JPWO2011115231A1 - オステオポンチン特異的モノクローナル抗体 - Google Patents
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Abstract
好中球の集積を阻害する物質、オステオポンチンの重合化を阻害する物質、またはモノマーオステオポンチンと重合オステオポンチンへの結合性が異なるオステオポンチン結合性抗体を明らかにする。オステオポンチンのトランスグルタミネーション部位を認識するオステオポンチン結合性抗体、好中球の集積を阻害するオステオポンチン結合性抗体、オステオポンチンの重合化を阻害するオステオポンチン結合性抗体、または抗体H鎖可変領域のH鎖CDR1のアミノ酸配列が配列番号2のアミノ酸配列を含み、H鎖CDR2のアミノ酸配列が配列番号3のアミノ酸配列を含み、H鎖CDR3のアミノ酸配列が配列番号4のアミノ酸配列を含むオステオポンチン結合性抗体を用いる。
Description
本発明は、新規のオステオポンチン結合性抗体に関する。
オステオポンチン(OPN)は、酸性のリン酸化糖タンパク質であり、組織再構成、繊維化、免疫応答、炎症応答、骨形成、腫瘍増殖・遊走等、生命現象に幅広く関与する細胞外マトリックスで、サイトカインにも分類される多機能性分子である。
OPNは細胞膜タンパク質インテグリンのリガンドとしても知られている。現在までに確認されているインテグリンは、RGD配列を認識するα5β1、α8β1、αvβ1、αvβ3、αvβ5、およびαvβ6の6種類、SVVYGLR配列を認識するα4β1、α4β7、およびα9β1の3種類の合計9種類である。
OPNは種々の翻訳後修飾を受けることが報告されているが、重要なことは、翻訳後修飾により活性が変化するという点である。例えば、トロンビンによる解裂によって形成されるN末端側フラグメントはcryptic epitope SVVYGLR(マウスではSLAYGLR)を外側に暴露させることでインテグリンα9β1やα4β1に認識され、その結果炎症性疾病等に関与することが報告されている。
もう1つの主要な翻訳後修飾は架橋反応による重合化である。重合化には血液凝固因子ファミリータンパク質であるトランスグルタミナーゼ2(TG2)が関与し、OPN内に存在するグルタミン−リジン残基間を共有結合で架橋することにより多量体(重合体)を形成すると考えられている。グルタミン残基に関しては、非特許文献1に、ウシOPNを用いた解析によりエクソン4内に存在するアミノ酸が重合化に特に重要であることが記載されている。
重合化したOPN(以下、重合OPNと称することもある)は骨でその存在が報告されているが、本蛋白質の生理的及び病理的意義に関しては未解明な点が多い。近年では少しずつではあるが機能解析が進んできており、非特許文献2には石灰化した動脈中に存在することが、非特許文献3には試験管内においてコラーゲンとの結合が強化することが、非特許文献4にはインテグリンとの接着が増強することが、非特許文献5には重合OPNの構造変換により生じた未知の認識領域が、インテグリンα9β1によって認識されることにより、好中球を遊走させることが記載されている。
一方、特許文献1にはOPNに結合性を示す抗体として、SVVYGLR配列を認識するインテグリンとオステオポンチンのトロンビン切断型N末端フラグメントとの結合を阻害するOPN結合性抗体が記載されている。
Esben et al., Ann N Y Acad Sci. 1995 Apr 21;760:363-6.
Kaartinen et al., J Histochem Cytochem. 2007 Apr;55(4):375-86. Epub 2006 Dec 22.
Kaartinen et al., J Biol Chem. 1999 Jan 15;274(3):1729-35.
Higashikawa et al., FEBS Lett. 2007 Jun 12;581(14):2697-701. Epub 2007 May 21.
Nishimichi et al., J Biol Chem. 2009 May 29;284(22):14769-76. Epub 2009 Apr 3.
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
第一に上記文献には、OPNの重合化が種々の生命現象に関与していることが記載されているが、OPNの重合化を阻害する物質が得られていなかった。従って、OPNの重合化が関連する生体内メカニズムを調べることが困難であった。また、OPNの重合化が関与する種々の反応機構を制御することも困難であった。加えて、OPNの関与する生体内メカニズムには未だ不明な点が多かった。
第一に上記文献には、OPNの重合化が種々の生命現象に関与していることが記載されているが、OPNの重合化を阻害する物質が得られていなかった。従って、OPNの重合化が関連する生体内メカニズムを調べることが困難であった。また、OPNの重合化が関与する種々の反応機構を制御することも困難であった。加えて、OPNの関与する生体内メカニズムには未だ不明な点が多かった。
第二に上記文献には、OPN結合性抗体が記載されているが、未重合のOPN(以下、モノマーOPNと称することもある)と重合OPNへの結合性が異なるOPN結合性抗体は得られていなかった。従って、OPNの重合化が関連する、新規の診断薬等を開発することは困難であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、OPNの重合化を阻害するOPN結合性抗体を提供することを目的とする。また本発明の別の目的は、モノマーOPNと重合OPNへの結合性が異なるOPN結合性抗体を提供することである。また本発明の他の目的は、好中球の集積を阻害するOPN結合性抗体を提供することである。
本発明によれば、OPNのTransglutamination motif(トランスグルタミネーション部位)を認識する、OPN結合性抗体が提供される。後述する実施例において、OPNのTransglutamination motifを認識する抗体が、OPNの重合化を阻害すること、好中球の集積を阻害すること、またはモノマーOPNに対して結合性を有し、重合OPNに対して結合性を有さないことが実証されている。そのため、上記OPN結合性抗体を用いれば、OPNの重合化を阻害すること、好中球の集積を阻害すること、またはOPNの重合に関する診断をすることができる。
本発明によれば、モノマーOPNに対して結合性を有し、重合OPNに対して結合性を有さない、OPN結合性抗体が提供される。このOPN結合性抗体を用いれば、OPNの重合状態の診断をすることができる。
本発明によれば、抗体H鎖可変領域のH鎖CDR1のアミノ酸配列が配列番号2のアミノ酸配列を含み、H鎖CDR2のアミノ酸配列が配列番号3のアミノ酸配列を含み、H鎖CDR3のアミノ酸配列が配列番号4のアミノ酸配列を含む、好中球の集積を阻害するOPN結合性抗体が提供される。このOPN結合性抗体は、後述する実施例で、OPNの重合化を阻害すること、好中球の集積を阻害すること、またはモノマーOPNに対して結合性を有し、重合OPNに対して結合性を有さないことが実証されている。そのため、このOPN結合性抗体を用いれば、OPNの重合化を阻害すること、好中球の集積を阻害すること、またはOPNの重合に関する診断をすることができる。
なおこのOPN結合性抗体は、H鎖CDR1のアミノ酸配列が、配列番号2において1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、H鎖CDR2のアミノ酸配列が配列番号3において1〜4個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、H鎖CDR3のアミノ酸配列が、配列番号4において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むアミノ酸配列であってもよい。
本発明によれば、上記いずれかのOPN結合性抗体をコードする塩基配列を含む、ポリヌクレオチドまたはベクターが提供される。このポリヌクレオチドは、後述する実施例で、上記いずれか1つ以上のOPN結合性抗体を生産するために使用できることが実証されている。そのため、上記ポリヌクレオチドまたはベクターを種々の蛋白質発現系に適用すれば、上記いずれか1つ以上のOPN結合性抗体を容易に生産することができる。
本発明によれば、上記いずれかのOPN結合性抗体を含む、好中球集積阻害剤が提供される。この好中球集積阻害剤は、後述する実施例で、好中球の集積を阻害できることが実証されているOPN結合性抗体を含む。そのため、この好中球集積阻害剤は、好中球の集積を阻害することができる。
本発明によれば、上記いずれかのOPN結合性抗体を含む、OPN重合化阻害剤が提供される。このOPN重合化阻害剤は、後述する実施例で、OPNの重合化を阻害できることが実証されているOPN結合性抗体を含む。そのため、このOPN重合化阻害剤は、OPNの重合化を阻害することができる。
本発明によれば、好中球の集積を阻害するオステオポンチン結合性モノクローナル抗体を含む、好中球集積阻害剤が提供される。この好中球集積阻害剤は、後述する実施例で、好中球の集積を阻害できることが実証されているOPN結合性抗体を含む。そのため、この好中球集積阻害剤は、好中球の集積を阻害することができる。
本発明によれば、上記いずれかのOPN結合性抗体を含む診断薬が提供される。この診断薬は、後述する実施例で、モノマーOPNに結合性を示し、重合OPNに結合性を示さないことが実証されているOPN結合性抗体を含む。または、この診断薬は後述する実施例で、好中球の集積を阻害できることが実証されているOPN結合性抗体を含む。そのため、OPNの重合化、または好中球の集積を診断するために使用できる。
本発明によれば、上記OPN結合性抗体を含む試薬が提供される。この試薬は、後述する実施例で、モノマーOPNに結合性を示し、重合OPNに結合性を示さないことが実証されているOPN結合性抗体を含む。または、OPNの重合化を阻害する、または好中球の集積を阻害することが実証されているOPN結合性抗体を含む。そのため、OPNの重合、または好中球の集積に関連する種々の研究の試薬として使用できる。
本発明によれば、OPNの重合化を阻害するOPN結合性抗体が得られる。または、OPNの重合化に関わる特定の部位を認識するOPN結合性抗体が得られる。または、モノマーOPNと重合OPNへの結合性が異なるOPN結合性抗体が得られる。または、特定のCDR配列を有するOPN結合性抗体が得られる。または、好中球の集積を抑剤するOPN結合性抗体が得られる。または、オステオポンチン重合化阻害剤もしくは好中球集積抑剤が得られる。
<発明の経緯>
OPNは組織再構成や免疫応答、腫瘍増殖など種々の生命現象に関わることが知られている蛋白質である。しかしながら、詳細な生理機能に関しては未解明な点が多い。そのような中、本願発明者らは様々な手法を検討した結果、ニワトリにOPN内の配列番号1からなるアミノ酸配列を抗原として免疫することで、OPN結合性抗体を得た。そして、得られたOPN結合性抗体の各種機能解析を実施した結果、驚くべきことに、好中球の集積を阻害する機能、OPNの重合を阻害する機能、またはモノマーOPNに結合性を有し且つ重合OPNに結合性を有しない性質等、従来のOPN結合性抗体にはみられない特徴を有している機能性抗体が得られていることが判明し、本発明を完成した。
