まず、受電器、無線電力伝送システムおよびkQ値算出方法の実施例を詳述する前に、電力伝送システムの例、並びに、複数の送電器および受電器を含む関連技術の無線電力伝送システムを、図1〜図12Cを参照して説明する。
図1Aは、有線電力伝送(ワイヤー接続給電)システムの一例を模式的に示す図であり、図1Bは、無線電力伝送(ワイヤレス給電)システムの一例を模式的に示す図である。図1Aおよび図1Bにおいて、参照符号2A1〜2C1は、それぞれ受電器を示す。
ここで、受電器2A1は、例えば、要望電力が10Wのタブレットコンピュータ(タブレット)を示し、受電器2B1は、例えば、要望電力が50Wのノートパソコンを示し、受電器2C1は、例えば、要望電力が2.5Wのスマートフォンを示す。なお、要望電力は、例えば、それぞれの受電器2A1〜2C1における充電池(二次電池)を充電するための電力に相当する。
図1Aに示されるように、通常、タブレット2A1やスマートフォン2C1の二次電池を充電する場合、例えば、パソコン(Personal Computer)のUSB(Universal Serial Bus)端子(または、専用電源等)3Aに対して電源ケーブル4A,4Cを介して接続する。また、ノートパソコン2B1の二次電池を充電する場合、例えば、専用の電源装置(AC-DC Converter)3Bに対して電源ケーブル4Bを介して接続する。
すなわち、図1Aに示されるように、携帯可能な受電器2A1〜2C1であっても、一般的に、電源ケーブル4A〜4Cを使用してUSB端子3Aや電源装置3Bからワイヤー接続により給電(有線電力伝送)を行っている。
この場合、例えば、各電源ケーブル4A〜4Cは、コネクタを介して受電器2A1〜2C1に接続されるため、コネクタの先に接続された受電器(接続機器)をコネクタごとに検知することで、台数を検知し、コネクタ形状により給電電力を固定することができる。さらに、要望電力に応じた電源ケーブルの接続をユーザが行うことで、要望電力を認識すると同時に、それぞれの接続機器へ適切な給電を行うようになっている。
ところで、近年、電磁誘導に代表される非接触給電技術の進歩により、例えば、シェーバーや電動歯ブラシ等でワイヤレス給電(無線電力伝送)が実用化されている。そこで、図1Bに示されるように、例えば、送電器1A1から、タブレット2A1,ノートパソコン2B1およびスマートフォン2C1に対して無線電力伝送することが考えられている。
図2Aは、二次元無線電力伝送(二次元ワイヤレス給電)システムの一例を模式的に示す図であり、例えば、上述したシェーバーや電動歯ブラシ等と同様に、電磁誘導により無線電力伝送を行う様子を示している。
図2Aに示されるように、電磁誘導を利用して無線電力伝送を行う場合には、非接触給電であっても送電距離が短いために、送電器1A2にほぼ接触している受電器だけが給電可能である。
すなわち、送電器(受電台)1A2上に置かれた受電器(ノートパソコン)2B2に対しては給電することができても、受電台1A2から離れたノートパソコン2B3に対しては給電することは困難である。このように、図2Aに示す無線電力伝送システムは、受電台1A2上の自由な配置を可能とする二次元的なワイヤレス給電システムである。
図2Bは、三次元無線電力伝送(三次元ワイヤレス給電)システムの一例を模式的に示す図であり、例えば、磁界共鳴または電界共鳴を利用して無線電力伝送を行う様子を示している。図2Bに示されるように、磁界共鳴または電界共鳴を利用して無線電力伝送を行う場合には、送電器1A2から所定範囲内(図2Bにおける破線の内側)に存在する複数の受電器に対して給電することが可能である。
すなわち、送電器1A3から所定範囲内のタブレット2A2,2A3、ノートパソコン2B2,2B3およびスマートフォン2C2に対して無線電力伝送することが可能である。なお、図2Bでは、1つの送電器1A3のみ描かれているが、複数の送電器により、様々な角度および位置の複数の受電器に対して、磁界共鳴または電界共鳴を利用して無線電力伝送を行うようになっている。
このように、図2Bに示す無線電力伝送システムは、例えば、磁界共鳴を利用することにより、電磁誘導を利用したものに比べて遠方の空間においても高い送電効率を得ることができる三次元的なワイヤレス給電システムである。
図3は、無線電力伝送(三次元ワイヤレス給電)システムの一例を概略的に示すブロック図である。図3において、参照符号1は一次側(送電側:送電器)を示し、2は二次側(受電側:受電器)を示す。
図3に示されるように、送電器1は、ワイヤレス送電部11、高周波電源部12、送電制御部13および通信回路部(第1通信回路部)14を含む。また、受電器2は、ワイヤレス受電部21、受電回路部(整流部)22、受電制御部23および通信回路部(第2通信回路部)24を含む。
ワイヤレス送電部11は、第1コイル(電力供給コイル)11bおよび第2コイル(送電共振コイル:送電コイル)11aを含み、また、ワイヤレス受電部21は、第3コイル(受電共振コイル:受電コイル)21aおよび第4コイル(電力取出コイル)21bを含む。
図3に示されるように、送電器1と受電器2は、送電共振コイル11aと受電共振コイル21aの間の磁界共鳴(電界共鳴)により、送電器1から受電器2へエネルギー(電力)の伝送を行う。なお、送電共振コイル11aから受電共振コイル21aへの電力伝送は、磁界共鳴だけでなく電界共鳴等も可能であるが、以下の説明では、主として磁界共鳴を例として説明する。
送電器1と受電器2は、通信回路部14と通信回路部24により、通信(近距離通信)を行う。ここで、送電器1の送電共振コイル11aと受電器2の受電共振コイル21aによる電力の伝送距離(電力伝送範囲)は、送電器1の通信回路部14と受電器2の通信回路部24による通信距離(通信範囲)よりも短く設定される。
また、送電共振コイル11aおよび21aによる電力伝送は、通信回路部14および24による通信とは独立した方式(Out-band通信)になっている。具体的に、送電共振コイル11aおよび21aによる電力伝送は、例えば、6.78MHzの周波数帯域を使用し、通信回路部14および24による通信は、例えば、2.4GHzの周波数帯域を使用する。
この通信回路部14および24による通信としては、例えば、IEEE 802.11bに準拠するDSSS方式の無線LANやブルートゥース(Bluetooth(登録商標))を利用することができる。
なお、上述した無線電力伝送システムは、例えば、使用する周波数の波長の1/6程度の距離の近傍界(near field)において、送電器1の送電共振コイル11aと、受電器2の受電共振コイル21aによる磁界共鳴または電界共鳴を利用して電力の伝送を行う。従って、電力伝送範囲(送電圏)は、電力伝送に使用する周波数に従って変化する。
高周波電源部12は、電力供給コイル(第1コイル)11bに対して電力を供給し、電力供給コイル11bは、その電力供給コイル11bの至近に配設された送電共振コイル11aに対して電磁誘導を利用して電力を供給する。送電共振コイル11aは、受電共振コイル21aとの間に磁場共鳴を生じさせる送電周波数により、受電共振コイル21a(受電器2)に電力を伝送する。
受電共振コイル21aは、その受電共振コイル21aの至近に配設された電力取出コイル(第4コイル)21bに対して電磁誘導を利用して電力を供給する。電力取出コイル21bには受電回路部22が接続され、所定の電力が取り出される。なお、受電回路部22からの電力は、例えば、バッテリ部(負荷)25におけるバッテリの充電、或いは、受電器2の回路に対する電源出力等として利用される。
ここで、送電器1の高周波電源部12は、送電制御部13により制御され、また、受電器2の受電回路部22は、受電制御部23により制御される。そして、送電制御部13および受電制御部23は、通信回路部14および24を介して接続され、送電器1から受電器2への電力伝送を好ましい状態で行うことができるように、様々な制御を行うようになっている。
図4A〜図4Cは、図3の無線電力伝送システムにおける伝送コイルの変形例を説明するための図である。ここで、図4Aおよび図4Bは、3コイル構成の例を示し、図4Cは、2コイル構成の例を示す。
すなわち、図3に示す無線電力伝送システムでは、ワイヤレス送電部11が第1コイル11bおよび第2コイル11aを含み、ワイヤレス受電部21が第3コイル21aおよび第4コイルを含んでいる。
これに対して、図4Aの例では、ワイヤレス受電部21を1つのコイル(受電共振コイル:LC共振器)21aとし、図4Bの例では、ワイヤレス送電部11を1つのコイル(送電共振コイル:LC共振器)11aとしている。
さらに、図4Cの例では、ワイヤレス受電部21を1つの受電共振コイル21aに設定すると共に、ワイヤレス送電部11を1つの送電共振コイル11aとしている。なお、図4A〜図4Cは、単なる例であり、様々に変形することができるのはいうまでもない。
図5A〜図5Dは、独立共振コイル(受電共振コイル21a)の例を示す回路図であり、図6A〜図6Dは、負荷または電源に接続された共振コイル(受電共振コイル21a)の例を示す回路図である。
ここで、図5A〜図5Dは、図3および図4Bにおける受電共振コイル21aに対応し、図6A〜図6Dは、図4Aおよび図4Cにおける受電共振コイル21aに対応する。
図5Aおよび図6Aに示す例は、受電共振コイル21aを、直列接続されたコイル(L)211,容量(C)212およびスイッチ213としたもので、通常時はスイッチ213をオフしておく。図5Bおよび図6Bに示す例は、受電共振コイル21aを、直列接続されたコイル(L)211および容量(C)212と、容量212に並列に接続されたスイッチ213としたもので、通常時はスイッチ213をオンしておく。
図5Cおよび図6Cに示す例は、図5Bおよび図6Bの受電共振コイル21aにおいて、容量212と並列に、直列接続されたスイッチ213および抵抗(R)214を設けたもので、通常時はスイッチ213をオンしておく。
図5Dおよび図6Dに示す例は、図5Bおよび図6Bの受電共振コイル21aにおいて、容量212と並列に、直列接続されたスイッチ213および他の容量(C')215を設けたもので、通常時はスイッチ213をオンしておく。
上述した各受電共振コイル21aにおいて、通常時に受電共振コイル21aが動作しないように、スイッチ213をオフまたはオンに設定するようになっている。これは、例えば、不使用の受電器2や故障した受電器2に対して電力が伝送されて発熱等が生じるのを避けるためである。
以上において、送電器1の送電共振コイル11aも図5A〜図5Dおよび図6A〜図6Dと同様にすることもできるが、送電器1の送電共振コイル11aとしては、通常時に動作するようにして、高周波電源部12の出力でオン/オフ制御してもよい。この場合、送電共振コイル11aは、図5Aおよび図6Aにおいて、スイッチ213を短絡したものになる。
以上により、複数の受電器2が存在する場合、送電器1から送電を行う所定の受電器2の受電共振コイル21aのみを選択して動作可能な状態とすることにより、その選択された受電器2に対する電力の伝送(時分割電力伝送)を行うことが可能になる。
図7A〜図7Cは、複数の送電器による磁界の制御例を説明するための図である。図7A〜図7Cにおいて、参照符号1Aおよび1Bは送電器を示し、2は受電器を示す。
図7Aに示されるように、送電器1Aの磁界共鳴に使用する送電用の送電共振コイル11aAと送電器1Bの磁界共鳴に使用する送電用の送電共振コイル11aBは、例えば、直交するように配設されている。
また、受電器2の磁界共鳴に使用する受電用の受電共振コイル21aは、送電共振コイル11aAおよび11aBにより囲まれた個所で異なる角度(平行にならない角度)に配置されている。
ここで、送電共振コイル(LC共振器)11aAおよび11aBは、1つの送電器に設けることも可能である。すなわち、1つの送電器1が複数のワイヤレス送電部11を含んでいてもよい。
図7Bは、送電共振コイル11aAおよび11aBが同じ位相の磁界を出力している様子を示し、図7Cは、送電共振コイル11aAおよび11aBが逆の位相の磁界を出力している様子を示す。
例えば、2個の直交する送電共振コイル11aAおよび11aBが同相出力の場合と逆相出力の場合を比較すると、合成磁界は90°回転した関係となり、それぞれの受電器2(受電共振コイル21a)の向きに合わせた送電を行う。
このように、複数の送電器1A,1Bにより、任意の位置および姿勢(角度)の受電器2に対して電力を伝送する場合、送電器1A,1Bの送電共振コイル11aA,11aBに発生させる磁界は様々に変化することが分かる。
上述した無線電力伝送システムは、複数の送電器と、少なくとも1つの受電器とを含み、受電器の位置(X,Y,Z)および姿勢(θX,θY,θZ)に応じて、その複数の送電器間の出力(強度および位相)を調整する。
なお、三次元空間に関しても、例えば、実際の三次元空間における3個以上の送電器を用いて、それぞれの出力位相差および出力強度比を調整することで、三次元空間上の任意の方向に磁界(電界)の向きを調整することが可能になることが理解されるであろう。
図8A〜図8Cは、複数の受電器に対する無線電力伝送を説明するための図である。なお、図8A〜図8Cでは、説明を簡略化するために、1つの送電器1Aおよび2つの受電器(携帯電話)2A,2A’のみ示しているが、送電器の数および受電器の数や種類等は様々に変化し得るのはいうまでもない。すなわち、図8Aに示されるように、1つの送電器1Aにより、2つの受電器2A,2A’に対するワイヤレス給電を行う場合を想定する。
まず、時分割電力伝送によりワイヤレス給電を行うときは、図8Bの左側図に示されるように、一方の受電器2Aだけに給電した後、図8Bの右側図に示されるように、他方の受電器2Aだけに給電する。なお、受電器の数がさらに多い場合も同様であり、時分割的に給電する受電器を順番に切り替えてワイヤレス給電を行う。
