本発明は、X線撮影装置に関し、透視画像にアノテーションを配置する技術に関する。
X線撮影装置は、取得したX線画像や静止画像である透視記録像において、操作者や医者が注目すべき部位や臓器にアノテーションを追加する機能を備えている(例えば、特許文献1)。アノテーションは例えば撮影時間や被検体情報を含むテキストや、矢印やスケールなどの図形である。このようなアノテーションを表示されたX線画像上に重畳表示することにより、読影時に必要な患者情報を提示したり、注目部位を観察しやすく、また大きさなどを判断しやすくすることができ、アノテーション機能は、X線撮影装置の重要な表示機能の一つである。
しかし、従来のアノテーション機能は検査後の静止画像や透視記録画像に限られており、被検体の動きや被検体とX線検出器との関係で画像が時々刻々変化する透視画像については、リアルタイムでアノテーションを配置することはできない。このため透視中にはアノテーション表示による利便性を享受することができなかった。
本発明は、透視中に、画像に追従して移動するアノテーションを配置することができ、臨床現場での教育や手術中においてもアノテーションの情報を利用できる技術を提供することを課題とする。
本発明のX線撮影装置は、X線源と、前記X線源と対向して配置されたX線検出器と、前記X線検出器が検出したX線をもとにX線透視画像を生成する画像処理部と、前記画像処理部が生成したX線画像を表示する表示部と、前記X線検出器の位置または前記X線検出器に対する被検体位置を検出する位置検出部とを備え、前記画像処理部は、前記X線透視画像に所定のアノテーションを配置するアノテーション付加部を備え、前記アノテーション付加部は、前記位置検出部が検出したX線検出器の位置または被検体位置に追従して、前記X線透視画像に重畳するアノテーションの位置を更新する。
本発明によれば、アノテーションを画像の移動に追従させることで、画像が移動した場合にもアノテーションを配置した注目部位を見失うことがなく、検査効率を上げることができる。
第一実施形態のX線画像診断装置の全体概要図
図1のX線画像診断装置の画像処理部(画像処理装置)の機能ブロック図
第一実施形態のX線画像診断装置の動作を示すフロー図
(a)〜(c)は、FPD回転移動に伴うアノテーションの移動を説明する図
(a)〜(c)は、FPD水平移動に伴うアノテーションの移動を説明する図
(a)、(b)は、FPD反転に伴うアノテーションの移動を説明する図
図4のアノテーション回転を説明する図
2種類のアノテーションを表示した実施例を示す図
(a)〜(d)は、FPDと被検体距離の変化に伴うアノテーションの変更を説明する図
第三実施形態のX線画像診断装置の位置検出部の一例を示す図
第四実施形態のX線画像診断装置の画像処理部(画像処理装置)の機能ブロック図
第四実施形態における移動量算出方法を説明する図
第四実施形態のX線画像診断装置の動作を示すフロー図
(a)、(b)は、第五実施形態が適用されるトモシンセシスの概念を説明する図
第五実施形態におけるアノテーションの移動を説明する図
第五実施形態における高さ補正を説明する図
本実施形態に係るX線撮影装置は、X線源と、前記X線源と対向して配置されたX線検出器と、前記X線検出器が検出したX線をもとにX線透視画像を生成する画像処理部と、前記画像処理部が生成したX線画像を表示する表示部と、前記X線検出器の位置または前記X線検出器に対する被検体位置を検出する位置検出部とを備え、前記画像処理部は、前記X線透視画像に所定のアノテーションを配置するアノテーション付加部を備え、前記アノテーション付加部は、前記位置検出部が検出したX線検出器の位置または被検体位置に追従して、前記X線透視画像に重畳するアノテーションの位置を更新することを特徴とする。
また、前記X線源と前記X線検出器を支持する支持器を備え、前記位置検出部は前記支持器に備えられていることを特徴とする。
また、前記支持器に備えられた前記位置検出装置は、被検体に対する前記X線検出器の水平移動、回転、及び、前記X線源と前記X線検出器の反転、のいずれかを検出することを特徴とする。
また、前記位置検出部は、磁気発生器と当該磁気発生器が発生した磁気を検出する磁気検出器との組み合わせからなり、前記磁気発生器及び磁気検出器の一方は前記被検体が置かれる寝台装置に固定され、他方は前記X線検出器に固定されていることを特徴とする。
また、前記位置検出部は、前記画像処理部が生成したX線画像から特徴のある被検体領域を認識する画像認識部を備え、前記画像認識部が認識した領域の、前記X線透視画像における位置の変化から、前記X線検出器の位置または前記被検体位置を検出することを特徴とする。
また、前記アノテーション付加部は、前記X線画像上に種類の異なる第1及び第2のアノテーションを配置し、前記第1のアノテーションの位置は固定し、前記第2のアノテーションの位置を前記X線検出器の位置または被検体位置をもとに更新する。
また、前記第1のアノテーションは、テキスト情報を含み、前記第2のアノテーションは図形情報を含むことを特徴とする。
また、前記位置検出部は、被検体と前記X線検出器との間の距離を測定する距離測定部を備え、前記アノテーション付加部は、前記距離測定部が測定した距離に応じて、前記X線透視画像に配置するアノテーションの拡大率/縮小率を変更することを特徴とする。
また、前記画像処理部は、前記X線源から照射するX線の照射方向が異なる複数のX線画像を用いて、前記X線検出器からの距離が異なる複数のトモシンセシス画像を再構成する再構成部を備え、前記アノテーション付加部は、前記X線透視画像に配置したアノテーションの位置を、前記トモシンセシス画像の高さ情報を用いて補正することを特徴とする。
また、本実施形態に係るX線透視画像表示方法は、X線透視画像にアノテーションを配置し、前記X線透視画像の生成と平行して、X線検出器と被検体との相対位置の変化を検出し、検出した位置情報を用いて前記X線透視画像に配置したアノテーションの位置を更新することを特徴とする。
以下、本発明のX線撮影装置及びX線透視画像表示方法について図を用いて詳細に説明する。
本実施形態のX線撮影装置は、X線源(11、12)と、前記X線源と対向して配置されたX線検出器(13)と、前記X線検出器が検出したX線をもとにX線透視画像を生成する画像処理部(15)と、前記画像処理部が生成したX線画像を表示する表示部(16)と、前記X線検出器の位置または前記X線検出器に対する被検体位置を検出する位置検出部(20、25、155)とを備え、前記画像処理部は、前記X線画像に所定のアノテーションを配置するアノテーション付加部(151)を備え、前記アノテーション付加部は、前記位置検出部が検出したX線検出器の位置または被検体位置に追従して、前記X線透視画像に重畳するアノテーションの位置を更新する。
以下、X線画像診断装置を例に、図面を参照して本発明のX線撮影装置の各実施形態を詳述する。
<第一実施形態>
図1に、X線画像診断装置の全体概要図、図2に、図1のX線画像診断装置の画像処理部の機能ブロック図を示す。
図1に示すように、X線画像診断装置は、主として、X線発生装置11、X線管12、X線平面検出器13、寝台装置14、画像処理装置15、モニタ16及び操作部17を備えている。また本実施形態のX線画像診断装置100は、X線平面検出器13と画像処理装置(画像処理部)15との間に、X線平面検出器13からの出力を制御するFPD制御装置18が備えられている。操作部17は、モニタ16と一体のコンソールとして備えられていてもよいし、X線発生装置11や画像処理装置15などに有線または無線で接続された別個のスイッチや操作ボタンなどを備えた操作具、あるいはその両者でもよい。
X線発生装置11は、X線管12とともに、X線源として機能するものであり、撮影スイッチ111や透視スイッチ112を備え、これらスイッチがONの時に、X線管12が所定のX線量のX線を照射するための電気信号をX線管12に出力する。撮影スイッチ111は、単発のX線を照射するためのスイッチ、透視スイッチ112は、連続してX線を照射するためのスイッチで、撮影か透視かによってX線管12に出力される電圧、電流は異なる。X線管12は、X線発生装置11からの電気信号に応じたX線を発生する。
X線平面検出器13は、FPDのほかI.I(Image Intesifier)などの公知の検出器を用いることが可能であるが、本実施形態では、解像度が高くダイナミックが広いなどの利点の多いFPDを用いる。
X線管12とFPD13は、互いに対向して配置するように支持器19によって支持されている。支持器19として、例えば、支柱に対し円弧形状アーム、所謂Cアームを回転可能に備えたものを利用することができる。その場合、X線管12とFPD13は、Cアームの円弧上の180°離れた位置に固定され、Cアームを支柱に対し回転させることにより、上下反転させたり、寝台装置14に寝かせられた被検体30に対し、任意の角度を取ることができる。またFPD13は、そのX線照射面と平行な面内で回転可能にCアームに固定されている。これにより、被検体30に対する向きを変えることができる。
