本発明は、作業車両、特に、エンジン上方に排気ガス後処理装置を備えた作業車両に関する。
作業車両には排気ガス後処理装置が搭載されている。排気ガス後処理装置は、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる煤等の粒子状物質を捕集して除去するディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を含んでいる。このディーゼル微粒子捕集フィルタ装置はエンジンの上部にエアクリーナと並べて配置されている。また、排気ガスをより浄化するために、排気ガス中のNOxを除去する窒素酸化物還元触媒装置が設けられる場合がある。窒素酸化物還元触媒装置はディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気下流側に設けられる。
前述のように、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置はエンジンの上部にエアクリーナ等とともにエンジンに直接支持されている。したがって、さらに窒素酸化物還元触媒装置を追加する場合は、エンジン上部において、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気下流側に配置することになる。
しかし、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置に加えて窒素酸化物還元触媒装置をエンジンに搭載すると、これらを合わせた重量は非常に重くなり、またエンジン全体の重心が高くなる。このため、エンジンの振動が大きくなり、好ましくない。
そこで、特許文献1に示されるように、車体フレームにテーブルを設け、このテーブルにディーゼル微粒子捕集フィルタ装置及び窒素酸化物還元触媒装置を搭載する構成が提案されている。
ここで、エンジンは一般的にゴムマウントによって車体フレームに支持されている。一方で、特許文献1に示されたテーブルは、車体フレームに直接固定されている。したがって、エンジンとは別に設けられたテーブルに排気ガス後処理装置を搭載した場合、エンジン側の振動とテーブルに搭載された排気ガス後処理装置側の振動とが異なる。このような振動の違いは、特許文献1にも示されているように、エンジンの排気部とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置との間に設けられたフレキシブル配管によって吸収されることになる。
しかし、特許文献1に示されるようなフレキシブル配管では、両者の振動の違いを十分に吸収することはできない。この点について、以下により詳細に説明する。
エンジンの排気部とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置とを接続する配管は、コスト及び部材の占有スペースを考慮すると、短い方が好ましい。このため、特許文献1では、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を、その排気ガス導入口がエンジンの排気部に対向するように配置して両者の間の距離を短くし、これらの間をフレキシブル配管によって接続している。
以上のように、特許文献1に示された構成では、フレキシブル配管が短く、可撓性の部分を十分に長く確保することができない。このため、前述のようなエンジン側の振動と排気ガス後処理装置側の振動との違いを十分に吸収することができない。
また、特許文献1の構成では、エンジンと排気ガス後処理装置とがそれぞれ別に車体フレームに支持されることになるので、両者を組み付ける際に組付誤差が生じる。しかし、特許文献1のフレキシブル配管では、前述と同様の理由によって、エンジン側と排気ガス後処理側との組付誤差を十分に吸収することは困難である。
本発明の課題は、エンジンとは別に設けられた支持機構に排気ガス後処理装置を搭載するようにした作業車両において、エンジン側と排気ガス後処理側との振動の違いや両者の組付誤差を十分に吸収できるようにすることにある。
本発明の第1側面に係る作業車両は、車体フレームと、車体フレームに搭載されたエンジンと、車体フレームに固定された支持機構と、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置と、接続配管と、を備えている。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置は、エンジンの上方において支持機構に搭載され、後方に向いた排気ガス導入口を有する。接続配管は、排気上流側の端部がエンジンの排気部に連結され、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の下方において排気上流側端部からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の後方に延びる延長部を有するとともに、排気下流側端部が後方からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口に連結され、延長部に可撓性管部を有する。
ここでは、エンジンとは別に設けられた支持機構が車体フレームに固定されており、この支持機構にディーゼル微粒子捕集フィルタ装置が搭載されている。このため、エンジンとディーゼル微粒子捕集フィルタ装置とは別の振動系で振動することになる。そこで、エンジンとディーゼル微粒子捕集フィルタ装置とを可撓性管部を有する接続配管によって接続し、可撓性管部によって両者の振動の違いを吸収するようにしている。
ここで、前述のように、エンジンとディーゼル微粒子捕集フィルタ装置とを接続する従来のフレキシブル配管では、配管全体の長さが短く、可撓性の部分を十分に確保することができない。
そこで本発明では、接続配管をエンジンの排気部からいったんディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を越えて後方に延長し、その端部をディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口に後方から連結するようにしている。このような構成では、接続配管を十分に長くすることができる。このため、エンジンの排気部からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を越えて延びる延長部に比較的長い可撓性管部を形成することができ、エンジンとディーゼル微粒子捕集フィルタ装置との振動の違いを十分に吸収することができる。また、同様の理由により、エンジン側とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置側の組付誤差も十分に吸収することができる。
本発明の第2側面に係る作業車両は、第1側面の作業車両において、接続配管は、後方からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口に向かって延びる下流側部と、延長部の後方端部と下流側部とを接続する連絡部と、を有する。
ここでは、接続配管は、エンジンの排気部からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の下方を通過して後方に延び、さらに上方に延び、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口に後方から連結されている。したがって、前述のように、エンジンの排気部からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の下方を通過する部分を長く確保でき、この部分に十分に長い可撓性管部を形成することができる。
本発明の第3側面に係る作業車両は、第2側面の作業車両において、接続配管は、上流側配管と、下流側配管と、を有している。上流側配管は、排気上流側の端部がエンジンの排気部に連結されるとともに、排気上流側端部から後方に延び、排気下流側が上方に屈曲して形成されて排気下流側端部が上方に開口している。下流側配管は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口に連結された第1管部と、第1管部と所定の角度を有し上流側配管の排気下流側端部に連結された第2管部と、を有する。そして、延長部は上流側配管に設けられ、下流側部は下流側配管の第1管部を含み、連絡部は上流側配管の排気下流側部分と下流側配管の第2管部とを含む。
ここでは、接続配管が上流側配管と下流側配管とから構成されている。このため、両配管の連結部においてもエンジン側とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置側との組付誤差を吸収することができる。特に、下流側配管は、いわゆるエルボ配管であるため、横及び縦方向の組付誤差の許容範囲を広くすることができる。また、エルボ配管を使用しているために、下流側配管が後方に突出するのを抑えることができ、特に振動吸収に不要な部分の占有スペースを小さくすることができる。
本発明の第4側面に係る作業車両は、第3側面の作業車両において、上流側配管は排気上流側端部及び排気下流側端部に球面ジョイントを有する。
ここでは、上流側配管の両端に球面ジョイントが設けられているので、エンジン側とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置側の組付時の角度誤差を容易に吸収することができる。
本発明の第5側面に係る作業車両は、第3又は第4側面の作業車両において、上流側配管の可撓性管部の排気下流側部分を支持機構に固定するための固定部材をさらに備えている。
ここでは、エンジン側に設けられた上流側配管の可撓性管部の排気下流側部分(すなわち後方部分)が固定部材によって支持フランジに固定されている。したがって、振動吸収等の作用を妨げることなく、上流側配管を確実に支持できる。
本発明の第6側面に係る作業車両は、第5側面の作業車両において、固定部材は、支持機構に固定された固定プレートと、上流側配管の延長部の排気下流側部分を固定プレートに固定するU字金具と、を有する。
ここでは、U字金具を着脱することによって、上流側配管を容易に着脱することができる。
