JPWO2014017536A1 - 光電変換層用組成物および光電変換素子 - Google Patents

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Abstract

焼結工程を要することなく基板に対する密着性に優れる光電変換層を形成可能な組成物を提供する。この組成物は、半導体(例えば、酸化チタン粒子)とイオン性ポリマー(例えば、スルホ基を有するフッ素系樹脂など)とで少なくとも構成するとともに、イオン性ポリマーの割合を半導体1重量部に対して0.1〜30重量部とする。この組成物は、さらに、色素(増感色素)を含んでいてもよい。光電変換層は、このような組成物を導電性基板にコーティングすることで、半導体を焼結させることなく形成できる。

Description

本発明は、太陽電池(特に、色素増感太陽電池)などの光電変換素子を構成する光電変換層を形成するのに有用な組成物、この組成物を用いた積層体(電極、光電極)およびこの積層体を備えた光電変換素子に関する。
太陽電池が環境負荷の小さいクリーンエネルギーとして注目され、実際に実用化されている。現在、結晶シリコンを用いた太陽電池が広く使用されているが、高純度なシリコンを用いるため発電コストが高い、また、室内など微弱光に対する変換効率が小さいなどの課題がある。
このような課題を解決するため、光電変換部位に有機材料を用いた太陽電池が広く開発されており、中でも色素増感太陽電池が注目されている。色素増感太陽電池は、スイス・ローザンヌ工科大学のGraetzelらにより開発されており[例えば、特許第2664194号公報(特許文献1)]、光電変換部位に金属酸化物半導体(酸化チタンなど)と増感色素とを用いたことに大きな特徴がある。
このような色素増感太陽電池において、光電変換は、金属酸化物半導体と増感色素との接触界面で生じるため、効率を上げるためには金属酸化物半導体の表面積を大きくするのが望ましい。このため、色素増感太陽電池では、ナノサイズの金属酸化物半導体を電極に用いることで、見かけ面積に対して実効面積を大きくしている。
このような金属酸化物ナノ粒子は、単純に基板に塗布しただけでは、僅かな衝撃で基板から容易に剥離し電極として機能しなくなる。また、粒子間の電気抵抗が大きいため、得られた電気を効率よく取り出すことが出来ず変換効率が低下する。このため、金属酸化物ナノ粒子を塗布した後、高温(450℃程度)で熱処理して金属酸化物ナノ粒子間を溶融接合させることで、上記課題を解決している。
しかし、上記手法では基板を高温に曝す必要があるため、実質的に使用できる基板がガラスなどの無機材料に限定されており、プラスチック基板を用いたフレキシブルな色素増感太陽電池を作製することが出来ない。
また、焼結過程で熱分解するため、塗布前の金属酸化物半導体に予め色素を吸着させておくことができず、焼結過程の後に色素を吸着させる過程が必要となり、焼結過程を含めて全体的に煩雑なプロセスが必要であり、製造コスト上昇の要因ともなっている。
なお、特開2005−251426号公報(特許文献2)には、導電性基板上に金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属クラスター又はその合金を、当該基板上への色素の結合及び結合した色素の遊離が可能なように固定化したものに色素を結合させ、これに光を照射することで生じた電流量を測定し、その電流量から結合した色素量を測定する方法が開示されている。この文献には、色素の遊離が可能なように固定化するための方法として、高分子電解質を用いる方法が好ましいと記載し、実施例では、ナフィオン(Nafion(R)、Aldrich社製,商品名;Nafion117,平均分子量1000)を1mlのエタノールに懸濁し、これに20.5%酸化チタン微粒子水溶液(TAYCA社製,商品名;TKS−203,粒径約6nm)400mlを加え、均一に分散することで得られた酸化チタン−ナフィオンゾル分散液を用いて、酸化チタン修飾ITO電極を作製したことが記載されている。
この文献では、色素を遊離(脱離)させることを想定しているため、十分な導電経路を構築することを想定していない。また、色素の脱離を阻害しないようにするため、高分子電解質の量を大きくすることを想定しておらず、導電性基板に対して高い密着性で金属酸化物などを固定することも全く想定していない。なお、この文献では、金属酸化物などを固定化する工程と色素を吸着させる工程とが必要であるため、製造プロセスが煩雑となる。
特許第2664194号公報(特許請求の範囲) 特開2005−251426号公報(特許請求の範囲、段落[0011]〜[0012]、実施例)
従って、本発明の目的は、優れた光電変換特性を有する光電変換層を形成可能な組成物、この組成物により形成された光電変換層を備えた積層体(電極)及びその製造方法、並びにこの積層体を備えた光電変換素子を提供することにある。
本発明の他の目的は、焼結工程を経ることなく、基板に対して高い密着性を有する光電変換層を形成可能な組成物、この組成物により形成された光電変換層を備えた積層体(電極)及びその製造方法、並びにこの積層体を備えた光電変換素子を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、半導体(例えば、酸化チタン粒子など)に対して、半導体に対しては不純物であるイオン性ポリマー(例えば、強酸性イオン交換樹脂など)を比較的大きい特定の割合で組み合わせることで、意外にも、焼結しなくても、基板に対する優れた密着性と、優れた光電変換特性(優れた半導体の導電性および優れた半導体−基板間の導電性)とを両立できる光電変換層を形成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の組成物(光電変換層用組成物)は、光電変換層を形成するための組成物であって、半導体およびイオン性ポリマーを含む。この組成物において、イオン性ポリマーの割合は、通常、半導体1重量部に対して0.1〜30重量部であってもよい。
本発明の組成物において、半導体は、金属酸化物(例えば、酸化チタン)であってもよい。半導体のサイズは、ナノサイズであってもよく、半導体の形状は粒子状又は繊維状であってもよい。好ましい半導体には、酸化チタンナノ粒子が含まれる。
本発明の組成物において、イオン性ポリマーは、アニオン性ポリマー(特に強酸性イオン交換樹脂)で構成してもよい。また、イオン性ポリマーは、比較的高いpH値を有していてもよく、例えば、25℃におけるpHが5以上のアニオン性ポリマーで構成してもよい。イオン性ポリマーの割合は、特に、半導体100重量部に対して0.25〜15重量部程度であってもよい。
代表的な本発明の組成物には、半導体が酸化チタンナノ粒子で構成され、イオン性ポリマーがスルホ基を有するフッ素含有樹脂で構成されたpH6以上のイオン性ポリマーであり、イオン性ポリマーの割合が、半導体1重量部に対して0.5〜8重量部である組成物などが含まれる。
本発明の組成物は、さらに、色素(例えば、ルテニウム錯体色素)を含んでいてもよい。
本発明には、導電性基板と、この基板上に積層された光電変換層とで構成された積層体であって、光電変換層が、前記組成物で形成されている積層体も含まれる。このような積層体は、電極として利用できる。前記導電性基板は、例えば、導電体層(又は導電層)が形成されたプラスチック基板であってもよい。また、このような積層体において、光電変換層の厚みは、例えば、0.1〜100μm程度であってもよい。
本発明には、導電性基板に、前記組成物をコーティングし、前記積層体を製造する方法も含まれる。このような方法では、通常、コーティング後、半導体(又は前記組成物)を焼結させることなく(又は焼結工程を経ることなく)、前記積層体を製造できる。
本発明には、さらに、前記積層体(電極としての前記積層体)を備えた光電変換素子も含まれる。このような光電変換素子は、太陽電池であってもよく、特に、色素を含む光電変換層で構成された積層体を備えた色素増感太陽電池であってもよい。このような色素増感太陽電池は、例えば、電極としての色素を含む光電変換層で構成された積層体と、この電極に対向して配置される対極と、これらの電極間に介在し、封止処理された電解質層とで構成されていてもよい。
