JPWO2009133668A1 - 水溶性フタロシアニン色素、水系インク組成物及び近赤外線吸収剤 - Google Patents

水溶性フタロシアニン色素、水系インク組成物及び近赤外線吸収剤 Download PDF

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Abstract

本発明は、下記式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩(式中、Mは金属原子等、Rはスルホ基又はカルボキシ基を表し、mは0乃至2、nは12乃至16、pは0乃至4の整数を、それぞれ表す。)、及び、当該色素又はその塩の少なくとも1種を含有する水系インク組成物に関する。本発明により、簡便かつ低コストで、近赤外領域に吸収を有し、水溶性に優れたフタロシアニン色素、及び、該色素を含有し、貯蔵安定性に優れた水系インク組成物を提供することができる。

Description

本発明は近赤外領域に吸収を有する水溶性のフタロシアニン色素又はその塩、及びこれを含有する水系インク組成物及び近赤外線吸収剤に関する。
従来より700〜2000nmの近赤外領域に吸収を有する近赤外線吸収色素は、産業上の様々な用途での利用が検討されている。例を挙げるとCD−R等の光情報記録媒体用途、サーマルCTP、フラッシュトナー定着又はレーザー感熱記録等の印刷用途、及び熱遮断フィルムにおける用途等に利用されている。さらには、選択的に特定の波長域の光を吸収するという特性を用い、PDPフィルター等に用いられる近赤外線カットフィルター、植物成長調整用フィルム等にも使用されている。また、近赤外線吸収色素を溶媒に溶解又は分散させることによりインク化し、目視では認識が困難であり、近赤外線検出器等のみで読み取りが可能な、近赤外線吸収インクとして使用することも可能である。
インクは溶媒の主成分により、水系のものと有機溶剤系のものに大別されるが、環境問題の点からも水系インクの使用が強く望まれており、水に可溶な近赤外線吸収色素の開発が望まれている。
近赤外線吸収色素としては、インモニウム色素、ジインモニウム色素、ジチオール金属錯体色素、シアニン色素等が知られている。
特許文献1では水溶性を付与させたシアニン色素が記載されているが、水溶液にした場合に、その貯蔵安定性が悪く実用的なものではなかった。
特許文献2には水溶性を付与させ、さらに水溶液での貯蔵安定性がよいシアニン色素が記載されている。
一方、特許文献3や特許文献4などにあるように、フタロシアニン色素でも近赤外線を吸収するものは多く知られている。
特に特許文献4には、フェニルチオ又はアルキルチオ等を置換基として有するするフタロシアニン化合物が多数例示され、赤外インク等の用途も開示されているが、その合成例に示されているものは何れも有機溶剤に可溶なフタロシアニン化合物であり、水系インクについての開示は無い。。
特許文献5には、近赤外線吸収ナフタロシアニン染料及びガリウムナフタロシアニンを含む水性インクジェットインクが開示されている。
米国特許第2895955号 特公平5−13190号 特開昭63−270765号 特開昭60−209583号 特表2008−509257号
本発明は前記したような状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡便かつ低コストで、近赤外領域に吸収を有し、かつ、水溶性を有するフタロシアニン色素及び、該水溶性フタロシアニン色素を含有する貯蔵安定性に優れた水系インク組成物及び近赤外線吸収剤を提供することにある。
本発明者等は前記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素及びそれを含有する水系インク組成物が、前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させたものである。
即ち、本発明は、以下に記載する発明を含むものである。
(1)
下記式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩を含有する水系インク組成物、
Figure 2009133668
[式中、Mは水素原子、金属原子、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表し、
Rはスルホ基又はカルボキシ基を表し、
mは0乃至2、nは12乃至16、pは0乃至4の整数を、それぞれ表す。]、
(2)
式(1)においてMがFe、Co、Cu、Al、Ni、Zn又はVOである上記(1)に記載の水系インク組成物、
(3)
式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する上記(1)又は(2)に記載の水系インク組成物、
(4)
有機溶剤をさらに含有する上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の水系インク組成物、
(5)
インクジェット記録用である上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の水系インク組成物、
(6)
式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩が、下記式(2)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩である上記(1)、(4)又は(5)に記載の水系インク組成物、
Figure 2009133668
[式中、qは0乃至2の整数を表す]、
(7)
式(2)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する上記(6)に記載の水系インク組成物。
(8)
式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩が水性媒体に溶解している上記(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の水系インク組成物。
(9)
式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩が下記式(101)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩である上記(1)、(4)又は(5)に記載の水系インク組成物、
Figure 2009133668
[式中、rは0乃至2の整数を表す]、
(10)
式(101)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する上記(9)に記載の水系インク組成物、
(11)
式(1)において、MがCu又はVO、Rがカルボキシ基、mが1、nが14乃至16の整数、pが0乃至2の整数である上記(8)に記載の水系インク組成物、
(12)
上記(1)乃至(11)のいずれか1項に記載の水系インク組成物のインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法、
(13)
被記録材が情報伝達用シートである上記(12)に記載のインクジェット記録方法、
(14)
情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシ−トである上記(13)に記載のインクジェット記録方法、
(15)
上記(1)乃至(11)のいずれか1項に記載の水系インク組成物を含む容器を装填したインクジェットプリンタ、
(16)
