JPWO2012029439A1 - 電流センサ - Google Patents

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Abstract

広範囲の被測定電流を測定でき、外乱磁気によるノイズを低減できる電流センサを提供すること。本発明の電流センサ(1)は、被測定電流からの誘導磁界により出力信号を出力する第一及び第二の磁気センサ(14a、14b)と、第一及び第二の磁気センサ(14a、14b)の出力信号を差動演算する制御部(21)と、第一及び第二の磁気センサ(14a、14b)と処理部(21)との接続を切替える切替制御回路(221)とを具備する。第一及び第二の磁気センサ(14a、14b)は、感度軸方向(D1)が同一方向に固定されると共に、導電部材(12)の中心点(P2)に対して異なる距離に配置され、切替制御回路(221)は、第一及び第二の磁気センサ(14a、14b)の出力信号が所定の閾値より大きいか否かを判定し、判定結果に応じて第一及び第二の磁気センサ(14a、14b)と制御部(21)との接続を切替える。

Description

本発明は、電流の大きさを測定する電流センサに関し、特に、導体を流れる電流を、磁電変換素子を介して検出する電流センサに関する。
近年、電気自動車やソーラー電池などの分野では、電気自動車やソーラー電池装置の大出力化・高性能化に伴って、取り扱う電流値が大きくなってきており、直流大電流を非接触で測定する電流センサが広く用いられている。このような電流センサとしては、検出対象となる導体に流れる電流を、導体周囲の磁界の変化を介して検出する磁電変換素子を備えたものが提案されている。また、電流センサとして、広い測定レンジを持つ電流センサが開発されている。
広い測定レンジを持つ電流センサとしては、導体からの距離を変えた位置に2つの磁気センサを配置し、電流により発生する磁界の強さの異なる場所で電流値を計測する電流センサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、磁気高感度素子としての一対の磁気インピーダンス素子を被検出電流を通流する電流線を挟んで対向配置し、一対の磁気インピーダンスに生じた電圧を加算することにより微小電流を安定して計測する電流センサが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2004−132790号公報 特開平10−73619号公報
しかしながら、特許文献1記載の電流センサでは、広範囲な測定レンジにするために、導体からの距離を広げる必要があるため、必要スペースが大きくなる。また、磁気センサを導体から離しすぎると、磁気センサ間で発生するノイズが異なってくるため、その対策が困難である。また、特許文献2記載の電流センサでは、一対の磁気インピーダンスの距離と電流線との間の距離の誤差により、被検出電流の測定誤差が生じる問題がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、広範囲の被測定電流を測定でき、外乱磁気によるノイズを低減できる電流センサを提供することを目的とする。
本発明の電流センサは、被測定電流からの誘導磁界により出力信号を出力する第一の磁気センサ及び第二の磁気センサと、前記第一の磁気センサの出力信号と前記第二の磁気センサの出力信号とを差動演算する差動部と、前記第一の磁気センサ及び前記第二の磁気センサと前記差動部との接続を切替える切替制御手段とを具備し、前記第一の磁気センサ及び前記第二の磁気センサは、感度軸方向が同一方向に固定されると共に、前記被測定電流を通流する導電部材の中心点との間の距離が互いに異なるように配置され、前記切替制御手段は、前記第一の磁気センサ又は第二の磁気センサの出力信号が所定の閾値より大きいか否かを判定し、判定結果に応じて前記第一の磁気センサ及び第二の磁気センサと前記差動部との接続を切替えることを特徴とする。
