JPWO2010050415A1 - 環状デプシペプチド化合物及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】COPD又は喘息の予防及び/又は治療に有用な化合物並びに当該化合物を有効成分として含有する医薬組成物を提供する。【解決手段】本発明者らは、醗酵天然物の薬理作用について鋭意検討した結果、東京都奥多摩町で採取したクロモバクテリウム(Chromobacterium)属の土壌細菌由来の環状デプシペプチド化合物が、気道収縮抑制作用と気道の炎症抑制作用を併せ持ち、COPD又は喘息の予防若しくは治療剤として有効であることを知見して、本発明を完成した。即ち、本発明は、環状デプシペプチド化合物又はその塩を有効成分として含有し、気管内投与、点鼻投与又は吸入投与により投与されるものである、慢性閉塞性肺疾患(COPD)又は喘息の予防及び/又は治療用医薬組成物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は医薬組成物、殊に慢性閉塞性肺疾患(COPD)又は喘息治療用医薬組成物の有効成分として有用な環状デプシペプチド化合物、及びそのCOPD又は喘息治療用用途に関する。
COPD及び喘息は、共に気道の気流が制限される疾患である。
COPDは、労作時呼吸困難と喀痰を伴う咳嗽を主症状とする疾患である。病態が悪化した際には、咳、喘鳴、呼吸困難が増強し、喀痰量の増加と膿性への性状変化を伴う。咳、喘鳴といった気道症状は、気道収縮および気道炎症とそれに付随する気道過分泌によってもたらされる。完全には可逆的でない気流制限を特徴とする疾患である。この気流制限は、通常進行性で、有害な粒子またはガスに対する肺の異常な炎症性反応に伴って生じる(The Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease 2006年。以下、GOLDと称する)。患者の多くは喫煙者である。COPDは、2020年の世界の死因別死亡率の第3位になると推定されている(Lancet、349、pp.1498−1504、1997年)。40歳以上の成人を対象にした世界12カ国で行われた調査において、COPDの有病率は10.1%と推定されている(Lancet、370、pp.741−750、2007年)。日本における40歳以上のCOPDの有病率は、10.9%と推定されている(Respiology、9、pp.458−465、2004年)。
喘息は、気道の反応性亢進と慢性炎症を特徴とする疾患であり、治療により改善する可逆的な気道狭窄を呈し、気道粘膜の浮腫のために気流制限が繰り返し発生する気道の慢性炎症疾患であり、例えば、発作性の呼吸困難、咳嗽、喘鳴が症状として現れる。喘息は、慢性呼吸器疾患の一つであり小児から高齢者まですべての年齢層において発症する。また、先進国、発展途上国を問わず患者数は増加傾向にあり、日本での有病率は乳幼児4.2%、小児4.0%、成人1.7%と報告されている(平成8年度厚生省長期慢性疾患総合研究事業)。日本国内の喘息による死亡者数は減少傾向にあるものの2006年で2778人と依然多い。
COPDおよび喘息の診断において、気道閉塞の度合いを示す一秒量(FEV1:Forced expiratory volume in 1 second)が指標とされている。「一秒量」とは、「息を吸えるだけ深く吸い込んでからできるだけ早く吐いた時の最初の一秒間に吐き出した息の量」と定義されている。代表的なCOPDの病期分類はGOLDで定められているものであり、FEV1により、[ステージI(軽症):FEV1≧80%予測値、II(中等症):50%≦FEV1<80%予測値、III(重症):30%≦FEV1<50%予測値、IV(最重症):FEV1<30%予測値または慢性呼吸不全]の4ステージに分類されている(GOLD、2006年)。喘息の重症度は症状の特徴と呼吸機能(FEV1およびPEF(最大呼気流量:Peak Expiratory Flow))により、[ステップ1(軽症間欠)型:FEV1,PEF≧80%(変動20%未満)、ステップ2(軽症持続型)FEV1,PEF≧80%(変動20〜30%)、ステップ3(中等症持続型)60%≦FEV1,PEF<80%(変動30%を越える)およびステップ4(重症持続型)FEV1,PEF<60%(変動30%を越える)]の4ステップに分類されている(喘息予防・管理ガイドライン、2006年)。
COPDについて、その症状を改善する中心的治療薬と位置づけられているのは、気管支拡張薬であり、β2アゴニスト、抗コリン剤およびテオフィリン製剤が知られている。
喘息については、その基本病態が炎症であることから、吸入ステロイド薬が標準治療薬として用いられている。しかし、気道狭窄に対しては気管支拡張薬、特に、長時間型吸入β2アゴニストが用いられている。また、ロイコトリエン受容体拮抗薬やテオフィリン製剤等も併用されている。
