以下、本発明の電力伝送装置、及び、電力伝送方法を適用した実施の形態について説明する。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1の電力伝送装置を含む送電システム10を示す図である。
図1に示すように、送電システム10は、一次側(送電側)の送電器1と二次側(受電側)の受電器2を含む。送電システム10は、送電器1及び受電器2を複数含んでもよい。なお、図1では実施の形態1の電力伝送装置を省略する。
送電器1は、交流電源11と、1次側コイル12及び1次側共振コイル13を含む送電系コイルTCとを有し、受電器2は、2次側共振コイル22及び2次側コイル23を含む受電系コイルRCと、負荷デバイス21とを有する。
図1に示すように、送電器1及び受電器2は、1次側共振コイル(LC共振器)13と受電共振コイル(LC共振器)22の間の磁界共鳴(磁界共振)により、送電器1から受電器2へエネルギー(電力)の伝送を行う。ここで、1次側共振コイル13から2次側共振コイル22への電力伝送は、磁界共鳴だけでなく電界共鳴(電界共振)等も可能であるが、以下の説明では、主として磁界共鳴を例として説明する。
また、実施の形態1では、交流電源11が出力する交流電圧の周波数が6.78MHzであり、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数が6.78MHzである場合について説明する。
なお、送電系コイルTCにおいて、1次側コイル12から1次側共振コイル13への電力伝送は電磁誘導を利用して行い、また、受電系コイルRCにおいて、2次側共振コイル22から2次側コイル23への電力伝送も電磁誘導を利用して行うようになっている。
図2は、実施の形態1の電力伝送装置100を示す図である。図2に示す電力伝送装置100は、図1に示す送電システム10に含まれる。図2に示すように、電力伝送装置100は、送電系コイルTC、受電系コイルRC、交流電源11、送電側制御回路14、負荷となるデバイス21、及び、受電側制御回路24を備える。
なお、実施の形態1の電力伝送装置100は、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合を判定する判定部を含むが、図2では省略する。判定部については、図3を用いて後述する。
送電系コイルTCは、1次側コイル12及び1次側共振コイル13を含む。1次側コイル12は、例えば、銅線またはアルミニウム線などの金属線が円周状に複数回巻かれたものであり、その両端に交流電源11による交流電圧(高周波電圧)が印加される。
1次側共振コイル13は、例えば、銅線またはアルミニウム線などの金属線が円周状に巻かれたコイル131、及び、コイル131の両端に接続されたコンデンサ132を含み、共振回路を形成する。なお、共振周波数f0は、次の式(1)で示される。
f0=1/{2π(LC)1/2} (1)
ここで、Lはコイル131のインダクタンス、Cはコンデンサ132の静電容量である。
1次側共振コイル13のコイル131は、例えば、ワンターンコイルであり、また、コンデンサ132は、種々の形式のコンデンサが適用可能であるが、できるだけ損失が少なく十分な耐圧を有するものが好ましい。コンデンサ132は、可変容量素子の一例である。
図2に示す電力伝送装置では、共振周波数を可変するために、コンデンサ132として可変コンデンサが用いられている。可変コンデンサとしては、例えば、MEMS技術を用いて製作された可変容量デバイスや半導体を用いた可変容量デバイス(バラクタ)を適用することができる。
1次側コイル12及び1次側共振コイル13は、電磁的に互いに密に結合するように、例えば、同一平面上で同心状に配置される。すなわち、1次側共振コイル13の内側に1次側コイル12が設けられた状態で配置される。或いは、1次側共振コイル13及び1次側コイル12は、同軸上で適当な距離をあけて配置してもよい。
この状態で、交流電源11から1次側コイル12に交流電圧が印加されると、1次側コイル12に生じた交番磁界による電磁誘導によって1次側共振コイル13に共振電流が流れる。すなわち、電磁誘導によって、1次側コイル12から1次側共振コイル13に電力が伝送される。
また、受電系コイルRCは、2次側共振コイル22及び2次側コイル23を含む。2次側共振コイル22は、例えば、銅線またはアルミニウム線などの金属線が円周状に巻かれたコイル221、及び、コイル221の両端に接続されたコンデンサ222を含む。2次側共振コイル22の共振周波数f0は、コイル221のインダクタンス及びコンデンサ222の静電容量に従って、前述した式(1)で示される。
2次側共振コイル22のコイル221は、例えば、ワンターンコイルであり、また、コンデンサ222は、前述したように、種々の形式のコンデンサが適用可能である。図2に示す電力伝送装置では、共振周波数を可変するために、コンデンサ222として可変コンデンサが用いられる。
可変コンデンサとしては、コンデンサ132と同様に、例えば、MEMS技術を用いて製作された可変容量デバイスや半導体を用いたバラクタを適用することができる。
2次側コイル23は、例えば、銅線またはアルミニウム線などの金属線が円周状に複数回巻かれたものであり、その両端に負荷であるデバイス21が接続される。なお、負荷デバイス21は、例えば、受電器2の電源として使用するバッテリやそのバッテリを充電するための回路である。
2次側共振コイル22及び2次側コイル23は、電磁的に互いに密に結合するように、例えば、同一平面上で同心状に配置される。すなわち、2次側共振コイル22の内側に2次側コイル23が設けられた状態で配置される。或いは、2次側共振コイル22及び2次側コイル23は、同軸上で適当な距離をあけて配置してもよい。
この状態で、2次側共振コイル22に共振電流が流れると、それによって発生した交番磁界による電磁誘導によって2次側コイル23に電流が流れる。すなわち、電磁誘導によって、2次側共振コイル22から2次側コイル23に電力が送られる。
ここで、送電系コイルTCから受電系コイルRCへは、磁界共鳴によって無線で電力を伝送するため、図2に示すように、コイル面が互いに平行で、コイル軸心が互いに一致するかまたは余りずれないように、互いに適当な距離の範囲内に配置される。
図2に示すように、電力伝送装置100において、コイル軸心KTに沿う方向が磁界KKの主な放射方向であり、送電系コイルTCから受電系コイルRCに向かう方向が送電方向TDである。
ここで、1次側共振コイル13の共振周波数ft及び2次側共振コイル22の共振周波数frが、両方とも交流電源11の周波数fdと一致しているとき、最大の電力が伝送される。
図2に示す電力伝送装置100では、送電側制御回路14及び受電側制御回路24により、交流電源11の位相φvt、並びに、1次側共振コイル13及び2次側共振コイル22に流れる電流の位相φit及びφirを用いて、共振周波数ftとfrの制御を行う。共振周波数ftとfrは、交流電源11の周波数fdと等しくなるように制御される。
ここで、送電側制御回路14は、送電系コイルTCに印加される電圧Vtの位相φvt及び送電系コイルTCに流れる電流Itの位相φitを検出し、位相差Δφtが所定の目標値φmtとなるように、送電系コイルTCの共振周波数ftを可変制御する。
すなわち、送電側制御回路14は、電流検出センサSE1、位相検出部141,142、目標値設定部143、フィードバック制御部144、及び、位相送信部145を有する。
電流検出センサSE1は、1次側共振コイル13に流れる電流Itを検出する。電流検出センサSE1としては、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子または検出コイルなどを用いることができる。この電流検出センサSE1は、例えば、電流Itの波形に応じた電圧信号を出力する。
位相検出部141は、1次側コイル12に印加される電圧Vtの位相φvtを検出し、例えば、電圧Vtの波形に応じた電圧信号を出力する。ここで、位相検出部141は、電圧Vtをそのまま出力してもよく、また、適当な抵抗によって分圧して出力してもよい。そのため、位相検出部141は、単なる導線、或いは、1つまたは複数の抵抗素子とすることもできる。
位相検出部142は、電流検出センサSE1からの出力に基づいて、1次側共振コイル13に流れる電流Itの位相φitを検出し、例えば、電流Itの波形に応じた電圧信号を出力する。ここで、位相検出部142は、電流検出センサSE1の出力をそのまま出力してもよい。そのため、電流検出センサSE1は、位相検出部142を兼ねるようにすることもできる。
目標値設定部143は、位相差Δφtの目標値φmtを設定して記憶する。そのため、目標値設定部143には、目標値φmtを記憶するためのメモリが設けられている。目標値φmtとしては、例えば、「−180°(−π radian)」または「−180°に適当な補正値aを加えた値」などが設定される。
