JPWO2013176261A1 - 微細藻類を用いた栄養添加剤の製造法 - Google Patents

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Abstract

より効率よく微生物または微細藻類を培養するための培地成分を提供する。微細藻類を培地で培養し、培地に微細藻類由来のバイオマスを生成させ、バイオマスに酸を添加することによりバイオマスを加水分解し、バイオマスの加水分解物を栄養添加剤として調整することにより、微生物または微細藻類の培養の為の栄養添加剤を製造する。

Description

本発明は、微細藻類を培養するための方法に関する。微細藻類は、バイオ燃料、食品、飼料添加物、医薬品、生理活性物質などの生産など様々な分野に利用される。
微細藻類は二酸化炭素を固定化し有機物を生産することができ、地球における有機物の第一次生産者であり、様々な用途に用いられている。微細藻類の1種、スピルリナは、南米・アフリカで昔から医療用に食されてきた歴史があり、現在その成分中の栄養素や生理活性物質について研究されている。同様に、クロレラ、デュナリエラ、ユーグレナなども、日本を中心として健康食品として用いられている。また、微細藻類は二枚貝が好んで食べる餌であり、牡蠣、アサリ、ムール貝、ウニの幼生の飼料として培養した微細藻類を使用する養殖法が、注目されている。例えば、キートセラスなどの微細藻類を密閉系タンクで培養して餌とする、牡蠣の稚貝の育成をおこなっている例がある。さらに、微細藻類には、糖質、たんぱく質、脂質、ミネラルが栄養学的にバランスよく含まれており、牛をはじめとする肉用家畜の飼育にも適すると考えられ、利用へ向けた検討がなされている。
微細藻類が産生する種々の成分にも、生理作用や有用な機能があることが分かってきている(非特許文献1)。例えば、血中のコレステロールを抑え動脈硬化を防止する物質として知られるオメガ脂肪酸と称される不飽和脂肪酸のDHA(Docosahexaenoic acid)は、微細藻類に由来するとされている。そこで、DHAを産生する微細藻類を工業的に大量培養し、そこから精製する方法が検討されている。また、微細藻類は種々の色を呈しているが、緑色は葉緑素に由来する。赤、橙、黄色などの色を有する種も多く、これらは天然色素として知られるカロテノイド類に由来することが知られている。これらのカロテノイド類は、抗酸化作用など多くの生理活性を示すことが判明しつつあり、機能性食材や化粧品などへの利用が検討されている。例えば、微細藻類ヘマトコッカスが多く産生するアスタキサンチン(Astaxanthin)は、生理作用として高い抗酸化作用を有し、紫外線や血中脂質の過酸化から生体を防御する作用があることが報告されている。微細藻類を培養するアスタキサンチン製造の産業化への取り組みが進められている。
化石燃料の枯渇問題という人類の抱える課題に対し、石油代替燃料として、トウモロコシ等の穀物由来のデンプンを原料とするバイオエタノールの開発が進められている。しかし、食料との競合問題が発生し、食料用トウモロコシのみならず穀類全般の価格高騰を招いている。そこで、食品との競合が無く、経済的に実施可能なバイオマスの開発が注目を浴びている。微細藻類は、増殖のために、基本的に二酸化炭素、ミネラルおよび光を要求し、有機炭素源なしで、主にディーゼル油代替として使用されるような油脂を生産することができる。また、微細藻類の培養には肥沃な土地や耕作用の畑を必要とせず、四季の影響を受けにくいことから、バイオ燃料を製造するのに用いられている他のバイオマスと比較して生産効率が良いことが期待されている(非特許文献2)。
しかしながら、特にバイオ燃料製造のためには、大量に製造し、かつ、価格が安くなくてはならないという課題があるため、他の微細藻類を用いた製造に比べると大規模の製造設備を要し、コストを低く抑えねばならない。従って、微細藻類の培養法はコストを低く抑えるために重要であり、多くの研究開発が行われている(非特許文献3)。
培養後の藻体を食品や飼料などのようにすべて利用しない場合には、藻体バイオマスの有効利用が課題となる。生理活性物質抽出やバイオ燃料抽出後の藻体バイオマスを低コストの処理で微細藻類の培養に再び用いることが出来れば、藻体の製造コストに貢献することができる。
微細藻類の藻体の全てまたは一部を硫酸、酢酸、乳酸などの酸またはアルカリで加水分解して、炭素源や窒素源として細菌や酵母などの微生物の培養に用いる方法は知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献4)。酵母またはクレブシエラの培養残渣のアルカリ分解物を炭素源としてクロレラの混合栄養培養に用いる方法も開示されている(特許文献4)。微細藻類の藻体の酸加水分解物を、微細藻類培養の栄養源として用いる具体的な方法はこれまで知られていなかった。
国際公開パンフレット2009/093703 中国特許出願公開102229895号 特開2011-229439号 中国特許出願公開102311921号
Cardozo, K.H. et al. 2007. Comparative Biochemistry and Physiology - C Toxicology and Pharmacology 146:60-78 Chisti, Y. 2007. Biotechnology Advances 25:294-306 Brennan, L. and Owende, P. 2010. Renewable and Sustainable Energy Reviews, 14:557-577 Nguyen, Minh Thu, Seung Phill Choi, Jinwon Lee, Jae Hwa Lee, and Sang Jun Sim, 2009. Journal of Microbiology and Biotechnology, 19:161-166
本発明は、より効率よく微生物または微細藻類を培養するための培地成分を提供することを課題とする。また、本発明は、より安価な微生物または微細藻類の培養方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、微細藻類の培養後に得られる微細藻類由来のバイオマス、例えば、微細藻類の藻体、藻体の破砕物、又はバイオ燃料等の有効成分を藻体から抽出した後に残る藻体残渣、を酸により加水分解処理して得られた加水分解物を培地に添加して再び微細藻類を培養することにより、効率よく微細藻類を培養できることを見出した。この知見に基づき本発明は完成された。
すなわち本発明は、以下のとおり例示できる。
(1)
a) 微細藻類を培地で培養し、微細藻類由来のバイオマスを生成すること、
b) 前記バイオマスに酸を添加することにより前記バイオマスを加水分解すること、および
c) 前記バイオマスの加水分解物を栄養添加剤として調製すること、
を含む、微生物または微細藻類の培養の為の栄養添加剤を製造する方法であって、
前記酸が、硫酸、塩酸、硝酸、及びリン酸からなる群より選択される酸であることを特徴とする、方法。
(2)
前記加水分解物が、微細藻類または微生物の生育を促進するものである、前記方法。
(3)
前記酸が硫酸であって、前記酸の添加量が、前記バイオマス中の窒素に対する硫酸イオンのモル比(SO4/N)が0.1から10となるような量である、前記方法。
(4)
前記酸が塩酸であって、前記酸の添加量が、前記バイオマス中の窒素に対する塩酸イオンのモル比(Cl/N)が0.1から20となるような量である、前記方法。
(5)
前記酸がリン酸であって、前記酸の添加量が、前記バイオマス中の窒素に対するリン酸イオンのモル比(PO4/N)が0.1から100となるような量である、前記方法。
(6)
前記酸が硝酸であって、前記酸の添加量が、前記バイオマス中の窒素に対する硝酸イオンのモル比(NO3/N)が0.1から100となるような量である、前記方法。
(7)
前記酸が硫酸であって、前記酸の添加量が、前記バイオマス中の窒素に対する硫酸イオンのモル比(SO4/N)が0.8から3となるような量である、前記方法。
(8)
前記加水分解が、75-130℃で5-50時間行われる、前記方法。
(9)
前記加水分解が、110-120℃で10-32時間行われる、前記方法。
(10)
前記バイオマスが、前記加水分解処理前に80-110℃で30分から2時間処理される、前記方法。
(11)
前記バイオマスが、前記加水分解処理前に90-105℃で40分から90分処理される、前記方法。
(12)
前記方法により製造された栄養添加剤が添加された培地で微細藻類または微生物を培養することを含む、目的物質を製造する方法。
(13)
前記目的物質が、L−アミノ酸である、前記方法。
(14)
前記目的物質が、スターチである、前記方法。
(15)
前記目的物質が、脂質または脂肪酸である、前記方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明の栄養添加剤の製造方法
本発明は、a)微細藻類を培地で培養し、微細藻類由来のバイオマスを生成すること、b)前記バイオマスに酸を添加することにより前記バイオマスを加水分解すること、およびc)前記バイオマスの加水分解物を栄養添加剤として調製すること、を含む、微生物または微細藻類培養の為の栄養添加剤を製造する方法(以下、「本発明の栄養添加剤の製造方法」ともいう)を提供する。また、同方法により製造される栄養添加剤を「本発明の栄養添加剤」ともいう。
すなわち、本発明の栄養添加剤の製造方法においては、微細藻類を培地で培養し、微細藻類由来のバイオマスを生成する。
<1−1>本発明で使用する微細藻類とその培養
