JPWO2011027796A1 - 五炭糖輸送体 - Google Patents

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Abstract

バイオマス資源を有効活用して五炭糖からバイオエタノールなどの有用物質を製造することを目的とする。HGT2遺伝子またはその発現タンパク質のキシロース輸送体としての使用;HGT2遺伝子、XUT1遺伝子およびHXT2.4遺伝子からなる群から選ばれる遺伝子の発現タンパク質であるキシロースおよび/またはL-アラビノース輸送体。;HGT2遺伝子、XUT1遺伝子およびHXT2.4遺伝子からなる群から選ばれる遺伝子のキシロースおよび/またはL-アラビノース輸送体としての使用;およびHGT2遺伝子、XUT1遺伝子およびHXT2.4遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子を酵母に導入し、キシロースおよび/またはL-アラビノースを含有するバイオマスの存在下で培養することを特徴とするバイオエタノールの製造方法。

Description

本発明は、アラビノース及び/又はキシロースの取り込みを促進する膜輸送タンパク質(輸送体)に関する。
地球上のバイオマスの大部分を占める木質系バイオマスは、リグノセルロースから構成されており、典型的なリグノセルロース系バイオマスでは、35〜45%のセルロース、25〜40%のヘミセルロース、15〜30%のリグニンで構成されている。このうち、近年、セルロースやリグニンについては、超臨界水を用いた短時間でグルコースへの変換する手法などの、盛んにそのエネルギー利用としての研究がなされている。ヘミセルロースは酸加水分解あるいは酵素分解によって容易にキシロースなどの単糖類に分解することが出来る。また、ヘミセルロースの大部分を占め、容易に調達できるキシロースを液体燃料へと効率よく変換させることは、エネルギー問題の点からも重要な課題と考えられている。
これまで、酵母などの多くの微生物を用いて、セルロースなどのヘキソースをエタノールへと嫌気的に効率よく変換させることには成功しているが、キシロースなどのペントースは高い効率で変換できないことが知られている。
キシロースをエタノールへと変換する経路として、図1に示したように、主に二つの経路が知られている。一つは、キシロースからキシルロースへとキシロース異性化酵素(XI)により補酵素に依存せずに一段階で変換する方法である。もう一つは、キシロース還元酵素(以下XR)によりキシロースをキシリトールへと変換させた後、キシリトールをキシリトール脱水素酵素(XDH)によりキシルロースへと変換する方法である。この時、変換には補酵素を必要とする。両方法ともキシルロースへと変換する事が出来れば、キシルロースキナーゼ(XK)によって生じたキシルロース5リン酸がペントース・リン酸回路を経由してエタノールへと容易に変換される。
XIは主にバクテリアに見られるキシロース代謝経路である。例えば、Streptomyces sp.やActinoplanes sp.のようなバクテリアは、XIによりキシロースをキシルロースへと変換した後、ペントース・リン酸回路を通ってエタノールへと変換できることが知られている(非特許文献1、2)。しかし、その効率は非常に低い。これは、有機酸が副生成物として生成することが原因ではないかと考えられている。これらのことから、工業的に利用するには至っていない。これに替わり、大腸菌にテキーラ製造に用いられるザイモモナス細菌のピルビン酸脱炭酸酵素とアルコール脱水素酵素の2つを発現させたKO11株が米国で開発されている(特許文献1、2)。この組み換え大腸菌は、リグノセルロースバイオマスに含まれる全ての単糖をエタノールまで変換できる。一方、発酵の際に乳酸・コハク酸・フマル酸・酢酸などの副生成物ができることと、リグノセルロースバイオマスを糖化した際に出る発酵阻害物質に対する耐性が低い点がいまだ完全には解決できていない。最近になって、真核微生物であるルーメン真菌の数種類にXIが存在することが明らかとなっている。
XR-XDH経路は主に真核微生物に見られる経路であり、Pichia stipitis、Candida shehatae、Pachysolen tannophilus等がこの経路を有すると知られている(非特許文献3,4)。これらの真核微生物を用いて主に発酵条件の最適化などに主眼に研究が行われてきたが、嫌気条件等の制御が難しく、またアルコールやリグノセルロースバイオマスの糖化分解物への耐性の面でも劣ることから、現在では主流ではない。これに替わり、S. cerevisiaeは潜在的アルコール発酵能とアルコール耐性能の高さから最も研究の進んでいる真核微生物である。
一方、本酵母はキシロースを資化できないため、主にP. stipitis由来のXRとXDH遺伝子、さらに現在ではS. cerevisiaeの持つXKの3種類の遺伝子を構成的に発現させたXR-XDH-XK遺伝子組み換え酵母が主に使われている。XIは、当初酵母の細胞内で機能的に発現させることができなかったことから研究が進んでいなかったが、最近になってルーメン真菌由来の遺伝子でその発現に成功、キシロース発酵にも成功しているが、XR-XDHのシステムに比べて効率が悪いことが分かってきている。
開発当初から指摘されてきたことであるが、XR-XDH-XK遺伝子組み換え酵母の問題点は大きく2つある。まず、発酵過程でキシリトール・グリセロール・酢酸などの副生成物が蓄積する。この原因としてXRとXDHの触媒反応における補酵素要求性の違いによる細胞内の酸化・還元バランスの乱れが挙げられており、酵母の補酵素リサイクルシステムの改良(非特許文献5)や、最近ではXRあるいはXDHを部位特異的変異によって人工的に異なる補酵素特異性を持つ変異体を作り出し、その遺伝子を用いてキシロース発酵を改善する試みなどもなされている(非特許文献6、7、8)。
