JPWO2014024939A6 - ポリ乳酸系ポリエステル樹脂、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体、およびポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体の製造方法 - Google Patents
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体、およびポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
式(1)、(2)、(3)を満たし、乳化剤、有機溶剤を使用することなく水系エマルジョンを形成することのできる自己乳化機能を有し、なおかつバイオマス度が高いポリ乳酸系ポリエステル樹脂、該ポリエステル樹脂を含有する水分散体、水性樹脂組成物、水性接着剤、水性塗料、水性インキ、水性接着剤/水性インキによって形成される積層体、および包装材料、さらに徐放性生分解性被覆剤、および徐放性生分解性被覆剤によって形成される徐放性生分解性被覆体。
1≦Log(MV)≦4 ・・・(1)
300≦(AV)≦2,500 ・・・(2)
Log(MV)≦0.0028×(AV)+1.2 ・・・(3)
但し、MVは、80℃における樹脂の溶融粘度(Pa・s)、AVは樹脂中のカルボキシル基酸価(eq/t)である。
1≦Log(MV)≦4 ・・・(1)
300≦(AV)≦2,500 ・・・(2)
Log(MV)≦0.0028×(AV)+1.2 ・・・(3)
但し、MVは、80℃における樹脂の溶融粘度(Pa・s)、AVは樹脂中のカルボキシル基酸価(eq/t)である。
Description
本発明は乳化剤および有機溶剤を使用することなく安定な水系エマルジョンを形成することのできる自己乳化機能を有し、なおかつ植物原料由来の樹脂骨格を有するポリ乳酸系ポリエステル樹脂、これを含有するポリエステル樹脂水分散体、および水分散体の製造方法に関する。
近年揮発性有機溶剤の排出抑制の観点から塗料、インキ、コーティング剤、接着剤、粘着剤、シール剤、プライマーおよび繊維製品や紙製品の各種処理剤が従来の有機溶剤系から水系化、ハイソリッド化、粉体化の方向に進みつつある。とりわけ水分散体による水系化は作業性の良さと作業環境改善の面から最も汎用的で有望視されている。加えて水分散体を形成するバインダー成分が生分解性樹脂を主体として構成されていれば、廃棄後の環境汚染防止の面から、より好ましい。また、水分散体を形成するバインダー成分が動植物等のバイオマス由来成分を原料として製造されるものであれば、化石燃料を原料とするものと比べて、二酸化炭素排出削減の点でより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂は、トウモロコシやイモ等の植物を原料として製造することができる乳酸および/またはラクチドを原料として製造することができる植物由来成分を主体として構成されている樹脂である。ポリ乳酸系樹脂は土壌や海水中では数年内に水と二酸化炭素に分解される生分解性を持ち、環境中に放出された際に、環境に対する負荷が比較的低い。したがって、ポリ乳酸系樹脂を水分散体とすることができれば、生分解性を有し、なおかつバイオマス由来成分を原料とするバインダー成分として有用であり、塗料、インキ、コーティング剤、接着剤、粘着剤、シール剤、プライマーおよび繊維製品や紙製品の各種処理剤等に用いることができることが期待できる。
ポリ乳酸セグメントを含む樹脂を水分散化してバインダー成分として用いた例としては、特許文献1〜5を挙げることができる。特許文献1、2では乳化剤により強制乳化されたポリ乳酸水分散体が用いられている。特許文献3に示される水系ポリ乳酸は、同じく乳化剤を用いて強制乳化させているが、親水性基を樹脂中に導入しても良いと示されており、中でも乳化性良好である点から、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩、または5−スルホイソフタル酸ジメチルのナトリウム塩が好ましいとされている。特許文献4ではポリ乳酸セグメントとスルホン酸金属塩基含有セグメントを分子中に有する共重合ポリウレタンが示されており、乳化剤を添加しなくても安定な水系エマルジョンを形成することのできる自己乳化機能を有することが示されている。また特許文献5では、水酸基を有する乳酸系ポリマーを多価カルボン酸もしくはその酸無水物と反応させ乳酸系ポリマーを有機溶媒に溶解し、塩基、水を添加し転相乳化させて自己水分散性粒子を製造する製法が示されている。
前記背景技術について、本発明者らが検討したところ、以下のような課題があることが判明した。すなわち、特許文献1、2、3に開示されている発明においては、ポリ乳酸樹脂水分散体を作製する際に乳化剤を使用しているので、バインダー成分として使用する場合、乳化剤が樹脂と被着体の界面に残存し接着性を低減するといった課題がある。また特許文献4に開示されている発明においては、乳化剤を使用することなく安定した水分散体が得られており、バインダー成分として使用した場合、高い接着性を示すものの、水分散体の製造工程で脱溶剤操作を行っており、揮発性有機溶剤排出抑制の観点では改善の余地がある。また特許文献5に開示されている発明においても、水分散体の製造工程で脱溶剤操作を行っており、揮発性有機溶剤排出抑制の観点では改善の余地がある。
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、乳化剤、有機溶剤を使用することなく水系エマルジョンを形成することのできる自己乳化機能を有し、なおかつバイオマス度が高いポリ乳酸系ポリエステル樹脂、これを含有する水分散体樹脂組成物、水性接着剤組成物、水性インキ、水性接着剤/水性インキによって形成される積層体、包装材料、および水分散体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
<1> 式(1)、(2)、(3)を満たすことを特徴とするポリ乳酸系ポリエステル樹脂。
1≦Log(MV)≦4 ・・・(1)
300≦(AV)≦2,500 ・・・(2)
Log(MV)≦0.0028×(AV)+1.2 ・・・(3)
但し、MVは80℃における前記ポリ乳酸系ポリエステル樹脂の溶融粘度(Pa・s)、AVは前記ポリ乳酸系ポリエステル樹脂の酸価(eq/t)である。
<2> 乳酸含有率が40質量%以上であることを特徴とする<1>に記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂。
<3> 数平均分子量が2,000以上50,000以下であることを特徴とする<1>または<2>に記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂。
<4> <1>〜<3>いずれかに記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂と塩基性化合物と水とを含有することを特徴とするポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体。
<5> 界面活性剤を含有しないことを特徴とする<4>に記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体。
<6> 有機溶剤を含有しないことを特徴とする<4>または<5>に記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体。
<7> <1>〜<3>いずれかに記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂と塩基性化合物と水とを、界面活性剤および有機溶剤を加えることなく混合することによってポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体を得る工程を有することを特徴とするポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体の製造方法。
<8> <1>〜<3>いずれかに記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂とカルボキシル基に対して反応性を有する硬化剤とを含有することを特徴とする水性樹脂組成物。
<9> 前記硬化剤が多価エポキシ化合物、多価オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物および多価金属塩からなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする<8>記載の水性樹脂組成物。
<10> <8>または<9>の水性樹脂組成物からなることを特徴とする水性接着剤。
<11> <8>または<9>の水性樹脂組成物からなることを特徴とする水性塗料。
<12> <8>または<9>の水性樹脂組成物と色材とからなることを特徴とする水性インキ。
<13> <1>〜<3>いずれかに記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂からなる層(A層)とフィルム、シート、織布、不織布および紙からなる群から選ばれる層(B層)とを含むことを特徴とする積層体。
<14> 前記B層がバイオマス由来物質および/またはバイオマス由来物質の化学改質物質から主としてなるものであることを特徴とする<13>に記載の積層体。
<15> <13>または<14>に記載の積層体を構成要素として有することを特徴とする包装材料。
<16> <8>または<9>の水性樹脂組成物からなることを特徴とする徐放性生分解性被覆剤。
<17> <16>に記載の徐放性生分解性被覆剤によって、被被覆成分を被覆したことを特徴とする徐放性生分解性被覆体。
<18> 前記被被覆成分が、殺虫、除草、除菌、防黴、生物誘引および生物忌避のいずれか1種以上の機能を有するものであることを特徴とする<17>に記載の徐放性生分解性被覆体。
<19> 前記被被覆成分が、生物に対する生理活性、生長促進および栄養補給のいずれか1種以上の機能を有するものであることを特徴とする<17>に記載の徐放性生分解性被覆体。
<1> 式(1)、(2)、(3)を満たすことを特徴とするポリ乳酸系ポリエステル樹脂。
1≦Log(MV)≦4 ・・・(1)
300≦(AV)≦2,500 ・・・(2)
Log(MV)≦0.0028×(AV)+1.2 ・・・(3)
但し、MVは80℃における前記ポリ乳酸系ポリエステル樹脂の溶融粘度(Pa・s)、AVは前記ポリ乳酸系ポリエステル樹脂の酸価(eq/t)である。
<2> 乳酸含有率が40質量%以上であることを特徴とする<1>に記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂。
<3> 数平均分子量が2,000以上50,000以下であることを特徴とする<1>または<2>に記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂。
<4> <1>〜<3>いずれかに記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂と塩基性化合物と水とを含有することを特徴とするポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体。
<5> 界面活性剤を含有しないことを特徴とする<4>に記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体。
<6> 有機溶剤を含有しないことを特徴とする<4>または<5>に記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体。
<7> <1>〜<3>いずれかに記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂と塩基性化合物と水とを、界面活性剤および有機溶剤を加えることなく混合することによってポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体を得る工程を有することを特徴とするポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体の製造方法。
<8> <1>〜<3>いずれかに記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂とカルボキシル基に対して反応性を有する硬化剤とを含有することを特徴とする水性樹脂組成物。
<9> 前記硬化剤が多価エポキシ化合物、多価オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物および多価金属塩からなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする<8>記載の水性樹脂組成物。
<10> <8>または<9>の水性樹脂組成物からなることを特徴とする水性接着剤。
<11> <8>または<9>の水性樹脂組成物からなることを特徴とする水性塗料。
<12> <8>または<9>の水性樹脂組成物と色材とからなることを特徴とする水性インキ。
