以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。なお、実施形態においては、所定対象物としての人体の右手の指関節の機構を利用して行われる関節運動をアシストする関節運動アシスト装置を例示して説明する。また、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[骨格構造]
実施形態に係る関節運動アシスト装置の説明に先立って、人体の手指の骨格構造について説明する。
図1には、手の平の側から視た右手の骨格構造が示されている。人体の手指の骨格は、図1に示されるように、「手根骨」に「母指の中手骨」が接続されている。また、当該「手根骨」には、示指、中指、薬指及び小指の「中手骨」が接続されている。そして、母指の中手骨には、「基節骨」及び「末節骨」から構成される「指骨」が接続されている。また、示指、中指、薬指及び小指の中手骨のそれぞれには、「基節骨」、「中節骨」及び「末節骨」から構成される「指骨」が接続されている。なお、手根が第1部位に対応し、母指の中手が第2部位に対応している。
ここで、「母指の中手骨」は、「鞍関節」である「母指の手根中手関節」により、「手根骨(より詳しくは、「大菱形骨」)」に接続されている。また、「示指、中指、薬指及び小指の中手骨」のそれぞれは、ほとんど動かない「半関節」により、「中手骨」に接続されている。
また、「手根骨」は、「大菱形骨」、「小菱形骨」、「舟状骨」を含んでいる。また、「手根骨」は、「有頭骨」、「月状骨」を含み、更に、「有鈎骨」、「三角骨」、「豆状骨」を含んでいる。そして、手根骨における「舟状骨」は、「有頭骨」及び「月状骨」と、「平面関節」により接続されている。
ここで、「鞍関節」は、両関節面が鞍の背面に相当するもので、互いに直交する方向に動く二軸性の関節である。図2(A)には、「鞍関節」の動きを概念的に説明するための図が示されている。また、「平面関節」は、2つの関節面が平面的で、互いにずれる運動を行う関節である。図2(B)には、「平面関節」の動きを概念的に説明するための図が示されている。この「鞍関節」及び「平面関節」の動きにより、母指は、示指等の他の四指と比べて、複雑な関節運動が可能となっている。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を、図3〜図15を参照して説明する。
<構成>
図3,4には、第1実施形態に係る関節運動アシスト装置100Aの外観図が示されている。図3,4における座標系(X,Y,Z)は、全ての手指が閉じた状態で、手指が延びる方向と直交し、母指(第1指)から小指(第5指)へと向かう方向を+X方向、手根から指先へと向かう方向を+Y方向、手の平の側から手の甲の側へと向かう方向を+Z方向とする座標系である。
ここで、図3は、右手HDの手背(手の甲)に装着される関節運動アシスト装置100Aを、手指の関節が伸展状態にあり、かつ、全ての手指が閉じているときに手背側(手の甲の側)から眺めた外観図である。また、図4は、図3に示される関節運動アシスト装置100Aを、手掌側(手の平の側)から眺めた外観図である。なお、関節運動アシスト装置100Aは、後述するように、21個のベローズを構成要素としている。そして、図3,4には、後述する第3ベローズ部材233のみが膨張し、他の20個のベローズが収縮しているときの関節運動アシスト装置100Aの状態が示されている。また、図4では、関節運動アシスト装置100Aを装着する右手の図示を省略している。
以下の構成の説明では、図3,4に示される状態の関節運動アシスト装置100Aについて説明する。また、以下の説明では、構成要素の回転運動を、一の構成要素を相対静止させた系で、説明することがある。
図3,4により総合的に示されるように、関節運動アシスト装置100Aは、第1部材としての手根骨格部材110Aと、母指関節運動アシスト部120Aとを備えている。また、関節運動アシスト装置100Aは、示指関節運動アシスト部130A2と、中指関節運動アシスト部130A3と、薬指関節運動アシスト部130A4と、小指関節運動アシスト部130A5とを備えている、さらに、関節運動アシスト装置100Aは、調整部180A(図4においては不図示)を備えている。
なお、以下の説明では、示指関節運動アシスト部130A2、中指関節運動アシスト部130A3、薬指関節運動アシスト部130A4、小指関節運動アシスト部130A5を総称して、「手指関節運動アシスト部130Aj(j=2,…,5)」又は「手指関節運動アシスト部130A」とも記す。
《手根骨格部材110A》
上記の手根骨格部材110Aについて説明する。手根骨格部材110Aは、例えば、鋼鉄製の部材であり、XY平面と平行な平板部を含む部材である。手根骨格部材110Aは、不図示のベルトにより、人体の手根に装着される。手根骨格部材110Aの平板部には、当該平板部の法線方向と平行な方向(Z方向)に沿って延びる軸部材AX0を挿入する軸穴が成型加工されている。そして、手根骨格部材110Aには、当該Z方向に沿って延びる軸部材AX0を中心軸にして、母指関節運動アシスト部120Aが回動可能に取り付けられる。また、手根骨格部材110Aには、示指関節運動アシスト部130A2の一方の端部、中指関節運動アシスト部130A3の一方の端部、薬指関節運動アシスト部130A4の一方の端部及び小指関節運動アシスト部130A5の一方の端部が固定される。
また、手根骨格部材110Aには、Z方向に沿って延びる軸部材110xを中心軸にして、第3ベローズ部材233の一方側が回動可能に取り付けられている。
《母指関節運動アシスト部120Aの構成》
次に、上記の母指関節運動アシスト部120Aの構成について説明する。母指関節運動アシスト部120Aは、母指の関節運動をアシストする。母指関節運動アシスト部120Aは、不図示のベルトにより、母指の中手及び指(基節、末節)に装着される。母指関節運動アシスト部120Aは、図3,4及び図5(A),(B)により総合的に示されるように、軸部材AX0と、第2部材としての第1母指中手骨格部材211Aと、第3部材としての第2母指中手骨格部材212と、第4部材の一部としての第3母指中手骨格部材213と、第4部材の一部としての母指基節骨格部材221と、第4部材の一部としての母指末節骨格部材223とを備えている。
また、母指関節運動アシスト部120Aは、第1ベローズ231と、第2ベローズ部材232と、伸縮部材としての第3ベローズ部材233と、母指第1関節対応ベローズ241と、母指第2関節対応ベローズ242とを備えている。さらに、母指関節運動アシスト部120Aは、拘束部材としての弾性部材251と、弾性部材261,262とを備えている。
ここで、図5(A)は、母指関節運動アシスト部120Aを、+Z方向側から視た図である。また、図5(B)は、図5(A)に示される母指関節運動アシスト部120Aを、−X方向側から視た図である。
上記の軸部材AX0は、例えば、鋼鉄製の円柱形状の部材である。軸部材AX0は、手根骨格部材110Aに成型された軸穴、及び、第1母指中手骨格部材211Aに成型された軸穴に挿入される。
上記の第1母指中手骨格部材211Aは、例えば、鋼鉄製の部材であり、図5(A),(B)及び図6により総合的に示されるように、手根骨格部材110Aの平板部と略平行な板を有する長板部211b、及び、当該長板部211bから延びる取付部211tを含む部材である。第1母指中手骨格部材211Aの長板部211bには、軸部材AX0を挿入する軸穴が成型加工されている。そして、第1母指中手骨格部材211Aは、Z方向を軸方向とする軸部材AX0により、手根骨格部材110Aに対して、回動可能に取り付けられている。
第1母指中手骨格部材211Aの長板部211bにおける第2母指中手骨格部材212の取り付け位置側である一方の端部には、弾性部材251及び第1ベローズ231を介して、第2母指中手骨格部材212が接続されている。また、第1母指中手骨格部材211Aの一方の端部側には、長板部211bの端から略直立して手の甲の方向(+Z方向)に沿って延びる環状の接続部が形成されている。そして、第1母指中手骨格部材211Aの一方の端部側の接続部は、第1ベローズ231の一方側端部に接続されている。
また、第1母指中手骨格部材211Aの取付部211tには、Z方向を軸方向とする軸部材211xを中心軸にして、第3ベローズ部材233の他方側が回動可能に取り付けられている。
上記の第2母指中手骨格部材212は、例えば、鋼鉄製の部材であり、図5(A),(B)及び図7により総合的に示されるように、長板部212b、及び、当該長板部212bが延びる方向と略直交するように長板部212bから延びる取付部212tを含む部材である。第2母指中手骨格部材212の長板部212bの一方の端部には、上述した弾性部材251及び第1ベローズ231を介して、第1母指中手骨格部材211Aが接続されている。ここで、第2母指中手骨格部材212の長板部212bは、手根に手根骨格部材110Aが装着されている時において、手根骨格部材110Aの平板部と略平行になる「母指の手根中手関節」の一の関節軸(以下、「第1軸」とも記す)の軸方向に対して略直交するように延びている。そして、第2母指中手骨格部材212の長板部212bの一方の端部は、当該第1軸を回動軸にして、回動可能に第1母指中手骨格部材211Aに接続されるようになっている。
また、第2母指中手骨格部材212の一方の端部側には、長板部212bの端から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。そして、第2母指中手骨格部材212の一方の端部側の接続部は、第1ベローズ231の他方側端部に接続されている。
また、第2母指中手骨格部材212の長板部212bの他方の端部には、第2母指中手骨格部材212が延びる方向及び第1軸の軸方向の双方と略直交する第2軸部材AX2を挿入する軸穴が成型加工されている。そして、第2母指中手骨格部材212の他方の端部には、第2軸部材AX2により、第3母指中手骨格部材213が回動可能に取り付けられている。
また、第2母指中手骨格部材212の取付部212tには、軸部材212xを中心軸にして、第2ベローズ部材232の他方側が回動可能に取り付けられている。
上記の第3母指中手骨格部材213は、例えば、鋼鉄製の部材であり、図5(A),(B)及び図8により総合的に示されるように、長板部213b、及び、当該長板部213bが延びる方向と略直交するように長板部213bから延びる取付部213tを含む部材である。第3母指中手骨格部材213の長板部の一方の端部には、第2軸部材AX2を挿入する軸穴が成型加工されている。そして、第3母指中手骨格部材213の一方の端部には、上述した第2軸部材AX2により、第2母指中手骨格部材212の他方の端部が回動可能に取り付けられている。
また、第3母指中手骨格部材213の長板部213bの他方の端部には、弾性部材262及び母指第2関節対応ベローズ242を介して、母指基節骨格部材221が接続されている。また、第3母指中手骨格部材213の他方の端部側には、長板部213bの端から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。そして、第3母指中手骨格部材213の他方の端部側の接続部は、母指第2関節対応ベローズ242の一方側端部に接続されている。
また、第3母指中手骨格部材213の取付部213tには、軸部材213xを中心軸にして、第2ベローズ部材232の一方側が回動可能に取り付けられている。
上述した第1母指中手骨格部材211A、第2母指中手骨格部材212及び第3母指中手骨格部材213は、母指の中手に装着される。
上記の母指基節骨格部材221は、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。そして、当該長板部には、端部から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。母指基節骨格部材221の長板部の一方の端部には、上述した弾性部材262及び母指第2関節対応ベローズ242を介して、第3母指中手骨格部材213が接続されている。そして、母指基節骨格部材221の一方の端部の接続部は、母指第2関節対応ベローズ242の他方側端部に接続されている。ここで、母指基節骨格部材221の長板部の一方の端部は、右手に関節運動アシスト装置100Aが装着されている時において、母指の第2関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に第3母指中手骨格部材213に接続されるようになっている。
また、母指基節骨格部材221の長板部の他方の端部には、弾性部材261及び母指第1関節対応ベローズ241を介して、母指末節骨格部材223が接続されている。そして、母指基節骨格部材221の他方の端部側の接続部は、母指第1関節対応ベローズ241の一方側端部に接続されている。この母指基節骨格部材221は、母指の基節に装着される。
上記の母指末節骨格部材223は、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。そして、当該長板部には、一方の端部から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。母指末節骨格部材223の長板部の一方の端部には、上述した弾性部材261及び母指第1関節対応ベローズ241を介して、母指基節骨格部材221が接続されている。そして、母指末節骨格部材223の一方の端部の接続部は、母指第1関節対応ベローズ241の他方側端部に接続されている。ここで、母指末節骨格部材223の長板部の一方の端部は、右手に関節運動アシスト装置100Aが装着されている時において、母指の第1関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に母指基節骨格部材221に接続されるようになっている。この母指末節骨格部材223は、母指の末節に装着される。
(第1ベローズ231、第2ベローズ部材232、第3ベローズ部材233)
次いで、第1ベローズ231、第2ベローズ部材232及び第3ベローズ部材233について説明する。これらの第1ベローズ231、第2ベローズ部材232及び第3ベローズ部材233は、手根骨格部材110Aに対する、母指関節運動アシスト部120Aの関節運動をアシストする力を発生させる。
上記の第1ベローズ231は、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、第1軸の周りに沿って、当該第1軸に対して略直交する方向に配置される。第1ベローズ231の一方側端部は、第1母指中手骨格部材211Aの一方の端部側に形成された接続部に接続されるとともに、第1ベローズ231の他方側端部は、第2母指中手骨格部材212の一方の端部側に形成された接続部に接続される。そして、第1ベローズ231と調整部180Aとの間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管271(後述する図12参照)を通じて、第1ベローズ231内の空気圧が変化すると、第1ベローズ231が膨縮する。この結果、第1ベローズ231が上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
上記の第2ベローズ部材232は、第2ベローズ232aと、接続部232b,232cとを備えている。第2ベローズ232aは、上述した第1ベローズ231と同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材である。
接続部232bは、例えば、鋼鉄製の部材であり、L字状に成型加工されている。接続部232bにおけるL字状の一方部分は環状部材となっており、第2ベローズ232aの一方側端部に接続されている。また、接続部232bにおけるL字状の他方部分は板状部材となっており、軸部材213xを挿入する軸穴が成型されている。そして、当該板状部材は、第2軸部材AX2と平行な軸方向の軸部材213xを中心軸にして、回動可能に第3母指中手骨格部材213の取付部213tに取り付けられている。
接続部232cは、接続部232bと同様に、例えば、鋼鉄製の部材であり、L字状に成型加工されている。接続部232cにおけるL字状の一方部分は環状部材となっており、第2ベローズ232aの他方側端部に接続されている。また、接続部232cにおけるL字状の他方部分は板状部材となっており、軸部材212xを挿入する軸穴が成型されている。そして、当該板状部材は、第2軸部材AX2と平行な軸方向の軸部材212xを中心軸にして、回動可能に第2母指中手骨格部材212の取付部212tに取り付けられている。
そして、第2ベローズ232aと調整部180Aとの間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管272(後述する図12参照)を通じて、第2ベローズ232a内の空気圧が変化すると、第2ベローズ232aが膨縮する。この結果、第2ベローズ部材232が上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
上記の第3ベローズ部材233は、第3ベローズ233aと、接続部233b,233cとを備えている。第3ベローズ233aは、上述した第1ベローズ231、第2ベローズ232aと同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材である。
