JPWO2014030683A1 - 貧血患者の貧血の要因を検出するためのバイオマーカー - Google Patents

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Abstract

貧血の原因をMDSと特定するための方法を提供すること、特に骨髄穿刺を行わない、血液専門医の決定を必要としない等といった、簡便にMDSと特定する方法を提供することを課題とする。解決手段は、下記の工程1及び2を含む貧血患者の貧血の要因を検出する方法である;(1)前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、(2)工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量よりも多い場合に、前記患者の貧血の要因がMDSであると決定する工程2。

Description

本発明は、貧血患者がMDSであると決定するためのバイオマーカー、貧血患者の貧血の要因を検出する方法、及びそのためのキット並びに診断剤に関する。
また、本発明は、貧血患者の白血病発症リスクを判定するためのバイオマーカー、貧血患者の白血病発症リスクを判定する方法、及びそのためのキット並びに診断剤に関する。
更に、本発明は、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を予測するためのバイオマーカー、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を予測する方法、及びこれらに用いられるキット並びに診断剤に関する。
貧血の症状を訴える患者を診断するには、その原因を調べる必要がある。通常であれば、患者の症状や身体状態の問診に加え、末梢血中の末梢血のヘモグロビン値を測定して確定診断を行った後、赤血球、白血球、血小板等の血液細胞の数、鉄分、ビタミン類等の量の検査等を行う。
それでもなお、貧血の原因が掴めない場合は、患者から骨髄穿刺によって検体を採取して骨髄中の造血の状態、芽球の有無、異常染色体の有無等といった、多血球の形態学的な情報を、熟練した技術、所謂、巧の技を習得した血液専門医によって調べる必要がある。
この様な方法によって、ようやく骨髄異形成症候群(MDS)の診断が可能となる。
MDSとは血液腫瘍の一種で、血球の量、質等が異常となる疾患である。そして、MDSとは、前白血病状態を引き起こして造血障害を来たし、その予後も悪く、急性骨髄性白血病に移行することが知られている。また、血球の分化、成熟等の障害が見られる疾患でもある。具体的には、赤血球数の減少(貧血状態)、血小板数の減少、白血球数の異常(減少あるいは増加)等といった症状が見られる。
MDSの患者数は、全世界で30万人、日本国内でも7,100人であり、その患者層は平均年齢70歳代と高齢者に多い。そのため、今後、高齢者社会に突入することから、MDS患者数の増加が懸念されている。
なお、MDSには不応性貧血(RA)、多血球系異形成を伴う不応性血球減少症(RCMD)、多血球異形成を伴う鉄芽球性不応性貧血(RCMD−RS)、芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)等が含まれる。RAの診断基準は、芽球の存在が末梢血において1%未満、骨髄において5%未満であって、且つ環状鉄芽球を有さない場合が基準とされ、RAから白血病となる確率は10%とされる。RAの治療方法としては、無治療、経過観察、又は輸血治療が主体となり、60〜80%のRA患者は、その症状が悪化する。また、長期生存の場合、肝臓での鉄分の沈着等といった、長期間の輸血による合併症への対策が必要となる。RCMDの診断基準は、RAの診断基準に加え明瞭な多血球の形態学的異形成が10%以上見られるものとされ、RCMDから白血病へ移行する確率は15〜20%とされる。
これらのMDSに関連する疾患のうち、RA及びRARSは軽症、RCMD及びRCMD−RSは中等症、そしてRAEBは重症とされる。
このようなMDSの中でも、重症の骨髄異形成症候群であるRAEBに関する診断については、WT1タンパク質をコードするmRNAを用いたキット等が上市されている。しかしながら、このようなキット等は末梢血から全RNAを採取する工程等を必要とし、医療現場で簡便に用いるには更なる改善が求められている。
また、これらのキットはMDSの中でも軽症度のものに対する診断には向いていない。
特許文献1には、アクチビンレセプター2Bのカイネース活性を測定するための方法が開示されている。そしてアクチビンが生体内で発揮する作用として赤血球の分化に関連する因子であることが開示されている。
特許文献2には、マウス由来のアクチビンレセプターの細胞外領域を認識するモノクローナル抗体が開示されている。そしてアクチビンが造血の場において作用するタンパク質であることも開示されている。
特許文献3には、アクチビンレセプター2のアンタゴニストを用いた、赤血球を増加させる方法が開示されている。そして貧血を処置する方法として斯かるアンタゴニストを用いることも開示されている。
特許文献4には、アルギニンを主成分とし、更にアクチビンを含む骨髄赤血球前駆細胞分化促進剤が開示されている。
特開2003−250537号公報 特開平11−335399号公報 特表2010−513506号公報 国際特許公報2006/115274号パンフレット
上述のように、貧血の原因、特にMDSが貧血の原因であると決定するために有用な方法は、骨髄穿刺という患者に負担のかかる方法で骨髄から検体を採取して、更に血液専門医による検体中の多血球に関して形態学的な診断を行う必要がある。従って、骨髄穿刺によって骨髄から検体を採取できる設備、並びに血液専門医が存在しないような、一般クリニックにおいて、貧血の症状を訴える患者がMDSに罹患しているかどうかを検査することは極めて困難である。
これに変わる方法として、一般クリニックからであっても検査委託することによって、簡便にMDSの診断が出来る方法を提供するためには、例えば造血幹細胞から分化する過程において発現するバイオマーカーを指標としたMDSの診断方法の開発が求められる。そこで、造血分化過程において、例えばマウスではSca−1、c−kit、CD71、Gata1、Ter119等が、ヒトでは、CD34、CD71、GPA(Glycophorin A)等が発現することが知られており、これらをバイオマーカーとしたMDSの診断方法が開発されつつあるが、何れも実用に耐え難く実現していない。
また、本発明者は、上述の様に造血に関与することが知られているアクチビンの受容体の1つであるACVR2Bが造血分化の過程に関与するかどうかは明確ではないことも見出している。
さらに、WT1をコードするmRNAを用いたキットは、末梢血から全RNAを採取する必要があると言う点で簡便とはいえない。
上記現状に鑑み、本発明の主な課題は、貧血の原因を決定するための方法を提供すること、特に骨髄穿刺を行わない、血液専門医の決定を必要としない等といった、簡便な方法で決定する方法を提供することである。更に、本発明の課題には、貧血患者が、白血病が発症しやすい状態かどうかを決定するための簡便な方法を提供することも含まれる。そして、本発明の課題には、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を予測する方法も含まれる。
本発明者は、Gata1―GFPトランスジェニックマウスを用いた実験によって、造血幹細胞から分化各ステージに分類される細胞群である、正染性赤芽球、網赤芽球、及び赤血球を分離することに成功した。
これらの分離された、それぞれの細胞群に関して更に研究を重ねた結果、ACVR2Bの発現量が、細胞群間において顕著に異なることを見出した。
本発明は、斯かる知見に基づいてなされたものであり、下記に示す広い態様の発明を包含するものである。
項1 下記の工程1及び2を含む貧血患者の貧血の要因を検出する方法;
(1)前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるアクチビンレセプター2B(ACVR2B)の発現量を測定する工程1、
(2)工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量よりも多い場合に、前記患者の貧血の要因がMDSであると決定する工程2。
項2 前記多血球が、赤血球、白血球、及び血小板からなる群より選択される一つ以上である、項1に記載の方法。
項3 MDSが、RA、RCMD、RCMD−RS、及びRAEBからなる群より選択される少なくとも1つである項1又は2に記載の方法。
項4 下記の工程1及び2を含む貧血患者の白血病発症リスクを判定する方法;
〔1〕前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、
〔2〕工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者は白血病発症リスクがあると決定する工程2。
項5 前記多血球が、赤血球、白血球、及び血小板からなる群より選択される一つ以上である、項4に記載の方法。
項6 白血病が、急性骨髄性白血病である、項4又は5に記載の方法。
項7 下記の工程1及び2を含む貧血患者の輸血の必要性又はその頻度を予測する方法;
{1}前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、
{2}工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者について輸血が必要でその頻度が、末梢血採取時における当該患者の輸血頻度よりも高いと決定する工程2。
項8 前記多血球が、赤血球、白血球、及び血小板からなる群より選択される何れか1つである、項7に記載の方法。
項9 白血病が、急性骨髄性白血病である、項7又は8に記載の方法。
項10 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の貧血の要因をMDSであると検出するための診断剤。
項11 MDSが、RA、RCMD、RCMD−RS、及びRAEBからなる群より選択される少なくとも1つである、項10に記載の診断剤。
項12 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の貧血の要因をMDSであると検出するためのキット。
項13 MDSが、RA、RCMD、RCMD−RS、及びRAEBからなる群より選択される少なくとも1つである、項12に記載のキット。
項14 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の白血病発症リスクを判定するための診断剤。
項15 白血病が、急性骨髄性白血病である、項14に記載の診断剤。
