JPWO2016017742A1 - 発光シートおよび偽造防止媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 発光性能に優れて、かつ偽造防止も図ることが可能な発光シートを提供する。【解決手段】 発光シート1は、第1基材層と、第1基材層2に形成され、エッジ部を有する凹部3および凸部4の少なくとも一方と、エッジ部に接する場所に配置される応力発光部と、を備える。エッジ部の少なくとも一部は、第1基材層に所定の方向に応力を付加したときに、応力が集中する応力集中部を有する。応力発光部は、応力集中部に付加される外部負荷の応力に応じた発光強度で所定波長の光を発光する。

Description

本発明は、応力発光材料を含有する発光シートおよび偽造防止媒体に関する。
応力により発光する応力発光材料は、実用化に向けた種々の開発が行われている(特許文献1,2参照)。特に、応力発光材料は、偽造防止を図る必要のある紙幣や有価証券などの偽造防止媒体への適用が検討されている。
また、米国では、薬のパッケージに偽造防止機能を設けることが法制化される予定になっており、他の国でも、薬のパッケージに同様の機能を設けることが義務化される可能性がある。
特開2007−55144号公報 特開2003−253261号公報
応力発光材料は、一般には応力が強いほど、発光量が多くなるが、応力をかける方向が異なると、所望の発光量が得られないおそれがある。よって、応力をかけることが想定されている方向に合わせて、最適な発光量が得られるようにするのが本来望ましいが、そのための具体的な構造については、従来提案されていない。
また、応力発光材料は、汎用的に用いられるようになってきたため、応力発光材料を用いて秘密の画像等を埋め込んでおき、応力をかけたときのみ、この画像が顕在化するような偽造防止機能を設けたとしても、比較的簡単に模倣されてしまうおそれがある。
偽造防止を図るには、対象物のどこに応力発光材料が用いられているのかが容易にはわからないようにするのが望ましい。また、応力をかけたときの発光強度や発光面積などの発光形態を場所によって相違させて、発光形態を簡単には模倣できないようにするのが望ましい。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、発光性能に優れて、かつ偽造防止も図ることが可能な発光シートおよび偽造防止媒体を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、第1基材層と、
前記第1基材層に形成され、エッジ部を有する凹部および凸部の少なくとも一方と、
前記エッジ部に接する場所に配置される応力発光部と、を備え、
前記エッジ部の少なくとも一部は、前記第1基材層に所定の方向に応力を付加したときに、応力が集中する応力集中部を有し、
前記応力発光部は、前記応力集中部に付加される外部負荷の応力に応じた発光強度で所定波長の光を発光する発光シートが提供される。
前記第1基材層は、応力発光材料を含有していてもよく、
前記応力発光部は、前記第1基材層の内部に設けられてもよい。
前記凹部および凸部の少なくとも一方は、空洞であってもよい。
前記凹部および凸部の少なくとも一方は、応力発光材料を含有する充填物で充填されており、
前記応力発光部は、前記充填物の内部に設けられてもよい。
前記第1基材層の上に積層される第2基材層を備えてもよく、
前記第2基材層は、応力発光材料を含有してもよく、
前記応力発光部は、前記第2基材層の内部に設けられてもよい。
前記凹部および前記凸部の少なくとも一方は、法線方向がそれぞれ相違する複数の面を有してもよく、
前記エッジ部は、前記複数の面のうち、互いに接合しあう2つの面の接合部であってもよい。
前記凹部および前記凸部の少なくとも一方における前記第1基材層の面方向における断面積は、前記第1基材層の面の法線方向において、連続的または段階的に変化してもよい。
前記凹部は、前記第1基材層の一主面から前記第1基材層の深さ方向に配置されてもよく、
前記凹部の前記一主面上の径サイズは、10〜100μmの範囲であってもよい。
前記凹部は、前記第1基材層の一主面から、前記第1基材層を貫通しない深さまで配置されてもよい。
前記凹部は、前記第1基材層の対向する2つの主面同士を貫通するように配置されてもよい。
前記凹部は、前記第1基材層の対向する2つの主面のいずれにも接しないように、前記第1基材層の内部に配置されてもよい。
前記応力集中部は、前記外部負荷に対する応力集中係数αが2以上の部位を有してもよい。
本発明の他の一態様では、第1基材層と、
前記第1基材層に形成され、エッジ部を有する凹部および凸部の少なくとも一方と、
前記エッジ部に接する場所に配置される応力発光部と、を備えてもよく、
前記エッジ部の少なくとも一部は、前記第1基材層に所定の方向に応力を付加したときに、応力が集中する応力集中部を有してもよく、
前記応力発光部は、前記応力集中部に付加される外部負荷の応力に応じた発光強度で所定波長の光を所定の発光態様で発光する偽造防止媒体が提供される。
本発明によれば、発光性能に優れて、かつ偽造防止も図ることが可能な発光シートおよび偽造防止媒体を提供できる。
本発明の第1の実施形態による発光シートの斜視図。 発光シートを上方(Z方向)から見た平面図。 凹部や凸部の一変形例を示す図。 凹部や凸部の一変形例を示す図。 第1基材層のおもて面から上方に凸部を形成する例を示す斜視図。 本発明の第2の実施形態による発光シート1の斜視図。 図5の発光シートを上方(Z方向)から見た平面図。 第1基材層の裏面側から下方に凸部を形成する例を示す斜視図。 本発明の第3の実施形態による発光シート1の斜視図。 図8の発光シートを上方(Z方向)から見た平面図。 本発明の第4の実施形態による発光シートの斜視図。 図10の発光シートを上方(Z方向)から見た平面図。 凹部を第1基材層の内部に設けた例を示す斜視図。 本発明の第5の実施形態による発光シート1の斜視図。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態による発光シート1の斜視図、図2は発光シート1を上方(Z方向)から見た平面図である。図1の発光シート1は、第1基材層2と、この第1基材層2のおもて面2a上に形成された複数の凹部3とを備えている。ここで、「おもて面2a」とは、発光シート1の上面あるいは観察者側の面を指す。本明細書では、「おもて面2a」の反対側の面を「裏面2b」と呼ぶ。
