JPWO2011118153A1 - プラズマディスプレイパネルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

金属酸化物を含む下地層と、下地層上に分散配置された凝集粒子と、を含むプラズマディスプレイパネルの製造方法は、以下のプロセスを含む。誘電体層上に保護層を形成する。次に、保護層表面をスパッタする。さらにスパッタされた保護層の成分を再堆積させることにより、保護層表面における第1の金属酸化物と第2の金属酸化物との濃度比を変える。

Description

ここに開示された技術は、表示デバイスなどに用いられるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)は、前面板と背面板とで構成される。前面板は、ガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成された表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。一方、背面板は、ガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成されたデータ電極と、データ電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
前面板と背面板とは電極形成面側を対向させて気密封着される。隔壁によって仕切られた放電空間には、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)の放電ガスが封入されている。放電ガスは、表示電極に選択的に印加された映像信号電圧によって放電する。放電によって発生した紫外線は、各色蛍光体層を励起する。励起した蛍光体層は、赤色、緑色、青色に発光する。PDPは、このようにカラー画像表示を実現している(特許文献1参照)。
保護層には、主に4つの機能がある。1つめは、放電によるイオン衝撃から誘電体層を保護することである。2つめは、データ放電を発生させるための初期電子を放出することである。3つめは、放電を発生させるための電荷を保持することである。4つめは、維持放電の際に二次電子を放出することである。イオン衝撃から誘電体層が保護されることにより、放電電圧の上昇が抑制される。初期電子放出数が増加することにより、画像のちらつきの原因となるデータ放電ミスが低減される。電荷保持性能が向上することにより、印加電圧が低減される。二次電子放出数が増加することにより、維持放電電圧が低減される。初期電子放出数を増加させるために、たとえば保護層のMgOに珪素(Si)やアルミニウム(Al)を添加するなどの試みが行われている(例えば、特許文献1、2、3、4、5など参照)。
特開2002−260535号公報 特開平11−339665号公報 特開2006−59779号公報 特開平8−236028号公報 特開平10−334809号公報
PDPの製造方法であって、PDPは、背面板と、背面板と対向配置された前面板と、を備える。前面板は、ガラス基板と、ガラス基板上に形成された表示電極と、表示電極を覆う誘電体層と、誘電体層を覆う保護層と、を有する。表示電極は、帯状の走査電極と、走査電極に平行な帯状の維持電極と、を含む。保護層は、誘電体層上に形成された下地層を含む。下地層には、酸化マグネシウムの結晶粒子が複数個凝集した凝集粒子が全面に亘って分散配置される。下地層は、少なくとも第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とを含む。さらに、下地層は、X線回折分析において少なくとも一つのピークを有する。下地層のピークは、第1金属酸化物のX線回折分析における第1のピークと、第2金属酸化物のX線回折分析における第2のピークと、の間にある。第1のピークおよび第2のピークは、下地層のピークが示す面方位と同じ面方位を示す。第1の金属酸化物および第2の金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムからなる群の中から選ばれる2種である。
このPDPの製造方法は、以下のプロセスを含む。ガラス基板上に前記表示電極を形成する。次に、表示電極を覆う誘電体層を形成する。次に、誘電体層上に保護層を形成する。次に、不活性ガス雰囲気下で、走査電極と維持電極とに電圧を印加して走査電極と維持電極との間に放電を発生させることで、不活性ガスのイオンを発生させて保護層をスパッタする。
図1は実施の形態に係るPDPの構造を示す斜視図である。 図2は実施の形態に係る前面板の構成を示す断面図である。 図3は実施の形態に係る前面板の電極配置を示す図である。 図4は実施の形態に係るPDPの製造工程を示す図である。 図5は実施の形態に係る前面板を示す図である。 図6は実施の形態に係るPDPを背面板側から見た図である。 図7は実施の形態に係る下地膜のX線回折分析の結果を示す図である。 図8は実施の形態に係る他の構成の下地膜のX線回折分析の結果を示す図である。 図9は実施の形態に係る凝集粒子の拡大図である。 図10は実施の形態に係るPDPの放電遅れと保護層中のカルシウム(Ca)濃度との関係を示す図である。 図11は同PDPに係る電子放出性能とVscn点灯電圧の関係を示す図である。 図12は実施の形態に係る凝集粒子の平均粒径と電子放出性能の関係を示す図である。 図13は実施の形態に係る凝集粒子の平均粒径と隔壁破壊確率の関係を示す図である。 図14は実施の形態に係る保護層形成工程を示す図である。 図15は実施の形態に係る放電装置を示す図である。 図16は実施の形態に係るPDPに印加される駆動波形図である。
[1.PDPの基本構造]
PDPの基本構造は、一般的な交流面放電型PDPである。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置されている。前面板2と背面板10とは、外周部がガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、NeおよびXeなどの放電ガスが53kPa〜80kPaの圧力で封入されている。
前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ7が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面ガラス基板3上には表示電極6とブラックストライプ7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成される。さらに誘電体層8の表面にMgOなどからなる保護層9が形成されている。また、図2に示すように、本実施の形態における保護層9は、誘電体層8に積層した下地層である下地膜91と下地膜91上に付着させた凝集粒子92とを含む。また、図3に示すように、走査電極4と維持電極5との間の相対的に狭い領域にメインギャップ50が形成されている。メインギャップ50は、PDP1において維持放電が発生する領域である。走査電極4と維持電極5との間の相対的に広い領域にインターピクセルギャップ60が形成される。維持放電は、インターピクセルギャップ60までは広がらない。すなわち、放電領域は、メインギャップ50を挟んで、概ね走査電極4と維持電極5との間の領域である。
走査電極4および維持電極5は、それぞれインジウム錫酸化物(ITO)、二酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性金属酸化物からなる透明電極上にAgを含むバス電極が積層されている。
背面ガラス基板11上には、表示電極6と直交する方向に、銀(Ag)を主成分とする導電性材料からなる複数のデータ電極12が、互いに平行に配置されている。データ電極12は、下地誘電体層13に被覆されている。さらに、データ電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。下地誘電体層13上および隔壁14の側面には、データ電極12毎に、紫外線によって赤色に発光する蛍光体層15、緑色に発光する蛍光体層15および青色に発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。表示電極6とデータ電極12とが交差する位置に放電セルが形成されている。表示電極6方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層15を有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
なお、本実施の形態において、放電空間16に封入する放電ガスは、10体積%以上30%体積以下のXeを含む。
