本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、車両に搭載された端末装置間において車車間通信を実行するとともに、交差点等に設置された基地局装置から端末装置へ路車間通信も実行する通信システムに関する。車車間通信として、端末装置は、車両の速度や位置等の情報(以下、これらを「データ」という)を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。また、他の端末装置は、パケット信号を受信するとともに、データをもとに車両の接近等を認識する。車両の接近を運転者に通知することによって、運転者に注意を促す。
車車間通信と路車間通信との干渉を低減するために、基地局装置は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定する。基地局装置は、路車間通信のために、複数のサブフレームのいずれかを選択し、選択したサブフレームの先頭部分の期間において、制御情報等が格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。制御情報には、当該基地局装置がパケット信号をブローキャスト送信するための期間(以下、「路車送信期間」という)に関する情報が含まれている。端末装置は、制御情報をもとに路車送信期間を特定し、路車送信期間以外の期間においてパケット信号を送信する。このように、路車間通信と車車間通信とが時間分割多重されるので、両者間のパケット信号の衝突確率が低減される。なお、車車間通信は、路車送信期間以外の車車間通信を実行するための期間(以下、「車車送信期間」という)においてCSMA方式にてなされる。
基地局装置からブロードキャスト送信されるパケット信号には、制御情報の他に、歩行者の存在や工事の存在が示された情報(以下、「障害物検知情報」という)が含まれる。さらに、歩行者や工事が存在している場所の位置情報(以下、「障害物位置情報」という)もパケット信号に含まれる。端末装置は、基地局装置からのパケット信号を受信すると、パケット信号から障害物検知情報と障害物位置情報とを取得する。交差点では、複数の道路が分岐されているので、走行しない道路が含まれている。このような走行しない道路における障害物検知情報は、運転者にとって不要である。障害物検知情報の数が増加するほど、不要な情報が多くなるので、運転者に対する注意喚起効果が低減される。運転者に対する注意喚起効果の低減を抑制するために、本実施例に係る端末装置は、次の処理を実行する。
端末装置は、カーナビゲーション装置に接続されており、カーナビゲーション装置において作成されたルート案内の情報(以下、「経路情報」という)を受けつける。端末装置は、経路情報をもとに交差点を越えてから走行すべき道路を推定し、推定した道路における障害物検知情報を抽出する。端末装置は、抽出した障害物検知情報を運転者に通知する。車両が交差点に接近して運転者が方向指示器を操作した場合、端末装置は、右折や左折に関する情報を受けつける。端末装置は、右折や左折に関する情報をもとに、交差点を越えてから走行すべき道路を再度推定し、障害物検知情報を再度抽出する。さらに、交差点に近づき運転者がハンドルを回転させた場合、端末装置は、ハンドル切角に関する情報やジャイロセンサにおける角速度情報を受けつける。端末装置は、ハンドル切角に関する情報やジャイロセンサにおける角速度情報をもとに、交差点を越えてから走行すべき道路を再度推定し、障害物検知情報を再度抽出する。再度抽出された障害物検知情報は、運転者に順次通知される。
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、基地局装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12h、ネットワーク202を含む。なお、各車両12には、図示しない端末装置が搭載されている。また、エリア212は、基地局装置10の周囲に形成され、エリア外214は、エリア212の外側に形成されている。
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12dが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。さらに、道路の一部が工事中であり、歩行者が道路を横断している。
