JPWO2015022883A1 - 光透過性に優れた生物材料を調製するための組成物およびその利用 - Google Patents

光透過性に優れた生物材料を調製するための組成物およびその利用 Download PDF

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Abstract

本発明は、アミノアルコールを、必要に応じて、尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物、非イオン性界面活性剤、ならびにスクロースからなる群より選択される少なくとも1つとともに用いることによって光透過性に優れた生物材料を提供する。本発明は、組織内での遺伝子の発現/局在や細胞形態のハイスループットな観察を全組織レベルで行うことができる技術を提供する。

Description

本発明は、光透過性に優れた生物材料を調製するための組成物およびその利用に関する。
近年、組織内遺伝子発現、細胞内局在、細胞形態の高度な観察を行うために、透明化試薬を用いて組織の光透過性を高める前処理(透明化処理)が行われており、種々の透明化試薬および前処理方法が開発されている。
非特許文献1および2には、ベンジルベンゾエート/ベンジルアルコール(benzylbenzoate/benzylalchol(BABB法))を用いた透明化処理技術が開示されている。BABB法は、有機溶媒を用いた古典的な組織透明化方法であり、シート照明マクロズーム顕微鏡(例えば、非特許文献3参照)に適用する透明化サンプルを作製する方法として応用されている。
非特許文献4には、フルクトースを用いて屈折率の調整を行う技術(SeeDB法)が開示されている。処理の間に生じる生体組織の変化を最小限に抑えることを主目的としているため、分子レベルの構造、膜構造、軸索の形状等がほぼ完全に保たれている。そして、2光子顕微鏡および最適化したレンズを用いることによって全脳レベルの観察が可能である。
非特許文献5には、電気泳動装置を用いた物理化学的な方法によって透明化を行う技術(CLARITY法)が開示されている。CLARITY法は、アクリルアミドポリマーを用いて固めた脳組織を、電気泳動装置を用いて物理化学的に処理して脂質成分を除去することによって透明化を実現する。組織内の分子レベルの構造が保たれた状態で、高度な透明化が約2週間で実現する。蛍光タンパク質ラベリング、免疫染色のいずれにも適応可能である。
非特許文献6には、水溶性試薬を用いることによって蛍光シグナルの消失を最小限に抑えることに成功した技術(Scale法)が開示されている。
Hans-Ulrich Dodt et al. "Ultramicroscopy: three-dimensional visualization of neuronal networks in the whole mouse brain" Nature Methods vol.4 no.4: 331-336 (2007) Klaus Becker et al. "Chemical Clearing and Dehydration of GFP Expressing Mouse Brains" PLoS ONE vol.7 issue 3: e33916 (2012) Philipp J. Keller et al. "Reconstruction of Zebrafish Early Embryonic Development by Scanned Light Sheet Microscopy" Science vol.322: 1065-1069 (2008) Meng-Tsen Ke et al. "SeeDB: a simple and morphology-preserving optical clearing agent for neuronal circuit reconstruction" advance online publication (published online 23 June 2013) Kwanghun Chung et al. "Structural andmolecularinterrogation of intact biological systems" Nature vol.497: 332-339 (2013) Hiroshi Hama et al. "Scale: a chemical approach for fluorescence imaging and reconstruction of transparent mouse brain" Nature Neuroscience vol.14 no.11: 1481-1490 (2011)
非特許文献1および2に記載のBABB法を用いれば、得られる透明化サンプルの透明度は高いものの、脱水処理および有機溶剤処理に起因して蛍光シグナルが急速に消失するという問題点を有している。また、BABB法は、三次元組織のままで免疫染色を行って透明化することは困難であり、しかも、有機溶媒を用いる点から、安全面で懸念される。
非特許文献4に記載のSeeDB法は、全脳レベルの観察が可能であるもののスキャンニングに数日間を要する。また、SeeDB法は、2光子顕微鏡を用いることが想定されているため、処理された組織(特に成体脳)の透明度は、シート照明マクロズーム顕微鏡に適応し得るほど高くない。
非特許文献5に記載のCLARITY法は、工程が煩雑でありかつ専用のデバイスを必要とするため、多サンプルの適応に向いていない。
非特許文献6に記載のScale法を用いた場合、透明度(特に成体脳)はシート照明系に適応し得るほど高くなく、また、Scale法は、透明化を達成するまでに週〜月単位の期間を必要とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、組織内での遺伝子の発現/局在や細胞形態のハイスループットな観察を、有機溶媒を用いることなく全組織レベルで行うための技術を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行なった。その結果、特定の化合物を特定の組合せにて用いることによって、ハイスループットな三次元イメージング系への適応が可能なレベルまで組織の光透過性を高めることができることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる試薬組成物は、光透過性に優れた生物材料を調製するために、アミノアルコールを含んでいることを特徴としている。本発明にかかる試薬組成物は、尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物、非イオン性界面活性剤、ならびにスクロースとからなる群より選択される少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。
本発明にかかる試薬キットは、光透過性に優れた生物材料を調製するために、アミノアルコールと、尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と、非イオン性界面活性剤とを含んでいる第一溶液、アミノアルコールと、尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と、スクロースとを含んでいる第二溶液を備えていることを特徴としている。本発明にかかる試薬キットにおいて、第二溶液は、非イオン性界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
本発明にかかる組成物は、上述した試薬組成物または試薬キットを製造するために、アミノアルコールを含んでいることを特徴としている。
本発明にかかるキットは、上述した試薬組成物または試薬キットを製造するために、アミノアルコールと、尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物、非イオン性界面活性剤、ならびにスクロースとからなる群より選択される少なくとも1つとを備えていることを特徴としている。