この構成によれば、被測定電流が小電流の場合には、第一の磁気センサ及び第二の磁気センサの出力信号を差動演算して被測定電流を測定でき、被測定電流が大電流の場合には、相対的に検出感度が低い第一の磁気センサ又は第二の磁気センサにより被測定電流を測定できる。この結果、被測定電流が小電流の場合には、第一の磁気センサ及び第二の磁気センサの出力信号に含まれる外乱磁気によるノイズが相殺されて測定精度が向上すると共に、被測定電流が大電流の場合においても、被測定電流の測定に用いる第一の磁気センサ又は第二の磁気センサの磁気飽和を抑制できる。したがって、広範囲の被測定電流を測定でき、外乱磁気によるノイズの影響を低減できる電流センサを実現できる。
本発明の電流センサにおいては、前記第一の磁気センサ及び第二の磁気センサは、前記第一の磁気センサと前記導電部材の中心点との間の距離が、前記第二の磁気センサと前記導電部材の中心点との間の距離より小さくなるように配置され、前記切替制御手段は、前記第一の磁気センサの出力信号が、所定の閾値より小さい場合には、前記第一の磁気センサ及び第二の磁気センサを前記差動部に共に接続し、前記第一の磁気センサの出力信号が、所定の閾値より大きい場合には、前記第二の磁気センサを前記差動部に接続することが好ましい。
この構成によれば、被測定電流が小電流の場合には、第一の磁気センサ及び第二の磁気センサの出力信号の差動演算により被測定電流を測定するので、外乱磁気によるノイズの影響を低減することができる。また、被測定電流の電流値が増大して第一の磁気センサの出力信号が所定の閾値を超えた場合には、第一の磁気センサに対して導電部材の中心から離れて設置された第二の磁気センサにより被測定電流を測定するので、第二の磁気センサの磁気飽和を抑制することが可能となる。したがって、広範囲の被測定電流を測定でき、外乱磁気によるノイズの影響を低減できる電流センサを実現できる。
本発明の電流センサにおいては、前記第一の磁気センサ及び第二の磁気センサは、前記第一の磁気センサの感度軸方向と当該第一の磁気センサに印加される前記誘導磁界の印加方向とのなす角度θ1が、前記第二の磁気センサの感度軸方向と当該第二の磁気センサに印加される前記誘導磁界の印加方向とのなす角度θ2より小さくなるように配置されることが好ましい。
この構成によれば、第二の磁気センサに対して印加される被測定電流からの誘導磁界の磁気ベクトルが、第一の磁気センサに対して印加される被測定電流からの誘導磁界の磁気ベクトルに対して小さくなる。これにより、被測定電流が大電流の場合においても、第二の磁気センサの磁気飽和を抑制することが可能となる。
本発明の電流センサにおいては、前記第一の磁気センサと前記第二の磁気センサとが配置される基板を有し、前記導電部材は、断面視にて長軸方向と短軸方向とを有する形状をなしており、前記基板は、前記導電部材の短軸方向において前記導電部材に並設され、前記基板の面内方向と前記長軸方向とが一致するように配置されることが好ましい。
この構成によれば、第一の磁気センサ及び第二の磁気センサを同一基板上に配置するので、電流センサの小型化・薄型化が可能となる。また、第一の磁気センサ及び第二の磁気センサと導電部材との間の距離とを個別に調整せずに電流センサを製造できるので、電流センサの製造が容易となる。
本発明の電流センサにおいては、前記導電部材は、断面視にて矩形形状であることが好ましい。この構成によれば、導電部材の短軸方向の端部近傍における誘導磁界の印加方向の変化が大きくなるので、第一の磁気センサ及び第二の磁気センサの感度軸方向における磁気ベクトルの差を大きくすることができる。この結果、第二の磁気センサの磁気飽和を抑制でき、大電流の被測定電流の測定が可能となる。
本発明の電流センサにおいては、前記第一の磁気センサ及び第二の磁気センサが、GMR素子であることが好ましい。
本発明によれば、広範囲の被測定電流を測定でき、外乱磁気によるノイズを低減できる電流センサを提供することができる。
