JPWO2013039038A1 - グリコリドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
フェノール系酸化防止剤の存在下でグリコール酸オリゴマーを解重合させるグリコリドの製造方法。
Description
本発明は、グリコリドの製造方法に関し、より詳しくは、グリコール酸オリゴマーを解重合させることによって得られるグリコリドの製造方法に関する。
ポリグリコール酸は、生分解性、ガスバリア性、強度などに優れた樹脂材料であり、縫合糸や人工皮膚などの医療用高分子材料;ボトル、フィルムなどの包装材料;射出成形品、繊維、蒸着フィルム、釣糸などの各種工業製品の樹脂材料などとして、広範な技術分野で用いられている。
ポリグリコール酸は、グリコール酸を脱水重縮合させることによって得ることができる。しかしながら、この方法で得られるポリグリコール酸は重量平均分子量が2万以下の低重合度のものであり、生分解性には優れるものの、ガスバリア性、強度、耐久性といった特性については多くの分野において十分に満足できるものではなかった。
このため、ポリグリコール酸は、通常、グリコリドの開環重合によって製造されている。この方法によれば、ポリグリコール酸の重合度を容易に制御できるとともに、重量平均分子量が2万を超える高重合度のポリグリコール酸を得ることができる。このとき用いられるグリコリドは、通常、下記式(I):
に従って、グリコール酸を脱水重縮合させて低重合度のグリコール酸オリゴマーを合成し、次に、このグリコール酸オリゴマーを、下記式(II):
に従って、解重合させることにより合成される。
ところで、このようなグリコール酸オリゴマーの解重合反応においては、加熱によるオリゴマーの重質化が従来から問題となっており、前記解重合反応を利用したグリコリドの製造方法について、様々な改良が行なわれている。例えば、特開平9−328481号公報(特許文献1)および国際公開第02/014303号(特許文献2)には、特定の高沸点極性有機溶媒中でグリコール酸オリゴマーの解重合反応を行うことによってオリゴマーの重質化を抑制できることが開示されている。しかしながら、これらの方法であっても、解重合反応を繰り返し行った場合には、グリコール酸オリゴマーが重質化するため、更なる改良が必要であった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、グリコール酸オリゴマーの解重合反応を利用して長時間にわたってグリコリドを製造する場合において、オリゴマーの重質化を抑制することが可能な新たなグリコリドの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、酸化防止剤の存在下でグリコール酸オリゴマーを解重合させることによって、オリゴマーの重質化を抑制することができ、長時間にわたってグリコリドを製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のグリコリドの製造方法は、フェノール系酸化防止剤の存在下でグリコール酸オリゴマーを解重合させる方法である。前記フェノール系酸化防止剤としては、分子量300以上のフェノール系酸化防止剤が好ましい。
本発明のグリコリドの製造方法において、前記グリコール酸オリゴマーの解重合は溶媒中で行うことが好ましく、前記溶媒としては沸点が230〜450℃である高沸点極性有機溶媒が好ましい。また、溶媒中での解重合により得られたグリコリドは溶媒と共留出させることが好ましい。さらに、本発明のグリコリドの製造方法においては、スズ化合物の存在下で前記グリコール酸オリゴマーの解重合を行うことも好ましい。
本発明によれば、グリコール酸オリゴマーの解重合反応を利用してグリコリドを製造する場合において、オリゴマーの重質化を抑制することができ、長時間にわたってグリコリドを製造することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のグリコリドの製造方法は、フェノール系酸化防止剤の存在下でグリコール酸オリゴマーを解重合させる方法である。また、本発明においては、前記グリコール酸オリゴマーを、溶媒中、スズ化合物の存在下、可溶化剤の存在下、またはこれらを2種以上組み合わせた条件下で解重合させることが好ましい。
(1)グリコール酸オリゴマー
本発明に用いられるグリコール酸オリゴマーは、重量平均分子量が2万以下のポリグリコール酸である。このようなグリコール酸オリゴマーはグリコール酸の重縮合反応によって合成することができる。なお、グリコール酸オリゴマーの重量平均分子量は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した、標準ポリメチルメタクリレート換算値である。
本発明に用いられるグリコール酸オリゴマーは、重量平均分子量が2万以下のポリグリコール酸である。このようなグリコール酸オリゴマーはグリコール酸の重縮合反応によって合成することができる。なお、グリコール酸オリゴマーの重量平均分子量は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した、標準ポリメチルメタクリレート換算値である。
このようなグリコール酸オリゴマーの合成方法の一例を以下に説明するが、本発明に用いられるグリコール酸オリゴマーはこの方法によって合成されたものに限定されない。例えば、グリコール酸、そのエステル(例えば、低級アルキルエステル)およびその塩(例えば、ナトリウム塩)のうちの少なくとも1種を、必要に応じて重縮合触媒またはエステル交換触媒の存在下、通常100〜250℃、好ましくは140〜230℃の温度に加熱し、水、アルコールなどの低分子量物質が実質的に留出しなくなるまで重縮合反応またはエステル交換反応を行うことによってグリコール酸オリゴマーが得られる。このようにして得られたグリコール酸オリゴマーは、そのまま本発明の製造方法における原料として使用してもよいが、ベンゼンやトルエンなどの貧溶媒で洗浄して未反応物、低重合成分および触媒などを除去した後、使用することが好ましい。
本発明に用いられるグリコール酸オリゴマーの重合度には特に制限はないが、グリコール酸オリゴマーの融点(Tm)が140℃以上(より好ましくは160℃以上、特に好ましくは180℃以上)となるような重合度が好ましい。グリコール酸オリゴマーの融点が前記下限未満になると、解重合反応により得られるグリコリドの収率が低下する傾向にある。なお、グリコール酸オリゴマーの融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて不活性ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で熱量分析を行なった場合に観察される吸熱ピーク温度として検出される温度である。グリコール酸オリゴマーの融点の上限値は約220℃である。
(2)酸化防止剤
本発明に用いられる酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤である。このようなフェノール系酸化防止剤の存在下で前記グリコール酸オリゴマーを解重合させることによって、オリゴマーの重質化を抑制することができ、長時間にわたってグリコリドを製造することが可能となる。
本発明に用いられる酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤である。このようなフェノール系酸化防止剤の存在下で前記グリコール酸オリゴマーを解重合させることによって、オリゴマーの重質化を抑制することができ、長時間にわたってグリコリドを製造することが可能となる。
前記フェノール系酸化防止剤としては、下記式(1−1)〜(1−5):
(式中、R11は炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルキル基を表し、R12は炭素数1〜5(好ましくは1〜3)のアルキレン基を表し、R13は炭素数1〜30(好ましくは15〜25)のアルキル基を表し、R14は水素原子または炭素数1〜5(好ましくは1〜3)のアルキル基を表す。)
で表されるフェノール系化合物、下記式(1−6):
で表されるフェノール系化合物、下記式(1−6):
で表されるトコフェロール〔CAS番号:1406−66−2、分子量:417〕、下記式(2−1)〜(2−2):
(式中、R21はt−ブチル基または1−メチルシクロヘキシル基を表し、R22は炭素数1〜5(好ましくは1〜3)のアルキル基を表し、R23は炭素数1〜5(好ましくは1〜3)のアルキレン基を表し、R24およびR25は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5(好ましくは1〜3)のアルキル基を表し、好ましくは一方が水素原子であり、他方が前記アルキル基であり、R26は硫黄原子、炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルキレン基、またはオキサスピロ環を有する2価の基を表す。)
