JPWO2012046351A1 - 茶類エキスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、茶類原料を、プロテアーセ、タンナーゼ、および20000U/g以上のポリガラクツロナーゼ活性を有する酵素製剤を添加して抽出処理することからなる茶類エキスの製造方法を提供するものであり、本発明の方法によれば、従来の茶葉からの酵素処理抽出では、分解、抽出しきれなかった茶葉由来の細胞壁成分を抽出することができ、また、細胞壁成分の分解にともなって抽出可能となった蛋白質をさらにアミノ酸に分解することができ、その結果、アミノ酸成分を豊富に含有し、甘味、こく味および旨味を豊富に有する茶類エキスを高収率で得ることができる。

Description

本発明は、甘味、こく味および旨味が強く、渋味の少ない茶類エキスを茶葉から高収率で製造する方法に関する。
近年、茶類飲料を缶あるいはペットボトル等に充填した商品が提供されており、消費者の甘味ばなれから高い支持を得てその生産量は増加の一途をたどっている。最近の傾向としては、旨味やコク味が強く、渋味が抑えられた茶類飲料が好まれている。
茶類エキスの製造に際して、酵素剤により処理する方法としては、例えば、プロトペクチナーゼとセルラーゼを併用して茶葉を抽出する方法(特許文献1参照)、紅茶葉をタンナーゼで処理する方法(特許文献2参照)、ペクチナーゼ、アミラーゼおよびポリフェノールオキシダーゼで処理する方法(特許文献3参照)、アミラーゼ或いはプロテアーゼ或いはセルラーゼまたはこれらの混合酵素の水溶液を含浸させて乾燥させ、次いで100〜170℃で加熱焙煎する穀茶の製造法(特許文献4参照)、粘着性澱粉と、α−もしくはβ−アミラーゼ、セルラーゼおよびプロテアーゼから選択される少なくとも1種の酵素の混合物により抽出したインスタント茶の製法(特許文献5参照)、紅茶の葉をタンナーゼ及び少なくとも一つの細胞壁消化酵素で湿潤する方法(特許文献6参照)、茶葉抽出残渣をセルラーゼおよびプロテアーゼで処理する方法(特許文献7参照)、茶類の熱水抽出液を予めタンナーゼで処理した後凍結濃縮する方法(特許文献8参照)、茶抽出液に、クロロゲン酸エステラーゼを作用させて混濁の少ない茶類飲料を製造する方法(特許文献9参照)、茶類原料を、プロテアーゼおよびタンナーゼの存在下に抽出することを特徴とする茶類エキスの製造方法(特許文献10参照)、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼおよびプロトペクチナーゼを少なくとも含有する酵素群を用い、茶葉を酵素分解抽出処理することを特徴とする茶葉抽出液の製造方法(特許文献11参照)、茶葉をプロテアーゼ存在下に水で抽出し、得られた抽出液をさらにプロテアーゼで処理することを特徴とする茶類エキスの抽出方法(特許文献12参照)、茶類原料の抽出時および/または抽出後にグルコアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、インベルターゼまたはα−ガラクトシダーゼなどの糖類分解酵素を用いて酵素分解処理することを特徴とする茶類エキスの製造方法(特許文献13参照)、ヒイロタケ産生酵素およびセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼまたはプロトペクチナーゼを用いて茶類原料を酵素分解抽出処理することを特徴とする茶類エキスの製造方法(特許文献14参照)などが提案されている。
しかしながら、これらの方法は、甘味、こく味、旨味などの呈味を改善し、収率向上を図る意味で、それなりの成果を上げているが、茶の抽出残渣には、まだまだ細胞壁や蛋白質などの有用成分が残存しており、それらすべてを有効に利用しているとはいえない。
特公昭46−17958号公報 特公昭52−42877 特公昭62−15175号公報 特開昭57−47465号公報 特公平1−47979号公報 特公平4−63662号公報 特許第3157539号公報 特開平5−328901号公報 特開平11−308965号公報 特開2003−144049号公報 特開2003−210110号公報 特開2008−67631号公報 特開2008−86280号公報 特開2008−125477号公報
本発明の目的は、従来の茶葉からの酵素処理抽出では、分解、抽出しきれなかった茶葉由来の細胞壁成分を抽出することができ、また、細胞壁成分の分解にともなって抽出可能となった蛋白質をさらにアミノ酸に分解することができ、その結果、アミノ酸成分を豊富に含有し、甘味、こく味および旨味を豊富に有し、かつ渋味の少ない茶類エキスを高収率で製造することができる方法を提供することである。
茶葉中には約25%のタンパク質が含まれており(5訂食品成分表)、このタンパク質をプロテアーゼで分解すれば旨味の強い茶類エキスが得られることが予想される。しかしながら、茶葉にプロテアーゼのみ作用させても、それほど多くのアミノ酸の遊離は見られない。本出願人は、以前の研究において、茶葉中のタンパク質がタンニンと結合しているのではないかと推測し、鋭意研究を行った結果、茶類原料を、プロテアーゼおよびタンナーゼの存在下に抽出することにより、旨味およびコク味が強く、渋味の少ない茶類エキスが得られることを見出し、先に提案した(前掲特許文献10参照)。
しかしながら、特許文献10に記載の方法を実施しても、抽出後の茶葉中には、まだ抽出されない細胞壁成分および蛋白質がかなり残存していることが明らかとなった。そこで、本発明者らは、この抽出されないで残存している細胞壁成分および蛋白質を有効利用すべく研究した結果、ペクチナーゼの中でも、特にポリガラクツロナーゼが茶葉の細胞組織を効率よく分解することを見出した。茶葉中のペクチン質を分解して可溶性固形分を増加させるためには、通常は、添加するポリガラクツロナーゼの活性単位を増やせばよいと考えられる。ところが、市販のほとんどのペクチナーゼは、ポリガラクツロナーゼの活性単位がそれほど高くなく、通常の添加量(茶葉に対して0.1〜2質量%程度)では効果が少なく、また、多量に添加すると、酵素製剤由来の賦形剤や酵素の蛋白質により、得られる茶類エキスの味が薄くなったり、茶とは異質の不自然な甘味が付与されたり、雑味が生じるなど、呈味に悪影響をおよぼすという問題が生じる。
