本発明は、圧電素子を有する振動型アクチュエータ及びそれを備えた駆動装置に関するものである。
従来より、圧電素子を有する振動型アクチュエータとしては、特許文献1に開示されたものが知られている。
特許文献1に係る振動型アクチュエータは、圧電素子で構成されたアクチュエータ本体と、該アクチュエータ本体に取り付けられた駆動子とを備えている。
このアクチュエータ本体は、長手方向を有する平板状の圧電素子で構成されており、対角位置にある2対の電極にそれぞれ位相の異なる交流電圧を印加することで、該圧電素子の長手方向への縦振動(所謂、伸縮振動)と該圧電素子の短手方向への屈曲振動とを調和的に発生させている。その結果、駆動子は、該圧電素子の長手方向と短手方向とを含む平面内で周回運動、詳しくは、楕円運動を行う。
前記駆動子は、略半球体に形成されていて、アクチュエータ本体の長辺側面に2つ設けられている。この長辺側面はアクチュエータ本体の屈曲振動の振動方向を向く面であって、アクチュエータ本体が屈曲振動する際にその屈曲振動に従って屈曲変形する、換言すれば、波打つ面である。これら2つの駆動子は、該長辺側面において、屈曲変位が最も大きくなる屈曲振動の腹の部分に取り付けられている。
このように構成された振動型アクチュエータは、固定体と、該固定体に対して相対的に移動可能に配置された可動体の間に配置される。詳しくは、振動型アクチュエータは、前記駆動子が固定体及び可動体のうちの一方(以下、被当接体ともいう)に当接した状態で、固定体及び可動体のうちの他方に固定されて配設されている。その状態で、振動型アクチュエータを作動させて駆動子を前述の如く周回運動させると、駆動子は周回運動の或る領域では被当接体を押圧しながら摩擦力を増大させて周回し、周回運動の別の領域では被当接体から離間して又は被当接体との間の摩擦力を低減した状態で周回することになる。そして、被当接体を押圧しながら周回するときに、駆動子と被当接体との間の摩擦力を介して駆動力が可動体に伝達され、可動体を所定の方向へ駆動する。
このとき、アクチュエータ本体は、付勢部材によって駆動子を被当接体に対して押圧する方向に付勢されており、駆動子と被当接体との間の摩擦力を高めることでアクチュエータ本体の駆動力が可動体に効率良く伝達するように構成されている。詳しくは、アクチュエータ本体のうち、駆動子が設けられた面と対向する反対側の面に付勢部材を設け、該付勢部材によってアクチュエータ本体を被当接体側へ付勢している。
特開2004−304963号公報
ところで、前述の如く、駆動子と被当接体との摩擦力を介して可動体を駆動する振動型アクチュエータにおいては、駆動子も被当接体もやがて摩耗する。その結果、被当接体には、駆動子の軌跡に沿った轍が形成される。可動体の移動範囲が狭い場合には一方の駆動子によって形成された轍と他方の駆動子によって形成された轍とは独立しているが、可動体の移動範囲が広くなると両方の駆動子で形成された轍が繋がる。こうして、繋がった轍においては、一方の駆動子による轍と他方の駆動子による轍とが重なった部分ができ、かかる部分では両方の駆動子によって轍の形成が進行するため、それ以外の部分と比べて、轍の深さが深くなる。このように轍の深さが異なる部分では、駆動子と被当接体との間の摩擦力が他の部分と異なり、可動体に付与される駆動力にばらつきが出てしまう。その結果、可動体を安定して駆動することができなくなる。また、轍の深さが変わる部分に段差が形成され、この段差を駆動子が通過する場合には、駆動子と被当接体との間の摩擦力が急激に変化してしまう。このことからも、可動体を安定して駆動することができなくなる。
本発明のうち、第1の発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動子との摩擦により被当接体に轍が形成される場合でも、可動体を安定して駆動することができる振動型アクチュエータを提供することにある。以下、この目的を第1の目的と称する。
また、前述の振動型アクチュエータは別の課題を有する。具体的には、前述の振動型アクチュエータにおいては、アクチュエータ本体は、付勢部材によって被当接体側に付勢されている一方、駆動子が押圧する被当接体から反力を受ける。これら付勢部材の付勢力と被当接体からの反力とは、アクチュエータ本体に対して、該アクチュエータ本体を回転させるモーメントとして作用する。その結果、該モーメントによってアクチュエータ本体の姿勢が変化すると共に、駆動子と被当接体との当接状態も変化し、所望の駆動力を可動体に出力できない虞があった。
本発明のうち、第2の発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アクチュエータ本体の姿勢の変化を抑制することにある。以下、この目的を第2の目的と称する。
また、前述の振動型アクチュエータは、さらに別の課題を有する。具体的には、前述の如く、駆動子から被当接体に作用する押圧力を付勢部材の付勢力によって高める構成においては、駆動子が、付勢部材による付勢力の方向に延びる直線上に位置することが好ましい。つまり、付勢部材から駆動子に作用する付勢力が、駆動子から被当接体へ作用する押圧力と同じ方向に作用することが好ましい。仮に、駆動子が付勢部材による付勢力の方向に延びる直線上に位置しない場合は、例えば、押圧力の方向と付勢力の方向とが駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する方向(即ち、平板状のアクチュエータ本体の厚み方向)にずれている場合には、付勢力が駆動子の押圧力の方向に対して該直交する方向に傾斜して、即ち、アクチュエータ本体を該直交する方向に傾斜させるように作用してしまう。その結果、駆動子が本来周回運動を行う平面よりも該平面に直交する方向に傾斜した面内で周回運動を行うことになる。つまり、駆動子から被当接体に作用する押圧力を高めるための付勢力を効率良く使うことができないため、駆動子と被当接体との間の摩擦力が十分に得られず、駆動力を可動体へ十分に伝達できない虞があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動子から可動体へ駆動力を効率良く伝達させることにある。以下、この目的を第3の目的と称する。
本発明は、駆動子を、該駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向に複数設けることによって、これらの目的を達成するようにしたものである。
詳しくは、第1の目的を達成するために、第1の発明は、第1駆動子と第2駆動子とを該第1及び第2駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向にずらして配置するようにしたものである。
具体的には、第1の発明に係る振動型アクチュエータは、圧電素子で構成、又は圧電素子を含んで構成され、振動方向が異なる複数の振動を行うアクチュエータ本体と、前記アクチュエータ本体の一の側面である設置面上に設けられて、該アクチュエータ本体の振動に従って周回運動することで所定の駆動方向に駆動力を出力する駆動子とを備え、前記駆動子は、前記設置面上において、前記駆動方向に沿った方向における異なる位置に設けられた第1駆動子と第2駆動子とを含んでおり、前記第1駆動子と前記第2駆動子とは、該第1及び第2駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向における異なる位置に位置するものとする。
また、第1の発明に係る駆動装置は、相対移動可能な固定体及び可動体と、前記固定体及び可動体の間に介設される請求項1に記載の振動型アクチュエータとを備え、前記振動型アクチュエータは、前記駆動子が前記固定体及び可動体の一方に当接する状態で該固定体及び可動体の他方に配設されており、前記駆動子を固定体及び可動体の一方に押圧するように前記アクチュエータ本体を付勢する付勢部材をさらに備えるものとする。
さらに、第2の目的を達成するために、第2の発明は、複数の駆動子を、該駆動子が周回運動を行う平面に直交する方向に配列させて駆動子群を構成させると共に、その駆動子群内において駆動子の位置を駆動力を出力する駆動方向にずらすようにしたものである。
具体的には、第2の発明は、圧電素子で構成、又は圧電素子を含んで構成され、振動方向が異なる複数の振動を行うアクチュエータ本体と、前記アクチュエータ本体の一の側面である設置面上に設けられて、該アクチュエータ本体の振動に従って周回運動することで所定の駆動方向へ駆動力を出力する駆動子とを備えた振動型アクチュエータが対象である。そして、前記駆動子は、該駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向に複数個設けられ該直交方向に設けられた駆動子で駆動子群を構成し、前記駆動子群における複数の前記駆動子は、前記駆動方向に沿った方向にずれた位置に配置されてるものとする。
さらにまた、第3の目的を達成するために、第3の発明は、駆動子を、該駆動子が周回運動を行う平面に直交する方向における異なる位置に複数設けるようにしたものである。
具体的には、第3の発明に係る振動型アクチュエータは、圧電素子で構成、又は圧電素子を含んで構成され、振動方向が異なる複数の振動を行うアクチュエータ本体と、前記アクチュエータ本体の一の側面である設置面上に設けられて、該アクチュエータ本体の振動に従って周回運動することで駆動力を出力する駆動子とを備え、前記駆動子は、該駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向において異なる位置に複数設けられているものとする。
また、第3の発明に係る駆動装置は、相対移動可能な固定体及び可動体と、前記固定体及び可動体の間に介設される前記振動型アクチュエータとを備え、前記振動型アクチュエータは、前記駆動子が前記固定体及び可動体の一方に当接する状態で該固定体及び可動体の他方に配設されており、前記駆動子を固定体及び可動体の一方に押圧するように前記アクチュエータ本体を付勢する付勢部材をさらに備えているものとする。
第1の発明によれば、駆動方向に沿った方向において複数の駆動子、具体的には、第1及び第2駆動子が設けられた振動型アクチュエータにおいて、第1駆動子と第2駆動子とを該第1及び第2駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向にずらして配置することによって、該第1及び第2駆動子が当接する被当接体に形成される轍が該直交方向にずれて形成されることになり、第1駆動子によって形成された轍と第2駆動子によって形成された轍とが繋がって、轍内に深さが異なる部分が形成されたり、段差が形成されることを防止することができる。その結果、駆動子と被当接体との間の摩擦力が大きく異なったり、急激に変化したりすることを防止することができるため、振動型アクチュエータの駆動対象を安定して駆動することができる。
また、第2の発明によれば、駆動子を、該駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向に複数個設けると共に、その駆動子の位置を駆動方向に沿った方向にずらすことによって、アクチュエータ本体と被当接体との当接部を該駆動方向に沿った方向に拡げることができるため、アクチュエータ本体が駆動子が周回運動を行う平面内において回転することを規制することができ、アクチュエータ本体の姿勢を安定させて、駆動子から可動体へ所望の駆動力を伝達させることができる。
さらに、第3の発明によれば、駆動子を、該駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向において異なる位置に複数設けることによって、アクチュエータ本体と被当接体との当接点を該直交方向に増やすことができ、アクチュエータ本体が該直交方向に傾斜することを防止して、アクチュエータ本体に与えられる付勢力によって駆動子と被当接体との間の摩擦力を効果的に高めることができ、ひいては、駆動子から可動体へ駆動力を効率良く伝達させることができる。
図1は、本発明の実施形態1に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図2は、駆動装置の斜視図である。
図3は、圧電素子ユニットの分解斜視図である。
図4は、アクチュエータ本体の概略構成を示す概略正面図である。
図5は、駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図6は、アクチュエータ本体の長手方向への縦振動の1次モードによる変位を示す概念図である。
図7は、アクチュエータ本体の屈曲振動の2次モードによる変位を示す概念図である。
図8は、アクチュエータ本体の動作を示す概念図である。
図9は、超音波アクチュエータによるステージの駆動を説明するための概念図であって、(a)は駆動前の状態、(b)はアクチュエータ本体が長手方向に伸張することで一方の駆動子によってステージを駆動する状態、(c)はアクチュエータ本体が長手方向に収縮することで他方の駆動子によってステージを駆動する状態を示す。
図10は、実施形態2に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図11は、実施形態2に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図12は、実施形態3に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図13は、実施形態3に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図14は、実施形態4に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図15は、実施形態5に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図16は、実施形態6に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図17は、実施形態6に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図18は、実施形態7に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図19は、実施形態7の変形例に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図20は、実施形態8に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図21は、実施形態8に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図22は、実施形態9に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図23は、実施形態9に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図24は、その他の実施形態に係る超音波アクチュエータの断面図である。
図25は、その他の実施形態に係る駆動子を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図26は、別のその他の実施形態に係る駆動子を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図27は、さらに別のその他の実施形態に係る駆動子を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図28は、さらにさらに別のその他の実施形態に係る駆動子を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図29は、別のその他の実施形態に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図30は、さらに別のその他の実施形態に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図31は、その他の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
図32は、別のその他の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
図33は、さらに別のその他の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
符号の説明
1,171,181,191 駆動装置
11 ステージ(可動体)
2,202,302,602,802,902,152,162 超音波アクチュエータ
4 アクチュエータ本体
40a 長辺側面(設置面)
40b 短辺側面(設置面)
62 付勢ゴム(付勢部材)
8A,208A,308A,408A,508A,608A,808A,908A 第1駆動子群(駆動子群)
8B,208B,308B,408B,508B,608B,808B,908B 第2駆動子群(駆動子群)
8a,208a,308a,408a,508a,608a,708a,808a,908a 第1駆動子(駆動子)
8b,208b,308b,408b,508b,608b,708b,808b,908b 第2駆動子(駆動子)
118,128,138,148 駆動子(第1駆動子、第2駆動子)
83 環状体
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る駆動装置1は、図2に示すように、ステージ11と、超音波アクチュエータ2と、該超音波アクチュエータ2を駆動制御する制御装置(図示省略)とを備えている。
ステージ11は、互いに平行な状態で固定体としての基台(図示省略)上に固定されたガイド12,12に摺動可能に取り付けられている。つまり、ステージ11は、ガイド12,12が延びる方向に沿って移動可能に構成されている。このステージ11が可動体を構成する。これらガイド12,12の延びる方向がステージ11の可動方向となる。このステージ11は、平面視略方形の板状部材であって、アルミナで形成されている。尚、ステージ11の材質は、アルミナに限られるものではなく、任意の材質を用いて形成することができる。そして、前記超音波アクチュエータ2は、このステージ11の裏面(ガイド12,12が設けられている側の面)に後述する駆動子8a,…,8b,…が当接するように配設されている。
前記超音波アクチュエータ2は、図1に示すように、振動を発生させるアクチュエータ本体4と、該アクチュエータ本体4の駆動力をステージ11に伝達させる駆動子8a,…,8b,…と、該アクチュエータ本体4を収容するケース5と、アクチュエータ本体4とケース5との間に介設されてアクチュエータ本体4を弾性的に支持する支持ゴム61,61と、アクチュエータ本体4を前記ステージ11に付勢するための付勢ゴム62とを備えている。この超音波アクチュエータ2が振動型アクチュエータを構成する(以下、同様)。
前記アクチュエータ本体4は、圧電素子ユニット40で構成されている。
前記圧電素子ユニット40は、略長方形状の互いに対向する一対の主面と、この主面と直交して該主面の長手方向に延びる、互いに対向する一対の長辺側面と、これら主面及び長辺側面の両方と直交して該主面の短手方向に延びる、互いに対向する一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。
この圧電素子ユニット40は、図3に示すように、5つの圧電体層(圧電素子)41,41,…と4つの内部電極層42,44,43,44とを交互に積層して構成される。内部電極層42,44,43,44は、積層方向に圧電体層41を介して交互に配された、第1給電電極層42と共通電極層44と第2給電電極層43と共通電極層44とで構成される。これら第1給電電極層42、第2給電電極層43及び共通電極層44,44のそれぞれは、各圧電体層41の主面上に印刷されている。
前記各圧電体層41は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などのセラミック材料からなる絶縁体層であって、前記圧電素子ユニット40と同様に、一対の主面と、一対の長辺側面と、一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。また、各圧電体層41には、その長辺側面のうち一方の長辺側面の長手方向中央部に外部電極45aが、一方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極46aが、他方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極47aがそれぞれ形成されている。
前記各共通電極層44は、圧電体層41の主面の略全面に亘って設けられた略長方形状をしている。また、各共通電極層44の一方の長辺部には、その長手方向中央部から圧電体層41の前記外部電極45aまで延びる引出電極44aが形成されている。
前記第1給電電極層42は、図4に示すように、圧電体層41の主面をその長手方向及び短手方向にそれぞれ2等分してなる4つの領域のうち該主面の対角線方向に位置する2対の領域のうち一方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第1電極42a,42bと、これら第1電極42a,42bを連結して導通させる導通電極42cとを有する。各第1電極42a(42b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。つまり、各第1電極42a(42b)は、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。また、第1電極42a,42bのうちの一方の第1電極42aには、圧電体層41の前記外部電極46aまで延びる引出電極42dが設けられている。
前記第2給電電極層43は、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する前記2対の領域のうち他方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第2電極43a,43bと、これら第2電極43a,43bを連結して導通させる導通電極43cとを有する。前記他方の対の領域のうち積層方向に見て前記第1電極42aの前記短手方向且つ前記第1電極42bの前記長手方向に隣接する領域に設けられる電極が第2電極43aであり、第1電極42aの該長手方向且つ第1電極42bの該短手方向に隣接する領域に設けられる電極が第2電極43bである。各第2電極43a(43b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。つまり、各第2電極43a(43b)は、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。また、第2電極43a,43bのうちの一方の第2電極43bには、圧電体層41の前記外部電極47aまで延びる引出電極43dが設けられている。
これら圧電体層41,41,…と内部電極層42,44,43,44とを交互に積層することで構成された圧電素子ユニット40においては、その一方の長辺側面の前記長手方向中央部に、各圧電体層41の外部電極45aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極45が形成されている。この外部電極45には、前記共通電極層44,44に形成された引出電極44a,44aが電気的に接続されている。同様に、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極46aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極46が形成されている。この外部電極46には、前記第1給電電極層42の引出電極42dが電気的に接続されている。また、圧電素子ユニット40の他方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極47aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極47が形成されている。この外部電極47には、前記第2給電電極層43の引出電極43dが電気的に接続されている。
そして、圧電素子ユニット40の長辺側面のうち他方の長辺側面、即ち、前記外部電極45aが設けられていない側の長辺側面(すなわち、後述する屈曲振動の振動方向を向く一対の面のうちの一方の面。以下、設置面ともいう)40aには、図1,5に示すように、6個の駆動子8a,…,8b,…が設けられている。
これら駆動子8a,…,8b,…は、球状の部材であって、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、タングステンカーバイド等で形成されている。また、駆動子8a,…,8b,…は、圧電素子ユニット40の設置面40aに対して接着剤82を介して点接触状に取り付けられている(図4参照)。ここで、「点接触状」とは、駆動子8a,…,8b,…と設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、駆動子8a,…,8b,…と設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該駆動子8a,…,8b,…と設置面40aとが実質的に点接触している状態も意味する。
接着剤82としては、圧電素子ユニット40の材料及び駆動子8a,8bの材料よりも柔らかいことが望ましい。具体的には、合成樹脂、特にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。このような材料を用いることにより圧電素子ユニット40の後述する振動をできるだけ阻害せずに駆動子8a,…,8b,…と設置面40aとの間の固定を実現することができる。
また、駆動子8a,…,8b,…が設けられた位置は、設置面40aにおいて、圧電素子ユニット40の長手方向両端部から該設置面40aの全長の30〜35%距離だけ内側に入った位置(図5中の直線Lで示す位置)であり、即ち、圧電素子ユニット40の後述する屈曲振動の2次モードの腹の位置であって、振動が最も大きくなる位置である。そして、これら駆動子8a,…,8b,…は、屈曲振動の2次モードの前記2箇所の腹の位置のうち長手方向一側に配設された第1駆動子8a,8a,…からなる第1駆動子群8Aと、長手方向他側に配設された第2駆動子8b,8b,…からなる第2駆動子群8Bとに分けられる。
各駆動子群8A(8B)においては、図5に示すように、駆動子8a,8a,…(8b,8b,…)が圧電素子ユニット40の厚み方向(以下、直交方向ともいう)に並んで、詳しくは、厚み方向に延びる直線L上に並んで設けられている。この直交方向は、圧電素子ユニット40の積層方向でもあり、駆動子8a(8b)が後述する周回運動を行う平面に直交する方向でもあり、圧電素子ユニット40の後述する屈曲振動の振動方向と縦振動の振動方向とに直交する方向でもある。また、これら駆動子8a,8a,…(8b,8b,…)は直交方向において互いに等間隔に配置されている。
ただし、第1駆動子群8Aの第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子群8Bの第2駆動子8b,8b,…とは、互いに直交方向にずれた位置に配置されており、直交方向位置が異なる。詳しくは、長手方向位置は異なるものの、直交方向位置だけを見ると、第1駆動子群8Aの第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子群8Bの第2駆動子8b,8b,…とは、第1駆動子8a,第2駆動子8b,第1駆動子8a,第2駆動子8b,…のように交互に配置されている。そして、直交方向に交互に並ぶ各第1駆動子8aと各第2駆動子8bとの直交方向間隔、即ち、直交方向の一端側から順に、1番目の第1駆動子8aと1番目の第2駆動子8bとの直交方向間隔、1番目の第2駆動子8bと2番目の第1駆動子8aとの直交方向間隔、2番目の第1駆動子8aと2番目の第2駆動子8bとの直交方向間隔、…は等間隔となっている。
また、このように直交方向に交互に配置された第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とは、直交方向における一端側からN番目(N=1,2,…,n)の該第1駆動子8aと同N番目の該第2駆動子8bとの直交方向中間位置tが下記式(1)を満たすように配置されている。
t={(2N−1)/(2n)}×T ・・・ (1)
ここで、
t:設置面40a上における直交方向の一端を基準としたときの直交方向の位置
n:直交方向に並ぶ駆動子の総数(本実施形態では、3個)
T:設置面40aの直交方向寸法(アクチュエータ本体4の厚み)
である。
すなわち、本実施形態では、直交方向の最も一端側(図5の下側)に位置する第1駆動子8aと第2駆動子8bとの直交方向中間位置は、設置面40aの直交方向一端側の端縁からT/6の位置に、直交方向の一端側から2番目の第1駆動子8aと同2番目の第2駆動子8bとの直交方向中間位置は、設置面40aにおける直交方向中央に、直交方向の一端側から3番目の(図5の上側に位置する)第1駆動子8aと同3番目の第2駆動子8bとの直交方向中間位置は、設置面40aの直交方向一端側の端縁から5T/6の位置に配置されている。つまり、直交方向一端側から1番目の第1及び第2駆動子8a,8bの直交方向中間位置と2番目の第1及び第2駆動子8a,8bの直交方向中間位置との間隔及び、2番目の第1及び第2駆動子8a,8bの直交方向中間位置と3番目の第1及び第2駆動子8a,8bの直交方向中間位置との間隔は、それぞれT/3となっている。
その結果、第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とは直交方向の一端側から他端側に向かってT/6の直交方向間隔を開けて交互に配置されている。そして、この直交方向間隔T/6は、第1及び第2駆動子8a,…,8b,…のステージ11との当接部の該直交方向幅より大きな値となっている。好ましくは、予め想定される、ステージ11に形成される轍の該直交方向幅よりも大きな値となっている。
以上、説明してきたアクチュエータ本体4は、前記外部電極45をグランドに接続し、前記外部電極46に所定周波数の交流電圧を、前記外部電極47に該交流電圧と位相が90°ずれた交流電圧を印加することによって、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する一方の対の第1電極42a,42bと、他方の対の第2電極43a,43bとに互いに位相が90°ずれた交流電圧が印加され、その長手方向への縦振動(いわゆる、伸縮振動)とその短手方向への屈曲振動(いわゆる、横振動)とが誘起される。
縦振動の共振周波数及び屈曲振動の共振周波数はそれぞれ、アクチュエータ本体4、即ち、圧電素子ユニット40の材料、形状等により決定される。さらに、両共振周波数は、アクチュエータ本体4を支持する力及び支持する部分によっても影響を受ける。これらを考慮して、両共振周波数を略一致させ、その近傍の周波数の交流電圧を位相を90°ずらした状態で外部電極46,47のそれぞれに印加する。例えば、縦振動の1次モード(図6参照)の共振周波数と屈曲振動の2次モード(図7参照)の共振周波数とが一致するように圧電素子ユニット40の形状等を設計して、該共振周波数近傍の交流電圧を前述の如く、位相を90°ずらして印加することによって、圧電素子ユニット40には、縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとが調和的に誘起され、図8(a)、(b)、(c)、(d)に示す形状の変化を順番に起こす。
その結果、圧電素子ユニット40に設けられた各駆動子8a(8b)が該圧電素子ユニット40の主面と平行な平面、即ち、長手方向と短手方向とを含む平面(図8における紙面と平行な面)内で略楕円運動、即ち、周回運動を行う。
前記ケース5は、樹脂製であって、前記圧電素子ユニット40に対応した略直方体状の概略箱形状をしている。このケース5は、前記圧電素子ユニット40の主面と平行で且つ略長方形状の主壁部51と、該主壁部51の前記長手方向の一側(図1における左側)に位置する短辺部に設けられた第1短辺壁部52と、該主壁部51の該長手方向の他側(図1における右側)に位置する短辺部に設けられた第2短辺壁部53と、該主壁部51の前記短手方向の一側(図1における下側)に位置する長辺部に設けられた長辺壁部54とを有している。つまり、ケース5は、主壁部51に対向する側及び該主壁部51の該短手方向の他側(図1における上側)に位置する長辺部(圧電素子ユニット40の駆動子8a,…,8b,…が設けられた長辺側面に対応する部分)には壁部が設けられておらず、圧電素子ユニット40の積層方向(主壁部51の法線方向)の一側及び該短手方向の他側に開口した形状となっている。
このように構成されたケース5内に前記アクチュエータ本体4が収容されている。アクチュエータ本体4は、圧電素子ユニット40の一方の主面が主壁部51と対向し且つ圧電素子ユニット40の一方の長辺側面(前記外部電極45が設けられている側の長辺側面)が長辺壁部54と対向するようにしてケース5内に収容されている。このとき、駆動子8a,…,8b,…はケース5から前記短手方向の他側に突出している。また、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面とケース5の第1短辺壁部52との間および圧電素子ユニット40の他方の短辺側面とケース5の第2短辺壁部53との間にはそれぞれ支持ゴム61,61が介設されている。この圧電素子ユニット40の両短辺側面は縦振動の腹の部分であるが、支持ゴム61,61は弾性体であるため、圧電素子ユニット40の縦振動を阻害することなく、該圧電素子ユニット40を支持することができる。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4並びに第1及び第2短辺壁部52,53だけでなく、主壁部51の内側表面とも当接している。また、圧電素子ユニット40の一方の長辺側面とケース5の長辺壁部54との間には付勢ゴム62が介設されている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4及び長辺壁部54だけでなく、主壁部51の内側表面とも当接している。
そして、主壁部51の内側表面における、前記支持ゴム61,61及び付勢ゴム62が当接する部分には電極51a(付勢ゴム62と当接する電極のみ図示)が設けられているこれらの電極は、主壁部51の外側表面に設けられた端子電極(図示省略)にそれぞれ導通している。
前記各支持ゴム61は、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4をその長手方向に付勢した状態で弾性的に支持する。それと共に、支持ゴム61,61は、主壁部51の内側表面の該支持ゴム61,61の配設位置に対応する部分に設けられ且つ前記端子電極に導通する電極と圧電素子ユニット40の外部電極46,47とを導通させている。
また、前記付勢ゴム62も、支持ゴム61と同様に、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4をその短手方向(即ち、短手方向が付勢方向に相当する)に付勢するためのものである。それと共に、付勢ゴム62は、圧電素子ユニット40の外部電極45と主壁部51の内側表面の電極51aとを導通させている。
尚、これら支持ゴム61及び付勢ゴム62の代わりに、板バネ等の弾性部材を採用してもよい。
つまり、ケース5の外側表面に設けられた前記端子電極に給電することによって、圧電素子ユニット40に給電することができる。
