JPWO2014157381A1 - 風味素材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、食品利用に適し、十分な量のシクロテンを含有する風味素材の製造方法を提供する。本発明は、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン並びにこれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上のアミノ酸又はその塩を0.1〜8.5M、並びにリボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される1種又は2種以上の糖類を0.1〜6.7Mの最終濃度で含む水溶液又は懸濁液を加熱する工程を含む、シクロテンを0.1ppm以上含有する風味素材の製造方法に関する。

Description

本発明は、飲食品に香気及び/又は風味を付与するための、シクロテンを含有する風味素材の製造方法に関する。
シクロテンは、シクロペンテン誘導体の一つであり、そのCAS登録番号は80−71−7である。シクロテンは、メープル、ウォールナッツに似た甘いカラメル様の香気を有することが知られており(非特許文献1)、飲食品に好ましい香気及び/又は風味を付与すると考えられている。
シクロテンは、ワインや和三盆糖にごく微量含まれることが知られている(非特許文献2、非特許文献3)。
非特許文献4には、スギ辺材から調製した木酢液中に、0.008〜0.987%のシクロテンが含まれることが報告されている。しかし、木酢液はその製造方法から、食品への利用には適さないという課題を有しており、飲食品に好ましい香気及び/又は風味を付与できる十分量のシクロテンを含む風味素材の製造方法が望まれていた。
非特許文献5には、グルコースとプロリンの加熱反応産物として約20種類の化合物が記載されており、その1つとしてシクロテンが記載されている。さらに、非特許文献6では、2,3-dihydro-3,5-dihydroxy-6-methyl-4(H)-pyran-4-oneの熱分解で生成する化合物の1つとしてシクロテンが記載されている。しかし、何れにおいても、シクロテンの生成量については一切報告されていない。
非特許文献7では、グルコースとグルタミン酸の加熱反応産物として約40種類の化合物が報告されており、その1つとしてシクロテン(3-Methylcyclopent-2-en-2-ol-1-one)が記載されているが、生成量については一切報告されていない。さらに、後掲の比較例で示す通り、本方法の加熱反応産物中のシクロテン生成量は検出限界(0.01ppm)以下であり、十分量のシクロテンを含有するとは言い難いものであった。
合成香料−化学と商品知識、印藤元一著、化学工業日報社、pp. 287-288 (2005) J. Agric. Food Chem. Vol. 47, 2837-2846, 1999 J. Nutr. Sci. Vitaminol. Vol. 27, 563-572, 1981 日本化学会誌 No.3, 385-391, 2002 J. Agric. Food Chem. Vol. 41, 547-553, 1993 J. Agric. Food Chem. Vol. 44, 282-289, 1996 Z. Lebensm Unters Forsch Vol. 182, 219-223, 1986
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、食品利用に適した、飲食品に香気及び/又は風味を付与するために、十分量のシクロテンを含有する風味素材の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン並びにこれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上のアミノ酸又はその塩と、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される1種又は2種以上の糖類とを、水溶液又は懸濁液中で加熱することにより、十分量のシクロテンを含有する風味素材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン並びにこれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上のアミノ酸又はその塩を0.1〜8.5M、並びにリボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される1種又は2種以上の糖類を0.1〜6.7Mの最終濃度で含む水溶液又は懸濁液を加熱する工程を含む、シクロテンを0.1ppm以上含有する風味素材の製造方法に関する。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン並びにこれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上のアミノ酸又はその塩を0.1〜8.5M、並びにリボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される1種又は2種以上の糖類を0.1〜6.7Mの最終濃度で含む水溶液又は懸濁液を加熱する工程を含む、シクロテンを0.1ppm以上含有する風味素材の製造方法。