もう1つの問題点は、六炭糖に比べて五炭糖の発酵速度が極めて遅いことである。この原因の1つは細胞内でキシロース→キシリトール→キシルロース→キシルロース5リン酸と変換された後の代謝の遅延であり、XK以外のペントース・リン酸回路のトランスケトラーゼ(TKL)・トランスアルドラーゼ(TAL)の発現を増強するなどの改良がなされている(非特許文献9)。原因の2番目としては、六炭糖に比べて五炭糖を細胞内へ輸送する能力の脆弱さである。サッカロミセス酵母にXR-XDHやXIのみを導入することでキシロース発酵が可能になる事実は、本酵母がキシロース輸送能力(およびその輸送体)を固有に保持することを示している。そこで、主要な六炭糖輸送体であるHXT1-7およびGAL2を全て欠損させた変異体RE700株に対して、HXT1-7とGAL2を個々に導入してキシロース輸送能を持つ六炭糖輸送体がHahn-Hagerdalら(非特許文献10)やHoら(非特許文献11)によって同定されている。しかし、これらの輸送体遺伝子を構成的に発現させてもエタノール生産性に向上は見られない。
他の生物由来の糖輸送遺伝子を導入する試みもいくつかなされている。まず、上記のHahn-Hagerdalらは、大腸菌(accession name, xylE)と、植物であるクロレラ(Hup1, accession No. X55349)とシロイヌナズナ(Stp2, accession No. NM_100608 ; Stp3,accession No. AJ002399)のキシロース輸送体遺伝子といった、植物と細菌由来のキシロース輸送体と推定される遺伝子を、S. cerevisiaeに対して同時に導入しているがうまくいっていない。異なる生物由来の遺伝子を酵母で機能的に発現させ膜に正確に局在させることは難しく、この点に関して彼らは解析を行っていない。
一方、Hectorらはシロイヌナズナ由来のキシロース輸送体遺伝子(accession No. #BT015354・#BT015128)を、XR-XDH-XK遺伝子を染色体組み込みしたS. cerevisiaeに導入した(非特許文献12)。アミノ酸末端に付加したヒスチジンタグを利用した免疫蛍光法により、導入した遺伝子が正確に発現し、また膜局在も正常であることを確認している。キシロース発酵に及ぼす影響だが、キシロース輸送能と消費速度、エタノール生産性がそれぞれ46%・40%・70%向上したとしている。糸状菌Trichoderma reeseiのキシロース輸送体を直接同定する試みがRuohonenらによってなされている(非特許文献13)。T. reeseiのcDNAをS. cerevisiae内で発現するようにライブラリを構築し、主要六炭糖輸送体を欠損させたS. cerevisiae変異株KY73にXR-XDH-XK遺伝子を染色体組み込みした株に上記ライブラリーを導入し、キシロースを炭素源として生育可能なコロニーを選抜した。わずか1つであるがコロニーが単離され、キシロース輸送体としてXlt1が同定された(accession No. AY818402)。ところが、この遺伝子を改めてKY73株に形質転換しキシロースでの生育や輸送能を調べても全く確認できなかった。結局、KY73株に何かしらの自然突然変異が起きたことでXlt1導入によるキシロース生育能が獲得されたのではないか、としている。
Goncalvesらは、キシロース資化性酵母であるCandida intermediaのcDNAライブラリから2種類の方法でキシロース輸送体を単離した。まずGXF1(accession No. AJ937350)は、S. cerevisiaeの六炭糖欠損変異体の表現型を補完する方法を用いて、一方GXS1(accession No. AJ875406)はキシロースで生育させたC. intermediaの細胞膜から直接タンパク質を精製し、決定した部分的アミノ酸配列からcDNAを単離した(非特許文献14)。GXF1とGXS1の両方でグルコースとキシロースの輸送能が見られた。続いて、両遺伝子をXR-XDH-XK遺伝子組み換え酵母で発現させキシロース発酵が行われた。しかし、GXF1は酵母細胞内で機能的に発現したもののGXS1はほとんど転写されずまた膜への局在も確認できなかった(非特許文献15)。これは、近縁の酵母由来の糖輸送遺伝子でもS. cerevisiae内で十分に発現させることは必ずしも容易でないことを示している。
キシロース発酵性酵母Pichia stipitisのゲノム配列は2007年に解読が終了したが、それ以前にも糖輸送に関する研究はいくつかなされている。Bissonらは、P. stipitisには高親和性(Km = 0.9mM)と低親和性(Km = 380mM)の2種類のキシロース輸送システムが存在し、このうち後者はグルコースの低親和性輸送システムと同じであることを明らかにしている(非特許文献16)。一方、Weierstallらは上記S. cerevisiae RE700株との補完性を使って、P. stipitisのグルコース輸送体を同定している(非特許文献17)。この中で、まずSUT1遺伝子が単離され(accession No. U77382)、続いてSUT1をプローブとしたゲノミックサザンハイブリダイゼーションによって互いに非常に良く似たヌクレオチド配列を持つSUT2とSUT3が単離された(accession No. AF0728080・U77581)。SUT1-3は六炭糖に加えてキシロースも輸送できることが分かっており、カイネティクスで見るとSUT1が最もよい。近藤らは、このSUT1をXR-XDH-XK遺伝子を染色体組み込みしたサッカロミセス酵母にプラスミドの形で導入した(非特許文献18)。これにより、キシロース発酵の際のキシロース消費速度は向上したが最終的なエタノール生産量は同じであった。本研究は、当該分野で糖輸送遺伝子導入という手法を用いてある程度の成功を収めている唯一の例である。
