(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る信号分波器のブロック図である。図1において、本実施の形態1の信号分波器1は、第1端子2、第2端子3、第3端子4、および第4端子5の4端子を少なくとも有する回路網6に接続される信号分波器1である。そして、回路網6の第1端子2に一方が接続される第1線路7と、回路網6の第2端子3に一方が接続される第2線路8と、回路網6の第3端子4に一方が接続される第3線路9と、回路網6の第4端子5に一方が接続される第4線路10とを有し、第1線路7の他方と第2線路8の他方とは第1交点11において接続され、第3線路9の他方と第4線路10の他方とは第2交点12において接続されている。
更に、本実施の形態1の信号分波器1は、第1線路7の途中に接続された第1整合回路13と第1位相器17と、第2線路8の途中に接続された第2整合回路14と第2位相器18と、第3線路9の途中に接続された第3整合回路15と第3位相器19と、第4線路10の途中に接続された第4整合回路16と第4位相器20とを有している。また、第1交点11とグランドとの間には第1負荷回路21が接続されており、第2交点12とグランドとの間には第2負荷回路22が接続されている。
更に、回路網6は、第5端子23と第6端子24と第7端子25と第8端子26とを有する。ここで、第1交点11から信号を入力した場合、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の位相と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている。また、当然の事であるが、第2交点12から信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との位相差も概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている。上記の条件を満たすように、第1線路7、第2線路8、第3線路9、及び第4線路10の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14、第3整合回路15、及び第4整合回路16と、第1位相器17、第2位相器18、第3位相器19、及び第4位相器20とは、適切な値となるように設計されている。
このことから、例えば、第1負荷回路21から送信された信号は、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の位相と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることから、第2交点12から第2負荷回路22側へ概ね伝搬していかない。
逆に、第2負荷回路22から送信された信号についても、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との位相差は概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点11から第1負荷回路21側へ概ね伝搬していかない。
よって、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間でアイソレーションが確保できる事となる。これにより、第1負荷回路21と第2負荷回路22とは、回路網6との信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、第1負荷回路21と第2負荷回路22とは、時間的、周波数的な選択をする必要もなく、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。
尚、第1交点11から信号を入力した場合、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路7、第2線路8、第3線路9、及び第4線路10の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14、第3整合回路15、及び第4整合回路16と、第1位相器17、第2位相器18、第3位相器19、及び第4位相器20とが設計されていても良い。また、同様に、第2交点12から信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路7、第2線路8、第3線路9、及び第4線路10の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14、第3整合回路15、及び第4整合回路16と、第1位相器17、第2位相器18、第3位相器19、及び第4位相器20とが設計されていてもよい。これにより、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
また、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路7、第2線路8の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14と、第1位相器17、第2位相器18とは設計されてもよい。
ここで、例えば、第1端子2と第2端子3との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子2と第2端子3との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零ということになる。故に、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点11において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点11から第1負荷回路側へは概ねコモンモードの信号は伝搬していかない。
逆に、例えば、第1端子2と第2端子3との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子2と第2端子3との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度ということになる。故に、第1端子2と、第2端子3とに、位相差は±180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点11において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点11から第1負荷回路側へ信号は概ね伝搬していくこととなる。
このように、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように信号分波器1が設計される事により、第1端子2と第2端子3との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して、第1負荷回路21へ伝搬させることができる。
更に、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件と、第1交点11から信号を入力した場合、第3線路9の第2交点側12に現れる信号の位相と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度となる条件とを考慮した場合、第1端子2から第2交点12までの位相変化量と、第2端子3から第2交点12までの位相変化量との差は、零となる。つまり、第1端子2と第2端子3との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第2交点12において同相で足し合わされ、第2交点12から第2負荷回路22側へ概ね伝搬されてゆく。
逆に、第1端子2と第2端子3との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第2交点12において逆相で足し合わされて相殺され、第2交点12から第2負荷回路22側へ概ね伝搬されて行かない。よって、第1端子2と第2端子3との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1負荷回路21側のみへ伝搬されてゆき、第1端子2と第2端子3との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2負荷回路22側のみへ伝搬されて行く。
つまり、本実施の形態1の信号分波器1は、第1端子2と第2端子3との間に生じる前記2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。尚、この場合に、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路7、第2線路8の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14と、第1位相器17、第2位相器18とが設計されていてもよい。これにより、第1交点11に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点11から第1負荷回路21側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。
また、同様に、第1端子2と、第2端子3とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路9、第4線路10の線路長と、第3整合回路15、第4整合回路16と、第3位相器19、第4位相器20とが設計されていてもよい。これにより、第2交点12に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点12から第2負荷回路22側へ伝搬する信号のコモンモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。
尚、第1端子2から第1交点11までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子3から第1交点11までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路7、第2線路8の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14と、第1位相器17、第2位相器18とが設計されていてもよい。
例えば、第1端子2と第2端子3との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子2から第1交点11までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子3から第1交点11までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点11においてはコモンモードの信号は相殺されることとなる。
つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点11は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点11から第1端子2、及び第2端子3までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子2及び第2端子3から、それぞれ第1交点11側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。
よって、第1端子2と第2端子3との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点11側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点12側へ伝搬して行く事となる。これにより、第2負荷回路22へ伝搬するディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を更に向上させる事ができると共に、第1負荷回路21へ伝搬するコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合に、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路7、第2線路8の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14と、第1位相器17、第2位相器18とが設計されていてもよい。これにより、第1交点11に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点11から第1負荷回路21側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。
尚、第1端子2から第2交点12までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子3から第2交点12までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路9、第4線路10との線路長と、第3整合回路15、第4整合回路16と、第3位相器17、第4位相器18とは、設計されてもよい。
これにより、例えば、第1端子2と第2端子3との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第1端子2から第2交点12までの位相変化量と、第2端子3から第2交点12までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点12においてはディファレンシャルモードの信号は相殺されることになる。つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点12は仮想的に接地された場所となる。
仮想的に接地された第2交点12から第1端子2、及び第2端子3までの位相変化量は共に90度となることより、第1端子2及び第2端子3から、それぞれ第2交点12側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子2と第2端子3との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点12側へ概ね伝搬して行かず、概ね第1交点11側へ伝搬して行く事となる。これにより、第1負荷回路21へ伝搬するコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を更に向上させる事ができると共に、第2負荷回路22へ伝搬するディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子2と、第2端子3とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路9、第4線路10の線路長と、第3整合回路15、第4整合回路16と、第3位相器19、第4位相器20とが設計されていてもよい。これにより、第2交点12に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点12から第2負荷回路22側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を向上させる事ができる。
尚、第3端子4から第2交点12までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第4端子5から第2交点12までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路9、第4線路10との線路長と、第3整合回路15、第4整合回路16と、第3位相器19、第4位相器20とは、設計されてもよい。
これにより、例えば、第3端子4と第4端子5との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第3端子4から第2交点12までの位相変化量と、第4端子5から第2交点12までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点12においてはディファレンシャルモードの信号は相殺されることになる。つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点12は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点12から第3端子4、及び第4端子5までの位相変化量は共に90度となることより、第3端子4及び第4端子5から、それぞれ第2交点12側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第3端子4と第4端子5との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点12側へ概ね伝搬して行かず、概ね第1交点11側へ伝搬して行く事となる。これにより、第1負荷回路21へ伝搬するコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を更に向上させる事ができると共に、第2負荷回路22へ伝搬するディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第3端子4と、第4端子5とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路9、第4線路10の線路長と、第3整合回路15、第4整合回路16と、第3位相器19、第4位相器20とが設計されていてもよい。これにより、第2交点12に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点12から第2負荷回路22側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を向上させる事ができる。
尚、図1において、第1整合回路13、第2整合回路14、第3整合回路15、第4整合回路16、第1位相器17、第2位相器18、第3位相器19、第4位相器20のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路7、第2線路8、第3線路9、及び第4線路10における伝送ロスを低減できると共に、必要となる部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。また、必要であれば、第1交点11と第1負荷回路21との間、第2交点12と第2負荷回路22との間のうち少なくとも一方に、整合回路を接続しても良い。これにより、本実施の形態の信号分波器1と第1負荷回路21との間、及び、信号分波器1と第2負荷回路22との間の整合状態を良好にすることができ、これらの間の反射損を低減でき、結果、電子機器の通信品質を良好なものにする事が可能となる。
尚、第1整合回路13、第2整合回路14、第3整合回路15、第4整合回路16、第1位相器17、第2位相器18、第3位相器19、第4位相器20とは、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計されるが、第1交点11から信号を入力した場合、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値とが同一である条件を満たすために、レジスタンス素子や増幅回路(例えば、第1線路7が送信経路、受信経路を有しており、それぞれに送信用増幅回路、受信用増幅回路を有するような構成等)等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、信号分波器1を用いた電子機器(図示せず)の送受信特性を向上させる事ができる。
また、図1においては、第5端子23、第6端子24、第7端子25、及び第8端子26から、信号が入出力されているが、入出力端子数はこれに限定する必要はなく、少なくとも1つの入出力端子から信号が入出力されていれば良い。
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2に係る信号分波器のブロック図である。尚、実施の形態1と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図2において、実施の形態2の信号分波器1は、少なくとも3端子を有する回路網6に接続される信号分波器1であって、この回路網6の第1端子2に一方が接続される第1線路7と、回路網6の第2端子3に一方が接続される第2線路8と、回路網6の第3端子4に一方が接続される第3線路9とを有し、第1線路7の他方と第2線路8の他方とは第1交点11に接続されている。
そして、第3線路9の他方から信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路7、第2線路8、及び第3線路9の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14、及び第3整合回路15と、第1位相器17、第2位相器18、及び第3位相器19とは設計されている。
このことから、例えば、第1負荷回路21から送信された信号は、第3線路9の他方側及び第3端子において相殺されるため、第2負荷回路22側へ概ね伝搬して行かない。逆に、第2負荷回路22から送信された信号についても、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との位相差は概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点11から第1負荷回路21側へ概ね伝搬して行かない。
よって、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間でアイソレーションが確保できる事となる。これにより、第1負荷回路21と第2負荷回路22とは、回路網6との信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、第1負荷回路21と第2負荷回路22とは、時間的、周波数的な選択をする必要もなく、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。また、本実施の形態2の信号分波器1は、本実施の形態1の信号分波器1と比較して、第3端子4と第2負荷回路22とを接続する線路数、整合回路数、位相器数を減らす事ができるため、小型化、軽量化を図ることができる。
尚、第3線路9の他方から信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路7及び第2線路8の線路長と、第1整合回路13及び第2整合回路14と、第1位相器17及び第2位相器18とが設計されていても良い。これにより、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
また、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路7、第2線路8の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14と、第1位相器17、第2位相器18とは設計されてもよい。
ここで、例えば、第1端子2と第2端子3との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子2と第2端子3との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となる。故に、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点11において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点11から第1負荷回路側へは概ねコモンモードの信号は伝搬していかない。
逆に、例えば、第1端子2と第2端子3との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子2と第2端子3との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となる。故に、第1端子2と、第2端子3とに、位相差が±180度であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点11において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点11から第1負荷回路側へディファレンシャルモードの信号は概ね伝搬して行くこととなる。
このように、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように信号分波器1が設計される事により、第1端子2と第2端子3との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1負荷回路21へ伝搬させることができる。更に、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件と、第3線路の他方から信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点側11に現れる信号の位相との位相差が概ね180度となる条件とを考慮した場合、第1端子2から第2交点12までの位相変化量と、第2端子3から第2交点12までの位相変化量との差は、零となる。つまり、第1端子2と第2端子3との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第3端子4において同相で足し合わされ、第2負荷回路22側へ概ね伝搬されてゆき、逆に、第1端子2と第2端子3との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第3端子4において逆相で足し合わされて相殺され、第2負荷回路22側へ概ね伝搬されて行かない。よって、第1端子2と第2端子3との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1負荷回路21側のみへ伝搬されてゆき、第1端子2と第2端子3との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2負荷回路22側のみへ伝搬されて行く。
つまり、本実施の形態2の信号分波器1は、第1端子2と第2端子3との間に生じる前記2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。尚、この場合に、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路7、第2線路8の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14と、第1位相器17、第2位相器18とが設計されていてもよい。
これにより、第1交点11に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点11から第1負荷回路21側へ伝搬する信号のコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を向上させる事ができる。