通信システム100は、交差点に基地局装置10を配置する。基地局装置10は、端末装置間の通信を制御する。基地局装置10は、図示しないGPS衛星から受信した信号や、図示しない他の基地局装置10にて形成されたフレームをもとに、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し生成する。ここで、各サブフレームの先頭部分に路車送信期間が設定可能であるような規定がなされている。基地局装置10は、複数のサブフレームのうち、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレームを選択する。基地局装置10は、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。基地局装置10は、設定した路車送信期間においてパケット信号を報知する。パケット信号に含まれるべきデータとして、複数種類のデータが想定される。ひとつが、制御情報であり、別のひとつが、障害物検知情報と障害物位置情報である。なお、基地局装置10は、障害物検知情報を内部で生成したり、外部から受けつけたりするが、これについては後述する。
端末装置は、エンジンにて駆動される車両12に搭載される。端末装置は、受信したパケット信号に含まれた制御情報をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の端末装置のそれぞれにおいて生成されるフレームは、基地局装置10において生成されるフレームに同期する。また、端末装置は、車車送信期間において、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。端末装置は、例えば、存在位置に関する情報をパケット信号に格納する。また、端末装置は、制御情報もパケット信号に格納する。つまり、基地局装置10から送信された制御情報は、端末装置によって転送される。一方、基地局装置10からのパケット信号を受信できない端末装置、つまりエリア外214に存在する端末装置は、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。さらに、端末装置は、他の端末装置からのパケット信号を受信することによって、他の端末装置が搭載された車両の接近を運転者へ通知する。
また、端末装置は、基地局装置10からのパケット信号に含まれた障害物検知情報と障害物位置情報を取得する。なお、ひとつのパケット信号に複数の障害物検知情報が含まれていることもある。端末装置は、交差点に近づくにつれて、車両12に備えられたナビゲーション装置からの経路情報、方向指示器による右折や左折に関する情報、ハンドル切角に関する情報やジャイロセンサにおける角速度情報を順次受けつける。端末装置は、受けつけた情報をもとに、交差点を越えてから走行すべき道路を繰り返し推定する。端末装置は、推定した道路に対応した障害物検知情報を抽出し、抽出した障害物検知情報を運転者へ通知する。
図2は、基地局装置10の構成を示す。基地局装置10は、アンテナ20、RF部22、変復調部24、処理部26、監視部28、制御部30、ネットワーク通信部34を含む。処理部26は、フレーム規定部40、選択部42、生成部46、記憶部48を含む。監視部28は、交差点において分岐している各道路における歩行者の存在や工事の存在を監視する。なお、歩行者や工事とは異なった障害物が監視されてもよい。具体的に説明すると、監視部28は、交差点において分岐している各道路を撮像するように複数の撮像装置を備える。例えば、図1のような交差点の場合、4つの道路に分岐されているので、各道路に対応づけられながら、4つの撮像装置が備えられている。
各撮像装置において撮像された画像をもとに、監視部28は、歩行者、障害物、工事(以下、「障害物」と総称する)の存在を検出する。歩行者、障害物、工事の存在の検出には、公知の画像処理が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。なお、画像は、動画像であってもよいし、静止画像であってもよい。監視部28は、いずれかの画像において障害物の存在を検出した場合、障害物検知情報を生成するとともに、それに対応した障害物位置情報も生成する。障害物検知情報では、障害物の種類が示されている。また、ひとつの撮像装置に対してひとつの障害物位置情報が予め固定的に付与されており、障害物位置情報は、検出した画像を撮像した撮像装置から特定される。複数の撮像装置において撮像された画像のそれぞれから障害物が検出された場合、監視部28は、複数の障害物検知情報と複数の障害物位置情報とを生成する。監視部28は、障害物検知情報と障害物位置情報とを処理部26へ出力する。
RF部22は、受信処理として、図示しない端末装置や他の基地局装置10からのパケット信号をアンテナ20にて受信する。RF部22は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、ベースバンドのパケット信号を変復調部24に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。RF部22には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。