[2]アミノ酸又はその塩及び糖類を含む水溶液を加熱する工程を含む、[1]に記載の方法。
[3]前記糖類が、キシロース、グルコース及びフラクトースからなる群より選択される1種又は2種以上である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記アミノ酸又はその塩がグルタミン酸ナトリウムである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]前記加熱を開始した時のpHが5〜9である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6]前記加熱温度が50〜180℃である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7]前記加熱を開始した後において、さらにpHを7〜9に調整する工程を含む、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8][1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法により得られる風味素材。
[9][8]に記載の風味素材を含有する、飲食品。
[10][8]に記載の風味素材を、飲食品あたりのシクロテン含有量が0.001ppb〜100ppmとなるように添加する工程を含む、飲食品の製造方法。
[11]アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン並びにこれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上のアミノ酸又はその塩を0.01〜8.5M、並びにリボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される1種又は2種以上の糖類を0.01〜6.7Mの最終濃度で含み、さらに、アミノ酸又はその塩に対する糖類のモル比が、アミノ酸又はその塩1モルに対して0.01〜105モルであり、かつ、アミノ酸又はその塩の最終濃度及び糖類の最終濃度がともに0.1M未満とならないように含む水溶液又は懸濁液を加熱する工程を含む、シクロテンを0.1ppm以上含有する風味素材の製造方法。
本発明の製造方法によれば、食品利用に適し、飲食品に香気及び/又は風味を付与するのに十分な量のシクロテンを含有する風味素材を提供することができる。
また、本発明の風味素材は、飲食品に好ましい香気及び/又は風味を付与することができる。
実施例2の加熱後のサンプル中のシクロテン量の相対値を示す。 実施例3の加熱後のサンプル中のシクロテン量を示す。 実施例4の加熱後のサンプル中のシクロテン量を示す。 実施例5の官能評価結果を示す。
本明細書において、「香気」とは、飲食せずに鼻だけで感じられる香り(オルソネーザルフレーバー)を意味する。「風味」とは、飲食時に感じられる口腔内から鼻へ抜ける香り(レトロネーザルフレーバー)を意味する。
また、本明細書において「%」とは、特に断りの無い限り、「重量%」を意味する。また、本明細書において「ppm」とは、特に断りの無い限り、「重量ppm」を意味する。さらに、本明細書において「M」とは、特に断りの無い限り、「mol/L(モル/リットル)」を意味する。
また、本明細書において、「十分量のシクロテン」とは、飲食品に好ましい香気及び/又は風味を付与できる量のシクロテンを意味し、具体的には0.1ppm以上、好ましくは1ppm以上、より好ましくは5ppm以上、最も好ましくは10ppm以上のシクロテンを意味する。
(1)本発明の風味素材の製造方法
本発明の風味素材の製造方法(以下、単に「本発明の方法」とも称する)は、シクロテンを0.1ppm以上含有する風味素材の製造方法であって、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン並びにこれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上のアミノ酸又はその塩を0.1〜8.5M、並びにリボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される1種又は2種以上の糖類を0.1〜6.7Mの最終濃度で含む水溶液又は懸濁液を加熱する工程を含む。勿論、更に他の工程を含んでいても構わない。
なお、アミノ酸又はその塩並びに糖類を含む水溶液又は懸濁液におけるこれらの「最終濃度」とは、水溶液の場合は、当該水溶液中における濃度をいい、懸濁液である場合は、加熱され可溶化された後の水溶液における濃度をいう。また、水溶液又は懸濁液のpH調整を行う場合についても、pH調整を行う前における濃度をいう。
本発明の方法で用いられるアミノ酸又はその塩は、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン並びにこれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上であり、好ましくはアスパラギン酸ナトリウム及び/又はグルタミン酸ナトリウムであり、より好ましくはグルタミン酸ナトリウムである。上記以外のアミノ酸又はその塩を用いた場合は、飲食品に好ましい香気及び/又は風味を付与するに足る十分量のシクロテンが生成しない。