本発明の実施の形態に係る電流センサの平面模式図である。 本発明の実施の形態に係る電流センサの断面模式図である。 本発明の実施の形態に係る電流センサにおける誘導磁界の説明図である。 本発明の実施の形態に係る電流センサにおける誘導磁界の説明図の部分拡大図である。 本発明の実施の形態に係る電流センサを示す機能ブロック図である。 本発明の実施の形態に係る電流センサの動作例を示すフロー図である。 本発明の実施例及び比較例に係る電流センサの出力信号と被測定電流との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る電流センサの平面模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係る電流センサ1は、内部に空間を有するケース11と、このケース11内に一部が配置され、一方向に延在する導電部材12を備える。ケース11内の導電部材12上には、基板13を介して、被測定電流Iからの誘導磁界M1(図4参照)により出力信号を出力する一対の第一及び第二の磁気センサ14a、14bが配置される。本実施の形態に係る電流センサ1においては、被測定電流Iの大きさに応じて、被測定電流Iの測定に用いる第一及び第二の磁気センサ14a、14bを切替えながら導電部材12を通流する被測定電流Iを測定する。
図2は、本実施の形態に係る電流センサ1の断面模式図であり、図1のA−A線矢視断面図である。図2に示すように、ケース11は、絶縁体で形成されるが、一部が、例えば、珪素鋼、パーマロイなどの透磁率が高い材料で構成され、ケース11内への外乱磁気を遮蔽するように構成されていても良い。ケース11は、断面視にて矩形枠状をなしており、このケース11内を貫通するように導電部材12が配置される。導電部材12は、断面視にて矩形形状をなしており、短軸方向D2の両端の一対の主面12a、12bと、長軸方向D3の両端の一対の端面12c、12dとを有する。被測定電流Iは、導電部材12により一方向に向けて通流される。
基板13は、導電部材12の長軸方向D3における一方の主面12aとケース11の天板11aとの間に図示されない支持部材によって支持される。また、基板13は、基板13の面内方向と長軸方向D3とが平行になるように、導電部材12の一方の主面12a側に並設される。基板13の面内方向と長軸方向D3とは完全に平行である必要はなく、本発明の効果を奏する範囲で略平行であれば良い。なお、基板13は、基板面に対する垂直方向において、幅方向における中点P1の位置が、導電部材12の長軸方向D3(幅方向)における中点(導電部材12の中心点P2)の位置と同一の位置になるように配置されることが好ましい。なお、幅方向における中点P1の位置が、導電部材12の長軸方向D3(幅方向)における中点(導電部材12の中心点P2)の位置と完全に同一である必要はなく、本発明の効果を奏する範囲で略同一であれば良い。また、基板13は、基板面の垂直方向において、幅方向における中点P1と導電部材12の長軸方向D3における中点(導電部材12の中心点P2)とが、揃うように(F1参照)配置されることが電流センサ1の小型化の観点からより好ましい。
基板13上には、第一及び第二の磁気センサ14a、14bと、第一及び第二の磁気センサ14a、14bの出力信号を演算処理する制御部21と(図5参照)が設けられる。第一の磁気センサ14aは、基板13上面の中央部(中点P1の近傍)に配置され、第二の磁気センサ14bは、基板13上面の一端部に配置される。第一及び第二の磁気センサ14a、14bは、感度軸方向D1が導電部材12の長軸方向D3と同一方向になるように固定され、互いに検出感度が同一となるように構成される。なお、感度軸方向D1が導電部材12の長軸方向D3と完全に同一である必要はなく、本発明の効果を奏する範囲で略同一であれば良い。
次に、図3及び図4を参照して本実施の形態に係る電流センサ1の被測定電流I測定時における誘導磁界M1について説明する。図3は、本実施の形態に係る電流センサ1における誘導磁界の説明図であり、図4は、図3に示す第一及び第二の磁気センサ14a、14bの部分拡大図である。なお、図3においては、電流センサ1の断面模式図を示し、説明の便宜上、ケース11を省略して示している。
