JPWO2010137597A1 - 複合磁性体リングおよびエネルギー変換器 - Google Patents

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Abstract

複数の永久磁石2を所定の間隔でリング状に並べ、相隣り合う2つの永久磁石2の間に低温キュリー点磁性体3を挟み、複数の永久磁石2と複数の低温キュリー点磁性体3とが交互に並んで配置されるように複合磁性体リング1が構成される。複合磁性体リング1内の低温キュリー点磁性体3のキュリー点近傍の透磁率の変化により排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械・電気エネルギー等に変換するエネルギー変換器が、複合磁性体リング1と、複合磁性体リング1の内部に配置される複数の磁極を有するローター5とを備え、複合磁性体リング1内の少なくとも1つの低温キュリー点磁性体3が、キュリー点の近傍の温度に加熱され、加熱後の低温キュリー点磁性体3の近傍に磁界が発生してローター5が回転する。

Description

本発明は、100℃以下の低温の排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械エネルギーまたは電気エネルギーとして有効に利用するために使用され得る複合磁性体リング、および、複合磁性体リングにおける低温キュリー点磁性体のキュリー点近傍の透磁率の変化を利用して低温の排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械エネルギーまたは電気エネルギーに効率良く変換するための熱磁気モーター等のエネルギー変換器に関する。
100℃以下の低温の排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーは大きなエネルギー源であるにもかかわらず、機械エネルギーまたは電気エネルギーとして有効に利用されていないのが現状である。これらの排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを回収して有効に利用するための一方策として、軟磁性体(例えば低温キュリー点磁性体)におけるキュリー点近傍の透磁率の変化を利用して排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械エネルギーに変換するための熱磁気モーター(熱磁気エンジンともよばれる)が従来提案されている。ここで、熱磁気モーターは、温度に依存してその磁気特性が変化する軟磁性体と永久磁石とにより構成される磁気回路を用いて低温の排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを効率良く機械エネルギーに変換する装置である。
従来の熱磁気モーターは、例えば後述の非特許文献1に開示されているように、整磁合金等の低温キュリー点磁性体からなる円盤型軟磁性体を有するローター(回転子)と、外部磁界を印加するための永久磁石を設けたステーター(固定子)とを具備している。さらに、ローターの主要部を構成する円盤型軟磁性体の一部の領域を加熱して高温部を形成し、円盤型軟磁性体の他の領域を冷却して低温部を形成すると、円盤型軟磁性体内で温度差が生じる。一般に、整磁合金等の円盤型軟磁性体は、キュリー点より低い温度領域では、キュリー点の温度に近づくにつれて透磁率が急激に低下する。このため、円盤型軟磁性体の高温部の透磁率は、低温部の透磁率よりもはるかに低い値になる。このときに、ステーターの永久磁石により、円盤型軟磁性体の高温部と低温部との境界面に対してほぼ垂直に外部磁界を印加すると、透磁率の高い円盤型軟磁性体の低温部が、透磁率の低い円盤型軟磁性体の高温部の方向に引かれるように力が発生する。それゆえに、円盤型軟磁性体の低温部から高温部の方向にローターを回転させるための回転力(駆動力)が発生し、この回転力に従ってローターが回転する。
このような従来の熱磁気モーターにおいては、円盤型軟磁性体の一部をステーターの永久磁石の磁極の間に挟み、磁場勾配の大きな領域にある円盤型軟磁性体の一部を加熱するようになっている。このため、円盤型軟磁性体の高温部から低温部へ熱が流れてしまい、円盤型軟磁性体の十分な加熱が行われなかった。また一方で、従来の熱磁気モーターの構造では、円盤型軟磁性体の大きさが限られているので、円盤型軟磁性体の高温部と低温部との間隔をそれほど大きく取ることができない。さらに、大きな回転力を得るためには、円盤型軟磁性体の高温部と低温部の透磁率の差を大きくするために、円盤型軟磁性体の高温部と低温部との境界における温度勾配を大きくする必要がある。それゆえに、円盤型軟磁性体を加熱する際の熱の流れによる熱損失が大きい。この結果として、低温の排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械エネルギー等に効率良く変換することが難しくなる。
ここで、前述のような従来の熱磁気モーター等のエネルギー変換器に関連した下記の特許文献1〜特許文献5および非特許文献1を先行技術文献として呈示する。
特許文献1では、整磁合金ドラムを有する加熱ローラと、加熱ローラの磁束密度の分布により回転トルクを発生させる永久磁石とを備える画像形成装置が開示されている。しかしながら、この画像形成装置では、整磁合金ドラムを有する加熱ローラの一部を加熱する際に、加熱ローラの高温部から低温部への熱の流れによる熱損失が大きくなる。
特許文献2では、太陽光熱を集光熱するレンズと、このレンズにより集光熱された熱源を所定の場所にガイドする光導ファイバーと、この光導ファイバーからの熱源にて回転させられ、複数の感温磁性体(低温キュリー点磁性体)からなるチップが配置された光熱磁気モーター型の磁気回転盤と、この磁気回転盤と一体に設けられている磁束発生手段とで光熱磁気発電部を構成し、また一方で、風力を受けて回転する翼車と、この翼車の回転により回転する回転軸と、この回転軸と一体に設けられている外筒と、この外筒の内周面に設けられ、上記磁束発生手段と対面している電機子巻線とで風力発電部を構成するようなハイブリッド発電装置が開示されている。しかしながら、このハイブリッド発電装置では、光熱磁気モーター型の磁気回転盤に配置された複数の感温磁性体からなるチップの一部を加熱する際に、1つのチップの中で、高温部から低温部への熱の流れが生じ、熱損失が大きくなる。また、感温磁性体チップの片側に磁石を配置しているためチップに強い磁場が印加されず強い回転トルクを発生できない。
特許文献3では、回転自在に支持された非磁性材料からなる支持体と、この支持体上で当該支持体の回転方向に所定の間隔をおいて配置された、低温のキュリー点を有するNi基合金からなる複数の感温磁性材料(低温キュリー点磁性体)と、これらの感温磁性材料の1つ又は複数と対向して配置された磁場発生用の磁石と、この磁石と対向して位置する感温磁性材料の磁石による磁化中心とずれた位置に、光熱源より熱をスポット的に集熱する集熱部とを具備する光熱磁気駆動装置が開示されている。しかしながら、この光熱磁気駆動装置では、支持体上に配置された複数の感温磁性材料の一部を加熱する際に、1つの感温磁性材料の高温部から低温部への熱の流れによる熱損失が大きくなる。また、感温磁性体の十分広い領域にわたって強い磁場が印加されないため強い回転トルクを発生できない。
特許文献4では、回転自在に軸支した感熱磁性材製の円筒体と、この円筒体の円周方向に磁極を位置せしめて円筒体の外周面と対向状に配設された磁石と、円筒体の一部を加熱する加熱領域と、円筒体の他の部分を冷却する冷却領域とからなる熱磁気回転装置において、エンジンから流出する高温冷却水により円筒体の一部を加熱し、高温冷却水の熱エネルギーの一部を熱磁気回転装置により機械エネルギーに変換する方法が開示されている。しかしながら、この熱磁気回転装置では、感熱磁性材製の円筒体の一部を加熱する際に、この円筒体の高温部から低温部への熱の流れによる熱損失が大きくなる。
特許文献5では、第1の界磁マグネット(永久磁石)と、第1の感熱磁性体(第1の低温キュリー点磁性体)と、第1の界磁磁極(ヨーク)とにより構成されるU相の界磁ユニットと、第2の界磁マグネットと、第2の感熱磁性体(第2の低温キュリー点磁性体)と、第2の界磁磁極とにより構成され、U相の界磁ユニットに対し90度の位相差を有する別のV相の界磁ユニットとを備え、第1の界磁マグネット、第1の感熱磁性体、第1の界磁磁極、第2の界磁マグネット、第2の感熱磁性体および第2の界磁磁極を磁気的に直列に接続して磁気回路を形成しており、第1の感熱磁性体を冷却し、かつ、第2の感熱磁性体を加熱し、次に、この冷却・加熱を切り替えることにより回転子マグネットを回転駆動させるような、感熱磁性体を用いた熱モーターが開示されている。
しかしながら、特許文献5に開示されている熱モーターでは、後述の本発明の複合磁性体リングと異なり、第1および第2の界磁マグネットが熱モーターの回転軸に平行な方向に磁化されており、かつ、わざわざ一対のヨーク(界磁磁極)等の軟磁性体を用いて回転軸に平行な方向に磁気回路を形成している。それゆえに、この熱モーターでは、感熱磁性体を加熱する際に、この感熱磁性体の高温部からヨーク等の他の構成要素の低温部へ熱が流れることによる熱損失が大きくなる。
さらに、特許文献5に開示されている熱モーターでは、説明図3および説明図4に示されるように、ヨーク4Uが感熱磁性体1Uの端面から内側に折れ曲がっており、永久磁石3Uに沿って永久磁石3UのS極方向へ伸びている。このため、ヨーク4Uの一部が永久磁石3UのN極に近づいており、感熱磁性体1Uが高温になって透磁率が下がったときに、永久磁石3UのN極から出た磁束を、ヨーク4Uの一部の永久磁石3UのN極に近い部分で拾ってしまう。その結果、感熱磁性体1Uの温度が変化しても、ヨーク4Uを通り、界磁ユニットの内部に磁界を発生させる磁束の量は、大きく変化せず、したがって強い回転磁界を作ることは困難である。
また、特許文献5に開示されている熱モーターの説明図4によれば、永久磁石/3UのN極と永久磁石3UのS極とはヨーク/4Uでつながっており、かつ、永久磁石3UのN極と永久磁石/3UのS極とは、感熱磁性体1Uおよび感熱磁性体/1Uを介して、ヨーク4Uでつながっている。このため、大部分の磁束は、説明図4の断面図において反時計回りに上記ループに沿って循環してしまい、回転子の入る場所に強い回転磁界を作ることは困難である。さらに、説明図4によれば、2個の永久磁石から出た磁束は、ヨーク4Uとヨーク/4Uとの間の隙間を通り、多くの部分がそれぞれ循環してしまい、回転子の入る場所に大きく漏れてこないため、強い回転磁界により充分大きな回転力を発生させることは困難である。
非特許文献1では、既に説明したように、整磁合金等の低温キュリー点磁性体からなる円盤型軟磁性体を有するローターと、外部磁界を印加するための永久磁石を設けたステーターとを具備し、円盤型軟磁性体の一部をステーターの永久磁石の磁極の間に挟み、磁場勾配の大きな領域にある円盤型軟磁性体の一部を加熱するようにした熱磁気エンジンが開示されている。この熱磁気エンジンでは、既に説明したように、円盤型軟磁性体を加熱する際に、この円盤型軟磁性体の低温部から高温部への熱の流れによる熱損失が大きくなる。
したがって、特許文献1〜特許文献5および非特許文献1のいずれにおいても、前述のような従来の熱磁気モーターと同様の問題が発生する。
特開2008−129310号公報 特開2005−76565号公報 特開2002−204588号公報 特開2001−289045号公報 特開平6−351222号公報