すなわち、時分割電力伝送は、複数の受電器がある場合、給電する対象となる受電器を順次選択することにより、ある瞬間には常に送電器に対して1つの受電器が対応することになる。このときの制御は、例えば、送電器と受電器が1対1の場合と同様とすることができる。ただし、時分割した結果、給電(満充電)に要する時間は、受電器の数だけの時間となるため、受電器が2台であれば1台のときの2倍の時間を要することになる。
次に、同時電力伝送によりワイヤレス給電を行うときは、図8Cに示されるように、1つの送電器1Aにより、2つの受電器2A,2A’の両方に給電する。なお、受電器の数がさらに多い場合も同様であり、それら複数の受電器に対して同時にワイヤレス給電を行う。
この同時電力伝送は、例えば、2台の受電器がある場合にはその2台の受電器を同時に給電するため、給電に要する時間は、同時給電される受電器の数に関わらず、1台分でよいため、ユーザメリットを考えると望ましい給電方法(無線電力伝送制御方法)と言える。
ただし、複数の受電器を同時給電(同時電力伝送)するには、受電器が1台のときとは異なる制御を行うことになる。また、複数の受電器に対して同時電力伝送を行う場合、送電上限や効率等の問題があるため、常に選択可能であるわけではない。なお、受電器の数が多数の場合、一部の複数の受電器に対して同時電力伝送を行い、他の受電器に対して時分割電力伝送を行うことも考えられる。
図9A〜図9Cは、複数の受電器に対する二次元の無線電力伝送制御方法の一例を説明するための図である。ここで、図9Aは、例えば、磁界共鳴を利用して、1つの送電器1Aにより、要望電力が異なる2つの受電器2A,2Bにワイヤレス給電する様子を示す。
また、図9Bは、送電器1A(送電共振コイル11a)から、受電器2A(受電共振コイル21aA)および受電器2B(受電共振コイル21aB)にワイヤレス給電する様子を示す。図9Cは、受電器2Bの共振点をずらして(デチューンして)、電力配分比を制御する手法を説明するためのものである。
なお、受電器2Aは、例えば、要望電力が5Wの携帯電話を示し、受電器2Bは、例えば、要望電力が50Wのノートパソコンを示す。また、説明を簡略化するために、携帯電話2AのLC共振器(ワイヤレス受電部)およびノートパソコン2BのLC共振器は、同じ仕様のものとする。さらに、図9Cにおいて、参照符号LL0は全体送電効率を示し、LLAは携帯電話2Aの受電電力を示し、LLBはノートパソコン2Bの受電電力を示す。
ところで、複数の受電器への同時ワイヤレス給電を行う場合それぞれの受電器における受電電力量が異なるケースが多発すると考えられる。例えば、図9Aに示されるように、要望電力が5Wの携帯電話と要望電力が50Wのノートパソコン、或いは、同じ種類の受電器であっても、バッテリ残量によっては、要望電力が異なるケースも考えられる。
例えば、受電器2A,2Bの位置や向き大きな差がない場合、同じ仕様の受電コイルが搭載されているとき、電力は等しく分配される。具体的に、携帯電話2Aの受電共振コイルにおけるインダクタンスをLA,キャパシタンスをCAとし、ノートパソコン2Bの受電共振コイルにおけるインダクタンスをLB,キャパシタンスをCBとする。
このとき、図9Cにおける参照符号PP0で示されるように、そのままの状態(共振点ずらさない状態)では、L0C0=LACA=LBCBが成立する。すなわち、図9Bにおけるそれぞれの共振周波数は、f0=fA=fBの関係が成立する。
そのため、例えば、送電器1Aからの送電電力が68.75Wで送電効率が80%だと仮定すると、携帯電話2Aおよびノートパソコン2Bは、両方とも27.5Wの電力を受け取ることになる。
すなわち、図9Aに示されるように、要望電力が10倍異なる受電器2Aと2Bであっても、例えば、55Wの要望電力に相当する出力を送電器1Aから出力した場合、受電器2A,2B側では、それぞれ27.5Wずつの電力を受電する結果となる。
このとき、携帯電話2Aの要望電力は5Wで、ノートパソコン2Bの要望電力は50Wであるため、携帯電話2Aの受電共振コイルによる共振点をずらして受電効率(ηip)を低下させるように制御する。
例えば、図9Cの矢印MAに示されるように、携帯電話2Aの受電共振コイル21aAにおける容量のキャパシタンスCAを、受電効率が最大となる受電共振コイルの共振点からずらすために、小さく(または、大きく)なるように制御する。
すなわち、図9Cの矢印MAのように、共振条件を意図的にずらす(キャパシタンスCAをずらす)ことでQ値を低下させ、携帯電話2Aの受電電力LLAは、共振点(P0)の27.5Wから次第に減少して、例えば、要望電力の5Wに設定することができる。
このとき、携帯電話2Aが受電しなくなった電力は、そのほとんどがノートパソコン2Bの受電電力となる。すなわち、ノートパソコン2Bの受電電力LLBは、携帯電話2Aの受電電力LLAの低下に応じて上昇し、無線電力伝送システムにおける全体送電効率LL0は、ほとんど低下しないことが分かる。
このように、共振条件を変えることで、具体的には、受電器2Aの共振用コンデンサ(容量)212の容量値(キャパシタンスCA)を変化させることで、結合が調整され、結果として、受電電力を所望の配分比に制御することが可能となる。
ここで、重要なこととして、共振条件を可変した受電器2Aの効率は低下していても、システム全体の送受電効率はほぼ一定を保っており、受電器2Aに到達していた電力を減らした分、受電器2Bへの電力が増加する。その結果、受電器2A,2Bの一方だけの単体給電時と比べても、ほぼ同じ効率で全体(両方の受電器2A,2B)に送電しつつ受電電力を所望の比に分配(配分)できることがわかる。
ところで、近年、複数の送電器(送電コイル)および複数の受電器を含む無線電力伝送システムにおいて、kQ値を利用して給電制御を行うことが注目されている。具体的に、例えば、kQ値の大きさに基づいて、複数の受電器に対して順番に電力を伝送する時分割電力伝送モードと、複数の受電器に対して同時に電力を伝送する同時電力伝送モードと、を切り替えて無線電力伝送を行う研究がなされている。
また、kQ値の大きさに基づいて、複数の受電器をグループ分けし、或いは、受電器(受電共振コイル)の共振点をずらしてデチューンすることも研究されている。さらに、無線電力伝送システムにおいて、kQ値を利用した様々な提案がなされるものと期待されている。
ここで、kQ値(kQ)は、電磁界(磁界または電界)の結合の程度を示すk値(k)と、電磁界の損失の程度を示すQ値(Q)の積である。なお、k値は、その値が大きいほど、結合の程度が大きいことを示し、また、Q値は、その値が大きいほど、損失の程度が小さいことを示す。
すなわち、kQは、次の式(1)により表される。ここで、Q
1は、送電器のQ値を示し、Q
2は、受電器のQ値を示す。
また、kは、次の式(2)により表される。ここで、M
12は、送電器と受電器の間の相互インダクタンスを示し、L
1は、送電器の自己インダクタンス、そして、L
2は、受電器の自己インダクタンスを示す。
さらに、Qは、次の式(3)により表される。ここで、ωは、角振動数を示し、R
1は、送電器の共振コイルの損失、そして、R
2は、受電器の共振コイルの損失を示す。
図10は、kQ値が適用される無線電力伝送システムの一例を説明するための図であり、kQ値のおおきさによりグループ分けを行う例を示すものである。なお、図10では、1つの送電器1Aおよび6個の受電器2A〜2Fを示しているが、これは単なる例であり、様々な場合があり得るのはいうまでもない。
図10に示されるように、例えば、無線電力伝送システムに6個の受電器2A〜2Fが含まれる場合、各受電器2A〜2FのkQ値(評価指標)を評価し、kQ値によりグループ分けを行う。まず、全ての受電器2A〜2Fを、それぞれ単体評価する。
例えば、受電器2Aを評価するとき、受電器2Aのみオンして、他の受電器2B〜2Fをオフ(例えば、図5Aの受電共振コイル21aにおけるスイッチ213をオフ)する。そして、例えば、kQ値が最大(kQmax1)となる受電器2Bを基準とし、他の受電器のkQ値(kQother)に関して、kQother/kQmax1が一定値以上ならば、同一グループとする。具体的に、図10では、kQ値がkQ1-1の受電器2FおよびkQ値がkQ1-2の受電器2Cが、第1グループGP1とされている。
次に、kQ値が最大(kQmax1)となる受電器2Bを含む第1グループGP1以外の受電器2A,2D,2Eにおいて、kQ値が最大(kQmax2)となる受電器2Aを基準として、同様にグループ分けを行う。具体的に、図10では、受電器2A,2D,2Eが、第2グループGP2とされている。
そして、分割されたグループGP1,GP2を単位として、同一グループ内では、例えば、同時給電を行う。また、kQ値によりグループ分けされた受電器に関して、例えば、閾値以下となるグループの受電器に対しては、時分割給電を行う。さらに、閾値以上となるグループの受電器に対して、同一グループ内の給電では、電力分配を調整(デチューン)して同時給電を行うことができ、異なるグループにまたがる受電器に対しては、時分割給電を行うのが好ましい。
ところで、一般的に、ワイヤレス送電可能なシステムの要件として、電力と効率は、比例する関係が好ましい。つまり、大電力を送電するシステムでは、高効率が望まれ、また、小電力を送電するシステムでは、低効率であっても許容することができる。これは、特に、ロスが結果として発熱になるため、放熱の問題を考えれば容易に理解することができる。
すなわち、大電力系において効率が低い場合には、放熱すべき電力が大きくなるため、システムを構築することが難しくなるためである。言い換えれば、送電電力に応じて、許容効率が規定されていると考えることもできる。
そのような状況で、kQ値が異なる複数の受電器に対した、同時給電すべきか、或いは、時分割給電すべきかを検討すると、送電完了時間を優先すれば、同時給電が常に望ましいと考えられるが、上述したように、許容できる効率は各系に応じて異なっている。
そこで、許容効率を確保しつつ、同時給電を行うことのできる方法を考えるのが現実的であり、本実施例では、kQ値の近いものをグループ化し、そのグループ内では同時給電を優先し、グループ外では時分割給電を優先するようになっている。
これは、kQ値が同じ(近い)ものの同時給電であれば、Q値を少し可変することで電力のバランスを調整することが容易である一方で、kQ値が大きく異なっているものの同時給電では、バランス調整のために、Q値を大きく低下させることになる。これは、結果として、全体の効率低下を招くことになる。
一例として、ノートパソコン群とスマートフォン群への給電を考える。ここで、ノートパソコン群(ノートパソコン)は、例えば、30Wの給電を要求し(要望電力が30Wであり)、その電力の大きさゆえに許容最低効率は80%とする。また、ノートパソコンは、サイズが大きいために受電コイルを大きくすることができ、kQ値を大きくすることが可能である。
一方、スマートフォン群(スマートフォン)は、例えば、5Wの給電を要求し(要望電力が5Wであり)、許容効率は40%とする。また、スマートフォンは、サイズが小さく、位置がより自由であるため、kQ値は小さく抑えられてしまう。
このような2つの郡への同時給電を行うと、kQ値が異なるグループへの同時給電となるが、ノートパソコン群への給電ばかりが実行され、スマートフォン群へ電力が届かないことになる。
このとき、例えば、Q値を低下させて電力のバランスを取ることもできるが、その場合には、全体の効率が低下してしまい、ノートパソコンを含む給電の効率が低くなり、例えば、許容効率が80%以下となってしまうこともあり得る。
そのため、kQ値が異なるグループへの同時給電は好ましくないことが分かる。すなわち、kQ値(評価指標)が設定値以上となる受電器が3つ以上存在するとき、そのkQ値の大きさに基づいてグループ分けを行うが、近いkQ値を持つ受電器が同じグループとなるようにグループ分けを行うのが好ましい。
ここで、kQ値によりグループ分けされた受電器に関して、例えば、閾値以下となるグループの受電器に対しては、時分割給電を行うことになる。また、閾値以上となるグループの受電器に対して、同一グループ内の給電では、電力分配を調整して同時給電を行うことができ、異なるグループにまたがる受電器に対しては、時分割給電を行うのが好ましい。
なお、複数の受電器をkQ値により複数のグループに分けるための閾値としては、想定される無線電力伝送システムの規模や仕様により様々に変化させることができ、それに従って、グループの数や各グループに含まれる受電器の数も変化することになる。
図11は、無線電力伝送システムの一例を示すブロック図であり、2つの送電器1A,1B、および、2つの受電器2A,2Bを含む例を示すものである。図11に示されるように、送電器1A,1Bは同様の構成を有し、それぞれワイヤレス送電部11A,11B、高周波電源部12A,12B、送電制御部13A,13Bおよび通信回路部14A,14Bを含む。
高周波電源部12A,12Bは、高周波の電力を発生するもので、例えば、前述した図3における高周波電源部12に相当し、固有の電源インピーダンスを有する。例えば、出力インピーダンスが50Ωに整合された定電圧電源や、高い出力インピーダンスのHi−ZΩ電源(定電流電源)などである。
送電制御部13A,13Bは、送電部11A,11Bを制御し、通信回路部14A,14Bは、各送電器および受電器間の通信を可能とするものであり、例えば、IEEE 802.11bに準拠するDSSS方式の無線LANやブルートゥース(Bluetooth(登録商標))を利用することができる。
なお、高周波電源部12A,12Bは、それぞれ外部電源10A,10Bから電力の供給を受け取り、送電制御部13A,13Bには、検出部SA,SBからの信号が入力されている。なお、送電器1Aおよび送電器1Bは、例えば、1つの送電器1に設けた2つの送電部(11)としてもよいのはいうまでもない。