このように構成された超音波アクチュエータ2は、図2に示すように、駆動子8a,…,8b,…がステージ11の裏面と当接するように配設されると共に、ケース5が基台(図示省略)に固定される。詳しくは、超音波アクチュエータ2は、圧電素子ユニット40の短手方向がステージ11の裏面に直交すると共に、圧電素子ユニット40の長手方向がステージ11の裏面と平行で且つガイド12,12と平行になるように配置される。さらに換言すれば、超音波アクチュエータ2は、圧電素子ユニット40の屈曲振動の方向がステージ11の裏面と直交すると共に、圧電素子ユニット40の縦振動の方向がガイド12,12と平行な方向を向くように配置される。
このとき、前記付勢ゴム62が圧縮変形しており、この付勢ゴム62の弾性力によって駆動子8a,…,8b,…がステージ11に付勢されている。超音波アクチュエータ2のステージ11への付勢力は、付勢ゴム62の弾性力によって決まる。
前記制御装置は、外部からの動作指令を受けて、その動作指令に応じた周波数の交流電圧を動作指令に応じた位相差で外部電極46,47に印加する。
制御装置は、前述の如く、アクチュエータ本体4、即ち、圧電素子ユニット40に縦振動と屈曲振動とを調和的に発生させて、駆動子8a,…,8b,…を図8に示すような周回運動させることで、ステージ11を移動させる。具体的には、圧電素子ユニット40の異常発熱を防止すべく、圧電素子ユニット40の縦振動と屈曲振動との共通の共振周波数よりも少し高い周波数の交流電圧が外部電極46,47に印加される。このとき、かかる交流電圧は、互いに位相が90°ずれた状態で外部電極46,47に印加される。
圧電素子ユニット40が、縦振動と屈曲振動との合成振動を行うと、駆動子8a,…,8b,…は圧電素子ユニット40の長手方向と短手方向とを含む平面内において略楕円運動を行う。こうすることで、駆動子8a,…,8b,…は、ステージ11との間の摩擦力の増大と緩和を周期的に繰り返しながら、ステージ11に対して摩擦力を介して圧電素子ユニット40の長手方向へ駆動力を付与しており、ステージ11はガイド12,12に沿って移動する。この圧電素子ユニット40の長手方向(ガイド12,12が延びる方向と一致する)が、駆動子8a,…,8b,…が駆動力を出力する方向である駆動方向に沿った方向に相当する。
以下に、超音波アクチュエータ2によるステージ11の駆動を、図9を参照してさらに詳しく説明する。圧電素子ユニット40が長手方向(縦振動の振動方向)に伸張するとき、第1駆動子8a(例えば、図9の左側)は、図9(b)に示すように、短手方向(屈曲振動の振動方向)においてステージ11側の領域を変位するため、ステージ11との間の摩擦力が増大し、この摩擦力によってステージ11を該長手方向における該第1駆動子8aが変位する側(図9の左側)へ移動させる。このとき、第2駆動子8b(図9の右側)は、該長手方向において第1駆動子8aとは逆向きに変位するが、該短手方向において反ステージ11側(ステージ11から離れる側)の領域を変位するため、ステージ11から離れて摩擦力が作用せず、ステージ11の移動にはほとんど影響を与えない。
一方、圧電素子ユニット40が長手方向に収縮するときは、第2駆動子8bは、図9(c)に示すように、短手方向においてステージ11側の領域を変位するため、ステージ11との間の摩擦力が増大し、この摩擦力によってステージ11を該長手方向における該第2駆動子8bが変位する側(図9の左側)へ移動させる。この移動方向は、前述した、圧電素子ユニット40の伸張時における第1駆動子8aによるステージ11の移動方向と同じである。このとき、第1駆動子8aは、該長手方向において第2駆動子8bとは逆向きに変位するが、該短手方向において反ステージ11側の領域を変位するため、ステージ11から離れて摩擦力が作用せず、ステージ11の移動にはほとんど影響を与えない。
尚、図9においては、ステージ11の移動に影響を与えない方の駆動子8b(8a)はステージ11から離れているが、必ずしも離れている必要はない。すなわち、駆動子8b(8a)は、ステージ11を移動させない程度の摩擦力で該ステージ11に当接してる状態であってもよい。
こうして、第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とは、位相が180°ずれた状態で交互にステージ11を所定の一方向へ移動させる。尚、前記交流電圧を位相を−90°ずらした状態で外部電極46,47に印加することによって、第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とが出力する駆動力を逆向きにすることができ、ステージ11を他方向へ移動させることができる。
尚、ステージ11の移動量、移動速度及び移動加速度は、外部電極46,47に給電する交流電圧の電圧値、周波数及び給電時間の少なくとも1つを調整する、又は外部電極46,47に給電する各交流電圧の位相のずれを変更する等によって調整することができる。
このように、超音波アクチュエータ2は、駆動子8a,…,8b,…に縦振動の振動方向(長手方向)と屈曲振動の振動方向(短手方向)とを含む平面内で周回運動させて、駆動子8a,…,8b,…とステージ11との間の摩擦力の増大と緩和とを繰り返しながら、該ステージ11を駆動している。このように、駆動子8a,…,8b,…とステージ11との間の摩擦力を介してステージ11を駆動しているため、超音波アクチュエータ2の使用を続けると、駆動子8a,…,8b,…及びステージ11はやがて摩耗する。その結果、ステージ11には、駆動子8a,…,8b,…との当接部に該駆動子8a,…,8b,…の軌跡に沿って、即ち、アクチュエータ本体4の長手方向に沿って轍が形成される。
ここで、本実施形態では、前述の如く、第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とを、設置面40a上において、轍が形成される方向(アクチュエータ本体4の長手方向)に直交する厚み方向にずらして配置しているため、第1駆動子8a,8a,…によってステージ11に形成される轍と第2駆動子8b,8b,…によってステージ11に形成される轍とはそれぞれ厚み方向にずれ、駆動子8a,…,8b,…の個数に対応した合計6本の轍が形成される。つまり、第1駆動子8a,8a,…によって形成される轍と第2駆動子8b,8b,…によって形成される轍とが繋がることがなく、第1及び第2駆動子8a,8bの両方で削られた轍の発生を防止することができる。その結果、1つの轍の中で他の部分と深さが大きく異なる部分がなくなるため、駆動子8a(8b)とステージ11との摩擦力が大きく異なることを防止することができると共に、深さが急に変わる部分がなくなるため、駆動子8a(8b)とステージ11との摩擦力が急激に変わることを防止することができる。
したがって、本実施形態1によれば、アクチュエータ本体4の設置面40aにおいてその長手方向の異なる位置に設けられた第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とを、それぞれアクチュエータ本体4の厚み方向の異なる位置に設ける、即ち、厚み方向にずらして設けることによって、第1駆動子8a,8a,…によってステージ11に形成される轍と第2駆動子8b,8b,…によってステージ11に形成される轍とが繋がることを防止することができる。その結果、1つの轍内において第1駆動子8aと第2駆動子8bとの両方に削られて深さが大きく異なる部分や深さが急激に変化する部分が形成されることを防止し、第1及び第2駆動子8a,…,8b,…とステージ11との間の摩擦力を安定させて、ステージ11を安定して駆動することができる。
また、第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とを該厚み方向へずらす量を想定している轍の幅(即ち、ステージ11又は駆動子8a,…,8b,…を交換することなく使用可能と想定する轍の幅)よりも大きくすることによって、第1駆動子8a,8a,…によってステージ11に形成される轍と第2駆動子8b,8b,…によってステージ11に形成される轍とが繋がることを確実に防止することができる。
直交方向に交互に配置された第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とを、直交方向における一端側からN番目(N=1,2,…,n)の該第1駆動子8aと同N番目の該第2駆動子8bとの直交方向中間位置tが前記式(1)を満たすように配置することによって、第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とを厚み方向にずらして配置する構成であっても、駆動子8a,…,8b,…を厚み方向へ均等に配置することができ、アクチュエータ本体4の振動に基づく駆動力を駆動子8a,…,8b,…のそれぞれから均等にステージ11に伝えることができる。
また、近年、電子機器の小型化にともない超音波アクチュエータ2も小型化が求められているが、超音波アクチュエータ2を小型化した場合、効率を低下させてしまう虞があった。すなわち、駆動子8a,…,8b,…の形状が相対的に大きくなってしまい、前述のようにアクチュエータ本体4の屈曲振動の腹の部分に駆動子8a,…,8b,…を設けた構成ではアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害してしまい、その結果、効率を低下させてしまう虞があった。
それに対し、本実施形態では、駆動子8a,…,8b,…を、アクチュエータ本体4の長手方向の各位置(駆動子群8A,8Bの位置)において、厚み方向に延びる直線L,L上に並ぶように配置することによって、駆動子8a,…,8b,…をアクチュエータ本体4の屈曲振動によって波打つ長辺側面に設けるにもかかわらず、該駆動子8a,…,8b,…がアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができる。さらに、駆動子8a,…,8b,…の形状を球状とすることによって、駆動子8a,…,8b,…とアクチュエータ本体4の設置面40aとの接触面積を小さくでき、アクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することをさらに抑制することができる。その結果、超音波アクチュエータ2としての効率を向上させることができる。ここで、「球状」とは、厳密な球形状に限られず、駆動子8a(8b)が圧電素子ユニット40に対して概略点接触となるような実質的な球形状も含む意味である。
さらに、駆動子8a(8b)を球状とすることによって、後述する円柱状の駆動子208a(208b)に比べて製造しやすいため、駆動子8a(8b)のコストを低減することができる。
《発明の実施形態2》
続いて、本発明の実施形態2に係る超音波アクチュエータ202について説明する。
実施形態2に係る超音波アクチュエータ202は、駆動子208a(208b)の形状が円柱状である点で、駆動子8a(8b)が球状である前記実施形態1と異なる。
詳しくは、超音波アクチュエータ202では、図10に示すように、圧電素子ユニット40の設置面40aにおける2次モードの屈曲振動の2箇所の腹の位置に、第1及び第2駆動子群208A,208Bが設けられている。第1駆動子群208Aは2つの駆動子208a,208aで構成されている一方、第2駆動子群208Bは1つの駆動子208bで構成されている。これら駆動子208a,…,208bはそれぞれ同じ円柱状をしている。
各駆動子208a(208b)は実施形態1と同様の接着剤82にて圧電素子ユニット40に固定されている。こうして、各駆動子208a(208b)は、圧電素子ユニット40の設置面40aに対して線接触状に取り付けられている。ここで、「線接触状」とは、駆動子208a(208b)と設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、駆動子208a(208b)と設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該駆動子208a(208b)と設置面40aとが実質的に線接触している状態も意味する。また、「円柱状」とは、厳密な円柱形状に限られず、駆動子208a(208b)が設置面40aに対して概略線接触となるような実質的な円柱形状も含む意味である。
第1駆動子群208Aでは、図11に示すように、第1駆動子208a,208aが圧電素子ユニット40の直交方向に並んで、詳しくは、直交方向に延びる直線L上に並んで設けられている。このとき、各第1駆動子208aは、その円柱の軸が直交方向を向くように配設されている。つまり、2つの第1駆動子208a,208aは、それぞれの円柱の軸が一直線上に並び、その一直線上に並んだ軸が直線Lと平行になっている。換言すれば、第1駆動子208a,208aは、それぞれの円柱の軸が該第1駆動子208a,208aが周回運動を行う平面に対して直交するように延びている。
また、第2駆動子208bも、その円柱の軸が直交方向を向くように配設されている。
ただし、第1駆動子群208Aの第1駆動子208a,208aと第2駆動子群208Bの第2駆動子208bとは、互いに直交方向にずれた位置に配置されており、直交方向位置が異なる。詳しくは、長手方向位置は異なるものの、直交方向位置だけを見れば、第1駆動子208a,第2駆動子208b,第1駆動子208aの順で交互に配置されている。
また、第1駆動子208aと第2駆動子208bとの直交方向へのずれ量は、第1及び第2駆動子208a,208bのステージ11との当接部の直交方向長さ、即ち、駆動子を構成する円柱の長さよりも大きくなっている。つまり、アクチュエータ本体4の長手方向の一方から他方へ向かって見たときに、第1駆動子208a,208aと第2駆動子208bとが重ならないように配置されている。
さらに、直交方向における一端側から1番目の第1駆動子208aと第2駆動子208bとの直交方向間隔及び、第2駆動子208bと直交方向における一端側から2番目の第1駆動子208aとの間隔は等間隔になっている。
したがって、実施形態2によれば、アクチュエータ本体4の設置面40aにおいてその長手方向の異なる位置に設けられた第1駆動子208a,208aと第2駆動子208bとを、それぞれアクチュエータ本体4の厚み方向の異なる位置に設ける、即ち、厚み方向にずらして設けることによって、第1駆動子208a,208aによってステージ11に形成される轍と第2駆動子208bによってステージ11に形成される轍とが繋がることを防止することができる。その結果、1つの轍内において深さが大きく異なる部分や深さが急激に変化する部分が形成されることを防止し、第1及び第2駆動子208a,208a,208bとステージ11との間の摩擦力を安定させて、ステージ11を安定して駆動することができる。
また、第1駆動子208a,208aと第2駆動子208bとの厚み方向へのずれ量は、第1及び第2駆動子208a,208bの厚み方向長さ、即ち、円柱の長さよりも大きくなっているため、第1駆動子208a,208aによってステージ11に形成される轍と第2駆動子208bによってステージ11に形成される轍とが厚み方向に重なり合うことも防止することができる。
また、駆動子208a(208b)の形状を円柱状とすることによって、各駆動子208a(208b)と設置面40aとの接触面積を小さくしてアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができると共に、該各駆動子208a(208b)をその円柱の軸がアクチュエータ本体4の屈曲振動の振動方向と縦振動の振動方向とに直交する方向を向くように、即ち、アクチュエータ本体4が屈曲振動を行う平面に対して直交する方向を向くように配設して設置面40aに取り付けることによって、アクチュエータ本体4の屈曲振動の阻害をさらに抑制することができる。
その他、実施形態1と同様の作用・効果を奏することができる。
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3に係る駆動装置1は、実施形態1に係る駆動装置1と基本的には同様の構成をしている。詳しくは、実施形態3に係る駆動装置1は、図2に示すような、ステージ11と、超音波アクチュエータ302と、該超音波アクチュエータ302を駆動制御する制御装置(図示省略)とを備えている。
ステージ11は、互いに平行な状態で固定体としての基台(図示省略)上に固定されたガイド12,12に摺動可能に取り付けられている。つまり、ステージ11は、ガイド12,12が延びる方向に沿って移動可能に構成されている。このステージ11が可動体を構成する。これらガイド12,12の延びる方向がステージ11の可動方向となる。このステージ11は、平面視略方形の板状部材であって、アルミナで形成されている。尚、ステージ11の材質は、アルミナに限られるものではなく、任意の材質を用いて形成することができる。そして、前記超音波アクチュエータ302は、このステージ11の裏面(ガイド12,12が設けられている側の面)に後述する駆動子308a,…,308b,…が当接するように配設されている。
前記超音波アクチュエータ302は、図12に示すように、振動を発生させるアクチュエータ本体4と、該アクチュエータ本体4の駆動力をステージ11に伝達させる駆動子308a,…,308b,…と、該アクチュエータ本体4を収容するケース5と、アクチュエータ本体4とケース5との間に介設されてアクチュエータ本体4を弾性的に支持する支持ゴム61,61と、アクチュエータ本体4を前記ステージ11に付勢するための付勢ゴム62とを備えている。この超音波アクチュエータ302が振動型アクチュエータを構成する(以下、同様)。
前記アクチュエータ本体4は、圧電素子ユニット40で構成されている。
前記圧電素子ユニット40は、略長方形状の互いに対向する一対の主面と、この主面と直交して該主面の長手方向に延びる、互いに対向する一対の長辺側面と、これら主面及び長辺側面の両方と直交して該主面の短手方向に延びる、互いに対向する一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。
この圧電素子ユニット40は、図3に示すように、5つの圧電体層(圧電素子)41,41,…と4つの内部電極層42,44,43,44とを交互に積層して構成される。内部電極層42,44,43,44は、積層方向に圧電体層41を介して交互に配された、第1給電電極層42と共通電極層44と第2給電電極層43と共通電極層44とで構成される。これら第1給電電極層42、第2給電電極層43及び共通電極層44,44のそれぞれは、各圧電体層41の主面上に印刷されている。
前記各圧電体層41は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などのセラミック材料からなる絶縁体層であって、前記圧電素子ユニット40と同様に、一対の主面と、一対の長辺側面と、一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。また、各圧電体層41には、その長辺側面のうち一方の長辺側面の長手方向中央部に外部電極45aが、一方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極46aが、他方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極47aがそれぞれ形成されている。
前記各共通電極層44は、圧電体層41の主面の略全面に亘って設けられた略長方形状をしている。また、各共通電極層44の一方の長辺部には、その長手方向中央部から圧電体層41の前記外部電極45aまで延びる引出電極44aが形成されている。
前記第1給電電極層42は、図4に示すように、圧電体層41の主面をその長手方向及び短手方向にそれぞれ2等分してなる4つの領域のうち該主面の対角線方向に位置する2対の領域のうち一方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第1電極42a,42bと、これら第1電極42a,42bを連結して導通させる導通電極42cとを有する。各第1電極42a(42b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。つまり、各第1電極42a(42b)は、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。また、第1電極42a,42bのうちの一方の第1電極42aには、圧電体層41の前記外部電極46aまで延びる引出電極42dが設けられている。
前記第2給電電極層43は、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する前記2対の領域のうち他方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第2電極43a,43bと、これら第2電極43a,43bを連結して導通させる導通電極43cとを有する。前記他方の対の領域のうち積層方向に見て前記第1電極42aの前記短手方向且つ前記第1電極42bの前記長手方向に隣接する領域に設けられる電極が第2電極43aであり、第1電極42aの該長手方向且つ第1電極42bの該短手方向に隣接する領域に設けられる電極が第2電極43bである。各第2電極43a(43b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。つまり、各第2電極43a(43b)は、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。また、第2電極43a,43bのうちの一方の第2電極43bには、圧電体層41の前記外部電極47aまで延びる引出電極43dが設けられている。
これら圧電体層41,41,…と内部電極層42,44,43,44とを交互に積層することで構成された圧電素子ユニット40においては、その一方の長辺側面の前記長手方向中央部に、各圧電体層41の外部電極45aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極45が形成されている。この外部電極45には、前記共通電極層44,44に形成された引出電極44a,44aが電気的に接続されている。同様に、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極46aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極46が形成されている。この外部電極46には、前記第1給電電極層42の引出電極42dが電気的に接続されている。また、圧電素子ユニット40の他方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極47aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極47が形成されている。この外部電極47には、前記第2給電電極層43の引出電極43dが電気的に接続されている。
そして、圧電素子ユニット40の長辺側面のうち他方の長辺側面、即ち、前記外部電極45aが設けられていない側の長辺側面(すなわち、後述する屈曲振動の振動方向を向く一対の面のうちの一方の面。以下、設置面ともいう)40aには、図12,13に示すように、6個の駆動子308a,…,308b,…が設けられている。
これら駆動子308a,…,308b,…は、球状の部材であって、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、タングステンカーバイド等で形成されている。また、駆動子308a,…,308b,…は、圧電素子ユニット40の設置面40aに対して接着剤82を介して点接触状に取り付けられている(図4参照)。ここで、「点接触状」とは、駆動子308a,…,308b,…と設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、駆動子308a,…,308b,…と設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該駆動子308a,…,308b,…と設置面40aとが実質的に点接触している状態も意味する。
接着剤82としては、圧電素子ユニット40の材料及び駆動子308a,308bの材料よりも柔らかいことが望ましい。具体的には、合成樹脂、特にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。このような材料を用いることにより圧電素子ユニット40の後述する振動をできるだけ阻害せずに駆動子308a,…,308b,…と設置面40aとの間の固定を実現することができる。
また、駆動子308a,…,308b,…が設けられた位置は、設置面40aにおいて、圧電素子ユニット40の長手方向両端部から該設置面40aの全長の30〜35%距離だけ内側に入った位置であり、即ち、圧電素子ユニット40の後述する屈曲振動の2次モードの腹の位置であって、振動が最も大きくなる位置である。そして、これら駆動子308a,…,308b,…は、屈曲振動の2次モードの前記2箇所の腹の位置のうち長手方向一側に配設された第1駆動子308a,308a,…からなる第1駆動子群308Aと、長手方向他側に配設された第2駆動子308b,308b,…からなる第2駆動子群308Bとに分けられる。
第1駆動子群308Aでは、図13に示すように、複数の第1駆動子308a,308a,…が圧電素子ユニット40の厚み方向(以下、直交方向ともいう)に配列されている。この直交方向は、圧電素子ユニット40の積層方向でもあり、第1駆動子308aが後述する周回運動を行う平面に直交する方向でもあり、圧電素子ユニット40の後述する屈曲振動の振動方向と縦振動の振動方向とに直交する方向でもある。このように、直交方向に配列された第1駆動子308a,308a,…は、全ての長手方向位置が同じわけではなく、長手方向位置が異なっている、即ち、長手方向にずれて配置されている。詳しくは、直交方向一端側から1番目と3番目の第1駆動子308a,308aは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向内側に所定量sだけずれた位置に配設される一方、直交方向一端側から2番目の第1駆動子308aは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向外側に所定量sだけずれた位置に配設されている。この直線Lは、屈曲振動の腹の部分を示している。つまり、1番目及び3番目の第1駆動子308a,308aと2番目の第1駆動子308aとは、屈曲振動の腹の部分からそれぞれ長手方向の反対側に同じずれ量sだけずれている。
また、これら第1駆動子308a,308a,…は、設置面40aの直交方向中心部を通り該直交方向に直交する(即ち、長手方向に延びる)直線に対して線対称な位置に配置されている。さらに、これら第1駆動子308a,308a,…は直交方向において互いに等間隔に配置されていて、より詳しくは、下記式(1)を満たす位置tに配置されている。
t={(2N−1)/(2n)}×T ・・・ (1)
ここで、
t:設置面40a上における直交方向の一端を基準としたときの直交方向の位置
n:直交方向に並ぶ駆動子の総数(本実施形態では、3個)
T:設置面40aの直交方向寸法(アクチュエータ本体4の厚み)
である。
すなわち、本実施形態では、直交方向の最も一端側(図13の下側)に位置する第1駆動子308aは、設置面40aの直交方向一端側の端縁からT/6の位置に、直交方向の一端側から2番目の第1駆動子308aは、設置面40aにおける直交方向中央に、直交方向の一端側から3番目の(図13の上側に位置する)第1駆動子308aは、設置面40aの直交方向一端側の端縁から5T/6の位置に配置されている。つまり、1番目の第1駆動子308aの位置と2番目の第1駆動子308aの位置との直交方向間隔及び、2番目の第1駆動子308aの位置と3番目の第1駆動子308aの位置との直交方向間隔は、それぞれT/3となっている。
一方、第2駆動子群308Bにおいても、第1駆動子群308Aと同様に、複数の第2駆動子308b,308b,…が圧電素子ユニット40の直交方向に配列されていると共に、それらの長手方向位置がずれている。さらに詳しくは、直交方向一端側から1番目と3番目の第2駆動子308b,308bは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向内側に所定量sだけずれた位置に配設される一方、直交方向一端側から2番目の第2駆動子308bは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向外側に所定量sだけずれた位置に配設されている。第2駆動子群308Bにおいても、この直線Lは屈曲振動の腹の部分を示している。
また、第2駆動子308b,308b,…は、直交方向位置についても、第1駆動子群308Aと同様に前記式(1)を満たすように配置されている。
つまり、第1駆動子308a,308a,…と第2駆動子308b,308b,…とは、設置面40aにおける長手方向中心部を中心に該長手方向に線対称な位置に、即ち、設置面40aにおける長手方向中心部を通り直交方向に延びる直線に対して線対称な位置に配置されている。
このように構成されたアクチュエータ本体4は、前記外部電極45をグランドに接続し、前記外部電極46に所定周波数の交流電圧を、前記外部電極47に該交流電圧と位相が90°ずれた交流電圧を印加することによって、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する一方の対の第1電極42a,42bと、他方の対の第2電極43a,43bとに互いに位相が90°ずれた交流電圧が印加され、その長手方向への縦振動(いわゆる、伸縮振動)とその短手方向への屈曲振動(いわゆる、横振動)とが誘起される。
縦振動の共振周波数及び屈曲振動の共振周波数はそれぞれ、アクチュエータ本体4、即ち、圧電素子ユニット40の材料、形状等により決定される。さらに、両共振周波数は、アクチュエータ本体4を支持する力及び支持する部分によっても影響を受ける。これらを考慮して、両共振周波数を略一致させ、その近傍の周波数の交流電圧を位相を90°ずらした状態で外部電極46,47のそれぞれに印加する。例えば、縦振動の1次モード(図6参照)の共振周波数と屈曲振動の2次モード(図7参照)の共振周波数とが一致するように圧電素子ユニット40の形状等を設計して、該共振周波数近傍の交流電圧を前述の如く、位相を90°ずらして印加することによって、圧電素子ユニット40には、縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとが調和的に誘起され、図8(a)、(b)、(c)、(d)に示す形状の変化を順番に起こす。
その結果、圧電素子ユニット40に設けられた各駆動子308a(308b)が該圧電素子ユニット40の主面と平行な平面、即ち、長手方向と短手方向とを含む平面(図8における紙面と平行な面)内で略楕円運動、即ち、周回運動を行う。
前記ケース5は、樹脂製であって、前記圧電素子ユニット40に対応した略直方体状の概略箱形状をしている。このケース5は、前記圧電素子ユニット40の主面と平行で且つ略長方形状の主壁部51と、該主壁部51の前記長手方向の一側(図12における左側)に位置する短辺部に設けられた第1短辺壁部52と、該主壁部51の該長手方向の他側(図12における右側)に位置する短辺部に設けられた第2短辺壁部53と、該主壁部51の前記短手方向の一側(図12における下側)に位置する長辺部に設けられた長辺壁部54とを有している。つまり、ケース5は、主壁部51に対向する側及び該主壁部51の該短手方向の他側(図12における上側)に位置する長辺部(圧電素子ユニット40の駆動子308a,…,308b,…が設けられた長辺側面に対応する部分)には壁部が設けられておらず、圧電素子ユニット40の積層方向(主壁部51の法線方向)の一側及び該短手方向の他側に開口した形状となっている。
このように構成されたケース5内に前記アクチュエータ本体4が収容されている。アクチュエータ本体4は、圧電素子ユニット40の一方の主面が主壁部51と対向し且つ圧電素子ユニット40の一方の長辺側面(前記外部電極45が設けられている側の長辺側面)が長辺壁部54と対向するようにしてケース5内に収容されている。このとき、駆動子308a,…,308b,…はケース5から前記短手方向の他側に突出している。また、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面とケース5の第1短辺壁部52との間および圧電素子ユニット40の他方の短辺側面とケース5の第2短辺壁部53との間にはそれぞれ支持ゴム61,61が介設されている。この圧電素子ユニット40の両短辺側面は縦振動の腹の部分であるが、支持ゴム61,61は弾性体であるため、圧電素子ユニット40の縦振動を阻害することなく、該圧電素子ユニット40を支持することができる。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4並びに第1及び第2短辺壁部52,53だけでなく、主壁部51の内側表面とも当接している。また、圧電素子ユニット40の一方の長辺側面とケース5の長辺壁部54との間には付勢ゴム62が介設されている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4及び長辺壁部54だけでなく、主壁部51の内側表面とも当接している。
そして、主壁部51の内側表面における、前記支持ゴム61,61及び付勢ゴム62が当接する部分には電極51a(付勢ゴム62と当接する電極のみ図示)が設けられているこれらの電極は、主壁部51の外側表面に設けられた端子電極(図示省略)にそれぞれ導通している。
前記各支持ゴム61は、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4をその長手方向に付勢した状態で弾性的に支持する。それと共に、支持ゴム61,61は、主壁部51の内側表面の該支持ゴム61,61の配設位置に対応する部分に設けられ且つ前記端子電極に導通する電極と圧電素子ユニット40の外部電極46,47とを導通させている。
また、前記付勢ゴム62も、支持ゴム61と同様に、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4をその短手方向(即ち、短手方向が付勢方向に相当する)に付勢するためのものである。それと共に、付勢ゴム62は、圧電素子ユニット40の外部電極45と主壁部51の内側表面の電極51aとを導通させている。この付勢ゴム62が付勢手段を構成する。
尚、これら支持ゴム61及び付勢ゴム62の代わりに、板バネ等の弾性部材を採用してもよい。
つまり、ケース5の外側表面に設けられた前記端子電極に給電することによって、圧電素子ユニット40に給電することができる。
このように構成された超音波アクチュエータ302は、図2に示すように、駆動子308a,…,308b,…がステージ11の裏面と当接するように配設されると共に、ケース5が基台(図示省略)に固定される。詳しくは、超音波アクチュエータ302は、圧電素子ユニット40の短手方向がステージ11の裏面に直交すると共に、圧電素子ユニット40の長手方向がステージ11の裏面と平行で且つガイド12,12と平行になるように配置される。さらに換言すれば、超音波アクチュエータ302は、圧電素子ユニット40の屈曲振動の方向がステージ11の裏面と直交すると共に、圧電素子ユニット40の縦振動の方向がガイド12,12と平行な方向を向くように配置される。
このとき、前記付勢ゴム62が圧縮変形しており、この付勢ゴム62の弾性力によって駆動子308a,…,308b,…がステージ11に付勢されている。超音波アクチュエータ302のステージ11への付勢力は、付勢ゴム62の弾性力によって決まる。
前記制御装置は、外部からの動作指令を受けて、その動作指令に応じた周波数の交流電圧を動作指令に応じた位相差で外部電極46,47に印加する。
制御装置は、前述の如く、アクチュエータ本体4、即ち、圧電素子ユニット40に縦振動と屈曲振動とを調和的に発生させて、駆動子308a,…,308b,…を図8に示すような周回運動させることで、ステージ11を移動させる。具体的には、圧電素子ユニット40の異常発熱を防止すべく、圧電素子ユニット40の縦振動と屈曲振動との共通の共振周波数よりも少し高い周波数の交流電圧が外部電極46,47に印加される。このとき、かかる交流電圧は、互いに位相が90°ずれた状態で外部電極46,47に印加される。