西川雅弘(大阪大学)および吉川和博(株式会社フジキン)、「排熱エネルギー回収利用のための熱磁気エンジンの開発(100W級熱磁気エンジンの設計製作)」(平成12年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構 新規産業創造型提案公募事業 研究成果報告書(最終版)),平成13年3月,大阪大学(エネルギー・環境技術98E 代 05−001)
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、高温部から低温部への熱の流れによる熱損失を最小限に抑えつつ、低コストで排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械エネルギーまたは電気エネルギーとして有効に利用するために使用され得る複合磁性体リング、および、複合磁性体リングにおける低温キュリー点磁性体の高温部から低温部への熱の流れによる熱損失を最小限に抑えつつ、低温の排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械エネルギーまたは電気エネルギーに効率良く変換するためのエネルギー変換器を提供することを目的とするものである。
上記問題点を解決するために、本発明の態様に係る複合磁性体リングは、複数の永久磁石を所定の間隔でリング状に並べ、相隣り合う2つの上記永久磁石の間に、低温のキュリー点を有する低温キュリー点磁性体を挟むことによって、複数の上記永久磁石と複数の上記低温キュリー点磁性体とが交互に並んでリング状に配置されるように構成される。
好ましくは、本発明の態様に係る複合磁性体リングにおいて、各々の上記永久磁石と当該永久磁石と隣り合う上記低温キュリー点磁性体との間に、断熱材を挟むように構成される。
さらに、好ましくは、本発明の態様に係る複合磁性体リングにおいて、少なくとも1つの上記低温キュリー点磁性体が、当該低温キュリー点磁性体のキュリー点の近傍の温度に加熱され、当該低温キュリー点磁性体の透磁率が変化することによって、当該低温キュリー点磁性体の近傍に磁界(磁場)が発生するようになっている。
さらに、好ましくは、本発明の態様に係る複合磁性体リングにおいて、加熱される対象である上記低温キュリー点磁性体を次々に切り替えて加熱し、かつ、加熱される対象以外の上記低温キュリー点磁性体を次々に切り替えて冷却することによって、上記複合磁性体リングの内部に回転磁界が発生するようになっている。
また一方で、本発明の態様に係るエネルギー変換器は、複数の永久磁石を所定の間隔でリング状に並べ、相隣り合う2つの上記永久磁石の間に、低温の(例えば室温の近傍の)キュリー点を有する低温キュリー点磁性体を挟むことによって、複数の上記永久磁石と複数の上記低温キュリー点磁性体とが交互に並んでリング状に配置される複合磁性体リングと、上記複合磁性体リングの内部に配置され、かつ、複数の磁極を有するローターとを備え、上記複合磁性体リング内の少なくとも1つの上記低温キュリー点磁性体が、当該低温キュリー点磁性体のキュリー点の近傍の温度に加熱され、当該低温キュリー点磁性体の透磁率が変化することによって、当該低温キュリー点磁性体の近傍に磁界が発生して上記ローターが回転するように構成される。
好ましくは、本発明の態様に係るエネルギー変換器において、各々の上記永久磁石と当該永久磁石と隣り合う上記低温キュリー点磁性体との間に、断熱材を挟むように構成される。
さらに、好ましくは、本発明の態様に係るエネルギー変換器において、上記ローターに連動して、加熱される対象である上記低温キュリー点磁性体を次々に切り替えて加熱し、かつ、加熱される対象以外の上記低温キュリー点磁性体を次々に切り替えて冷却することによって、上記ローターが連続して回転するように構成される。
また一方で、本発明の他の態様に係るエネルギー変換器は、複数の永久磁石を所定の間隔でリング状に並べ、相隣り合う2つの上記永久磁石の間に、低温のキュリー点を有する低温キュリー点磁性体を挟むことによって、複数の上記永久磁石と複数の上記低温キュリー点磁性体とが交互に並んでリング状に配置される複合磁性体リングと、上記複合磁性体リングの内部に配置され、かつ、複数の磁極を有するローターと、上記複合磁性体リング内の少なくとも1つの上記低温キュリー点磁性体を加熱する加熱手段とを備え、上記加熱手段により、少なくとも1つの上記低温キュリー点磁性体が、当該低温キュリー点磁性体のキュリー点の近傍の温度に加熱され、当該低温キュリー点磁性体の透磁率が変化することによって、当該低温キュリー点磁性体の近傍に磁界が発生して上記ローターが回転するように構成される。
好ましくは、本発明の他の態様に係るエネルギー変換器において、各々の上記永久磁石と当該永久磁石と隣り合う上記低温キュリー点磁性体との間に、断熱材を挟むように構成される。
さらに、好ましくは、本発明の他の態様に係るエネルギー変換器において、上記ローターに連動して、加熱される対象である上記低温キュリー点磁性体を次々に切り替えて加熱し、かつ、加熱される対象以外の上記低温キュリー点磁性体を次々に切り替えて冷却することによって、上記ローターが連続して回転するように構成される。
要約すれば、本発明では、複数の低温キュリー点磁性体と複数の永久磁石とを交互に並べてリング状に配置しているので、加熱される対象である低温キュリー点磁性体のみを他の低温キュリー点磁性体から分離した状態で均一に加熱することができる。それゆえに、当該低温キュリー点磁性体の高温部から他の低温キュリー点磁性体等の低温部への熱の流れによる熱損失が顕著に少なくなり、当該低温キュリー点磁性体を加熱する際の効率が上がる。この場合、低温キュリー点磁性体の高温部と低温部との温度差がごくわずかであっても、この温度差に応じて低温キュリー点磁性体のキュリー点の温度を適切に設定することにより、ローターを回転させることが可能になる。この結果として、低コストで効率良く低温の排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械エネルギーまたは電気エネルギーに変換することが可能になる。
さらに、本発明では、複合磁性体リング内の各々の永久磁石と当該永久磁石と隣り合う低温キュリー点磁性体との間に、断熱材を挟むことによって、低温キュリー点磁性体が断熱材により永久磁石と隔てられた構造になっている。それゆえに、加熱される対象である低温キュリー点磁性体の高温部から他の低温キュリー点磁性体等の低温部へ熱が流れることがなくなり、熱損失が最小限に抑えられる。
本発明との比較の対象として提示された一般の熱磁気モーターの概略的構成を示す平面図である。 本発明に係る複合磁性体リングの概略的構成を示す平面図である。 図2の複合磁性体リングを加熱する方法を説明するための平面図である。 図2の複合磁性体リングを用いた熱磁気モーターの動作原理を示す平面図である。 本発明に係る熱磁気モーターの実施例の概略的構成を示す斜視図である。 図5の実施例における低温キュリー点磁性体と集熱板との配置関係を示す斜視図である。 図5の実施例における太陽光の集光経路とミラーとの関係を示す正面図である。 図5の実施例においてローターが回転する様子を示す平面図である。 図5の実施例の変形例の概略的構成を示す平面図である。 図4の熱磁気モーターの変形例の動作原理を示す図である。
まず、本発明の複合磁性体リングおよびエネルギー変換器の実施例の構成および動作を説明する前に、本発明との比較の対象として提示された一般の熱磁気モーターの構成およびその問題点を、添付の図面(図1)を参照して説明する。
図1は、本発明との比較の対象として提示された一般の熱磁気モーターの概略的構成を示す平面図である。なお、図1に示す熱磁気モーターは、前述の非特許文献1に開示されている熱磁気エンジンにほぼ対応している。
図1において、一般の熱磁気モーターは、整磁合金(例えばNi−Fe(ニッケル−鉄)合金)等の低温キュリー点磁性体からなる円盤型軟磁性体210を有するローター200と、外部磁界を印加するための永久磁石110を設けたステーター100とを具備している。さらに、ローター200の主要部を構成する円盤型軟磁性体210の一部の領域を加熱して高温部220を形成し、円盤型軟磁性体210の他の領域を冷却して低温部230を形成すると、円盤型軟磁性体内で温度差が生じる。一般に、整磁合金等の円盤型軟磁性体210は、キュリー点より低い温度領域では、キュリー点近傍において、キュリー点の温度に近づくにつれて透磁率が急激に低下する。このため、円盤型軟磁性体210の高温部の透磁率は、低温部の透磁率よりもはるかに低い値になる。このときに、ステーター100の永久磁石110により、円盤型軟磁性体100の高温部と低温部との境界面に対してほぼ垂直に外部磁界を印加すると、透磁率の高い円盤型軟磁性体210の低温部230が、透磁率の低い円盤型軟磁性体210の高温部220の方向に引かれるように力が発生する。それゆえに、円盤型軟磁性体210の低温部230から高温部220の方向にローター200を回転させるための回転力(駆動力)が発生し、この回転力に従ってローターが反時計回りに回転する。
図1に示すような一般の熱磁気モーターにおいては、円盤型軟磁性体210の一部をステーター100の永久磁石110の磁極の間に挟み、磁場勾配の大きな領域にある円盤型軟磁性体210の一部を加熱するようになっている。このため、円盤型軟磁性体210の高温部220から低温部230へ熱が流れてしまい、円盤型軟磁性体210の十分な加熱が行われにくくなる(第1の不都合な事態)。
さらに、図1に示すような一般の熱磁気モーターの構造では、円盤型軟磁性体210の大きさが限られているので、円盤型軟磁性体210の高温部220と低温部230との間隔をそれほど大きく取ることができない。さらに、大きな回転力を得るためには、円盤型軟磁性体210の高温部220と低温部230の透磁率の差を大きくするために、円盤型軟磁性体210の高温部220と低温部230との境界における温度勾配をある程度大きくする必要がある。代表的に、円盤型軟磁性体210の高温部220は約100℃に設定され、低温部230は約60℃に設定されており、その温度差は約40℃に達する。それゆえに、円盤型軟磁性体を加熱する際の熱の流れによる熱損失が大きい。この結果として、低温の排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械エネルギー等に効率良く変換することが難しくなる(第2の不都合な事態)。
ついで、上記のような第1および第2の不都合な事態に対処するために考え出された本発明の複合磁性体リングおよびエネルギー変換器の実施例の構成および動作を、添付図面(図2〜図10)を参照しながら説明する。
図2は、本発明に係る複合磁性体リングの概略的構成を示す平面図である。ここでは、低温の排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械エネルギーまたは電気エネルギーに変換するためのエネルギー変換器(例えば熱磁気モーター)に適用されるような本発明の実施例による複合磁性体リング1の構成を簡略化して示す。なお、これ以降、前述した構成要素と同様のものについては、同一の参照番号を付して表すこととする。
本発明の実施例による複合磁性体リング1を作製する場合、図2の(I)に示すように、複数の永久磁石2を一定の間隔でリング状に並べ、相隣り合う2つの永久磁石の間に、比較的低温(例えば室温の近傍)のキュリー点を有する低温キュリー点磁性体3を挟む。これによって、複合磁性体リング1は、図2の(II)に示すように、複数の永久磁石2と複数の低温キュリー点磁性体3とが交互に並んでリング状に配置されるような構造になる。ここでは、複合磁性体リング1は、6個の低温キュリー点磁性体を有しているが、これ以外の任意の数の低温キュリー点磁性体を有する複合磁性体リングを作製することも可能である。実際上、複合磁性体リング1を作製する場合、複数の永久磁石2を一定の間隔でS極とN極を向かい合わせてリング状に並べ、相隣り合う2つの永久磁石の間に低温キュリー点磁性体3を挟むことが好ましい。