OPNは組織再構成や免疫応答、腫瘍増殖など種々の生命現象に関わることが知られている蛋白質である。しかしながら、詳細な生理機能に関しては未解明な点が多い。そのような中、本願発明者らは様々な手法を検討した結果、ニワトリにOPN内の配列番号1からなるアミノ酸配列を抗原として免疫することで、OPN結合性抗体を得た。そして、得られたOPN結合性抗体の各種機能解析を実施した結果、驚くべきことに、好中球の集積を阻害する機能、OPNの重合を阻害する機能、またはモノマーOPNに結合性を有し且つ重合OPNに結合性を有しない性質等、従来のOPN結合性抗体にはみられない特徴を有している機能性抗体が得られていることが判明し、本発明を完成した。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同様な内容については、
繰り返しの煩雑を避けるために適宜説明を省略する。
繰り返しの煩雑を避けるために適宜説明を省略する。
<実施形態1:OPN結合性抗体>
本実施形態はOPN結合性抗体である。このOPN結合性抗体は、OPNの重合化を阻害するOPN結合性抗体であってもよい。この場合、上記OPN結合性抗体はOPNの重合化が関連する種々の機能を阻害することができる。後述する実施例では、得られたOPN結合性抗体が、好中球の集積を阻害することが実証されている。そのため、上記OPN結合性抗体は好中球集積阻害剤として好適に使用できる。
本実施形態はOPN結合性抗体である。このOPN結合性抗体は、OPNの重合化を阻害するOPN結合性抗体であってもよい。この場合、上記OPN結合性抗体はOPNの重合化が関連する種々の機能を阻害することができる。後述する実施例では、得られたOPN結合性抗体が、好中球の集積を阻害することが実証されている。そのため、上記OPN結合性抗体は好中球集積阻害剤として好適に使用できる。
なお、hOPNおよびmOPN等のDNA配列およびアミノ酸配列は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBank等で参照できる。hOPN遺伝子をコードするcDNA、またはmOPN遺伝子をコードするcDNAは、公知の手法で得ることができる。例えば、ヒト細胞から調整したRNAを鋳型としてcDNAを合成し、それを鋳型として上記データベースから適宜設計したプライマーを用いてPCRを行うことにより得ることができる。
上記OPN結合性抗体が認識するOPN内の部位は特に限定しないが、OPNのTransglutamination motifであっても良い。この場合、上記OPN結合性抗体はTransglutamination motifを有するOPNに結合することができる。またこの場合、上記OPN結合性抗体は、OPNの重合化を阻害すること、または好中球の集積を阻害することができる。または、上記OPN結合性抗体はモノマーOPNに対して結合性を有し、重合OPNに対して結合性を有さない性質を有する。ここで、Transglutamination motifとはTG2が触媒作用を奏するときに認識するOPN内の部位のことを意味する。
また上記OPN結合性抗体は、OPN内の配列番号1からなるアミノ酸配列を認識する抗体であってもよい。この場合、上記OPN結合性抗体はOPN内の配列番号1からなるアミノ酸配列を有するOPNに結合することができる。また、OPN内の配列番号1からなるアミノ酸配列を有するOPNの重合化を阻害することができる。なお、ヒト、マウス、およびラット由来のOPNは、配列番号1からなるアミノ酸配列を有しているため、上記OPN結合性抗体が結合することができる。上記OPN結合性抗体は、配列番号1からなるアミノ酸配列を有していないOPNであっても、OPNのエピトープの立体構造次第では、その類似配列や、Transglutamination motifを有しているOPNであれば、結合できる。
また上記OPN結合性抗体は、OPN内の配列番号1からなるアミノ酸配列において1または2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を認識する抗体であってもよい。ここで、上記「1または2個」は好ましくは1個である。なぜならば、上記1または2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を認識する抗体は、OPN内の配列番号1からなるアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、OPN内の配列番号1からなるアミノ酸配列を認識するOPN結合性抗体に近い性質を有していることになるからである。
また上記OPN結合性抗体は、モノマーOPNに対して結合性を有し、重合OPNに対して結合性を有さない抗体であってもよい。この場合、上記OPN結合性抗体を検出用のプローブとして使用すれば、組織等においてOPNが重合OPNとして存在しているか、モノマーOPNとして存在しているかを調べることができる。そのため、重合OPNの関与する疾患の診断薬として、上記OPN結合性抗体を好適に使用できる。後述する実施例では、ウェスタンブロッティングによって調査可能であることが実証されている。また、後述する実施例において、モノマーOPNに対して結合性を有し、重合OPNに対して結合性を有さない抗体が、OPNの重合化を阻害すること、または好中球の集積を阻害することができることが実証されている。
また上記OPN結合性抗体が結合するOPNの由来は特に限定しないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、およびチンパンジーのいずれか1種以上であってもよい。
また上記OPN結合性抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。この場合、上記OPN結合性抗体は、OPNを高い特異性で認識するため、効率的にOPNに結合できる。または、効率的にOPNの重合化を阻害できる。または、効率的に好中球の集積を阻害できる。
また上記重合化はTG2に触媒される重合化であっても良い。この場合、TG2がOPNのTransglutamination motifを認識し、触媒する作用を、上記OPN結合性抗体が阻害することが可能である。
また上記OPN結合性抗体は、ニワトリを免疫して得られる抗体であってもよい。この場合、ニワトリの特殊な免疫系を利用して抗体を作製できるため、効率的に所望の性質を有する上記OPN結合性抗体を得ることができる。
また上記OPN結合性抗体は、ニワトリ抗体、キメラ抗体(ニワトリ−マウスキメラ抗体、ニワトリ−ヒトキメラ抗体、またはマウス−ヒトキメラ抗体等)、マウス抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体からなる群から選ばれる1種以上の抗体であってもよい。
また上記OPN結合性抗体は、抗体断片または抗原結合性断片であっても良い。この場合、安定性が上昇する、または抗体の生産効率が上昇する等の効果が得られる。
また上記OPN結合性抗体は、OPNの野生型または変異型に結合する抗体であってもよい。ここで、変異型とは、個体間のDNA配列の差異に起因するものを含む。また、OPN結合性抗体は野生型であることが好ましいが、変異型の場合は野生型に対し、好ましくは80%の相同性を有し、より好ましくは90%の相同性を有し、特に95%の相同性を有していることが好ましい。なぜならば、野生型に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例において、OPN結合性抗体によってOPNの重合化が阻害されることが実証されている、OPNに近い機能が得られるためである。
また上記OPN結合性抗体は、抗体H鎖可変領域のH鎖CDR1のアミノ酸配列が配列番号2のアミノ酸配列を含み、H鎖CDR2のアミノ酸配列が配列番号3のアミノ酸配列を含み、H鎖CDR3のアミノ酸配列が配列番号4のアミノ酸配列を含む、OPN結合性抗体であってもよい。後述する実施例で、この抗体H鎖可変領域を含むOPN結合性抗体が、ヒトおよびマウス由来のOPNに交差反応性を有すること、OPN内の配列番号1からなるアミノ酸配列に結合すること、モノマーOPNに結合性を有し、重合OPNに結合性を有しないこと、OPNの重合化を顕著に阻害する活性を有すること、in vivoで好中球の集積を阻害することが実証されている。
なお一般的に、抗体のアミノ酸配列にある程度の欠失、置換、付加等が生じても、抗体の機能はある程度保たれることが知られている。そのため、本実施形態のOPN結合性抗体は、ある程度の欠失、置換、付加等が生じていてもよい。
ここで、上記H鎖CDR1のアミノ酸配列は、配列番号2において1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であっても良い。また上記「1若しくは2個」は好ましくは1個である。なぜならば、上記1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をH鎖CDR1に含むOPN結合性抗体は、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、配列番号2のアミノ酸配列をH鎖CDR1に含むOPN結合性抗体に近い性質を有していることになるからである。
ここで、上記H鎖CDR2のアミノ酸配列は、配列番号3において1〜4個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であっても良い。ここで、上記「1〜4個」は好ましくは3個であり、より好ましくは2個であり、さらに好ましくは1個である。なぜならば、上記1〜4個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をH鎖CDR2に含むOPN結合性抗体は、配列番号3のアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、配列番号3のアミノ酸配列をH鎖CDR2に含むOPN結合性抗体に近い性質を有していることになるからである。
ここで、上記H鎖CDR3のアミノ酸配列は、配列番号4において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であっても良い。ここで、上記「1〜3個」は好ましくは2個であり、より好ましくは1個である。なぜならば、上記1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をH鎖CDR3に含むOPN結合性抗体は、配列番号4のアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、配列番号4のアミノ酸配列をH鎖CDR3に含むOPN結合性抗体に近い性質を有していることになるからである。
またこの抗体H鎖可変領域を含むOPN結合性抗体は、さらに抗体L鎖可変領域のL鎖CDR1のアミノ酸配列が配列番号5のアミノ酸配列を含み、L鎖CDR2のアミノ酸配列が配列番号6のアミノ酸配列を含み、L鎖CDR3のアミノ酸配列が配列番号7のアミノ酸配列を含む、OPN結合性抗体であってもよい。後述する実施例で、上記の抗体H鎖可変領域およびこの抗体L鎖可変領域を含むOPN結合性抗体が、ヒトおよびマウス由来のOPNに交差反応性を有すること、OPN内の配列番号1からなるアミノ酸配列に結合すること、モノマーOPNに結合性を有し、重合OPNに結合性を有しないこと、OPNの重合化を顕著に阻害する活性を有すること、in vivoで好中球の集積を阻害することが実証されている。