図3に示すように、被測定電流Iが導電部材12を通流すると、導電部材12を中心として導電部材12の外周縁から一定の範囲に誘導磁界M1が生じる。この誘導磁界M1は、被測定電流Iの通流方向(紙面手前から奥側方向)に対して右回りの方向となる。このため、導電部材12の一方の主面12aの中央部近傍においては、誘導磁界M1の方向は右方向(左方向)となり、導電部材12の他方の主面12bの中央部近傍においては、誘導磁界M1の方向は左方向(右方向)となる。また、導電部材12の端面12c、12dの近傍においては、端面12c、12dの一端側から他端側に向けて誘導磁界M1の方向が、断面視にて曲線状に変化する。このため、導電部材12の主面12aの中央部近傍に配置される第一の磁気センサ14aに対しては、感度軸方向D1に対して平行に誘導磁界M1が印加され、端面12cの近傍に配置される第二の磁気センサ14bに対しては、感度軸方向D1に対する斜め方向から誘導磁界M1が印加される。
次に、図4を参照して第一及び第二の磁気センサ14a、14bに対する誘導磁界M1の印加方向について詳細に説明する。図4に示すように、導電部材12の主面12aの中央部近傍に配置される第一の磁気センサ14aに対しては、感度軸方向D1(右方向)と同一方向から誘導磁界M1が印加される。このため、第一の磁気センサ14aの感度軸方向D1と誘導磁界M1の印加方向とは同一方向となり、第一の磁気センサ14aの感度軸方向D1と誘導磁界M1の印加方向とがなす角度θ1は微小値となる。
また、導電部材12の端面12cの近傍に配置される第二の磁気センサ14bに対しては、感度軸方向D1に対して所定の角度θ2をなす方向から誘導磁界M1が印加される。このため、第二の磁気センサ14bの感度軸方向D1と誘導磁界M1の印加方向とのなす角度θ2は、第一の磁気センサ14aの感度軸方向D1と誘導磁界M1の印加方向とのなす角度θ1より相対的に大きくなる。
第一の磁気センサ14aの中心点P3に対して印加される誘導磁界M1は、感度軸方向D1の磁気ベクトルM2と、基板13面に垂直方向の磁気ベクトルM3とにベクトル分解される。ここで、第一の磁気センサ14aに対しては、感度軸方向D1と略同一方向から誘導磁界M1が印加されるので、誘導磁界M1と感度軸方向D1とがなす角度θ1は微小値となり、誘導磁界M1の大きさと磁気ベクトルM2の大きさが略同一となる。このため、第一の磁気センサ14aから出力される出力信号は、誘導磁界M1の大きさに応じた出力信号が出力される。
一方、第二の磁気センサ14bの中心点P4に対して印加される誘導磁界M1は、感度軸方向D1の磁気ベクトルM2と、基板13面に垂直方向の磁気ベクトルM3とにベクトル分解される。このため、第二の磁気センサ14bから出力される出力信号は、誘導磁界M1がベクトル分解された磁気ベクトルM2の大きさに応じた出力信号が出力される。
すなわち、本実施の形態に係る電流センサ1においては、第一及び第二の磁気センサ14a、14bは、第一の磁気センサ14aと導電部材12の中心点P2との間の距離が、第二の磁気センサ14bと導電部材12の中心点P2との間の距離より小さくなるように配置される。この構成により、被測定電流Iからの誘導磁界M1が、第一及び第二の磁気センサ14a、14bに対して、互いに異なる大きさの磁気ベクトルM2として印加されるので、誘導磁界M1により第一の磁気センサ14aから出力される出力信号が、第二の磁気センサ14bから出力される出力信号に対して相対的に大きくなる。これにより、被測定電流Iが小電流の場合には、相対的に検出感度が高い第一の磁気センサ14aによって被測定電流Iを測定することが可能となる。また、被測定電流Iが大電流の場合には、誘導磁界M1の磁気ベクトルM2が第二の磁気センサ14aに印加されるので、第二の磁気センサ14bの磁気飽和を抑制することが可能となる。したがって、被測定電流Iの測定範囲を拡大することが可能となる。
