JPWO2010008100A1 - 骨格筋細胞又は骨細胞の誘導法 - Google Patents
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Abstract
この発明は、多能性幹細胞から、無血清培地中で骨細胞、軟骨細胞又は筋肉細胞を分化誘導する方法に関し、具体的には、哺乳動物由来の多能性幹細胞をBMP4含有無血清培地で培養してPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導し、骨細胞又は軟骨細胞へ分化する方法、並びに、多能性幹細胞をBMP4含有無血清培地で培養したのち、BMP4非存在、LiCl存在下の無血清培地で培養しPDGFRα陽性骨格筋前駆細胞へ分化誘導することを含む骨格筋細胞の形成方法に関する。
Description
本発明は、哺乳動物由来の多能性幹細胞からBMP4含有無血清培地にてPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導し、この前駆細胞からさらに骨格筋細胞、或いは、骨細胞又は軟骨細胞へ分化させる方法に関する。
胚性幹(ES)細胞、間葉系幹細胞などの多能性幹細胞の発見により、これらの多能性幹細胞を再生医療に利用するための研究が活発化している。特に、ヒトES細胞(Suemori et al.Biochemical and Biophysical Research Communications,(2006);345,926−932)の樹立が可能になったために、この幹細胞からいくつかの細胞、例えば心筋細胞(Yang et al.Nature.(2008),22;453(7194):524−528)、血管内皮細胞(Metallo et al.Stem Cells.(2008);26(2):372−380)、神経細胞(Ueno et al.Proc Natl Acad Sci USA.(2006);103(25):9554−9559)、膵島細胞(Jiang et al.Stem Cells.(2007);25(8):1940−1953)などに分化誘導することが報告されているが、実用化するには多くの問題が解決されねばならない。
その1つとして、これらの研究では、細胞の分化誘導に際して培地に牛胎仔血清が使用されることが多い。この場合、狂牛病などの感染、再現性などの問題が生じると予測される。さらに血清のロットの差による誘導効率の違いも大きく、再現性のある分化誘導が出来ない。また、別の問題として、ES細胞を含む多能性幹細胞の腫瘍(奇形腫)形成の問題も存在する。
このような状況において、多能性幹細胞から目的の細胞へ分化させるときに、血清を使用しない培養系が望ましいと考えられるし、また、腫瘍形成を起こさない安全性の高い分化細胞の構築が望ましいはずである。
本発明者らは、無血清培地を使用して多能性幹細胞から骨細胞、軟骨細胞の前駆細胞、及び骨格筋前駆細胞と骨格筋細胞を分化誘導する方法について検討してきた。
従来、骨髄中に存在する間葉系幹細胞が骨芽細胞へ分化する際にBMP(骨形成因子)などの因子の関与は指摘されてきたが(Friedman et al.J Cell Biochem.(2006);98(3):538−54)、このような内因性の間葉系幹細胞は骨髄などに非常に微量にしか存在しないため単離が難しいため、実用的な面で問題がある。また、ES細胞などの多能性幹細胞から、骨細胞、軟骨細胞、及び骨格筋細胞を分化誘導することに関しては、十分な知見がないようである。
その1つとして、これらの研究では、細胞の分化誘導に際して培地に牛胎仔血清が使用されることが多い。この場合、狂牛病などの感染、再現性などの問題が生じると予測される。さらに血清のロットの差による誘導効率の違いも大きく、再現性のある分化誘導が出来ない。また、別の問題として、ES細胞を含む多能性幹細胞の腫瘍(奇形腫)形成の問題も存在する。
このような状況において、多能性幹細胞から目的の細胞へ分化させるときに、血清を使用しない培養系が望ましいと考えられるし、また、腫瘍形成を起こさない安全性の高い分化細胞の構築が望ましいはずである。
本発明者らは、無血清培地を使用して多能性幹細胞から骨細胞、軟骨細胞の前駆細胞、及び骨格筋前駆細胞と骨格筋細胞を分化誘導する方法について検討してきた。
従来、骨髄中に存在する間葉系幹細胞が骨芽細胞へ分化する際にBMP(骨形成因子)などの因子の関与は指摘されてきたが(Friedman et al.J Cell Biochem.(2006);98(3):538−54)、このような内因性の間葉系幹細胞は骨髄などに非常に微量にしか存在しないため単離が難しいため、実用的な面で問題がある。また、ES細胞などの多能性幹細胞から、骨細胞、軟骨細胞、及び骨格筋細胞を分化誘導することに関しては、十分な知見がないようである。
本発明は、哺乳動物由来の多能性幹細胞から無血清条件下で骨細胞及び軟骨細胞の前駆細胞へ分化させる方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、哺乳動物由来の多能性幹細胞から無血清条件下で骨格筋前駆細胞及び骨格筋細胞へ分化させる方法を提供することを目的とする。
本発明は、要約すると、以下の特徴を包含する。
本発明は、第1の態様において、哺乳動物由来の多能性幹細胞をBMP4含有無血清培地で培養してPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導し、該中胚葉前駆細胞を回収することを含む、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞の作製方法を提供する。
その実施形態において、本発明で使用され得る多能性幹細胞は、胚性幹(ES)細胞である。
別の実施形態において、培地中のBMP4濃度が、1〜10ng/ml又はそれ以上である。
別の実施形態において、多能性幹細胞の細胞数が、1×105〜2×105である。
別の実施形態において、培養期間が4日〜7日の間である。
別の実施形態において、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、PDGFRα陰性ECD陽性細胞と比べてMsgn、Tbx6及びDll1遺伝子をより多く発現する。
別の実施形態において、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、VEGFR2、ECD、T及びCad11遺伝子をさらに発現する。
別の実施形態において、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、骨芽細胞、骨細胞又は軟骨細胞へ分化する能力を有する。
別の実施形態において、哺乳動物はヒトである。
本発明は更に、第2の態様において、上記定義の方法によって作製され得る、かつ、PDGFRα陰性ECD陽性細胞と比べてMsgn、Tbx6及びDll1遺伝子をより多く発現することを特徴とするPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を提供する。
その実施形態において、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、VEGFR2、ECD、T及びCad11遺伝子をさらに発現する。
本発明は更に、第3の態様において、上記定義のPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞から骨芽細胞、骨細胞又は軟骨細胞へ分化誘導することを含む、骨細胞又は軟骨細胞の形成方法を提供する。
本発明は更に、第4の態様において、上記定義のPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を含む、骨又は軟骨組織形成用組成物を提供する。
その実施形態において、上記組成物は、骨髄又は骨損傷部位への移植用である。
本発明は更に、第5の態様において、哺乳動物由来の多能性幹細胞をBMP4含有無血清培地で培養したのち、該培地からBMP4を除去し、さらに、LiClを含有する無血清培地で培養し、これによって骨格筋前駆細胞へ分化誘導することを含む、骨格筋細胞の形成方法を提供する。
その実施形態において、多能性幹細胞が、胚性幹(ES)細胞である。
別の実施形態において、上記定義の方法が、LiCl含有無血清培地で培養後、生じた細胞群からPDGFRα陽性骨格筋前駆細胞を選抜することをさらに含む。
別の実施形態において、上記定義の方法が、PDGFRα陽性骨格筋前駆細胞を、IGF−1、HGF及びFGFを含む無血清培地で培養したのち、培地からHGFとFGFを取り除きIGF−1単独で培養し、その後、IGF−1及びHGFの存在下で培養し、これによって骨格筋細胞を誘導することをさらに含む。
別の実施形態において、上記PDGFRα陽性骨格筋前駆細胞が、Myf5陽性及びMyoD陽性の細胞である。
別の実施形態において、上記骨格筋細胞が、ミオゲニン(myogenin)陽性及びMRF4陽性である。
<定義>
本明細書で使用する用語は、以下の意味を包含する。
本明細書で使用する「多能性幹細胞」という用語は、種々の細胞に分化する能力と自己複製能力を有する未分化な細胞を指し、多分化能性幹細胞とも呼ばれる。このような幹細胞には、例えば胚性幹細胞(「ES細胞(embryonic stem cell)」)、胚性生殖細胞(「EG細胞(embryonic germ cell)」)、精子幹細胞(「GS細胞(germline stem cell)」、人工多能性幹細胞(「iPS細胞」)、核移植クローン胚由来胚性幹細胞(「ntES細胞」)などが含まれる。
本明細書で使用する「BMP4」という用語は、骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein)4を指し、TGF−βスーパーファミリーに属し、他の骨形成タンパク質と同様に、骨や軟骨の発達、特に歯や四肢の発達、骨折の修復に関与しているといわれている。
本明細書で使用する「PDGFRα」という用語は、血小板由来増殖因子受容体(platelet−derived growth factor receptor)αを指し、種々の間葉系細胞に発現している分子量約18万の膜糖タンパク質でチロシンキナーゼ活性をもつPDGF受容体(PDGFR)の1つである。
本明細書で使用する「中胚葉前駆細胞」という用語は、原腸胚を構成する3つの胚葉(外胚葉、中胚葉及び内胚葉)のうちの1つである中胚葉の中の沿軸中胚葉に由来の、骨細胞又は軟骨細胞又は骨格筋細胞に分化可能な前駆細胞を指す。
本明細書で使用する「陽性」又は「陰性」という用語は、細胞表面に発現する特定の遺伝子マーカーの存在又は不存在について使用される。遺伝子マーカーが存在するとき「陽性」、一方、遺伝子マーカーが存在しないとき「陰性」であるという。
本明細書で使用する「無血清培地」という用語は、血清を含まない動物細胞用の培養培地を意味する。血清の代わりに、成長因子などのホルモン類、結合タンパク質、細胞接着因子などを含み、これによって細胞の生存や増殖を良好にする培地である。
本明細書で使用する「哺乳動物」という用語は、ヒト、サル、チンパンジーなどの霊長類、イヌ、ネコなどのペット類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの家畜類、マウス、ラット、ハムスター、ウサギなどの他の動物などを非限定的に包含する。好ましい哺乳動物はヒトである。また、「患者」という用語は、ヒトを含む上記哺乳動物を指す。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2008−186348号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
本発明はまた、哺乳動物由来の多能性幹細胞から無血清条件下で骨格筋前駆細胞及び骨格筋細胞へ分化させる方法を提供することを目的とする。
本発明は、要約すると、以下の特徴を包含する。
本発明は、第1の態様において、哺乳動物由来の多能性幹細胞をBMP4含有無血清培地で培養してPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導し、該中胚葉前駆細胞を回収することを含む、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞の作製方法を提供する。
その実施形態において、本発明で使用され得る多能性幹細胞は、胚性幹(ES)細胞である。
別の実施形態において、培地中のBMP4濃度が、1〜10ng/ml又はそれ以上である。
別の実施形態において、多能性幹細胞の細胞数が、1×105〜2×105である。
別の実施形態において、培養期間が4日〜7日の間である。
別の実施形態において、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、PDGFRα陰性ECD陽性細胞と比べてMsgn、Tbx6及びDll1遺伝子をより多く発現する。
別の実施形態において、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、VEGFR2、ECD、T及びCad11遺伝子をさらに発現する。
別の実施形態において、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、骨芽細胞、骨細胞又は軟骨細胞へ分化する能力を有する。
別の実施形態において、哺乳動物はヒトである。
本発明は更に、第2の態様において、上記定義の方法によって作製され得る、かつ、PDGFRα陰性ECD陽性細胞と比べてMsgn、Tbx6及びDll1遺伝子をより多く発現することを特徴とするPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を提供する。
その実施形態において、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、VEGFR2、ECD、T及びCad11遺伝子をさらに発現する。
本発明は更に、第3の態様において、上記定義のPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞から骨芽細胞、骨細胞又は軟骨細胞へ分化誘導することを含む、骨細胞又は軟骨細胞の形成方法を提供する。