とはいえ、近藤らの例で見てもグルコースに対するキシロース消費速度は6倍以上遅くいまだ実用化のレベルには達していない。P. stipitisのSUT1の有効性はある程度示されたが、本遺伝子はそもそもグルコース輸送体として同定されたものであり、P. stipitisの持つ最も優秀なキシロース輸送体であるわけではない可能性がある。実際、SUT1は好気的・嫌気的いずれの場合でもキシロース存在下で遺伝子発現が全く誘導されず、キシロース輸送能が劣るSUT2・SUT3のほうがよく発現している(非特許文献17)。
L-アラビノースは、木質バイオマスにはそれほど含まれていないものの、例えばコーンストーバ(茎)においては構成成分の15%を占める五炭糖であり、キシロースと並んでリグノセルロースバイオマスの主要五炭糖と位置付けられている。バクテリアは、L-アラビノース異性化酵素(AraA)リブロキナーゼ(AraB)・リブロース5リン酸4異性化酵素(AraD)による代謝経路を持つため、大腸菌KO11のように発酵能の付加でL-アラビノース発酵が可能となる(図2)。真核微生物の代謝経路が未解明だったこともあり、S. cerevisiaeによるL-アラビノース発酵の試みはこのバクテリア(主に大腸菌と枯草菌)の経路を導入したが、酵母細胞内でこれらの酵素がほとんど発現せず当初困難だった(非特許文献19)。やがて導入する遺伝子のコドンを酵母用に最適化することで、ある程度の発現量が確保できるようになった(非特許文献20)。また、S. cerevisiaeのGAL2がL-アラビノースを輸送できることから、恒常的発現プロモーター支配下での大量発現も行われた。これらの改良によりL-アラビノースの発酵は可能になったが、必ず長期間の継代培養による順化を行っている。
一方、Penttilaらの一連の研究で真核微生物のL-アラビノース代謝遺伝子が全て同定された(非特許文献21、22)。これによると、L-アラビノースはL-アラビニトール→L-キシルロース→キシリトール→キシルロース→キシルロース5リン酸と変換される(図2)。最初の還元酵素と最後2つの酵素はそれぞれXR・XDH・XKであることから、キシロース代謝経路と比較した新規酵素はL-アラビニトール4-脱水素酵素(LADH)とL-キシルロース還元酵素(LXR)だけということになる。そこで、XR-XDH-XK遺伝子組み換えS. cerevisiaeでLADH・LXR遺伝子を発現させた(非特許文献23)。バクテリアの遺伝子とは対照的に酵母細胞内での発現は問題なかったが、エタノールはほとんど生産されずまた副生成物としてL-アラビニトールが蓄積された。
固有にL-アラビノースを代謝できる真核微生物の持つL-アラビノース輸送体に関する研究はほとんどない。これは、S. cerevisiaeのGAL2の大量発現がある程度の効果を発揮しているためと考えられる。Knoshaugらは、L-アラビノースでよく成育できるKluyveromyces maxianusとPichia guilliermondiiの2種類の酵母のL-アラビノース輸送について研究を行った(特許文献3)。それぞれの酵母よりL-アラビノース輸送体と思われる遺伝子KmLAT1とPgLAT2を同定し、バクテリアのAraA・AraB・AraDを大量発現させた組み換えサッカロミセス酵母にプラスミドとして導入した。その結果、S. cerevisiaeのGAL2とPgLAT2を共発現させたとき、L-アラビノースを炭素源としたときの生育のDoubling timeが早くなった。エタノールは生成されていないようである。Hahn-Hagerdalらは、L-アラビノース代謝酵母であるCandida arabinofermentasからL-アラビノース輸送体遺伝子を同定した(特許文献4)。S. cerevisiaeを用いた発酵実験は行っていない。
実は、P. stipitisのゲノム上にはSUT2・SUT3の他にもう1つ良く似たホモログがありSUT4と名づけられている。これらSUT1-4は、真核微生物の既知の糖輸送体のアミノ酸配列を用いて作成した分子系統樹で見ると(図3)、P. stipitisの持つ40個弱の(推定)糖輸送体の中で最もサッカロミセス酵母の六炭糖輸送体HXTに近いため、これらがグルコースやキシロースを輸送できることはある程度予測が可能である。一方、既知の真核微生物の糖輸送体の基質特異性を系統樹に当てはめてみると、マルトースあるいはラクトース輸送体と推定できるごく少数を除くと相互の類縁関係と糖輸送能力には全く関連性がないことが分かる。すなわち、P. stipitisのSUT以外の残りの(推定)糖輸送体について現時点ではこれ以上知るすべがない。
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本発明の目的は、木質などのバイオマス資源のうち、約30%以上を占めるヘミセルロースを加水分解することによって容易に得ることが出来る単糖を、高効率でエタノールへと変換し、エネルギー問題を解決するための1つの手段を提供することである。
本発明者はまずP. stipitisの持つ全ての(推定)糖輸送体遺伝子をサッカロミセス酵母で発現させる系を構築、個々の遺伝子について網羅的に基質特異性を解析する中で、バイオエタノール生産のための酵母育種開発に重要な五炭糖輸送体を明らかにすることを試みた。その結果、特定の遺伝子が酵母において5炭糖の輸送タンパク質として機能することを見出した。