しかしながら、既存の気管支拡張薬は、例えば抗コリン剤は、口渇が発現すること、β2アゴニストについては、吸入ステロイド薬への追加効果の有用性が確認されているが、喘息関連死が有意に増加する報告があること、また、β2アゴニストのみで治療した場合には、気道リモデリングの進行を抑制しないことや、気道反応性が亢進することがあることなど、効果や安全性の面で更なる改善が求められている。
更に、抗炎症作用を併せ持つ気管支拡張薬は、COPDや喘息の治療において有用と考えられるが、既存の気管支拡張剤には、気管支拡張作用に加えて抗炎症作用を明確に示し、肺の気腫化や閉塞性変化の改善を示すものは報告されていない。
式(IV)の化合物は、東京都奥多摩町で採取したクロモバクテリウム(Chromobacterium)属の土壌細菌QS3666株の培養液より産生された環状デプシペプチドであり、ADPに惹起されたヒト血小板凝集を抑制することが報告されている(特許文献1、非特許文献1)。式(IV)の化合物の絶対立体構造は、マーフィー法およびキラルHPLC分析法によって、下式の通り決定されている(非特許文献2)。
Figure 2010050415
式(IV)の化合物は特異的なGq/11阻害剤であることが報告されている(非特許文献3)。Gq/11とは、G蛋白質の一種である。、G蛋白質はα、β、γサブユニットから成る三量体蛋白質であり、アミノ酸配列の相同性と標的とする効果器の違いからGs、Gi、Gq、G12のサブファミリーに分類される。さらにサブファミリーにはサブタイプが存在し、Gqには、Gq、G11、G14、G15、G16のサブタイプの存在が報告されている。式(IV)の化合物はGqおよびG11を強く阻害するがG15及びG16は阻害しない(非特許文献3)。
式(IV)の化合物は、in vitroの試験において、種々の受容体、具体的には、ADP受容体(P2Y1,P2Y2)、システイニルロイコトリエン受容体(CryLT−R1,CryLT−R2)及びムスカリン受容体(M1)の反応を阻害することが報告されている(非特許文献3)。
式(IV)の化合物は、30μg/kgの静脈内投与により血圧降下作用を示すことが報告されている(非特許文献4)。
さらに、下式(IIa)で示される、式(IV)の化合物とその類縁体の立体構造とそのADP受容体阻害作用の報告がある(非特許文献5)。
Figure 2010050415
サブスタンスPのN末トランケートアナログであるGPAnt−2及びそのアナログと称する直鎖状ヘプタペプチドが、Gq/11によるM1アセチルコリン誘発性GTPの加水分解を、それぞれ、10 μMで25 %阻害、10 μMで81 %阻害すると報告されている(非特許文献6)。しかしながら、その後、前記環状デプシペプチド以外には、選択的なGq/11阻害剤は報告されておらず、Gq/11阻害剤の更なる臨床的な効果の確認が待たれている。
特開2003−210190号公報
Journal of Antibiotics,56,pp.358−363,2003年 Tetrahedron,59,pp.4533−4538,2003年 Journal of Biological Chemistry,279,pp.47438−47445,2004年 Thromb Haemost,90,pp.406−413,2003年 Bioorganic and Medicinal Chemistry,12,pp.3125−3133,2004年 Journal of Biological Chemistry,267,pp.16237−16243,1992年
気道閉塞性疾患、特にCOPD又は喘息の治療に有用な、気道収縮抑制作用と気道の炎症抑制作用を併せもつ医薬を提供する。
本発明者らは、醗酵天然物の薬理作用について鋭意検討した結果、東京都奥多摩町で採取したクロモバクテリウム(Chromobacterium)属の土壌細菌由来の下式(II)で示される環状デプシペプチド化合物が、気道収縮抑制作用と気道の炎症抑制作用を併せ持ち、COPD又は喘息の予防若しくは治療剤として有効であることを知見して、本発明を完成した。
即ち、本発明は、式(II)の化合物又はその塩を有効成分として含有し、気管内投与、点鼻投与又は吸入投与により投与されるものである、慢性閉塞性肺疾患(COPD)又は喘息の予防及び/又は治療用医薬組成物に関する。
Figure 2010050415

[式中、
1は、−H又は−CH3であり、
2は、−H又は式(III)基であり、
Figure 2010050415

21は、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、又は−CH2SCH3であり、
22は、−CH(CH32又は−CH2SCH3であり、
3及びR4は、同一又は異なって、−H又は−CH3
あるいは、R3及びR4が一体となって=CH2を示していてもよく、
5、R6及びR7は、同一又は異なって、−H又は−Fである。]