また支持器19は、寝台装置14に対し、X線管12及びFPD13を水平方向に移動する機構部(不図示)が備えられており、これら機構部によって、X線管12及びFPD13に対する被検体30の位置を水平方向或いは上下方向に変化させることができる。
支持器19には、上述した回転機構や水平移動の機構によるX線管12及びFPD13の位置変化を検出するための位置検出装置20が備えられている。具体的には、水平Cアームの回転を検出するCアーム回転検出器及びFPD13の回転を検出するFPD回転検出器が備えられている。これら回転検出器として、エンコーダ等の公知の角度センサを用いることができる。また水平方向の位置変化については、レーザー式、赤外線式、磁気式などの測距センサを用いることができる。
これら位置検出装置20が検出したFPD13の回転量や変位量は、画像処理装置15に送られ、ここでX線画像に配置されるアノテーションの位置を変更するために用いられる。
FPD制御装置18は、FPD13から出力される電気信号を用いて1フレーム毎の画像データを作成し、画像処理装置15に送る。透視の場合には、1フレーム毎に画像データを更新し、更新した画像データを画像処理装置15に送る。
画像処理装置15は、FPD制御装置18から送られる画像データを用いて表示用の画像データを作成し、モニタ16に表示させる。モニタ16はX線画像を表示するとともに、操作部17とともにGUI(グラフィックユーザーインターフェイス)を兼ねることができる。その場合、モニタ16には種々の処理に対応する画像と、操作部17の操作によって移動するポインタとが表示され、ポインタの操作で所望の処理に対応する画像を選択することにより当該処理を実行させることができる。
次に画像処理装置15の機能について、図2の機能ブロック図を用いて説明する。
画像処理装置15は、図2に示すように、アノテーション付加部151、付帯情報記憶部152、表示画像作成部153、GUI部154を有している。
アノテーション付加部151は、操作部17の操作によって、モニタ16に表示された画像データの所定の位置にアノテーションを配置するとともに、支持器19に備えられた位置検出装置20から送られるCアームやFPDの回転角度の変化、寝台装置14に対するFPD13の水平方向の移動量を入力し、これら位置に関する情報をもとに画像データに配置するアノテーションの位置を更新する。
付帯情報記憶部152は、X線画像以外に表示画面に表示されるオブジェクト、例えばアノテーションや枠線などの画像やテキストデータなどを格納する。
表示画像作成部153は、モニタ16の表示画面を制御し、FPD制御装置18から送られる画像データとともにアノテーションや被検体に関する情報などをモニタ16の画面に表示させる。
GUI部154は、モニタ16に表示されるGUIの図形や画像を記憶するとともに、GUIを介した操作部17の操作に応じて、所定の処理を行うようにアノテーション付加部151、表示画像作成部153、その他の画像処理装置の機能を制御する。
次に上記構成におけるX線撮影装置の動作について説明する。ここでは透視の場合を例に説明する。透視では、時系列で多数のX線画像を取得し、透視画像としてモニタ16に表示する。図3に動作の手順を示す。
まず被検体30を寝台装置14に寝かせた状態で、X線管12及びFPD13の支持器19を操作して、被検体30の所望の位置を挟んでX線管12及びFPD13を配置する。次いでX線管12からFPD13に向けてX線を照射する。FPD制御装置18は、FPD13から送られる1フレーム毎の画像データから画像データを作成し、画像処理装置15に送る。画像処理装置15はFPD制御装置18から送られる画像データに必要な枠線や付帯情報を重畳させて表示画像を作成し、モニタ16に出力される。X線管13から低X線量のX線照射が連続して行われ、FPD制御装置18は1フレーム毎に画像データを更新して画像処理装置15に送る。その結果、モニタ16にはフレームレートの時間分解能で動画が表示される(S101)。
操作者は、モニタ16に映し出される動画像の所望の位置にアノテーションを配置する(S102)。アノテーションの配置は、動画像とともにモニタ16に表示されているGUIを通して行うことができる。例えば、モニタ16の画面に、複数のアノテーション画像(アイコン)を表示する。操作者は操作部17(マウス等)の操作により、表示された複数のアノテーション画像から1ないし複数のアノテーション画像を選択し、画像上の任意の位置に移動させて表示させる。またアノテーションの種類によっては、それを選択するとアノテーションが画面の所定の位置に配置される。
図4及び図5に、画像上に配置したアノテーションの例を示す。図4(a)に示すアノテーション401は、矢印の図形からなり、被検体画像400の胸部(心臓)を指し示すように配置されている。図5(a)に示すアノテーション501は、スケールであり、被検体画像500の右側に配置されている。
透視が開始されると、画像処理装置15は、FPD13の位置情報も位置検出装置20から受信する(S103)。FPD13の位置に変化がない場合には、表示画像の位置も変化しないので、アノテーションも初期位置のまま透視が継続される。FPD13の位置が変化するとそれに伴い透視画像の位置も変化する(S104)。同時に、位置検出装置20が検出したFPD13の位置情報が画像処理装置15に送られ、アノテーション付加部151は、現在表示されているアノテーション画像の位置を受信したFPD13の位置情報に基づき移動する(S105)。透視が終了するまで(S106)、FPD13の移動に追従してアノテーションも移動する。
また初期状態(S102)で画像に配置されたアノテーションの位置やFPD13の回転量及び移動量によって、アノテーションが表示画面から外れる場合が生じる。その場合にはアノテーションも表示しない。そしてその後のFPD13の移動によって、最初にアノテーションを配置した画像位置に対応する被検体部位がFPD13の撮影範囲に含まれるようになった場合には、再度、その画像位置にアノテーションを配置する。
表示画面から外れることとなったアノテーションをその後のFPD13の移動等によって再度画面に表示させる機能は、最初にアノテーションを配置したときのFPD13の位置を基準値として、移動後のFPD13の位置を位置情報として取得することにより、容易に実現することができる。
なお図3では、透視画像上でアノテーションの配置(S102)を行う場合を説明したが、この処理は透視画像を一時的に静止画像とした状態、すなわちX線照射を停止した状態で行ってもよい。これにより処理の間の無駄な被曝をなくすことができる。
次に位置検出装置20から得られる位置情報の内容に応じたアノテーション移動処理の詳細を説明する。位置検出装置20から送られる位置情報には、FPD回転検出器が検出したFPD13の回転量、Cアーム回転検出器が検出したFPD13の反転の有無、測距センサが検出したFPD13の水平方向の移動量がある。それぞれの場合について、FPD13の移動に追従したアノテーションの移動の様子を、図4〜図6に示す。
図4は、FPD13の回転に追従したアノテーション401の移動を示している。図4(a)に示した初期状態から、FPD13が(b)に示すように反時計回りに角度θ回転すると、FPD13から送られる画像データは、FPD13の回転方向と逆方向にθ回転したものとなり、表示画像は(c)に示す画像410となる。ここで最初に被検体画像30の心臓近傍にアノテーション401を配置した場合、アノテーション401の一点P、例えば矢印の先端の画面における座標が変わらないとすると、アノテーション401は被検体画像410に対する位置が異なることになる。そこで画像処理装置15は、位置検出装置20からFPD13の回転角度θを入力すると、図7に示すように、FPD13の回転中心に対応する表示画像の中心に対し、FPD13の回転角度と同じ角度、アノテーション401の点Pの座標を移動させる。ここでFPD13の回転中心がFPD13の中心であるとすると、画像データの中心座標がアノテーション401を回転させる場合の回転中心となる。ここでは説明を簡単にするために、画像データの中心座標を(0,0)とする。
アノテーション401の点Pの座標の移動は、最初の点Pの座標をP1(x1、y1)とし、回転中心を通るy軸と、回転中心と点P1とを結ぶ線がなす角度をφとすると、θ回転した後の点Pの座標P2(x2、y2)は次式(1)、(2)で表される。
x2=Lsin(φ+θ) (1)
y2=Lcos(φ+θ) (2)
ただし、L=√(x12+y12)
このようにアノテーションが配置される座標を変化させることにより、アノテーションは画像の回転に追従して移動し、図4(c)に示すアノテーション411のように被検体画像に対する位置が維持される。
図5は、FPD13の水平移動に追従したアノテーション501の移動を示している。図5において、アノテーション501はスケールであるが、アノテーションが図4に示すような図形の場合も同様である。