本発明は更に、第4の態様において、上記定義のPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を含む、骨又は軟骨組織形成用組成物を提供する。
その実施形態において、上記組成物は、骨髄又は骨損傷部位への移植用である。
本発明は更に、第5の態様において、哺乳動物由来の多能性幹細胞をBMP4含有無血清培地で培養したのち、該培地からBMP4を除去し、さらに、LiClを含有する無血清培地で培養し、これによって骨格筋前駆細胞へ分化誘導することを含む、骨格筋細胞の形成方法を提供する。
その実施形態において、多能性幹細胞が、胚性幹(ES)細胞である。
別の実施形態において、上記定義の方法が、LiCl含有無血清培地で培養後、生じた細胞群からPDGFRα陽性骨格筋前駆細胞を選抜することをさらに含む。
別の実施形態において、上記定義の方法が、PDGFRα陽性骨格筋前駆細胞を、IGF−1、HGF及びFGFを含む無血清培地で培養したのち、培地からHGFとFGFを取り除きIGF−1単独で培養し、その後、IGF−1及びHGFの存在下で培養し、これによって骨格筋細胞を誘導することをさらに含む。
別の実施形態において、上記PDGFRα陽性骨格筋前駆細胞が、Myf5陽性及びMyoD陽性の細胞である。
別の実施形態において、上記骨格筋細胞が、ミオゲニン(myogenin)陽性及びMRF4陽性である。
<定義>
本明細書で使用する用語は、以下の意味を包含する。
本明細書で使用する「多能性幹細胞」という用語は、種々の細胞に分化する能力と自己複製能力を有する未分化な細胞を指し、多分化能性幹細胞とも呼ばれる。このような幹細胞には、例えば胚性幹細胞(「ES細胞(embryonic stem cell)」)、胚性生殖細胞(「EG細胞(embryonic germ cell)」)、精子幹細胞(「GS細胞(germline stem cell)」、人工多能性幹細胞(「iPS細胞」)、核移植クローン胚由来胚性幹細胞(「ntES細胞」)などが含まれる。
本明細書で使用する「BMP4」という用語は、骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein)4を指し、TGF−βスーパーファミリーに属し、他の骨形成タンパク質と同様に、骨や軟骨の発達、特に歯や四肢の発達、骨折の修復に関与しているといわれている。
本明細書で使用する「PDGFRα」という用語は、血小板由来増殖因子受容体(platelet−derived growth factor receptor)αを指し、種々の間葉系細胞に発現している分子量約18万の膜糖タンパク質でチロシンキナーゼ活性をもつPDGF受容体(PDGFR)の1つである。
本明細書で使用する「中胚葉前駆細胞」という用語は、原腸胚を構成する3つの胚葉(外胚葉、中胚葉及び内胚葉)のうちの1つである中胚葉の中の沿軸中胚葉に由来の、骨細胞又は軟骨細胞又は骨格筋細胞に分化可能な前駆細胞を指す。
本明細書で使用する「陽性」又は「陰性」という用語は、細胞表面に発現する特定の遺伝子マーカーの存在又は不存在について使用される。遺伝子マーカーが存在するとき「陽性」、一方、遺伝子マーカーが存在しないとき「陰性」であるという。
本明細書で使用する「無血清培地」という用語は、血清を含まない動物細胞用の培養培地を意味する。血清の代わりに、成長因子などのホルモン類、結合タンパク質、細胞接着因子などを含み、これによって細胞の生存や増殖を良好にする培地である。
本明細書で使用する「哺乳動物」という用語は、ヒト、サル、チンパンジーなどの霊長類、イヌ、ネコなどのペット類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの家畜類、マウス、ラット、ハムスター、ウサギなどの他の動物などを非限定的に包含する。好ましい哺乳動物はヒトである。また、「患者」という用語は、ヒトを含む上記哺乳動物を指す。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2008−186348号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
図1は、マウスES細胞からPDGFR−α陽性中胚葉前駆細胞を分化誘導するための条件の検討及び結果を示す。図1aは、PDGFR−α陽性中胚葉前駆細胞の生成割合に及ぼす、培地に添加するBMP4の濃度の影響を表す図である。図1bは、PDGFR−α陽性中胚葉前駆細胞の生成割合に及ぼす、ES細胞の細胞数の濃度の影響を表す図である。図1cは、ES細胞の細胞数と増殖率との関係を示す図であり、白のバーは、培養初期の細胞数を表し、黒のバーは、培養終了時の細胞数を表す。図1dは、PDGFR−α陽性中胚葉前駆細胞の生成割合に及ぼす、培養日数の影響を表す図(上)、及び細胞の形状を示す図(下)である。図1eは、中胚葉発生に関わる遺伝子発現の経日的変化を表す。10%serumは牛胎仔血清を表す。T,Msgn,Tbx6,Pax3,Oct−3/4は、遺伝子マーカーであり、β−アクチン(Actin)はコントロールである。図1fは、FACSによって分離したPDGFR−α陽性細胞分画(フラクション1,2,3,4)(上)及び遺伝子発現解析の結果(下)を示す図である。
図2は、BMP4により誘導された中胚葉前駆細胞の骨、軟骨細胞への分化能を示す。(a)in vitroでの沿軸中胚葉前駆細胞(paraxial mesodermal progenitor cell;PMPc)と未分化、内胚葉系細胞(ECAD+、PDGFRa−)の骨形成能の比較である。骨誘導培地で誘導後28日後にカルシウムを染色するAlizarin Redにて染色した。(b)in vitroでの沿軸中胚葉前駆細胞(PMPc)と未分化、内胚葉系細胞(ECAD+、PDGFRa−)の軟骨形成能の比較である。軟骨誘導培地で誘導後21日後にムコ多糖を染色するAlcian Bleuにて染色した。どちらも中胚葉前駆細胞で高い形成能を示す。スケールバーは100mmを示す。(c)CCE/nLacZ ES由来の中胚葉前駆細胞を免疫不全マウスの骨髄に移植し28日後にLacZ染色を行い解析した。矢頭で示す青色の細胞がES細胞由来の細胞である。骨梁の辺縁に多く位置するのが分かる。また下段ではLacZ染色に加え、骨芽細胞を染めるAP染色も行った。ES細胞由来の細胞が骨芽細胞にも分化しているのが分かる。(矢印)左パネルのスケールバーは100mm、右パネルのスケールバーは10mmを示す。(d)CCE/nLacZ ES由来の中胚葉前駆細胞を免疫不全マウスの挫滅させた骨格筋に移植し28日後にLacZ染色を行い解析した。右パネルで緑に光る細胞がES細胞由来の細胞である。軟骨と骨に分化しているのが分かる。スケールバーは100mmを示す。
図3は、(a)骨格筋形成に関わる遺伝子の発現を表した図である。BMP4を初期に加え、後期にLiClを加えることで、Myf5,MyoDといった骨格筋遺伝子が発現することが分かる。β−アクチン(Actin)はコントロールである。(b)骨格筋遺伝子発現により、最適な培養期間を解析した。この結果からBMP4を3日間、LiClを4日間加えたものが最適であると考える。(c)骨格筋前駆細胞誘導によって得られたフラクション(上図、1,2,3)及びその遺伝子発現解析を示す(下図)。(d)無血清誘導による骨格筋誘導のプロトコールを表した図である。(e)IGF−1,HGF,FGFの組み合わせにより、ミオゲニン(Myogenin)、MRF4といった骨格筋分化遺伝子の発現が増加することを示している。(f)培養細胞中のミオゲニン(左図)および骨格筋アクチン(右図)陽性細胞の形態。スケールバーは50mmを示す。
図2は、BMP4により誘導された中胚葉前駆細胞の骨、軟骨細胞への分化能を示す。(a)in vitroでの沿軸中胚葉前駆細胞(paraxial mesodermal progenitor cell;PMPc)と未分化、内胚葉系細胞(ECAD+、PDGFRa−)の骨形成能の比較である。骨誘導培地で誘導後28日後にカルシウムを染色するAlizarin Redにて染色した。(b)in vitroでの沿軸中胚葉前駆細胞(PMPc)と未分化、内胚葉系細胞(ECAD+、PDGFRa−)の軟骨形成能の比較である。軟骨誘導培地で誘導後21日後にムコ多糖を染色するAlcian Bleuにて染色した。どちらも中胚葉前駆細胞で高い形成能を示す。スケールバーは100mmを示す。(c)CCE/nLacZ ES由来の中胚葉前駆細胞を免疫不全マウスの骨髄に移植し28日後にLacZ染色を行い解析した。矢頭で示す青色の細胞がES細胞由来の細胞である。骨梁の辺縁に多く位置するのが分かる。また下段ではLacZ染色に加え、骨芽細胞を染めるAP染色も行った。ES細胞由来の細胞が骨芽細胞にも分化しているのが分かる。(矢印)左パネルのスケールバーは100mm、右パネルのスケールバーは10mmを示す。(d)CCE/nLacZ ES由来の中胚葉前駆細胞を免疫不全マウスの挫滅させた骨格筋に移植し28日後にLacZ染色を行い解析した。右パネルで緑に光る細胞がES細胞由来の細胞である。軟骨と骨に分化しているのが分かる。スケールバーは100mmを示す。
図3は、(a)骨格筋形成に関わる遺伝子の発現を表した図である。BMP4を初期に加え、後期にLiClを加えることで、Myf5,MyoDといった骨格筋遺伝子が発現することが分かる。β−アクチン(Actin)はコントロールである。(b)骨格筋遺伝子発現により、最適な培養期間を解析した。この結果からBMP4を3日間、LiClを4日間加えたものが最適であると考える。(c)骨格筋前駆細胞誘導によって得られたフラクション(上図、1,2,3)及びその遺伝子発現解析を示す(下図)。(d)無血清誘導による骨格筋誘導のプロトコールを表した図である。(e)IGF−1,HGF,FGFの組み合わせにより、ミオゲニン(Myogenin)、MRF4といった骨格筋分化遺伝子の発現が増加することを示している。(f)培養細胞中のミオゲニン(左図)および骨格筋アクチン(右図)陽性細胞の形態。スケールバーは50mmを示す。
本発明について、以下でさらに詳細に説明する。
<PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞の作製>
本発明は、哺乳動物由来の多能性幹細胞をBMP4含有無血清培地で培養してPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導し、該中胚葉前駆細胞を回収することを含む、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞の作製方法を提供する。
本発明の方法は、無血清培地を使用して、胚性幹(ES)細胞などの多能性幹細胞からいかにしてPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導することができるかという課題を解決する。これまで、Flk1陽性の血液系前駆細胞が、activin A及びBMP4を無血清培地に加えるか、或いは低い濃度のBMP4で誘導することによりES細胞から分化することが報告されている(Era et al.(2008),Stem Cells,26(2):401−411)が、沿軸中胚葉前駆細胞の無血清誘導系に関する知見はほとんどない。
本発明者らは、意外にもBMP4を含有する無血清培地において効率よくPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導できることを見出した。この誘導の効率には、以下に述べるように、BMP4の濃度、出発細胞の培養密度などが大きく影響する。得られたPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、骨芽細胞、骨細胞及び軟骨細胞に分化する能力を有すること、並びに、該前駆細胞からさらに、骨格筋前駆細胞、さらに骨格筋細胞を形成することができることが今回判明した。
以下に、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞の作製について説明する。
多能性幹細胞
本発明方法では、多能性幹細胞が出発細胞として使用される。多能性幹細胞には、上記定義のとおり、胚性幹細胞(「ES細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、精子幹細胞(「GS細胞」)、人工多能性幹細胞(「iPS細胞」)、核移植クローン胚由来胚性幹細胞(「ntES細胞」)などが含まれる。好ましい多能性幹細胞は、ヒト由来の多能性幹細胞、例えばヒトES細胞、ヒトiPS細胞などである。
ES細胞は、極初期発生において主要な場を形成する肛盤胞の内部細胞塊に由来する幹細胞であり、生殖系列細胞を含むあらゆる成体を構成する細胞に分化する能力を内在している。もともとマウスES細胞が1981年に発見、樹立された(M.J.EvansとM.H.Kaufman(1981),Nature 292:154−156)が、その後、ヒト、サルなどの霊長類由来のES細胞株も樹立されたと言われている(J.A.Thomson et al.(199(9,Science 282:1145−1147;J.A.Thomson et al.(1995),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:7844−7848;J.A.Thomson et al.(1996),Biol.Reprod.,55:254−259;J.A.ThomsonとV.S.Marshall(1998),Curr.Top.Dev.Biol.,38:133−165)。霊長類ES細胞は、マウスES細胞と同様に、アルカリフォスファターゼやOCT−3/4を発現する以外に、ヒト胚盤胞の内部細胞塊で発現するSSEA−3、SSEA−4などの抗原も発現することが示されている(J.K.Henderson et al.(2002),Stem.Cells,20:329−337)。
