JPWO2010087425A1 - 前立腺癌の進行抑制剤および進行抑制方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する前立腺癌の進行抑制剤に関する。4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸は、ホルモン抵抗性を獲得した前立腺癌に対して増殖抑制やホルモン応答性回復等の作用を有することから、前立腺癌の進行抑制剤として有用である。

Description

本発明は、(1)4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする前立腺癌の進行抑制方法、(2)その方法に用いる4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する前立腺癌の進行抑制剤、および(3)かかる進行抑制剤を製造するための4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの使用等に関する。
前立腺癌は、米国では男性患者数の最も多い癌であり、日本でも近年の食生活の欧米化に伴い、患者数が急激に増加している癌である。
前立腺癌の治療においては、内分泌療法、手術療法、放射線療法等の選択肢があり、どの治療が施されるかは、前立腺癌の進行の程度や悪性度、患者の健康状態、年齢、合併症の有無等を考慮して判断されるが、その患者が前立腺癌であると初めて診断された場合、通常、内分泌療法(ホルモン療法ともいう)がまず試みられる。
ほぼ全ての患者において、治療開始初期における前立腺癌は、男性ホルモンに感受性を有する前立腺癌、いわゆるホルモン応答性前立腺癌であるため、男性ホルモンを低下させるような内分泌療法(抗アンドロゲン療法ともいう)を行うことで、前立腺癌の進行を抑えることができる。このような療法には、例えば、精巣を摘出する除睾術や、あるいは抗男性ホルモン薬、女性ホルモン薬、黄体ホルモン放出ホルモン(LH−RH)アゴニスト等の薬物投与等が含まれ、通常これらの療法を行うことで、前立腺癌はその腫瘍サイズの縮小を認め、また、腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原:prostate specific antigen)値も著しく低下する。
しかしながら多くの場合、概ね抗アンドロゲン療法の治療開始から半年乃至数年以内に、男性ホルモンは依然として低いレベルで推移しているにも関わらず、前立腺癌が再度増殖を開始するという現象が見られる。このように、前立腺癌が男性ホルモンの量に影響を受けることなく増殖する性質を獲得することは「ホルモン抵抗性の獲得」もしくは「アンドロゲン非依存性の獲得」等と表現されており、その結果として生じた男性ホルモンに感受性を有さない前立腺癌、いわゆるホルモン抵抗性(ホルモン不応性)前立腺癌に対しては、有効な治療法は存在せず、従って、新たな治療手段の開発が急務である。
一方、4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸は、国際公開第02/16311号パンフレットに記載された化合物であり、プロスタグランジンE2の受容体サブタイプであるEP3および/またはEP4に対する拮抗作用を有することから、癌(癌形成、癌増殖、癌の臓器転移、癌の骨転移、癌の骨転移に伴う高カルシウム血症)等に有効であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
プロスタグランジンE2(PGE2)の受容体サブタイプと前立腺癌の関係を示唆する別の報告では、EP2とEP4を共に抑制することで、癌細胞の増殖に関与するEGF受容体とアンドロゲン受容体の発現レベルを低下させ得る可能性が示されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、前立腺癌における血管新生のプロセスに、EP2およびEP4を介するプロスタグランジンEの作用が関与している旨の報告もある(例えば、非特許文献2参照)。
さらに、EP4に対する拮抗作用を有するキノリン誘導体が、前立腺癌の治療に有用であることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら今日まで、4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸と前立腺癌とを直接的に関連づけた文献はなく、当該化合物が前立腺癌の進行抑制作用を有することは知られていなかった。とりわけ、当該化合物が、前立腺癌がホルモン抵抗性を獲得するプロセスに作用して、ホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得抑制や、あるいはホルモン抵抗性前立腺癌のホルモン応答性回復等の作用を発揮すること、ならびに当該化合物が、前立腺癌がホルモン抵抗性を獲得した後の増殖プロセスに作用することで、ホルモン応答性前立腺癌の増殖には影響を与えずに、ホルモン抵抗性前立腺癌の増殖のみ抑制すること等の作用を発揮することは、何処にも記載も示唆もされていなかった。
国際公開第02/16311号パンフレット 国際公開第2006/122403号パンフレット
プロシーディングズ・オブ・ジ・アメリカン・アソシエーション・フォー・キャンサー・リサーチ・アニュアル・ミーティング(Proceedings of the American Association for Cancer Research Annual Meeting),49巻,1111〜1112頁(2008年) キャンサー・リサーチ(Cancer Research),68(19)巻,7750〜7759頁(2008年)
内分泌療法は前立腺癌治療における第一の選択肢であるが、多くの患者では、内分泌療法の治療開始から遅くとも数年以内に、ホルモン応答性前立腺癌がホルモン抵抗性前立腺癌へと転化するため、それ以上の内分泌療法は奏功しなくなる。このような患者では、その他の治療手段も望ましい効果を与えるものではなく、一部放射線療法で若干の自覚症状の軽減を得る場合もあるが、治癒を期待できるものではない。ホルモン抵抗性を獲得した前立腺癌の患者は、時間の経過に伴って、進行し、増殖し、さらには転移した癌によって、やがて死に至る。
従って、本発明の課題はホルモン抵抗性を獲得した前立腺癌の増殖をコントロールし、前立腺癌によって患者が死に至らしめられることを回避し得る有用な薬剤を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ホルモン抵抗性を獲得した前立腺癌患者の前立腺組織では、ホルモン応答性前立腺癌患者の前立腺組織に比べて、プロスタグランジンE2受容体サブタイプであるEP4の強い発現が認められること、ホルモン応答性前立腺癌の細胞株にEP4を強制発現させるとホルモン抵抗性を獲得すること、ならびにEP4拮抗作用を有する化合物である4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸は、ホルモン応答性前立腺癌の増殖を抑制しないにも関わらず、ホルモン抵抗性前立腺癌の増殖は抑制するという新たな知見を得た。本発明者らは従前知られていなかったこれらの知見をもとにさらに検討を加え、4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸が上記の課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
[1]4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する、ホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得抑制剤;
[2]抗アンドロゲン療法と組み合わせて用いられる前記[1]記載の剤;
[3]抗アンドロゲン療法が、酢酸ビカルタミド、酢酸フルタミド、酢酸クロルプロマジノン、リン酸エストラムスチンナトリウム、リュープロレリン、およびゴセレリンからなる群より選択される一種以上の薬物投与もしくは除睾術を含む前記[2]記載の剤;
[4]さらに、シスプラチンまたはドセタキセルを用いた化学療法、HIFU、または小線源療法を組み合わせて用いられる前記[3]記載の剤;
[5]4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する前立腺癌の進行抑制剤;
[6]前立腺癌の進行抑制が、ホルモン抵抗性前立腺癌のホルモン応答性回復である前記[5]記載の剤;
[7]前立腺癌の進行抑制が、ホルモン抵抗性前立腺癌の増殖抑制である前記[5]記載の剤;
[8]ホルモン抵抗性前立腺癌患者用である前記[5]記載の剤;
[9]ホルモン抵抗性前立腺癌患者が、少なくとも6ヶ月を超える継続した抗アンドロゲン療法下にある前立腺癌患者であって、抗アンドロゲン療法開始初期と比較して、抗アンドロゲン療法による前立腺癌の進行抑制効果が低下した患者である前記[8]記載の剤;
[10]4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを特徴とするホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得抑制方法;
[11]4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする前立腺癌の進行抑制方法;
[12]ホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得抑制剤を製造するための4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの使用;