本発明にかかる光透過性に優れた生物材料を調製する方法は、アミノアルコールと、尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と、非イオン性界面活性剤とを含んでいる第一溶液を、生物材料に浸潤させる第一浸潤工程を包含することを特徴としている。
上記方法は、アミノアルコールと、尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と、スクロースとを含んでいる第二溶液を、生物材料に浸潤させる第二浸潤工程をさらに包含してもよい。第二溶液は、非イオン性界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
本発明にかかる生物材料は、上述した方法に従って調製されることによって光透過性に優れていることを特徴としている。
本発明にかかる免疫組織化学的アッセイは、上記いずれかの方法によって調製した生物材料を用いることを特徴としている。
本発明にかかる自己抗体と反応性のある組織部位を探索する方法は、上記免疫組織化学的アッセイを用いることを特徴としている。
本発明にかかる自己抗体に対する抗原を探索する方法は、上記免疫組織化学的アッセイを用いることを特徴としている。
本発明にかかる生化学的アッセイは、上記いずれかの方法によって調製した生物材料を用いることを特徴としている。
本発明は、化学的な処理をベースにした技術であり、特殊なデバイスの使用および手技の煩雑さがない。さらに、本発明は、多サンプルのハイスループットな解析を可能とするレベルにまで高度な透明化を簡便な処理にて実現することができる。
本発明の一実施例に関し、本発明を用いて処理したマウス全脳の光透過性を確認した結果を示す図である。 本発明の一実施例に関し、本発明を用いて処理してマウス全脳をスキャンニングした結果を示す図である。 本発明の一実施例に関し、本発明を用いて処理したマウス全脳の三次元での免疫組織化学的アッセイの結果を示す図である。 本発明の一実施例に関し、本発明を用いて処理したマウス血液を示す図である。 本発明の一実施例に関し、本発明を用いて処理したマウス各種組織の光透過性を確認した結果、および三次元での蛍光イメージングの結果を示す図である。
本発明者らは独自の観点に基づいた大規模なスクリーニングを行い、数種のアミノアルコール、非イオン性界面活性剤、および尿素を選択し、ハイスループットな組織イメージングを実現するための第一溶液を完成した。また、本発明者らは別の独自の観点に基づいて、スクロースを含む第二溶液を完成した。そして、これらの溶液が、従来公知の透明化試薬の効果よりも優れた効果を提供することを確認し、特に、二種類の溶液を組み合わせて用いた際の効果が極めて優れていることを見出した。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔1.組成物およびキット〕
本発明は、光透過性に優れた生物材料を調製するための試薬組成物を提供する。本発明にかかる試薬組成物は、アミノアルコールを含んでいる溶液であることを特徴としている。本発明にかかる試薬組成物は、尿素または尿素誘導体を含んでいてもよい。本発明にかかる試薬組成物は、スクロースを含まない組成物(第一溶液または第一試薬ともいう。)であっても、スクロースをさらに含む組成物(第二溶液または第二試薬ともいう。)であってもよく、前者の場合、非イオン性界面活性剤をさらに含むことが好ましく、後者の場合、非イオン性界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
本発明はまた、光透過性に優れた生物材料を調製するための試薬キットを提供する。本発明にかかる試薬キットは、アミノアルコールと尿素または尿素誘導体と、非イオン性界面活性剤とを含んでいる第一溶液、アミノアルコールと尿素または尿素誘導体とスクロースとを含んでいる第二溶液を備えていることを特徴としている。第二溶液は必要に応じて非イオン性界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
本発明はさらに、光透過性に優れた生物材料を調製するための試薬組成物を製造するための組成物を提供する。この態様において、本発明にかかる組成物は、アミノアルコールを含んでいることを特徴としている。
本発明はまた、光透過性に優れた生物材料を調製するための試薬組成物を製造するためのキットを提供する。この態様において、本発明にかかるキットは、アミノアルコールと、尿素または尿素誘導体と、必要に応じて非イオン性界面活性剤および/またはスクロースとを備えていることを特徴としており、上記試薬組成物を構成するに必要な溶媒をさらに備えていてもよい。
本明細書中において使用される場合、用語「キット」は、特定の材料(例えば構成成分)を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図される。キットは、各材料を使用するための指示書を備えていることが好ましい。本明細書中においてキットの局面において使用される場合、「備えた(備えている)」は、キットを構成する個々の容器のいずれかの中に上記材料が内包されている状態が意図される。また、本発明にかかるキットは、複数の異なる組成物を1つに梱包した包装であってもよく、上記組成物は、溶液形態の場合、複数の異なる容器中に内包されていてもよい。本発明にかかるキットは、その複数の構成要素を同一の容器に混合して備えていても別々の容器に備えていてもよい。「指示書」は、紙またはその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはテープ、CD−ROMなどのような電子媒体に付されてもよく、キットの用途を実現するための手順が記載されている。本発明にかかるキットはまた、希釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を内包した容器を備えていてもよい。さらに、本発明にかかるキットは、キットの用途を実現するための手順を実行するために必要な器具および試薬を備えていてもよい。
本発明において使用される場合、用語「光透過性」は、入射光に対して透過光がどの程度通過するか、または励起光照射による蛍光がどの程度通過し、また散乱が低いかの程度をいい、「光透過性に優れた」という表現は、一例として、観察対象への入射光に対する観察対象からの出射光(すなわち透過光)の割合が高いことをいう。光透過性は、例えば、入射光に対する透過光の割合について、光を遮断する物質(例えば黒色の厚みのあるプラスチックや金属など)の場合を0%とし、水のような透明な液体の場合を100%として、百分率で表わすことができる。一実施形態にかかる光透過性に優れた生物材料において、入射光に対する透過光の割合は、分光測色計を用いて測定した光透過率が40%以上であり、好ましくは、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、または99%以上である。
試薬組成物を製造するための上記の組成物またはキットを用いて本発明の試薬組成物または試薬キットを調製する手順は特に限定されず、各構成成分を溶媒に溶解すればよく、溶解する順序もまた限定されない。
本発明の適用対象となる生物材料の種類は特に限定されないが、植物由来の材料または動物由来の材料が好ましく、魚類、両生類、爬虫類、鳥類または哺乳類(哺乳動物)等の動物由来の材料がより好ましく、哺乳動物由来の材料が特に好ましい。また、哺乳動物の種類は特に限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒトを除く霊長類等の実験動物;イヌ、ネコ等の愛玩動物(ペット);ウシ、ウマ等の家畜;ヒト;が挙げられる。
