JPWO2015020158A1 - ムスク系香料のスクリーニング方法 - Google Patents

ムスク系香料のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

本発明の課題は、ムスク系香料化合物をスクリーニングする方法を提供することである。当該課題は、ムスク系香料に特異的な嗅覚受容体を用いて、候補物質の中からムスク系香料化合物をスクリーニングする方法であって、少なくとも以下の工程:(i)候補物質の存在下又は非存在下で、前記嗅覚受容体を接触させる工程;(ii)指標となる値を測定する工程;(iii)上記(i)及び(ii)に基づく結果について、候補物質の存在下又は非存在下での結果を比較する工程;及び(iv)前記指標となる値が変化した候補物質を選択する工程;を含む、方法により解決される。

Description

本発明は、ムスク系香料のスクリーニング方法、それに用いるスクリーニング試薬及びキットに関する。
日常生活において、香りは生活の質を高める重要な要素の一つとして、特に近年ではその需要は益々高まっている。多々ある香りの成分の中でも、ムスク系香料は、香粧品に広く用いられる魅惑的な香気をもち、動物種を越えてフェロモン様の作用をもつという興味深い性質がある。
ムスクは、有史以前から薬や香油等に用いられてきた重要な物質であった。ムスクの香りは、ジャコウジカ、ジャコウネコ、ジャコウネズミ、マスクラットの臭腺(香嚢)を腹部から切除し、乾燥することにより得られてきた。ムスク香料はその甘い香りと香りの持続性により、石鹸や洗剤といった一般生活用品から高級化粧品に至るまで今や生活に欠かせない重要な香料である。しかし、天然ムスクは非常に希少であり、さらに、ジャコウジカの捕獲はワシントン条約により禁止されている。そこで、現在では、香粧品に用いるムスクの香りとして、主成分が化学合成されたムスコン様の香気を有するムスク系香料のアロマケミカル(合成香料)の開発がなされている。
ムスクの香りはムスコンを中心とする大環状ケトン構造をもつ化合物が有する香気をいう。ムスク系香料の中で最も古くから用いられてきたのが大環状ケトンムスク類である。しかし、ムスコンは工業的側面からみると、合成が難しく非常に高価である。そこで、これまでに、ムスコンの香気を模して、大環状ケトン、大環状ラクトン、大環状ジエステル、ニトロムスク、多環状ムスク、脂環式ムスクといった数百種類のムスク系香料が合成されている。
国際公開第2011/069156号
Nature Chemical Biology, VOL 9, March 2013, p.160-164 Biochemical and Biophysical Research Communication 305(2003) 964-969 Nat. Protoc. 2008; 3(9)1402-1413
匂いの質は、連続した波長スペクトル等の物理的方法で分類できず、これらのムスク系香料の匂いの評価は、元来、ヒトの官能試験によりなされていた。ヒトには多種類化学物質識別能があるといわれるものの、匂いの性質の官能評価を行うには熟練した技能が必要であり、さらに、ヒトが匂いとして感知しうる化学物質は、分子量が300までの有機化合物で揮発性のものに限定される。さらに、匂い物質に対する感じ方には個人差があるだけでなく、同一の人が同じ物質を評価する場合でも、環境や体調によって異なる匂いとして認識されたり、濃度が異なると全く異なる匂いとして認識されたりすることも指摘されている。さらに、同じ分子であっても光学異性体や幾何学異性体では匂いは異なる。このように、香りの評価は検査する個々人の主観的な評価に依存するため、匂いの質を客観的に評価できないという問題があった。
一方、分子生物学的には、ひとつの匂い物質は数十種類の嗅覚受容体で認識されるといわれている。嗅覚受容体は嗅細胞(嗅覚受容神経)にあるGタンパク質結合受容体(GPCR)である。ヒトでは約900種類存在するGPCRのうち、40%に相当する396個が嗅覚受容体であり、これは全遺伝子の約1%を占める。嗅覚受容体は他の受容体と同様、特有のリガンドではなく、匂い分子の構造へ結合することが知られている。しかし、全ての嗅覚受容体において同一方法で匂い応答を再構成することはできず、対応するリガンドが見出された嗅覚受容体は全受容体の10%以下にすぎない。このように、嗅覚システムは未だに解明されておらず、よって、分子生物学的アプローチにより特定の匂いに感受性がある嗅覚受容体を見出すことも容易でないという問題があった。
さらに、これまで、ムスク系香料の嗅覚系における認識メカニズムもほとんど知られていない。特に、大環状ケトンムスク類を受容する嗅覚受容体は数種類と極めて限定されていることが示唆されてきたのみである。
このように、さらに、ムスク系香料については、嗅覚系における認識メカニズムもほとんど知られておらず、よって、ムスク系香料に感受性のある嗅覚受容体も見出されておらず、香料の匂いの質について、客観的に評価できないという問題があった。
そこで、本発明は、ムスク系香料を客観的に評価する方法として、ムスク系香料に特異的な嗅覚受容体を用いて、候補物質の中からムスク系香料化合物をスクリーニングする方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、香粧品業界で重用されている大環状ケトン構造を有するムスク系香料を受容する嗅覚受容体として、マウスのOlfr1440(MOR215-1)嗅覚受容体を同定した。またマウスMOR215-1とアミノ酸配列相同性が最も高い機能遺伝子であるヒトOR5AN1嗅覚受容体が大環状ケトン構造を有するムスク系香料を受容することを見出し、本発明を完成するに至った。これらの嗅覚受容体は、評価系の選択によって、認識する物質が異なる。例えば、電気生理学的評価によれば大環状ケトンムスク類のみにしか応答しないのに対し、ルシフェラーゼ系では、大環状ケトンムスク類及び特定のニトロムスク類に属する化合物に応答を示す。しかし、両系共に、アミン、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸、エステル、芳香族化合物、ラクトンなどの香料には応答を示さない(Neuron. 2014 Jan 8;81(1):165-78.)。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) ムスク系香料に特異的な嗅覚受容体を用いて、候補物質の中からムスク系香料化合物をスクリーニングする方法であって、少なくとも以下の工程:
(i)候補物質の存在下又は非存在下で、前記嗅覚受容体を接触させる工程;
(ii)指標となる値を測定する工程;
(iii)上記(i)及び(ii)に基づく結果について、候補物質の存在下又は非存在下での結果を比較する工程;及び
(iv)前記指標となる値が変化した候補物質を選択する工程;
を含む、方法。
(2) ムスク系香料に特異的な嗅覚受容体が、マウスOlfr1440(MOR215-1)嗅覚受容体、マウスMOR214-3嗅覚受容体、及び/又はヒトOR5AN1嗅覚受容体である、(1)記載の方法。
(3) 指標となる値が、嗅覚受容体の電気生理学的アッセイの結果得られる値、細胞内シグナル量、遺伝子発現量又は細胞内のカルシウムイオン濃度である、(1)記載の方法。