[13]前立腺癌の進行抑制剤を製造するための4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの使用;
[14]4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する、ホルモン抵抗性前立腺癌のホルモン応答性回復もしくはホルモン抵抗性前立腺癌の増殖抑制剤;
[15]抗アンドロゲン療法と組み合わせて用いられる前記[14]記載の剤;
[16]抗アンドロゲン療法が、酢酸ビカルタミド、酢酸フルタミド、酢酸クロルプロマジノン、リン酸エストラムスチンナトリウム、リュープロレリン、およびゴセレリンからなる群より選択される一種以上の薬物投与もしくは除睾術を含む前記[15]記載の剤;
[17]さらに、シスプラチンまたはドセタキセルを用いた化学療法、HIFU、または小線源療法を組み合わせて用いられる前記[16]記載の剤;
[18]4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する抗アンドロゲン療法の奏功期間延長剤;
[19]抗アンドロゲン療法が、酢酸ビカルタミド、酢酸フルタミド、酢酸クロルプロマジノン、リン酸エストラムスチンナトリウム、リュープロレリン、およびゴセレリンからなる群より選択される一種以上の薬物投与もしくは除睾術を含む前記[18]記載の剤;
[20](a)アンドロゲン受容体を発現し、かつEP4を発現していない前立腺癌細胞株にEP4を強制発現させる工程、(b)工程(a)で得られた前立腺癌細胞株をヌードマウスに皮下移植する工程、(c)工程(b)で得られたヌードマウスを除睾する工程、(d)工程(c)で得られたヌードマウスに媒体もしくは被験化合物を投与する工程、および(e)腫瘍径もしくは腫瘍マーカーの測定値を、媒体投与群と被験化合物投与群との間で比較する工程とを含むことを特徴とする、ホルモン抵抗性前立腺癌の治療に有用な化合物のスクリーニング方法;
[21]4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有するテストステロン補充療法に伴う前立腺癌予防剤、または前記療法下における前立腺癌リスク低減剤;
[22]血漿もしくは血清PSA値が0.1ng/mL以上を示す健常人に対して投与される、4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する前立腺癌予防剤または前立腺癌リスク低減剤;
[23]4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有するホルモン抵抗性前立腺癌患者の生存期間延長剤;
[24]前立腺癌細胞とEP4アンタゴニストとを接触させる工程を含む、前記細胞のアンドロゲン非依存性の増殖速度をイン・ビトロもしくはイン・ビボで低下させる方法であって、EP4アンタゴニストが4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグである前記方法;
[25]EP4アンタゴニストを有効成分として含有するホルモン抵抗性前立腺癌の増殖速度を低下させるための医薬組成物であって、EP4アンタゴニストが4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグである医薬組成物;
[26]ホルモン応答性前立腺癌とEP4アンタゴニストとを接触させる工程を含む、ホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得をイン・ビトロもしくはイン・ビボで抑止する方法であって、EP4アンタゴニストが4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグである前記方法;および
[27]EP4アンタゴニストを有効成分として含有するホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得を抑止するための医薬組成物であって、EP4アンタゴニストが4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグである医薬組成物等に関する。
本発明によって、従来の手段では望ましい効果を得ることが困難であったホルモン抵抗性前立腺癌の進行をコントロールすることが可能となる。具体的には、ホルモン抵抗性前立腺癌の増殖を抑制したり、ホルモン応答性前立腺癌がホルモン抵抗性を獲得するのを阻害したり、あるいはホルモン抵抗性前立腺癌のホルモン応答性を回復させたりすることが可能となる。前立腺癌におけるホルモン抵抗性の獲得のプロセスにEP4が関与しており、EP4拮抗作用を有する4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグがこれらの作用を有することは従来技術から予測し得ないことである。
本発明で開示する、4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの作用のうち、特に、ホルモン応答性を有する前立腺癌の患者を対象として、4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを予め投与しておくことにより、該患者の前立腺癌がホルモン抵抗性を獲得することを阻止あるいは遅延させ得ることは、臨床上極めて有用である。この作用により、前記化合物は抗アンドロゲン療法の補助剤、とりわけ抗アンドロゲン療法の奏功期間延長剤として用いることが可能となる。
ヒトEP4強制発現前立腺癌細胞(LNCaP−EP4)におけるEP4の局在を示す免疫染色像である。 ヒトEP4強制発現前立腺癌細胞(LNCaP−EP4)をヌードマウスに移植し、さらに除睾した場合の腫瘍体積の推移を示す図である。 ホルモン抵抗性前立腺癌ゼノグラフトの腫瘍体積に及ぼす4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸(化合物A)の効果を示す図である。 ホルモン抵抗性前立腺癌ゼノグラフトのホルモン抵抗性獲得に及ぼす4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸(化合物A)の抑制効果を示す図である。
本発明において、4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸(以下、化合物Aと略記する場合がある。)とは、式(A):
Figure 2010087425
で示される構造を有する、国際公開第02/16311号パンフレットに記載された公知の化合物である。
本発明において、化合物Aの塩は、薬学的に許容される塩が好ましい。薬学的に許容される塩は、毒性の無い、水溶性のものが好ましい。化合物Aの適当な塩としては、例えば、アルカリ金属(例えば、カリウム、ナトリウム、リチウム等)の塩、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等)、有機アミン(例えば、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等)の塩等が挙げられる。
本発明において、化合物Aの適当な溶媒和物としては、例えば、水、アルコール系溶媒(例えば、エタノール等)等の溶媒和物が挙げられる。溶媒和物は低毒性かつ水溶性であることが好ましい。また、化合物Aの溶媒和物には、化合物Aの上記塩の溶媒和物も含まれる。
化合物Aは、公知の方法で上記塩、あるいは上記溶媒和物に変換することができる。
本発明において、化合物Aのプロドラッグとは、生体内において酵素や胃酸等による反応により化合物Aに変換される化合物をいう。化合物Aのプロドラッグとしては、例えば、化合物Aのカルボキシ基がエステル化、アミド化された化合物(例えば、カルボキシ基がエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、1−{(エトキシカルボニル)オキシ}エチルエステル化、フタリジルエステル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル化、1−{[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]オキシ}エチルエステル化、メチルアミド化された化合物等)等が挙げられる。これらの化合物は自体公知の方法によって製造することができる。また、化合物Aのプロドラッグは、溶媒和物および非溶媒和物のいずれであってもよい。また、化合物Aのプロドラッグは、廣川書店1990年刊「医薬品の開発」,第7巻,「分子設計」,163〜198頁に記載されている如く、生理的条件で化合物Aに変化するものであってもよい。さらに、化合物Aは放射性同位元素(例えば、3H、14C、35S、125I等)等で標識されていてもよく、化合物Aに含まれる任意の原子はそれぞれ対応する安定同位元素(例えば、重水素(2H)、重炭素(13C)、重窒素(15N)、重酸素(17O、18O)等)等に置換されていてもよい。
化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグは、公知の方法、例えば、国際公開第02/16311号パンフレットに記載された方法、それに準ずる方法、またはコンプリヘンシヴ・オーガニック・トランスフォーメーションズ:ア・ガイド・トゥー・ファンクショナル・グループ・プレパレーションズ、セカンド・エディション(リチャードC.ラロック、ジョンワイリーアンドサンズ・インク,1999)[Comprehensive Organic Transformations : A Guide to Functional Group Preparations, 2nd Edition (Richard C. Larock, John Wiley & Sons Inc, 1999)]に記載された方法等に従って、またはそれらの方法を適宜組み合わせることにより製造することができる。反応の生成物は通常の精製手段、例えば、常圧下または減圧下における蒸留、シリカゲルまたはケイ酸マグネシウムを用いた高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、あるいはカラムクロマトグラフィーまたは洗浄、再結晶等の方法により精製することができる。また所望によって、凍結乾燥等の処理に付してもよい。
