本発明は化学薬品など使わずに除菌できる濾過装置と濾過方法にかかり、とくに船舶のバラスト水等を国際環境基準に適合するレベルにまで除菌できる濾過装置と濾過方法に関する。
従来、船舶は船底のタンクにポンプ等で汲み上げた海水をバラスト水として積載して航行し、目的地に着くと貨物の積み下ろしの時間内にこのバラスト水を外部に排出している。これは、貨物を載せていない船舶や、貨物の積載量が少ない船舶は喫水線が下がり、バランスが保てなくなるためである。そして、この汲み上げ、排出に必要以上の時間がかかると輸送コストの上昇につながるため、これを貨物の積み下ろしの時間内に収めるべく、通常数百トン/時〜数千トン/時といった高速で汲み上げ、排出が行われている。
ところで、バラスト水を取水する海域と排出する海域は通常異なる。海水を取水する海域によっては有害なプランクトンや細菌が混入するおそれがあり、これを目的地の沿岸や港湾内で排出することになれば、この有害なプランクトンや細菌が人為的に取水海域から排出海域に運ばれたことになる。場合によっては、排出された海域でこれらが異常繁殖して生態系を破壊し、貝毒や赤潮の原因となり、海洋汚染を引き起こし、漁業に深刻な打撃を与えたりもする。実際にそのような事例も幾つか報告されている。さらには、公衆衛生に被害を及ぼすことすらある。
このように有害なプランクトンや細菌が船舶の移動に伴って運搬されるのを防止するため、2004年2月、国際海事機関(IMO;International Maritime Organization)において、船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約が採択された。この条約においてはD2バラスト水排出基準と言われるバラスト水に対する厳しい排出基準が設けられ、排出できるのは、50μm超のプランクトン数は1トンのバラスト水中に10個体/トン、10μm−50μmのプランクトン数は10個体/1ml、大腸菌類は250cfu(colony forming unit)/100ml未満にそれぞれ規制がかけられた。従ってこの排出基準によれば、50μm超の大きなプランクトンから1μ前後の小さな細菌に至る微生物を同時にかつほとんどを取り除き、しかも膨大なバラスト水を短時間に処理しなければならない。
現在、オーストラリアや米国と言った国々ではこの厳しい排出基準が先行して運用されている。これらの国に向かう多くの船舶においては、この排出基準を満たすために港湾等の沿岸でバラスト水の交換を行っている。すなわち、寄港する前に沿岸で積載してきたバラスト水を外洋のきれいな問題のない海水と交換している(リバラスト法)。
しかし、バラスト水の交換を行うときには船体のバランス保持が問題となり、交換の手順の誤りから転覆事故を誘発することもあり、交換に際しての安全確保が問題となっている。そして、バラスト水の交換だけではこの問題は本質的には片付かない。基準自体もより厳しくなる方向へ向かっており、オーストラリアや米国と言った国々ではさらに厳しい規準の設定が検討されている。
現在報告されている開発中のバラスト水処理装置は、G9という化学的手法による基準に基づいて、塩素等の化学薬品による薬品処理や、オゾンによるプランクトン、細菌の殺滅、殺菌を行うもの(化学処理法)が中心であり、D2バラスト水排出基準をクリアするには化学処理によるしかない、と言うのが実情である。なお、本明細書において、除菌とは目的のレベルにまでプランクトン、細菌などの微生物を取り除くことを意味する。
上述したようにバラスト水の取水、排水は積み降ろしの際に行われるため、もしG9基準に従ってバラスト水を殺菌すると、化学薬品で処理されたバラスト水が港湾に大量に排出され、化学薬品が港湾内の生物に大きな影響を与え、生態系を破壊する可能性がある。このため、物理的処理による除菌あるいは殺菌を行い、装置に関するG8基準に準拠した方法に期待が集まっている。
ところで、物理的処理の代表である濾過には、主として、ストレーナー等の濾材でこれに形成された空隙(開口)よりも大きな固形分粒子を捕えるストレン濾過現象によるものと、ケークや砂などが立体的に重なったとき形成される空隙で固形分粒子を捕える深層濾過現象によるものと、濾過の進行と共に成長するケークの表面で大きな固形分粒子を分離して清澄な液だけをケーク内に流して濾過するケーク濾過現象を利用するものがある。
1μ前後の小さな細菌までを濾過して清澄な水にするには、濾材の目が小さくなくてはならない。それゆえ短時間で目詰まりする。このときの濾過には、上述のケーク濾過現象などを利用することなどが考えられるが、圧力損失(流体抵抗)が直ぐに高くなり、数百トン/時あるいは数千トン/時という流速で流されるバラスト水を除菌するのは困難である。このためどうしても上述した化学薬剤による処理か、熱処理あるいは電気処理せざるを得なかった。
例えば、バラスト水を60℃程度以上で熱処理すれば、大腸菌等の生存に不適当な環境にすることができる(熱処理法)。この具体的な方法として、タンクにエンジン冷却用熱水を注入したり、熱交換器をバラスト水配管系の途中に配設したりする方法などが考えられる。しかし、これらの方法で殺菌が確実に行えるとまではいえないし、また、エネルギー効率もよくない。すなわち、殺菌するには膨大な熱量、費用を必要とする。さらに、熱温水を積載することによる貨物へ影響があり、また、熱温水の排出による海洋生物への影響も懸念される。
熱殺菌以外にも、オゾンまたはオゾンと蒸気の混合による殺菌(オゾン法)、高電圧パルスなどによって電気的に微生物を破壊する殺菌、紫外線や光触媒による殺菌(紫外線法)、電気化学法など、他の方法が提案されているが、何れも実用面で満足できる提案はない。
そして、以上の方法を組み合わせた複合的な方法として、濾材に濾過助剤をプリコートして行う濾過と熱処理または電気処理による殺菌とを組み合わせた方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。濾材の表面では濾過助剤が薄膜状になっており、この層に濾過中の微生物が集中するため、その集中した個所に熱エネルギー、電気エネルギーを与えて効果的に殺菌するものである。しかし、これも大量のバラスト水を処理するのは困難で、コスト的にも実用性があるとは言い難い。
なお、濾材には、100μm以下の懸濁物を濾過可能な精密濾過を目的とするものと、それを越えるサイズの濾過を行う一般濾過を目的とするものがある。焼結フィルタなどは精密濾過に使われ、スプリングフィルタは一般濾過に使われる。スプリングフィルタの方が圧力損失を比較的低くできる。また、濾材に濾過助剤でプリコートすると、ケーク濾過現象を利用した濾過が可能になる。このような濾過装置として、濾材上に、プリコート剤を粒径の小さいものから粒径の大きいものに順次積層した濾過フィルタが知られている(特許文献3参照)。
さて、スプリングフィルタのコイルには、螺旋状をなしたコイルの側面に突起が所定間隔で設けられ、コイルの間隙を一定値にするように構成されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、小さな細菌を除菌するにはこの間隙を相当に狭くせざるを得ず、このとき流体抵抗が大きくなるのは避けられない。コイルの間隙を広げると濾過助剤の方が小さくなり、流れに乗って間隙から流失してしまう。
特開2006−102283号公報
特開昭52−90871号公報
実開平3−38117号公報
以上説明したように、D2バラスト水排出基準レベルにバラスト水を処理するためには、現在のところG9に基づいた薬品処理でこの基準をクリアするしかない。しかし、これは沿岸の海洋生物に大きな影響を与え、生態系を破壊する可能性がある。これに対し、物理的に除菌すればこのような影響は回避できるが、今のところ実用性ある濾過装置と濾過方法は提案されていない。
特許文献1の濾過装置と濾過方法は、プリコート層の中に微生物が集中して存在することを利用して熱エネルギー、電気エネルギーを効率的に与える。しかし、この濾過装置と濾過方法はプリコートによって目詰まりを起し易く、大量のバラスト水を処理するのは難しい。また電気や熱エネルギーを供給しなければならない構成を考えると、装備は複雑で、コスト的な面からみても、実用性があるとは言い難い。
この点、特許文献2のようなスプリングフィルタはコスト的に実用性がある。しかし、スプリングフィルタを使った場合、100μmを越えるプランクトンのような微粒子の粗い濾過は可能であるが、D2基準を達成するような濾過は難しい。1μ前後の小さな細菌を取り除こうとすると、圧力損失が高くなり、毎時数百トン、数千トンといった流量を処理するのは事実上無理である。だからといって、スプリングフィルタの間隙を広げると除菌は不可能である。
そこで、特許文献3のようにスプリングフィルタにプリコートして小さな細菌まで濾し取ることも考えられるが、この場合も大量の水を処理できない。もし、大量の水を流すために単純に間隙を広げると、細かな濾過助剤がスプリングフィルタの目(間隙)から流失し、スプリングフィルタ上に保持できず、継続した濾過が行えない。このようにスプリングフィルタによる濾過と大量で高速なバラスト水の処理は互いに矛盾する関係を有している。
今のところ、実用性があり、生態系など環境を破壊せず、物理的処理によってバラスト水をD2バラスト水排出基準レベルにまで適合させることができる濾過装置及び濾過方法は存在しない。そして、これは原水(被処理水)がバラスト水の場合だけではない。排出に厳しい基準があり、大量に短時間で処理が必要な被処理水であれば、これと同様のことが言える。
そこで本発明は、短時間に大流量を処理することができ、物理的処理のみによって原水を高レベルに除菌できる濾過装置及び濾過方法を提供することを目的とする。
本発明の濾過装置は、開口を通して原水を濾過する濾材と、濾材の上流側に第1濾過助剤が積層された第1濾層と、第1濾層の上流側に第2濾過助剤が積層された第2濾層とを備え、第2濾層の側から濾材に原水を流して濾過を行う濾過装置において、第1濾過助剤が、開口の代表寸法より小さい代表粒径を有すると共に、通水時の流れで開口に粒子が凝集して複数個がこの開口を覆って架橋する粗い粒子主体の粒度分布を備えている一方、第2濾過助剤が、第1濾過助剤より小さく自身では開口に架橋できない細かな粒子主体の粒度分布を備え、濾材の開口と第2濾層の粒子のサイズ調整が、架橋現象によって濾材に保持される第1濾層によって行われることを主要な特徴とする。
また、本発明の濾過方法は、開口が形成された濾材の上流側に第1濾過助剤からなる第1濾層を積層し、第1濾層の上流側に第2濾過助剤からなる第2濾層を積層して、第2濾層の側から濾材に原水を流して濾過を行う濾過方法であって、第1濾層を積層するときには、開口の代表寸法より小さい代表粒径を有すると共に、通水時の流れにより開口へ粒子を凝集させ、複数個でこの開口を覆って架橋する粗い粒子主体の粒度分布をもつ第1濾過助剤を選択する一方、第2濾層を積層するときには、第1濾過助剤より小さく自身では開口に架橋できない細かな粒子主体の粒度分布をもつ第2濾過助剤を選択し、第1濾過助剤の架橋現象によって濾材に第1濾層を保持し、濾材の開口と第2濾層の粒子のサイズ調整を第1濾層によって行うことを主要な特徴とする。
本発明の濾過装置及び濾過方法によれば、物理的処理のみにより大量の原水を99%程度の高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にし、D2バラスト水排出基準を満たす濾過装置を実現することができる。精密な濾過と詰まり防止を両立させることができる。逆洗するための期間を従来の10倍程度に延ばし、長時間の連続運転を可能にする。さらに、プリコートする濾過助剤の粒径は、流失防止の観点から小粒径にするには限界があると思われていたが、この従来の限界を越えて小粒径にすることができる。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
本発明の実施の形態1における濾過装置の説明図
(a)本発明の実施の形態1における濾過装置のスプリングフィルタの要部拡大図、(b)本発明の実施の形態1における濾過装置のスプリングフィルタの分解図
本発明の実施の形態1における濾過装置の濾過状態の説明図
(a)無限長のスリットを有する場合の架橋の様子の説明図、(b)方形オリフィスの場合の架橋の様子の説明図、(c)円形オリフィスの場合の架橋の様子の説明図
走査型電子顕微鏡で画像解析した焼成珪藻土の粒度分布の説明図
焼成珪藻土の粒度分布の説明図
本発明の実施の形態1における濾過装置の除菌効果を示す第1の実験結果の説明図
(a)比較例の除菌効果を示す実験結果の説明図、(b)本発明の実施の形態1における濾過装置の除菌効果を示す第2の実験結果の説明図
本発明の実施の形態1における濾過方法の工程図
符号の説明
1 濾過タンク
1a 原水室
1b 処理水室
2 スプリングフィルタ
3 コイルスプリング
3a 突起
3b 貫通開口
4a キャップ部材
4b 固定部材
4c 係止具
5 芯材
5a 係止溝
5b 切り込み
6 仕切り板
10 原水タンク
11 プリコートタンク
12 処理水タンク
13 逆洗水タンク
14 ボディフィードタンク
15 汚泥タンク
16,17,18 ポンプ
19 ブロア
20 三方弁
21 ガスバルブ
22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33 弁
34,35,36,37 逆止弁
41,42,43 濾過助剤
44 ボディフィード濾過助剤
46 微粒子
本発明の第1の形態は、開口を通して原水を濾過する濾材と、濾材の上流側に第1濾過助剤が積層された第1濾層と、第1濾層の上流側に第2濾過助剤が積層された第2濾層とを備え、第2濾層の側から濾材に原水を流して濾過を行う濾過装置において、第1濾過助剤が、開口の代表寸法より小さい代表粒径を有すると共に、通水時の流れで開口に粒子が凝集して複数個がこの開口を覆って架橋する粗い粒子主体の粒度分布を備えている一方、第2濾過助剤が、第1濾過助剤より小さく自身では開口に架橋できない細かな粒子主体の粒度分布を備え、濾材の開口と第2濾層の粒子のサイズ調整が、架橋現象によって濾材に保持される第1濾層によって行われることを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、濾材の開口に第1濾過助剤のブリッジが形成され、自分自身では開口に架橋できない細かな第2濾過助剤を濾材上に保持することができる。第2濾過助剤と濾材のサイズ調整(目調整)を第1濾過助剤によって行うので、物理的処理のみによって大量の原水を高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にする。精密な濾過と詰まり防止を両立させることができる。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、コスト的に安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
本発明の第2の形態は、第1の形態に従属する形態であって、濾材が代表寸法dの開口を備えているとき、第1濾過助剤が開口の形状に応じて定まる(0.12〜0.25)×d近傍の代表粒径を有していることを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、第1濾過助剤が濾材の開口の形状に応じて定まる(0.12〜0.25)×d近傍の代表粒径を有しているため、濾材の開口に合わせて第1濾過助剤のブリッジを形成することができ、自分自身では開口に架橋できない細かな第2濾過助剤を濾材上に保持することができる。第2濾過助剤と濾材の目調整が第1濾過助剤によって行われるので、物理的処理のみによって大量の原水を高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にする。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。第1濾過助剤自身も濾過に寄与する。
本発明の第3の形態は、第1又は第2の形態に従属する形態であって、第2濾層の上流側に第2濾過助剤より大きな粒径の第3濾過助剤が積層された第3濾層が設けられ、この第3濾層により第2濾層の濾過過程における圧力損失の増加が抑制されることを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、第3濾層の第3濾過助剤は細かな第2濾過助剤からなる第2濾層が目詰まりしないように原水から大きな固形分粒子、例えばプランクトン等を濾過し、全体としての圧力損失の増加を抑制し、濾過機能の低下を防ぐことができる。