尚、第1端子2から第1交点11までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子3から第1交点11までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路7、第2線路8の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14と、第1位相器17、第2位相器18とが設計されていてもよい。
例えば、第1端子2と第2端子3との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子2から第1交点11までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子3から第1交点11までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点11においてはコモンモードの信号は相殺されることとなる。つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点11は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点11から第1端子2、及び第2端子3までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子2及び第2端子3から、それぞれ第1交点11側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子2と第2端子3との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点11側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点12側へ伝搬して行く事となる。
これにより、第1負荷回路21へ伝搬するコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を更に向上させる事ができると共に、第2負荷回路22へ伝搬するディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合に、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路7、第2線路8の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14と、第1位相器17、第2位相器18とが設計されていてもよい。これにより、第1交点11に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点11から第1負荷回路21側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。
尚、図2において第1整合回路13、第2整合回路14、第1位相器17、第2位相器18のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路7及び第2線路8における伝送ロスを低減できると共に、必要となる部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
また、必要であれば、第1交点11と第1負荷回路21との間、第3端子4と第2負荷回路22との間のうち少なくとも一方に、整合回路を接続しても良い。これにより、本実施の形態の信号分波器1と第1負荷回路21との間、及び、信号分波器1と第2負荷回路22との間の整合状態を良好にすることができ、これらの間の反射損を低減でき、結果、電子機器の通信品質を良好なものにする事が可能となる。
尚、第1整合回路13、第2整合回路14、第1位相器17、及び第2位相器18は、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計されるが、第3線路9の他方から信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一である条件を満たすために、レジスタンス素子や増幅回路(例えば、第1線路7が送信経路、受信経路を有しており、それぞれに送信用増幅回路、受信用増幅回路を有するような構成等)等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、信号分波器1を用いた電子機器の送受信特性を向上させる事ができる。
また、図2においては、第5端子23、第6端子24、第7端子25、及び第8端子26から、信号が入出力されているが、入出力端子数はこれに限定する必要はなく、少なくとも1つの入出力端子から信号が入出力されていれば良い。
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3に係る信号分波器1のブロック図である。尚、実施の形態1と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図3において、本実施の形態3の信号分波器1は、第1端子2に一方が接続される第1線路7と、第1端子2に一方が接続される第3線路9と、第2端子3に一方が接続される第2線路8と、第2端子3に一方が接続される第4線路10とを有し、第1線路7の他方と第2線路8の他方とは第1交点11に接続され、第3線路9の他方と第4線路10の他方とは第2交点12に接続されている。
そして、第1交点11から信号を入力した場合、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の位相と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路7、第2線路8、第3線路9、及び第4線路10の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14、第3整合回路15、及び第4整合回路16と、第1位相器17、第2位相器18、第3位相器19、及び第4位相器20とは設計されている。
このことから、例えば、第1負荷回路21から送信された信号は、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の位相と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることから、第2交点12から第2負荷回路22側へ概ね伝搬して行かない。
逆に、第2負荷回路22から送信された信号についても、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との位相差も概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点11から第1負荷回路21側へ概ね伝搬して行かない。
よって、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間でアイソレーションが確保できる。
これにより、第1負荷回路21と第2負荷回路22とは、回路網6との信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、第1負荷回路21と第2負荷回路22とは、時間的、周波数的な選択をする必要もなく、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。また、本実施の形態3の信号分波器1は、回路網6との間を2つの接続端子のみで接続する事が可能であり、実施の形態1、2で示した信号分波器1と比較して、構造の簡易化を図ることが可能となる。
尚、第1交点11から信号を入力した場合、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路7、第2線路8、第3線路9、及び第4線路10の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14、第3整合回路15、及び第4整合回路16と、第1位相器17、第2位相器18、第3位相器19、及び第4位相器20とが設計されていても良い。
また、同様に、第2交点12から信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路7、第2線路8、第3線路9、及び第4線路10の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14、第3整合回路15、及び第4整合回路16と、第1位相器17、第2位相器18、第3位相器19、及び第4位相器20とが設計されていてもよい。これにより、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
また、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路7、第2線路8の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14と、第1位相器17、第2位相器18とは設計されてもよい。
ここで、例えば、第1端子2と第2端子3との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子2と第2端子3との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となる。
故に、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点11において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点11から第1負荷回路側へは概ねコモンモードの信号は伝搬していかない。
逆に、例えば、第1端子2と第2端子3との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子2と第2端子3との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となる。故に、第1端子2と、第2端子3とに、位相差が±180度であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点11において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点11から第1負荷回路側へディファレンシャルモードの信号は概ね伝搬して行く。
このように、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように設計される事により、第1端子2と第2端子3との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1負荷回路21へ伝搬させることができる。
更に、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件と、第1交点11から信号を入力した場合、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の位相と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度となる条件とを考慮した場合、第1端子2から第2交点12までの位相変化量と、第2端子3から第2交点12までの位相変化量との差は、零となる。
つまり、第1端子2と第2端子3との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第2交点12において同相で足し合わされ、第2交点12から第2負荷回路22側へ概ね伝搬されてゆく。
逆に、第1端子2と第2端子3との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第2交点12において逆相で足し合わされて相殺され、第2交点12から第2負荷回路22側へ概ね伝搬されて行かない。
よって、第1端子2と第2端子3との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1負荷回路21側のみへ伝搬されてゆき、第1端子2と第2端子3との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2負荷回路22側のみへ伝搬されて行くこととなる。つまり、本実施の形態3の信号分波器1は、第1端子2と第2端子3との間に生じる前記2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。
尚、この場合に、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路7、第2線路8の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14と、第1位相器17、第2位相器18とが設計されていてもよい。これにより、第1交点11に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点11から第1負荷回路21側へ伝搬する信号のコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を向上させる事ができる。
また、同様に、第1端子2と、第2端子3とに、位相差180度であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路9、第4線路10の線路長と、第3整合回路15、第4整合回路16と、第3位相器19、第4位相器20とが設計されていてもよい。これにより、第2交点12に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点12から第2負荷回路22側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を向上させる事ができる。
尚、第1端子2から第1交点11までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子3から第1交点11までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路7、第2線路8の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14と、第1位相器17、第2位相器18とが設計されていてもよい。
例えば、第1端子2と第2端子3との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子2から第1交点11までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子3から第1交点11までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点11においてはコモンモードの信号は相殺されることとなる。
つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点11は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点11から第1端子2、及び第2端子3までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子2及び第2端子3から、それぞれ第1交点11側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。
よって、第1端子2と第2端子3との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点11側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点12側へ伝搬して行く事となる。これにより、第2負荷回路22へ伝搬するディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を更に向上させる事ができると共に、第1負荷回路21へ伝搬するコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子2と、第2端子3とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合に、第1線路7の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路8の第1交点11側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路7、第2線路8の線路長と、第1整合回路13、第2整合回路14と、第1位相器17、第2位相器18とが設計されていてもよい。これにより、第1交点11に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点11から第1負荷回路21側へ伝搬する信号のコモンモード信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を向上させる事ができる。
尚、第1端子2から第2交点12までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子3から第2交点12までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路9、第4線路10との線路長と、第3整合回路15、第4整合回路16と、第3位相器19、第4位相器20とは、設計されてもよい。
これにより、例えば、第1端子2と第2端子3との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第1端子2から第2交点12までの位相変化量と、第2端子3から第2交点12までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点12においてはディファレンシャルモードの信号は相殺されることになる。
つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点12は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点12から第1端子2、及び第2端子3までの位相変化量は共に90度となることより、第1端子2及び第2端子3から、それぞれ第2交点12側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。
よって、第1端子2と第2端子3との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点12側へ概ね伝搬して行かず、概ね第1交点11側へ伝搬して行く事となる。これにより、第1負荷回路21へ伝搬するコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を更に向上させる事ができると共に、第2負荷回路22へ伝搬するディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子2と、第2端子3とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路10の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路9、第4線路10の線路長と、第3整合回路15、第4整合回路16と、第3位相器19、第4位相器20とが設計されていてもよい。これにより、第2交点12に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点12から第2負荷回路22側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を向上させる事ができる。
尚、図3において、第1整合回路13、第2整合回路14、第3整合回路15、第4整合回路16、第1位相器17、第2位相器18、第3位相器19、第4位相器20のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路7、第2線路8、第3線路9、及び第4線路10における伝送ロスを低減できると共に、必要となる部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
また、必要であれば、第1交点11と第1負荷回路21との間、第2交点12と第2負荷回路22との間のうち少なくとも一方に、整合回路を接続しても良い。これにより、本実施の形態の信号分波器1と第1負荷回路21との間、及び、信号分波器1と第2負荷回路22との間の整合状態を良好にすることができ、これらの間の反射損を低減でき、結果、電子機器の通信品質を良好なものにする事が可能となる。
尚、第1整合回路13、第2整合回路14、第3整合回路15、第4整合回路16、第1位相器17、第2位相器18、第3位相器19、第4位相器20とは、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計されるが、第1交点11から信号を入力した場合、第3線路9の第2交点12側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路10の第2交点側12に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一である条件を満たすために、レジスタンス素子や増幅回路(例えば、第1線路7が送信経路、受信経路を有しており、それぞれに送信用増幅回路、受信用増幅回路を有するような構成等)等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、電子機器の送受信特性を向上させる事ができる。
また、図3においては、第5端子23、第6端子24、第7端子25、及び第8端子26から、信号が入出力されているが、入出力端子数はこれに限定する必要はなく、少なくとも1つの入出力端子から信号が入出力されていれば良い。
(実施の形態4)
以下、実施の形態4において、本発明の信号分波器を利用した電子機器の一例であるアンテナ装置について、説明する。理解が容易となるように、最初に、一般的な携帯電話等の無線端末で用いられるダイバーシティアンテナについて、図4を用いて説明する。その後、本発明の信号分波器を利用したアンテナ装置の説明を行う。
図4は一般的なダイバーシティアンテナの概念図である。図4において、携帯電話4100は、一定の距離を置いて配置された第1アンテナ4101と、第2アンテナ4102とを有している。第1アンテナ4101と第2アンテナ4102とはスイッチ4103へ接続されており、更に、スイッチ4103と信号処理部4104とは接続されている。第1アンテナ4101と第2アンテナ4102において受信された信号は、スイッチ4103を介して信号処理部4104へ送られ、信号処理部4104において、周波数変換、ノイズ除去、信号増幅等された後、復調される。この信号処理部4104は、復調された信号の信号品質値(例えば、BERなど)を導出した後、導出された信号品質値に基づいてスイッチ4103の状態を制御する。具体的には、信号処理部4104は、第1アンテナ4101と第2アンテナ4102とで受信される信号の品質値を比較し、より高い信号品質が実現できるアンテナをスイッチ4103の状態を切り替えることで選択する。
上記一般的なダイバーシティアンテナにおいて、第1アンテナ4101と第2アンテナ4102とは、アンテナ間のアイソレーションを確保するため、一定空間を離して配置する必要があり、第1アンテナ4101とスイッチ4103とを接続する信号線と、第2アンテナ4102とスイッチ4103とを接続する信号線とを、携帯電話4100内に長い距離這わせる必要がある。また、ダイバーシティアンテナを構成する2つのアンテナを携帯電話に設置する必要があり、生産効率が悪い。
そこで本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置は、1つのアンテナでアイソレーションの取れた2つの信号を入出力可能なダイバーシティアンテナを提供する。
本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置は、第1端子と、第2端子と、第3端子と、第4端子とを有するアンテナ素子と、このアンテナ素子に接続されるアンテナ装置とを有し、このアンテナ装置は、第1端子に一方が接続される第1線路と、第2端子に一方が接続される第2線路と、第3端子に一方が接続される第3線路と、第4端子に一方が接続される第4線路とを備え、第1線路の他方と第2線路の他方とは第1交点において接続され、第3線路の他方と第4線路の他方とは第2交点において接続されている。そして、第1交点から信号を入力した場合、第3線路の第2交点側に現れる信号の位相と、第4線路の第2交点側に現れる信号の位相との位相差は、概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている。
このような構成を本発明の信号分波器を用いたアンテナ装置が有していることより、第1交点から信号を入力した場合、第3線路の第2交点側に現れる信号の位相と、第4線路の第2交点側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点と第2交点との間のアイソレーションを概ね取る事ができる。
これにより第1交点と第2交点とは、アンテナ素子との信号のやり取りを相互に独立に行うことが可能となることから、1つのアンテナ装置を用いて、アイソレーションの取れた2つの信号の入出力が可能となる。これにより、1つのアンテナでアイソレーションの取れた2つの信号を入出力可能なダイバーシティアンテナを提供することが可能となる。
図5は、本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置のブロック図である。図5において、本実施の形態4のアンテナ装置501は、第1端子502、第2端子503、第3端子504、および第4端子505の4端子を少なくとも有するアンテナ素子506と、このアンテナ素子506の第1端子502に一方が接続される第1線路507と、アンテナ素子506の第2端子503に一方が接続される第2線路508と、アンテナ素子506の第3端子504に一方が接続される第3線路509と、アンテナ素子506の第4端子505に一方が接続される第4線路510とを有し、第1線路507の他方と第2線路508の他方とは第1交点511において接続され、第3線路509の他方と第4線路510の他方とは第2交点512において接続されている。
更に、本実施の形態4のアンテナ装置501は、第1線路507の途中に接続された第1整合回路513と第1位相器517と、第2線路508の途中に接続された第2整合回路514と第2位相器518と、第3線路509の途中に接続された第3整合回路515と第3位相器519と、第4線路510の途中に接続された第4整合回路516と第4位相器520とを有している。
また、第1交点511とグランドとの間には第1負荷回路521が接続されており、第2交点512とグランドとの間には第2負荷回路522が接続されている。
更に、アンテナ素子506は、第5端子523と第6端子524と第7端子525と第8端子526とを有する。ここで、第1交点511から信号を入力した場合、第3線路509の第2交点512側に現れる信号の位相と、第4線路510の第2交点512側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている。
また、第2交点512から信号を入力した場合、第1線路507の第1交点511側に現れる信号の位相と、第2線路508の第1交点511側に現れる信号の位相との位相差も概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている。
