JPWO2009050789A1 - チップ式ボールエンドミル、およびチップ素材 - Google Patents

チップ式ボールエンドミル、およびチップ素材 Download PDF

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Abstract

図1に示すように、スローアウェイチップ14のボール刃28a、28bは、板状部26の板厚方向において一部がその板状部26から突き出すように設けられた滑らかに湾曲するねじれ刃で、且つ、突出角度αが20°〜40°の範囲内であるため、スローアウェイチップ14の板状部26の板厚寸法tを従来と同程度に維持しつつ、突出角度αに応じてボール刃28a、28bが大きく突出させられてねじれが大きくされる。これにより、取付溝20に起因する工具本体12の強度や剛性の低下、或いはチップ材料の大幅な増加を抑制しつつ、ボール刃28a、28bのねじれが大きくなって切れ味が一層向上させられるとともに、ボール刃28a、28bの肉厚寸法(板状部26における板厚方向の寸法)が大きくなって剛性が向上させられ、一層優れた切削性能が得られるようになる。

Description

本発明はチップ式ボールエンドミルに係り、特に、工具本体の強度や剛性を損なうことなくボール刃の切れ味や刃先剛性を一層向上させる技術に関するものである。
(a) 先端に軸心と直交するように取付溝が設けられた軸状の工具本体と、(b) 前記取付溝内に挿入される板状部を備えているとともに、その取付溝から外部に突き出す部分にボール刃が設けられたチップと、を有し、(c) 前記工具本体の前記取付溝内に前記チップの板状部が挿入されて一体的に固設された状態で、前記軸心まわりに回転駆動されることにより前記ボール刃によって切削加工を行なうチップ式ボールエンドミルが知られている。特許文献1に記載のボールエンドミルはその一例で、ボルト等のクランプ手段により円柱形状の工具本体に対してスローアウェイチップが着脱可能に一体的に取り付けられるようになっているとともに、そのスローアウェイチップには、工具本体に取り付けられた状態において軸心まわりにねじれたボール刃が軸心に対して対称的に一対設けられている。スローアウェイチップは超硬合金等の硬質材料にて構成されており、優れた耐久性が得られる一方、ボール刃が軸心まわりにねじれるように設けられることにより、切れ味が向上して切削抵抗が低減され、良好な切削性能が得られるようになる。ボール刃のねじれは、ボールエンドミルの先端側から見た底面視において、ボール刃が軸心から外周縁に至る間でスローアウェイチップの板厚の範囲内で滑らかに湾曲するように形成されることによって付与される。
特開2004−291096
しかしながら、このような従来のチップ式ボールエンドミルは、チップの板厚によってボール刃の突出量すなわちねじれの大きさ(ねじれ角など)が制限されるため、ねじれによる切れ味の向上効果が必ずしも十分に得られない場合があるとともに、板厚が制限されることから必ずしも十分な刃先剛性が得られないことがあった。すなわち、チップの板厚を大きくすればボール刃のねじれを大きくすることができるとともに刃先剛性が高くなるが、工具本体の取付溝の溝幅が大きくなり、それに伴って工具本体のチップ取付部における強度や剛性が低下するため、チップの板厚を大きくするにも限界があるのである。また、チップの板厚を大きくすると、高価なチップ材料が大幅に増加してコスト高になるという別の問題も含んでいた。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、工具本体の強度や剛性を損なうことなくボール刃の切れ味や刃先剛性を向上させ、一層優れた切削性能が得られるようにすることにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 先端に軸心と直交するように取付溝が設けられた軸状の工具本体と、(b) 前記取付溝内に挿入される板状部を備えているとともに、その取付溝から外部に突き出す部分にボール刃が設けられたチップと、を有し、(c) 前記工具本体の前記取付溝内に前記チップの板状部が挿入されて一体的に固設された状態で、前記軸心まわりに回転駆動されることにより前記ボール刃によって切削加工を行なうチップ式ボールエンドミルにおいて、(d) 前記チップのボール刃は、そのチップが前記工具本体に取り付けられた状態でその工具本体の先端側から見た底面視において、前記軸心から外周縁に至る間で前記板状部の板厚方向において一部がその板状部から突き出すように設けられた滑らかに湾曲するねじれ刃であり、且つ、(e) その底面視において、前記板状部の板厚方向における前記ボール刃の最大突出部位と前記軸心とを結ぶ直線と、前記取付溝の中心線とが成す突出角度αが、20°〜40°の範囲内であることを特徴とする。
第2発明は、第1発明のチップ式ボールエンドミルにおいて、前記チップには、前記工具本体に取り付けられた状態において前記軸心に対して対称形状となるように一対のボール刃が設けられていることを特徴とする。
第3発明は、第1発明または第2発明のチップ式ボールエンドミルにおいて、前記チップは、前記工具本体に着脱可能に取り付けられて使用されるスローアウェイチップであることを特徴とする。
第4発明は、チップ式ボールエンドミルのチップに関するもので、第1発明〜第3発明の何れかのチップ式ボールエンドミルにおいて、前記工具本体に一体的に取り付けられて使用されるチップである。
第5発明は、第1発明〜第3発明の何れかのチップ式ボールエンドミルにおいて、前記チップとして使用されるチップ素材であって、(a) 前記板状部と、(b) その板状部が前記取付溝内に挿入された状態でその取付溝から外部に突き出す部分であって、少なくとも前記ボール刃がその板状部から突き出す部分でその板状部よりも板厚が厚くされた厚板部と、を一体に有し、(c) 前記工具本体に一体的に取り付けられた状態でギャッシュ加工が施されることにより前記ボール刃が形成されることを特徴とする。