本発明の第7側面に係る作業車両は、第1から第6側面のいずれかの作業車両において、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の前方において支持機構に搭載され、排気ガス中の窒素酸化物を還元する窒素酸化物還元触媒装置をさらに備えている。
ここでは、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置に加えて窒素酸化物還元触媒装置が設けられている。この場合は、排気ガス後処理全体の重量が増加し、振動が非常に大きくなる。
このような状況では、本発明のように接続配管を長くし、十分な可撓性管部を設けることによって、特に有効に振動吸収を抑えることができる。
本発明の第8側面に係る作業車両は、第7側面の作業車両において、接続配管の前端はディーゼル微粒子捕集フィルタ装置と窒素酸化物還元触媒装置との間に位置している。
ここで、例えばエンジンの排気部が窒素酸化物還元触媒装置より前方に位置している場合は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口をエンジン排気部に対向させても、エンジン排気部と排気ガス導入口との間の距離は比較的長くなる。したがって、この場合は、接続配管において可撓性部分を長く形成することができ、本発明のように接続配管をディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の後方まで延ばす必要性は小さくなる。
しかし、この第8側面に係る作業車両のように、接続配管の前端が窒素酸化物還元触媒装置とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置との間に位置するような状況では、前述のように、接続配管の延長部、すなわち可撓性管部を十分に長く確保することができない。したがって、接続配管と窒素酸化物還元触媒装置及びディーゼル微粒子捕集フィルタ装置との位置関係が以上のような場合に、本発明は特に有効である。
本発明の第9側面に係る作業車両は、第7側面の作業車両において、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口は、車両の左右方向においてエンジンの排気部と同じ側に設けられている。
ここでは、接続配管の延長部を長く確保しつつ、全体の長さが不必要に長くなるのを防止できる。
本発明の第10側面に係る作業車両は、第7から第9側面のいずれかの作業車両において、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置は、排気ガス導入口とは逆側の端部に前方に向かって排気ガス導出口を有し、内部を排気ガスが車両の左右方向に流れるように配置されている。また、窒素酸化物還元触媒装置は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置と同様に排気ガスが流れるように、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置が配置された方向と同じ方向に沿って配置されている。
以上のような本発明では、エンジンとは別に設けられた支持機構にディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を搭載するようにした作業車両において、エンジン側とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置側との振動の違いや両者の組付誤差を十分に吸収することができる。
本発明の作業車両の一実施形態であるホイールローダの外観斜視図。
図1のホイールローダを左前方から見た外観斜視部分図。
図1のホイールローダの車体カバーを取り外した状態の側面部分図。
エンジン及びトランスミッションの搭載状態を示す図。
排気ガス後処理装置及び支持機構を示す斜視図。
支持機構の分解斜視図。
支持機構に取付けられるシムを示す図。
接続配管の外観斜視図。
フランジ接続部の調整機能を説明するための模式図。
エアクリーナの配置を示す平面図。
エアクリーナとドアの関係を示す図。
エアクリーナのメンテナンス作業の様子を示す図。
本発明の作業車両の一実施形態であるホイールローダ1の外観斜視図を図1に示している。また、図2はホイールローダのキャブの左側方の一部を示したものである。
ここで、以下の説明における「前方」は車両の前方を、「後方」は車両の後方を示している。また、「左方向」及び「右方向」は、それぞれ車両の前方に向かって車両の左方向、右方向を意味する。
[全体構成]
ホイールローダ1は、車体フレーム2、作業機3、前輪4、後輪5、キャブ6を備えている。このホイールローダ1は、前輪4、後輪5が回転駆動されることにより自走可能であり、作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。
車体フレーム2は前車体部及び後車体部を有しており、前車体部と後車体部とは互いに左右方向に揺動可能に連結されている。前車体部には、作業機3及び前輪4が設けられている。後車体部には、後輪5及びキャブ6が設けられている。作業機3は、前車体部の前方に配置されており、バケット7及びバケットシリンダ8等を有している。前輪4及び後輪5のそれぞれの上方及び後方には、フェンダ4a,5aが設けられている。キャブ6の内部には運転室6aが設けられるとともに、各種の操作部材や操作盤が設けられている。
また、図2に示すように、キャブ6の左側方には、キャブ6に対して乗降するためのステップ10が設けられている。ステップ10は後輪用フェンダ5aの前方に配置されている。なお、キャブ6には、後方がキャブ本体6bにヒンジによって支持され、前方が開閉可能なドア11が設けられている。このドア11は、キャブ本体6bの外側部に設けられたストッパ12によって最大開度が規制されている。詳細は後述するが、左側の後輪用フェンダ5aの上部にはエアクリーナ13が配置されている。このエアクリーナ13によって、エンジン15に取り込まれるエアから異物が取り除かれ、浄化される。
図3は、キャブ6の後方の車体カバー9(図1)を取り外し、車両の左側方から後車体部を見た図である。この図に示すように、後車体部の後部には、エンジン15と、エンジン15の後方に配置された冷却ユニット16と、支持機構17と、エンジン15の上方において支持機構17に搭載された排気ガス後処理装置18と、が配置されている。また、キャブ6とエンジン15との間には作動油タンク19が配置されている。
エンジン15は、いわゆる縦置きであり、クランク軸が前後方向に延びるように配置されている。エンジン15は、図4に示すように、トランスミッション20とボルトで固定されて一体構造となっている。そして、このエンジン15とトランスミッション20とが、4個所のゴムマウント21を介して車体フレーム2に支持されている。
また、図3に示すように、エンジン15の左側には排気ガスによって吸気を過給するターボチャージャー22が設けられている。ターボチャージャー22は、排気ガス出口が後方に向くように設けられている。そして、ターボチャージャー22と排気ガス後処理装置18との間に接続配管23が設けられている。また、ターボチャージャー22とエアクリーナ13との間には樹脂あるいはゴムで形成された可撓性の吸気管24が設けられている。この吸気管24によって、エンジン15とエアクリーナ13との振動の違いが吸収される。
[支持機構17]
図5は、図3の一部を後方から見た斜視図である。また、図6は支持機構17を分解して示す斜視図である。これらの図に示すように、支持機構17は、車体フレーム2にボルトによって直接固定されており、前支持フレーム26と、後支持フレーム27と、ベースプレート28と、から構成されている。より詳細には、図5に示すように、後車体部の左右両側には、それぞれ前後方向に延びるサイドフレーム2a,2bが設けられている。この左右のサイドフレーム2a,2bの車体内側において、前後にブラケット29が設けられ、各ブラケット29に前支持フレーム26と後支持フレーム27とが固定されている。
前支持フレーム26は、左右の側部30,31と、天板部32と、連結部33と、を有している。左右の側部30,31のそれぞれは、前方部分にほぼ半円状の切欠き部30a,31aを有する矩形状に形成されている。また、左右の側部30,31プレートは、下端部に外側に張り出して形成された取付部30b,31bを有している。この取付部30b,31bが複数のボルト34によって左右のサイドフレーム2a,2bの内側に設けられたブラケット29に固定されている。天板部32は左右の側部30,31の上部を連結するように設けられている。この天板部32の上面には作動油タンク19が搭載されている。すなわち、前支持フレーム26は作動油タンク19を支持するための台座でもある。連結部33は左右の側部30,31の後部を連結している。連結部33の左右方向の中央部は天板部32の上面よりさらに上方に突出しており、前支持部35を形成している。なお、前支持部35の左右方向の幅は、天板32の左右方向の幅より短く形成されている。
後支持フレーム27は、左右の支柱37,38と、上梁39と、後支持部40と、を有している。左右の支柱37,38は下端部に取付部37a,38aを有している。取付部37a,38aは、側方視で略三角形状であり、下端は内側に張り出して形成されている。この内側に張り出した部分が複数のボルト41によって左右のサイドフレーム2a,2bの内側に設けられたブラケット29に固定されている。上梁39は左右の支柱37,38の上部を連結しており、後支持部40は上梁39の左右方向の中央部に設けられている。後支持部40は、上梁39からさらに上方に突出しており、前支持フレーム26の前支持部35と同じ高さに形成されている。
このような後支持フレーム27では、後支持部40が上梁39より上方に突出し、かつ左右方向の幅が上梁39より短いので、後支持部40の左右方向には、部材を配置するためのスペースS1,S2が形成されている。この実施形態では、図3に示すように、接続配管23の一部や、冷却ユニット16に接続される配管42a,42bがスペースS1,S2を利用して配置されている。
ベースプレート28は前支持フレーム26の前支持部35と後支持フレーム27の後支持部40との間に設けられている。ベースプレート28は、矩形状であり、左右方向の幅は、前支持部35及び後支持部40の幅とほぼ同じに形成されている。