「藻類(algae)」とは、酸素発生型光合成を行う生物のうち、主に地上に生息するコケ植物、シダ植物、種子植物を除いたもの全てを指す。藻類には、様々な単細胞生物及び多細胞生物が含まれ、具体的には、例えば、原核生物であるシアノバクテリア(藍藻)(cyanobacteria)、真核生物である灰色植物門 (Glaucophyta)、紅色植物門(紅藻)(Rhodophyta)、緑色植物門 (Chlorophyta)、クリプト植物門(クリプト藻)(Cryptophyta)、ハプト植物門(ハプト藻)(Haptophyta)、不等毛植物門(Heterokontophyta)、渦鞭毛植物門(渦鞭毛藻)(Dinophyta)、ユーグレナ植物門(Euglenophyta)、クロララクニオン植物門(Chlorarachniophyta)に分類される生物が含まれる。
「微細藻類(microalgae)」とは、これら藻類から多細胞生物である海藻類を除いた微視的な構造を持つ藻類を指す(バイオディバーシティ・シリーズ(3)藻類の多様性と系統:千原光雄 編 裳華房(1999))。なお、微細藻類には、複数個の細胞が群体を形成するものも含まれる。
本発明で使用する微細藻類は、そのような微細藻類に分類されるものであればいずれのものでもよい。
微細藻類には、油脂を貯蔵物質として蓄積するものがあることが知られている(Chisti, Y. 2007. Biotechnol Adv. 25: 294-306)。このような藻類としては、緑色植物門や不等毛植物門に属するものがよく知られている。
緑色植物門に属する藻類としては、例えば、緑藻綱(Chlorophyceae)、トレボキシア藻綱(Trebouxiophyceae)、プラシノ藻綱(Prasinophyceae)、アオサ藻綱(Ulvophyceae)、車軸藻綱(Charophyceae)等の綱に属する藻類が挙げられる。緑藻綱に属する藻類としては、例えば、ネオクロリス・オレオアバンダンス(Neochloris oleoabundans)(Tornabene, T.G. et al. 1983. Enzyme and Microb. Technol. 5: 435-440)等のネオクロリス属藻類、ナノクロリス・エスピー(Nannochloris sp.)(Takagi, M. et al. 2000. Appl. Microbiol. Biotechnol. 54: 112-117)等のナノクロリス属藻類、クラミドモナス・レインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)等のクラミドモナス(Chlamydomonas)属藻類、セネデスムス(Scenedesmus)属藻類、デスモデスムス(Desmodesmus)属藻類を挙げることが出来る。トレボキシア藻綱に属する藻類としては、例えば、クロレラ・ケッサレリ(Chlorella kessleri)等のクロレラ(Chlorella)属藻類を挙げることが出来る。
不等毛植物門に属する藻類としては、例えば、黄金色藻綱(Chrysophyceae)、ディクチオカ藻綱(Dictyochophyceae)、ペラゴ藻綱(Pelagophyceae)、ラフィド藻綱(Rhaphidophyceae)、珪藻綱(Bacillariophyceae)、褐藻綱(Phaeophyceae)、黄緑藻綱(Xanthophyceae)、真正眼点藻綱(Eustigmatophyceae)等の綱に属する藻類が挙げられる。珪藻綱に属する藻類としては、例えば、タラシオシラ・スードナナ(Thalassiosira pseudonana)(Tonon, T et al. 2002. Phytochemistry 61: 15-24)等のタラシオシラ(Thalassiosira)属藻類を挙げることが出来る。
ネオクロリス・オレオアバンダンスとして、具体的には、Neochloris oleoabundans UTEX 1185株が挙げられる。ナノクロリス・エスピーとして、具体的には、Nannochloris sp. UTEX LB 1999株が挙げられる。クロレラ・ケッサレリとして、具体的には、Chlorella kessleri 11h株(UTEX 263)が挙げられる。タラシオシラ・スードナナとして、具体的には、Thalassiosira pseudonana UTEX LB FD2株が挙げられる。これらの菌株は、テキサス大学藻類カルチャーコレクション(The University of Texas at Austin, The Culture Collection of Algae (UTEX), 1 University Station A6700, Austin, TX 78712-0183, USA)より入手することができる。
本発明において、微細藻類としては、好ましくは、緑藻綱、トレボキシア藻綱、又は珪藻綱に属する藻類を、さらに好ましくは、緑藻綱(Chlorophyceae)に属する藻類を使用できる。
また、DHA(docosahexaenoic acid)やEPA(eicosapentaenoic acid)などの高度不飽和脂肪酸を高濃度に蓄積する単細胞の菌様原生生物であるラビリンチュラ類も微細藻類に分類されることがある。ラビリンチュラ類には、具体的には、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属、シゾキトリウム(Schizochytrium)属、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)属、ウルケニア(Ulkenia)属などが含まれる。ラビリンチュラ類は、光合成を行わず従属栄養条件にて培養を行うが、本発明の方法を適用することが可能である。
本発明の栄養添加剤の製造方法における「培地」とは、微細藻類の培養に用いることが出来る培地を意味する。微細藻類の培養については多くの知見があり、クロレラ(Chlorella)属藻類、アルスロスピラ(Arthrospira)属藻類(Spirulina)、およびデュナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)などは、食用として大規模な工業的な培養が行われている(Spolaore, P. et al. 2006. J. Biosci. Bioeng. 101: 87-96)。クラミドモナス・レインハルディの培養には、例えば、0.3×HSM培地(Oyama, Y. et al. 2006. Planta 224: 646-654)を用いることが出来る。クロレラ・ケッサレリの培養には、0.2×ガンボーグ培地(Izumo, A. et al. 2007. Plant Science 172: 1138-1147)などを用いることが出来る。ネオクロリス・オレオアバンダンスやナノクロリス・エスピーは、modified NORO培地(Yamaberi, K. et al. 1998. J. Mar. Biotechnol. 6: 44-48; Takagi, M. et al. 2000. Appl. Microbiol. Biotechnol. 54: 112-117)やBold's Basal Medium(Tornabene, T. G. et al. 1983. Enzyme and Microb. Technol. 5: 435-440; Archibald, P. A. and Bold, H. C. 1970. Phytomorphology 20: 383-389)を用いて培養することが出来る。珪藻綱に属する藻類としては、タラシオシラ・スードナナの培養には、F/2培地(Lie, C.-P. and Lin, L.-P. 2001. Bot. Bull. Acad. Sin. 42: 207-214)などを好適に用いることが出来る。
また、藻類は、窒素源が枯渇すると油脂を藻体内に蓄積することが知られている(Thompson GA Jr. 1996. Biochim. Biophys. Acta 1302: 17-45)。本発明においては、窒素源の濃度をより制限した培地を微細藻類の培養に用いることもできる。
微細藻類の培養には、オープンポンドと呼ばれる解放系の培養系とクローズドフォトバイオリアクターと呼ばれる閉鎖系の培養系が存在するが、いずれを用いることもできる。また、微細藻類の培養には、光合成のみに依存した独立栄養培養(autotrophic)、炭素源に依存した従属栄養培養(heterotrophic)、光合成と有機化合物を同時に利用する混合栄養培養(mixotrophic)があるが、いずれの培養形態であってもかまわない。
培養は、本培養の培地の体積に対し、1-50 %の体積の前培養液を添加して行うことが多い。培地の初発のpHは、中性付近が好ましい。中性付近とは、例えば、pH7-9の範囲であってよい。培養中はpH調整を行わないことが多いが、必要に応じてpH調整を行うこともある。培養温度は、25-35℃が好ましく、特に28℃付近が一般的によく用いられる温度であるが、培養温度は、培養される微細藻類に適した温度であれば構わない。培養液には、空気を吹き込むことが多い。通気量としては、培養液体積当たりの1分間の通気量として、0.1-2 vvm(volume per volume per minute)がよく用いられる。培養液には、さらにCO2を吹き込んでもよい。CO2を吹き込むことにより、微細藻類の生育が早まることが期待される。CO2は、通気量に対して、0.5-5 %程度の量で吹き込むのが好ましい。光合成を利用した培養を行う場合、培養系に光を照射する。微細藻類の種類によって光の至適照射強度が異なるが、培養される微細藻類に適した強度で光を照射すればよい。光の照射強度としては、1,000-10,000 lux程度がよく用いられる。光源としては、屋内では白色の蛍光灯を用いることが一般的であるが、これに制限されない。また、光源としては、屋外では太陽光を用いることも可能である。また、必要に応じて、培養液を適切な強度で撹拌または循環することもある。培養時間は、特に制限されないが、例えば、1〜40日間であってよい。
このようにして微細藻類を培養することにより、培地に微細藻類の藻体が生成する。
<1−2>微細藻類由来のバイオマス