<13> <1>〜<3>いずれかに記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂からなる層(A層)とフィルム、シート、織布、不織布および紙からなる群から選ばれる層(B層)とを含むことを特徴とする積層体。
<14> 前記B層がバイオマス由来物質および/またはバイオマス由来物質の化学改質物質から主としてなるものであることを特徴とする<13>に記載の積層体。
<15> <13>または<14>に記載の積層体を構成要素として有することを特徴とする包装材料。
<16> <8>または<9>の水性樹脂組成物からなることを特徴とする徐放性生分解性被覆剤。
<17> <16>に記載の徐放性生分解性被覆剤によって、被被覆成分を被覆したことを特徴とする徐放性生分解性被覆体。
<18> 前記被被覆成分が、殺虫、除草、除菌、防黴、生物誘引および生物忌避のいずれか1種以上の機能を有するものであることを特徴とする<17>に記載の徐放性生分解性被覆体。
<19> 前記被被覆成分が、生物に対する生理活性、生長促進および栄養補給のいずれか1種以上の機能を有するものであることを特徴とする<17>に記載の徐放性生分解性被覆体。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂はポリ乳酸セグメントを高濃度で含むので、バイオマス度が高く、なおかつ生分解性に優れる。また、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂は、分子鎖中に高濃度のカルボキシル基を有するので、乳化剤および有機溶剤を使用することなしに塩基性化合物の水溶液と攪拌するだけで容易に水分散体を形成させることができる優れた水分散性を発揮する。また、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体は、乳化剤を使用することなく調製できるので、接着性に優れる。さらに、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体にカルボキシル基に対して反応性を有する硬化剤を配合することにより、接着性および耐水性に優れる接着層やインキを容易に得ることができる。また各種バイオマス素材と本発明の接着剤および/またはインキを組み合わせることにより、バイオマス度の高い積層体を得ることができる。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂は、下記式(1)、(2)、(3)を満たすことを特徴とするポリ乳酸系ポリエステル樹脂である。
1≦Log(MV)≦4 ・・・(1)
300≦(AV)≦2,500 ・・・(2)
Log(MV)≦0.0028×(AV)+1.2 ・・・(3)
但し、MVは、80℃における樹脂の溶融粘度(Pa・s)、AVは樹脂中の酸価(eq/t)である。
1≦Log(MV)≦4 ・・・(1)
300≦(AV)≦2,500 ・・・(2)
Log(MV)≦0.0028×(AV)+1.2 ・・・(3)
但し、MVは、80℃における樹脂の溶融粘度(Pa・s)、AVは樹脂中の酸価(eq/t)である。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の最大の特長は、乳化剤および有機溶剤を使用することなしに塩基性化合物の水溶液と攪拌するだけで容易に水分散体を形成させることができることである。高濃度の親水性基を有する樹脂の水分散性が高い傾向にあることは容易に想像できるが、現実には高濃度の親水性基を有するだけでは、その樹脂が水分散性を発揮するとは限らない。本発明者らは、樹脂を水分散させる温度において、樹脂が十分に高い易動性を有することが重要であることを見出した。もし樹脂の易動性が低ければ、親水性基の大半は樹脂塊の内部に水と隔てられた状態で存在し続けることになり、樹脂の水分散性を高める効果は発揮されない。これに対し、樹脂を水分散させる温度において樹脂が十分に可塑化されて樹脂分子鎖の易動性が高ければ、親水性基は容易に水と接触することができるので、たとえ比較的低い親水性基濃度しか有しない樹脂であっても、水分散性を獲得することができる。このような関係は、具体的には式(3)によって示すことができる。80℃における樹脂の溶融粘度の対数である「Log(MV)」は、樹脂の易動性の指標である。樹脂の酸価である「AV」は樹脂の親水性基濃度の指標である。樹脂の溶融粘度と酸価が式(3)を満たす場合に、乳化剤および有機溶剤を使用することなしに、樹脂と塩基性化合物の水溶液とを攪拌するだけで、容易に水分散体を形成させることができる。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の80℃における溶融粘度(単位:Pa・s)をMVとした場合、Log(MV)は1以上4以下であり、好ましくは1.7以上3.9以下、より好ましくは2以上3.8以下、さらに好ましくは2.2以上3.6以下である。Log(MV)が4より大きくなると、分散時の可塑化が不十分で、親水性基の分散効果が十分に発現せず、分散不良を起こす傾向にある。一方、Log(MV)が1より小さくなると、樹脂の凝集力が小さくなり、塗布膜の強度が小さくなり、例えば接着剤として用いた場合に、接着不良を起こす等の不具合が起こる傾向がある。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体は、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂を塩基性化合物の存在下、温水で容易に分散させることによって得ることができる。分散工程における水温が高すぎると、水の蒸発速度が高くなるので配合比率の制御が困難となる。また、分散工程における水温が高すぎると、揮発性の高い塩基性化合物を使用する場合には、塩基性化合物の揮発速度が高くなり、やはり配合比率の制御が困難となる。一方、溶解を促進するには、樹脂を十分に軟化させることが好ましく、この点からは水温をなるべく高くする方が好ましい。以上のような観点から、溶解させる水温としては80℃程度とすることが好ましい。そこで、本発明においては、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の分散時の可塑化の指標として、80℃における溶融粘度を採用している。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の酸価は、300eq/t(tonの意味)以上2,500eq/t以下であり、好ましくは400eq/t以上2,300eq/t以下、より好ましくは500eq/t以上2,100eq/t以下である。樹脂酸価が低すぎると樹脂に自己乳化性を発揮させることができず、また、この樹脂を用いた塗膜の硬化性が低くなる傾向にある。一方、樹脂酸価を高くすることにより水分散性が高くなる傾向にあるが、酸価が2,500eq/tよりも大きくなると、樹脂の吸水性が高くなり固形樹脂の状態でも加水分解を受けやすく保存安定性が悪くなる傾向にある。またこの樹脂を用いた硬化塗膜の耐水性も悪くなる傾向にある。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の数平均分子量は、2,000以上50,000以下であることが好ましく、より好ましくは3,000以上45,000以下、さらに好ましくは4,000以上40,000以下である。数平均分子量が低すぎると、樹脂の凝集力が小さくなり接着性が不良になる傾向にある。一方、数平均分子量が高すぎると、逆に樹脂の凝集力が大きくなり、水分散性が不良になる傾向にある。このため、一旦溶剤に溶解し水系に相転移させる方法では高濃度の水分散体の調製が可能であっても、塩基性化合物および水のみとの混合で水分散体を調製する場合にはごく低濃度の水分散体しか得ることができないことが多い。また、塩基性化合物および水のみとの混合で水分散体を調製すると、粒子径が粗大となる傾向にあり、製造後直ちに沈殿してしまう傾向にある。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の乳酸含量は40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。40質量%未満では、バイオマス度が低く、二酸化炭素排出削減効果の大きな、環境に対する負荷の低い材料とは言い難い。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の特性を実現する樹脂骨格としては、直鎖状でも分岐状でもよいが、分岐状であることがより好ましい。分岐状高分子は、溶融状態において直鎖状高分子よりも分子鎖の絡み合いが小さくなるとされており、同一組成の直鎖状高分子よりも同一分子量における溶融粘度が低くなる傾向にある。
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂に酸基を導入する方法は特に限定されないが、樹脂末端の水酸基に酸無水物を反応させる方法が簡便であり好ましい。この様な方法を採る場合、原料となるポリ乳酸系ポリエステル樹脂として分岐を有するポリ乳酸系ポリエステル樹脂を用いると、分子当たりの末端基数が高いので、酸価を大きくすることができ、好都合である。原料となるポリ乳酸系ポリエステル樹脂と酸無水物との比率を変更することにより、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の酸価を容易に調整することができる。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の化学構造は特に限定されないが、例えば、以下の式(4)で現される化学構造をとるものを好ましい例として挙げることができる。
Z−(O−(CO−Y−O)q−X)r ・・・(4)
但し、Zは水酸基をr個持つポリオールの残基、Yは−CH(CH3)−、または−CH(CH3)−と炭素数2〜10の直鎖または分岐アルキレン基とが混合した基、Xはカルボキシル基を2個以上有する多塩基酸の残基または水素であり、X,Y,Zは単一種からなるものでも複数種が混合した基であってもよい。q,rは正の数であり、qの平均値は5以上、rの平均値は3以上15以下である。
Z−(O−(CO−Y−O)q−X)r ・・・(4)
但し、Zは水酸基をr個持つポリオールの残基、Yは−CH(CH3)−、または−CH(CH3)−と炭素数2〜10の直鎖または分岐アルキレン基とが混合した基、Xはカルボキシル基を2個以上有する多塩基酸の残基または水素であり、X,Y,Zは単一種からなるものでも複数種が混合した基であってもよい。q,rは正の数であり、qの平均値は5以上、rの平均値は3以上15以下である。
前記式(4)で表されるポリ乳酸系ポリエステル樹脂は、例えば、水酸基を3個以上有する多価アルコールを開始剤として、ラクチド等の乳酸を構成成分として有する環状化合物を開環付加重合させ、次いで末端水酸基に多塩基酸を反応させて分子末端の少なくとも一部にカルボキシル基を導入することにより、製造することができる。また、前記式(4)で表されるポリ乳酸系ポリエステル樹脂は、グリコール酸等の乳酸以外のヒドロキシカルボン酸を構成成分とする環状化合物およびε−カプロラクトン等のラクトン類から選ばれる1種または2種以上の混合物とラクチド等の乳酸を構成成分として有する環状化合物とを、水酸基を3個以上有する多価アルコールを開始剤として開環付加重合させ、次いで末端水酸基に多塩基酸を反応させて分子末端に酸基を導入することによっても、製造することができる。
水酸基をr個持つポリオールの例としては、水酸基を3個以上有する多価アルコールおよびその誘導体を挙げることができる。水酸基を3個有する多価アルコールの例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等を挙げることができる。また水酸基を4個以上有する多価アルコールの例としては、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ポリグリセリン、キシリトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、マンノース等を挙げることができる。これらのうち、ポリグリセリン、キシリトール、ソルビトールは多数の水酸基を持つため、好ましい。
水酸基を3個以上有する多価アルコールの誘導体の好ましい例として、前記多価アルコールの水酸基の一部または全部がアルキレンオキサイド付加されたものを挙げることができ、前記アルキレンオキサイドとしてはエチレンオキサイドが特に好ましい。2級水酸基の、ラクチド等の開環重合の開始剤としての反応性は、1級水酸基の反応性よりもかなり劣るため、前記多価アルコールが2級水酸基と1級水酸基をともに有する場合、2級水酸基は開環付加重合の開始点となりにくい。このため、2級水酸基と1級水酸基をともに有する多価アルコールをラクチド等の開環付加重合の開始剤として用いると、多価アルコールの有する水酸基がすべて1級のみあるいはすべて2級のみの場合と比べて、分岐構造が形成されにくい傾向にある。多価アルコールが2級水酸基と1級水酸基をともに有する場合、あらかじめエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加反応させて用いると、2級水酸基末端は、1級水酸基末端に変換されることから、ラクチド等の開環付加重合の有効な開始点となり、分岐構造が形成されやすくなり好ましい。