ワイヤレス送電部11A,11Bは、磁界共鳴であればコイルに相当し、高周波電源部12A,12Bから供給される高周波電力を磁界に変換する。検出部SA,SBは、送電器1A,1Bの相対位置関係や受電器2A,2Bの相対位置関係を検出する。
なお、例えば、送電器1A,1Bの位置関係が固定され(送電共振コイル11a1,11a2が特定のL字ブロック状に固定され)、その情報を送電制御部13A,13Bが把握し、受電器2A,2Bが検出機能を有する場合、検出部SA,SBは省略可能である。
受電器2A,2Bも同様の構成を有し、それぞれワイヤレス受電部21A,21B、整流部(受電回路部)22A,22B、受電制御部23A,23B、通信回路部24A,24Bおよび機器本体(バッテリ部)25A,25Bを含む。
受電制御部23A,23Bは、受電器2A,2Bを制御するものであり、通信回路部24A,24Bは、各送電器および受電器間の通信を可能とするもので、前述したように、例えば、無線LANやブルートゥース(Bluetooth(登録商標))を利用する。
ワイヤレス受電部21A,21Bは、磁界共鳴であればコイルに相当し、無線で伝達された電力を電流に変換する。整流部22A,22Bは、ワイヤレス受電部21A,21Bから得られた交流電流をバッテリ充電や機器本体で使用可能なように直流電流に変換する。
上述したように、送電器1A,1Bおよび受電器2A,2Bは、それぞれの通信回路部14A,14B,24A,24Bを介して通信を行う。このとき、例えば、送電器1Aをマスタ(全体制御器)とし、このマスタ(送電器)1Aが、他の送電器1Bおよび受電器2A,2Bをスレーブとして制御することもできる。
ここで、送電器1A,1Bの通信回路部14A,14B、並びに、受電器2A,2Bの通信回路部24A,24Bを介した通信により、同時送電と時分割送電の切り替え、並びに、同時送電における電力配分比調整等の制御を行う。
具体的に、例えば、送電器1Aの通信回路部14Aおよび受電器2A,2Bの通信回路部24A,24Bを介して、それぞれの受電器2A,2BにおけるQ値を、無線電力伝送の制御を行うマスタ(例えば、送電器1A)に通信で伝える。
また、同時給電を行う場合、例えば、送電器1Aの通信回路部14Aおよび受電器2Bの通信回路部24Bを介して、受電器2Bの受電共振コイルにおける容量のキャパシタンス(CA)を共振点からずらし、電力配分比の調整を行う。具体的に、前述した図5Aに示す受電共振コイル21aにおける容量212のキャパシタンスの値を制御して、受電器2A,2Bの電力配分比を調整する。
さらに、時分割給電を行う場合、例えば、送電器1Aの通信回路部14Aおよび受電器2A,2Bの通信回路部24A,24Bを介して、ワイヤレス給電を行う受電器の切り替えを行う。
具体的に、例えば、前述した図5Aに示す受電共振コイル21aにおけるスイッチ213を制御して、ワイヤレス給電を行う受電器のスイッチ213だけを順にオンするように制御する。或いは、例えば、前述した図5Bに示す受電共振コイル21aにおけるスイッチ213を制御して、ワイヤレス給電を行う受電器のスイッチ213だけを順にオフするように制御する。
なお、ワイヤレス送電部11Aおよび11Bと、ワイヤレス受電部21Aまたは21Bの間は、磁界共鳴を利用した電力伝送に限定されるものではなく、例えば、電界共鳴、或いは、電磁誘導や電界誘導を利用した電力伝送方式を適用することもできる。
前述したように、複数の送電器(送電コイル)および複数の受電器を含む無線電力伝送システムにおいて、kQ値を利用して給電制御を行うことが注目され、様々な研究がなされている。
しかしながら、無線電力伝送システムにおいて、各受電器とのk値、従って、kQ値を精度よく算出する有効な提案がなされていないのが実情である。すなわち、無線電力伝送システムにおける各受電器とのkQ値を精度よく算出するのは難しい。
以下、受電器、無線電力伝送システムおよびkQ値算出方法の実施例を、添付図面を参照して詳述する。ここで、本実施例は、少なくとも1つの送電器および少なくとも1つの受電器を含む無線電力伝送システムに適用することができる。
なお、以下の説明では、1つの受電器とのkQ値を求める例を示すが、無線電力伝送システムが複数の受電器を含む場合には、1つの受電器のみを順番にオンしてそれぞれの受電器とのkQ値を求めることになる。
例えば、図11の例において、送電器1A(送電制御部13A)がマスタとしてシステム全体を制御する場合、受電器2AのkQ値を算出するには、受電器2Aのワイヤレス受電部21Aを動作状態とし、受電器2Bのワイヤレス受電部21Bを停止する。
例えば、受電器2A,2Bのワイヤレス受電部21A,21Bが共に、前述した図5Aに示す受電共振コイル21aを有する場合、受電器2Aにおける受電共振コイル21aのスイッチ213をオンし、受電器2Bにおけるスイッチ213をオフすることになる。
また、無線電力伝送システムが複数の送電器を含む場合には、複数の送電器に対するそれぞれの受電器とのkQ値を算出することもできるが、1つの送電器のみを順番にオンし、それぞれの送電器に対するそれぞれの受電器とのkQ値を求めることもできる。これらは、得られたkQ値の適用、或いは、kQ値に基づいた様々な制御に従って適宜行われる。
さらに、それぞれの受電器とのkQ値が得られたとき、例えば、それぞれの受電器(受電共振コイル)における磁界(電界)の損失の程度を示すQ値が既知の場合には、磁界(電界)の結合の程度を示すk値を算出し、そのk値を使用して様々な制御を行うこともできる。
図12A〜図12Cは、本実施例に適用されるkQ値を説明するための図である。ここで、図12Aは、送電器1(送電共振コイル11a)および受電器2(受電共振コイル21a)を概念的に示す図であり、例えば、前述した図4Cに示す伝送コイルの例に相当する。
また、図12Bは、図12Aにおける送電器1および受電器2の等化回路を示す図であり、図12Cは、RL/R2による効率(η)とkQ値の関係を示す図である。なお、伝送コイル(ワイヤレス送電部およびワイヤレス受電部)は、図4Cのものに限定されず、図3,図4Aおよび図4B等の構成であってもよいのはいうまでもない。
1つの送電器1(送電共振コイル11a)と1つの受電器2(受電共振コイル21a)間の磁界(電界)による電力伝送は、図12Aのように考えることができ、これは、図12Bの等化回路により表される。
なお、図12Bにおいて、参照符号R1およびL1は、送電共振コイル11a(コイル)の損失(抵抗値)および自己インダクタンスを示し、R2およびL2は、受電共振コイル21a(コイル211)の抵抗値および自己インダクタンスを示す。また、参照符号RLは、給電対象(バッテリ部25)の負荷抵抗を示し、Mは、送電共振コイル11aと受電共振コイル21a間の相互インダクタンスを示す。
参照符号C1は、送電共振コイル11a(容量)のキャパシタンスを示し、C2は、受電共振コイル21a(容量212)のキャパシタンスを示し、I1およびI2は、送電共振コイル11aおよび受電共振コイル21aを流れる電流を示し、Eは電源回路(12)を示す。
前述したように、kQ値、k値、並びに、送電器および受電器のQ値(Q
1,Q
2)は、次の式(1)〜式(3)により表される。
ここで、受電共振コイル21a(受電器2)の効率は、コイル211の抵抗値R
2だけでなく、給電対象となる負荷抵抗R
Lにより変化する。例えば、受電器において、受電共振コイル21aにおけるコイル211の抵抗値R
2は最小化を目指して設計されるが、負荷抵抗R
Lは、例えば、二次電池の充電率等によって変化する。なお、図12Cにおいて、効率ηは、次の式(4)により表される。
次に、kQ値と効率(η)の関係が、負荷抵抗RLにより大きく変化することを、図12Cを参照して説明する。図12Cにおいて、曲線LLhは、コイル211の抵抗値R2と負荷抵抗RLの比率が常に最適な場合(理想効率,最大効率)の特性を示し、また、LLiは、RL/R2=1のとき、LLjは、RL/R2=10のとき、LLkは、RL/R2=100のときの特性を示す。
図12Cから明らかなように、RL/R2の値により、kQ値と効率の関係が大きく変化するのが分かる。ここで、エネルギー損失の程度を示すQ値に関して、例えば、送電共振コイル11aにおけるωおよびL1、並びに、受電共振コイル21aにおけるωおよびL2は、通常、不変とみなすことができる。
図13は、第1実施例の無線電力伝送システムを説明するためのブロック図である。ここで、図13では、1つの送電器1および1つの受電器2のみが描かれているが、前述したように、本実施例の無線電力伝送システムは、複数の送電器および複数の受電器を含んでもよい。
なお、システムに複数の受電器が含まれている場合には、例えば、1つの受電器のみを順番にオンしてそれぞれの受電器とのkQ値を求める。また、システムに複数の送電器が含まれている場合には、複数の送電器に対するそれぞれの受電器とのkQ値を算出し、或いは、1つの送電器のみを順番にオンし、それぞれの送電器に対するそれぞれの受電器とのkQ値を求める。
図13に示されるように、送電器1は、送電共振コイル11a(ワイヤレス送電部11)、送電制御部(メモリを含む)13、通信回路部14、アンプ15および整合回路16を含む。
送電制御部13は、例えば、送電共振コイル11aの電圧電流入力波形Fcを受け取って、アンプ制御信号Saによりアンプ15の出力を制御し、整合回路16を介して送電共振コイル11aを駆動する。
ここで、送電制御部13は、送電共振コイル11aの電圧電流入力波形Fcを受け取って送電電力P1を検出するようになっている。また、送電制御部13にはメモリが設けられていて、例えば、送電共振コイル11aのコイルにおける損失Q1を予め記憶しておくようになっている。
受電器2は、受電共振コイル21a(ワイヤレス受電部21:受電コイル)、整流回路22a、DC/DCコンバータ22b、受電制御部(メモリを含む)23、通信回路部24、二次電池25、スイッチ26、および、電力検出用抵抗27を含む。ここで、DC/DCコンバータ22bおよび二次電池25は、受電コイル(21,21a)からの電力を使用する内部回路に相当する。
スイッチ26は、受電制御部23からの切り替え制御信号Ssに従って、受電共振コイル21aおよび整流回路22aを介して取り出した直流の受電電圧Vrを、電力検出用抵抗(負荷抵抗)27とDC/DCコンバータ22bに切り替え可能として印加する。また、負荷抵抗27は、受電制御部23からの抵抗値制御信号Srにより抵抗値が制御される可変抵抗とされている。
受電制御部23は、整流回路22aからの受電電圧Vrを受け取り、例えば、スイッチ制御信号Ssによりスイッチ26を制御して受電電圧Vrを負荷抵抗27に印加し、その負荷抵抗27の抵抗値RLによる受電電力P2を検出する。
なお、図13(および図14)において、スイッチ26および負荷抵抗27は、整流回路22aの後段に設けられ、整流された直流の受電電圧Vrおよび負荷抵抗27の抵抗値RLから受電電力P2を検出しているが、整流回路22aの前段に設けることもできる。
すなわち、後述する図15の第3実施例のように、受電共振コイル21aによる交流の受電電圧Vr'および負荷抵抗27の抵抗値RLから受電電力P2を検出することも可能である。
これにより、受電制御部23は、負荷抵抗27の抵抗値RLと受電共振コイル21a(コイル211)の抵抗値R2の抵抗比RL/R2、および、受電電力P2を得ることができ、この受電電力の検出情報を、通信により送電制御部13に伝達する。また、受電制御部23にはメモリが設けられていて、例えば、受電共振コイル21aのコイル211における損失Q2を予め記憶しておくようになっている。
なお、受電器2(受電制御部23)から送電器1(送電制御部13)への受電電力の検出情報として、例えば、受電電圧Vr,抵抗比RL/R2および損失Q2を、そのまま送電制御部13に伝達し、送電制御部13で受電電力P2等の算出を行ってもよい。
或いは、受電器2(受電制御部23)が、通信を介して、送電器1(送電制御部13)から、送電電力P1および送電共振コイル11aの損失Q1等の情報を受け取って、kQ値(k値)を算出することも可能である。
ここで、受電制御部23からの抵抗値制御信号Srによる、負荷抵抗27の抵抗値RLの制御は、図12Cの各特性曲線から明らかなように、RL/R2が小さい、すなわち、負荷抵抗27の抵抗値RLが小さい値から大きな値に変化するように制御するのが低効率時における検出精度を確保する上で好ましい。
受電制御部23は、通信(受電器側の通信回路部24および送電器側の通信回路部14)を介して、例えば、送電制御部13から送電条件(給電タイミング情報)を受け取り、送電制御部13に対して、所定のRL/R2に対する受電電力P2および損失Q2を伝達する。
これにより、例えば、無線電力伝送システムのマスタとして全体を制御する送電制御部13は、送電共振コイル11aのコイルの損失Q1、送電電力P1、受電共振コイル21aのコイルの損失Q2およびRL/R2の値を認識することができる。
従って、送電制御部13は、送電器1の送電電力P1,受電器2におけるRL/R2の値、および、受電器2の受電電力P2を認識することで、抵抗比RL/R2と測定効率(P2/P1)から受電器2とのkQ値を式(4)に基づいて推定することが可能となる。
すなわち、図12A〜図12Cを参照して説明した式(4)に対して、求めた測定効率(P2/P1)を効率ηとして適用し、さらに、求めた抵抗比RL/R2をRL/R2として、また、その逆数をR2/RLとして適用することで、kQ値を算出(推定)することができる。すなわち、第1実施例によれば、受電器におけるkQ値の算出精度を向上することが可能になる。このkQ値の算出精度を向上することは、以下の第2および第3実施例でも同様の効果として得られる。
なお、送電制御部13のメモリに記憶されたQ1および受電制御部23のメモリに記憶されたQ2からQ値を求めることができるので、kQ値を算出できれば、k値を算出することも可能となる。
