JPWO2011055549A1 - 誘電材料及びこれを用いた電気化学素子 - Google Patents

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Abstract

従来の活性炭やカーボンナノチューブを用いる場合のようなコストのかかる製造工程を必要とせずに電気二重層キャパシタを作製することができる誘電材料(分極性電極の材料)を提供すること、並びに、従来よりも高耐電圧の電気二重層キャパシタ等を実現できる高静電容量(C値)を有する誘電材料を提供するために、絶縁油に無機酸を混合することにより得られる炭素成分を利用する。

Description

本発明は、誘電材料及びこれを用いた電気化学素子、並びに当該電気化学素子を用いた蓄電装置等に関する。
近年、自動車の排気ガスによる大都市の大気汚染の緩和、石油代替エネルギーの利用促進、地球温暖化防止のために二酸化炭素の排出量低減等の観点から、電気自動車やハイブリッド自動車等の低公害車の普及が求められている。また、電力システムに太陽光や風力、水力等自然エネルギーに基づく分散電源の導入に伴い、様々な蓄電装置の開発が進められており、なかでも蓄電装置の高密度化、大容量化と高耐圧化を図る開発が進められている。そして、蓄電装置に用いられる電気化学素子として、例えば、高密度・大容量を可能とした電気二重層キャパシタが特に注目されている。
このような電気二重層キャパシタの容量は、分極性電極の表面積に比例することから、当該分極性電極の材料として表面積の大きい活性炭が一般に用いられている。活性炭は、ヤシガラ、石油ピッチ、石油コークス等の炭素含有量の多い原料を300〜700℃の低温で炭化し、その後賦活させることによって生成する。この賦活には、例えば水蒸気、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、又は水酸化カリウム等のカリウム塩等を用いて行われる。この賦活工程は、製造コストを高騰させる一因でもある。
また、電気二重層キャパシタを用いた蓄電装置には、その用途からも、高耐圧化が求められるところ、電気二重層キャパシタは、電解液が分極性電極等の導電体に接する面において、溶媒分子1層分の薄い領域に電荷を蓄積するものであるため、耐電圧(定格電圧)は3ボルト程度に止まってしまうことが多い。
更に、従来の電気二重層キャパシタにおいては、分極性電極の表面積を大きくすることを意図して、粒状化した活性炭をプロピレンカーボネート等の電解液中に均一に分散させることが行われているが、固体の活性炭を電解液中に均一に分散させることは実際には難しく、活性炭が本来有している表面積を有効活用しにくいという問題がある。
そこで、分極性電極を構成する材料として、活性炭に換えてカーボンナノチューブを用い、このカーボンナノチューブの一本一本を同方向に配置して大容量化を図る技術等が注目されている。
例えば、特許文献1においては、衝撃や曲げ荷重等による変形による漏液の恐れがなく、さらに薄型で大容量の電気を蓄えることの可能な電気二重層キャパシタを提供することを意図して、「集電体上に設けられたカーボンナノチューブ群を覆うように集電体上にゲル状電解質膜を形成してなる正負一対の電極を、容器内に、正極のカーボンナノチューブ群と負極のカーボンナノチューブ群が互いに向き合うようにかつ非接触状に配置することを特徴とする、カーボンナノチューブを用いた電気二重層キャパシタ。」が提案されている。
特開2007−266548号公報
しかし、上記特許文献1において提案されているように、正極のカーボンナノチューブ群と負極のカーボンナノチューブ群が互いに向き合うようにかつ非接触状に配置された構造を採用することは、製造工程上も、非常に煩雑であり、結果的に最終製品のコストを高くすることになる。
加えて、上記特許文献1には、得られる電気二重層キャパシタの耐電圧の具体的な数値は開示されておらず、耐電圧の観点からも未だ改善の余地があった。
そこで、本発明の目的は、従来の活性炭やカーボンナノチューブを用いる場合のようなコストと手間のかかる製造工程を必要とせずに電気二重層キャパシタを作製することができる誘電材料(分極性電極の材料)を提供すること、並びに、従来と同等以上の高耐電圧の電気二重層キャパシタ等を実現できる高静電容量(C値)を有する誘電材料を提供することにある。
ところで、上記課題とは別に、昨今、変圧器、電力用コンデンサ及び電力ケーブル等の絶縁材料として用いられる絶縁油の処理方法が、環境の観点からも問題になっており、本発明者は、この絶縁油の処理についての研究開発に興味を抱いていた。
そのようななか、本発明者がたまたま強酸である硫酸をある絶縁油に混合したところ、絶縁油中の炭化水素成分と硫酸とが化学反応を起こして分散液状の炭素(質)材料が得られた。そして、この得られた炭素材料に電子ビームを照射してみたところ、帯電の中和(再結合)によると推定される放電が発生し(後述の電子顕微鏡観察を参照)、炭素材料が巨大な蓄電能力を有することを確認し、本発明を完成するに至ったのである。
このようにして完成された本発明は、上記のような課題を解決すべく、絶縁油に無機酸を混合することにより得られる炭素成分を含むこと、を特徴とする誘電材料に関するものである。
本発明の誘電材料は、絶縁油に無機酸を混合することにより得られる炭素成分を必須成分とするが、その製造工程に起因し、絶縁油に含まれているようないずれかの液体(又は流体)成分を含んで、ペースト状、ゲル状、分散液状等であってもよい。分散液状の場合、例えば砂糖又はデンプン等を添加して固形化(ペースト化又はゲル化)させてもよい。また、本発明の誘電材料は、乾燥工程及び/又は焼成工程を経て、粉末状、顆粒状、集塊状であっても構わない。