そこで、本発明者らはこの問題を解決すべく、さらに研究を重ねた結果、今回、驚くべきことに、茶葉に、プロテアーゼおよびタンナーゼに加え、さらに、20000U/g以上のポリガラクツロナーゼ活性を有する酵素製剤を、茶葉1gに対し、ポリガラクツロナーゼ活性として800U以上となるような量で添加して抽出すると、茶葉からの可溶性固形分収率が飛躍的に向上し、ガラクツロン酸を大量に生成すること、また、アミノ酸収率も向上し、得られるエキスは甘味、こく味および旨味を豊富に有していることを見いだし、本発明を完成するに至った。
かくして、本願発明は、茶類原料を、(A)プロテアーゼ、(B)タンナーゼ、および(C)20000U/g以上のポリガラクツロナーゼ活性を有する酵素製剤を添加して抽出処理することを特徴とする茶類エキスの製造方法を提供するものである。
本発明の方法により、原料として使用される茶類原料の約40質量%〜約80質量%が可溶性固形分へと変換されたものであり、茶類原料からのエキス収率を大幅に向上させることができ、得られる茶類エキスはガラクツロン酸を多量に含んでいる。また、茶類原料からのアミノ酸収率も向上させることができる。さらに、本発明の方法により得られる茶類エキスは甘味、こく味および旨味を豊富に含んでおり、茶類飲料等に添加することにより、茶類飲料等に甘味、こく味および旨味を付与し或いは茶類飲料等の甘味、こく味および旨味を増強することができる。また、本発明の方法においては、茶類原料の酵素処理に伴い、酵素処理中の粘度が低下し、さらさらとなるため、酵素処理スラリーから茶葉残渣を分離する工程を容易に行うことができるようになる。具体的には、分離、濾過などの作業に要する時間が大幅に短縮され、製造における作業性の向上をはかることができ、作業時間の短縮により製造コストを下げることができるという効果も得られる。
本発明の方法において原料として使用される茶類としては、ツバキ科の常緑樹であるチャ(学名:Camellia sinensis(L)O.Kuntze)の芽、葉、茎などから得られる生葉、製茶された不発酵茶、半発酵茶および発酵茶を挙げることができる。不発酵茶としては、例えば、煎茶、番茶、ほうじ茶、玉露、かぶせ茶、てん茶などの蒸し製の不発酵茶や、嬉野茶、青柳茶、各種中国茶等の釜炒茶などの不発酵茶が挙げられ;半発酵茶としては、例えば、包種茶、鉄観音茶、ウーロン茶などが挙げられ;発酵茶としては、例えば、紅茶、プーアール茶、阿波番茶、碁石茶などが挙げられる。また、不発酵茶や半発酵茶を花で加香した茶なども使用することができる。これらのうち、特に、フレッシュでナチュラルな香気や甘味、旨味などを有する茶類エキスが得られるという観点から、緑茶、ウーロン茶、ジャスミン茶などが好適である。
本発明の方法は、上記の茶類原料を、プロテアーゼ(A)、タンナーゼ(B)、および20000U/g以上のポリガラクツロナーゼ活性を有する酵素製剤(C)を、茶類原料1gに対し、ポリガラクツロナーゼ活性として800U以上となるような量で抽出処理することを特徴とするものである。
本発明に従う酵素処理に使用されるプロテアーゼ(A)は、蛋白質やペプチドのペプチド結合を加水分解する酵素である。かかるプロテアーゼとしては、特に制限されず、動植物由来または微生物由来のプロテアーゼを使用することができ、例えば、プロテアーゼA「アマノ」、プロテアーゼM「アマノ」、プロテアーゼP「アマノ」3G、プロテアーゼN「アマノ」、パンクレアチンF、パパインW−40、プロメラインF(以上、天野エンザイム社製);スミチーム(登録商標)AP、LP、MP、FP、LPL(以上、新日本化学工業社製);プロチン(登録商標)FN(大和化成社製);デナプシン(登録商標)2P、デナチーム(登録商標)AP、XP−415、食品用精製パパイン、ビオプラーゼ(登録商標)XL−416F、SP−4FG、SP−15FG(以上、ナガセケムテックス社製);オリエンターゼ(登録商標)22BF、90N、ONS、20A(以上、エイチビィアイ社製);モルシン(登録商標)F、PD酵素、IP酵素、AO−プロテアーゼ(以上、キッコーマン社製);サカナーゼ(科研ファルマ社製の麹菌由来プロテアーゼ);パンチダーゼ(登録商標)NP−2、P、パパインソルブル、プロテアーゼYP−SS(以上、ヤクルト薬品工業社製);フレーバザイム(登録商標)、プロタメックス(登録商標)、ニュートラーゼ(登録商標)、アルカラーゼ(登録商標)(ノボザイムズジャパン社製);コクラーゼ(登録商標)SS、P(以上、三菱化学フーズ社製);VERON PS、COROLASE PN−L、COROLASE N、COROLASE 7089、VERON W、VERON P(以上、ABエンザイム社製);プロチンP、デスキン、デピレイス、プロチンA、サモアーゼ(登録商標)(以上、大和化成社製);オリエンターゼ(登録商標)90N、10NL、22BF、ヌクレイシン(登録商標)(以上、エイチビィアイ社製);アロアーゼ(登録商標)AP−10(ヤクルト薬品工業社製);エンチロンNBS(洛東化成工業社製);アクチナーゼ(登録商標)AS、AF(以上、科研ファルマ社製);アルカリプロテアーゼGL440、ピュラフェクト(登録商標)4000L、プロテアーゼ899、プロテックス6L、タシナーゼ(登録商標)(ジェネンコア協和社製);その他、動物由来のペプシン、トリプシンなどを挙げることができる。これらのプロテアーゼはそれぞれ単独でまたは2種以上組合わせて使用することができる。これらのプロテアーゼ(A)の使用量は、力価などにより異なり一概には言えないが、茶類原料1gあたり、通常約0.01U〜約100U、好ましくは約1U〜約80Uの範囲内を例示することができる。