圧電素子ユニット40が、縦振動と屈曲振動との合成振動を行うと、駆動子308a,…,308b,…は圧電素子ユニット40の長手方向と短手方向とを含む平面内において略楕円運動を行う。こうすることで、駆動子308a,…,308b,…は、ステージ11との間の摩擦力の増大と緩和を周期的に繰り返しながら、ステージ11に対して摩擦力を介して圧電素子ユニット40の長手方向へ駆動力を付与しており、ステージ11はガイド12,12に沿って移動する。この圧電素子ユニット40の長手方向(ガイド12,12が延びる方向と一致する)が、駆動子308a,…,308b,…が駆動力を出力する方向である駆動方向に相当する。
以下に、超音波アクチュエータ302によるステージ11の駆動を、図9を参照してさらに詳しく説明する。圧電素子ユニット40が長手方向(縦振動の振動方向)に伸張するとき、一方(例えば、図9の左側)の第1駆動子308aは、図9(b)に示すように、短手方向(屈曲振動の振動方向)においてステージ11側の領域を変位するため、ステージ11との間の摩擦力が増大し、この摩擦力によってステージ11を該長手方向における該一方の第1駆動子308aが変位する側(図9の左側)へ移動させる。このとき、他方(図9の右側)の第2駆動子308bは、該長手方向において一方の第1駆動子308aとは逆向きに変位するが、該短手方向において反ステージ11側(ステージ11から離れる側)の領域を変位するため、ステージ11から離れて摩擦力が作用せず、ステージ11の移動にはほとんど影響を与えない。
一方、圧電素子ユニット40が長手方向に収縮するときは、他方(図9の右側)の第2駆動子308bは、図9(c)に示すように、短手方向においてステージ11側の領域を変位するため、ステージ11との間の摩擦力が増大し、この摩擦力によってステージ11を該長手方向における該他方の第2駆動子308bが変位する側(図9の左側)へ移動させる。この移動方向は、前述した、圧電素子ユニット40の伸張時における一方の第1駆動子308aによるステージ11の移動方向と同じである。このとき、一方(図9の左側)の第1駆動子308aは、該長手方向において他方の第2駆動子308bとは逆向きに変位するが、該短手方向において反ステージ11側の領域を変位するため、ステージ11から離れて摩擦力が作用せず、ステージ11の移動にはほとんど影響を与えない。
尚、図9においては、ステージ11の移動に影響を与えない方の駆動子308b(308a)はステージ11から離れているが、必ずしも離れている必要はない。すなわち、駆動子308b(308a)は、ステージ11を移動させない程度の摩擦力で該ステージ11に当接してる状態であってもよい。
こうして、第1駆動子308a,308a,…と第2駆動子308b,308b,…とは、位相が180°ずれた状態で交互にステージ11を所定の一方向へ移動させる。尚、前記交流電圧を位相を−90°ずらした状態で外部電極46,47に印加することによって、駆動子308a,…,308b,…が出力する駆動力を逆向きにすることができ、ステージ11を他方向へ移動させることができる。
尚、ステージ11の移動量、移動速度及び移動加速度は、外部電極46,47に給電する交流電圧の電圧値、周波数及び給電時間の少なくとも1つを調整する、又は外部電極46,47に給電する各交流電圧の位相のずれを変更する等によって調整することができる。
このように、超音波アクチュエータ302は、駆動子308a,…,308b,…に縦振動の振動方向(長手方向)と屈曲振動の振動方向(短手方向)とを含む平面内で周回運動させて駆動子308a,…,308b,…とステージ11との間の摩擦力の増大と緩和とを繰り返しながら、該ステージ11を駆動している。このとき、駆動子308a,…,308b,…とステージ11との間の摩擦力は、付勢ゴム62の付勢力によって増強されている。
このとき、図9に示すように、アクチュエータ本体4は、一方の長辺側面における長手方向中央部において付勢ゴム62から付勢力を受けている一方、他方の長辺側面における長手方向中央部よりも端部側の位置に設けられた駆動子308a,308bを介して該ステージ11から反力を受けている。その結果、付勢ゴム62の付勢力とステージ11からの反力とが、アクチュエータ本体4を屈曲振動の振動方向及び縦振動の振動方向を含む平面(即ち、駆動子308a,308bが周回運動を行う平面)内で回転させるモーメントとして作用する。例えば、図9(b)の場合にはアクチュエータ本体4を反時計回りに、図9(c)に示す場合にはアクチュエータ本体4を時計回りに回転させるモーメントが発生する。
そこで、本実施形態では、前述の如く、各駆動子群308A(308B)において、厚み方向に配列された複数の駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)を長手方向にずらして配置している。こうすることで、各駆動子群308A(308B)において、駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)とステージ11との当接部を長手方向へ拡げている。その結果、アクチュエータ本体4に前述のようなモーメントが作用したとしても、該モーメントを駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)で受け止めて、アクチュエータ本体4の姿勢が変化することを防止することができる。
したがって、本実施形態3によれば、複数の駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)を厚み方向に配列させて構成した駆動子群308A(308B)において、駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)の位置を長手方向にずらすことによって、駆動子308a,…,308b,…が周回運動をしてステージ11を駆動する際に、ステージ11からの反力と付勢ゴム62からの付勢力とによりアクチュエータ本体4に該アクチュエータ本体4を回転させるモーメントが作用しても、アクチュエータ本体4が回転することを規制して、アクチュエータ本体4のステージ11に対する姿勢を維持することができる。その結果、駆動子308a,…,308b,…とステージ11との当接状態を所望の当接状態に維持して、アクチュエータ本体4からステージ11へ所望の駆動力を出力させることができ、超音波アクチュエータ302の動作を安定させることができる。
それに加えて、駆動子308a,…,308b,…をアクチュエータ本体4の厚み方向に複数設けることによって、駆動子の個数が増える、即ち、駆動子とステージ11との当接面積が増えるため、超音波アクチュエータ302からステージ11へ付与される駆動力を大きくすることができる。
また、各駆動子群308A(308B)において長手方向にずれている駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)を、屈曲振動の腹の部分を挟んだ両側に該腹の部分から同じ距離sとなるようにずらすことによって、アクチュエータ本体4が屈曲振動及び縦振動を行う際に、長手方向にずらした駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)の屈曲振動による振幅が略同じになってステージ11に対して略同時に当接することになるため、ステージ11への駆動力の付与を安定して行うことができる。
さらに、各駆動子群308A(308B)において長手方向にずれている駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)を、直交方向において、屈曲振動の腹の部分を挟んで一側と他側とに交互に配置することによって、駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)の位置を長手方向にずらす構成であっても、駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)を均等に配置することができ、ステージ11に対してバランス良く当接させることができる。
また、駆動子308a,…,308b,…を、設置面40aにおいて、長手方向中心部を通り該長手方向に直交する(厚み方向に延びる)直線に対して線対称な位置に配置することによって、第1駆動子群308Aと第2駆動子群308Bとからステージ11に付与される駆動力を均等にすることができ、ステージ11を安定して駆動することができる。
さらに、駆動子308a,…,308b,…を前記式(1)を満たすように配置することによって、駆動子308a,…,308b,…それぞれの間の直交方向間隔を等間隔にすることができ、押圧力を各駆動子308a(308b)からステージ11へ均等に伝えることができる。
また、近年、電子機器の小型化にともない超音波アクチュエータ302も小型化が求められているが、超音波アクチュエータ302を小型化した場合、効率を低下させてしまう虞があった。すなわち、駆動子308a,…,308b,…の形状が相対的に大きくなってしまい、前述のようにアクチュエータ本体4の屈曲振動の腹の部分に駆動子308a,…,308b,…を設けた構成ではアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害してしまい、その結果、効率を低下させてしまう虞があった。
それに対し、本実施形態では、駆動子308a,…,308b,…の形状を球状とすることによって、駆動子308a,…,308b,…とアクチュエータ本体4の設置面40aとの接触面積を小さくでき、アクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することをさらに抑制することができる。その結果、超音波アクチュエータ302としての効率を向上させることができる。ここで、「球状」とは、厳密な球形状に限られず、駆動子308a(308b)が圧電素子ユニット40に対して概略点接触となるような実質的な球形状も含む意味である。
さらに、駆動子308a(308b)を球状とすることによって、円柱状の駆動子208a(208b)に比べて製造しやすいため、駆動子308a(308b)のコストを低減することができる。
《発明の実施形態4》
続いて、本発明の実施形態4に係る超音波アクチュエータについて説明する。
実施形態4では、駆動子の配置が実施形態3と異なる。そこで、実施形態3と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
詳しくは、第1駆動子群408Aでは、図14に示すように、第1駆動子408a,408a,…は、直交方向に延びる直線Lに対して傾斜した傾斜直線La上に配列されている。この傾斜直線Laは、直交方向一端側(図14の下側)が長手方向外側に、直交方向他端側(図14の上側)が長手方向内側に位置する向きに該直線Lに対して傾斜している。尚、直線Lは、実施形態3と同様に屈曲振動の腹の部分を示している。
また、直交方向一端側から1番目の第1駆動子408aは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向外側に所定量sだけずれた位置に、2番目の第1駆動子408aは、直線L上の位置に、3番目の第1駆動子408aは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向内側に所定量sだけずれた位置に配置されている。
第2駆動子群408Bでは、第2駆動子408b,408b,…は、直交方向に延びる直線Lに対して傾斜した傾斜直線Lb上に配列されている。この傾斜直線Lbは、直交方向一端側(図14の下側)が長手方向内側に、直交方向他端側(図14の上側)が長手方向外側に位置するように直線Lに対して傾斜している。つまり、傾斜直線Lbは、直線Lに対して傾斜する向きが傾斜直線Laと同じになっていている。さらに、傾斜直線Laと傾斜直線Lbとは、直線Lに対して傾斜する傾斜角度の大きさはα°で同じであり、即ち、互いに平行になっている。
また、直交方向一端側から1番目の第2駆動子408bは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向内側に所定量sだけずれた位置に、2番目の第2駆動子408bは、直線L上の位置に、3番目の第2駆動子408bは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向外側に所定量sだけずれた位置に配置されている。
このように配設された第1駆動子408a,408a,…と第2駆動子408b,408b,…の直交方向位置は、実施形態3と同様に、前記式(1)を満たす位置に配置されている。
換言すれば、第1駆動子408a,408a,…と第2駆動子408b,408b,…とは、設置面40aにおける長手方向及び直交方向の中心部を中心に180°回転させた点対称な位置に配置されている。
したがって、実施形態4によれば、実施形態3と同様に、複数の駆動子408a,408a,…(408b,408b,…)を厚み方向に配列させて構成した駆動子群408A(408B)において、駆動子408a,408a,…(408b,408b,…)の位置を長手方向にずらすことによって、駆動子408a,…,408b,…が周回運動をしてステージ11を駆動する際に、ステージ11からの反力と付勢ゴム62からの付勢力とによりアクチュエータ本体4に該アクチュエータ本体4を回転させるモーメントが作用しても、アクチュエータ本体4が回転することを規制して、アクチュエータ本体4のステージ11に対する姿勢を維持することができる。その結果、アクチュエータ本体4からステージ11へ所望の駆動力を出力することができ、超音波アクチュエータの動作を安定させることができる。
また、アクチュエータ本体4の1次モードの縦振動は、アクチュエータ本体4の長手方向中心ほど小さく、長手方向端部側ほど大きくなる。そのため、駆動子408a,408a,…(408b,408b,…)を厚み方向に対して傾斜させて配列すると、駆動子408a(408b)ごとに長手方向位置が異なり、つまりは、縦振動の大きさが異なる。ところが、第1駆動子群408Aの第1駆動子408a,408a,…の配列方向(傾斜直線La)と第2駆動子群408Bの第2駆動子408b,408b,…の配列方向(傾斜直線Lb)とを平行にすることによって、アクチュエータ本体4の設置面40a上において厚み方向一端側には、直線Lよりも長手方向外側に位置して縦振動が相対的に大きい第1駆動子408aと直線Lよりも長手方向内側に位置して縦振動が相対的に小さい第2駆動子408bとが位置する一方、厚み方向他端側には、直線Lよりも長手方向内側に位置して縦振動が相対的に小さい第1駆動子408aと直線Lよりも長手方向外側に位置して縦振動が相対的に大きい第2駆動子408bとが位置することになり、駆動子408a,…,408b,…の振動の大きさが厚み方向中心部を中心として該厚み方向に線対称な分布となる。その結果、アクチュエータ本体4の縦振動の振動方向(即ち、長手方向)に沿った駆動力を出力することができ、ステージ11を安定して駆動することができる。
その他、実施形態3と同様の作用・効果を奏することができる。
尚、本実施形態4では、各駆動子群408A(408B)における複数の駆動子408a,408a,…(408b,408b,…)は直線上に配列されているが、これに限られるものではなく、曲線上に配列される構成であってもよい。
《発明の実施形態5》
続いて、本発明の実施形態5に係る超音波アクチュエータについて説明する。
実施形態5では、駆動子の配列方向の傾斜する向きが実施形態4と異なる。
詳しくは、第1駆動子群508Aでは、図15に示すように、第1駆動子508a,508a,…は、直線Lに対して傾斜した傾斜直線La上に配列されている。この傾斜直線Laは、直交方向一端側(図15の下側)が長手方向外側に、直交方向他端側(図15の上側)が長手方向内側に位置する向きに直線Lに対して傾斜している。
また、直交方向一端側から1番目の第1駆動子508aは、直線Lに対して長手方向外側に所定量sだけずれた位置に、2番目の第1駆動子508aは、直線L上の位置に、3番目の第1駆動子508aは、直線Lに対して長手方向内側に所定量sだけずれた位置に配置されている。
第2駆動子群508Bでは、第2駆動子508b,508b,…は、直線Lに対して傾斜した傾斜直線Lb上の配列されている。この傾斜直線Lbは、直交方向一端側(図15の下側)が長手方向外側に、直交方向他端側(図15の上側)が長手方向内側に位置する向きに直線Lに対して傾斜している。つまり、傾斜直線Lbは、直線Lに対して傾斜する向きが傾斜直線Laと反対になっており、傾斜直線Laと傾斜直線Lbとはハ字状になっている。尚、傾斜直線Laと傾斜直線Lbとは、直交方向に対して傾斜する向きが反対であるが、傾斜角度の大きさはα°で同じである。
また、直交方向一端側から1番目の第2駆動子508bは、直線Lに対して長手方向外側に所定量sだけずれた位置に、2番目の第2駆動子508bは、直線L上の位置に、3番目の第2駆動子508bは、直線Lに対して長手方向内側に所定量sだけずれた位置に配置されている。
第1駆動子508a,508a,…と第2駆動子508b,508b,…の直交方向位置は、実施形態3と同様に、前記式(1)を満たす位置に配置されている。
このように、第1駆動子508a,508a,…と第2駆動子508b,508b,…とは、設置面40aにおける長手方向中心部を中心に該長手方向に線対称な位置に、即ち、設置面40aにおける長手方向中心部を通り直交方向に延びる直線に対して線対称な位置に配置されている。
したがって、実施形態5によれば、実施形態4と同様に、複数の駆動子508a,508a,…(508b,508b,…)を厚み方向に配列させて構成した駆動子群508A(508B)において、駆動子508a,508a,…(508b,508b,…)の位置を長手方向にずらすことによって、駆動子508a,…,508b,…が周回運動をしてステージ11を駆動する際に、ステージ11からの反力と付勢ゴム62からの付勢力とによりアクチュエータ本体4に該アクチュエータ本体4を回転させるモーメントが作用しても、アクチュエータ本体4が回転することを規制して、アクチュエータ本体4のステージ11に対する姿勢を維持することができる。その結果、アクチュエータ本体4からステージ11へ所望の駆動力を出力することができ、超音波アクチュエータの動作を安定させることができる。
また、各駆動子群508A(508B)において、駆動子508a,508a,…(508b,508b,…)の配列方向を厚み方向に対して傾斜させると、該駆動子508a,508a,…(508b,508b,…)から出力される駆動力はその配列方向に直交する方向に傾斜しやすくなり、アクチュエータ本体4が傾く傾向にあるが、第1駆動子群508Aの第1駆動子508a,508a,…の配列方向と第2駆動子群508Bの第2駆動子508b,508b,…の配列方向とを厚み方向に対して反対の向きに傾斜させることによって、アクチュエータ本体4の傾きを抑制することができる。
その他、実施形態4と同様の作用・効果を奏することができる。
《発明の実施形態6》
続いて、本発明の実施形態6に係る超音波アクチュエータ602について説明する。
実施形態6に係る超音波アクチュエータ602は、駆動子608a(608b)の形状が円柱状である点で、駆動子が球状である前記実施形態3〜5と異なる。そこで実施形態3と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
詳しくは、超音波アクチュエータ602では、図16,17に示すように、圧電素子ユニット40の設置面40aにおける2次モードの屈曲振動の2箇所の腹の位置に、駆動子群608A,608Bが設けられている。これら駆動子群608A,608Bは、それぞれ2つの第1駆動子608a,608aと第2駆動子608b,608bとで構成されている。これら駆動子608a,…,608b,…はそれぞれ同じ円柱状をしている。
各駆動子608a(608b)は実施形態3と同様の接着剤82にて圧電素子ユニット40に固定されている。こうして、各駆動子608a(608b)は、圧電素子ユニット40の設置面40aに対して線接触状に取り付けられている。ここで、「線接触状」とは、駆動子608a(608b)と設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、駆動子608a(608b)と設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該駆動子608a(608b)と設置面40aとが実質的に線接触している状態も意味する。また、「円柱状」とは、厳密な円柱形状に限られず、駆動子608a(608b)が設置面40aに対して概略線接触となるような実質的な円柱形状も含む意味である。
第1駆動子群608Aでは、第1駆動子608a,608aが、直線Lに対して傾斜した傾斜直線La上に配列されている。同様に、第2駆動子群608Bでは、第2駆動子608b,608bが、直線Lに対して傾斜した傾斜直線Lb上に配列されている。これら傾斜直線Laと傾斜直線Lbとは、直線Lに対して傾斜する向きが反対になっていて、ハ字状になっている。
また、各駆動子608a(608b)は、その円柱の軸が厚み方向を向くように配設されている。換言すれば、各駆動子608a(608b)は、それぞれの円柱の軸が該駆動子608a(608b)が周回運動を行う平面に対して直交するように延びている。ただし、各駆動子608a(608b)を傾斜直線La(Lb)に沿った方向を向くように配設してもよい。
さらに、各駆動子群608A(608B)において、駆動子608a,608a(608b,608b)は、屈曲振動の腹の部分を挟んで長手方向の両側に該腹の部分から同じ距離sだけずれた位置に設けられている。
さらにまた、駆動子608a,…,608b,…の厚み方向位置は、前記式(1)を満たす位置となっている。すなわち、本実施形態では、厚み方向の最も一端側(図17の下側)に位置する第1駆動子608aは、設置面40aの厚み方向一端側の端縁からT/4の位置に、厚み方向の一端側から最も離れた(図17の上側に位置する)第1駆動子608aは、設置面40aの厚み方向一端側の端縁から3T/4の位置に配置されている。
したがって、実施形態6によれば、各駆動子608a(608b)を球状ではなく円柱状とした場合であっても、複数の駆動子608a,608a(608b,608b)を厚み方向に配列させて構成した駆動子群608A(608B)において、駆動子608a,608a(608b,608b)の位置を長手方向にずらすことによって、駆動子608a,…,608b,…が周回運動をしてステージ11を駆動する際に、ステージ11からの反力と付勢ゴム62からの付勢力とによりアクチュエータ本体4に該アクチュエータ本体4を回転させるモーメントが作用しても、アクチュエータ本体4が回転することを規制して、アクチュエータ本体4のステージ11に対する姿勢を維持することができる。その結果、アクチュエータ本体4からステージ11へ所望の駆動力を出力することができ、超音波アクチュエータ602の動作を安定させることができる。
また、駆動子608a(608b)の形状を円柱状とすることによって、各駆動子608a(608b)と設置面40aとの接触面積を小さくしてアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができると共に、該各駆動子608a(608b)をその円柱の軸がアクチュエータ本体4の屈曲振動の振動方向と縦振動の振動方向とに直交する方向を向くように、即ち、アクチュエータ本体4が屈曲振動を行う平面に対して直交する方向を向くように配設して設置面40aに取り付けることによって、アクチュエータ本体4の屈曲振動の阻害をさらに抑制することができる。
その他、実施形態3,5と同様の作用・効果を奏することができる。
尚、本実施形態では、各駆動子群608A(608B)に含まれる駆動子608a(608b)の個数を2個としたが、これに限られるものく、3個以上であってもよい。
また、第1駆動子群608Aの第1駆動子608a,608aの配列方向と第2駆動子群608Bの第2駆動子608b,608bの配列方向とが、厚み方向に対して反対向きに傾斜して、ハ字状となっているが、これに限られるものではなく、前記実施形態4のように両配列方向を厚み方向に対して同じ向きに傾斜させてもよい。かかる場合、実施形態4と同様の作用・効果を奏することができる。
《発明の実施形態7》
続いて、本発明の実施形態7に係る超音波アクチュエータについて説明する。
実施形態7に係る超音波アクチュエータは、前記実施形態3〜6のような厚み方向に配列された複数の駆動子からなる駆動子群を備えておらず、駆動子群の代わりに柱状の駆動子708a(708b)を備えている点で実施形態3〜6と異なる。そこで実施形態3と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
実施形態7に係る超音波アクチュエータでは、図18に示すように、アクチュエータ本体4の設置面40a上において、長手方向の異なる位置、詳しくは、屈曲振動の腹の部分のうちの長手方向内方の2箇所に2つの第1及び第2駆動子708a,708bが設けられている。
各駆動子708a(708b)は、円柱状で構成され、その円柱の軸Xa(Xb)がアクチュエータ本体4の厚み方向に対して傾斜するように配設されている。詳しくは、第1駆動子708aは、その軸方向一端部(図18の下側)が直線Lよりもアクチュエータ本体4の長手方向外側に位置する一方、その軸方向他端部(図18の上側)が直線Lよりもアクチュエータ本体4の長手方向内側に位置するように配設されている。また、第2駆動子708bは、その軸方向一端部(図18の下側)が直線Lよりもアクチュエータ本体4の長手方向外側に位置する一方、その軸方向他端部(図18の上側)が直線Lよりもアクチュエータ本体4の長手方向内側に位置するように配設されている。つまり、第1駆動子708aと第2駆動子708bとは設置面40a上においてハ字状に配置されている。
また、第1駆動子708aと第2駆動子708bとは、直線Lに対して傾斜する向きが反対であるが、傾斜角度の大きさはβ°で同じである。
こうして、第1駆動子708aと第2駆動子708bとは、設置面40aにおける長手方向中心部を中心に該長手方向に線対称な位置に、即ち、設置面40aにおける長手方向中心部を通り直交方向に延びる直線に対して線対称な位置に配置されている。
したがって、本実施形態7によれば、駆動子を柱状に形成して、厚み方向に対して傾斜させて配置することによって、駆動子とステージ11との当接部を長手方向に拡げることができる。そのため、駆動子708a,708bが周回運動をしてステージ11を駆動する際に、ステージ11からの反力と付勢ゴム62からの付勢力とによりアクチュエータ本体4に該アクチュエータ本体4を回転させるモーメントが作用しても、アクチュエータ本体4が回転することを規制して、アクチュエータ本体4のステージ11に対する姿勢を維持することができる。その結果、アクチュエータ本体4からステージ11へ所望の駆動力を出力することができ、超音波アクチュエータの動作を安定させることができる。
また、駆動子708a,708bを円柱状に形成することによって、駆動子708a,708bと設置面40aとの接触部が線接触状になるため、駆動子708a,708bをアクチュエータ本体4の屈曲振動の振動方向を向く面に設ける構成であっても、駆動子708a,708bと設置面40aとの接触面積を小さくしてアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができる。
さらに、前記実施形態3〜6のように、複数の駆動子で構成される駆動子群ではなく、1つの柱状の駆動子708a(708b)によって超音波アクチュエータの安定した動作を実現することができるため、コストを削減することができると共に、部品点数を削減して組立性を向上させることができる。
尚、駆動子708a,708bは、前述の如く、直線Lに対して傾斜する向きを反対にしてハ字状に配置するものに限られるものではない。すなわち、駆動子708a,708bは、その円柱の軸Xa,Xbが直線Lに対して傾斜していればよく、例えば、直線Lに対して同じ向きに傾斜するように配置してもよく、さらには、図19に示すように、駆動子708a,708bは、その軸Xa,Xbが互いに平行になるように配置してもよい。
《発明の実施形態8》
本発明の実施形態8に係る駆動装置1は、実施形態1に係る駆動装置1と基本的には同様の構成をしている。詳しくは、実施形態8に係る駆動装置1は、図2に示すような、ステージ11と、超音波アクチュエータ802と、該超音波アクチュエータ802を駆動制御する制御装置(図示省略)とを備えている。
ステージ11は、互いに平行な状態で固定体としての基台(図示省略)上に固定されたガイド12,12に摺動可能に取り付けられている。つまり、ステージ11は、ガイド12,12が延びる方向に沿って移動可能に構成されている。このステージ11が可動体を構成する。これらガイド12,12の延びる方向がステージ11の可動方向となる。このステージ11は、平面視略方形の板状部材であって、アルミナで形成されている。尚、ステージ11の材質は、アルミナに限られるものではなく、任意の材質を用いて形成することができる。そして、前記超音波アクチュエータ802は、このステージ11の裏面(ガイド12,12が設けられている側の面)に後述する駆動子808a,…,808b,…が当接するように配設されている。
前記超音波アクチュエータ802は、図20に示すように、振動を発生させるアクチュエータ本体4と、該アクチュエータ本体4の駆動力をステージ11に伝達させる駆動子808a,…,808b,…と、該アクチュエータ本体4を収容するケース5と、アクチュエータ本体4とケース5との間に介設されてアクチュエータ本体4を弾性的に支持する支持ゴム61,61と、アクチュエータ本体4を前記ステージ11に付勢するための付勢ゴム62とを備えている。この超音波アクチュエータ802が振動型アクチュエータを構成する(以下、同様)。
前記アクチュエータ本体4は、圧電素子ユニット40で構成されている。
前記圧電素子ユニット40は、略長方形状の互いに対向する一対の主面と、この主面と直交して該主面の長手方向に延びる、互いに対向する一対の長辺側面と、これら主面及び長辺側面の両方と直交して該主面の短手方向に延びる、互いに対向する一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。
この圧電素子ユニット40は、図3に示すように、5つの圧電体層(圧電素子)41,41,…と4つの内部電極層42,44,43,44とを交互に積層して構成される。内部電極層42,44,43,44は、積層方向に圧電体層41を介して交互に配された、第1給電電極層42と共通電極層44と第2給電電極層43と共通電極層44とで構成される。これら第1給電電極層42、第2給電電極層43及び共通電極層44,44のそれぞれは、各圧電体層41の主面上に印刷されている。
前記各圧電体層41は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などのセラミック材料からなる絶縁体層であって、前記圧電素子ユニット40と同様に、一対の主面と、一対の長辺側面と、一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。また、各圧電体層41には、その長辺側面のうち一方の長辺側面の長手方向中央部に外部電極45aが、一方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極46aが、他方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極47aがそれぞれ形成されている。
前記各共通電極層44は、圧電体層41の主面の略全面に亘って設けられた略長方形状をしている。また、各共通電極層44の一方の長辺部には、その長手方向中央部から圧電体層41の前記外部電極45aまで延びる引出電極44aが形成されている。
前記第1給電電極層42は、図4に示すように、圧電体層41の主面をその長手方向及び短手方向にそれぞれ2等分してなる4つの領域のうち該主面の対角線方向に位置する2対の領域のうち一方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第1電極42a,42bと、これら第1電極42a,42bを連結して導通させる導通電極42cとを有する。各第1電極42a(42b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。つまり、各第1電極42a(42b)は、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。また、第1電極42a,42bのうちの一方の第1電極42aには、圧電体層41の前記外部電極46aまで延びる引出電極42dが設けられている。
前記第2給電電極層43は、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する前記2対の領域のうち他方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第2電極43a,43bと、これら第2電極43a,43bを連結して導通させる導通電極43cとを有する。前記他方の対の領域のうち積層方向に見て前記第1電極42aの前記短手方向且つ前記第1電極42bの前記長手方向に隣接する領域に設けられる電極が第2電極43aであり、第1電極42aの該長手方向且つ第1電極42bの該短手方向に隣接する領域に設けられる電極が第2電極43bである。各第2電極43a(43b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。つまり、各第2電極43a(43b)は、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。また、第2電極43a,43bのうちの一方の第2電極43bには、圧電体層41の前記外部電極47aまで延びる引出電極43dが設けられている。
これら圧電体層41,41,…と内部電極層42,44,43,44とを交互に積層することで構成された圧電素子ユニット40においては、その一方の長辺側面の前記長手方向中央部に、各圧電体層41の外部電極45aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極45が形成されている。この外部電極45には、前記共通電極層44,44に形成された引出電極44a,44aが電気的に接続されている。同様に、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極46aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極46が形成されている。この外部電極46には、前記第1給電電極層42の引出電極42dが電気的に接続されている。また、圧電素子ユニット40の他方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極47aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極47が形成されている。この外部電極47には、前記第2給電電極層43の引出電極43dが電気的に接続されている。
そして、圧電素子ユニット40の長辺側面のうち他方の長辺側面、即ち、前記外部電極45aが設けられていない側の長辺側面(すなわち、後述する屈曲振動の振動方向を向く一対の面のうちの一方の面。以下、設置面ともいう)40aには、図20,21に示すように、6個の駆動子808a,…,808b,…が設けられている。
