JPWO2008108325A1 - 新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子および酵素活性を向上させる方法 - Google Patents

新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、それをコードする遺伝子および酵素活性を向上させる方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、中性からアルカリ性側にその反応至適pHを有する極めて有用な新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素および当該シアル酸転移酵素をコードする核酸を提供する。本発明はさらに、当該シアル酸転移酵素をコードする核酸を含むベクター、および当該ベクターで形質転換した宿主細胞を提供すると共に、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を製造する方法を提供する。

Description

本発明は、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、当該酵素をコードする遺伝子、及び当該酵素をコードする遺伝子で形質転換した微生物を用いる当該酵素の製造方法に関する。
糖転移酵素は生体内において糖タンパク質や糖脂質等(以下、複合糖質)の糖鎖の生合成に関与する酵素である。その反応生成物である複合糖質の糖鎖は生体内において非常に重要な機能を有している。例えば、主に哺乳類細胞において、糖鎖は分化や発生における細胞間および細胞−細胞外マトリックス間のシグナル伝達や複合糖質のタグとして機能する重要な分子であることなどが明らかにされている。
これを応用した例として、血液中の赤血球を生産するホルモンであるエリスロポエチンが挙げられる。天然型のエリスロポエチンは効果の持続性が低い欠点があった。そこで、エリスロポエチンは元来糖タンパク質であるが、新たな糖鎖を付加することによって、生体内における寿命を向上させた組換えエリスロポエチンタンパク質が開発、製造され、市販された。今後もこのように糖鎖を付加あるいは改変した医薬品、機能性食品等の開発が増えていくと考えられている。したがって、任意に糖鎖を合成・生産する手段の開発が求められている。とりわけ、最も効率的な手段のひとつとして、糖転移酵素の開発の重要性は増してきている。
これまでに約150種類以上の糖転移酵素遺伝子がヒト、マウス、ラットおよび酵母等の真核生物から単離されてきた。さらに、これらの遺伝子はCHO細胞や大腸菌等の宿主細胞で発現され、糖転移酵素活性を有するタンパク質が生産されてきた。一方、原核生物である細菌からも、20〜30種類程度の糖転移酵素遺伝子が単離されており、さらに大腸菌を用いる組換え生産系で糖転移酵素活性を有するタンパク質が発現され、それらの基質特性や酵素化学的な諸性質が明らかにされている。
シアル酸は、糖鎖の非還元末端に存在することが多いため、糖鎖の機能発現において極めて重要な糖であると考えられている。そのため、糖転移酵素の中でもシアル酸転移酵素は最も需要の高い酵素の一つである。β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびその遺伝子に関して、動物、特に哺乳類由来のものが多く報告されている(Hamamoto, T. , et al., Bioorg. Med. Chem., 1, 141-145 (1993); Weinstein, J. , et al., J. Biol. Chem., 262, 17735-17743 (1987))。しかし、これらの動物由来の酵素は精製が困難で大量に得られないため非常に高価であり、さらに酵素としての安定性が悪いという問題を有している。一方、細菌由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびその遺伝子としては、フォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damselae)に属する微生物から分離されたものが報告されている(国際公開第WO98/38315号;米国特許6255094号公報、Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 120, 104-110 (1996))。
これまでに知られている各種の哺乳動物、細菌由来のシアル酸転移酵素はいずれも反応至適pH範囲が5〜6のような酸性側であると報告されている(Paulson, J. C. et al., J. Biol. Chem., 252, 2363-2371 (1977)、Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 120, 104-110 (1996))。各種の糖タンパク質や糖脂質等の複合糖質糖鎖や単純な糖鎖に結合しているシアル酸は、酸性条件下においては徐々に分解されることが広く知られている。更に、シアル酸転移酵素の糖供与体基質であり、その価格が極めて高価なCMP−シアル酸は、酸性条件下では速やかに分解するが、アルカリ性条件下においては極めて安定であることが知られている。従って、シアル酸転移酵素を用いて各種の複合糖質や糖鎖にシアル酸を転移させる場合、反応後のシアル酸を含む糖鎖の安定性・保存性の観点から、更にシアル酸転移反応に使用するCMP−シアル酸の効率的な利用の観点からも、反応至適pHが中性からアルカリ性側にあるシアル酸転移酵素が求められている。
国際公開第WO98/38315号パンフレット 米国特許6255094号公報 Hamamoto, T. , et al., Bioorg. Med. Chem., 1, 141-145 (1993) Weinstein, J. , et al., J. Biol. Chem., 262, 17735-17743 (1987) Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 120, 104-110 (1996) Paulson, J. C. et al., J. Biol. Chem., 252, 2363-2371 (1977)
本発明の課題は、ビブリオ科フォトバクテリウム属に属する微生物に由来する新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、およびそれをコードする遺伝子を提供することである。更に具体的には、本発明は反応至適pHが中性からアルカリ性側である、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素、およびそれをコードする遺伝子を提供することを目的とする。
また、本発明の課題は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする遺伝子を利用して遺伝子組換え技術により本酵素を高生産する方法を提供することである。
本発明の課題はさらに、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素によるシアル酸転移反応の効率を高める方法を提供することを目的とする。
本発明者らは日本全国から4,000菌株以上の微生物を分離し、その性質について鋭意研究に努めた結果、フォトバクテリウム(Photobacterium)属に属する微生物の菌株から、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を生産する菌株を見出した。次に公知の遺伝子であるフォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damselae)由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のDNAをプローブに、当該菌株から新規なα2,6−シアル酸転移酵素遺伝子をクローニングした。本新規遺伝子を大腸菌で発現させた結果、本遺伝子はβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードし、その酵素タンパク質の反応至適pHが7から9.5であることを見出した。さらに、この新規な組換え酵素を精製し詳細に解析した結果、本組換え酵素は、シアル酸を単糖や糖鎖中のガラクトース残基、N−アセチルガラクトサミン残基などにα2,6結合で効率よく転移させることも見出し、本発明を完成させた。本発明は反応至適pHが中性からアルカリ性側である、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびそれをコードする核酸、ならびに、当該シアル酸転移酵素を製造する方法を提供する。
