JPWO2012042605A1 - ファスナーチェーン及びスライドファスナー - Google Patents

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Abstract

本発明のファスナーチェーン(2) は、織成されたファスナーテープ(10,30) を構成する経糸(15,35) の少なくとも一部に、リンが共重合された難燃性ポリエステル繊維(17,37) が配され、同ファスナーテープ(10,30) を構成する緯糸(16,36) に、リンが共重合されず、前記難燃性ポリエステル繊維(17,37) よりも高い引張強度を有する合成繊維(18,38) が配されている。これにより、優れた難燃性が安定して得られるとともに、ファスナーチェーン(2) を大量生産しても各ファスナーチェーン(2) の難燃性能にバラツキが生じない。更に、同ファスナーチェーン(2) は、経糸(15,35) の熱収縮を利用してチェーン横引強度を向上でき、また、経糸(15,35) と緯糸(16,36) 間の摩擦抵抗を増大させてファスナーテープ(10,30) の織目の位置がずれることを防止できる。しかも、難燃性ポリエステル繊維(17,37) の使用量が少ないため、ファスナーチェーン(2) を安価に提供できる。

Description

本発明は、織成された難燃性のファスナーテープを有するファスナーチェーン、及び同ファスナーチェーンを有するスライドファスナーに関する。
近年、自動車や鉄道、航空機などの分野において、車両や機体に配される座席や椅子等は、火災時に燃え広がることを防ぐために難燃性を有することが求められている。また、作業服などの衣類や、インテリアに用いられる椅子やカーテンのような屋内調度品などにも、難燃性が求められることがある。
このような難燃性が求められる繊維製品は、耐熱性又は難燃性を有する繊維を用いて構成され、又は、通常の繊維を用いて織物又は編物を作製した後、その織物又は編物に難燃剤を塗布することによって構成されている。
また、このような繊維製品にスライドファスナーが使用される場合、そのスライドファスナーについても難燃性が求められてきている。このため、従来のスライドファスナーでは難燃性を得るために、スライドファスナーのファスナーエレメントやファスナーテープに難燃剤を塗布することが一般的に行われていた。
しかし、最近では、自動車や航空機などの一部の分野における製品について、スライドファスナーの難燃性を更に向上させることが要望されている。また、上述のようにスライドファスナーに難燃剤を塗布することにより難燃性を得る場合、例えば当該スライドファスナーが取着されたファスナー被着製品に対して強力なドライクリーニングなどが繰り返し行われてしまうと、難燃剤がスライドファスナーから徐々に脱落し、スライドファスナーの難燃性能が経時的に低下する虞があった。
更に、スライドファスナーに難燃剤を付着させる場合、ファスナーテープやファスナーエレメントの染色工程において、染料に難燃剤を含ませて染色処理が行われることが多い。しかし、このように染料に難燃剤を含ませた場合、染色処理における染料の均染性を低下させ、その結果、ファスナーテープやファスナーエレメントに色むらを生じさせるとともに、難燃剤を均一に付着させることが極めて困難となり、得られた各スライドファスナーの難燃性能にバラツキを生じさせていた。
このような問題に対して、例えば特開2002−65319号公報(特許文献1)には、リンを所定の割合で含有するポリエステル繊維を用いてファスナーテープが構成されたスライドファスナーが開示されている。この特許文献1に記載されているスライドファスナーについて詳細に説明すると、同スライドファスナーは、左右一対のファスナーテープと、ファスナーテープの対向する側縁部にそれぞれ止着されたファスナーエレメントとを有している。
この場合、前記ファスナーテープとしては、リンをポリエステルに対して3000〜20000ppmで含有するポリエステル繊維を織成又は編成した織物又は編物や、リンをポリエステルに対して3000〜20000ppmで含有するポリエステル繊維の不織布などを用いることができる。特に、特許文献1の実施例では、ファスナーテープが、リンを7000ppmで含有したポリエステル仮撚加工糸(167dtex/48f)を経糸及び緯糸に使用して織成した織物により構成されている。
また、前記ファスナーエレメントとしては、合成樹脂を射出成形することによりファスナーテープに固着される射出タイプのファスナーエレメントや、モノフィラメントをコイル状又はジグザグ状に成形してファスナーテープに縫着される線状(連続状)のファスナーエレメントなどの種々のタイプのファスナーエレメントを用いることができる。
特に、特許文献1の実施例では、リンの含有量が7000ppmであるポリエステル樹脂からなるコイル状のファスナーエレメントが、縫い付け糸及び芯糸を用いて前記ファスナーテープに縫着されている。この場合、縫い付け糸及び芯糸も、リンを7000ppmで含有したポリエステル樹脂により構成されている。
なお、特許文献1の他の実施例においては、ファスナーエレメント、縫い付け糸、及び芯糸が、リンを含有しない通常のポリエステル樹脂又は繊維により構成されるとともに、ファスナーテープの経糸及び緯糸に、リンを含有させたポリエステル繊維を使用することにより、ファスナーテープのみに難燃性を持たせたスライドファスナーも記載されている。
このように、特許文献1のスライドファスナーにおけるファスナーテープは、リンをポリエステルに対して3000〜20000ppmで含有するポリエステル繊維を用いて構成されているため、当該スライドファスナーは、リンの作用により、様々な産業分野において規定されている燃焼性試験(例えば自動車内装材料の燃焼性試験方法:FMVSS No.302(JIS D1201))に合格するような高い難燃性を得ることができる。
また、特許文献1によれば、リンを含有する化合物を選定して使用するため、燃焼時に有毒なハロゲン系のガスの発生や、地球環境上問題になっているダイオキシンの発生の懸念がないため、安心して使用できるスライドファスナーを提供できるとしている。
なお、特許文献1のファスナーテープにおいて、ポリエステル繊維にリンを3000〜20000ppmで含有させる手段として、ポリエステル樹脂の製造時にリンをポリエステル樹脂に共重合させる方法と、ファスナーテープ等の染色時にリン化合物を難燃剤として染料に含ませて染色処理を行う方法とが記載されている。
この場合、ポリエステル樹脂の製造時にリンをポリエステル樹脂に共重合させる方法を用いることによって、例えば染色時にリン化合物を難燃剤として付与する方法を用いる場合に比べて、スライドファスナーに対して洗濯耐久性に優れた難燃性を持たせることができ、スライドファスナーにドライクリーニングなどが繰り返し行われても難燃性の低下を防ぐことが可能となる。
特開2002−65319号公報
