JPWO2009136505A1 - 緑色蛍光体 - Google Patents

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Abstract

優れた吸収率を示す緑色蛍光体を提供する。Sr、Ba及びCaのうちの一種又は二種以上の組み合わせからなる元素、Ga及びSを含有する母体結晶と、発光中心とを含有する緑色蛍光体であって、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布において、D10が4.5μm〜30μmであることを特徴とする緑色蛍光体を提案する。

Description

本発明は、緑色蛍光体に関する。詳しくは、青色LEDや近紫外LEDで励起することができ、照明用蛍光体として用いたり、液晶のバックライトや、FED(電界放射型ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイ)、EL(エレクトロルミネッセンス)などのディスプレイ用蛍光体として用いたりすることができる緑色蛍光体に関する。
現在の照明用光源の主流は、蛍光灯や白熱電球であるが、LED(発光ダイオード)を光源に用いたものは、蛍光灯等に比べて消費電力が少なく、寿命も長く、手で触っても熱くないなど安全性の面でも優れている上、水銀等の有害物質を含まず環境面でも優れているため、近い将来、照明用光源の主流となることが期待されている。
現行の白色LEDは、青色LEDとYAG:Ce(黄)とを組み合わせて構成されているが、自然な発色性を示す演色性に劣り、特に赤色物体や人肌をこのような現行の白色LEDで照らしても自然光に照らされた色を再現できないという問題を抱えていた。そこで、このような現行白色LEDの演色性を改善する手法として、近紫外LEDと赤、緑、青の3種類の蛍光体とを組み合わせたり、青色LEDと赤、緑の2種類の蛍光体とを組み合わせたりして白色LEDを構成することが検討されており、かかる目的に使用する緑色蛍光体として、SrGa24:Euが開示されている(特許文献1、2及び3参照)。
特開2002−060747号公報 特開2007−056267号公報 特開2007−214579号公報
従来、開示されていたSrGa24:Euからなる緑色蛍光体は、発光効率をさらに高める必要があった。発光効率を高めるためには、外部量子効率(=内部量子効率×吸収率)の高い蛍光体を用いることが重要である。そこで本発明は、外部量子効率を左右する要因の一つである吸収率に着目し、発光効率を高めるべく、優れた吸収率を示す緑色蛍光体を提供せんとするものである。
本発明は、Sr、Ba及びCaのうちの一種又は二種以上の組み合わせからなる元素、Ga及びSを含有する母体結晶と、発光中心とを含有する緑色蛍光体であって、 レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算(「積算通過分率」とも称される)10%の粒子径(D10)が4.5μm〜30μmであることを特徴とする緑色蛍光体を提案するものである。
本発明の緑色蛍光体によれば、近紫外領域〜青色領域の波長(300nm〜510nm程度)の励起光によって緑色を発光し、しかも、優れた吸収率を示し、高い外部量子効率を実現できる緑色蛍光体を提供することができる。
本発明者の研究により、Sr、Ba及びCaのうちの一種又は二種以上の組み合わせからなる元素、Ga及びSを含有する母体結晶と、発光中心とを含有する緑色蛍光体においては、その吸収率は、中心粒径を示すD50や平均粒径との相関性が低い一方、D10との相関性が極めて高いことが分かった。そこで、このような新たな知見に基づき、本発明は、前記緑色蛍光体のD10を規定することにより、吸収率の高い緑色蛍光体を提案するものである。
サンプル(N=41)について、D5、D10、D50、D90などの粒径種別ごとに、粒径(μm)と吸収率(%)との関係を示したグラフである。 (A)は実施例2−1で得られた蛍光体の発光スペクトルであり、(B)はその励起スペクトルである。
