本発明の実施例の基礎となった知見は、次の通りである。IEEE802.11等の規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御機能が使用されている。そのため、当該無線LANでは、複数の端末装置によって同一の無線チャネルが共有される。このようなCSMA/CAでは、キャリアセンスによって他のパケット信号が送信されていないことを確認した後に、パケット信号が送信される。ITS(Intelligent Transport Systems)のような車車間通信に無線LANを適用する場合、不特定多数の車両のそれぞれに搭載された端末装置へ情報を送信する必要があるために、信号はブロードキャストにて送信されることが望ましい。その結果、端末装置は、ブロードキャストされた信号を受信することによって、他の車両の接近を検出し、それを運転者に通知することによって、車両間の衝突事故を防止するための注意を運転者に喚起させる。
車両間の衝突事故を防止するとともに、歩行者等と車両との衝突事故を防止することも望まれる。これに対応するために、端末装置は、車載される他に歩行者にも携帯される。歩行者が車両と接触することを防止するために、歩行者に携帯される端末装置は、車載の端末装置に自己の存在を認識させるための信号を送信する。一方、歩行者に携帯される端末装置は、バッテリで駆動するので、車載の端末装置と比較して消費電力の低減がより強く求められる。端末装置の消費電力を抑制する方法にスリープがある。歩行者に携帯される端末装置では、送信処理、受信処理、その他の演算処理を実行しない期間は、できるだけスリープ状態に制御されることが望ましい。
歩行者に携帯される端末装置から送信される自己の存在を認識させるための信号は、屋外にいる間、定期的に送信される必要がある。その信号の送信タイミングではスリープ状態に制御できないため、その信号の送信間隔が短いほどスリープ期間は短くなる。
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、車両に搭載された端末装置(以下、「車載用端末装置」ともいう)間において車車間通信を実行するとともに、交差点等に設置された基地局装置から車載用端末装置へ路車間通信も実行する通信システムに関する。車車間通信として、車載用端末装置は、車両の速度や位置等の情報(以下、これらを「車両情報」という)を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。また、他の車載用端末装置は、パケット信号を受信するとともに、車両情報をもとに車両の接近等を認識する。車両の接近を運転者に通知することによって、運転者に注意を促す。車車間通信と路車間通信との干渉を低減するために、基地局装置は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定する。基地局装置は、路車間通信のために、複数のサブフレームのいずれかを選択し、選択したサブフレームの先頭部分の期間において、制御情報等が格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。制御情報には、当該基地局装置がパケット信号をブローキャスト送信するための期間(以下、「路車送信期間」という)に関する情報が含まれている。
車載用端末装置は、制御情報をもとに路車送信期間を特定し、路車送信期間以外の期間においてパケット信号を送信する。このように、路車間通信と車車間通信とが時間分割多重されるので、両者間のパケット信号の衝突確率が低減される。なお、車車間通信は、路車送信期間以外の車車間通信を実行するための期間(以下、「車車送信期間」という)においてCSMA方式にてなされる。このような端末装置は、歩行者にも携帯される(以下、歩行者に携帯される端末装置を「携帯用端末装置」という)。携帯用端末装置は、バッテリ駆動であり、低消費電力化を必要とされる。携帯用端末装置は、自己の存在を周囲に認識させるための情報(以下、存在情報という)を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。
携帯用端末装置は、消費電力を低減するため、できるだけ長い期間、スリープ状態にあることが好ましい。ただし、存在情報を格納したパケット信号は密に送信されるほど、携帯用端末装置を携帯する歩行者の存在が、車両の運転者に密に通知されることになるため、歩行者の安全性が高まる。携帯用端末装置は、安全性が高いと判定されるときスリープ期間および存在情報を格納したパケット信号の送信間隔を長くし、安全性が低いと判定されるときスリープ期間および存在情報を格納したパケット信号の送信間隔を短くする。これにより、歩行者の安全を確保しながら携帯用端末装置の消費電力を低減できる。また、携帯用端末装置は、存在情報を格納したパケット信号の送信タイミングを、近隣に位置する他の携帯端末装置からの存在情報を格納したパケット信号の送信タイミングと、ずらす。これにより、通信トラフィックの集中を抑制できる。
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、基地局装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12h、歩行者16と総称される第1歩行者16a、第2歩行者16bを含む。なお、各車両12には、図示しない車載用端末装置が設置され、各歩行者16は、図示しない携帯用端末装置を携帯する。また、エリア212は、基地局装置10の周囲に形成され、エリア外214は、エリア212の外側に形成されている。
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12dが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。
基地局装置10は、端末装置間の通信を制御する。基地局装置10は、図示しないGPS衛星から受信した信号や、図示しない他の基地局装置10にて形成されたフレームをもとに、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し生成する。ここで、各サブフレームの先頭部分に路車送信期間が設定可能であるような規定がなされている。基地局装置10は、複数のサブフレームのうち、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレームを選択する。基地局装置10は、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。基地局装置10は、設定した路車送信期間においてパケット信号を報知する。