これら駆動子808a,…,808b,…は、球状の部材であって、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、タングステンカーバイド等で形成されている。また、駆動子808a,…,808b,…は、圧電素子ユニット40の設置面40aに対して接着剤82を介して点接触状に取り付けられている(図4参照)。ここで、「点接触状」とは、駆動子808a,…,808b,…と設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、駆動子808a,…,808b,…と設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該駆動子808a,…,808b,…と設置面40aとが実質的に点接触している状態も意味する。
接着剤82としては、圧電素子ユニット40の材料及び駆動子808a,808bの材料よりも柔らかいことが望ましい。具体的には、合成樹脂、特にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。このような材料を用いることにより圧電素子ユニット40の後述する振動をできるだけ阻害せずに駆動子808a,…,808b,…と設置面40aとの間の固定を実現することができる。
また、駆動子808a,…,808b,…が設けられた位置は、設置面40aにおいて、圧電素子ユニット40の長手方向両端部から該設置面40aの全長の30〜35%距離だけ内側に入った位置(図21中の直線Lで示す位置)であり、即ち、圧電素子ユニット40の後述する屈曲振動の2次モードの腹の位置であって、振動が最も大きくなる位置である。そして、これら駆動子808a,…,808b,…は、屈曲振動の2次モードの前記2箇所の腹の位置のうち長手方向一側に配設された駆動子808a,808a,…からなる駆動子群808Aと、長手方向他側に配設された駆動子808b,808b,…からなる駆動子群808Bとに分けられる。
ここで、駆動子群808A,808Bにおける駆動子808a,…,808b,…の配置について説明する。ただし、駆動子群808Aと駆動子群808Bとでは、設置面40aにおける長手方向位置が異なるだけでその他の構成は同様であるため、以下では駆動子群808Aについてのみ説明し、駆動子群808Bの説明は省略する。
駆動子群808Aでは、図21に示すように、駆動子808a,808a,…が圧電素子ユニット40の厚み方向(以下、直交方向ともいう)において異なる位置に設けられている。この直交方向は、圧電素子ユニット40の積層方向でもあり、駆動子808aが後述する周回運動を行う平面に直交する方向でもあり、圧電素子ユニット40の後述する屈曲振動の振動方向と縦振動の振動方向とに直交する方向でもある。このように、直交方向の異なる位置に設けられた駆動子808a,808a,…は、直交方向に延びる直線L上に並んで設けられている。
また、これら駆動子808a,808a,…は、設置面40aの直交方向中心部を通り該直交方向に直交する(即ち、長手方向に延びる)直線に対して線対称な位置に配置されている。さらに、これら駆動子808a,808a,…は直交方向において互いに等間隔に配置されていて、より詳しくは、下記式(1)を満たす位置tに配置されている。
t={(2N−1)/(2n)}×T ・・・ (1)
ここで、
t:設置面40a上における直交方向の一端を基準としたときの直交方向の位置
n:直交方向に並ぶ駆動子の総数
T:設置面40aの直交方向寸法(アクチュエータ本体4の厚み)
である。
すなわち、本実施形態では、直交方向の最も一端側(図21の下側)に位置する駆動子808aは、設置面40aの直交方向一端側の端縁からT/6の位置に、直交方向の一端側から2番目の駆動子808aは、設置面40aにおける直交方向中央に、直交方向の一端側から3番目の(図21の上側に位置する)駆動子808aは、設置面40aの直交方向一端側の端縁から5T/6の位置に配置されている。つまり、1番目の駆動子808aの位置と2番目の駆動子808aの位置との間隔及び、2番目の駆動子808aの位置と3番目の駆動子808aの位置との間隔は、それぞれT/3となっている。
このように構成されたアクチュエータ本体4は、前記外部電極45をグランドに接続し、前記外部電極46に所定周波数の交流電圧を、前記外部電極47に該交流電圧と位相が90°ずれた交流電圧を印加することによって、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する一方の対の第1電極42a,42bと、他方の対の第2電極43a,43bとに互いに位相が90°ずれた交流電圧が印加され、その長手方向への縦振動(いわゆる、伸縮振動)とその短手方向への屈曲振動(いわゆる、横振動)とが誘起される。
縦振動の共振周波数及び屈曲振動の共振周波数はそれぞれ、アクチュエータ本体4、即ち、圧電素子ユニット40の材料、形状等により決定される。さらに、両共振周波数は、アクチュエータ本体4を支持する力及び支持する部分によっても影響を受ける。これらを考慮して、両共振周波数を略一致させ、その近傍の周波数の交流電圧を位相を90°ずらした状態で外部電極46,47のそれぞれに印加する。例えば、縦振動の1次モード(図6参照)の共振周波数と屈曲振動の2次モード(図7参照)の共振周波数とが一致するように圧電素子ユニット40の形状等を設計して、該共振周波数近傍の交流電圧を前述の如く、位相を90°ずらして印加することによって、圧電素子ユニット40には、縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとが調和的に誘起され、図8(a)、(b)、(c)、(d)に示す形状の変化を順番に起こす。
その結果、圧電素子ユニット40に設けられた各駆動子808a(808b)が該圧電素子ユニット40の主面と平行な平面、即ち、長手方向と短手方向とを含む平面(図8における紙面と平行な面)内で略楕円運動、即ち、周回運動を行う。
前記ケース5は、樹脂製であって、前記圧電素子ユニット40に対応した略直方体状の概略箱形状をしている。このケース5は、前記圧電素子ユニット40の主面と平行で且つ略長方形状の主壁部51と、該主壁部51の前記長手方向の一側(図20における左側)に位置する短辺部に設けられた第1短辺壁部52と、該主壁部51の該長手方向の他側(図20における右側)に位置する短辺部に設けられた第2短辺壁部53と、該主壁部51の前記短手方向の一側(図20における下側)に位置する長辺部に設けられた長辺壁部54とを有している。つまり、ケース5は、主壁部51に対向する側及び該主壁部51の該短手方向の他側(図20における上側)に位置する長辺部(圧電素子ユニット40の駆動子808a,…,808b,…が設けられた長辺側面に対応する部分)には壁部が設けられておらず、圧電素子ユニット40の積層方向(主壁部51の法線方向)の一側及び該短手方向の他側に開口した形状となっている。
このように構成されたケース5内に前記アクチュエータ本体4が収容されている。アクチュエータ本体4は、圧電素子ユニット40の一方の主面が主壁部51と対向し且つ圧電素子ユニット40の一方の長辺側面(前記外部電極45が設けられている側の長辺側面)が長辺壁部54と対向するようにしてケース5内に収容されている。このとき、駆動子808a,…,808b,…はケース5から前記短手方向の他側に突出している。また、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面とケース5の第1短辺壁部52との間および圧電素子ユニット40の他方の短辺側面とケース5の第2短辺壁部53との間にはそれぞれ支持ゴム61,61が介設されている。この圧電素子ユニット40の両短辺側面は縦振動の腹の部分であるが、支持ゴム61,61は弾性体であるため、圧電素子ユニット40の縦振動を阻害することなく、該圧電素子ユニット40を支持することができる。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4並びに第1及び第2短辺壁部52,53だけでなく、主壁部51の内側表面とも当接している。また、圧電素子ユニット40の一方の長辺側面とケース5の長辺壁部54との間には付勢ゴム62が介設されている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4及び長辺壁部54だけでなく、主壁部51の内側表面とも当接している。
そして、主壁部51の内側表面における、前記支持ゴム61,61及び付勢ゴム62が当接する部分には電極51a(付勢ゴム62と当接する電極のみ図示)が設けられているこれらの電極は、主壁部51の外側表面に設けられた端子電極(図示省略)にそれぞれ導通している。
前記各支持ゴム61は、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4をその長手方向に付勢した状態で弾性的に支持する。それと共に、支持ゴム61,61は、主壁部51の内側表面の該支持ゴム61,61の配設位置に対応する部分に設けられ且つ前記端子電極に導通する電極と圧電素子ユニット40の外部電極46,47とを導通させている。
また、前記付勢ゴム62も、支持ゴム61と同様に、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4をその短手方向(即ち、短手方向が付勢方向に相当する)に付勢するためのものである。それと共に、付勢ゴム62は、圧電素子ユニット40の外部電極45と主壁部51の内側表面の電極51aとを導通させている。
尚、これら支持ゴム61及び付勢ゴム62の代わりに、板バネ等の弾性部材を採用してもよい。
つまり、ケース5の外側表面に設けられた前記端子電極に給電することによって、圧電素子ユニット40に給電することができる。
このように構成された超音波アクチュエータ802は、図2に示すように、駆動子808a,…,808b,…がステージ11の裏面と当接するように配設されると共に、ケース5が基台(図示省略)に固定される。詳しくは、超音波アクチュエータ802は、圧電素子ユニット40の短手方向がステージ11の裏面に直交すると共に、圧電素子ユニット40の長手方向がステージ11の裏面と平行で且つガイド12,12と平行になるように配置される。さらに換言すれば、超音波アクチュエータ802は、圧電素子ユニット40の屈曲振動の方向がステージ11の裏面と直交すると共に、圧電素子ユニット40の縦振動の方向がガイド12,12と平行な方向を向くように配置される。
このとき、前記付勢ゴム62が圧縮変形しており、この付勢ゴム62の弾性力によって駆動子808a,…,808b,…がステージ11に付勢されている。超音波アクチュエータ802のステージ11への付勢力は、付勢ゴム62の弾性力によって決まる。
前記制御装置は、外部からの動作指令を受けて、その動作指令に応じた周波数の交流電圧を動作指令に応じた位相差で外部電極46,47に印加する。
制御装置は、前述の如く、アクチュエータ本体4、即ち、圧電素子ユニット40に縦振動と屈曲振動とを調和的に発生させて、駆動子808a,…,808b,…を図8に示すような周回運動させることで、ステージ11を移動させる。具体的には、圧電素子ユニット40の異常発熱を防止すべく、圧電素子ユニット40の縦振動と屈曲振動との共通の共振周波数よりも少し高い周波数の交流電圧が外部電極46,47に印加される。このとき、かかる交流電圧は、互いに位相が90°ずれた状態で外部電極46,47に印加される。
圧電素子ユニット40が、縦振動と屈曲振動との合成振動を行うと、駆動子808a,…,808b,…は圧電素子ユニット40の長手方向と短手方向とを含む平面内において略楕円運動を行う。こうすることで、駆動子808a,…,808b,…は、ステージ11との間の摩擦力の増大と緩和を周期的に繰り返しながら、ステージ11に対して摩擦力を介して圧電素子ユニット40の長手方向へ駆動力を付与しており、ステージ11はガイド12,12に沿って移動する。この圧電素子ユニット40の長手方向(ガイド12,12が延びる方向と一致する)が、駆動子808a,…,808b,…が駆動力を出力する方向である駆動方向に相当する。
以下に、超音波アクチュエータ802によるステージ11の駆動を、図9を参照してさらに詳しく説明する。圧電素子ユニット40が長手方向(縦振動の振動方向)に伸張するとき、一方(例えば、図9の左側)の駆動子808aは、図9(b)に示すように、短手方向(屈曲振動の振動方向)においてステージ11側の領域を変位するため、ステージ11との間の摩擦力が増大し、この摩擦力によってステージ11を該長手方向における該一方の駆動子808aが変位する側(図9の左側)へ移動させる。このとき、他方(図9の右側)の駆動子808bは、該長手方向において一方の駆動子808aとは逆向きに変位するが、該短手方向において反ステージ11側(ステージ11から離れる側)の領域を変位するため、ステージ11から離れて摩擦力が作用せず、ステージ11の移動にはほとんど影響を与えない。
一方、圧電素子ユニット40が長手方向に収縮するときは、他方(図9の右側)の駆動子808bは、図9(c)に示すように、短手方向においてステージ11側の領域を変位するため、ステージ11との間の摩擦力が増大し、この摩擦力によってステージ11を該長手方向における該他方の駆動子808bが変位する側(図9の左側)へ移動させる。この移動方向は、前述した、圧電素子ユニット40の伸張時における一方の駆動子808aによるステージ11の移動方向と同じである。このとき、一方(図9の左側)の駆動子808aは、該長手方向において他方の駆動子808bとは逆向きに変位するが、該短手方向において反ステージ11側の領域を変位するため、ステージ11から離れて摩擦力が作用せず、ステージ11の移動にはほとんど影響を与えない。
尚、図9においては、ステージ11の移動に影響を与えない方の駆動子808b(808a)はステージ11から離れているが、必ずしも離れている必要はない。すなわち、駆動子808b(808a)は、ステージ11を移動させない程度の摩擦力で該ステージ11に当接してる状態であってもよい。
こうして、駆動子808a,808a,…と駆動子808b,808b,…とは、位相が180°ずれた状態で交互にステージ11を所定の一方向へ移動させる。尚、前記交流電圧を位相を−90°ずらした状態で外部電極46,47に印加することによって、駆動子808a,…,808b,…が出力する駆動力を逆向きにすることができ、ステージ11を他方向へ移動させることができる。
尚、ステージ11の移動量、移動速度及び移動加速度は、外部電極46,47に給電する交流電圧の電圧値、周波数及び給電時間の少なくとも1つを調整する、又は外部電極46,47に給電する各交流電圧の位相のずれを変更する等によって調整することができる。
このように、超音波アクチュエータ802は、駆動子808a,…,808b,…に縦振動の振動方向(長手方向)と屈曲振動の振動方向(短手方向)とを含む平面内で周回運動させて駆動子808a,…,808b,…とステージ11との間の摩擦力の増大と緩和とを繰り返しながら、該ステージ11を駆動している。このとき、駆動子808a,…,808b,…とステージ11との間の摩擦力は、付勢ゴム62の付勢力によって増強されている。
ここで仮に、駆動子が、アクチュエータ本体4の厚み方向において複数設けられていない、即ち、駆動子の全数が1個の場合または駆動子が複数であっても全ての駆動子が厚み方向の同じ位置に設けられているとすると、付勢ゴム62や駆動子の組み立て誤差によって、付勢ゴム62の付勢力の方向が駆動子からステージへ作用する押圧力の方向(即ち、屈曲振動の方向)と一致せず、厚み方向にずれている場合には、アクチュエータ本体4とステージ11とは厚み方向において駆動子の1箇所だけで当接しているため、アクチュエータ本体4が該厚み方向に傾斜しやすく、駆動子が、本来周回運動を行うべき平面(即ち、アクチュエータ本体4の縦振動の振動方向と屈曲振動の振動方向とを含む平面)よりも厚み方向に傾斜した面内で周回運動を行うことになる。そうすると、付勢ゴム62によって駆動子をステージ11に付勢しているにもかかわらず、該付勢力のうち、駆動子の屈曲振動の振動方向に作用して駆動子のステージ11への押圧力を補助する成分が小さくなってしまい、駆動子とステージ11との間の摩擦力を効果的に増強することができない。
そこで、本実施形態では、駆動子808a,…,808b,…を前述の如く、アクチュエータ本体4の設置面40aにおいてその厚み方向の異なる位置に複数設けている。こうすることによって、駆動子808a,…,808b,…とステージ11との当接点を該厚み方向に増やすことができるため、付勢ゴム62の付勢力がアクチュエータ本体4の屈曲振動の振動方向から厚み方向にずれていても、付勢ゴム62の付勢力を厚み方向の広い範囲で受け止めることができ、駆動子808a,…,808b,…が周回運動を行う平面が厚み方向に傾斜することを防止することができる。
したがって、本実施形態8によれば、駆動子808a,…,808b,…をアクチュエータ本体4の厚み方向に複数設けることによって、駆動子808a,…,808b,…とステージ11との当接点を厚み方向に増やすことができ、アクチュエータ本体4が厚み方向に傾斜することを抑制することができる。その結果、アクチュエータ本体4の姿勢を安定させることができ、該駆動子808a,…,808b,…からステージ11へ駆動力を効率良く伝達させることができる。
それに加えて、駆動子808a,…,808b,…をアクチュエータ本体4の厚み方向に複数設けることによって、駆動子の個数が増える、即ち、駆動子とステージ11との当接面積が増えるため、超音波アクチュエータ802からステージ11へ付与される駆動力を大きくすることができる。
また、駆動子808a,…,808b,…を、設置面40aにおいて、厚み方向中心部を通り該厚み方向に直交する直線に対して線対称な位置に配置することによって、押圧力を駆動子808a,…,808b,…からステージ11へ厚み方向について均等に伝えることができる。
さらに、駆動子808a,…,808b,…を前記式(1)を満たすように配置することによって、駆動子808a,…,808b,…それぞれの間の間隔を等間隔にすることができ、押圧力を各駆動子808a(808b)からステージ11へ均等に伝えることができる。
また、近年、電子機器の小型化にともない超音波アクチュエータ802も小型化が求められているが、超音波アクチュエータ802を小型化した場合、効率を低下させてしまう虞があった。すなわち、駆動子808a,…,808b,…の形状がアクチュエータ本体4に対して相対的に大きくなってしまい、前述のようにアクチュエータ本体4の屈曲振動の腹の部分に駆動子808a,…,808b,…を設けた構成ではアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害してしまい、その結果、効率を低下させてしまう虞があった。
それに対し、本実施形態では、駆動子808a,…,808b,…を、アクチュエータ本体4の長手方向の各位置(駆動子群808A,808Bの位置)において、厚み方向に延びる直線L,L上に並ぶように配置することによって、駆動子808a,…,808b,…をアクチュエータ本体4の屈曲振動によって波打つ長辺側面に設けるにもかかわらず、該駆動子808a,…,808b,…がアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができる。さらに、駆動子808a,…,808b,…の形状を球状とすることによって、駆動子808a,…,808b,…とアクチュエータ本体4の設置面40aとの接触面積を小さくでき、アクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することをさらに抑制することができる。その結果、超音波アクチュエータ802としての効率を向上させることができる。ここで、「球状」とは、厳密な球形状に限られず、駆動子808a(808b)が圧電素子ユニット40に対して概略点接触となるような実質的な球形状も含む意味である。
さらに、駆動子808a(808b)を球状とすることによって、円柱状の駆動子208a(208b)に比べて製造しやすいため、駆動子808a(808b)のコストを低減することができる。
《発明の実施形態9》
続いて、本発明の実施形態9に係る超音波アクチュエータ902について説明する。
実施形態9に係る超音波アクチュエータ902は、駆動子908a(908b)の形状が円柱状である点で、駆動子808a(808b)が球状である前記実施形態8と異なる。
詳しくは、超音波アクチュエータ902では、図22に示すように、圧電素子ユニット40の設置面40aにおける2次モードの屈曲振動の2箇所の腹の位置に、駆動子群908A,908Bが設けられている。これら駆動子群908A,908Bは、それぞれ2つの駆動子908a,908aと駆動子908b,908bとで構成されている。これら駆動子908a,…,908b,…はそれぞれ同じ円柱状をしている。
各駆動子908a(908b)は実施形態8と同様の接着剤82にて圧電素子ユニット40に固定されている。こうして、各駆動子908a(908b)は、圧電素子ユニット40の設置面40aに対して線接触状に取り付けられている。ここで、「線接触状」とは、駆動子908a(908b)と設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、駆動子908a(908b)と設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該駆動子908a(908b)と設置面40aとが実質的に線接触している状態も意味する。また、「円柱状」とは、厳密な円柱形状に限られず、駆動子908a(908b)が設置面40aに対して概略線接触となるような実質的な円柱形状も含む意味である。
ここで駆動子群908A,908Bにおける駆動子908a,…,908b,…の配置について説明する。ただし、駆動子群908Aと駆動子群908Bとでは、設置面40aにおける長手方向位置が異なるだけでその他の構成は同様であるため、以下では駆動子群908Aについてのみ説明し、駆動子群908Bの説明は省略する。
駆動子群908Aでは、図23に示すように、駆動子908a,908aが圧電素子ユニット40の厚み方向、即ち、直交方向の異なる位置において該直交方向に延びる直線L上に並んで設けられている。このとき、各駆動子908aは、その円柱の軸が直交方向を向くように配設されている。つまり、2つの駆動子908a,908aは、それぞれの円柱の軸が一直線上に並び、その一直線上に並んだ軸が直線Lと平行になっている。換言すれば、駆動子908a,908aは、それぞれの円柱の軸が該駆動子908a,908aが周回運動を行う平面に対して直交するように延びている。
また、これら駆動子908a,908aは、設置面40aの直交方向中心部を通り該直交方向に直交する(即ち、長手方向に延びる)直線に対して線対称な位置に配置されている。さらに、これら駆動子908a,908aは直交方向において互いに等間隔に配置されていて、より詳しくは、前記式(1)を満たす位置tに配置されている。
すなわち、本実施形態では、直交方向の最も一端側(図23の下側)に位置する駆動子908aは、設置面40aの直交方向一端側の端縁からT/4の位置に、直交方向の一端側から最も離れた(図23の上側に位置する)駆動子908aは、設置面40aの直交方向一端側の端縁から3T/4の位置に配置されている。
したがって、実施形態9によれば、駆動子908a,…,908b,…をアクチュエータ本体4の厚み方向に複数設けることによって、駆動子908a,…,908b,…とステージ11との当接点を厚み方向に増やすことができ、アクチュエータ本体4が厚み方向に傾斜することを抑制することができる。その結果、アクチュエータ本体4の姿勢を安定させることができ、該駆動子908a,…,908b,…からステージ11へ駆動力を効率良く伝達させることができる。
ここで、駆動子908a(908b)の形状が円柱状の場合、駆動子908a(908b)とステージ(図示省略)との当接点をアクチュエータ本体4の厚み方向に増やすためには、その円柱状の軸方向長さを長くすることが考えられる。しかしながら、駆動子908a(908b)の軸方向長さを単純に長くする構成では、駆動子908a(908b)の重量が重くなり、アクチュエータ本体4の縦振動及び屈曲振動による駆動力が駆動子908a(908b)自体を周回運動させることに消費されてしまう。そのため、アクチュエータ本体4が発生する駆動力をステージ11の駆動に効率良く使用することができない。
それに対し、本実施形態によれば、円柱状の駆動子908a(908b)をアクチュエータ本体4の厚み方向に複数設けることによって、即ち、アクチュエータ本体4の厚み方向に延びる円柱状の駆動子を該厚み方向に複数に分割した構成となるため、駆動子群908A(908B)としての重量を軽量化すると共に、駆動子908a(908b)とステージ11との当接点をアクチュエータ本体4の厚み方向に増やすことができる。その結果、前述の効果に加えて、アクチュエータ本体4が発生する駆動力をステージ11の駆動に効率良く使用することができる。
また、駆動子908a(908b)の形状を円柱状とすることによって、各駆動子908a(908b)と設置面40aとの接触面積を小さくしてアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができると共に、該各駆動子908a(908b)をその円柱の軸がアクチュエータ本体4の屈曲振動の振動方向と縦振動の振動方向とに直交する方向を向くように、即ち、アクチュエータ本体4が屈曲振動を行う平面に対して直交する方向を向くように配設して設置面40aに取り付けることによって、アクチュエータ本体4の屈曲振動の阻害をさらに抑制することができる。
その他、実施形態8と同様の作用・効果を奏することができる。
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
すなわち、前記実施形態1,3〜5,8では駆動子を接着剤82を介して点接触状にアクチュエータ本体4に取り付けているが、図24に示すように、環状体83を各駆動子8a(8b)の周囲に配してもよい。つまり、各駆動子8a(8b)と圧電素子ユニット40の設置面40aとの接触点の周囲に環状体83を配置したものである。すなわち、各駆動子8a(8b)は、設置面40aに対して点接触状に取り付けられるだけでなく、環状体83を介しても設置面40aに取り付けられている。この環状体83は、各駆動子8a(8b)及び設置面40aそれぞれに対して線接触状に取り付けられている。また、各駆動子8a(8b)と環状体83、および環状体83と設置面40aとは、それぞれ接着剤82を介して取り付けられている。尚、各駆動子8a(8b)は、設置面40aに対して点接触状には取り付けられておらず、環状体83を介して線接触状にのみ取り付けられる構成であってもよい。ここで、「線接触状」とは、環状体83と駆動子8a(8b)又は設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、環状体83と駆動子8a(8b)又は設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該環状体83と駆動子8a(8b)又は設置面40aとが実質的に線接触している状態も意味する。
このように環状体83を配置させることによって、各駆動子8a(8b)と環状体83、および環状体83と設置面40aとの間で、それぞれの接触点を増やすことができ、これにより駆動子8a(8b)と設置面40aとの接続強度を向上させることができる。環状体83は、振動を妨げず接着強度を向上させる意味より、駆動子8a(8b)より柔らかく、接着剤82より堅い材質が望ましい。具体的には、アルミ、鉄などの金属や硬度の高いエポキシ、フェノールなどの樹脂である。
したがって、この実施形態によれば、前記実施形態の効果に加えて、駆動子8a(8b)の形状を球状とすると共に、各駆動子8a(8b)とアクチュエータ本体4の設置面40aとの間に環状体83を介在させて該各駆動子8a(8b)を設置面40aに対して点接触状に取り付けることによって、各駆動子8a(8b)と設置面40aとの接触面積を小さくすることができ、アクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができる。その結果、超音波アクチュエータとしての効率を向上させることができる。
また、前記実施形態の駆動子は、球状や円柱状であるが、これに限られるものではない。例えば、図25に示すように、円柱状の駆動子118をその軸がアクチュエータ本体4の屈曲振動の振動方向、即ち、アクチュエータ本体4の短手方向を向くように配設した構成であってもよいし、図26に示すように、先端が球面状に形成された円柱状の駆動子128を該先端がステージに当接するように配設した構成であってもよいし、図27に示すように、立方体形状の駆動子138を採用した構成であってもよいし、図28に示すように、断面台形の柱形状の駆動子148を採用した構成であってもよい。尚、図示は省略するが、設置面40aに取り付けられる取付面だけが球面状や円柱の側周面状に形成された駆動子であってもよい。
尚、前記実施形態3〜6においては、駆動子118,138,148のように、駆動子のステージとの当接部が駆動力を出力する駆動方向に沿った方向に幅を有する場合には、各駆動子群において、各駆動子を該駆動方向に沿った方向にずらす量を該当接部の幅よりも大きくすることが好ましい。そうすることによって、各駆動子の当接部が、駆動子が周回運動を行う平面に直交する方向において互いに重なることがなく、つまり、駆動子とステージとの当接部の、該駆動方向に沿った方向の幅を大きく確保することができ、アクチュエータ本体の姿勢を安定的に維持することができる。
また、アクチュエータ本体4の厚み方向の異なる位置に複数設けられた駆動子は、該厚み方向に延びる直線L上や直線La上に、又は、直線Lを基準に配置されているが、これに限られるものではない。すなわち、駆動子は、アクチュエータ本体4の厚み方向の異なる位置に複数設けられていればよい。ただし、前述の如く、アクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害しない観点からも、複数の駆動子は直線L上に並んで配置されることが好ましい。
さらに、駆動子の個数は、前記実施形態に限られるものではない。さらにまた、前記実施形態1,3〜6,8,9では、アクチュエータ本体4の設置面40aの長手方向において異なる位置に設けられた各駆動子群8A,8Bは、それぞれの長手方向位置において、即ち、駆動子群ごとに同数の駆動子を含んでいるが、これに限られるものではない。すなわち、駆動子群ごとに異なる個数の駆動子を含む構成であってもよい。
また、超音波アクチュエータを、アクチュエータ本体4に長手方向への縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとを調和的に発生させるように構成したが、これに限られるものではない。これ以外の振動又はモードを発生させるものであってもよく、アクチュエータ本体4を振動させて駆動子とステージ11との間の摩擦力を介して駆動力を出力する振動型アクチュエータであれば任意の構成を採用することができる。
また、超音波アクチュエータは、前記の構成に限られるものではない。例えば、前記支持ゴム61,61及び付勢ゴム62を介して圧電素子ユニット40に給電する構成ではなく、リード線を圧電素子ユニット40に接続して給電する構成でもよい。また、圧電素子ユニット40の振動のノード部(節の部分)を非弾性部材で支持する構成であってもよい。
さらにまた、アクチュエータ本体4は圧電素子ユニット40で構成されているが、金属などの基板に圧電素子を貼り付けた構成や、金属などで共振器を形成し、圧電素子を挟み込んだ構成であってもよい。この場合、圧電素子を含んで構成された共振器がアクチュエータ本体を構成する。
また、前記実施形態3〜7においては、図29に示すように、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面40b(この面が設置面に相当する)に円柱状の駆動子158が設けられた超音波アクチュエータ152を採用してもよい。駆動子158は、その軸がアクチュエータ本体4の厚み方向に対して傾斜するように配設されている。かかる構成であっても、アクチュエータ本体4が長手方向への縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとの合成振動を行うことによって駆動子158が周回運動を行い、ステージとの間の摩擦力を介して、該ステージを所定の可動方向(短手方向と平行な方向)へ移動させることができる。この場合、駆動方向は、アクチュエータ本体4の短手方向となるが、円柱状の駆動子158を厚み方向に対して傾斜させて配設することによって、駆動子158とステージとの当接部を該短手方向に拡げて、アクチュエータ本体4の姿勢を維持することができ、駆動子158からステージへ所望の駆動力を伝達させることができる。
さらに、前記実施形態8,9においては、図30に示すように、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面40b(この面が設置面に相当する)に2つの駆動子168,168が設けられた超音波アクチュエータ162を採用してもよい。駆動子168,168は、圧電素子ユニット40の厚み方向に並んで設けられている。かかる構成であっても、圧電素子ユニット40が長手方向への縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとの合成振動を行うことによって駆動子168,168が周回運動を行い、ステージとの間の摩擦力を介して、該ステージを所定の可動方向(短手方向と平行な方向)へ移動させることができる。
また、前記実施形態では、超音波アクチュエータ2(202,…)を基台に固定すると共に、駆動子8a,…,8b,…を移動可能なステージ11に当接させて、該超音波アクチュエータ2を作動させることで該ステージ11を駆動させているが、図31に示すように、超音波アクチュエータ2をステージに固定する構成としてもよい。詳しくは、駆動装置171は、互いに平行な状態で基台に固定されたガイド13,13と、該ガイド13,13に摺動自在に取り付けられたステージ14と、超音波アクチュエータ2とを備えている。該ガイド13,13のうちの一方のガイド13には、該ガイド13に固定された当接部材13aが設けられている。一方、ステージ14には、アクチュエータ取付部14aが設けられている。そして、超音波アクチュエータ2は、駆動子8a,…,8b,…が該ガイド13の当接部材13aに当接する状態で、該ステージ14のアクチュエータ取付部14aにケース5が取り付けられている。この状態で、超音波アクチュエータ2を作動させると、駆動子8a,…,8b,…は当接部材13aに対して駆動力を出力するが、該当接部材13aは固定されているため、超音波アクチュエータ2自体が当接部材13aに対して相対的にガイド13,13の長手方向に振動する。その結果、アクチュエータ取付部14aを介してケース5と連結されたステージ14がガイド13,13の長手方向に駆動される。
また、前記実施形態では、超音波アクチュエータの駆動力が付与されて駆動されるステージ11は平板状であるが、これに限られるものではなく、可動体の構成としては任意の構成を採用することができる。例えば、図32に示すように、可動体は所定の軸X回りに回動可能な円板体15であり、超音波アクチュエータの駆動子8a,…,8b,…が該円板体15の側周面15aに当接するように構成された駆動装置181を採用してもよい。かかる構成の場合、超音波アクチュエータを駆動すると、駆動子8a,…,8b,…の概略楕円運動によって、該円板体15が所定の軸X回りに回動させられる。また、図33に示すように、可動体は所定の軸X回りに回動可能な円板体16であり、超音波アクチュエータの駆動子8a,…,8b,…が該円板体16の平面部16aに当接するように構成された駆動装置191を採用してもよい。かかる構成の場合、超音波アクチュエータを駆動すると、駆動子8a,…,8b,…の概略楕円運動によって、該円板体16が駆動子8a,…,8b,…と当接部における接線方向に駆動され、結果として該円板体16が所定の軸X回りに回動させられる。