また、本発明は、気管内投与、点鼻投与又は吸入投与による、COPD又は喘息の予防若しくは治療用医薬組成物治療のための、式(II)の環状デプシペプチド化合物又はその塩、ならびに、式(II)の環状デプシペプチド化合物又はその塩の有効量を、治療が必要である患者に、気管内投与、点鼻投与又は吸入投与のいずれかの方法により投与することからなる、COPD又は喘息の予防若しくは治療方法にも関する。
更に、本発明の式(II)の環状デプシペプチド化合物は、下式(I)の新規化合物を包含する。よって、本発明は、式(I)の新規な環状デプシペプチド化合物又はその塩にも関する。
Figure 2010050415

(式中、
1が−CH3、R21が−CH2CH2CH3、かつ、R22が−CH(CH32
1が−H、R21が−CH3、かつ、R22が−CH(CH32;または、
1が−CH3、R21が−CH3、かつ、R22が−CH2SCH3 である。)
式(II)の環状デプシペプチド化合物又はその塩は、Gq/11阻害作用を有し、後記実施例に示す通り、気道収縮抑制作用と気道の炎症抑制作用を併せ持つ。よって、当該化合物を有効成分として含有する医薬組成物は、COPD又は喘息等の予防及び/又は治療剤として有用である。
試験例2における、Ref1の気道内圧変化率を示す図である。データを平均値+標準誤差(n=3又は4)で示す。( )内の数値はsaline投与群に対する抑制率を示す。 試験例3における、Ref1の気道内圧変化率を示す図である。データを平均値+標準誤差(n=3)で示す。( )内の数値はsaline投与群に対する抑制率を示す。 試験例5における、Ref1の細胞数を測定した結果を示す図である。データを平均値+標準誤差(n=9又は10)で示す。N,V,1,10及び100はそれぞれNormal群,Vehicle群,1 μg/kg投与群,10 μg/kg投与群および100 μg/kg投与群をそれぞれ表す。**はVehicle群と比較してp<0.01で有意であることを示す(Dunnettの多重比較)。 製造例におけるEx1の1H−NMRチャートを示す図である。 製造例におけるEx1の13C−NMRチャートを示す図である。 製造例におけるEx2の1H−NMRチャートを示す図である。 製造例におけるEx2の13C−NMRチャートを示す図である。 製造例におけるEx3の1H−NMRチャートを示す図である。 製造例におけるEx3の13C−NMRチャートを示す図である。 製造例におけるEx4の1H−NMRチャートを示す図である。 製造例におけるEx4の13C−NMRチャートを示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の式(II)の環状デプシペプチド化合物は、複数の不斉炭素原子を有しており、これに基づく光学異性体が存在しうる。本発明の医薬組成物の有効成分である環状デプシペプチド化合物は、式(II)の化合物の光学異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
本発明の医薬組成物の有効成分である、式(II)に示される環状デプシペプチド化合物またはその塩のある態様を以下に示す。
(1)R2が式(III)で示す基である化合物又はその塩。
(2)R21が−CH3又は−CH2CH2CH3である化合物又はその塩。
(3)R3及びR4が一体となって=CH2である化合物又はその塩。
(4)R5、R6及びR7が−Hである化合物又はその塩。
(5)式(IIa)又は(I)のいずれかに示される環状デプシペプチド化合物又はその塩。
(6)式(IIa)に示される環状デプシペプチド化合物又はその塩。
(7)R2が式(IIIa)で示す基である化合物又はその塩。
(6)式(I)に示される環状デプシペプチド化合物又はその塩。
(7)表3に示す物性値によって特定される立体構造を有する、式(I)に示される環状デプシペプチド化合物又はその塩。
本発明の式(I)に示される新規環状デプシペプチド化合物または塩としては、表3に示す物性値によって特定される立体構造を有するデプシペプチド化合物又はその塩が好ましい。
Figure 2010050415
なお、上記式(IIa)で示される環状デプシペプチド化合物は非特許文献5ならびに特許文献1により報告された化合物であり、Ref1は前記式(IV)の化合物である。本発明の医薬組成物の有効成分として、これらの既知化合物が好適である。
さらに、本発明の式(II)もしくは式(I)の環状デプシペプチド化合物は、その製薬学的に許容されるプロドラッグをも包含する。製薬学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等に変換されうる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog. Med.,5,2157−2161(1985)や、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻分子設計163−198に記載の基が挙げられる。