車両12は、エンジンにて駆動され、車載用端末装置を搭載する。車載用端末装置は、受信したパケット信号に含まれた制御情報をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の車載用端末装置のそれぞれにおいて生成されるフレームは、基地局装置10において生成されるフレームに同期する。また、車載用端末装置は、車車送信期間において、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。車載用端末装置は、例えば、存在位置に関する情報をパケット信号に格納する。また、車載用端末装置は、制御情報もパケット信号に格納する。つまり、基地局装置10から送信された制御情報は、車載用端末装置によって転送される。
一方、基地局装置10からのパケット信号を受信できない車載用端末装置、つまりエリア外214に存在する車載用端末装置は、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。さらに、車載用端末装置は、他の車載用端末装置からのパケット信号を受信することによって、他の車載用端末装置が搭載された車両の接近を運転者へ通知する。
歩行者16は、携帯用端末装置を携帯する。携帯用端末装置は、車載用端末装置と同様の処理を実行する。また、携帯用端末装置は、CSMA/CAを実行する際の平均待ち時間が車載用端末装置での平均待ち時間よりも短くなるように、コンテンションウインドウを設定する。さらに、携帯用端末装置における送信電力は、他の装置の送信電力よりも小さくなるように設定される。
図2は、基地局装置10の構成を示す。基地局装置10は、アンテナ20、RF部22、変復調部24、処理部26、ネットワーク通信部28、制御部30を含む。処理部26は、フレーム規定部32、選択部34、生成部36を含む。
RF部22は、受信処理として、図示しない端末装置や他の基地局装置10からのパケット信号をアンテナ20にて受信する。RF部22は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、ベースバンドのパケット信号を変復調部24に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。RF部22には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。
RF部22は、送信処理として、変復調部24から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、路車送信期間において、無線周波数のパケット信号をアンテナ20から送信する。また、RF部22には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。
変復調部24は、受信処理として、RF部22からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。さらに、変復調部24は、復調した結果を処理部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、処理部26からのデータに対して、変調を実行する。さらに、変復調部24は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部22に出力する。ここで、通信システム100は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式に対応するので、変復調部24は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
フレーム規定部32は、図示しないGPS衛星からの信号を受信し、受信した信号をもとに時刻の情報を取得する。なお、時刻の情報の取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。フレーム規定部32は、時刻の情報をもとに、複数のフレームを生成する。例えば、フレーム規定部32は、時刻の情報にて示されたタイミングを基準にして、「1sec」の期間を10分割することによって、「100msec」のフレームを10個生成する。このような処理を繰り返すことによって、フレームが繰り返されるように規定される。
なお、フレーム規定部32は、復調結果から制御情報を検出し、検出した制御情報をもとにフレームを生成してもよい。このような処理は、他の基地局装置10によって形成されたフレームのタイミングに同期したフレームを生成することに相当する。図3(a)−(d)は、通信システム100において規定されるフレームのフォーマットを示す。図3(a)は、フレームの構成を示す。フレームは、第1サブフレームから第Nサブフレームと示されるN個のサブフレームによって形成されている。例えば、フレームの長さが100msecであり、Nが8である場合、12.5msecの長さのサブフレームが規定される。図3(b)−(d)の説明は、後述し、図2に戻る。
選択部34は、フレームに含まれた複数のサブフレームのうち、路車送信期間を設定すべきサブフレームを選択する。具体的に説明すると、選択部34は、フレーム規定部32にて規定されたフレームを受けつける。選択部34には、RF部22、変復調部24を介して、図示しない他の基地局装置10および端末装置からの復調結果が入力される。選択部34は、入力された復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する。選択部34は、復調結果を受けつけたサブフレームを特定することによって、復調結果を受けつけていないサブフレームを特定する。これは、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレーム、つまり未使用のサブフレームを特定することに相当する。未使用のサブフレームが複数存在する場合、選択部34は、ランダムにひとつのサブフレームを選択する。未使用のサブフレームが存在しない場合、つまり複数のサブフレームのそれぞれが使用されている場合、選択部34は、復調結果に対応した受信電力を取得し、受信電力の小さいサブフレームを優先的に選択する。
図3(b)は、第1基地局装置10aによって生成されるフレームの構成を示す。第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第1基地局装置10aは、第1サブフレームにおいて路車送信期間につづいて車車送信期間を設定する。車車送信期間とは、車載用端末装置がパケット信号を報知可能な期間である。つまり、第1サブフレームの先頭期間である路車送信期間において第1基地局装置10aはパケット信号を報知可能であり、かつフレームのうち、路車送信期間以外の車車送信期間において車載用端末装置がパケット信号を報知可能であるような規定がなされる。さらに、第1基地局装置10aは、第2サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間のみを設定する。