また、本発明に従う酵素処理に使用されるタンナーゼ(B)としては、タンニンを分解する活性を有するものであれば、特に制限はなく任意のものを使用することができる。具体的には、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属、ムコール属などに属するタンナーゼ生産菌を、これら糸状菌の培養に通常用いられる培地を用い、常法に従って固体培養または液体培養し、得られる培養物またはその処理物を常法により精製処理したものを挙げることができる。なお、市販されているタンナーゼ、例えば、タンナーゼ「キッコーマン(5,000U/g)」(キッコーマン社製)、タンナーゼ「キッコーマン(500U/g)」(キッコーマン社製)、タンナーゼ(三菱化学フーズ社製)、スミチームTAN(新日本化学社製)などを用いてもよい。これらのタンナーゼはそれぞれ単独でまたは2種以上組合わせて使用することができる。タンナーゼ(B)の使用量は、力価などにより異なり一概には言えないが、茶類原料1gあたり、通常約0.1U〜約50U、好ましくは約0.5U〜約45Uの範囲内を例示することができる。
本発明の方法は、前記のプロテアーゼおよびタンナーゼに加え、20000U/g以上のポリガラクツロナーゼ活性を有する酵素製剤を、茶類原料1gあたり、ポリガラクツロナーゼ活性として800U以上となるような量で添加して抽出する点に本質的特徴を有するものであり、これにより、茶葉原料からの可溶性固形分収率が飛躍的に向上し、また、得られる茶類エキスは、ガラクツロン酸およびアミノ酸を豊富に含有し、かつ甘味、こく味および旨味が豊富になるという顕著な効果が得られる。
茶類原料をペクチナーゼで処理して抽出する技術は、前記のとおり、本願出願以前にも知られている。また、茶類原料に、プロテアーゼおよびタンナーゼに加えて、ペクチナーゼを添加して抽出した場合、プロテアーゼおよびタンナーゼのみを添加して抽出した場合と比較して、それなりの効果は得られる。ところが、茶類原料に、プロテアーゼおよびタンナーゼに加えて、茶類原料1gあたり、通常800U以上、好ましくは1000U以上、さらに好ましくは1000U〜10000U、より一層好ましくは1500U〜5000Uのポリガラクツロナーゼを添加して抽出処理すると、茶葉原料(乾燥茶葉)のうち、約40質量%〜約80質量%が可溶化するという驚くべき現象が起こり、また、細胞壁成分の分解に伴いガラクツロン酸が多量に生成し、さらにアミノ酸の抽出量も増加し、これらの増加に伴い、旨味、甘味、こく味などが増強され、風味豊かな茶類エキスを高収率で得ることができ、さらに、効率的に茶葉組織を分解し、水可溶性成分の抽出効率を高めることができることが判明した。
ポリガラクツロナーゼは、ペクチナーゼの一種である。一般的にペクチナーゼと分類される酵素には、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼおよびペクチンメチルエステラーゼが含まれる。ポリガラクツロナーゼはペクチン中のポリガラクツロン酸主鎖のα−1,4結合を加水分解する酵素であり、ペクチンリアーゼはペクチン中のポリガラクツロン酸主鎖のα−1,4結合をβ−脱離反応により分解する酵素であり、ペクチンメチルエステラーゼはペクチンのメチルエステルを加水分解する酵素である。ペクチナーゼは、植物の組織を崩壊させる酵素群の中心に位置付けられる酵素であり、茶類原料をペクチナーゼで処理して抽出する技術は、前記のとおり、本願出願以前より知られている。しかしながら、従来の、例えば、前記特許文献等に記載されているペクチナーゼを通常の添加量で使用して茶類原料を酵素処理しても、十分に茶類の細胞組織の分解が行われているとはいえない。そこで、茶類の細胞組織に対してはペクチナーゼ中のポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンメチルエステラーゼのいずれの酵素が特に有効であるかを検討したところ、ポリガラクツロナーゼは単独でも有効であり、また、従来使用されていたよりも高い活性単位を有するものを使用することにより、細胞組織の十分な分解が行われることを見出した。
なお、本明細書において、ポリガラクツロナーゼ活性は、ソモギーネルソン法(J.Biol.Chem.153,375−380,1994年)により、ポリガラクツロン酸水溶液を基質としてポリガラクツロナーゼを作用させ、酵素反応生成物である還元糖を比色法により定量する方法により測定した値であり、酵素1単位(1U)は、1分間にガラクツロン酸1μmolを生成する酵素量を意味する。
上記のペクチナーゼとしては、市販品として、例えば、ペクチナーゼPL「アマノ」、ペクチナーゼG「アマノ」(以上、天野エンザイム社製)、Pectinase−GODO(合同酒精社製)、スクラーゼ(登録商標)A、N、S(以上、三菱化学フーズ社製)、スミチーム(登録商標)AP−2、SPC、SPG、MC、PX、液状スミチームAP−2、(以上、新日本化学工業社製)、ペクチナーゼXP−534(ナガセケムテックス社製)、ペクチネックス(登録商標)、ペクチネックスウルトラSP−L、ウルトラザイム(登録商標)、ビノザイム(登録商標)、シトロザイム(登録商標)、ピールザイム(登録商標)(以上、ノボノルディスクバイオインダストリー社製);セルロシン(登録商標)PC5、PE60、PEL、可溶性ペクチナーゼT(以上、エイチビィアイ社製)、ペクチナーゼSS、ペクチナーゼHL(以上、ヤクルト薬品工業社製)などを挙げることができる。これらのうち、特にポリガラクツロナーゼ活性の高いペクチナーゼとしては、例えば、スミチームAP−2、SPC、SPG(以上、新日本化学工業社製)を挙げることができる。