(4) 指標となる値が細胞内シグナル量又は遺伝子発現量の場合に、ムスク系香料化合物が、大環状ケトンムスク類及び特定のニトロムスク類に属する化合物である、(3)記載の方法。
(5) 指標となる値が嗅覚受容体の電気生理学的アッセイの結果得られる値の場合に、ムスク系香料化合物が、大環状ケトンムスク類に属する化合物である、(3)記載の方法。
(6) 大環状ケトンムスク類に属する化合物が、ムスコン(3-methyl-cyclopentadecanone)、シクロペンタデカノン、アンブレトン(5-cyclohexadecen-1-one)、コスモン、ムセノン及びグロバノン並びにそれらの誘導体、その塩又はこれらの溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1つであり、特定のニトロムスク類に属する化合物が、ムスクケトン及び/又はムスクキシロール並びにそれらの誘導体、その塩又はこれらの溶媒和物である、(4)又は(5)記載の方法。
(7) (1)〜(6)いずれか1項記載の方法に用いる、ムスク系香料化合物スクリーニング試薬。
(8) (7)記載の試薬を含む、ムスク系香料化合物スクリーニングキット。
本発明により、ムスク系香料化合物をスクリーニングする方法が提供される。本発明のスクリーニングの対象となる物質は、新規ムスク系香料として用いることができる。また、本発明の方法は、電気的応答、蛍光強度、細胞内シグナル量、遺伝子発現量、細胞内cAMP産生量及びカルシウムイメージング法における細胞内カルシウムイオン濃度等を指標としてアッセイすることができるため、容易にハイスループット化することができる。
特に、本発明のスクリーニング方法でマウスOlfr1440(MOR215-1)嗅覚受容体とヒトOR5AN1嗅覚受容体を用いた場合、ムスク系香料のうち、大環状ケトンムスク類及び特定のニトロムスク類に属する化合物を特異的に探索できる。また、本発明のスクリーニング方法でマウスMOR214-3嗅覚受容体を用いた場合、ムスク系香料のうち、大環状ケトンムスク類に属する化合物を探索できる。
さらに、本発明のMOR215-1が発現したアフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理学的アッセイによるスクリーニング方法によれば、より香料として優れた商品価値があるl体のムスコンを認識することができる。また、本発明のOR5AN1が発現した細胞を用いたルシフェラーゼアッセイによるスクリーニング方法によれば、より香料として優れた商品価値があるl体のムスコンを認識することができる。
このように、本発明のスクリーニング方法によればムスク系香料を客観的に評価できる。
本発明のMOR215-1が発現したアフリカツメガエル卵母細胞をムスコンに暴露した場合の電流トレースを示す図である。 本発明のMOR215-1が発現したアフリカツメガエル卵母細胞をムスコンに暴露した場合の電気生理学的解析による用量反応曲線を示す図である。 本発明のMOR215-1が発現したアフリカツメガエル卵母細胞を匂い物質に暴露した場合の電流トレースを示す図である。 本発明のMOR215-1が大環状ケトンムスク類を特異的に認識することを示す図である。 本発明のMOR215-1が発現したアフリカツメガエル卵母細胞をラセミ体ムスコン、d体ムスコン、l体ムスコンに暴露した場合の電気生理学的解析による用量反応曲線を示す図である。 本発明のMOR215-1が発現したHEK293細胞のルシフェラーゼ活性の用量反応曲線を示す図である。 本発明のMOR215-1が発現したHEK293細胞の様々な匂い物質に対するルシフェラーゼ活性を示す図である。 本発明のMOR215-1が大環状ケトンムスク類及び特定のニトロムスク類に属する化合物を特異的に認識することを示す図である。 本発明のヒトOR5AN1が発現したHEK293細胞のムスコンに対するルシフェラーゼ活性による用量反応曲線を示す図である。 本発明のヒトOR5AN1が発現したHEK293細胞の様々な匂い物質に対するルシフェラーゼ活性を示す図である。 本発明のヒトOR5AN1が大環状ケトンムスク類及び特定のニトロムスク類に属する化合物を特異的に認識することを示す図である。 本発明のヒトOR5AN1が発現したHEK293細胞を、ラセミ体ムスコン、d体ムスコン、l体ムスコンに暴露した場合のルシフェラーゼアッセイによる解析結果を用量反応曲線として示した図である。 本発明のMOR214-3が大環状ケトンムスク類に属する化合物を特異的に認識することを示す図である。
本発明は、ムスク系香料に特異的な嗅覚受容体を用いて、候補物質の中からムスク系香料化合物をスクリーニングする方法に関する。以下に本発明を説明する。
(1)本発明のムスク系香料化合物
本発明に関するムスク系香料化合物とは、ジャコウジカ由来のムスクの香りの主成分であるムスコン様の香気を有する化合物をいい、例えば、大環状ケトン類、大環状ラクトン類、大環状ジエステル類、ニトロムスク類、多環状ムスク類、脂環式ムスク類等に分類される。中でも最も古くから用いられてきたのが大環状ケトンムスク類である。
大環状ケトンムスク類(Macrocyclic Ketone Musks)は、炭素数14〜20員環程度の環状構造をもつケトン化合物で、天然に存在するムスク香料と同一か又は極めて近似の香気であり、かつ、生分解性が高い。大環状ケトンムスク類としては、例えば、ムスコン(muscone;3-methyl-cyclopentadecanone)、シクロペンタデカノン(cyclopentadecanone)、アンブレトン(ambretone;5-cyclohexadecen-1-one)、コスモン(cosmone; 3-methyl-cyclotetradec-5-en-1-one)、ムセノン(muscenone; 3-methyl-cyclopentadec-5-en-1-one)、シクロヘキサデカノン及びシベトン等があげられる。ムスコンは15員環化合物でジャコウジカの生殖腺中に存在する、いわゆるムスク系香料の代表である。シクロペンタデカノンは15員環化合物でマスクラットの生殖腺中に存在し、その香気はムスコンに近似する。アンブレトンは16員環化合物であり、天然には存在せず、ムスク香が比較的強い。コスモンは14員環化合物であり、環内に2重結合がある。ムセノンは15員環化合物であり環内に2重結合がある。本発明では、電気生理学的アッセイによる測定及びルシフェラーゼ活性発現量の測定の場合に大環状ケトンムスク類に属する化合物をスクリーニングすることができる。
ニトロムスク類(Nitro Musks)はムスク香料開発の初期段階で開発された合成ムスク香料をいい、ベンゼン環にニトロ基がついた構造の化合物である。ニトロムスク類に属する化合物には光毒性,発癌性,神経毒性があるものもあり、全く用いられていない化合物もある。現在、香料として用いられている化合物としては、例えば、ムスクキシロール(musk xylol;1-(1,1-dimethylethyl)-3,5-dimethyl-2,4,6-trinitro-benzene)やムスクケトン(musk ketone;1-[4-(1,1-dimethylethyl)-2,6-dimethyl-3,5-dinitrophenyl]-ethanone)等があげられる。ムスクキシロールのムスク香には強力な効果があるのに加えて安価であるため、石鹸をはじめとする香粧品に汎用されている。ムスクケトンのムスク香は天然ムスクに最も近い。本発明では、ルシフェラーゼ活性発現量を測定する場合に、ニトロムスク類の化合物をスクリーニングすることができる。