で表されるビスフェノール系化合物、下記式(3):
で表されるビスフェノール系化合物、下記式(3):
(式中、R31は水素原子または炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルキル基を表し、R32は水素原子または炭素数1〜5(好ましくは1〜3)のアルキル基を表し、R31およびR32のうちの一方が水素原子であり、他方が前記アルキル基であり、R33は3価の脂肪族炭化水素基、3価の芳香族基または3価の複素環基を表す。)
で表されるトリフェノール系化合物、下記式(4):
で表されるトリフェノール系化合物、下記式(4):
(式中、R41は炭素数1〜5(好ましくは1〜3)のアルキレン基を表す。)
で表されるテトラフェノール系化合物などが挙げられる。
で表されるテトラフェノール系化合物などが挙げられる。
前記オキサスピロ環を有する2価の基としては、下記式(2−2−1):
で表される基が挙げられる。また、前記3価の芳香族環および複素環としては、下記式(3−1)および(3−2):
(式中、R34は、炭素数1〜5(好ましくは1〜3)のアルキレン基を表し、R35は炭素数1〜5(好ましくは1〜3)のアルキル基を表す。)
で表される基が挙げられる。
で表される基が挙げられる。
前記式(1−1)〜(1−5)、(2−1)、(2−2)、(3)、(3−1)、(3−2)および(4)中のアルキル基、アルキレン基、3価の脂肪族炭化水素基は直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。
前記式(1−1)で表されるフェノール系化合物としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール〔CAS番号:128−37−0、分子量:220〕などが挙げられ、前記式(1−2)で表されるフェノール系化合物としては、ブチル化ヒドロキシアニソール〔CAS番号:25013−16−5、分子量:180〕などが挙げられ、前記式(1−3)で表されるフェノール系化合物としては、メチルハイドロキノン〔CAS番号:95−71−6、分子量:124〕などが挙げられ、前記式(1−4)で表されるフェノール系化合物としては、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〔CAS番号:2082−79−3、分子量:531〕などが挙げられ、前記式(1−5)で表されるフェノール系化合物としては、p−ベンゾキノン〔CAS番号:106−51−4、分子量:108〕、メチル−p−べンゾキノン〔CAS番号:553−97−9、分子量:122〕などが挙げられる。
前記式(2−1)で表されるビスフェノール系化合物としては、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)〔CAS番号:119−47−1、分子量:341〕、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)〔CAS番号:88−24−4、分子量:369〕、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルジフェニルメタン〔CAS番号:77−62−3、分子量:421〕などが挙げられ、前記式(2−2)で表されるビスフェノール系化合物としては、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)〔CAS番号:96−69−5、分子量:359〕、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)〔CAS番号:85−60−9、分子量:383〕、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〔CAS番号:90498−90−1、分子量:741〕などが挙げられる。
前記式(3)で表されるトリフェノール系化合物としては、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン〔CAS番号:1843−03−4、分子量:545〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン〔CAS番号:1709−70−2、分子量:775〕、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン〔CAS番号:27676−62−6、分子量:784〕などが挙げられる。前記式(4)で表されるテトラフェノール系化合物としては、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン〔CAS番号:6683−19−8、分子量:1178〕などが挙げられる。
このようなフェノール系酸化防止剤は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのフェノール系酸化防止剤のうち、高温・高減圧下で行われる解重合反応時に留出しにくいという観点から、分子量が300以上のフェノール系酸化防止剤がより好ましく、分子量が500以上のフェノール系酸化防止剤がさらに好ましく、分子量が700以上のフェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
分子量が300〜499のフェノール系酸化防止剤としては、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)〔分子量:341〕、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)〔分子量:369〕、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)〔分子量:359〕、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)〔分子量:383〕、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルジフェニルメタン〔分子量:421〕、トコフェロール〔分子量:417〕などが挙げられる。また、分子量が500〜699のフェノール系酸化防止剤としては、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〔分子量:531〕、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン〔分子量:545〕などが挙げられる。さらに、分子量が700以上のフェノール系酸化防止剤としては、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〔分子量:741〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン〔分子量:775〕、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン〔分子量:1178〕、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン〔分子量:784〕などが挙げられる。
本発明において、反応系内のフェノール系酸化防止剤量としては、グリコール酸オリゴマー100質量部に対して0.5〜5質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。フェノール系酸化防止剤量が前記下限未満になると、グリコール酸オリゴマーの重質化を十分に抑制できない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、製造コストが上昇し、経済性の面で好ましくない傾向にある。
なお、本発明にかかるグリコール酸オリゴマーの解重合反応においては、前記フェノール系酸化防止剤の代わりに、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などを使用することも可能であるが、解重合反応液やグリコリドに対して着色や変性、劣化といった影響を及ぼしにくいといった観点から、本発明においてはフェノール系酸化防止剤を使用する。
前記アミン系酸化防止剤としては、下記式(5):
(式中、R51は炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)