本発明の組成物では、前記の通り、基板(導電性基板など)に対する光電変換層の密着性を向上又は改善できる。そのため、本発明には、基板に対する光電変換層の密着性を改善又は向上する方法も含まれる。この方法は、半導体を含む光電変換層にイオン性ポリマーを含有させて、基板に対する光電変換層(半導体を含む光電変換層)の密着性を向上又は改善する方法であってもよい。なお、この方法において、半導体やイオン性ポリマーの種類や割合等は、好ましい態様を含め、前記組成物と同様である。例えば、この方法において、イオン性ポリマーの割合(含有割合)は、前記と同様の割合(すなわち、半導体1重量部に対して0.1〜30重量部)であってもよい。
本発明の組成物では、優れた光電変換特性を有する光電変換層を形成できる。また、焼結工程を経ることなく、基板に対して高い密着性を有する光電変換層を形成できる。そのため、本発明では、基板を高温に晒すことがなく、基板としてプラスチック基板を使用することも可能である。このようなプラスチック基板を用いると、フレキシブルな電極や光電変換素子を得ることができる。さらに、焼結工程を経ることがないため、光電変換層の製造プロセスを簡略化でき、特に、色素増感型の光電変換層を形成する場合には、色素を予め半導体に付着又は吸着させることができるため、製造プロセスを簡略化する効果において非常に優れている。特に、本発明では、焼結工程を経ないにもかかわらず、光電変換特性を損なうことがなく、基板に対する高い密着性を担保できるため、極めて有用性が高い。
図1は、実施例1で得られた色素増感太陽電池の作製直後及び1週間後の出力特性を示す図である。 図2は、実施例2で得られた色素増感太陽電池の1週間後の出力特性を示す図である。 図3は、実施例3で得られた色素増感太陽電池の1週間後の出力特性を示す図である。 図4は、実施例4で得られた色素増感太陽電池の1週間後の出力特性を示す図である。 図5は、実施例5で得られた色素増感太陽電池の1週間後の出力特性を示す図である。 図6は、実施例6〜10で得られた色素増感太陽電池の1週間後の出力特性を示す図である。
[光電変換層用組成物]
本発明の組成物は、半導体およびイオン性ポリマーを少なくとも含む。このような組成物は、後述するように、特に、光電変換層(又は光電変換素子を構成する光電変換層)を形成するための組成物として有用である。
(半導体)
半導体としては、無機半導体、有機半導体に大別でき、本発明では、無機半導体を好適に用いることができる。無機半導体としては、半導体特性を有する無機物であればよく、用途に応じて適宜選択でき、例えば、金属単体、金属化合物(金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物など)が挙げられる。
無機半導体を構成する金属としては、例えば、周期表第2族金属(例えば、カルシウム、ストロンチウムなど)、周期表第3族金属(例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタノイドなど)、周期表第4族金属(例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなど)、周期表第5族金属(例えば、バナジウム、ニオブ、タンタルなど)、周期表第6族金属(例えば、クロム、モリブデン、タングステンなど)、周期表第7族金属(例えば、マンガンなど)、周期表第8族金属(例えば、鉄など)、周期表第9族金属(例えば、コバルトなど)、周期表第10族金属(例えば、ニッケルなど)、周期表第11族金属(例えば、銅など)、周期表第12族金属(例えば、亜鉛、カドミウムなど)、周期表第13族金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムなど)、周期表第14族金属(例えば、ゲルマニウム、スズなど)、周期表第15族金属(例えば、ヒ素、アンチモン、ビスマスなど)、周期表第16族金属(例えば、テルルなど)などが挙げられる。
半導体は、これらの金属を単独で含む化合物であってもよく、複数組み合わせて含む化合物であってもよい。例えば、半導体は、合金であってもよく、金属酸化物は複合酸化物であってもよい。また、半導体は、上記金属と、他の金属(アルカリ金属など)とを組み合わせて含んでいてもよい。
具体的な半導体としては、例えば、金属酸化物{例えば、遷移金属酸化物[例えば、周期表第3族金属酸化物(酸化イットリウム、酸化セリウムなど)、周期表第4族金属酸化物(酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムなど)、周期表第5族金属酸化物(酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル(五酸化二タンタルなど)など)、周期表第6族金属酸化物(酸化クロム、酸化タングステンなど)、周期表第7族金属酸化物(酸化マンガンなど)、周期表第8族金属酸化物(酸化鉄、酸化ルテニウムなど)、周期表第9族金属酸化物(酸化コバルト、酸化イリジウム、コバルトとナトリウムとの複合酸化物など)、周期表第10族金属酸化物(酸化ニッケルなど)、周期表第11族金属酸化物(酸化銅など)、周期表第12族金属酸化物(酸化亜鉛など)など]、典型金属酸化物[例えば、周期表第2族金属酸化物(酸化ストロンチウムなど)、周期表第13族金属酸化物(酸化ガリウム、酸化インジウムなど)、周期表第14族金属酸化物(酸化ケイ素、酸化スズなど)、周期表第15族金属酸化物(酸化ビスマスなど)など]、これらの金属を複数含む複合酸化物[例えば、周期表第11族金属と遷移金属(周期表第11族金属以外の遷移金属)との複合酸化物(例えば、CuYOなどの銅と周期表第3族金属との複合酸化物)、周期表第11族金属と典型金属の複合酸化物(例えば、CuAlO、CuGaO、CuInOなどの銅と周期表第13族金属との複合酸化物;SrCuなどの銅と周期表第2族金属との複合酸化物;AgInOなどの銀と周期表第13族金属との複合酸化物など)など]、これらの複数の金属および酸素以外の周期表第16族元素を含む酸化物[例えば、
周期表第11族金属と遷移金属(周期表第11族金属以外の遷移金属)との複合酸硫化物(例えば、LaCuOSなどの銅と周期表第3族金属との複合酸硫化物)、周期表第11族金属と遷移金属(周期表第11族金属以外の遷移金属)との複合酸セレン化物(例えば、LaCuOSeなどの銅と周期表第3族金属との複合酸セレン化物)など]など}、金属窒化物(窒化タリウムなど)、金属リン化物(InPなど)、金属硫化物{例えば、Cds、硫化銅(CuS、CuS)、複合硫化物[例えば、周期表第11族金属と典型金属との複合硫化物(例えば、CuGaS、CuInSなどの銅と周期表第13族金属との複合硫化物)など}、金属セレン化物(CdSe、ZnSeなど)、金属ハロゲン化物(CuCl、CuBrなど)、周期表第13族金属−第15族金属化合物(GaAs、InSbなど)、周期表第12族金属−第16族金属化合物(CdTeなど)などの金属化合物(又は合金);金属単体(例えば、パラジウム、白金、銀、金、ケイ素、ゲルマニウム)などが挙げられる。
なお、半導体は、他の元素をドープした半導体であってもよい。
半導体は、n型半導体であってもよく、p型半導体であってもよい。
上記例示の半導体(特に無機半導体)のうち、代表的なn型半導体としては、例えば、周期表第4族金属酸化物(酸化チタンなど)、周期表第5族金属酸化物(酸化ニオブ、酸化タンタルなど)、周期表第12族金属酸化物(酸化亜鉛など)、周期表第13族金属酸化物(酸化ガリウム、酸化インジウムなど)、周期表第14族金属酸化物(酸化スズなど)などが挙げられる。
また、代表的なp型半導体としては、例えば、周期表第6族金属酸化物(酸化クロムなど)、周期表第7族金属酸化物(酸化マンガンなど)、周期表第8族金属酸化物(酸化鉄など)、周期表第9族金属酸化物(酸化コバルト、酸化イリジウムなど)、周期表第10族金属酸化物(酸化ニッケルなど)、周期表第11族金属酸化物(酸化銅など)、周期表第15族金属酸化物(酸化ビスマスなど)、周期表第11族金属と遷移金属又は典型金属との複合酸化物(例えば、CuYO、CuAlO、CuGaO、CuInO、SrCu、AgInOなど)、周期表第11族金属と遷移金属との複合酸硫化物(例えば、LaCuOSなど)、周期表第11族金属と遷移金属との複合酸セレン化物(例えば、LaCuOSeなど)、周期表第11族金属と典型金属との複合硫化物(例えば、CuGaS、CuInSなど)などが挙げられる。
これらの半導体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらのうち、好ましい半導体には、金属酸化物が含まれ、特に透明金属酸化物(透明性を有する金属酸化物)が好ましい。このような金属酸化物としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)、酸化ガリウム(Ga)、銅−アルミニウム酸化物(CuAlO)、酸化イリジウム(IrO)、酸化ニッケル(NiO)、これらの金属酸化物のドープ体などが挙げられる。