前記特許文献1に記載されているスライドファスナーは、優れた難燃性を得るために、上述のように、ファスナーテープを構成する全ての糸条に、ポリエステル樹脂にリンを所定の割合で共重合させて構成された難燃性ポリエステル繊維が用いられている。なお、難燃性繊維としては、ハロゲンを含有させて構成される繊維も考えられるが、このようなハロゲンを含有した難燃性繊維は、燃焼時に有毒なハロゲン系ガスを発生させることから、リンを共重合させて構成された難燃性ポリエステル繊維が用いられる。
また、このような難燃性を有するスライドファスナーは、自動車や航空機のシート、衣類、屋内調度品などに用いられることが想定されているため、通常のポリエステル繊維(以下、通常のポリエステル繊維を「非難燃性ポリエステル繊維」とする)を用いてファスナーテープが構成された一般的なスライドファスナーと同等のファスナー性能(例えばチェーン横引強度など)を有することも求められる。
しかし、一般に、ポリエステル樹脂にリンを共重合させて構成された難燃性ポリエステル繊維は、リンを共重合させていない非難燃性ポリエステル繊維に比べて、繊維自体の引張強度が低く、また、高価であることが知られている。
このため、ファスナーテープの全ての構成糸条に難燃性ポリエステル繊維が用いられている前記特許文献1のスライドファスナーは、一般的なスライドファスナーに比べて、製造コストが著しく増大するとともに、ファスナーテープのテープ強度が低下してスライドファスナーの寿命を短縮させるという欠点があった。
更に、前記特許文献1のスライドファスナーは、左右のファスナーエレメントを噛合させた状態で左右のファスナーテープを互いに離間する方向に引っ張ったときに、ファスナーテープを構成する難燃性ポリエステル繊維がほつれたり、切断したりすることに起因して、左右のファスナーエレメントの噛み合いが外れ易くなる(所謂チェーン割れが生じ易くなる)。このため、ファスナー性能の最も重要な項目の1つであるチェーン横引強度を低下させるという問題もあった。
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、難燃性を有し、ファスナーテープのテープ強度が低下することを抑えて長期の使用に耐えるとともにチェーン割れの発生を防ぐことができ、また、従来よりも安価に提供することが可能なファスナーチェーン、及び同ファスナーチェーンを有するスライドファスナーを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明により提供されるファスナーチェーンは、基本的な構成として、織成された左右一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部に、連続状のファスナーエレメントが取着されたファスナーチェーンであって、前記ファスナーテープを構成する経糸の少なくとも一部に、リンが共重合された難燃性ポリエステル繊維が配され、前記ファスナーテープを構成する緯糸に、リンが共重合されず、前記難燃性ポリエステル繊維よりも高い引張強度を有する合成繊維が配されてなることを最も主要な特徴とするものである。
本発明に係るファスナーチェーンにおいて、前記難燃性ポリエステル繊維は、前記経糸の50%以上100%以下の割合で配されていることが好ましい。また、前記難燃性ポリエステル繊維は、テープ幅方向に均等な間隔で配されていることが好ましい。更に、前記難燃性ポリエステル繊維は、前記緯糸よりも太い線径を有していることが好ましい。
また、本発明のファスナーチェーンにおいて、前記緯糸は、3.5cN/dtex以上の引張強度を有していることが好ましい。
更に、本発明のファスナーチェーンにおいて、前記ファスナーエレメントは、リンを共重合した難燃性の合成樹脂により構成されていることが好ましい。更にまた、前記ファスナーテープ及び前記ファスナーエレメントに、リンを含む難燃剤が付着されていることが好ましい。
また、本発明によれば、上述の構成を備えたファスナーチェーンを有するスライドファスナーが提供される。
本発明に係るファスナーチェーンは、織成されたファスナーテープの経糸の少なくとも一部に、リンが共重合された難燃性ポリエステル繊維が配され、同ファスナーテープの緯糸に、リンが共重合されず、難燃性ポリエステル繊維よりも高い引張強度を有する合成繊維が配されている。
このような本発明のファスナーチェーンは、経糸に難燃性ポリエステル繊維が配されている。この場合、難燃性ポリエステル繊維は、リンを含有するモノマーをポリエステルに共重合して構成されており、火炎などの火熱源に接すると燃焼するものの、火熱源から離れると、リンの作用により延焼を防いで自然に消炎する性質を有する。なお、難燃性繊維としては、ハロゲンを含有させて構成される繊維も考えられるが、上述のようにハロゲンを含有した難燃性繊維は、燃焼時に有毒なハロゲン系ガスを発生させることから、本発明では、難燃性繊維として、リンを共重合させた難燃性ポリエステル繊維を使用する。
従って、このような難燃性ポリエステル繊維が経糸に配されている本発明のファスナーチェーンは、様々な産業分野において規定されている燃焼性試験(例えば自動車内装材料の燃焼性試験方法:FMVSS No.302(JIS D1201))に合格するような難燃性を安定して得ることができる。
また、本発明の難燃性ポリエステル繊維は、リンが共重合されているため、例えば強力なドライクリーニング等が施されても、難燃性ポリエステル繊維からリンが脱落することはなく、その難燃性を長期に渡り維持することができる。
更に、例えば従来のようにスライドファスナーの染色時に染料に難燃剤を含ませることによってスライドファスナーに難燃剤を付着させる場合、前述のようにファスナーテープ等に難燃剤を均一に付着させることが難しく、スライドファスナーの難燃性能にバラツキを生じさせるという問題があった。これに対して、本発明のように難燃性ポリエステル繊維を用いて難燃性のスライドファスナーを構成する場合、何れのスライドファスナーにも同様の難燃性能を安定して持たせることができるため、難燃性にバラツキが生じることを防止できる。
更にまた、本発明のファスナーチェーンでは、ファスナーテープの緯糸に、難燃性ポリエステル繊維よりも高い引張強度を有する合成繊維が配されている。これにより、同ファスナーチェーンのファスナーテープは、テープ強度や耐摩擦性などが高められ、長期の使用にも安定して耐えることができる。また、同ファスナーテープは、テープ幅方向に引っ張られても、前記特許文献1のようにファスナーテープの緯糸に難燃性ポリエステル繊維が用いられている場合に比べて、緯糸にほつれや切断が生じ難くなる。これにより、例えば左右のファスナーエレメントを噛合させた状態で左右のファスナーテープを互いに離間する方向に引っ張られても、チェーン割れが生じ難くなるため、チェーン横引強度を確実に向上させることができる。
特に、リンを共重合した難燃性ポリエステル繊維は、例えばリンが共重合されていない通常のポリエステル繊維(非難燃性ポリエステル繊維)に比べて、前述のように繊維自体の引張強度が低く、また、高価であることが知られており、その上、乾熱収縮率が大きいことも知られている。なお、難燃性ポリエステル繊維の乾熱収縮率が大きくなる理由としては、以下のことが考えられる。
即ち、難燃性ポリエステル繊維は重合の際にリンを含有するモノマーを共重合させなければならないことから、非難燃性ポリエステル繊維のように重合度を上げることが難しく、延伸条件や加熱条件が制限され、その結果、難燃性ポリエステル繊維は、大きな乾熱収縮率を有すると考えられる。
