JPWO2014069005A1 - 義歯装置の装着構造、および義歯装置 - Google Patents

義歯装置の装着構造、および義歯装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 柱歯(支台歯、鉤歯)の形成時に削合を無くすか又はほとんど削合しないで、快適で安定した装着感が得られる、義歯装置の装着構造等を提供する。【解決手段】 義歯装置と、該義歯装置の嵌合体が嵌め合わされる柱歯(鉤歯または支台歯)とを備え、柱歯は、当該柱歯のもととなる自立歯の少なくとも根元側部分に固定された柱歯被覆体を有し、該柱歯被覆体は、1つまたは2つの金属部材により部分的に、又は2つの金属部材により全周するように、自立歯を覆っており、義歯装置の嵌合体は、柱歯被覆体に接するように嵌め合わされ、かつ自立歯の頂部が該嵌合体の上端より高い位置にあることを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、義歯装置の装着構造の形成時に患者の、柱歯(鉤歯または支台歯)となる自立歯への削合をほとんどなくし、かつ使用時に自立歯への負担を減らしながら、違和感の小さい、義歯装置の装着構造、および義歯装置に関するものである。
(用語の定義):
(1)本発明の「義歯装置」は、従来の、「ブリッジ」および「部分義歯」を含むものである。従来のブリッジそのものであってもよいし、従来の部分義歯そのものであってもよい。さらに従来のブリッジおよび部分義歯の範疇に入らない、新しい概念の歯科補綴装置であってもよい。
(2)(i)説明対象が「義歯装置」の場合には、従来の部分義歯における「鉤歯」、また従来のブリッジにおける「支台歯」に対応し、これら両方を包含する語として、「柱歯」を用いることとする。「柱歯」およびそのもととなる「自立歯」は、残存歯だけでなくインプラントの人工歯牙も含むものとする。虫歯治療が既に施されていても、健常であれば、そのまま自立歯とする。もととなる自立歯は、1本の場合が多いが、連続する複数の自立歯を柱歯とする場合もある。
(ii)自立歯は柱歯に含まれる重要な構成要素であり、本発明の場合、自立歯自体は削合など無しにそのまま、またはほとんどそのまま柱歯に組み入れられるが、その自立歯に対して柱歯被覆体で被覆する処理を施して柱歯とする。
(iii)説明対象が部分義歯またはブリッジであることが明確な場合、またはこれらに限定することを意図する場合には、義歯装置ではなく、部分義歯またはブリッジの語を用いる。それに応じて鉤歯または支台歯の語を用いる。
(3)従来、欠損歯に代替する人工的な歯を示す語として、部分義歯には「人工歯」、またブリッジには「架工歯」、の語が用いられてきた。本発明における義歯装置において対応するものとして、「人工歯」の語を用いる。すなわち部分義歯の場合と共通する。
1.従来の部分義歯
従来の部分義歯は、欠損した歯の代わりをする人工歯、その人工歯を固定して顎堤に密着する義歯床、患者の残存歯(鉤歯)に着脱可能に係合されるクラスプ、そのクラスプと一体的に形成されるレスト等から構成されるのが普通である。これらレスト及びクラスプは、残存歯である鉤歯に係合して部分義歯の位置および姿勢を安定に保つ作用をする。しかし、このクラスプとレストは、鉤歯を強く拘束し、かつ横向きの力がかかったときテコの原理で鉤歯の歯根に大きなモーメントを発生させる。このため、使用者の不快感を増幅し、また鉤歯の健康性を損なうことがあった。さらに、クラスプやレスト自体に大きな応力がかかるため破損しやすく耐久性に欠けることがあった。
このような難点を除くために、レストを使用しないでC字状のクラスプを鉤歯の豊隆部の下部、すなわち鉤歯の根元部にのみ、あてがうように嵌め合わせる方式の部分義歯の提案がなされた(特許文献1,2)。鉤歯の根元部にのみ嵌合力を及ぼすことによって、鉤歯への負担は大きく軽減される。鉤歯根元にかかる応力は、鉤歯頂部にかかる応力に比べて、歯根部の周りに生じるモーメントの大きさを大幅に軽減する。クラスプによる鉤歯への拘束感は解消し、また歯根部の周りに大きなモーメントが生じないために鉤歯の耐久性を高めることができる。
鉤歯の根元部にのみ嵌合力を及ぼす手法は、金属製のクラスプを用いないいわゆるノンメタルデンチャにも適用されて、樹脂の嵌合部で鉤歯の根元部にのみ嵌合する構造が提案されている(特許文献3,4)。
上記のC字状のクラスプを用いることで、鉤歯への拘束力を軽減しかつ鉤歯に対してなるべく手を加えない流れとは別の流れとして、鉤歯の固定機能を最大限発揮させる、コーヌス・テレスコープ部分義歯の潮流もある(非特許文献1)。このコーヌス・テレスコープ部分義歯では、ほとんどの場合、鉤歯の神経を除いた上でその鉤歯に内冠という金属の被せを固定する。この内冠は、帽子のように鉤歯を歯冠部からすっぽりと歯牙全体を覆うものである。患者の鉤歯にそのような処置をした上で、部分義歯には、従来はクラスプがあった位置に、その鉤歯の内冠全体をすっぽり覆う金属製の被せ(外冠)を設ける。この外冠を内冠に被せることで、部分義歯は、口腔内に強固に固定される。このコーヌス・テレスコープ部分義歯によれば、部分義歯は安定に固定される。
ここまで従来の部分義歯について説明した。次に従来のブリッジについて説明する。
2.従来のブリッジ:
ブリッジは、1本の歯の部分的な欠損から多数歯の欠損までを補綴し、通常、支台歯に固定される歯科装置である。ブリッジの架工歯(ポンティック)にかかる咬合圧はその支台歯で負担されるため、ブリッジ構造において、支台歯および支台装置が高い耐久性を保つことができるように構成することが重要なポイントとなる。この点に関して、ピン保持インレーブリッジ(特許文献5)やインプラントに支台歯を設けて咬合力に順応して上下や左右の運動が可能なように歯科用床材を埋め込んだブリッジ構造(特許文献6)等の提案がなされている。また、参考書等においてクラウンブリッジに関する多くの歯科技術の進歩が紹介されている(たとえば非特許文献2参照)。
特許第4270578号 特許第4686541号 特許第4309938号 特開2010−201092号公報 特許公表2004−523290号 特許公開2002−238924号公報
黒田正彦「コーヌスクローネ」医歯薬出版株式会社、2007年4月15日第1版第14刷 石橋寛二ほか「クラウンブリッジ補綴学 第4版」医歯薬出版株式会社、2011年1月20日第4版第4刷
ブリッジと、部分義歯のうちのコーヌス・テレスコープ部分義歯と、の両方において、従来のものは、支台歯または鉤歯に対して、多大な削合をしていた。たとえば従来のブリッジでは、支台歯となる自立歯の頂部にクラウン(冠)をかぶせるため、自立歯を大きく削合していた。このため、削合による痛みをなくすために生活歯の場合は神経を除去して失活歯とすることが普通に行われていた。神経を除去された歯牙は、その歯牙が本来もっている生命力を大きく損なわれる。自立歯が本来もっている生命力を生かして、耐久性を保ちながら支台歯として用いることができれば、ブリッジの価値はさらに飛躍的に高まると考えられる。そのようなブリッジができれば、ヒトは健康な状態を非常な高齢にいたるまで保つことが可能となる。
またコーヌス・テレスコープ部分義歯については、内冠をかぶせるため、従来のブリッジと同様に、削合を大きくとり、かつ神経が生きている生活歯であっても神経を除去する方法が普通に行われる。これら大きな削合および神経の除去は、鉤歯の耐久性を大きく低下させるものである。
C字状のクラスプを用いる部分義歯の場合は、積極的に削合することはしないで、C字状のクラスプを自立歯の豊隆部より根元側に嵌合する。しかし、患者の患部の状況によっては、豊隆部がない自立歯にC字状クラスプを嵌合しなければならない場合がある。患者の自立歯に豊隆部がなければ安定した維持作用を得ることはできない。このような場合、自立歯に対して削合をすることなく安定した維持作用を確保する方策は知られていない。すなわちC字状のクラスプの部分義歯は、削合は積極的にしないものの、患者の歯牙の形態によっては、削合をせざるをえないか又は部分義歯の最適設計が困難になる場合があった。
その他の大きな問題として、部分義歯については、装着時の違和感が大きいという問題がある。とくに上記のコーヌス・テレスコープ部分義歯の場合、鉤歯に設けた内冠の上から外冠を被せて固定力を高めるため、テコの原理により鉤歯の歯根部には大きな荷重(モーメント)がかかり、その歯根部などに歯根破折などの損傷が生じる事例があった。さらに、鉤歯に二重の被せを被せるため、口腔内でかさばり、患者の違和感は大きいものがあった。このため、より一層、小型化および構造の簡素化をはかり、違和感をなくすことが要望されていた。また、鉤歯に二重の被せを被せるため、内冠の被せの段階からある程度の噛み合わせを考慮しながら調整し、外冠の段階で最終の噛み合わせの調整を行う必要がある。このため、噛み合わせの調整、気配りが煩雑となり、これについても多くの経験と熟達した技術が必要である。さらにコーヌス・テレスコープ部分義歯は、鉤歯が前歯である場合、隣接する歯牙の隙間が無いため大きく削合する必要があり、歯牙が細くなりすぎる等、適用することは容易ではない。
本発明は、柱歯の形成時に患者の自立歯への削合を無くすか又はほとんど削合しないで、安定した装着構造を確保し、かつ使用時に自立歯への負担を減らして快適な装着感を長期間、安定して得ることができる、義歯装着の装着構造、および義歯装置を提供することを目的とする。
本発明の義歯装置の装着構造は、人工歯および嵌合体を含む義歯装置と、該義歯装置の嵌合体が嵌め合わされる柱歯(鉤歯または支台歯)と、を備える。この義歯装置の装着構造では、柱歯は、当該柱歯のもととなる自立歯の少なくとも根元側部分に固定された柱歯被覆体を有し、該柱歯被覆体は、1つまたは2つの金属部材により部分的に、又は2つの金属部材により全周するように、自立歯を覆っており、義歯装置の嵌合体は、柱歯被覆体に接するように嵌め合わされ、かつ自立歯の頂部が該嵌合体の上端より高い位置にあることを特徴とする。
上記の義歯装置が、部分義歯である場合は、患者は上記の構成の義歯装置を日常的に着脱する。一方、ブリッジである場合は、通常、半永久的に柱歯に固定されるが、堅固な固定を確保した上で期間をおいて歯科診療所で着脱するようなタイプにしてもよい。
まず、部分義歯としてみた本発明の義歯装置について説明する。上記の構成では、嵌合体は、その上面が自立歯の頂部より低く根元側になるように嵌合されるので、自ずとその柱歯の根元部に嵌合する。柱歯の頂部は、嵌合体から突き出して露出状態となる。このため、嵌合体から柱歯の頂部および頂部コーナー部に応力は、全くかからず側周面下部にのみかかるので、柱歯の歯根の周りのモーメントは、柱歯の頂部に応力がかかる構造に比べて、大きく低減される。このため、柱歯にかかる負担は小さく、高い耐久性を保つことができる。また、柱歯が完全に被せ物(外冠)で覆われるコーヌス・テレスコープ部分義歯の構造に比べて、口腔内における違和感は非常に小さくなる。
次いで、ブリッジとしてみた本発明の義歯装置について説明する。上記の義歯装置の嵌合体は、通常は2つあり(1つでもよい)、その2つの嵌合体の間に1つ以上の人工歯(ポンティック)が保持される。その人工歯の保持は、連結部によってなされる。上記の嵌合体は、この連結部に連続するように、もしくはこの連結部の一部をなすように設けられる。食物を咬合するとき、人工歯にかかる咬合圧は柱歯によって負担される。従来のクラウンブリッジでは支台歯の頂部に固定されたクラウンに、架工歯から連結部を経て咬合圧がかかるので、テコの原理により支台歯の歯根に大きなモーメントがかかり支台歯の耐久性を劣化させるケースが多くあった。
本発明では、嵌合体が自立歯の少なくとも根元側部分に、全周して又は部分的に、固着された柱歯被覆体に、接するように嵌め合されるので、人工歯/連結部を経た咬合圧が柱歯の歯根に大きなモーメントを発生させることはない。本発明の義歯装置の装着構造では、咬合圧は、柱歯の根元側部分に歯軸に沿うようにかかるだけであり、むしろ自立歯の直立姿勢を助ける。倒壊させる向きの大きな負荷がかかることはない。また、動揺のある歯牙を不動の状態に治癒することも可能である。このため、柱歯となっている自立歯は本来もっている生命力を維持することができ、耐久性を向上することができる。
上記したように、柱歯被覆体は自立歯の少なくとも根元側部分に固定されるので、嵌合体は自ずと柱歯の根元側部分にまで嵌め合わされることになる。この結果、咬合圧が柱歯の頂部にかかることはなく、咬合圧に起因するテコ原理で拡大されたモーメントが自立歯の歯根に発生することが防止される。
次に、ブリッジおよび部分義歯に共通する問題である柱歯への削合について本発明の効果を説明する。柱歯被覆体は、1つまたは2つの金属部材により部分的に、又は2つの金属部材により全周するように、前記自立歯を覆う。
<自立歯を全周する柱歯被覆体の場合>:
2つの部材で形成することで、次の作用を得ることができる。すなわち、例えば柱歯被覆体が自立歯を全周する場合、1つの筒状の部材を用いたのでは、自立歯に縦方向から嵌めるため、自立歯は大きく削る必要がある。とくに豊隆部があっては筒状の部材は根元側にまで通らないので豊隆部は完全に削合する必要がある。2つの部材を用いると豊隆部の根元側に柱歯被覆体を形成することができる。豊隆部とは、歯牙の中央付近でふくらんで膨出している部分をいう(通常、歯牙には豊隆部がある)。1つの筒体を柱歯被覆体とした場合には、豊隆部でつかえて根元側に柱歯被覆体を移動させることはできない。豊隆部を削除しないかぎり原理的に不可能である。しかし、2つの金属部材を用いて、自立歯をはさんで周回するように又は部分的に固定するので、豊隆部をそのままの状態で残したまま根元側に容易に柱歯被覆体を固定することができる。このため、応力は鉤歯の頂部にかからず根元側にかかるので、根元に大きな曲げモーメントが発生することはなく、使用中、耐久性を高く保つことができる。この場合、豊隆部を削除することがないので、作製時に耐久性を大きく劣化させる処理をすることもない。
従来、上記のように、自立歯が生活歯であっても神経を除いて失活歯としなければならなかった。しかし、上記の構成によれば、柱歯被覆体は2つの金属部材で形成することができるので、1つの柱歯被覆体が柱歯を保護するよりも、自立歯の削合を大きく抑制することができ、大抵の場合、削合なしで柱歯被覆体を形成することができる。その結果、柱歯における自立歯の耐久性を高くすることができる。また、神経が残っている生活歯は、もちろん、そのまま神経を残したまま柱歯被覆体を形成することができる。この場合、自立歯の頂部はあけたまま柱歯を形成する。すなわち柱歯被覆体は頂部を覆わない構造をとる。また神経がない失活歯の場合でも、上述のように削合はしないか、または最少限ですむので、耐久性を損なうことがない。
<自立歯を部分的に覆う場合>:
部分的に覆う場合、通常、柱歯被覆体は1つの金属部材で形成される。しかし、犬歯を自立歯とする場合など豊隆部が大きく膨出する場合があり、削合無しで柱歯を形成するのに2つの金属部材を用いたほうがよい場合も多い。
なお、柱歯被覆体である金属部材の自立歯への固定は、1つの場合でも2つの場合でも、セメント、固着樹脂などで行われる。セメント、固着樹脂等は、固定するときは流動体なので、2つの部材による自立歯の被覆を補うように用いることができる。すなわち、金属部材を少し大きめに作製しておいて、自立歯の周囲にセメント等を配着することで、金属部材と自立歯もしくは金属部材同士(2つの場合)の当接を厳密化するなどの用い方ができる。その他、微小面積に限られるがセメント自体、被覆の一部となってもよい。
柱歯となる自立歯は、自立していればどのような歯でもよく、生活歯と失活歯とを問わない。とうぜん、治療済みと治療なし、とを問わない。したがって、柱歯となる自立歯に虫歯治療の詰め物などがあってもよい。これら治療が適切に維持されていれば、それらを生かしながら自立歯として用い、その自立歯に上記のように柱歯被覆体を配設することで柱歯を形成する。この柱歯に義歯装置の嵌合体を嵌め合わせることになる。これにより、従来、柱歯として用いることができないような自立歯であっても、本発明では柱歯として活用することができる。
なお、柱歯被覆体を構成する部材の自立歯への固定は、セメント、固着樹脂等で行われる。セメント、固着樹脂等は、固定するときは流動体なので、柱歯被覆体の部材による自立歯の被覆を補うように用いることができる。その他、微小面積に限られるが固着樹脂、セメント等それ自体が、被覆の一部となってもよい。上記のセメント、固着樹脂等は、永久的に固定する接着剤、セメント等であってもよいし、適当な手段によって離脱可能な、脱着を前提とする暫定的な接着剤、セメント等であってもよい。
嵌合体は、自立歯に嵌め合わされる形状のもの、たとえば筒状の物(完全な筒、指輪、側部が開いた部分的な筒など)であれば何でもよい。嵌合体を作製する材料は、金属とするが、表面に審美性を高めるために樹脂またはセラミックスによる白色コートをしてもよい。
一方、本発明の一つの処理が必要な点として、柱歯に柱歯被覆体を設ける点があげられる。この柱歯被覆体は通常は外面をミリングマシンで削られて、嵌合体が嵌め合わせやすくされる。いわば、従来のクラウンブリッジでは自立歯を削ってクラウンを嵌め合わせる形状に整えていた。これに対して、本発明では、柱歯被覆体を用いることで、その柱歯被覆体の外面に嵌合体が嵌合しやすいように形状を整え、自立歯について削合しないか、もしくはほとんど削合しない。
この柱歯被覆体は、柱歯のカリエス(虫歯)化を防御することになる。従来のブリッジではブリッジに大きな力がかかり、やがて歯牙との密着性が失われると、カリエスが生じる例が多くみられる。本発明の義歯装置では、上述のような力が働かないためカリエスに対して防御となる。
上記の自立歯への削合をしないことは自立歯の生命力を生かすことである。この削合しないで生命力を生かすことに比べれば、鉤歯被覆体を設けるという短所は問題にならないくらい小さなことである。
本発明の義歯装置では、柱歯を構成する自立歯の頂部は露出しており、部分義歯とした場合でもブリッジとした場合でも、咬合調整は必須である。柱歯の頂部もしくは頂面が柱歯被覆体から突出して露出しているため、どちらの場合でも、非常に容易となる。すなわち、嵌合体から突き出ている柱歯の頂部に対して、嵌合体と関係なく、たとえば製作の早期の段階で、咬合調整を行うことができる。このため、咬合調整を簡単に行うことができ、従来のコーヌス・テレスコープ部分義歯のように技工所(ラボ)段階で外冠に噛合調整を施す必要がない。このため、咬合面を形成するための工程を実施する機会が増え、かつ簡単化され、従来の場合のように内冠の頂部の厚みまで考慮する必要はなくなる。ただし、歯科医院での噛合調整において、微妙な調整が必要であることは従来と同様である。その微妙な調整という点においても、本発明の場合、柱歯を構成する自立歯のみの咬合調整という限られた調整であり、あとは技工所サイドでの工程なので、歯科医院での咬合調整が容易であるという利点は確実に得られる。
さらに、柱歯の形成時は、自立歯に対して、全周する柱歯被覆体だけでなく、部分的に固着される柱歯被覆体もあるので、臼歯だけでなく歯間がほとんど無い前歯に対して舌側(裏側)の範囲を被覆することができる。たとえば、前歯の舌側の範囲に、限定的に柱歯被覆体を固着して、その部分的な柱歯被覆体に接してC字状の嵌合体を嵌合させることが可能である。このため臼歯だけでなく前歯や犬歯を鉤歯とすることが可能である。
義歯装置は金属製の連結部を有し、嵌合体と該連結部とは、接合された金属一体物であるか、又は、一体鋳造された一体鋳造物である、ようにしてもよい。
これによって、金属による弾性が生じて弾性的な嵌合が実現する。嵌合体を柱歯に嵌合する時、力学的なポテンシャルの山を登って、落とし込まれる平衡位置(弾性変形が少し残るか、または殆どフリー)を設ける必要がある。このようなポテンシャルの山を通って落とし込まれる平衡位置は、嵌合体のみに着目していたのでは形成できない。義歯装置における連結部と嵌合体との一体化した金属体による適度な弾性と十分高い剛性とによって実現することができる。このような適度な弾性と十分高い剛性は、連結部と嵌合体とが一体化した一体金属によって実現することができる。
義歯装置の嵌合体が、{連結部の端に位置するC字体(C字体)、2つのアーム間に連結部が介在する変形C字体(変形C字体)、および連結部の端に位置する指輪体(指輪体)}の、いずれか一つとしてもよい。
これによって、欠損歯が、前歯、犬歯、臼歯、大臼歯などのどの歯牙であっても、その患者にとって最適な義歯装置を形成することができる。すなわち柱歯となる自立歯と隣の歯との隙間が大きく、安定した固定を重視しなければならない患部については、指輪体を配した義歯装置を用い、逆に前歯など隣の歯との間隔が無い場合には、C字体や変形C字体を用いた義歯装置とすることができる。
なお、変形C字体の嵌合体は、連結部をカニの本体として、左右のアームが1本ずつあるとして、そのカニの本体の左右端から1本ずつアームが出たような嵌合体をさす。欠損歯が前歯である場合に多く用いられる。
義歯装置の嵌合体が、C字体または変形C字体である場合において、柱歯には、柱歯被覆体によって当該柱歯の根元側にアンダーカットが形成されていてもよい。
患者の歯牙の状態によっては豊隆部のない自立歯を柱歯にしなければならない場合がある。また、普通に起きるケースといってもよいが、前歯を柱歯としてその前歯の裏側(舌側)もしくは側面部など本来、豊隆部がまったくない部分を、嵌合体が接する部分としなければならない場合がある。このようなケースでは、柱歯被覆体を、自立歯である前歯の裏側もしくは側面部に部分的に固着して、その根元側にかけてアンダーカットを形成することができる。これによって嵌合体は柱歯から抜けることなく安定に柱歯に嵌合した状態を維持することができる。
義歯装置の嵌合体が、指輪体である場合において、柱歯には、柱歯の頂部に向かって縮径するテーパーが付いているか、又はストレートであるようにできる。
これによって、指輪体を頂部から根元側へと嵌合させやすい柱歯を形成することができる。テーパーは、柱歯の外面が柱歯被覆体になる部分についてはその部分の柱歯被覆体にテーパーを付し、自立歯が外表面を形成する部分についてはその部分の自立歯にテーパーを付す。テーパーを付す場合は、柱歯被覆体に限定してテーパーを付すことになるように、柱歯被覆体の被覆範囲を大きくする。テーパーはミリングマシンにより高精度で形成することができる。
義歯装置の嵌合体が変形C字体である場合において、柱歯被覆体は、1本の自立歯に固定された金属部材であるか、又は連続する複数の自立歯にわたって各自立歯に部分的に固定された金属部材であるようにするのがよい。
これによって前歯が欠損した場合、変形C字体の嵌合体を有する義歯装置を用いて、安定して維持される補綴装置を形成することができる。ここで、2本の連続した自立歯にわたって固定された柱歯被覆体は、C字体が2つ結合したω字状の被覆体となり、それに嵌合する変形C字体の嵌合体は、その1本のアームが同様にω字状になる。
柱歯のもととなった自立歯の頂部が削合されていないようにできる。
従来のブリッジやコーヌス・テレスコープ部分義歯では、鋳造金属製の冠の頂面に咬合調整を施すので、その冠の厚み分だけ必ず支台歯または鉤歯となる自立歯の頂部を削合していた。またとうぜん冠は側部にもかぶさるので、頂部だけでなく側部も大きく削合していた。しかし、本発明の義歯装置の装着構造では柱歯の頂面もしくは自立歯の頂面は、義歯装置の嵌合体より高い位置にあり、自立歯にもともとある咬合面をそのまま使用するか、またはもともとある咬合面に不具合があれば微調整を施す。このため、自立歯の頂部を削合しないことにより、自立歯の耐久性を向上することができる。言うまでもなく、上記のように咬合調整が非常に簡単となる。
なお、本発明では、頂部だけでなく側面等についても削合はしないか、ほとんどしないが、頂部が典型的な部分なので頂部を取り上げたまでである。
義歯装置には、人工歯を補強するように補強樹脂が該人工歯と連結部との間の間隙を埋めるように配置され、歯軸の方向に沿って見て、人工歯から張り出して顎堤粘膜に密着する部分である樹脂製の義歯床が無いようにできる。
これによって義歯装置全体のサイズが小型化することが、患者は口腔内での違和感が大幅に小さくなり、快適な義歯装置の装着構造を得ることができる。
本発明の義歯装置は、人工歯および嵌合体を備え、該嵌合体が柱歯に嵌合される。この義歯装置では、嵌合体が金属製であり、該嵌合体と一体化した金属製の連結部を備え、嵌合体が、{(連結部の端に位置するC字体(C字体)、2つのアーム間に連結部が介在する変形C字体(変形C字体)、および連結部の端に位置する指輪体(指輪体))のいずれか一つであり、人工歯が連結部に支持されていることを特徴とする。
これによって、義歯装置全体に適度の弾性力と十分な剛性とを付与することができ、嵌合体を柱歯に嵌合するとき、弾性変形させながら弾性変形の小さい、またはほとんどフリーな、平衡位置を実現することができる。部分義歯の装着構造は、この平衡位置で、自立歯等に大きな拘束感を感じさせずに安定した状態を保つことができる。この結果、柱歯への拘束はほとんどない状態で、安定して強力な維持作用等を得ることが可能になる。また、小型化する上でも強力な支援となり、その小型化の結果、口腔内での違和感を減らし快適な装着感を確保することができる。
さらに、上記の一体物の金属による弾性力は、このあと説明する柱歯のアンダーカットへの適合を実現する嵌合体の上側および下側接触面と協働して、上記の平衡位置を、これまで形成不可能であった部分に形成することを可能にする。このため、義歯装置の装着構造の設計の範囲を大きく広げることができ、これまでよりも患者にとってより好ましい義歯装置の装着構造を作製できるようになる。
なお、上記の連結部と嵌合体との一体化は、嵌合体と連結部とが、接合されるか、または、一体鋳造されることで実現される。接合は、溶接(TIG、レーザーなど)、融着、拡散接合など何でもよい。
連結部は、歯列に沿うように延在しており、該延在している部分から歯軸方向に突き出る、架工歯よりも細い径の棒状部を有し、架工歯は該棒状部に支持されてもよい。
これによって、人工歯の配置が容易になり、義歯装置の製造を簡単に行うことができる。なお人工歯が棒状部に係止する部分についてはとくに限定しないが、棒状部が突き刺ささる孔などを設けてもよいし、また人工歯の配置の修正等が可能なように、人工歯の底部に幅のある溝状の部分を設けてもよい。
連結部、支持された状態の(連結部/該人工歯)を覆うように、補強樹脂が配置されていてもよい。
これによって、係止状態を安定に固定し、顎堤への接触をマイルドにすることができる。顎堤に接触しない場合もある。また、この樹脂は、義歯床のように、平面的に見て人工歯から大きくはみ出して顎堤粘膜に密着するようなものではない。この樹脂は、あくまで舌側から見て人工歯を保持するように根元部、隠れた部分となる(棒状部/該人工歯の底部)、延在する連結部を覆うように配置されるものである。