接続部233bは、例えば、鋼鉄製の部材であり、L字状に成型加工されている。接続部233bにおけるL字状の一方部分は環状部材となっており、第3ベローズ233aの一方側端部に接続されている。また、接続部233bにおけるL字状の他方部分は板状部材となっており、軸部材110xを挿入する軸穴が成型されている。そして、当該板状部材は、軸部材AX0と平行な軸方向の軸部材110xを中心軸にして、回動可能に手根骨格部材110Aに取り付けられている。
接続部233cは、接続部233bと同様に、例えば、鋼鉄製の部材であり、L字状に成型加工されている。接続部233cにおけるL字状の一方部分は環状部材となっており、第3ベローズ233aの他方側端部に接続されている。また、接続部233cにおけるL字状の他方部分は板状部材となっており、軸部材211xを挿入する軸穴が成型されている。そして、当該板状部材は、軸部材AX0と平行な軸方向の軸部材211xを中心軸にして、回動可能に第1母指中手骨格部材211Aの取付部211tに取り付けられている。
そして、第3ベローズ233aと調整部180Aとの間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管273(後述する図12参照)を通じて、第3ベローズ233a内の空気圧が変化すると、第3ベローズ233aが膨縮する。この結果、第3ベローズ部材233が上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
(母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242)
次いで、母指第1関節対応ベローズ241及び母指第2関節対応ベローズ242について説明する。母指第2関節対応ベローズ242は、第3母指中手骨格部材213に対する、母指基節骨格部材221の関節運動をアシストする力を発生する。また、母指第1関節対応ベローズ241は、母指基節骨格部材221に対する、母指末節骨格部材223の関節運動をアシストする力を発生する。
上記の母指第2関節対応ベローズ242は、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、母指の第2関節の関節軸の周りに沿って、当該関節軸に対して略直交する方向に配置される。母指第2関節対応ベローズ242の一方側端部は、第3母指中手骨格部材213の他方の端部側に形成された接続部に接続されるとともに、母指第2関節対応ベローズ242の他方側端部は、母指基節骨格部材221の一方の端部側に形成された接続部に接続される。
上記の母指第1関節対応ベローズ241は、母指第2関節対応ベローズ242と同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、母指の第1関節の関節軸の周りに沿って、当該関節軸に対して略直交する方向に配置される。母指第1関節対応ベローズ241の一方側端部は、母指基節骨格部材221の他方の端部側に形成された接続部に接続されるとともに、母指第1関節対応ベローズ241の他方側端部は、母指末節骨格部材223の一方の端部側に形成された接続部に接続される。
ここで、母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242間は、可撓性を有する樹脂製の配管により、連通している。そして、母指第2関節対応ベローズ242と調整部180Aとの間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管274を通じて、2つのベローズ内の空気圧が変化すると、当該2つのベローズが膨縮する。この結果、母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242が上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
上記の弾性部材251は、第1実施形態では、輪状のゴム部材を採用している。弾性部材251は、第1母指中手骨格部材211Aの長板部211bの一方の端部、及び、第2母指中手骨格部材212の長板部212bの一方の端部に取り付けられる。そして、弾性部材251は、第1ベローズ231における母指の手根中手関節と対向する部分を弾性的に拘束する。
上記の弾性部材262は、第1実施形態では、輪状のゴム部材を採用している。弾性部材262は、第3母指中手骨格部材213の長板部213bの他方の端部、及び、母指基節骨格部材221の長板部の一方の端部に取り付けられる。そして、弾性部材262は、母指第2関節対応ベローズ242における母指の第2関節と対向する部分を弾性的に拘束する。
上記の弾性部材261は、第1実施形態では、弾性部材262と同様に、輪状のゴム部材を採用している。弾性部材261は、母指基節骨格部材221の長板部の他方の端部、及び、母指末節骨格部材223の長板部の一方の端部に取り付けられる。そして、弾性部材261は、母指第1関節対応ベローズ241における母指の第1関節と対向する部分を弾性的に拘束する。
《手指関節運動アシスト部130Aj(j=2,…,5)の構成》
次に、上記の手指関節運動アシスト部130Aj(j=2,…,5)の構成について説明する。
ここで、手指関節運動アシスト部(示指関節運動アシスト部)130A2は、示指の関節運動をアシストする。また、手指関節運動アシスト部(中指関節運動アシスト部)130A3は、中指の関節運動をアシストする。また、手指関節運動アシスト部(薬指関節運動アシスト部)130A4は、薬指の関節運動をアシストする。また、手指関節運動アシスト部(小指関節運動アシスト部)130A5は、小指の関節運動をアシストする。そして、手指関節運動アシスト部130Aj(j=2,…,5)のそれぞれは、不図示のベルトにより、これらの手指の中手及び指(基節骨、中節骨、末節骨)に装着される。
図9(A),(B)には、手指関節運動アシスト部130Ajの代表として、手指関節運動アシスト部(示指関節運動アシスト部)130A2の構成図が示されている。図9(A)は、手指関節運動アシスト部130A2を、+Z方向側から視た図である。また、図9(B)は、図9(A)に示される手指関節運動アシスト部130A2を、−X方向側から視た図である。第1実施形態では、手指関節運動アシスト部130A3,130A4,130A5についても、手指関節運動アシスト部130A2と同様に構成されている。
手指関節運動アシスト部130Aj(j=2,…,5)のそれぞれは、図3,4及び図9(A),(B)により総合的に示されるように、第1中手骨格部材311jと、第2中手骨格部材312jと、開閉用ベローズ部材331jとを備えている。また、手指関節運動アシスト部130Ajのそれぞれは、基節骨格部材321jと、中節骨格部材322jと、末節骨格部材323jとを備えている。さらに、手指関節運動アシスト部130Ajのそれぞれは、第1関節対応ベローズ341jと、第2関節対応ベローズ342jと、第3関節対応ベローズ343jと、弾性部材361j,362j,363jとを備えている。
なお、以下の説明においては、第1中手骨格部材311j、第2中手骨格部材312j、開閉用ベローズ部材331j、基節骨格部材321j、中節骨格部材322j、末節骨格部材323jのそれぞれを、「第1中手骨格部材311」、「第2中手骨格部材312」、「開閉用ベローズ部材331」、「基節骨格部材321」、「中節骨格部材322」、「末節骨格部材323」とも記す。また、第1関節対応ベローズ341j、第2関節対応ベローズ342j、第3関節対応ベローズ343jのそれぞれを、「第1関節対応ベローズ341」、「第2関節対応ベローズ342」、「第3関節対応ベローズ343」とも記す。さらに、弾性部材361j,362j,363jを、「弾性部材361,362,363」とも記す。
上記の第1中手骨格部材311は、例えば、鋼鉄製の部材であり、図9(A),(B)及び図10に示されるように、Y方向に沿って延びる長板部を含む部材である。第1中手骨格部材311の一方の端部(−Y方向側)は、手根骨格部材110Aに固定されている。また、第1中手骨格部材311の他方の端部(+Y方向側)には、長板部の法線方向と略平行な方向に沿って延びる開閉用軸部材AXCj(以下、「開閉用軸部材AXC」とも記す)を挿入する軸穴が成型加工されている。そして、第1中手骨格部材311の他方の端部には、開閉用軸部材AXCにより、第2中手骨格部材312が回動可能に取り付けられている。
また、第1中手骨格部材311には、軸部材311xj(以下、「軸部材311x」とも記す)を中心軸にして、開閉用ベローズ部材331の一方側が回動可能に取り付けられている。
上記の第2中手骨格部材312は、例えば、鋼鉄製の部材であり、図9(A),(B)及び図11に示されるように、長板部312bと、当該長板部312bから延びる取付部312tとを含む部材である。第2中手骨格部材312の長板部の一方の端部には、開閉用軸部材AXCを挿入する軸穴が成型加工されている。そして、第2中手骨格部材312の一方の端部は、第1中手骨格部材311の他方の端部に対して、上述した開閉用軸部材AXCにより、回動可能に取り付けられている。
また、第2中手骨格部材312の長板部の他方の端部には、弾性部材363及び第3関節対応ベローズ343を介して、基節骨格部材321が接続されている。また、第2中手骨格部材312の他方の端部側には、長板部312bの端から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。そして、第2中手骨格部材312の他方の端部側の接続部は、第3関節対応ベローズ343の一方側端部に接続されている。
また、第2中手骨格部材312の取付部312tには、軸部材312xj(以下、「軸部材312x」とも記す)を中心軸にして、開閉用ベローズ部材331の他方側が回動可能に取り付けられている。
上述した第1中手骨格部材311及び第2中手骨格部材312は、手指の中手に装着される。
上記の基節骨格部材321は、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。そして、当該長板部には、両方の端部から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。基節骨格部材321の長板部の一方の端部には、上述した弾性部材363及び第3関節対応ベローズ343を介して、第2中手骨格部材312が接続されている。そして、基節骨格部材321の一方の端部側の接続部は、第3関節対応ベローズ343の他方側端部に接続されている。ここで、基節骨格部材321の長板部の一方の端部は、右手に関節運動アシスト装置100Aが装着されている時において、第3関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に第2中手骨格部材312に接続されるようになっている。
また、基節骨格部材321の長板部の他方の端部には、弾性部材362及び第2関節対応ベローズ342を介して、中節骨格部材322が接続されている。そして、基節骨格部材321の他方の端部側の接続部は、第2関節対応ベローズ342の一方側端部に接続されている。この基節骨格部材321は、手指の基節に装着される。
上記の中節骨格部材322は、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。そして、当該長板部には、両方の端部から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。中節骨格部材322の長板部の一方の端部には、上述した弾性部材362及び第2関節対応ベローズ342を介して、基節骨格部材321が接続されている。そして、中節骨格部材322の一方の端部側の接続部は、第2関節対応ベローズ342の他方側端部に接続されている。ここで、中節骨格部材322の長板部の一方の端部は、右手に関節運動アシスト装置100Aが装着されている時において、第2関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に基節骨格部材321に接続されるようになっている。
また、中節骨格部材322の長板部の他方の端部には、弾性部材361及び第1関節対応ベローズ341を介して、末節骨格部材323が接続されている。そして、中節骨格部材322の他方の端部側の接続部は、第1関節対応ベローズ341の一方側端部に接続されている。この中節骨格部材322は、手指の中節に装着される。
上記の末節骨格部材323は、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。そして、当該長板部には、一方の端部から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。末節骨格部材323の長板部の一方の端部には、上述した弾性部材361及び第1関節対応ベローズ341を介して、中節骨格部材322が接続されている。そして、末節骨格部材323の一方の端部側の接続部は、第1関節対応ベローズ341の他方側端部に接続されている。ここで、末節骨格部材323の長板部の一方の端部は、右手に関節運動アシスト装置100Aが装着されている時において、第1関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に中節骨格部材322に接続されるようになっている。この末節骨格部材323は、手指の末節に装着される。
(開閉用ベローズ部材331)
次いで、開閉用ベローズ部材331について説明する。開閉用ベローズ部材331は、第1中手骨格部材311に対する、第2中手骨格部材312の回動運動をアシストする力を発生させる
上記の開閉用ベローズ部材331は、開閉用ベローズ331aと、接続部331b,331cとを備えている。開閉用ベローズ331aは、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材である。
接続部331bは、例えば、鋼鉄製の部材であり、L字状に成型加工されている。接続部331bにおけるL字状の一方は環状部材となっており、開閉用ベローズ331aの一方側端部に接続されている。また、接続部331bにおけるL字状の他方は板状部材となっており、軸部材311xを挿入する軸穴が成型されている。そして、当該板状部材は、開閉用軸部材AXCと平行な軸方向の軸部材311xを中心軸にして、回動可能に第1中手骨格部材311に取り付けられている。
接続部331cは、接続部331bと同様に、例えば、鋼鉄製の部材であり、L字状に成型加工されている。接続部331cにおけるL字状の一方は環状部材となっており、開閉用ベローズ331aの他方側端部に接続されている。また、接続部331cにおけるL字状の他方は板状部材となっており、軸部材312xを挿入する軸穴が成型されている。そして、当該板状部材は、開閉用軸部材AXCと平行な軸方向の軸部材312xを中心にして、回動可能に第2中手骨格部材312の取付部312tに取り付けられている。
そして、開閉用ベローズ331aと調整部180Aとの間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管371(図12参照。以下、「配管371j」とも記す)を通じて、開閉用ベローズ331a内の空気圧が変化すると、開閉用ベローズ331aが膨縮する。この結果、開閉用ベローズ部材331が上述した回動運動をアシストする力を発生させる。
(第1〜第3関節対応ベローズ341,342,343)
次いで、第1関節対応ベローズ341、第2関節ベローズ342及び第3関節対応ベローズ343について説明する。第3関節対応ベローズ343は、第2中手骨格部材312に対する、基節骨格部材321の関節運動をアシストする力を発生する。また、第2関節対応ベローズ342は、基節骨格部材321に対する、中節骨格部材322の関節運動をアシストする力を発生する。さらに、第1関節対応ベローズ341は、中節骨格部材322に対する、末節骨格部材323の関節運動をアシストする力を発生する。
上記の第3関節対応ベローズ343は、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、第3関節の関節軸の周りに沿って、当該関節軸に対して略直交する方向に配置される。第3関節対応ベローズ343の一方側端部は、第2中手骨格部材312の他方の端部側に形成された接続部に接続されるとともに、第3関節対応ベローズ343の他方側端部は、基節骨格部材321の一方の端部側に形成された接続部に接続される。そして、第3関節対応ベローズ343と調整部180Aとの間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管373(図12参照。以下、「配管373j」とも記す)を通じて、第3関節対応ベローズ343内の空気圧が変化すると、第3関節対応ベローズ343が膨縮する。この結果、第3関節対応ベローズ343が上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
上記の第2関節対応ベローズ342は、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、第2関節の関節軸の周りに沿って、当該関節軸に対して略直交する方向に配置される。第2関節対応ベローズ342の一方側端部は、基節骨格部材321の他方の端部側に形成された接続部に接続されるとともに、第2関節対応ベローズ342の他方側端部は、中節骨格部材322の一方の端部側に形成された接続部に接続される。