以下に本発明の実施形態について詳細に述べるが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る緑色蛍光体(以下「本緑色蛍光体」という)は、Sr、Ba及びCaのうちの一種又は二種以上の組み合わせからなる元素と、Ga及びSとを含有する母体結晶に、発光中心としてEu2+をドープしてなる緑色蛍光体である。
本緑色蛍光体は、一般式で言えば、MGa24:Eu2+(但し、Mは、Sr、Ba及びCaのうちの一種或いは二種以上の組合せからなる元素)で示される結晶を含む蛍光体である。
但し、本緑色蛍光体における構成元素の質量比率としては、Mについては、全体の13〜34質量%、好ましくは15〜30質量%、特に好ましくは17〜28質量%が許容され、Gaについては、全体の34〜46質量%、好ましくは37〜43質量%、特に好ましくは38〜42質量%が許容される。
本緑色蛍光体の発光中心(発光イオン)は、2価のEu2+を含むもの、特に2価のEu2+のみであるのが好ましい。Eu2+の発光波長(色)は、母結晶に強く依存し、母結晶によって多彩な波長を示すことが知られているが、本緑色蛍光体が特定する母結晶であれば緑色を示す発光スペクトルを得ることができる。
Eu2+の濃度は、母結晶中のSrの濃度の0.1〜10mol%であることが好ましく、中でも0.5〜7mol%、その中でも特に1〜5mol%であるのが好ましい。
なお、発光中心(発光イオン)として、Eu2+以外のイオン、例えば希土類イオン及び遷移金属イオンからなる群より選ばれた1種又は2種以上のイオンを用いても同様の効果を期待することができる。希土類イオンとしては、例えばSc、Tb、Er等のイオンが挙げられ、遷移金属イオンとしては、例えばMn、Cu、Ag、Cr、Ti等のイオンが挙げられる。
(粒度分布)
本緑色蛍光体は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算10%の粒子径(D10)が4.5μm〜30μmであることが重要であり、5μm〜30μm、特に7μm〜30μmであることが好ましい。
本緑色蛍光体の組成の緑色蛍光体においては、D10と吸収率との相関性が特に高く、D10を4.5μm以上に規制することにより蛍光体粒子の吸収率(光源の光を蛍光体が吸収する効率)を65%以上にすることができ、5μm以上に規制することにより蛍光体粒子の吸収率を70%以上にすることができ、蛍光体粒子の外部量子効率(光を取り出す効率)を高めることができる。但し、D10が30μmを超えると吸収率が低下し、用途によっては、蛍光体を樹脂中に分散させて使用するため、その場合には単位体積当たりの充填率が低下する可能性があるため好ましくない。また、低粘性樹脂を使用した場合は分散性が悪くなるため、白色LEDなど発光素子の性能を十分に引き出すことが難しくなる可能性がある。よって、D10の上限値は30μm以下であるのが好ましい。
また、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算5%の粒子径(D5)に関しては、3.5μm〜20μmであるのが好ましく、特に4.5μm〜20μm、中でも特に5μm〜20μmであるのが好ましい。
本緑色蛍光体の組成の緑色蛍光体においては、D5も吸収率との相関性が高いため、D5を3.5μm以上に規制することによって、蛍光体粒子の吸収率をより確実に65%以上にすることができ、4.5μm以上に規制することにより蛍光体粒子の吸収率をより確実に70%以上にすることができ、蛍光体粒子の外部量子効率をより一層高めることができる。
他方、D5の上限は、D10と同様の理由で20μm以下であるのが好ましい。
さらに、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算90%の粒子径(D90)が7.5μm以上であるのが好ましく、特に13μm以上、その中でも特に22μm以上であるのが好ましい。
その一方で、150μmより大きい粒径、特に190μmより大きい粒径のものは、吸収率を下げることが判明しているため、D90は190μm以下(特に190μm未満)であるのが好ましく、中でも100μm以下(特に100μm未満)、その中でも特に50μm以下(特に50μm未満)であるのが特に好ましい。
