以下、実施形態の非接触受電装置用磁性シートとそれを用いた非接触受電装置、電子機器、並びに非接触充電装置について説明する。
本実施形態の非接触受電装置用磁性シートは、複数の磁性薄板の積層体を具備する。磁性シートを構成する積層体は、2種以上の磁性薄板を備えている。すなわち、積層体は少なくとも第1の磁性薄板とそれとは種類が異なる第2の磁性薄板とを少なくとも備えている。種類が異なる磁性薄板とは、磁歪定数等の磁気特性、厚さ、構成材料等が異なる磁性薄板を意味する。2種以上の磁性薄板としては、第1および第2の磁性薄板と種類が異なる第3の磁性薄板やそれ以上の磁性薄板を用いてもよい。磁性薄板の種類は、2種以上であれば特に限定されないが、構成材料(素材)の調達等を伴う製造性を考慮すると4種以下、さらには3種以下であることが好ましい。
図1ないし図3は非接触受電装置用磁性シートの構造例を示す断面図である。これらの図において、非接触受電装置用磁性シート1は、第1の磁性薄板である磁性薄板2と、粘着層部3と、磁性薄板2とは種類が異なり、第2の磁性薄板である磁性薄板4と、を備え、さらに図3に示す非接触受電装置用磁性シートは、樹脂フィルム5を備える。
磁性薄板2は、給電装置側に磁石が存在したとしても磁気飽和しにくい磁性薄板であることが好ましい。磁性薄板4は、受電装置の使用周波数で高透磁率が得られる磁性薄板であることが好ましい。磁気飽和しにくい磁性薄板2と高透磁率を有する磁性薄板4とを積層した磁性シート1を電子機器等に配置することによって、非接触充電装置の給電装置側における位置決め用の磁石の有無に関わらず、発熱、ノイズの発生、受電効率の低下等を抑制することができる。
磁性薄板2と磁性薄板4との間には、粘着層部3が設けられている。粘着層部3は、少なくとも磁性薄板2と磁性薄板4との間に設けられていることが好ましい。粘着層部3の材料は、磁性薄板2および磁性薄板4を固定することができれば特に限定されない。例えば、粘着層部3としては、粘着性を有する樹脂フィルムや接着剤等を用いることができる。樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム等が挙げられる。接着剤の具体例としては、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、アクリル系粘着剤等が挙げられる。
後述するように、磁性薄板2、4にユニット構造部を設ける場合、隙間部の位置ずれが発生するおそれがあるため、各磁性薄板間に粘着層部3を設けることが好ましい。粘着層部3の厚さは100μm以下が好ましく、さらに50μm以下がより好ましい。粘着層部3を薄くすることで、磁性シート1全体の厚さを薄くすることができる。粘着部層3の厚さの下限値は、特に限定されないが、粘着力を均一にするために5μm以上であることが好ましい。例えば、携帯電話機のように薄型化を要求される電子機器の場合、磁性シート1の厚さは外観を覆う樹脂フィルムを含めて1mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましく、さらには0.6mm以下であることがより好ましい。
磁性シート1を構成する積層体は、図2に示すように、複数枚の第1の磁性薄板として磁性薄板2A、2Bと複数枚の第2の磁性薄板として磁性薄板4A、4Bとを備えていてもよい。さらに、上記積層体は図3に示すように、複数枚の第1の磁性薄板として磁性薄板2A、2Bと1枚の第2の磁性薄板として磁性薄板4とを備えていてもよい。また、図3とは反対に積層体が1枚の第1の磁性薄板として磁性薄板2と複数枚の第2の磁性薄板として磁性薄板4A、4Bとを備えていてもよい。磁性薄板2、4のそれぞれの枚数は1〜4枚の範囲とすることが好ましい。図2および図3に示す磁性シート1は、磁性薄板2(2A、2B)、4(4A、4B)のそれぞれの間に粘着層部3を設けた構造を有する。
図3に示す磁性シート1は、2枚の第1の磁性薄板として磁性薄板2A、2Bと1枚の第2の磁性薄板として磁性薄板4との積層体と、該積層体を覆うように設けられた樹脂フィルム5と、を具備する。磁性薄板2、4が錆等の腐食の影響を受ける場合、積層体全体を樹脂フィルム5で覆うことが有効である。磁性薄板2、4を電気的に絶縁する必要がある場合にも、積層体全体を覆う樹脂フィルム5は有効である。図3に示す磁性シート1のように、積層体全体を樹脂フィルム5で覆う場合、同じ種類の磁性薄板、例えば磁性薄板2Aと磁性薄板2Bとの間には粘着層部3を設けなくてもよい。樹脂フィルム5の具体例としては、PETフィルム、PIフィルム、PPSフィルム、PPフィルム、PTFEフィルム等が挙げられる。
また、積層体の少なくとも1層は、同一平面上に隣り合うように設けられた2個以上の同一種の磁性薄板を備えるユニット構造部を有する。ユニット構造部における隣り合う磁性薄板同士の隙間部の幅は、例えば0mm以上1mm以下であることが好ましい。例えば、磁性薄板に切れ込み部を形成してユニット構造部を設けることにより、磁性シートのL値やQ値を向上させることができる。
切れ込み部を形成する方法としては、磁性薄板は薄い素材であることから、例えば細長い短冊状に加工した磁性薄板を並べる方法、ブラスト処理による貫通痕を付ける方法等が挙げられる。しかしながら、細長い短冊状に加工した磁性薄板を並べる方法では、並べる作業に時間がかかり作業性が悪い。また、1枚ずつ磁性薄板を並べるため、隣り合う磁性薄板同士の隙間部を均一に配置することが困難である。また、ブラスト処理による貫通痕を設ける方法は、磁性薄板に硬質球(セラミック球など)をぶつける方法であるため、樹脂フィルム上に磁性薄板を配置した後、ブラスト処理を行わないと磁性薄板が粉々に破壊されてしまう問題がある。
本実施形態の磁性シートにおいて、積層体の少なくとも1層は、同一平面上に隣り合うように設けられた2個以上の同一種の磁性薄板を備えるユニット構造部を有する。ここでのユニット構造とは、例えば隣り合う磁性薄板同士において、一方の磁性薄板の切れ込み部にもう一方の磁性薄板をはめ込む構造を示す。このはめ込む構造は3個以上の磁性薄板で行ってもよい。
ユニット構造部の形状は、櫛歯状、渦巻き状、波状、斜め櫛歯状、同心円状のいずれか1種であることが好ましい。図4〜7にユニット構造部の一例を示す。図4は櫛歯状ユニット構造部を示す図であり、図5は同心円状ユニット構造部を示す図であり、図6は波型ユニット構造部を示す図であり、図7は斜め櫛歯状ユニット構造部を示す図である。また、図中、磁性シート1は、隙間部6、ユニット構造部7を備える。
また、図8に櫛歯状ユニット構造部の具体例を示す。図8に示すユニット構造部は、第1の磁性薄板片7−1と第2の磁性薄板片7−2を備える。第1の磁性薄板片7−1と第2の磁性薄板片7−2を組み合わせることにより、一つのユニット構造部となる。例えば、第1の磁性薄板片7−1と第2の磁性薄板片7−2における櫛歯部間の隙間部が切れ込み部となる。お互いの櫛歯部をはめ込むことにより、ユニット構造部における隙間を小さくすることができる。例えば、櫛歯上のユニット構造部の場合、櫛歯部間の隙間が切れ込み部となる。