で表されるピペリジン系化合物が挙げられる。前記アルキレン基は直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。前記式(5)で表されるピペリジン系化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート〔CAS番号:52829−07−9、分子量:481〕などが挙げられる。
で表されるピペリジン系化合物が挙げられる。前記アルキレン基は直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。前記式(5)で表されるピペリジン系化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート〔CAS番号:52829−07−9、分子量:481〕などが挙げられる。
前記硫黄系酸化防止剤としては、下記式(6):
(式中、R61は炭素数1〜30(好ましくは10〜20)のアルキル基を表す。)
で表されるスルフィド系化合物が挙げられる。前記アルキル基は直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。前記式(6)で表されるスルフィド系化合物としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート〔CAS番号:123−28−4、分子量:515〕、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート〔CAS番号:16545−54−3、分子量:571〕、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート〔CAS番号:693−36−7、分子量:683〕などが挙げられる。
で表されるスルフィド系化合物が挙げられる。前記アルキル基は直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。前記式(6)で表されるスルフィド系化合物としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート〔CAS番号:123−28−4、分子量:515〕、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート〔CAS番号:16545−54−3、分子量:571〕、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート〔CAS番号:693−36−7、分子量:683〕などが挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、下記式(7−1)〜(7−3):
(式中、R71およびR72は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキル基を表し、R73は炭素数1〜20(好ましくは5〜15)のアルキル基を表す。)
で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(7−4):
で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(7−4):
(式中、R74は炭素1〜30(好ましくは15〜25)のアルキル基または炭素数6〜30(好ましくは10〜20)アリール基を表す。)
で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(7−5):
で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(7−5):
(式中、R75は炭素数1〜30(好ましくは10〜20)のアルキル基を表し、R76は炭素数1〜5(好ましくは1〜3)のアルキル基を表し、R77は炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルキレン基を表す。)
で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(7−6):
で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(7−6):
(式中、R78は炭素数1〜20(好ましくは5〜15)のアルキル基を表す。)
で表される亜リン酸エステル化合物などが挙げられる。
で表される亜リン酸エステル化合物などが挙げられる。
前記式(7−1)〜(7−6)中のアルキル基、アルキレン基は直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。
前記式(7−1)で表される亜リン酸エステル化合物としては、トリフェニルホスファイト〔CAS番号:101−02−0、分子量:310〕、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト〔CAS番号:26523−78−4、分子量:689〕、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト〔CAS番号:31570−04−4、分子量:647〕などが挙げられ、前記式(7−2)で表される亜リン酸エステル化合物としては、ジフェニルイソデシルホスファイト〔CAS番号:26544−23−0、分子量:374〕などが挙げられ、前記式(7−3)で表される亜リン酸エステル化合物としては、フェニルジイソデシルホスファイト〔CAS番号:25550−98−5、分子量:439〕などが挙げられる。
前記式(7−4)で表される亜リン酸エステル化合物としては、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)〔CAS番号:3806−34−6、分子量:733〕、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト〔CAS番号:80693−00−1、分子量:633〕などが挙げられる。前記式(7−5)で表される亜リン酸エステル化合物としては、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト〔CAS番号:13003−12−8、分子量:1240〕などが挙げられる。前記式(7−6)で表される亜リン酸エステル化合物としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト〔CAS番号:126050−54−2、分子量:583〕などが挙げられる。
(3)溶媒
本発明においては、グリコール酸オリゴマーの解重合反応性を向上させるために、溶媒を使用することが好ましい。このような溶媒としては極性有機溶媒が好ましく、沸点が230〜450℃である高沸点極性有機溶媒がより好ましい。このような高沸点極性有機溶媒は、解重合反応において溶媒として作用するとともに、生成したグリコリドを反応系から取り出す際の共留出成分として作用し、製造ラインの内壁にグリコリドなどが付着することを防ぐことができる。したがって、極性有機溶媒の沸点が前記下限未満になると、解重合反応温度を高く設定することができず、グリコリドの生成速度が低下する傾向にある。他方、極性有機溶媒の沸点が前記上限を超えると、解重合反応時に極性有機溶媒が留出しにくく、生成したグリコリドとの共留出が困難となる傾向にある。このような観点から、高沸点極性有機溶媒の沸点としては235〜450℃がより好ましく、255〜430℃がさらに好ましく、280〜420℃が特に好ましい。なお、本発明において極性有機溶媒の沸点は、常圧下での値であり、減圧下で沸点を測定した場合には常圧での値に換算する。
本発明においては、グリコール酸オリゴマーの解重合反応性を向上させるために、溶媒を使用することが好ましい。このような溶媒としては極性有機溶媒が好ましく、沸点が230〜450℃である高沸点極性有機溶媒がより好ましい。このような高沸点極性有機溶媒は、解重合反応において溶媒として作用するとともに、生成したグリコリドを反応系から取り出す際の共留出成分として作用し、製造ラインの内壁にグリコリドなどが付着することを防ぐことができる。したがって、極性有機溶媒の沸点が前記下限未満になると、解重合反応温度を高く設定することができず、グリコリドの生成速度が低下する傾向にある。他方、極性有機溶媒の沸点が前記上限を超えると、解重合反応時に極性有機溶媒が留出しにくく、生成したグリコリドとの共留出が困難となる傾向にある。このような観点から、高沸点極性有機溶媒の沸点としては235〜450℃がより好ましく、255〜430℃がさらに好ましく、280〜420℃が特に好ましい。なお、本発明において極性有機溶媒の沸点は、常圧下での値であり、減圧下で沸点を測定した場合には常圧での値に換算する。
また、このような極性有機溶媒の分子量としては150〜450が好ましく、180〜420がより好ましく、200〜400が特に好ましい。極性有機溶媒の分子量が前記範囲外になると、グリコリドとの共留出が起こりにくい傾向にある。