ES細胞は、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、マウス胎仔線維芽細胞をフィーダーにして樹立し維持することができる。ヒトES細胞の樹立と維持の方法については、例えばH.Suemori et al.(2006),Biochem.Biophys.Res.Commun.,345:926−932;M.Ueno et al.(2006),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:9554−9559などに記載されている。サルES細胞の樹立と維持の方法については、例えばH.Suemori et al.(2001),Dev.Dyn.,222:273−279;H.Kawasaki et al.(2002),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:1580−1585などに記載されている。
ヒトES細胞は、ヒト受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、マイトマイシンC処理マウス胎仔線維芽細胞(オリエンタル酵母(東京、日本)などから入手可能)のフィーダー層上で培養し樹立、維持することができる。培地として、例えば0.1mM 2−メルカプトエタノール、0.1mM 非必須アミノ酸、2mM L−グルタミン酸、20%KSR及び4ng/ml β−FGFを補充したDMEM/F−12培地を使用し、37℃、2%CO2/98%空気の湿潤雰囲気下でヒトES細胞を維持することができる(O.Fumitaka et al.(2008),Nat.Biotechnol.,26:215−224)。また、ES細胞は、3〜4日おきに継代する必要があり、このとき、継代は、例えば1mM CaCl2及び20%KSRを含有するPBS中の0.25%トリプシン及び0.1mg/ml コラゲナーゼIVを用いて行うことができる。
ES細胞の選択は、一般に、アルカリホスファターゼ、Oct−3/4、Nanog、Sox2などの遺伝子マーカーの発現を指標にしてReal−Time PCR法で行うことができる。特に、ヒトES細胞の選択では、OCT−3/4、NANOG、SOX2、ECADなどの遺伝子マーカーの発現を指標とすることができる(E.Kroon et al.(2008),Nat.Biotechnol.,26:443−452)。
Oct−3/4は、胚細胞と生殖細胞で特異的に発現する転写因子である(H.Niwa(2001),Cell Struct.Func.26:137−148;M.PesceとH.R.Scholer(2001),Stem Cells,19:271−278)。Nanogは、桑実胚の中央部で発現し始め、その後、胚盤胞の内部細胞塊で最大の発現を示し、分化細胞では発現が認められない。Sox2は、転写因子の1つであり、受精卵、内部細胞塊、生殖細胞で発現が認められている。胚性幹細胞の転写因子群については、山中伸弥,生化学,78:27−33(2006)(日本)などに記載されている。
精子幹細胞は、精巣由来の多能性幹細胞である。この細胞は、ES細胞と同様に、Nanogなどの遺伝子を発現し、種々の系列の細胞に分化誘導可能であり、マウス胚盤胞に移植するとキメラマウスを作出できるなどの性質をもつ(K.Shinohara et al.(2004),Cell,119:1001−1012)。
胚性生殖細胞は、胎生期の始原生殖細胞から樹立される、ES細胞と同様な多能性をもつ細胞である(Y.Matsui et al.(1992),Cell,70:841−847;J.L.Resnick et al.(1992),Nature,359:550−551)。
人工多能性幹細胞は、特定の再プログラミング因子(例えば、OCT3/4,SOX2,KLF4,C−MYCの組合わせ;OCT3/4,SOX2,KLF4の組合わせ;OCT3/4,SOX2,NANOG,LIN28の組合わせなど)を、DNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することによって作製することができる、ES細胞と同様の分化多能性と増殖能を有する人工幹細胞である(K.Takahashi and S.Yamanaka(2006)Cell,126:663−676;K.Takahashi et al.(2007),Cell,131:861−872;J.Yu et al.(2007),Science,318:1917−1920;国際公開WO 2007/069666)。
nt ES細胞は、核移植技術によって作製されたクローン胚由来のES細胞であり、受精卵由来のES細胞とほぼ同じ特性を有している(T.Wakayama et al.(2001),Science,292:740−743;J.Byrne et al.(2007),Nature,450:497−502)。すなわち、未受精卵の核を体細胞の核と置換することによって得られたクローン胚の内部細胞塊から樹立されたES細胞がnt ES(nuclear transfer ES)細胞である。nt ES細胞の作製のためには、核移植技術(J.B.Cibelli et al.(1998),Nature Biotechnol.,16:642−646)とES細胞作製技術(上記)の組み合わせが利用される。
BMP4含有無血清培地
本発明の方法では、無血清培地を使用すること、培地にBMP4を添加することを特徴とする。
BMP4(bone morphogenetic protein 4)は、TGF−βスーパーファミリーに属するタンパク質であり、他の骨形成タンパク質と同様に、骨や軟骨の発達、特に歯や四肢の発達、骨折の修復に関与しているといわれている。BMP4はまた、筋肉の発達、骨の鉱物化にも関与しているといわれる。ヒト胚の発生の際に、BMP4は胚の初期分化に必要な重要なシグナル伝達分子であり、また外胚葉組織の分化を刺激する。BMP4のクローニングや特性については、例えばJM Wozney et al.(1989),Science 242:1528−1534;S.Oida et al.(1995),DNA Seq.5(5):273−275;BL Rosenzweig et al.(1995),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92(17):7632−7636等に記載されている。
本発明で使用し得るBMP4は、哺乳動物由来のBMP4、その変異体、及びその化学修飾誘導体のいずれかである。本明細書で単に「BMP4」と記載する場合は、特別の断りがない限り、哺乳動物由来のBMP4、その変異体、及びその化学修飾誘導体のいずれをも指すものとする。
哺乳動物由来のBMP4の塩基配列及びアミノ酸配列は、NCBI(米国)のwebサイトにアクセスすることによって入手し得る。例えばヒト由来BMP4の登録番号は、NM_001201、NM_130850、NM_130851などであり、マウス由来のBMP4の登録番号は、NM_007554などである。上記変異体は、多能性幹細胞からPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導する能力を有し、かつ、天然型BMP4のアミノ酸配列と80%以上、85%以上、好ましくは90%以上、95%以上、98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。ここで、%同一性は、2つのアミノ酸配列のアラインメントにおいて、ギャップを導入するか或いはギャップを導入しないで各配列を整列させたときに、総アミノ酸数(ギャップ数も含む)に対する同−アミノ酸数の百分率(%)を意味する。%同一性は、例えばBLASTアルゴリズム(NCBI)を利用して決定することができるし、また同アルゴリズムを利用すると、遺伝子バンク(NCBIなど)から同一性のあるホモログ配列を検索することができる。BMP4の変異体(天然の突然変異体、遺伝子多型由来の変異体、選択的スプライス変異体、人工変異体などを含む)は、1若しくは複数の(好ましくは、1若しくは数個の)アミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を含み、例えば置換として、電気的性質(酸性、塩基性)、極性/疎水性、構造的性質(分枝の有無、芳香族性)などの性質が類似したアミノ酸間の置換が含まれる。変異体は、天然型BMP4と同様に、DNAクローニング、遺伝子組換え技術、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、部位特異的突然変異導入法、PCR利用の部位特異的突然変異導入法などの公知の技術を利用して作製することができる(J.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001);F.M.Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology,5th ed.,John Wiley & Sons,Inc.,2002など)。BMP4の化学修飾誘導体は、糖修飾体、水溶性ポリマー(例えばポリエチレングリコール)修飾体、リン酸又は硫酸修飾体、アルキル化修飾体、アシル化修飾体などを含むことができる。BMP4タンパク質は、以下に限定されないが、例えばR&D Systems社から入手可能である。
本発明で好ましく使用可能な無血清培地は、タンパク質成分としてインスリン及びトランスフェリンのみからなる無血清基本培地に、最終濃度で0.2%牛アルブミン、0.1mM 2−メルカプトエタノール、1ng/ml又はそれ以上のBMP4を添加して調製される培地である。無血清基本培地としては、例えばRPMI1640、DMEM(Dulbecco’s modified Eagle medium))、Ham’s F−12などの動物細胞培養用培地を、必要に応じて改変し、単独で又は任意に組み合わせて使用することができる。培地には、上記タンパク質成分の他に亜セレン酸ナトリウム、エタノールアミンなどを含有させることができる。好適な培地の具体例は、S−Clone SF−03培地(三光純薬、東京、日本)であり、RPMI1640(僅かに改変)、DMEM及びF−12の混合培地からなる。この基本培地は、マウス造血幹細胞の培養用として開発されたものであり、本発明における分化の誘導に際して他のホルモン、成長因子などの余分なタンパク質による影響を回避することができるという利点を有する。しかし、必要であれば、成長因子などのホルモン類を適宜、培地に添加することができる。
培養
本発明の方法では、無血清培地中のBMP4濃度、ES細胞などの多能性幹細胞の細胞数、並びに培養期間が重要である。
培地中のBMP4濃度は、1ng/ml又はそれ以上、好ましくは1〜10ng/ml又はそれ以上である。この至適範囲である1〜10ng/mlでは、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞への分化率が34%〜50%に向上する。
ES細胞などの多能性幹細胞の至適な細胞数は、1×105〜2×105である。PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞への分化率は、細胞数1×105の場合51%であり、細胞数2×105の場合34%であり、細胞数4×105の場合5%と激減する。
培養期間は、4日〜7日又はそれ以上、好ましくは5日〜7日、より好ましくは5日である。
PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞の特徴づけ
上記の培養によってES細胞などの多能性幹細胞から得られるPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、骨芽細胞、骨細胞又は軟骨細胞へ分化する能力を有している。この特性により、該前駆細胞は、骨又は軟骨の再生のために使用することができる。
PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞をさらに、発現遺伝子マーカーについて特徴付けると、この前駆細胞は、PDGFRα陰性ECD陽性細胞と比べてMsgn1(NM 001105569.1)、Tbx6(NM_005442など)及びDelta like 1(DLL1;NM 005618.3)遺伝子をより多く発現するという特徴を有している(図1f)。また、上記3つのマーカーの他に、前駆細胞は、VEGFR2(NM_002253など)、ECD(NM_014237など)、Brachyury(T;NM_009309)及びCad11(NM_001797など)遺伝子をさらに発現している(図1f)。一方、PDGFRα陰性ECD陽性細胞は、Msgn、Tbx6及びDll1遺伝子をほとんど又は全く発現しないし、かつ、骨細胞又は軟骨細胞への分化能を有していないことから、Msgn、Tbx6及びDll1遺伝子の発現をマーカーとすることによって骨細胞又は軟骨細胞へ分化するかどうかを判定することができる。
PDGFRα陰性ECD陰性細胞についても発現遺伝子マーカーを調べると、Msgn、Tbx6及びDll1遺伝子が弱く発現していることから、沿軸中胚葉前駆細胞が含まれていると考えられる(図1f)。この点では、骨細胞や軟骨細胞に分化する沿軸中胚葉前駆細胞について、PDGFRαは必ずしも陽性である必要はないかもしれない。
したがって、本発明は、上記定義の方法によって作製され得る、かつ、PDGFRα陰性ECD陽性細胞と比べてMsgn、Tbx6及びDll1遺伝子をより多く発現することを特徴とするPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を提供する。
この前駆細胞は、VEGFR2、ECD、T及びCad11遺伝子をさらに発現することを特徴としている。
<骨細胞又は軟骨細胞の形成>
本発明は、上記PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞から骨芽細胞、骨細胞又は軟骨細胞へ分化誘導することを含む、骨細胞又は軟骨細胞の形成方法を提供する。
本発明のPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を患者の骨髄又は骨損傷部位に移植すると、該前駆細胞は、骨細胞、特に骨芽細胞、又は軟骨細胞に分化し、非常に強い骨、軟骨組織形成能をもつ(図2c及び図2d)。しかしながら、この前駆細胞は、骨格筋細胞への分化能を有していなかった。