また、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算50%の粒子径(D50)は7μm〜50μmであるのが好ましく、特に8μm〜50μm、中でも特に12μm〜45μmであるのが好ましい。
そしてこの際、小粒径側からの通過分積算50%の頻度(%、p50という)に対する、小粒径側からの通過分積算10%の頻度(%、p10という)の割合(p10/p50)が、0.20〜0.65であるのが好ましく、特に0.20〜0.60、中でも特に0.20〜0.55であるのが好ましい。
ここで、「頻度」とは、0.1μm〜1000μmの範囲を128chに区分した際に、該当するchの粒径の頻度(%)を意味するものである。
(比表面積)
本緑色蛍光体の比表面積は、0.20〜1.2m2/gであるのが好ましく、特に0.22〜0.90m2/g、中でも特に0.25〜0.60m2/gであるのが好ましい。
(本緑色蛍光体の特徴)
本緑色蛍光体は、近紫外領域〜青色領域の波長(300nm〜510nm程度)の光によって励起され、緑色光を発光するものである(図2(A)(B)参照)。
本緑色蛍光体の発光スペクトルに関して言えば、波長300nm〜510nm程度の光励起によって、波長502nm±30nm〜557nm±30nmの領域に発光ピークを有するという特徴を備えており、Sr、Ba及びCaの比率を変えることで、波長502nm±30nm〜557nm±30nmの範囲内で緑色の色調を調整することができる。
ちなみに、BaGa24:Euの発光ピークは502nm±30nmであり、SrGa24:Euの発光ピークは536nm±30nmであり、CaGa24:Euの発光ピークは 557nm±30nmである。
なお、本緑色蛍光体は、同一組成であれば、近紫外領域〜青色領域の波長(300nm〜510nm程度)のいずれの波長で励起しても、発光スペクトルの幅、位置が変わらない点にも一つの特徴がある。
CIE色度座標について言えば、本緑色蛍光体は、x=0.05〜0.40、y=0.50〜0.80で示される緑色光、特にx=0.15〜0.35、y=0.60〜0.75で示される緑色光、中でもx=0.25〜0.33、y=0.65〜0.73で示される緑色光を発光することができ、Sr、Ba及びCaの比率を変えることで緑色の色調を調整することができる。
ちなみに、BaGa24:EuのCIE色度座標は(0.13,0.49)であり、SrGa24:EuのCIE色度座標は(0.30,0.67)であり、BaGa24:EuのCIE色度座標は(0.39,0.60)である。
本緑色蛍光体の吸収率は、65%以上とすることができ、上記のように粒度分布を制御することによって、さらに70%以上、またさらに75%以上に調整することができる。
このように吸収率を高めることができる結果、本緑色蛍光体の外部量子効率は、30%以上とすることができ、上記のように粒度分布を制御することによって、さらに35%以上、またさらに40%以上に調整することができる。
(製造方法)
次に、本緑色蛍光体の好ましい製造方法の一例について説明する。但し、下記に説明する製造方法に限定されるものではない。
本緑色蛍光体は、Sr原料、Ba原料及びCa原料のいずれか或いはこれらの2種類以上、および、Ga原料、S原料、並びにEu原料などの原料をそれぞれ秤量して混合し、還元雰囲気中900〜1400℃で焼成し、スタンプミルやらいかい機などで解砕した後、篩などで分級し、好ましくはさらにエタノールをはじめとする非水系有機溶媒や水に沈降させて上澄みを除いて乾燥させるようにして得ることができる。
上記のSr原料、Ba原料及びCa原料としては、各元素の酸化物の他、複酸化物、炭酸塩等の塩を挙げることができる。
Ga原料としては、Ga23、Ga23などのガリウム塩を挙げることができる。
S原料としては、SrSのほか、Ga23、EuS、S、BaS、SiS2、Ce23、H2Sガス等を挙げることができる。
Eu原料としては、EuS、EuF、Eu、EuCl等のユウロピウム化合物(Eu塩)を挙げることができる。
演色性を向上させるために、Pr、Smなどの希土類元素を色目調整剤として原料に添加してもよい。
