この発明は、通信圏内に位置する複数の移動体に対し車々間通信を行う、無線通信装置に関する。
車両に車々間通信装置を搭載し、自車両と他車両との間で上述した車々間通信を行うことで、車両同士の接触事故や衝突事故を防止する車々間通信技術が提案されている。具体的には、自車両の位置や速度、進行方向等に関する情報を他車両に送信し、また、他車両の位置や速度に関する情報を受信して衝突の危険性があるか否かを判定し、衝突の危険性がある場合には、双方の車両で回避行動を提案し、実行することで、衝突を未然に防止する技術である(例えば、非特許文献1参照)。
非特許文献1に開示されているように、車々間通信は、電源投入時に生成される自車両識別符号(送信元ID)と自車両情報からなるパケットの送信を車速に応じた一定の周期で試み、また、他車両が車々間通信を行っている場合は、パケットの衝突回避のために所定時間経過後に再度送信を試みる、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)の通信手順に従って動作するように規定されている。
ところで、全ての車両に上述した車々間通信装置が搭載され、あるいは歩行者が所持する携帯電話等に上述した車々間通信機能が搭載されている場合は、その車々間通信機能により、移動体同士の衝突を回避することができる。しかしながら、全ての移動体、特に、歩行者や自転車に車々間通信装置を所持させ、あるいは搭載することは困難であり、従って、車々間通信装置を搭載した車両と、車々間通信装置を持たない車両、自転車、あるいは歩行者との間で衝突が発生するというケースが考えられる。
このため、従来、車々間通信装置とセンサとを搭載した車両が、センサで歩行者を検出し、検出した歩行者の情報を車々間通信により他車両に送信することで、未然に歩行者との衝突事故を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
「5.8GHzを用いた車々間通信システムの実験用ガイドライン」ITS FORUM RC−005 1.0版、平成19年5月18日策定(ITS情報通信システム推進会議)
しかしながら、特許文献1に開示された技術によれば、歩行者情報を車々間通信で送信することはできるが、車々間通信は、自車両の情報を他車両に送信するための通信であるため、自車両情報に移動体情報としての歩行者情報を付加して送信する必要がある。例えば、歩行者情報を送信する車々間通信フレームのデータ形式として、図17(a)、図18に示すデータ形式が考えられる。図17(a)は、自車両の情報に一人分の歩行者情報を付加して送信するデータ形式であり、図18は、歩行者情報を纏めて付加して送信する場合のデータ形式である。
ここで、複数の歩行者が存在する場合、図17(a)に示す車々間通信フレームのデータ形式を使用すると、図17(b)に示されるように、一人の歩行者情報を送信後、次の歩行者情報を送信するためには、図20の表に示すように、車両速度[km/h]に応じて決まる自車両の送信周期[ms]を待って送信する必要があるため、歩行者を検出してからその歩行者情報を送信するまでに多大な時間を要するといった問題がある。
一方、複数の歩行者がいる場合に、1個の送信元IDに複数の歩行者情報を付加して送信する、図18に示す車々間通信フレームのデータ形式を使用すると、図19のタイミング図に示すように、自車両の送信データサイズが大きくなるため、自車両の送信完了を複数の他車両が待つ状態が発生すると考えられる。そのため、(a)自車両がパケット送信を完了した際、タイミングによっては(b)他車両#1と(c)他車両#2の送信タイミングが重なり、他車両#1、他車両#2が送信したパケットが衝突し、データが消失するという問題が発生しやすくなる。
また、他車両#1では本来の送信周期よりα1の時間遅れてデータ送信し、他車両#2では本来の送信周期よりα2の時間遅れてデータ送信することになり、したがって、図19に示すデータ形式では他車両の送信周期に影響を与えやすいという問題もある。更に、受信側では、車々間通信で受信した車両情報とセンサで取得した歩行者情報との両方を処理する必要があり、したがって、受信処理が複雑になるという問題もある。
この発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、歩行者等の移動体を検出してから移動体情報を送信するまでの時間を短縮するとともに、自車両の情報、移動体情報ともに同一フォーマットで送信するため、送信時間が一定となり、データの衝突の機会を減少させ、さらに、受信処理を簡素化した無線通信装置を提供することを目的とする。
この発明は、通信圏内に位置する複数の移動体に対して車々間通信を行う無線通信装置であって、車々間通信機能を持つ他車両との間で車々間通信を行う車々間通信部と、移動体を検知し、移動体の位置を含む移動体情報を取得する移動体情報取得部と、移動体情報取得部が取得した移動体情報に送信元識別符号を割り当て、他車両が送信中でなく、自車両に割り当てられた送信周期以外のタイミングで、送信元識別符号と移動体情報とを統合し、車々間通信部により送信する制御部と、を備えたことを特徴とする。
この発明によれば、制御部は、移動体情報に送信元識別符号を割り当て、他車両が送信中でなく、自車両に割り当てられた送信周期以外のタイミングで、送信元識別符号と移動体情報とを統合して送信する。このため、自車両情報と移動体情報とを同一データ形式で送信することで送信時間が一定になって衝突の機会が減り、また、自車両の送信周期に影響されること無く移動体情報の送信が可能になるため、移動体を検出してから移動体の情報を送信する間の時間が短縮される。更に、他車両の情報、移動体の情報共に同一データ形式で送信されるため、受信側での処理を簡素化できる。
この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の車々間通信フレームのデータ形式を示す図である。
この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の送信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の受信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態1に係る無線通信装置を搭載した車両の交差点周辺での走行環境を示した図である。
この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の構成を示す図である。
この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の送信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の受信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態2に係る無線通信装置を搭載した車両の交差点周辺での走行環境を示した図である。
この発明の実施の形態3に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
この発明の実施の形態3に係る無線通信装置の送信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態3に係る無線通信装置を搭載した車両の交差点周辺での走行環境を示した図である。
この発明の実施の形態4に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
この発明の実施の形態4に係る無線通信装置の送信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態4に係る無線津新装置の受信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態4に係る無線通信装置を搭載した車両の交差点周辺での走行環境を示した図である。
従来の無線通信装置が使用する車々間通信の通信フレームのデータ形式の一例を示す図である。
従来の無線通信装置が使用する車々間通信フレームのデータ形式の他の例を示す図である。
図18に示す通信フレームを用いて車々間通信を行った場合の移動体情報送信時のタイミング図である。
車々間通信における車両速度と送信周期との関係を表形式で示した図である。
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。ここでは、無線通信装置として、単一の伝送チャンネルを用い、通信ゾーン内に位置する複数の移動体に対して一斉同報による車々間通信を行う、車両に搭載される車々間通信装置1aが例示されている。図1によれば、車々間通信装置1aは、車々間通信アンテナ11と、車々間通信部12と、自車両情報取得部13と、移動体情報取得部14と、制御部15とにより構成される。ただし、複数の車々間通信装置が同一の伝送チャンネルで通信していればよく、必ずしも単一の伝送チャンネルでの通信に限定されるものではない。また、通信中に伝送チャンネルを占有していれば、特定の車両に対する通信でもよく、必ずしも一斉同報による車々間通信に限定されるものではない。
車々間通信アンテナ11は、車々間通信で使用される5.8GHz帯の周波数の電波を送受信するアンテナであり、車々間通信部12に接続される。車々間通信部12は、制御部15による制御の下で、通信圏内に位置して車々間通信機能を有する複数の車両との間で、CSMA/CAプロトコルによる車両情報、二輪車情報、自転車情報あるいは歩行者情報の送受信を行う。ただし、車々間通信に使用する周波数は5.8GHzに限定するものではなく、車両と車両が通信する車々間通信に用いられる周波数であればなんでも良い。ここで、車両情報とは、自車両の位置を含む走行速度、進行方向等に関する情報であり、二輪車情報とは、二輪車の位置を含む走行速度、進行方向等に関する情報であり、自転車情報とは、自転車の位置を含む走行速度、進行方向等に関する情報であり、歩行者情報とは、歩行者の位置を含む歩行速度、進行方向に関する情報である。また、通信する情報は上記情報を含んでいればよく、移動体に関するターンシグナル、ブレーキランプ、加速度等の情報を含んでいてもよい。
自車両情報取得部13は、不図示のGPS(Global Positioning System)、車速、ジャイロ等、車両に付属の各種センサにより、自車両の緯度・経度からなる位置情報、および車速や進行方向等に関する自車両情報を取得して制御部15へ出力する。移動体情報取得部14は、他車両や歩行者等の移動体を検知し、これら移動体の位置を含む移動体情報を取得する機能を有する。具体的には、不図示のカメラ、レーダ、レーザー等のセンサ類を用い、他車両、歩行者、自転車等の移動体を検知し、その緯度・経度に関する位置情報の他、速度、進行方向等車々間通信に関する移動体情報を取得して制御部15に出力する。
制御部15は、移動体情報取得部14が取得した移動体情報に送信元識別符号(送信元ID)を割り当て、車々間通信部12を介して車々間通信により送信する機能を有する。このとき、制御部15は、車々間通信部12を介して他車両が送信中であるか否かを判定し、他車両が送信中でなく、自車両に割り当てられた送信周期以外のタイミングで、送信元IDと移動体情報とを統合し、車々間通信部12を介して送信する。制御部15はまた、移動体情報取得部14から移動体情報を取得すると、自車両情報取得部13から自車両の位置を含む自車両情報を取得して、移動体と自車両との衝突の可能性を演算により判定し、乗員に情報提供する機能も有する。このため、制御部15は、主制御部150と、送信周期管理部151と、送信元ID管理部152と、情報提供部153とを含み、構成される。