RF部22は、送信処理として、変復調部24から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、路車送信期間において、無線周波数のパケット信号をアンテナ20から送信する。また、RF部22には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。
変復調部24は、受信処理として、RF部22からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。さらに、変復調部24は、復調した結果を処理部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、処理部26からのデータに対して、変調を実行する。さらに、変復調部24は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部22に出力する。ここで、通信システム100は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式に対応するので、変復調部24は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
フレーム規定部40は、図示しないGPS衛星からの信号を受信し、受信した信号をもとに時刻の情報を取得する。なお、時刻の情報の取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。フレーム規定部40は、時刻の情報をもとに、複数のフレームを生成する。例えば、フレーム規定部40は、時刻の情報にて示されたタイミングを基準にして、「1sec」の期間を10分割することによって、「100msec」のフレームを10個生成する。このような処理を繰り返すことによって、フレームが繰り返されるように規定される。なお、フレーム規定部40は、復調結果から制御情報を検出し、検出した制御情報をもとにフレームを生成してもよい。このような処理は、他の基地局装置10によって形成されたフレームのタイミングに同期したフレームを生成することに相当する。図3(a)−(d)は、通信システム100において規定されるフレームのフォーマットを示す。図3(a)は、フレームの構成を示す。フレームは、第1サブフレームから第Nサブフレームと示されるN個のサブフレームによって形成されている。例えば、フレームの長さが100msecであり、Nが8である場合、12.5msecの長さのサブフレームが規定される。図3(b)−(d)の説明は、後述し、図2に戻る。
選択部42は、フレームに含まれた複数のサブフレームのうち、路車送信期間を設定すべきサブフレームを選択する。具体的に説明すると、選択部42は、フレーム規定部40にて規定されたフレームを受けつける。選択部42は、RF部22、変復調部24を介して、図示しない他の基地局装置10あるいは端末装置からの復調結果を入力する。選択部42は、入力した復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する。選択部42は、復調結果を受けつけたサブフレームを特定することによって、復調結果を受けつけていないサブフレームを特定する。これは、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレーム、つまり未使用のサブフレームを特定することに相当する。未使用のサブフレームが複数存在する場合、選択部42は、ランダムにひとつのサブフレームを選択する。未使用のサブフレームが存在しない場合、つまり複数のサブフレームのそれぞれが使用されている場合に、選択部42は、復調結果に対応した受信電力を取得し、受信電力の小さいサブフレームを優先的に選択する。
図3(b)は、第1基地局装置10aによって生成されるフレームの構成を示す。第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第1基地局装置10aは、第1サブフレームにおいて路車送信期間につづいて車車送信期間を設定する。車車送信期間とは、端末装置がパケット信号を報知可能な期間である。つまり、第1サブフレームの先頭期間である路車送信期間において第1基地局装置10aはパケット信号を報知可能であり、かつフレームのうち、路車送信期間以外の車車送信期間において端末装置がパケット信号を報知可能であるような規定がなされる。さらに、第1基地局装置10aは、第2サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間のみを設定する。