また、生物材料は、個体そのものであってもよく(生きているヒト個体そのものは除く)、多細胞生物の個体から取得した器官、組織、体液(例えば、血液、唾液、血清、血漿、尿、滑液、髄液等)あるいは細胞であってもよい。生物は成体であってもよく胎仔であってもよい。本発明にかかる組成物は優れた透明化処理能力を有するので、生物材料が、多細胞動物由来の組織または器官(例えば、脳、心臓、肺、肝臓または腎臓の全体またはその一部)、あるいはヒトを除く多細胞動物の個体(例えば、胚等)そのものであっても透明化処理を適用可能である。
また、上記の生物材料は、顕微鏡観察用に固定化処理された材料であってもよく、固定化されていない材料であってもよい。なお、固定化された材料を用いる場合には、固定化処理後に、例えば20%(w/v)スクロース/PBS溶液に、充分に(例えば、24時間以上)浸漬する処理を行うことが好ましい。さらに、当該材料をOCT compundに包埋して液体窒素で凍結後、PBS中で解凍し、4%(w/v)パラホルムアルデヒド/PBS溶液で再度固定する処理を行うことが好ましい。なお、単位%(w/v)とは、溶液の体積(v(ミリリットル))に対する、使用する溶媒(スクロースまたはパラホルムアルデヒド)の重量(w(グラム))の百分率である。
上記生物材料は、具体的には例えば、蛍光性化学物質を注入した生体組織、蛍光性化学物質で染色を行った生体組織、蛍光タンパク質を発現した細胞を移植した生体組織、または蛍光タンパク質を発現した遺伝子改変動物の生体組織等であってもよい。
本発明を用いれば、生物材料の光透過性を顕著に高めることができるので、最新の顕微鏡技術と組み合わせることによってハイスループットな組織イメージングを可能とする。具体的には、
・蛍光タンパク質、蛍光物質のシグナルの消失が最小限に抑制される。
・多サンプル(数十個〜数百個)を同時に並行して処理することができる。
・シート照明顕微鏡との併用が実現する程度に高度な透明化が実現する。
・組織領域の構築に対する影響を最小限に抑制することができる。
また、本発明を用いれば、体液の光透過性を顕著に高めることができるので、体液中の色素の影響を排除した解析を行うことができる。
〔a.アミノアルコール〕
アミノアルコールは、水酸基とアミノ基を有する化合物である。アミノアルコールは、水性系ペイントにおける中和剤として使用されることがよく知られているが、それ以外に、インク組成物または医薬組成物の含有成分として用いられている。例えば、特開2011−12226号公報には、分散安定剤としてアミノアルコールを配合してなるインクジェット記録用インク組成物が開示されており、特開2009−221252号公報には、インク組成物にアミノアルコールを含有することで拭き取り性が向上することが開示されている。
Scale試薬にはアミノアルコールが用いられていない。また、アミノアルコールは、Scale試薬における任意成分である水溶性の高分子化合物(分子量が例えば5万〜6万程度以上の大きさであって、細胞内に実質的に侵入しないもの)でもグリセロール等の乾燥抑制成分でもない。上述した特開2011−12226号公報および特開2009−221252号公報に開示された組成物には、乾燥防止や湿潤の付与の観点からグリセリン(グリセロール)等の多価アルコール類が、アミノアルコールとともに含有されている。このことは、アミノアルコールおよびグリセリンがどちらもアルコールであるといえ、相補し得ない異なる機能を有しており、両者が併用されることがあったとしても置換可能といえないことを示している。そして、当業者はこのことを十分に認識している。
このように、アミノアルコールは、Scale試薬の組成として記載も示唆もされていないだけでなく公知の透明化試薬にも用いられていないので、光透過性に優れた生物材料を調製するための試薬にアミノアルコールを利用することは、当業者が容易に想到し得ることでない。
本発明に用いられるアミノアルコールは、アルカノールアミン(メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン等)であっても芳香族アミノアルコールであってもよく、これらは1級アルコール、2級アルコール、3級アルコールのいずれにも限定されない。本発明に好適に用いられるアミノアルコールとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリメチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエチルエタノールアミン、プロピルエタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、トリプロピルエタノールアミン、ブチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、トリブチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、プロピルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオールが挙げられる。また、N,N,N’,N’−テトラキス(1−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(1−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロチル)エチレンジアミンなどもまた、本発明に好適に用いられる。
一実施形態において、アミノアルコールは、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、またはN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンであることが好ましく、GFP等の蛍光タンパク質の観察に用いられる場合、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、または2−アミノ−1,3−プロパンジオールであることが好ましく、さらに、価格および安全性を考慮すると、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリエタノールアミンまたはトリイソプロパノールアミンであることが好ましく、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンまたはトリエタノールアミン(すなわち、2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール)がより好ましい。
〔b.尿素または尿素誘導体〕
本明細書中で使用される場合、「尿素または尿素誘導体」は尿素および種々の尿素誘導体の少なくとも1つであることが意図され、「尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物」と置換可能に用いられる。
上記尿素誘導体の種類は特に限定されないが具体的には例えば、各種のウレイン、または、下記の一般式(1)に示す化合物である。なお、一般式(1)に示す化合物には一部のウレインが含まれる。
一般式(1)に示す尿素誘導体において、R1、R2、R3、R4は、互いに独立に水素原子(但し、R1〜R4の全てが水素原子の場合は尿素自体に相当するので除かれる。)、ハロゲン原子、または炭化水素基であり、炭化水素基を構成する炭素原子が複数個ある場合には当該炭素原子の一部が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子により置換されていてもよい。炭化水素基としては、鎖状炭化水素基、および環状炭化水素基が含まれる。
上記鎖状炭化水素基として、例えば、鎖状アルキル基、鎖状アルケニル基、および鎖状アルキニル基等が例示される。鎖状炭化水素基を構成する炭素数は特に限定されないが、例えば、6以下の直鎖状または分岐状のものが挙げられ、好ましくは炭素数が1〜3のアルキル基である。鎖状炭化水素基は、例えば、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。鎖状アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