送信周期管理部151は、自車両の速度に応じて自車両情報を送信する車々間通信の送信周期を管理する機能を有する。また、送信元ID管理部152は、装置電源ON時に自車両の送信元IDを生成して電源OFF時まで保持する他、主制御部150から要求があった場合、新規に送信元IDを生成する機能を有する。情報提供部153は、主制御部150による制御の下で、音声や表示により自車両周囲の移動体情報をドライバに提供する機能を有する。
なお、主制御部150は、移動体情報取得部14が取得した移動体情報に送信元IDを割り当て、他車両が送信中でなく、自車両に割り当てられた送信周期以外のタイミングで、送信元IDと移動体情報とを統合し、車々間通信部12を介して送信する他、移動体情報を取得すると、自車両の位置を含む情報を取得して、移動体と自車両との衝突の可能性を演算により判定して乗員に情報提供する制御部15としての機能を実行するために、上述した、送信周期管理部151と、送信元ID管理部152と、情報提供部153とのシーケンス制御を行う。
図2に、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置が使用する車々間通信フレームの移動体情報のデータ形式の一例が示されている。図2によれば、図17〜図19に示した従来の車々間通信フレームのデータ形式と異なり、自車両情報と同様、歩行者情報が、送信元ID201と、移動体情報(緯度、経度、速度、進行方向等)202とが組み合わされた構造になっている。なお、送信元IDは、制御部15により、他車両が送信中でなく、自車両の送信周期以外のタイミングで移動体情報を取得する毎に逐次生成される。詳細は後述する。
図3は、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の送信時の動作を示すフローチャートである。以下、図3のフローチャートを参照しながら、図1、図2に示す、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の送信時の動作について詳細に説明する。
図3によれば、制御部15(主制御部150)は、まず、車々間通信アンテナ11及び車々間通信部12を介して他車両が送信中か否かを判定する(ステップST101)。ここで、他車両が送信中でないと判定された場合(ステップST101“YES”)、主制御部150は、送信周期管理部151により自車両が送信周期であるか否かを判定する(ステップST102)。ここで、自車両の送信周期であると判定された場合(ステップST102“YES”)、主制御部150は、自車両情報取得部13が取得した、緯度、経度、速度、進行方向からなる自車両情報を取り込む(ステップST103)。続いて主制御部150は、送信元ID管理部152が生成する自車両の送信元IDを取得し(ステップST104)、送信元IDと自車両情報からなる車々間通信フレームを組み立て、車々間通信部12、車々間通信アンテナ11経由で送信する(ステップST105)。
一方、ステップST102の「自車両の送信周期判定処理」において、自車両が送信周期でないと判定された場合(ステップST102“NO”)、主制御部150は、移動体情報取得部14から移動体情報が取得可能か否かを判定する(ステップST106)。ここで、移動体情報が取得可能であると判定された場合(ステップST106“YES”)、主制御部150は、送信元ID管理部152に移動体用の送信元ID生成を指示し、これを受けて送信元ID管理部152は、移動体用の送信元IDを生成する(ステップST107)。続いて主制御部150は、移動体情報取得部14から取得した移動体情報と、送信元ID管理部152が生成した送信元IDを統合し、図2に示した車々間通信フレームのデータ形式に従うパケットを組み立てる(ステップST108)。そして、車々間通信部12、車々間通信アンテナ11経由で生成した移動体情報を通信圏内にいる他車両に向けて一斉に同報送信する(ステップST109)。
なお、ステップST101の「他車両の送信中判定処理」において、他車両が送信中であると判定された場合(ステップST101“NO”)、主制御部150は、所定時間待機し(ステップST110)、所定時間経過後、再度、ステップST101の「他車両の送信中判定処理」を実行する。
次に、車々間通信装置1aの受信時の動作について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。図4によれば、主制御部150は、まず、車々間通信アンテナ11及び車々間通信部12を介して移動体情報を受信したか否かを判定する(ステップST111)。ここで、移動体情報を受信したと判定された場合(ステップST111“YES”)、主制御部150は、自車両情報取得部13が取得した自車両情報を取り込む(ステップST112)。そして、主制御部150は、取得した移動体情報と自車両情報とに基づき、移動体と自車両との衝突の可能性について、両者の位置情報予測に基づく演算により判定する(ステップST113)。なお、衝突判定の演算方法については周知であるため、ここでは詳細説明を省略する。
ここで、衝突可能性ありと判定された場合(ステップST114“YES”)、主制御部150は、情報提供部153により移動体の存在をドライバに情報提供する(ステップST115)。具体的に、情報提供部153は、主制御部150による制御の下で、例えば、不図示のナビゲーション装置等から得られる地図情報に基づき、表示モニタを使用して、自車両周囲の地図上に自車両及び移動体の位置関係を表示し、必要に応じて移動体の接近をドライバに通知する。なお、ステップST114の判定が“NO”の場合は動作を終了する。
図5に、車々間通信装置1aを搭載した車両の交差点周辺での走行環境が示されている。図5には、車両Aが走行し、歩行者C、歩行者D、歩行者Eが歩行する道路と、車両Bが走行する道路とが交差する交差点(T字路)が例示されている。ここでは、車両A及び車両Bは、上述した車々間通信装置1aを搭載しており、歩行者C、歩行者D、歩行者Eは、車々間通信機能を有する端末を所持しないものとする。以下、図5を参照しながら、図3、図4にフローチャートで示した車々間通信装置1aの送受信時の動作の補足説明を行う。
車両Aの車々間通信装置1a(制御部15)は、移動体としての歩行者Cの検出を行ない、図3のステップST106の「移動体情報取得判定処理」で、歩行者Cの、緯度、経度、速度、進行方向等の情報を取得する。なお、歩行者Cの緯度、経度の情報については、自車両の、緯度、経度、及び自車両との相対位置から算出するものとする。そして、制御部15は、ステップST107の「送信元ID生成処理」で、歩行者Cに対し、送信元IDとして“C”を割り当てる。次に、ステップST108の「送信元IDと移動体情報との統合処理」で生成した移動体情報を、図2に示す車々間通信フレームのデータ形式に従い一斉に同報送信する。
なお、歩行者D、及び歩行者Eについても同様に移動体情報を生成し、歩行者Dには送信元IDとして“D”を、歩行者Eには、送信元IDとして“E”をそれぞれ割り当て、車々間通信装置1aを搭載した車両Bが送信中でなく自車両が送信周期以外のタイミングで、車々間通信により車々間通信装置1aを搭載した他車両Bに送信する。また、車両Aの送信周期では、ステップST102〜ST105で示す「自車両情報の送信処理」を行い、送信元IDとして“A”を取得して自車両情報を送信する。
なお、車両Bでは、車両Aの自車両情報は送信元IDが“A”、歩行者Cの移動体情報は送信元IDが“C”、歩行者Dの移動体情報は送信元IDが“D”、歩行者Eの移動体情報は送信元IDが“E”として受信されるため、車両Aの他に、歩行者C、歩行者D、歩行者Eが、あたかも車々間通信機能を有する端末を所持し、車々間通信しているようにみえる。したがって、車両Bの車々間通信装置1a(制御部15)は、図4のステップST114の「衝突危険性の判定処理」でドライバへの情報提供の可否を判断するため、車両Aの自車両情報、歩行者C、歩行者D、歩行者Eの移動体情報の全てに対して同じ受信処理を行うことができる。なお、車両Aの移動体の検出対象は、歩行者のみならず、他車両、自転車等についても対象とする。また、車両Bに搭載した車々間通信装置1aは、必ずしも移動体情報取得部14を持つ必要はない。
上述した実施の形態1に係る無線通信装置(車々間通信装置1a)によれば、自車両の制御部15は、移動体情報に自車両の送信元識別符号(送信元ID)を割り当て、他車両が送信中でなく、自車両に割り当てられた送信周期以外のタイミングで、送信元識別符号と移動体情報とを統合して送信する。また、制御部15は、移動体情報を取得すると、自車両の位置を含む自車両情報を取得して、移動体と自車両との衝突の可能性を演算により判定し、乗員に対し、表示もしくは音声で情報提供する。このため、自車両情報と移動体情報とを同一データ形式で送信することで送信時間が一定になってデータの衝突の機会が減る。また、自車両の送信周期に影響されること無く移動体情報の送信が可能になるため、移動体を検出してから移動体の情報を送信する間の時間が短縮される。更に、他車両の情報、移動体の情報共に同一データ形式で送信されるため、受信側での処理を簡素化できるといった効果が得られる。
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。ここでも実施の形態1同様、無線通信装置として、単一の伝送チャンネルを用い、通信ゾーン内に位置する複数の移動体に対して一斉同報による車々間通信を行う、車両に搭載される車々間通信装置1bが例示されている。ただし、複数の車々間通信装置が同一の伝送チャンネルで通信していればよく、必ずしも単一の伝送チャンネルでの通信に限定されるものではない。また、通信中に伝送チャンネルを占有していれば、特定の車両に対する通信でもよく、必ずしも一斉同報による車々間通信に限定されるものではない。図6に示す実施の形態2において、図1に示す実施の形態1との構成上の差異は、実施の形態1の制御部15が有する構成に、移動体情報記憶部154が付加されたことにある。移動体情報記憶部154は、車々間通信により取得した移動体の情報を記憶する、例えば、不揮発性半導体記憶素子、揮発性半導体記憶素子のどちらか一方、または、その両方で構成される。他の構成は、図1に示す実施の形態1と同様である。
図7は、この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の送信時の動作を示すフローチャートである。図7によれば、他車両が送信中か否かを判定し、送信中でなく、自車両の送信周期であったときに、自車両情報を取得し、要求元IDを付加して車々間通信を行う処理(ステップST201〜ST205)は、図3に示す実施の形態1のステップST101〜ST105のそれぞれと同様である。このため、重複を回避する意味で説明を省略する。ステップST202の「自車両の送信周期判定処理」で、自車両の送信周期以外であると判定された場合以降(ステップST202“NO”〜)の処理が実施の形態1と異なるため、この差異についてのみ着目して以下に動作説明を行う。
図7において、送信周期判定部151を介して自車両の送信周期でないと判定された場合(ステップST202“NO”)、主制御部150は、移動体情報取得部14から移動体情報を取得できるか否かを判定する(ステップST206)。ここで、移動体情報を取得できると判定された場合(ステップST206“YES”)、主制御部150は、移動体情報取得部14から検出した移動体の移動体情報を取得すると共に、移動体情報記憶部154が記憶している移動体情報を読み出す(ステップST207)。続いて主制御部150は、記憶した移動体情報から移動体の現在位置を算出する(ステップST208)。