また、図7に示すように、ベースプレート28の下面と後支持部27の後支持部40の上面との間には、左右方向の2個所において、シム43を装着することが可能である(図7では一方のみを示している)。このシム43は、排気ガス後処理装置18が搭載されたベースプレート28を後支持フレーム27の後支持部40に固定する際に、排気ガス後処理装置18と接続配管23との高さ調整をするためのものである。シム43は、矩形状であって、左右方向の両端部に一方側が開放された1対の切欠き43aを有し、この1対の切欠き43aの間に貫通孔43bを有している。
このシム43は後支持部40の上面にボルト44によって固定されている。ベースプレート28には、ボルト44が設けられている位置に、ボルト44の頭部の径よりも大径の孔28aが形成されている。この孔28aによってベースプレート28とボルト44との干渉を避けることができる。したがって、シム43を後支持部40に固定したままベースプレート28を着脱することができる。
なお、シム43は、種々の厚みのものが用意されており、1枚のシム43あるいは複数のシム43を組み合わせて使用することによって、高さの調節を行うことが可能である。
[排気ガス後処理装置18]
図5及び図6に示すように、排気ガス後処理装置18は、エンジン15側の排気上流側(以下、単に「上流側」と記す)から順に、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45と、接続管48と、窒素酸化物還元触媒装置47と、を備えている。接続管48には尿素水溶液ミキシング装置46が取り付けられている。
ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45は、排気ガス中の煤等の粒子状物質を捕集するものであり、支持機構17のベースプレート28の後部に搭載されている。尿素水溶液ミキシング装置46は、図示しない尿素水溶液タンクから、やはり図示しないポンプによって吸い上げられた尿素水溶液を噴射し、排気ガス中に還元剤としての尿素水溶液を添加するものである。添加された尿素水溶液は加水分解されてアンモニアとなり、アンモニアは排気ガスとともに接続管48を介して窒素酸化物還元触媒装置47に供給される。窒素酸化物還元触媒装置47は、尿素水溶液ミキシング装置46からのアンモニアが還元剤として使用されて、排気ガス中の窒素酸化物を還元浄化する。窒素酸化物還元触媒装置47はディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45と同様に支持機構17のベースプレート28の前部に搭載されている。なお、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45と窒素酸化物還元触媒装置47とは、それぞれ別の取付プレートを介してベースプレート28に固定されている。
ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45及び窒素酸化物還元触媒装置47は、それぞれ並列に配置されている。具体的には、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45及び窒素酸化物還元触媒装置47は、共に円筒形状であり、中心軸が左右方向に互いに平行に延びるように配置されている。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導入口45aは、左端部に設けられ、その開口は後方を向いている。また、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導出口45bは、右端部に設けられ、その開口は前方を向いている。窒素酸化物還元触媒装置47の排気ガス導入口47aは、左端部に設けられ、その開口は後方を向いている。また、窒素酸化物還元触媒装置47の排気ガス導出口47bは、右端部に設けられ、その開口は後方で斜め上方を向いている。そして、接続管48がディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導出口45bと窒素酸化物還元触媒装置47の排気ガス導入口47aとの間に配置されている。
接続管48は、図5及び図10に示すように、第1屈曲部48aと、直線部48bと、第2屈曲部48cと、を有し、全体としてS字状に形成されている。第1屈曲部48aはディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導出口45b近傍に位置し、第2屈曲部48cは窒素酸化物還元触媒装置47の排気ガス導入口47a近傍に位置している。直線部48bは、第1屈曲部48aと第2屈曲部48cとの間に位置し、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45と窒素酸化物還元触媒装置47と並列して配置されている。
そして、尿素水溶液ミキシング装置46は、第1屈曲部48aに設けられており、接続管48内に尿素水溶液を噴射する。噴射された尿素水溶液は長い直線部48bを通過する際に、排気ガスと均等に混じり合うことになる。
なお、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45及び窒素酸化物還元触媒装置47の左右方向の長さはベースプレート28の左右方向の幅よりも長く形成されている。
[接続配管23]
接続配管23を図8に拡大して示している。接続配管23は、上流側配管51と、下流側配管52と、を有している。
上流側配管51は、配管本体54と、配管本体54の両端に設けられた前フランジ55及び後フランジ56と、を有している。また、配管本体54と前後のフランジ55,56との間には球面ジョイント57が構成されている。
配管本体54は、ステンレス製であり、前方から後方に延びる直線状の延長部54aと、延長部54aの後端部を上方に屈曲して形成された屈曲部54bと、を有している。延長部54aには、蛇腹状に形成された2つの可撓性管部54c,54dが形成されている。前後のフランジ55,56はそれぞれ、矩形状の接続端面55a,56aと、接続端面55a,56aから延びる管部55b,56bと、を有している。前フランジ55の接続端面55aはターボチャージャー22の排気ガス導出口に連結されている。また、後フランジ56の接続端面56aは下流側配管52に連結されている。
球面ジョイント57としては、例えば米国特許公開公報第2011/0074150号に開示されている公知の技術を利用すればよい。
また、図8に示すように、上流側配管51は、固定プレート60及びU字金具61を介して後支持フレーム27の左支柱37に固定されている。固定プレート60は、L字形状であり、下辺が左支柱37の上部に固定されている。そして、この固定プレート60の縦辺に、配管本体54の可撓性管部54dの後部(排気下流側)を抱え込んだU字金具61の両端がナット62によって固定されている。
下流側配管52は、90°エルボであり、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45に連結される第1管部64と、この第1管部64に直交する第2管部65と、を有する。第2管部65は上流側排管51の屈曲部54bとともに、接続配管23の下部と上部とを連絡する連絡部を構成している。
第1管部64の排気下流側端部にはフランジ64aが形成され、フランジ64aはディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導入口45aに連結されている。また、第2管部65の排気上流側端部にはフランジ65aが形成され、フランジ65aは上流側配管51の後フランジ56の接続端面56aに連結されている。
なお、図9に模式的に示すように、フランジF(各フランジの総称)の連結において、一方又は両方のフランジFのボルト貫通孔Hは、連結用ボルトBの径よりも大径に形成されている。このため、排気ガス後処理装置18をベースプレート28に搭載してサブユニット化し、このサブユニットを後支持フレーム27に固定された接続配管23に組み付ける際に、排気ガス後処理装置18側と接続配管23側との位置関係に誤差がある場合でも、組付誤差を吸収することができる。すなわち、このフランジFの組付構造が組付位置を調整する調整機構として機能している。
[エアクリーナ13]
エアクリーナ13及びその配置について、図2及び図11を用いて説明する。エアクリーナ13は、エンジンルームの外部であって、後輪用フェンダ5aの上部に設けられている。ここで、後輪用フェンダ5aは、フェンダ前部5bと、フェンダ前部5bに締結されたフェンダ後部5cと、から構成されている。フェンダ前部5bは、水平部分と、水平部分から前方かつ下方に傾斜する傾斜部分と、から構成されている。また、フェンダ後部5cは、側面視で円弧状に形成されており、後輪5の上方及び上方後部を覆っている。そして、エアクリーナ13はフェンダ前部5bの水平部分に搭載されている。
図2に示されるように、エアクリーナ13は一部を除いて、車体カバー9の外側に設けられたエアクリーナカバー70によって覆われている。図11は、車体カバー9及びエアクリーナカバー70を取り外した状態のエアクリーナ13及びそれに関連する部分の平面図である。
図2及び図11に示されるように、エアクリーナ13は円筒形であって、上部にはエア取入口13aを覆うキャップ71が設けられ、前端部には蓋13bが開閉自在に設けられている。また、エアクリーナ13の内部にはフィルタ72が着脱自在に配置されている。そして、エアクリーナカバー70は、エア取入口13a、キャップ71、及び蓋13bが装着された前端部を除いて、エアクリーナ13の大半を覆っている。なお、フィルタ72は、蓋13bを開けて斜め前方に引き抜くことによって、メンテナンス及び交換が可能である。
次に、エアクリーナ13の配置について詳細に説明する。