隣り合う磁性薄板同士をはめ込む構造にすることにより、ユニット構造部における隣り合う磁性薄板同士の隙間部の幅を0mm以上1mm以下とすることができる。さらに、ユニット構造部を上記構造にすることにより、隣り合う磁性薄板同士が重なり合うことを無くすことができる。また、同一平面にて隣り合う磁性薄板同士が重なり合う部分をなくすことができるため、磁性シートの平坦性が維持される。
本実施形態の磁性シートの構造が2種以上の磁性薄板を積層した構造であるため、同一平面で隣り合う磁性薄板同士が重なり合う部分が存在すると、磁性シートの平坦性が低下する。本実施形態の磁性シートは、平坦性を維持した上で、同一平面にて隣り合う磁性薄板同士の隙間部の幅を0〜1mmと小さくできるのでL値およびQ値を向上させることができる。
同一平面にて隣り合う磁性薄板同士の隙間部の幅は、0mm以上0.1mm以下が好ましい。隙間部の幅を0〜0.1mmとすることにより、隙間部から漏れる渦電流を小さくすることができる。また、製造性を考慮すると、同一平面にて隣り合う磁性薄板同士の隙間部の幅は、0.03mm以上0.07mm以下の範囲であることが好ましい。隙間部の幅が0mmとなる部分が増えると、隣り合う磁性薄板同士が重なりやすくなる。隙間部の幅を0.03mm以上とすることにより、はめ込み構造を有するユニット構造を形成することが容易となる。そのため、製造性を考慮すると、隙間部の幅は、0.03〜0.07mmであることが好ましい。このため、ユニット構造とは、同一平面にて隣り合う磁性薄板同士の隙間部の幅が1mm以下、さらには0.1mm以下であり、はめ込む構造を有する部分を示す。
なお、ユニット構造部は同一平面にて、1つまたは2つ以上存在していてもよい。また、第1の磁性薄板、第2の磁性薄板の中でいずれか1層がユニット構造を具備していればよい。また、第1の磁性薄板、第2の磁性薄板の中で2層以上、さらには全層がユニット構造を具備することが好ましい。
また、ユニット構造部において、隣り合う磁性薄板同士の隙間部の合計長さを100としたとき、隣り合う磁性薄板同士が接した箇所(隙間0mm)の合計長さは、10以上100以下であることが好ましい。隣り合う磁性薄板同士に隙間を設けることにより、L値、Q値を向上させることができる。一方、隙間が大きいと渦電流の漏れが大きくなり受電装置または電子機器等の発熱量が増えるおそれがある。そのため、隣り合う磁性薄板同士が接した状態であることが好ましい。隣り合う磁性薄板同士が接するとは、図9に一例を示したように、隣り合う磁性薄板の側面同士が接する箇所が存在することを示す。なお、隣り合う磁性薄板の側面同士が接する箇所は面接触、点接触のいずれでもよい。
本実施形態の磁性シートは、ユニット構造を具備しているので、隣り合う磁性薄板同士が接した箇所(隙間0mm)の合計長さを多くすることができる。また、隣り合う磁性薄板同士の隙間部の合計長さとは、ユニット構造においてはめ込まれる部分の辺の長さの合計である。例えば、図4のような櫛歯状の場合、櫛歯部分を構成する辺の合計を100とする。また、図5の同心円状のように内円と外円を組み合わせる場合、内円の外周が100となる。また、図6のような波型の場合、波線部の合計長さを100とする。ユニット構造を具備することにより、隣り合う磁性薄板同士の隙間部の合計長さを100としたとき、隣り合う磁性薄板同士が接した箇所(隙間0mm)の合計長さを10以上100以下とすることができる。また、好ましくは50以上100以下である。
ユニット構造部において、隣り合う磁性薄板同士が接する箇所の厚さは、磁性薄板の厚さT(μm)未満であることが好ましい。図9に示すように、磁性薄板の厚さT(μm)に対して隣り合う磁性薄板同士が接する箇所の厚さがT(μm)未満であると、隣り合う磁性薄板の側面同士がずれて平坦性を損なうおそれがない。
磁性シート1の積層体の具体例としては、磁歪定数の絶対値が5ppmを超える磁性薄板2と、磁歪定数の絶対値が5ppm以下である磁性薄板4との積層体が挙げられる。例えば、ストレインゲージ法等により磁歪定数を測定することができる。磁歪定数の絶対値が5ppm以下の範囲とは、−5ppmから+5ppmまでの範囲(零を含む)を示す。磁歪定数の絶対値が5ppmを超える範囲とは、−5ppm未満または+5ppmを超える範囲を示す。磁歪は、外部磁場により磁性体を磁化させたときにおける、磁場方向に伸縮する磁性体の割合を表す。磁性体の磁歪が大きい場合、磁歪と応力の相互作用で磁気異方性が誘導され、磁気飽和しにくくなる。
磁歪定数の絶対値が5ppmを超える磁性薄板2は、給電装置側に配置されている場合でも磁気的な影響を受けにくい。つまり、磁歪定数の絶対値が5ppmを超える磁性薄板2は、予め圧延時に生じた応力と磁歪との相互作用により、給電装置側に配置された磁石からもたらされる磁場によって磁気飽和しにくい。従って、磁性シート1として必要なL値(インダクタンス値)を得ることができる。磁歪定数の絶対値が5ppm以下の磁性薄板4は、給電装置側に磁石が配置されていない場合に高透磁率を示す。従って、磁性薄板2と磁性薄板4との積層体を備える磁性シート1によれば、給電装置側に磁石を配置した非接触充電方式、および給電装置側に磁石を配置していない非接触充電方式のいずれにおいても、良好な磁気シールド効果を得ることができる。
磁歪と応力との相互作用に基づく磁気飽和の抑制効果は、磁歪定数の絶対値が5ppmを超える場合に効果的に得ることができる。従って、磁性薄板2において、磁歪定数の絶対値が5ppmを超えることが好ましい。ただし、磁歪定数の絶対値が50ppmを超えると、応力との相互作用で得られる磁気異方性が大きくなりすぎて、十分なL値を得ることができないおそれがある。従って、磁性薄板2の磁歪定数の絶対値は5ppmを超えて50ppm以下の範囲であることが好ましい。磁性薄板4の磁歪定数の絶対値は、高透磁率を得るために5ppm以下であることが好ましく、さらに2ppm以下であることがより好ましい。磁性薄板4の磁歪定数は零であってもよい。
磁性シート1の具体例において、磁性薄板2の厚さは50〜300μmの範囲であることが好ましい。磁性薄板4の厚さは、10〜30μmの範囲であることが好ましい。さらに、磁性薄板2は、80μΩ・cm以上の電気抵抗値と1T(10kG)以上2.1T(21kG)以下の範囲の飽和磁束密度を有することが好ましい。磁性薄板4も80μΩ・cm以上の電気抵抗値を有することが好ましい。
磁性シート1の他の具体例としては、50〜300μmの範囲の厚さ(板厚)を有する磁性薄板2と、10〜30μmの範囲の厚さ(板厚)を有する磁性薄板4との積層体が挙げられる。磁性薄板2の磁歪定数の絶対値は、5ppmを超えることが好ましい。磁性薄板2の厚さが50μm未満であると、後述するように圧延で生じる応力が大きくなりすぎて、磁歪との相互作用で得られる磁気異方性が大きくなりすぎる。このため、十分なL値が得られないおそれがある。磁性薄板2の磁歪定数の絶対値は、50ppm以下であることが好ましい。磁性薄板2の厚さが300μmを超えると、100kHz以上でのL値およびQ値が低下する。磁性薄板2の厚さは80〜250μmの範囲であることが好ましい。磁性薄板2の厚さは、後述する質量法により求めてもよいし、マイクロメータで測定してもよい。磁性薄板2の厚さをマイクロメータで測定する場合、厚さは任意の3か所の測定値の平均値を示すものとする。