上記の第1関節対応ベローズ341は、第2関節対応ベローズ342と同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、第1関節の関節軸の周りに沿って、当該関節軸に対して略直交する方向に配置される。第1関節対応ベローズ341の一方側端部は、中節骨格部材322の他方の端部側に形成された接続部に接続されるとともに、第1関節対応ベローズ341の他方側端部は、末節骨格部材323の一方の端部側に形成された接続部に接続される。
ここで、第1関節対応ベローズ341、第2関節対応ベローズ342間は、可撓性を有する樹脂製の配管により、連通している。そして、第2関節対応ベローズ342と調整部180Aとの間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管372(図12参照。以下、「配管372j」とも記す)を通じて、2つのベローズ内の空気圧が変化すると、当該2つのベローズが膨縮する。この結果、第1関節対応ベローズ341、第2関節対応ベローズ342が上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
上記の弾性部材363は、輪状のゴム部材を採用している。弾性部材363は、第2中手骨格部材312の長板部の他方の端部、及び、基節骨格部材321の長板部の一方の端部に取り付けられる。そして、弾性部材363は、第3関節対応ベローズ343における第3関節と対向する部分を弾性的に拘束する。
上記の弾性部材362は、弾性部材363と同様に、輪状のゴム部材を採用している。弾性部材362は、基節骨格部材321の長板部の他方の端部、及び、中節骨格部材322の長板部の一方の端部に取り付けられる。そして、弾性部材362は、第2関節対応ベローズ342における第2関節と対向する部分を弾性的に拘束する。
上記の弾性部材361は、弾性部材363,362と同様に、輪状のゴム部材を採用している。弾性部材361は、中節骨格部材322の長板部の他方の端部、及び、末節骨格部材323の長板部の一方の端部に取り付けられている。そして、弾性部材361は、第1関節対応ベローズ341における第1関節と対向する部分を弾性的に拘束する。
《調整部180Aの構成》
次いで、上記の調整部180Aの構成について説明する。調整部180Aは、配管271を介して第1ベローズ231と連通している。また、調整部180Aは、配管272を介して第2ベローズ部材232と連通しているとともに、配管273を介して第3ベローズ部材233と連通している。さらに、調整部180Aは、配管274を介して母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242と連通している。
また、調整部180Aは、配管371j(j=2,…,5)を介して手指関節運動アシスト部130Aj(j=2,…,5)の開閉用ベローズ部材331jと連通している。また、調整部180Aは、配管373jを介して手指関節運動アシスト部130Ajの第3関節対応ベローズ343jと連通している。さらに、調整部180Aは、配管372jを介して手指関節運動アシスト部130Ajの第1関節対応ベローズ341j、第2関節対応ベローズ342jと連通している。以下の説明においては、これらのベローズを総称して、単に「ベローズ」とも記す。
かかる構成を有する調整部180Aは、図12に示されるように、加圧ポンプ181と、減圧ポンプ182と、電気−空気圧制御弁183と、制御部184と、配管185,186とを備えている。
上記の加圧ポンプ181は、配管185を介して、電気−空気圧制御弁183のポンプ側接続口の一方側に接続されている。この加圧ポンプ181は、ベローズへの空気の強制的供給を行う際に利用される。上記の減圧ポンプ182は、配管186を介して、電気−空気圧制御弁183のポンプ側接続口の他方側に接続されている。この減圧ポンプ182は、ベローズからの空気の強制的排出を行う際に、利用される。
上記の電気−空気圧制御弁183は、流路切換弁と、圧力制御弁(比例ソレノイドバルブ)とを備えて構成されている。この流路切換弁の入口側の一方が加圧ポンプ181に接続されているとともに、入口側の他方が減圧ポンプ182に接続されている。
そして、流路切換弁は、制御部184による制御のもとで、ベローズへの空気の強制的供給を行う際には、加圧ポンプ181に接続されている配管185と指定されたベローズと連通している配管とを接続して流路を形成する。また、流路切換弁は、制御部184による制御のもとで、ベローズからの空気の強制的排出を行う際には、減圧ポンプ182に接続されている配管186と指定されたベローズと連通している配管とを接続して流路を形成する。
例えば、第1ベローズ231への強制的供給を行う際には、流路切換弁は、配管185と配管271とを接続して流路を形成する。また、第1ベローズ231からの空気の強制的排出を行う際には、流路切換弁は、配管186と配管271とを接続して流路を形成する。
また、第2ベローズ部材232への強制的供給を行う際には、流路切換弁は、配管185と配管272とを接続して流路を形成する。また、第2ベローズ部材232からの空気の強制的排出を行う際には、流路切換弁は、配管186と配管272とを接続して流路を形成する。さらに、第3ベローズ部材233への強制的供給を行う際には、流路切換弁は、配管185と配管273とを接続して流路を形成する。また、第3ベローズ部材233からの空気の強制的排出を行う際には、流路切換弁は、配管186と配管273とを接続して流路を形成する。
また、母指第1関節対応ベローズ241及び母指第2関節対応ベローズ242への強制的供給を行う際には、流路切換弁は、配管185と配管274とを接続して流路を形成する。また、母指第1関節対応ベローズ241及び母指第2関節対応ベローズ242からの空気の強制的排出を行う際には、流路切換弁は、配管186と配管274とを接続して流路を形成する。
さらに、開閉用ベローズ部材331jへの強制的供給を行う際には、流路切換弁は、配管185と配管371jとを接続して流路を形成する。また、開閉用ベローズ部材331jからの空気の強制的排出を行う際には、流路切換弁は、配管186と配管371jとを接続して流路を形成する。
また、第1関節対応ベローズ341j及び第2関節対応ベローズ342jへの強制的供給を行う際には、流路切換弁は、配管185と配管372jとを接続して流路を形成する。また、第1関節対応ベローズ341j及び第2関節対応ベローズ342jからの空気の強制的排出を行う際には、流路切換弁は、配管186と配管372jとを接続して流路を形成する。さらに、第3関節対応ベローズ343jへの強制的供給を行う際には、流路切換弁は、配管185と配管373jとを接続して流路を形成する。また、第3関節対応ベローズ343jからの空気の強制的排出を行う際には、流路切換弁は、配管186と配管373jとを接続して流路を形成する。
また、圧力制御弁は、制御部184による制御のもとで、空気圧力を制御して、ベローズ内の空気圧を変化させる。
上記の制御部184は、ベローズからの空気の強制的排出、及び、ベローズへの空気の強制的供給の切り換え、並びに、ベローズ内の空気圧の制御を行う。かかる制御に際して、ベローズへの空気の強制的供給を行う場合には、制御部184は、電気−空気圧制御弁183が加圧ポンプ181と関節運動を行うベローズとを接続する流路を形成し、ベローズ内の空気圧力を調整するように、制御する。また、ベローズからの空気の強制的排出を行う場合には、制御部184は、電気−空気圧制御弁183が減圧ポンプ182と関節運動を行うベローズとを接続する流路を形成し、ベローズ内の空気圧力を調整するように、制御する。
こうした制御は、実験、シミュレーション、経験等を加味した脳波、筋力に関する生体情報に基づいて行われるようになっている。ここで、脳波、筋力に関する生体情報は、不図示の検出部が、脳波、筋電図、筋肉の硬さ等を検出することで、取得するようにすることができる。
<動作>
以上のようにして構成された関節運動アシスト装置100Aの動作、すなわち、指関節の機構を利用する関節運動のアシスト動作を説明する。
なお、関節運動アシスト装置100Aでは、当初においては、調整部180Aによるベローズ内の空気圧調整は行われておらず、全てのベローズの内圧は大気圧になっているものとする。
《母指の閉状態へのアシスト動作》
まず、母指を、閉じた状態にするアシスト動作について説明する。ここで、閉じた状態(以下、「閉状態」とも記す)」とは、人体の手指が閉じた状態であり、例えば、図3に示されるように、各手指の延びる方向が略一致する状態をいうものとする。
第1実施形態では、母指を閉状態にする際には、調整部180Aが、第1ベローズ231、第2ベローズ232aからの空気の強制的排出を行うための制御を行うとともに、第3ベローズ233aへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。
かかる制御に従って、調整部180Aにより、第1ベローズ231、第2ベローズ232aからの空気の強制的排出が行われると、第1ベローズ231、第2ベローズ232a内の空気圧が下降する。そして、第1ベローズ231、第2ベローズ232a内の空気圧が下降すると、第1ベローズ231、第2ベローズ232aが収縮する。また、かかる制御に従って、調整部180Aにより、第3ベローズ233aへの空気の強制的供給が行われると、第3ベローズ233a内の空気圧が上昇する。そして、第3ベローズ233a内の空気圧が上昇すると、第3ベローズ233aが膨張する。
こうして第3ベローズ233aが膨張すると、第1母指中手骨格部材211Aが、手根骨格部材110Aに対して、軸部材AX0を回転中心軸として、+Z方向から視たXY平面視(手の甲の側から視た状態)で時計回り(以下、単に「時計回り」とも記す)に回転する。
また、第1ベローズ231が収縮すると、第2母指中手骨格部材212が、第1母指中手骨格部材211Aに対して、二軸性の母指の手根中手関節の「一の関節軸」である第1軸を回動軸にして回転する。そして、当該回転により、手根骨格部材110Aの平板部と、第2母指中手骨格部材212の長板部212bとが、略同一平面を形成する。ここで、弾性部材251が第1ベローズ231における母指の手根中手関節と対向する部分を弾性的に拘束しているため、母指の手根中手関節に接続される部位間の伸縮が許容され、スムーズに、第1母指中手骨格部材211Aの一方の端部側に形成された接続部と第2母指中手骨格部材212の一方の端部側に形成された接続部との間の距離が、変化する。このため、第1ベローズ231が発生した直線的な収縮力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、母指の手根中手関節に接続される部位に伝達される。
さらに、第2ベローズ232aが収縮すると、第3母指中手骨格部材213が、第2母指中手骨格部材212に対して、第2軸部材AX2を回転中心軸にして、時計回りに回転する。そして、当該回転により、第2母指中手骨格部材212の長板部212bが延びる方向と、第3母指中手骨格部材213の長板部213bが延びる方向とのなす角が狭まり、略直角となる。この結果、母指関節運動アシスト部120Aは、上述した図3に示されるように、閉状態になる。このアシスト動作により、母指関節運動アシスト部120Aに装着されている母指は、閉状態になる。
ここで、第1ベローズ231の収縮による第2母指中手骨格部材212の、第1軸を回動軸とする第1母指中手骨格部材211Aに対する回転は、鞍関節の関節運動のアシスト動作の一部となっている。また、第2ベローズ232aの収縮による第3母指中手骨格部材213の、第2軸部材AX2を中心軸とする第2母指中手骨格部材212に対する回転は、鞍関節の関節運動のアシスト動作の一部となっている。
《母指の関節伸展状態へのアシスト動作》
次に、母指を、関節伸展状態にするアシスト動作について説明する。
母指を関節伸展状態にする際には、調整部180Aは、母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242からの空気の強制的排出を行うための制御を行う。
かかる制御に従って、調整部180Aにより、母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242からの空気の強制的排出が行われると、これらのベローズ内の空気圧が下降する。そして、母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242が収縮する。
こうして母指第2関節対応ベローズ242が収縮すると、母指第2関節対応ベローズ242は、母指の第2関節を伸展状態にする回動方向の力を発生する。そして、当該力の発生により、母指基節骨格部材221が、母指の第2関節の関節軸を回動軸にして、第3母指中手骨格部材213に対して回転する。ここで、母指第2関節対応ベローズ242における母指の第2関節と対向する部分が弾性部材262により、弾性的に拘束されているため、母指の第2関節の伸展に伴い、当該第2関節に接続される部位間の伸縮が許容され、第3母指中手骨格部材213の他方の端部側に形成された接続部と、母指基節骨格部材221の一方の端部側に形成された接続部との間の距離が、スムーズに変化する。このため、母指第2関節対応ベローズ242が発生した直線的な収縮力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、母指の第2関節に接続される部位に伝達される。
また、母指第1関節対応ベローズ241が収縮すると、母指第1関節対応ベローズ241は、母指の第1関節を伸展状態にする回動方向の力を発生する。そして、当該力の発生により、母指末節骨格部材223が、母指の第1関節の関節軸を回動軸にして、母指基節骨格部材221に対して回転する。ここで、母指第1関節対応ベローズ241における母指の第1関節と対向する部分が弾性部材261により、弾性的に拘束されているため、母指の第1関節の伸展に伴い、当該第1関節に接続される部位間の伸縮が吸収され、母指基節骨格部材221の他方の端部側に形成された接続部と母指末節骨格部材223の一方の端部側に形成された接続部との間の距離が、スムーズに変化する。このため、母指第1関節対応ベローズ241が発生した直線的な収縮力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、母指の第1関節に接続される部位に伝達される。この結果、母指関節運動アシスト部120Aは、上述した図3に示されるように、関節伸展状態になる。このアシスト動作により、母指関節運動アシスト部120Aに装着される母指は、関節伸展状態になる。
《母指以外の指の閉状態へのアシスト動作》
次いで、母指以外の指を、閉状態にするアシスト動作について説明する。
母指以外の指を閉状態にする際には、調整部180Aが、開閉用ベローズ部材331j(j=2,…,5)からの空気の強制的排出を行うための制御を行う。かかる制御に従って、調整部180Aにより、開閉用ベローズ部材331jからの空気の強制的排出が行われると、開閉用ベローズ部材331j内の空気圧が下降する。そして、開閉用ベローズ部材331j内の空気圧が下降すると、開閉用ベローズ部材331jが収縮する。
こうして開閉用ベローズ部材331jが収縮すると、第1中手骨格部材311jの長板部が延びる方向と、第2中手骨格部材312jの長板部312bが延びる方向とが、略同一となり、+Y方向と略一致する。この結果、手指関節運動アシスト部130Aj(j=2,…,5)は、上述した図3に示されるように、閉状態になる。このアシスト動作により、手指関節運動アシスト部130Ajに装着される指は、閉状態になる。
《母指以外の指の関節伸展状態へのアシスト動作》
次いで、母指以外の指を、関節伸展状態にするアシスト動作について説明する。
母指以外の指を関節伸展状態にする際には、調整部180Aは、第1関節対応ベローズ341j、第2関節対応ベローズ342j、第3関節対応ベローズ343jからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。かかる制御に従って、調整部180Aにより、第1関節対応ベローズ341j、第2関節対応ベローズ342j、第3関節対応ベローズ343jからの空気の強制的排出が行われると、これらのベローズ内の空気圧が下降する。そして、第1関節対応ベローズ341j、第2関節対応ベローズ342j、第3関節対応ベローズ343jが収縮する。
こうして第3関節対応ベローズ343jが収縮すると、第3関節対応ベローズ343jは、指の第3関節を伸展状態にする回転方向の力を発生する。そして、当該力の発生により、基節骨格部材321jが、第3関節の関節軸を回動軸にして、第2中手骨格部材312jに対して回転する。ここで、弾性部材363jが、第3関節対応ベローズ343jにおける第3関節と対向する部分を弾性的に拘束するため、第3関節の伸展に伴い、第2中手骨格部材312の他方の端部と基節骨格部材321の一方の端部との間の距離が、スムーズに変化する。このため、第3関節対応ベローズ343jが発生した直線的な収縮力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第3関節に接続される部位に伝達される。