また、本実施の形態に係る電流センサ1においては、第一及び第二の磁気センサ14a、14bの感度軸方向D1が同一方向に固定され、同一方向からの磁界に対して第一及び第二の磁気センサ14a、14bから出力される出力信号が同一となるように構成されているので、外乱磁気Hcに対しては、同相かつ同一の出力信号が出力される。このため、第一及び第二の磁気センサ14a、14bの出力信号を差動演算することにより、外乱磁気からノイズ成分が同相で除去される。したがって、電流センサ1の測定精度を向上することが可能となる。
図5は、本発明の実施の形態に係る電流センサを示す機能ブロック図である。第一及び第二の磁気センサ14a、14bは、それぞれ磁気平衡式センサであり、被測定電流Iによって発生する磁界を打ち消す方向の磁界を発生可能に配置されたフィードバックコイル141a、141bと、磁気検出素子である2つの磁気抵抗効果素子及び2つの固定抵抗素子からなるブリッジ回路142a、142bとから構成されている。
制御部21は、第一の磁気センサ14aのブリッジ回路142aの差動出力を増幅し、フィードバックコイル141aのフィードバック電流を制御する差動・電流アンプ211と、第一の磁気センサ14aのフィードバック電流を電圧に変換するI/Vアンプ212と、第二の磁気センサ14bのブリッジ回路142bの差動出力を増幅し、フィードバックコイル141bのフィードバック電流を制御する差動・電流アンプ213と、第二の磁気センサ14bのフィードバック電流を電圧に変換するI/Vアンプ214と、第一の磁気センサ14aからの出力信号の大きさに応じて第一及び第二の磁気センサ14a、14bと差動アンプ222との接続を切替える切替制御回路221と、I/Vアンプ212、214の差動出力を増幅する差動アンプ222とを含む。
フィードバックコイル141a、141bは、ブリッジ回路142a、142bの磁気抵抗効果素子の近傍に配置されており、被測定電流Iにより発生する誘導磁界を相殺するキャンセル磁界を発生する。ブリッジ回路142a、142bの磁気抵抗効果素子としては、GMR(Giant Magneto Resistance)素子やTMR(Tunnel Magneto Resistance)素子などを挙げることができる。磁気抵抗効果素子は、被測定電流Iからの誘導磁界の印加により抵抗値が変化する。2つの磁気抵抗効果素子と2つの固定抵抗素子によりブリッジ回路142a、142bを構成することにより、高感度の電流センサを実現することができる。また、磁気抵抗効果素子を用いることにより、電流センサを設置する基板面と平行な方向に感度軸を配置し易く、平面コイルを使用することが可能となる。
ブリッジ回路142a、142bは、被測定電流Iにより生じた誘導磁界M1に応じた電圧差を生じる2つの出力を備える。ブリッジ回路142a、142bの2つの出力は差動・電流アンプ211、213で増幅され、増幅された出力がフィードバックコイル141a、141bに電流(フィードバック電流)として与えられる。このフィードバック電流は、誘導磁界M1に応じた電圧差に対応する。このとき、フィードバックコイル141a、141bには、誘導磁界M1を相殺するキャンセル磁界が発生する。そして、誘導磁界M1とキャンセル磁界とが相殺される平衡状態となったときのフィードバックコイル141a、141bに流れる電流がI/Vアンプ212、214で電圧に変換され、この電圧がセンサ出力となる。
なお、差動・電流アンプ211においては、電源電圧を、I/V変換の基準電圧(フィードバックコイル抵抗の定格内最大値×フルスケール時フィードバックコイル電流)に近い値に設定することで、フィードバック電流が自動的に制限され、磁気抵抗効果素子やフィードバックコイルを保護する効果が得られる。また、ここではブリッジ回路142a、142bの二つの出力の差動を増幅してフィードバック電流に用いたが、ブリッジ回路からは中点電位のみを出力とし、所定の基準電位との電位差をもとにフィードバック電流としてもよい。
