JPWO2012056709A1 - 分析装置 - Google Patents

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Abstract

サンプルを分析するユニットを有するシステムを提供する。分析するユニットは、少なくとも2つのパラメータにより制御される電界を通過する化学物質のイオン強度を測定するイオン移動度センサーにサンプルを供給して得られた測定データに含まれるデータの2次元表現であって、第1のパラメータを変化させ、他のパラメータを固定したときのイオン強度を示す2次元表現の中に存在するピークを検出する機能ユニットと、検出されたピークと他の2次元表現の中に存在するピークとの連続性および生滅に基づいて検出されたピークを分類する機能ユニットと、分類されたピークに基づいて前記サンプルに含まれる化学物質を推定する機能ユニットとを有する。

Description

本発明は、サンプルを分析する装置および方法に関するものである。
高感度に化学物質を検出、分析する技術として、近年フィールド非対称性イオン移動度分光計(FAIMS)と呼ばれる装置が注目を集めている。この装置では、センサーに印加する直流電圧と交流電圧を変化させることにより、イオン化された化学物質の移動度の変化を、微細なフィルタによって検出し、その検出結果の差異により化学物質を特定することが可能である。
国際公開WO2006/013396号(日本特表2008−508693号)公報には、複数の電極を有する少なくとも1つのイオンチャネルの形状のイオンフィルタを有するイオン移動度分光計について記載されている。このイオン移動度分光計では、導電層に印加される時間変化する電位により、充填剤がイオン種を選択的に入れることができる。電位は、駆動電界成分および横電界成分を有し、好ましい実施形態において、電極のそれぞれは、駆動電界および横電界の両方の成分を生成するのに関与する。デバイスは、ドリフトガスフローがなくても用いることができる。さらに、この文献には、分光計の種々の用途であるようなマイクロスケール分光計を製作するための微細加工技術について記載されている。
FAIMS装置では、Vd電圧(Dispersion Voltage、分散電圧、電界電圧(Vd)、交流)とVc電圧(Compensation Voltage、補償電圧、直流)の2つの変量に応じて変化するイオン強度をイオン電流として検出することが可能である。検出されたイオン電流の波形は化学物質により異なることが多いので、化学物質の特定を行うことが可能である。イオン移動度センサーから得られるデータ(測定データ)は、イオン電流の値を含めると少なくとも3次元のデータとなる。また、化学物質によっては、たとえばイオン移動度特性により、Vd電圧を固定した場合に、Vc電圧を変えるとイオン電流の値は複数のピークを形成することがある。したがって、測定データに含まれるピークに基づき、イオン移動度センサーで検出しているサンプルの化学組成(サンプルに含まれる化学物質)を特定できる可能性がある。
本発明の態様の1つは、サンプルを分析するユニット(機能)を有するシステムである。このシステムは、少なくとも2つのパラメータにより制御される電界を通過する化学物質のイオン強度を測定するイオン移動度センサーにサンプルを供給して得られた測定データに含まれるデータの2次元表現であって、第1のパラメータを変化させ、他のパラメータを固定したときのイオン強度を示す2次元表現の中に存在するピークを検出する機能(機能ユニット)と、検出されたピークと他の2次元表現の中に存在するピークとの連続性および生滅に基づいて検出されたピークを分類する機能(機能ユニット)と、分類されたピークに基づいてサンプルに含まれる化学物質を推定する機能(機能ユニット)とを有する。典型的には、分類する機能は、電界を制御する少なくとも2つのパラメータの1つを第1のパラメータとして変化させ、他の1つを第2のパラメータとして変えた他の2次元表現の中に存在するピークとの関係を評価する第1の機能を含む。電界を制御する典型的なパラメータは、FAIMSセンサーの電界を制御するVd電圧とVc電圧である。
分析するユニットは、少なくとも2つのパラメータに加えてイオン移動度センサーに供給されるサンプルの条件が第3のパラメータとして制御された測定データ、すなわち、4次元以上の多次元(n次元、nは4以上の整数)の測定データの中の、第3のパラメータを変えた他の2次元表現の中に存在するピークとの関係を評価する第2の機能を含むことが望ましい。サンプルの条件は、サンプルの濃度、湿度、温度、流量および圧力のいずれかでよい。第2の機能により、2次元表現の中の複数のピークの存在が顕著になる第3のパラメータを選択できる可能性がある。
分類する機能は、ピーク特性を含む評価ルールに基づいて、検出されたピークの種別を判断する機能を含むことが望ましい。典型的な評価ルールは、リアクタンスのRIPのピーク特性と、化学物質から派生したモノマー、ディマーおよびトリマーのピーク特性の理論上の関係を含む。推定する機能は、モノマー、ディマーおよびトリマーの少なくともいずれかのピークを示す特定されたピークに基づきサンプルに含まれる化学物質の候補を選択することが可能となる。
さらに、推定する機能は、n次元の測定データに含まれている特定されたピークと第3のパラメータとの相関を求めることが可能であり、サンプルに含まれる化学物質の候補を選択することが可能となる。
本発明の他の態様の1つは、分析するユニットと、イオン移動度センサーとを有するシステムである。このシステムは、イオン移動度センサーに供給されるキャリアガス中のサンプルの濃度を制御する調整ユニットをさらに有することが望ましい。サンプルの濃度を第3のパラメータとする、n次元の測定データを得ることができる。
調整ユニットは、サンプルがイオン化ユニットを通過する第1のラインと、イオン化ユニットを通過したサンプルをキャリアガスと混合してイオン移動度センサーに供給する第2のラインとを含むことが望ましい。サンプルガスをキャリアガスと分離してイオン化できる。このため、サンプルガスのイオン化効率を向上でき、より微量な成分(化学物質)が含まれているサンプルガスであっても、微量な成分をイオン化してイオン移動度センサーにより検出させることができる。したがって、イオン移動度センサーに供給されるサンプルの濃度範囲を広く変化させることができる。
本発明の異なる他の態様の1つは、以下の工程を含む方法である。
・少なくとも2つのパラメータにより制御される電界を通過する化学物質のイオン強度を測定するイオン移動度センサーにサンプルを供給して得られた測定データに含まれるデータの2次元表現であって、第1のパラメータを変化させ、他のパラメータを固定したときのイオン強度を示す2次元表現の中に存在するピークを検出すること。
・検出されたピークと他の2次元表現の中に存在するピークとの連続性および生滅に基づいて検出されたピークを分類すること。
・分類されたピークに基づいてサンプルに含まれる化学物質を推定すること。
分類することは、少なくとも2つのパラメータの1つを第1のパラメータとして変化させ、少なくとも2つのパラメータの他の1つを第2のパラメータとして変えた他の2次元表現の中に存在するピークとの間の第1の関係を評価することを含む。
さらに、この方法は、少なくとも2つのパラメータに加えてイオン移動度センサーに供給されるサンプルの条件が第3のパラメータとして制御されたn次元の測定データの中の、第3のパラメータを変えた他の2次元表現の中に存在するピークとの間の第2の関係を評価することを含むことが望ましい。
センサーシステムの一例を示すブロック図。 PCの概略構成を示すブロック図。 分析ユニットの機能的な構成を示すブロック図。 測定データの一例を示す図。 分析方法(分析処理)の概要を示すフローチャート。 2次元表現を用いてサンプルを分析する方法を示すフローチャート。 ピークを分離する処理を表すフローチャート。 ピークを分離する処理の一部をさらに詳細に示すフローチャート。 ピーク分離処理の一例を示す図。 ピークの相関関係を分析する処理を示すフローチャート。 ピークを分類する処理を示すフローチャート。 RIPを特定する処理を示すフローチャート。 モノマー、ディマーを特定する処理を示すフローチャート。 トルエンのイオン移動度(図14(a))および濃度との相関性(図14(b))を示す。 エチルベンゼンのイオン移動度(図15(a))および濃度との相関性(図15(b))を示す。 スチレンのイオン移動度(図16(a))および濃度との相関性(図16(b))を示す。 p−キシレンのイオン移動度(図17(a))および濃度との相関性(図17(b))を示す。 m−キシレンのイオン移動度(図18(a))および濃度との相関性(図18(b))を示す。 各化学物質のディマーのイオン移動度(図19(a))およびモノマーのイオン移動度(図19(b))を示す。 各化学物質のディマーの強度の25ppb以下の濃度との相関性(図20(a))および5ppb以下の濃度との相関性(図20(b))を示す。 異なるサンプリングシステムを備えたセンサーシステムの概要を示すブロック図。
発明の実施の形態
図1は、イオン移動度センサーを含むセンサーシステムの概略構成を示すブロック図である。このセンサーシステム1は、イオン移動度センサー(FAIMSセンサー)5と、サンプリングされたガス(サンプルガス)2をFAIMSセンサー5に供給するサンプリングシステム10と、サンプルガス2の分析とアプリケーションとを実行するコンピュータ30とを含む。サンプリングシステム10は、FAIMSセンサー5に供給されるキャリアガス3中のサンプルガス2の濃度を制御する調整ユニットとしての機能を含む。