以下、本発明を詳細に説明する。
β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素
本発明は、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を提供する。本明細書において、「β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素」とは、シチジン1リン酸(CMP)−シアル酸からシアル酸を、複合糖質糖鎖もしくは遊離の糖鎖中のガラクトース残基の6位、ラクトースもしくはN−アセチルラクトサミンなどのオリゴ糖に存在するガラクトースの6位、またはガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、グルコース、N−アセチルグルコサミンもしくはマンノースなどの複合糖質を構成しうる単糖であって6位の炭素に水酸基を有する単糖の6位、に転移させる活性を有するタンパク質を意味する。本明細書において、「β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性」とは、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素について上述した活性を意味する。また、ここでいうシアル酸とは、シアル酸ファミリーに属するノイラミン酸誘導体を示す。具体的には、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、N−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)、5−デアミノ−5−ヒドロキシノイラミン酸(KDN)、ジシアル酸(ジN−アセチルノイラミン酸:Neu5Acα2,8(9)Neu5Ac)などを示す。
本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、配列番号2のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質である。また、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であってもよい。配列番号4のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列において、1−15番目のアミノ酸を除去し、そのN末端にメチオニンを付加した配列である。後述の実施例2において示すように、配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質も、配列番号2のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質と同様のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を保持した。このことは、配列番号2のうち少なくともアミノ酸16−497が存在すればβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を保持しうることを示すものである。よって、本発明の新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、配列番号2のアミノ酸1−497中のアミノ酸1−15の全部又は一部を欠失しているアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、あるいは、配列番号2のアミノ酸16−497のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であってもよい。
また、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、配列番号1の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質である。本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、配列番号3の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であってもよい。配列番号3の塩基配列は、配列番号1の塩基46−1494の塩基配列の5’末端に、開始コドン(ATG)を付加した配列に相当する。配列番号1および配列番号3の塩基配列は、それぞれ、配列番号2および配列番号4のアミノ酸配列をコードする。また、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、配列番号1の塩基46−1494の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であってもよい。
本発明はまた、上記の本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の変異体であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する変異タンパク質をも包含する。このような変異タンパク質もまた、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素に含まれる。
本発明の変異体タンパク質は、配列番号2、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数の、あるいは1または数個のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。置換は保存的置換であってもよく、これは特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることである。保存的置換の非限定的な例には、Ile、Val、LeuまたはAla相互の置換のような脂肪族基含有アミノ酸残基の間の置換、LysおよびArg、GluおよびAsp、GlnおよびAsn相互の置換のような極性残基の間での置換などが含まれる。
アミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加による変異体は、野生型タンパク質をコードするDNAに、例えば周知技術である部位特異的変異誘発(例えば、Nucleic Acid Research, Vol.10, No. 20, p.6487-6500, 1982参照、引用によりその全体を本明細書に援用する)を施すことにより作成することができる。本明細書において、「1または複数のアミノ酸」とは、部位特異的変異誘発法により欠失、置換、挿入および/または付加できる程度のアミノ酸を意味する。
部位特異的変異誘発法は、例えば、所望の変異である特定の不一致の他は、変異を受けるべき一本鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて次のように行うことができる。即ち、プライマーとして上記合成オリゴヌクレオチドを用いてファージに相補的な鎖を合成させ、得られた二重鎖DNAで宿主細胞を形質転換する。形質転換された細菌の培養物を寒天にプレーティングし、ファージを含有する単一細胞からプラークを形成させる。そうすると、理論的には50%の新コロニーが一本鎖として変異を有するファージを含有し、残りの50%が元の配列を有する。上記所望の変異を有するDNAと完全に一致するものとはハイブリダイズするが、元の鎖を有するものとはハイブリダイズしない温度において、得られたプラークをキナーゼ処理により標識した合成プローブとハイブリダイズさせる。次に該プローブとハイブリダイズするプラークを拾い、培養してDNAを回収する。
なお、酵素などの生物活性ペプチドのアミノ酸配列にその活性を保持しつつ1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を施す方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法、および遺伝子を選択的に開裂し、次に選択されたヌクレオチドを除去、置換、挿入または付加し、次いで連結する方法もある。
本発明の変異体タンパク質はまた、配列番号1、配列番号3からなる群より選択される塩基配列において、1または複数の、あるいは1または数個のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。ヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加は、部位特異的変位誘発のほか上述した方法により行うことができる。