大環状ラクトン類(Macrocyclic lactones)は、炭素数15員環又は16員環の環状構造をもつラクトン化合物で、生分解性に優れる。大環状ラクトン類としては、例えば、エグザルトリド(exaltolide;oxacyclohexadecan-2-one)、ハバノリド(habanolide;Oxacyclohexadecen-2-on)及びアンブレットリド(ambrettloide;Oxacycloheptadec-7-en-2-one)等があげられる。
大環状ジエステル類としては、例えば、エチレンブラシレート(ethylene brassylate;1,4-dioxacycloheptadecane-5,17-dione)があげられる。
多環状ムスク類(Polycyclic Musks)は合成ムスク香料で複数の環状構造がある化合物をいい、生分解性が低い。多環状ムスク類としては、例えば、トナリド(tonalide;1-(5,6,7,8-tetrahydro-3,5,5,6,8,8-hexamethyl-2-naphthalenyl)-ethanone)及びガラキソリド(galaxolide;1,3,4,6,7,8-hexahydro-4,6,6,7,8,8-hexamethyl-cyclopenta(gamma) -2-benzopyran)等があげられる。
脂環式ムスク類としては、例えば、ヘルベトリド(helvetolide;[2?[1?(3,3?dimethylcyclohexyl)ethoxy]?2?methylpropyl] propanoate)等があげられる。
本発明に関するムスク系香料化合物には、さらに上記化合物の誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物も含まれる。本発明のムスク系香料化合物の塩としては、特に限定されないが、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ピロ硫酸、メタリン酸、ヨウ化水素酸等の各種無機酸付加塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸等の各種有機酸付加塩;アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の各種アミノ酸との塩;があげられる。また、メラトニン誘導体にフェノール性水酸基又はカルボキシル基がある場合には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩として用いてもよい。本発明の化合物又はその塩は無水物であってもよく、水和物等の溶媒和物を形成してもよい。溶媒和物は水和物、非水和物のいずれでもよい。非水和物としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール、ジメチルホルムアミドなどを用いてよい。当該化合物は、公知の化学合成又は市販品であってもよい。
上記のように、ムスク系香料化合物は広汎に用いられる重要な香料であり、本発明は当該化合物を簡易かつ迅速に探索することができるため、好ましい。
(2)本発明のムスク系香料に特異的な嗅覚受容体
本発明に関するムスク系香料に特異的な嗅覚受容体とは、ムスク系香料を受容する受容体であればいかなるものも含まれるが、例えば、嗅覚受容体があげられる。嗅覚受容体とは、嗅細胞(嗅覚受容神経)に存在し、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)ファミリーに分類され、ヒトの他、哺乳動物、鳥類、両生類、爬虫類、昆虫等に存在する。なお、嗅細胞は脊椎動物では嗅上皮に存在するが、昆虫では触角に存在する。ヒトの嗅覚受容体は396個ある。
本発明に関連する嗅覚受容体としては、上記のいかなる嗅覚受容体も含まれるが、ヒト、チンパンジー、オランウータン、アカゲザル、マーモセット、キツネザル、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、オポッサム、カモノハシ、ニワトリ、トカゲ、イモリ、カエル、フグ、メダカ、ゼブラフィッシュ、サメ、ウナギ、ジャコウジカ、ジャコウネズミ、マスクラット、ジャコウネコ、ジャコウウシ等由来のものがあげられる。具体的には、マウスOlfr1440(MOR215-1)嗅覚受容体、マウスMOR214-3嗅覚受容体、ヒトOR5AN1嗅覚受容体等があげられる。Olfr1440(MOR215-1)嗅覚受容体、マウスMOR214-3嗅覚受容体、OR5AN1嗅覚受容体の塩基配列は公知であり、その配列情報はGenBank等の公共データベースを通じて容易に入手することができる。
Olfr1440(MOR215-1)嗅覚受容体のDNA配列は948塩基で公共データベースであるGenBankにアクセッション番号NM_146684として、またアミノ酸315残基でアミノ酸配列はアクセッション番号NP_666895としてそれぞれ登録されている。Olfr1440(MOR215-1)嗅覚受容体のDNA配列を配列番号1に、アミノ酸配列を配列番号2に示す。
MOR214-3嗅覚受容体のDNA配列は939塩基で公共データベースであるGenBankにアクセッション番号NM_146686として、またアミノ酸312残基でアミノ酸配列はアクセッション番号NP_666897としてそれぞれ登録されている。MOR214-3嗅覚受容体のDNA配列を配列番号6に、アミノ酸配列を配列番号7に示す。
OR5AN1嗅覚受容体のDNA配列は936塩基でアクセッション番号NM_001004729として、アミノ酸312残基でアミノ酸配列はアクセッション番号NP_001004729としてそれぞれ登録されている。OR5AN1嗅覚受容体のDNA配列を配列番号3に、アミノ酸配列を配列番号4に示す。
上記マウスOlfr1440(MOR215-1)嗅覚受容体、及びヒトOR5AN1嗅覚受容体は、主に大環状ケトンムスク類に属する化合物である、ムスコン、シクロペンタデカノン、アンブレトン、コスモン、ムセノン及びグロバノンなどや、場合によっては上記大環状ケトンムスク類に属する化合物に加えて特定のニトロムスク類に属する化合物であるムスクケトン及び/又はムスクキシロールを特異的に受容する。また、マウスMOR214-3嗅覚受容体は、主に大環状ケトンムスク類に属する化合物である、ムスコン、シクロペンタデカノン、アンブレトン、コスモン、ムセノン及びグロバノンなどを特異的に受容する。
上記のように、本発明はムスク系香料化合物のうち、大環状ケトンムスク類に属する化合物のみ又は大環状ケトンムスク類及びニトロムスクに属する化合物のみを簡易かつ迅速に探索することができる。このように、本発明は、所望の用途に適するムスク系香料化合物のみを特異的に探索することができるため、好ましい。