このようなチップ式ボールエンドミルにおいては、チップのボール刃が、板状部の板厚方向において一部がその板状部から突き出すように設けられた滑らかに湾曲するねじれ刃で、且つ、突出角度αが20°〜40°の範囲内であるため、チップの板状部の板厚を従来と同程度に維持しつつ、突出角度αに応じてボール刃が大きく突出させられてねじれが大きくされる。これにより、取付溝に起因する工具本体の強度や剛性の低下、或いはチップ材料の大幅な増加を抑制しつつ、ボール刃のねじれが大きくなって切れ味が一層向上させられるとともに、ボール刃の肉厚寸法(板状部における板厚方向の寸法)が大きくなって剛性が向上させられ、一層優れた切削性能が得られるようになる。例えば、切れ味および剛性の向上により加工精度や仕上げ加工品質(面粗さなど)が向上するとともに、剛性が高くなることにより、高硬度材に対する加工や切削代が比較的大きい中仕上げ加工、荒加工、高能率加工等にも使用できるようになる。
第2発明では、1枚のチップに一対のボール刃が設けられているため、2枚のチップを背中合わせに重ねて工具本体に取り付けて使用する場合に比較して、一対のボール刃の位置精度が高くなり、加工精度等の切削性能が一層向上して仕上げ加工などに一層好適に用いられる。
第3発明は、チップが工具本体に対して着脱可能に取り付けられて使用されるスローアウェイチップの場合で、ろう付け等により工具本体に一体に固設される場合に比較して、取付溝による工具本体の強度低下が問題になり易いため、スローアウェイチップの板状部の板厚を従来と同程度に維持しつつボール刃の突出量を大きくすることにより、工具本体の強度や剛性を損なうことなく切削性能を一層向上させる、という本発明の効果が一層顕著に得られる。
第4発明および第5発明は、第1発明〜第3発明のチップ式ボールエンドミルに用いられるチップおよびチップ素材に関するもので、実質的に第1発明〜第3発明と同様の効果が得られる。チップ素材を工具本体に固設した後にボール刃が形成される第5発明では、工具本体を基準として高い精度でボール刃を形成することが可能で、加工精度等の切削性能を一層向上させることができる。
本発明が適用されたチップ式ボールエンドミルの一例を説明する図で、(a) は正面図、(b) は底面拡大図、(c) は(a) の左側面図で先端部分の拡大図、(d) は(a) におけるID−ID断面の拡大図である。 図1のチップ式ボールエンドミルに用いられるチップ素材の一例を示す図で、(a) は正面図、(b) は(a) の右側面図、(c) は(a) の上方から見た平面図である。 図1のチップ式ボールエンドミルに用いられるチップ素材の別の例を示す図で、(a) は正面図、(b) は(a) の右側面図、(c) は(a) の上方から見た平面図である。 本発明品、従来品、および比較品の3種類のチップ式ボールエンドミルを用いて仕上げ加工を行い、切削加工面の違いを調べた際の試験品および切削面プロフィールを説明する図である。 図4の試験結果である切削加工面の写真を示す図である。 本発明品および従来品の2種類のチップ式ボールエンドミルを用いて、加工条件を変更しながら切削加工を行い、切削音および加工面を比較評価した際の試験品および試験結果を説明する図である。 本発明品および従来品の2種類のチップ式ボールエンドミルを用いて、送りを変更しながら切削加工を行い、切削動力を調べた際の試験品および試験結果を説明する図である。
符号の説明
10:チップ式ボールエンドミル 12:工具本体 14:スローアウェイチップ(チップ) 20:取付溝 26:板状部 28a、28b:ボール刃 40、50:チップ素材 42a、42b:厚板部 O:軸心 S:取付溝の中心線 P:最大突出部位 α:突出角度
本発明のチップ式ボールエンドミルは、チップを着脱可能に取り付けて使用するスローアウェイ式のボールエンドミルに好適に適用されるが、ろう付け等によりチップが取外し不能に一体に固設される場合にも適用され得る。工具本体の材質としては、例えば高速度工具鋼や合金工具鋼などの工具鋼が好適に用いられ、チップ材料としては、例えば超硬合金、サーメット、CBN等の超硬質工具材料が好適に用いられる。スローアウェイチップは、例えばボルト等のねじ部材や楔部材などのクランプ装置、或いは焼嵌め等によって工具本体に着脱可能に取り付けられる。
チップに設けられるボール刃の突出角度αは、板状部の板厚の範囲内でボール刃を形成する従来の場合、一般に15°程度であり、突出角度αが20°より小さいと、切れ味等の切削性能の向上効果が十分に得られない。一方、突出角度αが40°を超えると、板状部の板厚によっても異なるが、板状部からの突出寸法が大きくなり過ぎて却ってボール刃が折損し易くなるため、40°以下で設定する必要がある。この突出角度αは、25°〜35°の範囲内が一層望ましい。
チップは、第2発明のように1枚のチップに一対のボール刃が設けられ、単一のチップが取付溝内に嵌め入れられてチップ式ボールエンドミルが構成されることが望ましいが、それぞれ1つのボール刃が設けられた2枚のチップを背中合わせに重ねて取付溝内に嵌め入れてチップ式ボールエンドミルを構成する場合にも、本発明は適用され得る。また、1つのボール刃が設けられた単一のチップを取付溝内に嵌め入れてチップ式ボールエンドミルを構成すること、すなわち1枚刃のチップ式ボールエンドミルにも、本発明は適用され得る。
