JPWO2014034626A1 - N−[2−({2−[(2S)−2−シアノピロリジン−1−イル]−2−オキソエチル}アミノ)−2−メチルプロピル]−2−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボキサミドの結晶 - Google Patents

N−[2−({2−[(2S)−2−シアノピロリジン−1−イル]−2−オキソエチル}アミノ)−2−メチルプロピル]−2−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−6−カルボキサミドの結晶 Download PDF

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Abstract

【課題】 高純度で且つ安定性に優れ、吸湿性が低く、極めて水に溶けやすい特性を有する、アナグリプチンの結晶及びその製造方法を提供すること。【解決手段】 2θで表される回折角度として、9.8°、17.4°、18.6°、25.3°、及び25.8°付近にピークを有し、図1と実質的に同じである粉末X線回折パターンを示すアナグリプチンの結晶。当該結晶は、N-(2-アミノ-2-メチルプロピル)-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミドと(2S)-N-クロロアセチル-2-シアノピロリジンとを有機溶媒中で反応させた後、カラムクロマトグラフィー精製によって得られるアナグリプチンの非晶質を2-プロパノールから結晶化させることにより得られる。【選択図】 図1

Description

本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ-4(以下、DPP-4と略す)の活性を阻害するN-[2-({2-[(2S)-2-シアノピロリジン-1-イル]-2-オキソエチル}アミノ)-2-メチルプロピル]-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミド(一般名:アナグリプチン)の結晶及びその結晶の製造方法に関する。
グルカゴン様ペプチド(以下、GLP-1と略す)は、膵及び膵外組織に対し多様な作用を発現することにより血糖を低下させるが、セリンプロテアーゼの一種であるDPP-4により不活化される。そこでDPP-4の活性を阻害することによりGLP-1の不活化を抑える薬剤が、血糖低下作用を有する2型糖尿病治療薬として開発された。GLP-1は、糖濃度が低い状態ではインスリン分泌を促進しないため、本治療薬は低血糖を生じるリスクが少ない治療薬として特徴づけられている。このDPP-4阻害剤は、国内では初めにシタグリプチンが上市され、その後もいくつかの薬剤が上市されている。
アナグリプチンもDPP-4阻害剤として開発され、アナグリプチン及びその塩は特許文献1に記載されているが、結晶形に関する記載はない。尚、アナグリプチンと類似構造を有するビルダグリプチンの結晶に関する報告(非特許文献1)はあるが、ここでは、結晶化するための一般的な方法が記載されているだけで、実際にどのように結晶化を行ったかは書かれていないため、再現性よく結晶化できるかどうかは明らかではない。
国際公開第2004/067509号パンフレット
J.Med.Chem.,46,2774-2789(2003)
本発明者らは、特許文献1に記載の方法でアナグリプチン及びその塩酸塩を調製し、粉末X線回折法により分析したところ、両化合物共に非晶質の形態であった。これらが非晶質の形態であるということは、高純度にするための再結晶精製ができないことを意味し、安定性及び吸湿性の面からも好ましくない。そこで、本発明における課題は、高純度で且つ安定性に優れ、吸湿性が低い特性を有するアナグリプチンの結晶及びその結晶の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、高純度で且つ安定性に優れ、吸湿性が低く、極めて水に溶けやすい特性を有するアナグリプチンの結晶を見出すとともに、アナグリプチンの結晶化に適した製造方法及び工業的な製造に適したアナグリプチンの結晶の製造方法を見出した。すなわち本発明は、次のようである。
(1) N-[2-({2-[(2S)-2-シアノピロリジン-1-イル]-2-オキソエチル}アミノ)-2-メチルプロピル]-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミド(アナグリプチン)の結晶。
