JPWO2013065582A1 - 有機半導体素子の製造方法、有機半導体素子、有機単結晶薄膜の成長方法、有機単結晶薄膜、電子機器および有機単結晶薄膜群 - Google Patents

有機半導体素子の製造方法、有機半導体素子、有機単結晶薄膜の成長方法、有機単結晶薄膜、電子機器および有機単結晶薄膜群 Download PDF

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Abstract

有機半導体単結晶薄膜などの有機単結晶薄膜の位置、大きさ、結晶方位などを制御することができる有機単結晶薄膜の成長方法を提供する。成長制御領域(P1)およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域(P2)を一主面に有する基板11の成長制御領域および核形成制御領域に、有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する。この有機溶液の溶媒を蒸発させることにより、有機化合物からなる有機半導体単結晶薄膜を成長させる。

Description

本開示は、有機半導体素子の製造方法、有機半導体素子、有機単結晶薄膜の成長方法、有機単結晶薄膜、電子機器および有機単結晶薄膜群に関する。
近年、有機半導体結晶薄膜を用いた有機半導体素子の研究開発が盛んに行われている。この有機半導体素子においては、有機半導体結晶薄膜の位置、大きさ、結晶方位などを制御することが重要である。
従来、有機半導体結晶薄膜の成長方法として、次のような方法が提案されている(非特許文献1参照)。すなわち、表面にSiO2膜が形成された不純物ドープシリコン基板上に堰となるシリコン小片を設ける。このシリコン基板を水平面に対して傾斜させた状態で、シリコン小片の下側のエッジに [1] Benzothieno[3,2-b]benzothiophene 誘導体(C8−BTBT)を含む原料溶液からなる液滴を保持する。そして、この液滴を乾燥させることにより、液滴の下側から上側に向かってシリコン基板上にC8−BTBTからなる有機半導体結晶薄膜が成長する。この有機半導体結晶薄膜では、高い電子移動度(5cm2/Vs)が得られたと報告されている。
特開2010−6794号公報
T. Uemura, Y. Hirose, M. Uno, K. Takimiya and J. Takeya: Applied Physics Express 2(2009)111501 N. Kobayashi, M. Sasaki and K. Nomoto: Chem. Mater. 21(2009)552
しかしながら、非特許文献1に提案された従来の有機半導体結晶薄膜の成長方法では、位置、大きさ、結晶方位ともに制御することができないという欠点があった。
そこで、本開示が解決しようとする課題は、有機半導体単結晶薄膜などの各種の有機単結晶薄膜の位置、大きさ、結晶方位などを制御することができる有機単結晶薄膜の成長方法および有機単結晶薄膜を提供することである。
本開示が解決しようとする他の課題は、上記の有機単結晶薄膜の成長方法を用いた有機半導体素子の製造方法およびこの成長方法により成長された有機半導体単結晶薄膜を用いた有機半導体素子を提供することである。
本開示が解決しようとするさらに他の課題は、上記の有機半導体素子を用いた電子機器を提供することである。
本開示が解決しようとするさらに他の課題は、有機半導体単結晶薄膜などの各種の有機単結晶薄膜の結晶方位が揃っている有機単結晶薄膜群を提供することである。
上記課題を解決するために、本開示は、
成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記有機化合物からなる有機半導体単結晶薄膜を成長させる工程、
とを有する有機半導体素子の製造方法である。
また、本開示は、
成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記有機化合物からなる有機半導体単結晶薄膜を成長させる工程、
とを実行することにより製造される有機半導体素子である。
また、本開示は、
成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記有機化合物からなる有機半導体単結晶薄膜を成長させる工程、
とを実行することにより製造される有機半導体素子を有する電子機器である。
上記の有機半導体素子の製造方法、有機半導体素子および電子機器においては、典型的には、有機溶液の溶媒を蒸発させることにより、成長制御領域(あるいは成長領域)では有機溶液の状態が有機溶液の溶解度−過溶解度図の溶解度曲線と過溶解度曲線との間の準安定領域にあり、核形成制御領域(あるいは結晶核形成領域)では有機溶液の状態が溶解度−過溶解度図の過溶解度曲線の下側の不安定領域にあるようにする。すなわち、成長制御領域および核形成制御領域への供給直後の有機溶液は溶解度−過溶解度図の溶解度曲線より上側の安定領域にあるが、有機溶液の溶媒が蒸発する過程で、成長制御領域では有機溶液の状態が溶解度曲線と過溶解度曲線との間の準安定領域にあり、核形成制御領域では有機溶液の状態が過溶解度曲線の下側の不安定領域にあるようにする。この状態は、核形成制御領域の面積を成長制御領域の面積に比べて十分に小さく選ぶことにより、容易に実現することができる。すなわち、核形成制御領域に蓄えられる有機溶液の量は、成長制御領域に蓄えられる有機溶液の量に比べて十分に小さいので、核形成制御領域に蓄えられる有機溶液からの溶媒の蒸発速度は、成長制御領域に蓄えられる有機溶液の溶媒の蒸発速度に比べて十分に速い。このため、核形成制御領域では、溶媒の速い蒸発により濃度が増加して有機溶液の状態が不安定領域に入り、一方、これと同時に、成長制御領域では、溶媒の蒸発が遅いことにより濃度の増加が遅く有機溶液の状態が準安定領域に入るようにすることができる。この場合、有機溶液の状態が不安定領域にある核形成制御領域においてのみ有機溶液から核形成を起こさせることができる。このとき、核形成制御領域においては有機溶液中に有機化合物の結晶核が多数形成される。最終的には核形成制御領域において有機溶液からの核形成により形成された結晶核から成長した唯一つの結晶により核形成制御領域が塞がれる。そして、この結晶から成長制御領域上に結晶が成長することにより、シングルドメインの結晶(単結晶)が成長する。こうして、有機半導体単結晶薄膜が成長制御領域上に成長する。この場合、典型的には、有機溶液を一定温度、例えば15゜C以上20゜C以下の一定温度に保持するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
一般的には、有機溶液の温度が低い方が溶媒の蒸発が抑制されるため、結晶に溶質分子、すなわち有機化合物の分子が十分に供給される傾向がある。また、有機溶液の温度が低い方が溶媒の蒸発が抑制されることにより、有機溶液の表面の過飽和度が上がりにくく、横方向成長が抑制され、それによって膜厚方向に成長が進むことから、有機半導体単結晶薄膜の膜厚が大きくなる傾向がある。
成長制御領域および核形成制御領域は、好適には、親液性の表面を有し、さらに好適には、成長制御領域および核形成制御領域の周囲の基体の表面は疎液性の表面を有する。こうすることで、成長制御領域および核形成制御領域に有機溶液を供給した場合、有機溶液をこれらの成長制御領域および核形成制御領域上にのみ確実に留めることができる。
核形成制御領域は、典型的には、成長制御領域と連結され、かつ成長制御領域の上記の一辺に対して90°±10°傾斜した直線状の第1の部分を有し、あるいはさらに、第1の部分と連結され、かつ上記の一辺に対して傾斜した直線状の第2の部分を有する。あるいは、核形成制御領域は、成長制御領域と連結され、かつ上記の一辺上に第1の辺を有する三角形状の第3の部分およびこの第3の部分と連結され、かつ上記の一辺に対して傾斜した直線状の第4の部分を有する。第1の部分は、成長制御領域の一辺に対して好適には90°±5°、より好適には90°±2°、最も好適には90°±1°傾斜している。第2の部分は、成長制御領域の一辺に対して、0°以上(あるいは0°よりも大きく)90°未満、例えば25°以上65°以下、好適には30°以上60°以下傾斜しているが、これに限定されるものではない。第4の部分は、成長制御領域の一辺に対して、0°以上(あるいは0°よりも大きく)90°以下、例えば25°以上65°以下、好適には30°以上60°以下傾斜しているが、これに限定されるものではない。第3の部分の第2の辺と第3の辺との間の角度は、例えば、有機半導体単結晶薄膜の結晶構造で決まる多角形の角度に選ばれる。第1の部分、第2の部分および第4の部分の幅は、一般的には0.1μm以上50μm以下、好適には1μm以上50μm以下、より好適には1μm以上30μm以下、さらに好適には1μm以上20μm以下あるいは1μm以上10μm以下であるが、これに限定されるものではない。成長制御領域の形状は必要に応じて選ばれるが、典型的には、長方形または正方形の形状である。
典型的には、成長制御領域の大きさは核形成制御領域の大きさに比べて十分に大きく選ばれる。例えば、成長制御領域は、典型的には、例えば、上記の一辺の長さが1000μm以上10000μm以下、他の一辺の長さが100μm以上800μm以下の長方形の形状を有し、核形成制御領域に比べて十分に大きい。典型的な一つの例では、成長制御領域は長方形であり、核形成制御領域の第1の部分は成長制御領域の一つの長辺にこの長辺に垂直に設けられた上記成長制御領域よりも小さい長方形である。
有機半導体単結晶薄膜は、典型的な一つの例では、基体の一主面に対してほぼ平行な方向にπ電子スタック構造を有する。有機半導体単結晶薄膜は、例えば、三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系または正方晶系の結晶構造を有し、a軸方向またはb軸方向に上記のπ電子スタック構造を有する。この場合、有機半導体単結晶薄膜のa軸およびb軸は基体の一主面にほぼ平行である。有機半導体単結晶薄膜は、典型的には、その{110}面が上記の第1の部分、第2の部分、第3の部分の第1の辺以外の一辺または第4の部分に平行になるように成長する。また、有機半導体単結晶薄膜は、典型的には、頂角が82°の第1の頂点および頂角が98°の第2の頂点を有する四角形または五角形の形状を有する。第3の部分の第2の辺および第3の辺は、例えば、有機半導体単結晶薄膜の{110}面に平行である。
成長制御領域の一辺には、核形成制御領域が一つだけ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。また、成長制御領域は、基体の一主面に一つだけ設けられていてもよいし、互いに離れて複数設けられてもよい。成長制御領域が互いに離れて複数設けられる場合、好適には、これらの成長制御領域のうちの少なくとも二つの成長制御領域は互いに対向して設けられ、これらの二つの成長制御領域の互いに対向する辺にそれぞれ、複数の核形成制御領域が互いに重ならないように設けられる。
有機化合物としては、従来公知の各種のものを用いることができるが、例えば次のようなものを用いることができる。
(1)ポリピロールおよびその誘導体
(2)ポリチオフェンおよびその誘導体
(3)ポリイソチアナフテンなどのイソチアナフテン類
(4)ポリチェニレンビニレンなどのチェニレンビニレン類
(5)ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類
(6)ポリアニリンおよびその誘導体
(7)ポリアセチレン類
(8)ポリジアセチレン類
(9)ポリアズレン類
(10)ポリピレン類
(11)ポリカルバゾール類
(12)ポリセレノフェン類
(13)ポリフラン類
(14)ポリ(p−フェニレン)類
(15)ポリインドール類
(16)ポリピリダジン類
(17)ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、サーカムアントラセンなどのアセン類
(18)アセン類のうちの炭素の一部が窒素、硫黄、酸素などの原子あるいはカルボニル基などの官能基により置換された誘導体、例えば、トリフェノジオキサジン、トリフェノジアジン、ヘキサセン−6,15−キノンなど
(19)ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィドなどの高分子材料および多環縮合体
(20)(19)の高分子材料と同じ繰り返し単位を有するオリゴマー類
(21)金属フタロシアニン類
(22)テトラチアフルバレンおよびその誘導体
(23)テトラチアペンタレンおよびその誘導体
(24)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)およびN,N’−ジオクチルナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体
(25)ナフタレン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類
(26)アントラセン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類に代表される縮合環テトラカルボン酸ジイミド類
