JP2013150553A - CartptmRNA発現細胞標識動物およびそれを用いたスクリーニング方法 - Google Patents

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【課題】Cartpt遺伝子を発現する嗅細胞に発現する嗅覚受容体を同定する目的や、Cartpt遺伝子を発現する嗅細胞を活性化する匂い分子を同定する目的を達成するためのモデル動物およびそれを用いたスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】Cartpt遺伝子のエンハンサー、プロモーターを含む5’ノンコーディング配列および3’ノンコーディング配列、ならびに当該プロモーターの下流かつ当該3’ノンコーディング配列の上流に位置する蛍光タンパク質遺伝子を含む発現構築物を導入してなる遺伝子改変非ヒト動物、ならびに当該動物もしくはその組織を用いることを特徴とする、匂い分子または嗅覚受容体のスクリーニング方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、Cartpt mRNA発現細胞標識動物およびそれを用いたスクリーニング方法に関する。詳しくは、Cartpt mRNAを発現する細胞を標識した遺伝子改変非ヒト動物および当該動物を用いた匂い分子や嗅覚受容体のスクリーニング方法に関する。
CART(cocaine and amphetamine regulated transcript)は1995年にDouglassらによってコカイン又はアンフェタミンの投与によって発現が増加するmRNAとして同定された(非特許文献1)。
CARTペプチドをラット脳室に注入することで食欲抑制効果を持つことが知られている(非特許文献2)。CARTペプチドを用いて体重や食欲抑制を目的とした医薬品、食品を開発することは産業上の有用性が高い。しかし、ヒトや動物の脳に対してCARTペプチドを注入することは、安全上や倫理上の問題から実現することが困難である。
本発明者らは、CARTペプチドをコードするCartpt (CART prepropeptide) mRNAの発現をin situ hybridization法で解析した結果、鼻腔内の嗅上皮に発現することを初めて解明した(非特許文献3)。嗅上皮は、鼻腔の深部にあり、匂い分子を感知する嗅細胞が存在する組織である。嗅上皮はD-zone(dorsal-zone;背側ゾーン)とV-zone(ventral-zone;腹側ゾーン)の2つの空間的に定義される領域に分類される。Cartpt mRNAはD-zoneに存在する嗅細胞において強く発現していた。本発明者らは、嗅上皮のD-zoneに存在する嗅細胞のみを特異的に除去した遺伝子改変マウスを作成することで、D-zoneに存在する嗅細胞の機能を解析した。その結果、D-zoneは匂い分子に対する嫌悪、恐怖、食欲などの様々な種類の情動反応を先天的に制御していることを発見した(非特許文献4、特許文献1)。匂いに対する好き嫌いは個人差が多いことから、後天的な学習や経験によって決まっているのではないかと考えられてきたが、この常識は覆された。匂いに対する応答が先天的に決定されているという事実は、産業応用上で重要である。なぜなら、生育環境の違いによって生じる個人差や動物の個体差に影響されることなく共通した生理作用を対象に対して与える匂い分子を開発することが可能になるからである。実際に本発明者らは、これまでに開発されていなかった匂い慣れの問題を克服した極めて強力な恐怖情動の誘発活性を持つ匂い分子の開発に成功しており、この匂い分子は動物忌避剤や恐怖情動の誘発装置として実用化できる(特許文献2)。
特開2010−19614号公報 WO2011/096575
Douglass, J. et al., J Neurosci. 15, 2471-2481 (1995) Lambert, P.D. et al., Synapse 29, 293-298 (1998) Oka, Y. et al., Eur. J. Biochem. 270, 1995-2004 (2003) Kobayakawa, K. et al., Nature 450, 503-508 (2007)
特定の匂い分子を用いて鼻腔内のD-zoneに存在してCartpt mRNAを発現する嗅細胞からCARTペプチドを放出させることができれば、CARTペプチドを脳内や体内に注入するという従来の手法とは全く異なる技術発想による食欲や体重抑制技術が実現できる可能性がある。この技術を実現するためには、Cartpt mRNAを発現する嗅細胞を効率的に活性化する匂い分子をスクリーニングする必要がある。しかし、Cartpt mRNAを発現する嗅細胞を活性化する匂い分子を同定することは、従来の技術では困難である。マウスには1000種類以上の匂い分子センサーである嗅覚受容体が存在し、この中で4割程度がD-zoneに、残りがV-zoneに発現している。1つの嗅細胞には1種類のみの嗅覚受容体遺伝子が発現する性質がある。同じ種類の嗅覚受容体を発現する嗅細胞は、嗅上皮において他の種類の嗅覚受容体を発現する嗅細胞と入り混ざって存在している。D-zoneでは400種類もの嗅細胞がランダムに混ざり合っており、特定の嗅覚受容体を発現する嗅細胞を同定することは困難である。本発明の目的は、Cartpt遺伝子を発現する嗅細胞に発現する嗅覚受容体を同定する目的や、Cartpt遺伝子を発現する嗅細胞を活性化する匂い分子を同定する目的を達成するためのモデル動物およびそれを用いたスクリーニング方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、Cartpt mRNAを発現する嗅細胞を蛍光標識した遺伝子改変非ヒト動物を作出することによって、上記目的を効率的に達成できることに想到し、本発明を完成するに至った。即ち、本願発明は、以下に示す通りである。