また、半導体のうち、n型半導体を好適に使用してもよい。特に、本発明では、酸化チタン(TiO)などのn型の金属酸化物半導体を好適に使用してもよい。
酸化チタンの結晶形(結晶型)は、ルチル型(金紅石型)、アナターゼ型(鋭錐石型)、ブルッカイト型(板チタン石型)のいずれであってもよい。本発明では、ルチル型又はアナターゼ型酸化チタンを好適に用いることができる。アナターゼ型酸化チタンを用いると、長期にわたって基板に対する半導体の高い密着性を維持しやすい。一方、ルチル型酸化チタンは、配向しやすく、酸化チタン間の接触面積を比較的大きくできるため、導電性や耐久性の面から好適に用いてもよい。
なお、酸化チタンは、他の元素をドープした酸化チタンであってもよい。
半導体(例えば、酸化チタンなどの金属酸化物)の形状は、特に限定されず、粒子状、繊維状(又は針状又は棒状)、板状などであってもよい。好ましい形状は、粒子状又は針状であり、特に、粒子状の半導体(半導体粒子)が好ましい。
半導体粒子の平均粒径(平均一次粒子径)は、1〜1000nm(例えば、1〜700nm)程度の範囲から選択でき、通常、ナノサイズ(ナノメータサイズ)、例えば、1〜500nm(例えば、2〜400nm)、好ましくは3〜300nm(例えば、4〜200nm)、さらに好ましくは5〜100nm(例えば、6〜70nm)、特に50nm以下[例えば、1〜50nm(例えば、2〜40nm)、好ましくは3〜30nm(例えば、4〜25nm)、さらに好ましくは5〜20nm(例えば、6〜15nm)、通常10〜50nm]であってもよい。
また、針状(又は繊維状)の半導体において、平均繊維径は、例えば、1〜300nm、好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは50〜100nm程度であってもよい。また、針状の半導体において、平均繊維長は、10〜2000nm、好ましくは50〜1000nm、さらに好ましくは100〜500nm程度であってもよい。針状の半導体において、アスペクト比は、例えば、2〜200、好ましくは5〜100、さらに好ましくは20〜40程度であってもよい。
半導体(例えば、繊維状又は粒子状の半導体)の比表面積は、形状などにもよるが、例えば、1〜600m/g、好ましくは2〜500m/g、さらに好ましくは3〜400m/g程度であってもよい。
特に、半導体粒子の比表面積は、例えば、5〜600m/g(例えば、7〜550m/g)、好ましくは10〜500m/g(例えば、15〜450m/g)、さらに好ましくは20〜400m/g(例えば、30〜350m/g)、特に50m/g以上[例えば、50〜500m/g、好ましくは70〜450m/g、さらに好ましくは100〜400m/g、特に150〜350m/g(例えば、200〜350m/g)]であってもよい。
なお、繊維状又は針状の半導体の比表面積は、1〜100m/g、好ましくは2〜70m/g、さらに好ましくは3〜50m/g(例えば、4〜30m/g)程度であってもよい。
なお、半導体(酸化チタンなど)は、分散液(水分散液など)として、イオン性ポリマー(および後述の色素)と混合してもよい。また、半導体は、市販品を利用してもよく、慣用の方法を利用して合成したものを使用してもよい。例えば、酸化チタンの分散液は、特許第4522886号公報などに記載の方法により得ることができる。
(イオン性ポリマー)
本発明は、半導体とイオン性ポリマーとを組み合わせる(複合化する)ことに特徴を有している。このような組み合わせにより、イオン性ポリマーがバインダー的に作用するためか、基板に対する半導体の優れた密着性を付与できる。しかも、イオン性ポリマーと組み合わせても、優れた光電変換特性を備えた光電変換層を得ることができる。この理由は定かではないが、所定量のイオン性ポリマーと半導体[特に、ナノサイズの半導体粒子(半導体ナノ粒子)]との組み合わせにより、半導体の分散安定性を向上でき、半導体特性を有効に発揮できることや、イオン性のポリマーの種類によってはイオン性ポリマー自体が光電変換により発生した電荷を輸送する電解質(固体電解質)としても機能することなどが考えられる。
イオン性ポリマー(イオン性高分子)は、イオン性(電解質性)を有するポリマー(すなわち、高分子電解質)であればよく、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー{例えば、アミノ基又は置換アミノ基を有する重合体[例えば、アリルアミン系重合体(ポリアリルアミンなど)など]、第4級アンモニウム塩基を有する重合体(例えば、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーに第4級アンモニウム塩基を導入したポリマーなど)など}、両性ポリマー(カルボキシル基とアミノ基の双方を有するポリマーなど)のいずれであってもよいが、本発明では、通常、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー(特にアニオン性ポリマー)を好適に使用することができる。アニオン性ポリマー又はカチオン性ポリマーは、半導体(酸化チタンなど)の表面に対して結合(化学結合、水素結合など)して固定化されやいためか、バインダーとして好適に作用するようである。特に、イオン性ポリマーは、イオン交換樹脂(又はイオン交換体又は固体高分子電解質)であってもよい。
アニオン性ポリマーは、通常、酸基[カルボキシル基、スルホ基(又はスルホン酸基)など]を有するポリマーである。アニオン性ポリマーは、酸基(又は酸性基)を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。なお、酸基は、その一部又は全部が中和されていてもよい。
代表的なアニオン性ポリマー[又は陽イオン交換樹脂(カチオン型イオン交換樹脂、酸型イオン交換樹脂)]としては、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂{例えば、カルボキシル基を有するイオン交換樹脂[例えば、(メタ)アクリル酸ポリマー(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸;メタクリル酸−ジビニルベンゼンコポリマー、アクリル酸−ジビニルベンゼンコポリマーなどの(メタ)アクリル酸と他の共重合性単量体(架橋性モノマーなど)との共重合体など)、カルボキシル基を有するフッ素含有樹脂(パーフルオロカルボン酸樹脂)など]などが挙げられる。
中でも、好ましいアニオン性ポリマーには、強酸性陽イオン交換樹脂が含まれる。強酸性イオン交換樹脂としては、例えば、スルホ基を有するフッ素含有樹脂{例えば、フルオロアルケンとスルホフルオロアルキル−フルオロビニルエーテルとの共重合体[例えば、テトラフルオロエチレン−[2−(2−スルホテトラフルオロエトキシ)ヘキサフルオロプロポキシ]トリフルオロエチレン共重合体(例えば、グラフト共重合体)など]などのフルオロスルホン酸樹脂(特に、パーフルオロスルホン酸樹脂)など}、スルホ基を有するスチレン系樹脂[例えば、ポリスチレンスルホン酸、架橋スチレン系重合体のスルホン化物(例えば、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーのスルホン化物など)など]などが挙げられる。
なお、スルホ基を有するフッ素含有樹脂は、デュポン社から商品名「ナフィオン」シリーズなどとして入手可能である。
なお、イオン性ポリマーをアニオン性ポリマーで構成する場合、イオン性ポリマーをアニオン性ポリマーのみで構成してもよく、アニオン性ポリマーと他のイオン性ポリマー(例えば、両性ポリマーなど)とを組み合わせてもよい。このような場合、イオン性ポリマー全体に対するアニオン性ポリマーの割合は、例えば、30重量%以上(例えば、40〜99重量%)、好ましくは50重量%以上(例えば、60〜98重量%)、さらに好ましくは70重量%以上(例えば、80〜97重量%)であってもよい。
カチオン性ポリマーは、通常、塩基性基(アルカリ性基)を有するポリマーである。塩基性基としては、例えば、アミノ基[例えば、アミノ基、置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのモノ又はジアルキルアミノ基)などの第1級、第2級又は第3級アミノ基]、イミノ基(−NH−、−N<)、第4級アンモニウム塩基(例えば、トリメチルアンモニウム塩基などのトリアルキルアンモニウム塩基)などが挙げられる。カチオン性ポリマーは、これらの塩基性基を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。なお、塩基性基は、その一部又は全部が中和されていてもよい。