本発明の誘電材料に含まれる炭素成分は、詳細は後述するが、絶縁油に含まれる炭化水素と無機酸との脱水(分解)反応によって生じた粒子状の遊離炭素の集合体であり、個々の遊離炭素は非常に小さな粒径を有しており、大きな表面積を有しているものと考えられる。本発明の誘電材料においては、この遊離炭素は分子レベル(分子が集合したクラスターレベルを含む。)で略均一に分散した状態で存在しており、したがって、従来に比して大きな蓄電能力を発揮するものと考えられる。
本発明の誘電材料においては、上記無機酸が硫酸を含むことが好ましい。
硫酸を用いた場合には、大きな静電容量を有する炭素成分を含む誘電材料をより確実に実現することができる。これは、硫酸が強酸であることから、脱水(分解)反応がより確実に起こり、絶縁油中の炭化水素成分がより確実に分解されるためである。また、脱水(分解)反応によって生成する硫酸からのイオウ成分(イオウ原子、イオウ分子及び/又は硫酸イオン)が、残留しており、これが何らかの電気的寄与をしているものとも考えられる。
また、本発明の誘電材料においては、上記絶縁油が、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくは硫黄系炭化水素を含む鉱油系絶縁油、又は、炭化水素系若しくはエステル系油を含む合成油系絶縁油であること、が好ましい。
これらの絶縁油を用いた場合には、大きな静電容量を有する炭素成分を含む誘電材料をより確実に実現することができる。これは、これらの絶縁油に含まれる炭化水素成分が、酸によって確実に脱水(分解)反応するものであり、また、脱水(分解)反応によって本発明の誘電材料の効果を損なうような反応生成物を生じないと考えられるからである。
また、本発明の誘電材料においては、上記炭素成分がアモルファス炭素を含むことが好ましい。
即ち、上記のように、本発明の誘電材料における上記炭素成分は、分子レベル(分子が集合したクラスターレベルを含む。)で略均一に分散した状態の遊離炭素で構成されているが、結晶状態ではなく非晶質(アモルファス)状態であるのが好ましい。
アモルファス炭素は、非晶質乃至はガラス状の炭素であり、通常は、特定の樹脂の硬化成形体を作製した後、当該硬化成形体を焼成炭素化して製造されるものである。また、剛性、耐摩耗性、平滑性及び耐薬品性等に優れており、不純物や溶媒の浸透によるコンタミがないこともメリットとされている。本発明者は、かかるアモルファス炭素が誘電材料に非常に好適であることを見出したのである。
上記のように、本発明の誘電材料は大きな静電容量を有し、よって種々の電気化学素子に好適であることから、本発明は、少なくとも上記本発明の誘電材料を含む分極性電極と、セパレータと、第一の集電極及び第二の集電極と、を含むこと、を特徴とする電気化学素子にも関する。
ここでいう「電気化学素子」とは、本発明の誘電材料が含まれ、かつその電気的特性が化学的に使用され得る全ての素子を含む概念であり、例えば、電気二重層キャパシタ、コンデンサ及び電池(二次電池及び蓄電池も含む。)、並びにこれらを大型化した装置も本発明の「電気化学素子」含まれる。
このような本発明の電気化学素子は、上記本発明の誘電材料を含むため、化学反応ではなく単純に電気二重層において物理的に電荷を蓄えるものであり、高速充放電及び大パワー密度が得られ、したがって、従来の鉛蓄電池やアルミ電解コンデンサの代替品として有望である。
また、本発明は、上記本発明の電気化学素子を含むことを特徴とする蓄電装置にも関する。
ここでいう「蓄電装置」とは、例えば無停電電源装置、瞬時電圧低下補償装置及びバックアップ電源等の、電力供給源として使用される電気機器、更には、例えば自動車、風力発電装置及び太陽光発電装置等の、他の発電装置から得られた電気を蓄えて有効利用するためのシステムを含む概念である。
電力供給源として使用される上記電気機器に本発明の電気化学素子を用いれば、直流高電圧を扱う場合であっても、従来のように多数のコンデンサを多段直流接続する必要がなく、安定した動作及び部品点数の低減化の実現が可能となる。
他の発電装置から得られた電気を蓄えて有効利用するためのシステムに関しては、自動車に利用する場合には、モーターを駆動するための動力源や回生ブレーキにより得た電力の蓄電等に有効に利用することができる。また、風力又は太陽光を利用した発電システムは、自然エネルギーを利用するため発電ムラが生じてしまうが、本発明の電気化学素子を利用することにより、この発電ムラを解消し、需要供給の差を埋めることが比較的容易となり、電気の有効利用が可能となる。
更に本発明は、
絶縁油に無機酸を混合することにより得られる炭素成分を含むこと、を特徴とする誘電材料の製造方法であって、
絶縁油に無機酸を混合して炭素成分を遊離させる工程と、
前記絶縁油と前記無機酸の混合物から前記炭素成分を含む相を分離する工程と、を有すること、を特徴とする誘電材料の製造方法にも関する。
この方法は、絶縁油に酸を混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物から炭素成分を遊離させる遊離工程と、前記混合物から前記炭素成分を含む相を分離する分離工程と、を有しているとも言うことができ、上記混合工程と同時に上記遊離工程が開始されてもよい。
このような製造方法によれば、非常に小さな粒径及び大きな表面積を有し、分子レベル(分子が集合したクラスターレベルを含む。)で略均一に分散した状態で存在し、従来に比して大きな蓄電能力を発揮する遊離炭素からなる炭素成分をより確実に得ることができ、したがって、当該炭素成分を含むペースト状、ゲル状若しくは分散液状、又は粉末状、顆粒状若しくは集塊状の本発明の誘電材料を確実に得ることができる。
本発明によれば、従来の活性炭やカーボンナノチューブを用いる場合のようなコストと手間のかかる製造工程を必要とせずに電気二重層キャパシタ等を作製することができる誘電材料(分極性電極の材料)を提供すること、並びに、従来と同等以上の高耐電圧の電気二重層キャパシタ等を実現できる高静電容量(C値)を有する誘電材料等を提供することができる。