義歯装置には、人工歯の歯軸の方向に沿って見て、人工歯から張り出して顎堤粘膜に密着する部分である樹脂製の義歯床が無いようにしてもよい。
これによって義歯装置全体のサイズが小型化して、患者は義歯装置に対する違和感がなくなる。
嵌合体がC字体または変形C字体である場合、該嵌合体が柱歯に接する面において、該柱歯の根元側に接する部分の下側接触面は、柱歯の頂部側に接する部分である上側接触面に対して傾斜して、該柱歯の芯へと近づくように下方に延びているようにするのがよい。
これによって、柱歯被覆体によってアンダーカットを形成された場合、そのアンダーカットへと下側接触面が延び出て接触し、強固な維持力等を発現する嵌合部を形成することができる。上記のアンダーカットは豊隆部がない前歯や犬歯等を柱歯とする場合に、柱歯被覆体によって形成することができる。また豊隆部がある自立歯であっても、最適の義歯装置の装着構造を形成するのに、柱歯被覆体によってアンダーカットを形成するほうが好ましいのであれば、柱歯被覆体で人工的なアンダーカットを形成することができる。
なお下側接触面と上側接触面との境い目は、線状でもよいし、明確な線ではなく徐々に移行する幅をもった部分であってもよい。
本発明によれば、義歯装置の装着構造の作製時に患者の自立歯への削合を無くすか又はほとんど無くし、かつ使用時に鉤歯への負担を減らし耐久性を向上させたものを提供することができる。
本発明の義歯装置の装着構造等によれば、柱歯の形成時に患者の自立歯への削合を無くすか又はほとんど削合しないで、安定した装着構造を確保し、かつ使用時に自立歯への負担を減らして快適な装着感を長期間、安定して得ることができる。
(a)は本発明の実施の形態1の石膏模型における、舌側から見た義歯装置の装着構造、(b)は頬側から見た義歯装置の装着構造、を示す図である。 (a)は図1における柱歯、(b)は柱歯Kにおける柱歯被覆体、(c)は柱歯被覆体によるアンダーカット、(d)は断面、を示す図である。 (a)は図1の義歯装置、(b)は裏側から見た義歯装置、(c)は嵌合体であるC字体の横断面、を示す図である。 義歯装置を形成する金属製の連結部(嵌合体を含む)を示す図である。 柱歯に嵌合体を嵌合させて、連結部に架工歯を1本固定した状態を示す図である。 実施の形態1の義歯装置の装着構造の製作工程を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態2の石膏模型における義歯装置の装着構造を示し、(a)は舌側から、(b)は唇側から、見た図、である。 図7に示す義歯装置の装着構造における柱歯を舌側から見た図である。 図8の柱歯の部分拡大図である。 図7の義歯装置の装着構造における義歯装置を示し、(a)は唇側(前側正面)から、(b)は舌側から、見た図である。 本発明の実施の形態3の石膏模型におけるブリッジ構造を示し、(a)は頬側から見上げた図、(b)は舌側から見下ろした図、である。 図11のブリッジ構造におけるブリッジを示す図である。 図11に示すブリッジ構造における支台歯を示し、(a)は舌側(裏側)の左サイドから見下ろした、(b)は頬側(正面)左サイドから見下ろした、図である。 (a)および(b)は、支台歯被覆体を構成する部材の一方を示す図である。 (a)は、支台歯被覆体を固定する前の自立歯を示す図であり、(b)は同じ歯牙に従来のクラウンブリッジを用いると仮定した場合、そのクラウンブリッジを装着する前の自立歯を示す図である。 一般のクラウンブリッジの従来例を示す図である。 実施の形態3のブリッジ構造の製作工程を示すフローチャートである。 実施の形態3のブリッジ構造の別の製作工程を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態4のブリッジ構造(上顎)を示す図である。 図19のブリッジ構造における支台歯を示し、(a)はやや舌側(後側)から見下ろした、また(b)は頬側(前側)から見た、図である。 図20に示すブリッジ構造におけるブリッジを示す図である。 本発明の実施の形態5のブリッジ構造(上顎)を示す図である。 図22に示すブリッジ構造におけるブリッジを示す図である。 (a)は全体の支台歯、(b)は支台歯K、(c)は支台歯K、を示す図である。 金属製の連結部(嵌合体を含む)を支台歯に装着した状態を示す図である。 図25の連結部に架工歯を1本固定した状態を示す図である。 (a)は本発明の実施の形態6における部分義歯の装着構造、(b)は鉤歯Kの部分拡大、(c)は鉤歯Kの部分拡大、を示す図である。 (a)は図27の部分義歯、(b)は鉤歯Kに対応する嵌合体である指輪体の部分拡大、を示す図である。 (a)は図27に示す部分義歯の装着構造における鉤歯、(b)は鉤歯Kの鉤歯被覆体の一方の部材を固定した状態、(c)は鉤歯被覆体の他方の部材、を示す図である。 鉤歯における断面図である。 実施の形態6の部分義歯の装着構造の製作工程を示すフローチャートである。 実施の形態6の部分義歯の装着構造の別の製作工程を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態7における部分義歯の装着構造を示す斜視図である。 図33における部分義歯を外した鉤歯を示す図である。 図33の部分義歯の鉤歯Kに対応する指輪体の部分拡大図である。 (a)本発明の実施の形態8における部分義歯の装着構造、(b)は鉤歯Kの部分拡大、(c)が鉤歯Kの部分拡大、を示す図である。 (a)は図36における部分義歯を外した後の鉤歯、(b)は鉤歯Kの部分拡大、(c)は鉤歯Kの部分拡大、を示す図である。 図36における部分義歯を示す図である。 本発明の実施の形態9における義歯装置の柱歯を示し、(a)は2つの柱歯被覆体を配置した状態、(b)は2つのうち一方の柱歯被覆体を外した状態、(c)は外した一方の柱歯被覆体を示す、図である。 図39の柱歯に嵌合体を嵌合した状態を示す図である。
(実施の形態1)
図1(a)、(b)は本発明の実施の形態1における義歯装置の装着構造50を示す斜視図である。図1において、義歯装置10は、患者の上顎を模した石膏模型Mに装着されている。石膏模型Mの口腔の柱歯K(K,K)に部分義歯10の嵌合体11が嵌め合わされている。この義歯装置10は、部分義歯とみてもよいしブリッジとみてもよい。また、ブリッジ、部分義歯の範疇に入らない新しい概念の歯科補綴装置とみてもよい。義歯装置10は、その嵌合体11が柱歯K1,K2を構成する自立歯1,2に、セメント、接着樹脂等で固定されればブリッジといえる。しかし脱着自由であれば部分義歯といえる。また、接着樹脂等で固着するにしても、永続的に固定を維持するセメント、接着樹脂等もあるし、比較的簡単に解離することができるテンポラリーセメントや暫定的な接着樹脂等もある。どのようなセメント、接着樹脂等を用いてもよい。その意味で、部分義歯とブリッジとの明確な区別も無くなりつつあり、本実施の形態の義歯装置10は新しい概念の歯科補綴装置であるといってよい。なぜ本実施の形態における歯科補綴装置が生まれたのか、詳細に説明する。なお、2つの柱歯K,Kの区別をしないときは、柱歯Kと表記する。
図1(a)は舌側(T)から見た装着構造50であり、図1(b)は頬側から見た装着構造50である。符合Cは、頬側と唇側とを示すが、とくに断らない限り、区別しないで共通に用いる。装着構造50以外の部分の歯牙は省略している。2つの柱歯K,Kの間に人工歯16が2本、配置されている。柱歯K,Kとなる自立歯1,2は生活歯であり健常状態にある。義歯装置10における維持装置は嵌合体11であり、本実施の形態では嵌合体11はC字体である。C字体11は、自立歯1,2をもとに形成された柱歯K,Kの柱歯被覆体(図1では嵌合体11に隠されて見えない)に接して嵌め合わされている。この嵌め合わせは、見た目よりも安定して堅固に嵌め合わされており、嵌合の際に「カチッ」という感触があることで、嵌合が実現したことを認識することができる。すなわちC字体の嵌合体11をあてがうように嵌め合わせるという文章から類推されるよりも、弾性力および剛性が発現されて嵌合が実現される。そのような嵌合を実現するためには、力学的なポテンシャルの山を登って、落とし込まれる平衡位置を設ける必要がある。このような平衡位置を含む装着構造がどのような機構に基いているのか完全には解明されていない。
義歯装置10は、自立歯1(R)に形成された柱歯Kと、自立歯2(R)に形成された柱歯Kとの間に配置されている。欠損歯は、2本(R,R)であり、代わりに2本の人工歯16が用いられている。本実施の形態の特徴はつぎの点にある。
(1)義歯装置10の嵌合体11が2つともC字体である。この例では、柱歯Kとされる自立歯2(R)と、隣の自立歯3(R)との間がほとんどないことが1つの特徴である。もう1つの特徴は、柱歯Kとされる自立歯1(R)が大臼歯であり、豊隆部が大きく膨出していることである。嵌合体11をC字体とすることで、義歯装置10を小型化でき、嵩張らず口腔内での違和感をほとんど無くすことが可能となる。
(2)義歯装置10の人工歯16の底部および根元部に床22を配置している。この床22は人工歯16の義歯装置内での固定を補強するための樹脂であり、顎堤粘膜に密着する義歯床とは異なる。義歯床は義歯装置の人工歯16を平面的に見て、人工歯16から張り出して顎堤粘膜に密着して咬合力等を負担するが、義歯装置を嵩張らせてしまい、装着したときの口腔内での違和感を大きくする。このため本実施の形態では義歯床は除いて、人工歯16の固定を補強する床22のみを配置している。床22の底部には、顎堤の頂部(山嶺)に適合するように凹状溝が形成されているが、顎堤の山裾まで張り出していない。
(3)これまで説明してきたように、柱歯K,Kに対して削合はされていない。この点については、実施の形態3などでさらに詳しく説明する。
(4)嵌合体11は、柱歯K,Kの根元側に嵌合するので、柱歯の歯根に大きなモーメントが生じないので、耐久性を保持して、かつ装着感も快適である。この点についても、実施の形態3以降で詳しく説明する。
図2(a)は、図1の義歯装置の装着構造50から義歯装置10を外したあとの歯牙を示す図である。柱歯K,Kに、柱歯被覆体31が固着されている。この柱歯被覆体31は、部分的に自立歯1(R)または2(R)に設けられ、かつ、どちらの柱歯被覆体31も自立歯1,2の根元側において、アンダーカットuが形成されている。すなわち、柱歯被覆体31の根元側ほど自立歯1または2の歯軸中心に近付くような傾きが形成されている。
図2(b)〜(d)は、柱歯Kに注目して、そのアンダーカットuを説明する図である。図2(b)、(c)は斜視図であり、図2(d)は断面図である。柱歯被覆体31は、その長手方向が自立歯1を周回する方向であり、幅方向は、自立歯1の頂部側から根元側にかけての方向である。その柱歯被覆体31の幅方向において、根元側のアンダーカットuを形成する幅のほうが、頂部側の部分の幅よりも大きいことが分かる。もともと大臼歯である自立歯1(R)は、豊隆部は存在するが、図2(a)〜(d)に示すように、柱歯被覆体31によって人工的にアンダーカットを形成することで、より安定的で強固な維持力等が発現されるように、嵌合体11と柱歯Kとによる嵌合構造を得ることができる。この結果、嵌合体11をC字体と小型化することができ、口腔内での違和感が小さい装着感に優れた義歯装置の装着構造を形成することができる。
図3(a)は、自立歯の頂部側から見た義歯装置10の斜視図である。義歯装置10は、上顎の欠損した右5番(R)および右6番(R)を補綴するために、対応する位置に配置された2本の人工歯16を有し、柱歯Kに嵌合するC字体の嵌合体11が両端に配置されている。床22は、人工歯16の固定のために人工歯16の下部に配置されている。この床22は、上記のように、平面的に見て人工歯16から大きくはみ出す部分はない。このため、義歯装置10は口腔内で嵩張らず、良好な装着感を得ることができる。
嵌合体11を構成するC字体では、柱歯Kに接触する面は、頂部側に接触する上側接触面sと、根元側に接触する下側接触面rとで形成され、屈曲部pが両面に境界になっている。上側接触面sは柱歯の側面に沿うように形成されているが、下側接触面rは、柱歯被覆体31によって形成されたアンダーカットuに適合するように下方ほど柱歯Kの中心軸に近づくように延び出している。このため、上側接触面sと下側接触面rとの間に、C字体の長手方向に沿うように屈曲部pが延在している。このような接触面の構造は、柱歯KおよびKの両方でアンダーカットuが柱歯被覆体31によって形成されているので、義歯装置10の両端の嵌合体11,11において形成されている。
図3(b)は義歯装置10の床22が接する顎堤側(裏面側)から見た斜視図である。上記のように、床22の底部22bには、顎堤の頂部(山嶺)に適合するように凹状溝が形成されているが、顎堤の山裾まで張り出していない。また、底部22b側から見ると、その底面22bを通して金属製の連結部25が透けて見える。
図3(c)は、嵌合体11の横断面図であり、上側接触面sと下側接触面rと、その境界の屈曲部pを示す。屈曲部pは、はっきりした線状でなく、湾曲した帯状であってもよい。
図4は、図3(b)で透けて見えていた連結部25および嵌合体11を示す図である。金属製の連結部25は嵌合体11とは一体鋳造された金属の一体物であり、この金属製の一体物であることによって適度な弾性および十分大きな剛性を兼ね備えることが可能になる。金属であるため断面を大きくしないでも十分な強度および剛性を有する。すなわち弾性変形を大きくするには、断面を小さくして細長くすればよいが、それだけでは食物の咀嚼における大きな咬合圧に耐えることはできない。また断面を太くして剛性だけ大きくしても嵌合すること自体が不可能になる。弾性と剛性との調和が重要であると思われる。上記の金属の一体物を用いることで、口腔内で嵩張らない程度の断面(断面の平均径)を用いながら、嵌合にとって適切な弾性と剛性とを得ることができる。
なお、連結部25の断面は逆三角形として、底側の頂点に相当する箇所(稜線)が顎堤粘膜に緩く接触するようにするのがよい。これによって顎堤粘膜の形状に応じて歯科医院において、連結部25に樹脂の床22を補充して患者の口腔状態に適した形状に仕上げることができる。
また、樹脂は、本来、大きな弾性変形が可能であり、床22は、この連結部25/嵌合体11の金属の一体物における弾性変形に余裕をもって追随することができる。
図4において、連結部25は断面が扁平(長楕円)状であり、嵌合体11と連結部25とからなる金属部材が一体鋳造されている。この一体鋳造された金属部材によって十分な弾性力と剛性とを発現することができ、柱歯への装着の際に「パチッ」もしくは「カチン」という感触を得ることができる。この感触は、義歯装置10の装着において、溜まった弾性エネルギーが部分的または大部分、解放される感触といってよい。すなわち、嵌合の際に、力学的に弾性エネルギー(ポテンシャルエネルギー)が高い状態を経由してポテンシャルエネルギーが低い安定した平衡位置に到達して時点で、溜まった弾性エネルギーが部分的または大部分、解放される感触といってよい。平衡位置において、柱歯Kに嵌合するのに必要な低いレベルの弾性変形もしくは弾性力は残って維持されている。この状態では、少々の咬合圧では変形しない十分大きな剛性が重要となる。一体化された連結部25および嵌合体11によって、適度な弾性と十分大きな剛性とを兼ね備えることができる。剛性には、C字体のアームなどの平均断面、連結部25の断面などが寄与する。嵌合の際の弾性変形は、C字体11の開き、連結部25のしなり、など一体金属物全体全体で負担される。ただし、現状、本実施の形態のように、歯牙に負担が少なく良好に嵌合する部分義歯の装着構造は得られているが、その動力学的な機構の解明には至っていない。これまでの説明はあくまで推測であり、以後の説明においても同様である。
図4に示す金属部材で注目すべき、もう1つのポイントは、断面が扁平状の連結部25から直交するように(歯軸に並行する方向に)、細径の棒状部18が突き出ていることである。この棒状部18の位置は、架工歯16が配置される位置である。
図5は、柱歯Kに近いほうの人工歯16を棒状部18に係止させ、人工歯16を連結部25に固定するために床22で固めた状態を示す図である。人工歯16が棒状部18に係止する部分についてはとくに限定しない。棒状部18が突き刺ささる孔などを設けてもよいし、また人工歯16の配置の修正等が可能なように、人工歯16の底部に幅のある溝状の部分を設けてもよい。人工歯16が棒状部18に係止した状態を安定に保つように、床22で固める。床22は、棒状部18と人工歯16との間の隙間、連結部25と人工歯との間のスペース、を埋めて、さらに人工歯16の側面根元部やC字体の嵌合体11との隙間を埋めるようにする。
床22は、係止状態を安定に固定し、図3(b)に示す凹状の底部22bによって顎堤頂部への接触をマイルドにすることができる。床22は、上記したように、平面的に見て架工歯から大きく張り出して顎堤粘膜に密着するようなものではない。このため、義歯装置10は小型化され違和感を大幅に減らすことができる。
上記の義歯装置10は、セメント、接着樹脂等で柱歯K、Kに固定することでブリッジとして用いてもよいし、固着することなく脱着自由にして部分義歯として用いてもよい。本実施の形態における義歯装置10は、これまでにない新しい概念の歯科補綴装置である。いずれの用い方をしても、自立歯への削合はほとんど無く、またはまったく無く、柱歯Kを形成することができる。さらに、柱歯被覆体31によるアンダーカットuと、嵌合体11/連結部25の一体金属物による弾性と、の協働による安定して堅固な維持作用等の発現により、義歯床等を不要にすることができるので小型化が可能になり、快適な装着感を得ることができる。
次に製造方法について図6により説明する。まず、義歯装置10の設計において、柱歯となる自立歯等を設定する。次いで印象採得および咬合採得を行う。次いで柱歯被覆体31を製造する。その製造の工程では、鋳造用の鋳型を作製し、金属を鋳込んで柱歯被覆体の部材を製造する。柱歯被覆体31の材料は、製造のし易さ、耐久性などから大抵の場合、金属がよく、その金属は通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金、ジルコニア等を用いることができる。中でも白金加金が最も望ましい。模型上の自立歯の嵌合体11が当たる部分にその部材を固定して、柱歯被覆体の原形を組み立てる。当然、図2(a)〜(d)に示すアンダーカットuが実現する原型とする。
柱歯被覆体31を形成するとき、同じ機会に義歯装置10、とくに嵌合体11を作製する。すなわち義歯装置10に設けるC字体の嵌合体11を、同様に鋳型を作り鋳造により作製する。柱歯被覆体の模型(雄型)に嵌合するように嵌合体の雄型を配置して、これに基づく鋳型により作製するので、柱歯被覆体31の作製と同じ機会に嵌合体11を作製することができる。嵌合体11と義歯装置10の連結部25とは、一体鋳造物としてもよいし、別々に鋳造した後で金属ロウ付け、レーザー溶接などで連結することができる。人工歯16も連結部25の棒状部18に取り付け床22によって固定する。これによって患者に数週間も待たせることなく、短期間で、柱歯K、義歯装置10およびその構造50が完成する。
すなわち柱歯被覆体31を患者の自立歯1に固着して柱歯Kを作製し、その柱歯Kに、同じ機会に作製した義歯装置10を装着して固定して、装着構造50を完成することができる。迅速な義歯装置の装着構造50の完成によって患者は数週間も待たされることなく、数日で食物を食べる喜びを持つことができる。
本発明において、自立歯1,2の頂部1t,2tは、嵌合体11の上端11tより上(根元と反対側)に位置して露出している。このため、上記の製造方法の説明では触れていないが、柱歯Kの咬合調整が非常に容易、かつ簡単になる。すなわち、従来のコーヌス・テレスコープ部分義歯のように、内冠および外冠に覆われた後の外冠に咬合調整すること、または従来のブリッジのように支台歯に冠をかぶせた後の冠に咬合調整すること、に比べれば、非常に簡単になる。柱歯Kとなる自立歯1,2の頂部1t,2tが、露出されたままだからである。このため、咬合調整を行う機会が多くあり、かつ自立歯1,2における既に咬合調整済みの頂面をそのまま用いてもよい、からである。
(実施の形態2)
図7(a)、(b)は本発明の実施の形態2における、上顎への義歯装置の装着構造50を示す斜視図である。(a)は舌側から見た図であり、(b)は唇側(前側正面)から見た図である。この義歯装置10およびその装着構造50も、実施の形態1と同様に、柱歯Kに嵌合して固定すればブリッジであり、脱着自由に嵌合すれば部分義歯であり、また、新しい概念の歯科補綴装置である。
欠損した歯牙は左右1番(R,L)の2本であり、義歯装置10の人工歯16によって補綴される。本実施の形態では、嵌合体11は、少し注釈が必要である。実施の形態1では、1つの柱歯Kに嵌合する嵌合体11がC字体であり、2本のアームがC字体の形状をなしていた。しかし、本実施の形態では、マクロ的に見て2本のアームは大きく開いたC字体を形成している。本発明において、閉じていない2本のアームから形成される嵌合体11は、すべてC字体とみることとする。これによって、本実施の形態における嵌合体11は、変形した変形C字体であるとする。その上で、アームの1本に着目すると、C字体が複合した複合C字アームを呈している。連続した自立歯を柱歯にする場合、複合C字アームの形状が現れる。すなわち、両端の柱歯K,Kは、ともに連続する自立歯1,2および3,4に形成されている。後側(舌側)から見ると、複合C字アームの嵌合体11および床22が明瞭に見えるが、前側正面からは人工歯16と歯肉色の床22のみが見える。銀白色の嵌合体11は、審美性という点から正面から見えないほうが好ましい。
図8は、図7における義歯装置10を外して柱歯Kおよび柱歯被覆体31を見えるようにした図である。柱歯Kは、連続する2本の自立歯1(R),2(R)に、柱歯被覆体31を固定し、また柱歯Kは自立歯3(L),4(L)に柱歯被覆体31を固定することにより、形成されている。連続する2本の自立歯を柱歯とするため、柱歯被覆体31は両方とも、マクロ的に見て複合C字体である。しかし、それぞれの柱歯K、Kにおいてアンダーカットuを形成するために、その表面形状は、上側では緩く傾斜したテラス状であるが、それより根元側では、その緩く傾斜したテラスから宙に飛び出してしまうようなオーバーハングの崖、すなわちアンダーカットu、になっている。図9は、そのような柱歯被覆体31におけるアンダーカットuを少し誇張した図である。
図10は、図7における義歯装置10を示す図である。(a)は前側正面から見た図であり、(b)は嵌合体11を構成する1本のアームの横断面図であり、(c)は舌側(後側)から見た図である。(a)において、嵌合体11は、2本のアームで構成されるので、上述の定義に基づき、変形C字体と呼ぶ。嵌合体11を構成するアームが柱歯Kに接触する面において、柱歯被覆体31のアンダーカットuに接触する下側接触面rは、上側接触面sから屈曲部pを経て、下方に向かうほど前に(柱歯の芯側に)延び出すような傾斜面となっている。この嵌合体11のアームの接触面における、下側接触面r、上側接触面s、および屈曲部pは、図10(a)および(b)に明瞭にあらわれている。このように、嵌合体11の接触面が、上側接触面sと下側接触面rとで構成されることで、アンダーカットuに下側接触面rが接して係止されるので、柱歯Kへの嵌合が、堅固な安定したものになる。
上記したように、嵌合体11と連結部25とが金属製の一体物であることも、嵌合に適切な弾性および剛性を付与する点で寄与している。本実施の形態の場合、前歯2本が対象になるので、図10(c)に示すように、樹脂補強22の裏面22bは、人工歯16の歯軸に交差するような凹面というよりは、人工歯16の表面(側面)に沿うような凹面となる。この床22の裏面22bから透けて見える連結部25は、嵌合体11の両アームと一体鋳造されたものである。
本実施の形態における義歯装置10およびその装着構造50における重要なポイントは、実施の形態1のポイント(1)〜(4)と共通するので説明を省略する。製造方法においても、実施の形態における図6に示した製造プロセスと変わるところはない。咬合調整についても、実施の形態1と共通する。
(実施の形態3)
本実施の形態では、義歯装置10はブリッジであり、柱歯Kは支台歯と、柱歯被覆体31は支台歯被覆体と、また人工歯16は架工歯もしくはポンティックと、呼ぶ。義歯装置の装着構造50についても、ブリッジ構造と呼ぶこととする。
図11は本発明の実施の形態3における石膏模型Mにおけるブリッジ構造50を示し、(a)は頬側Cから見上げた、(b)は舌側Tから見下ろした、斜視図である。ブリッジ以外の部分は健常歯があるが省略している。2つの支台歯K,Kの間に架工歯(ポンティック)16が2本保持されている。支台歯K,Kとなる自立歯1,2は生活歯であり健常状態にある。ブリッジ10における支台装置は嵌合体であり、本実施の形態では嵌合体11は指輪体である。指輪体11は、自立歯1,2をもとに形成された支台歯K,Kの支台歯被覆体31に接して嵌め合わされている。架工歯16は、頬側(正面側)から見える部分は、図1(a)に示すように、樹脂もしくはセラミックスの白い人工歯で形成されていて審美性が損なわれないようにしている。この架工歯16を保持する連結部25は金属製であり、架工歯16の舌側(裏側)全体を覆っていて、架工歯の頂部16tも、この連結部25とみることができる金属部材16g(25)が覆っている。このため、咬合調整は、連結部25から延長する金属部材16gに対して施されている。咬合調整は、複雑で微妙な凹凸を形成するので、セラミックス等に対して咬合調整するよりも金属部材16gに対して行うほうが容易である。また、審美性を優先する場合には、咬合面に歯牙と同色のセラミックス等を使用することになる。
図11(a)、(b)において重要なことは次の点にある。
<1>:支台歯K,Kに含まれる自立歯1,2は削合されず、自立歯をそのまま支台歯にしている。
<2>:架工歯(ポンティック)16にかかる咬合圧は支台歯K,Kで負担されるが、その咬合圧は、支台歯K,Kの根元側部分に歯軸方向にかかり、自立歯1,2の頂部にかかることはない。このため、頂部にかかる咬合圧の水平方向(横方向)の成分によって倒壊する向きの大きなモーメントが歯根に発生することはない。すなわち、図11に示すように、架工歯16にかかる咬合圧は、連結部25→指輪体11→支台歯被覆体31→自立歯1,2の根元側部分、の経路で自立歯に負荷を及ぼす。負荷は自立歯1,2の根元側部分にかかるので、テコの原理で拡大された大きなモーメントが歯根にかかることがない。負荷は歯軸方向に沿うので、むしろ自立歯が直立姿勢を保持するのを助ける作用を及ぼす。