このように、リンを共重合した難燃性ポリエステル繊維は乾熱収縮率が大きいため、同難燃性ポリエステル繊維をファスナーテープの経糸に配した本発明のスライドファスナーは、例えばスライドファスナーの製造工程において所定の温度の熱セット処理などが施された場合に、経糸が熱収縮してファスナーテープをテープ長さ方向に大きく収縮させることができる。このため、同ファスナーチェーンは、ファスナーテープのテープ長さ方向における単位長さ当たりの緯糸の本数を増大させて、緯糸の密度を高めることができる。
このようにファスナーテープがテープ長さ方向に収縮して緯糸の密度が高められることにより、ファスナーテープのテープ強度(特に、テープ幅方向の引っ張りに対するテープ強度)を更に高めることができる。また、ファスナーテープの収縮に伴って、各ファスナーエレメントの噛合頭部間の間隔が狭められるため、左右のファスナーエレメント間の噛合強度を容易に増大させることができる。その結果、本発明のファスナーチェーンは、チェーン横引強度を更に向上させることができ、例えば特許文献1のようにファスナーテープの全ての構成糸条に難燃性ポリエステル繊維が用いられている従来のファスナーチェーンに比べて、10%以上も高いチェーン横引強度を有することが可能となる。
更に、本発明のファスナーチェーンは、上述のように緯糸の密度が高められることにより、経糸と緯糸間の摩擦抵抗を増大させることができ、それによって、例えばファスナーテープに縫製等を行った際に、ファスナーテープの織目の位置がずれることを効果的に防止できる。
例えばファスナーテープの織目の位置がずれた場合、同ファスナーテープが引っ張り応力を受けた際に、その引っ張り応力が局部的に集中し易くなり、経糸や緯糸にほつれや切断などを生じさせる原因になることがあったが、本発明のファスナーチェーンは、ファスナーテープにおける織目の位置がずれ難く、ファスナーテープが引っ張り応力を受けても、その引っ張り応力が局部的に集中することを防止できる。
本発明に係るファスナーチェーンにおいて、前記難燃性ポリエステル繊維は、経糸の50%以上100%以下の割合で配されている。ここで、経糸の50%以上の割合で難燃性ポリエステル繊維が配されているとは、経糸の2本当たりに1本以上の割合で難燃性ポリエステル繊維が配されていることを言い、100%の割合で難燃性ポリエステル繊維が配されているとは、全ての経糸に難燃性ポリエステル繊維が配されていることを言う。
このように難燃性ポリエステル繊維が経糸の50%以上の割合で配されていることにより、例えば前記特許文献1のようにファスナーテープの全ての構成糸条に難燃性ポリエステル繊維が用いられている場合と同様の難燃性能をファスナーテープに持たせることができる。また、ファスナーテープに熱セット処理などを施したときに、ファスナーテープをテープ長さ方向に確実に収縮させることができるため、ファスナーチェーンのチェーン横引強度を安定して向上させるとともに、織目の位置ずれが生じることも安定して防止できる。
更に、難燃性ポリエステル繊維は、リンが共重合されていることに起因して、染色処理を行った際に非難燃性ポリエステル繊維よりも染まり易いという性質を有する。この場合、難燃性ポリエステル繊維が、ファスナーテープの経糸の50%以上の割合で配されていれば、難燃性ポリエステル繊維がその他の合成繊維よりも濃く染まっても、その難燃性ポリエステル繊維の色彩をファスナーテープに主として表して、ファスナーテープに生じる色むら(斑模様)を目立ち難くすることが可能となる。
一方、難燃性ポリエステル繊維が経糸の100%以下の割合で配されていることにより、ファスナーチェーンの製造コストが増大することを防ぐとともに、難燃性ポリエステル繊維自体の引張強度が低いことに起因してファスナーチェーンのチェーン横引強度が低下することを防止できる。
本発明に係るファスナーチェーンにおいて、難燃性ポリエステル繊維は、テープ幅方向に均等な間隔で配されている。これにより、ファスナーテープの全体に亘って難燃性を均一に持たせることができる。また、同ファスナーチェーンを染色したときには、ファスナーテープに生じる色むら(斑模様)をより目立ち難くすることが可能となる。
また、本発明のファスナーチェーンにおいて、前記難燃性ポリエステル繊維は、緯糸よりも太い線径を有している。これにより、難燃性ポリエステル繊維の引張強度を高めて、ファスナーテープのテープ強度をより向上させることができる。
更に、前記緯糸は、3.5cN/dtex以上、好ましくは4.0cN/dtex以上の引張強度を有している。これにより、ファスナーテープがテープ幅方向に引っ張られた際に緯糸にほつれや切断が生じ難くなるため、チェーン横引強度を確実に向上させることができる。
また、本発明のファスナーチェーンにおいて、前記ファスナーエレメントは、リンを共重合した難燃性の合成樹脂により構成されている。更に、ファスナーテープ及びファスナーエレメントには、リンを含む難燃剤が付着されている。これにより、ファスナーチェーンの難燃性をより一層高めることができる。
そして、上述の構成を備えたファスナーチェーンを有する本発明のスライドファスナーは、様々な産業分野において規定されている燃焼性試験に合格するような難燃性を長期に渡って安定して備えており、また、従来の難燃性を備えたスライドファスナー(例えば前記特許文献1のスライドファスナー)よりも安価に提供することが可能である。
また、本発明のスライドファスナーは、ファスナーテープのテープ強度や耐摩擦性などが高められており、長期の使用にも安定して耐えることができ、また例えばファスナーテープに縫製等を行った際に、ファスナーテープの織目の位置がずれることを効果的に防止できる。更に、本発明のスライドファスナーは、従来の難燃性を備えたスライドファスナーよりも高いチェーン横引強度を安定して有することができる。
図1は、本発明の実施形態に係るファスナーチェーンを有するスライドファスナーを示す正面図である。 図2は、同ファスナーチェーンにおけるファスナーテープの一部の織物組織を模式的に表す図である。 図3は、本発明の別の実施形態に係るファスナーテープの一部の織物組織を模式的に表す図である。 図4は、実施例1〜4及び比較例1,2の燃焼性を測定した結果を表すグラフである。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
例えば、以下の実施形態では、ファスナーテープのテープ側縁部にコイル状に連続したファスナーエレメントが縫着されたファスナーチェーンについて説明する。しかし、本発明は、これに限定されず、例えばファスナーテープのテープ側縁部にジグザグ状のファスナーエレメントが縫着されてファスナーチェーンが構成されていても良い。
また、以下の実施形態では、平坦なファスナーテープのテープ側縁部にファスナーエレメントが取着されたスタンダードタイプのスライドファスナーについて説明するが、本発明において、スライドファスナーの種類は特に限定されるものではなく、例えばファスナーテープがU字状に折り曲げられて構成された所謂隠しタイプのスライドファスナーに対しても本発明を好適に適用することができる。