本発明において、「微細藻類由来のバイオマス」(以下、「微細藻類バイオマス」または単に「バイオマス」ともいう)としては、培養後の微細藻類の藻体そのもの、および微細藻類の藻体の処理物が挙げられる。微細藻類の藻体の処理物としては、特に制限されないが、微細藻類の藻体の破砕物、および所望の成分を微細藻類の藻体から抽出した後の残渣(「藻体残渣」または「残藻体」ともいう)が挙げられる。所望の成分としては、バイオ燃料等の有効成分が挙げられる。バイオ燃料等の有効成分としては、脂肪酸、油脂の加水分解物、テルペノイドやステロイド等の脂質、炭化水素が挙げられる。
なお、本発明の栄養添加剤の製造方法において、「微細藻類を培地で培養し、微細藻類由来のバイオマスを生成する」とは、微細藻類の藻体そのものをバイオマスとして用いる場合には、培養により培地に微細藻類の藻体を生成することを意味してよく、微細藻類の藻体の処理物をバイオマスとして用いる場合には、微細藻類を培地で培養し、培養により生成した微細藻類の藻体を処理することにより、藻体の処理物を生成することを意味してよい。
微細藻類の藻体を破砕や抽出等の処理に供する場合、微細藻類の藻体は、培地に含まれたまま処理に供してもよく、適宜希釈または濃縮してから処理に供してもよく、回収してから処理に供してもよい。
藻体を培養液から回収する方法としては、一般的な遠心分離や濾過、あるいは、凝集剤(flocculant)を用いた重力による沈降などの方法が挙げられる(Grima, E. M. et al. 2003. Biotechnol. Advances 20: 491-515)。すなわち、藻体を自然に、あるいは凝集剤等を用いて沈降させ、沈降した藻体を回収することが出来る。また、遠心分離により藻体を沈殿させ、沈殿した藻体を回収することが出来る。また、例えば、藻体を沈殿させ、上清を適宜除くことにより、藻体を所望の程度に濃縮することができる。また、任意の媒体、例えば水や緩衝液等の水性媒体を用いて、藻体を所望の程度に希釈することができる。
藻体からの所望の成分の抽出は、微細藻類の種類や成分の種類等に応じて適宜選択した手法により行うことができる。所望の成分を微細藻類の藻体から抽出した後の残渣を微細藻類バイオマスとして利用する場合、例えば、藻体を一旦破砕し、油脂等の有効成分を抽出した後の残渣を利用することや、藻体を中温度で処理し、油脂を生成させた後(WO2011/013707に記載)の残渣を利用することができる。
微細藻類の藻体を破砕する方法としては、用途に応じていろいろな方法があり、どのような方法を用いても構わない。藻体を破砕する方法としては、例えば、高温処理、有機溶媒処理、煮沸処理、強アルカリ処理、超音波処理、フレンチプレス、及びこれらの任意の組合せが好適に用いられる。高温処理としては、例えば、100℃以上、好ましくは150℃以上、さらに好ましくは175〜215℃の温度での処理が挙げられる。高温処理には、水熱反応と呼ばれるような条件での高温高圧反応も含まれる。有機溶媒処理としては、例えば、メタノール:クロロホルム混合溶媒による処理が挙げられる。また、藻体を乾燥させた後に、物理的な方法で破砕することも可能である。一般的に、脂溶性の物質は、藻体を破砕することで抽出効率を向上させることができる。藻体の破砕後、例えば、溶媒抽出によってバイオ燃料等の脂溶性の有効成分を破砕物から抽出することが可能である。例えば、藻体の破砕物から油脂を抽出する場合、80%メタノール又は80%アセトンを藻体の破砕物に加え、さらに、これらに不溶性の油脂をヘキサンやクロロホルムなどの溶媒で抽出することにより、粗脂溶性画分として油脂を抽出することができる。
微細藻類の藻体を処理する方法としては、WO2011/013707に記載の中温度での処理(以下、「中温処理」ともいう)も挙げられる。具体的には、例えば、微細藻類の藻体を中温度で処理後、処理物を遠心分離によって沈殿物と上清液に分離し、沈殿物に含まれる微細藻類が生産する油脂を有機溶剤により抽出した後の残渣を、微細藻類バイオマスとして使用することができる。残渣はそのまま使用することができるが、凍結乾燥、エバポレーションなどの処理により濃縮することもできる。
中温度とは、処理物中の脂肪酸またはグリセロールもしくはグルコースの量が増加するのに十分な温度を意味する。藻体は、例えば、連続で同じ温度で処理(以下、「連続中温処理」ともいう)してもよく、途中で温度を低下させて処理してもよい。途中で温度を低下させる態様としては、第一段中温処理として一旦中温度で処理した後に、第二段中温処理として、第一段中温処理の温度を下回る一定の温度で処理する態様が挙げられる。連続中温処理および第一段中温処理の温度の下限は、通常には40℃以上、好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上、上限は、通常には70℃以下、好ましくは65℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。第二段中温処理の温度の下限は、通常には30℃以上、好ましくは35℃以上、さらに好ましくは40℃以上、上限は、通常には55℃以下、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは45℃以下である。
中温処理には、上記藻類の培養方法で得られた藻体を含む培養物をそのまま用いてもよく、藻体を含む画分を適宜濃縮して用いてもよい。例えば、中温処理には、回収した藻体を用いてもよい。
また、中温処理の前に、反応系のpHを弱酸性に調整してもよく、且つ/又は、一旦藻体を凍結させてもよい。
ここで、弱酸性のpHは、好ましくは3.0〜7.0、さらに好ましくは4.0〜6.0であってよい。
凍結させる温度は、通常には、-80℃以上且つ0℃以下の温度を意味し、好ましくは-20℃以下、さらに好ましくは-50℃以下であってよい。凍結させる時間は、1時間以上であるのが好ましい。
本発明において、連続中温処理の時間は、少なくとも1時間以上、さらに好ましくは5時間以上であってよい。連続中温処理の時間は、通常48時間以下、さらに好ましくは24時間以下であってよい。また、第一段中温処理の時間は、少なくとも1分以上、好ましくは10分以上、さらに好ましくは20分以上であってよい。第一段中温処理の時間は、通常120分以下、さらに好ましくは60分以下であってよい。さらに、第二段中温処理の時間は、少なくとも1時間以上、さらに好ましくは4時間以上であってよい。第二段中温処理の時間は、通常20時間以下、さらに好ましくは15時間以下であってよい。
また、中温処理後に、さらにアルカリ処理または有機溶剤処理を行ってもよい。中温処理後にアルカリ処理又は有機溶剤処理する場合には、中温処理後の処理液は、そのまま処理してもよく、希釈して処理してもよく、バイオマスを含む画分を適宜濃縮して処理してもよい。バイオマスを含む画分を濃縮して処理することには、例えば、中温処理後の処理液に含まれるバイオマスを沈殿させ、所望の程度に濃縮して処理することや、中温処理後の処理液に含まれるバイオマスを沈殿させ、沈殿物を上清液から分離し、分離された沈殿物を処理することが含まれる。アルカリ処理又は有機溶剤処理を行う反応液における沈殿物(固形分)の濃度は、例えば、250 g/L以下、好ましくは125 g/L以下であってよい。アルカリ処理の場合は、沈殿物(固形分)の濃度が125 g/L以下の反応液を処理することが好ましい。有機溶剤処理の場合は、沈殿物を上清液から分離して処理することが好ましい。
中温処理後のアルカリ処理のpHは、通常にはpH10.5以上且つpH14以下、好ましくはpH11.5以上、さらに好ましくはpH12.5以上であってよい。アルカリ処理には、NaOHやKOH等のアルカリ性物質を利用することができる。
同アルカリ処理の温度は、通常には60℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上であってよい。同アルカリ処理の温度は、120℃以下であることが好ましい。
同アルカリ処理の時間は、少なくとも10分以上、好ましくは30分以上、さらに好ましくは60分以上であってよい。同アルカリ処理の時間は、150分以下であることが好ましい。
中温処理後の有機溶剤処理は、中温処理による処理物を乾燥して有機溶剤処理してもよいが、乾燥せずに有機溶剤処理することもできる。ここでの有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸エチル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ヘキサンなどが挙げられる。
<1−3>微細藻類由来のバイオマスの酸加水分解、および本発明の栄養添加剤の調製
本発明の栄養添加剤の製造方法においては、微細藻類由来のバイオマスに酸を添加することにより、バイオマスを加水分解する。
酸は、微細藻類由来のバイオマスそのものに添加してもよく、微細藻類由来のバイオマスを含む画分に添加してもよい。「微細藻類由来のバイオマスそのもの」とは、回収したバイオマス、例えば、培地から回収した藻体や各種処理液から回収した藻体破砕物や藻体残渣等の藻体処理物をいう。「微細藻類由来のバイオマスを含む画分」とは、バイオマスを含む任意の画分、例えば、藻体を含む培養物、藻体破砕物や藻体残渣等の藻体処理物を含む処理液、同処理液を希釈または濃縮したものをいう。すなわち、微細藻類由来のバイオマスは、培地や各種処理液に含まれたまま加水分解処理に供してもよく、適宜希釈または濃縮してから加水分解処理に供してもよく、回収してから加水分解処理に供してもよい。バイオマスの希釈、濃縮、または回収は、上述した藻体の希釈、濃縮、または回収と同様に行ってよい。本発明の栄養添加剤の製造方法においては、1種のバイオマスのみを用いてもよく、2種またはそれ以上のバイオマスを組み合わせて用いてもよい。なお、「バイオマスに酸を添加すること」には、バイオマスと酸を互いに混合する態様や、酸にバイオマスを添加する態様も含まれるものとする。
加水分解に用いる酸は、微細藻類由来のバイオマスを加水分解するような酸であればどのようなものでも構わない。酸としては、特に、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸が好適に用いられる。