上記の条件を満たすように、第1線路507、第2線路508、第3線路509、及び第4線路510の線路長と、第1整合回路513、第2整合回路514、第3整合回路515、及び第4整合回路516と、第1位相器517、第2位相器518、第3位相器519、及び第4位相器520とは、適切な値となるように設計されている。
このことから、例えば、第1負荷回路521から送信された信号は、第3線路509の第2交点512側に現れる信号の位相と、第4線路510の第2交点512側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることから、第2交点512から第2負荷回路522側へ概ね伝搬して行かない。
逆に、第2負荷回路522から送信された信号についても、第1線路507の第1交点511側に現れる信号の位相と、第2線路508の第1交点511側に現れる信号の位相との位相差は概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点511から第1負荷回路521側へ概ね伝搬して行かない。
よって、第1負荷回路521と第2負荷回路522との間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1負荷回路521と第2負荷回路522との間でアイソレーションが確保できる。これにより、第1負荷回路521と第2負荷回路522とは、1つのアンテナ素子506を介して、信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、第1負荷回路521と第2負荷回路522とは、時間的、周波数的な制限を課せられる事も無く、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。
尚、第1交点511から第2交点512側へ信号を入力した場合、第3線路509の第2交点512側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路510の第2交点512側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路507、第2線路508、第3線路509、及び第4線路510の線路長と、第1整合回路513、第2整合回路514、第3整合回路515、及び第4整合回路516と、第1位相器517、第2位相器518、第3位相器519、及び第4位相器520とが設計されていても良い。
また、同様に、第2交点512から第1交点511側へ信号を入力した場合、第1線路507の第1交点511側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路508の第1交点511側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路507、第2線路508、第3線路509、及び第4線路510の線路長と、第1整合回路513、第2整合回路514、第3整合回路515、及び第4整合回路516と、第1位相器517、第2位相器518、第3位相器519、及び第4位相器520とが設計されていてもよい。これにより、第1負荷回路521と第2負荷回路522との間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
また、第1端子502と、第2端子503とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合、第1線路7の第1交点511側に現れる信号の位相と、第2線路508の第1交点511側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路507、第2線路508の線路長と、第1整合回路513、第2整合回路514と、第1位相器517、第2位相器518とは設計されてもよい。
ここで、例えば、第1端子502と第2端子503との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子502と第2端子503との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となっている。故に、第1端子502と、第2端子503とに、同位相であり、且つ、同振幅の絶対値の信号を入力した場合、第1線路507の第1交点511側に現れる信号の位相と、第2線路508の第1交点511側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点511において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点511から第1負荷回路側へは概ねコモンモードの信号は伝搬していかない。
逆に、第1端子502と第2端子503との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子502と第2端子503との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となる。故に、第1端子502と、第2端子503とに、位相差は±180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路507の第1交点511側に現れる信号の位相と、第2線路508の第1交点511側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点511において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点511から第1負荷回路側へ信号は概ね伝搬して行く。
このように、第1端子502と、第2端子503とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合、第1線路507の第1交点511側に現れる信号の位相と、第2線路508の第1交点511側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように信号分波器501が設計される事により、第1端子502と第2端子503との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1負荷回路521へ伝搬させることができる。
更に、第1端子502と、第2端子503とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合、第1線路507の第1交点511側に現れる信号の位相と、第2線路508の第1交点511側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件と、第1交点511から信号を入力した場合、第3線路509の第2交点512側に現れる信号の位相と、第4線路510の第2交点512側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度となる条件とを考慮した場合、第1端子502から第2交点512までの位相変化量と、第2端子503から第2交点512までの位相変化量との差は、零となる。つまり、第1端子502と第2端子503との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第2交点512において同相で足し合わされ、第2交点512から第2負荷回路522側へ概ね伝搬されてゆく。
逆に、第1端子502と第2端子503との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第2交点512において逆相で足し合わされて相殺され、第2交点512から第2負荷回路522側へ概ね伝搬されて行かない。よって、第1端子502と第2端子503との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1負荷回路521側のみへ伝搬されてゆき、第1端子502と第2端子503との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2負荷回路522側のみへ伝搬されて行くこととなる。つまり、本実施の形態4のアンテナ装置501は、アンテナ素子506を介して第1端子502と第2端子503との間に生じる2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。
尚、この場合に、第1端子502と、第2端子503とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路507の第1交点511側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路508の第1交点511側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路507、第2線路508の線路長と、第1整合回路513、第2整合回路514と、第1位相器517、第2位相器518とが設計されていてもよい。これにより、第1交点511に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点511から第1負荷回路521側へ伝搬する信号のコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。
また、同様に、第1端子502と、第2端子503とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第3線路509の第2交点512側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路510の第2交点512側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路509、第4線路510の線路長と、第3整合回路515、第4整合回路516と、第3位相器519、第4位相器520とが設計されていてもよい。これにより、第2交点512に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点512から第2負荷回路522側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。
尚、第1端子502から第1交点511までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子503から第1交点511までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路507、第2線路508の線路長と、第1整合回路513、第2整合回路514と、第1位相器517、第2位相器518とが設計されていてもよい。
例えば、第1端子502と第2端子503との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子502から第1交点511までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子503から第1交点511までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点511においてはコモンモードの信号は相殺されることとなる。つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点511は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点511から第1端子502、及び第2端子503までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子2及び第2端子503から、それぞれ第1交点511側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子502と第2端子503との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点511側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点512側へ伝搬して行く。これにより、第2負荷回路522へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。また、第1負荷回路521へ伝搬するコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子502と、第2端子503とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合に、第1線路507の第1交点511側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路508の第1交点511側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路507、第2線路508の線路長と、第1整合回路513、第2整合回路514と、第1位相器517、第2位相器518とが設計されていてもよい。これにより、第1交点511に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点511から第1負荷回路521側へ伝搬する信号のコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子506に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャル信号の信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型のダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第1端子502から第2交点512までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子503から第2交点512までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路509、第4線路510との線路長と、第3整合回路515、第4整合回路516と、第3位相器519、第4位相器520とは、設計されてもよい。これにより、例えば、第1端子502と第2端子503との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第1端子2から第2交点12までの位相変化量と、第2端子3から第2交点12までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点512においてはディファレンシャルモードの信号は相殺される。つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点512は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点512から第1端子502、及び第2交点512から第2端子503までの位相変化量は共に90度となることより、第1端子502及び第2端子503から、それぞれ第2交点512側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。
よって、第1端子502と第2端子503との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点512側へ概ね伝搬して行かず、概ね第1交点511側へ伝搬して行く。これにより、第1負荷回路521へ伝搬するコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を向上させる事ができると共に、第2負荷回路522へ伝搬するディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子502と、第2端子503とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合に、第3線路509の第2交点512側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路510の第2交点512側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路509、第4線路510の線路長と、第3整合回路515、第4整合回路516と、第3位相器519、第4位相器520とが設計されていてもよい。
これにより、第2交点512に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点512から第2負荷回路522側へ伝搬する信号のコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子506に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型ダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第3端子504から第2交点511までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第4端子505から第2交点512までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路509、第4線路510との線路長と、第3整合回路515、第4整合回路516と、第3位相器519、第4位相器520とは、設計されてもよい。これにより、例えば、第3端子504と第4端子505との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第3端子504から第2交点511までの位相変化量と、第4端子505から第2交点512までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点512においてはディファレンシャルモードの信号は相殺されることになる。つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点512は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点512から第3端子504、及び第4端子505までの位相変化量は共に90度となることより、第3端子504及び第4端子505から、それぞれ第2交点512側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。
よって、第3端子504と第4端子505との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点512側へ概ね伝搬して行かず、概ね第1交点511側へ伝搬して行く。これにより、第1負荷回路521へ伝搬するコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を更に向上させる事ができると共に、第2負荷回路522へ伝搬するディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第3端子504と、第4端子505とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路509の第2交点512側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路510の第2交点512側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路509、第4線路510の線路長と、第3整合回路515、第4整合回路516と、第3位相器519、第4位相器520とが設計されていてもよい。
これにより、第2交点512に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点512から第2負荷回路522側へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
故に、アンテナ素子506に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャル信号の信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、図5において、第1整合回路513、第2整合回路514、第3整合回路515、第4整合回路516、第1位相器517、第2位相器518、第3位相器519、第4位相器520のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路507、第2線路508、第3線路509、及び第4線路510における伝送ロスを低減できると共に、部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
また、必要であれば、第1交点511と第1負荷回路521との間、第2交点512と第2負荷回路522との間のうち少なくとも一方に、整合回路を接続しても良い。これにより、本実施の形態4のアンテナ装置501と第1負荷回路521との間、及び、アンテナ装置501と第2負荷回路522との間の整合状態を良好にすることができ、これらの間の反射損を低減でき、結果、電子機器の通信品質を良好なものにする事が可能となる。
尚、第1整合回路513、第2整合回路514、第3整合回路515、第4整合回路516、第1位相器517、第2位相器518、第3位相器519、第4位相器520とは、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計される。しかし、第1交点511から信号を入力した場合、第3線路509の第2交点512側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路510の第2交点512側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一である条件を満たすために、レジスタンス素子や増幅回路(例えば、第1線路7が送信経路と受信経路との2つの経路を有しており、それぞれの経路が送信用増幅回路、受信用増幅回路を有するような構成等)等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1負荷回路521と第2負荷回路522との間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、電子機器の送受信特性を向上させる事ができる。
(実施の形態5)
図6は、本発明の実施の形態5に係るアンテナ装置のブロック図である。尚、実施の形態4と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図6において、実施の形態605のアンテナ装置601は、少なくとも3端子を有するアンテナ素子606と、アンテナ素子606の第1端子602に一方が接続される第1線路607と、アンテナ素子606の第2端子603に一方が接続される第2線路608と、アンテナ素子606の第3端子604に一方が接続される第3線路609とを有し、第1線路607の他方と第2線路608の他方とは第1交点611に接続されている。そして、第3線路609の他方から信号を入力した場合、第1線路607の第1交点611側に現れる信号の位相と、第2線路608の第1交点611側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路607、第2線路608、及び第3線路609の線路長と、第1整合回路613、第2整合回路614、及び第3整合回路615と、第1位相器617、第2位相器618、及び第3位相器619とは設計されている。
このことから、例えば、第1負荷回路621から送信された信号は、第3線路609の他方側及び第3端子604において相殺されるため、第2負荷回路622側へ概ね伝搬して行かない。逆に、第2負荷回路622から送信された信号についても、第1線路607の第1交点611側に現れる信号の位相と、第2線路608の第1交点611側に現れる信号の位相との位相差は概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点611から第1負荷回路621側へ概ね伝搬して行かない。
よって、第1負荷回路621と第2負荷回路622との間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1負荷回路621と第2負荷回路622との間でアイソレーションが確保できる。これにより、第1負荷回路621と第2負荷回路622とは、アンテナ素子606を介して、信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、第1負荷回路621と第2負荷回路622とは、時間的、周波数的な制限を受けることなく、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。また、本実施の形態5のアンテナ装置601は、実施の形態4のアンテナ装置と比較して第3端子604と第2負荷回路622とを接続する線路の数、整合回路の数、位相器の数を減らす事ができるため、小型化、軽量化を図ることができる。
尚、第3線路609の他方から信号を入力した場合、第1線路607の第1交点611側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路608の第1交点611側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路607及び第2線路608の線路長と、第1整合回路613及び第2整合回路614と、第1位相器617及び第2位相器618とが設計されていても良い。これにより、第1負荷回路621と第2負荷回路622との間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
また、第1端子602と、第2端子603とに、同位相であり、且つ、同振幅の絶対値の信号を入力した場合、第1線路607の第1交点611側に現れる信号の位相と、第2線路608の第1交点611側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路607、第2線路608の線路長と、第1整合回路613、第2整合回路614と、第1位相器617、第2位相器618とは設計されてもよい。
ここで、例えば、第1端子602と第2端子603との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子602と第2端子603との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となっている。故に、第1端子602と、第2端子603とに、同位相であり、且つ、同振幅の絶対値の信号を入力した場合、第1線路607の第1交点611側に現れる信号の位相と、第2線路608の第1交点611側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点611において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点611から第1負荷回路621側へは概ねコモンモードの信号は伝搬していかない。