なお、ステップST206の判定が、“NO”の場合は、動作を終了する。
次に、主制御部150は、移動体情報記憶部154から読み出した移動体情報が示す移動体と、移動体情報取得部14が取得した移動体との位置誤差が所定値Lより大きいか否かを判定する(ステップST209)。ここで、位置誤差が所定値Lより大きいと判定された場合(ステップST209“YES”)、主制御部150は、移動体情報記憶部154から読み出した移動体情報が示す移動体は、車々間通信装置1を所有していないとみなし、送信元ID管理部152を制御してその移動体用に送信元IDを生成する(ステップST210)。続いて制御部150は、検出し、取得された移動体情報に送信元ID管理部152が生成した送信元IDを統合し、図2に示した車々間通信フレームのデータ形式に従うパケットを組み立てる(ステップST211)。そして、車々間通信部12、車々間通信アンテナ11経由で生成したパケットを送信する(ステップST212)。
なお、ステップST201の「他車両の送信中判定処理」において、他車両が送信中であると判定された場合(ステップST201“NO”)、主制御部150は、所定時間待機し(ステップST213)、所定時間経過後、再度、ステップST201の「他車両の送信中判定処理」を実行する。
図8は、この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の受信時の動作を示すフローチャートである。図8によれば、移動体情報受信の有無判定に始まり、自車両情報を取得し、移動体と自車両との衝突の危険性有無判定を行い、ドライバに情報提供するまでの処理(ステップST221〜ST225)は、図4に示す実施の形態1のステップST111〜ST115のそれぞれの処理と同様である。このため、重複を回避する意味で説明を省略する。実施の形態1との差異は、ここでは、ステップST225の情報提供部153による「ドライバへの情報提供処理」の後、あるいは、ステップST224の「衝突の危険性有無判定処理」後に、車々間通信アンテナ11及び車々間通信部12を介して受信した移動体情報を移動体情報記憶部154に記憶する処理(ステップST226)が付加されたことである。ここに記憶された移動体情報は、車々間通信による移動体情報送信時に、検出した移動体情報との重複送信回避のために使用される。
図9に、上述した実施の形態2において、車々間通信装置1bを搭載した車両の交差点周辺での走行環境が示されている。図9には、車両Fが走行し、歩行者H、歩行者I、歩行者Jが歩行する道路と、車両Gが走行する道路とが交差する交差点(T自路)が示されている。この交差点において、車両F、車両G及び歩行者Hが、図6に示す車々間通信装置1bを持ち、歩行者I、歩行者Jは、車々間通信装置1bを持たないものとする。なお、ここで歩行者Hとは、車々間通信機能を内蔵した端末を所持している歩行者のことをいう。以下、図9を参照しながら、図7、図8にフローチャートで示した車々間通信装置1bの送受信時の動作の補足説明を行う。
歩行者Hは、図7に示す移動体情報の送信処理(ステップST201〜ST205)を行い、送信元IDとして割り当てられ“H”を付加して歩行者としての自身の移動体情報を送信する。このとき、車両Fは、図8に示す移動体情報の受信処理(ステップST221〜ST225)を行い、ステップST226で、歩行者Hの移動体情報を制御部15の移動体情報記憶部154に記憶する。
次に、車両Fで、図7のステップST206に示す「移動体情報取得処理」を実行した場合、車両Fの緯度・経度及び自車両との相対位置から算出される、歩行者Hの緯度・経度に関する情報と、速度、進行方向からなる移動体情報を取得する。そして、移動体情報記憶部154に記憶してある歩行者Hの移動体情報を取得し(ステップST207)、歩行者Hの現在位置を、緯度・経度、速度、進行方向等から算出する(ステップST208)。続いて、算出した歩行者Hの位置情報と、先に取得した歩行者Hの位置情報との誤差がL未満である場合(ステップST209“NO”)、制御部15は、歩行者Hの情報は車々間通信により取得済みであると判断し、歩行者Hに対する送信元IDの生成処理を禁止する。
歩行者I、及び歩行者Jについても同様の処理を行うが、制御部15は、歩行者I及び歩行者Jの移動体情報は、移動体情報記憶部154に記憶されていないため、歩行者Iには送信元ID“I”、歩行者Jには送信元ID“J”を割り当て(ステップST210)、それぞれ取得した位置情報と統合して車々間通信で送信する(ステップST211、ST212)。
また、車両Fでは、自車両の送信周期において(ステップST202“YES”)、図7に示す自車両情報の送信処理(ステップSTS202〜ST205)を行い、取得した自車両情報に送信元ID“F”を付加して車々間通信を行う。なお、車両Gでの受信処理は、図5に示した実施の形態1における車両Bの受信処理と同じであるため重複説明回避のために省略する。また、車両Fの移動体の検出対象は歩行者のみならず、他車両、自転車でもよく、更に、歩行者H、及び車両Gに搭載した車々間通信装置1bは、必ずしも移動体情報取得部14、移動体情報記憶部154を供える必要はない。
上述した実施の形態2に係る無線通信装置(車々間通信装置1b)によれば、制御部15は、車々間通信部12で他車両から移動体情報を取得した場合、移動体情報取得部14で取得した同じ移動体情報の送信を禁止する。このため、重複する移動体情報を車々間通信により送信することがないため、通信トラフィック量を軽減することができる。また、実施の形態1同様、自車両情報と移動体情報とを同一データ形式で送信することで送信時間が一定になってデータの衝突の機会が減る。また、自車両の送信周期に影響されること無く移動体情報の送信が可能になるため、移動体を検出してから移動体の情報を送信する間の時間が短縮される。更に、他車両の情報、移動体の情報共に同一データ形式で送信されるため、受信側での処理を簡素化できるといった効果が得られる。
実施の形態3.
図10は、この発明の実施の形態3に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。以下に説明する実施の形態3では、単一の伝送チャンネルを用い、通信圏内に位置する複数の移動体に対して一斉同報による車々間通信を行う無線通信装置を、車両ではなく、インフラとして、例えば路側に設置した例が示されている。ただし、複数の車々間通信装置が同一の伝送チャンネルで通信していればよく、必ずしも単一の伝送チャンネルでの通信に限定されるものではない。また、通信中に伝送チャンネルを占有していれば、特定の車両に対する通信でもよく、必ずしも一斉同報による車々間通信に限定されるものではない。以下、路側に設置した車々間通信機能を有する無線通信装置を路側無線通信装置1cとして説明を行う。
図10に示されるように、路側無線通信装置1cは、車々間通信アンテナ11と、車々間通信部12と、移動体情報取得部14と、制御部15とにより構成され、また、制御部15は、主制御部150と、送信元ID管理部152とを含み構成される。すなわち、図1に示す実施の形態1の車々間通信装置1aと比較すれば、実施の形態1が有する制御部15に含まれる送信周期管理部151と情報提供部153とが省略された構成になっている。なお、これらブロックが有するそれぞれの機能は、図1に示すそれと同じであるため説明を省略する。
図11は、この発明の実施の形態3に係る無線通信装置(路側無線通信装置1c)の送信時の動作を示すフローチャートであり、図12は、路側通信装置1cが設置された交差点周辺での車両の走行環境を示した図である。図12では、歩行者Nと歩行者Oと歩行者Pが歩行する道路と、車両Lと車両Mが走行し、また、歩行者Nと歩行者Oと歩行者Pとが歩行する道路とが交差する交差点(T字路)が示されており、一方の道路脇には、路側無線通信装置1cが設置されているものとする。また、車両Lと車両Mは、図1に示す車々間通信装置1aを搭載しており、歩行者N、歩行者O、歩行者Pは、共に車々間通信機能を有する端末を所持していないものとして説明する。
図11において、路側無線通信装置1c(制御部15)は、他車両が送信中で無いときに(ステップST301“YES”)歩行者Nの移動体情報を取得するにあたり、路側通信装置1cの緯度・経度、及び路側通信装置1cと歩行者Nとの相対位置から算出される、歩行者Nの緯度・経度、及び速度と進行方向に関する移動体情報を取得する(ステップST302“YES”)。そして、路側無線通信装置1c(制御部15)は、歩行者Nに対し、送信元ID“N”を生成して割り当て(ステップST303)、取得した移動体情報と統合し(ステップST304)、図2に示す通信フレームのデータ形式に従い車々間通信で一斉同報送信する(ステップST305)。歩行者O及び歩行者Pについても同様、路側無線通信装置1c(制御部15)は、移動体情報を生成し、歩行者Oには送信元ID“O”、歩行者Pには送信元ID“P”をそれぞれ割り当て統合して得られる移動体情報を車々間通信で一斉に同報送信する。
なお、ステップST301の「他車両の送信中でない判定処理」において、他車両が送信中であると判定された場合(ステップST301“NO”)、主制御部150は、所定時間待機し(ステップST306)、所定時間経過後、再度、ステップST301の「他車両の送信中でない判定処理」を実行する。
一方、車両Mでは、車々間通信装置1a(制御部15)が、図3に示す自車両情報の送信処理(ステップST101〜ST105)を行い、送信元ID“M”を付加して車両Mの自車両情報を車々間通信で一斉に同報送信する。これに対し、車両Lでは、車両Mの移動体情報が送信元ID“M”、歩行者Nの移動体情報が送信元ID“N”、歩行者Oの移動体情報が送信元ID“O”、歩行者Pの移動体情報が送信元ID“P”として受信されるため、車両Lからは、車両Mだけでなく、歩行者N、歩行者O、歩行者Pも車々間通信しているようにみえる。したがって、車両Lに搭載された車々間通信装置1a(制御部15)は、ドライバへの情報提供の可否を判定するために、車両M、歩行者N、歩行者O、歩行者Pの全ての移動体情報に対して図4に示す受信処理だけで済み、更に、1台の路側無線通信装置1cで、歩行者及び車々間通信により送受信される移動体情報を全て取得することが出来る。なお、路側無線通信装置1cの移動体の検出対象は歩行者のみならず、車両、自転車の何れでもよく、また、車両L及び車両Mに搭載される車々間通信装置1aは、必ずしも移動体情報取得部14を持つ必要はない。
上述した実施の形態3に係る無線通信装置(路側無線通信装置1c)によれば、制御部15は、移動体情報に送信元識別符号(送信元ID)を割り当て、他車両が送信中でないタイミングで、送信元識別符号と移動体情報とを統合して送信する。このため、車両情報と移動体情報とを同一データ形式で送信することで送信時間が一定になって衝突の機会が減る。また、車両の送信周期に影響されること無く移動体情報の送信が可能になるため、移動体を検出してから移動体の情報を送信する間の時間が短縮される。更に、車両の情報、移動体の情報共に同一データ形式で送信されるため、受信側での処理を簡素化できるといった効果が得られる。なお、実施の形態3において、無線通信装置を路側に設置する場合についてのみ例示したが、路側に制限されず、車々間通信により車両との間で電波が届く範囲(例えば、100m圏内)であれば、道路上等であっても良く、場所に制限されることはない。
実施の形態4.