〔1〕 Cartpt遺伝子のエンハンサー、プロモーターを含む5’ノンコーディング配列および3’ノンコーディング配列、ならびに当該プロモーターの下流かつ当該3’ノンコーディング配列の上流に位置する蛍光タンパク質遺伝子を含む発現構築物を導入してなる遺伝子改変非ヒト動物。
〔2〕 蛍光タンパク質により主に背側ゾーンにおける嗅細胞が標識されている、前記〔1〕記載の非ヒト動物。
〔3〕 匂い分子探索用である前記〔1〕または〔2〕に記載の非ヒト動物。
〔4〕 動物がマウスである前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の非ヒト動物。
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の非ヒト動物から得られる組織。
〔6〕 組織が鼻腔、嗅上皮、嗅球、嗅上皮と嗅球の組み合わせ、嗅細胞、嗅細胞が接続する糸球、嗅細胞から延伸した軸索、嗅細胞と糸球の組み合わせおよび嗅細胞と軸索と糸球の組み合わせからなる群より選ばれる、前記〔5〕に記載の組織。
〔7〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の非ヒト動物または前記〔5〕もしくは〔6〕に記載の組織を用いることを特徴とする、匂い分子または嗅覚受容体のスクリーニング方法。
〔8〕 下記工程:
(a)前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の非ヒト動物または前記〔5〕もしくは〔6〕に記載の組織と被験物質とを接触させる工程、
(b)前記被験物質に接触させた動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答を調べ、被験物質に接触しない動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答と比較する工程、ならびに
(c)前記比較結果に基づいて、被験物質とそれに応答する嗅細胞とを選択する工程
を含む、嗅覚受容体にシグナルを伝達する匂い分子のスクリーニング方法。
〔9〕 下記工程:
(a)前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の非ヒト動物または前記〔5〕もしくは〔6〕に記載の組織に匂い分子としての被験物質を接触させる工程、
(b)前記被験物質に接触した動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答を調べ、被験物質に接触しない動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答と比較する工程、ならびに
(c)前記比較結果に基づいて、匂い分子に応答する嗅細胞を選択する工程
を含む、特定の匂い分子に応答する嗅細胞に発現する嗅覚受容体のスクリーニング方法。
〔10〕 下記工程:
(a)前記〔9〕で同定された嗅覚受容体とGタンパク質とを培養細胞で発現させる工程、
(b)前記培養細胞に被験物質を接触させる工程、
(c)被験物質を接触させた培養細胞における嗅覚受容体からのシグナル伝達を調べ、被験物質を接触させない培養細胞におけるシグナル伝達と比較する工程、および
(d)前記比較結果に基づいて、嗅覚受容体からのシグナル伝達を活性化する被験物質を選択する工程
を含む、特定の嗅覚受容体に対する匂い分子のスクリーニング方法。
本発明の遺伝子改変非ヒト動物(CART標識動物)は、Cartpt遺伝子を発現する嗅細胞をGFP、CRPまたはRFPなどの蛍光タンパク質で標識するトランスジェニックやノックインなどの遺伝子改変により得られた非ヒト動物(マウス、ラット、ウサギ、サルなど)であり、匂い分子または嗅覚受容体の解析用ツールとして有用である。蛍光標識を指標に本発明の遺伝子改変非ヒト動物からCartpt遺伝子を発現する嗅細胞を単離することにより、単離した嗅細胞に発現する嗅覚受容体を網羅的に同定することができる。本発明の遺伝子改変非ヒト動物を用いて、Cartpt遺伝子を発現する嗅細胞や糸球を活性化する匂い分子を簡便にかつ迅速に同定することができる。CARTを発現する嗅細胞を特異的に蛍光タンパク質で標識した遺伝子改変非ヒト動物では、蛍光タンパク質を発現する嗅細胞を単離して、そこに発現する嗅覚受容体(ORx)をsingle cell RT-PCRなどの方法でクローニングすること、ならびに、蛍光タンパク質を発現する嗅細胞が応答する匂い分子をカルシウムイメージングなどの方法でスクリーニングすることができる。また、蛍光タンパク質は軸索を経由して糸球へと運ばれるので、CART標識動物ではCartpt mRNAを発現する嗅細胞が接続する糸球も蛍光標識される。蛍光標識された糸球の匂い分子に対する応答性をカルシウムイメージングなどの方法で解析することで、Cartpt mRNAを発現する嗅細胞の匂い応答性を間接的に調べることができる。本発明の遺伝子改変非ヒト動物を用いて食欲抑制活性を有するCARTペプチドを嗅細胞から分泌させることで、体重や食欲を抑制する技術に用いる匂い分子のスクリーニングが容易になり、医薬品の開発に寄与することができる(図1参照)。