<3>:支台歯K,Kの自立歯1,2の頂部1t,2tは、指輪体11の上端11tよりも高い位置にある。ここで、高い位置とは、歯根から遠ざかるほど、より高い位置をいう。自立歯1,2の頂部1t,2tが指輪体11の上端11tよりも高い位置にあり、完全に露出しているので、噛み合わせ面としては、自立歯1,2の噛み合わせ面1t,2tをそのまま用いることができる。この結果、噛み合わせ面を簡単な咬合調整をするぐらいで形成することができる。
図12は、本実施の形態における装着する前のブリッジ10を示す斜視図である。嵌合体11には指輪体を用いている。支台装置は、ブリッジの嵌合体である指輪体11と、患者側の自立歯から形成される支台歯K,Kとで形成される。嵌合体11には、図12に示すように指輪体のような完全に閉じた筒状がよく用いられるが、実施の形態1,2などのように、部分的にあいた部分筒状体(断面がC字体の部分筒状体など)を用いる場合も多用される。図12に示すブリッジの特徴は次の点にある。
<4>:指輪体11は、架工歯16の根元側の部分で連結されている。すなわち架工歯16を裏側で保持する金属部材16g(25)と指輪体11は一体化されるように連結している。金属部材16gは、金属製の連結部25と一体になっているので、結局、嵌合体11と金属部材16gと連結部25とは、金属一体物である。
指輪体11と金属部材16gとの連結位置は、架工歯16の根元側部分である。このように指輪体11が、架工歯16の根元側部分で連結していることで、指輪体11は、支台歯の根元側部分に固定されている支台歯被覆体31に自然に嵌合することができる。
<5>:指輪体11の径は、歯軸方向に沿って見て架工歯16の径よりも大きい。これについては、このあとさらに詳しく説明する。
図13は、ブリッジを装着する前の支台歯K,Kを示し、(a)は裏側の左サイドから見下ろした、(b)は正面左サイドから見下ろした、斜視図である。支台歯K,Kで重要なことは次の点にある。
<6>:支台歯被覆体31は2つの部材31a,31bで構成されている。2つの部材で支台歯被覆体31を形成することにより、豊隆部があってもその豊隆部を切削することなく豊隆部の根元側に支台歯被覆体31を固定できる。たとえば1つの筒体を自立歯の根元側に入れようとすると、豊隆部につかえて筒体を根元側に配置することはできない。豊隆部を切削して除かない限り、筒体は根元側まで入らない。しかし、支台歯被覆体31を2つの部材31a,31bで形成することにより、豊隆部の根元側に対して、一方側から1つの部材31aを自立歯1,2にあてがい、一方、同じ自立歯1,2の他方側から他の1つの部材31bをあてがい、自立歯1,2を周回するように固定することができる。これにより、豊隆部を削除することなく支台歯被覆体31を豊隆部の根元側に形成することができる(図15(a)と(b)とを比較参照)。支台歯K,Kにおいて、2つの部材31a,31bの端どうしがあたる位置に境目31eが形成される。図13(a)、(b)において、1つの部材31aは頬側からあてがわれ、他の部材31bは舌側からあてがわれているが、自立歯1,2に向かってゆく方角についてはとくに限定はしない。歯牙は、豊隆部をもつのが普通であり、豊隆部を削除することなく豊隆部の根元側に支台歯被覆体31を形成できることは、自立歯1,2の生命力を持続させて支台歯K,Kの耐久性を大きく向上させることができる。
<7>:本実施の形態のように、2つの部材31a,31bにより支台歯被覆体31を形成することにより、豊隆部を削除しないで根元側部分に支台歯被覆体31が設けられた支台歯K,Kを形成することができる。このため、自立歯1,2が神経を有する生活歯である場合、神経を除くことなく支台歯K,Kを形成することができる。歯牙は神経をもつ限り強い生命力を維持することができる。生活歯のまま支台歯K,Kとすることでその生命力を持続でき、従来の神経を除く場合に比べて耐久性を飛躍的に高めることができる。
また、神経を取ることもない。歯牙を削合することがなければ、痛みが生じる削合等の治療、麻酔の注射の痛みも省かれ、患者にとっては最高の喜びと安心を得ることができる。
<8>:図13(a)、(b)に示す支台歯被覆体31(31a,31b)の外面には、ミリングマシンによって頂部に向かって縮径するようなテーパーが付されている。このテーパーは、図12に示すブリッジ10の指輪体11を支台歯被覆体31に接しながら嵌め合わせるとき、円滑に嵌合するために付ける。
<9>:支台歯Kを参照して、支台歯被覆体31の2つの部材31a,31bは、セメント、固着樹脂等により自立歯2に固定される。さらに、この上に指輪体11が嵌合してこの指輪体11も支台歯被覆体31/自立歯2にセメント、固着樹脂等で固定される。このため固定に問題を生じることはない。
図14(a),(b)は、支台歯被覆体31を構成する2つの部材の一方を示す図である。どちらも鋳造金属製であり、一様な厚みでなく局所的に厚い箇所もあるが厚みは0.5mm前後を目指して作製する。
図15(a)は、本実施の形態において、支台歯被覆体31を固定する前の自立歯を示す図である。豊隆部20を明瞭に認めることができる。この豊隆部20をそのまま残して、図13(a)、(b)に示すように、2つの部材31a,31bによって支台歯被覆体31を設けることができる。比較のために、図15(b)に、本実施の形態と同じ歯牙にクラウンブリッジを用いると仮定した場合、そのクラウンブリッジを装着する直前の自立歯101,102を示す。豊隆部を除くために、多大な削合を行うことが分かる。生活歯の場合であっても、ほとんどの場合、神経を除く必要がある。なぜならば、クラウンをかぶせるために、これほど多大な削合を行うと神経が非常な痛み信号を発するからである。このため神経は除かざるをえないことがほとんどである。
図16に、本実施の形態と関係ないが一般のクラウンブリッジの従来例を示す。ブリッジ110は、支台装置である2つのクラウン111の間に架工歯116が連結部125で保持されている。クラウン110および連結部125は鋳造金属製であり、所定の厚みを要する。このため、支台歯となる自立歯101,102は、多大な削合を受け、自然のままの歯牙から歴然と細くなっている。すなわち、支台歯となる自立歯101,102は、図15(b)と同様に、大きく削合されている。
本実施の形態のブリッジ10およびブリッジ構造50は、上記のように、<1>〜<9>に挙げた特徴を有する。ここで、<1>および<5>について補足を加える。
<1>については、削合がないことによる耐久性の向上等については既に他の特徴の項目において説明した。ここで補足する点は、本実施の形態のブリッジおよびブリッジ構造の製造が簡単化されるということである。削合がなく、咬合調整もそれ以前の自立歯の噛み合わせ面をほとんど使用する。さらに、ブリッジ構造50およびブリッジ10について、その始めから装着までの過程に長年の経験や名医しか理解できない技術は必要ない。このため、通常の歯科医であれば容易に製造することができる。
<5>については、自立歯に削合を加えず、さらに支台歯被覆体31を自立歯の根元側部分に配置するので、嵌合体11である指輪体の径は、とうぜん支台歯被覆体31の径より大きくなる。この結果、2つの指輪体11の間の距離は小さくなり、2つの指輪体11の間に保持される架工歯(ポンティック)16の径は小さくなる。この結果、自分の歯である自立歯1,2を含む支台歯K,Kは太い径となり、咬合時に安定した咬合感を得ることができる。
次に製造方法について図17により説明する。まず、ブリッジ10の設計において、支台歯となる自立歯等を設定する。次いで印象採得および咬合採得を行う。次いで支台歯被覆体31を2つの部材31a,31bによって製造する。その製造の工程では、鋳造用の鋳型を作製し、金属を鋳込んで支台歯被覆体の部材2つを製造する。支台歯被覆体31の材料は、製造のし易さ、耐久性などから大抵の場合、金属がよく、その金属は通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金、ジルコニア等を用いることができる。中でも白金加金が最も望ましい。模型上の自立歯の豊隆部から根元側部分にその2つの部材が連続して周回するように固定して、支台歯被覆体の原形を組み立てる。次いでミリングマシンにより、頂部側へと縮径するテーパーを付ける。テーパー角は0.5°以上6°以下とするのがよい。ただし、テーパー角ゼロでもよい、すなわちストレートであってもよい。ブリッジはセメント等で固定され、脱着を繰り返すことがないからである。支台歯被覆体31a,31bの外面に付けるテーパーは、鋳型の雄型の段階でいちどミリングマシンで付けておき、さらに鋳造された金属部材に対して、再度、ミリングマシンで仕上げのテーパーを形成するのがよい。これにより、高い寸歩精度を確保することができる。
ただし、ミリングマシンで先細りのテーパーを付けない場合もある。それは、実施の形態1、2に示したように、柱歯被覆体31によりアンダーカットuを形成する場合である。ブリッジ構造50の支台歯被覆体31によって支台歯Kにアンダーカットを形成する場合は少なくない。このアンダーカットuを支台歯Kに形成する場合は、ミリングマシンでテーパーを付けることはない。図17において、ミリングマシンでテーパーを形成する記述に括弧を付しているのは、このアンダーカットuを付ける場合は適用しないことを示すためである。
支台歯被覆体31a,31bを形成するとき、同じ機会にブリッジ10を作製する。すなわちブリッジ10の設ける指輪体等の嵌合体11を、同様に鋳型を作り鋳造により作製する。支台歯被覆体の模型(雄型)に嵌合するように嵌合体の雄型を配置して、これに基づく鋳型により作製するので、支台歯被覆体31a,31bの作製と同じ機会に嵌合体11を作製することができる。嵌合体11とブリッジ10の連結部25とは、金属ロウ付け、レーザー溶接などで連結することができる。架工歯16も連結部25に固定する。これによって患者に長期間待たせることなく、短期間で、支台歯K、ブリッジ10およびその構造50が完成する。
すなわち支台歯被覆体31a,31bを患者の自立歯1に固着して支台歯Kを作製し、その支台歯Kに、同じ機会に作製したブリッジ10を装着して固定して、ブリッジ構造50を完成することができる。迅速なブリッジ構造50の完成によって患者は長期間待たされることなく、数日で食物を食べる喜びを持つことができる。
図18は、実施の形態3のブリッジ構造の別の製作工程を示すフローチャートである。ブリッジ10の設計において、支台歯となる自立歯等を設定するのは、図17の工程と同じである。次いで印象採得その1を行う。次いで支台歯被覆体31を2つの部材31a,31bによって製造する。その製造の工程では、鋳造用の鋳型を作製し、金属を鋳込んで支台歯被覆体の部材2つを製造する。支台歯被覆体31の材料は、製造のし易さ、耐久性などから大抵の場合、金属がよく、その金属は通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金等を用いることができる。中でも白金加金が最も望ましい。模型上の自立歯の豊隆部から根元側部分にその2つの部材が連続して周回するように固定して、支台歯被覆体の原形を組み立てる。次いでミリングマシンにより、頂部側へと縮径するテーパーを付ける。テーパー角は0.5°以上6°以下とするのがよい。ただし、テーパー角ゼロでもよい、すなわちストレートであってもよい。ブリッジはセメント等で固定され、脱着を繰り返すことがないからである。上記のようにテーパー角を形成するのは、製造時につぎに説明する嵌合体を円滑に嵌め合わせることができるようにするためである。模型上でのテーパー形成を終了した後、患者の自立歯に2つの部材31a,31bからなる支台歯被覆体31を固定して支台歯K,Kを完成させる。ここで、ミリングマシンでテーパーを形成する記述に括弧が付されているのは、図17と同様の理由に基づく。
次いで、指輪体等の嵌合体11を含むブリッジを形成するために、印象採得その2を行う。このときの印象には、支台歯K,Kの情報(外形など)が含まれている。この支台歯K,Kの外形に適合させて嵌合体11となる指輪体などの鋳型を作製し、金属を鋳込んで指輪体11を作製する。一方、架工歯16を取り付ける連結部25を主体とするブリッジについても鋳型を作製して金属を鋳込む。この段階のブリッジ10は連結部25そのものといってもよいので、ブリッジ(連結部)などと記す。ブリッジ10(連結部25)と指輪体11などの嵌合体とは金属ロウ付けなどで一体化する。架工歯16の部分が長い場合、このように嵌合体とブリッジ10(連結部25)とを別々に鋳込んで後でロウ付けすることで一体化する。このような方法と並んで、より直接的な方法を用いてもよい。すなわち最初から、ブリッジ10(連結部25)と嵌合体11とを一体化した鋳型を作製して、一体化した嵌合体付きブリッジ10を製造してもよい。連結部25および嵌合体である指輪体11の材料についても、製造のし易さ、耐久性などから大抵の場合、金属がよく、その金属は通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金等を用いることができる。中でも白金加金が望ましい。ロウ付けの材料は、通常、歯科技工所において用いられる歯科用金属のロウ付け材料を用いるのがよい。また、レーザー溶接によって一体化してもよい。
上記のいずれかの方法で製造された一体化した(嵌合体+ブリッジ)の連結部25に架工歯16を配置して固定する。また、ブリッジ10全体について微調整をして嵌合体11の配置(傾きなど)を最適化した後、支台歯K,Kに嵌合体11を嵌め合わせてセメント等で固定する。これによって本実施の形態における、ブリッジを含むブリッジ構造が完成する。本実施の形態における連結部25と嵌合体11との金属一体物により、実施の形態1において説明した、弾性と剛性との調和が得られて、堅固で安定した嵌合もしくは装着構造が得られることは、言うまでもない。実施の形態4以降についても、嵌合体11と連結部25との金属一体物による作用は同じである。
(実施の形態4)
本実施の形態も、実施の形態3と同様にブリッジを対象にするので、実施の形態3の冒頭における用語の定義がそのまま適用される。
図19は、本発明の実施の形態4の石膏模型Mにおける上顎のブリッジ構造50を示す図である。このブリッジ10は上顎全体の歯牙を対象にしており、総ブリッジである。このブリッジ構造50における支台歯Kは自立歯1(L:左6番の大臼歯)に形成され、また支台歯Kは自立歯2(R:右7番の大臼歯)に形成されている。すなわちこれら自立歯1(L)、2(R)に支台歯被覆体31が配置され、その支台歯被覆体31に指輪体11が嵌合している。
本実施の形態のブリッジ構造50におけるブリッジ10では、上記の嵌合体11の他に、ブリッジ10内の途中にC字体11を2つ持っている。これらC字体11は、ブリッジ10の連結部25(16g)の中に含まれるように、連結部25を構成するように連続して形成されている。このように義歯装置の中、とくに連結部25の中に含まれるように配置されるC字体は、連結部25そのものがC字状の形態をとる場合もあるし、連結部25にC字状の凹部を形成しておいてその凹部に金属製の別体のC字体を接合して固定する場合もあり、嵌合体に関して本質的な差はない。
支台歯Kは自立歯3(L;左1番の前歯)に形成され、また支台歯Kは自立歯4(R:右3番の犬歯)に形成されている。C字体11が嵌合する自立歯3,4は、自立歯に部分周する支台歯被覆体31で舌側を主体に被覆されている。C字体11は支台歯K,Kに舌側からあてがわれるように嵌合するとき、指輪体等の嵌合体がブリッジに含まれるので、まず嵌合する順序を考慮する必要がある。通常、C字体を自立歯に横方向からあてがっておいて、指輪体等の嵌合体を縦方向に移動させて自立歯に嵌合させるのがよい。この場合の支台歯被覆体31は横方向から支点の支持点になるようにあてがわれるので、外面に形成されるテーパーは、0°に近いほうがよい。
ブリッジ10の中におけるC字体11と連結部25との関係をより詳しく説明すると次のとおりである。上述のように、支台歯K,Kでは、C字体11は、その金属製のC字状の部分がブリッジ10の連結部25の中に含まれるように、連結部25の延長部分として形成されている。
図19に示すブリッジ構造50は、上顎に総ブリッジ10を装着した構造である。総ブリッジ10の指輪体11を支台歯K,Kに嵌め合わせるとき、その時にはC字体の嵌合体11を既に支台歯K,Kに嵌め合わせておくように設計するのがよい。嵌合部(指輪体)11を、支台歯K,Kに嵌め合わせるときのブリッジの移動の方向は、上記のように、歯軸方向(縦方向)もしくはそれに近い方向である。嵌め合わせるとき、支台歯K,KおよびK,K/支台歯被覆体31には、セメント、接着樹脂等を塗布しておき、嵌合直後に余分のセメント、接着樹脂等を除いて、滑らかな外形を整える。ブリッジ10は、装着状態の永続性を保たせるため半永久的なセメント、接着樹脂を用いてもよいし、着脱を短期間で繰り返すために暫定的な固着剤やテンポラリーセメントを用いてもよい。すなわちブリッジ10の使用の仕方は、部分義歯のように日々脱着するようにしてもよいし、一度装着したら半永久的にそのまま使用するようにしてもよい。
図20は、図19に示すブリッジ構造50を形成する前の、支台歯K,KおよびK,Kを示す斜視図である。図20(a)はやや舌側(後側)から見下ろした図であり、図20(b)は頬側(前側)から見た図である。指輪体11が嵌合する支台歯K,Kでは、自立歯1(L),2(R)が2つの部材31a,31bからなる支台歯被覆体31によって全周を被覆され、その2つの部材31a,31bが当接することで形成される境目31eが2箇所、見て取れる。自立歯1,2の頂部1t,2tに形成されている咬合面は、ブリッジ形成前のものがそのまま残されている。
C字体の嵌合体11が嵌合する自立歯3(L),4(R)では、舌側(裏側)のみが支台歯被覆体31によって覆われ、頬側(前側)は自立歯の部分が露出している。この場合、支台歯被覆体31は1つの部材でもよいし2つの部材でもよい。支台歯被覆体31が部分周であるのは、たとえば自立歯が前歯であって、舌側(裏側)に限定すれば豊隆部といえるものがなく、自立歯3,4の根元側部分に容易に嵌合するC字体の嵌合体11を嵌め合わせることができるからである。その場合には金属光沢を隠すために支台歯被覆体の唇側(前側)に白色のセラミックスコーティング等を施すのがよい。
図21は、図20に示すブリッジ構造におけるブリッジ10を示す図である。支台歯K,Kに対応する箇所には、指輪体11が配置されている。また、支台歯K,Kに対応する箇所には、C字体の嵌合体11となるC字状の金属部材が連結部25の一部をなすように配置されている。連結部25には架工歯16が固定されている。
(実施の形態5)
図22は、本発明の実施の形態5における、上顎のブリッジ構造50を示す図である。ブリッジ10は、自立歯1(R)に形成された支台歯Kと、自立歯2(R)に形成された支台歯Kとの間に架けられている。欠損歯は、2本(R,R)であり、代わりに2本の架工歯16が用いられている。図示している部分以外の歯牙は省略されている。本実施の形態の特徴はつぎの点にある。
(1)ブリッジ10の嵌合体が2つともC字体11である。支台歯Kとされる自立歯2(R)と、隣の自立歯3(R)との間がほとんどないことが一つの理由である。もう一つの理由は、支台歯Kとされる自立歯1(R)が大臼歯であり、豊隆部が大きく膨出しており、指輪体の嵌合体とするとブリッジが大型化して患者の口腔内で嵩張ってしまうことがあげられる。支台歯Kに対してもC字体の嵌合体11を嵌合させることで、ブリッジ10を小型化でき、違和感をほとんど無くすことが可能となる。
(2)ブリッジ10の架工歯16の底部および根元部に床22を配置している。この床22は架工歯16の固定を補強するための樹脂であるが、この点については、架工歯16の固定構造の説明において、このあと詳しく説明する。
自立歯1(R)は全周被覆する支台歯被覆体31で被覆されていて、これにC字体11が嵌合している。ブリッジ10は口腔内で固定されて長い間、同じ状態を保持するため、歯列の隅など食物カス等が溜まりやすい箇所は支台歯被覆体31で保護することで虫歯になるおそれを無くすことができる。このため、C字体11が嵌合する支台歯Kにおいて自立歯1(R)を全周被覆する支台歯被覆体31を用いることがある。すなわち審美性を損なうおそれがない臼歯などにおいて、虫歯予防が重要な場合、C字体11が嵌合する場合でも全周被覆することがある。全周被覆する場合、当然、2つの部材からなる支台歯被覆体が用いられる。
図23は、図22におけるブリッジ10を示す図である。上記(1)で述べたように、ブリッジ10の両端の嵌合体はともにC字体11である。また、(2)で触れたように、床22が架工歯16の底部、根元側側面などに配置されている。この床22は、補助的に架工歯16を安定に固定する作用を担っている。この点について図25以降で詳しく説明する。
図24(a)は、図22のブリッジ構造50からブリッジ10を外したあとの支台歯等を示す図である。図24(b)は支台歯Kを、(c)は支台歯Kを、いずれも頂部側から見た図である。支台歯Kは、上記(3)のように、2つの部材31a,31bによって全周被覆されている。2つの部材31a,31bで全体の支台歯被覆体31を形成しているため、大きな豊隆部20があっても削合することなく、支台歯被覆体31で覆うことが可能である。支台歯Kは、2つの部材31a,31bによって全体において部分周する被覆体31が形成されている。部分周する場合でも、図24(c)に示すように周回する範囲が半周以上になり、大きな豊隆部20がある場合、1つの部材では豊隆部20を削合しないで被覆体31を形成することは難しい。このため、支台歯Kでは、自立歯2(R)を2つの部材31a、31bで被覆して部分周する被覆体31を形成する。
図25は、図23に示すブリッジ10の製造法を説明するための図である。両端のC字体11の間に、連結部25(の芯部)が延在している。連結部25(の芯部)は帯状であり、鋳造によって、図4において説明したC字体11と連結部25とからなる金属部材が一体鋳造されている。この金属部材で注目すべきポイントは、帯状の連結部25の芯部から直交するように(歯軸に並行する方向に)、細径の棒状部18が突き出ていることである。この棒状部18の位置は、架工歯16が配置される位置である。なお、連結部25というとき、C字体11も含めた一体鋳造物をさす場合と、C字体11を除いた連結部の芯部のみをさす場合がある。
支台歯被覆体31,31に被覆された支台歯K,Kに、C字体11を含む一体鋳造物25を配置する。C字体11は、両方とも支台歯K,Kに嵌合している。棒状部18は、架工歯16が配置される位置を示す。
図26は、支台歯Kに近いほうの架工歯16を棒状部18に係止させ、床22で架工歯16の底部、その部分の連結部25および架工歯の側面根元部を被覆した状態を示す図である。架工歯16が棒状部18に係止する部分についてはとくに限定しない。棒状部18が突き刺ささる孔などを設けてもよいし、また架工歯16の配置の修正等が可能なように、架工歯16の底部に幅のある溝状の部分を設けてもよい。架工歯16が棒状部18に係止した状態を安定に保つように、床22で固める。樹脂は、膨状部18と架工歯16との間の隙間、連結芯部17と架工歯との間のスペース、を埋めて、さらに架工歯16の側面根元部やC字体嵌合体11との隙間を埋めるようにする。
これによって、係止状態を安定に固定し、顎堤への接触をマイルドにすることができる。ただし、この樹脂は、義歯床のように、平面的に見て架工歯から大きくはみ出して顎堤粘膜に密着するようなものではない。この樹脂は、舌側から見て架工歯を保持するように根元部、隠れた部分となる(棒状部/該架工歯の底部)、延在する連結部を覆うように配置されるものである。平面的に見て、架工歯からのはみ出しはほとんどない。このため、ブリッジ10は小型化され違和感をほとんど無くすことができる。
本実施の形態のブリッジ10は、つぎのようにして、支台歯K,Kに嵌合する。
(1)支台歯KにC字体11をあてがう。自立歯1を全周する支台歯被覆体31には、頂部ほど縮径するように2°のテーパーを付けてある。この支台歯被覆体31が支点になるように、C字体11をあてがう。このあてがいの時、支台歯KにC字体11cをあてがう移動方向は、横方向でもよいし、縦方向すなわち歯軸方向に沿うようにしてもよい。このとき、他方の端のC字体11は、支台歯Kの支台歯K側の斜め上方に配置しておく。
(2)次いで、他方の端のC字体11を支台歯Kに嵌合するように上方から近づけ接触させ、カチリという感触まで落とし込む。カチリという感触があれば嵌合は完全になされている。この嵌合の形態によれば、支台歯Kを支点にして、他の端のC字体11は、縦方向に回転して支台歯Kに嵌合することになる。したがって支台歯Kに嵌合するC字体11は、縦方向に近い移動をする嵌め合わせになる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、義歯装置10は部分義歯であり、柱歯Kはしたがって鉤歯と、柱歯被覆体31は鉤歯被覆体と、呼ぶ。義歯装置の装着構造50についても、部分義歯の装着構造と呼ぶ。
図27(a)は本発明の実施の形態6における部分義歯の装着構造50を示す斜視図である。図27において、部分義歯10は、患者の上顎を模した石膏模型Mに装着されている。石膏模型Mの口腔の鉤歯に部分義歯10の維持装置が嵌め合わされている。部分義歯10は、義歯床35と、人工歯16などを備えている。義歯床35の縁に金属製連結部の端が露出している。
患者には、2本の鉤歯K,Kが形成されている。鉤歯Kは右3番(R)に、鉤歯Kは右6番(R)に形成されている。鉤歯K,Kは、患者の歯牙である自立歯1,2をもとに形成されている。その他の歯は、すべて人工歯16である。鉤歯における自立歯1,2の頂部1t,2tは、露出している。自立歯1,2の頂部1t,2tが露出していることで、咬合調整は簡単かつ容易に行うことが可能になる。
図27(b)および(c)は、それぞれ鉤歯KおよびKを示す斜視図である。2本の鉤歯K,Kは、ともに2つの部材からなる鉤歯被覆体31a,31bにより被覆されている。鉤歯被覆体31a,31bの材料は歯科用の金属材料であれば何でもよいが、金属は製造が容易であり耐久性も高いので、金属製の被覆物がよく用いられる。たとえば白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金等を用いることができる。中でも白金加金が最も望ましい。
本実施の形態において、鉤歯のもととなる自立歯1,2は、鉤歯被覆体31a,31bにより少なくとも根元部が被覆されるので(頂部も含めて全てか、または側周面のみかはあるが)、両者を合わせて鉤歯K(31)と記す場合もある。図27に示す場合、部分義歯10は2本の鉤歯K(31)を主要な維持箇所として安定に保持される。