このような高沸点極性有機溶媒としては、例えば、芳香族ジカルボン酸ジエステル、芳香族カルボン酸エステル、脂肪族ジカルボン酸ジエステル、ポリアルキレングリコールジエーテル、芳香族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルエステル、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルエステル、ポリアルキレングリコールジエステル、芳香族リン酸エステルなどが挙げられる。これらの高沸点極性有機溶媒の中でも、芳香族ジカルボン酸ジエステル、芳香族カルボン酸エステル、脂肪族ジカルボン酸ジエステル、ポリアルキレングリコールジエーテルが好ましく、熱劣化が起こりにくいという観点から、ポリアルキレングリコールジエーテルがより好ましい。また、前記高沸点極性有機溶媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
前記芳香族ジカルボン酸ジエステルとしては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジベンジルフタレート、ベンジルブチルフタレートなどのフタル酸エステル類が挙げられる。前記芳香族カルボン酸エステルとしては、例えば、ベンジルベンゾエートなどの安息香酸エステルが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸ジエステルとしては、ジオクチルアジペートなどのアジピン酸エステル、ジブチルセバケートなどのセバシン酸エステルが挙げられる。
前記ポリアルキレングリコールジエーテルとしては、下記式(8):
X1−O−(R1−O)p−Y1 (8)
(前記式(8)中、R1はメチレン基または炭素数2〜8の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基を表し、X1は炭化水素基を表し、Y1は炭素数2〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。pは1以上の整数であり、pが2以上の場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
X1−O−(R1−O)p−Y1 (8)
(前記式(8)中、R1はメチレン基または炭素数2〜8の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基を表し、X1は炭化水素基を表し、Y1は炭素数2〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。pは1以上の整数であり、pが2以上の場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
前記式(8)中のR1は、メチレン基または炭素数2〜8の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基であれば特に制限はないが、前記式(8)で表されるポリアルキレングリコールジエーテルを入手または合成しやすいという観点からエチレン基であることが好ましい。
前記式(8)中のX1は、アルキル基、アリール基などの炭化水素基であり、中でも、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。この炭化水素基の炭素数が前記上限を超えると、前記式(8)で表されるポリアルキレングリコールジエーテルの極性が低下してグリコール酸オリゴマーの溶解性が低下するとともにグリコリドとの共留出が困難となる傾向にある。前記アルキル基としてはメチル基、エチル基。プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基などが挙げられる。これらのアルキル基は分岐状のものでも直鎖状のものでもよい。前記アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、置換フェニル基、置換ナフチル基などが挙げられる。置換フェニル基および置換ナフチル基の置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子(Cl、Br、Iなど)が好ましい。このような置換基の数は、例えば、置換フェニル基の場合には1〜5であり、好ましくは1〜3であり、置換基が複数存在する場合にはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。なお、このような置換基はポリアルキレングリコールジエーテルの沸点と極性を調整する役割を果たす。
前記式(8)中のY1は、炭素数2〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基である。Y1の炭素数が前記上限を超えると、前記式(8)で表されるポリアルキレングリコールジエーテルの極性が低下してグリコール酸オリゴマーの溶解性が低下するとともにグリコリドとの共留出が困難となる。他方、Y1がメチル基になると、前記式(8)で表されるポリアルキレングリコールジエーテルがグリコリドとの共留出に適切な高沸点の溶媒となるためにはR1の炭素数を大きくする必要がある。しかしながら、このようなポリアルキレングリコールジエーテルを合成するとpが幅広い分布を持ち、蒸留による精製が必要となるなど製造工程が煩雑となる。従って、工業的規模での実施という観点から、前記式(8)中のY1がメチル基であるポリアルキレングリコールジエーテルは好ましくない。前記アルキル基およびアリール基としては、それぞれ前記X1のアルキル基およびアリール基として例示したものが挙げられる。
前記式(8)中のpは1以上の整数であるが、2以上の整数であることが好ましい。他方、pの上限としては特に制限はないが、8以下の整数であることが好ましく、5以下の整数であることがより好ましい。pが前記上限をこえると、ポリアルキレングリコールジエーテルの合成時に重合度分布が広くなり、前記式(8)中のpが同じであるポリアルキレングリコールジエーテルを単離しにくくなる傾向にある。また、pが2以上の場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
このようなポリアルキレングリコールジエーテルのうち、前記式(8)中のX1およびY1がともにアルキル基であり、且つ、X1とY1の炭素数の合計が3〜21(より好ましくは6〜20)であるポリアルキレングリコールジエーテルが好ましい。また、この場合、X1およびY1は同一のアルキル基であってもよいし、異なるアルキル基であってもよい。
このようなポリアルキレングリコールジエーテルの具体例としては、
ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジオクチルエーテル、ジエチレングリコールブチル−2−クロロフェニルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジオクチルエーテル、トリエチレングリコールブチルオクチルエーテル、トリエチレングリコールブチルデシルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジプロピルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジオクチルエーテル、ジエチレングリコールブチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルオクチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルオクチルエーテル、トリエチレングリコールブチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールヘキシルオクチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールブチルオクチルエーテル、テトラエチレングリコールヘキシルオクチルエーテルなどのポリエチレングリコールジアルキルエーテル;
このポリエチレングリコールジアルキルエーテルのエチレンオキシ基の代わりにプロピレンオキシ基またはブチレンオキシ基を有するポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(例えば、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリブチレングリコールジアルキルエーテル);
ジエチレングリコールブチルフェニルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルフェニルエーテル、ジエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、トリエチレングリコールブチルフェニルエーテル、トリエチレングリコールヘキシルフェニルエーテル、トリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、テトラエチレングリコールブチルフェニルエーテル、テトラエチレングリコールヘキシルフェニルエーテル、テトラエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、およびこれらのポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルのフェニル基の水素原子がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換された化合物といったポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル;
このポリエチレングリコールアルキルアリールエーテルのエチレンオキシ基の代わりにプロピレンオキシ基またはブチレンオキシ基を有するポリアルキレングリコールアルキルアリールエーテル(例えば、ポリプロピレングリコールアルキルアリールエーテル、ポリブチレングリコールアルキルアリールエーテル);
ジエチレングリコールジフェニルエーテル、トリエチレングリコールジフェニルエーテル、テトラエチレングリコールジフェニルエーテル、およびこれらのポリエチレングリコールジフェニルエーテルのフェニル基の水素原子がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換された化合物といったポリエチレングリコールジアリールエーテル;
このポリエチレングリコールジアリールエーテルのエチレンオキシ基の代わりにプロピレンオキシ基またはブチレンオキシ基を有するポリアルキレングリコールジアリールエーテル(例えば、ポリプロピレングリコールジアリールエーテル、ポリブチレングリコールジアリールエーテル);
などが挙げられる。また、このようなポリアルキレングリコールジエーテルは、国際公開第02/014303号に記載の方法により合成することができる。
ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジオクチルエーテル、ジエチレングリコールブチル−2−クロロフェニルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジオクチルエーテル、トリエチレングリコールブチルオクチルエーテル、トリエチレングリコールブチルデシルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジプロピルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジオクチルエーテル、ジエチレングリコールブチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルオクチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルオクチルエーテル、トリエチレングリコールブチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールヘキシルオクチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールブチルオクチルエーテル、テトラエチレングリコールヘキシルオクチルエーテルなどのポリエチレングリコールジアルキルエーテル;
このポリエチレングリコールジアルキルエーテルのエチレンオキシ基の代わりにプロピレンオキシ基またはブチレンオキシ基を有するポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(例えば、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリブチレングリコールジアルキルエーテル);
ジエチレングリコールブチルフェニルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルフェニルエーテル、ジエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、トリエチレングリコールブチルフェニルエーテル、トリエチレングリコールヘキシルフェニルエーテル、トリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、テトラエチレングリコールブチルフェニルエーテル、テトラエチレングリコールヘキシルフェニルエーテル、テトラエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、およびこれらのポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルのフェニル基の水素原子がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換された化合物といったポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル;
このポリエチレングリコールアルキルアリールエーテルのエチレンオキシ基の代わりにプロピレンオキシ基またはブチレンオキシ基を有するポリアルキレングリコールアルキルアリールエーテル(例えば、ポリプロピレングリコールアルキルアリールエーテル、ポリブチレングリコールアルキルアリールエーテル);
ジエチレングリコールジフェニルエーテル、トリエチレングリコールジフェニルエーテル、テトラエチレングリコールジフェニルエーテル、およびこれらのポリエチレングリコールジフェニルエーテルのフェニル基の水素原子がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換された化合物といったポリエチレングリコールジアリールエーテル;
このポリエチレングリコールジアリールエーテルのエチレンオキシ基の代わりにプロピレンオキシ基またはブチレンオキシ基を有するポリアルキレングリコールジアリールエーテル(例えば、ポリプロピレングリコールジアリールエーテル、ポリブチレングリコールジアリールエーテル);
などが挙げられる。また、このようなポリアルキレングリコールジエーテルは、国際公開第02/014303号に記載の方法により合成することができる。
このようなポリアルキレングリコールジエーテルのうち、合成が容易であり、熱劣化が起こりにくいという観点から、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテルがより好ましい。
また、本発明に用いられるポリアルキレングリコールジエーテルとしては、25℃におけるグリコリドの溶解度が0.1〜10%であるものが好ましい。なお、グリコリドの溶解度とは、25℃のポリアルキレングリコールジエーテルにグリコリドを飽和状態になるまで溶解させたときのポリアルキレングリコールジエーテルの容積(ml)に対するグリコリドの質量(g)を百分率で表したものである。グリコリドの溶解度が前記下限未満になると、ポリアルキレングリコールジエーテルと共留出したグリコリドが製造ラインの途中で析出して製造ラインの閉塞などが起こる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、共留出したグリコリドを回収するために、例えば、共留出物を0℃以下に冷却したり、共留出物に貧溶媒を加えたりして、グリコリドを単離しなければならない場合がある。
このような所定のグリコリドの溶解度を有するポリアルキレングリコールジエーテルとしては、テトラエチレングリコールジブチルエーテル(沸点=340℃、分子量=306、グリコリドの溶解度=4.6%)、トリエチレングリコールブチルオクチルエーテル(沸点=350℃、分子量=350、グリコリドの溶解度=2.0%)、トリエチレングリコールブチルデシルエーテル(沸点=400℃、分子量=400、グリコリドの溶解度=1.3%)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点=256℃、分子量=218、グリコリドの溶解度=1.8%)、及びジエチレングリコールブチル2−クロロフェニルエーテル(沸点=345℃、分子量=273、グリコリドの溶解度=1.8%)が挙げられる。これらの中でも、合成の容易性、耐熱劣化性、グリコール酸オリゴマーの解重合反応性、グリコリドの回収性などの観点から、テトラエチレングリコールジブチルエーテル及びトリエチレングリコールブチルオクチルエーテルがより好ましい。