近年、幹細胞を用いた再生医療に対する要望が増大しており、この分野の研究も活発化している。胚性幹細胞や、骨髄又は臍帯血から単離された内在性多分化能性前駆細胞、から誘導される組織特異的幹細胞(造血幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、神経幹細胞、上皮幹細胞、血管内皮幹細胞など)は、対応する種々の細胞に分化する能力を有している。例えば、間葉系幹細胞は、軟骨細胞、骨細胞(骨芽細胞)、筋肉細胞、心筋細胞、脂肪細胞、線維芽細胞などに分化するといわれている。骨髄中の間葉系幹細胞は、全骨髄細胞の0.001〜0.01%と非常少ないため、幹細胞の単離には過度の負担を要すると思われる。
これに対して、本発明の方法は、例えばES細胞などの多能性幹細胞から容易な操作で、骨細胞、軟骨細胞に分化する能力をもつPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を得ることができるという利点を提供する。
<骨格筋細胞の形成>
上で説明したPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、骨細胞及び軟骨細胞への分化能を有しているが筋肉細胞への分化能をもたない。そこで、多能性幹細胞から筋肉細胞への分化を誘導する方法を研究した結果、該前駆細胞をBMP4非存在下、LiCl(塩化リチウム)を含有させた無血清培地で培養することによって骨格筋細胞へ分化誘導することが見出された。
したがって、本発明はさらに、哺乳動物由来の多能性幹細胞をBMP4含有無血清培地で培養したのち、該培地からBMP4を除去し、さらに、LiClを含有する無血清培地で培養し、これによって骨格筋細胞へ分化誘導することを含む、骨格筋細胞の形成方法を提供する。
培養は、初め、上記「BMP4含有無血清培地」の項で記載したような培地中で培養し、その後、BMP4を除去し、LiClを含有する無血清培地中で培養を継続する。具体的には、BMP4存在下でのES細胞などの多能性幹細胞の培養後、3〜5日目でBMP4を除去し、かつ好適には約2.5mM〜約5mM LiClを添加した以外には上記と同様の無血清培地にてさらに1〜4日間培養をさらに継続する。このとき、より好適には、BMP4を3日目で取り除き、2.5mM LiClを4日間添加する。これによって、全細胞の約75%がPDGFRα陽性骨格筋前駆細胞に分化誘導される(図3b)。
この方法は、LiCl含有無血清培地で培養後、生じた細胞群からPDGFRα陽性骨格筋前駆細胞を選抜することをさらに含むことができる。PDGFRα陽性骨格筋前駆細胞が、Myf5陽性及びMyoD陽性の細胞であるので、これらの遺伝子マーカーの発現を指標にして上記前駆細胞の選抜を行うことができる。また、このとき、細胞移植後の患者での腫瘍形成を回避するために、未分化細胞を、例えばセルソーターを使用して分離除去することが重要である。
次に、上記のようにして得られたPDGFRα陽性骨格筋前駆細胞から骨格筋細胞を誘導する。そのための好適実施形態によれば、PDGFRα陽性骨格筋前駆細胞を4x104/cm2の細胞密度で、コラーゲンタイプIコートディッシュ上でIGF−1(Insulin−like Growth Factor−1)2〜10ng/ml、HGF(Hepatocyte Growth Factor)5〜20ng/ml及びFGF(Fibroblast Growth Factor)1〜5ng/mlを含む無血清培地(インスリン及びトランスフェリンのみからなる無血清基本培地(例えばSF−03)に、最終濃度で0.2%牛アルブミン、0.1mM 2−メルカプトエタノールを加えたもの)で培養(例えば3日)したのち、培地からHGFとFGFを取り除きIGF−1単独で培養し(例えば4日)し、さらにIGF−1及びHGFの存在下で培養(例えば7日)する。図3dには、この方法の手順が経時的に例示されている。
上記の方法によって、多能性幹細胞から、成熟した骨格筋細胞を誘導することができる。骨格筋細胞は、ミオゲニン(myogenin)陽性及びMRF4陽性であるので、これらの遺伝子マーカーの発現を指標にし、RT−PCR法で確認することができる。
<用途>
本発明の方法で作製された上記のPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、患部において骨又は軟骨組織を修復、形成するために使用することができる。この方法は、例えば骨粗鬆症、骨折、関節リウマチを含む関節炎、先天性骨形成不全症、軟骨低形成症などの治療のために使用することができる。
同様に、本発明の方法で作製された上記の骨格筋細胞は、患部において筋肉組織を修復、形成するために使用することができる。この方法は、例えばDuchenne型筋ジストロフィー、福山型筋ジストロフィー、廃用症候群などの治療のために使用することができる。
いずれの場合にも、患者の骨、軟骨、又は筋肉の損傷部位、欠損部位、炎症部位などに上記細胞を移植することによって組織の患部を修復するために使用できる。例えば、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を、骨髄又は骨損傷部位もしくは軟骨損傷部位へ移植することができる。
PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞又は骨格筋細胞は、培養物からトリプシンで細胞を回収し、生体適合性の液体に浮遊させ、患部又は骨髄に直接注入することができる。移植に要するこれら細胞の細胞数は、1×105〜1×107程度であるが、この範囲に限定されない。
あるいは、骨又は軟骨前駆細胞であるPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、三次元的組織構造を形成するための足場となるようなハイドロゲル(例えばアルギネート)、ハイドロキシアパタイトなどと組み合わせた組成物形態となして、それを患部に充填してもよい。
<PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞の作製>
本発明は、哺乳動物由来の多能性幹細胞をBMP4含有無血清培地で培養してPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導し、該中胚葉前駆細胞を回収することを含む、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞の作製方法を提供する。
本発明の方法は、無血清培地を使用して、胚性幹(ES)細胞などの多能性幹細胞からいかにしてPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導することができるかという課題を解決する。これまで、Flk1陽性の血液系前駆細胞が、activin A及びBMP4を無血清培地に加えるか、或いは低い濃度のBMP4で誘導することによりES細胞から分化することが報告されている(Era et al.(2008),Stem Cells,26(2):401−411)が、沿軸中胚葉前駆細胞の無血清誘導系に関する知見はほとんどない。
本発明者らは、意外にもBMP4を含有する無血清培地において効率よくPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導できることを見出した。この誘導の効率には、以下に述べるように、BMP4の濃度、出発細胞の培養密度などが大きく影響する。得られたPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、骨芽細胞、骨細胞及び軟骨細胞に分化する能力を有すること、並びに、該前駆細胞からさらに、骨格筋前駆細胞、さらに骨格筋細胞を形成することができることが今回判明した。
以下に、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞の作製について説明する。
多能性幹細胞
本発明方法では、多能性幹細胞が出発細胞として使用される。多能性幹細胞には、上記定義のとおり、胚性幹細胞(「ES細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、精子幹細胞(「GS細胞」)、人工多能性幹細胞(「iPS細胞」)、核移植クローン胚由来胚性幹細胞(「ntES細胞」)などが含まれる。好ましい多能性幹細胞は、ヒト由来の多能性幹細胞、例えばヒトES細胞、ヒトiPS細胞などである。
ES細胞は、極初期発生において主要な場を形成する肛盤胞の内部細胞塊に由来する幹細胞であり、生殖系列細胞を含むあらゆる成体を構成する細胞に分化する能力を内在している。もともとマウスES細胞が1981年に発見、樹立された(M.J.EvansとM.H.Kaufman(1981),Nature 292:154−156)が、その後、ヒト、サルなどの霊長類由来のES細胞株も樹立されたと言われている(J.A.Thomson et al.(199(9,Science 282:1145−1147;J.A.Thomson et al.(1995),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:7844−7848;J.A.Thomson et al.(1996),Biol.Reprod.,55:254−259;J.A.ThomsonとV.S.Marshall(1998),Curr.Top.Dev.Biol.,38:133−165)。霊長類ES細胞は、マウスES細胞と同様に、アルカリフォスファターゼやOCT−3/4を発現する以外に、ヒト胚盤胞の内部細胞塊で発現するSSEA−3、SSEA−4などの抗原も発現することが示されている(J.K.Henderson et al.(2002),Stem.Cells,20:329−337)。
ES細胞は、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、マウス胎仔線維芽細胞をフィーダーにして樹立し維持することができる。ヒトES細胞の樹立と維持の方法については、例えばH.Suemori et al.(2006),Biochem.Biophys.Res.Commun.,345:926−932;M.Ueno et al.(2006),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:9554−9559などに記載されている。サルES細胞の樹立と維持の方法については、例えばH.Suemori et al.(2001),Dev.Dyn.,222:273−279;H.Kawasaki et al.(2002),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:1580−1585などに記載されている。
ヒトES細胞は、ヒト受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、マイトマイシンC処理マウス胎仔線維芽細胞(オリエンタル酵母(東京、日本)などから入手可能)のフィーダー層上で培養し樹立、維持することができる。培地として、例えば0.1mM 2−メルカプトエタノール、0.1mM 非必須アミノ酸、2mM L−グルタミン酸、20%KSR及び4ng/ml β−FGFを補充したDMEM/F−12培地を使用し、37℃、2%CO2/98%空気の湿潤雰囲気下でヒトES細胞を維持することができる(O.Fumitaka et al.(2008),Nat.Biotechnol.,26:215−224)。また、ES細胞は、3〜4日おきに継代する必要があり、このとき、継代は、例えば1mM CaCl2及び20%KSRを含有するPBS中の0.25%トリプシン及び0.1mg/ml コラゲナーゼIVを用いて行うことができる。
ES細胞の選択は、一般に、アルカリホスファターゼ、Oct−3/4、Nanog、Sox2などの遺伝子マーカーの発現を指標にしてReal−Time PCR法で行うことができる。特に、ヒトES細胞の選択では、OCT−3/4、NANOG、SOX2、ECADなどの遺伝子マーカーの発現を指標とすることができる(E.Kroon et al.(2008),Nat.Biotechnol.,26:443−452)。
Oct−3/4は、胚細胞と生殖細胞で特異的に発現する転写因子である(H.Niwa(2001),Cell Struct.Func.26:137−148;M.PesceとH.R.Scholer(2001),Stem Cells,19:271−278)。Nanogは、桑実胚の中央部で発現し始め、その後、胚盤胞の内部細胞塊で最大の発現を示し、分化細胞では発現が認められない。Sox2は、転写因子の1つであり、受精卵、内部細胞塊、生殖細胞で発現が認められている。胚性幹細胞の転写因子群については、山中伸弥,生化学,78:27−33(2006)(日本)などに記載されている。
精子幹細胞は、精巣由来の多能性幹細胞である。この細胞は、ES細胞と同様に、Nanogなどの遺伝子を発現し、種々の系列の細胞に分化誘導可能であり、マウス胚盤胞に移植するとキメラマウスを作出できるなどの性質をもつ(K.Shinohara et al.(2004),Cell,119:1001−1012)。
胚性生殖細胞は、胎生期の始原生殖細胞から樹立される、ES細胞と同様な多能性をもつ細胞である(Y.Matsui et al.(1992),Cell,70:841−847;J.L.Resnick et al.(1992),Nature,359:550−551)。
人工多能性幹細胞は、特定の再プログラミング因子(例えば、OCT3/4,SOX2,KLF4,C−MYCの組合わせ;OCT3/4,SOX2,KLF4の組合わせ;OCT3/4,SOX2,NANOG,LIN28の組合わせなど)を、DNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することによって作製することができる、ES細胞と同様の分化多能性と増殖能を有する人工幹細胞である(K.Takahashi and S.Yamanaka(2006)Cell,126:663−676;K.Takahashi et al.(2007),Cell,131:861−872;J.Yu et al.(2007),Science,318:1917−1920;国際公開WO 2007/069666)。