上記環状炭化水素基として、例えば、シクロアルキル基、およびシクロアルケニル基等が例示される。環状炭化水素基は、例えばハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、等の、炭素数が3以上、好ましくは6以下のものが挙げられる。シクロアルケニル基の例としては、シクロヘキセニル基等の、炭素数が3以上、好ましくは6以下のものが挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
また、一般式(1)に示す尿素誘導体のより好ましい具体例は、以下の1)〜2)に示す通りである。
1)R1〜R4より選択される任意の3つの基が水素原子であり、残りの1つの基がハロゲン原子、または炭素数1〜6以下の鎖状炭化水素基である。より好ましくは残りの1つの基が、炭素数1〜3、または炭素数が1〜2のアルキル基である。
2)R1〜R4より選択される任意の2つの基が水素原子であり、残りの2つの基が互いに独立にハロゲン原子、または炭素数1〜6以下の鎖状炭化水素基である。より好ましくは残りの2つの基が何れも、炭素数1〜3、または炭素数が1〜2のアルキル基である。なお、水素原子となる2つの基の一方はR1、R2の何れかから選ばれ、他方はR3、R4の何れかから選ばれることがより好ましい。
尿素は、毒性が極めて低い生体由来の成分である。そのため、本発明にかかる試薬組成物は、Scale試薬と同様に、固定化された生物材料はもとより、固定化されていない(生きた)生物材料の透明化にも用い得る。また、尿素は、蛍光タンパク質へのダメージ、およびその蛍光シグナルの消失が比較的少ないため、本発明にかかる試薬組成物は、Scale試薬と同様に、蛍光タンパク質を用いた生物材料の観察にも適用し得る。さらに、尿素は、極めて安価で入手容易でもあり、かつ取扱い性に優れるため、極めて低コストかつ簡単な手順での透明化処理を提供し得る。
また、本発明にかかる試薬組成物は、Scale試薬と同様に、上記の利点に加えて、光散乱性が高い不透明な生物材料の透明性を、従来の透明化試薬と比較して格段に向上させることができ、超深部組織に存在する種々の蛍光タンパク質および蛍光物質の観察が可能となる。特に脳組織では、これまで深部観察のバリアーであった白質層を透明化することが可能となり、白質層より深部に位置する領域(例えば脳梁)の観察が可能となる。さらに、本発明にかかる試薬組成物を用いる透明化処理は、Scale試薬を用いる場合と同様にある程度まで可逆的である。具体的には、透明化処理後の生物材料を、平衡塩類溶液に浸漬するだけで、透明化状態を解除し、保存や免疫組織化学的アッセイ、生化学的アッセイ等の用途に使用することが可能である。平衡塩類溶液とは、具体的には例えば、PBS、HBSSなどリン酸塩によって緩衝液化された平衡塩類溶液;トリス塩酸塩によって緩衝液化された平衡塩類溶液(TBS);人口脳脊髄液(ACSF);MEM,DMEM,及びHam’s F−12などの細胞培養用の基礎培地;等が挙げられる。透明化処理の前後においてタンパク質等の抗原性が変化されることなく保存されるため、通常の組織染色、および免疫染色の手法を用いた分析が可能である。
なお、尿素に代えて上記した尿素誘導体を用いる場合も、同様の利点が得られる。
本発明にかかる試薬組成物における「尿素」の含有量は、Scale試薬と同様に、生物材料の透明化処理が進展する限りにおいて特に限定されない。なお、「尿素」の含有量の上限は、使用する溶媒に対する尿素の溶解度により決定される。対象とする生物材料の種類にも依存するが、例えば、本発明にかかる試薬組成物における尿素の含有量が比較的少ない場合には処理時間を長くし、尿素の含有量が比較的多い場合には処理時間を短くすることで必要な透明化処理を行うことができる。透明化処理を様々な程度にて実現することができるという観点からは、1M以上、8.5M以下の範囲内の濃度であることが好ましく、3.5M以上、8.5M以下の範囲内の濃度であることがより好ましく、4M以上、8M以下の範囲内の濃度であることが特に好ましい。また、尿素に代えて尿素誘導体(または尿素と尿素誘導体との混合物)を用いる場合にも、尿素と同じ含有量に設定することができる。
〔c.非イオン性界面活性剤〕
非イオン性界面活性剤もまた、光透過性に優れた生物材料を調製するための試薬組成物の製造に使用されてもよく、得られた試薬組成物は、生物材料中の光散乱物質の除去に非常に有用である。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の脂肪酸系;ポリビニルアルコール等の高級アルコール系;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェノール系の界面活性剤が挙げられる。具体的には、例えば、Triton X−100、およびTriton X−140等のTriton X(登録商標)シリーズ;Tween−20、Tween−40、Tween−60、およびTween−80等のTween(登録商標)シリーズ;NP−40(商品名);からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられ、必要に応じて、二種以上を混合して使用されてもよい。
スクロースを含まない本発明にかかる試薬組成物(第一試薬ともいう。)に用いられる非イオン性界面活性剤の含有量は、5重量%以上であれば特に限定されないが、6重量%以上、25重量%以下の範囲内であることが好ましく、8重量%以上、20重量%以下の範囲内であることがより好ましく、10重量%以上、20重量%以下の範囲内であることがさらに好ましく、12重量%以上、20重量%以下の範囲内であることが特に好ましい。なお、単位重量%とは、試薬組成物の重量(w(グラム))に対する、使用する界面活性剤の重量(w(グラム))の百分率である。
界面活性剤は、Scale試薬における任意成分である。Scale試薬は、透明化処理が比較的困難な生物材料の透明化を行う場合に界面活性剤を含んでいることが好ましく、また、生物組織へのScale試薬の侵入を緩やかに向上させるという理由から、試薬中に必要に応じて非イオン性界面活性剤が含まれていてもよい。ただし、その含有量は主に0.05重量%以上、0.2重量%以下の範囲内で用いられており、本発明にかかる試薬組成物に用いられる非イオン性界面活性剤の含有量と大きく異なっている。
なお、非イオン性界面活性剤は、生物組織への本試薬の侵入を緩やかに向上させるので、スクロースを含む本発明にかかる試薬組成物(第二溶液ともいう。)に任意成分として含まれてもよい。本発明にかかる試薬組成物に用いられる非イオン性界面活性剤の含有量は、0.025重量%以上、5重量%以下の範囲内であることが好ましく、0.05重量%以上、0.5重量%以下の範囲内であることがより好ましく、0.05重量%以上、0.2重量%以下の範囲内であることが特に好ましい。
〔d.スクロース〕
スクロースもまた、光透過性に優れた生物材料を調製するための試薬組成物の製造に使用されてもよく、適用すべき生物材料の屈折率に合った屈折率の試薬を得るに非常に有用である。本明細書においてはスクロースについてのみ言及するが、スクロースと同様の屈折率調整効果を示す任意の物質を使用することができる。
当該分野において、スクロースは、一般に、組織固定液(例えばパラホルムアルデヒド溶液)と置換することによって固定された組織の損傷を防ぐために用いられ、その濃度は通常10重量%以上、30重量%以下の範囲内である。スクロースを含む本発明にかかる試薬組成物(第二溶液ともいう。)は、組織固定液と置換するために用いられるのでなく、好ましくは、固定された組織がスクロースによって置換された後に用いられ、より好ましくは、固定された組織がスクロースによって置換され、次いで、本発明にかかる第一溶液が適用された後に第二溶液として用いられる。