図27(b)および(c)において注目すべき点は、鉤歯K,Kにおいて、自立歯1,2の豊隆部20がそのまま鉤歯に残っていて、豊隆部20の根元側に鉤歯被覆体31aが配置されている構造にある。このような豊隆部20/鉤歯被覆体31aの配置構造を可能にしたのは、鉤歯被覆体を2つの部材で構成したからである。この点については、図29において説明する。
部分義歯10には、指輪体の嵌合体11が設けられており、この指輪体11を鉤歯K(31)が貫通して、自立歯1,2の頂部1t,2tが露出している。指輪体11に鉤歯Kが入って貫通することで、部分義歯10の鉤歯K(31)への嵌合が実現する。
図28(a)は、図27に示した部分義歯の装着構造50における部分義歯10を示す図である。また図28(b)は、鉤歯Kに嵌合する指輪体11を含む周辺の部分拡大図である。指輪体11は、周囲を義歯床35に取り巻かれているが、義歯床35中の連結部の中心部分と連結している。指輪体11は、鉤歯Kの頂部側から歯軸方向(縦方向)に沿って、鉤歯Kの豊隆部20を経て根元部に嵌合される。したがって、指輪体11は豊隆部20に対応する位置の鉤歯Kの断面を通す大きさを持たなければならない。指輪体11が、鉤歯Kの根元側まで嵌め合わされ、義歯床35の裏面が患者の顎堤粘膜に密着することで、部分義歯10装着は、安定に維持される。
嵌合体である指輪体11の材料についても、製造のし易さ、耐久性などから大抵の場合、金属がよく、その金属は通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金等を用いることができる。中でも白金加金が望ましい。
図29(a)は、図27の部分義歯の装着構造50において、部分義歯10を外したあとの鉤歯K,Kを示す図である。鉤歯K,Kにおいて、鉤歯被覆体31a,31bは、2つの部材によって形成され、この2つの部材31a,31bが自立歯1,2を完全周している。図29(b)は、鉤歯Kにおいて頬側の部材31aを除いて、舌側の部材31bのみを配置し、固定した状態を示す図である。この図29(b)において、豊隆部20は頬側に膨出しているのが分かる。図29(c)は、鉤歯被覆体の2つの部材のうちの頬側の部材31aを示す図である。この部材31aを、端面31eを相手側の部材31bの端面31eに隙間最少になるように、当てるように配置・固定する。このとき部材31aは、自立歯1の最大豊隆部20を少し覆うように、豊隆部20の根元側を回り込む形に配置され、固定される。
2つの部材31a,31bを用いることで、豊隆部20をそのまま残して、自立歯1,2を被覆するが可能になる。2つの部材を用いないで1つの筒状の鉤歯被覆体で自立歯を被覆する場合、豊隆部を削合しなければ筒状の鉤歯被覆体は自立歯の根元側にまで到達することはできない。豊隆部が筒状の鉤歯被覆体につかえてしまうからである。このため、コーヌス・テレスコープ型部分義歯では、1つの冠付き筒状体で自立歯を覆うために、自立歯の豊隆部を大きく削合する。自立歯が神経の生きている生活歯であっても、神経を除いていた。豊隆部を削合するほど大きく削合すると痛みが強く、神経を除かざるをえないからである。しかし、神経を除いた失活歯は、耐久性が半減し、しかも削合が大きくなされている。このため、従来は、自立歯の生命力を大きく削いでいた。
本実施の形態のように、2つの部材で鉤歯被覆体31a,31bを構成することで、豊隆部20があっても、横方向からはさむように2つの部材を自立歯1に近づけて覆うことが可能になる。この結果、自立歯1,2に対する削合は無しにすることが可能になる。この結果、鉤歯Kの耐久性を飛躍的に高めることが可能になる。
また、咬合調整という観点からみると、自立歯1,2の頂部1t,2tは、鉤歯を形成する前からある噛み合わせ面であり、咬合調整をしなくてよいか、咬合調整をしたとしてもわずかの調整で良好な咬合状態を実現することが可能になる。
図30は、鉤歯K,Kにおける断面図である。残存歯である自立歯1は顎堤8において自立しており、この自立歯1の根元側部分に鉤歯被覆体31a,31bが配設され、その外面に部分義歯10の指輪体11が嵌合している。ここで重要な点は、鉤歯被覆体31a,31bの外面に頂部側に向かって縮径するようなテーパーTが付いていることである。鉤歯K,Kと、部分義歯10の指輪体11と、が形成する構造について説明する。つぎの構造がポイントとなる。鉤歯K、K等の符合は、図30だけでなく、図29等を参照するために付している。
(S1)鉤歯K、Kは、それぞれが2つの部材31a,31bによって完全周回される。このとき自立歯の豊隆部20は、そのまま残して少なくとも根元部が被覆される。
(S2)2つの部材31a,31bは、その外面に頂部側に向かって縮径するようにテーパーTが付される。所定の厚みを有する鉤歯被覆体31a,31bで被覆された結果、鉤歯K、Kは、その最大径は自立歯1の豊隆部20の位置の径ではなくなる。豊隆部20ではなく、鉤歯被覆体31a,31bが被覆する位置が最大径の位置となる。その最大径の位置が、根元側最下点になるように、図30に示すように、鉤歯被覆体31a,31bの外面に頂部側に向かって縮径するようなテーパーを付ける。テーパーの角度としては、頂部側へと縮径するように0.5°以上6°以下のテーパーが付されているのがよい。たとえば2°程度とする。
(S3)部分義歯10の嵌合体11である指輪体は、上記の鉤歯被覆体31a,31bの最下点の断面よりも小さく、鉤歯被覆体31a,31bの上面での断面よりも大きい断面をもつようにする。これによって、部分義歯10の指輪体11は、鉤歯被覆体31a,31の上面から最下点の間のいずれかの高さ位置で、鉤歯被覆体31a,31bに止まり、堅固に支持または維持されることになる。このような指輪体11等の止まりを担保するのが、上記鉤歯被覆体31a,31bの外面に設けた頂部側に向かって縮径するテーパーである。
本実施の形態における部分義歯は、次の特徴を有する。
<F1>:鉤歯K,Kに含まれる自立歯1,2は削合されず、自立歯をそのまま鉤歯のもとにしている。
<F2>:人工歯16および鉤歯K,Kにかかる咬合圧は、自立歯1,2および義歯床35で負担される。そのうち鉤歯K,Kにかかる咬合圧は、鉤歯の根元側部分に歯軸方向にかかり、自立歯1,2の頂部に横向きにかかることはない。このため、頂部1t,2tにかかる咬合圧の水平方向(横方向)の成分によって倒壊する向きの大きなモーメントが歯根に発生することはない。負荷は自立歯1,2の根元側部分に縦方向にかかるので、テコの原理で拡大された大きなモーメントが歯根にかかることがない。負荷は歯軸方向に沿うので、むしろ自立歯が直立姿勢を保持するのを助ける作用を及ぼす。
<F3>:鉤歯K,Kの自立歯1,2の頂部1t,2tは、指輪体11の上端よりも高い位置にある。ここで、高い位置とは、歯根から遠ざかるほど、より高い位置と呼ぶ。自立歯1,2の頂部1t,2tが指輪体11の上部11tよりも高い位置にあり、完全に露出しているので、噛み合わせ面としては、自立歯1,2の噛み合わせ面1t,2tをそのまま用いることができる。この結果、簡単に噛み合わせ面を形成することができる。
<F4>:指輪体11は、人工歯16の中央高さ位置よりも根元側に近い位置に配置されている。すなわち人工歯16を義歯床35の内部で保持する大連結子または補強金属25の金属部材(図示せず)と指輪体11は一体化されるように連結している。その連結位置は、人工歯16の根元側部分である。このように指輪体11が、人工歯16の根元側部分の高さ位置で連結していることで、指輪体11は、鉤歯の根元側部分に固定されている鉤歯被覆体31に自然に嵌合することができる。
<F5>:指輪体11の径は、歯軸方向に沿って平均的に見て人工歯16の径よりも大きい。指輪体11は鉤歯被覆体31a,31bに嵌合するので、鉤歯被覆体31a,31bの厚みの分だけ、人工歯よりも径が大きくなる。ただ、歯牙の位置によって歯牙の形状は大きく変動するので、あくまで概括的かつ平均的な意味でのことである。
<F6>:鉤歯被覆体31は2つの部材31a,31bで構成されている。この点は、本発明の最大の利点の一つをもたらすものであり、既に詳しく説明した。
<F7>:本実施の形態のように、2つの部材31a,31bにより鉤歯被覆体31を形成することにより、豊隆部を削除しないで鉤歯を完成させることができる。この点についても、上記<6>と合わせて既に説明した。
<F8>:図30に示す鉤歯被覆体31(31a,31b)の外面には、頂部に向かって縮径するようなテーパーが付されている。このテーパーは、部分義歯10の指輪体11を鉤歯被覆体31に接しながら円滑に嵌め合わせ、かつ係止させるために形成する。
<F9>:図29(b)および(c)を参照して、鉤歯被覆体31の2つの部材31a,31bは、セメント、固着樹脂等により自立歯1に固定される。鉤歯被覆体31を構成する2つの部材は、どちらも鋳造金属製であり、厚みは0.5mm以下である。
<F10>:鉤歯被覆物31a,31b、および筒状嵌合体11は、噛み合わせ面を除いて、幾何学的であり、微妙な形状の調整をそれほど必要としない。また、噛み合わせは、筒状嵌合体11とは無関係に、鉤歯被覆物31a,31bを作製するときに調整することができる。このため、部分義歯10およびその装着構造50は、それほど熟達した歯科上の勘やセンスは必要なく、比較的、容易に作製することができる。このため汎用性の高い構造を有する部分義歯10およびその装着構造50であるといえる。
図31は、本実施の形態における部分義歯10およびその装着構造50を作製する方法を説明するためのフローチャートである。まず、部分義歯10の設計において、鉤歯となる自立歯等を設定する。次いで印象採得および咬合採得を行う。次いで鉤歯被覆体31を2つの部材31a,31bによって製造する。その製造の工程では、鋳造用の鋳型を作製し、金属を鋳込んで鉤歯被覆体の部材2つを製造する。鉤歯被覆体31の材料は、製造のし易さ、耐久性などから大抵の場合、金属がよく、その金属は通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金、ジルコニア等を用いることができる。中でも白金加金が最も望ましい。模型上の自立歯の豊隆部から根元側部分にその2つの部材が連続して周回するように固定して、鉤歯被覆体の原形を組み立てる。次いでミリングマシンにより、頂部側へと縮径するテーパーを付ける。テーパー角は0.5°以上6°以下とするのがよい。ただし、歯肉に近い部分はテーパー角ゼロでもよい、すなわちストレートであってもよい。部分義歯の嵌合体が嵌合して嵌合状態が安定する場合があるからである。鉤歯被覆体31a,31bの外面に付けるテーパーは、鋳型の雄型の段階でいちどミリングマシンにより付けておき、さらに鋳造された金属部材に対して、再度、ミリングマシンで仕上げのテーパーを形成するのがよい。これにより、高い寸歩精度を確保することができる。
ただし、ミリングマシンで先細りのテーパーを付けない場合もある。それは、実施の形態1、2に示したように、柱歯被覆体31によりアンダーカットuを形成する場合である。部分義歯の装着構造50の鉤歯被覆体31によって鉤歯Kにアンダーカットを形成する場合は少なくない。このアンダーカットuを鉤歯Kに形成する場合は、その部分に対してミリングマシンでテーパーを付けることはない。ただし、部分義歯10においてそのアンダーカットに嵌合するC字体と対をなすもう一つのC字体が嵌合する鉤歯については歯軸に沿ってそのもう一つのC字体が嵌合するので、ミリングマシンでテーパーを付けることになる。図31において、ミリングマシンでテーパーを形成する記述に括弧を付しているのは、このアンダーカットuを付ける鉤歯には適用しないことを示すためである。
鉤歯被覆体31a,31bを形成するとき、同じ機会に部分義歯10を作製する。すなわち部分義歯10に設ける指輪体等の嵌合体11を、同様に鋳型を作り鋳造により作製する。鉤歯被覆体の模型(雄型)に嵌合するように嵌合体の雄型を配置して、これに基づく鋳型により作製するので、鉤歯被覆体31a,31bの作製と同じ機会に嵌合体11を作製することができる。嵌合体11と部分義歯10の金属製の連結部25とは、金属ロウ付け、レーザー溶接などで連結することができる。人工歯16も連結部25に所定の方法で固定しながら、当該人工歯16の底部を義歯床35に埋設する。人工歯16を連結部25に固定する方法には、人工歯16の根元に横方向に貫通孔をあけて、この貫通孔を充填しながら通り抜ける義歯床35の材料であるレジンを用いる方法などがある。この方法によれば、レジンが人工歯16を貫通するレジン紐となって、義歯床35もしくは連結部25の周縁部に人工歯16を連結する。したがって人工歯16は義歯床35に固定されると言ってもよい。
上記の製造方法などから分かるように、部分義歯10において、嵌合体11と連結部25とは接合され、一体化された金属である。このため、連結部25は、図27、28に示すようにその周縁部のみを見ると、嵌合体11と一体物の金属部材のようには見えないが、実際は接合もしくは一体鋳造された金属部材である。周縁部も含めて連結部25であることは言うまでもない。この連結部25は、ブリッジにおける連結部25と同等物であり、一般に義歯装置10における連結部と同等の金属部材ということができる。
図31に示す製造方法により、患者に数週間も待たせることなく、短期間で、鉤歯K、部分義歯10およびその構造50が完成する。
すなわち鉤歯被覆体31a,31bを患者の自立歯1に固着して鉤歯Kを作製し、その鉤歯Kに、同じ機会に作製した部分義歯10を装着して微調整しながら、装着構造50を完成することができる。迅速な部分義歯の装着構造50の完成によって患者は長期間待たされることなく、数日で食物を食べる喜びを持つことができる。
図32は、本実施の形態における部分義歯10およびその装着構造50を作製する、図31の方法とは異なる別の方法のフローチャートである。鉤歯K(31)を形成するために自立歯1を決定し、削合するかしないか、削合する場合その程度はどの程度とするかなど、全体の概要をデザインする。このあと1回目の印象採得を行って、自立歯1の型をとり、鋳型を作製する。金属製の鉤歯被覆体31a,31bの雄型には、その外面に高精度のテーパー面が形成されるように、テーパー製作用の製造装置を用いるのがよい。出来た雄型を用いて金属製の鉤歯被覆体31a,31bを作製する。金属にはたとえば白金加金を用いるのがよい。また、上記したように外面にはテーパー角0.5°以上6°以下のテーパーを付ける。
鋳造して作製した鉤歯被覆体31a,31bを、歯科用切削機械等で成形加工して自立歯1を周回(完全周回または部分周回)させる形態にしたあと、セメントなどの接着剤を用いて自立歯1に固定する。咬合面1tはすでに形成しておいてもよいし、この後、微調整してもよい。いずれにしても咬合面1tはもとからある状態を基本にして、調整はほとんどしなくてよい。この段階が、図29(a)に石膏模型で示した状態に対応する。
このあと2回目の印象採得を行う。この印象採得によって、部分義歯10およびその嵌合体である指輪体11を製作することが可能になる。金属製の連結部25も合わせて製作する。これにより、連結部25、指輪体11、人工歯16の配置を調整するための中間段階の部分義歯を作製することができる。さらに部分義歯10全体の型を作製することが可能になる。
指輪体11の側面の厚みについても、従来のクラウン等の厚みの範囲にするのがよい。当然ながら、指輪体11については、鉤歯被覆体31a,31bの外面のテーパーに適合するように内面にテーパーを付ける。そして指輪体11の高さは、隣接する人工歯16の頂部より低くするのがよい。鉤歯の自立歯1の頂部1tにおける咬合を確保するためである。指輪体の根元側下部は、義歯床35の裏面に揃うようにする。鉤歯根元部に応力をかけて、歯根の周りのモーメントを小さくするためである。
このあと、連結部25、指輪体11、人工歯16などを型内に配置した上で、義歯床35となる樹脂に置き換えて部分義歯10を作製する。
図32に示す部分義歯の装着構造の製造方法は、鉤歯が奥歯である場合でも前歯である場合でも、用いることができる。
上記の製造方法は、製造方法の中の特別の一つである。本発明の部分義歯およびその装着構造は、必ずしも上記の特別の一つの製造方法で製造したものでなくてもよい。
(実施の形態7)
図33は、本発明の実施の形態7における部分義歯の装着構造50を示す図である。この部分義歯の装着構造50は、下顎に対するものである。特徴は、鉤歯が1本だけという点にある。すなわち鉤歯K1は、自立歯1(R)を基に形成されている。患者の自立歯1は右6番のみで、そのほかは全て部分義歯10に設けられた人工歯16である。
図34は、その右6番の自立歯1をもとに形成された鉤歯K1を示す図である。鉤歯被覆体は、実施の形態1と同様に2つの部材31a,31bにより形成されている。この鉤歯Kにおいても、自立歯1の頂部1tは鉤歯被覆体31a,31bから露出していて、咬合面は鉤歯被覆体を形成するよりも前からある咬合面をそのまま用いている。鉤歯被覆体31a,31bの形態は、実施の形態1におけるものと同じである。
図35は、図33に示した部分義歯の装着構造50における部分義歯10の鉤歯Kを含む周囲の部分拡大図である。指輪体11は、義歯床35の材料に周囲を取り囲まれていて、内周は見えるが外面は義歯床35に覆われて透けて見えるだけである。
本実施の形態により、1本の自立歯1(R)があれば、その自立歯1をもとに鉤歯Kを形成して、総入れ歯に匹敵するような、残りの歯がすべて人工歯16で形成される部分義歯10を形成できる、ことが分かる。
(実施の形態8)
図36(a)は、本発明の実施の形態8における部分義歯の装着構造50を示す図である。上顎の部分義歯の装着構造50である。本実施の形態では、鉤歯は、K〜Kの4つである。このうち、鉤歯Kは、正確には本発明の柱歯ということはできない。なぜならば鉤歯Kには、鉤歯被覆体が配置されていないからである。その意味で、鉤歯Kは、本発明における通常の嵌合部ではなく、補助的な補助嵌合部を形成するということができる。
補助嵌合部の鉤歯K,は、部分義歯の装着構造50に単独である場合はなく、必ず、他の鉤歯Kなどの補助という形で存在する。図36において、補助嵌合部は、鉤歯被覆体のない自立歯1(L)そのものの鉤歯Kに、C字体の嵌合体11が嵌合することで形成されている。また、鉤歯Kには、C字体の嵌合体11が嵌合して、通常の嵌合部を形成している。
図36において、ほかの2つの鉤歯K,Kには部分義歯10の指輪体11が嵌合する。この場合、鉤歯K,Kには自立歯1を完全周する鉤歯被覆体が2つの部材で形成される。
図36(b)は、鉤歯Kの部分拡大図である。実施の形態6,7における鉤歯と同様に、自立歯1(L)に鉤歯被覆体31aが周回され、その鉤歯被覆体に接するように指輪体11が嵌合されている。
これに対して、補助嵌合部の鉤歯Kは自立歯2(L)そのものであり、鉤歯被覆体はない。補助嵌合部は、鉤歯となる自立歯2が左1番の前歯であることが重要なポイントである。前歯は歯間が詰まっているため、前歯に完全周する鉤歯被覆体を設けることは難しいし、さらに指輪体のような嵌合体を嵌合させることも難しい。このため、前歯を鉤歯とする場合、この補助嵌合部のように、自立歯そのものとし、部分義歯10の嵌合体は、C字体11として舌側から嵌合する形態をとることになる。
図37(a)は、図36の部分義歯の装着構造50から部分義歯10を外したあとの鉤歯K〜Kを示す図である。このうち補助嵌合部の鉤歯Kは、図11(b)に示すように自立歯1(L)そのものである。一方、鉤歯Kについては、図37(c)に示すように、鉤歯被覆体を構成する2つの部材31a,31bによって自立歯3(R)が部分周されている。自立歯3の右3番は、いわゆる犬歯であり、この犬歯についても、指輪体のような嵌合体を嵌合させることは難しく、本実施の形態に示すように嵌合体は、C字体11とするのがよい。それは、自立歯の歯牙が隣どうし詰まっていて完全周する鉤歯被覆体を根元側に設けることが難しく、かつ指輪体のような嵌合体をその上に重ねて嵌合させることが難しいからである。すなわち前歯や犬歯の歯牙の形態のために、C字体の嵌合体11を採用することになる。
図38は、図36の部分義歯の装着構造50における部分義歯10を示し、その部分義歯10裏側から見た図である。鉤歯K,Kに対応する嵌合体11は指輪体であり、上記のように自立歯1,4は、それぞれ左6番(L)および右7番(R)の臼歯である。また、2つのC字体の嵌合体12は、それぞれ鉤歯K、および補助嵌合部の鉤歯Kに対応している。C字体の嵌合体11は、上記のように前歯Lおよび犬歯Rに嵌合する。
C字体の嵌合体11は、舌側(裏側)から前歯や犬歯に嵌合することができる。ただし、嵌合の際の部分義歯を移動させる方向は、主嵌合部があるので、それを考慮する必要がある。このため、歯軸方向(縦方向)に移動させて嵌合する場合が多い。しかしC字体の嵌合体を先に入れ込んで指輪体の嵌合体を後から落とし込むこともあり、この場合は、C字体の嵌合体11は、横方向に移動させて鉤歯に嵌合させる経路が容易である。もちろんC字体の嵌合体11を先に縦方向に移動させて鉤歯に嵌合させてもよい。指輪体の嵌合体11は、C字体の嵌合体11を支点にして回転しながら縦方向に沿って対応する鉤歯に嵌合することになる。
指輪体とC字体との組み合わせ、これらの嵌合体についての多種多様な着脱時の移動方向、これを利用して脱着の容易な部分義歯10を製造することができる。
このようなC字体の嵌合体、および、部分周する鉤歯被覆体31a,31bもしくは被覆体のない自立歯1そのもの、は、頬側に金属光沢がある部分が見えないので、審美上の点からも好ましい。
ここに至って、本発明における最後の特徴<F11>が明確になった。
<F11>:鉤歯被覆体は自立歯を部分周するタイプとし、嵌合体をC字体とすることで、前歯や犬歯を鉤歯とする部分義歯の装着構造が可能である。この場合、このタイプ単独で、部分義歯およびその装着構造を構成することができる。さらに、嵌合体はC字体とするが、鉤歯は自立歯そのものとする補助嵌合部を形成することで、前歯、犬歯を、やはり鉤歯とすることができ、装着を安定化することができる。
(実施の形態9)
図39は、本発明の実施の形態9の義歯装置の装着構造における柱歯Kを示し、(a)は柱歯被覆体31a,31bで被覆された状態、(b)は一方の柱歯被覆体を外した状態、(c)は外した一方の柱歯被覆体31aを示す、図である。本実施の形態では、柱歯被覆体31a,31bの形態にポイントがある。図39によれば、柱歯被覆体31a,31bは残存歯1を全周するが、2つの柱歯被覆体どうしが当たる線もしくは面は、屈曲しており、一方の凸部の先が他方の凹部に食い込んでいる。これまでの実施の形態では2つの柱歯被覆体どうしが当たる線もしくは面は1本の直線であった。しかし、本実施の形態では、図39に示すように、一方の凸部の先が他方の凹部に食い込む形態をとる。
本実施の形態の柱歯被覆体31a,31bの形態の利点は、残存歯1の周りで柱歯被覆体31a,31bの位置がずれを生じる余地がなく、ピタリと決まる点にある。さらに、柱歯被覆体31a,31bの残存歯1への固定の安定度を大きく向上することができる。これは柱歯被覆体31a,31bが相互に食い込んでいるため、相互に相手の動きを封じる作用があるからと思われる。
図40は、図39の鉤歯Kに、連結部25に連結した指輪体11を嵌合した状態を示す図である。指輪体等の嵌合体11を含む部分義歯については、これまでの実施の形態の部分義歯と同様である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明によれば、削合を画期的に減らし、または削合しないことにより、柱歯(支台歯、鉤歯)への負担を軽減しながら、耐久性が高く、噛み合わせ調整を簡単にできる、小型化した義歯装置(ブリッジ、部分義歯)の装着構造等を得ることができる。とくに前歯や犬歯を鉤歯とする場合、C字体の嵌合体を用いることで、円滑な嵌合を実現することができる。また、上記の特徴を備えた、部分義歯とブリッジとを融合して両者の区別がなくなるような新たな概念の義歯装置を得ることができる。
1,2など 自立歯、1t,2tなど 自立歯の頂部(咬合面)、8 顎堤、10 義歯装置、11 義歯装置の嵌合体(C字体、複合C字体、指輪体)、11t 嵌合体の上面、16 人工歯、20 豊隆部、22 床、22b 床の底面、25 金属製の連結部、31 柱歯被覆体、31a,31b 柱歯被覆体の部材、35 義歯床、50 義歯装置の装着構造、K,K,など 柱歯(鉤歯、支台歯)、M 石膏模型、T 鉤歯被覆体外面のテーパー。C 頬側または唇側、T 舌側、u 柱歯被覆体のアンダーカット部、r 嵌合体の下側接触面、s 嵌合体の上側接触面、g 嵌合体の外面。
本発明は、義歯装置の装着構造の形成時に患者の、柱歯(鉤歯または支台歯)となる自立歯への削合をほとんどなくし、かつ使用時に自立歯への負担を減らしながら、違和感の小さい、義歯装置の装着構造、および義歯装置に関するものである。
(用語の定義):
(1)本発明の「義歯装置」は、従来の、「ブリッジ」および「部分義歯」を含むものである。従来のブリッジそのものであってもよいし、従来の部分義歯そのものであってもよい。さらに従来のブリッジおよび部分義歯の範疇に入らない、新しい概念の歯科補綴装置であってもよい。
(2)(i)説明対象が「義歯装置」の場合には、従来の部分義歯における「鉤歯」、また従来のブリッジにおける「支台歯」に対応し、これら両方を包含する語として、「柱歯」を用いることとする。「柱歯」およびそのもととなる「自立歯」は、残存歯だけでなくインプラントの人工歯牙も含むものとする。虫歯治療が既に施されていても、健常であれば、そのまま自立歯とする。もととなる自立歯は、1本の場合が多いが、連続する複数の自立歯を柱歯とする場合もある。
(ii)自立歯は柱歯に含まれる重要な構成要素であり、本発明の場合、自立歯自体は削合など無しにそのまま、またはほとんどそのまま柱歯に組み入れられるが、その自立歯に対して柱歯被覆体で被覆する処理を施して柱歯とする。
(iii)説明対象が部分義歯またはブリッジであることが明確な場合、またはこれらに限定することを意図する場合には、義歯装置ではなく、部分義歯またはブリッジの語を用いる。それに応じて鉤歯または支台歯の語を用いる。
(3)従来、欠損歯に代替する人工的な歯を示す語として、部分義歯には「人工歯」、またブリッジには「架工歯」、の語が用いられてきた。本発明における義歯装置において対応するものとして、「人工歯」の語を用いる。すなわち部分義歯の場合と共通する。
1.従来の部分義歯