図11に示すように、エアクリーナ13は、後輪用フェンダ5aのフェンダ前部5bの上部であって、キャブ6の後部側方に配置されている。より詳細には、エアクリーナ13の前部はステップ10の後方かつキャブ6の後端部の側方に位置し、後部は作動油タンク19の前部の側方に位置している。また、エアクリーナ13の中心軸Cは、ほぼ水平であって、前方が後方に比較してキャブ6からより離れるように、車両の前後に延びる中心軸に対して傾斜している。なお、前述のように、フィルタ72はこの中心軸Cに沿って前方に取り出すことが可能である。
また、前述のように、キャブ6には、ドア11の最大開度を規制するためのストッパ12が設けられており、図12に示すように、エアクリーナ13の前端部は、ドア11がストッパ12に当接するまで最大に開けられた場合でも、ドア11と干渉しない位置に配置されている。
以上のようなエアクリーナ13の配置によって、図12に示すように、作業者はステップ10に乗り、エアクリーナ13の蓋13bを開けてフィルタ72のメンテナンス又は交換作業を容易に行うことができる。
[エア・排気ガスの流れ]
図3に示すように、エアは、エアクリーナ13から導入され、吸気管24及びターボチャージャー22を経由してエンジン15に供給される。また、エンジン15からの排気ガスは、ターボチャージャー22を駆動した後、接続配管23を介して排気ガス後処理装置18に導入される。
排気ガス後処理装置18では、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45によって煤等の粒子状物質が捕集される。その後、尿素水溶液ミキシング装置46に導入される。この尿素水溶液ミキシング装置46では、排気ガス中に尿素水溶液が噴射され、排気ガスと尿素水溶液とが混合される。これにより、尿素水溶液は排気ガスの熱及び排気ガス中の水蒸気によって加水分解されてアンモニアとなる。このようにして生成されたアンモニアは、排気ガスとともに接続管48を介して窒素酸化物還元触媒装置47に供給される。そして、この窒素酸化物還元触媒装置47においては、アンモニアが還元剤として使用されて、排気ガス中の窒素酸化物が還元浄化される。
[排気ガス後処理装置18の着脱]
ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45は所定時間ご毎に車両から取り外してメンテナンスが必要である。そこで、排気ガス後処理装置18の組付及びメンテナンスが容易になるように、排気ガス後処理装置18はベースプレート28とともにサブユニット化されている。このサブユニットを支持機構17に組み付ける際には、まず、接続配管23をエンジン15及び支持機構17に固定しておく。
具体的には、上流側配管51の前フランジ55をターボチャージャー22の排気ガス導出口に連結するとともに、固定プレート60及びU字金具61によって配管本体54の可撓性管部54dのさらに排気下流側を支持機構17に固定する。ここで、上流側配管51をターボチャージャー22に連結する際には、排気上流側の球面ジョイント57を仮止めした状態で両者を連結する。また、U字金具61についても仮止めした状態にしておく。
次に、上流側配管51に下流側配管52を連結する。なお、上流側配管51と下流側配管52とは、上流側配管51をターボチャージャー22に連結する前に連結しておいてもよい。このとき、前記同様に、排気下流側の球面ジョイント57を仮止めした状態で、両者のフランジ56,65aを連結する。
以上のようにして接続配管23をエンジン15及び支持機構17側に固定した状態で、サブユニットを支持機構17に支持させる。サブユニットを支持機構17に組み付ける際には、シム43によって両者の高さを調整し、また下流側配管52の両端部のフランジ64a,65aの組付を調整することによって前後、上下及び左右方向の調整を行う。さらに、上流側配管51の両端部の球面ジョイント57によって両者の角度調整を行う。なお、シム調整は、出荷前にメーカ側で調整するので、メンテナンス時に調整することはほとんどない。
以上の調整を行うにあたって、接続配管23の上流側配管51には比較的長い可撓性管部54c,54dが設けられているので、この可撓性管部54c,54dによって組付誤差を吸収することも可能である。
以上のようにして、サブユニットとエンジン15及び支持機構17側の位置が適切に調整されると、仮止めしていた各部を確実に固定し、組付作業を終了する。
排気ガス後処理装置18が組み付けられた状態では、エンジン15及びトランスミッション20はゴムマウント21によって車体フレーム2に搭載され、排気ガス後処理装置18は支持機構17によって車体フレーム2に直接搭載されている。このため、運転状態では、エンジン15側の振動と排気ガス後処理装置18側の振動とが異なることになる。
しかし、接続配管23の延長部54aに、比較的長い可撓性管部54c,54dが形成されているために、両者の振動の違いを十分に吸収することができる。したがって、エンジン15の振動を抑えることができる。
[エアクリーナ13のメンテナンス]
エアクリーナ13においては、所定期間毎にフィルタ72の清掃又は交換作業が必要になる。このとき、フィルタ72をエアクリーナ13から取り外す必要がある。
エアクリーナ13からフィルタ72を取り外す場合は、図13に示すように、作業者はステップ10に乗り、エアクリーナ13の蓋13bを開ける。そして、エアクリーナ13からフィルタ72をエアクリーナ13の中心軸Cに沿って前方に抜き出せばよい。このとき、エアクリーナ13は前方側が後方側に比較してキャブ6から離れるように傾斜しているので、フィルタ72の引き抜き作業が容易になる。
[特徴]
(1)接続配管23を、ターボチャージャー22からいったんディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45を越えて後方に延長し、その端部を上方に湾曲させ、さらにディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導入口45aに後方から接続するようにしている。このため、接続配管23の延長部54aを十分に長くすることができ、この延長部54aに比較的長い可撓性管部54c,54dを形成することができる。したがって、この長い可撓性管部54c,54dによってエンジン15と排気ガス後処理装置18の振動の違いを十分に吸収することができる。
(2)接続配管23を上流側配管51と下流側配管52とで構成しているために、両配管51,52の各連結部において位置ずれを許容するための構成を採用することができる。したがって、前述のような可撓性管部54c,54dと併せて、各連結部によってエンジン15側と排気ガス後処理装置18側の組付誤差も十分に吸収することができる。
(3)上流側配管51の両端部には球面ジョイント57が設けられているので、上流側配管51の可撓性管部54c,54dと併せて、エンジン15側と排気ガス後処理装置18の角度誤差を容易に吸収することができる。
(4)接続配管23を構成する上流側配管51の可撓性管部54c,54dの排気下流側(後方部分)が固定プレート60及びU字金具61によって支持機構17に固定されている。したがって、振動吸収等の作用を妨げることなく、接続配管23を確実に固定することができる。
(5)エンジン15の左側にターボチャージャー22が配置されるとともに、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導入口45aが左端部に形成されている。このため、ターボチャージャー22とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45とを連結する接続配管23が不必要に長くなるのを避けることができる。
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
(a)前記実施形態では、接続配管を上流側配管と下流側配管とによって構成したが、接続配管の構成は前記実施形態に限定されない。例えば、3個以上の配管によって構成してもよい。
(b)前記実施形態では接続配管の2個所に可撓性管部を設けたが、例えば1個所あるいは3個所以上に分けて配置してもよい。
(c)排気ガス後処理装置としては、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置及び窒素酸化物還元触媒装置の両方を備えた構成に限定されない。窒素酸化物還元触媒装置を有していない排気ガス後処理装置であっても、本発明を有効に適用することができる。
(d)前記実施形態では、作業車両としてホイールローダを例にとって説明したが、例えばモータグレーダのような作業車両にも本発明を同様に適用することができる。
本発明では、エンジンとは別に設けられた支持機構にディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を搭載するようにした作業車両において、エンジン側とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置側との振動の違いや両者の組付誤差を十分に吸収することができる。
1 ホイールローダ
2 車体フレーム
15 エンジン
17 支持機構
18 排気ガス後処理装置
22 ターボチャージャー
23 接続配管
45 ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置
45a 排気ガス導入口
45b 排気ガス導出口
47 窒素酸化物還元触媒装置
51 上流側配管
52 下流側配管
54 配管本体
54a 延長部
54b 屈曲部
54c,54d 可撓性管部
55,56 フランジ
57 球面ジョイント
60 固定プレート
61 U字金具
64 第1管部
64a フランジ
65 第2管部
65a フランジ
本発明の第1側面に係る作業車両は、車体フレームと、車体フレームに搭載されたエンジンと、車体フレームに固定された支持機構と、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置と、接続配管と、を備えている。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置は、エンジンの上方において支持機構に搭載されるとともに、内部を排気ガスが車両の左右方向に流れるように配置され、後方に向いた排気ガス導入口を有する。接続配管は、排気上流側の端部がエンジンの排気部に連結され、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の下方かつエンジンの側方において排気上流側端部からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の後方に向かって車両の前後方向に延びる延長部を有するとともに、排気下流側端部が後方からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口に連結され、延長部に可撓性管部を有する。