ここで、このL鎖CDR1のアミノ酸配列は、配列番号5において1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であっても良い。ここで、上記「1若しくは2個」は好ましくは1個である。なぜならば、上記1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をL鎖CDR1に含むOPN結合性抗体は、配列番号5のアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、配列番号5のアミノ酸配列をL鎖CDR1に含むOPN結合性抗体に近い性質を有していることになるからである。
ここで、上記L鎖CDR2のアミノ酸配列は、配列番号6において1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であっても良い。ここで、上記「1若しくは2個」は好ましくは1個である。なぜならば、上記1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をL鎖CDR2に含むOPN結合性抗体は、配列番号6のアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、配列番号6のアミノ酸配列をL鎖CDR2に含むOPN結合性抗体に近い性質を有していることになるからである。
ここで、上記L鎖CDR3のアミノ酸配列は、配列番号7において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であっても良い。ここで、上記「1〜3個」は好ましくは2個であり、より好ましくは1個である。なぜならば、上記1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をL鎖CDR3に含むOPN結合性抗体は、配列番号7のアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、配列番号7のアミノ酸配列をL鎖CDR3に含むOPN結合性抗体に近い性質を有していることになるからである。
本発明の他の実施形態は、上記OPN結合性抗体をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドである。この場合、上記ポリヌクレオチドを用いれば、当該技術分野で公知の方法によって、上記OPN結合性抗体を作製できる。
本発明の他の実施形態は、上記ポリヌクレオチドまたはその一部を含むベクターである。この場合、上記ベクターを用いれば、当該技術分野で公知の方法によって、上記OPN結合性抗体を作製できる。
上記のベクターは、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19、pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどを用いることができる。
また上記のベクターとして、pPDS(特許3908257号明細書)やpLPDS(特開2009-82075号公報)、pHPDS(特開2010-4895号公報)、pcChMo/Hベクター、またはpcChMo/Lベクター(Tateishi et al., J Vet Med Sci. 2008 Apr;70(4):397-400.)などを使用することで、所望の形態のOPN結合性抗体を作製できる。
本発明の他の実施形態は、上記ポリヌクレオチドまたはその少なくとも一部を含むベクターが導入された宿主細胞または形質転換体である。上記宿主細胞または形質転換体を用いれば、当該技術分野で公知の方法によって、上記OPN結合性抗体を作製できる。上記宿主細胞は、ヒトや他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスターなど)の細胞であってもよい。哺乳動物細胞としては、例えば、サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHO(CHO細胞)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(CHO(dhfr)細胞)、マウスL細胞,マウスAtT-20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞、ヒトHEK293細胞などが挙げられる。または、Escherichia属菌、Bacillus属菌、酵母、鳥類細胞、または昆虫細胞であってもよい。
また、上記のポリヌクレオチドまたはベクターの細胞への導入と抗体の生産は、当該技術分野で公知の方法に従って行うことができる。ポリヌクレオチドまたはベクターの細胞への導入方法として例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、アデノウイルスによる方法、レトロウイルスによる方法、またはマイクロインジェクションなどを使用できる[改訂第4版 新 遺伝子工学ハンドブック, 羊土社(2003):152-179.]。抗体の細胞を用いた生産方法としては、例えば、[タンパク質実験ハンドブック,羊土社(2003):128-142.]、[Shimamoto et al., Biologicals. 2005 Sep;33(3):169-174.]に記載の方法を使用できる。なお、OPN結合性抗体は、化学合成もしくは無細胞翻訳系で合成された蛋白質であってもよい。
また、上記OPN結合性抗体は、OPN結合性抗体を産生する細胞から、当該技術分野において公知の方法を用いて精製することができる。抗体の精製方法は、例えば、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、プロテインA、プロテインG、ゲルろ過クロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーなどを用いて達成され得る(タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):27-52.)。なお、上記OPN結合性抗体のうち、ニワトリ型抗体(IgY)はプロテインAやプロテインGとは結合しないと考えられる。
本明細書において抗体は、抗原上の特定のエピトープに特異的に結合することができる分子を指し、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体であってもよい。また、抗体は様々な形態で存在することができ、例えば、Fv、Fab、F(ab')2、Fab'、diabody、一本鎖抗体(例えば、scFv、dsFv)、CDRを含むペプチド、多価特異的抗体(例えば、二価特異的抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体などが挙げられる。また、抗体は、安定性を高めるために、所望の機能を有している限り、より低分子であることが好ましい。
本明細書においてポリクローナル抗体は、例えば、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導するために、哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスターなど)や鳥類等に、目的の抗原を含む免疫原を投与することによって抗体を生成することが可能である。免疫原の投与は、1つ以上の免疫剤、および所望の場合にはアジュバントの注入を必要とすることもある。アジュバントは、免疫応答を増加させるために使用されることもあり、フロイントアジュバント(完全または不完全)、ミネラルゲル(水酸化アルミニウム等)、界面活性物質(リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール等)、または潜在的に有用なヒトアジュバント(カルメット−ゲラン桿菌(BCG)またはコリネバクテリウムパルバム)を含む。その他、MPL-TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)を含む。免疫プロトコールは、当該技術分野で公知であり、選択する動物宿主に伴い、免疫応答を誘発する任意の方法によって実施される場合がある[タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):86-91.]。
本明細書においてモノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じることが可能な突然変異を除いて、同一であるものを含む。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、異なるエピトープ(抗原決定基)に対応する異なる抗体を典型的に含む、通常のポリクローナル抗体とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一のエピトープに対応する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養から合成できる点で有用である。「モノクローナル」という形容は、実質的に均一な抗体集団から得られたという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本明細書におけるモノクローナル抗体は、[Kohler G, Milstein C., Nature. 1975 Aug 7;256(5517):495-497.]に掲載されているようなハイブリドーマ法と同様の方法によって作ることができる。あるいは、本発明で使用されるモノクローナル抗体は、米国特許第4816567号に記載されているような組換え法と同様の方法によって作ることができる。または、本明細書におけるモノクローナル抗体は、[Clackson et al., Nature. 1991 Aug 15;352(6336):624-628.]または[Marks et al., J Mol Biol. 1991 Dec 5;222(3):581-597.]に記載されているような技術と同様の方法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。または、[タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):92-96.]に掲載されている一般的な生産方法によって作ることができる。なお、本明細書におけるモノクローナル抗体は、後述する実施例に記載の方法で作製することが好ましい。
なお、Fvは、完全な抗原認識及び結合部位を含む抗体フラグメントである。この領域は、密接な非共有結合による1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つのCDRは相互に作用してVH-VL二量体の表面に抗原結合部位を形成する。そして、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。なお、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるOPN結合性抗体のFvをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fvを生産することができる。