スクロースを含む本発明にかかる試薬組成物(第二試薬ともいう。)に用いられるスクロースの含有量は、30重量%以上であれば特に限定されないが、30重量%以上、80重量%以下の範囲内であることが好ましく、30重量%以上、70重量%以下の範囲内であることがより好ましく、40重量%以上、70重量%以下の範囲内であることがさらに好ましく、40重量%以上、60重量%以下の範囲内であることが特に好ましい。なお、単位重量%とは、第2の試薬の重量(w(グラム))に対する、使用するスクロースの重量(w(グラム))の百分率である。
〔e.溶媒〕
本発明にかかる試薬組成物に使用される溶媒の種類は、上述した有効成分を溶解し得る限り特に限定されないが、水を主溶媒として用いることが好ましく、水のみを溶媒として用いることが特に好ましい。なお、本発明において、「水を主溶媒として用いる」とは、使用される全溶媒に占める水の体積の割合が他の溶媒と比較して最も多いことを指し、好ましくは使用される全溶媒の体積の合計の50%を超え100%以下の量の水を用いることを指す。また、水を主溶媒として用いて調製された本発明にかかる試薬組成物を、水溶液としての試薬と称する。
なお、水を主溶媒として用いた場合には、例えば、固定化した標本にはジメチルスルホキシド(DMSO)を水と混合し用いてもよい。例えば固定化した標本にDMSOを混合して用いれば、生物材料に対する試薬の浸透性の向上、および角質表面を有する組織の透明化処理促進等の効果が期待される。
溶媒として水を用いる主な利点は、以下の通りである:
1)本発明にかかる試薬組成物の有効成分は水への溶解性に優れているため、本発明にかかる試薬組成物の調製が容易かつ低コストとなる;
2)有機溶媒を主溶媒として用いる場合と比較して、透明化処理時に処理対象となる生物材料の脱水を伴わない。そのため、生物材料が収縮するという問題を抑制可能となる;
3)有機溶媒を主溶媒として用いる場合と比較して、蛍光タンパク質に損傷を与える可能性が著しく低減される。そのため、透明化処理を受けた生物材料を、蛍光タンパク質を用いて観察可能となる;
4)固定化された材料に限定されず、生材料の透明化処理に適用可能となる;
5)後述するように透明化処理が可逆的となり、透明化処理後の生体試料を必要に応じて透明化処理前の状態に戻すことができる;
6)有機溶媒を主溶剤として用いる場合と比較して、取り扱いの安全性がより高くなる。
また、本発明にかかる試薬組成物は、透明化処理の対象となる生物材料に好適なpHの維持が可能な緩衝液であってもよい。さらに、本発明にかかる試薬組成物は、透明化処理の対象となる生物材料の変形を招来せず、かつ生物材料内に有効成分が充分に浸透する程度に、その浸透圧が調整されていてもよい。
〔f.さらなる任意成分〕
本発明にかかる試薬組成物は、Scale試薬と同様に、必要に応じて、グリセロール、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピレングリコール、ならびにマクロゴールから選択される少なくとも一種の化合物を「乾燥抑制成分」として含むことができる。乾燥抑制成分は、透明化処理の対象となる生物材料の乾燥を防止する。とりわけ、透明化処理後に光学顕微鏡による観察に供されるまでの時間が比較的長い場合、あるいは、光学顕微鏡による長時間観察に供される場合には、本発明にかかる試薬組成物は、上記の乾燥抑制成分を含むことが好ましい。
また、グリセロール等の「乾燥抑制成分」を使用する場合、その含有量は特に限定されないが、2.5重量%以上、20重量%以下の範囲内の濃度で含むことが好ましく、5重量%以上、15重量%以下の範囲内の濃度で含むことがより好ましく、8重量%以上、12重量%以下の範囲内の濃度で含むことが特に好ましい。なお、単位重量%とは、試薬組成物の重量(w(グラム))に対する、使用する「乾燥抑制成分」の重量(w(グラム))の百分率である。
また、本発明にかかる試薬組成物は、Scale試薬と同様に、上述した成分以外に、例えば、pH調整剤、および浸透圧調整剤等の添加剤を必要に応じて含んでいてもよい。
〔2.本発明にかかる方法〕
光透過性に優れた生物材料を調製するために、尿素または尿素誘導体と、アミノアルコールと、非イオン性界面活性剤とを含んでいる第一溶液を調製する。調製した第一溶液中に生物材料を配置することによって、第一溶液を生物材料に浸潤させる。第一溶液を浸潤させるべき生物材料は、予めパラホルムアルデヒド溶液で固定し、次いでスクロース溶液で置換していることが好ましい。
第一溶液は、本発明にかかる試薬組成物を製造するためのキットを用いて調製されてもよく、本発明にかかる試薬組成物としてそのまま提供されてもよい。すなわち、本発明にかかる方法は、光透過性に優れた生物材料を調製するために、尿素または尿素誘導体と、アミノアルコールと、非イオン性界面活性剤とを含んでいる第一溶液を、生物材料に浸潤させる工程(すなわち第一浸潤工程)を包含することを特徴としている。第一溶液を浸潤させた生物材料は、従来公知の透明化試薬の効果よりも優れた光透過性を示す。このことにより、第一溶液によって生物材料中の光散乱物質(主に脂質)が除去されたことがわかる。このように、第一溶液は、脂質を多く含有している器官または組織の透明化を実現するという優れた効果を発揮する。
また、第一溶液と混合された血液は、その光透過性が顕著に向上する。このことにより、第一溶液によって血液中の色素(主にヘモグロビン)が除去されたことがわかる。このように、第一溶液は、血液の透明化、ならびに血液を多く含有している臓器または組織の透明化を実現するという、予測し得ない優れた効果を発揮する。
本発明にかかる方法は、第一浸潤工程に加えて、生物材料への第二溶液の浸潤(すなわち第二浸潤工程)が行われることが好ましい。この場合、尿素または尿素誘導体と、アミノアルコールと、スクロースとを含んでいる第二溶液を調製する。調製した第二溶液中に生物材料を配置することによって、第二溶液を生物材料に浸潤させる。第二溶液を浸潤させるべき生物材料は、予めパラホルムアルデヒド溶液で固定し、次いでスクロース溶液で置換していることが好ましく、第一浸潤工程を行った後に第一溶液を十分に洗浄していることがより好ましい。第二溶液を浸潤させた生物材料は、従来公知の透明化試薬に匹敵する光透過性を示し、第一浸潤工程および第二浸潤工程の両方を施した生物材料は、従来公知の透明化試薬の効果よりも極めて優れた光透過性を示す。このことにより、第一溶液によって除去しきれなかった光散乱物質が存在し、第二溶液によってその光散乱物質が除去されたか、または第一浸潤工程後の生物材料における光散乱が減弱されたことがわかる。また、第二浸潤工程は、第一浸潤工程を行ったことによって膨らんだ生物材料のサイズを元に戻すことができる。このように、第二溶液は、脂質を多く含有している器官または組織の透明化を実現するという第一溶液の優れた効果を、顕著に増強する。
一実施形態において、本発明にかかる方法は、以下の手順に従って行われることが好ましい:
1)4%パラホルムアルデヒド溶液で潅流固定したマウスから脳を摘出し、摘出した脳をパラホルムアルデヒド溶液で12〜24時間固定する
2)固定後の脳を、20%スクロース/PBS溶液で置換する
3)置換した脳を第一溶液でさらに置換する
4)第一溶液を浸潤させた脳を、PBSで数時間ずつ数回洗浄する
5)洗浄した脳を第二溶液で置換する
6)第二溶液を浸潤させた脳を観察する。あるいは、PBSで洗浄した後に保存する。
N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンを第一溶液に用いて調製された生物材料の光透過性は非常に優れていた。また、トリエタノールアミン(すなわち、2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール)を用いた第二溶液を組み合わせた場合に、その光透過性がさらに向上した。これらのアミノアルコールを用いた場合、GFP等の蛍光タンパク質の蛍光シグナルの消失が非常に少ないので、全脳イメージングに好適に用いられる。