切替制御回路221は、第一の磁気センサ14aからの出力信号の大きさが所定の閾値より大きいか否かを判断する判定回路を備えており、第一の磁気センサ14aの出力信号の大きさに応じて、I/Vアンプ212及びI/Vアンプ214と差動アンプ222との接続を切替える。切替制御回路221は、第一の磁気センサ14aの出力信号が所定の閾値より小さい場合には、I/Vアンプ212、214を共に差動アンプ222に接続し、第一及び第二の磁気センサ14a、14bからの出力信号を差動アンプ222に共に出力する。また、切替制御回路221は、第一の磁気センサ14bの出力信号が所定の閾値より大きい場合には、I/Vアンプ214を差動アンプ222に接続し、第二の磁気センサ14bからの出力信号を出力する。
差動アンプ222は、I/Vアンプ212の出力信号を基準電圧との間で増幅してセンサ出力として処理すると共に、I/Vアンプ212、214の出力信号の差動値をセンサ出力として処理する。このような処理を行うことにより、第一の磁気センサ14a、第二の磁気センサ14bの出力信号における地磁気などの外部磁場の影響はキャンセルされ、より高精度に電流を測定できる。
次に、図6を参照して本実施の形態に係る電流センサ1の動作例について説明する。図6は、本実施の形態に係る電流センサの動作例を示すフロー図である。
図6に示すように、被測定電流Iの測定開始後、まず、第一及び第二の磁気センサ14a、14bを共に用いて被測定電流Iを測定する(ステップST1)。次に、第一の磁気センサ14aの出力信号の大きさが所定の閾値より大きいか否かを切替制御回路221の判定回路で判定する(ステップST2)。ステップST2において、第一の磁気センサ14aの出力信号が所定の閾値より小さい場合には、第一及び第二の磁気センサ14a、14bを共に用いて被測定電流Iを測定する(ステップST1)。一方、ステップST2において、第一の磁気センサ14aの出力信号が、所定の閾値より大きい場合には、第二の磁気センサ14bを用いて被測定電流Iを測定する(ステップST3)。次に、第一の磁気センサ14aの出力信号が所定の閾値より大きいか否かを切替制御回路221の判定回路で判定する(ステップST4)。第一の磁気センサ14aの出力信号が、所定の閾値より大きい状態では、第二の磁気センサ14bを用いて被測定電流Iを測定する(ステップST3)。第一の磁気センサ14aの出力信号が所定の閾値より小さくなった場合には、第一及び第二の磁気センサ14a、14bを共に用いて被測定電流Iの大きさを測定する(ステップST1)。以上の動作を繰り返して被測定電流を測定する。
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
図1及び図2に示すように、第一及び第二の磁気センサ14a、14bを、基板13を介して導電部材12の中心点P2とそれぞれ異なる距離に配置してなる電流センサ1を作製し、第一及び第二の磁気センサ14a、14bを切替えながら、被測定電流Iを0Aから1000Aまで変化させたときの電流センサ1の出力信号を調べた。その結果を図7に示す。また、比較例として、導電部材12上に基板13を介して一対の磁気センサ14a、14bを導電部材12の中心点P2とそれぞれ等しい距離に配置してなる電流センサを作製し、第一及び第二の磁気センサ14a、14bを共に用いて被測定電流Iを0Aから1000Aまで変化させたときの電流センサの出力信号を調べた。その結果を図7に併記する。図7から分かるように、本実施の形態に係る電流センサ1によれば、小電流の被測定電流Iから大電流の被測定電流Iまで、電流センサの出力信号が線形に変化することがわかる。これに対し、比較例に係る電流センサでは、600Aより大きい被測定電流Iの範囲においては、磁気飽和が生じて電流センサの出力信号が一定となることが分かる。