逆に、例えば、第1端子602と第2端子603との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子602と第2端子603との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となる。故に、第1端子602と、第2端子603とに、位相差が±180度であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合、第1線路607の第1交点611側に現れる信号の位相と、第2線路608の第1交点611側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点611において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点611から第1負荷回路621側へディファレンシャルモードの信号は概ね伝搬して行く。
このように、第1端子602と、第2端子603とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路607の第1交点611側に現れる信号の位相と、第2線路608の第1交点611側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように設計される事により、第1端子602と第2端子603との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1負荷回路621へ伝搬させることができる。
更に、第1端子602と、第2端子603とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路607の第1交点611側に現れる信号の位相と、第2線路608の第1交点611側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件と、第3線路609の他方から信号を入力した場合、第1線路607の第1交点611側に現れる信号の位相と、第2線路608の第1交点61側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度となる条件とを考慮した場合、第1端子602から第3端子604までの位相変化量と、第2端子603から第3端子604までの位相変化量との差は、零となる。
つまり、第1端子602と第2端子603との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第3端子604において同相で足し合わされ、第2負荷回路622側へ概ね伝搬されてゆき、逆に、第1端子602と第2端子603との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第3端子604において逆相で足し合わされて相殺され、第2負荷回路622側へ概ね伝搬されて行かない。
よって、第1端子602と第2端子603との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1負荷回路621側のみへ伝搬されてゆき、逆に、第1端子602と第2端子603との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2負荷回路622側のみへ伝搬されて行くこととなる。
つまり、本実施の形態5のアンテナ装置601は、第1端子602と第2端子603との間に生じる2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。尚、この場合に、第1端子602と、第2端子603とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路607の第1交点611側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路608の第1交点611側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路607、第2線路608の線路長と、第1整合回路613、第2整合回路614と、第1位相器617、第2位相器618とが設計されていてもよい。
これにより、第1交点611に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点611から第1負荷回路621側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子606に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャル信号の信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第1端子602から第1交点611までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子603から第1交点611までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路607、第2線路608の線路長と、第1整合回路613、第2整合回路614と、第1位相器617、第2位相器618とが設計されていてもよい。例えば、第1端子602と第2端子603との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子602から第1交点611までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子603から第1交点611までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点611においてはコモンモードの信号は相殺されることとなる。
つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点611は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点611から第1端子602、及び第2端子603までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子602及び第2端子603から、それぞれ第1交点611側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子602と第2端子603との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点611側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点612側へ伝搬して行く。
これにより、第2負荷回路622へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第1負荷回路621へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子602と、第2端子603とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第1線路607の第1交点611側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路608の第1交点611側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路607、第2線路608の線路長と、第1整合回路613、第2整合回路614と、第1位相器617、第2位相器618とが設計されていてもよい。
これにより、第1交点611に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点611から第1負荷回路621側へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
故に、アンテナ素子606に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャル信号の信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、図6において第1整合回路613、第2整合回路614、第1位相器617、第2位相器618のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路607及び第2線路608における伝送ロスを低減できると共に、必要となる部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
また、必要であれば、第1交点611と第1負荷回路621との間、第3端子604と第2負荷回路622との間のうち少なくとも一方に、整合回路を接続しても良い。これにより、本実施の形態5のアンテナ装置601と第1負荷回路621との間、及び、アンテナ装置601と第2負荷回路622との間の整合状態を良好にすることができ、これらの間の反射損を低減でき、結果、電子機器の通信品質を良好なものにする事が可能となる。
尚、第1整合回路613、第2整合回路614、第1位相器617、及び第2位相器618は、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計される。しかし、第3線路609の他方から信号を入力した場合、第1線路607の第1交点611側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路608の第1交点611側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一である条件を満たすために、レジスタンス素子や増幅回路(例えば、第1線路607が送信経路、受信経路を有しており、それぞれに送信用増幅回路、受信用増幅回路を有するような構成等)等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1負荷回路621と第2負荷回路622との間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、電子機器の送受信特性を向上させる事ができる。
(実施の形態6)
図7は、本発明の実施の形態6に係るアンテナ装置701のブロック図である。尚、実施の形態4と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図7において、本実施の形態6のアンテナ装置701は、第1端子702、及び第2端子703の2端子を少なくとも有するアンテナ素子706と、第1端子702に一方が接続される第1線路707と、第1端子702に一方が接続される第3線路709と、第2端子703に一方が接続される第2線路708と、第2端子703に一方が接続される第4線路710とを有し、第1線路707の他方と第2線路708の他方とは第1交点711に接続され、第3線路709の他方と第4線路710の他方とは第2交点712に接続されている。
そして、第1交点711から信号を入力した場合、第3線路709の第2交点712側に現れる信号の位相と、第4線路710の第2交点712側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路707、第2線路708、第3線路709、及び第4線路710の線路長と、第1整合回路713、第2整合回路714、第3整合回路715、及び第4整合回路716と、第1位相器717、第2位相器718、第3位相器719、及び第4位相器720とは設計されている。
このことから、例えば、第1負荷回路721から送信された信号は、第3線路709の第2交点712側に現れる信号の位相と、第4線路710の第2交点712側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることから、第2交点712から第2負荷回路722側へ概ね伝搬して行かない。
逆に、第2負荷回路722から送信された信号についても、第1線路707の第1交点711側に現れる信号の位相と、第2線路708の第1交点711側に現れる信号の位相との位相差も概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点711から第1負荷回路721側へ概ね伝搬して行かない。
よって、第1負荷回路721と第2負荷回路722との間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1負荷回路721と第2負荷回路722との間でアイソレーションが確保できる。これにより、第1負荷回路721と第2負荷回路722とは、アンテナ素子706を介して、信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。
つまり、第1負荷回路721と第2負荷回路722とは、時間的、周波数的な選択をする必要もなく、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。また、本実施の形態6のアンテナ装置701は、実施の形態4のアンテナ装置と比較して、アンテナ素子706との間を2つの接続端子のみで接続する事が可能であり、構造の簡易化を図ることが可能となる。
尚、第1交点711から第2交点712側へ信号を入力した場合、第3線路709の第2交点712側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路710の第2交点712側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路707、第2線路708、第3線路709、及び第4線路710の線路長と、第1整合回路713、第2整合回路714、第3整合回路715、及び第4整合回路716と、第1位相器717、第2位相器718、第3位相器719、及び第4位相器720とが設計されていても良い。
また、同様に、第2交点712から第1交点711側へ信号を入力した場合、第1線路707の第1交点711側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路708の第1交点711側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路707、第2線路708、第3線路709、及び第4線路710の線路長と、第1整合回路713、第2整合回路714、第3整合回路715、及び第4整合回路716と、第1位相器717、第2位相器718、第3位相器719、及び第4位相器720とが設計されていてもよい。これにより、第1負荷回路721と第2負荷回路722との間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
また、第1端子702と、第2端子703とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路707の第1交点711側に現れる信号の位相と、第2線路708の第1交点711側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路707、第2線路708の線路長と、第1整合回路713、第2整合回路714と、第1位相器717、第2位相器718とは設計されてもよい。
ここで、例えば、第1端子702と第2端子703との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子702と第2端子703との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となっている。故に、第1端子702と、第2端子703とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路707の第1交点711側に現れる信号の位相と、第2線路708の第1交点711側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点711において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点711から第1負荷回路721側へは概ねコモンモードの信号は伝搬していかない。
逆に、例えば、第1端子702と第2端子703との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子702と第2端子703との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となっている。故に、第1端子702と、第2端子703とに、位相差が±180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路707の第1交点711側に現れる信号の位相と、第2線路708の第1交点711側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点711において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点711から第1負荷回路721側へディファレンシャルモードの信号は概ね伝搬して行く。
このように、第1端子702と、第2端子703とに、同位相であり、且つ、同振幅の絶対値の信号を入力した場合、第1線路707の第1交点711側に現れる信号の位相と、第2線路708の第1交点711側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように設計される事により、第1端子702と第2端子703との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1負荷回路721へ伝搬させることができる。
更に、第1端子702と、第2端子703とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路707の第1交点711側に現れる信号の位相と、第2線路708の第1交点711側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件と、第1交点711から信号を入力した場合、第3線路709の第2交点712側に現れる信号の位相と、第4線路710の第2交点712側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度となる条件とを考慮した場合、第1端子702から第2交点712までの位相変化量と、第2端子703から第2交点712までの位相変化量との差は、零となる。
つまり、第1端子702と第2端子703との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第2交点712において同相で足し合わされ、第2交点712から第2負荷回路722側へ概ね伝搬されてゆき、逆に、第1端子702と第2端子703との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第2交点712において逆相で足し合わされて相殺され、第2交点712から第2負荷回路722側へ概ね伝搬されて行かない。
よって、第1端子702と第2端子703との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1負荷回路721側のみへ伝搬されてゆき、第1端子702と第2端子703との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2負荷回路722側のみへ伝搬されて行くこととなる。つまり、本実施の形態6のアンテナ装置701は、第1端子702と第2端子703との間に生じる2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。
尚、この場合に、第1端子702と、第2端子703とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路707の第1交点711側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路8の第1交点711側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路707、第2線路708の線路長と、第1整合回路713、第2整合回路714と、第1位相器717、第2位相器718とが設計されていてもよい。これにより、第1交点711に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点711から第1負荷回路721側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
また、同様に、第1端子702と、第2端子703とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第3線路709の第2交点712側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路710の第2交点712側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路709、第4線路710の線路長と、第3整合回路715、第4整合回路716と、第3位相器719、第4位相器720とが設計されていてもよい。これにより、第2交点712に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点712から第2負荷回路722側へ伝搬する信号のコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
これにより、アンテナ素子706に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第1端子702から第1交点711までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子703から第1交点711までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路707、第2線路708の線路長と、第1整合回路713、第2整合回路714と、第1位相器719、第2位相器720とが設計されていてもよい。
例えば、第1端子702と第2端子703との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子702から第1交点711までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子703から第1交点711までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点711においてはコモンモードの信号は相殺される。
つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点711は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点711から第1端子702、及び第2端子703までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子702及び第2端子703から、それぞれ第1交点711側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子2と第2端子703との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点711側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点712側へ伝搬して行く。
これにより、第2負荷回路22へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第1負荷回路21へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子702と、第2端子703とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第1線路707の第1交点711側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路708の第1交点711側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路707、第2線路708の線路長と、第1整合回路713、第2整合回路714と、第1位相器717、第2位相器718とが設計されていてもよい。
これにより、第1交点711に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点711から第1負荷回路721側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子706に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャル信号の信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第1端子702から第2交点711までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子703から第2交点712までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路709、第4線路710との線路長と、第3整合回路715、第4整合回路716と、第3位相器719、第4位相器720とは、設計されてもよい。
これにより、例えば、第1端子702と第2端子703との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第1端子702から第2交点711までの位相変化量と、第2端子703から第2交点712までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点712においてはディファレンシャルモードの信号は相殺される。
つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点712は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点712から第1端子702、及び第2端子703までの位相変化量は共に90度となることより、第1端子702及び第2端子703から、それぞれ第2交点712側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。
よって、第1端子702と第2端子703との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点712側へ概ね伝搬して行かず、概ね第1交点711側へ伝搬して行く。これにより、第1負荷回路721へ伝搬するディファレンシャルモードの信号の顧問モードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第2負荷回路722へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子702と、第2端子703とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路709の第2交点712側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路710の第2交点712側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路709、第4線路710の線路長と、第3整合回路715、第4整合回路716と、第3位相器719、第4位相器720とが設計されていてもよい。