サンプリングシステム10は、1または複数の化学物質を含む、分析対象のサンプルガス2の取り込みを行う入力部11と、取り込んだサンプルガス2に湿度を加える湿度発生器兼調整装置(加湿装置)12と、Ni63またはUVなどの直接または間接的なイオン化手段によりサンプルガス2中の化学物質(分子、組成物、細胞など)をイオン化するイオン化処理装置(イオン化ユニット)13と、逆流防止弁付きの昇圧ポンプ14と、スプリットフロー装置15と、ミキシングチャンバー16とを含み、これらが順番に適当な配管、たとえば、テフロン(登録商標)コーティングされたチューブにより連通されている。昇圧ポンプ14は、ポンプ本体14aとフィルタ14bとを含む。入力部11、加湿ユニット12、イオン化ユニット13、昇圧ポンプ14は、吸引したサンプルガス2がイオン化ユニット13を通過する第1のライン19aに含まれる。
サンプリング対象のサンプルガス2は、測定対象の物体が気相であるものに限らず、液相あるいは固相であってもよい。測定対象の物体が気体以外であれば、測定対象物の周囲に存在するガスや、適当な方法により測定対象物を気化させたガスをサンプルガス2として、第1のライン19aを通ってFAIMSセンサー5に到達させることができる。サンプルガス2は、一時的に吸着させて放出させるなどの方法により、測定対象物から時間的および/または空間的に分離されたガスであってもよく、適当な方法により事前に濃縮されていたり、希釈されているガスであってもよい。
サンプリングシステム10は、第1のライン19aと並列に設けられた、キャリアガスをミキシングチャンバー16に供給するキャリアガス供給ライン19bを含む。キャリアガス供給ライン19bは、キャリアガスの生成装置17と、キャリアガス流量調整装置18とを含む。キャリアガス3の典型的なものは、適当な方法により不純物が除去されたクリーンなドライエアーである。不純物の除去率はサンプルガス2で測定しようとする物質の濃度などに依存するが、キャリアガス3は基本的にはイオン化されないので、リアクタントおよび/またはイオン化対象の物質との間で電荷の移動が少ない程度の空気であってもよい。また、不活性気体であってもよく、あるいは、適当な種類の高純度な気体であってもよい。
典型的な流量調整装置18は、デジタルマスフローコントローラ(MFC)である。MFCは、流体の質量流量を計測して流量制御を行う機器であり、流体の流量計測には主に体積流量と質量流量が用いられる。体積流量は、計測対象となる流体に環境温度や使用圧力等の変化により体積変化が生じるため、正確な流量を計測する場合は変化量に合った補正を行う。質量流量は、流体の質量(重さ)を計測することにより、使用条件の変化による補正を行う必要がない。デジタルMFCは、半導体プロセスをはじめ、高精度な流量計測・制御を要求されるプロセスにおける流量制御機器として公知なものである。
ミキシングチャンバー16は、第1のライン19aのイオン化ユニット13を通過したサンプルガス2と、キャリアガス供給ライン19bから供給されたキャリアガス3とを混合し、FAIMSセンサー5に供給する測定用ガス4を生成する第2のライン19cに含まれる。FAIMSセンサー5を通過したガスは排気ユニット21を介して外気(外界)に放出される。
センサーシステム1のコンピュータ(PC)30は、メモリ、CPUなどの汎用のハードウェア資源に加え、FAIMSセンサー5から得られた測定データの分析機能を含むデバイス(臭覚プロセッサ、OLP、Olfaction Processor)50と、センサーコントローラデバイス40とを含む。OLP50は、1つの集積化されたデバイス(半導体チップ、ASIC、LSI)または複数の集積化されたチップ(チップセット)として提供される。以下で説明するOLP50に実装されるユニットおよび機能(機能ユニット)は、OLP50に実装された回路および/または内蔵されたプロセッサで実行されるソフトウェア(プログラム、プログラム製品)で実現される。また、以下において、OLP50により実現される機能として説明する機能(機能ユニット)は、PC30の汎用的なハードウェア資源により実現することも可能である。
OLP50は、センサーコントローラデバイス40を介して受信した測定データを分析する分析ユニット51と、サンプリングシステム10により測定用ガス4中のサンプルガス2の濃度を制御する濃度制御ユニット58と、流量制御ユニット59とを含む。濃度制御ユニット58は、分析ユニット51の指示により流量制御ユニット59を制御してサンプルガス2とキャリアガス3との流量を制御するとともに、加湿ユニット12の能力を制御する。後述するように、イオン化においては水分を含むリアクタントの存在が重要であり、特に、湿度を高くすることによりサンプルガス2中の測定対象の化学物質のイオン化効率が向上する。その一方、イオン化した水分が高濃度のリアクタント(RIP)としてFAIMSセンサー5に入力されると、RIPのピークが現れる、電圧Vdが低い測定条件において、RIPのピークが大きくなりすぎて測定対象の化学物質のピークが隠される可能性がある。したがって、濃度制御ユニット58はFAIMSセンサー5の測定結果により、イオン化ユニット13を通過するサンプルガス2の湿度が適度になるように制御する。加湿ユニット12の一例は超音波振動により水分をミスト化する装置、熱により水分を蒸発させて加湿する装置などである。
流量制御ユニット59は、濃度調整ユニットとして機能するサンプリングシステム10の第1のライン19aおよび第2のライン19cの流量を制御する。流量制御ユニット59には、FAIMSセンサー5の上流および下流に設けられた流量計24および23からのデータが入力され、FAIMSセンサー5を通過するガス流量が所定の値あるいは範囲に入るよう、第1のライン19a、キャリアガス供給ライン19bの流量を制御する。第1のライン19aの流量(サンプルガスの流量)は、ポンプ14の能力と、フロースプリッッタ15によりイオン化ユニット13を通過したサンプルガス2を分割することとにより制御する。キャリアガス供給ライン19bの流量(キャリアガスの流量)は、キャリアガス流量調整装置18により制御する。キャリアガス生成装置17の典型的なものは、コンプレッサあるいは圧縮ボンベである。FAIMSセンサー5を通過するガス量をさらに精度よく制御するために、排気側に流量調整装置22を設けてもよい。
イオン移動度を測定するFAIMSセンサー5により、サンプルガス2を測定する場合、一定した速度でガスがセンサー5を通過することが望ましく、FAIMSセンサー5を通過するガス流量はある程度の量が必要となる。たとえば、センサー5を通過する測定用ガス4のガス量として1気圧で2〜3リットル/分の流量を維持することが要求される。
一方、FAIMSセンサー5においてイオン移動度あるいはイオン移動度の特性の相違によりサンプルガス2に含まれている物質の影響を測定しようとすると、サンプルガス2に含まれている物質がイオン化されていることが前提となる。キャリアガス3とサンプルガス2とを混合し、それに放射線・コロナ・紫外線などのイオン化処理をほどこして、イオン化されたサンプルを作りだすことも可能である。このイオン化プロセスにおいて、キャリアガス3、典型的にはエアーに含まれる、水(HO)、窒素(N)、酸素(O)などはリアクタントとして介在し、サンプルのイオン化の一端を担っている。すなわち、化学物質がイオン化される過程の1つは、リアクタントがイオン化され、イオン化されたリアクタントと測定対象の微量な化学物質とが接触することにより化学物質がチャージされることである。
通常、イオン化ユニット13を通過するサンプルガス2に含まれる測定対象の化学物質の濃度は、リアクタントとなる水、窒素、酸素の濃度と比較すると数百万分の1(ppm)あるいは数10億分の1(ppb)である。したがって、イオン化ユニット13のイオン化のエネルギーの大半は、サンプルガス2中の測定対象の化学物質のイオン化ではなく、サンプルガス2中のリアクタントそのもののイオン化に消費されており、効率の高いイオン化ユニットであっても、ごくわずか(5%程度)のエネルギーしか測定対象の物質のイオン化に使われていない。
また、リアクタントの中で、サンプルのイオン化に特に適しているのは水分であり、イオン化ユニット13を通過するガスの湿度が高い方が測定対象の化学物質を効率よくイオン化できる。通常、イオン化を行う際に必要な水分を供給するのは、キャリアガスとして用いられるエアー(圧縮空気)であるが、エアーに予期せぬ化学物質が相対的に大量に混入していると、測定結果に影響を与える場合がある。
図1に示したセンサーシステム1のサンプリングシステム10においては、イオン化ユニット13をバイパスしてミキシングチャンバー16に供給されるキャリアガスによりFAIMSセンサー5を通過する気体(測定用ガス)4の流量を測定に適した状態に維持できる。したがって、第1のライン19aを通過するサンプルガス2の流量は、サンプルガス2に含まれる測定対象の化学物質が効率よくイオン化される速度(流速、流量)に制御することが可能となる。たとえば、イオン化ユニット13中のサンプルガス2の滞留時間を延ばすことにより、サンプルガス2中の測定対象の化学物質のイオン化率が向上するとともに、サンプルガス2に含まれるリアクタントのイオン化率も向上できる。さらに、サンプルガス2が第1のライン19aを通過する速度を低くできるので、リアクタントと測定対象の化学物質との接触時間を確保でき、リアクタントを介した測定対象の化学物質のイオン化率を向上できる。したがって、濃度の高いサンプルガス2をイオン化ユニット13に供給してサンプルガス2のイオン化効率を向上できる。
また、このサンプリングシステム10においては、キャリアガス3とは独立して、イオン化ユニット13を通過するサンプルガス2の流量を制御できる。すなわち、FAIMSセンサー5の通過流量と、イオン化ユニット13の通過流量とを独立して制御することが可能である。このため、イオン化ユニット13の通過流量を制御することにより、FAIMSセンサー5を通過する測定用ガス4の中のイオン化されたサンプルガス2の濃度を制御できる。したがって、測定用ガス4中のイオン化された測定対象の化学物質の濃度を広い範囲で精度よく制御することが可能であり、FAIMSセンサー5の測定感度を制御できる。