本発明の第4の形態は、第2の形態に従属する形態であって、開口の代表寸法dが90μm以上の大きさをもつことを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、圧力損失の増加を抑え、また必要以上に濾材の目を広すぎたときに生じる濾過機能の低下を防ぐことができる。物理処理のみにより大量の原水を99%程度の高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にし、D2バラスト水排出基準を満たす濾過装置を実現することができる。逆洗するための期間を従来の10倍に延ばし、長時間の連続運転を可能にする。
本発明の第5の形態は、第2の形態に従属する形態であって、開口がスリットの場合に、第1濾過助剤の代表粒径がこのスリットの間隙を代表寸法dとして(0.20〜0.25)×d近傍の粒径を有していることを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、第1濾過助剤が濾材のスリットの形状に応じて定まる(0.20〜0.25)×d近傍の代表粒径を有しているため、スプリングフィルタなどの濾材の開口に合わせて第1濾過助剤のブリッジを形成することができ、自分自身では開口に架橋できない細かな第2濾過助剤を濾材上に保持することができる。第2濾過助剤と濾材の目調整が第1濾過助剤によって行われるので、物理的処理のみによって大量の原水を高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にする。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。第1濾過助剤自身も濾過に寄与する。
本発明の第6の形態は、第1の形態に従属する形態であって、第2濾層の上流側にボディフィード濾過助剤が積層されたボディフィード層を備え、このボディフィード層により装置全体の圧力損失の増加が抑制されることを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、第2濾層の上流側に濾滓が形成されて目詰まりを起し、大量の原水の短時間濾過が行えなくなるのを防止し、長時間の連続運転を可能にする。
本発明の第7の形態は、第3の形態に従属する形態であって、第3濾層の上流側、若しくは順に濾過助剤の粒子が大きくなる濾層が第3濾層に更に積層されるときにはこの最も上流側の濾層の上流にボディフィード濾過助剤からなるボディフィード層が積層され、このボディフィード層により装置全体の圧力損失の増加が抑制されることを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、第3濾層の上流側に更に多くの濾層を積層し、濾層での目詰まりの可能性をさらに分散することができ、長時間の連続運転を可能にすることができる。
本発明の第8の形態は、第7の形態に従属する形態であって、濾材がコイル体を備えたスプリングフィルタであって、開口がコイル体を巻回したコイル体間の間隙であり、プリコートのために第1〜第3濾過助剤の何れかの濾過助剤,更に積層される濾過助剤をそれぞれ供給することができるプリコート助剤供給系路と、原水にボディフィード濾過助剤を供給するボディフィード助剤供給系路とを備えたことを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、スプリングフィルタとプリコート助剤供給系路、ボディフィード助剤供給系路を使って物理的処理のみにより大量の原水を99%程度の高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にすることができる。逆洗するための期間を従来の10倍に延ばし、長時間の連続運転を可能にする。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
本発明の第9の形態は、第8の形態に従属する形態であって、間隙が60μm〜120μmで、第1濾過助剤が代表粒径20μm〜40μm近傍の珪藻土、第2濾過助剤が代表粒径10μm近傍の珪藻土、第3濾過助剤が代表粒径20μm〜40μm近傍の珪藻土、ボディフィード濾過助剤が代表粒径20μm近傍の珪藻土であることを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、コスト的にきわめて安価で、確実に大量の原水を99%程度の高レベルに除菌することができ、同時に、大量の原水を短時間に濾過することができる。
本発明の第10の形態は、第7の形態に従属する形態であって、原水が異物のほか微生物を含む水であって、第2濾層では主として細菌類を濾過し、第3濾層は主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトン及び10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンに由来する濾滓形成を抑え、ボディフィード層では主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトンと10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンに由来する濾滓形成を抑えることを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、原水が異物のほか微生物を含む水であっても、第2濾層では主として細菌類を濾過し、第3濾層では第2濾層にプランクトンが直接付着するのを保護する。すなわち主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトン及び10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンに由来する濾滓形成を抑え、細かな第2濾層の粒子層にプランクトンが付着して圧力が上昇して流量低下するのを防止する。ボディフィード層では第3濾層における主として10μm〜50μmクラスの大きさのプランクトンに由来する濾滓形成を抑えることができ、長時間の連続運転を可能にする。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
本発明の第11の形態は、第1乃至第10の何れかの形態に従属する形態であって、船体に設置されると共に、海水又は淡水を汲み上げるための給水路と、バラストタンクに接続される処理水路とを備え、この海水又は淡水を濾過してバラスト水を供給することを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、物理的処理のみにより大量の原水を99%程度の高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にし、D2バラスト水排出基準を満たす濾過装置を物理的方法で実現することができる。他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
本発明の第12の形態は、開口が形成された濾材の上流側に第1濾過助剤からなる第1濾層を積層し、第1濾層の上流側に第2濾過助剤からなる第2濾層を積層して、第2濾層の側から濾材に原水を流して濾過を行う濾過方法であって、第1濾層を積層するときには、前記開口の代表寸法より小さい代表粒径を有すると共に、通水時の流れにより開口へ粒子を凝集させ、複数個でこの開口を覆って架橋する粗い粒子主体の粒度分布をもつ第1濾過助剤を選択する一方、第2濾層を積層するときには、第1濾過助剤より小さく自身では開口に架橋できない細かな粒子主体の粒度分布をもつ第2濾過助剤を選択し、第1濾過助剤の架橋現象によって濾材に第1濾層を保持し、濾材の開口と第2濾層の粒子のサイズ調整を第1濾層によって行うことを特徴とする濾過方法である。
この構成によって、濾材の開口に第1濾過助剤のブリッジが形成され、自分自身では開口に架橋できない細かな第2濾過助剤を濾材上に保持することができる。第2濾過助剤と濾材の目調整を第1濾過助剤で行うので、物理的処理のみによって大量の原水を高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にする。精密な濾過と詰まり防止を両立させることができる。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、コスト的に安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
本発明の第13の形態は、第12の形態に従属する形態であって、第1濾層を積層するときに、濾材が代表寸法dの開口を備えている場合、この開口の形状に応じて定まる(0.12〜0.25)×d近傍の代表粒径をもつ第1濾過助剤を選択することを特徴とする濾過方法である。
この構成によって、第1濾過助剤が濾材の開口の形状に応じて定まる(0.12〜0.25)×d近傍の代表粒径を有しているため、濾材の開口に合わせて第1濾過助剤のブリッジを形成することができ、自分自身では開口に架橋できない細かな第2濾過助剤を濾材上に保持することができる。第2濾過助剤と濾材の目調整が第1濾過助剤によって行われるので、物理的処理のみによって大量の原水を高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にする。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。第1濾過助剤自身も濾過に寄与する。
本発明の第14の形態は、第13の形態に従属する形態であって、開口の代表寸法dが90μm以上の大きさをもつことを特徴とすることを特徴とする濾過方法である。
この構成によって、濾材の目、及びこの大きさから定まる第1濾過助剤が小さくなり過ぎることなく、圧力損失の増加を抑え、また必要以上に濾材の目を広すぎたときに生じる濾過機能の低下を防ぐことができる。物理処理のみにより大量の原水を99%程度の高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にし、D2バラスト水排出基準を満たす濾過装置を実現することができる。逆洗するための期間を従来の10倍に延ばし、長時間の連続運転を可能にする。
本発明の第15の形態は、第14の形態に従属する形態であって、開口がスリットの場合に、このスリットの間隙を代表寸法dとして、第1濾過助剤が(0.20〜0.25)×d近傍の代表粒径を有していることを特徴とする濾過方法である。
この構成によって、第1濾過助剤が濾材のスリットの形状に応じて定まる(0.20〜0.25)×d近傍の代表粒径を有しているため、スプリングフィルタなどの濾材の開口に合わせて第1濾過助剤のブリッジを形成することができ、自分自身では開口に架橋できない細かな第2濾過助剤を濾材上に保持することができる。第2濾過助剤と濾材の目調整が第1濾過助剤で行われるので、物理的処理のみによって大量の原水を高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にする。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。第1濾過助剤自身も濾過に寄与する。
本発明の第16の形態は、第12の形態に従属する形態であって、第2濾層の上に1層又は2層以上の濾層を順に積層すると共に、このとき積層する濾過助剤の粒径を既に積層されている最も上流側の濾層の粒径と同一又はより大きい粒径にすることを特徴とする濾過方法である。
この構成によって、第2濾層の上流側に更に1層又は2層以上の濾層を積層し、濾層での目詰まりの可能性をさらに分散することができ、長時間の連続運転を可能にすることができる。
本発明の第17の形態は、第12の形態に従属する形態であって、原水の濾過時に、この原水にボディフィード濾過助剤を混合して第2濾層に供給し、この供給により第2濾層の更に上流にボディフィード層を形成して、濾層における圧力損失の増加を抑制することを特徴とする濾過方法である。
この構成によって、第2濾層の上流側に濾滓が形成されて目詰まりを起し、大量の原水の短時間濾過が行えなくなるのを防止し、長時間の連続運転を可能にする。
本発明の第18の形態は、第16の形態に従属する形態であって、原水の濾過時に、この原水に動物性プランクトンと同等な大きさの粒径のボディフィード濾過助剤を混合して最も上流側の濾層に供給し、この供給により濾層の更に上流にボディフィード層を形成して、濾層における圧力損失の増加を抑制することを特徴とする濾過方法である。
この構成によって、第3濾層における主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトンと10μm〜50μmクラスの大きさの動物性プランクトンに由来する濾滓形成を抑えることができ、長時間の連続運転を可能にする。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における濾過装置と濾過方法について説明をする。本発明の実施の形態1の被処理水はバラスト水である。図1は本発明の実施の形態1における濾過装置の説明図、図2(a)は本発明の実施の形態1における濾過装置のスプリングフィルタの要部拡大図、図2(b)は本発明の実施の形態1における濾過装置のスプリングフィルタの分解図、図3は本発明の実施の形態1における濾過装置の濾過状態の説明図、図4(a)は無限長のスリットを有する場合の架橋の様子の説明図、図4(b)は方形オリフィスの場合の架橋の様子の説明図、図4(c)は円形オリフィスの場合の架橋の様子の説明図、図5は走査型電子顕微鏡で画像解析した焼成珪藻土の粒度分布の説明図、図6は焼成珪藻土の粒度分布の説明図、図7は本発明の実施の形態1における濾過装置の除菌効果を示す第1の実験結果の説明図、図8(a)は比較例の除菌効果を示す実験結果の説明図、図8(b)本発明の実施の形態1における濾過装置の除菌効果を示す第2の実験結果の説明図、図9は本発明の実施の形態1における濾過方法の工程図である。
図1、図2(a)(b)に示すように、濾過タンク1に原水(以下、被処理水ともいう)が流入すると、この被処理水を内部に複数本配設されたスプリングフィルタ2で濾過し、濾過された処理水を吐出する。各スプリングフィルタ2には多層のプリフィルタ層が表面に形成される。各スプリングフィルタ2は次の構成から形成されている。
すなわち、スプリングフィルタ2は図2(a)のように断面が略円形の線材を螺旋状に巻回したコイルスプリング3から構成され、コイルスプリング3の長手方向、所定間隔ごとに高さ60μm〜120μm程度の突起3aが形成されている。この突起3aによって、コイルスプリング3は密巻きされたときコイルの軸方向に1巻の間隔(1ピッチ)が60μm〜120μm程度の、好適には90μm〜120μm程度の濾過機能を有する間隙(スリット)を形成する。この間隙に原水を流すことによって濾過が可能になる。この間隙はコイルスプリング2の両端が閉止されるためきわめて細長い開口になる。なお、この間隙は40μm以下では圧力損失が大きくなるすぎるため、少なくとも40μmより広い間隙にするのが適当である。しかし、必要以上に広すぎる間隙はプリコートする濾過助剤の粒子も大きくせざるを得ず、全体としての濾過機能が低下するので、できれば90μm以上で、90μm〜120μm程度にするのがよい。
次に、図2(a)(b)に示すコイルスプリング3の上端に設けられる固定部材4bには、スプリングフィルタ2で濾過された処理水を吐出するための貫通開口3bが形成されている。この固定部材4bは仕切り板6にコイルスプリング3を取り付け、スプリングフィルタ2として構成するための部材であって、図2(b)に示すように中央に通水用の貫通開口3bが形成されたボルト状の部材である。固定部材4bの外周には雄ネジが刻設されており、この雄ネジが仕切り板6に形成された雌ネジと螺合することによって、スプリングフィルタ2の仕切り板6への取り付けを行う。
固定部材4bの貫通開口3bには、板状で略Π字状の係止具4cの脚部分が固定部材4bのネジ側から内面に密着して挿入され、その頭部分が貫通開口3bを横断して架橋し、両側の張り出した部分と脚部分で仕切り板6に係止される。この係止具4cの上端に、長尺の板で構成された芯材5の係止溝5aが引っ掛けられ、係止具4cの頭部分がこの係止溝5a内の所定位置に係合される。これにより、係止具4cと芯材5は上方からみたとき板が互いに十字状に交差した状態で組み合わされて、仕切り板6に取り付けられる。なお、この係止溝5aは芯材5の上端近くに配設されL字状の溝として形成される。
このように芯材5が固定部材4bに支持されると、芯材5は係止具4cに吊り下げられたような状態となるから、この周囲にコイルスプリング3を下側(上流側)から挿通する。芯材5の下端部にはT字状の切り込み5bが形成されており、次に締結具5cの頭部をこの切り込み5b内に挿入する。なお、この締結具5cはボルトと2個のナットから構成される。切り込み5bに挿入した締結具5cのボルトの螺合部をキャップ部材4の挿通孔から突出させ、キャップ部材4aを押込み、これをナットで締め付けると、コイルスプリング3をキャップ部材4aと固定部材4bで挟持したスプリングフィルタ2が組み上がる。なお、締結具5cはダブルナットで固定するので緩みがなく、水密に締め付けることができ、水漏れなど起さない。