本発明の方法で用いられる上記アミノ酸の塩としては、可食性の塩であれば特に限定されないが、例えば、カルボキシル基等の酸性基に対しては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;アルミニウム塩;亜鉛塩;トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロヘキシルアミン等の有機アミンとの塩;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩を挙げることができる。
また、アミノ基等の塩基性基に対しては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩;酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸との塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩を挙げることができる。
本発明の方法で用いられる上記アミノ酸にはD体とL体が存在するが、本発明においてはそのどちらを用いてもよく、ラセミ混合物であるDL体を用いてもよい。さらに、これらのアミノ酸は精製品を用いることもできるし、これらのアミノ酸を含有する食品素材(例えば、酵母エキス、蛋白加水分解物等)を用いることもでき、特に制限されるものではない。
本発明の方法における水溶液又は懸濁液中のアミノ酸又はその塩の最終濃度としては、通常0.1M以上、好ましくは0.2M以上、より好ましくは0.5M以上、最も好ましくは1M以上であり、通常8.5M以下、好ましくは7M以下、より好ましくは5M以下、さらに好ましくは3M以下、最も好ましくは2.7M以下である。具体的には、例えば、0.1〜8.5M、好ましくは0.2〜5M、より好ましくは0.5〜3M、さらに好ましくは1〜3M、最も好ましくは1〜2.7Mである。なお、アミノ酸又はその塩を2種類以上用いる場合は、その最終濃度の合計が上記範囲内であれば良い。ここで、「アミノ酸又はその塩の最終濃度」とは、上記の通り、アミノ酸又はその塩を含む水溶液である場合は、当該水溶液中の濃度をいい、アミノ酸又はその塩を含む懸濁液である場合は、当該懸濁液が加熱され、可溶化された後の水溶液中における濃度をいう。
本発明の方法で用いられる糖類としては還元性単糖及び二糖が望ましく、例えば、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース及びフラクトースなどの単糖類、シュークロース、マルトース及びラクトースなどの二糖類を挙げることができ、好ましくは、キシロース、グルコース及びフラクトースが挙げられ、特に好ましくはグルコースである。これらは単独で用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
本発明の方法における水溶液又は懸濁液中の糖類の最終濃度としては、通常0.1M以上、好ましくは0.2M以上、より好ましくは0.5M以上、最も好ましくは1M以上であり、通常6.7M以下、好ましくは6M以下、より好ましくは5M以下、さらに好ましくは3M以下、最も好ましくは2.7M以下である。具体的には、例えば、0.1〜6.7M、好ましくは0.2〜5M、より好ましくは0.5〜3M、さらに好ましくは1〜3M、最も好ましくは1〜2.7Mである。なお、糖類を2種類以上用いる場合は、その最終濃度の合計が上記範囲内であれば良い。ここで、「糖類の最終濃度」とは、上記の通り、糖類を含む水溶液である場合は、当該水溶液中の濃度をいい、糖類を含む懸濁液である場合は、当該懸濁液が加熱され、可溶化された後の水溶液中における濃度をいう。
また、水溶液又は懸濁液中でのアミノ酸又はその塩に対する糖類のモル比は特に限定されないが、通常、アミノ酸又はその塩1モルに対して、0.01〜10モル、好ましくは0.1〜5モル、より好ましくは0.5〜2モルである。
さらに、本発明の方法の別の態様においては、アミノ酸又はその塩を0.01〜8.5M、及び糖類を0.01〜6.7Mの最終濃度で含み、さらに、水溶液又は懸濁液中に、アミノ酸又はその塩に対する糖類のモル比が、アミノ酸又はその塩1モルに対して0.01〜105モルの範囲内であり、かつアミノ酸又はその塩の最終濃度及び糖類の最終濃度がともに0.1M未満とならないように、アミノ酸又はその塩及び糖類が含まれていれば、当該水溶液又は懸濁液を加熱することにより、0.1ppm以上のシクロテンが生成され得る。
本態様において用いられるアミノ酸又はその塩、及び糖類については、上記と同様である。
また、本態様における水溶液又は懸濁液中のアミノ酸又はその塩の最終濃度としては、通常0.01M以上、好ましくは0.1M以上、より好ましくは0.2M以上、さらに好ましくは0.5M以上、最も好ましくは1M以上であり、通常8.5M以下、好ましくは7M以下、より好ましくは5M以下、さらに好ましくは3M以下、最も好ましくは2.7M以下である。具体的には、例えば、0.01〜8.5M、好ましくは0.1〜7M、より好ましくは0.2〜5M、さらに好ましくは0.5〜3M、さらにより好ましくは1〜3M、最も好ましくは1〜2.7Mである。アミノ酸又はその塩を2種類以上用いる場合は、その最終濃度の合計が上記範囲内であれば良い。
本態様における水溶液又は懸濁液中の糖類の最終濃度としては、通常0.01M以上、好ましくは0.1M以上、より好ましくは0.2M以上、さらに好ましくは0.5M以上、最も好ましくは1M以上であり、通常6.7M以下、好ましくは6M以下、より好ましくは5M以下、さらに好ましくは3M以下、最も好ましくは2.7M以下である。具体的には、例えば、0.01〜6.7M、好ましくは0.1〜6M、より好ましくは0.2〜5M、さらに好ましくは0.5〜3M、さらにより好ましくは1〜3M、最も好ましくは1〜2.7Mである。糖類を2種類以上用いる場合は、その最終濃度の合計が上記範囲内であれば良い。