また、式(II)もしくは式(I)の環状デプシペプチド化合物の塩とは、製薬学的に許容される塩であり、置換基の種類によって、酸付加塩又は塩基との塩を形成する場合がある。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩等が挙げられる。
さらに、本発明の式(II)もしくは式(I)の環状デプシペプチドの化合物又はその塩としては、それらの各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形の物質をも包含する。また、本発明は、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含する。
(製造法)
本発明の式(II)もしくは式(I)の環状デプシペプチド化合物は、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属に属する当該物質生産菌を栄養培地にて培養し、当該物質を蓄積させた培養物から該環状ペプチド化合物を採取することによって得られる。適当な造塩反応を付加することにより所望の塩を得ることができる。
当該物質の製造において使用する微生物は、クロモバクテリウム属に属し当該物質の生産能を有する微生物であればいずれも用いることができる。このような微生物としては、例えば東京都奥多摩町で採取したクロモバクテリウム属の土壌細菌、クロモバクテリウム エスピーQS3666を挙げることができる。本菌株は既知であり、その菌学的性状は、特許文献1に記載され、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305−8566))に国際寄託されている(受託日:2002年1月4日、受託番号FERM BP−10786号)。なお、微生物は人工的に又は自然に変異を起こしやすいので、クロモバクテリウム エスピーQS3666株としては、天然から分離された微生物の他に、これに紫外線、放射線、化学薬剤などで人工的に変異させたもの及びそれらの天然変異体も、本願化合物を産生する限りにおいて好適に用いることができる。
培養は一般微生物の培養方法に準じて行われる。
培養に用いられる培地としては、クロモバクテリウム エスピー QS3666株が利用する栄養源を含有する培地であればよく、合成培地、半合成培地又は天然培地が用いられる。培地の組成は、例えば炭素源としてはD−グルコース、マンノース、マルトース、デンプン、ブドウ糖、デキストリン、グリセリン、植物油等が、窒素源としては肉エキス、ペプトン、グルテンミール、綿実粕、大豆粉、落花生粉、魚粉、コーンスチーブリカー、乾燥酵母、酵母エキス、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿酸その他の有機、無機の窒素源が用いられる。また、金属塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄、コバルト等の硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩などが必要に応じて添加される。さらに、必要に応じてメチオニン、システイン、シスチン、チオ硫酸塩、オレイン酸メチル、ラード油、シリコン油、界面活性剤などの生成促進物質又は消泡剤を添加することもできる。
本発明化合物の中で、R5、R6、R7のうち少なくとも1つがフッ素である化合物は、フェニル基上にフッ素基を有するフェニルアラニンを培地に添加し、上記一般的培養方法に準じて生産することが可能である。
培養条件としては好気的条件下で培養するのが一般的に有利で、培養温度は15〜32℃の範囲、好ましくは20〜28℃付近で行われる。培地のpHは約5〜9好ましくは約5〜6の範囲に調整すると好結果が得られる。培養期間は培地の組成、温度条件に応じて適宜設定されるが、通常1〜20日程度、好ましくは2〜5日程度である。
培養物からの本発明化合物の単離精製には、通常の微生物の培養物から生理活性物質を単離精製する方法が適用される。即ち、培養物をそのまま、あるいは遠心分離又は濾過して菌体を除去した後、適当な溶剤に対する溶解性及び溶解度の差、溶液からの析出速度の差、種々の吸着剤に対する吸着親和性の差、2種の液層間における分配の差等を利用する方法を適用することができる。具体的には例えば、培養液を適宜の担体に接触させ、濾液中の該化合物を吸着させ、ついで適当な溶媒で溶出することにより該化合物を精製する方法を挙げることができる。これらの方法は必要に応じて単独に用いられ、又は任意の順序に組合せ、反復して適用できる。
本発明の式(II)もしくは式(I)の環状デプシペプチド化合物は、対応する本発明の式(II)もしくは式(I)の環状デプシペプチド化合物を原料として、公知のアルキル化、アシル化、置換反応、酸化、還元、加水分解、脱保護、ハロゲン化等、当業者が通常採用しうる工程を任意に組み合わせることにより製造することもできる。例えば、R3またはR4の、一方が−CH3で、もう一方が−Hの化合物は、R3及びR4が一体となって、=CH2である化合物を接触還元することにより得られる。