また、水酸基を3個以上有する多価アルコールの誘導体の好ましい例として、前記多価アルコールの水酸基の一部が脂肪酸でエステル化されたものを挙げることができる。ポリグリセリンのステアリン酸エステルやオレイン酸エステルはこのような化合物の例であるが、食品添加物としても使用されている安全性の高い化合物であり、エステル化率の低いものを選べば、本発明のポリ乳酸系樹脂に高分岐構造を取らせることが可能であり好ましい。
また、水酸基を3個以上有するポリマーポリオールも、水酸基を3個以上有する多価アルコールの誘導体の好ましい例である。水酸基を3個以上有するポリマーポリオールの具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールを挙げることができる。これらのうち、生分解性を考慮すると脂肪族成分からなるポリエステルポリオールが好ましい。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂において、前記Yは−CH(CH3)−、または−CH(CH3)−と炭素数2〜10の直鎖または分岐アルキレン基とが混合した基である。前記−(CO−Y−O)q−は、ラクチド類またはラクチド類とラクトン類の混合物を、ポリオールを開始剤として開環付加重合することによって、容易に得ることができる。ラクチド類としては、例えば、ラクチド(乳酸の環状二量体)、グリコリド(グリコール酸の環状二量体)等を用いることができる。また、ラクトン類としては、例えば、β−プロピオンラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等を用いることができる。またこれらの化合物は、必ずしも単独で用いる必要はなく、複数種類を共重合することができる。なかでも、生分解性に優れ、かつ重合が容易なε−カプロラクトンおよびラクチドの使用が好ましい。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂において、前記−(CO−Y−O)q−におけるqは正の数であり、qの平均値は5以上、より好ましくは7以上、さらに好ましくは10以上である。qの平均値が低すぎると、必然的に得られるポリ乳酸系ポリエステル樹脂の分子量が低いものとなり、樹脂の凝集力が小さくなり接着性が不良になる傾向にある。一方、qの平均値は50以下であることが好ましい。qの平均値が高すぎると、樹脂の数平均分子量が大きくなり、樹脂の凝集力が大きくなるために溶融粘度が大きくなり、水分散性が不良になる可能性がある。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂において、前記−(O−(CO−Y−O)q−X)rにおけるrの平均値は3以上15以下、より好ましくは3.5以上14以下、さらに好ましくは4以上13以下である。rの平均値が低すぎると、ポリマーの末端基の数が少なく酸付加で導入できる酸価が小さいため、樹脂の分子量が高い場合には水分散性が劣り、水分散性が確保できる程度に樹脂の分子量を下げると樹脂の強度が実用に耐えなくなる。またrの平均値が15を超えると、末端酸付加の際に架橋反応が起こりゲル化を起こす可能性がある。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂において、前記−(CO−Y−O)q−はD−乳酸残基と6−ヒドロキシカプロン酸残基のいずれか一方または双方とL−乳酸残基とから主としてなるランダム共重合体であることが好ましい。また、−(CO−Y−O)q−に占めるL−乳酸残基の含有率は90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。L−乳酸含有率が高すぎると、結晶性が顕著に現われるため、水分散性が不良になる傾向にある。またL−乳酸含量が90質量%を超えると、接着剤として使用する場合、時間経過とともに結晶化が進み接着強度の著しい低下が見られる場合がある。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂において、前記−(CO−Y−O)q−は、典型的には、D−ラクチドとε−カプロラクトンのいずれか一方または双方とL−ラクチドの開環付加重合によって得られるランダム共重合体から主としてなり、さらに他の成分が共重合されていても良い。D−ラクチドとε−カプロラクトンのいずれか一方または双方とL−ラクチドとから主としてなるランダム共重合体は、たとえば、従来公知の開環重合触媒の存在下あるいは不存在下に、ポリオールを開始剤として、D−ラクチドとε−カプロラクトンのいずれか一方または双方とL−ラクチドを加熱撹拌することにより、得ることができる。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂において、前記Xはカルボキシル基を2個以上含む多塩基酸の残基または水素である。前記多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸およびその酸無水物、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸およびその酸無水物、マレイン酸、フマル酸、テルペン−マレイン酸付加体等の不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸およびその酸無水物、トリメリット酸、メチルシクロへキセントリカルボン酸等の3価以上のカルボン酸およびその酸無水物を挙げることができる。これらのうち、無水トリメリット酸は付加反応で容易に反応させることができ、かつ1分子あたりカルボキシル基を2個導入できるので、多量の酸基の導入が可能であり、水分散化に有利であるので好ましい。またバイオマス原料である無水コハク酸も、反応が容易であり、高いバイオマス度を維持できることから好ましい。
また、前記多塩基酸として、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、2,2’−ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)、グリセリントリスアンヒドロトリメリテート等の酸二無水物も使用することができる。これらの化合物を用いると鎖延長効果により、分子量を上げることが可能であり、樹脂強度向上の観点から好ましい。特に、比較的低温で付加反応が可能で、凝集力が少なく水分散性の良好な、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)の使用が好ましい。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂は、グリコール酸等の乳酸以外のヒドロキシカルボン酸を構成成分とする環状化合物およびε−カプロラクトン等のラクトン類から選ばれる1種または2種以上の混合物とラクチド等の乳酸を構成成分として有する環状化合物とを、水酸基を3個以上有する多価アルコールおよびその誘導体、水酸基を3個以上有するポリマーポリオールを開始剤として開環付加重合させ、次いで末端水酸基に多塩基酸を反応させて分子末端に酸基を導入することによっても、製造することができる。より具体的には、水酸基を3個以上含むポリオール、ラクチド、ε−カプロラクトン、触媒を一括して仕込み、150℃以上に昇温させ1時間〜3時間重合させ、さらに多塩基酸無水物を加えて1時間〜2時間反応させることにより、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂を得ることができる。多塩基酸無水物が重合系中に含まれる水との反応によって開環しないように、各原料はあらかじめ真空乾燥等を行って含水率を下げてから使用することが好ましい。また重合中の水分の影響を避けるため、真空中、または不活性ガス雰囲気下で重合を行うことが好ましい。重合温度はポリ乳酸の熱安定性を勘案すると180℃以下で行うのが好ましい。また、酸無水物を水酸基に付加反応させる場合、従来公知の酸付加触媒を使用することにより、重合速度を上げることができる。このような効果を期待できる触媒の例としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩;2−エチル−4−イミダゾール等のイミダゾール類;4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩;p−トルエンスルホン酸ナトリウム等のスルホニウム塩;p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類;オクチル酸亜鉛等の有機金属塩等を挙げることができる。これらのうち、アミン類、ピリジン類、ホスフィン類が開環重合反応の触媒としてより好ましく、特に4−ジメチルアミノピリジンを用いると重合反応速度を高くすることができる。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂を重合によって得る際には、各種の酸化防止剤を添加することが有効である。重合温度が高い場合や重合時間が長い場合には、ポリ乳酸セグメントは耐熱性が低いため酸化劣化を受け、着色することがある。また、ポリエーテル等耐熱性の低いセグメントが共重合されているとさらに酸化劣化を受けやすくなる場合があり、このような場合、酸化防止剤の添加が特に有効である。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ニトロ化合物系酸化防止剤、無機化合物系酸化防止剤等公知のものが例示できる。比較的耐熱性の高いフェノール系酸化防止剤が好ましく、樹脂に対して0.05質量%以上0.5質量%以下の添加が好ましい。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂は水分散性が良好なため、塩基性化合物の存在下、温水中で容易に水分散することができる。水分散体製造時の液温は40℃以上95℃以下が好ましく、より好ましくは55℃以上90℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上85℃以下である。水温が低くても分散は進行するが、時間が掛かってしまう。水温の高い方が分散は早くなるが、水温が高すぎると、水の蒸発速度が高くなるので配合比率の制御が困難となり、また、揮発性の高い塩基性化合物を使用する場合には、塩基性化合物の揮発速度が高くなり、やはり配合比率の制御が困難となる。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体の製造方法において使用される塩基性化合物としては、アンモニア、有機アミン化合物、無機塩基性化合物等が挙げられる。
前記有機アミン化合物の具体例を挙げると、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、sec−ブチルアミン等のアルキルアミン類、3−エトキシプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン等のアルコキシアミン類、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等のモルホリン類である。これらの有機アミン化合物のうち、親水性の高いアルカノールアミン類、特にトリエタノールアミンを使用すると水分散性を向上させることができる。
前記無機塩基性化合物の具体例を挙げると、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、および炭酸アンモニウム等を使用することができる。多価金属の塩基性化合物は、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂中に含まれる複数のカルボキシル基と水に難溶性の塩を生成し、分散性を悪化させる可能性があるので、使用する場合は少量に限定することが好ましい。
前記塩基性化合物は、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基の少なくとも一部を中和し得る量を必要とし、具体的には本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の酸基に対して0.5当量〜1.0当量を添加することが望ましい。また、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の酸基に対して1.0当量未満の塩基性化合物を用いて水分散体を形成した後、前記塩基性化合物を追加添加して、最終的な塩基性化合物の添加量を酸基に対して0.5当量〜1.0当量としても良い。このとき、水分散体のpHは6.5〜7.0に調整することが、ポリ乳酸セグメントの加水分解を抑制する観点で、好ましい。塩基性化合物の添加比率が低すぎると水分散性が低くなる傾向にあり、高すぎると水分散体のpHが高くなりポリ乳酸系ポリエステル樹脂が加水分解を起こす可能性がある。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の水分散体を製造するためには、乳化剤や有機溶剤を使用する必要はないが、必ずしも使用を排除するものでもない。各種ノニオン性乳化剤やアニオン性乳化剤の使用により、水分散体のさらなる安定化を図ることが可能となる場合がある。また、あらかじめ本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂を適当な有機溶剤に溶解したのち相転移させることにより、より安定な水分散体を得ることができる場合がある。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体は水性接着剤として使用することができる。この際、カルボキシル基と反応する硬化剤を加えると、より接着力の高い接着剤を得ることができる。前記硬化剤としては、メラミン系、ベンゾグアナミン系等のアミノ樹脂、多価イソシアネート化合物、多価オキサゾリン化合物、多価エポキシ化合物、フェノール樹脂、カルボジイミド化合物等の各種の硬化剤を使用することができる。特に、多価エポキシ化合物、多価オキサゾリン化合物はカルボキシル基との反応性が高く、低温での硬化が可能となり、また高い接着力を得ることができ、好ましい。また多価金属塩も硬化剤として使用することができる。