凹部3は、第1基材層2のおもて面2aから、第1基材層2の深さ方向に形成されている。凹部3の具体的な形状は特に問わないが、図1の例では、X方向における断面が三角形で、Y方向における断面が矩形で、Z方向から見た平面形状が矩形の凹部3を示している。各凹部3の形状およびサイズは、必ずしも同一でなくてもよい。ただし、発光シート1のおもて面2aを指で触れたときに、凹部3の存在を認識できない程度のサイズにするのが望ましい。凹部3の存在を認識できなくすることで、発光シート1の内部構造を把握できにくくし、偽造防止を図ることができる。凹部3の1辺および深さ方向のサイズは、例えば10〜100μm程度が望ましい。なお、偽造防止を考慮に入れなくてもよい場合は、100μmよりも大きなサイズの凹部3を形成してもよい。
第1基材層2は、例えば樹脂層で形成されている。樹脂層は、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または電離放射線硬化性樹脂を用いて形成可能である。第1基材層2に応力発光機能を持たせるには、樹脂層に応力発光材料を含有させればよい。
あるいは、第1基材層2の全体を応力発光材料としてもよい。この場合の応力発光材料としては、例えば、熱弾性マルテンサイト変態近傍において、応力による双晶疑弾性変形を生じやすい材料として既に知られているEu添加SrAl(SAOE)を焼成したものを用いることができる。あるいは、SAOEを粉砕等して得た微粒子を上述した樹脂層に含有させて、第1基材層2を形成してもよい。
第1基材層2は、必ずしも透明である必要はない。凹部3は第1基材層2のおもて面2aに形成されているため、第1基材層2が着色されていても、凹部3のエッジ部分からの光を第1基材層2のおもて面2a側から発光させることができる。ただし、発光強度を高めるには、第1基材層2の透明度を上げるか、あるいは反射特性に優れた白色に近い明るい色にするのが望ましい。ここで、透明とは、応力発光材料の発光波長を透過することを意味する。
第1基材層2に含有される応力発光材料は、例えば、多面体構造の複数の分子によって形成される母体結晶の空間に、アルカリ金属イオン、及び/または、アルカリ土類金属イオンが挿入された基本構造を有していてもよい。応力発光材料の発光中心として、ユウロピウム(Eu)等の希土類金属イオンを用いることができる。
なお、応力発光材料は、応力により発光する材料であればよく、その具体的な材料は、上述したものに限定されない。応力発光材料の種類によって、発光色を変えることができるため、所望の発光色が得られるような材料を選択するのが望ましい。また、応力発光材料にて発光される光の波長は、必ずしも可視光帯域とは限らない。適切な材料を選択することで、紫外光や赤外光など、可視光帯域外の波長で発光させることもできる。例えば、偽造防止性能を向上させたい場合は、可視光帯域外の波長で発光させ、人間の目では発光態様が視認できないようにしてもよい。
第1基材層2の耐水性を向上するため、第1基材層2に表面処理を施すことも好適である。この表面処理は、適宜な量の表面処理剤を、適宜な有機溶媒(有機溶剤)に、常温、または、加温して溶解させ、その溶解液に、目的に応じた適宜な量の、上記した応力発光材料を添加し、デゾルバーやミキサー等の適宜な撹拌装置を用いて、適宜な時間、撹拌した後、適宜な条件下で乾燥させることにより得られる。このとき、応力発光材料の形状を壊さず、維持するように条件を設定する必要がある。また、有機溶媒の水分含有量を調節することが、さらに好ましく、その水分含有量は、0.5%未満とする。水分含有量が0.5%以上の場合には、溶液中の水分で応力発光材料の発光特性が低下する。
さらに、耐水性をさらに向上させる目的で、上記した溶解液に添加する応力発光材料の表面を、予め防水性シリカ層などで被覆しておくことも好適である。この被膜の厚さは、0.1μm〜10μmとなるように設定する。
第1基材層2のおもて面2aに凹部3を形成するには、例えば、第1基材層2の材料となる応力発光材料SAOEに、予め凹部3の場所に合わせて低分子量の樹脂を充填した焼成用材料(SAOE分散樹脂)を焼成し、SAOEを焼結するとともに、凹部3内の樹脂を焼失させることで凹部3を形成することができる。あるいは、焼成済のSAOEシートのおもて面2a側に、レーザ等の切削器具を用いて凹部3を物理的に形成してもよい。
図1のように、第1基材層2のおもて面2aに複数の凹部3が存在する場合、第1基材層2を曲げたり、第1基材層2のおもて面2aを押圧したときに、最も応力がかかるのは、凹部3のエッジ部分である。より具体的には、凹部3を構成する各面の境界線周辺に応力がかかる。凹部3を構成する各面は、法線方向がそれぞれ相違しており、面同士の境界線はエッジ部になる。このエッジ部の少なくとも一部が、応力が集中する応力集中部となる。凹部3のエッジ部のすべてに均等に応力がかかるわけではなく、第1基材層2を曲げたり押圧した方向に応じて、応力のかかり方が変化する。本明細書では、発光シート1に対して所定の方向に応力を付加したときに、凹部3のエッジ部のうちで、応力が集中する部分を応力集中部と呼ぶ。
このように、第1基材層2のおもて面2aに複数の凹部3を設けることで、凹部3のエッジ部の周辺に特に顕著に応力を集中させることができ、エッジ部の近くに存在する応力発光材料の発光強度が特に大きくなる。凹部3の応力集中部における応力集中係数αは、最大応力(σmax)/平板応力(σ)として、α≧5である。応力集中部は例えば520nmの波長(緑色)で発光し、この光は第1基材層2の内部を通過して、おもて面2a側から放出される。
本実施形態による発光シート1を、そのシート面に直交する方向、もしくは、そのシート面をねじる方向に、数Mパスカル程度の負荷を与えると、その応力集中部において、視認可能なレベルの発光(1mcd/cm以上)を十分に超える明るさの発光(10mcd/cm以上、好ましくは、100mcd/cm)を発現し、その光がシート内を通過してシートの表面側で観察することができる。