(27)メロシアニン色素類またはヘミシアニン色素類などの色素
有機化合物としては、好適には、芳香族化合物またはその誘導体が用いられる。芳香族化合物は、ベンゼン系芳香族化合物、複素芳香族化合物、非ベンゼン系ベンゼン系芳香族化合物に分類される。ベンゼン系芳香族化合物は、縮合環芳香族化合物、例えば、ベンゾ縮合環化合物などである。複素芳香族化合物は、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾールなどである。非ベンゼン系芳香族化合物は、例えば、アヌレン、アズレン、シクロペンタジエニルアニオン、シクロヘプタトリエニルカチオン(トロピリウムイオン)、トロポン、メタロセン、アセプレイアジレンなどである。
上記の芳香族化合物の中でも、好適には、縮合環化合物が用いられる。縮合環化合物としては、アセン類(ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセンなど)、フェナントレン、クリセン、トリフェニレン、テトラフェン、ピレン、ピセン、ペンタフェン、ペリレン、ヘリセン、コロネンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。芳香族化合物としては、好適には、6,12−ジオキサアンタントレン(いわゆるペリキサンテノキサンテン、6,12-dioxaanthanthreneであり、「PXX」と略称される場合もある)などのジオキサアンタントレン系化合物も用いられる(非特許文献2および特許文献1参照)。
有機半導体素子は、有機半導体単結晶薄膜を用いるものである限り、基本的にはどのようなものであってもよいが、例えば、有機トランジスタ、有機光電変換素子などである。有機半導体素子に用いる有機半導体単結晶薄膜は一層であってもよいし、二層以上であってもよく、二層以上の有機半導体単結晶薄膜は同種のものであっても異種のものであってもよい。有機トランジスタでは、有機半導体単結晶薄膜は、例えば、チャネルが形成される半導体層である。有機光電変換素子では、有機半導体単結晶薄膜は、有機光電変換層である。例えば、有機トランジスタでは、電子が走行する方向が有機半導体単結晶薄膜のキャリアの移動度が高い方向になるように有機半導体単結晶薄膜の結晶方位を設定することにより、高移動度の有機トランジスタを実現することができる。また、有機光電変換素子では、有機半導体単結晶薄膜の結晶方位を偏光軸の方向に設定することにより、偏光に対する感応性が高い偏光有機光電変換素子を実現することができる。偏光有機光電変換素子は、例えば、偏光有機撮像装置や測距機能素子などとして用いることができる。
電子機器は、有機半導体素子などの電子素子を一つまたは二つ以上用いる各種の電子機器であってよく、携帯型のものと据え置き型のものとの双方を含み、機能や用途も問わない。電子機器の具体例を挙げると、液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイなどのディスプレイ、携帯電話、モバイル機器、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、車載機器、家庭電気製品、工業製品などである。また、偏光有機光電変換素子は、偏光を利用する各種の電子機器、例えば、偏光有機光電変換素子からなる偏光有機撮像装置を用いる3次元カメラなどである。
また、本開示は、
成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記有機化合物からなる有機単結晶薄膜を成長させる工程、
とを有する有機単結晶薄膜の成長方法である。
また、本開示は、
成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記有機化合物からなる有機単結晶薄膜を成長させる工程、
とを実行することにより成長される有機単結晶薄膜である。
また、本開示は、
成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記核形成制御領域において上記有機溶液からの核形成により形成された結晶核から成長した唯一つの結晶により上記核形成制御領域を塞ぎ、この結晶を上記成長制御領域上に成長させることにより上記有機化合物からなる有機単結晶薄膜を成長させる工程、
とを有する有機単結晶薄膜の成長方法である。
また、本開示は、
基体の一主面に成長された、有機化合物からなる複数の有機単結晶薄膜からなる有機単結晶薄膜群であって、
上記有機単結晶薄膜群のうちの17%以上47%以下の個数の有機単結晶薄膜は、頂角が82°の第1の頂点および頂角が98°の第2の頂点を有する五角形の形状を有し、
上記有機単結晶薄膜群のうちの16%以上41%以下の個数の有機単結晶薄膜は、頂角が82°の第1の頂点および頂角が98°の第2の頂点を有する四角形の形状を有する有機単結晶薄膜群である。
上記の有機単結晶薄膜、有機単結晶薄膜の成長方法および有機単結晶薄膜群において、有機単結晶薄膜は、有機半導体単結晶薄膜だけでなく、有機半導体単結晶薄膜以外の各種の有機単結晶薄膜、例えば有機絶縁体単結晶薄膜などを含む。有機単結晶薄膜を形成する有機化合物は、有機単結晶薄膜の種類に応じて適宜選ばれる。
上記の有機単結晶薄膜あるいは有機半導体単結晶薄膜は、各種の電子素子に用いることができる。電子素子は、有機単結晶薄膜あるいは有機半導体単結晶薄膜を用いるものである限り、基本的にはどのようなものであってもよく、有機半導体素子はその一種である。この電子素子は、一層または二層以上の有機半導体単結晶薄膜のほかに、例えば絶縁膜などの他の薄膜を一層または二層以上含んでもよく、この薄膜は有機薄膜であっても無機薄膜であってもよい。また、例えば、有機半導体単結晶薄膜にタンパク質などのバイオ材料を組み合わせることによりバイオ素子を得ることもできる。
上記の有機単結晶薄膜群において、有機単結晶薄膜は、典型的には、成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記有機化合物からなる有機単結晶薄膜を成長させる工程とを実行することにより成長されたものである。
上記の有機単結晶薄膜、有機単結晶薄膜の成長方法および有機単結晶薄膜群の上記以外のことは、その性質に反しない限り、上記の有機半導体素子の製造方法および有機半導体素子に関連して説明したことが成立する。
本開示によれば、有機半導体単結晶薄膜あるいは有機単結晶薄膜の位置、大きさ、結晶方位などを容易に制御することができる。そして、この有機半導体単結晶薄膜あるいは有機単結晶薄膜を用いることにより高性能の有機半導体素子あるいは電子素子を実現することができ、これらの有機半導体素子あるいは電子素子を用いることにより高性能の電子機器を実現することができる。
図1は、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法において用いられる有機溶液に関する溶解度−過溶解度図を示す略線図である。 図2は、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法を説明するための略線図である。 図3A、図3Bおよび図3Cは、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法を説明するための略線図である。 図4Aおよび図4Bは、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法の成長メカニズムを検証するために行ったシミュレーションのモデルを示す略線図である。 図5Aおよび図5Bは、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法の成長メカニズムを検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。 図6は、実施例1においてSiウェハー上に成長させたC2Ph−PXX薄膜のマトリクスアレイおよび典型的な形状のC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図7A、図7Bおよび図7Cは、実施例1においてSiウェハー上に成長させたC2Ph−PXX薄膜の制限視野電子線回折パターンを示す図面代用写真およびC2Ph−PXX薄膜のファセットを示す略線図である。 図8は、実施例1においてSiウェハー上に櫛形パターンの櫛歯部の幅を5μmとしてマトリクスアレイ状に成長させたC2Ph−PXX薄膜の回転角の分布を示す略線図である。 図9は、実施例1においてSiウェハー上に櫛形パターンの櫛歯部の幅を10μmとしてマトリクスアレイ状に成長させたC2Ph−PXX薄膜の回転角の分布を示す略線図である。 図10Aおよび図10Bは、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法の成長メカニズムを説明するための略線図である。 図11Aおよび図11Bは、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法の成長メカニズムを説明するための略線図である。 図12は、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法の成長メカニズムを説明するための略線図である。 図13は、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法において用いられる製膜装置を示す略線図である。 図14は、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法において用いられる製膜装置を示す略線図である。 図15は、第2の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法を説明するための略線図である。 図16は、第2の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法を説明するための略線図である。 図17は、第2の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法を説明するための略線図である。 図18は、第2の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法を説明するための略線図である。 図19は、実施例2においてSiウェハー上にC2Ph−PXX薄膜を成長した方法を説明するための略線図である。 図20は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図21は、実施例2においてSiウェハー上に18゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図22は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図23は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図24は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図25は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図26は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図27は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図28は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図29は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図30は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図31は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図32は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図33は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図34は、実施例2においてSiウェハー上にW2=10μmの基本パターン上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図35は、実施例2においてSiウェハー上にW2=10μmの基本パターン上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図36は、実施例2においてSiウェハー上にW2=10μmの基本パターン上に16゜Cで成長したC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図37は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長した一つのC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図38は、実施例2においてSiウェハー上に16゜Cで成長した一つのC2Ph−PXX薄膜の制限視野電子線回折パターンを示す図面代用写真である。 