これらの硬化剤を使用する場合、その含有量は本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂100質量部に対し、5〜50質量部であることが好ましい。硬化剤の配合量が5質量部を下回ると硬化性が不足する傾向にあり、50質量部を超えると塗膜が硬くなりすぎる傾向にある。
本発明の水性接着剤の硬化剤として適切な多価エポキシ化合物としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂等を挙げることができる。ノボラック型エポキシ樹脂の例としては、フェノール、クレゾール、アルキルフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応させて得られるノボラック類に、エピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものを挙げることができる。ビスフェノール型エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類にエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものや、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルと前記ビスフェノール類の縮合物にエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものを挙げることができる。トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂の例としては、トリスフェノールメタン、トリスクレゾールメタン等とエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるものを挙げることができる。アミノ基含有エポキシ樹脂の例としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等のグリシジルアミン系を挙げることができる。共重合型エポキシ樹脂の例としては、グリシジルメタクリレートとスチレンの共重合体、グリシジルメタクリレートとスチレンとメチルメタクリレートの共重合体、あるいは、グリシジルメタクリレートとシクロヘキシルマレイミド等との共重合体等を挙げることができる。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体は乳化効果を持つため、水に溶けないエポキシ化合物も硬化剤として使用することができるが、水溶性エポキシ樹脂の方が使用しやすく好ましい。水溶性エポキシ樹脂の例としては、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびその誘導体、ソルビトール等の水溶性化合物の水酸基の一部をグリシジル基にしたものを挙げることができる。市販の水溶性エポキシ樹脂としては、阪本薬品工業(株)製のSR−EGM、SR−8EG、SR−GLG、SR−SEP、ナガセケミッテックス(株)製のデナコール(登録商標)EX−614、EX−512、EX−412等を挙げることができる。
本発明の水性接着剤の硬化剤として適切な多価オキサゾリン化合物としては、市販のオキサゾリン化合物を使用することができ、日本触媒製エポクロス(登録商標)WS−500、WS−700、エポクロス(登録商標)K−2010E、エポクロス(登録商標)K−2020E等を使用することができる。
本発明の水性接着剤の硬化剤として適切なカルボジイミド化合物としては、市販のカルボジイミド化合物を使用することができ、日清紡製カルボジライト(登録商標)V−02、V−04等を使用することができる。
本発明の水性接着剤の硬化剤として適切な多価金属塩としては、カルシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩等を使用することができるが、特に塩化カルシウム、炭酸亜鉛アンモニウムが好ましい。
本発明の水性接着剤の硬化剤として適切なフェノール樹脂としては、たとえばアルキル化フェノール類および/またはクレゾール類とホルムアルデヒドとの縮合物を挙げることができる。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基でアルキル化されたアルキル化フェノール、p-tert-アミルフェノール、4,4'-sec-ブチリデンフェノール、p-tert-ブチルフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-シクロヘキシルフェノール、4,4'-イソプロピリデンフェノール、p-ノニルフェノール、p-オクチルフェノール、3-ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニル-o-クレゾール、p-フェニルフェノール、キシレノール等とホルムアルデヒドとの縮合物を挙げることができる。
本発明の水性接着剤の硬化剤として適切なアミノ樹脂としては、例えば尿素、メラミン、ベンゾグアナミン等のホルムアルデヒド付加物、さらにこれらの化合物を炭素原子数が1〜6のアルコールによりアルコキシ化したアルキルエーテル化合物を挙げることができる。具体的にはメトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロール−N,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン等が挙げられるが、好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミンおよびメトキシ化メチロール化ベンゾグアナミンであり、それぞれ単独または併用して使用することができる。
本発明の水性接着剤の硬化剤として適切な多価イソシアネート化合物としては、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。低分子化合物としては、たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネートを挙げることができる。また、これらのイソシアネート化合物の3量体等を挙げることができる。また高分子化合物としては、複数の活性水素を有する化合物と前記低分子ポリイソシアネート化合物の過剰量とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物を挙げることができる。複数の活性水素を有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン等の多価アミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の水酸基とアミノ基を有する化合物、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類等の活性水素含有ポリマーを挙げることができる。
前記イソシアネート化合物はブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3-ジクロロ-2-プロパノール等のハロゲン置換アルコール類、t-ブタノール、t-ペンタノール等の第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタム等のラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステル等の活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類、重亜硫酸ソーダ等も挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて得られる。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体に、色材を配合することにより水性インキを得ることができ、さらにカルボキシル基に対して反応性を有する硬化剤を配合することによりインキの耐水性を向上させることができる。色材としては、公知の顔料、染料を配合することができる。本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の酸価が大きいので各種顔料の分散性が大きく、高濃度の水性インキの作製が可能である。硬化剤としては、接着剤用途で例示したしたものを使用することができる。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体に、各種顔料、塗料に一般的に使用される添加剤を配合することにより水性塗料を得ることができ、さらにカルボキシル基に対して反応性を有する硬化剤を配合することにより塗装膜の耐水性を向上させることができる。顔料としては、公知の有機/無機の着色顔料、炭酸カルシウム、タルク等の体質顔料、鉛丹、亜酸化鉛等の防錆顔料、アルミニウム粉、硫化亜鉛(蛍光顔料)等の各種機能性顔料を配合することができる。また、添加剤としては、可塑剤、分散剤、沈降防止剤、乳化剤、増粘剤、消泡剤、防カビ剤、防腐剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、つや消し剤、帯電防止剤、導電剤、難燃剤等を配合することができる。本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の酸価が大きいので各種顔料の分散性が大きく、高濃度の水性塗料の作製が可能である。硬化剤としては、接着剤用途で例示したしたものを使用することができる。
本発明の水分散体、接着剤、インキおよび塗料は、各種増粘剤を配合することにより、作業性に適した粘性、粘度に調整することができる。増粘剤添加による系の安定性から、メチルセルロース、ポリアルキレングリコール誘導体等のノニオン性のもの、ポリアクリル酸塩、アルギン酸塩等のアニオン性のものが好ましい。
本発明の水分散体、接着剤、インキおよび塗料は、各種表面張力調整剤を使用することにより、塗布性をさらに向上することができる。表面張力調整剤としては、たとえば、アクリル系、ビニル系、シリコーン系、フッ素系の表面張力調整剤等が例示され、特に制限されるものではないが、接着性を損ないにくいことから、上記の中でもアクリル系、ビニル系の表面張力調整剤が好ましい。表面張力調整剤の添加量が過剰であると接着強度を損なう傾向にあるので、樹脂に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下に添加量を制限すべきである。
本発明により得られる水分散体は、水分散体の製造の際に、あるいは製造された水分散体に対して、表面平滑剤、消泡剤、酸化防止剤、分散剤、潤滑剤等の公知の添加剤を配合しても良い。