本発明の誘電材料の電子顕微鏡写真である。 本発明の誘電材料の別の電子顕微鏡写真である。 本発明の誘電材料の更に別の電子顕微鏡写真である。 本発明の電気化学素子の一実施形態の概略構成図である。 本発明の電気化学素子の別の実施形態(電気二重層キャパシタ)の概略構成図である。 本発明の電気化学素子の更に別の実施形態(鉛蓄電池)の一部を切り欠いた概略斜視図である。 本発明の誘電材料のSEM写真である。 本発明の誘電材料の別のSEM写真である。 本発明の誘電材料の更に別のSEM写真である。 本発明の実施例において測定した誘電材料のラマン分光分析の結果を示す図である。 本発明の実施例において誘電材料の静電容量を測定するために作製した測定用電気化学素子の概略断面図である。
以下、一部図面を参照しながら、本発明の誘電材料及びこれを用いた電気化学素子の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、図面における各部材の形状や寸法は、実際に本発明の作用効果を奏するための形状や寸法を必ずしも実際どおりには表わしていない場合もある。
(1)誘電材料
本発明の誘電材料は、絶縁油に無機酸を混合することにより得られる炭素成分を含むこと、を特徴とするものであり、上記のように、絶縁油に無機酸を混合することにより得られる炭素成分を必須成分とするが、その製造工程に起因し、絶縁油に含まれているようないずれかの液体(又は流体)成分を含んで、ペースト状、ゲル状、分散液状等であってもよい。また、本発明の誘電材料は、乾燥工程及び/又は焼成工程を経て、粉末状、顆粒状、集塊状であっても構わない。
本発明の誘電材料の原料となる「絶縁油」は、変圧器、電力用コンデンサ及び電力ケーブル等の絶縁材料として利用される液状の絶縁材料であり、無機酸による脱水(分解)反応によって炭素成分を遊離し得る炭化水素成分を含む鉱油系絶縁油と合成油系絶縁油のいずれも用いることができる(なお、絶縁油は、電気絶縁油として日本工業規格により規格化されている。)。
鉱油系絶縁油としては、例えば、n−パラフィン又はイソパラフィンを主成分とするパラフィン系炭化水素、2,3環ナフテン又はアルキル置換ナフテンを主成分とするナフテン系炭化水素、2,3環芳香族又はアルキル置換芳香族を主成分とする芳香族系炭化水素、及びモノスルフィド、ジスルフィド、ノルカプタン又はチオフェンを主成分とする硫黄系炭化水素等が挙げられる。
また、合成油系絶縁油としては、例えば、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリブテン、ポリα−オレフィン又はアルキルジフェニルアルカンを主成分とする炭化水素系、及びベンジルネオカプレート、ポリオールエステル又はシリケートエステルを主成分とするエステル系油等が挙げられる。
なかでも、上記絶縁油が、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくは硫黄系炭化水素を含む鉱油系絶縁油、又は、炭化水素系若しくはエステル系油を含む合成油系絶縁油であること、が好ましい。これらの絶縁油を用いた場合には、大きな静電容量を有する炭素成分を含む誘電材料をより確実に実現することができる。これは、これらの絶縁油に含まれる炭化水素成分が、無機酸によって確実に脱水(分解)反応するものであり、また、脱水(分解)反応によって本発明の誘電材料の効果を損なうような反応生成物を生じないと考えられるからである。
次に、本発明の誘電材料の原料となる「無機酸」は、上記絶縁油と混合した際に、脱水(分解)反応によって上記絶縁油に含まれる炭化水素成分から遊離した炭素成分を生成するものであればよく、例えば硫酸、硝酸等が挙げられる。なかでも硫酸が好ましく、更には濃硫酸が好ましい。
なかでも、硫酸を用いた場合には、大きな静電容量を有する炭素材料を含む誘電材料をより容易かつ確実に実現することができる。これは、硫酸が強酸であることから、脱水(分解)反応がより確実に起こり、絶縁油中の炭化水素成分がより確実に分解されるためである。また、脱水(分解)反応によって生成する硫酸からのイオウ成分(イオウ原子、イオウ分子及び/又は硫酸イオン)が、残留しており、これが何らかの電気的寄与をしているものとも考えられる。
本発明の誘電材料に含まれる炭素材料は、絶縁油に含まれる炭化水素と強酸との脱水(分解)反応によって生じた粒子状の遊離炭素の集合体であり、個々の遊離炭素は非常に小さな粒径を有しており、大きな表面積を有しているものと考えられる。本発明の誘電材料においては、この遊離炭素は分子レベル(分子が集合したクラスターレベルを含む。)で略均一に分散した状態で存在しており、より大きな表面積を有効利用することができるため、従来に比して大きな蓄電能力を発揮するものと考えられる。
ここで、「分子レベルで略均一に分散」とは、無機酸との化学反応により炭化水素成分が分解して生成した炭素成分が、絶縁油から原子、分子及び/又はこれらのクラスター(集合体乃至は結合体)等の微小単位で遊離し、略均一に分散して存在することを意味する。
本発明の誘電材料においては、上記炭素成分がアモルファス炭素を含むことが好ましい。上記のように、本発明の誘電材料における上記炭素材料は、分子レベル(分子が集合したクラスターレベルを含む。)で略均一に分散した状態の遊離炭素で構成されているが、更に、結晶状態ではなく非晶質(アモルファス)状態であるのが好ましい。
上記のとおり、アモルファス炭素は、非晶質乃至はガラス状の炭素であり、通常は、特定の樹脂の硬化成形体を作製した後、当該硬化成形体を焼成炭素化して製造されるものである。また、剛性、耐摩耗性、平滑性及び耐薬品性等に優れており、不純物や溶媒の浸透によるコンタミがないこともメリットとされている。かかるアモルファス炭素は電気化学的特性にも優れ、本発明の誘電材料に非常に好適に用いられる。