本発明の変異体タンパク質はさらに、配列番号2、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上、好ましくは65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.5%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
または、本発明の変異体タンパク質は、配列番号1、配列番号3からなる群より選択される塩基配列と、少なくとも70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.5%以上の同一性を有する核酸によってコードされるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
2つのアミノ酸配列の同一性%は、視覚的検査および数学的計算によって決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman, S. B. 及びWunsch, C. D. (J. Mol. Biol., 48: 443-453, 1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff, S. 及びHenikoff, J. G. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915-10919, 1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、用いてもよい。同一性のパーセントは、例えばAltschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)に記載されているBLASTプログラムを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。または、2つのアミノ酸配列の同一性%は、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス製)などのプログラム、または、FASTAアルゴリズムなどを用いて決定してもよい。その際、検索はデフォルト値を用いてよい。
2つの核酸配列の同一性%は、視覚的検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。代表的な、好ましいコンピュータ・プログラムは、遺伝学コンピュータ・グループ(GCG;ウィスコンシン州マディソン)のウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.0プログラム「GAP」である(Devereux, et al., 1984, Nucl. Acids Res., 12: 387)。この「GAP」プログラムの使用により、2つの核酸配列の比較の他に、2つのアミノ酸配列の比較、核酸配列とアミノ酸配列との比較を行うことができる。ここで、「GAP」プログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての(同一物について1、および非同一物について0の値を含む)一元(unary)比較マトリックスのGCG実行と、SchwartzおよびDayhoff監修「ポリペプチドの配列および構造のアトラス(Atlas of Polypeptide Sequence and Structure)」国立バイオ医学研究財団、353−358頁、1979により記載されるような、GribskovおよびBurgess, Nucl. Acids Res., 14: 6745, 1986の加重アミノ酸比較マトリックス;または他の比較可能な比較マトリックス;(2)アミノ酸の各ギャップについて30のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の1のペナルティ;またはヌクレオチド配列の各ギャップについて50のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の3のペナルティ;(3)エンドギャップへのノーペナルティ:および(4)長いギャップへは最大ペナルティなし、が含まれる。当業者により使用される他の配列比較プログラムでは、例えば、米国国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlにより使用が利用可能なBLASTNプログラム、バージョン2.2.7、またはUW−BLAST2.0アルゴリズムが使用可能である。UW−BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されている。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを使用し、使用可能である選択パラメーターは以下の通りである:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(WoottonおよびFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry, 1993)により決定される;WoottonおよびFederhen, 1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol., 266: 544-71も参照されたい)、または、短周期性の内部リピートからなるセグメント(ClaverieおよびStates(Computers and Chemistry, 1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、および(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、またはE−スコア(KarlinおよびAltschul, 1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない);好ましいE−スコア閾値の数値は0.5であるか、または好ましさが増える順に、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75、または1e−100である。
本発明の変異タンパク質はまた、配列番号1、配列番号3からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
ここで、「ストリンジェントな条件下」とは、中程度または高程度にストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度にストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第3版,第6−7章,Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40−50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark's solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および例えば、約40℃−60℃、0.5−6×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。好ましくは中程度にストリンジェントな条件は、約50℃、6×SSCのハイブリダイゼーション条件(及び洗浄条件)を含む。高ストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。
一般に、こうした条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度および/または低い塩濃度でのハイブリダイゼーション(例えば、約65℃、6×SSCないし0.2×SSC、好ましくは6×SSC、より好ましくは2×SSC、最も好ましくは0.2×SSCのハイブリダイゼーション)および/または洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、およびおよそ65℃−68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液では、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mM クエン酸ナトリウムである)にSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaH2PO4、および1.25mM EDTA、pH7.4である)を代用することが可能であり、洗浄はハイブリダイゼーションが完了した後で15分間行う。