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本発明の振動型アクチュエータは、駆動子が、該駆動子が周回運動を行う平面に直交する方向に複数設けられるという特徴を有し、高効率化が要求される電子機器等に有用である。また、本発明の振動型アクチュエータは、駆動子と被当接体との当接部を駆動方向に沿った方向に拡げることができ、アクチュエータ本体の姿勢を安定させることができるという特徴を有し、安定した駆動が要求される電子機器等に有用である。
本発明は、圧電素子を有する振動型アクチュエータ及びそれを備えた駆動装置に関するものである。
従来より、圧電素子を有する振動型アクチュエータとしては、特許文献1に開示されたものが知られている。
特許文献1に係る振動型アクチュエータは、圧電素子で構成されたアクチュエータ本体と、該アクチュエータ本体に取り付けられた駆動子とを備えている。
このアクチュエータ本体は、長手方向を有する平板状の圧電素子で構成されており、対角位置にある2対の電極にそれぞれ位相の異なる交流電圧を印加することで、該圧電素子の長手方向への縦振動(所謂、伸縮振動)と該圧電素子の短手方向への屈曲振動とを調和的に発生させている。その結果、駆動子は、該圧電素子の長手方向と短手方向とを含む平面内で周回運動、詳しくは、楕円運動を行う。
前記駆動子は、略半球体に形成されていて、アクチュエータ本体の長辺側面に2つ設けられている。この長辺側面はアクチュエータ本体の屈曲振動の振動方向を向く面であって、アクチュエータ本体が屈曲振動する際にその屈曲振動に従って屈曲変形する、換言すれば、波打つ面である。これら2つの駆動子は、該長辺側面において、屈曲変位が最も大きくなる屈曲振動の腹の部分に取り付けられている。
このように構成された振動型アクチュエータは、固定体と、該固定体に対して相対的に移動可能に配置された可動体の間に配置される。詳しくは、振動型アクチュエータは、前記駆動子が固定体及び可動体のうちの一方(以下、被当接体ともいう)に当接した状態で、固定体及び可動体のうちの他方に固定されて配設されている。その状態で、振動型アクチュエータを作動させて駆動子を前述の如く周回運動させると、駆動子は周回運動の或る領域では被当接体を押圧しながら摩擦力を増大させて周回し、周回運動の別の領域では被当接体から離間して又は被当接体との間の摩擦力を低減した状態で周回することになる。そして、被当接体を押圧しながら周回するときに、駆動子と被当接体との間の摩擦力を介して駆動力が可動体に伝達され、可動体を所定の方向へ駆動する。
このとき、アクチュエータ本体は、付勢部材によって駆動子を被当接体に対して押圧する方向に付勢されており、駆動子と被当接体との間の摩擦力を高めることでアクチュエータ本体の駆動力が可動体に効率良く伝達するように構成されている。詳しくは、アクチュエータ本体のうち、駆動子が設けられた面と対向する反対側の面に付勢部材を設け、該付勢部材によってアクチュエータ本体を被当接体側へ付勢している。
ところで、前述の如く、駆動子と被当接体との摩擦力を介して可動体を駆動する振動型アクチュエータにおいては、駆動子も被当接体もやがて摩耗する。その結果、被当接体には、駆動子の軌跡に沿った轍が形成される。可動体の移動範囲が狭い場合には一方の駆動子によって形成された轍と他方の駆動子によって形成された轍とは独立しているが、可動体の移動範囲が広くなると両方の駆動子で形成された轍が繋がる。こうして、繋がった轍においては、一方の駆動子による轍と他方の駆動子による轍とが重なった部分ができ、かかる部分では両方の駆動子によって轍の形成が進行するため、それ以外の部分と比べて、轍の深さが深くなる。このように轍の深さが異なる部分では、駆動子と被当接体との間の摩擦力が他の部分と異なり、可動体に付与される駆動力にばらつきが出てしまう。その結果、可動体を安定して駆動することができなくなる。また、轍の深さが変わる部分に段差が形成され、この段差を駆動子が通過する場合には、駆動子と被当接体との間の摩擦力が急激に変化してしまう。このことからも、可動体を安定して駆動することができなくなる。
本発明のうち、第1の発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動子との摩擦により被当接体に轍が形成される場合でも、可動体を安定して駆動することができる振動型アクチュエータを提供することにある。以下、この目的を第1の目的と称する。
また、前述の振動型アクチュエータは別の課題を有する。具体的には、前述の振動型アクチュエータにおいては、アクチュエータ本体は、付勢部材によって被当接体側に付勢されている一方、駆動子が押圧する被当接体から反力を受ける。これら付勢部材の付勢力と被当接体からの反力とは、アクチュエータ本体に対して、該アクチュエータ本体を回転させるモーメントとして作用する。その結果、該モーメントによってアクチュエータ本体の姿勢が変化すると共に、駆動子と被当接体との当接状態も変化し、所望の駆動力を可動体に出力できない虞があった。
本発明のうち、第2の発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アクチュエータ本体の姿勢の変化を抑制することにある。以下、この目的を第2の目的と称する。
また、前述の振動型アクチュエータは、さらに別の課題を有する。具体的には、前述の如く、駆動子から被当接体に作用する押圧力を付勢部材の付勢力によって高める構成においては、駆動子が、付勢部材による付勢力の方向に延びる直線上に位置することが好ましい。つまり、付勢部材から駆動子に作用する付勢力が、駆動子から被当接体へ作用する押圧力と同じ方向に作用することが好ましい。仮に、駆動子が付勢部材による付勢力の方向に延びる直線上に位置しない場合は、例えば、押圧力の方向と付勢力の方向とが駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する方向(即ち、平板状のアクチュエータ本体の厚み方向)にずれている場合には、付勢力が駆動子の押圧力の方向に対して該直交する方向に傾斜して、即ち、アクチュエータ本体を該直交する方向に傾斜させるように作用してしまう。その結果、駆動子が本来周回運動を行う平面よりも該平面に直交する方向に傾斜した面内で周回運動を行うことになる。つまり、駆動子から被当接体に作用する押圧力を高めるための付勢力を効率良く使うことができないため、駆動子と被当接体との間の摩擦力が十分に得られず、駆動力を可動体へ十分に伝達できない虞があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動子から可動体へ駆動力を効率良く伝達させることにある。以下、この目的を第3の目的と称する。
本発明は、駆動子を、該駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向に複数設けることによって、これらの目的を達成するようにしたものである。
詳しくは、第1の目的を達成するために、第1の発明は、第1駆動子と第2駆動子とを該第1及び第2駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向にずらして配置するようにしたものである。
具体的には、第1の発明に係る振動型アクチュエータは、圧電素子で構成、又は圧電素子を含んで構成され、振動方向が異なる複数の振動を行うアクチュエータ本体と、前記アクチュエータ本体の一の側面である設置面上に設けられて、該アクチュエータ本体の振動に従って周回運動することで所定の駆動方向に駆動力を出力する駆動子とを備え、前記駆動子は、前記設置面上において、前記駆動方向に沿った方向における異なる位置に設けられた第1駆動子と第2駆動子とを含んでおり、前記第1駆動子と前記第2駆動子とは、該第1及び第2駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向における異なる位置に位置するものとする。
また、第1の発明に係る駆動装置は、相対移動可能な固定体及び可動体と、前記固定体及び可動体の間に介設される請求項1に記載の振動型アクチュエータとを備え、前記振動型アクチュエータは、前記駆動子が前記固定体及び可動体の一方に当接する状態で該固定体及び可動体の他方に配設されており、前記駆動子を固定体及び可動体の一方に押圧するように前記アクチュエータ本体を付勢する付勢部材をさらに備えるものとする。
さらに、第2の目的を達成するために、第2の発明は、複数の駆動子を、該駆動子が周回運動を行う平面に直交する方向に配列させて駆動子群を構成させると共に、その駆動子群内において駆動子の位置を駆動力を出力する駆動方向にずらすようにしたものである。
具体的には、第2の発明は、圧電素子で構成、又は圧電素子を含んで構成され、振動方向が異なる複数の振動を行うアクチュエータ本体と、前記アクチュエータ本体の一の側面である設置面上に設けられて、該アクチュエータ本体の振動に従って周回運動することで所定の駆動方向へ駆動力を出力する駆動子とを備えた振動型アクチュエータが対象である。そして、前記駆動子は、該駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向に複数個設けられ該直交方向に設けられた駆動子で駆動子群を構成し、前記駆動子群における複数の前記駆動子は、前記駆動方向に沿った方向にずれた位置に配置されてるものとする。
さらにまた、第3の目的を達成するために、第3の発明は、駆動子を、該駆動子が周回運動を行う平面に直交する方向における異なる位置に複数設けるようにしたものである。
具体的には、第3の発明に係る振動型アクチュエータは、圧電素子で構成、又は圧電素子を含んで構成され、振動方向が異なる複数の振動を行うアクチュエータ本体と、前記アクチュエータ本体の一の側面である設置面上に設けられて、該アクチュエータ本体の振動に従って周回運動することで駆動力を出力する駆動子とを備え、前記駆動子は、該駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向において異なる位置に複数設けられているものとする。
また、第3の発明に係る駆動装置は、相対移動可能な固定体及び可動体と、前記固定体及び可動体の間に介設される前記振動型アクチュエータとを備え、前記振動型アクチュエータは、前記駆動子が前記固定体及び可動体の一方に当接する状態で該固定体及び可動体の他方に配設されており、前記駆動子を固定体及び可動体の一方に押圧するように前記アクチュエータ本体を付勢する付勢部材をさらに備えているものとする。
第1の発明によれば、駆動方向に沿った方向において複数の駆動子、具体的には、第1及び第2駆動子が設けられた振動型アクチュエータにおいて、第1駆動子と第2駆動子とを該第1及び第2駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向にずらして配置することによって、該第1及び第2駆動子が当接する被当接体に形成される轍が該直交方向にずれて形成されることになり、第1駆動子によって形成された轍と第2駆動子によって形成された轍とが繋がって、轍内に深さが異なる部分が形成されたり、段差が形成されることを防止することができる。その結果、駆動子と被当接体との間の摩擦力が大きく異なったり、急激に変化したりすることを防止することができるため、振動型アクチュエータの駆動対象を安定して駆動することができる。
また、第2の発明によれば、駆動子を、該駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向に複数個設けると共に、その駆動子の位置を駆動方向に沿った方向にずらすことによって、アクチュエータ本体と被当接体との当接部を該駆動方向に沿った方向に拡げることができるため、アクチュエータ本体が駆動子が周回運動を行う平面内において回転することを規制することができ、アクチュエータ本体の姿勢を安定させて、駆動子から可動体へ所望の駆動力を伝達させることができる。
さらに、第3の発明によれば、駆動子を、該駆動子が周回運動を行う平面に対して直交する直交方向において異なる位置に複数設けることによって、アクチュエータ本体と被当接体との当接点を該直交方向に増やすことができ、アクチュエータ本体が該直交方向に傾斜することを防止して、アクチュエータ本体に与えられる付勢力によって駆動子と被当接体との間の摩擦力を効果的に高めることができ、ひいては、駆動子から可動体へ駆動力を効率良く伝達させることができる。
図1は、本発明の実施形態1に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図2は、駆動装置の斜視図である。
図3は、圧電素子ユニットの分解斜視図である。
図4は、アクチュエータ本体の概略構成を示す概略正面図である。
図5は、駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図6は、アクチュエータ本体の長手方向への縦振動の1次モードによる変位を示す概念図である。
図7は、アクチュエータ本体の屈曲振動の2次モードによる変位を示す概念図である。
図8は、アクチュエータ本体の動作を示す概念図である。
図9は、超音波アクチュエータによるステージの駆動を説明するための概念図であって、(a)は駆動前の状態、(b)はアクチュエータ本体が長手方向に伸張することで一方の駆動子によってステージを駆動する状態、(c)はアクチュエータ本体が長手方向に収縮することで他方の駆動子によってステージを駆動する状態を示す。
図10は、実施形態2に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図11は、実施形態2に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図12は、実施形態3に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図13は、実施形態3に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図14は、実施形態4に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図15は、実施形態5に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図16は、実施形態6に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図17は、実施形態6に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図18は、実施形態7に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図19は、実施形態7の変形例に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図20は、実施形態8に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図21は、実施形態8に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図22は、実施形態9に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図23は、実施形態9に係る駆動子の配置を示す、アクチュエータ本体の平面図である。
図24は、その他の実施形態に係る超音波アクチュエータの断面図である。
図25は、その他の実施形態に係る駆動子を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図26は、別のその他の実施形態に係る駆動子を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図27は、さらに別のその他の実施形態に係る駆動子を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図28は、さらにさらに別のその他の実施形態に係る駆動子を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図29は、別のその他の実施形態に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図30は、さらに別のその他の実施形態に係る超音波アクチュエータの斜視図である。
図31は、その他の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
図32は、別のその他の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
図33は、さらに別のその他の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る駆動装置1は、図2に示すように、ステージ11と、超音波アクチュエータ2と、該超音波アクチュエータ2を駆動制御する制御装置(図示省略)とを備えている。
ステージ11は、互いに平行な状態で固定体としての基台(図示省略)上に固定されたガイド12,12に摺動可能に取り付けられている。つまり、ステージ11は、ガイド12,12が延びる方向に沿って移動可能に構成されている。このステージ11が可動体を構成する。これらガイド12,12の延びる方向がステージ11の可動方向となる。このステージ11は、平面視略方形の板状部材であって、アルミナで形成されている。尚、ステージ11の材質は、アルミナに限られるものではなく、任意の材質を用いて形成することができる。そして、前記超音波アクチュエータ2は、このステージ11の裏面(ガイド12,12が設けられている側の面)に後述する駆動子8a,…,8b,…が当接するように配設されている。
前記超音波アクチュエータ2は、図1に示すように、振動を発生させるアクチュエータ本体4と、該アクチュエータ本体4の駆動力をステージ11に伝達させる駆動子8a,…,8b,…と、該アクチュエータ本体4を収容するケース5と、アクチュエータ本体4とケース5との間に介設されてアクチュエータ本体4を弾性的に支持する支持ゴム61,61と、アクチュエータ本体4を前記ステージ11に付勢するための付勢ゴム62とを備えている。この超音波アクチュエータ2が振動型アクチュエータを構成する(以下、同様)。
前記アクチュエータ本体4は、圧電素子ユニット40で構成されている。
前記圧電素子ユニット40は、略長方形状の互いに対向する一対の主面と、この主面と直交して該主面の長手方向に延びる、互いに対向する一対の長辺側面と、これら主面及び長辺側面の両方と直交して該主面の短手方向に延びる、互いに対向する一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。
この圧電素子ユニット40は、図3に示すように、5つの圧電体層(圧電素子)41,41,…と4つの内部電極層42,44,43,44とを交互に積層して構成される。内部電極層42,44,43,44は、積層方向に圧電体層41を介して交互に配された、第1給電電極層42と共通電極層44と第2給電電極層43と共通電極層44とで構成される。これら第1給電電極層42、第2給電電極層43及び共通電極層44,44のそれぞれは、各圧電体層41の主面上に印刷されている。
前記各圧電体層41は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などのセラミック材料からなる絶縁体層であって、前記圧電素子ユニット40と同様に、一対の主面と、一対の長辺側面と、一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。また、各圧電体層41には、その長辺側面のうち一方の長辺側面の長手方向中央部に外部電極45aが、一方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極46aが、他方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極47aがそれぞれ形成されている。
前記各共通電極層44は、圧電体層41の主面の略全面に亘って設けられた略長方形状をしている。また、各共通電極層44の一方の長辺部には、その長手方向中央部から圧電体層41の前記外部電極45aまで延びる引出電極44aが形成されている。
前記第1給電電極層42は、図4に示すように、圧電体層41の主面をその長手方向及び短手方向にそれぞれ2等分してなる4つの領域のうち該主面の対角線方向に位置する2対の領域のうち一方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第1電極42a,42bと、これら第1電極42a,42bを連結して導通させる導通電極42cとを有する。各第1電極42a(42b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。つまり、各第1電極42a(42b)は、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。また、第1電極42a,42bのうちの一方の第1電極42aには、圧電体層41の前記外部電極46aまで延びる引出電極42dが設けられている。
前記第2給電電極層43は、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する前記2対の領域のうち他方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第2電極43a,43bと、これら第2電極43a,43bを連結して導通させる導通電極43cとを有する。前記他方の対の領域のうち積層方向に見て前記第1電極42aの前記短手方向且つ前記第1電極42bの前記長手方向に隣接する領域に設けられる電極が第2電極43aであり、第1電極42aの該長手方向且つ第1電極42bの該短手方向に隣接する領域に設けられる電極が第2電極43bである。各第2電極43a(43b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。つまり、各第2電極43a(43b)は、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。また、第2電極43a,43bのうちの一方の第2電極43bには、圧電体層41の前記外部電極47aまで延びる引出電極43dが設けられている。
これら圧電体層41,41,…と内部電極層42,44,43,44とを交互に積層することで構成された圧電素子ユニット40においては、その一方の長辺側面の前記長手方向中央部に、各圧電体層41の外部電極45aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極45が形成されている。この外部電極45には、前記共通電極層44,44に形成された引出電極44a,44aが電気的に接続されている。同様に、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極46aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極46が形成されている。この外部電極46には、前記第1給電電極層42の引出電極42dが電気的に接続されている。また、圧電素子ユニット40の他方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極47aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極47が形成されている。この外部電極47には、前記第2給電電極層43の引出電極43dが電気的に接続されている。
そして、圧電素子ユニット40の長辺側面のうち他方の長辺側面、即ち、前記外部電極45aが設けられていない側の長辺側面(すなわち、後述する屈曲振動の振動方向を向く一対の面のうちの一方の面。以下、設置面ともいう)40aには、図1,5に示すように、6個の駆動子8a,…,8b,…が設けられている。
これら駆動子8a,…,8b,…は、球状の部材であって、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、タングステンカーバイド等で形成されている。また、駆動子8a,…,8b,…は、圧電素子ユニット40の設置面40aに対して接着剤82を介して点接触状に取り付けられている(図4参照)。ここで、「点接触状」とは、駆動子8a,…,8b,…と設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、駆動子8a,…,8b,…と設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該駆動子8a,…,8b,…と設置面40aとが実質的に点接触している状態も意味する。
接着剤82としては、圧電素子ユニット40の材料及び駆動子8a,8bの材料よりも柔らかいことが望ましい。具体的には、合成樹脂、特にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。このような材料を用いることにより圧電素子ユニット40の後述する振動をできるだけ阻害せずに駆動子8a,…,8b,…と設置面40aとの間の固定を実現することができる。
また、駆動子8a,…,8b,…が設けられた位置は、設置面40aにおいて、圧電素子ユニット40の長手方向両端部から該設置面40aの全長の30〜35%距離だけ内側に入った位置(図5中の直線Lで示す位置)であり、即ち、圧電素子ユニット40の後述する屈曲振動の2次モードの腹の位置であって、振動が最も大きくなる位置である。そして、これら駆動子8a,…,8b,…は、屈曲振動の2次モードの前記2箇所の腹の位置のうち長手方向一側に配設された第1駆動子8a,8a,…からなる第1駆動子群8Aと、長手方向他側に配設された第2駆動子8b,8b,…からなる第2駆動子群8Bとに分けられる。
各駆動子群8A(8B)においては、図5に示すように、駆動子8a,8a,…(8b,8b,…)が圧電素子ユニット40の厚み方向(以下、直交方向ともいう)に並んで、詳しくは、厚み方向に延びる直線L上に並んで設けられている。この直交方向は、圧電素子ユニット40の積層方向でもあり、駆動子8a(8b)が後述する周回運動を行う平面に直交する方向でもあり、圧電素子ユニット40の後述する屈曲振動の振動方向と縦振動の振動方向とに直交する方向でもある。また、これら駆動子8a,8a,…(8b,8b,…)は直交方向において互いに等間隔に配置されている。
ただし、第1駆動子群8Aの第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子群8Bの第2駆動子8b,8b,…とは、互いに直交方向にずれた位置に配置されており、直交方向位置が異なる。詳しくは、長手方向位置は異なるものの、直交方向位置だけを見ると、第1駆動子群8Aの第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子群8Bの第2駆動子8b,8b,…とは、第1駆動子8a,第2駆動子8b,第1駆動子8a,第2駆動子8b,…のように交互に配置されている。そして、直交方向に交互に並ぶ各第1駆動子8aと各第2駆動子8bとの直交方向間隔、即ち、直交方向の一端側から順に、1番目の第1駆動子8aと1番目の第2駆動子8bとの直交方向間隔、1番目の第2駆動子8bと2番目の第1駆動子8aとの直交方向間隔、2番目の第1駆動子8aと2番目の第2駆動子8bとの直交方向間隔、…は等間隔となっている。
また、このように直交方向に交互に配置された第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とは、直交方向における一端側からN番目(N=1,2,…,n)の該第1駆動子8aと同N番目の該第2駆動子8bとの直交方向中間位置tが下記式(1)を満たすように配置されている。
t={(2N−1)/(2n)}×T ・・・ (1)
ここで、
t:設置面40a上における直交方向の一端を基準としたときの直交方向の位置
n:直交方向に並ぶ駆動子の総数(本実施形態では、3個)
T:設置面40aの直交方向寸法(アクチュエータ本体4の厚み)
である。
すなわち、本実施形態では、直交方向の最も一端側(図5の下側)に位置する第1駆動子8aと第2駆動子8bとの直交方向中間位置は、設置面40aの直交方向一端側の端縁からT/6の位置に、直交方向の一端側から2番目の第1駆動子8aと同2番目の第2駆動子8bとの直交方向中間位置は、設置面40aにおける直交方向中央に、直交方向の一端側から3番目の(図5の上側に位置する)第1駆動子8aと同3番目の第2駆動子8bとの直交方向中間位置は、設置面40aの直交方向一端側の端縁から5T/6の位置に配置されている。つまり、直交方向一端側から1番目の第1及び第2駆動子8a,8bの直交方向中間位置と2番目の第1及び第2駆動子8a,8bの直交方向中間位置との間隔及び、2番目の第1及び第2駆動子8a,8bの直交方向中間位置と3番目の第1及び第2駆動子8a,8bの直交方向中間位置との間隔は、それぞれT/3となっている。
その結果、第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とは直交方向の一端側から他端側に向かってT/6の直交方向間隔を開けて交互に配置されている。そして、この直交方向間隔T/6は、第1及び第2駆動子8a,…,8b,…のステージ11との当接部の該直交方向幅より大きな値となっている。好ましくは、予め想定される、ステージ11に形成される轍の該直交方向幅よりも大きな値となっている。
以上、説明してきたアクチュエータ本体4は、前記外部電極45をグランドに接続し、前記外部電極46に所定周波数の交流電圧を、前記外部電極47に該交流電圧と位相が90°ずれた交流電圧を印加することによって、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する一方の対の第1電極42a,42bと、他方の対の第2電極43a,43bとに互いに位相が90°ずれた交流電圧が印加され、その長手方向への縦振動(いわゆる、伸縮振動)とその短手方向への屈曲振動(いわゆる、横振動)とが誘起される。
縦振動の共振周波数及び屈曲振動の共振周波数はそれぞれ、アクチュエータ本体4、即ち、圧電素子ユニット40の材料、形状等により決定される。さらに、両共振周波数は、アクチュエータ本体4を支持する力及び支持する部分によっても影響を受ける。これらを考慮して、両共振周波数を略一致させ、その近傍の周波数の交流電圧を位相を90°ずらした状態で外部電極46,47のそれぞれに印加する。例えば、縦振動の1次モード(図6参照)の共振周波数と屈曲振動の2次モード(図7参照)の共振周波数とが一致するように圧電素子ユニット40の形状等を設計して、該共振周波数近傍の交流電圧を前述の如く、位相を90°ずらして印加することによって、圧電素子ユニット40には、縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとが調和的に誘起され、図8(a)、(b)、(c)、(d)に示す形状の変化を順番に起こす。
その結果、圧電素子ユニット40に設けられた各駆動子8a(8b)が該圧電素子ユニット40の主面と平行な平面、即ち、長手方向と短手方向とを含む平面(図8における紙面と平行な面)内で略楕円運動、即ち、周回運動を行う。
前記ケース5は、樹脂製であって、前記圧電素子ユニット40に対応した略直方体状の概略箱形状をしている。このケース5は、前記圧電素子ユニット40の主面と平行で且つ略長方形状の主壁部51と、該主壁部51の前記長手方向の一側(図1における左側)に位置する短辺部に設けられた第1短辺壁部52と、該主壁部51の該長手方向の他側(図1における右側)に位置する短辺部に設けられた第2短辺壁部53と、該主壁部51の前記短手方向の一側(図1における下側)に位置する長辺部に設けられた長辺壁部54とを有している。つまり、ケース5は、主壁部51に対向する側及び該主壁部51の該短手方向の他側(図1における上側)に位置する長辺部(圧電素子ユニット40の駆動子8a,…,8b,…が設けられた長辺側面に対応する部分)には壁部が設けられておらず、圧電素子ユニット40の積層方向(主壁部51の法線方向)の一側及び該短手方向の他側に開口した形状となっている。
このように構成されたケース5内に前記アクチュエータ本体4が収容されている。アクチュエータ本体4は、圧電素子ユニット40の一方の主面が主壁部51と対向し且つ圧電素子ユニット40の一方の長辺側面(前記外部電極45が設けられている側の長辺側面)が長辺壁部54と対向するようにしてケース5内に収容されている。このとき、駆動子8a,…,8b,…はケース5から前記短手方向の他側に突出している。また、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面とケース5の第1短辺壁部52との間および圧電素子ユニット40の他方の短辺側面とケース5の第2短辺壁部53との間にはそれぞれ支持ゴム61,61が介設されている。この圧電素子ユニット40の両短辺側面は縦振動の腹の部分であるが、支持ゴム61,61は弾性体であるため、圧電素子ユニット40の縦振動を阻害することなく、該圧電素子ユニット40を支持することができる。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4並びに第1及び第2短辺壁部52,53だけでなく、主壁部51の内側表面とも当接している。また、圧電素子ユニット40の一方の長辺側面とケース5の長辺壁部54との間には付勢ゴム62が介設されている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4及び長辺壁部54だけでなく、主壁部51の内側表面とも当接している。
そして、主壁部51の内側表面における、前記支持ゴム61,61及び付勢ゴム62が当接する部分には電極51a(付勢ゴム62と当接する電極のみ図示)が設けられているこれらの電極は、主壁部51の外側表面に設けられた端子電極(図示省略)にそれぞれ導通している。
前記各支持ゴム61は、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4をその長手方向に付勢した状態で弾性的に支持する。それと共に、支持ゴム61,61は、主壁部51の内側表面の該支持ゴム61,61の配設位置に対応する部分に設けられ且つ前記端子電極に導通する電極と圧電素子ユニット40の外部電極46,47とを導通させている。
また、前記付勢ゴム62も、支持ゴム61と同様に、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4をその短手方向(即ち、短手方向が付勢方向に相当する)に付勢するためのものである。それと共に、付勢ゴム62は、圧電素子ユニット40の外部電極45と主壁部51の内側表面の電極51aとを導通させている。
尚、これら支持ゴム61及び付勢ゴム62の代わりに、板バネ等の弾性部材を採用してもよい。
つまり、ケース5の外側表面に設けられた前記端子電極に給電することによって、圧電素子ユニット40に給電することができる。
このように構成された超音波アクチュエータ2は、図2に示すように、駆動子8a,…,8b,…がステージ11の裏面と当接するように配設されると共に、ケース5が基台(図示省略)に固定される。詳しくは、超音波アクチュエータ2は、圧電素子ユニット40の短手方向がステージ11の裏面に直交すると共に、圧電素子ユニット40の長手方向がステージ11の裏面と平行で且つガイド12,12と平行になるように配置される。さらに換言すれば、超音波アクチュエータ2は、圧電素子ユニット40の屈曲振動の方向がステージ11の裏面と直交すると共に、圧電素子ユニット40の縦振動の方向がガイド12,12と平行な方向を向くように配置される。
このとき、前記付勢ゴム62が圧縮変形しており、この付勢ゴム62の弾性力によって駆動子8a,…,8b,…がステージ11に付勢されている。超音波アクチュエータ2のステージ11への付勢力は、付勢ゴム62の弾性力によって決まる。