なお、本発明の誘電材料には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、電解液(電解質溶液)、導電助剤及びバインダ等、任意成分として種々の材料を添加してもよい。例えば、本発明の誘電材料がコンデンサ等の電気化学素子に用いられる場合に、金属製の電極が酸による腐食から保護するために、シリコーン油又は無機酸の中和剤を添加することが考えられる。シリコーン油は電極の表面を覆い、酸による電極の腐食を防止し、中和剤は、中和反応により無機酸を消滅させて、酸による電極の腐食を防止する。また、電解液として硫酸を添加・混合した場合には、反応生成物である炭素材料と残留する絶縁油や硫酸成分等とを分離しなくても、得られる混合物をそのまま本発明の誘電材料として使用できるというメリットがある。
本発明の誘電材料は、無機酸を加えて炭素成分を遊離させることで製造され、その際、加えられた無機酸のすべてが反応により消費されることが望ましいが、残存することもある。そのような誘電材料をコンデンサ等の電気化学素子に用いた場合、その電極を腐食するおそれがある。そのため、シリコーン油又は中和剤を電極の腐食防止のために加えてもよい。もちろん、後述するように、酸に強い電極材料を選択することによっても腐食防止が可能である。
また、本発明の誘電材料には、例えば有機高分子材料からなる微粒子等の分散剤(凝集防止剤)を添加してもよい。かかる有機高分子材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びポリプロピレン等が挙げられる。このような分散剤(凝集防止剤)を誘電材料に加えれば、誘電材料中に分散している炭素成分が凝集することを防止でき、炭素材料の表面積を低下、短絡及び耐電圧の低下を抑制することができる。
(2)本発明の誘電材料の製造方法
本発明の誘電材料の製造方法は、
絶縁油に無機酸を混合して炭素成分を遊離させる工程と、
前記絶縁油と前記無機酸の混合物から前記炭素成分を含む相を分離する工程と、を有すること、を特徴とする。
まず、絶縁油に無機酸を混合して炭素成分を遊離させる工程(混合・遊離工程)において、絶縁油と無機酸との混合比は、絶縁油の劣化度、絶縁油及び無機酸の濃度及び種類、並びに、得られる誘電材料に所望する特性等によって異なるが、適宜選択することが可能である。絶縁油中の炭化水素成分のモル当量の無機酸を用いて、全ての炭化水素成分と無機酸とを反応させるのが、効率的である。絶縁油と無機酸の混合比率は適宜選択すればよいが、無機酸の量が多ければ多いほど絶縁油中の炭化水素成分の脱水(分解)反応がより確実に促進されて好ましい。
例えば、無機酸が濃硫酸(濃度:36N(=18モル/リットル))の場合、絶縁油に対する硫酸の混合比率は、特に制限されないが、例えば、絶縁油:硫酸=20:1〜1:5(体積比)の範囲で適宜選択するのが好ましく、絶縁油:硫酸=3:1〜1:3(体積比)がより好ましい。
絶縁油と無機酸の混合方法としては、特に制限はなく、絶縁油に無機酸を添加して混合しても、無機酸に絶縁油を添加して混合してもよい。例えば、変圧器、電力用コンデンサ及び電力ケーブル等に入った状態の使用済みの絶縁油に、無機酸を添加・混合してもよい。
絶縁油と無機酸とを混合して炭素成分を遊離させるためには、例えば、絶縁油と無機酸との混合物を静置して、炭素成分を遊離させればよい。例えば、上記混合物を2〜3日、更には一週間ほど放置しておくことにより、炭素成分が充分に遊離される。具体的には、絶縁油中で遊離炭素を含む炭素成分を有する相が分離され、相分離した混合物が得られる。なお、静置とともに、又は、静置とは別に、例えば、加熱若しくは攪拌等の物理的操作、又は、光照射等の化学的操作を行って遊離を進行させることも考えられる。
そして、次に、絶縁油と無機酸の混合物から前記炭素成分を含む相を分離する工程として、上記混合・遊離工程で得た相分離した混合物から、炭素成分を含む相を分離する。ここでいう「分離」とは、炭素成分のみを厳密に抽出することを意味するものでなく、炭素成分に加えて絶縁油等を含み、本発明の誘電材料をペースト状、ゲル状又は分散液状にする程度の分離を意味する。
この分離には、デカンテーション、遠心分離若しくは濾過のうちのいずれかの方法を採用してよいが、これらのうちの任意の方法を組み合わせて採用してもよい。この分離工程によって剰余の絶縁油や無機酸等を除去し、ペースト状、ゲル状又は分散液状の本発明の誘電材料が得られる。
ペースト状、ゲル状又は分散液状の本発明の誘電材料は、更に濾過工程、乾燥工程及び/又は焼成工程を経て、粉末状、顆粒状又は集塊状としても構わない。これらの形態は、本発明の誘電材料の用途等によって適宜選択すればよい。例えば、本発明の誘電材料をコンデンサ等の電気化学素子に用いることを考慮し、所望する電気化学素子の設計に応じて任意の形態を選択すればよい。
(3)電気化学素子
次に、本発明の電気化学素子は、上記本発明の誘電材料を含む分極性電極と、セパレータと、第一の集電極及び第二の集電極と、を含むこと、を特徴とする。ここにおいて、本発明の誘電材料は、いわゆる活物質又は分極性電極そのものとして用いられ、いずれにしても、分極性電極を構成する。
(3−1)電気化学素子1
まず、本発明の電気化学素子の一例として、電気二重層キャパシタの製造技術に基づいて製造する場合を説明する。本発明の電気化学素子は、上記本発明の誘電材料を含む分極性電極と、セパレータと、第一の集電極及び第二の集電極と、が密閉容器に封入されることにより構成される。形状については、例えば、円筒型、箱型のいずれの形状を採用してもよく、それら以外の形状であってもよい。
ここで、図4に本発明の電気化学素子1の一実施形態の概略構成図を示す。電源に接続された第一の集電極(正極)2と第二の集電極(負電極)4との間に、本発明の分散液状、ゲル状又はペースト状の誘電材料からなる分極性電極6を挟み、かつ、セパレータ8を備えている。第一の集電極(正極)2と第二の集電極(負電極)4との間に電圧を印加することにより、誘電材料からなる分極性電極6中のC6aが電子を捕捉し、一方、C6bがプラスに帯電する。