すなわち、このサンプリングシステム10を採用することにより、サンプルガス2とキャリアガス3とを混合した後に行っていたイオン化処理を混合する前に行うので、サンプルガス2を十分にイオン化できる。キャリアガス3と、サンプルガス2とは1気圧程度で混合することができ、流量の大半を占めるキャリアガス3によりFAIMSセンサー5を通過するガスの気圧制御が可能である。したがって、サンプルガス2の吸引圧力が制御可能となる。たとえば、第1のライン19aを通ってイオン化されるサンプルガス2は、エアーが混入されていなくてもよく、非常に低い気圧で吸い込むことも可能である。サンプルガス2をキャリアガス3に注入するために加圧する必要があるが、サンプルガス2の流量が小さいので、小型で小流量高圧のポンプ14でキャリアガス3にサンプルガス2を混ぜることができる。また、ベンチュリーなどを用いてキャリアガス3にサンプルガス2を吸い込んで混入させることも可能である。
このサンプリングシステム10は、イオン化処理効率を向上できるので、FAIMSセンサー5の化学物質の分析能力を向上できる。あるいは、FAIMSセンサー5を小型化できる。さらに、キャリアガス3に多少の不純物が含まれている場合であってもキャリアガス3はイオン化ユニット13を通過しないので不純物がイオン化される可能性は小さい。したがって、一般の空気などをキャリアガスとして使うことが可能であり、より容易に低濃度のサンプルガス2を分析するセンサーシステム1を提供できる。
イオン移動度センサー5の典型的なものとして、非対称電界イオン移動度スペクトロメータ(FAIMS)または微分型電気移動度スペクトロメータ(DMS)が知られている。FAIMSセンサー5の一例は、国際公開WO2006/013396または国際公開WO2007/014303に記載されたイオン移動度分析装置である。これらはモノリシックな、またはマイクロマシン型のコンパクトな質量分析装置であり、十分に携帯できるものである。FAIMSセンサー5は、イオン化された測定対象に電場の影響を与えながら移動させるドリフトチャンバ5bと、ドリフトチャンバ5bを通過したイオン化された測定対象(測定対象の電荷)を検出する検出器5aとを含む。ドリフトチャンバ5bにおいては、電圧Vdおよび電圧Vcにより生成されるソフトウェア制御された電界が特定の周期でプラス・マイナスに変動し、その電界のフィルタリング効果により、検出目標の化学物質がフィルタリングされ、短期間、たとえば、msecレベルで検出器5aに衝突し、イオン強度(イオン電流)Icとして測定される。
センサーシステム1は、さらに、FAIMSセンサー5を通過するガスの温度や湿度などの環境情報(環境条件)を測定するための複数のセンサー群(環境情報センサー群)6を含む。環境条件測定用のセンサー群6は、温度センサー6a、湿度センサー6b、圧力センサ6cなどを含む。
図2に、センサーシステム1を制御するパーソナルコンピュータ(PC)30の概略構成を示している。PC30は、CPU31と、適当なメモリ32と、ハードディスクなどのストレージ33と、ユーザインタフェースを提供するローカルな入出力インタフェース34と、例えば、無線LAN39a、有線LAN39bを介して外部の機器やインターネット9に接続されている機器とデータ交換するための通信インタフェース(トランシーバ)37と、これらを接続するバスシステム38とを備えている。ローカル入出力インタフェース34には、キーボード35aなどの入力機器と、液晶ディスプレイ35bなどの画像出力機器と、スピーカ35cなどの音響出力機器と、マイクロホン35dなどの音響情報を取得するための機器が接続されている。センサーシステム1は、これらの入出力デバイスを含んでいてもよく、入出力デバイスを接続するためのインタフェースが用意されているものであってもよい。
PC30は、さらに内部バス38に接続されたOLP50と、OLP50に接続されたセンサーコントローラデバイス40とを備えている。センサーコントローラデバイス40は、OLP50により制御され、OLP50に対して各種のデータを供給する機能を果たす。センサーコントローラデバイス40は、各種のセンサーと接続され、データを取得(サンプリング)するためのセンサーインタフェース41と、いくつかのセンサーの測定条件を変えることができるセンサードライバ・コントローラユニット(SDCU)42とを備えている。
OLP50を含むシステム1のもっとも小さい単位は、デバイス(集積回路チップ)50そのものである。OLP50を含むシステムは、PC30であっても良く、さらにはOLP50を搭載した水質検査装置、微少な麻薬物質の検出が可能な麻薬検出装置や、患者の呼気から疾患の罹患状態を調べる健康モニタ装置などであっても良い。
OLP50は、分析ユニット(解析ユニット)51と、濃度制御ユニット58と、流量制御ユニット59とを含む。OLP50は、外気あるいは周辺の空気のにおい(匂い、芳香、臭い)の要因となる化学物質をリアルタイムで検出(解析)することができるデバイスあるいは装置である。においの情報は、健康および安全にかかわる多くのアプリケーションで重要な役割を果たす。OLP50は、においの情報を出力する機能(臭覚機能)をポータブルな家電装置やPC30に搭載することを可能としている。
においの要因は、周囲の空気に含まれる化合物、ガスなどの化学物質である。以下において、化学物質とは、化合物、分子および元素を含み、成分あるいは組成物に限らず、生成物も含む。それらにおいの要因は、水晶センサー(QCM、Quartz Crystal Microbalance)、電気化学的なセンサー、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス、光センサー、ガスクロマトグラフィーおよび質量分析装置などのセンサーにより検出できる。これらのセンサーは、化学物質の存在により変化(変動)する量(物理量)を検出できるものである。これらのセンサーの多くは、かさばっていて複雑であり、日常で使用されるアプリケーションに使用することは容易ではない。さらに、これらのセンサーの幾つかは、少量のガスまたはその他の特定の化学物質にのみ鋭敏であったり、感度が温度と湿度に応じて変わるなどの制限もある。
近年、上述したようにコンパクトで携帯が可能で、においの要因を検出できる分析装置が検討されている。イオン移動度(Ion Mobility)および光学(赤外線、NMR)を使用した分析デバイスは、単一チップに纏められた小さなセンサーを提供可能であり、家庭における健康および安全管理のような種々様々のアプリケーションに使用できる可能性がある。
これらの分析装置(センサー)は、特定の成分(化学物質)に敏感なセンサーと比較すると汎用性が高く、分析可能な範囲内では、ほとんどすべての成分の有無および強度(濃度)を同じ程度の精度で検出できる。しかしながら、分析装置は化学物質の存在を示唆する大量のデータを出力する。そのため、センサーの出力データをPC30のホストCPU31で処理しようとするとCPU31の処理能力が過大でないと、臭覚機能を実現しようとするために他のアプリケーションを実現できなくなったり、処理能力が著しく制限されたりする可能性がある。OLP50は、そのような不便さに対しても解を提供できるものである。すなわち、図2に示したようなPC30をベースとするシステム1に限らず、ワンチップ化されたOLP50を搭載することにより、家電や携帯電話などの極めてハンディーな電子端末、ホームセキュリティ用の機器などに、経済的に臭覚機能を搭載することが可能となる。
上述したフィールド非対称質量分析計(FAIMS、Field Asymmetric waveform Ion Mobility Spectrometry、またはDIMS、Differential Ion Mobility Spectrometry)のようなMEMSセンサーを、OLP50とともに用いることにより、高価なCPUまたはDSPが不要で、大きな機械的な部品も不要で、さらに、複雑なコントロール回路類も解析回路類も不要な、低コストの、においを記録、認識できるシステム1を提供できる。
図3に、OLP50の分析ユニット51の機能的な構成をブロック図により示している。分析ユニット51は、2つのパラメータである電圧Vdおよび電圧Vcにより制御される電界内を通過するイオン化された化学物質のイオン強度(イオン電流)Icを測定するFAIMS5に、サンプルガス2を供給して得られた測定データ61を解析し、サンプルガス2に含まれている化学物質を推定する。FAIMS5には、サンプリングシステム10により濃度を変えたサンプルガス2が供給される。したがって、測定データ61には、電圧Vcを第1のパラメータ、電圧Vdを第2のパラメータ、サンプルガス2の濃度(測定用ガス4中の濃度)Cnを第3のパラメータとして測定条件を変えたときのイオン電流Icが含まれており、少なくとも4次元の測定データである。
分析ユニット51は、測定データ61に含まれるデータの2次元表現(2次元スペクトラム、2次元マトリクス)69であって、第1のパラメータである電圧Vcを変化させ、第2のパラメータである電圧Vdを固定したときのイオン強度を示す2次元表現69の中に存在するピークを検出する機能(ピーク検出機能、ピーク検出機能ユニット、ピーク検出ブロック)52と、検出されたピークと他の2次元表現69の中に存在するピークとの連続性および生滅に基づいて検出されたピークを分類する機能(ピーク分類機能、ピーク分類機能ユニット、ピーク分類ブロック)53と、分類されたピークに基づいてサンプルガス2に含まれる化学物質を推定する機能(推定機能、推定機能ユニット、推定ブロック)54とを含む。分類機能53は、複数の2次元表現69の中に存在するピーク同士の関係(相関)を評価するピーク相関分析機能(第1の機能)53aと、評価ルールに基づいて、検出されたピークの種別(タイプ)を判断する機能53bとを含む。評価ルールは、ピークの測定、半値幅、移動などのピーク特性を含む。
分析ユニット51は、2つのパラメータ(電圧Vcおよび電圧Vd)に加えてサンプルガス2の濃度Cnを第3のパラメータとして制御された測定データ61の中の、濃度Cnを変えた2次元表現69を選択し、それらの2次元表現69の中に存在するピーク同士の関係を評価させる濃度選択機能(濃度選択機能ユニット、第2の機能)55を含む。電圧Vcおよび電圧Vdは、2次元表現69を得るためにいずれか一方を変化させ、他方を固定することができる。また、第3のパラメータは、測定用ガス4中のサンプルガス2の濃度Cnに限らず、サンプルガスの湿度、温度、流量および圧力のいずれかであってもよい。