一般的な市販のペクチナーゼ製剤のポリガラクツロナーゼ活性は、通常500U/g〜約20000U/g程度である。したがって、茶葉原料1gに対し800Uを添加するためには、茶葉原料1gに対して0.04g〜1.6gという大量のペクチナーゼ製剤を添加しなければならない。その際、酵素製剤量を、例えば茶葉原料1gに対し0.06g以上、特に0.08g以上添加すると、賦形剤やその他の成分の影響が茶類抽出液に強く出てしまい、得られる茶類エキスの味が薄くなったり、茶とは異質の不自然な甘味が付与されたり、雑味が生じるなど、呈味に悪影響をおよぼすという問題が生じる。したがって、ポリガラクツロナーゼ活性として本来20000U/g以上の高い活性を有するペクチナーゼはそのまま使用することができるが、ポリガラクツロナーゼ活性が20000U/g未満のペクチナーゼ製剤の場合には、例えば、該酵素製剤を水混和性有機溶剤(アセトン、エタノールなど)沈殿、等電点沈殿、限外濾過、ゲル濾過などにより精製し、ポリガラクツロナーゼ活性が20000U/g以上の画分を回収し使用する必要がある。
また、抽出処理に際して、前記のプロテアーゼ(A)、タンナーゼ(B)およびポリガラクツロナーゼ(C)に加えて、さらに、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)またはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼを添加して抽出することにより、さらに効率的に茶葉組織を分解し、水可溶性成分の抽出効率を増加させることができる。
茶類をセルラーゼで処理して抽出する技術は、前記のとおり、本願出願以前にも知られている。また、茶類原料に、プロテアーゼおよびタンナーゼに加えて、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)やトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)など由来のセルラーゼを添加して抽出した場合、プロテアーゼおよびタンナーゼのみを添加して抽出した場合と比較して、それなりの効果は得られる。ところが、茶類原料に、プロテアーゼおよびタンナーゼに加えて、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)またはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼを添加して抽出したところ、細胞組織の十分な分解が行われることが判明した。
上記のトリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)またはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼとしては、例えば、セルロシン(登録商標)T3(エイチビィアイ社製)、スミチーム(登録商標)CS、C(以上、新日本化学工業社製)、セルラーゼSS(ナガセケムテックス社製)、スクラーゼ(登録商標)C(三菱化学フーズ社製)などを挙げることができる。トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)またはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼの使用量は、力価などにより異なり一概には言えないが、茶類原料1gあたり、通常約0.1〜約200U、好ましくは約0.5〜約100U、より好ましくは約1〜約50Uの範囲内を例示することができる。
本発明では、さらに、本発明の効果を妨げない範囲で、ヘミセルラーゼ、プロトペクチナーゼ、グルコアミラーゼ、グルカナーゼ、マンナナーゼ、α−ガラクトシダーゼなど、その他の糖質分解酵素を併用することもできる。
本発明の茶類エキスを製造するための一実施態様を例示すれば、次のとおりである:
茶類原料1重量部に対し、4質量部〜40質量部の水および必要に応じ茶類原料の0.1質量%〜1質量%のアスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムを溶解した溶液を用意し、それに茶類原料を添加し、必要に応じ、約60℃〜約121℃で約2秒〜約20分間殺菌した後冷却する。ついで、まず、タンナーゼを加えて均一に混合した後、さらに、プロテアーゼ、および20000U/g以上のポリガラクツロナーゼ活性を有する酵素製剤を、茶類原料1gあたり、ポリガラクツロナーゼ活性として800U以上となるような量で添加して、約20℃〜約60℃で約30分〜約24時間酵素処理を行う。酵素処理後、約60℃〜約121℃で約2秒〜約20分間酵素失活し冷却し、遠心分離、濾紙濾過等の適宜な分離手段を用いて分離することにより清澄な茶類エキスを得ることができる。得られる茶類エキスは所望により適宜な濃縮手段を用いて濃縮液の形態とすることもできる。
以上の酵素処理抽出により、酵素処理を全く行わない茶類エキスに比べ、約4倍量〜約5倍量のアミノ酸が生成し、また、茶類原料の細胞組織が分解して多量のガラクツロン酸が生成し、原料として使用した茶類のうち、約40質量%〜約80質量%を可溶性固形分に変換することができる。