仕切り板6は、図1のように濾過タンク1の内部を2分して上方に処理水室1b、下方に原水室1aを形成する。仕切り板6にはスプリングフィルタ2の数だけ図2(b)に示すような雌ネジが形成された挿入孔が設けられ、この挿入孔内に各スプリングフィルタ2の固定部材4bの雄ネジを螺合して水密に装着することができる。これにより、貫通開口3bだけが処理水室1bと原水室1aとを連通する部位となる。固定部材4bを仕切り板6に螺合し係止具4cを介して芯材5を支持するから、スプリングフィルタ2の組み立てが容易で、確実に固定でき、水密性を確保することができる。
次に、図1に基づいて濾過装置の全体構成を説明する。実施の形態1の濾過装置は、船体に設置され、海水あるいは淡水を汲み上げるための給水路と、バラストタンクに接続される処理水路とを備えたものであり、バラスト水を汲み上げたり、排出したりするとき海水又は淡水を濾過する。原水は給水路に設けられた原水タンク10に一旦貯めたり、船体のシーチェストから直接取水することで、ポンプ17によって弁29、逆止弁35経由で濾過タンク1に送水される。濾過処理/除菌処理時には、濾過タンク1で濾過、除菌された処理水は三方弁20を介して処理水タンク12に送水されて収容される。
濾過装置のスプリングフィルタ2の表面には、図3に示すように多層のプリコート層、すなわち実施の形態1では3層をなす第1プリコート層A、第2プリコート層B、第3プリコート層Cが形成される。また、濾過装置全体の圧力損失抑え、各層での目詰まりを防ぐためにボディフィード濾過助剤44が原水に混合されて供給され、第3プリコート層Cの上にボディフィード層が形成される。
各プリコート層は、プリコート用の濾過助剤41,42,43の粉末を清水(あるいは処理水、原水)に混入したプリコート用の濾過助剤の懸濁液をそれぞれスプリングフィルタ2に順に供給することで形成される。各助剤懸濁液はプリコートタンク11で濾過助剤41,42,43の順に調製され、ポンプ16によって第1プリコート層A、第2プリコート層B、第3プリコート層Cの順でプリコートタンク11から0.01MPa〜0.03MPa程度で圧送され、スプリングフィルタ2の表面をプリコートする。なお、各濾過助剤41,42,43をそれぞれ別のタンクで調製して供給するのでもよい。第1プリコート層A、第2プリコート層B、第3プリコート層Cをそれぞれ独自の系路にすることもできる。
ボディフィード層Dは、原水に混入されるボディフィード濾過助剤44がプリコート層状に新たに堆積する濾材となって、動物プランクトンや植物プランクトン、細かなゴミ等の微粒子46を捕捉し、水道(みずみち)が閉塞するのを防ぐものであり、これにより圧力損失の増加が抑えられる。ボディフィード濾過助剤44は動物プランクトン等を除去できるような比較的大きな粒子径の助剤を使用するのがよく、予め、ボディフィードタンク14内の清水あるいは原水、処理水に混合して調製しておく。調製後はボディフィード濾過助剤44が沈殿しないように撹拌を続けながら原水に混入して使用する。
ボディフィード層Dは、原水を濾過する時に、ポンプ17の作用で濾過助剤の懸濁液がボディフィードタンク14から弁31、逆止弁36を経て0.2MPa〜1MPa程度で圧送され、送水中の原水に混合されて、プリコート層の表面を覆って堆積する。堆積しながら同時に動物プランクトン、植物プランクトン等の微粒子46を図3に示すように捕捉する。動物プランクトンは目詰まりすると粘度の高い濾滓となるため、従来から対策が難しいとされているが、ボディフィードすることによってこれを解消できる。ボディフィードによって濾滓が分散するので第3プリコート層Cの表面にケーク濾過現象で濾滓が集中的に形成されることはない。
なお、以上説明した実施の形態1では第3プリコート層Cを設けているが、第2プリコート層Bの上に直接ボディフィード層Dを形成することも、また、第3プリコート層Cの上に更に濾過助剤の粒子が大きくなる別のプリコート層を順に積層することもできる。そして、この別のプリコート層を更に形成する場合は最上流のプリコート層の上流にボディフィード層を積層する。このボディフィード層により最上流のプリコート層における圧力損失の増加(濾滓の集中的な生成)を抑え、さらに濾過装置全体、言い換えれば多層のプリコート層全体で圧力損失が高くなるのを抑えることができる。
ところで、原水からプランクトンだけを取り除くような場合もある。この場合は第1プリコート層Aの上に、実施の形態1の第2濾層としてボディフィード層Dを形成すればよい。濾過助剤42の層が形成されていないため除菌までするのは難しいが、プランクトン等を除去することはできる。ここで、第1濾層となる第1プリコート層Aは濾過助剤間の目調整を行うために必要な層であり、第2濾層との目調整のために設置される。この目調整については後で詳述する。
さて、第1プリコート層Aの濾過助剤41は、後述する理由からコイルスプリング3の間隙に濾過助剤41自身で保持が可能な特異な粒径の粒子になっている。濾過助剤41には焼成珪藻土などを使うのが好適である。また、第2プリコート層Bの濾過助剤42は1μm前後の細菌類を取り除くためのもので、これも焼成珪藻土などを使うのが好適である。第3プリコート層Cの濾過助剤43も焼成珪藻土などが好適である。主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトンと10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンを濾過する。そして、ボディフィード濾過助剤44も焼成珪藻土とするのがよい。
珪藻土は、数万年乃至数千万年の太古の地球上に繁茂した珪藻と呼ばれる藻類(植物プランクトン)が化石となったものである。これを焼いた焼成珪藻土の各粒子は0.1μm〜1.0μmの無数の細孔を備えており、焼成珪藻土を濾過助剤としたときには、動物プランクトン、植物プランクトンが粒子間に捕えられ、大腸菌などの細菌類は粒子間だけでなく、この無数の細孔に取り込まれるものと推測される。
ここで濾過助剤41,42,43、ボディフィード濾過助剤44の各粒径に求められる特性について簡単に説明する。第1プリコート層Aの濾過助剤41はコイルスプリング3の間隙との関係が重要で、通水時の流れでコイルスプリング3の間隙に粒子が凝集して、この間隙中に複数個で連なることが可能な特定の粗い粒子主体の粒度分布を備えていなければならない。これに対し、第2プリコート層Bの濾過助剤42は1μm前後の細菌を濾過するために、濾過助剤41より小さく、自身だけではコイルスプリング3の間隙に架橋できない細かな粒度分布を有するものである。また、第3プリコート層Cの濾過助剤43は濾過助剤42の粒径分布より代表粒径が大きいものが採用される。更に多くのプリコート層を積層するときには、代表粒径が濾過助剤43より徐々に大きくなるようなサイズの粒子を採用する。そして、ボディフィード濾過助剤44は原水がプリコート層に流入する前に予備的にプランクトン、ゴミ等を取り除く粒径の粒度分布を有している必要があり、これらの大きさに応じた粒径の濾過助剤を選んで、ボディフィードする。
続いて、図1に基づいて実施の形態1の濾過装置の各流路について説明する。清水系と弁26、プリコートタンク11、弁27、ポンプ16、弁28、逆止弁34を接続する流路がプリコート助剤供給系路であり、清水系と弁25、ボディフィードタンク14、弁31、逆止弁36を接続する流路がボディフィード供給系路である。ボディフィード供給系路はポンプ17を駆動することによって原水に濾過助剤の懸濁液を供給する。実施の形態1においては、ボディフィード供給系路をプリコート助剤供給系路と別構成にしているが、ボディフィード供給系路の構成とプリコート助剤供給系路を共用することもできる。
また、上記した清水系とつながる流路に代えて、プリコート助剤供給系路を三方弁20、弁22、プリコートタンク11、弁27、ポンプ16、弁28、逆止弁34からなる処理水を供給する流路で構成するのでも、また、ボディフィード供給系路を三方弁20、弁24、ボディフィードタンク14、弁31、逆止弁36からなる処理水を供給する流路で構成するのでもよい。そして、さらにこのような清水や処理水の流路に代えて、原水をプリコートタンク11に導き、弁27、ポンプ16、弁28、逆止弁34からなる流路でプリコートのための濾過助剤の懸濁液を原水室1aに供給することも、また、原水を一部ボディフィードタンク14に導き、ボディフィードのための濾過助剤の懸濁液を弁31、逆止弁36からなる流路で原水に混合することもできる。
次に、逆洗水供給系路について説明する。逆洗水タンク13は逆洗するときの逆洗水を収容するものである。逆洗時にはポンプ18により弁30、逆止弁36を介して処理水室1b側から原水室1a側に逆洗水が送水される。第1プリコート層A側から逆洗水が多層のプリコート層に流れ込み、第2プリコート層B、第3プリコート層C、ボディフィード層Dの濾滓を洗い流す。逆洗後の逆洗水は、弁32を通って汚泥として汚泥タンク15に収容される。そして、濾過装置にはブロア19が設けられており、ガスバルブ21、逆止弁37経由で逆洗時に空気を濾過タンク1の原水室1a内に供給することもできる。ブロア19によって送られた空気は原水室1aの下方から噴出されて無数の気泡になって上昇し、泡の浮力によってコイルスプリング3の内面に付着している珪藻土と濾滓を内面から剥がし、剥落させる。なお、逆洗水供給系路も、三方弁20、弁23からの処理水を逆洗水として供給する流路を採用することができるし、原水を逆洗水タンク13に導く流路を設け、これを逆洗水として供給する流路にすることもできる。さらに、使用した濾過助剤は再利用することができる。
さて、実施の形態1の濾過装置と濾過方法において、本発明の特徴的な構成について説明する。細菌まで濾過するには非常に目の細かい濾材で濾過する必要がある。しかし、これではこの濾材を使って大量の原水を短時間に濾過することはできない。短時間で目詰まりし、連続的な運転は困難である。
また、濾材として比較的目の大きなスプリングフィルタ2を採用した場合、精密な濾過をするためにはこれに濾過助剤をプリコートすることが必要であり、この大きな目にプリコートする濾過助剤の粒径はスプリングフィルタ2の目に比例して大きくしなければならない。このため、濾過助剤を小粒径にするには圧力損失の増加を抑える必要から事実上限界があるように考えられていた。
すなわち、細菌まで濾過するには細かい粒径であることが必要であるが、細かい濾過助剤はスプリングフィルタ2の間隙から流失し、プリコート層として保持できないのである。これを避けるためスプリングフィルタ2の目を小さくして狭い間隙にすると、圧力損失が高く、数千トン/時といった大量の原水を短時間に濾過することができなくなる。こうした矛盾する課題を同時に解決するのは困難であり、これがバラスト水などを物理的に除菌する濾過装置が存在しない理由の1つであった。
しかし、実施の形態1においては以下の手段でこの矛盾を解決した。すなわち、濾過助剤と濾材の目(濾過機能を有する開口、すなわち間隙、細孔、メッシュ、スリット等)が不整合で前者が小さすぎ、後者に保持できないような場合に、両者のサイズを調整する目調整手段を介在させるという手段を講じた。そして、この目調整手段として濾過助剤を利用する。いわば目調整の機能を濾過のための濾過助剤の機能から分離させたことになる。
すなわち、スプリングフィルタ2の間隙を広くすると共に、この間隙を複数個連なって自身でブリッジを形成するような大きさの濾過助剤41をプリコートする。そして、除菌を徹底して行うため、第2プリコート層Bの濾過助剤42を所定の細かい粒径の助剤とする。さらにこの第2プリコート層Bに積層される第3プリコート層Cを第2プリコート層Bが目詰まりしないような粒径の濾過助剤43とする。
図3のスプリングフィルタ2に直接細かい濾過助剤42を積層しようとすると、その間隙が広すぎ、濾過助剤42は流れに乗って流失する。しかし、所定の粒径の濾過助剤41をプリコートした場合は、複数個の濾過助剤41がアーチ状に連なってこの濾材の目にブリッジを架け、自分自身で自分の層と上層を支え、積層状態を保持できるようになる。
濾材が図4(a)に示すように平板であって、ここにスリットが開けられているような場合(スリットの間隔をdとする)、濾過助剤41の代表粒径をaとすると、濾過助剤41の粒径に対してa/d=0.25近傍の値以上の値を与えると、通水時の流れに乗って濾過助剤41がスリットで凝集し、凝集の中で複数個、4個程度の粒子が自然に連なって力を及ぼし合い、このスリットに架橋し、アーチ状のブリッジを形成する。なお、a/d>1となるような場合は、a/dが1の近傍の値をもつ場合だと濾材の目を塞ぎ易く、またa/dがこの1の近傍の値より大きくなると粒子間の間隙も大きくなって、小さな濾過助剤42を濾層として保持できず流失させてしまう。これは目調整を行うプリコート層としては適当でない。従って、少なくともa/dが1の近傍より小さいこと(a/d<1)が好ましい。そして、濾過助剤42をできるだけ小径にして除菌作用を向上させるには、これを保持する濾過助剤41はできるだけ粒径が小さい方がよく、a/d<1の中でも濾過助剤41は代表粒径がa/d=0.25の近傍値となるような濾過助剤とするのが好適である。
逆にa/d=0.25の近傍値より小さい値を与えると、このブリッジは形成されない。濾過助剤41は流れに乗って流失する。a/d=0.25近傍の代表粒径を与えた場合、4個、5個程度で濾過助剤41はこのスリットに架橋する。そして、a/d=0.25を越える代表粒径の濾過助剤41の場合は、もっと少ない個数で架橋する。
ここで、近傍値というのは、a/dがおおむね±0.02程度で変動する範囲である。濾過助剤は不均一な形状と、同一の傾向はもつものの、少し個体差のある粒度分布を有している。このため、あるパラメータ(ここではa/d)の範囲、値が所定の作用効果を奏する中核となる範囲、値であっても、その作用効果を奏する範囲、値は濾過助剤の個体差に基づいて変動する。a/dが好適となる範囲の下限の限界値もおおむね±0.02程度で変動し、この範囲の近くにほぼ均等な作用効果を示す近傍領域が出現する。これは以下説明する他の濾材と濾過助剤等においてもすべて同様である。
これをブリッジ形成の場合で説明すると、a/d=0.25が作用効果を奏する下限の限界値ではあるが、濾過助剤の形状が不均一で必ずしも一定しない粒度分布をもつため、代表粒径aが2μm程度変動する。このような場合にもブリッジが形成されるようなことが起こる。スリットの間隔dは大体100μm程度であるため、言い換えると±0.02程度でa/dの下限値に変動が生じる。従って、多くの場合はa/d=0.25程度を閾値とすればよいが、濾過助剤によってはa/d=(0.25−0.02)〜(0.25+0.02)の中の1つの値が下限値となる場合もある。このように本明細書で近傍値と言うときは、ある値、ある範囲の傍でこの値、範囲とほぼ均等な作用効果を示す幅のある値を意味する。
スプリングフィルタ2のスリットを使った場合、図3に示すように断面が円形のコイルであるため、平板とはやや異なって、a/d=0.2近傍の値以上の値を与えた場合でもアーチ状のブリッジを形成する。a/d=0.2の近傍より小さいとブリッジは形成されない。この場合もa/d>1となるような場合は適当ではない。濾過助剤42を保持する濾過助剤41はできるだけ粒径が小さい方がよく、下限値のa/d=0.2の近傍値となるような濾過助剤を採用するのがよい。
このスプリングフィルタ2の場合は5個程度で間隙に架橋する。しかし、濾過助剤41のブリッジを形成可能な個数が減って(粒径が大きくなる)a/dが1の近傍だと、濾材の目を塞ぎ易くなり、この場合圧力損失が高くなって、短時間で目詰まりし、連続的な運転が難しくなる。またa/dがこの1の近傍から大きくなると粒子間の間隙も大きくなって、目詰まりは少なくなる。しかし、目調整は難しくなる。
従って、濾材の目が平板のスリットの場合には濾過助剤に対してa/d=0.25近傍の代表粒径を与えるのがよい。また、スリットがスプリングフィルタ(コイルの円形断面)の間隙の場合は、a/d=0.2近傍の代表粒径を与えるのが好適である。そして、スリットにも、濾材が平板に近いものからコイルの断面形状のものまで様々あるが、少なくとも濾過助剤の代表粒径aをa/d=0.20〜0.25近傍の粒径とすることでブリッジが形成可能になる。このような粒径を選択することにより、ブリッジを形成すると共に、除菌に優れた小粒径の濾過助剤を保持でき、圧力損失を抑え、短時間で目詰まりせず、連続運転が可能になる。