nt ES細胞は、核移植技術によって作製されたクローン胚由来のES細胞であり、受精卵由来のES細胞とほぼ同じ特性を有している(T.Wakayama et al.(2001),Science,292:740−743;J.Byrne et al.(2007),Nature,450:497−502)。すなわち、未受精卵の核を体細胞の核と置換することによって得られたクローン胚の内部細胞塊から樹立されたES細胞がnt ES(nuclear transfer ES)細胞である。nt ES細胞の作製のためには、核移植技術(J.B.Cibelli et al.(1998),Nature Biotechnol.,16:642−646)とES細胞作製技術(上記)の組み合わせが利用される。
BMP4含有無血清培地
本発明の方法では、無血清培地を使用すること、培地にBMP4を添加することを特徴とする。
BMP4(bone morphogenetic protein 4)は、TGF−βスーパーファミリーに属するタンパク質であり、他の骨形成タンパク質と同様に、骨や軟骨の発達、特に歯や四肢の発達、骨折の修復に関与しているといわれている。BMP4はまた、筋肉の発達、骨の鉱物化にも関与しているといわれる。ヒト胚の発生の際に、BMP4は胚の初期分化に必要な重要なシグナル伝達分子であり、また外胚葉組織の分化を刺激する。BMP4のクローニングや特性については、例えばJM Wozney et al.(1989),Science 242:1528−1534;S.Oida et al.(1995),DNA Seq.5(5):273−275;BL Rosenzweig et al.(1995),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92(17):7632−7636等に記載されている。
本発明で使用し得るBMP4は、哺乳動物由来のBMP4、その変異体、及びその化学修飾誘導体のいずれかである。本明細書で単に「BMP4」と記載する場合は、特別の断りがない限り、哺乳動物由来のBMP4、その変異体、及びその化学修飾誘導体のいずれをも指すものとする。
哺乳動物由来のBMP4の塩基配列及びアミノ酸配列は、NCBI(米国)のwebサイトにアクセスすることによって入手し得る。例えばヒト由来BMP4の登録番号は、NM_001201、NM_130850、NM_130851などであり、マウス由来のBMP4の登録番号は、NM_007554などである。上記変異体は、多能性幹細胞からPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導する能力を有し、かつ、天然型BMP4のアミノ酸配列と80%以上、85%以上、好ましくは90%以上、95%以上、98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。ここで、%同一性は、2つのアミノ酸配列のアラインメントにおいて、ギャップを導入するか或いはギャップを導入しないで各配列を整列させたときに、総アミノ酸数(ギャップ数も含む)に対する同−アミノ酸数の百分率(%)を意味する。%同一性は、例えばBLASTアルゴリズム(NCBI)を利用して決定することができるし、また同アルゴリズムを利用すると、遺伝子バンク(NCBIなど)から同一性のあるホモログ配列を検索することができる。BMP4の変異体(天然の突然変異体、遺伝子多型由来の変異体、選択的スプライス変異体、人工変異体などを含む)は、1若しくは複数の(好ましくは、1若しくは数個の)アミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を含み、例えば置換として、電気的性質(酸性、塩基性)、極性/疎水性、構造的性質(分枝の有無、芳香族性)などの性質が類似したアミノ酸間の置換が含まれる。変異体は、天然型BMP4と同様に、DNAクローニング、遺伝子組換え技術、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、部位特異的突然変異導入法、PCR利用の部位特異的突然変異導入法などの公知の技術を利用して作製することができる(J.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001);F.M.Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology,5th ed.,John Wiley & Sons,Inc.,2002など)。BMP4の化学修飾誘導体は、糖修飾体、水溶性ポリマー(例えばポリエチレングリコール)修飾体、リン酸又は硫酸修飾体、アルキル化修飾体、アシル化修飾体などを含むことができる。BMP4タンパク質は、以下に限定されないが、例えばR&D Systems社から入手可能である。
本発明で好ましく使用可能な無血清培地は、タンパク質成分としてインスリン及びトランスフェリンのみからなる無血清基本培地に、最終濃度で0.2%牛アルブミン、0.1mM 2−メルカプトエタノール、1ng/ml又はそれ以上のBMP4を添加して調製される培地である。無血清基本培地としては、例えばRPMI1640、DMEM(Dulbecco’s modified Eagle medium))、Ham’s F−12などの動物細胞培養用培地を、必要に応じて改変し、単独で又は任意に組み合わせて使用することができる。培地には、上記タンパク質成分の他に亜セレン酸ナトリウム、エタノールアミンなどを含有させることができる。好適な培地の具体例は、S−Clone SF−03培地(三光純薬、東京、日本)であり、RPMI1640(僅かに改変)、DMEM及びF−12の混合培地からなる。この基本培地は、マウス造血幹細胞の培養用として開発されたものであり、本発明における分化の誘導に際して他のホルモン、成長因子などの余分なタンパク質による影響を回避することができるという利点を有する。しかし、必要であれば、成長因子などのホルモン類を適宜、培地に添加することができる。
培養
本発明の方法では、無血清培地中のBMP4濃度、ES細胞などの多能性幹細胞の細胞数、並びに培養期間が重要である。
培地中のBMP4濃度は、1ng/ml又はそれ以上、好ましくは1〜10ng/ml又はそれ以上である。この至適範囲である1〜10ng/mlでは、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞への分化率が34%〜50%に向上する。
ES細胞などの多能性幹細胞の至適な細胞数は、1×105〜2×105である。PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞への分化率は、細胞数1×105の場合51%であり、細胞数2×105の場合34%であり、細胞数4×105の場合5%と激減する。
培養期間は、4日〜7日又はそれ以上、好ましくは5日〜7日、より好ましくは5日である。
PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞の特徴づけ
上記の培養によってES細胞などの多能性幹細胞から得られるPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、骨芽細胞、骨細胞又は軟骨細胞へ分化する能力を有している。この特性により、該前駆細胞は、骨又は軟骨の再生のために使用することができる。
PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞をさらに、発現遺伝子マーカーについて特徴付けると、この前駆細胞は、PDGFRα陰性ECD陽性細胞と比べてMsgn1(NM 001105569.1)、Tbx6(NM_005442など)及びDelta like 1(DLL1;NM 005618.3)遺伝子をより多く発現するという特徴を有している(図1f)。また、上記3つのマーカーの他に、前駆細胞は、VEGFR2(NM_002253など)、ECD(NM_014237など)、Brachyury(T;NM_009309)及びCad11(NM_001797など)遺伝子をさらに発現している(図1f)。一方、PDGFRα陰性ECD陽性細胞は、Msgn、Tbx6及びDll1遺伝子をほとんど又は全く発現しないし、かつ、骨細胞又は軟骨細胞への分化能を有していないことから、Msgn、Tbx6及びDll1遺伝子の発現をマーカーとすることによって骨細胞又は軟骨細胞へ分化するかどうかを判定することができる。
PDGFRα陰性ECD陰性細胞についても発現遺伝子マーカーを調べると、Msgn、Tbx6及びDll1遺伝子が弱く発現していることから、沿軸中胚葉前駆細胞が含まれていると考えられる(図1f)。この点では、骨細胞や軟骨細胞に分化する沿軸中胚葉前駆細胞について、PDGFRαは必ずしも陽性である必要はないかもしれない。
したがって、本発明は、上記定義の方法によって作製され得る、かつ、PDGFRα陰性ECD陽性細胞と比べてMsgn、Tbx6及びDll1遺伝子をより多く発現することを特徴とするPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を提供する。
この前駆細胞は、VEGFR2、ECD、T及びCad11遺伝子をさらに発現することを特徴としている。
<骨細胞又は軟骨細胞の形成>
本発明は、上記PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞から骨芽細胞、骨細胞又は軟骨細胞へ分化誘導することを含む、骨細胞又は軟骨細胞の形成方法を提供する。
本発明のPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を患者の骨髄又は骨損傷部位に移植すると、該前駆細胞は、骨細胞、特に骨芽細胞、又は軟骨細胞に分化し、非常に強い骨、軟骨組織形成能をもつ(図2c及び図2d)。しかしながら、この前駆細胞は、骨格筋細胞への分化能を有していなかった。
近年、幹細胞を用いた再生医療に対する要望が増大しており、この分野の研究も活発化している。胚性幹細胞や、骨髄又は臍帯血から単離された内在性多分化能性前駆細胞、から誘導される組織特異的幹細胞(造血幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、神経幹細胞、上皮幹細胞、血管内皮幹細胞など)は、対応する種々の細胞に分化する能力を有している。例えば、間葉系幹細胞は、軟骨細胞、骨細胞(骨芽細胞)、筋肉細胞、心筋細胞、脂肪細胞、線維芽細胞などに分化するといわれている。骨髄中の間葉系幹細胞は、全骨髄細胞の0.001〜0.01%と非常少ないため、幹細胞の単離には過度の負担を要すると思われる。
これに対して、本発明の方法は、例えばES細胞などの多能性幹細胞から容易な操作で、骨細胞、軟骨細胞に分化する能力をもつPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を得ることができるという利点を提供する。
<骨格筋細胞の形成>
上で説明したPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、骨細胞及び軟骨細胞への分化能を有しているが筋肉細胞への分化能をもたない。そこで、多能性幹細胞から筋肉細胞への分化を誘導する方法を研究した結果、該前駆細胞をBMP4非存在下、LiCl(塩化リチウム)を含有させた無血清培地で培養することによって骨格筋細胞へ分化誘導することが見出された。
したがって、本発明はさらに、哺乳動物由来の多能性幹細胞をBMP4含有無血清培地で培養したのち、該培地からBMP4を除去し、さらに、LiClを含有する無血清培地で培養し、これによって骨格筋細胞へ分化誘導することを含む、骨格筋細胞の形成方法を提供する。
培養は、初め、上記「BMP4含有無血清培地」の項で記載したような培地中で培養し、その後、BMP4を除去し、LiClを含有する無血清培地中で培養を継続する。具体的には、BMP4存在下でのES細胞などの多能性幹細胞の培養後、3〜5日目でBMP4を除去し、かつ好適には約2.5mM〜約5mM LiClを添加した以外には上記と同様の無血清培地にてさらに1〜4日間培養をさらに継続する。このとき、より好適には、BMP4を3日目で取り除き、2.5mM LiClを4日間添加する。これによって、全細胞の約75%がPDGFRα陽性骨格筋前駆細胞に分化誘導される(図3b)。
この方法は、LiCl含有無血清培地で培養後、生じた細胞群からPDGFRα陽性骨格筋前駆細胞を選抜することをさらに含むことができる。PDGFRα陽性骨格筋前駆細胞が、Myf5陽性及びMyoD陽性の細胞であるので、これらの遺伝子マーカーの発現を指標にして上記前駆細胞の選抜を行うことができる。また、このとき、細胞移植後の患者での腫瘍形成を回避するために、未分化細胞を、例えばセルソーターを使用して分離除去することが重要である。
次に、上記のようにして得られたPDGFRα陽性骨格筋前駆細胞から骨格筋細胞を誘導する。そのための好適実施形態によれば、PDGFRα陽性骨格筋前駆細胞を4x104/cm2の細胞密度で、コラーゲンタイプIコートディッシュ上でIGF−1(Insulin−like Growth Factor−1)2〜10ng/ml、HGF(Hepatocyte Growth Factor)5〜20ng/ml及びFGF(Fibroblast Growth Factor)1〜5ng/mlを含む無血清培地(インスリン及びトランスフェリンのみからなる無血清基本培地(例えばSF−03)に、最終濃度で0.2%牛アルブミン、0.1mM 2−メルカプトエタノールを加えたもの)で培養(例えば3日)したのち、培地からHGFとFGFを取り除きIGF−1単独で培養し(例えば4日)し、さらにIGF−1及びHGFの存在下で培養(例えば7日)する。図3dには、この方法の手順が経時的に例示されている。
上記の方法によって、多能性幹細胞から、成熟した骨格筋細胞を誘導することができる。骨格筋細胞は、ミオゲニン(myogenin)陽性及びMRF4陽性であるので、これらの遺伝子マーカーの発現を指標にし、RT−PCR法で確認することができる。