さらに、本態様では、水溶液又は懸濁液中におけるアミノ酸又はその塩に対する糖類のモル比は、アミノ酸又はその塩1モルに対して、通常0.01〜105モルであり、好ましくは0.01〜10モルであり、より好ましくは0.1〜5モルであり、さらに好ましくは0.5〜2モルである。
また、アミノ酸又はその塩及び糖類は、水溶液又は懸濁液中に、それらの最終濃度がともに0.1M未満とならないように含まれ、好ましくは、それらの最終濃度がともに0.2M未満とならないように含まれる。水溶液又は懸濁液中におけるアミノ酸又はその塩及び糖類の最終濃度がともに0.1M未満である場合には、0.1ppm以上のシクロテンが生成されない。
本発明の方法においては、特に限定されないが、好ましくは、上記アミノ酸又はその塩及び上記糖類は、それぞれ所望の量を秤取し、水を加えて混合し、水溶液又は懸濁液として加熱する。前記水としては、市水、町水等の水道水や、蒸留水、脱イオン水等の精製水を用いることが好ましい。水の使用量は、アミノ酸又はその塩及び糖類の各使用量に応じ、それぞれの最終濃度が上記の範囲内となる量である。水溶液又は懸濁液の加熱温度は、通常50〜180℃であり、好ましくは70〜160℃であり、より好ましくは90〜160℃であり、さらに好ましくは90〜150℃であり、特に好ましくは95〜150℃である。当該加熱温度が50℃未満であると、シクロテンが十分に生成されない傾向がある。一方、当該加熱温度が180℃を超えると、コゲ臭が生じて風味素材に異風味がつく傾向がある。
上記水溶液又は懸濁液の加熱方法は、加熱温度が上記の範囲内になれば特に制限されず、直接加熱及び間接加熱のどちらでもよく、例えば、直火、電気ヒーター、マイクロウェーブ等による加熱が挙げられる。また加熱中の攪拌はあってもなくてもよい。加熱に用いられる装置としては、例えば、オイルバス、ウォーターバス、恒温槽、ヒートブロック、ニーダー、コンビミックス等が挙げられる。勿論、これらに制限されるものではない。
本発明の方法において、上記水溶液又は懸濁液の加熱を開始した時のpHは、通常5〜9であり、好ましくは6〜9であり、より好ましくは7〜9である。当該pHが5未満であると、シクロテンが十分に生成されない傾向があり、当該pHが9を超えると風味素材に異風味がつく傾向がある。
なお、上記水溶液又は懸濁液の加熱開始時のpHを、以下「初発pH」ともいう。
上記水溶液又は懸濁液のpHの調整は、飲食品に一般的に用いられるpH調整剤を用いて行うことができる。本発明において用い得るpH調整剤に特に限定は無いが、流通性の点から、塩酸、リン酸、クエン酸、蟻酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等が好ましい。勿論、これらに制限されるものではない。
本発明の方法における上記水溶液又は懸濁液の加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すればよいが、通常1〜64時間であり、好ましくは2〜32時間である。当該加熱時間が1時間未満であると、シクロテンが十分に生成されない傾向がある。一方、当該加熱時間が64時間を超えると、コゲ臭が生じ、風味素材に異風味がつく傾向がある。
また、シクロテンの生成量の点からは、95〜160℃で1〜7時間加熱することが好ましく、150℃で1〜5時間、又は160℃で1〜3時間加熱することがより好ましい。
本発明の方法においては、加熱反応の途中で再度pH調整(以下、「2段目pH調整」ともいう)をする工程を加えても良い。2段目pH調整を行うタイミングは、水溶液又は懸濁液中のアミノ酸又はその塩及び糖類の濃度や加熱温度によって適宜調整すればよいが、例えば加熱開始後0.5〜4時間後であり、好ましくは1〜2時間後である。また、2段目pH調整は、加熱開始時のpH、即ち初発pHに関わらず、水溶液又は懸濁液のpHが7〜9になるように行うことが好ましく、8〜9になるように行うことがより好ましい。なお、加熱反応中2段目pH調整を行う場合の加熱時間も、加熱温度等に応じて適宜設定すればよいが、2段目pH調整を行わない場合と同様に、最初に加熱を開始してから終了するまでの総時間として、通常1〜64時間であり、好ましくは2〜32時間であり、より好ましくは4〜16時間である。
2段目pH調整を行う場合の加熱温度は、2段目pH調整を行わない場合と同様に、通常50〜180℃であり、好ましくは70〜160℃であり、より好ましくは90〜150℃である。
本発明の方法で得られる風味素材は、シクロテンを含有する。該風味素材中のシクロテンの含有量は、通常0.1ppm以上であり、好ましくは1ppm以上であり、より好ましくは10ppm以上であり、最も好ましくは50ppm以上である。また、該風味素材中のシクロテンの含有量は、通常1,000ppm以下であり、好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下である。風味素材中のシクロテン含有量が0.1〜1,000ppmの範囲であれば、飲食品に好ましい香気及び/又は風味を付与することができる。
本発明の方法により得られる風味素材中のシクロテン含有量は、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)等により、定量することができる。