図5(a)に示した初期状態から、FPD13が例えば被検体の体軸方向に沿って足側に移動したとすると、(b)に示すように、被検体画像510は、FPD13の移動方向と逆方向に、つまり画面の上方に移動する。このときアノテーション付加部151は、測距センサから水平移動距離(ここではY方向の距離:ΔY)を入力すると、この水平移動距離に対応する画像座標における距離(Δy)を算出し、次式(3)のようにアノテーション501を配置する位置を移動する。その結果、アノテーション511は被検体の画像とともに移動し、被検体に対し同じ位置に保たれる。なおスケールのように、x座標が固定されているアノテーションの場合には、y方向のFPD13移動のみに追従してアノテーションが移動されるが、図4に示すような矢印401の場合には、FPD13のx方向及びy方向の移動に追従してアノテーションも移動する(次式(3)及び(4))。
y2=y1+Δy (3)
x2=x1+Δx (4)
なお図5の実施例のように、透視像500上に、スケール501を配置した場合は、透視中の透視像の移動にリアルタイムで追従してスケール501を移動することにより、図5(c)に示すように、あたかも大きなスケール512を配置しているのと同じ効果が得られ、画面からはみ出るような大きさの被検体に関しても、大きさを測定することが可能となる。
図6は、FPD13の反転に追従したアノテーション601の移動を示している。図6(a)は被検体30の上側にX線管12、下側にFPD13が配置されている場合(オーバーチューブ)で、ステップS102では、この状態の透視画像600にアノテーション601が配置されたとする。図6(b)は、(a)に対し、X線管12及びFPD13の位置が反転している状態(アンダーチューブ)を示している。(a)に示す初期状態から(b)に示すようにFPD13位置の反転があったことをCアーム回転検出部が検出し、その反転情報を画像処理装置15が入力すると、FPD13から送られる画像データ及び表示画像は左右が反転した画像610となる。
アノテーション付加部151は、反転情報を入力すると、アノテーションの点Pを座標(x1、y1)から座標(−x1、y1)に移動する。これによりアノテーション611はFPD13が反転しても、被検体30に対し初期状態(a)と同じ位置に配置される。
以上、説明したように、本実施形態によれば、画像上のどこにアノテーションを配置しても透視画像の所定位置とアノテーションとを一体化して表示させることができる。
なお図4〜図6では、それぞれ、回転、水平移動、反転が独立して行われた場合を示しているが、FPD13の移動がこれらの組み合わせである場合にも、式(1)や式(2)を組み合わせることにより、FPD13の移動に追従したアノテーションの移動が可能である。
また図4〜図6では、1種のアノテーションを表示させる場合を示しているが、種類の異なる複数のアノテーションを表示させることも可能である。例えば、図4に示す矢印401と図5に示すスケール501を同じ画面上に配置してもよい。この場合、矢印401はFPD13の水平移動に追従して水平移動させるが、スケール501は上下方向のみに移動するほうにしてよい。
さらに、FPD13に追従させるアノテーションの他に、画面上の固定された位置に別のアノテーションを表示させることも可能である。図8に2種類のアノテーションを表示した実施例を示す。この実施例では、被検体画像800の所定の位置に関連付けられたアノテーション(矢印)801と、画像に追従しないアノテーション802とが配置されている。アノテーション802は、常に表示しておきたい情報、例えば被検体情報やコメントなどのテキスト情報をブロック内に表示したものであり、図示する実施例では画面の右下の固定した位置に配置されている。
アノテーション801(811)は、右側の図に示すように、画像が800から810へ移動するのに追従して移動するが、アノテーション802(812)は固定した位置にあり移動しない。
<第二実施形態>
本実施形態のX線撮影装置は、画像の拡大縮小にアノテーションを追従させる処理を行うことが特徴である。
X線撮影装置および画像処理装置の構成は、図1及び図2に示す第一実施形態の構成と同様であり、本実施形態でもこれら図面を援用する。以下、異なる点を中心に説明する。
本実施形態のX線撮影装置は、FPD13と被検体30との距離を変更する機構が備えられている。このような機構は、支持器19に備えられていてもよいし、寝台装置14に備えられていてもよいが、以下では寝台装置14に備えられている場合を説明する。寝台装置14に備えられた垂直移動機構は、寝台装置14を上下動することで、寝台に寝かせられた被検体30とFPD13との距離を調整することができる。この垂直移動機構には、上下の移動量を検出する位置検出装置20が備えられている。位置検出装置20としては、第一実施形態において水平方向の移動量を検出した測距センサなどを用いてもよいし、上下位置の変位に要したエネルギーを距離に変換する検出器などでもよい。画像処理装置15は透視の間、位置検出装置20が検出した上下の移動量を受信する。
図9(a)に示すように、被検体30とFPD13との距離が、例えば点線に記載した位置から実線で示した位置に変化し、FPD13に対し被検体30が離れると、被検体30の画像900(図9(b))は拡大され、図9(c)に示すようになる(画像910)。画像の拡大率は、x方向及びy方向についても同一であり、拡大前の被検体30とFPD13との距離d1、拡大後の被検体30とFPD13との距離d2を用いて求めることができる。
アノテーション付加部151は、位置検出装置20が検出した被検体30とFPD13との距離d1、d2を用いて、図9(a)の画面でアノテーション901を配置した位置から上下移動後に移動すべき位置の座標を算出し、算出した位置にアノテーション901を移動する。距離の検出とアノテーション901の移動は、透視中に所定のタイミングで連続して行われるので、距離の変化による画像の拡大とアノテーションの移動は連動する。従って、動画上では被検体像上の同一位置にアノテーション901が固定したまま画像が拡大する様子が表示される。
被検体30とFPD13との距離が縮まるように寝台装置14の垂直移動機構が動作した場合にも、同様であり、表示画像910が図9(c)の状態から図9(b)の状態に縮小し、それに伴ってアノテーション911が移動し、アノテーション901(911)は被検体画像900(910)に対しては固定した関係を保つことができる。
また図9(c)に示す状態からさらに拡大し図9(d)に示す状態になった場合には、アノテーション921は表示画面から外れ、表示されない。しかし画像を再度縮小したときには、被検体画像の所定位置に配置された状態で再度表示されることは第一実施形態と同様である。
また拡大或いは縮小した任意の画面において、FPD13の水平移動や回転があった場合には、第一実施形態と同様に、アノテーション901を水平移動或いは回転させることができる。
<第三実施形態>
本実施形態は、X線管12及びFPD13を支持する支持器19が寝台装置14と接続されておらず、自由に移動できるX線撮影装置に好適に適用される。このようなX線撮影装置の場合、支持器19からFPD13の位置情報を取得することができない。そこで本実施形態は、FPD13の位置情報を支持器19から独立して配置された位置検出装置から取得する。位置検出装置として、例えば、磁気発生器と当該磁気発生器が発生した磁気を検出する磁気検出器との組み合わせを用いることができる。
以下、第一実施形態と異なる点を中心に本実施形態を説明する。本実施形態のX線撮影装置が備える位置検出装置25の一実施例を図10に示す。図10に示す実施例では、寝台装置14の上面の四隅に磁気発生器251を配置し、FPD13(例えば、その中心)に磁気センサ252を配置する。磁気センサ252は、寝台装置14の四隅に備えられた磁気発生器251が発生する磁気の強さと方向を検出し、各磁気発生器251に対する磁気センサ252の位置を検出することができる。
例えば、寝台装置14の中心を磁気センサ252の基準位置としたとき、磁気発生器251A、251Bからの磁気の強さと、磁気発生器251C、251Dからの磁気の強さとの比の変化から、基準位置に対する紙面の上下方向の移動量を検出することができる。同様に磁気発生器251A、251Cからの磁気の強さと、磁気発生器251B、251Dからの磁気の強さとの比の変化から、基準位置に対する紙面の左右方向の移動量を検出することができる。
磁気センサ252が検出した寝台装置14(被検体)に対するFPD13の移動量に対応する電気信号は、X線撮影装置の画像処理装置15に入力される。画像処理装置15のアノテーション付加部151が、入力したFPD13の移動量をもとに動画(透視画像)に添付したアノテーションを追従移動することは、第一実施形態と同様である。またX線管12とFPD13との反転については、支持器19から情報を得ることができる。
被検体とFPD13との距離については、例えば、寝台装置14に配置した4つの磁気発生器251からの磁気総量の増減から、寝台装置14に対するFPD13の垂直方向の移動量を検出することができる。垂直方向の移動量を用いることにより、第二実施形態と同様に画像の拡大縮小に対応してアノテーション位置を移動することができる。
