JP2015228843A - 生体内の鉄量に関する状態を予測する方法 - Google Patents

生体内の鉄量に関する状態を予測する方法 Download PDF

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飛鳥 亀井
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啓子 阿部
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Abstract

【課題】生体内の鉄量に関する状態、すなわち、生体内の鉄量の不足又は過剰に起因して、生体が貧血状態若しくは貧血を伴わない鉄欠乏状態、又は鉄過剰状態のいずれかの状態にあるか否かを予測する方法であって、体内鉄量変化に対する応答が早く、簡便で被検査者の負担が少ない方法を提供すること。
【解決手段】生体内の鉄量の不足又は過剰に対応して血球細胞中の特定の遺伝子の転写物量が変化することを見出した。生体から採取した血液細胞から総RNAを抽出し、特定の遺伝子の転写物量を測定する。特定の遺伝子の転写物量の増減により、貧血状態、貧血を伴わない鉄欠乏状態及び鉄過剰状態のいずれかにある可能性が高いかを判断する。
【選択図】なし

Description

本発明は、生体内の鉄量に関する状態を予測する方法に関する。すなわち、本発明は、生体内の鉄量の不足又は過剰に起因して、生体が貧血状態若しくは貧血を伴わない鉄欠乏状態、又は鉄過剰状態のいずれかの状態にあるか否かを予測する方法に関する。
鉄は必須の栄養素であり、鉄の摂取量が不足すると体内の貯蔵鉄が利用され、やがて貧血に至るが、日本人女性の約1割が貧血という報告がある。また、貧血に至る前に「貧血のない鉄欠乏」状態(貧血予備群)が存在するが、これは日本人女性の約2〜4割を占めると言われており、深刻な症状は呈さないものの、長期化・悪化すると貧血に至るリスクをはらむため、改善が求められる。
一方、サプリメント剤の普及等により鉄の過剰摂取リスクも増えている。鉄を過剰に摂取すると、臓器に鉄が蓄積し、臓器障害が引き起こされる。臓器に蓄積した鉄の一部が酸化傷害の原因となり、炎症を引き起こすことで様々な臓器障害につながることから、近年では特に鉄の過剰リスクが問題視されている。例えばC型肝炎では鉄が肝臓に蓄積する現象が見られるが、これがさらに肝炎を悪化させ、肝硬変、やがては肝臓ガンへと進行させる原因ともなる。また、鉄は心不全や糖尿病リスクを高める因子としても注目されている。
従来より、鉄摂取量に応答して変動する生体内の鉄量の指標として、血液のヘモグロビン濃度、血清フェリチン濃度、TIBC(トランスフェリン総鉄結合能)、血清鉄濃度が使われている。これらは疾病の診断用に用いられるものである。これらのうち、最も一般的に健康診断等で用いられるのは、ヘモグロビン濃度であるが、ヘモグロビン濃度は体内鉄量変化に対する応答が比較的遅い。そのため、貧血のない鉄欠乏や鉄過剰の指標としては不十分である。従って、体内鉄量を正確に測定するには、これらの4項目をそれぞれ別々に測定して総合的に判断する必要があるが、これらは疾病の診断時において測定されるものであり、鉄が関与するような疾病以外で常に生体内の鉄量をモニタリングすることは、健康診断におけるヘモグロビン測定以外では通常行われていない。
一方、本願発明者らは、先に鉄欠乏食をラットに与えて貧血を起こし、鉄の主な貯蔵臓器である肝臓の細胞中の各種遺伝子の転写物量をDNAマイクロアレイを用いて測定した(非特許文献1及び2)。
Kamei et al., Physiol Genomics. (2010) 42:149-56 Kamei et al., PLoS One. (2013) 8:e65732
本発明の目的は、生体内の鉄量に関する状態、すなわち、生体内の鉄量の不足又は過剰に起因して、生体が貧血状態若しくは貧血を伴わない鉄欠乏状態、又は鉄過剰状態のいずれかの状態にあるか否かを予測する方法であって、体内鉄量変化に対する応答が早く、簡便で被検査者の負担が少ない方法を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、生体内の鉄量の不足又は過剰に対応して血球細胞中の遺伝子転写物量が変化するかもしれないと考えた。そこで、ラットに鉄欠乏食又は鉄過剰食を与えて貧血状態、貧血を伴わない鉄欠乏状態及び鉄過剰状態を作出し、血液から総RNAを抽出し、市販のDNAマイクロアレイで遺伝子の転写物量を測定した。その結果、貧血状態、貧血を伴わない鉄欠乏状態及び鉄過剰状態のそれぞれの場合に、正常ラットと比較して転写物量が統計学的に有意に増加又は減少する遺伝子を特定することに成功し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記表1〜表6に記載される少なくとも1つの遺伝子について、生体から採取した血球細胞中の転写物量を測定することを含む、生体内の鉄量に関する状態を予測する方法であって、