濃度選択機能55は、ストレージ33の化学物質ライブラリ67を参照し、2次元表現69の中の複数のピークの存在が顕著になる最適な濃度Cnbを選択する機能55aを含む。分析ユニット51の機能は、ストレージ33に格納された各種のデータテーブル(ライブラリ)を参照しながら所定の機能を果たす。たとえば、ピーク検出機能52は、ピーク分離テーブル62を参照し、分離されたピーク(検出されたピーク)によりピークデータベース63を更新する。ピーク分類機能53は、ピーク分類ルールテーブル64およびピーク種別(タイプ)ルールテーブル65により提供された評価ルールを用い、ピークの種別を判断する。評価ルールには、リアクタンスのRIPのピーク特性と、化学物質から派生したモノマー、ディマーおよびトリマーのピーク特性の理論上の関係が含まれる。
サンプルガス2に含まれる化学物質を推定する機能54は、モノマー、ディマーおよびトリマーの少なくともいずれかのピークを示す特定されたピークに基づきサンプルガス2に含まれる化学物質の候補を選択する第1の選択機能54aと、特定されたピークと第3のパラメータである濃度Cnとの相関を求め、サンプルガス2に含まれる化学物質の候補を選択する第2の選択機能54bとを含む。
以下では、OLP50の分析ユニット51で行う解析処理(分析処理)をフローチャートに基づき説明する。この処理は、OLP50とCPU31の分担処理で行うことも可能である。
図4に、FAIMSセンサー5の測定データ69の一例を示す。図4は、測定データ69に含まれるデータの3次元表現であり、Vd電圧をステップ上に変化させながら、Vc電圧を変えた場合のイオン電流Icの値を示している。この図では、最初の固定化されたVd電圧に対する、Vc電圧とイオン電流の値が、3次元表示のもっとも奥のラインに表されている。その後、Vd電圧を少しずつ増加させることにより測定データを得ている。この例では、特定のVd電圧に対して、少なくとも3個のピークが表れていることが分かる。
FAIMSセンサー5では、Vd電圧(電圧Vd、Dispersion Voltage、MHz程度の周波数、たとえば、1から20MHz程度の周波数で、適当なデューティーサイクル(たとえば30%程度)のサイクリックに変化する交流またはパルスなどの交流電圧値)と、Vc電圧(電圧Vc、Compensation Voltage、直流電圧値)の2つの変量に応じて変化するイオン電流を検出することにより、化学物質の特定を行うことが可能である。たとえば、一定の電界電圧Vdに対して補償電圧Vcを変化させることによりイオン電流Icの2次元のスペクトル(2次元表現、マトリクス)69が得られる。補償電圧Vcを変化させる範囲は、たとえば、±10V、±6V程度である。さらに、電界電圧Vdを変化させることにより3次元のスペクトルが得られ、濃度Cnを変化させることにより4次元のスペクトルが得られる。電界電圧Vdは、たとえば、約1,000V/cmから約30,000V/cmまでの範囲、あるいはそれ以上の範囲を変化させる。以降では、電圧Vdは変化させる範囲内における比率(%)で示す。一定の補償電圧Vcに対して電界電圧Vdを変化させて2次元のデータを取得し、さらに補償電圧Vcを変化させて3次元のデータを取得してもよい。いずれの場合もイオン電流を得るためのパラメータ(電界電圧Vdおよび補償電圧Vc)は2次元のデータとなる。
化学物質は、その特性に応じて、たとえば電界電圧Vdを固定化した場合に、複数のピークを形成することがある。たとえば、ジメチルスフルフォイド(Dimethyl−Sulfoxide、(CHSO)の場合、図4に示すように、特定のVd電圧に対し、Vc電圧を変化させた測定データ61の2次元表現69には、化学物質のイオン移動度の特性により、イオン電流に3個のピークが得られる。
図5に、分析ユニット51によりサンプルガス2を分析する全体の処理を示している。ステップ400において、推定する機能54の第1の選択機能54aが、2次元表現69で検出され、特定されたピークに基づきサンプルガス2に含まれる化学物質を推定する。ステップ510において、特定されたピークと、選択された化学物質の特有のピークとのマッチングが十分であれば、推定する機能54は推定精度が十分であると判断し、ステップ550において、第1の選択機能54aで選択された化学物質をサンプルガス2に含まれていると推定される化学物質としてホストCPU31に出力する。
ステップ510において、推定精度が不十分であると判断されると、濃度選択機能55が、ステップ520において、測定データ61に含まれている濃度Cnの異なるデータの2次元表現69を選択する。化学物質ライブラリ67のデータに基づき最適濃度選択機能55aが、分析に最も適した濃度Cnbを選択できる場合は、その濃度Cnbの2次元表現69を選択する。分析に最も適した濃度Cnbの一例は、2次元表現69の中の複数のピークの存在が顕著になるデータが得られる濃度である。分析に最も適した濃度Cnbが事前に分からない場合は、ステップ530で濃度Cnの変更範囲が終了するまで濃度Cnが異なる2次元表現69をステップ400で繰り返し評価する。濃度Cnの変更が可能な範囲は、たとえば、サンプリングシステム10において、測定用ガス4中のサンプルガス2の濃度が変更可能な範囲である。
全ての濃度範囲の分析が終了すると、ステップ540において、推定する機能54の第2の選択機能54bが、2次元表現69で検出され、特定されたピークと濃度Cnとの相関を加味して、サンプルガス2に含まれる化学物質を推定する。ステップ550において、第2の選択機能54bで選択された化学物質をサンプルガス2に含まれていると推定される化学物質としてホストCPU31に出力する。これらの処理はコンピュータ上で稼働するプログラム(プログラム製品)として提供することが可能であり、適当な記録媒体に記録して提供することができ、インターネットなどのコンピュータネットワークを介して提供することも可能である。
図6に、サンプルガス2に含まれる化学物質を推定する処理400の概要を示している。化学物質を推定する処理400は、ピークを検出する処理(ピーク特性検出処理、Peak Characterization)100と、ピーク分類処理(Peak Classification)200と、化学物質の推定処理(化学物質統合化処理、Group Chemical Objects)370とを含む。ピーク分離処理200は、ピークの相関関係を分析する処理250と、ピークの種別を判断する処理300とを含む。スタート401およびエンド402は、この処理フローのエントリーポイントである。
図7に、ピーク検出処理100のさらに詳細なフローを示している。ピーク検出機能52が実行するピーク検出処理100は、測定データ61に含まれるデータの2次元表現(2次元スペクトラム、2次元マトリクス)69の中に現れるイオン電流Icのピーク特性を測定する処理である。この処理では、一つの固定化された電界電圧Vdに対して、補償電圧Vcが変化した場合に、イオン電流Icの特性にピークが存在するのか否か、存在する場合に幾つ存在するのか、また存在する場合のピークの特性などを検出する。
ステップ101はこの処理フローのエントリーポイントである。処理102では、ピーク分離処理を行うための基準(ピーク分離テーブル、Peak Separation rule table)62を設定する。ピーク分離テーブル62には、ピーク分離処理を行うための基準(基準特性)、たとえば、ノイズ等と区別するための域値(Threshold)、ノイズ除去するためのフィルタ処理(平滑化処理)の形式指定(Filter Type)、ピーク特性の背後に現れるベースラインの特性(Baseline type)、ピーク分離に用いられるカーブフィットの特性(Fit Type)などが含まれる。ピーク分離テーブル62の基準特性は、アプリケーションに応じて、あるいはユーザの指定により特有の値が選択されるが、特に指定がない場合にはデフォルトの値が選択される。
域値(Threshold)は、一般に測定結果に含まれる微細なノイズ成分と、特定の化学物質に起因するピークの識別を行うための域値を指定する。この域値が小さいと、微細なノイズもピークと判断するため、不要な処理が行われることになる。一方、域値を大きくすると、不要なノイズは除去できるが、微細ながら必要なピークを見逃すことになる。これらの値はアプリケーションに応じて、経験上設定される。
フィルタ処理の形式指定(Filter Type)は、ノイズを除去するための平滑化フィルタ処理の形式を指定する。具体的には、フィルタの次数や係数の指定を行う。ベースラインの特性(Baseline type)は、ピークが存在しない場合に本来表れるべきであり、ピークによって隠されているベースラインの特性を指定する。一般には、ピークがない場合には平坦(直線)になることが多いが、その場合でも一定の傾斜を持つことがある。ベースライン特性は、直線だけでなく多項式でも近似できる。
カーブフィットの特性(Fit Type)は、複数のピークが存在するときに必要な、ピークカーブのフィッティングを行うための特性の指定を行う。一般的には、ガウシアン特性がよく用いられるが、他の特性、例えばローレンツ特性なども指定可能である。
処理103では、正極性のイオン電流測定結果(PosIon)および負極性のイオン電流測定結果(NegIon)と、その他の環境条件のデータを取得する。FAIMSセンサー5には、同時に正極性のイオン電流と負極性のイオン電流が測定可能なものもあり、その場合の処理を表している。これらの値は、その後の処理において用いられる。
処理104は、測定された電界電圧Vdの値の数だけの処理を行うためのループ処理である。処理104では、対応する一つの電界電圧Vdの値に対して、正極性と負極性のイオン電流の測定が行われ、そのデータの2次元表現69があれば、ステップ105からステップ108までの処理が行われる。