また、Fabは、IgGを蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した、抗原結合活性を有する抗体断片である。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるOPN結合性抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、OPN結合性抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを生産することができる。
また、F(ab')2は、IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたものよりやや大きい、抗原結合活性を有する抗体断片である。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるOPN結合性抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab'をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
また、Fab'は、F(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した、抗原結合活性を有する抗体断片である。F(ab')2を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるOPN結合性抗体のFab'断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fab'を製造することができる。
また、scFvは、1本のVHと1本のVLとを適当なペプチドリンカーを用いて連結したポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるOPN結合性抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、scFvを製造することができる。
また、diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一であることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるOPN結合性抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをペプチドリンカーのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、diabodyを製造することができる。
また、dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものの総称である。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法(Reiter et al., Protein Eng. 1994 May;7(5):697-704.)に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるOPN結合性抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、dsFvを製造することができる。
また、CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるOPN結合性抗体のVHまたはVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDRを含むペプチドを製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBOC法(t-ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法によって製造することもできる。
また、キメラ抗体は異種生物間における、抗体の可変領域と、抗体の定常領域とを連結したもので、遺伝子組換え技術によって容易に構築できる。キメラ抗体を生成する方法は、当該技術分野で公知である。例えば、マウス-ヒトキメラ抗体は、[Roguska et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1;91(3):969-973.]に記載の方法で作製できる。標的抗原に対するマウスモノクローナル抗体の、マウス軽鎖V領域およびマウス重鎖V領域をコードするDNA断片をクローニングし、これらのマウスV領域をコードするDNAを、ヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結して発現させることによってマウス-ヒトキメラ抗体が得られる。マウス-ヒトキメラ抗体を作製するための基本的な方法は、クローン化されたcDNAに存在するマウスリーダー配列及びV領域配列を、哺乳類細胞の発現ベクター中にすでに存在するヒト抗体C領域をコードする配列に連結する。あるいは、クローン化されたcDNAに存在するマウスリーダー配列及びV領域配列をヒト抗体C領域をコードする配列に連結した後、哺乳類細胞発現ベクターに連結する。ヒト抗体C領域の断片は、任意のヒト抗体のH鎖C領域及びヒト抗体のL鎖C領域のものとすることができ、例えばヒトH鎖のものについてはCγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4、及びL鎖のものについてはCλ又はCκを各々挙げることができる。
また、ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク(FR)領域、さらにヒト免疫グロブリン由来の定常領域を有し、所望の抗原に結合する。抗原結合を改変する、好ましくは、改善するために、ヒトフレームワーク領域のアミノ酸残基は、CDRドナー抗体からの対応する残基と置換されることが多い。これらのフレームワーク置換は、当該技術分野で周知の方法(例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するために、CDRとフレームワーク残基の相互作用のモデリングによって、および特定の位置で異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較)によって実施される(Riechmann et al., Nature. 1988 Mar 24;332(6162):323-327.)。抗体は、当該技術分野で既知の種々の手法を使用してヒト化することが可能である(Almagro et al., FRont Biosci. 2008 Jan 1;13:1619-1633.)。例えば、CDRグラフティング(Ozaki et al., Blood. 1999 Jun 1;93(11):3922-3930.)、Re-surfacing (roguska et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1;91(3):969-973.)、およびFRシャッフル(Damschroder et al., Mol Immunol. 2007 Apr;44(11):3049-3060. Epub 2007 Jan 22.)などが挙げられる。ニワトリ抗体のヒト化については、Nishiboriらの方法によってなし得る(Nishibori et al., Mol. Immunol. 2006 May;43:634-642; 特願2005−056665 )。
また、ヒト抗体は、典型的には、抗体を構成する重鎖の可変領域、重鎖の定常領域、軽鎖の可変領域、および軽鎖の定常領域を含む全ての領域がヒトイムノグロブリンをコードする遺伝子に由来する抗体である。主な作成方法としてはヒト抗体作製用トランスジェニックマウス法、ファージディスプレイ法などがある。ヒト抗体作製用トランスジェニックマウス法は、内因性Igをノックアウトしたマウスに機能的なヒトのIg遺伝子を導入すれば、マウス抗体の代わりに多様な抗原結合能を持つヒト抗体が産生される。さらにこのマウスを免疫すればヒトモノクローナル抗体を従来のハイブリドーマ法で得ることが可能である。例えば、[Lonberg et al., Int Rev Immunol. 1995;13(1):65-93.]に記載の方法で作成できる。ファージディスプレイ法は、典型的には大腸菌ウイルスの一つであるM13やT7などの繊維状ファージのコート蛋白質(g3pやg10pなど)のN末端側にファージの感染性を失わないよう外来遺伝子を融合蛋白質として発現させるシステムである。例えば、[Vaughan et al., Nat Biotechnol. 1996 Mar;14(3):309-314.]に記載の方法で作成できる。
また、上記OPN結合性抗体において1若しくは数個のアミノ酸が別のアミノ酸に置換している場合には、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に置換していることが好ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、および、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。これらの各グループ内のアミノ酸同士の置換は保存的置換と総称される。あるアミノ酸配列に対する1または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加、または他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1984 Sep;81(18):5662-5666.、Zoller et al., Nucleic Acids Res. 1982 Oct 25;10(20):6487-6500.、Wang et al., Science. 1984 Jun 29;224(4656):1431-1433.)。
また、OPN結合性抗体は、既知の選択または突然変異誘発法を使用し、親和成熟させてもよい。好ましい親和成熟抗体は、成熟抗体が出発抗体のものよりも、5倍、より好ましくは10倍、さらに好ましくは20または30倍の親和性を有する。例えば、抗体ファージライブラリを用いたバイオパニングを使用できる。この方法の典型的な操作は、固定化した標的蛋白質に抗体ファージライブラリを反応させ、結合しなかったファージ抗体を洗浄により除去した後に、結合したファージ抗体を溶出し大腸菌に感染させて増殖させる、という操作を数回行うことで標的蛋白質に特異的なファージ抗体を取得することである(改訂版 抗体実験マニュアル, 羊土社(2008):211-221.)。
また、OPN結合性抗体のクラスは、IgM、IgD、IgG、IgA、IgE、IgX、IgY、IgW、IgNARであってもよい。
また、OPN結合性抗体のCDR1、CDR2、またはCDR3は、例えば、ヒトまたは他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスターなど)由来や鳥類(ニワトリ等)等由来の抗体であってもよい。