上記方法により、茶類原料からの固形分収率、アミノ酸収率およびガラクツロン酸収率のいずれもが増加する結果、(a)茶類エキスの全固形分(Bx換算)を基準にして、ガラクツロン酸を1.1〜5質量%含有し、(b)ガラクツロン酸/タンニンの質量比が0.04〜0.8であり、かつ(c)ガラクツロン酸/アミノ酸の質量比が0.08〜0.8である茶類エキス;好ましくは、(a)茶類エキスの全固形分(Bx換算)を基準にして、ガラクツロン酸を1.2〜4質量%含有し、(b)ガラクツロン酸/タンニンの質量比が0.06〜0.4であり、かつ(c)ガラクツロン酸/アミノ酸の質量比が0.14〜0.6である茶類エキス;より好ましくは、(a)茶類エキスの全固形分(Bx換算)を基準にして、ガラクツロン酸を1.3〜3質量%含有し、(b)ガラクツロン酸/タンニンの質量比が0.07〜0.2であり、かつ(c)ガラクツロン酸/アミノ酸の質量比が0.19〜0.4である茶類エキスを得ることができる。
なお、ガラクツロン酸は、抹茶などの高級茶をイメージさせるような、とろっとした、さわやかな酸味を有するため、苦渋味のマスキング、異臭のマスキング、ボディー感の付与などの作用があることが推定され、本発明の茶類エキスの甘味、こく味、旨味などはガラクツロン酸の増加が重要な要因の一つと推定される。
本発明の茶類エキスは、所望により、容器に充填した後又は充填する前に加熱殺菌することにより、長期間保管可能な状態とすることもできる。
また、本発明の茶類エキスは、通常そのまま液状で利用することができるが、所望により、該エキスにデキストリン、化工澱粉、サイクロデキストリン、アラビアガム等の賦形剤を添加して粉末状とすることもできる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
参考例1 ポリガラクツロナーゼ活性の測定(ソモギーネルソン法:J.Biol.Chem.153,375−380,1994年参照)
ポリガラクツロン酸を1%含有する50mM酢酸緩衝液(pH4.5)0.9mlに酵素溶液の適当(適切)な希釈液を0.1ml添加する。前記混合溶液を45℃で適当(適切)時間反応させた後、沸騰水浴で10分間加熱して酵素失活し、氷冷し反応液とする。反応液0.3mlにソモギー銅試薬0.3mlを加え、沸騰水浴で10分間加熱し、氷冷し、ネルソン試薬0.3mlを加えて試験管ミキサーにて良く攪拌し、さらにイオン交換水3mlを加えて、試験管ミキサーにてよく攪拌する。この溶液を遠心分離機にて9000回転、3分間処理し、上清の500nmにおける吸光度(Abs.)を測定する。一方、前記酵素溶液の適当(適切)な希釈液をあらかじめ加熱失活したものを用いて、前記と全く同様の操作を行い、ブランクの吸光度とする。使用した酵素濃度、酵素反応時間、吸光度から酵素が1gについて、1分間に生成させたガラクツロン酸のμmol数を算出し、酵素1g当たりのユニット(U)とする。
測定した酵素およびポリガラクツロナーゼ活性測定値:
スミチームAP2(新日本化学工業社製): 12400U/g
セルロシンPE60(エイチビィアイ社製):20600U/g
スミチームMC(新日本化学工業社製): 1690U/g
スクラーゼN(三菱化学フーズ社製): 4550U/g
参考例2
スミチームAP2(新日本化学工業社製)100g(上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性:12400U/g)をイオン交換水1000gに溶解し、ビバフロー(登録商標)50VF05P2(分画分子量30,000:ザルトリウス社製)で限外ろ過濃縮して、未通過部30mlを回収し、さらに、凍結乾燥し、参考品2(12.0g:上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性:86500U/g)を得た。
実施例1
軟水900gにアスコルビン酸ナトリウム0.6gを溶解した溶液に緑茶葉(中国産蒸青製法)100gを添加し、80℃で5分間殺菌し、45℃まで冷却した。これにタンナーゼ(三菱化学フーズ社製:500U/g)1gを加え、15分間攪拌した。その後、プロテアーゼM(アマノエンザイム社製:5500U/g)1gおよび参考品2を4.8g(茶葉1gに対し、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性として4152U/g)を添加して溶解後、40℃にて8時間酵素処理を行った。
酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却し、さらし布にて茶葉残渣固形物を除いた後、No.2濾紙(8cm)にセルロースパウダー10gをプレコートしたヌッチェろ過器を使用して一定圧力にて吸引濾過(減圧度13.33KPa)を行い、清澄な抽出液825gを得た(濾過所要時間3分42秒)。この抽出液を減圧濃縮し、Bx48°の濃縮液165.3gを得た。この濃縮液を95℃、30秒間加熱殺菌して、密閉容器に充填後、急速に常温まで冷却して本発明品1の緑茶エキスを得た。
実施例2
実施例1において、参考品2の添加量を4.8gに代えて2.4g(茶葉1gに対し、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性として2076U/g)とする以外は実施例1と全く同様の操作を行い(濾過所要時間4分25秒)本発明品2(149.1g)を得た。
実施例3
実施例1において、参考品2の添加量を4.8gに代えて1.2g(茶葉1gに対し、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性として1038U/g)とする以外は実施例1と全く同様の操作を行い(濾過所要時間5分52秒)本発明品3(138.5g)を得た。
実施例4
実施例1において、参考品2(4.8g)に代えてセルロシンPE60(5.0g、茶葉1gに対し、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性として1030U/g)を添加する以外は実施例1と全く同様の操作を行い(濾過所要時間5分21秒)本発明品4(146.3g)を得た。
実施例5