なお、目標値φmtの設定は、予め記憶された1つまたは複数のデータの中から選択することにより行ってもよく、また、CPUやキーボードなどからの指令によって行われるようにしてもよい。
フィードバック制御部144は、交流電源11の電圧Vtの位相φvtと1次側共振コイル13の電流Itの位相φitとの位相差Δφtが、設定された目標値φmtとなるように、1次側共振コイル13の共振周波数ftを可変制御する。
位相送信部145は、1次側コイル12に供給される電圧Vtの位相φvtについての情報を、受電側制御回路24に対してアナログ信号またはデジタル信号として無線で送信する。ここで、例えば、S/N比を向上させるために、電圧Vtの波形に応じた電圧信号を整数倍に逓倍して送信することもできる。
受電側制御回路24は、送電系コイルTCに供給される電圧VTの位相φvt及び受電系コイルRCに流れる電流IRの位相φirを検出し、それらの位相差Δφrが所定の目標値φmrとなるように、受電系コイルRCの共振周波数frを可変制御する。
すなわち、受電側制御回路24は、電流検出センサSE2、位相受信部241、位相検出部242、目標値設定部243、及び、フィードバック制御部244を有する。
電流検出センサSE2は、2次側共振コイル22に流れる電流Irを検出する。電流検出センサSE2としては、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子または検出コイルなどを用いることができる。この電流検出センサSE2は、例えば、電流Irの波形に応じた電圧信号を出力する。
位相受信部241は、位相送信部145から送信された位相φvtについての情報を受け取って出力する。ここで、位相送信部145で電圧信号を逓倍した場合には、位相受信部241で元に戻すために分周を行う。位相受信部241は、例えば、電圧Vtに応じた電圧信号を出力する。
位相検出部242は、電流検出センサSE2からの出力に基づいて、2次側共振コイル22に流れる電流Irの位相φirを検出し、例えば、電流Irの波形に応じた電圧信号を出力する。ここで、位相検出部242は、電流検出センサSE2の出力をそのまま出力してもよい。そのため、電流検出センサSE2は、位相検出部242を兼ねるようにすることもできる。
目標値設定部243は、位相差Δφrの目標値φmrを設定して記憶する。そのため、目標値設定部243には、目標値φmrを記憶するためのメモリが設けられている。目標値φmrとして、例えば、送電側制御回路14における目標値φmtに「−90°(−π/2 radian)」を加算した値が設定される。
すなわち、目標値φmrとしては、例えば、「−270°(−3π/2 radian)」または「−270°に適当な補正値aを加えた値」などが設定される。なお、目標値φmrの設定方法などについては、目標値φmtの場合と同様である。
フィードバック制御部244は、交流電源11の電圧Vtの位相φvtと2次側共振コイル22の電流Irの位相φirとの位相差Δφrが、設定された目標値φmrとなるように、2次側共振コイル22の共振周波数frを可変制御する。
なお、送電側制御回路14における目標値設定部143とフィードバック制御部144は、共振周波数制御部の一例である。同様に、受電側制御回路24における目標値設定部243とフィードバック制御部244は、共振周波数制御部の一例である。
また、上述のように、送電系コイルTCと受電系コイルRCは、図2に示すように、コイル面が互いに平行で、コイル軸心が互いに一致するかまたは余りずれないように、互いに適当な距離の範囲内に配置されることが望ましい。
しかしながら、送電系コイルTCは電力を送電する装置側に配設され、受電系コイルRCは電力を受電する装置側に配設されるため、送電系コイルTCに含まれる1次側共振コイル13と、受電系コイルRCに含まれる2次側共振コイル22との位置関係は、常に一定ではなく、変化しうる。
また、磁界共鳴による電力の伝送は、電磁誘導による電力の伝送よりも電力を伝送可能な距離が長く、送電側と受電側がより離れている場合でも電力を伝送することができる。
このため、磁界共鳴による電力の伝送を行う場合には、送電側と受電側との間にある程度の距離がある場合がある。そして、電力伝送装置100の用途によっては、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との間の距離は、送電側から受電側に電力を伝送する度に異なる可能性がある。
また、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合は、互いの間の距離等に応じて変わる。
このようなことから、実施の形態1の電力伝送装置100は、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合に応じて、電力の伝送効率を最適化するために、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合を判定する。
図3は、図2に示す電力伝送装置100の制御系を示すブロック図である。図3には、送電器1のフィードバック制御部144、判定制御部160、及び、受電器2のフィードバック制御部244の詳細を示す。
ここで、図3のブロック図では、簡略化のために、図2における位相検出部141,142,241,242は省略されている。すなわち、図3では、電流検出センサSE1から1次側共振コイル13に流れる電流Itの位相φitが直接出力されているが、この位相φitは、例えば、フィードバック制御部144に設けた位相検出部142を介して出力されてもよい。
図3に示すように、フィードバック制御部144は、位相比較部151、加算部152、ゲイン調整部153,154、補償部155、及び、ドライバ156を備える。
位相比較部151は、電流検出センサSE1で検出された電流Itの位相φitと、交流電源11の電圧Vtの位相φvtとを比較し、位相φitと位相φvtとの位相差Δφtを表す信号を出力する。位相比較部151から出力される位相差Δφtを表す信号は、加算部152と判定制御部160に入力される。位相比較部151は、位相差検出部の一例である。
加算部152は、位相比較部151の出力する位相差Δφtから、目標値設定部143に設定された目標値φmtを減算(反転して加算)する。従って、位相差Δφtと目標値φmtが一致したときに、加算部152の出力は零となる。
加算部152の出力は、ゲイン調整部154に入力され、さらに、補償部155に入力される。ここで、ゲイン調整部153及び154は、制御が正しく行われるように、それぞれ入力される値またはデータに対するゲイン(利得)を調整し、或いは、データなどの換算を行う。
なお、ゲイン調整部154の調整端子154Aには、判定制御部160からゲイン調整信号が入力される。ゲイン調整部154のゲインは、判定制御部160によって調整される。
補償部155は、例えば、低周波成分に対するゲインを定める。すなわち、フィードバック制御部144は、例えば、コンデンサ132であるMEMS可変容量デバイスに対するフィードバック制御を行うサーボ系とみることができる。
従って、補償部155には、サーボ系の安定化、高速化、高精度化を図るための適当なサーボフィルタが用いられる。また、このようなサーボ系においてPID(Proportional Integral Derivative Controller)動作を行わせるためのフィルタ回路または微分積分回路などが、適宜使用される。
なお、補償部155のオン/オフ制御端子155Aは、判定制御部160に接続されている。補償部155は、判定制御部160からオン/オフ制御端子155Aにオフ信号が入力されているときは、出力信号を出力しない。この結果、フィードバック制御が行われなくなる。補償部155は、判定制御部160からオン/オフ制御端子155Aにオン信号が入力されると、出力信号を出力する。この結果、フィードバック制御が行われる。
ドライバ156は、例えば、コンデンサ132であるMEMS可変容量デバイスに対して制御信号KTtを出力し、そのMEMS可変容量デバイスの静電容量を可変制御する。ドライバ156の制御端子156Aには、判定制御部160からコンデンサ132の静電容量を調整する信号が入力される。
ここで、MEMS可変容量デバイス(MEMS可変キャパシタ)は、例えば、ガラスの基板上に下部電極及び上部電極を設け、それら電極間に印加する電圧による静電吸引力で生じる撓みに起因した間隙の変化を利用して、静電容量を変化させるようになっている。
なお、MEMS可変容量デバイス(コンデンサ132)は、キャパシタのための電極と駆動のための電極とが別個に設けられることもある。また、駆動のための電極に印加する電圧と静電容量の変化量との関係が線形ではないため、例えば、ドライバ156において、その変換のための演算またはテーブル換算などを適宜行うようになっている。