項16 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の白血病発症リスクを判定するためのキット。
項17 白血病が、急性骨髄性白血病である、項16に記載のキット。
項18 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度の診断剤。
項19 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を検出するためのキット。
項20 ACVR2Bからなる、貧血患者の貧血の要因をMDSであると検出するためのバイオマーカー。
項21 MDSが、RA、RCMD、RCMD−RS、及びRAEBからなる群より選択される少なくとも1つである、項20に記載のバイオマーカー。
項22 ACVR2Bからなる、貧血患者の貧血患者の白血病発症リスクを判定するためのバイオマーカー。
項23 白血病が、急性骨髄性白血病である、項22に記載のバイオマーカー。
項24 ACVR2Bからなる、貧血患者の貧血の患者の輸血の必要性及びその頻度を予測するためのバイオマーカー。
以下に、本発明の効果について記載する。ただし、本願発明が、以下に示す効果の全てを有する発明に限定されず、少なくとも何れか1つの効果を有する発明であることは言うまでもない。
本発明に係る方法、診断剤、キット、又はバイオマーカーを用いることによって、従来MDSを診断する上で行われる、患者に負担のかかる骨髄穿刺を行わずに診断することが可能である点で優れている。そして、高度な技術を有する血液専門医によらずにMDSの診断が可能である点においても非常に優れている。
また、本発明に係る方法、診断剤、キット、又はバイオマーカーは、貧血の原因をMDSと簡便な方法によって決定づけるのに特に有用である。このことは、一般クリニックにおける外来患者を専門医に紹介するに必要な患者のエビデンスを十分に、且つ簡便に得ることが可能である点において優れている。
特に、貧血の患者はほぼ毎日、外来に訪れるため、MDSといった非常に重篤な疾患を早い段階で診断する点においても非常に有用である。
更に、本発明の方法、診断剤、キット、又はバイオマーカーは、MDSから白血病への進行の予測に有効に用いられる。
MDSは白血病に進行し易い事が知られており、結果として白血病を発症してしまうと、骨髄内で白血病細胞が激しく増殖し、正常に血球を作る事ができず、延いては赤血球を作れなくなる事に伴うことで貧血の状態となり、MDSの治療の際には輸血が必要になる事も知られている。また、MDSとは赤血球への分化、成熟等において障害が認められる事から、MDSそのものの治療にも輸血が必要である。
以上のことから、本発明の方法、診断剤、キット、又はバイオマーカーは、輸血の必要性及びその頻度を予測することにおいても非常に有用である。
各分化ステージの血球細胞の分取した結果を示す図。 正染性赤芽球、網赤芽球、及び赤血球の細胞集団にて発現するAcvr2b(ヒトタンパク質ホモログ名称:ACVR2B)のmRNAの量を測定した結果を示す図。 末梢血に含まれる赤血球にて発現するACVR2Bの量を測定した結果を示す図。サンプルは、健常者、MDSのうちでもRAの患者、並びにRCMDの患者から得られた末梢血であり、その中の赤血球(マーカーはCD45/CD71/GPA)における、ACVR2Bの発現量を示している。 末梢血に含まれる白血球にて発現するACVR2Bの量を測定した結果を示す図。サンプルは、健常者、MDSのうちでもRAの患者、並びにRCMDの患者から得られた末梢血であり、その中の白血球(マーカーはCD45/GPA)における、ACVR2Bの発現量を示している。 末梢血に含まれる赤血球(図4)及び白血球(図5)にて発現するACVR2Bの量を測定した結果をグラフ化した図。 末梢血に含まれる赤血球にて発現するACVR2Bの量を測定した結果を示す図。サンプルは、健常者、MDSのうちでもRAの患者、並びにRCMDの患者、そして対照実験として健常高齢者及び腎性貧血患者から得られた末梢血である。
以下に本発明について詳細に説明する。なお、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。
例えば、Sambrook and Russell,“Molecular Cloning A LABORATORY MANUAL”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 2001; Ausubel, F. M. et al. “Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley & Sons, New York, .NY;Molecular Biology of the Cell 5E:Reference Edition Bruce Alberts、Alexander Johnson、Julian Lewis、 Martin Raff;Basic and Clinical Pharmacology 12/E(LANGE Basic Science)by Bertram Katzung,Susan Masters and Anthony Trevor(Dec 13, 2011)等の文献を参照すればよい。
<用語の説明>
本明細書にて用いる用語「貧血」とは、WHOのガイドラインに示されている様に、男性であれば血中のヘモグロビン濃度が13g/dL以下、女性であれば、12g/dL以下である状態をいい、動悸、息切れ、眩暈等の症状を呈するが、無症状である場合であっても、上述した血中ヘモグロビン濃度となっている場合には貧血であると決定してもよい。また、用語「貧血患者」とは上述した「貧血」の症状を患う者である。
本明細書にて用いる用語「貧血の要因」とは、上述した「貧血」の発症機序をいい、例えば、症状の1つとして貧血が挙げられる疾患等に言いかえることができる。
このような疾患としては、MDS、腎性貧血、単に加齢に伴う貧血、鉄欠乏生貧血、サラセミア、鉄芽球性貧血、巨赤芽球性貧血(ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏)、原発性骨髄不全、炎症、尿毒症、溶血性貧血、再生不良性貧血、鎌状赤血球証、腎性貧血等が挙げられる。
本明細書にて用いる用語「MDS」とは、血液腫瘍の一種で、骨髄異形成症候群と呼ばれ、血球の量や質が異常となる疾患であり、赤血球を始めとする多血球の分化、成熟等において障害が認められる疾患ある。
具体的にMDSには、不応性貧血(RA)、多血球系異形成を伴う不応性血球減少症(RCMD)多血球異形成を伴う鉄芽球性不応性貧血(RCMD−RS)、芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)等が含まれる。これらの疾患は、上述のように、赤血球への分化、成熟等において障害が認められ、最終的にその一部は後述する白血病に進展するものである。
これらの疾患は、それぞれ骨髄及び/又は末梢血から得られた血球細胞を、形態学的な手段を用いて検査する事によって診断できるものである。具体的な診断方法は、公知の方法を用いればよく、特に限定されるものではない。
上述した疾患の中でも、RAEBが最も白血病に進展し易い。
本明細書にて用いる用語「白血病」とは、その症状、病態等によって、例えば急性白血病、慢性白血病等に分類される。また、これとは別の分類法によっては、骨髄性白血病、リンパ性白血病に分類される。上述の白血病の中でも、急性骨髄性白血病が特に好ましい。
なお、急性骨髄性白血病に関しては、FAB分類と呼ばれる分類法に従って、更に、M0;急性未分化型骨髄性白血病(最未分化型);M1:急性未分化型骨髄芽球性白血病;M2:急性分化型骨髄芽球性白血病;M3急性前骨髄球性白血病;M4:急性骨髄単球性白血病;M5:急性単球性白血病;M6:赤白血病;M7:急性巨核球性白血病に分類される。
本明細書にて用いる用語「発症リスク」とは、ある疾患を発症するかどうかの危険度を表すものであり、実際に当該疾患を発症しているかどうか診断した結果によって影響されるものではない。
本明細書にて用いる用語「頻度」とは、輸血頻度として用いられ、輸血の必要回数が多いか少ないかの度合いを示すものである。これは、1回の輸血に対して可能な量が定められているために、多量の輸血が必要な場合は、輸血の回数を増やして必要量の輸血を行う事、及び1回の輸血でそれによる効果を発揮する期間が最長120日である事に基づいて輸血の回数が決定されるものである。
例えば、臨床上、骨髄異形成症候群と診断された患者(体重60kg)で血中のヘモグロビン値が7g/dL以下であれば、1回の輸血で2単位(280mL)上限として行うことにより、1.3〜1.4g/dL程度のヘモグロビン値が上昇する。これでもまだ、所望の血中ヘモグロビン値に達しない場合、又は、症状の悪化、即ち赤血球の分化、成熟等の障害が改善されず、血中のヘモグロビン値が低下した場合には、再度、期間をおいて上限である2単位の輸血を行う事になる。
本明細書にて用いる用語「ACVR2B」とは、アクチビンレセプター2Bとも呼ばれる。アクチビンレセプター2Bとは、N末端からシステインリッチ領域を含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、セリン/スレオニン型カイネースドメインを含む細胞内ドメインを有するレセプタータンパク質である。
アクチビンレセプター2Bは、Bone Morphogenetic Protein7(BMP7)、Growth/Differentiation factor 5(GDF5)、Myostatin(MSTN)、インヒビンα(INHA)、インヒビンβ Aサブユニット(INHBA)、インヒビンβ Bサブユニット(INHBB)、インヒビンβ Cサブユニット(INHBC)、NODAL、TDGF等をリガンドとするセリン/スレオニンキナーゼ型受容体であって、前記リガンドの刺激に応答してBMPレセプター1A(BMPR1A)、BMPレセプター1B(BMPR1B)、アクチビンレセプター1(ACVR1)等と複合体を形成し、細胞内のSmadカスケード等を作動させる機能の一端を担うレセプタータンパク質である。
アクチビンレセプター2Bは、具体的に例えば、http://www.uniprot.org/uniprot/Q13705等に示されるアミノ酸配列(配列番号1)からなるタンパク質である。このようなタンパク質の中でも、特に、少なくとも配列番号1における1番目〜119番目のアミノ酸配列からなる細胞外ドメインを有していることが好ましい。
なお、本発明が対象とするACVR2Bは、上述のタンパク質そのものに限定はされず、変異(置換、欠失、付加等)がされたタンパク質であってもよい。
本明細書にて用いる用語「発現量」とは、mRNAの発現量ではなく、mRNAを基に翻訳されたタンパク質の発現量であることを意味する。
本明細書にて用いる用語「バイオマーカー」とは、糖質、脂質、タンパク質、等の生体由来の物質で、生体内の生物学的変化を定量的に把握するための指標となるものを指す。