加水分解を行う反応液全量に対する微細藻類由来のバイオマスの全固形分の比率は、好ましくは5-80 %(w/w)、より好ましくは10-40 %(w/w)であってよい。加える酸の量は、陰イオンと、藻体バイオマス中の窒素に対するモル比が、0.1から100、好ましくは0.1から20、好ましくは0.1から10になるように調節することが好ましい。加える酸の量は、酸の種類等に応じて適宜変更してよい。
例えば、硫酸を用いる場合、加える硫酸の量は、藻体バイオマス中の窒素に対する硫酸イオンのモル比(SO4/N)が、0.1から100、好ましくは0.1から10、より好ましくは0.8から3となるような量であってよい。硫酸としては98%硫酸を使うことができるが、これに限らない。
硫酸以外の酸を用いる場合にも、微細藻類由来のバイオマスを加水分解できるような条件を適宜選択して加水分解処理を行うことができる。硫酸以外の酸を用いる場合、硫酸を用いる場合と同様の条件で加水分解処理を行ってもよく、酸の種類等に応じて適宜条件を変更してもよい。硫酸以外の酸を用いる場合、上記説明における「硫酸イオン」は、用いる酸に対応する陰イオンに読み替えてもよい。
例えば、塩酸を用いる場合、加える塩酸の量は、藻体バイオマス中の窒素に対する塩化物イオンのモル比(Cl/N)が、0.1から100、好ましくは0.1から20、より好ましくは0.8から3となるような量であってよい。
例えば、リン酸を用いる場合、加えるリン酸の量は、藻体バイオマス中の窒素に対するリン酸イオンのモル比(PO4/N)が、0.1から100、好ましくは0.1から50、より好ましくは0.8から20となるような量であってよい。
例えば、硝酸を用いる場合、加える硝酸の量は、藻体バイオマス中の窒素に対する硝酸イオンのモル比(NO3/N)が、0.1から100、好ましくは0.1から50、より好ましくは0.8から20となるような量であってよい。
酸の添加後、反応液を、好ましくは75-130℃、より好ましくは110-120℃で、好ましくは5-50時間、より好ましくは10-32時間処理する。酸処理の前に、好ましくは80-110℃、より好ましくは90-105℃で、好ましくは30分から2時間、より好ましくは40分から90分、バイオマスを処理してもよい。
加水分解後、反応液を中和する処理を行ってもよい。中和は、反応液にアルカリを添加することにより行うことができる。アルカリとしては、特に制限されないが、NaOHやKOHが挙げられる。中和後のpHは、例えば、5〜7であってよい。
加水分解後、反応液から不溶物を除去する処理を行ってもよい。不溶物の除去は、例えば、濾過や遠心分離により行うことができる。
このようにして、微細藻類由来のバイオマスの加水分解物が得られる。
本発明の栄養添加剤の製造方法においては、バイオマスの加水分解物を栄養添加剤として調製する。「バイオマスの加水分解物を栄養添加剤として調製する」とは、上記のようにして得られたバイオマスの加水分解物を有効成分として本発明の栄養添加剤を調製することを意味する。本発明の栄養添加剤は、微細藻類由来のバイオマスの加水分解物からなるものであってもよく、その他の成分を含むものであってもよい。すなわち、「バイオマスの加水分解物を栄養添加剤として調製する」とは、上記のようにして得られたバイオマスの加水分解物をそのまま本発明の栄養添加剤とすることであってもよく、上記のようにして得られたバイオマスの加水分解物とその他の成分を組み合わせて栄養添加剤とすることであってもよい。なお、バイオマスの加水分解物は、適宜、希釈または濃縮して、栄養添加剤の調製に用いることができる。その他の成分としては、微生物または微細藻類を培養するために用いることができる成分であれば特に制限されない。
このようにして、本発明の栄養添加剤が得られる。
微細藻類由来のバイオマスの加水分解物、および当該加水分解物を有効成分とする本発明の栄養添加剤は、微生物または微細藻類の生育を促進する効果、または、微生物または微細藻類による物質生産を促進する効果、を有する。
「微生物または微細藻類の生育を促進する」とは、前記加水分解物または本発明の栄養添加剤を添加した培地で微生物または微細藻類を培養した場合に、前記加水分解物または本発明の栄養添加剤を添加していない培地で微生物または微細藻類を培養した場合と比較して、微生物または微細藻類の生育が向上していれば特に制限されない。「微生物または微細藻類の生育を促進する」とは、前記加水分解物または本発明の栄養添加剤を添加した培地で微生物または微細藻類を培養した場合に、前記加水分解物または本発明の栄養添加剤を添加していない培地で微生物または微細藻類を培養した場合と比較して、微生物または微細藻類の生育が、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上、向上することであってよい。微生物または微細藻類の生育は、OD値や乾燥藻体重量を測定することにより測定できる。
また、「微生物または微細藻類による物質生産を促進する」とは、前記加水分解物または本発明の栄養添加剤を添加した培地で微生物または微細藻類を培養した場合に、前記加水分解物または本発明の栄養添加剤を添加していない培地で微生物または微細藻類を培養した場合と比較して、微生物または微細藻類による目的物質の生産が向上していれば特に制限されない。「微生物または微細藻類による物質生産を促進する」とは、前記加水分解物または本発明の栄養添加剤を添加した培地で微生物または微細藻類を培養した場合に、前記加水分解物または本発明の栄養添加剤を添加していない培地で微生物または微細藻類を培養した場合と比較して、微生物または微細藻類による目的物質の生産が、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、向上することであってよい。ここでいう「目的物質の生産の向上」とは、目的物質の生産量、生産性、および/または収率の向上であってよい。
前記加水分解物または本発明の栄養添加剤が微生物または微細藻類の生育または物質生産を促進するか否かは、前記加水分解物または本発明の栄養添加剤の添加の有無の他は同条件で微生物または微細藻類を培養し、微生物または微細藻類の生育または物質生産の程度を比較することにより確認できる。
本発明の栄養添加剤に含まれる前記加水分解物の量は、本発明の栄養添加剤が、微生物または微細藻類の生育を促進する効果、または、微生物または微細藻類による物質生産を促進する効果、を有する限り、特に制限されない。本発明の栄養添加剤に含まれる前記加水分解物の量は、例えば、本発明の栄養添加剤を培地に添加した際に、培地における前記加水分解物の濃度が、窒素量に換算して、好ましくは1 mMから100 mM、より好ましくは10 mMから30 mMとなるような量であってよい。
<2>本発明の栄養添加剤の利用法
本発明の栄養添加剤は、微生物または微細藻類を培養するために用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明の栄養添加剤が添加された培地で微細藻類または微生物を培養することを含む、微細藻類または微生物を培養する方法(以下、「本発明の培養方法」ともいう)を提供する。本発明の培養方法の一態様においては、微細藻類または微生物を培養し、所望の目的物質を製造することができる。すなわち、本発明の培養方法の一態様は、本発明の栄養添加剤が添加された培地で微細藻類または微生物を培養することを含む、目的物質を製造する方法、であってよい。
本発明の培養方法においては、本発明の栄養添加剤の添加された培地を用いること以外は、通常の微生物または微細藻類を培養するのと同様の条件で、または通常の微生物または微細藻類を培養し目的物質の製造を行うのと同様の条件で、微生物または微細藻類を培養することができる。
微細藻類は、例えば、本発明の栄養添加剤の添加された培地を用いること以外は、上述した本発明の栄養添加剤の製造方法における微細藻類の培養と同様の条件で培養することができる。具体的には、例えば、実施例で用いた0.2×ガンボーグB5 培地、BG11培地、AF-6培地など、微細藻類の培養に用いることができる培地であればいずれのものでも本発明の栄養添加剤を添加して用いることができる。
また、微生物は、例えば、本発明の栄養添加剤が添加された、炭素源、窒素源、硫黄源、無機イオン、及び必要に応じその他の有機成分を含有する適当な培地で培養することができる。また、必要に応じて、抗生物質や遺伝子の発現誘導剤を培地に添加することもできる。炭素源としては、例えば、グルコース、フラクトース、シュクロース、糖蜜、でんぷんの加水分解物等の糖類、グリセロール、エタノール等のアルコール類、フマル酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類が挙げられる。窒素源としては、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水が挙げられる。硫黄源としては、例えば、硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物、次亜硫酸塩、チオ硫酸塩等の無機硫黄化合物が挙げられる。無機イオンとしては、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、リン酸イオン、カリウムイオン、鉄イオンが挙げられる。その他の有機成分としては、有機微量栄養素が挙げられる。有機微量栄養素としては、例えば、ビタミンやアミノ酸、またはそれらを含む酵母エキス等を用いることができる。培養は、例えば、好気的条件下で12〜100時間実施してよい。培養温度は、例えば、25℃〜40℃であってよい。培養pHは、例えば、5〜8に制御されてよい。なお、pH調整には、無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、更にはアンモニアガス、アンモニア水等を使用することができる。