本発明の方法で得られたシクロテンを含有する風味素材は、反応終了後に、そのまま用いても良いし、又は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、適宜精製処理等を施したり、賦形剤(例、アラビアガム、加工澱粉、α―サイクロデキストリン、β―サイクロデキストリン、γ―サイクロデキストリン、分岐状サイクロデキストリン、大豆多糖類、ゼラチン、デキストリン、脱脂粉乳、乳糖、少糖類等)等を添加したりして用いてもよい。
また、本発明の方法の加熱反応終了後、反応生成物を冷凍し、反応生成物に含まれる未反応のアミノ酸を晶析させて除去する工程を経た後に、風味素材として用いてもよい。反応生成物の冷凍は、−10〜−15℃で12〜36時間行うことが好ましく、−15〜−20℃で12〜36時間行うことがより好ましい。析出した未反応のアミノ酸は、自然沈降、濾過等の手法により除去することができる。
(2)本発明の風味素材
本発明の方法によって得られた風味素材(以下、単に「本発明の素材」とも称する)は、飲食品にふくらみのある風味、甘い香気及び/又は風味、持続性のある風味等の好ましい香気及び/又は風味を付与することができる。「ふくらみのある風味」とは、飲食品を口に含んでから2秒後から4秒後までに感じる、口腔中に広がる風味を意味する。また、「甘い香気及び/又は風味」とはメープル、ウォールナッツに似た甘いカラメル様の香気及び/又は風味を意味する。また、「持続性のある風味」とは飲食品を口に含んでから4秒後から6秒後までに感じる、口腔中に持続する風味を意味する。
本発明において、本発明の素材におけるシクロテンの「含有量」とは、本発明の素材が賦形剤等を添加してなる場合には、添加した賦形剤等の重量を除いて算出した含有量を意味する。
具体的には、本発明の素材におけるシクロテンの含有量は、通常0.1ppm以上、好ましくは1ppm以上、より好ましくは10ppm以上、最も好ましくは50ppm以上であり、通常1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは200ppm以下である。本発明の素材におけるシクロテンの含有量が上記範囲内であると、ふくらみのある風味、甘い香気及び/又は風味、持続性のある風味等の好ましい香気及び/又は風味を飲食品に付与する効果が高い。
本発明の素材におけるシクロテンの含有量は、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)等により、定量可能である。
本発明の素材の形態は、特に制限されないが、例えば、液体状(油状、スラリー状等を含む)、固体状(粉末状、顆粒状等を含む)、ゲル状、ペースト状等が挙げられる。
本発明の素材が添加される飲食品としては、例えば、調味料をはじめ、スープ、畜肉、鶏肉、魚介類等を加工した加工食品、ふりかけ、インスタント食品、スナック食品、缶詰食品、乳または乳製品、及び乳化食品等が挙げられるが、それらに限定されず、その他の広範な食品類にも本発明の素材を添加することができる。本発明の風味素材を添加した飲食品には、ふくらみのある風味、甘い香気及び/又は風味、持続性のある風味等の好ましい香気及び/又は風味が付与される。
本発明の素材の飲食品への添加濃度は、その形態及びシクロテン含有量等にもよるが、通常10ppm〜10%であり、好ましくは50ppm〜6%であり、より好ましくは100ppm〜3%である。本発明の風味素材の添加濃度が低すぎると、好ましい香気及び/又は風味の付与効果が得られず、添加濃度が高すぎると、飲食品として自然でなく人工的な香気及び/又は風味が付与されてしまう傾向がある。
本発明の素材は、後掲の実施例5でも示す通り、市販のシクロテン香料を単独で用いる場合に比べて低濃度のシクロテン量で、飲食品に好ましい香気及び/又は風味を付与することができる。
(3)本発明の製造方法により得られる風味素材を含有する飲食品
本発明はまた、本発明の製造方法により得られる風味素材を含有する飲食品(以下、単に「本発明の飲食品」とも称する)を提供する。
本発明の素材が添加された飲食品は、シクロテンを0.001ppb〜100ppm、好ましくは0.005ppb〜60ppm、より好ましくは0.01ppb〜30ppm含有し、ふくらみのある風味、甘い香気及び/又は風味、持続性のある風味等の好ましい香気及び/又は風味を有する。
(4)本発明の飲食品の製造方法
本発明の素材を飲食品に添加することにより、ふくらみのある風味、甘い香気及び/又は風味、持続性のある風味等の好ましい香気及び/又は風味を有する飲食品を製造することができる。従って、本発明はさらに、本発明の素材を飲食品に添加する工程を含む、飲食品の製造方法をも提供する。本発明の方法において対象となる飲食品は特に限定されず、具体的には上記に例示したものが挙げられる。
本発明の風味素材を飲食品に添加する時期は特に制限されず、例えば、飲食品を製造又は調理等する際に、他の原材料と併せて添加してもよいし、飲食品の製造後又は調理後に添加してもよく、飲食品の喫食直前及び/又は喫食中に添加してもよい。
また、本発明の風味素材は、飲食品に直接添加してもよく、水、出し汁、調理油等に混合して添加してもよい。
本発明の風味素材は、飲食品あたりのシクロテン含有量が0.001ppb〜100ppm、好ましくは0.005ppb〜60ppm、より好ましくは0.01ppb〜30ppmとなるように添加される。