(1)表1に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には貧血状態又は貧血のない鉄欠乏状態である可能性が高く、減少している場合には鉄過剰状態である可能性が高い、
(2)表2に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、減少している場合には貧血状態又は貧血のない鉄欠乏状態である可能性が高く、
(3)表3に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には貧血状態である可能性が高く、減少している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、
(4)表4に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、減少している場合には貧血状態である可能性が高く、
(5) 表5に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には貧血状態である可能性が高く、減少している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、
(6)表6に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、減少している場合には貧血状態である可能性が高い、
と判断する、方法を提供する。
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本発明によれば、生体内の鉄量に関する状態、すなわち、生体内の鉄量の不足又は過剰に起因して、生体が貧血状態若しくは貧血を伴わない鉄欠乏状態、又は鉄過剰状態のいずれかの状態にあるか否かを簡便に予測することができ、患者の負担も少ない。また、本願発明の方法は、体内鉄量変化に対する応答が早い。したがって、本発明により、鉄の過不足が深刻な状態に陥る前に、いわゆる未病レベルで生体内の鉄量を診断し、対応することで、健康状態への回復・維持が可能となる。さらに、本発明を活用することで鉄が関与する様々な疾病の進行の抑制につながれば、QOL(quality of life)の向上、健康寿命の延長や医療費の削減などを通じて大いに社会貢献するものと期待される。
下記実施例において測定した、通常食又は鉄欠乏食を供与したラットにおけるヘモグロビンの血中濃度変化を示す図である。 下記実施例において測定した、通常食又は鉄欠乏食を供与したラットにおける血中のヘモグロビン量、フェリチン量、TIBC(トランスフェリン総鉄結合能)、血清鉄の測定結果を示す図である。 下記実施例において測定した、通常食又は鉄過剰食を供与したラットにおける血中のヘモグロビン量、フェリチン量、TIBC(トランスフェリン総鉄結合能)、血清鉄の測定結果を示す図である。
下記実施例に具体的に記載する方法により、ラットに鉄欠乏食又は鉄過剰食を与えて貧血状態、貧血を伴わない鉄欠乏状態及び鉄過剰状態を作出し、血液から総RNAを抽出し、市販のDNAマイクロアレイで遺伝子の転写物量を測定した。その結果、貧血状態、貧血を伴わない鉄欠乏状態及び鉄過剰状態のそれぞれの場合に、正常ラットと比較して転写物量が統計学的に有意に増加又は減少する遺伝子を特定することに成功した。
すなわち、
(1)表1に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には貧血状態又は貧血のない鉄欠乏状態である可能性が高く、減少している場合には鉄過剰状態である可能性が高い、
(2)表2に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、減少している場合には貧血状態又は貧血のない鉄欠乏状態である可能性が高く、
(3)表3に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には貧血状態である可能性が高く、減少している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、