励起効率の向上のために、Sc、La、Gd、Lu等の希土類族元素から選択される1種以上の元素を増感剤として原料に添加するようにしてもよい。
ただし、これらの添加量は、Srに対してそれぞれ5モル%以下とするのが好ましい。これらの元素の含有量が5モル%を超えると、異相が多量に析出し、輝度が著しく低下するおそれがある。
また、アルカリ金属元素、Ag等の1価の陽イオン金属、Cl-、F-、I-等のハロゲンイオンを電荷補償剤として原料に添加するようにしてもよい。その添加量は、電荷補償効果及び輝度の点で、アルミニウム族や希土類族の含有量と等量程度とするのが好ましい。
原料の混合は、乾式、湿式いずれで行なってもよい。
乾式混合する場合、その混合方法を特に限定するものではなく、例えばジルコニアボールをメディアに用いてペイントシェーカーやボールミル等で混合し、必要に応じて乾燥させて、原料混合物を得るようにすればよい。
湿式混合する場合は、原料を懸濁液の状態とし、上記同様にジルコニアボールをメディアに用いてペイントシェーカーやボールミル等で混合した後、篩等でメディアを分離し、減圧乾燥や真空乾燥などの適宜乾燥法によって懸濁液から水分を除去して乾燥原料混合物を得るようにすればよい。
焼成する前に、必要に応じて、上記如く得られた原料混合物を粉砕、分級、乾燥を施すようにしてもよい。但し、必ずしも粉砕、分級、乾燥を施さなくてもよい。
焼成は、1000℃以上で焼成するのが好ましい。
この際の焼成雰囲気としては、少量の水素ガスを含有する窒素ガス雰囲気、一酸化炭素を含有する二酸化炭素雰囲気、硫化水素、二硫化炭素、その他の不活性ガス又は還元性ガスの雰囲気などを採用することができるが、中でも硫化水素雰囲気で焼成するのが好ましい。
焼成温度が1000℃以上であれば、十分かつ均一な焼成を行うことできる。焼成温度の上限は焼成炉の耐久温度、生成物の分解温度等によって決まるが、本緑色蛍光体の製造方法においては1000〜1200℃で焼成することが特に好ましい。また、焼成時間は焼成温度と関連するが、2〜24時間程度である。
上記焼成において、原料混合物がイオウ原料を含まない場合には、硫化水素又は二硫化炭素の雰囲気中で焼成する必要がある。しかし、原料混合物中にイオウ原料を含む場合には、硫化水素、二硫化炭素又は不活性ガスの雰囲気中で焼成することができる。この場合の硫化水素及び二硫化炭素はイオウ化合物となることもあり、また生成物の分解を抑制する機能もある。
他方、焼成雰囲気に硫化水素又は二硫化炭素を用いる場合には、これらの化合物もイオウ化合物となるため、例えば、原料成分としてBaSを用いる場合には、バリウム化合物及びイオウ化合物を用いたことになる。
本緑色蛍光体の製造においては、焼成後、スタンプミルやらいかい機、ペイントシェーカーなどで解砕し、次いで篩などで分級する必要がある。解砕する際、粒度が細かくなり過ぎることのないように解砕時間を調整するのが好ましい。
また、篩などによる分級では、150μmより大きい粒径、特に130μmより大きい粒径、中でも特に110μmより大きい粒径をカットするように分級するのが好ましい。また、2μmより小さい粒径、特に3μmより小さい粒径、中でも特に4μmより小さい粒径をカットするように分級するのが好ましい。
さらに、エタノールをはじめとする非水系有機溶媒や水などに投入し、超音波振動を与えつつ攪拌した後に静置させ、上澄みを除いて沈降物を回収し、次いで乾燥させるのが好ましい。この最後の溶媒沈降分級処理により、外部量子効率を顕著に高めることができる。
(用途)
本緑色蛍光体は、励起源と組合わせて緑色発光素子乃至装置を構成することができ、各種用途に用いることができる。例えば一般照明のほか、特殊光源、液晶のバックライトやEL、FED、CRT用表示デバイスなどの表示デバイスなどに利用することができる。
本緑色蛍光体とこれを励起し得る励起源とを組合わせた緑色発光素子乃至装置の一例として、例えば波長300nm〜510nmの光(すなわち、紫光〜青色光)を発生する発光体の近傍、すなわち該発光体が発光した光を受光し得る位置に本緑色蛍光体を配置して構成される緑色発光素子乃至装置を挙げることができる。具体的には、発光体からなる発光体層上に、本緑色蛍光体からなる蛍光体層を積層するようにすればよい。