実施例1において、参考品2(4.8g)に加えてさらにスミチームC(新日本化学工業社製のTrichoderma longibrachiatum由来のセルラーゼ:1500U/g)0.25gを添加する以外は実施例1と全く同様の操作を行い(濾過所要時間3分21秒)本発明品5(167.3g)を得た。
実施例6
実施例1において、参考品2(4.8g)に加えてさらにセルロシンT3(エイチビイアイ社製のTrichoderma reesei由来のセルラーゼ:2600U/g)0.25gを添加する以外は実施例1と全く同様の操作を行い(濾過所要時間3分32秒)本発明品6(165.4g)を得た。
参考例3
スミチームMC(新日本化学社製)150g(上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性:1690U/g)をイオン交換水1500gに溶解洗浄し、遠心分離(4,500×g、5分)によって沈殿部を回収し、さらに凍結乾燥して、参考品3(9.8g、記測定によるポリガラクツロナーゼ活性:20770U/g)を得た。
実施例7
実施例1において、参考品2(4.8g)に代えて参考品3を4.9g(茶葉1gに対し、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性として1018U/g)添加する以外は実施例1と全く同様の操作を行い(濾過所要時間4分49秒)本発明品7(153.2)を得た。
参考例4
スクラーゼN(三菱化学フーズ社製)100g(上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性:4550U/g)をイオン交換水1000gに溶解し、ビバフロー(登録商標)50VF05P2(分画分子量30,000:ザルトリウス社製)で限外ろ過濃縮して、未通過部25mlを回収し、さらに、凍結乾燥して、参考品4(10.0g、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性:32,000U/g)を得た。
実施例8
実施例1において参考品2(4.8g)に代えて参考品4を5.0g(茶葉1gに対し、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性として1600U/g)添加する以外は実施例1と全く同様の操作を行い(濾過所要時間4分16秒)本発明品8(155.4g)を得た。
比較例1
実施例1において、酵素を一切使用しない以外は、実施例1と全く同様の操作を行い(濾過所要時間10分25秒)比較品1(66.8g)を得た。
比較例2
実施例1において、参考品2(4.8g)を使用しない以外は、実施例1と全く同様の操作を行い(濾過所要時間9分57秒)比較品2(72.9g)を得た。
比較例3〜5
実施例1において、参考品2(4.8g)に代えて、それぞれ、スミチームAP2(新日本化学工業社製)2.0g(茶葉1gに対し、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性として248U/g)、スミチームMC(新日本化学工業社製)2.0g(茶葉1gに対し、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性として33.8U/g)、スクラーゼN(三菱化学フーズ社製)2.0g(茶葉1gに対し、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性として91U/g)とする以外は実施例1と全く同様の操作を行い比較品3〜5を得た(濾過所用時間および収量を、その他の測定値と共に下記表1に示す)。
比較例6〜8(市販ペクチナーゼを多量に使用することにより、茶葉1gに対するポリガラクツロナーゼ活性として800U以上とした例)
実施例1において、参考品2(4.8g)に代えて、それぞれ、スミチームAP2(新日本化学工業社製)8.0g(茶葉1gに対し、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性として992U/g)、スミチームMC(新日本化学工業社製)50.0g(茶葉1gに対し、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性として845U/g)、スクラーゼN(三菱化学フーズ社製)20g(茶葉1gに対し、上記測定によるポリガラクツロナーゼ活性として910U/g)とする以外は実施例1と全く同様の操作を行い比較品6〜8を得た(濾過所用時間および収量を、その他の測定値と共に下記表1に示す)。
成分分析
本発明品1〜8および比較品1〜8はタンニン、アミノ酸およびガラクツロン酸の濃度(%は質量基準である)の測定を行った。
測定方法
アミノ酸:アミノ酸自動分析計
タンニン:酒石酸鉄法
ガラクツロン酸:高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法
本発明品1〜8および比較品1〜8の緑茶原料からの収量および各成分の測定値(濃度)および濾過所用時間を下記表1に示す。
Figure 2012046351
表1に示したとおり、茶類原料を、プロテアーゼ、タンナーゼ、および茶葉1gに対し、ポリガラクツロナーゼ活性として800U以上となるような量で添加して抽出した本発明品1〜8および比較品6〜8は、酵素を全く使用していない比較品1、プロテアーゼおよびタンナーゼを添加して抽出した比較品2、プロテアーゼ、タンナーゼおよび茶葉1gに対し800U未満のポリガラクツロナーゼを添加して抽出した比較品3〜5のいずれと比較しても、濾過時間が大幅に短縮され、作業性が格段に向上することが明らかである。
なお、上記濾過時間の短縮は、上記少量の調製では分単位の違いであり、大きな差ではないが、一般的にエキス類の工業生産において、濾過工程は全行程の作業時間を律速する工程であり、工業的な大量製造(数トン〜数十トン)を行った場合には、大幅な改善となることが予想される。