図3(c)は、第2基地局装置10bによって生成されるフレームの構成を示す。第2基地局装置10bは、第2サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第2基地局装置10bは、第2サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第3サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。図3(d)は、第3基地局装置10cによって生成されるフレームの構成を示す。第3基地局装置10cは、第3サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第3基地局装置10cは、第3サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第2サブフレーム、第4サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。このように、複数の基地局装置10は、互いに異なったサブフレームを選択し、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。図2に戻る。選択部34は、選択したサブフレームの番号を生成部36へ出力する。
生成部36は、選択部34から受けつけたサブフレーム番号のサブフレームに路車送信期間を設定し、路車送信期間において報知すべきRSU(Road Side Unit)パケット信号を生成する。なお、以下の説明において、RSUパケット信号とパケット信号とは区別せずに使用する。図4(a)−(b)は、サブフレームの構成を示す。図4(a)は、路車送信期間が設定されたサブフレームを示す。図示のごとく、ひとつのサブフレームは、路車送信期間、車車送信期間の順に構成される。図4(b)は、路車送信期間におけるパケット信号の配置を示す。図示のごとく、路車送信期間において、複数のRSUパケット信号が並べられている。ここで、前後のパケット信号は、SIFS(Short Interframe Space)だけ離れている。
ここでは、RSUパケット信号の構成を説明する。図5(a)−(b)は、通信システム100において規定されるパケット信号に格納されるMACフレームのフォーマットを示す。図5(a)は、MACフレームのフォーマットを示す。MACフレームは、先頭から順に、「MACヘッダ」、「LLCヘッダ」、「メッセージヘッダ」、「データペイロード」、「FCS」が配置される。データペイロードに含まれる情報については、後述する。図5(b)は、生成部36によって生成されるメッセージヘッダの構成を示す図である。メッセージヘッダには、基本部分が含まれている。
基本部分は、「プロトコルバージョン」、「送信ノード種別」、「再利用回数」、「TSFタイマ」、「RSU送信期間長」を含む。プロトコルバージョンは、対応しているプロトコルのバージョンを示す。送信ノード種別は、MACフレームが含まれたパケット信号の送信元を示す。例えば、「0」は端末装置を示し、「1」は基地局装置10を示す。なお、車載用端末装置と携帯用端末装置とを区別する場合、送信ノード種別が2ビットで示される。選択部34が、入力された復調結果の中から、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する場合に、選択部34は、送信ノード種別の値を利用する。再利用回数は、メッセージヘッダが端末装置によって転送される場合の有効性の指標を示し、TSFタイマは、送信時刻を示す。RSU送信期間長は、路車送信期間の長さを示しており、路車送信期間に関する情報といえる。図2に戻る。
ネットワーク通信部28は、図示しないネットワーク202に接続される。ネットワーク通信部28は、ネットワーク202から、渋滞情報を受けつける。生成部36は、ネットワーク通信部28から、渋滞情報を取得し、データペイロードに格納することによって、前述のRSUパケット信号を生成する。制御部30は、基地局装置10全体の処理を制御する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図6は、車両12に搭載された車載用端末装置14の構成を示す。車載用端末装置14は、アンテナ40、RF部42、変復調部44、処理部46、制御部48を含む。処理部46は、タイミング特定部50、転送決定部56、取得部58、通知部60、生成部62を含み、タイミング特定部50は、抽出部52、キャリアセンス部54を含む。アンテナ40、RF部42、変復調部44は、図2のアンテナ20、RF部22、変復調部24と同様の処理を実行する。そのため、ここでは、差異を中心に説明する。
RF部42、変復調部44は、図示しない他の端末装置や基地局装置10からのパケット信号を受信する。なお、前述のごとく、RF部42、変復調部44は、路車送信期間において、基地局装置10からのパケット信号を受信する。前述のごとく、RF部42、変復調部44は、車車送信期間において、他の車載用端末装置14からのパケット信号および携帯用端末装置18からのパケット信号を受信する。
抽出部52は、変復調部44からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。その際、抽出部52は、車載用端末装置14が図1のエリア212内に存在すると推定する。抽出部52は、サブフレームのタイミングと、パケット信号のメッセージヘッダの内容、具体的には、RSU送信期間長の内容をもとに、フレームを生成する。なお、フレームの生成は、前述のフレーム規定部32と同様になされればよいので、ここでは説明を省略する。その結果、抽出部52は、基地局装置10において形成されたフレームに同期したフレームを生成する。
一方、抽出部52は、RSUパケット信号を受信していない場合、車載用端末装置14が図1のエリア外214に存在すると推定する。抽出部52は、エリア212に存在していると推定した場合、車車送信期間を選択する。抽出部52は、エリア外214に存在していると推定した場合、フレームの構成と無関係のタイミングを選択する。抽出部52は、車車送信期間を選択した場合、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報をキャリアセンス部54へ出力する。抽出部52は、フレームの構成と無関係のタイミングを選択すると、キャリアセンスの実行をキャリアセンス部54に指示する。
キャリアセンス部54は、抽出部52から、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報を受けつける。キャリアセンス部54は、車車送信期間において、キャリアセンスを実行することによって、干渉電力を測定する。また、キャリアセンス部54は、干渉電力をもとに、車車送信期間における送信タイミングを決定する。具体的に説明すると、キャリアセンス部54は、所定のしきい値を予め記憶しており、干渉電力としきい値とを比較する。干渉電力がしきい値よりも小さければ、キャリアセンス部54は、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部54は、抽出部52から、キャリアセンスの実行を指示された場合、フレームの構成を考慮せずに、CSMAを実行することによって、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部54は、決定した送信タイミングを生成部62へ通知する。