代表的なカチオン性ポリマー[又は陰イオン交換樹脂(アニオン型イオン交換樹脂、塩基型イオン交換樹脂)]としては、例えば、アミン系ポリマー{例えば、アリルアミン系ポリマー[ポリアリルアミン、アリルアミン−ジメチルアリルアミン共重合体、ジアリルアミン−二酸化硫黄共重合体などのアリルアミン系単量体(例えば、アリルアミン、ジアリルアミン、ジアリルアルキルアミン(ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミンなど)など)の単独又は共重合体(複数のアリルアミン系単量体の共重合体のみならず、アリルアミン系単量体と共重合性単量体との共重合体も含む、以下同様の表現において同じ)]、ビニルアミン系ポリマー(例えば、ポリビニルアミンなどのビニルアミン系単量体の単独又は共重合体)、アミノ基を有する(メタ)アクリル系ポリマー[例えば、アミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのN−モノ又はジアルキルアミノC1−4アルキル(メタ)アクリレート)、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどのN−モノ又はジアルキルアミノC1−4アルキル(メタ)アクリルアミド)などのアミノ基を有する(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体など]、ヘテロ環式アミン系ポリマー[例えば、イミダゾール系ポリマー(例えば、ポリビニルイミダゾールなど)、ピリジン系ポリマー(例えば、ポリビニルピリジンなど)、ピロリドン系ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)など]、アミン変性エポキシ樹脂、アミン変性シリコーン樹脂など}、イミン系ポリマー[例えば、ポリアルキレンイミン(例えば、ポリエチレンイミンなど)などのイミン系単量体の単独又は共重合体]、第4級アンモニウム塩基含有ポリマーなどが挙げられる。
第4級アンモニウム塩基含有ポリマーにおいて、塩としては、特に限定されず、例えば、ハロゲン化物塩(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩などのアルカン酸塩)、スルホン酸塩などが挙げられる。
第4級アンモニウム塩基含有ポリマーとしては、例えば、上記例示のアミン系ポリマーやイミン系ポリマーのアミノ基やイミノ基を第4級アンモニウム塩基化したポリマー{例えば、N,N,N−トリアルキル−N−(メタ)アクリロイルオキシアルキルアンモニウム塩[例えば、トリメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライドなどのトリC1−10アルキル(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルキルアンモニウム塩]の単独又は共重合体}の他、ビニルアラルキルアンモニウム塩系ポリマー{例えば、ビニルアラルキルアンモニウム塩[例えば、N,N,N−トリアルキル−N−(ビニルアラルキル)アンモニウム塩(例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライドなどのトリC1−10アルキル(ビニル−C6−10アリールC1−4アルキル)アンモニウム塩)、N,N−ジアルキル−N−アラルキル−N−(ビニルアラルキル)アンモニウム塩(例えば、N,N−ジメチル−N−ベンジル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライドなどのN,N−ジC1−10アルキル−N−C6−10アリールC1−4アルキル−N−(ビニル−C6−10アリールC1−4アルキル)アンモニウム塩)]の単独又は共重合体など}、カチオン化セルロース[例えば、ヒドロキシ基含有セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース)と第4級アンモニウム塩基(例えば、トリアルキルアンモニウム塩基など)を有するエポキシ化合物(例えば、N,N,N−トリアルキル−N−グリシジルアンモニウム塩)との反応物]、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーに第4級アンモニウム塩基を導入したポリマーなどが挙げられる。
なお、カチオン性セルロース(カチオン化セルロース)は、(株)ダイセルから、商品名「ジェルナー」、ポリアリルアミンは、ニットーボーメディカル(株)から商品名「PAA」シリーズ、アミン変性シリコーン樹脂は、信越化学工業(株)から、商品名「KF」シリーズなどとして入手できる。
好ましいカチオン性ポリマーは、第4級アンモニウム塩基含有ポリマーなどの強塩基性のカチオン性ポリマー(陰イオン交換樹脂)が挙げられる。
なお、イオン性ポリマーをカチオン性ポリマーで構成する場合、イオン性ポリマーをカチオン性ポリマーのみで構成してもよく、カチオン性ポリマーと他のイオン性ポリマー(例えば、両性ポリマーなど)とを組み合わせてもよい。このような場合、イオン性ポリマー全体に対するカチオン性ポリマーの割合は、例えば、30重量%以上(例えば、40〜99重量%)、好ましくは50重量%以上(例えば、60〜98重量%)、さらに好ましくは70重量%以上(例えば、80〜97重量%)であってもよい。
イオン性ポリマーは、酸性、中性、アルカリ性のいずれであってもよい。特に、本発明では、比較的pHが大きいイオン性ポリマー(アニオン性ポリマーなど)を好適に使用してもよい。このようなイオン性ポリマーのpH(25℃)は、例えば、3以上(例えば、4〜14)、好ましくは5以上(例えば、6〜14)、さらに好ましくは7以上(例えば、7〜14)程度であってもよい。
特に、アニオン性ポリマー(例えば、強酸性イオン交換樹脂)又はアニオン性ポリマーで構成されたイオン性ポリマーのpH(25℃)は、例えば、3以上(例えば、4〜14)、好ましくは5以上(例えば、5〜13)、さらに好ましくは6以上(例えば、6.5〜12)、特に7以上(例えば、7〜12)であってもよく、通常6〜14(例えば、6.5〜11、好ましくは7〜9)程度であってもよい。
また、特に、カチオン性ポリマー(例えば、強塩基性陰イオン交換樹脂)又はカチオン性ポリマーで構成されたイオン性ポリマーのpH(25℃)は、5以上(例えば、6〜14)の範囲から選択でき、例えば、7以上(例えば、7.5〜14)、好ましくは8以上(例えば、8.5〜14)、さらに好ましくは9以上(例えば、9.5〜13.5)、特に10以上(例えば、10.5〜13)であってもよい。
このように比較的高いpHのイオン性ポリマーを用いることで、半導体の種類にもよるが、半導体(例えば、酸化チタンナノ粒子)の凝集を効率よく抑えることができるためか、光電変換特性をより一層向上できる場合がある。
なお、pHは、イオン性ポリマーの水溶液又は水分散液における値(又は水を含む溶媒中における値)であってもよい。換言すれば、上記pHは、25℃において、イオン性ポリマーを水又は水を含む溶媒に溶解又は分散させたときの溶液(水溶液など)又は分散液(水分散液など)における値(pH)であってもよい。
なお、pHは、慣用の方法(例えば、アニオン性ポリマーの酸基を適当な塩基で中和する方法など)により調整することができる。
なお、pHの調整方法は、特に限定されず、慣用の方法(例えば、酸基を適当な塩基で中和する方法や塩基性基を適当な酸基で中和する方法など)により行うことができる。なお、中和された酸基において、カウンターイオンとしては、特に限定されず、例えば、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムなど)などであってもよい。
なお、イオン性ポリマー(アニオン性ポリマーなど)は、架橋構造を有していてもよく(例えば、前記例示の(メタ)アクリル酸−ジビニルベンゼンコポリマーやスチレン系重合体のスルホン化物など)、架橋構造を有していなくてもよい。本発明では、特に、架橋構造を有していない(又は架橋度が非常に低い)イオン性ポリマーを好適に使用してもよい。
