JPWO2012002547A1 - ボセンタン固体分散体 - Google Patents

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Abstract

pHに依存することなくボセンタンの水への溶出性が良好で、長期間保存してもその溶出性が維持されたボセンタン含有医薬組成物を提供する。(A)ボセンタンと(B)セルロース系ポリマー、合成ホモポリマー及び合成コポリマーから選ばれるマトリックス成分とからなる固体分散体であって、(A)と(B)との質量比(A:B)が1:0.05〜1:10であり、37℃の水への溶解濃度が50〜500μg/mLであり、37℃のpH6.8のリン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウム水溶液への溶解濃度が0.6〜10mg/mLである固体分散体。

Description

本発明は、pHの依存なしにボセンタンの水への溶出性及び長期安定性が高いボセンタン固体分散体及びその製法、並びにそのボセンタン固体分散体を含む医薬組成物に関する。
ボセンタンは、化学名N−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−5−(2−メトキシフェノキシ)−2−(2−ピリミジニル)−ピリミジン−4−イル]−4−tert−ブチルーベンゼンスルホンアミドであり、エンドセリン受容体拮抗薬として知られている。該ボセンタンは高血圧、虚血性、血管攣縮及び狭心症などの心血管疾患の治療に有用であり、肺動脈性肺高血圧症の治療薬として使用されている。ボセンタンの合成方法は、米国特許5,292,740号公報、米国特許6,136,971号公報に記載されている。
ボセンタン及びその誘導体は、難水溶性であり、特にpH5以下では0.03mg/mL未満の溶解濃度であり、バイオアベイラビリティーを高めるためには、水への溶解性を高めること、さらには医薬品として3年以上溶解性等の性質が維持されることが求められている。
一般に、難溶性の薬物の水への溶解濃度を向上させるには、平均粒子径をナノサイズまで粉砕する方法、シクロデキストリンなどで包接化する方法、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどの多孔性担体に吸着させる方法、乳化などによりマイクロスフェアにする方法、非結晶化する方法などが知られている。
これまで、ボセンタンの水への溶解性を向上させる方法としては、ボセンタンを溶解性の高い結晶型に結晶構造を変えることや非結晶化する方法(特許文献1、2、3)、難溶性薬物、合成ポリマー、ジメチルエーテルを高温高圧化で溶解させて気流中に噴霧してマトリックス成分に微細に分散させる方法(特許文献4)、溶解性の溶媒と非溶解性の溶媒の混合溶液に活性物質を溶解させて噴霧乾燥する難溶性薬物の固体分散体(特許文献5)などが知られている。
国際公開2008/135795号パンフレット 国際公開2009/047637号パンフレット 国際公開2009/083739号パンフレット 特表2001−505190号公報 国際公開2007/016435号パンフレット
しかしながら、非晶質ボセンタンは、pH1〜5の領域においては難溶性であり、また長期安定性は十分ではなかった。
従って本発明の課題は、pHに依存することなくボセンタンの水への溶出性が良好で、長期間保存してもその溶出性が維持されたボセンタン含有医薬組成物を提供することにある。
そこで本発明者は、ボセンタンと種々の成分とを混合して固体分散体を製造してその溶出性を検討してきたところ、ボセンタンと特定のポリマーから選ばれるマトリックス成分とを一定の比率で混合して固体分散体とすることにより、水及びpH6.8という腸管のpH水溶液のいずれにおいても良好な溶出性を示し、かつ長期保存後もその溶出性が維持されたボセンタン固体分散体が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、(A)ボセンタンと(B)セルロース系ポリマー、合成ホモポリマー及び合成コポリマーから選ばれるマトリックス成分とからなる固体分散体であって、(A)と(B)との質量比(A:B)が1:0.05〜1:10であり、37℃の水への溶解濃度が50〜500μg/mLであり、37℃のpH6.8のリン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウム水溶液への溶解濃度が0.6〜10mg/mLである固体分散体を提供するものである。
また、本発明は、上記のボセンタン固体分散体100質量部に対して、医薬添加成分を1〜10000質量部含有する医薬組成物を提供するものである。