また、プローブに放射性物質を使用しない市販のハイブリダイゼーションキットを使用することもできる。具体的には、ECL direct labeling & detection system(Amersham社製)を使用したハイブリダイゼーション等が挙げられる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションとしては、例えば、キット中のハイブリダイゼーションバッファーにブロッキング試薬を5%(w/v)、NaClを0.5Mになるように加え、42℃で4時間行い、洗浄は、0.4% SDS、0.5xSSC中で、55℃で20分を二回、2xSSC中で室温、5分を一回行う、という条件が挙げられる。
シアル酸転移酵素活性は、公知の手法、例えば、J. Biochem., 120, 104-110 (1996)(引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている方法で測定してもよい。例えば、糖供与体基質としてCMP−NeuAc(N−アセチルノイラミン酸)を、そして糖受容体基質としてラクトースを用いて酵素反応を行い、反応生成物であるシアリルラクトースの量を評価することで酵素活性を評価することができる。なお、酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシアル酸を転移する酵素量である。
糖受容体基質に転移したシアル酸の結合様式の決定方法としては、限定するわけではないが、ピリジルアミノ化糖鎖を用いる手法、反応生成物の核磁気共鳴分光法(NMR)による分析など、当業者に公知の手法のいずれかを用いて行うことができる。ピリジルアミノ化糖鎖を用いる手法は、ピリジルアミノ化糖鎖を糖受容体基質として酵素反応を行うことを含む。具体的には、ピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ製)を糖受容体基質、CMP−NeuAcを糖供与体基質として用いて酵素反応を行い、反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、反応生成物の保持時間からシアル酸が転移された位置を特定する。
本発明の一態様において本発明の酵素は、フォトバクテリウム属に属する微生物由来である。本発明の酵素は、フォトバクテリウム属に属する微生物由来であれば特に限定されるものではなく、フォトバクテリウム属に属する新種の微生物由来の酵素であってもよい。好ましい態様において、本発明の酵素はフォトバクテリウム・レイオグナシー(Photobacterium leiognathi)に属する微生物由来である。
本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の酵素学的性質および理化学的性質は、上記に定義したβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有することを特徴とするほか、限定するわけではないが、至適pHがpH7〜pH9.5の範囲、好ましくはpH7.5〜pH9.5、pH7.5〜pH9、pH8〜pH9の範囲、さらに好ましくはpH8である。また、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、至適温度が25〜30℃であること、および/または分子量がSDS−PAGE分析で50,000±5,000Da程度であることを特徴としてもよい。
また、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、リン酸バッファーを含む反応液中で使用すると、他のバッファー、例えば、酢酸バッファー、カコジル酸バッファー、ビス−トリスバッファー、トリス−塩酸バッファー、TAPSバッファー、CHESバッファー、CAPSバッファーなど、と比較して高い酵素活性を示す。よって本発明は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の使用であって、リン酸バッファーを含む組成を有する反応液中で使用することを特徴とする、前記使用、をも提供する。本明細書において、リン酸バッファーとは、当業者が通常用いる意味として解される。好ましい態様において、リン酸バッファーとはリン酸イオン(PO4 3-)を緩衝剤の構成成分として含むバッファーを意味する。さらに好ましい態様において、リン酸バッファーは、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸水素二カリウム(K2HPO4)、および、それらの組合せ、からなる群より選択される緩衝剤を含むバッファーであってよい。また、本発明の酵素をリン酸バッファーを含む反応液中で使用する際は、至適pHである、pH7〜pH9.5の範囲で使用することが好ましい。
β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸
本発明は、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸を提供する。
本発明の核酸は、配列番号2、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードする核酸である。本発明の核酸はまた、配列番号1、配列番号3からなる群より選択される塩基配列を含んでなる核酸である。
本発明の核酸は、上記の核酸の変異体であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。そのような核酸もまた、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸に含まれる。
そのような核酸の変異体は、配列番号2、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数の、あるいは1または数個のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質、をコードする核酸である。本発明の核酸の変異体はまた、配列番号1、配列番号3からなる群より選択される塩基配列において、1または複数の、あるいは1または数個のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列を含んでなる核酸である。アミノ酸またはヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/付加は、上述した方法により導入することができる。
また、そのような核酸の変異体は、配列番号2、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上、好ましくは65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.5%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質、をコードする核酸である。本発明の核酸の変異体はまた、配列番号1、配列番号3を付加した配列)からなる群より選択される塩基配列と、好ましくは70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.5%以上の同一性を有する核酸であって、該核酸はβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする、前記核酸である。ここで、アミノ酸配列または塩基配列の同一性は、上記に示した方法で決定することができる。
そのような核酸の変異体はさらに、配列番号1、配列番号3からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件、または高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む核酸であって、該核酸はβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする、前記核酸である。ここで、ストリンジェントな条件または高度にストリンジェントな条件とは、上記で定義したとおりである。
また、本発明の核酸によりコードされるタンパク質は、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有することを特徴とするほか、限定されるわけではないが、その酵素活性の至適pHがpH7〜pH9.5の範囲、好ましくはpH7.5〜pH9.5、pH7.5〜pH9、pH8〜pH9の範囲、さらに好ましくはpH8である。また本発明の核酸によりコードされるタンパク質は、至適温度が25〜30℃であること、および/または、当該タンパク質の分子量がSDS−PAGE分析で50,000±5,000Da程度であることを特徴としてもよい。