本発明は、以下の遺伝子またはその発現タンパク質のキシロース、アラビノースなどの五炭糖輸送体もしくはその使用、バイオエタノールの製造方法を提供するものである。
項1 HGT2遺伝子またはその発現タンパク質のキシロース輸送体としての使用。
項2 HGT2遺伝子、XUT1遺伝子およびHXT2.4遺伝子からなる群から選ばれる遺伝子の発現タンパク質であるキシロースおよび/またはL-アラビノース輸送体。
項3 HGT2遺伝子、XUT1遺伝子およびHXT2.4遺伝子からなる群から選ばれる遺伝子のキシロースおよび/またはL-アラビノース輸送体としての使用。
項4 HGT2遺伝子、XUT1遺伝子およびHXT2.4遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子を酵母に導入し、キシロースおよび/またはL-アラビノースを含有するバイオマスの存在下で培養することを特徴とするバイオエタノールの製造方法。
項5 キシロースおよび/またはL-アラビノースを含有するバイオマスが、リグノセルロースである上記項4に記載のバイオエタノールの製造方法。
本発明によれば、キシロース、アラビノースなどの五炭糖の取り込み能が劣る微生物に遺伝子導入することにより五炭糖の取り込み能を格段に向上させて、五炭糖の利用を促進することができる。
また、五炭糖の代謝関連酵素を同時に酵母などの微生物に導入することで、リグノセルロース系の木質系バイオマスからエタノールを効率よく産生することができる。
非特許文献18において、XR-XDH-XKを染色体組み込んだS. cerevisiae MT8-1を宿主として用い、SUT1を導入してもバイオエタノールの生産量は向上しないことが示されているが、本願では、同じ宿主にSUT1遺伝子を導入することで、エタノールの生産量が向上したことが示された。形質転換法に関し、非特許文献18の近藤らは足りないアミノ酸を全て培地中に直接添加して培養しているのに対し、本発明ではアデニン以外の栄養要求性は、プラスミドを入れることで補完している。理論に拘束されることを望むものではないが、このことから、栄養要求性は、プラスミドを入れることで補完するのが望ましいと考えられる。
キシロース代謝経路。 バクテリア(A)と真核微生物(B)のL-アラビノース代謝経路。 真核微生物の糖輸送体の分子系統樹の太字は、今回解析を行ったP. stipitisのものを示す。他の生物ものは、全て機能解析済みである。Sc, Saccharomyces cerevisiae; Kl, Kluyveromyces lactis; Td, Torulaspora delbrueckii; Ci, Candida intermedia; Sp, Schizosaccharomyces pombe; Am, Amanita muscaria; Uf, Uromyces fabae; An, Aspergillus niger; Hp, Hansenula polymorpha; Cn, Cryptococcus neoformans; Dh, Debaryomyces hansenii; Bc, Botrytis cinerea; Tr, Trichoderma reesei; Ca, Candida albicans。 P. stipitisの(推定)糖輸送体遺伝子のサブクローニングに用いたプライマー配列。図中のaについて、内部のHindIIIサイト(二重下線部)をつぶしている。図中のbについて、SUT2−4は、ほとんど同じヌクレオチドサイトのため、単純なゲノミックPCRでは単離できない。そこで、SUT2-up+SUT2-down、SUT3-up+SUT3-down、SUT4-up+SUT4-downのプライマーで、SUT2-4を含むゲノム断片をそれぞれに増幅。次にその断片を鋳型としてそれぞれのプライマーで遺伝子を増幅している。図中のcについて、内部のEcoRIサイト(二重下線部)をつぶしている。図中のdについて、イントロンを含む遺伝子(HGT1、LAC3、QUP3、QUP4)については、二回のPCRによってcDNAを合成している。図中のeについて、内部のHindIIIサイト(二重下線部)をつぶしている。 P. stipitisの(推定)糖輸送体遺伝子のサブクローニング。cDNAをpPGKプラスミドに組み込んだものを鋳型として、PCRにより確認したもの。括弧内の数字は遺伝子の塩基の長さを示す。 本研究で用いた菌株およびプラスミド。 P. stipitisの(推定)糖輸送体遺伝子の基質特異性。S. cerevisiae KY73株にそれぞれの遺伝子を形質転換し、(A)グルコース・(B)D-マンノース・(C)フルクトース・(D)ガラクトースを炭素源とするYNB最小培地で生育をみた。記載のない遺伝子は生育が見られなかった。なお、表示のグラフの縦軸は、OD600の数値を表す。 (A)キシロース輸送能を持つP. stipitisの(推定)糖輸送体遺伝子の同定。各遺伝子を発現させたS. cerevisiae KY73株をマルトースで培養後にキシロースを加え、細胞内キシロースの存在の有無をHPLCで解析した。(B)は、輸送能がある遺伝子を抜粋したもの。 P. stipitisのキシロース輸送体のキシロース輸送のタイムコース。図8の実験を、キシロース添加後に30分毎にサンプリングし解析を行ったもの。数値は、キシロースとキシリトールの量を足したものとして表してある。内部のグラフはキシロース・キシリトールそれぞれのデータ。 pAUR-XR-XDH-XKプラスミドの模式図。