イオン性ポリマー(イオン交換樹脂)において、イオン交換容量は、0.1〜5.0meq/g(例えば、0.15〜4.0meq/g)、好ましくは0.2〜3.0meq/g(例えば、0.3〜2.0meq/g)、さらに好ましくは0.4〜1.5meq/g、特に0.5〜1.0meq/g程度であってもよい。
なお、イオン性ポリマーの分子量は、溶媒に対して溶解もしくは分散できる範囲であれば特に制限されない。
イオン性ポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
イオン性ポリマーの割合は、半導体1重量部に対して、0.1重量部以上(例えば、0.1〜30重量部)の範囲から選択でき、例えば、0.15〜25重量部(例えば、0.18〜20重量部)、好ましくは0.2〜18重量部(例えば、0.25〜15重量部)、さらに好ましくは0.3〜12重量部(例えば、0.4〜10重量部)、特に0.5〜8重量部(例えば、0.55〜7重量部)程度であってもよく、通常0.1〜10重量部(例えば、0.3〜7重量部)程度であってもよい。上記のような割合で半導体とイオン性ポリマーとを組み合わせることにより、基板に対する優れた密着性と優れた光電変換特性とを高いレベルで両立させることができる。なお、イオン性ポリマーの量が少なすぎると、半導体の分散性を向上できないことなども関連して十分な密着性が得られない場合がある。また、多すぎると、半導体間の接触を妨げやすくなり、かえって光電変換特性を低下させる虞がある。
(色素)
本発明の組成物は、さらに、色素を含んでいてもよい。色素を含有させることで、色素増感型の光電変換層又は色素増感型の光電変換素子(色素増感太陽電池など)を効率よく形成することができる。
色素(染料、顔料)としては、増感剤(増感色素、光増感色素)として機能する成分(又は増感作用を示す成分)であれば特に限定されず、例えば、有機色素、無機色素(例えば、炭素系顔料、クロム酸塩系顔料、カドミウム系顔料、フェロシアン化物系顔料、金属酸化物系顔料、ケイ酸塩系顔料、リン酸塩系顔料など)などが挙げられる。色素は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
有機色素(有機染料又は有機顔料)としては、例えば、ルテニウム錯体色素{例えば、ルテニウムのビピリジン錯体[例えば、シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)ビステトラブチルアンモニウム(別名:N719)、シス−ビス(イソチオシアナト)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)、シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)、シス−ビス(シアニド)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)、トリス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)ジクロリドなど]、ルテニウムのターピリジン錯体[例えば、トリス(イソチオシアナト)ルテニウム(II)−2,2’:6’,2’’−ターピリジン−4,4’,4’’−トリカルボン酸 トリステトラブチルアンモニウム塩など]などのルテニウムのピリジン系錯体}、オスミウム錯体色素、ポルフィリン系色素(マグネシウムポルフィリン、亜鉛ポルフィリンなど)、クロロフィル系色素(クロロフィルなど)、キサンテン系色素(ローダミンB、エリスロシンなど)、シアニン系色素(メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニンなど)、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、クマリン系色素、キノン系色素、アントラキノン系色素、スクアリリウム系色素、アゾメチン系色素、キノフタロン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリン系色素、ニトロソ系色素、ピロロピロール系色素、塩基性色素(メチレンブルーなど)などが挙げられる。
これらの色素の中でも、有機色素が好ましく、中でも、ルテニウム錯体色素が好ましい。
なお、色素は、通常、半導体(又は半導体表面)に付着した(又は固定化された)形態で光電変換層(又は光電変換素子)に含まれる。付着(又は固定化)の態様としては、吸着(物理吸着)、化学結合などが挙げられる。そのため、色素は、半導体に対して付着しやすい色素を好適に選択してもよい。また、カルボキシル基、エステル基、スルホ基などの官能基を配位子として有する色素(例えば、N719などのカルボキシル基を有するルテニウム色素)も好ましい。このような配位子を有する色素は、酸化チタンなどの半導体表面と結合しやすく、脱離しにくいため好適である。
色素の割合(付着又は吸着割合)は、特に限定されないが、例えば、半導体およびイオン性ポリマーと関連づけて、下記式の範囲となるように選択してもよい。
0<(I×I+D×D)/S≦1
(式中、Iはイオン性ポリマー中のイオン性基の数、Iはイオン性基1個あたりの占有面積、Dは色素(色素分子)の数、Dは色素1個あたりの占有面積、Sは、半導体の表面積を示す。)
上記式において、Iはイオン性基の総数であり、例えば、イオン性ポリマーのイオン交換容量(meq/g)にイオン性ポリマーの重量(g)及びアボガドロ数を掛けることで求めることができ、通常、I×I<Sである。I、Dは、それぞれ、イオン性基1つの占有面積(m)、色素1分子の占有面積(m)であり、面積が最大となるよう投影した時の値を用いることができる。
具体的な色素の割合は、半導体1重量部に対して、例えば、0.001〜1重量部(例えば、0.003〜0.7重量部)、好ましくは0.005〜0.5重量部(例えば、0.007〜0.3重量部)、さらに好ましくは0.01〜0.2重量部(例えば、0.02〜0.1重量部)程度であってもよい。
本発明の組成物は、溶媒を含む組成物(コーティング組成物)であってもよい。溶媒としては、特に限定されず、有機溶媒[例えば、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルカノール類)、芳香族系溶媒(例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートなどの酢酸エステル類)、ケトン系溶媒(例えば、アセトンなどの鎖状ケトン類;シクロヘキサノンなどの環状ケトン類)、エーテル系溶媒(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロアルカン類)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、ニトロ系溶媒(例えば、ニトロベンゼンなど)など]、水などが挙げられる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
溶媒を含む組成物において、固形分(又は不揮発性成分)の割合は、光電変換層を形成する際のコーティング方法などに応じて適宜選択でき、例えば、0.1〜90重量%(例えば、0.5〜70重量%)、好ましくは1〜50重量%(例えば、5〜40重量%)、さらに好ましくは10〜30重量%程度であってもよい。本発明では、比較的イオン性ポリマーの割合を大きくできるので、半導体を含む固形分が高濃度であっても、半導体の分散安定性を十分に担保できる。
また、溶媒を含む組成物のpHは、特に限定されないが、前記のように比較的高いpHとしてもよい。例えば、溶媒を含む組成物のpH(25℃)は、例えば、3以上(例えば、4〜14)、好ましくは5以上(例えば、6〜14)、さらに好ましくは7以上(例えば、7〜14)程度であってもよい。特に、イオン性ポリマーをアニオン性ポリマーで構成する場合、溶媒を含む組成物のpH(25℃)は、例えば、3以上(例えば、4〜14)、好ましくは5以上(例えば、5〜13)、さらに好ましくは6以上(例えば、6.5〜12)、特に7以上(例えば、7〜12)であってもよく、通常6〜14(例えば、6.5〜11、好ましくは7〜9)程度であってもよい。また、特に、カチオン性ポリマーでイオン性ポリマーを構成する場合、溶媒を含む組成物のpH(25℃)は、5以上(例えば、6〜14)の範囲から選択でき、例えば、7以上(例えば、7.5〜14)、好ましくは8以上(例えば、8.5〜14)、さらに好ましくは9以上(例えば、9.5〜13.5)、特に10以上(例えば、10.5〜13)であってもよい。