取得部58は、図示しないGPS受信機、ジャイロセンサ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、車載用端末装置14の存在位置、進行方向、移動速度等の車両情報を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。取得部58は、車両情報を生成部62へ出力する。
転送決定部56は、メッセージヘッダの転送を制御する。転送決定部56は、パケット信号からメッセージヘッダを抽出する。パケット信号が基地局装置10から直接送信されている場合には、再利用回数が「0」に設定されているが、パケット信号が他の車載用端末装置14から送信されている場合には、再利用回数が「1以上」の値に設定されている。転送決定部56は、抽出したメッセージヘッダから、転送すべきメッセージヘッダを選択する。ここでは、例えば、再利用回数が最も小さいメッセージヘッダが選択される。また、転送決定部56は、複数のメッセージヘッダに含まれた内容を合成することによって新たなメッセージヘッダを生成してもよい。転送決定部56は、選択対象のメッセージヘッダを生成部62へ出力する。その際、転送決定部56は、再利用回数を「1」増加させる。
生成部62は、取得部58から車両情報を受けつけ、転送決定部56からメッセージヘッダを受けつける。生成部62は、図5(a)−(b)に示されたMACフレームを使用し、車両情報をデータペイロードに格納する。生成部62は、MACフレームが含まれたパケット信号を生成する。変復調部44、RF部42は、キャリアセンス部54において決定した送信タイミングにて、生成されたパケット信号をアンテナ40を介してブロードキャスト送信する。これは、車車間通信に相当する。なお、送信タイミングは、車車送信期間に含まれている。
通知部60は、抽出部52を介して、図示しない基地局装置10からのパケット信号を取得するとともに、図示しない他の車載用端末装置14からのパケット信号を取得する。通知部60は、取得したパケット信号に対する処理として、パケット信号に格納されたデータの内容に応じて、図示しない他の車両12や歩行者16の接近等を運転者へモニタやスピーカを介して通知する。さらに、通知部60は、渋滞情報等も運転者へモニタやスピーカを介して通知する。
図7は、実施例1に係る、歩行者16に携帯された携帯用端末装置18の構成を示す。携帯用端末装置18は、アンテナ70、RF部72、変復調部74、処理部76、制御部78、動き検出部80、電池98を含む。また、処理部76は、電力管理部82、位置情報取得部84、生成部86、タイミング特定部88を含む。タイミング特定部88は、抽出部90、キャリアセンス部92を含む。以下、車載用端末装置14との相違を中心に説明する。
動き検出部80は、携帯用端末装置18の動きを検出する。実施例1では、動き検出部80は3軸加速度センサを備える。3軸加速度センサは、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸それぞれの加速度を検出できる。3軸加速度センサは重力加速度も検出できるため、携帯用端末装置18の姿勢を特定できる。動き検出部80は、検出結果を電力管理部82に出力する。
位置情報取得部84は、図示しないGPS受信機から位置情報を取得する。位置情報取得部84は、位置情報を生成部86に出力する。生成部86は、当該位置情報を含む存在情報をデータペイロードに含むパケット信号を生成する。送信部(RF部72および変復調部74)は、生成されたパケット信号をアンテナ70を介してブロードキャスト送信する。存在情報を含むパケット信号(以下、存在信号という)の生成および送信は、定期的(例えば、3秒ごと)に実行される。なお前述したように、タイミング特定部88により路車送信期間にパケット信号が送信されないよう制御されるため、存在信号の送信タイミングが路車送信期間に含まれる場合、送信部は路車送信期間が終了してから当該パケット信号を送信する。存在信号の送信により、携帯用端末装置18の送信電波が届く範囲に位置する、車載用端末装置14および基地局装置10に、歩行者の存在を認識させることができる。
携帯用端末装置18は、車載用端末装置14と同様、基地局装置10からの信号(RSUパケット信号)を受信すれば、エリア内に存在していると推定し、車車送信期間において送信を行い、RSUパケット信号を受信していない場合は、エリア外にいると推定し、フレームの構成と無関係のタイミングを選択する。携帯用端末装置18が車載用端末装置14と異なる点は、携帯用端末装置18はスリープから復帰した後、まず受信処理を行って基地局装置10の存在を確認し、送信タイミングを決めることにある。本実施例ではスリープから復帰した後、フレーム期間(100ms)の間に少なくとも一つのRSUパケット信号を受信するか否かにより、基地局装置10の存在の有無を判定する。
電力管理部82は、携帯用端末装置18の電力を管理する。具体的には、携帯用端末装置18の電源がオンされている状態で、携帯用端末装置18の電力モードを通常モードとスリープモード(省電力モードともいう)との間で切り替える。スリープモードでは携帯用端末装置18の最小限の機能を維持するための構成要素にしか電源が供給されない。スリープモードでは送信機能と同様、受信機能もスリープする。携帯用端末装置18の信号送信時、基地局装置10からのRSUパケット信号の受信期間中は送信せず、車車送信期間を認識したうえで送信する。まず、受信機能がスリープから復帰してフレームを認識してから送信する。つまり、送信頻度に応じて受信頻度も変化する。
本実施例ではスリープモードにおいて電力管理部82は、アンテナ70、RF部72、変復調部74、制御部78、位置情報取得部84(GPS受信機を含む)、生成部86、タイミング特定部88への電源供給を、最低限の待機電力を除き停止する。動き検出部80への電源供給は停止しない。即ち、スリープモードに移行しても通常モードと同じ電源環境を維持する。通常モードでは電力管理部82は全ての構成要素に対する電源供給を制限しない。
電力管理部82は、動き検出部80による検出結果に応じて、スリープを制御する。具体的には、電力管理部82は、存在信号が送信される期間を少なくとも除く期間に、携帯用端末装置18をスリープモードに設定する。存在信号が送信される期間は通常モードに設定する。
電力管理部82は、動き検出部80による検出結果から携帯用端末装置18が静止または規則的な動きをしていると判定するとき、存在信号の送信間隔およびスリープ時間を長くする。携帯用端末装置18が静止していると判定されるとき携帯用端末装置18を携帯する歩行者も静止していると推測できる。携帯用端末装置18が規則的な動きをしていると判定されるとき携帯用端末装置18を携帯する歩行者が、一定の速度で一定の方向に進んでいると推測できる。