(2) 粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される回折角度として、9.8°、17.4°、18.6°、25.3°、及び25.8°付近にピークを有することを特徴とする、(1)に記載の結晶。
(3) 2θで表される回折角度が、図1に示す粉末X線回折パターンと実質的に同じであることを特徴とする、(1)に記載の結晶。
(4) 赤外線吸収スペクトルにおいて、波数3340cm-1、1664cm-1、及び1654cm-1付近に吸収を認めることを特徴とする、(1)に記載の結晶。
(5) cm-1で表される波数が、図2に示す赤外線吸収スペクトルと実質的に同じであることを特徴とする、(1)に記載の結晶。
(6) 示差走査熱量測定(DSC)において、120℃付近に吸熱ピークを有することを特徴とする、(1)に記載の結晶。
(7) 吸熱ピークが、図3に示す示差走査熱量測定曲線と実質的に同じであることを特徴とする、(1)に記載の結晶。
(8) N-(2-アミノ-2-メチルプロピル)-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミドと(2S)-N-クロロアセチル-2-シアノピロリジンとを有機溶媒中で反応させた後、カラムクロマトグラフィー精製によって得られるアナグリプチンの非晶質を2-プロパノールから結晶化させることによりアナグリプチンの結晶を得ることを特徴とする、アナグリプチンの結晶の製造方法。
(9) N-(2-アミノ-2-メチルプロピル)-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミドと(2S)-N-クロロアセチル-2-シアノピロリジンとを有機溶媒中で反応させ、得られたアナグリプチンの非晶質を晶析溶媒に溶解した後、アナグリプチンの種結晶を加えて晶析させることによりアナグリプチンの結晶を得ることを特徴とする、アナグリプチンの結晶の製造方法。
(10) 前記N-(2-アミノ-2-メチルプロピル)-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミドと(2S)-N-クロロアセチル-2-シアノピロリジンとの反応を、アルカリ炭酸塩及びヨウ化塩の存在下に行う、(8)又は(9)に記載の製造方法。
(11) 前記アルカリ炭酸塩が炭酸カリウム、及びヨウ化塩がヨウ化カリウムである、(10)に記載の製造方法。
(12) 前記有機溶媒が、アセトン、ジクロロメタン、及び酢酸エチルからなる群から選択される、(8)又は(9)に記載の製造方法。
(13) 前記(2S)-N-クロロアセチル-2-シアノピロリジンが、N-(2-アミノ-2-メチルプロピル)-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミドに対して1から1.2当量である、(8)又は(9)に記載の製造方法。
(14) 前記晶析溶媒が、2-プロパノール又は酢酸エチルである、(9)に記載の製造方法。
(15) 前記アナグリプチンの種結晶を加えて晶析させることによりアナグリプチンの結晶を得る操作後に、さらに、ろ液を濃縮した後にアナグリプチンの種結晶を加えて晶析させることによりアナグリプチンの結晶を得る工程を複数回行う、(9)に記載の製造方法。
本発明のアナグリプチンの結晶は、純度が高く、安定性に優れ、吸湿性が低く、水に極めて溶けやすいことから、医薬品として使用するのに極めて適している。
化合物1(結晶)の粉末X線回折パターン(実施例1) 化合物1(結晶)の赤外線吸収スペクトル(実施例2) 化合物1(結晶)の示差走査熱量測定曲線(実施例2) 化合物2(非晶質)の粉末X線回折パターン(試験例1) 化合物1(非晶質)の粉末X線回折パターン(試験例1)
N-[2-({2-[(2S)-2-シアノピロリジン-1-イル]-2-オキソエチル}アミノ)-2-メチルプロピル]-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミド(アナグリプチン:以下、化合物1と略す)及びその塩酸塩(以下、化合物2と略す)を、下記式(1)及び下記式(2)に示す。
[化合物1]
Figure 2014034626
[化合物2]
Figure 2014034626