図13は、この発明の実施の形態4に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。以下に説明する実施の形態4においても上述した実施の形態3同様、無線通信装置は、単一の伝送チャンネルを用い、通信圏内に位置する複数の移動体に対して一斉同報による車々間通信を行う路側無線通信装置1dとして説明する。ただし、複数の車々間通信装置が同一の伝送チャンネルで通信していればよく、必ずしも単一の伝送チャンネルでの通信に限定されるものではない。また、通信中に伝送チャンネルを占有していれば、特定の車両に対する通信でもよく、必ずしも一斉同報による車々間通信に限定されるものではない。
以下に説明する実施の形態4の路側無線通信装置1dにおいて、実施の形態3の路側無線通信装置1cとの構成上の差異は、実施の形態3の路側無線通信装置1cが有する制御部15に移動体情報記憶部154が付加されたことにある。他の構成は実施の形態3と同じである。移動体情報記憶部154は、車々間通信により取得した移動体の情報を記憶する、例えば、不揮発性半導体記憶素子、揮発性半導体記憶素子のどちらか一方、または、その両方で構成される。
図14は、路側無線通信装置1dの送信時の動作を示すフローチャートであり、図15は、路側無線通信装置1dの受信時の動作を示すフローチャートである。以下、図14、図15のフローチャートを参照しながら、図13に示す路側無線通信装置1dの動作について説明する。
図14において、路側無線通信装置1dの制御部15(主制御部150)は、まず、移動体情報取得部14から他車両が送信中でないタイミングを監視して(ステップST401“YES”)、車々間通信アンテナ11、及び車々間通信部12を介し、移動体情報を受信したか否かを判定する(ステップST402)。ここで、移動体情報を受信した場合(ステップST402“YES”)、主制御部150は、受信した移動体情報を移動体情報記憶部154に記憶する(ステップST403)。なお、他車両が送信中の場合は(ステップST401“NO”)、一定時間待機後、再びステップST401の他車両送信中判定処理を実行する。
図16に、路側通信装置1dが設置された交差点周辺での車両の走行環境が示されている。ここでは、歩行者T、歩行者U、歩行者Vが歩行する道路と、車両R及び車両Sが走行する道路が交差する交差点(T字路)が示されており、歩行者T、歩行者U、歩行者Vが歩行する道路脇に路側無線通信装置1dが設置されている。路側無線通信装置1dは、車々間通信機能を有し、また、車両S、車両Rには、図1に示す車々間通信装置1aが搭載され、歩行者Tは、車々間通信機能を有する端末を所持し、歩行者U、歩行者Vは車々間通信機能を有する端末を所持していないものとして説明する。
車両R及び歩行者Tは車々間通信装置1aを持つため、図3に示す自車両R、及び歩行者T自身の移動体情報の送信処理(ステップST101〜ST105)を実行し、車両Rの移動体情報は送信元ID“R”、歩行者Tの移動体情報は送信元ID“T”を付加して一斉に同報送信する。これに対し、路側無線通信装置1dは、図15に示す受信処理を行い、車両R、及び歩行者Tの移動体情報を受信すると(ステップST411“YES”)、移動体情報記憶部154に記憶する(ステップST412)。
路側無線通信装置1dでは、制御部15(主制御部150)が、図14に示す移動体情報取得処理を実行するにあたり(ステップST402“YES”)、路側無線通信装置1dの緯度、経度、及び路側無線通信装置1dと歩行者Tとの相対位置から算出される歩行者Tの緯度・経度に関する位置情報、及び速度と進行方向に関する移動体情報を車々間通信で取得する。続いて、主制御部150は、車々間通信で取得した歩行者Tの移動体情報と、移動体情報記憶部154に記憶された歩行者Tの移動体情報とを取得し(ステップST403)、歩行者Tの現在位置を、緯度・経度、速度、進行方向等の移動体情報から算出する(ステップST404)。
そして、主制御部150は、算出された歩行者Tの位置情報と、先に検出され取得された歩行者Tの位置情報との誤差を算出し、その誤差がL未満である場合は(ステップST405“NO”)、歩行者Tの情報は車々間通信で既に取得済みであると判断し、歩行者Tに対する送信元IDの生成を禁止する。歩行者U及び歩行者Vについても同様の処理を行うが、歩行者U及び歩行者Vの情報は移動体情報記憶部154に記憶されていないため、歩行者Uについては送信元ID“U”を、歩行者Vには送信元ID“V”を生成してそれぞれに割り当て(ステップST406)、取得した歩行者U及び歩行者Vの移動体情報と統合して(ステップST407)、車々間通信で一斉に同報送信する(ステップST408)。
これに対し、車両Sでは、車両Rの移動体情報が送信元ID“R”、歩行者Tの移動体情報が送信元ID“T”、歩行者Uの移動体情報が送信元ID“U”、歩行者Pの移動体情報が送信元ID“V”として受信されるため、車両Sからは、車両Rだけでなく、歩行者T、歩行者U、歩行者Vも車々間通信機能を有する端末を所持し、車々間通信しているようにみえる。したがって、車両Sに搭載された車々間通信装置1aは、ドライバへの情報提供の可否を判定するために、車両R、歩行者T、歩行者U、歩行者Vの全ての移動体情報に対して図4に示す受信処理だけで済み、更に、1台の路側無線通信装置1dで、歩行者及び車々間通信により送受信される移動体情報を全て取得することが出来る。なお、路側無線通信装置1dの移動体の検出対象は歩行者のみならず、車両、自転車の何れでもよく、また、車両R、車両Sに搭載され、あるいは歩行者Tが所持する車々間通信装置1aは、必ずしも移動体情報取得部14、移動体情報記憶部154を持つ必要はない。
上述した実施の形態4に係る無線通信装置(路側無線通信装置1d)によれば、制御部15は、車々間通信部12で車両から移動体情報を取得した場合、移動体情報取得部14で取得した同じ移動体情報の送信を禁止する。このため、重複する移動体情報を車々間通信により送信することがないため、通信トラフィック量を軽減することができる。また、実施の形態3同様、車両情報と移動体情報とを同一データ形式で送信することで送信時間が一定になってデータの衝突の機会が減る。また、車両の送信周期に影響されること無く移動体情報の送信が可能になるため、移動体を検出してから移動体の情報を送信する間の時間が短縮される。更に、車両の情報、移動体の情報共に同一データ形式で送信されるため、受信側での処理を簡素化できるといった効果が得られる。
なお、上述した実施の形態1、2、3、4において、制御部15が有する機能は、全てをソフトウェアによって実現しても、あるいは少なくともその一部をハードウエアで実現してもよい。例えば、制御部15が、移動体情報取得部14が取得した移動体情報に自車両の送信元識別符号を割り当て、車々間通信部12を介して車々間通信により送信するデータ処理は、1または複数のプログラムによりコンピュータ上で実現しても良く、また、少なくとも一部をハードウエアで実現してもよい。
本発明の無線通信装置は、車々間通信機能を有する車両が、他車両、歩行者、あるいは自転車等の移動体を検出し、その位置情報を含む移動体情報を、取得した移動体毎に送信元IDを割り当て、車々間通信機能を用い、車々間通信機能を持たない移動体の変わりに移動体情報を送信するものである。このように制御することで、自車両、移動体のいずれの情報についても同じデータ形式で送信が可能になるため、送信時間を一定とし、また、受信側では、移動体が仮想的に車々間通信機能を有する端末を所有し、移動体が自身の情報を車々間通信で送信しているようにみえるため、他の移動体が車々間通信機能を持つか否かに係わらず、同一の処理でドライバへの情報提供が可能である。また、移動体情報を自車両の送信周期以外のタイミングで送信することにより、自車両の送信周期に影響を与えずに移動体情報を送信することができ、更に、車々間通信で取得した他車両を検出した場合に、検出した移動体情報を送信しないように制御することで重複した移動体情報の送信を回避でき通信トラフィックの軽減にも寄与する。本発明は、車両への適用の他に、歩行者が所持する携帯電話、自転車、交通インフラへの適用が考えられる。
この発明は、通信圏内に位置する複数の移動体に対し車々間通信を行う、無線通信装置に関する。
車両に車々間通信装置を搭載し、自車両と他車両との間で上述した車々間通信を行うことで、車両同士の接触事故や衝突事故を防止する車々間通信技術が提案されている。具体的には、自車両の位置や速度、進行方向等に関する情報を他車両に送信し、また、他車両の位置や速度に関する情報を受信して衝突の危険性があるか否かを判定し、衝突の危険性がある場合には、双方の車両で回避行動を提案し、実行することで、衝突を未然に防止する技術である(例えば、非特許文献1参照)。
非特許文献1に開示されているように、車々間通信は、電源投入時に生成される自車両識別符号(送信元ID)と自車両情報からなるパケットの送信を車速に応じた一定の周期で試み、また、他車両が車々間通信を行っている場合は、パケットの衝突回避のために所定時間経過後に再度送信を試みる、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)の通信手順に従って動作するように規定されている。
ところで、全ての車両に上述した車々間通信装置が搭載され、あるいは歩行者が所持する携帯電話等に上述した車々間通信機能が搭載されている場合は、その車々間通信機能により、移動体同士の衝突を回避することができる。しかしながら、全ての移動体、特に、歩行者や自転車に車々間通信装置を所持させ、あるいは搭載することは困難であり、従って、車々間通信装置を搭載した車両と、車々間通信装置を持たない車両、自転車、あるいは歩行者との間で衝突が発生するというケースが考えられる。
このため、従来、車々間通信装置とセンサとを搭載した車両が、センサで歩行者を検出し、検出した歩行者の情報を車々間通信により他車両に送信することで、未然に歩行者との衝突事故を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
「5.8GHzを用いた車々間通信システムの実験用ガイドライン」ITS FORUM RC−005 1.0版、平成19年5月18日策定(ITS情報通信システム推進会議)
しかしながら、特許文献1に開示された技術によれば、歩行者情報を車々間通信で送信することはできるが、車々間通信は、自車両の情報を他車両に送信するための通信であるため、自車両情報に移動体情報としての歩行者情報を付加して送信する必要がある。例えば、歩行者情報を送信する車々間通信フレームのデータ形式として、図17(a)、図18に示すデータ形式が考えられる。図17(a)は、自車両の情報に一人分の歩行者情報を付加して送信するデータ形式であり、図18は、歩行者情報を纏めて付加して送信する場合のデータ形式である。