(4)表4に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、減少している場合には貧血状態である可能性が高く、
(5) 表5に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には貧血状態である可能性が高く、減少している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、
(6)表6に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、減少している場合には貧血状態である可能性が高い、
と判定することができる。
上記表1〜表6に記載されている各遺伝子は、それぞれ、統計学的に有意差が認められたものである(FDR<0.05)。
上記表1〜表6に記載されている遺伝子は、ポリペプチドをコードする遺伝子又は非コードRNAをコードする非RNA遺伝子であり、それぞれのmRNA又は非コードRNAと同じ配列のオリゴヌクレオチドが固定化されているDNAアレイが市販されているものであるから、当然ながら各遺伝子は公知であり、その塩基配列も周知のデータベースに記録されているものである。また、実施例はラットを用いて行ったので、実施例において特定された各遺伝子はラット遺伝子であるが、ほとんど全てのラット遺伝子において、各遺伝子に対応するヒト遺伝子も知られており、その塩基配列も公知であるから、本発明の方法はヒトに適用することも可能である。
上記表1〜表6に示す各遺伝子について、遺伝子タイトル(gene title)並びにラット及びヒトのEntrez ID No. を付加したものを、それぞれ下記表1A〜表6Aに示す。
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上記表1〜表6に記載されている各遺伝子のうち、表5及び表6に記載されている各遺伝子は、非特許文献1又は2に記載されている、肝臓細胞中の転写物量が生体内鉄量に依存して変化する遺伝子である。したがって、表1、表2、表3及び表4に記載されている各遺伝子は、血球細胞特異的に生体内鉄量に依存して転写物量が増減するものであり、肝臓細胞内では、これらの遺伝子の転写物量の増減はみられない。なお、このような遺伝子が多数見つかったことからも、肝臓細胞内での転写物量の増減に基づいて、血球細胞内での転写物量の増減を予測することはできない。
上記表1〜表6に示される各遺伝子は、統計学的有意差がFDR<0.05のものであり、統計学的有意差が出ているので、これらの各遺伝子を用いることができるが、統計学的有意差がより高いものを用いることによりさらに精度が向上するので好ましい。上記表1〜表6に示される各遺伝子のうち、統計学的有意差がFDR<0.01のものをピックアップして下記表7〜表12にそれぞれ示す。したがって、本発明の方法は、下記表7〜表11に記載の遺伝子の転写物量を測定することが好ましい。
Figure 2015228843
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さらに、表1〜表6に記載の各遺伝子のうち、特に好ましいもの(いずれかの群で変化倍率が2倍以上のもの)は、それぞれ、Bud31、Churc1、Cox7a2l、Eif1、Eif3h、Ell2、Gas5、Gltscr2、Gpbp1、Mat2b、LOC100361103、Rpl26、RGD1565306、LOC100362027、Rpl7、LOC100360522、Rps19、Rps25、Rps4x、Rps7、Ube2b(以上、表1中)、Bach1、Cdkn2c、Eif2c2、Nprl3(以上、表2中)、Dctn2、Dnajb12、Dpm1、Eif2s3y、Fam117a、Fam92a1、Gpbp1l1、Gpbp1l2、Haus4、Itgb3bp、Itgb3bp、Pip5k1b、Pnpla8、Ppp2r3c、Serinc3、Sh3yl1、Slc7a5、Swi5、Tpm1、Trpc6、Ube2f、Ubxn11、Yipf3、Yipf4(以上、表3中)、Tspo、Ube2d2、Ube2d3、Ypel3(以上、表5中)であるので、少なくともこれらを用いることが好ましい。さらに、各表中に記載される各遺伝子のうち、最も好ましいもの(貧血群で変化倍率5倍以上)を列挙すると、Churc1、Cox7a2l、Eif3h、Ell2、Gas5、Gltscr2、Gpbp1、Mat2b、LOC100361103、Rps19、Rps7、Ube2bである。少なくともこれらを用いることが特に好ましい。