図39は、C2Ph−PXXのπ電子スタック構造を示す略線図である。 図40Aおよび図40Bは、有機半導体単結晶薄膜の成長モデルを説明するための略線図である。 図41Aおよび図41Bは、有機半導体単結晶薄膜の成長モデルを説明するための略線図である。 図42は、第3の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法を説明するための略線図である。 図43は、第4の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法を説明するための略線図である。 図44は、第5の実施の形態による有機トランジスタを示す略線図である。 図45は、第6の実施の形態による積層構造体の第1の例を示す略線図である。 図46は、第6の実施の形態による積層構造体の第2の例を示す略線図である。 図47は、第6の実施の形態による積層構造体の第3の例を示す略線図である。 図48は、第6の実施の形態による積層構造体の第4の例を示す略線図である。 図49は、第6の実施の形態による積層構造体の第5の例を示す略線図である。 図50は、第6の実施の形態による積層構造体の第6の例を示す略線図である。 図51は、第6の実施の形態による積層構造体の第7の例を示す略線図である。 図52は、第6の実施の形態による積層構造体の第8の例を示す略線図である。 図53は、第6の実施の形態による積層構造体の第9の例を示す略線図である。 図54A、図54Bおよび図54Cは、第7の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法を説明するための略線図である。 図55A、図55Bおよび図55Cは、第8の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法を説明するための略線図である。 図56は、第8の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法により実際に成長させたC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図57A、図57B、図57C、図57Dおよび図57Eは、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法により実際に成長させたC2Ph−PXX薄膜の成長の様子を時系列的に示す図面代用写真である。 図58は、有機半導体単結晶薄膜の成長メカニズムを調べるために透過型電子顕微鏡観察を行った電子顕微鏡観察用試料の作製方法を説明するための図面代用写真である。 図59は、有機半導体単結晶薄膜の成長メカニズムを調べるために透過型電子顕微鏡観察を行った電子顕微鏡観察用試料の作製方法を説明するための図面代用写真である。 図60は、電子顕微鏡観察用試料の断面透過型電子顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図61Aおよび図61Bは、電子顕微鏡観察用試料の断面透過型電子顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図62Aおよび図62Bは、電子顕微鏡観察用試料の断面透過型電子顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図63Aおよび図63Bは、電子顕微鏡観察用試料の断面透過型電子顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図64Aおよび図64Bは、電子顕微鏡観察用試料の断面透過型電子顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図65は、電子顕微鏡観察用試料の断面透過型電子顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図66は、電子顕微鏡観察用試料の断面透過型電子顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図67は、電子顕微鏡観察用試料の断面透過型電子顕微鏡写真を示す図面代用写真である。 図68A、図68Bおよび図68Cは、図58に示す遷移領域と成長結晶との連結部の平面形状を示す図面代用写真である。 図69A、図69B、図69C、図69Dおよび図69Eは、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法の成長メカニズムを説明するための略線図である。 図70Aおよび図70Bは、有機半導体単結晶薄膜の成長後に有機溶液を排液する方法を説明するための平面図および断面図である。 図71は、二層のC2Ph−PXX薄膜が互いに異なる結晶方位で成長した例を示す図面代用写真である。
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(有機半導体単結晶薄膜の成長方法)
2.第2の実施の形態(有機半導体単結晶薄膜の成長方法)
3.第3の実施の形態(有機半導体単結晶薄膜の成長方法)
4.第4の実施の形態(有機半導体単結晶薄膜の成長方法)
5.第5の実施の形態(有機トランジスタおよびその製造方法)
6.第6の実施の形態(積層構造体およびその製造方法)
7.第7の実施の形態(有機半導体単結晶薄膜の成長方法)
8.第8の実施の形態(有機半導体単結晶薄膜の成長方法)
〈1.第1の実施の形態〉
[有機半導体単結晶薄膜の成長方法]
図1は、第1の実施の形態による有機半導体単結晶薄膜の成長方法において用いられる有機溶液(有機半導体単結晶薄膜の原料となる有機化合物を溶媒に溶解させた溶液)に関する溶解度−過溶解度図(solubility-supersolubility diagram) を示す。図1に示すように、有機溶液の状態は、温度の低下および/または濃度の増加によって、溶解度曲線の上側の不飽和領域(安定領域)から、溶解度曲線の下側の過飽和領域に変化する。安定領域では、自発的な結晶化は起きない。結晶化は過飽和領域で進行可能である。過飽和領域は二つの領域に分けられる。一つの領域は、溶解度曲線と過溶解度曲線との間の準安定領域である。この準安定領域では、結晶成長だけが起き、核形成は起きない。他の領域は、過溶解度曲線の下側の不安定領域である。この不安定領域では、自発的な結晶化が可能である。
図1に基づいて有機半導体単結晶薄膜の成長方法の一例について説明する。図2に示すように、基板11上に、有機溶液に対して親液性(lyophilic)の表面S1を有する櫛形パターンPを形成する。この親液性の表面S1を有する櫛形パターンPは、有機溶液に対して濡れやすい領域であり、有機溶液を定着させる性質を有している。この櫛形パターンP以外の基板11の表面は、有機溶液に対して疎液性(lyophobic)の表面S2とする。この疎液性の表面S2を有する領域は、有機溶液に対して濡れにくい領域であり、有機溶液をはじく性質を有している。櫛形パターンPは、長方形の背部P1と、この背部P1の一つの長辺に沿って等間隔に、かつこの長辺に対して垂直方向に突き出るように設けられた複数の長方形の櫛歯部P2とからなる。背部P1の面積は、各櫛歯部P2の面積に対して十分に大きい。
今、この櫛形パターンP上に有機溶液の液滴を載せると、この液滴はこの櫛形パターンPの親液性の表面S1に留まり、この櫛形パターンPの外側の疎液性の表面S2に移動しない。この有機溶液の液滴の状態の過飽和領域への移行は、溶媒の蒸発を利用して有機溶液の濃度を高くすることにより実現することができる。図1の破線ABCは、一例として一定温度Tgで上記の操作を行う方法を示す。面積が大きく、多くの有機溶液を蓄えることができる背部P1では、溶媒の急速な蒸発が抑制される。この背部P1の領域は成長制御領域(growth control region,GCR)として用いられる。一方、櫛歯部P2の領域は核形成制御領域(nucleation control region,NCR)として用いられる。櫛歯部P2の面積は背部P1の面積に比べて十分に小さく、従って各櫛歯部P2上の有機溶液の量は背部P1上の有機溶液の量に比べて十分に小さいため、各櫛歯部P2、すなわち核形成制御領域からの溶媒の蒸発速度は、背部P1、すなわち成長制御領域からの溶媒の蒸発速度に比べてずっと速い。このように、背部P1、すなわち成長制御領域の上の部分の有機溶液と各櫛歯部P2、すなわち核形成制御領域の上の部分の有機溶液との間で溶媒の蒸発速度に大きな差があることを利用することにより、有機溶液の液滴の局所的な過飽和度を高精度に制御することができる。
図3A、図3Bおよび図3Cを参照して、有機溶液からの溶液成長による有機半導体単結晶薄膜の成長モデルを説明する。図3Aは櫛形パターンPのうちの一つの櫛歯部P2および背部P1の一部を示す。この背部P1および櫛歯部P2の上に不飽和の有機溶液の液滴を保持させる。この状態の有機溶液は図1の安定状態Aにある。有機溶液の蒸発を開始させると、背部P1の上の部分の有機溶液に比べて櫛歯部P2の上の部分の有機溶液の方が溶媒の蒸発が速く、従って有機溶液の濃度の増加が速いため、背部P1の上の部分の有機溶液は図1の準安定状態Bにあり、一方、櫛歯部P2の上の部分の有機溶液は図1の不安定状態Cにある状態が実現される。すなわち、背部P1と櫛歯部P2とは互いに隣接しているにもかかわらず、有機溶液の状態を背部P1では準安定状態B、櫛歯部P2では不安定状態Cと、互いに異なる状態に同時に設定することができる。有機溶液が不安定状態Cにある櫛歯部P2、すなわち核形成制御領域では自発的な結晶化が可能であり、櫛歯部P2の上の領域内の複数箇所で結晶核が形成され得るが、最終的には、図3Bに示すように、唯一つの結晶Cだけが櫛歯部P2を完全に塞ぐように十分な大きさに成長する。そして、図3Cに示すように、有機溶液が準安定状態Bにある背部P1、すなわち成長制御領域に、この櫛歯部P2を塞いだ安定な結晶Cから有機半導体単結晶薄膜Fが成長する。以上のことから分かるように、この方法によれば、櫛歯部P2を起点として背部P1上に有機半導体単結晶薄膜Fを成長させることができる。すなわち、有機半導体単結晶薄膜Fを成長させる位置を高精度に制御することができることが分かる。
図2に示す破線で囲んだ長方形の領域について有機溶液の溶媒の蒸発の挙動を調べるために、有機溶液の液滴の形状および蒸発速度の計算流体力学シミュレーションを行った。計算を簡単にするために、溶媒の液滴の形状を、計算流体力学(CFD)ソフトウェアFLOW−3DRを用いて、溶媒の表面張力および接触角を考慮して計算した。溶媒の表面張力は35.9mN/mとした。溶媒の接触角θは、実験により、親液性表面に対しては6度、疎液性表面に対しては63度と求められた。また、溶媒の粘度はμ=0.01Pa・s、密度はρ=1030kg/m3とした。図4Aおよび図4Bはそれぞれ、櫛形パターンP上の溶媒の液滴の初期および最終的な形状を模式的に示す。各部の寸法は図4Aおよび図4Bに示すとおりである。図4Aに示すように、溶媒の液滴Lは、初期には櫛形パターンP上に均一の厚さ(この例では10μm)で存在する。図4Bに示すように、最終的には、背部P1の上では、溶媒の液滴Lは、表面張力により中央部が盛り上がった形状(ホグバック(hogback)形状)となる。溶媒の液滴Lの厚さは、背部P1、すなわち成長制御領域の上では16.5μm、櫛歯部P2、すなわち核形成制御領域では2.7μmである。従って、櫛歯部P2、すなわち核形成制御領域上の溶媒の量は、背部P1、すなわち成長制御領域上の溶媒の量に比べてずっと小さいことが分かる。この結果、櫛歯部P2、すなわち核形成制御領域上の溶媒の蒸発速度は、背部P1、すなわち成長制御領域上の溶媒の蒸発速度に比べてずっと速くなる。
溶媒の蒸発速度は下記の微分方程式で表される。
dw/dt=−C(Psat.−P)
ここで、w、C、Psat.、Pおよびtはそれぞれ、溶媒の分子の質量、定数係数、溶媒の飽和蒸気圧、溶媒の蒸気圧および時間である。図5Aおよび図5Bは、櫛歯部P2の上の溶媒の蒸発が終了する前のある時刻における溶媒の蒸気密度の計算結果を示す。ただし、温度は20゜Cとした。図5Aおよび図5Bはそれぞれ、櫛形パターンPの上方から見たときの溶媒の蒸気密度の分布および櫛形パターンPの断面内の溶媒の蒸気密度の分布を示す。図5Aおよび図5Bには等蒸気密度線も示す。等蒸気密度線の間隔は傾斜が大きい程狭くなっている。蒸気圧は溶媒の表面における飽和蒸気圧にほぼ等しいので、櫛歯部P2、すなわち核形成制御領域における溶媒の蒸発速度は、背部P1、すなわち成長制御領域における溶媒の蒸発速度に比べていつも速くなっている。これは、櫛歯部P2は溶媒に囲まれていないため、櫛歯部P2では、蒸発する溶媒分子の拡散速度が背部P1より速くなるためである。
上記のシミュレーション結果によれば、図1における安定状態Aから不安定状態Cへの移行は、櫛歯部P2で最初に起こり、その結果、自発的な結晶化が起きることが裏付けられる。また、溶媒の量だけでなく、蒸発速度によっても、背部P1、すなわち成長制御領域と櫛歯部P2、すなわち核形成制御領域との間で溶媒の蒸発に大きな差が生じることも分かる。