さらに、図2の(I)に示すように、各々の永久磁石2と当該永久磁石2と隣り合う低温キュリー点磁性体3との間に、断熱シート等の断熱材4を挟む。これらの断熱材4によって、複数の永久磁石2のいずれか一方の端部(N極またはS極の部分)と、複数の低温キュリー点磁性体3のいずれか一方の端とが直接接触しないようになっており、低温キュリー点磁性体3の高温部から低温部へ熱が流れるのを防止することが可能になる(断熱材4による断熱効果が得られる)。なお、図2の(II)ならびに後述の図3、図4、図5および図10では、複合磁性体リング1の構造に関連した説明を簡単にするために、断熱材4の図示を省略している。
好ましくは、永久磁石2として、低価格のバリウムフェライト磁石が使用される。また一方で、低温キュリー点磁性体3として、同様に低価格のマンガン亜鉛フェライト(例えば、組成Mn0.25Zn0.75Feのマンガン亜鉛フェライト)が使用される。ここでは、低温キュリー点磁性体のキュリー点の温度は、室温(25℃)の近傍(例えば30℃〜60℃)に予め設定されているが、通常、その組成に依存して約−40℃〜100℃まで変化させることが可能である。さらに、断熱材4として、例えばテフロン(登録商標)シートからなる断熱シートが使用されている。
あるいは、代替的な構成として、各々の永久磁石と当該永久磁石と隣り合う低温キュリー点磁性体との間に断熱材を挟む代わりに、各々の低温キュリー点磁性体の両側に狭い隙間(ギャップ)を設けておくことも可能である。このような構成においても、前述の図1の複合磁性体リングの場合と同様に、複数の永久磁石のいずれか一方の端部と、複数の低温キュリー点磁性体のいずれか一方の端とが直接接触しないようになっているので、低温キュリー点磁性体の高温部から低温部へ熱が流れるのを防止することが可能になる。
図3は、図2の複合磁性体リングを加熱する方法を説明するための平面図であり、図4は、図2の複合磁性体リングを用いた熱磁気モーターの動作原理を示す平面図である。ここでは、熱磁気モーター等のエネルギー変換器において、本発明の実施例による複合磁性体リング1が、12個の磁極を有するステーターとして使用される場合を想定する。ただし、12個以外の任意の数の磁極を有するステーターを熱磁気モーター等に使用することも可能である。
複数の低温キュリー点磁性体3が全て加熱されずに低温(L)(例えば室温(25℃))になっている状態では、全ての低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的高い値になっているままである。この状態では、各々の永久磁石2の端部(N極またはS極の部分)にて発生する磁束は、各々の永久磁石2に隣接して配置される低温キュリー点磁性体3内を集中的に通過し、低温キュリー点磁性体3の外部にはほとんど漏れてこない。このため、低温キュリー点磁性体3の外部には磁界が発生しない。
ここで、図3の(1)に示すように、複数の低温キュリー点磁性体3を全て加熱して高温(H)(例えば40℃)にし、複数の低温キュリー点磁性体3のキュリー点の近傍の温度に上昇させた状態では、全ての低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的低い値になるように変化する。この状態では、各々の永久磁石2の端部にて発生する磁束は、各々の永久磁石2に隣接して配置される低温キュリー点磁性体3内を通過するのみでなく、当該低温キュリー点磁性体3の近傍の外部にも漏れてくる。ただし、このときには、全ての低温キュリー点磁性体3の近傍に同様に磁界が発生するので、回転磁界を発生することができない。複合磁性体リング1の内側に回転磁界を発生させることができないので、複合磁性体リング1の内部に配置されているローターを回転させることができない。
また一方で、図3の(2)に示すように、複数の低温キュリー点磁性体3を交互に加熱して(すなわち、6個の低温キュリー点磁性体3を1つおきに加熱して)3個の低温キュリー点磁性体3を高温(H)にし、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3のキュリー点の近傍の温度に上昇させた状態では、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的低い値になるように変化する。これに対して、加熱される対象以外の3個の低温キュリー点磁性体3は、低温(L)の近傍まで自然冷却されており、加熱される対象以外の低温キュリー点磁性体3の透磁率は比較的高い値になっているままである。この状態では、加熱される対象である3個の低温キュリー点磁性体3に隣接して配置される永久磁石2の端部にて発生する磁束は、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3内を通過するのみでなく、当該低温キュリー点磁性体3の近傍の外部にも漏れてくる。このときには、加熱される対象である3個の低温キュリー点磁性体3の近傍にのみ磁界が発生し、複合磁性体リング1の内側に回転磁界を発生させることができるので、複合磁性体リング1の内部に配置されているローターを回転させることができる。
さらに、図3の(3)に示すように、複合磁性体リング1の中心を通り対称に2個の低温キュリー点磁性体3を加熱して高温(H)にし、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3のキュリー点の近傍の温度に上昇させた状態では、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的低い値になるように変化する。これに対して、加熱される対象以外の4個の低温キュリー点磁性体3は、低温(L)の近傍で自然冷却されており、加熱される対象以外の低温キュリー点磁性体3の透磁率は比較的高い値になっているままである。この状態では、加熱される対象である2個の低温キュリー点磁性体3に隣接して配置される永久磁石2の端部にて発生する磁束は、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3の近傍の外部に漏れてくる。このときには、加熱される対象である2個の低温キュリー点磁性体3の近傍にのみ磁界が発生し、複合磁性体リング1の内側に回転磁界を発生させることができるので、前述の図3の(2)の場合と同様に、複合磁性体リング1の内部に配置されているローターを回転させることができる。
さらに、図3の(4)に示すように、1個の低温キュリー点磁性体3のみを加熱して高温(H)にし、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3のキュリー点の近傍の温度に上昇させた状態では、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的低い値になるように変化する。これに対して、加熱される対象以外の5個の低温キュリー点磁性体3は、低温(L)の近傍で自然冷却されており、加熱される対象以外の低温キュリー点磁性体3の透磁率は比較的高い値になっているままである。この状態では、加熱される対象である1個の低温キュリー点磁性体3に隣接して配置される永久磁石2の端部にて発生する磁束は、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3の近傍の外部に漏れてくる。このときには、加熱される対象である1個の低温キュリー点磁性体3の近傍にのみ磁界が発生し、複合磁性体リング1の内側に回転磁界を発生させることができるので、前述の図3の(2)および(3)の場合と同様に、複合磁性体リング1の内部に配置されているローターを回転させることができる。
なお、図3の(2)〜(4)にて説明した複合磁性体リングを加熱する方法では、加熱される対象である低温キュリー点磁性体が加熱された後に、低温(例えば室温)の近傍になるように自然冷却されるようになっているが、冷却水等の流体を使用して、加熱された後の低温キュリー点磁性体を室温またはそれより低い温度まで強制的に冷却することも可能である。このようにすれば、高温の低温キュリー点磁性体の透磁率と低温の低温キュリー点磁性体の透磁率との差を相対的に大きくすることができるので、複合磁性体リングの内側にて前述の図3の(2)〜(4)の場合よりも強い回転磁界を発生させることが可能になる。
ついで、図4の(a)〜(d)に示す動作原理を参照しながら、例えば図3の(3)の加熱方法(すなわち、複合磁性体リング1の中心を通り対称に2個の低温キュリー点磁性体を加熱する方法)に従って熱磁気モーターを回転動作させる場合の動作原理を説明する。
図4の(a)〜(d)に例示されている熱磁気モーターは、前述の図2の(II)のような6個の永久磁石2と6個の低温キュリー点磁性体3とが交互に並んで配置される複合磁性体リング1からなる12個の磁極を有するステーター10と、複合磁性体リング1の内部に配置されるローター5とを備えている。ここでは、ローター5は、8個の磁極6−1〜6−8を有しているが、これ以外の任意の数の磁極を有するローターをステーターの内部に配置することも可能である。ただし、ローターの磁極の位置に関係なくローターの起動(ローターの静止状態から回転が始まること)を可能にするために、ステーターの永久磁石の数と低温キュリー点磁性体の数が3の倍数であるときには、ローターの磁極の数が3の倍数でないことが望ましい。あるいは、ローターの磁極の数が3の倍数であるときには、ステーターの永久磁石の数と低温キュリー点磁性体の数が3の倍数でないことが望ましい。
初めに、ローター5が、図4の(a)に示すような位置にあると想定する。ここでは、d−1の方向にある低温キュリー点磁性体3の中心の位置と、ローター5のN極の磁極6−1とS極の磁極6−2との中間の位置とが少しずれている。また一方で、d−4の方向にある低温キュリー点磁性体3の中心の位置と、ローター5のN極の磁極6−5とS極の磁極6−6の中間の位置とが少しずれている。d−1の方向にある低温キュリー点磁性体3と、d−4の方向にある低温キュリー点磁性体3とは、複合磁性体リング1の中心を通り互いに対称の位置に存在する。
このときに、図4の(a)に示すように、複合磁性体リング1の中心を通り対称の位置に存在するようなd−1の方向にある低温キュリー点磁性体3と、d−4の方向にある低温キュリー点磁性体3とを同時に加熱して高温(H)にし、d−1の方向およびd−4の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3のキュリー点の近傍の温度にまで上昇させる。この状態では、d−1の方向およびd−4の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的低い値になるように変化する。このときに、d−1の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側にS極およびN極の磁極が発生し、d−1の方向にある低温キュリー点磁性体3の近傍に磁界が形成される。この場合、d−1の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側のS極およびN極の磁極により形成される磁界の向きと、ローター5の2個の磁極6−1、6−2により形成される磁界の向きとがほぼ平行でかつ反対方向になるように(すなわち、静磁エネルギーが最小になるように)、ローター5に対して回転トルクが発生する。また一方で、d−4の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側のS極およびN極の磁極により形成される磁界の向きと、ローター5の2個の磁極6−5、6−6により形成される磁界の向きとがほぼ平行でかつ反対方向になるように、ローター5に対して前述の2個の磁極6−1、6−2の場合と同様の回転トルクが発生する。