[2.PDPの製造方法]
次に、PDP1の製造方法について図4を用いて説明する。
まず、前面板2の製造方法について説明する。図4に示すように、電極形成工程S11では、フォトリソグラフィ法によって、前面ガラス基板3上に、走査電極4および維持電極5とブラックストライプ7とが形成される。走査電極4および維持電極5は、導電性を確保するためのAgを含むバス電極4b、5bを有する。また、走査電極4および維持電極5は、透明電極4a、5aを有する。バス電極4bは、透明電極4aに積層される。バス電極5bは、透明電極5aに積層される。
透明電極4a、5aの材料には、透明度と電気伝導度を確保するためITOなどが用いられる。まず、スパッタ法などによって、ITO薄膜が前面ガラス基板3に形成される。次にリソグラフィ法によって所定のパターンの透明電極4a、5aが形成される。
バス電極4b、5bの材料には、AgとAgを結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含む白色ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、白色ペーストが、前面ガラス基板3に塗布される。次に、乾燥炉によって、白色ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、白色ペーストが露光される。
次に、白色ペーストが現像され、バス電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、バス電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、バス電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、バス電極パターン中のガラスフリットが溶融する。溶融したガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。以上の工程によって、バス電極4b、5bが形成される。
このようにして、透明電極4aと透明電極5aとの間の相対的に狭い領域にメインギャップ50が形成される。透明電極4aと透明電極5aとの間の相対的に広い領域にインターピクセルギャップ60が形成される。
ブラックストライプ7には、黒色顔料を含む材料が用いられる。ブラックストライプ7は、スクリーン印刷法などを用いて表示電極6間に形成される。
また、図5に示すように、走査電極4および維持電極5を形成するのと同時に、走査電極側引出部21および維持電極側引出部23が形成される。走査電極側引出部21および維持電極側引出部23は、誘電体層8および保護層9で被覆されない領域に形成される。走査電極側引出部21には、走査電極4に回路基板からの信号を伝達する複数の走査電極端子22が形成されている。維持電極側引出部23には、維持電極5に回路基板からの信号を伝達する複数の維持電極端子24が形成されている。
次に、誘電体層形成工程S12では、誘電体層8が形成される。誘電体層8の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む誘電体ペーストが用いられる。まずダイコート法などによって、誘電体ペーストが所定の厚みで走査電極4、維持電極5およびブラックストライプ7を覆うように前面ガラス基板3上に塗布される。次に、乾燥炉によって、誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。溶融したガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。以上の工程S12によって、誘電体層8が形成される。ここで、誘電体ペーストをダイコートする方法以外にも、スクリーン印刷法、スピンコート法などを用いることができる。また、誘電体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、誘電体層8となる膜を形成することもできる。誘電体層8の詳細は、後述される。
次に、保護層形成工程S13では、誘電体層8上に保護層9が形成される。保護層には、下地膜91と下地膜91上に分散配置された凝集粒子92とが含まれる。下地膜91には、少なくとも2種の金属酸化物が含まれる。保護層9の詳細および保護層形成工程S13の詳細は、後述される。
次に、スパッタ工程S14では、保護層9表面がスパッタされる。保護層9表面がスパッタされることにより、保護層9表面の金属酸化物の濃度比が変化する。スパッタ工程S14の詳細は、後述される。
以上の工程S11〜S14により前面ガラス基板3上に走査電極4、維持電極5、ブラックストライプ7、誘電体層8、保護層9が形成され、前面板2が完成する。
次に、背面板作製工程S21について説明する。フォトリソグラフィ法によって、背面ガラス基板11上に、データ電極12が形成される。データ電極12の材料には、導電性を確保するためのAgとAgを結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含むデータ電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、データ電極ペーストが所定の厚みで背面ガラス基板11上に塗布される。次に、乾燥炉によって、データ電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、データ電極ペーストが露光される。次に、データ電極ペーストが現像され、データ電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、データ電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、データ電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、データ電極パターン中のガラスフリットが溶融する。溶融したガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。以上の工程によって、データ電極12が形成される。ここで、データ電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
次に、下地誘電体層13が形成される。下地誘電体層13の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む下地誘電体ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、下地誘電体ペーストが所定の厚みでデータ電極12が形成された背面ガラス基板11上にデータ電極12を覆うように塗布される。次に、乾燥炉によって、下地誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、下地誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、下地誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。溶融したガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。以上の工程によって、下地誘電体層13が形成される。ここで、下地誘電体ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、ダイコート法、スピンコート法などを用いることができる。また、下地誘電体ペーストを用いずに、CVD法などによって、下地誘電体層13となる膜を形成することもできる。
次に、フォトリソグラフィ法によって、隔壁14が形成される。隔壁14の材料には、フィラーと、フィラーを結着させるためのガラスフリットと、感光性樹脂と、溶剤などを含む隔壁ペーストが用いられる。まず、ダイコート法などによって、隔壁ペーストが所定の厚みで下地誘電体層13上に塗布される。次に、乾燥炉によって、隔壁ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、隔壁ペーストが露光される。次に、隔壁ペーストが現像され、隔壁パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、隔壁パターンが所定の温度で焼成される。つまり、隔壁パターン中の感光性樹脂が除去される。また、隔壁パターン中のガラスフリットが溶融する。溶融したガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。以上の工程によって、隔壁14が形成される。ここで、フォトリソグラフィ法以外にも、サンドブラスト法などを用いることができる。