また、電力管理部82は、動き検出部80による検出結果から携帯用端末装置18の移動速度が第1設定値未満と判定するとき、存在信号の送信間隔およびスリープ時間を長くしてもよい。また、電力管理部82は、動き検出部80による検出結果から携帯用端末装置18の移動速度が第1設定値未満であり、かつ静止または規則的な動きをしていると判定するとき、存在信号の送信間隔およびスリープ時間を長くしてもよい。
電力管理部82は、3軸加速度センサの各軸の出力値の推移から、携帯用端末装置18を携帯する歩行者が静止しているか、一定の速度で一定の方向に歩いているか、一定の速度で一定の方向に走っているかを推測できる。例えば、3軸加速度センサの各軸の出力値を合成し、その合成値が1Gより低くなった時刻を検出し、その後、1Gより高くなった時刻を検出する。両時刻が所定の期間内であれば、歩数としてカウントする。この歩数カウントの間隔、合成値の上ピークから下ピークまでの差分、などから歩行者の移動速度を推測できる。また、3軸加速度センサの各軸の出力値の変化から進行方向が一定か否かを推測できる。進行方向が一定の場合、歩行者の前後方向の軸の出力値は規則的に変化し、左右方向の軸の出力値はほぼ一定となる。これに対し、歩行者が蛇行して、または千鳥足で歩いている場合、歩行者の前後方向および左右方向の軸の出力値は不規則となる。また、歩行者の速度が一定の場合、歩行者の前後方向の軸の出力値は規則的に変化し、歩行者の速度が一定でない場合、歩行者の前後方向の軸の出力値は不規則となる。
携帯用端末装置18を携帯する歩行者が静止または規則的な動きをしている場合、車両12の運転者による歩行者の動きに対する予測可能性が高いため、電力管理部82は、存在信号の送信間隔およびスリープ時間を長くして、電力の節約度合いを大きくする。
また、電力管理部82は、動き検出部80による検出結果から携帯用端末装置18が不規則な動きをしていると判定するとき、存在信号を含むパケット信号の送信間隔およびスリープ時間を短くする。携帯用端末装置18が不規則な動きをしていると判定されるとき携帯用端末装置18を携帯する歩行者も、不規則な動きをしていると推測できる。
また、電力管理部82は、動き検出部80による検出結果から携帯用端末装置18の移動速度が第1設定値以上と判定するとき、存在信号の送信間隔およびスリープ時間を短くしてもよい。また、電力管理部82は、動き検出部80による検出結果から携帯用端末装置18の移動速度が第1設定値以上であり、かつ不規則な動きをしていると判定するとき、存在信号の送信間隔およびスリープ時間を短くしてもよい。
電力管理部82は、3軸加速度センサの各軸の出力値の推移から、携帯用端末装置18を携帯する歩行者が不規則な動きをしているか推測できる。例えば、前述した処理を実行することにより、歩行者が静止および規則的な動きをしていないと判定したとき、不規則な動きをしていると判定する。
携帯用端末装置18を携帯する歩行者が不規則な動きをしている場合、車両12の運転者による歩行者の動きに対する予測可能性が低いため、電力管理部82は、存在信号の送信間隔およびスリープ時間を短くして、安全性を向上させる。不規則な動きをしている歩行者は子供や泥酔者などが多いため、その動向は交通安全上、密に車両12に伝達されることが望ましい。
また、電力管理部82は、携帯用端末装置18がスリープ状態において、動き検出部80により検出される動きの変化が第2設定値より大きいとき、スリープ状態を解除して、存在信号を含むパケット信号を送信させる。電力管理部82は、3軸加速度センサのいずれかの軸の出力値の単位時間当たり変化が第2設定値を超えるとき、歩行者の動きに顕著な変化が発生したと推測する。例えば、静止中から歩き出した、静止中から走りだした、歩きから走りに変化した、走りから歩きに変化した、歩行速度が大きく変化した、進行方向を変えた、ジャンプした、転んだ、等が発生したと推測できる。
携帯用端末装置18を携帯する歩行者の動きが顕著に変化した場合、車両12の運転者による歩行者の動きに対する予測可能性が低下するため、電力管理部82は、スリープモードから通常モードに復帰させて、送信部に存在信号を送信させる。これにより、安全性が向上する。
図8(a)−(c)は、実施例1に係る電力管理部82による電力モード管理を説明するための図である。図8(a)−(c)に示す例では、電力モード管理パターンを2種類設定する。図8(a)は、第1電力モード管理パターンを示す。図8(b)は、第2電力モード管理パターンを示す。前述したように存在信号は定期に送信される必要があるため、存在信号の送信タイミングが到来するごとにスリープモードから通常モードに復帰する必要がある。第1電力モード管理パターンは存在信号の送信間隔および個々のスリープ期間が短い例である。第2電力モード管理パターンは送信信号の送信間隔および個々のスリープ期間が長い例である。例えば、第1電力モード管理パターンでは2秒ごとに存在信号が送信され、第2電力モード管理パターンでは4秒ごとに存在信号が送信される。
通常モードでは基地局装置10、車載用端末装置14および他の携帯用端末装置18から送信されたパケット信号を受信できる。スリープモードと通常モードとの比率は、存在信号の送信タイミングだけでなく、受信期間も考慮して決定される。
図8(c)は、携帯用端末装置18の動きの変化が第2設定値を超えた場合を示す。この場合、電力管理部82はタイミング特定部88に割込信号を出力する。タイミング特定部88はスリープ期間にその割込信号を受けるとスリープ期間を終了させ、送信部に存在信号を送信させる。その後、電力管理部82は第1電力モード管理パターンに設定する。
図9は、実施例1に係る電力管理部82による電力モード管理を説明するためのフローチャートである。電力管理部82は、携帯用端末装置18がオンの状態で(S10のY)、携帯用端末装置18の電力モードをスリープモードに移行させる(S12)。電力管理部82は、動き検出部80の検出結果から携帯用端末装置18が静止中または規則的な動きをしていると判定したとき(S14のY)、スリープ期間が長い第2電力モード管理パターンを選択する(S16)。携帯用端末装置18が不規則な動きをしていると判定したとき(S14のN)、スリープ期間が短い第1電力モード管理パターンを選択する(S18)。
電力管理部82は、動き検出部80の検出結果から携帯用端末装置18に第2設定値を超える動き変化が発生したか否か判定する(S20)。発生した場合(S20のY)、ステップS24に遷移し、発生していない場合(S20のN)、ステップS22に遷移する。電力管理部82は、ひとつのスリープ期間が終了したか否か判定する(S22)。終了していない場合(S22のN)、ステップS14に遷移し、ステップS14〜ステップS22までの処理を繰り返す。終了した場合(S22のY)、ステップS24に遷移する。
電力管理部82は、ひとつのスリープ期間が終了した場合(S22のY)または第2設定値を超える動き変化が発生した場合(S20のY)、スリープモードから通常モードへ移行する(S24)。送信部は存在信号をブロードキャスト送信する(S26)。その後、ステップS10に遷移する。ステップS10〜ステップS26までの処理が携帯用端末装置18の電源がオフされるまで(S10のN)、継続される。