図4の(a)では、この回転トルクによって、d−1の方向にある低温キュリー点磁性体3の中心の位置と、ローター5のN極の磁極6−1とS極の磁極6−2との中間の位置とが複合磁性体リング1の中心の位置から見て同一の方向に位置するように(すなわち、静磁エネルギーが最小になるように)、ローター5が反時計回りにわずか回転する。同様に、d−4の方向にある低温キュリー点磁性体3の中心の位置と、ローター5のN極の磁極6−5とS極の磁極6−6との中間の位置とが複合磁性体リング1の中心の位置から見て同一の方向に位置するように、ローター5が、前述の2個の磁極6−1、6−2の場合と同じ角度だけ反時計回りに回転する。もし、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3が切り替わらなければ、ローター5は、反時計回りにわずか回転して停止することになる。
次に、図4の(b)に示すように、前述の図4の(a)で加熱されなかった互いに対称の位置に存在する2個の低温キュリー点磁性体3を、今回加熱される対象として切り替える。ここでは、複合磁性体リング1の中心を通り対称の位置に存在するd−3の方向にある低温キュリー点磁性体3と、d−6の方向にある低温キュリー点磁性体3とを同時に加熱して高温(H)にし、d−3の方向およびd−6の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3のキュリー点の近傍の温度にまで上昇させる。この状態では、d−3の方向およびd−6の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的低い値になるように変化する。このときに、d−3の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側にS極およびN極の磁極が発生し、d−3の方向にある低温キュリー点磁性体3の近傍に磁界が形成される。この場合、d−3の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側のS極およびN極の磁極により形成される磁界の向きと、ローター5の2個の磁極6−3、6−4により形成される磁界の向きとがほぼ平行でかつ反対方向になるように、ローター5に対して回転トルクが発生する。また一方で、d−6の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側のS極およびN極の磁極により形成される磁界の向きと、ローター5の2個の磁極6−7、6−8により形成される磁界の向きとがほぼ平行でかつ反対方向になるように、ローター5に対して前述の2個の磁極6−3、6−4の場合と同様の回転トルクが発生する。
図4の(b)では、この回転トルクによって、d−3の方向にある低温キュリー点磁性体3の中心の位置と、ローター5のN極の磁極6−3とS極の磁極6−4との中間の位置とが複合磁性体リング1の中心の位置から見て同一の方向に位置するように、ローター50が反時計回りに所定の角度だけ(例えば30度)回転する。同様に、d−6の方向にある低温キュリー点磁性体3の中心の位置と、ローター5のN極の磁極6−7とS極の磁極6−8との中間の位置とが複合磁性体リング1の中心の位置から見て同一の方向に位置するように、ローター5が、前述の2個の磁極6−3、6−4の場合と同じ角度だけ反時計回りに回転する。ただし、図4の(b)に示すローター5は、図4の(b)に示す複合磁性体リング1の温度分布の結果発生した回転トルクによって、図4の(a)の方向から所定の角度回転した後の状態を示している。
これと同時に、d−1およびd−4の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3は、加熱されなくなったために温度が低下し、低温(L)の近傍になるように自然冷却される。この状態では、d−1およびd−4の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的高い値になるように変化する。このため、当該低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁極が消滅する。この結果として、ローター5の2個の磁極6−1、6−2と、d−1の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁界との相互作用がなくなると共に、ローター5の2個の磁極6−5、6−6と、d−4の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁界との相互作用がなくなり、前述のようにローター5が例えば30度回転することを容易にする。
なお、図4の(b)では、d−1およびd−4の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3が加熱された後に、低温(L)の近傍になるように自然冷却されるようになっているが、冷却水等の流体を使用して、加熱された後の2個の低温キュリー点磁性体を室温またはそれより低い温度まで強制的に冷却することも可能である。このようにすれば、高温(H)の低温キュリー点磁性体の透磁率と低温(L)の低温キュリー点磁性体の透磁率との差を相対的に大きくすることができるので、複合磁性体リングの内側にて前述の図4の(b)の場合よりも強い回転磁界を発生させることが可能になる。
さらに、図4の(c)に示すように、前述の図4の(a)および(b)で加熱されなかった互いに対称の位置に存在する2個の低温キュリー点磁性体3を、今回加熱される対象として切り替える。ここでは、複合磁性体リング1の中心を通り対称の位置に存在するd−2の方向にある低温キュリー点磁性体3と、d−5の方向にある低温キュリー点磁性体3とを同時に加熱して高温(H)にし、d−2の方向およびd−5の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3のキュリー点の近傍の温度にまで上昇させる。この状態では、d−2の方向およびd−5の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的低い値になるように変化する。このときに、d−2の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側にS極およびN極の磁極が発生し、d−5の方向にある低温キュリー点磁性体3の近傍に磁界が形成される。この場合、d−2の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側のS極およびN極の磁極により形成される磁界の向きと、ローター5の2個の磁極6−1、6−2により形成される磁界の向きとがほぼ平行でかつ反対方向になるように、ローター5に対して回転トルクが発生する。また一方で、d−5の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側のS極およびN極の磁極により形成される磁界の向きと、ローター5の2個の磁極6−5、6−6により形成される磁界の向きとがほぼ平行でかつ反対方向になるように、ローター5に対して前述の2個の磁極6−1、6−2の場合と同様の回転トルクが発生する。
図4の(c)では、この回転トルクによって、d−2の方向にある低温キュリー点磁性体3の中心の位置と、ローター5のN極の磁極6−1とS極の磁極6−2との中間の位置とが複合磁性体リング1の中心の位置から見て同一の方向に位置するように、ローター5がさらに反時計回りに例えば30度回転する。同様に、d−5の方向にある低温キュリー点磁性体3の中心の位置と、ローター5のN極の磁極6−5とS極の磁極6−6との中間の位置とが複合磁性体リング1の中心の位置から見て同一の方向に位置するように、ローター5が、前述の2個の磁極6−1、6−2の場合と同じ角度だけ反時計回りに回転する。ただし、図4の(c)に示したローター5は、図4の(c)に示す複合磁性体リング1の温度分布の結果発生した回転トルクによって、図4の(b)の方向から所定の角度回転した後の状態を示している。
これと同時に、d−3およびd−6の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3は、加熱されなくなったために温度が低下し、低温(L)の近傍になるように自然冷却される。この状態では、d−3およびd−6の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的高い値になるように変化する。このため、当該低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁極が消滅する。この結果として、ローター5の2個の磁極6−3、6−4と、d−3の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁界との相互作用がなくなると共に、ローター5の2個の磁極6−7、6−8と、d−6の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁界との相互作用がなくなり、前述のようにローター5が例えば30度回転することを容易にする。
なお、図4の(c)では、d−3およびd−6の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3が加熱された後に、低温(L)の近傍になるように自然冷却されるようになっているが、冷却水等の流体を使用して、加熱された後の2個の低温キュリー点磁性体を室温またはそれより低い温度まで強制的に冷却することも可能である。このようにすれば、高温(H)の低温キュリー点磁性体の透磁率と低温(L)の低温キュリー点磁性体の透磁率との差を相対的に大きくすることができるので、複合磁性体リングの内側にて前述の図4の(c)の場合よりも強い回転磁界を発生させることが可能になる。
さらに、図4の(d)に示すように、前述の図4の(b)および(c)で加熱されなかった互いに対称の位置に存在する2個の低温キュリー点磁性体3(ここでは、前述の図4の(a)で加熱された後に自然冷却されているような互いに対称の位置に存在する2個の低温キュリー点磁性体3)を、今回加熱される対象として切り替える。ここでは、複合磁性体リング1の中心を通り対称の位置に存在するd−1の方向にある低温キュリー点磁性体3と、d−4の方向にある低温キュリー点磁性体3とを同時に加熱して高温(H)にし、d−1の方向およびd−4の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3のキュリー点の近傍の温度にまで再度上昇させる。この状態では、d−1の方向およびd−4の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的低い値になるように変化する。このときに、d−1の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側にS極およびN極の磁極が発生し、d−4の方向にある低温キュリー点磁性体3の近傍に磁界が形成される。この場合、d−1の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側のS極およびN極の磁極により形成される磁界の向きと、ローター5の2個の磁極6−7、6−8により形成される磁界の向きとがほぼ平行でかつ反対方向になるように、ローター5に対して回転トルクが発生する。また一方で、d−4の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側のS極およびN極の磁極により形成される磁界の向きと、ローター5の2個の磁極6−3、6−4により形成される磁界の向きとがほぼ平行でかつ反対方向になるように、ローター5に対して前述の2個の磁極6−7、6−8の場合と同様の回転トルクが発生する。