本発明において、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグは、実質的に純粋で単一な物質であるものに限定されず、不純物(例えば、製造工程に由来する副生成物、溶媒、原料等、または分解物等)を、医薬品原薬として許容される範囲の量を含有していてもよい。
前記の方法により製造された、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグは、そのままの形で、あるいは生体内で変換されることで、EP4に対する拮抗作用を示すため、EP4アンタゴニストとして使用することができる。
本発明は、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を、哺乳動物(例えば、ヒトや非ヒト動物(サル、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス等))、好ましくはヒト(患者)に投与して、前立腺癌の進行を抑制する方法(以下、本発明の方法と略記する場合がある。)、その方法に用いる化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する前立腺癌の進行抑制剤(以下、本発明の剤と略記する場合がある。)、およびかかる進行抑制剤を製造するための化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの使用等を開示するものである。なお、本発明において、「進行」とは、前立腺癌が、増殖し、転移し、あるいはホルモン抵抗性の獲得等、宿主である哺乳動物にとって望ましくない性質を獲得することを意味する。
本発明において、前立腺癌は、前立腺に発生する癌そのもの、およびその癌から転移した癌の全てを包含する。通常、前立腺癌の大部分は組織学的に腺癌で、ほかに扁平上皮癌、単純癌、未分化癌等が希に見られることが知られているが、これらは全て本発明でいう前立腺癌に含まれる。
また前立腺癌は、それが前立腺癌でありさえすれば、どのような段階・ステージにあるものであっても構わない。前立腺癌の段階やステージは、例えば、前立腺癌の性質、所在、患者の症状、あるいはマーカーの変動等を指標に、例えば、前立腺被膜を貫通し周囲に浸潤した前立腺癌、造骨性骨転移した前立腺癌、外腸骨骨動脈周囲にリンパ節転移した前立腺癌、大動脈周囲にリンパ節転移した前立腺癌、宿主である哺乳動物が無症状である前立腺癌、宿主である哺乳動物が排尿困難・頻尿・血尿等の症状をきたした前立腺癌、前立腺酸性ホスファターゼ(prostatic acid phosphatase : PAP)の上昇が観察される前立腺癌、前立腺特異抗原(prostate specific antigen : PSA)の上昇が観察される前立腺癌、またはガンマセミノプロテイン(gamma seminoprotein)の上昇が観察される前立腺癌等と表現されることもあるし、あるいはこれらの組み合わせで表現されることもある。また例えば、病理組織の形態コードやT分類・N分類・M分類等の病期分類、あるいは腫瘍の構造異型によるグリーソン分類(Gleason's grade)等の公知の分類方法に従って種々表現されることもあるが、本発明における前立腺癌はそのいずれでもよい。
上記の前立腺癌はいずれも本発明の対象であり、本発明によって好ましい進行抑制効果を得ることができる。前立腺癌は上記のように、様々に分類されることが知られているが、本発明によって得られる前立腺癌の進行抑制効果は、その前立腺癌がホルモン応答性を有するか否かによってその得られる効果も区別可能である。具体的には、前立腺癌を、「ホルモン応答性を有する前立腺癌」と「ホルモン抵抗性を獲得した前立腺癌」に二大別した場合、「ホルモン応答性を有する前立腺癌」(ホルモン応答性前立腺癌)に対してはホルモン抵抗性獲得抑制という進行抑制効果を、「ホルモン抵抗性を獲得した前立腺癌」(ホルモン抵抗性前立腺癌)に対してはホルモン応答性回復ならびに増殖抑制という優れた進行抑制効果を得ることができる。
ここで、「ホルモン応答性の有無」は、前立腺癌の進行に対し、男性ホルモンの量的変化が影響を及ぼすかどうかによって判断することができる。具体的には、男性ホルモンの量が低下した場合に前立腺癌の進行も遅延する場合、その前立腺癌は「ホルモン応答性を有する前立腺癌」(ホルモン応答性前立腺癌)に分類される。他方、男性ホルモンの量が低下しているにも関わらず前立腺癌が進行し続ける場合、その前立腺癌は「ホルモン抵抗性を獲得した前立腺癌」(ホルモン抵抗性前立腺癌)に分類される。
本発明において、「ホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得抑制」とは、前記ホルモン応答性前立腺癌が、男性ホルモンの量的変化に影響を受けることなく進行する性質を獲得しないようにすること、あるいはその性質を獲得する時期を遅らせることを意味する。また、「ホルモン抵抗性前立腺癌のホルモン応答性回復」とは、前記ホルモン抵抗性前立腺癌が、男性ホルモンの量的変化に依存して進行する性質を再び獲得することを意味する。「ホルモン抵抗性前立腺癌のホルモン応答性回復」の好適な例としては、例えば、以下に示すように、抗アンドロゲン療法が奏功しなくなった、あるいは効目が低下した患者において、抗アンドロゲン療法が再び奏功するようになる、あるいはより効果を示すようになることが挙げられる。
本発明において、前立腺癌の「増殖抑制」とは、当該前立腺癌の細胞が増殖する速度を遅くすること、すなわち、増殖速度を低下せしめることを意味し、増殖しないようにすることをも含む。前立腺癌の「増殖抑制」は、前立腺癌を腫瘍径で観察した場合には、「腫瘍径の拡大速度の遅延」、あるいは「腫瘍径の拡大が見られない」ことをもって判断することができる。腫瘍径が縮小した場合は、「腫瘍径の拡大が見られない」と判断しても構わない。また、前立腺癌の「増殖抑制」は、腫瘍の長径・短径を測定し、算出した腫瘍体積を指標として観察してもよい。例えば、後述の実施例において、腫瘍体積は、腫瘍の長径および短径を電子ノギスで計測し、計算式{腫瘍体積=腫瘍の直径×(腫瘍の短径)2×0.52}によって算出したものである。前立腺癌を腫瘍体積で観察した場合には、「腫瘍体積の増大速度の遅延」、あるいは「腫瘍体積の増大が見られない」ことをもって前立腺癌の「増殖抑制」を判断することができる。腫瘍径で評価した場合と同様に、腫瘍体積が減少した場合は、「腫瘍体積の増大がみられない」と判断しても構わない。
本発明において、抗アンドロゲン療法とは、前立腺癌患者の体内において、アンドロゲン、すなわち男性ホルモンと、前立腺癌の癌細胞とが接触する確率を低下させることができる手段であれば全て包含する。つまり、前立腺癌患者のアンドロゲンの血中濃度を下げる手段であってもよいし、前立腺癌患者の前立腺およびその周辺組織におけるアンドロゲンの局所濃度を特異的に低下させる手段であってもよい。なお、ここでいうアンドロゲンとは、男性ホルモンの総称であり、テストステロンのほか、ジヒドロテストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステロン、アンドロステンジオン等が含まれる。
本発明において、抗アンドロゲン療法としては、例えば、精巣を摘出する除睾術や、あるいは抗男性ホルモン薬、女性ホルモン薬、黄体ホルモン放出ホルモン(LH−RH)アゴニスト等の薬物投与、または除睾術または黄体ホルモン放出ホルモンアゴニストと抗男性ホルモン薬の併用であるMAB療法等が挙げられる。ここで、抗男性ホルモン薬としては、例えば、酢酸ビカルタミド(商品名カソデックス)、酢酸フルタミド(商品名オダイン)等の非ステロイド性抗アンドロゲン薬、例えば、酢酸クロルプロマジノン(商品名プロスタール)等のステロイド性抗アンドロゲン薬が挙げられる。女性ホルモン薬としては、例えば、リン酸エストラムスチンナトリウム(商品名エストラサイト)等のエストロゲン製剤が挙げられる。黄体ホルモン放出ホルモンアゴニストとしては、例えば、リュープロレリン(商品名リュープリン)、ゴセレリン(商品名ゾラデックス)等が挙げられる。
本発明において、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を上記の前立腺癌の進行抑制に用いる場合、その投与対象である哺乳動物(例えば、ヒトや非ヒト動物等、好ましくはヒト(患者))への投与経路は、経口投与であっても、また非経口投与であってもよい。非経口投与は、例えば、動脈内投与、静脈内投与のように全身投与であってもよいし、また例えば、局所注射や経皮投与、直腸投与あるいは前立腺周辺組織への埋め込み投与等のように局所投与であってもよい。静脈内投与は点滴投与であってもよいし、また、局所注射は如何なる部位、例えば、筋肉、皮下、皮内等への注射であっても構わない。
化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの投与量は、生体に投与されたこれらの薬物が顕著な毒性を示すことなく、前立腺癌に対して進行抑制効果を示す用量であれば如何なる用量であっても構わないが、通常、約0.01mg乃至約5000mgの範囲で用いられる。なお、前記のように投与方法を変えることで、望ましい効果を得るために必要な投与量も変化するので、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを投与する際にはその投与方法に応じて適した投与量を選択すればよい。