ここで、複数の歩行者が存在する場合、図17(a)に示す車々間通信フレームのデータ形式を使用すると、図17(b)に示されるように、一人の歩行者情報を送信後、次の歩行者情報を送信するためには、図20の表に示すように、車両速度[km/h]に応じて決まる自車両の送信周期[ms]を待って送信する必要があるため、歩行者を検出してからその歩行者情報を送信するまでに多大な時間を要するといった問題がある。
一方、複数の歩行者がいる場合に、1個の送信元IDに複数の歩行者情報を付加して送信する、図18に示す車々間通信フレームのデータ形式を使用すると、図19のタイミング図に示すように、自車両の送信データサイズが大きくなるため、自車両の送信完了を複数の他車両が待つ状態が発生すると考えられる。そのため、(a)自車両がパケット送信を完了した際、タイミングによっては(b)他車両#1と(c)他車両#2の送信タイミングが重なり、他車両#1、他車両#2が送信したパケットが衝突し、データが消失するという問題が発生しやすくなる。
また、他車両#1では本来の送信周期よりα1の時間遅れてデータ送信し、他車両#2では本来の送信周期よりα2の時間遅れてデータ送信することになり、したがって、図19に示すデータ形式では他車両の送信周期に影響を与えやすいという問題もある。更に、受信側では、車々間通信で受信した車両情報とセンサで取得した歩行者情報との両方を処理する必要があり、したがって、受信処理が複雑になるという問題もある。
この発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、歩行者等の移動体を検出してから移動体情報を送信するまでの時間を短縮するとともに、自車両の情報、移動体情報ともに同一フォーマットで送信するため、送信時間が一定となり、データの衝突の機会を減少させ、さらに、受信処理を簡素化した無線通信装置を提供することを目的とする。
この発明は、通信圏内に位置する複数の移動体に対して車々間通信を行う無線通信装置であって、車々間通信機能を持つ他車両との間で車々間通信を行う車々間通信部と、移動体を検知し、移動体の位置を含む移動体情報を取得する移動体情報取得部と、移動体情報取得部が取得した移動体情報に送信元識別符号を割り当て、他車両が送信中でなく、自車両に割り当てられた送信周期以外のタイミングで、送信元識別符号と移動体情報とを統合し、車々間通信部を介して送信する制御部と、を備えたことを特徴とする。
この発明によれば、制御部は、移動体情報に送信元識別符号を割り当て、他車両が送信中でなく、自車両に割り当てられた送信周期以外のタイミングで、送信元識別符号と移動体情報とを統合して送信する。このため、自車両情報と移動体情報とを同一データ形式で送信することで送信時間が一定になって衝突の機会が減り、また、自車両の送信周期に影響されること無く移動体情報の送信が可能になるため、移動体を検出してから移動体の情報を送信する間の時間が短縮される。更に、他車両の情報、移動体の情報共に同一データ形式で送信されるため、受信側での処理を簡素化できる。
この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の車々間通信フレームのデータ形式を示す図である。
この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の送信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の受信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態1に係る無線通信装置を搭載した車両の交差点周辺での走行環境を示した図である。
この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の構成を示す図である。
この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の送信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の受信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態2に係る無線通信装置を搭載した車両の交差点周辺での走行環境を示した図である。
この発明の実施の形態3に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
この発明の実施の形態3に係る無線通信装置の送信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態3に係る無線通信装置を搭載した車両の交差点周辺での走行環境を示した図である。
この発明の実施の形態4に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
この発明の実施の形態4に係る無線通信装置の送信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態4に係る無線津新装置の受信時の動作を示すフローチャートである。
この発明の実施の形態4に係る無線通信装置を搭載した車両の交差点周辺での走行環境を示した図である。
従来の無線通信装置が使用する車々間通信の通信フレームのデータ形式の一例を示す図である。
従来の無線通信装置が使用する車々間通信フレームのデータ形式の他の例を示す図である。
図18に示す通信フレームを用いて車々間通信を行った場合の移動体情報送信時のタイミング図である。
車々間通信における車両速度と送信周期との関係を表形式で示した図である。
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。ここでは、無線通信装置として、単一の伝送チャンネルを用い、通信ゾーン内に位置する複数の移動体に対して一斉同報による車々間通信を行う、車両に搭載される車々間通信装置1aが例示されている。図1によれば、車々間通信装置1aは、車々間通信アンテナ11と、車々間通信部12と、自車両情報取得部13と、移動体情報取得部14と、制御部15とにより構成される。ただし、複数の車々間通信装置が同一の伝送チャンネルで通信していればよく、必ずしも単一の伝送チャンネルでの通信に限定されるものではない。また、通信中に伝送チャンネルを占有していれば、特定の車両に対する通信でもよく、必ずしも一斉同報による車々間通信に限定されるものではない。
車々間通信アンテナ11は、車々間通信で使用される5.8GHz帯の周波数の電波を送受信するアンテナであり、車々間通信部12に接続される。車々間通信部12は、制御部15による制御の下で、通信圏内に位置して車々間通信機能を有する複数の車両との間で、CSMA/CAプロトコルによる車両情報、二輪車情報、自転車情報あるいは歩行者情報の送受信を行う。ただし、車々間通信に使用する周波数は5.8GHzに限定するものではなく、車両と車両が通信する車々間通信に用いられる周波数であればなんでも良い。ここで、車両情報とは、自車両の位置を含む走行速度、進行方向等に関する情報であり、二輪車情報とは、二輪車の位置を含む走行速度、進行方向等に関する情報であり、自転車情報とは、自転車の位置を含む走行速度、進行方向等に関する情報であり、歩行者情報とは、歩行者の位置を含む歩行速度、進行方向に関する情報である。また、通信する情報は上記情報を含んでいればよく、移動体に関するターンシグナル、ブレーキランプ、加速度等の情報を含んでいてもよい。
自車両情報取得部13は、不図示のGPS(Global Positioning System)、車速、ジャイロ等、車両に付属の各種センサにより、自車両の緯度・経度からなる位置情報、および車速や進行方向等に関する自車両情報を取得して制御部15へ出力する。移動体情報取得部14は、他車両や歩行者等の移動体を検知し、これら移動体の位置を含む移動体情報を取得する機能を有する。具体的には、不図示のカメラ、レーダ、レーザー等のセンサ類を用い、他車両、歩行者、自転車等の移動体を検知し、その緯度・経度に関する位置情報の他、速度、進行方向等車々間通信に関する移動体情報を取得して制御部15に出力する。
制御部15は、移動体情報取得部14が取得した移動体情報に送信元識別符号(送信元ID)を割り当て、車々間通信部12を介して車々間通信により送信する機能を有する。このとき、制御部15は、車々間通信部12を介して他車両が送信中であるか否かを判定し、他車両が送信中でなく、自車両に割り当てられた送信周期以外のタイミングで、送信元IDと移動体情報とを統合し、車々間通信部12を介して送信する。制御部15はまた、移動体情報取得部14から移動体情報を取得すると、自車両情報取得部13から自車両の位置を含む自車両情報を取得して、移動体と自車両との衝突の可能性を演算により判定し、乗員に情報提供する機能も有する。このため、制御部15は、主制御部150と、送信周期管理部151と、送信元ID管理部152と、情報提供部153とを含み、構成される。
送信周期管理部151は、自車両の速度に応じて自車両情報を送信する車々間通信の送信周期を管理する機能を有する。また、送信元ID管理部152は、装置電源ON時に自車両の送信元IDを生成して電源OFF時まで保持する他、主制御部150から要求があった場合、新規に送信元IDを生成する機能を有する。情報提供部153は、主制御部150による制御の下で、音声や表示により自車両周囲の移動体情報をドライバに提供する機能を有する。
なお、主制御部150は、移動体情報取得部14が取得した移動体情報に送信元IDを割り当て、他車両が送信中でなく、自車両に割り当てられた送信周期以外のタイミングで、送信元IDと移動体情報とを統合し、車々間通信部12を介して送信する他、移動体情報を取得すると、自車両の位置を含む情報を取得して、移動体と自車両との衝突の可能性を演算により判定して乗員に情報提供する制御部15としての機能を実行するために、上述した、送信周期管理部151と、送信元ID管理部152と、情報提供部153とのシーケンス制御を行う。
図2に、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置が使用する車々間通信フレームの移動体情報のデータ形式の一例が示されている。図2によれば、図17〜図19に示した従来の車々間通信フレームのデータ形式と異なり、自車両情報と同様、歩行者情報が、送信元ID201と、移動体情報(緯度、経度、速度、進行方向等)202とが組み合わされた構造になっている。なお、送信元IDは、制御部15により、他車両が送信中でなく、自車両の送信周期以外のタイミングで移動体情報を取得する毎に逐次生成される。詳細は後述する。