(3)本発明のスクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法は、上記ムスク系香料に特異的な嗅覚受容体を用いて、候補物質の中からムスク系香料化合物をスクリーニングする方法であって、少なくとも以下の工程:(i)候補物質の存在下又は非存在下で、前記嗅覚受容体を接触させる工程;(ii)指標となる値を測定する工程;(iii)上記(i)及び(ii)に基づく結果について、候補物質の存在下又は非存在下での結果を比較する工程;及び(iv)前記指標となる値が変化した候補物質を選択する工程;を含む、方法である。
本発明のスクリーニング方法の「(i)候補物質の存在下又は非存在下で、前記嗅覚受容体を接触させる工程」(以下、「接触工程」という場合もある)において、候補物質を嗅覚受容体に接触させる方法としては、嗅覚受容体に関する核酸、タンパク質、抗体、細胞、動物等を用いて接触させる、公知のいかなる方法をも用いることができる。例えば、電気生理学的アッセイ、ルシフェラーゼアッセイ、カルシウムイメージングアッセイ等があげられる。特に、リガンドスクリーニングは、高品質のムスク香を呈する物質のスクリーニングを効率よく行うことができるので好ましい。また、発現系を用いる場合には、他の因子を共発現させてよい。発現される嗅覚受容体の感度が向上するからである。
本発明のスクリーニング方法で用いる発現ベクターとしては、嗅覚受容体がムスク系香料化合物に応答するようなベクターであればいかなるベクターをも用いることができる。一例としては、嗅覚受容体遺伝子配列を組み込んだ発現ベクターがあげられる。発現ベクターの構築、ベクターの細胞への導入法は周知であり、当分野における通常の技術を用いて行うことができる(例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)参照)。発現ベクターに関連する標識物質や本発明の嗅覚受容体をコードする各遺伝子を連結するベクターは、市販のものを用いることができる。
発現ベクターとしては、具体的には、嗅覚受容体遺伝子配列に加えて、Gαolf、RTP1(short variant)、CFTR等のその他の因子が共発現するような発現ベクターを作製し、これらを細胞内に導入して発現させる。嗅覚受容体及び上記因子は、1つのベクター内にカセットとして組み込んでもよく、別々のベクターに連結して細胞に各々別個に導入してもよい。また、嗅覚受容体の細胞膜部位への局在に有利な因子を用いてもよい。例えば、ウシロドプシンなどは嗅覚受容体の膜局在を促進するが、リガンド特異性に影響を及ぼさず、好適である。
本発明のスクリーニング方法で、電気生理学的アッセイにて候補物質を嗅覚受容体に接触させる場合に用いる発現ベクターとしては、例えば、嗅覚受容体遺伝子配列に加えて、Gαolf、RTP1(short variant)、CFTR等のその他の因子が共発現するような発現ベクターがあげられる。本発明のスクリーニング方法で、ルシフェラーゼアッセイにて候補物質を嗅覚受容体に接触させる場合に用いる発現ベクターとしては、例えば、以下の実施例に記載したようなHEK293細胞発現系に用いるベクターがあげられる。本発明のスクリーニング方法で、カルシウムイメージングアッセイにて候補物質を嗅覚受容体に接触させる場合に用いる発現ベクターとしては、例えば、HEK293細胞発現系に用いるプラスミドベクターがあげられる。
本発明のスクリーニング方法で用いられる発現系としては、電気生理学的アッセイでは嗅覚受容体を発現させたアフリカツメガエル卵母細胞等が、ルシフェラーゼアッセイ及びカルシウムイメージングアッセイではHEK293細胞等が、それぞれあげられる。いずれの系においても、嗅覚受容体を介したシグナルを効率よく測定するためにRTP1など種々の共発現因子を用いてよい。
次に、本発明の接触に関する工程について、具体的に、「(i)候補物質の存在下又は非存在下で、前記嗅覚受容体を接触させる工程」とは、発現ベクターを導入した細胞を、候補物質を接触させるための試験用細胞と、対照物質を接触させるための対照細胞に分け、試験用細胞に候補物質を添加等により接触させる工程をいい、当該接触による発生する標識シグナルを検出する。ここで、「接触」とは、候補物質が発現ベクターを導入した細胞と相互作用するように処理することを意味し、細胞培養系に候補物質を添加すること、候補物質の存在下で細胞を培養することのいずれをも意味するが、これらに限定されない。
「(ii)指標となる値を測定する工程」の「指標となる値」とは、候補物質がムスク系化合物であるか否かの測定系における評価の指標とするものの値をいい、上記接触工程で発生した標識シグナルを検出して測定する。標識シグナルとは、発現系に含まれる標識物質由来のシグナルのほか、電気生理学的アッセイにより発生するシグナルや、ルシフェラーゼアッセイ法で測定するルシフェラーゼ遺伝子発現量や、カルシウムイメージングアッセイで測定するカルシウムイオン濃度等があげられる。
本発明の「指標となる値」としては、例えば、嗅覚受容体の電気生理学的アッセイの結果得られる値、細胞内シグナル量、遺伝子発現量又は細胞内のカルシウムイオン濃度があげられるがこれらに限定されない。ここで、「嗅覚受容体の電気生理学的アッセイの結果得られる値」に関しては、電気生理学的アッセイにより発生するシグナルである細胞に流れる電流を測定し、電流量によりシグナルの強さを評価する方法があげられる。「細胞内シグナル量」としては、例えばルシフェラーゼアッセイ法を用いるcAMPの産生量があげられる。これは、嗅覚受容体がリガンドとなる匂い物質との結合に伴いHEK293細胞内のGタンパク質と共役してアデニル酸シクラーゼを介して細胞内でcAMPを増加させるのに伴い、このcAMP応答配列CREを介したルシフェラーゼ遺伝子の発現量を測定する方法である。「遺伝子発現量」に関しては、上記ルシフェラーゼ遺伝子の発現量等があげられるがこれらに限定されない。「細胞内のカルシウムイオン濃度」に関しては、カルシウムイメージングアッセイを用いる方法があげられる。これは、細胞内外を移動するカルシウムイオン濃度を測定することにより、カルシウムイオン濃度をシグナルの強さとして評価する方法である。
嗅覚受容体に関するシグナルを検出するための検出手段として標識物質を用いてもよい。標識物質としては、蛍光標識物質、放射標識物質、これらの標識物質で標識された抗体のいずれも用いることができる。検出操作が容易である点で、オワンクラゲ(Aequorea victorea)由来の緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein: GFP)が好ましい。蛍光標識物質としては、GFPのほか、GFPを改変した変異体(GFPバリアント)であるEGFP(Enhanced-humanized GFP)又はrsGFP(red-shift GFP)などがあげられる。また、黄色蛍光タンパク質(yellow fluorescent protein: YFP)、藍色蛍光タンパク質(cyan fluorescent protein: CFP)、青色蛍光タンパク質(blue fluorescent protein: BFP)、ホタル及びウミシイタケ(Renilla reniformis)由来のルシフェラーゼを用いてもよく、これらをコードする遺伝子を本発明で用いることができる。これらをコードする遺伝子の塩基配列は公知であり、市販品を用いることができ、あるいは、GenBank等の公共データベースを通じて配列情報を容易に入手することができる。本発明のスクリーニング方法で用いられる標識物質としては、ホタル由来のルシフェラーゼがあげられるが、これに限定されない。