また、培地に本発明の栄養添加剤を添加することによって、既存の培地中の成分、例えば、炭素源、窒素源、リン酸源、硫黄源、カリウム源から選択される1またはそれ以上の成分の使用量を低減することも可能である。これにより直接的に培地にかかるコストを削減することができる。
本発明の栄養添加剤の添加量は、本発明の栄養添加剤の効果が得られる限り特に制限されない。「本発明の栄養添加剤の効果が得られる」とは、微生物または微細藻類の生育を促進する効果、または、微生物または微細藻類による物質生産を促進する効果が得られることをいう。本発明の栄養添加剤の適切な添加量は、例えば、本発明の栄養添加剤を種々の濃度で添加した培地で微生物または微細藻類を培養し、生育または物質生産の程度を比較することで、決定することができる。本発明の栄養添加剤の添加量は、例えば、培地における本発明の栄養添加剤の濃度が、窒素量に換算して、好ましくは1 mMから100 mM、より好ましくは10 mMから30 mMとなるような量であってよい。
本発明の培養法においては、1種の本発明の栄養添加剤が培地に添加されてもよく、2種またはそれ以上の本発明の栄養添加剤が培地に添加されてもよい。例えば、藻体の酸加水分解物と藻体残渣の酸加水分解物を組み合わせて培地に添加してもよい。2種またはそれ以上の本発明の栄養添加剤が培地に添加される場合、それらの組み合わせ比率は、本発明の栄養添加剤の効果が得られる限り特に制限されない。
本発明の栄養添加剤は、培養開始時までに培地に添加されてもよいし、培養の開始後に培地に添加されてもよい。すなわち、「本発明の栄養添加剤が添加された培地で微細藻類または微生物を培養すること」には、培養の一部の期間において、本発明の栄養添加剤が添加されていない培地が用いられる場合も含まれる。「培養の一部の期間」とは、例えば、培養の全期間の内の、10%以下の期間、20%以下の期間、または30%以下の期間であってよい。本発明の栄養添加剤は、連続的あるいは間欠的に培地に追加添加されてもよい。本発明の栄養添加剤が連続的に添加される場合、本発明の栄養添加剤は培養の全期間において連続的に添加されてもよく、培養の一部の期間において連続的に添加されてもよい。また、本発明の栄養添加剤が連続的に添加される場合、その全期間において、本発明の栄養添加剤の添加速度および/または種類は、一定であってもよく、そうでなくてもよい。また、本発明の栄養添加剤が2またはそれ以上の回数培地に添加される場合、各添加時の本発明の栄養添加剤の添加量および/または種類は、同じであってもよく、そうでなくてもよい。
本発明の培養方法において、微細藻類としては、上記に記載された微細藻類を利用することができる。
また、本発明の培養方法において、微生物としては、いずれの微生物でも利用することができる。微生物としては、細菌が挙げられ、例えば、コリネ型細菌、バチルス属細菌、腸内細菌科に属する細菌が好ましい。
コリネ型細菌とは、好気性の高GCグラム陽性桿菌である。コリネ型細菌は、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが現在コリネバクテリウム属に統合された細菌を含み(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255(1991))、またコリネバクテリウム属と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。
コリネ型細菌としては、下記のような種が挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム
コリネバクテリウム・アルカノリティカム
コリネバクテリウム・カルナエ
コリネバクテリウム・グルタミカム(ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム)
コリネバクテリウム・リリウム
コリネバクテリウム・メラセコーラ
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス
コリネバクテリウム・ハーキュリス
ブレビバクテリウム・ディバリカタム
ブレビバクテリウム・フラバム
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム
ブレビバクテリウム・ロゼウム
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・スタティオニス)
ブレビバクテリウム・アルバム
ブレビバクテリウム・セリヌム
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム
コリネ型細菌として、具体的には、下記のような菌株を例示することができる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム ATCC13870
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム ATCC15806
コリネバクテリウム・アルカノリティカム ATCC21511
コリネバクテリウム・カルナエ ATCC15991
コリネバクテリウム・グルタミカム(ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム) ATCC13020, ATCC13032, ATCC13060,ATCC13869,FERM BP-734
コリネバクテリウム・リリウム ATCC15990
コリネバクテリウム・メラセコーラ ATCC17965
コリネバクテリウム・エッフィシエンス AJ12340(FERM BP-1539)
コリネバクテリウム・ハーキュリス ATCC13868
ブレビバクテリウム・ディバリカタム ATCC14020
ブレビバクテリウム・フラバム ATCC13826, ATCC14067, AJ12418(FERM BP-2205)
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム ATCC14068
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869
ブレビバクテリウム・ロゼウム ATCC13825
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム ATCC14066
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス ATCC19240
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・スタティオニス) ATCC6871, ATCC6872
ブレビバクテリウム・アルバム ATCC15111
ブレビバクテリウム・セリヌム ATCC15112
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラス ATCC15354
腸内細菌としては、エシェリヒア属、エンテロバクター属、パントエア属、クレブシエラ属、セラチア属、エルビニア属、サルモネラ属、モルガネラ属など、腸内細菌科に属する細菌であれば、特に限定されない。具体的にはNCBI(National Center for Biotechnology Information)データベースに記載されている分類により腸内細菌科に属するものが利用できる(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/htbin-post/Taxonomy/wgetorg?mode=Tree&id=1236&lvl=3&keep=1&srchmode=1&unlock)。腸内細菌としては、エシェリヒア属細菌を用いることが望ましい。
エシェリヒア属細菌としては、特に限定されないが、具体的にはNeidhardtらの著書(Backmann, B. J. 1996. Derivations and Genotypes of some mutant derivatives of Escherichia coli K-12, p. 2460-2488. Table 1. In F. D. Neidhardt (ed.), Escherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology/Second Edition, American Society for Microbiology Press, Washington, D.C.)に挙げられるものが利用できる。その中では、例えばエシェリヒア・コリが挙げられる。エシェリヒア・コリとしては具体的には、エシェリヒア・コリK12株由来の菌株を用いることができ、例えば、エシェリヒア・コリ MG1655株(ATCC No.47076)、W3110株(ATCC No.27325)が挙げられる。
これら上記のATCC番号が付された菌株は、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所 P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)より分譲を受けることが出来る。すなわち各菌株に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることが出来る(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。