次に、蛍光体層15が形成される。蛍光体層15の材料には、蛍光体とバインダと溶剤などとを含む蛍光体ペーストが用いられる。まず、ディスペンス法などによって、蛍光体ペーストが所定の厚みで隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に塗布される。次に、乾燥炉によって、蛍光体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、蛍光体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、蛍光体ペースト中の樹脂が除去される。以上の工程によって、蛍光体層15が形成される。ここで、ディスペンス法以外にも、スクリーン印刷法、インクジェット法などを用いることができる。
以上の背面板作製工程S21により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材を有する背面板10が完成する。
次に、フリット塗布工程S22では、ディスペンス法によって、背面板10の周囲に封着材(図示せず)が形成される。封着材(図示せず)の材料には、ガラスフリットとバインダと溶剤などを含む封着ペーストが用いられる。次に乾燥炉によって、封着ペースト中の溶剤が除去される。
そして、前面板2と、背面板10とが組み立てられる。アライメント工程S31では、表示電極6とデータ電極12とが直交するように、前面板2と背面板10とが対向配置される。図6に示すように、PDP1は、背面板10側から見て、走査電極側引出部21と、維持電極側引出部23が突出している。
次に、封着排気工程S32では、前面板2と背面板10の周囲がガラスフリットで封着され、放電空間16内が排気される。
最後に、放電ガス供給工程S33では、放電空間16にNe、Xeなどを含む放電ガスが封入される。
最後に、組み立てられたPDP1は一般に維持電圧が高く放電自体も不安定であるためエージング工程S34が行われる。エージング工程S34により、PDP1の製造工程においてPDP1の放電特性が均一になる。また、PDP1の放電特性が安定する。
以上の工程によりPDP1が完成する。
[3.誘電体層の詳細]
誘電体層8について詳細に説明する。誘電体層8は、第1誘電体層81と第2誘電体層82とで構成させている。第1誘電体層81の誘電体材料は、以下の成分を含む。三酸化二ビスマス(Bi)は20重量%〜40重量%である。酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)および酸化バリウム(BaO)からなる群の中から選ばれる少なくとも1種は0.5重量%〜12重量%である。三酸化モリブデン(MoO)、三酸化タングステン(WO)、二酸化セリウム(CeO)および二酸化マンガン(MnO)からなる群の中から選ばれる少なくとも1種は0.1重量%〜7重量%である。
なお、MoO、WO、CeOおよびMnOからなる群に代えて、酸化銅(CuO)、三酸化二クロム(Cr)、三酸化二コバルト(Co)、七酸化二バナジウム(V)および三酸化二アンチモン(Sb)からなる群の中から選ばれる少なくとも1種が0.1重量%〜7重量%含まれてもよい。
また、上述の成分以外の成分として、ZnOが0重量%〜40重量%、三酸化二硼素(B)が0重量%〜35重量%、二酸化硅素(SiO)が0重量%〜15重量%、三酸化二アルミニウム(Al)が0重量%〜10重量%など、鉛成分を含まない成分が含まれてもよい。
誘電体材料は、湿式ジェットミルやボールミルで平均粒径が0.5μm〜2.5μmとなるように粉砕されて誘電体材料粉末が作製される。次にこの誘電体材料粉末55重量%〜70重量%と、バインダ成分30重量%〜45重量%とが三本ロールでよく混練してダイコート用、または印刷用の第1誘電体層用ペーストが完成する。
バインダ成分はエチルセルロース、またはアクリル樹脂1重量%〜20重量%を含むターピネオール、またはブチルカルビトールアセテートである。また、ペースト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルが添加されてもよい。また、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどが添加されてもよい。分散剤が添加されると、印刷性が向上される。
第1誘電体層用ペーストは、表示電極6を覆い前面ガラス基板3にダイコート法あるいはスクリーン印刷法で印刷される。印刷された第1誘電体層用ペーストは、乾燥後、誘電体材料の軟化点より少し高い温度である575℃〜590℃で焼成され、第1誘電体層81が形成される。
次に、第2誘電体層82について説明する。第2誘電体層82の誘電体材料は、以下の成分を含む。Biは、11重量%〜20重量%である。CaO、SrO、BaOから選ばれる少なくとも1種は1.6重量%〜21重量%である。MoO、WO、CeOから選ばれる少なくとも1種は0.1重量%〜7重量%である。
なお、MoO、WO、CeOに代えて、CuO、Cr、Co、V、Sb、MnOから選ばれる少なくとも1種が0.1重量%〜7重量%含まれてもよい。
また、上記の成分以外の成分として、ZnOが0重量%〜40重量%、Bが0重量%〜35重量%、SiOが0重量%〜15重量%、Alが0重量%〜10重量%など、鉛成分を含まない成分が含まれていてもよい。
誘電体材料は、湿式ジェットミルやボールミルで平均粒径が0.5μm〜2.5μmとなるように粉砕されて誘電体材料粉末が作製される。次にこの誘電体材料粉末55重量%〜70重量%と、バインダ成分30重量%〜45重量%とが三本ロールでよく混練してダイコート用、または印刷用の第2誘電体層用ペーストが完成する。
バインダ成分はエチルセルロース、またはアクリル樹脂1重量%〜20重量%を含むターピネオール、またはブチルカルビトールアセテートである。また、ペースト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルが添加されてもよい。また、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどが添加されてもよい。分散剤が添加されると、印刷性が向上される。
第2誘電体層用ペーストは、第1誘電体層81上にスクリーン印刷法あるいはダイコート法で印刷される。印刷された第2誘電体層用ペーストは、乾燥後、誘電体材料の軟化点より少し高い温度である550℃〜590℃で焼成され、第2誘電体層82が形成される。
なお、誘電体層8の膜厚は、可視光透過率を確保するために、第1誘電体層81と第2誘電体層82とを合わせ41μm以下とすることが好ましい。
第1誘電体層81は、バス電極4b、5bのAgとの反応を抑制するためにBiの含有量を第2誘電体層82のBiの含有量よりも多くして20重量%〜40重量%としている。すると、第1誘電体層81の可視光透過率が第2誘電体層82の可視光透過率よりも低くなるので、第1誘電体層81の膜厚は第2誘電体層82の膜厚よりも薄くされている。
第2誘電体層82は、Biの含有量が11重量%より少ないと着色は生じにくくなるが、第2誘電体層82中に気泡が発生しやすくなる。そのためBiの含有量が11重量%より少ないことは好ましくない。一方、Biの含有率が40重量%を超えると着色が生じやすくなるため、可視光透過率が低下する。そのためBiの含有量が40重量%を超えることは好ましくない。
また、誘電体層8の膜厚が小さいほど輝度の向上と放電電圧を低減するという効果は顕著になる。そのため、絶縁耐圧が低下しない範囲内であればできるだけ膜厚を小さく設定することが望ましい。
以上の観点から、本実施の形態では、誘電体層8の膜厚を41μm以下に設定し、第1誘電体層81を5μm〜15μm、第2誘電体層82を20μm〜36μmとしている。
以上のようにして製造されたPDP1は、表示電極6にAg材料を用いても、前面ガラス基板3の着色現象(黄変)、および、誘電体層8中の気泡の発生などが抑制され、絶縁耐圧性能に優れた誘電体層8を実現することが確認されている。
次に、本実施の形態におけるPDP1において、これらの誘電体材料によって第1誘電体層81において黄変や気泡の発生が抑制される理由について考察する。すなわち、Biを含む誘電体ガラスにMoO、またはWOを添加することによって、AgMoO、AgMo、AgMo13、AgWO、Ag、Ag13といった化合物が580℃以下の低温で生成しやすいことが知られている。本実施の形態では、誘電体層8の焼成温度が550℃〜590℃であることから、焼成中に誘電体層8中に拡散した銀イオン(Ag)は誘電体層8中のMoO、WO、CeO、MnOと反応し、安定な化合物を生成して安定化する。すなわち、Agが還元されることなく安定化されるため、凝集してコロイドを生成することがない。したがって、Agが安定化することによって、Agのコロイド化に伴う酸素の発生も少なくなるため、誘電体層8中への気泡の発生も少なくなる。