本発明の技術の概念図である。図中、XはCARTを発現する嗅細胞を活性化する匂い分子であり、ORxはCARTを発現する嗅細胞に発現する嗅覚受容体である。XとORxは現在同定されていない。Gは蛍光標識タンパク質、CはCARTペプチドを表す。一つの嗅細胞には一種類の嗅覚受容体が発現している。背側ゾーンには400種類の嗅覚受容体を発現する嗅細胞が存在するが、この図では白、灰色、黒の嗅覚受容体を発現する3種類の嗅細胞を示した。同じ種類の嗅覚受容体を発現する嗅細胞は嗅上皮でモザイク状に局在しているが、脳の嗅球に軸索を接続する際には、特定の位置に存在する糸球へ集中して神経線維である軸索を接続する性質がある。CARTを発現する嗅細胞を匂い分子Xを用いて活性化することで、脳へCARTを非侵襲的に分泌することが可能になる。 Cartpt mRNAを発現する嗅細胞が蛍光標識されたマウスを作出するためのBACクローンの模式図である。aは、Cartptの5’上流の配列約120kbpと3’側下流の配列約100kbを含むBACクローンの概略を示す。bは、蛍光タンパク質CFPの配列とpoly A付加シグナルを接続したコンストラクトを示す。cは、aのCartptの開始コドンATGの位置にbのCFP-polyA配列を挿入したコンストラクトを示す。当該コンストラクトを用いて、トランスジェニックマウスを作製した。 CART-CFPトランスジェニックマウスによるCART発現嗅細胞の可視化を示す。aは、CART-CFPトランスジェニックマウスの嗅上皮の切片を作製し、蛍光標識された嗅細胞の解析結果である。図では左半分の嗅上皮を示している。黒丸で示した鼻腔の背側中央部に近い位置が背側ゾーンであり、遠い位置が腹側ゾーンである。黒色が蛍光のシグナルであり主に背側ゾーンに局在している。b〜eは、CART-CFPトランスジェニックマウスの嗅上皮の拡大図を示す。b、cはDAPIで染色された細胞核を、d、eはCFPの蛍光シグナルを示す。fは、dの切片中の一つの嗅細胞を取り出して模式的に示す図である。 CART-CFPトランスジェニックマウスによるCART発現嗅細胞が接続する糸球の可視化図である。CART-CFPトランスジェニックマウスの嗅球の切片を作製し、DAPI(a)、抗OMACS抗体(c)、抗CFP抗体(e)を用いて染色した結果を示す。aの中で黒色で染色された細胞核に囲まれた円上の領域が糸球であり、bに抜き出して示した。cは背側ゾーンの嗅細胞のマーカーであるOMACSの糸球における局在を免疫染色によって検出した結果を示す。bで抜き出して示した糸球のすべてにおいてOMACSのシグナルが認められた(d)。eは抗GFP抗体(CFPも認識する)を用いてCFPを検出した結果を示す。図中の上側の糸球ではシグナルが認められないが、図中の下側の糸球ではシグナルが認められる(f)。一つ一つの糸球は特定の種類の嗅覚受容体に対応している。従って、背側ゾーンに局在する嗅細胞(OMACS陽性)の中で、一部の嗅覚受容体を発現する嗅細胞(CFP陽性)のみがCARTを発現していることが分かる。
本発明において「遺伝子」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。本発明において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、ゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。
本明細書において、CART(cocaine and amphetamine regulated transcript)に関して、遺伝子またはmRNAを指す場合、Cartpt(CART prepropeptide)で示し、タンパク質を指す場合、CARTまたはCARTペプチドで示す。Cartpt遺伝子は、いかなる動物由来の遺伝子であってもよく、タンパク質をコードする領域のみならず、ノンコーディング領域も含む。トランスジェニック動物の作出の場合外因性のCartpt遺伝子を用い、ノックイン動物の作出の場合内在性のCartpt遺伝子を用いる。外因性の遺伝子としてはヒトCartpt遺伝子、マウスCartpt遺伝子、ラットCartpt遺伝子、サルCartpt遺伝子などを用いることが好ましく、内因性の遺伝子としてはヒトCartpt遺伝子を除く、マウスCartpt遺伝子、ラットCartpt遺伝子、サルCartpt遺伝子などを用いることが好ましい。例えば、ヒトCartpt遺伝子は、Genbank Accession No. NM_00429などで公表されており、自体公知の方法により単離することができる。また、マウスCartpt遺伝子は、Genbank Accession No. NM_013732, NM_001081493 などで公表されており、自体公知の方法により単離することができる。ラットCartpt遺伝子は、Douglassらの文献(Douglass, J. et al., J Neurosci. 15, 2471-2481 (1995))およびGenbank Accession No. NM_017110などで公表されており、自体公知の方法により単離することができる。サルCartpt遺伝子は、Genbank Accession No. XM_001096906などで公表されており、自体公知の方法により単離することができる。
本発明において、蛍光タンパク質は、至適な波長の励起光を吸収することにより蛍光を発するタンパク質である。蛍光タンパク質としては、GFP、YFP、CFP、RFP、Venusなどのオワンクラゲ由来蛍光タンパク質およびそれらの類似体、ウミシイタケ由来蛍光タンパク質およびその類似体、DsRed、HcRed、AsRed、ZsGreen、ZsYellow、AmCyan、AcGFP、Kaedeなどのサンゴ由来蛍光タンパク質およびそれらの類似体などがあげられるが、これらに限定されるものではない。これらの蛍光タンパク質およびその類似体ならびに当該タンパク質をコードする核酸は、公知である。