従来の部分義歯は、欠損した歯の代わりをする人工歯、その人工歯を固定して顎堤に密着する義歯床、患者の残存歯(鉤歯)に着脱可能に係合されるクラスプ、そのクラスプと一体的に形成されるレスト等から構成されるのが普通である。これらレスト及びクラスプは、残存歯である鉤歯に係合して部分義歯の位置および姿勢を安定に保つ作用をする。しかし、このクラスプとレストは、鉤歯を強く拘束し、かつ横向きの力がかかったときテコの原理で鉤歯の歯根に大きなモーメントを発生させる。このため、使用者の不快感を増幅し、また鉤歯の健康性を損なうことがあった。さらに、クラスプやレスト自体に大きな応力がかかるため破損しやすく耐久性に欠けることがあった。
このような難点を除くために、レストを使用しないでC字状のクラスプを鉤歯の豊隆部の下部、すなわち鉤歯の根元部にのみ、あてがうように嵌め合わせる方式の部分義歯の提案がなされた(特許文献1,2)。鉤歯の根元部にのみ嵌合力を及ぼすことによって、鉤歯への負担は大きく軽減される。鉤歯根元にかかる応力は、鉤歯頂部にかかる応力に比べて、歯根部の周りに生じるモーメントの大きさを大幅に軽減する。クラスプによる鉤歯への拘束感は解消し、また歯根部の周りに大きなモーメントが生じないために鉤歯の耐久性を高めることができる。
鉤歯の根元部にのみ嵌合力を及ぼす手法は、金属製のクラスプを用いないいわゆるノンメタルデンチャにも適用されて、樹脂の嵌合部で鉤歯の根元部にのみ嵌合する構造が提案されている(特許文献3,4)。
上記のC字状のクラスプを用いることで、鉤歯への拘束力を軽減しかつ鉤歯に対してなるべく手を加えない流れとは別の流れとして、鉤歯の固定機能を最大限発揮させる、コーヌス・テレスコープ部分義歯の潮流もある(非特許文献1)。このコーヌス・テレスコープ部分義歯では、ほとんどの場合、鉤歯の神経を除いた上でその鉤歯に内冠という金属の被せを固定する。この内冠は、帽子のように鉤歯を歯冠部からすっぽりと歯牙全体を覆うものである。患者の鉤歯にそのような処置をした上で、部分義歯には、従来はクラスプがあった位置に、その鉤歯の内冠全体をすっぽり覆う金属製の被せ(外冠)を設ける。この外冠を内冠に被せることで、部分義歯は、口腔内に強固に固定される。このコーヌス・テレスコープ部分義歯によれば、部分義歯は安定に固定される。
ここまで従来の部分義歯について説明した。次に従来のブリッジについて説明する。
2.従来のブリッジ:
ブリッジは、1本の歯の部分的な欠損から多数歯の欠損までを補綴し、通常、支台歯に固定される歯科装置である。ブリッジの架工歯(ポンティック)にかかる咬合圧はその支台歯で負担されるため、ブリッジ構造において、支台歯および支台装置が高い耐久性を保つことができるように構成することが重要なポイントとなる。この点に関して、ピン保持インレーブリッジ(特許文献5)やインプラントに支台歯を設けて咬合力に順応して上下や左右の運動が可能なように歯科用床材を埋め込んだブリッジ構造(特許文献6)等の提案がなされている。また、参考書等においてクラウンブリッジに関する多くの歯科技術の進歩が紹介されている(たとえば非特許文献2参照)。
特許第4270578号 特許第4686541号 特許第4309938号 特開2010−201092号公報 特許公表2004−523290号 特許公開2002−238924号公報
黒田正彦「コーヌスクローネ」医歯薬出版株式会社、2007年4月15日第1版第14刷 石橋寛二ほか「クラウンブリッジ補綴学 第4版」医歯薬出版株式会社、2011年1月20日第4版第4刷
ブリッジと、部分義歯のうちのコーヌス・テレスコープ部分義歯と、の両方において、従来のものは、支台歯または鉤歯に対して、多大な削合をしていた。たとえば従来のブリッジでは、支台歯となる自立歯の頂部にクラウン(冠)をかぶせるため、自立歯を大きく削合していた。このため、削合による痛みをなくすために生活歯の場合は神経を除去して失活歯とすることが普通に行われていた。神経を除去された歯牙は、その歯牙が本来もっている生命力を大きく損なわれる。自立歯が本来もっている生命力を生かして、耐久性を保ちながら支台歯として用いることができれば、ブリッジの価値はさらに飛躍的に高まると考えられる。そのようなブリッジができれば、ヒトは健康な状態を非常な高齢にいたるまで保つことが可能となる。
またコーヌス・テレスコープ部分義歯については、内冠をかぶせるため、従来のブリッジと同様に、削合を大きくとり、かつ神経が生きている生活歯であっても神経を除去する方法が普通に行われる。これら大きな削合および神経の除去は、鉤歯の耐久性を大きく低下させるものである。
C字状のクラスプを用いる部分義歯の場合は、積極的に削合することはしないで、C字状のクラスプを自立歯の豊隆部より根元側に嵌合する。しかし、患者の患部の状況によっては、豊隆部がない自立歯にC字状クラスプを嵌合しなければならない場合がある。患者の自立歯に豊隆部がなければ安定した維持作用を得ることはできない。このような場合、自立歯に対して削合をすることなく安定した維持作用を確保する方策は知られていない。すなわちC字状のクラスプの部分義歯は、削合は積極的にしないものの、患者の歯牙の形態によっては、削合をせざるをえないか又は部分義歯の最適設計が困難になる場合があった。
その他の大きな問題として、部分義歯については、装着時の違和感が大きいという問題がある。とくに上記のコーヌス・テレスコープ部分義歯の場合、鉤歯に設けた内冠の上から外冠を被せて固定力を高めるため、テコの原理により鉤歯の歯根部には大きな荷重(モーメント)がかかり、その歯根部などに歯根破折などの損傷が生じる事例があった。さらに、鉤歯に二重の被せを被せるため、口腔内でかさばり、患者の違和感は大きいものがあった。このため、より一層、小型化および構造の簡素化をはかり、違和感をなくすことが要望されていた。また、鉤歯に二重の被せを被せるため、内冠の被せの段階からある程度の噛み合わせを考慮しながら調整し、外冠の段階で最終の噛み合わせの調整を行う必要がある。このため、噛み合わせの調整、気配りが煩雑となり、これについても多くの経験と熟達した技術が必要である。さらにコーヌス・テレスコープ部分義歯は、鉤歯が前歯である場合、隣接する歯牙の隙間が無いため大きく削合する必要があり、歯牙が細くなりすぎる等、適用することは容易ではない。
本発明は、柱歯の形成時に患者の自立歯への削合を無くすか又はほとんど削合しないで、安定した装着構造を確保し、かつ使用時に自立歯への負担を減らして快適な装着感を長期間、安定して得ることができる、義歯装着の装着構造、および義歯装置を提供することを目的とする。
本発明の義歯装置の装着構造は、人工歯および嵌合体を含む義歯装置と、該義歯装置の嵌合体が嵌め合わされる柱歯(鉤歯または支台歯)と、を備える。この義歯装置の装着構造では、柱歯は、当該柱歯のもととなる自立歯の少なくとも根元側部分に固定された柱歯被覆体を有し、該柱歯被覆体は、前記自立歯の頂部を露出させて、1つまたは2つの金属部材により部分的に、又は2つの金属部材により全周するように、自立歯を覆っており、義歯装置の嵌合体は、柱歯被覆体に接するように嵌め合わされ、かつ自立歯の頂部が該嵌合体の上端より高い位置にあり、義歯装置は金属製の連結部を有し、嵌合体と該連結部とは連結しており、義歯装置の嵌合体が、{前記連結部の端に位置するC字体(C字体)、2つのアーム間に前記連結部が介在する変形C字体(変形C字体)、および前記連結部の端に位置する指輪体(指輪体)}のいずれか一つであることを特徴とする。
上記の義歯装置が、部分義歯である場合は、患者は上記の構成の義歯装置を日常的に着脱する。一方、ブリッジである場合は、通常、半永久的に柱歯に固定されるが、堅固な固定を確保した上で期間をおいて歯科診療所で着脱するようなタイプにしてもよい。
まず、部分義歯としてみた本発明の義歯装置について説明する。上記の構成では、嵌合体は、その上面が自立歯の頂部より低く根元側になるように嵌合されるので、自ずとその柱歯の根元部に嵌合する。柱歯の頂部は、嵌合体から突き出して露出状態となる。このため、嵌合体から柱歯の頂部および頂部コーナー部に応力は、全くかからず側周面下部にのみかかるので、柱歯の歯根の周りのモーメントは、柱歯の頂部に応力がかかる構造に比べて、大きく低減される。このため、柱歯にかかる負担は小さく、高い耐久性を保つことができる。また、柱歯が完全に被せ物(外冠)で覆われるコーヌス・テレスコープ部分義歯の構造に比べて、口腔内における違和感は非常に小さくなる。
次いで、ブリッジとしてみた本発明の義歯装置について説明する。上記の義歯装置の嵌合体は、通常は2つあり(1つでもよい)、その2つの嵌合体の間に1つ以上の人工歯(ポンティック)が保持される。その人工歯の保持は、連結部によってなされる。上記の嵌合体は、この連結部に連続するように、もしくはこの連結部の一部をなすように設けられる。食物を咬合するとき、人工歯にかかる咬合圧は柱歯によって負担される。従来のクラウンブリッジでは支台歯の頂部に固定されたクラウンに、架工歯から連結部を経て咬合圧がかかるので、テコの原理により支台歯の歯根に大きなモーメントがかかり支台歯の耐久性を劣化させるケースが多くあった。
本発明では、嵌合体が自立歯の少なくとも根元側部分に、全周して又は部分的に、固着された柱歯被覆体に、接するように嵌め合されるので、人工歯/連結部を経た咬合圧が柱歯の歯根に大きなモーメントを発生させることはない。本発明の義歯装置の装着構造では、咬合圧は、柱歯の根元側部分に歯軸に沿うようにかかるだけであり、むしろ自立歯の直立姿勢を助ける。倒壊させる向きの大きな負荷がかかることはない。また、動揺のある歯牙を不動の状態に治癒することも可能である。このため、柱歯となっている自立歯は本来もっている生命力を維持することができ、耐久性を向上することができる。
上記したように、柱歯被覆体は自立歯の少なくとも根元側部分に固定されるので、嵌合体は自ずと柱歯の根元側部分にまで嵌め合わされることになる。この結果、咬合圧が柱歯の頂部にかかることはなく、咬合圧に起因するテコ原理で拡大されたモーメントが自立歯の歯根に発生することが防止される。
次に、ブリッジおよび部分義歯に共通する問題である柱歯への削合について本発明の効果を説明する。柱歯被覆体は、1つまたは2つの金属部材により部分的に、又は2つの金属部材により全周するように、前記自立歯を覆う。
<自立歯を全周する柱歯被覆体の場合>:
2つの部材で形成することで、次の作用を得ることができる。すなわち、例えば柱歯被覆体が自立歯を全周する場合、1つの筒状の部材を用いたのでは、自立歯に縦方向から嵌めるため、自立歯は大きく削る必要がある。とくに豊隆部があっては筒状の部材は根元側にまで通らないので豊隆部は完全に削合する必要がある。2つの部材を用いると豊隆部の根元側に柱歯被覆体を形成することができる。豊隆部とは、歯牙の中央付近でふくらんで膨出している部分をいう(通常、歯牙には豊隆部がある)。1つの筒体を柱歯被覆体とした場合には、豊隆部でつかえて根元側に柱歯被覆体を移動させることはできない。豊隆部を削除しないかぎり原理的に不可能である。しかし、2つの金属部材を用いて、自立歯をはさんで周回するように又は部分的に固定するので、豊隆部をそのままの状態で残したまま根元側に容易に柱歯被覆体を固定することができる。このため、応力は鉤歯の頂部にかからず根元側にかかるので、根元に大きな曲げモーメントが発生することはなく、使用中、耐久性を高く保つことができる。この場合、豊隆部を削除することがないので、作製時に耐久性を大きく劣化させる処理をすることもない。
従来、上記のように、自立歯が生活歯であっても神経を除いて失活歯としなければならなかった。しかし、上記の構成によれば、柱歯被覆体は2つの金属部材で形成することができるので、1つの柱歯被覆体が柱歯を保護するよりも、自立歯の削合を大きく抑制することができ、大抵の場合、削合なしで柱歯被覆体を形成することができる。その結果、柱歯における自立歯の耐久性を高くすることができる。また、神経が残っている生活歯は、もちろん、そのまま神経を残したまま柱歯被覆体を形成することができる。この場合、自立歯の頂部はあけたまま柱歯を形成する。すなわち柱歯被覆体は頂部を覆わない構造をとる。また神経がない失活歯の場合でも、上述のように削合はしないか、または最少限ですむので、耐久性を損なうことがない。
<自立歯を部分的に覆う場合>:
部分的に覆う場合、通常、柱歯被覆体は1つの金属部材で形成される。しかし、犬歯を自立歯とする場合など豊隆部が大きく膨出する場合があり、削合無しで柱歯を形成するのに2つの金属部材を用いたほうがよい場合も多い。
なお、柱歯被覆体である金属部材の自立歯への固定は、1つの場合でも2つの場合でも、セメント、固着樹脂などで行われる。セメント、固着樹脂等は、固定するときは流動体なので、2つの部材による自立歯の被覆を補うように用いることができる。すなわち、金属部材を少し大きめに作製しておいて、自立歯の周囲にセメント等を配着することで、金属部材と自立歯もしくは金属部材同士(2つの場合)の当接を厳密化するなどの用い方ができる。その他、微小面積に限られるがセメント自体、被覆の一部となってもよい。
柱歯となる自立歯は、自立していればどのような歯でもよく、生活歯と失活歯とを問わない。とうぜん、治療済みと治療なし、とを問わない。したがって、柱歯となる自立歯に虫歯治療の詰め物などがあってもよい。これら治療が適切に維持されていれば、それらを生かしながら自立歯として用い、その自立歯に上記のように柱歯被覆体を配設することで柱歯を形成する。この柱歯に義歯装置の嵌合体を嵌め合わせることになる。これにより、従来、柱歯として用いることができないような自立歯であっても、本発明では柱歯として活用することができる。
なお、柱歯被覆体を構成する部材の自立歯への固定は、セメント、固着樹脂等で行われる。セメント、固着樹脂等は、固定するときは流動体なので、柱歯被覆体の部材による自立歯の被覆を補うように用いることができる。その他、微小面積に限られるが固着樹脂、セメント等それ自体が、被覆の一部となってもよい。上記のセメント、固着樹脂等は、永久的に固定する接着剤、セメント等であってもよいし、適当な手段によって離脱可能な、脱着を前提とする暫定的な接着剤、セメント等であってもよい。
嵌合体は、自立歯に嵌め合わされる形状のもの、たとえば筒状の物(完全な筒、指輪、側部が開いた部分的な筒など)であれば何でもよい。嵌合体を作製する材料は、金属とするが、表面に審美性を高めるために樹脂またはセラミックスによる白色コートをしてもよい。
一方、本発明の一つの処理が必要な点として、柱歯に柱歯被覆体を設ける点があげられる。この柱歯被覆体は通常は外面をミリングマシンで削られて、嵌合体が嵌め合わせやすくされる。いわば、従来のクラウンブリッジでは自立歯を削ってクラウンを嵌め合わせる形状に整えていた。これに対して、本発明では、柱歯被覆体を用いることで、その柱歯被覆体の外面に嵌合体が嵌合しやすいように形状を整え、自立歯について削合しないか、もしくはほとんど削合しない。
この柱歯被覆体は、柱歯のカリエス(虫歯)化を防御することになる。従来のブリッジではブリッジに大きな力がかかり、やがて歯牙との密着性が失われると、カリエスが生じる例が多くみられる。本発明の義歯装置では、上述のような力が働かないためカリエスに対して防御となる。
上記の自立歯への削合をしないことは自立歯の生命力を生かすことである。この削合しないで生命力を生かすことに比べれば、鉤歯被覆体を設けるという短所は問題にならないくらい小さなことである。
本発明の義歯装置では、柱歯を構成する自立歯の頂部は露出しており、部分義歯とした場合でもブリッジとした場合でも、咬合調整は必須である。柱歯の頂部もしくは頂面が柱歯被覆体から突出して露出しているため、どちらの場合でも、非常に容易となる。すなわち、嵌合体から突き出ている柱歯の頂部に対して、嵌合体と関係なく、たとえば製作の早期の段階で、咬合調整を行うことができる。このため、咬合調整を簡単に行うことができ、従来のコーヌス・テレスコープ部分義歯のように技工所(ラボ)段階で外冠に噛合調整を施す必要がない。このため、咬合面を形成するための工程を実施する機会が増え、かつ簡単化され、従来の場合のように内冠の頂部の厚みまで考慮する必要はなくなる。ただし、歯科医院での噛合調整において、微妙な調整が必要であることは従来と同様である。その微妙な調整という点においても、本発明の場合、柱歯を構成する自立歯のみの咬合調整という限られた調整であり、あとは技工所サイドでの工程なので、歯科医院での咬合調整が容易であるという利点は確実に得られる。
さらに、柱歯の形成時は、自立歯に対して、全周する柱歯被覆体だけでなく、部分的に固着される柱歯被覆体もあるので、臼歯だけでなく歯間がほとんど無い前歯に対して舌側(裏側)の範囲を被覆することができる。たとえば、前歯の舌側の範囲に、限定的に柱歯被覆体を固着して、その部分的な柱歯被覆体に接してC字状の嵌合体を嵌合させることが可能である。このため臼歯だけでなく前歯や犬歯を鉤歯とすることが可能である。
義歯装置は金属製の連結部を有し、嵌合体と該連結部とは連結している。
これによって、金属による弾性が生じて弾性的な嵌合が実現する。嵌合体を柱歯に嵌合する時、力学的なポテンシャルの山を登って、落とし込まれる平衡位置(弾性変形が少し残るか、または殆どフリー)を設ける必要がある。このようなポテンシャルの山を通って落とし込まれる平衡位置は、嵌合体のみに着目していたのでは形成できない。義歯装置における連結部と嵌合体との一体化した金属体による適度な弾性と十分高い剛性とによって実現することができる。このような適度な弾性と十分高い剛性は、連結部と嵌合体とが一体化した一体金属によって実現することができる。
義歯装置の嵌合体が、{連結部の端に位置するC字体(C字体)、2つのアーム間に連結部が介在する変形C字体(変形C字体)、および連結部の端に位置する指輪体(指輪体)}の、いずれか一つである。
これによって、欠損歯が、前歯、犬歯、臼歯、大臼歯などのどの歯牙であっても、その患者にとって最適な義歯装置を形成することができる。すなわち柱歯となる自立歯と隣の歯との隙間が大きく、安定した固定を重視しなければならない患部については、指輪体を配した義歯装置を用い、逆に前歯など隣の歯との間隔が無い場合には、C字体や変形C字体を用いた義歯装置とすることができる。
なお、変形C字体の嵌合体は、連結部をカニの本体として、左右のアームが1本ずつあるとして、そのカニの本体の左右端から1本ずつアームが出たような嵌合体をさす。欠損歯が前歯である場合に多く用いられる。
義歯装置の嵌合体が、C字体または変形C字体である場合において、柱歯には、柱歯被覆体によって当該柱歯の根元側にアンダーカットが形成されていてもよい。
患者の歯牙の状態によっては豊隆部のない自立歯を柱歯にしなければならない場合がある。また、普通に起きるケースといってもよいが、前歯を柱歯としてその前歯の裏側(舌側)もしくは側面部など本来、豊隆部がまったくない部分を、嵌合体が接する部分としなければならない場合がある。このようなケースでは、柱歯被覆体を、自立歯である前歯の裏側もしくは側面部に部分的に固着して、その根元側にかけてアンダーカットを形成することができる。これによって嵌合体は柱歯から抜けることなく安定に柱歯に嵌合した状態を維持することができる。
また、上記の柱歯被覆体は、前記アンダーカットの上側では緩く傾斜したテラス状の面が形成されていてもよい。
義歯装置の嵌合体が、指輪体である場合において、柱歯には、柱歯の頂部に向かって縮径するテーパーが付いているか、又はストレートであるようにできる。
これによって、指輪体を頂部から根元側へと嵌合させやすい柱歯を形成することができる。テーパーは、柱歯の外面が柱歯被覆体になる部分についてはその部分の柱歯被覆体にテーパーを付し、自立歯が外表面を形成する部分についてはその部分の自立歯にテーパーを付す。テーパーを付す場合は、柱歯被覆体に限定してテーパーを付すことになるように、柱歯被覆体の被覆範囲を大きくする。テーパーはミリングマシンにより高精度で形成することができる。
義歯装置の嵌合体が変形C字体である場合において、柱歯被覆体は、1本の自立歯に固定された金属部材であるか、又は連続する複数の自立歯にわたって各自立歯に部分的に固定された金属部材であるようにするのがよい。
これによって前歯が欠損した場合、変形C字体の嵌合体を有する義歯装置を用いて、安定して維持される補綴装置を形成することができる。ここで、2本の連続した自立歯にわたって固定された柱歯被覆体は、C字体が2つ結合したω字状の被覆体となり、それに嵌合する変形C字体の嵌合体は、その1本のアームが同様にω字状になる。
柱歯のもととなった自立歯の頂部が削合されていないようにできる。
従来のブリッジやコーヌス・テレスコープ部分義歯では、鋳造金属製の冠の頂面に咬合調整を施すので、その冠の厚み分だけ必ず支台歯または鉤歯となる自立歯の頂部を削合していた。またとうぜん冠は側部にもかぶさるので、頂部だけでなく側部も大きく削合していた。しかし、本発明の義歯装置の装着構造では柱歯の頂面もしくは自立歯の頂面は、義歯装置の嵌合体より高い位置にあり、自立歯にもともとある咬合面をそのまま使用するか、またはもともとある咬合面に不具合があれば微調整を施す。このため、自立歯の頂部を削合しないことにより、自立歯の耐久性を向上することができる。言うまでもなく、上記のように咬合調整が非常に簡単となる。
なお、本発明では、頂部だけでなく側面等についても削合はしないか、ほとんどしないが、頂部が典型的な部分なので頂部を取り上げたまでである。
義歯装置には、人工歯を補強するように補強樹脂が該人工歯と連結部との間の間隙を埋めるように配置され、歯軸の方向に沿って見て、人工歯から張り出して顎堤粘膜に密着する部分である樹脂製の義歯床が無いようにできる。
これによって義歯装置全体のサイズが小型化することが、患者は口腔内での違和感が大幅に小さくなり、快適な義歯装置の装着構造を得ることができる。
本発明の義歯装置は、人工歯および嵌合体を備え、該嵌合体が柱歯に嵌合される。この義歯装置では、嵌合体が金属製であり、該嵌合体と一体化した金属製の連結部を備え、嵌合体が、{(連結部の端に位置するC字体(C字体)、2つのアーム間に連結部が介在する変形C字体(変形C字体)、および連結部の端に位置する指輪体(指輪体))のいずれか一つであり、人工歯が連結部に支持されており、嵌合体は柱歯の頂部に係止されるレストを含まず、該嵌合体と連結部とは人工歯の根元側の部分で連結しており、該嵌合体は該人工歯の中央高さ位置よりも根元側に近い高さ位置に位置しており、義歯装置には、人工歯の歯軸の方向に沿って見て、人工歯から張り出して顎堤粘膜に密着する部分である樹脂製の義歯床が無いことを特徴とする。
これによって、義歯装置全体に適度の弾性力と十分な剛性とを付与することができ、嵌合体を柱歯に嵌合するとき、弾性変形させながら弾性変形の小さい、またはほとんどフリーな、平衡位置を実現することができる。部分義歯の装着構造は、この平衡位置で、自立歯等に大きな拘束感を感じさせずに安定した状態を保つことができる。この結果、柱歯への拘束はほとんどない状態で、安定して強力な維持作用等を得ることが可能になる。また、小型化する上でも強力な支援となり、その小型化の結果、口腔内での違和感を減らし快適な装着感を確保することができる。
さらに、上記の一体物の金属による弾性力は、このあと説明する柱歯のアンダーカットへの適合を実現する嵌合体の上側および下側接触面と協働して、上記の平衡位置を、これまで形成不可能であった部分に形成することを可能にする。このため、義歯装置の装着構造の設計の範囲を大きく広げることができ、これまでよりも患者にとってより好ましい義歯装置の装着構造を作製できるようになる。
なお、上記の連結部と嵌合体との一体化は、嵌合体と連結部とが、接合されるか、または、一体鋳造されることで実現される。接合は、溶接(TIG、レーザーなど)、融着、拡散接合など何でもよい。
連結部は、歯列に沿うように延在しており、該延在している部分から歯軸方向に突き出る、人工歯よりも細い径の棒状部を有し、人工歯は該棒状部に支持されてもよい。
これによって、人工歯の配置が容易になり、義歯装置の製造を簡単に行うことができる。なお人工歯が棒状部に係止する部分についてはとくに限定しないが、棒状部が突き刺ささる孔などを設けてもよいし、また人工歯の配置の修正等が可能なように、人工歯の底部に幅のある溝状の部分を設けてもよい。
連結部、支持された状態の(連結部/該人工歯)を覆うように、補強樹脂が配置されていてもよい。
これによって、係止状態を安定に固定し、顎堤への接触をマイルドにすることができる。顎堤に接触しない場合もある。また、この樹脂は、義歯床のように、平面的に見て人工歯から大きくはみ出して顎堤粘膜に密着するようなものではない。この樹脂は、あくまで舌側から見て人工歯を保持するように根元部、隠れた部分となる(棒状部/該人工歯の底部)、延在する連結部を覆うように配置されるものである。
義歯装置には、人工歯の歯軸の方向に沿って見て、人工歯から張り出して顎堤粘膜に密着する部分である樹脂製の義歯床が無いようにする。
これによって義歯装置全体のサイズが小型化して、患者は義歯装置に対する違和感がなくなる。
嵌合体がC字体または変形C字体である場合、該嵌合体が柱歯に接する面において、該柱歯の根元側に接する部分の下側接触面は、柱歯の頂部側に接する部分である上側接触面に対して傾斜して、該柱歯の芯へと近づくように下方に延びているようにするのがよい。
これによって、柱歯被覆体によってアンダーカットを形成された場合、そのアンダーカットへと下側接触面が延び出て接触し、強固な維持力等を発現する嵌合部を形成することができる。上記のアンダーカットは豊隆部がない前歯や犬歯等を柱歯とする場合に、柱歯被覆体によって形成することができる。また豊隆部がある自立歯であっても、最適の義歯装置の装着構造を形成するのに、柱歯被覆体によってアンダーカットを形成するほうが好ましいのであれば、柱歯被覆体で人工的なアンダーカットを形成することができる。
なお下側接触面と上側接触面との境い目は、線状でもよいし、明確な線ではなく徐々に移行する幅をもった部分であってもよい。
上記の上側接触面は上側ほど柱歯の芯に近づくような傾斜がついているようにできる。
本発明によれば、義歯装置の装着構造の作製時に患者の自立歯への削合を無くすか又はほとんど無くし、かつ使用時に鉤歯への負担を減らし耐久性を向上させたものを提供することができる。
本発明の義歯装置の装着構造等によれば、柱歯の形成時に患者の自立歯への削合を無くすか又はほとんど削合しないで、安定した装着構造を確保し、かつ使用時に自立歯への負担を減らして快適な装着感を長期間、安定して得ることができる。