本発明の第10側面に係る作業車両は、第7から第9側面のいずれかの作業車両において、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置は、排気ガス導入口とは逆側の端部に前方に向かって排気ガス導出口を有している。また、窒素酸化物還元触媒装置は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置と同様に排気ガスが流れるように、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置が配置された方向と同じ方向に沿って配置されている。
本発明は、作業車両、特に、エンジン上方に排気ガス後処理装置を備えた作業車両に関する。
作業車両には排気ガス後処理装置が搭載されている。排気ガス後処理装置は、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる煤等の粒子状物質を捕集して除去するディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を含んでいる。このディーゼル微粒子捕集フィルタ装置はエンジンの上部にエアクリーナと並べて配置されている。また、排気ガスをより浄化するために、排気ガス中のNOxを除去する窒素酸化物還元触媒装置が設けられる場合がある。窒素酸化物還元触媒装置はディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気下流側に設けられる。
前述のように、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置はエンジンの上部にエアクリーナ等とともにエンジンに直接支持されている。したがって、さらに窒素酸化物還元触媒装置を追加する場合は、エンジン上部において、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気下流側に配置することになる。
しかし、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置に加えて窒素酸化物還元触媒装置をエンジンに搭載すると、これらを合わせた重量は非常に重くなり、またエンジン全体の重心が高くなる。このため、エンジンの振動が大きくなり、好ましくない。
そこで、特許文献1に示されるように、車体フレームにテーブルを設け、このテーブルにディーゼル微粒子捕集フィルタ装置及び窒素酸化物還元触媒装置を搭載する構成が提案されている。
ここで、エンジンは一般的にゴムマウントによって車体フレームに支持されている。一方で、特許文献1に示されたテーブルは、車体フレームに直接固定されている。したがって、エンジンとは別に設けられたテーブルに排気ガス後処理装置を搭載した場合、エンジン側の振動とテーブルに搭載された排気ガス後処理装置側の振動とが異なる。このような振動の違いは、特許文献1にも示されているように、エンジンの排気部とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置との間に設けられたフレキシブル配管によって吸収されることになる。
しかし、特許文献1に示されるようなフレキシブル配管では、両者の振動の違いを十分に吸収することはできない。この点について、以下により詳細に説明する。
エンジンの排気部とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置とを接続する配管は、コスト及び部材の占有スペースを考慮すると、短い方が好ましい。このため、特許文献1では、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を、その排気ガス導入口がエンジンの排気部に対向するように配置して両者の間の距離を短くし、これらの間をフレキシブル配管によって接続している。
以上のように、特許文献1に示された構成では、フレキシブル配管が短く、可撓性の部分を十分に長く確保することができない。このため、前述のようなエンジン側の振動と排気ガス後処理装置側の振動との違いを十分に吸収することができない。
また、特許文献1の構成では、エンジンと排気ガス後処理装置とがそれぞれ別に車体フレームに支持されることになるので、両者を組み付ける際に組付誤差が生じる。しかし、特許文献1のフレキシブル配管では、前述と同様の理由によって、エンジン側と排気ガス後処理側との組付誤差を十分に吸収することは困難である。
本発明の課題は、エンジンとは別に設けられた支持機構に排気ガス後処理装置を搭載するようにした作業車両において、エンジン側と排気ガス後処理側との振動の違いや両者の組付誤差を十分に吸収できるようにすることにある。
本発明の第1側面に係る作業車両は、車体フレームと、車体フレームに搭載されたエンジンと、車体フレームに固定された支持機構と、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置と、接続配管と、を備えている。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置は、エンジンの上方において支持機構に搭載されるとともに、内部を排気ガスが車両の左右方向に流れるように配置され、車両の左右方向の一方側で後方に向いた排気ガス導入口を有する。接続配管は、排気上流側の端部がエンジンの排気部に連結された上流側配管と、排気下流側端部が後方からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口に連結された下流側配管と、有する。
上流側配管は、直線状の延長部と、屈曲部と、を有する。延長部は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の下方かつ排気ガス導入口が設けられた側と同じ側のエンジンの側方において排気上流側端部からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を越えて後方に向かって車両の前後方向に延び、可撓性管部を有する。屈曲部は延長部の後端部を上方に屈曲して形成されている。また、下流側配管は第1管部と第2管部とを有する。第1管部は排気下流側の端部がディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口に連結されるとともに後方に延びる。第2管部は第1管部と所定の角度を有し第1管部の排気上流側と上流側配管の屈曲部の排気下流側との間に設けられている。
ここでは、エンジンとは別に設けられた支持機構が車体フレームに固定されており、この支持機構にディーゼル微粒子捕集フィルタ装置が搭載されている。このため、エンジンとディーゼル微粒子捕集フィルタ装置とは別の振動系で振動することになる。そこで、エンジンとディーゼル微粒子捕集フィルタ装置とを可撓性管部を有する接続配管によって接続し、可撓性管部によって両者の振動の違いを吸収するようにしている。
ここで、前述のように、エンジンとディーゼル微粒子捕集フィルタ装置とを接続する従来のフレキシブル配管では、配管全体の長さが短く、可撓性の部分を十分に確保することができない。
そこで本発明では、接続配管をエンジンの排気部からいったんディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を越えて後方に延長し、その端部をディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口に後方から連結するようにしている。このような構成では、接続配管を十分に長くすることができる。このため、エンジンの排気部からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を越えて延びる延長部に比較的長い可撓性管部を形成することができ、エンジンとディーゼル微粒子捕集フィルタ装置との振動の違いを十分に吸収することができる。また、同様の理由により、エンジン側とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置側の組付誤差も十分に吸収することができる。
ここでは、接続配管は、エンジンの排気部からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の下方を通過して後方に延び、さらに上方に延び、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口に後方から連結されている。したがって、前述のように、エンジンの排気部からディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の下方を通過する部分を長く確保でき、この部分に十分に長い可撓性管部を形成することができる。
また、本発明では、接続配管が上流側配管と下流側配管とから構成されている。このため、両配管の連結部においてもエンジン側とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置側との組付誤差を吸収することができる。特に、下流側配管は、いわゆるエルボ配管であるため、横及び縦方向の組付誤差の許容範囲を広くすることができる。また、エルボ配管を使用しているために、下流側配管が後方に突出するのを抑えることができ、特に振動吸収に不要な部分の占有スペースを小さくすることができる。
本発明の第2側面に係る作業車両は、第1側面の作業車両において、上流側配管は、延長部及び屈曲部を含む配管本体と、配管本体の両端に設けられた前フランジ及び後フランジと、配管本体と前後のフランジとの間に設けられた球面ジョイントと、を有する。