なお、本発明の飲食品は、本発明の風味素材を飲食品に添加する工程以外は、公知の飲食品と同様の原料を用い、公知の飲食品と同様に製造することができる。
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例における風味素材の製造条件及び風味素材中のシクロテン量の測定条件は、以下の通りである。
(1)加熱反応に用いたアミノ酸又はその塩及び糖類
特に断りの無い限り、アミノ酸又はその塩及び糖類は、和光純薬株式会社製を用いた。
(2)加熱反応条件
各実施例及び比較例に示す量のアミノ酸又はその塩と糖類を、30mL容ガラス製バイアル瓶に入れ、水10gを添加して室温で10分間混合し、溶解又は懸濁した。その後、2M水酸化ナトリウム水溶液または2M塩酸水溶液で水溶液又は懸濁液のpHを調整し、ヒートブロック(IKA社製、RCT basic)で水溶液又は懸濁液を攪拌しながら一定時間加熱した。尚、加熱温度及び時間は各実施例及び比較例に記載の通りである。加熱後の反応溶液を冷却後、ガスクロマトグラフィーに供した。
(3)風味素材中のシクロテン量の測定方法
ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)により、下記に示す条件下に測定を行った。
<分析機器>
GC―MS;アジレント(Agilent)社製 型番5973−N
オートサンプラー(前処理、注入装置);ゲステル(GESTEL)社製 型番MPS2
<分析前処理>
サンプル5mLをセプタム付き20mL容バイアル瓶に入れ、70℃に加熱しながら固相マイクロ抽出(SPME)ファイバー(85μm Polyacrylate 57294−U:White)をヘッドスペース部分に60分間暴露し、成分を吸着させた。
<分析条件>
カラム;アジレント(Agilent)社製 DB−WAX(60m×0.25mm×0.25μm)
注入条件;220℃
モード;スプリットレス
ヘッド圧力;初期圧力=105kPaから13kPa/分で200kPaまで昇圧し、200kPaで4分間保持。
オーブン条件;50℃で0.6分間保持後、25℃/分で230℃まで昇温し、230℃で4.2分間保持。
[比較例]
グルタミン酸7.4mgとグルコース0.9mgを30mL容ガラス製バイアル瓶に計り取り、水10gを添加して混合した。水溶液中のグルタミン酸及びグルコースの最終濃度はそれぞれ5mMであった。水溶液のpH調整は行わず、150℃で1時間加熱した。加熱後のサンプル中のシクロテン含有量は検出限界以下であった。なお、前記シクロテンの検出限界は0.01ppmである。
[実施例1]各種糖類を用いたシクロテン生成の検討
実施例1−1〜1−3、比較例1−1〜1−3として、グルタミン酸ナトリウム9.35gと各種糖類(グルコース9g、フラクトース9g、キシロース7.5g)を30mL容ガラス製バイアル瓶に計り取り、水10gを添加して混合した。水溶液中のグルタミン酸ナトリウムの最終濃度は1.8M、糖の最終濃度は各々1.8Mであった。各実験区で用いたアミノ酸又はその塩及び糖類を表1に示す。各水溶液のpHを2M水酸化ナトリウム水溶液で8に調整した後、95℃で8時間加熱した。加熱後の各サンプル中のシクロテン含有量の測定結果を表2に示す。なお、表2中のシクロテン含有量の測定値の単位はppmである。
表2の結果から分かるように、水中にグルコース、フラクトース又はキシロースのみが存在し、グルタミン酸ナトリウムが存在しない比較例1−1〜1−3では、シクロテンは検出限界以下であった。一方、これらの糖類とグルタミン酸ナトリウムが水中に共存する実施例1−1〜1−3では、約17〜33ppmのシクロテンの生成が見られた。
[実施例2] 各種アミノ酸又はその塩を用いたシクロテン生成の検討
実施例2−1〜2−5、比較例2−1〜2−17として、各種アミノ酸又はその塩及びグルコースをバイアル瓶に計り取り、水10gを添加して混合し、水溶液を調製した。水溶液中の各アミノ酸又はその塩の最終濃度及びグルコースの最終濃度は各々1Mであった。各実験区で用いたアミノ酸又はその塩及び糖類を表3に示す。
各水溶液のpHを2M水酸化ナトリウム水溶液又は2M塩酸水溶液にて7に調整した後、各々95℃で17時間加熱した。グルタミン酸ナトリウムとグルコースを含む水溶液を加熱した後のサンプル(実施例2−1)中のシクロテン量を100とした場合の、他のアミノ酸又はその塩を用いた場合のシクロテン量の相対値を図1に示す。
図1の結果から分かるように、グルコースと反応させるアミノ酸又はその塩がグルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、メチオニン、バリン又はヒスチジン塩酸塩である場合にシクロテンの生成が認められ、特にグルタミン酸ナトリウム又はアスパラギン酸ナトリウムである場合には、その他のアミノ酸又はその塩である場合と比較して、多量のシクロテンの生成が認められた。
[実施例2A〜2C]アミノ酸又はその塩及び糖類の最終濃度の影響の検討
フラクトース量を一定としてグルタミン酸ナトリウム量を変化させた場合(実施例2A)、グルタミン酸ナトリウム量を一定としてフラクトース量を変化させた場合(実施例2B)、及びグルタミン酸ナトリウム1モルに対するフラクトースのモル比を1として、それぞれの量を変化させた場合(実施例2C)について、シクロテンの生成量を検討した。