以上説明したように実施例1によれば、携帯用端末装置18を携帯している歩行者の動きに応じて、存在信号の送信間隔およびスリープ期間を変化させることにより、交通の安全性を確保しつつ、携帯用端末装置18の消費電力を低減できる。即ち、歩行者が比較的安全な振る舞いをしていると推測できる場合、存在信号の送信間隔およびスリープ期間を長く設定し、歩行者が比較的危険な振る舞いをしていると推測できる場合、存在信号の送信間隔およびスリープ期間を短く設定する。これにより、歩行者の交通安全の要請と携帯用端末装置18の消費電力の要請を両立できる。
図10は、実施例2に係る、歩行者16に携帯された携帯用端末装置18の構成を示す。携帯用端末装置18は、アンテナ70、RF部72、変復調部74、処理部76、制御部78、電池98を含む。実施例2では動き検出部80は必須ではないため省略している。また、処理部76は、電力管理部82、車載器ID管理部81、車載器ID保持部83、位置情報取得部84、生成部86、タイミング特定部88を含む。タイミング特定部88は、抽出部90、キャリアセンス部92を含む。以下、実施例1に係る携帯用端末装置18との相違を中心に説明する。
電力管理部82は、車載用端末装置14から受信されるパケット信号により特定される、近隣に存在する車両の数に応じて、スリープを制御する。車載用端末装置14が半径数100mを受信範囲とする送信電力でパケット信号を送信している場合、携帯用端末装置18は、半径数100m圏内に存在する車両の数を認識することになる。
車載用端末装置14から送信されるパケット信号には、送信元の車載用端末装置14を特定するための識別情報(以下、車載器IDという)が含まれている。携帯用端末装置18の受信部(RF部72および変復調部74)は、車載器IDが含まれたパケット信号を受信し、その車載器IDを取り出し、車載器ID管理部81に渡す。車載器ID管理部81は、受信部から渡された車載器IDを車載器ID保持部83に登録する。
車載器ID保持部83に登録されている車載器IDは、電力管理部82により定期的に参照される。具体的には、存在信号の送信完了の度に参照される。前回の参照タイミングで車載器ID保持部83に存在した車載器IDが、前回の参照タイミングから今回の参照タイミングまでの間に受信部により受信されなかった場合、車載器ID管理部81は、その車載器IDを車載器ID保持部83から削除する。前回の参照タイミングで車載器ID保持部83に存在した車載器IDが、前回の参照タイミングから今回の参照タイミングまでの間に受信部により受信された場合、車載器ID管理部81は、受信された車載器IDを新たに登録せず、既存の車載器IDをそのまま維持する。前回の参照タイミングで車載器ID保持部83に存在しなかった車載器IDが、前回の参照タイミングから今回の参照タイミングまでの間に受信部により受信された場合、車載器ID管理部81は、受信された車載器IDを車載器ID保持部83に登録する。
電力管理部82は、車載器ID保持部83に登録されている車載器IDに応じて、存在信号の送信間隔およびスリープ期間の長さを決定する。具体的には車載器IDの数が多いほど、存在信号の送信間隔およびスリープ期間を長く設定する。例えば、車載器IDの数に対して比例的な関係にあるスリープ期間を設定する。例えば、車載器IDの数が1〜10のときスリープ期間を2秒に設定し、車載器IDの数が100以上のときスリープ期間を5秒に設定し、車載器IDの数が50〜60のときスリープ期間を3.5秒に設定する。
これは、道路に存在する車両が多い場合、渋滞が発生しているか、車両の流れが悪いため比較的低速走行になり、道路に存在する車両が少ない場合、車両の流れが良いため比較的高速走行になるというモデルに基づく。即ち、歩行者の近隣に存在する車両の数が少ないほど危険性が高まるというモデルである。なお、車載器IDの数が0のときは、スリープ期間を最大値に設定する。車両が0のときは危険でないためである。
また、電力管理部82は、車載器ID保持部83に登録されている車載器IDの変化に応じて、存在信号の送信間隔およびスリープ期間の長さを決定してもよい。具体的には、前回の参照タイミングで車載器ID保持部83に保持されていた車載器IDと、今回の参照タイミングで車載器ID保持部83に保持されている車載器IDとの差分を検出する。この差分は正規化されたものであってもよい。例えば、前回の参照タイミングで車載器ID保持部83に保持されていた車載器IDが今回の参照タイミングで存在しなくなった割合が算出されてもよい。
電力管理部82は、車載器ID保持部83に保持される車載器IDの変化が多いほど、スリープ期間を短く設定する。例えば、車載器IDの変化に対して反比例的な関係にあるスリープ期間を設定する。例えば、車載器IDの変化が0〜10%のときスリープ期間を5秒に設定し、車載器IDの変化が90〜100%のときスリープ期間を2秒に設定し、車載器IDの変化が50〜60%のときスリープ期間を3.5秒に設定する。これは、車載器IDの変化が大きいほど、道路に存在する車両の流れが良く比較的高速走行になるというモデルに基づく。
図11は、実施例2に係る電力管理部82による電力モード管理を説明するためのフローチャート1である。携帯用端末装置18がオンの状態で(S30のY)、受信部は車載用端末装置14から送信されたパケット信号を受信する(S32)。車載器ID管理部81は、受信されたパケット信号に含まれる車載器IDを車載器ID保持部83に登録する。電力管理部82は、車載器ID保持部83に保持される車載器IDの数を特定する(S34)。電力管理部82は、特定した車載器IDの数に応じて、次のスリープ期間を設定する(S36)。電力管理部82は、携帯用端末装置18の電力モードをスリープモードに移行させる(S38)。電力管理部82は、設定したスリープ期間が経過すると、電力モードをスリープモードから通常モードへ移行させる(S40)。送信部は存在信号をブロードキャスト送信する(S42)。その後、ステップS30に遷移する。ステップS30〜ステップS42までの処理が携帯用端末装置18の電源がオフされるまで(S30のN)、継続される。
図12は、実施例2に係る電力管理部82による電力モード管理を説明するためのフローチャート2である。フローチャート2では、フローチャート1のステップS34及びステップS36が、ステップS35及びステップS37にそれぞれ置き換わっている。即ち、電力管理部82は、車載器ID保持部83に保持される車載器IDの変化を特定する(S35)。電力管理部82は、特定した車載器IDの変化に応じて、次のスリープ期間を設定する(S37)。それ以外のステップは、フローチャート1と同様である。