上記(1)乃至(11)のいずれか一項に記載の水系インク組成物によって記録された記録物、
(17)
下記式(2)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
Figure 2009133668
[式中、qは0乃至2の整数を表す]、
(18)
上記(17)に記載の式(2)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する色素混合物、
(19)
下記式(101)
Figure 2009133668
[式中、rは0乃至2の整数を表す]
で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(20)
上記(19)に記載の式(101)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する色素混合物、
(21)
上記(1)に記載の式(1)において、MがCu又はVO、(R)m置換フェニルチオ基がo−カルボキシフェニルチオ基、nが14乃至16の整数、pが0乃至2の整数である水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(22)
上記(1)に記載の式(1)において、MがCu又はVO、Rはカルボキシ基、mは1、nは12乃至16、pは0乃至4の整数である水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する色素混合物であって、かつ、pが1〜4である化合物を、少なくとも1種含有し、その総含有量が色素混合物の総量に対して、高速液体クロマトグラフィーの面積比で、3〜70%である水溶性フタロシアニン色素混合物又はその塩、
(23)
式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩が、式(1)において、MがCu又はVO、Rはカルボキシ基、mは1、nは12乃至16、pは0乃至4の整数である水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する色素混合物であって、かつ、pが1〜4である化合物を、少なくとも1種含有し、その総含有量が色素混合物の総量に対して、高速液体クロマトグラフィーの面積比で、3〜70%である水溶性フタロシアニン色素混合物又はその塩である上記(1)に記載の水系インク組成物、
(24)
上記(1)又は(2)に記載の式(1)の色素、上記(6)に記載の式(2)の色素又は上記(9)に記載の式(101)に記載の色素の何れか一つを含有し、且つ、その何れか一つに付き、少なくともヒドロキシ基を有する色素1種とヒドロキシ基を有しない色素1種の少なくとも2種を含有する近赤外線吸収剤、
に関する。
本発明で使用される上記式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩は、近赤外線を吸収し、水や水溶性有機溶剤に対する溶解性に優れ、該色素が水系溶剤に溶解した水系溶液でのインク組成物(水系インク組成物)とすることができる。また、この色素を含有する本発明の水系インク組成物は長期間保存後の固体析出、物性変化、色相変化等もなく、貯蔵安定性が極めて良好である。
本発明を詳細に説明する。便宜上、「本発明の色素又はその塩」の両者を含めて、「本発明の色素」と、以下簡略して記載する。また、以下の記載において、「式(1)で表される色素」、「式(2)で表される色素」及び「式(101)で表される色素」等の記載も、特に断らない限り、「色素又はその塩」を意味する。また、「本発明の色素」は、特に断らない限り、上記「式(1)で表される色素」、「式(2)で表される色素」及び「式(101)で表される色素」の何れの場合も含むものとする。
本発明の水系インク組成物は、本発明の色素を含有することを特徴とする。
以下、最初に、本発明の色素について説明する。また、便宜上、本発明の近赤外線吸収剤の説明も含む。
前記式(1)において、Mは水素原子、金属原子、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表し、
Rはスルホ基又はカルボキシ基を表し、
mは0〜2の整数を表し、
nは12〜16の整数を表し、
pは0〜4の整数をそれぞれ表す。
なお、前記式(1)の構造式から明らかなように、nとpとの和は最大16である。
前記Mは、水素原子、金属原子、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表す。
Mが水素原子以外の場合、該Mはフタロシアニン色素のいわゆる中心金属である。従って、Mが1価の金属カチオンの場合には、該中心金属は2分子、Mが2価の金属カチオンの場合には、該中心金属は1分子であるであることを意味する。
Mが水素原子の場合、前記式(1)で表されるフタロシアニン色素は中心金属を有しないため、該Mと結合する2つの窒素原子が、それぞれ1つの水素原子を有することを意味する。
金属原子の具体例としては例えば、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb及びBi等が挙げられる。
金属酸化物としてはVO及びGeO等が挙げられる。
金属水酸化物としては例えば、Si(OH)、Cr(OH)、Sn(OH)及びAlOH等が挙げられる。
金属ハロゲン化物としては例えば、SiCl、VCl、VCl、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl及びAlCl等が挙げられる。
前記式(1)におけるMで表される、フタロシアニンの中心金属を代えることにより、最大吸収波長を望みの波長に調整することも可能であり、目的に応じて適宜Mを選択することもできる。
前記式(1)におけるMとしては、これらの中でもFe、Co、Cu、Ni、Zn、Al、AlOH、V又はVOが好ましく、より好ましくはFe、Co、Cu、Ni、Zn、Al又はVOが挙げられ、さらに好ましくはCu又はVOが挙げられる。
前記式(1)中、Rはスルホ基又はカルボキシ基を表し、カルボキシ基が好ましい。スルホ基又はカルボキシ基は遊離酸又はその塩の何れであってもよい。式(1)の水溶性フタロシアニン色素が塩の場合、上記スルホ基又はカルボキシ基は塩を形成している。該塩としては、水溶性の塩であれば良く、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩:及び、テトラメチルアンモニウム塩等の低級アルキルアンモニウム塩;等が挙げられる。水溶性等の点で、アルカリ金属塩はより好ましい。
またRの置換位置は特に制限されないが、硫黄原子の置換位置を1位とした場合に2位が好ましい。
また、より好ましいRとしては、2−カルボキシ基を挙げることができる。
mは0〜2の整数を表し、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
本発明の色素における、Rで表されるスルホ基及び/又はカルボキシ基の個数は、通常1分子あたり12乃至20程度であり、好ましくは1分子あたり12乃至16程度であり、より好ましくは1分子あたり14乃至16程度である。
nは12乃至16の整数を表す。高い水溶性を求める為には数値が大きいほうが有利である。従って、nは14乃至16が好ましい。
pは0乃至4の整数を表す。場合により、1乃至3が好ましく、1乃至2がより好ましく、1がさらに好ましい。通常、pは0乃至2が好ましい。特に、中心金属がVOの場合pは0乃至2が好ましく、VO以外のCu等の金属の場合pは0又は1がより好ましい。