判定制御部160は、判定部の一例である。判定制御部160は、位相比較部151の出力端子、ゲイン調整部154の調整端子154A、補償部155のオン/オフ制御端子155A、及びドライバ156の制御端子156Aに接続されている。
判定制御部160は、補償部155をオフにした状態で、ドライバ156にコンデンサ132の静電容量を掃引させ、位相比較部151で検出される電流Itの位相φitと電圧Vtの位相φvtとの位相差の変化度合に基づいて、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合を判定する。
また、判定制御部160は、判定結果に基づき、ゲイン調整部154のゲインの調整、又は、補償部155のオン/オフの制御を行う。
フィードバック制御部244は、位相比較部251、加算部252、ゲイン調整部253,254、補償部255、ドライバ256、及び、極性反転部257を備える。
なお、フィードバック制御部244における各部の動作は、実質的に、上述したフィードバック制御部144における各部の動作と同様なので、その説明は省略する。
なお、図2における送電側制御回路14及び受電側制御回路24、並びに、図3におけるフィードバック制御部144、判定制御部160、及びフィードバック制御部244などは、ソフトウエアまたはハードウエア、或いは、それらの組み合わせで実現可能である。
例えば、CPU、ROM及びRAMなどのメモリ、その他の周辺素子などを含むコンピュータを用い、適当なコンピュータプログラムをCPUに実行させることで実現することができる。その場合、適当なハードウエア回路を併用することになる。
図4及び図5は、図2及び図3に示す電力伝送装置における共振周波数の制御を説明するための図である。ここで、図4において、横軸は交流電源11の周波数f[MHz]を示し、縦軸は各コイルに流れる電流Iの大きさ[dB]を示す。また、図5において、横軸は交流電源11の周波数f[MHz]を示し、縦軸は各コイルに流れる電流Iの位相φ[radian]を示す。
なお、位相φは、交流電源11の電圧Vtの位相φvt、つまり1次側コイル12に供給される電圧Vtの位相φvtを基準とし、その位相差Δφを示す。すなわち、位相φvtと一致した場合には、位相φが0となる。位相φが負の値である場合は、交流電源11から出力される交流電圧Vtの位相φvtに対して、電流の位相が遅れていることを表す。一方、電流の位相φが正の値である場合は、交流電源11から出力される交流電圧Vtの位相φvtに対して、電流の位相が進んでいることを表す。
各曲線に付した参照符号CBA1〜CBA4及びCBB1〜CBB4において、末尾の数字1、2、3、4は、それぞれ、1次側コイル12、1次側共振コイル13、2次側共振コイル22、2次側コイル23に対応することを示す。
さらに、図4及び図5は、共振周波数制御において、1次側共振コイル13、または、1次側共振コイル13及び2次側共振コイル22を、その共振周波数ft,frが10MHzとなるように制御する場合を示す。
このとき、目標値設定部143の目標値φmtは「−π radian (−180°)」に設定され、目標値設定部243の目標値φmrは「−3π/2 radian (−270°)」に設定される。
すなわち、目標値φmrは、目標値φmtに−π/2を加算した値「φmt−π/2」、つまり目標値φmtよりもπ/2遅れた位相が設定される。
曲線CBA2に示すように、1次側共振コイル13の電流Itは、交流電源11の周波数fdと一致する10MHzにおいて最大となっている。また、曲線CBB2に示すように、1次側共振コイル13の電流Itの位相φitは、共振周波数ftである10MHzにおいて、−πとなっている。つまり、目標値φmtと一致している。
ここで、1次側共振コイル13は、1次側コイル12からみて直列共振回路と見ることができ、共振周波数ftよりも低い周波数fdにおいては容量性となって−π/2に近づき、高い周波数fdにおいては誘導性となって−3π/2に近づく。
このように、1次側共振コイル13に流れる電流Itの位相φitは、共振周波数ftの近辺において大きく変化する。位相φitつまり位相差Δφtが−πとなるように制御することによって、1次側共振コイル13の共振周波数ftを電圧Vtの周波数fdに高精度で一致させることができる。
なお、曲線CBA1に示すように、1次側コイル12に流れる電流Iも、共振周波数ftにおいて最大となる。曲線CBB1に示すように、1次側コイル12に流れる電流Iの位相φiは、共振周波数ftの近辺において零または進み位相となり、共振周波数ftから外れると−π/2となる。
曲線CBA3に示すように、2次側共振コイル22の電流Irは、交流電源11の周波数fdと一致する10MHzにおいて最大となっている。
曲線CBB3に示すように、2次側共振コイル22の電流Irの位相φirは、共振周波数ftである10MHzにおいて、−3π/2となっている。つまり、目標値φmrと一致している。また、周波数fdが共振周波数ftよりも低くなった場合に、位相差Δφが減少して−π/2に近づき、共振周波数ftよりも高くなった場合に、位相差Δφが増大して−5π/2つまり−π/2に近づく。
このように、1次側共振コイル13及び2次側共振コイル22に流れる電流It,Irの位相φit,φirは、共振周波数ft,frの近辺において大きく変化する。位相φit,φirつまり位相差Δφt,Δφrが−πまたは−3π/2となるように制御することによって、1次側共振コイル13及び2次側共振コイル22の共振周波数ft,frを電圧Vtの周波数fdに高精度で一致させることができる。
これにより、環境要因などの変化があっても、送電系コイルTC及び受電系コイルRCの共振周波数を交流電源11の周波数fdに正確に一致させることができ、送電装置3から受電装置4に対して、常に最大の効率で電力を伝送することが可能になる。
さらに、交流電源の電圧Vtに対するコイル電流の位相差Δφを基に制御を行うため、例えば、スイープサーチ法による場合のように電流の振幅の変動による影響を受けることがなく、正確な制御を行うことができる。
なお、スイープサーチ法では、例えば、送電系コイルTCまたは受電系コイルRCにおけるLまたはCをスイープさせ、コイルの電流値が最大(ピーク)となる位置を試行錯誤的にサーチする。
図6及び図7は、図2及び図3に示す電力伝送装置におけるシミュレーション条件を説明するための図である。図6に示すように、シミュレーション条件としては、1次側コイル12及び1次側共振コイル13を同一平面上で同心状に配置し、2次側共振コイル22及び2次側コイル23も同一平面上で同心状に配置した。
また、送電系コイルTC(1次側コイル12及び1次側共振コイル13)と受電系コイルRC(2次側共振コイル22及び2次側コイル23)との距離Dを25mmに設定し、駆動周波数(交流電源11の周波数fd)を7MHzに設定した。さらに、負荷(負荷デバイス21の抵抗値)を10Ωに設定し、各コイルの巻線の太さをφ0.5mmに設定した。
さらに、図7に示すように、1次側コイル12の外径をφ20mmとし巻数を1回に設定し、1次側共振コイル13の外径をφ40mmとし巻数を5回に設定した。また、2次側共振コイル22の外径をφ30mmとし巻数を5回に設定し、2次側コイル23の外径をφ20mmとし巻数を1回に設定した。なお、1次側共振コイル13及び2次側共振コイル22における隣接する巻線の中心間の距離(ピッチ)を、0.8mmに設定した。
次に、図8を用いて、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との間の距離D(図6参照)を変えることによって1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合を変えた場合における1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の電流と位相の周波数特性について説明する。
図8は、距離Dの変化による1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流の電流値の周波数特性を示す図である。図9は、距離Dの変化による1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流の位相の周波数特性を示す図である。
図8及び図9に示す6つの周波数特性は、シミュレーションにおいて、距離Dを変化させるとともに、交流電源11から出力される交流電圧の周波数を変化させることによって得たものである。