図1は、第1の実施形態に係るファスナーチェーンを有するスライドファスナーを示す正面図である。また、図2は、同ファスナーチェーンにおけるファスナーテープの一部の織物組織を模式的に表す図である。
なお、以下の説明において、前後方向とは、ファスナーテープの長さ方向を指し、スライダーが摺動する摺動方向と同じ方向である。また、左右方向とは、ファスナーテープのテープ幅方向を指すものとし、ファスナーテープのテープ面に平行で、且つ、テープ長さ方向に直交する方向を指すものとする。更に、上下方向とは、ファスナーテープのテープ面に直交するテープ表裏方向を指し、特に、ファスナーテープに対してファスナーエレメントが取着されている側の方向を上方とし、その反対側の方向を下方と規定する。
第1の実施形態に係るファスナーチェーン2は、図1に示すように、スライダー6が取り付けられることにより、スタンダードタイプのスライドファスナー1を構成することができる。この場合、図1に示したスライドファスナー1は、第1の実施形態に係るファスナーチェーン2と、同ファスナーチェーン2のエレメント列20の一端側に固着された上止具7と、同ファスナーチェーン2のエレメント列20の他端側に固着された下止具8と、エレメント列20に沿って摺動可能に取り付けられたスライダー6とを有している。
同スライドファスナー1は、スライダー6を上止具7側(前方向)に向けて摺動させることにより、左右のエレメント列20を噛合させてスライドファスナー1を閉鎖し、また、スライダー6を下止具8側(後方向)に向けて摺動させることにより、左右のエレメント列20を分離させてスライドファスナー1を開くように構成されている。なお、このスライドファスナー1における上止具7、下止具8、及びスライダー6は、従来から一般的に用いられているものと同様に構成されている。
このようなスライドファスナー1を構成する本実施例1のファスナーチェーン2は、細幅状に織成された左右一対のファスナーテープ10と、各ファスナーテープ10の対向するテープ側縁部12に沿って配されたエレメント列20とを有しており、同エレメント列20は、連続状のファスナーエレメント21が縫製糸22を用いてファスナーテープ10に縫着されることによって構成されている。
第1の実施形態におけるファスナーテープ10は、テープ長さ方向に沿って配される経糸15と、テープ幅方向に沿って配される緯糸16とにより織成された細幅の帯状体により構成されている。この発明におけるファスナーテープ10は、複数のフィラメントからなるマルチフィラメント糸を経糸15及び緯糸16に用い、緯糸16のダブルピックでニードル織成することによって作製されている。また、ダブルピックの緯糸16は、1本の糸条が往復動して2本の糸条が引き揃えられた状態で2本1組として緯入れされている。このため、1つのファスナーテープ10は、1本の緯糸16と複数本の経糸15とによって織成される。なお、図2及び図3においては、図を簡略に表現するため、緯入れされて引き揃えられた2本1組の糸条を、1本の緯糸16として表している。
このファスナーテープ10は、座席カバーや衣類などのファスナー被着製品に縫い付けられる部分となるテープ主体部11と、テープ主体部11の一側縁側に配され、ファスナーエレメント21が取着されるテープ側縁部12(エレメント取付部と呼ぶこともある)とを有している。また、テープ主体部11は、スライダー6を摺動させたときに同スライダー6のフランジ部が通過する領域となる第1主体部領域11aと、ファスナーテープ10の風合いを表現する領域となる第2主体部領域11bとを有している。
この場合、ファスナーテープ10におけるテープ側縁部12と、テープ主体部11の第1主体部領域11aとは、平織組織で織成されており、一方、テープ主体部11の第2主体部領域11bは、綾織組織で織成されている。なお、本発明において、ファスナーテープ10の織物組織については特に限定されるものではなく、任意に変更することが可能である。
第1の実施形態において、ファスナーテープ10を構成する全ての経糸15には、リンを含有するモノマーがポリエステルに共重合して構成された難燃性ポリエステル繊維17が配されており(図2において、色が付されている糸)、ファスナーテープ10を構成する全ての緯糸16には、リンが共重合されていない通常のポリエステル繊維(非難燃性ポリエステル繊維)18が配されている(図2において、白色の糸)。なお、これらの経糸15及び緯糸16は、マルチフィラメント糸により形成されているが、本発明ではこれらの経糸15及び緯糸16をモノフィラメント糸により形成することも可能である。
ここで、リンが共重合された難燃性ポリエステル繊維17は、リンが共重合されていない非難燃性ポリエステル繊維18よりも染まり易いという性質を有するものの、第1の実施形態のようにファスナーテープ10を構成する経糸15の全てに難燃性ポリエステル繊維17が配されていれば、例えば第1の実施形態のファスナーチェーン2に染色処理を行っても、ファスナーテープ10に生じる色むら(斑模様)を目立ち難くすることができ、ファスナーチェーン2又はスライドファスナー1の見栄え(外観品質)を向上させることができる。
また第1の実施形態において、難燃性ポリエステル繊維17自体のリン含有量(リン原子の含有量)は、5800ppmに設定されている。このため、本実施形態のファスナーテープ10のように、経糸15のみに難燃性ポリエステル繊維17が配され、緯糸16には、リンが共重合されていない非難燃性ポリエステル繊維18が配されている場合においては、ファスナーテープ10におけるリンの含有量は、難燃性ポリエステル繊維17のリン含有量のおよそ半分となる2900ppm程度となる。
なお、本発明において、難燃性ポリエステル繊維17自体のリン含有量は3000ppm以上20000ppm以下に設定されることが好ましく、また、ファスナーテープ10におけるリン含有量は、700ppm以上10000ppm以下に、特に1000ppm以上5000ppm以下に設定されることが好ましい。これは、難燃性ポリエステル繊維17又はファスナーテープ10のリン含有量が小さ過ぎると、所望の難燃性能を安定して得られなくなる虞があり、一方、難燃性ポリエステル繊維17又はファスナーテープ10のリン含有量が大き過ぎると、繊維強度又はテープ強度の著しい低下を招く虞があるからである。
この場合、経糸15に配される難燃性ポリエステル繊維17は、マルチフィラメントにより構成されているが、難燃性ポリエステル繊維17自体のリン含有量を上記範囲内に設定するためには、所定の割合でリンを共重合させたフィラメント同士を撚り合わせることによって、難燃性ポリエステル繊維17を構成することができ、又は、リンを共重合させたフィラメントと、リンを共重合させていないフィラメントとを所定の割合で撚り合わせることによって、難燃性ポリエステル繊維17を構成することもできる。
また、第1の実施形態において、経糸15に配される難燃性ポリエステル繊維17は、リンがポリエステルの主鎖に共重合されて構成されていても良く、また、リンがポリエステルの側鎖に共重合されて構成されていても良い。更に、難燃性ポリエステル繊維17は、3.3cN/dtex〜3.8cN/dtex程度の引張強度を有しており、また、例えばファスナーチェーン2に180℃の熱セット処理が施された場合には、14%〜15%の乾熱収縮率を示す。