化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの投与量の目安としては、例えば、これらの薬物を経口投与する場合、その1回あたりの投与量としては、約0.1mg乃至約5000mgが好ましく、約1mg乃至約1000mgがより好ましく、約3mg乃至約100mgが特に好ましい。また、例えばこれらの薬物を動脈内投与または静脈内投与する場合、その1回あたりの投与量としては、約0.01mg乃至約1000mgが好ましく、約0.1mg乃至約100mgがより好ましく、約1mg乃至約30mgが特に好ましい。さらに、例えばこれらの薬物を局所注射や経皮投与、直腸投与あるいは前立腺周辺組織へ埋め込み投与する場合、その1回あたりの投与量としては、約0.01mg乃至約50mgが好ましく、約1mg乃至約10mgがより好ましい。なお、化合物Aの塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを用いる場合、化合物Aの量として上記に示した投与量が好適である。
化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを上記の投与方法で哺乳動物(例えば、ヒトや非ヒト動物等、好ましくはヒト(患者))へ投与する場合には、それぞれの投与形態に応じて製剤化した医薬組成物が用いられる。
経口投与のために用いる医薬組成物としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル)、散剤、顆粒剤等の内服用固形剤や、例えば、水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等の内服用液剤が挙げられる。
内服用固形剤は、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグをそのまま、または賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸等)等とともに混合し、常法に従って製剤化することができる。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。カプセル剤とする場合には、例えば、ゼラチンやコラーゲン等の蛋白質、例えば、デンプン、アミロース、ポリガラクツロン酸、寒天、カラギナン、アラビアガム、ジェランガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸等の多糖類、例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリグルタミン酸等の生分解性プラスチック、例えば、中鎖脂肪酸のトリグリセリドやジグリセリド等の硬化油脂を主成分とするカプセル皮膜に充填すればよい。
内服用液剤は、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化して製剤化することができる。この液剤にはさらに、例えば、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を添加することもできる。
動脈内投与、静脈内投与、または局所注射のために用いる医薬組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤のいずれであってもよい。これらの医薬組成物は、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを溶剤に溶解、懸濁または乳化させて製造される。溶剤として、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせ等が用いられる。さらにこの医薬組成物は、安定化剤、緩衝剤、pH調節剤、溶解剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、界面活性剤、抗酸化剤、消泡剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤等の、例えば、薬事日報社2000年刊「医薬品添加物事典」(日本医薬品添加剤協会編集)等に記載されているような添加剤を含んでいてもよい。また、点滴投与のために輸液製剤とする場合はこれらの添加剤に加え、電解質類(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等)、糖類(例えば、グルコース、果糖、ソルビトール、マンニトール、デキストラン等)、蛋白アミノ酸類(例えば、グリシン、アスパラギン酸、リジン等)、ビタミン類(例えば、ビタミンB1、ビタミンC等)等の一般的に輸液に用いられる成分も用いることができる。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって調製される。また無菌の固形剤、例えば、凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
局所注射のための医薬組成物は、マイクロスフェア注射剤であってもよい。マイクロスフェアの製造方法、使用方法等に関しては、必要に応じて、小石眞純監修「マイクロ/ナノ系カプセル・微粒子の開発と応用」(株)シーエムシー出版(2003年)を参照すればよい。また、一般的な生理活性物質の徐放化に関しては、必要に応じて、宮尾興平著「ドラッグ・デリバリー・システムの実際」医薬ジャーナル社(1986年)を参照すればよい。マイクロスフェア注射剤とした前記の医薬組成物は、筋肉内や、好ましくは皮下に注射して、局所で化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを持続放出することが可能となる。かかるマイクロスフェア注射剤は、所望によって、静脈内、または動脈内に投与することもできる。
経皮投与に用いられる医薬組成物としては、例えば、液体スプレー剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゾル剤、エアロゾル、パップ剤、プラスター剤、テープ剤等が挙げられる。これらの組成物には、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグと、一般的に外用剤に用いられる油性基剤[例えば、植物油(例えば、綿実油、胡麻油、オリーブ油等)、ロウ類(例えば、カルナバワックス、ミツロウ等)、高級炭化水素類(例えば、白色ワセリン、流動パラフィン、プラスチベース等)、脂肪酸(例えば、ステアリン酸、パルミチン酸等)およびそのエステル、高級アルコール類(例えば、セタノール等)、シリコン類(例えば、シリコンフルイド、シリコンゴム等)等]、水溶性基剤[例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体等の溶液または高分子ハイドロゲル、ポリエチレングリコール(局方マクロゴール)、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エタノール、グリセリン等]、テープ剤に用いられる粘着剤[例えば、合成ゴム系粘着剤(例えば、メタアクリル酸エステル共重合体、天然ゴム系粘着剤、合成イソプレン等)、シリコンポリマー系粘着剤等]、フィルム基剤[例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体、PET、アルミラミネート等]、ゲル基剤[例えば、乾燥寒天、ゼラチン、水酸化アルミニウム、ケイ酸等]、または油性基剤と水溶性基剤に界面活性剤[例えば、陰イオン界面活性剤(例えば、脂肪酸、サポニン、脂肪酸サルコシド、アルコール硫酸エステル、アルコールリン酸エステル等)、陽イオン界面活性剤(例えば、4級アンモニウム塩、複素環アミン等)、両性界面活性剤(例えば、アルキルベタイン、リゾレシチン等)、非イオン界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等)等]等を加えた乳剤性基剤等が用いられる。また、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば、界面活性剤[例えば、陰イオン界面活性剤(例えば、脂肪酸、サポニン、脂肪酸サルコシド、アルコール硫酸エステル、アルコールリン酸エステル等)、陽イオン界面活性剤(例えば、4級アンモニウム塩、複素環アミン等)、両性界面活性剤(例えば、アルキルベタイン、リゾレシチン等)、非イオン界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等)等]、増粘剤[例えば、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース等)、ポリカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、メトキシメチレン無水マレイン酸共重合体等)、非イオン水溶性高分子(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等)等]、安定化剤[例えば、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム等)、キレート剤(例えば、EDTA等)等]、pH調整剤[例えば、リン酸塩緩衝剤、水酸化ナトリウム等]、保存剤[例えば、パラベン類、アルキル4級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)等]、吸収促進補助剤[例えば、脂肪酸およびそのエステル類(例えば、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピル等)、リン脂質類(例えば、ホスファチジルコリン等)、テルペン類(例えば、リモネン等)、アザシクロアルカン類(例えば、Azone(商標名、ネルソンリサーチ社)等)等]等を添加することもできる。化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有するこれらの経皮投与用製剤は、前記の各種基剤、粘着剤またはその他必要に応じて添加される添加物を用いて常法により製造することができる。