図8の(A)、(B)、(C)には、それぞれ、距離Dを30mm、20mm、10mmにした場合における1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流の電流値の周波数特性を示す。
図8の(A)、(B)、(C)における横軸は、交流電源11から出力される交流電圧の周波数を示し、縦軸は1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流の電流値を示す。実線は1次側共振コイル13に流れる電流の電流値を示し、破線は2次側共振コイル22に流れる電流の電流値を示す。
図9の(A)、(B)、(C)には、それぞれ、距離Dを30mm、20mm、10mmにした場合の位相の1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流の位相の周波数特性を示す。
図9の(A)、(B)、(C)における横軸は、交流電源11から出力される交流電力の周波数を示す。横軸に表される交流電源11から出力される交流電力の周波数は、1次側共振コイル13に与える電力の周波数に等しい。
また、図9の(A)、(B)、(C)における縦軸は1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流の位相を示す。実線は1次側共振コイル13に流れる電流の位相を示し、破線は2次側共振コイル22に流れる電流の位相を示す。
ここで、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流の位相は、交流電源11から出力される交流電圧の位相を基準とした位相差として表してある。すなわち、図9の(A)、(B)、(C)には、交流電源11から出力される交流電圧の位相を0(degrees)とした場合の1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流の位相を表す。
図9の(A)、(B)、(C)には、交流電源11から出力される交流電圧の位相に対して1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流の位相が遅れるか、進むかが表される。
図9の(A)、(B)、(C)において、位相が負の値である場合は、交流電源11から出力される交流電圧の位相に対して、電流の位相が遅れていることを表す。一方、電流の位相が正の値である場合は、交流電源11から出力される交流電圧の位相に対して、電流の位相が進んでいることを表す。
なお、図8及び図9の(A)に示す距離Dが30mmの場合は、結合係数kが0.02、Q値がQ=145であり、kQ積は約3.1である。図8及び図9の(B)に示す距離Dが20mmの場合は、結合係数kが0.06、Q値がQ=145であり、kQ積は約8.3である。また、図8及び図9の(C)に示す距離Dが10mmの場合は、結合係数kが0.2、Q値がQ=144であり、kQ積は約29である。
kQ積が高いほど、1次側共振コイル13から2次側共振コイル22への電力の伝送効率が高いため、ここでは便宜的に、D=30mmの場合を弱結合、D=20mmの場合を中結合、D=10mmの場合を強結合と称す。
弱結合、中結合、強結合は、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合を表す相対的な概念である。1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合が弱結合、中結合、強結合のいずれであるかは、距離Dだけではなく、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の外径、巻数、又はピッチ等によっても変わるため、距離Dの範囲だけで定義することは難しい。
実施の形態1の電力伝送装置100における弱結合、中結合、強結合の判断方法については後述する。
図8の(A)に示すように、弱結合(D=10mm)の場合に1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流は、ともに単峰型である。電流の最大値は、6.78MHzにおいて得られており、これは、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)に等しい。
図8の(B)に示すように、中結合(D=20mm)の場合に1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流は、ともに双峰型である。電流の最大値は、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)よりも低い約6.5MHzと、共振周波数(6.78MHz)よりも高い約7.1MHzにおいて得られている。
図8の(C)に示すように、強結合(D=30mm)の場合に1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流は、ともに双峰型である。電流の最大値は、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)よりも低い約6.2MHzと、共振周波数(6.78MHz)よりも高い約7.6MHzにおいて得られている。
以上のように、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22に流れる電流は、結合度合が比較的低いときは単峰型の特性を示し、結合度合が比較的高いときは双峰型の特性を示す。結合度合が高くなるにつれて、双峰型の特性の2つのピークは離れる傾向にある。
また、図9の(A)に実線で示すように、弱結合(D=30mm)の場合に1次側共振コイル13に流れる電流の位相は、交流電源11から出力される交流電圧の周波数の増大に伴い、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)の前後で遅れる傾向(右下がりの傾向)を示す。
また、図9の(A)に破線で示すように、弱結合(D=30mm)の場合に2次側共振コイル22に流れる電流の位相は、交流電源11から出力される交流電圧の周波数の増大に伴い、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)の前後で遅延する傾向(右下がりの特性)を示す。
また、図9の(B)に実線で示すように、中結合(D=20mm)の場合に1次側共振コイル13に流れる電流の位相は、交流電源11から出力される交流電圧の周波数の増大に伴い、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)の前後で変化しない傾向(フラットな特性)を示す。
また、図9の(B)に破線で示すように、中結合(D=20mm)の場合に2次側共振コイル22に流れる電流の位相は、交流電源11から出力される交流電圧の周波数の増大に伴い、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)の前後で減少する傾向(右下がりの特性)を示す。
また、図9の(C)に実線で示すように、強結合(D=10mm)の場合に1次側共振コイル13に流れる電流の位相は、交流電源11から出力される交流電圧の周波数の増大に伴い、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)の前後で進む傾向(右上がりの特性)を示す。
また、図9の(C)に破線で示すように、強結合(D=10mm)の場合に2次側共振コイル22に流れる電流の位相は、交流電源11から出力される交流電圧の周波数の増大に伴い、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)の前後で緩やかに遅れる傾向(緩やかな右下がりの特性)を示す。
ここで、図9の(A)、(B)、(C)に実線で示す1次側共振コイル13に流れる電流の位相に着目する。
図9の(A)に実線で示す弱結合(D=30mm)の場合の1次側共振コイル13に流れる電流の位相は、交流電源11から出力される交流電圧の周波数の増大に伴い、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)の前後で遅れる傾向(右下がりの特性)を示す。
また、図9の(B)に実線で示す中結合(D=20mm)の場合の1次側共振コイル13に流れる電流の位相は、交流電源11から出力される交流電圧の周波数の増大に伴い、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)の前後で変化しない傾向(フラットな特性)を示す。
また、図9の(C)に実線で示す強結合(D=10mm)の場合の1次側共振コイル13に流れる電流の位相は、交流電源11から出力される交流電圧の周波数の増大に伴い、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)の前後で進む傾向(右上がりの特性)を示す。