また、第2関節対応ベローズ342jが収縮すると、第2関節対応ベローズ342jが、指の第2関節を伸展状態にする回転方向の力を発生する。そして、当該力により、中節骨格部材322jが、第2関節の関節軸を回動軸にして、基節骨格部材321jに対して回転する。ここで、弾性部材362jが、第2関節対応ベローズ342jにおける第2関節と対向する部分を弾性的に拘束するため、第2関節の伸展に伴い、基節骨格部材321の他方の端部と中節骨格部材322の一方の端部との間の距離が、スムーズに変化する。このため、第2関節対応ベローズ342jが発生した直線的な収縮力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第2関節に接続される部位に伝達される。
さらに、第1関節対応ベローズ341jが収縮すると、第1関節対応ベローズ341jが、指の第1関節を伸展状態にする回転方向の力を発生する。そして、当該力により、末節骨格部材323jが、第1関節の関節軸を回動軸にして、中節骨格部材322jに対して回転する。ここで、弾性部材361jが、第1関節対応ベローズ341jにおける第1関節と対向する部分を弾性的に拘束するため、第1関節の伸展に伴い、中節骨格部材322の他方の端部と末節骨格部材323の一方の端部との間の距離が、スムーズに変化する。このため、第1関節対応ベローズ341jが発生した直線的な収縮力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第1関節に接続される部位に伝達される。この結果、手指関節運動アシスト部130Aj(j=2,…,5)は、上述した図3に示されるように、関節伸展状態になる。このアシスト動作により、手指関節運動アシスト部130Ajに装着される指は、関節伸展状態になる。
《母指の開状態へのアシスト動作》
次いで、母指を、開いた状態にするアシスト動作について説明する。ここで、開いた状態(以下、「開状態」とも記す)」とは、人体の手指が開いた状態であり、例えば、後述する図13に示されるように、各手指の延びる方向が略一致する状態ではない状態をいうものとする。
図3に示される閉状態から、母指を開状態にする際には、調整部180Aが、第1ベローズ231からの空気の強制的排出を行うための制御、第2ベローズ232aへの空気の強制的供給を行うための制御、第3ベローズ233aからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。
かかる制御に従って、調整部180Aにより、第1ベローズ231からの空気の強制的排出が行われると、上述したように、第1ベローズ231が収縮する。また、かかる制御に従って、第2ベローズ232aへの空気の強制的供給が行われると、第2ベローズ232a内の空気圧が上昇する。そして、第2ベローズ232a内の空気圧が上昇すると、第2ベローズ232aが膨張する。また、かかる制御に従って、第3ベローズ233aからの空気の強制的排出が行われると、第3ベローズ233a内の空気圧が下降する。そして、第3ベローズ233a内の空気圧が下降すると、第3ベローズ233aが収縮する。
こうして第3ベローズ233aが収縮すると、第1母指中手骨格部材211Aが、手根骨格部材110Aに対して、軸部材AX0を回転中心軸として、+Z方向から視たXY平面視で反時計回り(以下、単に「反時計回り」とも記す)に回転する。
また、第1ベローズ231が収縮すると、上述したように、手根骨格部材110Aの平板部と、第2母指中手骨格部材212の長板部212bとが、略同一平面を形成する。さらに、第2ベローズ232aが膨張すると、第3母指中手骨格部材213が、第2母指中手骨格部材212に対して、第2軸部材AX2を回転中心軸にして、反時計回りに回転運動する。そして、当該回転運動により、第2母指中手骨格部材212の長板部212bが延びる方向と、第3母指中手骨格部材213の長板部213bが延びる方向とのなす角が広がるように変化する。この結果、母指関節運動アシスト部120Aは、図13に示されるように、開状態になる。このアシスト動作により、母指関節運動アシスト部120Aに装着される母指は、開状態になる。
なお、図13に示される関節運動アシスト装置100Aでは、調整部180Aの図示、及び、配管の一部の図示を省略している。また、図13では、関節運動アシスト装置100Aを装着する右手の図示を省略している。
ここで、第1ベローズ231の収縮による第2母指中手骨格部材212の、第1軸を回動軸とする第1母指中手骨格部材211Aに対する回転は、上述したように、鞍関節の関節運動のアシスト動作の一部となっている。また、第2ベローズ232aの膨張による第3母指中手骨格部材213の、第2軸部材AX2を中心軸とする第2母指中手骨格部材212に対する回転運動は、鞍関節の関節運動のアシスト動作の一部となっている。
《母指以外の指の開状態へのアシスト動作》
次いで、母指以外の指を、開状態にするアシスト動作について説明する。
図3に示される閉状態から、母指以外の指を開状態にする際には、調整部180Aが、開閉用ベローズ部材331j(j=2,…,5)への空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御に従って、調整部180Aにより、開閉用ベローズ部材331jへの空気の強制的供給が行われると、開閉用ベローズ部材331j内の空気圧が上昇する。そして、開閉用ベローズ部材331j内の空気圧が上昇すると、開閉用ベローズ部材331jが膨張する。
こうして開閉用ベローズ部材331jが膨張すると、第2中手骨格部材312が、第1中手骨格部材311に対して、開閉用軸部材AXCjを回転中心軸にして回転する。そして、当該回転により、第1中手骨格部材311に対して、第2中手骨格部材312が傾く。この結果、手指関節運動アシスト部130Aj(j=2,…,5)は、図13に示されるように、開状態になる。このアシスト動作により、手指関節運動アシスト部130Ajに装着される指は、開状態になる。
《母指の手根中手関節の運動のアシスト動作》
次に、第1ベローズ231の伸縮による母指関節運動アシスト部120Aの手根中手関節の運動のアシスト動作について、説明する。
第1ベローズ231が収縮した図3に示される状態から、調整部180Aが、第1ベローズ231への空気の強制的供給を行うための制御を行うと、第1ベローズ231内の空気圧が上昇する。そして、第1ベローズ231内の空気圧が上昇すると、第1ベローズ231が膨張する。
こうして第1ベローズ231が膨張すると、第2母指中手骨格部材212が、第1母指中手骨格部材211Aに対して、第1軸を回動軸にして回転する。そして、当該回転により、第2母指中手骨格部材212の長板部212bの法線方向と、手根骨格部材110Aの平板部の法線方向とが、略同一方向でなくなる。ここで、弾性部材251が、第1ベローズ231における母指の手根中手関節と対向する部分を弾性的に拘束しているため、母指の手根中手関節に接続される部位間の伸縮が吸収され、スムーズに、第1母指中手骨格部材211Aの一方の端部側に形成された接続部と第2母指中手骨格部材212の一方の端部側に形成された接続部との間の距離が、変化する。このため、第1ベローズ231が発生した直線的な伸長力が効率的に回転力に変換され、当該回転力が、母指の手根中手関節に接続される部位に伝達される。この結果、母指関節運動アシスト部120Aは、図14(A),(B)に示される状態になる。この動作により、母指の手根中手関節の運動が、アシストされる。
ここで、図14(A),(B)には、第1ベローズ231が膨張したときの母指関節運動アシスト部120A、及び、示指関節運動アシスト部130A2が示されている。図14(A)は、当該母指関節運動アシスト部120A、及び、示指関節運動アシスト部130A2を、+Z方向側から視た図である。また、図14(B)は、図14(A)に示される母指関節運動アシスト部120A、及び、示指関節運動アシスト部130A2を、−X方向側から視た図である。なお、図14(A),(B)では、関節運動アシスト装置100Aを装着する右手の図示を省略している。
このため、第1ベローズ231の伸縮による第2母指中手骨格部材212の、第1軸を回動軸とする第1母指中手骨格部材211Aに対する回転、及び、上述した第2ベローズ232aの伸縮による第3母指中手骨格部材213の、第2軸部材AX2を中心軸とする第2母指中手骨格部材212に対する回転により、関節運動アシスト装置100Aは、母指の鞍関節の運動をアシストすることができる。
《母指の関節屈曲状態へのアシスト動作》
次に、母指を、関節屈曲状態にするアシスト動作について説明する。
母指を関節屈曲状態にする際には、調整部180Aは、母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242への空気の強制的供給を行うための制御を行う。
かかる制御に従って、調整部180Aにより、母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242への空気の強制的供給が行われると、これらのベローズ内の空気圧が上昇する。そして、母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242が膨張する。
こうして母指第2関節対応ベローズ242が膨張すると、母指第2関節対応ベローズ242は、母指の第2関節を屈曲状態にする回動方向の力を発生する。そして、当該力により、母指基節骨格部材221が、母指の第2関節の関節軸を回動軸にして、第3母指中手骨格部材213に対して回転する。ここで、母指第2関節対応ベローズ242における母指の第2関節と対向する部分が弾性部材262により、弾性的に拘束されているため、母指の第2関節の屈曲に伴い、当該第2関節に接続される部位間の伸縮が吸収され、第3母指中手骨格部材213の他方の端部側に形成された接続部と、母指基節骨格部材221の一方の端部側に形成された接続部との間の距離が、スムーズに変化する。このため、母指第2関節対応ベローズ242が発生した直線的な伸長力が効率的に回転力に変換され、回転力が、母指の第2関節に接続される部位に伝達される。
また、母指第1関節対応ベローズ241が膨張すると、母指第1関節対応ベローズ241は、母指の第1関節を屈曲状態にする回動方向の力を発生する。そして、当該力により、母指末節骨格部材223が、母指の第1関節の関節軸を回動軸にして、母指基節骨格部材221に対して回転する。ここで、母指第1関節対応ベローズ241における母指の第1関節と対向する部分が弾性部材261により、弾性的に拘束されているため、母指の第1関節の屈曲に伴い、当該第1関節に接続される部位間の伸縮が許容され、母指基節骨格部材221の他方の端部側に形成された接続部と母指末節骨格部材223の一方の端部側に形成された接続部との間の距離が、スムーズに変化する。このため、母指第1関節対応ベローズ241が発生した直線的な伸長力が効率良く回転力に変換され、回転力が、母指の第1関節に接続される部位に伝達される。この結果、母指関節運動アシスト部120Aは、関節屈曲状態になる。このアシスト動作により、母指関節運動アシスト部120Aに装着される母指は、関節屈曲状態になる。
《母指以外の指の関節屈曲状態へのアシスト動作》
次いで、母指以外の指を、関節屈曲状態にするアシスト動作について説明する。
母指以外の指を関節屈曲状態にする際には、調整部180Aは、第1関節対応ベローズ341j、第2関節対応ベローズ342j、第3関節対応ベローズ343jへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。
かかる制御に従って、調整部180Aにより、第1関節対応ベローズ341j、第2関節対応ベローズ342j、第3関節対応ベローズ343jへの空気の強制的供給が行われると、これらのベローズ内の空気圧が上昇する。そして、第1関節対応ベローズ341j、第2関節対応ベローズ342j、第3関節対応ベローズ343jが略円弧状に膨張する。
こうして第3関節対応ベローズ343jが膨張すると、第3関節対応ベローズ343jは、第3関節を屈曲状態にする回転方向の力を発生する。そして、当該力の発生により、基節骨格部材321jが、第2中手骨格部材312jに対して、第3関節の関節軸を回動軸にして回転する。ここで、弾性部材363jが、第3関節対応ベローズ343jにおける第3関節と対向する部分を弾性的に拘束するため、第3関節の屈曲に伴い、第2中手骨格部材312の他方の端部と基節骨格部材321の一方の端部との間の距離が、スムーズに変化する。このため、第3関節対応ベローズ343jが発生した直線的な伸長力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第3関節に接続される部位に伝達される。
また、第2関節対応ベローズ342jが膨張すると、第2関節対応ベローズ342jが、指の第2関節を屈曲状態にする回転方向の力を発生する。そして、当該力により、中節骨格部材322jが、第2関節の関節軸を回動軸にして、基節骨格部材321jに対して回転する。ここで、弾性部材362jが、第2関節対応ベローズ342jにおける第2関節と対向する部分を弾性的に拘束するため、第2関節の屈曲に伴い、基節骨格部材321の他方の端部と中節骨格部材322の一方の端部との間の距離が、スムーズに変化する。このため、第2関節対応ベローズ342jが発生した直線的な伸長力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第2関節に接続される部位に伝達される。
さらに、第1関節対応ベローズ341jが膨張すると、第1関節対応ベローズ341jが、指の第1関節を屈曲状態にする回転方向の力を発生する。そして、当該力により、末節骨格部材323jが、第1関節の関節軸を回動軸にして、中節骨格部材322jに対して回転する。ここで、弾性部材361jが、第1関節対応ベローズ341jにおける第1関節と対向する部分を弾性的に拘束するため、第1関節の屈曲に伴い、中節骨格部材322の他方の端部と末節骨格部材323の一方の端部との間の距離が、スムーズに変化する。このため、第1関節対応ベローズ341jが発生した直線的な伸長力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第1関節に接続される部位に伝達される。
この結果、手指関節運動アシスト部130Aj(j=2,…,5)は、図15に示されるように、関節屈曲状態になる。このアシスト動作により、手指関節運動アシスト部130Ajに装着される指は、関節屈曲状態になる。ここで、図15には、手指関節運動アシスト部130Ajの代表として、手指関節運動アシスト部(示指関節運動アシスト部)130A2が示されている。なお、図15では、関節運動アシスト装置100Aを装着する右手の図示を省略している。
上述したアシスト動作の組み合わせにより、関節運動アシスト装置100Aは、健常者の手指の動きと同様な複雑な関節運動をアシストする。
以上説明したように、第1実施形態では、関節運動アシスト装置100Aの手根骨格部材110Aを、人体の手根に装着し、母指関節運動アシスト部120Aを母指に装着する。ここで、第1ベローズ231が収縮しているときには、第2母指中手骨格部材212は、手根骨格部材110Aの平板部と第2母指中手骨格部材212の長板部とが略同一平面を形成するように、第1ベローズ231及び弾性部材251を介して、第1母指中手骨格部材211Aに接続されている。また、第2ベローズ232aが収縮しているときには、第2母指中手骨格部材212の長板部が延びる方向と、第3母指中手骨格部材213の長板部が延びる方向とが、略垂直となっている。
こうした構成を採用したうえで、調整部180Aにより、第1ベローズ231への空気の強制的供給が行われると、第1ベローズ231が膨張し、第1ベローズ231からの空気の強制的排出が行われると第1ベローズ231が収縮する。そして、当該第1ベローズ231が伸縮すると、第2母指中手骨格部材212が、第1母指中手骨格部材211Aに対して、二軸性の母指の手根中手関節の「一の関節軸」である第1軸を回動軸にして回動する。ここで、弾性部材251が、第1ベローズ231における母指の手根中手関節と対向する部分を弾性的に拘束しているため、母指の手根中手関節に接続される部位間の伸縮が吸収され、第1母指中手骨格部材211Aの一方の端部側に形成された接続部と第2母指中手骨格部材212の一方の端部側に形成された接続部との間の距離が、スムーズに変化する。このため、第1ベローズ231が発生した直線的な伸縮力が効率的に回転力に変換され、当該回転力が、母指の手根中手関節に接続される部位に伝えられる。
また、調整部180Aにより、第2ベローズ232aへの空気の強制的供給が行われると、第2ベローズ232aが膨張し、第2ベローズ232aからの空気の強制的排出が行われると第2ベローズ232aが収縮する。そして、当該第2ベローズ232aの伸縮により、第3母指中手骨格部材213が、第2母指中手骨格部材212に対して、第1軸と略直交する第2軸部材AX2を回転中心軸にして回動する。
このように、第1実施形態では、手部に関節運動アシスト装置100Aを装着した場合に、母指関節運動アシスト部120Aは、手根骨格部材110Aに対して、互いに直角方向に働く二軸性の関節運動、すなわち、「鞍関節」に相当する関節運動を実現することができる。このため、母指の手根中手関節(鞍関節)の関節運動をアシストすることができる。
また、第1実施形態では、調整部180Aにより、第3ベローズ233aへの空気の強制的供給が行われると、第3ベローズ233aが膨張し、当該膨張により、第1母指中手骨格部材211Aが、手根骨格部材110Aに対して、軸部材AX0を回転中心軸として、手の甲の側から視た状態で、時計回りに回転する。また、調整部180Aにより、第3ベローズ233aからの空気の強制的排出が行われると第3ベローズ233aが収縮し、当該収縮により、第1母指中手骨格部材211Aが、手根骨格部材110Aに対して、軸部材AX0を回転中心軸として、手の甲の側から視た状態で、反時計回りに回転する。