以上説明したように実施例2によれば、車載器ID保持部83に保持される車載器IDの数または変化に応じて、存在信号の送信間隔およびスリープ期間を変化させることにより、交通の安全性を確保しつつ、携帯用端末装置18の消費電力を低減できる。即ち、道路状況から比較的安全と推測できる場合、存在信号の送信間隔およびスリープ期間を長く設定し、比較的危険と推測できる場合、存在信号の送信間隔およびスリープ期間を短く設定する。これにより、歩行者の交通安全の要請と携帯用端末装置18の消費電力の要請を両立できる。
図13は、実施例3に係る、歩行者16に携帯された携帯用端末装置18の構成を示す。携帯用端末装置18は、アンテナ70、RF部72、変復調部74、処理部76、制御部78、電池98を含む。実施例3でも動き検出部80は必須ではないため省略している。また、処理部76は、電力管理部82、歩行者端末情報管理部85、歩行者端末情報保持部87、位置情報取得部84、生成部86、タイミング特定部88を含む。タイミング特定部88は、抽出部90、キャリアセンス部92を含む。以下、実施例2に係る携帯用端末装置18との相違を中心に説明する。
電力管理部82は、他の携帯用端末装置18から受信されるパケット信号により特定される、他の携帯用端末装置18が存在信号を送信する送信タイミングに応じて、スリープを制御する。他の携帯用端末装置18が半径数100mを受信範囲とする送信電力でパケット信号を送信している場合、携帯用端末装置18は、半径数100m圏内に存在する他の携帯用端末装置18の存在およびその携帯用端末装置18による存在信号の送信タイミングを認識することになる。
生成部86は、携帯用端末装置18を特定するための識別情報(以下、歩行者端末IDという)、存在信号および存在信号の送信タイミング(以下、単に送信タイミングと表記する)を含むパケット信号を生成する。送信タイミングには、少なくとも次の送信タイミングが含まれる。次回以降の送信タイミングも決定している場合、次回以降の送信タイミングも含まれてもよい。送信部は、当該パケット信号をブロードキャスト送信する。送信タイミングは基本的に規則的であるが、路車送信期間が設定されるとずれる。また、実施例1、2に示したように存在信号の送信間隔を可変構成とする場合もずれる。
受信部(RF部72および変復調部74)は、他の携帯用端末装置18から送信されたパケット信号を受信し、そのパケット信号から歩行者端末ID、存在信号および送信タイミングを取り出す。受信部は取り出した歩行者端末IDおよび送信タイミングを歩行者端末情報管理部85に渡す。歩行者端末情報管理部85は、受信部から渡された歩行者端末IDおよび送信タイミングを歩行者端末情報保持部87に登録する。なお、位置情報も合わせて登録してもよい。歩行者端末情報管理部85は、歩行者端末情報保持部87に登録されている送信タイミングのうち、その時刻を過ぎたものを削除する。
歩行者端末情報保持部87に登録されている他の携帯用端末装置18の送信タイミングは、電力管理部82により定期的に参照される。具体的には、存在信号の送信完了の度に参照される。電力管理部82は、歩行者端末情報保持部87に登録されている、少なくとも一つの他の携帯用端末装置18の送信タイミングと、自己の送信タイミングが重複しないよう、自己の次の送信タイミングを決定する。電力管理部82は、決定した送信タイミング及び受信期間を考慮し、次のスリープ期間の長さを決定する。
なお、全ての携帯用端末装置18で存在信号の送信間隔が共通かつ固定の場合、電力管理部82は、他の携帯用端末装置18の送信タイミングに対して、自己の送信タイミングをずらすだけで足りる。
ここまで、携帯用端末装置18の送信タイミングを携帯用端末装置18自身が決定する例を説明したが、基地局装置10が決定することもできる。基地局装置10は、エリア212内に存在する全ての携帯用端末装置18の送信タイミングを取得できる。基地局装置10の図示しない送信タイミング決定部は、エリア212に存在する全ての携帯用端末装置18の送信タイミングが重複しないよう、それぞれの携帯用端末装置18の送信タイミングを決定する。送信部(RF部22および変復調部24)は、それぞれの携帯用端末装置18の送信タイミングを含むパケット信号を生成し、アンテナ20を介してブロードキャスト送信する。
基地局装置10から当該パケット信号が送信されたときスリープ状態の携帯用端末装置18は、当該パケット信号を受信できない。この対策として、当該パケット信号を受信した、車載用端末装置14または携帯用端末装置18は、受信したパケット信号を転送する。このホッピングを実行することにより、携帯用端末装置18が当該パケット信号を受信できる確率が高まる。
携帯用端末装置18の受信部は、基地局装置10から送信されたパケット信号を受信し、そのパケット信号から基地局装置10により指定された送信タイミングを取り出す。電力管理部82は、指定された送信タイミング及び受信期間を考慮し、次のスリープ期間の長さを決定する。
図14は、複数の携帯用端末装置18の送信タイミングを示す図である。図14では送信電波が干渉し合う圏内に3つの携帯用端末装置18(第1携帯用端末装置18a、第2携帯用端末装置18b、第3携帯用端末装置18c)が存在することを前提とする。図14では前述の送信タイミングの調整処理が実行された結果、3つの携帯用端末装置18の送信タイミングが重複しない状態を示している。
図15は、実施例3に係る電力管理部82による電力モード管理を説明するためのフローチャート1である。携帯用端末装置18がオンの状態で(S50のY)、受信部は他の携帯用端末装置18から送信されたパケット信号を受信する(S52)。歩行者端末情報管理部85は、受信されたパケット信号に含まれる歩行者端末IDおよび送信タイミングを歩行者端末情報保持部87に登録する。電力管理部82は、歩行者端末情報保持部87を参照して他の携帯用端末装置18の送信タイミングを特定する(S54)。電力管理部82は、特定した送信タイミングと自己の送信タイミングが重複しないよう、自己の次の送信タイミングを決定し、当該送信タイミングに応じて次のスリープ期間を決定する(S56)。電力管理部82は、携帯用端末装置18の電力モードをスリープモードに移行させる(S58)。電力管理部82は、設定したスリープ期間が経過すると、電力モードをスリープモードから通常モードへ移行させる(S60)。送信部は存在信号をブロードキャスト送信する(S62)。その後、ステップS50に遷移する。ステップS50〜ステップS62までの処理が携帯用端末装置18の電源がオフされるまで(S50のN)、継続される。
図16は、実施例3に係る電力管理部82による電力モード管理を説明するためのフローチャート2である。携帯用端末装置18がオンの状態で(S50のY)、受信部は基地局装置10から送信されたパケット信号を受信する(S53)。電力管理部82は、当該パケット信号に含まれる、指定された送信タイミングに応じて、自己の次の送信タイミングを決定し、当該送信タイミングに応じて次のスリープ期間を決定する(S55)。電力管理部82は、携帯用端末装置18の電力モードをスリープモードに移行させる(S58)。電力管理部82は、設定したスリープ期間が経過すると、電力モードをスリープモードから通常モードへ移行させる(S60)。送信部は存在信号をブロードキャスト送信する(S62)。その後、ステップS50に遷移する。ステップS50〜ステップS62までの処理が携帯用端末装置18の電源がオフされるまで(S50のN)、継続される。