すなわち、1次側共振コイル13に流れる電流の位相は、交流電源11から出力される交流電圧の周波数の増大に伴い、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)の前後で、遅れる傾向(右下がりの特性)、変化しない傾向(フラットな特性)、又は、進む傾向(右上がりの特性)を示す。
また、ここで、コンデンサ132の静電容量を大きくすると、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数は低下する。これとは逆に、コンデンサ132の静電容量を小さくすると、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数は上昇する。これは、上述した式(1)から明らかである。
共振周波数が低下すると、図8の(A)、(B)、(C)に示す電流の周波数特性は、左側にシフトする。このため、共振周波数が低下すると、図9の(A)、(B)、(C)に示す位相の周波数特性も左側にシフトする。図9の(A)、(B)、(C)に示す位相の周波数特性は、位相が0度である点(共振点)と、図8の(A)、(B)、(C)に示す電流の周波数特性の共振周波数とが一致するように、シフトする。
ここで、実際に電力伝送装置100で送電側から受電側に電力の伝送を行う際には、交流電源11が出力する交流電圧の周波数は、電力伝送装置100に割り当てられている周波数に設定される。電力伝送装置100に割り当てられている周波数は、実施の形態1では、6.78MHzである。
このため、コンデンサ132の静電容量が連続的に増大するように掃引して1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数を低下させた場合に、1次側共振コイル13に流れる電流の位相に変化があると、位相比較部151(図3参照)の出力が変化する。位相比較部151は、交流電源11が出力する6.78MHzの交流電圧の位相φvtと、1次側共振コイル13に流れる電流の位相φitとの位相差Δφtを表す信号を出力する。
ここで、弱結合である場合は、コンデンサ132の静電容量を掃引して1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数を低下させると、図9の(A)に示す右下がりの特性が左側にずれることにより、6.78MHzの交流電圧の位相φvtに対する電流の位相φitは遅れる。この場合は、位相比較部151が出力する位相差Δφtを表す信号は、位相の遅れを表す。
また、中結合である場合は、コンデンサ132の静電容量を掃引して1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数を低下させて、図9の(B)に示すフラットな特性が左側にずれても、6.78MHzの交流電圧の位相φvtに対する電流の位相φitは殆ど変化しない。この場合は、位相比較部151が出力する位相差Δφtを表す信号は、位相の変化が殆どないことを表す。
また、強結合である場合は、コンデンサ132の静電容量を掃引して1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数を低下させると、図9の(C)に示す右上がりの特性が左側にずれることにより、6.78MHzの交流電圧の位相φvtに対する電流の位相φitは進む。この場合は、位相比較部151が出力する位相差Δφtを表す信号は、位相の進みを表す。
このように、コンデンサ132の静電容量を大きくした場合の位相比較部151が出力する位相差Δφtを表す信号の変化は、送電側のみで検出することができる。
すなわち、受電側を動かさない状態で、かつ、補償部(図3参照)をオフにして送電側のフィードバック制御をオフにした状態で、コンデンサ132の静電容量を掃引して1次側共振コイル13の共振周波数を低下させたときの位相比較部151の出力に基づいて、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合を判定することができる。なお、受電側を動かさない状態とは、送電側から受電側に電力を伝送するときとは異なり、送電側で結合状態を判定するために、ごく小さな電力の交流源力を交流電源11から出力させる状態をいう。
この場合に、判定制御部160(図3参照)で位相比較部151の出力を検出すれば、判定制御部160で、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合を判定することができる。
このように、位相比較部151において、交流電圧の位相φvtと、1次側共振コイル13に流れる電流の位相φitとの位相差を監視できるため、実施の形態1の電力伝送装置100では、1次側共振コイル13に流れる電流の位相に着目する。
ここで、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合が、弱結合、中結合、強結合のいずれであるかは、実施の形態1では、次のように判断する。
実施の形態1では、コンデンサ132の静電容量が連続的に増大するように掃引して1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数を低下させたときに、位相比較部151が出力する位相差Δφtを表す信号に応じて、弱結合、中結合、強結合のいずれであるかを判定すればよい。
位相差Δφtが、位相の遅れを表す第1の所定値以下である場合には、弱結合であると判定する。第1の所定値は、負の値であり、具体的な値は、距離Dと、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の外径、巻数、又はピッチ等とに基づいて、シミュレーション又は実験によって決定すればよい。
また、位相差Δφtが、第1の所定値より大きく、かつ、位相の進みを表す第2の所定値未満である場合には、中結合であると判定する。第2の所定値は、正の値であり、具体的な値は、距離Dと、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の外径、巻数、又はピッチ等とに基づいて、シミュレーション又は実験によって決定すればよい。
また、位相差Δφtが、第2の所定値以上である場合には、強結合であると判定すればよい。
また、上述したように、磁界共鳴による電力の伝送は、電磁誘導による電力の伝送よりも電力を伝送可能な距離が長く、送電側と受電側がより離れている場合でも電力を伝送することができる。
このため、磁界共鳴による電力の伝送を行う場合には、送電側と受電側との間にある程度の距離がある場合がある。
このため、実施の形態1の電力伝送装置100では、フィードバック制御部144及び244(図2及び図3参照)によるフィードバック制御におけるゲイン等の設定は、弱結合を基準に設定されており、コンデンサ132、222の静電容量の増大に対して、電流の位相が遅れることが前提になっていることとする。
なお、ここでは、コンデンサ132の静電容量が連続的に増大するように掃引して1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数を低下させた場合の位相比較部151の出力に基づいて1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合を判定する形態について説明する。
しかしながら、コンデンサ132の静電容量が連続的に減少するように掃引した場合の位相比較部151の出力に基づいて1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合を判定してもよい。
コンデンサ132の静電容量を小さくすると、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数が上昇するので、コンデンサ132の静電容量を大きくする場合とは逆方向に位相がずれた場合に、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合を同様に判定すればよい。
次に、図10を用いて、距離Dと、送電側から受電側への電力の伝送効率との関係について説明する。
図10は、距離Dと、送電側から受電側へ伝送される電力の伝送効率との関係を示す図である。図10の縦軸に示す伝送効率は、1次側コイル12に入力される電力に対する2次側コイル23から取り出される電力の比率である。1次側コイル12と2次側コイル23との間は、1次側共振コイル13及び2次側共振コイル22を経て電力が伝送される。
図10に示す横軸は、交流電源11が出力する交流電圧の周波数である。図10に示す伝送効率の特性は、シミュレーションによって得たものである。横軸に表される交流電源11から出力される交流電力の周波数は、1次側共振コイル13に与える電力の周波数に等しい。