本発明の遺伝子改変非ヒト動物は、Cartpt遺伝子のエンハンサー、プロモーターを含む5’ノンコーディング配列、および3’ノンコーディング配列、ならびに当該プロモーターの下流かつ当該3’ノンコーディング配列の上流に位置する蛍光タンパク質遺伝子を含む発現構築物を導入してなるものである。前記3’ノンコーディング配列は、3’エンハンサーを含んでいてもよい。前記蛍光タンパク質遺伝子は、Cartpt遺伝子のプロモーターの下流に作動可能に連結されている。発現構築物を構成する各要素は、直接結合していてもよく、本発明の目的を達成しうる限りにおいて、任意の塩基配列が挿入されていてもよい。かかる挿入配列としては、例えば、クローニングの過程で付加される制限酵素切断部位から生じる塩基配列などがあげられ、通常、1〜5000bp程度の長さを有するものである。
Cartpt遺伝子のエンハンサー、プロモーターを含む5’ノンコーディング配列、および3’ノンコーディング配列は、公表されているCartpt遺伝子の塩基配列情報に基づいて、当該技術で公知の遺伝子工学的技術を用いて、クローニングし、蛍光タンパク質遺伝子と連結することにより、発現構築物を調製することができる。
前記発現構築物としては、前記プロモーターおよび前記蛍光タンパク質遺伝子を嗅細胞で機能させるためには、BAC(bacterial artificial chromosome)クローン、内在のCartpt遺伝子を蛍光タンパク質遺伝子で標的化するためのターゲティングベクター、BACクローンより短い(数kbpから数十kbpの)Cartpt遺伝子の転写制御配列を用いて蛍光タンパク質遺伝子を発現させるためのベクター、数kbpのCartpt遺伝子の転写制御配列を用いて蛍光タンパク質遺伝子を発現させるウイルスベクターなどがあげられる。これらの発現構築物の基本骨格となるベクターは特に限定されず、形質転換を行う細胞中で自己複製可能なものであればよく、公知または市販のものを使用することができる。ウイルスベクターとしては、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、センダイウイルス、シンドビスウイルスなどのウイルスベクターがあげられる。
本発明において、「遺伝子改変」とは、「トランスジェニック」、「ノックイン」または「ウイルスベクターを用いる鼻腔内への注入」によって、外因性の蛍光タンパク質遺伝子をCartpt遺伝子プロモーターの下流に結合させた発現構築物を染色体遺伝子に導入すること、または少なくとも嗅細胞内に導入することをいう。導入された非ヒト動物およびその子孫を遺伝子改変非ヒト動物と称する。
用いられる動物としては、ヒト以外の動物であれば特に限定されるものではない。好適な動物としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル等の実験動物ならびにウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ等の家畜があげられるが、遺伝子工学的に利用が容易であるところから、マウス、ラット、ウサギが好ましく、マウスがより好ましい。
本発明の遺伝子改変非ヒト動物は、以下の文献を参照して自体公知の方法により製造することができる。
1. Brinster RL, Chen HY, Trumbauer ME, Yagle MK, Palmiter RD.
Factors affecting the efficiency of introducing foreign DNA into mice by microinjecting eggs. Proc. Nail. Acad. Sci. USA 82 4438-4442, July (1985)
2. Yang XW, Model P, Heintz N.
Homologous recombination based modification in Esherichia coli and germline transmission in transgenic mice of a bacterial artificial chromosome. Nature biotechnology 15 859-865 (1997)
3. Gong S, Zheng C, Doughty ML, Losos K, Didkovsky N, Schambra UB, Nowak NJ, Joyner A, Leblanc G, Hatten ME, Heintz N.
A gene expression atlas of the central nervous system based on bacterial artificial chromosomes. Nature. 425 917-925. (2003)
4. 発生工学実験マニュアル. トランスジェニックマウスの作り方
勝木元也/編 講談社サイエンティフィク, 1995
5. Manipulating the Mouse Embryo. A Laboratory Manual. 3rd Edition.
Nagy A, Gertsenstein M, Vintersten K and Behringer R. Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2003.