本発明の水分散体、接着剤、インキおよび塗料は、各種紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤を添加することにより、さらに耐光性、耐酸化性を向上させることができる。紫外線吸収効果、光安定効果をもつ化合物をポリエステル骨格に導入することで、耐光性は大幅に向上するが、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤のエマルジョンや水溶液を、ポリエステル樹脂水分散体に添加することによっても耐光性は向上する。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等各種有機系のもの、酸化亜鉛等無機系のもののいずれも使用可能である。また、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、フェノチアジン、ニッケル化合物等一般的にポリマー用のもの各種が使用可能である。光安定剤もポリマー用のもの各種が使用可能であるが、ヒンダードアミン系のものが有効である。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂からなる層(A層)とフィルム、シート、織布、不織布および紙からなる群から選ばれる層(B層)とを積層し、積層体とすることができる。前記積層体は、例えば、フィルム、シート、織布、不織布および紙からなる群から選ばれる層(B層)に、本発明の水性接着剤および/または水性インキを塗布し乾燥させることにより容易に得ることができる。本発明の水性接着剤および水性インキは、各種原料からなるフィルム、シート、織布、不織布および紙と強い接着性を示すが、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、デンプン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリオレフィンおよびこれらの化学改質物質から作製されるフィルム、シートに対して特に高い接着力を示す。これらのうち、ポリ乳酸、セルロース、デンプン等のバイオマス原料からなるフィルム、シートおよび紙と組み合わせれば、積層体全体のバイオマス度を極めて高くすることができる。また、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂から得られる水性接着剤および水性インキは、各種金属蒸着フィルムおよび金属酸化物蒸着フィルムにも高い接着力を示すので、前記A層/金属蒸着層/B層の3層構造の積層体や、前記A層/金属酸化物蒸着層/B層の3層構造の積層体として用いることも有用である。金属蒸着層および金属酸化物に使用する金属およびB層は特に限定されないが、特にアルミニウム蒸着フィルムと、本発明の水性接着剤および水性インキとの接着力が大きい。本発明の水性接着剤および水性インキが、各種金属蒸着フィルムおよび各種金属酸化物に対して高い接着力を示すのは、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の酸価が高いことの効果であると思われる。これらの積層体は、バイオマス度が高いので比較的短期間で使い捨てにされる材料、例えば包装材料としての使用に好適であり、特に食品包装材料として最適である。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂およびその水分散体を徐放性生分解性被覆剤として使用することができる。本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂は、適度な生分解速度を有するので、自然環境中に放置されると長期間にわたって徐々に生分解され、それに伴って被被覆成分を環境中に徐々に放出することができる。そのため、肥料、農薬、防黴剤、殺菌剤、生物忌避剤等の被被覆剤を本発明の生分解性被覆剤で被覆して形成した被覆体は、被被覆剤の持続放出性に優れる。また、本発明の生分解性被覆剤は、その好ましい実施態様において造膜性に優れる水分散体を形成することができ、塗膜の形態で用いることができる。
<徐放性生分解性被覆体>
本発明における徐放性生分解性被覆体は、被被覆成分を本発明における徐放性生分解性被覆剤によって被覆したものである。本発明の徐放性生分解性被覆体には、被被覆成分および本発明の徐放性生分解性被覆剤以外の成分が配合されていてもよく、例えば、他の生分解性樹脂、非生分解性樹脂、加水分解促進剤、加水分解抑制剤等が配合されていてもよい。また、徐放性生分解性被覆体とは、被被覆成分が徐放性生分解性被覆剤で被覆されているものを指すが、被被覆成分と同じ成分が被覆体の内部に存在するのみならず外表面にも付着しているものをも含む。
本発明における徐放性生分解性被覆体は、被被覆成分を本発明における徐放性生分解性被覆剤によって被覆したものである。本発明の徐放性生分解性被覆体には、被被覆成分および本発明の徐放性生分解性被覆剤以外の成分が配合されていてもよく、例えば、他の生分解性樹脂、非生分解性樹脂、加水分解促進剤、加水分解抑制剤等が配合されていてもよい。また、徐放性生分解性被覆体とは、被被覆成分が徐放性生分解性被覆剤で被覆されているものを指すが、被被覆成分と同じ成分が被覆体の内部に存在するのみならず外表面にも付着しているものをも含む。
本発明における徐放性生分解性被覆体は、土壌、河川湖沼および海洋等の表面および内部等の自然環境中において、微生物等の生物により徐々に分解され、その過程で被被覆成分を長期間にわたって持続的に放出し続ける作用を示す。このため、適切な被被覆成分を選択することによって、徐放性農薬、緩効性肥料、持続性防汚塗料等として用いることができる。
<被被覆成分>
本発明における被被覆成分は、自然環境中で徐放させることが望まれる成分であれば、特に限定されない。本発明における被被覆成分の具体例としては、殺虫、除草、除菌、防黴、生物誘引および生物忌避等の生物の駆除作用が期待できる成分、生理活性物質や肥料等の生物に対する生長促進作用および/または栄養補給作用が期待できる成分等を挙げることができる。また、被被覆成分は、単一成分に限定されず複数成分からなるものであってもよい。
本発明における被被覆成分は、自然環境中で徐放させることが望まれる成分であれば、特に限定されない。本発明における被被覆成分の具体例としては、殺虫、除草、除菌、防黴、生物誘引および生物忌避等の生物の駆除作用が期待できる成分、生理活性物質や肥料等の生物に対する生長促進作用および/または栄養補給作用が期待できる成分等を挙げることができる。また、被被覆成分は、単一成分に限定されず複数成分からなるものであってもよい。
<徐放性生分解性被覆体の製造方法>
本発明の徐放性生分解性被覆体の製造方法は特に限定されないが、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の水分散体を経由して製造されることが好ましい。被被覆成分を水分散体に溶解または分散させ、ついで水分散体自体を噴霧し水分を蒸散させて粒子状としたり、何らかの担体の共存下に噴霧し担体表面および/または担体内部に付着させたり、何らかの被着体に塗布し塗膜を形成させたりすることによって、容易に生分解性被覆体を得ることができ、好都合だからである。しかも、生分解性のポリ乳酸系ポリエステル樹脂が界面活性剤の添加なしに水分散体を形成することができる自己乳化性のものであると、生分解の過程で界面活性剤を環境中に放出することがなく、より環境負荷が少なくなり、より好ましい。また、有機溶剤を含有しないまたは有機溶剤の使用量が少ない水分散体であれば、被覆体の製造工程および被覆体の使用の両方の場面において、有機溶剤を環境中に放出することがない、または少ないため、より環境負荷が少なくなり、より好ましい。
本発明の徐放性生分解性被覆体の製造方法は特に限定されないが、本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂の水分散体を経由して製造されることが好ましい。被被覆成分を水分散体に溶解または分散させ、ついで水分散体自体を噴霧し水分を蒸散させて粒子状としたり、何らかの担体の共存下に噴霧し担体表面および/または担体内部に付着させたり、何らかの被着体に塗布し塗膜を形成させたりすることによって、容易に生分解性被覆体を得ることができ、好都合だからである。しかも、生分解性のポリ乳酸系ポリエステル樹脂が界面活性剤の添加なしに水分散体を形成することができる自己乳化性のものであると、生分解の過程で界面活性剤を環境中に放出することがなく、より環境負荷が少なくなり、より好ましい。また、有機溶剤を含有しないまたは有機溶剤の使用量が少ない水分散体であれば、被覆体の製造工程および被覆体の使用の両方の場面において、有機溶剤を環境中に放出することがない、または少ないため、より環境負荷が少なくなり、より好ましい。
本願は、2012年8月9日に出願された日本国特許出願第2012−176999号に基づく優先権の利益を主張するものである。上記日本国特許出願第2012−176999号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
なお、以下、特記のない場合、部は質量部を表す。また、本明細書中で採用した測定、評価方法は次の通りである。
<樹脂組成>
樹脂試料を、重クロロホルムまたは重ジメチルスルホキシドに溶解し、VARIAN社製 NMR装置400−MRを用いて、1H−NMR分析、必要に応じて13C−NMR分析を行ってその積分比より、樹脂組成を求め、質量%で表示した。また、左記樹脂組成を元に、乳酸含有率(質量%)を算出した。
また、乳酸のL/D比率は以下のとおりの方法で求めた。
試料の5g/100mLクロロホルム溶液を調製し、測定温度25℃、測定光源波長589nmにおいて比旋光度を測定し、[α]obsとした。また、上述の方法で求めた試料組成において、乳酸成分をすべてL−乳酸成分に置換した組成の樹脂を重合し、[α]obsと同様の方法により比旋光度を測定し、[α]100とした。
OP[%]= ABS([α]obs/[α]100)×100
OP=100%の時、試料に含まれる乳酸はすべてL体であり、OP=0%の時は、L体とD体の含有率は等しく各々50%であり、L乳酸/(L乳酸+D乳酸)=50+[OP]/2、との関係が成立する。左記により、L−乳酸とD−乳酸の比率を算出した。
樹脂試料を、重クロロホルムまたは重ジメチルスルホキシドに溶解し、VARIAN社製 NMR装置400−MRを用いて、1H−NMR分析、必要に応じて13C−NMR分析を行ってその積分比より、樹脂組成を求め、質量%で表示した。また、左記樹脂組成を元に、乳酸含有率(質量%)を算出した。
また、乳酸のL/D比率は以下のとおりの方法で求めた。
試料の5g/100mLクロロホルム溶液を調製し、測定温度25℃、測定光源波長589nmにおいて比旋光度を測定し、[α]obsとした。また、上述の方法で求めた試料組成において、乳酸成分をすべてL−乳酸成分に置換した組成の樹脂を重合し、[α]obsと同様の方法により比旋光度を測定し、[α]100とした。
OP[%]= ABS([α]obs/[α]100)×100
OP=100%の時、試料に含まれる乳酸はすべてL体であり、OP=0%の時は、L体とD体の含有率は等しく各々50%であり、L乳酸/(L乳酸+D乳酸)=50+[OP]/2、との関係が成立する。左記により、L−乳酸とD−乳酸の比率を算出した。
<数平均分子量>
樹脂試料を、樹脂濃度が0.5質量%程度となるようにテトラヒドロフランに溶解し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブレンフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定した。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とした。カラムには昭和電工製KF−802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用した。
樹脂試料を、樹脂濃度が0.5質量%程度となるようにテトラヒドロフランに溶解し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブレンフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定した。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とした。カラムには昭和電工製KF−802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用した。
<酸価>
樹脂試料0.8gを20mlのN,N−ジメチルホルミアミドに溶解し、フェノールフタレイン指示薬の存在下、0.1Nのナトリウムメトキシドのメタノール溶液で滴定し、溶液が赤色に着色した点を中和点とし、樹脂106gあたりの当量(当量/106g)に換算して表示した。
樹脂試料0.8gを20mlのN,N−ジメチルホルミアミドに溶解し、フェノールフタレイン指示薬の存在下、0.1Nのナトリウムメトキシドのメタノール溶液で滴定し、溶液が赤色に着色した点を中和点とし、樹脂106gあたりの当量(当量/106g)に換算して表示した。
<溶融粘度>
島津製作所社製のフローテスター(CFT−500C型)にて、80℃に設定した加熱体中央のシリンダー中に水分率0.1%以下に乾燥した樹脂試料を充填し、充填1分経過後、プランジャーを介して試料に圧力(4.9MPa)をかけ、シリンダー底部のダイ(孔径:0.5mm、厚み:20mm)より、溶融した試料を押出し、プランジャーの降下距離と降下時間を記録し、溶融粘度を算出した。
島津製作所社製のフローテスター(CFT−500C型)にて、80℃に設定した加熱体中央のシリンダー中に水分率0.1%以下に乾燥した樹脂試料を充填し、充填1分経過後、プランジャーを介して試料に圧力(4.9MPa)をかけ、シリンダー底部のダイ(孔径:0.5mm、厚み:20mm)より、溶融した試料を押出し、プランジャーの降下距離と降下時間を記録し、溶融粘度を算出した。
<保存安定性>
樹脂試料を大気中、開放系、50℃で10日間保存した後、数平均分子量を測定し、保存前後の分子量変化を評価した。
(判定)○:数平均分子量の変化が5%未満
△:数平均分子量の変化が5%以上10%未満
×:数平均分子量の変化が10%以上
樹脂試料を大気中、開放系、50℃で10日間保存した後、数平均分子量を測定し、保存前後の分子量変化を評価した。
(判定)○:数平均分子量の変化が5%未満
△:数平均分子量の変化が5%以上10%未満