有機半導体単結晶薄膜の原料となる有機化合物としては、既に挙げたものを用いることができるが、そのうちペリキサンテノキサンテン(PXX)系化合物の具体例をいくつか挙げると次の通りである。
(ただし、Rはアルキル基、直鎖、分岐は問わない)
(ただし、Rはアルキル基、直鎖、分岐は問わない)
(ただし、Rはアルキル基、直鎖、分岐は問わない)
(ただし、Rはアルキル基、Rの数は2〜5)
(ただし、Rはアルキル基、Rの数は1〜5)
(ただし、Rはアルキル基、Rの数は1〜5)
(ただし、A1、A2は式(8)で表される)
(ただし、Rはアルキル基または他の置換基、Rの数は1〜5)
〈実施例1〉
実際に有機半導体単結晶薄膜の成長を行って上述の成長メカニズムを検証した結果について説明する。
有機半導体単結晶薄膜を成長させる基板として、不純物が高濃度にドープされ、表面にSiO2膜が形成された4インチのSiウェハーを用いた。このSiウェハーの表面を清浄化した後、その上に次のようにして櫛形パターンPを形成した。すなわち、Siウェハーの表面のうちの櫛形パターンPを形成する部分以外の部分にリフトオフ法によりアモルファスフッ素樹脂膜(旭硝子株式会社製サイトップ)を形成し、疎液性表面S2を形成した。この疎液性表面S2の内側の部分の表面が親液性表面S1であり、この部分が櫛形パターンPとなる。櫛形パターンPの背部P1の大きさは200μm×6.5mmであり、この櫛形パターンPを互いに300μm離してかつ互いに平行に12本形成した。この櫛形パターンPの櫛歯部P2の幅は5μmまたは10μm、長さは40μm、櫛歯部P2の間隔は200μmとした。一つの櫛形パターンP当たりの櫛歯部P2の数は32個とした。すなわち、櫛歯部P2を12×32マトリックスアレイで形成した。有機半導体単結晶薄膜の原料としては、式(9)で表されるC2Ph−PXXを選択した。これは、C2Ph−PXXは室温で溶媒に十分に溶解し、空気中で優れた安定性を有するためである。C2Ph−PXX粉末を室温でテトラリンに溶解し、C2Ph−PXX濃度が0.4重量%の有機溶液を調製した。空気中でこの有機溶液を上記のSiウェハー上に滴下した後、このSiウェハーを後述の製膜装置の内部に設けられたホルダー上に載せ、このSiウェハー上にC2Ph−PXX薄膜を成長させた。ホルダーの温度は17゜Cに保持した。すなわち、成長温度は17゜Cである。このSiウェハーを製膜装置の内部に導入する際には、約60゜Cに保持されたガス導入管から窒素(N2)ガスを0.3L/minの流量で流した。成長終了後、Siウェハーを真空オーブン中で80゜Cで8時間乾燥させ、Siウェハー表面に残存している溶媒を完全に除去した。
図6Aは、上述のようにして成長させたC2Ph−PXX薄膜の偏光光学顕微鏡写真を示す。ただし、櫛歯部P2の幅は5μmとした。図6Bおよび図6Cは、これらのC2Ph−PXX薄膜の典型的な形状を示す偏光光学顕微鏡写真を示す。図6A、図6Bおよび図6Cより、図1〜図3を参照して説明したとおりに成長が起きていることが分かる。すなわち、全てのC2Ph−PXX薄膜は櫛歯部P2と背部P1との交差部から背部P1にかけて成長しており、これはC2Ph−PXX薄膜の成長位置を高精度に制御することができることを示している。これらのC2Ph−PXX薄膜の大きさは約100×100μm2であった。また、これらのC2Ph−PXX薄膜の厚さは約0.2μmであった。各C2Ph−PXX薄膜におけるコントラストは厚さが場所によって異なることによるものである。全てのC2Ph−PXX薄膜は82度または98度の同様なファセット角を有し、これはファセット成長が起きていることを示す。この結果は、全てのC2Ph−PXX薄膜はシングルドメインの結晶、言い換えると単結晶薄膜であることを示す。加えて、これらのC2Ph−PXX薄膜の数を櫛歯部P2の数で割った値で定義される歩留まりは12×32のマトリックスアレイの98.2%であり、これはこの方法が大面積プロセスとしての可能性を有することを示す。
上述のC2Ph−PXX薄膜の構造を詳細に調べるため、透過型電子顕微鏡(TEM)(JEOL JEM−4000FXS)により、加速電圧400kVかつ低線量条件で電子顕微鏡観察を行った。図7Aは、平面TEM観察からのC2Ph−PXX薄膜の制限視野電子線回折パターンを示す。図7Aから分かるように、各回折スポットが明確に観察されており、これはC2Ph−PXX薄膜が単結晶であることを示す。平面(a軸およびb軸)内の格子定数は、回折パターンの周期よりそれぞれ1.1nmおよび1.3nmと得られる。a軸とb軸との二つの方向により形成される角度は90.5度である。断面TEM写真により、c軸方向の格子定数は2.2nmであることが分かり、これはC2Ph−PXX分子の長さと完全に整合する。ただし、a軸とb軸との二つの方向により形成される角度は約90度であるので、C2Ph−PXX薄膜の結晶構造は斜方晶系と仮定した。図7Bには82度および98度の特徴的なファセット角が見られる。図7Cに示すように、実空間においては、{110}ファセットにより囲まれた長方形は対角線の両端に82度および98度の角度の特徴的な頂点を有する。従って、図7Cにファセット成長が明らかに見られるので、全てのC2Ph−PXX薄膜は単結晶であると結論することができる。
2Ph−PXX薄膜の結晶方位を詳細に調べるために、図6Aに示す全てのC2Ph−PXX薄膜の回転角を調べた。〈−110〉方向が櫛歯部P2、すなわち核形成制御領域の長手方向と平行なC2Ph−PXX薄膜の形状が回転角0度に対応すると定義する。右向きおよび左向きの回転は、それぞれ+および−の回転角で表される。図8は、櫛歯部P2の幅が5μmのときのC2Ph−PXX薄膜の回転角のヒストグラムを示す。図8の上部の挿入図は各回転角に対応してC2Ph−PXX薄膜の結晶の形状を示したものである。図8より、C2Ph−PXX薄膜は、約−48度および0度の回転角を有することが明確に観察される。全てのC2Ph−PXX薄膜のうちの回転角が約−48度±10度以内にあるものの割合および回転角が約0度±10度以内にあるものの割合はそれぞれ29.1%および13.1%と見積もられた。従って、回転角が約−48度の形状が支配的であった。この形状は図6Bに示すC2Ph−PXX薄膜の形状に対応する。図9は、櫛歯部P2の幅が10μmのときのC2Ph−PXX薄膜のヒストグラムを示す。図9に示すように、この場合は特別な回転角は存在しない。この結果は、C2Ph−PXX薄膜の結晶方位は櫛歯部P2の幅に依存することを示唆する。櫛歯部P2の幅が減少するに従って、図6Bに示す形状のC2Ph−PXX薄膜が増加する。
以上より、次のような重要な結果が得られた。第1に、シングルドメイン、すなわち単結晶のC2Ph−PXX薄膜を成長させることができる。第2に、C2Ph−PXX薄膜の結晶方位は櫛歯部P2の幅に依存する。これらの結果は、櫛歯部P2の領域内の現象と密接に関係していると考えられる。図10Aおよび図10Bは、溶媒の蒸発初期における櫛歯部P2の領域内の結晶化メカニズムを示す。また、図11Aおよび図11Bは、溶媒の蒸発末期における櫛歯部P2の領域内の結晶化メカニズムを示す。ここで、図10Aおよび図11Aは断面図、図10Bおよび図11Bは上面図を示す。図10Aおよび図10Bに示すように、溶媒の蒸発初期には櫛歯部P2の領域内で有機溶液の液滴Lの表面に複数の結晶核Nが形成されるが、溶媒の蒸発末期には、図11Aおよび図11Bに示すように、最終的に唯一つの結晶核Nが十分に大きく成長して安定な結晶Cとなり櫛歯部P2を塞ぐ。その理由は、図12に示すように、成長速度に異方性があるためであると考えられる(同図中の破線の矢印の長さは成長速度を示す)。すなわち、蒸発初期には、不均一な核形成のエネルギーの方が均一な核形成のエネルギーよりも低いことにより、液滴Lと疎液性表面S2との界面で不均一に多数の結晶核Nが形成される。結晶のファセットは安定な表面であるため、結晶核Nは液滴Lと疎液性表面S2との界面に接触して{110}面が形成される。結晶核Nが液滴Lと疎液性表面S2との界面に当たらず、液滴Lの最上部に移動すると、表面張力が最大になるように結晶核Nが配列する。櫛歯部P2の幅が小さくなるほど、液滴Lの曲率半径が小さくなる。従って、櫛歯部P2の幅が小さくなるほど、結晶核Nの形状が細長い方がずっと有利である。結晶核Nが直ぐに当たらない場合とゆっくりと当たらない場合との二つの場合がある。直ぐに当たらない場合には、図10Bの(1)に示すように、結晶核Nは等方的に成長し、その結果、回転角48度の形状が形成される。これとは逆に、ゆっくりと当たらない場合には、図10Bの(2)に示すように、成長している〈110〉あるいは〈1−10〉ファセット面は液滴Lと疎液性表面S2との界面と接触していないことにより、結晶核Nは非等方的に成長する。従って、回転角0度付近の形状が非常に有利である。ここで、〈110〉あるいは〈1−10〉ファセット面が液滴Lと疎液性表面S2との界面と接触すると考える。この場合、回転角約±90度付近の形状が得られると考えられる。これは、液滴Lと疎液性表面S2との界面と{110}面との間の結合力が、液滴Lと疎液性表面S2との界面と{1−10}面との間の結合力より大きいためであると考えられる。
[製膜装置]
上述の有機半導体単結晶薄膜の成長に用いられる製膜装置の一例について説明する。
図13は、有機半導体単結晶薄膜の成長に用いられる製膜装置を示す。図13に示すように、この製膜装置は、チャンバー21と連結管22を介してこのチャンバー21と連結された溶媒タンク23とを有する。チャンバー21は溶媒タンク23と連結された状態において密閉可能となっている。チャンバー21には排気管24が設けられている。チャンバー21内には、温度制御可能なホルダー25が設けられており、このホルダー25上に製膜を行う基体(図示せず)が載置される。
溶媒タンク23には、有機半導体単結晶薄膜の成長に用いられる有機溶液中の溶媒と同じ種類の補助溶媒26が蓄積されている。この補助溶媒26の温度は、図示省略したオイルバスなどの加熱手段により調整可能になっている。この補助溶媒26には、溶媒タンク23の外部から内部に導入されたガス導入管27を通じてガスを導入可能になっている。溶媒タンク23は、連結管22を通じてチャンバー21に補助溶媒26の蒸気を含む蒸気を供給可能になっている。これにより、補助溶媒26の温度に応じて、有機溶液の周辺環境、すなわちチャンバー21の内部における蒸気の圧力(蒸気圧)Pが制御されるようになっている。なお、チャンバー21に供給された蒸気は必要に応じて排気管24を通じて外部に排気可能である。
この製膜装置を用いて有機半導体単結晶薄膜を成長させるためには、図14に示すように、基板11を製膜装置のチャンバー21内に導入し、ホルダー25上に載せる。次に、排気管24を閉じてチャンバー21および溶媒タンク23を密閉した後、例えば、ガス導入管27から溶媒タンク23に窒素(N2)などのガス28を導入する。これにより、補助溶媒26を含む蒸気29が溶媒タンク23から連結管22を通じてチャンバー21に供給されるため、このチャンバー21の内部は蒸気29が満たされた環境となる。基板11の温度は、ホルダー25を用いて図1に示すTgに設定する。必要に応じて、オイルバスなどを用いて補助溶媒26の温度もTgに設定することが好ましい。これにより、チャンバー21の内部の蒸気圧Pが温度Tgにおける飽和蒸気圧になるため、液相(有機溶液30)と気相(蒸気)とが平衡状態になる。このことは、溶媒タンク23の内部における液相(補助溶媒26)と気相(蒸気)とにおいても同様である。
一方、有機半導体単結晶薄膜の成長に用いる有機化合物を溶媒に溶解させた有機溶液30を調製する。溶媒としては、従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ばれるが、具体的には、例えば、キシレン、p−キシレン、メシチレン、トルエン、テトラリン、アニソール、ベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、シクロヘキサンおよびエチルシクロヘキサンのうちの少なくとも一つである。
そして、図14に示すように、こうして調製された有機溶液30を、図示しないノズルを介して基板11上に供給する。
次に、上述の成長方法と同様に有機溶液30の温度をTgに保って有機溶液30中の溶媒を蒸発させることにより、櫛歯部P2上に蓄えられた有機溶液30から結晶核が形成され、この結晶核から成長した唯一つの結晶Cが背部P1との連結部の櫛歯部P2を塞ぎ、この結晶Cが背部P1上に蓄えられた有機溶液30中で成長を始め、背部P1上に有機半導体単結晶薄膜が成長する。
以上のように、この第1の実施の形態によれば、有機半導体単結晶薄膜の結晶方位や位置や大きさを制御することができる。このため、例えば、有機トランジスタでは、電子が走行する方向が有機半導体単結晶薄膜のキャリアの移動度が高い方向になるように有機半導体単結晶薄膜の結晶方位を設定することにより、高移動度の高性能の有機トランジスタを実現することができる。また、有機光電変換素子では、有機半導体単結晶薄膜の結晶方位を偏光軸の方向に設定することにより、偏光に対する感応性が高い偏光有機光電変換素子を実現することができる。
〈2.第2の実施の形態〉
[有機半導体単結晶薄膜の成長方法]