各表に記載されている遺伝子は、それぞれ統計学的有意差が認められたものであるから、各遺伝子単独でも鉄量に関する状態を予測することが可能であるが、各表に示す遺伝子のうち、それぞれ複数の遺伝子の転写物量を測定することが予測の精度を高める上で好ましく、特に、それぞれ半数以上の遺伝子の転写物量を測定することが好ましい。
各遺伝子の転写物量の測定自体は周知の方法により行うことができ、例えば、下記実施例に具体的に記載されている血球細胞から抽出したRNAを試料とし、DNAマイクロアレイを用いて測定する方法や、血球から抽出したRNAを鋳型として定量的逆転写PCR等の定量的核酸増幅法等により容易に行うことができる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実験方法・結果
動物実験
1) 鉄欠乏性貧血ラットの作成
3週齢の雄性SDラットを約1週間の予備飼育の後、2群に分け、それぞれ異なる食餌(実験食と総称)を摂取させた。成長期のげっ歯類用の標準調製飼料であるAIN93G食およびAIN93Gから鉄(クエン酸鉄)のみを除去した鉄欠乏食である。AIN93G食を与える群を通常食群(n=5)、鉄欠乏食を与える群を鉄欠乏食群(n=6)とした。なお、鉄欠乏食群は通常食群に比べて摂食量が低下することから、摂取カロリーや他の栄養素の摂取量の違いによる影響を除くために、通常食群は鉄欠乏食群の前日平均摂食量を摂取させた。飼育環境は8時〜20時を明期とする12時間明暗サイクルとし、気温は23 ± 2°C、相対湿度は45 ± 2%にて制御した。実験食摂取開始後13日目より9時〜17時の8時間制限給餌を開始し、17日目に1.5時間の摂食後、麻酔下にて解剖を行い、頸動脈より採血した。血液は、200 micro Lの全血をそのままTRIzol LS Reagentに懸濁し、液体窒素にて保存した。残りの血液は遠心分離し、血清あるいは血漿を採取した。全血からのtotal RNAの抽出はTRIzol LS Reagentの定法に従って行った。
飼育期間中、2群間で体重差は認められなかった。また、鉄欠乏の指標として、血中のヘモグロビン量の測定を実施した(図1)。以上は全て、実験動物中央研究所(共同実験先)にて実施した。
DNAマイクロアレイはAffymetrix社のGeneChip(商品名)Rat Genome 230 2.0 Arrayを用いた。Rat Genome 230 2.0 Arrayには約30,000の転写産物情報が搭載されている。血液より抽出したtotal RNAは、Affymetrix社の定法に従ってDNAマイクロアレイ用に調製し、データを取得した。
2) 貧血のない鉄欠乏ラットの作成
3週齢の雄性SDラットを約1週間の予備飼育の後、2群に分け、それぞれ異なる食餌(実験食と総称)を摂取させた。成長期のげっ歯類用の標準調製飼料であるAIN93G食およびAIN93Gから鉄(クエン酸鉄)のみを除去した鉄欠乏食である。AIN93G食を与える群を通常食群(n=8)、鉄欠乏食を与える群を貧血のない鉄欠乏食群(n=9)とした。なお、貧血のない鉄欠乏食群は通常食群に比べて摂食量が低下することから、他の栄養素の摂取量や摂取カロリーの違いによる影響を除くために、通常食群は貧血のない鉄欠乏食群の前日平均摂食量を摂取させた。飼育環境は8時〜20時を明期とする12時間明暗サイクルとし、気温は20 ± 1°C、相対湿度は35 ± 15%にて制御した。予備飼育期間中から9時〜17時の8時間制限給餌を開始し、実験食開始3日目に1.5時間の摂食後、麻酔下にて解剖を行い、頸動脈より採血した。血液は、200 micro Lの全血をそのままTRIzol LS Reagentに懸濁し、液体窒素にて保存した。残りの血液は遠心分離し、血清あるいは血漿を採取した。全血からのtotal RNAの抽出はTRIzol LS Reagentの定法に従って行った。
飼育期間中、2群間で体重差は認められなかった。また、鉄欠乏の指標として、血中のヘモグロビン量、フェリチン量、TIBC(トランスフェリン総鉄結合能)、血清鉄の測定を実施した(図2)。以上は全て、東京大学(共同実験先)にて実施した。
DNAマイクロアレイはAffymetrix社のGeneChip(商品名)Rat Genome 230 2.0 Arrayを用いた。Rat Genome 230 2.0 Arrayには約30,000の転写産物情報が搭載されている。血液より抽出したtotal RNAは、Affymetrix社の定法に従ってDNAマイクロアレイ用に調製し、データを取得した。なお、DNAマイクロアレイにかけたサンプル数は通常食群(n=4)、貧血のない鉄欠乏食群(n=4)である。
3) 鉄過剰食摂取ラットの作成