また、受電共振コイル21aのコイルの損失Q2の値は、受電制御部23から通信を介して送電制御部13に伝達せずに、例えば、受電器の種類や型番を示す情報からQ2の値を参照できるテーブルを、予め、送電器側に設けておくこともできる。
以上の処理は、例えば、送電器1から送電される電力により、受電器2における二次電池25の充電を行う本送電の前に、送電器1から小電力を送電して行うテスト送電において実施することができる。
図14は、第2実施例の無線電力伝送システムにおける受電器を説明するためのブロック図である。図14と上述した図13の比較から明らかなように、第2実施例における受電器は、第1実施例における受電器と、スイッチ26'および負荷抵抗27'の構成が異なっている。
すなわち、第1実施例では、負荷抵抗27が、受電制御部23からの抵抗値制御信号Srにより抵抗値が制御される可変抵抗とされているのに対して、第2実施例では、負荷抵抗27'が、複数(図14では、3個)の抵抗素子RL1〜RL3を含んでいる。
すなわち、第1実施例の受電器では、負荷抵抗27が、受電制御部23からの抵抗値制御信号Srにより抵抗値が制御される可変抵抗とされている。これに対して、第2実施例の受電器では、負荷抵抗27'が複数の抵抗素子RL1〜RL3を含み、その抵抗素子の1つが、受電制御部23からのスイッチ制御信号Ss'に従って動作するスイッチ26'により選択されるようになっている。
すなわち、スイッチ26'は、受電制御部23からのスイッチ制御信号Ss'に従って、受電電圧Vrを、負荷抵抗27'におけるいずれかの抵抗素子RL1〜RL3、或いは、DC/DCコンバータ22bに切り替え可能として印加する。
ここで、各抵抗素子RL1〜RL3の抵抗値としては、例えば、図12Cに示されるように、抵抗比RL/R2の値が1,10,100程度となるように設定することができる。なお、負荷抵抗27'に設ける抵抗素子の数および各抵抗素子の設定値等は、様々に設定することができるのはいうまでもない。
図15は、第3実施例の無線電力伝送システムにおける受電器を説明するためのブロック図である。図15に示されるように、第3実施例における受電器は、ワイヤレス受電部21が受電共振コイル21aおよび電力取出コイル21bを含む。すなわち、受電共振コイル21aおよび電力取出コイル21bは、受電コイル(ワイヤレス受電部21)に相当する。
これは、例えば、前述した図3および図4Bに示す受電器のワイヤレス受電部21と同様であり、受電共振コイル21aは、その受電共振コイル21aの至近に配設された電力取出コイル21bに対して電磁誘導を利用して電力を供給する。
受電共振コイル21aには、スイッチ26および負荷抵抗27が設けられ、例えば、テスト送電時に、スイッチ26を切り替えて、受電共振コイル21aによる交流の受電電圧Vr'を負荷抵抗27に印加する。
なお、スイッチ26を制御する受電制御部23からの切り替え制御信号Ss、並びに、負荷抵抗27の抵抗値RLを制御する抵抗値制御信号Srは、図13を参照して説明したものと同様である。
ただし、第3実施例の受電器において、受電制御部23は、受電共振コイル21aからの交流の受電電圧Vr'および負荷抵抗27の抵抗値RLから受電電力P2を検出することになる。
そして、電力取出コイル21bには、整流回路22aが接続され、整流回路22aを介して取り出された直流の受電電圧Vrは、スイッチ26"を介してDC/DCコンバータ22bに印加されるようになっている。
ここで、スイッチ26および26"は、受電制御部23からの切り替え制御信号SsおよびSs"により、スイッチングのタイミングが同期するように制御されている。すなわち、スイッチ26により、受電共振コイル21aによる交流の受電電圧Vr'が負荷抵抗27に印加されるとき、スイッチ26"により、整流回路22aによる直流の受電電圧VrがDC/DCコンバータ22bに印加されないようになっている。
換言すると、例えば、テスト送電時において、受電制御部23は、スイッチ26および負荷抵抗27の抵抗値RLを制御して、交流の受電電圧Vr'および抵抗値RL(抵抗比RL/R2)から受電電力P2を算出する。
このとき、受電制御部23は、スイッチ26"を制御して、DC/DCコンバータ22bの入力が高インピーダンス状態となるように制御する。このテスト送電により、受電制御部23は、受電電力P2を算出し、その算出された受電電力P2を、通信を介してRL/R2等の情報と共に送電器1の送電制御部13に伝達する。
そして、本送電を行う場合、受電制御部23は、スイッチ26を制御して負荷抵抗27を受電共振コイル21aから切り離すと共に、スイッチ26"を制御して整流回路22aからの受電電圧VrがDC/DCコンバータ22bに印加されるようにする。
第3実施例において、スイッチ26および負荷抵抗27は、例えば、図14を参照して説明した第2実施例と同じ構成を有するスイッチ26'および複数の抵抗素子RL1〜RL3を含む負荷抵抗27'とすることもできる。
図16は、本実施例のkQ値算出処理の一例を説明するためのフローチャートである。図16において、送電器側の処理をステップST11〜ST19で示し、受電器側の処理をステップST21〜ST27で示す。
図16に示されるように、kQ値算出処理が開始すると、送電器(1)において、ステップST11でテスト送電を設定し、ステップST12に進んで、テスト送電を通知し、ステップST13に進んで、テスト送電を開始する。ここで、テスト送電は、送電器1からテストのための比較的小電力の送電を行うことになる。
さらに、送電器1では、ステップST14において、送電電力P1を検出する。すなわち、送電器1において、送電制御部13は、送電共振コイル11aの電圧電流入力波形Fcを受け取って送電電力P1を検出できるようになっている。
そして、ステップST15に進んで、受電器2からの通知が有ったかどうかを判定、すなわち、受電器2からの通知が有るまで待って、受電器2からの通知が有ったと判定すれば、ステップST16に進む。
一方、受電器(2)では、送電器1のステップST12におけるテスト送電通知を受けて、ステップST21において、テスト送電を設定する。すなわち、受電器2において、例えば、通信回路部14および24による通信により、或いは、送電器1からのテスト送電用の電力を受信して、スイッチ26は、DC/DCコンバータ22bから負荷抵抗(電力検出用抵抗)27への接続切り替えを行う。
具体的に、受電制御部23からのスイッチ制御信号Ssに従ったスイッチ26の切り替えにより、受電共振コイル21aおよび整流回路22aを介して取り出した受電電圧Vrは、負荷抵抗27に印加される。このとき、負荷抵抗27の抵抗値(RL)は、受電制御部23からの抵抗制御信号Srにより、例えば、小さい値から大きな値に変化するように可変制御される。
さらに、ステップST22に進んで、受電電圧Vrを検出したかどうかを判定し、受電電圧Vrを検出したと判定すると、ステップST23に進んで、受電電力P2および抵抗比(RL/R2)を通信(通信回路部24,13)により、送電器1へ伝える。すなわち、受電制御部23は、可変制御した負荷抵抗27の抵抗値(RL)を認識しているので、RL/R2の値および受電電力P2を算出し、通信により、送電器1の送電制御部13に通知することができる。
送電器1では、この受電器2からの通知を受け取ると、ステップST16において、kQ値の演算を行う。すなわち、送電器1の送電制御部13は、送電器1の送電電力P1,受電器2におけるRL/R2の値、および、受電器2の受電電力P2が分かるため、抵抗比RL/R2と測定効率(P2/P1)から受電器2のkQ値の演算を行うことができる。
具体的に、図12A〜図12Cを参照して説明した式(4)に対して、求めた測定効率(P2/P1)を効率ηとして適用し、さらに、求めた抵抗比RL/R2をRL/R2として、また、その逆数をR2/RLとして適用することで、kQ値を算出することができる。
なお、受電器2とのkQ値が求められると、送電制御部13のメモリに記憶されたQ1および受電制御部23のメモリに記憶されたQ2からQ値が分かるため、k値を演算することもできる。ここで、kQ値またはk値は、論理式を用いて算出することもできるが、例えば、予めテーブルを準備しておき、そのテーブルを利用して求めることも可能である。
さらに、送電器1では、ステップST17に進んで、検出精度が許容範囲かどうかを判定し、検出精度が許容範囲ではない(検出精度NG:No Good)と判定すると、ステップST14に戻って同様の処理を繰り返し、さらに、受電器2へ通知する。
すなわち、受電器2では、ステップST24において、本送電の通知ではないと判定し、ステップST25に進む。テップST25では、検出精度NGの通知であると判定し、ステップST26に進み、負荷抵抗27の抵抗値RLを、例えば、より大きな値に切り替え、或いは、可変制御し、ステップST22に戻って同様の処理を繰り返す。
一方、送電器1のステップST17において、検出精度が許容範囲内である(検出精度OK)と判定すると、ステップST19に進んで、本送電の設定/通知/開始を行って処理を終了する。すなわち、送電器1は、実際に、受電器2の二次電池25を充電するための本送電を開始し、その本送電の通知を、例えば、通信を介して受電器2伝える。
これを受けて、受電器2では、ステップ24において、本送電通知が有ったと判定し、ステップST27に進んで、本送電用の設定を行う。すなわち、受電器2において、例えば、通信により、或いは、送電器1からの本送電用の電力を受信して、スイッチ26は、負荷抵抗27からDC/DCコンバータ22bへの接続切り替えを行う。
具体的に、受電制御部23からのスイッチ制御信号Ssに従ったスイッチ26の切り替えにより、受電共振コイル21aおよび整流回路22aを介して取り出した受電電圧Vrは、DC/DCコンバータ22bに印加される。
なお、前述したように、例えば、無線電力伝送システムが複数の受電器を含む場合には、1つの受電器のみを順番にオンしてテスト送電を行い、それぞれの受電器とのkQ値を求めることになる。また、例えば、予めQ1値およびQ2値が分かっていれば、Q値を求めることができ、k値を算出することが可能である。そして、算出された複数の受電器とのkQ値またはk値は、給電方式の選択や複数の受電器のグループ化を始めとして、様々な制御に利用することができるのは前述した通りである。
ここに記載されている全ての例および条件的な用語は、読者が、本発明と技術の進展のために発明者により与えられる概念とを理解する際の助けとなるように、教育的な目的を意図したものである。
また、具体的に記載されている上記の例および条件、並びに、本発明の優位性および劣等性を示すことに関する本明細書における例の構成に限定されることなく、解釈されるべきものである。
さらに、本発明の実施例は詳細に説明されているが、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換および修正をこれに加えることが可能であると解すべきである。
まず、受電器、無線電力伝送システムおよびkQ値算出方法の実施例を詳述する前に、電力伝送システムの例、並びに、複数の送電器および受電器を含む関連技術の無線電力伝送システムを、図1〜図12Cを参照して説明する。
図1Aは、有線電力伝送(ワイヤー接続給電)システムの一例を模式的に示す図であり、図1Bは、無線電力伝送(ワイヤレス給電)システムの一例を模式的に示す図である。図1Aおよび図1Bにおいて、参照符号2A1〜2C1は、それぞれ受電器を示す。
ここで、受電器2A1は、例えば、要望電力が10Wのタブレットコンピュータ(タブレット)を示し、受電器2B1は、例えば、要望電力が50Wのノートパソコンを示し、受電器2C1は、例えば、要望電力が2.5Wのスマートフォンを示す。なお、要望電力は、例えば、それぞれの受電器2A1〜2C1における充電池(二次電池)を充電するための電力に相当する。
図1Aに示されるように、通常、タブレット2A1やスマートフォン2C1の二次電池を充電する場合、例えば、パソコン(Personal Computer)のUSB(Universal Serial Bus)端子(または、専用電源等)3Aに対して電源ケーブル4A,4Cを介して接続する。また、ノートパソコン2B1の二次電池を充電する場合、例えば、専用の電源装置(AC-DC Converter)3Bに対して電源ケーブル4Bを介して接続する。
すなわち、図1Aに示されるように、携帯可能な受電器2A1〜2C1であっても、一般的に、電源ケーブル4A〜4Cを使用してUSB端子3Aや電源装置3Bからワイヤー接続により給電(有線電力伝送)を行っている。
この場合、例えば、各電源ケーブル4A〜4Cは、コネクタを介して受電器2A1〜2C1に接続されるため、コネクタの先に接続された受電器(接続機器)をコネクタごとに検知することで、台数を検知し、コネクタ形状により給電電力を固定することができる。さらに、要望電力に応じた電源ケーブルの接続をユーザが行うことで、要望電力を認識すると同時に、それぞれの接続機器へ適切な給電を行うようになっている。
ところで、近年、電磁誘導に代表される非接触給電技術の進歩により、例えば、シェーバーや電動歯ブラシ等でワイヤレス給電(無線電力伝送)が実用化されている。そこで、図1Bに示されるように、例えば、送電器1A1から、タブレット2A1,ノートパソコン2B1およびスマートフォン2C1に対して無線電力伝送することが考えられている。
図2Aは、二次元無線電力伝送(二次元ワイヤレス給電)システムの一例を模式的に示す図であり、例えば、上述したシェーバーや電動歯ブラシ等と同様に、電磁誘導により無線電力伝送を行う様子を示している。
図2Aに示されるように、電磁誘導を利用して無線電力伝送を行う場合には、非接触給電であっても送電距離が短いために、送電器1A2にほぼ接触している受電器だけが給電可能である。