前記制御装置は、外部からの動作指令を受けて、その動作指令に応じた周波数の交流電圧を動作指令に応じた位相差で外部電極46,47に印加する。
制御装置は、前述の如く、アクチュエータ本体4、即ち、圧電素子ユニット40に縦振動と屈曲振動とを調和的に発生させて、駆動子8a,…,8b,…を図8に示すような周回運動させることで、ステージ11を移動させる。具体的には、圧電素子ユニット40の異常発熱を防止すべく、圧電素子ユニット40の縦振動と屈曲振動との共通の共振周波数よりも少し高い周波数の交流電圧が外部電極46,47に印加される。このとき、かかる交流電圧は、互いに位相が90°ずれた状態で外部電極46,47に印加される。
圧電素子ユニット40が、縦振動と屈曲振動との合成振動を行うと、駆動子8a,…,8b,…は圧電素子ユニット40の長手方向と短手方向とを含む平面内において略楕円運動を行う。こうすることで、駆動子8a,…,8b,…は、ステージ11との間の摩擦力の増大と緩和を周期的に繰り返しながら、ステージ11に対して摩擦力を介して圧電素子ユニット40の長手方向へ駆動力を付与しており、ステージ11はガイド12,12に沿って移動する。この圧電素子ユニット40の長手方向(ガイド12,12が延びる方向と一致する)が、駆動子8a,…,8b,…が駆動力を出力する方向である駆動方向に沿った方向に相当する。
以下に、超音波アクチュエータ2によるステージ11の駆動を、図9を参照してさらに詳しく説明する。圧電素子ユニット40が長手方向(縦振動の振動方向)に伸張するとき、第1駆動子8a(例えば、図9の左側)は、図9(b)に示すように、短手方向(屈曲振動の振動方向)においてステージ11側の領域を変位するため、ステージ11との間の摩擦力が増大し、この摩擦力によってステージ11を該長手方向における該第1駆動子8aが変位する側(図9の左側)へ移動させる。このとき、第2駆動子8b(図9の右側)は、該長手方向において第1駆動子8aとは逆向きに変位するが、該短手方向において反ステージ11側(ステージ11から離れる側)の領域を変位するため、ステージ11から離れて摩擦力が作用せず、ステージ11の移動にはほとんど影響を与えない。
一方、圧電素子ユニット40が長手方向に収縮するときは、第2駆動子8bは、図9(c)に示すように、短手方向においてステージ11側の領域を変位するため、ステージ11との間の摩擦力が増大し、この摩擦力によってステージ11を該長手方向における該第2駆動子8bが変位する側(図9の左側)へ移動させる。この移動方向は、前述した、圧電素子ユニット40の伸張時における第1駆動子8aによるステージ11の移動方向と同じである。このとき、第1駆動子8aは、該長手方向において第2駆動子8bとは逆向きに変位するが、該短手方向において反ステージ11側の領域を変位するため、ステージ11から離れて摩擦力が作用せず、ステージ11の移動にはほとんど影響を与えない。
尚、図9においては、ステージ11の移動に影響を与えない方の駆動子8b(8a)はステージ11から離れているが、必ずしも離れている必要はない。すなわち、駆動子8b(8a)は、ステージ11を移動させない程度の摩擦力で該ステージ11に当接してる状態であってもよい。
こうして、第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とは、位相が180°ずれた状態で交互にステージ11を所定の一方向へ移動させる。尚、前記交流電圧を位相を−90°ずらした状態で外部電極46,47に印加することによって、第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とが出力する駆動力を逆向きにすることができ、ステージ11を他方向へ移動させることができる。
尚、ステージ11の移動量、移動速度及び移動加速度は、外部電極46,47に給電する交流電圧の電圧値、周波数及び給電時間の少なくとも1つを調整する、又は外部電極46,47に給電する各交流電圧の位相のずれを変更する等によって調整することができる。
このように、超音波アクチュエータ2は、駆動子8a,…,8b,…に縦振動の振動方向(長手方向)と屈曲振動の振動方向(短手方向)とを含む平面内で周回運動させて、駆動子8a,…,8b,…とステージ11との間の摩擦力の増大と緩和とを繰り返しながら、該ステージ11を駆動している。このように、駆動子8a,…,8b,…とステージ11との間の摩擦力を介してステージ11を駆動しているため、超音波アクチュエータ2の使用を続けると、駆動子8a,…,8b,…及びステージ11はやがて摩耗する。その結果、ステージ11には、駆動子8a,…,8b,…との当接部に該駆動子8a,…,8b,…の軌跡に沿って、即ち、アクチュエータ本体4の長手方向に沿って轍が形成される。
ここで、本実施形態では、前述の如く、第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とを、設置面40a上において、轍が形成される方向(アクチュエータ本体4の長手方向)に直交する厚み方向にずらして配置しているため、第1駆動子8a,8a,…によってステージ11に形成される轍と第2駆動子8b,8b,…によってステージ11に形成される轍とはそれぞれ厚み方向にずれ、駆動子8a,…,8b,…の個数に対応した合計6本の轍が形成される。つまり、第1駆動子8a,8a,…によって形成される轍と第2駆動子8b,8b,…によって形成される轍とが繋がることがなく、第1及び第2駆動子8a,8bの両方で削られた轍の発生を防止することができる。その結果、1つの轍の中で他の部分と深さが大きく異なる部分がなくなるため、駆動子8a(8b)とステージ11との摩擦力が大きく異なることを防止することができると共に、深さが急に変わる部分がなくなるため、駆動子8a(8b)とステージ11との摩擦力が急激に変わることを防止することができる。
したがって、本実施形態1によれば、アクチュエータ本体4の設置面40aにおいてその長手方向の異なる位置に設けられた第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とを、それぞれアクチュエータ本体4の厚み方向の異なる位置に設ける、即ち、厚み方向にずらして設けることによって、第1駆動子8a,8a,…によってステージ11に形成される轍と第2駆動子8b,8b,…によってステージ11に形成される轍とが繋がることを防止することができる。その結果、1つの轍内において第1駆動子8aと第2駆動子8bとの両方に削られて深さが大きく異なる部分や深さが急激に変化する部分が形成されることを防止し、第1及び第2駆動子8a,…,8b,…とステージ11との間の摩擦力を安定させて、ステージ11を安定して駆動することができる。
また、第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とを該厚み方向へずらす量を想定している轍の幅(即ち、ステージ11又は駆動子8a,…,8b,…を交換することなく使用可能と想定する轍の幅)よりも大きくすることによって、第1駆動子8a,8a,…によってステージ11に形成される轍と第2駆動子8b,8b,…によってステージ11に形成される轍とが繋がることを確実に防止することができる。
直交方向に交互に配置された第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とを、直交方向における一端側からN番目(N=1,2,…,n)の該第1駆動子8aと同N番目の該第2駆動子8bとの直交方向中間位置tが前記式(1)を満たすように配置することによって、第1駆動子8a,8a,…と第2駆動子8b,8b,…とを厚み方向にずらして配置する構成であっても、駆動子8a,…,8b,…を厚み方向へ均等に配置することができ、アクチュエータ本体4の振動に基づく駆動力を駆動子8a,…,8b,…のそれぞれから均等にステージ11に伝えることができる。
また、近年、電子機器の小型化にともない超音波アクチュエータ2も小型化が求められているが、超音波アクチュエータ2を小型化した場合、効率を低下させてしまう虞があった。すなわち、駆動子8a,…,8b,…の形状が相対的に大きくなってしまい、前述のようにアクチュエータ本体4の屈曲振動の腹の部分に駆動子8a,…,8b,…を設けた構成ではアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害してしまい、その結果、効率を低下させてしまう虞があった。
それに対し、本実施形態では、駆動子8a,…,8b,…を、アクチュエータ本体4の長手方向の各位置(駆動子群8A,8Bの位置)において、厚み方向に延びる直線L,L上に並ぶように配置することによって、駆動子8a,…,8b,…をアクチュエータ本体4の屈曲振動によって波打つ長辺側面に設けるにもかかわらず、該駆動子8a,…,8b,…がアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができる。さらに、駆動子8a,…,8b,…の形状を球状とすることによって、駆動子8a,…,8b,…とアクチュエータ本体4の設置面40aとの接触面積を小さくでき、アクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することをさらに抑制することができる。その結果、超音波アクチュエータ2としての効率を向上させることができる。ここで、「球状」とは、厳密な球形状に限られず、駆動子8a(8b)が圧電素子ユニット40に対して概略点接触となるような実質的な球形状も含む意味である。
さらに、駆動子8a(8b)を球状とすることによって、後述する円柱状の駆動子208a(208b)に比べて製造しやすいため、駆動子8a(8b)のコストを低減することができる。
《発明の実施形態2》
続いて、本発明の実施形態2に係る超音波アクチュエータ202について説明する。
実施形態2に係る超音波アクチュエータ202は、駆動子208a(208b)の形状が円柱状である点で、駆動子8a(8b)が球状である前記実施形態1と異なる。
詳しくは、超音波アクチュエータ202では、図10に示すように、圧電素子ユニット40の設置面40aにおける2次モードの屈曲振動の2箇所の腹の位置に、第1及び第2駆動子群208A,208Bが設けられている。第1駆動子群208Aは2つの駆動子208a,208aで構成されている一方、第2駆動子群208Bは1つの駆動子208bで構成されている。これら駆動子208a,…,208bはそれぞれ同じ円柱状をしている。
各駆動子208a(208b)は実施形態1と同様の接着剤82にて圧電素子ユニット40に固定されている。こうして、各駆動子208a(208b)は、圧電素子ユニット40の設置面40aに対して線接触状に取り付けられている。ここで、「線接触状」とは、駆動子208a(208b)と設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、駆動子208a(208b)と設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該駆動子208a(208b)と設置面40aとが実質的に線接触している状態も意味する。また、「円柱状」とは、厳密な円柱形状に限られず、駆動子208a(208b)が設置面40aに対して概略線接触となるような実質的な円柱形状も含む意味である。
第1駆動子群208Aでは、図11に示すように、第1駆動子208a,208aが圧電素子ユニット40の直交方向に並んで、詳しくは、直交方向に延びる直線L上に並んで設けられている。このとき、各第1駆動子208aは、その円柱の軸が直交方向を向くように配設されている。つまり、2つの第1駆動子208a,208aは、それぞれの円柱の軸が一直線上に並び、その一直線上に並んだ軸が直線Lと平行になっている。換言すれば、第1駆動子208a,208aは、それぞれの円柱の軸が該第1駆動子208a,208aが周回運動を行う平面に対して直交するように延びている。
また、第2駆動子208bも、その円柱の軸が直交方向を向くように配設されている。
ただし、第1駆動子群208Aの第1駆動子208a,208aと第2駆動子群208Bの第2駆動子208bとは、互いに直交方向にずれた位置に配置されており、直交方向位置が異なる。詳しくは、長手方向位置は異なるものの、直交方向位置だけを見れば、第1駆動子208a,第2駆動子208b,第1駆動子208aの順で交互に配置されている。
また、第1駆動子208aと第2駆動子208bとの直交方向へのずれ量は、第1及び第2駆動子208a,208bのステージ11との当接部の直交方向長さ、即ち、駆動子を構成する円柱の長さよりも大きくなっている。つまり、アクチュエータ本体4の長手方向の一方から他方へ向かって見たときに、第1駆動子208a,208aと第2駆動子208bとが重ならないように配置されている。
さらに、直交方向における一端側から1番目の第1駆動子208aと第2駆動子208bとの直交方向間隔及び、第2駆動子208bと直交方向における一端側から2番目の第1駆動子208aとの間隔は等間隔になっている。
したがって、実施形態2によれば、アクチュエータ本体4の設置面40aにおいてその長手方向の異なる位置に設けられた第1駆動子208a,208aと第2駆動子208bとを、それぞれアクチュエータ本体4の厚み方向の異なる位置に設ける、即ち、厚み方向にずらして設けることによって、第1駆動子208a,208aによってステージ11に形成される轍と第2駆動子208bによってステージ11に形成される轍とが繋がることを防止することができる。その結果、1つの轍内において深さが大きく異なる部分や深さが急激に変化する部分が形成されることを防止し、第1及び第2駆動子208a,208a,208bとステージ11との間の摩擦力を安定させて、ステージ11を安定して駆動することができる。
また、第1駆動子208a,208aと第2駆動子208bとの厚み方向へのずれ量は、第1及び第2駆動子208a,208bの厚み方向長さ、即ち、円柱の長さよりも大きくなっているため、第1駆動子208a,208aによってステージ11に形成される轍と第2駆動子208bによってステージ11に形成される轍とが厚み方向に重なり合うことも防止することができる。
また、駆動子208a(208b)の形状を円柱状とすることによって、各駆動子208a(208b)と設置面40aとの接触面積を小さくしてアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができると共に、該各駆動子208a(208b)をその円柱の軸がアクチュエータ本体4の屈曲振動の振動方向と縦振動の振動方向とに直交する方向を向くように、即ち、アクチュエータ本体4が屈曲振動を行う平面に対して直交する方向を向くように配設して設置面40aに取り付けることによって、アクチュエータ本体4の屈曲振動の阻害をさらに抑制することができる。
その他、実施形態1と同様の作用・効果を奏することができる。
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3に係る駆動装置1は、実施形態1に係る駆動装置1と基本的には同様の構成をしている。詳しくは、実施形態3に係る駆動装置1は、図2に示すような、ステージ11と、超音波アクチュエータ302と、該超音波アクチュエータ302を駆動制御する制御装置(図示省略)とを備えている。
ステージ11は、互いに平行な状態で固定体としての基台(図示省略)上に固定されたガイド12,12に摺動可能に取り付けられている。つまり、ステージ11は、ガイド12,12が延びる方向に沿って移動可能に構成されている。このステージ11が可動体を構成する。これらガイド12,12の延びる方向がステージ11の可動方向となる。このステージ11は、平面視略方形の板状部材であって、アルミナで形成されている。尚、ステージ11の材質は、アルミナに限られるものではなく、任意の材質を用いて形成することができる。そして、前記超音波アクチュエータ302は、このステージ11の裏面(ガイド12,12が設けられている側の面)に後述する駆動子308a,…,308b,…が当接するように配設されている。
前記超音波アクチュエータ302は、図12に示すように、振動を発生させるアクチュエータ本体4と、該アクチュエータ本体4の駆動力をステージ11に伝達させる駆動子308a,…,308b,…と、該アクチュエータ本体4を収容するケース5と、アクチュエータ本体4とケース5との間に介設されてアクチュエータ本体4を弾性的に支持する支持ゴム61,61と、アクチュエータ本体4を前記ステージ11に付勢するための付勢ゴム62とを備えている。この超音波アクチュエータ302が振動型アクチュエータを構成する(以下、同様)。
前記アクチュエータ本体4は、圧電素子ユニット40で構成されている。
前記圧電素子ユニット40は、略長方形状の互いに対向する一対の主面と、この主面と直交して該主面の長手方向に延びる、互いに対向する一対の長辺側面と、これら主面及び長辺側面の両方と直交して該主面の短手方向に延びる、互いに対向する一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。
この圧電素子ユニット40は、図3に示すように、5つの圧電体層(圧電素子)41,41,…と4つの内部電極層42,44,43,44とを交互に積層して構成される。内部電極層42,44,43,44は、積層方向に圧電体層41を介して交互に配された、第1給電電極層42と共通電極層44と第2給電電極層43と共通電極層44とで構成される。これら第1給電電極層42、第2給電電極層43及び共通電極層44,44のそれぞれは、各圧電体層41の主面上に印刷されている。
前記各圧電体層41は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などのセラミック材料からなる絶縁体層であって、前記圧電素子ユニット40と同様に、一対の主面と、一対の長辺側面と、一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。また、各圧電体層41には、その長辺側面のうち一方の長辺側面の長手方向中央部に外部電極45aが、一方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極46aが、他方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極47aがそれぞれ形成されている。
前記各共通電極層44は、圧電体層41の主面の略全面に亘って設けられた略長方形状をしている。また、各共通電極層44の一方の長辺部には、その長手方向中央部から圧電体層41の前記外部電極45aまで延びる引出電極44aが形成されている。
前記第1給電電極層42は、図4に示すように、圧電体層41の主面をその長手方向及び短手方向にそれぞれ2等分してなる4つの領域のうち該主面の対角線方向に位置する2対の領域のうち一方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第1電極42a,42bと、これら第1電極42a,42bを連結して導通させる導通電極42cとを有する。各第1電極42a(42b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。つまり、各第1電極42a(42b)は、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。また、第1電極42a,42bのうちの一方の第1電極42aには、圧電体層41の前記外部電極46aまで延びる引出電極42dが設けられている。
前記第2給電電極層43は、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する前記2対の領域のうち他方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第2電極43a,43bと、これら第2電極43a,43bを連結して導通させる導通電極43cとを有する。前記他方の対の領域のうち積層方向に見て前記第1電極42aの前記短手方向且つ前記第1電極42bの前記長手方向に隣接する領域に設けられる電極が第2電極43aであり、第1電極42aの該長手方向且つ第1電極42bの該短手方向に隣接する領域に設けられる電極が第2電極43bである。各第2電極43a(43b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。つまり、各第2電極43a(43b)は、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。また、第2電極43a,43bのうちの一方の第2電極43bには、圧電体層41の前記外部電極47aまで延びる引出電極43dが設けられている。
これら圧電体層41,41,…と内部電極層42,44,43,44とを交互に積層することで構成された圧電素子ユニット40においては、その一方の長辺側面の前記長手方向中央部に、各圧電体層41の外部電極45aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極45が形成されている。この外部電極45には、前記共通電極層44,44に形成された引出電極44a,44aが電気的に接続されている。同様に、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極46aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極46が形成されている。この外部電極46には、前記第1給電電極層42の引出電極42dが電気的に接続されている。また、圧電素子ユニット40の他方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極47aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極47が形成されている。この外部電極47には、前記第2給電電極層43の引出電極43dが電気的に接続されている。
そして、圧電素子ユニット40の長辺側面のうち他方の長辺側面、即ち、前記外部電極45aが設けられていない側の長辺側面(すなわち、後述する屈曲振動の振動方向を向く一対の面のうちの一方の面。以下、設置面ともいう)40aには、図12,13に示すように、6個の駆動子308a,…,308b,…が設けられている。
これら駆動子308a,…,308b,…は、球状の部材であって、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、タングステンカーバイド等で形成されている。また、駆動子308a,…,308b,…は、圧電素子ユニット40の設置面40aに対して接着剤82を介して点接触状に取り付けられている(図4参照)。ここで、「点接触状」とは、駆動子308a,…,308b,…と設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、駆動子308a,…,308b,…と設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該駆動子308a,…,308b,…と設置面40aとが実質的に点接触している状態も意味する。
接着剤82としては、圧電素子ユニット40の材料及び駆動子308a,308bの材料よりも柔らかいことが望ましい。具体的には、合成樹脂、特にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。このような材料を用いることにより圧電素子ユニット40の後述する振動をできるだけ阻害せずに駆動子308a,…,308b,…と設置面40aとの間の固定を実現することができる。
また、駆動子308a,…,308b,…が設けられた位置は、設置面40aにおいて、圧電素子ユニット40の長手方向両端部から該設置面40aの全長の30〜35%距離だけ内側に入った位置であり、即ち、圧電素子ユニット40の後述する屈曲振動の2次モードの腹の位置であって、振動が最も大きくなる位置である。そして、これら駆動子308a,…,308b,…は、屈曲振動の2次モードの前記2箇所の腹の位置のうち長手方向一側に配設された第1駆動子308a,308a,…からなる第1駆動子群308Aと、長手方向他側に配設された第2駆動子308b,308b,…からなる第2駆動子群308Bとに分けられる。
第1駆動子群308Aでは、図13に示すように、複数の第1駆動子308a,308a,…が圧電素子ユニット40の厚み方向(以下、直交方向ともいう)に配列されている。この直交方向は、圧電素子ユニット40の積層方向でもあり、第1駆動子308aが後述する周回運動を行う平面に直交する方向でもあり、圧電素子ユニット40の後述する屈曲振動の振動方向と縦振動の振動方向とに直交する方向でもある。このように、直交方向に配列された第1駆動子308a,308a,…は、全ての長手方向位置が同じわけではなく、長手方向位置が異なっている、即ち、長手方向にずれて配置されている。詳しくは、直交方向一端側から1番目と3番目の第1駆動子308a,308aは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向内側に所定量sだけずれた位置に配設される一方、直交方向一端側から2番目の第1駆動子308aは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向外側に所定量sだけずれた位置に配設されている。この直線Lは、屈曲振動の腹の部分を示している。つまり、1番目及び3番目の第1駆動子308a,308aと2番目の第1駆動子308aとは、屈曲振動の腹の部分からそれぞれ長手方向の反対側に同じずれ量sだけずれている。
また、これら第1駆動子308a,308a,…は、設置面40aの直交方向中心部を通り該直交方向に直交する(即ち、長手方向に延びる)直線に対して線対称な位置に配置されている。さらに、これら第1駆動子308a,308a,…は直交方向において互いに等間隔に配置されていて、より詳しくは、下記式(1)を満たす位置tに配置されている。
t={(2N−1)/(2n)}×T ・・・ (1)
ここで、
t:設置面40a上における直交方向の一端を基準としたときの直交方向の位置
n:直交方向に並ぶ駆動子の総数(本実施形態では、3個)
T:設置面40aの直交方向寸法(アクチュエータ本体4の厚み)
である。
すなわち、本実施形態では、直交方向の最も一端側(図13の下側)に位置する第1駆動子308aは、設置面40aの直交方向一端側の端縁からT/6の位置に、直交方向の一端側から2番目の第1駆動子308aは、設置面40aにおける直交方向中央に、直交方向の一端側から3番目の(図13の上側に位置する)第1駆動子308aは、設置面40aの直交方向一端側の端縁から5T/6の位置に配置されている。つまり、1番目の第1駆動子308aの位置と2番目の第1駆動子308aの位置との直交方向間隔及び、2番目の第1駆動子308aの位置と3番目の第1駆動子308aの位置との直交方向間隔は、それぞれT/3となっている。
一方、第2駆動子群308Bにおいても、第1駆動子群308Aと同様に、複数の第2駆動子308b,308b,…が圧電素子ユニット40の直交方向に配列されていると共に、それらの長手方向位置がずれている。さらに詳しくは、直交方向一端側から1番目と3番目の第2駆動子308b,308bは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向内側に所定量sだけずれた位置に配設される一方、直交方向一端側から2番目の第2駆動子308bは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向外側に所定量sだけずれた位置に配設されている。第2駆動子群308Bにおいても、この直線Lは屈曲振動の腹の部分を示している。
また、第2駆動子308b,308b,…は、直交方向位置についても、第1駆動子群308Aと同様に前記式(1)を満たすように配置されている。
つまり、第1駆動子308a,308a,…と第2駆動子308b,308b,…とは、設置面40aにおける長手方向中心部を中心に該長手方向に線対称な位置に、即ち、設置面40aにおける長手方向中心部を通り直交方向に延びる直線に対して線対称な位置に配置されている。
このように構成されたアクチュエータ本体4は、前記外部電極45をグランドに接続し、前記外部電極46に所定周波数の交流電圧を、前記外部電極47に該交流電圧と位相が90°ずれた交流電圧を印加することによって、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する一方の対の第1電極42a,42bと、他方の対の第2電極43a,43bとに互いに位相が90°ずれた交流電圧が印加され、その長手方向への縦振動(いわゆる、伸縮振動)とその短手方向への屈曲振動(いわゆる、横振動)とが誘起される。
縦振動の共振周波数及び屈曲振動の共振周波数はそれぞれ、アクチュエータ本体4、即ち、圧電素子ユニット40の材料、形状等により決定される。さらに、両共振周波数は、アクチュエータ本体4を支持する力及び支持する部分によっても影響を受ける。これらを考慮して、両共振周波数を略一致させ、その近傍の周波数の交流電圧を位相を90°ずらした状態で外部電極46,47のそれぞれに印加する。例えば、縦振動の1次モード(図6参照)の共振周波数と屈曲振動の2次モード(図7参照)の共振周波数とが一致するように圧電素子ユニット40の形状等を設計して、該共振周波数近傍の交流電圧を前述の如く、位相を90°ずらして印加することによって、圧電素子ユニット40には、縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとが調和的に誘起され、図8(a)、(b)、(c)、(d)に示す形状の変化を順番に起こす。
その結果、圧電素子ユニット40に設けられた各駆動子308a(308b)が該圧電素子ユニット40の主面と平行な平面、即ち、長手方向と短手方向とを含む平面(図8における紙面と平行な面)内で略楕円運動、即ち、周回運動を行う。
前記ケース5は、樹脂製であって、前記圧電素子ユニット40に対応した略直方体状の概略箱形状をしている。このケース5は、前記圧電素子ユニット40の主面と平行で且つ略長方形状の主壁部51と、該主壁部51の前記長手方向の一側(図12における左側)に位置する短辺部に設けられた第1短辺壁部52と、該主壁部51の該長手方向の他側(図12における右側)に位置する短辺部に設けられた第2短辺壁部53と、該主壁部51の前記短手方向の一側(図12における下側)に位置する長辺部に設けられた長辺壁部54とを有している。つまり、ケース5は、主壁部51に対向する側及び該主壁部51の該短手方向の他側(図12における上側)に位置する長辺部(圧電素子ユニット40の駆動子308a,…,308b,…が設けられた長辺側面に対応する部分)には壁部が設けられておらず、圧電素子ユニット40の積層方向(主壁部51の法線方向)の一側及び該短手方向の他側に開口した形状となっている。
このように構成されたケース5内に前記アクチュエータ本体4が収容されている。アクチュエータ本体4は、圧電素子ユニット40の一方の主面が主壁部51と対向し且つ圧電素子ユニット40の一方の長辺側面(前記外部電極45が設けられている側の長辺側面)が長辺壁部54と対向するようにしてケース5内に収容されている。このとき、駆動子308a,…,308b,…はケース5から前記短手方向の他側に突出している。また、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面とケース5の第1短辺壁部52との間および圧電素子ユニット40の他方の短辺側面とケース5の第2短辺壁部53との間にはそれぞれ支持ゴム61,61が介設されている。この圧電素子ユニット40の両短辺側面は縦振動の腹の部分であるが、支持ゴム61,61は弾性体であるため、圧電素子ユニット40の縦振動を阻害することなく、該圧電素子ユニット40を支持することができる。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4並びに第1及び第2短辺壁部52,53だけでなく、主壁部51の内側表面とも当接している。また、圧電素子ユニット40の一方の長辺側面とケース5の長辺壁部54との間には付勢ゴム62が介設されている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4及び長辺壁部54だけでなく、主壁部51の内側表面とも当接している。
そして、主壁部51の内側表面における、前記支持ゴム61,61及び付勢ゴム62が当接する部分には電極51a(付勢ゴム62と当接する電極のみ図示)が設けられているこれらの電極は、主壁部51の外側表面に設けられた端子電極(図示省略)にそれぞれ導通している。
前記各支持ゴム61は、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4をその長手方向に付勢した状態で弾性的に支持する。それと共に、支持ゴム61,61は、主壁部51の内側表面の該支持ゴム61,61の配設位置に対応する部分に設けられ且つ前記端子電極に導通する電極と圧電素子ユニット40の外部電極46,47とを導通させている。
また、前記付勢ゴム62も、支持ゴム61と同様に、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4をその短手方向(即ち、短手方向が付勢方向に相当する)に付勢するためのものである。それと共に、付勢ゴム62は、圧電素子ユニット40の外部電極45と主壁部51の内側表面の電極51aとを導通させている。この付勢ゴム62が付勢手段を構成する。
尚、これら支持ゴム61及び付勢ゴム62の代わりに、板バネ等の弾性部材を採用してもよい。
つまり、ケース5の外側表面に設けられた前記端子電極に給電することによって、圧電素子ユニット40に給電することができる。
このように構成された超音波アクチュエータ302は、図2に示すように、駆動子308a,…,308b,…がステージ11の裏面と当接するように配設されると共に、ケース5が基台(図示省略)に固定される。詳しくは、超音波アクチュエータ302は、圧電素子ユニット40の短手方向がステージ11の裏面に直交すると共に、圧電素子ユニット40の長手方向がステージ11の裏面と平行で且つガイド12,12と平行になるように配置される。さらに換言すれば、超音波アクチュエータ302は、圧電素子ユニット40の屈曲振動の方向がステージ11の裏面と直交すると共に、圧電素子ユニット40の縦振動の方向がガイド12,12と平行な方向を向くように配置される。
このとき、前記付勢ゴム62が圧縮変形しており、この付勢ゴム62の弾性力によって駆動子308a,…,308b,…がステージ11に付勢されている。超音波アクチュエータ302のステージ11への付勢力は、付勢ゴム62の弾性力によって決まる。
前記制御装置は、外部からの動作指令を受けて、その動作指令に応じた周波数の交流電圧を動作指令に応じた位相差で外部電極46,47に印加する。
制御装置は、前述の如く、アクチュエータ本体4、即ち、圧電素子ユニット40に縦振動と屈曲振動とを調和的に発生させて、駆動子308a,…,308b,…を図8に示すような周回運動させることで、ステージ11を移動させる。具体的には、圧電素子ユニット40の異常発熱を防止すべく、圧電素子ユニット40の縦振動と屈曲振動との共通の共振周波数よりも少し高い周波数の交流電圧が外部電極46,47に印加される。このとき、かかる交流電圧は、互いに位相が90°ずれた状態で外部電極46,47に印加される。
圧電素子ユニット40が、縦振動と屈曲振動との合成振動を行うと、駆動子308a,…,308b,…は圧電素子ユニット40の長手方向と短手方向とを含む平面内において略楕円運動を行う。こうすることで、駆動子308a,…,308b,…は、ステージ11との間の摩擦力の増大と緩和を周期的に繰り返しながら、ステージ11に対して摩擦力を介して圧電素子ユニット40の長手方向へ駆動力を付与しており、ステージ11はガイド12,12に沿って移動する。この圧電素子ユニット40の長手方向(ガイド12,12が延びる方向と一致する)が、駆動子308a,…,308b,…が駆動力を出力する方向である駆動方向に相当する。