ここでは、上流側配管の両端に球面ジョイントが設けられているので、エンジン側とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置側の組付時の角度誤差を容易に吸収することができる。
本発明の第3側面に係る作業車両は、第1又は第2側面の作業車両において、上流側配管の可撓性管部の排気下流側部分を支持機構に固定するための固定部材をさらに備えている。
ここでは、エンジン側に設けられた上流側配管の可撓性管部の排気下流側部分(すなわち後方部分)が固定部材によって支持フランジに固定されている。したがって、振動吸収等の作用を妨げることなく、上流側配管を確実に支持できる。
本発明の第4側面に係る作業車両は、第3側面の作業車両において、固定部材は、支持機構に固定された固定プレートと、上流側配管の延長部の排気下流側部分を固定プレートに固定するU字金具と、を有する。
ここでは、U字金具を着脱することによって、上流側配管を容易に着脱することができる。
本発明の第5側面に係る作業車両は、第1から第4側面のいずれかの作業車両において、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の前方において支持機構に搭載され、排気ガス中の窒素酸化物を還元する窒素酸化物還元触媒装置をさらに備えている。
ここでは、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置に加えて窒素酸化物還元触媒装置が設けられている。この場合は、排気ガス後処理全体の重量が増加し、振動が非常に大きくなる。
このような状況では、本発明のように接続配管を長くし、十分な可撓性管部を設けることによって、特に有効に振動吸収を抑えることができる。
本発明の第6側面に係る作業車両は、第5側面の作業車両において、接続配管の前端はディーゼル微粒子捕集フィルタ装置と窒素酸化物還元触媒装置との間に位置している。
ここで、例えばエンジンの排気部が窒素酸化物還元触媒装置より前方に位置している場合は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口をエンジン排気部に対向させても、エンジン排気部と排気ガス導入口との間の距離は比較的長くなる。したがって、この場合は、接続配管において可撓性部分を長く形成することができ、本発明のように接続配管をディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の後方まで延ばす必要性は小さくなる。
しかし、この第6側面に係る作業車両のように、接続配管の前端が窒素酸化物還元触媒装置とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置との間に位置するような状況では、前述のように、接続配管の延長部、すなわち可撓性管部を十分に長く確保することができない。したがって、接続配管と窒素酸化物還元触媒装置及びディーゼル微粒子捕集フィルタ装置との位置関係が以上のような場合に、本発明は特に有効である。
本発明の第7側面に係る作業車両は、第5又は第6側面の作業車両において、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置の排気ガス導入口は、車両の左右方向においてエンジンの排気部と同じ側に設けられている。
ここでは、接続配管の延長部を長く確保しつつ、全体の長さが不必要に長くなるのを防止できる。
本発明の第8側面に係る作業車両は、第5から第7側面のいずれかの作業車両において、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置は、排気ガス導入口とは逆側の端部に前方に向かって排気ガス導出口を有している。また、窒素酸化物還元触媒装置は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置と同様に排気ガスが流れるように、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置が配置された方向と同じ方向に沿って配置されている。
以上のような本発明では、エンジンとは別に設けられた支持機構にディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を搭載するようにした作業車両において、エンジン側とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置側との振動の違いや両者の組付誤差を十分に吸収することができる。
本発明の作業車両の一実施形態であるホイールローダの外観斜視図。
図1のホイールローダを左前方から見た外観斜視部分図。
図1のホイールローダの車体カバーを取り外した状態の側面部分図。
エンジン及びトランスミッションの搭載状態を示す図。
排気ガス後処理装置及び支持機構を示す斜視図。
支持機構の分解斜視図。
支持機構に取付けられるシムを示す図。
接続配管の外観斜視図。
フランジ接続部の調整機能を説明するための模式図。
エアクリーナの配置を示す平面図。
エアクリーナとドアの関係を示す図。
エアクリーナのメンテナンス作業の様子を示す図。
本発明の作業車両の一実施形態であるホイールローダ1の外観斜視図を図1に示している。また、図2はホイールローダのキャブの左側方の一部を示したものである。
ここで、以下の説明における「前方」は車両の前方を、「後方」は車両の後方を示している。また、「左方向」及び「右方向」は、それぞれ車両の前方に向かって車両の左方向、右方向を意味する。
[全体構成]
ホイールローダ1は、車体フレーム2、作業機3、前輪4、後輪5、キャブ6を備えている。このホイールローダ1は、前輪4、後輪5が回転駆動されることにより自走可能であり、作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。
車体フレーム2は前車体部及び後車体部を有しており、前車体部と後車体部とは互いに左右方向に揺動可能に連結されている。前車体部には、作業機3及び前輪4が設けられている。後車体部には、後輪5及びキャブ6が設けられている。作業機3は、前車体部の前方に配置されており、バケット7及びバケットシリンダ8等を有している。前輪4及び後輪5のそれぞれの上方及び後方には、フェンダ4a,5aが設けられている。キャブ6の内部には運転室6aが設けられるとともに、各種の操作部材や操作盤が設けられている。
また、図2に示すように、キャブ6の左側方には、キャブ6に対して乗降するためのステップ10が設けられている。ステップ10は後輪用フェンダ5aの前方に配置されている。なお、キャブ6には、後方がキャブ本体6bにヒンジによって支持され、前方が開閉可能なドア11が設けられている。このドア11は、キャブ本体6bの外側部に設けられたストッパ12によって最大開度が規制されている。詳細は後述するが、左側の後輪用フェンダ5aの上部にはエアクリーナ13が配置されている。このエアクリーナ13によって、エンジン15に取り込まれるエアから異物が取り除かれ、浄化される。
図3は、キャブ6の後方の車体カバー9(図1)を取り外し、車両の左側方から後車体部を見た図である。この図に示すように、後車体部の後部には、エンジン15と、エンジン15の後方に配置された冷却ユニット16と、支持機構17と、エンジン15の上方において支持機構17に搭載された排気ガス後処理装置18と、が配置されている。また、キャブ6とエンジン15との間には作動油タンク19が配置されている。
エンジン15は、いわゆる縦置きであり、クランク軸が前後方向に延びるように配置されている。エンジン15は、図4に示すように、トランスミッション20とボルトで固定されて一体構造となっている。そして、このエンジン15とトランスミッション20とが、4個所のゴムマウント21を介して車体フレーム2に支持されている。
また、図3に示すように、エンジン15の左側には排気ガスによって吸気を過給するターボチャージャー22が設けられている。ターボチャージャー22は、排気ガス出口が後方に向くように設けられている。そして、ターボチャージャー22と排気ガス後処理装置18との間に接続配管23が設けられている。また、ターボチャージャー22とエアクリーナ13との間には樹脂あるいはゴムで形成された可撓性の吸気管24が設けられている。この吸気管24によって、エンジン15とエアクリーナ13との振動の違いが吸収される。
[支持機構17]
図5は、図3の一部を後方から見た斜視図である。また、図6は支持機構17を分解して示す斜視図である。これらの図に示すように、支持機構17は、車体フレーム2にボルトによって直接固定されており、前支持フレーム26と、後支持フレーム27と、ベースプレート28と、から構成されている。より詳細には、図5に示すように、後車体部の左右両側には、それぞれ前後方向に延びるサイドフレーム2a,2bが設けられている。この左右のサイドフレーム2a,2bの車体内側において、前後にブラケット29が設けられ、各ブラケット29に前支持フレーム26と後支持フレーム27とが固定されている。
前支持フレーム26は、左右の側部30,31と、天板部32と、連結部33と、を有している。左右の側部30,31のそれぞれは、前方部分にほぼ半円状の切欠き部30a,31aを有する矩形状に形成されている。また、左右の側部30,31プレートは、下端部に外側に張り出して形成された取付部30b,31bを有している。この取付部30b,31bが複数のボルト34によって左右のサイドフレーム2a,2bの内側に設けられたブラケット29に固定されている。天板部32は左右の側部30,31の上部を連結するように設けられている。この天板部32の上面には作動油タンク19が搭載されている。すなわち、前支持フレーム26は作動油タンク19を支持するための台座でもある。連結部33は左右の側部30,31の後部を連結している。連結部33の左右方向の中央部は天板部32の上面よりさらに上方に突出しており、前支持部35を形成している。なお、前支持部35の左右方向の幅は、天板32の左右方向の幅より短く形成されている。