本発明の色素は、フタロシアニン環が有する4つのベンゼン環上に、最大で、それぞれ4つの置換基を有することができるので、上記の通り、式(1)におけるnは16が最大となる。本発明においてはnが12〜16、好ましくは14〜16であり、nが16より小さい時、16とその数値(nの値)との差は、水素原子又は/及びヒドロキシ基での置換数である。従って、例えば、nが15、又は14の場合、該ベンゼン環上の残りの部位(nが15の時、残りの部位は1つ、nが14の時、残りの部位は2つ)は、水素原子又は/及びヒドロキシ基である。例えば、実施例1においては、nが14〜16の混合物であり、nが15の化合物についてみると、残りの一つが、ヒドロキシである化合物と水素原子である化合物の両者を含み、HPLCの面積比でおおよそ、水素原子/ヒドロキシ=5/1であった。
ヒドロキシ基の置換基数は上記の式(1)ではpで表され、pは0〜4、好ましくは0〜2である。式(1)におけるフタロシアニン環が有する4つのベンゼン環上の、置換基を有しうる個所の合計の16から、ヒドロキシ基及びフェニルチオ基で置換されている数を引いた数が、該ベンゼン環上に非置換で存在する水素原子の数であり、それは、式(1)においては16−(p+n)となる。式(2)及び式(101)では、同様に、それぞれ、非置換で存在する水素原子の数は、16−(2−カルボキシフェニルチオ基の数+q)及び16−(2−カルボキシフェニルチオ基の数+r)となる。
上記から判るように式(1)におけるn及びpの合計は最大16である。また、式(2)及び式(101)においても、2−カルボキシフェニルチオ基の数とq又はrとの合計も最大で16である。
また、nが16以外の場合、式(1)で表される色素は、前記のフタロシアニン環が有する4つのベンゼン環上の置換基の置換位置についての、位置異性体の混合物である。該位置異性体の置換位置を特定することは極めて困難であり、また位置異性体の混合物であっても本発明の効果は害しないため、本発明の色素は、上記の位置異性体をも含む。
本発明のインク組成物は、前記式(1)で表される色素を、少なくとも1種含有する。好ましくは該色素を少なくとも2種含有する。前記式(1)で表される色素は、単一化合物としてより、混合物として合成するほうが容易である。通常は該色素は混合物であってもその使用に支障を生じない。従って、目的とする本発明の効果を害しない限り、本発明の色素は、前記式(1)で表される色素を、少なくとも2種含有する色素混合物として使用するのが好ましい。また、一般的に単一の色素よりも色素混合物の方が水溶解性が大きくなる傾向があるため、本発明の水系インク組成物用の色素としては、前記本発明の色素を、少なくとも2種含む色素混合物が好ましい。特に、2−カルボキシフェニルチオ基を有する式(2)又は式(101)で表される色素又はその塩は新規であり、それぞれの式で表される色素を、少なくとも2種含有する色素混合物は、本発明においてより好ましい。
本発明の色素を、少なくとも2種含む色素混合物としては、式(1)においてはnの異なる色素((R)m置換フェニルチオ基の置換数の異なる化合物)の混合物、又は、式(2)又は式(101)においては、2−カルボキシフェニルチオ基の置換数の異なる色素の混合物、例えば、好ましいものとしては、上記(R)m置換又は2−カルボキシ置換フェニルチオ基の置換数が、14,15及び16の3種の色素を含む色素混合物、又は、ヒドロキシ基を有する色素と有しない色素の色素混合物、及び更にその両者を含む色素混合物等を挙げることができる。
ヒドロキシ基を有する色素(式(1)においてnが1〜4、好ましくは1〜2、式(2)におけるqが1〜2、又は式(101)におけるrが1〜2である色素)と有しない色素(上記n、q及びrが0である色素)の色素混合物の場合、ヒドロキシ基を有する色素の割合は、色素混合物の全量に対して、高速クロマトグラフィー(HPLC)による面積比で、3〜70%が好ましく、残部(97〜30%)がヒドロキシ基を有しない色素の割合である。
式(1)においてMがVOであるとき、又は式(101)であるとき、ヒドロキシ基を有する色素の割合は、上記面積比で30〜60%がより好ましい。また、式(1)においてMがVO以外のCu等の金属原子であるとき、又は式(2)であるとき、ヒドロキシ基を有する色素の割合は上記面積比で、3〜20%、好ましくは4〜10%である。
式(1)、式(2)又は式(101)において、ヒドロキシ基を有する色素のヒドロキシ数は1〜4の範囲の何れでもよい。また、ヒドロキシ基の数の異なる混合物であっても良く、単一化合物であっても良い。ヒドロキシ基を有する色素としては、ヒドロキシ基を1又は2個有する色素が好ましい。従って、ヒドロキシ基を1又は2個有する色素とヒドロキシ基を有しない色素の色素混合物はより好ましい。該色素混合物におけるヒドロキシ基を有する色素の色素混合物全体に対する割合は前記のように、3〜70%が好ましく、残部(97〜30%)がヒドロキシ基を有しない色素の割合である。
該ヒドロキシ基を有する色素とヒドロキシ基を有しない色素の色素混合物を有効成分として含む近赤外線吸収剤は本発明の一つである。該近赤外線吸収剤における該色素混合物の含量は、近赤外線吸収剤としての役割を果たす量であれば特に限定されない。通常、該色素混合物の含量は近赤外線吸収剤の総量に対して、0.01〜100%の範囲、好ましくは0.05〜100%である。該近赤外線吸収剤は、該有効成分以外の添加剤を任意に含むことができる。該任意の添加剤としては近赤外線吸収剤に使用される添加剤であれば、何れでもよい。任意の添加剤の含量は、近赤外線吸収剤の総量に対して、0〜99.99%の範囲であり、好ましくは0〜99.95%である。該任意の添加剤として水又は水性溶媒を挙げることができる。本発明の近赤外線吸収剤は、上記有効成分を溶解した水を含む水系の近赤外線吸収剤とすることができる。その好ましい例は後記する本発明の水系インク組成物である。
なお本発明で使用される本発明の色素におけるフェニルチオ基の数は、通常12〜16個であり、より好ましくは14〜16個である。該色素がフェニルチオ基以外の置換基として、ヒドロキシ基を有する場合は、フェニルチオ基とヒドロキシ基の数の合計は最大16である。
本発明で使用される本発明の色素は、フェニルチオ基及びヒドロキシ基の置換基数が同一な単一の化合物であっても、該置換基数の異なる混合物であっても良く、通常、前記のように2種以上の混合物が好ましい。特にヒドロキシ基を有する色素とヒドロキシ基を有しない色素の色素混合物はより好ましい。
本発明の前記式(1)で表される色素において、nが16、15又は14で表される色素からなる色素混合物である場合、色素混合物の総量に対する好ましい各色素の混合比率は、HPLCの面積比で、通常、n=16:20〜65%、n=15:10〜55%及びn=14:0〜30%、好ましくは6〜30%である。
より好ましくは、例えば、MがCu等のVO以外のとき、色素混合物の総量に対する各色素の混合比率は、HPLCの面積比で、通常、nが16:34乃至64%/nが15:12乃至52%/nが14:0乃至28%であり、好ましくは、それぞれが、39乃至59%/25乃至47%/3乃至23%であり、より好ましくは、それぞれが、44乃至54%/30乃至42%/8乃至18%である。
前記式(1)で表される色素の内、好ましいものの一つが前記式(2)で表される色素である。前記式(2)中、qは0乃至2、好ましくは0又は1、より好ましくは1の整数を表す。また前記式(2)中、「14〜16」とは、14乃至16の整数のいずれかであることを示し、qとの合計は最大16である。
前記式(2)で表される色素も、前記式(1)の色素の場合と同様、前記式(2)で表される色素を、少なくとも2種含有する色素混合物が好ましい。