6a及びC6bは何らかの炭化水素を示し、k、l、m及びnは任意の整数である。k=m=1かつl=n=0のとき、遊離炭素が原子の状態で生成される。このように、遊離炭素が分子レベルで均一に分散し、それぞれの遊離炭素が電子を捕捉することで、大容量の電荷を蓄えることができ、誘電材料に含まれる絶縁油等の絶縁材料により、高耐圧化を図ることができる。
また、図4に示す電気化学素子1においては、本発明の誘電材料が分散液状、ペースト状又はゲル状で流動性を有するものであるため、そのまま分極性電極6として用いられ、局部的絶縁破壊などに対しても優れた自己回復性を備え、実用上有益である。
なお、「正極」とは、電気二重層キャパシタに電圧を印加した際に、アニオンが吸着する電極であり、「負極」とは、電気二重層キャパシタに電圧を印加した際に、カチオンが吸着する電極である。
第一の集電極(正極)2と第二の集電極(負電極)4としては、一般的に高い導電性を有する材料であれば特に限定されないが、少なくとも低電気抵抗の金属材料が好ましく用いられ、例えば、銅、アルミニウム、金、白金、鉛、錫、ニッケル等、その他、ヨウ素をドーピングした有機絶縁材料や導電性有機材料等が用いられる。なかでも、本発明の誘電材料の製造時に使用した無機酸が残存している場合を考慮して、酸に侵されにくいという観点からは、金、白金、鉛、錫、ニッケル等を用いればよい。
第一の集電極(正極)2と第二の集電極(負電極)4の厚みは、例えば10〜50μm程度であり、第一の集電極(正極)2と第二の集電極(負電極)4には、例えばリード接続用のタブ(図示せず)が設けられている。
分極性電極6には、導電助剤が含まれていてもよい。かかる導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック等の本発明の誘電材料に含まれる炭素成分以外の炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物等が挙げられる。
また、分極性電極6には、電解液が含まれていてもよい。電解液としては、電解質を有機溶媒に溶解させたものが使用される。電解質としては、例えば、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TEA+BF )、トリエチルモノメチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TEMA+BF )等の4級アンモニウム塩を用いることができる。
更に、分極性電極6には、バインダが含まれていてもよい。バインダとしては、分極性電極6の形状を維持できる程度の結着力を有するものであれば特に限定されず種々の結着剤を使用できる。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂や、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)と水溶性高分子(カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、デキストリン、グルテン等)との混合物等が挙げられる。
セパレータ8は、分極性電極6の第一の集電極(正極)2側と第二の集電極(負電極)4側とのオーミックな接触を防ぐものであり、電気化学素子1の耐電圧に影響を与えるものである。柔軟性があり、機械的強度があり、耐久性が高いことが望ましい。誘電材料中に絶縁油などを含むことにより、耐電圧の向上が図られるが、セパレータ8もそれに応じた材料を用いることが好ましい。
セパレータ8の材料としては、種々の無機絶縁材料及び有機絶縁材料を用いることができる。無機絶縁材料としては、例えば、酸化亜鉛材料、ガラス及びセラミックス等が挙げられる。
また、有機絶縁材料としては、例えば、従来の電気二重層キャパシタにおいても用いられている絶縁紙や、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの多孔質ポリマーフィルムや不織布等が挙げられる。例えば、絶縁紙には用途に応じて種々あるが、高耐圧を図るためには、変圧器などの高電圧を使用する機器に用いられるものが好ましい。また、膨潤しないものが好ましい。
なお、本発明の誘電材料が粉末状、顆粒状又は集塊状で、分極性電極6の活物質として使用される場合には、分極性電極6は、本発明の誘電材料の他に上記電解液を含み、その他に導電助剤やバインダを含んでもよい。また、電解液に代えて本発明の誘電材料を製造する際に用いた絶縁油を用いても構わない。分極性電極を2つに分割し、両者の間に電解液層を設けてもよい。
(3−2)電気化学素子2
また、本発明の電気化学素子は、図5に示すような構造を有していてもよい。図5は、典型的な電気二重層キャパシタの構造を採用した本発明の電気化学素子10であり、電極部は、電源に接続された第一の集電極(正極)12及び第二の集電極(負電極)14と、第一の集電極(正極)12及び第二の集電極(負電極)14にそれぞれ固定・接続された、本発明の粉末状、顆粒状又は集塊状の誘電材料を含む固体状の分極性電極16a、16bと、で構成されている。
また、電解質部は、分極性電極16a、16bの間の空間に充填された電解液と、当該空間を第一の集電極(正極)12側と第二の集電極(負電極)14側とに隔てるセパレータ18と、で構成されている。この第一の集電極(正極)2と第二の集電極(負電極)4との間に電圧を印加することにより、電解液と分極性電極16a、16bとの界面(電気二重層)で分極が起こり、ここに電荷(電気容量)が蓄積される。
この電気化学素子10の各構成要素は、図4を用いて説明した上記電気化学素子1の場合と同様であればよいが、分極性電極16a、16bは、本発明の粉末状、顆粒状又は集塊状の誘電材料を含む固体状の電極であり、したがって、例えば、少なくともバインダを含んだ構成を有している。
(3−3)電気化学素子3