β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を発現する微生物
本発明者らは、ビブリオ科フォトバクテリウム属に属する微生物が新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を発現することを見いだした。よって本発明は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を発現する単離された微生物を提供する。本発明の微生物は、フォトバクテリウム属に属し、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素生産能を有する単離された微生物である。好ましい態様において、本発明の微生物は、フォトバクテリウム・レイオグナシーに属し、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素生産能を有する単離された微生物である。なお、上記のフォトバクテリウム属の微生物は一般に海洋性細菌であり、海水中または海産の魚介類から分離される。
本発明の微生物は、例えば以下に説明するようなスクリーニング法を用いて分離することができる。海水、海砂、海泥あるいは海産魚介類を微生物源とする。海水、海砂、海泥はそのままもしくは滅菌海水で希釈し、接種源とする。海産魚介類は表面の粘液等をループで擦り採って接種源としたり、内臓器を滅菌海水中で磨砕した液を接種源としたりする。これらをマリンブロスアガー2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)や塩化ナトリウム添加ニュートリエントアガー培地(ベクトン・ディッキンソン製)などの平板培地上に塗布し、様々な温度条件下で生育する海洋性微生物を取得する。常法に従い、得られた微生物を純粋培養した後、マリンブロス2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)や塩化ナトリウム添加ニュートリエントブロス培地(ベクトン・ディッキンソン製)などの液体培地を用い、それぞれの微生物を培養する。微生物が十分生育した後に、培養液から菌体を遠心分離によって集める。集めた菌体に界面活性剤である0.2%トリトンX−100(関東化学製)を含む20mMカコジレート緩衝液(pH6.0)を添加し、菌体を懸濁する。この菌体懸濁液を氷冷下、超音波処理し細胞を破砕する。この細胞破砕液を酵素溶液として、常法にしたがってシアル酸転移活性を測定し、シアル酸転移活性を有する菌株を得ることができる。
本発明の酵素として記載される、反応至適pHが7.0から9.5という特徴を有するβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を生産するフォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株は上記のスクリーニング法を用いることで得られた。
組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を製造する方法
本発明は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を製造する方法にも関する。好ましい態様において本発明の方法は、本発明の酵素を生産する。
本発明は、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸を含む発現ベクター、および当該発現ベクターを含有する宿主細胞を提供する。そして、本発明は、当該発現ベクターを含有する宿主細胞を、組換えタンパク質の発現に適する条件下で培養して、発現された組換えタンパク質を回収することにより組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を製造する方法も提供する。
本発明の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を製造するためには、使用する宿主に応じて選ばれた発現ベクターに、哺乳動物、微生物、ウィルス、または昆虫遺伝子等から誘導された適当な転写または翻訳調節ヌクレオチド配列に機能可能に連結したβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸配列を挿入する。調節配列の例として、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに、転写および翻訳の開始および終結を制御する適切な配列が挙げられる。
本発明のベクターに挿入されるβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸配列は、上述した本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸の塩基配列である。この配列は、リーダー配列を含んでいても、含んでいなくてもよい。リーダー配列を含む場合、配列番号1のヌクレオチド1−45に相当するリーダー配列であってもよく、また他の生物源由来のリーダー配列に置き換えてもよい。リーダー配列を置き換えることによって、発現したタンパク質を宿主細胞の外に分泌させるように発現システムを設計することも可能である。
また、本発明の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質は、当該酵素をコードする核酸に続いて、Hisタグ、FLAGTMタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼなどをコードする核酸を連結した核酸をベクターに挿入することにより、融合タンパク質として発現することも可能である。本発明の酵素をこのような融合タンパク質として発現させることにより、当該酵素の精製および検出を容易にすることができる。
β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質の発現に適する宿主細胞には、原核細胞、酵母または高等真核細胞が含まれる。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞宿主で用いる適切なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, New York, (1985)(引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている。
原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性菌、例えば、大腸菌または枯草菌が含まれる。大腸菌のような原核細胞を宿主として使用する場合、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質は、原核細胞内での組換えポリペプチドの発現を容易にするためにN末端メチオニン残基を含むようにしてもよい。このN末端メチオニンは、発現後に組換えα2,6−シアル酸転移酵素タンパク質から切り離すこともできる。
原核宿主細胞内で用いる発現ベクターは、一般に1または2以上の表現型選択可能マーカー遺伝子を含む。表現型選択可能マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質耐性を付与するか、または独立栄養要求性を付与する遺伝子である。原核宿主細胞に適する発現ベクターの例には、pBR322(ATCC37017)のような市販のプラスミドまたはそれらから誘導されるものが含まれる。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含有するので、形質転換細胞を同定するのが容易である。適切なプロモーターならびにβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸のDNA配列が、このpBR322ベクター内に挿入される。他の市販のベクターには、例えば、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals, スウェーデン、ウプサラ)およびpGEM1(Promega Biotech.、米国、ウイスコンシン州、マディソン)などが含まれる。
原核宿主細胞用の発現ベクターにおいて通常用いられるプロモーター配列には、tacプロモーター、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)プロモーター、ラクトースプロモーター(Changら、Nature 275:615, 1978;およびGoeddelら、Nature 281:544, 1979、引用によりその全体を本明細書に援用する。)などが含まれる。