図4の(d)では、この回転トルクによって、d−1の方向にある低温キュリー点磁性体3の中心の位置と、ローター5のN極の磁極6−7とS極の磁極6−8との中間の位置とが複合磁性体リング1の中心の位置から見て同一の方向に位置するように、ローター5がさらに反時計回りに例えば30度回転する。同様に、d−4の方向にある低温キュリー点磁性体3の中心の位置と、ローター5のN極の磁極6−3とS極の磁極6−4との中間の位置とが複合磁性体リング1の中心の位置から見て同一の方向に位置するように、ローター5が、前述の2個の磁極6−7、6−8の場合と同じ角度だけ反時計回りに回転する。ただし、図4の(d)に示したローター5は、図4の(d)に示す複合磁性体リング1の温度分布の結果発生した回転トルクによって、図4の(c)の方向から所定の角度回転した後の状態を示している。
これと同時に、d−2およびd−5の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3は、加熱されなくなったために温度が低下し、低温(L)の近傍になるように自然冷却される。この状態では、d−2およびd−5の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的高い値になるように変化する。このため、当該低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁極が消滅する。この結果として、ローター5の2個の磁極6−1、6−2と、d−2の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁界との相互作用がなくなると共に、ローター5の2個の磁極6−5、6−6と、d−5の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁界との相互作用がなくなり、前述のようにローター5が例えば30度回転することを容易にする。
なお、図4の(d)では、d−2およびd−5の方向にある2個の低温キュリー点磁性体3が加熱された後に、低温(L)の近傍になるように自然冷却されるようになっているが、冷却水等の流体を使用して、加熱された後の2個の低温キュリー点磁性体を室温またはそれより低い温度まで強制的に冷却することも可能である。このようにすれば、高温(H)の低温キュリー点磁性体の透磁率と低温(L)の低温キュリー点磁性体の透磁率との差を相対的に大きくすることができるので、複合磁性体リングの内側にて前述の図4の(d)の場合よりも強い回転磁界を発生させることが可能になる。
上記のような図4の(a)〜(d)の動作原理に従って、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3を次々に切り替えて加熱し、これと同時に、加熱される対象以外の低温キュリー点磁性体3(加熱された後の低温キュリー点磁性体3も含む)を次々に切り替えて自然冷却することによって、複合磁性体リング1の内部に連続した回転磁界が発生し、ローター5の磁極の位置に関係なくローター5の起動ができる状態で、ローター5が連続して回転するようになる。なお、前述のように、加熱された後の低温キュリー点磁性体を自然冷却する代わりに、冷却水等の流体を使用して、加熱された後の2個の低温キュリー点磁性体を室温またはそれより低い温度まで強制的に冷却することも可能である。
図4の(a)〜(d)に例示されている熱磁気モーターは、6個の永久磁石と6個の低温キュリー点磁性体とが交互に並んで配置される複合磁性体リングからなる12個の磁極を有するステーターと、上記複合磁性体リングの内部に配置される8個の磁極を有するローターとから構成されており、複合磁性体リングの中心を通り対称に、2個の低温キュリー点磁性体を時計回りに60度ずつ次々に切り替えて加熱したときに、ローターは反時計回りに30度ずつ回転する。
また、複合磁性体リングの中心を通り対称に、2個の低温キュリー点磁性体を反時計回りに60度ずつ次々に切り替えて加熱したときに、ローターは時計回りに30度ずつ回転する。
なお、例えば図10にて後述するように、熱磁気モーターが、3個の永久磁石(または6個の永久磁石)と3個の低温キュリー点磁性体とが交互に並んで配置される複合磁性体リングからなる6個の磁極を有するステーターと、上記複合磁性体リングの内部に配置される4個の磁極を有するローターとから構成される場合には、複合磁性体リングの1個の低温キュリー点磁性体を時計回りに120度ずつ次々に切り替えて加熱したときに、ローターは反時計回りに60度ずつ回転する。
また、複合磁性体リングの1個の低温キュリー点磁性体を反時計回りに120度ずつ次々に切り替えて加熱したときに、ローターは時計回りに60度ずつ回転する。
上記の図2〜図4の実施例による複合磁性体リングでは、複数の低温キュリー点磁性体と複数の永久磁石とを交互に並べてリング状に配置しているので、加熱される対象として選択された低温キュリー点磁性体のみを他の低温キュリー点磁性体から分離した状態で均一に加熱することができる。それゆえに、加熱される対象である低温キュリー点磁性体の高温部から、室温の近傍で自然冷却されている低温キュリー点磁性体の低温部への熱の流れによる熱損失が顕著に少なくなり、当該低温キュリー点磁性体を加熱する際の効率が上がる。それゆえに、低温キュリー点磁性体の高温部(例えば40℃)と低温部(例えば室温(25℃))との温度差(例えば15℃)がごくわずかであっても、この温度差に応じて低温キュリー点磁性体のキュリー点の温度を適切に設定することにより、ローターが連続して回転するような熱磁気モーターを提供することが可能になる。
さらに、上記実施例による複合磁性体リングでは、永久磁石として、低価格のバリウムフェライト磁石を使用し、また一方で、低温キュリー点磁性体として、同様に低価格のマンガン亜鉛フェライトを使用している。それゆえに、上記のような複合磁性体リングを有する熱磁気モーター等を使用して、低コストで効率良く低温の排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械エネルギーまたは電気エネルギーに変換することが可能になる。
さらに、上記実施例による複合磁性体リングでは、複合磁性体リング内の各々の永久磁石と当該永久磁石と隣り合う低温キュリー点磁性体との間に、断熱材を挟むことによって、低温キュリー点磁性体が断熱材により永久磁石と隔てられた構造になっている。それゆえに、加熱される対象である低温キュリー点磁性体の高温部から、当該低温キュリー点磁性体に隣接して配置される永久磁石や他の低温キュリー点磁性体の低温部へ熱が流れることがなくなり、熱損失が最小限に抑えられる。
あるいは、代替的に、各々の永久磁石と当該永久磁石と隣り合う低温キュリー点磁性体との間に断熱材を挟む代わりに、各々の低温キュリー点磁性体の両側に狭い隙間(ギャップ)を設けておく構造にすることも可能である。このような構造においても、上記実施例による複合磁性体リングの場合と同様に、複数の永久磁石のいずれか一方の端部と、複数の低温キュリー点磁性体のいずれか一方の端とが直接接触しないようになっているので、加熱される対象である低温キュリー点磁性体の高温部から、当該低温キュリー点磁性体に隣接して配置される永久磁石や他の低温キュリー点磁性体の低温部へ熱が流れることがなくなり、熱損失が最小限に抑えられる。
さらに、上記実施例による複合磁性体リングでは、各々の永久磁石と低温キュリー点磁性体との間に、軟磁性体のヨークを挟むことによって、複合磁性体リングの外側へ流れる磁束を減らし、複合磁性体リングの内側へ流れる磁束を増やすことができるので、その結果、ヨークのない場合より強い磁界を複合磁性体リングの内側へ発生させ、ローターの回転トルクを増大させることが可能である。
さらに、上記実施例による複合磁性体リングでは、太陽光を照射することにより複数の複合磁性体リングの少なくとも1個を加熱して複合磁性体リングの高温部を作り出すことによって、太陽熱による回転機発電が可能になる。ここで、前述のように、永久磁石として、低価格のバリウムフェライト磁石を使用し、かつ、低温キュリー点磁性体として、低価格のマンガン亜鉛フェライトを使用することによって、極めて低コストの太陽熱発電を実現することが可能になる。
さらに、上記実施例による複合磁性体リングでは、低温の排熱エネルギーにより複数の複合磁性体リングの少なくとも1個を加熱して複合磁性体リングの高温部を作り出すことによって、極めて低コストの排熱回収システムを実現することが可能になる。
図5は、本発明に係る熱磁気モーターの実施例の概略的構成を示す斜視図、図6は、図5の実施例における低温キュリー点磁性体と集熱板との配置関係を示す斜視図、そして、図7は、図5の実施例における太陽光の集光経路とミラーとの関係を示す正面図である。ただし、ここでは、本発明の実施例によるエネルギー変換器として、太陽光の熱エネルギーを機械エネルギーに変換するための熱磁気モーターの構成を例示する。
図5において、本発明の実施例による熱磁気モーターは、マンガン亜鉛フェライト(組成Mn0.25Zn0.75Fe)等からなる6対の低温キュリー点磁性体3(すなわち、6個の上側低温キュリー点磁性体3aおよび6個の下側低温キュリー点磁性体3b)と、バリウムフェライト等からなる6個の永久磁石2とが交互に並んで配置される複合磁性体リング1により構成されたステーター10を備えている。さらに、ステーター10の中央部に、2個の希土類磁石等からなる磁極61、62(N極とS極)を有するローター50が配置されている。ローター50には、このローター50に連動して回転する回転シャフト8が取り付けられている。
さらに、図5において、第1の反射面71aを有する第1のミラー71が、ローター50の回転軸に対し45度傾いた状態で、回転シャフト8に固定されている。さらに、第2の反射面72aを有する第2のミラー72が、第1のミラー71からローター50の回転軸に対し垂直の方向に突き出した状態で、かつ、ローター50の回転軸に対し45度傾いた状態で配置されている。この第2のミラー72は、透明のボックス73により第1のミラー71に固定されている。第1のミラー71の上部には、太陽光SLを集光して第2のミラー72に入射するためのレンズ70が配置されている。さらに、複合磁性体リング1の周囲には、複数の低温キュリー点磁性体3にそれぞれ別個に接触して配置される複数の集熱板7が張り出している。各々の集熱板7は、Cu(銅)等の非磁性でかつ良好な熱伝導率を有する材料により作製される。高温部から低温部へ熱が流れるのを防止するために、各々の集熱板と当該集熱板と隣り合う集熱板との間には、わずかな空隙SPが形成されている。上記の第1のミラー71、第2のミラー72、透明のボックス73およびレンズ70は、太陽光SLを集光して少なくとも1つの集熱板7に照射する光学装置を構成する。
この光学装置により少なくとも1つの集熱板7の表面に照射された光は、当該集熱板7により熱エネルギーに変換される。変換された熱エネルギーは、当該集熱板7に接触している低温キュリー点磁性体3に伝達され、この低温キュリー点磁性体3を加熱するために利用される。