特に、図1の形状の凹部3は、最深部で複数の面が一つの境界線(エッジ部)に接続されている。このエッジ部が最も応力が集中する場所となる。よって、このエッジ部の延びる方向に沿って、第1基材層2に応力をかけると、このエッジ部付近で強く発光することになる。本明細書では、応力集中部における応力により発光を行う箇所を応力発光部と呼ぶ。図1の場合、応力発光部は第1基材層2か、凹部3内に充填される充填物である。
図1の凹部3は、図2に示すように、Z方向から見た平面形状が矩形状である。よって、例えば、図1の凹部3のエッジ部e1の延在方向に沿って第1基材層2に応力をかけた場合には、エッジ部e1に応力が集中し、エッジ部e1付近が最も強く発光する。また、図1の凹部3のエッジ部e2の延在方向に沿って第1基材層2に応力をかけた場合には、エッジ部e2に応力が集中し、エッジ部e2付近が最も強く発光する。このように、発光シート1に応力をかける方向によって、強く発光する場所が変化する。
凹部3の形状は任意であるが、凹部3のエッジ部に沿って第1基材層2に応力をかけることで、凹部3の特定のエッジ部周辺を特に強く発光させることができる。
本実施形態では、凹部3のエッジ部付近で発光させることを想定しているため、応力発光材料を第1基材層2に含有させる代わりに、凹部3の内部に樹脂層を充填し、この樹脂層の中に応力発光材料を含有させてもよい。これにより、第1基材層2に応力発光材料を含有させる場合よりも、応力発光材料の使用量を減らすことができ、部材コストの削減が図ることができる。
なお、凹部3に樹脂層などを充填する場合、凹部3内の樹脂層と第1基材層2の樹脂層とでは、弾性率を相違させるのが望ましい。弾性率が同じだと、応力に差がなくなり、凹部3のエッジ部分での応力集中度合が小さくなるおそれあるためである。
一方、第1基材層2に応力発光材料を含有させる場合は、凹部3内は空洞であってもよい。凹部3内が空洞であっても、第1基材層2における凹部3のエッジ部分には応力が集中するため、第1基材層2に含有される応力発光材料によって、エッジ部分の発光強度を高くすることができる。
上述したように、第1基材層2のおもて面2aに凹部3を設けると、第1基材層2に何らかの応力をかけたときに、凹部3のエッジ部分に応力を集中させることができ、エッジ部分を特に明るく発光させることができる。この原理を利用して、複数の凹部3のエッジ部分が特定の形状になるように、第1基材層2のおもて面2a上の複数の凹部3の配列に特徴を持たせることで、所望の絵画像、文字、記号、数字などの形に合わせて発光させることができる。上述したように、第1基材層2に応力をかけた方向によって、凹部3の一部のエッジ部のみをより強く発光させることができるため、特定の方向に応力をかけた場合のみ、特定の形状で発光させることができる。この特定の形状での発光は、特定の方向に応力をかけない限り行われないため、特定の形状での発光により秘密の情報を表現できる。このように、第1の実施形態による発光シート1は、凹部3によって秘密の情報を第1基材層2に埋め込むことができ、偽造防止媒体として利用することができる。
なお、凹部3の内部が空洞である場合、凹部3の形成された第1基材層2のおもて面2aが露出していると、凹部3の内部にゴミ等が溜まるおそれがある。そこで、第1基材層2のおもて面2a全体を保護層で覆ってもよい。これにより、凹部3が露出されなくなり、耐久性が向上する。また、第1基材層2のおもて面2a全体を保護層で覆うことで、発光シート1のおもて面2aを完全に平坦化することができ、凹部3の存在をより認識されにくくなる。
図1では、第1基材層2のおもて面2aに形成される各凹部3を複数の平面で構成する例を示したが、凹部3を図3Aや図3Bに示すように、円錐形状や多角錘形状に近い形状にしてもよい。凹部3の最深部3cの面積が小さいほど、最深部3cに応力が集中しやすくなるため、より強い光で発光させたい場合は、図3Aや図3Bのように、凹部3の底部3bの面積をできるだけ小さくするのが望ましい。
図1では、第1基材層2のおもて面2aから、第1基材層2の深さ方向に凹部3を形成する例を示したが、本実施形態は、図4に示すように、第1基材層2のおもて面2aから上方に凸部4を形成する場合にも適用可能である。凸部4は、凹部3と同様に、法線方向がそれぞれ異なる複数の面で形成されており、各面同士が接合する接合部がエッジ部となるため、このエッジ部が応力集中部となり、エッジ部に接する部分での発光強度を高くすることができる。
図4の凸部4は、例えば樹脂層で形成され、この樹脂層には、応力発光材料が含有される。これにより、発光シート1の所定方向に応力を付加すると、凸部4のエッジ部の少なくとも一部が応力集中部となり、凸部4内の応力発光材料によって明るく発光させることができる。なお、凸部4が円錐または多角錘形状の場合は、凸部4の頂部に応力が集中する。よって、凸部4の頂部付近を明るく発光させることができる。
第1基材層2のおもて面2a上に図4のような凸部4が形成されている場合、指で触ったときに凸部4の存在を認識しやすくなるが、凸部4の高さを10〜100μm程度に抑えて、かつ凸部4の頂部の面積を広げたり、あるいは頂部に丸みを持たせたりすることで、凸部4の存在を認識しにくくすることができる。あるいは、凸部4を覆うように、第1基材層2の上に保護層を積層してもよい。
このように、第1の実施形態では、第1基材層2のおもて面2aに凹部3と凸部4の少なくとも一方を設けるとともに、凹部3や凸部4のエッジ部分に接する場所に応力発光材料を配置するため、第1基材層2に応力をかけたときに、凹部3のエッジ部分に応力を集中させて、応力発光材料によってエッジ部分を明るく発光させることができる。凹部3の配置場所を工夫することで、第1基材層2の特定の方向に応力をかけたときに、凹部3のエッジ部分によって特定の形状で発光させることができ、偽造防止媒体などへの適用が可能となる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1基材層2の裏面2b側に凹部3を設けたものである。