一方、緯糸16に配される非難燃性ポリエステル繊維18は、従来から一般的に知られている通常のポリエステル繊維を用いることができる。この非難燃性ポリエステル繊維18は、経糸15の難燃性ポリエステル繊維17よりも高い引張強度を有しており、具体的には、3.5cN/dtex以上の引張強度、好ましくは4.0cN/dtex以上の引張強度を有している。また、この非難燃性ポリエステル繊維18は、例えばファスナーチェーン2に180℃の熱セット処理が施された場合に、7%〜8%の乾熱収縮率を示す。
なお、経糸15の難燃性ポリエステル繊維17及び緯糸16の非難燃性ポリエステル繊維18が有する引張強度の上限値は特に限定されるものではないが、現在のところ、リンが共重合された難燃性ポリエステル繊維17の引張強度は、一般に4.0cN/dtex未満であり、また、非難燃性ポリエステル繊維18の引張強度は、一般に6.0cN/dtex未満である。
また、本発明において、緯糸16に配される合成繊維の材質は特に限定されず、任意に変更することが可能である。更に、経糸15に配される難燃性ポリエステル繊維17と、緯糸16に配される合成繊維が有する引張強度及び乾熱収縮率の大きさについても特に限定されず、緯糸16に配される合成繊維の引張強度が、経糸15に配される難燃性ポリエステル繊維17よりも大きければ良い。
第1の実施形態のファスナーテープ10は、例えば180℃の熱セット処理が施された場合、上述のように経糸15の難燃性ポリエステル繊維17が、緯糸16の非難燃性ポリエステル繊維18よりも大きく収縮する。このため、熱セット処理後のファスナーテープ10は、相対的にテープ長さ方向に大きく収縮しており、熱セット処理が行われる前に比べて、ファスナーテープ10のテープ長さ方向における単位長さ当たりの緯糸16の本数を増大させ、緯糸16の密度を高めることができる。
この場合、第1の実施形態のファスナーチェーン2では、熱収縮後のファスナーテープ10における単位面積当たりに配される経糸15と緯糸16との重量比は、経糸15:緯糸16=50.8:49.2となる。なお、本発明において、ファスナーテープ10の経糸15及び緯糸16が熱収縮した後の単位面積当たりに配される経糸15の重量比の割合は、ファスナーテープ10の難燃性とテープ強度との関係を考慮して、25%以上52%以下の範囲内であることが好ましい。
また一般に、合成繊維は大きく熱収縮するほど線径が太くなるため、例えばファスナーテープ10の織成時に難燃性ポリエステル繊維17と非難燃性ポリエステル繊維18とが同じ線径を有していた場合には、熱収縮後の難燃性ポリエステル繊維17は、熱収縮後の非難燃性ポリエステル繊維18よりも太い線径を有している。線径は、その糸の単位長さ当たりの重量であるdtex(デシテックス)で表すことができ、線径が太い糸は、線径が細い糸に比べて、デシテックスの数値が大きくなる。
このように第1の実施形態のファスナーチェーン2では、難燃性ポリエステル繊維17が熱収縮することによって、緯糸16の密度が高められるとともに、熱収縮後の難燃性ポリエステル繊維17が熱収縮後の非難燃性ポリエステル繊維18よりも太く形成されているため、ファスナーテープ10のテープ強度や耐摩耗性を確実に向上させることができる。
次に、第1の実施形態におけるファスナーエレメント21は、連続したコイル形状を有しており、リンを共重合させたポリエステル樹脂により構成されている。この場合、ファスナーエレメント21におけるリンの含有量は、3000ppm以上20000ppm以下に設定されている。
このコイル状のファスナーエレメント21は、例えばリンを共重合させたポリエステル樹脂製のモノフィラメントを所定の間隔で押圧することにより膨大状の噛合頭部を形成し、その後、コイル状に捲き回すことによって成形されている。なお、本発明においてファスナーエレメント21の材質は特に限定されるものではなく、例えばリンが共重合されていない通常のポリエステル樹脂や、ポリアミド樹脂などの合成樹脂を用いてファスナーエレメント21を構成することも可能である。
また、同ファスナーエレメント21は、前後方向(ファスナーテープ10の長さ方向)に張り出すように形成された噛合頭部と、同噛合頭部から延出した一対の上下脚部と、上脚部又は下脚部の延端部と前後方向に隣接するファスナーエレメント21の下脚部又は上脚部とを連結する連結部とを有している。
第1の実施形態において、コイル状のファスナーエレメント21は、上下脚部間に芯紐23を挿通させた状態で、噛合頭部をファスナーテープ10の側端縁から突出するようにして縫製糸22の二重環縫いによりファスナーテープ10に縫い付けられており、それによって、エレメント列20が構成されている。なお、本発明では、芯紐23を設けずにファスナーエレメント21をファスナーテープ10に縫着してエレメント列20を構成することも可能である。
また、例えばファスナーエレメント21がファスナーテープ10に縫着されたファスナーチェーン2に対して180℃の熱セット処理が施された場合、ファスナーテープ10が上述のようにテープ長さ方向に熱収縮するため、左右の各エレメント列20において、テープ長さ方向に隣接するファスナーエレメント21の噛合頭部間の間隔を狭めることができる。これにより、左右のファスナーエレメント21を互いに強く噛み合せることができ、同ファスナーエレメント21の噛合強度を高めることができる。
以上のように構成された第1の実施形態のファスナーチェーン2(又は同ファスナーチェーン2を有するスライドファスナー1)では、ファスナーテープ10の全ての経糸15に難燃性ポリエステル繊維17が配され、且つ、ファスナーエレメント21がリンを共重合させたポリエステル樹脂により構成されているため、種々の燃焼性試験において合格することが可能な難燃性能を安定して得ることができる。また、第1の実施形態のファスナーチェーン2を大量生産しても、各ファスナーチェーン2の難燃性能にバラツキを生じさせることもない。
更に、同ファスナーチェーン2の難燃性は、経糸15及びファスナーエレメント21のポリエステル樹脂にリンが共重合していることにより得られるため、例えば強力なドライクリーニング等が施されても低下することはなく、所定の難燃性能を長期に渡って安定して維持することができる。
更にまた、ファスナーテープ10の緯糸16には、難燃性ポリエステル繊維17よりも製造コストの安い非難燃性ポリエステル繊維18が配されている。このため、同ファスナーチェーン2は、例えば前記特許文献1のようなファスナーテープの全ての構成糸条に難燃性ポリエステル繊維が用いられている従来のファスナーチェーンに比べて、十分な難燃性を維持しながら、難燃性ポリエステル繊維17の使用量を抑えて、安価に提供することができる。
また、同ファスナーチェーン2では、テープ幅方向の引っ張り応力に対してファスナーテープ10の緯糸16や経糸15にほつれや切断が生じ難く、また、ファスナーテープ10のテープ強度や耐摩擦性などが高められている。このため、ファスナーチェーン2を長期に渡って安定して使用することができる。