本実施形態によれば、寝台装置14に対し独立して移動可能なX線管12及びFPD13を備えたX線撮影装置においても、被検体30とFPD13との相対的な位置の変化を検出し、その検出結果を用いて透視画像に配置したアノテーションを画像に追従させることができる。
<第四実施形態>
本実施形態は、FPD13の位置情報を支持器19に備えられた位置検出装置や磁気検出器から得るのではなく、画像処理装置が画像処理によって検出することを特徴とする。
図11に、本実施形態のX線撮影装置の画像処理装置の機能ブロック図を示す。図11において、図2と同じ要素は同じ符号で示し、説明を省略する。図11に示すように画像処理装置15は、アノテーション付加部151、付帯情報記憶部152、表示画像作成部153、GUI部154、画像認識部155を有している。
画像認識部155は、操作部17の操作により指定された画像上の特徴的な形状を持つ部分(以下、特徴領域)を検出し、位置を記録する。特徴領域の指定は、例えば、透視画像にアノテーションを配置するときに、操作部17により領域を指定して行うことができる。
特徴領域は、アノテーションを配置した位置の周囲(近傍)や画像の中心近傍であることが好ましい。ただし、アノテーションを配置した位置の周囲や画像の中心近傍に特徴的な形状を持つ部分がない場合には、それ以外の部分を指定してもよい。また特徴領域は1か所でもよいが、2か所以上を指定してもよい。特徴領域を2か所以上に指定した場合には、FPDの移動によって1か所が画像データから外れても、他の特徴領域が画像データに含まれていれば位置の検出が可能となる。またアノテーションが画面外に一度外れたとしても、画面内に戻ってきた場合は再度アノテーションの表示が可能となる。さらに2か所以上の特徴領域を記録することにより、FPDの水平移動のみならず、回転を検出することも可能となる。
特徴領域の検出は、FPD制御装置18から送られてくる各フレームの画像データについて行う。この場合、特徴領域の画像自体を画像認識技術により行ってもよいし、特徴領域の画像について画素値の特徴量やプロファイルの特徴量などを抽出し、抽出した特徴量によって特徴領域を認識するようにしてもよい。
画像認識部155は、さらに、認識した特徴領域の位置情報(例えば特徴領域の中心の座標)と、最初に指定した特徴領域の位置情報を用いて、特徴領域の移動量(方向と大きさ)を算出する。特徴領域をアノテーションの周辺に指定した場合には、特徴領域の移動方向及び移動量は、アノテーションを配置した位置の移動方向及び移動量と同じであるとみなせる。また図12に示すように、最初に指定した特徴領域が2か所Q11、Q12の場合には、Q11とQ12とを結ぶ線分L1に対するアノテーション配置位置P1と、移動後の位置Q21とQ22とを結ぶ線分L2に対する位置P2とが同じになる位置を位置P2として算出する。
本実施形態のX線撮影装置の動作を、図13に示すフローを参照して説明する。図12において、図3と同じ処理は同じ符号で示す。透視が開始されると(S101)、操作部17の操作に応じて、アノテーション付加部151が透視画像上の所定の位置にアノテーションを配置する(S102)。また操作部17の操作に応じて、アノテーションを配置した位置の周辺に特徴領域を指定する(S201)。画像認識部155は、指定された特徴領域の画像パターンや特徴量などを算出し、その座標とともに記憶する。その後、透視の継続(S103)と並行して、各フレームの画像毎に特徴領域の検出を行い、最初に指定した特徴領域の位置からの移動量を算出する(S202)。
特徴領域が移動した場合には(S203)、アノテーション付加部151は画像認識部155が算出した移動量と同じ移動量分、アノテーションを移動する。これにより第一実施形態と同様に、リアルタイムでアノテーションをFPDの水平移動に追従させることができる。但し、アノテーションがスケールのように、画像の邪魔にならない画面の片側に配置されるものである場合には、例えば画面のy方向の移動のみを行う。
図13のフローでは、アノテーションの配置(S102)と特徴領域の指定(S201)を透視画像上で行う場合を説明したが、これらの処理は透視画像を一時的に静止画像とした状態、すなわちX線照射を停止した状態で行うことにより、被曝を低減することができる。
本実施形態においても、2種類以上のアノテーション、例えば位置を固定したアノテーションとFPDの移動に連動するアノテーションとを併用できることは第一実施形態と同様である。この場合には、一方のみをFPDに追従移動させる。
本実施形態によれば、X線撮影装置が位置検出装置20を備えない場合にも適用することができ、また磁気検出器などの追加も不要にすることができる。
<第五実施形態>
本実施形態は、本発明をトモシンセシスに適用した実施形態である。装置の基本構成は図1及び図2又は図12に示す構成と同じであり、以下の説明では、必要に応じてこれら図面に記載された要素を引用する。
まず図14及び図15を参照して、トモシンセシスの概念と、トモシンセシスへの適用について説明する。
図14(a)に示すように、X線管12からX線を照射して、被検体のX線画像を得た場合、X線の照射方向については、透過X線の積分された値が検出される。従ってX線の照射方向に重なった被検体の部位141、142、143は、重なったまま画像化される(画像241、242、243)。FPD13に対するX線の照射方向を異ならせた場合、図14(b)に示すように、FPD13からの高さの違いに応じて、重なった部位にずれが生じる(画像341、342、343)。トモシンセシスは、X線の照射方向を異ならせた複数の画像から、高さの異なる面の画像を再構成する技術である。高さ毎に得られる再構成画像は、トモシンセシス画像と呼ばれる。
本実施形態では、図15に示すように、トモシンセシス撮影によって得られた複数のトモシンセシス画像451、452にアノテーション455を配置し、このアノテーションをその後の透視画像450に配置する。その際、アノテーションを配置したトモシンセシス画像がそれぞれ持つ高さ情報を用いて、アノテーションの位置情報を補正する。アノテーションの位置情報を、X線管及びFPDの支持器19に備えられた位置検出装置20または磁気検出器25から、或いは、画像処理装置15の画像認識部や移動量算出部から、得ることは第一〜第四実施形態と同様である。
図16に示すように、FPD13からの高さが高さhの画像451(図15)にアノテーション455を配置したとし、この時のアノテーションの所定の一点P(例えば矢印の先端)の座標をx1とする。X線管12及びFPD13が被検体30に対し、−x方向にΔx0移動した場合、画像上でFPD13に近い部分の移動量はFPD13の移動量とほぼ同じとみなすことができ、その場合、アノテーション455を座標x1+Δx0にすれば、アノテーション455はFPD13の移動に追従する。一方、ΔFPD13からの高さがhである画像451におけるアノテーション配置位置の移動量Δx(h)は、それより多く、具体的には次式(5)で表される。
Δx(h)=Δx0{L/(L−h)} (5)
式中、Lはx線管12とFPD13との距離を表す。
式(5)は高さの関数であり、高さで補正された移動量である。FPD13の移動方向と画像の移動方向は逆になるという関係があるので、画像451に配置したアノテーション455をFPD13の移動方向と逆方向に式(5)で求められる移動量Δx(h)移動することにより、アノテーションがFPDを追従することになる。FPDからの高さが画像451とは異なる画像452(図15)に配置されたアノテーション456についても同様に式(5)から移動量を算出することができる。
このように本実施形態によれば、FPD13からの高さによる補正が施されたFPD追従移動が可能となる。
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の特徴は静止画像以外の画像について配置したアノテーションを画像の位置変化に追従させることを基本とするものであり、各実施形態に限定されるものではないし、また各実施形態を適宜組み合わせたり、各実施形態の一部の機能を省略することも可能である。
また本発明の機能を実現する装置構成についても適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態では、本発明の特徴的な機能を、主として画像処理装置で実現する場合を説明したが、画像処理装置やそれを構成する各部の名称に限定されず、CPU内に同様の処理を行う要素を設けることは可能である。
本発明によれば、アノテーションの機能を有効に利用することができるX線撮影装置が提供される。
11 X線発生装置、12 X線管、13 X線平面検出器(FPD)、14 寝台装置、15 画像処理装置、16 モニタ、17 操作部、18 FPD制御装置、19 支持器、20、25 位置検出装置、30 被検体、151 アノテーション付加部、152 付帯情報記憶部、153 表示画像作成部、154 GUI部、155 画像認識部。
本発明は、X線撮影装置に関し、X線透視画像にアノテーションを配置する技術に関する。