この際、蛍光体層は、例えば、粉末状の本緑色蛍光体を、結合剤と共に適当な溶剤に加え、充分に混合して均一に分散させて塗布液とし、得られた塗布液を、発光層の表面に塗布及び乾燥させて塗膜(蛍光体層)を形成するようにすればよい。
また、本緑色蛍光体をガラス組成物や樹脂組成物に混練してガラス層内或いは樹脂層内に本緑色蛍光体を分散させるようにして蛍光体層を形成することもできる。
さらにまた、本緑色蛍光体をシート状に成形し、このシートを発光体層上に積層するようにしてもよいし、また、本緑色蛍光体を発光体層上に直接スパッタリングさせて製膜するようにしてもよい。
また、本緑色蛍光体と、赤色蛍光体と、必要に応じて青色蛍光体と、これらを励起し得る励起源とを組合わせて白色発光素子乃至装置を構成することができる。このような白色発光素子乃至装置は、例えば一般照明のほか、特殊光源、液晶のバックライトやEL、FED、CRT用表示デバイスなどの表示デバイスなどに利用することができる。
本緑色蛍光体と、赤色蛍光体と、必要に応じて青色蛍光体と、これらを励起し得る励起源とを組合わせて構成する白色発光素子乃至装置の一例として、例えば波長300nm〜510nmの光(すなわち、紫光〜青色光)を発生する発光体の近傍、すなわち該発光体が発光した光を受光し得る位置に本緑色蛍光体を配置すると共に赤色蛍光体と必要に応じて青色蛍光体とを配置することにより構成される白色発光素子乃至装置を挙げることができる。具体的には、発光体からなる発光体層上に、本緑色蛍光体からなる蛍光体層と、赤色蛍光体からなる蛍光体層と、必要に応じて青色蛍光体からなる蛍光体層とを積層するようにすればよい。
また、粉末状の本緑色蛍光体と赤色蛍光体と必要に応じて青色蛍光体とを、結合剤と共に適当な溶剤に加え、充分に混合して均一に分散させ、得られた塗布液を、発光層の表面に塗布及び乾燥して塗膜(蛍光体層)を形成するようにしてもよい。
また、本緑色蛍光体と赤色蛍光体と必要に応じて青色蛍光体とを、ガラス組成物や樹脂組成物に混練してガラス層内或いは樹脂層内に蛍光体を分散させるようにして蛍光体層を形成することもできる。
また、青色LED或いは近紫外LEDからなる励起源上に、本緑色蛍光体と赤色蛍光体を樹脂中に混練してなる蛍光体層を形成するようにしてもよい。
さらにまた、本緑色蛍光体と赤色蛍光体と必要に応じて青色蛍光体とをそれぞれシート状に成形し、このシートを発光体層上に積層するようにしてもよいし、また、本緑色蛍光体と赤色蛍光体とを発光体層上に直接スパッタリングさせて製膜するようにしてもよい。
(用語の解説)
本発明において「緑色発光素子乃至装置」或いは「白色発光素子乃至装置」における「発光素子」とは、少なくとも蛍光体とその励起源としての発光源とを備えた、比較的小型の光を発する発光デバイスを意図し、「発光装置」とは、少なくとも蛍光体とその励起源としての発光源とを備えた、比較的大型の光を発する発光デバイスを意図するものである。
本発明において「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であるのが好ましい」旨の意図も包含する。
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明はこれらに限定されて解釈されるものではない。
<レーザー回折粒度分布測定機を用いた粒度体積基準分布測定>
99.5%エタノール溶液で循環系内部を満たし、超音波分散などの分散処理をすることなく(装置の超音波もOFFとした)、レーザー回折粒度分布測定機(堀場製作所社製「LA−920」)を用いて、粉末試料を透過率90〜85%になるように投入し、測定セル内の溶媒中粒子を循環させながら粒度を測定した。
この測定で得られた粒度体積基準分布図(チャート)から、D5、D10、D50、D90などを求めた。
なお、溶媒に対する相対屈折率は1.20に設定し、循環速度を3に設定した。
<比表面積の測定>
比表面積(SSA)は、島津製作所社製「Flow SorbII2300」にて、BET1点法で測定した。
<PL発光スペクトルの測定>