より具体的に、バイオマーカーとは、病気等の現状を把握するために用いられる現状を診断又は判定するための指標としての役割と、疾患等の予防や病状の推移を予測するための予測診断又は推定するための指標としての役割を有するものである。
本発明の方法
本発明の方法は、貧血患者の<貧血の要因を検出する方法>、<白血病発症リスクを判定する方法>、及び<輸血の必要性及びその頻度を予測する方法>を包含する。
<貧血の要因を検出する方法>
本発明の貧血患者の貧血の要因を検出する方法は、以下の工程1及び工程2を含む。
(1)前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、
(2)工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量よりも多い場合に、前記患者の貧血の要因がMDSであると決定する工程2。
(工程1について)
工程1は、貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程である。
末梢血とは血管内に存在する血液を意味する。このような末梢血は、ヒトの血管内に注射針等を刺して採取すればよい。注射針等は、例えば金属製のものを用いればよく、サーフロー(登録商標)のような留置張りを用いてもよい。プラスチック製の注射針を金属針と共に血管内に刺して、それを留置して末梢血を採取してもよい。採取した末梢血は、適宜、凝固を妨げる工程に供してもよい。具体的には、ヘパリン、EDTAといった抗凝固剤を用いればよいが、安価で、汎用性が高いEDTAを用いる事が好ましい。
多血球とは、特に限定はされないが、例えば、赤血球、白血球、血小板等が挙げられる。より好ましくは、赤血球、白血球等である。
ACVR2Bの具体的な測定方法は、特に限定されないが、例えば、ACVR2Bに対する抗体を用いたフローサイトメトリー法を用いることによって測定することが可能である。他の方法としてはACVR2Bに対する抗体を用いたELISA法、Western blotting法等を用いることによっても測定することができる。
これらの測定方法は公知のプロトコールに従えば、当業者であれば容易に測定することができる。
ACVR2Bに対する抗体は、市販された抗体、又は適宜常法に基づいて作成した抗体をそのまま用いてもよいし、当該抗体に対して標識物質を付加した修飾化抗体として用いてもよい。
上記抗体の由来は、特に限定はされず、ヒト、マウス、ラット、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ラマ、ダチョウ、アルパカ、ウマ等の動物種由来の抗体が挙げられる。
また、上記抗体はモノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよい。ACVR2B抗体とはACVR2Bに特異的に結合する分子であれば、特に限定されずイムノグロブリン(Ig)、又は例えば、scFv、F(ab′)、minibody等といった抗体の断片等が挙げられる。また、アフィボディも上述の抗体に包含される。また、抗血清も、上述の抗体に包含される。
抗体がイムノグロブリンである場合、そのサブタイプも特に限定はされず、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgY、IgW等のいずれであってもよい。また、抗体のサブクラスも特定のサブクラスには限定されることは無く、例えばヒトIgGであれば、IgG1〜4のいずれであってもよい。
工程1にて用いる上述の抗ACVR2B抗体は、ACVR2Bに特異的に結合する能力を発揮する限りにおいて、上述の数種類の抗体を混合して用いてもよい。
工程1においてACVR2Bの量を測定する際に、上記多血球に特異的に発現するマーカーに対する抗体を用いて多血球を特定する。これによって、特定の多血球におけるACVR2Bの量を測定することが可能になる。
このようなマーカーとしては、CD3、CD4、CD5、CD10、CD13、CD19、CD20、CD23、CD33、CD34、CD38、CD45、CD45RA、CD90、IgM、HLA−DR等の白血球マーカー;CD71、GPA等の赤血球マーカー;CD41、CD42b、CD61、CD62P、PAC−1等の血小板マーカー等が挙げられ、これらの抗体は、適宜、組み合わせればよい。
また、これらのマーカーに対する抗体も、特定の由来種等に限定されるものではなく、上記ACVR2Bに対する抗体と同様にすればよく、適宜標識物質によって標識化されていてもよい。
上記マーカーに対する抗体の具体的な使用方法は、上記フローサイトメトリー法、ELISA法、Western blotting法等といった公知の方法に沿って用いればよく、特に限定されない。
(工程2について)
工程2は、上記(工程1)にて測定した貧血患者の末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量よりも多い場合に、前記患者の貧血の要因がMDSであると決定する工程である。
健常者とは、上記用語「貧血」にて説明した貧血状態でないヒトであり、上述のような貧血の症状を訴えるか否かについては、健常者を定義する上で特に限定はされない。また、健常者の人種、年齢、性別は問わない。そして、健常者から得られる「末梢血」とは上述の通りである。
多血球とは、(工程1)にて測定する前記患者から得た末梢血に含まれる多血球と同様に定義されるものである。
健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量は、上述の(工程1)におけるACVR2Bの測定方法と同じ方法にて決定することができる。
ここで、(工程1)にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量と、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量の比較は、特に限定はされないが、例えば以下に示す比較方法を採用すればよい。
第1の比較方法として、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球サンプルを、(工程1)にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球サンプルと、同じ測定方法及び同じ測定条件で測定し、得られたACVR2Bの量を相対的に比較する方法が挙げられる。
比較した結果、ACVR2Bの量が多ければ多い程、上述のようなMDSの病態である多血球の分化、成熟等の障害の程度が強いと決定する事ができるために、MDSの症状を発症していると決定することができる。
従って(工程1)にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの量が、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの量よりも多い場合、貧血患者の貧血の原因がMDSであると決定することができる。
第2の比較方法として、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球サンプルにおけるACVR2Bの量を予め測定しておき、その測定値よりも、(工程1)にて測定した貧血患者から得られた末梢血における多血球におけるACVR2Bの量が多い場合に、貧血患者の貧血の要因をMDSと決定することができる。
また、第2の比較方法における、貧血患者から得られた末梢血の多血球におけるACVR2Bの測定方法及び測定条件は、上述した第1の方法と同様に、予め測定した健常者から得られた末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの測定方法及び測定条件と同じである。
なお、予め測定した健常者から得られる末梢血の多血球におけるのACVR2Bの量(測定値)を一般化しておき、その一般化した数値(例えばカットオフ値と呼ばれる。)を基に、(工程1)にて測定した貧血患者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの量が多いか又は少ないかを比較してもよい。
一般化した数値は、ある一定以上数の異なる健常者から得られる末梢血の多血球におけるACVR2Bの量を統計学的に解析し、単位末梢血量当たり、又は単位多血球量当たりの数値として一般化する方法が挙げられるが、このような方法は、公知の解析技術、統計学的技術等を用いればよく、上述の方法に限定はされない。
<白血病発症リスクを判定する方法>
本発明の貧血患者の白血病発症リスクを判定する方法は、以下の工程1及び工程2を含む。
〔1〕前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、
〔2〕工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者は白血病リスクがあると決定する工程2。
〔工程1について〕
工程1は、貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程である。
本工程は、上述の<貧血の要因を検出する方法>における(工程1)と同様にすればよい。
〔工程2について〕
工程2は、上記〔工程1〕にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者は白血病発症リスクがあると決定する工程である。
健常者とは、上述の<貧血の要因を検出する方法>における(工程1)に記載の通りである。
多血球とは、〔工程1〕にて測定する前記患者から得た末梢血に含まれる多血球と同様に定義されるものである。
健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量は、上述の〔工程1〕におけるACVR2Bの測定方法と同じ方法にて決定することができる。
ここで、〔工程1〕にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量と、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量の比較は、以下に示す比較方法を採用すればよい。
第1の比較方法として、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球サンプルを、〔工程1〕にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球サンプルと、同じ測定方法及び同じ測定条件で測定し、得られたACVR2Bの量を相対的に比較する方法が挙げられる。