前記式(1)で表される色素の内、前記式(2)と同様に好ましいものの一つが前記式(101)で表される色素である。前記式(101)中、rは0乃至2、好ましくは1の整数を表す。また前記式(101)中、「14〜16」とは、14乃至16の整数のいずれかであることを示し、rとの合計は最大16である。
前記式(101)で表される色素も、前記式(1)と同様、前記式(101)で表される色素から選択される少なくとも2種の色素を含有する、色素混合物であることが好ましい。
前記式(1)におけるMがVOである色素におけるnが16、15及び14で表される色素の混合物である場合の各色素の混合比率等は、MがVO以外のものとは少し異なる。この場合、本発明の色素総量に対する混合比率は、HPLCの面積比で、nが16:12乃至42%/nが15:29乃至59%/nが14:4乃至34%であり、好ましくは、それぞれが、17乃至37%/34乃至54%/9乃至29%であり、より好ましくは、それぞれが、22乃至32%/39乃至49%/14乃至24%である。
前記式(1)におけるM、R、m、n及びpについて、好ましいもの同士を組合せたものはより好ましく、より好ましいもの同士を組合せたものはさらに好ましい。さらに好ましいもの同士等についても同様である。
好ましい本発明の色素及びそれを含有する水系インクを具体的に挙げれば、下記の通りである。
(i)
前記式(1)において、MがFe、Co、Cu、Ni、Zn、Al又はVOであり、mが1又は2を表す、水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(ii)
nが14乃至16の整数を、pが0乃至2の整数を表す、上記(i)に記載の水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(iii)
mが1である、上記(i)又は(ii)に記載の水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(iv)
Rがカルボキシ基、好ましくは2−カルボキシ基である、上記(i)〜(iii)の何れか一項に記載の水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(v)
MがCu又はVOである、上記(i)〜(iv)の何れか一項に記載の水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(vi)
前記式(2)で表され、qが0乃至2の整数、好ましくは0又は1を表す、上記(i)〜(iii)の何れか一項に記載の水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(vii)
MがVOである、上記(i)〜(iv)の何れか一項に記載の水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(viii)
前記式(101)で表され、rが0乃至2の整数を表す、上記(i)〜(iii)の何れか一項に記載の水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(ix)
上記各水溶性フタロシアニン色素が、該水溶性フタロシアニン色素を少なくとも2種含む色素混合物である上記(i)〜(viii)の何れか一項に記載の水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(x)
色素混合物の(R)m置換又は2−カルボキシ置換フェニルチオ基の置換数が、14、15及び16の3種の化合物を含む混合物、ヒドロキシ基を有する化合物と有しない化合物の混合物、及び更にその両者を含む混合物からなる群から選ばれる何れか一つである上記(ix)に記載の水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(xi)
色素混合物の(R)m置換又は2−カルボキシ置換フェニルチオ基の置換数が、14、15及び16の3種の化合物を含む混合物であり、色素混合物の総量に対する好ましい各色素の混合比率は、HPLCの面積比で、通常、n=16:20〜65%、n=15:10〜55%、n=14:0〜30%である上記(ix)に記載の水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(xii)
色素混合物がヒドロキシ基を有する化合物と有しない化合物の混合物であり、ヒドロキシ基を有する化合物の割合は、色素混合物の全量に対して、高速クロマトグラフィー(HPLC)による面積比で、3〜70%、残部(97〜30%)がヒドロキシ基を有しない化合物である上記(ix)に記載の水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
(xiii)
上記(i)〜(xii)の何れか1項に記載の水溶性フタロシアニン色素又はその塩及び水を含み、該色素が水に溶解している水系インク組成物、
(xiv)
水溶性フタロシアニン色素又はその塩の含量が、水系インク組成物の総量に対して、通常0.05〜20質量%、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、更に好ましくは0.05〜1質量%含有する上記(xiii)記載の水系インク組成物、
を挙げることができる。
本発明の式(1)で表される色素の製造方法について記載する。
本発明の色素は、基本的には、式(1)の(R)m置換フェニルチオ基の置換数(n)に対応するハロゲン原子をフタロシアニン骨格のベンゼン環上に有するハロゲノフタロシアニンに、後記式(4)で表されるチオール化合物を常法により反応させることにより、通常ハロゲン置換数に対応する(R)m置換フェニルチオ基を有する色素を主成分とする色素混合物として得ることができる。
より具体的には、例えば、後記式(3)で表される化合物(ヘキサデカクロル又はヘキサデカブロムフタロシアニン)と、後記式(4)で表される化合物((R)m置換フェニルチオール)とを反応させることにより本発明の色素を得ることができる。この場合、後記実施例に示すように、式(1)において、nが14〜16である化合物が得られる。
また、Rがスルホ基であるものについては、下記式(3)で表される化合物と、mが0である下記式(4)で表される化合物とを反応させた後に、常法により、例えば発煙硫酸などを用いて、スルホ化することにより得ることもできる。
後記式(3)及び(4)で表される化合物は、いずれも公知の方法により合成することができるが、市販品として購入することも可能である。
Figure 2009133668
[式中、Xは塩素原子又は臭素原子を表す]
Figure 2009133668
[式中R及びmは前記式(1)と同じ意味を表す]
前記式(3)で表される化合物と前記式(4)で表される化合物との反応は、通常の求核置換反応と同様に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び/又は水素化ナトリウム等の塩基の存在下で行うことができる。
この反応は、通常は溶媒中で行うのが好ましい。その際の反応溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
好ましい本発明の色素の製造方法について以下により詳しく記載する。