一方、これらの効果を有効にするためには、Biを含む誘電体ガラス中にMoO、WO、CeO、MnOの含有量を0.1重量%以上にすることが好ましいが、0.1重量%以上7重量%以下がさらに好ましい。特に、0.1重量%未満では黄変を抑制する効果が少なく、7重量%を超えるとガラスに着色が起こり好ましくない。
すなわち、本実施の形態におけるPDP1の誘電体層8は、Ag材料よりなるバス電極4b、5bと接する第1誘電体層81では黄変現象と気泡発生を抑制し、第1誘電体層81上に設けた第2誘電体層82によって高い光透過率を実現している。その結果、誘電体層8全体として、気泡や黄変の発生が極めて少なく透過率の高いPDPを実現することが可能となる。
[4.保護層の詳細]
保護層9は、下地層である下地膜91と凝集粒子92とを含む。下地膜91は、少なくとも第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とを含む。第1の金属酸化物および第2の金属酸化物は、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群の中から選ばれる2種である。さらに、下地膜91は、X線回折分析において少なくとも一つのピークを有する。このピークは、第1金属酸化物のX線回折分析における第1のピークと、第2金属酸化物のX線回折分析における第2のピークと、の間にある。第1のピークと第2のピークは、下地膜91のピークが示す面方位と同じ面方位を示す。
[4−1.下地膜の詳細]
本実施の形態におけるPDP1の保護層9を構成する下地膜91面におけるX線回折結果を図7に示す。また、図7には、MgO単体、CaO単体、SrO単体、およびBaO単体のX線回折分析の結果も示す。
図7において、横軸はブラッグの回折角(2θ)であり、縦軸はX線回折波の強度である。回折角の単位は1周を360度とする度で示され、強度は任意単位(arbitrary unit)で示されている。特定方位面である結晶方位面は括弧付けで示されている。
図7に示すように、(111)の面方位において、CaO単体は回折角32.2度にピークを有する。MgO単体は回折角36.9度にピークを有する。SrO単体は回折角30.0度にピークを有する。BaO単体のピークは回折角27.9度にピークを有している。
本実施の形態におけるPDP1では、保護層9の下地膜91は、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群の中から選ばれる少なくとも2つ以上の金属酸化物を含んでいる。
下地膜91を構成する単体成分が2成分の場合についてのX線回折結果を図7に示す。A点は、単体成分としてMgOとCaOの単体を用いて形成した下地膜91のX線回折結果である。B点は、単体成分としてMgOとSrOの単体を用いて形成した下地膜91のX線回折結果である。C点は、単体成分としてMgOとBaOの単体を用いて形成した下地膜91のX線回折結果である。
図7に示すように、A点は、(111)の面方位において、回折角36.1度にピークを有する。第1の金属酸化物となるMgO単体は、回折角36.9度にピークを有する。第2の金属酸化物となるCaO単体は、回折角32.2度にピークを有する。すなわち、D点のピークは、MgO単体のピークとSrO単体のピークとの間に存在している。同様に、E点のピークは、回折角32.8度であり、第1の金属酸化物となるMgO単体のピークと第2の金属酸化物となるBaO単体のピークとの間に存在している。F点のピークも、回折角30.2度であり、第1の金属酸化物となるCaO単体のピークと第2の金属酸化物となるBaO単体のピークとの間に存在している。
また、下地膜91を構成する単体成分が3成分以上の場合のX線回折結果を図8に示す。D点は、単体成分としてMgO、CaOおよびSrOを用いて形成した下地膜91のX線回折結果である。E点は、単体成分としてMgO、CaOおよびBaOを用いて形成した下地膜91のX線回折結果である。F点は、単体成分としてCaO、SrOおよびBaOを用いて形成した下地膜91のX線回折結果である。
図8に示すように、D点は、(111)の面方位において、回折角33.4度にピークを有する。第1の金属酸化物となるMgO単体は、回折角36.9度にピークを有する。第2の金属酸化物となるSrO単体は、回折角30.0度にピークを有する。すなわち、A点のピークは、MgO単体のピークとCaO単体のピークとの間に存在している。同様に、E点のピークは、回折角32.8度であり、第1の金属酸化物となるMgO単体のピークと第2の金属酸化物となるBaO単体のピークとの間に存在している。F点のピークも、回折角30.2度であり、第1の金属酸化物となるMgO単体のピークと第2の金属酸化物となるBaO単体のピークとの間に存在している。
したがって、本実施の形態におけるPDP1の下地膜91は、少なくとも第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とを含む。さらに、下地膜91は、X線回折分析において少なくとも一つのピークを有する。このピークは、第1金属酸化物のX線回折分析における第1のピークと、第2金属酸化物のX線回折分析における第2のピークと、の間にある。第1のピークと第2のピークは、下地膜91のピークが示す面方位と同じ面方位を示す。第1の金属酸化物および第2の金属酸化物は、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群の中から選ばれる2種である。
なお、上記の説明では、結晶の面方位面として(111)を対象として説明したが、他の面方位を対象とした場合も金属酸化物のピークの位置が上記と同様とある。
CaO、SrOおよびBaOの真空準位からの深さは、MgOと比較して浅い領域に存在する。そのため、PDP1を駆動する場合において、CaO、SrO、BaOのエネルギー準位に存在する電子がXeイオンの基底状態に遷移する際に、オージェ効果により放出される電子数が、MgOのエネルギー準位から遷移する場合と比較して多くなると考えられる。
また、上述のように、本実施の形態における下地膜91のピークは、第1金属酸化物のピークと第2金属酸化物のピークとの間にある。すなわち、下地膜91のエネルギー準位は、単体の金属酸化物の間に存在し、オージェ効果により放出される電子数がMgOのエネルギー準位から遷移する場合と比較して多くなると考えられる。
その結果、下地膜91では、MgO単体と比較して、良好な二次電子放出特性を発揮することができ、結果として、維持電圧を低減することができる。そのため、特に輝度を高めるために放電ガスとしてのXe分圧を高めた場合に、放電電圧を低減し、低電圧でなおかつ高輝度のPDP1を実現することが可能となる。
表1には、本実施の形態におけるPDP1において、60kPaのXeおよびNeの混合ガス(Xe、15%)を封入し、下地膜91の構成を変えた場合の維持電圧の結果を示す。
Figure 2011118153
なお、表1の維持電圧は比較例の値を「100」とした場合の相対値で表している。サンプルAの下地膜91は、MgOとCaOによって構成されている。サンプルBの下地膜91は、MgOとSrOによって構成されている。サンプルCの下地膜91は、MgOとBaOによって構成されている。サンプルDの下地膜91は、MgO、CaOおよびSrOによって構成されている。サンプルEの下地膜91はMgO、CaOおよびBaOによって構成されている。また、比較例は、下地膜91がMgO単体によって構成されている。
放電ガスのXeの分圧を10%から15%に高めた場合には輝度が約30%上昇するが、下地膜91がMgO単体の場合の比較例では、維持電圧が約10%上昇する。
一方、本実施の形態におけるPDPでは、サンプルA、サンプルB、サンプルC、サンプルD、サンプルEいずれも、維持電圧を比較例に比較して約10%〜20%低減することができる。そのため、通常動作範囲内の維持電圧とすることができ、高輝度で低電圧駆動のPDPを実現することができる。