X線撮影装置は、取得した静止画像や透視記録画像において、操作者や医者が注目すべき部位や臓器にアノテーションを追加する機能を備えている(例えば、特許文献1)。アノテーションは例えば撮影時間や被検体情報を含むテキストや、矢印やスケールなどの図形である。このようなアノテーションを表示されたX線画像上に重畳表示することにより、読影時に必要な患者情報を提示したり、注目部位を観察しやすく、また大きさなどを判断しやすくすることができ、アノテーション機能は、X線撮影装置の重要な表示機能の一つである。
しかし、従来のアノテーション機能は検査後の静止画像や透視記録画像に限られており、被検体の動きや被検体とX線検出器との関係で画像が時々刻々変化する透視画像については、リアルタイムでアノテーションを配置することはできない。このため透視中にはアノテーション表示による利便性を享受することができなかった。
本発明は、透視中に、画像に追従して移動するアノテーションを配置することができ、臨床現場での教育や手術中においてもアノテーションの情報を利用できる技術を提供することを課題とする。
本発明のX線撮影装置は、X線源と、前記X線源と対向して配置されたX線検出器と、前記X線検出器が検出したX線をもとにX線透視画像を生成する画像処理部と、前記画像処理部が生成したX線透視画像を表示する表示部と、前記X線検出器の位置または前記X線検出器に対する被検体位置を検出する位置検出部とを備え、前記画像処理部は、前記X線透視画像に所定のアノテーションを配置するアノテーション付加部を備え、前記アノテーション付加部は、前記位置検出部が検出したX線検出器の位置または被検体位置に追従して、前記X線透視画像に重畳するアノテーションの位置を変更する。
本発明によれば、アノテーションを画像の移動に追従させることで、画像が移動した場合にもアノテーションを配置した注目部位を見失うことがなく、検査効率を上げることができる。
第一実施形態のX線画像診断装置の全体概要図
図1のX線画像診断装置の画像処理部(画像処理装置)の機能ブロック図
第一実施形態のX線画像診断装置の動作を示すフロー図
(a)〜(c)は、FPD回転移動に伴うアノテーションの移動を説明する図
(a)〜(c)は、FPD水平移動に伴うアノテーションの移動を説明する図
(a)、(b)は、FPD反転に伴うアノテーションの移動を説明する図
図4のアノテーション回転を説明する図
2種類のアノテーションを表示した実施例を示す図
(a)〜(d)は、FPDと被検体距離の変化に伴うアノテーションの変更を説明する図
第三実施形態のX線画像診断装置の位置検出部の一例を示す図
第四実施形態のX線画像診断装置の画像処理部(画像処理装置)の機能ブロック図
第四実施形態における移動量算出方法を説明する図
第四実施形態のX線画像診断装置の動作を示すフロー図
(a)、(b)は、第五実施形態が適用されるトモシンセシスの概念を説明する図
第五実施形態におけるアノテーションの移動を説明する図
第五実施形態における高さ補正を説明する図
本実施形態に係るX線撮影装置は、X線源と、前記X線源と対向して配置されたX線検出器と、前記X線検出器が検出したX線をもとにX線透視画像を生成する画像処理部と、前記画像処理部が生成したX線透視画像を表示する表示部と、前記X線検出器の位置または前記X線検出器に対する被検体位置を検出する位置検出部とを備え、前記画像処理部は、前記X線透視画像に所定のアノテーションを配置するアノテーション付加部を備え、前記アノテーション付加部は、前記位置検出部が検出したX線検出器の位置または被検体位置に追従して、前記X線透視画像に重畳するアノテーションの位置を変更することを特徴とする。
また、前記X線源と前記X線検出器を支持する支持器を備え、前記位置検出部は前記支持器に備えられていることを特徴とする。
また、前記支持器に備えられた前記位置検出部は、被検体に対する前記X線検出器の水平移動、回転、及び、前記X線源と前記X線検出器の反転、のいずれかを検出することを特徴とする。
また、前記位置検出部は、磁気発生器と当該磁気発生器が発生した磁気を検出する磁気検出器との組み合わせからなり、前記磁気発生器及び磁気検出器の一方は前記被検体が置かれる寝台装置に固定され、他方は前記X線検出器に固定されていることを特徴とする。
また、前記位置検出部は、前記画像処理部が生成したX線透視画像から特徴のある被検体領域を認識する画像認識部を備え、前記画像認識部が認識した領域の、前記X線透視画像における位置の変化から、前記X線検出器の位置または前記被検体位置を検出することを特徴とする。
また、前記アノテーション付加部は、前記X線透視画像上に種類の異なる第1及び第2のアノテーションを配置し、前記第1のアノテーションの位置は固定し、前記第2のアノテーションの位置を前記X線検出器の位置または被検体位置をもとに変更する。
また、前記第1のアノテーションは、テキスト情報を含み、前記第2のアノテーションは図形情報を含むことを特徴とする。
また、前記位置検出部は、被検体と前記X線検出器との間の距離を測定する距離測定部を備え、前記アノテーション付加部は、前記距離測定部が測定した距離に応じて、前記X線透視画像に配置するアノテーションの拡大率/縮小率を変更することを特徴とする。
また、前記画像処理部は、前記X線源から照射するX線の照射方向が異なる複数のX線透視画像を用いて、前記X線検出器からの距離が異なる複数のトモシンセシス画像を再構成する再構成部を備え、前記アノテーション付加部は、前記X線透視画像に配置したアノテーションの位置を、前記トモシンセシス画像の高さ情報を用いて補正することを特徴とする。
また、本実施形態に係るX線透視画像表示方法は、X線透視画像にアノテーションを配置し、前記X線透視画像の生成と平行して、X線検出器と被検体との相対位置の変化を検出し、検出した位置情報を用いて前記X線透視画像に配置したアノテーションの位置を変更することを特徴とする。
以下、本発明のX線撮影装置及びX線透視画像表示方法について図を用いて詳細に説明する。
本実施形態のX線撮影装置は、X線源(11、12)と、前記X線源と対向して配置されたX線検出器(13)と、前記X線検出器が検出したX線をもとにX線透視画像を生成する画像処理部(15)と、前記画像処理部が生成したX線透視画像を表示する表示部(16)と、前記X線検出器の位置または前記X線検出器に対する被検体位置を検出する位置検出部(20、25、155)とを備え、前記画像処理部は、前記X線透視画像に所定のアノテーションを配置するアノテーション付加部(151)を備え、前記アノテーション付加部は、前記位置検出部が検出したX線検出器の位置または被検体位置に追従して、前記X線透視画像に重畳するアノテーションの位置を変更する。
以下、X線画像診断装置を例に、図面を参照して本発明のX線撮影装置の各実施形態を詳述する。
<第一実施形態>
図1に、X線画像診断装置の全体概要図、図2に、図1のX線画像診断装置の画像処理部の機能ブロック図を示す。
図1に示すように、X線画像診断装置は、主として、X線発生装置11、X線管12、X線平面検出器13、寝台装置14、画像処理装置15、モニタ16及び操作部17を備えている。また本実施形態のX線画像診断装置100は、X線平面検出器13と画像処理装置(画像処理部)15との間に、X線平面検出器13からの出力を制御するFPD制御装置18が備えられている。操作部17は、モニタ16と一体のコンソールとして備えられていてもよいし、X線発生装置11や画像処理装置15などに有線または無線で接続された別個のスイッチや操作ボタンなどを備えた操作具、あるいはその両者でもよい。
X線発生装置11は、X線管12とともに、X線源として機能するものであり、撮影スイッチ111や透視スイッチ112を備え、これらスイッチがONの時に、所定のX線量のX線を照射するための電気信号をX線管12に出力する。撮影スイッチ111は、単発のX線を照射するためのスイッチ、透視スイッチ112は、連続してX線を照射するためのスイッチで、撮影か透視かによってX線管12に出力される電圧、電流は異なる。X線管12は、X線発生装置11からの電気信号に応じたX線を発生する。
X線平面検出器13は、FPDのほかI.I(Image Intensifier)などの公知の検出器を用いることが可能であるが、本実施形態では、解像度が高くダイナミックが広いなどの利点の多いFPDを用いる。
X線管12とFPD(X線平面検出器)13は、互いに対向して配置するように支持器19によって支持されている。支持器19として、例えば、支柱に対し円弧形状アーム、所謂Cアームを回転可能に備えたものを利用することができる。その場合、X線管12とFPD13は、Cアームの円弧上の180°離れた位置に固定され、Cアームを支柱に対し回転させることにより、上下反転させたり、寝台装置14に寝かせられた被検体30に対し、任意の角度を取ることができる。またFPD13は、そのX線照射面と平行な面内で回転可能にCアームに固定されている。これにより、被検体30に対する向きを変えることができる。
また支持器19は、寝台装置14に対し、X線管12及びFPD13を水平方向に移動する機構部(不図示)が備えられており、これら機構部によって、X線管12及びFPD13に対する被検体30の位置を水平方向或いは上下方向に変化させることができる。