前記式(3)で表される化合物に、塩基を該化合物の16〜52倍当量、好ましくは24〜52倍当量加え、それを、撹拌下に該化合物の20〜30倍重量の溶媒に溶解あるいは懸濁させ、次いで、そこに、前記式(4)で表される化合物を、式(3)で表される化合物の16〜32倍当量、好ましくは16〜25倍当量加え、両化合物を80〜150℃、好ましくは110〜140℃で反応させる。該反応は、常圧下、又は加圧下のいずれで行ってもよい。反応時間は反応条件によって異なるが、通常は1〜50時間の範囲内である。
反応の進行度合は、例えば、反応液のλmax(最大吸収波長)を測定することにより確認することができる。
反応終了後、析出固体を濾過分離し、必要に応じて水又はアルコール等で洗浄し、色素中に不純物として含有する無機塩や、未反応原料等を除去した後、乾燥することにより、目的とする前記式(1)で表される色素を得ることができる。
得られた色素は、必要に応じて、さらに酸析等を行うことにより、精製してもよい。
なお、本発明の式(2)又は式(101)で表される色素も、上記式(4)で表されるチオール化合物として、チオサルチル酸又はその塩を用いることにより、同様に製造することができる。
本発明の色素は、天然及び合成繊維材料又は混紡品の染色、さらには、筆記用インク及びインクジェット記録用の水系インク組成物の製造に適している。
本発明の前記式(1)で表される色素を含む溶液、例えば該色素の合成反応における最終工程の反応液は、本発明の水系インク組成物の製造に直接使用する事も出来る。又は、反応液等の本発明の色素を含む溶液から該色素を単離、例えば、濾過分離後乾燥又は該溶液のスプレー乾燥などの方法により該色素を単離した後、得られた色素をインク組成物に加工することもできる。 本発明のインク組成物は、本発明の色素を、水系インク組成物の総量に対して、通常0.05〜20質量%、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、更に好ましくは0.05〜1質量%含有する。また、更に好ましい態様として、本発明の色素を水溶液中に通常0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%含有する。残部は水及び任意に添加してもよい水溶性有機溶剤等の添加剤である。水溶性有機溶剤はインク組成物のの総量に対して、通常0〜60質量%の範囲で含有する。
本発明のインク組成物に使用する色素は、色素中における、本発明の色素又は該色素の色素混合物の含有量(本発明の色素の純度)が高い方が好ましい。例えば、HPLCの面積比で、その好ましい含有量は、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であり、実質的に前記式(1)で表される色素又は該色素の混合物のみ(純度100%)であってもよい。
好ましい本発明の水系インク組成物は、前記式(1)で表される色素として、前記(i)乃至(xii)の何れか1項に記載した色素を含有する場合である。
本発明の水系インク組成物は、本発明の色素(前記式(1)で表される色素など)を水及び必要に応じて水溶性有機溶剤(水と混和が可能な有機溶剤)を加えた混合溶媒などの水性媒体(水単独又は水を主体とする溶媒)に溶解し、必要に応じインク調製剤を添加したものである。なお、本明細書において水性媒体は、水単独、又は水に水溶性有機溶剤を添加した有機溶剤水溶液を言う。このインク組成物をインクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合、インクの調製に用いる本発明の色素は、不純物として含有する金属陽イオンの塩化物、例えば塩化ナトリウム;或いは、硫酸塩、例えば硫酸ナトリウム;等の無機物の含有量が少ないものが好ましい。この場合、例えば本発明の色素中に含まれる不純物の大部分を占める塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムの総含有量は、インク中に含有する色素の総質量中に1質量%以下程度が好ましい。無機不純物の少ない色素を製造するには、例えばそれ自体公知の逆浸透膜による方法、又は、本発明の色素又はその塩の乾燥品あるいはウェットケーキを、メタノールなどのアルコール及び水の混合溶媒中で撹拌して懸濁精製し、固体を濾過分離し、乾燥するなどの方法で、前記で合成された本発明の色素を脱塩処理すればよい。
本発明の水系インク組成物は水を媒体として調製されるものであり、必要に応じて、水溶性有機溶剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しても良い。水溶性有機溶剤は、染料溶解、乾燥防止(湿潤)、粘度調整、浸透促進、表面張力調整、消泡等の機能を目的として使用される。本発明の水系インク組成物は水溶性有機溶剤を含有するのが好ましい。その他のインク調製剤としては、例えば、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、染料溶解剤、褪色防止剤、乳化安定剤、表面張力調整剤、消泡剤、分散剤、及び分散安定剤等の公知の添加剤が挙げられる。
水溶性有機溶剤の含有量はインク組成物全体に対して0〜60質量%、好ましくは10〜50質量%であり、その他のインク調製剤はインク組成物全体に対して0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%用いるのが良い。上記以外の残部は水である。
本発明で使用しうる水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール及び第三ブタノール等のC1−C4アルカノール;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン及び1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式ケトン;アセトン、メチルエチルケトン又は2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びチオジグリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;トリメチロールプロパン、グリセリン及びヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(好ましくはトリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及びトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4モノアルキルエーテル;並びに、γーブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等があげられる。
なお、上記の水溶性有機溶剤にはトリメチロールプロパン等のように、常温で固体の物質も含まれているが、これらは固体であっても水溶性を示し、水に溶解させた場合には水溶性有機溶剤と同じ目的で使用することができるため、便宜上、本明細書においては水溶性有機溶剤の範疇に記載するものとする。
上記の水溶性有機溶剤として好ましいものは、イソプロパノール、グリセリン、モノ、ジ又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンおよびブチルカルビトールであり、より好ましくはイソプロパノール、グリセリン、ジエチレングリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンおよびブチルカルビトールである。これらの水溶性有機溶剤は、単独もしくは混合して用いられる。