より詳しく説明すると、太陽光SLはレンズ70により集光され、レンズ70の中心Oと第1のミラー71の中心とを結ぶラインに向かって集束する。このようにして集束された光FLは、第1のミラー71の第1の反射面71aおよび第2のミラーの72の第2の反射面72aにて反射され、複合磁性体リング1の周囲に張り出している任意の1つの集熱板7の表面のスポットPに集中的に照射される。この集熱板7の表面のスポットPに照射された光によって、集熱板7が加熱されて高温(H)になり、このときに発生する熱によって、当該集熱板7に接触している低温キュリー点磁性体3が、当該低温キュリー点磁性体3のキュリー点の近傍の温度になるように加熱される。このような低温キュリー点磁性体の加熱方法は、前述の図3の(4)に説明されている加熱方法(すなわち、1個の低温キュリー点磁性体のみを加熱する方法)とほぼ同様である。
集熱板7により加熱される対象である低温キュリー点磁性体3が、そのキュリー点の近傍の温度にまで上昇した場合、前述の図4の(a)〜(d)で説明したように、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的低い値になるように変化し、当該低温キュリー点磁性体3に隣接して配置される永久磁石2の端部から出る磁束が、当該低温キュリー点磁性体3の近傍の外部に漏れてくる。この磁束は、複合磁性体リング1の中央に置かれたローター50の2個の磁極61、62が存在する場所に磁界を形成する。この磁界によってローター50に回転トルクが与えられ、ローター50が反時計回りに回転する。
ローター50が回転すると同時に、このローター50に連動して回転する回転シャフト8に固定されている第1のミラー71が回転し、さらに、透明のボックス73により第1のミラー71に固定されている第2のミラー72も回転してスポットPが集熱板7の上を順次移動する。このため、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3が次々に切り替えられ、当該低温キュリー点磁性体3のキュリー点の近傍の温度になるように次々に加熱される。第2のミラー72が、これまで加熱されていた集熱板7を通過した後は、当該集熱板7は、空気の対流により室温(25℃)の近傍まで自然冷却される。
あるいは、代替的な構成として、冷却水等の流体を使用して、加熱された後の集熱板7および当該集熱板に接触している低温キュリー点磁性体を室温またはそれより低い温度まで強制的に冷却することも可能である。このようにすれば、加熱される対象の低温キュリー点磁性体の透磁率と加熱された後の低温キュリー点磁性体の透磁率との差を相対的に大きくすることができるので、複合磁性体リングの内側により強い回転磁界を発生させることが可能になる。
さらに、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3に隣接して配置される永久磁石2が加熱されないようにするために、各々の低温キュリー点磁性体3と当該低温キュリー点磁性体3と隣り合う永久磁石2との間には、薄いテフロン(登録商標)シート等の断熱シートが挟まれている(図5では、断熱シートの図示を省略する:後述の図8を参照のこと)。この断熱シートによって、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3の高温部から、当該低温キュリー点磁性体3に隣接して配置される永久磁石2へ熱が流れるのを防止することが可能になる。
あるいは、代替的な構成として、各々の永久磁石と当該永久磁石と隣り合う低温キュリー点磁性体との間に断熱シートを挟む代わりに、各々の低温キュリー点磁性体の両側に狭い隙間(ギャップ)を設けておくことも可能である。このような構成においても、前述の図5の複合磁性体リングの場合と同様に、複数の永久磁石のいずれか一方の端部と、複数の低温キュリー点磁性体のいずれか一方の端とが直接接触しないようになっているので、加熱される対象である低温キュリー点磁性体の高温部から、当該低温キュリー点磁性体に隣接して配置される永久磁石へ熱が流れるのを防止することが可能になる。
図6に示すように、各々の低温キュリー点磁性体3は、各々の集熱板7に形成された突出部7pの上部および下部に分離された状態で配置されている。より詳しく説明すると、各々の上側低温キュリー点磁性体3aは、各々の集熱板7の上部表面に接触した状態で固定されており、各々の下側低温キュリー点磁性体3bは、各々の集熱板7の下部表面に接触した状態で固定されている。これによって、上側低温キュリー点磁性体3aおよび下側低温キュリー点磁性体3bと集熱板7との熱的な接触を良好に保つことが可能になる。なお、ここでは、上側低温キュリー点磁性体3aと下側低温キュリー点磁性体3bに分離した形状になっているが、上側低温キュリー点磁性体3aと下側低温キュリー点磁性体3bとが部分的につながっている形状になっていてもよい。
図5の実施例における太陽光SLの集光経路と第1のミラー71および第2のミラー72との関係が、図7に例示されている。図7に示すように、太陽光SLは、レンズ70により集光され、レンズ70の中心Oと第1のミラー71の中心とを結ぶラインに向かって集束する。このようにして集束された光FLは、第1のミラー71の第1の反射面71aにより反射され、90度方向を変えて第2のミラーの72に向かって進む。さらに、集束された光FLは、第2のミラー72の第2の反射面72aにより反射され、90度方向を変えて、複合磁性体リング1の周囲に張り出している任意の1つの集熱板7の表面に向かって進む。最終的に、集束された光FLは、当該集熱板7の表面のスポットPに集中的に照射される。第1のミラー71を固定するための回転シャフト8は、第1の軸受81および第2の軸受82に連結されており、回転シャフト8を介してローター50の回転による機械エネルギーが熱磁気モーターの外部に伝達される。
図8は、図5の実施例においてローターが回転する様子を示す平面図である。この場合も、熱磁気モーターは、6対の低温キュリー点磁性体3(図8では、6個の上側低温キュリー点磁性体3aのみ示す)と6個の永久磁石2とが交互に並んで配置される複合磁性体リング1により構成されたステーター10と、ステーター10の中央部に配置され、かつ、2個の矩形状の磁極61、62を有するローター50とを備えている。
複合磁性体リング1と、ローター50と、第1のミラー71および第2のミラー72との関係が、図8に例示されている。図8に示すように、低温キュリー点磁性体3を加熱してローター50に回転トルクを与えるために、ローター50の2個の磁極61、62を結ぶ方向と、第1のミラー71と第2のミラー72とを結ぶ方向とを角度A(例えば30度)だけずらして第1のミラー71および第2のミラー72を固定している。
図8において、第2のミラー72はD−1の方向にあり、ローター50のN極の磁極61はD−2の方向にあり、S極の磁極62はD−8の方向にある。太陽光が1つの集熱板7に照射されると、D−1の方向にある集熱板7が加熱される。これによって、同一方向にある低温キュリー点磁性体3が加熱され、当該低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的低い値になるように変化する。このときに、当該低温キュリー点磁性体3の両側にS極およびN極の磁極が発生し、当該低温キュリー点磁性体3の近傍に磁界が形成される。この場合、当該低温キュリー点磁性体3の両側のS極およびN極の磁極により形成される磁界の向きと、ローター50の2個の磁極61、62により形成される磁界の向きとがほぼ平行でかつ反対方向になるように(すなわち、静磁エネルギーが最小になるように)、ローター50に対して回転トルクが発生する。
図8では、この回転トルクによって、ローター50が反時計回りに60度回転する。ローター50が60度回転すると、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3の両側に発生した磁極による磁界の向きと、ローター50の2個の磁極61、62により形成される磁界の向きとがほぼ平行でかつ反対方向になるように当該ローター50が向いたため、ローター50は停止すると考えられる。しかしながら、ローター50の回転によって、第2のミラー72が、D−3の方向に配置されている集熱板7の上に移動する、これによって、D−3の方向にある集熱板7と当該集熱板7に接触している低温キュリー点磁性体3の温度が上昇し、当該低温キュリー点磁性体3の両側にS極およびN極の磁極が発生する。
これと同時に、D−1の方向にある集熱板7および当該集熱板7に接触している低温キュリー点磁性体3は、加熱されなくなったために温度が低下し、当該低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的高い値になるように変化する。このため、当該低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁極が消滅する。この結果として、ローター50の2個の磁極61、62と、D−1の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁界との相互作用がなくなり、ローター50が60度回転することを容易にする。
なお、図8では、D−1の方向にある集熱板7および当該集熱板7に接触している低温キュリー点磁性体3が加熱された後に、室温の近傍になるように自然冷却されるようになっているが、冷却水等の流体を使用して、加熱された後の集熱板および当該集熱板に接触している低温キュリー点磁性体を室温またはそれより低い温度まで強制的に冷却することも可能である。このようにすれば、加熱される対象である低温キュリー点磁性体の透磁率と加熱された後の低温キュリー点磁性体の透磁率との差を相対的に大きくすることができるので、複合磁性体リングの内側にて前述の図8の場合よりも強い回転磁界を発生させることが可能になり、より強い回転トルクが得られる。
以上の工程を繰り返し実行することによって、D−5、D−7、D−9およびD−11の方向にある集熱板7および当該集熱板7に接触している低温キュリー点磁性体3が次々に切り替えられて加熱され、これと同時に、加熱された後の集熱板7および当該集熱板7に接触している低温キュリー点磁性体3が次々に切り替えられて自然冷却されるかまたは強制的に冷却され、ローター50が連続して回転するようになる。なお、図8に示した熱磁気モーターにおいて、第2のミラー72がD−2の方向にあり、集光スポットPの径が集熱板の空隙SPの幅より大きい場合には、図8におけるD−1およびD−3方向の集熱板7が同時に加熱され、D−1方向およびD−3方向の低温キュリー点磁性体3の温度が上がり透磁率が減少するため、D−12方向の永久磁石2のN極から、D−4方向の永久磁石2のS極へ向かって磁束が流れ、強い磁場が発生する。このときローター50のN極の磁極61はD−3の方向にあり、S極の磁極62はD−9の方向にあるのでローター50に対して反時計回りの回転トルクが生じ、ローター50が反時計方向に回転する。したがって、図8に示した熱磁気モーターは、第2のミラー72が集熱板7の上方にある場合でも、集熱板7の空隙の上方にある場合でも起動が可能である。なお、D−2の方向の永久磁石2のS極およびN極により生ずる磁場は、D−12の方向の永久磁石2のN極およびD−4の方向の永久磁石2のS極により生ずる磁場に対し方向が逆であるが、その強度は小さく与える影響は少ない。