グルタミン酸ナトリウムとしては、L−グルタミン酸ナトリウム・一水和物(味の素株式会社製)を用い、フラクトースとしては、純果糖S(加藤化学株式会社製、フラクトース99.9%)を用いた。表4に示す量の前記グルタミン酸ナトリウム及びフラクトースを、それぞれ30mL容のガラスバイアル瓶に秤取し、蒸留水10mLを加えて室温で攪拌混合し、溶解又は懸濁した。前記水溶液又は懸濁液のpHを測定し、pHが7.0±0.5となるように、2M水酸化ナトリウム水溶液又は2M塩酸水溶液にて調整した後、油浴中95℃で5時間加熱した。次いで冷却し、SPMEバイアルに移してGC−MSによりシクロテンを定量した。
定量結果は、表4に併せて示した。
表4に示されるように、グルタミン酸ナトリウム及びフラクトースの最終濃度がそれぞれ0.1M以上である場合には、0.1ppm以上のシクロテンの生成が認められた(実施例2A−3〜2A−8、2B−3〜2B−8、2C−1〜2C−5)。また、グルタミン酸ナトリウムの最終濃度が0.1M未満であっても、グルタミン酸ナトリウム1モルに対するフラクトースのモル比が103.5又は49.0である場合(実施例2A−1、2A−2)、又はフラクトースの最終濃度が0.1M未満であっても、グルタミン酸ナトリウム1モルに対するフラクトースのモル比が0.01又は0.02である場合(実施例2B−1、2B−2)には、0.1ppm以上のシクロテンの生成が見られた。しかし、グルタミン酸ナトリウム及びフラクトースの最終濃度がいずれも0.1M未満である場合には、0.1ppm以上のシクロテンの生成は見られなかった(比較例2C−1、2C−2)。
[実施例3]加熱温度及び加熱時間の検討
(1)実施例3−1〜3−12として、果糖ぶどう糖液糖F−55(日本澱粉工業株式会社製)10gとグルタミン酸ナトリウム(味の素株式会社製)9.4gをバイアル瓶に計り取り、混合し、水溶液を調製した。なお、果糖ぶどう糖液糖F−55には、グルコース34%及びフラクトース41%が含まれる。また、水溶液中のグルタミン酸ナトリウムの最終濃度は2.6M、糖類(グルコース及びフラクトース)の最終濃度は2.2Mであった。
各水溶液のpHを2M水酸化ナトリウム水溶液で8.5に調整した後、サンプルを表5に記載の条件(温度及び時間)で各々加熱した。加熱後のサンプル中のシクロテン量を図2に示す。
図2の結果から分かるように、加熱温度95〜150℃、加熱時間2〜6.5時間で10〜90ppmのシクロテンが生成した。特に加熱温度150℃のときに70〜90ppmのシクロテンが生成した。
(2)実施例3−13〜3−40として、L−グルタミン酸ナトリウム・一水和物(味の素株式会社製)9.4gと純果糖S(加藤化学株式会社製、フラクトース99.9%)9gを30mL容のガラスバイアル瓶に秤取し、蒸留水10mLを加えて室温で攪拌混合した。グルタミン酸ナトリウム及びフラクトースの最終濃度は、ともに1.8Mであった。前記懸濁液のpHを測定し、pHが7.0±0.5となるように、2M水酸化ナトリウム水溶液又は2M塩酸水溶液にて調整した後、油浴中表6に示す条件(温度及び時間)で加熱した。次いで冷却し、SPMEバイアル瓶に移してGC−MSによりシクロテンを定量した。
定量結果は、表6に併せて示した。
表6に示されるように、グルタミン酸ナトリウムとフラクトースを含む懸濁液を加熱した場合も、95℃〜160℃で1〜7時間加熱した場合に、0.1ppm以上のシクロテンの生成が認められた。
特に、150℃で1〜3時間加熱した場合(実施例3−33〜3−35)、及び160℃で2〜3時間加熱した場合(実施例3−38、3−39)に、約70ppm以上のシクロテンの生成が認められた。
[実施例4]2段目pH調整の検討
実施例4−1〜4−16として、純果糖S(加藤化学株式会社製、フラクトース99.9%)9gとグルタミン酸ナトリウム(味の素株式会社製)9.4gをバイアル瓶に計り取り、水10gを添加して混合し、水溶液を調製した。水溶液中のグルタミン酸ナトリウム及びフラクトースの最終濃度は各々1.8Mであった。
各水溶液のpHを2M水酸化ナトリウム水溶液又は2M塩酸水溶液で各々5〜9に調整(表7中、「初発pH」と記載)して、95℃で1時間加熱した。その後、2M水酸化ナトリウム水溶液でpHを7〜9に調整(表7中、「2段目pH」と記載)し、更に95℃で4時間加熱した。各実験区のpH条件を表5に、加熱後のサンプル中のシクロテン量を図3に示す。
図3の結果から分かるように、初発pHにもよるが、加熱反応開始1時間後にpHを7〜9に調整することで、反応サンプル中のシクロテン量が増加する傾向が見られた。特に、初発pHが5〜7である場合に、2段目pHを8又は9とすることにより、また初発pHが9である場合に、2段目pHを9とすることにより、シクロテン量が著しく増加した。
[実施例5]ティットコーチュン煮汁の製造
<風味素材の製造>
果糖ぶどう糖液糖F−55(日本澱粉工業株式会社製)10gとグルタミン酸ナトリウム(味の素株式会社製)9.4gをバイアル瓶に計り取り、水溶液を調製した。水溶液のpHを2M水酸化ナトリウム水溶液で8.5に調整したサンプル、及びpH無調整のサンプル(pH=5.8)を、それぞれ表8に記載の条件(温度及び時間)で加熱し、本発明品1、本発明品2とした。なお、本発明品1、本発明品2ともに、加熱途中での2段目pH調整は行わなかった。
本発明品1及び本発明品2のシクロテン量は、それぞれ44ppm及び28ppmであった。
<ティットコーチュン煮汁の調製>
ティットコーチュン煮汁は以下のように調製した。
豚バラ肉200g、タマネギ50g、ニンニク5g、ショウガ5g、ニョクマム17g、砂糖26g、水163gを原料とした。豚バラ肉は、予め、表面に色が付くまで数分間フライパンで焼いた。タマネギ、ニンニク、ショウガをよく炒め、豚バラ肉、ニョクマム、砂糖、水を入れて、約30分間煮込み、煮汁を得た。