本発明の組成物は、各成分(半導体、イオン性ポリマー、必要に応じて色素など)を混合することにより得ることができる。例えば、溶媒を含む組成物は、各成分を溶媒中で混合することで調製してもよく、予め各成分(例えば、半導体およびイオン性ポリマー)を混合した後、溶媒に混合(又は分散)させて調製してもよい。なお、前記のように、酸化チタンなどの半導体は、予め溶媒に分散させた分散液の形態で、イオン性ポリマー(および色素)と混合してもよい。なお、前記のように、組成物のpHを調整する場合、pHの調整は適当な段階で行うことができ、例えば、半導体の分散液中のpHを予め前記範囲となるように調整して、イオン性ポリマー(および色素)と混合してもよく、半導体(又はその分散液)とイオン性ポリマー(および色素)との混合系において組成物のpHを調整してもよい。
また、色素は、半導体およびイオン性ポリマーと予め混合してもよく、基板に半導体およびイオン性ポリマーを含む組成物を塗布して形成された塗膜に、色素をコーティング(付着)させることもできる。本発明では、後述のように、半導体を焼結(焼成)させる必要がないため、予め半導体およびイオン性ポリマーと混合することが可能である。
本発明の組成物は、光電変換層(又は光電変換素子を構成する光電変換層)を形成するための組成物として有用である。このような光電変換層は、通常、基板上に形成される。すなわち、光電変換層は、基板とともに積層体を構成する。以下に、光電変換層およびその製法について詳述する。
[積層体およびその製造方法]
本発明の積層体は、基板と、この基板上に積層された光電変換層(前記組成物で形成された光電変換層)とで構成される。
基板は、用途にもよるが、通常、導電性基板であってもよい。導電性基板は、導電体(又は導電体層)のみで構成してもよいが、通常、ベースとなる基板(ベース基板)上に導電体層(又は導電層又は導電膜)が形成された基板などが挙げられる。なお、このような場合、光電変換層は、導電体層上に形成される。
導電体(導電剤)としては、用途に応じて適宜選択できるが、例えば、導電性金属酸化物[例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、アンチモンドープ金属酸化物(アンチモンドープ酸化錫など)、錫ドープ金属酸化物(錫ドープ酸化インジウムなど)、アルミニウムドープ金属酸化物(アルミニウムドープ酸化亜鉛など)、ガリウムドープ金属酸化物(ガリウムドープ酸化亜鉛など)、フッ素ドープ金属酸化物(フッ素ドープ酸化スズなど)など]などの導電体が挙げられる。これらの導電体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、導電体は、通常、透明導電体であってもよい。
ベース基板としては、無機基板(例えば、ガラスなど)、有機基板[例えば、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、セルロース系樹脂(セルローストリアセテートなど)、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルスルホンなど)、ポリスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィドなど)、ポリイミド樹脂などのプラスチックで形成された基板又はフィルム(プラスチック基板又はプラスチックフィルム)など]などが挙げられる。本発明では、半導体の焼結工程が不要であるため、ベース基板としてプラスチック基板(プラスチックフィルム)を用いることが可能である。
光電変換層は、前記組成物を基板(導電体層)上に塗布(又はコーティング)することにより形成できる。塗布方法としては、特に限定されず、例えば、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ブレードコート法、ドクターブレード法、スキージ法、ディップコート法、スプレー法、スピンコート法、インクジェット印刷法などが例示できる。塗布後、所定の温度(例えば、室温〜150℃程度)で乾燥させてもよい。
なお、色素は、前記のように、半導体およびイオン性ポリマーを基板上に塗布した後、半導体およびイオン性ポリマーを含む塗膜に色素を付着させることで光電変換層に含有させてもよい。色素を付着させる方法としては、色素を含む溶液を塗膜に噴霧する方法、塗膜を形成した基板を色素を含む溶液に浸漬する方法などが挙げられる。なお、噴霧又は浸漬後、前記と同様に乾燥させてもよい。
なお、本発明では、組成物を基板上に塗布した後、半導体を焼結(又は焼成)させることなく[又は高温(例えば、400℃以上)で加熱処理することなく]、光電変換層を形成する。本発明では、このような焼結工程を経なくても、優れた基板に対する密着性(さらには、光電変換特性)を有する光電変換層を形成できる。
上記のようにして光電変換層が基板(導電性基板)上に形成され、積層体が得られる。光電変換層の厚みは、例えば、0.1〜100μm(例えば、0.3〜70μm)、好ましくは0.5〜50μm(例えば、1〜30μm)、さらに好ましくは3〜20μm程度であってもよい。
上記のようにして得られる積層体は、導電体層と光電変換層とを有しており、光電変換素子を構成する電極として利用できる。以下、光電変換素子について詳述する。
[光電変換素子]
光電変換素子は、前記積層体(電極)を備えている。すなわち、光電変換素子は、電極としての積層体を備えている。代表的な光電変換素子の一例としては、太陽電池が挙げられる。特に、光電変換層が色素を含む場合、光電変換素子は、色素増感太陽電池を形成する。
太陽電池は、例えば、電極としての積層体と、この電極(電極の光電変換層側)に対向して配置される対極と、これらの電極間に介在し、封止処理された電解質層とで構成されている。すなわち、電解質層(又は電解質)は、両電極(又はその縁部)を封止材[例えば、熱可塑性樹脂(アイオノマー樹脂など)、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、シリコーン樹脂など)などで構成された封止材]により封止処理することで形成された空間又は空隙内に介在している(又は封入される)。
なお、対極は、電極(又は積層体)を構成する半導体の種類によって、正極又は負極となる。すなわち、半導体がn型半導体であるとき、対極は正極(積層体は負極)を形成し、半導体がp型半導体であるとき、対極は負極(積層体は正極)を形成する。
対極は、前記積層体と同様に、導電性基板と、この導電性基板上(又は導電性基板の導電体層上)に形成された触媒層(正極触媒層又は負極触媒層)とで構成される。なお、導電体層が導電性に加えて還元能力を有している場合、必ずしも触媒層を設ける必要はない。なお、対極は、導電体層又は触媒層の面を積層体(又は電極)と対向させる。対極において、導電性基板は、前記と同様の基板の他、後述のようにベース基板上に導電体層と触媒層とを兼ね備えた層(導電触媒層)を形成した基板などであってもよい。また、触媒層(正極触媒層又は負極触媒層)は、特に限定されず、導電性金属(金、白金など)、カーボンなどで形成できる。
触媒層(正極触媒層又は負極触媒層)は、非多孔質層(又は非多孔性層)であってもよく、多孔質構造を有する層(多孔質層)であってもよい。このような多孔質層(多孔質触媒層)は、多孔性触媒成分(多孔質触媒成分)で構成されていてもよく、多孔性成分(多孔質成分)とこの多孔性成分に担持された触媒成分とで構成してもよく、これらを組み合わせて構成してもよい。すなわち、多孔性触媒成分は、多孔性を有するとともに、触媒成分として機能する成分(多孔性と触媒機能とを兼ね備えた成分)である。なお、後者の態様において、多孔性成分は、触媒機能を備えていてもよい。
多孔性触媒成分としては、例えば、金属微粒子(例えば、白金黒など)、多孔質カーボン[活性炭、グラファイト、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック(カーボンブラック集合体)、カーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ集合体)など]などが挙げられる。これらの成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。多孔質触媒成分のうち、活性炭などを好適に用いることができる。