P. stipitis由来のXR・XDH遺伝子およびS. cerevisiae由来のXK遺伝子はいずれもPGKプロモーターで発現し、S. cerevisiaeの染色体上に相同組み換えする際は、オーレオバシジン耐性遺伝子AUR1-C内にあるBsiWIの制限酵素サイトで切断し形質転換する。 P. stipitisのキシロース輸送体のサッカロミセス酵母内でのキシロース発酵。それぞれの遺伝子を、キシロース代謝酵素は持つが輸送能は持たないS. cerevisiae KY73-XYL株にプラスミドとして導入した。図の縦軸は成分濃度g/L、横軸は発酵時間hである。(A)キシロース濃度・(B)キシリトール濃度・(C)グリセロール濃度・(D)エタノール濃度。 P.stipitisのキシロース輸送体のサッカロミセス酵母内でのキシロース発酵。それぞれの遺伝子を、正常な六炭糖輸送体を持つ野生型サッカロミセス酵母にキシロース資化能を付加したMT8-1-XYL株にプラスミドとして導入した。(A)キシロース濃度・(B)エタノール濃度。ごく少量のキシロースと酢酸が副生成物として検出された(データは示さず)。 (A)L-アラビノース輸送能を持つP. stipitisの(推定)糖輸送体遺伝子の同定。各遺伝子を発現させたS. cerevisiae KY73株をマルトースで培養後にキシロースを加え、細胞内キシロースの存在の有無をHPLCで解析した。(B)は、輸送能がある遺伝子を抜粋したもの。 P. stipitisのL-アラビノース輸送体のL-アラビノース輸送のタイムコース。図13の実験を、L-アラビノース添加後に30分毎にサンプリングし解析を行ったもの。 リアルタイムPCR解析に使用するプライマー配列。図中、「遺伝子」と記載した項目には、リアルタイムPCRによる解析対象となる遺伝子を記載している。 P. stipitisを特定の炭素源を含む最小培地にて培養した際に、発現が誘導される遺伝子を示す結果。(A)はグルコース、(B)はマンノース、(C)はフルクトース、(D)はガラクトース、(E)はキシロース、(F)はL-アラビノースを炭素源として含む培地での実験結果を表す。(A)〜(F)における各系列成分は、(G)に示すように、左からRGT2、SNF3、SUT1、SUT2/3/4、HXT2.1、HXT2.2、HXT2.3、HXT2.4、HXT2.5/2.6、HXT4、XUT1、XUT2、XUT3、XUT4、XUT5、XUT6、XUT7、HGT1、HGT2、QUP1、QUP2、QUP3、QUP4、LAC1、LAC2、LAC3、MAL1、MAL2、MAL3、MAL4、MAL5、MFS5、STL1、AUT1、FUC1遺伝子の発現量を示す。 P. stipitisを特定の炭素源を含む最小培地にて培養した際に、発現が誘導される遺伝子を示す結果。(A)はRGT2遺伝子、(B)はSUT1遺伝子、(C)はSUT2/3/4遺伝子、(D)はHXT2.4遺伝子、(E)はXUT1遺伝子、(F)はHGT2遺伝子の発現量を示す。(A)〜(F)における各系列成分は、(G)に示すように、左からグルコース、マンノース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、L-アラビノース、D-アラビノース、L-ラムノース、マルトース、セロビオース、スクロース、ラクトース、グリセロールを含む培地にて実験した結果を示す。 HGT2およびXUT1の糖輸能を示す結果。(A)は、キシロース輸送能の結果を示す。(B)は、L−アラビノースの輸送能を示す。なお、図中の○は、キシロースのみの存在下において、HGT2のみを発現させた際の、糖の輸送能を示す。図中の△はキシロースおよびL−アラビノースの存在下において、HGT2のみを発現させた際の、糖の輸送能を示す。図中の◇はキシロースおよびL−アラビノースの存在下において、HGT2およびXUT1を発現させた際の、糖の輸送能を示す。
本明細書において、HGT2遺伝子またはその発現タンパク質としては、P. stipitis由来のものが好ましく例示されるが(NCBI accession No. XM_001382718)、これ以外の真核細胞もしくは原核細胞由来の、キシロース輸送体および/またはL-アラビノース輸送体としての機能を有するその改変体を含むHGT2遺伝子またはその発現タンパク質を広く包含する。
本明細書において、SUT1遺伝子またはその発現タンパク質としては、P. stipitis由来のものが好ましく例示されるが(NCBI accession No. U77382)、これ以外の真核細胞もしくは原核細胞由来の、キシロース輸送体および/またはL-アラビノース輸送体としての機能を有するその改変体を含むSUT1遺伝子またはその発現タンパク質を広く包含する。
本明細書において、XUT1遺伝子またはその発現タンパク質としては、P. stipitis由来のものが好ましく例示されるが(NCBI accession No. XM_001385546)、これ以外の真核細胞もしくは原核細胞由来の、キシロース輸送体および/またはL-アラビノース輸送体としての機能を有するその改変体を含むXUT1遺伝子またはその発現タンパク質を広く包含する。
本明細書において、HXT2.4遺伝子またはその発現タンパク質としては、P. stipitis由来のものが好ましく例示されるが(NCBI accession No. XM_001387720)、これ以外の真核細胞もしくは原核細胞由来の、キシロース輸送体および/またはL-アラビノース輸送体としての機能を有するその改変体を含むHXT2.4遺伝子またはその発現タンパク質を広く包含する。
本明細書において、HGT2遺伝子、XUT1遺伝子、SUT1遺伝子、HXT2.4遺伝子などは、単独もしくは組み合わせて、該遺伝子を発現させることができる宿主に組み込み、該遺伝子がコードするアミノ酸配列を有するタンパク質をキシロース輸送体および/またはL-アラビノース輸送体として使用される。発現の条件は、一般的に宿主細胞に外来遺伝子を組み込んで発現させる際に使用される、公知の条件を用いればよい。