図3(c)は、第2基地局装置10bによって生成されるフレームの構成を示す。第2基地局装置10bは、第2サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第2基地局装置10bは、第2サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第3サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。図3(d)は、第3基地局装置10cによって生成されるフレームの構成を示す。第3基地局装置10cは、第3サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第3基地局装置10cは、第3サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第2サブフレーム、第4サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。このように、複数の基地局装置10は、互いに異なったサブフレームを選択し、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。図2に戻る。選択部42は、選択したサブフレームの番号を生成部46へ出力する。
生成部46は、選択部42から受けつけたサブフレーム番号のサブフレームに路車送信期間を設定し、路車送信期間において報知すべきRSUパケット信号を生成する。なお、以下の説明において、RSUパケット信号とパケット信号とは区別せずに使用される。図4(a)−(b)は、サブフレームの構成を示す。図4(a)は、路車送信期間が設定されたサブフレームを示す。図示のごとく、ひとつのサブフレームは、路車送信期間、車車送信期間の順に構成される。図4(b)は、路車送信期間におけるパケット信号の配置を示す。図示のごとく、路車送信期間において、複数のRSUパケット信号が並べられている。ここで、前後のパケット信号は、SIFS(Short Interframe Space)だけ離れている。
ここでは、RSUパケット信号の構成を説明する。図5(a)−(b)は、通信システム100において規定されるパケット信号に格納されるMACフレームのフォーマットを示す。図5(a)は、MACフレームのフォーマットを示す。MACフレームは、先頭から順に、「MACヘッダ」、「LLCヘッダ」、「メッセージヘッダ」、「データペイロード」、「FCS」を配置する。データペイロードに含まれる情報については、後述する。図5(b)は、生成部46によって生成されるメッセージヘッダの構成を示す図である。メッセージヘッダには、基本部分が含まれている。
基本部分は、「プロトコルバージョン」、「送信ノード種別」、「再利用回数」、「TSFタイマ」、「RSU送信期間長」を含む。プロトコルバージョンは、対応しているプロトコルのバージョンを示す。送信ノード種別は、MACフレームが含まれたパケット信号の送信元を示す。例えば、「0」は端末装置を示し、「1」は基地局装置10を示す。選択部42が、入力した復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する場合に、選択部42は、送信ノード種別の値を利用する。再利用回数は、メッセージヘッダが端末装置によって転送される場合の有効性の指標を示し、TSFタイマは、送信時刻を示す。RSU送信期間長は、路車送信期間の長さを示しており、路車送信期間に関する情報といえる。図2に戻る。
ネットワーク通信部34は、図示しないネットワーク202に接続される。ネットワーク通信部34は、ネットワーク202から、障害物検知情報と障害物位置情報を受けつける。記憶部48は、監視部28からの障害物検知情報と障害物位置情報を記憶するとともに、ネットワーク通信部34からの障害物検知情報と障害物位置情報も記憶する。生成部46は、記憶部48から、障害物検知情報と障害物位置情報を取得し、データペイロードに格納することによって、前述のRSUパケット信号を生成する。なお、基地局装置10が設置された交差点の位置情報(以下、「交差点位置情報」という)もデータペイロードに含まれる。交差点位置情報は、基地局装置10の位置情報ともいえる。制御部30は、基地局装置10全体の処理を制御する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図6は、車両12に搭載された端末装置14の構成を示す。端末装置14は、アンテナ50、RF部52、変復調部54、処理部56、制御部58を含む。処理部56は、生成部64、タイミング特定部60、転送決定部90、通知部70、取得部72、抽出部74、受付部76、選択部78、推定部80を含む。また、タイミング特定部60は、抽出部66、キャリアセンス部94を含む。アンテナ50、RF部52、変復調部54は、図2のアンテナ20、RF部22、変復調部24と同様の処理を実行する。そのため、ここでは、差異を中心に説明する。
変復調部54、処理部56は、図示しない他の端末装置14や基地局装置10からのパケット信号を受信する。なお、前述のごとく、変復調部54、処理部56は、路車送信期間において、基地局装置10からのパケット信号を受信する。前述のごとく、変復調部54、処理部56は、車車送信期間において、他の端末装置14からのパケット信号を受信する。