また本発明は、上記のボセンタン固体分散体の製造法を提供するものである。
本発明のボセンタン固体分散体は、pHに依存せずボセンタンのバイオアベイラビリティーを向上させることができるため、作用時間の短縮、薬剤投与量と副作用を減少させることができ、また長期安定性が向上しているためより生産に適した製造方法や保存を簡便にすることができる。ボセンタンをどのpH領域でも結晶に比べて溶出改善する事はバイオアベイラビリティーの向上のみならず、固体差変動・食事の影響などを減少させるため、患者への服薬コンプライアンス向上並びに難治性疾患に対する患者のアドヒアランス向上を行うことができる。
加速試験前後の実施例15のボセンタン固体分散体及び比較例1のX−RDチャートである。 加速試験前後の比較例3の非晶質ボセンタン及び比較例1のX−DRチャートである。 加速試験前後の実施例15のボセンタン固体分散体及び比較例1のDSCチャートである。 加速試験前後の比較例3の非晶質ボセンタン及び比較例1のDSCチャートである。
本発明の固体分散体は、(A)ボセンタンと、(B)セルロース系ポリマー、合成ホモポリマー及び合成コポリマーから選ばれるマトリックス成分とからなる固体分散体である。
本発明の(A)固体分散体に用いるボセンタンとしては、ボセンタン無水物、ボセンタン一水和物、ボセンタン多水和物、ボセンタン溶媒和物、医薬品に許容されるボセンタン塩等が挙げられる。
原料として用いるボセンタンは、製造上で単分子またはナノ粒子サイズに分散させるため、いずれの形態のものを用いてもよい。結晶、非晶質のいずれでも混合物でもよく、結晶としては公知の結晶多形のうちいずれを用いてもよい。
(B)マトリックス成分は、セルロース系ポリマー、合成ホモポリマー及び合成コポリマーから選ばれる。
本発明の固体分散体は(A)ボセンタンと、(B)前記3種の高分子から選ばれるマトリックスとからなる固体分散体としたときに、pHに依存することなく、優れた溶出性を有する固体分散体となる。例えば、ボセンタンを、油脂、界面活性剤、天然高分子、スターチ、糖類及びアミノ酸を用いて固体分散体としても、溶出性の良好な固体分散体は得られない。
(A)ボセンタンと(B)マトリックス成分の質量比(A:B)としては、マトリックス成分の特性と付与する物性によって任意に選択することができるが、pHに依存しない良好な溶出性と安定性を得る点から、1:0.05〜1:10であり、より好ましくは1:0.1〜1:5であり、さらに好ましくは1:0.1〜1:3、最も好ましくは1:0.1〜1:2である。
本発明のボセンタン固体分散体は、X−RD(X’Pert−MPD型、フィリップス社製)によりボセンタンの結晶が実質的に確認されず(実施例15の図1参照)、また、DSC(Thermo plus DSC8230、(株)リガク製)により、約115℃でのボセンタンの吸熱ピークが確認されない(実施例15の図3参照)。これらよりボセンタン固体分散体は、単分子及び/又は結晶として物性が発現しない程度の粒子サイズでマトリックス成分中に分散していると想定される。
セルロース系ポリマーには、非イオン性セルロース系ポリマーとイオン性セルロース系ポリマーがあり、非イオン性セルロース系ポリマーとしては、例えば、ヒプロメロース(信越化学工業(株)製:TC−5E、TC−5R、メトローズ60SHなど)、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:NISSO HPC−L、HPC−SSLなど)、メチルセルロース(信越化学工業(株)製:メトローズSM−4、SM−15など)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートなどが挙げられる。
イオン性セルロース系ポリマーとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(信越化学工業(株)製:信越AQOAT−AS−LF,AS−MF,AS−HGなど)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業(株)製:HP−50,HP−55など)、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、エチルカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、エチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネートフタレート、セルロースプロピオネートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、メチルセルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートサクシネート、セルロースプロピオネートトリメリテート、セルロースブチレートトリメリテート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、セルロースアセテートピリジンカルボキシレート、サリチル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルサリチル酸セルロースアセテート、エチル安息香酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルエチル安息香酸セルロースアセテート、エチルフタル酸セルロースアセテート、エチルニコチン酸セルロースアセテート、エチルピコリン酸セルロースアセテートなどが挙げられる。
合成ホモポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン(BASF社製:Kollodon K30、K90、K17など)、架橋型ポリビニルピロリドン、ポリエチレングルコール(三洋化成工業(株)製:マクロゴール4000,6000,20000など)、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、カルボキシビニルポリマーなどが挙げられる。
合成コポリマーとしては、例えば、メタクリル酸コポリマー(Rohm社製:オイドラギットL100、L100−55、S100、L30D−55など)、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー(Rohm社製:オイドラギットE100、RS100など)、ポリビニルアルコールポリビニルアセタートコポリマー、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールコポリマー、ポリエチレンポリビニルアルコールコポリマー、ポリビニルピロリドンコポリマー(BASF社製:Kollodon VA64、SRなど)などが挙げられる。
これらのマトリックス成分のうち、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシエチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、エチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ポリビニルピロリドン、架橋型ポリビニルピロリドン、ポリエチレングルコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシビニルポリマー、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアルコールポリビニルアセタートコポリマー、ポリビニルピロリドンコポリマーが好ましい。
さらにはヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンコポリマー及びメタクリル酸コポリマーから選ばれる1種以上が好ましい。
本発明のボセンタン固体分散体は、水溶液中で結晶ボセンタンよりも水への溶出性能が高い。特にボセンタンの溶解濃度が低い酸性領域のpH1〜5では、結晶ボセンタンや非晶質ボセンタンよりも良好な溶解性を示す。
具体的には、37℃の水(蒸留水)への溶解濃度は50〜500μg/mLである。また、37℃のpH6.8の水性溶液、特に37℃のpH6.8のリン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウム水溶液への溶解濃度は0.6〜10mg/mLである。ここでpH6.8の水性溶液への溶解濃度が高いことは、ボセンタンの吸収部位である腸管での溶出性が良好であることを意味する。
ここでのボセンタンの溶解濃度は、後述の実施例で述べる方法によって求められる。すなわち、溶液に添加した後、攪拌しながら定期的に濃度を測定する。このときの10〜120分間、好ましくは60分以後、最も好ましくは120分後でのボセンタンの溶解濃度である。
従って、本発明のボセンタン固体分散体は、水にボセンタンが溶解したときの溶解濃度を長時間に渡って維持することができる。
難溶性薬物の固体分散体は、一時的に溶解濃度が増加しても過溶解状態にあるため、薬物結晶の再析出を起こして経時的に溶解濃度が低下するものがある。非晶質ボセンタンにおいても同様の傾向がある。これに対して本発明のボセンタン固体分散体では、溶出して120分以内には溶解濃度の低下を生じない。ボセンタンは胃から小腸までの長い時間に渡って吸収されるため、溶解濃度の保持時間は長い方が好ましい。