また、本明細書においてOPN結合性抗体は、その重鎖CDR領域をコードするDNAと、公知のヒトまたはヒト以外の生物由来の抗体の、重鎖CDR領域を除く領域をコードするDNAとを、当該技術分野で公知の方法に従ってベクターに連結後、公知の細胞を使用して発現させることによって得ることができる。または、CDR-grafting(Ozaki et al., Blood. 1999 Jun 1;93(11):3922-3930.)によって任意の抗体に上記OPN結合性抗体の重鎖CDRをグラフティングすることで得ることができる。また、このとき、該抗体の標的抗原への作用効率を上げることができるため、当該分野で公知の方法(例えば、抗体のアミノ酸残基をランダムに変異させ、反応性の高いものをスクリーニングする方法、またはファージディスプレイ法など)を用いて、該抗体の重鎖CDR領域を除く領域を最適化することが好ましい。特に、該抗体の標的抗原への作用効率を上げることができるため、当該分野で公知の方法、例えば、FRシャッフル(Damschroder et al., Mol Immunol. 2007 Apr;44(11):3049-3060. Epub 2007 Jan 22.)、またはバーニヤゾーンのアミノ酸残基またはパッケージング残基を置換する方法(特開2006-241026、またはFoote et al., J Mol Biol.1992 Mar 20;224(2):487-499.)を用いて、FR領域を最適化することが好ましい。また、所望の抗体を得るためには、上記OPN結合性抗体の重鎖CDRとともに、上記OPN結合性抗体の軽鎖CDRを用いることが好ましい。
本明細書において「重合化」とは、物質に物質が結合して分子量が増加する状態を意味する。
本明細書において抗原抗体反応における「認識する」とは、抗体工学分野で通常用いられる意味で使用でき、例えば、抗体が結合するために接触するという意味、または特異的に結合するという意味を含む。
本明細書において抗原抗体反応における「結合性を有さない」とは、抗体が抗原に結合することは可能ではあるが、抗原に結合する抗体が顕著に少ないことを意味する。
本明細書において「交差反応性」とは、ある抗体が、類似構造を有している2種以上の抗原に対して、いずれにも有意な結合親和性を持つ性質を総称する。ここで、類似構造を有する抗原とは、相同性が高い蛋白質を含む。
本明細書において「重鎖(H鎖)」とは、抗体の主な構成要素であり、典型的には、軽鎖(L鎖)とジスルフィド結合および非共有結合によって結合している。重鎖のN末端側のドメインには、同種の同一クラスの抗体でもアミノ酸配列が一定しない可変領域(VH)と呼ばれる領域が存在し、一般的に、VHが抗原に対する特異性、親和性に大きく寄与していることが知られている。例えば、[Reiter et al., J Mol Biol. 1999 Jul 16;290(3):685-98.]にはVHのみの分子を作製したところ、抗原と特異的に、高い親和性で結合したことが記載されている。さらに、また、[Wolfson W, Chem Biol. 2006 Dec;13(12):1243-1244.]にはラクダの抗体の中には、軽鎖を持たない重鎖のみの抗体が存在していることが記載されている。
本明細書において「CDR(相補性決定領域、complementarity determining region)」とは、抗体において、実際に抗原に直接接触して結合部位を形成している領域である。一般的にCDRは、抗体のFv(可変領域:重鎖のV領域(VH)と軽鎖のV領域(VL)とから構成されている)上に位置している。また一般的にCDRは、5〜20アミノ酸残基程度からなるCDR1、CDR2、CDR3が存在する。そして、特に重鎖のCDRが抗体の抗原への結合における寄与していることが知られている。またCDRの中でも、一般的にはCDR3が抗体の抗原への結合における寄与が最も高いことが知られている。例えば、[Willy et al., Biochemical and Biophysical Research Communications Volume 356, Issue 1, 27 April 2007, Pages 124-128]には重鎖CDR3を改変させることで抗体の結合能を上昇させたことが記載されている。また、CDRは抗体の抗原に対する特異性を決定する領域であるため、抗体間でアミノ酸配列が大きく異なり、超可変領域ともよばれている。CDR以外のFv領域はフレームワーク領域(FR)と呼ばれ、FR1、FR2、FR3およびFR4からなり、抗体間で比較的よく保存されている(Kabat et al.,「Sequence of Proteins of Immunological Interest」US Dept. Health and Human Services, 1983.)。即ち、抗体の反応性を特徴付ける要因は重鎖CDR3であり、次に重鎖CDRであるといえる。
本明細書において「重鎖CDR3」とは、抗体の重鎖のCDRに存在していて、抗原に直接接触して結合部位を形成している領域である。一般的に、重鎖CDRには重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3が存在し、重鎖CDR3が結合における寄与が最も高い。CDRの定義およびその位置を決定する方法は複数報告されており、これらの何れも採用し得る。例えば、Kabatの定義(Sequences of proteins of immunological interest, 5th ed.,U.S. Department of Health and Human Services,1991)、またはChothiaの定義(Chothia et al., J. Mol. Biol.,1987;196:901-917)を採用してもよい。本明細書においては、Kabatの定義を好適な例として採用するが、必ずしもこれに限定されない。また、場合によっては、Kabatの定義とChothiaの定義の両方を考慮して決定しても良く、例えば、各々の定義によるCDRの重複部分を、または、各々の定義によるCDRの両方を含んだ部分をCDRとすることもできる。そのような方法の具体例としては、Kabatの定義とChothia aの定義の折衷案である、Oxford Molecular's AbM antibody modeling softwareを用いたMartinらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989;86:9268-9272)がある。
本明細書において「結合する」とは、物質間の連結を意味する。連結は共有結合または非共有結合のいずれであってもよく、たとえば、イオン結合、水素結合、疎水性相互作用、または親水性相互作用が挙げられる。
<実施形態2:OPN結合性抗体の用途>
本発明の他の実施形態は、上記OPN結合性抗体を含むOPN重合化阻害剤である。OPNの重合化を阻害することは、OPNの重合化が関連する種々の機能を阻害することができる。また、本発明の他の実施形態は、上記OPN結合性抗体を含む好中球集積阻害剤である。この好中球集積阻害剤を用いれば、好中球の集積が関連する種々の機能を阻害することができる。
本発明の他の実施形態は、上記OPN結合性抗体を含むOPN重合化阻害剤である。OPNの重合化を阻害することは、OPNの重合化が関連する種々の機能を阻害することができる。また、本発明の他の実施形態は、上記OPN結合性抗体を含む好中球集積阻害剤である。この好中球集積阻害剤を用いれば、好中球の集積が関連する種々の機能を阻害することができる。
また、上記OPN重合化阻害剤または好中球集積阻害剤は、OPNの重合化または好中球の集積と関連する生体分子の機能阻害を通して、研究用の試薬や、再生医療における細胞または組織の機能や生存率を維持するための添加剤、または畜産において動物の成育を補助するための添加剤として使用できる。また上記OPN重合化阻害剤は、OPNの重合化が関連する疾患の診断または研究に用いることができる。また上記好中球集積阻害剤は、好中球の集積に関連する疾患の診断または研究に用いることができる。
また、上記OPN重合化阻害剤または好中球集積阻害剤は、アンプル、バイアル、ステンレス容器、またはプラスチック容器内で保存してもよい。また、例えば生理食塩水、ブドウ糖、水酸化Na、リン酸水素Na水和物、リン酸二水素Na、クエン酸水和物、トレハロース、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化Na、アルコール、または非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート、HCO-50)等を配合してもよい。
また、本発明の他の実施形態は、上記OPN結合性抗体もしくはその抗体断片と、モノマーOPNとを接触させる工程を含む、好中球の集積を阻害する方法またはOPNの重合化を阻害する方法である。この方法を利用すれば、in vitroまたはin vivoで好中球の集積を阻害すること、またはOPNの重合化を阻害することができる。
重合化阻害効果の測定方法は特に限定しないが、モノマーOPNと、TG2とをOPN結合性抗体存在下またはネガティブコントロール存在下で混合し、インキュベーション後、SDS-PAGEに供し、ウェスタンブロッティングでOPNを検出することで容易に測定可能である。OPN結合性抗体存在下において重合したOPNの量は、ネガティブコントロール存在下で重合したOPNの量に比べて、例えば80、60、40、20、10、5、または0%であってもよい。この割合は、ここで例示したいずれか1つの値以下、またはいずれか2つの値の範囲内であってもよい。
OPN結合性抗体と、OPNとの結合強度または結合の有無を調べる方法としては、ELISA法、FACS分析、BIACOREを用いた方法など、当該技術分野で公知の方法をいずれも使用できる。
また、OPNにOPN結合性抗体が結合する様態は、解離平衡定数(KD)、結合定数(Ka)、結合速度定数(ka)、または解離速度定数(kd)で表すことができる。測定には、ELISA法(Enzyme Linked Immuno-Sorbent Assay)またはBIACOREシステム等を使用できる。ELISA法は比較的低コストで導入でき、最も典型的な手法である。ELISA法は、測定したい物質と特異的に反応する抗体もしくは既知量の抗原を固相化したマイクロプレートに、測定したい物質と酵素標識抗原とを同時に加えて反応させ、プレートに結合した酵素標識物の酵素活性を比色法や蛍光法により計測して、特異的相互作用を測定する方法である。抗体の高い結合能と分子認識能を利用するため、HPLC法等と比較して非常に高感度な検出が可能である。
BIACOREシステムは、動的なパラメータを測定できる優れた測定方法で、センサー表面に生体分子を固定化して、相互作用の相手となる分子を添加することでセンサー表面における特異的相互作用をリアルタイムに測定する。分子標識の必要なしに、特異的相互作用について結合反応から平衡状態および解離反応までをリアルタイムに測定することが可能である。測定操作は、リガンドをセンサー表面に固定化した後、マイクロ流路系を介して反応物質を含む試料溶液を添加することにより、センサー表面でおこる特異的相互作用を微細な質量変化として測定する。その測定原理に表面プラズモン共鳴(Surface plasmonresonance、SPR)とよばれる光学現象を採用することで信頼性のある測定が行える。直接得られた反応速度をもとに、結合速度定数(ka)および解離速度定(kd)を算定でき詳細な解析が可能である[Jonsson et al., Biotechniques. 1991 Nov;11(5):620-7.、Fivash et al., Curr Opin Biotechnol. 1998 Feb;9(1):97-101.、生命科学のための機器分析実験ハンドブック, 羊土社(2007):243-248.]。