図5は本発明の第2の実施形態による発光シート1の斜視図、図6は図5の発光シート1を上方(Z方向)から見た平面図である。図5の発光シート1は、第1基材層2と、この第1基材層2の裏面2b上に形成された複数の凹部3とを備えている。
凹部3は、第1基材層2の裏面2bから、第1基材層2の内部にかけて形成されている。図6を図2と比較すればわかるように、本実施形態による凹部3は、第1基材層2の裏面2b上において、第1の実施形態による凹部3よりも細長形状とされている。本明細書では、本実施形態による凹部3のように細長形状のものを総称してスリット形状とも呼ぶ。
図5の凹部3のX方向における断面は逆三角形、Y方向における断面は矩形、Z方向から見た平面形状は矩形であるが、これは一例にすぎない。凹部3の各方向における断面形状は任意である。
図5の凹部3は、Z方向から見た平面形状が図1よりも細長のスリット形状とされている。凹部3を細長のスリット形状にすることで、凹部3の長手方向に沿って第1基材層2に応力をかけたときに、凹部3の長手方向のエッジ部に応力を集中させることができる。
図5では、複数の凹部3の長手方向をY方向に沿って配置し、複数の凹部3の短手方向をX方向に沿って配置している。これら凹部3はX方向にもY方向にも複数個ずつ配置されている。
第1基材層2にY方向に沿って応力をかけることで、複数の凹部3の長手方向が並ぶ方向に応力を集中させることができ、線状に明るく発光させることができる。
なお、凹部3を配置する方向は任意である。できるだけ長い距離にわたって線状に発光させたい場合には、凹部3の長手方向を第1基材層2の裏面2bの対角方向に平行にして、複数の凹部3を並べて配置すればよい。
図5の凹部3を形成するには、例えば、第1基材層2の材料となる応力発光材料SAOEに、予め凹部3の場所に合わせて低分子量の樹脂を充填した焼成用材料(SAOE分散樹脂)を焼成し、SAOEを焼結するとともに、凹部3内の樹脂を焼失させることで形成可能である。あるいは、焼成済のSAOEシートのおもて面2a側に、レーザ等の切削器具を用いて凹部3を形成してもよい。
図5のような細長のスリット形状の凹部3の場合、凹部3の長手方向に沿って応力を集中させることができ、凹部3の長手方向に線状に発光させることができる。よって、複数の凹部3を同じ向きに配置することで、特定方向に長い距離にわたって発光させることができる。よって、バーコードのような直線的な情報表示を行うのに適している。これにより、本実施形態によれば、複数の凹部3を第1基材層2の裏面2b側に形成することで、第1基材層2の特定方向に応力をかけない限り出現しない秘密情報を第1基材層2に埋め込むことができる。
図5では、複数の平面で凹部3を形成しているが、凹部3の形状やサイズは任意であり、例えば、図3Aや図3Bのように、円錐や多角錘に近い形状でもよい。
第1の実施形態と同様に、第2の実施形態においても、凹部3の内部は空洞でもよいし、所定の材料(例えば樹脂層)を充填してもよい。凹部3の内部が空洞である場合、第1基材層2に応力発光材料を含有する必要がある。
また、凹部3の内部を樹脂層などで充填する場合は、応力発光材料は、第1基材層2と凹部3内の充填物の少なくとも一方に含有させればよい。
図5の凹部3は、第1基材層2の裏面2b側に設けられており、凹部3のエッジ部分での発光を第1基材層2のおもて面2a側に伝搬させるには、第1基材層2の透明度を高くしなければならない。よって、第1基材層2は、例えば透明樹脂層で形成するのが望ましい。
図5では、第1基材層2の裏面2b側から、第1基材層2の内部にかけて凹部3を形成する例を示したが、本実施形態は、図7に示すように、第1基材層2の裏面2b側から下方に凸部4を形成する場合にも適用可能である。図7の凸部4は、図4と同様に、例えば樹脂層で形成され、この樹脂層には、応力発光材料が含有される。これにより、発光シート1の所定方向に応力を付加すると、凸部4のエッジ部の少なくとも一部が応力集中部となり、凸部4内の応力発光材料によって明るく発光させることができる。なお、凸部4が円錐または多角錘形状の場合は、凸部4の頂部に応力が集中する。よって、凸部4の頂部付近を明るく発光させることができる。
第1基材層2の裏面2b側に図7のような凸部4を設けると、第1基材層2の裏面2b側に凹凸が形成されることになり、第1基材層2の裏面2b全体を別の部材に面接触する際の妨げになる。よって、第1基材層2の裏面2b側に保護層を積層して、保護層にて凸部4を覆ってもよい。
このように、第2の実施形態では、第1基材の裏面2b側に、細長のスリット形状の凹部3を複数個形成するため、これら凹部3の長手方向の並ぶ向きに合わせて第1基材層2に応力をかけることにより、凹部3の長手方向に沿った方向に発光させることができる。これら凹部3は第1基材層2の裏面2b側に配置されているため、第1基材層2のおもて面2aを人間の指で触っても、凹部3の存在を認識することはできない。また、第1基材層2と凹部3は透明度の高い材料で形成されているため、目視でも凹部3の存在を認識することは難しい。よって、凹部3によって、秘密情報を第1基材層2に埋め込んでおくことができ、この秘密情報は、第1基材層2に特定の方向の応力をかけた場合のみ、発光して出現されるため、偽造防止目的で使用することができる。
上述した第2の実施形態では、第1の実施形態よりも細長のスリット形状の凹部3を、第1基材層2の裏面2b側に形成する例を示したが、第2の実施形態と同様の細長のスリット形状の凹部3を、第1基材層2のおもて面2a側に形成してもよい。すなわち、第1の実施形態における凹部3を細長のスリット形状にしてもよい。細長のスリット形状の凹部3は、第1基材層2のおもて面2aに露出する面積が小さいため、応力がより集中しやすくなって、発光強度を向上できる上に、第1基材層2のおもて面2a側に凹部3を形成しても、指で触ったときに凹部3の存在が認識しにくくなる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1基材層2のおもて面2aから裏面2bまで貫通する凹部3を形成するものである。
図8は本発明の第3の実施形態による発光シート1の斜視図、図9は図8の発光シート1を上方(Z方向)から見た平面図である。図8の発光シート1は、第1基材層2と、この第1基材層2のおもて面2aから裏面2bまで貫通する複数の凹部3とを備えている。