比較した結果、ACVR2Bの量が多ければ多い程、上述した多血球の分化、成熟等の障害の程度が強い事から、貧血患者が白血病を発症しやすいと決定することができるために、〔工程1〕にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの量が、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの量よりも多い場合、貧血患者は白血病リスクがあると決定することができる。
第2の比較方法として、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球サンプルにおけるACVR2Bの量を予め測定しておき、その測定値よりも、〔工程1〕にて測定した貧血患者から得られた末梢血における多血球におけるACVR2Bの量が多い場合に、貧血患者は白血病発症リスクがあると決定することができる。
また、第2の比較方法における、貧血患者から得られた末梢血の多血球におけるACVR2Bの測定方法及び測定条件は、上述した第1の方法と同様に、予め測定した健常者から得られた末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの測定方法及び測定条件とそれぞれ同じである。
なお、第2の比較方法において、上記〔工程1〕にて測定された貧血患者から得られる末梢血の多血球におけるACVR2Bの量と比較する対象数値は、上記<貧血の要因を検出する方法>にて説明したカットオフ値を同様に用いればよい。
<輸血の必要性及びその頻度を予測する方法>
本発明の貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を予測する方法は、以下の工程1及び工程2を含む。
{1}前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、
{2}工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者について輸血が必要で、その頻度が、末梢血採取時における当該患者の輸血頻度よりも高いと決定する工程2。
{工程1について}
工程1は、前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程である。
本工程は、上述の<貧血の要因を検出する方法>における(工程1)と同様にすればよい。
{工程2について}
工程2は、上記工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者について輸血が必要であると判断する共に、末梢血採取時における当該患者の輸血頻度よりも、輸血頻度が高いと決定する工程である。
工程2により、輸血頻度が高いと決定された貧血患者であって、末梢血採取時における輸血の回数が0回(貧血に対する輸血措置がなされていない)である患者は、少なくとも1回の輸血が必要であると決定され、末梢血採取時において貧血に対する輸血措置を少なくとも1回でも受けたことのある患者は、その回数よりも多い輸血回数が必要であると決定される。
健常者とは、上述の<貧血の要因を検出する方法>における(工程1)に記載の通りである。
多血球とは、{工程1}にて測定する前記患者から得た末梢血に含まれる多血球と同様に定義されるものである。
健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量は、上述の{工程1}におけるACVR2Bの測定方法と同じ方法にて決定することができる。
ここで、{工程1}にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量と、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量の比較は、以下に示す比較方法を採用すればよい。
第1の比較方法として、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球サンプルを、{工程1}にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球サンプルと、同じ測定方法及び同じ測定条件で測定し、得られたそれぞれのACVR2Bの量を相対的に比較する方法が挙げられる。
比較した結果、ACVR2Bの量が多ければ多い程、貧血患者について輸血が必要で、その頻度が高いと決定することができるために、{工程1}にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの量が、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの量よりも多い場合、貧血患者について輸血が必要で、その輸血頻度が高いと決定することができる。
第2の比較方法として、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球サンプルにおけるACVR2Bの量を予め測定しておき、その測定値よりも、{工程1}にて測定した貧血患者から得られた末梢血における多血球におけるACVR2Bの量が多い場合に、貧血患者について輸血が必要で、その頻度が高いと決定することができる。
また、第2の比較方法における、貧血患者から得られた末梢血の多血球におけるACVR2Bの測定方法及び測定条件は、上述した第1の方法と同様に、予め測定した健常者から得られた末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの測定方法及び測定条件と同じである。
なお、第2の比較方法において、上記{工程1}にて測定された貧血患者から得られる末梢血の多血球におけるACVR2Bの量と比較する対象数値は、上記<貧血の要因を検出する方法>にて説明したカットオフ値を同様に用いればよい。
輸血頻度が高いとは、末梢血採取時における輸血回数(0回を含む)と比較して、輸血の回数が多いことを意味し、これを言い換えると、貧血患者の将来の輸血回数が、末梢血採取時における輸血回数よりも増えることを意味する。
本発明の診断剤
本発明の診断剤は、貧血患者の<貧血の要因をMDSであると検出するための診断剤>、<白血病発症リスクを判定するための診断剤>、及び<輸血の必要性及びその頻度の診断剤>を包含する。
本発明の診断剤は、抗ACVR2B抗体を含む。抗ACVR2B抗体とは、上述の<貧血の要因を検出する方法>の(工程1)にて詳述したACVR2Bに対する抗体と同様である。
診断剤そのものが抗ACVR2B抗体であっても、他の成分を含んでいてもよい。他の成分を含んでいる場合、診断剤における抗ACVR2B抗体の含有量は特に限定される事はないが、診断剤当たり、通常は0.0001〜99.99重量部程度である。診断剤に含まれる他の成分とは、抗ACVR2B抗体の、ACVR2Bに対して特異的に結合する能力を発揮する範囲に限り、診断剤の分野で用いられる公知の成分であり、特に限定はされない。
<貧血の要因をMDSであると検出するための診断剤>
貧血の要因をMDSであると検出するための診断剤は、後述する<貧血の要因をMDSであると検出するためのキット>の構成要素の1つとして好適に用いられる。そして、上述の<貧血の要因を検出する方法>において記載した方法に従って有用に用いられる。
<白血病発症リスクを判定するための診断剤>
白血病発症リスクを判定するための診断剤は、後述する<白血病発症リスクを判定するためのキット>の構成要素の1つとして好適に用いられる。そして、上述の<白血病リスクを判定する方法>において記載した方法に従って有用に用いられる。
<輸血の必要性及びその頻度の診断剤>
輸血の必要性及びその頻度の診断剤は、後述する<輸血の必要性及びその頻度を予測するためのキット>の構成要素の1つとして好適に用いられる。そして、上述の<輸血の必要性及びその頻度を予測する方法>において記載した方法に従って有用に用いられる。
本発明のキット
本発明のキットは、貧血患者の<貧血の要因をMDSであると検出するためのキット>、<白血病発症リスクを判定するためのキット>、及び<輸血の必要性及びその頻度を予測するためのキット>を包含する。
本発明のキットは、抗ACVR2B抗体を含む。抗ACVR2B抗体とは、<貧血の要因を検出する方法>の(工程1)にて詳述したACVR2Bに対する抗体と同様にすればよい。
本発明のキットに包含される抗ACVR2B抗体は、ACVR2Bに対して特異的に結合する能力を発揮する抗体である範囲において、2種類以上の抗体を包含していてもよい。この場合、それぞれの抗体は別々の容器に充填されていてもよく、同一の容器に充填されていてもよい。
なお、上述の抗ACVR2B抗体は、後述する本発明のキットに包含されていてもよい器具の底面等に吸着した態様で、本発明のキットに包含されていてもよい。
本発明のキットには、多血球に特異的に発現するマーカーに対する抗体を更に含んでいてもよい。多血球とは、上記<貧血の要因を検出する方法>の(工程1)の通りであり、このような抗体は、具体的には上記<貧血の要因を検出する方法>の(工程1)にて記載したものである。
また、本発明のキットには、適当な生化学的実験に主に用いられる器具を包含していてもよい。例えば、プレート、マルチウェルプレート、シール、ディッシュ、スポイト、キャピラリー、チューブ等が挙げられる。
更に、本発明のキットには適当な生化学的試薬を包含していてもよく、例えば、緩衝液、適当な界面活性剤等を含む洗浄液、染色液、発色液、増感液、反応停止液;アビジン化化合物、ビオチン化化合物;抗イムノグロブリン抗体、標識化抗イムノグロブリン抗体;安定剤、防腐剤、保存剤、タンパク質分解酵素阻害剤;ACVR2B標準物質等が挙げられる。
<貧血の要因をMDSであると検出するためのキット>
貧血の要因をMDSであると検出するためのキットは、上述の抗ACVR2B抗体を含む。
貧血の要因をMDSであると検出するためのキットは、上述の<貧血患者の貧血の要因を検出する方法>に、特に好適に用いることができる。従って、当該キットには当該方法について記載したプロトコールを含んでいてもよい。
さらに、貧血の要因をMDSであると検出するための他のキットに含まれる構成要素の何れか1つ以上を含んでいてもよい。構成要素とは、特に限定はされないが、例えば、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD10抗体、抗CD13抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD23抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD38抗体、抗CD45抗体、抗CD45RA抗体、抗CD90抗体、抗IgM抗体、抗HLA−DR抗体;抗CD71抗体、抗GPA抗体;抗CD41抗体、抗CD42b抗体、抗CD61抗体、抗CD62P抗体、抗PAC−1抗体等が挙げられる。等が挙げられる。これらの中でも、抗CD45抗体、抗CD34抗体、抗GPA抗体等が好ましい。