しかも、同ファスナーチェーン2は、ファスナーテープ10の緯糸16や経糸15にほつれや切断が生じ難くなる上に、経糸の難燃性ポリエステル繊維17の熱収縮に起因してファスナーエレメント21の噛合強度を高めることができるため、ファスナー性能の最も重要な項目の1つであるチェーン横引強度を確実に向上させることができる。
更に、第1の実施形態のファスナーチェーン2は、上述のように緯糸16の密度が高められることにより、経糸15と緯糸16間の摩擦抵抗を増大させることができ、それによって、ファスナーテープ10に縫製等が行われても、ファスナーテープ10の織目の位置がずれることを効果的に防止できる。従って、同ファスナーチェーン2におけるファスナーテープ10が引っ張り応力などを受けても、その応力がファスナーテープ10の一部に局部的に集中することを防止できるため、ファスナーテープ10の緯糸16や経糸15にほつれや切断をより生じ難くすることができる。
また、上述のような第1の実施形態に係るファスナーチェーン2は、ファスナーテープ10及びファスナーエレメント21の表面に難燃剤を付着させることによって、ファスナーチェーン2の難燃性能を更に向上させることができる。なお、ファスナーテープ10及びファスナーエレメント21の表面に難燃剤を付着させる方法としては、ファスナーチェーン2の染色工程において、リンを含有する難燃剤を染料に含ませて染色処理を行う方法を用いることができる。
なお、この第1の実施形態に係るファスナーチェーン2では、ファスナーテープ10を構成する全ての経糸15に、リンが共重合された難燃性ポリエステル繊維17が配されているが、本発明においては、ファスナーテープ10を構成する経糸15の少なくとも一部に、リンが共重合された難燃性ポリエステル繊維17が配されていれば良く、特に、ファスナーテープ10を構成する経糸15の50%以上の割合(経糸15の2本当たりに1本以上の割合)で、リンが共重合された難燃性ポリエステル繊維17が配されていることが好ましい。
ここで、本発明における第2の実施形態として、ファスナーテープを構成する経糸に、50%の割合(2本当たりに1本の割合)で難燃性ポリエステル繊維が配されているファスナーチェーンについて、図3を参照しながら説明する。なお、第2の実施形態に係るファスナーチェーンは、ファスナーテープの経糸に配される難燃性ポリエステル繊維の割合が相違することを除いて、前述の第1の実施形態に係るファスナーチェーンと基本的に同じ構成を有している。
第2の実施形態に係るファスナーチェーンのファスナーテープ30は、図3に示したように、テープ長さ方向に沿って配される経糸35と、テープ幅方向に沿って配される緯糸36とにより織成されており、テープ主体部31と、テープ主体部31の一側縁側に配され、ファスナーエレメントが取着されるテープ側縁部32とを有している。また、テープ主体部31は、平織組織で織成された第1主体部領域31aと、綾織組織で織成された第2主体部領域31bとを有している。
また、同ファスナーテープ30を構成する緯糸36には、前述の第1の実施形態に係るファスナーチェーンと同様に、リンが共重合されていない非難燃性ポリエステル繊維38が配されている。一方、同ファスナーテープ30を構成する経糸35の半分(50%)には、リンが共重合された難燃性ポリエステル繊維37が配されており、残りの半分(50%)には、リンが共重合されていない非難燃性ポリエステル繊維38が配されている。
特に、第2の実施形態の場合、ファスナーテープ30の経糸35に配される難燃性ポリエステル繊維37と非難燃性ポリエステル繊維38とは1本ずつ交互に配されており、ファスナーテープ30のテープ幅方向の全体に亘って難燃性ポリエステル繊維37が均等な間隔で配されている。これにより、ファスナーテープ30の全体に亘って難燃性を均等に得ることができる。
また、上述のように難燃性ポリエステル繊維37がファスナーテープ30のテープ幅方向の全体に亘って均等に配されていれば、例えばファスナーチェーンに染色処理を行った際に、難燃性ポリエステル繊維37が非難燃性ポリエステル繊維38よりも濃く染まっても、ファスナーテープ30に生じる色むらを目立ち難くすることができる。
なお、本発明においては、ファスナーテープ30の経糸35の一部に難燃性ポリエステル繊維37が配される場合、同難燃性ポリエステル繊維37を、第2の実施形態のように均等に配置せずに、局部的に密集するように配置することもできる。例えばスライドファスナー1をファスナー被着製品に取着したときに、外部に露呈するテープ部分に高度な難燃性を持たせたい場合などでは、ファスナーテープ30におけるテープ側縁部32や、テープ主体部31の第1主体部領域31aに、難燃性ポリエステル繊維37を密集させることも可能である。
この場合、ファスナーテープ30の経糸35の半分に配される難燃性ポリエステル繊維37には、前述の第1の実施形態と同様に構成された難燃性ポリエステル繊維17が用いられており、また、ファスナーテープ30の経糸35の残りの半分に配される非難燃性ポリエステル繊維38と、ファスナーテープ30の緯糸36に配される非難燃性ポリエステル繊維38とには、前述の第1の実施形態と同様に構成された非難燃性ポリエステル繊維18が用いられている。
即ち、第2の実施形態において、難燃性ポリエステル繊維37自体のリン含有量は、前述の第1の実施形態と同様に、5800ppmに設定されている。このため、ファスナーテープ30を構成する経糸35に50%の割合で難燃性ポリエステル繊維37が配されている第2の実施形態の場合において、ファスナーテープ30におけるリンの含有量は、難燃性ポリエステル繊維37のリン含有量のおよそ1/4となる1450ppm程度となる。
また、第2の実施形態に係るファスナーチェーンでは、前述の第1の実施形態と同様に、難燃性ポリエステル繊維37を熱収縮させることによって、緯糸36の密度が高められるとともに熱収縮後の難燃性ポリエステル繊維37が太くなるため、ファスナーテープ30のテープ強度や耐摩耗性を向上させることができる。
以上のように構成された第2の実施形態のファスナーチェーンでは、種々の燃焼性試験において合格することが可能な難燃性能を安定して得ることができる。また、同ファスナーチェーンは、大量生産されても各ファスナーチェーンの難燃性能にバラツキを生じさせることはなく、また、例えば強力なドライクリーニング等が施されても難燃性能が低下することを防止できる。更に、同ファスナーチェーンでは、難燃性ポリエステル繊維37の使用量が、前述の第1の実施形態の場合よりも更に少ないため、より安価に提供することが可能となる。
また、第2の実施形態のファスナーチェーンは、前述の第1の実施形態と同様に、ファスナーテープ30の緯糸36や経糸35にほつれや切断が生じ難く、経糸に配された難燃性ポリエステル繊維37の熱収縮に起因してファスナーエレメントの噛合強度を高めることができるため、チェーン横引強度を確実に向上させることができる。更に、緯糸36の密度が高められることにより、経糸35と緯糸36間の摩擦抵抗を増大させることができるため、ファスナーテープ30の織目の位置がずれることを効果的に防止できる。