上記チップには予めボール刃が設けられ、取付溝に一体的に固設されてチップ式ボールエンドミルを構成するものでも良いが、第5発明のように、ボール刃を形成する前のチップ素材を取付溝に一体的に固設した後、ギャッシュ加工でそのチップ素材にボール刃を形成することによりチップ式ボールエンドミルを構成することも可能である。チップ素材は、工具本体へ取付後のボール刃等の加工を容易にするため、ボール刃が設けられる球面を予め設けておくこともできるが、工具本体を基準として高い精度でボール刃を形成するためには、工具本体への取付後に球面加工を行うとともにギャッシュ加工を施してボール刃を形成することが望ましいなど、種々の態様が可能である。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用されたチップ式ボールエンドミル10を示す図で、(a) は軸心Oと直角方向から見た正面図、(b) は先端側から見た拡大底面図、(c) は(a) の左側面図で先端部分の拡大図、(d) は(c) の断面図すなわち(a) におけるID−ID断面図であり、軸状の工具本体12と単一のスローアウェイチップ14とから構成されている。工具本体12は、高速度工具鋼にて構成されているとともに、大径のシャンク16および小径の首部18を同軸上に一体に備えている段付の円柱形状を成しており、シャンク16側から見て軸心Oの右まわりに回転駆動されることにより切削加工を行なう右回転用のものである。首部18の先端は半球形状とされているとともに、軸心Oと直交するように断面が矩形の取付溝20が設けられており、前記スローアウェイチップ14がその取付溝20内に嵌め入れられ、クランプ装置としてのねじ24により取付溝20内で挟圧されて一体的に固定されるとともに、ねじ24が緩められることにより取外し可能とされている。図1の(b) に示す底面図は、先端側から見た底面視の図に相当する。
スローアウェイチップ14は、超硬合金にて構成されているとともに、取付溝20の溝幅と略同じか僅かに小さい板厚寸法tで、その取付溝20内に挿入される板状部26と、取付溝20から外部に突き出す部分に設けられた一対のボール刃28a、28bとを一体に備えている。ボール刃28a、28bは、図1(b) に示す底面図において軸心Oに対して対称形状を成しているとともに、首部18の径寸法よりも僅かに大きい径寸法の単一の球面上に設けられており、軸心Oまわりに回転駆動されることにより、それ等のボール刃28a、28bによって切削加工を行う2枚刃のチップ式ボールエンドミル10が構成されている。そして、軸心Oまわりに回転駆動されつつ軸心Oと直角方向へ移動させられることにより、その球面に対応する円弧形状の溝や湾曲面を切削加工するとともに、所定のピックフィード(Pf)で移動させられることにより、略平坦な平面や所定の二次元曲面、或いは三次元曲面などを切削加工することができる。板状部26のボール刃28a、28bが設けられた側と反対側、すなわち半円弧形状と反対側の底面は平坦面で、取付溝20の溝底に接するようにその取付溝20内に嵌め入れられることにより、図1に示す予め定められた一定の姿勢に位置決めされるとともに、板状部26の中央すなわち半円弧形状の中心またはその近傍部分には、ねじ24が挿通させられる挿通穴29が設けられている。
上記一対のボール刃28a、28bは、図1(b) に示す底面図から明らかなように、何れも軸心Oから外周縁に至る間で回転切削方向すなわち図1(b) における軸心Oの左まわり方向に膨出するように滑らかに湾曲するねじれ刃で、軸心Oの近傍部分は板状部26の板厚寸法tの範囲内で形成されているものの、それよりも外周側の部分は板厚方向すなわち図1(b) における上下方向において板状部26から突き出して形成されている。すなわち、板状部26の板厚方向におけるボール刃28a、28bの最大突出部位Pまでの寸法Tは板厚寸法tよりも大きいのであり、且つ、その最大突出部位Pと軸心Oとを結ぶ直線と、取付溝20の中心線Sとが成す突出角度αは20°〜40°の範囲内で、本実施例では25°〜35°の範囲内とされている。スローアウェイチップ14の半円弧形状の外周面には、ボール刃28a、28bに連続して所定の逃げ面が形成されている一方、工具本体12の首部18の先端には、ボール刃28a、28bのすくい面に連続するようにギャッシュ30a、30bが設けられている。
上記スローアウェイチップ14は、予め図1に示す最終形状のものを用意し、ギャッシュ30a、30b等が設けられた工具本体12の取付溝20内に板状部26を嵌め入れてねじ24により一体的に固設するだけで、目的とするチップ式ボールエンドミル10が構成されるようにすることもできるが、図2に示すチップ素材40を用いて、工具本体12に取り付けた後に所定の研削加工等を行ってスローアウェイチップ14とすることも可能である。
図2の(a) は正面図で、(b) は(a) の右側面図、(c) は(a) の上方から見た平面図であり、チップ素材40は、前記板状部26と、その板状部26が取付溝20内に嵌め入れられた状態で取付溝20から外部に突き出す部分であって、少なくとも前記ボール刃28a、28bが板状部26の板厚方向において板状部26から突き出す部分で、その板状部26よりも板厚が厚くされた厚板部42a、42bとを一体に備えている。また、全体としてスローアウェイチップ14と同様な半円弧形状を成しているとともに、その半円弧の外周面44は、前記ボール刃28a、28bが設けられる球面形状を成しており、工具本体12の取付溝20内に板状部26を嵌め入れてねじ24により一体的に固設した状態で、ギャッシュ加工や逃げ面加工等が施されることにより所定のすくい面や逃げ面を有するボール刃28a、28bが形成される。この時のギャッシュ加工で、同時に工具本体12のギャッシュ30a、30bが形成されるようにしても良い。なお、図2の(c) に示す一点鎖線は、工具本体12に取り付けられた後に設けられるボール刃28a、28bを表している。
図3のチップ素材50は、板状部26および厚板部42a、42bを一体に備えている点は上記チップ素材40と同じであるが、球面形状の半円弧を備えておらず、全体として四角形状(略正方形)を成している。したがって、この場合は、工具本体12の取付溝20内に板状部26を嵌め入れてねじ24により一体的に固設した後、工具本体12を基準として球面加工を行うとともにギャッシュ加工や逃げ面加工等を施すことにより、所定のすくい面や逃げ面を有するボール刃28a、28bを形成することになる。図3の(a) 〜(c) は、それぞれ図2の(a) 〜(c) に対応する図である。