図8の凹部3は、図4と同様の細長のスリット形状である。よって、図9の平面図は図5と同様になる。図8では、おもて面2a側に露出する凹部3の面積が、裏面2b側に露出する凹部3の面積よりも大きい例を示しているが、逆に、裏面2b側に露出する凹部3の面積が、おもて面2a側に露出する凹部3の面積よりも大きくてもよい。また、凹部3の面方向の断面積は、おもて面2a側から裏面2b側にかけて、連続的または断続的に変化してもよいし、常に同面積でもよい。また、凹部3は、面方向の法線方向に延びていてもよいし、法線方向から傾斜して延びていてもよい。さらに、凹部3は、第1基材層2の内部で、湾曲したり、分岐してもよい。裏面2b側に露出する凹部3のサイズは、10〜100μm程度である。
図8の例では、凹部3の長手方向をY方向に平行にして、Y方向に複数の凹部3を配置するとともに、凹部3の短手方向をX方向に平行にして、X方向に複数の凹部3を配置している。なお、第1基材層2の面方向における凹部3の並ぶ方向は任意である。
図8の凹部3を形成するには、例えば、第1基材層2の材料となる応力発光材料SAOEに、予め凹部3の場所に合わせて低分子量の樹脂を充填した焼成用材料(SAOE分散樹脂)を焼成し、SAOEを焼結するとともに、凹部3内の樹脂を焼失させることで形成可能である。あるいは、焼成済のSAOEシートのおもて面2a側に、レーザ等の切削器具を用いて凹部3を形成してもよい。
図8の凹部3は、第1基材層2のおもて面2aから裏面2bまで貫通しているため、第1基材層2に応力をかけたときに、第1基材層2のおもて面2a側と裏面2b側の双方において、発光させることができる。
なお、凹部3の内部は、空洞でもよいし、第1および第2の実施形態で説明したように、凹部3の内部に樹脂等の充填物を充填してもよい。凹部3の内部が空洞の場合には、第1基材層2に応力発光材料を含有させる必要がある。一方、凹部3の内部に充填物が充填されている場合、第1基材層2と充填物との少なくとも一方に応力発光材料を含有させる必要がある。
このように、第3の実施形態による発光シート1は、第1基材層2のおもて面2a側から裏面2b側まで貫通する凹部3を有しているため、おもて面2a側でも裏面2b側でも、同様の発光強度で発光させることができる。
凹部3は、細長のスリット形状であるため、おもて面2a側と裏面2b側のどちらを人間の指で触っても、凹部3の存在が認識しにくくなる。よって、凹部3によって秘密の情報を第1基材層2に埋め込むことができる。すなわち、複数の凹部3を特定の位置に配置することで、特定の方向に応力をかけたときに、特定の絵画像、記号、文字、数字などの形状に沿って発光させることができる。このように、第3の実施形態も、偽造防止媒体への適用が可能となる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第1基材層2のおもて面2a側に、網目状の凹部3を形成するものである。
図10は本発明の第4の実施形態による発光シート1の斜視図、図11は図10の発光シート1を上方(Z方向)から見た平面図である。図10の発光シート1は、第1基材層2と、この第1基材層2のおもて面2a側に網目状に形成された複数の凹部3とを有する。
凹部3の底部は、第1基材層2の内部にあってもよいし、第1基材層2を貫通して裏面2b側にあってもよい。
図10では、凹部3の形状を矩形状にしているが、凹部3の形状は図示したものに限定されない。例えば、凹部3は、矩形以外の多角形やその他の形状でもよい。
凹部3が矩形状の場合に、その縦横比は任意である。第2および第3の実施形態で説明したように細長のスリット形状でもよいし、正方形に近い形状でもよい。
凹部3のサイズも任意である。ただし、凹部3の存在が目視および指の触感にて認識できない程度のサイズが望ましい。例えば、凹部3の一辺の長さは10μm〜100μm程度が望ましい。
凹部3の内部は空洞であってもよいし、凹部3の内部に所定の材料を充填してもよい。凹部3に充填される材料は、例えば顔料分散樹脂層である。顔料分散樹脂層は、第1基材層2との色差が0.5以下が望ましい。色差が0.5より大きいと、第1基材層2に凹部3が網目状に配置されていることが視認されてしまうためである。第1基材層2が白色であれば、顔料分散樹脂層も同じ色調の白色の樹脂を用いる。また、第1基材層2と顔料分散樹脂層との屈折率差は0.1以下が望ましい。屈折率差が0.1より大きいと、凹部3の界面で光が屈折し、やはり凹部3の存在が視認されるおそれがあるためである。
また、第1基材層2(ヤング率が約200GPa)と顔料分散樹脂層(ヤング率が約2GPa)のヤング率比を、10/1〜1000/1とすることで、凹部3のエッジ部分への応力を集中させることができる。
凹部3を形成する面同士の為す角度が小さいほど、この部分に応力が集中し、その集中度は、応力集中係数αは2以上、好ましくは5以上にする。これにより、本実施形態による発光シート1のシート面に直交する方向、もしくはシート面にねじる方向に、数MPa程度の負荷を与えると、その応力集中点において、視認可能なレベルの発光1mcd/cm以上を十分に超える明るさの発光(10mcd/cm以上、好ましくは、100mcd/cm)を発現することができる。
第1基材層2のおもて面2a側に網目状の凹部3を形成するには、例えば、第1基材層2の材料となる応力発光材料SAOEに、予め凹部3の場所に合わせて低分子量の樹脂を充填した焼成用材料(SAOE分散樹脂)を焼成し、SAOEを焼結するとともに、凹部3内の樹脂を焼失させることで形成可能である。あるいは、焼成済のSAOEシートのおもて面2a側に、レーザ等の切削器具を用いて凹部3を形成してもよい。
凹部3が空洞のままだと、凹部3にゴミ等の異物が入り込んで、凹部3が着色してしまうおそれがある。そこで、第1基材層2のおもて面2a側を、光散乱性を維持しつつ高い透明性を有する保護層で覆ってもよい。保護層の材料としては、繰り返しの応力負荷による疲労により剥離がおきないように、折り曲げ耐性の高いゴム状部材で形成するのが望ましい。