図10に示すように、伝送効率が最も高くなるのは、いずれの距離Dにおいても、1次側共振コイル13及び2次側共振コイル22の共振周波数(6.78MHz)の場合である。いずれの距離Dにおいても、周波数が6.78MHzからずれるに従って、伝送効率は低下する傾向がある。
また、距離Dが短いほど伝送効率が高く、かつ、周波数の変化に対する伝送効率の変化が少ない傾向がある。換言すれば、距離Dが長いほど伝送効率が低く、かつ、周波数の変化に対する伝送効率の変化が多い傾向がある。
例えば、コンデンサ132の静電容量の調整可能な範囲が、6.78MHzに合わせた場合を中心(0%)として、±10%である場合には、1次側共振コイル13及び2次側共振コイル22の共振周波数の調整可能な範囲は、約±3.2%になる。これは、図10に、6.78MHzを中心として横方向の両矢印で示す範囲である。
このような共振周波数の調整可能な範囲(約±3.2%)内においても、図10に示すように、距離Dが短いほど伝送効率が高く、かつ、周波数の変化に対する伝送効率の変化が少なく、距離Dが長いほど伝送効率が低く、かつ、周波数の変化に対する伝送効率の変化が多い傾向がある。
ところで、電力伝送装置100で送電側から受電側に電力を伝送するときに、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の結合度合によらずに、フィードバック制御部144及び244(図2、3参照)によるフィードバック制御を行うと次のようになる。
図9の(A)に示すように、弱結合である場合に、コンデンサ132の静電容量を掃引して1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数を低下させると、図9の(A)に示す右下がりの特性が左側にずれることにより、6.78MHzの交流電圧の位相φvtに対する電流の位相φitは遅れる。
このように電流の位相が変化する場合に、フィードバック制御部144及び244(図2、3参照)によるフィードバック制御を行うと、送電側でコンデンサ132の静電容量の変化に対する電流の位相の変化が同一極性なので、フィードバック制御部144及び244によるゲインの調整等は問題なく働く。
これは、フィードバック制御部144及び244によるフィードバック制御におけるゲイン等の設定が、弱結合を基準に設定されており、コンデンサ132、222の静電容量の増大に対して、電流の位相が遅れることが前提になっているからである。
また、図9の(B)に示すように、中結合である場合は、コンデンサ132の静電容量を掃引して1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数を低下させて、図9の(B)に示すフラットな特性が左側にずれても、6.78MHzの交流電圧の位相φvtに対する電流の位相φitは殆ど変化しない。
このように電流の位相が共振点の前後で殆ど変化しない場合に、フィードバック制御部144及び244(図2、3参照)によるフィードバック制御を行うと、送電側でコンデンサ132の静電容量を変化させても、電流の位相φitが殆ど変化しないので、フィードバック制御部144によるゲイン調整が整合しなくなる。
従って、中結合である場合は、フィードバック制御部144によるフィードバック制御が正常に機能しなくなり、この結果、フィードバック制御部244によるフィードバック制御も正常に機能しなくなおそれがある。
また、図9の(C)に示すように、強結合である場合は、コンデンサ132の静電容量を掃引して1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数を低下させると、図9の(C)に示す右上がりの特性が左側にずれることにより、6.78MHzの交流電圧の位相φvtに対する電流の位相φitは進む。
このように電流の位相が共振点の前後で電流の位相φitは進む場合に、フィードバック制御部144及び244(図2、3参照)によるフィードバック制御を行うと、送電側でコンデンサ132の静電容量を変化に対する電流の位相の変化が、弱結合の場合の位相の変化とは逆極性になるため、フィードバック制御部144によるゲイン調整が整合しなくなる。
このように、フィードバック制御部144によるゲイン調整と、コンデンサ132の静電容量を変化に対する電流の位相の変化とが逆極性になると、1次側共振コイル13を流れる電流の共振周波数が定まらなくなり、制御が発散するおそれがある。
また、例えば、図9の(C)に示すX点のような位置で、1次側共振コイル13に流れる電流の共振周波数が落ち着く可能性があるが、X点は必ずしも適切な動作点ではなく、意図しない動作点である可能性がある。
従って、強結合である場合は、フィードバック制御部144によるフィードバック制御が正常に機能しなくなり、この結果、フィードバック制御部244によるフィードバック制御も正常に機能しなくなおそれがある。
一方、図10に示したように、距離Dが比較的短い場合には、距離Dが比較的長い場合よりも伝送効率が高く、かつ、周波数の変化に対する変動が少ない。
従って、実施の形態1の電力伝送装置100では、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合の判定結果が弱結合の場合にのみ、フィードバック制御部144及び244によるフィードバック制御を行うこととする。
そして、実施の形態1の電力伝送装置100では、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合の判定結果が中結合又は強結合の場合には、フィードバック制御部144及び244によるフィードバック制御を行わないこととする。
これは、次のような理由に基づくものである。フィードバック制御部144は、弱結合の場合を基準としてゲイン等の設定が行われている。また、弱結合のように距離Dが比較的長い場合には、図10に示すように伝送効率は比較的低く、かつ、周波数の変化に対する伝送効率の変動が比較的大きい。
このため、弱結合の場合には、フィードバック制御によって最適な動作点で動作させることによる恩恵が大きい。
一方、中結合及び強結合の場合は、フィードバック制御部144による送信側でのフィードバック制御が正常に機能しないおそれがある。また、図10に示すように、中結合及び強結合の場合は伝送効率は比較的高く、かつ、周波数の変化に対する伝送効率の変動が比較的小さい。
このため、中結合及び強結合の場合は、フィードバック制御を行わなくても、ある程度良好な動作点で動作できると考えられる。
以上のような理由から、実施の形態1の電力伝送装置100では、弱結合の場合にのみフィードバック制御部144及び244によるフィードバック制御を行い、中結合又は強結合の場合には、フィードバック制御部144及び244によるフィードバック制御を行わないこととする。
従って、実施の形態1の電力伝送装置100では、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合が弱結合であるか、弱結合以外(中結合又は強結合)であるかの判定を行うことが必要になる。
ここで、図11を用いて、距離Dに対する伝送効率の低下率について考える。
図11は、実施の形態1の電力伝送装置100における、距離Dに対する伝送効率の低下率の特性を示す図である。
図11において、横軸は、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との間の距離D(1次側コイル12及び1次側共振コイル13と、2次側共振コイル22及び2次側コイル23との間の距離D)を表す。また、縦軸は、伝送効率の低下率を示す。伝送効率の低下率とは、図9に示す共振周波数(6.78MHz)における伝送効率に対する、周波数が±3.2%変化した場合の伝送効率の低下分の最大値の割合である。
図11に示すように、距離Dの増大に伴い、伝送効率の低下率は増大している。
ここで、弱結合と、弱結合以外(中結合又は強結合)とを区別するために、例えば、コンデンサ132の静電容量を±10%の範囲で掃引した場合に、周波数が6.78MHzである場合に比べて伝送効率が第3の所定値以上低下する場合に、弱結合であると判定することとする。
そして、ここでは、一例として、第3の所定値(伝送効率)は10%であることとする。このような場合には、距離D=25mmの場合が、弱結合と弱結合以外との境界となる。
このような場合には、距離Dが25mm以上の場合に、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合が弱結合であると判定し、フィードバック制御部144及び244によるフィードバック制御を行うようにすればよい。フィードバック制御部144は、制御部の一例である。