実施例5−1、5−2、比較例5−1、5−2として、得られたティットコーチュン煮汁に、市販のシクロテン香料(シグマアルドリッチ社製)、本発明品1、本発明品2を表9に記載の通り添加した。得られた煮汁中のシクロテン濃度(算出値)は表9に記載の通りである。
<ティットコーチュン煮汁の香気及び/又は風味の評価>
上記で得られたティットコーチュン煮汁について、煮込み時間90分の煮汁の香気及び/又は風味の評点を5.0点、煮込み時間30分の煮汁の香気及び/又は風味の評点を1.0点として、5人の専門パネルで官能評価を行った。評価項目は、「甘い風味」、「中から後にかけてのふくらみ」(図4中、「中〜後のふくらみ」と記載)、「持続性」、及び「煮込み時間90分の煮汁との類似性」(図4中、「類似性」と記載)である。なお、「甘い風味」とはメープル、ウォールナッツに似た甘いカラメル様の香気及び/又は風味であり、「中から後にかけてのふくらみ」とは、煮汁を口に含んでから2秒後から4秒後までに感じる、口腔中に広がる風味である。また、「持続性」とは煮汁を口に含んでから4秒後から6秒後までに感じる、口腔中に持続する風味である。官能評価結果を図4に示す。
図4から分かる通り、市販のシクロテン香料添加煮汁(比較例5−2)、本発明品1添加煮汁(実施例5−1)及び本発明品2添加煮汁(実施例5−2)は、いずれも無添加品(比較例5−1)に比べ、甘い風味、中から後にかけてのふくらみ及び持続性が付与され、90分煮込み品により近づくことが確認された。また、本発明品1及び本発明品2添加煮汁では、煮汁中のシクロテン濃度(算出値)はそれぞれ市販のシクロテン香料添加煮汁の1/60及び1/90程度であるが、市販のシクロテン香料添加煮汁と同程度の香気及び/又は風味が認められた。
従って、本発明の風味素材は、市販のシクロテン香料に比べ、極めて高い香気及び/又は風味付与効果を有することが確認された。
本発明によれば、食品利用に適し、飲食品に香気及び/又は風味を付与するのに十分な量のシクロテンを含有する風味素材の製造方法、及び該風味素材を提供し得る。
また、本発明の風味素材により、好ましい香気及び/又は風味の付与された飲食品を製造し、提供することができる。
本出願は日本国で出願された特願2013−063871(出願日:2013年3月26日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (11)

  1. アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン並びにこれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上のアミノ酸又はその塩を0.1〜8.5M、並びにリボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される1種又は2種以上の糖類を0.1〜6.7Mの最終濃度で含む水溶液又は懸濁液を加熱する工程を含む、シクロテンを0.1ppm以上含有する風味素材の製造方法。
  2. アミノ酸又はその塩及び糖類を含む水溶液を加熱する工程を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記糖類が、キシロース、グルコース及びフラクトースからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記アミノ酸又はその塩がグルタミン酸ナトリウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記加熱を開始した時のpHが5〜9である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記加熱温度が50〜180℃である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記加熱を開始した後において、さらにpHを7〜9に調整する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られる風味素材。
  9. 請求項8に記載の風味素材を含有する、飲食品。
  10. 請求項8に記載の風味素材を、飲食品あたりのシクロテン含有量が0.001ppb〜100ppmとなるように添加する工程を含む、飲食品の製造方法。
  11. アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン並びにこれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上のアミノ酸又はその塩を0.01〜8.5M、並びにリボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される1種又は2種以上の糖類を0.01〜6.7Mの最終濃度で含み、さらに、アミノ酸又はその塩に対する糖類のモル比が、アミノ酸又はその塩1モルに対して0.01〜105モルであり、かつ、アミノ酸又はその塩の最終濃度及び糖類の最終濃度がともに0.1M未満とならないように含む水溶液又は懸濁液を加熱する工程を含む、シクロテンを0.1ppm以上含有する風味素材の製造方法。
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