例えば、前記Ref7で示される既知化合物は、非特許文献5の3132ページに記載されるようにRef1の化合物をMeOH中でのPd/Cを用いた接触還元によって製造することができる。
具体的には、前記Ref1〜7で示される既知化合物については、特許文献1又は非特許文献5に記載された方法によって製造した。又、Ex1〜4で示される新規化合物は、後述の実施例に記載された方法に従って製造することができる。その他の本願発明に包含される化合物についても、適宜培養条件や分離精製方法を調整することによって、あるいは、更に化学修飾反応を付すことによって生産し得る。
式(II)の化合物又はその塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する医薬組成物は、気管内投与、点鼻投与又は吸入投与用の製剤であり、当分野において通常用いられている賦形剤、即ち、薬剤用賦形剤や薬剤用担体等を用いて、通常使用されている方法によって調製することができる。
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤として製剤化する場合は、本発明の医薬組成物は、固体、液体又は半固体状であり、従来公知の方法に従って製造することができる。必要に応じて、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。
投与には、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、DPI(ドライパウダー吸入製剤(Dry powder inhaler))、MDI(定量噴霧式吸入剤(Metered dose inhaler))等のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
通常、気管内、吸入もしくは点鼻投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.00001〜10 mg/kgが適当で、好ましくは、体重当たり約0.001〜1 mg/kgを、1日1回〜複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
式(II)の化合物は、COPDや喘息の治療に通常用いられる種々の治療剤又は予防剤と併用することができる。当該併用は、同時投与、或いは別個に連続して、若しくは所望の時間間隔をおいて投与してもよい。同時投与製剤は、配合剤であっても別個に製剤化されていてもよい。
本明細書中、以下の略号を用いることがある。EtOAc=酢酸エチル、MeOH=メタノール、LTD4=ロイコトリエンD4、PBS(−)=カルシウム、マグネシウム不含Phosphate Buffered Saline、メサコリン=アセチルβメサコリンクロライド。
製造例:式(I)の環状デプシペプチド化合物Ex1〜4の製造例
(培養)
種培地は、100 mL容の三角フラスコに、酵母エキス5 g、ポリペプトン10 g、食塩5 gおよび蒸留水1 Lを含む培地を30 mLずつ分注し、121℃で30分間オートクレーブで滅菌することにより調製した。
生産培地は、100 mL容の三角フラスコに、大豆油50 g、ポリペプトン3.3 g、酵母エキス7.8 g、脱脂大豆粉20 g、コーンスティープリカー50 g、塩化リチウム0.65 gおよび蒸留水1 Lを含む培地(pH 7.0)を30 mLずつ分注し、121℃で30分間オートクレーブで滅菌することにより調製した。
種培地にクロモバクテリウム エスピーQS3666株の斜面培養物を1白金耳分接種し、30℃で2日間振とう培養した。次に、生産培地(全600 mL、各30 mL)の各フラスコに、前述の種培養液を2 mLずつ接種し、25℃で5 日間振とう培養した。
(精製)
この培養液600 mLにアセトン600 mLを加えて菌体を破砕した後、ろ過して菌体を除去した。続いて、このろ液を水溶液となるまで濃縮した後、EtOAc 600 mLで2回抽出した。このEtOAc抽出物 7.1 gをダイソーゲルSP−120−15/30−ODS−Bを用いたカラムクロマトグラフィー(20×250 mm)に付し、MeOH/水(3:7、4:6、5:5、6:4、7:3、8:2、9:1、10:0)で溶出した。MeOH/水(8:2)で溶出した画分1はロータリーエバポレーターで濃縮乾固した後、MeOH 1 mLに溶解し、CAPCELL PAK MGII 20×250 mm(資生堂)およびMeOH/水(75:25)を用いたHPLC(流速10 mL/分)により精製し、実施例化合物1(Ex1、保持時間41.4分)を6 mg得た。MeOH/水(7:3)で溶出した画分2はロータリーエバポレーターで濃縮乾固した後、MeOH 1 mLに溶解し、CAPCELL PAK MGII 20×250 mm(資生堂)およびMeOH/水(75:25)を用いたHPLC(流速10 mL/分)により精製し実施例化合物2(Ex2、保持時間16.0分)、実施例化合物3(Ex3、保持時間18.4分)、実施例化合物4(Ex4、保持時間19.2分)をそれぞれ1 mg、1 mg、1 mg得た。Ex1〜4までの物性データを下表に示す。また、各化合物の1H−NMRチャート(測定溶媒:1,4−Dioxane−d8)ならびに13C−NMRチャート(測定溶媒:1,4−Dioxane−d8)を図4〜11にそれぞれ示す。