液体スプレー剤、ローション剤、ゾル剤またはエアロゾルは、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを、水、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エタノール、グリセリン等の溶媒中に、溶解または分散させることによって製造することができる。また、所望によって前記の添加剤を加えることもできる。
軟膏剤またはクリーム剤は、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを、前記水溶性基剤、前記油性基剤および/または水、植物油等の当該技術分野で通常用いられる溶剤と混合し、必要に応じて界面活性剤を加え、乳化処理を施すことによって製造することができる。また、所望によって前記の添加剤を加えることもできる。
パップ剤、プラスター剤、またはテープ剤は、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグおよび所望によって前記粘着剤を含有する溶液(必要であれば前記添加剤を含有していてもよい)を前記フィルム基剤上に塗布し、必要に応じて架橋処理や乾燥操作を施すことによって製造することができる。
ゲル剤は、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグまたはその塩および前記ゲル基剤を含有する溶液(必要であれば前記添加剤を含有していてもよい)を型に流し込み、必要に応じて架橋処理や乾燥操作を施すことによって製造することができる。
埋め込み投与用の医薬組成物は、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグをそのまま、あるいは生分解性のシートでくるむようにして、目的に応じて種々の形状に製剤化することができる。例えば、粒状、円柱状、角柱状、シート状、ディスク状、スティック状、ロッド状、球状、微粒子状、ペースト状等の固形、半固形製剤へと製剤化することができる。
直腸投与用の医薬組成物、いわゆる坐剤を製造する際には、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを自体公知の方法に従って、油性または水性の固状、半固状あるいは液状の坐剤とすることができる。かかる組成物に用いる油性基剤としては、例えば、高級脂肪酸のグリセリド(例えば、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社)等)、中級脂肪酸(例えば、ミグリオール類(ダイナマイトノーベル社)等)、あるいは植物油(例えば、ゴマ油、大豆油、綿実油等)等が用いられる。また、水性基剤としては、例えば、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコール等が、水性ゲル基剤としては、例えば、天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体等が用いられる。
これらの医薬組成物を前立腺癌の進行抑制剤として使用する場合、その医薬組成物の投薬期間は特に限定されるものではない。これらの医薬組成物の投薬は所望によって適当な休薬期間をおいて、間歇的に行っても構わない。間歇的投与では、休薬期間は1日以上30日以下であることが好ましく、例えば、1日おきの間歇的投与、2日投与1日休薬の間歇的投与、5日連投後2日休薬する間歇的投与等や、一般的にカレンダー方式(例えば、錠剤であればカレンダー錠と称される。)を用いた間歇的投与であってもよい。また、例えば、前立腺周辺組織への埋め込み投与等では、薬効の持続が期待されるので、1週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回、1年に1回等の投与も可能である。
本発明の剤における具体的な投薬期間としては、例えば、経口的な投与や経皮投与であれば、1日乃至5年間等、好ましくは1日乃至1年間等、より好ましくは1日乃至6ヶ月間等、特に好ましくは1日乃至2ヶ月間等が挙げられる。また例えば、静脈内投与であれば、1日乃至100日間等、好ましくは1日乃至10日間等、より好ましくは1日乃至1週間等が挙げられる。
これらの投薬期間中における1日あたりの投薬回数としては、経口的な投与や静脈内投与の投与形態では、例えば、1回乃至5回等、好ましくは1回乃至3回等、より好ましくは1回乃至2回等、最も好ましくは1回等が挙げられる。経皮投与では、血中濃度をコントロールする作用が期待でき、一般的に副作用と称される有害な事象の発生時に投薬を中断することができるので、患者にとっては使いやすい投与形態ともいえる。
本発明において、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグは、上記の医薬組成物として単剤で使用してもよいし、また、前立腺癌の治療に用いられる他の薬剤や治療方法(外科的治療を含む)等と組み合わせて使用してもよい。
化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する医薬組成物を他の薬剤と組み合わせて使用する場合は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤として投与する併用剤の形態をとってもよい。別々の製剤としての投与には、同時投与および時間差による投与が含まれる。組み合わせて使用される他の薬剤としては、例えば、前記のような抗アンドロゲン療法に用いられる各種薬剤や、あるいは癌化学療法に用いられる抗癌剤等が挙げられる。抗癌剤と組み合わせて使用する場合には、とりわけ、シスプラチン、ドセタキセルとの組合わせが好ましい。
なお、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する医薬組成物と組み合わせて使用する前記の薬剤は例示であって、これらに限定されるものではない。これらの薬剤の投与方法は特に限定されず、経口投与であっても非経口投与であってもよい。また、これらの薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。これらの薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
また、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する医薬組成物の投与と組み合わせて行われる外科的療法としては、前記の如く抗アンドロゲン療法で行われる除睾術のような外科的療法に加えて、例えば、前立腺癌の腫瘍組織の摘出のために行われる外科的療法や、前立腺癌の腫瘍組織を摘出することなく生体内でそのまま破壊するHIFU(高エネルギー焦点式超音波前立腺治療システム)、あるいは生体内に埋め込んだ線源により放射線療法を行う小線源療法等も好ましく挙げられる。
具体的な組合わせの好適な一例として、例えば、半年間乃至数年間の抗アンドロゲン療法を行い、前立腺癌がホルモン抵抗性を獲得するに到った前立腺癌患者に対し、抗アンドロゲン療法を維持しつつ、かつ化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する医薬組成物と、シスプラチンおよび/またはドセタキセルを投与して、前立腺癌の増殖速度を低下させた後に、HIFU等の外科的療法で前立腺癌組織を破壊する方法等を例示することができる。
EP4アンタゴニストである化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグは、前述のように医療目的で哺乳動物に投与されるほか、イン・ビトロ(in vitro)もしくはイン・ビボ(in vivo)の試験系で実験的に前立腺癌と接触させ、例えば、他のEP4アンタゴニスト、あるいは別の薬理学的メカニズムを有する化合物が、前立腺癌の進行抑制作用を有するか否かを評価する際の陽性対照(ポジティブ・コントロール)として使用することもできる。なお、化合物Aのプロドラッグをイン・ビトロの試験系で使用する際には、その試験系で化合物Aが生成するか否かを確認する必要がある。
ここで、イン・ビトロの試験系とは、通常、当業者が理解するように、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグと前立腺癌が生体外で接触する工程を含むものであればよく、例えば、生体から摘出した前立腺癌組織、そこから単離し培養した前立腺癌細胞、あるいは前立腺癌細胞株等に、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを添加して作用させる行為を含む。
また、イン・ビボの試験系とは、通常、当業者が理解するように、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグと前立腺癌が生体内で接触する工程を含むものであればよく、例えば、前立腺癌モデル動物や後述の実施例に記載するような前立腺癌担癌モデル動物等に、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを投与して作用させる行為を含む。