図15に示すように、基板31の一主面に、親液性の表面を有する成長制御領域32およびこの成長制御領域32と連結された核形成制御領域33を形成する。基板31の一主面のうちの成長制御領域32および核形成制御領域33以外の部分の表面は疎液性である。親液性の表面を有する成長制御領域32および核形成制御領域33は、有機溶液に対して濡れやすい領域であり、有機溶液を定着させる性質を有している。一方、成長制御領域32および核形成制御領域33以外の、疎液性の表面を有する領域は、有機溶液に対して濡れにくい領域であり、有機溶液をはじく性質を有している。親液性の表面を有する成長制御領域32および核形成制御領域33は、例えば、親液性の基板31の表面に疎液性の表面処理または膜形成処理が施されたものである。親液性の基板31の表面を疎液性とするためには、例えば、アモルファスフッ素樹脂膜(旭硝子株式会社製サイトップ)を疎液性としたい領域に形成すればよい。
成長制御領域32は、この例では長方形の形状を有する。この成長制御領域32の面積は幅W1および長さL1により決定される。幅W1および長さL1は有機半導体単結晶薄膜の形状および大きさに応じて適宜選ばれるが、有機溶液の量を確保するために、幅W1および長さL1は好適には十分に大きく選ばれる。例えば、幅W1=1000〜10000μm、長さL1=100〜800μmに選ばれる。
核形成制御領域33は、成長制御領域32の長辺である一辺32aに対して垂直な第1の部分33aと、この第1の部分33aと連結され、かつ成長制御領域32の上記の一辺32aに対して0°以上90°未満、例えば25°以上65°以下の角度θ1傾斜した第2の部分33bとからなる。これらの第1の部分33aおよび第2の部分33bの幅W2は、成長制御領域32の幅W1よりも狭くなっており、成長制御領域32と核形成制御領域33との連結位置34には、内側に向かって凸状の角部35が形成されている。幅W2は好適には十分に小さく選ばれ、例えば、幅W2=0.1〜30μmに選ばれる。第1の部分33aの長さL2は例えばL2=5〜50μm、第2の部分33bの長さL3は例えばL3=10〜150μmに選ばれるが、これに限定されるものではない。
角部35の先端形状は、特に限定されないが、好適には先鋭な形状とする。また、角部35の角度θ2は、特に限定されないが、好適にはほぼ90°とする。
図16に示すように、成長制御領域32および核形成制御領域33上に有機溶液36を供給する。その後、第1の実施の形態と同様にして有機溶液36の溶媒を蒸発させることにより、例えば第1の部分33aに形成された結晶核から成長した結晶により第1の部分33aが塞がれ、この結晶が結晶成長することより、図17に示すように、成長制御領域32上に有機半導体単結晶薄膜39が成長する。
最後に、必要に応じて、基板31の一主面から有機溶液36を除去することにより、図18に示すように、有機半導体単結晶薄膜39が得られる。
図18に示すように、例えば、成長制御領域32上に、頂角が82°の第1の頂点および頂角が98°の第2の頂点を有する五角形の形状を有する有機半導体単結晶薄膜39が成長する。有機半導体単結晶薄膜39は、頂角が82°の第1の頂点および頂角が98°の第2の頂点を有する四角形の形状を有することもある。
必要に応じて、有機半導体単結晶薄膜39を成長させた後、エッチング法などを用いて所望の平面形状となるように有機半導体単結晶薄膜39をパターニングしてもよい。
〈実施例2〉
基板31として実施例1と同様なSiウェハーを用い、その表面の所定部分の疎液性処理を行い、親液性の表面を有する成長制御領域32および核形成制御領域33からなる7mm×7mmサイズの基本パターンを10行9列で配置した。ただし、Siウェハーは円形であるので、1〜4行目と8〜10行目までは9列未満となる。基本パターンには、核形成制御領域33の第1の部分33aと第2の部分33bとの間の角度θ3(=90°−θ1)が45°、60°、30°の場合のものが含まれる。成長制御領域32の大きさは200μm×6.5mmであり、この成長制御領域32を互いに300μm離してかつ互いに平行に10本形成した。成長制御領域32の一つの長辺の方向の核形成制御領域33の間隔は200μm、核形成制御領域33の幅W2は5μmまたは10μm、第1の部分33aの長さL2は40μm、第2の部分33bの長さL3は100μmとした。図19に示すように、図14に示す製膜装置のホルダー25上にこのSiウェハー40を2枚載せ、このSiウェハー40上に有機半導体単結晶薄膜39を成長させる。成長温度(基板温度)は16゜C(16゜C±1゜Cでも同様な結果が得られる)または18゜C(18゜C±1゜Cでも同様な結果が得られる)とした。図14に示す製膜装置のガス導入管27から窒素(N2)ガスを0.3L/minの流量で供給した。ガス導入管27の温度は58゜Cに設定した。
有機半導体単結晶薄膜39の原料としては、式(9)で表されるC2Ph−PXXを用いた。
Siウェハー40の全面に成長した全ての有機半導体単結晶薄膜39の偏光光学顕微鏡写真を図20および図21に示す。図20は成長温度16゜Cの場合、図21は成長温度18゜Cの場合である。Siウェハー40の一主面に有機溶液36を供給し、ガス導入管27からN2ガスの供給を開始してから約8分で有機溶液36の溶媒の乾燥が開始し、Siウェハー40の全体で有機溶液36の溶媒の乾燥が終了するのに要した時間は1時間強であった。図20および図21の1〜4行目はθ3=45°、5〜8行目はθ3=60°、9〜12行目はθ3=30°の場合である。
図22〜図24に、Siウェハー40上の一段目(θ3=45°)の有機半導体単結晶薄膜39を拡大して示す。これらの図22〜図24には、各有機半導体単結晶薄膜39の付近に、結晶構造から予想される{110}面ファセットからなる四角形を挿入した(以下の図25〜図36においても同様)。図25〜図27に、Siウェハー40上の5段目(θ3=60°)の有機半導体単結晶薄膜39を拡大して示す。図28〜図30に、Siウェハー40上の9段目(θ3=30°)の有機半導体単結晶薄膜39を拡大して示す。図31〜図33に、Siウェハー40上の12段目(θ3=30°)の有機半導体単結晶薄膜39を拡大して示す。
図20〜図33に示すように、成長制御領域32上の有機半導体単結晶薄膜39の形状としては、頂角82°の第1の頂点および頂角98°の第2の頂点を有する四角形または五角形が観察される。これらの二種類の形状を有する有機半導体単結晶薄膜39の個数と全体に占める割合を求めたところ、下記のようになった。
成長温度:16゜C
θ3 五角形の個数 四角形の個数
45° 42(33%) 31(24%)
60° 37(29%) 27(21%)
30° 31(24%) 41(32%)
成長温度:18゜C
θ3 五角形の個数 四角形の個数
45° 60(47%) 16(13%)
60° 27(21%) 31(24%)
30° 20(17%) 29(23%)
図34〜図36は、Siウェハー44上の四段目(θ3=45°)の有機半導体単結晶薄膜39を拡大して示す。核形成制御領域33の幅W2は10μmである。
図34〜図36より、核形成制御領域33の幅W2が5μmの方が、幅W2が10μmの場合に比べて有機半導体単結晶薄膜39の歩留まりが高い。
図37に、上述のようにして成長された一つの有機半導体単結晶薄膜39の平面透過型電子顕微鏡写真(平面TEM写真)を示す。図38に、この有機半導体単結晶薄膜39に対してほぼ垂直な方向から電子線を入射させたときの平面制限視野電子線回折パターンを示す。図38より、a=1.1nm、b=1.3nm、a軸とb軸との間の角度γはγ=90.5°であった。C2Ph−PXXからなる分子結晶薄膜のX線回折測定によれば、a=11.44Å(1.144nm)、b=12.67Å(1.267nm)、c=22.17Å(2.217nm)、α=94.8°、β=88.4°、γ=94.8°あるいはa=11.43Å(1.143nm)、b=12.63Å(1.263nm)、c=22.80Å(2.280nm)、α=94.5°、β=88.3°、γ=94.8°であり、三斜晶系または単斜晶系の結晶構造を有することが分かっている。図38より得られるa、bはX線回折測定により求められた値とほぼ等しいが、図38より得られるγはX線回折測定により求められた値より僅かに小さい。有機半導体単結晶薄膜39のc軸は電子線の入射方向とほぼ等しい。これらの結果を踏まえると、図37に示す平面TEMで観察される有機半導体単結晶薄膜39のファセットは{110}面であると結論することができる。
図39は、C2Ph−PXXからなる有機半導体単結晶薄膜39のa軸方向のπ電子スタック構造を模式的に示したものである。図39では、π電子スタックの方向が分かるようにC2Ph−PXXの主骨格の配列を模式的に示した。
以上の結果を踏まえて、有機半導体単結晶薄膜39の成長モデルについて考察する。第1の実施の形態で説明したとおり、成長初期において、結晶核は、核形成制御領域33の第1の部分33aまたは第2の部分33bに形成される。図40Aおよび図40Bは、核形成制御領域33の第2の部分33bで結晶核が形成され、唯一つの結晶が成長して第2の部分33bを塞ぐ場合を示す。この場合、結晶核は{110}面で囲まれた四角形の形状を有し、この結晶核のa軸またはb軸が第2の部分33bの側壁に平行になるように形成される。そして、この結晶核の結晶方位を保持したままこの結晶核から成長した唯一つの結晶により第2の部分33bが塞がれる。こうして第2の部分33bを塞いだ結晶が成長制御領域32上に成長する結果、成長制御領域32上に有機半導体単結晶薄膜39が成長する。この有機半導体単結晶薄膜39は、82°の頂角を有する第1の頂点および98°の頂角を有する第2の頂点を有し、四辺が{110}面に平行な五角形の形状を有する。図41Aおよび図41Bは、核形成制御領域33の第1の部分33aで結晶核が形成され、唯一つの結晶が成長して第1の部分33aを塞ぐ場合を示す。図40Aおよび図40Bの場合と同様に、結晶核は{110}面で囲まれた四角形の形状を有し、この結晶のa軸またはb軸が第1の部分33aの側壁に平行になるように形成される。そして、この結晶の結晶方位を保持したまま成長制御領域32上に結晶成長が進む結果、成長制御領域32上に成長する有機半導体単結晶薄膜39は、82°の頂角を有する第1の頂点および98°の頂角を有する第2の頂点を有し、三辺が{110}面に平行な四角形の形状を有する。
図20〜図33に示す有機半導体単結晶薄膜39の成長制御領域32上の形状と上記の成長モデルから導かれる形状とを比較すると、ばらつきはあるものの概ね一致する。このことから、有機半導体単結晶薄膜39の成長は、上記成長モデルでほぼ説明されると考えることができる。
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
〈3.第3の実施の形態〉
[有機半導体単結晶薄膜の成長方法]
第3の実施の形態においては、基板31の一主面に設ける成長制御領域32および核形成制御領域33のパターンとして図42に示すようなものを用いる。
図42に示すように、第3の実施の形態においては、核形成制御領域33は、成長制御領域32の一辺32aを第1の辺とする三角形状の第3の部分33cと、この第3の部分33cと第1の辺に対向する頂点部で連結され、かつ成長制御領域32の上記の一辺32aに対して0°以上90°以下、例えば25°以上65°以下の角度θ1傾斜した直線状の第4の部分33dとからなる。三角形状の第3の部分33cの第2の辺33eは第4の部分33dの一つの側壁と同一線上にあり、成長制御領域32の上記の一辺32aに対して0°以上90°以下、例えば25°以上65°以下の角度θ1傾斜している。三角形状の第3の部分33cの第2の辺33eと第3の辺33fとの間の角度は有機半導体単結晶薄膜39の結晶構造で決まる角度であり、一例を挙げると98°あるいは82°である。第3の部分33cの第2の辺33eと第3の辺33fとの間の角度が98°の場合を図42の左の部分、82°の場合を図42の右の部分に示す。
第4の部分33dの幅W2は、成長制御領域32の幅W1よりも狭くなっている。言い換えると、この場合、核形成制御領域33は、第4の部分33dでは幅W2が一定であるが、第3の部分33cでは幅W2が徐々に広がった形となっている。幅W2は好適には十分に小さく選ばれ、例えば、幅W2=0.1〜30μmに選ばれる。第3の部分33aの第2の辺33eの長さL3は例えばL3=5〜50μm、第4の部分33dの長さL4は例えばL4=10〜150μmに選ばれる。
核形成制御領域33の形状を上記のように選ぶことにより、成長初期に核形成制御領域33の第4の部分33d上に結晶核が形成され、唯一つの結晶が成長して第4の部分33dを塞ぐ。この結晶が第3の部分33aを経由して成長制御領域32上に成長し、この際第3の部分33cの第2の辺33eと第3の辺33fとの間の角度で規定されるファセットが出現するように結晶成長が進む。その結果、例えば82°の頂角を有する第1の頂点および98°の頂角を有する第2の頂点を有する四角形または五角形の形状に有機半導体単結晶薄膜39が成長する。
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
〈4.第4の実施の形態〉
[有機半導体単結晶薄膜の成長方法]