Figure 2010050415
上記の物性データとNMRデータから実施例化合物1、2、3、4の平面構造式をそれぞれ以下の式に決定した。その立体構造については式(IIa)と同様の構造を有する化合物が含まれると推定されるが、未確定である。また、Ex3とEx4は光学異性体の関係にあるが、異性体を形成する不斉炭素の位置は未確定である。
Figure 2010050415
式(II)の化合物の薬理活性は、以下に示す試験により確認した。
試験例1:Gq/11に対する阻害作用
(方法)
q/11を活性化させることが知られているロイコトリエン受容体CysLTR2(システイニル ロイコトリエン受容体2)を用いて、非特許文献3の方法に準じて行った。CysLTR2を安定に発現しているCHO細胞を96well Black/clear bottom plate(BECTON DICKINSON社製)に1wellあたり20,000細胞になるように播種して、24 時間培養後、培地を廃棄し、2 μM Fluo−4, AM(Molecular Probe社製)、0.004 %pluronic acid、1%FBS、20 mM HEPES、2.5 mM probenecid を含むHanks BSS(GIBCO 社製)を1wellあたり100 μL添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞を20 mM HEPES を含む Hanks BSSで4回洗浄して、1wellあたり100 μLの20 mM HEPESを含むHanks BSSを添加した。さらに、最終濃度1×10-10 Mから1×10-5 Mになるように20 mM HEPESを含むHanks BSSで希釈した被験化合物を50 μL添加し30分間室温で放置した。CysLTR2のリガンドであるロイコトリエンD4(LTD4、Cayman社製)添加後の細胞内Ca2+濃度の変化はFLIPR(Moleucular Device 社製)を用いて経時的に測定した。測定開始10秒後に最終濃度10 nMになるように20 mM HEPESを含むHanks BSSで希釈したロイコトリエンD4を50 μL添加し、50 秒間は1秒ごとに、さらに2分間は6秒ごとに蛍光強度を測定し、3 分間の測定時間での最高蛍光強度を観察した。被験化合物の濃度と最高蛍光強度をプロットしてIC50値を算出し、これをGq/11阻害活性とした。その結果、例えば、Ref1、Ref2、Ref3、Ref5、及び、Ref7のGq/11阻害活性(IC50値)はそれぞれ、66、34、56、25、及び、32(nM)であり、Ex1、Ex2、Ex3、及び、Ex4のGq/11阻害活性(IC50値)はそれぞれ、31、317、97、及び、365(nM)であった。
試験例1の結果から、本発明化合物は良好なGq/11阻害作用を有することを確認した。
試験例2:気管内投与による、メサコリンにより惹起される気道収縮に対する抑制作用
(方法)
SD系雄性ラット(日本チャールス・リバー(株))を実験に供した。ラットの腹腔内にウレタン(1.2 g/kg)を投与し麻酔した。気管内投与用ゾンデを用いて0.5 mL/kgの用量で被験化合物(0.3、1、及び、3 μg/kg)、又は、生理食塩液を気管内投与した(3又は4例)。ラットの外頸静脈に静脈内投与用のカニュレーションを施した。気管を切開し気管カニューレを挿入し呼吸解析コンピュータシステム(flexiVent、SCIREQ社)を用いて人工呼吸(10 mL/kg、90 回/分)を施した。人工呼吸回路には圧トランスジューサー(TP−400T、日本光電)を接続し、気道内圧変化を測定した。気道内圧信号はひずみ圧力用アンプ(AP−601G、日本光電)で増幅し、熱書記録器(WT−685G、日本光電またはLINEARCORDER F WR3701、グラフテック)を用いてチャート紙上に記録した。ラットの体温は体温保持装置(BWT−100、バイオリサーチセンター)を用いて37℃に維持した。被験化合物の気管内投与1時間後にアセチルβメサコリンクロライド生理食塩液(30 μg/kg、アセチルコリンβメサコリンクロライド=SIGMA社製)を静脈内投与し、気道収縮反応を惹起した。気道内圧上昇率(%)を、生理食塩液気管内投与時と比較することにより被験化合物の気道収縮抑制率を算出しED50値を求めた。
Ref1の気道内圧変化率を図1に示す。Ref1は、気道収縮惹起の1時間前にラットに0.3、1、及び、3 μg/kgを気管内投与することにより、それぞれ32、45、及び、98 %の抑制率を示した。3点から算出したED50値は、0.73 μg/kgであった。また、Ref2〜7及びEx1〜4も同様に、1 μg/kgから10 μg/kgの用量で気道収縮反応を抑制した。