以上説明したように、本実施の形態に係る電流センサ1においては、第一の磁気センサ14aと導電部材12の中心点P2との間の距離が、第二の磁気センサ14bと導電部材12の中心点P2との間の距離より小さくなるように配置する。この構成により、被測定電流Iからの誘導磁界M1が、第一及び第二の磁気センサ14a、14bに対して、互いに異なる大きさの磁気ベクトルM2として印加されるので、誘導磁界M1により第一の磁気センサ14aから出力される出力信号が、第二の磁気センサ14bから出力される出力信号に対して相対的に大きくなる。これにより、被測定電流Iが小電流の場合には、相対的に検出感度が高い第一の磁気センサ14aによって被測定電流Iを測定することが可能となる。また、被測定電流Iが大電流の場合には、誘導磁界M1の磁気ベクトルM2のみが第二の磁気センサ14aに印加されるので、第二の磁気センサ14bの磁気飽和を抑制することが可能となる。したがって、被測定電流Iの測定範囲を拡大することが可能となる。
また、本実施の形態に係る電流センサ1においては、小電流の測定時には、第一及び第二の磁気センサ14a、14bの感度軸方向D1を同一方向に固定し、第一及び第二の磁気センサ14a、14bの出力信号を差動演算するので、第一及び第二の磁気センサ14a、14bに共に印加される外乱磁気Hcによるノイズを相殺することができる。
さらに、本実施の形態に係る電流センサ1においては、導電部材12上に基板13を介して一対の第一及び第二の磁気センサ14a、14bを配置し、基板13の面内方向と導電部材12の長軸方向D3とを一致して配置するので、電流センサ1の小型化が可能となる。また、一枚の基板13上に第一及び第二の磁気センサ14a、14bを配置するので、電流センサ1を簡易に製造することができ、製造コストを低減することが可能となる。
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。例えば、上記実施の形態における各素子の接続関係、大きさなどは適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明は、本発明の効果が得られる範囲を逸脱しないで適宜変更して実施することができる。
例えば、上記実施の形態に係る電流センサ1においては、第一の磁気センサ14aと導電部材12の中心点P2との間の距離が、第二の磁気センサ14bと導電部材12の中心点P2との間の距離より小さくなるように配置する例について説明したが、第一及び第二の磁気センサ14a、14bは、被測定電流Iからの誘導磁界M1が、第一及び第二の磁気センサ14a、14bに対して異なる強度で印加され、外乱磁気Hcが第一及び第二の磁気センサ14bに対して同一の強度で印加される配置であれば適時変更可能である。例えば、第一及び第二の磁気センサ14a、14bは、第一の磁気センサ14aに対する誘導磁界M1の印加方向と、第一の磁気センサ14aの感度軸方向D1とがなす角度θ1が、第二の磁気センサ14bに対する誘導磁界M1の印加方向と、第二の磁気センサ14bの感度軸方向D1とがなす角度θ2より小さくなるように配置してもよい。このように構成することによっても被測定電流Iが小電流の場合には、相対的に検出感度が高い第一の磁気センサ14aによって被測定電流Iを測定することが可能となる。また、被測定電流Iが大電流の場合には、誘導磁界M1の磁気ベクトルM2のみが第二の磁気センサ14aに印加されるので、第二の磁気センサ14bの磁気飽和を抑制することが可能となる。
また、上記実施の形態に係る電流センサ1においては、断面視にて矩形形状を有する導電部材12を用いる構成について説明したが、導電部材12の形状は、短軸方向D2及び長軸方向D3を有する形状であれば適時変更可能である。導電部材12の形状としては、例えば、断面視にて矩形形状、楕円形状、扁平形状等、本発明の効果が得られる範囲であれば適時変更可能である。
さらに、上記実施の形態に係る電流センサ1においては、第二の磁気センサ14bに対して印加される誘導磁界M1の角度θ2は、第二の磁気センサ14bの磁気飽和を抑制できる範囲であれば適時変更可能である。なお、上記実施の形態においては、第一の磁気センサ14aの出力信号と所定の閾値とを比較して第一及び第二の磁気センサ14a、14bを切替える例について説明したが、第二の磁気センサ14bの出力信号と所定の閾値とを比較して第一及び第二の磁気センサ14a、14bを切替える構成としてもよい。