多孔性成分としては、上記多孔質カーボンの他、金属化合物粒子[例えば、前記例示の導電性金属酸化物(例えば、錫ドープ酸化インジウムなど)の粒子(微粒子)など]などが挙げられる。これらの成分は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、触媒成分としては、導電性金属(例えば、白金)などが挙げられる。
多孔性触媒成分および多孔性成分の形状(又は形態)は、特に限定されず、粒子状、繊維状などであってもよく、好ましくは粒子状である。
このような粒子状の多孔性触媒成分及び多孔性成分(多孔性粒子)の平均粒径は、例えば、1〜1000μm(例えば、5〜700μm)、好ましくは10〜500μm(例えば、20〜400μm)、さらに好ましくは30〜300μm(例えば、40〜200μm)、特に50〜150μm(例えば、70〜100μm)程度であってもよい。
多孔性触媒成分及び多孔性成分の比表面積は、例えば、1〜4000m/g(例えば、10〜3500m/g)、好ましくは20〜3000m/g(例えば、30〜2500m/g)、さらに好ましくは50〜2000m/g(例えば、100〜1500m/g)、特に200〜1000m/g(例えば、300〜500m/g)程度であってもよい。
なお、多孔質層(多孔質触媒層)は、必要に応じて、バインダー成分[例えば、樹脂成分[例えば、セルロース誘導体(メチルセルロース)などの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂]などを含んでいてもよい。
バインダー成分の割合は、多孔質層(多孔質触媒層)全体に対して、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%(例えば、3〜20重量%)程度であってもよい。
多孔質層を有する電極は、少なくとも多孔質層を備えていればよく、通常、少なくとも基板(導電性基板であってもよい基板)と多孔質触媒層とで少なくとも構成されている。代表的な多孔質層を有する電極としては、(i)導電性基板(ベース基板上に導電体層が形成された基板、前記例示の導電性基板など)と、この導電性基板(又は導電体層)上に形成され、多孔性触媒成分で構成された多孔質触媒層とで構成された電極(又は積層体)、(ii)ベース基板(前記例示のベース基板など)と、このベース基板上に形成され、多孔性成分および触媒成分(例えば、触媒成分が担持された多孔性成分)で構成された多孔質触媒層とで構成された電極(又は積層体)などが挙げられる。
多孔質層(多孔質触媒層)の厚みは、例えば、0.1〜100μm(例えば、0.3〜70μm)、好ましくは0.5〜50μm(例えば、0.7〜40μm)、さらに好ましくは1〜30μm程度であってもよい。
電解質層は、電解質と溶媒とを含む電解液で形成してもよく、電解質を含む固体層(又はゲル)で形成してもよい。電解液を構成する電解質としては、特に限定されず、汎用の電解質、例えば、ハロゲン(ハロゲン分子)とハロゲン化物塩との組み合わせ[例えば、臭素と臭化物塩との組み合わせ、ヨウ素とヨウ化物塩との組み合わせなど]などが挙げられる。ハロゲン化物塩を構成するカウンターイオン(カチオン)としては、金属イオン[例えば、アルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなど)など]、第4級アンモニウムイオン[テトラアルキルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩(例えば、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム塩)など]などが挙げられる。電解質は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらのうち、好ましい電解質には、ヨウ素とヨウ化物塩との組み合わせ、特に、ヨウ素とヨウ化金属塩[例えば、アルカリ金属塩(ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなど)、第4級アンモニウム塩など]との組み合わせが挙げられる。
電解液を構成する溶媒としては、特に限定されず、汎用の溶媒を用いることができ、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルカノール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類)、ニトリル類(アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートなど)、ラクトン類(γ−ブチロラクトンなど)、エーテル類(1,2−ジメトキシエタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソランなどの環状エーテル類)、スルホラン類(スルホランなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、水、などが挙げられる。溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、光電変換素子において、イオン性ポリマーと電解液とは接触する(又は電解液中にイオン性ポリマーが存在する)が、前記のように、イオン性ポリマーのpHを調整する場合、光電変換素子においてもイオン性ポリマーのpHを維持するのが好ましい。具体的には、電解液(電解液中におけるイオン性ポリマー)のpH(25℃)は、3以上(例えば、4〜14)、好ましくは5以上(例えば、6〜14)、さらに好ましくは7以上(例えば、7〜14)程度であってもよい。特に、イオン性ポリマーをアニオン性ポリマーで構成する場合、電解液(電解液中におけるイオン性ポリマー)のpH(25℃)は、例えば、3以上(例えば、4〜14)、好ましくは5以上(例えば、5〜13)、さらに好ましくは6以上(例えば、6.5〜12)、特に7以上(例えば、7〜12)であってもよく、通常6〜14(例えば、6.5〜11、好ましくは7〜9)程度であってもよい。また、特に、カチオン性ポリマーでイオン性ポリマーを構成する場合、電解液(電解液中におけるイオン性ポリマー)のpH(25℃)は、5以上(例えば、6〜14)の範囲から選択でき、例えば、7以上(例えば、7.5〜14)、好ましくは8以上(例えば、8.5〜14)、さらに好ましくは9以上(例えば、9.5〜13.5)、特に10以上(例えば、10.5〜13)であってもよい。
このようなpH調整の観点から、電解液を構成する成分はpH調整に影響を及ぼさない成分を好適に使用してもよい。例えば、電解液として、中性溶媒又は非酸性溶媒(又は非プロトン性溶媒)を好適に使用してもよい。
なお、電解液において、電解質の濃度は、例えば、0.01〜10M、好ましくは0.03〜8M、さらに好ましくは0.05〜5M程度であってもよい。また、ハロゲン(ヨウ素など)とハロゲン化物塩(ヨウ化物塩など)とを組み合わせる場合、これらの割合は、ハロゲン/ハロゲン化物塩(モル比)=1/0.5〜1/100、好ましくは1/1〜1/50、さらに好ましくは1/2〜1/30程度であってもよい。
また、電解質を含む固体層を構成する電解質としては、前記例示の電解質の他、固体状電解質{例えば、樹脂成分[例えば、チオフェン系重合体(例えば、ポリチオフェンなど)、カルバゾール系重合体(例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)など)など]、低分子有機成分(例えば、ナフタレン、アントラセン、フタロシアニンなど)などの有機固体成分;ヨウ化銀などの無機固体成分など}などが挙げられる。これらの成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、固体層は、前記電解質や電解液をゲル基材[例えば、熱可塑性樹脂(ポリエチレングリコール、ポリメチルメタクリレートなど)、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂など)など]に保持した固体層であってもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
酸化チタン粒子(石原産業(株)製、「ST−01」、平均一次粒子径7nm、比表面積300m/g、アナターゼ型結晶)10重量部、アニオン性ポリマーを含む分散液(デュポン社製「ナフィオンDE2021」、20%の割合で含む水および1−プロパノール分散液、イオン交換容量0.95〜1.03meq/g、pH(25℃)=7、1分子当たりの占有面積約0.024nm)25重量部(すなわち、アニオン性ポリマー5重量部)およびメタノール65重量部を混合して酸化チタン分散液を調製した。