<用途>
本発明の方法で作製された上記のPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、患部において骨又は軟骨組織を修復、形成するために使用することができる。この方法は、例えば骨粗鬆症、骨折、関節リウマチを含む関節炎、先天性骨形成不全症、軟骨低形成症などの治療のために使用することができる。
同様に、本発明の方法で作製された上記の骨格筋細胞は、患部において筋肉組織を修復、形成するために使用することができる。この方法は、例えばDuchenne型筋ジストロフィー、福山型筋ジストロフィー、廃用症候群などの治療のために使用することができる。
いずれの場合にも、患者の骨、軟骨、又は筋肉の損傷部位、欠損部位、炎症部位などに上記細胞を移植することによって組織の患部を修復するために使用できる。例えば、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を、骨髄又は骨損傷部位もしくは軟骨損傷部位へ移植することができる。
PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞又は骨格筋細胞は、培養物からトリプシンで細胞を回収し、生体適合性の液体に浮遊させ、患部又は骨髄に直接注入することができる。移植に要するこれら細胞の細胞数は、1×105〜1×107程度であるが、この範囲に限定されない。
あるいは、骨又は軟骨前駆細胞であるPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞は、三次元的組織構造を形成するための足場となるようなハイドロゲル(例えばアルギネート)、ハイドロキシアパタイトなどと組み合わせた組成物形態となして、それを患部に充填してもよい。
本発明を以下の実施例で、マウスES細胞を例示しながらさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの具体例によって限定されないものとする。
方法
細胞培養とES細胞のin vitro分化
CCE ES細胞とtLacZ遺伝子を発現している(CCE/nLacZ)ES細胞は西川伸一博士(神戸理研再生研、兵庫、日本)より分与される。筋肉、骨、軟骨のもととなる沿軸(軸傍)中胚葉(Paraxial mesoderm)に分化させるため、ES細胞をタイプ4コラーゲン(新田ゼラチン社、大阪、日本)でコートした10cmシャーレで培養し、SF−03培地(三光純薬(東京、日本);SF−03は、タンパク成分として、インスリン、トランスフェリンのみからなる無血清基本培地であり、京都大学医学部分子遺伝学西川伸一研究室(京都、日本)(現:理化学研究所発生科学研究センター幹細胞研究グループ(兵庫、日本))におけるマウス造血前駆細胞を対象とした研究成果に基づいて開発されたもの)に最終濃度0.2%牛アルブミン、0.1mM 2−mercaptoethanol、1ng/ml BMP4(遺伝子組み換えR&D system社)を加えて培養した。4〜7日後骨、軟骨前駆細胞がPDGFR−α陽性細胞として現れ、これをセルソーターで分離してさらに培養した。筋肉前駆細胞への分化は3日間上記BMP4を含む培地で培養後、培地を変えて、2.5mM LiClを含むSF−03培地でさらに4日間培養した。さらに筋肉細胞に分化させるため、細胞をセルソーターで分離し、タイプ1コラーゲンでコートした24穴プレートで2ng/ml IGF−1(R&D systems)と10ng/ml HGF(R&D systems)と2ng/ml bFGF(R&D systems)を加えたSF−03培地で培養した。そして3日後さらに培地を2ng/ml IGF−1を含むSF−03培地に変換し、5日後2ng/ml IGF−1と10ng/ml HGFを含むSF−03培地で7日間培養した。骨形成および軟骨形成培養については、Sakurai et al.Stem Cells.(2006);24(3):575−86を参照して行うことができる。
抗体、細胞染色、FACS解析
APA5(anti−PDGFR−α)とECCD2(anti−ECD)は西川伸一研究室(上記)より分与、ビオチン化APA5はフィコエリトリン−ストレプトアビジン(Phycoerythrin−streptavidin)(BD Pharmingen)で染色した。モノクローナルECCD2抗体はアロフィコシアニン(allophycocyanin(APC))と結合させた。培養細胞は0.05%トリプシン−EDTAで分離させ、染色後FACSCaliburで解析し、FACSVantage−HG(Becton Dickinson)で細胞分離を行った。免疫染色は2000倍希釈ウサギ抗β−ガラクトシダーゼ(CHEMICON)、200倍希釈ウサギ抗ミオゲニン(Myogenin)(Santa Cruz)、100倍希釈ウサギ抗骨格筋アクチン(skeletal muscle Actin)(Abcam)で1次抗体染色後、β−ガラクトシダーゼはAlexa488結合抗ウサギIgG(Invitrogen)で、MyogeninとActinはHRP結合抗ウサギIgG(CHEMICON)でそれぞれ二次抗体染色した。
分化ES細胞のマウスへの移植
本発明者らはマウスの実験を名古屋大学(愛知、日本)実験動物指針に従って行った。PDGFR−α+ECD−(図1f,1)とPDGFR−α−ECD+(図1e,3及び4)の分画を5x105細胞以上の細胞数でセルソーターを用いて分離し、最終濃度2.5x104cells/μlにαMEM(10%Fetal Bovine Serum(FBS)+100μM 2−ME)で浮遊させ、KSNヌードマウス(Nihon SLC)の骨格筋(大腿四頭筋)を挫滅させ、筋肉内に注射した。また骨芽細胞への分化を行うため、膝関節から脛骨の骨髄に21G注射針で移入した。
RT−PCR
RT−PCRは常法に従って行った。使用したプライマーは表1に示す。RT−PCRの条件は、変性(Denaturation)94℃30秒、アニーリング(Annealing)62℃30秒、伸長(Extension)72℃1分を1サイクルとし、30から35サイクルのPCRを行った。
結果
BMP4がPDGFR−α陽性中胚葉前駆細胞をES細胞から効率的に誘導する
BMP4によるES細胞の中胚葉分化をPDGFR−αの発現を指標にして調べた。その結果、6日間培養で、BMP4なしでは3%であったが1ng/ml BMP4で34%分化し、その後緩やかに増加した。このあとは1ng/ml BMP4に固定して実験を行った(図1a)。細胞密度がPDGFR−α陽性細胞分化に与える影響を調べた。1x105細胞を10cmシャーレで培養した場合PDGFR−α陽性細胞が51%に増加した。2x105細胞では34%、それ以上ではPDGFR−α陽性細胞の割合が減少した(図1b)。そして、どの割合が最も細胞数が増加するか調べたところ2x105細胞で最も効率よく5日間培養で15倍に増加した(図1c)。それで2x105細胞を培養して、何日後に最も多くのPDGFR−α陽性細胞が現れるかを調べたところ、培養4日にPDGFR−α陽性細胞が現れ、5日に45%とピークに達した(図1d,上)。形態もES細胞の丸い形からcobble stone様に変化した(図1d,下)。
中胚葉発生に関わる遺伝子発現を経時的に解析すると、胎児の発生と同じような順序で遺伝子発現が移り変わっていくことが確認された(図1e)。最も初期の中胚葉マーカーであるTが分化3日目から発現しており、その後は分化が進むほど発現が減少する。代わって沿軸中胚葉から原節(Somite)形成に関わる分子であるMsgn、Tbx6の発現が分化4日目から強く認められ、分化6日目には減少する。さらに原節(Somite)から皮筋板(Dermomyotome)が形成されるための重要な分子Pax3が分化5日目から強く現れ、分化7日目には減少する。また未分化マーカーであるOct3/4は分化が進むにつれて徐々に発現が減少してゆく。これらの変化から考えると、このBMP4を添加した培養システムは実際の胎児発生を忠実に再現したモデルであると考えられる。さらにこの効率よく誘導されたPDGFR−α陽性細胞が、確かに沿軸中胚葉の前駆細胞であるのかを確認するため、各フラクションをFACSにて分離し遺伝子発現を解析した(図1f)。PDGFR−α陽性分画であるフラクション1は予想通りTbx6,Msgn,Dll1などの沿軸中胚葉マーカーを強く発現していた。また間葉細胞(mesenchymal cell)のマーカーであるCad11(Osteoblast−cadherin)もこのフラクション1に強く発現している。一方未分化マーカーであるOct3/4とNanogはPDGFR−α陰性ECD陽性及び強陽性の分画(フラクション3及び4)に強く発現しており、また内胚葉マーカーであるFoxa2もこの分画で強く発現していた。このことからECDという未分化及び内胚葉マーカーで分離されたPDGFR−α陰性ECD陽性及び強陽性の分画は、やはり未分化な細胞と内胚葉の前駆細胞を多く含む細胞群であり、沿軸中胚葉マーカーであるPDGFR−αによって分離されたPDGFR−α陽性分画は沿軸中胚葉の前駆細胞であることがわかった。さらにPDGFR−α陰性ECD陰性であるフラクション2はTbx6,Msgn,Dll1などの沿軸中胚葉マーカーを弱く発現しており、この分画にも沿軸中胚葉の前駆細胞が存在すると考えられる。このフラクション2をフラクション1と合わせて沿軸中胚葉の前駆細胞と考えると、BMP4添加の誘導において分化6日目では沿軸中胚葉前駆細胞は実に80%もの高い効率で誘導されると考えられる(図1f)。次に示す骨、軟骨細胞への分化能を評価する実験では、このフラクション1とフラクション2を合わせた細胞群を沿軸中胚葉前駆細胞(paraxial mesodermal progenitor cells(PMPc))として扱っている。
BMP4で誘導した沿軸中胚葉前駆細胞は軟骨と骨に分化する
次に、本発明者らは、BMP4により誘導された沿軸中胚葉前駆細胞が、沿軸中胚葉由来組織である骨、軟骨へと分化する能力を有するかどうかをin vitro,in vivo両方で解析した。分化6日目の沿軸中胚葉前駆細胞はin vitroの骨細胞誘導において、Alizarin Red陽性の十分なカルシウムマトリックスを均一に形成する骨細胞へと分化した(図2a)。一方で未分化な細胞を多く含むPDGFR−α陰性ECD陽性細胞は一部のコロニーでのみAlizarin Red陽性のカルシウム沈着を認めた。これは未分化な細胞の一部が骨細胞誘導に反応してカルシウム陽性になったと考えられる。しかしながら沿軸中胚葉前駆細胞はウェル全体に均一にカルシウムマトリックスを形成しており、沿軸中胚葉前駆細胞の多くが骨誘導に反応する比較的均一な細胞群であると考えられる。
次に、軟骨細胞誘導においては、沿軸中胚葉前駆細胞は微小集積培養(Micromass culture)によって形成された高細胞密度のコロニーの中心に、Alcian Blue陽性の軟骨細胞の形成を認めた(図2b)。一方、PDGFR−α陰性ECD陽性細胞は同じ高細胞密度のコロニーを形成するもののAlcian Blueは陰性であり、軟骨細胞の形成は認められなかった(n=4)。以上の結果から、BMP4により誘導された沿軸中胚葉前駆細胞は、in vitroにおいて骨細胞及び軟骨細胞への高い分化能を有することが明らかとなった。
次に、BMP4により誘導された沿軸中胚葉前駆細胞のin vivoでの骨細胞への分化能を解析するため、免疫不全マウスの骨髄に直接分化6日目の細胞を移植した。移植後4週に脛骨の組織を観察するとLacZ陽性のES細胞由来の細胞が骨梁を中心に認められた(図2c,上)。一部は骨基質の中にも存在したが、特に骨梁の辺縁の部分に多く認められた(図2c,矢頭)。この局在は骨芽細胞の存在する位置と非常に近いと考えられ、また沿軸中胚葉前駆細胞は骨芽細胞のマーカーでもあるcadherin 11を特異的に発現しているため(図1f)、AP染色を行い骨芽細胞へ分化しているかどうかを解析した(図2c,下)。予想通り骨梁の辺縁にAP陽性の領域が多く認められたが、この中の一部にはLacZ陽性の核を持つものも存在した(図2c,矢印)。以上により、BMP4により誘導された沿軸中胚葉前駆細胞は、in vivoにおいて骨細胞特に骨芽細胞への分化能を有することが明らかとなった。
さらに、この沿軸中胚葉前駆細胞は、骨や軟骨形成を促進しない環境でも細胞自律的(cell autonomous)に骨や軟骨へと分化する能力を有している(図2d)。挫滅させた免疫不全マウスの大腿四頭筋に分化6日目の沿軸中胚葉前駆細胞を直接移植し、4週間後に組織を解析した。その結果、再生中の骨格筋組織の中に異所性軟骨および骨組織の形成を認めた(図2d,左)(n=3)。この異所性軟骨及び骨組織は皮膜で覆われており、他の組織成分は含まれておらず、奇形腫ではなかった。またこれらの異所性軟骨はLacZ陽性であり、移植された細胞由来であることが確認された(図2d,右)。これらの結果により、BMP4により誘導された沿軸中胚葉前駆細胞は非常に強い骨、軟骨組織形成能を持つと考えられた。
しかしながら挫滅した骨格筋に移植したにもかかわらず、BMP4により誘導された沿軸中胚葉前駆細胞は骨格筋細胞へ分化していなかった(データ示さず,n=8)。BMPはマウスの骨格筋発生において、Myf5やMyoDといった筋原性調節遺伝子(myogenic regulator gene)の発現を抑制することが知られている(Reshef et al.Genes and Development.(1998);12(3):290−303)。また筋原性調節遺伝子の発現促進にはWntシグナルが深く関わっていることも知られている(Parker et al.Nature Review Genetics.(2003);4(7):497−507)。そこで次に、骨格筋細胞誘導のためBMP4を取り除き、Wntシグナルを代用して、β−cateninを核内へ移行させる作用を持つLiClを培地に加える実験を行った。
LiClは筋肉細胞をESから誘導する