分光蛍光度計(日立社製、F−4500)を用いてPL (フォトルミネッセンス)スペクトルを測定した。
<CIE色度座標の測定>
PLスペクトルから、下記の式を用いて輝度発光色(CIE色度座標xy値)を測定した。
Figure 2009136505
<吸収率、内部量子効率、外部量子効率の測定>
分光蛍光光度計FP−6500、積分球ユニットISF−513(日本分光株式会社製)を用い、固体量子効率計算プログラムに従い行った。なお、分光蛍光光度計は、副標準光源およびローダミンBを用いて補正した。
励起光466nmとした場合のSrGa24:Eu蛍光体の吸収率、内部量子効率、外部量子効率の計算式を以下に示す。
Figure 2009136505
[試験1]
出発原料としてSrS、Ga23及びEuSを用い、Sr/Sの原子比が1となるようにSrS及びGa23を配合し、Srに対して1.0モル%となるようにEuSを配合し、φ3mmのジルコニアボールをメディアに用いて混合し、得られた混合物を、硫化水素雰囲気中、1000℃で6時間焼成した。次に、焼成した得たものを解砕し、目開き140メッシュ及び440メッシュの篩を用いて、目開き140メッシュの篩下で且つ目開き440メッシュの篩上を回収し、粉末を回収してサンプルを得た。
この際、混合に用いた装置及び時間、解砕に用いた装置及び時間を変更して、様々な粒度のサンプルを得た。
また、一部のサンプルについては、前述のように回収した粉末を、99.5%エタノール溶液(25℃)に入れて攪拌しながら超音波(本多電子株式会社製「W−113」)をかけて分散させ、静置した後、上澄みを除いて沈降したものだけを回収し、乾燥機(100℃)で10分乾燥させてサンプル(サンプル1−41)を得た。
このようにして得られたサンプル1−41について、それぞれ粒度体積基準分布測定を行ってD5、D10、D50、D90、D95、D99.9を測定すると共に、それぞれについて吸収率を測定し(表1)、粒径(D5、D10、D50、D90、D95、D99.9)と吸収率との関係をグラフにプロットした(図1)。また、各粒径についてプロットを結んで相関係数を求めてグラフ中に記入した。
この結果、少なくとも本緑色蛍光体の組成、すなわちSr、Ba及びCaのうちの一種又は二種以上の組み合わせからなる元素と、Ga及びSとを含有する母体結晶に、発光中心としてEuをドープしてなる緑色蛍光体においては、異なる製造方法で得たサンプルであっても、吸収率とD50との関係では、相関係数がR2<0.5を示す一方、D5及びD10との関係ではR2>0.9を示すことが認められた。すなわち、本緑色蛍光体の組成においては、中心粒径を示すD50を規定したのでは、吸収率を改善することはできないが、D10乃至D5を規定することにより、吸収率を改善できることを見出すことができた。
Figure 2009136505
[実施例1〜3及び比較例1〜2]
前記で得られた知見に基づき、粒度分布と、吸収率や外部量子効率、CIE等との関係をより正確に把握するため、粒度分布に基づいてグループ分けした実施例1群、2群、3群及び比較例群について比較検討した。
なお、実施例1群、2群、3群及び比較例群は、各種製造方法で得られた蛍光体粉体を、下記表2に示すように、粒度分布に基づいてグループ分けしたものである。
Figure 2009136505
(実施例及び比較例の製造方法)
出発原料としてSrS、Ga23及びEuSを用い、Sr/Sの原子比が1となるようにSrS及びGa23を配合し、Srに対して1.0モル%となるようにEuSを配合し、φ3mmのジルコニアボールをメディアに用いてペイントシェイカーで100分間混合し、得られた混合物を、硫化水素雰囲気中、900℃〜1000℃で1時間〜24時間焼成した(実施例によっては、多段階的に焼成を行った。)
次に、らいかい機(日陶科学社製「ALM−360T」)で0.5分〜25分間解砕するか、或いは、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製ペイントシェーカー「100V」)で10分〜30分間解砕した後、目開き140メッシュ及び440メッシュの篩を用いて、目開き140メッシュの篩下で且つ目開き440メッシュの篩上を回収し、一般式SrGa24:Eu2+で示される結晶からなる蛍光体粉末を得た。