第4の実施の形態においては、基板31の一主面に設ける成長制御領域32および核形成制御領域33のパターンとして図43に示すようなものを用いる。図43に示すように、基板31(図示せず)の一主面に、複数の成長制御領域32が互いに平行にかつ互いに離れて設けられている。これらの成長制御領域32のうちの互いに隣接する二つの成長制御領域32の互いに対向する辺32aにそれぞれ、複数の核形成制御領域33が、典型的には等間隔に、かつ互いに重ならないように設けられている。この場合、互いに対向する二つの成長制御領域32のうちの一方の成長制御領域32の各核形成制御領域33は、他方の成長制御領域32の各核形成制御領域33の間に位置するように設けられている。また、一方の成長制御領域32の各核形成制御領域33は、他方の成長制御領域32の各核形成制御領域33の近傍に互いに対向して設けられている。
この第4の実施の形態においては、上記以外のことについては、第1の実施の形態と同様である。
この第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、次のような利点を得ることができる。すなわち、互いに隣接する二つの成長制御領域32の互いに対向する辺にそれぞれ、複数の核形成制御領域33が互いに重ならないように設けられ、一方の成長制御領域32の各核形成制御領域33は他方の成長制御領域32の各核形成制御領域33の近傍に設けられている。このため、成長制御領域32に供給された有機溶液36の溶媒の蒸発を抑制しながら、核形成制御領域33に供給された有機溶液36の溶媒の蒸発を促進することができ、有機半導体単結晶薄膜39の成長速度の向上を図ることができる。
〈5.第5の実施の形態〉
[有機トランジスタ]
第5の実施の形態においては、有機半導体単結晶薄膜を用いた有機トランジスタおよびその製造方法について説明する。
図44はこの有機トランジスタを示す。図44に示すように、この有機トランジスタにおいては、基板51上にゲート電極52が設けられている。このゲート電極52を覆うようにゲート絶縁膜53が設けられている。このゲート絶縁膜53上にチャネル領域となる有機半導体単結晶薄膜54が設けられている。そして、この有機半導体単結晶薄膜54上にソース電極55およびドレイン電極56が設けられている。これらのゲート電極52、有機半導体単結晶薄膜54、ソース電極55およびドレイン電極56により、絶縁ゲート型電界効果トランジスタの構成を有するトップコンタクト・ボトムゲート型の有機トランジスタが構成されている。
この有機トランジスタにおいては、好適には、チャネル長方向(ソース電極55とドレイン電極56とを結ぶ方向)が有機半導体単結晶薄膜54のキャリア移動度が高い方向に設定されている。
有機半導体単結晶薄膜54は、既に述べた有機化合物からなる。ゲート絶縁膜53は、例えば、無機絶縁体、有機絶縁体、有機絶縁性高分子などからなる。無機絶縁体としては、例えば、二酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si34あるいはSiNx)などが挙げられる。有機絶縁体あるいは有機絶縁性高分子としては、例えば、ポリビニルフェノール、ポリメタクリル酸メチル、ポリイミド、フッ素樹脂、PVP−RSiCl3、DAP、isoDAP、ポリ(α−メチルスチレン)、シクロオレフィン・コポリマーなどが挙げられる。有機半導体単結晶薄膜54およびゲート絶縁膜63の厚さは、この有機トランジスタに要求される特性などに応じて適宜選ばれる。
基板51の材料は、従来公知の材料の中から必要に応じて選ばれ、可視光に対して透明な材料であっても不透明な材料であってもよい。また、基板51は、導電性であっても非導電性であってもよい。また、基板51は、フレキシブル(可撓性)であってもフレキシブルでなくてもよい。具体的には、基板51の材料としては、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの各種のプラスチック(有機ポリマー)、雲母、各種のガラス基板、石英基板、シリコン基板、ステンレス鋼などの各種の合金、各種の金属などが挙げられる。基板51の材料としてプラスチックを用いることにより、基板51をフレキシブルにすることができ、ひいてはフレキシブルな有機トランジスタを得ることができる。プラスチック基板としては、例えば、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォンなどからなるものが用いられる。
ゲート電極52、ソース電極55およびドレイン電極56を構成する材料としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、インジウム(In)、錫(Sn)などの金属、あるいは、これらの金属元素を含む合金、これらの金属からなる導電性粒子、これらの金属を含む合金の導電性粒子、不純物を含有したポリシリコンなどの各種の導電性物質が挙げられる。ゲート電極52、ソース電極55およびドレイン電極56を構成する材料としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]やテトラチアフルバレン−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TTF−TCNQ)などの有機導電材料(導電性高分子)も挙げられる。ゲート電極52、ソース電極55およびドレイン電極56は、これらの物質からなる二種以上の層の積層構造とすることもできる。チャネル長方向のゲート電極52の幅(ゲート長)やソース電極55とドレイン電極56との間の距離(チャネル長)は、この有機トランジスタに要求される特性などに応じて適宜選ばれる。
[有機トランジスタの製造方法]
図44に示すように、まず、従来公知の方法により、基板51上にゲート電極52を形成した後、その上にゲート絶縁膜53を形成する。
一方、第1の実施の形態と同様にして、有機化合物を溶媒に溶解させた有機溶液を調製する。そして、この有機溶液を用いて例えば第1〜第4の実施の形態のいずれかの方法によりゲート絶縁膜53上に有機半導体単結晶薄膜39を成長させる。
次に、必要に応じて、こうして形成された有機半導体単結晶薄膜39をエッチングなどにより所定形状にパターニングした後、この有機半導体単結晶薄膜39上に従来公知の方法によりソース電極55およびドレイン電極56を形成する。
以上により、目的とするトップコンタクト・ボトムゲート型有機トランジスタが製造される。
この第5の実施の形態によれば、有機半導体単結晶薄膜39の結晶方位を制御することができるので、この有機半導体単結晶薄膜39のキャリアの移動度が高い方向をチャネル長方向に設定することにより、高移動度の高性能の有機トランジスタを実現することができる。
〈6.第6の実施の形態〉
[積層構造体]
第6の実施の形態においては、有機半導体単結晶薄膜を含む各種の積層構造体について説明する。この積層構造体は各種の電子素子に用いられる。
図45に示す第1の例による積層構造体においては、基板61上に有機半導体単結晶薄膜62および有機半導体多結晶薄膜63が順次積層されている。有機半導体単結晶薄膜62および有機半導体多結晶薄膜63の導電型はp型、n型、i型のいずれであってもよく、必要に応じて選ばれる。有機半導体単結晶薄膜62および有機半導体多結晶薄膜63には、必要に応じて電極または配線が設けられる。基板61としては、例えば、第5の実施の形態における基板51と同様なものを用いることができ、必要に応じて選ばれる(以下の例においても同様)。有機半導体単結晶薄膜62は、例えば、第1〜第4の実施の形態と同様に成長させることができる。有機半導体多結晶薄膜63は、各種の方法、例えば、溶液成長(液相成長)、気相成長、真空蒸着などにより成長させることができる。
図46に示す第2の例による積層構造体においては、基板61上に有機半導体多結晶薄膜63および有機半導体単結晶薄膜62が順次積層されている。すなわち、有機半導体単結晶薄膜62および有機半導体多結晶薄膜63の積層順序が図45に示す積層構造体と逆になっている。
図47に示す第3の例による積層構造体においては、基板61上に有機半導体単結晶薄膜62および無機材料からなる無機薄膜64が順次積層されている。有機半導体単結晶薄膜62の導電型はp型、n型、i型のいずれであってもよく、必要に応じて選ばれる。無機薄膜64は導電性であっても絶縁性であってもよく、必要に応じて選ばれる。有機半導体単結晶薄膜62は、例えば、第1〜第4の実施の形態と同様に成長させることができる。無機薄膜64は、各種の方法、例えば、溶液成長(液相成長)、化学気相成長、真空蒸着、スパッタリングなどにより成長させることができる。
図48に示す第4の例による積層構造体においては、基板61上に無機材料からなる無機薄膜64および有機半導体単結晶薄膜62が順次積層されている。すなわち、有機半導体単結晶薄膜62および無機薄膜64の積層順序が図47に示す積層構造体と逆になっている。
図49に示す第5の例による積層構造体においては、基板61上に有機半導体単結晶薄膜62およびこの有機半導体単結晶薄膜62と異なる有機半導体単結晶薄膜65が順次積層されている。これらの有機半導体単結晶薄膜62、65は、例えば、第1〜第4の実施の形態と同様に成長させることができる。この積層構造体は、例えば、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、ヘテロ界面FET(HIFET)などのヘテロ接合を用いる各種の半導体素子に適用することができる。また、さらにもう一層の有機半導体単結晶薄膜を積層することにより、例えばヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)なども実現することができる。
図50に示す第6の例による積層構造体においては、基板61上に有機半導体単結晶薄膜65および有機半導体単結晶薄膜62が順次積層されている。すなわち、有機半導体単結晶薄膜62、65の積層順序が図49に示す積層構造体と逆になっている。
図51に示す第7の例による積層構造体においては、図50に示す積層構造体と同様に、基板61上に有機半導体単結晶薄膜65および有機半導体単結晶薄膜62が順次積層されているが、上層の有機半導体単結晶薄膜62の大きさは下層の有機半導体単結晶薄膜65よりも小さくなっている。下層の有機半導体単結晶薄膜65の一端には引き出し部65aが設けられている。上層の有機半導体単結晶薄膜62の、有機半導体単結晶薄膜65の引き出し部65aとは反対側の一端には引き出し部62aが設けられている。引き出し部62a、65aは、例えば、電極または配線を形成する領域として用いることができる。
図52に示す第8の例による積層構造体においては、基板61上に電極66が設けられ、その上に薄膜67〜70が順次積層されている。薄膜67〜70のうちの少なくとも一層は有機半導体単結晶薄膜である。この有機半導体単結晶薄膜は、例えば、第1〜第4の実施の形態と同様に成長させることができる。薄膜67〜70のうちの有機半導体単結晶薄膜以外の薄膜は、各種の方法、例えば、溶液成長(液相成長)、化学気相成長、真空蒸着、スパッタリングなどにより成長させることができる。
図53に示す第9の例による積層構造体においては、基板61上に電極66、71が互いに離れて設けられている。電極66上には薄膜67〜70が順次積層されている。電極71上には薄膜72〜75が順次積層されている。薄膜67〜70のうちの少なくとも一層は有機半導体単結晶薄膜である。また、薄膜72〜75のうちの少なくとも一層は有機半導体単結晶薄膜である。さらに、電極66、71の間の部分の基板61上には、膜面がこの基板61の一主面に対してほぼ垂直方向の薄膜76〜82が基板61の一主面に平行な方向に順次設けられている。
この第6の実施の形態によれば、有機トランジスタ、発光ダイオード(LED)、半導体レーザなどの各種の電子素子の元になる積層構造体を得ることができる。
〈7.第7の実施の形態〉
[有機半導体単結晶薄膜の成長方法]
第7の実施の形態においては、大面積の有機半導体単結晶薄膜を成長させる方法について説明する。
図8および図9を参照して説明したように、例えば図3A、図3B、図3Cに示すような櫛形パターンPの櫛歯部P2(核形成制御領域)の幅が小さい方が、この櫛歯部P2に形成される結晶Cから成長する有機半導体単結晶薄膜Fの配向が揃う傾向がある。
そこで、第7の実施の形態においては、まず、図54Aに示すように、櫛歯部P2の幅が小さく(例えば、幅5μm)、かつ櫛歯部P2の間隔が小さい櫛形パターンPを形成する。
次に、図54Bに示すように、第1の実施の形態と同様にして、各櫛歯部P2の根元に結晶を成長させ、この結晶から背部P1上に有機半導体単結晶薄膜Fを成長させる。
成長を続けると、櫛歯部P2の間隔が小さいことにより、各櫛歯部P2の根元から成長した各有機半導体単結晶薄膜F同士が、櫛形パターンPの長手方向の辺に平行な方向に合体し、しかも櫛歯部P2の幅が小さいことにより各有機半導体単結晶薄膜F同士の配向が揃っているため、細長い形状の単一の有機半導体単結晶薄膜Fが得られる。逆に言えば、櫛歯部P2の間隔は、成長後、短時間で、各櫛歯部P2の根元から成長した有機半導体単結晶薄膜F同士が合体するように選ばれる。さらに成長を続けると、図54Cに示すように、櫛形パターンPの背部P1上にこの背部P1の長手方向の幅と同じ幅を有する大面積の長方形の有機半導体単結晶薄膜Fが成長する。こうして成長した有機半導体単結晶薄膜Fは大面積であるだけでなく厚さが小さい。