マウスES細胞を骨格筋細胞へと分化させるため、これまでのBMP4添加での誘導と比べ、BMP4を3日目で取り除いたもの及びBMP4を3日目で取り除くと同時にLiClを1〜10mMの範囲で添加した条件での分化を試みた。合計7日間培養した後RT−PCRにて遺伝子発現を解析した(図3a)。BMP4単独で誘導した細胞は分化7日目で皮筋板(Dermomyotome)のマーカーであるPax3の発現は認めるものの、筋原性調節因子(Myogenic regulatory factor)であるMyf5,MyoDの発現は認められなかった。しかしながら分化3日目でBMP4を除いた培養系では非常にわずかではあるがMyf5の発現が認められた。さらにLiClを添加した培養系では全てでMyf5の発現を認め、2.5mM及び5mMの濃度ではMyoDの発現も強く確認された。これらの結果から、BMP4を分化の初期に取り除くことにより、筋原性因子(myogenic factor)の発現が誘導され、さらにLiCl添加によるWntシグナルにより筋原性因子の発現が亢進することが明らかとなった。以降の実験ではLiClの濃度は2.5mMを至適濃度として実験している。一方BMP4を用いずに最初からLiCLのみで誘導した場合には、Myf5,MyoDのみならずPax3の発現もほとんど認められなかった。血液細胞分化の研究においてもBMP4が初期のprimitive streak typeの中胚葉誘導を促進するという報告もあり(Pick et al.Stem Cells(2007);25(9):2206−14)、これらの結果はES細胞分化系において初期のBMP4刺激が中胚葉形成には必要であることを示唆している。
次にBMP4を除きLiClを添加する最も適切な期間を解析した(図3b,上)。この結果MyoDの発現が最も強く見られたのはBMP4を3日目で取り除きLiClを4日間添加したものと、BMP4を4日目で取り除きLiClを3日間添加した培養条件であった。BMP4の刺激期間が長いほどMyf5の発現が減少し、LiCl誘導の期間が長いほどMyoDの発現が増加した。この結果から、至適な誘導条件はBMP4を3日目で取り除きLiClを4日間添加する培養条件として、以降の実験を行った。BMP4を3日目で取り除き2.5mMのLiClを添加した場合のPDGFR−αの経時的な発現経過をFACSにて解析した(図3b,下)。PDGFR−αは時間とともに発現が増加する傾向を示し、LiCl添加4日目には74%もの細胞がPDGFR−α陽性であった。BMP4単独で分化誘導した場合と比較してPDGFR−α陰性ECD陰性分画が21%と半分程度であり、PDGFR−α陰性ECD陽性分画はわずか5%と極めて少なくなっていた(図3c)。これらの分画の遺伝子発現をRT−PCRにて解析すると、予想通りPDGFR−α陽性分画がPax3,Pax7陽性の中胚葉分画であり、Myf5,MyoDも特異的に発現していた。PDGFR−α陰性ECD陽性においてもPax7の発現が認められたが、神経細胞のマーカーであるSox1がこの分画で特異的に発現しており、Pax7は神経系の細胞にも発現していることから、このPax7の発現は神経細胞への分化を現していると考えられる。未分化マーカーであるOct3/4およびNanogと内胚葉マーカーであるFoxa2はPDGFR−α陰性ECD陽性分画に強く発現しており、BMP4単独誘導と同様の結果であった。しかしながらPDGFR−α陰性ECD陰性分画の遺伝子発現はBMP4単独誘導とは異なり、中胚葉マーカーの発現はなく、未分化マーカー及び内胚葉マーカーが弱く発現しているのみであった(図3c)。以上の結果からBM4を3日目で取り除きLiClを4日間添加した骨格筋細胞の分化誘導系においては、PDGFR−α陽性分画が骨格筋前駆細胞を含むPopulationであることが分かった。
次に、得られたPDGFR−α陽性細胞をin vitroで成熟した骨格筋へと分化する方法を試みた(図3d)。マウスの生体において骨格筋の幹細胞である衛星細胞(satellite cell)が骨格筋へと分化する際に、IGF,HGF,FGFが重要な役割を果たす事が知られている(Charge et al.Physiological reviews.(2004);84(1):209−38)。図3dは、Myf5,MyoD陽性の筋芽細胞(Myoblast)がミオゲニン(myogenin),MRF4陽性の筋線維(Myofiber)へと融合する際の成長因子をin vitroで再現した培養方法である。BMP4を3日目で取り除きLiClを4日間添加する培養により誘導されたMyf5,MyoD陽性細胞をPDGFR−αをマーカーに分離し、これをCollagen Type Iディッシュ上に再培養し、初期にはIGF−1,HGF,bFGFを全て加える。筋芽細胞が増殖する際にはこれらの因子は全て促進的に働くが、増殖した筋芽細胞がミオゲニン,MRF4陽性となり、融合する際にはHGF,bFGFは抑制的に働く(Charge et al.Physiological reviews.(2004);84(1):209−38)。そのため一定期間でHGF,bFGFを取り除き、IGF−1単独で培養することでミオゲニン,MRF4陽性細胞が誘導されるかどうかを解析した(図3e)。初めからIGF−1単独で誘導した細胞でもミオゲニンは陽性となるが、MRF4も発現するのは初めの3日間はHGFおよびbFGFを添加した誘導方法であった。この初めの3日間はIGF−1に加えHGFおよびbFGFを添加し、その後4日間はIGF−1単独で再培養した細胞のミオゲニンの発現を蛋白レベルでも確認した(図3f,左)。核がミオゲニン陽性となっている紡錘形の細胞がいくつか確認された。多核になっているものも認められた。またこのミオゲニン陽性細胞を成熟した骨格筋細胞へと分化させるため、さらにIGF−1とHGFで誘導を試みた。7日後に骨格筋アクチン陽性の骨格筋細胞がいくつか認められた(図3f,右)。以上の結果から、本発明者らは、無血清培養系でES細胞から成熟した骨格筋細胞へと誘導する方法を確立した。
方法
細胞培養とES細胞のin vitro分化
CCE ES細胞とtLacZ遺伝子を発現している(CCE/nLacZ)ES細胞は西川伸一博士(神戸理研再生研、兵庫、日本)より分与される。筋肉、骨、軟骨のもととなる沿軸(軸傍)中胚葉(Paraxial mesoderm)に分化させるため、ES細胞をタイプ4コラーゲン(新田ゼラチン社、大阪、日本)でコートした10cmシャーレで培養し、SF−03培地(三光純薬(東京、日本);SF−03は、タンパク成分として、インスリン、トランスフェリンのみからなる無血清基本培地であり、京都大学医学部分子遺伝学西川伸一研究室(京都、日本)(現:理化学研究所発生科学研究センター幹細胞研究グループ(兵庫、日本))におけるマウス造血前駆細胞を対象とした研究成果に基づいて開発されたもの)に最終濃度0.2%牛アルブミン、0.1mM 2−mercaptoethanol、1ng/ml BMP4(遺伝子組み換えR&D system社)を加えて培養した。4〜7日後骨、軟骨前駆細胞がPDGFR−α陽性細胞として現れ、これをセルソーターで分離してさらに培養した。筋肉前駆細胞への分化は3日間上記BMP4を含む培地で培養後、培地を変えて、2.5mM LiClを含むSF−03培地でさらに4日間培養した。さらに筋肉細胞に分化させるため、細胞をセルソーターで分離し、タイプ1コラーゲンでコートした24穴プレートで2ng/ml IGF−1(R&D systems)と10ng/ml HGF(R&D systems)と2ng/ml bFGF(R&D systems)を加えたSF−03培地で培養した。そして3日後さらに培地を2ng/ml IGF−1を含むSF−03培地に変換し、5日後2ng/ml IGF−1と10ng/ml HGFを含むSF−03培地で7日間培養した。骨形成および軟骨形成培養については、Sakurai et al.Stem Cells.(2006);24(3):575−86を参照して行うことができる。
抗体、細胞染色、FACS解析
APA5(anti−PDGFR−α)とECCD2(anti−ECD)は西川伸一研究室(上記)より分与、ビオチン化APA5はフィコエリトリン−ストレプトアビジン(Phycoerythrin−streptavidin)(BD Pharmingen)で染色した。モノクローナルECCD2抗体はアロフィコシアニン(allophycocyanin(APC))と結合させた。培養細胞は0.05%トリプシン−EDTAで分離させ、染色後FACSCaliburで解析し、FACSVantage−HG(Becton Dickinson)で細胞分離を行った。免疫染色は2000倍希釈ウサギ抗β−ガラクトシダーゼ(CHEMICON)、200倍希釈ウサギ抗ミオゲニン(Myogenin)(Santa Cruz)、100倍希釈ウサギ抗骨格筋アクチン(skeletal muscle Actin)(Abcam)で1次抗体染色後、β−ガラクトシダーゼはAlexa488結合抗ウサギIgG(Invitrogen)で、MyogeninとActinはHRP結合抗ウサギIgG(CHEMICON)でそれぞれ二次抗体染色した。
分化ES細胞のマウスへの移植
本発明者らはマウスの実験を名古屋大学(愛知、日本)実験動物指針に従って行った。PDGFR−α+ECD−(図1f,1)とPDGFR−α−ECD+(図1e,3及び4)の分画を5x105細胞以上の細胞数でセルソーターを用いて分離し、最終濃度2.5x104cells/μlにαMEM(10%Fetal Bovine Serum(FBS)+100μM 2−ME)で浮遊させ、KSNヌードマウス(Nihon SLC)の骨格筋(大腿四頭筋)を挫滅させ、筋肉内に注射した。また骨芽細胞への分化を行うため、膝関節から脛骨の骨髄に21G注射針で移入した。
RT−PCR
RT−PCRは常法に従って行った。使用したプライマーは表1に示す。RT−PCRの条件は、変性(Denaturation)94℃30秒、アニーリング(Annealing)62℃30秒、伸長(Extension)72℃1分を1サイクルとし、30から35サイクルのPCRを行った。
BMP4がPDGFR−α陽性中胚葉前駆細胞をES細胞から効率的に誘導する
BMP4によるES細胞の中胚葉分化をPDGFR−αの発現を指標にして調べた。その結果、6日間培養で、BMP4なしでは3%であったが1ng/ml BMP4で34%分化し、その後緩やかに増加した。このあとは1ng/ml BMP4に固定して実験を行った(図1a)。細胞密度がPDGFR−α陽性細胞分化に与える影響を調べた。1x105細胞を10cmシャーレで培養した場合PDGFR−α陽性細胞が51%に増加した。2x105細胞では34%、それ以上ではPDGFR−α陽性細胞の割合が減少した(図1b)。そして、どの割合が最も細胞数が増加するか調べたところ2x105細胞で最も効率よく5日間培養で15倍に増加した(図1c)。それで2x105細胞を培養して、何日後に最も多くのPDGFR−α陽性細胞が現れるかを調べたところ、培養4日にPDGFR−α陽性細胞が現れ、5日に45%とピークに達した(図1d,上)。形態もES細胞の丸い形からcobble stone様に変化した(図1d,下)。
中胚葉発生に関わる遺伝子発現を経時的に解析すると、胎児の発生と同じような順序で遺伝子発現が移り変わっていくことが確認された(図1e)。最も初期の中胚葉マーカーであるTが分化3日目から発現しており、その後は分化が進むほど発現が減少する。代わって沿軸中胚葉から原節(Somite)形成に関わる分子であるMsgn、Tbx6の発現が分化4日目から強く認められ、分化6日目には減少する。さらに原節(Somite)から皮筋板(Dermomyotome)が形成されるための重要な分子Pax3が分化5日目から強く現れ、分化7日目には減少する。また未分化マーカーであるOct3/4は分化が進むにつれて徐々に発現が減少してゆく。これらの変化から考えると、このBMP4を添加した培養システムは実際の胎児発生を忠実に再現したモデルであると考えられる。さらにこの効率よく誘導されたPDGFR−α陽性細胞が、確かに沿軸中胚葉の前駆細胞であるのかを確認するため、各フラクションをFACSにて分離し遺伝子発現を解析した(図1f)。PDGFR−α陽性分画であるフラクション1は予想通りTbx6,Msgn,Dll1などの沿軸中胚葉マーカーを強く発現していた。また間葉細胞(mesenchymal cell)のマーカーであるCad11(Osteoblast−cadherin)もこのフラクション1に強く発現している。一方未分化マーカーであるOct3/4とNanogはPDGFR−α陰性ECD陽性及び強陽性の分画(フラクション3及び4)に強く発現しており、また内胚葉マーカーであるFoxa2もこの分画で強く発現していた。このことからECDという未分化及び内胚葉マーカーで分離されたPDGFR−α陰性ECD陽性及び強陽性の分画は、やはり未分化な細胞と内胚葉の前駆細胞を多く含む細胞群であり、沿軸中胚葉マーカーであるPDGFR−αによって分離されたPDGFR−α陽性分画は沿軸中胚葉の前駆細胞であることがわかった。さらにPDGFR−α陰性ECD陰性であるフラクション2はTbx6,Msgn,Dll1などの沿軸中胚葉マーカーを弱く発現しており、この分画にも沿軸中胚葉の前駆細胞が存在すると考えられる。このフラクション2をフラクション1と合わせて沿軸中胚葉の前駆細胞と考えると、BMP4添加の誘導において分化6日目では沿軸中胚葉前駆細胞は実に80%もの高い効率で誘導されると考えられる(図1f)。次に示す骨、軟骨細胞への分化能を評価する実験では、このフラクション1とフラクション2を合わせた細胞群を沿軸中胚葉前駆細胞(paraxial mesodermal progenitor cells(PMPc))として扱っている。
BMP4で誘導した沿軸中胚葉前駆細胞は軟骨と骨に分化する
次に、本発明者らは、BMP4により誘導された沿軸中胚葉前駆細胞が、沿軸中胚葉由来組織である骨、軟骨へと分化する能力を有するかどうかをin vitro,in vivo両方で解析した。分化6日目の沿軸中胚葉前駆細胞はin vitroの骨細胞誘導において、Alizarin Red陽性の十分なカルシウムマトリックスを均一に形成する骨細胞へと分化した(図2a)。一方で未分化な細胞を多く含むPDGFR−α陰性ECD陽性細胞は一部のコロニーでのみAlizarin Red陽性のカルシウム沈着を認めた。これは未分化な細胞の一部が骨細胞誘導に反応してカルシウム陽性になったと考えられる。しかしながら沿軸中胚葉前駆細胞はウェル全体に均一にカルシウムマトリックスを形成しており、沿軸中胚葉前駆細胞の多くが骨誘導に反応する比較的均一な細胞群であると考えられる。