このため、第1実施形態では、上述した「鞍関節」の関節運動のアシスト動作を補完し、母指の手根中手関節により、手根に接続される母指の可動範囲を広げることができる。
また、第1実施形態では、調整部180Aが、母指関節運動アシスト部120Aの母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242内の空気圧を調整することにより、母指の中手骨に対する基節骨の運動、母指の基節骨に対する末節骨の運動、すなわち、母指の関節伸展運動及び関節屈曲運動をアシストすることができる。
また、第1実施形態では、調整部180Aが、手指関節運動アシスト部130Aの第1関節対応ベローズ341、第2関節対応ベローズ342、第3関節対応ベローズ343内の空気圧を調整することにより、示指、中指、薬指及び小指のそれぞれの第1関節、第2関節及び第3関節について、手指の関節伸展運動及び関節屈曲運動をアシストすることができる。
また、第1実施形態では、調整部180Aが、手指関節運動アシスト部130Aの開閉用ベローズ部材331内の空気圧を調整することにより、示指、中指、薬指及び小指のそれぞれについて、開閉運動をアシストすることができる。
したがって、第1実施形態によれば、健常者の手部の関節運動と同様の関節運動を、適切にアシストすることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を、図16〜図18を主に参照して説明する。
<構成>
図16には、第2実施形態に係る関節運動アシスト装置100Bの外観図が示されている。ここで、図16は、右手HDの手背に装着される関節運動アシスト装置100Bを、手指の関節が伸展状態にあり、かつ、手指が閉状態のときに手背側から眺めた外観図である。
図16に示されるように、関節運動アシスト装置100Bは、上述した第1実施形態の関節運動アシスト装置100Aと比べて、手根骨格部材110Aに代えて手根骨格部材110Bを備える点、手指関節運動アシスト部130Aj(j=2,…,5)に代えて手指関節運動アシスト部130Bj(j=2,…,5)を備える点、及び、調整部180Aに代えて調整部180Bを備える点が異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
《手根骨格部材110B》
上記の手根骨格部材110Bについて説明する。手根骨格部材110Bは、例えば、鋼鉄製の部材であり、XY平面と平行な平板部を含む部材である。第2実施形態では、手根骨格部材110Bは、不図示のベルトにより、人体の手根、手根に接続される示指の中手の一部、手根に接続される中指の中手の一部、手根に接続される薬指の中手の一部、手根に接続される小指の中手の一部に装着される。
手根骨格部材110Bの平板部には、当該平板部の法線方向と平行な方向(Z方向)に沿って延びる軸部材AX0を挿入する溝LHが成型加工されている。そして、手根骨格部材110Bには、当該軸部材AX0により、母指関節運動アシスト部120Aが、溝LHに沿って移動可能であるとともに、母指関節運動アシスト部120Aが、軸部材AX0を中心軸にして回動可能に取り付けられる。
手根骨格部材110Bには、中指関節運動アシスト部130B3の一方の端部を固定される。また、手根骨格部材110Bには、後述する開閉用軸部材AXC2,AXC4,AXC5を挿入する3個の軸穴が成型加工されている。そして、手根骨格部材110Bには、開閉用軸部材AXC2により、示指関節運動アシスト部130B2の一方の端部を回動可能に取付けられ、開閉用軸部材AXC4により、薬指関節運動アシスト部130B4の一方の端部を回動可能に取付けられている。また、手根骨格部材110Bには、開閉用軸部材AXC5により、小指関節運動アシスト部130B5の一方の端部が回動可能に取り付けられている。
また、手根骨格部材110Bには、第1実施形態の手根骨格部材110Aと同様に、Z軸方向に沿って延びる軸部材110xを中心軸にして、第3ベローズ部材233の一方側が回動可能に取り付けられている(上述した図5(A)参照)。
《手指関節運動アシスト部130Bj(j=2,…,5)の構成》
まず、上記の手指関節運動アシスト部(示指関節運動アシスト部)130B2、手指関節運動アシスト部(薬指関節運動アシスト部)130B4、手指関節運動アシスト部(小指関節運動アシスト部)130B5の構成について説明する。なお、以下の説明では、示指関節運動アシスト部130B2、薬指関節運動アシスト部130B4、小指関節運動アシスト部130B5を総称して、「手指関節運動アシスト部130Bk(k=2,4,5)」とも記す。
図17(A)には、手指関節運動アシスト部130Bkの代表として、手指関節運動アシスト部(示指関節運動アシスト部)130B2の構成図が示されている。第2実施形態では、手指関節運動アシスト部130B4,130B5は、手指関節運動アシスト部130B2と同様に構成されている。
手指関節運動アシスト部130B2,130B4,130B5のそれぞれは、図16及び図17(A)により総合的に示されるように、上述した第1実施形態の手指関節運動アシスト部130Aj(図9参照)と比べて、第1中手骨格部材311を備えていない点が異なっている。なお、図17(A)では、関節運動アシスト装置100Bを装着する右手の図示を省略している。
すなわち、手指関節運動アシスト部130Bk(k=2,4,5)のそれぞれは、第2中手骨格部材312kと、開閉用ベローズ部材331kと、基節骨格部材321kと、中節骨格部材322kと、末節骨格部材323kとを備えている。また、手指関節運動アシスト部130Bk(k=2,4,5)のそれぞれは、第1関節対応ベローズ341kと、第2関節対応ベローズ342kと、第3関節対応ベローズ343kとを備えている。
第2実施形態では、第2中手骨格部材312kの一方の端部(−Y方向側)は、手根骨格部材110Bに対して、開閉用軸部材AXCkにより、回動可能に取り付けられている。また、第2実施形態では、開閉用ベローズ部材331kの一方側は、軸部材111xkを中心軸にして、回動可能に手根骨格部材110Bに取り付けられている。
次に、上記の手指関節運動アシスト部(示指関節運動アシスト部)130B3の構成について説明する。
図17(B)には、手指関節運動アシスト部(中指関節運動アシスト部)130B3の構成図が示されている。手指関節運動アシスト部130B3は、図16及び図17(B)により総合的に示されるように、上述した第1実施形態の手指関節運動アシスト部130A3(図9参照)と比べて、第1中手骨格部材3113を備えていない点、第2中手骨格部材3123に代えて第2中手骨格部材312B3を備える点、及び、開閉用ベローズ部材3313を備えていない点が異なっている。なお、図17(B)では、関節運動アシスト装置100Bを装着する右手の図示を省略している。
すなわち、手指関節運動アシスト部130B3は、第2中手骨格部材312B3と、基節骨格部材3213と、中節骨格部材3223と、末節骨格部材3233とを備えている。また、手指関節運動アシスト部130B3は、第1関節対応ベローズ3413と、第2関節対応ベローズ3423と、第3関節対応ベローズ3433とを備えている。
上記の第2中手骨格部材312B3は、上述した第1実施形態の第2中手骨格部材3123と比べて、取付部を有していない点が異なっている。そして、第2中手骨格部材312B3の一方の端部(−Y方向側)は、手根骨格部材110Bに固定されている。
《調整部180B》
上記の調整部180Bについて説明する。調整部180Bは、上述した第1実施形態の調整部180Aと比べて、第2実施形態の中指関節運動アシスト部130B3が開閉用ベローズ部材3313を備えていないことに対応して、当該開閉用ベローズ部材3313への空気の強制的供給、及び、当該開閉用ベローズ部材3313からの空気の強制的排出を行わない点が異なっている。
<動作>
以上のようにして構成された関節運動アシスト装置100Bの動作について、説明する。
なお、関節運動アシスト装置100Bでは、当初においては、調整部180Bによるベローズ内の空気圧調整は行われておらず、ベローズの内圧は大気圧になっているものとする。
ここで、関節運動アシスト装置100Bの「母指の関節伸展状態へのアシスト動作」、「母指の関節屈曲状態へのアシスト動作」及び「母指の手根中手関節の運動のアシスト動作」は、上述した第1実施形態における関節運動アシスト装置100Aのアシスト動作と同様に行われる。また、関節運動アシスト装置100Bの「母指以外の指の関節伸展状態へのアシスト動作」及び「母指以外の指の関節屈曲状態へのアシスト動作」は、上述した第1実施形態における関節運動アシスト装置100Aのアシスト動作と同様に行われる。
《母指の閉状態へのアシスト動作》
まず、母指を、閉状態にするアシスト動作について説明する。
第2実施形態では、母指を閉状態にする際には、調整部180Bが、第1ベローズ231、第2ベローズ232aからの空気の強制的排出を行うための制御を行うとともに、第3ベローズ233aへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。
かかる制御に従って、調整部180Bにより、第1ベローズ231、第2ベローズ232aからの空気の強制的排出が行われると、第1ベローズ231、第2ベローズ232aが収縮する。また、かかる制御に従って、調整部180Bにより、第3ベローズ233aへの空気の強制的供給が行われると、第3ベローズ233aが膨張する。
こうして第3ベローズ233aが膨張すると、第1母指中手骨格部材211Aは、手根骨格部材110Bの溝LHに沿って−X方向に移動しつつ、手根骨格部材110Bに対して、軸部材AX0を回転中心軸として、時計回りに回転する。
また、第1ベローズ231が収縮すると、第1実施形態の場合と同様に、第2母指中手骨格部材212が、第1母指中手骨格部材211Aに対して、二軸性の母指の手根中手関節の「一の関節軸」である第1軸を回動軸にして回転する。そして、当該回転により、手根骨格部材110Bの平板部と、第2母指中手骨格部材212の長板部212bとが、略同一平面を形成する。
さらに、第2ベローズ232aが収縮すると、第1実施形態の場合と同様に、第3母指中手骨格部材213が、第2母指中手骨格部材212に対して、第2軸部材AX2を回転中心軸にして、時計回りに回転運動する。そして、当該回転運動により、第2母指中手骨格部材212の長板部212bが延びる方向と、第3母指中手骨格部材213の長板部213bが延びる方向とのなす角が狭まり、略直角となる。この結果、母指関節運動アシスト部120Aは、上述した図16に示されるように、閉状態になる。このアシスト動作により、母指関節運動アシスト部120Aに装着されている母指は、閉状態になる。
ここで、第3ベローズ233aの膨張による第1母指中手骨格部材211Aの、手根骨格部材110Bに対する移動運動は、平面関節の関節運動のアシスト動作となっている。
《母指以外の指の閉状態へのアシスト動作》
次いで、母指以外の指を、閉状態にするアシスト動作について説明する。
母指以外の指を閉状態にする際には、中指関節運動アシスト部130B3が開閉用ベローズ部材3313を備えていないことに対応して、調整部180Bが、当該開閉用ベローズ部材3313からの空気の強制的排出を行わない点を除いて、上述した第1実施形態における関節運動アシスト装置100Aのアシスト動作と、同様に行われる。この結果、手指関節運動アシスト部130Bj(j=2,…,5)は、上述した図16に示されるように、閉状態になる。このアシスト動作により、手指関節運動アシスト部130Bjに装着される指は、閉状態になる。
《母指の開状態へのアシスト動作》
次に、母指を、開状態にするアシスト動作について説明する。
図16に示される閉状態から、母指を開状態にする際には、調整部180Bが、第1ベローズ231からの空気の強制的排出を行うための制御、第2ベローズ232aへの空気の強制的供給を行うための制御、第3ベローズ233aからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。
かかる制御に従って、調整部180Bにより、第1ベローズ231からの空気の強制的排出が行われると、第1ベローズ231が収縮する。また、かかる制御に従って、第2ベローズ232aへの空気の強制的供給が行われると、第2ベローズ232aが膨張する。また、かかる制御に従って、第3ベローズ233aからの空気の強制的排出が行われると、第3ベローズ233a内の空気圧が下降すると、第3ベローズ233aが収縮する。
こうして第3ベローズ233aが収縮すると、第1母指中手骨格部材211Aは、手根骨格部材110Bの溝LHに沿って+X方向に移動しつつ、手根骨格部材110Bに対して、軸部材AX0を回転中心軸として、反時計回りに回転する。
また、第1ベローズ231が収縮すると、上述したように、第2母指中手骨格部材212が、第1母指中手骨格部材211Aに対して、第1軸を回動軸にして回転し、手根骨格部材110Bの平板部と、第2母指中手骨格部材212の長板部212bとが、略同一平面を形成する。さらに、第2ベローズ232aが膨張すると、第1実施形態の場合と同様に、第3母指中手骨格部材213が、第2母指中手骨格部材212に対して、第2軸部材AX2を回転中心軸にして、反時計回りに回転運動する。そして、当該回転運動により、第2母指中手骨格部材212の長板部212bが延びる方向と、第3母指中手骨格部材213の長板部213bが延びる方向とのなす角が広がるように変化する。
この結果、母指関節運動アシスト部120Aは、図18に示されるように、開状態になる。このアシスト動作により、母指関節運動アシスト部120Aに装着されている母指は、開状態になる。なお、図18に示される関節運動アシスト装置100Bでは、調整部180Bの図示、及び、配管の一部の図示を省略している。また、図18では、関節運動アシスト装置100Bを装着する右手の図示を省略している。
ここで、第3ベローズ233aの収縮による第1母指中手骨格部材211Aの、手根骨格部材110Bに対する移動運動は、平面関節の関節運動のアシスト動作となっている。
《母指以外の指の開状態へのアシスト動作》
次いで、母指以外の指を、開状態にするアシスト動作について説明する。
母指以外の指を開状態にする際には、中指関節運動アシスト部130B3が開閉用ベローズ部材3313を備えていないことに対応して、調整部180Bが、当該開閉用ベローズ部材3313への空気の強制的供給を行わない点を除いて、上述した第1実施形態における関節運動アシスト装置100Aのアシスト動作と、同様に行われる。この結果、手指関節運動アシスト部130Bj(j=2,…,5)は、図18に示されるように、開状態になる。このアシスト動作により、手指関節運動アシスト部130Bjに装着される指は、開状態になる。
上述したアシスト動作の組み合わせにより、関節運動アシスト装置100Bは、健常者の手指の動きと同様な複雑な関節運動をアシストする。
以上説明したように、第2実施形態では、母指関節運動アシスト部120Aは、第1実施形態と同様に構成されている。そして、手部に関節運動アシスト装置100Bを装着した場合に、調整部180Bが、第1ベローズ231、第2ベローズ232a内の空気圧を調整することにより、第1実施形態と同様に、母指関節運動アシスト部120Aは、手根骨格部材110Aに対して、互いに直交する方向に働く二軸性の関節運動、すなわち、「鞍関節」に相当する関節運動を実現することができる。このため、母指の手根中手関節(鞍関節)の関節運動をアシストすることができる。
また、第2実施形態では、調整部180Bにより、第3ベローズ233aへの空気の強制的供給が行われると、第3ベローズ233aが膨張し、当該膨張により、第1母指中手骨格部材211Aが、手根骨格部材110Bの溝LHに沿って、小指方向と反対の方向に移動しつつ、手根骨格部材110Bに対して、軸部材AX0を回転中心軸として、手の甲の側から視た状態で、時計回りに回転する。また、調整部180Bにより、第3ベローズ233aからの空気の強制的排出が行われると第3ベローズ233aが収縮し、当該収縮により、第1母指中手骨格部材211Aは、手根骨格部材110Bの溝LHに沿って、小指方向に移動しつつ、手根骨格部材110Bに対して、軸部材AX0を回転中心軸として、手の甲の側から視た状態で、反時計回りに回転する。
このため、第2実施形態では、第1母指中手骨格部材211Aの手根骨格部材110Bに形成された溝内の移動により、手根骨格部材110Bに対する母指関節運動アシスト部120Aの「平面関節」の動きを実現することができる。このため、母指の平面関節の関節運動をアシストすることができる。また、第1実施形態と同様に、上述した「鞍関節」の関節運動のアシスト動作を補完し、手根に接続される母指の可動範囲を広げることができる。
また、第2実施形態では、調整部180Bが、母指関節運動アシスト部120Aの母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242内の空気圧を調整することにより、母指の中手骨に対する基節骨の運動、母指の基節骨に対する末節骨の運動、すなわち、母指の関節伸展運動及び関節屈曲運動をアシストすることができる。