なお、CaO、SrO、BaOは、単体では反応性が高いため不純物と反応しやすく、そのために電子放出性能が低下してしまうという課題を有していた。しかしながら、本実施の形態においては、それらの金属酸化物の構成とすることにより、反応性を低減し、不純物の混入や酸素欠損の少ない結晶構造で形成されている。そのため、PDPの駆動時に電子が過剰放出されるのが抑制され、低電圧駆動と二次電子放出性能の両立効果に加えて、適度な電子保持特性の効果も発揮される。この電荷保持特性は、特に初期化期間に貯めた壁電荷を保持しておき、書き込み期間において書き込み不良を防止して確実な書き込み放電を行う上で有効である。
[4−2.凝集粒子の詳細]
次に、本実施の形態における下地膜91上に設けた凝集粒子92について詳細に説明する。
凝集粒子92は、図9に示すように、MgOの結晶粒子92aが複数個凝集したものである。形状は走査型電子顕微鏡(SEM)によって確認することができる。本実施の形態においては、複数個の凝集粒子92が、下地膜91の全面に亘って分散配置されている。
凝集粒子92は平均粒径が0.9μm〜2.5μmの範囲の粒子である。なお、本実施の形態において、平均粒径とは、体積累積平均径(D50)のことである。また、平均粒径の測定には、レーザ回折式粒度分布測定装置MT−3300(日機装株式会社製)が用いられた。
凝集粒子92は、固体として強い結合力によって結合しているのではない。凝集粒子92は、静電気やファンデルワールス力などによって複数の一次粒子が集合したものである。また、凝集粒子92は、超音波などの外力により、その一部または全部が一次粒子の状態に分解する程度の力で結合している。凝集粒子92の粒径としては、約1μm程度のもので、結晶粒子92aとしては、14面体や12面体などの7面以上の面を持つ多面体形状を有する。また、結晶粒子92aは、以下に示す気相合成法または前駆体焼成法のいずれかで製造することができる。
気相合成法では、不活性ガスが満たされた雰囲気下で純度が99.9%以上のマグネシウム(Mg)金属材料が加熱される。さらに、雰囲気に酸素を少量導入して加熱されることによって、Mgが直接酸化する。これによりMgOの結晶粒子92aが作製される。
一方、前駆体焼成法では、以下の方法によって結晶粒子92aが作製される。前駆体焼成法では、MgOの前駆体を700℃以上の高温で均一に焼成される。そして、焼成されたMgOが徐冷されてMgOの結晶粒子92aが得られる。前駆体としては、例えば、マグネシウムアルコキシド(Mg(OR))、マグネシウムアセチルアセトン(Mg(acac))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、炭酸マグネシウム(MgCO)、塩化マグネシウム(MgCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸マグネシウム(Mg(NO)、シュウ酸マグネシウム(MgC)のうちのいずれか1種以上の化合物を選ぶことができる。
なお、選択した化合物によっては、通常、水和物の形態をとることもあるがこのような水和物を用いてもよい。これらの化合物は、焼成後に得られるMgOの純度が99.95%以上、望ましくは99.98%以上になるように調整される。これらの化合物中に、各種アルカリ金属、B、Si、Fe、Alなどの不純物元素が一定量以上混じっていると、熱処理時に不要な粒子間癒着や焼結を生じ、高結晶性のMgOの結晶粒子92aを得にくいためである。このため、不純物元素を除去することなどにより予め前駆体を調整することが必要となる。前駆体焼成法の焼成温度や焼成雰囲気を調整することにより、粒径の制御ができる。焼成温度は700℃程度から1500℃程度の範囲で選択できる。焼成温度が1000℃以上では、一次粒径を0.3〜2μm程度に制御可能である。結晶粒子92aは前駆体焼成法による生成過程において、複数個の一次粒子同士が凝集した凝集粒子92の状態で得られる。
MgOの凝集粒子92は、本発明者の実験により、主として書き込み放電における放電遅れを抑制する効果と、放電遅れの温度依存性を改善する効果が確認されている。そこで本実施の形態では、凝集粒子92が下地膜91に比べて高度な初期電子放出特性に優れる性質を利用して、放電パルス立ち上がり時に必要な初期電子供給部として配設している。
放電遅れは、放電開始時において、トリガーとなる初期電子が下地膜91表面から放電空間16中に放出される量が不足することが主原因と考えられる。そこで、放電空間16に対する初期電子の安定供給に寄与するため、MgOの凝集粒子92を下地膜91の表面に分散配置する。これによって、放電パルスの立ち上がり時に放電空間16中に電子が豊富に存在し、放電遅れの解消が図られる。したがって、このような初期電子放出特性により、PDP1が高精細の場合などにおいても放電応答性の良い高速駆動ができるようになっている。なお下地膜91の表面に金属酸化物の凝集粒子92を配設する構成では、主として書き込み放電における放電遅れを抑制する効果に加え、放電遅れの温度依存性を改善する効果も得られる。
以上のように、本実施の形態におけるPDP1では、低電圧駆動と電荷保持の両立効果を奏する下地膜91と、放電遅れの防止効果を奏するMgOの凝集粒子92とにより構成することによって、PDP1全体として、高精細なPDPでも高速駆動を低電圧で駆動でき、かつ、点灯不良を抑制した高品位な画像表示性能を実現できる。
[4−3.実験1]
図10は、本実施の形態におけるPDP1のうち、MgOとCaOとで構成した下地膜91を用いた場合の放電遅れと保護層9中のカルシウム(Ca)濃度との関係を示す図である。下地膜91としてMgOとCaOとで構成し、下地膜91は、X線回折分析において、MgOのピークが発生する回折角とCaOのピークが発生する回折角との間にピークが存在するようにしている。
なお、図10には、保護層9として下地膜91のみの場合と、下地膜91上に凝集粒子92を配置した場合とについて示し、放電遅れは、下地膜91中にCaが含有されていない場合を基準として示している。
図10より明らかなように、下地膜91のみの場合と、下地膜91上に凝集粒子92を配置した場合とにおいて、下地膜91のみの場合はCa濃度の増加とともに放電遅れが大きくなるのに対し、下地膜91上に凝集粒子92を配置することによって放電遅れを大幅に小さくすることができ、Ca濃度が増加しても放電遅れはほとんど増大しないことがわかる。
[4−4.実験2]
次に、本実施の形態における保護層9を有するPDP1の効果を確認するために行った実験結果について説明する。
まず、構成の異なる保護層9を有するPDP1を試作した。試作品1は、MgOによる保護層9のみを形成したPDP1である。試作品2は、Al,Siなどの不純物をドープしたMgOによる保護層9を形成したPDP1である。試作品3は、MgOによる保護層9上にMgOからなる結晶粒子92aの一次粒子のみを散布し、付着させたPDP1である。
一方、試作品4は本実施の形態におけるPDP1である。試作品4は、MgOによる下地膜91上に、同等の粒径を有するMgOの結晶粒子92a同士を凝集させた凝集粒子92を全面に亘って分布するように付着させたPDP1である。保護層9として、前述のサンプルAを用いている。すなわち、保護層9は、MgOとCaOとで構成した下地膜91と、下地膜91上に結晶粒子92aを凝集させた凝集粒子92を全面に亘ってほぼ均一に分布するように付着させている。なお、下地膜91は、下地膜91面のX線回折分析において、下地膜91を構成する第1の金属酸化物のピークと第2の金属酸化物のピークの間にピークを有する。すなわち、第1の金属酸化物はMgOであり、第2の金属酸化物はCaOである。そして、MgOのピークの回折角は36.9度であり、CaOのピークの回折角は32.2度であり、下地膜91のピークの回折角は36.1度に存在するようにしている。
これらの4種類の保護層の構成を有するPDP1について、電子放出性能と電荷保持性能が測定された。
なお、電子放出性能は、大きいほど電子放出量が多いことを示す数値である。電子放出性能は、放電の表面状態及びガス種とその状態によって定まる初期電子放出量として表現される。初期電子放出量は、表面にイオンあるいは電子ビームを照射して表面から放出される電子電流量を測定する方法で測定できる。しかし、非破壊で実施することが困難である。そこで、特開2007−48733号公報に記載されている方法が用いられた。つまり、放電時の遅れ時間のうち、統計遅れ時間と呼ばれる放電の発生しやすさの目安となる数値が測定された。統計遅れ時間の逆数を積分することにより、初期電子の放出量と線形対応する数値になる。放電時の遅れ時間とは、書込み放電パルスの立ち上がりから書込み放電が遅れて発生するまでの時間である。放電遅れは、書込み放電が発生する際のトリガーとなる初期電子が保護層表面から放電空間中に放出されにくいことが主要な要因として考えられている。