すなわち、送電器(受電台)1A2上に置かれた受電器(ノートパソコン)2B2に対しては給電することができても、受電台1A2から離れたノートパソコン2B3に対しては給電することは困難である。このように、図2Aに示す無線電力伝送システムは、受電台1A2上の自由な配置を可能とする二次元的なワイヤレス給電システムである。
図2Bは、三次元無線電力伝送(三次元ワイヤレス給電)システムの一例を模式的に示す図であり、例えば、磁界共鳴または電界共鳴を利用して無線電力伝送を行う様子を示している。図2Bに示されるように、磁界共鳴または電界共鳴を利用して無線電力伝送を行う場合には、送電器1A2から所定範囲内(図2Bにおける破線の内側)に存在する複数の受電器に対して給電することが可能である。
すなわち、送電器1A3から所定範囲内のタブレット2A2,2A3、ノートパソコン2B2,2B3およびスマートフォン2C2に対して無線電力伝送することが可能である。なお、図2Bでは、1つの送電器1A3のみ描かれているが、複数の送電器により、様々な角度および位置の複数の受電器に対して、磁界共鳴または電界共鳴を利用して無線電力伝送を行うようになっている。
このように、図2Bに示す無線電力伝送システムは、例えば、磁界共鳴を利用することにより、電磁誘導を利用したものに比べて遠方の空間においても高い送電効率を得ることができる三次元的なワイヤレス給電システムである。
図3は、無線電力伝送(三次元ワイヤレス給電)システムの一例を概略的に示すブロック図である。図3において、参照符号1は一次側(送電側:送電器)を示し、2は二次側(受電側:受電器)を示す。
図3に示されるように、送電器1は、ワイヤレス送電部11、高周波電源部12、送電制御部13および通信回路部(第1通信回路部)14を含む。また、受電器2は、ワイヤレス受電部21、受電回路部(整流部)22、受電制御部23および通信回路部(第2通信回路部)24を含む。
ワイヤレス送電部11は、第1コイル(電力供給コイル)11bおよび第2コイル(送電共振コイル:送電コイル)11aを含み、また、ワイヤレス受電部21は、第3コイル(受電共振コイル:受電コイル)21aおよび第4コイル(電力取出コイル)21bを含む。
図3に示されるように、送電器1と受電器2は、送電共振コイル11aと受電共振コイル21aの間の磁界共鳴(電界共鳴)により、送電器1から受電器2へエネルギー(電力)の伝送を行う。なお、送電共振コイル11aから受電共振コイル21aへの電力伝送は、磁界共鳴だけでなく電界共鳴等も可能であるが、以下の説明では、主として磁界共鳴を例として説明する。
送電器1と受電器2は、通信回路部14と通信回路部24により、通信(近距離通信)を行う。ここで、送電器1の送電共振コイル11aと受電器2の受電共振コイル21aによる電力の伝送距離(電力伝送範囲)は、送電器1の通信回路部14と受電器2の通信回路部24による通信距離(通信範囲)よりも短く設定される。
また、送電共振コイル11aおよび21aによる電力伝送は、通信回路部14および24による通信とは独立した方式(Out-band通信)になっている。具体的に、送電共振コイル11aおよび21aによる電力伝送は、例えば、6.78MHzの周波数帯域を使用し、通信回路部14および24による通信は、例えば、2.4GHzの周波数帯域を使用する。
この通信回路部14および24による通信としては、例えば、IEEE 802.11bに準拠するDSSS方式の無線LANやブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標))を利用することができる。
なお、上述した無線電力伝送システムは、例えば、使用する周波数の波長の1/6程度の距離の近傍界(near field)において、送電器1の送電共振コイル11aと、受電器2の受電共振コイル21aによる磁界共鳴または電界共鳴を利用して電力の伝送を行う。従って、電力伝送範囲(送電圏)は、電力伝送に使用する周波数に従って変化する。
高周波電源部12は、電力供給コイル(第1コイル)11bに対して電力を供給し、電力供給コイル11bは、その電力供給コイル11bの至近に配設された送電共振コイル11aに対して電磁誘導を利用して電力を供給する。送電共振コイル11aは、受電共振コイル21aとの間に磁場共鳴を生じさせる送電周波数により、受電共振コイル21a(受電器2)に電力を伝送する。
受電共振コイル21aは、その受電共振コイル21aの至近に配設された電力取出コイル(第4コイル)21bに対して電磁誘導を利用して電力を供給する。電力取出コイル21bには受電回路部22が接続され、所定の電力が取り出される。なお、受電回路部22からの電力は、例えば、バッテリ部(負荷)25におけるバッテリの充電、或いは、受電器2の回路に対する電源出力等として利用される。
ここで、送電器1の高周波電源部12は、送電制御部13により制御され、また、受電器2の受電回路部22は、受電制御部23により制御される。そして、送電制御部13および受電制御部23は、通信回路部14および24を介して接続され、送電器1から受電器2への電力伝送を好ましい状態で行うことができるように、様々な制御を行うようになっている。
図4A〜図4Cは、図3の無線電力伝送システムにおける伝送コイルの変形例を説明するための図である。ここで、図4Aおよび図4Bは、3コイル構成の例を示し、図4Cは、2コイル構成の例を示す。
すなわち、図3に示す無線電力伝送システムでは、ワイヤレス送電部11が第1コイル11bおよび第2コイル11aを含み、ワイヤレス受電部21が第3コイル21aおよび第4コイルを含んでいる。
これに対して、図4Aの例では、ワイヤレス受電部21を1つのコイル(受電共振コイル:LC共振器)21aとし、図4Bの例では、ワイヤレス送電部11を1つのコイル(送電共振コイル:LC共振器)11aとしている。
さらに、図4Cの例では、ワイヤレス受電部21を1つの受電共振コイル21aに設定すると共に、ワイヤレス送電部11を1つの送電共振コイル11aとしている。なお、図4A〜図4Cは、単なる例であり、様々に変形することができるのはいうまでもない。
図5A〜図5Dは、独立共振コイル(受電共振コイル21a)の例を示す回路図であり、図6A〜図6Dは、負荷または電源に接続された共振コイル(受電共振コイル21a)の例を示す回路図である。
ここで、図5A〜図5Dは、図3および図4Bにおける受電共振コイル21aに対応し、図6A〜図6Dは、図4Aおよび図4Cにおける受電共振コイル21aに対応する。
図5Aおよび図6Aに示す例は、受電共振コイル21aを、直列接続されたコイル(L)211,容量(C)212およびスイッチ213としたもので、通常時はスイッチ213をオフしておく。図5Bおよび図6Bに示す例は、受電共振コイル21aを、直列接続されたコイル(L)211および容量(C)212と、容量212に並列に接続されたスイッチ213としたもので、通常時はスイッチ213をオンしておく。
図5Cおよび図6Cに示す例は、図5Bおよび図6Bの受電共振コイル21aにおいて、容量212と並列に、直列接続されたスイッチ213および抵抗(R)214を設けたもので、通常時はスイッチ213をオンしておく。
図5Dおよび図6Dに示す例は、図5Bおよび図6Bの受電共振コイル21aにおいて、容量212と並列に、直列接続されたスイッチ213および他の容量(C')215を設けたもので、通常時はスイッチ213をオンしておく。
上述した各受電共振コイル21aにおいて、通常時に受電共振コイル21aが動作しないように、スイッチ213をオフまたはオンに設定するようになっている。これは、例えば、不使用の受電器2や故障した受電器2に対して電力が伝送されて発熱等が生じるのを避けるためである。
以上において、送電器1の送電共振コイル11aも図5A〜図5Dおよび図6A〜図6Dと同様にすることもできるが、送電器1の送電共振コイル11aとしては、通常時に動作するようにして、高周波電源部12の出力でオン/オフ制御してもよい。この場合、送電共振コイル11aは、図5Aおよび図6Aにおいて、スイッチ213を短絡したものになる。
以上により、複数の受電器2が存在する場合、送電器1から送電を行う所定の受電器2の受電共振コイル21aのみを選択して動作可能な状態とすることにより、その選択された受電器2に対する電力の伝送(時分割電力伝送)を行うことが可能になる。
図7A〜図7Cは、複数の送電器による磁界の制御例を説明するための図である。図7A〜図7Cにおいて、参照符号1Aおよび1Bは送電器を示し、2は受電器を示す。
図7Aに示されるように、送電器1Aの磁界共鳴に使用する送電用の送電共振コイル11aAと送電器1Bの磁界共鳴に使用する送電用の送電共振コイル11aBは、例えば、直交するように配設されている。
また、受電器2の磁界共鳴に使用する受電用の受電共振コイル21aは、送電共振コイル11aAおよび11aBにより囲まれた個所で異なる角度(平行にならない角度)に配置されている。
ここで、送電共振コイル(LC共振器)11aAおよび11aBは、1つの送電器に設けることも可能である。すなわち、1つの送電器1が複数のワイヤレス送電部11を含んでいてもよい。
図7Bは、送電共振コイル11aAおよび11aBが同じ位相の磁界を出力している様子を示し、図7Cは、送電共振コイル11aAおよび11aBが逆の位相の磁界を出力している様子を示す。
例えば、2個の直交する送電共振コイル11aAおよび11aBが同相出力の場合と逆相出力の場合を比較すると、合成磁界は90°回転した関係となり、それぞれの受電器2(受電共振コイル21a)の向きに合わせた送電を行う。
このように、複数の送電器1A,1Bにより、任意の位置および姿勢(角度)の受電器2に対して電力を伝送する場合、送電器1A,1Bの送電共振コイル11aA,11aBに発生させる磁界は様々に変化することが分かる。
上述した無線電力伝送システムは、複数の送電器と、少なくとも1つの受電器とを含み、受電器の位置(X,Y,Z)および姿勢(θX,θY,θZ)に応じて、その複数の送電器間の出力(強度および位相)を調整する。
なお、三次元空間に関しても、例えば、実際の三次元空間における3個以上の送電器を用いて、それぞれの出力位相差および出力強度比を調整することで、三次元空間上の任意の方向に磁界(電界)の向きを調整することが可能になることが理解されるであろう。
図8A〜図8Cは、複数の受電器に対する無線電力伝送を説明するための図である。なお、図8A〜図8Cでは、説明を簡略化するために、1つの送電器1Aおよび2つの受電器(携帯電話)2A,2A’のみ示しているが、送電器の数および受電器の数や種類等は様々に変化し得るのはいうまでもない。すなわち、図8Aに示されるように、1つの送電器1Aにより、2つの受電器2A,2A’に対するワイヤレス給電を行う場合を想定する。
まず、時分割電力伝送によりワイヤレス給電を行うときは、図8Bの左側図に示されるように、一方の受電器2Aだけに給電した後、図8Bの右側図に示されるように、他方の受電器2Aだけに給電する。なお、受電器の数がさらに多い場合も同様であり、時分割的に給電する受電器を順番に切り替えてワイヤレス給電を行う。
すなわち、時分割電力伝送は、複数の受電器がある場合、給電する対象となる受電器を順次選択することにより、ある瞬間には常に送電器に対して1つの受電器が対応することになる。このときの制御は、例えば、送電器と受電器が1対1の場合と同様とすることができる。ただし、時分割した結果、給電(満充電)に要する時間は、受電器の数だけの時間となるため、受電器が2台であれば1台のときの2倍の時間を要することになる。
次に、同時電力伝送によりワイヤレス給電を行うときは、図8Cに示されるように、1つの送電器1Aにより、2つの受電器2A,2A’の両方に給電する。なお、受電器の数がさらに多い場合も同様であり、それら複数の受電器に対して同時にワイヤレス給電を行う。
この同時電力伝送は、例えば、2台の受電器がある場合にはその2台の受電器を同時に給電するため、給電に要する時間は、同時給電される受電器の数に関わらず、1台分でよいため、ユーザメリットを考えると望ましい給電方法(無線電力伝送制御方法)と言える。
ただし、複数の受電器を同時給電(同時電力伝送)するには、受電器が1台のときとは異なる制御を行うことになる。また、複数の受電器に対して同時電力伝送を行う場合、送電上限や効率等の問題があるため、常に選択可能であるわけではない。なお、受電器の数が多数の場合、一部の複数の受電器に対して同時電力伝送を行い、他の受電器に対して時分割電力伝送を行うことも考えられる。
図9A〜図9Cは、複数の受電器に対する二次元の無線電力伝送制御方法の一例を説明するための図である。ここで、図9Aは、例えば、磁界共鳴を利用して、1つの送電器1Aにより、要望電力が異なる2つの受電器2A,2Bにワイヤレス給電する様子を示す。
また、図9Bは、送電器1A(送電共振コイル11a)から、受電器2A(受電共振コイル21aA)および受電器2B(受電共振コイル21aB)にワイヤレス給電する様子を示す。図9Cは、受電器2Bの共振点をずらして(デチューンして)、電力配分比を制御する手法を説明するためのものである。
なお、受電器2Aは、例えば、要望電力が5Wの携帯電話を示し、受電器2Bは、例えば、要望電力が50Wのノートパソコンを示す。また、説明を簡略化するために、携帯電話2AのLC共振器(ワイヤレス受電部)およびノートパソコン2BのLC共振器は、同じ仕様のものとする。さらに、図9Cにおいて、参照符号LL0は全体送電効率を示し、LLAは携帯電話2Aの受電電力を示し、LLBはノートパソコン2Bの受電電力を示す。
ところで、複数の受電器への同時ワイヤレス給電を行う場合それぞれの受電器における受電電力量が異なるケースが多発すると考えられる。例えば、図9Aに示されるように、要望電力が5Wの携帯電話と要望電力が50Wのノートパソコン、或いは、同じ種類の受電器であっても、バッテリ残量によっては、要望電力が異なるケースも考えられる。