次に、軟骨細胞誘導においては、沿軸中胚葉前駆細胞は微小集積培養(Micromass culture)によって形成された高細胞密度のコロニーの中心に、Alcian Blue陽性の軟骨細胞の形成を認めた(図2b)。一方、PDGFR−α陰性ECD陽性細胞は同じ高細胞密度のコロニーを形成するもののAlcian Blueは陰性であり、軟骨細胞の形成は認められなかった(n=4)。以上の結果から、BMP4により誘導された沿軸中胚葉前駆細胞は、in vitroにおいて骨細胞及び軟骨細胞への高い分化能を有することが明らかとなった。
次に、BMP4により誘導された沿軸中胚葉前駆細胞のin vivoでの骨細胞への分化能を解析するため、免疫不全マウスの骨髄に直接分化6日目の細胞を移植した。移植後4週に脛骨の組織を観察するとLacZ陽性のES細胞由来の細胞が骨梁を中心に認められた(図2c,上)。一部は骨基質の中にも存在したが、特に骨梁の辺縁の部分に多く認められた(図2c,矢頭)。この局在は骨芽細胞の存在する位置と非常に近いと考えられ、また沿軸中胚葉前駆細胞は骨芽細胞のマーカーでもあるcadherin 11を特異的に発現しているため(図1f)、AP染色を行い骨芽細胞へ分化しているかどうかを解析した(図2c,下)。予想通り骨梁の辺縁にAP陽性の領域が多く認められたが、この中の一部にはLacZ陽性の核を持つものも存在した(図2c,矢印)。以上により、BMP4により誘導された沿軸中胚葉前駆細胞は、in vivoにおいて骨細胞特に骨芽細胞への分化能を有することが明らかとなった。
さらに、この沿軸中胚葉前駆細胞は、骨や軟骨形成を促進しない環境でも細胞自律的(cell autonomous)に骨や軟骨へと分化する能力を有している(図2d)。挫滅させた免疫不全マウスの大腿四頭筋に分化6日目の沿軸中胚葉前駆細胞を直接移植し、4週間後に組織を解析した。その結果、再生中の骨格筋組織の中に異所性軟骨および骨組織の形成を認めた(図2d,左)(n=3)。この異所性軟骨及び骨組織は皮膜で覆われており、他の組織成分は含まれておらず、奇形腫ではなかった。またこれらの異所性軟骨はLacZ陽性であり、移植された細胞由来であることが確認された(図2d,右)。これらの結果により、BMP4により誘導された沿軸中胚葉前駆細胞は非常に強い骨、軟骨組織形成能を持つと考えられた。
しかしながら挫滅した骨格筋に移植したにもかかわらず、BMP4により誘導された沿軸中胚葉前駆細胞は骨格筋細胞へ分化していなかった(データ示さず,n=8)。BMPはマウスの骨格筋発生において、Myf5やMyoDといった筋原性調節遺伝子(myogenic regulator gene)の発現を抑制することが知られている(Reshef et al.Genes and Development.(1998);12(3):290−303)。また筋原性調節遺伝子の発現促進にはWntシグナルが深く関わっていることも知られている(Parker et al.Nature Review Genetics.(2003);4(7):497−507)。そこで次に、骨格筋細胞誘導のためBMP4を取り除き、Wntシグナルを代用して、β−cateninを核内へ移行させる作用を持つLiClを培地に加える実験を行った。
LiClは筋肉細胞をESから誘導する
マウスES細胞を骨格筋細胞へと分化させるため、これまでのBMP4添加での誘導と比べ、BMP4を3日目で取り除いたもの及びBMP4を3日目で取り除くと同時にLiClを1〜10mMの範囲で添加した条件での分化を試みた。合計7日間培養した後RT−PCRにて遺伝子発現を解析した(図3a)。BMP4単独で誘導した細胞は分化7日目で皮筋板(Dermomyotome)のマーカーであるPax3の発現は認めるものの、筋原性調節因子(Myogenic regulatory factor)であるMyf5,MyoDの発現は認められなかった。しかしながら分化3日目でBMP4を除いた培養系では非常にわずかではあるがMyf5の発現が認められた。さらにLiClを添加した培養系では全てでMyf5の発現を認め、2.5mM及び5mMの濃度ではMyoDの発現も強く確認された。これらの結果から、BMP4を分化の初期に取り除くことにより、筋原性因子(myogenic factor)の発現が誘導され、さらにLiCl添加によるWntシグナルにより筋原性因子の発現が亢進することが明らかとなった。以降の実験ではLiClの濃度は2.5mMを至適濃度として実験している。一方BMP4を用いずに最初からLiCLのみで誘導した場合には、Myf5,MyoDのみならずPax3の発現もほとんど認められなかった。血液細胞分化の研究においてもBMP4が初期のprimitive streak typeの中胚葉誘導を促進するという報告もあり(Pick et al.Stem Cells(2007);25(9):2206−14)、これらの結果はES細胞分化系において初期のBMP4刺激が中胚葉形成には必要であることを示唆している。
次にBMP4を除きLiClを添加する最も適切な期間を解析した(図3b,上)。この結果MyoDの発現が最も強く見られたのはBMP4を3日目で取り除きLiClを4日間添加したものと、BMP4を4日目で取り除きLiClを3日間添加した培養条件であった。BMP4の刺激期間が長いほどMyf5の発現が減少し、LiCl誘導の期間が長いほどMyoDの発現が増加した。この結果から、至適な誘導条件はBMP4を3日目で取り除きLiClを4日間添加する培養条件として、以降の実験を行った。BMP4を3日目で取り除き2.5mMのLiClを添加した場合のPDGFR−αの経時的な発現経過をFACSにて解析した(図3b,下)。PDGFR−αは時間とともに発現が増加する傾向を示し、LiCl添加4日目には74%もの細胞がPDGFR−α陽性であった。BMP4単独で分化誘導した場合と比較してPDGFR−α陰性ECD陰性分画が21%と半分程度であり、PDGFR−α陰性ECD陽性分画はわずか5%と極めて少なくなっていた(図3c)。これらの分画の遺伝子発現をRT−PCRにて解析すると、予想通りPDGFR−α陽性分画がPax3,Pax7陽性の中胚葉分画であり、Myf5,MyoDも特異的に発現していた。PDGFR−α陰性ECD陽性においてもPax7の発現が認められたが、神経細胞のマーカーであるSox1がこの分画で特異的に発現しており、Pax7は神経系の細胞にも発現していることから、このPax7の発現は神経細胞への分化を現していると考えられる。未分化マーカーであるOct3/4およびNanogと内胚葉マーカーであるFoxa2はPDGFR−α陰性ECD陽性分画に強く発現しており、BMP4単独誘導と同様の結果であった。しかしながらPDGFR−α陰性ECD陰性分画の遺伝子発現はBMP4単独誘導とは異なり、中胚葉マーカーの発現はなく、未分化マーカー及び内胚葉マーカーが弱く発現しているのみであった(図3c)。以上の結果からBM4を3日目で取り除きLiClを4日間添加した骨格筋細胞の分化誘導系においては、PDGFR−α陽性分画が骨格筋前駆細胞を含むPopulationであることが分かった。
次に、得られたPDGFR−α陽性細胞をin vitroで成熟した骨格筋へと分化する方法を試みた(図3d)。マウスの生体において骨格筋の幹細胞である衛星細胞(satellite cell)が骨格筋へと分化する際に、IGF,HGF,FGFが重要な役割を果たす事が知られている(Charge et al.Physiological reviews.(2004);84(1):209−38)。図3dは、Myf5,MyoD陽性の筋芽細胞(Myoblast)がミオゲニン(myogenin),MRF4陽性の筋線維(Myofiber)へと融合する際の成長因子をin vitroで再現した培養方法である。BMP4を3日目で取り除きLiClを4日間添加する培養により誘導されたMyf5,MyoD陽性細胞をPDGFR−αをマーカーに分離し、これをCollagen Type Iディッシュ上に再培養し、初期にはIGF−1,HGF,bFGFを全て加える。筋芽細胞が増殖する際にはこれらの因子は全て促進的に働くが、増殖した筋芽細胞がミオゲニン,MRF4陽性となり、融合する際にはHGF,bFGFは抑制的に働く(Charge et al.Physiological reviews.(2004);84(1):209−38)。そのため一定期間でHGF,bFGFを取り除き、IGF−1単独で培養することでミオゲニン,MRF4陽性細胞が誘導されるかどうかを解析した(図3e)。初めからIGF−1単独で誘導した細胞でもミオゲニンは陽性となるが、MRF4も発現するのは初めの3日間はHGFおよびbFGFを添加した誘導方法であった。この初めの3日間はIGF−1に加えHGFおよびbFGFを添加し、その後4日間はIGF−1単独で再培養した細胞のミオゲニンの発現を蛋白レベルでも確認した(図3f,左)。核がミオゲニン陽性となっている紡錘形の細胞がいくつか確認された。多核になっているものも認められた。またこのミオゲニン陽性細胞を成熟した骨格筋細胞へと分化させるため、さらにIGF−1とHGFで誘導を試みた。7日後に骨格筋アクチン陽性の骨格筋細胞がいくつか認められた(図3f,右)。以上の結果から、本発明者らは、無血清培養系でES細胞から成熟した骨格筋細胞へと誘導する方法を確立した。
本発明によって、無血清培養系で中胚葉前駆細胞を誘導し、さらに骨細胞又は軟骨細胞へ分化させること、或いは骨格筋前駆細胞から骨格筋細胞へ分化させることが可能になった。形成された細胞を患者の骨や筋肉の損傷部位に移植することによって、損傷部位を修復することが可能になる。特に、多能性幹細胞として患者由来の細胞を使用するときには、免疫学的拒絶反応を誘発しない上記分化細胞を作製することができるという格別な利益が提供される。
本発明により、骨、軟骨又は筋肉組織の損傷、欠損又は炎症部位の修復と治療を可能とするので、細胞を利用した再生医療のために有用である。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
[配列表]
本発明により、骨、軟骨又は筋肉組織の損傷、欠損又は炎症部位の修復と治療を可能とするので、細胞を利用した再生医療のために有用である。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
[配列表]
Claims (20)
- 哺乳動物由来の多能性幹細胞をBMP4含有無血清培地で培養してPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を誘導し、該中胚葉前駆細胞を回収することを含む、PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞の作製方法。
- 多能性幹細胞が、胚性幹(ES)細胞である、請求項1記載の方法。
- 培地中のBMP4濃度が、1〜10ng/ml又はそれ以上である、請求項1又は2記載の方法。
- 多能性幹細胞の細胞数が、1×105〜2×105である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
- 培養期間が4日〜7日の間である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
- PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞が、PDGFRα陰性ECD陽性細胞と比べてMsgn、Tbx6及びDll1遺伝子をより多く発現する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞が、VEGFR2、ECD、T及びCad11遺伝子をさらに発現する、請求項6記載の方法。
- PDGFRα陽性中胚葉前駆細胞が、骨芽細胞、骨細胞又は軟骨細胞へ分化する能力を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
- 哺乳動物がヒトである、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項記載の方法によって作製され得る、かつ、PDGFRα陰性ECD陽性細胞と比べてMsgn、Tbx6及びDll1遺伝子をより多く発現することを特徴とするPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞。
- VEGFR2、ECD、T及びCad11遺伝子をさらに発現する、請求項10記載のPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞。
- 請求項10又は11記載のPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞から骨芽細胞、骨細胞又は軟骨細胞へ分化誘導することを含む、骨細胞又は軟骨細胞の形成方法。
- 請求項10又は11記載のPDGFRα陽性中胚葉前駆細胞を含む、骨又は軟骨組織形成用組成物。
- 骨髄又は骨損傷部位への移植用である、請求項13記載の組成物。
- 哺乳動物由来の多能性幹細胞をBMP4含有無血清培地で培養したのち、該培地からBMP4を除去し、さらに、LiClを含有する無血清培地で培養し、これによって骨格筋前駆細胞へ分化誘導することを含む、骨格筋細胞の形成方法。
- 多能性幹細胞が、胚性幹(ES)細胞である、請求項15記載の方法。
- LiCl含有無血清培地で培養後、生じた細胞群からPDGFRα陽性骨格筋前駆細胞を選抜することをさらに含む、請求項16記載の方法。
- PDGFRα陽性骨格筋前駆細胞を、IGF−1、HGF及びFGFを含む無血清培地で培養したのち、培地からHGFとFGFを取り除きIGF−1単独で培養し、その後、IGF−1及びHGFの存在下で培養し、これによって骨格筋細胞を誘導することをさらに含む、請求項17記載の方法。
- PDGFRα陽性骨格筋前駆細胞が、Myf5陽性及びMyoD陽性の細胞である、請求項17又は18記載の方法。
- 骨格筋細胞が、ミオゲニン陽性及びMRF4陽性である、請求項15〜19のいずれか1項記載の方法。
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