支持器19には、上述した回転機構や水平移動の機構によるX線管12及びFPD13の位置変化を検出するための位置検出装置20が備えられている。具体的には、水平Cアームの回転を検出するCアーム回転検出器及びFPD13の回転を検出するFPD回転検出器が備えられている。これら回転検出器として、エンコーダ等の公知の角度センサを用いることができる。また水平方向の位置変化については、レーザー式、赤外線式、磁気式などの測距センサを用いることができる。
これら位置検出装置20が検出したFPD13の回転量や変位量は、画像処理装置15に送られ、ここでX線透視画像に配置されるアノテーションの位置を変更するために用いられる。
FPD制御装置18は、FPD13から出力される電気信号を用いて1フレーム毎の画像データを作成し、画像処理装置15に送る。透視の場合には、1フレーム毎に画像データを更新し、更新した画像データを画像処理装置15に送る。
画像処理装置15は、FPD制御装置18から送られる画像データを用いて表示用の画像データを作成し、モニタ16に表示させる。モニタ16はX線透視画像を表示するとともに、操作部17とともにGUI(グラフィックユーザーインターフェイス)を兼ねることができる。その場合、モニタ16には種々の処理に対応する画像と、操作部17の操作によって移動するポインタとが表示され、ポインタの操作で所望の処理に対応する画像を選択することにより当該処理を実行させることができる。
次に画像処理装置15の機能について、図2の機能ブロック図を用いて説明する。
画像処理装置15は、図2に示すように、アノテーション付加部151、付帯情報記憶部152、表示画像作成部153、GUI部154を有している。
アノテーション付加部151は、操作部17の操作によって、モニタ16に表示された画像データの所定の位置にアノテーションを配置するとともに、支持器19に備えられた位置検出装置20から送られるCアームやFPD13の回転角度の変化、寝台装置14に対するFPD13の水平方向の移動量を入力し、これら位置に関する情報をもとに画像データに配置するアノテーションの位置を変更する。
付帯情報記憶部152は、X線透視画像以外に表示画面に表示されるオブジェクト、例えばアノテーションや枠線などの画像やテキストデータなどを格納する。
表示画像作成部153は、モニタ16の表示画面を制御し、FPD制御装置18から送られる画像データとともにアノテーションや被検体に関する情報などをモニタ16の画面に表示させる。
GUI部154は、モニタ16に表示されるGUIの図形や画像を記憶するとともに、GUIを介した操作部17の操作に応じて、所定の処理を行うようにアノテーション付加部151、表示画像作成部153、その他の画像処理装置の機能を制御する。
次に上記構成におけるX線撮影装置の動作について説明する。ここでは透視の場合を例に説明する。透視では、時系列で多数のX線透視画像を取得し、透視画像としてモニタ16に表示する。図3に動作の手順を示す。
まず被検体30を寝台装置14に寝かせた状態で、X線管12及びFPD13の支持器19を操作して、被検体30の所望の位置を挟んでX線管12及びFPD13を配置する。次いでX線管12からFPD13に向けてX線を照射する。FPD制御装置18は、FPD13から出力される電気信号を用いて1フレーム毎の画像データを作成し、画像処理装置15に送る。画像処理装置15はFPD制御装置18から送られる画像データに必要な枠線や付帯情報を重畳させて表示画像を作成し、モニタ16に出力される。X線管13から低X線量のX線照射が連続して行われ、FPD制御装置18は1フレーム毎に画像データを更新して画像処理装置15に送る。その結果、モニタ16にはフレームレートの時間分解能で動画が表示される(S101)。
操作者は、モニタ16に映し出される動画像の所望の位置にアノテーションを配置する(S102)。アノテーションの配置は、動画像とともにモニタ16に表示されているGUIを通して行うことができる。例えば、モニタ16の画面に、複数のアノテーション画像(アイコン)を表示する。操作者は操作部17(マウス等)の操作により、表示された複数のアノテーション画像から1乃至複数のアノテーション画像を選択し、画像上の任意の位置に表示させる。またアノテーションの種類によっては、それを選択するとアノテーションが画面の所定の位置に配置される。
図4及び図5に、画像上に配置したアノテーションの例を示す。図4(a)に示すアノテーション401は、矢印の図形からなり、被検体画像400の胸部(心臓)を指し示すように配置されている。図5(a)に示すアノテーション501は、スケールであり、被検体画像500の右側に配置されている。
透視が開始されると、画像処理装置15は、FPD13の位置情報も位置検出装置20から受信する(S103)。FPD13の位置に変化がない場合には、表示画像の位置も変化しないので、アノテーションも初期位置のまま透視が継続される。FPD13の位置が変化するとそれに伴い透視画像の位置も変化する(S104)。同時に、位置検出装置20が検出したFPD13の位置情報が画像処理装置15に送られ、アノテーション付加部151は、現在表示されているアノテーション画像の位置を受信したFPD13の位置情報に基づき移動する(S105)。透視が終了するまで(S106)、FPD13の移動に追従してアノテーションも移動する。
また初期状態(S102)で画像に配置されたアノテーションの位置やFPD13の回転量及び移動量によって、アノテーションが表示画面から外れる場合が生じる。その場合にはアノテーションも表示しない。そしてその後のFPD13の移動によって、最初にアノテーションを配置した画像位置に対応する被検体部位がFPD13の撮影範囲に含まれるようになった場合には、再度、その画像位置にアノテーションを配置する。
表示画面から外れることとなったアノテーションをその後のFPD13の移動等によって再度画面に表示させる機能は、最初にアノテーションを配置したときのFPD13の位置を基準値として、移動後のFPD13の位置を位置情報として取得することにより、容易に実現することができる。
なお図3では、透視画像上でアノテーションの配置(S102)を行う場合を説明したが、この処理は透視画像を一時的に静止画像とした状態、すなわちX線照射を停止した状態で行ってもよい。これにより処理の間の無駄な被曝をなくすことができる。
次に位置検出装置20から得られる位置情報の内容に応じたアノテーション移動処理の詳細を説明する。位置検出装置20から送られる位置情報には、FPD回転検出器が検出したFPD13の回転量、Cアーム回転検出器が検出したFPD13の反転の有無、測距センサが検出したFPD13の水平方向の移動量がある。それぞれの場合について、FPD13の移動に追従したアノテーションの移動の様子を、図4〜図6に示す。
図4は、FPD13の回転に追従したアノテーション401の移動を示している。図4(a)に示した初期状態から、FPD13が図4(b)に示すように反時計回りに角度θ回転すると、FPD13から送られる画像データは、FPD13の回転方向と逆方向にθ回転したものとなり、表示画像は図4(c)に示す被検体画像410となる。ここで最初に被検体画像400の心臓近傍にアノテーション401を配置した場合、アノテーション401の一点P、例えば矢印の先端の画面における座標が変わらないとすると、アノテーション401は被検体画像410に対する位置が異なることになる。そこで画像処理装置15は、位置検出装置20からFPD13の回転角度θを入力すると、図7に示すように、FPD13の回転中心に対応する表示画像の中心に対し、FPD13の回転角度と同じ角度、アノテーション401の点Pの座標を移動させる。ここでFPD13の回転中心がFPD13の中心であるとすると、画像データの中心座標がアノテーション401を回転させる場合の回転中心となる。ここでは説明を簡単にするために、画像データの中心座標を(0,0)とする。
アノテーション401の点Pの座標の移動は、最初の点Pの座標をP1(x1、y1)とし、回転中心を通るy軸と、回転中心と点P1とを結ぶ線がなす角度をφとすると、θ回転した後の点Pの座標P2(x2、y2)は次式(1)、(2)で表される。
x2=Lsin(φ+θ) (1)
y2=Lcos(φ+θ) (2)
ただし、L=√(x12+y12)
このようにアノテーションが配置される座標を変化させることにより、アノテーションは画像の回転に追従して移動し、図4(c)に示すアノテーション411のように被検体画像410に対する位置が維持される。
図5は、FPD13の水平移動に追従したアノテーション501の移動を示している。図5において、アノテーション501はスケールであるが、アノテーションが図4に示すような図形の場合も同様である。