また、基板13は、上記配置構成に限定されず、適時変更可能である。例えば、基板13が、導電部材12の長軸方向に対して所定の角度、傾斜して配置されていてもよい。
さらに、上記本実施の形態では、第一の磁気センサ、第二の磁気センサとして、磁気平衡式センサを使用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。磁気センサとしては、電流線を通る被測定電流Iからの誘導磁界により互いに出力信号を出力するものであればよく、例えば、磁気比例式センサ、ホール素子やその他の磁気検出素子を使用してもよい。磁気比例式センサを使用することで、磁気平衡式センサを使用する構成と比較して消費電力を低減することが可能である。
本発明は、広範囲の被測定電流を測定でき、外乱磁気によるノイズを低減できるという効果を有し、特に、電気自動車やハイブリッドカーのモータ駆動用の電流の大きさを検出する電流センサに好適に用いることが可能である。
本出願は、2010年8月31日出願の特願2010−194176に基づく。この内容は、全てここに含めておく。

Claims (6)

  1. 被測定電流からの誘導磁界により出力信号を出力する第一の磁気センサ及び第二の磁気センサと、前記第一の磁気センサの出力信号と前記第二の磁気センサの出力信号とを差動演算する差動部と、前記第一の磁気センサ及び前記第二の磁気センサと前記差動部との接続を切替える切替制御手段とを具備し、
    前記第一の磁気センサ及び前記第二の磁気センサは、感度軸方向が同一方向に固定されると共に、前記被測定電流を通流する導電部材の中心点との間の距離が互いに異なるように配置され、
    前記切替制御手段は、前記第一の磁気センサ又は第二の磁気センサの出力信号が所定の閾値より大きいか否かを判定し、判定結果に応じて前記第一の磁気センサ及び第二の磁気センサと前記差動部との接続を切替えることを特徴とする電流センサ。
  2. 前記第一の磁気センサ及び第二の磁気センサは、前記第一の磁気センサと前記導電部材の中心点との間の距離が、前記第二の磁気センサと前記導電部材の中心点との間の距離より小さくなるように配置され、
    前記切替制御手段は、前記第一の磁気センサの出力信号が、所定の閾値より小さい場合には、前記第一の磁気センサ及び第二の磁気センサを前記差動部に共に接続し、前記第一の磁気センサの出力信号が、所定の閾値より大きい場合には、前記第二の磁気センサを前記差動部に接続することを特徴とする請求項1記載の電流センサ。
  3. 前記第一の磁気センサ及び第二の磁気センサは、前記第一の磁気センサの感度軸方向と当該第一の磁気センサに印加される前記誘導磁界の印加方向とのなす角度θ1が、前記第二の磁気センサの感度軸方向と当該第二の磁気センサに印加される前記誘導磁界の印加方向とのなす角度θ2より小さくなるように配置されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電流センサ。
  4. 前記第一の磁気センサと前記第二の磁気センサとが配置される基板を有し、
    前記導電部材は、断面視にて長軸方向と短軸方向とを有する形状をなしており、
    前記基板は、前記導電部材の短軸方向において前記導電部材に並設され、前記基板の面内方向と前記長軸方向とが一致するように配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電流センサ。
  5. 前記導電部材は、断面視にて矩形形状であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電流センサ。
  6. 前記第一の磁気センサ及び第二の磁気センサが、GMR素子であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の電流センサ。
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