本実施形態の磁性シート1は、給電装置側の磁石の有無に関わらず、非接触受電装置用の磁気シールド等として使用することができる。磁性シート1は、給電装置側に磁石が配置されている場合に磁気飽和しにくい磁性薄板2と、磁石が配置されていない場合に使用周波数で高透磁率を示す磁性薄板4とを積層した構造を有する。ただし、給電装置側に磁石が配置されていないにも関わらず、磁性薄板4のインダクタンス値がそのまま得られず、磁性シート1として15〜30%程度低下したインダクタンス値しか得られない場合がある。これは磁気飽和しにくい磁性薄板2の電気抵抗値が影響していることが考えられる。その原因は明確ではないが、以下のように推測される。
磁性薄板2の電気抵抗値が低い場合、渦電流損が大きくなってQ値が低下する。これに伴って、一体化されている高透磁率材からなる磁性薄板4も磁性薄板2の影響を受け、結果として磁性シート1のインダクタンス値が低下することが考えられる。このため、磁性薄板2は電気抵抗値が80μΩ・cm以上であることが好ましい。磁性薄板2の電気抵抗値が80μΩ・cm以上であると、渦電流損の増大やそれに伴うQ値の低下を抑制することができる。従って、磁性薄板4のインダクタンスを効果的に発揮させることができる。磁性薄板2の電気抵抗値は100μΩ・cm以上であることがより好ましい。また、磁性薄板4の電気抵抗値も80μΩ・cm以上であることが好ましく、100μΩ・cm以上であることがより好ましい。なお、電気抵抗値の測定方法は、4端子法にて行うものとする。
磁性薄板2の磁気飽和を抑制するために、磁性薄板2は大きな磁歪定数を有すると共に、1T(10kG)以上の飽和磁束密度を有することが好ましい。磁性薄板2の飽和磁束密度を1T以上とすることによって、給電装置側に磁石が配置されている場合に、磁性薄板2の磁気飽和をより効果的に抑制することができる。特に、後述するNd−Fe−B系磁石やSm−Co系磁石等の希土類磁石のように、磁力の強い磁石を用いる場合には、磁性薄板2の飽和磁束密度は1T以上、さらには1.2T以上であることが好ましい。磁性薄板2の飽和磁束密度は特に限定されないが、2.1T(21kG)以下であることが好ましい。上述した希土類磁石を用いる場合でも、飽和磁束密度は2.1T程度であれば十分である。さらに、飽和磁束密度が2.1Tを超えるとFe合金における添加元素量が極めて限られてしまい、耐酸化対策が十分でなくなるため、使用中に錆が生じやすくなるという別の要因がある。
磁性シート1を構成する積層体は、1枚の磁性薄板2、または2〜4枚の範囲で積層された磁性薄板2を備えることが好ましい。給電装置側に磁石が配置されている場合に磁気飽和しにくくするために、磁性薄板2の積層枚数を多くすることが効果的である。ただし、積層枚数を増やすと磁性シート1全体が厚くなる。磁性シート1全体が厚くなりすぎると、携帯電話等の薄型化が求められる電子機器に搭載することが困難になる。50〜300μmの厚さを有する磁性薄板2において、磁歪定数の絶対値が5ppmを超える条件、電気抵抗値が80μΩ・cm以上である条件、飽和磁束密度が1T以上である条件のうち、少なくとも2つ以上の条件を満たすことによって、磁性薄板2の枚数を1〜4枚、さらには1〜3枚と少なくすることが可能となる。
磁性薄板4の厚さは、上述したように10〜30μmであることが好ましい。磁性薄板4の厚さを30μm以下とすることによって、磁性薄板4を高透磁率化することができる。ただし、磁性薄板4の厚さが10μm未満であると製造が困難になり、さらに切れ込み部を形成する際に砕けてしまうおそれがある。磁性薄板4の厚さは12〜25μmの範囲であることがより好ましい。磁性薄板4は受電装置の使用周波数で高透磁率を示すことが好ましい。受電装置の使用周波数とは、非接触充電の送電に使用する周波数のことである。磁性薄板4の透磁率は、使用周波数で1000以上であることが好ましい。磁性薄板4の磁歪定数の絶対値は5ppm以下であることが好ましい。磁性薄板4の厚さと磁歪定数とに基づいて、磁性薄板4の透磁率をより効果的に高めることができる。
磁性薄板4の厚さ(板厚)Xは質量法により求めることが好ましい。具体的には、アルキメデス法により磁性薄板4の密度(実測値)Dを求める。次に、ノギス等により磁性薄板4の長さLと幅Wを測定する。さらに、磁性薄板4の質量Mを測定する。磁性薄板4の密度Dは、質量M/体積(長さL×幅W×厚さX)に等しい。従って、第2の磁性薄板の板厚Xは、[質量M/(長さL×幅W)]/密度D、から求められる。磁性薄板4は、後述するアモルファス合金薄帯のように急冷法を使用して製造される場合がある。その場合、冷却ロールの表面状態によって、合金薄帯の表面にうねりが形成されることがある。そのため、磁性薄板4としてアモルファス合金やFe基微細結晶合金を用いる場合は、質量法で厚さを求めることが好ましい。
磁性シート1を構成する積層体は、1枚の磁性薄板4、または2〜4枚の範囲で積層された磁性薄板4を備えることが好ましい。給電装置側に磁石が配置されていない場合に高透磁率を得るために、磁性薄板4の積層枚数を多くすることが効果的である。ただし、積層枚数を増やすと磁性シート1全体が厚くなる。磁性シート1全体が厚くなりすぎると、携帯電話等の薄型化が求められる電子機器に搭載することが困難になる。10〜30μmの厚さを有する磁性薄板4が、磁歪定数の絶対値が5ppm以下の条件、および後述する一般式1または一般式2で表される組成を有する磁性薄板4の構成材料の条件のうち、1つまたは2つの条件を満たすことによって、磁性薄板4の枚数を1〜4枚、さらには1〜3枚と少なくすることができる。
磁性薄板2の構成材料としては、上述した特性を満たすのであれば特に限定されないが、FeまたはNiを基とする合金を適用することが好ましい。なお、「基とする」とは、質量比で見たとき構成元素として最も多く含んでいるという意味である。磁性薄板2の構成材料としては、Fe−Cr系、Fe−Ni系、Fe−Si系等のFe合金が挙げられる。Fe合金の具体例としては、ステンレス鋼、珪素鋼、パーマロイ、アンバー、コバール等が挙げられる。これらの中でも、磁性薄板2はステンレス鋼、特にフェライト系ステンレス鋼からなることが好ましい。Fe−Cr系、Fe−Ni系、Fe−Si系等のFe合金は、圧延加工により板厚を調整しやすい。さらに、圧延加工等の応力付加工程で内部歪を形成し、磁歪との相互作用により磁気異方性を発生させやすい。従って、磁性薄板2を磁気飽和しにくくすることができる。なお、ステンレス鋼とは、Feを基とし、Crを10質量%以上含有するさび難く耐食性の高いFe合金の総称である。また、ステンレス鋼は、組織構造から、フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト系に区別される。