<白血病発症リスクを判定するためのキット>
白血病発症リスクを判定するためのキットは、上述の抗ACVR2B抗体を含む。
白血病発症リスクを判定するためのキットは、上述の<白血病発症リスクを判定する方法>に、特に好適に用いることができる。従って、当該キットには当該方法について記載したプロトコールを含んでいてもよい。
さらに、白血病発症リスクを判定するための他のキットに含まれる構成要素の何れか1つ以上を含んでいてもよい。このような構成要素として、例えば、抗Tim−3抗体等が挙げられる。このような構成要素を用いた白血病発症リスクを判定する方法は、上述の他のキットを使用する際の公知のプロトコールに従えばよい。
なお、白血病発症リスクを判定するためのキットには、白血病のタイプを決定するためのキットの構成要素が含まれていてもよく、例えば、抗CD1a抗体、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD10抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗HLA−DR抗体、抗CD56抗体、抗CD235a:GPA抗体などが挙げられる。
このような構成要素を用いる事によって、白血病のタイピングを決定する方法は、上述の白血病のタイピングを決定するためのキットを使用する際の公知のプロトコールに従えばよい。
<輸血の必要性及びその頻度を予測するためのキット>
輸血の必要性及びその頻度を予測するためのキットは、上述の抗ACVR2B抗体を含む。
輸血の必要性及びその頻度を予測するためのキットは、上述の<輸血の必要性及びその頻度を予測する方法>に、特に好適に用いることができる。従って、当該キットには当該方法について記載したプロトコールを含んでいてもよい
さらに、輸血の必要性及びその頻度を予測するための他のキットに含まれる構成要素の何れか1つ以上を含んでいてもよい。構成要素とは、特に限定はされないが、例えば、抗フェリチン抗体、抗葉酸抗体、抗ビタミンB12抗体等が挙げられる。
本発明のバイオマーカー
本発明のバイオマーカーは、貧血患者の<貧血の要因をMDSであると決定するためのバイオマーカー>、<白血病発症リスクを判定するためのバイオマーカー>、及び<輸血の必要性及びその頻度を予測するためのバイオマーカー>を包含する。
<貧血の要因をMDSであると決定するためのバイオマーカー>
貧血の要因をMDSであると決定するためのバイオマーカーは、ACVR2BACVR2Bからなる。
ACVR2Bとは、上述の通りである。このようなACVR2Bは、末梢血の多血球に存在する。末梢血とは上述の通りである。
貧血の要因をMDSと検出するためのバイオマーカーは、上述の<貧血の要因を検出する方法>において記載した方法に従って有用に用いられる。
<白血病発症リスクを判定するためのバイオマーカー>
白血病発症リスクを判定するためのバイオマーカーは、ACVR2Bからなる。
ACVR2Bとは、上述の通りである。このようなACVR2Bは、末梢血の多血球に存在する。末梢血とは上述の通りである。
白血病発症リスクを判定するためのバイオマーカーは、上述の<白血病発症リスクを判定する方法>において記載した方法に従って有用に用いられる。
<輸血の必要性及びその頻度を予測するためのバイオマーカー>
輸血の必要性及びその頻度を予測するためのバイオマーカーは、ACVR2Bからなる。
ACVR2Bとは、上述の通りである。このようなACVR2Bは、末梢血の多血球に存在する。末梢血とは上述の通りである。
輸血の必要性及びその頻度を予測するためのバイオマーカーは、上述の<輸血の必要性及びその頻度を予測する方法>において記載した方法に従って有用に用いられる。
以下に示す実施例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明が以下に示す実施例に限定されないのは言うまでもない。
<抗体>
本実施例にて用いた抗体は、以下の通りである。
Figure 2014030683
※上記抗体の他に、human ACVR2B−APCを、human ACVR2B(abcam)とAPC conjugation kit (Dojindo)を用い、常法に従って作製した。
<各分化ステージの血球細胞の分取>
定法に基づいて作製したGata1−GFPトランスジェニックマウスの胎齢16.5週目の胎仔から肝臓組織を採取し、その後、常法に従って細胞群に分散させた。得られた細胞群は、3mLのPBSで洗浄した後、3mLのMACSバッファーにて氷上で30分間ブロッキング処理を行った。
次いで、氷上のまま、細胞群に上記表1に示す抗体である、mouse CD45−PE、mouse Sca1−PE、mouse cKit、mouse CD71−PE及び、mouse Ter119―PBを加えて30分間免疫反応させ、最後に氷上のまま30分間DRAQ5にて染色処理を施した。
これらの処理を施した細胞群をBD Bioscience社のフローサイトメトリー装置を用いて解析し、次いでセルソーター装置を用いて、各種造血分化ステージの細胞に分画した。結果を図1に示す。
図中、Aでゲーティングされた領域は、正染性赤芽球の細胞集団であり、Bでゲーティングされた領域は、網赤芽球の細胞集団であった。また、図左下は、赤血球の細胞集団であった。
これらの中から、セルソーター装置を用いて、正染性赤芽球と網赤芽球の細胞集団をそれぞれ分取した。
<分化マーカー候補の探索>
上述の分取した正染性赤芽球と網赤芽球をDNAアレイ法(アジレントテクノロジー社)に供し、それぞれの細胞集団内で発現している遺伝子を解析した。表2に、正染性赤芽球よりも網赤芽球の方が発現量の少ない遺伝子を示す。
Figure 2014030683
これらの遺伝子の中からAcvr2bを選択し、正染性赤芽球、網赤芽球、及び赤血球の細胞集団にて発現するAcvr2bのmRNAの量を常法に従って測定した。結果を、図2に示す。
図2に示す結果から、Acvr2bは、正染性赤芽球では著量発現しているのに対して、網赤芽球並びに赤血球では殆ど発現していないことが明らかとなった。正常な造血分化の過程において、正染性赤芽球、網赤芽球、赤血球の順に分化ステージが進むことに鑑みれば、Acvr2b(ヒトタンパク質ホモログ名称:ACVR2B)は、正常な赤血球への成熟が見られないMDSのバイオマーカーとして有用であることが示唆された。
<ヒト末梢血におけるACVR2Bの発現量について>
健常者、RA患者、及びRCMD患者の末梢血を1〜2mLずつ採取し、凝固を防ぐために、EDTA−2Naで処理した。次いで、1x10個の細胞をチューブへとり、3mLのPBSで3回、末梢血を洗浄し、氷上で30分間3mLのMACSバッファーを用いてブロッキング処理に供した。その後、氷上のまま、末梢血に上記表1に示す抗体のうち、human GPA−FITC、human CD71−PE、humanCD45−APC−Cy7、及びhuman ACTR−IIB−APCを加え、30分間免疫反応を行った。
これらの処理を施した末梢血をBD Bioscience社のフローサイトメトリー装置を用いて解析した。結果を図3〜図6に示す。
これらの結果から、MDS患者(RA及びRCMD)は、健常者と比較して、明らかに末梢血の赤血球において、ACVR2Bの発現量が多いことが明らかであった。また、これは白血球においても同様の結果であった。また、図6から、MDS患者は、貧血になりやすいとされる高齢者の健常者と比較しても、ACVR2Bの発現量は高く、他の要因(腎性貧血)で貧血が生じている患者と比較しても高いことが明らかとなった。
これらの結果から、末梢血から得られる赤血球及び/又は白血球におけるACVR2Bの発現量が健常者、健常高齢者、及び腎性貧血患者から得られたものと比較して大きい場合に、MDSが原因で貧血を生じていると決定することが可能であることが示唆された。また、これは、多血球の分化・成熟障害を反映する事から、MDSから白血病、特に急性白血病へ進展する可能性が高いことも示唆される。
【0001】
技術分野
[0001]
本発明は、貧血患者がMDSであると決定するためのバイオマーカー、貧血患者の貧血の要因を決定する方法、及びそのためのキット並びに診断剤に関する。
[0002]
また、本発明は、貧血患者の白血病発症リスクを決定するためのバイオマーカー、貧血患者の白血病発症リスクを決定する方法、及びそのためのキット並びに診断剤に関する。
[0003]
更に、本発明は、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を決定するためのバイオマーカー、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を決定する方法、及びこれらに用いられるキット並びに診断剤に関する。
背景技術
[0004]
貧血の症状を訴える患者を診断するには、その原因を調べる必要がある。通常であれば、患者の症状や身体状態の問診に加え、末梢血中の末梢血のヘモグロビン値を測定して確定診断を行った後、赤血球、白血球、血小板等の血液細胞の数、鉄分、ビタミン類等の量の検査等を行う。
[0005]
それでもなお、貧血の原因が掴めない場合は、患者から骨髄穿刺によって検体を採取して骨髄中の造血の状態、芽球の有無、異常染色体の有無等といった、多血球の形態学的な情報を、熟練した技術、所謂、巧の技を習得した血液専門医によって調べる必要がある。
この様な方法によって、ようやく骨髄異形成症候群(MDS)の診断が可能となる。
[0006]
MDSとは血液腫瘍の一種で、血球の量、質等が異常となる疾患である。そして、MDSとは、前白血病状態を引き起こして造血障害を来たし、その予後も悪く、急性骨髄性白血病に移行することが知られている。また、血球
【0004】
MDSの診断方法の開発が求められる。そこで、造血分化過程において、例えばマウスではSca−1、c−kit、CD71、Gata1、Ter119等が、ヒトでは、CD34、CD71、GPA(Glycophorin A)等が発現することが知られており、これらをバイオマーカーとしたMDSの診断方法が開発されつつあるが、何れも実用に耐え難く実現していない。
[0019]
また、本発明者は、上述の様に造血に関与することが知られているアクチビンの受容体の1つであるACVR2Bが造血分化の過程に関与するかどうかは明確ではないことも見出している。
[0020]
さらに、WT1をコードするmRNAを用いたキットは、末梢血から全RNAを採取する必要があると言う点で簡便とはいえない。
[0021]
上記現状に鑑み、本発明の主な課題は、貧血の原因を決定するための方法を提供すること、特に骨髄穿刺を行わない、血液専門医の決定を必要としない等といった、簡便な方法で決定する方法を提供することである。更に、本発明の課題には、貧血患者が、白血病が発症しやすい状態かどうかを決定するための簡便な方法を提供することも含まれる。そして、本発明の課題には、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を決定する方法も含まれる。