3週齢の雄性SDラットを約1週間の予備飼育の後、2群に分け、それぞれ異なる食餌(実験食と総称)を摂取させた。成長期のげっ歯類用の標準調製飼料であるAIN93G食およびAIN93Gに鉄(クエン酸鉄)を通常の約10倍添加した鉄過剰食である。AIN93G食を与える群を通常食群(n=8)、鉄過剰食を与える群を鉄過剰食群(n=9)とした。摂食量について両群間に差は無い。飼育環境は8時〜20時を明期とする12時間明暗サイクルとし、気温は24±1℃ 、相対湿度は55±5%にて制御した。実験食開始8日目の夕方から16時間の絶食後、9日目の9時より麻酔下にて解剖を行い、頸動脈より採血した。血液は、200 micro Lの全血をそのままTRIzol LS Reagentに懸濁し、液体窒素にて保存した。残りの血液は遠心分離し、血清あるいは血漿を採取した。全血からのtotal RNAの抽出はTRIzol LS Reagentの定法に従って行った。
飼育期間中、2群間で体重差は認められなかった。また、鉄欠乏の指標として、血中のヘモグロビン量、フェリチン量、TIBC(トランスフェリン総鉄結合能)、血清鉄の測定を実施した(図3)。以上は全て、東京大学(共同実験先)にて実施した。
DNAマイクロアレイはAffymetrix社のGeneChip(商品名)Rat Genome 230 2.0 Arrayを用いた。Rat Genome 230 2.0 Arrayには約30,000の転写産物情報が搭載されている。血液より抽出したtotal RNAは、Affymetrix社の定法に従ってDNAマイクロアレイ用に調製し、データを取得した。
DNAマイクロアレイデータ解析
<変動probe set抽出条件>
1) 鉄欠乏性貧血ラット
得られたCELファイルデータをDFWにて正規化後、Rank productsにて2群間比較を行った。各probe setに関し、通常群に対して実験群で増加あるいは減少とされるFDRが0.05未満との判定が付されたものを有意とし、「発現変動probe set」として抽出した。
2) 貧血のない鉄欠乏ラット
得られたCELファイルデータをDFWにて正規化後、Rank productsにて2群間比較を行った。各probe setに関し、通常群に対して実験群で増加あるいは減少とされるFDRが0.05未満との判定が付されたものを有意とし、「発現変動probe set」として抽出した。
3) 鉄過剰ラット
得られたCELファイルデータをDFWにて正規化後、Rank productsにて2群間比較を行った。各probe setに関し、通常群に対して実験群で増加あるいは減少とされるFDRが0.05未満との判定が付されたものを有意とし、「発現変動probe set」として抽出した。
<鉄量のわずかな増減にも応答する遺伝子マーカー>
変動probe set抽出条件に従って抽出されたprobe setのうち、鉄欠乏性貧血ラットおよび貧血のない鉄欠乏ラットで共通の変動かつ鉄過剰ラットで逆の変動を示すものを抽出した。これらprobe setのうち、遺伝子名が重複するもの、遺伝子名が付与されていないものを除く処理を行い、「変動遺伝子リスト」とした。
さらにここから、既報(非特許文献1又は2)の論文から肝臓で変動することが明らかな遺伝子を抽出した。
以上の条件で抽出された遺伝子をまとめると以下の通りである。なお、下記の表12〜表15は、対応するヒト遺伝子が存在しないため上記表1及び表2には記載されていないが、本実施例においてラットの遺伝子として特定されたものである。
a) 鉄欠乏性貧血ラットおよび貧血のない鉄欠乏で増加し、鉄過剰ラットで減少する、かつ肝臓における変動遺伝子ではないもの(上記表1及び表12)
Figure 2015228843
b) 鉄欠乏性貧血ラットおよび貧血のない鉄欠乏で増加し、鉄過剰ラットで減少する、かつ肝臓においても変動する遺伝子(表13)
Figure 2015228843
c) 鉄欠乏性貧血ラットおよび貧血のない鉄欠乏で減少し、鉄過剰ラットで増加する、かつ肝臓における変動遺伝子ではないもの(上記表2及び表14)
Figure 2015228843
d) 鉄欠乏性貧血ラットおよび貧血のない鉄欠乏で減少し、鉄過剰ラットで増加する、かつ肝臓においても変動する遺伝子(表15)
Figure 2015228843
全てを統合すると鉄量のわずかな増減にも応答する遺伝子マーカーの総合リストとなり、a)とc)のみの組み合わせであれば、新規遺伝子マーカーリストとなる。
<鉄量の大きな増減に応答する遺伝子マーカー>