処理105では、そのイオン電流の測定値に対して、まず前値との差分をとり、前の局所的な最小値との差分が域値を超えるものに対してピークが存在すると仮定し、ピークの中心位置(position、補償電圧Vcの値)と、ピークが存在するベースの開始位置(Base Start、同じく補償電圧Vcの値)、ベースの終了位置(Base end、同じく補償電圧Vcの値)が決定される。この処理は、「0」を含むピークの数だけ行われる。つまり、ピークが存在しない場合もあるし、複数存在する場合もある。
処理106はピーク分離処理である。まずイオン電流Icの測定値に対して平滑化フィルタ処理を行い、処理105で検出/特定された各々のピークに対して、最もピーク値の高いピークから順次、ベースラインの補正処理を行い、さらにガウシアン特性などによるピークフィッティング処理を行う。これらの処理により、複数のピークが重なり合った場合にも、ピークを分離処理することが可能となる。
処理107では、処理106で得られた複数のピークに対して、ユニークな(一義的な、唯一の)番号(ID)を付し、またそのピークの特性(ピーク位置、ピーク値、半値幅などの特性)を求める。処理108では、処理107で得られたピーク特性のデータベース(ピークデータベース)63を最新の値に更新する。処理109は、処理100の終了ポイントである。
図8にピーク分離処理(Peak Separation)106の詳細を示す。ステップ151はエントリーポイントである。処理152は、ピーク分離処理をするための各種条件を設定するルーチンであり、ピーク分離テーブル62から、ピーク分離の基準(Peak separation Rule)をロードする。この基準には、ピーク分離に用いるアルゴリズムのタイプ、エラー最小の判定法、ピーク位置のトレースの有無、ピーク値の域値などが含まれる。
処理153では、最初にすべてのピーク候補の位置のデータを取得する。処理154は、それ以降の処理をピークの候補の数だけ繰り返すための分岐である。処理は、もっともピーク値が大きいものから順次行われる。
処理155では、ピークフィッティングの前処理を行う。具体的には、ピーク位置、ピーク幅、ピーク高などを求める。処理156では、ピークの背後に存在するはずの、ベースラインの位置を確定させる。ピークの傾斜特性と、ピーク外のベースラインの傾斜から、ピーク開始位置とピーク終了位置を求める。
処理157では、例えばガウシアンカーブを用いたフィッティング処理を行う。フィッティング処理は、ピークが一つのガウシアン特性で近似できると仮定して、ピークを近似するガウシアン特性と、同じく近似したベースラインの値を加算した値と、実際のデータとの差分が最も小さくなるようする。たとえば、ピーク位置、ピーク幅等のパラメータを変動させながら、二乗平均誤差あるいは誤差の絶対値の累積値が最小になるように行う。次にこのピークが2つのガウシアン特性(2つのピーク)で近似できると仮定して、同様にピークフィッティング処理を行う。この処理は、元の波形とフィッティングされた波形の誤差が、フィッティングの域値を下回るまで、ガウシアン特性の数を増やしながら行われる。このような処理により、2つ以上のピークが重なり合ったデータに対しても、ピークを分離してそれぞれのピークを正しく特定することができる。
図9に、上記の処理によりピーク分離した一例を示す。この例では、2つのピーク(ピーク#1およびピーク#2)が、傾斜を持ったベースライン上で、重なり合っている。このような条件でも、ガウシアンカーブの数を増やしながら、ピークフィッティングを繰り返すことにより、2つのガウシアンカーブで近似することができ、重なり合った2つのピークが正しく分離できる。
図8の処理158では、処理157のフィッティングで得られた結果が、他のそれまでの結果と矛盾しないかを検証し、問題がない場合にはその結果が正しいと判断し、その結果によりピークデータベース63を更新する。このような手順で、ピーク値の高いものから順次、最後のピーク候補まで、フィッティング処理を行う。ステップ159は出口である。
図10にピーク相関関係分析処理(Peak Relation Analysis)250の詳細フローを示す。この処理は、ピーク分類機能53の相関分析機能53aが行う。処理201はエントリーポイントである。処理202では、ピーク分類ルールテーブル64からピークを分類するための基準(ルール)を取り込む。分類する基準は、具体的には、域値、平滑フィルタのタイプ、ベースラインタイプ、フィッティングの関数などであり、実際には前の処理100で用いられた各種パラメータあるいは条件である。これらのパラメータの一部は、処理250の中でも直接的に用いられるし、一部は前の処理100の結果を判定するときの条件として用いられる。
処理203では、以下の処理204、205および206で形成されるループ処理の前処理を行っている。具体的には、最初のVd電圧(通常は測定したVd電圧の中でもっとも低い電圧)に対するイオン電流の測定結果(2次元表現、2次元スペクトラム)69から、その中に存在するすべてのピークに対して、トラッキングするための窓(ウィンドウ)を割り当てる。具体的には、各ピークの頂点位置を窓の中心位置とし、適当な高さと前後の幅を持たせる。たとえば、ピーク中心のVc電圧に対しプラスマイナスΔの電圧値を持たせる。
処理204は、イオン電流の測定データ(結果を収納するマトリクス)61の中で、所定の濃度Cnで得られた最初の電界電圧Vdの値の2次元表現69から、最後の電界電圧Vdの値の2次元表現69まで、処理205および206を繰り返し行うための分岐である。
処理205では、処理203で設定した初期値、あるいはひとつ前のループで設定したピークの窓に対して、今回処理するデータの中のピークがどれだけ移動しているかを調べる。新しいピーク位置が、窓の枠内に収まっていれば、それを新たな窓位置にする。ピークは、新たに発生することも、消滅することもあり得る。新たに発生したピークに対しては、新たに窓を設定し、ピークが消滅した場合には、窓も消滅させる。処理206では、あらかじめ設けておいた、各々のピークと、窓の対応関係を表すピーク分類テーブルを更新する。
処理207では、所定の濃度Cnのすべての2次元表現69に対する処理を終了した後に、電界電圧Vdの変化量(この値は、測定を開始する前にあらかじめ選択しておく)に対して、ピークの中心の移動量、すなわち、イオン移動度の変化が適正でない(イオン移動度の差分の変化が前の値よりも大きすぎる)場合に、窓を介してグルーピングされたピーク群を無効と判定する。
処理208では、上述した処理により、最終的に決定したピークのデータベース63を更新する。処理209は、終了ポイントである。
図11に、ピークタイプを判断する処理(Group Chemical Objects)300の詳細をフローチャートにより示している。この処理は、ピーク種別を判断する機能53bが行う。処理301は、エントリーポイントである。処理302は、ピークタイプルールテーブル65からタイプ分けするための基準(ルール)を取り込む。タイプ分けの基準は、具体的には、イオン化する段階で現れる水などのリアクタントイオン(Reactant Ion)と、イオン化された対象の試料(Product Ion)のピーク特性に関する理論上のルールを含む。これらの理論上のルールに関しては、例えば「G.A.Eiceman, Z.Karpas著、Ion Mobility Spectrometry, CRC出版や、Alexandre A, Shvartsburg著、Differential Ion Mobility Spectrometry, CRC出版」などに詳述されている。概要は以下の通りである。
通常の空気中には、窒素(N)、酸素(O)と水(HO)が含まれているが、そこへ微量な化学物質(仮にMとする)が混入し、さらにイオン化された場合、その組成は一般に以下のように変化する。
(HO)+M+N⇔MH(HO)+N+H
⇔M(HO)+N+HO ・・・(1)
上の式(1)は、イオン化された分子の変遷を表しているが、その成分量まではあらわしていない。最初の項は、リアクタントイオン、次の項はモノマー(Monomer)、最後の項はディマー(Dimer)を表している。最初に、イオンは水分と結び付きやすく、3個の水の分子と結合して水イオンとなる。この状態で電界強度が高くなると、水の分子1個が、化学物質Mに置き換わり、モノマーと呼ばれる、Mの分子1個と水の分子2個からなるイオンを形成する。さらに電界が高くなると、ディマーと呼ばれる、Mの分子2個と水の分子1個からなるイオンを形成する。この場合のリアクタントは水である。
処理303では、すべてのVd電圧に対するイオン電流測定データ(2次元表現、2次元スペクトラム)69に対して、リアクタントイオンによるピークを特定する。この処理は、後でさらに説明する。
処理304では、E/N特性(エネルギー対密度の特性)を計算し、各ピークのエネルギー分布を求める。処理305では、すべてのイオン電流測定データ(2次元表現、2次元スペクトラム)69から、各ピーク間の相関を求める。処理306では、イオン化された対象の試料(Product Ion)のモノマー(Monomer)、ディマー(Dimer)、トリマー(Trimer)、および、RIP(Reactant Ion Peak)の相互の関係を調べ、それらのピークの相関関係を決定する。RIPは、リアクタントとして作用する、環境中に含まれる水、窒素、酸素等のピークである。この処理に関しては、後にさらに詳述する。
このピーク種別(ピークタイプ)を判断する処理300に続いて、サンプルガス2に含まれる化学物質を推定する処理370を行う。この処理は、推定機能54が行う。まず、処理371では、処理306で決定された複数のピーク相関から、サンプルガス2中のイオン化された対象の試料(Product Ion、化学物質)を推定し、推定された化学物質から派生して生じたピークを特定する(グルーピング、grouping)。また、孤立した、他のピークと関連のないピークも決定する。
処理372では、上述した処理で特定された各種ピークの相関関係が、互いに矛盾しないか検証し、もし問題があればその相関は否定され、推定された化学物質も否定される。推定された化学物質から派生するとして特定されたピークが互いに矛盾しなければ、推定された化学物質がサンプルガス2に含まれていると判断する。処理373は出口である。