本発明ではさらに、ホルモン抵抗性前立腺癌の治療に有用な化合物のスクリーニング方法をも開示する。この方法は、(a)アンドロゲン受容体を発現し、かつEP4を発現していない前立腺癌細胞株にEP4を強制発現させる工程、(b)工程(a)で得られた前立腺癌細胞株をヌードマウスに皮下移植する工程、(c)工程(b)で得られたヌードマウスを除睾する工程、(d)工程(c)で得られたヌードマウスに媒体または被験化合物を投与する工程、および(e)腫瘍径または腫瘍マーカーの測定値を、媒体投与群と被験化合物投与群との間で比較する工程とを含む。具体的な例として、後述の実施例2、3および5に開示される内容が挙げられる。これらの工程の各々のステップ、すなわち、受容体の強制発現、ヌードマウスへの皮下移植、ヌードマウスの除睾、被験化合物の投与、および腫瘍径または腫瘍マーカーの測定は、全て公知の手段をそのまま、あるいは適宜改変することにより実施可能である。被験化合物として投与すべき化合物は、ホルモン抵抗性前立腺癌の治療に有用である可能性がある化合物であればどのようなものであってもよいが、例えば、公知のEP4拮抗作用を有する化合物群から任意に選択して用いることができる。例えば、欧州特許出願公開第1175889号明細書、独国特許出願公開第2330307号明細書、特開2008−273936号公報、米国特許出願公開第2006/0094742号明細書、国際公開第00/16760号パンフレット、国際公開第00/21532号パンフレット、国際公開第01/62708号パンフレット、国際公開第02/16311号パンフレット、国際公開第02/20462号パンフレット、国際公開第02/32422号パンフレット、国際公開第02/32900号パンフレット、国際公開第02/50031号パンフレット、国際公開第02/50032号パンフレット、国際公開第02/50033号パンフレット、国際公開第2003/016254号パンフレット、国際公開第2003/030911号パンフレット、国際公開第2003/037348号パンフレット、国際公開第2003/037373号パンフレット、国際公開第2003/053923号パンフレット、国際公開第2003/099857号パンフレット、国際公開第2004/067524号パンフレット、国際公開第2005/037812号パンフレット、国際公開第2005/061475号パンフレット、国際公開第2005/105732号パンフレット、国際公開第2005/105733号パンフレット、国際公開第2006/050241号パンフレット、国際公開第2006/113571号パンフレット、国際公開第2006/122403号パンフレット、国際公開第2007/121578号パンフレット、国際公開第2008/104055号パンフレット、国際公開第2008/116304号パンフレット等に開示された化合物群から任意に選択して用いることができる。これらの化合物は、各々の特許出願公開明細書に記載された方法、または公知の方法、例えば、コンプリヘンシヴ・オーガニック・トランスフォーメーションズ:ア・ガイド・トゥー・ファンクショナル・グループ・プレパレーションズ、セカンド・エディション(リチャードC.ラロック,ジョンワイリーアンドサンズ・インク,1999)[Comprehensive Organic Transformations : A Guide to Functional Group Preparations, 2nd Edition (Richard C. Larock, John Wiley & Sons Inc, 1999)]に記載された方法等に従って製造することができる。
なお、前記スクリーニング方法で用いられる「アンドロゲン受容体を発現し、かつEP4を発現していない前立腺癌細胞株」において、アンドロゲン受容体とEP4の発現量は、厳密に解釈されるべきではない。例えば、受容体の発現を評価する公知の方法、例えば、蛍光抗体法、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、RT−PCR等を用い、実質的にアンドロゲン受容体を発現している前立腺癌細胞株であって、かつEP4を実質的に発現していないか、またはその発現量が極めて低いレベルにある細胞株を選択すればよい。このような細胞株の一つとしてLNCaPが例示される。
[薬理試験]
化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグのホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得抑制作用や、あるいはホルモン抵抗性前立腺癌のホルモン応答性回復作用は、例えば、以下に例示する薬理試験を行うことによって証明することができる。なお、以下の方法においては、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの薬理作用を適切に評価し得るよう、試験条件を種々検討し、評価の精度および/または感度を向上させる改良を加えることもできる。また、適切な細胞種を選択することでイン・ビトロでこれらの作用を確認することも可能である。
試験例1:ホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得抑制作用の確認
後述の実施例6に示すように、前立腺癌患者の局所再発組織をヌードマウスの皮下に移植し、前立腺癌ゼノグラフトを作製する。マウスに除睾術を施したのち、マウスを2群にわけ、1群のみに化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを投与する。もう1群には何も投与しないか、あるいは化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの投与に用いた媒体のみを投与する。化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを投与しなかった群では約2ヶ月間の飼育でホルモン抵抗性を獲得するが、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを投与した群ではホルモン抵抗性を獲得しないか、あるいはホルモン抵抗性の獲得が遅れるので、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグによるホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得抑制作用を確認することができる。
試験例2:ホルモン抵抗性前立腺癌のホルモン応答性回復作用の確認
後述の実施例6に示すように、前立腺癌患者の局所再発組織をヌードマウスの皮下に移植し、前立腺癌ゼノグラフトを作製する。マウスに前記抗アンドロゲン療法に用いられる薬物の有効量を投与しつづけ、約2ヶ月間飼育することでホルモン抵抗性を獲得させる。マウスに化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを負荷しつつ数ヶ月乃至1年間飼育後、除睾術を施し、さらに数ヶ月間飼育して腫瘍径の変化を観察する。一旦ホルモン抵抗性を獲得したにも関わらず、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを投与することによって除睾術による腫瘍径の縮小効果が観察されるので、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグにホルモン抵抗性前立腺癌のホルモン応答性回復作用があることを確認することができる。
また、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグは、ホルモン抵抗性前立腺癌患者の生存期間延長剤としても利用可能である。ここで、生存期間延長とは、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを投与することにより、投与しない場合と比較して、例えば数週間、好ましくは数ヶ月、より好ましくは数年間、ホルモン抵抗性前立腺癌が原因で死亡することを先延ばしにすることを意味する。この作用は、例えば、以下に示す方法によって確認することができる。なお、以下の方法においては、前記と同様、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの薬理作用を適切に評価し得るよう、試験条件を種々検討し、評価の精度および/または感度を向上させる改良を加えることもできる。
試験例3:生存期間延長作用の確認
後述の実施例6に示すように、前立腺癌患者の局所再発組織をヌードマウスの皮下に移植し、前立腺癌ゼノグラフトを作製する。マウスに除睾術を施したのち、約2ヶ月間飼育することでホルモン抵抗性を獲得せしめ、その後、マウスを2群にわけて、1群のみに化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを投与し続ける。もう1群には何も投与しないか、あるいは化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの投与に用いた媒体のみを投与する。化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを投与しなかった群では投与した群に比較して早期に死亡例が観察されることから、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの生存期間延長作用を確認することができる。
[毒性]
化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの毒性は非常に低いものであり、医薬として使用するために十分安全であると判断できる。
[医薬品への適用]