更にまた、本発明の電気化学素子は、図6に示すような構造を有していてもよい。図6は、典型的な鉛蓄電池の構造を採用した本発明の電気化学素子100の一部を切り欠いた斜視図である。電気化学素子100の構成要素は、一部を除き従来の鉛蓄電池と同じであればよいが、以下においては各構成要素について簡単に説明する。
電気化学素子100においては、電槽102が隔壁104によって複数のセル室16に仕切られており、各セル室106には極板群108が1つずつ収納されている。極板群108は、図示しないが、複数枚の正極板及び負極板をセパレータを介して積層することにより構成されている。正極板は正極接続部110に接続され、負極板は負極接続部112に接続、極板群108は隣接するセル室106内の極板群108と直列に接続されている。
電槽102の上部開口部には、正極端子114及び負極端子116が設けられた蓋118が装着されている。蓋118に設けられた注液口には、電池内部で発生したガスを電池外に排出するための排気口を有する排気栓120が設けられている。
正極板は、正極格子と、正極格子に保持された正極活物質層と、からなる。正極活物質層は主として正極活物質(PbO)で構成され、正極活物質層中には正極活物質以外に、例えば、炭素材料(本発明の誘電材料を構成する炭素材料であってもよい。)等の導電助剤やバインダ等が少量含まれていてもよい。正極格子は、正極活物質層を保持するエキスパンド格子である。
正極格子は、例えばCa及びSnの少なくとも1つを含むPb合金で構成されている。Pb合金としては、耐食性及び機械的強度の観点から、0.01〜0.10重量%のCaを含むPb−Ca合金、0.05〜3.0重量%のSnを含むPb−Sn合金、又はCa及びSnを含むPb−Ca−Sn合金を用いることができる。正極格子は、0.03〜0.10重量%のCa及び0.6〜1.8重量%のSnを含むPb−Ca−Sn合金からなるのが好ましい。更に好ましくは、Pb−Ca−Sn合金は、Snを0.8〜1.8重量%含む。
なお、正極格子や正極接続部に用いられるCa及びSnの少なくとも1つを含むPb合金は、実質上Sbを含まない。ただし、鉛合金中に、減液量および自己放電量の増大による電池性能への悪影響がない程度のSbを不純物として0.002重量%以下含んでいてもよい。正極格子及び正極接続部材中のSb含有量がこの程度であれば、Sbが負極板へ移動することはない。
また、正極格子の耐食性を改善するために、正極格子体の鉛合金が0.01〜0.08重量%のBaや0.001〜0.05重量%のAgを含んでいてもよい。Caを含む鉛合金を用いる場合、溶融鉛合金からのCaの酸化消失を抑制するために0.001〜0.05重量%程度のAlを添加してもよい。また、0.0005〜0.005重量%程度のBiを不純物として含んでいてもよい。
正極格子は、正極活物質層と接する表面の少なくとも一部に、2.0〜7.0重量%のSnを含む鉛合金層を有するのが好ましい。正極活物質層と正極格子との界面における不働態層の生成が抑制され、正極板の過放電に対する耐久性が向上する。
正極格子がSnを含む場合、鉛合金層中のSn含有量は正極格子中のSn含有量よりも多いのが好ましい。例えば、正極格子がSnを1.6重量%含む場合、鉛合金層は少なくとも1.6重量%を超えるSnを含むのが好ましく、更に鉛合金層中のSn含有量は3.0〜6.0重量%であるのがより好ましい。正極格子よりも鉛合金層のほうがSn含有量が少ないと、正極格子と正極活物質との界面においてSn含有量の少ない鉛合金層が存在することにより、上記のSnによる効果が小さくなる。
次に、負極板は、負極格子と、負極格子に保持された負極活物質層と、で構成される。負極活物質層は主として負極活物質(Pb)で構成され、負極活物質層中には負極活物質以外に、例えば、リグニンや硫酸バリウム等の防縮剤、炭素材料(本発明の誘電材料を構成する炭素材料であってもよい。)等の導電助剤、又はバインダが少量含まれていてもよい。負極格子は、負極活物質層が保持されたエキスパンド格子である。
負極格子及び負極接続部は、例えば、実質上Sbを含まず、Ca及びSnの少なくとも1つを含むPb合金からなる。ただし、Pb合金中に0.001重量%未満の微量のSbを不純物として含んでいてもよい。Sb含有量がこの程度の量であれば、自己放電量および電解液の減液量は増大しない。
負極格子には、正極格子と同様にPb−Ca−Sn合金を用いてもよいが、負極格子は正極板に比べて腐食しにくいため、Snを必ずしも含む必要はない。負極格子の強度を向上させたり、格子作製時の溶融鉛の湯流れ性を改善したりするために、負極格子にSnを0.2〜0.6重量%含むPb合金を用いてもよい。また、機械的強度の観点から、Caを0.03〜0.10重量%含むPb合金を用いてもよい。
負極活物質層は、0.0001〜0.003重量%のSbを含む。負極活物質層が負極活物質よりも水素過電圧の低いSbを含むことにより、負極板の充電電位が上昇するため、負極板の充電受入性が大幅に改善される。また、負極活物質層中のSbは電解液中に溶出しにくいため、負極格子の腐食を抑制することができる。
特に、負極活物質層中のSb含有量が、0.0001重量%以上であると寿命特性が改善される。一方、負極活物質層中のSb含有量が0.003重量%を超えると、負極格子の耳の腐食が徐々に進行する。負極格子の腐食を抑制する効果及び充放電サイクルにともなう電解液量の減少を抑制する効果が顕著に得られるため、負極活物質層中のSbの含有量は、0.0001〜0.001重量%であるのが好ましい。
負極活物質層へのSbの添加は、例えば、負極ペースト作製時に負極ペースト中にSb、Sbの酸化物もしくは硫酸塩、またはアンチモン酸塩等のSbを含む化合物を添加すればよい。また、これ以外に、負極板をSbイオンを含む電解液、例えば、硫酸アンチモンやアンチモン酸塩を含む希硫酸に浸漬して電解めっきすることにより、負極活物質上にSbを電析させてもよい。