なお、第1プリコート層Aと第2プリコート層Bが接触している部分では、濾過助剤41の互いの間隙や凹凸の中に小さな濾過助剤42が入り込み、両者が混じった状態が形成される。この混在のため、濾過助剤42の目と濾過助剤41の目のサイズが一挙に変化するのではなく、この混じり合った範囲で徐々に濾材の目が変化し、急激な流体抵抗の変化で形成される濾滓を防止して、目詰まりを遅らせる。
さて、図4(a)は以上説明した濾材が無限長のスリットを有する場合の架橋の様子を示している。これに対し、図4(b)は濾材が有限長の四辺からなる方形オリフィスを有する場合の架橋の様子を示している。この場合、a/d=0.15近傍より大きい代表粒径をもてば図4(b)に示すようにブリッジが形成される。6、7個程度の粒子でドーム状のブリッジが形成される。この場合も、a/d>1となるような場合は好適ではない。a/d=0.15の近傍値より小さい値を与えると、ブリッジは形成されない。濾過助剤は流れに乗って流失する。濾過助剤のブリッジを形成可能な個数が減って(粒径が大きくなる)a/dが1の近傍の値になると、濾材の目を塞ぎ易く、この場合圧力損失が高くなって、短時間で目詰まりし、連続的な運転が難しくなる。またa/dがこの1の近傍より大きくなると、目詰まりは少なくなるが、目調整が困難になる。そしてこの濾過助剤は粒径が小さい方が除菌に優れた小さな濾過助剤を保持できる。従って、濾材の目が方形オリフィスの場合には、濾過助剤に対してa/d=0.15近傍の代表粒径を与えるのが好適である。
同様に、図4(c)に示すように円形オリフィスの場合、a/d=0.14近傍より大きい代表粒径をもてばドーム状のブリッジが形成される。6、7個程度の粒子でドーム状のブリッジが形成される。この場合も、a/d>1となるような場合は目調整には不適当な粒径となる。a/d=0.14の近傍値より小さい値だと、ブリッジは形成されない。濾過助剤は流れに乗って流失する。濾過助剤のブリッジを形成する個数は少なくなるが、a/dが1の近傍値になると、圧力損失が上がり、短時間で目詰まりし、連続的な運転ができなくなる。1の近傍より大きくなる場合は目調整が不適当になる。そしてこの濾過助剤は粒径が小さい方が小さな除菌用の濾過助剤を保持できる。従って、濾材の目が円形オリフィスの場合には、濾過助剤に対してa/d=0.14近傍の代表粒径を与えるのが好適である。
上述したように、珪藻土からなる濾過助剤の粒径分布には最大の度数を示す最頻値のバラツキとして2μm程度の変動がある。そして、最頻値付近の分布にも特徴があり、中央から大体±2μm程度の範囲で横並びの値を有し(図5の「645」「600H」参照)、最大度数付近が扁平に広がる分布を示す傾向がある。このためa/d=0.12近傍以上であれば濾過助剤によっては十分に架橋できる。
そして、濾材の目の形状が楕円や矩形になったりして、スリットとオリフィスの中間的な形状の場合や、様々な形状の濾材の目が寄せ集まっている場合などにおいては、この形状がスリットに近い形状の場合はa/d=0.25に近づき、円形オリフィスに近い形状の場合はa/d=0.12に近づき、スリットに近い目の形状の数が多ければa/d=0.25に近づき、円形オリフィスに近い形状の数が多ければa/d=0.12に近づく。さらに濾材がスプリングフィルタのように丸い断面の場合は、a/d=0.2に近い値がブリッジ形成の可否の閾値になる。以上のことから、濾過助剤の粒径のパラメータa/dは濾材の目(濾過機能を有する開口、すなわち間隙、細孔、メッシュ、スリット等)の形状に応じてa/d=(0.12〜0.25)の中から選ぶことができる。
さて、実施の形態1のスプリングフィルタ2は、40μmよりも大きい間隙を有している。圧力損失とのバランスを考えながら除菌機能を向上させるためには、できれば60μm〜120μm、好適には90μm〜120μmの間隙がよい。従って、第1プリコート層Aの濾過助剤41は18μm〜24μm程度であればよい。間隙が100μmのスプリングフィルタ2の場合は20μm近傍の代表粒径を選び、90μmのスプリングフィルタ2の場合は18μm程度の代表粒径を選べばよい。ただ、90μmの場合に、18μmよりやや大きめの20μmの代表粒径をもつ焼成珪藻土を用いて確実に架橋するのもよい。両者の圧力損失に差はなく、ブリッジの形成がより確実になる。
第2プリコート層Bの濾過助剤42は除菌するために代表粒径10μm近傍の珪藻土とし、第3プリコート層Cの濾過助剤43は代表粒径が20μm〜40μm近傍の珪藻土にするのがよい。第3プリコート層Cでは主として第2プリコート層Bにプランクトンが直接付着して濾滓形成することによる目詰まりを防ぎ、5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトン及び10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンを濾過し、これに由来する濾滓形成を抑える。細かな第2プリコート層Bの濾過助剤42の粒子層にプランクトンが付着して圧力が上昇し流量低下するのを防止する。さらに、ボディフィード濾過助剤は代表粒径20μm近傍の珪藻土とするのがよい。ボディフィード層は5μmを越える大きさのプランクトン(5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトンと10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトン)と異物を濾過するものであり、これらプランクトンに由来する濾滓形成を抑え、プリコート層全体の圧力損失を低下させる。
このように実施の形態1においては、目調整を行う第1プリコート層Aを設け、これによってスプリングフィルタ2の間隙を広くし、あわせて第2プリコート層Bで1μm前後の細菌まで濾過できるようにしている。この目調整を行う第1層プリコート層Aは主として粗い粒径の粒径分布の濾過助剤41からなり、これに積層される第2層プリコート層Bは除菌作用を有する主として細かい粒径の粒径分布の濾過助剤42から構成する。さらに第3プリコート層Cは第2層が濾過過程で目詰まりしないようにするための層であり、この上にこれらのプリコート層全体が目詰まりしないようにボディフィード層Dが形成される。
これら複数のプリコート層、ボディフィード層、スプリングフィルタの連携によって、除菌と大量、短時間の濾過を可能にする。逆洗を実施する期間は従来の10倍程度に延び、長時間の連続運転を可能にする。また、濾過助剤の粒径は流失防止の観点から小粒径にするには限界があると思われていたが、この従来の限界を越えて小粒径にすることができる。物理的な濾過だけで、99%程度の除菌を達成でき、D2バラスト水排出基準を達成することが可能であり、逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も簡単、コンパクトにでき、バラスト水の処理を行うのに最適な濾過装置を実現できる。
(実施例)
実施の形態1においては、その具体的な作用効果を測定するため、濾過助剤41,43、ボディフィード濾過助剤44として焼成珪藻土(シリカ600H/シリカ645;中央シリカ株式会社製)を用い、濾過助剤42として焼成珪藻土(シリカ100F;中央シリカ株式会社製)を用いてバラスト水の濾過実験を行った。スプリングフィルタ2の間隙は90μmである。
図5は走査型電子顕微鏡で画像解析した焼成珪藻土の粒度分布である。図6はこのときの焼成珪藻土の累積頻度である。焼成珪藻土の粒径は画像から粒子の面積からこれを円に換算したときの面積円相当径(μm)で表している。実験で使用した濾過助剤41,43、ボディフィード濾過助剤44(シリカ600H/シリカ645)の焼成珪藻土の粒径は何れも20μm近傍に最大度数の最頻値があり、20μmが代表粒径であることが分かる。また、実験で使用した濾過助剤42の焼成珪藻土(シリカ100F)は10μm近傍に最頻値があり、10μmが代表粒径である。
図6の焼成珪藻土の累積頻度によれば、濾過助剤42の焼成珪藻土の場合、98%近い粒子が粒径30μmより小さい粒子であり、濾過助剤41,43、ボディフィード濾過助剤44の場合、98%近い粒子が粒径50μmより小さい粒子であることが分かる。図5,6が示すように、焼成珪藻土の濾過助剤粒子は粒径が正規分布をもつような分布ではなく、最大粒径より大きい粒径の粒子を比較的幅広く含む分布を有している。珪藻土を焼結した場合、珪藻土表面が溶融して固まったような焼結体となるが、この溶融物の多寡、粒子形状は焼結により変動する。この溶融が不均一な粒径となる原因の1つであり、図5,6のような粒度分布になる原因の1つと考えられる。しかし、この焼成珪藻土の粒径は大部分が代表粒径の2〜3倍の範囲内に存在しており、焼結する条件などで多少の差があるが、焼成珪藻土の粒度分布はおおむね図5のような傾向の分布になるものが多い。
図7はこの除菌効果を示す実験結果を示す。図7によれば、長時間の連続運転(逆洗を行うまでの時間が従来の約10倍となった)を可能にするだけでなく、99.5%まで除去可能であることを示す。A−2(0.21Mpa)等の表記において、A−1は原水Aのサンプルであることを示し、A−2,A−3,・・・等の番号2,3等はサンプルA−1に対する各実験の名称として付したものであり、括弧内は濾過タンク1内の圧力を示している。原水室1a内における仕切り板6に近い側の圧力である。実験で用いた細菌数は一般細菌を培養してカウントしlog表示したものである。図7の実験の場合、0.2MPa以上の圧力をかけて通水することで細菌類が十分に除菌できていることが分かる。なお、圧力はとくに高圧を加える必要はなく、比較的低い圧力でも十分除菌効果が得られる。そして、これは上記国際条約のD2基準、50μm超のプランクトン数は1トンのバラスト水中に10個体/トン、10μm−50μmのプランクトン数は10個体/1ml、大腸菌類250cfu(colony forming unit)/100ml未満、という基準をこの濾過装置だけでクリアできることを実証するものである。
図8(a)(b)は原水BのサンプルB−1に対して、本実施例と比較例による濾過をそれぞれ実験して比較したものである。比較例としては、20μmの代表粒径の焼成珪藻土(シリカ600H)をスプリングフィルタに施して濾過したものである。処理水を24時間培養して一般細菌の菌数の検査を行った。これに対し、実施例は、20μmの代表粒径の濾過助剤41,43、ボディフィード濾過助剤44として焼成珪藻土(シリカ600H)を使い、濾過助剤42として焼成珪藻土(シリカ100F)を使用して濾過したものである。図7同様、濾過の圧力は括弧内に記載されている。スプリングフィルタ2の間隙は90μmである。24時間培養して同じ検査を行った。これによれば、比較例の焼成珪藻土の場合、0.038MPa,0.066MPaの何れの場合も除菌数は2.0logCFU/ml程度にすぎず、除菌率も50%から57%であるが、実施例の場合は0.060MPaで除菌数は1.9logCFU/ml程度になり、除菌率は99%にまでなっているのが分かる。なお、ここで除菌率99%と言うのは、上記のサンプル、検査環境、条件においてこの結果が得られたということであって、サンプル、検査環境、条件が変われば増減する余地を残すものである。こうしたことを考慮し、本実施の形態1の濾過装置を使用すれば除菌率99%程度を実現できると言い直すことができる。
このように実施の形態1の濾過装置においては、プリコート層を複数層設け、さらにボディフィード層を形成するだけで、除菌率99%程度を実現できる。逆洗を行うまでの時間を従来の約10倍に延ばすことができ、長時間の連続運転ができるようになった。
続いて、実施の形態1における濾過方法について説明する。図9に示すように、濾過運転をする前に、スプリングフィルタ2の外周をプリコート処理する。このプリコート処理は、弁26、27,28を開放し、清水系に接続する。清水系について説明するが、処理水、原水でもよい。
この状態でポンプ16を駆動し、プリコートタンク11内に収納された粉末状の濾過助剤41を撹拌装置により清水と混ぜて濾過タンク1の原水室1aに吐出し、第1プリコート層Aを形成する。次に濾過助剤42に対して同じ手順で処理を行い、これによって第2プリコート層Bを形成し、さらに濾過助剤43に対しても同じ手順で処理し、第3プリコート層Cを形成する。この手順で多層のプリコート層を形成する(第1工程)。その後、三方弁17が切り換えられ、処理水室1bが処理水タンク12に接続される。
次に、ボディフィードしながら濾過を行うボディフィード処理/濾過処理を行う(第2工程)。ボディフィード処理/濾過処理は次のように行う。予め、ボディフィードタンク14内に収納された原水にボディフィード濾過助剤44を混合し、ボディフィード用の懸濁液を調製しておく。調製後は沈殿を起さないように撹拌装置により継続して撹拌を行う。ボディフィードするときには、この懸濁液をポンプ17で供給中の原水に混合し、原水室1aに吐出する。これにより第1プリコート層A、第2プリコート層B、第3プリコート層Cの上にボディフィード層Dが形成される。なお、原水に代え処理水に混合するのでもよい。
ボディフィード層Dは、原水に混入された濾過助剤44が新たに堆積する濾材となってプランクトンなどを捕捉し、第3プリコート層C表面に濾滓が形成されるのを防止して水道(みずみち)の閉塞を防ぐ。濾過装置全体の圧力損失の増加を抑制することができるものである。多層のプリコート層、ボディフィード層で原水中のプランクトン、細菌類が除去され、処理水が処理水タンク12に導かれる。
その後、スプリングフィルタ2の外周で圧力損失が高くなると、逆洗を行う(第3工程)。このとき、清水系若しくは弁23を介して逆洗水タンク13に収容された逆洗水を濾過タンク1に弁30を開いてポンプ18で送り込み、弁32を開いて排水する。これにより、濾過装置で捕捉された濾滓が逆洗される。なお、ここで逆洗水として原水を利用することもできる。さらに弁18を開放し、ブロア19を駆動して、空気を濾過タンク1内に供給する。
ブロア19によって送られた空気は原水室1aの下方から無数の気泡として噴出され、泡の浮力によってコイルスプリング3の内面に付着している第1プリコート層A、第2プリコート層B、第3プリコート層C、ボディフィード層Dの珪藻土と濾滓をコイルスプリング3の内面から剥がし、これらの汚泥を汚泥タンク15に収容する。なお、スプリングフィルタ2の間隙が60μmより小さいような場合には、圧縮空気を処理水室1bの方から噴出して、濾過タンク1内に残っている水をコイルスプリング3の処理水室1b側から原水室1a側に押し出すのもよい。
続いて、再び第1工程に戻って、スプリングフィルタ2の外周を再プリコート処理する。濾過助剤41で第1プリコート層Aを形成し、濾過助剤42に対して同じ手順で処理を行い、第2プリコート層Bを形成し、さらに濾過助剤43に対しても同じ手順で処理し、第3プリコート層Cを形成する。この一連の処理で再び多層のプリコート層を形成し、ボディフィード処理/濾過処理を行えばよい。
このように実施の形態1の濾過装置と濾過方法によれば、化学薬品を使用せず、物理的処理だけでバラスト水を高レベルに除菌することができ、装置に信頼性があり、実用的であって、長時間連続運転が可能でコストパフォーマンスに優れたものとなる。
複数のプリコート層、ボディフィード層、スプリングフィルタの連携によって、微小な細菌まで除菌すると同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にし、逆洗を実施する期間は従来の10倍程度にまで延び、長時間の連続運転を可能にする。また、プリコートするための濾過助剤の粒径は、流失防止の観点から小粒径にするには限界があると思われていたが、この従来の限界を越えて小粒径にすることができる。
物理的な濾過だけで、99%程度の除菌を達成でき、D2バラスト水排出基準を達成することが可能であり、長時間の連続運転が可能なばかりでなく、逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も簡単、コンパクトにできる。そして、この濾過装置と濾過方法は、バラスト水の処理に限られず、あらゆる被処理水から除菌と異物を取り除く濾過を行うことができる。
本発明は、バラスト水等の生物を国際環境基準に適合するレベルに除菌できるような濾過装置に適用できる。
【0008】
3a 突起
3b 貫通開口
4a キャップ部材
4b 固定部材
4c 係止具
5 芯材
5a 係止溝
5b 切り込み
6 仕切り板
10 原水タンク
11 プリコートタンク
12 処理水タンク
13 逆洗水タンク
14 ボディフィードタンク
15 汚泥タンク
16,17,18 ポンプ
19 ブロア
20 三方弁
21 ガスバルブ
22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33 弁