フェライト系ステンレス鋼は、Fe−Cr系合金の1種であり、Crを10〜28質量%の範囲で含むことが好ましい。Crの含有量が10質量%以下では電気抵抗が低く、28質量%を超えると加工性が低下し、薄板が得られにくくなり、また飽和磁化が低下する。Crの含有量は12〜26質量%の範囲がより好ましく、さらに15〜25質量%の範囲が望ましい。フェライト系ステンレス鋼は、FeとCr以外に、0.1質量%以下のC(炭素)を、0.1質量%以下のN(窒素)、0.1質量%以下のO(酸素)、0.1質量%以下のP(リン)、0.1質量%以下のS(硫黄)等を含有していてもよい。
さらに、フェライト系ステンレス鋼は、5質量%以下のNi、5質量%以下のCo、5質量%以下のCu、3質量%以下のSi、0.1〜8質量%のAl、0.3質量%以下のB、1質量%以下のMnを含有していてもよい。さらに、フェライト系ステンレス鋼は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、MoおよびWから選ばれる少なくとも1種を1質量%以下の範囲で、Be、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種を0.1質量%以下の範囲で、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、SeおよびTeから選ばれる少なくとも1種を1質量%以下の範囲で、さらにYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種を1質量%以下の範囲で含有していてもよい。各成分の下限値は、特に断りがない限り、零(検出限界以下)を含むものである。
フェライト系ステンレス鋼における各添加元素の限定理由は以下の通りである。Cの含有量が多いと熱間加工性が低下するために少ない方が好ましいが、大幅に低減することは製造性の面から困難である。Cの含有量は加工性や靭性の点から0.1質量%以下が好ましい。Nの含有量を大幅に低減することは製造性の面から困難である。Nの含有量は加工性や靭性の点から0.1質量%以下が好ましい。Pは電気抵抗値の増大に有効であり、高周波特性を向上させる効果を有する。ただし、Pを多く含むと熱間加工性が低下するため、Pの含有量は0.1質量%以下が好ましい。Sの含有量が0.1質量%を超えると、結晶粒界に硫化物や酸化物が形成しやすくなり、熱間加工性が低下する。さらに、エッチング性も低下する。Sの含有量は1質量%以下が好ましい。Oの含有量が多いと酸化物系の介在物が多くなり、加工性が低下する。Oの含有量は0.1質量%以下が好ましく、さらに0.01質量%以下がより好ましい。
Ni、CoおよびCuは、耐食性の向上、結晶粒の微細化による高周波特性の向上、および加工性の向上に寄与する。ただし、それら元素の含有量が多すぎると添加効果が低下するため、各元素の含有量は5質量%以下が好ましく、さらに4質量%以下がより好ましい。Siは軟磁気特性の制御に有効な元素であり、さらに脱酸剤としての効果や熱間加工性を向上させる効果を有する。Siの含有量が多すぎると加工性が逆に劣化するため、Siの含有量は3質量%以下が好ましく、さらに2.5質量%以下がより好ましい。Alは電気抵抗を高くするのに有効な元素である。Alの含有量は0.1質量%以上で電気抵抗が効果的に高くなるが、8質量%を超えると加工性が低下する。BはC、S、P、O、N等の結晶粒界への偏析を抑制する効果や熱間加工性を向上させる効果を有する。Bの含有量が多すぎるとC、O、Nを含むホウ化物を形成し、加工性が悪くなる。Bの含有量は0.3質量%以下が好ましく、さらに0.1質量%以下がより好ましい。Mnは脱酸剤として有効である。Mnの含有量が多すぎると熱間加工性が低下するため、Mnの含有量は1質量%以下が好ましく、さらに0.8質量%以下がより好ましい。
Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、MoおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素は、高強度化や耐食性の向上に有効であるため、プレス等の加工性が向上すると共に、電気抵抗値が高くなる。それら元素の合計含有量が1質量%を超えると靭性が低下する。好ましい元素はTi、Nb、Taである。Be、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種の元素は、脱酸剤としての効果や熱間加工性の向上効果を有する。それら元素の合計含有量が0.1質量%を超えると加工性が逆に劣化する。より好ましい含有量は0.03質量%以下である。Zn、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、SeおよびTeから選ばれる少なくとも1種の元素は、加工性の向上に有効な元素であるが、合計含有量が1質量%を超えると加工しにくくなる。より好ましい含有量は0.3質量%以下である。Yを含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素は、電気抵抗を高くするのに有効であり、熱間加工性の向上効果も有する。それら元素の合計含有量が1質量%を超えると加工性が逆に劣化する。より好ましい含有量は0.5質量%以下である。
Fe−Ni系合金やFe−Si系合金においても、主たる構成元素のみでは電気抵抗が80μΩ・cm未満となるが、Fe−Cr系合金と同様にAlの適量添加、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、希土類元素、アルカリ土類元素等の添加、さらにMn等の脱酸剤の残量制御によって、電気抵抗値が80μΩ・cm以上になる。ただし、Fe−Ni系ではNi量が78〜80質量%の近傍組成で、Fe−Si系ではSi量が6.5質量%の近傍組成で磁歪定数が小さくなり、給電装置側に磁石が配置されている場合のインダクタンス値が低下する。そのような組成は除くことが好ましい。
磁性薄板2を構成するFe−Cr系、Fe−Ni系、Fe−Si系等のFe合金薄板は、一般的な溶解、鋳造、圧延の各プロセスにより作製される。例えば、所定の組成比に調製した合金素材を大気中または不活性雰囲気中で溶解した後、所定の型に鋳込む。次に、合金材を熱間加工または冷間加工し、目的とする板厚にまで圧延して磁性薄板を得る。双ロール法を用いて溶融状態の合金を直接急冷圧延することで磁性薄板を得ることもできる。高透磁率化のために圧延後に熱処理を行ってもよい。熱処理の条件は600〜1200℃、10秒〜5時間が好ましい。磁性薄板4としてCo基アモルファス合金やFe基微細結晶合金を用いる場合、磁性薄板2の高透磁率化は必ずしも必要がないため、熱処理温度を600℃未満としたものや圧延後の板材をそのまま磁性シート1に適用してもよい。従って、磁性シート1の製造コストを低下させることができる。
磁性薄板4は、Co基アモルファス合金または5〜30nmの平均結晶粒径を有するFe基微細結晶合金からなることが好ましい。これら合金からなる薄板は、例えば単ロール法で合金溶湯を超急冷することにより作製される。これにより、厚さが10〜30μmの範囲の磁性薄板4を容易に得ることができる。
Co基アモルファス合金は、以下の一般式1で表される組成を有することが好ましい。
一般式1:(Co1−x−yFexMnyNiz)100−a−b−cM1aSibBc