以下に、超音波アクチュエータ302によるステージ11の駆動を、図9を参照してさらに詳しく説明する。圧電素子ユニット40が長手方向(縦振動の振動方向)に伸張するとき、一方(例えば、図9の左側)の第1駆動子308aは、図9(b)に示すように、短手方向(屈曲振動の振動方向)においてステージ11側の領域を変位するため、ステージ11との間の摩擦力が増大し、この摩擦力によってステージ11を該長手方向における該一方の第1駆動子308aが変位する側(図9の左側)へ移動させる。このとき、他方(図9の右側)の第2駆動子308bは、該長手方向において一方の第1駆動子308aとは逆向きに変位するが、該短手方向において反ステージ11側(ステージ11から離れる側)の領域を変位するため、ステージ11から離れて摩擦力が作用せず、ステージ11の移動にはほとんど影響を与えない。
一方、圧電素子ユニット40が長手方向に収縮するときは、他方(図9の右側)の第2駆動子308bは、図9(c)に示すように、短手方向においてステージ11側の領域を変位するため、ステージ11との間の摩擦力が増大し、この摩擦力によってステージ11を該長手方向における該他方の第2駆動子308bが変位する側(図9の左側)へ移動させる。この移動方向は、前述した、圧電素子ユニット40の伸張時における一方の第1駆動子308aによるステージ11の移動方向と同じである。このとき、一方(図9の左側)の第1駆動子308aは、該長手方向において他方の第2駆動子308bとは逆向きに変位するが、該短手方向において反ステージ11側の領域を変位するため、ステージ11から離れて摩擦力が作用せず、ステージ11の移動にはほとんど影響を与えない。
尚、図9においては、ステージ11の移動に影響を与えない方の駆動子308b(308a)はステージ11から離れているが、必ずしも離れている必要はない。すなわち、駆動子308b(308a)は、ステージ11を移動させない程度の摩擦力で該ステージ11に当接してる状態であってもよい。
こうして、第1駆動子308a,308a,…と第2駆動子308b,308b,…とは、位相が180°ずれた状態で交互にステージ11を所定の一方向へ移動させる。尚、前記交流電圧を位相を−90°ずらした状態で外部電極46,47に印加することによって、駆動子308a,…,308b,…が出力する駆動力を逆向きにすることができ、ステージ11を他方向へ移動させることができる。
尚、ステージ11の移動量、移動速度及び移動加速度は、外部電極46,47に給電する交流電圧の電圧値、周波数及び給電時間の少なくとも1つを調整する、又は外部電極46,47に給電する各交流電圧の位相のずれを変更する等によって調整することができる。
このように、超音波アクチュエータ302は、駆動子308a,…,308b,…に縦振動の振動方向(長手方向)と屈曲振動の振動方向(短手方向)とを含む平面内で周回運動させて駆動子308a,…,308b,…とステージ11との間の摩擦力の増大と緩和とを繰り返しながら、該ステージ11を駆動している。このとき、駆動子308a,…,308b,…とステージ11との間の摩擦力は、付勢ゴム62の付勢力によって増強されている。
このとき、図9に示すように、アクチュエータ本体4は、一方の長辺側面における長手方向中央部において付勢ゴム62から付勢力を受けている一方、他方の長辺側面における長手方向中央部よりも端部側の位置に設けられた駆動子308a,308bを介して該ステージ11から反力を受けている。その結果、付勢ゴム62の付勢力とステージ11からの反力とが、アクチュエータ本体4を屈曲振動の振動方向及び縦振動の振動方向を含む平面(即ち、駆動子308a,308bが周回運動を行う平面)内で回転させるモーメントとして作用する。例えば、図9(b)の場合にはアクチュエータ本体4を反時計回りに、図9(c)に示す場合にはアクチュエータ本体4を時計回りに回転させるモーメントが発生する。
そこで、本実施形態では、前述の如く、各駆動子群308A(308B)において、厚み方向に配列された複数の駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)を長手方向にずらして配置している。こうすることで、各駆動子群308A(308B)において、駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)とステージ11との当接部を長手方向へ拡げている。その結果、アクチュエータ本体4に前述のようなモーメントが作用したとしても、該モーメントを駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)で受け止めて、アクチュエータ本体4の姿勢が変化することを防止することができる。
したがって、本実施形態3によれば、複数の駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)を厚み方向に配列させて構成した駆動子群308A(308B)において、駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)の位置を長手方向にずらすことによって、駆動子308a,…,308b,…が周回運動をしてステージ11を駆動する際に、ステージ11からの反力と付勢ゴム62からの付勢力とによりアクチュエータ本体4に該アクチュエータ本体4を回転させるモーメントが作用しても、アクチュエータ本体4が回転することを規制して、アクチュエータ本体4のステージ11に対する姿勢を維持することができる。その結果、駆動子308a,…,308b,…とステージ11との当接状態を所望の当接状態に維持して、アクチュエータ本体4からステージ11へ所望の駆動力を出力させることができ、超音波アクチュエータ302の動作を安定させることができる。
それに加えて、駆動子308a,…,308b,…をアクチュエータ本体4の厚み方向に複数設けることによって、駆動子の個数が増える、即ち、駆動子とステージ11との当接面積が増えるため、超音波アクチュエータ302からステージ11へ付与される駆動力を大きくすることができる。
また、各駆動子群308A(308B)において長手方向にずれている駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)を、屈曲振動の腹の部分を挟んだ両側に該腹の部分から同じ距離sとなるようにずらすことによって、アクチュエータ本体4が屈曲振動及び縦振動を行う際に、長手方向にずらした駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)の屈曲振動による振幅が略同じになってステージ11に対して略同時に当接することになるため、ステージ11への駆動力の付与を安定して行うことができる。
さらに、各駆動子群308A(308B)において長手方向にずれている駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)を、直交方向において、屈曲振動の腹の部分を挟んで一側と他側とに交互に配置することによって、駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)の位置を長手方向にずらす構成であっても、駆動子308a,308a,…(308b,308b,…)を均等に配置することができ、ステージ11に対してバランス良く当接させることができる。
また、駆動子308a,…,308b,…を、設置面40aにおいて、長手方向中心部を通り該長手方向に直交する(厚み方向に延びる)直線に対して線対称な位置に配置することによって、第1駆動子群308Aと第2駆動子群308Bとからステージ11に付与される駆動力を均等にすることができ、ステージ11を安定して駆動することができる。
さらに、駆動子308a,…,308b,…を前記式(1)を満たすように配置することによって、駆動子308a,…,308b,…それぞれの間の直交方向間隔を等間隔にすることができ、押圧力を各駆動子308a(308b)からステージ11へ均等に伝えることができる。
また、近年、電子機器の小型化にともない超音波アクチュエータ302も小型化が求められているが、超音波アクチュエータ302を小型化した場合、効率を低下させてしまう虞があった。すなわち、駆動子308a,…,308b,…の形状が相対的に大きくなってしまい、前述のようにアクチュエータ本体4の屈曲振動の腹の部分に駆動子308a,…,308b,…を設けた構成ではアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害してしまい、その結果、効率を低下させてしまう虞があった。
それに対し、本実施形態では、駆動子308a,…,308b,…の形状を球状とすることによって、駆動子308a,…,308b,…とアクチュエータ本体4の設置面40aとの接触面積を小さくでき、アクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することをさらに抑制することができる。その結果、超音波アクチュエータ302としての効率を向上させることができる。ここで、「球状」とは、厳密な球形状に限られず、駆動子308a(308b)が圧電素子ユニット40に対して概略点接触となるような実質的な球形状も含む意味である。
さらに、駆動子308a(308b)を球状とすることによって、円柱状の駆動子208a(208b)に比べて製造しやすいため、駆動子308a(308b)のコストを低減することができる。
《発明の実施形態4》
続いて、本発明の実施形態4に係る超音波アクチュエータについて説明する。
実施形態4では、駆動子の配置が実施形態3と異なる。そこで、実施形態3と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
詳しくは、第1駆動子群408Aでは、図14に示すように、第1駆動子408a,408a,…は、直交方向に延びる直線Lに対して傾斜した傾斜直線La上に配列されている。この傾斜直線Laは、直交方向一端側(図14の下側)が長手方向外側に、直交方向他端側(図14の上側)が長手方向内側に位置する向きに該直線Lに対して傾斜している。尚、直線Lは、実施形態3と同様に屈曲振動の腹の部分を示している。
また、直交方向一端側から1番目の第1駆動子408aは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向外側に所定量sだけずれた位置に、2番目の第1駆動子408aは、直線L上の位置に、3番目の第1駆動子408aは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向内側に所定量sだけずれた位置に配置されている。
第2駆動子群408Bでは、第2駆動子408b,408b,…は、直交方向に延びる直線Lに対して傾斜した傾斜直線Lb上に配列されている。この傾斜直線Lbは、直交方向一端側(図14の下側)が長手方向内側に、直交方向他端側(図14の上側)が長手方向外側に位置するように直線Lに対して傾斜している。つまり、傾斜直線Lbは、直線Lに対して傾斜する向きが傾斜直線Laと同じになっていている。さらに、傾斜直線Laと傾斜直線Lbとは、直線Lに対して傾斜する傾斜角度の大きさはα°で同じであり、即ち、互いに平行になっている。
また、直交方向一端側から1番目の第2駆動子408bは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向内側に所定量sだけずれた位置に、2番目の第2駆動子408bは、直線L上の位置に、3番目の第2駆動子408bは、直交方向に延びる直線Lに対して長手方向外側に所定量sだけずれた位置に配置されている。
このように配設された第1駆動子408a,408a,…と第2駆動子408b,408b,…の直交方向位置は、実施形態3と同様に、前記式(1)を満たす位置に配置されている。
換言すれば、第1駆動子408a,408a,…と第2駆動子408b,408b,…とは、設置面40aにおける長手方向及び直交方向の中心部を中心に180°回転させた点対称な位置に配置されている。
したがって、実施形態4によれば、実施形態3と同様に、複数の駆動子408a,408a,…(408b,408b,…)を厚み方向に配列させて構成した駆動子群408A(408B)において、駆動子408a,408a,…(408b,408b,…)の位置を長手方向にずらすことによって、駆動子408a,…,408b,…が周回運動をしてステージ11を駆動する際に、ステージ11からの反力と付勢ゴム62からの付勢力とによりアクチュエータ本体4に該アクチュエータ本体4を回転させるモーメントが作用しても、アクチュエータ本体4が回転することを規制して、アクチュエータ本体4のステージ11に対する姿勢を維持することができる。その結果、アクチュエータ本体4からステージ11へ所望の駆動力を出力することができ、超音波アクチュエータの動作を安定させることができる。
また、アクチュエータ本体4の1次モードの縦振動は、アクチュエータ本体4の長手方向中心ほど小さく、長手方向端部側ほど大きくなる。そのため、駆動子408a,408a,…(408b,408b,…)を厚み方向に対して傾斜させて配列すると、駆動子408a(408b)ごとに長手方向位置が異なり、つまりは、縦振動の大きさが異なる。ところが、第1駆動子群408Aの第1駆動子408a,408a,…の配列方向(傾斜直線La)と第2駆動子群408Bの第2駆動子408b,408b,…の配列方向(傾斜直線Lb)とを平行にすることによって、アクチュエータ本体4の設置面40a上において厚み方向一端側には、直線Lよりも長手方向外側に位置して縦振動が相対的に大きい第1駆動子408aと直線Lよりも長手方向内側に位置して縦振動が相対的に小さい第2駆動子408bとが位置する一方、厚み方向他端側には、直線Lよりも長手方向内側に位置して縦振動が相対的に小さい第1駆動子408aと直線Lよりも長手方向外側に位置して縦振動が相対的に大きい第2駆動子408bとが位置することになり、駆動子408a,…,408b,…の振動の大きさが厚み方向中心部を中心として該厚み方向に線対称な分布となる。その結果、アクチュエータ本体4の縦振動の振動方向(即ち、長手方向)に沿った駆動力を出力することができ、ステージ11を安定して駆動することができる。
その他、実施形態3と同様の作用・効果を奏することができる。
尚、本実施形態4では、各駆動子群408A(408B)における複数の駆動子408a,408a,…(408b,408b,…)は直線上に配列されているが、これに限られるものではなく、曲線上に配列される構成であってもよい。
《発明の実施形態5》
続いて、本発明の実施形態5に係る超音波アクチュエータについて説明する。
実施形態5では、駆動子の配列方向の傾斜する向きが実施形態4と異なる。
詳しくは、第1駆動子群508Aでは、図15に示すように、第1駆動子508a,508a,…は、直線Lに対して傾斜した傾斜直線La上に配列されている。この傾斜直線Laは、直交方向一端側(図15の下側)が長手方向外側に、直交方向他端側(図15の上側)が長手方向内側に位置する向きに直線Lに対して傾斜している。
また、直交方向一端側から1番目の第1駆動子508aは、直線Lに対して長手方向外側に所定量sだけずれた位置に、2番目の第1駆動子508aは、直線L上の位置に、3番目の第1駆動子508aは、直線Lに対して長手方向内側に所定量sだけずれた位置に配置されている。
第2駆動子群508Bでは、第2駆動子508b,508b,…は、直線Lに対して傾斜した傾斜直線Lb上の配列されている。この傾斜直線Lbは、直交方向一端側(図15の下側)が長手方向外側に、直交方向他端側(図15の上側)が長手方向内側に位置する向きに直線Lに対して傾斜している。つまり、傾斜直線Lbは、直線Lに対して傾斜する向きが傾斜直線Laと反対になっており、傾斜直線Laと傾斜直線Lbとはハ字状になっている。尚、傾斜直線Laと傾斜直線Lbとは、直交方向に対して傾斜する向きが反対であるが、傾斜角度の大きさはα°で同じである。
また、直交方向一端側から1番目の第2駆動子508bは、直線Lに対して長手方向外側に所定量sだけずれた位置に、2番目の第2駆動子508bは、直線L上の位置に、3番目の第2駆動子508bは、直線Lに対して長手方向内側に所定量sだけずれた位置に配置されている。
第1駆動子508a,508a,…と第2駆動子508b,508b,…の直交方向位置は、実施形態3と同様に、前記式(1)を満たす位置に配置されている。
このように、第1駆動子508a,508a,…と第2駆動子508b,508b,…とは、設置面40aにおける長手方向中心部を中心に該長手方向に線対称な位置に、即ち、設置面40aにおける長手方向中心部を通り直交方向に延びる直線に対して線対称な位置に配置されている。
したがって、実施形態5によれば、実施形態4と同様に、複数の駆動子508a,508a,…(508b,508b,…)を厚み方向に配列させて構成した駆動子群508A(508B)において、駆動子508a,508a,…(508b,508b,…)の位置を長手方向にずらすことによって、駆動子508a,…,508b,…が周回運動をしてステージ11を駆動する際に、ステージ11からの反力と付勢ゴム62からの付勢力とによりアクチュエータ本体4に該アクチュエータ本体4を回転させるモーメントが作用しても、アクチュエータ本体4が回転することを規制して、アクチュエータ本体4のステージ11に対する姿勢を維持することができる。その結果、アクチュエータ本体4からステージ11へ所望の駆動力を出力することができ、超音波アクチュエータの動作を安定させることができる。
また、各駆動子群508A(508B)において、駆動子508a,508a,…(508b,508b,…)の配列方向を厚み方向に対して傾斜させると、該駆動子508a,508a,…(508b,508b,…)から出力される駆動力はその配列方向に直交する方向に傾斜しやすくなり、アクチュエータ本体4が傾く傾向にあるが、第1駆動子群508Aの第1駆動子508a,508a,…の配列方向と第2駆動子群508Bの第2駆動子508b,508b,…の配列方向とを厚み方向に対して反対の向きに傾斜させることによって、アクチュエータ本体4の傾きを抑制することができる。
その他、実施形態4と同様の作用・効果を奏することができる。
《発明の実施形態6》
続いて、本発明の実施形態6に係る超音波アクチュエータ602について説明する。
実施形態6に係る超音波アクチュエータ602は、駆動子608a(608b)の形状が円柱状である点で、駆動子が球状である前記実施形態3〜5と異なる。そこで実施形態3と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
詳しくは、超音波アクチュエータ602では、図16,17に示すように、圧電素子ユニット40の設置面40aにおける2次モードの屈曲振動の2箇所の腹の位置に、駆動子群608A,608Bが設けられている。これら駆動子群608A,608Bは、それぞれ2つの第1駆動子608a,608aと第2駆動子608b,608bとで構成されている。これら駆動子608a,…,608b,…はそれぞれ同じ円柱状をしている。
各駆動子608a(608b)は実施形態3と同様の接着剤82にて圧電素子ユニット40に固定されている。こうして、各駆動子608a(608b)は、圧電素子ユニット40の設置面40aに対して線接触状に取り付けられている。ここで、「線接触状」とは、駆動子608a(608b)と設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、駆動子608a(608b)と設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該駆動子608a(608b)と設置面40aとが実質的に線接触している状態も意味する。また、「円柱状」とは、厳密な円柱形状に限られず、駆動子608a(608b)が設置面40aに対して概略線接触となるような実質的な円柱形状も含む意味である。
第1駆動子群608Aでは、第1駆動子608a,608aが、直線Lに対して傾斜した傾斜直線La上に配列されている。同様に、第2駆動子群608Bでは、第2駆動子608b,608bが、直線Lに対して傾斜した傾斜直線Lb上に配列されている。これら傾斜直線Laと傾斜直線Lbとは、直線Lに対して傾斜する向きが反対になっていて、ハ字状になっている。
また、各駆動子608a(608b)は、その円柱の軸が厚み方向を向くように配設されている。換言すれば、各駆動子608a(608b)は、それぞれの円柱の軸が該駆動子608a(608b)が周回運動を行う平面に対して直交するように延びている。ただし、各駆動子608a(608b)を傾斜直線La(Lb)に沿った方向を向くように配設してもよい。
さらに、各駆動子群608A(608B)において、駆動子608a,608a(608b,608b)は、屈曲振動の腹の部分を挟んで長手方向の両側に該腹の部分から同じ距離sだけずれた位置に設けられている。
さらにまた、駆動子608a,…,608b,…の厚み方向位置は、前記式(1)を満たす位置となっている。すなわち、本実施形態では、厚み方向の最も一端側(図17の下側)に位置する第1駆動子608aは、設置面40aの厚み方向一端側の端縁からT/4の位置に、厚み方向の一端側から最も離れた(図17の上側に位置する)第1駆動子608aは、設置面40aの厚み方向一端側の端縁から3T/4の位置に配置されている。
したがって、実施形態6によれば、各駆動子608a(608b)を球状ではなく円柱状とした場合であっても、複数の駆動子608a,608a(608b,608b)を厚み方向に配列させて構成した駆動子群608A(608B)において、駆動子608a,608a(608b,608b)の位置を長手方向にずらすことによって、駆動子608a,…,608b,…が周回運動をしてステージ11を駆動する際に、ステージ11からの反力と付勢ゴム62からの付勢力とによりアクチュエータ本体4に該アクチュエータ本体4を回転させるモーメントが作用しても、アクチュエータ本体4が回転することを規制して、アクチュエータ本体4のステージ11に対する姿勢を維持することができる。その結果、アクチュエータ本体4からステージ11へ所望の駆動力を出力することができ、超音波アクチュエータ602の動作を安定させることができる。
また、駆動子608a(608b)の形状を円柱状とすることによって、各駆動子608a(608b)と設置面40aとの接触面積を小さくしてアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができると共に、該各駆動子608a(608b)をその円柱の軸がアクチュエータ本体4の屈曲振動の振動方向と縦振動の振動方向とに直交する方向を向くように、即ち、アクチュエータ本体4が屈曲振動を行う平面に対して直交する方向を向くように配設して設置面40aに取り付けることによって、アクチュエータ本体4の屈曲振動の阻害をさらに抑制することができる。
その他、実施形態3,5と同様の作用・効果を奏することができる。
尚、本実施形態では、各駆動子群608A(608B)に含まれる駆動子608a(608b)の個数を2個としたが、これに限られるものく、3個以上であってもよい。
また、第1駆動子群608Aの第1駆動子608a,608aの配列方向と第2駆動子群608Bの第2駆動子608b,608bの配列方向とが、厚み方向に対して反対向きに傾斜して、ハ字状となっているが、これに限られるものではなく、前記実施形態4のように両配列方向を厚み方向に対して同じ向きに傾斜させてもよい。かかる場合、実施形態4と同様の作用・効果を奏することができる。
《発明の実施形態7》
続いて、本発明の実施形態7に係る超音波アクチュエータについて説明する。
実施形態7に係る超音波アクチュエータは、前記実施形態3〜6のような厚み方向に配列された複数の駆動子からなる駆動子群を備えておらず、駆動子群の代わりに柱状の駆動子708a(708b)を備えている点で実施形態3〜6と異なる。そこで実施形態3と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
実施形態7に係る超音波アクチュエータでは、図18に示すように、アクチュエータ本体4の設置面40a上において、長手方向の異なる位置、詳しくは、屈曲振動の腹の部分のうちの長手方向内方の2箇所に2つの第1及び第2駆動子708a,708bが設けられている。
各駆動子708a(708b)は、円柱状で構成され、その円柱の軸Xa(Xb)がアクチュエータ本体4の厚み方向に対して傾斜するように配設されている。詳しくは、第1駆動子708aは、その軸方向一端部(図18の下側)が直線Lよりもアクチュエータ本体4の長手方向外側に位置する一方、その軸方向他端部(図18の上側)が直線Lよりもアクチュエータ本体4の長手方向内側に位置するように配設されている。また、第2駆動子708bは、その軸方向一端部(図18の下側)が直線Lよりもアクチュエータ本体4の長手方向外側に位置する一方、その軸方向他端部(図18の上側)が直線Lよりもアクチュエータ本体4の長手方向内側に位置するように配設されている。つまり、第1駆動子708aと第2駆動子708bとは設置面40a上においてハ字状に配置されている。
また、第1駆動子708aと第2駆動子708bとは、直線Lに対して傾斜する向きが反対であるが、傾斜角度の大きさはβ°で同じである。
こうして、第1駆動子708aと第2駆動子708bとは、設置面40aにおける長手方向中心部を中心に該長手方向に線対称な位置に、即ち、設置面40aにおける長手方向中心部を通り直交方向に延びる直線に対して線対称な位置に配置されている。
したがって、本実施形態7によれば、駆動子を柱状に形成して、厚み方向に対して傾斜させて配置することによって、駆動子とステージ11との当接部を長手方向に拡げることができる。そのため、駆動子708a,708bが周回運動をしてステージ11を駆動する際に、ステージ11からの反力と付勢ゴム62からの付勢力とによりアクチュエータ本体4に該アクチュエータ本体4を回転させるモーメントが作用しても、アクチュエータ本体4が回転することを規制して、アクチュエータ本体4のステージ11に対する姿勢を維持することができる。その結果、アクチュエータ本体4からステージ11へ所望の駆動力を出力することができ、超音波アクチュエータの動作を安定させることができる。
また、駆動子708a,708bを円柱状に形成することによって、駆動子708a,708bと設置面40aとの接触部が線接触状になるため、駆動子708a,708bをアクチュエータ本体4の屈曲振動の振動方向を向く面に設ける構成であっても、駆動子708a,708bと設置面40aとの接触面積を小さくしてアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができる。
さらに、前記実施形態3〜6のように、複数の駆動子で構成される駆動子群ではなく、1つの柱状の駆動子708a(708b)によって超音波アクチュエータの安定した動作を実現することができるため、コストを削減することができると共に、部品点数を削減して組立性を向上させることができる。
尚、駆動子708a,708bは、前述の如く、直線Lに対して傾斜する向きを反対にしてハ字状に配置するものに限られるものではない。すなわち、駆動子708a,708bは、その円柱の軸Xa,Xbが直線Lに対して傾斜していればよく、例えば、直線Lに対して同じ向きに傾斜するように配置してもよく、さらには、図19に示すように、駆動子708a,708bは、その軸Xa,Xbが互いに平行になるように配置してもよい。
《発明の実施形態8》
本発明の実施形態8に係る駆動装置1は、実施形態1に係る駆動装置1と基本的には同様の構成をしている。詳しくは、実施形態8に係る駆動装置1は、図2に示すような、ステージ11と、超音波アクチュエータ802と、該超音波アクチュエータ802を駆動制御する制御装置(図示省略)とを備えている。
ステージ11は、互いに平行な状態で固定体としての基台(図示省略)上に固定されたガイド12,12に摺動可能に取り付けられている。つまり、ステージ11は、ガイド12,12が延びる方向に沿って移動可能に構成されている。このステージ11が可動体を構成する。これらガイド12,12の延びる方向がステージ11の可動方向となる。このステージ11は、平面視略方形の板状部材であって、アルミナで形成されている。尚、ステージ11の材質は、アルミナに限られるものではなく、任意の材質を用いて形成することができる。そして、前記超音波アクチュエータ802は、このステージ11の裏面(ガイド12,12が設けられている側の面)に後述する駆動子808a,…,808b,…が当接するように配設されている。
前記超音波アクチュエータ802は、図20に示すように、振動を発生させるアクチュエータ本体4と、該アクチュエータ本体4の駆動力をステージ11に伝達させる駆動子808a,…,808b,…と、該アクチュエータ本体4を収容するケース5と、アクチュエータ本体4とケース5との間に介設されてアクチュエータ本体4を弾性的に支持する支持ゴム61,61と、アクチュエータ本体4を前記ステージ11に付勢するための付勢ゴム62とを備えている。この超音波アクチュエータ802が振動型アクチュエータを構成する(以下、同様)。
前記アクチュエータ本体4は、圧電素子ユニット40で構成されている。
前記圧電素子ユニット40は、略長方形状の互いに対向する一対の主面と、この主面と直交して該主面の長手方向に延びる、互いに対向する一対の長辺側面と、これら主面及び長辺側面の両方と直交して該主面の短手方向に延びる、互いに対向する一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。
この圧電素子ユニット40は、図3に示すように、5つの圧電体層(圧電素子)41,41,…と4つの内部電極層42,44,43,44とを交互に積層して構成される。内部電極層42,44,43,44は、積層方向に圧電体層41を介して交互に配された、第1給電電極層42と共通電極層44と第2給電電極層43と共通電極層44とで構成される。これら第1給電電極層42、第2給電電極層43及び共通電極層44,44のそれぞれは、各圧電体層41の主面上に印刷されている。
前記各圧電体層41は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などのセラミック材料からなる絶縁体層であって、前記圧電素子ユニット40と同様に、一対の主面と、一対の長辺側面と、一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。また、各圧電体層41には、その長辺側面のうち一方の長辺側面の長手方向中央部に外部電極45aが、一方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極46aが、他方の短辺側面の短手方向中央部に外部電極47aがそれぞれ形成されている。
前記各共通電極層44は、圧電体層41の主面の略全面に亘って設けられた略長方形状をしている。また、各共通電極層44の一方の長辺部には、その長手方向中央部から圧電体層41の前記外部電極45aまで延びる引出電極44aが形成されている。
前記第1給電電極層42は、図4に示すように、圧電体層41の主面をその長手方向及び短手方向にそれぞれ2等分してなる4つの領域のうち該主面の対角線方向に位置する2対の領域のうち一方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第1電極42a,42bと、これら第1電極42a,42bを連結して導通させる導通電極42cとを有する。各第1電極42a(42b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。つまり、各第1電極42a(42b)は、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。また、第1電極42a,42bのうちの一方の第1電極42aには、圧電体層41の前記外部電極46aまで延びる引出電極42dが設けられている。
前記第2給電電極層43は、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する前記2対の領域のうち他方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第2電極43a,43bと、これら第2電極43a,43bを連結して導通させる導通電極43cとを有する。前記他方の対の領域のうち積層方向に見て前記第1電極42aの前記短手方向且つ前記第1電極42bの前記長手方向に隣接する領域に設けられる電極が第2電極43aであり、第1電極42aの該長手方向且つ第1電極42bの該短手方向に隣接する領域に設けられる電極が第2電極43bである。各第2電極43a(43b)は略矩形状の電極であり、積層方向に見て共通電極層44と重なっている。つまり、各第2電極43a(43b)は、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。また、第2電極43a,43bのうちの一方の第2電極43bには、圧電体層41の前記外部電極47aまで延びる引出電極43dが設けられている。
これら圧電体層41,41,…と内部電極層42,44,43,44とを交互に積層することで構成された圧電素子ユニット40においては、その一方の長辺側面の前記長手方向中央部に、各圧電体層41の外部電極45aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極45が形成されている。この外部電極45には、前記共通電極層44,44に形成された引出電極44a,44aが電気的に接続されている。同様に、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極46aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極46が形成されている。この外部電極46には、前記第1給電電極層42の引出電極42dが電気的に接続されている。また、圧電素子ユニット40の他方の短辺側面の前記短手方向中央部には、各圧電体層41の外部電極47aが積層方向に並んで一まとまりの外部電極47が形成されている。この外部電極47には、前記第2給電電極層43の引出電極43dが電気的に接続されている。
そして、圧電素子ユニット40の長辺側面のうち他方の長辺側面、即ち、前記外部電極45aが設けられていない側の長辺側面(すなわち、後述する屈曲振動の振動方向を向く一対の面のうちの一方の面。以下、設置面ともいう)40aには、図20,21に示すように、6個の駆動子808a,…,808b,…が設けられている。
これら駆動子808a,…,808b,…は、球状の部材であって、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、タングステンカーバイド等で形成されている。また、駆動子808a,…,808b,…は、圧電素子ユニット40の設置面40aに対して接着剤82を介して点接触状に取り付けられている(図4参照)。ここで、「点接触状」とは、駆動子808a,…,808b,…と設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、駆動子808a,…,808b,…と設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該駆動子808a,…,808b,…と設置面40aとが実質的に点接触している状態も意味する。
接着剤82としては、圧電素子ユニット40の材料及び駆動子808a,808bの材料よりも柔らかいことが望ましい。具体的には、合成樹脂、特にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。このような材料を用いることにより圧電素子ユニット40の後述する振動をできるだけ阻害せずに駆動子808a,…,808b,…と設置面40aとの間の固定を実現することができる。