また、成分的には表1に示したとおり、酵素を全く使用していない比較品1と比べ、プロテアーゼおよびタンナーゼを添加して抽出した比較品2〜8および本発明品1〜8は、いずれもアミノ酸が大幅に増加している。
緑茶原料にプロテアーゼ、タンナーゼ、および茶葉1gに対し800U以上のポリガラクツロナーゼを添加して抽出した本発明品1〜8および比較品6〜8は、緑茶原料にプロテアーゼとタンナーゼのみを添加して抽出した比較品2と比べ、エキス(Bx48°)の収率が約2倍程度まで増加し、極めて高収率でエキスが得られた。また、本発明品1に使用した酵素に加えてさらにTrichoderma longibrachiatum由来のセルラーゼを使用した本発明品5およびTrichoderma reesei由来のセルラーゼを使用した本発明品6ではさらにエキス収率は増加した。
本発明品2および3は、本発明品1のポリガラクツロナーゼの使用量を減らしたものであり、エキス(Bx48°)の収率は本発明品1と比べるとやや少なくなっているが、比較品2〜5と比べると約1.3〜約2倍程度増加しており、本発明の方法により茶類原料からの可溶性固形分収率が大幅に増加することがわかる。
酵素を全く使用していない比較品1はガラクツロン酸がほとんど含まれておらず、また緑茶原料にプロテアーゼおよびタンナーゼのみを作用させた比較品2はガラクツロン酸が0.06質量%程度しか含まれていないが、ペクチナーゼを添加して抽出した比較品3〜8および本発明品1〜8にはガラクツロン酸が0.16質量%〜0.92質量%含まれていた。なかでも、ガラクツロン酸濃度は添加したポリガラクツロナーゼ活性単位が増加するに伴い増加することが判明した。茶葉1gに対し800U以上のポリガラクツロナーゼを添加して抽出した本発明品1〜8は、エキス中のガラクツロン酸濃度が0.66質量%〜0.94質量%であり特に多く含まれていた。
他方、本発明品1〜8は、比較品3〜5と比べ、アミノ酸濃度、タンニン濃度がやや低かった。しかしながら、これは、細胞壁の分解成分の増加により、アミノ酸濃度およびタンニン濃度としては相対的に下がったものと考えられる。
また、茶類原料を、プロテアーゼ、タンナーゼ、およびポリガラクツロナーゼ活性として20000U/g未満の酵素製剤を、茶葉1gに対し、ポリガラクツロナーゼ活性として800U以上となる量添加して抽出した比較品6〜8は、固形分収率は多いものの、アミノ酸、タンニン、ガラクツロン酸の各濃度は、本発明品1〜8と比較する相対的に低く、茶類エキス中に酵素製剤中の賦形剤等に由来する成分が含まれてきているものと思われた。
そこで、下記表2に、本発明品1〜8および比較品1〜8の緑茶原料からの可溶性固形分収率および各成分の収率(表1より計算により算出)を示す。
Figure 2012046351
表2に示したとおり、酵素を全く使用していない比較品1と比べ、プロテアーゼおよびタンナーゼを添加して抽出した比較品2〜8および本発明品1〜8は、茶葉からのアミノ酸収率が4〜5倍に増加している。また、プロテアーゼとタンナーゼに加えて茶葉1gに対し800U以上のポリガラクツロナーゼを添加して抽出した本発明品1〜8および比較品6〜8では、プロテアーゼ、タンナーゼ、および茶葉1gに対し800U未満のポリガラクツロナーゼを添加して抽出した比較品3〜5と比較して、茶葉からのアミノ酸収率が約2割程度高くなっている。
また、茶葉からのタンニン収率については、プロテアーゼ、タンナーゼに加えてポリガラクツロナーゼを添加して抽出した本発明品1〜8および比較品3〜8は、固形分収率の増加に伴って増加した。特に、プロテアーゼ、タンナーゼに加えて、茶葉1gに対し800U以上のポリガラクツロナーゼを添加して抽出した本発明品1〜8および比較品6〜8では、茶葉からのタンニン収率が茶葉質量に対し12〜14%程度であり、酵素を全く使用していない比較品1およびプロテアーゼおよびタンナーゼを使用した比較品2と比べ、約2割程度収率が高くなっている。
本発明品1〜8および比較品6〜8は、茶葉からのガラクツロン酸収率が0.80%〜1.54%程度であり、多量のガラクツロン酸が生成していることがわかる。
他方、比較品6〜8は、本発明品3、4、7と同程度のポリガラクツロナーゼ活性単位を使用したものであり、ガラクツロン酸収率は同程度であるが、固形分収率は、本発明品3、4、7よりも多く、特に、添加した酵素製剤の絶対量が多い比較品7、次いで比較品8が多かった。このことより、比較品6〜8は、酵素製剤中の賦形剤等に由来する成分を多量に含んでいることが予想される。
官能評価
本発明品1〜8および比較品1〜8をイオン交換水にて160倍(Bx0.3°)に希釈した後、よく訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価方法は、苦渋味、甘味、旨味、バランスについてそれぞれ、非常によい:10点、よい:8点、ややよい:6点、やや悪い:4点、悪い:2点、非常に悪い:0点として官能評価を行い、また、コメントを記した。その平均点およびコメントの平均的な内容を下記表3に示す。
Figure 2012046351
表3に示したとおり、酵素を全く使用していない比較品1は、緑茶の旨味、甘味が弱く、強い苦渋味を有しているという評価で、苦渋味、甘味、旨味、バランスのいずれについても評価が低かった。また、緑茶原料にプロテアーゼとタンナーゼのみを添加して抽出した比較品2は、比較品1と比べ、緑茶の旨味が強く、苦渋味は比較品1より弱いが、まだかなり強く、甘味は乏しいという評価であり、苦渋味、甘味、旨味、バランスのいずれについても比較品1よりは多少評価が高かった。