課題を解決するための手段
[0022]
本発明者は、Gata1―GFPトランスジェニックマウスを用いた実験によって、造血幹細胞から分化各ステージに分類される細胞群である、正染性赤芽球、網赤芽球、及び赤血球を分離することに成功した。
[0023]
これらの分離された、それぞれの細胞群に関して更に研究を重ねた結果、ACVR2Bの発現量が、細胞群間において顕著に異なることを見出した。
[0024]
本発明は、斯かる知見に基づいてなされたものであり、下記に示す広い態様の発明を包含するものである。
[0025]
項1 下記の工程1及び2を含む貧血患者の貧血の要因をMDSと決定する方法;
(1)前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるアクチビンレセプター2B(ACVR2B)の発現量を測定する工程1、
【0005】
(2)工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量よりも多い場合に、前記患者の貧血の要因がMDSであると決定する工程2。
[0026]
項2 前記多血球が、赤血球、白血球、及び血小板からなる群より選択される一つ以上である、項1に記載の方法。
[0027]
項3 MDSが、RA、RCMD、RCMD−RS、及びRAEBからなる群より選択される少なくとも1つである項1又は2に記載の方法。
[0028]
項4 下記の工程1及び2を含む貧血患者の白血病発症リスクを決定する方法;
〔1〕前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、
〔2〕工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者は白血病発症リスクがあると決定する工程2。
[0029]
項5 前記多血球が、赤血球、白血球、及び血小板からなる群より選択される一つ以上である、項4に記載の方法。
[0030]
項6 白血病が、急性骨髄性白血病である、項4又は5に記載の方法。
[0031]
項7 下記の工程1及び2を含む貧血患者の輸血の必要性又はその頻度を決定する方法;
{1}前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、
{2}工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者について輸血が必要でその頻度が、末梢血採取時における当該患者の輸血頻度よりも高いと決定する工程2。
[0032]
項8 前記多血球が、赤血球、白血球、及び血小板からなる群より選択される何れか1つである、項7に記載の方法。
[0033]
項9 白血病が、急性骨髄性白血病である、項7又は8に記載の方法。
【0006】
[0034]
項10 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の貧血の要因をMDSであると決定するための診断剤。
[0035]
項11 MDSが、RA、RCMD、RCMD−RS、及びRAEBからなる群より選択される少なくとも1つである、項10に記載の診断剤。
[0036]
項12 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の貧血の要因をMDSであると決定するためのキット。
[0037]
項13 MDSが、RA、RCMD、RCMD−RS、及びRAEBからなる群より選択される少なくとも1つである、項12に記載のキット。
[0038]
項14 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の白血病発症リスクを決定するための診断剤。
[0039]
項15 白血病が、急性骨髄性白血病である、項14に記載の診断剤。
[0040]
項16 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の白血病発症リスクを決定するためのキット。
[0041]
項17 白血病が、急性骨髄性白血病である、項16に記載のキット。
[0042]
項18 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を決定するための診断剤。
[0043]
項19 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を決定するためのキット。
[0044]
項20 ACVR2Bからなる、貧血患者の貧血の要因をMDSであると決定するためのバイオマーカー。
[0045]
項21 MDSが、RA、RCMD、RCMD−RS、及びRAEBからなる群より選択される少なくとも1つである、項20に記載のバイオマーカー。
[0046]
項22 ACVR2Bからなる、貧血患者の貧血患者の白血病発症リスクを決定するためのバイオマーカー。
[0047]
項23 白血病が、急性骨髄性白血病である、項22に記載のバイオマーカー。
[0048]
項24 ACVR2Bからなる、貧血患者の貧血の患者の輸血の必要性及
【0007】
びその頻度を決定するためのバイオマーカー。
発明の効果
[0049]
以下に、本発明の効果について記載する。ただし、本願発明が、以下に示す効果の全てを有する発明に限定されず、少なくとも何れか1つの効果を有する発明であることは言うまでもない。
[0050]
本発明に係る方法、診断剤、キット、又はバイオマーカーを用いることによって、従来MDSを診断する上で行われる、患者に負担のかかる骨髄穿刺を行わずに診断することが可能である点で優れている。そして、高度な技術を有する血液専門医によらずにMDSの診断が可能である点においても非常に優れている。
[0051]
また、本発明に係る方法、診断剤、キット、又はバイオマーカーは、貧血の原因をMDSと簡便な方法によって決定づけるのに特に有用である。このことは、一般クリニックにおける外来患者を専門医に紹介するに必要な患者のエビデンスを十分に、且つ簡便に得ることが可能である点において優れている。
[0052]
特に、貧血の患者はほぼ毎日、外来に訪れるため、MDSといった非常に重篤な疾患を早い段階で診断する点においても非常に有用である。
[0053]
更に、本発明の方法、診断剤、キット、又はバイオマーカーは、MDSから白血病への進行の予測に有効に用いられる。
[0054]
MDSは白血病に進行し易い事が知られており、結果として白血病を発症してしまうと、骨髄内で白血病細胞が激しく増殖し、正常に血球を作る事ができず、延いては赤血球を作れなくなる事に伴うことで貧血の状態となり、MDSの治療の際には輸血が必要になる事も知られている。また、MDSとは赤血球への分化、成熟等において障害が認められる事から、MDSそのものの治療にも輸血が必要である。
[0055]
以上のことから、本発明の方法、診断剤、キット、又はバイオマーカーは、輸血の必要性及びその頻度を決定することにおいても非常に有用である。
図面の簡単な説明
【0012】
[0075]
本明細書にて用いる用語「発現量」とは、mRNAの発現量ではなく、mRNAを基に翻訳されたタンパク質の発現量であることを意味する。
[0076]
本明細書にて用いる用語「バイオマーカー」とは、糖質、脂質、タンパク質、等の生体由来の物質で、生体内の生物学的変化を定量的に把握するための指標となるものを指す。
[0077]
より具体的に、バイオマーカーとは、病気等の現状を把握するために用いられる現状を診断又は判定するための指標としての役割と、疾患等の予防や病状の推移を予測するための予測診断又は推定するための指標としての役割を有するものである。
[0078]
本発明の方法
本発明の方法は、貧血患者の<貧血の要因を決定する方法>、<白血病発症リスクを決定する方法>、及び<輸血の必要性及びその頻度を決定する方法>を包含する。
[0079]
<貧血の要因を決定する方法>
本発明の貧血患者の貧血の要因を決定する方法は、以下の工程1及び工程2を含む。
(1)前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、
(2)工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量よりも多い場合に、前記患者の貧血の要因がMDSであると決定する工程2。
[0080]
(工程1について)
工程1は、貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程である。
[0081]
末梢血とは血管内に存在する血液を意味する。このような末梢血は、ヒトの血管内に注射針等を刺して採取すればよい。注射針等は、例えば金属製のものを用いればよく、サーフロー(登録商標)のような留置張りを用いてもよい。プラスチック製の注射針を金属針と共に血管内に刺して、それを留置
【0016】
VR2Bの測定方法及び測定条件と同じである。
[0104]
なお、予め測定した健常者から得られる末梢血の多血球におけるのACVR2Bの量(測定値)を一般化しておき、その一般化した数値(例えばカットオフ値と呼ばれる。)を基に、(工程1)にて測定した貧血患者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの量が多いか又は少ないかを比較してもよい。
[0105]
一般化した数値は、ある一定以上数の異なる健常者から得られる末梢血の多血球におけるACVR2Bの量を統計学的に解析し、単位末梢血量当たり、又は単位多血球量当たりの数値として一般化する方法が挙げられるが、このような方法は、公知の解析技術、統計学的技術等を用いればよく、上述の方法に限定はされない。
[0106]
<白血病発症リスクを決定する方法>
本発明の貧血患者の白血病発症リスクを決定する方法は、以下の工程1及び工程2を含む。
〔1〕前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、
〔2〕工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者は白血病リスクがあると決定する工程2。
[0107]
〔工程1について〕
工程1は、貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程である。
[0108]
本工程は、上述の<貧血の要因を決定する方法>における(工程1)と同様にすればよい。
[0109]
〔工程2について〕
工程2は、上記〔工程1〕にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者は白血病発症リスクがあると決定する工程である。
【0017】
[0110]
健常者とは、上述の<貧血の要因を決定する方法>における(工程1)に記載の通りである。