また、電荷保持性能は、その指標として、PDP1として作製した場合に電荷放出現象を抑えるために必要とする走査電極に印加する電圧(以下Vscn点灯電圧と称する)の電圧値が用いられた。すなわち、Vscn点灯電圧の低い方が、電荷保持能力が高いことを示す。Vscn点灯電圧が低いと、PDPが低電圧で駆動できる。よって、電源や各電気部品として、耐圧および容量の小さい部品を使用することが可能となる。現状の製品において、走査電圧を順次パネルに印加するためのMOSFETなどの半導体スイッチング素子には、耐圧150V程度の素子が使用されている。Vscn点灯電圧としては、温度による変動を考慮し、120V以下に抑えることが望ましい。
図11から明らかなように、試作品4は、電荷保持性能の評価において、Vscn点灯電圧を120V以下にすることができ、なおかつ電子放出性能がMgOのみの保護層の場合の試作品1に比べて格段に良好な特性を得ることができた。
一般的にはPDPの保護層の電子放出能力と電荷保持能力は相反する。例えば、保護層の成膜条件の変更、あるいは、保護層中にAlやSi、Baなどの不純物をドーピングして成膜することにより、電子放出性能を向上することは可能である。しかし、副作用としてVscn点灯電圧も上昇してしまう。
本実施の形態の保護層9を有するPDPにおいては、電子放出能力としては、8以上の特性で、電荷保持能力としてはVscn点灯電圧が120V以下のものを得ることができる。すなわち、高精細化により走査線数が増加し、かつセルサイズが小さくなる傾向にあるPDPに対応できるような電子放出能力と電荷保持能力の両方を備えた保護層9を得ることができる。
[4−5.実験3]
次に、本実施の形態によるPDP1の保護層9に用いた凝集粒子92の粒径について詳細に説明する。なお、以下の説明において、粒径とは平均粒径を意味し、平均粒径とは、体積累積平均径(D50)のことを意味している。
図12は、保護層9において、MgOの凝集粒子92の平均粒径を変化させて電子放出性能を調べた実験結果を示すものである。図12において、凝集粒子92の平均粒径は、凝集粒子92をSEM観察することにより測長された。
図12に示すように、平均粒径が0.3μm程度に小さくなると、電子放出性能が低くなり、ほぼ0.9μm以上であれば、高い電子放出性能が得られる。
放電セル内での電子放出数を増加させるためには、保護層9上の単位面積当たりの結晶粒子数は多い方が望ましい。本発明者らの実験によれば、保護層9と密接に接触する隔壁14の頂部に相当する部分に結晶粒子92aが存在すると、隔壁14の頂部を破損させる場合がある。この場合、破損した隔壁14の材料が蛍光体の上に乗るなどによって、該当するセルが正常に点灯または消灯しなくなる現象が発生することがわかった。隔壁破損の現象は、結晶粒子92aが隔壁頂部に対応する部分に存在しなければ発生しにくいことから、付着させる結晶粒子数が多くなれば、隔壁14の破損発生確率が高くなる。図13は、凝集粒子92の平均粒径を変化させて隔壁破壊確率を調べた実験結果を示すものである。図13に示すように、凝集粒子92の平均粒径が2.5μm程度に大きくなると、隔壁破損の確率が急激に高くなり、2.5μmより小さくなると、隔壁破損の確率は比較的小さく抑えることができる。
以上のように本実施の形態の保護層9を有するPDP1においては、電子放出能力としては、8以上の特性で、電荷保持能力としてはVscn点灯電圧が120V以下のものを得ることができる。
なお、本実施の形態では、結晶粒子としてMgO粒子を用いて説明したが、この他の単結晶粒子でも、MgO同様に高い電子放出性能を持つSr、Ca、Ba、Alなどの金属酸化物による結晶粒子を用いても同様の効果を得ることができるため、粒子種としてはMgOに限定されるものではない。
[5.保護層形成工程S13の詳細]
次に、本実施の形態のPDP1において、保護層形成工程S13について、図14を用いて説明する。
図14に示すように、保護層形成工程S13は、誘電体層8を形成する誘電体層形成工程S12を行った後に、下地膜蒸着工程S131、ペースト塗布工程S132、乾燥工程S133および焼成工程S134がある。
[5−1.下地膜蒸着工程S131]
下地膜蒸着工程S131では、真空蒸着法によって、下地膜91が誘電体層8上に形成される。真空蒸着法の原材料は、MgO単体、CaO単体、SrO単体およびBaO単体の材料のペレットまたはそれらの材料を混合したペレットである。真空蒸着法の他にも、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いることができる。
そして、その後のペースト塗布工程S132および乾燥工程S133において、未焼成の下地膜91の全面に亘って、下地膜91上に有機溶剤の被膜17が形成される。なお、ペースト塗布工程S132の前に下地膜91を焼成してもよい。
[5−2.ペースト塗布工程S132]
ペースト塗布工程S132では、まず、凝集粒子92を分散させた有機溶剤である凝集粒子ペーストが作製される。その後、凝集粒子ペーストが下地膜91上に塗布されることにより、平均膜厚8μm以上20μm以下の凝集粒子ペースト膜が形成される。なお、凝集粒子ペーストを下地膜91上に塗布する方法として、スクリーン印刷法、スプレー法、スピンコート法、ダイコート法、スリットコート法なども用いることができる。
ここで、凝集粒子ペーストの作製に使用する有機溶剤としては、下地膜91や凝集粒子92との親和性が高いものが適している。例えばメチルメトキシブタノール、テルピネオール、プロピレングリコール、ベンジルアルコールなどの有機溶剤単体もしくはそれらの混合溶剤が用いられる。また、有機溶剤には、樹脂が含まれてもよい。これらの有機溶剤を含んだペーストの粘度は例えば20mPa・sである。
そして、凝集粒子ペーストが塗布された前面ガラス基板3は、直ちに乾燥工程S133に移される。
[5−3.乾燥工程S133]
乾燥工程S133では、凝集粒子ペースト膜が乾燥される。そして、有機溶剤が蒸発することにより、下地膜91上に凝集粒子92が分散配置される。このとき、有機溶剤はすべて蒸発せず、下地膜91上に残存する。乾燥方法として、減圧乾燥が好ましい。具体的には、真空チャンバー内の圧力が2分程度で10Pa程度まで減圧されることにより、凝集粒子ペースト膜が急速に乾燥される。この方法により、加熱乾燥では顕著である膜内の対流が発生しない。したがって、凝集粒子92がより均一に下地膜91上に付着される。ただし、乾燥方法として、有機溶剤の特性によっては、加熱乾燥が用いられてもよい。
[5−4.焼成工程S134]
次に、焼成工程S134では、下地膜91上に残存した有機溶剤や樹脂が焼成されることより、有機溶剤が蒸発する。そして、凝集粒子92が下地膜91上に分散配置される。
まず、乾燥工程S133を終えた前面ガラス基板3が、焼成炉へ搬送される。そして、焼成炉が、内部を排気されたまま昇温される。前面ガラス基板3が、例えば370℃程度になるまで昇温される。そして、前面ガラス基板3が、その温度で10分〜20分程度保持される。これにより、有機溶剤が蒸発する。有機溶剤が蒸発することにより、下地膜91上には凝集粒子92が分散配置される。ここで、有機溶剤に樹脂が含まれている場合には、樹脂も燃焼される。
なお、焼成工程S134において、下地膜蒸着工程S131で形成された未焼成の下地膜91も、焼成される。
この方法によれば、下地膜91に凝集粒子92を全面に亘って分散配置することが可能である。
[6.スパッタ工程S14の詳細]
スパッタ工程S14は、一例として、図15に示す放電装置100を用いて行われる。放電装置100は、放電チャンバー102、複数の端子部104、ケーブル106、テーブル108、直流電源110を備えている。放電チャンバー102は、図示しないゲート部を備えている。ゲート部を介して、前面ガラス基板3が出し入れされる。端子部104は、棒状の導電部を備える。複数の端子部104は、放電チャンバー102の内部で互いが対向するように少なくとも2箇所に配置されている。端子部104と、直流電源110とは、ケーブル106を介して電気的に接続されている。テーブル108は、放電チャンバー102内に配置されている。テーブル108は、図示しない固定機構を備えている。直流電源110は、LC共振回路を含み、パルス波形を発生させることができる。さらに直流電源110は、複数の端子部104に対して、異なるパルス波形を供給できる。
まず、下地膜91上に、凝集粒子92が付着した前面ガラス基板3がテーブル108上に設置される。前面ガラス基板3は、下地膜91が上になるように設置される。次に、図5および図6で示した維持電極端子24と端子部104の導電部が接続される。また、走査電極端子22と端子部104の導電部が接続される。