また、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を酵母宿主内で発現させてもよい。好ましくは、サッカロミセス属(Saccharomyces、例えば、S. cerevisiae )を用いるが、ピキア属(Pichia)またはクルイベロミセス属(Kluyveromyces)のような他の酵母の属を用いてもよい。酵母ベクターは、2μ酵母プラスミドからの複製起点の配列、自立複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、および選択可能なマーカー遺伝子を含有することが多い。酵母α因子リーダー配列を用いて、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質の分泌を行わせることもできる。酵母宿主からの組換えポリペプチドの分泌を促進するのに適する他のリーダー配列も知られている。酵母を形質転換する方法は、例えば、Hinnenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75: 1929-1933, 1978(引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている。
哺乳動物または昆虫宿主細胞培養系を用いて、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を発現することもできる。哺乳動物起源の株化細胞系も用いることができる。哺乳動物宿主細胞発現ベクターのための転写および翻訳制御配列は、ウィルスゲノムから得ることができる。通常用いられるプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマウィルス、アデノウイルス2などから誘導される。SV40ウィルスゲノム、例えば、SV40起点、初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライス部位、およびポリアデニル化部位から誘導されるDNA配列を用いて、哺乳動物宿主細胞内での構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝子要素を与えてもよい。哺乳動物宿主細胞内で用いるためのベクターは、例えば、OkayamaおよびBerg(Mol. Cell. Biol., 3: 280, 1983、引用によりその全体を本明細書に援用する。)の方法で構築することができる。
本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を産生する1つの方法は、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質をコードする核酸配列を含む発現ベクターで形質転換した宿主細胞を、当該タンパク質が発現する条件下で培養することを含む。次いで、用いた発現系に応じてβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を培養培地または細胞抽出液から回収する。
組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を精製する操作は、用いた宿主の型および本発明のタンパク質を培養培地中に分泌させるかどうかといった要因に従って適宜選択される。例えば、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を精製する操作には、陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラム、ゲル濾過カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、CDP−ヘキサノールアミンアガロースカラム、CMP−ヘキサノールアミンアガロースカラム、疎水性カラム等のカラムクロマトグラフィーおよびネイティブ−PAGE等、またはそれらの組み合わせが含まれる。また、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素に精製を容易にするタグなどを融合させて発現させた場合には、アフィニティークロマトグラフィーによる精製方法を利用してもよい。例えば、ヒスチジンタグ、FLAGTMタグ、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)などを融合させた場合には、それぞれ、Ni−NTA(ニトリロトリ酢酸)カラム、抗FLAG抗体を連結したカラム、またはグルタチオンを連結したカラム、などを用いてアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は電気泳動的に単一バンドになるまで精製してもよいが、部分精製品でも十分な活性を有するため、本発明のβ−ガラクトシド−2,6−シアル酸転移酵素は精製品であってもよく、または部分精製品であってもよい。
抗体
本発明は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質に対する抗体を提供する。本発明の抗体は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質、またはそのフラグメント、に対して作製してもよい。ここで、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素のフラグメントは、当該酵素のアミノ酸配列中、少なくとも6アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、少なくとも20アミノ酸、または少なくとも30アミノ酸を含む配列を有するフラグメントである。
抗体は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素またはそのフラグメントを、当該技術分野において抗体作製のために用いられる動物、例えば、限定されるわけではないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギなどに免疫して作製してもよい。抗体はポリクローナル抗体であっても、またはモノクローナル抗体であってもよい。抗体は、当業者に周知の抗体作製方法に基づいて作製することができる。
本発明の抗体は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質をアフィニティー精製により回収するのに用いることができる。本発明の抗体は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質を、ウエスタンブロッティングやELISAなどのアッセイにおいて検出するのに用いることもできる。
β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の活性を向上させる方法
本発明はまた、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、当該反応の効率を高める方法に関する。
本発明者らは、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、その反応液中に一価金属イオンを添加すると、当該反応の効率が高められることを見いだした。
従って、一態様において本発明は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、当該反応を一価金属イオンの存在下で行うことにより、当該一価金属イオンの非存在下と比較して、当該反応の効率を高める方法、に関する。好ましくは、一価金属イオンはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオン、さらに好ましくは、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンである。
本発明の方法において、一価金属イオンの量は、反応系の総量を基準として、0.05M〜2.0M、好ましくは0.05M〜1.5M、0.1M〜1.5M、0.05M〜1.0M、0.1M〜1.0Mである。
本発明者らは、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、その反応液中にカルシウムイオンを添加すると、当該反応の効率が高められることを見いだした。
従って、一態様において本発明は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、当該反応をカルシウムイオンの存在下で行うことにより、カルシウムイオンの非存在下と比較して、当該反応の効率を高める方法、に関する。