このようなチップ式ボールエンドミル10においては、スローアウェイチップ14のボール刃28a、28bが、板状部26の板厚方向において一部がその板状部26から突き出すように設けられた滑らかに湾曲するねじれ刃で、且つ、突出角度αが25°〜35°の範囲内であるため、スローアウェイチップ14の板状部26の板厚寸法tを従来と同程度に維持しつつ、突出角度αに応じてボール刃28a、28bが大きく突出させられてねじれが大きくされる。これにより、取付溝20に起因する工具本体12の強度や剛性の低下、或いはチップ材料の大幅な増加を抑制しつつ、ボール刃28a、28bのねじれが大きくなって切れ味が一層向上させられるとともに、ボール刃28a、28bの肉厚寸法(板状部26における板厚方向の寸法)が大きくなって剛性が向上させられ、一層優れた切削性能が得られるようになる。例えば、切れ味および剛性の向上により加工精度や仕上げ加工品質(面粗さなど)が向上するとともに、剛性が高くなることにより、高硬度材に対する加工や切削代が比較的大きい中仕上げ加工、荒加工、高能率加工等にも使用できるようになる。
また、本実施例では1枚のスローアウェイチップ14に一対のボール刃28a、28bが設けられているため、2枚のチップを背中合わせに重ねて工具本体12に取り付けて使用する場合に比較して、一対のボール刃28a、28bの位置精度が高くなり、加工精度等の切削性能が一層向上して仕上げ加工などに一層好適に用いられる。
また、本実施例は、工具本体12に対して着脱可能に取り付けられて使用されるスローアウェイチップ14の場合で、ろう付け等により工具本体12に一体に固設される場合に比較して、取付溝20による工具本体12の強度等の低下が問題になり易いため、スローアウェイチップ14の板状部26の板厚寸法tを従来と同程度に維持しつつボール刃28a、28bの突出寸法を大きくすることにより、工具本体12の強度や剛性を損なうことなく切削性能を一層向上させる、という上記効果が一層顕著に得られる。
また、図3に示すように四角形状のチップ素材50が用いられ、そのチップ素材50を工具本体12に固設した後に、その工具本体12を基準として球面加工やギャッシュ加工等を施してボール刃28a、28bを形成する場合には、工具本体12を基準として高い精度でボール刃28a、28bが設けられるため、加工精度等の切削性能が一層向上する。
因みに、図4の(a) に示すように前記突出角度α=15°で、板状部26の板厚寸法tの範囲内でボール刃28a、28bが設けられた従来品(試験品No1)と、突出角度α=30°の本発明品(試験品No2)と、板状部26の板厚寸法tが薄くて突出角度α=10°の比較品(試験品No3)とを用意し、仕上げ加工用の以下の加工条件で図4(b) に示すプロフィールの切削加工を行い、その加工面品質を比較したところ図5に示す結果が得られた。図4(b) は、切削加工面の断面形状(プロフィール)で、円弧半径R1=R2=50mm、山高さh=30mm、切削長さL=200mmである。なお、以下の加工条件の「fz 」は、1刃当りの送り量である。
《加工条件》
・工具径:R10
・機械:横型マシニングセンタ
・被削材:S50C
・回転数(N):16000min-1
・送り(F):12000mm/min(fz =0.375mm/t)
・切削速度(V):1005m/min
・切込み量(Z):0.3mm
・ピックフィード(Pf):0.3mm
・切削油:無し
図5に示す切削加工面の写真から明らかなように、中央の本発明品(試験品No2)によれば、上側の従来品(試験品No1)や下側の比較品(試験品No3)に比較して、面粗さが良好で光沢のある緻密な切削加工面が得られる。突出角度α=10°の比較品(試験品No3)は、切れ味が悪くて面粗さが著しく荒く、以後の比較試験を中止した。
図6は、(a) に示すように突出角度α=30°の本発明品(試験品No1)と、突出角度α=15°で、板状部26の板厚寸法tの範囲内でボール刃28a、28bが設けられた従来品(試験品No2)とを用意し、中仕上げ〜荒加工用の以下の加工条件で前記図4(b) に示すプロフィールの切削加工を行い、その切削加工時の切削音および加工面を耳および目視でそれぞれ評価したところ、(b) に示す結果が得られた。図4(b) の円弧半径R1=R2=50mmで、山高さh=30mm、切削長さL=200mmである。また、以下の加工条件の「fz 」は、1刃当りの送り量である。
《加工条件》
・工具径:R10
・機械:横型マシニングセンタ
・被削材:S50C
・回転数(N):3840min-1
・送り(F):12000mm/min(fz =1.563mm/t)
・切削速度(V):241m/min
・切込み量(Z):1〜4mm
・ピックフィード(Pf):1〜5mm
・切削油:無し
図6の(b) の評価の欄の「◎」は優、「○」は良、「△」は可、「×」は不可を意味し、予め定められた評価基準に従って試験者の感覚で評価したものであり、試験品No1の本発明品(突出角度α=30°)では殆ど「◎」または「○」で、ピックフィードPfや切込み量Zが比較的大きい荒加工等の高能率加工でも「○」または「△」であった。これに対し、試験品No2の従来品(突出角度α=15°)では、ピックフィードPfや切込み量Zが比較的小さい中仕上げの加工条件下では「○」であるが、ピックフィードPfや切込み量Zが大きくなる荒加工では「△」或いは「×」になり、本発明品の方が過酷な加工条件下まで良好な切削性能が得られる。また、評価の欄の◎=4点、○=3点、△=2点、×=1点として合計点を求めると、本発明品は55点であるのに対して従来品は42点であり、トータルとして本発明品の方が優れた切削性能が得られることが分かる。
図7は、(a) に示すように突出角度α=30°の本発明品(試験品No1)と、突出角度α=15°で、板状部26の板厚寸法tの範囲内でボール刃28a、28bが設けられた従来品(試験品No2)とを用意し、以下の加工条件で送りFをオーバーライド機構により20%ずつ変化させて切削加工を行い、その切削加工時の切削動力(最大値)を測定したところ、(b) に示す結果が得られた。切削動力は主軸動力計によって測定した。なお、以下の加工条件の「fz 」は、1刃当りの送り量である。
《加工条件》
・工具径:R10
・機械:横型マシニングセンタ
・被削材:S50C
・回転数(N):4800min-1
・送り(F):1500mm/min(fz =0.156mm/t)
〜2700mm/min(fz =0.281mm/t)
・切削速度(V):302m/min