以上説明したように実施例3によれば、近隣に存在する複数の携帯用端末装置18の送信タイミングができるだけ重複しないように、それぞれの携帯用端末装置18が送信タイミングを調整することにより、通信トラフィックの集中を抑制できる。これにより、必要な情報が報知できなくなる状態を回避できる。送信タイミングの決定を携帯用端末装置18が自律的に行う手法は、基地局装置10が存在しないエリアでも実現でき、汎用性が高い。一方、送信タイミングの決定を基地局装置10が行う手法は高精度であり、存在信号の衝突可能性をより低減できる。
以上、本発明の実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
前述の実施例1、2において携帯用端末装置18は位置情報取得部84を備えた。この点、位置情報取得部84を備えない構成であってもよい。この場合、携帯用端末装置18の送信部が送信するパケット信号には位置情報が含まれないことになる。車載用端末装置14が搭載された車両12の運転者は、近隣の歩行者の位置は認識できないが、近隣に歩行者が存在することは認識できる。これによれば、携帯用端末装置18がGPS受信機を搭載する必要がなくなるため、携帯用端末装置18の小型化、低コスト化を図ることができる。
前述の実施例1では、動き検出部80は3軸加速度センサを用いる例を説明した。この点、ジャイロセンサ等、携帯用端末装置18の振動を検出できるセンサであれば、加速度センサに限定されない。また、加速度センサは3軸に限らず、2軸や6軸であってもよい。
前述の実施例2では、車載用端末装置14から送信されたパケット信号に含まれる車載器IDを車載器ID保持部83に登録し、電力管理部82は、車載器ID保持部83に登録された車載器IDの数または変化に応じて、存在信号の送信間隔およびスリープ期間の長さを決定した。この点、車載用端末装置14から送信されたパケット信号に車両が含まれている場合、電力管理部82は、その車速に応じて、存在信号の送信間隔およびスリープ期間の長さを決定してもよい。具体的には、車速が速いほど、存在信号の送信間隔およびスリープ期間を短くする。
前述の実施例3では、電力管理部82は、他の携帯用端末装置18の送信タイミングに対して自己の送信タイミングがずれるように、自己の送信タイミングを決定した。この点、電力管理部82は、歩行者端末情報保持部87に登録された携帯用端末装置18の数に応じて、存在信号の送信間隔およびスリープ期間の長さを決定してもよい。具体的には、携帯用端末装置18の数が多いほど、存在信号の送信間隔およびスリープ期間を長くする。近隣に存在する携帯用端末装置18の数が多いほど、存在信号が衝突する可能性が高まるが、存在信号の送信間隔を長くすることにより、衝突する可能性を低下させることができる。
前述の実施例3において携帯用端末装置18の送信部は、通常の送信電力によるパケット信号の送信に加えて、半径5〜10mを受信範囲とする小電力電波または微弱電波でパケット信号を送信する。以下、このパケット信号の送信を近距離通信と呼ぶ。タイミング特定部88は近距離通信期間を定期的に設定する。例えば1秒に1回設定する。歩行者端末情報管理部85は小電力電波または微弱電波で通信できる圏内に複数の携帯用端末装置18が存在する場合、その複数の携帯用端末装置18をグルーピングする。
グルーピングされた複数の携帯用端末装置18間では、近距離通信を用いてそのグルーブの代表の携帯用端末装置18を決定するための情報がやりとりされる。グループの代表の携帯用端末装置18は、所定期間が経過するごとに交代されることが好ましい。消費電力を均一化する趣旨である。
グループの代表の携帯用端末装置18のみが、存在信号を含むパケット信号を送信する。グループのその他の携帯用端末装置18は存在信号を送信しないため、スリープ期間を長くできる。代表の携帯用端末装置18は、その他の携帯用端末装置18から歩行者端末IDに加えてその位置情報を取得し、自己およびその他の携帯用端末装置18の位置情報を含むパケット信号を送信してもよい。
また、代表の携帯用端末装置18は、自己の位置情報を含み、その他の携帯用端末装置18の位置情報を含まないパケット信号を送信してもよい。複数の歩行者がごく狭いエリア内に存在する場合、車両の運転者にとってその人数は重要でなく、その集団の位置を把握できれば足りる。なお、グループの形成およびグループの代表の携帯用端末装置18を決定する処理を、基地局装置10が実行し、それぞれの携帯用端末装置18にその旨を通知してもよい。
前述の実施例1〜3では、車載用端末装置14が搭載される車両12として四輪車を例に説明したが、オートバイや自転車などの二輪車であってもよい。また、携帯用端末装置18を人が携帯する例を説明したが、犬や猫などの動物に身につけさせてもよい。
本発明の一態様の概要は、次の通りである。本発明のある態様の無線装置は、自己の存在を周囲に認識させるための信号を送信する送信部と、本無線装置の動きを検出する動き検出部と、本無線装置の電力を管理する電力管理部と、を備える。電力管理部は、動き検出部による検出結果に応じて、スリープを制御する。
この態様によれば、無線装置を携帯している歩行者等の動きに応じて歩行者等が比較的安全な振る舞いをしているか否か推測し、それに応じてスリープを制御することにより、交通の安全性を確保しつつ、無線装置の消費電力を低減できる。
送信部は、自己の存在を周囲に認識させるための信号を定期的に送信してもよい。電力管理部は、信号が送信される期間を少なくとも除く期間に、本無線装置をスリープ状態に制御してもよい。電力管理部は、動き検出部による検出結果から本無線装置が静止または規則的な動きをしていると判定するとき、信号の送信間隔およびスリープ時間を長くしてもよい。本無線装置が静止または規則的な動きをしていると判定するとき、信号の送信間隔およびスリープ時間を長くすることにより、歩行者等の交通安全の要請と無線装置の消費電力の要請をより最適に満たすことができる。
送信部は、自己の存在を周囲に認識させるための信号を定期的に送信してもよい。電力管理部は、信号が送信される期間を少なくとも除く期間に、本無線装置をスリープ状態に制御してもよい。電力管理部は、動き検出部による検出結果から本無線装置が不規則な動きをしていると判定するとき、信号の送信間隔およびスリープ時間を短くしてもよい。本無線装置が不規則な動きをしていると判定するとき、信号の送信間隔およびスリープ時間を短くすることにより、歩行者等の交通安全の要請と無線装置の消費電力の要請をより最適に満たすことができる。
電力管理部は、スリープ状態において、動き検出部により検出される動きの変化が設定値より大きいとき、スリープ状態を解除し、送信部に自己の存在を周囲に認識させるための信号を送信させてもよい。動きの変化が設定値より大きいとき、スリープ状態を解除することにより、歩行者等の交通安全の要請と無線装置の消費電力の要請をより最適に満たすことができる。