(a)は本発明の実施の形態1の石膏模型における、舌側から見た義歯装置の装着構造、(b)は頬側から見た義歯装置の装着構造、を示す図である。 (a)は図1における柱歯、(b)は柱歯Kにおける柱歯被覆体、(c)は柱歯被覆体によるアンダーカット、(d)は断面、を示す図である。 (a)は図1の義歯装置、(b)は裏側から見た義歯装置、(c)は嵌合体であるC字体の横断面、を示す図である。 義歯装置を形成する金属製の連結部(嵌合体を含む)を示す図である。 柱歯に嵌合体を嵌合させて、連結部に架工歯を1本固定した状態を示す図である。 実施の形態1の義歯装置の装着構造の製作工程を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態2の石膏模型における義歯装置の装着構造を示し、(a)は舌側から、(b)は唇側から、見た図、である。 図7に示す義歯装置の装着構造における柱歯を舌側から見た図である。 図8の柱歯の部分拡大図である。 図7の義歯装置の装着構造における義歯装置を示し、(a)は唇側(前側正面)から、(b)は舌側から、見た図である。 本発明の実施の形態3の石膏模型におけるブリッジ構造を示し、(a)は頬側から見上げた図、(b)は舌側から見下ろした図、である。 図11のブリッジ構造におけるブリッジを示す図である。 図11に示すブリッジ構造における支台歯を示し、(a)は舌側(裏側)の左サイドから見下ろした、(b)は頬側(正面)左サイドから見下ろした、図である。 (a)および(b)は、支台歯被覆体を構成する部材の一方を示す図である。 (a)は、支台歯被覆体を固定する前の自立歯を示す図であり、(b)は同じ歯牙に従来のクラウンブリッジを用いると仮定した場合、そのクラウンブリッジを装着する前の自立歯を示す図である。 一般のクラウンブリッジの従来例を示す図である。 実施の形態3のブリッジ構造の製作工程を示すフローチャートである。 実施の形態3のブリッジ構造の別の製作工程を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態4のブリッジ構造(上顎)を示す図である。 図19のブリッジ構造における支台歯を示し、(a)はやや舌側(後側)から見下ろした、また(b)は頬側(前側)から見た、図である。 図20に示すブリッジ構造におけるブリッジを示す図である。 本発明の実施の形態5のブリッジ構造(上顎)を示す図である。 図22に示すブリッジ構造におけるブリッジを示す図である。 (a)は全体の支台歯、(b)は支台歯K、(c)は支台歯K、を示す図である。 金属製の連結部(嵌合体を含む)を支台歯に装着した状態を示す図である。 図25の連結部に架工歯を1本固定した状態を示す図である。 (a)は本発明の実施の形態6における部分義歯の装着構造、(b)は鉤歯Kの部分拡大、(c)は鉤歯Kの部分拡大、を示す図である。 (a)は図27の部分義歯、(b)は鉤歯Kに対応する嵌合体である指輪体の部分拡大、を示す図である。 (a)は図27に示す部分義歯の装着構造における鉤歯、(b)は鉤歯Kの鉤歯被覆体の一方の部材を固定した状態、(c)は鉤歯被覆体の他方の部材、を示す図である。 鉤歯における断面図である。 実施の形態6の部分義歯の装着構造の製作工程を示すフローチャートである。 実施の形態6の部分義歯の装着構造の別の製作工程を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態7における部分義歯の装着構造を示す斜視図である。 図33における部分義歯を外した鉤歯を示す図である。 図33の部分義歯の鉤歯Kに対応する指輪体の部分拡大図である。 (a)本発明の実施の形態8における部分義歯の装着構造、(b)は鉤歯Kの部分拡大、(c)が鉤歯Kの部分拡大、を示す図である。 (a)は図36における部分義歯を外した後の鉤歯、(b)は鉤歯Kの部分拡大、(c)は鉤歯Kの部分拡大、を示す図である。 図36における部分義歯を示す図である。 本発明の実施の形態9における義歯装置の柱歯を示し、(a)は2つの柱歯被覆体を配置した状態、(b)は2つのうち一方の柱歯被覆体を外した状態、(c)は外した一方の柱歯被覆体を示す、図である。 図39の柱歯に嵌合体を嵌合した状態を示す図である。
(実施の形態1)
図1(a)、(b)は本発明の実施の形態1における義歯装置の装着構造50を示す斜視図である。図1において、義歯装置10は、患者の上顎を模した石膏模型Mに装着されている。石膏模型Mの口腔の柱歯K(K,K)に部分義歯10の嵌合体11が嵌め合わされている。この義歯装置10は、部分義歯とみてもよいしブリッジとみてもよい。また、ブリッジ、部分義歯の範疇に入らない新しい概念の歯科補綴装置とみてもよい。義歯装置10は、その嵌合体11が柱歯K1,K2を構成する自立歯1,2に、セメント、接着樹脂等で固定されればブリッジといえる。しかし脱着自由であれば部分義歯といえる。また、接着樹脂等で固着するにしても、永続的に固定を維持するセメント、接着樹脂等もあるし、比較的簡単に解離することができるテンポラリーセメントや暫定的な接着樹脂等もある。どのようなセメント、接着樹脂等を用いてもよい。その意味で、部分義歯とブリッジとの明確な区別も無くなりつつあり、本実施の形態の義歯装置10は新しい概念の歯科補綴装置であるといってよい。なぜ本実施の形態における歯科補綴装置が生まれたのか、詳細に説明する。なお、2つの柱歯K,Kの区別をしないときは、柱歯Kと表記する。
図1(a)は舌側(T)から見た装着構造50であり、図1(b)は頬側から見た装着構造50である。符合Cは、頬側と唇側とを示すが、とくに断らない限り、区別しないで共通に用いる。装着構造50以外の部分の歯牙は省略している。2つの柱歯K,Kの間に人工歯16が2本、配置されている。柱歯K,Kとなる自立歯1,2は生活歯であり健常状態にある。義歯装置10における維持装置は嵌合体11であり、本実施の形態では嵌合体11はC字体である。C字体11は、自立歯1,2をもとに形成された柱歯K,Kの柱歯被覆体(図1では嵌合体11に隠されて見えない)に接して嵌め合わされている。この嵌め合わせは、見た目よりも安定して堅固に嵌め合わされており、嵌合の際に「カチッ」という感触があることで、嵌合が実現したことを認識することができる。すなわちC字体の嵌合体11をあてがうように嵌め合わせるという文章から類推されるよりも、弾性力および剛性が発現されて嵌合が実現される。そのような嵌合を実現するためには、力学的なポテンシャルの山を登って、落とし込まれる平衡位置を設ける必要がある。このような平衡位置を含む装着構造がどのような機構に基いているのか完全には解明されていない。
義歯装置10は、自立歯1(R)に形成された柱歯Kと、自立歯2(R)に形成された柱歯Kとの間に配置されている。欠損歯は、2本(R,R)であり、代わりに2本の人工歯16が用いられている。本実施の形態の特徴はつぎの点にある。
(1)義歯装置10の嵌合体11が2つともC字体である。この例では、柱歯Kとされる自立歯2(R)と、隣の自立歯3(R)との間がほとんどないことが1つの特徴である。もう1つの特徴は、柱歯Kとされる自立歯1(R)が大臼歯であり、豊隆部が大きく膨出していることである。嵌合体11をC字体とすることで、義歯装置10を小型化でき、嵩張らず口腔内での違和感をほとんど無くすことが可能となる。
(2)義歯装置10の人工歯16の底部および根元部に床22を配置している。この床22は人工歯16の義歯装置内での固定を補強するための樹脂であり、顎堤粘膜に密着する義歯床とは異なる。義歯床は義歯装置の人工歯16を平面的に見て、人工歯16から張り出して顎堤粘膜に密着して咬合力等を負担するが、義歯装置を嵩張らせてしまい、装着したときの口腔内での違和感を大きくする。このため本実施の形態では義歯床は除いて、人工歯16の固定を補強する床22のみを配置している。床22の底部には、顎堤の頂部(山嶺)に適合するように凹状溝が形成されているが、顎堤の山裾まで張り出していない。
(3)これまで説明してきたように、柱歯K,Kに対して削合はされていない。この点については、実施の形態3などでさらに詳しく説明する。
(4)嵌合体11は、柱歯K,Kの根元側に嵌合するので、柱歯の歯根に大きなモーメントが生じないので、耐久性を保持して、かつ装着感も快適である。この点についても、実施の形態3以降で詳しく説明する。
図2(a)は、図1の義歯装置の装着構造50から義歯装置10を外したあとの歯牙を示す図である。柱歯K,Kに、柱歯被覆体31が固着されている。この柱歯被覆体31は、部分的に自立歯1(R)または2(R)に設けられ、かつ、どちらの柱歯被覆体31も自立歯1,2の根元側において、アンダーカットuが形成されている。すなわち、柱歯被覆体31の根元側ほど自立歯1または2の歯軸中心に近付くような傾きが形成されている。
図2(b)〜(d)は、柱歯Kに注目して、そのアンダーカットuを説明する図である。図2(b)、(c)は斜視図であり、図2(d)は断面図である。柱歯被覆体31は、その長手方向が自立歯1を周回する方向であり、幅方向は、自立歯1の頂部側から根元側にかけての方向である。その柱歯被覆体31の幅方向において、根元側のアンダーカットuを形成する幅のほうが、頂部側の部分の幅よりも大きいことが分かる。もともと大臼歯である自立歯1(R)は、豊隆部は存在するが、図2(a)〜(d)に示すように、柱歯被覆体31によって人工的にアンダーカットを形成することで、より安定的で強固な維持力等が発現されるように、嵌合体11と柱歯Kとによる嵌合構造を得ることができる。この結果、嵌合体11をC字体と小型化することができ、口腔内での違和感が小さい装着感に優れた義歯装置の装着構造を形成することができる。
図3(a)は、自立歯の頂部側から見た義歯装置10の斜視図である。義歯装置10は、上顎の欠損した右5番(R)および右6番(R)を補綴するために、対応する位置に配置された2本の人工歯16を有し、柱歯Kに嵌合するC字体の嵌合体11が両端に配置されている。床22は、人工歯16の固定のために人工歯16の下部に配置されている。この床22は、上記のように、平面的に見て人工歯16から大きくはみ出す部分はない。このため、義歯装置10は口腔内で嵩張らず、良好な装着感を得ることができる。
嵌合体11を構成するC字体では、柱歯Kに接触する面は、頂部側に接触する上側接触面sと、根元側に接触する下側接触面rとで形成され、屈曲部pが両面に境界になっている。上側接触面sは柱歯の側面に沿うように形成されているが、下側接触面rは、柱歯被覆体31によって形成されたアンダーカットuに適合するように下方ほど柱歯Kの中心軸に近づくように延び出している。このため、上側接触面sと下側接触面rとの間に、C字体の長手方向に沿うように屈曲部pが延在している。このような接触面の構造は、柱歯KおよびKの両方でアンダーカットuが柱歯被覆体31によって形成されているので、義歯装置10の両端の嵌合体11,11において形成されている。
図3(b)は義歯装置10の床22が接する顎堤側(裏面側)から見た斜視図である。上記のように、床22の底部22bには、顎堤の頂部(山嶺)に適合するように凹状溝が形成されているが、顎堤の山裾まで張り出していない。また、底部22b側から見ると、その底面22bを通して金属製の連結部25が透けて見える。
図3(c)は、嵌合体11の横断面図であり、上側接触面sと下側接触面rと、その境界の屈曲部pを示す。屈曲部pは、はっきりした線状でなく、湾曲した帯状であってもよい。
図4は、図3(b)で透けて見えていた連結部25および嵌合体11を示す図である。金属製の連結部25は嵌合体11とは一体鋳造された金属の一体物であり、この金属製の一体物であることによって適度な弾性および十分大きな剛性を兼ね備えることが可能になる。金属であるため断面を大きくしないでも十分な強度および剛性を有する。すなわち弾性変形を大きくするには、断面を小さくして細長くすればよいが、それだけでは食物の咀嚼における大きな咬合圧に耐えることはできない。また断面を太くして剛性だけ大きくしても嵌合すること自体が不可能になる。弾性と剛性との調和が重要であると思われる。上記の金属の一体物を用いることで、口腔内で嵩張らない程度の断面(断面の平均径)を用いながら、嵌合にとって適切な弾性と剛性とを得ることができる。
なお、連結部25の断面は逆三角形として、底側の頂点に相当する箇所(稜線)が顎堤粘膜に緩く接触するようにするのがよい。これによって顎堤粘膜の形状に応じて歯科医院において、連結部25に樹脂の床22を補充して患者の口腔状態に適した形状に仕上げることができる。
また、樹脂は、本来、大きな弾性変形が可能であり、床22は、この連結部25/嵌合体11の金属の一体物における弾性変形に余裕をもって追随することができる。
図4において、連結部25は断面が扁平(長楕円)状であり、嵌合体11と連結部25とからなる金属部材が一体鋳造されている。この一体鋳造された金属部材によって十分な弾性力と剛性とを発現することができ、柱歯への装着の際に「パチッ」もしくは「カチン」という感触を得ることができる。この感触は、義歯装置10の装着において、溜まった弾性エネルギーが部分的または大部分、解放される感触といってよい。すなわち、嵌合の際に、力学的に弾性エネルギー(ポテンシャルエネルギー)が高い状態を経由してポテンシャルエネルギーが低い安定した平衡位置に到達して時点で、溜まった弾性エネルギーが部分的または大部分、解放される感触といってよい。平衡位置において、柱歯Kに嵌合するのに必要な低いレベルの弾性変形もしくは弾性力は残って維持されている。この状態では、少々の咬合圧では変形しない十分大きな剛性が重要となる。一体化された連結部25および嵌合体11によって、適度な弾性と十分大きな剛性とを兼ね備えることができる。剛性には、C字体のアームなどの平均断面、連結部25の断面などが寄与する。嵌合の際の弾性変形は、C字体11の開き、連結部25のしなり、など一体金属物全体全体で負担される。ただし、現状、本実施の形態のように、歯牙に負担が少なく良好に嵌合する部分義歯の装着構造は得られているが、その動力学的な機構の解明には至っていない。これまでの説明はあくまで推測であり、以後の説明においても同様である。
図4に示す金属部材で注目すべき、もう1つのポイントは、断面が扁平状の連結部25から直交するように(歯軸に並行する方向に)、細径の棒状部18が突き出ていることである。この棒状部18の位置は、架工歯16が配置される位置である。
図5は、柱歯Kに近いほうの人工歯16を棒状部18に係止させ、人工歯16を連結部25に固定するために床22で固めた状態を示す図である。人工歯16が棒状部18に係止する部分についてはとくに限定しない。棒状部18が突き刺ささる孔などを設けてもよいし、また人工歯16の配置の修正等が可能なように、人工歯16の底部に幅のある溝状の部分を設けてもよい。人工歯16が棒状部18に係止した状態を安定に保つように、床22で固める。床22は、棒状部18と人工歯16との間の隙間、連結部25と人工歯との間のスペース、を埋めて、さらに人工歯16の側面根元部やC字体の嵌合体11との隙間を埋めるようにする。
床22は、係止状態を安定に固定し、図3(b)に示す凹状の底部22bによって顎堤頂部への接触をマイルドにすることができる。床22は、上記したように、平面的に見て架工歯から大きく張り出して顎堤粘膜に密着するようなものではない。このため、義歯装置10は小型化され違和感を大幅に減らすことができる。
上記の義歯装置10は、セメント、接着樹脂等で柱歯K、Kに固定することでブリッジとして用いてもよいし、固着することなく脱着自由にして部分義歯として用いてもよい。本実施の形態における義歯装置10は、これまでにない新しい概念の歯科補綴装置である。いずれの用い方をしても、自立歯への削合はほとんど無く、またはまったく無く、柱歯Kを形成することができる。さらに、柱歯被覆体31によるアンダーカットuと、嵌合体11/連結部25の一体金属物による弾性と、の協働による安定して堅固な維持作用等の発現により、義歯床等を不要にすることができるので小型化が可能になり、快適な装着感を得ることができる。
次に製造方法について図6により説明する。まず、義歯装置10の設計において、柱歯となる自立歯等を設定する。次いで印象採得および咬合採得を行う。次いで柱歯被覆体31を製造する。その製造の工程では、鋳造用の鋳型を作製し、金属を鋳込んで柱歯被覆体の部材を製造する。柱歯被覆体31の材料は、製造のし易さ、耐久性などから大抵の場合、金属がよく、その金属は通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金、ジルコニア等を用いることができる。中でも白金加金が最も望ましい。模型上の自立歯の嵌合体11が当たる部分にその部材を固定して、柱歯被覆体の原形を組み立てる。当然、図2(a)〜(d)に示すアンダーカットuが実現する原型とする。
柱歯被覆体31を形成するとき、同じ機会に義歯装置10、とくに嵌合体11を作製する。すなわち義歯装置10に設けるC字体の嵌合体11を、同様に鋳型を作り鋳造により作製する。柱歯被覆体の模型(雄型)に嵌合するように嵌合体の雄型を配置して、これに基づく鋳型により作製するので、柱歯被覆体31の作製と同じ機会に嵌合体11を作製することができる。嵌合体11と義歯装置10の連結部25とは、一体鋳造物としてもよいし、別々に鋳造した後で金属ロウ付け、レーザー溶接などで連結することができる。人工歯16も連結部25の棒状部18に取り付け床22によって固定する。これによって患者に数週間も待たせることなく、短期間で、柱歯K、義歯装置10およびその構造50が完成する。
すなわち柱歯被覆体31を患者の自立歯1に固着して柱歯Kを作製し、その柱歯Kに、同じ機会に作製した義歯装置10を装着して固定して、装着構造50を完成することができる。迅速な義歯装置の装着構造50の完成によって患者は数週間も待たされることなく、数日で食物を食べる喜びを持つことができる。
本発明において、自立歯1,2の頂部1t,2tは、嵌合体11の上端11tより上(根元と反対側)に位置して露出している。このため、上記の製造方法の説明では触れていないが、柱歯Kの咬合調整が非常に容易、かつ簡単になる。すなわち、従来のコーヌス・テレスコープ部分義歯のように、内冠および外冠に覆われた後の外冠に咬合調整すること、または従来のブリッジのように支台歯に冠をかぶせた後の冠に咬合調整すること、に比べれば、非常に簡単になる。柱歯Kとなる自立歯1,2の頂部1t,2tが、露出されたままだからである。このため、咬合調整を行う機会が多くあり、かつ自立歯1,2における既に咬合調整済みの頂面をそのまま用いてもよい、からである。
(実施の形態2)
図7(a)、(b)は本発明の実施の形態2における、上顎への義歯装置の装着構造50を示す斜視図である。(a)は舌側から見た図であり、(b)は唇側(前側正面)から見た図である。この義歯装置10およびその装着構造50も、実施の形態1と同様に、柱歯Kに嵌合して固定すればブリッジであり、脱着自由に嵌合すれば部分義歯であり、また、新しい概念の歯科補綴装置である。
欠損した歯牙は左右1番(R,L)の2本であり、義歯装置10の人工歯16によって補綴される。本実施の形態では、嵌合体11は、少し注釈が必要である。実施の形態1では、1つの柱歯Kに嵌合する嵌合体11がC字体であり、2本のアームがC字体の形状をなしていた。しかし、本実施の形態では、マクロ的に見て2本のアームは大きく開いたC字体を形成している。本発明において、閉じていない2本のアームから形成される嵌合体11は、すべてC字体とみることとする。これによって、本実施の形態における嵌合体11は、変形した変形C字体であるとする。その上で、アームの1本に着目すると、C字体が複合した複合C字アームを呈している。連続した自立歯を柱歯にする場合、複合C字アームの形状が現れる。すなわち、両端の柱歯K,Kは、ともに連続する自立歯1,2および3,4に形成されている。後側(舌側)から見ると、複合C字アームの嵌合体11および床22が明瞭に見えるが、前側正面からは人工歯16と歯肉色の床22のみが見える。銀白色の嵌合体11は、審美性という点から正面から見えないほうが好ましい。
図8は、図7における義歯装置10を外して柱歯Kおよび柱歯被覆体31を見えるようにした図である。柱歯Kは、連続する2本の自立歯1(R),2(R)に、柱歯被覆体31を固定し、また柱歯Kは自立歯3(L),4(L)に柱歯被覆体31を固定することにより、形成されている。連続する2本の自立歯を柱歯とするため、柱歯被覆体31は両方とも、マクロ的に見て複合C字体である。しかし、それぞれの柱歯K、Kにおいてアンダーカットuを形成するために、その表面形状は、上側では緩く傾斜したテラス状であるが、それより根元側では、その緩く傾斜したテラスから宙に飛び出してしまうようなオーバーハングの崖、すなわちアンダーカットu、になっている。図9は、そのような柱歯被覆体31におけるアンダーカットuを少し誇張した図である。
図10は、図7における義歯装置10を示す図である。(a)は前側正面から見た図であり、(b)は嵌合体11を構成する1本のアームの横断面図であり、(c)は舌側(後側)から見た図である。(a)において、嵌合体11は、2本のアームで構成されるので、上述の定義に基づき、変形C字体と呼ぶ。嵌合体11を構成するアームが柱歯Kに接触する面において、柱歯被覆体31のアンダーカットuに接触する下側接触面rは、上側接触面sから屈曲部pを経て、下方に向かうほど前に(柱歯の芯側に)延び出すような傾斜面となっている。この嵌合体11のアームの接触面における、下側接触面r、上側接触面s、および屈曲部pは、図10(a)および(b)に明瞭にあらわれている。このように、嵌合体11の接触面が、上側接触面sと下側接触面rとで構成されることで、アンダーカットuに下側接触面rが接して係止されるので、柱歯Kへの嵌合が、堅固な安定したものになる。
上記したように、嵌合体11と連結部25とが金属製の一体物であることも、嵌合に適切な弾性および剛性を付与する点で寄与している。本実施の形態の場合、前歯2本が対象になるので、図10(c)に示すように、樹脂補強22の裏面22bは、人工歯16の歯軸に交差するような凹面というよりは、人工歯16の表面(側面)に沿うような凹面となる。この床22の裏面22bから透けて見える連結部25は、嵌合体11の両アームと一体鋳造されたものである。
本実施の形態における義歯装置10およびその装着構造50における重要なポイントは、実施の形態1のポイント(1)〜(4)と共通するので説明を省略する。製造方法においても、実施の形態における図6に示した製造プロセスと変わるところはない。咬合調整についても、実施の形態1と共通する。
(実施の形態3)
本実施の形態では、義歯装置10はブリッジであり、柱歯Kは支台歯と、柱歯被覆体31は支台歯被覆体と、また人工歯16は架工歯もしくはポンティックと、呼ぶ。義歯装置の装着構造50についても、ブリッジ構造と呼ぶこととする。
図11は本発明の実施の形態3における石膏模型Mにおけるブリッジ構造50を示し、(a)は頬側Cから見上げた、(b)は舌側Tから見下ろした、斜視図である。ブリッジ以外の部分は健常歯があるが省略している。2つの支台歯K,Kの間に架工歯(ポンティック)16が2本保持されている。支台歯K,Kとなる自立歯1,2は生活歯であり健常状態にある。ブリッジ10における支台装置は嵌合体であり、本実施の形態では嵌合体11は指輪体である。指輪体11は、自立歯1,2をもとに形成された支台歯K,Kの支台歯被覆体31に接して嵌め合わされている。架工歯16は、頬側(正面側)から見える部分は、図1(a)に示すように、樹脂もしくはセラミックスの白い人工歯で形成されていて審美性が損なわれないようにしている。この架工歯16を保持する連結部25は金属製であり、架工歯16の舌側(裏側)全体を覆っていて、架工歯の頂部16tも、この連結部25とみることができる金属部材16g(25)が覆っている。このため、咬合調整は、連結部25から延長する金属部材16gに対して施されている。咬合調整は、複雑で微妙な凹凸を形成するので、セラミックス等に対して咬合調整するよりも金属部材16gに対して行うほうが容易である。また、審美性を優先する場合には、咬合面に歯牙と同色のセラミックス等を使用することになる。
図11(a)、(b)において重要なことは次の点にある。
<1>:支台歯K,Kに含まれる自立歯1,2は削合されず、自立歯をそのまま支台歯にしている。
<2>:架工歯(ポンティック)16にかかる咬合圧は支台歯K,Kで負担されるが、その咬合圧は、支台歯K,Kの根元側部分に歯軸方向にかかり、自立歯1,2の頂部にかかることはない。このため、頂部にかかる咬合圧の水平方向(横方向)の成分によって倒壊する向きの大きなモーメントが歯根に発生することはない。すなわち、図11に示すように、架工歯16にかかる咬合圧は、連結部25→指輪体11→支台歯被覆体31→自立歯1,2の根元側部分、の経路で自立歯に負荷を及ぼす。負荷は自立歯1,2の根元側部分にかかるので、テコの原理で拡大された大きなモーメントが歯根にかかることがない。負荷は歯軸方向に沿うので、むしろ自立歯が直立姿勢を保持するのを助ける作用を及ぼす。
<3>:支台歯K,Kの自立歯1,2の頂部1t,2tは、指輪体11の上端11tよりも高い位置にある。ここで、高い位置とは、歯根から遠ざかるほど、より高い位置をいう。自立歯1,2の頂部1t,2tが指輪体11の上端11tよりも高い位置にあり、完全に露出しているので、噛み合わせ面としては、自立歯1,2の噛み合わせ面1t,2tをそのまま用いることができる。この結果、噛み合わせ面を簡単な咬合調整をするぐらいで形成することができる。
図12は、本実施の形態における装着する前のブリッジ10を示す斜視図である。嵌合体11には指輪体を用いている。支台装置は、ブリッジの嵌合体である指輪体11と、患者側の自立歯から形成される支台歯K,Kとで形成される。嵌合体11には、図12に示すように指輪体のような完全に閉じた筒状がよく用いられるが、実施の形態1,2などのように、部分的にあいた部分筒状体(断面がC字体の部分筒状体など)を用いる場合も多用される。図12に示すブリッジの特徴は次の点にある。
<4>:指輪体11は、架工歯16の根元側の部分で連結されている。すなわち架工歯16を裏側で保持する金属部材16g(25)と指輪体11は一体化されるように連結している。金属部材16gは、金属製の連結部25と一体になっているので、結局、嵌合体11と金属部材16gと連結部25とは、金属一体物である。
指輪体11と金属部材16gとの連結位置は、架工歯16の根元側部分である。このように指輪体11が、架工歯16の根元側部分で連結していることで、指輪体11は、支台歯の根元側部分に固定されている支台歯被覆体31に自然に嵌合することができる。
<5>:指輪体11の径は、歯軸方向に沿って見て架工歯16の径よりも大きい。これについては、このあとさらに詳しく説明する。
図13は、ブリッジを装着する前の支台歯K,Kを示し、(a)は裏側の左サイドから見下ろした、(b)は正面左サイドから見下ろした、斜視図である。支台歯K,Kで重要なことは次の点にある。