例えば、受電器2A,2Bの位置や向き大きな差がない場合、同じ仕様の受電コイルが搭載されているとき、電力は等しく分配される。具体的に、携帯電話2Aの受電共振コイルにおけるインダクタンスをLA,キャパシタンスをCAとし、ノートパソコン2Bの受電共振コイルにおけるインダクタンスをLB,キャパシタンスをCBとする。
このとき、図9Cにおける参照符号PP0で示されるように、そのままの状態(共振点ずらさない状態)では、L0C0=LACA=LBCBが成立する。すなわち、図9Bにおけるそれぞれの共振周波数は、f0=fA=fBの関係が成立する。
そのため、例えば、送電器1Aからの送電電力が68.75Wで送電効率が80%だと仮定すると、携帯電話2Aおよびノートパソコン2Bは、両方とも27.5Wの電力を受け取ることになる。
すなわち、図9Aに示されるように、要望電力が10倍異なる受電器2Aと2Bであっても、例えば、55Wの要望電力に相当する出力を送電器1Aから出力した場合、受電器2A,2B側では、それぞれ27.5Wずつの電力を受電する結果となる。
このとき、携帯電話2Aの要望電力は5Wで、ノートパソコン2Bの要望電力は50Wであるため、携帯電話2Aの受電共振コイルによる共振点をずらして受電効率(ηip)を低下させるように制御する。
例えば、図9Cの矢印MAに示されるように、携帯電話2Aの受電共振コイル21aAにおける容量のキャパシタンスCAを、受電効率が最大となる受電共振コイルの共振点からずらすために、小さく(または、大きく)なるように制御する。
すなわち、図9Cの矢印MAのように、共振条件を意図的にずらす(キャパシタンスCAをずらす)ことでQ値を低下させ、携帯電話2Aの受電電力LLAは、共振点(P0)の27.5Wから次第に減少して、例えば、要望電力の5Wに設定することができる。
このとき、携帯電話2Aが受電しなくなった電力は、そのほとんどがノートパソコン2Bの受電電力となる。すなわち、ノートパソコン2Bの受電電力LLBは、携帯電話2Aの受電電力LLAの低下に応じて上昇し、無線電力伝送システムにおける全体送電効率LL0は、ほとんど低下しないことが分かる。
このように、共振条件を変えることで、具体的には、受電器2Aの共振用コンデンサ(容量)212の容量値(キャパシタンスCA)を変化させることで、結合が調整され、結果として、受電電力を所望の配分比に制御することが可能となる。
ここで、重要なこととして、共振条件を可変した受電器2Aの効率は低下していても、システム全体の送受電効率はほぼ一定を保っており、受電器2Aに到達していた電力を減らした分、受電器2Bへの電力が増加する。その結果、受電器2A,2Bの一方だけの単体給電時と比べても、ほぼ同じ効率で全体(両方の受電器2A,2B)に送電しつつ受電電力を所望の比に分配(配分)できることがわかる。
ところで、近年、複数の送電器(送電コイル)および複数の受電器を含む無線電力伝送システムにおいて、kQ値を利用して給電制御を行うことが注目されている。具体的に、例えば、kQ値の大きさに基づいて、複数の受電器に対して順番に電力を伝送する時分割電力伝送モードと、複数の受電器に対して同時に電力を伝送する同時電力伝送モードと、を切り替えて無線電力伝送を行う研究がなされている。
また、kQ値の大きさに基づいて、複数の受電器をグループ分けし、或いは、受電器(受電共振コイル)の共振点をずらしてデチューンすることも研究されている。さらに、無線電力伝送システムにおいて、kQ値を利用した様々な提案がなされるものと期待されている。
ここで、kQ値(kQ)は、電磁界(磁界または電界)の結合の程度を示すk値(k)と、電磁界の損失の程度を示すQ値(Q)の積である。なお、k値は、その値が大きいほど、結合の程度が大きいことを示し、また、Q値は、その値が大きいほど、損失の程度が小さいことを示す。
すなわち、kQは、次の式(1)により表される。ここで、Q
1は、送電器のQ値を示し、Q
2は、受電器のQ値を示す。
また、kは、次の式(2)により表される。ここで、M
12は、送電器と受電器の間の相互インダクタンスを示し、L
1は、送電器の自己インダクタンス、そして、L
2は、受電器の自己インダクタンスを示す。
さらに、Qは、次の式(3)により表される。ここで、ωは、角振動数を示し、R
1は、送電器の共振コイルの損失、そして、R
2は、受電器の共振コイルの損失を示す。
図10は、kQ値が適用される無線電力伝送システムの一例を説明するための図であり、kQ値のおおきさによりグループ分けを行う例を示すものである。なお、図10では、1つの送電器1Aおよび6個の受電器2A〜2Fを示しているが、これは単なる例であり、様々な場合があり得るのはいうまでもない。
図10に示されるように、例えば、無線電力伝送システムに6個の受電器2A〜2Fが含まれる場合、各受電器2A〜2FのkQ値(評価指標)を評価し、kQ値によりグループ分けを行う。まず、全ての受電器2A〜2Fを、それぞれ単体評価する。
例えば、受電器2Aを評価するとき、受電器2Aのみオンして、他の受電器2B〜2Fをオフ(例えば、図5Aの受電共振コイル21aにおけるスイッチ213をオフ)する。そして、例えば、kQ値が最大(kQmax1)となる受電器2Bを基準とし、他の受電器のkQ値(kQother)に関して、kQother/kQmax1が一定値以上ならば、同一グループとする。具体的に、図10では、kQ値がkQ1-1の受電器2FおよびkQ値がkQ1-2の受電器2Cが、第1グループGP1とされている。
次に、kQ値が最大(kQmax1)となる受電器2Bを含む第1グループGP1以外の受電器2A,2D,2Eにおいて、kQ値が最大(kQmax2)となる受電器2Aを基準として、同様にグループ分けを行う。具体的に、図10では、受電器2A,2D,2Eが、第2グループGP2とされている。
そして、分割されたグループGP1,GP2を単位として、同一グループ内では、例えば、同時給電を行う。また、kQ値によりグループ分けされた受電器に関して、例えば、閾値以下となるグループの受電器に対しては、時分割給電を行う。さらに、閾値以上となるグループの受電器に対して、同一グループ内の給電では、電力分配を調整(デチューン)して同時給電を行うことができ、異なるグループにまたがる受電器に対しては、時分割給電を行うのが好ましい。
ところで、一般的に、ワイヤレス送電可能なシステムの要件として、電力と効率は、比例する関係が好ましい。つまり、大電力を送電するシステムでは、高効率が望まれ、また、小電力を送電するシステムでは、低効率であっても許容することができる。これは、特に、ロスが結果として発熱になるため、放熱の問題を考えれば容易に理解することができる。
すなわち、大電力系において効率が低い場合には、放熱すべき電力が大きくなるため、システムを構築することが難しくなるためである。言い換えれば、送電電力に応じて、許容効率が規定されていると考えることもできる。
そのような状況で、kQ値が異なる複数の受電器に対した、同時給電すべきか、或いは、時分割給電すべきかを検討すると、送電完了時間を優先すれば、同時給電が常に望ましいと考えられるが、上述したように、許容できる効率は各系に応じて異なっている。
そこで、許容効率を確保しつつ、同時給電を行うことのできる方法を考えるのが現実的であり、本実施例では、kQ値の近いものをグループ化し、そのグループ内では同時給電を優先し、グループ外では時分割給電を優先するようになっている。
これは、kQ値が同じ(近い)ものの同時給電であれば、Q値を少し可変することで電力のバランスを調整することが容易である一方で、kQ値が大きく異なっているものの同時給電では、バランス調整のために、Q値を大きく低下させることになる。これは、結果として、全体の効率低下を招くことになる。
一例として、ノートパソコン群とスマートフォン群への給電を考える。ここで、ノートパソコン群(ノートパソコン)は、例えば、30Wの給電を要求し(要望電力が30Wであり)、その電力の大きさゆえに許容最低効率は80%とする。また、ノートパソコンは、サイズが大きいために受電コイルを大きくすることができ、kQ値を大きくすることが可能である。
一方、スマートフォン群(スマートフォン)は、例えば、5Wの給電を要求し(要望電力が5Wであり)、許容効率は40%とする。また、スマートフォンは、サイズが小さく、位置がより自由であるため、kQ値は小さく抑えられてしまう。
このような2つの郡への同時給電を行うと、kQ値が異なるグループへの同時給電となるが、ノートパソコン群への給電ばかりが実行され、スマートフォン群へ電力が届かないことになる。
このとき、例えば、Q値を低下させて電力のバランスを取ることもできるが、その場合には、全体の効率が低下してしまい、ノートパソコンを含む給電の効率が低くなり、例えば、許容効率が80%以下となってしまうこともあり得る。
そのため、kQ値が異なるグループへの同時給電は好ましくないことが分かる。すなわち、kQ値(評価指標)が設定値以上となる受電器が3つ以上存在するとき、そのkQ値の大きさに基づいてグループ分けを行うが、近いkQ値を持つ受電器が同じグループとなるようにグループ分けを行うのが好ましい。
ここで、kQ値によりグループ分けされた受電器に関して、例えば、閾値以下となるグループの受電器に対しては、時分割給電を行うことになる。また、閾値以上となるグループの受電器に対して、同一グループ内の給電では、電力分配を調整して同時給電を行うことができ、異なるグループにまたがる受電器に対しては、時分割給電を行うのが好ましい。
なお、複数の受電器をkQ値により複数のグループに分けるための閾値としては、想定される無線電力伝送システムの規模や仕様により様々に変化させることができ、それに従って、グループの数や各グループに含まれる受電器の数も変化することになる。
図11は、無線電力伝送システムの一例を示すブロック図であり、2つの送電器1A,1B、および、2つの受電器2A,2Bを含む例を示すものである。図11に示されるように、送電器1A,1Bは同様の構成を有し、それぞれワイヤレス送電部11A,11B、高周波電源部12A,12B、送電制御部13A,13Bおよび通信回路部14A,14Bを含む。
高周波電源部12A,12Bは、高周波の電力を発生するもので、例えば、前述した図3における高周波電源部12に相当し、固有の電源インピーダンスを有する。例えば、出力インピーダンスが50Ωに整合された定電圧電源や、高い出力インピーダンスのHi−ZΩ電源(定電流電源)などである。
送電制御部13A,13Bは、送電部11A,11Bを制御し、通信回路部14A,14Bは、各送電器および受電器間の通信を可能とするものであり、例えば、IEEE 802.11bに準拠するDSSS方式の無線LANやブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標))を利用することができる。
なお、高周波電源部12A,12Bは、それぞれ外部電源10A,10Bから電力の供給を受け取り、送電制御部13A,13Bには、検出部SA,SBからの信号が入力されている。なお、送電器1Aおよび送電器1Bは、例えば、1つの送電器1に設けた2つの送電部(11)としてもよいのはいうまでもない。
ワイヤレス送電部11A,11Bは、磁界共鳴であればコイルに相当し、高周波電源部12A,12Bから供給される高周波電力を磁界に変換する。検出部SA,SBは、送電器1A,1Bの相対位置関係や受電器2A,2Bの相対位置関係を検出する。
なお、例えば、送電器1A,1Bの位置関係が固定され(送電共振コイル11a1,11a2が特定のL字ブロック状に固定され)、その情報を送電制御部13A,13Bが把握し、受電器2A,2Bが検出機能を有する場合、検出部SA,SBは省略可能である。
受電器2A,2Bも同様の構成を有し、それぞれワイヤレス受電部21A,21B、整流部(受電回路部)22A,22B、受電制御部23A,23B、通信回路部24A,24Bおよび機器本体(バッテリ部)25A,25Bを含む。
受電制御部23A,23Bは、受電器2A,2Bを制御するものであり、通信回路部24A,24Bは、各送電器および受電器間の通信を可能とするもので、前述したように、例えば、無線LANやブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標))を利用する。
ワイヤレス受電部21A,21Bは、磁界共鳴であればコイルに相当し、無線で伝達された電力を電流に変換する。整流部22A,22Bは、ワイヤレス受電部21A,21Bから得られた交流電流をバッテリ充電や機器本体で使用可能なように直流電流に変換する。
上述したように、送電器1A,1Bおよび受電器2A,2Bは、それぞれの通信回路部14A,14B,24A,24Bを介して通信を行う。このとき、例えば、送電器1Aをマスタ(全体制御器)とし、このマスタ(送電器)1Aが、他の送電器1Bおよび受電器2A,2Bをスレーブとして制御することもできる。
ここで、送電器1A,1Bの通信回路部14A,14B、並びに、受電器2A,2Bの通信回路部24A,24Bを介した通信により、同時送電と時分割送電の切り替え、並びに、同時送電における電力配分比調整等の制御を行う。
具体的に、例えば、送電器1Aの通信回路部14Aおよび受電器2A,2Bの通信回路部24A,24Bを介して、それぞれの受電器2A,2BにおけるQ値を、無線電力伝送の制御を行うマスタ(例えば、送電器1A)に通信で伝える。
また、同時給電を行う場合、例えば、送電器1Aの通信回路部14Aおよび受電器2Bの通信回路部24Bを介して、受電器2Bの受電共振コイルにおける容量のキャパシタンス(CA)を共振点からずらし、電力配分比の調整を行う。具体的に、前述した図5Aに示す受電共振コイル21aにおける容量212のキャパシタンスの値を制御して、受電器2A,2Bの電力配分比を調整する。
さらに、時分割給電を行う場合、例えば、送電器1Aの通信回路部14Aおよび受電器2A,2Bの通信回路部24A,24Bを介して、ワイヤレス給電を行う受電器の切り替えを行う。