図12に、リアクタントイオンによるピーク(RIP)を特定する処理303の詳細を示す。エントリーポイント331に続く処理332では、ピークタイプルールテーブル65からイオンの特性に関する各種基準をロードする。この基準には、具体的には、イオン化処理の方法、イオン化のエネルギー、エアーの流量、湿度、およびセンサーそのもののパラメータが含まれる。
処理333では、イオン化の方法にしたがい、分岐する。放射線、コロナによる間接イオン化の場合には、処理334以下の処理を行う。紫外線などの直接イオン化の場合は、直接イオン化による処理339、たとえばUVによるイオン化の処理340へ分岐する。
間接イオン化の場合、まず、処理334において、RIPの極性を決める。すなわち、正極性のイオン電流特性に関してRIPを求めるのか、それとも負極性のイオン電流特性に関してRIPを求めるのかを決める。なお、RIPは両方の極性に対して存在する。
処理335では、平均のイオン化エネルギーを計算する。処理336では、ピークの相関関係を分析する処理250において、ウィンドウにより連結され、複数の2次元表現69の間で同一タイプのピークであると判断されたピーク(ピーク群)の中から、RIPの候補となるピークのリストを作る。
RIPは、FAIMSセンサー5の特性として通常の環境で使われる限り、電界電圧Vdを0Vから増加させた場合、ピークの位置がマイナス(補償電圧Vcがマイナス)になることが判明している。また、同様に、FAIMSセンサー5の特性として、電界電圧Vdがその最大値の50%を超える場合には、電荷が他の分子へ転嫁し、RIPのピークは消滅することが判明している。そのため、多くのRIPの候補の中から、ピーク位置の補償電圧Vcがマイナスでないものを除外し、同様に電界電圧Vdが50%を超えるものも除外する。
処理337では、さらにRIPの候補の中から、電界電圧Vdを増加させた場合に減少しないものを除外する。電界電圧Vdを増加させた場合、RIPはリアクタントとしての性質から、徐々に電荷が他の(目的とする)化学物質のモノマー、ディマー、さらにはトリマーへ奪われていく。このため、RIPであれば、ピークのイオン電流Icが減少することが知られている。したがって、さらにRIPの候補の中から、電界電圧Vdを増加させた場合に減少しないものを除外する。
処理338では、下記の2つの条件に適応するか否かでさらにRIPのピーク候補を検証および/または絞り込む。
条件(1):RIPのピーク値が減少するとともに、新たに他の(目的とする)化学物質のモノマー、ディマー等が発生する。RIPのピーク値の減少にともなって、ピークの個数が増加するか否かを検査する。
条件(2):RIPのピーク値が減少するとともに、RIPが獲得していた電荷が他の(目的とする)化学物質のモノマー、ディマー等に移動し、それらのピークの電荷が増加する。RIPの候補、およびそれに対応するモノマー、ディマー、さらにはトリマーのエネルギー量を算出し、それらが一定の値に保たれるかを計算する。
処理341では、最終的に残ったRIPの候補をRIPとしてグルーピングする。たとえば、ピークの属性を“RIP”とし、さらにグループIDを、RIPを意味する“0”とする。ステップ342はリターンポイントである。
図13に、対象とする化学物質のモノマー、ディマー等の複数のピークの相関を特定する処理306の詳細を示す。エントリーポイント351に続く処理352では、ピークタイプルールテーブル65から、モノマー、ディマー等の複数のピークのイオンの特性に関する各種基準をロードする。これらの基準には、具体的には、イオン化処理の方法、イオン化のエネルギー、エアーの流量、湿度、およびセンサーそのもののパラメータが含まれる。
処理353では、イオン化の方法にしたがい、分岐する。放射線、コロナによる間接イオン化の場合には、処理354以下の処理を行う。紫外線などの直接イオン化の場合は、直接イオン化処理358、たとえばUV処理359へ分岐する。
処理354では、対象とする化学物質のピークの極性を決める。すなわち、正極性のイオン電流特性に関してピークを求めるのか、それとも負極性のイオン電流特性に関してピークを求めるのかを決める。なお、ピークは両方の極性に対して存在しうる。
処理355では、ピークの相関関係を分析する処理250において、ウィンドウにより連結され、複数の2次元表現69の間で同一タイプのピークであると判断されたピーク(ピーク群)の中から、モノマーの候補となるピークのリストを作る。
モノマーは、FAIMSセンサー5の特性として通常の環境で使われる限り、電界電圧Vdを0%から増加させた場合、ピーク位置の補償電圧Vcはマイナスになることが判明している。また、同様に、FAIMSセンサー5の特性として、電界電圧Vdがその最大値の50%を超える場合には、ディマー等へ転嫁し、ピークは消滅することが判明している。そのため、多くのモノマーの候補の中から、ピーク位置の補償電圧Vcがマイナスでないものを除外し、同様に電界電圧Vdが50%を超えるものも除外する。また、すでにRIPと判明しているものも除外する。同様に、ディマーの候補となるピークのリストも作成する。ディマーに対する判別条件は、電界電圧Vdが正、かつ補償電圧Vdが正である。
処理356では、モノマーの候補、ディマーの候補の中から、モノマーとディマーとしての相関があるピークを特定する。具体的には、モノマー候補のピーク値が減少するにつれディマー候補のピーク値が増加する、あるいは逆に、モノマー候補のピーク値が増加するにつれディマー候補のピーク値が減少する場合に、これらのピークに相関があるとして、共通のグループIDを割り当てる。
処理357では、共通のグループIDが割り当てられなかったピークに対して、ユニークなグループIDを割り当て、ピークの属性を“独立(Independent)”とする。処理360では、モノマー、あるいはディマーと判断されたピークに対し、ピークの属性をそれぞれ“モノマー(Monomer)”と“ディマー(Dimer)”と設定する。ステップ361はリターンポイントである。
以上に述べたように、分析ユニット51は、測定データ61の2次元表現69において検出されたピークを、自動的にRIP、モノマー、ディマーおよびその他の独立したピークとして特定する。したがって、分析ユニット51の推定機能54は、特定された各タイプのピークに関して、それらの相関を調べ、化学物質ライブラリ67に登録されている化学物質毎に纏めることができる。このため、特定されたピークのグループが、共通の化学物質から派生しているか判断できる。同様に、孤立した、他のピークとの関連のないピークも明確になる。そのため、サンプルガス2に含まれる化学物質であって、FAIMSセンサー5により検出された化学物質を、化学物質ライブラリ67に登録されている化学物質の中から容易に選択できる。同様に、サンプルガス2に含まれる化学物質であって、化学物質ライブラリ67に登録されていない未知の化学物質の存在の有無の示唆を得ることができる。
FAIMSセンサー5から得られる測定データ61中の補償電圧Vc(第1のパラメータ)に現れる個々のピーク位置は気温、湿度、気圧、濃度などの様々な要因で変わる。したがって、分析ユニット51においては、第1および第2のパラメータ(電圧Vcおよび電圧Vd)により表現される、測定データの2次元表現69に含まれるピーク位置に加えて、たとえば、濃度Cnを第3のパラメータとして、上記において特定されたピークを評価することにより、さらに各ピークを精度よく分離し、ピークポジションだけではなく、濃度Cnなどの第3のパラメータのピークとの相関、たとえば、ピークの変位(量的変化、高さの変化)、第3のパラメータに対する一般的性質などから、ピークの連続性を精度よく判断できる。
図14(a)にトルエンを含む測定用ガス4をFAIMSセンサー5で測定したときのRIPの位置(Vc電圧、実線)と、トルエンのディマーピークの位置(Vc電圧、破線)とをVd電圧(%)により示している。図14(b)に、Vd電圧が70%のときに、測定用ガス4中のトルエン(化学物質)の濃度を1.5ppbから79.7ppbまで変化させたときの2次元表現(2次元スペクトル)を示している。イオン電流値Icは所定の単位時間当たりに流れた値A.U.である。以下の各化学物質においても同様である。
図15(a)にエチルベンゼンを含む測定用ガス4をFAIMSセンサー5で測定したときのRIPの位置(Vc電圧、実線)と、ディマーピークの位置(Vc電圧、破線)とをVd電圧(%)により示している。図15(b)に、Vd電圧が70%のときに、測定用ガス4中のエチルベンゼン(化学物質)の濃度を448pptから25ppbまで変化させたときの2次元表現(2次元スペクトル)を示している。
図16(a)にスチレンを含む測定用ガス4をFAIMSセンサー5で測定したときのRIPの位置(Vc電圧、実線)と、モノマーピークの位置(細破線)およびディマーピークの位置(Vc電圧、破線)とをVd電圧(%)により示している。図16(b)に、Vd電圧が70%のときに、測定用ガス4中のスチレン(化学物質)の濃度を448pptから25ppbまで変化させたときの2次元表現(2次元スペクトル)を示している。
図17(a)にp−キシレンを含む測定用ガス4をFAIMSセンサー5で測定したときのRIPの位置(Vc電圧、実線)と、モノマーピークの位置(細破線)およびディマーピークの位置(Vc電圧、破線)とをVd電圧(%)により示している。図17(b)に、Vd電圧が70%のときに、測定用ガス4中のp−キシレン(化学物質)の濃度を382pptから10ppbまで変化させたときの2次元表現(2次元スペクトル)を示している。
図18(a)にm−キシレンを含む測定用ガス4をFAIMSセンサー5で測定したときのRIPの位置(Vc電圧、実線)と、ディマーピークの位置(Vc電圧、破線)とをVd電圧(%)により示している。図18(b)に、Vd電圧が70%のときに、測定用ガス4中のm−キシレン(化学物質)の濃度を95pptから1.9ppbまで変化させたときの2次元表現(2次元スペクトル)を示している。