「(iii)上記(i)及び(ii)に基づく結果について、候補物質の存在下又は非存在下での結果を比較する工程」では、標識物質のシグナルの強さ(シグナル強度)を、蛍光強度、電気泳動におけるバンドの濃さ等の各々の標識タンパク質に適した方法により定量するか、あるいは目視することにより調べることができる。そして、「(iv)前記指標となる値が変化した候補物質を選択する工程」では、対照よりもシグナル強度が同等かそれよりも高い候補物質を、ムスク系香料化合物又はムスク系香料化合物を含む物質として選択する。測定方法としては、例えば、電気生理学的方法で細胞に流れる電流を測定すること、ルシフェラーゼ活性の測定やカルシウムイメージングアッセイによりカルシウムイオン濃度を測定すること等があげられる。電気生理学的方法で細胞に流れる電流を測定する方法としては、具体的には上記の嗅覚受容体等をコードする遺伝子を導入したアフリカツメガエル卵母細胞を適当期間培養した後、細胞膜電流を測定する方法等があげられる。カルシウムイメージングアッセイによりカルシウムイオン濃度を測定する方法としては、具体的には上記の嗅覚受容体等をコードする遺伝子を導入した細胞を適当時間培養した後、CCDカメラで細胞のカルシウムイオン濃度をモニターすることにより測定する方法等があげられる。
対照としては、候補物質を加えないいわゆるネガティブコントロールや候補物質の代わりに1又はそれ以上の所望のムスク系香料化合物を用いるいわゆるポジティブコントロールがあげられる。例えば、候補物質が非存在の対照試験区では、香料化合物が存在しない状態や、用いる香料化合物が溶解されたバッファに細胞を接触させた状態で全細胞電流を測定したり、蛍光標識の蛍光強度を測定したり、カルシウムイオン濃度を測定したりする。
本発明のスクリーニング方法では、用いる嗅覚受容体によりムスク系化合物に属する化合物を含む候補物質を広くスクリーニングできるし、用いる嗅覚受容体と対照化合物を適宜組み合わせて選択して、ムスク系化合物の中の特定の化学物質を含む候補物質をスクリーニングすることもできる。前者の例としては、マウスOlfr1440(MOR215-1)、マウスMOR214-3又はヒトOR5AN1嗅覚受容体を用いたルシフェラーゼアッセイにより、大環状ケトンムスク類及び特定のニトロムスク類に属する化合物を含む候補物質をスクリーニングする場合である。後者の例としては、例えば、マウスOlfr1440(MOR215-1)を用いた電気生理学的アッセイにより、大環状ケトンムスク類に属する化合物を含む候補物質をスクリーニングする場合である。当該受容体は電気生理学的アッセイでは、大環状ケトンムスク類に属する化合物のみを特異的に受容するからである。このように、本発明のスクリーニング方法は、特定のムスク系香料化合物のスクリーニングに加えて、候補物質に「(1)本発明のムスク系香料化合物」に記載したムスク系香料化合物のどの分類に属する化合物が含まれているかの解析も可能である。
本発明のスクリーニングの対象となる候補物質としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。これら候補物質は酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などと塩を形成していてもよい。このような塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
本発明は、例えばリガンドスクリーニングにより、蛍光強度の変化によって標識物質を検出することが可能であるので、多検体を短時間で処理することができ、ハイスループットスクリーニングを行うことができるため、好ましい。また、スクリーニングの対象物質であるムスク系香料化合物が存在しなければ嗅覚受容体は応答がない。従って、本発明のスクリーニング方法では、嗅覚受容体が応答したものを選択するだけでよく、ムスク系香料化合物の探索を簡易かつ高精度に効率よく行うことができる。
(4)本発明のスクリーニング試薬
本発明のムスク系香料に特異的な嗅覚受容体を用いて、候補物質の中からムスク系香料化合物をスクリーニングする場合は、上記ムスク系香料に特異的な嗅覚受容体等を他の溶媒や溶質と組み合わせて組成物とすることができる。たとえば、蒸留水、pH緩衝試薬、塩、タンパク質、界面活性剤などを組み合わせることができる。
反応試薬は適当な化学的または物理的検出手段により検出可能な標識を有する。そのような標識物質を用いる測定法に使用される標識剤として、たとえば蛍光物質、酵素、放射性同位元素、発光物質などが用いられる。
蛍光物質として、フルオレスカミン、フルオレッセインイソチオシアネートなど、酵素として、ルシフェラーゼ、パーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸脱水酵素、α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼなど、放射性同位元素として、125I、131I、3H、14Cなど、発光物質として、ルシフェリン、セレンテラジン、ルシゲニン、ルミノール、ルミノール誘導体などが例示される。
さらに、反応媒体として、反応の至適条件を与えるか、反応生成物質の安定化などに有用な緩衝液、反応物質の安定化剤などが含まれる。
(5)本発明のスクリーニングキット
本発明のムスク系香料に特異的な嗅覚受容体を用いて、候補物質の中からムスク系香料化合物をスクリーニングする場合、特別の条件、操作などは必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作に準じて行なわれ、必要であれば若干の修飾を加えて好適な測定系を構築できる。
そのためのもっとも簡便かつ効率的な測定を行なうことを可能とするのは、上記試薬をキット化することである。キット化により、通常の検査室または実験室で、特殊な分析機器、熟練した操作、高度の知識は必要とせずに、効率的に定量を行なうことができる。アッセイキットの構成および形態は、とくに限定されるものでなく所定の目的を達成できるものであればその内容は限定されない。一般には候補物質試料について、スクリーニングを実行し得られた結果を解釈するための使用説明書、反応試薬、反応が行なわれる場となる反応媒体、アッセイの場を提供する基材などから構成される。さらに所望により、比較基準とするためのあるいは検量線を作成するための照合サンプル、検出器なども含んでもよい。本発明のスクリーニング方法の検出手段としては、膜電流測定機器、分光器、放射線検出器、光散乱検出器といった上記標識を検出可能なものがあげられる。また、得られたデータを解析する装置、データ解析のためのソフトウェア、プリンタ等が含まれてもよい。
次に、本発明を実施例によって説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
(実施例1)
実施例1は嗅覚受容体を含むアフリカツメガエル卵母細胞発現系を作製することを目的とする。
(1)MOR215-1(Olfr1440)の相補的RNAの作製
嗅覚受容体としてOlfr1440(配列番号1及び2)(以下、「OR」という場合もある。)を用いた。ウシロドプシンのアミノ末端20アミノ酸残基(配列番号5)を、エピトープタグとしてMOR215-1のアミノ末端配列に付加させたベクターを作製した。当該タグは細胞内で合成されたMOR215-1タンパク質を細胞膜に局在させるために用いたもので、リガンド特異性を何ら変化させるものではない。