具体的に、例えば、前述した図5Aに示す受電共振コイル21aにおけるスイッチ213を制御して、ワイヤレス給電を行う受電器のスイッチ213だけを順にオンするように制御する。或いは、例えば、前述した図5Bに示す受電共振コイル21aにおけるスイッチ213を制御して、ワイヤレス給電を行う受電器のスイッチ213だけを順にオフするように制御する。
なお、ワイヤレス送電部11Aおよび11Bと、ワイヤレス受電部21Aまたは21Bの間は、磁界共鳴を利用した電力伝送に限定されるものではなく、例えば、電界共鳴、或いは、電磁誘導や電界誘導を利用した電力伝送方式を適用することもできる。
前述したように、複数の送電器(送電コイル)および複数の受電器を含む無線電力伝送システムにおいて、kQ値を利用して給電制御を行うことが注目され、様々な研究がなされている。
しかしながら、無線電力伝送システムにおいて、各受電器とのk値、従って、kQ値を精度よく算出する有効な提案がなされていないのが実情である。すなわち、無線電力伝送システムにおける各受電器とのkQ値を精度よく算出するのは難しい。
以下、受電器、無線電力伝送システムおよびkQ値算出方法の実施例を、添付図面を参照して詳述する。ここで、本実施例は、少なくとも1つの送電器および少なくとも1つの受電器を含む無線電力伝送システムに適用することができる。
なお、以下の説明では、1つの受電器とのkQ値を求める例を示すが、無線電力伝送システムが複数の受電器を含む場合には、1つの受電器のみを順番にオンしてそれぞれの受電器とのkQ値を求めることになる。
例えば、図11の例において、送電器1A(送電制御部13A)がマスタとしてシステム全体を制御する場合、受電器2AのkQ値を算出するには、受電器2Aのワイヤレス受電部21Aを動作状態とし、受電器2Bのワイヤレス受電部21Bを停止する。
例えば、受電器2A,2Bのワイヤレス受電部21A,21Bが共に、前述した図5Aに示す受電共振コイル21aを有する場合、受電器2Aにおける受電共振コイル21aのスイッチ213をオンし、受電器2Bにおけるスイッチ213をオフすることになる。
また、無線電力伝送システムが複数の送電器を含む場合には、複数の送電器に対するそれぞれの受電器とのkQ値を算出することもできるが、1つの送電器のみを順番にオンし、それぞれの送電器に対するそれぞれの受電器とのkQ値を求めることもできる。これらは、得られたkQ値の適用、或いは、kQ値に基づいた様々な制御に従って適宜行われる。
さらに、それぞれの受電器とのkQ値が得られたとき、例えば、それぞれの受電器(受電共振コイル)における磁界(電界)の損失の程度を示すQ値が既知の場合には、磁界(電界)の結合の程度を示すk値を算出し、そのk値を使用して様々な制御を行うこともできる。
図12A〜図12Cは、本実施例に適用されるkQ値を説明するための図である。ここで、図12Aは、送電器1(送電共振コイル11a)および受電器2(受電共振コイル21a)を概念的に示す図であり、例えば、前述した図4Cに示す伝送コイルの例に相当する。
また、図12Bは、図12Aにおける送電器1および受電器2の等化回路を示す図であり、図12Cは、RL/R2による効率(η)とkQ値の関係を示す図である。なお、伝送コイル(ワイヤレス送電部およびワイヤレス受電部)は、図4Cのものに限定されず、図3,図4Aおよび図4B等の構成であってもよいのはいうまでもない。
1つの送電器1(送電共振コイル11a)と1つの受電器2(受電共振コイル21a)間の磁界(電界)による電力伝送は、図12Aのように考えることができ、これは、図12Bの等化回路により表される。
なお、図12Bにおいて、参照符号R1およびL1は、送電共振コイル11a(コイル)の損失(抵抗値)および自己インダクタンスを示し、R2およびL2は、受電共振コイル21a(コイル211)の抵抗値および自己インダクタンスを示す。また、参照符号RLは、給電対象(バッテリ部25)の負荷抵抗を示し、Mは、送電共振コイル11aと受電共振コイル21a間の相互インダクタンスを示す。
参照符号C1は、送電共振コイル11a(容量)のキャパシタンスを示し、C2は、受電共振コイル21a(容量212)のキャパシタンスを示し、I1およびI2は、送電共振コイル11aおよび受電共振コイル21aを流れる電流を示し、Eは電源回路(12)を示す。
前述したように、kQ値、k値、並びに、送電器および受電器のQ値(Q
1,Q
2)は、次の式(1)〜式(3)により表される。
ここで、受電共振コイル21a(受電器2)の効率は、コイル211の抵抗値R
2だけでなく、給電対象となる負荷抵抗R
Lにより変化する。例えば、受電器において、受電共振コイル21aにおけるコイル211の抵抗値R
2は最小化を目指して設計されるが、負荷抵抗R
Lは、例えば、二次電池の充電率等によって変化する。なお、図12Cにおいて、効率ηは、次の式(4)により表される。
次に、kQ値と効率(η)の関係が、負荷抵抗RLにより大きく変化することを、図12Cを参照して説明する。図12Cにおいて、曲線LLhは、コイル211の抵抗値R2と負荷抵抗RLの比率が常に最適な場合(理想効率,最大効率)の特性を示し、また、LLiは、RL/R2=1のとき、LLjは、RL/R2=10のとき、LLkは、RL/R2=100のときの特性を示す。
図12Cから明らかなように、RL/R2の値により、kQ値と効率の関係が大きく変化するのが分かる。ここで、エネルギー損失の程度を示すQ値に関して、例えば、送電共振コイル11aにおけるωおよびL1、並びに、受電共振コイル21aにおけるωおよびL2は、通常、不変とみなすことができる。
図13は、第1実施例の無線電力伝送システムを説明するためのブロック図である。ここで、図13では、1つの送電器1および1つの受電器2のみが描かれているが、前述したように、本実施例の無線電力伝送システムは、複数の送電器および複数の受電器を含んでもよい。
なお、システムに複数の受電器が含まれている場合には、例えば、1つの受電器のみを順番にオンしてそれぞれの受電器とのkQ値を求める。また、システムに複数の送電器が含まれている場合には、複数の送電器に対するそれぞれの受電器とのkQ値を算出し、或いは、1つの送電器のみを順番にオンし、それぞれの送電器に対するそれぞれの受電器とのkQ値を求める。
図13に示されるように、送電器1は、送電共振コイル11a(ワイヤレス送電部11)、送電制御部(メモリを含む)13、通信回路部14、アンプ15および整合回路16を含む。
送電制御部13は、例えば、送電共振コイル11aの電圧電流入力波形Fcを受け取って、アンプ制御信号Saによりアンプ15の出力を制御し、整合回路16を介して送電共振コイル11aを駆動する。
ここで、送電制御部13は、送電共振コイル11aの電圧電流入力波形Fcを受け取って送電電力P1を検出するようになっている。また、送電制御部13にはメモリが設けられていて、例えば、送電共振コイル11aのコイルにおける損失Q1を予め記憶しておくようになっている。
受電器2は、受電共振コイル21a(ワイヤレス受電部21:受電コイル)、整流回路22a、DC/DCコンバータ22b、受電制御部(メモリを含む)23、通信回路部24、二次電池25、スイッチ26、および、電力検出用抵抗27を含む。ここで、DC/DCコンバータ22bおよび二次電池25は、受電コイル(21,21a)からの電力を使用する内部回路に相当する。
スイッチ26は、受電制御部23からの切り替え制御信号Ssに従って、受電共振コイル21aおよび整流回路22aを介して取り出した直流の受電電圧Vrを、電力検出用抵抗(負荷抵抗)27とDC/DCコンバータ22bに切り替え可能として印加する。また、負荷抵抗27は、受電制御部23からの抵抗値制御信号Srにより抵抗値が制御される可変抵抗とされている。
受電制御部23は、整流回路22aからの受電電圧Vrを受け取り、例えば、スイッチ制御信号Ssによりスイッチ26を制御して受電電圧Vrを負荷抵抗27に印加し、その負荷抵抗27の抵抗値RLによる受電電力P2を検出する。
なお、図13(および図14)において、スイッチ26および負荷抵抗27は、整流回路22aの後段に設けられ、整流された直流の受電電圧Vrおよび負荷抵抗27の抵抗値RLから受電電力P2を検出しているが、整流回路22aの前段に設けることもできる。
すなわち、後述する図15の第3実施例のように、受電共振コイル21aによる交流の受電電圧Vr'および負荷抵抗27の抵抗値RLから受電電力P2を検出することも可能である。
これにより、受電制御部23は、負荷抵抗27の抵抗値RLと受電共振コイル21a(コイル211)の抵抗値R2の抵抗比RL/R2、および、受電電力P2を得ることができ、この受電電力の検出情報を、通信により送電制御部13に伝達する。また、受電制御部23にはメモリが設けられていて、例えば、受電共振コイル21aのコイル211における損失Q2を予め記憶しておくようになっている。
なお、受電器2(受電制御部23)から送電器1(送電制御部13)への受電電力の検出情報として、例えば、受電電圧Vr,抵抗比RL/R2および損失Q2を、そのまま送電制御部13に伝達し、送電制御部13で受電電力P2等の算出を行ってもよい。
或いは、受電器2(受電制御部23)が、通信を介して、送電器1(送電制御部13)から、送電電力P1および送電共振コイル11aの損失Q1等の情報を受け取って、kQ値(k値)を算出することも可能である。
ここで、受電制御部23からの抵抗値制御信号Srによる、負荷抵抗27の抵抗値RLの制御は、図12Cの各特性曲線から明らかなように、RL/R2が小さい、すなわち、負荷抵抗27の抵抗値RLが小さい値から大きな値に変化するように制御するのが低効率時における検出精度を確保する上で好ましい。
受電制御部23は、通信(受電器側の通信回路部24および送電器側の通信回路部14)を介して、例えば、送電制御部13から送電条件(給電タイミング情報)を受け取り、送電制御部13に対して、所定のRL/R2に対する受電電力P2および損失Q2を伝達する。
これにより、例えば、無線電力伝送システムのマスタとして全体を制御する送電制御部13は、送電共振コイル11aのコイルの損失Q1、送電電力P1、受電共振コイル21aのコイルの損失Q2およびRL/R2の値を認識することができる。
従って、送電制御部13は、送電器1の送電電力P1,受電器2におけるRL/R2の値、および、受電器2の受電電力P2を認識することで、抵抗比RL/R2と測定効率(P2/P1)から受電器2とのkQ値を式(4)に基づいて推定することが可能となる。
すなわち、図12A〜図12Cを参照して説明した式(4)に対して、求めた測定効率(P2/P1)を効率ηとして適用し、さらに、求めた抵抗比RL/R2をRL/R2として、また、その逆数をR2/RLとして適用することで、kQ値を算出(推定)することができる。すなわち、第1実施例によれば、受電器におけるkQ値の算出精度を向上することが可能になる。このkQ値の算出精度を向上することは、以下の第2および第3実施例でも同様の効果として得られる。
なお、送電制御部13のメモリに記憶されたQ1および受電制御部23のメモリに記憶されたQ2からQ値を求めることができるので、kQ値を算出できれば、k値を算出することも可能となる。
また、受電共振コイル21aのコイルの損失Q2の値は、受電制御部23から通信を介して送電制御部13に伝達せずに、例えば、受電器の種類や型番を示す情報からQ2の値を参照できるテーブルを、予め、送電器側に設けておくこともできる。
以上の処理は、例えば、送電器1から送電される電力により、受電器2における二次電池25の充電を行う本送電の前に、送電器1から小電力を送電して行うテスト送電において実施することができる。
図14は、第2実施例の無線電力伝送システムにおける受電器を説明するためのブロック図である。図14と上述した図13の比較から明らかなように、第2実施例における受電器は、第1実施例における受電器と、スイッチ26'および負荷抵抗27'の構成が異なっている。
すなわち、第1実施例では、負荷抵抗27が、受電制御部23からの抵抗値制御信号Srにより抵抗値が制御される可変抵抗とされているのに対して、第2実施例では、負荷抵抗27'が、複数(図14では、3個)の抵抗素子RL1〜RL3を含んでいる。
すなわち、第1実施例の受電器では、負荷抵抗27が、受電制御部23からの抵抗値制御信号Srにより抵抗値が制御される可変抵抗とされている。これに対して、第2実施例の受電器では、負荷抵抗27'が複数の抵抗素子RL1〜RL3を含み、その抵抗素子の1つが、受電制御部23からのスイッチ制御信号Ss'に従って動作するスイッチ26'により選択されるようになっている。
すなわち、スイッチ26'は、受電制御部23からのスイッチ制御信号Ss'に従って、受電電圧Vrを、負荷抵抗27'におけるいずれかの抵抗素子RL1〜RL3、或いは、DC/DCコンバータ22bに切り替え可能として印加する。
ここで、各抵抗素子RL1〜RL3の抵抗値としては、例えば、図12Cに示されるように、抵抗比RL/R2の値が1,10,100程度となるように設定することができる。なお、負荷抵抗27'に設ける抵抗素子の数および各抵抗素子の設定値等は、様々に設定することができるのはいうまでもない。
図15は、第3実施例の無線電力伝送システムにおける受電器を説明するためのブロック図である。図15に示されるように、第3実施例における受電器は、ワイヤレス受電部21が受電共振コイル21aおよび電力取出コイル21bを含む。すなわち、受電共振コイル21aおよび電力取出コイル21bは、受電コイル(ワイヤレス受電部21)に相当する。
これは、例えば、前述した図3および図4Bに示す受電器のワイヤレス受電部21と同様であり、受電共振コイル21aは、その受電共振コイル21aの至近に配設された電力取出コイル21bに対して電磁誘導を利用して電力を供給する。