本発明は、前立腺癌の進行抑制を目的として、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を投与することを特徴とするものである。本発明に用いられる化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する医薬組成物は、有効成分として化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有しており、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト動物(サル、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス等))において前記の目的のために使用することができる。特に本発明で例示する好ましい用法・用量で、哺乳動物(例えば、ヒトや非ヒト動物等、好ましくはヒト(患者))に、経口的または非経口的に全身投与または局所投与することによって、従来の手段では望ましい効果を得ることが困難であったホルモン抵抗性前立腺癌の進行をコントロールすることが可能となる。具体的には、ホルモン抵抗性前立腺癌の増殖を抑制したり、ホルモン応答性前立腺癌がホルモン抵抗性を獲得するのを阻害したり、あるいはホルモン抵抗性前立腺癌のホルモン応答性を回復させたりすることが可能となる。
本発明によって前立腺癌の進行抑制効果が得られているかどうかは、公知の手段を用いて判断することができる。通常、前立腺癌の診断は、血液検査、直腸診、経直腸的超音波検査、生検、CT(Computed Tomography)検査、骨シンチグラフィー、MRI(Magnetic Resonance Imaging)検査、および問診等を任意に組み合わせて行われるが、これらの手段を用いて本発明による前立腺癌の進行抑制効果の有無を判断することができる。また、生検で採取した組織の顕微鏡検査と生化学検査の結果を利用して、グリーソンスコア(Gleason score)で判断しても構わない。
なお、グリーソンスコアは前立腺癌の主要な診断基準であり、その方法についてはキャンサー・ケモセラピー(Cancer Chemother. Rep.),50巻,125〜128頁(1966年)に記載されている。
前立腺癌の進行抑制効果を判断する簡便な方法の一つとして、PSA(前立腺特異抗原)検査を挙げることができる。PSA検査は血液検査の一つであり、血中(好ましくは血漿もしくは血清中)のPSAの量を測定するキットが商業的に入手可能である。例えばこのキットを用い、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの投与前と投与後の血中(好ましくは血漿もしくは血清中)のPSAの値を比較して、投与後において投与前と同等かまたはより低い値が得られていれば、本発明により前立腺癌の進行抑制効果が得られていると判断することができる。勿論、このキットを用いれば、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグ以外にも、抗アンドロゲン療法による前立腺癌の進行抑制効果も知ることができるので、このキットを用いて前立腺癌患者の血中(好ましくは血漿もしくは血清中)のPSA値を経時的にモニタリングすることによって、抗アンドロゲン療法の開始初期と比較して、抗アンドロゲン療法による前立腺癌の進行抑制効果が低下した患者を見極めることが可能である。
本発明で開示する化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグはまた、前立腺癌になる可能性が高い前立腺癌ハイリスク者を対象に投与することで、前立腺癌予防剤または前立腺癌リスク低減剤としても使用することが可能である。具体的には、テストステロン補充療法を受けている患者、もしくは血漿または血清PSA値が0.1ng/mL以上の健常人を対象として、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを予め投与しておくことにより、前立腺癌の発生そのものを抑制し、前立腺癌予防剤または前立腺癌リスク低減剤として用いることが可能となる。
ここで、テストステロン補充療法とは、生体内のテストステロン産生量の低下によっておこる、性的欲求(リビドー)低下、筋肉量減少、腹部脂肪増加、骨低密度化、気力低下、数学的・空間的思考鈍化、血球数減少等の症状の発現を遅らせ、あるいは逆行させる目的で、テストステロンを外因的に投与する方法をいう。
テストステロン補充療法を受けている患者、もしくは血漿または血清PSA値が0.1ng/mL以上(好ましくは、0.1ng/mL以上、より好ましくは2ng/mL以上、特に好ましくは4ng/mL以上、とりわけ好ましくは10ng/mL以上)の健常人は、前立腺癌になるリスクが高いと考えられており、その他の検査の結果から前立腺癌ではないと判断されている場合であっても、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを予め投与しておくことにより、前立腺癌の発生そのものを抑制することができ、前立腺癌のリスクを軽減することができる。なお、化合物A、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの投与に際しては、本発明で開示した医薬組成物とその投与方法を準用することが可能である。
以下、実施例および製剤例によって本発明を詳述するが本発明はこれらに限定されるものものではない。
なお、後述の実施例6に示す前立腺癌ゼノグラフトモデルは、前立腺癌患者の病態を動物モデルで再現するものであり、除睾術の有無によって、ホルモン応答性前立腺癌患者またはホルモン抵抗性前立腺癌患者のモデルとして使い分けることが可能である。例えば、除睾術を付した本モデルでの有効性は、ホルモン抵抗性前立腺癌患者における有効性を明確に示唆するものである。
実施例1:ヒト前立腺組織を用いたEP4免疫染色
抗アンドロゲン療法未実施の前立腺癌患者(27名)および抗アンドロゲン療法の実施によりホルモン抵抗性を獲得した前立腺癌患者(31名)より採取した前立腺癌組織について組織マイクロアレイ(Tissue Microarray)を作製し、常法により抗ヒトEP4ポリクローナル抗体(MBL社)を用いた免疫染色を実施し、前立腺組織におけるEP4発現量を比較した。なお、この試験に使用した前立腺癌組織は、前立腺全摘除術患者の前立腺より採取した組織、剖検時に採取した組織、または局所再発組織に対する経尿道的手術の際に採取した組織である。
EP4発現量を表す免疫染色の強度は、病理学の専門医師によって、none、weak、moderate、strongの4段階に分類し、各々の組織サンプル中でより強く染色されている部分の割合を指標として、6段階(none、weak≦20%、weak>20%、moderate≦20%、moderate>20%、strong>20%)で評価した。それをまとめた結果を以下の表1に示す。
Figure 2010087425
<結果> 抗アンドロゲン療法の実施によりホルモン抵抗性を獲得した前立腺癌患者の前立腺癌組織(Hormone refractory)では、抗アンドロゲン療法未実施の前立腺癌患者のそれ(Hormone naive)と比較して、EP4の発現が亢進していた。
実施例2:ヒトEP4強制発現前立腺癌細胞の樹立
(1)EP4発現ベクターの作製
クローニングベクター(pBluescript-EP4)を制限酵素(EcoRI/BamHI)で切断し、切り出したEP4遺伝子配列を発現ベクター(pcDNA3.1(-))に組み込んで、EP4発現ベクター(pcDNA3.1-humanEP4)を作製した。
(2)ヒト前立腺癌細胞株へのEP4遺伝子導入
ヒト前立腺癌細胞株LNCaPを、10%ウシ胎児血清(FBS)含有RPMI−1640培地を用いて懸濁後、6cmディッシュに1ウェルあたり2.5×106個の細胞密度で播種し、24時間培養した。その後、リポフェクタミン2000(lipofectamine 2000)を用いて、上記で調製したEP4発現ベクター(pcDNA3.1-humanEP4)により遺伝子導入を行った。48時間後よりG418(1mg/mL)含有選択培地を用いて培養し、単一クローン細胞(LNCaP−EP4)を作製した。また、EP4発現ベクターの代わりに空の発現ベクター(pcDNA3.1(-))を用いて同様の操作を行い、多クローン細胞(LNCaP−mock)を作製した。
(3)免疫染色によるEP4発現の確認
上記で作製した各クローンを、10%ウシ胎児血清(FBS)含有RPMI−1640培地を用いて懸濁後、6cmディッシュに1ウェルあたり1.0×106個の細胞密度で播種し、48時間培養した。その後、3.7%パラホルムアルデヒドによる固定を行い、常法により抗ヒトEP4ポリクローナル抗体(Cayman社)を用いた細胞免疫染色を実施した。結果を図1に示す。
<結果> LNCaP−EP4では、細胞膜から細胞質にかけて、EP4の局在が観察された。他方、LNCaP−mockでは、EP4の発現は観察されなかった。
実施例3:担癌マウスの作製および評価
実施例2で作製したLNCaP−mockおよびLNCaP−EP4を、それぞれ、1.0×107個ずつ100μLのマトリゲル(Matrigel)と混合し、ヌードマウスの背部皮下に移植した。その後、腫瘍体積が100〜300mm3に達した時点でマウスに除睾術(castration)を施し、以降70日にわたって経日的に腫瘍体積(Tumor volume)を測定した。その結果を図2に示す。
<結果> 除睾術実施から70日後の腫瘍体積で比較すると、LNCaP−mockを移植したマウスの腫瘍体積は、除睾術施術時の約2倍程度であったが、LNCaP−EP4を移植したマウスでは約6倍に増加した。また同様に、LNCaP−EP4を移植したマウスでは血中PSA値の上昇も観察された。以上のことから、LNCaPにEP4を強制発現させることによって、LNCaPがホルモン抵抗性の増殖能ならびにPSA産生能を獲得することがわかった。
実施例4:EP4拮抗活性の測定