図5(a)に示した初期状態から、FPD13が例えば被検体の体軸方向に沿って足側に移動したとすると、図5(b)に示すように、被検体画像510は、FPD13の移動方向と逆方向に、つまり画面の上方に移動する。このときアノテーション付加部151は、測距センサから水平移動距離(ここではY方向の距離:ΔY)を入力すると、この水平移動距離に対応する画像座標における距離(Δy)を算出し、次式(3)のようにアノテーション501を配置する位置を移動する。その結果、アノテーション511は被検体画像510とともに移動し、被検体に対し同じ位置に保たれる。なおスケールのように、x座標が固定されているアノテーションの場合には、y方向のFPD13移動のみに追従してアノテーションが移動されるが、図4に示すような矢印401の場合には、FPD13のx方向及びy方向の移動に追従してアノテーションも移動する(次式(3)及び(4))。
y2=y1+Δy (3)
x2=x1+Δx (4)
なお図5の実施例のように、被検体画像500上に、アノテーション(スケール)501を配置した場合は、透視中の透視像の移動にリアルタイムで追従してスケール501を移動することにより、図5(c)に示すように、あたかも大きなスケール512を配置しているのと同じ効果が得られ、画面からはみ出るような大きさの被検体に関しても、大きさを測定することが可能となる。
図6は、FPD13の反転に追従したアノテーション601の移動を示している。図6(a)は被検体30の上側にX線管12、下側にFPD13が配置されている場合(オーバーチューブ)で、ステップS102では、この状態の被検体画像600にアノテーション601が配置されたとする。図6(b)は、図6(a)に対し、X線管12及びFPD13の位置が反転している状態(アンダーチューブ)を示している。図6(a)に示す初期状態から図6(b)に示すようにFPD13位置の反転があったことをCアーム回転検出部が検出し、その反転情報を画像処理装置15が入力すると、FPD13から送られる画像データ及び表示画像は左右が反転した被検体画像610となる。
アノテーション付加部151は、反転情報を入力すると、アノテーションの点Pを座標(x1、y1)から座標(−x1、y1)に移動する。これによりアノテーション611はFPD13が反転しても、被検体30に対し初期状態図6(a)と同じ位置に配置される。
以上、説明したように、本実施形態によれば、画像上のどこにアノテーションを配置しても透視画像の所定位置とアノテーションとを一体化して表示させることができる。
なお図4〜図6では、それぞれ、回転、水平移動、反転が独立して行われた場合を示しているが、FPD13の移動がこれらの組み合わせである場合にも、式(1)〜式(4)を組み合わせることにより、FPD13の移動に追従したアノテーションの移動が可能である。
また図4〜図6では、1種のアノテーションを表示させる場合を示しているが、種類の異なる複数のアノテーションを表示させることも可能である。例えば、図4に示す矢印401と図5に示すスケール501を同じ画面上に配置してもよい。この場合、矢印401はFPD13の水平移動に追従して水平移動させるが、スケール501は上下方向のみに移動するほうにしてよい。
さらに、FPD13に追従させるアノテーションの他に、画面上の固定された位置に別のアノテーションを表示させることも可能である。図8に2種類のアノテーションを表示した実施例を示す。この実施例では、被検体画像800の所定の位置に関連付けられたアノテーション(矢印)801と、画像に追従しないアノテーション802とが配置されている。アノテーション802は、常に表示しておきたい情報、例えば被検体情報やコメントなどのテキスト情報をブロック内に表示したものであり、図示する実施例では画面の右下の固定した位置に配置されている。
アノテーション801(811)は、右側の図に示すように、被検体画像800から被検体画像810へ移動するのに追従して移動するが、アノテーション802(812)は固定した位置にあり移動しない。
<第二実施形態>
本実施形態のX線撮影装置は、画像の拡大縮小にアノテーションを追従させる処理を行うことが特徴である。
X線撮影装置および画像処理装置の構成は、図1及び図2に示す第一実施形態の構成と同様であり、本実施形態でもこれら図面を援用する。以下、異なる点を中心に説明する。
本実施形態のX線撮影装置は、FPD13と被検体30との距離を変更する機構が備えられている。このような機構は、支持器19に備えられていてもよいし、寝台装置14に備えられていてもよいが、以下では寝台装置14に備えられている場合を説明する。寝台装置14に備えられた垂直移動機構は、寝台装置14を上下動することで、寝台に寝かせられた被検体30とFPD13との距離を調整することができる。この垂直移動機構には、上下の移動量を検出する位置検出装置20が備えられている。位置検出装置20としては、第一実施形態において水平方向の移動量を検出した測距センサなどを用いてもよいし、上下位置の変位に要したエネルギーを距離に変換する検出器などでもよい。画像処理装置15は透視の間、位置検出装置20が検出した上下の移動量を受信する。
図9(a)に示すように、被検体30とFPD13との距離が、例えば点線に記載した位置から実線で示した位置に変化し、FPD13に対し被検体30が離れると、被検体30の被検体画像900(図9(b))は拡大され、図9(c)に示すようになる(被検体画像910)。被検体画像の拡大率は、x方向及びy方向についても同一であり、拡大前の被検体30とFPD13との距離d1、拡大後の被検体30とFPD13との距離d2を用いて求めることができる。
アノテーション付加部151は、位置検出装置20が検出した被検体30とFPD13との距離d1、d2を用いて、図9(a)の画面でアノテーション901を配置した位置から上下移動後に移動すべき位置の座標を算出し、算出した位置にアノテーション901を移動する。距離の検出とアノテーション901の移動は、透視中に所定のタイミングで連続して行われるので、距離の変化による画像の拡大とアノテーションの移動は連動する。従って、動画上では被検体像上の同一位置にアノテーション901が固定したまま画像が拡大する様子が表示される。
被検体30とFPD13との距離が縮まるように寝台装置14の垂直移動機構が動作した場合にも、同様であり、被検体画像910が図9(c)の状態から図9(b)の状態に縮小し、それに伴ってアノテーション911が移動し、アノテーション901(911)は被検体画像900(910)に対しては固定した関係を保つことができる。
また図9(c)に示す状態からさらに拡大し図9(d)に示す状態になった場合には、アノテーション921は表示画面から外れ、表示されない。しかし被検体画像を再度縮小したときには、被検体画像の所定位置に配置された状態で再度表示されることは第一実施形態と同様である。
また拡大或いは縮小した任意の被検体画像において、FPD13の水平移動や回転があった場合には、第一実施形態と同様に、アノテーション901を水平移動或いは回転させることができる。
<第三実施形態>
本実施形態は、X線管12及びFPD13を支持する支持器19が寝台装置14と接続されておらず、自由に移動できるX線撮影装置に好適に適用される。このようなX線撮影装置の場合、支持器19からFPD13の位置情報を取得することができない。そこで本実施形態は、FPD13の位置情報を支持器19から独立して配置された位置検出装置から取得する。位置検出装置として、例えば、磁気発生器と当該磁気発生器が発生した磁気を検出する磁気検出器との組み合わせを用いることができる。
以下、第一実施形態と異なる点を中心に本実施形態を説明する。本実施形態のX線撮影装置が備える位置検出装置25の一実施例を図10に示す。図10に示す実施例では、寝台装置14の上面の四隅に磁気発生器251(251A、251B、251C、251D)を配置し、FPD13(例えば、その中心)に磁気センサ252を配置する。磁気センサ252は、寝台装置14の四隅に備えられた磁気発生器251が発生する磁気の強さと方向を検出し、各磁気発生器251に対する磁気センサ252の位置を検出することができる。
例えば、寝台装置14の中心を磁気センサ252の基準位置としたとき、磁気発生器251A、251Bからの磁気の強さと、磁気発生器251C、251Dからの磁気の強さとの比の変化から、基準位置に対する紙面の上下方向の移動量を検出することができる。同様に磁気発生器251A、251Cからの磁気の強さと、磁気発生器251B、251Dからの磁気の強さとの比の変化から、基準位置に対する紙面の左右方向の移動量を検出することができる。
磁気センサ252が検出した寝台装置14(被検体)に対するFPD13の移動量に対応する電気信号は、X線撮影装置の画像処理装置15に入力される。画像処理装置15のアノテーション付加部151が、入力したFPD13の移動量をもとに動画(透視画像)に添付したアノテーションを追従移動することは、第一実施形態と同様である。またX線管12とFPD13との反転については、支持器19から情報を得ることができる。
被検体30とFPD13との距離については、例えば、寝台装置14に配置した4つの磁気発生器251からの磁気総量の増減から、寝台装置14に対するFPD13の垂直方向の移動量を検出することができる。垂直方向の移動量を用いることにより、第二実施形態と同様に画像の拡大縮小に対応してアノテーション位置を移動することができる。