(式中、M1はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素であり、xは0≦x≦0.1を満足する数(原子比)であり、yは0≦y≦0.1を満足する数(原子比)であり、zは0≦z≦0.1を満足する数(原子比)であり、aは0≦a≦10原子%を満足する数であり、bは5≦b≦20原子%を満足する数であり、cは5≦c≦30原子%を満足する数である。)
一般式1において、Co、Fe、MnおよびNiの含有量は、透磁率、磁歪定数、磁束密度、鉄損等の要求される磁気特性に応じて調整される。M1元素は熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために、必要に応じて添加される元素である。Si(珪素)およびB(ホウ素)は、磁性合金のアモルファス化(非晶質化)に有効な元素である。特に、Bは磁性薄板4のアモルファス化に有効である。Siはアモルファス相の形成の助成や、結晶化温度の上昇に有効な元素である。一般式1を満たすCo基アモルファス合金であれば、磁歪定数の絶対値を5ppm以下、さらには2ppm以下(零を含む)に調整しやすい。なお、Co基アモルファス合金の磁気特性の調整のために、Co基アモルファス合金において300〜500℃で5分〜2時間の熱処理を施してもよい。
Fe基微細結晶合金は、以下の一般式2で表される組成を有することが好ましい。
一般式2:(Fe1−dTd)100−e−f−g−hCueSifBgM2h
(式中、TはCoおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素、M2はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、MoおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素であり、dは0≦d≦0.5を満足する数(原子比)であり、eは0≦e≦3原子%を満足する数、fは0≦f≦30原子%を満足する数、gは2≦g≦25原子%を満足する数、hは0.1≦h≦30原子%を満足する数である。)
FeおよびT元素の組成比は、透磁率、磁歪定数、磁束密度、鉄損等の要求される磁気特性に応じて調整される。Cuは結晶を析出させる際の結晶の粗大化を防ぐ成分である。M2元素は、結晶粒径の均一化や磁歪の低減に有効な元素である。SiおよびBは一旦アモルファス化するために有効な成分である。Fe基微細結晶合金はアモルファス合金と同様に、急冷法で厚さが10〜30μmのアモルファス薄板を作製し、このアモルファス薄板を500〜700℃の温度で5分〜5時間熱処理することにより作製される。平均結晶粒径が5〜30nmの微細結晶は熱処理により析出させる。微細結晶は面積率で20%以上析出すればよい。
本実施形態の磁性シート1は、磁性薄板2、4を所定のサイズに加工した後、必要に応じて粘着層部3を介して積層することにより作製される。また、L値またはQ値を向上させるために、磁性薄板2または磁性薄板4の少なくとも1層に前述のようなユニット構造部を付与する。また、ユニット構造部であるため、隣り合う磁性薄板同士に表裏貫通した隙間部を形成できる。
図4ないし図7はユニット構造部の形成例を示す図である。これらの図において、ユニット構造部は第1および第2の磁性薄板2、4のいずれにも形成することができるため、磁性薄板の符号は省略している。ユニット構造部の形状は図4ないし図7の形状に限らず、様々な形状を適用できる。
ユニット構造部の形成方法としては、特に限定されないが、例えばプレス加工により長尺の磁性薄板を目的のサイズに加工して形成する方法、切断刃により切断して形成する方法、エッチングによりスリットを形成する方法、レーザ加工により形状加工して形成する方法等が挙げられる。ユニット構造部はこれらの方法を組み合わせて形成してもよい。本実施形態のユニット構造部は、隣り合う磁性薄板において、一方の磁性薄板の切れ込み部に他方の磁性薄板をはめ込む構造を有する。このため、予めユニット構造部を組んでから粘着層上に配置することが好ましい。また、同一平面上において、複数個のユニット構造部を配置してもよい。また、個々のユニット構造部の形状が異なる形状であってもよい。本実施形態の磁性シート1は、同一平面上に複数の磁性薄板を備えるユニット構造部を具備するため、磁性薄板の配置が容易である。そのため、量産性に優れている。
本実施形態の磁性シート1は、同一平面上に配置された磁性薄板2(4)の外周領域の合計外周長Aに対する、磁性薄板2(4)に設けられた隙間部6の合計長さBの比(B/A)が2〜25の範囲となるユニット構造部を有することが好ましい。磁性薄板2(4)に設けられる隙間部6のB/Aを2〜25の範囲に制御することで、磁性シート1のL値およびQ値を向上させることができる。
図10は、ユニット構造部における隙間部の一例を示す図である。図10では、櫛歯形状のユニット構造部を形成した例を示している。また、図10において、磁性薄板片7−1と磁性薄板片7−2で第1のユニット構造部、磁性薄板片7−3と磁性薄板片7−4で第2のユニット構造部、磁性薄板片7−5と磁性薄板片7−6で第3のユニット構造部、磁性薄板片7−7と磁性薄板片7−8で第4のユニット構造部を構成し、4つのユニット構造部が同一平面上に四角形状に配列されている。
図10において、磁性薄板の外周領域の合計外周長Aは、磁性薄板の四辺の合計長さとなるためA=A1+A2+A3+A4となる。また、隙間部6の合計長さBは、それぞれのユニット構造部内の隙間部6の長さと隣り合うユニット構造部同士の隙間部の幅も含む。ここでは櫛歯状のユニット構造部を用いて説明したが、同心円状、波状、斜め櫛歯形状などの他の形状であっても同様のカウント方法となる。
B/Aが2未満ではQ値の向上効果が十分ではなく、B/Aが25を超えるとL値が低下する。すなわち、B/Aが2未満では渦電流の発生を抑制する効果が小さく、B/Aが25を超えると受電効率が低下する。受電効率の低下は、充電時間を長時間化させる要因となる。
非接触充電装置において、受電装置(充電される電子機器)には受電効率を高めるために共振回路が適用されている。L(インダクタ)とC(コンデンサ)とを直列または並列に接続して構成された共振回路は、特定の共振周波数で回路に流れる電流が最大または最小となる。共振回路の先鋭化(周波数選択性)を得るための重要な特性として共振のQ値がある。
Q値は、Q=2πfL/Rで表わされる。πは円周率3.14、fは周波数、LはL値(インダクタタンス)、Rは損失である。Q値を上げるためには、周波数fを大きくすること、Lを大きくすること、または損失Rを小さくすることが必要である。例えば、回路設計で周波数fを大きくすることができるものの、周波数fが大きくなると渦電流損が大きくなり、損失Rが大きくなってしまう。