このようにして得られた本発明の遺伝子改変非ヒト動物をさらに交配して得られる子孫動物、これら動物に由来する組織も本発明に含まれる。前記組織としては、すべての組織があげられ、鼻腔、嗅上皮、嗅球、嗅上皮と嗅球の組み合わせ、嗅細胞、嗅細胞が接続する糸球、嗅細胞から延伸した軸索、嗅細胞と糸球の組み合わせおよび嗅細胞と軸索と糸球の組み合わせなどが好ましい。また、前記組織に由来する細胞も本発明に含まれる。かかる細胞としては、前記組織中に含まれる個々の細胞、組織中から単離された細胞、これら細胞から樹立した細胞株があげられる。
本発明の遺伝子改変非ヒト動物は、鼻腔、具体的には嗅上皮の嗅細胞で蛍光タンパク質が発現している。遺伝子改変非ヒト動物においてCartpt mRNAが発現する組織に対し、導入した蛍光タンパク質に応じて特定の波長の励起光を照射し、励起分子から蛍光が放射される。本発明の遺伝子改変非ヒト動物は、例えば、図3に示すように、嗅上皮の主に背側ゾーンの嗅細胞が蛍光標識されており、蛍光標識を指標にして、下記スクリーニング方法に供することができる。
本発明は、前記遺伝子改変非ヒト動物または前記組織を用いることを特徴とする、匂い分子または嗅覚受容体のスクリーニング方法を提供する。
[スクリーニング方法I]
本発明のスクリーニング方法Iは、嗅覚受容体にシグナルを伝達する匂い分子を選別することができ、具体的には、下記工程を含む:
(a)前記遺伝子改変非ヒト動物または前記組織と被験物質とを接触させる工程、
(b)前記被験物質に接触させた動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答を調べ、被験物質に接触しない動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答と比較する工程、ならびに
(c)前記比較結果に基づいて、被験物質とそれに応答する嗅細胞とを選択する工程。
前記(a)において、被験物質とは、いかなる公知物質および新規物質であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分などがあげられる。また、本発明者らにより同定された動物用忌避剤(国際公開第2011/096575)に有効成分として含まれる化合物を二次スクリーニングに供することも好ましい。また、これらの化合物の2種以上の混合物を試料として供することもできる。
前記被験物質と本発明の動物との接触は特に限定されるものではないが、被験物質の経口的または非経口的な投与により行うことができる。非経口的投与経路としては、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内等の全身投与、あるいは鼻腔内、標的細胞付近への局所投与等があげられ、鼻腔内または標的組織付近への局所投与が好ましい。
前記被験物質と組織との接触は、動物への被験物質の投与によって行うこともできるが、生体外に組織を取り出し、被験物質を添加した培地または組織保存液等を満たした試験管内で組織と被験物質との接触を行うことが望ましい。
前記被験物質の投与量は、有効成分の種類、分子の大きさ、投与経路、投与対象となる動物種、投与対象の薬物受容性、体重、年齢等によって適宜設定することができる。また、被験物質の添加量は、試験管内での組織の生存に影響しない範囲で適宜設定することができる。
接触時間は、特に限定されるものではないが、被験物質の投与または添加後、1秒から4時間が例示される。
前記工程(b)において、蛍光標識された組織の被験物質に対する応答を調べる方法としては、嗅覚受容体のシグナル伝達による細胞内のカルシウム上昇を調べるカルシウムイメージング、電気生理学的な方法、神経活動をモニターする機能プローブを遺伝子工学的な手法やウィルスによって嗅細胞に発現させたマウスを用いて調べる方法などがあげられ、カルシウムイメージングが好適に用いられる。カルシウムイメージングによる被験物質に対する嗅細胞の応答は、Proc Natl Acad Sci U S A. 96(7):4040-4045 (1999)に準じて測定することができる。あるいは、カルシウムイメージング用の蛍光試薬が市販されており、市販品に添付された製造業者の指示書に従って、測定することができる。電気生理学的な方法についてはJ Physiol. 419:177-192 (1989)に準じて測定することができる。神経活動をモニターする機能プローブを用いた方法については、例えばNeuron.;48(6):1039-53 (2005)に準じて測定することができる。
前記工程(b)において、被験物質に接触しない動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答も同時にまたは別途調べ、接触動物または組織における結果と非接触動物または組織における結果とを比較する。また、適宜、陽性対照として、公知の匂い分子(例、オイゲノール)を同様に接触させた動物または組織における結果を調べることも望ましい。