抽出部66は、変復調部54からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。その際、抽出部66は、図1のエリア212内に存在すると推定する。抽出部66は、サブフレームのタイミングと、パケット信号のメッセージヘッダの内容、具体的には、RSU送信期間長の内容をもとに、フレームを生成する。なお、フレームの生成は、前述のフレーム規定部40と同様になされればよいので、ここでは説明を省略する。その結果、抽出部66は、基地局装置10において形成されたフレームに同期したフレームを生成する。
一方、抽出部66は、RSUパケット信号を受信していない場合、図1のエリア外214に存在すると推定する。抽出部66は、エリア212に存在していることを推定した場合、車車送信期間を選択する。抽出部66は、エリア外214に存在していることを推定すると、フレームの構成と無関係のタイミングを選択する。抽出部66は、車車送信期間を選択した場合、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報をキャリアセンス部94へ出力する。抽出部66は、フレームの構成と無関係のタイミングを選択すると、キャリアセンスの実行をキャリアセンス部94に指示する。
キャリアセンス部94は、抽出部66から、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報を受けつける。キャリアセンス部94は、車車送信期間において、キャリアセンスを実行することによって、干渉電力を測定する。また、キャリアセンス部94は、干渉電力をもとに、車車送信期間における送信タイミングを決定する。具体的に説明すると、キャリアセンス部94は、所定のしきい値を予め記憶しており、干渉電力としきい値とを比較する。干渉電力がしきい値よりも小さければ、キャリアセンス部94は、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部94は、抽出部66から、キャリアセンスの実行を指示された場合、フレームの構成を考慮せずに、CSMAを実行することによって、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部94は、決定した送信タイミングを生成部64へ通知する。
取得部72は、図示しないGPS受信機、ジャイロセンサ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、図示しない車両12、つまり端末装置14が搭載された車両12の存在位置、進行方向、移動速度等(以下、「位置情報」と総称する)を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。取得部72は、位置情報を生成部64へ出力する。
転送決定部90は、メッセージヘッダの転送を制御する。転送決定部90は、パケット信号からメッセージヘッダを抽出する。パケット信号が基地局装置10から直接送信されている場合には、再利用回数が「0」に設定されているが、パケット信号が他の端末装置14から送信されている場合には、再利用回数が「1以上」の値に設定されている。転送決定部90は、抽出したメッセージヘッダから、転送すべきメッセージヘッダを選択する。ここでは、例えば、再利用回数が最も小さいメッセージヘッダが選択される。また、転送決定部90は、複数のメッセージヘッダに含まれた内容を合成することによって新たなメッセージヘッダを生成してもよい。転送決定部90は、選択対象のメッセージヘッダを生成部64へ出力する。その際、転送決定部90は、再利用回数を「1」増加させる。
生成部64は、取得部72から位置情報を受けつけ、転送決定部90からメッセージヘッダを受けつける。生成部64は、図5(a)−(b)に示されたMACフレームを使用し、位置情報をデータペイロードに格納する。生成部64は、MACフレームが含まれたパケット信号を生成するとともに、キャリアセンス部94において決定した送信タイミングにて、変復調部54、RF部52、アンテナ50を介して、生成したパケット信号をブロードキャスト送信する。なお、送信タイミングは、車車送信期間に含まれている。
通知部70は、路車送信期間において、図示しない基地局装置10からのパケット信号を取得するとともに、車車送信期間において、図示しない他の端末装置14からのパケット信号を取得する。通知部70は、取得したパケット信号に対する処理として、パケット信号に格納されたデータの内容に応じて、図示しない他の車両12の接近等を運転者へモニタやスピーカを介して通知する。