FACS分析は、典型的にはフローセル内を流れる細胞にレーザー光をあて、細胞からの前方散乱光、側方散乱光からパラメータを測定し、細胞の特性を決める解析手法である。一つの細胞に結合する蛍光標識抗体は、その細胞の表面抗原の量と比例することから、蛍光強度と表面抗原の量が比例する。
なお 、OPN結合性抗体による、好中球の集積の阻害強度は、例えば後述する実施例に記載の方法で評価できる。このとき、本実施形態のOPN結合性抗体を用いた場合の好中球の数は、ネガティブコントロールを用いた場合に比べて少ない方がよく、例えば70、50、30、10、5、または0%であってもよい。この割合は、ここで例示したいずれか1つの値以下、またはいずれか2つの値の範囲内であってもよい。
本発明の他の実施形態は、上記OPN結合性抗体を含有する、診断薬である。この診断薬は、上記OPN結合性抗体を含むため、OPNの重合化が関連する種々の疾患の診断に好適に使用できる。例えば、OPNを含有する被検試料に対して、上記OPN結合性抗体が結合性を有さなければOPNの重合化が起きている可能性が高く、上記疾患を罹患している、または上記疾患を将来発症するリスクを秘めていると考えることができる。
本明細書において「診断薬」とは、被検者の疾患もしくは疾患可能性の診断、または被験者由来の被検試料における疾患関連物質の検査に関して使用可能な物質を表す。ここで、診断薬の使用方法は特に限定しないが、例えば、被検試料と、他の試料(例えば、コントロール試料など)において、OPNの重合化の様態を検査、比較することで上記疾患の診断が可能になると考えられる。例えば、疾患がOPNの重合化に起因しているときには、被検試料においてOPN結合性抗体の結合量が減少すると考えられる。
また、本明細書において「被検者」とは、ヒトもしくはその他哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスターなど)または鳥類を含む。また、被検試料とは身体や排泄物由来の試料を含み、例えば、細胞、血液、間質液、血漿、血管外液、脳脊髄液、滑液、胸膜液、腹水、血清、リンパ液、体液、唾液、尿、便、痰、膿、病理切片またはそれらから得られる試料(例えば、細胞の培養液や抽出されたtotal RNAなど)を含む。被検試料としては、より診断精度が上がるため、疾患部位から直接的に抽出された組織もしくは細胞、またはそれらから得られる試料を使用することが好ましい。
ここで、診断薬として使用する際の検出方法は特に限定されないが、例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、免疫沈降法、免疫比濁法などを挙げることができる。好ましくはエンザイムイムノアッセイであり、特に好ましいものはELISA(sandwich ELISA等)である。ELISAなどの上述した免疫学的方法は当業者に公知の方法により行うことが可能である。また、診断薬にはPET(Positron Emission Tomography)のための試薬、実験に使用する試薬または材料も含む。
OPN結合性抗体を用いた検出方法は限定しないが、例えば、OPN結合性抗体を支持体に固定し、ここに被検試料を加え、インキュベートを行いOPN結合性抗体と被検試料中のOPNを結合させた後に洗浄して、OPN結合性抗体を介して支持体に結合したOPNを検出することにより、被検試料中のOPNの検出を行う方法を挙げることができる。OPN結合性抗体を介して支持体に結合したOPNの検出の好ましい態様として、標識物質で標識されたOPN結合性抗体を用いる方法を挙げることができる。例えば、支持体に固定されたOPN結合性抗体に被検試料を接触させ、洗浄後に、標識物質で標識されたOPN結合性抗体を接触させ、さらに標識抗体を用いて標識物質を検出し、OPNの指標とする。
抗体の標識は通常知られている方法により行うことが可能である。標識物質としては、蛍光色素、酵素、補酵素、化学発光物質、放射性物質などの当業者に公知の標識物質を用いることが可能であり、具体的な例としては、ラジオアイソトープ(32P、14C、125I、3H、131Iなど)、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロリド、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ビオチンなどを挙げることができる。標識物質としてビオチンを用いる場合には、ビオチン標識抗体を添加後に、アルカリホスファターゼなどの酵素を結合させたアビジンをさらに添加することが好ましい。
本発明の他の実施形態は、上記OPN結合性抗体を含む試薬である。ここで、試薬には、基礎研究のための材料等を含み、例えばELASA、ウェスタンブロッティング、またはFACS分析等に使用できる。この試薬の使用用途は特に限定しないが、例えば、生体組織中のモノマーOPNと重合OPNの比率を計測するために使用できる。また、試薬として用いる際の使用方法もしくは使用例を記載した指示書、その指示書の所在を記載した文面、または種々のバッファーとともに使用しても良い。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、上記実施形態に記載の構成を組み合わせて採用することもできる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1:OPNの調整>
ヒトOPN(hOPN)を、以下の手順により調整した。手順の詳細は、[Yokosaki et al., J Biol Chem. 1999 Dec 17;274(51):36328-34.]に記載されている方法に従った。なお上記hOPNのAccessionナンバー(GenBank)はNM_001040058.1である。
ヒトOPN(hOPN)を、以下の手順により調整した。手順の詳細は、[Yokosaki et al., J Biol Chem. 1999 Dec 17;274(51):36328-34.]に記載されている方法に従った。なお上記hOPNのAccessionナンバー(GenBank)はNM_001040058.1である。
hOPN遺伝子をpGEX6Pプラスミド(GE Healthcare社)に組み込み、グルタチオンS−トランスフェラーゼ融合蛋白質の状態で、大腸菌で発現させた。次に、グルタチオンセファロース4B カラム(GE Healthcare社)に結合させた後、PreScission プロテアーゼ(GE Healthcare社)を用いてhOPNとグルタチオンS−トランスフェラーゼとを切り離し、モノマー状態のhOPN(以下、モノマーhOPNと称することもある)(2 mg/ml、in TBS buffer、pH 7.5)を得た。
さらに、hOPN 500μlと、guinea pig TG2 (オリエンタル酵母社)(2 mg/ml、in TBS buffer、pH 7.5)500 μlおよび5倍濃度重合化バッファー(250 mM Tris-HCl pH 7.5, 25 mM CaCl2, 5 mM DTT)250μlとを、37℃で3~16時間インキュベーションすることによって重合化したhOPN(以下、重合hOPNと称することもある)を得た。
また、モノマー状態のマウスOPN(以下、モノマーmOPNと称することもある)、および重合化したmOPN(以下、重合mOPNと称することもある)を同様の手順で調整した。なお上記mOPNのAccessionナンバー(GenBank)はNM_001204201である。重合化の手順の詳細は、[Nishimichi et al., J Biol Chem. 2009 May 29;284(22):14769-76.]に記載されている方法に従った。
<実施例2:QKQNLLAPQの重合化への影響>
OPNに含まれるQKQNLLAPQ(配列番号1)のアミノ酸配列が、OPNの重合化に影響を持つか調べた。QKQNLLAPQのアミノ酸配列を欠失させたモノマーhOPN(delta QKQNLLAPQ hOPN)を、KOD -Plus- Mutagenesis Kit(TOYOBO社)を用いて調整した。
OPNに含まれるQKQNLLAPQ(配列番号1)のアミノ酸配列が、OPNの重合化に影響を持つか調べた。QKQNLLAPQのアミノ酸配列を欠失させたモノマーhOPN(delta QKQNLLAPQ hOPN)を、KOD -Plus- Mutagenesis Kit(TOYOBO社)を用いて調整した。
野生型のモノマーhOPNと、delta QKQNLLAPQ hOPNを、それぞれguinea pig TG2と反応させた後、還元条件下のSDS-PAGEに供し、ウェスタンブロッティングにより検出した。その結果を図1に示す。図1より、野生型のモノマーhOPNはTG2存在下で重合し、delta QKQNLLAPQ hOPNはTG2存在下ではほぼ重合しなかったことがわかる。即ち、QKQNLLAPQのアミノ酸配列は、TG2によるOPNの重合化に関与する配列である。
また、異種生物間における、抗原ペプチドのアミノ酸配列の相同性は図1に示すとおりである。QKQNLLAPQのアミノ酸配列はヒト、マウス、ラットに存在し、類似のアミノ酸配列からなる部位(Transglutamination motifと称することもある)が、ウサギ、ウシにも存在することがわかる。
<実施例3:抗OPN抗体の作製>
OPNに結合する抗体を、以下の手順により作製した。抗原には、OPNの一部に相当する、QKQNLLAPQのアミノ酸配列からなるペプチド(以下、抗原ペプチドと称することもある)(シグマジェノシス社)を用いた。
OPNに結合する抗体を、以下の手順により作製した。抗原には、OPNの一部に相当する、QKQNLLAPQのアミノ酸配列からなるペプチド(以下、抗原ペプチドと称することもある)(シグマジェノシス社)を用いた。
(3-1)scFv ファージ抗体の調整
抗原ペプチドに結合する、ニワトリ由来のscFv ファージ抗体を以下の手順により調整した。手順の詳細は [nakamura et al., J Vet Med Sci. 2004 Jul;66(7):807-14]に記載されている方法に従った。
抗原ペプチドに結合する、ニワトリ由来のscFv ファージ抗体を以下の手順により調整した。手順の詳細は [nakamura et al., J Vet Med Sci. 2004 Jul;66(7):807-14]に記載されている方法に従った。
2ヶ月齢のH-B15近交系ニワトリに、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)に結合させた抗原ペプチド(以下、KLH 結合抗原ペプチドと称することもある)(100μg/0.5 ml/ニワトリ)を複数回注射することで過免疫した。血中抗体価の上昇したニワトリから脾臓を摘出した後、リンパ球を分離した。抗原ペプチドに対する特異抗体価は、オボアルブミンに結合させた抗原ペプチド(以下、OVA 結合抗原ペプチドと称することもある)に対するELISAにて測定した。ELISAは一般的なプロトコールに従って実施した。