特許文献1(WO2004/067509)の実施例2の化合物である化合物2及びその遊離塩基である化合物1は、特許文献1の実施例1の化合物の製造方法に基づく実施例2の化合物の製造方法により製造することができる。すなわち、2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボン酸のテトラヒドロフラン溶液に、N,N’-カルボニルジイミダゾール(以下、CDIと略す)を加え反応させた溶液を、(S)-1-[(2-アミノ-1,1-ジメチルエチル)アミノアセチル]ピロリジン-2-カルボニトリル2塩酸塩とトリエチルアミンのテトラヒドロフラン溶液に滴下、撹拌した後、反応液を濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより得ることができる(以下従来法とする)。
従来法にて調製した化合物1及びその塩酸塩である化合物2を粉末X線回折法により分析したところ、両化合物共に非晶質の形態であった。そこで、一般的に粉末になり易いと考えられる塩の形態である化合物2を単一溶媒(ジクロロメタン、アセトニトリル、2-プロパノール、酢酸エチル、アセトン)を用いて、冷却法により結晶化を試みたが、結晶は得られなかった。次に混合溶媒(ジクロロメタン/エーテル、2-PrOH/エーテル、2-PrOH/ヘキサン、2-PrOH/酢酸エチル、i-BuOH/ヘキサン、水/アセトン)を用いて、貧溶媒法(沈殿法)により結晶化を試みたが、得られた粉末は結晶ではなかった。尚、参考例1は、より結晶化しやすいと考えられる後述の改良法で得られた化合物1の結晶から塩酸塩である化合物2を調製して実験したものである。
さらに、前記化合物1を塩酸塩以外の塩の形態、即ち、p-トルエンスルホン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、1/2硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、メタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、サリチル酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、及びマロン酸塩にして、単一溶媒系及び混合溶媒系により結晶化を検討したが結晶は得られなかった。尚、参考例2は、より結晶化しやすいと考えられる後述の改良法で得られた化合物1の結晶からp-トルエンスルホン酸塩を調製して実験したものである。
一方、従来法にて調製した遊離塩基である化合物1についても、参考例3に示すように、単一溶媒又は混合溶媒を用いて、冷却法により結晶化を試みたが、やはり結晶は得られなかった。このように、化合物1又はその塩を結晶の形態とすることは困難であったところ、本発明者らは、下記(化3)の反応工程式に示す反応(以下改良法とする)を行い、その反応混合物からカラムクロマトグラフィーで精製することにより得られた非晶質の化合物1を2-プロパノールに溶解し、室温で放置または氷浴中で冷却したところ、結晶が析出することを見出し、この結晶をろ取し乾燥することにより目的とする結晶を得ることに成功した。更に、得られたこの結晶を種結晶として用いることにより、以下の(化3)の反応工程式をベースにした工業的な製造に適した方法を見出した。当該方法は、カラムクロマトグラフィーが不要で安定に結晶を供給でき、スケールアップが容易であるという有利な効果を持っている。その製造方法を以下に説明する。
[反応工程式] 化合物3+化合物4→化合物1
Figure 2014034626
(化3)の反応工程式においては、N-(2-アミノ-2-メチルプロピル)-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミド(以下化合物3とする)と(2S)-N-クロロアセチル-2-シアノピロリジン(以下化合物4とする)とを有機溶媒中で反応させた後、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、非晶質の化合物1を得、これを2-プロパノールを用いて結晶化させることにより、化合物1の結晶を得ることができる。また工業的な製造に適した方法として、化合物3と化合物4とを有機溶媒中で反応させ、得られた化合物1の非晶質を晶析溶媒に溶解した後、化合物1の結晶を種結晶として加えて晶析させ、ろ取することにより化合物1の結晶を得ることができる。さらに、結晶をろ取した後のろ液を濃縮した後に化合物1の種結晶を加えて晶析させることにより、化合物1の結晶を得ることができる。