前記工程(c)において、工程(b)で得られた比較結果に基づき、嗅覚受容体にシグナルを伝達する被験物質を選択する。選択する基準は、カルシウムイメージング法を用いた場合、被験物質非接触に動物または組織における結果と比較して、有意に細胞内のカルシウムが上昇していることを指標にすればよい。
このようにして選択された被験物質は、嗅覚受容体にシグナルを伝達する匂い分子であり、先天的な生理作用に関与していることが期待される。さらに、下記スクリーニング方法IIまたはIIIによって応答する嗅覚受容体を同定することにより、医薬品の候補薬となりうる。
[スクリーニング方法II]
本発明のスクリーニング方法IIは、特定の匂い分子に応答する嗅細胞に発現する嗅覚受容体をクローニングすることができ、具体的には、下記工程を含む:
(a)前記非ヒト動物または組織に匂い分子としての被験物質を接触させる工程、
(b)前記被験物質に接触した動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答を調べ、被験物質に接触しない動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答と比較する工程、ならびに
(c)前記比較結果に基づいて、匂い分子に応答する嗅細胞を選択する工程。
前記工程(a)〜(b)は、前記スクリーニング方法Iと同様であるが、スクリーニング方法Iで匂い分子として同定された被験物質を使用することが望ましい。
前記工程(c)において、工程(b)で得られた比較結果に基づき、匂い分子に応答する嗅細胞を選択する。選択した細胞中で発現している嗅覚受容体(ORx)を、例えば、single cell RT-PCRなどの方法でクローニングし、シークエンスする。このようにして同定された特定の匂い分子に応答する嗅覚受容体は、当該匂い分子に応答する生体反応を解明するツールとなり得、創薬の新規ターゲットとしても有用である。
本発明においては、本発明の遺伝子改変非ヒト動物のCART発現細胞は蛍光タンパク質で標識されていることから、蛍光標識された細胞をセルソーティング等で単離し、各細胞における嗅覚受容体(ORx)の候補遺伝子を網羅的にクローニングすることも可能である。候補遺伝子が発現している嗅細胞を個々に選別し、かかる細胞を用いて被験物質を作用させることにより、嗅覚受容体とそのリガンドとしての匂い分子との組合せを網羅的に解析することもできる。また、嗅覚受容体とそのリガンドとしての匂い分子との組合せは、以下のスクリーニング方法IIIによっても解明することができる。
[スクリーニング方法III]
本発明のスクリーニング方法IIIは、特定の嗅覚受容体に対する匂い分子を選択することができ、具体的には、下記工程を含む:
(a)スクリーニング方法IIで同定された嗅覚受容体とGタンパク質とを培養細胞で発現させる工程、
(b)前記培養細胞に被験物質を接触させる工程、
(c)被験物質を接触させた培養細胞における嗅覚受容体からのシグナル伝達を調べ、被験物質を接触させない培養細胞におけるシグナル伝達と比較する工程、および
(d)前記比較結果に基づいて、嗅覚受容体からのシグナル伝達を活性化する被験物質を選択する工程。
前記工程(a)において、スクリーニング方法IIで同定された嗅覚受容体とGα15などのGタンパク質を、常法に従ってHEK293などの培養細胞に発現させる。
前記工程(b)において、培養細胞と被験物質の接触は、スクリーニング方法Iにおける工程(a)の組織と被験物質の接触に準じて行うことができる。接触条件は、培養細胞の培養条件下で、被験物質添加後1秒〜4時間が例示される。
前記工程(c)において、培養細胞における嗅覚受容体からのシグナル伝達は、スクリーニング方法Iにおける工程(b)と同様に測定することができる。好ましくは、カルシウムイメージング方法である。
前記工程(d)において、嗅覚受容体からのシグナル伝達を活性化する被験物質は、スクリーニング方法Iにおける工程(c)と同様にして選択することができる。
このようにして選択された被験物質は、同定された嗅覚受容体特異的にシグナル伝達を活性化させる医薬品の候補薬となりうる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
Cartpt mRNA発現細胞が蛍光タンパク質(CFP)で標識されたマウスの作出
マウスCartpt遺伝子の周辺200kbp(キロ塩基対)のゲノム配列を含むBAC(bacterial artificial chromosome)クローンのCartpt遺伝子をCFP遺伝子とpolyA付加シグナルに置換したBACトランスジェニック用DNAを構築し、常法に従って、C57/BL6マウスの胚に遺伝子導入し、CART-CFPトランスジェニックマウスを作製した(図2)。得られたトランスジェニックマウスではCFP遺伝子がCartpt遺伝子の発現に必要なプロモーターやエンハンサーを利用しているので、本来であればCartpt mRNAが発現する細胞にCFPが発現する。