次に、放電チャンバー102内に不活性ガスが導入される。具体的には、まず、放電チャンバー102が、図示しない真空ポンプによって、大気圧から、10−2Pa程度まで排気される。その後、不活性ガスとして、15体積%のXeと85体積%のNeとの混合ガスが放電チャンバー102内に導入される。不活性ガスによって、放電チャンバー102の内部の雰囲気は60kPaまで昇圧する。
次に、直流電源110がパルス波形を発生させる。ケーブル106と端子部104を介して走査電極端子22に印加されたパルス波形は、走査電極4に伝達される。ケーブル106と端子部104を介して維持電極端子24に印加されたパルス波形は、維持電極5に伝達される。維持電極5に印加されたパルス波形は、走査電極4に印加されたパルス波形とは位相が半周期ずれている。しかし、走査電極4に印加されたパルス波形と維持電極5に印加されたパルス波形の周期およびピーク高さは同じである。本実施の形態においては、直流電源110は、200Vの電圧を発生させている。また、LC共振回路によってリンギングされたパルス波形は、ピーク高さが260Vであり、周波数が45kHzであった。
パルス波形が印加された維持電極5と、パルス波形が印加された走査電極4との間で面放電が発生する。放電により発生したXeイオンが、下地膜91および凝集粒子92と衝突する。保護層9の表面は、衝突するXeイオンによってスパッタされる。スパッタされることにより、保護層9の表面の金属酸化物の濃度比が変化する。保護層9に含まれる複数の金属酸化物は、それぞれスパッタレートが異なるからである。また、スパッタされた保護層9の成分は保護層9上に再堆積するからである。下地膜91および凝集粒子92の表面から飛び出した金属酸化物の多くは下地膜91および凝集粒子92に再堆積する。放電チャンバー102内部は大気圧に近い圧力(60kPa)まで昇圧されているために、スパッタされた金属酸化物は、長距離を移動することなく放電ガスによってはね返されると考えられる。
発明者らは、保護層9表面における金属酸化物の濃度比をX線光電子分光分析(XPS)により測定した。測定装置は、走査型光電子分光分析装置装置(アルバック・ファイ社製)が用いられた。XPSによる測定では、保護層9の最表面から10nmまでの領域が測定された。保護層9表面における放電領域の金属酸化物の濃度比と非放電領域の金属酸化物の濃度比とは、処理時間の経過に従い変化していく。特に、下地膜91上におけるスパッタされた領域の金属酸化物の濃度比とスパッタされない領域の金属酸化物の濃度比とは、処理時間の経過に従い大きく変化していく。これらは、保護層9表面に金属酸化物の濃度比が変化した新たな混合膜が形成されていくからである。そして、保護層9における金属酸化物の濃度比は、特定の処理時間を経過したあたりから平衡に達し、特定の濃度比に収束する。混合膜が形成された後は、混合膜自体がスパッタされる。そして、スパッタされた混合膜の成分が再堆積する。よって、特定の処理時間の経過後は、金属酸化物の濃度比が大きく変動しないと考えられる。
このように、保護層9表面における金属酸化物の濃度比は、特定の処理時間で平衡に達し、保護層9の表面組成が安定する。
スパッタ工程S14によって、保護層9の表面組成が安定するので、PDP1の維持電圧の放電時間にともなう変動が抑制される。また、保護層9が予めエージング後の状態に近づく。そのため、PDP1の製造方法におけるエージング工程S34の時間が短縮される。
なお、ピーク高さ、周波数などのパルス波形の形状は、不活性ガスの圧力、組成、放電ギャップの距離などによって、適宜調整され得る。パルス波形は、リンギングパルスに限られず、矩形パルスでもよい。パルス波形の周波数は、5kHz以上180kHz以下の範囲で設定される。処理時間は、10秒以上15分以下の範囲の時間が好ましい。保護層9表面の濃度比を変えるには、少なくとも10秒以上の処理時間が必要であるからである。また、保護層9表面の濃度比は、15分以内の処理時間で平衡に達するからである。不活性ガスとして、希ガスおよび窒素からなる群の中から選ばれる少なくとも一種のガスが用いられる。放電チャンバー102の内部の雰囲気は、40kPa以上90kPa以下の範囲の圧力が好ましい。スパッタされた保護層9の成分が再堆積するからである。
これより、保護層9の表面組成が安定するので、PDP1の維持電圧の放電時間にともなう変動が抑制される。
ところで、従来のPDPの製造方法では、エージング工程において、走査電極4と維持電極5との間に逆位相の矩形波が印加された。例えば、電位差は200(V)程度の矩形波が、印加された。それにより、放電空間16における走査電極4と維持電極5との間に放電が発生する。矩形波は、3時間程度印加された。
一方、本実施の形態におけるPDP1の製造方法では、スパッタ工程S14において、保護層9がエージング工程S34後の状態に近づく。そのため、従来のエージング工程と同様の電位差の矩形波が印加された場合、エージング工程S34の1時間が1/3〜1/10程度に短縮される。
さらに、スパッタ工程S14では、保護層9は清浄化される。清浄化されることによりCO系の不純物が保護層9から除去される。よって、下地膜91の変質が抑制され、維持電圧が低下する。
[6−1.実施例]
PDP1が作製され、PDP1の性能が評価された。作製されたPDP1は、42インチクラスのハイビジョンテレビに適合するものである。すなわち、PDP1は、前面板2と、前面板2と対向配置された背面板10と、を備える。また、前面板2と背面板10の周囲は、封着材で封着されている。前面板2は、表示電極6と誘電体層8と保護層9とを有する。背面板10は、データ電極12と、下地誘電体層13と、隔壁14と、蛍光体層15とを有する。PDP1には、Xeの含有量が15体積%のネオンNe−Xe系の混合ガスが、60kPaの内圧で封入された。また、走査電極4と維持電極5との距離、すなわちメインギャップ50は、80μmであった。隔壁14の高さは120μm、隔壁14と隔壁14との間隔(セルピッチ)は150μmであった。
実施例および比較例における下地膜91は、CaOとMgOとで構成されている。下地膜蒸着工程S131において、真空蒸着法の原材料として、97.1mol%のMgOと、2.9mol%のCaOとを混合したペレットが用いられた。下地膜91の膜厚は、700nmであった。下地膜91上には、MgOの結晶粒子92aが複数個凝集した凝集粒子92が全面に亘って分散配置された。凝集粒子92の平均粒径は、1.1μmであった。実施例および比較例の凝集粒子92の被覆率は15.0%であった。
比較例では、スパッタ工程S14が行われない。したがって実施例と比較例におけるPDP1の違いは、スパッタ工程S14の有無のみである。
発明者らは、表示電極6上の保護層9表面におけるCaOの濃度をXPSにより測定した。つまり、保護層9表面におけるスパッタされた領域が、最表面から10nmの範囲で測定された。スパッタされた領域のCaOの濃度は、処理時間が15分程度経過したあたりから平衡に達し、16.0mol%に収束した。15分程度の処理時間で、スパッタされた領域の保護層9上にCaOとMgOの新たな混合膜が形成されたからである。スパッタされた領域は、概ね表示電極6上であった。
なお、スパッタされない領域の保護層9表面におけるMgOの濃度は、上昇していた。スパッタされない領域においても、新たな混合膜が形成されたからである。スパッタされた領域に形成された混合膜とスパッタされない領域に形成された混合膜とは、金属酸化物の濃度比が異なる。つまり、表示電極6上の保護層9表面における金属酸化物の濃度比と、表示電極6が形成されていない領域上の保護層9表面における金属酸化物の濃度比と、が変化した。さらには、メインギャップ50における保護層9表面の金属酸化物の濃度比と、インターピクセルギャップ60における保護層9表面の金属酸化物の濃度比と、も異なる。
また、下地膜蒸着工程S131において、MgOとCaOの濃度比を変えたペレットを用いて下地膜91を形成した他の実施例が、同様にXPSにより測定された。99.3mol%のMgOと、0.7mol%のCaOとを混合したペレットが用いられた場合、スパッタされた領域のCaOの濃度は、4.3mol%に収束した。94.1mol%のMgOと、5.9mol%のCaOとを混合したペレットを用いられた場合、スパッタされた領域のCaOの濃度は、28.8mol%に収束した。88.0mol%のMgOと、12.0mol%のCaOとを混合したペレットが用いられた場合、スパッタされた領域のCaOの濃度は、49.3mol%に収束した。
[6−2.実験4]