このため、距離Dが25mm未満の場合には、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合が中結合又は強結合であると判定し、フィードバック制御部144及び244によるフィードバック制御を行わないようにすればよい。これは、フィードバック制御を行わない制御モードを選択することである。
電力伝送装置100は、距離Dを判別することはできないので、距離Dが25mmの場合に位相比較部151が出力する位相差Δφtの変化率Δφt'に基づいて、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合が中結合又は強結合であると判定するようにすればよい。ここでは、距離Dが25mmの場合に位相比較部151が出力する位相差Δφtの変化率Δφt'をαとする。変化率Δφt'は、コンデンサ132の静電容量の変化に対する位相差Δφtの変化の割合を表す。換言すれば、変化率Δφt'は、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数の変化に対する位相差Δφtの変化の割合を表す。コンデンサ132の静電容量は、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数に対応するからである。位相差変化率αは、第1の遅延度合を表す位相差の変化率の一例であり、弱結合は、第1結合度合の一例である。
電力伝送装置100は、受電側をオフにして、かつ、補償部155(図3参照)をオフにした状態で、コンデンサ132の静電容量が増大するように掃引したときに、位相比較部151が出力する位相差Δφtの変化率がα以下になるか否かで、結合度合が弱結合又は弱結合以外のいずれであるかを判定すればよい。
コンデンサ132の静電容量が増大するように掃引すると、1次側共振コイル13に流れる電流Itの位相φitは、交流電源11が出力する交流電圧の位相φvtに対して遅れる方向に変化するため、位相比較部151で検出される位相差Δφtの変化率は負の値になる。
このため、距離Dが25mmの場合に位相比較部151が出力する位相差変化率αは、負の値である。
次に、図12を用いて、電力伝送装置100における結合度合の判別と、フィードバック制御のオン/オフの切り替えについて説明する。
図12は、実施の形態1の電力伝送装置100の判定制御部160が実行する処理を示す図である。判定処理部160は、電力伝送装置100がオンになると、一連の処理を開始する(スタート)。
判定制御部160は、フィードバック制御部144のフィードバック制御がオフになっているか否かを判定する(ステップS11)。フィードバック制御部144のフィードバック(FB)制御は、補償部155のオン/オフ制御端子155Aに判定制御部160からオフ信号を入力されることによってオフにされる。
判定制御部160は、ステップS11において、フィードバック制御部144がオフになっていない(S11:NO)と判定すると、補償部155にオフ信号を入力してフィードバック制御部144をオフにする(ステップS11A)。
判定制御部160は、ステップS11において、フィードバック制御部144がオフになっている(S11:YES)と判定すると、ドライバ156にコンデンサ132の静電容量を初期値から増大するように掃引させる(ステップS12)。
例えば、コンデンサ123の静電容量の調整可能な範囲が、6.78MHzに合わせた場合を中心(0%)として、±10%である場合には、ステップS12の処理により、コンデンサ123の静電容量が、−10%から+10%まで掃引される。
次に、判定制御部160は、位相比較部151から入力される位相差φΔtを検出する(ステップS13)。
次に、判定制御部160は、ステップS13で検出した位相差φΔtの変化率Δφt'に基づき、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合が弱結合であるか否かを判定する(ステップS14)。
例えば、距離Dが25mmの場合に位相比較部151が出力する位相差変化率αが、弱結合と弱結合以外(中結合又は強結合)との境界値である場合には、判定制御部160は、ステップS13で検出した位相差φΔtの変化率Δφt'と、位相差変化率αとを比較することによって、結合度合が弱結合であるか否かを判定すればよい。
この場合、判定制御部160は、ステップS13で検出した位相差φΔtの変化率Δφt'が、位相差変化率α以下であれば、結合度合は弱結合であると判定し、ステップS13で検出した位相差φΔtが、位相差変化率αより大きければ、結合度合は弱結合以外であると判定することになる。
判定制御部160は、結合状態が弱結合であると判定すると(S14:YES)、フィードバック制御部144によるフィードバック制御をオンにするために、補償部155にオン信号を入力する(ステップS15)。
この結果、フィードバック制御が行われ、一連の処理は終了する(エンド)。フィードバック制御は、図4及び図5を用いて説明したように行われる。
一方、判定制御部160は、ステップS14において、結合状態が弱結合以外であると判定すると(S14:NO)、結合状態が中結合であるか否かを判定する(ステップS16)。ステップS14は、結合状態が中結合又は強結合のいずれであるかを判定するステップである。
例えば、図11に示す距離Dに対する伝送効率の低下率の特性において、距離Dが15mm以上の場合に、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合が中結合であると判定するようにすればよい。
この場合は、距離Dが15mmである場合に位相比較部151が出力する位相差Δφtの変化率Δφt'をβとし、位相比較部151が出力する位相差Δφtの変化率Δφt'がβ以下になるか否かで、結合度合が中結合又は強結合のいずれであるかを判定すればよい。
判定制御部160は、位相差Δφtの変化率Δφt'がβ以下の場合に、結合状態は中結合である(S16:YES)と判定し、一連の処理を終了する(エンド)。
判定制御部160は、ステップS16において、位相差Δφtの変化率Δφt'がβ未満であると判定した場合(S16:NO)は、結合状態が強結合であるか否かを判定する(ステップS17)。判定制御部160は、位相比較部151が出力する位相差Δφtの変化率Δφt'がβ未満であれば、結合度合が強結合であると判定し(S17:YES)、一連の処理を終了する(エンド)。
なお、判定制御部160は、ステップS17において、位相比較部151が出力する位相差Δφtの変化率Δφt'がβ未満ではないと判定した場合は、フローをステップS12にリターンする。判定制御部160が、ステップS17でNOと判定する場合は、位相比較部151が出力する位相差Δφtに異常がある等の場合である。
以上の処理により、判定制御部160は、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合を判定し、弱結合である場合にはフィードバック制御部144のフィードバック制御をオンにする。この結果、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合が弱結合の状態で、送電側と受電側のフィードバック制御がともに行われて、最適な動作点での電力の伝送が行われる。
一方、中結合又は強結合の場合は、フィードバック制御部144のフィードバック制御がオフにされた状態で、送電側から受電側に電力が伝送される。この場合は、コンデンサ132の静電容量は、可変量が0%の中央値、又は、予め設定された所定の値に設定すればよい。
以上のように、実施の形態1によれば、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合に応じて、電力伝送を効率的に行うことができる電力伝送装置100を提供することができる。
なお、判定制御部160が内部メモリを備える場合は、次のようにしてもよい。ステップS12でコンデンサ132の静電容量を初期値から増大するように掃引するときに、位相比較部151が出力する位相差Δφtの変化率Δφt'が0度になる共振点を与える静電容量の値を内部メモリに格納してもよい。そして、ステップS15でフィードバック制御をオンにする際に、判定制御部160が内部メモリに格納した静電容量を用いてドライバ156を駆動し、フィードバック制御の開始時から、共振点で動作するようにしてもよい。
このように、フィードバック制御の開始時から共振点で動作するようにすれば、フィードバック制御において、動作点が共振点に引き込まれやすくなり、フィードバック制御における動作がより安定する。