[実施例2]
CART-CFPトランスジェニックマウスにおけるCFPの局在
実施例1で得られたCART-CFPトランスジェニックマウスを用いて、嗅上皮に452nmの励起光を照射してCFPの局在を調べた。結果を図3に示す。図3aは、CART-CFPトランスジェニックマウスの嗅上皮の切片を作製し、蛍光標識された嗅細胞の解析結果である。図では左半分の嗅上皮を示している。黒丸で示した鼻腔の背側中央部に近い位置が背側ゾーンであり、遠い位置が腹側ゾーンである。黒色が蛍光のシグナルであり、主に背側ゾーンに局在している。図3b〜eは、CART-CFPトランスジェニックマウスの嗅上皮の拡大図を示す。図3b、cはDAPIで染色された細胞核を、図3d、eはCFPの蛍光シグナルを示す。図3fは、図3dの切片中の一つの嗅細胞を取り出して模式的に示す図である。CFPはCartpt遺伝子が発現する鼻腔上皮の背側ゾーンの嗅細胞で発現し、発現したCFPは、嗅細胞から軸索にも移行していることがわかった。
[実施例3]
CART-CFPトランスジェニックマウスを用いた嗅細胞が接続する糸球の可視化
CART-CFPトランスジェニックマウスの嗅球の切片を作製し、核染色用のdiamidino-2-phenylindole(DAPI)(a、同仁化学研究所製)、抗OMACS抗体(c、Nature 450, p503-508 (2007)に記載された方法で調製したもの)、抗GFP抗体(e、nacalai製)を用いて染色した。結果を図4に示す。
図4aの中で黒色で染色された細胞核に囲まれた円上の領域が糸球であり、図4bに抜き出して示した。図4cは背側ゾーンの嗅細胞のマーカーであるOMACSの糸球における局在を検出した結果を示す。図4bで抜き出して示した糸球のすべてにおいてOMACSのシグナルが認められた(図4d)。図4eは抗GFP抗体(CFPも認識する)を用いてCFPを検出した結果を示す。図中の上側の糸球ではシグナルが認められないが、図中の下側の糸球ではシグナルが認められる(図4f)。一つ一つの糸球は特定の種類の嗅覚受容体に対応している。従って、背側ゾーンに局在する嗅細胞(OMACS陽性)の中で、一部の嗅覚受容体を発現する嗅細胞(CFP陽性)のみがCARTを発現していることが分かる。
[実施例4]
CART-CFPトランスジェニックマウスを用いた嗅覚受容体のスクリーニング法
嗅覚受容体遺伝子のスクリーニングは、以下の方法で実施できる。実施例1で得られたCART-CFPトランスジェニックマウスから嗅上皮を取り出し、酵素処理などを行い、嗅細胞を単離する。単離された嗅細胞の中から蛍光タンパク質で標識されたものを、マニュピレーターなどを用いて手動で、または、セルソーターなどを用いて自動で回収する。回収した蛍光標識された嗅細胞に発現する嗅覚受容体遺伝子を分子生物学実験において一般的に用いられる手法を用いて同定することができる。
[実施例5]
匂い分子のスクリーニング(1)
実施例1で得られたCART-CFPトランスジェニックマウスの嗅上皮の薄切切片を作製する、または、嗅上皮を鼻腔の骨からシート状に剥離するなどの手法を用いて、組織培養可能なシート状の形態にする。シート状の形態になった嗅上皮において、蛍光標識された嗅細胞の匂い分子に対する応答をカルシウムイメージングなどの方法で解析する。対照として、匂い分子を接触させない蛍光標識された嗅細胞も、カルシウムイメージングなどの方法で解析し、比較データとして使用する。
また、実施例1で得られたCART-CFPトランスジェニックマウスを麻酔し、嗅球の背側ドメインを露出させた状態で固定装置に固定する。この状態のマウスに対して匂い分子を嗅がせた際の嗅球における蛍光標識された糸球の匂い応答性を、カルシウムイメージングやintrinsic signalのイメージング法などの方法で解析する。対照として、匂い分子を嗅がせる前のトランスジェニックマウスにおける蛍光標識された嗅細胞も、カルシウムイメージングなどの方法で解析し、比較データとして使用する。
[実施例6]
匂い分子のスクリーニング(2)
実施例5のスクリーニング方法で同定した、CART陽性嗅細胞に発現する嗅覚受容体を活性化する匂い分子は、以下の方法でもスクリーニングすることができる。同定された嗅覚受容体とGα15などのGタンパク質をHEK293などの培養細胞に発現させる。培養細胞における匂い分子の応答は、カルシウムイメージングなどの方法で解析する。