[0111]
多血球とは、〔工程1〕にて測定する前記患者から得た末梢血に含まれる多血球と同様に定義されるものである。
[0112]
健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量は、上述の〔工程1〕におけるACVR2Bの測定方法と同じ方法にて決定することができる。
[0113]
ここで、〔工程1〕にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量と、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量の比較は、以下に示す比較方法を採用すればよい。
[0114]
第1の比較方法として、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球サンプルを、〔工程1〕にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球サンプルと、同じ測定方法及び同じ測定条件で測定し、得られたACVR2Bの量を相対的に比較する方法が挙げられる。
[0115]
比較した結果、ACVR2Bの量が多ければ多い程、上述した多血球の分化、成熟等の障害の程度が強い事から、貧血患者が白血病を発症しやすいと決定することができるために、〔工程1〕にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの量が、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの量よりも多い場合、貧血患者は白血病リスクがあると決定することができる。
[0116]
第2の比較方法として、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球サンプルにおけるACVR2Bの量を予め測定しておき、その測定値よりも、〔工程1〕にて測定した貧血患者から得られた末梢血における多血球におけるACVR2Bの量が多い場合に、貧血患者は白血病発症リスクがあると決定することができる。
[0117]
また、第2の比較方法における、貧血患者から得られた末梢血の多血球におけるACVR2Bの測定方法及び測定条件は、上述した第1の方法と同様
【0018】
に、予め測定した健常者から得られた末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの測定方法及び測定条件とそれぞれ同じである。
[0118]
なお、第2の比較方法において、上記〔工程1〕にて測定された貧血患者から得られる末梢血の多血球におけるACVR2Bの量と比較する対象数値は、上記<貧血の要因を決定する方法>にて説明したカットオフ値を同様に用いればよい。
[0119]
<輸血の必要性及びその頻度を決定する方法>
本発明の貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を決定する方法は、以下の工程1及び工程2を含む。
{1}前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、
{2}工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者について輸血が必要で、その頻度が、末梢血採取時における当該患者の輸血頻度よりも高いと決定する工程2。
[0120]
{工程1について}
工程1は、前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程である。
[0121]
本工程は、上述の<貧血の要因を決定する方法>における(工程1)と同様にすればよい。
[0122]
{工程2について}
工程2は、上記工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者について輸血が必要であると判断する共に、末梢血採取時における当該患者の輸血頻度よりも、輸血頻度が高いと決定する工程である。
[0123]
工程2により、輸血頻度が高いと決定された貧血患者であって、末梢血採取時における輸血の回数が0回(貧血に対する輸血措置がなされていない)である患者は、少なくとも1回の輸血が必要であると決定され、末梢血採取
【0019】
時において貧血に対する輸血措置を少なくとも1回でも受けたことのある患者は、その回数よりも多い輸血回数が必要であると決定される。
[0124]
健常者とは、上述の<貧血の要因を決定する方法>における(工程1)に記載の通りである。
[0125]
多血球とは、{工程1}にて測定する前記患者から得た末梢血に含まれる多血球と同様に定義されるものである。
[0126]
健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量は、上述の{工程1}におけるACVR2Bの測定方法と同じ方法にて決定することができる。
[0127]
ここで、{工程1}にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量と、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量の比較は、以下に示す比較方法を採用すればよい。
[0128]
第1の比較方法として、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球サンプルを、{工程1}にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球サンプルと、同じ測定方法及び同じ測定条件で測定し、得られたそれぞれのACVR2Bの量を相対的に比較する方法が挙げられる。
[0129]
比較した結果、ACVR2Bの量が多ければ多い程、貧血患者について輸血が必要で、その頻度が高いと決定することができるために、{工程1}にて測定した貧血患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの量が、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの量よりも多い場合、貧血患者について輸血が必要で、その輸血頻度が高いと決定することができる。
[0130]
第2の比較方法として、健常者から得られた末梢血に含まれる多血球サンプルにおけるACVR2Bの量を予め測定しておき、その測定値よりも、{工程1}にて測定した貧血患者から得られた末梢血における多血球におけるACVR2Bの量が多い場合に、貧血患者について輸血が必要で、その頻度が高いと決定することができる。
【0020】
[0131]
また、第2の比較方法における、貧血患者から得られた末梢血の多血球におけるACVR2Bの測定方法及び測定条件は、上述した第1の方法と同様に、予め測定した健常者から得られた末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの測定方法及び測定条件と同じである。
[0132]
なお、第2の比較方法において、上記{工程1}にて測定された貧血患者から得られる末梢血の多血球におけるACVR2Bの量と比較する対象数値は、上記<貧血の要因を決定する方法>にて説明したカットオフ値を同様に用いればよい。
[0133]
輸血頻度が高いとは、末梢血採取時における輸血回数(0回を含む)と比較して、輸血の回数が多いことを意味し、これを言い換えると、貧血患者の将来の輸血回数が、末梢血採取時における輸血回数よりも増えることを意味する。
[0134]
本発明の診断剤
本発明の診断剤は、貧血患者の<貧血の要因をMDSであると決定するための診断剤>、<白血病発症リスクを決定するための診断剤>、及び<輸血の必要性及びその頻度を決定するための診断剤>を包含する。
[0135]
本発明の診断剤は、抗ACVR2B抗体を含む。抗ACVR2B抗体とは、上述の<貧血の要因を決定する方法>の(工程1)にて詳述したACVR2Bに対する抗体と同様である。
[0136]
診断剤そのものが抗ACVR2B抗体であっても、他の成分を含んでいてもよい。他の成分を含んでいる場合、診断剤における抗ACVR2B抗体の含有量は特に限定される事はないが、診断剤当たり、通常は0.0001〜99.99重量部程度である。診断剤に含まれる他の成分とは、抗ACVR2B抗体の、ACVR2Bに対して特異的に結合する能力を発揮する範囲に限り、診断剤の分野で用いられる公知の成分であり、特に限定はされない。
[0137]
<貧血の要因をMDSであると決定するための診断剤>
貧血の要因をMDSであると決定するための診断剤は、後述する<貧血の要因をMDSであると決定するためのキット>の構成要素の1つとして好適
【0021】
に用いられる。そして、上述の<貧血の要因を決定する方法>において記載した方法に従って有用に用いられる。
[0138]
<白血病発症リスクを決定するための診断剤>
白血病発症リスクを決定するための診断剤は、後述する<白血病発症リスクを決定するためのキット>の構成要素の1つとして好適に用いられる。そして、上述の<白血病リスクを決定する方法>において記載した方法に従って有用に用いられる。
[0139]
<輸血の必要性及びその頻度を決定するための診断剤>
輸血の必要性及びその頻度を決定するための診断剤は、後述する<輸血の必要性及びその頻度を決定するためのキット>の構成要素の1つとして好適に用いられる。そして、上述の<輸血の必要性及びその頻度を決定する方法>において記載した方法に従って有用に用いられる。
[0140]
本発明のキット
本発明のキットは、貧血患者の<貧血の要因をMDSであると決定するためのキット>、<白血病発症リスクを決定するためのキット>、及び<輸血の必要性及びその頻度を決定するためのキット>を包含する。
[0141]
本発明のキットは、抗ACVR2B抗体を含む。抗ACVR2B抗体とは、<貧血の要因を決定する方法>の(工程1)にて詳述したACVR2Bに対する抗体と同様にすればよい。
[0142]
本発明のキットに包含される抗ACVR2B抗体は、ACVR2Bに対して特異的に結合する能力を発揮する抗体である範囲において、2種類以上の抗体を包含していてもよい。この場合、それぞれの抗体は別々の容器に充填されていてもよく、同一の容器に充填されていてもよい。
[0143]
なお、上述の抗ACVR2B抗体は、後述する本発明のキットに包含されていてもよい器具の底面等に吸着した態様で、本発明のキットに包含されていてもよい。
[0144]
本発明のキットには、多血球に特異的に発現するマーカーに対する抗体を更に含んでいてもよい。多血球とは、上記<貧血の要因を決定する方法>の
【0022】
(工程1)の通りであり、このような抗体は、具体的には上記<貧血の要因を決定する方法>の(工程1)にて記載したものである。
[0145]