これにより、第2交点712に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点712から第2負荷回路722側へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子706に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャル信号の信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、図7において、第1整合回路713、第2整合回路714、第3整合回路715、第4整合回路716、第1位相器717、第2位相器718、第3位相器719、第4位相器720のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路707、第2線路708、第3線路709、及び第4線路710における伝送ロスを低減できると共に、必要となる部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
また、必要であれば、第1交点711と第1負荷回路721との間、第2交点712と第2負荷回路722との間のうち少なくとも一方に、整合回路を接続しても良い。これにより、本実施の形態6のアンテナ装置701と第1負荷回路721との間、及び、アンテナ装置701と第2負荷回路722との間の整合状態を良好にすることができ、これらの間の反射損を低減でき、結果、電子機器の通信品質を良好なものにする事が可能となる。
尚、第1整合回路713、第2整合回路714、第3整合回路715、第4整合回路716、第1位相器717、第2位相器718、第3位相器719、第4位相器720とは、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計される。しかし、第1交点711から信号を入力した場合、第3線路709の第2交点712側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路710の第2交点712側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一である条件を満たすために、レジスタンス素子や増幅回路(例えば、第1線路707が送信経路、受信経路を有しており、それぞれに送信用増幅回路、受信用増幅回路を有するような構成等)等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1負荷回路721と第2負荷回路722との間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、電子機器の送受信特性を向上させる事ができる。
(実施の形態7)
図8は本発明の実施の形態7に係る信号分波器を使用した信号伝送の方法を示す図である。尚、実施の形態6と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図8においては、アンテナ素子806として、第1エレメント835と第3エレメント837とから成るアンテナエレメントと、第2エレメント836と第4エレメント838とから成るアンテナエレメントとの2対のアンテナエレメントにより構成されたダイポールアンテナを用いた場合を示している。
図8において、第3エレメント837の端部に第1端子802が設けられ、第4エレメント838の端部に第2端子803が設けられている。そして、第1端子802に接続された第1線路807及び第3線路809と、第2端子803に接続された第2線路808及び第4線路810と、第1位相器817、第2位相器818、第3位相器819、及び第4位相器820と、第1負荷回路821及び第2負荷回路822とは、電子機器(図示せず)に内蔵されているグランド板834の上方に概ね配置されている。尚、第1負荷回路821の一端と、第2負荷回路822の一端とはグランド板834に接続されているが、第1端子802と第2端子803はグランド板834に対して直接的に接続されていない。また、第1端子802から第1交点811までの位相変化量が+90度となるように第1線路807と第1位相器817とは設計されており、第2端子803から第1交点811までの位相変化量が−90度となるように第2線路808と第2位相器818とは設計されており、第1端子802から第2交点812までの位相変化量が+90度となるように第3線路809と第3位相器819とは設計されており、第2端子803から第2交点812までの位相変化量が+90度となるように第4線路810と第4位相器820とは設計されている。
そして、第1エレメント835と第2エレメント836とは、グランド板834の端部に概ね平行に配置されており、第3エレメント837と第4エレメント838とは、グランド板834に端部に概ね垂直に配置されている。
図9は本発明の実施の形態7に係る信号分波器を使用したアンテナの動作説明図である。図9において、アンテナ素子806にディファレンシャルモードの信号が発生した場合を示す。第1エレメント835と第2エレメント836とには、向きの揃った電流(図9において矢印にて図示)が発生し、第3エレメント837と第4エレメント838とには、向きが逆となる電流が発生する。
よって、第1端子802と第2端子803とに発生する信号の位相差は180度となる。このような信号が第1端子802と第2端子803に入力された場合、実施の形態6において説明した原理により、第1交点711には信号は現れるが、第2交点812には、信号が現れない。つまり、アンテナ素子806にディファレンシャルモードの信号が発生した場合には、第1負荷回路821にはその信号が受信されるが、第2負荷回路822にはその信号は受信されない。また、第1負荷回路821からアンテナ装置801に信号を入力した場合、この信号は第2負荷回路822には伝搬されず、大部分の信号はアンテナ素子806に供給される。
そして、供給された信号は、アンテナ素子806にディファレンシャルモードの電流を発生させ(図9参照)、電磁波として空中に放射される。放射に寄与するアンテナ素子806上の電流ベクトルは、第1エレメント835と第2エレメント836とに発生する電流ベクトルが主であり、第3エレメント837と第4エレメント838とに発生する電流ベクトルについては、電流ベクトルの向きがお互い逆向きとなるため、大きくは放射に寄与しない。
よって、アンテナ素子806にディファレンシャルモードが発生した場合の放射パターンは、点線で示したような放射パターン839となる。このことから、第1エレメント835及び第2エレメント836に対して、主に垂直方向から到来する電磁波を受信した場合には、アンテナ素子806上にディファレンシャルモードが発生し、第1負荷回路821からのみ、その信号が取り出されることとなる。
図10は本発明の実施の形態7に係る信号分波器を使用したアンテナの動作原理を示す図である。図10において、アンテナ素子806にコモンモードの信号が発生した場合を示す。第1エレメント835と第2エレメント836とには、向きが逆の電流(図10において矢印にて図示)が発生し、第3エレメント837と第4エレメント838とには、向きが揃った電流が発生する。よって、第1端子802と第2端子803とに発生する信号の位相差は実質的に0度となる。
このような信号が第1端子802と第2端子803に入力された場合、実施の形態6において説明した原理により、第2交点812には信号は現れるが、第1交点811には、信号が現れない。つまり、アンテナ素子806にコモンモードの信号が発生した場合には、第2負荷回路822にはその信号が受信されるが、第1負荷回路821にはその信号は受信されない。
また、第2負荷回路822からアンテナ装置801に信号を入力した場合、この信号は第1負荷回路821には伝搬されず、大部分の信号はアンテナ素子806に供給される。そして、供給された信号は、アンテナ素子6にコモンモードの電流を発生させ(図10参照)、電磁波として空中に放射される。
放射に寄与するアンテナ素子806上の電流ベクトルは、第3エレメント837と第3エレメント838とに発生する電流ベクトルと、それに連動して発生するグランド板834上の電流ベクトル841が主であり、第1エレメント835と第2エレメント836とに発生する電流ベクトルについては、電流ベクトルの向きがお互い逆向きとなるため、大きくは放射に寄与しない。よって、アンテナ素子806にコモンモードが発生した場合の放射パターンは、図10の点線で示したような放射パターン840となる。このことから、主に、第3エレメント837及び第4エレメント838に対して主に垂直方向から到来する電磁波を受信した場合には、アンテナ素子806上にコモンモードが発生し、第2負荷回路822からのみ、その信号が取り出される。
以上のことから、図8〜図10に示した対称構造を有するアンテナ素子806(例えば、ダイポールアンテナ)を用いる事により、1つのアンテナ素子のみで指向性ダイバーシティアンテナとして使用することが可能となる。これにより、アンテナ装置の小型化、軽量化を図ることが可能となる。
図8〜図10に示すような対称構造を有するアンテナ素子806を敢えて採用する理由としては、第1端子802と第2端子803との間にコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号とがそれぞれ発生した場合に、放射に寄与する電流ベクトルの向きを互いに直交させることが可能となる為である(図9、10の放射に寄与する電流ベクトルが直交していることからも理解できる)。故に、本発明の信号分配器を用いたアンテナ装置の特長である1つのアンテナ素子のみで実現される指向性ダイバーシティアンテナのダイバーシティ利得を最大化させる事が可能となる。
アンテナ素子806が対称構造を有していなくとも2つの偏波軸(互いに直交してはいないが)を有した小型な指向性ダイバーシティアンテナを実現することは可能である。
尚、グランド板834に関しても、アンテナ素子806同様に、任意の線844を基準に線対称となる形状を有していても良い(図8参照)。コモンモードの信号が第1端子802と第2端子803との間に発生した場合には、グランド板834にも放射に寄与する電流ベクトルが発生するため、グランド板834に関しても、任意の線844に対して対称な構造となるように設計されていれば、ダイバーシティ利得の高い指向性ダイバーシティアンテナを実現することができる。
上記の事実は、図5の4つの端子を有するアンテナ装置506の場合や、図6の3つの端子を有するアンテナ装置606の場合にも、同様に当てはまる。
図11は本発明の実施の形態7に係るアンテナ装置を示す図である。図11において、図11において、第1端子802と第2端子803とを結ぶ第1直線(図示せず)上の第1端子802と第2端子803との中点(図示せず)において、第1直線に垂直な線844を基準に、アンテナ素子806は実質的に線対称形状を有している。更に、第3端子804と第4端子805とを結ぶ第3直線(図示せず)上の第3端子804と第4端子805との中点(図示せず)において、第3直線に垂直な線844に対して、アンテナ素子806は実質的に線対称形状を有している。アンテナ素子806として、このような形状を採用する事により、指向性ダイバーシティアンテナのダイバーシティ利得の最大化を図ることが可能となる。
図12は本発明の実施の形態7に係る別のアンテナ装置を示す図である。図12において、第1端子802と第2端子803とを結ぶ第1直線(図示せず)上の第1端子802と第2端子803との中点(図示せず)において、第1直線に垂直な線844を基準に、アンテナ素子806は実質的に線対称形状を有していると共に、線844の上に第3端子804が実質的に存在する構造となっている。アンテナ素子806として、このような形状を採用する事により、高いダイバーシティ利得を有する指向性ダイバーシティアンテナを実現することが出来る。
また、本実施の形態7のアンテナ装置801は、第1負荷回路821と第2負荷回路822との間に高いアイソレーション特性を有しているため、共用器の機能も有しているといえる。例えば、第1負荷回路821を受信側回路として使用し、第2負荷回路822を送信側回路として使用することが考えられる。本発明のアンテナ装置801を共用器としても利用した場合、送受信の信号が同一周波数であったとしても、第1負荷回路821と第2負荷回路822との間にアイソレーションを確保できるため、従来の共用器では実現できなかった特性を実現する事が可能となっている。
また、アンテナ素子806に発生するディファレンシャルモードの信号を受信する第1交点811が受信側回路へ接続される構成としてもよい。これにより、外部ノイズに対してより耐性のあるディファレンシャルモードの信号を受信側に割り当てる事により、外部ノイズによる受信信号の劣化を回避でき、電子機器の受信性能の向上を図ることが可能となる。
尚、実施の形態7においては、対称構造のアンテナ素子(ダイポールアンテナ)を用いた。しかし、対称構造のアンテナ素子に限る必要はなく、少なくとも2つの接続端子を有したアンテナ素子であれば、非対称構造のアンテナ素子を用いてもよい。携帯電話等の小型携帯端末に内蔵される事を想定した場合、アンテナ素子に許されるスペースが非常に少ない事から、対称構造のアンテナ素子を採用する事は困難である。故に、本発明の実施の形態7に係るアンテナ装置801を用いれば、非対称構造のアンテナ素子を用いた場合においても、非対称構造のアンテナ素子に発生するコモンモードとディファレンシャルモードの2つのモードをそれぞれ独立に受信・送信でき、等価的に2本分のアンテナ素子として機能させる事ができる。これにより、アンテナ素子に許容される容積の少ない小型の電子機器に最適なアンテナ装置を実現できる。
また、本実施の形態7のアンテナ装置を、テレビ放送やラジオ放送を受信する車載用アンテナに用いてもよい。この場合、例えば、透明樹脂フィルム上に作成された本実施の形態のアンテナ素子806をフロントガラスに貼り付け、本実施の形態7のアンテナ装置を実現する事で、小型で受信性能に優れたダイバーシティアンテナを実現できる。また、この場合、第1交点811と第1負荷回路821(例えば、テレビのチューナや復調回路等の受信機)との間、及び、第2交点812と第2負荷回路822(例えば、テレビのチューナや復調回路等の受信機)との間は、約5m程度の同軸ケーブルにて接続される事となる。しかし、以下記載の実施の形態8以降で説明する伝送方式を採用する事により、信号線の本数を2本から1本に減らす事が可能となる。これにより軽量化、生産効率の向上を図ることができる。
尚、図8の第3エレメント837と第1端子802との間、第4エレメント838と第2端子803との間にそれぞれ増幅器を接続する事により、第1端子802及び第2端子803からアンテナ装置801側のロスによるNF特性劣化を低減する事ができる。
図13から図22には、第1端子802から見た入力インピーダンスが50Ωとなる第1エレメント835と第3エレメント837とから成るアンテナエレメントと、第2端子803から見た入力インピーダンスが50Ωとなる第2エレメント836と第4エレメント838とから成るアンテナエレメントとを用いて、620MHzにおいて本実施の形態7のアンテナ装置801を設計した一例を示している。図13から図22において、freqは周波数を示し、impedanceはインピーダンスを示す。
図13は本発明の実施の形態7に係るアンテナ素子806がディファレンシャルモードで動作した場合を示す図である。図14は本発明の実施の形態7に係るアンテナ素子806がコモンモードで動作した場合を示す図である。アンテナ素子806がディファレンシャルモードで動作している時(図13参照)、第1エレメント835と第3エレメント837とから成るアンテナエレメントと、第2エレメント836と第4エレメント838とから成るアンテナエレメントとが直列に接続された形となるため、第1端子802と第2端子803とから見たアンテナ素子806の入力インピーダンスは100Ωとなる。
アンテナ素子806がコモンモードで動作している時(図14参照)、第1エレメント835と第3エレメント837とから成るアンテナエレメントと、第2エレメント836と第4エレメント838とから成るアンテナエレメントとが並列に接続された形となるため、第1端子802と第2端子803とから見たアンテナ素子806の入力インピーダンスは25Ωとなる。
これらの事実を設計に反映させたため、図13のアンテナ素子806(ポート番号3)の入力インピーダンスは100Ωとなっており、図14のアンテナ素子806(ポート番号6)の入力インピーダンスは25Ωとなっている。また、一般的に高周波回路は50Ωで設計されるので、図13の第1負荷回路821(ポート番号1)、及び第2負荷回路822(ポート番号2)と、図14の第1負荷回路821(ポート番号4)、及び第2負荷回路822(ポート番号5)とは、それらの入力インピーダンスを50Ωとして設計を行った。図13及び図14においては、第1位相器817、第2位相器818、第3位相器819、及び第4位相器820とは、それぞれ803素子のリアクタンス素子で実現した。
図15は本発明の実施の形態7に係るアンテナ装置の通過特性を示す図である。図15において、図13で示したアンテナ素子806がディファレンシャルモードで動作した場合のアンテナ素子806(ポート番号3)と第1負荷回路821(ポート番号1)と第2負荷回路822(ポート番号2)との間の通過特性を示す。例えば、S(3,1)とは、第1負荷回路821(ポート番号1)からアンテナ素子806(ポート番号3)への通過特性を示している。図15より、第1負荷回路821(ポート番号1)からアンテナ素子806(ポート番号3)への通過特性S(3,1)は、620MHzにおいて、ほぼ0dBとなり、導通状態である事が分かる。これに対して、第2負荷回路822(ポート番号2)からアンテナ素子806(ポート番号3)への通過特性S(3,2)は、620MHzにおいて、−30dB以下となり、高いアイソレーションが取れている事が分かる。また、第1負荷回路821(ポート番号1)から第2負荷回路822(ポート番号2)への通過特性S(2,1)についても、620MHzにおいて、−30dB以下となり、高いアイソレーションが取れている事が分かる。
図16は本発明の実施の形態7に係る別のアンテナ装置の通過特性を示す図である。図16において、図14で示したアンテナ素子806がコモンモードで動作した場合のアンテナ素子806(ポート番号6)と第1負荷回路821(ポート番号4)と第2負荷回路822(ポート番号5)との間の通過特性を示す。例えば、S(6,4)とは、第1負荷回路821(ポート番号4)からアンテナ素子806(ポート番号6)への通過特性を示している。図16より、第2負荷回路822(ポート番号5)からアンテナ素子806(ポート番号6)への通過特性S(6,5)は、620MHzにおいて、ほぼ0dBとなり、導通状態である事が分かる。これに対して、第1負荷回路821(ポート番号4)からアンテナ素子806(ポート番号6)への通過特性S(6,4)は、620MHzにおいて、−30dB以下となり、高いアイソレーションが取れている事が分かる。また、第1負荷回路821(ポート番号4)から第2負荷回路822(ポート番号5)への通過特性S(5,4)についても、620MHzにおいて、−30dB以下となり、高いアイソレーションが取れている事が分かる。
以上より、図5から図10で説明したアンテナ装置の動作が実際に実現できることがわかる。参考までに、図17から図22において、ポート番号1から6までの各ポートにおけるインピーダンス特性を示す。図17から図22において、例えば、S(1,1)とは、図13における第1負荷回路821から第1交点811側を見た時の入力インピーダンス特性を示している。
尚、図8のアンテナ素子806と信号分波器とは、第1線路と、第2線路と、第3線路と、第4線路の特性インピーダンスが共にZoであると共に、第1交点に接続される第1負荷回路の第1交点から見た入力インピーダンスと、第2交点に接続される第2負荷回路の第2交点から見た入力インピーダンスと、第1端子から見たアンテナ素子806の入力インピーダンスと、第2端子から見たアンテナ素子806の入力インピーダンスとが共に概ねZo/2であるように設計しても良い。これは、図8に示したアンテナ装置が、図13と図14とで示した等価回路により表わされるためである。
これにより、アンテナ素子806と、第1負荷回路821または第2負荷回路822とのインピーダンス整合が容易に取れることとなり、反射損を低減できる。ちなみに、図14、図15は、上記のインピーダンスの関係を満たしており、その結果、図17〜図22に示すように、良好な電気特性を実現できている。
尚、上記の実施の形態4〜7における第1負荷回路と第2負荷回路とは、実際的には、信号の受信、送信を行う通信回路を表しており、電子機器内部に搭載されている実装基板等に実装されている。
また、図5〜図10において、第1端子と第1交点との間は、1本の線路である第1線路と、1つの第1整合回路と、1つの第1位相器とで構成されている。しかし、複数の線路、複数の整合回路、複数の位相回路により構成されていても良い。このことは、第2端子と第1交点との間、第3端子と第2交点との間、第4端子と第2交点との間についても同様である。そして、「第1線路」、「第2線路」、「第3線路」、「第4線路」とは、複数の線路にて構成されるものも含んでいる。同様に、「第1整合回路」、「第2整合回路」、「第3整合回路」、「第4整合回路」とは、複数の整合回路にて構成されるものも含んでおり、「第1位相器」、「第2位相器」、「第3位相器」、「第4位相器」とは、複数の位相器にて構成されるものも含んでいる。
(実施の形態8)
図23は本発明の実施の形態4〜6に係るアンテナ装置を電子機器に使用した場合のブロック図である。尚、実施の形態6と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図23において、第1端子902と第2端子903とを有するアンテナ素子906は、第1端子2を介して第1増幅器942と接続され、また、第2端子903を介して第902増幅器943に接続されている。そして、第1増幅器942は、第9端子928において2端子対線路927と接続されると共に、第2増幅器943は、第10端子929において2端子対線路927と接続される。また、第1信号分波器930の第1整合回路913と第3整合回路915とは、2端子対線路927の第1端子902と接続されており、第1信号分波器930の第2整合回路914と第4整合回路916とは、2端子対線路927の第2端子903と接続されている。
更に、第1位相器917は、第1整合回路913と第1交点911との間に接続され、第2位相器918は、第2整合回路914と第1交点911との間に接続され、第3位相器919は、第3整合回路915と第2交点912との間に接続され、第4位相器920は、第4整合回路916と第2交点912との間に接続されている。
ここで、図23の第1信号分波器930の第1線路907、第2線路908、第3線路909、及び第4線路910の線路長と、第1整合回路913、第2整合回路914、第3整合回路915、及び第4整合回路916と、第1位相器917、第2位相器918、第3位相器919、及び第4位相器920とが設計されているとする。
この場合、例えば、アンテナ素子906にディファレンシャルモードの信号1と、コモンモードの信号2が発生したとすると、信号1は2端子対線路927をディファレンシャルモードで伝搬してゆき、信号2は2端子対線路927をコモンモードで伝搬して行く。つまり、信号1と信号2とは2端子対線路927において混合され、伝搬して行く。これらの混合された信号は、第1信号分波器930により概ね精度良く分離することができる。具体的には、実施の形態6にて説明した原理により、ディファレンシャルモードで伝搬してきた信号1のみ第1負荷回路921において受信され、また、コモンモードで伝搬してきた信号2のみ第2負荷回路922において受信される。つまり、本発明のアンテナ装置を用いる事により、2種類の信号の送受を、1つのアンテナ素子906を用いて行うことが可能となる。
尚、本実施の形態8のアンテナ装置は、例えば、2端子対線路927の第5端子923及び第6端子924から、または第7端子925及び第8端子926から、ディファレンシャルモードとコモンモードとにより第1信号と第2信号とを入出力し、それを、第1信号分波器930により受信し、アンテナ素子906により送信するような使い方をしてもよい。これにより、2端子対線路927に多数の負荷回路が接続されたネットワークにおいて、負荷回路同士のデータの送受を高速に行う事が可能となる。
逆に、第5端子923、第6端子924、第7端子925、及び第8端子926を削除し、2端子対線路927の一端に第1端子902、第2端子903と、が接続され、他端に第9端子928、第10端子929とが接続された構成としてもよい。これにより、2端子対線路927の構造を簡易にすることができる。
また、2端子対線路927は、任意の面に対して面対称となる形状を有していてもよい。このような形状を採用する事により、例えば、コモンモードの信号が、2端子対線路927を伝搬中にディファレンシャルモードに変換されてしまうことを防止できる。
更に、2端子対線路927は、その外側をシールドされていてもよい。外側をシールドする事により、外部からの到来するノイズにより、主に、コモンモードで伝搬している信号のS/N(Signal/Noise)特性が劣化する事を防止する事ができると共に、2端子対線路927をコモンモードで伝送中の信号が、放射して損失する事を防止する事ができる。
また、この事を考慮し、伝送量の多い変調方式(例えば64QAMや16QAMなど)の信号をディファレンシャルモードで伝送し、比較的伝送量が少なく高い受信感度が求められない変調方式(例えばQPSKやBPSKなど)の信号をコモンモードで伝送するように、伝送モードに応じて伝送する信号を使い分けてもよい。
更に、本実施の形態8のアンテナ装置を用いれば、コモンモードを受信する第2負荷回路922において、2端子対回路927が受けたノイズの量を把握することも可能である。これは、外部から到来し2端子対回路927に漏れ込むノイズは、2端子対線路927上を主にコモンモードにより伝搬することとなるためである。
尚、上記の信号1と信号2の周波数は同一であっても良いし、異なっていても良い。第1負荷回路921と第2負荷回路922とから、それぞれ独立に入出力可能であるためである。
また、第1増幅器942と第2増幅器943とは、ローノイズアンプとして動作させることができる。これにより、第1増幅器942と第2増幅器943の後段回路(例えば、2端子対線路927や第1信号分波器930等がこれに相当する)のロスによる受信システムのNF特性劣化を軽減することができる。
例えば、コモンモードを2端子対線路927に伝送した場合、放射による伝送損失が発生するが、第1増幅器942と第2増幅器943とを用いる事により、NF特性劣化を軽減できる。また、図23においては、信号を受信する場合について説明することを意識したため、アンテナ素子906からの信号を増幅する第1増幅器942、第2増幅器943のみを記載した。しかし、2端子対線路927からの信号を増幅する第3増幅器が第9端子928と第1端子902との間に第1増幅器942と並列に接続され、2端子対線路927からの信号を増幅する第4増幅器が第10端子929と第2端子903との間に第2増幅器943と並列に接続された構成としてもよい。これにより、1つのアンテナ素子906と1つの2端子対線路927とを用いるのみで、送信側と受信側共に2つの独立した信号を扱う事ができ、電子機器のデータ伝送量を増加させる事ができる。