試験例2の結果から、本発明化合物は、ラットに気管内投与することによりメサコリン誘発の気道収縮反応を抑制することを確認した。
試験例3:気管内投与による、LTD4により惹起される気道収縮反応に対する作用
(方法)
ハートレー(Hartley)系雄性モルモット(日本エスエルシー(株))を実験に供した。モルモットにウレタン(1.2 g/kg)を腹腔内投与し麻酔した。注射針(30G)を用いて0.5 mL/kgの用量で被験化合物(0.3、1、及び、3 μg/kg)、又は生理食塩液を気管内に注入投与した(各群3例)。モルモットの外頸静脈に静脈内投与用のカニュレーションを施した。気管を切開し気管カニューレを挿入し、人工呼吸器(MODEL683、HARVARD)を用いて、人工呼吸(10 mL/kg、60 回/分)を施した。人工呼吸回路には圧トランスジューサー(TP−400T、日本光電)を接続し、気道内圧変化を測定した。気道内圧信号はひずみ圧力用アンプ(AP−601G、日本光電)で増幅し、熱書記録器(LINEARCORDER F WR3701、グラフテック)を用いてチャート紙上に記録した。モルモットの体温は、体温保持装置(BWT−100、バイオリサーチセンター)を用いて37℃に維持した。被験化合物を気管内に注入投与した30分後に、LTD4の生理食塩水溶液(0.3 μg/kg)を静脈内に投与し、気道収縮反応を惹起した。
(結果)
Ref1の気道内圧変化率を図2に示す。生理食塩液投与群では顕著な気道収縮反応を示したのに対し、Ref1を投与した群では気道収縮反応の抑制が認められた(ED50値は1.1 μg/kg)。
試験例3の結果から、本発明化合物が、気管内に投与することにより、LTD4により惹起される気道収縮反応を抑制することを確認した。
試験例4:気管内投与による、頸動脈圧に対する作用
(方法)
SD系雄性ラット(日本チャールス・リバー(株))を実験に供した。ラットの腹腔内にウレタン(1.2 g/kg)を投与し麻酔した。頸動脈にカニュレーションを施し、圧トランスジューサー(TP−400T、日本光電)を接続した。血圧測定用カニューレおよび圧トランスジューサーは5%ヘパリン生理食塩液で満たした。圧力信号をひずみ圧力用アンプ(AP−601G、日本光電)で増幅し、熱書記録器(WT−685G、日本光電)を用いてチャート紙上に記録した。ラット体温は体温保持装置(BWT−100、バイオリサーチセンター)を用いてを37℃に維持した。気管を露出し、注射針(27G)を用いて0.5 mL/kgの用量で被験化合物(30又は100 μg/kg)または生理食塩液を気管内に直接注入投与した。30 μg/kg投与群には5例、100 μg/kg投与群には1例、生理食塩液投与群には3例用いた。気管内投与後30分間、平均血圧を測定した。
(結果)
生理食塩液または30 μg/kgの用量でRef1を気管内投与した群の10分後の血圧低下は、それぞれ5±2.4 mmHgおよび7±5.2 mmHgであり、また、血圧を観察した30分間における最大低下量はそれぞれ20±7.1 mmHgおよび22±3.3 mmHgであり、両者に有意な差はなかった。一方、Ref1を100 μg/kgの用量で気管内投与した群では明らかな血圧の低下が認められた。
Figure 2010050415
試験例4の結果から、Ref1をラットに気管内投与した場合の頸動脈圧に対する最大無作用量は少なくとも30 μg/kgであることが示唆された。この結果より、頸動脈圧に対する最大無作用量(少なくとも30 μg/kg)と、気道収縮抑制作用のED50値(0.73 μg/kg)とは少なくとも40倍の乖離があることが示唆された。
試験例5:点鼻投与による、タバコ煙吸入により誘発される気道炎症に対する作用
(方法)
BALB/c雄性マウス(日本チャールス・リバー(株))を実験に供した。マウスの腹腔内にペントバルビタールナトリウム(40 mg/kg)を投与し麻酔した。DAY0からDAY10(DAY5および6を除く)の期間、被験化合物(1、10、及び、100 μg/kg)をマウスに1日1回、点鼻投与した。Vehicle群には生理食塩液を同様に点鼻投与した。各群10例とした。点鼻投与の1時間後にマウスをデシケータに入れ、タバコ煙発生装置(SG−200、柴田科学(株))を用いて空気で濃度を4%まで希釈したタバコ煙を1時間吸入させた。Day11にマウスの腹腔内にペントバルビタールナトリウム(80 mg/kg)を投与後、脱血し安楽死させた。呼吸停止後、気管を切開し、PBS(−)0.5 mL×3回で気管支肺胞洗浄を行い、洗浄液を回収した。遠心操作により上清を除去後、細胞をPBS(−)に再懸濁し、血球(WBC)、好中球(NEUT)、リンパ球(LYMPH)、マクロファージ(MONO)及び好酸球(EO)についてその細胞数を多項目自動血球分析装置(XT−2000 シスメックス(株))で測定した。