得られたリンパ球からRNAを抽出し逆転写酵素を用いてcDNAの合成を行った。そのcDNAを鋳型に、CHBプライマー(5'-CTGATGGCGGCCGTGACGTT-3')およびCHSFプライマー(5'-TCCACCTGTCGACACGATGACTTCGGT-3')のプライマーセットを用いてニワトリ抗体のVH領域を増幅させ、CLFプライマー(5'-ATTAGCGCGCTTAAGGACGGTCAGGGTT-3')およびCLSBプライマー(5'-TCTGACGTCGCGCTGACTCAGCC-3')のプライマーセットを用いてニワトリ抗体のVL領域を増幅させた。その後、VH領域とVL領域が、リンカー(GGGGS)3を介して繋がるようにアセンブルPCRを行い、scFv遺伝子ライブラリーを作製した。
scFv遺伝子ライブラリーのscFv遺伝子をファージミドベクター pLPDS に組み込み、エレクトロポレーションによりE. coli XL1-Blueに形質転換した。pLPDSは、ファージディスプレイ用発現ベクターであり、ラクトースオペロン(Lac)プロモーター、リボゾーム結合部位(RBS)、M13 geneIIIのリーダー配列(g3l)、クローニングサイト、およびニワトリCλ鎖遺伝子を有し、クローニングサイトに組み込まれた抗体遺伝子が大腸菌のペリプラズムを経て再構成ファージ体として発現できるように設計されている。
さらにヘルパーファージVCS-M13(Stratagene社)を感染させて、培養上清中に抗体を発現しているファージディスプレイscFvライブラリーを調整した。
次に、OVA結合抗原ペプチド(2.5μg/ml in PBS)を96穴プレートに50μlずつ添加し、4℃で一夜コートした後、2% non-fat dried milk-TBSで37°C で1 時間ブロッキングした。上記のファージディスプレイscFvライブラリーを、プレートに固定されたOVA 結合抗原ペプチドを用いて4回パニングした。このパニングセレクションの手順の詳細は[Nakamura er al., Cytotechnology. 2000 Mar;32(3):191-198.]に記載されている方法に従った。パニング済のファージディスプレイscFvライブラリーから、ELISAで標的抗原に対して強い陽性反応を示すscFv ファージ抗体を選別し、抗体CDRのDNA配列を解析した。その結果を表1に示す。抗体CDRのDNA配列は、[Kabat et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.] の方法に準じて特定した。なお、パニングしたライブラリー由来の約100個のファージクローンのうち、約60個が陽性反応を示していた。ELISAの二次抗体にはペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ニワトリIgG (H+L) 抗体(x1/10,000、 Bethyl)、基質にはo−フェニレンジアミンサルフェート(KATAYAMA CHEM社)を用い、490 nmの吸光度により測定した。
(3-2)ニワトリーマウス抗体への組換え
ニワトリーマウスキメラ抗OPN IgG1を、以下の手順により作製した。手順の詳細は、[Tateishi et al., J Vet Med Sci. 2008 Apr;70(4):397-400.]に記載されている方法に従った。
ニワトリーマウスキメラ抗OPN IgG1を、以下の手順により作製した。手順の詳細は、[Tateishi et al., J Vet Med Sci. 2008 Apr;70(4):397-400.]に記載されている方法に従った。
scFv ファージ抗体を鋳型に、VH-bivalent-Fプライマー(5'-CCCACAGGGCTGATGGCGGCCGTGACGTTGGACG-3')およびVH-reverseプライマー(5'-GGAGGAGACCATGACTTCGGT-3')のプライマーセットを用いてニワトリ抗体のVH領域を増幅させた。H鎖リーダー配列およびCH1 PCRフラグメントを上記文献に従い調整した。H鎖リーダー配列、VH領域、およびCH1 PCRフラグメントをオーバーラップPCRで繋ぎ、さらにpcChMo/Hベクターへクローニングした。pcChMo/Hベクターは、マウスキメラ抗体のH鎖発現用ベクターであり、cytomegalovirusプロモーター、クローニングサイト、マウス抗体H鎖定常領域、6×Hisリピート配列、および薬剤耐性遺伝子(zeocinおよびAmp)を有し、クローニングサイトに組み込まれた抗体遺伝子が、マウス抗体H鎖定常領域と結合した状態で発現できるように設計されている。
また、scFv ファージ抗体を鋳型に、VL-bivalent-Fプライマー(5'-AGGTTCCCTGGTGCAGGCAGCAGTGACTCAGCCGC-3')およびVL-reverseプライマー(5'-GCCGAGGACGGTCAGGGTT-3')のプライマーセットを用いてニワトリ抗体のVL領域を増幅させた。L鎖リーダー配列およびCκ PCRフラグメントを上記文献に従い調整した。L鎖リーダー配列、VL領域、およびCκ PCRフラグメントをオーバーラップPCRで繋ぎ、さらにpcChMo/Lベクターへクローニングした。pcChMo/Lベクターは、マウスキメラ抗体のL鎖発現用ベクターであり、cytomegalovirusプロモーター、クローニングサイト、マウス抗体L鎖定常領域、および薬剤耐性遺伝子(neomycinおよびAmp)を有し、クローニングサイトに組み込まれた抗体遺伝子が、マウス抗体L鎖定常領域と結合した状態で発現できるように設計されている。
作製したH鎖、L鎖のコンストラクトを、293fectin(Invitrogen社)を用いてほ乳類培養細胞(FreeStyle 293-F cslls)(Invitrogen社)にトランスフェクトした。さらに、FreeStyle 293 expression medium (Invitrogen社) を用いて、旋回培養器BR-40FL(タイテック社)中にて8%CO2、125 rpm, 37℃の条件で30 ml、3日間培養を行ない、その培養液上清から、Nickel-NTA アガロース(キアゲン社)によってニワトリーマウスキメラ抗OPN IgG1を精製した。溶出後のニワトリーマウスキメラ抗OPN IgG1をpH7.5のTBS bufferに置換した。
<実施例4:認識部位および交差反応性の評価>
上記の実験で得られたニワトリーマウスキメラ抗OPN IgG1をHUPB1 chimeric IgGと命名し、以下の通りELISAによってHUPB1 chimeric IgGが認識する部位、およびHUPB1 chimeric IgGの交差反応性を調べた。
上記の実験で得られたニワトリーマウスキメラ抗OPN IgG1をHUPB1 chimeric IgGと命名し、以下の通りELISAによってHUPB1 chimeric IgGが認識する部位、およびHUPB1 chimeric IgGの交差反応性を調べた。
固定化抗原には、モノマーhOPN、delta QKQNLLAPQ hOPN、またはモノマーmOPNを用いた。各々のOPN(2.5 μg/ml、in PBS buffer、pH 7.4)を96穴プレートに50μlずつ添加し、4℃で一夜コートした。プレートを25% ブロックエース(雪印社)-PBSでブロッキング後、HUPB1 chimeric IgG(1μg/ml)50μlを反応させた。ELISAの二次抗体にはペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(Cappel社)、基質にはo−フェニレンジアミンサルフェート(KATAYAMA CHEM社)を用い、490 nmの吸光度により測定した。
また、HUPB1 chimeric IgGに変えて、hOPN全長を抗原として作製した抗hOPNニワトリIgY(anti-hOPN chick IgY)を用いて、上記と同様の手順で抗体の認識部位、および交差反応性を調べた。
その結果を図2Aに示す。HUPB1 chimeric IgGは、hOPNおよびmOPNに結合し、delta QKQNLLAPQ hOPNには結合しなかった。一方で、anti-hOPN chick IgYは、hOPNおよびdelta QKQNLLAPQ hOPNに結合し、mOPNには結合しなかった。
また、モノマーhOPNまたはモノマーmOPNが固定化されたプレートに、抗原ペプチド(QKQNLLAPQ、1mg/ml、in PBS buffer、pH 7.4)およびHUPB1 chimeric IgG(1μg/ml)を50μlずつ添加し、competition ELISAを行なった。
その結果を図2Bに示す。HUPB1 chimeric IgGは、抗原ペプチド非存在下でhOPNおよびmOPNに結合し、抗原ペプチド存在下ではhOPNおよびmOPNに結合しなかった。
これらの結果から、HUPB1 chimeric IgGは、ヒトとマウス由来のOPNに交差反応性を有し、且つOPNのQKQNLLAPQからなるアミノ酸配列を認識する、特徴的なOPN結合性抗体であることがわかる。この抗体を用いれば、ヒトおよびマウスの組織または細胞等のOPNの局在を調べることが可能となる。
<実施例5:モノマーOPNおよび重合OPNへの反応性の評価>
HUPB1 chimeric IgGの、モノマーOPNおよび重合OPNへの反応性を以下の通りELISAによって調べた。
HUPB1 chimeric IgGの、モノマーOPNおよび重合OPNへの反応性を以下の通りELISAによって調べた。
固定化抗原には、モノマーhOPN、モノマーmOPN、重合hOPN、重合mOPNを用いた。まず、各々のOPN(2.5 μg/ml、in PBS buffer、pH 7.4)を96穴プレートに50μlずつ添加し、4℃で一夜コートした。プレートを25% ブロックエース(雪印社)-PBSでブロッキング後、HUPB1 chimeric IgG(1μg/ml)50μlを反応させた。ELISAの二次抗体にはペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(Cappel社)、基質にはo−フェニレンジアミンサルフェート(KATAYAMA CHEM社)を用い、490 nmの吸光度により測定した。その結果を図3Aに示す。
また、HUPB1 chimeric IgGに変えて、anti-hOPN chick IgY、またはmOPN内に存在する配列VDVPNGRGDSLAYGLRをペプチドとして合成し、これを抗原として作製した抗mOPNニワトリIgY(anti-mOPN chick IgY)を用いて、上記と同様の手順でモノマーOPNおよび重合OPNへの反応性を調べた。その結果を図3B、図3Cに示す。なお、anti-hOPN chick IgYおよびanti-mOPN chick IgYの作製において、scFv ファージ抗体の作製方法は上記HUPB1 chimeric IgGの場合と同様であり、ニワトリモノクローナル抗体への組換えは[Shimamoto et al., Biologicals. 2005 Sep;33(3):169-74]に記載の方法と同様に行なった。
これらの実験においてHUPB1 chimeric IgGは、モノマーhOPNおよびモノマーmOPNに結合し、重合hOPNおよび重合mOPNには結合しなかった。一方で、anti-hOPN chick IgYは、モノマーhOPNおよび重合hOPNに結合した。anti-mOPN chick IgYは、モノマーmOPNおよび重合mOPNに結合した。