34,35,36,37 逆止弁
41,42,43 濾過助剤
44 ボディフィード濾過助剤
46 微粒子
発明を実施するための最良の形態
[0028]
本発明の第1の形態は、開口を通して原水を濾過する濾材と、第1濾過助剤の粒子が複数個連なって架橋する架橋現象で該第1濾過助剤が濾材の上
【0009】
流側にプリコートされた第1濾層と、第1濾層の上流側に第2濾過助剤がプリコートされた第2濾層とを備え、第1濾過助剤が、開口より小さく、かつプリコート時の流れで開口にその粒子が凝集したとき複数個で連なってこの開口に架橋することができる大きさを有している一方、第2濾過助剤が、第1濾過助剤より小さく自身では開口に架橋できない大きさを有し、濾材の開口と第2濾過助剤の粒子のサイズ調整が第1濾過助剤の架橋現象によって行われ、第2濾層の側から濾材に原水を流して濾過を行う濾過装置であって、第2濾層の上流側には、第2濾過助剤より大きな粒径の第3濾過助剤がプリコートされた第3濾層が設けられ、この第3濾層により第2濾層の濾過過程における圧力損失の増加が抑制されることを特徴とする濾過装置である。
[0029]
この構成によって、濾材の開口に第1濾過助剤のブリッジが形成され、自分自身では開口に架橋できない細かな第2濾過助剤を濾材上に保持することができる。第2濾過助剤と濾材のサイズ調整(目調整)を第1濾過助剤によって行うので、物理的処理のみによって大量の原水を高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にする。精密な濾過と詰まり防止を両立させることができる。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、コスト的に安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。第3濾層の第3濾過助剤は細かな第2濾過助剤からなる第2濾層が目詰まりしないように原水から大きな固形分粒子、例えばプランクトン等を濾過し、全体としての圧力損失の増加を抑制し、濾過機能の低下を防ぐことができる。
[0030]
[0031]
【0010】
[0032]
[0033]
[0034]
[0035]
[0036]
[0037]
【0011】
[0038]
[0039]
[0040]
本発明の第7の形態は、第1の形態に従属する形態であって、第3濾層の上流側、若しくは順に濾過助剤の粒子が大きくなる濾層が第3濾層に更に積層されるときにはこの最も上流側の濾層の上流にボディフィード濾過助剤からなるボディフィード層が積層され、このボディフィード層により装置全体の圧力損失の増加が抑制されることを特徴とする濾過装置である。
[0041]
この構成によって、第3濾層の上流側に更に多くの濾層を積層し、濾層での目詰まりの可能性をさらに分散することができ、長時間の連続運転を可能にすることができる。
[0042]
本発明の第8の形態は、第7の形態に従属する形態であって、濾材がコイル体を備えたスプリングフィルタであって、開口がコイル体を巻回したコイル体間の間隙であり、プリコートのために第1〜第3濾過助剤の何れかの濾過助剤,更に積層される濾過助剤をそれぞれ供給することができるプリコート助剤供給系路と、原水にボディフィード濾過助剤を供給するボディフィード助剤供給系路とを備えたことを特徴とする濾過装置である。
[0043]
この構成によって、スプリングフィルタとプリコート助剤供給系路、ボディフィード助剤供給系路を使って物理的処理のみにより大量の原水を99%程度の高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にすることができる。逆洗するための期間を従来の10
【0012】
倍に延ばし、長時間の連続運転を可能にする。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
[0044]
本発明の第9の形態は、第8の形態に従属する形態であって、間隙が60μm〜120μmで、第1濾過助剤、第2濾過助剤、第3濾過助剤、及びボディフィード濾過助剤が珪藻土であることを特徴とする濾過装置である。
[0045]
この構成によって、コスト的にきわめて安価で、確実に大量の原水を99%程度の高レベルに除菌することができ、同時に、大量の原水を短時間に濾過することができる。
[0046]
本発明の第10の形態は、第7の形態に従属する形態であって、原水が異物のほか微生物を含む水であって、第2濾層では主として細菌類を濾過し、第3濾層は主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトン及び10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンに由来する濾滓形成を抑え、ボディフィード層では主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトンと10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンに由来する濾滓形成を抑えることを特徴とする濾過装置である。
[0047]
この構成によって、原水が異物のほか微生物を含む水であっても、第2濾層では主として細菌類を濾過し、第3濾層では第2濾層にプランクトンが直接付着するのを保護する。すなわち主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトン及び10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンに由来する濾滓形成を抑え、細かな第2濾層の粒子層にプランクトンが付着して圧力が上昇して流量低下するのを防止する。ボディフィード層では第3濾層における主として10μm〜50μmクラスの大きさのプランクトンに由来する濾滓形成を抑えることができ、長時間の連続運転を可能にする。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式
【0013】
と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
[0048]
[0049]
[0050]
[0051]
【0014】
[0052]
[0053]
[0054]
[0055]
[0056]
【0015】
[0057]
[0058]
本発明の第16の形態は、濾材の開口より小さくかつプリコート時の流れにより開口へ粒子が凝集して複数個が連なって架橋することができる大きさの第1濾過助剤を選択し、この第1濾過助剤によって濾材の上流側に第1濾層をプリコートすると共に、第1濾過助剤より小さく自身では開口に架橋できない大きさの第2濾過助剤を選択し、第1濾層の上流側にこの第2濾過助剤によって第2濾層をプリコートし、濾材の開口と第2濾過助剤の粒子のサイズ調整を第1濾過助剤の架橋現象によって行い、第2濾層の側から濾材に原水を流して濾過を行う濾過方法であって、第2濾層の上に1層又は2層以上の濾層を順にプリコートし、このときプリコートする濾過助剤の粒径を既にプリコートされている最も上流側の濾層の粒径より大きい粒径にすることを特徴とする濾過方法である。
[0059]
この構成によって、濾材の開口に第1濾過助剤のブリッジが形成され、自分自身では開口に架橋できない細かな第2濾過助剤を濾材上に保持することができる。第2濾過助剤と濾材の目調整を第1濾過助剤で行うので、物理的処理のみによって大量の原水を高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にする。精密な濾過と詰まり防止を両立させることができる。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、コスト的に安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。そして、第2濾層の上流側に更に1層又は2層以上の濾層を積層し、濾層での目詰まりの可能性をさらに分散することができ、長時間の連続運転を可能にすることができる。
[0060]
[0061]
[0062]
本発明の第18の形態は、第16の形態に従属する形態であって、原水の濾過時に、この原水に動物性プランクトンと同等な大きさの粒径のボディフィード濾過助剤を混合して最も上流側の濾層に供給し、この供給により濾層
本発明は化学薬品など使わずに除菌できる濾過装置と濾過方法にかかり、とくに船舶のバラスト水等を国際環境基準に適合するレベルにまで除菌できる濾過装置と濾過方法に関する。
従来、船舶は船底のタンクにポンプ等で汲み上げた海水をバラスト水として積載して航行し、目的地に着くと貨物の積み下ろしの時間内にこのバラスト水を外部に排出している。これは、貨物を載せていない船舶や、貨物の積載量が少ない船舶は喫水線が下がり、バランスが保てなくなるためである。そして、この汲み上げ、排出に必要以上の時間がかかると輸送コストの上昇につながるため、これを貨物の積み下ろしの時間内に収めるべく、通常数百トン/時〜数千トン/時といった高速で汲み上げ、排出が行われている。
ところで、バラスト水を取水する海域と排出する海域は通常異なる。海水を取水する海域によっては有害なプランクトンや細菌が混入するおそれがあり、これを目的地の沿岸や港湾内で排出することになれば、この有害なプランクトンや細菌が人為的に取水海域から排出海域に運ばれたことになる。場合によっては、排出された海域でこれらが異常繁殖して生態系を破壊し、貝毒や赤潮の原因となり、海洋汚染を引き起こし、漁業に深刻な打撃を与えたりもする。実際にそのような事例も幾つか報告されている。さらには、公衆衛生に被害を及ぼすことすらある。
このように有害なプランクトンや細菌が船舶の移動に伴って運搬されるのを防止するため、2004年2月、国際海事機関(IMO;International Maritime Organization)において、船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約が採択された。この条約においてはD2バラスト水排出基準と言われるバラスト水に対する厳しい排出基準が設けられ、排出できるのは、50μm超のプランクトン数は1トンのバラスト水中に10個体/トン、10μm−50μmのプランクトン数は10個体/1ml、大腸菌類は250cfu(colony forming unit)/100ml未満にそれぞれ規制がかけられた。従ってこの排出基準によれば、50μm超の大きなプランクトンから1μ前後の小さな細菌に至る微生物を同時にかつほとんどを取り除き、しかも膨大なバラスト水を短時間に処理しなければならない。
現在、オーストラリアや米国と言った国々ではこの厳しい排出基準が先行して運用されている。これらの国に向かう多くの船舶においては、この排出基準を満たすために港湾等の沿岸でバラスト水の交換を行っている。すなわち、寄港する前に沿岸で積載してきたバラスト水を外洋のきれいな問題のない海水と交換している(リバラスト法)。
しかし、バラスト水の交換を行うときには船体のバランス保持が問題となり、交換の手順の誤りから転覆事故を誘発することもあり、交換に際しての安全確保が問題となっている。そして、バラスト水の交換だけではこの問題は本質的には片付かない。基準自体もより厳しくなる方向へ向かっており、オーストラリアや米国と言った国々ではさらに厳しい規準の設定が検討されている。
現在報告されている開発中のバラスト水処理装置は、G9という化学的手法による基準に基づいて、塩素等の化学薬品による薬品処理や、オゾンによるプランクトン、細菌の殺滅、殺菌を行うもの(化学処理法)が中心であり、D2バラスト水排出基準をクリアするには化学処理によるしかない、と言うのが実情である。なお、本明細書において、除菌とは目的のレベルにまでプランクトン、細菌などの微生物を取り除くことを意味する。
上述したようにバラスト水の取水、排水は積み降ろしの際に行われるため、もしG9基準に従ってバラスト水を殺菌すると、化学薬品で処理されたバラスト水が港湾に大量に排出され、化学薬品が港湾内の生物に大きな影響を与え、生態系を破壊する可能性がある。このため、物理的処理による除菌あるいは殺菌を行い、装置に関するG8基準に準拠した方法に期待が集まっている。
ところで、物理的処理の代表である濾過には、主として、ストレーナー等の濾材でこれに形成された空隙(開口)よりも大きな固形分粒子を捕えるストレン濾過現象によるものと、ケークや砂などが立体的に重なったとき形成される空隙で固形分粒子を捕える深層濾過現象によるものと、濾過の進行と共に成長するケークの表面で大きな固形分粒子を分離して清澄な液だけをケーク内に流して濾過するケーク濾過現象を利用するものがある。
1μ前後の小さな細菌までを濾過して清澄な水にするには、濾材の目が小さくなくてはならない。それゆえ短時間で目詰まりする。このときの濾過には、上述のケーク濾過現象などを利用することなどが考えられるが、圧力損失(流体抵抗)が直ぐに高くなり、数百トン/時あるいは数千トン/時という流速で流されるバラスト水を除菌するのは困難である。このためどうしても上述した化学薬剤による処理か、熱処理あるいは電気処理せざるを得なかった。
例えば、バラスト水を60℃程度以上で熱処理すれば、大腸菌等の生存に不適当な環境にすることができる(熱処理法)。この具体的な方法として、タンクにエンジン冷却用熱水を注入したり、熱交換器をバラスト水配管系の途中に配設したりする方法などが考えられる。しかし、これらの方法で殺菌が確実に行えるとまではいえないし、また、エネルギー効率もよくない。すなわち、殺菌するには膨大な熱量、費用を必要とする。さらに、熱温水を積載することによる貨物へ影響があり、また、熱温水の排出による海洋生物への影響も懸念される。
熱殺菌以外にも、オゾンまたはオゾンと蒸気の混合による殺菌(オゾン法)、高電圧パルスなどによって電気的に微生物を破壊する殺菌、紫外線や光触媒による殺菌(紫外線法)、電気化学法など、他の方法が提案されているが、何れも実用面で満足できる提案はない。
そして、以上の方法を組み合わせた複合的な方法として、濾材に濾過助剤をプリコートして行う濾過と熱処理または電気処理による殺菌とを組み合わせた方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。濾材の表面では濾過助剤が薄膜状になっており、この層に濾過中の微生物が集中するため、その集中した個所に熱エネルギー、電気エネルギーを与えて効果的に殺菌するものである。しかし、これも大量のバラスト水を処理するのは困難で、コスト的にも実用性があるとは言い難い。
なお、濾材には、100μm以下の懸濁物を濾過可能な精密濾過を目的とするものと、それを越えるサイズの濾過を行う一般濾過を目的とするものがある。焼結フィルタなどは精密濾過に使われ、スプリングフィルタは一般濾過に使われる。スプリングフィルタの方が圧力損失を比較的低くできる。また、濾材に濾過助剤でプリコートすると、ケーク濾過現象を利用した濾過が可能になる。このような濾過装置として、濾材上に、プリコート剤を粒径の小さいものから粒径の大きいものに順次積層した濾過フィルタが知られている(特許文献3参照)。
さて、スプリングフィルタのコイルには、螺旋状をなしたコイルの側面に突起が所定間隔で設けられ、コイルの間隙を一定値にするように構成されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、小さな細菌を除菌するにはこの間隙を相当に狭くせざるを得ず、このとき流体抵抗が大きくなるのは避けられない。コイルの間隙を広げると濾過助剤の方が小さくなり、流れに乗って間隙から流失してしまう。
特開2006−102283号公報
特開昭52−90871号公報
実開平3−38117号公報
以上説明したように、D2バラスト水排出基準レベルにバラスト水を処理するためには、現在のところG9に基づいた薬品処理でこの基準をクリアするしかない。しかし、これは沿岸の海洋生物に大きな影響を与え、生態系を破壊する可能性がある。これに対し、物理的に除菌すればこのような影響は回避できるが、今のところ実用性ある濾過装置と濾過方法は提案されていない。
特許文献1の濾過装置と濾過方法は、プリコート層の中に微生物が集中して存在することを利用して熱エネルギー、電気エネルギーを効率的に与える。しかし、この濾過装置と濾過方法はプリコートによって目詰まりを起し易く、大量のバラスト水を処理するのは難しい。また電気や熱エネルギーを供給しなければならない構成を考えると、装備は複雑で、コスト的な面からみても、実用性があるとは言い難い。
この点、特許文献2のようなスプリングフィルタはコスト的に実用性がある。しかし、スプリングフィルタを使った場合、100μmを越えるプランクトンのような微粒子の粗い濾過は可能であるが、D2基準を達成するような濾過は難しい。1μ前後の小さな細菌を取り除こうとすると、圧力損失が高くなり、毎時数百トン、数千トンといった流量を処理するのは事実上無理である。だからといって、スプリングフィルタの間隙を広げると除菌は不可能である。