さらに、図8では、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3に隣接して配置される永久磁石2が加熱されないようにするために、各々の低温キュリー点磁性体3と当該低温キュリー点磁性体3と隣り合う永久磁石2との間には、薄いテフロン(登録商標)シート等の断熱シート40が挟まれている。この断熱シート40によって、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3の高温部から、当該低温キュリー点磁性体3に隣接して配置される永久磁石2へ熱が流れるのを防止することが可能になる。
なお、図5〜図8の実施例による熱磁気モーターにおいては、ステーター10は、6対の低温キュリー点磁性体3と6個の永久磁石2とが交互に並んで配置される複合磁性体リング1により構成されているが、これ以外の任意の数の低温キュリー点磁性体および永久磁石を使用して構成された複合磁性体リングをステーターとして使用することも可能である。また一方で、図5〜図8の実施例による熱磁気モーターにおいては、ステーター10の中央部に、2個の磁極を有するローターが配置されているが、これ以外の任意の数の磁極を有するローターを使用することも可能である。ただし、図5〜図8の実施例においても、図4の場合と同様に、ステーターの永久磁石の数と低温キュリー点磁性体の数が3の倍数であるときには、ローターの磁極の数が3の倍数でないことが望ましい。あるいは、ローターの磁極の数が3の倍数であるときには、ステーターの永久磁石の数と低温キュリー点磁性体の数が3の倍数でないことが望ましい。
さらに、図5〜図8の実施例による熱磁気モーターにおいては、複数の低温キュリー点磁性体と複数の永久磁石2とが交互に並んで配置される複合磁性体リング1をステーター10として使用し、かつ、ステーター10の中央部に、複数の磁極を有するローターを配置しているが、上記の複合磁性体リング1をローターとして回転させ、当該ローターの中央部に2個あるいはこれ以上の磁極を有するステーターを配置するような構造にすることも可能である。
これまで説明した図5〜図8の実施例による熱磁気モーターでは、複数の低温キュリー点磁性体と複数の永久磁石とが交互に並んでリング状に配置された複合磁性体リングをステーターとして使用し、加熱される対象として選択された低温キュリー点磁性体のみを他の低温キュリー点磁性体から分離した状態で均一に加熱することができる。それゆえに、加熱される対象である低温キュリー点磁性体の高温部から、室温の近傍で自然冷却されている低温キュリー点磁性体の低温部への熱の流れによる熱損失が顕著に少なくなり、当該低温キュリー点磁性体を加熱する際の効率が上がる。それゆえに、低温キュリー点磁性体の高温部と低温部との温度差がごくわずかであっても、この温度差に応じて低温キュリー点磁性体のキュリー点の温度を適切に設定することにより、ローターが連続して回転するような熱磁気モーターを提供することが可能になる。
さらに、上記実施例による熱磁気モーターでは、複合磁性体リングの永久磁石として、低価格のバリウムフェライト磁石を使用し、また一方で、複合磁性体リングの低温キュリー点磁性体として、同様に低価格のマンガン亜鉛フェライトを使用している。それゆえに、上記のような複合磁性体リングを有する熱磁気モーターを使用して、低コストで効率良く低温の排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械エネルギーまたは電気エネルギーに変換することが可能になる。
さらに、上記実施例による熱磁気モーターでは、複合磁性体リング内の各々の永久磁石と当該永久磁石と隣り合う低温キュリー点磁性体との間に、断熱シートを挟むことによって、低温キュリー点磁性体が断熱シートにより永久磁石と隔てられた構造になっている。それゆえに、加熱される対象である低温キュリー点磁性体の高温部から、当該低温キュリー点磁性体に隣接して配置される永久磁石や他の低温キュリー点磁性体の低温部へ熱が流れることがなくなり、熱損失が最小限に抑えられる。
あるいは、代替的に、各々の永久磁石と当該永久磁石と隣り合う低温キュリー点磁性体との間に断熱シートを挟む代わりに、各々の低温キュリー点磁性体の両側に狭い隙間(ギャップ)を設けておく構造にすることも可能である。このような構造においても、上記実施例による熱磁気モーターの複合磁性体リングの場合と同様に、複数の永久磁石のいずれか一方の端部と、複数の低温キュリー点磁性体のいずれか一方の端とが直接接触しないようになっているので、加熱される対象である低温キュリー点磁性体の高温部から、当該低温キュリー点磁性体に隣接して配置される永久磁石や他の低温キュリー点磁性体の低温部へ熱が流れることがなくなり、熱損失が最小限に抑えられる。
図9は、図5の実施例の変形例の概略的構成を示す平面図である。この場合も、前述の図5の実施例と同様に、熱磁気モーターは、6対の低温キュリー点磁性体3(図9では、6個の上側低温キュリー点磁性体3aのみ示す)と6対の永久磁石2とが交互に並んで配置される複合磁性体リング1により構成されたステーター10と、ステーター10の中央部に配置され、かつ、2個の磁極61m、62m(N極とS極)を有するローター50mとを備えている。
図9の変形例の構成は、前述の図8の実施例の構成と概ね同じである。ただし、図9の変形例において、各々の永久磁石(一対の永久磁石2−1、2−2)の中央部に軟磁性体のヨーク9を形成している点と、ローターの磁極61m、62mが丸みを帯びた形状を有している点が前述の図8の実施例の場合と異なる。これらのヨーク9の各々の先端には、複合磁性体リング1の内周部より円弧状に突き出した先端部9aが形成されている。さらに、これらのヨーク9のキュリー点の温度は、室温(25℃)よりはるかに高い温度に設定されている。
ここで、ヨーク9の各々の先端にて円弧状に突き出した先端部9aが形成されている理由、および、ローター50mの磁極61m、62mが丸みを帯びた形状を有している理由について説明する。各々の一対の永久磁石2−1、2−2の中央部に軟磁性体のヨーク9を形成すると、一対の永久磁石2−1、2−2の磁極により発生する磁束の一部が、対応するヨーク9の先端部9aに出てくる。ローター50mにて大きな回転トルクを発生させるために、これらのヨーク9より突き出した先端部9aを矩形状としたり、大きく突き出したり、かつ、ローター50mの2個の磁極61m、62mを矩形状にしていると想定した場合、ローター50mの磁極61m、62mの両側にそれぞれ配置される2個のヨークと、磁極61m、62mとの間の磁気的な相互作用があまりにも強くなって、ローター50mのコギング(cogging)が強くなりすぎるおそれがある。このため、ローター50mが回転しなくなる場合が生じてくる。このような事態を回避するために、ヨーク9の各々の先端部9aを円弧状とし、突き出す長さを調節すると共に、ローターの磁極61m、62mを丸みを帯びた形状にすることによって、図9においてローター50mの磁極61m、62mの両側にそれぞれ位置する2個のヨークと、磁極61m、62mとの間の磁気的な相互作用を適度に弱めるようにしている。
図9において、第2のミラー72はD−1の方向にあり、ローター50mのN極の磁極61mはD−2の方向にあり、S極の磁極62mはD−8の方向にある。太陽光が1つの集熱板7に照射されると、D−1の方向にある集熱板7が加熱される。これによって、同一方向にある低温キュリー点磁性体3が加熱され、当該低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的低い値になるように変化する。このときに、当該低温キュリー点磁性体3の両側にS極およびN極の磁極が発生し、当該低温キュリー点磁性体3の近傍に磁界が形成される。さらに、D−12の方向にある一対の永久磁石2−1、2−2の磁極により発生する磁束の一部が、対応するヨーク9の先端部9aに出てくる。さらにまた、D−2の方向にある一対の永久磁石2−1、2−2の磁極により発生する磁束による磁界が、対応するヨーク9の先端部9aに出てくる。このようにして上記の2つのヨーク9の先端部9aに出てくる磁束に対する磁界は、D−1の方向にある低温キュリー点磁性体3の近傍に形成される磁界に付加されるので、前述の図8の実施例の場合よりも大きな磁界が、ローター50mの2個の磁極61m、62mにより形成される磁界と磁気的な相互作用を行う。それゆえに、ローター50mに対して、前述の図8の実施例の場合よりも大きな回転トルクが発生する。この結果として、ローター50mが、前述の図8の実施例の場合よりも安定に回転するようになり、前述の図8の実施例の場合よりも効率良く太陽光の熱エネルギーを機械エネルギーに変換することが可能になる。
図9では、この回転トルクによって、ローター50mが反時計回りに60度回転する。ローター50mが60度回転すると、加熱される対象である低温キュリー点磁性体3の両側に発生した磁極による磁界の向きと、ローター50mの2個の磁極61m、62mにより形成される磁界の向きとがほぼ平行でかつ反対方向になるように当該ローター50mが向いたため、ローター50mは停止すると考えられる。しかしながら、ローター50mの回転によって、第2のミラー72が、D−3の方向に配置されている集熱板7の上に移動する。これによって、D−3の方向にある集熱板7と当該集熱板7に接触している低温キュリー点磁性体3の温度が上昇し、当該低温キュリー点磁性体3の両側にS極およびN極の磁極が発生する。さらに、D−2の方向にある一対の永久磁石2−1、2−2の磁極により発生する磁束の一部が、対応するヨーク9の先端部9aに出てくる。さらにまた、D−4の方向にある一対の永久磁石2−1、2−2の磁極により発生する磁束の一部が、対応するヨーク9の先端部9aに出てくる。このようにして上記の2つのヨーク9の先端部9aに出てくる磁束に対する磁界は、D−3の方向にある低温キュリー点磁性体3の近傍に形成される磁界に付加されるので、前述の図8の実施例の場合よりも大きな磁界が、ローター50mの2個の磁極61m、62mにより形成される磁界と磁気的な相互作用を行う。
これと同時に、D−1の方向にある集熱板7および当該集熱板7に接触している低温キュリー点磁性体3は、加熱されなくなったために温度が低下し、当該低温キュリー点磁性体3の透磁率が比較的高い値になるように変化する。このため、当該低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁極が消滅する。この結果として、ローター50mの2個の磁極61m、62mと、D−1の方向にある低温キュリー点磁性体3の両側に発生していた磁界との相互作用がなくなり、ローター50mが60度回転することを容易にする。
以上の工程を繰り返し実行することによって、前述の図8の実施例の場合と同様に、D−5、D−7、D−9およびD−11の方向にある集熱板7および当該集熱板7に接触している低温キュリー点磁性体3が次々に切り替えられて加熱され、これと同時に、加熱された後の集熱板7および当該集熱板7に接触している低温キュリー点磁性体3が次々に切り替えられて自然冷却されるかまたは強制的に冷却され、ローター50mが連続して安定に回転するようになる。
なお、図9の変形例による熱磁気モーターにおいては、ステーター10は、6対の低温キュリー点磁性体3と6対の永久磁石2とが交互に並んで配置される複合磁性体リング1により構成されているが、これ以外の任意の数の低温キュリー点磁性体および永久磁石を使用して構成された複合磁性体リングをステーターとして使用することも可能である。また一方で、図9の変形例による熱磁気モーターにおいては、ステーター10の中央部に、2個の磁極を有するローターが配置されているが、これ以外の任意の数の磁極を有するローターを使用することも可能である。ただし、図9の変形例においても、前述の図5〜図8の実施例の場合と同様に、ステーターの永久磁石の数と低温キュリー点磁性体の数が3の倍数であるときには、ローターの磁極の数が3の倍数でないことが望ましい。あるいは、ローターの磁極の数が3の倍数であるときには、ステーターの永久磁石の数と低温キュリー点磁性体の数が3の倍数でないことが望ましい。