×:数平均分子量の変化が10%以上
<水分散性の評価>
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコに、樹脂、塩基性化合物、水を所定量添加した後、温度を80℃に保ち、400rpmで1時間撹拌した後、目視で水分散性を判定した。
(判定)○:未分散物が全くなく樹脂が完全に分散する。
△:未分散物が存在する。
×:樹脂が全く分散しない。
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコに、樹脂、塩基性化合物、水を所定量添加した後、温度を80℃に保ち、400rpmで1時間撹拌した後、目視で水分散性を判定した。
(判定)○:未分散物が全くなく樹脂が完全に分散する。
△:未分散物が存在する。
×:樹脂が全く分散しない。
<水分散体の平均粒子径>
水分散体試料の体積粒子径基準の算術平均径を、HORIBA LB−500を用いて測定し、水分散体の平均粒子径として採用した。但し、水分散性が△または×のものについては、平均粒子径の測定を行わず、「−」と表示した。
水分散体試料の体積粒子径基準の算術平均径を、HORIBA LB−500を用いて測定し、水分散体の平均粒子径として採用した。但し、水分散性が△または×のものについては、平均粒子径の測定を行わず、「−」と表示した。
<水性接着剤の調製>
水分散体に対して、硬化剤として水溶性エポキシ樹脂SR−SEP(阪本薬品工業(株)製)を表3に記載の比率で配合し、水性接着剤を調製した。
水分散体に対して、硬化剤として水溶性エポキシ樹脂SR−SEP(阪本薬品工業(株)製)を表3に記載の比率で配合し、水性接着剤を調製した。
<接着性評価用サンプルの調製>
厚さ25μmのPETフィルム(東洋紡(株)製)のコロナ処理面に、乾燥後の厚みが5μmとなるように水性接着剤を塗布し、80℃×5分間乾燥した。その接着面に、別の厚さ25μmのPETフィルムのコロナ処理面を貼り合わせ、80℃で3kgf/cm2の加圧下に30秒間プレスし、40℃で8時間熱処理して硬化させて、剥離強度評価用サンプルを得た(初期評価用)。
また、上記サンプルを25℃の水中に5時間浸漬後、表面の水を十分に拭き取り、耐水性評価用サンプルとした。
厚さ25μmのPETフィルム(東洋紡(株)製)のコロナ処理面に、乾燥後の厚みが5μmとなるように水性接着剤を塗布し、80℃×5分間乾燥した。その接着面に、別の厚さ25μmのPETフィルムのコロナ処理面を貼り合わせ、80℃で3kgf/cm2の加圧下に30秒間プレスし、40℃で8時間熱処理して硬化させて、剥離強度評価用サンプルを得た(初期評価用)。
また、上記サンプルを25℃の水中に5時間浸漬後、表面の水を十分に拭き取り、耐水性評価用サンプルとした。
<接着性の評価>
剥離強度を測定し、接着性の評価とした。25℃において、引張速度300mm/minで180°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。実用的性能から考慮すると2N/cm以上が良好である。但し、水分散性が△または×のものについて、上澄み液部分を用いて水性接着剤を作製し、接着性評価用サンプル作製を試みたが、有効成分が少ないため、乾燥後厚みが5μmとなるように塗布することが不可能であった。この塗布面にPETフィルムを上述の方法で貼り合わせ剥離強度評価用サンプルを作製し、剥離強度測定を行ったところ、剥離強度は0.1N/cm以下であり、正確な測定ができないと判断し、「−」と表示した。
剥離強度を測定し、接着性の評価とした。25℃において、引張速度300mm/minで180°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。実用的性能から考慮すると2N/cm以上が良好である。但し、水分散性が△または×のものについて、上澄み液部分を用いて水性接着剤を作製し、接着性評価用サンプル作製を試みたが、有効成分が少ないため、乾燥後厚みが5μmとなるように塗布することが不可能であった。この塗布面にPETフィルムを上述の方法で貼り合わせ剥離強度評価用サンプルを作製し、剥離強度測定を行ったところ、剥離強度は0.1N/cm以下であり、正確な測定ができないと判断し、「−」と表示した。
<耐水性の評価>
前記接着性評価用サンプルを25℃の水中に5時間浸漬後、表面の水を十分に拭き取り、25℃において、引張速度300mm/minで180°剥離試験を行い剥離強度を測定した。但し、水分散性が△または×のものについては、ほとんど接着性を示さなかったため、耐水性の測定を行わず、「−」と表示した。
前記接着性評価用サンプルを25℃の水中に5時間浸漬後、表面の水を十分に拭き取り、25℃において、引張速度300mm/minで180°剥離試験を行い剥離強度を測定した。但し、水分散性が△または×のものについては、ほとんど接着性を示さなかったため、耐水性の測定を行わず、「−」と表示した。
以下、実施例中の本文および表に示した化合物の略号はそれぞれ以下の化合物を示す。
P−GLY:ポリグリセリン#750(数平均分子量750)
P−GLY−EO750:ジグリセリンエチレンオキサイド付加物(数平均分子量750)
P−GLY−MOS:デカグリセリンモノオレイン酸エステル
PEG1000:ポリエチレングリコール(数平均分子量1000)
L−LD:L−ラクチド
D−LD:D−ラクチド
CL:ε−カプロラクトン
TMA:無水トリメリット酸
SC:無水コハク酸
MA:無水マレイン酸
TEA:トリエチルアミン
TETA:トリエタノールアミン
AN:アンモニア水(28%)
NaHCO3:炭酸水素ナトリウム
P−GLY:ポリグリセリン#750(数平均分子量750)
P−GLY−EO750:ジグリセリンエチレンオキサイド付加物(数平均分子量750)
P−GLY−MOS:デカグリセリンモノオレイン酸エステル
PEG1000:ポリエチレングリコール(数平均分子量1000)
L−LD:L−ラクチド
D−LD:D−ラクチド
CL:ε−カプロラクトン
TMA:無水トリメリット酸
SC:無水コハク酸
MA:無水マレイン酸
TEA:トリエチルアミン
TETA:トリエタノールアミン
AN:アンモニア水(28%)
NaHCO3:炭酸水素ナトリウム
実施例A−1
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1の製造
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコにジグリセリンエチレンオキサイド付加物(数平均分子量750)7.7部、L−ラクチド74.4部、ε−カプロラクトン15.2部および触媒としてオクチル酸錫0.028部を仕込み、60℃で30分窒素ガスを流通した。次いで60℃下に30分間減圧し、内容物をさらに乾燥させた。再び窒素ガスを流通しつつ重合系を180℃に昇温し、180℃到達後3時間撹拌した。次いでリン酸0.018部を添加し、20分撹拌後、系を減圧し、未反応のラクチドおよびカプロラクトンを留去した。約20分後、未反応物の留出が収まった後、無水コハク酸4.4部を仕込み、180℃で2時間攪拌した後、内容物を取り出し冷却した。得られたポリ乳酸系ポリエステル樹脂の組成、数平均分子量、乳酸含有率等を表1に示した。
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1の製造
温度計、撹拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコにジグリセリンエチレンオキサイド付加物(数平均分子量750)7.7部、L−ラクチド74.4部、ε−カプロラクトン15.2部および触媒としてオクチル酸錫0.028部を仕込み、60℃で30分窒素ガスを流通した。次いで60℃下に30分間減圧し、内容物をさらに乾燥させた。再び窒素ガスを流通しつつ重合系を180℃に昇温し、180℃到達後3時間撹拌した。次いでリン酸0.018部を添加し、20分撹拌後、系を減圧し、未反応のラクチドおよびカプロラクトンを留去した。約20分後、未反応物の留出が収まった後、無水コハク酸4.4部を仕込み、180℃で2時間攪拌した後、内容物を取り出し冷却した。得られたポリ乳酸系ポリエステル樹脂の組成、数平均分子量、乳酸含有率等を表1に示した。
実施例A−1〜A−8、比較例A−9〜A−15
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.2〜15の製造
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1と同様にして、但し、仕込み原料およびその比率を変更してポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.2〜15を合成し、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1と同様の評価を行った。評価結果を表1〜表2に示した。また、図1に、実施例および比較例で用いたポリ乳酸系ポリエステル樹脂のAVとLog(MV)の関係をプロットしたグラフを示した。
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.2〜15の製造
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1と同様にして、但し、仕込み原料およびその比率を変更してポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.2〜15を合成し、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1と同様の評価を行った。評価結果を表1〜表2に示した。また、図1に、実施例および比較例で用いたポリ乳酸系ポリエステル樹脂のAVとLog(MV)の関係をプロットしたグラフを示した。
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.9は、樹脂酸価が低く、かつ式(3)を満たさず、本発明の範囲外である。ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.10は、式(3)を満たさず、本発明の範囲外である。ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.11は、樹脂酸価が高く、本発明の範囲外である。樹脂No.11は保存安定性が劣るが、酸価が高く吸水性が高いためと推測される。ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.12は、Log(MV)が小さく、本発明の範囲外である。ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.13は、Log(MV)が大きく、かつ式(3)を満たさず、本発明の範囲外である。ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.14は、式(3)を満たさず、本発明の範囲外である。ポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.15も、式(3)を満たさず、本発明の範囲外である。
実施例C−1
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体、水性接着剤の製造および評価
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を25部、TEA1.1部、水75部を仕込み、80℃に昇温し1時間撹拌した後、内容物を取り出し冷却し、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体1を製造した。得られた水分散体の粒子径を測定した。さらに、上述の方法で硬化剤を配合し、得られた塗膜の接着性と耐水性を評価した。結果を表3に示した。
ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体、水性接着剤の製造および評価
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を25部、TEA1.1部、水75部を仕込み、80℃に昇温し1時間撹拌した後、内容物を取り出し冷却し、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体1を製造した。得られた水分散体の粒子径を測定した。さらに、上述の方法で硬化剤を配合し、得られた塗膜の接着性と耐水性を評価した。結果を表3に示した。
実施例C−2〜C−8
実施例C−1と同様にして、但し、仕込み原料およびその比率を変更してポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体の製造を行い、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体2〜8を製造した。さらに、実施例C−1と同様に、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体2〜8に硬化剤を配合し、得られた塗膜の接着性と耐水性を評価した。結果を表3に示した。いずれも高い水分散性を示し、また硬化塗膜は高い接着性および耐水性を示した。