<6>:支台歯被覆体31は2つの部材31a,31bで構成されている。2つの部材で支台歯被覆体31を形成することにより、豊隆部があってもその豊隆部を切削することなく豊隆部の根元側に支台歯被覆体31を固定できる。たとえば1つの筒体を自立歯の根元側に入れようとすると、豊隆部につかえて筒体を根元側に配置することはできない。豊隆部を切削して除かない限り、筒体は根元側まで入らない。しかし、支台歯被覆体31を2つの部材31a,31bで形成することにより、豊隆部の根元側に対して、一方側から1つの部材31aを自立歯1,2にあてがい、一方、同じ自立歯1,2の他方側から他の1つの部材31bをあてがい、自立歯1,2を周回するように固定することができる。これにより、豊隆部を削除することなく支台歯被覆体31を豊隆部の根元側に形成することができる(図15(a)と(b)とを比較参照)。支台歯K,Kにおいて、2つの部材31a,31bの端どうしがあたる位置に境目31eが形成される。図13(a)、(b)において、1つの部材31aは頬側からあてがわれ、他の部材31bは舌側からあてがわれているが、自立歯1,2に向かってゆく方角についてはとくに限定はしない。歯牙は、豊隆部をもつのが普通であり、豊隆部を削除することなく豊隆部の根元側に支台歯被覆体31を形成できることは、自立歯1,2の生命力を持続させて支台歯K,Kの耐久性を大きく向上させることができる。
<7>:本実施の形態のように、2つの部材31a,31bにより支台歯被覆体31を形成することにより、豊隆部を削除しないで根元側部分に支台歯被覆体31が設けられた支台歯K,Kを形成することができる。このため、自立歯1,2が神経を有する生活歯である場合、神経を除くことなく支台歯K,Kを形成することができる。歯牙は神経をもつ限り強い生命力を維持することができる。生活歯のまま支台歯K,Kとすることでその生命力を持続でき、従来の神経を除く場合に比べて耐久性を飛躍的に高めることができる。
また、神経を取ることもない。歯牙を削合することがなければ、痛みが生じる削合等の治療、麻酔の注射の痛みも省かれ、患者にとっては最高の喜びと安心を得ることができる。
<8>:図13(a)、(b)に示す支台歯被覆体31(31a,31b)の外面には、ミリングマシンによって頂部に向かって縮径するようなテーパーが付されている。このテーパーは、図12に示すブリッジ10の指輪体11を支台歯被覆体31に接しながら嵌め合わせるとき、円滑に嵌合するために付ける。
<9>:支台歯Kを参照して、支台歯被覆体31の2つの部材31a,31bは、セメント、固着樹脂等により自立歯2に固定される。さらに、この上に指輪体11が嵌合してこの指輪体11も支台歯被覆体31/自立歯2にセメント、固着樹脂等で固定される。このため固定に問題を生じることはない。
図14(a),(b)は、支台歯被覆体31を構成する2つの部材の一方を示す図である。どちらも鋳造金属製であり、一様な厚みでなく局所的に厚い箇所もあるが厚みは0.5mm前後を目指して作製する。
図15(a)は、本実施の形態において、支台歯被覆体31を固定する前の自立歯を示す図である。豊隆部20を明瞭に認めることができる。この豊隆部20をそのまま残して、図13(a)、(b)に示すように、2つの部材31a,31bによって支台歯被覆体31を設けることができる。比較のために、図15(b)に、本実施の形態と同じ歯牙にクラウンブリッジを用いると仮定した場合、そのクラウンブリッジを装着する直前の自立歯101,102を示す。豊隆部を除くために、多大な削合を行うことが分かる。生活歯の場合であっても、ほとんどの場合、神経を除く必要がある。なぜならば、クラウンをかぶせるために、これほど多大な削合を行うと神経が非常な痛み信号を発するからである。このため神経は除かざるをえないことがほとんどである。
図16に、本実施の形態と関係ないが一般のクラウンブリッジの従来例を示す。ブリッジ110は、支台装置である2つのクラウン111の間に架工歯116が連結部125で保持されている。クラウン110および連結部125は鋳造金属製であり、所定の厚みを要する。このため、支台歯となる自立歯101,102は、多大な削合を受け、自然のままの歯牙から歴然と細くなっている。すなわち、支台歯となる自立歯101,102は、図15(b)と同様に、大きく削合されている。
本実施の形態のブリッジ10およびブリッジ構造50は、上記のように、<1>〜<9>に挙げた特徴を有する。ここで、<1>および<5>について補足を加える。
<1>については、削合がないことによる耐久性の向上等については既に他の特徴の項目において説明した。ここで補足する点は、本実施の形態のブリッジおよびブリッジ構造の製造が簡単化されるということである。削合がなく、咬合調整もそれ以前の自立歯の噛み合わせ面をほとんど使用する。さらに、ブリッジ構造50およびブリッジ10について、その始めから装着までの過程に長年の経験や名医しか理解できない技術は必要ない。このため、通常の歯科医であれば容易に製造することができる。
<5>については、自立歯に削合を加えず、さらに支台歯被覆体31を自立歯の根元側部分に配置するので、嵌合体11である指輪体の径は、とうぜん支台歯被覆体31の径より大きくなる。この結果、2つの指輪体11の間の距離は小さくなり、2つの指輪体11の間に保持される架工歯(ポンティック)16の径は小さくなる。この結果、自分の歯である自立歯1,2を含む支台歯K,Kは太い径となり、咬合時に安定した咬合感を得ることができる。
次に製造方法について図17により説明する。まず、ブリッジ10の設計において、支台歯となる自立歯等を設定する。次いで印象採得および咬合採得を行う。次いで支台歯被覆体31を2つの部材31a,31bによって製造する。その製造の工程では、鋳造用の鋳型を作製し、金属を鋳込んで支台歯被覆体の部材2つを製造する。支台歯被覆体31の材料は、製造のし易さ、耐久性などから大抵の場合、金属がよく、その金属は通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金、ジルコニア等を用いることができる。中でも白金加金が最も望ましい。模型上の自立歯の豊隆部から根元側部分にその2つの部材が連続して周回するように固定して、支台歯被覆体の原形を組み立てる。次いでミリングマシンにより、頂部側へと縮径するテーパーを付ける。テーパー角は0.5°以上6°以下とするのがよい。ただし、テーパー角ゼロでもよい、すなわちストレートであってもよい。ブリッジはセメント等で固定され、脱着を繰り返すことがないからである。支台歯被覆体31a,31bの外面に付けるテーパーは、鋳型の雄型の段階でいちどミリングマシンで付けておき、さらに鋳造された金属部材に対して、再度、ミリングマシンで仕上げのテーパーを形成するのがよい。これにより、高い寸歩精度を確保することができる。
ただし、ミリングマシンで先細りのテーパーを付けない場合もある。それは、実施の形態1、2に示したように、柱歯被覆体31によりアンダーカットuを形成する場合である。ブリッジ構造50の支台歯被覆体31によって支台歯Kにアンダーカットを形成する場合は少なくない。このアンダーカットuを支台歯Kに形成する場合は、ミリングマシンでテーパーを付けることはない。図17において、ミリングマシンでテーパーを形成する記述に括弧を付しているのは、このアンダーカットuを付ける場合は適用しないことを示すためである。
支台歯被覆体31a,31bを形成するとき、同じ機会にブリッジ10を作製する。すなわちブリッジ10の設ける指輪体等の嵌合体11を、同様に鋳型を作り鋳造により作製する。支台歯被覆体の模型(雄型)に嵌合するように嵌合体の雄型を配置して、これに基づく鋳型により作製するので、支台歯被覆体31a,31bの作製と同じ機会に嵌合体11を作製することができる。嵌合体11とブリッジ10の連結部25とは、金属ロウ付け、レーザー溶接などで連結することができる。架工歯16も連結部25に固定する。これによって患者に長期間待たせることなく、短期間で、支台歯K、ブリッジ10およびその構造50が完成する。
すなわち支台歯被覆体31a,31bを患者の自立歯1に固着して支台歯Kを作製し、その支台歯Kに、同じ機会に作製したブリッジ10を装着して固定して、ブリッジ構造50を完成することができる。迅速なブリッジ構造50の完成によって患者は長期間待たされることなく、数日で食物を食べる喜びを持つことができる。
図18は、実施の形態3のブリッジ構造の別の製作工程を示すフローチャートである。ブリッジ10の設計において、支台歯となる自立歯等を設定するのは、図17の工程と同じである。次いで印象採得その1を行う。次いで支台歯被覆体31を2つの部材31a,31bによって製造する。その製造の工程では、鋳造用の鋳型を作製し、金属を鋳込んで支台歯被覆体の部材2つを製造する。支台歯被覆体31の材料は、製造のし易さ、耐久性などから大抵の場合、金属がよく、その金属は通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金等を用いることができる。中でも白金加金が最も望ましい。模型上の自立歯の豊隆部から根元側部分にその2つの部材が連続して周回するように固定して、支台歯被覆体の原形を組み立てる。次いでミリングマシンにより、頂部側へと縮径するテーパーを付ける。テーパー角は0.5°以上6°以下とするのがよい。ただし、テーパー角ゼロでもよい、すなわちストレートであってもよい。ブリッジはセメント等で固定され、脱着を繰り返すことがないからである。上記のようにテーパー角を形成するのは、製造時につぎに説明する嵌合体を円滑に嵌め合わせることができるようにするためである。模型上でのテーパー形成を終了した後、患者の自立歯に2つの部材31a,31bからなる支台歯被覆体31を固定して支台歯K,Kを完成させる。ここで、ミリングマシンでテーパーを形成する記述に括弧が付されているのは、図17と同様の理由に基づく。
次いで、指輪体等の嵌合体11を含むブリッジを形成するために、印象採得その2を行う。このときの印象には、支台歯K,Kの情報(外形など)が含まれている。この支台歯K,Kの外形に適合させて嵌合体11となる指輪体などの鋳型を作製し、金属を鋳込んで指輪体11を作製する。一方、架工歯16を取り付ける連結部25を主体とするブリッジについても鋳型を作製して金属を鋳込む。この段階のブリッジ10は連結部25そのものといってもよいので、ブリッジ(連結部)などと記す。ブリッジ10(連結部25)と指輪体11などの嵌合体とは金属ロウ付けなどで一体化する。架工歯16の部分が長い場合、このように嵌合体とブリッジ10(連結部25)とを別々に鋳込んで後でロウ付けすることで一体化する。このような方法と並んで、より直接的な方法を用いてもよい。すなわち最初から、ブリッジ10(連結部25)と嵌合体11とを一体化した鋳型を作製して、一体化した嵌合体付きブリッジ10を製造してもよい。連結部25および嵌合体である指輪体11の材料についても、製造のし易さ、耐久性などから大抵の場合、金属がよく、その金属は通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金等を用いることができる。中でも白金加金が望ましい。ロウ付けの材料は、通常、歯科技工所において用いられる歯科用金属のロウ付け材料を用いるのがよい。また、レーザー溶接によって一体化してもよい。
上記のいずれかの方法で製造された一体化した(嵌合体+ブリッジ)の連結部25に架工歯16を配置して固定する。また、ブリッジ10全体について微調整をして嵌合体11の配置(傾きなど)を最適化した後、支台歯K,Kに嵌合体11を嵌め合わせてセメント等で固定する。これによって本実施の形態における、ブリッジを含むブリッジ構造が完成する。本実施の形態における連結部25と嵌合体11との金属一体物により、実施の形態1において説明した、弾性と剛性との調和が得られて、堅固で安定した嵌合もしくは装着構造が得られることは、言うまでもない。実施の形態4以降についても、嵌合体11と連結部25との金属一体物による作用は同じである。
(実施の形態4)
本実施の形態も、実施の形態3と同様にブリッジを対象にするので、実施の形態3の冒頭における用語の定義がそのまま適用される。
図19は、本発明の実施の形態4の石膏模型Mにおける上顎のブリッジ構造50を示す図である。このブリッジ10は上顎全体の歯牙を対象にしており、総ブリッジである。このブリッジ構造50における支台歯Kは自立歯1(L:左6番の大臼歯)に形成され、また支台歯Kは自立歯2(R:右7番の大臼歯)に形成されている。すなわちこれら自立歯1(L)、2(R)に支台歯被覆体31が配置され、その支台歯被覆体31に指輪体11が嵌合している。
本実施の形態のブリッジ構造50におけるブリッジ10では、上記の嵌合体11の他に、ブリッジ10内の途中にC字体11を2つ持っている。これらC字体11は、ブリッジ10の連結部25(16g)の中に含まれるように、連結部25を構成するように連続して形成されている。このように義歯装置の中、とくに連結部25の中に含まれるように配置されるC字体は、連結部25そのものがC字状の形態をとる場合もあるし、連結部25にC字状の凹部を形成しておいてその凹部に金属製の別体のC字体を接合して固定する場合もあり、嵌合体に関して本質的な差はない。
支台歯Kは自立歯3(L;左1番の前歯)に形成され、また支台歯Kは自立歯4(R:右3番の犬歯)に形成されている。C字体11が嵌合する自立歯3,4は、自立歯に部分周する支台歯被覆体31で舌側を主体に被覆されている。C字体11は支台歯K,Kに舌側からあてがわれるように嵌合するとき、指輪体等の嵌合体がブリッジに含まれるので、まず嵌合する順序を考慮する必要がある。通常、C字体を自立歯に横方向からあてがっておいて、指輪体等の嵌合体を縦方向に移動させて自立歯に嵌合させるのがよい。この場合の支台歯被覆体31は横方向から支点の支持点になるようにあてがわれるので、外面に形成されるテーパーは、0°に近いほうがよい。
ブリッジ10の中におけるC字体11と連結部25との関係をより詳しく説明すると次のとおりである。上述のように、支台歯K,Kでは、C字体11は、その金属製のC字状の部分がブリッジ10の連結部25の中に含まれるように、連結部25の延長部分として形成されている。
図19に示すブリッジ構造50は、上顎に総ブリッジ10を装着した構造である。総ブリッジ10の指輪体11を支台歯K,Kに嵌め合わせるとき、その時にはC字体の嵌合体11を既に支台歯K,Kに嵌め合わせておくように設計するのがよい。嵌合部(指輪体)11を、支台歯K,Kに嵌め合わせるときのブリッジの移動の方向は、上記のように、歯軸方向(縦方向)もしくはそれに近い方向である。嵌め合わせるとき、支台歯K,KおよびK,K/支台歯被覆体31には、セメント、接着樹脂等を塗布しておき、嵌合直後に余分のセメント、接着樹脂等を除いて、滑らかな外形を整える。ブリッジ10は、装着状態の永続性を保たせるため半永久的なセメント、接着樹脂を用いてもよいし、着脱を短期間で繰り返すために暫定的な固着剤やテンポラリーセメントを用いてもよい。すなわちブリッジ10の使用の仕方は、部分義歯のように日々脱着するようにしてもよいし、一度装着したら半永久的にそのまま使用するようにしてもよい。
図20は、図19に示すブリッジ構造50を形成する前の、支台歯K,KおよびK,Kを示す斜視図である。図20(a)はやや舌側(後側)から見下ろした図であり、図20(b)は頬側(前側)から見た図である。指輪体11が嵌合する支台歯K,Kでは、自立歯1(L),2(R)が2つの部材31a,31bからなる支台歯被覆体31によって全周を被覆され、その2つの部材31a,31bが当接することで形成される境目31eが2箇所、見て取れる。自立歯1,2の頂部1t,2tに形成されている咬合面は、ブリッジ形成前のものがそのまま残されている。
C字体の嵌合体11が嵌合する自立歯3(L),4(R)では、舌側(裏側)のみが支台歯被覆体31によって覆われ、頬側(前側)は自立歯の部分が露出している。この場合、支台歯被覆体31は1つの部材でもよいし2つの部材でもよい。支台歯被覆体31が部分周であるのは、たとえば自立歯が前歯であって、舌側(裏側)に限定すれば豊隆部といえるものがなく、自立歯3,4の根元側部分に容易に嵌合するC字体の嵌合体11を嵌め合わせることができるからである。その場合には金属光沢を隠すために支台歯被覆体の唇側(前側)に白色のセラミックスコーティング等を施すのがよい。
図21は、図20に示すブリッジ構造におけるブリッジ10を示す図である。支台歯K,Kに対応する箇所には、指輪体11が配置されている。また、支台歯K,Kに対応する箇所には、C字体の嵌合体11となるC字状の金属部材が連結部25の一部をなすように配置されている。連結部25には架工歯16が固定されている。
(実施の形態5)
図22は、本発明の実施の形態5における、上顎のブリッジ構造50を示す図である。ブリッジ10は、自立歯1(R)に形成された支台歯Kと、自立歯2(R)に形成された支台歯Kとの間に架けられている。欠損歯は、2本(R,R)であり、代わりに2本の架工歯16が用いられている。図示している部分以外の歯牙は省略されている。本実施の形態の特徴はつぎの点にある。
(1)ブリッジ10の嵌合体が2つともC字体11である。支台歯Kとされる自立歯2(R)と、隣の自立歯3(R)との間がほとんどないことが一つの理由である。もう一つの理由は、支台歯Kとされる自立歯1(R)が大臼歯であり、豊隆部が大きく膨出しており、指輪体の嵌合体とするとブリッジが大型化して患者の口腔内で嵩張ってしまうことがあげられる。支台歯Kに対してもC字体の嵌合体11を嵌合させることで、ブリッジ10を小型化でき、違和感をほとんど無くすことが可能となる。
(2)ブリッジ10の架工歯16の底部および根元部に床22を配置している。この床22は架工歯16の固定を補強するための樹脂であるが、この点については、架工歯16の固定構造の説明において、このあと詳しく説明する。
自立歯1(R)は全周被覆する支台歯被覆体31で被覆されていて、これにC字体11が嵌合している。ブリッジ10は口腔内で固定されて長い間、同じ状態を保持するため、歯列の隅など食物カス等が溜まりやすい箇所は支台歯被覆体31で保護することで虫歯になるおそれを無くすことができる。このため、C字体11が嵌合する支台歯Kにおいて自立歯1(R)を全周被覆する支台歯被覆体31を用いることがある。すなわち審美性を損なうおそれがない臼歯などにおいて、虫歯予防が重要な場合、C字体11が嵌合する場合でも全周被覆することがある。全周被覆する場合、当然、2つの部材からなる支台歯被覆体が用いられる。
図23は、図22におけるブリッジ10を示す図である。上記(1)で述べたように、ブリッジ10の両端の嵌合体はともにC字体11である。また、(2)で触れたように、床22が架工歯16の底部、根元側側面などに配置されている。この床22は、補助的に架工歯16を安定に固定する作用を担っている。この点について図25以降で詳しく説明する。
図24(a)は、図22のブリッジ構造50からブリッジ10を外したあとの支台歯等を示す図である。図24(b)は支台歯Kを、(c)は支台歯Kを、いずれも頂部側から見た図である。支台歯Kは、上記(3)のように、2つの部材31a,31bによって全周被覆されている。2つの部材31a,31bで全体の支台歯被覆体31を形成しているため、大きな豊隆部20があっても削合することなく、支台歯被覆体31で覆うことが可能である。支台歯Kは、2つの部材31a,31bによって全体において部分周する被覆体31が形成されている。部分周する場合でも、図24(c)に示すように周回する範囲が半周以上になり、大きな豊隆部20がある場合、1つの部材では豊隆部20を削合しないで被覆体31を形成することは難しい。このため、支台歯Kでは、自立歯2(R)を2つの部材31a、31bで被覆して部分周する被覆体31を形成する。
図25は、図23に示すブリッジ10の製造法を説明するための図である。両端のC字体11の間に、連結部25(の芯部)が延在している。連結部25(の芯部)は帯状であり、鋳造によって、図4において説明したC字体11と連結部25とからなる金属部材が一体鋳造されている。この金属部材で注目すべきポイントは、帯状の連結部25の芯部から直交するように(歯軸に並行する方向に)、細径の棒状部18が突き出ていることである。この棒状部18の位置は、架工歯16が配置される位置である。なお、連結部25というとき、C字体11も含めた一体鋳造物をさす場合と、C字体11を除いた連結部の芯部のみをさす場合がある。
支台歯被覆体31,31に被覆された支台歯K,Kに、C字体11を含む一体鋳造物25を配置する。C字体11は、両方とも支台歯K,Kに嵌合している。棒状部18は、架工歯16が配置される位置を示す。
図26は、支台歯Kに近いほうの架工歯16を棒状部18に係止させ、床22で架工歯16の底部、その部分の連結部25および架工歯の側面根元部を被覆した状態を示す図である。架工歯16が棒状部18に係止する部分についてはとくに限定しない。棒状部18が突き刺ささる孔などを設けてもよいし、また架工歯16の配置の修正等が可能なように、架工歯16の底部に幅のある溝状の部分を設けてもよい。架工歯16が棒状部18に係止した状態を安定に保つように、床22で固める。樹脂は、膨状部18と架工歯16との間の隙間、連結芯部17と架工歯との間のスペース、を埋めて、さらに架工歯16の側面根元部やC字体嵌合体11との隙間を埋めるようにする。
これによって、係止状態を安定に固定し、顎堤への接触をマイルドにすることができる。ただし、この樹脂は、義歯床のように、平面的に見て架工歯から大きくはみ出して顎堤粘膜に密着するようなものではない。この樹脂は、舌側から見て架工歯を保持するように根元部、隠れた部分となる(棒状部/該架工歯の底部)、延在する連結部を覆うように配置されるものである。平面的に見て、架工歯からのはみ出しはほとんどない。このため、ブリッジ10は小型化され違和感をほとんど無くすことができる。
本実施の形態のブリッジ10は、つぎのようにして、支台歯K,Kに嵌合する。
(1)支台歯KにC字体11をあてがう。自立歯1を全周する支台歯被覆体31には、頂部ほど縮径するように2°のテーパーを付けてある。この支台歯被覆体31が支点になるように、C字体11をあてがう。このあてがいの時、支台歯KにC字体11cをあてがう移動方向は、横方向でもよいし、縦方向すなわち歯軸方向に沿うようにしてもよい。このとき、他方の端のC字体11は、支台歯Kの支台歯K側の斜め上方に配置しておく。
(2)次いで、他方の端のC字体11を支台歯Kに嵌合するように上方から近づけ接触させ、カチリという感触まで落とし込む。カチリという感触があれば嵌合は完全になされている。この嵌合の形態によれば、支台歯Kを支点にして、他の端のC字体11は、縦方向に回転して支台歯Kに嵌合することになる。したがって支台歯Kに嵌合するC字体11は、縦方向に近い移動をする嵌め合わせになる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、義歯装置10は部分義歯であり、柱歯Kはしたがって鉤歯と、柱歯被覆体31は鉤歯被覆体と、呼ぶ。義歯装置の装着構造50についても、部分義歯の装着構造と呼ぶ。
図27(a)は本発明の実施の形態6における部分義歯の装着構造50を示す斜視図である。図27において、部分義歯10は、患者の上顎を模した石膏模型Mに装着されている。石膏模型Mの口腔の鉤歯に部分義歯10の維持装置が嵌め合わされている。部分義歯10は、義歯床35と、人工歯16などを備えている。義歯床35の縁に金属製連結部の端が露出している。
患者には、2本の鉤歯K,Kが形成されている。鉤歯Kは右3番(R)に、鉤歯Kは右6番(R)に形成されている。鉤歯K,Kは、患者の歯牙である自立歯1,2をもとに形成されている。その他の歯は、すべて人工歯16である。鉤歯における自立歯1,2の頂部1t,2tは、露出している。自立歯1,2の頂部1t,2tが露出していることで、咬合調整は簡単かつ容易に行うことが可能になる。
図27(b)および(c)は、それぞれ鉤歯KおよびKを示す斜視図である。2本の鉤歯K,Kは、ともに2つの部材からなる鉤歯被覆体31a,31bにより被覆されている。鉤歯被覆体31a,31bの材料は歯科用の金属材料であれば何でもよいが、金属は製造が容易であり耐久性も高いので、金属製の被覆物がよく用いられる。たとえば白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金等を用いることができる。中でも白金加金が最も望ましい。
本実施の形態において、鉤歯のもととなる自立歯1,2は、鉤歯被覆体31a,31bにより少なくとも根元部が被覆されるので(頂部も含めて全てか、または側周面のみかはあるが)、両者を合わせて鉤歯K(31)と記す場合もある。図27に示す場合、部分義歯10は2本の鉤歯K(31)を主要な維持箇所として安定に保持される。
図27(b)および(c)において注目すべき点は、鉤歯K,Kにおいて、自立歯1,2の豊隆部20がそのまま鉤歯に残っていて、豊隆部20の根元側に鉤歯被覆体31aが配置されている構造にある。このような豊隆部20/鉤歯被覆体31aの配置構造を可能にしたのは、鉤歯被覆体を2つの部材で構成したからである。この点については、図29において説明する。
部分義歯10には、指輪体の嵌合体11が設けられており、この指輪体11を鉤歯K(31)が貫通して、自立歯1,2の頂部1t,2tが露出している。指輪体11に鉤歯Kが入って貫通することで、部分義歯10の鉤歯K(31)への嵌合が実現する。
図28(a)は、図27に示した部分義歯の装着構造50における部分義歯10を示す図である。また図28(b)は、鉤歯Kに嵌合する指輪体11を含む周辺の部分拡大図である。指輪体11は、周囲を義歯床35に取り巻かれているが、義歯床35中の連結部の中心部分と連結している。指輪体11は、鉤歯Kの頂部側から歯軸方向(縦方向)に沿って、鉤歯Kの豊隆部20を経て根元部に嵌合される。したがって、指輪体11は豊隆部20に対応する位置の鉤歯Kの断面を通す大きさを持たなければならない。指輪体11が、鉤歯Kの根元側まで嵌め合わされ、義歯床35の裏面が患者の顎堤粘膜に密着することで、部分義歯10装着は、安定に維持される。
嵌合体である指輪体11の材料についても、製造のし易さ、耐久性などから大抵の場合、金属がよく、その金属は通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金等を用いることができる。中でも白金加金が望ましい。
図29(a)は、図27の部分義歯の装着構造50において、部分義歯10を外したあとの鉤歯K,Kを示す図である。鉤歯K,Kにおいて、鉤歯被覆体31a,31bは、2つの部材によって形成され、この2つの部材31a,31bが自立歯1,2を完全周している。図29(b)は、鉤歯Kにおいて頬側の部材31aを除いて、舌側の部材31bのみを配置し、固定した状態を示す図である。この図29(b)において、豊隆部20は頬側に膨出しているのが分かる。図29(c)は、鉤歯被覆体の2つの部材のうちの頬側の部材31aを示す図である。この部材31aを、端面31eを相手側の部材31bの端面31eに隙間最少になるように、当てるように配置・固定する。このとき部材31aは、自立歯1の最大豊隆部20を少し覆うように、豊隆部20の根元側を回り込む形に配置され、固定される。