上記エピトープタグでタグ付けされたMOR215-1、Gαolf、RTP1(short variant)、CFTRそれぞれの遺伝子配列を組み込んだ環状DNAベクターを、制限酵素処理により直鎖状DNAとした。この直鎖状DNAを鋳型として、T7RNAポリメラーゼもしくはSP6RNAポリメラーゼを用いて相補的RNAの合成を誘導した。
2)アフリカツメガエル卵母細胞への導入
アフリカツメガエル卵母細胞を非特許文献1記載の方法により調製した。実施例1で作製した相補的RNAを、MOR215-1(20ng)、Gαolf(10ng)、RTP1(10ng)、CFTR(10ng)を50μlの水溶液として、1の卵母細胞にマイクロインジェクションした。その後、上記細胞を18℃で、2〜3日間培養した。
(実施例2)
実施例2は実施例1で作製したアフリカツメガエル発現系を用いた電気生理学的解析を行うことを目的とする。
アフリカツメガエル卵母細胞を用いて以下の条件で電気生理学的解析を行った。匂い物質はまず100 mM DMSO溶液として調整し、所望の濃度となるようにND96緩衝液に希釈して細胞の刺激に用いた。
電気生理学的解析は、細胞膜電流を測定することにより行った。具体的には、2本のガラス電極を卵母細胞に刺入し、細胞膜内外の電位差を−80mVに固定した。リガンドの結合により嗅覚受容体が活性化された場合、卵母細胞に共発現させていたCFTRが塩化物イオンチャネルとして開口する。これにより生じる膜電位の変化を補正するために、電極より注入した電流量を測定した。
実施例1で培養したアフリカツメガエル卵母細胞(n=6)の膜電流を測定した。電流測定時には、卵母細胞にND96緩衝液を常に還流させておき、投与した匂い物質が直ちに洗いだされるようにした。ムスコンを溶解させたND96緩衝液を上記卵母細胞に添加した。アデニリルシクラーゼアクチベーターであるフォルスコリン(Forskolin)(40μM)を、CFTRの機能が発現していることを確認するためのポジティブコントロールとして用いた。得られた応答振幅は30μMムスコンの応答比率として正規化した。
本発明のMOR215-1及びMockが発現したアフリカツメガエル卵母細胞をムスコンに暴露した場合の電流トレースを図1に、用量反応曲線を図2に示す。誤差範囲を±SEで示す。これより、電気生理学的解析手法を用いることで、マウス嗅覚受容体MOR215-1が大環状ケトンムスク類のムスコンに濃度依存的に応答することが示された。
(実施例3)
実施例3は、実施例1で作製したアフリカツメガエル発現系を用いて各種化合物に暴露させた場合の電気生理学的解析を行うことを目的とする。
匂い物質として以下の化合物を用いた以外は、実験方法は実施例2と同様である。
アミン類:1,4-diaminobutane, triethylamine, aniline, pyridine, isoamylamine, 2,5-dimethylpyrazine, N,N-diethyl-m-toluamide, tyramine;
アルコール類:1-butanol, 1-octanol, 1-decanol, 1-dodecanol, 5-nonanol, 2-ethyl-1-hexanol, 2-methyl-1-propanol;
アルデヒド類:butanal, hexanal, octanal, decanal, dodecanal, trans-2,4-decadienal;
ケトン類:3-pentanone, 2-heptanone, 2-nonanone;
酸:1-butanoic acid, 1-hexanoic acid, 1-octanoic acid, 1 -nonanoic acid,1-decanoic acid;
エステル類:octyl acetate, nonyl acetate, octyl butyrate, ethyl dodecylate, 2-phenylethylacetate, isoamyl propionate;
ベンゼン類:benzene, allylbenzene, 2-phenylethyl alcohol, ethyl benzoate, anisole, 2-phenylethylacetate;
バニリン様化合物:vanilline, vanillin acetate, isovanillin, 2-hydroxy-3-methoxybenzaldehyde, 4-methoxy-3-methylbenzaldehyde, 3,4-dimethylbenzaldehyde;
ラクトン類;γ-butyrolactone, γ-octanolactone, γ-decanolactone, γ-undecalactone, γ-dodecanolactone
実験で用いた化合物をDMSOで0.3mMの濃度で保存した。
これらの化合物について、マウスの嗅球イメージングと卵母細胞を用いたアッセイを行ったところ、ムスコン以外にMOR215-1を応答させた物質は見られなかった(図3)。すなわち、MOR215-1はムスコンに特異的に応答することがわかった。
(実施例4)
実施例4は、実施例1で作製したアフリカツメガエル発現系を用いてさらにムスク系匂い物質に関して電気生理学的解析を行うことを目的とする。
実施例3でMOR215-1がムスコンに特異的に応答したことが示されたため、MOR215-1が応答するムスク系匂い物質を特定するためにさらに実験を行った。以下の化合物を用いた以外は、実験方法は実施例2と同様である。
1: muscone
2: cyclopentadecanone
3: ambretone
4: cyclopentadecanol
5: ethylene brassylate
6: musk xylol
7: musk ketone
8: exaltolide
9: habanolide
10: muscenone
11: galaxolide
12: helvetolide
13: ambrettloide
14: tonalide
15: cyclopentadecane
16: cyclohexanone
17: cosmone
18: 2H-cosmone
19: cyclodecanone
20: cycloundecanone
21: 2-pentadecanone
22: 8- pentadecanone
23: celestlide
24: cashmerane
25: globanone
実験で用いた化合物はND96緩衝液に溶解して濃度を100μMに調製した。
結果を図4に示す。このうち、MOR215-1は大環状ケトン類ムスク香料化合物である1: muscone, 2: cyclopentadecanone, 3: ambretone, 17: cosmone, 10: muscenoneには応答を示したが他の物質には応答しなかった。従って、MOR215-1は大環状ケトン類ムスク香料化合物に特異的に応答することが示された。
(実施例5)
実施例5は、MOR215-1が発現したアフリカツメガエル卵母細胞とムスコンの光学異性体との電気生理学的解析を行うことを目的とする。