このように、第4の実施形態では、第1基材層2に網目状に凹部3を配置しているため、発光シート1に対して図10のX方向とY方向のどちらの方向に応力をかけても、いずれかの凹部3のエッジ部を線状に発光させることができる。また、第1基板上の一部に網目状に凹部3を配置することで、特定の絵画像、文字、記号、数字などの形状に沿った発光を行うこともできる。
また、凹部3は、人間の指で触っても認識できない程度のサイズであり、凹部3と第1基材層2とは色差もなく、屈折率差もないため、凹部3の存在を視認することもできない。よって、凹部3を用いて、第1基材層2の内部に秘密の情報を埋め込むことができる。これにより、本実施形態の発光シート1は、偽造防止目的で利用できる。
上述した第1〜第4の実施形態では、凹部3または凸部4を、第1基材層2のおもて面2aまたは裏面2bから形成する例を示したが、図12に示すように、凹部3が、第1基材層2のおもて面2aと裏面2bのいずれにも接しないようにして、第1基材層2の内部に凹部3を形成してもよい。
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、発光シート1を2層構造にするものである。
図13は本発明の第5の実施形態による発光シート1の斜視図である。図13の発光シート1は、第1基材層2と、この第1基材層2の上に積層される第2基材層5とを備えている。
第1基材層2は、上述した第1〜第4の実施形態の第1基材層2と同様に、おもて面2a側に複数の凹部3を有する。これら凹部3の底部は、第1基材層2の内部にあってもよいし、第1基材層2を貫通して裏面2b側にあってもよい。凹部3の形状も、第1〜第4の実施形態で説明したように、種々の形状を取り得る。
本実施形態では、凹部3の表面を第2基材層5で覆うため、凹部3の表面が指に触れるおそれはない。よって、凹部3のサイズは、第1〜第4の実施形態の凹部3よりも大きくてもよい。
凹部3は、空洞でもよい。凹部3が空洞の場合、第2基材層5に応力発光材料が含有される。
凹部3が空洞の場合、第2基材層5の上面を積層方向に所定の押圧力で押圧すると、第2基材層5が凹部3の内部に押されて、凹部3のエッジ部分に応力が集中し、凹部3のエッジ部周辺が発光する。応力発光材料が第1基材層2と第2基材層5のどちらに含有されていても、凹部3のエッジ部分の応力集中の影響を受けて、凹部3のエッジ部分の周辺が発光する。
第1基材層2および第2基材層5の構成材料は、基本的には第1〜第4の実施形態の第1基材層2と同様でよい。凹部3が空洞の場合は、第2基材層5に応力発光材料を含有させるのが望ましいが、第1基材層2に応力発光材料を含有させるか否かは任意である。
第2基材層5は、ある程度の弾力性を有するのが望ましい。第2基材層5の上面を押圧したときに、第2基材層5が凹部3の内部に押されることで、凹部3のエッジ部分に応力を集中させることができる。
また、凹部3は、空洞ではなく、第1基材層2よりも弾性率の低い低弾性率材料が充填されていてもよい。これにより、凹部3内の低弾性率材料は、第1基材層2よりも撓みやすくなり、第2基材層5の上面を押圧したときに、第2基材層5が凹部3内の低弾性率材料を押し込むことになる。これにより、凹部3のエッジ部分に応力が集中しやすくなる。
凹部3への低弾性率材料の充填は、第1基材層2上に複数の凹部3を形成した後に、各凹部3に低弾性率材料を充填してもよいし、印刷処理により、低弾性率材料からなる複数の層を先に形成した後、これら層を覆うように第1基材層2を形成してもよい。
本実施形態による発光シート1は、凹部3が第2基材層5で覆われているため、第2基材層5の透明性が高くないと、凹部3のエッジ部分での発光が発光シート1の表面まで伝搬されないおそれがある。よって、第2基材層5は、透明性の高い樹脂層などで形成するのが望ましい。
このように、第5の実施形態では、凹部3が形成された第1基材層2の上に第2基材層5を積層するため、凹部3が発光シート1の表面上に露出されなくなり、凹部3の存在を認識されにくくなる。発光シート1の表面を積層方向に押圧することにより、第2基材層5が凹部3の内側に押圧されることになり、凹部3のエッジ部分に応力が集中する。これにより、凹部3のエッジ部周辺を発光させることができる。凹部3の数や配置を調整することで、特定方向に応力をかけたときに特定の形状で発光させることができる。これにより、凹部3により、秘密情報を第1基材層2の内部に埋め込むことができ、偽造防止媒体を作製できる。
上述した第1〜第5の実施形態を包含する上位概念の発光シート1の構造的な特徴は以下の通りである。すなわち、本発明の上位概念による発光シート1は、第1基材層2と、凹部3および凸部4の少なくとも一方と、応力発光部とを備えている。凹部3および凸部4の少なくとも一方は、第1基材層2に形成され、エッジ部を有する。応力発光部は、エッジ部に接する場所に配置されている。より具体的には、応力発光部は、第1基材層2の内部に設けられる。あるいは、応力発光部は、凹部3または凸部4を充填する充填物の内部に設けられる。エッジ部の少なくとも一部は、第1基材層2に所定の方向に応力を付加したときに、応力が集中する応力集中部を有する。応力発光部は、応力集中部に付加される外部付加の応力に応じた発光強度で所定波長の光を発光する。
このような発光シート1では、第1基材層2に所定の方向に応力を付加したときに、エッジ部の一部に応力集中部を設けることができ、この応力集中部を外部負荷の応力に応じた発光強度で所定波長の光で発光させることができる。
(実施例1)
応力集中係数αが少なくとも2以上となる部位を有する凹部3に対応した空洞をあらかじめ設けた焼成用型と、このような凹部3を形成するためのプレス金型とを準備する。この焼成用型は、縦30mm×横100mm×厚さ10mmのサイズの第1基材層2を形成するためのものである。この焼成用型は、ステンレスを内貼りした金属製である。
第1基材層2の凹部3は、3mm×3mmの正方形の開口部を有し、深さが2.6mmであって、このような凹部3が、第1基材層2のおもて面2a側に6mm間隔の碁盤目状に設けられている。