後支持フレーム27は、左右の支柱37,38と、上梁39と、後支持部40と、を有している。左右の支柱37,38は下端部に取付部37a,38aを有している。取付部37a,38aは、側方視で略三角形状であり、下端は内側に張り出して形成されている。この内側に張り出した部分が複数のボルト41によって左右のサイドフレーム2a,2bの内側に設けられたブラケット29に固定されている。上梁39は左右の支柱37,38の上部を連結しており、後支持部40は上梁39の左右方向の中央部に設けられている。後支持部40は、上梁39からさらに上方に突出しており、前支持フレーム26の前支持部35と同じ高さに形成されている。
このような後支持フレーム27では、後支持部40が上梁39より上方に突出し、かつ左右方向の幅が上梁39より短いので、後支持部40の左右方向には、部材を配置するためのスペースS1,S2が形成されている。この実施形態では、図3に示すように、接続配管23の一部や、冷却ユニット16に接続される配管42a,42bがスペースS1,S2を利用して配置されている。
ベースプレート28は前支持フレーム26の前支持部35と後支持フレーム27の後支持部40との間に設けられている。ベースプレート28は、矩形状であり、左右方向の幅は、前支持部35及び後支持部40の幅とほぼ同じに形成されている。
また、図7に示すように、ベースプレート28の下面と後支持部27の後支持部40の上面との間には、左右方向の2個所において、シム43を装着することが可能である(図7では一方のみを示している)。このシム43は、排気ガス後処理装置18が搭載されたベースプレート28を後支持フレーム27の後支持部40に固定する際に、排気ガス後処理装置18と接続配管23との高さ調整をするためのものである。シム43は、矩形状であって、左右方向の両端部に一方側が開放された1対の切欠き43aを有し、この1対の切欠き43aの間に貫通孔43bを有している。
このシム43は後支持部40の上面にボルト44によって固定されている。ベースプレート28には、ボルト44が設けられている位置に、ボルト44の頭部の径よりも大径の孔28aが形成されている。この孔28aによってベースプレート28とボルト44との干渉を避けることができる。したがって、シム43を後支持部40に固定したままベースプレート28を着脱することができる。
なお、シム43は、種々の厚みのものが用意されており、1枚のシム43あるいは複数のシム43を組み合わせて使用することによって、高さの調節を行うことが可能である。
[排気ガス後処理装置18]
図5及び図6に示すように、排気ガス後処理装置18は、エンジン15側の排気上流側(以下、単に「上流側」と記す)から順に、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45と、接続管48と、窒素酸化物還元触媒装置47と、を備えている。接続管48には尿素水溶液ミキシング装置46が取り付けられている。
ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45は、排気ガス中の煤等の粒子状物質を捕集するものであり、支持機構17のベースプレート28の後部に搭載されている。尿素水溶液ミキシング装置46は、図示しない尿素水溶液タンクから、やはり図示しないポンプによって吸い上げられた尿素水溶液を噴射し、排気ガス中に還元剤としての尿素水溶液を添加するものである。添加された尿素水溶液は加水分解されてアンモニアとなり、アンモニアは排気ガスとともに接続管48を介して窒素酸化物還元触媒装置47に供給される。窒素酸化物還元触媒装置47は、尿素水溶液ミキシング装置46からのアンモニアが還元剤として使用されて、排気ガス中の窒素酸化物を還元浄化する。窒素酸化物還元触媒装置47はディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45と同様に支持機構17のベースプレート28の前部に搭載されている。なお、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45と窒素酸化物還元触媒装置47とは、それぞれ別の取付プレートを介してベースプレート28に固定されている。
ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45及び窒素酸化物還元触媒装置47は、それぞれ並列に配置されている。具体的には、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45及び窒素酸化物還元触媒装置47は、共に円筒形状であり、中心軸が左右方向に互いに平行に延びるように配置されている。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導入口45aは、左端部に設けられ、その開口は後方を向いている。また、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導出口45bは、右端部に設けられ、その開口は前方を向いている。窒素酸化物還元触媒装置47の排気ガス導入口47aは、左端部に設けられ、その開口は後方を向いている。また、窒素酸化物還元触媒装置47の排気ガス導出口47bは、右端部に設けられ、その開口は後方で斜め上方を向いている。そして、接続管48がディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導出口45bと窒素酸化物還元触媒装置47の排気ガス導入口47aとの間に配置されている。
接続管48は、図5及び図10に示すように、第1屈曲部48aと、直線部48bと、第2屈曲部48cと、を有し、全体としてS字状に形成されている。第1屈曲部48aはディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導出口45b近傍に位置し、第2屈曲部48cは窒素酸化物還元触媒装置47の排気ガス導入口47a近傍に位置している。直線部48bは、第1屈曲部48aと第2屈曲部48cとの間に位置し、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45と窒素酸化物還元触媒装置47と並列して配置されている。
そして、尿素水溶液ミキシング装置46は、第1屈曲部48aに設けられており、接続管48内に尿素水溶液を噴射する。噴射された尿素水溶液は長い直線部48bを通過する際に、排気ガスと均等に混じり合うことになる。
なお、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45及び窒素酸化物還元触媒装置47の左右方向の長さはベースプレート28の左右方向の幅よりも長く形成されている。
[接続配管23]
接続配管23を図8に拡大して示している。接続配管23は、上流側配管51と、下流側配管52と、を有している。
上流側配管51は、配管本体54と、配管本体54の両端に設けられた前フランジ55及び後フランジ56と、を有している。また、配管本体54と前後のフランジ55,56との間には球面ジョイント57が構成されている。
配管本体54は、ステンレス製であり、前方から後方に延びる直線状の延長部54aと、延長部54aの後端部を上方に屈曲して形成された屈曲部54bと、を有している。延長部54aには、蛇腹状に形成された2つの可撓性管部54c,54dが形成されている。前後のフランジ55,56はそれぞれ、矩形状の接続端面55a,56aと、接続端面55a,56aから延びる管部55b,56bと、を有している。前フランジ55の接続端面55aはターボチャージャー22の排気ガス導出口に連結されている。また、後フランジ56の接続端面56aは下流側配管52に連結されている。
球面ジョイント57としては、例えば米国特許公開公報第2011/0074150号に開示されている公知の技術を利用すればよい。
また、図8に示すように、上流側配管51は、固定プレート60及びU字金具61を介して後支持フレーム27の左支柱37に固定されている。固定プレート60は、L字形状であり、下辺が左支柱37の上部に固定されている。そして、この固定プレート60の縦辺に、配管本体54の可撓性管部54dの後部(排気下流側)を抱え込んだU字金具61の両端がナット62によって固定されている。
下流側配管52は、90°エルボであり、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45に連結される第1管部64と、この第1管部64に直交する第2管部65と、を有する。第2管部65は上流側排管51の屈曲部54bとともに、接続配管23の下部と上部とを連絡する連絡部を構成している。
第1管部64の排気下流側端部にはフランジ64aが形成され、フランジ64aはディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導入口45aに連結されている。また、第2管部65の排気上流側端部にはフランジ65aが形成され、フランジ65aは上流側配管51の後フランジ56の接続端面56aに連結されている。
なお、図9に模式的に示すように、フランジF(各フランジの総称)の連結において、一方又は両方のフランジFのボルト貫通孔Hは、連結用ボルトBの径よりも大径に形成されている。このため、排気ガス後処理装置18をベースプレート28に搭載してサブユニット化し、このサブユニットを後支持フレーム27に固定された接続配管23に組み付ける際に、排気ガス後処理装置18側と接続配管23側との位置関係に誤差がある場合でも、組付誤差を吸収することができる。すなわち、このフランジFの組付構造が組付位置を調整する調整機構として機能している。
[エアクリーナ13]
エアクリーナ13及びその配置について、図2及び図11を用いて説明する。エアクリーナ13は、エンジンルームの外部であって、後輪用フェンダ5aの上部に設けられている。ここで、後輪用フェンダ5aは、フェンダ前部5bと、フェンダ前部5bに締結されたフェンダ後部5cと、から構成されている。フェンダ前部5bは、水平部分と、水平部分から前方かつ下方に傾斜する傾斜部分と、から構成されている。また、フェンダ後部5cは、側面視で円弧状に形成されており、後輪5の上方及び上方後部を覆っている。そして、エアクリーナ13はフェンダ前部5bの水平部分に搭載されている。
図2に示されるように、エアクリーナ13は一部を除いて、車体カバー9の外側に設けられたエアクリーナカバー70によって覆われている。図11は、車体カバー9及びエアクリーナカバー70を取り外した状態のエアクリーナ13及びそれに関連する部分の平面図である。