また、第2実施形態では、調整部180Bが、手指関節運動アシスト部130Bの第1関節対応ベローズ341、第2関節対応ベローズ342、第3関節対応ベローズ343内の空気圧を調整することにより、示指、中指、薬指及び小指のそれぞれの第1関節、第2関節及び第3関節について、手指の関節伸展運動及び関節屈曲運動をアシストすることができる。
また、第2実施形態では、調整部180Bが、手指関節運動アシスト部130Bの開閉用ベローズ部材331内の空気圧を調整することにより、示指、薬指及び小指のそれぞれについて、開閉運動をアシストすることができる。
したがって、第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、健常者の手部の関節運動と同様の関節運動を、適切にアシストすることができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を、図19〜図23を主に参照して説明する。
<構成>
図19,20には、第3実施形態に係る関節運動アシスト装置100Cの外観図が示されている。ここで、図19は、右手HDの手背に装着される関節運動アシスト装置100Cを、手指の関節が伸展状態にあり、かつ、手指が閉状態のときに手背側から眺めた外観図である。また、図20は、図19に示される関節運動アシスト装置100Cを、手掌側から眺めた外観図である。なお、図20では、関節運動アシスト装置100Cを装着する右手の図示を省略している。
図19,20により総合的に示されるように、関節運動アシスト装置100Cは、上述した第1実施形態の関節運動アシスト装置100Aと比べて、手根骨格部材110Aに代えて手根骨格部材110Cを備える点、湾曲運動部140Cを更に備える点、及び、調整部180Aに代えて調整部180C(図20においては不図示)を備える点が異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
《手根骨格部材110C》
上記の手根骨格部材110Cについて説明する。手根骨格部材110Cは、例えば、鋼鉄製の部材であり、XY平面と平行な平板部を含む部材である。第3実施形態では、手根骨格部材110Cは、不図示のベルトにより、人体の手根に装着される。手根骨格部材110Cの平板部には、当該平板部の法線方向と平行な方向(Z方向)に沿って延びる軸部材AX0を挿入する軸穴が成型加工されている。そして、手根骨格部材110Cには、第1実施形態の手根骨格部材110Aと同様に、当該Z方向に沿って延びる軸部材AX0を中心軸にして、母指関節運動アシスト部120Aが回動可能に取り付けられている。また、手根骨格部材110Cには、示指関節運動アシスト部130A2の一方の端部が固定される。
また、手根骨格部材110Cには、第1実施形態の手根骨格部材110Aと同様に、Z軸方向に沿って延びる軸部材110xを中心軸にして、第3ベローズ部材233の一方側が回動可能に取り付けられている(上述した図5(A)参照)。
《湾曲運動部140Cの構成》
上記の湾曲運動部140Cの構成について説明する。湾曲運動部140Cは、図19〜21により総合的に示されるように、接続部412,413,414,415を備えている。また、湾曲運動部140Cは、湾曲用ベローズ421と、湾曲用ベローズ422と、湾曲用ベローズ423と、弾性部材441,442,443とを備えている。
上記の接続部412は、例えば、鋼鉄製の部材であり、L字状に成型加工され、板部と、当該板部の+X方向側の端部から略直立して延びる環状部を有している。接続部412の板部は、第1中手骨格部材3112に取り付けられている。また、接続部412の環状部は、湾曲用ベローズ421の一方側端部に接続されている。
上記の接続部413は、例えば、鋼鉄製の部材であり、U字状に成型加工され、板部と、当該板部の+X方向側及び−X方向側の端部から略直立して延びる環状部を有している。接続部413の板部は、第1中手骨格部材3113に取り付けられている。また、接続部413における−X方向側の一方の環状部は、湾曲用ベローズ421の他方側端部に接続されている。さらに、接続部413における+X方向側の他方の環状部は、湾曲用ベローズ422の一方側端部に接続されている。
上記の接続部414は、接続部413と同様に、例えば、鋼鉄製の部材であり、U字状に成型加工され、板部と、当該板部の+X方向側及び−X方向側の端部から略直立して延びる環状部を有している。接続部414の板部は、第1中手骨格部材3114に取り付けられている。また、接続部414における−X方向側の一方の環状部は、湾曲用ベローズ422の他方側端部に接続されている。さらに、接続部414における+X方向側の他方の環状部は、湾曲用ベローズ423の一方側端部に接続されている。
上記の接続部415は、接続部412と同様に、例えば、鋼鉄製の部材であり、L字状に成型加工され、板部と、当該板部の−X方向側の端部から略直立して延びる環状部を有している。接続部415の板部は、第1中手骨格部材3115に取り付けられている。また、接続部415の環状部は、湾曲用ベローズ423の他方側端部に接続されている。
上記の湾曲用ベローズ421は、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、手背側で、略X軸方向に沿って配置される。湾曲用ベローズ421の一方側端部は、第1中手骨格部材3112における第1中手骨格部材3113の側部側に、接続部412を介して、接続される。また、湾曲用ベローズ421の他方側端部は、第1中手骨格部材3113における第1中手骨格部材3112の側部側に、接続部413を介して、接続される。そして、湾曲用ベローズ421と調整部180Cとの間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管を通じて、湾曲用ベローズ421内の空気圧が変化すると、湾曲用ベローズ421が膨縮する。
上記の湾曲用ベローズ422は、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、手背側で、略X軸方向に沿って配置される。湾曲用ベローズ422の一方側端部は、第1中手骨格部材3113における第1中手骨格部材3114の側部側に、接続部413を介して、接続される。また、湾曲用ベローズ422の他方側端部は、第1中手骨格部材3114における第1中手骨格部材3113の側部側に、接続部414を介して、接続される。そして、湾曲用ベローズ422と調整部180Cとの間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管を通じて、湾曲用ベローズ422内の空気圧が変化すると、湾曲用ベローズ422が膨縮する。
上記の湾曲用ベローズ423は、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、手背側で、略X軸方向に沿って配置される。湾曲用ベローズ423の一方側端部は、第1中手骨格部材3114における第1中手骨格部材3115の側部側に、接続部414を介して、接続される。また、湾曲用ベローズ423の他方側端部は、第1中手骨格部材3115における第1中手骨格部材3114の側部側に、接続部415を介して、接続される。そして、湾曲用ベローズ423と調整部180Cとの間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管を通じて、湾曲用ベローズ423内の空気圧が変化すると、湾曲用ベローズ423が膨縮する。
上記の弾性部材441は、輪状のゴム部材を採用している。弾性部材441は、接続部412の環状部、及び、接続部413の一方の環状部に取り付けられる。そして、弾性部材441は、湾曲用ベローズ421における手背と対向する部分を弾性的に拘束する。
上記の弾性部材442は、弾性部材441と同様に、輪状のゴム部材を採用している。弾性部材442は、接続部413の他方の環状部、及び、接続部414の一方の環状部に取り付けられる。そして、弾性部材442は、湾曲用ベローズ422における手背と対向する部分を弾性的に拘束する。
上記の弾性部材443は、弾性部材441,442と同様に、輪状のゴム部材を採用している。弾性部材443は、接続部414の他方の環状部、及び、接続部415の環状部に取り付けられる。そして、弾性部材443は、湾曲用ベローズ423における手背と対向する部分を弾性的に拘束する。
《調整部180C》
上記の調整部180Cについて説明する。調整部180Cは、上述した第1実施形態の調整部180Aと比べて、第3実施形態の湾曲運動部140Cが湾曲用ベローズ421,422,423を備えることに対応して、湾曲用ベローズ421,422,423への空気の強制的供給、及び、湾曲用ベローズ421,422,423からの空気の強制的排出を更に行う点が異なっている。
<動作>
以上のようにして構成された関節運動アシスト装置100Cの動作について、説明する。
なお、関節運動アシスト装置100Cでは、当初においては、調整部180Cによるベローズ内の空気圧調整は行われておらず、ベローズの内圧は大気圧になっているものとする。
ここで、関節運動アシスト装置100Cの「母指の閉状態へのアシスト動作」、「母指の開状態へのアシスト動作」、「母指の関節伸展状態へのアシスト動作」、「母指の関節屈曲状態へのアシスト動作」及び「母指の手根中手関節の運動のアシスト動作」は、上述した第1実施形態における関節運動アシスト装置100Aのアシスト動作と同様に行われる。
また、関節運動アシスト装置100Cの「母指以外の指の閉状態へのアシスト動作」、「母指以外の指の開状態へのアシスト動作」、「母指以外の指の関節伸展状態へのアシスト動作」及び「母指以外の指の関節屈曲状態への運アシスト動作は、上述した第1実施形態における関節運動アシスト装置100Aのアシスト動作と同様に行われる。
《手掌の湾曲運動のアシスト動作》
手掌の湾曲運動のアシスト動作について、説明する。ここで、図19,20に示されるように、手根骨格部材110Cの平板部の法線方向、及び、第1中手骨格部材3112,3113,3114,3115の長板部の法線方向が同一方向となっている関節運動アシスト装置100Cの状態を「非湾曲状態」というものとする。また、第3実施形態では、手根骨格部材110C、第1中手骨格部材3112,3113,3114,3115、及び、湾曲運動部140Cから構成される部分を「手掌運動部」というものとする。
手掌を当該非湾曲状態にする際には、調整部180Cが、湾曲用ベローズ421,422,423からの空気の強制的排出を行うための制御を行う。かかる制御に従って、調整部180Cにより、湾曲用ベローズ421,422,423からの空気の強制的排出が行われると、これらのベローズ内の空気圧が下降する。そして、湾曲用ベローズ421,422,423が収縮する。
こうして湾曲用ベローズ421が収縮すると、弾性部材441が、湾曲用ベローズ421における手背と対向する部分を弾性的に拘束するため、示指の中手骨が延びる方向と中指の中手骨が延びる方向と略平行であり、示指の中手骨と中指の中手骨との間を通る線(以下、「示指−中指中間線」とも記す)を略中心軸にして、第1中手骨格部材3113が、第1中手骨格部材3112に対して回転する。そして、当該回転により、第1中手骨格部材3112の法線方向と、第1中手骨格部材3113の法線方向とが、略同一方向になる。このようにして湾曲用ベローズ421が発生する直線的な収縮力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第1中手骨格部材3112を装着する部位及び第1中手骨格部材3113を装着する部位に伝達される。
また、湾曲用ベローズ422が収縮すると、弾性部材442が、湾曲用ベローズ422における手背と対向する部分を弾性的に拘束するため、中指の中手骨が延びる方向と薬指の中手骨が延びる方向と略平行であり、中指の中手骨と薬指の中手骨との間を通る線(以下、「中指−薬指中間線」とも記す)を略中心軸にして、第1中手骨格部材3114が、第1中手骨格部材3113に対して回転する。そして、当該回転により、第1中手骨格部材3113の法線方向と、第1中手骨格部材3114の法線方向とが、略同一方向になる。このようにして湾曲用ベローズ422が発生する直線的な収縮力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第1中手骨格部材3113を装着する部位及び第1中手骨格部材3114を装着する部位に伝達される。
さらに、湾曲用ベローズ423が収縮すると、弾性部材443が、湾曲用ベローズ423における手背と対向する部分を弾性的に拘束するため、薬指の中手骨が延びる方向と小指の中手骨が延びる方向と略平行であり、薬指の中手骨と小指の中手骨との間を通る線(以下、「薬指−小指中間線」とも記す)を略中心軸にして、第1中手骨格部材3115が、第1中手骨格部材3114に対して回転する。そして、当該回転により、第1中手骨格部材3114の法線方向と、第1中手骨格部材3115の法線方向とが、略同一方向になる。このようにして湾曲用ベローズ423が発生する直線的な収縮力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第1中手骨格部材3114を装着する部位及び第1中手骨格部材3115を装着する部位に伝達される。
この結果、関節運動アシスト装置100Cの手掌運動部は、上述した図19,20に示されるように、非湾曲状態になる。このアシスト動作により、手掌運動部に装着される手掌は、非湾曲状態になる。
次に、手掌を湾曲状態にするアシスト動作について説明する。
手掌を湾曲状態にする際には、調整部180Cが、湾曲用ベローズ421,422,423への空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御に従って、調整部180Cにより、湾曲用ベローズ421,422,423への空気の強制的供給が行われると、これらのベローズ内の空気圧が上昇する。そして、湾曲用ベローズ421,422,423が膨張する。
こうして湾曲用ベローズ421が膨張すると、弾性部材441が、湾曲用ベローズ421における手背と対向する部分を弾性的に拘束するため、示指−中指中間線を略中心軸にして、第1中手骨格部材3113が、第1中手骨格部材3112に対して回転する。そして、当該回転により、第1中手骨格部材3112の法線方向と、第1中手骨格部材3113の法線方向とが、同一方向でなくなる。このようにして湾曲用ベローズ421が発生する直線的な伸長力が効率的に回転力に変換され、当該回転力が、第1中手骨格部材3112を装着する部位及び第1中手骨格部材3113を装着する部位に、効率良く伝達される。
また、湾曲用ベローズ422が膨張すると、弾性部材442が、湾曲用ベローズ422における手背と対向する部分を弾性的に拘束するため、中指−薬指中間線を略中心軸にして、第1中手骨格部材3114が、第1中手骨格部材3113に対して回転する。そして、当該回転により、第1中手骨格部材3113の法線方向と、第1中手骨格部材3114の法線方向とが、同一方向でなくなる。このようにして湾曲用ベローズ422が発生する直線的な伸長力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第1中手骨格部材3113を装着する部位及び第1中手骨格部材3114を装着する部位に伝達される。
さらに、湾曲用ベローズ423が膨張すると、弾性部材443が、湾曲用ベローズ423における手背と対向する部分を弾性的に拘束するため、薬指−小指中間線を略中心軸にして、第1中手骨格部材3115が、第1中手骨格部材3114に対して回転する。そして、当該回転により、第1中手骨格部材3114の法線方向と、第1中手骨格部材3115の法線方向とが、同一方向でなくなる。このようにして湾曲用ベローズ423が発生する直線的な伸長力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第1中手骨格部材3114を装着する部位及び第1中手骨格部材3115を装着する部位に伝達される。
この結果、関節運動アシスト装置100Cの手掌運動部は、図22,23に示されるように、湾曲状態になる。このアシスト動作により、手掌運動部に装着される手掌は、湾曲状態になる。
ここで、図22は、湾曲用ベローズ421,422,423が膨張したときの関節運動アシスト装置100Cを、手背側から視た図である。図22では、湾曲用ベローズ421,422,423以外のベローズの図示を省略している。また、図23は、湾曲用ベローズ421,422,423が膨張したときの関節運動アシスト装置100Cの手掌運動部を、手掌側から視た図である。なお、図22,23では、関節運動アシスト装置100Cを装着する右手の図示を省略している。
上述したアシスト動作の組み合わせにより、関節運動アシスト装置100Cは、健常者の手指の動きと同様な複雑な関節運動をアシストする。
以上説明したように、第3実施形態では、母指関節運動アシスト部120Aは、第1及び第2実施形態と同様に構成されている。そして、手部に関節運動アシスト装置100Cを装着した場合に、調整部180Cが、第1ベローズ231、第2ベローズ232a内の空気圧を調整することにより、第1及び第2実施形態と同様に、母指関節運動アシスト部120Aは、手根骨格部材110Cに対して、互いに直交する方向に働く二軸性の関節運動、すなわち、「鞍関節」に相当する関節運動を実現することができる。このため、母指の手根中手関節(鞍関節)の関節運動をアシストすることができる。