図3は、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の送信時の動作を示すフローチャートである。以下、図3のフローチャートを参照しながら、図1、図2に示す、この発明の実施の形態1に係る無線通信装置の送信時の動作について詳細に説明する。
図3によれば、制御部15(主制御部150)は、まず、車々間通信アンテナ11及び車々間通信部12を介して他車両が送信中か否かを判定する(ステップST101)。ここで、他車両が送信中でないと判定された場合(ステップST101“YES”)、主制御部150は、送信周期管理部151により自車両が送信周期であるか否かを判定する(ステップST102)。ここで、自車両の送信周期であると判定された場合(ステップST102“YES”)、主制御部150は、自車両情報取得部13が取得した、緯度、経度、速度、進行方向からなる自車両情報を取り込む(ステップST103)。続いて主制御部150は、送信元ID管理部152が生成する自車両の送信元IDを取得し(ステップST104)、送信元IDと自車両情報からなる車々間通信フレームを組み立て、車々間通信部12、車々間通信アンテナ11経由で送信する(ステップST105)。
一方、ステップST102の「自車両の送信周期判定処理」において、自車両が送信周期でないと判定された場合(ステップST102“NO”)、主制御部150は、移動体情報取得部14から移動体情報が取得可能か否かを判定する(ステップST106)。ここで、移動体情報が取得可能であると判定された場合(ステップST106“YES”)、主制御部150は、送信元ID管理部152に移動体用の送信元ID生成を指示し、これを受けて送信元ID管理部152は、移動体用の送信元IDを生成する(ステップST107)。続いて主制御部150は、移動体情報取得部14から取得した移動体情報と、送信元ID管理部152が生成した送信元IDを統合し、図2に示した車々間通信フレームのデータ形式に従うパケットを組み立てる(ステップST108)。そして、車々間通信部12、車々間通信アンテナ11経由で生成した移動体情報を通信圏内にいる他車両に向けて一斉に同報送信する(ステップST109)。
なお、ステップST101の「他車両の送信中判定処理」において、他車両が送信中であると判定された場合(ステップST101“NO”)、主制御部150は、所定時間待機し(ステップST110)、所定時間経過後、再度、ステップST101の「他車両の送信中判定処理」を実行する。
次に、車々間通信装置1aの受信時の動作について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。図4によれば、主制御部150は、まず、車々間通信アンテナ11及び車々間通信部12を介して移動体情報を受信したか否かを判定する(ステップST111)。ここで、移動体情報を受信したと判定された場合(ステップST111“YES”)、主制御部150は、自車両情報取得部13が取得した自車両情報を取り込む(ステップST112)。そして、主制御部150は、取得した移動体情報と自車両情報とに基づき、移動体と自車両との衝突の可能性について、両者の位置情報予測に基づく演算により判定する(ステップST113)。なお、衝突判定の演算方法については周知であるため、ここでは詳細説明を省略する。
ここで、衝突可能性ありと判定された場合(ステップST114“YES”)、主制御部150は、情報提供部153により移動体の存在をドライバに情報提供する(ステップST115)。具体的に、情報提供部153は、主制御部150による制御の下で、例えば、不図示のナビゲーション装置等から得られる地図情報に基づき、表示モニタを使用して、自車両周囲の地図上に自車両及び移動体の位置関係を表示し、必要に応じて移動体の接近をドライバに通知する。なお、ステップST114の判定が“NO”の場合は動作を終了する。
図5に、車々間通信装置1aを搭載した車両の交差点周辺での走行環境が示されている。図5には、車両Aが走行し、歩行者C、歩行者D、歩行者Eが歩行する道路と、車両Bが走行する道路とが交差する交差点(T字路)が例示されている。ここでは、車両A及び車両Bは、上述した車々間通信装置1aを搭載しており、歩行者C、歩行者D、歩行者Eは、車々間通信機能を有する端末を所持しないものとする。以下、図5を参照しながら、図3、図4にフローチャートで示した車々間通信装置1aの送受信時の動作の補足説明を行う。
車両Aの車々間通信装置1a(制御部15)は、移動体としての歩行者Cの検出を行ない、図3のステップST106の「移動体情報取得判定処理」で、歩行者Cの、緯度、経度、速度、進行方向等の情報を取得する。なお、歩行者Cの緯度、経度の情報については、自車両の、緯度、経度、及び自車両との相対位置から算出するものとする。そして、制御部15は、ステップST107の「送信元ID生成処理」で、歩行者Cに対し、送信元IDとして“C”を割り当てる。次に、ステップST108の「送信元IDと移動体情報との統合処理」で生成した移動体情報を、図2に示す車々間通信フレームのデータ形式に従い一斉に同報送信する。
なお、歩行者D、及び歩行者Eについても同様に移動体情報を生成し、歩行者Dには送信元IDとして“D”を、歩行者Eには、送信元IDとして“E”をそれぞれ割り当て、車々間通信装置1aを搭載した車両Bが送信中でなく自車両が送信周期以外のタイミングで、車々間通信により車々間通信装置1aを搭載した他車両Bに送信する。また、車両Aの送信周期では、ステップST102〜ST105で示す「自車両情報の送信処理」を行い、送信元IDとして“A”を取得して自車両情報を送信する。
なお、車両Bでは、車両Aの自車両情報は送信元IDが“A”、歩行者Cの移動体情報は送信元IDが“C”、歩行者Dの移動体情報は送信元IDが“D”、歩行者Eの移動体情報は送信元IDが“E”として受信されるため、車両Aの他に、歩行者C、歩行者D、歩行者Eが、あたかも車々間通信機能を有する端末を所持し、車々間通信しているようにみえる。したがって、車両Bの車々間通信装置1a(制御部15)は、図4のステップST114の「衝突危険性の判定処理」でドライバへの情報提供の可否を判断するため、車両Aの自車両情報、歩行者C、歩行者D、歩行者Eの移動体情報の全てに対して同じ受信処理を行うことができる。なお、車両Aの移動体の検出対象は、歩行者のみならず、他車両、自転車等についても対象とする。また、車両Bに搭載した車々間通信装置1aは、必ずしも移動体情報取得部14を持つ必要はない。
上述した実施の形態1に係る無線通信装置(車々間通信装置1a)によれば、自車両の制御部15は、移動体情報に自車両の送信元識別符号(送信元ID)を割り当て、他車両が送信中でなく、自車両に割り当てられた送信周期以外のタイミングで、送信元識別符号と移動体情報とを統合して送信する。また、制御部15は、移動体情報を取得すると、自車両の位置を含む自車両情報を取得して、移動体と自車両との衝突の可能性を演算により判定し、乗員に対し、表示もしくは音声で情報提供する。このため、自車両情報と移動体情報とを同一データ形式で送信することで送信時間が一定になってデータの衝突の機会が減る。また、自車両の送信周期に影響されること無く移動体情報の送信が可能になるため、移動体を検出してから移動体の情報を送信する間の時間が短縮される。更に、他車両の情報、移動体の情報共に同一データ形式で送信されるため、受信側での処理を簡素化できるといった効果が得られる。
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。ここでも実施の形態1同様、無線通信装置として、単一の伝送チャンネルを用い、通信ゾーン内に位置する複数の移動体に対して一斉同報による車々間通信を行う、車両に搭載される車々間通信装置1bが例示されている。ただし、複数の車々間通信装置が同一の伝送チャンネルで通信していればよく、必ずしも単一の伝送チャンネルでの通信に限定されるものではない。また、通信中に伝送チャンネルを占有していれば、特定の車両に対する通信でもよく、必ずしも一斉同報による車々間通信に限定されるものではない。図6に示す実施の形態2において、図1に示す実施の形態1との構成上の差異は、実施の形態1の制御部15が有する構成に、移動体情報記憶部154が付加されたことにある。移動体情報記憶部154は、車々間通信により取得した移動体の情報を記憶する、例えば、不揮発性半導体記憶素子、揮発性半導体記憶素子のどちらか一方、または、その両方で構成される。他の構成は、図1に示す実施の形態1と同様である。
図7は、この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の送信時の動作を示すフローチャートである。図7によれば、他車両が送信中か否かを判定し、送信中でなく、自車両の送信周期であったときに、自車両情報を取得し、要求元IDを付加して車々間通信を行う処理(ステップST201〜ST205)は、図3に示す実施の形態1のステップST101〜ST105のそれぞれと同様である。このため、重複を回避する意味で説明を省略する。ステップST202の「自車両の送信周期判定処理」で、自車両の送信周期以外であると判定された場合以降(ステップST202“NO”〜)の処理が実施の形態1と異なるため、この差異についてのみ着目して以下に動作説明を行う。
図7において、送信周期判定部151を介して自車両の送信周期でないと判定された場合(ステップST202“NO”)、主制御部150は、移動体情報取得部14から移動体情報を取得できるか否かを判定する(ステップST206)。ここで、移動体情報を取得できると判定された場合(ステップST206“YES”)、主制御部150は、移動体情報取得部14から検出した移動体の移動体情報を取得すると共に、移動体情報記憶部154が記憶している移動体情報を読み出す(ステップST207)。続いて主制御部150は、記憶した移動体情報から移動体の現在位置を算出する(ステップST208)。
なお、ステップST206の判定が、“NO”の場合は、動作を終了する。
次に、主制御部150は、移動体情報記憶部154から読み出した移動体情報が示す移動体と、移動体情報取得部14が取得した移動体との位置誤差が所定値Lより大きいか否かを判定する(ステップST209)。ここで、位置誤差が所定値Lより大きいと判定された場合(ステップST209“YES”)、主制御部150は、移動体情報記憶部154から読み出した移動体情報が示す移動体は、車々間通信装置1を所有していないとみなし、送信元ID管理部152を制御してその移動体用に送信元IDを生成する(ステップST210)。続いて制御部150は、検出し、取得された移動体情報に送信元ID管理部152が生成した送信元IDを統合し、図2に示した車々間通信フレームのデータ形式に従うパケットを組み立てる(ステップST211)。そして、車々間通信部12、車々間通信アンテナ11経由で生成したパケットを送信する(ステップST212)。