また、本発明のキットには、適当な生化学的実験に主に用いられる器具を包含していてもよい。例えば、プレート、マルチウェルプレート、シール、ディッシュ、スポイト、キャピラリー、チューブ等が挙げられる。
[0146]
更に、本発明のキットには適当な生化学的試薬を包含していてもよく、例えば、緩衝液、適当な界面活性剤等を含む洗浄液、染色液、発色液、増感液、反応停止液;アビジン化化合物、ビオチン化化合物;抗イムノグロブリン抗体、標識化抗イムノグロブリン抗体;安定剤、防腐剤、保存剤、タンパク質分解酵素阻害剤;ACVR2B標準物質等が挙げられる。
[0147]
<貧血の要因をMDSであると決定するためのキット>
貧血の要因をMDSであると決定するためのキットは、上述の抗ACVR2B抗体を含む。
[0148]
貧血の要因をMDSであると決定するためのキットは、上述の<貧血患者の貧血の要因を決定する方法>に、特に好適に用いることができる。従って、当該キットには当該方法について記載したプロトコールを含んでいてもよい。
[0149]
さらに、貧血の要因をMDSであると検出するための他のキットに含まれる構成要素の何れか1つ以上を含んでいてもよい。構成要素とは、特に限定はされないが、例えば、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD10抗体、抗CD13抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD23抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD38抗体、抗CD45抗体、抗CD45RA抗体、抗CD90抗体、抗IgM抗体、抗HLA−DR抗体;抗CD71抗体、抗GPA抗体;抗CD41抗体、抗CD42b抗体、抗CD61抗体、抗CD62P抗体、抗PAC−1抗体等が挙げられる。これらの中でも、抗CD45抗体、抗CD34抗体、抗GPA抗体等が好ましい。
[0150]
<白血病発症リスクを決定するためのキット>
【0023】
白血病発症リスクを決定するためのキットは、上述の抗ACVR2B抗体を含む。
[0151]
白血病発症リスクを決定するためのキットは、上述の<白血病発症リスクを決定する方法>に、特に好適に用いることができる。従って、当該キットには当該方法について記載したプロトコールを含んでいてもよい。
[0152]
さらに、白血病発症リスクを決定するための他のキットに含まれる構成要素の何れか1つ以上を含んでいてもよい。このような構成要素として、例えば、抗Tim−3抗体等が挙げられる。このような構成要素を用いた白血病発症リスクを決定する方法は、上述の他のキットを使用する際の公知のプロトコールに従えばよい。
[0153]
なお、白血病発症リスクを決定するためのキットには、白血病のタイプを決定するためのキットの構成要素が含まれていてもよく、例えば、抗CD1a抗体、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD10抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗HLA−DR抗体、抗CD56抗体、抗CD235a:GPA抗体などが挙げられる。
[0154]
このような構成要素を用いる事によって、白血病のタイピングを決定する方法は、上述の白血病のタイピングを決定するためのキットを使用する際の公知のプロトコールに従えばよい。
[0155]
<輸血の必要性及びその頻度を決定するためのキット>
輸血の必要性及びその頻度を決定するためのキットは、上述の抗ACVR2B抗体を含む。
[0156]
輸血の必要性及びその頻度を決定するためのキットは、上述の<輸血の必要性及びその頻度を決定する方法>に、特に好適に用いることができる。従って、当該キットには当該方法について記載したプロトコールを含んでいてもよい。
【0024】
さらに、輸血の必要性及びその頻度を決定するための他のキットに含まれる構成要素の何れか1つ以上を含んでいてもよい。構成要素とは、特に限定はされないが、例えば、抗フェリチン抗体、抗葉酸抗体、抗ビタミンB12抗体等が挙げられる。
[0157]
本発明のバイオマーカー
本発明のバイオマーカーは、貧血患者の<貧血の要因をMDSであると決定するためのバイオマーカー>、<白血病発症リスクを決定するためのバイオマーカー>、及び<輸血の必要性及びその頻度を決定するためのバイオマーカー>を包含する。
[0158]
<貧血の要因をMDSであると決定するためのバイオマーカー>
貧血の要因をMDSであると決定するためのバイオマーカーは、ACVR2BACVR2Bからなる。
[0159]
ACVR2Bとは、上述の通りである。このようなACVR2Bは、末梢血の多血球に存在する。末梢血とは上述の通りである。
[0160]
貧血の要因をMDSと決定するためのバイオマーカーは、上述の<貧血の要因を決定する方法>において記載した方法に従って有用に用いられる。
[0161]
<白血病発症リスクを決定するためのバイオマーカー>
白血病発症リスクを決定するためのバイオマーカーは、ACVR2Bからなる。
[0162]
ACVR2Bとは、上述の通りである。このようなACVR2Bは、末梢血の多血球に存在する。末梢血とは上述の通りである。
[0163]
白血病発症リスクを決定するためのバイオマーカーは、上述の<白血病発症リスクを決定する方法>において記載した方法に従って有用に用いられる。
[0164]
<輸血の必要性及びその頻度を決定するためのバイオマーカー>
輸血の必要性及びその頻度を決定するためのバイオマーカーは、ACVR2Bからなる。
[0165]
ACVR2Bとは、上述の通りである。このようなACVR2Bは、末梢
【0025】
血の多血球に存在する。末梢血とは上述の通りである。
[0166]
輸血の必要性及びその頻度を決定するためのバイオマーカーは、上述の<輸血の必要性及びその頻度を決定する方法>において記載した方法に従って有用に用いられる。
実施例
[0167]
以下に示す実施例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明が以下に示す実施例に限定されないのは言うまでもない。
[0168]
<抗体>
本実施例にて用いた抗体は、以下の通りである。
[0169]
[表1]
Figure 2014030683
[0170]
※上記抗体の他に、human ACVR2B−APCを、human ACVR2B(abcam)とAPC conjugation kit (Dojindo)を用い、常法に従って作製した。
[0171]
<各分化ステージの血球細胞の分取>
定法に基づいて作製したGata1−GFPトランスジェニックマウスの胎齢16.5週目の胎仔から肝臓組織を採取し、その後、常法に従って細胞群に分散させた。得られた細胞群は、3mLのPBSで洗浄した後、3mLのMACSバッファーにて氷上で30分間ブロッキング処理を行った。
[0172]
次いで、氷上のまま、細胞群に上記表1に示す抗体である、mouse

Claims (18)

  1. 下記の工程1及び2を含む貧血患者の貧血の要因を検出する方法;
    (1)前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるアクチビンレセプター2B(ACVR2B)の発現量を測定する工程1、
    (2)工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量よりも多い場合に、前記患者の貧血の要因が骨髄異形成症候群(MDS)であると決定する工程2。
  2. MDSが、RA、RCMD、RCMD−RS、及びRAEBからなる群より選択される少なくとも1つである請求項1に記載の方法。
  3. 下記の工程1及び2を含む貧血患者の白血病の発症リスクを判定する方法;
    〔1〕前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、
    〔2〕工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者は白血病発症リスクがあると決定する工程2。
  4. 白血病が、急性骨髄性白血病である、請求項3に記載の方法。
  5. 下記の工程1及び2を含む貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を予測する方法;
    {1}前記患者から得た末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量を測定する工程1、
    {2}工程1にて測定したACVR2Bの発現量が、健常者から得られる末梢血に含まれる多血球におけるACVR2Bの発現量より多い場合に、前記患者について輸血が必要で、その頻度が末梢血採取時における当該患者の輸血頻度よりも高いと決定する工程2。
  6. 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の貧血の要因をMDSであると検出するための診断剤。
  7. MDSが、RA、RCMD、RCMD−RS、及びRAEBからなる群より選択される少なくとも1つである請求項6に記載の診断剤。
  8. 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の白血病発症リスクを判定するための診断剤。
  9. 白血病が、急性骨髄性白血病である、請求項8に記載の診断剤。
  10. 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度の診断剤。
  11. 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の貧血の要因をMDSであると検出するためのキット。
  12. MDSが、RA、RCMD、RCMD−RS、及びRAEBからなる群より選択される少なくとも1つである請求項11に記載のキット。
  13. 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の白血病発症リスクを判定するためのキット。
  14. 白血病が、急性骨髄性白血病である、請求項13に記載のキット。
  15. 抗ACVR2B抗体を含む、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を予測するためのキット。
  16. ACVR2Bからなる、貧血患者がMDSであると判定するためのバイオマーカー。
  17. ACVR2Bからなる、貧血患者の白血病発症リスクを決定するためのバイオマーカー。
  18. ACVR2Bからなる、貧血患者の輸血の必要性及びその頻度を予測するためのバイオマーカー。
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