このような構造を有する発光シート1の形状の3次元画像データを、構造解析ソフトウエアにて解析した。この結果、形成された発光シート1は、発光シート1の横方向の両端部を手前に引いて、横方向の中央部を裏面2bから上面2a方向に押し付けるように、湾曲させる変形応力の負荷を与えたときに、応力集中係数αが10.0である部位を有する形状であることを確認した。
次いで、プラスチックの曲げ特性を求めるための3点法により、この実施例1の発光シート1のおもて面2aを下方に向け、横方向の両端部をそれぞれ支点で支え、横方向の中央部を裏面2bから押し下げるように、2mm/分の試験速度で、発光シート1に対して、所定の外部負荷として、その面に垂直な方向に、100kPaの変形応力を掛けたところ、発光シート1がその方向に撓み、その変形によって、発光シート1内の凹部3のエッジ部における所定の部位S1に変形応力が集中し、同時に、その部位S1からその変形応力に応じた発光強度を有する所定波長の光(緑色の光)が発光して、所定波長の光(緑色の光)が視認可能となった。
具体的には、凹部3のエッジ部における所定の部位S1に変形応力が集中し、この所定の部位S1が、その変形応力に応じた発光強度を有する所定波長の光(緑色の光)を発光した。特に、凹部3の所定の部位S1から、強い光(緑色の光)が放出され、凹部3の側面でも反射して、その光が、一定の方向に集められて強められ、観察者は、その発光シート1のおもて面2aの凹部3の位置において、その所定波長の光(緑色の光)を視認できた。
また、この実施例1の発光シート1を、底のサイズが、縦30mm×横100mmのかまぼこ型であって、その曲率半径が60mmのステンレス製の治具の、その曲面上に、発光シート1に対する所定の外力負荷として、手の指で押し当てたところ、発光シート1が変形し、特に、治具の突出部分付近に対応する部分が、その変形によって、緑色に発光して、目視にて視認することができ、この発光シート1の真正性を確認した。
さらに、この真正性の確認動作を、100回繰り返したところ、いずれも、変わらず、同様の緑色の発光を確認でき、このことから、実施例1の発光シート1を偽造することは、非常に困難と思われた。
(実施例2)
第1基材層2のおもて面2aが平坦な面であり、裏面2bに所定の形状の凹部3を有するステンレスを内貼りした金属製の焼成用型と、このような凹部3を形成するためのプレス金型とを準備した。
実施例2における第1基材層2の凹部3は、6mm×6mmの正方形の開口部を有し、深さが5.2mmの楔形であって、この楔形が、第1基材層2の裏面2b側に、12mm間隔の碁盤目状に、一つ置きに設けられている。
これとは別に、縦30mm×横100mm×厚さ10.2mmの直方体の空洞を持つ焼成用型2に、母体材料であるSrAlを入れるとともに、発光中心となるEuを1%、ホウ酸を1%添加し、水素添加アルゴン還元雰囲気中で、900℃まで徐々に昇温して、仮焼成した後、上述した凹部3を形成するためにプレス金型を用いた、10トンプレスによる加圧成形によって、上記した図5のような形状を持つ応力発光材料の仮焼成物を得た。
この応力発光材料の仮焼成物を、上記のごとく準備した焼成用型に入れ替えて、水素添加アルゴン還元雰囲気中で、1300℃にて、4時間焼成し、自然冷却させて、その焼成用型から取り出して、縦30mm×横100mm×厚さ10mmの第1基材層2を作製した。この第1基材層2のおもて面2aは平坦な面となっており、且つ、裏面2bには凹部3が碁盤の目状に形成されていた。
そして、作製した実施例2の発光シート1の形状を表す3次元画像データを、構造解析ソフトウエアで解析した。この結果、発光シート1は、発光シート1の横方向の両端部を手前に引いて、横方向の中央部を他方の表面側から奥に押し付けるように、湾曲させる変形応力の負荷に対して、応力集中係数αが15.0である部位S1を有する形態であることを確認した。
次いで、プラスチックの曲げ特性を求めるための3点法により、この実施例2の発光シート1の裏面2bを下方に向け、横方向の両端部をそれぞれ支点で支え、横方向の中央部を、2mm/分の試験速度で、発光シート1に対して、所定の外部負荷として、裏面2b側からおもて面2a側に向かって、100kPaの変形応力を掛けたところ、発光シート1が上方に向かって撓み、その変形によって、発光シート1内の凹部3のエッジ部の所定の部位S1に変形応力が集中し、同時に、その部位S1からその変形応力に応じた発光強度を有する所定波長の光(緑色の光)が発光して、発光シート1のおもて面2a側から、所定波長の光(緑色の光)が視認可能となった。
具体的には、発光シート1の所定の部位S1に、変形応力が集中し、この所定の部位S1が、その変形応力に応じた発光強度を有する所定波長の光(緑色の光)を発光して、特に、凹部3の所定の部位S1から、強い光(緑色の光)が放出され、凹部3の側面でも反射して、その光(緑色の光)が、一定の方向に集められ、強められると同時に、発光シート1の内部を透過して、観察者は、その発光シート1のおもて面2a側にて、所定波長の光を視認できた。
また、この実施例2の発光シート1を、底のサイズが、縦30mm×横100mmのかまぼこ型であって、そのかまぼこ状の突出部分の曲率半径が60mmの治具の、その突出曲面上に、発光シート1の他方の表面が接するように置き、発光シート1に対する所定の外力負荷として、手の指で押し当てたところ、発光シート1が変形し、その変形によって、緑色に発光して、目視にて視認することができ、この発光シート1の真正性を確認した。
さらに、この真正性の確認動作を、100回繰り返したところ、いずれも変わらず、同様の緑色の発光を確認でき、このことから、実施例2の発光シート1を偽造することは、非常に困難と思われた。
(実施例3)
焼成用型として、縦30mm×横100mm×厚さ10.2mmの基本形状に対して、その中央部に、上面及び下面が縦5mm×横5mmで、高さが10.2mmである四角柱からなる空洞を、2mmの間隔で、縦4個及び、横4個(計16個)の間仕切りを設けた、ステンレスを内貼りした金属製の焼成用型を準備した。この焼成用型は、図8の発光シート1を作製するためのものである。
本実施例3の発光シート1は、縦30mm×横100mm×厚さ10.2mmの直方体であり、その中央部に、縦5mm×横5mm×高さ10.2mmの凹部3を、縦横それぞれ4個ずつ、計16個の凹部3を有する。