ここまでは、路車間通信による端末装置14でのタイミング同期処理、車車間通信による警告処理を説明したが、以下では、路車間通信による警告処理を説明する。取得部72は、変復調部54からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、障害物検知情報、障害物位置情報、交差点位置情報を取得する。なお、これらの情報が複数取得されてもよい。取得部72は、取得した障害物検知情報、障害物位置情報、交差点位置情報を抽出部74へ出力する。
受付部76は、図示しない複数の外部装置であって、かつ車両12に搭載された外部装置に接続される。ここで、車両12には、端末装置14も搭載されている。複数の外部装置のひとつがナビゲーション装置であり、受付部76は、ナビゲーション装置から経路情報を受けつける。また、複数の外部装置の別のひとつが、方向指示器であり、受付部76は、方向指示器から右折や左折に関する情報を受けつける。さらに、複数の外部装置の別のひとつが、ハンドル切角センサやジャイロセンサであり、受付部76は、これらからハンドル切角に関する情報や角速度情報を受けつける。このような経路情報、右折や左折に関する情報、ハンドル切角に関する情報、角速度情報は、進行方向に関する情報といえる。受付部76は、進行方向に関する情報を選択部78へ出力する。その際、受付部76は、進行方向に関する情報の供給元になる外部装置に関する情報(以下、「外部装置情報」という)も選択部78へ出力する。
選択部78は、受付部76から、進行方向に関する情報を受けつけ、受けつけた情報のうちのいずれかを選択する。また、選択部78は、受付部76から、外部装置情報も受けつける。ここで、選択部78は、複数の外部装置のそれぞれに対して付与された優先度をもとに、いずれかの情報を選択する。ここでは、例えば、優先度が高い方から低い方への順に、(1)ハンドル切角センサやジャイロセンサ、(2)方向指示器、(3)ナビゲーション装置と規定されている。これは、右折や左折を検出する精度の高い装置に対して、優先度を高くしているといえる。具体的に説明すると、ハンドル切角センサやジャイロセンサでは、車両12の回転を検出するので、右折や左折を高精度に検出できる。一方、これらは、交差点に進入した後のタイミングで検出を実行する。
また、方向指示器は、一般的に、右折や左折を予告するために使用されるが、使用されないおそれもある。そのため、これは、ハンドル切角センサやジャイロセンサよりも低い精度で右折や左折を検出できる。一方、これは、交差点に進入する前のタイミングで検出を実行する。さらに、ナビゲーション装置は、現在地と目的地とが設定されたタイミングで検出を実行する。経路情報にしたがって運転がなされないこともあるので、これの検出精度は、方向指示器よりも低くなる。これらをまとめると、優先度が低い外部装置ほど、検出タイミングが早いともいえる。
図7は、選択部78に記憶されるテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、外部装置欄220、優先度欄222が含まれる。外部装置欄220には、受付部76において情報を受けつけるべき外部装置の名称が示されている。優先度欄222には、各外部装置に付与した優先度が示されている。選択部78は、取得部72において取得した位置情報をもとに、交差点への接近を検出すると、進行方向に関する情報と外部装置情報との組合せを受けつけるごとに、図7のテーブルを参照する。
さらに選択部78は、現在選択している外部装置情報と同一の優先度あるいは高い優先度の外部装置情報を受けつけた場合に、そのときの進行方向に関する情報を選択する。一方、現在選択している外部装置情報よりも低い優先度の外部装置情報を受けつけた場合に、選択部78は、そのときの進行方向に関する情報を選択しない。図6に戻る。選択部78は、選択した進行方向に関する情報と外部装置情報との組合せを推定部80へ出力する。また、選択部78は、交差点を通過してから所定距離を経過した後に、選択をリセットする。
推定部80は、選択部78から、進行方向に関する情報と外部装置情報との組合せを受けつける。推定部80は、取得部72において取得した位置情報と、受けつけた情報とをもとに、交差点を通過してからの進行方向を推定する。図8は、端末装置14による進行方向の推定処理の概要を示す。ここでは、道路の左側から右側へ向かって、図示しない車両12が走行している場合を想定する。図示したポイントP1において、選択部78が、ナビゲーション装置からの経路情報「直進」を選択している場合に、推定部80は、交差点を通過してから直進方向に走行することを推定する。
車両12が走行して、図示したポイントP2において、選択部78が、方向指示器からの「左折」を選択している場合に、推定部80は、交差点を通過してから左折方向に走行することを推定する。さらに車両12が走行して、図示したポイントP3において、選択部78が、ハンドル切り角センサからの「左への回転」を選択している場合に、推定部80は、交差点を通過してから左折方向に走行することを継続して推定する。図6に戻る。推定部80は、推定した進行方向(以下、「進行方向情報」という)を推定部80へ出力する。