本発明において、反応系内の溶媒量としては、グリコール酸オリゴマー100質量部に対して30〜5000質量部が好ましく、50〜2000質量部がより好ましく、60〜200質量部が特に好ましい。溶媒量が前記下限未満になると、解重合温度条件下において、反応系内のグリコール酸オリゴマーの溶液相の比率が低下(グリコール酸オリゴマーの融液相の比率が増大)し、グリコール酸オリゴマーの解重合反応性が低下したり、融液相においてグリコール酸オリゴマーが重質化したりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、解重合反応時の熱効率が低下し、解重合反応によるグリコリドの生産性も低下する傾向にある。
(4)スズ化合物
本発明においては、二塩化スズ、四塩化スズ、アルキルカルボン酸スズなどのスズ化合物を使用することが好ましい。このようなスズ化合物を使用することによって、解重合反応におけるグリコール酸やその鎖状二量体などの生成が抑制され、スズ化合物を使用しない場合に比べて、グリコリドの収量を大きく増大させることが可能となる。
本発明においては、二塩化スズ、四塩化スズ、アルキルカルボン酸スズなどのスズ化合物を使用することが好ましい。このようなスズ化合物を使用することによって、解重合反応におけるグリコール酸やその鎖状二量体などの生成が抑制され、スズ化合物を使用しない場合に比べて、グリコリドの収量を大きく増大させることが可能となる。
このようなスズ化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、前記スズ化合物のうち、グリコリドの生産性が向上するという観点から、二塩化スズまたはオクタン酸スズが好ましく、オクタン酸スズがより好ましい。
本発明において、反応系内のスズ化合物量としては、グリコール酸オリゴマー100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜2質量部がより好ましく、0.1〜0.5質量部が特に好ましい。スズ化合物量が前記下限未満になると、解重合反応におけるグリコール酸やその鎖状二量体などの生成が十分に抑制されず、グリコリドの収量が十分に増大しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、溶媒や可溶化剤の分解反応が促進され、分解物がグリコリドと共留出するため、グリコリドの純度が低下する傾向にある。
(5)可溶化剤
本発明においては、溶媒(特に、高沸点極性有機溶媒)に対するグリコール酸オリゴマーの溶解特性(溶解度および/または溶解速度)を向上させるために、可溶化剤を添加することが好ましい。また、可溶化剤を添加することによってグリコール酸オリゴマーの解重合反応性を高めることもできる。このような可溶化剤としては、次の要件(1)〜(5)のいずれか1つ以上を満たす化合物であることが好ましい。
本発明においては、溶媒(特に、高沸点極性有機溶媒)に対するグリコール酸オリゴマーの溶解特性(溶解度および/または溶解速度)を向上させるために、可溶化剤を添加することが好ましい。また、可溶化剤を添加することによってグリコール酸オリゴマーの解重合反応性を高めることもできる。このような可溶化剤としては、次の要件(1)〜(5)のいずれか1つ以上を満たす化合物であることが好ましい。
(1)非塩基性化合物であること。すなわち、アミン、ピリジン、キノリンなどの塩基性化合物は、グリコール酸オリゴマーや生成するグリコリドと反応するおそれがあるため、好ましくない。
(2)溶媒に相溶性または可溶性の化合物であること。溶媒に相溶性または可溶性の化合物であれば、常温で液体でも固体でもよい。
(3)沸点が180℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上、特に好ましくは250℃以上の化合物であること。特に、解重合反応に使用する溶媒の沸点よりも高沸点の化合物を可溶化剤として使用すると、グリコリドと溶媒の共留出時には、可溶化剤が留出しないか、留出量が極めて少なくなるので好ましい。多くの場合、沸点が450℃以上の化合物を可溶化剤として使用することにより、良好な結果を得ることができる。ただし、解重合反応に使用する溶媒の沸点よりも低沸点の化合物であっても、アルコール類などは、可溶化剤として好適に使用することができる。
(4)例えば、OH基、COOH基、CONH基などの官能基を有する化合物であること。
(5)溶媒よりもグリコール酸オリゴマーとの親和性が高いこと。なお、可溶化剤とグリコール酸オリゴマーとの親和性は、グリコール酸オリゴマーと溶媒との混合物を230℃以上の温度に加熱して均一な溶液相を形成させ、そこに、グリコール酸オリゴマーを更に添加して、その濃度を、混合物が均一溶液相を形成しなくなるまで高め、そこに可溶化剤を加えて、再び均一溶液相を形成するか否かを目視により観察することによって確認することができる。
本発明においては、このような要件のいずれか1つ以上を満たす化合物を可溶化剤として使用することが好ましいが、具体的には、アルコール類、フェノール類、脂肪族カルボン酸類、脂肪族アミド類、脂肪族イミド類、分子量が450を超えるポリアルキレングリコールジエーテルおよびスルホン酸類からなる群から選択される少なくとも1種の非塩基性有機化合物であって、沸点が180℃以上(より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは230℃以上、特に好ましくは250℃以上)のものを可溶化剤として使用することが好ましい。
このような可溶化剤の中でもアルコール類は特に効果的である。前記アルコール類としては、デカノール、トリデカノール、デカンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族アルコール;クレゾール、クロロフェノール、ナフチルアルコールなどの芳香族アルコール;ポリアルキレングリコール;ポリアルキレングリコールモノエーテルなどが挙げられる。これらのアルコール類は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
また、このようなアルコール類の中でも、高沸点であるため留出することがほとんどなく、しかも、グリコール酸オリゴマーの溶解性が高く、解重合反応が促進され、さらに反応容器内壁のクリーニング効果が特に優れていることから、下記式(9):
HO−(R2−O)q−X2 (9)
(式(9)中、R2はメチレン基または炭素数2〜8の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基を表し、X2は炭化水素基を表す。qは1以上の整数であり、qが2以上の場合、複数のR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるポリアルキレングリコールモノエーテルが好ましい。
HO−(R2−O)q−X2 (9)
(式(9)中、R2はメチレン基または炭素数2〜8の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基を表し、X2は炭化水素基を表す。qは1以上の整数であり、qが2以上の場合、複数のR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるポリアルキレングリコールモノエーテルが好ましい。
前記式(9)中のR2は、メチレン基または炭素数2〜8の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基であれば特に制限はないが、前記式(9)で表されるポリアルキレングリコールジエーテルを入手または合成しやすいという観点からエチレン基であることが好ましい。また、前記式(9)中のX2は、アルキル基、アリール基などの炭化水素基であり、中でも、炭素数1〜18の炭化水素基が好ましく、炭素数6〜18の炭化水素基がより好ましい。
このようなポリアルキレングリコールモノエーテルのうち、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリエチレングリコールモノオクチルエーテル、ポリエチレングリコールモノデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテルなどのポリエチレングリコールモノアルキルエーテル;このポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのエチレンオキシ基の代わりにプロピレンオキシ基またはブチレンオキシ基を有するポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリブチレングリコールモノアルキルエーテル)が好ましく、ポリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリエチレングリコールモノオクチルエーテル、ポリエチレングリコールモノデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル;このポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのエチレンオキシ基の代わりにプロピレンオキシ基またはブチレンオキシ基を有するポリアルキレングリコールモノエーテルがより好ましい。このようなポリアルキレングリコールモノエーテルは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