エンテロバクター属細菌としては、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等、パントエア属細菌としてはパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)が挙げられる。尚、近年、エンテロバクター・アグロメランスは、16S rRNAの塩基配列解析などにより、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)又はパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、パントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)に再分類されているものがある。本発明においては、腸内細菌科に分類されるものであれば、エンテロバクター属又はパントエア属のいずれに属するものであってもよい。パントエア・アナナティスを遺伝子工学的手法を用いて育種する場合には、例えば、パントエア・アナナティスAJ13355株(FERM BP-6614)、AJ13356株(FERM BP-6615)、AJ13601株(FERM BP-7207)及びそれらの誘導体を親株として用いることができる。これらの株は、分離された当時はエンテロバクター・アグロメランスと同定され、エンテロバクター・アグロメランスとして寄託されたが、上記のとおり、16S rRNAの塩基配列解析などにより、パントエア・アナナティスに再分類されている。
本発明において、バチルス属細菌としては、バチルス・ズブチリス(B. subtilis 168 Marburg株; ATCC6051)が挙げられる。
本発明の培養法により目的物質を製造する場合、微生物または微細藻類としては、目的物質の生産能を有する微生物または微細藻類を用いる。本発明の培養法により製造される目的物質はいずれでもよい。微生物を用いる場合は、目的物質としては、L-アミノ酸や核酸が挙げられる。微細藻類を用いた場合には、目的物質としては、スターチ、スターチの加水分解物(スターチの糖化物ともいう)、脂肪酸、油脂の加水分解物、脂質、および炭化水素が挙げられる。本発明の培養法においては、1種の目的物質が製造されてもよく、2種またはそれ以上の目的物質が製造されてもよい。
本発明の培養法においては、微生物または微細藻類が目的物質そのものを生産してもよく、微生物または微細藻類により生産された物質をさらに処理して目的物質を生産してもよい。すなわち、本発明の培養法は、微生物または微細藻類により生産された物質をさらに処理して目的物質を生産するステップを含んでいてもよい。微生物または微細藻類により生産された物質をさらに処理して目的物質を生産する場合、「目的物質の生産能」とは、当該処理により目的物質へと変換される物質の生産能を意味してよい。具体的には、例えば、目的物質がスターチの加水分解物である場合、「目的物質の生産能」とは、スターチの生産能を意味してよい。
目的物質の生産能を有する微生物または微細藻類は、例えば、公知の手法により取得することができる。目的物質の生産能を有する微生物または微細藻類は、もともと目的物質の生産能を有するものであってもよく、目的物質の生産能を付与または増強されたものであってもよい。
L−アミノ酸生産菌は、例えば、上記のような細菌にL−アミノ酸生産能を付与することにより、または、上記のような細菌のL−アミノ酸生産能を増強することにより、取得できる。
L−アミノ酸生産能の付与または増強は、従来、コリネ型細菌又はエシェリヒア属細菌等のアミノ酸生産菌の育種に採用されてきた方法により行うことができる(アミノ酸発酵、(株)学会出版センター、1986年5月30日初版発行、第77〜100頁参照)。そのような方法としては、例えば、栄養要求性変異株の取得、L−アミノ酸のアナログ耐性株の取得、代謝制御変異株の取得、L−アミノ酸の生合成系酵素の活性が増強された組換え株の創製が挙げられる。L−アミノ酸生産菌の育種において、付与される栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質は、単独であってもよく、2種又は3種以上であってもよい。また、L−アミノ酸生産菌の育種において、活性が増強されるL−アミノ酸生合成系酵素も、単独であってもよく、2種又は3種以上であってもよい。さらに、栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質の付与と、生合成系酵素の活性の増強が組み合わされてもよい。
L−アミノ酸生産能を有する栄養要求性変異株、アナログ耐性株、又は代謝制御変異株は、親株又は野生株を通常の変異処理に供し、得られた変異株の中から、栄養要求性、アナログ耐性、又は代謝制御変異を示し、且つL−アミノ酸生産能を有するものを選択することによって取得できる。通常の変異処理としては、X線や紫外線の照射、N−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン等の変異剤処理が挙げられる。
また、L−アミノ酸生産能の付与又は増強は、目的のL−アミノ酸の生合成に関与する酵素の活性を増強することによっても行うことができる。酵素活性の増強は、例えば、同酵素をコードする遺伝子の発現が増強するように細菌を改変することにより行うことができる。遺伝子の発現を増強する方法は、WO00/18935号パンフレット、欧州特許出願公開1010755号明細書等に記載されている。
また、L−アミノ酸生産能の付与又は増強は、目的のL−アミノ酸の生合成経路から分岐して目的のL−アミノ酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性を低下させることによっても行うことができる。
核酸等のその他の目的物質の生産能を有する微生物や微細藻類も、L−アミノ酸生産菌を取得するのと同様の手法で取得することができる。
アミノ酸としては、L−リジン、L−オルニチン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−シトルリン、L−イソロイシン、L−アラニン、L−バリン、L−ロイシン、グリシン、L−スレオニン、L−セリン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−トリプトファン、L−システイン、L−シスチン、L−メチオニン、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン及びL−アスパラギンが挙げられる。
核酸としては、プリンヌクレオシド、プリンヌクレオチドなどが挙げられる。プリンヌクレオシドとしては、イノシン、キサントシン、グアノシン、アデノシンなどが挙げられる。プリンヌクレオチドとしては、プリンヌクレオシドの5'−燐酸エステル、例えばイノシン酸(イノシン−5'−リン酸。以下「IMP」ともいう)、キサンチル酸(キサントシン−5'−リン酸。以下「XMP」ともいう)、グアニル酸(グアノシン−5'−モノリン酸。以下「GMP」ともいう)、アデニル酸(アデノシン−5'−モノリン酸。以下「AMP」ともいう)などが挙げられる。
スターチは、グルコースがα-1,4-グルコシド結合によって直鎖状に結合したアミロースとα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合の両者の直鎖を枝に持つアミロペクチンとからなる高分子多糖類である。アミラーゼ (amylase) は、スターチなどのグルコシド結合を加水分解する酵素の総称である。アミラーゼは、作用する部位の違いによって、α-アミラーゼ (α-amylase EC3.2.1.1)、β-アミラーゼ (β-amylase EC3.2.1.2)、およびグルコアミラーゼ (glucoamylase EC3.2.1.3) に大別される。α-アミラーゼは、スターチやグリコーゲンなどのα-1,4-グルコシド結合をランダムに切断するエンド型の酵素である。β-アミラーゼは、スターチの非還元性末端からマルトース単位でα-1,4-グルコシド結合を逐次分解するエキソ型の酵素である。グルコアミラーゼ(アミログルコシダーゼとも呼ばれる)は、スターチの非還元性末端からグルコース単位でα-1,4-グルコシド結合を逐次分解するエキソ型の酵素で、アミロペクチンに含まれるα-1,6-結合も分解する。グルコアミラーゼは、スターチから直接グルコースを生成するため、グルコースの製造に広く用いられており、本発明においても好ましい酵素である。
穀物由来のスターチの糖化反応は、工業的にも実施されている多くの例がある(Robertson, G. H. et al. 2006. J. Agric. Food Chem. 54: 353-365)。このような例と同様にして、スターチを含有する藻体から、酵素反応によりスターチの糖化物を得ることが可能である。また、スターチを含有する藻体を破砕し、破砕した藻体を含む溶液を酵素処理することによりスターチの糖化物を得ることも可能である。破砕した藻体を含む溶液を酵素処理する場合には、前処理として、煮沸、超音波処理、アルカリ処理などを組み合わせて用いることが好ましい(Izumo, A. et al. 2007. Plant Science 172: 1138-1147)。
酵素反応の条件は、使用する酵素の性質に応じて適宜設定することが可能である。例えば、アミログルコシダーゼ(シグマ-アルドリッチ社A-9228)では、酵素濃度2〜20U/mL、温度40〜60℃、pH4〜6の条件が好ましい。
尚、スターチの糖化物は、例えば、L−アミノ酸生産菌等の細菌を培養する際の炭素源として利用することができる。よって、酵素反応時(糖化時)のpHの調整において、細菌が資化し得る有機酸をバッファーとして用いると、スターチの糖化物と共に該有機酸を、該細菌を培養する際の炭素源として用いることができる。例えば、酵素反応産物をそのまま培地に添加することができる。
本発明において、微細藻類により生産されるスターチの糖化物とは、上記のように、スターチを加水分解して、細菌が資化可能なマルトース又はグルコースのようなオリゴ糖又は単糖を生成させたものをいう。また、微細藻類により生産されるスターチの糖化物は、スターチの実質的にすべてが糖化されていてもよいが、一部が糖化されたものであってもよい。微細藻類により生産されるスターチの糖化物は、好ましくは、スターチの50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上がグルコースに変換されたものであってよい。さらに、微細藻類により生産されるスターチの糖化物は、微細藻類が生産するスターチ以外の炭水化物又はその糖化物を含んでいてもよい。