本発明の方法において、カルシウムイオンの量は、反応系の総量を基準として、1.0mM〜2.0M、好ましくは1.0mM〜1.0M、1.0mM〜500mM、1.0mM〜100mM、5.0mM〜2.0M、5.0mM〜1.0M、5.0mM〜500mM、5.0mM〜100mM、5.0mM〜50mM、5.0mM〜25mM、5.0mM〜20mM、10mM〜100mM、10mM〜50mM、10mM〜25mM、10mM〜20mMである。
また、本発明者らは、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、その反応液中に、リン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ホウ酸イオン、塩化物イオン、およびフッ化物イオンからなる群より選択される陰イオンを添加すると、当該反応の効率が高められることを見いだした。
従って、一態様において本発明は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、当該反応をリン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、およびホウ酸イオンからなる群より選択される錯イオン、塩化物イオン、フッ化物イオンならびにそれらいずれかの組合せ、からなる群より選択される陰イオンの存在下で行うことにより、当該陰イオンの非存在下と比較して、当該反応の効率を高める方法、に関する。好ましい態様において陰イオンは、リン酸イオン、硫酸イオン、および硝酸イオンからなる群より選択される錯イオン、塩化物イオン、ならびにそれらいずれかの組合せ、からなる群より選択される陰イオンである。
本発明の方法において、陰イオンの量は、反応系の総量を基準として、0.05M〜2.0M、好ましくは0.05M〜1.5M、0.1M〜1.5M、0.05M〜1.0M、0.1M〜1.0Mである。
また、別の態様において本発明は、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、当該反応を、一価金属イオンまたはカルシウムイオンと、リン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオンからなる群より選択される錯イオン、および塩化物イオンからなる群より選択される陰イオンとの塩の存在下で行うことにより、当該塩の非存在下と比較して、当該反応の効率を高める方法、に関する。
本発明の方法において、酵素反応を行う条件は、本発明のシアル酸転移酵素が反応する条件であれば、特に制限はない。酵素反応溶液には、限定するわけではないが、カコジレートバッファー、リン酸バッファー、トリス−塩酸バッファー、ビストリスバッファー、TAPSバッファー、CHESバッファー、CAPSバッファーなどの緩衝液を用いてもよい。反応溶液のpHは、本発明のシアル酸転移酵素が反応する条件であればいずれでもよく、より好ましくはpH7〜9.5であり、さらに好ましくは本発明のシアル酸転移酵素の至適pHである。また、反応溶液の反応温度は、本発明のシアル酸転移酵素が反応する条件であればいずれでもよく、好ましくは本発明のシアル酸転移酵素の至適温度である。糖供与体および糖受容体濃度の条件は、糖転移酵素が反応する条件であれば特に制限はなく、当業者であれば、これらの濃度を適宜設定することができる。
本発明の方法において、糖転移酵素の反応系に一価金属イオン、カルシウムイオン、陰イオン、および/または塩を添加する時期に特に制限はないが、例えば、酵素反応前に、酵素反応用緩衝液に、酵素溶液に、糖受容体基質溶液に、または糖供与体溶液に溶解させておいてもよく、あるいはこれらと独立に適当濃度の一価金属イオン、カルシウムイオン、陰イオン、および/または塩溶液を調整し、これを反応系に添加してもよい。一価金属イオン、カルシウムイオン、陰イオン、および/または塩溶液を酵素反応成分と独立に調整する態様では、反応の直前または反応の途中で一価金属イオン、カルシウムイオン、陰イオン、および/または塩を反応系に添加することも可能である。
本明細書において、一価金属イオン、カルシウムイオン、陰イオン、および/または塩の存在下とは、反応溶液の緩衝剤とは別に、一価金属イオン、カルシウムイオン、陰イオン、および/または塩を反応液中に添加した状態を意味する。
本発明の方法において、酵素活性が向上する、または反応効率が高まるとは、当該反応を一価金属イオン、カルシウムイオン、陰イオン、および/または塩の存在下で行うことにより、その非存在下に比べて当該反応の効率が高まることをいう。好ましい態様において、酵素活性が向上する、または反応効率が高まるとは、当該反応を一価金属イオン、カルシウムイオン、陰イオン、および/または塩の存在下で行うことにより、その非存在下に比べて、酵素の相対活性が1倍より大きい、より好ましくは1.1倍より大きい、さらに好ましくは1.2倍より大きいことをいう。増加した酵素活性の上限は特に定めなくてもよく、好ましくは10倍以下、5倍以下、3倍以下、2倍以下であってもよい。
本発明は、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびそれをコードする核酸を提供することにより、生体内において重要な機能を有することが明らかにされている糖鎖の合成・生産手段を提供するという観点において貢献する。特に、本発明のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素は、既存のものと比較して、反応至適pHが中性からアルカリ性側にあるという特徴を有し、さらに受容体基質特異性が広範囲である。シアル酸は、生体内の複合糖質糖鎖において非還元末端に存在することが多く、糖鎖機能という観点から極めて重要な糖であるため、シアル酸転移酵素は糖転移酵素の中でも最も需要が高い酵素の一つであり、本発明の新規なシアル酸転移酵素の提供は、そのような高い需要に応えるものである。
図1−1は、フォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(配列番号3)を含む発現ベクターで形質転換した大腸菌を培養し、得られた菌体から調製した粗酵素液を、ピリジルアミノ化ラクトース(PA−ラクトース)およびCMP−シアル酸に反応させた反応溶液のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が3.967分のピークはPA−ラクトース、4.452分のピークはPA−6’−シアリルラクトースである。 図1−2は、フォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(配列番号3)を含む発現ベクターで形質転換した大腸菌を培養し、得られた菌体から調製した粗酵素液を、ピリジルアミノ化(PA)ラクトースと混合させた場合のHPLC分析結果を示す図である。図1−1の実験に対してシアル酸供与体であるCMP−シアル酸を反応液に混合していない対照実験の結果である。保持時間が3.962分のピークはPA−ラクトースである。 図1−3は、PA−ラクトースの標品のHPLC分析結果を示す図である。PA−ラクトースは、保持時間3.973分のピークとして現れる。 図1−4は、公知の酵素であるフォトバクテリウム・ダムセラ JT0160株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をPA−ラクトースおよびCMP−シアル酸に反応させた反応溶液(ピリジルアミノ化α2,6−シアリルラクトースが生成されている)のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が3.981分のピークはPA−ラクトース、4.470分のピークはPA−6’−シアリルラクトースである。 図1−5は、公知の酵素であるフォトバクテリウム・ダムセラ JT0160株由来のα2,6−シアル酸転移酵素をPA−ラクトースに反応させた反応溶液のHPLC分析結果を示す図である。図1−4の実験に対し、CMP−シアル酸を反応液に混合していない対照実験である。保持時間が3.976分のピークはPA−ラクトースである。 図2−1は、フォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株由来の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)の酵素活性における反応pHの影響を示すグラフである。用いた緩衝液の種類、pH範囲は以下の通りである:酢酸バッファー(pH4−5)、カコジル酸バッファー(pH5−6)、ビスートリスバッファー(pH6−7)、リン酸バッファー(pH6−9.5)、トリス−塩酸バッファー(pH7−9)TAPSバッファー(pH8−9)、CHESバッファー(pH9−10)、CAPSバッファー(pH10−11)。 