本明細書において、HGT2遺伝子、XUT1遺伝子、SUT1遺伝子、HXT2.4遺伝子などは、単独もしくは組み合わせて、エタノール発酵可能な宿主に組み込み、これをキシロースおよび/またはL-アラビノースを含むバイオマスの存在下で発酵させることによりバイオエタノールを産生することができる。発酵の条件は、これらの遺伝子を組み込んでいない宿主の発酵条件と同じであり、公知の条件がそのまま用いればよい。
エタノール発酵に用いられるバイオマスは、キシロースおよび/またはアラビノースが含まれるバイオマスであれば特に限定されず、公知のバイオマスが広く用いられる。このようなバイオマスとしては、リグノセルロースを含む木材・稲わら・水草などが用いられる。
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことは言うまでもない。
実施例1
P. stipitisのゲノム配列に対して、サッカロミセス酵母のヘキソース輸送体(HXT)をプローブとしてProtein-Blastサーチを行い、約30%を下限として相同性のある遺伝子38個を選抜した。それぞれの遺伝子の5’および3’末端に適切な制限酵素部位が付加されるようにオリゴヌクレオチドプライマーを設計した(図4)。制限酵素処理したcDNAは、サッカロミセス酵母の構成的発現プロモーターであるPhosphoglycerate kinase(PGK)プロモーター・ターミネーターカセットおよびマーカー遺伝子としてURA3を含むpPGKプラスミドにサブクローニングした。各プラスミドを鋳型としたPCR実験結果を図5に示す。
ヘキソースであるグルコース・D-マンノース・D-フルクトース・D-ガラクトースに対する輸送能を調べるため、主要なヘキソース輸送体であるHXT1-7およびGAL2が全て欠損したサッカロミセス酵母変異株であるKY73を用いた。本株は、マルトース以外の炭素源で生育不能であり、用いることのできる栄養要求性はウラシルのみである。KY73株に対して、P. stipitisの糖輸送体遺伝子を含むpPGKプラスミドを形質転換し、マルトースを炭素源とするYNB培地プレート上で選抜を行った。単一のコロニーを選び、グルコース・D-マンノース・D-フルクトース・D-ガラクトースをそれぞれ炭素源とするYNB液体培地で生育の有無を観察した。その結果、各ヘキソースに対する輸送能を有する遺伝子として以下のものが同定された。
グルコース:SUT1・HGT2・SUT3・SUT2・XUT3・SUT4・XUT1・HXT2.2
D-マンノース:SUT1・SUT2・SUT3・SUT4・HGT2・RGT2・XUT3・XUT1
D-フルクトース:SUT1・SUT2・XUT3・SUT3・SUT4・HGT2
D-ガラクトース・SUT1・SUT3
生育曲線を図7に示す。全体の傾向として、選抜した糖輸送体遺伝のごく一部のもののみに六炭糖輸送能があり、それはD-ガラクトースを除くグルコース・D-マンノース・D-フルクトースを同時に輸送できることが分かる。Weierstallらは、P. stipitisのグルコース輸送体遺伝子を同定する目的で、P. stipitisのゲノムライブラリをKY73とは異なるが同様の変異を有するサッカロミセス酵母の変異株Yに導入しSUT1を同定。さらにそのホモログとしてSUT2・SUT3を同定している。本実験でも、SUT1-3で最も強くKY73のヘキソース輸送能の補完が見られており、この結果とよく一致している。
実施例2:「D-キシロース輸送体」
(1)キシロース輸送体遺伝子のスクリーニング
リグノセルロース系バイオマスの主要五炭糖であるD-キシロースに対する輸送体を同定するために以下のような実験を行った。P. stipitisの糖輸送体遺伝子を含むpPGKプラスミドを保持するKY73株を、10mLのYNBMal(マルトースを炭素源とする最小培地)で30oC・3日間培養した。これにより、培地中のマルトースは全て消費される。次に、400μLの50%D-キシロース溶液を加える(最終濃度2%)。2時間の振騰後、酵母細胞を遠心で集め氷冷した滅菌水30mLで二度洗浄する。次に、集めた酵母細胞を400μLの滅菌水に懸濁し、37oC・200rpmで1時間振騰する。これにより、導入した遺伝子によって細胞内に輸送されたD-キシロースは細胞外に排出される。上清中のD-キシロース濃度は、AminexHPX-87HカラムをつないだHPLCシステムによる示差屈折系(RI)によって同定した。
HPLCの溶出曲線の結果を図8に示す。キシロースの細胞内輸送が確認された遺伝子は、SUT1・HGT2・SUT2・SUT3・MAL5・XUT3・SUT4であった。溶出曲線を見ると、キシロースに相当するピーク(10分)に加えてキシリトールと思われるピーク(11.7分)も確認された。これは、サッカロミセス酵母が持つXRのホモログであるGRE3によってキシロースからキシリトールが作られたためと考えられる。次に、上記7種類の遺伝子についてキシロース輸送のタイムコースを測定した(図9)。最もキシロースを輸送したのはHGT2であり、この遺伝子はキシリトールも最も多く確認された。SUT1・SUT2・SUT3がこれに続くが、これらの遺伝子のキシロース輸送能についてはWeierstallらの以前の研究で明らかとなっている。
(2)キシロース輸送体のキシロース発酵能