図10は、図4の熱磁気モーターの変形例の動作原理を示す図である。ここでは、3個の低温キュリー点磁性体3と6個の永久磁石2−1、2−2とが交互に並んで配置される複合磁性体リングからなる6個の磁極を有するステーター10と、上記複合磁性体リングの内部に配置される4個の磁極を有するローター5とから構成される熱磁気モーターの変形例について説明する。なお、これまでは、複数の永久磁石と複数の低温キュリー点磁性体とが交互に並んでリング状に配置される円形の複合磁性体リングからなるステーターを使用していたが、例えば図10に示すように、必ずしも複合磁性体リングの形状を円形にしなくても(例えば、複合磁性体リングの形状が正三角形または正六角形等の正多角形であっても)、前述の図4の熱磁気モーターとほぼ同様の機能を有する熱磁気モーターを作製することが可能である。
図10の(a)〜(d)に示すように、ほぼ正三角形の複合磁性体リングは、3個の低温キュリー点磁性体3と、6個の永久磁石2−1、2−2と、相隣り合う2個の永久磁石の間から内側に伸びた3個のヨーク9−2と、磁束を導くためのみに設けられた6個のヨーク9−1、9−3とから形成されている。
さらに詳しく説明すると、複合磁性体リングからの磁束をできるだけ多くローター5の近傍に導き、強い回転磁界を形成するために、図10のように、内側に向かって例えば純鉄のヨーク9−2が伸びている。さらに、永久磁石2−1、2−2も、複合磁性体リングの形状が円形のときの位置から、内側へ折れ曲がっている。このようにすると、熱磁気モーターを含む装置の体積が減少し、かつ、低温キュリー点磁性体3とローター5とを離すことができるので、加熱・冷却のための設備の設計が容易に行えるという利点がある。
ここで、図10の(a)〜(d)を参照しながら、例えば図3の(4)の加熱方法(すなわち、1個の低温キュリー点磁性体のみを加熱する方法)に従って熱磁気モーターを回転動作させる場合の動作原理を説明する。
図10の(a)において、3個の低温キュリー点磁性体3が全て低温であれば、磁束は複合磁性体リングの中を通り、外部には出てこない。ここで、DD−1の方向にある低温キュリー点磁性体3が加熱されると、磁気回路が切断されるため、DD−2の方向の磁石2−2のN極からDD−6の方向の磁石2−1のS極に向かう磁束の一部が複合磁性体リングの内側に漏れてくるが、ローター5の磁極から離れているために、その効果は小さい。
これと同時に、DD−2の方向のヨーク9−2からDD−6の方向のヨーク9−2へ向かう磁束が複合磁性体リングの内側に発生する。上記磁束は、DD−6の方向のヨーク9−2、永久磁石2−2およびヨーク9−3を通り、さらに、DD−5の方向の低温キュリー点磁性体3を通り、さらに、DD−4の方向のヨーク9−1、永久磁石2−1、ヨーク9−2、永久磁石2−2およびヨーク9−3を通り、さらに、DD−3の方向の低温キュリー点磁性体3を通り、さらに、DD−2の方向のヨーク9−1および永久磁石2−1を通り、そして、DD−2の方向のヨーク9−2へ至り、循環している。この磁束に伴って、DD−2の方向のヨーク9−2と、DD−6の方向のヨーク9−2との間に磁界が発生し、ローター5のN極の磁極60−1およびS極の磁極60−2が磁気的な力を受けるため、ローター5は反時計回りに僅か回転し、停止する。
次に、図10の(b)に示すように、DD−1の方向にある低温キュリー点磁性体3を低温とし、DD−5の方向にある低温キュリー点磁性体3を加熱すると、DD−6の方向のヨーク9−2とDD−4の方向のヨーク9−2との間に磁界が発生し、ローター5のN極の磁極60−3およびS極の磁極60−4が磁気的な力を受けるため、ローター5が反時計回りに所定の角度だけ(例えば60度)回転する。ただし、図10の(b)は、図10の(a)のローターが所定の角度回転した後のローターの位置を表している。
さらに、図10の(c)に示すように、DD−5の方向にある低温キュリー点磁性体3を低温とし、DD−3の方向にある低温キュリー点磁性体3を加熱すると、DD−4の方向のヨーク9−2とDD−2の方向のヨーク9−2との間に磁界が発生し、ローター5のN極の磁極60−1およびS極の磁極60−2が磁気的な力を受けるため、ローター5が反時計回りに所定の角度だけ(例えば60度)回転する。ただし、図10の(c)は、図10の(b)のローターが所定の角度回転した後のローターの位置を表している。
さらに、図10の(d)に示すように、DD−3の方向にある低温キュリー点磁性体3を低温とし、DD−1の方向にある低温キュリー点磁性体3を加熱すると、DD−2の方向のヨーク9−2とDD−6の方向のヨーク9−2との間に磁界が発生し、ローター5のN極の磁極60−3およびS極の磁極60−4が磁気的な力を受けるため、ローター5が反時計回りに所定の角度だけ(例えば60度)回転する。ただし、図10の(d)は、図10の(c)のローターが所定の角度回転した後のローターの位置を表している。
以下、順次、DD−5の方向の低温キュリー点磁性体3、DD−3の方向の低温キュリー点磁性体3、および、DD−1の方向の低温キュリー点磁性体3を次々に加熱することにより、連続した回転が得られる。
上記のように、図10の熱磁気モーターにおいては、複合磁性体リングの形状を円形から正多角形(例えば正三角形)に変形させることによって、より強い回転磁界をローターの近傍に形成することが可能になる。また、低温キュリー点磁性体をローターから離れた位置に置くことができるので、低温キュリー点磁性体を加熱する熱の一部がローターに伝わり、ローターに温度分布が発生して障害となるのを防止することが可能になる。また、装置の体積も、複合磁性体リングの形状が円形の場合より減少させることが可能になる。また、複合磁性体リングの形状を正多角形に変形させることによって、直線加工のみでステーターを作製することができるようになり、複合磁性体リングの形状が円形の場合よりもステーターの作製が容易になる。
ただし、図10の熱磁気モーターにおいては、ローターが、加熱された低温キュリー点磁性体の方向へ引っ張られるので、ローターの軸受に負担がかかる。また一方で、図4に示したような12個の磁極のステーターと、8個の磁極のローターとを備える熱磁気モーターにおいては、対称の位置の2箇所の低温キュリー点磁性体が加熱されるので、ローターの軸受に加わる横向きの力は相殺されてゼロ(0)になり、軸受にかかる負担は軽減される。
本発明は、複数の低温キュリー点磁性体と複数の永久磁石とを交互に並べて形成された複合磁性体リングにおける低温キュリー点磁性体のキュリー点近傍の透磁率の変化を利用して、100℃以下の低温の排熱エネルギーや太陽光の熱エネルギーを機械エネルギーまたは電気エネルギーに効率良く変換するための熱磁気モーターや太陽熱発電機等のエネルギー変換器に適用することが可能である。
1 複合磁性体リング
2 永久磁石
2−1、2−2 永久磁石
3 低温キュリー点磁性体
3a 上側低温キュリー点磁性体
3b 下側低温キュリー点磁性体
4 断熱材
5 ローター
6−1〜6−8 磁極
7 集熱板
7p 突出部
8 回転シャフト
9 ヨーク
9a 先端部
10 ステーター
40 断熱シート
50 ローター
50m ローター
61、62 磁極
61m、62m 磁極
70 レンズ
71 第1のミラー
71a 第1の反射面
72 第2のミラー
72a 第2の反射面
73 透明のボックス
81 第1の軸受
82 第2の軸受

Claims (10)

  1. 複数の永久磁石を所定の間隔でリング状に並べ、相隣り合う2つの前記永久磁石の間に、低温のキュリー点を有する低温キュリー点磁性体を挟むことによって、複数の前記永久磁石と複数の前記低温キュリー点磁性体とが交互に並んでリング状に配置されるように構成されることを特徴とする複合磁性体リング。
  2. 各々の前記永久磁石と当該永久磁石と隣り合う前記低温キュリー点磁性体との間に、断熱材を挟むように構成される請求項1記載の複合磁性体リング。
  3. 少なくとも1つの前記低温キュリー点磁性体が、当該低温キュリー点磁性体のキュリー点の近傍の温度に加熱され、当該低温キュリー点磁性体の透磁率が変化することによって、当該低温キュリー点磁性体の近傍に磁界が発生する請求項1または2記載の複合磁性体リング。
  4. 加熱される対象である前記低温キュリー点磁性体を次々に切り替えて加熱し、かつ、加熱される対象以外の前記低温キュリー点磁性体を次々に切り替えて冷却することによって、前記複合磁性体リングの内部に回転磁界が発生する請求項3記載の複合磁性体リング。
  5. 複数の永久磁石を所定の間隔でリング状に並べ、相隣り合う2つの前記永久磁石の間に、低温のキュリー点を有する低温キュリー点磁性体を挟むことによって、複数の前記永久磁石と複数の前記低温キュリー点磁性体とが交互に並んでリング状に配置される複合磁性体リングと、
    前記複合磁性体リングの内部に配置され、かつ、複数の磁極を有するローターとを備え、
    前記複合磁性体リング内の少なくとも1つの前記低温キュリー点磁性体が、当該低温キュリー点磁性体のキュリー点の近傍の温度に加熱され、当該低温キュリー点磁性体の透磁率が変化することによって、当該低温キュリー点磁性体の近傍に磁界が発生して前記ローターが回転するように構成されることを特徴とするエネルギー変換器。
  6. 各々の前記永久磁石と当該永久磁石と隣り合う前記低温キュリー点磁性体との間に、断熱材を挟むように構成されることを特徴とする請求項5記載のエネルギー変換器。
  7. 前記ローターに連動して、加熱される対象である前記低温キュリー点磁性体を次々に切り替えて加熱し、かつ、加熱される対象以外の前記低温キュリー点磁性体を次々に切り替えて冷却することによって、前記ローターが連続して回転するように構成されることを特徴とする請求項5または6記載のエネルギー変換器。
  8. 複数の永久磁石を所定の間隔でリング状に並べ、相隣り合う2つの前記永久磁石の間に、低温のキュリー点を有する低温キュリー点磁性体を挟むことによって、複数の前記永久磁石と複数の前記低温キュリー点磁性体とが交互に並んでリング状に配置される複合磁性体リングと、
    前記複合磁性体リングの内部に配置され、かつ、複数の磁極を有するローターと、
    前記複合磁性体リング内の少なくとも1つの前記低温キュリー点磁性体を加熱する加熱手段とを備え、
    前記加熱手段により、少なくとも1つの前記低温キュリー点磁性体が、当該低温キュリー点磁性体のキュリー点の近傍の温度に加熱され、当該低温キュリー点磁性体の透磁率が変化することによって、当該低温キュリー点磁性体の近傍に磁界が発生して前記ローターが回転するように構成されることを特徴とするエネルギー変換器。
  9. 各々の前記永久磁石と当該永久磁石と隣り合う前記低温キュリー点磁性体との間に、断熱材を挟むように構成されることを特徴とする請求項8記載のエネルギー変換器。
  10. 前記ローターに連動して、加熱される対象である前記低温キュリー点磁性体を次々に切り替えて加熱し、かつ、加熱される対象以外の前記低温キュリー点磁性体を次々に切り替えて冷却することによって、前記ローターが連続して回転するように構成されることを特徴とする請求項8または9記載のエネルギー変換器。
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