本発明のボセンタン固体分散体は結晶ボセンタンに対して、蒸留水においては1.5倍以上の溶解濃度であり、好ましくは2倍以上、更に好ましくは5倍以上の溶解濃度であり、pH1〜5においては、ボセンタン固体分散体は結晶ボセンタンに対して2倍以上の溶解濃度、好ましくは5倍以上、更に好ましくは10倍以上の溶解濃度であり、pH6.8では、ボセンタン固体分散体は結晶体に対して2倍以上の溶解濃度、好ましくは5倍以上、更に好ましくは10倍以上の溶解濃度である。
蒸留水の溶出試験において、120分後及び1日後の場合、本発明の固体分散体は非結晶ボンセンタンに対して、それぞれ1.5倍以上、好ましくは2倍以上の溶解濃度を有する。
また本発明の固体分散体は、長期保存後も優れた溶出性を維持している。具体的には温度40℃、相対湿度75%で7日間放置後における、37℃の水への溶解濃度が50〜500μg/mLであり、37℃のpH6.8のリン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウム水溶液への溶解濃度0.6〜10mg/mLである。ここで溶解濃度は固体分散体添加後120分後の溶解濃度である。
温度40℃、相対湿度75%に7日間放置後の溶解濃度は、本発明の固体分散体は非晶質ボセンタンに対して、蒸留水で1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上になる。pH6.8の水性溶液では1.5倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上である。
本発明のボセンタン固体分散体について以下に述べる。
本発明のボセンタン固体分散体は、マトリックス成分中にボセンタンが単分子及び/又は微細粒子で分散した構造からなる。微細粒子の大きさとしては、平均粒子径が400nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは50nm、最も好ましくは20nm以下である。ボセンタン固体分散体の構造は、後述の粉末X線構造解析によって結晶が実質的に確認されないこと、熱分析によってボセンタン結晶特有の吸熱ピークが確認されないことから同定することができる。
本発明のボセンタン固体分散体の製造方法を以下に述べる。
本発明のボセンタン固体分散体は、一般的に薬物の固体分散体を製造する方法によって製造することができる。例えば、溶媒法、溶融法、メカノケミカル法が挙げられる。
溶媒法は、ボセンタン、マトリックス成分及び必要に応じて医薬添加成分を有機溶媒に懸濁又は溶解させる。次いで溶媒の除去または析出させることによって製造する。
溶媒を除去する方法としては、エバポレーション法、噴霧法、ろ過法、凍結乾燥法などが挙げられる。噴霧法には流動層法、噴霧乾燥法、転動層法、攪拌法、超臨界法などがあり、溶媒を短時間で除去できることから、ボセンタンとマトリックス成分が溶媒中と同様な分子分散状態での固体分散体を得ることができるため、噴霧法が好ましい。噴霧法のうち、溶媒を瞬時に除去し、大量に連続生産可能であることから噴霧乾燥法が好ましい。
溶媒の除去にかかる時間は、短いほうが好ましく120分以内、好ましくは60分以内、より好ましくは10分以内、さらに好ましくは5分以内、最も好ましくは2分以内である。ここでの溶媒の除去にかかる時間とは本発明のボセンタン固体分散体の固形物が得られる時間であって、溶媒は一部残留していてもよい。残留している溶媒は後述の2次乾燥で除去することができる。
用いる溶媒は、医薬的に許容される溶媒であればよく、ボセンタンが溶解する溶媒、例えば、エタノール、メタノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸、蟻酸、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。これらを所望のボセンタン固体分散体の性質にあわせて、1種の溶媒又は2種以上の混合溶媒として用いる事ができる。
溶媒法のうち析出させる方法は共沈法が好ましい。具体的には、ボセンタンとマトリックス成分を溶媒に溶解又は懸濁させ、溶解したボセンタン及び/又はマトリックス成分が不溶な溶媒の添加や、温度の低下などで溶解濃度を下げることによって析出させる。
エバポレーション法による製造方法について詳細に記載する。ボセンタンとマトリックス成分を溶媒に溶解又は懸濁させる。この時の濃度は、固形分0.2〜40重量%であり、好ましくは1〜20重量%である。次いで減圧下又は常圧下で溶媒を除去する。このときの温度は、溶媒が留去できる温度であって蒸留時間から適度に選ぶことができ、−10〜120℃、好ましくは0〜100℃である。