これとは別に、母体材料であるSrAlに、発光中心となるEuを1%、ホウ酸を1%添加した応力発光材料用組成物を、焼成用型の空洞の隅々まで充填し、水素添加アルゴン還元雰囲気中で、900℃まで徐々に昇温して、仮焼成した後、さらに、水素添加アルゴン還元雰囲気中で、1300℃にて、4時間焼成し、自然冷却させて、所定の形状を持つ応力発光材料を作製した。そして、作製した応力発光材料を、その形状を維持したまま、その焼成用型から取り出して、縦30mm×横100mm×厚さ10.0mmの直方体で、その中央部に、16個のおもて面2aから裏面2bまで貫通する凹部3が縦横等間隔に整然と並んでいる形状を持つ発光シート1を得た。
そして、この実施例3の発光シート1の形状の3次元画像データを、構造解析ソフトウエアで解析した。この結果、発光シート1の横方向の両端部を、両端部が遠ざかるように、且つ、その表面及び裏面2bに平行な方向であって、且つ、その両端部に垂直な方向へ引っ張る外力負荷によって、発光シート1が変形し、発光シート1内に、その外力負荷に応じた変形応力が発生すると同時に、その変形応力によって、この16個の凹部3(部位)に変形応力が集中し、且つ、その開口の角(応力が集中する箇所KS1)における応力集中係数αは、3.3であることを確認した。
次いで、プラスチック−引張特性の試験方法(JIS K 7161―1994(ISO 5271:1993))に準じて、この実施例3の発光シート1の横方向の両端部を、つかみ具で固定し、両端部が遠ざかるように、2mm/分の試験速度で、発光シート1に対して、所定の外力負荷として、その両端部面に垂直な方向に、100kPaの変形応力を掛けたところ、発光シート1がその方向に延びる物理的な変形を起こし、その変形によって、発光シート1の16個の凹部3に一様に変形応力が集中し、同時に、その16個の凹部3からその変形応力に応じた発光強度を有する所定波長の光(緑色の光)が発光して、所定波長の光(緑色の光)が視認可能となった。
具体的には、発光シート1の16個の凹部3のそれぞれの凹部3のそれぞれの4つの側面が直交している角辺において、その所定波長の光(緑色の光)がより強く発光し、開口より直接放出され、もしくは、それらの側面で繰り返し反射して放出され、その発光シート1の表面側、及び、裏面2b側からの観測において、その16個の凹部3の上、または、下の開口から発した、所定波長の光を視認することができた。
また、この実施例3の発光シート1の横方向の両端部を、左右の手でそれぞれつかみ、両端部が遠ざかるように、引っ張ったところ、発光シート1がその方向に延びる物理的な変形を起こし、その変形によって、同様の発光が生じ、同様に視認でき、さらに、この動作を100回繰り返したところ、その所定波長の光(緑色の光)の輝度に変化はなく、視認でき、実施例3の発光シート1を偽造することはとても困難と思われた。
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
1 発光シート、2 第1基材層、3 凹部、4 凸部、5 第2基材層

Claims (13)

  1. 第1基材層と、
    前記第1基材層に形成され、エッジ部を有する凹部および凸部の少なくとも一方と、
    前記エッジ部に接する場所に配置される応力発光部と、を備え、
    前記エッジ部の少なくとも一部は、前記第1基材層に所定の方向に応力を付加したときに、応力が集中する応力集中部を有し、
    前記応力発光部は、前記応力集中部に付加される外部負荷の応力に応じた発光強度で所定波長の光を発光する発光シート。
  2. 前記第1基材層は、応力発光材料を含有しており、
    前記応力発光部は、前記第1基材層の内部に設けられる請求項1に記載の発光シート。
  3. 前記凹部および凸部の少なくとも一方は、空洞である請求項1に記載の発光シート。
  4. 前記凹部および凸部の少なくとも一方は、応力発光材料を含有する充填物で充填されており、
    前記応力発光部は、前記充填物の内部に設けられる請求項1に記載の発光シート。
  5. 前記第1基材層の上に積層される第2基材層を備え、
    前記第2基材層は、応力発光材料を含有しており、
    前記応力発光部は、前記第2基材層の内部に設けられる請求項1に記載の発光シート。
  6. 前記凹部および前記凸部の少なくとも一方は、法線方向がそれぞれ相違する複数の面を有し、
    前記エッジ部は、前記複数の面のうち、互いに接合しあう2つの面の接合部である請求項1に記載の発光シート。
  7. 前記凹部および前記凸部の少なくとも一方における前記第1基材層の面方向における断面積は、前記第1基材層の面の法線方向において、連続的または段階的に変化する請求項1に記載の発光シート。
  8. 前記凹部は、前記第1基材層の一主面から前記第1基材層の深さ方向に配置されており、
    前記凹部の前記一主面上の径サイズは、10〜100μmの範囲である請求項1に記載の発光シート。
  9. 前記凹部は、前記第1基材層の一主面から、前記第1基材層を貫通しない深さまで配置される請求項1に記載の発光シート。
  10. 前記凹部は、前記第1基材層の対向する2つの主面同士を貫通するように配置される請求項1に記載の発光シート。
  11. 前記凹部は、前記第1基材層の対向する2つの主面のいずれにも接しないように、前記第1基材層の内部に配置される請求項1に記載の発光シート。
  12. 前記応力集中部は、前記外部負荷に対する応力集中係数αが2以上の部位を有する請求項1に記載の発光シート。
  13. 第1基材層と、
    前記第1基材層に形成され、エッジ部を有する凹部および凸部の少なくとも一方と、
    前記エッジ部に接する場所に配置される応力発光部と、を備え、
    前記エッジ部の少なくとも一部は、前記第1基材層に所定の方向に応力を付加したときに、応力が集中する応力集中部を有し、
    前記応力発光部は、前記応力集中部に付加される外部負荷の応力に応じた発光強度で所定波長の光を所定の発光態様で発光する偽造防止媒体。
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