尚、上記において、アンテナ素子906がコモンモード及びディファレンシャルモードのアンテナとして動作している場合には、例えば、2端子対線路927もアンテナの一部として動作することになるため、アンテナ素子906のサイズを等価的に大きくすることができ、アンテナ装置の放射抵抗を増加させる事ができる。
このことは、例えば、アンテナ装置を上述のテレビ放送やラジオ放送を受信する車載用アンテナに適用した場合、2端子対線路27の長さが約5m程度と長くなるため、更に顕著な効果として現れることになる。この効果は、第1増幅器42と第2増幅器43が無い場合には、更に顕著なものとなる。
図24は本発明の実施の形態8に係る別のアンテナ装置を示す図である。図24において、図23における第9端子928と第10端子929に第2信号分波器931を接続した構成となっている。そして、図24のアンテナ装置は、第2信号分波器931の第1交点911と、例えば、図5〜図7のアンテナ装置の少なくとも一つの第1交点911とを接続し、第2信号分波器931の第2交点912と、図5〜図7のアンテナ装置の少なくとも一つの第2交点912とを接続して、使用することになる。これにより、第1交点911においては、2端子対線路927とアンテナ素子906とから得られるディファレンシャルモードの信号が取り出され、第2交点912においては、2端子対線路927とアンテナ素子906とから得られるコモンモードの信号が取り出される。よって、第1交点911と第2交点912とにそれぞれ負荷回路を接続し、当該負荷回路から複数の対象に信号を効率的に供給する事が可能となる。
(実施の形態9)
以下、実施の形態9として、本発明の信号分波器を用いた電子機器の一例として、信号伝送方式の事例を説明する。理解を容易にするために、最初に一般の信号伝送方式について図25を用いて説明し、その後、本発明の信号分配器を用いた、又は、その原理を利用した信号伝送方式について説明する。
図25は一般の携帯電話で用いられる信号伝送方式のブロック図である。図25において、一般の信号伝送方式5100は、第1高周波回路5101と第2高周波回路5102とを有し、第1高周波回路5101と第2高周波回路5102とは、第1伝送線路5103と第2伝送線路5104とから成る2端子対線路5105により電気的に接続されている。
例えば、第1高周波回路5101から第2高周波回路5102へ信号を伝送する場合、通常、第1伝送線路5103へ出力する信号と、第2伝送線路5104から入力される信号とは、実質的に同一の振幅の絶対値を有し、位相は逆相となっている(このような信号の伝送の様子をディファレンシャルモードと言う。図25中の矢印は、信号の電流の向きを例示している)。
通常、2端子対線路5105として、フィーダー線や同軸線路等が用いられる。また、一般の信号伝送方式5100は、2端子対線路5105、第1高周波回路5101、および第2高周波回路5102が外部機器からのノイズを受ける事もある。この場合、ノイズは、2端子対線路5105を実質的にコモンモードで伝送するため、ノイズ除去のため、2端子対線路5105の途中にコモンモードフィルタを接続する場合もある。
上記一般の信号伝送方式は、ある任意時間に2端子対線路を伝送できる信号は1つだけであるため、同一時間に2つ以上の同一周波数の信号を伝送することはできない。もしも、2つの信号を同一時間にディファレンシャルモードにより伝送した場合、2つの信号は混信してしまい、受信側において分離できない。これは、例えば、携帯電話においては、データを伝送するスピードを一定以上に上げられないことを意味している。
本発明の実施の形態9に係る信号伝送方式は、同一周波数の2つの信号を同一時間に伝送する事ができる信号伝送方式を提供する。
本発明の実施の形態9に係る信号伝送方式は、2端子対線路を用いて、第1信号をディファレンシャルモードにより伝送し、第2信号をコモンモードにより伝送する構成となっている。
本発明の実施の形態9に係る信号伝送方式においては、2端子対線路を用いて、第1信号をディファレンシャルモードにより伝送し、第2信号をコモンモードにより伝送する構成となっている。このため、例えば、同一周波数の2つの信号である第1信号と第2信号とを、1つの2端子対線路を介して同一時間に伝送する事が可能な信号伝送方式を提供することが可能となる。
図26は、本発明の実施の形態9に係る信号伝送方式のブロック図である。図26において、本実施の形態9の信号伝送方式201は、第1端子202、第2端子203、第3端子204、および第4端子205の4端子を少なくとも有する2端子対線路206と、この2端子対線路206の第1端子202に一方が接続される第1線路207と、2端子対線路206の第2端子203に一方が接続される第2線路208と、2端子対線路206の第3端子204に一方が接続される第3線路209と、2端子対線路206の第4端子205に一方が接続される第4線路210とを有し、第1線路207の他方と第2線路208の他方とは第1交点211において接続され、第3線路209の他方と第4線路210の他方とは第2交点212において接続されている。
更に、本実施の形態9の信号伝送方式201は、第1線路7の途中に接続された第1整合回路213と第1位相器217と、第2線路208の途中に接続された第2整合回路214と第2位相器218と、第3線路209の途中に接続された第3整合回路215と第3位相器219と、第4線路210の途中に接続された第4整合回路216と第4位相器220とを有している。また、第1交点211とグランドとの間には第1負荷回路221が接続されており、第2交点212とグランドとの間には第2負荷回路222が接続されている。
更に、2端子対線路206は、第6端子223と第7端子224と第8端子225と第9端子226とを有する。ここで、第1交点211から信号を入力した場合、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の位相と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている。また、第2交点212から信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との位相差も概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている。
上記の条件を満たすように、第1線路207、第2線路208、第3線路209、及び第4線路210の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、及び第4整合回路216と、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、及び第4位相器220とは、適切な値となるように設計されている。このことから、例えば、第1負荷回路221から送信された信号は、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の位相と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることから、第2交点212から第2負荷回路222側へ実質的に伝搬して行かない。
逆に、第2負荷回路222から送信された信号についても、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との位相差は概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点211から第1負荷回路221側へ実質的に伝搬して行かない。
よって、第1負荷回路21と第2負荷回路22との間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間でアイソレーションが確保できる。これにより、第1負荷回路221と第2負荷回路222とは、2端子対線路206との信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、第1負荷回路221と第2負荷回路222とは、時間的、周波数的な制限を課せられる必要もなく、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。
更に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とは設計される。ここで、例えば、第1端子202と第2端子203との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子202と第2端子203との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となる。
故に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点211において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点211から第1負荷回路側へは概ねコモンモードの信号は伝搬していかない。
逆に、例えば、第1端子202と第2端子203との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子202と第2端子203との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となる。故に、第1端子202と、第2端子203とに、位相差は±180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点211において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点211から第1負荷回路側へ信号は実質的に伝搬して行くこととなる。
このように、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように信号分波器201が設計される事により、第1端子202と第2端子203との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1負荷回路221へ伝搬させることができる。
更に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件と、第1交点211から信号を入力した場合、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の位相と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度となる条件とを考慮した場合、第1端子202から第2交点212までの位相変化量と、第2端子203から第2交点212までの位相変化量との差は、実質的に零となる。
つまり、第1端子202と第2端子203との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第2交点212において同相で足し合わされ、第2交点212から第2負荷回路222側へ実質的に伝搬されて行く。
逆に、第1端子202と第2端子203との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第2交点212において逆相で足し合わされて相殺され、第2交点212から第2負荷回路222側へ実質的に伝搬されて行かない。
よって、第1端子202と第2端子203との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、実質的に第1負荷回路221側のみへ伝搬されて行き、第1端子202と第2端子203との間に生じたコモンモードの信号は、実質的に第2負荷回路222側のみへ伝搬されて行くこととなる。つまり、本実施の形態9の信号伝送方式201は、第1端子202と第2端子203との間に生じる2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。
つまり、例えば、ディファレンシャルモードで伝送されている第1信号と、コモンモードで伝送されている第1信号と同一周波数の第2信号とが、2端子対線路206を介して伝送されている時、実質的に相互に干渉することなく、第1信号は第1交点211を介して第1負荷回路221に取り出され、第2信号は第2交点212を介して第2負荷回路222に取り出される。
逆に、第1負荷回路221から第1信号を第1交点211に入力し、第2負荷回路222から第2信号を第2交点212に入力する事により、実質的に相互に干渉させることなく、第1信号と第2信号とを、2端子対線路206を介して伝送させることができる。
つまり、1つの2端子対線路206を用いて、同一周波数の2つの信号である第1信号と第2信号とを、同一時間に伝送する事が可能となり、データ伝送量を増加させる事ができる。
尚、この場合に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とが設計されていてもよい。
これにより、第1交点211に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点211から第1負荷回路221側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
また、同様に、第1端子202と、第2端子203とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路209、第4線路210の線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器219、第4位相器220とが設計されていてもよい。
これにより、第2交点212に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点212から第2負荷回路222側へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
また、第1交点211から信号を入力した場合、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208、第3線路209、及び第4線路210の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、及び第4整合回路216と、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、及び第4位相器220とが設計されていても良い。
また、同様に、第2交点212から信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208、第3線路209、及び第4線路210の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、及び第4整合回路216と、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、及び第4位相器220とが設計されていてもよい。これにより、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
尚、第1端子202から第1交点211までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子203から第1交点211までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とが設計されていてもよい。例えば、第1端子202と第2端子203との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子202から第1交点211までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子3から第1交点211までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点211においてはコモンモードの信号は相殺される。
つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点211は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点211から第1端子202、及び第2端子203までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子202及び第2端子203から、それぞれ第1交点211側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子202と第2端子203との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点211側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点212側へ伝搬して行く事となる。これにより、第2負荷回路222へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第1負荷回路221へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とが設計されていてもよい。これにより、第1交点211に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点211から第1負荷回路221側へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
尚、第1端子202から第2交点211までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子203から第2交点212までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路209、第4線路210との線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器217、第4位相器218とは、設計されてもよい。これにより、例えば、第1端子202と第2端子203との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第1端子202から第2交点211までの位相変化量と、第2端子203から第2交点212までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点212においてはディファレンシャルモードの信号は相殺される。
つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点212は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点212から第1端子202、及び第2端子203までの位相変化量は共に90度となることより、第1端子202及び第2端子203から、それぞれ第2交点212側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子202と第2端子203との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点212側へ概ね伝搬して行かず、概ね第1交点211側へ伝搬して行く事となる。これにより、第1負荷回路222へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第2負荷回路222へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子202と、第2端子203とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路209、第4線路210の線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器219、第4位相器220とが設計されていてもよい。
これにより、第2交点212に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点212から第2負荷回路222側へ伝搬する信号のコモンモードの信号のディファレンシャルモードに対する比率を向上させる事ができる。
尚、第3端子204から第2交点211までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第4端子205から第2交点212までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路209、第4線路210との線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器217、第4位相器218とは、設計されてもよい。
これにより、例えば、第3端子204と第4端子205との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第3端子204から第2交点211までの位相変化量と、第4端子205から第2交点212までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点212においてはディファレンシャルモードの信号は相殺されることになる。
つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点212は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点212から第3端子204、及び第4端子205までの位相変化量は共に90度となることより、第3端子204及び第4端子205から、それぞれ第2交点212側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第3端子204と第4端子205との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点212側へ概ね伝搬して行かず、概ね第1交点211側へ伝搬して行く。これにより、第1負荷回路222へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第2負荷回路222へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第3端子204と、第4端子205とに、位相差2180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路209、第4線路210の線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器219、第4位相器220とが設計されていてもよい。これにより、第2交点212に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点212から第2負荷回路222側へ伝搬する信号のコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
尚、図26において、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、第4整合回路216、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、第4位相器220のうち少なくとも一つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路207、第2線路208、第3線路209、及び第4線路210における伝送ロスを低減できると共に、必要となる部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
また、必要であれば、第1交点211と第1負荷回路221との間、第2交点212と第2負荷回路222との間のうち少なくとも一方に、整合回路を接続しても良い。これにより、本実施の形態9の信号伝送方式201と第1負荷回路221との間、及び、信号伝送方式201と第2負荷回路222との間の整合状態を良好にすることができ、これらの間の反射損を低減でき、結果、電子機器の通信品質を良好なものにする事が可能となる。
尚、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、第4整合回路216、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、第4位相器220とは、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計される。しかし、レジスタンス素子や増幅回路(例えば、第1線路207が送信経路、受信経路を有しており、それぞれに送信用増幅回路、受信用増幅回路を有するような構成等)等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、電子機器の送受信特性を向上させる事ができる。
また、図26においては、第6端子223、第7端子224、第8端子225、及び第9端子226から、信号が入出力されている。しかし、入出力端子数はこれに限定する必要はなく、少なくとも1つの入出力端子から信号が入出力されていれば良い。
(実施の形態10)
図27は、本発明の実施の形態10に係る信号伝送方式のブロック図である。尚、実施の形態9と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図27において、実施の形態10の信号伝送方式301は、第1端子302、第2端子303、第3端子304、および第4端子305の4端子を少なくとも有する2端子対線路306と、第3端子304と第4端子305とを接続する短絡線327上に第5端子336を有すると共に、第1端子302から第5端子336までの位相変化量と、第2端子303から第5端子336までの位相変化量は実質的に同一となっている。
更に、本発明の実施の形態10に係る信号伝送方式301は、2端子対線路306の第1端子302に一方が接続される第1線路307と、2端子対線路306の第2端子303に一方が接続される第2線路308と、2端子対線路306の第3端子304に一方が接続される第3線路309とを有し、第1線路307の他方と第2線路308の他方とは第1交点311に接続されている。そして、第3線路309の他方から信号を入力した場合、第1線路307の第1交点311側に現れる信号の位相と、第2線路308の第1交点311側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路307、第2線路308、及び第3線路309の線路長と、第1整合回路313、第2整合回路314、及び第3整合回路315と、第1位相器317、第2位相器318、及び第3位相器319とは設計されている。
このことから、例えば、第1負荷回路321から第2負荷回路322側へ送信された信号は、第3線路309の他方側及び第3端子において相殺されるため、第2負荷回路322側へ概ね伝搬して行かない。逆に、第2負荷回路322から第1負荷回路321側へ送信された信号についても、第1線路307の第1交点311側に現れる信号の位相と、第2線路308の第1交点311側に現れる信号の位相との位相差は概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点311から第1負荷回路321側へ概ね伝搬して行かない。