そこで、本実施形態では所定量(B/Aが2〜25)の隙間部6を形成したユニット構造部を有する磁性薄板を用いることによって、渦電流損の増大を抑制する。渦電流とは、導体に加わる磁界の大きさが変化した場合に電磁誘導により導体中に励起される環状電流のことであり、これに伴って発生する損失が渦電流損である。電磁誘導を伴うので渦電流が大きくなると発熱が生じる。例えば、二次電池を搭載した受電装置では、渦電流により二次電池のケースが発熱し、充放電サイクル寿命が短くなったり、放電容量の劣化が促進される。必要以上に発熱すると電子デバイスの故障の原因にもなる。磁性薄板2(4)に上記隙間部6を形成することで、渦電流損の増大が抑制される。隙間部6の幅Sを0mm以上1mm以下と小さくすることで、磁性薄板2(4)の隙間を磁束が通り抜けて二次電池のケース表面等に渦電流が発生することを防ぐことができる。
磁性シート1を構成する積層体は、B/Aが異なる隙間部6を有するユニット構造部を有する磁性薄板2(4)を2枚以上備えることが好ましい。例えば、磁性薄板2の隙間部6のB/Aと磁性薄板4の隙間部6のB/A(零を含む)とを異ならせることが好ましい。このためには、磁性薄板2と磁性薄板4の間で異なるユニット構造部を設けることも効果的である。本実施形態の磁性シート1には、種類が異なる磁性薄板2、4が用いられる。磁性薄板2、4に求められる磁気特性は異なるため、B/Aはそれぞれの磁性薄板2、4に応じて設定することが好ましい。さらに、B/Aを異ならせることで、磁性シート1の厚さ方向に連続した穴が設けられることを抑制することができるため、渦電流の発生を抑制する効果が向上する。高インダクタンス値を必要とする場合には、磁性薄板4のB/Aを零とする。すなわち、隙間部6(切れ込み部)を有しなくてもよい。
次に、本実施形態の受電装置、電子機器および非接触充電装置について説明する。図11および図12は、電子機器の構成を示す図である。図11および図12に示す電子機器10は、非接触充電方式を適用した受電装置11と電子機器本体部12とを具備する。電子機器本体部12は、回路基板13とそれに搭載された電子デバイス14とを具備する。受電装置11や電子機器本体部12は、筐体15内に配置されており、これらによって電子機器10が構成されている。
受電装置11は、受電コイルとしてのスパイラルコイル16と、スパイラルコイル16に発生した交流電圧を整流する整流器17と、整流器17で整流された直流電圧により充電される二次電池18とを備えている。電子機器本体部12は、受電装置11の二次電池18に充電された直流電圧が供給されて動作する電子デバイス14を備えている。電子機器12本体は電子デバイス14や回路基板13以外の部品や装置等を備えていてもよい。スパイラルコイル16としては、銅線等の金属ワイヤを平面状態で巻回した平面コイル、金属粉ペーストをスパイラル状に印刷して形成した平面コイル等が用いられる。スパイラルコイル16の巻回形状は、円形状、楕円状、四角形状、多角形状等、特に限定されない。スパイラルコイル16の巻回数も要求特性に応じて適宜設定される。
整流器17としては、トランジスタやダイオード等の半導体素子が挙げられる。整流器17の個数は任意であり、必要に応じて1個または2個以上の整流器17が用いられる。整流器17は薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)等の成膜技術で形成したものであってもよい。図11および図12において、整流器17は、回路基板13のスパイラルコイル16側に設置される。整流器17は、回路基板13のスパイラルコイル16とは反対側の面に設けてもよい。二次電池18は充放電が可能であり、二次電池18としては平板型やボタン型等の種々の形状のものを使用することができる。電子デバイス14には、抵抗素子、容量素子、インダクタンス素子、制御素子、記憶素子等、回路を構成する各種の素子や部品が含まれる。さらに、これら以外の部品や装置を用いてもよい。回路基板13は樹脂基板やセラミック基板等の絶縁基板の表面や内部に回路を形成したものである。電子デバイス14は回路基板13上に実装されている。電子デバイス14は回路基板13に実装されていないものを含んでいてもよい。
図11に示す電子機器10は、スパイラルコイル(受電コイル)16と二次電池18との間に設置された磁性シート1を具備する。すなわち、スパイラルコイル16と二次電池18とは磁性シート1を挟んで配置されている。スパイラルコイル16はその少なくとも一部として平面部を有し、この平面部は磁性シート1の表面に沿って配置されている。受電装置11として見た場合、それを構成するスパイラルコイル16と二次電池18との間に磁性シート1が配置されていることになる。
図12に示す電子機器10は、二次電池18と回路基板13との間に設置された磁性シート1を具備する。さらに、磁性シート1はスパイラルコイル16と整流器17との間やスパイラルコイル16と電子デバイス14との間に配置してもよい。磁性シート1はこれら各箇所のうち1箇所以上に配置される。磁性シート1は2箇所もしくはそれ以上の箇所に配置されていてもよい。
電子機器10の構成は、図11ないし図12に限られない。スパイラルコイル16と二次電池18と回路基板13との配置は種々に変更が可能である。例えば、上側から二次電池18、回路基板13、スパイラルコイル16を順に配置してもよい。磁性シート1は、例えば回路基板13とスパイラルコイル16との間に配置される。スパイラルコイル16と回路基板13との間に磁性シート1を配置する場合、単にスパイラルコイル16と磁性シート1と回路基板13とを積層するだけでもよいし、これらの間を接着剤やろう材で固定してもよい。上記した構造以外の場合も同様であり、各構成要素を積層するだけでもよいし、それらの間を接着剤やろう材で固定してもよい。
上述したように、スパイラルコイル16と二次電池18との間、スパイラルコイル16と整流器17との間、スパイラルコイル16と電子デバイス14との間、スパイラルコイル16と回路基板13との間の少なくとも1箇所に磁性シート1を配置することによって、充電時にスパイラルコイル16を通る磁束を磁性シート1でシールドすることができる。従って、電子機器10内部の回路基板13等と鎖交する磁束が減少するため、電磁誘導による渦電流の発生を抑制することが可能となる。
磁性シート1の厚さは、設置性や磁束の遮断性等を考慮して1mm以下の範囲とすることが好ましい。磁性シート1の厚さは、粘着層部3や外観を覆う樹脂フィルム5等の厚さを含むものである。磁性シート1のL値を重視する場合には、スパイラルコイル16側に高透磁率を有する磁性薄板4を配置することが好ましい。磁性シート1のQ値を重視する場合には、スパイラルコイル16側に磁気飽和しにくい磁性薄板2を配置することが好ましい。
渦電流の影響を抑制することによって、回路基板13に実装された電子デバイス14や整流器17の発熱、回路基板13の回路の発熱、さらに渦電流に起因するノイズの発生が抑制される。電子機器10内部における発熱の抑制は、二次電池18の性能や信頼性の向上に寄与する。渦電流損によるQ値の低下を抑制することで、受電装置11に供給する電力を増大させることができる。磁性シート1は、スパイラルコイル16に対する磁心としても機能するため、受電効率や充電効率を高めることができる。これらは電子機器10に対する充電時間の短縮に寄与する。さらに、二次電池18のケースに発生する渦電流も抑制されるため、充電時の二次電池18の温度上昇が少なく、寿命特性が低下しにくい。