また、第3実施形態では、調整部180Cが、第3ベローズ233a内の空気圧を調整することにより、第1及び第2実施形態と同様に、上述した「鞍関節」の関節運動のアシスト動作を補完し、手根に接続される母指の可動範囲を広げることができる。
また、第3実施形態では、調整部180Cが、母指関節運動アシスト部120Aの母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242内の空気圧を調整することにより、母指の中手骨に対する基節骨の運動、母指の基節骨に対する末節骨の運動、すなわち、母指の関節伸展運動及び関節屈曲運動をアシストすることができる。
また、第3実施形態では、調整部180Cが、手指関節運動アシスト部130Aの第1関節対応ベローズ341、第2関節対応ベローズ342、第3関節対応ベローズ343内の空気圧を調整することにより、示指、中指、薬指及び小指のそれぞれの第1関節、第2関節及び第3関節について、手指の関節伸展運動及び関節屈曲運動をアシストすることができる。
また、第3実施形態では、調整部180Cが、手指関節運動アシスト部130Aの開閉用ベローズ部材331内の空気圧を調整することにより、示指、中指、薬指及び小指のそれぞれについて、開閉運動をアシストすることができる。
また、第3実施形態では、調整部180Cが、湾曲運動部140Cの湾曲用ベローズ421,422,423内の空気圧を調整することにより、人の手の平を湾曲させる場合の運動をアシストすることができる。
したがって、第3実施形態によれば、上述した第1及び第2実施形態と同様に、健常者の手部の関節運動と同様の関節運動を、適切にアシストすることができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を、図24〜図27を主に参照して説明する。
<構成>
図24,25には、第4実施形態に係る関節運動アシスト装置100Dの外観図が示されている。ここで、図24は、右手HDの手背に装着される関節運動アシスト装置100Dを、手指の関節が伸展状態にあり、かつ、手指が閉状態のときに手背側から眺めた外観図である。また、図25は、図24に示される関節運動アシスト装置100Dを、手掌側から眺めた外観図である。なお、図25では、関節運動アシスト装置100Dに装着される右手の図示を省略している。
図24,25により総合的に示されるように、関節運動アシスト装置100Dは、上述した第2実施形態の関節運動アシスト装置100Bと比べて、手根骨格部材110Bに代えて手根骨格部材110Dを備える点、薬指関節運動アシスト部130B4に代えて薬指関節運動アシスト部130D4を備える点、小指関節運動アシスト部130B5に代えて小指関節運動アシスト部130D5を備える点、湾曲運動部140Dを更に備える点、及び、調整部180Bに代えて調整部180D(図25においては不図示)を備える点が異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
《手根骨格部材110D》
上記の手根骨格部材110Dについて説明する。手根骨格部材110Dは、例えば、鋼鉄製の部材であり、XY平面と平行な平板部を含む部材である。第4実施形態では、手根骨格部材110Dは、不図示のベルトにより、人体の手根、手根に接続される示指の中手の一部、手根に接続される中指の中手の一部に装着される。
手根骨格部材110Dの平板部には、第2実施形態の手根骨格部材110Bと同様に、当該平板部の法線方向と平行な方向(Z方向)に沿って延びる軸部材AX0を挿入する溝LHが成型加工されている。そして、手根骨格部材110Dには、当該軸部材AX0により、母指関節運動アシスト部120Aが、溝LHに沿って移動可能であるとともに、母指関節運動アシスト部120Aが、軸部材AX0を中心軸にして回動可能に取り付けられる。
手根骨格部材110Dには、中指関節運動アシスト部130B3の一方の端部が固定されている。また、手根骨格部材110Dには、開閉用軸部材AXC2を挿入する1個の軸穴が成型加工されている。そして、手根骨格部材110Dには、開閉用軸部材AXC2により、示指関節運動アシスト部130B2の一方の端部が回動可能に取り付けられている。
また、手根骨格部材110Dには、第2実施形態の手根骨格部材110Bと同様に、Z軸方向に沿って延びる軸部材110xを中心軸にして、第3ベローズ部材233の一方側が回動可能に取り付けられている(上述した図5(A)参照)。
さらに、手根骨格部材110Dは、後述するように、湾曲運動部140Dに接続されている。
《手指関節運動アシスト部130D4,130D5の構成》
上記の手指関節運動アシスト部(薬指関節運動アシスト部)130D4、手指関節運動アシスト部(小指関節運動アシスト部)130D5の構成について説明する。
手指関節運動アシスト部(薬指関節運動アシスト部)130D4は、図24,25により総合的に示されるように、上述した第2実施形態の手指関節運動アシスト部130B4(図17参照)と比べて、第1中手骨格部材311D4を更に備える点が異なっている。
上記の第1中手骨格部材311D4は、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を含む部材である。第1中手骨格部材311D4の端部(+Y方向側)には、開閉用軸部材AXC4を挿入する軸穴が成型加工されている。そして、第1中手骨格部材311D4の当該端部には、開閉用軸部材AXC4により、第2中手骨格部材3124が回動可能に取り付けられている。
また、第1中手骨格部材311D4には、軸部材311x4を中心軸にして、開閉用ベローズ部材3314の一方側が回動可能に取り付けられている。
さらに、第1中手骨格部材311D4は、後述するように、湾曲運動部140Dに接続されている。
手指関節運動アシスト部(小指関節運動アシスト部)130D5は、上述した第2実施形態の手指関節運動アシスト部130B5(図17参照)と比べて、第1中手骨格部材311D5を更に備える点が異なっている。
上記の第1中手骨格部材311D5は、第1中手骨格部材311D4と同様に、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を含む部材である。第1中手骨格部材311D5の端部(+Y方向側)には、開閉用軸部材AXC5を挿入する軸穴が成型加工されている。そして、第1中手骨格部材311D5の当該端部には、開閉用軸部材AXC5により、第2中手骨格部材3125が回動可能に取り付けられている。
また、第1中手骨格部材311D5には、軸部材311x5を中心軸にして、開閉用ベローズ部材3315の一方側が回動可能に取り付けられている。
さらに、第1中手骨格部材311D5は、後述するように、湾曲運動部140Dに接続されている。
《湾曲運動部140Dの構成》
上記の湾曲運動部140Dの構成について説明する。湾曲運動部140Dは、図24〜26により総合的に示されるように、接続部411,414,415を備えている。また、湾曲運動部140Dは、湾曲用ベローズ422と、湾曲用ベローズ423と、弾性部材442,443とを備えている。
上記の接続部411は、例えば、鋼鉄製の部材であり、L字状に成型加工され、板部と、当該板部の+X方向側の端部から略直立して延びる環状部を有している。接続部411の板部は、手根骨格部材110Dに取り付けられている。また、接続部411の環状部は、湾曲用ベローズ422の一方側端部に接続されている。
上記の接続部414は、例えば、鋼鉄製の部材であり、U字状に成型加工され、板部と、当該板部の+X方向側及び−X方向側の端部から略直立して延びる環状部を有している。接続部414の板部は、第1中手骨格部材311D4に取り付けられている。また、接続部414における−X方向側の一方の環状部は、湾曲用ベローズ422の他方側端部に接続されている。さらに、接続部414における+X方向側の他方の環状部は、湾曲用ベローズ423の一方側端部に接続されている。
上記の接続部415は、接続部411と同様に、例えば、鋼鉄製の部材であり、L字状に成型加工され、板部と、当該板部の−X方向側の端部から略直立して延びる環状部を有している。接続部415の板部は、第1中手骨格部材311D5に取り付けられている。また、接続部415の環状部は、湾曲用ベローズ423の他方側端部に接続されている。
上記の湾曲用ベローズ422は、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、手背側で、略X軸方向に沿って配置される。湾曲用ベローズ422の一方側端部は、手根骨格部材110Dにおける第1中手骨格部材311D4の側部側に、接続部411を介して、接続される。また、湾曲用ベローズ422の他方側端部は、第1中手骨格部材311D4における手根骨格部材110Dの側部側に、接続部414を介して、接続される。そして、湾曲用ベローズ422と調整部180Dとの間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管を通じて、湾曲用ベローズ422内の空気圧が変化すると、湾曲用ベローズ422が膨縮する。
上記の湾曲用ベローズ423は、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、手背側で、略X軸方向に沿って配置される。湾曲用ベローズ423の一方側端部は、第1中手骨格部材311D4における第1中手骨格部材311D5の側部側に、接続部414を介して、接続される。また、湾曲用ベローズ423の他方側端部は、第1中手骨格部材311D5における第1中手骨格部材311D4の側部側に、接続部415を介して、接続される。そして、湾曲用ベローズ423と調整部180Dとの間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管を通じて、湾曲用ベローズ423内の空気圧が変化すると、湾曲用ベローズ423が膨縮する。
上記の弾性部材442は、輪状のゴム部材を採用している。弾性部材442は、接続部411の他方の環状部、及び、接続部414の一方の環状部に取り付けられる。そして、弾性部材442は、湾曲用ベローズ422における手背と対向する部分を弾性的に拘束する。
上記の弾性部材443は、輪状のゴム部材を採用している。弾性部材443は、接続部414の他方の環状部、及び、接続部415の環状部に取り付けられる。そして、弾性部材443は、湾曲用ベローズ423における手背と対向する部分を弾性的に拘束する。
《調整部180D》
上記の調整部180Dについて説明する。調整部180Dは、上述した第2実施形態の調整部180Bと比べて、第4実施形態の湾曲運動部140Dが湾曲用ベローズ422,423を備えることに対応して、湾曲用ベローズ422,423への空気の強制的供給、及び、湾曲用ベローズ422,423からの空気の強制的排出を更に行う点が異なっている。
<動作>
以上のようにして構成された関節運動アシスト装置100Dの動作について、説明する。
なお、関節運動アシスト装置100Dでは、当初においては、調整部180Dによるベローズ内の空気圧調整は行われておらず、ベローズの内圧は大気圧になっているものとする。
ここで、関節運動アシスト装置100Dの「母指の閉状態へのアシスト動作」、「母指の開状態へのアシスト動作」、「母指の関節伸展状態へのアシスト動作」、「母指の関節屈曲状態へのアシスト動作」及び「母指の手根中手関節の運動のアシスト動作」は、上述した第2実施形態における関節運動アシスト装置100Bのアシスト動作と同様に行われる。
また、関節運動アシスト装置100Dの「母指以外の指の閉状態へのアシスト動作」、「母指以外の指の開状態へのアシスト動作」は、上述した第2実施形態における関節運動アシスト装置100Bのアシスト動作と同様に行われる。さらに、関節運動アシスト装置100Dの「母指以外の指の関節伸展状態へのアシスト動作」及び「母指以外の指の関節屈曲状態へのアシスト動作」は、上述した第2実施形態における関節運動アシスト装置100Bのアシスト動作と同様に行われる。
《手掌の湾曲運動のアシスト動作》
手掌の湾曲運動のアシスト動作について、説明する。ここで、図24,25に示されるように、手根骨格部材110Dの平板部の法線方向、及び、第1中手骨格部材311D4,311D5の長板部の法線方向が同一方向となっている関節運動アシスト装置100Dの状態を「非湾曲状態」というものとする。また、第4実施形態では、手根骨格部材110D、第1中手骨格部材311D4,311D5、及び、湾曲運動部140Dから構成される部分を「手掌運動部」というものとする。
手掌を当該非湾曲状態にする際には、調整部180Dが、湾曲用ベローズ422,423からの空気の強制的排出を行うための制御を行う。かかる制御に従って、調整部180Dにより、湾曲用ベローズ422,423からの空気の強制的排出が行われると、湾曲用ベローズ422,423が収縮する。
こうして湾曲用ベローズ422が収縮すると、弾性部材442が、湾曲用ベローズ422における手背と対向する部分を弾性的に拘束するため、中指−薬指中間線を略中心軸にして、第1中手骨格部材311D4が、手根骨格部材110Dに対して回転する。そして、当該回転により、手根骨格部材110Dの法線方向と、第1中手骨格部材311D4の法線方向とが、略同一方向になる。このようにして湾曲用ベローズ422が発生する直線的な収縮力が効率的に回転力に変換され、当該回転力が、手根骨格部材110Dを装着する部位及び第1中手骨格部材311D4を装着する部位に伝達される。
また、湾曲用ベローズ423が収縮すると、弾性部材443が、湾曲用ベローズ423における手背と対向する部分を弾性的に拘束するため、薬指−小指中間線を略中心軸にして、第1中手骨格部材311D5が、第1中手骨格部材311D4に対して回転する。そして、当該回転により、第1中手骨格部材311D4の法線方向と、第1中手骨格部材311D5の法線方向とが、略同一方向になる。このようにして湾曲用ベローズ423が発生する直線的な収縮力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第1中手骨格部材311D4を装着する部位及び第1中手骨格部材311D5を装着する部位に伝達される。この結果、関節運動アシスト装置100Dの手掌運動部は、上述した図24,25に示されるように、非湾曲状態になる。このアシスト動作により、手掌運動部に装着される手掌は、非湾曲状態になる。
次に、手掌を湾曲状態にするアシスト動作について説明する。
手掌を湾曲状態にする際には、調整部180Dが、湾曲用ベローズ422,423への空気の強制的供給を行うための制御を行う。かかる制御に従って、調整部180Dにより、湾曲用ベローズ422,423への空気の強制的供給が行われると、湾曲用ベローズ422,423が膨張する。
こうして湾曲用ベローズ422が膨張すると、弾性部材442が、湾曲用ベローズ422における手背と対向する部分を弾性的に拘束するため、中指−薬指中間線を略中心軸にして、第1中手骨格部材311D4が、手根骨格部材110Dに対して回転する。そして、当該回転により、手根骨格部材110Dの法線方向と、第1中手骨格部材311D4の法線方向とが、同一方向でなくなる。このようにして湾曲用ベローズ422が発生する直線的な伸長力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、手根骨格部材110Dを装着する部位及び第1中手骨格部材311D4を装着する部位に伝達される。
さらに、湾曲用ベローズ423が膨張すると、弾性部材443が、湾曲用ベローズ423における手背と対向する部分を弾性的に拘束するため、薬指−小指中間線を略中心軸にして、第1中手骨格部材311D5が、第1中手骨格部材311D4に対して回転する。そして、当該回転により、第1中手骨格部材311D4の法線方向と、第1中手骨格部材311D5の法線方向とが、同一方向でなくなる。このようにして湾曲用ベローズ423が発生する直線的な伸長力が効率良く回転力に変換され、当該回転力が、第1中手骨格部材311D4を装着する部位及び第1中手骨格部材311D5を装着する部位に伝達される。この結果、関節運動アシスト装置100Dの手掌運動部は、図27に示されるように、湾曲状態になる。このアシスト動作により、手掌運動部に装着される手掌は、湾曲状態になる。
ここで、図27は、湾曲用ベローズ422,423が膨張したときの関節運動アシスト装置100Dの手掌運動部を、手掌側から視た図である。なお、図27では、関節運動アシスト装置100Dに装着される右手の図示を省略している。
上述したアシスト動作の組み合わせにより、関節運動アシスト装置100Dは、健常者の手指の動きと同様な複雑な関節運動をアシストする。
以上説明したように、第4実施形態では、母指関節運動アシスト部120Aは、第1〜第3実施形態と同様に構成されている。そして、手部に関節運動アシスト装置100Dを装着した場合に、調整部180Dが、第1ベローズ231、第2ベローズ232a内の空気圧を調整することにより、第1〜第3実施形態と同様に、母指関節運動アシスト部120Aは、手根骨格部材110Dに対して、互いに直交する方向に働く二軸性の関節運動、すなわち、「鞍関節」に相当する関節運動を実現することができる。このため、母指の手根中手関節(鞍関節)の関節運動をアシストすることができる。
また、第4実施形態では、調整部180Dが、第3ベローズ233a内の空気圧を調整することにより、第2実施形態と同様に、手根骨格部材110Dに対する母指関節運動アシスト部120Aの「平面関節」の動きを実現することができる。このため、母指の平面関節の関節運動をアシストすることができる。また、第1〜第3実施形態と同様に、上述した「鞍関節」の関節運動のアシスト動作を補完し、手根に接続される母指の可動範囲を広げることができる。