ニシガキ(Nishigaki)らの方法(FEBS lett., 364, 339-341, 1995)に準じて調製したマウスEP4発現CHO細胞を、24ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり1×105個の細胞密度で播種し、2日間培養した。各ウェルをMEM(minimum essential medium)(0.5mL)で洗浄した後、アッセイ培地(assay medium)(MEM containing 1mmol/L IBMX,1%BSA)(0.45mL)を加え、37℃で10分間インキュベーションした。その後、PGE2単独またはこれと各種濃度の化合物Aとを共に含む溶液(0.05mL)を添加し、37℃で10分間反応させた後、氷冷TCA(10w/v%)(0.5mL)を添加し、反応を停止させた。この反応液をプレートごと−80℃で一旦凍結させ、融解させた後に、スクレイパーで細胞を剥離した。13,000rpmで3分間遠心分離を行い、その上清のcAMP濃度をアマシャム(Amersham)社のcAMP測定キットを用いて測定した。
化合物AのEP4拮抗活性は、PGE2単独でほぼ最大のcAMP産生作用を示す濃度(100nM)の反応に対する抑制率として算出した。
<結果> 化合物AのEP4拮抗活性は、IC50値で1.3nMであった。
実施例5:LNCaP−EP4の増殖およびPSA産生に対する化合物Aの作用の検討
実施例2で作製したLNCaP−mockおよびLNCaP−EP4を、10%ウシ胎児血清(FBS)含有RPMI−1640培地を用いて懸濁後、6cmディッシュに1ウェルあたり1.5×105個の細胞密度で播種し、24時間培養した。それぞれの培地をアンドロゲン除去培養液(10%CSFBS含有RPMI−1640培地)に交換し、PGE2(1μM)の存在下または非存在下、10nMまたは100nMの化合物Aを共存させ、6日間培養した。これらの細胞は、細胞数をカウント後、RNA抽出に付した。抽出したRNAから作製したcDNAを、リアルタイムPCR法に付し、PSA/GAPDH(glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase,グリセルアルデヒド 3−リン酸脱水素酵素)の発現比を求めた。これらの結果を以下の表2(A:細胞増殖(Cell growth)に関するデータ、B:PSA発現(PSA expression)に関するデータ)に示す。
Figure 2010087425
<結果> LNCaP−EP4は、PGE2(1μM)の添加により増殖した。その程度は、LNCaP−mockに比べて約2倍弱であった。このPGE2の添加による細胞増殖は、化合物Aの添加により濃度依存的に抑制された(表2(A)参照)。
また、PGE2非存在下におけるPSA発現の変化を評価した結果、LNCaP−EP4では、LNCaP−mockに比べてPSAの発現が亢進していた。上記と同様に、LNCaP−EP4のPSA発現は、化合物Aの添加により濃度依存的に抑制された(表2(B)参照)。
実施例6:前立腺癌ゼノグラフト(Xenograft)に対する化合物Aの作用の検討
前立腺癌患者の局所再発組織をヌードマウスの皮下に移植し、前立腺癌ゼノグラフト(KUCaP/WT)を作製した。マウスに除睾術を施し、約2ヶ月間飼育することにより、ホルモン抵抗性を獲得せしめた。このホルモン抵抗性前立腺癌ゼノグラフトを、対照群および化合物A投与群(各群5匹)にわけ、それぞれ3週間にわたって蒸留水(100μL/日)または化合物A(20mg/kg/日)を腹腔内に投与し、経日的に腫瘍体積を観察した。その結果を図3に示す。
<結果> 化合物A投与群では、対照群に比べて有意に増殖が抑制された。また、化合物A投与群ではマウスの死亡は観察されなかった。
なお、ホルモン抵抗性を獲得しない条件での化合物Aの効果を確認するため、除睾術を施さずに同試験を行った場合、化合物A投与群と対照群の腫瘍体積には差は認めらなかった。このことから、化合物Aの前立腺癌増殖抑制効果は、前立腺癌がホルモン抵抗性前立腺癌である場合にのみ認められ、ホルモン応答性前立腺癌の増殖に対して化合物Aは効果を示さないことがわかった。
実施例7:ホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得に対する化合物Aの作用の検討
前立腺癌患者の局所再発組織をヌードマウスの皮下に移植し、前立腺癌ゼノグラフト(KUCaP/WT)を作製した。約2ヶ月間飼育した後に除睾術を施し、さらに約1ヶ月間飼育した後に対照群および化合物A投与群の2群に振り分けた。そのうち、腫瘍体積が2500mm3を超えないマウス(各群5匹)を投与対象として選択し、対照群には蒸留水(10mL/kg/日)を、化合物A投与群には化合物A(1〜4週目:100mg/10mL/kg/日、5週目以降:50mg/10mL/kg/日)をそれぞれ11週間にわたって経口投与し、1週間毎に腫瘍体積を観察した。腫瘍体積の推移を図4に示す。なお、図中では、各測定日における腫瘍体積は、投与開始日(群分け日)の腫瘍体積を100%とする体積比で表示した。
<結果> 対照群では、投与第6週目以降に腫瘍体積の増大が認められたが、化合物A投与群では、投与第11週目でも腫瘍体積は投与開始時と同等であった。除睾術施術後に観察される癌細胞の再増殖は、ホルモン抵抗性の獲得によるものであると考えられており、化合物Aを投与しておくことにより癌細胞の再増殖が抑制されたことから、化合物Aにはホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得抑制作用があることが確認された。
製剤例1:
4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸(5.0kg)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(崩壊剤)(0.2kg)、ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)(0.1kg)、微結晶セルロース(4.7kg)の各成分を常法により混合した後打錠して、一錠あたり50mgの活性成分を含有する錠剤10万錠を得た。
製剤例2:
4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸(2.0kg)、マンニトール(20kg)、蒸留水(500L)の各成分を常法により混合した後、除塵フィルターでろ過し、5mLずつアンプルに充填し、オートクレーブで加熱滅菌して、1アンプルあたり20mgの活性成分を含有するアンプル10万本を得た。
本発明で開示する、4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する前立腺癌の進行抑制剤は、安全で、かつ従来の医療技術では治療することができなかったホルモン抵抗性前立腺癌に対して増殖抑制やホルモン応答性回復等の作用を有することから、医薬として実に有用である。また、ホルモン応答性を有する前立腺癌の段階から本発明の剤を投与しておくことにより、ホルモン抵抗性の獲得を阻止あるいは遅延させることが可能であり、従って、抗アンドロゲン療法の補助剤、または抗アンドロゲン療法の作用期間延長剤としての利用も可能である。

Claims (13)

  1. 4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する、ホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得抑制剤。
  2. 抗アンドロゲン療法と組み合わせて用いられる請求項1記載の剤。
  3. 抗アンドロゲン療法が、酢酸ビカルタミド、酢酸フルタミド、酢酸クロルプロマジノン、リン酸エストラムスチンナトリウム、リュープロレリン、およびゴセレリンからなる群より選択される一種以上の薬物投与もしくは除睾術を含む請求項2記載の剤。
  4. さらに、シスプラチンまたはドセタキセルを用いた化学療法、HIFU、または小線源療法を組み合わせて用いられる請求項3記載の剤。
  5. 4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを含有する前立腺癌の進行抑制剤。
  6. 前立腺癌の進行抑制が、ホルモン抵抗性前立腺癌のホルモン応答性回復である請求項5記載の剤。
  7. 前立腺癌の進行抑制が、ホルモン抵抗性前立腺癌の増殖抑制である請求項5記載の剤。
  8. ホルモン抵抗性前立腺癌患者用である請求項5記載の剤。
  9. ホルモン抵抗性前立腺癌患者が、少なくとも6ヶ月を超える継続した抗アンドロゲン療法下にある前立腺癌患者であって、抗アンドロゲン療法開始初期と比較して、抗アンドロゲン療法による前立腺癌の進行抑制効果が低下した患者である請求項8記載の剤。
  10. 4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを特徴とするホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得抑制方法。
  11. 4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする前立腺癌の進行抑制方法。
  12. ホルモン応答性前立腺癌のホルモン抵抗性獲得抑制剤を製造するための4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの使用。
  13. 前立腺癌の進行抑制剤を製造するための4−(4−シアノ−2−{[2−(4−フルオロ−1−ナフチル)プロパノイル]アミノ}フェニル)酪酸、その塩、その溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの使用。
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