ムスコンとして、ラセミ体ムスコン、l-ムスコン及びd-ムスコンを用いた以外は、実験方法は実施例2と同様である。
上記実験の電気生理学的解析による用量反応曲線を図5に示す。データは平均値±SEで示した。その結果、ラセミ体のムスコンに対する50%効果濃度(EC50)は4.2μM(n=5)、l-ムスコンのEC50は1.6μMの(n=3)、d-ムスコンのEC50は178μM(n=3)であった。この結果から、MOR215-1はd体と比較して、l体のムスコンをよく認識することが示された。l体のムスコンはd体のムスコンよりもムスク香が強く、閾値も低いため、香料としての商品価値が優れている。従って、本発明のMOR215-1が発現したアフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理学的アッセイによるスクリーニング方法によれば、より香料として優れた商品価値があるl体のムスコンを認識することができる点で好ましい。
(実施例6)
実施例6はHEK293細胞発現系を用いたルシフェラーゼアッセイによる解析を行うことを目的とする。
(1)Olfr1440(MOR215-1)発現ベクターのHEK293細胞への導入
ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイは非特許文献3記載の方法に従って行った。
ポリDリジンをコーティングした96穴プレート(BD BioCoat)を用いて、HEK293細胞を37℃、5% CO2の条件で培養した。ウシロドプシンのアミノ酸N末端20残基(配列番号5)がタグ付けされたMOR215-1ベクター0.05μg、cAMP応答配列プロモーター含有ホタルルシフェラーゼベクター(Promega)0.01μg、チミジンキナーゼプロモーター含有ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼベクター(Promega)0.005μg、及びRTP1Sベクター0.01μgをカチオン性脂質Lipofectamine 2000 Reagent(Invitrogen)0.15μlを用いて導入した。遺伝子導入を行った細胞を24〜28時間培養した。
(2)ルシフェラーゼアッセイによるムスク系香料応答の測定
匂い物質を測定に用いる濃度になるように各々20μMのL-グルタミン添加CD293培養液(GIBCO)に溶解した。形質転換した細胞を、匂い物質含有培養液60μlを用いて37℃、5% CO2の条件で4時間刺激し、ルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ活性の測定には、Dual-Glo Luciferase Assay System(Promega)を用いた。また、当該活性は100μMムスコンに対する反応比率として正規化した。測定は同時に3連で行った平均を1回分の測定として複数回行い、その誤差範囲を±SEで示し、MOR215-1が発現したHEK293細胞のルシフェラーゼ活性による用量反応曲線を作成した。
結果を図6に示す。ルシフェラーゼアッセイ系を用いることで、MOR215-1が大環状ケトンムスク類のムスコンに濃度依存的に応答することが示された。
(実施例7)
実施例7は、実施例6で作製したHEK293細胞発現系を用いたルシフェラーゼアッセイにより各化合物に関する解析を行うことを目的とする。化合物として、実施例3で用いた化合物群を用いた。各化合物を20μM L-グルタミン添加CD293培養液(GIBCO)に10μM濃度になるように調製して実験に用いた。実験方法は、化合物群の刺激時間を3時間とした以外は実施例6と同様である。解析は、10μMムスコンの3時間秒刺激に対する反応比率として正規化して行った。
結果を図7に示す。ムスコン以外にMOR215-1を応答させた物質は見られなかった。すなわち、MOR215-1はムスコンに特異的に応答することが示された。
(実施例8)
実施例8は、実施例6のHEK293細胞発現系を用いたルシフェラーゼアッセイによるムスク系匂い物質に関する解析を行うことを目的とする。
実施例7でMOR215-1がムスコンに特異的に応答したことが示されたため、MOR215-1が応答する化合物をさらに特定するために、ムスク系匂い物質について実験を行った。実験に用いた化合物群は実施例4と同様であり、実験で用いた化合物は20μM L-グルタミン添加CD293培養液(GIBCO)に10μM濃度になるように調製した。実験方法は、化合物群の刺激時間を10秒とした以外は実施例6と同様である。解析は、図8は10μMムスコン3時間刺激に対する反応比率として正規化して行った。測定は同時に3連で行った平均を1回分の測定として複数回行い、その誤差範囲を±SEで示した。
結果を図8に示す。MOR215-1は大環状ケトン類ムスク香料化合物である1: muscone, 2: cyclopentadecanone, 3: ambretone, 10: muscenone, 17: cosmone, 18: 2H-cosmone及びニトロムスクである7: musk ketoneに応答を示した。従って、MOR215-1は大環状ケトン類ムスク香料化合物及びニトロムスクに特異的に応答することが示された。
(実施例9)
実施例9はヒト嗅覚受容体OR5AN1のHEK293細胞発現系を用いたルシフェラーゼアッセイによる解析を行うことを目的とする。
実験方法は、MOR215-1のかわりにヒト嗅覚受容体OR5AN1(配列番号3及び4)を用いた以外は実施例6と同様である。ルシフェラーゼ活性は100μMのムスコンに対する応答比率で正規化した。誤差範囲は±SEで示した。
結果を図9に示す。これより、その結果、ルシフェラーゼアッセイ系を用いることで、ヒト嗅覚受容体OR5AN1が大環状ケトンムスク類のムスコンに濃度依存的に応答することが示された。
(実施例10)
実施例10は、ヒト嗅覚受容体OR5AN1に対して実施例6のHEK293細胞発現系を用いたルシフェラーゼアッセイにより各化合物に関する解析を行うことを目的とする。
実験方法はヒト嗅覚受容体OR5AN1を用いた以外は実施例7と同様である。
結果を図10に示す。ムスコン以外にOR5AN1を応答させた物質は見られなかった。すなわち、OR5AN1はムスコンに特異的に応答することが示された。
(実施例11)
実施例11は、ヒト嗅覚受容体OR5AN1に対して実施例6のHEK293細胞発現系を用いたルシフェラーゼアッセイによるムスク系匂い物質に関する解析を行うことを目的とする。
実施例10でOR5AN1がムスコンに特異的に応答したことが示されたため、OR5AN1が応答する化合物をさらに特定するために、ムスク系匂い物質について実験を行った。実験方法は、MOR215-1のかわりにヒト嗅覚受容体OR5AN1(配列番号3及び4)を用いた以外は実施例6と同様である。
結果を図11に示す。OR5AN1は大環状ケトン類ムスク香料化合物である1: muscone, 2: cyclopentadecanone, 3: ambretone, 10: muscenone, 17: cosmone, 18: 2H-cosmone, 25: globanone並びにニトロムスクである6: musk xylol及び7: musk ketoneに応答を示した。従って、OR5AN1は大環状ケトン類ムスク香料化合物及びニトロムスクに特異的に応答することが示された。