・切込み量(Z):8mm
・切削加工長さ:200mm(横引き)
・切削油:無し
図7の(b) において、「切削動力」は切削抵抗に相当するもので、ボール刃28a、28bの切れ味によって変化し、試験品No1の本発明品(突出角度α=30°)によれば、試験品No2の従来品(突出角度α=15°)に比較して3%〜6%程度切削動力が低減され、切れ味が向上することが分かる。なお、従来品の評価の欄の「△」は、切削音大および被削面のびびり大によるもので、「×」は、チッピングにより切削加工が不可であったことを意味している。また、本発明品のオーバーライド80%の場合、切削動力は23.8kWと比較的大きいが、切削音やびびり振動が許容範囲内で適切に切削加工を行うことができた。これは、ボール刃28a、28bのねじれが大きくなることで、切削抵抗が軸心Oまわりにおいて分散されるとともに切り屑の流れがスムーズになる一方、ボール刃28a、28bの剛性が向上したためと考えられる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
本発明のチップ式ボールエンドミルは、チップのボール刃が、板状部の板厚方向において一部がその板状部から突き出すように設けられた滑らかに湾曲するねじれ刃で、且つ、突出角度αが20°〜40°の範囲内であるため、チップの板状部の板厚寸法tを従来と同程度に維持しつつ、突出角度αに応じてボール刃が大きく突出させられてねじれが大きくされる。これにより、取付溝に起因する工具本体の強度や剛性の低下、或いはチップ材料の大幅な増加を抑制しつつ、ボール刃のねじれが大きくなって切れ味が一層向上させられるとともに、ボール刃の肉厚寸法が大きくなって剛性が向上させられ、一層優れた切削性能が得られるようになり、高精度な仕上げ加工の他、高硬度材に対する加工や切削代が比較的大きい中仕上げ加工、荒加工、高能率加工等にも好適に用いられる。
【0001】
技術分野
[0001]
本発明はチップ式ボールエンドミルに係り、特に、工具本体の強度や剛性を損なうことなくボール刃の切れ味や刃先剛性を一層向上させる技術に関するものである。
背景技術
[0002]
(a)先端に軸心と直交するように取付溝が設けられた軸状の工具本体と、(b)前記取付溝内に挿入される板状部を備えているとともに、その取付溝から外部に突き出す部分にボール刃が設けられたチップと、を有し、(c)前記工具本体の前記取付溝内に前記チップの板状部が挿入されて一体的に固設された状態で、前記軸心まわりに回転駆動されることにより前記ボール刃によって切削加工を行なうチップ式ボールエンドミルが知られている。特許文献1に記載のボールエンドミルはその一例で、ボルト等のクランプ手段により円柱形状の工具本体に対して交換式チップが着脱可能に一体的に取り付けられるようになっているとともに、その交換式チップには、工具本体に取り付けられた状態において軸心まわりにねじれたボール刃が軸心に対して対称的に一対設けられている。交換式チップは超硬合金等の硬質材料にて構成されており、優れた耐久性が得られる一方、ボール刃が軸心まわりにねじれるように設けられることにより、切れ味が向上して切削抵抗が低減され、良好な切削性能が得られるようになる。ボール刃のねじれは、ボールエンドミルの先端側から見た底面視において、ボール刃が軸心から外周縁に至る間で交換式チップの板厚の範囲内で滑らかに湾曲するように形成されることによって付与される。
特許文献1:特開2004−291096
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0003]
しかしながら、このような従来のチップ式ボールエンドミルは、チップの板厚によってボール刃の突出量すなわちねじれの大きさ(ねじれ角など)が制限されるため、ねじれによる切れ味の向上効果が必ずしも十分に得られない場合があるとともに、板厚が
【0002】
制限されることから必ずしも十分な刃先剛性が得られないことがあった。すなわち、チップの板厚を大きくすればボール刃のねじれを大きくすることができるとともに刃先剛性が高くなるが、工具本体の取付溝の溝幅が大きくなり、それに伴って工具本体のチップ取付部における強度や剛性が低下するため、チップの板厚を大きくするにも限界があるのである。また、チップの板厚を大きくすると、高価なチップ材料が大幅に増加してコスト高になるという別の問題も含んでいた。
[0004]
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、工具本体の強度や剛性を損なうことなくボール刃の切れ味や刃先剛性を向上させ、一層優れた切削性能が得られるようにすることにある。
課題を解決するための手段
[0005]
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a)先端に軸心と直交するように取付溝が設けられた軸状の工具本体と、(b)前記取付溝内に挿入される板状部を備えているとともに、その取付溝から外部に突き出す部分にボール刃が設けられたチップと、を有し、(c)前記工具本体の前記取付溝内に前記チップの板状部が挿入されて一体的に固設された状態で、前記軸心まわりに回転駆動されることにより前記ボール刃によって切削加工を行なうチップ式ボールエンドミルにおいて、(d)前記チップのボール刃は、そのチップが前記工具本体に取り付けられた状態でその工具本体の先端側から見た底面視において、前記軸心から外周縁に至る間で前記板状部の板厚方向において一部がその板状部から突き出すように設けられた滑らかに湾曲するねじれ刃であり、且つ、(e)その底面視において、前記板状部の板厚方向における前記ボール刃の最大突出部位と前記軸心とを結ぶ直線と、前記取付溝の中心線とが成す突出角度αが、20°〜40°の範囲内である一方、(f)前記チップは、前記板状部と、その板状部が前記取付溝内に挿入された状態でその取付溝から外部に突き出す部分であって、少なくとも前記ボール刃がその板状部から突き出す部分でその板状部よりも板厚が厚くされた厚板部と、を一体に有するチップ素材を用いて、そのチップ素材が前記工具本体に一体的に取り付けられた状態でギャッシュ加工が施されることにより前記ボール刃が形成されたものであることを特徴とする。