噴霧乾燥法による製造方法について詳細に記載する。ボセンタンとマトリックス成分を有機溶媒に溶解又は懸濁させる。この時の濃度は、噴霧乾燥できる濃度であればよく、固形分は0.1〜80重量%であり、好ましくは0.5〜50重量%である。ついで噴霧乾燥により溶媒の除去と造粒を同時に行う。噴霧乾燥機としては、円盤式またはノズル式(例えば、加圧ノズル、2流体ノズル、4流体ノズル)の噴霧乾燥機を用いる。噴霧乾燥の際の温度としては、入口温度が約20〜150℃であり、出口温度が約0〜85℃が好ましい。
なお、エバポレーション法や噴霧乾燥法などの溶媒法によって、ボセンタン固体分散体を得、残留溶媒のさらなる除去が必要であった場合、2次乾燥を行うことができる。2次乾燥は、ボセンタン固体分散体を安定に維持できる方法であれば、通常医薬品の製造で用いられている乾燥方法で行うことができる。
溶融法は、ボセンタンとマトリックス成分、必要に応じてその他の医薬添加成分とを、いずれかの成分が溶融する温度以上に加熱し、融解したのち冷却することによってボセンタン固体分散体を製造する方法である。使用する機械や温度、常法に従って任意に選択することができる。機械としてはエクストルーダーが挙げられる。このとき融点を下げるため溶媒を添加してもよく、溶融後に溶媒を除去する。
メカノケミカル法は、ボセンタンとマトリックス成分、必要に応じてその他の医薬添加成分とを同時に粉砕・衝撃を与えることによってボセンタン固体分散体を製造する方法である。使用する機械や温度、粉砕条件は常法に従って任意に選択することができる。
このようにして得られたボセンタン固体分散体は、錠剤への混合性や溶出性、徐放性、苦味マスキングのために医薬品に使用可能な添加剤を用いて、乾式造粒や湿式造粒を行うことができる。ボセンタン固体分散体の粒子径や嵩密度の違いで医薬添加物との混合性が劣る場合は、ローラーコンパクターなどで厚密化を行い、粒子径や嵩密度を大きくすることができる。
ボセンタン固体分散体及び/又はボセンタン固体分散体含有粒子に医薬添加物を混合し、錠剤、カプセル、散剤、液剤、乳剤もしくは懸濁剤などの経口型の医薬組成物を得る。また、非経口剤として、注射剤、坐剤、点眼剤、吸入剤、皮膚外用剤などの医薬組成物も得ることができる。これらの製造方法は公知の方法を用いることができる。
医薬添加物としては、結合剤(例えば、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、部分α化澱粉、ポピドン、アラビアガム、プルラン、デキストリンなど)、賦形剤(例えば、スターチ、D−マンニトール、乳糖、トレハロース、結晶セルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、ハイドロタルサイト、無水ケイ酸など)、崩壊剤(例えば、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなど)、界面活性剤(例えばポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、脂肪酸グリセリンエステル、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、滑沢剤(ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、タルク、フマル酸ステアリルナトリウムなど)、酸味料(例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸など)、発泡剤(例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)、甘味剤(例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなど)、香料(例えば、レモン油、オレンジ油、メントールなど)、着色剤(例えば、食用赤色2号、食用青色2号、食用黄色5号、食用レーキ色素、三二酸化鉄、アスタキサンチンなど)、安定化剤(例えば、エデト酸ナトリウム、トコフェロール、トコトリエノール、シクロデキストリンなど)、矯味剤、着香剤などが挙げられる。
これらの医薬添加剤は、ボセンタン固体分散体100質量部に対して、1〜10000質量部用いることができる。
本発明のボセンタン固体分散体を含有する医薬組成物は、ボセンタンの溶解濃度向上により、投与量を減らしても、従来の結晶ボセンタンと同等のAUCが期待できる。ボセンタンは、エンドセリン受容体拮抗作用をもち、現在は肺動脈性肺高血圧症(WHO機能分類クラスII、IIIあるいはIV)の治療薬としてのみ用いられているが、肺動脈性肺高血圧症(WHO機能分類クラスI)、その他の肺高血圧症、急性及び/又は慢性腎不全、強皮症に伴う指先潰瘍、動脈硬化、慢性肺血栓塞栓症に伴う肺高血圧症、特発性肺繊維症、睡眠時無呼吸症候群、血管肥厚(再狭窄)、狭心症、心筋梗塞、慢性心不全、くも膜下出血後の脳血管攣縮などの治療薬、予防薬あるいは管理薬としても有望である。