油脂は、脂肪酸とグリセロールのエステルであり、トリグリセリドとも呼ばれる。脂肪酸は、例えば、L−アミノ酸生産菌等の細菌を培養する際の炭素源として利用することができる。よって、微細藻類が産生する油脂としては、加水分解により生じる脂肪酸種が、L−アミノ酸生産菌等の細菌が炭素源として資化できるものであることが好ましく、それらの含量が高いものであることがより好ましい。L-アミノ酸生産能を有する細菌が資化できる長鎖の脂肪酸種としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などが挙げられる。
また、一般的に、生物は、油脂以外にも加水分解により脂肪酸を遊離する脂質(lipid)を含んでおり、脂質の加水分解により生じる脂肪酸を炭素源として用いることも出来る。脂質としては、単純脂質(Simple Lipid)である、蝋(wax)やセラミド(Ceramide)、および複合脂質である、リン脂質 (Phospholipid)や糖脂質 (Glycolipid)などが挙げられる。なお、脂質としては、テルペノイドやステロイドも挙げられる。
なお、脂肪酸は、微細藻類により直接的に生産されてもよい。すなわち、目的物質の一例である脂肪酸は、上記のような油脂や脂質の加水分解によって生じるものであってもよく、微細藻類により直接的に生産されるものであってもよい。
本発明において、油脂の加水分解物とは、上記微細藻類油脂を化学的方法又は酵素的方法等により加水分解して得られる加水分解物である。化学的な加水分解法としては、高温(250-260℃)、高圧(5-6MPa)下で油脂と水を向流接触させる連続高温加水分解法が一般的に行われている。また、強酸存在下や、酸触媒存在下で油脂の加水分解が起こることが知られている(米国特許第4,218,386号)。また、酵素を用いて低温(30℃前後)で反応を行うことも工業的に行われている(Jaeger, K. E. et al. 1994. FEMS Microbiol. Rev. 15: 29-63)。前記酵素としては、油脂の加水分解反応を触媒する酵素リパーゼを用いることが出来る。
具体的には例えば、油脂と水を同量仕込み、200℃で1時間程度、小型圧力容器中で加熱攪拌することで、70-80%程度の加水分解率を得ることが出来る。工業的には、高温(250-260℃)、高圧(5-6MPa)条件が用いられる。一方、酵素的方法は、よりマイルドな条件で加水分解を行うことが出来る。水と油脂を攪拌しつつ、リパーゼ反応に適した温度で酵素反応を行うことは、当業者であれば容易である。リパーゼは工業的に重要な酵素であり、様々な産業的利用がなされている(Hasan, F. et al. 2006. Enzyme and Microbiol. Technol. 39: 235-251)。使用する酵素は、1種でも2種以上であってもよい。
リパーゼは、油脂を脂肪酸とグリセロールに加水分解する酵素であり、トリアシルグリセロールリパーゼ(triacylglycerol lipase)またはトリアシルグリセリドリパーゼ(triacylglyceride lipase)とも呼ばれる。
リパーゼは多様な生物から見いだされているが、上記の反応を触媒するリパーゼであれば、どのような種由来のリパーゼも用いることが可能である。近年、脂肪酸エステルであるバイオディーゼル燃料を、油脂とアルコールからリパーゼ酵素を用いて生産する様々な試みも行われている(Fukuda, H., Kondo, A., and Noda, H. 2001., J. Biosci. Bioeng. 92, 405-416)。
微生物由来の代表的なリパーゼとしては、バチラス(Bacillus)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属由来のリパーゼが多数知られている(Jaeger, K. E., and Eggert, T. 2002. Curr. Opin. Biotechnol. 13: 390-397)。
油脂の加水分解物は、脂肪酸とグリセロールの混合物であり、一般的な油脂の加水分解物に含まれる脂肪酸に対するグリセロールの重量比は10%程度であることが知られている。加水分解物は、加水分解反応後の反応物そのものであってもよく、脂質に由来する脂肪酸やグリセロール等の細菌が資化可能な炭素源を含む限り、反応物を分画又は精製したものであってもよい。加水分解物が脂肪酸及びグリセロールを含む場合は、グリセロールの脂肪酸に対する重量比(グリセロール重量:脂肪酸重量)は、2:100〜50:100であることが好ましく、5:100〜20:100であることがより好ましい。
油脂の加水分解物は、室温付近の温度においては、グリセロールを含む下層(水相)と、脂肪酸を含む上層(油相)に分離しているのが一般的である。下層を採取すれば、主としてグリセロールを含む画分が得られる。また、上層を採取すれば、主として脂肪酸を含む画分が得られる。油脂の加水分解物は、例えば、L−アミノ酸生産菌等の細菌を培養する際の炭素源として利用することができる。炭素源としては、これらのいずれを使用してもよいが、グリセロールと脂肪酸の両方を使用することが好ましい。グリセロール及び脂肪酸の両方を含む加水分解物を炭素源として用いる場合は、加水分解物を乳化処理することが好ましい。乳化処理としては、乳化促進剤添加、攪拌、ホモジナイズ、超音波処理等が挙げられる。乳化処理によって、L−アミノ酸生産菌等の細菌がグリセロール及び脂肪酸を資化しやすくなり、L-アミノ酸発酵がより有効になると考えられる。乳化処理は、L-アミノ酸生産能を有する細菌等の細菌が、脂肪酸とグリセロールの混合物を資化しやすくする処理であれば、どのようなものでも構わない。例えば、乳化方法として、乳化促進剤や界面活性剤を加えること等が考えられる。ここで乳化促進剤としては、リン脂質やステロールが挙げられる。また界面活性剤としては、非イオン界面活性剤では、ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノオレイン酸エステル(Tween 80)などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、n-オクチルβ-D-グルコシドなどのアルキルグルコシド、ショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、アルキルベタインであるN,N-ジメチル-N-ドデシルグリシンベタインなどが挙げられる。これ以外にも、トライトンX-100(Triton X-100)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij-58)やノニルフェノールエトキシレート(Tergitol NP-40)等の一般的に生物学の分野で用いられる界面活性剤が利用可能である。
さらに、脂肪酸のような難溶解性物質の乳化や均一化を促進するための操作も有効である。この操作は、脂肪酸とグリセロールの混合物の乳化や均一化を促進する操作であれば、どのような操作でも構わない。具体的には、攪拌処理、ホモジナイザー処理、ホモミキサー処理、超音波処理、高圧処理、高温処理などが挙げられるが、攪拌処理、ホモジナイザー処理、超音波処理およびこれらの組合せがより好ましい。
上記乳化促進剤による処理と、攪拌処理、ホモジナイザー処理及び/または超音波処理を組み合わせることが特に好ましい。これらの処理は、脂肪酸がより安定なアルカリ条件下で行われることが望ましい。アルカリ条件としては、pH9以上が好ましく、pH10以上がより好ましい。
目的物質が生成されたことは、物質の検出または同定に用いられる適当な手法により確認することができる。そのような手法としては、HPLC、LC/MS、GC/MS、およびNMR等が挙げられる。例えば、グリセロールの濃度はF-キット グリセロール(Roche Diagnostics社)のようなキットや様々なバイオセンサーによって測定が可能である。また、例えば、脂肪酸又は油脂の濃度は、ガスクロマトグラフィ(Hashimoto, K. et al. 1996. Biosci. Biotechnol. Biochem. 70: 22-30)やHPLC(Lin, J. T. et al. 1998. J. Chromatogr. A. 808: 43-49)により測定することが可能である。
本発明の培養方法は、目的物質を回収するステップを含んでいてもよい。目的物質の回収は、目的物質の種類等の諸条件に応じて適宜選択した手法により行うことができる。例えば、発酵液からのL−アミノ酸の回収は、通常、イオン交換樹脂法(Nagai,H.et al., Separation Science and Technology, 39(16),3691-3710)、沈殿法、膜分離法(特開平9-164323号、特開平9-173792号)、晶析法(WO2008/078448、WO2008/078646)、その他の公知の方法を組み合わせることにより実施できる。なお、菌体内にL−アミノ酸が蓄積する場合には、例えば、菌体を超音波などにより破砕し、遠心分離によって菌体を除去して得られる上清から、イオン交換樹脂法などによってL−アミノ酸を回収することができる。その他の物質の回収も、上記L−アミノ酸の回収と同様の手法により行うことができる。
本発明は以下の実施例によって、更に具体的に説明されるが、これらはいかなる意味でも本発明を限定する意図と解してはならない。
実施例1:微細藻類 Chlorella kessleri 11h株の培養