前記化合物3は、特許文献1の中間体実施例111に記載の方法のように、2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボン酸にオキサリルクロライドを反応させて合成した酸ハライドを、2-アミノ-2メチルプロピルアミンと縮合させることにより合成するか、又は2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボン酸と2-アミノ-2メチルプロピルアミンとをCDI等の縮合剤を用いて縮合させることにより合成することができる。また前記化合物4は、同じく特許文献1の中間体実施例1に記載の方法のように、L-プロリンアミドとクロロアセチルクロライドとを反応させた後、脱水反応させることにより合成することができる。尚、種結晶は、前記化合物3と前記化合物4とを反応させた反応混合物からカラムクロマトグラフィーで精製することにより得られた非晶質の化合物1を2-プロパノールに溶解し、室温で放置するか又は氷浴中で冷却することにより晶析させ、この結晶をろ取し乾燥することにより得ることができる。
前記化合物3と化合物4との反応においては、化合物3に対して化合物4を0.8から1.5当量用いるのが好ましく、さらに好ましくは1から1.2当量であり、最も好ましくは1から1.1当量である。また、前記化合物3と化合物4との反応においては、アルカリ炭酸塩及びヨウ化塩を添加することが好ましい。アルカリ炭酸塩としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、ヨウ化塩としては、ヨウ化ナトリウム及びヨウ化カリウム等が挙げられ、これらの中でも、炭酸カリウム及びヨウ化カリウムを添加することが最も好ましい。尚、アルカリ炭酸塩は化合物3に対して1から1.3当量、ヨウ化塩は化合物3に対して0.5から1.2当量用いるのが好ましい。また、反応温度は5℃から50℃、反応時間は1時間から40時間の範囲が好ましい。反応溶媒としては、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、2-プロパノール、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられ、これらの中でも、アセトン、ジクロロメタン、又は酢酸エチルが好ましい。晶析溶媒としては、2-プロパノール、エタノール、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられ、これらの中でも、2-プロパノール又は酢酸エチルが好ましい。結晶をろ取した後のろ液を濃縮した後に、化合物1の種結晶を加えて晶析させることにより化合物1の結晶を得る工程は複数回行うことが好ましく、通常は2回行う。
このようにして製造された本発明の化合物1の結晶の物性は次の通りであり、粉末X線回折パターンを図1に、赤外線吸収スペクトルを図2、示差走査熱量測定曲線を図3に示す。
1.粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される回折角度として、9.8°、17.4°、18.6°、25.3°、及び25.8°付近にピークを有する。
2.赤外線吸収スペクトルにおいて、波数3340cm-1、1664cm-1、及び1654cm-1付近に吸収を認める。
3.示差走査熱量測定(DSC)において、120℃付近に吸熱ピークを有する。
4.水に対する溶解度は1g/ml以上であり、日本薬局方における溶解性は「極めて溶けやすい」に分類される。
本発明の化合物1の結晶は、DPP-4の活性を阻害する作用を有し、高純度で且つ安定性に優れ、吸湿性が低いことから、医薬組成物として使用することが出来る。当該医薬組成物は、糖尿病の予防又は治療剤として有用である。本発明化合物を医薬として使用する場合の投与形態としては、「日本薬局方」製剤総則記載の各種投与形態が目的に応じて選択できる。例えば、錠剤の形態に成形するに際しては、通例、当該分野で用いられる経口摂取可能な成分を選択すればよい。例えば、乳糖、結晶セルロース、白糖、及びリン酸カリウム等の賦形剤がそれにあたる。更に、所望により、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、及び凝集防止剤等、製剤分野で常用される種々の添加剤を配合してもよい。