そこで、特許文献3のようにスプリングフィルタにプリコートして小さな細菌まで濾し取ることも考えられるが、この場合も大量の水を処理できない。もし、大量の水を流すために単純に間隙を広げると、細かな濾過助剤がスプリングフィルタの目(間隙)から流失し、スプリングフィルタ上に保持できず、継続した濾過が行えない。このようにスプリングフィルタによる濾過と大量で高速なバラスト水の処理は互いに矛盾する関係を有している。
今のところ、実用性があり、生態系など環境を破壊せず、物理的処理によってバラスト水をD2バラスト水排出基準レベルにまで適合させることができる濾過装置及び濾過方法は存在しない。そして、これは原水(被処理水)がバラスト水の場合だけではない。排出に厳しい基準があり、大量に短時間で処理が必要な被処理水であれば、これと同様のことが言える。
そこで本発明は、短時間に大流量を処理することができ、物理的処理のみによって原水を高レベルに除菌できる濾過装置及び濾過方法を提供することを目的とする。
本発明の濾過装置は、開口を通して原水を濾過する濾材と、濾材の上流側に第1濾過助剤が積層された第1濾層と、第1濾層の上流側に第2濾過助剤が積層された第2濾層とを備え、第2濾層の側から濾材に原水を流して濾過を行う濾過装置において、第1濾過助剤が、開口の代表寸法より小さい代表粒径を有すると共に、通水時の流れで開口に粒子が凝集して複数個がこの開口を覆って架橋する粗い粒子主体の粒度分布を備えている一方、第2濾過助剤が、第1濾過助剤より小さく自身では開口に架橋できない細かな粒子主体の粒度分布を備え、濾材の開口と第2濾層の粒子のサイズ調整が、架橋現象によって濾材に保持される第1濾層によって行われることを主要な特徴とする。
また、本発明の濾過方法は、開口が形成された濾材の上流側に第1濾過助剤からなる第1濾層を積層し、第1濾層の上流側に第2濾過助剤からなる第2濾層を積層して、第2濾層の側から濾材に原水を流して濾過を行う濾過方法であって、第1濾層を積層するときには、開口の代表寸法より小さい代表粒径を有すると共に、通水時の流れにより開口へ粒子を凝集させ、複数個でこの開口を覆って架橋する粗い粒子主体の粒度分布をもつ第1濾過助剤を選択する一方、第2濾層を積層するときには、第1濾過助剤より小さく自身では開口に架橋できない細かな粒子主体の粒度分布をもつ第2濾過助剤を選択し、第1濾過助剤の架橋現象によって濾材に第1濾層を保持し、濾材の開口と第2濾層の粒子のサイズ調整を第1濾層によって行うことを主要な特徴とする。
本発明の濾過装置及び濾過方法によれば、物理的処理のみにより大量の原水を99%程度の高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にし、D2バラスト水排出基準を満たす濾過装置を実現することができる。精密な濾過と詰まり防止を両立させることができる。逆洗するための期間を従来の10倍程度に延ばし、長時間の連続運転を可能にする。さらに、プリコートする濾過助剤の粒径は、流失防止の観点から小粒径にするには限界があると思われていたが、この従来の限界を越えて小粒径にすることができる。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
本発明の実施の形態1における濾過装置の説明図
(a)本発明の実施の形態1における濾過装置のスプリングフィルタの要部拡大図、(b)本発明の実施の形態1における濾過装置のスプリングフィルタの分解図
本発明の実施の形態1における濾過装置の濾過状態の説明図
(a)無限長のスリットを有する場合の架橋の様子の説明図、(b)方形オリフィスの場合の架橋の様子の説明図、(c)円形オリフィスの場合の架橋の様子の説明図
走査型電子顕微鏡で画像解析した焼成珪藻土の粒度分布の説明図
焼成珪藻土の粒度分布の説明図
本発明の実施の形態1における濾過装置の除菌効果を示す第1の実験結果の説明図
(a)比較例の除菌効果を示す実験結果の説明図、(b)本発明の実施の形態1における濾過装置の除菌効果を示す第2の実験結果の説明図
本発明の実施の形態1における濾過方法の工程図
1 濾過タンク
1a 原水室
1b 処理水室
2 スプリングフィルタ
3 コイルスプリング
3a 突起
3b 貫通開口
4a キャップ部材
4b 固定部材
4c 係止具
5 芯材
5a 係止溝
5b 切り込み
6 仕切り板
10 原水タンク
11 プリコートタンク
12 処理水タンク
13 逆洗水タンク
14 ボディフィードタンク
15 汚泥タンク
16,17,18 ポンプ
19 ブロア
20 三方弁
21 ガスバルブ
22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,
33 弁
34,35,36,37 逆止弁
41,42,43 濾過助剤
44 ボディフィード濾過助剤
46 微粒子
本発明の第1の形態は、開口を通して原水を濾過する濾材と、第1濾過助剤の粒子が複数個連なって架橋する架橋現象で該第1濾過助剤が濾材の上流側にプリコートされた第1濾層と、第1濾層の上流側に第2濾過助剤がプリコートされた第2濾層とを備え、第1濾過助剤が、開口より小さく、かつプリコート時の流れで開口にその粒子が凝集したとき複数個で連なってこの開口に架橋することができる大きさを有している一方、第2濾過助剤が、第1濾過助剤より小さく自身では開口に架橋できない大きさを有し、濾材の開口と第2濾過助剤の粒子のサイズ調整が第1濾過助剤の架橋現象によって行われ、第2濾層の側から濾材に原水を流して濾過を行う濾過装置であって、第2濾層の上流側には、第2濾過助剤より大きな粒径の第3濾過助剤がプリコートされた第3濾層が設けられ、この第3濾層により第2濾層の濾過過程における圧力損失の増加が抑制されることを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、濾材の開口に第1濾過助剤のブリッジが形成され、自分自身では開口に架橋できない細かな第2濾過助剤を濾材上に保持することができる。第2濾過助剤と濾材のサイズ調整(目調整)を第1濾過助剤によって行うので、物理的処理のみによって大量の原水を高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にする。精密な濾過と詰まり防止を両立させることができる。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、コスト的に安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。第3濾層の第3濾過助剤は細かな第2濾過助剤からなる第2濾層が目詰まりしないように原水から大きな固形分粒子、例えばプランクトン等を濾過し、全体としての圧力損失の増加を抑制し、濾過機能の低下を防ぐことができる。
本発明の第2の形態は、第1の形態に従属する形態であって、第3濾層の上流側、若しくは順に濾過助剤の粒子が大きくなる濾層が第3濾層に更に積層されるときにはこの最も上流側の濾層の上流にボディフィード濾過助剤からなるボディフィード層が積層され、このボディフィード層により装置全体の圧力損失の増加が抑制されることを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、第3濾層の上流側に更に多くの濾層を積層し、濾層での目詰まりの可能性をさらに分散することができ、長時間の連続運転を可能にすることができる。
本発明の第3の形態は、第2の形態に従属する形態であって、濾材がコイル体を備えたスプリングフィルタであって、開口がコイル体を巻回したコイル体間の間隙であり、プリコートのために第1〜第3濾過助剤の何れかの濾過助剤,更に積層される濾過助剤をそれぞれ供給することができるプリコート助剤供給系路と、原水にボディフィード濾過助剤を供給するボディフィード助剤供給系路とを備えたことを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、スプリングフィルタとプリコート助剤供給系路、ボディフィード助剤供給系路を使って物理的処理のみにより大量の原水を99%程度の高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にすることができる。逆洗するための期間を従来の10倍に延ばし、長時間の連続運転を可能にする。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
本発明の第4の形態は、第3の形態に従属する形態であって、間隙が60μm〜120μmで、第1濾過助剤、第2濾過助剤、第3濾過助剤、及びボディフィード濾過助剤が珪藻土であることを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、コスト的にきわめて安価で、確実に大量の原水を99%程度の高レベルに除菌することができ、同時に、大量の原水を短時間に濾過することができる。
本発明の第5の形態は、第2の形態に従属する形態であって、原水が異物のほか微生物を含む水であって、第2濾層では主として細菌類を濾過し、第3濾層は主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトン及び10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンに由来する濾滓形成を抑え、ボディフィード層では主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトンと10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンに由来する濾滓形成を抑えることを特徴とする濾過装置である。
この構成によって、原水が異物のほか微生物を含む水であっても、第2濾層では主として細菌類を濾過し、第3濾層では第2濾層にプランクトンが直接付着するのを保護する。すなわち主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトン及び10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンに由来する濾滓形成を抑え、細かな第2濾層の粒子層にプランクトンが付着して圧力が上昇して流量低下するのを防止する。ボディフィード層では第3濾層における主として10μm〜50μmクラスの大きさのプランクトンに由来する濾滓形成を抑えることができ、長時間の連続運転を可能にする。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
本発明の第6の形態は、濾材の開口より小さくかつプリコート時の流れにより開口へ粒子が凝集して複数個が連なって架橋することができる大きさの第1濾過助剤を選択し、この第1濾過助剤によって濾材の上流側に第1濾層をプリコートすると共に、第1濾過助剤より小さく自身では開口に架橋できない大きさの第2濾過助剤を選択し、第1濾層の上流側にこの第2濾過助剤によって第2濾層をプリコートし、濾材の開口と第2濾過助剤の粒子のサイズ調整を第1濾過助剤の架橋現象によって行い、第2濾層の側から濾材に原水を流して濾過を行う濾過方法であって、第2濾層の上に1層又は2層以上の濾層を順にプリコートし、このときプリコートする濾過助剤の粒径を既にプリコートされている最も上流側の濾層の粒径より大きい粒径にすることを特徴とする濾過方法である。
この構成によって、濾材の開口に第1濾過助剤のブリッジが形成され、自分自身では開口に架橋できない細かな第2濾過助剤を濾材上に保持することができる。第2濾過助剤と濾材の目調整を第1濾過助剤で行うので、物理的処理のみによって大量の原水を高レベルに除菌することができ、また同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にする。精密な濾過と詰まり防止を両立させることができる。流失防止に対する第1濾過助剤の粒径の限界を取り払うことができる。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、コスト的に安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。そして、第2濾層の上流側に更に1層又は2層以上の濾層を積層し、濾層での目詰まりの可能性をさらに分散することができ、長時間の連続運転を可能にすることができる。
本発明の第7の形態は、第6の形態に従属する形態であって、原水の濾過時に、この原水に動物性プランクトンと同等な大きさの粒径のボディフィード濾過助剤を混合して最も上流側の濾層に供給し、この供給により濾層の更に上流にボディフィード層を形成して、濾層における圧力損失の増加を抑制することを特徴とする濾過方法である。
この構成によって、第3濾層における主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトンと10μm〜50μmクラスの大きさの動物性プランクトンに由来する濾滓形成を抑えることができ、長時間の連続運転を可能にする。逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も信頼性と実用性があり、簡単、コンパクトにできる。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における濾過装置と濾過方法について説明をする。本発明の実施の形態1の被処理水はバラスト水である。図1は本発明の実施の形態1における濾過装置の説明図、図2(a)は本発明の実施の形態1における濾過装置のスプリングフィルタの要部拡大図、図2(b)は本発明の実施の形態1における濾過装置のスプリングフィルタの分解図、図3は本発明の実施の形態1における濾過装置の濾過状態の説明図、図4(a)は無限長のスリットを有する場合の架橋の様子の説明図、図4(b)は方形オリフィスの場合の架橋の様子の説明図、図4(c)は円形オリフィスの場合の架橋の様子の説明図、図5は走査型電子顕微鏡で画像解析した焼成珪藻土の粒度分布の説明図、図6は焼成珪藻土の粒度分布の説明図、図7は本発明の実施の形態1における濾過装置の除菌効果を示す第1の実験結果の説明図、図8(a)は比較例の除菌効果を示す実験結果の説明図、図8(b)本発明の実施の形態1における濾過装置の除菌効果を示す第2の実験結果の説明図、図9は本発明の実施の形態1における濾過方法の工程図である。
図1、図2(a)(b)に示すように、濾過タンク1に原水(以下、被処理水ともいう)が流入すると、この被処理水を内部に複数本配設されたスプリングフィルタ2で濾過し、濾過された処理水を吐出する。各スプリングフィルタ2には多層のプリフィルタ層が表面に形成される。各スプリングフィルタ2は次の構成から形成されている。
すなわち、スプリングフィルタ2は図2(a)のように断面が略円形の線材を螺旋状に巻回したコイルスプリング3から構成され、コイルスプリング3の長手方向、所定間隔ごとに高さ60μm〜120μm程度の突起3aが形成されている。この突起3aによって、コイルスプリング3は密巻きされたときコイルの軸方向に1巻の間隔(1ピッチ)が60μm〜120μm程度の、好適には90μm〜120μm程度の濾過機能を有する間隙(スリット)を形成する。この間隙に原水を流すことによって濾過が可能になる。この間隙はコイルスプリング2の両端が閉止されるためきわめて細長い開口になる。なお、この間隙は40μm以下では圧力損失が大きくなるすぎるため、少なくとも40μmより広い間隙にするのが適当である。しかし、必要以上に広すぎる間隙はプリコートする濾過助剤の粒子も大きくせざるを得ず、全体としての濾過機能が低下するので、できれば90μm以上で、90μm〜120μm程度にするのがよい。
次に、図2(a)(b)に示すコイルスプリング3の上端に設けられる固定部材4bには、スプリングフィルタ2で濾過された処理水を吐出するための貫通開口3bが形成されている。この固定部材4bは仕切り板6にコイルスプリング3を取り付け、スプリングフィルタ2として構成するための部材であって、図2(b)に示すように中央に通水用の貫通開口3bが形成されたボルト状の部材である。固定部材4bの外周には雄ネジが刻設されており、この雄ネジが仕切り板6に形成された雌ネジと螺合することによって、スプリングフィルタ2の仕切り板6への取り付けを行う。