テキサス大学藻類カルチャーコレクション(The University of Texas at Austin, The Culture Collection of Algae (UTEX), 1 University Station A6700, Austin, TX 78712-0183, USA)より、Chlorella kessleri 11h株(UTEX 263)を入手した。Chlorella kessleri 11h株を、100 mLの0.2×ガンボーグB5培地(日本製薬)を入れた500 mL容三角フラスコにて、培養温度30℃、光強度7,000 lux、3 % CO2濃度の空気・CO2混合ガス雰囲気のインキュベーター(TOMY社製培養装置CLE-303)で7日間振とう培養し、これを前培養液とした。1.5 L の0.2×ガンボーグB5 培地を入れた2 L容ジャーファーメンター(石川製作所製)に、前培養液80 mLを添加し、培養温度30℃、光強度20,000 luxにて、500 mL/minで3%CO2濃度の空気・CO2混合ガスを吹き込みながら、14日間培養を行った。尚、光源には、蛍光灯からの白色光を用いた。ここで得られた藻体を、以下、「藻類バイオマス」という。
(0.2×ガンボーグB5培地)
KNO3 500 mg/L
MgSO4・7H2O 50 mg/L
NaH2PO4・H2O 30 mg/L
CaCl2・2H2O 30 mg/L
(NH42SO4 26.8 mg/L
Na2-EDTA 7.46 mg/L
FeSO4・7H2O 5.56 mg/L
MnSO4・H2O 2 mg/L
H3BO3 0.6 mg/L
ZnSO4・7H2O 0.4 mg/L
KI 0.15 mg/L
Na2MoO2・2H2O 0.05 mg/L
CuSO4・5H2O 0.005 mg/L
CoCl2・6H2O 0.005 mg/L
120℃ 15分 オートクレーブ殺菌
実施例2:藻類由来油脂を抽出した後の残藻体の調製
実施例1と同様の方法で培養したChlorella kessleri 11h株の培養液1.5 L分を、5,000 rpmで10分間遠心分離したあと上清約1.47 L分を除き、約30mLの藻体濃縮液を調製した。藻体を懸濁し、これに1 N塩酸を添加してpH 4.6に調整し、遠心分離上清を加えて液量を40mLにした。これを撹拌しつつ50℃で6時間インキュベートした。インキュベート後の反応液を、5,000 rpmで10分間遠心分離して上清を除き、得られた沈殿物を39mlのエタノールに懸濁して、撹拌しつつ50℃で1時間インキュベートした。インキュベート後の反応液をろ過して、藻体から抽出された藻類由来油脂を含むろ液と、ろ紙上の残渣として残藻体を得た。ろ紙とろ紙上の残渣を8 mLのエタノールで洗浄し、洗浄に用いたエタノールは先述のろ液と混合した。
実施例3:藻類バイオマスおよび残藻体の酸加水分解
実施例1で得た藻類バイオマスおよび実施例2で得た残藻体を、それぞれ、以下の様にして硫酸で加水分解した。
実施例1で得られた培養液および実施例2で残藻体の調製に用いた培養液のそれぞれについて、培養液中の全固形分の重量を、以下の手順で測定した。ガラス繊維ろ紙を乾燥し、重量を測定した。十分に撹拌して均一にした培養液のうち3 mLを正確に分取し、先述のガラス繊維ろ紙でろ過した。ろ過後のガラス繊維ろ紙を再び乾燥し、重量を測定した。ろ過前後の重量差を培養液3mL中の全固形分の重量とした。その結果、実施例1で得られた培養液の固形分重量は3.62 g/Lであった。また、実施例2で残藻体の調製に用いた培養液の固形分重量は3.79 g/Lであった。
藻類バイオマスの酸加水分解物の調製のため、実施例1で得られた培養液約1.3 L分を、5,000 rpmで10分間遠心分離したあと上清約1.27 L分を除き、約30 mLの藻類バイオマス濃縮液(藻体濃縮液)を得た。その固形分濃度を培養液の固形分濃度と濃縮率から求めると、約159 g/Lとなった。
また、残藻体の酸加水分解物の調製のため、実施例2で得られた脂質抽出残渣(残藻体)を逆浸透水に懸濁し、約40 mLの残藻体濃縮液を得た。その固形分濃度を同様に求めると、約125 g/Lとなった。
それぞれの濃縮液に含まれる窒素量をもとに、添加後の硫酸イオンの窒素に対するモル比(SO4/N)が10となるよう硫酸を添加した。この時点での反応液中の固形分は、残藻体の反応液では約11 %、藻類バイオマス(藻体)の反応液では約13 %となった。
各反応液を、116℃で32時間処理した。これに12N KOHを添加してpH 6.0に調整し、不溶物をろ過して除いた。これらのろ液を、それぞれ、「藻体バイオマスの酸加水分解物」および「残藻体の酸加水分解物」という。
実施例4:藻類バイオマスの酸加水分解物及び残藻体の酸加水分解物を用いた微細藻類 Chlorella kessleri 11h株の培養
実施例3で得られた藻類バイオマスの酸加水分解物および残藻体の酸加水分解物を、それぞれ、以下の様に培地に添加して藻類の培養に用いた。
Chlorella kessleri 11h株を、10 mLの0.2×ガンボーグB5培地(日本製薬)を入れた50 mL容三角フラスコにて、培養温度30℃、光強度7,000 lux、3 % CO2濃度の空気・CO2混合ガス雰囲気のインキュベーター(TOMY社製培養装置CLE-303)で7日間振とう培養し、これを前培養液とした。藻類バイオマスの酸加水分解物または残藻体の酸加水分解物を窒素量として0.1 mM添加した0.2×ガンボーグB5 培地10 mLを入れた50 mL容三角フラスコに、前培養液0.5 mLを添加し、培養温度30℃、光強度7,000 lux、3 % CO2濃度の空気・CO2混合ガス雰囲気のインキュベーター(TOMY社製培養装置CL-301)で5日間振とう培養した。
生育の比較のため、振とう培養中のフラスコから培養液30μLを無菌的に分取して逆浸透水で10倍希釈したサンプルの濁度(750nm)を測定した。
脂肪酸の蓄積量は、以下の方法で測定した。振とう培養中のフラスコから培養液500μLを無菌的に分取して-80℃で30分間凍結し、ただちに50℃で20時間処理した。そのサンプルを12,000 rpm、4℃、5分間遠心分離して上清を除き、藻体の沈殿を得た。これにメタノール:クロロホルム(1:1)溶液を500μL加え、20分間振盪して脂質抽出を行った。抽出された脂質を含むメタノール:クロロホルム溶液を遠心濃縮し、イソプロパノールに再溶解したサンプルの脂肪酸濃度を脂肪酸定量キット(和光純薬 LabAssay NEFA)で定量した。
結果を表1、2に示す。表1、2に示す様に、藻類バイオマスの酸加水分解物または残藻体の酸加水分解物を添加した培地を用いた場合には、藻類バイオマスの酸加水分解物または残藻体の酸加水分解物を添加していない培地を用いた場合と比較して、生育がよく、脂肪酸蓄積量が高かった。
Figure 2013176261
Figure 2013176261
本発明により、微生物または藻類の培養に効果的な栄養添加剤を製造することができる。本発明により製造された栄養添加剤を用いることにより、安価に微生物または藻類の培養を行うことが出来る。また、一態様において、本発明により製造された栄養添加剤を用いることにより、安価に微生物または藻類の培養を行い、所望の目的物質を製造することが出来る。

Claims (15)

  1. a) 微細藻類を培地で培養し、微細藻類由来のバイオマスを生成すること、
    b) 前記バイオマスに酸を添加することにより前記バイオマスを加水分解すること、および
    c) 前記バイオマスの加水分解物を栄養添加剤として調製すること、
    を含む、微生物または微細藻類の培養の為の栄養添加剤を製造する方法であって、
    前記酸が、硫酸、塩酸、硝酸、及びリン酸からなる群より選択される酸であることを特徴とする、方法。
  2. 前記加水分解物が、微細藻類または微生物の生育を促進するものである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記酸が硫酸であって、前記酸の添加量が、前記バイオマス中の窒素に対する硫酸イオンのモル比(SO4/N)が0.1から10となるような量である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記酸が塩酸であって、前記酸の添加量が、前記バイオマス中の窒素に対する塩酸イオンのモル比(Cl/N)が0.1から20となるような量である、請求項1または2に記載の方法。
  5. 前記酸がリン酸であって、前記酸の添加量が、前記バイオマス中の窒素に対するリン酸イオンのモル比(PO4/N)が0.1から100となるような量である、請求項1または2に記載の方法。
  6. 前記酸が硝酸であって、前記酸の添加量が、前記バイオマス中の窒素に対する硝酸イオンのモル比(NO3/N)が0.1から100となるような量である、請求項1または2に記載の方法。
  7. 前記酸が硫酸であって、前記酸の添加量が、前記バイオマス中の窒素に対する硫酸イオンのモル比(SO4/N)が0.8から3となるような量である、請求項3に記載の方法。
  8. 前記加水分解が、75-130℃で5-50時間行われる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記加水分解が、110-120℃で10-32時間行われる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記バイオマスが、前記加水分解処理前に80-110℃で30分から2時間処理される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記バイオマスが、前記加水分解処理前に90-105℃で40分から90分処理される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法により製造された栄養添加剤が添加された培地で微細藻類または微生物を培養することを含む、目的物質を製造する方法。
  13. 前記目的物質が、L−アミノ酸である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記目的物質が、スターチである、請求項12に記載の方法。
  15. 前記目的物質が、脂質または脂肪酸である、請求項12に記載の方法。
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