また、本発明のボセンタン固体分散体は以下の薬物と組み合わせて肺動脈性肺高血圧症を含む肺高血圧症などを治療、予防または管理するためにさらなる治療剤、例えば、限定ではないが、Rho−キナーゼ阻害剤、プロスタサイクリンアゴニスト、5−HT2Aアンタゴニスト、抗凝血剤、抗血小板薬、利尿剤、強心配糖体、カルシウムチャネル遮断剤、脂質低下剤、血管拡張剤、内皮アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エンドペプチダーゼ阻害剤、選択的セロトニン再取込阻害剤、トロンボキサン阻害剤、血管再構築調節剤、エンドセリン受容体拮抗剤および肺動脈圧を下げると知られている他の治療剤などと、組み合わせることができる。
Rho−キナーゼ阻害剤としては、例えば、ファスジル、Y−27632及びH−1152Pなどである。
プロスタサイクリンアゴニストとしては、例えば、イロプロスト、トレプロスチニル、エポプロステノール、ベラプロスト及びイロメジンなどである。
5−HT2Aアンタゴニストとしては、例えば、サルポグレラートなどである。
抗凝血剤としては、例えば、ワーファリンなどである。
抗血小板薬としては、例えば、アスピリンなどである。
利尿剤としては、例えば、フロセミド、トリクロロメチアジド、クロルタリドン、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、シクロペンチアジド、ポリチアジド、メフルシド、キシマピド、メトラゾン、スピロノラクトン及びトリアムテレンなどである。
強心配糖体としては、例えば、ジゴキシンなどである。
カルシウムチャネル遮断剤としては、例えば、ジルチアゼム、ニフェジピン、アムロジピン、ニソルジピン、アゼルニジピン、ニカルジピン、ニモジピン、イスラジピン、ニトレンジピン、フェロジピン及びベラパミルなどである。
脂質低下剤としては、例えば、アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、イタバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、ZD−4522及びロバスタチンなどのHMG−CoA還元酵素阻害剤などである。
血管拡張剤としては、例えば、プロスタサイクリン及び一酸化窒素などである。
ホスホジエステラーゼ阻害剤としては、例えば、アムリノン、ミルリノン及びオルプリノンなどである。ホスホジエステラーゼIV阻害剤、例えば、シルデナフィル、タダラフィル及びバルデナフィルなどである。
選択的セロトニン再取込阻害剤としては、例えば、フルオキセチン、セルツルレイン、パロキセチン及びベンラファキシンなどである。
血管再構築調節剤としては、例えば、グリベッグなどである。
エンドセリン受容体拮抗剤としては、例えば、ボセンタンの他に、シタキセンタン、アンブリセンタン、クラゾセンタン及びマシテンタンなどである。
肺動脈圧を下げる他の治療剤としては、例えば、エナラプリル、ラミプリル、カプトプリル、シラザプリル、トランドラプリル、ホシノプリル、キナプリル、モエキシプリル、リシノプリル及びペリンドプリルなどのACE阻害剤、ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、エンブサルタン、バルサルタン、オルメサルタン及びテルミサルタンなどのAT−II阻害剤(ARB剤)、イロプロスト、ベタプロスト、L−アルギニン、アデノシン、オマパトリラト、酸素、ジゴキシンなどである。
以下に、本発明を実施例により説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
[実験1] 溶媒留去法によるボセンタン固体分散体1
結晶ボセンタン一水和物の粉末40mgとそれぞれ表1のポリマー40mgを50mLのナス型フラスコに投げ入れ、混合溶媒(塩化メチレン/エタノール=8/2)30mLを加えて溶解させた。アスピレーター減圧下、温度40℃で溶媒を留去しのち、1晩、減圧下(5Torr以下)、40℃で乾燥し、ボセンタン固体分散体を得た。
Figure 2012002547
(溶出試験1)
前述の実験で得た試料を含むナス型フラスコを37℃の温浴に浸し、37℃の崩壊試験液第2液(pH6.8)40mL溶液を加えてフラスコ口をパラフィン紙で閉じ、100回/分で震盪させながら、経時的に水溶液を採取し、その溶液を0.45μmのフィルターで篩過し、その溶液0.2mLをメタノールで10mLに希釈した。UV測定器(JASCO−MPD型、日本分光(株)製)で270nmの波長の吸光度を測定し溶解濃度を求めた。