得られた酸化チタン粒子分散液を、スキージ法によりITO付ガラス基板(Luminescence Technology社製 サイズ25mm×25mm、ITO層の厚み0.14μm)のITO層側に塗布したのち、大気中70℃で乾燥させた(乾燥後の塗膜の厚み5μm)。乾燥後の基板を色素溶液[N719色素(東京化成工業(株)製、分子量1188.57、1分子当たりの占有面積約1nm)のアセトニトリル/ブタノール混合溶液(濃度0.5重量%)]に半日浸漬させた。浸漬後、基板をメタノールで洗浄、乾燥させて色素吸着酸化チタン電極を得た。
得られた色素吸着酸化チタン電極のITO層側(色素吸着側)と、対極としての、スパッタリング法によりITO層側に形成された白金薄膜(厚み0.003μm)を備えたITO付ガラス基板(Luminescence Technology社製 サイズ25mm×25mm、ITO層の厚み0.14μm)のITO層側(白金薄膜側)とを50μmの間隔で対向させ、各基板(又は各電極又は各ITO層)の周囲を互いに結ぶように封止材又はスペーサ(三井・デュポンポリケミカル製、「ハイミラン」)で封止し、両基板(又は両電極又は両ITO層)間に形成された空隙(又は封止材で封止された空間)内に電解液を充填し、色素増感太陽電池を作製した。なお、電解液には、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージドを0.5M、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M含むアセトニトリル溶液を用いた。
そして、得られた色素増感太陽電池をソーラーシミュレーター(三永電機製作所(株)製「XES-301S+EL-100」)を用い、AM 1.5、100mW/cm、25℃の条件で評価した。作製直後及び1週間後の出力特性を図1に示す。図1から明らかなように、1週間後も出力特性に変化は見られなかった。
(実施例2)
実施例1において、酸化チタン粒子(石原産業(株)製、「ST−01」)に代えて酸化チタン((株)ダイセル製、ルチル型結晶)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、色素増感太陽電池を作製し、評価した。1週間後の出力特性を図2に示す。
(実施例3)
酸化チタン粒子(石原産業(株)製、「ST−01」、平均一次粒子径7nm、比表面積300m/g、アナターゼ型結晶)10重量部、アニオン性ポリマーを含む分散液(デュポン社製「ナフィオンDE2021」、20%の割合で含む水および1−プロパノール分散液、イオン交換容量0.95〜1.03meq/g、pH(25℃)=7、1分子当たりの占有面積約0.024nm)25重量部(すなわち、アニオン性ポリマー5重量部)、色素(N719、東京化成工業(株)製、分子量1188.57、1分子当たりの占有面積約1nm)0.1重量部およびメタノール65重量部を混合して酸化チタン分散液を調製した。
得られた酸化チタン粒子分散液を、スキージ法によりITO付ガラス基板(Luminescence Technology社製 サイズ25mm×25mm、ITO層の厚み0.14μm)のITO層側に塗布したのち、大気中70℃で乾燥させ、色素吸着酸化チタン電極(負極)が形成された基板を得た(乾燥後の塗膜の厚み5μm)。
そして、得られた色素吸着酸化チタン電極を用いて、実施例1と同様にして、色素増感太陽電池を作製し、評価した。1週間後の出力特性を図3に示す。
(実施例4)
実施例1において、ITO付ガラス基板に代えてITO付ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(アルドリッチ製、サイズ30×50mm、ITO層の厚み0.12μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、色素増感太陽電池を作製し、評価した。1週間後の出力特性を図4に示す。
(実施例5)
実施例1において、イオン性ポリマーとして、ナフィオン2021DEに代えて、ポリアクリル酸ナトリウム(アルドリッチ製、重量平均分子量1800、pH(25℃)=7)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、色素増感太陽電池を作製し、評価した。1週間後の出力特性を図5に示す。
(比較例1および実施例6〜10)
実施例1において、酸化チタン1重量部に対するナフィオン2021DEの量を、5重量部に代えて、0.05重量部(比較例1)、0.20重量部(実施例6)、0.67重量部(実施例7)、1.0重量部(実施例8)、2.0重量部(実施例9)、6.0重量部(実施例10)としたこと以外は、実施例1と同様にして、色素増感太陽電池を作製し、評価した。なお、比較例1では、ITO付ガラス基板に対する密着性が無く、容易に剥離し、色素増感太陽電池を作製できなかった。実施例6〜10について、1週間後の出力特性を図6に示す。
本発明の組成物は、光電変換層又は光電変換素子を形成するのに有用である。特に、本発明では焼結させることなく、優れた光電変換特性を有する光電変換層を形成できるので、プラスチック基板上などに光電変換層を形成することも可能である。このような組成物を用いて得られる光電変換素子は、太陽電池(特に、色素増感太陽電池)などの光電池として好適である。

Claims (17)

  1. 光電変換層を形成するための組成物であって、半導体およびイオン性ポリマーを含み、かつイオン性ポリマーの割合が、半導体1重量部に対して0.1〜30重量部である光電変換層用組成物。
  2. 半導体が、金属酸化物である請求項1記載の組成物。
  3. 半導体が、酸化チタンナノ粒子である請求項1又は2記載の組成物。
  4. イオン性ポリマーが、アニオン性ポリマーで構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. イオン性ポリマーが、強酸性イオン交換樹脂で構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. イオン性ポリマーが、25℃におけるpHが5以上のアニオン性ポリマーで構成されている請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
  7. イオン性ポリマーの割合が、半導体1重量部に対して0.25〜15重量部である請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
  8. 半導体が酸化チタンナノ粒子で構成され、イオン性ポリマーがスルホ基を有するフッ素含有樹脂で構成されたpH6以上のイオン性ポリマーであり、イオン性ポリマーの割合が、半導体1重量部に対して0.5〜8重量部である請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
  9. さらに、色素を含む請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
  10. 色素が、ルテニウム錯体色素である請求項9記載の組成物。
  11. 導電性基板と、この基板上に積層された光電変換層とで構成された積層体であって、光電変換層が、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物で形成されている積層体。
  12. 導電性基板が、導電体層が形成されたプラスチック基板である請求項11記載の積層体。
  13. 光電変換層の厚みが0.1〜100μmである請求項11又は12記載の積層体。
  14. 導電性基板に、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物をコーティングし、半導体を焼結させることなく、請求項11〜13のいずれかに記載の積層体を製造する方法。
  15. 請求項11〜13のいずれかに記載の積層体を備えた光電変換素子。
  16. 電極としての色素を含む光電変換層で構成された積層体と、この電極に対向して配置される対極と、これらの電極間に介在し、封止処理された電解質層とで構成された色素増感太陽電池である請求項15記載の光電変換素子。
  17. 半導体を含む光電変換層に、半導体1重量部に対して0.1〜30重量部の割合でイオン性ポリマーを含有させて、基板に対する光電変換層の密着性を向上又は改善する方法。
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