固定部材4bの貫通開口3bには、板状で略Π字状の係止具4cの脚部分が固定部材4bのネジ側から内面に密着して挿入され、その頭部分が貫通開口3bを横断して架橋し、両側の張り出した部分と脚部分で仕切り板6に係止される。この係止具4cの上端に、長尺の板で構成された芯材5の係止溝5aが引っ掛けられ、係止具4cの頭部分がこの係止溝5a内の所定位置に係合される。これにより、係止具4cと芯材5は上方からみたとき板が互いに十字状に交差した状態で組み合わされて、仕切り板6に取り付けられる。なお、この係止溝5aは芯材5の上端近くに配設されL字状の溝として形成される。
このように芯材5が固定部材4bに支持されると、芯材5は係止具4cに吊り下げられたような状態となるから、この周囲にコイルスプリング3を下側(上流側)から挿通する。芯材5の下端部にはT字状の切り込み5bが形成されており、次に締結具5cの頭部をこの切り込み5b内に挿入する。なお、この締結具5cはボルトと2個のナットから構成される。切り込み5bに挿入した締結具5cのボルトの螺合部をキャップ部材4の挿通孔から突出させ、キャップ部材4aを押込み、これをナットで締め付けると、コイルスプリング3をキャップ部材4aと固定部材4bで挟持したスプリングフィルタ2が組み上がる。なお、締結具5cはダブルナットで固定するので緩みがなく、水密に締め付けることができ、水漏れなど起さない。
仕切り板6は、図1のように濾過タンク1の内部を2分して上方に処理水室1b、下方に原水室1aを形成する。仕切り板6にはスプリングフィルタ2の数だけ図2(b)に示すような雌ネジが形成された挿入孔が設けられ、この挿入孔内に各スプリングフィルタ2の固定部材4bの雄ネジを螺合して水密に装着することができる。これにより、貫通開口3bだけが処理水室1bと原水室1aとを連通する部位となる。固定部材4bを仕切り板6に螺合し係止具4cを介して芯材5を支持するから、スプリングフィルタ2の組み立てが容易で、確実に固定でき、水密性を確保することができる。
次に、図1に基づいて濾過装置の全体構成を説明する。実施の形態1の濾過装置は、船体に設置され、海水あるいは淡水を汲み上げるための給水路と、バラストタンクに接続される処理水路とを備えたものであり、バラスト水を汲み上げたり、排出したりするとき海水又は淡水を濾過する。原水は給水路に設けられた原水タンク10に一旦貯めたり、船体のシーチェストから直接取水することで、ポンプ17によって弁29、逆止弁35経由で濾過タンク1に送水される。濾過処理/除菌処理時には、濾過タンク1で濾過、除菌された処理水は三方弁20を介して処理水タンク12に送水されて収容される。
濾過装置のスプリングフィルタ2の表面には、図3に示すように多層のプリコート層、すなわち実施の形態1では3層をなす第1プリコート層A、第2プリコート層B、第3プリコート層Cが形成される。また、濾過装置全体の圧力損失抑え、各層での目詰まりを防ぐためにボディフィード濾過助剤44が原水に混合されて供給され、第3プリコート層Cの上にボディフィード層が形成される。
各プリコート層は、プリコート用の濾過助剤41,42,43の粉末を清水(あるいは処理水、原水)に混入したプリコート用の濾過助剤の懸濁液をそれぞれスプリングフィルタ2に順に供給することで形成される。各助剤懸濁液はプリコートタンク11で濾過助剤41,42,43の順に調製され、ポンプ16によって第1プリコート層A、第2プリコート層B、第3プリコート層Cの順でプリコートタンク11から0.01MPa〜0.03MPa程度で圧送され、スプリングフィルタ2の表面をプリコートする。なお、各濾過助剤41,42,43をそれぞれ別のタンクで調製して供給するのでもよい。第1プリコート層A、第2プリコート層B、第3プリコート層Cをそれぞれ独自の系路にすることもできる。
ボディフィード層Dは、原水に混入されるボディフィード濾過助剤44がプリコート層状に新たに堆積する濾材となって、動物プランクトンや植物プランクトン、細かなゴミ等の微粒子46を捕捉し、水道(みずみち)が閉塞するのを防ぐものであり、これにより圧力損失の増加が抑えられる。ボディフィード濾過助剤44は動物プランクトン等を除去できるような比較的大きな粒子径の助剤を使用するのがよく、予め、ボディフィードタンク14内の清水あるいは原水、処理水に混合して調製しておく。調製後はボディフィード濾過助剤44が沈殿しないように撹拌を続けながら原水に混入して使用する。
ボディフィード層Dは、原水を濾過する時に、ポンプ17の作用で濾過助剤の懸濁液がボディフィードタンク14から弁31、逆止弁36を経て0.2MPa〜1MPa程度で圧送され、送水中の原水に混合されて、プリコート層の表面を覆って堆積する。堆積しながら同時に動物プランクトン、植物プランクトン等の微粒子46を図3に示すように捕捉する。動物プランクトンは目詰まりすると粘度の高い濾滓となるため、従来から対策が難しいとされているが、ボディフィードすることによってこれを解消できる。ボディフィードによって濾滓が分散するので第3プリコート層Cの表面にケーク濾過現象で濾滓が集中的に形成されることはない。
なお、以上説明した実施の形態1では第3プリコート層Cを設けているが、第2プリコート層Bの上に直接ボディフィード層Dを形成することも、また、第3プリコート層Cの上に更に濾過助剤の粒子が大きくなる別のプリコート層を順に積層することもできる。そして、この別のプリコート層を更に形成する場合は最上流のプリコート層の上流にボディフィード層を積層する。このボディフィード層により最上流のプリコート層における圧力損失の増加(濾滓の集中的な生成)を抑え、さらに濾過装置全体、言い換えれば多層のプリコート層全体で圧力損失が高くなるのを抑えることができる。
ところで、原水からプランクトンだけを取り除くような場合もある。この場合は第1プリコート層Aの上に、実施の形態1の第2濾層としてボディフィード層Dを形成すればよい。濾過助剤42の層が形成されていないため除菌までするのは難しいが、プランクトン等を除去することはできる。ここで、第1濾層となる第1プリコート層Aは濾過助剤間の目調整を行うために必要な層であり、第2濾層との目調整のために設置される。この目調整については後で詳述する。
さて、第1プリコート層Aの濾過助剤41は、後述する理由からコイルスプリング3の間隙に濾過助剤41自身で保持が可能な特異な粒径の粒子になっている。濾過助剤41には焼成珪藻土などを使うのが好適である。また、第2プリコート層Bの濾過助剤42は1μm前後の細菌類を取り除くためのもので、これも焼成珪藻土などを使うのが好適である。第3プリコート層Cの濾過助剤43も焼成珪藻土などが好適である。主として5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトンと10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンを濾過する。そして、ボディフィード濾過助剤44も焼成珪藻土とするのがよい。
珪藻土は、数万年乃至数千万年の太古の地球上に繁茂した珪藻と呼ばれる藻類(植物プランクトン)が化石となったものである。これを焼いた焼成珪藻土の各粒子は0.1μm〜1.0μmの無数の細孔を備えており、焼成珪藻土を濾過助剤としたときには、動物プランクトン、植物プランクトンが粒子間に捕えられ、大腸菌などの細菌類は粒子間だけでなく、この無数の細孔に取り込まれるものと推測される。
ここで濾過助剤41,42,43、ボディフィード濾過助剤44の各粒径に求められる特性について簡単に説明する。第1プリコート層Aの濾過助剤41はコイルスプリング3の間隙との関係が重要で、通水時の流れでコイルスプリング3の間隙に粒子が凝集して、この間隙中に複数個で連なることが可能な特定の粗い粒子主体の粒度分布を備えていなければならない。これに対し、第2プリコート層Bの濾過助剤42は1μm前後の細菌を濾過するために、濾過助剤41より小さく、自身だけではコイルスプリング3の間隙に架橋できない細かな粒度分布を有するものである。また、第3プリコート層Cの濾過助剤43は濾過助剤42の粒径分布より代表粒径が大きいものが採用される。更に多くのプリコート層を積層するときには、代表粒径が濾過助剤43より徐々に大きくなるようなサイズの粒子を採用する。そして、ボディフィード濾過助剤44は原水がプリコート層に流入する前に予備的にプランクトン、ゴミ等を取り除く粒径の粒度分布を有している必要があり、これらの大きさに応じた粒径の濾過助剤を選んで、ボディフィードする。
続いて、図1に基づいて実施の形態1の濾過装置の各流路について説明する。清水系と弁26、プリコートタンク11、弁27、ポンプ16、弁28、逆止弁34を接続する流路がプリコート助剤供給系路であり、清水系と弁25、ボディフィードタンク14、弁31、逆止弁36を接続する流路がボディフィード供給系路である。ボディフィード供給系路はポンプ17を駆動することによって原水に濾過助剤の懸濁液を供給する。実施の形態1においては、ボディフィード供給系路をプリコート助剤供給系路と別構成にしているが、ボディフィード供給系路の構成とプリコート助剤供給系路を共用することもできる。
また、上記した清水系とつながる流路に代えて、プリコート助剤供給系路を三方弁20、弁22、プリコートタンク11、弁27、ポンプ16、弁28、逆止弁34からなる処理水を供給する流路で構成するのでも、また、ボディフィード供給系路を三方弁20、弁24、ボディフィードタンク14、弁31、逆止弁36からなる処理水を供給する流路で構成するのでもよい。そして、さらにこのような清水や処理水の流路に代えて、原水をプリコートタンク11に導き、弁27、ポンプ16、弁28、逆止弁34からなる流路でプリコートのための濾過助剤の懸濁液を原水室1aに供給することも、また、原水を一部ボディフィードタンク14に導き、ボディフィードのための濾過助剤の懸濁液を弁31、逆止弁36からなる流路で原水に混合することもできる。
次に、逆洗水供給系路について説明する。逆洗水タンク13は逆洗するときの逆洗水を収容するものである。逆洗時にはポンプ18により弁30、逆止弁36を介して処理水室1b側から原水室1a側に逆洗水が送水される。第1プリコート層A側から逆洗水が多層のプリコート層に流れ込み、第2プリコート層B、第3プリコート層C、ボディフィード層Dの濾滓を洗い流す。逆洗後の逆洗水は、弁32を通って汚泥として汚泥タンク15に収容される。そして、濾過装置にはブロア19が設けられており、ガスバルブ21、逆止弁37経由で逆洗時に空気を濾過タンク1の原水室1a内に供給することもできる。ブロア19によって送られた空気は原水室1aの下方から噴出されて無数の気泡になって上昇し、泡の浮力によってコイルスプリング3の内面に付着している珪藻土と濾滓を内面から剥がし、剥落させる。なお、逆洗水供給系路も、三方弁20、弁23からの処理水を逆洗水として供給する流路を採用することができるし、原水を逆洗水タンク13に導く流路を設け、これを逆洗水として供給する流路にすることもできる。さらに、使用した濾過助剤は再利用することができる。
さて、実施の形態1の濾過装置と濾過方法において、本発明の特徴的な構成について説明する。細菌まで濾過するには非常に目の細かい濾材で濾過する必要がある。しかし、これではこの濾材を使って大量の原水を短時間に濾過することはできない。短時間で目詰まりし、連続的な運転は困難である。
また、濾材として比較的目の大きなスプリングフィルタ2を採用した場合、精密な濾過をするためにはこれに濾過助剤をプリコートすることが必要であり、この大きな目にプリコートする濾過助剤の粒径はスプリングフィルタ2の目に比例して大きくしなければならない。このため、濾過助剤を小粒径にするには圧力損失の増加を抑える必要から事実上限界があるように考えられていた。
すなわち、細菌まで濾過するには細かい粒径であることが必要であるが、細かい濾過助剤はスプリングフィルタ2の間隙から流失し、プリコート層として保持できないのである。これを避けるためスプリングフィルタ2の目を小さくして狭い間隙にすると、圧力損失が高く、数千トン/時といった大量の原水を短時間に濾過することができなくなる。こうした矛盾する課題を同時に解決するのは困難であり、これがバラスト水などを物理的に除菌する濾過装置が存在しない理由の1つであった。
しかし、実施の形態1においては以下の手段でこの矛盾を解決した。すなわち、濾過助剤と濾材の目(濾過機能を有する開口、すなわち間隙、細孔、メッシュ、スリット等)が不整合で前者が小さすぎ、後者に保持できないような場合に、両者のサイズを調整する目調整手段を介在させるという手段を講じた。そして、この目調整手段として濾過助剤を利用する。いわば目調整の機能を濾過のための濾過助剤の機能から分離させたことになる。
すなわち、スプリングフィルタ2の間隙を広くすると共に、この間隙を複数個連なって自身でブリッジを形成するような大きさの濾過助剤41をプリコートする。そして、除菌を徹底して行うため、第2プリコート層Bの濾過助剤42を所定の細かい粒径の助剤とする。さらにこの第2プリコート層Bに積層される第3プリコート層Cを第2プリコート層Bが目詰まりしないような粒径の濾過助剤43とする。
図3のスプリングフィルタ2に直接細かい濾過助剤42を積層しようとすると、その間隙が広すぎ、濾過助剤42は流れに乗って流失する。しかし、所定の粒径の濾過助剤41をプリコートした場合は、複数個の濾過助剤41がアーチ状に連なってこの濾材の目にブリッジを架け、自分自身で自分の層と上層を支え、積層状態を保持できるようになる。
濾材が図4(a)に示すように平板であって、ここにスリットが開けられているような場合(スリットの間隔をdとする)、濾過助剤41の代表粒径をaとすると、濾過助剤41の粒径に対してa/d=0.25近傍の値以上の値を与えると、通水時の流れに乗って濾過助剤41がスリットで凝集し、凝集の中で複数個、4個程度の粒子が自然に連なって力を及ぼし合い、このスリットに架橋し、アーチ状のブリッジを形成する。なお、a/d>1となるような場合は、a/dが1の近傍の値をもつ場合だと濾材の目を塞ぎ易く、またa/dがこの1の近傍の値より大きくなると粒子間の間隙も大きくなって、小さな濾過助剤42を濾層として保持できず流失させてしまう。これは目調整を行うプリコート層としては適当でない。従って、少なくともa/dが1の近傍より小さいこと(a/d<1)が好ましい。そして、濾過助剤42をできるだけ小径にして除菌作用を向上させるには、これを保持する濾過助剤41はできるだけ粒径が小さい方がよく、a/d<1の中でも濾過助剤41は代表粒径がa/d=0.25の近傍値となるような濾過助剤とするのが好適である。
逆にa/d=0.25の近傍値より小さい値を与えると、このブリッジは形成されない。濾過助剤41は流れに乗って流失する。a/d=0.25近傍の代表粒径を与えた場合、4個、5個程度で濾過助剤41はこのスリットに架橋する。そして、a/d=0.25を越える代表粒径の濾過助剤41の場合は、もっと少ない個数で架橋する。
ここで、近傍値というのは、a/dがおおむね±0.02程度で変動する範囲である。濾過助剤は不均一な形状と、同一の傾向はもつものの、少し個体差のある粒度分布を有している。このため、あるパラメータ(ここではa/d)の範囲、値が所定の作用効果を奏する中核となる範囲、値であっても、その作用効果を奏する範囲、値は濾過助剤の個体差に基づいて変動する。a/dが好適となる範囲の下限の限界値もおおむね±0.02程度で変動し、この範囲の近くにほぼ均等な作用効果を示す近傍領域が出現する。これは以下説明する他の濾材と濾過助剤等においてもすべて同様である。
これをブリッジ形成の場合で説明すると、a/d=0.25が作用効果を奏する下限の限界値ではあるが、濾過助剤の形状が不均一で必ずしも一定しない粒度分布をもつため、代表粒径aが2μm程度変動する。このような場合にもブリッジが形成されるようなことが起こる。スリットの間隔dは大体100μm程度であるため、言い換えると±0.02程度でa/dの下限値に変動が生じる。従って、多くの場合はa/d=0.25程度を閾値とすればよいが、濾過助剤によってはa/d=(0.25−0.02)〜(0.25+0.02)の中の1つの値が下限値となる場合もある。このように本明細書で近傍値と言うときは、ある値、ある範囲の傍でこの値、範囲とほぼ均等な作用効果を示す幅のある値を意味する。
スプリングフィルタ2のスリットを使った場合、図3に示すように断面が円形のコイルであるため、平板とはやや異なって、a/d=0.2近傍の値以上の値を与えた場合でもアーチ状のブリッジを形成する。a/d=0.2の近傍より小さいとブリッジは形成されない。この場合もa/d>1となるような場合は適当ではない。濾過助剤42を保持する濾過助剤41はできるだけ粒径が小さい方がよく、下限値のa/d=0.2の近傍値となるような濾過助剤を採用するのがよい。
このスプリングフィルタ2の場合は5個程度で間隙に架橋する。しかし、濾過助剤41のブリッジを形成可能な個数が減って(粒径が大きくなる)a/dが1の近傍だと、濾材の目を塞ぎ易くなり、この場合圧力損失が高くなって、短時間で目詰まりし、連続的な運転が難しくなる。またa/dがこの1の近傍から大きくなると粒子間の間隙も大きくなって、目詰まりは少なくなる。しかし、目調整は難しくなる。