以下、実施例及び比較例を示すことにより本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
ここで、以下の実施例1〜4及び比較例1,2において、リンが共重合された難燃性ポリエステル繊維としては、リンの含有量が5800ppmに設定され、3.8cN/dtexの引張強度を有し、180℃の熱処理が施された場合に14%の乾熱収縮率を示す難燃性ポリエステル繊維を準備した。また、通常のポリエステル繊維(非難燃性ポリエステル繊維)としては、4.0cN/dtexの引張強度を有し、且つ、180℃の熱処理が施された場合に7%の乾熱収縮率を示すポリエステル繊維を準備した。更に、ファスナーエレメントとして、リンを5800ppmの含有量で共重合させたポリエステル樹脂製のモノフィラメントをコイル状に成形したものを準備した。
(実施例1)
全ての経糸にリンが共重合された難燃性ポリエステル繊維が配され、且つ、緯糸に非難燃性ポリエステル繊維が配されたファスナーテープを左右一対で準備した後、両ファスナーテープの対向するテープ側縁部にコイル状のファスナーエレメントを縫着することによって、ファスナーチェーンを作製した。
その後、作製したファスナーチェーンに180℃の熱セット処理を施すことによって、実施例1の測定試料となるファスナーチェーンを得た。この場合、ファスナーテープに対する難燃性ポリエステル繊維の含有比率は50%となり、また、難燃性ポリエステル繊維のリン含有量は5800ppmに設定されているため、実施例1のファスナーテープにおけるリンの含有量は2900ppmとなる。
ここで、実施例1〜4に記載の難燃性ポリエステル繊維の含有比率は、ファスナーテープの1m当たりに配される経糸と緯糸の当該ファスナーテープに占める重量比率に基づいている。この場合、ファスナーテープは左右一対で配されているため、片側のファスナーテープのみを試料として含有比率を算出しても良い。
(実施例2)
経糸に、難燃性ポリエステル繊維が75%の割合(4本当たりに3本の割合)で均等に配されるとともに、非難燃性ポリエステル繊維が25%の割合(4本当たりに1本の割合)で配され、且つ、緯糸に非難燃性ポリエステル繊維が配されたファスナーテープを左右一対で準備した後、両ファスナーテープの対向するテープ側縁部にコイル状のファスナーエレメントを縫着することによって、ファスナーチェーンを作製した。
なお、実施例2のファスナーテープにおいては、難燃性ポリエステル繊維が織り込まれる3本のテープ幅方向に互いに隣接する経糸と、非難燃性ポリエステル繊維が織り込まれる1本の経糸とが順番に繰り返し配されることによって、難燃性ポリエステル繊維が、4本当たりに3本の割合で、テープ幅方向に均等な間隔で配されている。
その後、作製したファスナーチェーンに180℃の熱セット処理を施すことによって、実施例2の測定試料となるファスナーチェーンを得た。この場合、ファスナーテープに対する難燃性ポリエステル繊維の含有比率は37.5%となり、また、実施例2のファスナーテープにおけるリンの含有量は、2175ppmとなる。
(実施例3)
経糸に、難燃性ポリエステル繊維と非難燃性ポリエステル繊維とがそれぞれ50%の割合(2本当たりに1本の割合)で均等に配され、且つ、緯糸に非難燃性ポリエステル繊維が配されたファスナーテープを左右一対で準備した後、両ファスナーテープの対向するテープ側縁部にコイル状のファスナーエレメントを縫着することによって、ファスナーチェーンを作製した。
その後、作製したファスナーチェーンに180℃の熱セット処理を施すことによって、実施例3の測定試料となるファスナーチェーンを得た。この場合、ファスナーテープに対する難燃性ポリエステル繊維の含有比率は25%となり、また、実施例3のファスナーテープにおけるリンの含有量は、1450ppmとなる。
(実施例4)
経糸に、難燃性ポリエステル繊維が25%の割合(4本当たりに1本の割合)で均等に配されるとともに、非難燃性ポリエステル繊維が75%の割合(4本当たりに3本の割合)で配され、且つ、緯糸に非難燃性ポリエステル繊維が配されたファスナーテープを左右一対で準備した後、両ファスナーテープの対向するテープ側縁部にコイル状のファスナーエレメントを縫着することによって、ファスナーチェーンを作製した。
なお、実施例4のファスナーテープにおいては、難燃性ポリエステル繊維が織り込まれる1本の経糸と、非難燃性ポリエステル繊維が織り込まれる3本のテープ幅方向に互いに隣接する経糸とが順番に繰り返し配されることによって、難燃性ポリエステル繊維が、4本当たりに1本の割合で、テープ幅方向に均等な間隔で配されている。
その後、作製したファスナーチェーンに180℃の熱セット処理を施すことによって、実施例4の測定試料となるファスナーチェーンを得た。この場合、ファスナーテープに対する難燃性ポリエステル繊維の含有比率は12.5%となり、また、実施例4のファスナーテープにおけるリンの含有量は、725ppmとなる。
上記実施例1〜4において、ファスナーエレメントにリンを含有させる方法として、リンをポリエステル樹脂に混練してモノフィラメントを形成し、同モノフィラメントをコイル状に成形する方法を用いても良い。
(比較例1)
全ての経糸と緯糸にリンが共重合された難燃性ポリエステル繊維が配されたファスナーテープを左右一対で準備した後、両ファスナーテープの対向するテープ側縁部にコイル状のファスナーエレメントを縫着することによって、ファスナーチェーンを作製した。
その後、作製したファスナーチェーンに180℃の熱セット処理を施すことによって、比較例1の測定試料となるファスナーチェーンを得た。この場合、ファスナーテープに対する難燃性ポリエステル繊維の含有比率は100%となり、また、比較例1のファスナーテープにおけるリンの含有量は、5800ppmとなる。
(比較例2)
全ての経糸と緯糸に非難燃性ポリエステル繊維が配されたファスナーテープを左右一対で準備した後、両ファスナーテープの対向するテープ側縁部にコイル状のファスナーエレメントを縫着することによって、ファスナーチェーンを作製した。
その後、作製したファスナーチェーンに180℃の熱セット処理を施すことによって、比較例2の測定試料となるファスナーチェーンを得た。この場合、ファスナーテープに対する難燃性ポリエステル繊維の含有比率は0%となる。
以上のようにして実施例1〜4及び比較例1,2に係る各ファスナーチェーンをそれぞれ10本ずつ製造し、その後、各ファスナーチェーンの難燃性を評価するために、米国の難燃性に関する規格(FMVSS No.302)に準じて、水平燃焼時の燃焼距離を測定した。
具体的には、先ず、測定試料となる各ファスナーチェーンに対して、ファスナーテープの一方のテープ端部から38mmの位置に標準線を付した。続いて、各ファスナーチェーンに対して、燃焼促進剤として5%のシリコン溶液を添加し、その後、同ファスナーチェーンを十分に乾燥させた。
次に、乾燥させたファスナーチェーンを水平に保持した後、ファスナーテープの一方のテープ端部にガスバーナーの炎を30秒間接炎させ、その後、ガスバーナーの炎をテープ端部から離した。そして、ファスナーテープに付した標準線を基準にして、ファスナーテープの燃焼距離を金尺を用いて目視により測定した。