以上のように、この第7の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、大面積の有機半導体単結晶薄膜Fを成長させることができるという利点を得ることができる。
〈8.第8の実施の形態〉
[有機半導体単結晶薄膜の成長方法]
第8の実施の形態においては、第7の実施の形態と同様に、大面積の有機半導体単結晶薄膜を成長させる方法について説明する。
第8の実施の形態においては、まず、図55Aに示すように、基板11上に櫛歯部P2の幅が小さい(例えば、幅5μm)櫛形パターンPを形成する。
次に、図55Bに示すように、通常は水平面に対して平行に設置される基板11を、櫛形パターンPの長手方向が水平面に対して所定の角度傾斜するように設置する。この傾斜角度は、使用する有機溶液などに応じて適宜選ばれるが、例えば、1°以上20°以下、好適には5°以上20°以下である。そして、基板11を傾斜させたまま、第1の実施の形態と同様にして、櫛歯部P2の根元に結晶を成長させ、この結晶から背部P1上に有機半導体単結晶薄膜Fを成長させる。このとき、基板11が傾斜していることにより、有機溶液はこの傾斜方向の下流側に流れる。
さらに成長を続けると、図55Cに示すように、櫛形パターンPの背部P1上にこの背部P1の長手方向に延びる大面積の有機半導体単結晶薄膜Fが成長する。このように大面積の有機半導体単結晶薄膜Fが成長する理由は、以下のように考えられる。基板11の傾斜方向の下流側に有機溶液の流れが存在する結果、有機溶液が広がり厚さが小さくなるために有機溶液の表面積が増大し、有機溶液の表面から蒸発する有機溶媒の量が増大する。これにより、有機溶液の過飽和度が増大するので、有機溶液の状態が「準安定」(図1)になりやすくなる。したがって、有機半導体単結晶薄膜Fのステップ端に絶えず成長原料である有機化合物分子が供給され、大きく薄い有機半導体単結晶薄膜Fが得られると考えられる。また、このとき、基板11の傾斜方向に有機溶液の流れが存在する結果、有機半導体単結晶薄膜Fは、櫛歯部P2に関して左右非対称に、具体的には、有機溶液の流れの下流側の方が上流側より幅が大きくなるように成長する。
図56に、実際に基板11を傾斜させて有機半導体単結晶薄膜Fの成長を行った例を示す。有機半導体単結晶薄膜FとしてはC2Ph−PXX薄膜を用いた。図56に示すように、大面積の有機半導体単結晶薄膜が成長しており、この有機半導体単結晶薄膜は櫛歯部に関して、有機溶液の流れの下流側の方が上流側より幅が大きくなるように成長していることが分かる。
この第8の実施の形態によれば、第7の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
ここで、第1の実施の形態において、櫛形パターンPの櫛歯部P2の根元に結晶C(初期結晶)が成長し、この結晶Cから有機半導体単結晶薄膜Fが成長する様子を撮影した結果について説明する。有機半導体単結晶薄膜FとしてはC2Ph−PXX薄膜を用いた。図57A、図57B、図57C、図57D及び図57Eにその結果を示す。これは、結晶成長初期の様子をビデオカメラで撮影し、5コマに編集して示したものであり、図57Aから図57Eに向かって時間が進んでいる。図57A、図57B、図57C、図57D及び図57Eに示すように、櫛歯部の根元にこの櫛歯部を塞ぐように初期結晶が成長し、この初期結晶から徐々に背部に向かって有機半導体単結晶薄膜が成長して行く様子が分かる。この観察結果は、既に説明した有機半導体単結晶薄膜の成長メカニズムが正しいことを裏付けるものである。
次に、櫛形パターンの櫛歯部の根元に成長した初期結晶から有機半導体単結晶薄膜(成長結晶)が成長する過程を詳細に検討した結果について説明する。有機半導体単結晶薄膜としてはC2Ph−PXX薄膜を用いた。
図58は一つの櫛歯部の根元に成長した初期結晶から成長結晶が成長した様子を示す光学顕微鏡写真である。この光学顕微鏡写真を詳細に見ると、初期結晶と成長結晶との間に遷移領域が存在することが分かる。
図58の破線の四角で囲まれた領域を拡大した光学顕微鏡写真を図59に示す。試料全面にカーボン保護膜を形成して保護し、特にこの領域の中央部の細長い長方形の領域の表面には厚いカーボン保護膜を形成して保護した。厚いカーボン保護膜を形成した領域を切り出し、電子顕微鏡観察用試料を採取した。そして、この電子顕微鏡観察用試料を図59の矢印で示す方向から透過型電子顕微鏡により観察した。
図60は電子顕微鏡観察用試料の遷移領域近傍の断面形態を示す断面透過型電子顕微鏡写真(低倍率像)を示す。図60に示すように、初期結晶と成長結晶との間の遷移領域においては、初期結晶から成長結晶に向かって結晶の厚さが徐々に増加している。なお、図60において、絶縁膜とあるのは、Si基板(Siウェハー)の表面に形成されたSiO2膜である(以下同様)。
図61Aに示す電子顕微鏡観察用試料の長方形で囲んだ初期結晶の部分の断面透過型電子顕微鏡写真を図61Bに示す。図61Bにおいては、複数の結晶面(結晶面Aと表示する)の1周期が1分子層に対応し、約20層観察される。図61Bに示すように、結晶面Aは結晶の表面に対してほぼ平行になっている。
図62Aに示す電子顕微鏡観察用試料の長方形で囲んだ遷移領域の部分の断面透過型電子顕微鏡写真を図62Bに示す。図62Bに示すように、遷移領域においては、結晶を構成する分子層が21層から26層に増加し、これに伴い結晶の表面が傾斜している。この遷移領域の傾斜表面を有する部分においては基板側に白いコントラストを呈した部分が観察されるが、これは多孔質領域を示す(透過型電子顕微鏡写真では多孔質の領域は白いコントラストとなって写る)。この多孔質領域は結晶欠陥を吸収する欠陥吸収部と考えられる。言い換えると、初期結晶から成長結晶が成長する際には、遷移領域において結晶欠陥が発生することにより歪みが吸収され、その結果、成長結晶が良好に成長するものと考えられる。
図63Aに示す電子顕微鏡観察用試料の長方形で囲んだ遷移領域の部分の断面透過型電子顕微鏡写真を図63Bに示す。図63Bに示すように、遷移領域の傾斜表面を有する部分においては、結晶面Aは傾斜表面にほぼ平行になっており、初期結晶から成長結晶に向かう方向に分子層が27層から1層ずつ増加している。これに伴い、図63Bにおいては、基板側に、矢印(→)で示すように、ステップが観察されている。
図64Aに示す電子顕微鏡観察用試料の長方形で囲んだ成長結晶の部分の断面透過型電子顕微鏡写真を図64Bに示す。図64Bに示すように、成長結晶の部分においては、結晶は基板表面にほぼ平行な表面を有し、結晶面Aは結晶表面にほぼ平行になっている。成長結晶を構成する分子層は62層である。
次に、有機溶液からの成長の途中で成長温度を強制的に下げたことを除いて上記と同様にして電子顕微鏡観察用試料を作製し、断面透過型電子顕微鏡観察を行った結果について説明する。図65はこの電子顕微鏡観察用試料の断面透過型電子顕微鏡写真を示す。図66はこの電子顕微鏡観察用試料の遷移領域近傍の部分の断面を拡大して示す断面透過型電子顕微鏡写真を示す。図66に示すように、初期結晶および遷移領域の結晶とも上下二層に分かれている。図67は遷移領域を拡大して示す断面透過型電子顕微鏡写真を示す。図67に示すように、結晶の上層部(表面結晶)には表面に平行な結晶面が明瞭に観察されているが、その下層部には結晶面が観察されず、これは単結晶になっていないことを示す。この観察結果は、有機溶液からの結晶成長が有機溶液の表面から開始することを裏付けるものである。すなわち、有機溶液の表面から有機溶媒が蒸発することにより有機溶液の表面が最初に過飽和となるためである。これについては後に改めて議論する。
次に、初期結晶から遷移領域を介して成長結晶が成長する際の遷移領域と成長結晶との連結部の平面形状の特徴について説明する。図68Aは良好な成長結晶が得られた場合における遷移領域と成長結晶との連結部の光学顕微鏡写真を示す。図68Aに示すように、遷移領域と成長結晶との連結部の両側とも円弧状に湾曲した形状を有する。この湾曲部の曲率半径は約2.5μmである。図68Bは遷移領域と成長結晶との連結部の片側のみ円弧状に湾曲した形状を有する場合を示す。この場合、成長結晶のうちの遷移領域との連結部が円弧状の形状を有する部分は結晶の乱れが抑制されており、良好な単結晶の成長結晶が得られている。図68Cは遷移領域と成長結晶との連結部の両側とも円弧状に湾曲した形状を有していない場合を示す。図68Cに示すように、この場合、遷移領域の結晶の乱れが成長結晶まで継続している結果、成長結晶は良好な結晶性を有していない。以上の観察結果から、良好な結晶性の成長結晶が成長するためには、少なくとも遷移領域と成長結晶との連結部の片側、好適には両側とも円弧状に湾曲した形状を有することが望ましいと考えられる。
次に、上述の電子顕微鏡観察の結果に基づいて、初期結晶から遷移領域を介して成長結晶が成長する成長モデルを考察した結果について説明する。
図3において、櫛形パターンPの親液性の表面S1に有機溶液を供給する。この場合、図4Bに示すように、櫛歯部P2の面積が背部P1の面積よりずっと小さいことにより、有機溶液Lは、背部P1上では大きく盛り上がるが、櫛歯部P2上では薄く広がる。このとき、実際には、有機溶液Lは、表面張力の作用により、図69Aに示すように、櫛歯部P2と背部P1との連結部の櫛歯部P2側の部分でくびれた形状となる。一方、既に述べたように、成長時においては、櫛歯部P2上の有機溶液Lの表面から優先的に有機溶媒の蒸発が進み、この櫛歯部P2上の有機溶液Lの表面から分子層の成長が開始する。有機溶媒の蒸発がさらに進むと、有機溶液Lの厚さが最も小さい、櫛歯部P2と背部P1との間のくびれた部分において分子層の厚さ方向の成長が終了する。こうして、図69Bに示すように、最終的に櫛歯部P2に接し、かつ櫛歯部P2の根元の部分を塞ぐように結晶Cが形成される(図3B参照)。結晶Cの成長中は、背部P1の上の有機溶液Lから有機溶媒はほとんど蒸発しないが、結晶Cの成長後には、背部P1の上の有機溶液Lの表面から有機溶媒の蒸発が開始し、この有機溶液Lの表面から分子層の成長が開始する。図69Cに示すように、このとき、この分子層は結晶Cを種として背部P1側に成長し、有機溶液Lの表面に結晶Cとほぼ同じ厚さの成長結晶、すなわち有機半導体単結晶薄膜Fが形成される。背部P1の上の有機溶液Lの液面は櫛歯部P2から背部P1の中央部に向かって上り坂のように傾斜しているが、有機溶媒の蒸発に伴って徐々に傾斜が小さくなる。この過程で有機溶液Lは櫛歯部P2から背部P1の中央部に向かう方向に徐々になくなっていき、それに伴い、この方向の距離が増す毎に結晶の下面に1分子層ずつ成長する結果、この方向に結晶、すなわち有機半導体単結晶薄膜Fの厚さが徐々に大きくなってくる。これが、図63Bに示すように、遷移領域の分子層の数が櫛歯部P2から背部P1の中央部に向かって1分子層ずつ増加している理由である。こうして成長した有機半導体単結晶薄膜Fは有機溶液Lからの有機溶媒の蒸発とともに徐々に沈下し、最終的に背部P1上に接する。以上のようにして、最終的に、図69Dに示すように、有機半導体単結晶薄膜Fが成長する。
以上のプロセスにおいて、背部P1の有機溶液Lの表面に所望の厚さの有機半導体単結晶薄膜Fが成長した場合には、それ以上成長を行う必要がないため、例えば、この有機半導体単結晶薄膜Fの下に残存する有機溶液Lを強制的に除去してもよい。このためには、例えば、背部P1の下方に基板11に排液用の溝を形成すればよい。この溝の底面および両側面は、いずれも親液性表面としておく。この溝の断面形状は特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、例えば、長方形、半円形、U形、V形などである。この溝の平面形状も特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、例えば、スリット状、格子状などである。典型的には、この溝の少なくとも一端は、基板11の端面に露出するようにする。こうすることで、この溝の露出した一端から基板11の外部に有機溶液Lを排液することができる。図70Aおよび図70Bに、溝が格子状に形成された一例を示す。ここで、図70Aは平面図、図70Bは図70AのB−B線に沿っての断面図である。図70Aおよび図70Bに示すように、この例では、基板11の主面に長方形の断面形状を有する溝Gが縦横に延びて形成されている。溝Gの幅および互いに隣接する溝Gの間の凸部の幅は例えば50μm以上100μm以下、溝Gの深さは例えば100μm以上300μm以下であるが、これに限定されるものではない。
次に、有機半導体単結晶薄膜の原料となる有機化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液を用いて結晶方位が互いに異なる二層の有機半導体単結晶薄膜からなる積層構造を形成する方法について説明する。
このためには、まず、上述と同様な方法により一層目の有機半導体単結晶薄膜を成長させる。次に、櫛歯部P2(核形成制御領域)に有機溶液が再度流れ込むように基板11を傾斜させた後、再度、基板11を水平にして上述と同様な方法により二層目の有機半導体単結晶薄膜を成長させる。このとき、有機溶液が櫛形パターンP上に残るようにするために、好適には、背部P1および櫛歯部P2とも幅を十分に大きくする。