それに対し、プロテアーゼとタンナーゼに加えて、ポリガラクツロナーゼ活性として20000U/g以上を有する酵素製剤を、茶葉1gに対し、ポリガラクツロナーゼ活性として800U以上となるような量で添加して抽出した本発明品1〜8は、緑茶の旨味、甘味、こく味が強く、また、苦渋味がほのかでマイルドで、風味全体のバランスがよく、高級抹茶のような呈味であり、極めて高い評価であった。
他方、プロテアーゼとタンナーゼに加えて茶葉1gに対し800U未満のポリガラクツロナーゼを添加して抽出した比較品3〜5は、緑茶の旨味、甘味はある程度感じられるが、苦渋味がやや際だっておりバランスが悪く、本発明品1〜8と比較して評価が劣っていた。
また、プロテアーゼとタンナーゼに加えて、ポリガラクツロナーゼ活性として20000U/g未満の酵素製剤を、茶葉1gに対し、ポリガラクツロナーゼ活性として800U以上となる量で添加して抽出した比較品6〜8は、緑茶の旨味、甘味はある程度感じられるが、茶とは異質の甘味および雑味が感じられややバランスが悪く、特に、添加した酵素製剤の絶対量が多い比較品7および比較品8は、茶とは異質の甘味および雑味が強く感じられバランスが悪く、風味が悪かった。
成分間の比率
ガラクツロン酸は、抹茶などの高級茶をイメージさせるような、とろっとした、さわやかな酸味を有しており、そのため、苦渋味のマスキング、異臭のマスキング、ボディー感の付与などの作用があり、したがって、本発明により得られる茶類エキスの甘味、こく味、旨味などはガラクツロン酸の増加が重要な要因の一つであると推定される。すなわち、茶類に本来含まれるアミノ酸やプロテアーゼ処理による分解により生じたアミノ酸の旨味や甘味に加えて、ガラクツロン酸がマスキング効果を発揮し、カテキンの苦渋味をマスキングし、さらには、タンナーゼ処理により生じた没食子酸の酸味やえぐみをマスキングし、呈味を改善していることが推定される。
表1〜表3に示された結果から、本発明品はガラクツロン酸が他の成分と比較して相対的に多く含まれていると考えられたため、本発明品1〜8および比較品1〜8について、(a)茶類エキスの全固形分(Bx換算)を基準としたガラクツロン酸量(質量)、(b)ガラクツロン酸/タンニンの質量比、(c)ガラクツロン酸/アミノ酸の質量比を算出した。その結果を下記表4に示す。
Figure 2012046351
表4に示したとおり、風味的に極めて評価の高かった本発明品1〜8は、(a)茶類エキスの全固形分(Bx換算)を基準としたガラクツロン酸の含有量(質量)は1.3〜2.0%、(b)ガラクツロン酸/タンニンの質量比は0.07〜0.12、(c)ガラクツロン酸/アミノ酸の質量比は0.19〜0.30の範囲内であった。
一方、比較品1〜5は(a)茶類エキスの全固形分(Bx換算)を基準としたガラクツロン酸の含有量(質量)は0.8%未満であり、(b)ガラクツロン酸/タンニンの質量比は0.03未満であり、(c)ガラクツロン酸/アミノ酸の質量比は0.08未満であった。
また、比較品6〜8は(a)茶類エキスの全固形分(Bx換算)を基準としたガラクツロン酸の含有量(質量)は0.78〜1.1%、(b)ガラクツロン酸/タンニンの質量比は0.059〜0.07であり、(c)ガラクツロン酸/アミノ酸の質量比は0.164〜0.186であり、いずれも本発明品1〜8と比べやや低かった。
したがって、これらの差異により、本発明により得られる茶類エキスの甘味、こく味、旨味などがもたらされたと推定される。
また、その数値的範囲としては、上記実施例から、(a)茶類エキスの全固形分(Bx換算)を基準としたガラクツロン酸の含乳量(質量)が1.1〜5%であり、(b)ガラクツロン酸/タンニンの質量比が0.04〜0.8であり、かつ(c)ガラクツロン酸/アミノ酸の質量比が0.08〜0.8;好ましくは、(a)茶類エキスの全固形分(Bx換算)を基準としたガラクツロン酸の含有量(質量)が1.2〜4%であり、(b)ガラクツロン酸/タンニンの質量比が0.06〜0.4であり、かつ(c)ガラクツロン酸/アミノ酸の質量比が0.14〜0.6であり;より好ましくは、(a)茶類エキスの全固形分(Bx換算)を基準としたガラクツロン酸の含有量(質量)が1.3〜3%であり、(b)ガラクツロン酸/タンニンの質量比が0.07〜0.2であり、かつ(c)ガラクツロン酸/アミノ酸の質量比が0.19〜0.4であれば、本発明の効果による呈味がもたらされると考えられる。

Claims (6)

  1. 茶類原料を、(A)プロテアーゼ、(B)タンナーゼ、および(C)20000U/g以上のポリガラクツロナーゼ活性を有する酵素製剤を添加して抽出処理することを特徴とする茶類エキスの製造方法。
  2. 茶類原料が緑茶、ウーロン茶またはジャスミン茶である請求項1に記載の方法。
  3. プロテアーゼ(A)を茶類原料1gあたり0.01U〜100Uの範囲内で添加する請求項1または2に記載の方法。
  4. タンナーゼ(B)を茶類原料1gあたり0.1U〜50Uの範囲内で添加する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 20000U/g以上のポリガラクツロナーゼ活性を有する酵素製剤(C)を、茶類原料1gあたり、ポリガラクツロナーゼ活性として800U以上となるような量で添加する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. さらに、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)またはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼを添加して抽出処理する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
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