また、実施例によっては、さらに次のようなエタノール沈降分級処理を行った。
すなわち、前記のように篩分けして回収した粉末を、さらに99.5%エタノール溶液(25℃)に入れて、実施例によっては超音波(本多電子株式会社製「W−113」)を28Hz、45Hz、100Hzの順番に1分〜2分かけて分散させた後、30秒〜10分間静置した(この時間が、表3に示したエタノール沈降時間)。次いで、上澄みを除いて沈降したものだけを回収し、乾燥機(100℃)で10分乾燥させて、一般式SrGa24:Eu2+で示される結晶からなる蛍光体粉末を得た。
なお、各実施例及び比較例における焼成条件、粉砕条件、分級条件については表3を参照されたい。
各実施例及び比較例で得られた蛍光体粉末の各種物性の測定結果、すなわち粒径、通過分積算50%の頻度に対する通過分積算10%の頻度の割合(p10/p50)、比表面積、吸収率、外部量子効率及びCIE色度座標の測定結果を表4に示した。
Figure 2009136505
Figure 2009136505
(考察)
この結果、励起スペクトル(図2(B))より、本緑色蛍光体(サンプル1)は、波長300nm〜510nmの光(すなわち、紫光〜青色光)により十分励起され、特に2つのピークが見られることから、近紫外光及び青色光によってより十分励起されることを確認した。
また、本明細書に示さない試験の結果、Sr、Ba及びCaの比率を変えることで、波長502nm±30nm〜557nm±30nmの範囲内で発光ピーク位置を調整でき、また、Sr、Ba及びCaの比率を変えることで、CIE色度座標x=0.05〜0.40、y=0.50〜0.80の範囲で緑色の色調を調整できることが確認され、その際、本緑色蛍光体は、同一組成であれば、近紫外領域〜青色領域の波長(300nm〜510nm程度)のいずれの波長で励起しても、発光スペクトルの幅、位置が変わらないことを確認した。
蛍光体粒子の吸収率を65%以上に高める、好ましくは70%以上に高める、より好ましくは75%以上に高めるという観点から、D10に関しては4.5μm〜30μmであることが必要であり、好ましくは5μm〜30μm、より好ましくは7μm〜30μmである。また、D5に関しては、3.5μm〜20μmであることが好ましく、特に4.5μm〜20μm、中でも特に5μm〜20μmであるのが好ましい。D90に関しては、7.5μm以上、特に13μm以上、その中でも特に22μm以上であるのが好ましく、また、190μm以下、中でも100μm以下、その中でも特に50μm以下(特に50μm未満)であるのが特に好ましいことが認められた。
また、同じく蛍光体粒子の吸収率を65%以上に高める、好ましくは70%以上に高める、より好ましくは75%以上に高めるという観点から、D50に関しては、7μm〜50μmであることが好ましく、より好ましくは8μm〜50μm、特により好ましくは12μm〜50μmであることが認められた。
そして、通過分積算50%の頻度(%、p50という)に対する通過分積算10%の頻度(%、p10という)の割合(p10/p50)に関しては、0.20〜0.65であることが好ましく、特に0.20〜0.60、中でも特に0.20〜0.55であるのが好ましいことが認められた。
ここで、「頻度」とは、0.1μm〜1000μmの範囲で128chの場合の該当する粒径の頻度(%)を意味するものである。
また、エタノール沈降分級処理(エタノールで洗浄及び沈降分級)すると、吸収率および外部量子効率が顕著に向上することが確認できた。
但し、CaS:EuおよびSrS:Euに対して同様の処理を行った結果、外部量子効率が顕著に向上する効果は認められなかった。
[実施例4〜8及び比較例3]
出発原料としてSrS、Ga23及びEuSを用い、Ga/Srの原子比が表5に示す値となるようにSrS及びGa23を配合すると共に、焼成温度を表5に示す温度とした以外は、実施例2−10と同様に焼成及び解砕までを行い、一般式SrGa24:Eu2+で示される結晶からなる蛍光体粉末(サンプル)を得た。