図71に実際の成長例を示す。この例ではC2Ph−PXX薄膜を成長させた。図71に示すように、二層のC2Ph−PXX薄膜が互いに異なる結晶方位で成長していることが分かる。
次に、互いに異なる半導体からなる二層以上の有機半導体単結晶薄膜からなるヘテロ構造の形成方法について説明する。
第1の方法では、次のようにしてヘテロ構造を形成する。まず、有機半導体単結晶薄膜の原料となる互いに溶解度が異なる二種類以上の有機化合物を有機溶媒に溶解させる。次に、この有機溶液を櫛形パターンP上に供給し、成長温度を一定にして有機溶液の有機溶媒を蒸発させると、溶解度が最も低い有機化合物から結晶が成長し、続いて、次に溶解度が低い有機化合物から結晶が成長するというように、溶解度が低い有機化合物から溶解度が高い有機化合物から順次、結晶が成長する。必要に応じて、既に述べたように、櫛歯部P2(核形成制御領域)に有機溶液が再度流れ込むように基板11を傾斜させる。こうして、互いに異なる有機半導体単結晶薄膜が接合されたヘテロ構造が形成される。
第2の方法では、次のようにしてヘテロ構造を形成する。まず、有機半導体単結晶薄膜の原料となる第1の有機化合物を第1の有機溶媒に溶解した第1の有機溶液を用いて上述の方法により一層目の有機半導体単結晶薄膜を成長させる。次に、この一層目の有機半導体単結晶薄膜上に、第1の有機化合物と異なる第2の有機化合物を第2の有機溶媒に溶解した第2の有機溶液を用いて上述の方法により二層目の有機半導体単結晶薄膜を成長させる。第2の有機溶媒としては、一層目の有機半導体単結晶薄膜が溶けない、あるいは第1の有機化合物の溶解度が極めて小さい有機溶媒を用いる。以上のプロセスを必要な回数繰り返し行う。こうして、互いに異なる有機半導体単結晶薄膜が接合されたヘテロ構造が形成される。
以上、実施の形態および実施例について具体的に説明したが、本開示は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではない。
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
[1]成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記有機化合物からなる有機半導体単結晶薄膜を成長させる工程、
とを有する有機半導体素子の製造方法。
[2]上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記成長制御領域では上記有機溶液の状態が上記有機溶液の溶解度−過溶解度図の溶解度曲線と過溶解度曲線との間の準安定領域にあり、上記核形成制御領域では上記有機溶液の状態が上記溶解度−過溶解度図の過溶解度曲線の下側の不安定領域にあるようにする前記[1]に記載の有機半導体素子の製造方法。
[3]上記核形成制御領域において上記有機溶液からの核形成により形成された結晶核から成長した唯一つの結晶により上記核形成制御領域が塞がれ、この結晶が上記成長制御領域上に成長する前記[1]または[2]に記載の有機半導体素子の製造方法。
[4]上記有機溶液を一定温度に保持する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
[5]上記成長制御領域および上記核形成制御領域は親液性の表面を有する前記[1]〜[4]のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
[6]上記核形成制御領域は、上記成長制御領域と連結され、かつ上記成長制御領域の上記一辺に対して90°±10°傾斜した直線状の第1の部分を有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
[7]上記第1の部分の幅は0.1μm以上50μm以下である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
[8]上記成長制御領域は長方形であり、上記核形成制御領域の上記第1の部分は上記成長制御領域の一つの長辺にこの長辺に垂直に設けられた上記成長制御領域よりも小さい長方形である前記[1]〜[7]のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
[9]上記核形成制御領域は、上記第1の部分と連結され、かつ上記一辺に対して傾斜した直線状の第2の部分を有する前記[1]〜[8]のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
[10]上記核形成制御領域は、上記成長制御領域と連結され、かつ上記一辺上に第1の辺を有する三角形状の第3の部分およびこの第3の部分と連結され、かつ上記一辺に対して傾斜した直線状の第4の部分を有する前記[1]〜[8]のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
[11]上記有機半導体単結晶薄膜は、上記基体の上記一主面に対してほぼ平行な方向にπ電子スタック構造を有する前記[1]〜[10]のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
[12]上記有機半導体単結晶薄膜は、三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系または正方晶系の結晶構造を有し、a軸方向またはb軸方向に上記π電子スタック構造を有する前記[1]〜[11]のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
[13]上記成長制御領域上の上記有機半導体単結晶薄膜は、頂角が82°の第1の頂点および頂角が98°の第2の頂点を有する四角形または五角形の形状を有する前記[1]〜[12]のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
[14]上記基体の上記一主面に上記成長制御領域が互いに離れて複数設けられ、これらの成長制御領域のうちの少なくとも二つの成長制御領域は互いに対向して設けられ、これらの二つの成長制御領域の互いに対向する辺にそれぞれ、複数の上記核形成制御領域が互いに重ならないように設けられている前記[1]〜[13]のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
11 基板
30 有機溶液
31 基板
32 成長制御領域
33 核形成制御領域
33a 第1の部分
33b 第2の部分
33c 第3の部分
33d 第4の部分
36 有機溶液
39 有機半導体単結晶薄膜
40 Siウェハー
P 櫛形パターン
1 背部
2 櫛歯部
1 親液性の表面
2 疎液性の表面
F 有機半導体単結晶薄膜

Claims (20)

  1. 成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
    上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記有機化合物からなる有機半導体単結晶薄膜を成長させる工程、
    とを有する有機半導体素子の製造方法。
  2. 上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記成長制御領域では上記有機溶液の状態が上記有機溶液の溶解度−過溶解度図の溶解度曲線と過溶解度曲線との間の準安定領域にあり、上記核形成制御領域では上記有機溶液の状態が上記溶解度−過溶解度図の過溶解度曲線の下側の不安定領域にあるようにする請求項1記載の有機半導体素子の製造方法。
  3. 上記核形成制御領域において上記有機溶液からの核形成により形成された結晶核から成長した唯一つの結晶により上記核形成制御領域が塞がれ、この結晶が上記成長制御領域上に成長する請求項2記載の有機半導体素子の製造方法。
  4. 上記有機溶液を一定温度に保持する請求項3記載の有機半導体素子の製造方法。
  5. 上記成長制御領域および上記核形成制御領域は親液性の表面を有する請求項4記載の有機半導体素子の製造方法。
  6. 上記核形成制御領域は、上記成長制御領域と連結され、かつ上記成長制御領域の上記一辺に対して90°±10°傾斜した直線状の第1の部分を有する請求項5記載の有機半導体素子の製造方法。
  7. 上記第1の部分の幅は0.1μm以上50μm以下である請求項6記載の有機半導体素子の製造方法。
  8. 上記成長制御領域は長方形であり、上記核形成制御領域の上記第1の部分は上記成長制御領域の一つの長辺にこの長辺に垂直に設けられた上記成長制御領域よりも小さい長方形である請求項7記載の有機半導体素子の製造方法。
  9. 上記核形成制御領域は、上記第1の部分と連結され、かつ上記一辺に対して傾斜した直線状の第2の部分を有する請求項6記載の有機半導体素子の製造方法。
  10. 上記核形成制御領域は、上記成長制御領域と連結され、かつ上記一辺上に第1の辺を有する三角形状の第3の部分およびこの第3の部分と連結され、かつ上記一辺に対して傾斜した直線状の第4の部分を有する請求項5記載の有機半導体素子の製造方法。
  11. 上記有機半導体単結晶薄膜は、上記基体の上記一主面に対してほぼ平行な方向にπ電子スタック構造を有する請求項1記載の有機半導体素子の製造方法。
  12. 上記有機半導体単結晶薄膜は、三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系または正方晶系の結晶構造を有し、a軸方向またはb軸方向に上記π電子スタック構造を有する請求項11記載の有機半導体素子の製造方法。
  13. 上記成長制御領域上の上記有機半導体単結晶薄膜は、頂角が82°の第1の頂点および頂角が98°の第2の頂点を有する四角形または五角形の形状を有する請求項12記載の有機半導体素子の製造方法。
  14. 上記基体の上記一主面に上記成長制御領域が互いに離れて複数設けられ、これらの成長制御領域のうちの少なくとも二つの成長制御領域は互いに対向して設けられ、これらの二つの成長制御領域の互いに対向する辺にそれぞれ、複数の上記核形成制御領域が互いに重ならないように設けられている請求項1記載の有機半導体素子の製造方法。
  15. 成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機半導体を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
    上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記有機半導体からなる有機半導体単結晶薄膜を成長させる工程、
    とを実行することにより製造される有機半導体素子。
  16. 成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機半導体を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
    上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記有機半導体からなる有機半導体単結晶薄膜を成長させる工程、
    とを実行することにより製造される有機半導体素子を有する電子機器。
  17. 成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
    上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記有機化合物からなる有機単結晶薄膜を成長させる工程、
    とを有する有機単結晶薄膜の成長方法。
  18. 成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
    上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記有機化合物からなる有機単結晶薄膜を成長させる工程、
    とを実行することにより成長される有機単結晶薄膜。
  19. 成長制御領域およびこの成長制御領域の一辺にこの成長制御領域と連結されて設けられた少なくとも一つの核形成制御領域を一主面に有する基体の上記成長制御領域および上記核形成制御領域に有機化合物を溶媒に溶解させた不飽和の有機溶液を供給する工程と、
    上記有機溶液の上記溶媒を蒸発させることにより、上記核形成制御領域において上記有機溶液からの核形成により形成された結晶核から成長した唯一つの結晶により上記核形成制御領域を塞ぎ、この結晶を上記成長制御領域上に成長させることにより上記有機化合物からなる有機単結晶薄膜を成長させる工程、
    とを有する有機単結晶薄膜の成長方法。
  20. 基体の一主面に成長された、有機化合物からなる複数の有機単結晶薄膜からなる有機単結晶薄膜群であって、
    上記有機単結晶薄膜群のうちの17%以上47%以下の個数の有機単結晶薄膜は、頂角が82°の第1の頂点および頂角が98°の第2の頂点を有する五角形の形状を有し、
    上記有機単結晶薄膜群のうちの16%以上41%以下の個数の有機単結晶薄膜は、頂角が82°の第1の頂点および頂角が98°の第2の頂点を有する四角形の形状を有する有機単結晶薄膜群。
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