本発明の医薬組成物中に有効成分として含有される本発明化合物の量は、特に限定されず、適宜選択される。有効成分化合物の投与量は、その用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度により適宜決定されるが、経口投与の場合には、本発明化合物の量が1日体重1kg当り0.1mg〜100mg、好ましくは1mg〜10mgの範囲で、1日に1〜3回に分けて適宜投与することができる。尚、通常、成人には100mgを1日2回経口投与する。しかしながら、投与量及び投与回数は、治療すべき症状の程度及び選択された投与経路を含む関連する状況に鑑みて決定されることから、前記の投与量範囲及び投与回数は本発明の範囲を限定するものではない。
以下に、実施例、参考例、及び試験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、粉末X線回折測定、赤外線吸収スペクトル測定、示差走査熱量測定は、以下の測定条件で行った。
[粉末X線回折の測定条件] 装置:リガクRAD-R,管球:Cu,管電圧:40kV,管電流:20mL,測定範囲:2〜80°(2θ)
[赤外線吸収スペクトルの測定条件] 装置: PERKIN ELMER 1640,測定範囲:4000〜500cm-1,分解能:4.0cm-1,スキャン回数:16
[示差走査熱量の測定条件] 装置:セイコー電子工業 DSC220CU,測定範囲:30〜260℃,昇温速度:10℃/分,雰囲気:N2 30mL/分
[実施例1]アナグリプチン(化合物1)の結晶化
化合物3(1.0g)、炭酸カリウム(0.69g)、及びヨウ化カリウム(0.83g)をアセトン(25mL)に懸濁し、氷冷下に化合物4(0.77g、化合物3に対して1.1当量)のアセトン(17mL)溶液を加えた。冷却浴を除去し、室温で一晩撹拌し減圧濃縮した。残渣にクロロホルム(22mL)及び水(18mL)を加え分液した。水層をクロロホルム(18mL)で抽出した後、有機層を合わせ、飽和食塩水(6mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム/メタノール=30/1→20/1)で精製し、非晶質の化合物1(1.2g)を得た。この内の100mgを2-プロパノール(2.4mL)に溶解し室温で1日間放置したところ、結晶が析出し、この結晶をろ取し乾燥することにより化合物1の結晶(36mg)を得た。
XRD:9.8°, 17.4°, 18.6°, 25.3°, 25.8° (2θ).
[実施例2]アナグリプチン(化合物1)の結晶の工業的製法
化合物3(220g)、炭酸カリウム(146g)、及びヨウ化カリウム(178g)をアセトン(2.8L)に懸濁し、氷浴中で冷却した。これに化合物4(161g、化合物3に対して1.04当量)のアセトン(2.8L)溶液を加えて5 ℃で40時間撹拌した。その後、クロロホルム(2.8L)及び水(4.2L)を加え、1N塩酸によりpH値を7に調製した。水層をクロロホルムで洗浄した後、8N水酸化ナトリウム水溶液(175ml)でアルカリ性に調製し、クロロホルムで3回抽出した。有機層をあわせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮し、残渣に2-プロパノール(630ml)を加えて溶解させた。これに化合物1の種結晶を加え、5℃で一晩撹拌し、析出した結晶をろ取した。ろ液を濃縮し、残渣に2-プロパノール(210ml)を加え溶解させた。これに化合物1の種結晶を加え、5℃で一晩撹拌し、析出した結晶をろ取した。先にろ取した結晶と合わせて乾燥し、化合物1の結晶(250g)を得た。ここで種結晶は、前記実施例1の方法で得た結晶を用いた。
mp: 117-119℃.
ESI-pos: m/z 384 (M+H)+.
ESI-neg: m/z 282 (M-H)-.
1H-NMR (Methanol-d4) δppm: 1.17(6H,s),
2.1-2.2(2H,m), 2.2-2.3(2H,m), 2.51(3H,s), 3.41(2H,dx2), 3.52(2H,dx2),
3.6-3.7(2H,m), 4.78(1H,dd), 6.55(1H,s), 8.87(1H,d), 9.29(1H,s).
IR(KBr)cm-1: 3340(N-H), 1664(C=O), 1654(C=O).
Anal. Calcd for C19H25N7O2:C,59.51;H,6.57;N,25.57; found:C,59.55;H,6.58;N,25.90.