図19(a)に、上記各化学物質のディマーピークの位置(Vc電圧)の変化(イオン移動度)を纏めて示している。また、図19(b)に、上記各化学物質のモノマーピークの位置(Vc電圧)の変化(イオン移動度)を纏めて示している。なお、m−キシレンについては、測定した濃度範囲ではモノマーピークを識別できなかった。
図20(a)に、上記各化学物質のディマーピークの強度(イオン電流)Icを濃度Cnが0−25ppbの範囲で示している。図20(b)に、上記化学物質のディマーピークの強度Icを0−5ppbの範囲で示している。
トルエン(Touluene)はメチルベンゼンとも呼ばれ、芳香族炭化水素に属する有機化合物であり、化学式CCHで表され、ベンゼンの水素原子の一つをメチル基で置換した構造を持つ。分子量は、92.14である。
エチルベンゼン(Ethylbenzene)はフェニルエタン(phenylethane)、エチルベンゾール(ethylbenzol)とも呼ばれ、化学式Cで表される炭化水素であり、ベンゼン環上の1つの水素をエチル基で置換した構造を持つ。分子量は、106.16である。
スチレン(styrene)はビニルベンゼンとも呼ばれ、化学式Cで表される芳香族炭化水素である。分子量は104である。
キシレン(xylene)はジメチルベンゼンとも呼ばれ、分子式C10で表される芳香族化合物である。分子量は106.17である。キシレンは、ベンゼンの水素のうち2つをメチル基で置換した構造をもち、p−キシレン(1,4−ジメチルベンゼン)はメチル基がパラの位置にあり、m−キシレン(1,3−ジメチルベンゼン)はメチル基がメタの位置にある位置異性体である。
これら5つの化学物質は、ベンゼン環を備えた芳香族化合物で、分子量も比較的近い。特に、p−キシレンとm−キシレンとは、位置異性体であり、基本的な分子構造および分子量は共通する。
しかしながら、図19(a)および(b)に示すように、2次元表現69を解析することによって得られたディマーピークおよびモノマーピークの動き(シフト)は異なり、イオン移動度が異なることがわかる。したがって、特定のVd電圧の2次元表現69におけるピーク位置を比較することにより、これらの化学物質を特定できることがわかる。たとえば、図19(a)において、Vd電圧がP1の2次元表現69では、p−キシレンおよびスチレンのディマーピークは近いが、他の化学物質のディマーピークの位置(Vc電圧)は離れている。Vd電圧がP2の2次元表現69では、p−キシレンおよびスチレンのディマーピークの位置も離れており、5つの化学物質を識別できる可能性がある。Vd電圧がP3の2次元表現69では、m−キシレンおよびエチルベンゼンのディマーピークの位置は近いが、他の化学物質のディマーピークの位置は離れている。また、図19(b)においては、Vd電圧がP4の2次元表現69では、スチレンおよびエチルベンゼンのディマーピークの位置は近いが、他の化学物質のディマーピークの位置は離れている。
1または複数のVd電圧のディマーピークの位置および/またはモノマーピークの位置(Vc電圧)を比較し、Vd電圧との相関関係を評価することにより、比較的特性の近い化学物質であっても十分に精度よく特定できることがわかる。したがって、この分析ユニット51により、サンプルガス2に含まれている化学物質の候補を十分に精度よく特定できる。
さらに、図20(a)および(b)に示すように、濃度Cnに対する各化学物質のディマーピークの感度(イオン電流)Icの値は異なっている。また、各化学物質のディマーピークの感度Icと濃度Cnとの相関関係も異なっている。すなわち、濃度Cnの異なる複数の2次元表現69に現れるピークの強度、ピークの変化率は、化学物質により異なっており、この分析ユニット51においては、サンプルの濃度Cnを変えることによって、さらに化学物質の特定が容易となる。たとえば、数ppt−2ppbの範囲であれば、p−キシレンおよびm−キシレンは、他の化学物質と区別することは容易であり、p−キシレンおよびm−キシレンも、ピーク強度Icを濃度Cnの関数として評価すれば十分に精度よく特定できる。スチレン、トルエン、エチルベンゼンにおいては、5ppb−20ppb程度の濃度範囲でいくつかの2次元表現60に現れるピーク強度Icと濃度Cnとの関数を比較することにより十分に精度よく特定できる。
このように、分析ユニット51においては、Vc電圧およびVd電圧により特定されたピークと、濃度Cnとの相関を求めることにより、サンプルガス2に含まれる化学物質の候補を、より精度よく推定できる。
さらに、分析ユニット51においては、測定データ61に含まれる各ピークをそれらの相関、すなわち、大小、増減、生滅を、電界電圧Vd(第2のパラメータ)、変位(変化量)などに基づいて解析することにより、測定データ61に含まれる複数のピークの少なくとも一部のピークを相互に関連付けてグループ化する。したがって、分析ユニット51では、測定データ61に含まれている各ピークの一方および/または他方のパラメータ上の位置に加え、第1および第2のパラメータ上のピーク同士の挙動の相関、センサー5に対する検出対象の要因(化学物質)の一般的ルールなどにより、グループ化されたピーク、グループの数、グループの挙動、さらには、グループ化されなかったピークの有無および挙動、といった情報が得られる。
これらのグループ化された、あるいはグループ化されなかったピークおよびその挙動は、FAIMSセンサー5に対する要因の影響が共通する、あるいは共通しない要素を持つことを意味する。したがって、グループ化されたピーク、グループの数、グループの挙動、さらにグループ化されなかった独立のピークといった要素により検出対象の要因をグループ化することにより、検出対象の要因の特定を容易に、また精度よく行うことが可能となる。検出対象の要因が化学物質であれば、有機および無機の化学物質の多くは基(グループ、ラジカル)によりグループ化され、その影響がピークの挙動に強く表れると想定される。したがって、この分析ユニット51および方法400は、化学物質の特定にも役立つものである。
すなわち、FAIMSセンサー5から得られる測定データ(検出データ)のピークの相関に注目することにより、得られたデータに含まれるピークが、どの物質から派生しているのかを特定することが可能である。この点に注目して、自動的にピークを検出するだけでなく、ピークをグループに分割して、どのピークが同じ化学物質から派生しているかを特定することができる。
図21に、異なるサンプリングシステムを備えたセンサーシステム1の概略構成を示している。このセンサーシステム1は、サンプリングセクション(サンプリングシステム)600と、センサーセクション700とを含む。図21に示したサンプリングシステム600の第1のライン610は、ヒーター付きの吸引口651と、ダイアフラムポンプ652とを含む。吸引口651のヒーターは温度コントローラ671により吸引口651の温度が65℃以下になるように制御される。第1のライン610と並列するキャリアガス供給ライン611は、キャリアガスソース681と、圧力制御ユニット682とを含む。キャリアガスの典型的なものはクリーンドライエアーであり、メタン濃度が0.1ppm以下、露点が−45℃以下であることが望ましい。
サンプリングシステム600は、さらに、第2のライン620を含む。第2のライン620は、第1のライン610により供給されたサンプルガス602と、キャリアガス供給ライン611により供給されたキャリアガス603とを混合するミキサー653と、フロースプリッタ654と、流量制御回路673による制御を受ける流量調整ユニット657とを含む。流量調整ユニット657により流量制御された混合ガス(測定用ガス)604は、フィルタ658を介してFAIMSセンサー5に供給される。FAIMSセンサー5の下流にはさらに流量調整装置660が設置されている。
フロースプリッタ654には、スプリットされた混合ガスの流量調整を行う調整バルブ655を介して、濃縮または希釈する濃度調整ユニット656が接続されており、濃縮または希釈された混合ガス604は、元のラインに戻したり、異なるイオン移動度センサーまたはガスクロマトグラフィーなどの第2のセンサー661に供給することも可能となっている。
図21に示したサンプリングシステム600は、高濃度少量のサンプルガスを採取し、キャリアガスにより適当な濃度に薄めてFAIMSセンサー5に供給できる。したがって、FAIMSセンサー5を通過するサンプルの濃度をFAIMSセンサー5でもっとも測定しやすい濃度に動的に、自律的に、あるいは自動的に制御することができる。また、FAIMSセンサー5を通過するサンプルの濃度を動的に制御できるので、サンプルの濃度によりFAIMSセンサー5の出力特性を容易に得ることができ、サンプルの濃度と出力との関係からサンプルを同定することも可能となる。
さらに、サンプルガスが通過する第1のライン610の容量を小さくできるというメリットがある。測定対象のサンプルガス602の一部は、第1のライン610の配管内に付着(コンタミネーション)するものがあり、同一の配管を用いて異なるサンプルを測定する場合のバックグラウンドノイズとなることがある。第1のライン610の容量を小さくすることにより配管径を小さくでき、配管を加熱して付着したサンプルを除去することが容易となる。また、配管径が限られるのでパージ回数も容易に確保することができ、測定の準備に要する時間を大幅に短縮できる。
なお、キャリアガス供給ライン611および第2のライン620の配管も、排気系を除き、加熱されていることが望ましい。
上記において説明したシステムおよび方法は、4次元以上の多次元データを測定データとして取得するシステムにおいて好適である。上記において説明したシステムおよび方法においては、イオン電流の値の特性を、ある次元のパラメータの近隣のデータ間の相関から特定し、現れるピークを、それを派生させる要因、たとえば、化学物質毎にグループ化させることを含む。また、連続する2つ以上の測定データの2次元表現の中に含まれる複数のピークの連続性を検出する手段を備え、検出したピークの連続性、新たなピークの発生、およびピークの消滅情報を合わせて出力する。