よって、第1負荷回路321と第2負荷回路322との間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1負荷回路321と第2負荷回路322との間でアイソレーションが確保できる。これにより、第1負荷回路321と第2負荷回路322とは、2端子対線路306との信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、第1負荷回路321と第2負荷回路322とは、時間的、周波数的な制限を課せられる必要もなく、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。
また、本実施の形態10の信号伝送方式301は、実施の形態9と比較して、第3端子304と第2負荷回路322とを接続する線路数、整合回路数、位相器数を減らす事できるため、小型化、軽量化を図ることができる。
尚、第3線路309の他方から信号を入力した場合、第1線路307の第1交点311側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路308の第1交点311側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路307及び第2線路308の線路長と、第1整合回路313及び第2整合回路314と、第1位相器317及び第2位相器318とが設計されていても良い。これにより、第1負荷回路321と第2負荷回路322との間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
更に、第1端子302と、第2端子303とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路307の第1交点311側に現れる信号の位相と、第2線路308の第1交点311側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路307、第2線路308の線路長と、第1整合回路313、第2整合回路314と、第1位相器317、第2位相器318とは設計される。ここで、例えば、第1端子302と第2端子303との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子302と第2端子303との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となっている。
故に、第1端子302と、第2端子303とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路307の第1交点311側に現れる信号の位相と、第2線路308の第1交点311側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点311において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点311から第1負荷回路側へは概ねコモンモードの信号は伝搬していかない。逆に、例えば、第1端子302と第2端子303との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子302と第2端子303との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となっている。
故に、第1端子302と、第2端子303とに、位相差が±180度であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合、第1線路307の第1交点311側に現れる信号の位相と、第2線路308の第1交点311側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点311において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点311から第1負荷回路側へディファレンシャルモードの信号は概ね伝搬して行く。
このように、第1端子302と、第2端子303とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路307の第1交点311側に現れる信号の位相と、第2線路308の第1交点311側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように設計される事により、第1端子302と第2端子303との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1負荷回路321へ伝搬させることができる。
更に、第1端子302と、第2端子303とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路307の第1交点311側に現れる信号の位相と、第2線路308の第1交点311側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件と、第1交点311から信号を入力した場合、第3線路309の第2交点312側に現れる信号の位相と、第4線路310の第2交点312側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度となる条件とを考慮した場合、第1端子302から第2交点312までの位相変化量と、第2端子303から第2交点312までの位相変化量との差は、実質的に零となる。
つまり、第1端子302と第2端子303との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第3端子304において同相で足し合わされ、第2負荷回路322側へ概ね伝搬されてゆき、逆に、第1端子302と第2端子303との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第3端子304において逆相で足し合わされて相殺され、第2負荷回路322側へ概ね伝搬されて行かない。
よって、第1端子302と第2端子303との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、実質的に第1負荷回路321側のみへ伝搬されてゆき、第1端子302と第2端子303との間に生じたコモンモードの信号は、実質的に第2負荷回路322側のみへ伝搬されて行くこととなる。つまり、本実施の形態10の信号伝送方式301は、第1端子302と第2端子303との間に生じる2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。
つまり、例えば、ディファレンシャルモードで伝送されている第1信号と、コモンモードで伝送されている第1信号と同一周波数の第2信号とが、2端子対線路306を介して伝送されている時、実質的に相互に干渉することなく、第1信号は第1交点311を介して第1負荷回路321に取り出され、第2信号は第3端子304を介して第2負荷回路322に取り出される。
逆に、第1負荷回路321から第1信号を第1交点311に入力し、第2負荷回路322から第2信号を第3端子304に入力する事により、実質的に相互に干渉させることなく、第1信号と第2信号とを、2端子対線路6を介して伝送させることができる。
つまり、1つの2端子対線路306を用いて、同一周波数の2つの信号である第1信号と第2信号とを、同一時間に伝送する事が可能となり、データ伝送量を増加させる事ができる。
尚、この場合に、第1端子302と、第2端303とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路307の第1交点311側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路308の第1交点311側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路307、第2線路308の線路長と、第1整合回路313、第2整合回路314と、第1位相器317、第2位相器318とが設計されていてもよい。これにより、第1交点311に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点311から第1負荷回路321側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
尚、第1端子302から第1交点311までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子303から第1交点311までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路307、第2線路308の線路長と、第1整合回路313、第2整合回路314と、第1位相器317、第2位相器318とが設計されていてもよい。
例えば、第1端子302と第2端子303との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子302から第1交点311までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子303から第1交点311までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点311においてはコモンモードの信号は相殺される。つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点311は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点311から第1端子302、及び第2端子303までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子302及び第2端子303から、それぞれ第1交点311側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子302と第2端子303との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点311側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点312側へ伝搬して行く。これにより、第2負荷回路322へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第1負荷回路321へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子302と、第2端子303とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第1線路307の第1交点311側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路308の第1交点311側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路307、第2線路308の線路長と、第1整合回路313、第2整合回路314と、第1位相器317、第2位相器318とが設計されていてもよい。これにより、第1交点311に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点311から第1負荷回路321側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
尚、図27において第1整合回路313、第2整合回路314、第1位相器317、第2位相器318のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路307及び第2線路308における伝送ロスを低減できると共に、必要となる部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
また、必要であれば、第1交点311と第1負荷回路321との間、第3端子304と第2負荷回路322との間のうち少なくとも一方に、整合回路を接続しても良い。これにより、本実施の形態10の信号伝送方式301と第1負荷回路321との間、及び、信号伝送方式301と第2負荷回路322との間の整合状態を良好にすることができ、これらの間の反射損を低減でき、結果、電子機器の通信品質を良好なものにする事が可能となる。
尚、第1整合回路313、第2整合回路314、第1位相器317、及び第2位相器318は、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計される。しかし、第3線路309の他方から信号を入力した場合、第1線路307の第1交点311側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路308の第1交点311側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一である条件を満たすために、レジスタンス素子や増幅回路(例えば、第1線路307が送信経路、受信経路を有しており、それぞれに送信用増幅回路、受信用増幅回路を有するような構成等)等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1負荷回路321と第2負荷回路322との間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、電子機器の送受信特性を向上させる事ができる。
また、図27においては、第6端子323、第7端子324、第8端子325、及び第9端子326から、信号が入出力されているが、入出力端子数はこれに限定する必要はなく、少なくとも1つの入出力端子から信号が入出力されていれば良い。
更に、図27においては、第1端子302、第3端子304、第2端子303、及び第4端子305とが、それぞれ異なる位置にて構成されているが、第1端子302と第3端子304、及び、第2端子303と第4端子305とが、それぞれ同じ位置にて構成されていても、上記と同様の効果が得られると共に、2端子対線路306上の端子数を減らす事が可能となり、2端子対線路306の構造を簡略化できる。第1端子302と、第2端子303とに、同位相であり、且つ、同振幅の信号を入力した場合、第1線路307の第1交点311側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路308の第1交点311側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となる場合には、このような第1端子302と第3端子304、及び、第2端子303と第4端子305とが、それぞれ同じ位置にて構成されている場合も含んでいる。
(実施の形態11)
図28は、本発明の実施の形態11に係る信号伝送方式のブロック図である。尚、実施の形態9と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図28において、本実施の形態11の信号伝送方式401は、第1端子402と第2端子403とに接続された第1信号分波器430と、第10端子428と第11端子429とに接続された第2信号分波器431とを有している。
第1信号分波器430は、第1端子402に一方が接続される第1線路407と、第1端子402に一方が接続される第3線路409と、第2端子403に一方が接続される第2線路408と、第2端子403に一方が接続される第4線路410とを有し、第1線路407の他方と第2線路408の他方とは第1交点411に接続され、第3線路409の他方と第4線路410の他方とは第2交点412に接続されている。
また、第2信号分波器431は、第10端子428に一方が接続される第1線路407と、第1端子402に一方が接続される第3線路409と、第11端子429に一方が接続される第2線路408と、第2端子403に一方が接続される第4線路410とを有し、第1線路407の他方と第2線路408の他方とは第1交点411に接続され、第3線路409の他方と第4線路410の他方とは第2交点412に接続されている。
ここで、まずは、第1信号分波器430の動作原理について、以下、詳述する(第2信号分波器431の動作原理についても、第1信号分波器430と同様である)。
第1信号分波器430の第1交点411から信号を入力した場合、第3線路409の第2交点412側に現れる信号の位相と、第4線路410の第2交点412側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路407、第2線路408、第3線路409、及び第4線路410の線路長と、第1整合回路413、第2整合回路414、第3整合回路415、及び第4整合回路416と、第1位相器417、第2位相器418、第3位相器419、及び第4位相器420とは設計されている。このことから、例えば、第1負荷回路421から送信された信号は、第3線路409の第2交点412側に現れる信号の位相と、第4線路410の第2交点412側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることから、第2交点412から第2負荷回路422側へ実質的に伝搬して行かない。
逆に、第2負荷回路422から送信された信号についても、第1線路407の第1交点411側に現れる信号の位相と、第2線路408の第1交点411側に現れる信号の位相との位相差も実質的に180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点411から第1負荷回路421側へ実質的に伝搬して行かない。よって、第1負荷回路421と第2負荷回路422との間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1負荷回路421と第2負荷回路422との間でアイソレーションが確保できる。
これにより、第1負荷回路421と第2負荷回路422とは、2端子対線路406との信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、第1負荷回路421と第2負荷回路422とは、時間的、周波数的な制限を課せられる必要もなく、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。
また、本実施の形態11の第1信号分波器430(第2信号分波器431も同様)は、2端子対線路406との間を2つの接続端子のみで接続する事が可能であり、構造の簡易化を図ることが可能となる。
尚、第1交点411から信号を入力した場合、第3線路409の第2交点412側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路410の第2交点412側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路407、第2線路408、第3線路409、及び第4線路410の線路長と、第1整合回路413、第2整合回路414、第3整合回路415、及び第4整合回路416と、第1位相器417、第2位相器418、第3位相器419、及び第4位相器420とが設計されていても良い。
また、同様に、第2交点412から信号を入力した場合、第1線路407の第1交点411側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路408の第1交点411側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路407、第2線路408、第3線路409、及び第4線路410の線路長と、第1整合回路413、第2整合回路414、第3整合回路415、及び第4整合回路416と、第1位相器417、第2位相器418、第3位相器419、及び第4位相器420とが設計されていてもよい。これにより、第1負荷回路421と第2負荷回路422との間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
更に、第1端子402と、第2端子403とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路407の第1交点411側に現れる信号の位相と、第2線路408の第1交点411側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路407、第2線路408の線路長と、第1整合回路413、第2整合回路414と、第1位相器417、第2位相器418とは設計される。
ここで、例えば、第1端子402と第2端子403との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子402と第2端子403との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となっている。故に、第1端子402と、第2端子403とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路407の第1交点411側に現れる信号の位相と、第2線路408の第1交点411側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点411において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点411から第1負荷回路側へは実質的にコモンモードの信号は伝搬していかない。
逆に、例えば、第1端子402と第2端子403との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子402と第2端子403との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となる。故に、第1端子402と、第2端子403とに、位相差が±180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路407の第1交点411側に現れる信号の位相と、第2線路408の第1交点411側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点411において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点411から第1負荷回路側へディファレンシャルモードの信号は実質的に伝搬して行く。
このように、第1端子402と、第2端子403とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路407の第1交点411側に現れる信号の位相と、第2線路408の第1交点411側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように設計される事により、第1端子402と第2端子403との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1負荷回路421へ伝搬させることができる。
更に、第1端子402と、第2端子403とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路407の第1交点411側に現れる信号の位相と、第2線路408の第1交点411側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件と、第1信号をディファレンシャルモードにより2端子対線路を用いて伝送し、第2信号をコモンモードにより前記2端子対線路を用いて伝送する条件とを考慮した場合、第1端子402から第2交点412までの位相変化量と、第2端子403から第2交点412までの位相変化量との差は、零となる。
つまり、第1端子402と第2端子403との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第2交点412において同相で足し合わされ、第2交点412から第2負荷回路422側へ実質的に伝搬されてゆき、逆に、第1端子402と第2端子403との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第2交点412において逆相で足し合わされて相殺され、第2交点412から第2負荷回路422側へ実質的に伝搬されていかない。
よって、第1端子402と第2端子403との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1負荷回路421側のみへ伝搬されてゆき、第1端子402と第2端子403との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2負荷回路422側のみへ伝搬されて行くこととなる。つまり、本実施の形態11の信号伝送方式401は、第1端子402と第2端子403との間に生じる2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。
つまり、例えば、ディファレンシャルモードで伝送されている第1信号と、コモンモードで伝送されている第1信号と同一周波数の第2信号とが、2端子対線路6を介して伝送されている時、実質的に相互に干渉することなく、第1信号は第1交点411を介して第1負荷回路421に取り出され、第2信号は第2交点412を介して第2負荷回路422に取り出される。
逆に、第1負荷回路421から第1信号を第1交点411に入力し、第2負荷回路422から第2信号を第2交点412に入力する事により、実質的に相互に干渉させることなく、第1信号と第2信号とを、2端子対線路406を介して伝送させることができる。
つまり、1つの2端子対線路406を用いて、同一周波数の2つの信号である第1信号と第2信号とを、同一時間に伝送する事が可能となり、データ伝送量を増加させる事ができる。
尚、この場合に、第1端子402と、第2端子403とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路407の第1交点411側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路408の第1交点411側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路407、第2線路408の線路長と、第1整合回路413、第2整合回路414と、第1位相器417、第2位相器418とが設計されていてもよい。これにより、第1交点411に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点411から第1負荷回路421側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
また、同様に、第1端子402と、第2端子403とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第3線路409の第2交点412側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路410の第2交点412側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路409、第4線路410の線路長と、第3整合回路415、第4整合回路416と、第3位相器419、第4位相器420とが設計されていてもよい。