Solubility (20℃): >1g/ml (very soluble)
[参考例1]アナグリプチン塩酸塩(化合物2)の結晶化検討
実施例2で得た化合物1の結晶(5.0g)を蒸留水(15ml)に溶解し、氷浴下に1N塩酸(13ml)を滴下した。滴下終了後、凍結乾燥し非晶質として化合物2(7.23g)を得た。得られた化合物2を100mgずつ、表1に示した溶媒Aにそれぞれ加熱溶解した後、室温で放置又は溶媒Bを加えて室温で放置した。しかしながら化合物2の結晶を得ることはできなかった。
Figure 2014034626
[参考例2]アナグリプチン(化合物1)のp-トルエンスルホン酸塩の結晶化検討
実施例2で得た化合物1の結晶(5.0g)を蒸留水(10ml)に溶解した。これにp-トルエンスルホン酸・H2O(2.48g)の水溶液(5ml)をゆっくり加えて撹拌した後、凍結乾燥し非晶質として化合物1のp-トルエンスルホン酸塩(7.23g)を得た。得られたp-トルエンスルホン酸塩を100mgずつ、表2に示した溶媒Aにそれぞれ加熱溶解した後、室温で放置又は溶媒Bを加えて室温で放置した。しかしながら化合物1のp-トルエンスルホン酸塩の結晶を得ることはできなかった。
Figure 2014034626
[参考例3]従来法により得られた非晶質のアナグリプチン(化合物1)の結晶化検討
従来法により得られた非晶質である化合物1を100mgずつ、表3に示した溶媒Aにそれぞれ加熱溶解させた後、溶媒Bを加える場合には白濁させた後、室温で3日間放置したが結晶は析出しなかった。そこで、さらに5℃で1日間放置したが結晶は析出しなかった。従って、従来法によって得られる非晶質の化合物1は、通常の方法では結晶化が困難であることがわかった。尚、表3の溶媒A*の使用量は、化合物1の結晶が約40mg溶解する量に、各溶媒に対する溶解度から設定した。
Figure 2014034626
[試験例1]粉末X線回折の測定
従来法により化合物1及び化合物2を調製し、粉末X線回折を下記の条件にて測定したところ、結晶性の回折ピークが認められず、化合物1及び化合物2は非晶質であることが確認された。この非晶質の化合物2のX線回折パターンを図4に、化合物1のそれを図5に示す。一方、本願明細書の実施例1に記載されている方法により調製した化合物1のX線回折パターンは、図1に示されているように結晶性の回折ピークが観測されており、結晶であることが確認された。
[試験例2]60℃(密閉)条件の安定性試験
改良法により調製した非晶質の化合物1、その遊離塩基を特許文献1の実施例1と同様の方法で塩酸塩とした非晶質の化合物2、及び本願明細書の実施例1に記載の方法で調製した化合物1の結晶の各試料を10mgずつ褐色ガラス瓶に入れ、これを60℃で保存し、4週間後の純度を比較した。その結果、非晶質の化合物1は、初期には不純物は認められなかったが、4週間後の純度は99.4%であった。非晶質の化合物2は、初期の純度は98.8%であったが、4週間後に96.1%まで減少し、この時の不純物ピークのエリア値は0.6%から3.1%まで増加した。一方、化合物1の結晶は、初期には不純物が認められず、4週間後においても純度に変化はなかった。尚、純度測定は次の条件にて実施した。
・カラム:Develosil CN-5 (Nomura Chemical), 250mmx4.6mmφ
・移動相:20mM NaH2PO4 buffer (pH 6.9)/MeCN = 80/20
・流速:1.0ml/min.