変動probe set抽出条件に従って抽出されたprobe setのうち、鉄欠乏性貧血ラットで変動し、かつ鉄過剰ラットで逆の変動し、かつ貧血のない鉄欠乏ラットでは変動しないものを抽出した。これらprobe setのうち、遺伝子名が重複するもの、遺伝子名が付与されていないものを除く処理を行い、「変動遺伝子リスト」とした。
さらにここから、既報(非特許文献1又は2)の論文から肝臓で変動することが明らかな遺伝子を抽出した。
以上の条件で抽出された遺伝子をまとめると以下の通りである。なお、下記の表16〜表19は、対応するヒト遺伝子が存在しないため上記表3〜表6には記載されていないが、本実施例においてラットの遺伝子として特定されたものである。
e) 鉄欠乏性貧血ラットで増加し、鉄過剰ラットで減少する、かつ肝臓における変動遺伝子ではないもの(上記表3及び表16)
Figure 2015228843
f) 鉄欠乏性貧血ラットで増加し、鉄過剰ラットで減少する、かつ肝臓においても変動する遺伝子(上記表4及び表17)
Figure 2015228843
g) 鉄欠乏性貧血ラットで減少し、鉄過剰ラットで増加する、かつ肝臓における変動遺伝子ではないもの(上記表5及び表18)
Figure 2015228843
h) 鉄欠乏性貧血ラットで減少し、鉄過剰ラットで増加する、かつ肝臓においても変動する遺伝子(上記表6及び表19)
Figure 2015228843
全てを統合すると鉄量の大きな増減に応答する遺伝子マーカーの総合リストとなり、e)とg)のみの組み合わせであれば、新規遺伝子マーカーリストとなる。

Claims (7)

  1. 下記表1〜表6に記載される少なくとも1つの遺伝子について、生体から採取した血球細胞中の転写物量を測定することを含む、生体内の鉄量に関する状態を予測する方法であって、
    (1)表1に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には貧血状態又は貧血のない鉄欠乏状態である可能性が高く、減少している場合には鉄過剰状態である可能性が高い、
    (2)表2に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、減少している場合には貧血状態又は貧血のない鉄欠乏状態である可能性が高く、
    (3)表3に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には貧血状態である可能性が高く、減少している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、
    (4)表4に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、減少している場合には貧血状態である可能性が高く、
    (5) 表5に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には貧血状態である可能性が高く、減少している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、
    (6)表6に示す遺伝子の転写物量が増加している場合には鉄過剰状態である可能性が高く、減少している場合には貧血状態である可能性が高い、
    と判断する、方法。
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
  2. 前記表1、表2、表3及び表4に記載される少なくとも1つの遺伝子の転写物量を測定することを含む請求項1記載の方法。
  3. 前記表1〜表6中にそれぞれ記載されている遺伝子が、下記表7〜表11に記載されている遺伝子である請求項1記載の方法。
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
    Figure 2015228843
  4. 前記表7、表8、表9及び表10に記載される少なくとも1つの遺伝子の転写物量を測定することを含む請求項3記載の方法。
  5. 各表に記載されている遺伝子のうち、それぞれ複数の遺伝子の転写物量を測定する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 各表に記載されている遺伝子のうち、それぞれ半数以上の遺伝子の転写物量を測定する請求項5記載の方法。
  7. 遺伝子の転写物量は、血球細胞から抽出したRNAを試料とし、DNAマイクロアレイを用いて測定する請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
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