結果を表2に示す。なお、比較例1はボセンタン一水和物結晶粉末である。
ここで崩壊試験液2液は、0.2Mリン酸二水素カリウム試液250mLに0.2N水酸化ナトリウム試薬118mL及び水を加えて1000mLとすることにより調製した。この液は無色澄明で、そのpHは約6.8である。
Figure 2012002547
実施例1〜12のボセンタン固体分散体の溶解濃度は、10〜120分後のいずれにおいても比較例1の結晶ボセンタンに対して、10倍以上の溶解濃度を示し、比較例2〜6に対して2倍以上の溶解濃度を示し、溶解性の向上が極めて優れていることが分かる。油脂類のステアリン酸、界面活性剤のポリオキシエチレン水素化カストールオイル60やポリオキシエチレンラウリルエーテル、天然高分子のキサンタンガムは、ボセンタンの固体分散体用のマトリックスとしては適していないことが分かる。
(溶出試験2)
前述の実験と同じ条件で得たボセンタン固体分散体をナス型フラスコごと口を開放し、温度40℃、湿度75%の条件下(加速試験)で2週間保持した。
先の溶出試験1と同様の方法により、第2液を用いて溶出試験を行って経時的に溶解濃度を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2012002547
実施例1、2、7、10のボセンタン固体分散体の溶解濃度は、10〜120分後のいずれにおいても、比較例1の結晶ボセンタンに対して10倍の溶解濃度であり、溶解濃度が極めて優れていることが分かる。すなわち医薬品で温度40℃、相対湿度75%の条件下で保持しても溶解濃度の変化は見られず、安定性が極めて高いことが分かる。
[実験2] 溶媒留去法によるボセンタン固体分散体2
結晶ボセンタン一水和物の粉末200mgとそれぞれ表4のポリマー200mgを50mLのナス型フラスコに投げ入れ、混合溶媒(塩化メチレン/エタノール=8/2)30mLを加えて溶解させた。アスピレーター減圧下、温度40℃で溶媒を留去しのち、1晩、減圧下(5Torr以下)、40℃で乾燥し、ボセンタン固体分散体を得た。
なお、比較例6は結晶ボセンタン一水和物単独で同様の操作を行ったものである。
Figure 2012002547
(溶出試験3)
前述の実験で得た試料を含むナス型フラスコを37℃の温浴に浸し、37℃の蒸留水40mLを加えてフラスコ口をパラフィン紙で閉じ、100回/分で震盪させながら、経時的に水溶液を採取し、先の溶出試験1と同様の方法で水溶液のボセンタン溶解濃度を測定した。結果を表5に示す。1日放置後の水溶液中のボセンタン濃度を表6に示す。
Figure 2012002547
Figure 2012002547
本発明の実施例13〜14のボセンタン固体分散体は、溶解試験の120分後において、結晶ボセンタンに対して、2倍以上の溶解濃度を示した。非晶質ボセンタンは一時的に溶解濃度の増加を示すが、経時的に溶解濃度が下がっていた。本発明のボセンタン固体分散体は、初期の溶解濃度も高く、経時的にも溶解濃度を高い状態で維持していた。
また、溶出試験の溶液を1日放置した後、本発明のボセンタン固体分散体は濃度低下がほとんど起きていない。比較例1、6においては、溶解試験の120分後に対して1/5に濃度が低下している。本発明のボセンタン固体分散体は水溶液中においても濃度を維持し、ボセンタン結晶の析出がほとんど起こらず、溶解性が極めて優れている。
[実験3] 噴霧乾燥法によるボセンタン固体分散体
(実施例15)
結晶ボセンタン一水和物の粉末1gとヒドロキシプロピルメチルセルロース1gを100mLの溶媒(塩化メチレン:エタノール=8:2)に溶解させた。ついで、入熱温度80℃、排熱温度50℃、噴霧速度6mL/分で噴霧乾燥を行い、得られた粉末を更に1晩、減圧下(5Torr以下)、40℃で乾燥してボセンタン固体分散体の粉末を得た。
(比較例7)
結晶ボセンタン一水和物の粉末1gを50mLの溶媒(塩化メチレン:エタノール=8:2)に溶解させた。ついで、入熱温度80℃、排熱温度50℃、噴霧速度6mL/分で噴霧乾燥を行い、得られた粉末を更に1晩、減圧下(5Torr以下)、40℃で乾燥して非晶質ボセンタンの粉末を得た。
(加速試験)
実施例15、比較例7、比較例1(結晶ボセンタン一水和物)を開口し、温度40℃、相対湿度75%の条件で2週間保持した。
(溶出試験4)
加速試験を行った試料30mLのスクリュー管にとり、37℃の試験液(蒸留水又は第2液(pH6.8))を加え、1分間震盪した後、37℃の温浴に浸し、150回/分で震盪させながら随時濃度を先の溶出試験1と同様の方法でボセンタンの溶解濃度を測定した。投入した試料の量はボセンタン相当で蒸留水の場合15mg、2液の場合30mgであった。蒸留水の結果を表7に、第2液の結果を表8に示す。