主要なキシロース輸送体であるHGT2・SUT1・SUT2・SUT3についてキシロース発酵の際の性質を調べるために以下のような実験を行った。まず、KY73株に、P. stipitis由来のXRおよびXDH遺伝子、さらにサッカロミセス酵母由来のXK遺伝子をそれぞれPGKプロモーターにつないだカセットを有する酵母染色体組み込み型プラスミドpAUR-XR-XDH-XKを導入した(図10)。本プラスミドは同時に真核微生物に対して抗菌作用を示すオーレオバシジンの耐性遺伝子AUR1-Cを保持しており、サッカロミセス酵母染色体上にある対立遺伝子AURとの間で相同組み換えが起こることによってオーレオバシジン耐性をマーカーとしてXR-XDH-XK遺伝子を染色体上に安定して導入することができる。このようにして作製した株をKY73-XYLと名付ける。
次に、KY73-XYLに対して、HGT2・SUT1・SUT2・SUT3をそれぞれ保持するpPGKプラスミドを形質転換した。これにより、各遺伝子によって細胞内に取り込まれたキシロースはエタノールまで代謝されることになる。KY73-XYL株はキシロースを唯一の炭素源として生育可能であり、20g/Lキシロースを炭素源として200mLバッフルフラスコを用いて回転速度150rpmで発酵実験を行った(図11)。キシロース消費速度および生産されたエタノール濃度から、SUT1とHGT2で十分なキシロース発酵が行われていることが分かる。次にSUT1とHGT2で比較すると、SUT1はHGT2より約2倍キシロース消費が早いものの、6日後に生産されたエタノール量で見るとHGT2はSUT1の約90%に達しており両者間ではそれほど差がない。これは、SUT1がHGT2よりキシリトールが約2.9倍、グリセロールが約4.9倍も多く蓄積することで、せっかく取り込んだキシロースを効率的にエタノール変換できていないことによると考えられる。
次に、KY73株ではなく六炭糖輸送体の欠損していないサッカロミセス酵母を用いてキシロース発酵を行った。まず、宿主酵母であるMT8-1株(MATa ade his3 leu2 trp1 ura3)に対して、上記pAUR-XR-XDH-XKプラスミドを導入した(MT8-1XYLと名付ける)。ゲノミックPCRおよび無細胞抽出液中の酵素活性により、XR・XDH遺伝子が正常に組み込まれ、またXK遺伝子活性が上昇していることを確認した。MT8-1XYL株に、pPGK・pPGK-SUT1・pPGK-SUT2・pPGK-HGT2(いずれもura3+)プラスミドを、YEpM4(leu2+)・pHV1(his3+)・pTV3(trp1+)とともにそれぞれアデニンを塗布したYNBプレート上で形質転換した(株名はプラスミドと同じとする)。それぞれの形質転換酵母を、アデニンを含むYNB最小培地でグルコースを炭素源として培養した後に、アデニンを含む20g/Lキシロースを炭素源として200mLバッフルフラスコを用いて回転速度150rpmで発酵実験を行った。その結果を図12に示す。
コントロールであるpPGKではキシロース消費は極めて遅く、4日後で13.7g/Lが残っており、エタノール生産も全く確認できなかった。一方、SUT1とHGT2のキシロース消費量は4日後でpPGKのそれぞれ2.7倍と2.9倍であり、エタノールが3.2g/Lと2.4g/L生成された。SUT2でも多少の向上は見られたものの、SUT1・HGT2よりははるかに低かった。この結果は、KY73-XYLを用いた個々の遺伝子のキシロース発酵実験の結果とよく一致する。
実施例3:「L-アラビノース輸送体」
D-キシロースと並びリグノセルロース系バイオマスのもう1つの主要五炭糖であるL-アラビノースに対する輸送体を同定するために以下のような実験を行った。P. stipitisの糖輸送体遺伝子のKY73株を用いた細胞内への取り込み能の測定は、D-キシロースに準じて行った。
HPLCによる細胞内L-アラビノース濃度測定の結果を図13に示す。L-アラビノースのピークは10.8分前後に出るが、同定されたピークは11.2分前後でありこれはL-アラビニトールに相当する。これは、サッカロミセス酵母の持つGRE3がL-アラビノース還元酵素として働き、細胞内に取り込まれたL-アラビノースをL-アラビニトールに変換したためであると考えられる。L-アラビニトールのピークが確認されたP. stipitisの糖輸送体遺伝子は、XUT1・HGT2・SUT3・SUT2・SUT1・XUT3であった。次に、上記7種類の遺伝子についてL-アラビノース輸送のタイムコースを測定した(図14)。HGT2・XUT1で最も高いL-アラビノース輸送が確認された。
実施例4:「リアルタイムPCR法による遺伝子発現解析」
これまでは、主にサッカロミセス酵母変異株KY73を用いた糖輸送体遺伝子翻訳産物の糖輸送能解析について記載してきた。一方、例えば糖輸送体遺伝子Aが糖Bを輸送する能力があることとその遺伝子がP. stipitisにおける糖Bの代謝において機能していることは必ずしも一致しない。厳密に言えば各糖輸送体遺伝子を個別に破壊した変異株を作製し表現型を調べる必要があるが、ここでは「ある糖を基質とする輸送体遺伝子の発現はその糖を炭素源とした生育下で誘導される」という一般的知見に基づいて、各種糖を炭素源として含む各種最小培地においてP. stipitisを培養し、糖輸送体遺伝子のmRNAの量をリアルタイムPCRによって見積もることで、タンパク質としての機能と遺伝子発現の相関について比較検討した。