セパレータには、一般的には、微多孔性のポリエチレンシートが用いられる。イオン伝導性を向上させるために、ポリエチレンにカーボンを含ませてもよい。微多孔性のポリエチレンシートは、電解液が透過可能である、孔径が0.01〜1μm程度の細孔を有する。孔径が1μmを超えると、活物質がセパレータを通過し易くなる。
また、セパレータには、耐酸性を有する繊維マットを用いてもよい。繊維には、繊維径が0.1〜2μmであるガラス繊維または繊維径が1〜10μmであるポリプロピレン樹脂繊維などの合成繊維が用いられる。正極活物質の正極板からの脱落が抑制され、優れたサイクル寿命特性が得られる点で、セパレータは耐酸性を有する繊維マットからなるのが好ましい。
ここで、各セル室106には、通常の鉛蓄電池と同様に、極板群108の全体を漬漬するように電解液である硫酸が注入されている。更に、本発明の電気化学素子100においては、この硫酸に、上記した本発明の誘電材料を得るための「絶縁油」が混合されており、これにより、本来の鉛蓄電池が含む電解液である硫酸と、絶縁油中の炭化水素成分とが、脱水(分解)反応を起こし、上記したような静電容量の高い炭素材料を含むペースト状、ゲル状又は分散液状の誘電材料が生成し、極板群108は本発明の誘電材料に浸漬された状態となっている。
以上、本発明の誘電材料及びこれを用いた電気化学素子の代表的な例について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるわけではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更も全て本発明に含まれるものである。以下、実施例を用いて本発明の誘電材料をより具体的に説明するが、本発明がかかる実施例に限定されないものであることは言うまでもない。
≪実施例1≫
濃度:36Nの濃硫酸と、ナフテン系絶縁油である(株)かんでんエンジニアリング製「サンオームオイルM1」と、を、16ml:8ml(2:1)の体積比で混合し、得られた混合物(分散液)を、1週間室温下で静置し、硫酸と絶縁油中の炭化水素成分とを反応させた。その結果、混合物は、2相に分離しており、下側には、黒色のペースト状又はゲル状の炭素材料が含まれる相が形成されていた。デカンテーションによりこの相を分離して自然乾燥し、本発明の誘電材料1を得た。
≪実施例2≫
濃硫酸とナフテン系絶縁油である「サンオームオイルM1」との混合比を1:2に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の誘電材料2を得た。ただし、2相に分離した混合物において、黒色のペースト状又はゲル状の炭素材料が含まれる相は、上側に形成されていた。
≪実施例3≫
濃硫酸とナフテン系絶縁油である「サンオームオイルM1」との混合比を3:1に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の誘電材料3を得た。
≪実施例4≫
濃硫酸とナフテン系絶縁油である「サンオームオイルM1」との混合比を1:3に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の誘電材料4を得た。
≪実施例5≫
濃硫酸とナフテン系絶縁油である「サンオームオイルM1」との混合比を4:1に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の誘電材料5を得た。
≪実施例6≫
濃硫酸とナフテン系絶縁油である「サンオームオイルM1」との混合比を5:100に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の誘電材料6を得た。
≪実施例7≫
ナフテン系絶縁油として、(株)かんでんエンジニアリング製「サンオームオイルM1」に代えて昭和シェル石油(株)製の「シェルダイアラオイルB」を用いた以外は、実施例3と同様にして、本発明の誘電材料7を得た。
≪実施例8≫
濃硫酸として、18Nの濃硫酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の誘電材料8を得た。得られた誘電材料は黒色分散液状であった。
≪実施例9≫
濃硫酸として、12Nの濃硫酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の誘電材料9を得た。
≪実施例10≫
濃硫酸に代えて濃硝酸(14N)を用いた以外は、実施例4と同様にして、本発明の誘電材料10を得た。
≪実施例11≫
濃硫酸に代えて、36N濃硫酸と14N濃硝酸との3:1(体積比)酸混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の誘電材料11を得た。
[評価試験]
(1)電子顕微鏡観察
上記実施例5で得られた本発明の誘電材料5を、真空装置により脱気乾燥して得た試料を、電子顕微鏡で観察して写真を撮影した。ここでは、ごく少量の試料を用い、観察・撮影時の厚みは1mmに満たず、また、金蒸着等はせず直接観察した(図1)。ついで、図1の状態から、電子ビームの印加電圧を20kVに設定して観測を続けた。時間の経過に伴い、誘電材料は、図2〜図3に示す状態に変化した。図2において、その一部が明るくなっていることがわかり、図3においては、その明るくなっている部分(図中白くなっている部分)がさらに均一に広がっていた。
(2)SEM観察
上記実施例1で得られた本発明の誘電材料1のSEM像を、誘電材料1に砂糖1gを添加して固形化(ペースト化)し、米国FEI company社製のPHENOM、The Perfect Combinationを用いて観察し、倍率を変えて写真を撮影した。その結果を、図7〜図9に示した。
(3)ラマン分光分析
上記実施例1で得られた本発明の誘電材料1について、日本分光(株)製のNRS5100型レーザーラマン分光光度計を用い、励起波長532nm及び対物レンズ100倍の条件で、定性分析を行った。その結果を図10に示した。
(4)静電容量の測定