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、及び、ベンジルブロムアセテート系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、及び、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤として酢酸ソーダ、ソルビン酸ソーダ、及び、安息香酸ナトリウム等があげられる。防腐防黴剤の具体例としては、例えば、プロクセルRTMGXL(S)およびプロクセルRTMXL−2(S)(商品名、いずれもアベシア社製)等が好ましく挙げられる。なお、本明細書において、上付きの「RTM」は登録商標を意味する。
pH調整剤は、インクの保存安定性を向上させる目的で、インクのpHを6.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム;あるいは、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。
本発明のインク組成物のpHの範囲は、通常6.0乃至11.0、好ましくは7.0乃至11.0、より好ましくは8.0乃至11.0である。pHが5以下である場合、前記式(1)で表される色素の水溶解性は極めて低く、室温で、水に対して0.6質量%以下程度の溶解性しか示さない。しかし、pHを8以上とした場合には、同様の条件でおよそ21質量%と、極めて良好な溶解性を示す。従って、本発明のインク組成物のpHの範囲は上記の範囲が好ましい。
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、及び、ウラシル二酢酸ナトリウムなどがあげられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、及び、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライトなどがあげられる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、及び、スチルベン系化合物を用いることができる。
粘度調整剤としては、水溶性有機溶剤の他に、水溶性高分子化合物があげられ、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、及び、ポリイミン等があげられる。
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、及び、エチレンカーボネート等があげられる。尿素を使用するのが好ましい。
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、及びヘテロ環類などが挙げられ、金属錯体としてはニッケル錯体、及び亜鉛錯体などが挙げられる。
表面張力調整剤としては、界面活性剤があげられ、例えばアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤などがあげられる。
アニオン界面活性剤としては、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸およびその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、並びに、ジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、及び、ポリ4−ビニルピリジン誘導体などが挙げられる。
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、及び、その他イミダゾリン誘導体などがある。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート及びポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレングリコール(アルコール)系(例えば、日信化学工業株式会社製、商品名サーフィノールRTM104、82もしくは465、又は、オルフィンRTMSTG等)、並びに、ポリグリコールエーテル系(例えばSIGMA−ALDRICH社製、商品名TergitolRTM15−S−7など)等が挙げられる。
消泡剤としては、高酸化油系、グリセリン脂肪酸エステル系、フッ素系、及び、シリコーン系化合物が必要に応じて用いられる。
これらの水系インク調製剤は、単独もしくは混合して用いられる。なお、本発明のインク組成物の表面張力は通常25〜70mN/m、より好ましくは25〜60mN/mである。また本発明のインク組成物の粘度は30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下に調整することがより好ましい。
本発明の水系インク組成物を製造するにあたり、添加剤などの各薬剤を溶解させる順序には特に制限はない。インク組成物を調製するにあたり、用いる水はイオン交換水又は蒸留水など不純物が少ない物が好ましい。さらに、調製したインク組成物は、必要に応じて、メンブランフィルターなどを用いて精密濾過を行って夾雑物を除いてもよく、インクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合は精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過に使用するフィルターの孔径は通常1μm〜0.1μm、好ましくは0.8μm〜0.1μmである。
本発明の色素を含有する水系インク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング、又は記録(印刷)における使用、特にインクジェット記録における使用に適する。また本発明の水系インク組成物は、貯蔵安定性が高く長期間放置しておいても吸光度の劣化等の品質変化が少ない。
本発明の記録物とは、本発明の色素で記録された物質のことである。記録物の材料(被記録材)には特に制限はなく、例えば紙又はフィルムなどの情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)等、記録されるものであれば何でも良く、これらに限定されない。
上記の情報伝達用シートとしては、特に制限はなく、普通紙はもちろん、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、又は、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものなども用いることができる。該インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工する方法;または多孔質シリカ、アルミナゾル又は特殊セラミックスなどの、インク中の色素を吸収し得る無機微粒子を、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工する方法;などにより設けられる。このようなインク受容層を設けたものは通常インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙、または光沢フィルム等と呼ばれる。
本発明のインクジェット記録方法での被記録材への記録は、例えば本発明の水系インク組成物が充填された容器をインクジェットプリンタの所定位置にセットし、通常の方法、即ち、該インク組成物の小滴を記録信号に応じて吐出させ、それを被記録材に付着させ、被記録材に記録する方法により、行えばよい。
インクジェットプリンタには、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式;及び加熱により生ずる泡を利用したバブルジェットRTM方式;等のプリンタがある。本発明のインクジェット記録方法は、いかなる方式のプリンタであっても使用が可能である。