従って、濾材の目が平板のスリットの場合には濾過助剤に対してa/d=0.25近傍の代表粒径を与えるのがよい。また、スリットがスプリングフィルタ(コイルの円形断面)の間隙の場合は、a/d=0.2近傍の代表粒径を与えるのが好適である。そして、スリットにも、濾材が平板に近いものからコイルの断面形状のものまで様々あるが、少なくとも濾過助剤の代表粒径aをa/d=0.20〜0.25近傍の粒径とすることでブリッジが形成可能になる。このような粒径を選択することにより、ブリッジを形成すると共に、除菌に優れた小粒径の濾過助剤を保持でき、圧力損失を抑え、短時間で目詰まりせず、連続運転が可能になる。
なお、第1プリコート層Aと第2プリコート層Bが接触している部分では、濾過助剤41の互いの間隙や凹凸の中に小さな濾過助剤42が入り込み、両者が混じった状態が形成される。この混在のため、濾過助剤42の目と濾過助剤41の目のサイズが一挙に変化するのではなく、この混じり合った範囲で徐々に濾材の目が変化し、急激な流体抵抗の変化で形成される濾滓を防止して、目詰まりを遅らせる。
さて、図4(a)は以上説明した濾材が無限長のスリットを有する場合の架橋の様子を示している。これに対し、図4(b)は濾材が有限長の四辺からなる方形オリフィスを有する場合の架橋の様子を示している。この場合、a/d=0.15近傍より大きい代表粒径をもてば図4(b)に示すようにブリッジが形成される。6、7個程度の粒子でドーム状のブリッジが形成される。この場合も、a/d>1となるような場合は好適ではない。a/d=0.15の近傍値より小さい値を与えると、ブリッジは形成されない。濾過助剤は流れに乗って流失する。濾過助剤のブリッジを形成可能な個数が減って(粒径が大きくなる)a/dが1の近傍の値になると、濾材の目を塞ぎ易く、この場合圧力損失が高くなって、短時間で目詰まりし、連続的な運転が難しくなる。またa/dがこの1の近傍より大きくなると、目詰まりは少なくなるが、目調整が困難になる。そしてこの濾過助剤は粒径が小さい方が除菌に優れた小さな濾過助剤を保持できる。従って、濾材の目が方形オリフィスの場合には、濾過助剤に対してa/d=0.15近傍の代表粒径を与えるのが好適である。
同様に、図4(c)に示すように円形オリフィスの場合、a/d=0.14近傍より大きい代表粒径をもてばドーム状のブリッジが形成される。6、7個程度の粒子でドーム状のブリッジが形成される。この場合も、a/d>1となるような場合は目調整には不適当な粒径となる。a/d=0.14の近傍値より小さい値だと、ブリッジは形成されない。濾過助剤は流れに乗って流失する。濾過助剤のブリッジを形成する個数は少なくなるが、a/dが1の近傍値になると、圧力損失が上がり、短時間で目詰まりし、連続的な運転ができなくなる。1の近傍より大きくなる場合は目調整が不適当になる。そしてこの濾過助剤は粒径が小さい方が小さな除菌用の濾過助剤を保持できる。従って、濾材の目が円形オリフィスの場合には、濾過助剤に対してa/d=0.14近傍の代表粒径を与えるのが好適である。
上述したように、珪藻土からなる濾過助剤の粒径分布には最大の度数を示す最頻値のバラツキとして2μm程度の変動がある。そして、最頻値付近の分布にも特徴があり、中央から大体±2μm程度の範囲で横並びの値を有し(図5の「645」「600H」参照)、最大度数付近が扁平に広がる分布を示す傾向がある。このためa/d=0.12近傍以上であれば濾過助剤によっては十分に架橋できる。
そして、濾材の目の形状が楕円や矩形になったりして、スリットとオリフィスの中間的な形状の場合や、様々な形状の濾材の目が寄せ集まっている場合などにおいては、この形状がスリットに近い形状の場合はa/d=0.25に近づき、円形オリフィスに近い形状の場合はa/d=0.12に近づき、スリットに近い目の形状の数が多ければa/d=0.25に近づき、円形オリフィスに近い形状の数が多ければa/d=0.12に近づく。さらに濾材がスプリングフィルタのように丸い断面の場合は、a/d=0.2に近い値がブリッジ形成の可否の閾値になる。以上のことから、濾過助剤の粒径のパラメータa/dは濾材の目(濾過機能を有する開口、すなわち間隙、細孔、メッシュ、スリット等)の形状に応じてa/d=(0.12〜0.25)の中から選ぶことができる。
さて、実施の形態1のスプリングフィルタ2は、40μmよりも大きい間隙を有している。圧力損失とのバランスを考えながら除菌機能を向上させるためには、できれば60μm〜120μm、好適には90μm〜120μmの間隙がよい。従って、第1プリコート層Aの濾過助剤41は18μm〜24μm程度であればよい。間隙が100μmのスプリングフィルタ2の場合は20μm近傍の代表粒径を選び、90μmのスプリングフィルタ2の場合は18μm程度の代表粒径を選べばよい。ただ、90μmの場合に、18μmよりやや大きめの20μmの代表粒径をもつ焼成珪藻土を用いて確実に架橋するのもよい。両者の圧力損失に差はなく、ブリッジの形成がより確実になる。
第2プリコート層Bの濾過助剤42は除菌するために代表粒径10μm近傍の珪藻土とし、第3プリコート層Cの濾過助剤43は代表粒径が20μm〜40μm近傍の珪藻土にするのがよい。第3プリコート層Cでは主として第2プリコート層Bにプランクトンが直接付着して濾滓形成することによる目詰まりを防ぎ、5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトン及び10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトンを濾過し、これに由来する濾滓形成を抑える。細かな第2プリコート層Bの濾過助剤42の粒子層にプランクトンが付着して圧力が上昇し流量低下するのを防止する。さらに、ボディフィード濾過助剤は代表粒径20μm近傍の珪藻土とするのがよい。ボディフィード層は5μmを越える大きさのプランクトン(5μm〜10μmクラスの大きさの植物プランクトンと10μm〜50μmクラスの大きさの動物プランクトン)と異物を濾過するものであり、これらプランクトンに由来する濾滓形成を抑え、プリコート層全体の圧力損失を低下させる。
このように実施の形態1においては、目調整を行う第1プリコート層Aを設け、これによってスプリングフィルタ2の間隙を広くし、あわせて第2プリコート層Bで1μm前後の細菌まで濾過できるようにしている。この目調整を行う第1層プリコート層Aは主として粗い粒径の粒径分布の濾過助剤41からなり、これに積層される第2層プリコート層Bは除菌作用を有する主として細かい粒径の粒径分布の濾過助剤42から構成する。さらに第3プリコート層Cは第2層が濾過過程で目詰まりしないようにするための層であり、この上にこれらのプリコート層全体が目詰まりしないようにボディフィード層Dが形成される。
これら複数のプリコート層、ボディフィード層、スプリングフィルタの連携によって、除菌と大量、短時間の濾過を可能にする。逆洗を実施する期間は従来の10倍程度に延び、長時間の連続運転を可能にする。また、濾過助剤の粒径は流失防止の観点から小粒径にするには限界があると思われていたが、この従来の限界を越えて小粒径にすることができる。物理的な濾過だけで、99%程度の除菌を達成でき、D2バラスト水排出基準を達成することが可能であり、逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も簡単、コンパクトにでき、バラスト水の処理を行うのに最適な濾過装置を実現できる。
(実施例)
実施の形態1においては、その具体的な作用効果を測定するため、濾過助剤41,43、ボディフィード濾過助剤44として焼成珪藻土(シリカ600H/シリカ645;中央シリカ株式会社製)を用い、濾過助剤42として焼成珪藻土(シリカ100F;中央シリカ株式会社製)を用いてバラスト水の濾過実験を行った。スプリングフィルタ2の間隙は90μmである。
図5は走査型電子顕微鏡で画像解析した焼成珪藻土の粒度分布である。図6はこのときの焼成珪藻土の累積頻度である。焼成珪藻土の粒径は画像から粒子の面積からこれを円に換算したときの面積円相当径(μm)で表している。実験で使用した濾過助剤41,43、ボディフィード濾過助剤44(シリカ600H/シリカ645)の焼成珪藻土の粒径は何れも20μm近傍に最大度数の最頻値があり、20μmが代表粒径であることが分かる。また、実験で使用した濾過助剤42の焼成珪藻土(シリカ100F)は10μm近傍に最頻値があり、10μmが代表粒径である。
図6の焼成珪藻土の累積頻度によれば、濾過助剤42の焼成珪藻土の場合、98%近い粒子が粒径30μmより小さい粒子であり、濾過助剤41,43、ボディフィード濾過助剤44の場合、98%近い粒子が粒径50μmより小さい粒子であることが分かる。図5,6が示すように、焼成珪藻土の濾過助剤粒子は粒径が正規分布をもつような分布ではなく、最大粒径より大きい粒径の粒子を比較的幅広く含む分布を有している。珪藻土を焼結した場合、珪藻土表面が溶融して固まったような焼結体となるが、この溶融物の多寡、粒子形状は焼結により変動する。この溶融が不均一な粒径となる原因の1つであり、図5,6のような粒度分布になる原因の1つと考えられる。しかし、この焼成珪藻土の粒径は大部分が代表粒径の2〜3倍の範囲内に存在しており、焼結する条件などで多少の差があるが、焼成珪藻土の粒度分布はおおむね図5のような傾向の分布になるものが多い。
図7はこの除菌効果を示す実験結果を示す。図7によれば、長時間の連続運転(逆洗を行うまでの時間が従来の約10倍となった)を可能にするだけでなく、99.5%まで除去可能であることを示す。A−2(0.21Mpa)等の表記において、A−1は原水Aのサンプルであることを示し、A−2,A−3,・・・等の番号2,3等はサンプルA−1に対する各実験の名称として付したものであり、括弧内は濾過タンク1内の圧力を示している。原水室1a内における仕切り板6に近い側の圧力である。実験で用いた細菌数は一般細菌を培養してカウントしlog表示したものである。図7の実験の場合、0.2MPa以上の圧力をかけて通水することで細菌類が十分に除菌できていることが分かる。なお、圧力はとくに高圧を加える必要はなく、比較的低い圧力でも十分除菌効果が得られる。そして、これは上記国際条約のD2基準、50μm超のプランクトン数は1トンのバラスト水中に10個体/トン、10μm−50μmのプランクトン数は10個体/1ml、大腸菌類250cfu(colony forming unit)/100ml未満、という基準をこの濾過装置だけでクリアできることを実証するものである。
図8(a)(b)は原水BのサンプルB−1に対して、本実施例と比較例による濾過をそれぞれ実験して比較したものである。比較例としては、20μmの代表粒径の焼成珪藻土(シリカ600H)をスプリングフィルタに施して濾過したものである。処理水を24時間培養して一般細菌の菌数の検査を行った。これに対し、実施例は、20μmの代表粒径の濾過助剤41,43、ボディフィード濾過助剤44として焼成珪藻土(シリカ600H)を使い、濾過助剤42として焼成珪藻土(シリカ100F)を使用して濾過したものである。図7同様、濾過の圧力は括弧内に記載されている。スプリングフィルタ2の間隙は90μmである。24時間培養して同じ検査を行った。これによれば、比較例の焼成珪藻土の場合、0.038MPa,0.066MPaの何れの場合も除菌数は2.0logCFU/ml程度にすぎず、除菌率も50%から57%であるが、実施例の場合は0.060MPaで除菌数は1.9logCFU/ml程度になり、除菌率は99%にまでなっているのが分かる。なお、ここで除菌率99%と言うのは、上記のサンプル、検査環境、条件においてこの結果が得られたということであって、サンプル、検査環境、条件が変われば増減する余地を残すものである。こうしたことを考慮し、本実施の形態1の濾過装置を使用すれば除菌率99%程度を実現できると言い直すことができる。
このように実施の形態1の濾過装置においては、プリコート層を複数層設け、さらにボディフィード層を形成するだけで、除菌率99%程度を実現できる。逆洗を行うまでの時間を従来の約10倍に延ばすことができ、長時間の連続運転ができるようになった。
続いて、実施の形態1における濾過方法について説明する。図9に示すように、濾過運転をする前に、スプリングフィルタ2の外周をプリコート処理する。このプリコート処理は、弁26、27,28を開放し、清水系に接続する。清水系について説明するが、処理水、原水でもよい。
この状態でポンプ16を駆動し、プリコートタンク11内に収納された粉末状の濾過助剤41を撹拌装置により清水と混ぜて濾過タンク1の原水室1aに吐出し、第1プリコート層Aを形成する。次に濾過助剤42に対して同じ手順で処理を行い、これによって第2プリコート層Bを形成し、さらに濾過助剤43に対しても同じ手順で処理し、第3プリコート層Cを形成する。この手順で多層のプリコート層を形成する(第1工程)。その後、三方弁17が切り換えられ、処理水室1bが処理水タンク12に接続される。
次に、ボディフィードしながら濾過を行うボディフィード処理/濾過処理を行う(第2工程)。ボディフィード処理/濾過処理は次のように行う。予め、ボディフィードタンク14内に収納された原水にボディフィード濾過助剤44を混合し、ボディフィード用の懸濁液を調製しておく。調製後は沈殿を起さないように撹拌装置により継続して撹拌を行う。ボディフィードするときには、この懸濁液をポンプ17で供給中の原水に混合し、原水室1aに吐出する。これにより第1プリコート層A、第2プリコート層B、第3プリコート層Cの上にボディフィード層Dが形成される。なお、原水に代え処理水に混合するのでもよい。
ボディフィード層Dは、原水に混入された濾過助剤44が新たに堆積する濾材となってプランクトンなどを捕捉し、第3プリコート層C表面に濾滓が形成されるのを防止して水道(みずみち)の閉塞を防ぐ。濾過装置全体の圧力損失の増加を抑制することができるものである。多層のプリコート層、ボディフィード層で原水中のプランクトン、細菌類が除去され、処理水が処理水タンク12に導かれる。
その後、スプリングフィルタ2の外周で圧力損失が高くなると、逆洗を行う(第3工程)。このとき、清水系若しくは弁23を介して逆洗水タンク13に収容された逆洗水を濾過タンク1に弁30を開いてポンプ18で送り込み、弁32を開いて排水する。これにより、濾過装置で捕捉された濾滓が逆洗される。なお、ここで逆洗水として原水を利用することもできる。さらに弁18を開放し、ブロア19を駆動して、空気を濾過タンク1内に供給する。
ブロア19によって送られた空気は原水室1aの下方から無数の気泡として噴出され、泡の浮力によってコイルスプリング3の内面に付着している第1プリコート層A、第2プリコート層B、第3プリコート層C、ボディフィード層Dの珪藻土と濾滓をコイルスプリング3の内面から剥がし、これらの汚泥を汚泥タンク15に収容する。なお、スプリングフィルタ2の間隙が60μmより小さいような場合には、圧縮空気を処理水室1bの方から噴出して、濾過タンク1内に残っている水をコイルスプリング3の処理水室1b側から原水室1a側に押し出すのもよい。
続いて、再び第1工程に戻って、スプリングフィルタ2の外周を再プリコート処理する。濾過助剤41で第1プリコート層Aを形成し、濾過助剤42に対して同じ手順で処理を行い、第2プリコート層Bを形成し、さらに濾過助剤43に対しても同じ手順で処理し、第3プリコート層Cを形成する。この一連の処理で再び多層のプリコート層を形成し、ボディフィード処理/濾過処理を行えばよい。
このように実施の形態1の濾過装置と濾過方法によれば、化学薬品を使用せず、物理的処理だけでバラスト水を高レベルに除菌することができ、装置に信頼性があり、実用的であって、長時間連続運転が可能でコストパフォーマンスに優れたものとなる。
複数のプリコート層、ボディフィード層、スプリングフィルタの連携によって、微小な細菌まで除菌すると同時に、大量の原水を短時間に濾過することを可能にし、逆洗を実施する期間は従来の10倍程度にまで延び、長時間の連続運転を可能にする。また、プリコートするための濾過助剤の粒径は、流失防止の観点から小粒径にするには限界があると思われていたが、この従来の限界を越えて小粒径にすることができる。
物理的な濾過だけで、99%程度の除菌を達成でき、D2バラスト水排出基準を達成することが可能であり、長時間の連続運転が可能なばかりでなく、逆洗自体も容易で、使用した濾過助剤は再利用することができ、他方式と比べてコスト的にきわめて安価であり、設備も簡単、コンパクトにできる。そして、この濾過装置と濾過方法は、バラスト水の処理に限られず、あらゆる被処理水から除菌と異物を取り除く濾過を行うことができる。
本発明は、バラスト水等の生物を国際環境基準に適合するレベルに除菌できるような濾過装置に適用できる。