(実施例12)
実施例12は、ヒト嗅覚受容体OR5AN1に対して実施例6のHEK293細胞発現系を用いたルシフェラーゼアッセイによるムスコンの光学異性体に関する解析を行うことを目的とする。ムスコンとして、ラセミ体ムスコン、l-ムスコン及びd-ムスコンを用いたこと、また、MOR215-1のかわりにヒト嗅覚受容体OR5AN1(配列番号3及び4)を用いたこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。
上記実験のルシフェラーゼアッセイによる用量反応曲線を図12に示す。データは平均値±SEで示した。その結果、l体ムスコンは、ラセミ体ムスコンやd体ムスコンと比較してOR5AN1に対して強い応答を引き起こすことが分かった。l体のムスコンはd体のムスコンよりもムスク香が強く、閾値も低いため、香料としての商品価値が優れている。従って、本発明のOR5AN1が発現したHEK293細胞を用いたルシフェラーゼアッセイによるスクリーニング方法によれば、より香料として優れた商品価値があるl体のムスコンを強く認識することができる点で好ましい。
(実施例13)
実施例13は、マウス嗅覚受容体MOR214-3に対して実施例6のHEK293細胞発現系を用いたルシフェラーゼアッセイによるムスク系匂い物質に関する解析を行うことを目的とする。MOR214-3が応答する化合物を特定するために、ムスク系匂い物質について実験を行った。実験方法は、MOR215-1のかわりにマウス嗅覚受容体MOR214-3(配列番号6及び7)を用いた以外は実施例6と同様である。
結果を図13に示す。MOR214-3は大環状ケトン類ムスク香料化合物である1: muscone, 2: cyclopentadecanone, 3: ambretone, 10: muscenone, 17: cosmone, 18: 2H-cosmone, 25: globanoneに応答を示した。従って、MOR214-3は大環状ケトン類ムスク香料化合物に特異的に応答することが示された。
(実施例14)
実施例14は、嗅覚受容体に対して実施例6のHEK293細胞発現系を用いたカルシウムイメージングアッセイによる解析を行うことを目的とする。
HEK293細胞を37℃、5% CO2の条件で培養する。HEK293細胞に嗅覚受容体を発現させるためのプラスミドベクターを作製するために、Flagタグ及びウシロドプシンのアミノ酸N末端20残基からなるロドプシンタグ(配列番号5)がついた嗅覚受容体MOR215-1、MOR214-3及びOR5AN1をpME18SベクターのEcoRI/XhoIサイトにクローニングする。
PCR条件として、以下の試薬:
×10 PCR buffer 5μl
dNTP mix 5μl
KOD plus 1μl
MgCl2 3μl
Primer Sense (20pM) 1μl
Primer Anti sense (20pM) 1μl
Template 1μl
H2O 33μl(Total 50μl)
を用いて、以下の温度条件:
a) 95℃ 2min
b) 95℃ 30s
c) primerのTm‐2℃ 30s
d) 72℃ 60s
b)~d)を40サイクル
e) 72℃ 7min
を用いる。
プラスミドを細胞導入するために、リポフェクション法を用いる。Lipofectamine2000 (Invtrogen)12.5μlをOpti-MEM (Invitrogen)400μlで希釈して10分間放置した後、MOR215-1、MOR214-3又はOR5AN1 (pME18S) 2.5μg、RTPs 1.0μg及びGαl5 1.5μgを混合した後、さらに20分間放置する。
遺伝子導入後の細胞に対して、Fura-2AM(Molecular Probes)を培地中終濃度2.5μMで25分間負荷する。専用チャンバーをディッシュ内に固定して、流速を1.5ml/minに設定したペリスタポンプでRinger溶液を約10分間還流して余分な指示薬を除去する。レシオ値が安定したら、イメージングを開始する。イメージングには、HiSCAカメラ(浜松ホトニクス)、光源に150Wキセノンランプ(浜松ホトニクス)、AQUACOSMOS Ca imaging system(浜松ホトニクス)を用いて測定をする。匂い物質による匂い刺激は同様にペリスタポンプを用いて行い、Ringer溶液還流の合間に15秒間匂い物質を溶液で刺激する。細胞の脱感作を防ぐために匂い刺激の間に2.5分間Ringer溶液でwashを行う。匂い刺激の後にコントロールとしてIsoproterenolを匂い刺激と同様の方法で与える。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
本発明のスクリーニング方法は、ムスク系香料化合物を広く探索できることに加えて、ムスク系香料の中でも大環状ケトン類ムスク香料化合物のみをも探索できるため、新規な香料化合物の探索及び開発に寄与できると期待される。
配列番号5:ウシロドプシンエピトープタグ

Claims (8)

  1. ムスク系香料に特異的な嗅覚受容体を用いて、候補物質の中からムスク系香料化合物をスクリーニングする方法であって、少なくとも以下の工程:
    (i)候補物質の存在下又は非存在下で、前記嗅覚受容体を接触させる工程;
    (ii)指標となる値を測定する工程;
    (iii)上記(i)及び(ii)に基づく結果について、候補物質の存在下又は非存在下での結果を比較する工程;及び
    (iv)前記指標となる値が変化した候補物質を選択する工程;
    を含む、方法。
  2. ムスク系香料に特異的な嗅覚受容体が、マウスOlfr1440(MOR215-1)嗅覚受容体、マウスMOR214-3嗅覚受容体、及び/又はヒトOR5AN1嗅覚受容体である、請求項1記載の方法。
  3. 指標となる値が、嗅覚受容体の電気生理学的アッセイの結果得られる値、細胞内シグナル量、遺伝子発現量又は細胞内のカルシウムイオン濃度である、請求項1記載の方法。
  4. 指標となる値が細胞内シグナル量又は遺伝子発現量の場合に、ムスク系香料化合物が、大環状ケトンムスク類及び特定のニトロムスク類に属する化合物である、請求項3記載の方法。
  5. 指標となる値が嗅覚受容体の電気生理学的アッセイの結果得られる値の場合に、ムスク系香料化合物が、大環状ケトンムスク類に属する化合物である、請求項3記載の方法。
  6. 大環状ケトンムスク類に属する化合物が、ムスコン(3-methyl-cyclopentadecanone)、シクロペンタデカノン、アンブレトン(5-cyclohexadecen-1-one)、コスモン、ムセノン及びグロバノン並びにそれらの誘導体、その塩又はこれらの溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1つであり、特定のニトロムスク類に属する化合物が、ムスクケトン及び/又はムスクキシロール並びにそれらの誘導体、その塩又はこれらの溶媒和物である、請求項4又は5記載の方法。
  7. 請求項1〜6いずれか1項記載の方法に用いる、ムスク系香料化合物スクリーニング試薬。
  8. 請求項7記載の試薬を含む、ムスク系香料化合物スクリーニングキット。
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