[0006]
第2発明は、第1発明のチップ式ボールエンドミルにおいて、前記チップには、前記軸心に対して対称形状となるように一対のボール刃が設けられていることを特徴とする。
[0007]
第3発明は、第1発明または第2発明のチップ式ボールエンドミルにおいて、前記チップ素材は、前記工具本体に着脱可能に取り付けられて使用されることを特徴とする。
【0003】
[0008]
[0009]
第5発明は、第1発明〜第3発明の何れかのチップ式ボールエンドミルに用いられるチップ素材であって、(a)前記板状部と、(b)その板状部が前記取付溝内に挿入された状態でその取付溝から外部に突き出す部分であって、少なくとも前記ボール刃がその板状部から突き出す部分でその板状部よりも板厚が厚くされた厚板部と、を一体に有し、(c)前記工具本体に一体的に取り付けられた状態でギャッシュ加工が施されることにより前記ボール刃が形成されることを特徴とする。
発明の効果
[0010]
このようなチップ式ボールエンドミルにおいては、チップのボール刃が、板状部の板厚方向において一部がその板状部から突き出すように設けられた滑らかに湾曲するねじれ刃で、且つ、突出角度αが20°〜40°の範囲内であるため、チップの板状部の板厚を従来と同程度に維持しつつ、突出角度αに応じてボール刃が大きく突出させられてねじれが大きくされる。これにより、取付溝に起因する工具本体の強度や剛性の低下、或いはチップ材料の大幅な増加を抑制しつつ、ボール刃のねじれが大きくなって切れ味が一層向上させられるとともに、ボール刃の肉厚寸法(板状部における板厚方向の寸法)が大きくなって剛性が向上させられ、一層優れた切削性能が得られるようになる。例えば、切れ味および剛性の向上により加工精度や仕上げ加工品質(面粗さなど)が向上するとともに、剛性が高くなることにより、高硬度材に対する加工や切削代が比較的大きい中仕上げ加工、荒加工、高能率加工等にも使用できるようになる。また、チップ素材を工具本体に固設した後にギャッシュ加工が施されてボール刃が形成されるため、工具本体を基準として高い精度でボール刃を形成することが可能で、加工精度等の切削性能を一層向上させることができる。
[0011]
第2発明では、1枚のチップに一対のボール刃が設けられているため、2枚のチップを背中合わせに重ねて工具本体に取り付けて使用する場合に比較して、一対のボール刃の位置精度が高くなり、加工精度等の切削性能が一層向上して仕上げ加工などに一層好適に用いられる。
[0012]
第3発明は、チップ素材が工具本体に対して着脱可能に取り付けられて使用される
【0004】
場合で、ろう付け等により工具本体に一体に固設される場合に比較して、取付溝による工具本体の強度低下が問題になり易いため、チップの板状部の板厚を従来と同程度に維持しつつボール刃の突出量を大きくすることにより、工具本体の強度や剛性を損なうことなく切削性能を一層向上させる、という本発明の効果が一層顕著に得られる。
[0013]
第5発明は、第1発明〜第3発明のチップ式ボールエンドミルに用いられるチップ素材に関するもので、実質的に第1発明〜第3発明と同様の効果が得られる。
図面の簡単な説明
[0014]
[図1]本発明が適用されたチップ式ボールエンドミルの一例を説明する図で、(a)は正面図、(b)は底面拡大図、(c)は(a)の左側面図で先端部分の拡大図、(d)は(a)におけるID−ID断面の拡大図である。
[図2]図1のチップ式ボールエンドミルに用いられるチップ素材の一例を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の上方から見た平面図である。
[図3]図1のチップ式ボールエンドミルに用いられるチップ素材の別の例を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の上方から見た平面図である。
[図4]本発明品、従来品、および比較品の3種類のチップ式ボールエンドミルを用いて仕上げ加工を行い、切削加工面の違いを調べた際の試験品および切削面プロフィールを説明する図である。
[図5]図4の試験結果である切削加工面の写真を示す図である。
[図6]本発明品および従来品の2種類のチップ式ボールエンドミルを用いて、加工条件を変更しながら切削加工を行い、切削音および加工面を比較評価した際の試験品および試験結果を説明する図である。
[図7]本発明品および従来品の2種類のチップ式ボールエンドミルを用いて、送りを変更しながら切削加工を行い、切削動力を調べた際の試験品および試験結果を説明する図である。
【0005】
符号の説明
[0015]
10:チップ式ボールエンドミル 12:工具本体 14:交換式チップ(チップ) 20:取付溝 26:板状部 28a、28b:ボール刃 40、50:チップ素材 42a、42b:厚板部 O:軸心 S:取付溝の中心線 P:最大突出部位 α:突出角度
発明を実施するための最良の形態
[0016]
本発明のチップ式ボールエンドミルは、チップ素材を着脱可能に取り付けて使用する刃先交換式のボールエンドミルに好適に適用されるが、ろう付け等によりチップ素材が取外し不能に一体に固設される場合にも適用され得る。工具本体の材質としては、例えば高速度工具鋼や合金工具鋼などの工具鋼が好適に用いられ、チップ材料としては、例えば超硬合金、サーメット、CBN等の超硬質工具材料が好適に用いられる。チップ素材は、例えばボルト等のねじ部材や楔部材などのクランプ装置、或いは焼嵌め等によって工具本体に着脱可能に取り付けられる。
[0017]
チップに設けられるボール刃の突出角度αは、板状部の板厚の範囲内でボール刃を形成する従来の場合、一般に15°程度であり、突出角度αが20°より小さいと、切れ味等の切削性能の向上効果が十分に得られない。一方、突出角度αが40°を超えると、板状部の板厚によっても異なるが、板状部からの突出寸法が大きくなり過ぎて却ってボール刃が折損し易くなるため、40°以下で設定する必要がある。この突出角度αは、25°〜35°の範囲内が一層望ましい。