Figure 2012002547
Figure 2012002547
蒸留水及び第2液において、120分後、本発明の固体分散体は、結晶ボセンタンに対して10倍以上の溶解濃度を有し、非晶質ボセンタン対して3倍以上の溶解濃度を有している。本発明の固体分散体は経時的に溶解濃度の低下はみられず、水溶液中でボセンタンの過飽和状態が極めて安定であることがわかる。
(X線による分析)
X線測定装置(X’Pert−MPD型、フィリップス社製)を用いて結晶構造を測定した。結果を図1と図2に示す。
製造直後、本発明の固体分散体(実施例15)と非晶質ボセンタン(比較例7)はともに特定の結晶ピークが現れず、非結晶状態であることが分かる。温度40℃、相対湿度75%の加速試験後では、非晶質ボセンタン(比較例7)は結晶ピークが現れており、結晶状態に戻りつつある。対して本発明の固体分散体は非結晶状態を維持しており、本発明の固体分散体は非結晶状態の安定性が極めて高いことが分かる。
(熱分析)
熱分析測定装置(Thermo plus DSC8230、(株)リガク製)を用いて吸熱ピークを測定した。結果を図3と図4に示す。製造直後、本発明の固体分散体(実施例15)と非晶質ボセンタン(比較例7)はともに特定の吸熱ピークが現れず、非結晶状態である。温度40℃、相対湿度75%の加速試験後、非晶質ボセンタン(比較例7)は65℃付近と108℃付近に吸熱ピークが現れており、結晶構造ができている。対して本発明の固体分散体は吸熱ピークがなく、非結晶状態を維持している。
本発明のボセンタン固体分散体は、加温加湿下でも結晶化が起こらないため、溶解性が高いまま維持できているのに対し、非晶質ボセンタンは結晶化が起こるため、溶解性が低下する。

Claims (11)

  1. (A)ボセンタンと(B)セルロース系ポリマー、合成ホモポリマー及び合成コポリマーから選ばれるマトリックス成分とからなる固体分散体であって、(A)と(B)との質量比(A:B)が1:0.05〜1:10であり、37℃の水への溶解濃度が50〜500μg/mLであり、37℃のpH6.8のリン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウム水溶液への溶解濃度が0.6〜10mg/mLである固体分散体。
  2. 温度40℃、相対湿度75%で7日間放置後における、37℃の水への溶解濃度が50〜500μg/mLであり、37℃のpH6.8のリン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウム水溶液への溶解濃度が0.6〜10mg/mLである請求項1記載の固体分散体。
  3. 粉末X線構造解析で実質的にボセンタンの結晶が確認されず、熱分解により115℃の吸熱ピークが観察されない請求項1又は2記載の固体分散体。
  4. (B)マトリックス成分が、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンコポリマー及びメタクリル酸コポリマーから選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の固体分散体。
  5. (A)と(B)との質量比(A:B)が1:0.1〜1:3である請求項1〜4のいずれか1項記載の固体分散体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の固体分散体100質量部に対して、医薬添加成分を1〜10000質量部含有する医薬組成物。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項記載の固体分散体の製造方法であって、ボセンタンを溶媒に溶解、及びマトリックス成分を溶媒に溶解又は分散した後、溶媒を除去する固体分散体の製造方法。
  8. 溶媒除去が噴霧によって10分以内である請求項7に記載の固体分散体の製造方法。
  9. 請求項1〜5のいずれか1項記載の固体分散体の製造方法であって、ボセンタンとマトリックス成分を加熱により溶融した後、冷却する固体分散体の製造方法。
  10. 請求項1〜5のいずれか1項記載の固体分散体の製造方法であって、ボセンタンとマトリックス成分を混合し、粉砕・衝撃を与える固体分散体の製造方法。
  11. 請求項1〜5のいずれか1項記載の固体分散体の製造方法であって、ボセンタンを溶媒に溶解し、更にマトリックス成分を溶媒に溶解又は分散した後、貧溶媒を添加して析出する固体分散体の製造方法。
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