抽出部74は、取得部72から、取得した障害物検知情報、障害物位置情報、交差点位置情報を受けつけるとともに、推定部80から、進行方向情報を受けつける。抽出部74は、障害物検知情報、障害物位置情報、交差点位置情報をもとに、障害物検知情報がどの道路に対応するかを推定する。そのために、例えば、抽出部74は、障害物位置情報にて示された緯度・経度と、交差点位置情報にて示された緯度・経度との間でベクトル演算を実行することによって、交差点から分岐する道路のうち、障害物が存在しうる道路を推定する。また、抽出部74は、進行方向情報をもとに、交差点から分岐する道路のうち、走行しうる道路を推定する。その後、抽出部74は、障害物が存在しうる道路のうち、走行しうる道路を抽出し、抽出した道路に対応した障害物検知情報を特定する。これは、パケット信号に含まれた位置情報と、推定部80において推定した進行方向とをもとに、進行に影響を与えうる障害物検知情報を抽出することに相当する。抽出部74は、抽出した障害物検知情報、障害物位置情報を通知部70へ出力する。
通知部70は、抽出部において抽出した障害物検知情報、障害物位置情報を運転者に通知する。例えば、車両12に搭載されたナビゲーション装置に地図情報が表示されている場合、通知部70は、地図上に障害物の存在を表示させる。また、通知部70は、障害物の存在をスピーカから出力してもよい。制御部58は、端末装置14全体の動作を制御する。
本発明の実施例によれば、交差点を通過した後に進行しうる道路を推定し、推定した道路における障害物の情報のみを抽出するので、不要な障害物の情報を除外できる。また、不要な障害物の情報が除外されるので、通知すべき障害物の情報量を抑制できる。また、通知すべき障害物の情報量が抑制されるので、運転者に対して効率的に注意を喚起できる。また、推定した道路における障害物の情報のみを抽出するので、進行方向に応じた障害物の情報を通知できる。
また、他の基地局装置から直接受信したパケット信号だけではなく、端末装置から受信したパケット信号をもとに、他の基地局装置によって使用されているサブフレームを特定するので、使用中のサブフレームの特定精度を向上できる。また、使用中のサブフレームの特定精度が向上するので、基地局装置から送信されるパケット信号間の衝突確率を低減できる。また、基地局装置から送信されるパケット信号間の衝突確率が低減されるので、端末装置が制御情報を正確に認識できる。また、制御情報が正確に認識されるので、路車送信期間を正確に認識できる。また、路車送信期間が正確に認識されるので、パケット信号の衝突確率を低減できる。
また、使用中のサブフレーム以外を優先的に使用するので、他の基地局装置からのパケット信号と重複したタイミングで、パケット信号を送信する可能性を低減できる。また、いずれのサブフレームも他の基地局装置によって使用されている場合に、受信電力の低いサブフレームを選択するので、パケット信号の干渉の影響を抑制できる。また、端末装置によって中継された制御情報の送信元になる他の基地局装置からの受信電力として、当該端末装置の受信電力を使用するので、受信電力の推定処理を簡易にできる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、受付部76は、外部装置として、ナビゲーション装置等に接続される。しかしながらこれに限らず例えば、車両12の進行方向を推定可能な情報を出力できれば、他の外部装置であってもよい。その際、車両12の進行方向を推定可能な情報の精度に応じて、当該他の外部装置に優先度が付与される。本変形例によれば、さまざまな外部装置を使用できる。
本発明の実施例において、外部装置には優先度が付与されており、選択部78は、優先度に応じて情報を選択する。しかしながらこれに限らず、優先度が付与されていなくてもよい。その際、選択部78は、受けつけた情報をすべて選択してもよい。本変形例によれば、選択処理を省略できる。
本発明の変形例において、基地局装置10からブロードキャスト送信されるパケット信号に、障害物検知情報と障害物位置情報とが格納される。しかしながらこれに限らず、障害物検知情報と障害物位置情報とが、端末装置14からブロードキャスト送信されるパケット信号に格納されてもよい。その際、端末装置14は、例えば、車両12に搭載されずに、歩行者に携帯される。ここで、歩行者の一例は、子ども、老人、身体障害者である。その際、端末装置14は、取得部72において取得した位置情報を障害物位置情報に設定する。また、端末装置14は、自らの存在を障害物検知情報とするので、定常的に障害物検知情報を出力する。なお、端末装置14は、高さ情報をパケット信号に格納してもよい。その際、受信側の端末装置14は、高さ情報によって歩道橋上に存在することを検出した場合、障害物検知情報を抽出しない。本変形例によれば、交通事故によって被害者になる可能性の高い歩行者から障害物検知情報を送信するので、歩行者の安全性を向上できる。