[0018]
チップは、第2発明のように1枚のチップに一対のボール刃が設けられることが望ましいが、それぞれ1つのボール刃が設けられた2枚のチップを背中合わせに重ねてチップ式ボールエンドミルを構成する場合にも、本発明は適用され得る。また、1つのボール刃が設けられた単一のチップでチップ式ボールエンドミルを構成すること、すなわち1枚刃のチップ式ボールエンドミルにも、本発明は適用され得る。
[0019]
【0006】
チップ素材は、工具本体へ取付後のボール刃等の加工を容易にするため、ボール刃が設けられる球面を予め設けておくこともできるが、工具本体を基準として高い精度でボール刃を形成するためには、工具本体への取付後に球面加工を行うとともにギャッシュ加工を施してボール刃を形成することが望ましいなど、種々の態様が可能である。
実施例
[0020]
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用されたチップ式ボールエンドミル10を示す図で、(a)は軸心Oと直角方向から見た正面図、(b)は先端側から見た拡大底面図、(c)は(a)の左側面図で先端部分の拡大図、(d)は(c)の断面図すなわち(a)におけるID−ID断面図であり、軸状の工具本体12と単一の交換式チップ14とから構成されている。工具本体12は、高速度工具鋼にて構成されているとともに、大径のシャンク16および小径の首部18を同軸上に一体に備えている段付の円柱形状を成しており、シャンク16側から見て軸心Oの右まわりに回転駆動されることにより切削加工を行なう右回転用のものである。首部18の先端は半球形状とされているとともに、軸心Oと直交するように断面が矩形の取付溝20が設けられており、前記交換式チップ14がその取付溝20内に嵌め入れられ、クランプ装置としてのねじ24により取付溝20内で挟圧されて一体的に固定されるとともに、ねじ24が緩められることにより取外し可能とされている。図1の(b)に示す底面図は、先端側から見た底面視の図に相当する。
[0021]
交換式チップ14は、超硬合金にて構成されているとともに、取付溝20の溝幅と略同じか僅かに小さい板厚寸法tで、その取付溝20内に挿入される板状部26と、取付溝20から外部に突き出す部分に設けられた一対のボール刃28a、28bとを一体に備えている。ボール刃28a、28bは、図1(b)に示す底面図において軸心Oに対して対称形状を成しているとともに、首部18の径寸法よりも僅かに大きい径寸法の単一の球面上に設けられており、軸心Oまわりに回転駆動されることにより、それ等のボール刃28a、28bによって切削加工を行う2枚刃のチップ式ボールエンドミル10が構
【0007】
成されている。そして、軸心Oまわりに回転駆動されつつ軸心Oと直角方向へ移動させられることにより、その球面に対応する円弧形状の溝や湾曲面を切削加工するとともに、所定のピックフィード(Pf)で移動させられることにより、略平坦な平面や所定の二次元曲面、或いは三次元曲面などを切削加工することができる。板状部26のボール刃28a、28bが設けられた側と反対側、すなわち半円弧形状と反対側の底面は平坦面で、取付溝20の溝底に接するようにその取付溝20内に嵌め入れられることにより、図1に示す予め定められた一定の姿勢に位置決めされるとともに、板状部26の中央すなわち半円弧形状の中心またはその近傍部分には、ねじ24が挿通させられる挿通穴29が設けられている。
[0022]
上記一対のボール刃28a、28bは、図1(b)に示す底面図から明らかなように、何れも軸心Oから外周縁に至る間で回転切削方向すなわち図1(b)における軸心Oの左まわり方向に膨出するように滑らかに湾曲するねじれ刃で、軸心Oの近傍部分は板状部26の板厚寸法tの範囲内で形成されているものの、それよりも外周側の部分は板厚方向すなわち図1(b)における上下方向において板状部26から突き出して形成されている。すなわち、板状部26の板厚方向におけるボール刃28a、28bの最大突出部位Pまでの寸法Tは板厚寸法tよりも大きいのであり、且つ、その最大突出部位Pと軸心Oとを結ぶ直線と、取付溝20の中心線Sとが成す突出角度αは20°〜40°の範囲内で、本実施例では25°〜35°の範囲内とされている。交換式チップ14の半円弧形状の外周面には、ボール刃28a、28bに連続して所定の逃げ面が形成されている一方、工具本体12の首部18の先端には、ボール刃28a、28bのすくい面に連続するようにギャッシュ30a、30bが設けられている。
[0023]
上記交換式チップ14は、図2に示すチップ素材40を用いて、工具本体12に取り付けた後に所定の研削加工等を行って交換式チップ14とされている。
[0024]
図2の(a)は正面図で、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の上方から見た平面図であ
【0008】
り、チップ素材40は、前記板状部26と、その板状部26が取付溝20内に嵌め入れられた状態で取付溝20から外部に突き出す部分であって、少なくとも前記ボール刃28a、28bが板状部26の板厚方向において板状部26から突き出す部分で、その板状部26よりも板厚が厚くされた厚板部42a、42bとを一体に備えている。また、全体として交換式チップ14と同様な半円弧形状を成しているとともに、その半円弧の外周面44は、前記ボール刃28a、28bが設けられる球面形状を成しており、工具本体12の取付溝20内に板状部26を嵌め入れてねじ24により一体的に固設した状態で、ギャッシュ加工や逃げ面加工等が施されることにより所定のすくい面や逃げ面を有するボール刃28a、28bが形成される。この時のギャッシュ加工で、同時に工具本体12のギャッシュ30a、30bが形成されるようにしても良い。なお、図2の(c)に示す一点鎖線は、工具本体12に取り付けられた後に設けられるボール刃28a、28bを表している。
[0025]