(結果)
Ref1の結果を図3に示す。Ref1は、1日1回、10、および100 μg/kgの用量で点鼻投与した群では、好中球、リンパ球および好酸球の気道への浸潤を有意に抑制した。
試験例5の結果から、本発明化合物が、タバコ煙吸入によって誘発される気道への好中球、リンパ球及び好酸球の浸潤を抑制することを確認した。
本発明化合物は、試験例1の結果より、Gq/11阻害作用を有することが確認され、試験例2、試験例3の結果から、気管内投与により、メサコリンやLTD4により惹起される気道収縮の抑制作用を有することがされた。試験例4より、頸動脈圧に対する最大無作用量は、気道収縮抑制作用を示すED50値とは大きな乖離があることが示唆された。また、本発明化合物は、試験例5の結果から、タバコ煙吸入によって誘発される気道への好中球、リンパ球及び好酸球の浸潤を抑制し、気道の炎症を抑制する作用を有することが確認された。
以上の結果から、本発明化合物は、気管内、点鼻又は吸入投与時、気道収縮の抑制作用と気道の炎症を抑制する作用を併せて有することが示唆され、また、これらの作用が血圧低下作用とも乖離できる可能性が示されたことから、COPDや喘息の予防若しくは治療として有用であることが期待された。
本発明の環状デプシペプチド化合物又はその塩は、Gq/11阻害作用を有し、気道収縮抑制作用と気道の炎症抑制作用を有することから、COPD又は喘息等の予防及び/又は治療に有用である。

Claims (5)

  1. 式(I)の環状デプシペプチド化合物又はその塩。
    Figure 2010050415

    (式中、
    1が−CH3、R21が−CH2CH2CH3、かつ、R22が−CH(CH32
    1が−H、R21が−CH3、かつ、R22が−CH(CH32;または、
    1が−CH3、R21が−CH3、かつ、R22が−CH2SCH3 である。)
  2. 式(II)の環状デプシペプチド化合物又はその塩を有効成分として含有し、気管内投与、点鼻投与又は吸入投与により投与されるものである、慢性閉塞性肺疾患(COPD)又は喘息の予防及び/又は治療用医薬組成物。
    Figure 2010050415

    [式中、
    1は−H又は−CH3であり、
    2は、−H又は式(III)で示される基であり、
    Figure 2010050415

    21は、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3又は−CH2SCH3であり、
    22は、−CH(CH32又は−CH2SCH3であり、
    3及びR4は、同一又は異なって、−H又は−CH3、あるいは、R3及びR4が一体となって、=CH2であり、
    5、R6及びR7は、同一又は異なって、−H又は−Fである。]
  3. 環状デプシペプチド化合物又はその塩が、式(IIa)又は(I)のいずれかに示される環状デプシペプチド化合物又はその塩である、請求項2記載の医薬組成物。

    Figure 2010050415
  4. 気管内投与、点鼻投与又は吸入投与による、COPD又は喘息の予防若しくは治療のための、式(II)の環状デプシペプチド化合物又はその塩。
    Figure 2010050415

    [式中、
    1は−H又は−CH3であり、
    2は、−H又は式(III)で示される基であり、
    Figure 2010050415

    21は、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3又は−CH2SCH3であり、
    22は、−CH(CH32又は−CH2SCH3であり、
    3及びR4は、同一又は異なって、−H又は−CH3、あるいは、R3及びR4が一体となって、=CH2であり、
    5、R6及びR7は、同一又は異なって、−H又は−Fである。]
  5. 式(II)の環状デプシペプチド化合物又はその塩の有効量を、治療が必要である患者に、気管内投与、点鼻投与又は吸入投与のいずれかの方法により投与することからなる、COPD又は喘息の予防若しくは治療方法。
    Figure 2010050415

    [式中、
    1は−H又は−CH3であり、
    2は、−H又は式(III)で示される基であり、
    Figure 2010050415

    21は、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3又は−CH2SCH3であり、
    22は、−CH(CH32又は−CH2SCH3であり、
    3及びR4は、同一又は異なって、−H又は−CH3、あるいは、R3及びR4が一体となって、=CH2であり、
    5、R6及びR7は、同一又は異なって、−H又は−Fである。]
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