また、本発明にかかる方法を利用して免疫組織化学アッセイを行う場合、上記4と5との間に行うことが好ましいがこれに限定されない。
上記手順(透明化処理)を実行する際の温度は特に限定されないが、15℃以上、45℃以下の範囲内であることが好ましい。また、透明化処理を実行する処理時間は、特に限定されないが、2時間以上、6ヶ月以内の範囲内であることが好ましく、12時間以上、7日以内の範囲内であることがより好ましい。
さらに、本発明により、本発明の方法に従って調製した光透過性に優れた生物材料が提供される。Scale法では、厚さ100μm以下のマウス脳切片を用いて、2光子顕微鏡による観察が可能な優れた光の透過率を提供しているが、本発明の方法に従って調製した生物材料(脳全体)は、後述する実施例に示すように、第1浸潤工程だけであっても、520nm以上の波長を有する光の透過率が60%以上、560nm以上の波長を有する光の透過率が70%以上、640nm以上の波長を有する光の透過率が80%以上という格別優れた効果を奏する。しかも、これに第2浸潤工程を組み合わせることによって、散乱の大きな部位の上記透過率がさらに向上する。このように、本発明は、切片でない生物材料に対してこのように優れた光透過性を付与することができ、その結果、得られた生物材料を1光子共焦点顕微鏡にて観察することができる。
また、本発明の方法に従って調製した光透過性に優れた生物材料の観察には、520nm以上の波長を有する光が好適に用いられ、例えば、可視光領域中、赤(波長領域740〜625nm)、オレンジ(波長領域625〜590nm)、黄(波長領域590〜565nm)、緑(波長領域565〜520nm)の色を呈する光に対する透過性に優れた生物材料が、本発明によって提供される。
〔3.本発明のさらなる利用〕
透明化処理された生物材料は、次いで、例えば、光学顕微鏡による観察工程に供される。観察工程に供される生物材料は、必要に応じて、上記透明化処理工程の事前に、または透明化処理工程後で観察工程前に、染色あるいはマーキング等の可視化処理工程が施されてもよい。
例えば、可視化処理工程に蛍光タンパク質を用いる場合には、透明化処理工程の事前に、生きた生物材料に対して蛍光タンパク質遺伝子を導入して、蛍光タンパク質を発現させる。
また、可視化処理工程として、蛍光性化学物質(蛍光タンパク質は除く)の生物材料への注入、または蛍光性化学物質を用いた生物材料の染色を行う場合には、上記透明化処理工程の事前または当該工程の最中に行うことが好ましいが、上記透明化処理工程後に行うこともできる。さらに、可視化処理工程として、蛍光性化学物質以外の化学物質を用いた染色を行うこともできる。
観察工程は、あらゆる種類の光学顕微鏡を用いて行うことができる。例えば、観察工程は、三次元超分解顕微鏡技術(例えば、STED、3D PALM、FPALM、3D STORM、およびSIM)を適用して行うこともできる。また、観察工程は、多光子励起型(一般的には2光子励起型)の光学顕微鏡技術を適用して行ってもよいが、1光子共焦点顕微鏡またはシート照明マクロズーム顕微鏡を用いることがより好ましい。
後述する実施例に示すように、本発明を用いれば、三次元にて免疫組織化学を行うことが可能である。このような利点を有する本発明は、自己免疫疾患の解析ツールとして極めて有用である。自己免疫疾患の解析に用いられる場合、生物材料を提供する生物は成体であってもよく胎仔であってもよく、哺乳類(哺乳動物)であることが好ましく、好ましい哺乳類としては、ヒトを除く霊長類(例えば、マーモセット)、ヒトが挙げられる。また、生物材料は、個体そのもの(生きているヒト個体そのものは除く。)であってもよいが、多細胞動物由来の組織または器官(例えば、脳全体またはその一部)が本発明に好適に用いられる。
自己免疫疾患は、免疫系が自己(内因性抗原)に対する抗体(自己抗体)を産生し、非自己と認識された上記内因性抗原を排除しようと反応することによって生じる疾患である。これまでに数多くの自己免疫疾患が見出され、多くの研究がなされているが、自己抗体が患者体内の組織のどのような部位と実際に反応しているのかを知ることは困難であり、疾患の責任病巣を同定することは困難である。また、産生された自己抗体の具体的な抗原を知ることは困難である。
一実施形態において、本発明は、上記免疫組織化学的アッセイを用いて自己抗体と反応性である組織部位を探索する方法を提供する。上記組織部位は、自己抗体に起因する疾患の責任病巣であり得る。別の実施形態において、本発明は、上記免疫組織化学的アッセイを用いて自己抗体に対する抗原を探索する方法を提供する。
本発明を用いれば、生体組織の複雑な構造を維持した状態にて抗原抗体反応を確認することができるので、自己抗体が患者体内の組織のどのような部位と実際に反応しているのかを探索することが可能であり、産生された自己抗体の抗原を探索することが可能である。例えば、自己免疫疾患患者から採取した自己抗体を蛍光標識したものを上記可視化処理工程に供し、引き続いて上記観察工程を行うことによって、自己抗体が反応する部位を見出すことができ、自己抗体の抗原を見出すことができる。
疾患責任病巣を同定することによって、種々の脳神経疾患(精神疾患、睡眠障害、神経変性疾患を含む。)との関連性を見出す可能性がある。例えば、種々の脳神経疾患のモデル動物に由来する生物材料を用いて自己抗体の反応性を確認することによって、種々の病態を自己免疫疾患の観点から解明するためのデータが取得される可能性がある。
透明化処理された生物材料は、次いで、例えば、生化学的アッセイに供されてもよい。生化学的アッセイは、細胞、組織等の生体材料中に含まれるタンパク質、脂質、低分子化合物等を化学的に解析するためのアッセイである。生化学的アッセイは、例えば、臨床の現場において最も簡便かつ有用な情報収集手段として用いられており、その解析結果は、種々の疾患(例えば、肝臓病、腎臓病、糖尿病、高血圧、心臓病、高尿酸血症など)の診断または予後の判定などに用いられる。
一般的に、生化学的アッセイは、生体材料中に含まれるタンパク質、脂質、低分子化合物等をクロマトグラフィー、電気泳動等によって分離し、抗原抗体反応や特殊な検出器(質量分析器等)によって検出することによって達成される。このような生化学的アッセイを組み合わせることにより、透明化に使用したサンプルの複合的な解析が可能となるので、本発明が適用された生物材料は、生化学的アッセイに供されることが好ましい。生化学的アッセイに供される生物材料は、必要に応じて、事前に所望の染色または蛍光標識が施されてもよい。
一実施形態において、本発明は、上記生化学的アッセイを用いて生物材料中の成分を生化学的に解析する方法と組み合わせた複合的な解析環境を提供する。本発明に好適に用いられる生物材料は、個体から取得した器官や組織(例えば、脳、心臓、肺、腎臓または肝臓)、体液(例えば、血液、唾液、血清、血漿、尿、滑液、髄液等)であり得る。本発明は、公知の種々の生化学的解析に用いられればよく、例えば、透明化後のイメージング解析によってさらなる解析を必要とする部位が見出された場合には、その部位についてのプロテオミクス的解析(例えば質量分析計を用いた解析)等に好適に利用され、その測定対象としては、タンパク質、核酸、脂質、糖、生体内低分子化合物等が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明を、以下の実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
〔1:透明化処理後のマウス全脳の光透過性〕
生後6ヶ月齢の個体に対して、ペリスタポンプを用いて左心室より室温PBSを灌流した後、室温固定液(4%パラホルムアルデヒド/PBS,pH7〜8)を灌流することによって、マウスの全身を完全に固定した。