実施例C−1と同様にして、但し、仕込み原料およびその比率を変更してポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体の製造を行い、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体2〜8を製造した。さらに、実施例C−1と同様に、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体2〜8に硬化剤を配合し、得られた塗膜の接着性と耐水性を評価した。結果を表3に示した。いずれも高い水分散性を示し、また硬化塗膜は高い接着性および耐水性を示した。
比較例C−9〜C−15
実施例C−1と同様にして、但し、仕込み原料およびその比率を変更してポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体の製造を試み、水分散体が得られたものについてはさらに、実施例C−1と同様に硬化剤を配合し、得られた塗膜の接着性と耐水性を評価した。結果を表4に示した。
実施例C−1と同様にして、但し、仕込み原料およびその比率を変更してポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体の製造を試み、水分散体が得られたものについてはさらに、実施例C−1と同様に硬化剤を配合し、得られた塗膜の接着性と耐水性を評価した。結果を表4に示した。
比較例C−9、比較例C−10は1時間攪拌後も未分散樹脂が大量に存在し、さらに1時間攪拌を続けてもなお大量の未分散樹脂が残存していた。比較例C−9、比較例C−10に使用したポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.9、樹脂No.10は式(3)を満たさず本発明の範囲外である。水分散工程において樹脂を十分に可塑化させるためには、溶融粘度に比して酸価が低すぎるため、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂の分散が殆ど進まなかったものと推定される。
比較例C−11、C−12において、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂の水分散性は良好であったものの、比較例C−11は耐水性が不良、比較例C−12は接着性が不良であった。比較例C−11に使用した樹脂No.11は、樹脂の酸価が高く、本発明の範囲外である。酸価に対して当量の硬化剤を配合しているが、未反応のカルボキシル基が多数残存しているために、耐水性が不良になったと推定される。比較例C−12に使用した樹脂No.12は、樹脂の溶融粘度が低く、本発明の範囲外である。溶融粘度が低いために凝集力が低く、接着性が不良となったものと推定される。
比較例C−13に使用したポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.13は、1時間攪拌後にはほとんど樹脂の分散が進んでおらず、さらに1時間攪拌を続けたがほとんど分散ができなかった。樹脂No.13は、樹脂の溶融粘度が高く、かつ式(3)を満たさず本発明の範囲外である。水分散工程において樹脂を十分に可塑化させるためには、溶融粘度に比して酸価が低すぎるため、分散が殆どできなかったものと推定される。
比較例C−14に使用した樹脂No.14、比較例C−15に使用した樹脂No.15は、1時間攪拌後にはほとんど樹脂の分散が進んでおらず、さらに1時間攪拌を続けたがほとんど分散ができなかった。樹脂No.14、樹脂No.15は、式(3)を満たさず本発明の範囲外である。水分散温度での樹脂を十分に可塑化させるためには、溶融粘度に比して酸価が低すぎるため、分散が殆どできなかったものと推定される。
<塗料>
水性塗料(D−1)の製造例
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を100部、TEA4.4部、水233部を仕込み、70℃に昇温し1時間撹拌した後、内容物を取り出し冷却し、100メッシュの濾布で濾過した濾液に、硬化剤(住友化学(株)製M−40W)を20部、イオン交換水150部、酸化チタン(石原産業(株)製CR−93)50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの10%ベンジルアルコール溶液2.5部を添加し、ガラスビーズ型高速振とう機を用いて3時間振とうすることにより均一に分散し水性塗料(D−1)を得た。
水性塗料(D−1)の製造例
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を100部、TEA4.4部、水233部を仕込み、70℃に昇温し1時間撹拌した後、内容物を取り出し冷却し、100メッシュの濾布で濾過した濾液に、硬化剤(住友化学(株)製M−40W)を20部、イオン交換水150部、酸化チタン(石原産業(株)製CR−93)50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの10%ベンジルアルコール溶液2.5部を添加し、ガラスビーズ型高速振とう機を用いて3時間振とうすることにより均一に分散し水性塗料(D−1)を得た。
水性塗料(D−2)の製造例
水性塗料(D−1)においてポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1に替えてポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.7を用い、TEA量を6.8部とした以外は水性塗料(D−1)と同様の配合、製造にて水性塗料(D−2)を得た。
上記水性塗料(D−1)、(D−2)を用いて塗膜性能試験を行った。なお塗板の作製、評価は以下の方法に従った。この結果を表5に示す。
水性塗料(D−1)においてポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1に替えてポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.7を用い、TEA量を6.8部とした以外は水性塗料(D−1)と同様の配合、製造にて水性塗料(D−2)を得た。
上記水性塗料(D−1)、(D−2)を用いて塗膜性能試験を行った。なお塗板の作製、評価は以下の方法に従った。この結果を表5に示す。
塗板の作製
溶融亜鉛メッキ鋼板に前記水性塗料(D−1)、(D−2)を塗装後、80℃、10分乾燥後、次いで140℃で30分間焼き付けを行った。膜厚は5μmとした。
溶融亜鉛メッキ鋼板に前記水性塗料(D−1)、(D−2)を塗装後、80℃、10分乾燥後、次いで140℃で30分間焼き付けを行った。膜厚は5μmとした。
評価方法
1.光沢
GLOSS METER(東京電飾社製)を用いて、60度での反射を測定した。
◎:90以上 ○:80以上〜90未満 △:50以上〜80未満 ×:50未満
1.光沢
GLOSS METER(東京電飾社製)を用いて、60度での反射を測定した。
◎:90以上 ○:80以上〜90未満 △:50以上〜80未満 ×:50未満
2.沸水試験
塗装鋼板を沸水中に2時間浸漬した後の塗膜外観(ブリスター発生状況)を評価した。◎:ブリスターなし
○:ブリスター発生面積10%未満
△:ブリスター発生面積10〜50%
×:ブリスター発生面積50%超
塗装鋼板を沸水中に2時間浸漬した後の塗膜外観(ブリスター発生状況)を評価した。◎:ブリスターなし
○:ブリスター発生面積10%未満
△:ブリスター発生面積10〜50%
×:ブリスター発生面積50%超
3.耐溶剤性
20℃の室内において、メチルエチルケトンをしみ込ませたガーゼにて塗面に1kgf/cm2の荷重をかけ、5cmの長さの間を往復させた。下地が見えるまでの往復回数を記録した。50回の往復で下地が見えないものは>50と表示した。回数の大きいほど塗膜の硬化性が良好である。
20℃の室内において、メチルエチルケトンをしみ込ませたガーゼにて塗面に1kgf/cm2の荷重をかけ、5cmの長さの間を往復させた。下地が見えるまでの往復回数を記録した。50回の往復で下地が見えないものは>50と表示した。回数の大きいほど塗膜の硬化性が良好である。
4.密着性
JIS K-5400碁盤目−テープ法に準じて、試験板の塗膜表面にカッターナイフで素地に達するように、直交する縦横11本ずつの平行な直線を1mm間隔で引いて、1mm×1mmのマス目を100個作成した。その表面にセロハン粘着テープを密着させ、テープを急激に剥離した際のマス目の剥がれ程度を観察し下記基準で評価した。
◎:塗膜剥離が全く見られない。
○:塗膜がわずかに剥離したが、マス目は90個以上残存。
△:塗膜が剥離し、マス目の残存数は50個以上で90個未満。
×:塗膜が剥離し、マス目の残存数は50個未満。
JIS K-5400碁盤目−テープ法に準じて、試験板の塗膜表面にカッターナイフで素地に達するように、直交する縦横11本ずつの平行な直線を1mm間隔で引いて、1mm×1mmのマス目を100個作成した。その表面にセロハン粘着テープを密着させ、テープを急激に剥離した際のマス目の剥がれ程度を観察し下記基準で評価した。
◎:塗膜剥離が全く見られない。
○:塗膜がわずかに剥離したが、マス目は90個以上残存。
△:塗膜が剥離し、マス目の残存数は50個以上で90個未満。
×:塗膜が剥離し、マス目の残存数は50個未満。
<インキ>
水性インキ(E−1)の製造例
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量2,000mlのガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を100部、TEA4.4部、水233部を仕込み、70℃に昇温し1時間撹拌した後、30℃まで冷却した後、酸化鉄イエロー水分散体(大日精化工業(株)製MF−5050Yellow)19.6部、水690.2部、2−プロパノール55部を加え、さらに1時間攪拌した後、内容物を取り出し、100メッシュの濾布で濾過して水性インキ(E−1)を得た。
水性インキ(E−1)の製造例
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量2,000mlのガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を100部、TEA4.4部、水233部を仕込み、70℃に昇温し1時間撹拌した後、30℃まで冷却した後、酸化鉄イエロー水分散体(大日精化工業(株)製MF−5050Yellow)19.6部、水690.2部、2−プロパノール55部を加え、さらに1時間攪拌した後、内容物を取り出し、100メッシュの濾布で濾過して水性インキ(E−1)を得た。
水性インキ(E−2)の製造例
水性インキ(E−1)においてポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1に替えてポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.7を用い、TEA量を6.8部とした以外は水性インキ(E−1)と同様の配合、製造にて順次水性インキを得た。
上記水性インキ(E−1)、(E−2)を用いてインキ塗膜性能試験を行った。なお評価サンプルの作製、評価は以下の方法に従った。この結果を表6に示す。
水性インキ(E−1)においてポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1に替えてポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.7を用い、TEA量を6.8部とした以外は水性インキ(E−1)と同様の配合、製造にて順次水性インキを得た。
上記水性インキ(E−1)、(E−2)を用いてインキ塗膜性能試験を行った。なお評価サンプルの作製、評価は以下の方法に従った。この結果を表6に示す。
<水性インキの分散安定性評価>
上記水性インキ(E−1)、(E−2)を、20℃、−5℃でそれぞれ2週間保存し、インキの外観変化を評価した。
◎:外観変化全くなし
○:外観変化殆どなし(攪拌で再分散できる沈降物が発生)
△:わずかに沈降物が発生(攪拌で再分散できないものが若干残る)
×:沈降物発生
上記水性インキ(E−1)、(E−2)を、20℃、−5℃でそれぞれ2週間保存し、インキの外観変化を評価した。
◎:外観変化全くなし
○:外観変化殆どなし(攪拌で再分散できる沈降物が発生)
△:わずかに沈降物が発生(攪拌で再分散できないものが若干残る)
×:沈降物発生
<耐水性評価用サンプルの調製>
厚さ25μmのPETフィルム(東洋紡(株)製)のコロナ処理面に、水性インキ(E−1)、(E−2)を各々乾燥後の厚みが2μmとなるように塗布し、80℃×30分間乾燥し、耐水性評価用サンプルとした。
厚さ25μmのPETフィルム(東洋紡(株)製)のコロナ処理面に、水性インキ(E−1)、(E−2)を各々乾燥後の厚みが2μmとなるように塗布し、80℃×30分間乾燥し、耐水性評価用サンプルとした。
<耐水性の評価>
前記耐水性評価用サンプルを25℃の水中に5時間浸漬後、表面の水を十分に拭き取り、外観変化を確認した。
◎:外観変化全くなし