典型的には、FAIMSセンサー5の出力を解析する装置(分析ユニット)51において、ある特定のVd電圧に対し、Vc電圧を変化させた場合に現れるイオン電流のピークに対し、近隣のVd電圧の場合のピークとの相関を調べ、それらが同じ化学物質から派生しているのか否かを判定し、測定結果に表れるピークを、派生させる化学物質毎にグループ化することを含む。近隣のイオン電流のピークの相関は、ピークの現れる場所、ピークの幅、ピーク値だけでなく、イオン化された物質の理論上の特性等を考慮して判断される。ある特定のVc電圧に対し、Vd電圧を変化させた場合に現れるイオン電流のピークに対し、近隣のVc電圧の場合のピークとの相関を調べ、それらが同じ化学物質から派生しているのか否かを判定してもよい。
上記において説明したシステムおよび方法においては、さらに、FAIMSなどのセンサーから得られた測定結果(出力)から、自動的にピークを検出するだけでなく、どのピークが相関がある(同じ化学物質から派生している)かが判定される。このため、どのピーク群が、共通の要因、典型的には化学物質から派生しているのかが明らかとなる。また同様に、孤立した、他のピークとの関連のないピークも明確になる。そのため、センサーの出力中に、目的とする要因(典型的には化学物質)の存在の有無を容易に判断できるだけでなく、未知の要因の存在の有無に関しても示唆を得ることができる。
このため、FAIMSなどのセンサーから得られた出力(測定データ)を解析する際に、多種多様の要因(化学物質)の出力に習熟しなくても、容易に、また、いっそう確実にセンサー出力に含まれる要因を判断または推定できる。また、センサーから得られた出力(測定データ)を解析する装置においては、サンプルに含まれる化学物質を自動的に判断できるので、この装置を使う上での利便性が大幅に向上する。
また、上記において説明したシステムおよび方法においては、FAIMSなどのセンサーから得られた測定結果が、自動的に、センサーに対する影響が共通する要素を備えた要因毎にグループ化される。たとえば、測定結果が化学物質毎にグループ化される。このため、センサーや測定対象の要因について、予め精度の高い情報を得ていない場合であっても、グループ化された結果より、要因を容易に、また精度良く推定したり、決定したりすることができる。たとえば、FAIMS装置や化学物質に習熟していなくても、測定された(検出された)化学物質を容易に、より確実に判断ができ、この装置を使う上での利便性が大幅に向上する。
また、上記において説明したシステムおよび方法においては、測定結果は自動的に、共通の要素を備えた要因毎に分類されて表現される。たとえば、要因が化学物質であれば、基(グループ、ラジカル)などのイオン移動度に影響を与える要素を含むグループに分類して表現される。このため、解析装置(分析ユニットまたはOLPを含む装置)を操作する人の能力への依存度を低減でき、安定した成果を上げることができる。また、測定結果の誤解釈を防ぐことができる。さらに、装置に対する習熟度の影響も抑制できる。そのため、結果として、測定にかかる時間を短縮することも可能である。上記において説明した装置および方法は、複数の要因、たとえば、化学物質が混在する場合にも有効であり、複数の要因(化学物質)から派生するピークが分類して示されるので、測定結果の判断が容易になり、誤判断を防ぐことができる。
以上のように、分析ユニット51を備えたOLP50によれば、測定結果を自動的に化学物質毎に分類して表現するので、装置を操作する人の能力に依存せずに安定した成果を上げることができ、また誤解釈を防ぐことができる。また装置に習熟する必要が少なくなる。そのため、結果として、測定にかかる時間を短縮することも可能である。また、分析ユニット51および分析方法400は、複数の化学物質が混在する場合にも有効であり、複数の化学物質から派生するピークが分類して示される。このため、測定結果の判断が容易になり、誤判断を防ぐことができる。
なお、上記においては、FAIMSセンサーを備えたシステムを例に本発明を説明しているが、他のタイプのイオン移動度センサーを備えたシステムにおいても適用可能である。センサーシステムの応用範囲は特に限定されないが、例えば水の中に微量な化学物質が含まれていないかを検出する水質検査装置、微量な麻薬物質の検出が可能な麻薬検出装置や、患者の呼気から疾患の罹患状態を調べる健康モニタ装置などが考えられる。

Claims (20)

  1. サンプルを分析するユニットを有するシステムであって、
    前記分析するユニットは、少なくとも2つのパラメータにより制御される電界を通過する化学物質のイオン強度を測定するイオン移動度センサーに前記サンプルを供給して得られた測定データに含まれるデータの2次元表現であって、第1のパラメータを変化させ、他のパラメータを固定したときのイオン強度を示す2次元表現の中に存在するピークを検出する機能と、
    検出されたピークと他の2次元表現の中に存在するピークとの連続性および生滅に基づいて前記検出されたピークを分類する機能と、
    分類されたピークに基づいて前記サンプルに含まれる化学物質を推定する機能とを有するシステム。
  2. 請求項1において、前記分類する機能は、前記少なくとも2つのパラメータの1つを前記第1のパラメータとして変化させ、前記少なくとも2つのパラメータの他の1つを第2のパラメータとして変えた前記他の2次元表現の中に存在するピークとの関係を評価する第1の機能を含む、システム。
  3. 請求項2において、前記分析するユニットは、前記少なくとも2つのパラメータに加えて前記イオン移動度センサーに供給される前記サンプルの条件が第3のパラメータとして制御された前記測定データの中の、前記第3のパラメータを変えた前記他の2次元表現の中に存在するピークとの関係を評価する第2の機能を含む、システム。
  4. 請求項3において、前記サンプルの条件は、前記サンプルの濃度、湿度、温度、流量および圧力のいずれかである、システム。
  5. 請求項3または4において、前記第2の機能は、前記2次元表現の中の複数のピークの存在が顕著になる前記第3のパラメータを選択する機能を含む、システム。
  6. 請求項3ないし5のいずれかにおいて、前記分類する機能は、ピーク特性を含むピーク特性を評価ルールに基づいて、前記検出されたピークの種別を判断する機能を含む、システム。
  7. 請求項6において、前記評価ルールは、リアクタンスのRIPのピーク特性と、化学物質から派生したモノマー、ディマーおよびトリマーのピーク特性との理論上の関係を含む、システム。
  8. 請求項7において、前記推定する機能は、モノマー、ディマーおよびトリマーの少なくともいずれかのピークを示す特定されたピークに基づき前記サンプルに含まれる化学物質の候補を選択する機能を含む、システム。
  9. 請求項8において、前記推定する機能は、前記特定されたピークと前記第3のパラメータとの相関を求め、前記サンプルに含まれる化学物質の候補を選択する機能を含む、システム。
  10. 請求項1ないし9のいずれかにおいて、
    前記イオン移動度センサーをさらに有する、システム。
  11. 請求項3ないし9のいずれかにおいて、
    前記イオン移動度センサーに供給されるキャリアガス中の前記サンプルの濃度を制御する調整ユニットをさらに有する、システム。
  12. 請求項11において、前記調整ユニットは、前記サンプルを、イオン化ユニットを通過させる第1のラインと、
    前記イオン化ユニットを通過したサンプルをキャリアガスと混合して前記イオン移動度センサーに供給する第2のラインとを含む、システム。
  13. 請求項12において、前記第1のラインは、前記イオン化ユニットの上流に設けられた加湿ユニットを含む、システム。
  14. 少なくとも2つのパラメータにより制御される電界を通過する化学物質のイオン強度を測定するイオン移動度センサーにサンプルを供給して得られた測定データに含まれるデータの2次元表現であって、第1のパラメータを変化させ、他のパラメータを固定したときのイオン強度を示す2次元表現の中に存在するピークを検出することと、
    検出されたピークと他の2次元表現の中に存在するピークとの連続性および生滅に基づいて前記検出されたピークを分類することと、
    分類されたピークに基づいて前記サンプルに含まれる化学物質を推定することとを有する方法。
  15. 請求項14において、前記分類することは、前記少なくとも2つのパラメータの1つを前記第1のパラメータとして変化させ、前記少なくとも2つのパラメータの他の1つを第2のパラメータとして変えた前記他の2次元表現の中に存在するピークとの間の第1の関係を評価することを含む、方法。
  16. 請求項15において、前記少なくとも2つのパラメータに加えて前記イオン移動度センサーに供給される前記サンプルの条件が第3のパラメータとして制御された前記測定データの中の、前記第3のパラメータを変えた前記他の2次元表現の中に存在するピークとの間の第2の関係を評価することをさらに有する、方法。
  17. 請求項16において、前記第2の関係を評価することは、前記2次元表現の中の複数のピークの存在が顕著になる前記第3のパラメータを選択することを含む、方法。
  18. 請求項16または17において、前記分類することは、ピーク特性を含む評価ルールに基づいて前記検出されたピークの種別を判断することとを含む、方法。
  19. 請求項18において、前記評価ルールは、リアクタンスのRIPのピーク特性と、化学物質から派生したモノマー、ディマーおよびトリマーのピーク特性との理論上の関係を含み、
    前記推定することは、モノマー、ディマーおよびトリマーの少なくともいずれかのピークを示す特定されたピークに基づき前記サンプルに含まれる化学物質の候補を選択することをさらに含む、方法。
  20. 請求項19において、前記推定することは、前記特定されたピークと前記第3のパラメータとの相関を求め、前記サンプルに含まれる化学物質の候補を選択することをさらに含む、方法。
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