以下に本発明を更に実施例により具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。実施例中の反応及び晶析等の操作については、特に断りのない限りいずれも攪拌下に行った。
また、最大吸収波長(λmax)は、水溶液での測定値である。
実施例にて合成した本発明の色素は、下記するように、前記式(1)で表される色素の混合物であった。また、合成した本発明の色素はいずれも室温(25℃)で、水に対して100g/L以上の溶解度を示した。なお、水溶液のpHは8〜10であった。
実施例1
下記式(2)で表される色素の合成。
なお、下記式中のqは0又は1を示す。
Figure 2009133668
N,N−ジメチルホルムアミド150部中に、後記式(5)で表されるピグメントグリーン7(東京化成工業株式会社製)5.6部、後記式(6)で表されるチオサリチル酸(和光純薬工業株式会社製)18.5部、及び、炭酸カリウム33.1部を添加し、得られた混合物を135℃まで昇温した。135〜140℃において33時間反応を行った後、反応液を100℃まで冷却した。そこにN,N−ジメチルホルムアミド30部を加え、析出した固体をろ過した。ろ過分離した固体を水400部に溶解させた後に、35%塩酸により酸析を行った。析出した固体をろ過、水洗、乾燥して、上記式(2)で表される本発明の色素のナトリウム塩17.8部を得た。
この色素は分析の結果、後記式(8)乃至(11)の各色素の混合物であり、得られた混合物のHPLC純度は、各色素の総量で99.15%であった。色素総量に対する各色素の含有割合は、HPLCの面積比で、小数点以下の数値を四捨五入して記載すると、以下の通りであった(括弧で示した番号は色素の式番号を表す)。
(8)/(9)/(10)/(11)=49%/31%/6%/13%
得られた色素混合物の水中におけるλmaxは777nmであった。
色素のn及びqの数値は、LC−MSを用いた質量分析(LC:HP−1100、アジレント社製/MS:LCT質量分析計、マイクロマス社製)により決定した。
また、HPLCの測定条件は以下の通りである。
カラム:InertsilRTMODS−2(5μm、2.1×250mm)[ジーエルサイエンス株式会社製]
カラムオーブン:40℃
溶出溶媒:5mM酢酸アンモニウム/アセトニトリル
[95/5(0min)→50/50(30min)→20/80(10min)]
流量:0.2mL/min
検出器:PDA(220〜900nm)
式(5)
Figure 2009133668
式(6)
Figure 2009133668
式(8)〜(11)
Figure 2009133668
上記式(8)、(9)及び(11)で表される色素は、上記式(1)において、MがCu、Rが硫黄原子の置換位置を1位として2−カルボキシ、mが1、nがそれぞれ16、15及び14、pがいずれも0で表される色素である。
また上記式(10)で表される色素は、同様に、MがCu、Rが2−カルボキシ、mが1、nが15、pが1で表される色素である。
実施例2(水系インク組成物の調製及び貯蔵安定性試験)
上記実施例1で得られた本発明のフタロシアニン色素0.1部を水100部に溶解させ、本発明の水系インク組成物を調製した。尚、水はイオン交換水を使用した。
調製した水系インク組成物を50℃のオーブン中に13日間放置し、貯蔵安定性試験を行った。試験前後に、その水系インク組成物を分光光度計(UV−3150、株式会社島津製作所製)にて測定し、極大吸収波長における吸光度の変化より、貯蔵安定性の評価を行った。結果を後記表1に示す。
比較例1
比較のために、上記色素の代わりに下記式(7)で表されるシアニン色素を用いる以外は実施例2と同様にして、水系インク組成物を調製し、貯蔵安定性を評価した。これを比較例1とする。結果を後記表1に示した。
なお、下記式(7)で表される色素は、特許文献2の実施例1に記載の方法で合成した。λmax:775nm(水中)
Figure 2009133668
表1(貯蔵安定性試験)
インク組成物中の色素残存率
実施例2 51%
比較例1 34%
表1の結果から明らかなように、本発明の色素を含有するインク組成物は、公知の色素と比較して、貯蔵安定性に極めて優れることが明らかとなった。
実施例3
下記式(101)で表される色素の合成。
Figure 2009133668
スルホラン(純正化学工業株式会社製)16部中にオキシ塩化バナジウム0.5部(和光純薬工業株式会社製)、テトラクロロフタル酸無水物(東京化成工業株式会社製)2.6部、モリブデン酸アンモニウム0.07部、及び、尿素4.6部を加え、得られた混合物を210℃まで昇温した。205〜210℃で7時間反応を行った後、反応液を30℃まで冷却し、そこにN,N−ジメチルホルムアミド7.1部を加えた。析出した固体をろ過し、水洗した。水洗した固体をN,N−ジメチルホルムアミド142部中に加え、100〜105℃で2.5時間撹拌し、固体をろ過分離した。得られた固体を6%水酸化ナトリウム水溶液17部に加え、その液を95〜100℃で4時間撹拌した。固体をろ過、水洗、乾燥して、上記式(101)で表される化合物の前駆体となるテトラアザポルフィリン誘導体(前記式(3)において、MがVO、全てのXがClである化合物)1.9部を得た。
N,N−ジメチルホルムアミド50部中に上記のテトラアザポルフィリン誘導体1.9部、前記式(6)で表されるチオサリチル酸(和光純薬工業株式会社製)6.4部、及び、炭酸カリウム11.7部を添加し、得られた混合物を130℃まで昇温した。125〜130℃において8.5時間反応を行った後、反応液を30℃まで冷却した。そこにN,N−ジメチルホルムアミド20部を加え、析出した固体をろ過分離した。得られた固体を水100部に溶解させた後に、35%塩酸により酸析を行った。析出した固体をろ過し、水洗した。得られた固体を水80部中に懸濁させ、次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液により、懸濁液をpH9.5に調整し、固体を溶解させた。そこに2−プロパノール200部を加え、析出した固体をろ過分離、乾燥し、上記式(101)で表される本発明の色素のナトリウム塩2.8部を得た。
得られた色素について後記の条件でHPLC分析を行った結果、得られた色素は後記式(102)乃至(105)の各色素の混合物であり、得られた色素におけるHPLC純度は、前記各色素の総量で90.38%であった。
得られた色素の総量に対する各色素の含有割合は、HPLCの面積比で、小数点以下の数値を四捨五入して記載すると、以下の通りであった(括弧で示した番号は色素の式番号を表す)。
(102)/(103)/(104)/(105)=27%/33%/11%/19%
得られた色素混合物の水中におけるλmaxは847nmであった。
各色素のn及びrの数値は、LC−MSを用いた質量分析(LC:ACQUITY UPLCRTM、Waters社製/MS:LCT質量分析計、マイクロマス社製)により決定した。
また、HPLCの測定条件は以下の通りである。
カラム:ACQUITY UPLCRTM BEH Shield RP18(1.7μm、2.1×100mm)[Waters社製]
カラムオーブン:40℃
溶出溶媒:5mM酢酸アンモニウム/アセトニトリル
[95/5(0min)→50/50(10min)→50/50(12min)]
流量:0.35mL/min
検出器:PDA(220〜800nm)
式(102)〜(105)
Figure 2009133668