本実施形態によれば、寝台装置14に対し独立して移動可能なX線管12及びFPD13を備えたX線撮影装置においても、被検体30とFPD13との相対的な位置の変化を検出し、その検出結果を用いて透視画像に配置したアノテーションを画像に追従させることができる。
<第四実施形態>
本実施形態は、FPD13の位置情報を支持器19に備えられた位置検出装置や磁気検出器から得るのではなく、画像処理装置が画像処理によって検出することを特徴とする。
図11に、本実施形態のX線撮影装置の画像処理装置の機能ブロック図を示す。図11において、図2と同じ要素は同じ符号で示し、説明を省略する。図11に示すように画像処理装置15は、アノテーション付加部151、付帯情報記憶部152、表示画像作成部153、GUI部154、画像認識部155を有している。
画像認識部155は、操作部17の操作により指定された画像上の特徴的な形状を持つ部分(以下、特徴領域)を検出し、位置を記録する。特徴領域の指定は、例えば、透視画像にアノテーションを配置するときに、操作部17により領域を指定して行うことができる。
特徴領域は、アノテーションを配置した位置の周囲(近傍)や画像の中心近傍であることが好ましい。ただし、アノテーションを配置した位置の周囲や画像の中心近傍に特徴的な形状を持つ部分がない場合には、それ以外の部分を指定してもよい。また特徴領域は1か所でもよいが、2か所以上を指定してもよい。特徴領域を2か所以上に指定した場合には、FPD13の移動によって1か所が画像データから外れても、他の特徴領域が画像データに含まれていれば位置の検出が可能となる。またアノテーションが画面外に一度外れたとしても、画面内に戻ってきた場合は再度アノテーションの表示が可能となる。さらに2か所以上の特徴領域を記録することにより、FPD13の水平移動のみならず、回転を検出することも可能となる。
特徴領域の検出は、FPD制御装置18から送られてくる各フレームの画像データについて行う。この場合、特徴領域の画像自体を画像認識技術により行ってもよいし、特徴領域の画像について画素値の特徴量やプロファイルの特徴量などを抽出し、抽出した特徴量によって特徴領域を認識するようにしてもよい。
画像認識部155は、さらに、認識した特徴領域の位置情報(例えば特徴領域の中心の座標)と、最初に指定した特徴領域の位置情報を用いて、特徴領域の移動量(方向と大きさ)を算出する。特徴領域をアノテーションの周辺に指定した場合には、特徴領域の移動方向及び移動量は、アノテーションを配置した位置の移動方向及び移動量と同じであるとみなせる。また図12に示すように、最初に指定した特徴領域が2か所Q11、Q12の場合には、Q11とQ12とを結ぶ線分L1に対するアノテーション配置位置P3と、移動後の位置Q21とQ22とを結ぶ線分L2に対する位置P4とが同じになる位置を位置P4として算出する。
本実施形態のX線撮影装置の動作を、図13に示すフローを参照して説明する。図13において、図3と同じ処理は同じ符号で示す。透視が開始されると(S101)、操作部17の操作に応じて、アノテーション付加部151が透視画像上の所定の位置にアノテーションを配置する(S102)。また操作部17の操作に応じて、アノテーションを配置した位置の周辺に特徴領域を指定する(S201)。画像認識部155は、指定された特徴領域の画像パターンや特徴量などを算出し、その座標とともに記憶する。その後、透視の継続(S103)と並行して、各フレームの画像毎に特徴領域の検出を行い、最初に指定した特徴領域の位置からの移動量を算出する(S202)。
特徴領域が移動した場合には、アノテーション付加部151は画像認識部155が算出した移動量と同じ移動量分、アノテーションを移動する。これにより第一実施形態と同様に、リアルタイムでアノテーションをFPDの水平移動に追従させることができる。但し、アノテーションがスケールのように、画像の邪魔にならない画面の片側に配置されるものである場合には、例えば画面のy方向の移動のみを行う。
図13のフローでは、アノテーションの配置(S102)と特徴領域の指定(S201)を透視画像上で行う場合を説明したが、これらの処理は透視画像を一時的に静止画像とした状態、すなわちX線照射を停止した状態で行うことにより、被曝を低減することができる。
本実施形態においても、2種類以上のアノテーション、例えば位置を固定したアノテーションとFPDの移動に連動するアノテーションとを併用できることは第一実施形態と同様である。この場合には、一方のみをFPDに追従移動させる。
本実施形態によれば、X線撮影装置が位置検出装置20、25を備えない場合にも適用することができ、また磁気検出器などの追加も不要にすることができる。
<第五実施形態>
本実施形態は、本発明をトモシンセシスに適用した実施形態である。装置の基本構成は図1及び図2又は図12に示す構成と同じであり、以下の説明では、必要に応じてこれら図面に記載された要素を引用する。
まず図14及び図15を参照して、トモシンセシスの概念と、トモシンセシスへの適用について説明する。
図14(a)に示すように、X線管12からX線を照射して、被検体のX線透視画像を得た場合、X線の照射方向については、透過X線の積分された値が検出される。従ってX線の照射方向に重なった被検体の部位141、142、143は、重なったまま画像化される(画像241、242、243)。FPD13に対するX線の照射方向を異ならせた場合、図14(b)に示すように、FPD13からの高さの違いに応じて、重なった部位にずれが生じる(画像341、342、343)。トモシンセシスは、X線の照射方向を異ならせた複数の画像から、高さの異なる面の画像を再構成する技術である。高さ毎に得られる再構成画像は、トモシンセシス画像と呼ばれる。
本実施形態では、図15に示すように、トモシンセシス撮影によって得られた複数のトモシンセシス画像451、452にアノテーション455を配置し、このアノテーションをその後の透視画像450に配置する。その際、アノテーションを配置したトモシンセシス画像がそれぞれ持つ高さ情報を用いて、アノテーションの位置情報を補正する。アノテーションの位置情報を、X線管12及びFPD13の支持器19に備えられた位置検出装置20または磁気検出器25から、或いは、画像処理装置15の画像認識部155や移動量算出部から、得ることは第一〜第四実施形態と同様である。
図16に示すように、FPD13からの高さが高さhの画像451(図15)にアノテーション455を配置したとし、この時のアノテーションの所定の一点P(例えば矢印の先端)の座標をx1とする。X線管12及びFPD13が被検体30に対し、−x方向にΔx0移動した場合、画像上でFPD13に近い部分の移動量はFPD13の移動量とほぼ同じとみなすことができ、その場合、アノテーション455を座標x1+Δx0にすれば、アノテーション455はFPD13の移動に追従する。一方、ΔFPD13からの高さがhである画像451におけるアノテーション配置位置の移動量Δx(h)は、それより多く、具体的には次式(5)で表される。
Δx(h)=Δx0{L/(L−h)} (5)
式中、LはX線管12とFPD13との距離を表す。
式(5)は高さの関数であり、高さで補正された移動量である。FPD13の移動方向と画像の移動方向は逆になるという関係があるので、画像451に配置したアノテーション455をFPD13の移動方向と逆方向に式(5)で求められる移動量Δx(h)移動することにより、アノテーションがFPDを追従することになる。FPDからの高さが画像451とは異なる画像452(図15)に配置されたアノテーション456についても同様に式(5)から移動量を算出することができる。
このように本実施形態によれば、FPD13からの高さによる補正が施されたFPD追従移動が可能となる。
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の特徴は静止画像以外の画像について配置したアノテーションを画像の位置変化に追従させることを基本とするものであり、各実施形態に限定されるものではないし、また各実施形態を適宜組み合わせたり、各実施形態の一部の機能を省略することも可能である。
また本発明の機能を実現する装置構成についても適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態では、本発明の特徴的な機能を、主として画像処理装置で実現する場合を説明したが、画像処理装置やそれを構成する各部の名称に限定されず、CPU内に同様の処理を行う要素を設けることは可能である。
本発明によれば、アノテーションの機能を有効に利用することができるX線撮影装置が提供される。
11 X線発生装置、12 X線管、13 X線平面検出器(FPD)、14 寝台装置、15 画像処理装置、16 モニタ、17 操作部、18 FPD制御装置、19 支持器、20、25 位置検出装置、30 被検体、151 アノテーション付加部、152 付帯情報記憶部、153 表示画像作成部、154 GUI部、155 画像認識部。