また、他の好ましいアルコール類としては、下記式(10):
HO−(R3−O)r−H (10)
(式(10)中、R3はメチレン基または炭素数2〜8の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基を表す。rは1以上の整数であり、rが2以上の場合、複数のR3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるポリアルキレングリコールが挙げられる。
HO−(R3−O)r−H (10)
(式(10)中、R3はメチレン基または炭素数2〜8の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基を表す。rは1以上の整数であり、rが2以上の場合、複数のR3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるポリアルキレングリコールが挙げられる。
前記式(10)中のR3は、メチレン基または炭素数2〜8の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基であれば特に制限はないが、前記式(10)で表されるポリアルキレングリコールを入手または合成しやすいという観点からエチレン基であることが好ましい。
このようなポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
また、可溶化剤として用いられる、分子量が450を超えるポリアルキレングリコールジエーテルとしては、ポリエチレングリコールジメチルエーテル#500(平均分子量500)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル#2000(平均分子量2000)などが挙げられる。分子量が前記下限以下になると、解重合反応時のグリコリドの留出とともに可溶化剤も留出し、本発明にかかる混合物中でのグリコール酸オリゴマーの溶解性が低下する傾向にある。
なお、グリコール酸オリゴマーの解重合反応における可溶化剤の作用は、未だ十分に明らかではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、可溶化剤は、1)グリコール酸オリゴマーの末端と反応してグリコール酸オリゴマーを溶けやすいもの(状態)に変える作用、2)グリコール酸オリゴマーの分子鎖の中間に作用して分子鎖を切断し、分子量を調整してグリコール酸オリゴマーを溶けやすいものに変える作用、3)溶媒系全体の極性を変えて親水性を高め、グリコール酸オリゴマーの溶解性を高める作用、4)グリコール酸オリゴマーを乳化分散させる作用、5)グリコール酸オリゴマーの一方の末端に結合して解重合反応点を増やす作用、6)グリコール酸オリゴマーの中間に作用して切断するとともに、切断した分子鎖末端に結合して解重合反応点を増やす作用、7)これらの複合作用を行うもの、と推定される。
本発明において、反応系内の可溶化剤量としては、グリコール酸オリゴマー100質量部に対して0.1〜500質量部が好ましく、1〜300質量部がより好ましい。可溶化剤量が前記下限未満になると、溶媒(特に、高沸点極性有機溶媒)に対するグリコール酸オリゴマーの溶解特性が低下することがある。他方、可溶化剤の含有量が前記上限を超えると可溶化剤の回収にコストがかかり、経済性の面で好ましくない傾向にある。
<グリコリドの製造方法>
本発明のグリコリドの製造方法においては、フェノール系酸化防止剤の存在下でグリコール酸オリゴマーを解重合させる。この解重合は、溶媒中で行うことが好ましい。これにより、グリコリドの生成および揮発速度を向上させることが可能となる。また、スズ化合物の存在下、可溶化剤の存在下、またはこれらを組み合わせた条件下で前記解重合を行うことも好ましい。以下、フェノール系酸化防止剤の存在下、溶媒中でグリコール酸オリゴマーを解重合させる方法について詳細に説明する。
本発明のグリコリドの製造方法においては、フェノール系酸化防止剤の存在下でグリコール酸オリゴマーを解重合させる。この解重合は、溶媒中で行うことが好ましい。これにより、グリコリドの生成および揮発速度を向上させることが可能となる。また、スズ化合物の存在下、可溶化剤の存在下、またはこれらを組み合わせた条件下で前記解重合を行うことも好ましい。以下、フェノール系酸化防止剤の存在下、溶媒中でグリコール酸オリゴマーを解重合させる方法について詳細に説明する。
(溶解工程)
先ず、グリコール酸オリゴマーとフェノール系酸化防止剤と溶媒とを混合する。得られた混合物を加熱して、溶媒にグリコール酸オリゴマーおよびフェノール系酸化防止剤を溶解させる。このとき、前記混合物には可溶化剤を混合することが好ましい。これにより、グリコール酸オリゴマーの溶媒への溶解性が向上し、グリコリドの生成および揮発速度を飛躍的に向上させることが可能となる。また、必要に応じてスズ化合物を混合してもよい。これにより、グリコリドの収量を増大させることができる。
先ず、グリコール酸オリゴマーとフェノール系酸化防止剤と溶媒とを混合する。得られた混合物を加熱して、溶媒にグリコール酸オリゴマーおよびフェノール系酸化防止剤を溶解させる。このとき、前記混合物には可溶化剤を混合することが好ましい。これにより、グリコール酸オリゴマーの溶媒への溶解性が向上し、グリコリドの生成および揮発速度を飛躍的に向上させることが可能となる。また、必要に応じてスズ化合物を混合してもよい。これにより、グリコリドの収量を増大させることができる。
前記混合物の加熱温度としては、200〜350℃が好ましく、210〜310℃がより好ましく、220〜300℃が特に好ましく、230〜290℃が最も好ましい。加熱温度が前記下限未満になると、グリコール酸オリゴマーが溶媒に溶解しにくく、均一な溶液が得られにくいため、グリコール酸オリゴマーの解重合反応性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、グリコール酸オリゴマーが重質化する傾向にある。
また、前記混合物の加熱は常圧下で行なっても減圧下で行なってもよいが、0.1〜90kPa(より好ましくは1〜30kPa、特に好ましくは1.5〜20kPa、最も好ましくは2〜10kPa)の減圧下で行うことが好ましい。さらに、不活性ガス雰囲気下で加熱することも好ましい。
グリコール酸オリゴマーを溶媒に溶解させる場合、均一な溶液相を形成させることが好ましいが、グリコール酸オリゴマー融液相の残存率が0.5以下であればグリコール酸オリゴマー融液相が残存していてもよい。「融液相の残存率」とは、流動パラフィンのようにグリコール酸オリゴマーに対して実質的に溶解力のない溶媒中にグリコール酸オリゴマーを所定量添加してグリコール酸オリゴマーが解重合する温度まで加熱した場合に形成されるグリコール酸オリゴマー融液相の容積をa(ml)とし、実際に使用する溶媒中にグリコール酸オリゴマーを同量添加してグリコール酸オリゴマーが解重合する温度まで加熱した場合に形成されるグリコール酸オリゴマー融液相の容積をb(ml)とした場合に、b/aで表される比率を意味する。このような融液相の残存率としては0.3以下がより好ましく、0.1以下が特に好ましく、実質的にゼロであることが最も好ましい。融液相の残存率が前記上限を超えると、生成したグリコリドの留出が起こりにくくなるとともに、融液相においてグリコール酸オリゴマーが重質化する傾向にある。
(解重合工程)
次に、このようにして調製した溶液相(グリコール酸オリゴマーとフェノール系酸化防止剤と、必要に応じて可溶化剤およびスズ化合物とを溶媒中に実質的に均一に溶解したもの)の加熱をさらに継続し、前記溶液相中でグリコール酸オリゴマーを解重合させ、グリコリドを生成させる。本発明においては、フェノール系酸化防止剤の存在下でグリコール酸オリゴマーを解重合させるため、オリゴマーの重質化が抑制され、長時間にわたってグリコリドを製造することが可能となる。
次に、このようにして調製した溶液相(グリコール酸オリゴマーとフェノール系酸化防止剤と、必要に応じて可溶化剤およびスズ化合物とを溶媒中に実質的に均一に溶解したもの)の加熱をさらに継続し、前記溶液相中でグリコール酸オリゴマーを解重合させ、グリコリドを生成させる。本発明においては、フェノール系酸化防止剤の存在下でグリコール酸オリゴマーを解重合させるため、オリゴマーの重質化が抑制され、長時間にわたってグリコリドを製造することが可能となる。