なお、ステップST201の「他車両の送信中判定処理」において、他車両が送信中であると判定された場合(ステップST201“NO”)、主制御部150は、所定時間待機し(ステップST213)、所定時間経過後、再度、ステップST201の「他車両の送信中判定処理」を実行する。
図8は、この発明の実施の形態2に係る無線通信装置の受信時の動作を示すフローチャートである。図8によれば、移動体情報受信の有無判定に始まり、自車両情報を取得し、移動体と自車両との衝突の危険性有無判定を行い、ドライバに情報提供するまでの処理(ステップST221〜ST225)は、図4に示す実施の形態1のステップST111〜ST115のそれぞれの処理と同様である。このため、重複を回避する意味で説明を省略する。実施の形態1との差異は、ここでは、ステップST225の情報提供部153による「ドライバへの情報提供処理」の後、あるいは、ステップST224の「衝突の危険性有無判定処理」後に、車々間通信アンテナ11及び車々間通信部12を介して受信した移動体情報を移動体情報記憶部154に記憶する処理(ステップST226)が付加されたことである。ここに記憶された移動体情報は、車々間通信による移動体情報送信時に、検出した移動体情報との重複送信回避のために使用される。
図9に、上述した実施の形態2において、車々間通信装置1bを搭載した車両の交差点周辺での走行環境が示されている。図9には、車両Fが走行し、歩行者H、歩行者I、歩行者Jが歩行する道路と、車両Gが走行する道路とが交差する交差点(T自路)が示されている。この交差点において、車両F、車両G及び歩行者Hが、図6に示す車々間通信装置1bを持ち、歩行者I、歩行者Jは、車々間通信装置1bを持たないものとする。なお、ここで歩行者Hとは、車々間通信機能を内蔵した端末を所持している歩行者のことをいう。以下、図9を参照しながら、図7、図8にフローチャートで示した車々間通信装置1bの送受信時の動作の補足説明を行う。
歩行者Hは、図7に示す移動体情報の送信処理(ステップST201〜ST205)を行い、送信元IDとして割り当てられ“H”を付加して歩行者としての自身の移動体情報を送信する。このとき、車両Fは、図8に示す移動体情報の受信処理(ステップST221〜ST225)を行い、ステップST226で、歩行者Hの移動体情報を制御部15の移動体情報記憶部154に記憶する。
次に、車両Fで、図7のステップST206に示す「移動体情報取得処理」を実行した場合、車両Fの緯度・経度及び自車両との相対位置から算出される、歩行者Hの緯度・経度に関する情報と、速度、進行方向からなる移動体情報を取得する。そして、移動体情報記憶部154に記憶してある歩行者Hの移動体情報を取得し(ステップST207)、歩行者Hの現在位置を、緯度・経度、速度、進行方向等から算出する(ステップST208)。続いて、算出した歩行者Hの位置情報と、先に取得した歩行者Hの位置情報との誤差がL未満である場合(ステップST209“NO”)、制御部15は、歩行者Hの情報は車々間通信により取得済みであると判断し、歩行者Hに対する送信元IDの生成処理を禁止する。
歩行者I、及び歩行者Jについても同様の処理を行うが、制御部15は、歩行者I及び歩行者Jの移動体情報は、移動体情報記憶部154に記憶されていないため、歩行者Iには送信元ID“I”、歩行者Jには送信元ID“J”を割り当て(ステップST210)、それぞれ取得した位置情報と統合して車々間通信で送信する(ステップST211、ST212)。
また、車両Fでは、自車両の送信周期において(ステップST202“YES”)、図7に示す自車両情報の送信処理(ステップSTS202〜ST205)を行い、取得した自車両情報に送信元ID“F”を付加して車々間通信を行う。なお、車両Gでの受信処理は、図5に示した実施の形態1における車両Bの受信処理と同じであるため重複説明回避のために省略する。また、車両Fの移動体の検出対象は歩行者のみならず、他車両、自転車でもよく、更に、歩行者H、及び車両Gに搭載した車々間通信装置1bは、必ずしも移動体情報取得部14、移動体情報記憶部154を供える必要はない。
上述した実施の形態2に係る無線通信装置(車々間通信装置1b)によれば、制御部15は、車々間通信部12で他車両から移動体情報を取得した場合、移動体情報取得部14で取得した同じ移動体情報の送信を禁止する。このため、重複する移動体情報を車々間通信により送信することがないため、通信トラフィック量を軽減することができる。また、実施の形態1同様、自車両情報と移動体情報とを同一データ形式で送信することで送信時間が一定になってデータの衝突の機会が減る。また、自車両の送信周期に影響されること無く移動体情報の送信が可能になるため、移動体を検出してから移動体の情報を送信する間の時間が短縮される。更に、他車両の情報、移動体の情報共に同一データ形式で送信されるため、受信側での処理を簡素化できるといった効果が得られる。
実施の形態3.
図10は、この発明の実施の形態3に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。以下に説明する実施の形態3では、単一の伝送チャンネルを用い、通信圏内に位置する複数の移動体に対して一斉同報による車々間通信を行う無線通信装置を、車両ではなく、インフラとして、例えば路側に設置した例が示されている。ただし、複数の車々間通信装置が同一の伝送チャンネルで通信していればよく、必ずしも単一の伝送チャンネルでの通信に限定されるものではない。また、通信中に伝送チャンネルを占有していれば、特定の車両に対する通信でもよく、必ずしも一斉同報による車々間通信に限定されるものではない。以下、路側に設置した車々間通信機能を有する無線通信装置を路側無線通信装置1cとして説明を行う。
図10に示されるように、路側無線通信装置1cは、車々間通信アンテナ11と、車々間通信部12と、移動体情報取得部14と、制御部15とにより構成され、また、制御部15は、主制御部150と、送信元ID管理部152とを含み構成される。すなわち、図1に示す実施の形態1の車々間通信装置1aと比較すれば、実施の形態1が有する制御部15に含まれる送信周期管理部151と情報提供部153とが省略された構成になっている。なお、これらブロックが有するそれぞれの機能は、図1に示すそれと同じであるため説明を省略する。
図11は、この発明の実施の形態3に係る無線通信装置(路側無線通信装置1c)の送信時の動作を示すフローチャートであり、図12は、路側通信装置1cが設置された交差点周辺での車両の走行環境を示した図である。図12では、歩行者Nと歩行者Oと歩行者Pが歩行する道路と、車両Lと車両Mが走行し、また、歩行者Nと歩行者Oと歩行者Pとが歩行する道路とが交差する交差点(T字路)が示されており、一方の道路脇には、路側無線通信装置1cが設置されているものとする。また、車両Lと車両Mは、図1に示す車々間通信装置1aを搭載しており、歩行者N、歩行者O、歩行者Pは、共に車々間通信機能を有する端末を所持していないものとして説明する。
図11において、路側無線通信装置1c(制御部15)は、他車両が送信中で無いときに(ステップST301“YES”)歩行者Nの移動体情報を取得するにあたり、路側通信装置1cの緯度・経度、及び路側通信装置1cと歩行者Nとの相対位置から算出される、歩行者Nの緯度・経度、及び速度と進行方向に関する移動体情報を取得する(ステップST302“YES”)。そして、路側無線通信装置1c(制御部15)は、歩行者Nに対し、送信元ID“N”を生成して割り当て(ステップST303)、取得した移動体情報と統合し(ステップST304)、図2に示す通信フレームのデータ形式に従い車々間通信で一斉同報送信する(ステップST305)。歩行者O及び歩行者Pについても同様、路側無線通信装置1c(制御部15)は、移動体情報を生成し、歩行者Oには送信元ID“O”、歩行者Pには送信元ID“P”をそれぞれ割り当て統合して得られる移動体情報を車々間通信で一斉に同報送信する。
なお、ステップST301の「他車両の送信中でない判定処理」において、他車両が送信中であると判定された場合(ステップST301“NO”)、主制御部150は、所定時間待機し(ステップST306)、所定時間経過後、再度、ステップST301の「他車両の送信中でない判定処理」を実行する。
一方、車両Mでは、車々間通信装置1a(制御部15)が、図3に示す自車両情報の送信処理(ステップST101〜ST105)を行い、送信元ID“M”を付加して車両Mの自車両情報を車々間通信で一斉に同報送信する。これに対し、車両Lでは、車両Mの移動体情報が送信元ID“M”、歩行者Nの移動体情報が送信元ID“N”、歩行者Oの移動体情報が送信元ID“O”、歩行者Pの移動体情報が送信元ID“P”として受信されるため、車両Lからは、車両Mだけでなく、歩行者N、歩行者O、歩行者Pも車々間通信しているようにみえる。したがって、車両Lに搭載された車々間通信装置1a(制御部15)は、ドライバへの情報提供の可否を判定するために、車両M、歩行者N、歩行者O、歩行者Pの全ての移動体情報に対して図4に示す受信処理だけで済み、更に、1台の路側無線通信装置1cで、歩行者及び車々間通信により送受信される移動体情報を全て取得することが出来る。なお、路側無線通信装置1cの移動体の検出対象は歩行者のみならず、車両、自転車の何れでもよく、また、車両L及び車両Mに搭載される車々間通信装置1aは、必ずしも移動体情報取得部14を持つ必要はない。
上述した実施の形態3に係る無線通信装置(路側無線通信装置1c)によれば、制御部15は、移動体情報に送信元識別符号(送信元ID)を割り当て、他車両が送信中でないタイミングで、送信元識別符号と移動体情報とを統合して送信する。このため、車両情報と移動体情報とを同一データ形式で送信することで送信時間が一定になって衝突の機会が減る。また、車両の送信周期に影響されること無く移動体情報の送信が可能になるため、移動体を検出してから移動体の情報を送信する間の時間が短縮される。更に、車両の情報、移動体の情報共に同一データ形式で送信されるため、受信側での処理を簡素化できるといった効果が得られる。なお、実施の形態3において、無線通信装置を路側に設置する場合についてのみ例示したが、路側に制限されず、車々間通信により車両との間で電波が届く範囲(例えば、100m圏内)であれば、道路上等であっても良く、場所に制限されることはない。
実施の形態4.