・波長:UV 247nm及び220nm
・注入量:10 μL
・試料濃度:100 μg/ml(H2O)
以上の結果から、非晶質の化合物1及び非晶質の化合物2と比べて、化合物1の結晶は安定性の面から極めて優れていることが示された。
Figure 2014034626
[試験例3]66%RH(20℃)条件の吸湿性試験
改良法により調製した非晶質の化合物1、その遊離塩基を特許文献1の実施例1と同様の方法で塩酸塩とした非晶質の化合物2、及び本願明細書の実施例1に記載の方法で調製した化合物1の結晶の各試料100mgずつを、亜硝酸ナトリウム飽和水溶液により調製した湿度66%RHのデシケータ内に入れ、20℃にて放置した。各試料の重量変化を経時的に測定し、重量増加率を算出した。その結果、非晶質の化合物1は、7日後に1.7%の重量増加率を示し、その時の純度は99.8%と僅かに低下した。非晶質の化合物2は、7日後に1.7%の重量増加率を示し、その時の純度は初期値の97.9%から90.5%に低下した。一方、化合物1の結晶は、7日後においても0.01%の重量増加率で吸湿性は認められず、純度の変化も認められなかった。以上の結果から、化合物1の結晶は、非晶質の化合物1及び非晶質の化合物2と比べて、吸湿性の面から極めて優れていることが示された。
Figure 2014034626
これら全ての実験結果より、非晶質の化合物1及び非晶質の化合物2と比べて、本発明の化合物1の結晶は高純度で且つ安定性に優れ、吸湿性が低い特性を有し、医薬品として使用するのに適したものであることがわかった。

Claims (15)

  1. N-[2-({2-[(2S)-2-シアノピロリジン-1-イル]-2-オキソエチル}アミノ)-2-メチルプロピル]-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミド(アナグリプチン)の結晶。
  2. 粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される回折角度として、9.8°、17.4°、18.6°、25.3°、及び25.8°付近にピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の結晶。
  3. 2θで表される回折角度が、下記の図1に示す粉末X線回折パターンと実質的に同じであることを特徴とする、請求項1に記載の結晶。
    Figure 2014034626
  4. 赤外線吸収スペクトルにおいて、波数3340cm-1、1664cm-1、及び1654cm-1付近に吸収を認めることを特徴とする、請求項1に記載の結晶。
  5. cm-1で表される波数が、下記の図2に示す赤外線吸収スペクトルと実質的に同じであることを特徴とする、請求項1に記載の結晶。
    Figure 2014034626
  6. 示差走査熱量測定(DSC)において、120℃付近に吸熱ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の結晶。
  7. 吸熱ピークが、下記の図3に示す示差走査熱量測定曲線と実質的に同じであることを特徴とする、請求項1に記載の結晶。
    Figure 2014034626
  8. N-(2-アミノ-2-メチルプロピル)-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミドと(2S)-N-クロロアセチル-2-シアノピロリジンとを有機溶媒中で反応させた後、カラムクロマトグラフィー精製によって得られるアナグリプチンの非晶質を2-プロパノールから結晶化させることによりアナグリプチンの結晶を得ることを特徴とする、アナグリプチンの結晶の製造方法。
  9. N-(2-アミノ-2-メチルプロピル)-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミドと(2S)-N-クロロアセチル-2-シアノピロリジンとを有機溶媒中で反応させ、得られたアナグリプチンの非晶質を晶析溶媒に溶解した後、アナグリプチンの種結晶を加えて晶析させることによりアナグリプチンの結晶を得ることを特徴とする、アナグリプチンの結晶の製造方法。
  10. 前記N-(2-アミノ-2-メチルプロピル)-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミドと(2S)-N-クロロアセチル-2-シアノピロリジンとの反応を、アルカリ炭酸塩及びヨウ化塩の存在下に行う、請求項8又は9に記載の製造方法。
  11. 前記アルカリ炭酸塩が炭酸カリウム、及びヨウ化塩がヨウ化カリウムである、請求項10に記載の製造方法。
  12. 前記有機溶媒が、アセトン、ジクロロメタン、及び酢酸エチルからなる群から選択される、請求項8又は9に記載の製造方法。
  13. 前記(2S)-N-クロロアセチル-2-シアノピロリジンが、N-(2-アミノ-2-メチルプロピル)-2-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボキサミドに対して1から1.2当量である、請求項8又は9に記載の製造方法。
  14. 前記晶析溶媒が、2-プロパノール又は酢酸エチルである、請求項9に記載の製造方法。
  15. 前記アナグリプチンの種結晶を加えて晶析させることによりアナグリプチンの結晶を得る操作後に、さらに、ろ液を濃縮した後にアナグリプチンの種結晶を加えて晶析させることによりアナグリプチンの結晶を得る工程を複数回行う、請求項9に記載の製造方法。
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