上記式(102)及び(104)で表される色素は、上記式(1)において、MがVO、Rが、硫黄原子の置換位置を1位として2−カルボキシ、mが1、nがそれぞれ16及び15、pがいずれも0で表される色素である。
また上記式(103)で表される色素は、同様に、MがVO、Rが2−カルボキシ、mが1、nが15、pが1で表される色素である。
更に上記式(105)で表される色素は、同様に、MがVO、Rが2−カルボキシ、mが1、nが14、pが2で表される色素である。
実施例4(水系インク組成物及び貯蔵安定性試験)
実施例1で得られた色素の代わりに実施例3で得られた本発明のフタロシアニン色素を用い、さらにオーブン中の放置期間を14日間とする以外は実施例2と同様にして、貯蔵安定性の評価を行った。その結果、インク組成物中の色素残存率は48%であった。
比較例1より放置期間が長いにもかかわらず、実施例3で得られた本発明のフタロシアニン色素は、比較例1の色素の残存率に比べ、色素残存率が48%と高く、比較例1の色素に比べ、貯蔵安定性に極めて優れることがわかる。
本発明の水溶性フタロシアニン色素又はその塩は、水や水溶性有機溶剤に対する溶解性に優れる。又、この色素を含有する本発明の水系インク組成物は、長期間保存後の固体析出、物性変化、色相変化等もなく、貯蔵安定性が極めて良好である。よって本発明の水系インク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング、又は記録(印刷)等に好適に用いられ、特にインクジェット記録用の近赤外線吸収インクとして、極めて好適に用いられる。

Claims (24)

  1. 下記式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩を含有する水系インク組成物、
    Figure 2009133668
    [式中、Mは水素原子、金属原子、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表し、
    Rはスルホ基又はカルボキシ基を表し、
    mは0乃至2、nは12乃至16、pは0乃至4の整数を、それぞれ表す]。
  2. 式(1)においてMがFe、Co、Cu、Al、Ni、Zn又はVOである請求項1に記載の水系インク組成物。
  3. 式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する請求項1に記載の水系インク組成物。
  4. 有機溶剤をさらに含有する請求項1又は3に記載の水系インク組成物。
  5. インクジェット記録用である請求項4に記載の水系インク組成物。
  6. 式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩が、下記式(2)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩である請求項1に記載の水系インク組成物、
    Figure 2009133668
    [式中、qは0乃至2の整数を表す]。
  7. 式(2)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する請求項6に記載の水系インク組成物。
  8. 式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩が水性媒体に溶解している請求項1に記載の水系インク組成物。
  9. 式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩が下記式(101)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩である請求項1に記載の水系インク組成物、
    Figure 2009133668
    [式中、rは0乃至2の整数を表す]。
  10. 式(101)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する請求項9に記載の水系インク組成物。
  11. 式(1)において、MがCu又はVO、Rがカルボキシ基、mが1、nが14乃至16の整数、pが0乃至2の整数である請求項8に記載の水系インク組成物。
  12. 請求項1に記載の水系インク組成物のインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
  13. 被記録材が情報伝達用シートである請求項12に記載のインクジェット記録方法。
  14. 情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシ−トである請求項13に記載のインクジェット記録方法。
  15. 請求項1に記載の水系インク組成物を含む容器を装填したインクジェットプリンタ。
  16. 請求項1に記載の水系インク組成物によって記録された記録物。
  17. 下記式(2)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩、
    Figure 2009133668
    [式中、qは0乃至2の整数を表す]。
  18. 請求項17に記載の式(2)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する色素混合物。
  19. 下記式(101)
    Figure 2009133668
    [式中、rは0乃至2の整数を表す]
    で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩。
  20. 請求項19に記載の式(101)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する色素混合物。
  21. 請求項1に記載の式(1)において、MがCu又はVO、(R)m置換フェニルチオ基がo−カルボキシフェニルチオ基、nが14乃至16の整数、pが0乃至2の整数である水溶性フタロシアニン色素又はその塩。
  22. 請求項1に記載の式(1)において、MがCu又はVO、Rはカルボキシ基、mは1、nは12乃至16、pは0乃至4の整数である水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する色素混合物であって、かつ、pが1〜4である化合物を、少なくとも1種含有し、その総含有量が色素混合物の総量に対して、高速液体クロマトグラフィーの面積比で、3〜70%である水溶性フタロシアニン色素混合物又はその塩。
  23. 式(1)で表される水溶性フタロシアニン色素又はその塩が、式(1)において、MがCu又はVO、Rはカルボキシ基、mは1、nは12乃至16、pは0乃至4の整数である水溶性フタロシアニン色素又はその塩を、少なくとも2種含有する色素混合物であって、かつ、pが1〜4である化合物を、少なくとも1種含有し、その総含有量が色素混合物の総量に対して、高速液体クロマトグラフィーの面積比で、3〜70%である水溶性フタロシアニン色素混合物又はその塩である請求項1に記載の水系インク組成物。
  24. 請求項1に記載の式(1)の色素、請求項6に記載の式(2)の色素又は請求項9に記載の式(101)に記載の色素の何れか一つを含有し、且つ、その何れか一つに付き、少なくともヒドロキシ基を有する色素1種とヒドロキシ基を有しない色素1種の少なくとも2種を含有する近赤外線吸収剤。
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