次いで、マウスの頭蓋骨を除去して、全脳を注意深く摘出した。摘出した全脳を氷冷固定液(4%パラホルムアルデヒド/PBS,pH7〜8)に4℃の環境下で一晩浸漬した。固定した全脳を20%スクロース/PBS溶液中へ移し、4℃の環境下で浸潤させた。20%スクロース/PBS溶液を浸潤させた脳サンプル(サンプルa)の光学顕微鏡像を、図1の(a)に示す。サンプルaの光透過率(サンプル中央部分)を、コニカミノルタCM−5分光測色計を用いて測定した(図1の(d))。
20%スクロース/PBS溶液で置換した脳を、25% N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、15% Triton X−100(ナカライテスク Cat No.25987−85)、および25%尿素を含む第一溶液(Sol.PE)中へ移し、37℃の環境下でゆるやかに振盪しながら7日間浸潤させることによって、第一溶液で置換した。第一溶液を浸潤させた脳サンプル(サンプルb)の光学顕微鏡像を、図1の(b)に示す。サンプルbの光透過率(サンプル中央部分)を、コニカミノルタCM−5分光測色計を用いて測定した(図1の(d))。次いで、第一溶液で置換した脳を、PBS中へ移し、室温環境下で緩やかに3〜12時間ずつ2〜3回振盪して洗浄した。洗浄した脳を、10%トリエタノールアミン、0.1% Triton X−100、25%尿素、50%スクロースを含む第二溶液(Sol.CL)中へ移し、室温環境下で緩やかに4日以上振盪することによって、第二溶液で置換した。第二溶液を浸潤させた脳サンプル(サンプルc)の光学顕微鏡像を、図1の(c)に示す。サンプルcの光透過率(サンプル中央部分)を、コニカミノルタCM−5分光測色計を用いて測定した(図1の(d))。
サンプルaは、どの波長領域であっても光透過性が低いが、サンプルbはサンプルの光透過性を大いに改善し、サンプルbとサンプルcとを比較することによって、第二溶液への置換が白質の透明化を促進したことがわかる。
〔2:全脳の透明化およびスキャンニング〕
ROSA26部位にH2B-mCherry(蛍光タンパク質mCherryを融合したヒストンH2Bタンパク質)をノックインしたマウス(Takaya Abe et al., "Establishment of Conditional Reporter Mouse Lines at ROSA26 Locus For Live Cell Imaging" Genesis vol.49: 579-590 (2011))の生後7ヶ月齢の個体に対して、ペリスタポンプを用いて左心室より室温PBSを灌流した後、室温固定液(4%パラホルムアルデヒド/PBS,pH7〜8)を灌流することによって、マウスの全身を完全に固定した。
次いで、マウスの頭蓋骨を除去して、全脳を注意深く摘出した。摘出した全脳を氷冷固定液(4%パラホルムアルデヒド/PBS,pH7〜8)に4℃の環境下で一晩浸漬した。固定した全脳を20%スクロース/PBS溶液中へ移し、4℃の環境下で浸潤させた。
20%スクロース/PBS溶液で置換した脳を、25% N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、15% Triton X−100(ナカライテスク Cat No.25987−85)、および25%尿素を含む第一溶液(Sol.PE)中へ移し、37℃の環境下で10日間浸潤させることによって、第一溶液で置換した。第一溶液で置換した脳を、PBS中へ移し、室温環境下で緩やかに3〜12時間ずつ2〜3回振盪して洗浄した。
洗浄した脳を、10%トリエタノールアミン、0.1% Triton X−100、25%尿素、50%スクロースを含む第二溶液(Sol.CL)中へ移し、室温環境下で緩やかに4日以上振盪することによって、第二溶液で置換した。第二溶液で置換した脳を、観察用サンプルとして用いた。
観察用サンプルを、TSF4300/ミネラルオイル(1:1)の混合オイルに浸し、シート照明マクロズーム顕微鏡(LaVision社、Ultramicroscope)を用いた全脳スキャンニングに供した。取得したデータを、Imaris(Bitplane社)を用いて三次元に再構成した(図2)。図2の(a)は、サンプルの脳底部側からの三次元再構成画像を示し、(b)は、顕微鏡にて観察された観察面を示し、(c)は、三次元再構成されたサンプルの冠状断を示し、(d)は、三次元再構成されたサンプルの矢状断を示す。示されるように、本発明を用いて処理された組織は、シート照明マクロズーム顕微鏡に適応し得る程度にその光透過性が高いということがわかった。
〔3:三次元での免疫組織化学的アッセイ〕
ROSA26部位にH2B-EGFP(蛍光タンパク質EGFPを融合したヒストンH2Bタンパク質)をノックインしたマウス(Takaya Abe et al. 前出)の生後4ヶ月齢の個体に対して、ペリスタポンプを用いて左心室より室温PBSを灌流した後、室温固定液(4%パラホルムアルデヒド/PBS,pH7〜8)を灌流することによって、マウスの全身を完全に固定した。
次いで、マウスの頭蓋骨を除去して、全脳を注意深く摘出し、視床下部を含む脳領域を注意深く切り出した。切り出した脳領域組織を氷冷固定液(4%パラホルムアルデヒド/PBS,pH7〜8)に4℃の環境下で一晩浸漬した。固定した組織を20%スクロース/PBS溶液中へ移し、4℃の環境下で浸潤させた。
20%スクロース/PBS溶液で置換した組織を、25% N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、15% Triton X−100(ナカライテスク Cat No.25987−85)、および25%尿素を含む第一溶液(Sol.PE)中へ移し、4℃の環境下で緩やかに24時間振盪することによって、第一溶液で置換した。第一溶液で置換した組織を、PBS中へ移し、室温の環境下で緩やかに3〜12時間ずつ2〜3回振盪して洗浄した。
洗浄した組織を、抗Copeptin抗体(Santacruz社)および抗VIP抗体(Immunostar社)の希釈液(それぞれ1:100および1:300)中へ移して3日間反応させた。上記希釈液を除去した後、抗体と反応させた組織を、0.1% Triton X−100/PBS中へ移し、室温または37℃の環境下で緩やかに3〜12時間ずつ2〜3回振盪して洗浄した。
洗浄した組織を、Alexa蛍光色素を結合した二次抗体の希釈液(1:1000)中へ移して3日間反応させた。上記希釈液を除去した後、二次抗体と反応させた組織を、0.1% Triton X−100/PBS中へ移し、室温または37℃の環境下で緩やかに3〜12時間ずつ2〜3回振盪して洗浄し、さらにPBS中へ移し、室温環境下で緩やかに3〜12時間ずつ1〜2回振盪して洗浄した。
洗浄した組織を、1%パラホルムアルデヒド/PBS中へ移し、室温で約30分間振盪することによって、抗体をクロスリンクさせ、さらにPBS中へ移し、室温環境下で緩やかに3〜12時間ずつ1〜2回振盪して洗浄した。次いで、10%トリエタノールアミン、0.1% Triton X−100、25%尿素、および50%スクロースを含む第二溶液(Sol.CL)中へ移し、室温環境下で緩やかに2日間以上振盪することによって、第二溶液で置換した。第二溶液で置換した組織を、観察用サンプルとして用いた。
観察用サンプルを、共焦点レーザー顕微鏡(カールツァイス社、LSM700)を用いて、視交叉上核領域を、脳底部から約500μm程度の深さまで観察した。取得したデータを、Imaris(Bitplane社)を用いて三次元に再構成した(図2)。
図3の(a)は、三次元再構成されたサンプルを斜め上方から観察した画像を示し、(b)は、三次元再構成されたサンプルをほぼ真横から観察した画像を示す。示されるように、EGFPの蛍光像だけでなく、CopeptinおよびVIPの免疫染色像を首尾よく三次元にて観察することができた。
〔4:血液に対する効果〕