図2及び図11に示されるように、エアクリーナ13は円筒形であって、上部にはエア取入口13aを覆うキャップ71が設けられ、前端部には蓋13bが開閉自在に設けられている。また、エアクリーナ13の内部にはフィルタ72が着脱自在に配置されている。そして、エアクリーナカバー70は、エア取入口13a、キャップ71、及び蓋13bが装着された前端部を除いて、エアクリーナ13の大半を覆っている。なお、フィルタ72は、蓋13bを開けて斜め前方に引き抜くことによって、メンテナンス及び交換が可能である。
次に、エアクリーナ13の配置について詳細に説明する。
図11に示すように、エアクリーナ13は、後輪用フェンダ5aのフェンダ前部5bの上部であって、キャブ6の後部側方に配置されている。より詳細には、エアクリーナ13の前部はステップ10の後方かつキャブ6の後端部の側方に位置し、後部は作動油タンク19の前部の側方に位置している。また、エアクリーナ13の中心軸Cは、ほぼ水平であって、前方が後方に比較してキャブ6からより離れるように、車両の前後に延びる中心軸に対して傾斜している。なお、前述のように、フィルタ72はこの中心軸Cに沿って前方に取り出すことが可能である。
また、前述のように、キャブ6には、ドア11の最大開度を規制するためのストッパ12が設けられており、図12に示すように、エアクリーナ13の前端部は、ドア11がストッパ12に当接するまで最大に開けられた場合でも、ドア11と干渉しない位置に配置されている。
以上のようなエアクリーナ13の配置によって、図12に示すように、作業者はステップ10に乗り、エアクリーナ13の蓋13bを開けてフィルタ72のメンテナンス又は交換作業を容易に行うことができる。
[エア・排気ガスの流れ]
図3に示すように、エアは、エアクリーナ13から導入され、吸気管24及びターボチャージャー22を経由してエンジン15に供給される。また、エンジン15からの排気ガスは、ターボチャージャー22を駆動した後、接続配管23を介して排気ガス後処理装置18に導入される。
排気ガス後処理装置18では、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45によって煤等の粒子状物質が捕集される。その後、尿素水溶液ミキシング装置46に導入される。この尿素水溶液ミキシング装置46では、排気ガス中に尿素水溶液が噴射され、排気ガスと尿素水溶液とが混合される。これにより、尿素水溶液は排気ガスの熱及び排気ガス中の水蒸気によって加水分解されてアンモニアとなる。このようにして生成されたアンモニアは、排気ガスとともに接続管48を介して窒素酸化物還元触媒装置47に供給される。そして、この窒素酸化物還元触媒装置47においては、アンモニアが還元剤として使用されて、排気ガス中の窒素酸化物が還元浄化される。
[排気ガス後処理装置18の着脱]
ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45は所定時間ご毎に車両から取り外してメンテナンスが必要である。そこで、排気ガス後処理装置18の組付及びメンテナンスが容易になるように、排気ガス後処理装置18はベースプレート28とともにサブユニット化されている。このサブユニットを支持機構17に組み付ける際には、まず、接続配管23をエンジン15及び支持機構17に固定しておく。
具体的には、上流側配管51の前フランジ55をターボチャージャー22の排気ガス導出口に連結するとともに、固定プレート60及びU字金具61によって配管本体54の可撓性管部54dのさらに排気下流側を支持機構17に固定する。ここで、上流側配管51をターボチャージャー22に連結する際には、排気上流側の球面ジョイント57を仮止めした状態で両者を連結する。また、U字金具61についても仮止めした状態にしておく。
次に、上流側配管51に下流側配管52を連結する。なお、上流側配管51と下流側配管52とは、上流側配管51をターボチャージャー22に連結する前に連結しておいてもよい。このとき、前記同様に、排気下流側の球面ジョイント57を仮止めした状態で、両者のフランジ56,65aを連結する。
以上のようにして接続配管23をエンジン15及び支持機構17側に固定した状態で、サブユニットを支持機構17に支持させる。サブユニットを支持機構17に組み付ける際には、シム43によって両者の高さを調整し、また下流側配管52の両端部のフランジ64a,65aの組付を調整することによって前後、上下及び左右方向の調整を行う。さらに、上流側配管51の両端部の球面ジョイント57によって両者の角度調整を行う。なお、シム調整は、出荷前にメーカ側で調整するので、メンテナンス時に調整することはほとんどない。
以上の調整を行うにあたって、接続配管23の上流側配管51には比較的長い可撓性管部54c,54dが設けられているので、この可撓性管部54c,54dによって組付誤差を吸収することも可能である。
以上のようにして、サブユニットとエンジン15及び支持機構17側の位置が適切に調整されると、仮止めしていた各部を確実に固定し、組付作業を終了する。
排気ガス後処理装置18が組み付けられた状態では、エンジン15及びトランスミッション20はゴムマウント21によって車体フレーム2に搭載され、排気ガス後処理装置18は支持機構17によって車体フレーム2に直接搭載されている。このため、運転状態では、エンジン15側の振動と排気ガス後処理装置18側の振動とが異なることになる。
しかし、接続配管23の延長部54aに、比較的長い可撓性管部54c,54dが形成されているために、両者の振動の違いを十分に吸収することができる。したがって、エンジン15の振動を抑えることができる。
[エアクリーナ13のメンテナンス]
エアクリーナ13においては、所定期間毎にフィルタ72の清掃又は交換作業が必要になる。このとき、フィルタ72をエアクリーナ13から取り外す必要がある。
エアクリーナ13からフィルタ72を取り外す場合は、図13に示すように、作業者はステップ10に乗り、エアクリーナ13の蓋13bを開ける。そして、エアクリーナ13からフィルタ72をエアクリーナ13の中心軸Cに沿って前方に抜き出せばよい。このとき、エアクリーナ13は前方側が後方側に比較してキャブ6から離れるように傾斜しているので、フィルタ72の引き抜き作業が容易になる。
[特徴]
(1)接続配管23を、ターボチャージャー22からいったんディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45を越えて後方に延長し、その端部を上方に湾曲させ、さらにディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導入口45aに後方から接続するようにしている。このため、接続配管23の延長部54aを十分に長くすることができ、この延長部54aに比較的長い可撓性管部54c,54dを形成することができる。したがって、この長い可撓性管部54c,54dによってエンジン15と排気ガス後処理装置18の振動の違いを十分に吸収することができる。
(2)接続配管23を上流側配管51と下流側配管52とで構成しているために、両配管51,52の各連結部において位置ずれを許容するための構成を採用することができる。したがって、前述のような可撓性管部54c,54dと併せて、各連結部によってエンジン15側と排気ガス後処理装置18側の組付誤差も十分に吸収することができる。
(3)上流側配管51の両端部には球面ジョイント57が設けられているので、上流側配管51の可撓性管部54c,54dと併せて、エンジン15側と排気ガス後処理装置18の角度誤差を容易に吸収することができる。
(4)接続配管23を構成する上流側配管51の可撓性管部54c,54dの排気下流側(後方部分)が固定プレート60及びU字金具61によって支持機構17に固定されている。したがって、振動吸収等の作用を妨げることなく、接続配管23を確実に固定することができる。
(5)エンジン15の左側にターボチャージャー22が配置されるとともに、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45の排気ガス導入口45aが左端部に形成されている。このため、ターボチャージャー22とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置45とを連結する接続配管23が不必要に長くなるのを避けることができる。
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
(a)前記実施形態では、接続配管を上流側配管と下流側配管とによって構成したが、接続配管の構成は前記実施形態に限定されない。例えば、3個以上の配管によって構成してもよい。
(b)前記実施形態では接続配管の2個所に可撓性管部を設けたが、例えば1個所あるいは3個所以上に分けて配置してもよい。
(c)排気ガス後処理装置としては、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置及び窒素酸化物還元触媒装置の両方を備えた構成に限定されない。窒素酸化物還元触媒装置を有していない排気ガス後処理装置であっても、本発明を有効に適用することができる。
(d)前記実施形態では、作業車両としてホイールローダを例にとって説明したが、例えばモータグレーダのような作業車両にも本発明を同様に適用することができる。
本発明では、エンジンとは別に設けられた支持機構にディーゼル微粒子捕集フィルタ装置を搭載するようにした作業車両において、エンジン側とディーゼル微粒子捕集フィルタ装置側との振動の違いや両者の組付誤差を十分に吸収することができる。
1 ホイールローダ
2 車体フレーム
15 エンジン
17 支持機構
18 排気ガス後処理装置
22 ターボチャージャー
23 接続配管
45 ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置
45a 排気ガス導入口
45b 排気ガス導出口
47 窒素酸化物還元触媒装置
51 上流側配管
52 下流側配管
54 配管本体
54a 延長部
54b 屈曲部
54c,54d 可撓性管部
55,56 フランジ
57 球面ジョイント
60 固定プレート
61 U字金具
64 第1管部
64a フランジ
65 第2管部
65a フランジ