CARTペプチドが食欲抑制活性を有することは既に知られている。また、蛍光タンパク質を用いて細胞を標識する技術は既に広く用いられている。しかし、本発明ではCartpt遺伝子が嗅上皮の一部の嗅細胞において発現するという自らの発見に基づいて、CART発現細胞を特定の匂い分子を用いて刺激することで、CARTペプチドを脳へ作用させるというこれまでにない発想を実現するために、CART発現細胞を蛍光タンパク質で標識するという新規性のある遺伝子操作マウスを作成したという点で、既存の技術や発想に対する技術的特徴を有する。
特定の匂い分子が食欲や体重抑制効果を持つことは既に知られている。現時点では、特定の匂い分子を実際にヒトや動物に嗅がせた際の摂食量や体重の変化を測定するという方法で食欲や体重抑制効果を持つ匂い分子の開発が行われている。ヒトや動物を用いた試験は時間やコストがかかるので、多くの匂い分子の効果をスクリーニングするためには、効率的な技術の開発が必要である。現時点では、個々の嗅覚受容体が特定の生理的な機能に及ぼす役割は解明されていないために、特定の嗅覚受容体を発現する嗅細胞の活性を指標にして、体重や体重抑制効果を持つ匂い分子をスクリーニングする技術は存在しない。このような現時点での技術的な背景において、本発明の技術は、食欲抑制効果を持つCARTを発現する嗅細胞を蛍光標識した遺伝子改変非ヒト動物を用いて、体重や食欲抑制効果を持つ匂い分子をスクリーニングするという点で従来の手法に比較して時間やコストの面で有利である。
本発明の遺伝子改変非ヒト動物を用いることにより、匂い分子または嗅覚受容体の迅速かつ網羅的なスクリーニングが可能となる。

Claims (10)

  1. Cartpt遺伝子のエンハンサー、プロモーターを含む5’ノンコーディング配列および3’ノンコーディング配列、ならびに当該プロモーターの下流かつ当該3’ノンコーディング配列の上流に位置する蛍光タンパク質遺伝子を含む発現構築物を導入してなる遺伝子改変非ヒト動物。
  2. 蛍光タンパク質により背側ゾーンにおける嗅細胞が標識されている、請求項1記載の非ヒト動物。
  3. 匂い分子探索用である請求項1または2に記載の非ヒト動物。
  4. 動物がマウスである請求項1〜3のいずれか1項に記載の非ヒト動物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の非ヒト動物から得られる組織。
  6. 組織が鼻腔、嗅上皮、嗅球、嗅上皮と嗅球の組み合わせ、嗅細胞、嗅細胞が接続する糸球、嗅細胞から延伸した軸索、嗅細胞と糸球の組み合わせおよび嗅細胞と軸索と糸球の組み合わせからなる群より選ばれる、請求項5に記載の組織。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の非ヒト動物または請求項5もしくは6に記載の組織を用いることを特徴とする、匂い分子または嗅覚受容体のスクリーニング方法。
  8. 下記工程:
    (a)請求項1〜4のいずれか1項に記載の非ヒト動物または請求項5もしくは6に記載の組織と被験物質とを接触させる工程、
    (b)前記被験物質に接触させた動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答を調べ、被験物質に接触しない動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答と比較する工程、ならびに
    (c)前記比較結果に基づいて、被験物質とそれに応答する嗅細胞とを選択する工程
    を含む、嗅覚受容体にシグナルを伝達する匂い分子のスクリーニング方法。
  9. 下記工程:
    (a)請求項1〜4のいずれか1項に記載の非ヒト動物または請求項5もしくは6に記載の組織に匂い分子としての被験物質を接触させる工程、
    (b)前記被験物質に接触した動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答を調べ、被験物質に接触しない動物または組織における蛍光標識された組織の被験物質に対する応答と比較する工程、ならびに
    (c)前記比較結果に基づいて、匂い分子に応答する嗅細胞を選択する工程
    を含む、特定の匂い分子に応答する嗅細胞に発現する嗅覚受容体のスクリーニング方法。
  10. 下記工程:
    (a)請求項9で同定された嗅覚受容体とGタンパク質とを培養細胞で発現させる工程、
    (b)前記培養細胞に被験物質を接触させる工程、
    (c)被験物質を接触させた培養細胞における嗅覚受容体からのシグナル伝達を調べ、被験物質を接触させない培養細胞におけるシグナル伝達と比較する工程、および
    (d)前記比較結果に基づいて、嗅覚受容体からのシグナル伝達を活性化する被験物質を選択する工程
    を含む、特定の嗅覚受容体に対する匂い分子のスクリーニング方法。
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