また、駆動子808a,…,808b,…が設けられた位置は、設置面40aにおいて、圧電素子ユニット40の長手方向両端部から該設置面40aの全長の30〜35%距離だけ内側に入った位置(図21中の直線Lで示す位置)であり、即ち、圧電素子ユニット40の後述する屈曲振動の2次モードの腹の位置であって、振動が最も大きくなる位置である。そして、これら駆動子808a,…,808b,…は、屈曲振動の2次モードの前記2箇所の腹の位置のうち長手方向一側に配設された駆動子808a,808a,…からなる駆動子群808Aと、長手方向他側に配設された駆動子808b,808b,…からなる駆動子群808Bとに分けられる。
ここで、駆動子群808A,808Bにおける駆動子808a,…,808b,…の配置について説明する。ただし、駆動子群808Aと駆動子群808Bとでは、設置面40aにおける長手方向位置が異なるだけでその他の構成は同様であるため、以下では駆動子群808Aについてのみ説明し、駆動子群808Bの説明は省略する。
駆動子群808Aでは、図21に示すように、駆動子808a,808a,…が圧電素子ユニット40の厚み方向(以下、直交方向ともいう)において異なる位置に設けられている。この直交方向は、圧電素子ユニット40の積層方向でもあり、駆動子808aが後述する周回運動を行う平面に直交する方向でもあり、圧電素子ユニット40の後述する屈曲振動の振動方向と縦振動の振動方向とに直交する方向でもある。このように、直交方向の異なる位置に設けられた駆動子808a,808a,…は、直交方向に延びる直線L上に並んで設けられている。
また、これら駆動子808a,808a,…は、設置面40aの直交方向中心部を通り該直交方向に直交する(即ち、長手方向に延びる)直線に対して線対称な位置に配置されている。さらに、これら駆動子808a,808a,…は直交方向において互いに等間隔に配置されていて、より詳しくは、下記式(1)を満たす位置tに配置されている。
t={(2N−1)/(2n)}×T ・・・ (1)
ここで、
t:設置面40a上における直交方向の一端を基準としたときの直交方向の位置
n:直交方向に並ぶ駆動子の総数
T:設置面40aの直交方向寸法(アクチュエータ本体4の厚み)
である。
すなわち、本実施形態では、直交方向の最も一端側(図21の下側)に位置する駆動子808aは、設置面40aの直交方向一端側の端縁からT/6の位置に、直交方向の一端側から2番目の駆動子808aは、設置面40aにおける直交方向中央に、直交方向の一端側から3番目の(図21の上側に位置する)駆動子808aは、設置面40aの直交方向一端側の端縁から5T/6の位置に配置されている。つまり、1番目の駆動子808aの位置と2番目の駆動子808aの位置との間隔及び、2番目の駆動子808aの位置と3番目の駆動子808aの位置との間隔は、それぞれT/3となっている。
このように構成されたアクチュエータ本体4は、前記外部電極45をグランドに接続し、前記外部電極46に所定周波数の交流電圧を、前記外部電極47に該交流電圧と位相が90°ずれた交流電圧を印加することによって、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する一方の対の第1電極42a,42bと、他方の対の第2電極43a,43bとに互いに位相が90°ずれた交流電圧が印加され、その長手方向への縦振動(いわゆる、伸縮振動)とその短手方向への屈曲振動(いわゆる、横振動)とが誘起される。
縦振動の共振周波数及び屈曲振動の共振周波数はそれぞれ、アクチュエータ本体4、即ち、圧電素子ユニット40の材料、形状等により決定される。さらに、両共振周波数は、アクチュエータ本体4を支持する力及び支持する部分によっても影響を受ける。これらを考慮して、両共振周波数を略一致させ、その近傍の周波数の交流電圧を位相を90°ずらした状態で外部電極46,47のそれぞれに印加する。例えば、縦振動の1次モード(図6参照)の共振周波数と屈曲振動の2次モード(図7参照)の共振周波数とが一致するように圧電素子ユニット40の形状等を設計して、該共振周波数近傍の交流電圧を前述の如く、位相を90°ずらして印加することによって、圧電素子ユニット40には、縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとが調和的に誘起され、図8(a)、(b)、(c)、(d)に示す形状の変化を順番に起こす。
その結果、圧電素子ユニット40に設けられた各駆動子808a(808b)が該圧電素子ユニット40の主面と平行な平面、即ち、長手方向と短手方向とを含む平面(図8における紙面と平行な面)内で略楕円運動、即ち、周回運動を行う。
前記ケース5は、樹脂製であって、前記圧電素子ユニット40に対応した略直方体状の概略箱形状をしている。このケース5は、前記圧電素子ユニット40の主面と平行で且つ略長方形状の主壁部51と、該主壁部51の前記長手方向の一側(図20における左側)に位置する短辺部に設けられた第1短辺壁部52と、該主壁部51の該長手方向の他側(図20における右側)に位置する短辺部に設けられた第2短辺壁部53と、該主壁部51の前記短手方向の一側(図20における下側)に位置する長辺部に設けられた長辺壁部54とを有している。つまり、ケース5は、主壁部51に対向する側及び該主壁部51の該短手方向の他側(図20における上側)に位置する長辺部(圧電素子ユニット40の駆動子808a,…,808b,…が設けられた長辺側面に対応する部分)には壁部が設けられておらず、圧電素子ユニット40の積層方向(主壁部51の法線方向)の一側及び該短手方向の他側に開口した形状となっている。
このように構成されたケース5内に前記アクチュエータ本体4が収容されている。アクチュエータ本体4は、圧電素子ユニット40の一方の主面が主壁部51と対向し且つ圧電素子ユニット40の一方の長辺側面(前記外部電極45が設けられている側の長辺側面)が長辺壁部54と対向するようにしてケース5内に収容されている。このとき、駆動子808a,…,808b,…はケース5から前記短手方向の他側に突出している。また、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面とケース5の第1短辺壁部52との間および圧電素子ユニット40の他方の短辺側面とケース5の第2短辺壁部53との間にはそれぞれ支持ゴム61,61が介設されている。この圧電素子ユニット40の両短辺側面は縦振動の腹の部分であるが、支持ゴム61,61は弾性体であるため、圧電素子ユニット40の縦振動を阻害することなく、該圧電素子ユニット40を支持することができる。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4並びに第1及び第2短辺壁部52,53だけでなく、主壁部51の内側表面とも当接している。また、圧電素子ユニット40の一方の長辺側面とケース5の長辺壁部54との間には付勢ゴム62が介設されている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4及び長辺壁部54だけでなく、主壁部51の内側表面とも当接している。
そして、主壁部51の内側表面における、前記支持ゴム61,61及び付勢ゴム62が当接する部分には電極51a(付勢ゴム62と当接する電極のみ図示)が設けられているこれらの電極は、主壁部51の外側表面に設けられた端子電極(図示省略)にそれぞれ導通している。
前記各支持ゴム61は、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。これら支持ゴム61,61は、アクチュエータ本体4をその長手方向に付勢した状態で弾性的に支持する。それと共に、支持ゴム61,61は、主壁部51の内側表面の該支持ゴム61,61の配設位置に対応する部分に設けられ且つ前記端子電極に導通する電極と圧電素子ユニット40の外部電極46,47とを導通させている。
また、前記付勢ゴム62も、支持ゴム61と同様に、シリコーンゴムに金属粒子を混入した導電性ゴムで構成され、略直方体状をしている。この付勢ゴム62は、アクチュエータ本体4をその短手方向(即ち、短手方向が付勢方向に相当する)に付勢するためのものである。それと共に、付勢ゴム62は、圧電素子ユニット40の外部電極45と主壁部51の内側表面の電極51aとを導通させている。
尚、これら支持ゴム61及び付勢ゴム62の代わりに、板バネ等の弾性部材を採用してもよい。
つまり、ケース5の外側表面に設けられた前記端子電極に給電することによって、圧電素子ユニット40に給電することができる。
このように構成された超音波アクチュエータ802は、図2に示すように、駆動子808a,…,808b,…がステージ11の裏面と当接するように配設されると共に、ケース5が基台(図示省略)に固定される。詳しくは、超音波アクチュエータ802は、圧電素子ユニット40の短手方向がステージ11の裏面に直交すると共に、圧電素子ユニット40の長手方向がステージ11の裏面と平行で且つガイド12,12と平行になるように配置される。さらに換言すれば、超音波アクチュエータ802は、圧電素子ユニット40の屈曲振動の方向がステージ11の裏面と直交すると共に、圧電素子ユニット40の縦振動の方向がガイド12,12と平行な方向を向くように配置される。
このとき、前記付勢ゴム62が圧縮変形しており、この付勢ゴム62の弾性力によって駆動子808a,…,808b,…がステージ11に付勢されている。超音波アクチュエータ802のステージ11への付勢力は、付勢ゴム62の弾性力によって決まる。
前記制御装置は、外部からの動作指令を受けて、その動作指令に応じた周波数の交流電圧を動作指令に応じた位相差で外部電極46,47に印加する。
制御装置は、前述の如く、アクチュエータ本体4、即ち、圧電素子ユニット40に縦振動と屈曲振動とを調和的に発生させて、駆動子808a,…,808b,…を図8に示すような周回運動させることで、ステージ11を移動させる。具体的には、圧電素子ユニット40の異常発熱を防止すべく、圧電素子ユニット40の縦振動と屈曲振動との共通の共振周波数よりも少し高い周波数の交流電圧が外部電極46,47に印加される。このとき、かかる交流電圧は、互いに位相が90°ずれた状態で外部電極46,47に印加される。
圧電素子ユニット40が、縦振動と屈曲振動との合成振動を行うと、駆動子808a,…,808b,…は圧電素子ユニット40の長手方向と短手方向とを含む平面内において略楕円運動を行う。こうすることで、駆動子808a,…,808b,…は、ステージ11との間の摩擦力の増大と緩和を周期的に繰り返しながら、ステージ11に対して摩擦力を介して圧電素子ユニット40の長手方向へ駆動力を付与しており、ステージ11はガイド12,12に沿って移動する。この圧電素子ユニット40の長手方向(ガイド12,12が延びる方向と一致する)が、駆動子808a,…,808b,…が駆動力を出力する方向である駆動方向に相当する。
以下に、超音波アクチュエータ802によるステージ11の駆動を、図9を参照してさらに詳しく説明する。圧電素子ユニット40が長手方向(縦振動の振動方向)に伸張するとき、一方(例えば、図9の左側)の駆動子808aは、図9(b)に示すように、短手方向(屈曲振動の振動方向)においてステージ11側の領域を変位するため、ステージ11との間の摩擦力が増大し、この摩擦力によってステージ11を該長手方向における該一方の駆動子808aが変位する側(図9の左側)へ移動させる。このとき、他方(図9の右側)の駆動子808bは、該長手方向において一方の駆動子808aとは逆向きに変位するが、該短手方向において反ステージ11側(ステージ11から離れる側)の領域を変位するため、ステージ11から離れて摩擦力が作用せず、ステージ11の移動にはほとんど影響を与えない。
一方、圧電素子ユニット40が長手方向に収縮するときは、他方(図9の右側)の駆動子808bは、図9(c)に示すように、短手方向においてステージ11側の領域を変位するため、ステージ11との間の摩擦力が増大し、この摩擦力によってステージ11を該長手方向における該他方の駆動子808bが変位する側(図9の左側)へ移動させる。この移動方向は、前述した、圧電素子ユニット40の伸張時における一方の駆動子808aによるステージ11の移動方向と同じである。このとき、一方(図9の左側)の駆動子808aは、該長手方向において他方の駆動子808bとは逆向きに変位するが、該短手方向において反ステージ11側の領域を変位するため、ステージ11から離れて摩擦力が作用せず、ステージ11の移動にはほとんど影響を与えない。
尚、図9においては、ステージ11の移動に影響を与えない方の駆動子808b(808a)はステージ11から離れているが、必ずしも離れている必要はない。すなわち、駆動子808b(808a)は、ステージ11を移動させない程度の摩擦力で該ステージ11に当接してる状態であってもよい。
こうして、駆動子808a,808a,…と駆動子808b,808b,…とは、位相が180°ずれた状態で交互にステージ11を所定の一方向へ移動させる。尚、前記交流電圧を位相を−90°ずらした状態で外部電極46,47に印加することによって、駆動子808a,…,808b,…が出力する駆動力を逆向きにすることができ、ステージ11を他方向へ移動させることができる。
尚、ステージ11の移動量、移動速度及び移動加速度は、外部電極46,47に給電する交流電圧の電圧値、周波数及び給電時間の少なくとも1つを調整する、又は外部電極46,47に給電する各交流電圧の位相のずれを変更する等によって調整することができる。
このように、超音波アクチュエータ802は、駆動子808a,…,808b,…に縦振動の振動方向(長手方向)と屈曲振動の振動方向(短手方向)とを含む平面内で周回運動させて駆動子808a,…,808b,…とステージ11との間の摩擦力の増大と緩和とを繰り返しながら、該ステージ11を駆動している。このとき、駆動子808a,…,808b,…とステージ11との間の摩擦力は、付勢ゴム62の付勢力によって増強されている。
ここで仮に、駆動子が、アクチュエータ本体4の厚み方向において複数設けられていない、即ち、駆動子の全数が1個の場合または駆動子が複数であっても全ての駆動子が厚み方向の同じ位置に設けられているとすると、付勢ゴム62や駆動子の組み立て誤差によって、付勢ゴム62の付勢力の方向が駆動子からステージへ作用する押圧力の方向(即ち、屈曲振動の方向)と一致せず、厚み方向にずれている場合には、アクチュエータ本体4とステージ11とは厚み方向において駆動子の1箇所だけで当接しているため、アクチュエータ本体4が該厚み方向に傾斜しやすく、駆動子が、本来周回運動を行うべき平面(即ち、アクチュエータ本体4の縦振動の振動方向と屈曲振動の振動方向とを含む平面)よりも厚み方向に傾斜した面内で周回運動を行うことになる。そうすると、付勢ゴム62によって駆動子をステージ11に付勢しているにもかかわらず、該付勢力のうち、駆動子の屈曲振動の振動方向に作用して駆動子のステージ11への押圧力を補助する成分が小さくなってしまい、駆動子とステージ11との間の摩擦力を効果的に増強することができない。
そこで、本実施形態では、駆動子808a,…,808b,…を前述の如く、アクチュエータ本体4の設置面40aにおいてその厚み方向の異なる位置に複数設けている。こうすることによって、駆動子808a,…,808b,…とステージ11との当接点を該厚み方向に増やすことができるため、付勢ゴム62の付勢力がアクチュエータ本体4の屈曲振動の振動方向から厚み方向にずれていても、付勢ゴム62の付勢力を厚み方向の広い範囲で受け止めることができ、駆動子808a,…,808b,…が周回運動を行う平面が厚み方向に傾斜することを防止することができる。
したがって、本実施形態8によれば、駆動子808a,…,808b,…をアクチュエータ本体4の厚み方向に複数設けることによって、駆動子808a,…,808b,…とステージ11との当接点を厚み方向に増やすことができ、アクチュエータ本体4が厚み方向に傾斜することを抑制することができる。その結果、アクチュエータ本体4の姿勢を安定させることができ、該駆動子808a,…,808b,…からステージ11へ駆動力を効率良く伝達させることができる。
それに加えて、駆動子808a,…,808b,…をアクチュエータ本体4の厚み方向に複数設けることによって、駆動子の個数が増える、即ち、駆動子とステージ11との当接面積が増えるため、超音波アクチュエータ802からステージ11へ付与される駆動力を大きくすることができる。
また、駆動子808a,…,808b,…を、設置面40aにおいて、厚み方向中心部を通り該厚み方向に直交する直線に対して線対称な位置に配置することによって、押圧力を駆動子808a,…,808b,…からステージ11へ厚み方向について均等に伝えることができる。
さらに、駆動子808a,…,808b,…を前記式(1)を満たすように配置することによって、駆動子808a,…,808b,…それぞれの間の間隔を等間隔にすることができ、押圧力を各駆動子808a(808b)からステージ11へ均等に伝えることができる。
また、近年、電子機器の小型化にともない超音波アクチュエータ802も小型化が求められているが、超音波アクチュエータ802を小型化した場合、効率を低下させてしまう虞があった。すなわち、駆動子808a,…,808b,…の形状がアクチュエータ本体4に対して相対的に大きくなってしまい、前述のようにアクチュエータ本体4の屈曲振動の腹の部分に駆動子808a,…,808b,…を設けた構成ではアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害してしまい、その結果、効率を低下させてしまう虞があった。
それに対し、本実施形態では、駆動子808a,…,808b,…を、アクチュエータ本体4の長手方向の各位置(駆動子群808A,808Bの位置)において、厚み方向に延びる直線L,L上に並ぶように配置することによって、駆動子808a,…,808b,…をアクチュエータ本体4の屈曲振動によって波打つ長辺側面に設けるにもかかわらず、該駆動子808a,…,808b,…がアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができる。さらに、駆動子808a,…,808b,…の形状を球状とすることによって、駆動子808a,…,808b,…とアクチュエータ本体4の設置面40aとの接触面積を小さくでき、アクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することをさらに抑制することができる。その結果、超音波アクチュエータ802としての効率を向上させることができる。ここで、「球状」とは、厳密な球形状に限られず、駆動子808a(808b)が圧電素子ユニット40に対して概略点接触となるような実質的な球形状も含む意味である。
さらに、駆動子808a(808b)を球状とすることによって、円柱状の駆動子208a(208b)に比べて製造しやすいため、駆動子808a(808b)のコストを低減することができる。
《発明の実施形態9》
続いて、本発明の実施形態9に係る超音波アクチュエータ902について説明する。
実施形態9に係る超音波アクチュエータ902は、駆動子908a(908b)の形状が円柱状である点で、駆動子808a(808b)が球状である前記実施形態8と異なる。
詳しくは、超音波アクチュエータ902では、図22に示すように、圧電素子ユニット40の設置面40aにおける2次モードの屈曲振動の2箇所の腹の位置に、駆動子群908A,908Bが設けられている。これら駆動子群908A,908Bは、それぞれ2つの駆動子908a,908aと駆動子908b,908bとで構成されている。これら駆動子908a,…,908b,…はそれぞれ同じ円柱状をしている。
各駆動子908a(908b)は実施形態8と同様の接着剤82にて圧電素子ユニット40に固定されている。こうして、各駆動子908a(908b)は、圧電素子ユニット40の設置面40aに対して線接触状に取り付けられている。ここで、「線接触状」とは、駆動子908a(908b)と設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、駆動子908a(908b)と設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該駆動子908a(908b)と設置面40aとが実質的に線接触している状態も意味する。また、「円柱状」とは、厳密な円柱形状に限られず、駆動子908a(908b)が設置面40aに対して概略線接触となるような実質的な円柱形状も含む意味である。
ここで駆動子群908A,908Bにおける駆動子908a,…,908b,…の配置について説明する。ただし、駆動子群908Aと駆動子群908Bとでは、設置面40aにおける長手方向位置が異なるだけでその他の構成は同様であるため、以下では駆動子群908Aについてのみ説明し、駆動子群908Bの説明は省略する。
駆動子群908Aでは、図23に示すように、駆動子908a,908aが圧電素子ユニット40の厚み方向、即ち、直交方向の異なる位置において該直交方向に延びる直線L上に並んで設けられている。このとき、各駆動子908aは、その円柱の軸が直交方向を向くように配設されている。つまり、2つの駆動子908a,908aは、それぞれの円柱の軸が一直線上に並び、その一直線上に並んだ軸が直線Lと平行になっている。換言すれば、駆動子908a,908aは、それぞれの円柱の軸が該駆動子908a,908aが周回運動を行う平面に対して直交するように延びている。
また、これら駆動子908a,908aは、設置面40aの直交方向中心部を通り該直交方向に直交する(即ち、長手方向に延びる)直線に対して線対称な位置に配置されている。さらに、これら駆動子908a,908aは直交方向において互いに等間隔に配置されていて、より詳しくは、前記式(1)を満たす位置tに配置されている。
すなわち、本実施形態では、直交方向の最も一端側(図23の下側)に位置する駆動子908aは、設置面40aの直交方向一端側の端縁からT/4の位置に、直交方向の一端側から最も離れた(図23の上側に位置する)駆動子908aは、設置面40aの直交方向一端側の端縁から3T/4の位置に配置されている。
したがって、実施形態9によれば、駆動子908a,…,908b,…をアクチュエータ本体4の厚み方向に複数設けることによって、駆動子908a,…,908b,…とステージ11との当接点を厚み方向に増やすことができ、アクチュエータ本体4が厚み方向に傾斜することを抑制することができる。その結果、アクチュエータ本体4の姿勢を安定させることができ、該駆動子908a,…,908b,…からステージ11へ駆動力を効率良く伝達させることができる。
ここで、駆動子908a(908b)の形状が円柱状の場合、駆動子908a(908b)とステージ(図示省略)との当接点をアクチュエータ本体4の厚み方向に増やすためには、その円柱状の軸方向長さを長くすることが考えられる。しかしながら、駆動子908a(908b)の軸方向長さを単純に長くする構成では、駆動子908a(908b)の重量が重くなり、アクチュエータ本体4の縦振動及び屈曲振動による駆動力が駆動子908a(908b)自体を周回運動させることに消費されてしまう。そのため、アクチュエータ本体4が発生する駆動力をステージ11の駆動に効率良く使用することができない。
それに対し、本実施形態によれば、円柱状の駆動子908a(908b)をアクチュエータ本体4の厚み方向に複数設けることによって、即ち、アクチュエータ本体4の厚み方向に延びる円柱状の駆動子を該厚み方向に複数に分割した構成となるため、駆動子群908A(908B)としての重量を軽量化すると共に、駆動子908a(908b)とステージ11との当接点をアクチュエータ本体4の厚み方向に増やすことができる。その結果、前述の効果に加えて、アクチュエータ本体4が発生する駆動力をステージ11の駆動に効率良く使用することができる。
また、駆動子908a(908b)の形状を円柱状とすることによって、各駆動子908a(908b)と設置面40aとの接触面積を小さくしてアクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができると共に、該各駆動子908a(908b)をその円柱の軸がアクチュエータ本体4の屈曲振動の振動方向と縦振動の振動方向とに直交する方向を向くように、即ち、アクチュエータ本体4が屈曲振動を行う平面に対して直交する方向を向くように配設して設置面40aに取り付けることによって、アクチュエータ本体4の屈曲振動の阻害をさらに抑制することができる。
その他、実施形態8と同様の作用・効果を奏することができる。
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
すなわち、前記実施形態1,3〜5,8では駆動子を接着剤82を介して点接触状にアクチュエータ本体4に取り付けているが、図24に示すように、環状体83を各駆動子8a(8b)の周囲に配してもよい。つまり、各駆動子8a(8b)と圧電素子ユニット40の設置面40aとの接触点の周囲に環状体83を配置したものである。すなわち、各駆動子8a(8b)は、設置面40aに対して点接触状に取り付けられるだけでなく、環状体83を介しても設置面40aに取り付けられている。この環状体83は、各駆動子8a(8b)及び設置面40aそれぞれに対して線接触状に取り付けられている。また、各駆動子8a(8b)と環状体83、および環状体83と設置面40aとは、それぞれ接着剤82を介して取り付けられている。尚、各駆動子8a(8b)は、設置面40aに対して点接触状には取り付けられておらず、環状体83を介して線接触状にのみ取り付けられる構成であってもよい。ここで、「線接触状」とは、環状体83と駆動子8a(8b)又は設置面40aとが厳密に接触している状態に限られず、環状体83と駆動子8a(8b)又は設置面40aとの間に接着剤82を介在させて該環状体83と駆動子8a(8b)又は設置面40aとが実質的に線接触している状態も意味する。
このように環状体83を配置させることによって、各駆動子8a(8b)と環状体83、および環状体83と設置面40aとの間で、それぞれの接触点を増やすことができ、これにより駆動子8a(8b)と設置面40aとの接続強度を向上させることができる。環状体83は、振動を妨げず接着強度を向上させる意味より、駆動子8a(8b)より柔らかく、接着剤82より堅い材質が望ましい。具体的には、アルミ、鉄などの金属や硬度の高いエポキシ、フェノールなどの樹脂である。
したがって、この実施形態によれば、前記実施形態の効果に加えて、駆動子8a(8b)の形状を球状とすると共に、各駆動子8a(8b)とアクチュエータ本体4の設置面40aとの間に環状体83を介在させて該各駆動子8a(8b)を設置面40aに対して点接触状に取り付けることによって、各駆動子8a(8b)と設置面40aとの接触面積を小さくすることができ、アクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害することを抑制することができる。その結果、超音波アクチュエータとしての効率を向上させることができる。
また、前記実施形態の駆動子は、球状や円柱状であるが、これに限られるものではない。例えば、図25に示すように、円柱状の駆動子118をその軸がアクチュエータ本体4の屈曲振動の振動方向、即ち、アクチュエータ本体4の短手方向を向くように配設した構成であってもよいし、図26に示すように、先端が球面状に形成された円柱状の駆動子128を該先端がステージに当接するように配設した構成であってもよいし、図27に示すように、立方体形状の駆動子138を採用した構成であってもよいし、図28に示すように、断面台形の柱形状の駆動子148を採用した構成であってもよい。尚、図示は省略するが、設置面40aに取り付けられる取付面だけが球面状や円柱の側周面状に形成された駆動子であってもよい。
尚、前記実施形態3〜6においては、駆動子118,138,148のように、駆動子のステージとの当接部が駆動力を出力する駆動方向に沿った方向に幅を有する場合には、各駆動子群において、各駆動子を該駆動方向に沿った方向にずらす量を該当接部の幅よりも大きくすることが好ましい。そうすることによって、各駆動子の当接部が、駆動子が周回運動を行う平面に直交する方向において互いに重なることがなく、つまり、駆動子とステージとの当接部の、該駆動方向に沿った方向の幅を大きく確保することができ、アクチュエータ本体の姿勢を安定的に維持することができる。
また、アクチュエータ本体4の厚み方向の異なる位置に複数設けられた駆動子は、該厚み方向に延びる直線L上や直線La上に、又は、直線Lを基準に配置されているが、これに限られるものではない。すなわち、駆動子は、アクチュエータ本体4の厚み方向の異なる位置に複数設けられていればよい。ただし、前述の如く、アクチュエータ本体4の屈曲振動を阻害しない観点からも、複数の駆動子は直線L上に並んで配置されることが好ましい。
さらに、駆動子の個数は、前記実施形態に限られるものではない。さらにまた、前記実施形態1,3〜6,8,9では、アクチュエータ本体4の設置面40aの長手方向において異なる位置に設けられた各駆動子群8A,8Bは、それぞれの長手方向位置において、即ち、駆動子群ごとに同数の駆動子を含んでいるが、これに限られるものではない。すなわち、駆動子群ごとに異なる個数の駆動子を含む構成であってもよい。
また、超音波アクチュエータを、アクチュエータ本体4に長手方向への縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとを調和的に発生させるように構成したが、これに限られるものではない。これ以外の振動又はモードを発生させるものであってもよく、アクチュエータ本体4を振動させて駆動子とステージ11との間の摩擦力を介して駆動力を出力する振動型アクチュエータであれば任意の構成を採用することができる。
また、超音波アクチュエータは、前記の構成に限られるものではない。例えば、前記支持ゴム61,61及び付勢ゴム62を介して圧電素子ユニット40に給電する構成ではなく、リード線を圧電素子ユニット40に接続して給電する構成でもよい。また、圧電素子ユニット40の振動のノード部(節の部分)を非弾性部材で支持する構成であってもよい。
さらにまた、アクチュエータ本体4は圧電素子ユニット40で構成されているが、金属などの基板に圧電素子を貼り付けた構成や、金属などで共振器を形成し、圧電素子を挟み込んだ構成であってもよい。この場合、圧電素子を含んで構成された共振器がアクチュエータ本体を構成する。
また、前記実施形態3〜7においては、図29に示すように、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面40b(この面が設置面に相当する)に円柱状の駆動子158が設けられた超音波アクチュエータ152を採用してもよい。駆動子158は、その軸がアクチュエータ本体4の厚み方向に対して傾斜するように配設されている。かかる構成であっても、アクチュエータ本体4が長手方向への縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとの合成振動を行うことによって駆動子158が周回運動を行い、ステージとの間の摩擦力を介して、該ステージを所定の可動方向(短手方向と平行な方向)へ移動させることができる。この場合、駆動方向は、アクチュエータ本体4の短手方向となるが、円柱状の駆動子158を厚み方向に対して傾斜させて配設することによって、駆動子158とステージとの当接部を該短手方向に拡げて、アクチュエータ本体4の姿勢を維持することができ、駆動子158からステージへ所望の駆動力を伝達させることができる。
さらに、前記実施形態8,9においては、図30に示すように、圧電素子ユニット40の一方の短辺側面40b(この面が設置面に相当する)に2つの駆動子168,168が設けられた超音波アクチュエータ162を採用してもよい。駆動子168,168は、圧電素子ユニット40の厚み方向に並んで設けられている。かかる構成であっても、圧電素子ユニット40が長手方向への縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとの合成振動を行うことによって駆動子168,168が周回運動を行い、ステージとの間の摩擦力を介して、該ステージを所定の可動方向(短手方向と平行な方向)へ移動させることができる。
また、前記実施形態では、超音波アクチュエータ2(202,…)を基台に固定すると共に、駆動子8a,…,8b,…を移動可能なステージ11に当接させて、該超音波アクチュエータ2を作動させることで該ステージ11を駆動させているが、図31に示すように、超音波アクチュエータ2をステージに固定する構成としてもよい。詳しくは、駆動装置171は、互いに平行な状態で基台に固定されたガイド13,13と、該ガイド13,13に摺動自在に取り付けられたステージ14と、超音波アクチュエータ2とを備えている。該ガイド13,13のうちの一方のガイド13には、該ガイド13に固定された当接部材13aが設けられている。一方、ステージ14には、アクチュエータ取付部14aが設けられている。そして、超音波アクチュエータ2は、駆動子8a,…,8b,…が該ガイド13の当接部材13aに当接する状態で、該ステージ14のアクチュエータ取付部14aにケース5が取り付けられている。この状態で、超音波アクチュエータ2を作動させると、駆動子8a,…,8b,…は当接部材13aに対して駆動力を出力するが、該当接部材13aは固定されているため、超音波アクチュエータ2自体が当接部材13aに対して相対的にガイド13,13の長手方向に振動する。その結果、アクチュエータ取付部14aを介してケース5と連結されたステージ14がガイド13,13の長手方向に駆動される。
また、前記実施形態では、超音波アクチュエータの駆動力が付与されて駆動されるステージ11は平板状であるが、これに限られるものではなく、可動体の構成としては任意の構成を採用することができる。例えば、図32に示すように、可動体は所定の軸X回りに回動可能な円板体15であり、超音波アクチュエータの駆動子8a,…,8b,…が該円板体15の側周面15aに当接するように構成された駆動装置181を採用してもよい。かかる構成の場合、超音波アクチュエータを駆動すると、駆動子8a,…,8b,…の概略楕円運動によって、該円板体15が所定の軸X回りに回動させられる。また、図33に示すように、可動体は所定の軸X回りに回動可能な円板体16であり、超音波アクチュエータの駆動子8a,…,8b,…が該円板体16の平面部16aに当接するように構成された駆動装置191を採用してもよい。かかる構成の場合、超音波アクチュエータを駆動すると、駆動子8a,…,8b,…の概略楕円運動によって、該円板体16が駆動子8a,…,8b,…と当接部における接線方向に駆動され、結果として該円板体16が所定の軸X回りに回動させられる。
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本発明の振動型アクチュエータは、駆動子が、該駆動子が周回運動を行う平面に直交する方向に複数設けられるという特徴を有し、高効率化が要求される電子機器等に有用である。また、本発明の振動型アクチュエータは、駆動子と被当接体との当接部を駆動方向に沿った方向に拡げることができ、アクチュエータ本体の姿勢を安定させることができるという特徴を有し、安定した駆動が要求される電子機器等に有用である。
1,171,181,191 駆動装置
11 ステージ(可動体)
2,202,302,602,802,902,152,162 超音波アクチュエータ
4 アクチュエータ本体
40a 長辺側面(設置面)
40b 短辺側面(設置面)
62 付勢ゴム(付勢部材)
8A,208A,308A,408A,508A,608A,808A,908A 第1駆動子群(駆動子群)
8B,208B,308B,408B,508B,608B,808B,908B 第2駆動子群(駆動子群)
8a,208a,308a,408a,508a,608a,708a,808a,908a 第1駆動子(駆動子)
8b,208b,308b,408b,508b,608b,708b,808b,908b 第2駆動子(駆動子)
118,128,138,148 駆動子(第1駆動子、第2駆動子)
83 環状体