図3のチップ素材50は、板状部26および厚板部42a、42bを一体に備えている点は上記チップ素材40と同じであるが、球面形状の半円弧を備えておらず、全体として四角形状(略正方形)を成している。したがって、この場合は、工具本体12の取付溝20内に板状部26を嵌め入れてねじ24により一体的に固設した後、工具本体12を基準として球面加工を行うとともにギャッシュ加工や逃げ面加工等を施すことにより、所定のすくい面や逃げ面を有するボール刃28a、28bを形成することになる。図3の(a)〜(c)は、それぞれ図2の(a)〜(c)に対応する図である。
[0026]
このようなチップ式ボールエンドミル10においては、交換式チップ14のボール刃28a、28bが、板状部26の板厚方向において一部がその板状部26から突き出すように設けられた滑らかに湾曲するねじれ刃で、且つ、突出角度αが25°〜35°の範囲内であるため、交換式チップ14の板状部26の板厚寸法tを従来と同程度に維持しつつ、突出角度αに応じてボール刃28a、28bが大きく突出させられてねじれが大きくされる。これにより、取付溝20に起因する工具本体12の強度や剛性の低下、或いはチップ材料の大幅な増加を抑制しつつ、ボール刃28a、28bのねじれが大きくなって切れ味が一層向上させられるとともに、ボール刃28a、28bの肉厚寸法(板状部26における板厚方向の寸法)が大きくなって剛性が向上させられ、一
【0009】
層優れた切削性能が得られるようになる。例えば、切れ味および剛性の向上により加工精度や仕上げ加工品質(面粗さなど)が向上するとともに、剛性が高くなることにより、高硬度材に対する加工や切削代が比較的大きい中仕上げ加工、荒加工、高能率加工等にも使用できるようになる。
[0027]
また、本実施例では1枚の交換式チップ14に一対のボール刃28a、28bが設けられているため、2枚のチップを背中合わせに重ねて工具本体12に取り付けて使用する場合に比較して、一対のボール刃28a、28bの位置精度が高くなり、加工精度等の切削性能が一層向上して仕上げ加工などに一層好適に用いられる。
[0028]
また、本実施例は、工具本体12に対して着脱可能に取り付けられて使用される交換式チップ14の場合で、ろう付け等により工具本体12に一体に固設される場合に比較して、取付溝20による工具本体12の強度等の低下が問題になり易いため、交換式チップ14の板状部26の板厚寸法tを従来と同程度に維持しつつボール刃28a、28bの突出寸法を大きくすることにより、工具本体12の強度や剛性を損なうことなく切削性能を一層向上させる、という上記効果が一層顕著に得られる。
[0029]
また、図3に示すように四角形状のチップ素材50が用いられ、そのチップ素材50を工具本体12に固設した後に、その工具本体12を基準として球面加工やギャッシュ加工等を施してボール刃28a、28bを形成する場合には、工具本体12を基準として高い精度でボール刃28a、28bが設けられるため、加工精度等の切削性能が一層向上する。
[0030]
因みに、図4の(a)に示すように前記突出角度α=15°で、板状部26の板厚寸法tの範囲内でボール刃28a、28bが設けられた従来品(試験品No1)と、突出角度α=30°の本発明品(試験品No2)と、板状部26の板厚寸法tが薄くて突出角度α=10°の比較品(試験品No3)とを用意し、仕上げ加工用の以下の加工条件で図4(b)に示すプロフィールの切削加工を行い、その加工面品質を比較したところ図5に示す結果が得られた。図4(b)は、切削加工面の断面形状(プロフィール)で、円弧半径R1=R2=50mm、山高さh=30mm、切削長さL=200mmである。なお、以下の加工条件の「fz」は、1刃当りの送り量である。
《加工条件》

Claims (5)

  1. 先端に軸心と直交するように取付溝が設けられた軸状の工具本体と、
    前記取付溝内に挿入される板状部を備えているとともに、該取付溝から外部に突き出す部分にボール刃が設けられたチップと、
    を有し、前記工具本体の前記取付溝内に前記チップの板状部が挿入されて一体的に固設された状態で、前記軸心まわりに回転駆動されることにより前記ボール刃によって切削加工を行なうチップ式ボールエンドミルにおいて、
    前記チップのボール刃は、該チップが前記工具本体に取り付けられた状態で該工具本体の先端側から見た底面視において、前記軸心から外周縁に至る間で前記板状部の板厚方向において一部が該板状部から突き出すように設けられた滑らかに湾曲するねじれ刃であり、
    且つ、該底面視において、前記板状部の板厚方向における前記ボール刃の最大突出部位と前記軸心とを結ぶ直線と、前記取付溝の中心線とが成す突出角度αが、20°〜40°の範囲内である
    ことを特徴とするチップ式ボールエンドミル。
  2. 前記チップには、前記工具本体に取り付けられた状態において前記軸心に対して対称形状となるように一対のボール刃が設けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載のチップ式ボールエンドミル。
  3. 前記チップは、前記工具本体に着脱可能に取り付けられて使用されるスローアウェイチップである
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のチップ式ボールエンドミル。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載のチップ式ボールエンドミルにおいて、前記工具本体に一体的に取り付けられて使用されるチップ。
  5. 請求項1〜3の何れか1項に記載のチップ式ボールエンドミルにおいて、前記チップとして使用されるチップ素材であって、
    前記板状部と、
    該板状部が前記取付溝内に挿入された状態で該取付溝から外部に突き出す部分であって、少なくとも前記ボール刃が該板状部から突き出す部分で該板状部よりも板厚が厚くされた厚板部と、
    を一体に有し、前記工具本体に一体的に取り付けられた状態でギャッシュ加工が施されることにより前記ボール刃が形成される
    ことを特徴とするチップ式ボールエンドミルのチップ素材。
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