受電共振コイル21aには、スイッチ26および負荷抵抗27が設けられ、例えば、テスト送電時に、スイッチ26を切り替えて、受電共振コイル21aによる交流の受電電圧Vr'を負荷抵抗27に印加する。
なお、スイッチ26を制御する受電制御部23からの切り替え制御信号Ss、並びに、負荷抵抗27の抵抗値RLを制御する抵抗値制御信号Srは、図13を参照して説明したものと同様である。
ただし、第3実施例の受電器において、受電制御部23は、受電共振コイル21aからの交流の受電電圧Vr'および負荷抵抗27の抵抗値RLから受電電力P2を検出することになる。
そして、電力取出コイル21bには、整流回路22aが接続され、整流回路22aを介して取り出された直流の受電電圧Vrは、スイッチ26"を介してDC/DCコンバータ22bに印加されるようになっている。
ここで、スイッチ26および26"は、受電制御部23からの切り替え制御信号SsおよびSs"により、スイッチングのタイミングが同期するように制御されている。すなわち、スイッチ26により、受電共振コイル21aによる交流の受電電圧Vr'が負荷抵抗27に印加されるとき、スイッチ26"により、整流回路22aによる直流の受電電圧VrがDC/DCコンバータ22bに印加されないようになっている。
換言すると、例えば、テスト送電時において、受電制御部23は、スイッチ26および負荷抵抗27の抵抗値RLを制御して、交流の受電電圧Vr'および抵抗値RL(抵抗比RL/R2)から受電電力P2を算出する。
このとき、受電制御部23は、スイッチ26"を制御して、DC/DCコンバータ22bの入力が高インピーダンス状態となるように制御する。このテスト送電により、受電制御部23は、受電電力P2を算出し、その算出された受電電力P2を、通信を介してRL/R2等の情報と共に送電器1の送電制御部13に伝達する。
そして、本送電を行う場合、受電制御部23は、スイッチ26を制御して負荷抵抗27を受電共振コイル21aから切り離すと共に、スイッチ26"を制御して整流回路22aからの受電電圧VrがDC/DCコンバータ22bに印加されるようにする。
第3実施例において、スイッチ26および負荷抵抗27は、例えば、図14を参照して説明した第2実施例と同じ構成を有するスイッチ26'および複数の抵抗素子RL1〜RL3を含む負荷抵抗27'とすることもできる。
図16は、本実施例のkQ値算出処理の一例を説明するためのフローチャートである。図16において、送電器側の処理をステップST11〜ST19で示し、受電器側の処理をステップST21〜ST27で示す。
図16に示されるように、kQ値算出処理が開始すると、送電器(1)において、ステップST11でテスト送電を設定し、ステップST12に進んで、テスト送電を通知し、ステップST13に進んで、テスト送電を開始する。ここで、テスト送電は、送電器1からテストのための比較的小電力の送電を行うことになる。
さらに、送電器1では、ステップST14において、送電電力P1を検出する。すなわち、送電器1において、送電制御部13は、送電共振コイル11aの電圧電流入力波形Fcを受け取って送電電力P1を検出できるようになっている。
そして、ステップST15に進んで、受電器2からの通知が有ったかどうかを判定、すなわち、受電器2からの通知が有るまで待って、受電器2からの通知が有ったと判定すれば、ステップST16に進む。
一方、受電器(2)では、送電器1のステップST12におけるテスト送電通知を受けて、ステップST21において、テスト送電を設定する。すなわち、受電器2において、例えば、通信回路部14および24による通信により、或いは、送電器1からのテスト送電用の電力を受信して、スイッチ26は、DC/DCコンバータ22bから負荷抵抗(電力検出用抵抗)27への接続切り替えを行う。
具体的に、受電制御部23からのスイッチ制御信号Ssに従ったスイッチ26の切り替えにより、受電共振コイル21aおよび整流回路22aを介して取り出した受電電圧Vrは、負荷抵抗27に印加される。このとき、負荷抵抗27の抵抗値(RL)は、受電制御部23からの抵抗値制御信号Srにより、例えば、小さい値から大きな値に変化するように可変制御される。
さらに、ステップST22に進んで、受電電圧Vrを検出したかどうかを判定し、受電電圧Vrを検出したと判定すると、ステップST23に進んで、受電電力P2および抵抗比(RL/R2)を通信(通信回路部24,14)により、送電器1へ伝える。すなわち、受電制御部23は、可変制御した負荷抵抗27の抵抗値(RL)を認識しているので、RL/R2の値および受電電力P2を算出し、通信により、送電器1の送電制御部13に通知することができる。
送電器1では、この受電器2からの通知を受け取ると、ステップST16において、kQ値の演算を行う。すなわち、送電器1の送電制御部13は、送電器1の送電電力P1,受電器2におけるRL/R2の値、および、受電器2の受電電力P2が分かるため、抵抗比RL/R2と測定効率(P2/P1)から受電器2のkQ値の演算を行うことができる。
具体的に、図12A〜図12Cを参照して説明した式(4)に対して、求めた測定効率(P2/P1)を効率ηとして適用し、さらに、求めた抵抗比RL/R2をRL/R2として、また、その逆数をR2/RLとして適用することで、kQ値を算出することができる。
なお、受電器2とのkQ値が求められると、送電制御部13のメモリに記憶されたQ1および受電制御部23のメモリに記憶されたQ2からQ値が分かるため、k値を演算することもできる。ここで、kQ値またはk値は、論理式を用いて算出することもできるが、例えば、予めテーブルを準備しておき、そのテーブルを利用して求めることも可能である。
さらに、送電器1では、ステップST17に進んで、検出精度が許容範囲かどうかを判定し、検出精度が許容範囲ではない(検出精度NG:No Good)と判定すると、ステップST14に戻って同様の処理を繰り返し、さらに、受電器2へ通知する。
すなわち、受電器2では、ステップST24において、本送電の通知ではないと判定し、ステップST25に進む。テップST25では、検出精度NGの通知であると判定し、ステップST26に進み、負荷抵抗27の抵抗値RLを、例えば、より大きな値に切り替え、或いは、可変制御し、ステップST22に戻って同様の処理を繰り返す。
一方、送電器1のステップST17において、検出精度が許容範囲内である(検出精度OK)と判定すると、ステップST19に進んで、本送電の設定/通知/開始を行って処理を終了する。すなわち、送電器1は、実際に、受電器2の二次電池25を充電するための本送電を開始し、その本送電の通知を、例えば、通信を介して受電器2伝える。
これを受けて、受電器2では、ステップST24において、本送電通知が有ったと判定し、ステップST27に進んで、本送電用の設定を行う。すなわち、受電器2において、例えば、通信により、或いは、送電器1からの本送電用の電力を受信して、スイッチ26は、負荷抵抗27からDC/DCコンバータ22bへの接続切り替えを行う。
具体的に、受電制御部23からのスイッチ制御信号Ssに従ったスイッチ26の切り替えにより、受電共振コイル21aおよび整流回路22aを介して取り出した受電電圧Vrは、DC/DCコンバータ22bに印加される。
なお、前述したように、例えば、無線電力伝送システムが複数の受電器を含む場合には、1つの受電器のみを順番にオンしてテスト送電を行い、それぞれの受電器とのkQ値を求めることになる。また、例えば、予めQ1値およびQ2値が分かっていれば、Q値を求めることができ、k値を算出することが可能である。そして、算出された複数の受電器とのkQ値またはk値は、給電方式の選択や複数の受電器のグループ化を始めとして、様々な制御に利用することができるのは前述した通りである。
ここに記載されている全ての例および条件的な用語は、読者が、本発明と技術の進展のために発明者により与えられる概念とを理解する際の助けとなるように、教育的な目的を意図したものである。
また、具体的に記載されている上記の例および条件、並びに、本発明の優位性および劣等性を示すことに関する本明細書における例の構成に限定されることなく、解釈されるべきものである。
さらに、本発明の実施例は詳細に説明されているが、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換および修正をこれに加えることが可能であると解すべきである。
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに、以下の付記を開示する。
(付記1)
少なくとも1つの送電器からの電力を、磁界共鳴または電界共鳴を利用して無線により受け取る受電器であって、
前記送電器からの電力を無線により受け取る受電コイルと、
前記受電コイルによる電力を使用する内部回路と、
前記受電コイルによる電力を検出する電力検出用抵抗と、
前記受電コイルによる受電電圧を、前記電力検出用抵抗に切り替えて印加するスイッチと、
前記電力検出用抵抗および前記スイッチを制御する受電制御部と、
前記送電器との間で、受電電力の検出情報および給電タイミング情報を含む通信を行う通信回路部と、を有する、
ことを特徴とする受電器。
(付記2)
前記受電制御部は、
前記電力検出用抵抗の抵抗値を制御し、前記受電コイルの抵抗値と前記電力検出用抵抗の抵抗値の抵抗比、並びに、前記受電コイルによる受電電圧から、前記受電電力を算出し、
算出された前記受電電力の検出情報を、前記通信回路部を介して前記送信回路に伝達する、
ことを特徴とする付記1に記載の受電器。
(付記3)
前記スイッチは、前記受電コイルによる受電電圧を、前記電力検出用抵抗および前記内部回路に切り替えて印加する、
ことを特徴とする付記1または付記2に記載の受電器。
(付記4)
前記電力検出用抵抗は、前記受電制御部により抵抗値が可変制御される可変抵抗であり、
前記スイッチは、受電コイルを、前記電力検出用抵抗と前記内部回路に切り替えて接続する、
ことを特徴とする付記3に記載の受電器。
(付記5)
前記電力検出用抵抗は、複数の抵抗素子を含み、
前記スイッチは、複数の前記抵抗素子のいずれかと、前記内部回路を切り替えて接続する、
ことを特徴とする付記3に記載の受電器。
(付記6)
前記受電コイルは、
前記送電器からの電力を無線により受け取る受電共振コイルと、
前記受電共振コイルからの電力を、電磁誘導を利用して受け取る電力取出コイルと、を含み、
前記スイッチは、
前記受電共振コイルによる第1受電電圧を、前記電力検出用抵抗に切り替えて印加する第1スイッチと、
前記電力取出コイルによる第2受電電圧を、前記内部回路に切り替えて印加する第2スイッチと、を含む、
ことを特徴とする付記1または付記2に記載の受電器。
(付記7)
前記受電制御部は、
前記受電コイルの損失を記憶するメモリを含む、
ことを特徴とする付記1乃至付記6のいずれか1項に記載の受電器。
(付記8)
前記内部回路は、二次電池を含み、
前記受電コイルによる電力を使用して前記二次電池を充電する、
ことを特徴とする付記1乃至付記7のいずれか1項に記載の受電器。
(付記9)
少なくとも1つの送電器、および、前記送電器からの電力を、磁界共鳴または電界共鳴を利用して無線により受け取る少なくとも1つの受電器を含む無線電力伝送システムであって、
前記受電器は、
前記送電器からの電力を無線により受け取る受電コイルと、
前記受電コイルによる電力を使用する内部回路と、
前記受電コイルによる電力を検出する電力検出用抵抗と、
前記受電コイルによる受電電圧を、前記電力検出用抵抗に切り替えて印加するスイッチと、
前記電力検出用抵抗および前記スイッチを制御する受電制御部と、
前記送電器との間で、受電電力の検出情報および給電タイミング情報を含む通信を行う第1通信回路部と、を有し、
前記送電器は、
前記受電器に対して、電力を無線により伝送する送電コイルと、
前記受電器に対する送電電力および前記受電器からの前記検出情報に基づいて、kQ値を算出する送電制御部と、
前記受電器との間で、前記検出情報および前記給電タイミング情報を含む通信を行う第2通信回路部と、を有する、
ことを特徴とする無線電力伝送システム。
(付記10)
前記受電器は、付記2乃至付記8のいずれか1項に記載の受電器である、
ことを特徴とする付記9に記載の無線電力伝送システム。
(付記11)
前記送電制御部は、
前記送電コイルの損失を記憶するメモリを含む、
ことを特徴とする付記9または付記10に記載の無線電力伝送システム。
(付記12)
少なくとも1つの送電器からの電力を、磁界共鳴または電界共鳴を利用して無線により受け取る受電器のkQ値を、前記送電器と前記受電器の間における、磁界または電界の結合の程度を示すk値と、磁界または電界の損失の程度を示すQ値の積として求めるkQ値算出方法であって、
前記受電器は、
前記送電器からの電力を無線により受け取る受電コイルと、
前記受電コイルによる電力を使用する内部回路と、
前記受電コイルによる電力を検出する電力検出用抵抗と、を有し、
前記電力検出用抵抗の抵抗値を制御し、前記受電コイルの抵抗値と前記電力検出用抵抗の抵抗値の抵抗比、並びに、前記受電コイルによる受電電圧から、受電電力を算出し、
前記送電器から出力する送電電力と前記受電電力から測定効率を算出し、
前記抵抗比および前記測定効率から、前記受電器のkQ値を算出する、
ことを特徴とするkQ値算出方法。
(付記13)
さらに、
前記受電器における前記受電コイルの損失、および、前記送電器における送電コイルの損失から前記Q値を算出し、
算出された前記kQ値からk値を算出する、
ことを特徴とする付記12に記載のkQ値算出方法。
(付記14)
前記kQ値の算出は、前記送電器から小電力を送電して行うテスト送電において行われる、
ことを特徴とする付記12または付記13に記載のkQ値算出方法。
(付記15)
前記kQ値の算出は、前記送電器において行われる、
ことを特徴とする付記12乃至付記14のいずれか1項に記載のkQ値算出方法。