パラホルムアルデヒド固定したマウス血液0.1mLに、0.4mLの処理溶液(PBS溶液、25%尿素を含む第一溶液(Sol.PE)、またはアミノアルコール溶液(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの25%水溶液))を添加した。混合液を室温で混合した直後に、15000rpmで5分間遠心分離した。上清を分離した後の沈殿に上記処理溶液を0.5mL加え、再び同様に遠心分離し、再度沈殿を上清と分離した。このような沈殿の洗浄操作を3回繰り返した後に、沈殿に上記処理溶液0.5mLを混合した。
結果を図4に示す。図中カラム1〜3はそれぞれ、血液とPBS溶液との混合液、血液と第一溶液との混合液、および血液とアミノアルコール溶液との混合液を遠心分離して得られた上清および沈殿(血球沈渣)を示す。
第一溶液を用いて血液を処理することによって沈渣の脱色が確認された(カラム2)。この効果は、第一溶液中に含まれているアミノアルコールによるものであることがわかった(カラム3)。
〔5:各種組織の透明化〕
蛍光タンパク質mKate2を発現するマウスの生後4ヶ月齢の個体に対して、ペリスタポンプを用いて左心室より室温にてヘパリンPBS溶液10mLを灌流した後、室温固定液(4%パラホルムアルデヒド/PBS,pH7〜8)150mLを灌流することによって、マウスの全身を完全に固定し、次いで、20mLのPBS溶液で洗浄し、第一溶液を2倍希釈した溶液20mLでさらに灌流した。
次いで、固定したマウスから、心臓、肺、腎臓および肝臓を摘出した。摘出した組織を、第一溶液に5日間浸漬し、次いで第二溶液に4日間浸漬して透明化した。
透明化前後の各組織サンプルの光学顕微鏡像を、図5のカラム1および2に示す。また、透明化処理時に細胞核染色試薬SYTO16で染色した各組織サンプルを用いて、シート照明顕微鏡による3次元イメージングを行い、mKate2の蛍光(赤)とSYTO16の蛍光(緑)とを同時に画像化した(カラム3)。
図示されるように、本発明による透明化は、生物材料として脳以外の各種組織に対してもまた適用可能であり、シート照明顕微鏡に適応し得るレベルであることがわかった。
このように、本発明は以下のような利点を有する:
[1]有機溶媒を用いた手法と同等の透明化レベルを水溶性試薬によって実現し、シート照明顕微鏡での観察を可能にした。
[2]有機溶媒を用いた手法と比較して、蛍光シグナルの消失を最小限に抑制するとともに安全性を飛躍的に向上させた。
[3]蛍光タンパク質の検出だけでなく、抗体または対比染色などの免疫組織化学的アッセイに使用可能である。これにより、三次元での免疫組織化学が可能となった。
[4]化合物スクリーニングによる試薬組成の改変および最適化によって、Scale法と比較して処理時間を明らかに短縮させ(月単位から日〜週単位へ)、2光子顕微鏡が必要なレベルからシート照明マクロ顕微鏡に適応可能なレベルにまで透明度を向上させた。
[5]スクリーニングした化合物はいずれも安価であったため、低コストにて実用化することが可能である。
[6]特殊なデバイスおよび煩雑な操作を必要としない、簡便なプロトコルを確立したことにより、多サンプルの並行処理を可能とした。
[7]シート照明マクロ顕微鏡に適応した際に、全脳のスキャニングを1色あたり1時間程度で完了することができるので、タイムラグがほとんどない状態でマルチカラーでの画像を取得することが可能であり、三次元で再構成された全脳をデータ化することが可能である。
[8]生体組織の複雑な構造を三次元にて維持した状態で免疫組織化学を行うことが可能なため、自己抗体が被験体内の実際の組織にてどのような部位と反応しているのかを探索することができ、自己抗体の抗原を探索することができる。
本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
2光子励起型の光学顕微鏡を用いることなく、汎用型の1光子共焦点顕微鏡であっても高精度のイメージングが実現し、さらに、シート照明マクロズーム顕微鏡のような最新の顕微鏡技術と組み合わせることによってハイスループットな組織イメージングが可能となる。このことは、医学の進歩だけでなく新薬の開発等にも大いに貢献する。

Claims (16)

  1. アミノアルコールを含んでいる溶液であることを特徴とする光透過性に優れた生物材料を調製するための試薬組成物。
  2. 尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物をさらに含んでいることを特徴とする請求項1に記載の試薬組成物。
  3. 非イオン性界面活性剤をさらに含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の試薬組成物。
  4. スクロースをさらに含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の試薬組成物。
  5. アミノアルコールと、尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と、非イオン性界面活性剤とを含んでいる第一溶液、
    アミノアルコールと、尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と、スクロースとを含んでいる第二溶液
    を備えていることを特徴とする光透過性に優れた生物材料を調製するための試薬キット。
  6. 第二溶液が非イオン性界面活性剤をさらに含んでいることを特徴とする請求項5に記載の試薬キット。
  7. アミノアルコールを含んでいることを特徴とする、光透過性に優れた生物材料を調製するための試薬組成物を製造するための組成物。
  8. (1)アミノアルコール、ならびに
    (2)尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物、非イオン性界面活性剤、ならびにスクロースからなる群より選択される少なくとも1つ
    を備えていることを特徴とする、光透過性に優れた生物材料を調製するための試薬組成物を製造するためのキット。
  9. 光透過性に優れた生物材料を調製する方法であって、
    アミノアルコールと、尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と、非イオン性界面活性剤とを含んでいる第一溶液を、生物材料に浸潤させる第一浸潤工程
    を包含することを特徴とする方法。
  10. アミノアルコールと、尿素および尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と、スクロースとを含んでいる第二溶液を、生物材料に浸潤させる第二浸潤工程をさらに包含することを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 第二溶液が非イオン性界面活性剤をさらに含んでいることを特徴とする請求項10に記載の方法。
  12. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法に従って調製した光透過性に優れた生物材料。
  13. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法に従って調製した生物材料を用いることを特徴とする免疫組織化学的アッセイ。
  14. 請求項13に記載の免疫組織化学的アッセイを用いることを特徴とする自己抗体と反応性である組織部位を探索する方法。
  15. 請求項13に記載の免疫組織化学的アッセイを用いることを特徴とする自己抗体に対する抗原を探索する方法。
  16. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法に従って調製した生物材料を用いることを特徴とする生化学的アッセイ。
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