なお、以上では、ステップS14において弱結合であると判定した場合に、フィードバック制御をオンにする形態について説明したが、結合状態が分かればよい場合は、ステップS14の判定を終えた段階で、フローを終了してもよい。この場合は、結合状態を判定することができる電力伝送装置100を提供することができる。
また、以上では、1次側共振コイル13の両端間に接続されるコンデンサ132の静電容量を変えることによって1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数を調整する形態について説明した。しかしながら、コンデンサ132を用いなくても、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22の共振周波数を調整することは可能である。
図13は、実施の形態1の変形例による1次側共振コイル13Aを示す図である。1次側共振コイル13Aは、螺旋コイルであり、螺旋コイルの巻線の間隔を変えることによって静電容量を調整する点が、ワンターンコイル131及びコンデンサ132を含む1次側共振コイル13(図2及び図3参照)と異なる。
1次側共振コイル13Aは、両端が保持部13B1、13B2によって保持されている。また、保持部13B1、13B2は、ステー13C1、13C2を介して、駆動部13D1、13D2に固定されている。駆動部13D1、13D2は、互いの間の間隔を調整できるように、移動可能である。駆動部13D1、13D2は、例えば、モーターのような駆動装置を有し、互いの間の間隔を調整することにより、1次側共振コイル13Aをコイル軸lの方向に伸縮させるために設けられている。1次側共振コイル13Aを伸縮させると、1次側共振コイル13Aの巻線同士の間隔が変わるため、浮遊容量が変化し、共振周波数を調整することができる。1次側共振コイル13Aを縮めれば浮遊容量は大きくなり、1次側共振コイル13Aを延ばせば浮遊容量は小さくなる。
以上のように、1次側共振コイル13Aを伸縮させることによって共振周波数を調整してもよい。なお、駆動部13D1、13D2は、いずれか一方が固定されていてもよい。また、駆動部13D1、13D2は、モーター以外の駆動装置によって互いの間の間隔を調整してもよい。
<実施の形態2>
実施の形態2の電力伝送装置は、結合度合が強結合であると判定した場合に、フィードバック制御部144のゲイン極性を逆極性に切り替えてフィードバック制御を行う点が実施の形態1の電力伝送装置100と異なる。強結合は、第2結合度合の一例である。
実施の形態2の電力伝送装置は、図2及び図3に示す実施の形態1の電力伝送装置100と同様の構成を有し、判定制御部160による制御のみが実施の形態1の電力伝送装置100と異なる。
このため、以下の説明では図1乃至図11を援用し、図14のフローチャートを用いて相違点について説明する。
図14は、実施の形態2の電力伝送装置の判定制御部160が実行する処理を示す図である。図14に示すステップS1〜S17は、図12に示す実施の形態1の電力伝送装置100におけるステップS1〜S17と同様であるため、重複説明を省略する。
判定制御部160は、ステップS17において、結合度合が強結合であると判定した場合(S17:YES)は、ゲイン極性を逆極性に切り替えた上で、補償部155にオン信号を入力し、フィードバック制御部144によるフィードバック制御を行わせる(ステップS20)。
判定制御部160は、ゲイン調整部154のゲイン極性を逆特性に切り替えることにより、フィードバック制御部144のゲイン極性を逆極性に切り替える。ゲイン調整部154のゲイン極性を逆特性に切り替えることは、実施の形態1におけるゲイン調整部154のゲインを−1倍することによって実現できる。
この結果、フィードバック制御部144のゲイン極性を逆極性に切り替えた上で、強結合の状態で、送電側と受電側のフィードバック制御がともに行われて、最適な動作点での電力の伝送が行われる。
以上のように、実施の形態2によれば、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合に応じて、電力伝送を効率的に行うことができる電力伝送装置を提供することができる。
<実施の形態3>
実施の形態3の電力伝送装置は、結合度合が中結合又は強結合であると判定した場合に、1次側コイル12及び1次側共振コイル13を含む送電系コイルTCと、2次側共振コイル22及び2次側コイル23を含む受電系コイルRCとのkQ積を低減してフィードバック制御を行う点が実施の形態1の電力伝送装置100と異なる。
実施の形態3の電力伝送装置は、図2及び図3に示す実施の形態1の電力伝送装置100と同様の構成を有し、判定制御部160による制御のみが実施の形態1の電力伝送装置100と異なる。
このため、以下の説明では図1乃至図11を援用し、図15のフローチャートを用いて相違点について説明する。
図15は、実施の形態3の電力伝送装置の判定制御部160が実行する処理を示す図である。図15に示すステップS1〜S17は、図12に示す実施の形態1の電力伝送装置100におけるステップS1〜S17と同様であるため、重複説明を省略する。
判定制御部160は、ステップS16において、結合度合が中結合であると判定した場合(S16:YES)は、kQ積を低減した上で、補償部155にオン信号を入力し、フィードバック制御部144によるフィードバック制御を行わせる(ステップS30)。
具体的には、判定制御部160は、送電系コイルTCと受電系コイルRCとのkQ積を低減した上で、中結合の状態で、送電側と受電側のフィードバック制御がともに行われて、最適な動作点での電力の伝送が行われる。
また、判定制御部160は、ステップS17において、結合度合が強結合であると判定した場合(S17:YES)も、ステップS16において中結合であると判定した場合(S16:YES)と同様にkQ積を低減した上で、補償部155にオン信号を入力し、フィードバック制御部144によるフィードバック制御を行わせる(ステップS30)。
以上のように、実施の形態3によれば、1次側共振コイル13と2次側共振コイル22との結合度合に応じて、電力伝送を効率的に行うことができる電力伝送装置を提供することができる。
なお、1次側共振コイル13のkQ積の低減は、例えば、次のようにして実現すればよい。
図16は、実施の形態3の電力伝送装置の1次側コイル12、1次側共振コイル13、2次側共振コイル22、及び2次側コイル23の構成の一例を示す図である。kQ積の低減は、例えば、1次側共振コイル13に、エレメント300を設けることによって実現すればよい。エレメント300は、例えば、1次側共振コイル13に直列に挿入される可変抵抗器、又は、1次側共振コイル13に設けられるタップである。
1次側共振コイル13に直列に挿入される可変抵抗器の抵抗値を増大させれば、Q値を増大させることができ、可変抵抗器の抵抗値を減少させれば、Q値を減少させることができる。
また、1次側共振コイル13に設けられるタップは、磁界共鳴による電力伝送に用いる1次側共振コイル13の実効的な巻数を変える素子であり、結合係数kを変えるために設けられる。例えば、1次側共振コイル13の中点にタップを設けておき、判定制御部160がタップを切り替えることにより、磁界共鳴による電力伝送に用いる1次側共振コイル13の実効的な巻数を10巻又は5巻に切り替えられるようにすればよい。これにより、結合係数kを変更することができる。
以上のように、エレメント300を用いてQ値又は結合係数kを変更することにより、kQ積を低減することができる。
以上、本発明の例示的な実施の形態の電力伝送装置、及び、電力伝送方法について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
本発明の実施の形態の電力伝送装置は、交流電源に接続される1次側コイルと、前記1次側コイルから電磁誘導によって電力を受電する1次側共振コイルと、前記1次側共振コイルとの間で生じる磁界共鳴によって前記1次側共振コイルから電磁誘導により電力を受電する2次側共振コイルと、前記2次側共振コイルから電磁誘導によって電力を受電する2次側コイルと、前記1次側共振コイルに供給される電圧の位相に対する、前記1次側共振コイルに流れる電流の位相の位相差を検出する位相差検出部と、前記1次側共振コイルに設けられる可変容量部と、前記可変容量部の静電容量を変化させて前記1次側共振コイル及び前記2次側共振コイルの共振周波数を変化させたときの前記共振周波数の変化量に対する前記位相差の変化度合に基づき、前記1次側共振コイル及び前記2次側共振コイルの結合度合を判定する判定部とを含み、前記判定部は、前記静電容量を増大させて前記1次側共振コイル及び前記2次側共振コイルの共振周波数を低下させたときの前記共振周波数の変化量に対する前記位相差の変化度合が、前記共振周波数の前後の所定の区間において第1の遅延度合以上の遅延を表す場合に、前記1次側共振コイル及び前記2次側共振コイルの結合度合が第1結合度合以下であると判定する。