維持電圧の変化を測定することによりPDP1の性能が評価された。図16に示すように、PDP1を駆動させるためのパルス電圧が、走査電極4、維持電極5、データ電極12に印加された。性能評価実験でPDP1に印加される電圧条件は、以下のとおりである。初期化電圧(固定)が330Vで、走査電圧(固定)が−140V、パルス幅0.6μsで、書込み電圧(固定)が70Vで、維持電圧(固定)が200V、維持周期0.5μsである。
さらに、性能評価実験においては、PDP1の全ての放電セルに維持放電が発生した状態である。比較例においては、維持電圧の初期値が194Vであった。維持放電時間の累積にともない、維持電圧は低下していった。維持放電時間が累積で400時間を経過したときには、維持電圧は、186Vまで低下した。さらに、維持放電時間が累積で800時間を経過したときには、維持電圧は174Vまで低下した。一方、実施例においては、維持電圧の初期値が171Vであった。その後、維持放電時間が累積しても、維持電圧は、170Vであった。したがって、実施例においては、維持放電時の維持電圧は、比較例よりも安定している。
[7.まとめ]
PDP1の製造方法であって、PDP1は、背面板10と、背面板10と対向配置された前面板2と、を備える。前面板2は、誘電体層8と、誘電体層8を覆う保護層9と、を有する。保護層9は、誘電体層8上に形成された下地膜91を含む。下地膜91には、MgOの結晶粒子が複数個凝集した凝集粒子92が全面に亘って分散配置される。下地膜91は、少なくとも第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とを含む。さらに、下地膜91は、X線回折分析において少なくとも一つのピークを有する。下地膜91のピークは、第1金属酸化物のX線回折分析における第1のピークと、第2金属酸化物のX線回折分析における第2のピークと、の間にある。第1のピークおよび第2のピークは、下地層のピークが示す面方位と同じ面方位を示す。第1の金属酸化物および第2の金属酸化物は、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群の中から選ばれる2種である。
PDP1の製造方法は、以下のプロセスを含む。誘電体層8上に保護層9を形成する。次に、保護層9表面をスパッタし、さらにスパッタされた保護層9の成分を再堆積させることにより、保護層9表面における第1の金属酸化物と第2の金属酸化物との濃度比を変える。
このPDP1の製造方法によれば、保護層9の表面組成を安定させることができるので、PDP1の維持電圧の放電時間にともなう変動が抑制される。
また、このPDP1の製造方法によれば、保護層9を予めエージング後の状態に近づけることができる。そのため、PDP1の製造方法におけるエージング工程S34の時間を短縮することができる。
以上のように本実施の形態に開示された技術は、高精細で高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力のPDPを実現する上で有用である。
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a,5a 透明電極
4b,5b バス電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 データ電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
21 走査電極側引出部
22 走査電極端子
23 維持電極側引出部
24 維持電極端子
81 第1誘電体層
82 第2誘電体層
91 下地膜
92 凝集粒子
92a 結晶粒子
100 放電装置
102 放電チャンバー
104 端子部
106 ケーブル
108 テーブル
110 直流電源

Claims (5)

  1. 背面板と、前記背面板と対向配置された前面板と、を備え、
    前記前面板は、誘電体層と、前記誘電体層を覆う保護層と、を有し、
    前記保護層は、前記誘電体層上に形成された下地層を含み、
    前記下地層には、酸化マグネシウムの結晶粒子が複数個凝集した凝集粒子が全面に亘って分散配置され、
    前記下地層は、少なくとも第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とを含み、
    さらに、前記下地層は、X線回折分析において少なくとも一つのピークを有し、
    前記ピークは、第1金属酸化物のX線回折分析における第1のピークと、第2金属酸化物のX線回折分析における第2のピークと、の間にあり、
    前記第1のピークおよび前記第2のピークは、前記ピークが示す面方位と同じ面方位を示し、
    前記第1の金属酸化物および前記第2の金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムからなる群の中から選ばれる2種である、
    プラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
    前記誘電体層上に前記保護層を形成し、
    次に、前記保護層表面をスパッタし、さらにスパッタされた前記保護層の成分を再堆積させることにより、前記保護層表面における前記第1の金属酸化物と前記第2の金属酸化物との濃度比を変える、
    ことを備えるプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  2. 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
    さらに前記前面板は、ガラス基板と、前記ガラス基板上に形成され、かつ、前記誘電体層に覆われた表示電極と、を有し、
    前記ガラス基板上に前記表示電極を形成し、
    次に、前記表示電極を覆う前記誘電体層を形成し、
    次に、前記誘電体層上に前記保護層を形成し、
    次に、不活性ガス雰囲気下で、前記表示電極に電圧を印加することにより放電を発生させ、
    さらに、前記放電により発生した前記不活性ガスのイオンで前記保護層表面をスパッタし、
    さらに、スパッタされた前記保護層の成分を再堆積させることにより、前記保護層表面における前記濃度比を変える、
    ことを備えるプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  3. 請求項2に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
    不活性ガス雰囲気下で、前記表示電極に電圧を印加することにより放電を発生させ、
    さらに、前記放電により発生した前記不活性ガスのイオンで前記保護層表面をスパッタし、
    さらに、スパッタされた前記保護層の成分を再堆積させることにより、前記保護層表面における前記放電が発生した領域に相当する放電領域の前記濃度比と、前記保護層表面における前記放電が発生しなかった領域に相当する非放電領域の前記濃度比と、を変える、
    ことを備えるプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  4. 請求項2に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
    不活性ガス雰囲気下で、前記表示電極に電圧を印加することにより放電を発生させ、
    さらに、前記放電により発生した前記不活性ガスのイオンで前記保護層表面をスパッタし、
    さらに、スパッタされた前記保護層の成分を再堆積させることにより、前記保護層表面におけるスパッタされた領域の前記濃度比と、前記保護層表面におけるスパッタされない領域の前記濃度比と、を変える、
    ことを備えるプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  5. 請求項3または4のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
    不活性ガス雰囲気下で、前記走査電極と前記維持電極とに電圧を印加することにより放電を発生させ、
    さらに、前記放電により発生した前記不活性ガスのイオンで前記保護層表面をスパッタし、
    さらに、スパッタされた前記保護層の成分を再堆積させることにより、前記表示電極上の前記保護層表面における前記濃度比と、前記表示電極が形成されていない領域上の前記保護層表面における前記濃度比と、を変える、
    ことを備えるプラズマディスプレイパネルの製造方法。
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