これにより、第2交点412に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点412から第2負荷回路422側へ伝搬する信号のコモンモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。
尚、第1端子402から第1交点411までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子403から第1交点411までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路407、第2線路8の線路長と、第1整合回路413、第2整合回路414と、第1位相器417、第2位相器418とが設計されていてもよい。
例えば、第1端子402と第2端子403との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子402から第1交点411までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子403から第1交点411までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点411においてはコモンモードの信号は相殺されることとなる。
つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点411は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点411から第1端子402、及び第2端子403までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子402及び第2端子403から、それぞれ第1交点411側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子402と第2端子403との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点411側へ概ね伝搬して行かず、実質的に第2交点412側へ伝搬して行く。これにより、第2負荷回路422へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第1負荷回路421へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子402と、第2端子403とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第1線路407の第1交点411側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路408の第1交点411側に現れる信号の振幅の絶対値とが実質的に同一となるように、第1線路407、第2線路408の線路長と、第1整合回路413、第2整合回路414と、第1位相器417、第2位相器418とが設計されていてもよい。これにより、第1交点411に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点411から第1負荷回路21側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号の顧問モードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
尚、第1端子402から第2交点411までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子403から第2交点412までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路409、第4線路410との線路長と、第3整合回路415、第4整合回路416と、第3位相器417、第4位相器418とは、設計されてもよい。これにより、例えば、第1端子402と第2端子403との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第1端子402から第2交点411までの位相変化量と、第2端子403から第2交点412までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点412においてはディファレンシャルモードの信号は相殺されることになる。
つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点412は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点412から第1端子402、及び第2端子403までの位相変化量は共に90度となることより、第1端子402及び第2端子403から、それぞれ第2交点412側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子402と第2端子403との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点412側へ実質的に伝搬して行かず、実質的に第1交点411側へ伝搬して行く。これにより、第1負荷回路422へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第2負荷回路422へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子402と、第2端子403とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路409の第2交点412側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路410の第2交点412側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路409、第4線路410の線路長と、第3整合回路415、第4整合回路416と、第3位相器419、第4位相器420とが設計されていてもよい。これにより、第2交点412に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点412から第2負荷回路422側へ伝搬する信号のコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
尚、図28において、第1整合回路413、第2整合回路414、第3整合回路415、第4整合回路416、第1位相器417、第2位相器418、第3位相器419、第4位相器420のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路407、第2線路408、第3線路409、及び第4線路410における伝送ロスを低減できると共に、必要となる部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
また、必要であれば、第1交点411と第1負荷回路421との間、第2交点412と第2負荷回路422との間のうち少なくとも一方に、整合回路を接続しても良い。これにより、本実施の形態11の信号伝送方式401と第1負荷回路421との間、及び、信号伝送方式401と第2負荷回路422との間の整合状態を良好にすることができ、これらの間の反射損を低減でき、結果、電子機器の通信品質を良好なものにする事が可能となる。
尚、第1整合回路413、第2整合回路414、第3整合回路415、第4整合回路416、第1位相器417、第2位相器418、第3位相器419、第4位相器420とは、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計される。そして、2端子対線路の断面形状が実質的に面対称である条件を満たすために、レジスタンス素子や増幅回路(例えば、第1線路407が送信経路、受信経路を有しており、それぞれに送信用増幅回路、受信用増幅回路を有するような構成等)等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1負荷回路421と第2負荷回路422との間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、電子機器の送受信特性を向上させる事ができる。
また、図28においては、第6端子423、第7端子424、第8端子425、及び第9端子426から、信号が入出力されているが、入出力端子数はこれに限定する必要はなく、少なくとも1つの入出力端子から信号が入出力されていれば良い。
次に、図28に示した実施の形態11に係る信号伝送方式401の動作の様子について、以下、詳述する。
図28において、第1信号分波器430の第1整合回路413と第3整合回路415とは、2端子対線路406の第1端子402と接続されており、第1信号分波器430の第2整合回路414と第4整合回路416とは、2端子対線路427の第2端子403と接続されている。更に、第2信号分波器431の第1整合回路413と第3整合回路415とは、2端子対線路406の第10端子428と接続されており、第2信号分波器431の第2整合回路414と第4整合回路416とは、2端子対線路406の第11端子429と接続されている。
また、第1信号分波器430の第1交点411と第1負荷回路421とは接続され、第1信号分波器430の第2交点412と第2負荷回路422とは接続されており、更に、第2信号分波器431の第1交点411と第3負荷回路432とは接続され、第2信号分波器431の第2交点412と第4負荷回路433とは接続されている。
例えば、第1負荷回路421から第1交点411に第1信号を入力し、第2負荷回路422から第2交点412に第2信号を入力した場合、第1信号は2端子対線路427をディファレンシャルモードで伝搬してゆき、第2信号は2端子対線路427をコモンモードで伝搬して行く。つまり、第1信号と第2信号とは2端子対線路427において混合され、伝搬して行く。これらの混合された信号は、第2信号分波器431により実質的に精度良く分離することができる。
具体的には、2端子対線路406をディファレンシャルモードで伝搬してきた第1信号のみ第3負荷回路432にて受信され、また、2端子対線路406をコモンモードで伝搬してきた第2信号のみ第4負荷回路433にて受信される。
つまり、本発明の実施の形態11に係る信号伝送方式を用いる事により、2種類の信号の送受を、1つの2端子対線路406のみを用いて行う事が可能となる。よって、ディファレンシャルモードとコモンモードの両方のモードを利用して信号伝送を行うことにより、信号伝送量を増やす事が可能となる。
尚、本実施の形態11の信号伝送方式401は、例えば、2端子対線路406の第6端子423及び第7端子424から、または第8端子425及び第9端子426から、ディファレンシャルモードとコモンモードとにより第1信号と第2信号とを入出力し、それを、第1信号分波器430と第2信号分波器431とにより受信するような使い方をしてもよい。これにより、ネットワークにぶら下がった多数の負荷回路に信号を送信する事が可能となる。
また、2端子対線路406の断面形状は、実質的に面対称となる形状を有していてもよい。このような形状を採用する事により、例えば、コモンモードの信号が、2端子対線路406を伝搬中にディファレンシャルモードに変換されてしまうことを防止できる。
図29、図30は本発明の実施の形態11に係る信号伝送方式に用いられる2端子対線路の断面形状を示す図である。
図29において、2端子対線路406は第1伝送線434と第2伝送線435とを有しており、更に、第1伝送線434と第2伝送線435とを取り囲むようにシールド導体437を有している。ここで、第1伝送線434、第2伝送線435、及びシールド導体437とは、面438を基準に実質的に面対称の構成となっている。
また、図30において、2端子対線路406は第1伝送線434と第2伝送線435とを有しており、更に、第1伝送線434と第2伝送線435とを取り囲むようにシールド導体437を有している。ここで、第1伝送線434、第2伝送線435、及びシールド導体437とは、面438を基準に実質的に面対称の構成となっている。
図29、図30に示したように、2端子対線路406が任意の面438を基準に面対称の構成を有していれば、コモンモードの信号が、2端子対線路406を伝搬中にディファレンシャルモードに変換されてしまうことを防止できる。これにより、2端子対線路406を伝送されるディファレンシャルモードとコモンモードとの2つの信号を干渉することを防止できる。
更に、図29、図30に示した2端子対線路406は、第1伝送線434と第2伝送線435とを取り囲むように、その外側にシールド導体437を有している。
一般的に、2端子対線路406の周囲からノイズが2端子対線路406に到来した場合、当該ノイズは2端子対線路406においてコモンモードによって受信される。よって、2端子対線路406をコモンモードにより伝送してされている信号のS/N比は、このようなノイズにより劣化させられてしまう。これを防止するため図29、図30に示したように、2端子対線路406はシールド導体437を有しており、シールド導体437によりノイズが2端子対線路406上に洩れこまないよう配慮されている。また、一般的に、2端子対線路406上を伝送されるコモンモードによる信号は、伝送中に電磁波として周囲に放射され易く、伝送中のロスが大きくなる。これを防止する意味でも、図29、図30に示した2端子対線路406は、シールド導体437を有している。尚、図29、図30においては、シールド導体437は1重のものを図示した。しかし、これを2重以上のものに置き換えてもよい。これにより、外部からのノイズ耐性が向上すると共に、コモンモードの放射の抑圧を更に図ることができる。
図31、図32は本発明の実施の形態11に係る信号伝送方式に用いられる2端子対線路の別の断面形状を示す図である。高周波基板と、この高周波基板上の導電性パターンにより2端子対線路406を形成した場合の一例を示す。
図31において、2端子対線路406は、第1伝送線434と第2伝送線435とを有すると共に、第1伝送線434と第2伝送線435とに近接してシールド導体437を有しており、第1伝送線434と第2伝送線435とシールド導体437とは、高周波基板439の表層(内層でも可、シールド導体437と直流的に導通していなければよい)に形成されている。ここで、第1伝送線434、第2伝送線435、及びシールド導体437とは、面438を基準に実質的に面対称の構成となっている。
また、図32に示した2端子対線路406は、図31のものに対し、シールド導体437を第1伝送線434と第2伝送線435とが形成された層にも形成した点が異なっている。図32に示した2端子対線路406についても、第1伝送線434、第2伝送線435、及びシールド導体437とは、面438を基準に実質的に面対称の構成となっている。
図31、図32に示したように、2端子対線路406が任意の面438を基準に面対称の構成を有していれば、コモンモードの信号が、2端子対線路406を伝搬中にディファレンシャルモードに変換されてしまうことを防止できる。これにより、2端子対線路406を伝送されるディファレンシャルモードとコモンモードとの2つの信号を干渉することを防止できる。
また、図29、図30の2端子対線路406と同様に、シールド導体437は、ノイズが2端子対線路406上に洩れこまないように機能すると共に、2端子対線路406を伝送中のコモンモードの信号が放射しないように機能している。
尚、図31に示した第1伝送線434、第2伝送線435は、それらの下方にのみシールド導体437が配置されているが、上方にも更にシールド導体は配置した構成としても良い。これにより、シールド効果が更に高められる。
また、2端子対線路406を伝送されているコモンモードの信号の方が、ディファレンシャルモードの信号よりも、外部のノイズの影響を受け易い事を考慮し、伝送量の多い変調方式(例えば64QAMや16QAMなど)の信号をディファレンシャルモードで伝送し、比較的伝送量が少ない変調方式(例えばQPSKやBPSKなど)の信号をコモンモードで伝送するように、伝送モードに応じて伝送する信号を使い分けてもよい。一般的に、伝送量の多い変調方式(例えば64QAMや16QAMなど)の信号の場合、その受信時には高い信号品質値が要求される。よって、よりノイズに対して耐性のあるディファレンシャルモードによる伝送信号に、高い信号品質値が求められる信号を割り当てる事より、全体として、伝送量を増加させる事が可能となる。ここで、「信号品質値」とは、例えば、C/N比やS/N比等の信号とノイズの比を表す指標を指している。
尚、本実施の形態11の信号分波器を用いれば、コモンモードを受信する第2負荷回路422又は第4負荷回路433において、2端子対回路406が受けたノイズの量を把握することも可能である。
具体的に、図28において第2負荷回路422が無い構成を考えてみる。この構成において、第1負荷回路421から2端子対線路406へ信号1を入力した場合、その信号1は2端子対線路406を伝送されて、第3負荷回路432において受信されることとなる。信号1が2端子対線路406を伝送されている途中で、外部からのノイズを受け、信号1の信号品質値が劣化した場合に、そのノイズを抽出し、受けたノイズと振幅の絶対値が等しく、位相が逆相となるように調整した後、信号1と足し合わせてあげれば、信号1に混ざり合ったノイズをキャンセルすることが出来る。
故に、第4負荷回路433において、2端子対線路406で受信された外部のノイズを受信し、このノイズの振幅と位相を上記条件が満たされる(振幅の絶対値が等しく、移送が逆相に為る)ように調整しながら、第3負荷回路432で受信される信号1に合成し、2端子対線路406を伝送中に信号1に漏れ込んだノイズをキャンセルすれば、信号1の信号品質を向上させることが可能となる。
本発明の実施の形態11のような構成により上記のノイズキャンセルシステムを実現すれば、第4負荷回路433で受信されるノイズと信号1の比率(ノイズ/信号1)が非常に大きな値にできるため、非常に優れたノイズキャンセルシステムが構築できる。なぜなら、外部のノイズは2端子対線路406をコモンモードで主に伝送されるため、その大部分が第4負荷回路433で抽出できるからである。
また、信号1が第4負荷回路433において、ほぼ受信されないことも、本発明の実施の形態11のような構成によるノイズキャンセルシステムが非常に優れた性能を有している理由の1つとなっている。もしも、第4負荷回路433において、ノイズと共に信号1も受信されてしまうと、第3負荷回路432で受信された信号1と合成する際に、信号1自身を減ずる方向に作用してしまうためである。
尚、上記の第1信号と第2信号の周波数は同一であっても良いし、異なっていても良い。また、図28においては、例えば、第1信号分波器430と第2信号分波器431とのペアにより信号の送受をするシステムを構成できる。しかし、それに限らず、3つ以上の信号分波器を2端子対線路406に接続させて、複数の信号分波器のペアによる送受を行っても良い。また、複数の信号分波器のペアにおいて、それぞれの使用する周波数を異ならせても良いし、送受のタイミングをずらしてもよい。これにより、それぞれの信号分波器のペア同士の干渉を低減できる。
更に、第1負荷回路421から第1交点411に送信される第1信号と、第2負荷回路422から第2交点412に送信される第2信号と、同一信号としてもよい。これにより、より確実に信号を伝送する事が可能となる。
そして、第1信号と第2信号が同一信号である時、第1端子2から信号を入力した場合に、第1線路407の第1交点411側に現れる信号と、第3線路409の第2交点412側に現れる信号との位相差が90度±180度*n(nは0以上の整数)であり、第2端子403から信号を入力した場合に、第2線路408の第1交点411側に現れる信号と、第4線路410の第2交点412側に現れる信号との位相差が90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第1信号分波器430と第2信号分波器431は設計されていてもよい。これにより、第1信号と第2信号が、2端子対線路406上において90度±180度*n(nは0以上の整数)の位相差を持って合成される。故に、第1信号と第2信号が、2端子対線路406上において0度±180度*n(nは0以上の整数)の位相差を持って合成されたときのように、2端子対線路406上で電流、電圧の大きな振幅が発生する事を防止でき、2端子対線路406が発生する電圧、電流により破損する事を防止する事ができる。
(実施の形態12)
図33から図42には、第1端子1902から2端子対線路1906を見たときの入力インピーダンスが50Ωとなり、第2端子1903から2端子対線路1906を見たときの入力インピーダンスが50Ωとなる2端子対線路1906を用いて、620MHzにおいて本実施の形態12の信号伝送方式1901を設計した一例を示している。図33から図42において、freqは周波数を示し、impedanceはインピーダンスを示す。
図33は、2端子対線路1906にディファレンシャルモードの信号を伝送させる場合を示し、図34は、2端子対線路1906にコモンモードの信号を伝送させる場合を示している。
2端子対線路1906にディファレンシャルモードの信号を伝送させる時、第1端子1902から見た第1伝送線1934の入力インピーダンスと、第2端子1903から見た第2伝送線1935の入力インピーダンスとが直列に接続された形となるため、第1端子1902と第2端子1903とから見た2端子対線路1906の入力インピーダンスは100Ωとなる。
2端子対線路1906がコモンモードの信号を伝送させる時、第1端子1902から見た第1伝送線1934の入力インピーダンスと、第2端子1903から見た第2伝送線1935の入力インピーダンスとが並列に接続された形となるため、第1端子1902と第2端子1903とから見た2端子対線路1906の入力インピーダンスは25Ωとなる。
これらの事実を設計に反映させたため、図33の2端子対線路1906(ポート番号3)の入力インピーダンスは100Ωとなっており、図34の2端子対線路1906(ポート番号6)の入力インピーダンスは25Ωとなっている。
また、一般的に高周波回路は50Ωで設計されるので、図33の第1負荷回路1921(ポート番号1)、及び第2負荷回路1922(ポート番号2)と、図34の第1負荷回路1921(ポート番号4)、及び第2負荷回路1922(ポート番号5)とは、それらの入力インピーダンスを50Ωとして設計を行った。図33及び図34においては、第1位相器1917、第2位相器1918、第3位相器1919、及び第4位相器1920とは、それぞれ3素子のリアクタンス素子で実現した。
図35には、図33で示した2端子対線路1906にディファレンシャルモードの信号を伝送させた場合の2端子対線路1906(ポート番号3)と第1負荷回路1921(ポート番号1)と第2負荷回路1922(ポート番号2)との間の通過特性を示したものである。図35中で、例えば、S(3,1)とは、第1負荷回路1921(ポート番号1)から2端子対線路1906(ポート番号3)への通過特性を示している。図35より、第1負荷回路1921(ポート番号1)から2端子対線路1906(ポート番号3)への通過特性S(3,1)は、620MHzにおいて、ほぼ0dBとなり、導通状態である事が分かる。
これに対して、第2負荷回路1922(ポート番号2)から2端子対線路1906(ポート番号3)への通過特性S(3,2)は、620MHzにおいて、−30dB以下となり、高いアイソレーションが取れている事が分かる。また、第1負荷回路1921(ポート番号1)から第2負荷回路1922(ポート番号2)への通過特性S(2,1)についても、620MHzにおいて、−30dB以下となり、高いアイソレーションが取れている事が分かる。
図36には、図34で示した2端子対線路1906にコモンモードの信号を伝送させた場合の2端子対線路1906(ポート番号6)と第1負荷回路1921(ポート番号4)と第2負荷回路1922(ポート番号5)との間の通過特性を示したものである。図36中で、例えば、S(6,4)とは、第1負荷回路1921(ポート番号4)から2端子対線路1906(ポート番号6)への通過特性を示している。図36より、第2負荷回路1922(ポート番号5)から2端子対線路1906(ポート番号6)への通過特性S(6,5)は、620MHzにおいて、ほぼ0dBとなり、導通状態である事が分かる。これに対して、第1負荷回路1921(ポート番号4)から2端子対線路1906(ポート番号6)への通過特性S(6,4)は、620MHzにおいて、−30dB以下となり、高いアイソレーションが取れている事が分かる。また、第1負荷回路1921(ポート番号4)から第2負荷回路1922(ポート番号5)への通過特性S(5,4)についても、620MHzにおいて、−30dB以下となり、高いアイソレーションが取れている事が分かる。
以上より、図28から図32で説明した信号伝送方式1901の動作が実際に実現できることがわかる。参考までに、図37から図42において、ポート番号1から6までの各ポートにおけるインピーダンス特性を示す。図37から図42において、例えば、S(1,1)とは、図33における第1負荷回路1921から第1交点1911側を見た時の入力インピーダンス特性を示している。
尚、本発明の実施の形態12に係る信号伝送方式1901は、第1線路と、第2線路と、第3線路と、第4線路の特性インピーダンスが共にZoであると共に、第1交点に接続される第1負荷回路の第1交点から見た入力インピーダンスと、第2交点に接続される第2負荷回路の第2交点から見た入力インピーダンスと、第1端子から見た第1伝送線の入力インピーダンスと、第2端子から見た第2伝送線の入力インピーダンスとが共に概ねZo/2であるように設計しても良い。これにより、2端子対線路1906と、第1信号分配器1930と、第1負荷回路1921または第2負荷回路1922とのインピーダンス整合が容易に取れることとなり、反射損を低減できる。ちなみに、図33、図34は、上記のインピーダンスの関係を満たしており、その結果、図35〜図42に示すように、良好な電気特性を実現できている。
尚、上記の実施の形態9〜11における第1負荷回路、第2負荷回路、第3負荷回路、および第4負荷回路とは、実際的には、信号の受信、送信を行う通信回路や、信号処理部を表しており、電子機器内部の搭載されている実装基板等に実装されている。ここで、「信号処理部」とは、例えば、送信したい信号を復調し、増幅、帯域制限、周波数変換等するような回路や、信号を受信するために、受信信号を増幅、帯域制限、周波数変換等し、復調後、データを抽出する等の作業を行う回路を指している。
また、図26〜図28において、第1端子1902と第1交点1911との間は、1本の線路である第1線路1907と、1つの第1整合回路1913と、1つの第1位相器1917とで構成されているが、複数の線路、複数の整合回路、複数の位相回路により構成されていても良い。このことは、第2端子1903と第1交点1911との間、第3端子1904と第2交点1912との間、第4端子1905と第2交点1912との間についても同様である。そして、「第1線路」、「第2線路」、「第3線路」、「第4線路」とは、複数の線路にて構成されるものも含んでいる。同様に、「第1整合回路」、「第2整合回路」、「第3整合回路」、「第4整合回路」とは、複数の整合回路にて構成されるものも含んでおり、「第1位相器」、「第2位相器」、「第3位相器」、「第4位相器」とは、複数の位相器にて構成されるものも含んでいる。