この解重合反応における温度および圧力などの好ましい条件は、前記溶解工程における好ましい条件と同じである。また、前記溶解工程における加熱条件と解重合工程における加熱条件は同じであっても異なっていてもよい。特に、圧力については、解重合反応温度が低下し、溶媒の回収率が向上するという観点からできる限り低いことが好ましく、通常、溶解工程における圧力よりも低い圧力下で加熱する。
(留出工程)
次に、このようにして生成したグリコリドを溶媒とともに留出させる。これにより、製造ラインの内壁へのグリコリドの付着が抑制され、ラインの閉塞を防止することができる。また、この解重合反応は可逆反応であるため、グリコリドを反応系から留出させることによってグリコール酸オリゴマーの解重合反応が効率的に進行する。特に、減圧下で解重合反応を行うとグリコリドが留出しやすく、解重合反応がより効率的に進行する。
次に、このようにして生成したグリコリドを溶媒とともに留出させる。これにより、製造ラインの内壁へのグリコリドの付着が抑制され、ラインの閉塞を防止することができる。また、この解重合反応は可逆反応であるため、グリコリドを反応系から留出させることによってグリコール酸オリゴマーの解重合反応が効率的に進行する。特に、減圧下で解重合反応を行うとグリコリドが留出しやすく、解重合反応がより効率的に進行する。
本発明の製造方法よってグリコリドを連続的に製造する場合、このグリコリドの留出量に対応する量のグリコール酸オリゴマーを解重合反応系に連続的または間欠的に補充することが好ましい。このとき、グリコール酸オリゴマーが溶媒に均一に溶解した状態が保持されるように補充する必要がある。また、フェノール系酸化防止剤や溶媒、可溶化剤、スズ化合物が留出した場合にも、留出量に相当する量のフェノール系酸化防止剤や溶媒、可溶化剤、スズ化合物を解重合反応系に連続的または間欠的に補充することが好ましい。なお、フェノール系酸化防止剤や溶媒、可溶化剤、スズ化合物については、新たなものを補充してもよいが、以下の回収工程で回収したものを再利用してもよい。
(回収工程)
このように、溶媒とともに留出したグリコリドは、特開2004−523596号公報または国際公開第WO02/014303号に記載の方法により回収することができる。例えば、グリコリドと溶媒との共留出物を冷却し、必要に応じて貧溶媒を添加して固化・析出させることによって回収することができる。また、国際公開第WO02/014303号に記載されているように、熱安定性に優れた溶媒を用いた場合には、相分離によって回収することもできる。
このように、溶媒とともに留出したグリコリドは、特開2004−523596号公報または国際公開第WO02/014303号に記載の方法により回収することができる。例えば、グリコリドと溶媒との共留出物を冷却し、必要に応じて貧溶媒を添加して固化・析出させることによって回収することができる。また、国際公開第WO02/014303号に記載されているように、熱安定性に優れた溶媒を用いた場合には、相分離によって回収することもできる。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、グリコール酸オリゴマーの融点は以下の方法により測定した。
<グリコール酸オリゴマーの融点>
示差走査熱量計(DSC)を用いて不活性ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
示差走査熱量計(DSC)を用いて不活性ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
(調製例1)
1リットルのセパラブルフラスコに、グリコール酸の70%水溶液(デュポン社製工業用グレード)1kgを仕込み、常圧で撹拌しながら加熱して室温から220℃まで4時間かけて昇温させた。この間、生成した水を留去しながら縮合反応を行なった。次に、フラスコ内を常圧から2kPaまで1時間かけて徐々に減圧した後、220℃で3時間加熱して縮合反応を継続した。その後、未反応原料などの低沸分を留去してグリコール酸オリゴマー(GAO)480gを得た。このグリコール酸オリゴマーの融点は211℃であった。
1リットルのセパラブルフラスコに、グリコール酸の70%水溶液(デュポン社製工業用グレード)1kgを仕込み、常圧で撹拌しながら加熱して室温から220℃まで4時間かけて昇温させた。この間、生成した水を留去しながら縮合反応を行なった。次に、フラスコ内を常圧から2kPaまで1時間かけて徐々に減圧した後、220℃で3時間加熱して縮合反応を継続した。その後、未反応原料などの低沸分を留去してグリコール酸オリゴマー(GAO)480gを得た。このグリコール酸オリゴマーの融点は211℃であった。
(実施例1)
100mlの耐圧容器に、調製例1で得られたグリコール酸オリゴマー(GAO)4.57g、溶媒としてテトラエチレングリコールジブチルエーテル(TEG−DB、沸点:340℃、分子量:306、グリコリドの溶解度:4.6%)2.86g、可溶化剤としてオクチルトリエチレングリコール(OTEG)2.54g、触媒として二塩化スズ(SnCl2)二水和物0.071g、およびフェノール系酸化防止剤として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン((株)ADEKA製「アデカスタブAO−330」、分子量:775)100mgを仕込み、260℃まで加熱して均一な溶液を調製した。
100mlの耐圧容器に、調製例1で得られたグリコール酸オリゴマー(GAO)4.57g、溶媒としてテトラエチレングリコールジブチルエーテル(TEG−DB、沸点:340℃、分子量:306、グリコリドの溶解度:4.6%)2.86g、可溶化剤としてオクチルトリエチレングリコール(OTEG)2.54g、触媒として二塩化スズ(SnCl2)二水和物0.071g、およびフェノール系酸化防止剤として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン((株)ADEKA製「アデカスタブAO−330」、分子量:775)100mgを仕込み、260℃まで加熱して均一な溶液を調製した。
この溶液を260℃に加熱しながら1日間静置して解重合反応を行い、グリコリドを合成した。得られた溶液1gに0.1g/mlの水酸化ナトリウム水溶液5mlを添加し、95℃で5時間加熱してアルカリ分解処理を施した。この溶液をろ過し、残渣(アルカリ分解不溶物)を60℃で2日間真空乾燥した後、アルカリ分解不溶物の質量を測定し、反応終了後の溶液中のアルカリ分解不溶物の濃度を求めたところ、3.2質量%であった。
(比較例1)
フェノール系酸化防止剤を使用しなかった以外は実施例1と同様にしてグリコリドを合成し、反応終了後の溶液中のアルカリ分解不溶物の濃度を求めたところ、11.6質量%であった。
フェノール系酸化防止剤を使用しなかった以外は実施例1と同様にしてグリコリドを合成し、反応終了後の溶液中のアルカリ分解不溶物の濃度を求めたところ、11.6質量%であった。
以上の結果から明らかなように、グリコール酸オリゴマーを解重合してグリコリドを製造する場合において、フェノール系酸化防止剤を添加することによって、グリコール酸オリゴマーの重質化を抑制できることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、グリコール酸オリゴマーの解重合反応において、オリゴマーの重質化を抑制することが可能となる。
したがって、本発明のグリコリドの製造方法は、製造ラインの閉塞などの不具合が発生しにくく、長時間(例えば、10日間以上、好ましくは20日間以上、より好ましくは50日間以上)にわたって安定してグリコリドを製造することができ、工業的に優位なグリコリドの製造方法として有用である。
Claims (6)
- フェノール系酸化防止剤の存在下でグリコール酸オリゴマーを解重合させるグリコリドの製造方法。
- 前記フェノール系酸化防止剤が、分子量300以上のフェノール系酸化防止剤である、請求項1に記載のグリコリドの製造方法。
- 前記グリコール酸オリゴマーを溶媒中で解重合させる請求項1または2に記載のグリコリドの製造方法。
- 前記溶媒が、沸点が230〜450℃である高沸点極性有機溶媒である、請求項3に記載のグリコリドの製造方法。
- 前記解重合により得られたグリコリドと前記溶媒とを共留出させる請求項3または4に記載のグリコリドの製造方法。
- 前記グリコール酸オリゴマーをスズ化合物の存在下で解重合させる請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のグリコリドの製造方法。
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