リアルタイムPCRに用いる増幅プライマーの設計はPrimer3 program(http://frodo.wi.mit.edu/primer3/input.htm)を用い、解析する遺伝子から100〜150bpの増幅が行われるようにした。本実施例にて用いた具体的なプライマーの配列を図15に示す。P. stipitisは、炭素源としてグルコース、マンノース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、L-アラビノースD-アラビノース、L-ラムノース、マルトース、セロビオース、スクロース、ラクトース、グリセロールをそれぞれ2%(w/v)濃度で含む最少培地で好気的培養によって生育させ、対数増殖期(OD600 = 0.6〜0.8)において菌体を回収し、引き続いてRNeasy(R)Mini Kit (Qiagen)によりRNA抽出を行った。抽出した100 ngのRNAを用い、PrimerScript(R) RT reagent Kit (Perfect RealTime) (TaKaRa)を用いてcDNA逆転写を行った。リアルタイムPCRによる解析は、SYBR(R)Premix Ex TaqTM (Perfect Real Time) (Bio-Rad)を用いて行った。ハウスキーピング遺伝子としてアクチン遺伝子(ACT1)を用いた。
2回行った実験の平均値の結果を図16及び17に示す。図16に示す結果には、最小培地に含まれるそれぞれの糖に対して、各種遺伝子の発現量を示している。図中のグラフの縦軸は、コントロールとして用いたハウスキーピング遺伝子であるアクチン遺伝子の発現量を1とし、それぞれの遺伝子の発現量を相対的に表したものである。図17は、図16に示すデータを各種発現遺伝子ごとにまとめたものであり、最小培地にグルコースを2%(w/v)の濃度で含む際の発現量を基にして、その他のそれぞれの糖を同じ濃度で含む最小培地で培養した際の各種遺伝子の発現量を示している。
グルコース・マンノース・フルクトース・ガラクトースのいずれの六炭糖を含む最小培地においても、最も大量に発現していたのはこれまで六炭糖輸送体として知られていたSUT遺伝子群ではなく、上述のスクリーニングにて新たに同定されたHGT2遺伝子であった。またHGT2遺伝子の発現産物が輸送対象とできない、ガラクトースを含む最小培地での生育下でも十分に発現していることから、HGT2遺伝子は特定の糖によって誘導されるのではなく、構成的に発現している遺伝子であると考えられる。HGT2に次いで発現しているのはSUT1〜4及びRGT2であり、この結果は上記のKY73株を用いた相補的生育実験とよく一致している。
五炭糖であるキシロースについては、非特許文献17に示すWeierstallらの結果から、キシロースの存在下においてSUT1は発現が誘導されず、SUT2又はSUT3が好気的条件下でのみ発現することが分かっている。本実施例においても好気的培養においてSUT2〜4の発現量がSUT1に比べて十分に低い結果が得られており、従来の知見とよく一致する。一方で、HGT2はこのSUT2〜4の2倍以上の発現が見られており、タンパク質機能解析の結果と合わせてP.stipitisの最も主要なキシロース輸送体であることが示唆される。
次にL-アラビノースを含む最小培地での実験において、最も顕著に発現したのはHXT2.4であり、グルコースを含む最小培地での実験結果と比べて670倍も誘導がかかった。しかしこのタンパク質は(少なくともサッカロミセス酵母内では)L-アラビノース輸送能は確認できておらず、サッカロミセス酵母内での機能的発現に問題があるかもしれない。HXT2.4に次いで高い発現量を示すXUT1は、上記の実施例から十分なL-アラビノース輸送能が見られており、P. stipitisの最も主要なL-アラビノース輸送体であることが示唆される。従って、HXT2.4もL-アラビノース輸送体として関与すると考えられる。
実施例5:「キシロース・L-アラビノース共存下におけるキシロースの輸送能」
実施例2または3に準じた方法にてHGT2を発現させたKY73株のキシロース・L-アラビノース共存下(共に2% (w/v)濃度)での輸送能を見てみると、L-アラビノース非存在下に比べてキシロースの取り込み能が約3倍に向上する(図18:A)。但し、この効果はHGT2と共にXUT1を発現させても変わらず、またHGT2及びXUT1のL-アラビノース取り込みの加算的効果も維持される(図18:B)。
自然界においては、実験室のようにキシロース、L-アラビノース等が単独で存在することはありえず、一般にはセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等により生じた六炭糖等とキシロース、L-アラビノース等を同時に取り込むことになる。よって、キシロース、L-アラビノース等が混在するような条件下で、HGT2、XUT1等が発現した酵母細胞が、キシロースおよびL-アラビノースの取り込みにおいて、協同的効果が見られるという上記結果は非常に好ましい。

Claims (5)

  1. HGT2遺伝子またはその発現タンパク質のキシロース輸送体としての使用。
  2. HGT2遺伝子、XUT1遺伝子およびHXT2.4遺伝子からなる群から選ばれる遺伝子の発現タンパク質であるキシロースおよび/またはL-アラビノース輸送体。
  3. HGT2遺伝子、XUT1遺伝子およびHXT2.4遺伝子からなる群から選ばれる遺伝子のキシロースおよび/またはL-アラビノース輸送体としての使用。
  4. HGT2遺伝子、XUT1遺伝子およびHXT2.4遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子を酵母に導入し、キシロースおよび/またはL-アラビノースを含有するバイオマスの存在下で培養することを特徴とするバイオエタノールの製造方法。
  5. キシロースおよび/またはL-アラビノースを含有するバイオマスが、リグノセルロースである請求項4に記載のバイオエタノールの製造方法。
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