図13は、この発明の実施の形態4に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。以下に説明する実施の形態4においても上述した実施の形態3同様、無線通信装置は、単一の伝送チャンネルを用い、通信圏内に位置する複数の移動体に対して一斉同報による車々間通信を行う路側無線通信装置1dとして説明する。ただし、複数の車々間通信装置が同一の伝送チャンネルで通信していればよく、必ずしも単一の伝送チャンネルでの通信に限定されるものではない。また、通信中に伝送チャンネルを占有していれば、特定の車両に対する通信でもよく、必ずしも一斉同報による車々間通信に限定されるものではない。
以下に説明する実施の形態4の路側無線通信装置1dにおいて、実施の形態3の路側無線通信装置1cとの構成上の差異は、実施の形態3の路側無線通信装置1cが有する制御部15に移動体情報記憶部154が付加されたことにある。他の構成は実施の形態3と同じである。移動体情報記憶部154は、車々間通信により取得した移動体の情報を記憶する、例えば、不揮発性半導体記憶素子、揮発性半導体記憶素子のどちらか一方、または、その両方で構成される。
図14は、路側無線通信装置1dの送信時の動作を示すフローチャートであり、図15は、路側無線通信装置1dの受信時の動作を示すフローチャートである。以下、図14、図15のフローチャートを参照しながら、図13に示す路側無線通信装置1dの動作について説明する。
図14において、路側無線通信装置1dの制御部15(主制御部150)は、まず、移動体情報取得部14から他車両が送信中でないタイミングを監視して(ステップST401“YES”)、車々間通信アンテナ11、及び車々間通信部12を介し、移動体情報を受信したか否かを判定する(ステップST402)。ここで、移動体情報を受信した場合(ステップST402“YES”)、主制御部150は、受信した移動体情報を移動体情報記憶部154に記憶する(ステップST403)。なお、他車両が送信中の場合は(ステップST401“NO”)、一定時間待機後、再びステップST401の他車両送信中判定処理を実行する。
図16に、路側通信装置1dが設置された交差点周辺での車両の走行環境が示されている。ここでは、歩行者T、歩行者U、歩行者Vが歩行する道路と、車両R及び車両Sが走行する道路が交差する交差点(T字路)が示されており、歩行者T、歩行者U、歩行者Vが歩行する道路脇に路側無線通信装置1dが設置されている。路側無線通信装置1dは、車々間通信機能を有し、また、車両S、車両Rには、図1に示す車々間通信装置1aが搭載され、歩行者Tは、車々間通信機能を有する端末を所持し、歩行者U、歩行者Vは車々間通信機能を有する端末を所持していないものとして説明する。
車両R及び歩行者Tは車々間通信装置1aを持つため、図3に示す自車両R、及び歩行者T自身の移動体情報の送信処理(ステップST101〜ST105)を実行し、車両Rの移動体情報は送信元ID“R”、歩行者Tの移動体情報は送信元ID“T”を付加して一斉に同報送信する。これに対し、路側無線通信装置1dは、図15に示す受信処理を行い、車両R、及び歩行者Tの移動体情報を受信すると(ステップST411“YES”)、移動体情報記憶部154に記憶する(ステップST412)。
路側無線通信装置1dでは、制御部15(主制御部150)が、図14に示す移動体情報取得処理を実行するにあたり(ステップST402“YES”)、路側無線通信装置1dの緯度、経度、及び路側無線通信装置1dと歩行者Tとの相対位置から算出される歩行者Tの緯度・経度に関する位置情報、及び速度と進行方向に関する移動体情報を車々間通信で取得する。続いて、主制御部150は、車々間通信で取得した歩行者Tの移動体情報と、移動体情報記憶部154に記憶された歩行者Tの移動体情報とを取得し(ステップST403)、歩行者Tの現在位置を、緯度・経度、速度、進行方向等の移動体情報から算出する(ステップST404)。
そして、主制御部150は、算出された歩行者Tの位置情報と、先に検出され取得された歩行者Tの位置情報との誤差を算出し、その誤差がL未満である場合は(ステップST405“NO”)、歩行者Tの情報は車々間通信で既に取得済みであると判断し、歩行者Tに対する送信元IDの生成を禁止する。歩行者U及び歩行者Vについても同様の処理を行うが、歩行者U及び歩行者Vの情報は移動体情報記憶部154に記憶されていないため、歩行者Uについては送信元ID“U”を、歩行者Vには送信元ID“V”を生成してそれぞれに割り当て(ステップST406)、取得した歩行者U及び歩行者Vの移動体情報と統合して(ステップST407)、車々間通信で一斉に同報送信する(ステップST408)。
これに対し、車両Sでは、車両Rの移動体情報が送信元ID“R”、歩行者Tの移動体情報が送信元ID“T”、歩行者Uの移動体情報が送信元ID“U”、歩行者Pの移動体情報が送信元ID“V”として受信されるため、車両Sからは、車両Rだけでなく、歩行者T、歩行者U、歩行者Vも車々間通信機能を有する端末を所持し、車々間通信しているようにみえる。したがって、車両Sに搭載された車々間通信装置1aは、ドライバへの情報提供の可否を判定するために、車両R、歩行者T、歩行者U、歩行者Vの全ての移動体情報に対して図4に示す受信処理だけで済み、更に、1台の路側無線通信装置1dで、歩行者及び車々間通信により送受信される移動体情報を全て取得することが出来る。なお、路側無線通信装置1dの移動体の検出対象は歩行者のみならず、車両、自転車の何れでもよく、また、車両R、車両Sに搭載され、あるいは歩行者Tが所持する車々間通信装置1aは、必ずしも移動体情報取得部14、移動体情報記憶部154を持つ必要はない。
上述した実施の形態4に係る無線通信装置(路側無線通信装置1d)によれば、制御部15は、車々間通信部12で車両から移動体情報を取得した場合、移動体情報取得部14で取得した同じ移動体情報の送信を禁止する。このため、重複する移動体情報を車々間通信により送信することがないため、通信トラフィック量を軽減することができる。また、実施の形態3同様、車両情報と移動体情報とを同一データ形式で送信することで送信時間が一定になってデータの衝突の機会が減る。また、車両の送信周期に影響されること無く移動体情報の送信が可能になるため、移動体を検出してから移動体の情報を送信する間の時間が短縮される。更に、車両の情報、移動体の情報共に同一データ形式で送信されるため、受信側での処理を簡素化できるといった効果が得られる。
なお、上述した実施の形態1、2、3、4において、制御部15が有する機能は、全てをソフトウェアによって実現しても、あるいは少なくともその一部をハードウエアで実現してもよい。例えば、制御部15が、移動体情報取得部14が取得した移動体情報に自車両の送信元識別符号を割り当て、車々間通信部12を介して車々間通信により送信するデータ処理は、1または複数のプログラムによりコンピュータ上で実現しても良く、また、少なくとも一部をハードウエアで実現してもよい。
本発明の無線通信装置は、車々間通信機能を有する車両が、他車両、歩行者、あるいは自転車等の移動体を検出し、その位置情報を含む移動体情報を、取得した移動体毎に送信元IDを割り当て、車々間通信機能を用い、車々間通信機能を持たない移動体の変わりに移動体情報を送信するものである。このように制御することで、自車両、移動体のいずれの情報についても同じデータ形式で送信が可能になるため、送信時間を一定とし、また、受信側では、移動体が仮想的に車々間通信機能を有する端末を所有し、移動体が自身の情報を車々間通信で送信しているようにみえるため、他の移動体が車々間通信機能を持つか否かに係わらず、同一の処理でドライバへの情報提供が可能である。また、移動体情報を自車両の送信周期以外のタイミングで送信することにより、自車両の送信周期に影響を与えずに移動体情報を送信することができ、更に、車々間通信で取得した他車両を検出した場合に、検出した移動体情報を送信しないように制御することで重複した移動体情報の送信を回避でき通信トラフィックの軽減にも寄与する。本発明は、車両への適用の他に、歩行者が所持する携帯電話、自転車、交通インフラへの適用が考えられる。