また、第4実施形態では、調整部180Dが、母指関節運動アシスト部120Aの母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242内の空気圧を調整することにより、母指の中手骨に対する基節骨の運動、母指の基節骨に対する末節骨の運動、すなわち、母指の関節伸展運動及び関節屈曲運動をアシストすることができる。
また、第4実施形態では、調整部180Dが、手指関節運動アシスト部130Bの第1関節対応ベローズ341、第2関節対応ベローズ342、第3関節対応ベローズ343内の空気圧を調整することにより、示指、中指、薬指及び小指のそれぞれの第1関節、第2関節及び第3関節について、手指の関節伸展運動及び関節屈曲運動をアシストすることができる。
また、第4実施形態では、調整部180Dが、手指関節運動アシスト部130Bの開閉用ベローズ部材331内の空気圧を調整することにより、示指、薬指及び小指のそれぞれについて、開閉運動をアシストすることができる。
また、第4実施形態では、調整部180Dが、湾曲運動部140Dの湾曲用ベローズ422,423内の空気圧を調整することにより、人の手の平を湾曲させる場合の運動をアシストすることができる。
したがって、第4実施形態によれば、上述した第1〜第3実施形態と同様に、健常者の手部の関節運動と同様の関節運動を、適切にアシストすることができる。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を、図28,29を主に参照して説明する。
<構成>
図28には、第5実施形態に係る関節運動アシスト装置100Eの外観図が示されている。ここで、図28は、右手HDの手背に装着される関節運動アシスト装置100Eを、手指の関節が伸展状態にあり、かつ、手指が閉状態のときに手背側から眺めた外観図である。
図28に示されるように、関節運動アシスト装置100Eは、上述した第2実施形態の関節運動アシスト装置100Bと比べて、手根骨格部材110Bに代えて手根骨格部材110Eを備える点、母指関節運動アシスト部120Aに代えて母指関節運動アシスト部120Eを備える点、及び、調整部180Bに代えて調整部180Eを備える点が異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
《手根骨格部材110E》
上記の手根骨格部材110Eについて説明する。手根骨格部材110Eは、例えば、鋼鉄製の部材であり、XY平面と平行な平板部を含む部材である。第5実施形態では、手根骨格部材110Eは、不図示のベルトにより、人体の手根、手根に接続される示指の中手の一部、手根に接続される中指の中手の一部、手根に接続される薬指の中手の一部、手根に接続される小指の中手の一部に装着される。
手根骨格部材110Eの平板部には、当該平板部の法線方向と平行な方向(Z方向)に沿って延びる軸部材AX0を挿入する軸穴が成型加工されている。そして、手根骨格部材110Eには、当該Z方向に沿って延びる軸部材AX0を中心軸にして、母指関節運動アシスト部120Eが回動可能に取り付けられる。
手根骨格部材110Eには、中指関節運動アシスト部130B3の一方の端部が固定されている。また、手根骨格部材110Eには、開閉用軸部材AXC2,AXC4,AXC5を挿入する3個の軸穴が成型加工されている。そして、手根骨格部材110Eは、開閉用軸部材AXC2により、示指関節運動アシスト部130B2の一方の端部を回動可能に取付け、開閉用軸部材AXC4により、薬指関節運動アシスト部130B4の一方の端部を回動可能に取付けている。また、手根骨格部材110Eには、開閉用軸部材AXC5により、小指関節運動アシスト部130B5の一方の端部が回動可能に取り付けられている。
また、手根骨格部材110Eには、第2実施形態の手根骨格部材110Bと同様に、Z軸方向に沿って延びる軸部材110xを中心軸にして、第3ベローズ部材233の一方側が回動可能に取り付けられている(上述した図5(A)参照)。
《母指関節運動アシスト部120Eの構成》
次に、上記の母指関節運動アシスト部120Eの構成について説明する。母指関節運動アシスト部120Eは、図28に示されるように、上述した第2実施形態の母指関節運動アシスト部120Aと比べて、第1母指中手骨格部材211Aに代えて第1母指中手骨格部材211Eを備える点が異なっている。
上記の第1母指中手骨格部材211Eは、例えば、鋼鉄製の部材であり、手根骨格部材110Eの平板部と略平行な板を有する長板部を含む部材である。第1母指中手骨格部材211Eの長板部の略中央には、軸部材AX0を挿入する軸穴が成型加工されている。そして、第1母指中手骨格部材211Eは、Z方向を軸方向とする軸部材AX0により、手根骨格部材110Eに対して、回動可能に取り付けられている。
第1母指中手骨格部材211Eの長板部における第2母指中手骨格部材212の取り付け位置側である一方の端部には、弾性部材251及び第1ベローズ231を介して、第2母指中手骨格部材212が接続されている。また、第1母指中手骨格部材211Eの一方の端部側には、長板部の端から略直立して手の甲の方向(+Z方向)に沿って延びる環状の接続部が形成されている。そして、第1母指中手骨格部材211Eの一方の端部側の接続部は、第1ベローズ231の一方側端部に接続されている。
また、第1母指中手骨格部材211Eの長板部の他方の端部には、Z方向を軸方向とする軸部材211xを中心軸にして、第3ベローズ部材233の他方側が回動可能に取り付けられている。
このため、第5実施形態では、第2実施形態の第1母指中手骨格部材211Aと異なり、第3ベローズ233aが収縮すると、第1母指中手骨格部材211Eは、手根骨格部材110Eに対して、軸部材AX0を中心軸として、時計回りに回転するようになっている。また、第3ベローズ233aが膨張すると、第1母指中手骨格部材211Eは、手根骨格部材110Eに対して、軸部材AX0を中心軸として、反時計回りに回転するようになっている。
《調整部180E》
上記の調整部180Eについて説明する。調整部180Eは、上述した第2実施形態の調整部180Bと比べて、第2実施形態の母指関節運動アシスト部120Eが第1母指中手骨格部材211Eを備えることに対応して、母指関節運動アシスト部120Eを閉状態にする際には、第3ベローズ233aからの空気の強制的排出を行い、母指関節運動アシスト部120Eを開状態にする際には、第3ベローズ233aへの空気の強制的供給を行う点が異なっている。
<動作>
以上のようにして構成された関節運動アシスト装置100Eの動作について、説明する。
なお、関節運動アシスト装置100Eでは、当初においては、調整部180Eによるベローズ内の空気圧調整は行われておらず、ベローズの内圧は大気圧になっているものとする。
ここで、関節運動アシスト装置100Eの「母指の関節伸展状態へのアシスト動作」、「母指の関節屈曲状態へのアシスト動作」及び「母指の手根中手関節の運動のアシスト動作」は、上述した第2実施形態における関節運動アシスト装置100Bのアシスト動作と同様に行われる。
また、関節運動アシスト装置100Eの「母指以外の指の閉状態へのアシスト動作」、「母指以外の指の開状態へのアシスト動作」、「母指以外の指の関節伸展状態へのアシスト動作」及び「母指以外の指の関節屈曲状態へのアシスト動作」は、上述した第2実施形態における関節運動アシスト装置100Bのアシスト動作と同様に行われる。
《母指の閉状態へのアシスト動作》
母指を、閉じた状態にするアシスト動作について説明する。
第5実施形態では、母指を閉状態にする際には、調整部180Eが、第1ベローズ231、第2ベローズ232a、第3ベローズ233aからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。
かかる制御に従って、調整部180Eにより、第1ベローズ231、第2ベローズ232a、第3ベローズ233aからの空気の強制的排出が行われると、第1ベローズ231、第2ベローズ232a、第3ベローズ233a内の空気圧が下降する。そして、第1ベローズ231、第2ベローズ232a、第3ベローズ233aが収縮する。
こうして第3ベローズ233aが収縮すると、第1母指中手骨格部材211Eが、手根骨格部材110Eに対して、軸部材AX0を回転中心軸として、時計回りに回転する。
また、第1ベローズ231が収縮すると、上述したように、第2母指中手骨格部材212が、第1母指中手骨格部材211Eに対して、二軸性の母指の手根中手関節の「一の関節軸」である第1軸を回動軸にして回転する。そして、当該回転により、手根骨格部材110Eの平板部と、第2母指中手骨格部材212の長板部212bとが、略同一平面を形成する。さらに、第2ベローズ232aが収縮すると、上述したように、第2母指中手骨格部材212の長板部212bが延びる方向と、第3母指中手骨格部材213の長板部213bが延びる方向とのなす角が狭まり、略直角となる。この結果、母指関節運動アシスト部120Eは、上述した図28に示されるように、閉状態になる。このアシスト動作により、母指関節運動アシスト部120Eに装着されている母指は、閉状態になる。
《母指の開状態へのアシスト動作》
次いで、母指を、開状態にするアシスト動作について説明する。
図28に示される閉状態から、母指を開状態にする際には、調整部180Eが、第1ベローズ231からの空気の強制的排出を行うための制御、第2ベローズ232aへの空気の強制的供給を行うための制御、第3ベローズ233aへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。
かかる制御に従って、調整部180Eにより、第1ベローズ231からの空気の強制的排出が行われると、上述したように、第1ベローズ231が収縮する。また、かかる制御に従って、第2ベローズ232aへの空気の強制的供給が行われると、上述したように、第2ベローズ232aが膨張する。また、かかる制御に従って、第3ベローズ233aへの空気の強制的供給が行われると、第3ベローズ233a内の空気圧が上昇する。そして、第3ベローズ233a内の空気圧が上昇すると、第3ベローズ233aが膨張する。
こうして第3ベローズ233aが膨張すると、第1母指中手骨格部材211Eが、手根骨格部材110Eに対して、軸部材AX0を回転中心軸として、反時計回りに回転する。
また、第1ベローズ231が収縮すると、上述したように、第2母指中手骨格部材212が、第1母指中手骨格部材211Eに対して、第1軸を回動軸にして回転し、手根骨格部材110Eの平板部と、第2母指中手骨格部材212の長板部212bとが、略同一平面を形成する。さらに、第2ベローズ232aが膨張すると、上述したように、第2母指中手骨格部材212の長板部212bが延びる方向と、第3母指中手骨格部材213の長板部213bが延びる方向とのなす角が広がるように変化する。
この結果、母指関節運動アシスト部120Eは、図29に示されるように、開状態になる。このアシスト動作により、母指関節運動アシスト部120Eに装着されている母指は、開状態になる。なお、図29に示される関節運動アシスト装置100Eでは、調整部180Eの図示、及び、配管の一部の図示を省略している。また、図29では、関節運動アシスト装置100Eを装着する右手の図示を省略している。
上述したアシスト動作の組み合わせにより、関節運動アシスト装置100Eは、健常者の手指の動きと同様な複雑な関節運動をアシストする。
以上説明したように、第5実施形態では、母指関節運動アシスト部120Eの第1母指中手骨格部材211Eは、第3ベローズ233aが収縮しているときには、母指関節運動アシスト部120Eを閉状態にし、第3ベローズ233aが膨張しているときには、母指関節運動アシスト部120Eを開状態にするように、構成されている。このため、第5実施形態では、関節運動アシスト装置を図28に示される状態にする際には、全てのベローズを収縮させる制御とすることができ、制御の簡易化を図ることができる。
また、第5実施形態では、手部に関節運動アシスト装置100Eを装着した場合に、調整部180Eが、第1ベローズ231、第2ベローズ232a内の空気圧を調整することにより、第1〜第4実施形態と同様に、母指関節運動アシスト部120Eは、手根骨格部材110Eに対して、互いに直交する方向に働く二軸性の関節運動、すなわち、「鞍関節」に相当する関節運動を実現することができる。このため、母指の手根中手関節(鞍関節)の関節運動をアシストすることができる。
また、第5実施形態では、調整部180Eが、第3ベローズ233a内の空気圧を調整することにより、第1〜第4実施形態と同様に、上述した「鞍関節」の関節運動のアシスト運動を補完し、手根に接続される母指の可動範囲を広げることができる。
また、第5実施形態では、調整部180Eが、母指関節運動アシスト部120Eの母指第1関節対応ベローズ241、母指第2関節対応ベローズ242内の空気圧を調整することにより、母指の中手骨に対する基節骨の運動、母指の基節骨に対する末節骨の運動、すなわち、母指の関節伸展運動及び関節屈曲運動をアシストすることができる。
また、第5実施形態では、調整部180Eが、手指関節運動アシスト部130Bの第1関節対応ベローズ341、第2関節対応ベローズ342、第3関節対応ベローズ343内の空気圧を調整することにより、示指、中指、薬指及び小指のそれぞれの第1関節、第2関節及び第3関節について、手指の関節伸展運動及び関節屈曲運動をアシストすることができる。
また、第5実施形態では、調整部180Eが、手指関節運動アシスト部130Bの開閉用ベローズ部材331内の空気圧を調整することにより、示指、薬指及び小指のそれぞれについて、開閉運動をアシストすることができる。
したがって、第5実施形態によれば、上述した第1〜第4実施形態と同様に、健常者の手部の関節運動と同様の関節運動を、適切にアシストすることができる。
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記の第1〜第5実施形態では、母指関節運動アシスト部は、第3母指中手骨格部材、母指基節骨格部材、母指末節骨格部材を構成要素にするとともに、母指第2関節対応ベローズを構成要素とした。これに対して、図30に示されるように関節運動アシスト装置100Fの母指関節運動アシスト部120Fのように、第3母指中手骨格部材及び母指基節骨格部材を一体にした母指中手基節骨格部材を構成要素にするとともに、母指第2関節対応ベローズを省略するようにしてもよい。
また、上記の第1〜第5実施形態では、母指関節運動アシスト部の第2ベローズについては、一方側端部が、第3母指中手骨格部材に取り付けられるとともに、他方側端部が、第2母指中手骨格部材に取り付けられることとした。これに対して、図30に示される関節運動アシスト装置100Fの母指関節運動アシスト部120Fのように、第2ベローズの一方側端部が、第3母指中手骨格部材に取り付けられるとともに、第2ベローズの他方側端部が、第5部材としての第1中手骨格部材3112に取り付けられるようにしてもよい。なお、図30に示される関節運動アシスト装置100Fでは、右手の図示を省略している。
また、上記の第1〜第5実施形態では、関節運動アシスト装置は、第3ベローズ部材を備えるようにしたが、図30の関節運動アシスト装置100Fのように、第3ベローズ部材を省略するようにしてもよい。
なお、図30に示される関節運動アシスト装置100Fでは、第3母指中手骨格部材と第1中手骨格部材3112との接続は、第2ベローズ及び軸部を有する蝶番により実現されているが、当該蝶番を省略するようにしてもよい。また、関節運動アシスト装置100Fの調整部180Fは、上述した第1実施形態の調整部180Aと比べて、関節運動アシスト装置100Fが母指第2関節対応ベローズ、及び、第3ベローズ部材を備えていないことに対応して、当該指第2関節対応ベローズ、及び、第3ベローズ部材への空気の強制的供給、及び、当該指第2関節対応ベローズ、及び、第3ベローズ部材からの空気の強制的排出を行わない点が異なっている。
また、上記の第1〜第5実施形態では、不図示のベルトを利用して、関節運動アシスト装置を人体の右手に装着した。これに対して、ベルトを使用せずに、関節運動アシスト装置を配設した手袋を利用して、関節運動アシスト装置を人体の右手に装着するようにしてもよい。
また、上記の第1〜第5実施形態では、人体の右手の手指の運動をアシストする関節運動アシスト装置を説明したが、左手の手指の運動をアシストする関節運動アシスト装置であってもよいことは勿論である。
また、第1〜第5実施形態においては、樹脂製のベローズを採用したが、伸縮自在であり、人体に装着される装置の重さ等の負担をかけることがない素材であれば、他の素材であってもよい。
また、本発明の関節運動アシスト装置は、作動流体を空気としたが、他の気体や、水や油等の液体であってもよい。
本発明の関節運動アシスト装置は、介護や福祉の分野で利用する場合には、リハビリテーション用として装着するだけでなく、力が弱っている者がパワーアシスト用の装置としても利用することができる。また、本発明の関節運動アシスト装置は、介護や福祉の分野以外で、物を掴む等のパワーアシスト装置としても利用することができる。
また、上記の実施形態においては、人体の関節運動をアシストする関節運動アシスト装置に本発明を適用したが、関節機構を有する人体以外の外骨格形の哺乳類、外骨格形のロボット等の所定対象物の関節運動アシスト装置にも本発明を適用することができる。