ここで、ファスナーテープの燃焼が標準線に達した場合を0mmと規定し、ファスナーテープの燃焼が標準線に至らなかった場合は、標準線からの燃焼しなかったテープ部分の長さをマイナス表記で表すこととした。一方、ファスナーテープの燃焼が標準線を越えた場合は、標準線からの燃焼したテープ部分の長さをプラス表記で表すこととした。そして、実施例1〜4及び比較例1,2に係る各ファスナーチェーンについて、燃焼距離の測定を10本ずつ行って燃焼距離の測定値の平均を求めた。求めた燃焼距離の平均値の結果を図4に示す。
次に、実施例1及び比較例1,2に係るファスナーチェーンについて、チェーン横引強度試験を行った。このチェーン横引強度試験では、先ず、左右のファスナーエレメントを噛合させた状態で、ファスナーチェーンのテープ長さ方向の一端部と他端部を固定することによってファスナーチェーンを弛緩しないように保持する。次に、左右ファスナーテープのテープ長さ方向の中間部を左右一対のクランパーでそれぞれ把持し、続いて、ファスナーテープを把持した左右のクランパーを互いに離間する方向に一定の速度で移動させることによって、噛合状態のファスナーエレメントに対して徐々に負荷を加える。そして、ファスナーエレメントの噛み合いが外れたときの負荷を測定することによって、ファスナーチェーンのチェーン横引強度を求めた。なお、実施例1及び比較例1,2のファスナーチェーンについて、チェーン横引強度試験をそれぞれ10本ずつ行い、測定したチェーン横引強度の平均値を求めた。その結果、実施例1のファスナーチェーンは、平均で1019Nのチェーン横引強度を有しており、また、比較例1及び2のファスナーチェーンは、平均で874Nのチェーン横引強度、及び946Nのチェーン横引強度をそれぞれ有していた。
先ず、実施例1〜4及び比較例1,2のファスナーチェーンにおける難燃性を比較してみると、図4に示したように、ファスナーテープを構成する経糸の少なくとも一部に難燃性ポリエステル繊維が配された実施例1〜4のファスナーチェーンは、難燃性ポリエステル繊維が全く配されていない比較例2に係るファスナーチェーンよりも燃焼距離が小さく、リンの作用により延焼を防いでいることが確認できるため、難燃性を有していることが明らかとなった。
特に、ファスナーテープを構成する経糸の50%以上100%以下の割合で難燃性ポリエステル繊維が配されている実施例1〜3に係るファスナーチェーンについては、緯糸に非難燃性ポリエステル繊維が配されているにも関わらず、全ての経糸と緯糸に難燃性ポリエステル繊維が配されたファスナーテープを有する比較例2に係るファスナーチェーンと略同等の難燃性能を有しており、米国の難燃性に関する規格(FMVSS No.302)を達成できるような難燃性を有することが確認できた。
また、実施例1及び比較例1,2のファスナーチェーンにおけるチェーン横引強度を比較してみると、実施例1のファスナーチェーンは、経糸と緯糸に非難燃性ポリエステル繊維が配された比較例2のファスナーチェーンよりも高いチェーン横引強度を有していた。特に、実施例1のファスナーチェーンのチェーン横引強度は、経糸と緯糸に難燃性ポリエステル繊維が配された比較例1のファスナーチェーンのチェーン横引強度よりも10%以上も高いことが確認された。
実施例1のファスナーチェーンが高いチェーン横引強度を有している理由としては、ファスナーテープの緯糸に非難燃性ポリエステル繊維が配されており、且つ、経糸の熱収縮により緯糸の密度が高められているために、ファスナーテープのテープ強度が増大し、ファスナーテープをテープ幅方向に引っ張っても緯糸や経糸にほつれや切断が生じ難くなったことと、経糸の熱収縮によりファスナーエレメントの噛合頭部間の間隔が狭められて、左右のファスナーエレメントの噛合強度が増大したことが考えられる。
また、上記の実施例1〜4に関して、ファスナーエレメントを、リンを共重合しない非難燃性のポリエステル樹脂で構成してファスナーチェーンを作製し、得られた各ファスナーチェーンの難燃性について、上記と同様の試験を行った。その結果、非難燃性のファスナーエレメントを難燃性のファスナーテープに取着したファスナーチェーンの燃焼距離は、難燃性のファスナーエレメントを有する上記実施例1〜4のファスナーチェーンよりもそれぞれ大きかったものの、比較例2に係るファスナーチェーンよりも小さかった。従って、実施例1〜4に関して、ファスナーエレメントを非難燃性のポリエステル樹脂で構成した場合でも、リンの作用により延焼を防いでいることが確認できるため、難燃性を有していると言える。
1 スライドファスナー
2 ファスナーチェーン
6 スライダー
7 上止具
8 下止具
10 ファスナーテープ
11 テープ主体部
11a 第1主体部領域
11b 第2主体部領域
12 テープ側縁部
15 経糸
16 緯糸
17 難燃性ポリエステル繊維
18 非難燃性ポリエステル繊維
20 エレメント列
21 ファスナーエレメント
22 縫製糸
23 芯紐
30 ファスナーテープ
31 テープ主体部
31a 第1主体部領域
31b 第2主体部領域
32 テープ側縁部
35 経糸
36 緯糸
37 難燃性ポリエステル繊維
38 非難燃性ポリエステル繊維

Claims (8)

  1. 織成された左右一対のファスナーテープ(10,30) の対向するテープ側縁部(12,32) に、連続状のファスナーエレメント(21)が取着されたファスナーチェーン(2) であって、
    前記ファスナーテープ(10,30) を構成する経糸(15,35) の少なくとも一部に、リンが共重合された難燃性ポリエステル繊維(17,37) が配され、
    前記ファスナーテープ(10,30) を構成する緯糸(16,36) に、リンが共重合されず、前記難燃性ポリエステル繊維(17,37) よりも高い引張強度を有する合成繊維(18,38) が配されてなる
    ことを特徴とするファスナーチェーン。
  2. 前記難燃性ポリエステル繊維(17,37) は、前記経糸(15,35) の50%以上100%以下の割合で配されてなる請求項1記載のファスナーチェーン。
  3. 前記難燃性ポリエステル繊維(17,37) は、テープ幅方向に均等な間隔で配されてなる請求項1記載のファスナーチェーン。
  4. 前記難燃性ポリエステル繊維(17,37) は、前記緯糸(16,36) よりも太い線径を有してなる請求項1記載のファスナーチェーン。
  5. 前記緯糸(16,36) は、3.5cN/dtex以上の引張強度を有してなる請求項1記載のファスナーチェーン。
  6. 前記ファスナーエレメント(21)は、リンを共重合した難燃性の合成樹脂により構成されてなる請求項1記載のファスナーチェーン。
  7. 前記ファスナーテープ(10,30) 及び前記ファスナーエレメント(21)に、リンを含む難燃剤が付着されてなる請求項1記載のファスナーチェーン。
  8. 請求項1〜請求項7の何れかに記載のファスナーチェーン(2) を有することを特徴とするスライドファスナー。
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