上記実施例1で得られた誘電材料1を用いて、図11に示す測定用素子200を作製し、静電容量を測定した。具体的には、まず有底円筒状の第一のガラス製容器(φ50mmのシャーレ)202内に、カップ状のアルミ電極208b及びカップ状の銅電極208aを乗せて第一の電極208とし、その内側底面部に上記誘電材料1を層状に敷き詰めて誘電材料層206aを形成した。また、第二のガラス製容器(φ45mmのシャーレ)204内に、上記誘電材料を層状に敷き詰めて誘電材料層206bを形成し、カップ状の銅電極210aとカップ状のアルミ電極210bとを乗せて第二の電極210とした。その後、第一のガラス製容器202内に第二のガラス製容器204を入れ、図11に示す測定用素子200を作製した。
上記のようにして作製した測定用素子200の第一の電極208と第二の電極210との間に、日置電機(株)製のHIOKI3532LCRハイテスタを接続し、Z(Ω)、C(F)及びC(F)を測定した。そして、1V、42Hz、8時間又は5時間の条件で定電圧充電をした後、同様にして、Z(Ω)、C(F)及びC(F)を測定した。その結果を表2に示した。
図1〜図3に示す電子顕微鏡写真から、電子ビームの照射を受けた本発明の誘電材料が放電を生じたものと考えられる。即ち、この誘電材料が、電子ビームの照射により帯電し、時間の経過に伴い帯電量が飽和し、放電が生じたものと考えられる。また、明るくなっている部分が均一に広がっているということは、炭素成分の一つ一つが電荷を捕捉し、飽和に至ってそれぞれが略一時に放電したことの現れでもあるともいえ、誘電残量として好適であることが伺える。
また、図7〜図9に示すSEM像の写真から、倍率を大きくしても、砂漠のような様子が確認され、微細な粒子状(粉末状)の炭素が生成しており、本発明の誘電材料においては炭素が繊維化(つまり結晶化)していないことがわかる。
また、図10に示すラマン分光分析の結果から、炭素に起因するピークがシャープな形状ではなく、炭素はカーボンナノチューブ等のようには結晶化しておらず、アモルファス炭素(カーボン)が形成されていることが確認された。
更に、表2に示す結果から、本発明の誘電材料を用いた測定用素子の両電極間では、充電後に抵抗が著しく下がり、静電容量(C及びC)が著しく上がっていることがわかる。ここでは、測定の便宜から、交流電流を用いて測定を行ったが、実際には上記素子は直流電流を用いて使用されるため、42Hzという低い周波数を用いた。本発明の誘電材料は、このような交流電流を用いた場合でも、大きな静電容量を発揮することから、直流電流を用いた場合には、更に大きな静電容量を発揮することが期待された。
なお、実施例2〜実施例7の誘電材料を用いた場合も、同様の結果が得られた。
また、上記実施例1〜実施例7においては、絶縁油に硫酸を添加・混合した後、黒色ペーストからなる本発明の誘電材料をデカンテーションにより分離したが、残留した絶縁油に更に硫酸を添加・混合したところ、再び2相に分離し、下側には、黒色のペースト状又はゲル状の炭素材料が含まれる相が形成された。このことから、例えば使用済みの絶縁油等から、本発明の誘電材料が高い収率で得られることが期待された。
なお、(株)ジャパンエナジー製のパラフィン系絶縁油(JOMO HSトランスN)を用いた場合も、上記と同様の結果が得られた。
電気エネルギーの効率的利用のために蓄電装置の高性能化が求められている昨今において、本発明の誘電材料は、従来の活性炭等に比して大きな静電容量を有していることから、高密度化、大容量化及び耐高圧化を必要とする各種素子及び装置への適用が考えられる。また、使用済みの鉛蓄電池等には、上記のように電解液として硫酸が含まれているため、本発明の誘電材料をここに添加・混合すれば、反応生成物である炭素材料と残留する硫酸成分とを分離しなくても、得られる混合物を含む鉛蓄電池をそのまま使用でき、再利用及びリサイクルの観点から好ましい。

Claims (10)

  1. 絶縁油に無機酸を混合することにより得られる炭素成分を含むこと、を特徴とする誘電材料。
  2. 前記無機酸が硫酸を含むこと、を特徴とする請求項1に記載の誘電材料。
  3. 前記絶縁油が、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくは硫黄系炭化水素を含む鉱油系絶縁油、又は、炭化水素系若しくはエステル系油を含む合成油系絶縁油であること、を特徴とする請求項1又は2に記載の誘電材料。
  4. 前記炭素成分がアモルファス炭素を含むこと、を特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載の誘電材料。
  5. 少なくとも請求項1〜4のうちのいずれかに記載の誘電材料を含む分極性電極と、セパレータと、第一の集電極及び第二の集電極と、を含むこと、を特徴とする電気化学素子。
  6. 請求項5に記載の前記電気化学素子を含むこと、を特徴とする蓄電装置。
  7. 絶縁油に無機酸を混合することにより得られる炭素成分を含むこと、を特徴とする誘電材料の製造方法であって、
    絶縁油に無機酸を混合して炭素成分を遊離させる工程と、
    前記絶縁油と前記無機酸の混合物から前記炭素成分を含む相を分離する工程と、を有すること、を特徴とする誘電材料の製造方法。
  8. 前記無機酸が硫酸を含むこと、を特徴とする請求項7に記載の誘電材料の製造方法。
  9. 前記絶縁油が、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくは硫黄系炭化水素を含む鉱油系絶縁油、又は、炭化水素系若しくはエステル系油を含む合成油系絶縁油であること、を特徴とする請求項7又は8に記載の誘電材料の製造方法。
  10. 前記炭素成分がアモルファス炭素を含むこと、を特徴とする請求項7〜9のうちのいずれかに記載の誘電材料の製造方法。


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