上述した本実施形態の磁性シート1は、例えばインダクタ用磁性体や磁気シールド用磁性体(ノイズ対策シートを含む)として用いられる。特に、100kHz以上の周波数帯で使用される磁性シートに好適である。すなわち、切れ込み部を有する磁性薄板2に基づくQ値の向上効果や渦電流損の低減効果は、100kHz以上の周波数帯域でより良好に発揮される。従って、磁性シート1は100kHz以上の周波数帯で使用されるインダクタ用磁性体や磁気シールド用磁性体として好適である。
本実施形態の受電装置11とそれを用いた電子機器10においては、スパイラルコイル16と鎖交した磁束に起因する渦電流が抑制されるため、機器内部の発熱を低下させることができると共に、受電効率を向上させることが可能となる。これらによって、給電時の電力を大きくすることができ、充電時間の短縮を図ることができる。この本実施形態の電子機器10は携帯電話機、携帯型オーディオ機器、デジタルカメラ、ゲーム機等に好適である。このような電子機器10は給電装置にセットして非接触充電が行われる。
図13は本実施形態による非接触充電装置の構成を示す図である。非接触充電装置20は、電子機器10と給電装置30とを具備する。非接触充電装置20において、電子機器10は前述した本実施形態で示したものである。給電装置30は、給電コイル31、給電コイル用磁心32、受電装置11の位置合わせを行う磁石33、および図示しないが給電コイル31に交流電圧を印加する電源等を備えている。電子機器10を給電装置30上にセットした際に、給電コイル31は受電装置11と非接触で配置される。図13において、矢印は磁束の流れを示している。
非接触充電装置20による充電は以下のようにして行われる。給電装置30の給電コイル31に電源から交流電圧を印加し、給電コイル31に磁束を生じさせる。給電コイル31に発生させた磁束は、給電コイル31と非接触で配置されたスパイラルコイル16に伝達される。スパイラルコイル16には磁束を受けて電磁誘導で交流電圧が生じる。この交流電圧は整流器17で整流される。整流器17で整流された直流電圧により二次電池18に充電される。
非接触充電装置20においては、非接触で電力の伝送が行われる。図13に示す給電装置30は、受電装置11の位置決めを行うための磁石33を具備する。磁石33は給電コイル31の中心に1個配置したが、これに限定されない。磁石32は永久磁石であれば特に限定されないが、Nd−Fe−B系磁石であることが好ましい。
永久磁石としては、Sm−Co系磁石やSm−Fe−N系磁石等の様々なものが知られているが、Nd−Fe−B系磁石は比較的安価であるために汎用性が高い。Nd−Fe−B系磁石は、焼結磁石(Nd−Fe−B系磁石粉末の焼結体)であってもよいし、ボンド磁石(Nd−Fe−B系磁石粉末と樹脂との混合物)であってもよい。また、Nd−Fe−B系焼結磁石、Nd−Fe−B系ボンド磁石、Sm−Co系磁石は、残留磁束密度(Br)が0.70T以上、保磁力(Hc)が400kA/m以上と磁力が強い。また、フェライト磁石はBrが0.60T以下、Hcが400kA/m未満のものが主流である。
本実施形態の磁性シート1は、給電装置30に磁石33が搭載されていたとしても磁気飽和しないため、磁気シールドやインダクタとして良好に機能させることができる。従って、受電装置11の受電効率を向上させることができる。本実施形態の磁性シート1は、受電装置11の位置合わせを行う磁石33が搭載されていない給電装置30を適用する場合においても、磁気シールドやインダクタとして良好に機能する。従って、磁石33が搭載されていない給電装置30を使用する場合においても、受電装置11の受電効率を向上させることができる。給電装置の構成は、磁石33が搭載されていないことを除いて、図13に示す給電装置30と同様である。そのような給電装置においては、移動可能なコイルで受電装置11の位置合わせを行うようにしてもよい。
本実施形態の磁性シート1は、同一平面上に配置した磁性薄板がユニット構造部を有していることからユニット構造部における隣り合う磁性薄板同士の隙間部を小さくできることからインダクタンス値(L値)を大きくすることができる。そのため、位置決め用磁石を具備した給電装置を使用した非接触充電装置においても受電効率を向上させることができる。また、ユニット構造部を備えることにより、隣り合う磁性薄板同士が重なることを防ぐことができるので磁性シートの平坦性を維持することができる。
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
(第1の非接触充電装置)
第1の非接触充電装置として携帯電話機用の充電システムを用意した。給電装置はAC電源からの電力を、制御回路を通して一定の電磁波に変換し、この電磁波を送信する一次コイル(給電コイル)を置き台の近傍に配置したものである。なお、一次コイルの中心部には直径15mm、厚さ0.5mmのNd−Fe−B系焼結磁石(残留磁束密度(Br):1.42T、保磁力(Hc):438kA/m)を配置した。携帯電話機は受電装置としてスパイラルコイルからなる二次コイル(受電コイル)と二次コイルに生じた交流電力を整流する整流器が実装された回路基板と二次電池とを具備する。二次コイルは銅線を外周30mm、内周23mmとして平面状に巻回したものである。
(比較例A)
第1の非接触充電装置において、磁性シートを用いずに受電装置を構成したものを比較例Aとした。
(実施例1〜16)
第1の磁性薄板として、溶解、鋳造、圧延工程を経て、厚さが200μmのステンレス鋼薄板を作製した。ステンレス鋼の組成は、0.01質量%のC、0.35質量%のSi、0.20質量%のMn、0.024質量%のP、0.003質量%のS、18.8質量%のCr、3.4質量%のAl、0.18質量%のTi、0.02質量%のOを含み、残部がFeである。この材料の電気抵抗値は124μΩ・cmであり、飽和磁束密度は1.36T、磁歪定数の絶対値は26ppmであった。圧延後の熱処理は行っていない。
第2の磁性薄板として、厚さが18μmのCo基アモルファス合金薄板を単ロール急冷法により作製した。Co基アモルファス合金薄板の組成は、(Co0.90Fe0.05Nb0.02Cr0.03)75Si13B12(原子%)である。この材料の磁歪定数の絶対値は1ppm以下、飽和磁束密度は0.55T、電気抵抗値は120μΩ・cmであった。電気抵抗は4端子法で測定した。飽和磁束密度は試料振動型磁力計で測定した。磁歪定数はストレインゲージ法で測定した。第1の磁性薄板の厚さはマイクロメータで測定した。第2の磁性薄板の厚さは質量法により求めた。
実施例1〜8は第2の磁性薄板としてCo基アモルファス合金薄板を使ったものである。また、隣り合う磁性薄板同士が接している割合が0である実施例1および実施例6は、ユニット構造における隣り合う第1の磁性薄板同士の隙間部の幅の最小値を0.03mm以上にしたものである。
次に、ステンレス鋼薄板(第1の磁性薄板)およびCo基アモルファス合金薄板(第2の磁性薄板)を縦42mm×横42mmの四角形状に切断した。ステンレス鋼薄板(第1の磁性薄板)は、表1に示したB/A(=磁性薄板の外周領域の合計外周長A/磁性薄板に設けられた隙間部の合計長さB)となるような櫛歯状のユニット構造部とした。また、Co基アモルファス合金薄板(第2の磁性薄板)は平板(スリット加工しないもの)形状、8分割(隙間0.2mmに統一して配置したもの)形状のものを用意した(表1参照)。