○:外観変化殆どなし(塗膜と基材の界面のごく一部に水の浸入の形跡がみられる)
△:塗膜の一部に水による膨潤がみられる。
×:全面剥離/溶解が起こった。
前記耐水性評価用サンプルを25℃の水中に5時間浸漬後、表面の水を十分に拭き取り、外観変化を確認した。
◎:外観変化全くなし
○:外観変化殆どなし(塗膜と基材の界面のごく一部に水の浸入の形跡がみられる)
△:塗膜の一部に水による膨潤がみられる。
×:全面剥離/溶解が起こった。
<積層体>
積層体(F−1)の製造例
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を100部、TEA4.4部、水233部を仕込み、70℃に昇温し1時間撹拌した後、30℃以下に冷却し、コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製スノーテックス(登録商標)C)を100部加え、さらに1時間攪拌した後、100メッシュの濾布で濾過した濾液を、厚さ25μmのPLAフィルム(Innovia
Films社製)のコロナ処理面に、乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、80℃×30分間乾燥し、積層体(F−1)を得た。
積層体(F−1)の製造例
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1を100部、TEA4.4部、水233部を仕込み、70℃に昇温し1時間撹拌した後、30℃以下に冷却し、コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製スノーテックス(登録商標)C)を100部加え、さらに1時間攪拌した後、100メッシュの濾布で濾過した濾液を、厚さ25μmのPLAフィルム(Innovia
Films社製)のコロナ処理面に、乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、80℃×30分間乾燥し、積層体(F−1)を得た。
積層体(F−2)の製造例
積層体(F−1)においてポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1に替えてポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.7を用い、TEA量を6.8部とした以外は積層体(F−1)と同様の配合、製造にて積層体(F−2)を得た。
上記積層体(F−1)、(F−2)を用いて性能試験を行った。評価は以下の方法に従った。この結果を表7に示す。
積層体(F−1)においてポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.1に替えてポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.7を用い、TEA量を6.8部とした以外は積層体(F−1)と同様の配合、製造にて積層体(F−2)を得た。
上記積層体(F−1)、(F−2)を用いて性能試験を行った。評価は以下の方法に従った。この結果を表7に示す。
<バイオマス度>
積層体全質量に含まれる、バイオマス由来成分の質量%を算出した。
積層体全質量に含まれる、バイオマス由来成分の質量%を算出した。
<生分解性試験>
積層体10cm×10cmをコンポスター(生ゴミ処理機、三井ホーム社製(MAM))中に入れ、7日後にサンプル形態を目視にて観察し、生分解性の程度を下記の基準に従って4段階で評価した。
◎:サンプルの形態が完全になし
○:サンプルの形態がほとんどなし
△:サンプルの断片あり
×:サンプルの形態がほとんど残っている
積層体10cm×10cmをコンポスター(生ゴミ処理機、三井ホーム社製(MAM))中に入れ、7日後にサンプル形態を目視にて観察し、生分解性の程度を下記の基準に従って4段階で評価した。
◎:サンプルの形態が完全になし
○:サンプルの形態がほとんどなし
△:サンプルの断片あり
×:サンプルの形態がほとんど残っている
<徐放性生分解性被覆剤>
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.7を100部、TEA6.8部、水233部を仕込み、70℃に昇温し1時間撹拌した後、30℃以下に冷却し、コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製スノーテックスC)を100部加え、さらに1時間攪拌した後、100メッシュの濾布で濾過した。その濾液を、平均粒径4mmの窒素系粒状肥料成分に、噴流被覆装置を用いて噴霧被覆し、高温の熱風により水分を蒸発乾燥して被覆粒状の徐放性生分解性被覆体G1を得た。
また濾液をポリプロピレンシートに塗工し60℃の熱風乾燥機中で乾燥し、ついでポリプロピレンシートから剥離させ、乾燥厚み約20μmのポリ乳酸系ポリエステル樹脂H1からなるシートを作製した。このシートを用いて、好気性暗所下での生分解性を評価した。具体的な評価方法はASTM−D5338に準拠した。評価結果を表8に示した。このシートの分解速度は、後述するポリ乳酸系ポリエステル樹脂H2からなるシートと比較すれば速いものの、セルロースよりは遅いことが判明した。ポリ乳酸系ポリエステル樹脂H1は、徐放性を示し、かつ、比較的短期間で被被覆成分の放出を終了させたい場合の被覆剤および被覆体に適する
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.7を100部、TEA6.8部、水233部を仕込み、70℃に昇温し1時間撹拌した後、30℃以下に冷却し、コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製スノーテックスC)を100部加え、さらに1時間攪拌した後、100メッシュの濾布で濾過した。その濾液を、平均粒径4mmの窒素系粒状肥料成分に、噴流被覆装置を用いて噴霧被覆し、高温の熱風により水分を蒸発乾燥して被覆粒状の徐放性生分解性被覆体G1を得た。
また濾液をポリプロピレンシートに塗工し60℃の熱風乾燥機中で乾燥し、ついでポリプロピレンシートから剥離させ、乾燥厚み約20μmのポリ乳酸系ポリエステル樹脂H1からなるシートを作製した。このシートを用いて、好気性暗所下での生分解性を評価した。具体的な評価方法はASTM−D5338に準拠した。評価結果を表8に示した。このシートの分解速度は、後述するポリ乳酸系ポリエステル樹脂H2からなるシートと比較すれば速いものの、セルロースよりは遅いことが判明した。ポリ乳酸系ポリエステル樹脂H1は、徐放性を示し、かつ、比較的短期間で被被覆成分の放出を終了させたい場合の被覆剤および被覆体に適する
<徐放性生分解性被覆剤>
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.6を100部、TEA11.3部、水233部を仕込み、70℃に昇温し1時間撹拌した後、30℃以下に冷却し、コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製スノーテックスC)を100部加え、さらに1時間攪拌した後、100メッシュの濾布で濾過した。その濾液を、平均粒径4mmの窒素系粒状肥料成分に、噴流被覆装置を用いて噴霧被覆し、高温の熱風により水分を蒸発乾燥して被覆粒状の徐放性生分解性被覆体G2を得た。
また濾液をポリプロピレンシートに塗工し60℃の熱風乾燥機中で乾燥し、ついでポリプロピレンシートから剥離させ、乾燥厚み約20μmのポリ乳酸系ポリエステル樹脂H2からなるシートを作製した。このシートを用いて、好気性暗所下での生分解性を評価した。具体的な評価方法はASTM−D5338に準拠した。評価結果を表8に示した。このシートの分解速度は比較的遅く、比較的長期間にわたる被被覆成分の放出が必要な場合の被覆剤および被覆体に適する。
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した容量500mlのガラスフラスコにポリ乳酸系ポリエステル樹脂No.6を100部、TEA11.3部、水233部を仕込み、70℃に昇温し1時間撹拌した後、30℃以下に冷却し、コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製スノーテックスC)を100部加え、さらに1時間攪拌した後、100メッシュの濾布で濾過した。その濾液を、平均粒径4mmの窒素系粒状肥料成分に、噴流被覆装置を用いて噴霧被覆し、高温の熱風により水分を蒸発乾燥して被覆粒状の徐放性生分解性被覆体G2を得た。
また濾液をポリプロピレンシートに塗工し60℃の熱風乾燥機中で乾燥し、ついでポリプロピレンシートから剥離させ、乾燥厚み約20μmのポリ乳酸系ポリエステル樹脂H2からなるシートを作製した。このシートを用いて、好気性暗所下での生分解性を評価した。具体的な評価方法はASTM−D5338に準拠した。評価結果を表8に示した。このシートの分解速度は比較的遅く、比較的長期間にわたる被被覆成分の放出が必要な場合の被覆剤および被覆体に適する。
本発明のポリ乳酸系ポリエステル樹脂は、塩基性化合物と水のみにて容易に水分散が可能であり、環境にやさしい樹脂、水分散体を提供することができる。また硬化剤を配合することにより、耐水性の高い塗膜を提供することができる。
Claims (19)
- 式(1)、(2)、(3)を満たすことを特徴とするポリ乳酸系ポリエステル樹脂。
1≦Log(MV)≦4 ・・・(1)
300≦(AV)≦2,500 ・・・(2)
Log(MV)≦0.0028×(AV)+1.2 ・・・(3)
但し、MVは80℃における前記ポリ乳酸系ポリエステル樹脂の溶融粘度(Pa・s)、AVは前記ポリ乳酸系ポリエステル樹脂の酸価(eq/t)である。 - 乳酸含有率が40質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂。
- 数平均分子量が2,000以上50,000以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂。
- 請求項1〜3いずれかに記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂と塩基性化合物と水とを含有することを特徴とするポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体。
- 界面活性剤を含有しないことを特徴とする請求項4に記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体。
- 有機溶剤を含有しないことを特徴とする請求項4または5に記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体。
- 請求項1〜3いずれかに記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂と塩基性化合物と水とを、界面活性剤および有機溶剤を加えることなく混合することによってポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体を得る工程を有することを特徴とするポリ乳酸系ポリエステル樹脂水分散体の製造方法。
- 請求項1〜3いずれかに記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂とカルボキシル基に対して反応性を有する硬化剤とを含有することを特徴とする水性樹脂組成物。
- 前記硬化剤が多価エポキシ化合物、多価オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物および多価金属塩からなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項8記載の水性樹脂組成物。
- 請求項8または9の水性樹脂組成物からなることを特徴とする水性接着剤。
- 請求項8または9の水性樹脂組成物からなることを特徴とする水性塗料。
- 請求項8または9の水性樹脂組成物と色材とからなることを特徴とする水性インキ。
- 請求項1〜3いずれかに記載のポリ乳酸系ポリエステル樹脂からなる層(A層)とフィルム、シート、織布、不織布および紙からなる群から選ばれる層(B層)とを含むことを特徴とする積層体。
- 前記B層がバイオマス由来物質および/またはバイオマス由来物質の化学改質物質から主としてなるものであることを特徴とする請求項13に記載の積層体。
- 請求項13または請求項14に記載の積層体を構成要素として有することを特徴とする包装材料。
- 請求項8または9の水性樹脂組成物からなることを特徴とする徐放性生分解性被覆剤。
- 請求項16に記載の生分解性被覆剤によって、被被覆成分を被覆したことを特徴とする徐放性生分解性被覆体。
- 前記被被覆成分が、殺虫、除草、除菌、防黴、生物誘引および生物忌避のいずれか1種以上の機能を有するものであることを特徴とする請求項17に記載の徐放性生分解性被覆体。
- 前記被被覆成分が、生物に対する生理活性、生長促進および栄養補給のいずれか1種以上の機能を有するものであることを特徴とする請求項17に記載の徐放性生分解性被覆体。
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