これらの結果から、HUPB1 chimeric IgGは、モノマーOPNに結合性を有し、且つ重合OPNに結合性を有しない、特徴的なOPN結合性抗体であることがわかる。この抗体を用いれば、ヒトの組織または細胞等のOPNの重合化の様態を調べることが可能となる。
<実施例6:OPN重合化の阻害活性の評価>
OPN は、guinea pig TG2によって重合化することが知られている(Higashikawa et al., FEBS Lett. 2007 Jun 12;581(14):2697-701.)。この重合化における、HUPB1 chimeric IgGの影響を調べた。
OPN は、guinea pig TG2によって重合化することが知られている(Higashikawa et al., FEBS Lett. 2007 Jun 12;581(14):2697-701.)。この重合化における、HUPB1 chimeric IgGの影響を調べた。
モノマーmOPN(50μg/ml)5μl、およびモノマーmOPNに対して0.5〜4倍過剰モル濃度のHUPB1 chimeric IgG(20-250μg/ml)5μlを混合し、37℃でインキュベーションした。30分後、TG2(50μg/ml)10μlおよび5倍濃度重合化バッファー(250 mM Tris-HCl pH7.5, 25 mM CaCl2, 5 mM DTT)を加えた。さらに3時間後、反応溶液を還元条件下のSDS-PAGE(50 ng モノマーmOPN/lane)に供し、ウェスタンブロッティングを行なった。SDS-PAGE後のサンプルをImmun-Blot PVDF membrane(Bio-Rad社)に1時間、350 mAの電流で転写した。一次抗体にホースラディッシュペルオキシダーゼ標識抗モノマーmOPN chick IgYを使用し、室温で30min反応させた。基質にはImmobilon Western HRP Substrate(Millipore社)を使用した。
また、HUPB1 chimeric IgGに変えて、anti-DNP(anti-dinitrophenyl) chimeric IgGを用いて、上記と同様の手順で重合化への影響を調べた。
その結果を図4に示す。モノマーmOPNは、HUPB1 chimeric IgG存在下で重合が抑制された。特に、HUPB1 chimeric IgGがモノマーmOPNと同濃度以上の時に、顕著に重合を抑制した。一方で、モノマーmOPNは、anti-DNP chimeric IgG存在下で重合が抑制されなかった。anti-DNP chimeric IgGの濃度を上げても同様であった。1.0、2.0、または4.0倍過剰モル濃度のHUPB1 chimeric IgGを用いた場合、重合したOPNの量は、anti-DNP chimeric IgGを用いた場合に比べて、それぞれ約80、約40、または約10%以下に抑えられていた。
これらの結果から、HUPB1 chimeric IgGは、OPNの重合化を顕著に阻害する特徴的なOPN結合性抗体であることがわかる。
<実施例7:マウスにおける好中球集積の阻害活性の評価>
マウス(C57/BL6マウス、雌)にHUPB1 chimeric IgG、およびモノマーmOPNを腹腔内投与した。3時間後に腹腔内にPBS buffer (pH 7.4) 3ml を注入して腹水を採取した。その腹水から標本を作製し、光学顕微鏡を用いて好中球の集積状況を調べた。また、HUPB1 chimeric IgGに変え、anti-DNP chimeric IgGを用いて、上記と同様の手順で好中球の集積状況を調べた。それらの結果を図5に示す。図5において、マイナスはanti-DNP chimeric IgGを用いた場合の好中球の数を、プラスはHUPB1 chimeric IgGを用いた場合の好中球の数を表している。anti-DNP chimeric IgGを用いた場合の好中球の数は約0.6×106であり、HUPB1 chimeric IgGを用いた場合の好中球の数は約0.3×106であった。即ち、HUPB1 chimeric IgGを投与すると、約50%以下に好中球の数が減少していた。
マウス(C57/BL6マウス、雌)にHUPB1 chimeric IgG、およびモノマーmOPNを腹腔内投与した。3時間後に腹腔内にPBS buffer (pH 7.4) 3ml を注入して腹水を採取した。その腹水から標本を作製し、光学顕微鏡を用いて好中球の集積状況を調べた。また、HUPB1 chimeric IgGに変え、anti-DNP chimeric IgGを用いて、上記と同様の手順で好中球の集積状況を調べた。それらの結果を図5に示す。図5において、マイナスはanti-DNP chimeric IgGを用いた場合の好中球の数を、プラスはHUPB1 chimeric IgGを用いた場合の好中球の数を表している。anti-DNP chimeric IgGを用いた場合の好中球の数は約0.6×106であり、HUPB1 chimeric IgGを用いた場合の好中球の数は約0.3×106であった。即ち、HUPB1 chimeric IgGを投与すると、約50%以下に好中球の数が減少していた。
この結果から、HUPB1 chimeric IgGは、in vivoで好中球の集積を阻害する効果を有する、特徴的なOPN結合性抗体であることがわかる。
<結果の考察>
以上の結果から、本実施例に記載の生産方法により得られたOPN結合性抗体は、1)ヒトおよびマウス由来のOPNに交差反応性を有する、2)OPNのQKQNLLAPQからなるアミノ酸配列に結合する、3)モノマーOPNに結合性を有し、重合OPNに結合性を有しない、4)OPNの重合化を顕著に阻害する活性を有する、5)in vivoで好中球の集積を阻害する、または6)CDRに表1に示すアミノ酸配列を有する、特徴を有していることがわかる。
以上の結果から、本実施例に記載の生産方法により得られたOPN結合性抗体は、1)ヒトおよびマウス由来のOPNに交差反応性を有する、2)OPNのQKQNLLAPQからなるアミノ酸配列に結合する、3)モノマーOPNに結合性を有し、重合OPNに結合性を有しない、4)OPNの重合化を顕著に阻害する活性を有する、5)in vivoで好中球の集積を阻害する、または6)CDRに表1に示すアミノ酸配列を有する、特徴を有していることがわかる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解され
るところである。
るところである。
Claims (25)
- オステオポンチンのトランスグルタミネーション部位を認識する、オステオポンチン結合性抗体。
- 好中球の集積を阻害する、請求項1に記載のオステオポンチン結合性抗体。
- オステオポンチンの重合化を阻害する、請求項1に記載のオステオポンチン結合性抗体。
- オステオポンチン内の配列番号1からなるアミノ酸配列を認識する抗体である、請求項2に記載のオステオポンチン結合性抗体。
- モノマーオステオポンチンに対して結合性を有し、重合オステオポンチンに対して結合性を有さない抗体である、請求項2に記載のオステオポンチン結合性抗体。
- ヒト、マウス、およびラット由来のいずれのオステオポンチンにも結合する抗体である、請求項2に記載のオステオポンチン結合性抗体。
- モノクローナル抗体である、請求項2に記載のオステオポンチン結合性抗体。
- モノマーオステオポンチンに対して結合性を有し、重合オステオポンチンに対して結合性を有さない、オステオポンチン結合性抗体。
- 好中球の集積を阻害する、請求項8に記載のオステオポンチン結合性抗体。
- オステオポンチンのトランスグルタミネーション部位を認識する抗体である、請求項8に記載のオステオポンチン結合性抗体。
- 抗体重鎖可変領域の重鎖CDR1のアミノ酸配列が、
g)配列番号2のアミノ酸配列、
h)配列番号2において1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2のアミノ酸配列が、
i)配列番号3のアミノ酸配列、
j)配列番号3において1〜4個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3のアミノ酸配列が、
k)配列番号4のアミノ酸配列、
l)配列番号4において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含み、好中球の集積を阻害するオステオポンチン結合性抗体。 - 請求項11に記載のオステオポンチン結合性抗体であって、
抗体軽鎖可変領域の軽鎖CDR1のアミノ酸配列が、
m)配列番号5のアミノ酸配列、
n)配列番号5において1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2のアミノ酸配列が、
o)配列番号6のアミノ酸配列、
p)配列番号6において1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR3のアミノ酸配列が、
q)配列番号7のアミノ酸配列、
r)配列番号7において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、オステオポンチン結合性抗体。 - オステオポンチンのトランスグルタミネーション部位を認識する抗体である、請求項12に記載のオステオポンチン結合性抗体。
- オステオポンチンの重合化を阻害する抗体である、請求項12に記載のオステオポンチン結合性抗体。
- 重鎖CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号2、3、および4のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列であり、軽鎖CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号5、6、および7のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列である、請求項12に記載のオステオポンチン結合性抗体。
- 抗体断片である、請求項1に記載のオステオポンチン結合性抗体。
- 請求項1に記載のオステオポンチン結合性抗体をコードする塩基配列を含む、ポリヌクレオチドまたはベクター。
- 請求17に記載のポリヌクレオチドまたはベクターを含む、細胞または形質転換体。
- 請求項2に記載のオステオポンチン結合性抗体を含む、好中球集積阻害剤。
- 請求項3に記載のオステオポンチン結合性抗体を含む、オステオポンチン重合化阻害剤。
- 好中球の集積を阻害するオステオポンチン結合性モノクローナル抗体を含む、好中球集積阻害剤。
- 前記抗体がオステオポンチンの重合化を阻害する抗体である、請求項21に記載の好中球集積阻害剤。
- 前記抗体がオステオポンチンまたはその断片をニワトリに免役して得られる抗体である、請求項22に記載の好中球集積阻害剤。
- 請求項1に記載のオステオポンチン結合性抗体を含む、診断薬。
- 請求項1に記載のオステオポンチン結合性抗体を含む、試薬。
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JPN6011019234; 生化学 抄録CD, 2008, 4P-0509 * |
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