また、さらにその後、目開き140メッシュ及び440メッシュの篩を用いて、目開き140メッシュの篩下で且つ目開き440メッシュの篩上を回収する分級を行い、一般式SrGa24:Eu2+で示される結晶からなる蛍光体粉末(サンプル)を得た。
Figure 2009136505
分級前サンプル(焼成後)について注目すると、Ga/Sr>2.00にすることで、D10の値に大きな差異はないにもかかわらず、D50の値は大幅に大きくなることが分かった。つまり、Ga/Sr>2.00にすることで、吸収率低下の要因である微粒を除去しやすくなり、分級収率を改善することができ、工業的には生産性が格段に向上することができる。
よって、このような分級収率の観点から、Ga/Srは、2.2〜3.0の範囲内であることがより好ましく、特に2.4〜2.7の範囲内であることがさらに好ましいものと考えることができる。
[試験1]
出発原料としてSrS、Ga23及びEuSを用い、Srに対して1.0モル%となるようにEuSを配合し、φ3mmのジルコニアボールをメディアに用いて混合し、得られた混合物を、硫化水素雰囲気中、1000℃で6時間焼成した。次に、焼成した得たものを解砕し、目開き140メッシュ及び440メッシュの篩を用いて、目開き140メッシュの篩下で且つ目開き440メッシュの篩上を回収し、粉末を回収してサンプルを得た。
この際、混合に用いた装置及び時間、解砕に用いた装置及び時間を変更して、様々な粒度のサンプルを得た。
また、一部のサンプルについては、前述のように回収した粉末を、99.5%エタノール溶液(25℃)に入れて攪拌しながら超音波(本多電子株式会社製「W−113」)をかけて分散させ、静置した後、上澄みを除いて沈降したものだけを回収し、乾燥機(100℃)で10分乾燥させてサンプル(サンプル1−41)を得た。
(実施例及び比較例の製造方法)
出発原料としてSrS、Ga23及びEuSを用いSrに対して1.0モル%となるようにEuSを配合し、φ3mmのジルコニアボールをメディアに用いてペイントシェイカーで100分間混合し、得られた混合物を、硫化水素雰囲気中、900℃〜1000℃で1時間〜24時間焼成した(実施例によっては、多段階的に焼成を行った。)
次に、らいかい機(日陶科学社製「ALM−360T」)で0.5分〜25分間解砕するか、或いは、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製ペイントシェーカー「100V」)で10分〜30分間解砕した後、目開き140メッシュ及び440メッシュの篩を用いて、目開き140メッシュの篩下で且つ目開き440メッシュの篩上を回収し、一般式SrGa24:Eu2+で示される結晶からなる蛍光体粉末を得た。

Claims (6)

  1. Sr、Ba及びCaのうちの一種又は二種以上の組み合わせからなる元素、Ga及びSを含有する母体結晶と、発光中心とを含有する緑色蛍光体であって、
    レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算10%の粒子径(D10)が4.5μm〜30μmであることを特徴とする緑色蛍光体。
  2. レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算90%の粒子径(D90)が100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の緑色蛍光体。
  3. 発光中心としてEu2+を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の緑色蛍光体。
  4. 波長300nm〜510nmの励起スペクトルを示すことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の緑色蛍光体。
  5. 励起源と、請求項1〜4の何れかに記載の緑色蛍光体とを備えた緑色発光素子乃至装置。
  6. 励起源と、請求項1〜4の何れかに記載の緑色蛍光体と、赤色蛍光体とを備えた白色発光素子乃至装置。
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