次に、粘着層部としてアクリル系接着剤(厚さ10μm)を塗布したPETフィルム(厚さ12.5μm)を用意した。ステンレス鋼薄板とCo基アモルファス合金薄板を粘着層部(厚さ10μmのアクリル系接着剤層)を介して積層し、最外層をPETフィルムとなるように積層して実施例1〜8の磁性シートとした(表1参照)。また、比較例1として隙間部の幅を1.5mmに統一した以外は実施例1と同様の磁性シートを用意した(表1参照)。
次に、第2の磁性薄板として、質量法で求めた厚さが20μmのFe基微細結晶合金薄板(組成:Fe73Cu1Nb3Si15B8(原子%)、平均結晶粒径:10nm)を用意した。この磁性薄板を、縦42mm×横42mmの四角形状に加工した。また、Fe基微細結晶合金薄板には540℃×1時間の熱処理を施した。この磁性薄板の飽和磁束密度は1.34T、電気抵抗値は120μΩ・cm、磁歪定数の絶対値は1ppm以下であった。また、Fe基微細結晶合金薄板(第2の磁性薄板)は平板(スリット加工しないもの)の形状、8分割(隙間0.2mmに統一して配置したもの)の形状のものを用意した(表1参照)。
実施例9〜16は第2の磁性薄板としてFe基微細結晶合金薄板を用いたものである。また、隣り合う磁性薄板同士が接している割合が0である実施例9および実施例14は、ユニット構造における隣り合う第1の磁性薄板同士の隙間部の幅の最小値を0.03mm以上にしたものである。
次に、粘着層部としてアクリル系接着剤(厚さ10μm)を塗布したPETフィルム(厚さ12.5μm)および前述のステンレス鋼薄板(第1の磁性薄板)と組合せて表2に示す実施例9〜16にかかる磁性シートを作製した。また、比較例2として、隙間部の幅を1.5mmに統一した以外は実施例9と同様の磁性シートを用意した(表2参照)。
実施例1〜16および比較例1〜2の磁性シートについて、インピーダンスアナライザ(HP4192A)を用いてQ値とL値を測定した。給電装置側に電子機器(受電装置)の位置決め用磁石が配置されているものを使用した。また、非接触充電装置としての特性を評価するために、結合効率(受電効率)と発熱量を測定した。
結合効率は、一次コイル(給電コイル)から一定の電力(ここでは1W)を送信したとき、どれだけの電力を二次コイル(受電コイル)に伝えられるかで評価した。比較例A(磁性シート無し)の結合効率(二次コイルに伝えられた電力量)を100としたとき、20%以上40%未満向上したもの(120以上140未満)をB、140%以上160%未満向上したもの(140以上)をA、160%以上向上したもの(160以上)をS、10%以上20%未満であったもの(110以上120未満)をC、10%未満であったもの(110未満)をDで示す。結合効率が高いということは、受電効率が高いことを意味する。
発熱量としては、送電速度0.4W/h、1.5W/hおよび3.0W/hによる送電を2時間行い、2時間後の温度上昇を測定した。温度上昇が10℃以下のものをA、温度上昇が10℃を超えて20℃以下のものをB、温度上昇が20℃を超えて30℃以下のものをC、温度上昇が30℃を超えたものをDで示す。送電前は室温25℃で統一した。温度上昇が小さいということは渦電流の発生が抑制されていることを意味する。なお、送電速度0.4W/hでは受電速度0.25W/h、送電速度1.5W/hでは受電速度0.9W/h、送電速度3.0W/hでは受電速度1.7W/hであった。
充電時間の削減率(%)の測定において、実施例1〜8では比較例1の充電時間と比較して短くなった充電時間の割合を示した。また、実施例9〜16では比較例2と比較して短くなった充電時間の割合を示した。削減率(%)が大きいほど充電時間が短いことを示す。なお、充電条件は送電速度1.5W/hにて行った。これらの結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例1〜16の磁性シートは、磁石があっても、良好な特性を示すことが確認された。特に、ユニット構造部において隣り合う磁性薄板同士が接している箇所が多いものほど優れた特性を示した。また、実施例5〜8および実施例13〜16のように隙間部の最大幅を狭くしたものは受電速度が上がっても発熱量を低減できた。比較例1や比較例2のように隙間が大きい磁性シートは、特性が低下した。
(実施例1A〜16A)
実施例1〜16の磁性シートを使用した非接触充電装置として、携帯電話機用の充電システムを構成した。給電装置はAC電源(0.5Aまたは1.0A)からの電力を、制御回路を通して一定の電磁波に変換し、この電磁波を送信する一次コイル(給電コイル)を置き台の近傍に配置したものである。磁石として、Nd−Fe−B系ボンド磁石(Br:0.75T、Hc:756kA/m)、Sm−Co系磁石(Br:1.02T、Hc:796kA/m)、フェライト磁石(Br:0.43T、Hc:398kA/m)を用意し、いずれかを一次コイルの中心部に配置した。携帯電話機は、受電装置としてスパイラルコイルからなる二次コイル(受電コイル)と二次コイルに生じた交流電力を整流する整流器が実装された回路基板と二次電池とを具備している。二次コイルは銅線を外周30mm、内周23mmに平面状に巻回したものである。
AC電源の電流が0.5Aの場合と1.0Aの場合について、非接触充電装置の結合効率および発熱量を測定した。非接触充電装置の特性評価は、上述したNd−Fe−B系ボンド磁石、Sm−Co系磁石、フェライト磁石を用いた場合についてそれぞれ実施した。結合効率は、AC電源の電流を0.5Aまたは1.0Aとし、一次コイル(給電コイル)から一定の電力(ここでは1W)を送信したとき、どれだけの電力を二次コイル(受電コイル)に伝えられるかで評価した。比較例Aの結合効率(二次コイルに伝えられた電力量)を100としたとき、20%以上40%未満向上したもの(120以上140未満)をB、140%以上160%未満向上したもの(140以上160未満)をA、160%以上向上したもの(160以上)をS、20%未満であったもの(120未満)をCで示す。発熱量は、AC電源の電流を0.5Aまたは1.0Aとして送電を2時間行い、2時間後の温度上昇を測定した。温度上昇が25℃以下のものをA、温度上昇が25℃を超えて40℃以下のものをB、温度上昇が40℃を超えたものをCで示す。送電前は室温25℃で統一した。それらの結果を表4および表5に示す。
表4および表5から明らかなように、本実施例の磁性シートはAC電源の電流値を変えた場合であっても優れた特性を示すことが確認された。さらに、磁石を変えた場合においても、本実施例の磁性シートは優れた特性を示すことが確認された。これらのことから、AC電源の変化や位置決め用磁石の材質が変化した場合においても、本実施例の磁性シートによれば受電効率の向上や発熱量の低減を実現することができる。従って、受電装置や非接触充電装置の信頼性や汎用性を大幅に高めることが可能になる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。