2つの部材31a,31bを用いることで、豊隆部20をそのまま残して、自立歯1,2を被覆するが可能になる。2つの部材を用いないで1つの筒状の鉤歯被覆体で自立歯を被覆する場合、豊隆部を削合しなければ筒状の鉤歯被覆体は自立歯の根元側にまで到達することはできない。豊隆部が筒状の鉤歯被覆体につかえてしまうからである。このため、コーヌス・テレスコープ型部分義歯では、1つの冠付き筒状体で自立歯を覆うために、自立歯の豊隆部を大きく削合する。自立歯が神経の生きている生活歯であっても、神経を除いていた。豊隆部を削合するほど大きく削合すると痛みが強く、神経を除かざるをえないからである。しかし、神経を除いた失活歯は、耐久性が半減し、しかも削合が大きくなされている。このため、従来は、自立歯の生命力を大きく削いでいた。
本実施の形態のように、2つの部材で鉤歯被覆体31a,31bを構成することで、豊隆部20があっても、横方向からはさむように2つの部材を自立歯1に近づけて覆うことが可能になる。この結果、自立歯1,2に対する削合は無しにすることが可能になる。この結果、鉤歯Kの耐久性を飛躍的に高めることが可能になる。
また、咬合調整という観点からみると、自立歯1,2の頂部1t,2tは、鉤歯を形成する前からある噛み合わせ面であり、咬合調整をしなくてよいか、咬合調整をしたとしてもわずかの調整で良好な咬合状態を実現することが可能になる。
図30は、鉤歯K,Kにおける断面図である。残存歯である自立歯1は顎堤8において自立しており、この自立歯1の根元側部分に鉤歯被覆体31a,31bが配設され、その外面に部分義歯10の指輪体11が嵌合している。ここで重要な点は、鉤歯被覆体31a,31bの外面に頂部側に向かって縮径するようなテーパーTが付いていることである。鉤歯K,Kと、部分義歯10の指輪体11と、が形成する構造について説明する。つぎの構造がポイントとなる。鉤歯K、K等の符合は、図30だけでなく、図29等を参照するために付している。
(S1)鉤歯K、Kは、それぞれが2つの部材31a,31bによって完全周回される。このとき自立歯の豊隆部20は、そのまま残して少なくとも根元部が被覆される。
(S2)2つの部材31a,31bは、その外面に頂部側に向かって縮径するようにテーパーTが付される。所定の厚みを有する鉤歯被覆体31a,31bで被覆された結果、鉤歯K、Kは、その最大径は自立歯1の豊隆部20の位置の径ではなくなる。豊隆部20ではなく、鉤歯被覆体31a,31bが被覆する位置が最大径の位置となる。その最大径の位置が、根元側最下点になるように、図30に示すように、鉤歯被覆体31a,31bの外面に頂部側に向かって縮径するようなテーパーを付ける。テーパーの角度としては、頂部側へと縮径するように0.5°以上6°以下のテーパーが付されているのがよい。たとえば2°程度とする。
(S3)部分義歯10の嵌合体11である指輪体は、上記の鉤歯被覆体31a,31bの最下点の断面よりも小さく、鉤歯被覆体31a,31bの上面での断面よりも大きい断面をもつようにする。これによって、部分義歯10の指輪体11は、鉤歯被覆体31a,31の上面から最下点の間のいずれかの高さ位置で、鉤歯被覆体31a,31bに止まり、堅固に支持または維持されることになる。このような指輪体11等の止まりを担保するのが、上記鉤歯被覆体31a,31bの外面に設けた頂部側に向かって縮径するテーパーである。
本実施の形態における部分義歯は、次の特徴を有する。
<F1>:鉤歯K,Kに含まれる自立歯1,2は削合されず、自立歯をそのまま鉤歯のもとにしている。
<F2>:人工歯16および鉤歯K,Kにかかる咬合圧は、自立歯1,2および義歯床35で負担される。そのうち鉤歯K,Kにかかる咬合圧は、鉤歯の根元側部分に歯軸方向にかかり、自立歯1,2の頂部に横向きにかかることはない。このため、頂部1t,2tにかかる咬合圧の水平方向(横方向)の成分によって倒壊する向きの大きなモーメントが歯根に発生することはない。負荷は自立歯1,2の根元側部分に縦方向にかかるので、テコの原理で拡大された大きなモーメントが歯根にかかることがない。負荷は歯軸方向に沿うので、むしろ自立歯が直立姿勢を保持するのを助ける作用を及ぼす。
<F3>:鉤歯K,Kの自立歯1,2の頂部1t,2tは、指輪体11の上端よりも高い位置にある。ここで、高い位置とは、歯根から遠ざかるほど、より高い位置と呼ぶ。自立歯1,2の頂部1t,2tが指輪体11の上部11tよりも高い位置にあり、完全に露出しているので、噛み合わせ面としては、自立歯1,2の噛み合わせ面1t,2tをそのまま用いることができる。この結果、簡単に噛み合わせ面を形成することができる。
<F4>:指輪体11は、人工歯16の中央高さ位置よりも根元側に近い位置に配置されている。すなわち人工歯16を義歯床35の内部で保持する大連結子または補強金属25の金属部材(図示せず)と指輪体11は一体化されるように連結している。その連結位置は、人工歯16の根元側部分である。このように指輪体11が、人工歯16の根元側部分の高さ位置で連結していることで、指輪体11は、鉤歯の根元側部分に固定されている鉤歯被覆体31に自然に嵌合することができる。
<F5>:指輪体11の径は、歯軸方向に沿って平均的に見て人工歯16の径よりも大きい。指輪体11は鉤歯被覆体31a,31bに嵌合するので、鉤歯被覆体31a,31bの厚みの分だけ、人工歯よりも径が大きくなる。ただ、歯牙の位置によって歯牙の形状は大きく変動するので、あくまで概括的かつ平均的な意味でのことである。
<F6>:鉤歯被覆体31は2つの部材31a,31bで構成されている。この点は、本発明の最大の利点の一つをもたらすものであり、既に詳しく説明した。
<F7>:本実施の形態のように、2つの部材31a,31bにより鉤歯被覆体31を形成することにより、豊隆部を削除しないで鉤歯を完成させることができる。この点についても、上記<6>と合わせて既に説明した。
<F8>:図30に示す鉤歯被覆体31(31a,31b)の外面には、頂部に向かって縮径するようなテーパーが付されている。このテーパーは、部分義歯10の指輪体11を鉤歯被覆体31に接しながら円滑に嵌め合わせ、かつ係止させるために形成する。
<F9>:図29(b)および(c)を参照して、鉤歯被覆体31の2つの部材31a,31bは、セメント、固着樹脂等により自立歯1に固定される。鉤歯被覆体31を構成する2つの部材は、どちらも鋳造金属製であり、厚みは0.5mm以下である。
<F10>:鉤歯被覆物31a,31b、および筒状嵌合体11は、噛み合わせ面を除いて、幾何学的であり、微妙な形状の調整をそれほど必要としない。また、噛み合わせは、筒状嵌合体11とは無関係に、鉤歯被覆物31a,31bを作製するときに調整することができる。このため、部分義歯10およびその装着構造50は、それほど熟達した歯科上の勘やセンスは必要なく、比較的、容易に作製することができる。このため汎用性の高い構造を有する部分義歯10およびその装着構造50であるといえる。
図31は、本実施の形態における部分義歯10およびその装着構造50を作製する方法を説明するためのフローチャートである。まず、部分義歯10の設計において、鉤歯となる自立歯等を設定する。次いで印象採得および咬合採得を行う。次いで鉤歯被覆体31を2つの部材31a,31bによって製造する。その製造の工程では、鋳造用の鋳型を作製し、金属を鋳込んで鉤歯被覆体の部材2つを製造する。鉤歯被覆体31の材料は、製造のし易さ、耐久性などから大抵の場合、金属がよく、その金属は通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金、ジルコニア等を用いることができる。中でも白金加金が最も望ましい。模型上の自立歯の豊隆部から根元側部分にその2つの部材が連続して周回するように固定して、鉤歯被覆体の原形を組み立てる。次いでミリングマシンにより、頂部側へと縮径するテーパーを付ける。テーパー角は0.5°以上6°以下とするのがよい。ただし、歯肉に近い部分はテーパー角ゼロでもよい、すなわちストレートであってもよい。部分義歯の嵌合体が嵌合して嵌合状態が安定する場合があるからである。鉤歯被覆体31a,31bの外面に付けるテーパーは、鋳型の雄型の段階でいちどミリングマシンにより付けておき、さらに鋳造された金属部材に対して、再度、ミリングマシンで仕上げのテーパーを形成するのがよい。これにより、高い寸歩精度を確保することができる。
ただし、ミリングマシンで先細りのテーパーを付けない場合もある。それは、実施の形態1、2に示したように、柱歯被覆体31によりアンダーカットuを形成する場合である。部分義歯の装着構造50の鉤歯被覆体31によって鉤歯Kにアンダーカットを形成する場合は少なくない。このアンダーカットuを鉤歯Kに形成する場合は、その部分に対してミリングマシンでテーパーを付けることはない。ただし、部分義歯10においてそのアンダーカットに嵌合するC字体と対をなすもう一つのC字体が嵌合する鉤歯については歯軸に沿ってそのもう一つのC字体が嵌合するので、ミリングマシンでテーパーを付けることになる。図31において、ミリングマシンでテーパーを形成する記述に括弧を付しているのは、このアンダーカットuを付ける鉤歯には適用しないことを示すためである。
鉤歯被覆体31a,31bを形成するとき、同じ機会に部分義歯10を作製する。すなわち部分義歯10に設ける指輪体等の嵌合体11を、同様に鋳型を作り鋳造により作製する。鉤歯被覆体の模型(雄型)に嵌合するように嵌合体の雄型を配置して、これに基づく鋳型により作製するので、鉤歯被覆体31a,31bの作製と同じ機会に嵌合体11を作製することができる。嵌合体11と部分義歯10の金属製の連結部25とは、金属ロウ付け、レーザー溶接などで連結することができる。人工歯16も連結部25に所定の方法で固定しながら、当該人工歯16の底部を義歯床35に埋設する。人工歯16を連結部25に固定する方法には、人工歯16の根元に横方向に貫通孔をあけて、この貫通孔を充填しながら通り抜ける義歯床35の材料であるレジンを用いる方法などがある。この方法によれば、レジンが人工歯16を貫通するレジン紐となって、義歯床35もしくは連結部25の周縁部に人工歯16を連結する。したがって人工歯16は義歯床35に固定されると言ってもよい。
上記の製造方法などから分かるように、部分義歯10において、嵌合体11と連結部25とは接合され、一体化された金属である。このため、連結部25は、図27、28に示すようにその周縁部のみを見ると、嵌合体11と一体物の金属部材のようには見えないが、実際は接合もしくは一体鋳造された金属部材である。周縁部も含めて連結部25であることは言うまでもない。この連結部25は、ブリッジにおける連結部25と同等物であり、一般に義歯装置10における連結部と同等の金属部材ということができる。
図31に示す製造方法により、患者に数週間も待たせることなく、短期間で、鉤歯K、部分義歯10およびその構造50が完成する。
すなわち鉤歯被覆体31a,31bを患者の自立歯1に固着して鉤歯Kを作製し、その鉤歯Kに、同じ機会に作製した部分義歯10を装着して微調整しながら、装着構造50を完成することができる。迅速な部分義歯の装着構造50の完成によって患者は長期間待たされることなく、数日で食物を食べる喜びを持つことができる。
図32は、本実施の形態における部分義歯10およびその装着構造50を作製する、図31の方法とは異なる別の方法のフローチャートである。鉤歯K(31)を形成するために自立歯1を決定し、削合するかしないか、削合する場合その程度はどの程度とするかなど、全体の概要をデザインする。このあと1回目の印象採得を行って、自立歯1の型をとり、鋳型を作製する。金属製の鉤歯被覆体31a,31bの雄型には、その外面に高精度のテーパー面が形成されるように、テーパー製作用の製造装置を用いるのがよい。出来た雄型を用いて金属製の鉤歯被覆体31a,31bを作製する。金属にはたとえば白金加金を用いるのがよい。また、上記したように外面にはテーパー角0.5°以上6°以下のテーパーを付ける。
鋳造して作製した鉤歯被覆体31a,31bを、歯科用切削機械等で成形加工して自立歯1を周回(完全周回または部分周回)させる形態にしたあと、セメントなどの接着剤を用いて自立歯1に固定する。咬合面1tはすでに形成しておいてもよいし、この後、微調整してもよい。いずれにしても咬合面1tはもとからある状態を基本にして、調整はほとんどしなくてよい。この段階が、図29(a)に石膏模型で示した状態に対応する。
このあと2回目の印象採得を行う。この印象採得によって、部分義歯10およびその嵌合体である指輪体11を製作することが可能になる。金属製の連結部25も合わせて製作する。これにより、連結部25、指輪体11、人工歯16の配置を調整するための中間段階の部分義歯を作製することができる。さらに部分義歯10全体の型を作製することが可能になる。
指輪体11の側面の厚みについても、従来のクラウン等の厚みの範囲にするのがよい。当然ながら、指輪体11については、鉤歯被覆体31a,31bの外面のテーパーに適合するように内面にテーパーを付ける。そして指輪体11の高さは、隣接する人工歯16の頂部より低くするのがよい。鉤歯の自立歯1の頂部1tにおける咬合を確保するためである。指輪体の根元側下部は、義歯床35の裏面に揃うようにする。鉤歯根元部に応力をかけて、歯根の周りのモーメントを小さくするためである。
このあと、連結部25、指輪体11、人工歯16などを型内に配置した上で、義歯床35となる樹脂に置き換えて部分義歯10を作製する。
図32に示す部分義歯の装着構造の製造方法は、鉤歯が奥歯である場合でも前歯である場合でも、用いることができる。
上記の製造方法は、製造方法の中の特別の一つである。本発明の部分義歯およびその装着構造は、必ずしも上記の特別の一つの製造方法で製造したものでなくてもよい。
(実施の形態7)
図33は、本発明の実施の形態7における部分義歯の装着構造50を示す図である。この部分義歯の装着構造50は、下顎に対するものである。特徴は、鉤歯が1本だけという点にある。すなわち鉤歯K1は、自立歯1(R)を基に形成されている。患者の自立歯1は右6番のみで、そのほかは全て部分義歯10に設けられた人工歯16である。
図34は、その右6番の自立歯1をもとに形成された鉤歯K1を示す図である。鉤歯被覆体は、実施の形態1と同様に2つの部材31a,31bにより形成されている。この鉤歯Kにおいても、自立歯1の頂部1tは鉤歯被覆体31a,31bから露出していて、咬合面は鉤歯被覆体を形成するよりも前からある咬合面をそのまま用いている。鉤歯被覆体31a,31bの形態は、実施の形態1におけるものと同じである。
図35は、図33に示した部分義歯の装着構造50における部分義歯10の鉤歯Kを含む周囲の部分拡大図である。指輪体11は、義歯床35の材料に周囲を取り囲まれていて、内周は見えるが外面は義歯床35に覆われて透けて見えるだけである。
本実施の形態により、1本の自立歯1(R)があれば、その自立歯1をもとに鉤歯Kを形成して、総入れ歯に匹敵するような、残りの歯がすべて人工歯16で形成される部分義歯10を形成できる、ことが分かる。
(実施の形態8)
図36(a)は、本発明の実施の形態8における部分義歯の装着構造50を示す図である。上顎の部分義歯の装着構造50である。本実施の形態では、鉤歯は、K〜Kの4つである。このうち、鉤歯Kは、正確には本発明の柱歯ということはできない。なぜならば鉤歯Kには、鉤歯被覆体が配置されていないからである。その意味で、鉤歯Kは、本発明における通常の嵌合部ではなく、補助的な補助嵌合部を形成するということができる。
補助嵌合部の鉤歯K,は、部分義歯の装着構造50に単独である場合はなく、必ず、他の鉤歯Kなどの補助という形で存在する。図36において、補助嵌合部は、鉤歯被覆体のない自立歯1(L)そのものの鉤歯Kに、C字体の嵌合体11が嵌合することで形成されている。また、鉤歯Kには、C字体の嵌合体11が嵌合して、通常の嵌合部を形成している。
図36において、ほかの2つの鉤歯K,Kには部分義歯10の指輪体11が嵌合する。この場合、鉤歯K,Kには自立歯1を完全周する鉤歯被覆体が2つの部材で形成される。
図36(b)は、鉤歯Kの部分拡大図である。実施の形態6,7における鉤歯と同様に、自立歯1(L)に鉤歯被覆体31aが周回され、その鉤歯被覆体に接するように指輪体11が嵌合されている。
これに対して、補助嵌合部の鉤歯Kは自立歯2(L)そのものであり、鉤歯被覆体はない。補助嵌合部は、鉤歯となる自立歯2が左1番の前歯であることが重要なポイントである。前歯は歯間が詰まっているため、前歯に完全周する鉤歯被覆体を設けることは難しいし、さらに指輪体のような嵌合体を嵌合させることも難しい。このため、前歯を鉤歯とする場合、この補助嵌合部のように、自立歯そのものとし、部分義歯10の嵌合体は、C字体11として舌側から嵌合する形態をとることになる。
図37(a)は、図36の部分義歯の装着構造50から部分義歯10を外したあとの鉤歯K〜Kを示す図である。このうち補助嵌合部の鉤歯Kは、図11(b)に示すように自立歯1(L)そのものである。一方、鉤歯Kについては、図37(c)に示すように、鉤歯被覆体を構成する2つの部材31a,31bによって自立歯3(R)が部分周されている。自立歯3の右3番は、いわゆる犬歯であり、この犬歯についても、指輪体のような嵌合体を嵌合させることは難しく、本実施の形態に示すように嵌合体は、C字体11とするのがよい。それは、自立歯の歯牙が隣どうし詰まっていて完全周する鉤歯被覆体を根元側に設けることが難しく、かつ指輪体のような嵌合体をその上に重ねて嵌合させることが難しいからである。すなわち前歯や犬歯の歯牙の形態のために、C字体の嵌合体11を採用することになる。
図38は、図36の部分義歯の装着構造50における部分義歯10を示し、その部分義歯10裏側から見た図である。鉤歯K,Kに対応する嵌合体11は指輪体であり、上記のように自立歯1,4は、それぞれ左6番(L)および右7番(R)の臼歯である。また、2つのC字体の嵌合体12は、それぞれ鉤歯K、および補助嵌合部の鉤歯Kに対応している。C字体の嵌合体11は、上記のように前歯Lおよび犬歯Rに嵌合する。
C字体の嵌合体11は、舌側(裏側)から前歯や犬歯に嵌合することができる。ただし、嵌合の際の部分義歯を移動させる方向は、主嵌合部があるので、それを考慮する必要がある。このため、歯軸方向(縦方向)に移動させて嵌合する場合が多い。しかしC字体の嵌合体を先に入れ込んで指輪体の嵌合体を後から落とし込むこともあり、この場合は、C字体の嵌合体11は、横方向に移動させて鉤歯に嵌合させる経路が容易である。もちろんC字体の嵌合体11を先に縦方向に移動させて鉤歯に嵌合させてもよい。指輪体の嵌合体11は、C字体の嵌合体11を支点にして回転しながら縦方向に沿って対応する鉤歯に嵌合することになる。
指輪体とC字体との組み合わせ、これらの嵌合体についての多種多様な着脱時の移動方向、これを利用して脱着の容易な部分義歯10を製造することができる。
このようなC字体の嵌合体、および、部分周する鉤歯被覆体31a,31bもしくは被覆体のない自立歯1そのもの、は、頬側に金属光沢がある部分が見えないので、審美上の点からも好ましい。
ここに至って、本発明における最後の特徴<F11>が明確になった。
<F11>:鉤歯被覆体は自立歯を部分周するタイプとし、嵌合体をC字体とすることで、前歯や犬歯を鉤歯とする部分義歯の装着構造が可能である。この場合、このタイプ単独で、部分義歯およびその装着構造を構成することができる。さらに、嵌合体はC字体とするが、鉤歯は自立歯そのものとする補助嵌合部を形成することで、前歯、犬歯を、やはり鉤歯とすることができ、装着を安定化することができる。
(実施の形態9)
図39は、本発明の実施の形態9の義歯装置の装着構造における柱歯Kを示し、(a)は柱歯被覆体31a,31bで被覆された状態、(b)は一方の柱歯被覆体を外した状態、(c)は外した一方の柱歯被覆体31aを示す、図である。本実施の形態では、柱歯被覆体31a,31bの形態にポイントがある。図39によれば、柱歯被覆体31a,31bは残存歯1を全周するが、2つの柱歯被覆体どうしが当たる線もしくは面は、屈曲しており、一方の凸部の先が他方の凹部に食い込んでいる。これまでの実施の形態では2つの柱歯被覆体どうしが当たる線もしくは面は1本の直線であった。しかし、本実施の形態では、図39に示すように、一方の凸部の先が他方の凹部に食い込む形態をとる。
本実施の形態の柱歯被覆体31a,31bの形態の利点は、残存歯1の周りで柱歯被覆体31a,31bの位置がずれを生じる余地がなく、ピタリと決まる点にある。さらに、柱歯被覆体31a,31bの残存歯1への固定の安定度を大きく向上することができる。これは柱歯被覆体31a,31bが相互に食い込んでいるため、相互に相手の動きを封じる作用があるからと思われる。
図40は、図39の鉤歯Kに、連結部25に連結した指輪体11を嵌合した状態を示す図である。指輪体等の嵌合体11を含む部分義歯については、これまでの実施の形態の部分義歯と同様である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明によれば、削合を画期的に減らし、または削合しないことにより、柱歯(支台歯、鉤歯)への負担を軽減しながら、耐久性が高く、噛み合わせ調整を簡単にできる、小型化した義歯装置(ブリッジ、部分義歯)の装着構造等を得ることができる。とくに前歯や犬歯を鉤歯とする場合、C字体の嵌合体を用いることで、円滑な嵌合を実現することができる。また、上記の特徴を備えた、部分義歯とブリッジとを融合して両者の区別がなくなるような新たな概念の義歯装置を得ることができる。
1,2など 自立歯、1t,2tなど 自立歯の頂部(咬合面)、8 顎堤、10 義歯装置、11 義歯装置の嵌合体(C字体、複合C字体、指輪体)、11t 嵌合体の上面、16 人工歯、20 豊隆部、22 床、22b 床の底面、25 金属製の連結部、31 柱歯被覆体、31a,31b 柱歯被覆体の部材、35 義歯床、50 義歯装置の装着構造、K,K,など 柱歯(鉤歯、支台歯)、M 石膏模型、T 鉤歯被覆体外面のテーパー。C 頬側または唇側、T 舌側、u 柱歯被覆体のアンダーカット部、r 嵌合体の下側接触面、s 嵌合体の上側接触面、g 嵌合体の外面。

Claims (13)

  1. 人工歯および嵌合体を含む義歯装置と、該義歯装置の嵌合体が嵌め合わされる柱歯(鉤歯または支台歯)と、を備える義歯装置の装着構造であって、
    前記柱歯は、当該柱歯のもととなる自立歯の少なくとも根元側部分に固定された柱歯被覆体を有し、
    該柱歯被覆体は、1つまたは2つの金属部材により部分的に、又は2つの金属部材により全周するように、前記自立歯を覆っており、
    前記義歯装置の嵌合体は、金属製であり、前記柱歯被覆体に接するように嵌め合わされ、かつ前記自立歯の頂部が該嵌合体の上端より高い位置にあることを特徴とする、義歯装置の装着構造。
  2. 前記義歯装置は金属製の連結部を有し、前記嵌合体と該連結部とは、接合された金属一体物であるか、又は、一体鋳造された一体鋳造物であることを特徴とする、請求項1に記載の義歯装置の装着構造。
  3. 前記義歯装置の嵌合体が、{前記連結部の端に位置するC字体(C字体)、2つのアーム間に前記連結部が介在する変形C字体(変形C字体)、および前記連結部の端に位置する指輪体(指輪体)}のいずれか一つであることを特徴とする、請求項2に記載の義歯装置の装着構造。
  4. 前記義歯装置の嵌合体が、前記C字体または前記変形C字体である場合において、前記柱歯には、前記柱歯被覆体によって当該柱歯の根元側にアンダーカットが形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の義歯装置の装着構造。
  5. 前記義歯装置の嵌合体が、前記指輪体である場合において、前記柱歯には、前記柱歯の頂部に向かって縮径するテーパーが付いているか、又はストレートであることを特徴とする、請求項3に記載の義歯装置の装着構造。
  6. 前記義歯装置の嵌合体が前記変形C字体である場合において、前記柱歯被覆体は、1本の前記自立歯に固定された前記金属部材であるか、又は連続する複数の自立歯にわたって各自立歯に部分的に固定された前記金属部材であることを特徴とする、請求項3または4に記載の義歯装置の装着構造。
  7. 前記柱歯のもととなった自立歯の頂部が削合されていないことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の義歯装置の装着構造。
  8. 前記義歯装置には、前記人工歯を補強するように補強樹脂が該人工歯と前記連結部との間の間隙を埋めるように配置され、歯軸の方向に沿って見て、前記人工歯から張り出して顎堤粘膜に密着する部分である樹脂製の義歯床が無いことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の義歯装置の装着構造。
  9. 人工歯および嵌合体を備え、該嵌合体が柱歯に嵌合される義歯装置であって、
    前記嵌合体が金属製であり、該嵌合体と一体化した金属製の連結部を備え、
    前記嵌合体が、{前記連結部の端に位置するC字体(C字体)、2つのアーム間に前記連結部が介在する変形C字体(変形C字体))、および前記連結部の端に位置する指輪体(指輪体)のいずれか一つであり、
    前記人工歯が前記連結部に支持されていることを特徴とする、義歯装置。
  10. 前記連結部は、歯列に沿うように延在しており、該延在している部分から歯軸方向に突き出る、前記架工歯よりも細い径の棒状部を有し、前記架工歯は該棒状部に支持されていることを特徴とする、請求項9に記載の義歯装置。
  11. 前記連結部、前記支持された状態の(連結部/該人工歯)を覆うように、補強樹脂が配置されていることを特徴とする、請求項9または10に記載の義歯装置。
  12. 前記義歯装置には、前記人工歯の歯軸の方向に沿って見て、前記人工歯から張り出して顎堤粘膜に密着する部分である樹脂製の義歯床が無いことを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の義歯装置。
  13. 前記嵌合体がC字体または変形C字体である場合、該嵌合体が前記柱歯に接する面において、該柱歯の根元側に接する部分の下側接触面は、前記柱歯の頂部側に接する部分である上側接触面に対して傾斜して、該柱歯の芯へと近づくように下方に延びていることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか1項に記載の義歯装置。
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