図2−2は、フォトバクテリウム属 JT−ISH−224株(寄託番号:NITE BP−87)由来の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性における反応温度の影響を示すグラフである。 図3は、フォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株由来の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)の酵素活性に及ぼす、各種の塩の添加の効果を示すグラフである。 図4は、フォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株由来の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)の酵素活性に及ぼす、各種1価金属イオンの添加の影響を示すグラフである。 図5は、フォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株由来の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)の酵素活性に及ぼす、カルシウムイオンの添加の影響を示すグラフである。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1: β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を生産する微生物のスクリーニングと菌株の同定
(1)スクリーニング
海水、海砂、海泥あるいは海産魚介類を接種源とした。この接種源をマリンブロスアガー2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)からなる平板培地上に塗布し、15℃、25℃もしくは30℃で生育する微生物を取得した。常法に従い、得られた微生物を純粋培養した後、マリンブロス2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)からなる液体培地を用いてそれぞれの微生物を培養した。微生物が十分成育した後に、培養液から菌体を遠心分離によって集めた。集めた菌体に、0.2%トリトンX−100(関東化学製)を含む20mMカコジレート緩衝液(pH6.0)を添加し、菌体を懸濁した。この菌体懸濁液を氷冷下、超音波処理し細胞を破砕した。この細胞破砕液を粗酵素溶液としてシアル酸転移活性を測定し、シアル酸転移活性を有する菌株JT−SHIZ−145株を得た。
シアル酸転移活性は、J. Biochem., 120, 104-110 (1996) (引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている方法で測定した。具体的には、糖供与体基質CMP−NeuAc(70nmol、14CでNeuAcをラベルしたCMP−NeuAc 約20,000cpmを含む。NeuAcはN−アセチルノイラミン酸を表す)、糖受容体基質としてラクト−ス(1.25μmol)、NaClを0.5M濃度になるように添加し、および上記に記した方法で調製した酵素を含む反応溶液(30μl)を用いて酵素反応を行った。酵素反応は25℃で10分間から180分間程度行った。反応終了後、反応溶液に1.97mlの5mMリン酸緩衝液(pH6.8)を加え、この溶液をDowex1×8(PO4 3‐ フォーム、0.2×2cm、BIO−RAD製)カラムに供した。このカラムの溶出液(0〜2ml)に含まれる反応生成物、すなわち、シアリルラクト−スに含まれる放射活性を測定することで、酵素活性を算出した。酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシアル酸を転移する酵素量である。
次に、シアル酸の結合様式を明らかにするために、PA−ラクトースを基質とする反応を行った。得られた粗酵素液を用い、ピリジルアミノ化糖鎖を糖受容体基質として酵素反応を行った。ピリジルアミノ化糖鎖としては、ピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ製)を用い分析した。5μlの粗酵素液に1.5μlの5mM CMP−NeuAcおよび1.5μlの10pmol/μl糖受容体基質を加え、25℃下で18時間反応させた。反応終了後、100℃で2分間反応溶液を処理することにより酵素を失活させた。その後、HPLCで反応生成物の分析を行った。HPLCシステムとしてShimadzu LC10A(島津製作所製)を用い、分析カラムにはTakara PALPAK Type R(タカラバイオ製)を用いた。0.15% N−ブタノールを含む100mM 酢酸−トリエチルアミン(pH5.0)で平衡化したカラムに72μlの溶出液A(100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)を加えた反応液を注入した。ピリジルアミノ化糖鎖の溶出には溶出液A(100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)および溶出液B(0.5%、n−ブタノールを含む100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)を用い、30〜50%溶出液Bの直線濃度勾配法(0〜20分)および100%溶出液B(21〜35分)により、順次ピリジルアミノ化糖鎖を溶出した。なお、分析は以下の条件で行った(流速:1ml/min、カラム温度:40℃、検出:蛍光(Ex:320nm、Em:400nm))。その結果、JT−SHIZ−145株はβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有することが明らかとなった(図1−1ないし図1−5)。
(2)16S rRNA遺伝子の塩基配列解析によるJT−SHIZ−145株の細菌学的同定
JT−SHIZ−145株から、常法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより16S rRNA遺伝子の部分塩基配列を増幅し、塩基配列を決定した。
JT−SHIZ−145株の16S rRNA遺伝子のDNA塩基配列はフォトバクテリウム・レイオグナシー(Photobacterium leiognathi)基準株ATCC25521の16S rRNA遺伝子の配列に最も相同性が高く、その相同率は99.8%であることが明らかとなった。これらの結果から、JT−SHIZ−145株はビブリオ科フォトバクテリウム属に属する微生物で、フォトバクテリウム・レイオグナシーに属すると同定した。
実施例2:JT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニングと塩基配列決定、および当該遺伝子の大腸菌での発現
(1)JT−SHIZ−145株におけるβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログの存在の確認
β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有することが明らかとなったJT−SHIZ−145株において、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(Yamamoto et al. (1996) J Biochem 120: 104-110)、またはJT−ISH−224株(寄託番号:NITE BP−87)由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(PCT/JP2006/304993)のホモログが存在するかどうかを明らかにするため、ゲノミックサザンハイブリダイゼーションを実施した。JT−SHIZ−145株の菌体ペレット約0.75gから、Qiagen Genomic−tip 500/G(Qiagen社製)を用い、キット添付の説明書きに従って、約100μgのゲノムDNAを調製した。次に、JT−SHIZ−145株のゲノムDNA数μgを制限酵素EcoRI、HindIII、BamH I、Xho Iでそれぞれ消化し、0.8%アガロースゲル電気泳動で分画した。泳動後、ゲルを0.4M NaOHを用いたアルカリブロッティングに供試し、DNAをHybond−N+ナイロンメンブレンフィルター(GEヘルスバイオサイエンス社製)に転写した。このフィルターに関して、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(GenBankアクセッション番号:E17028)の部分断片(ATGからHindIIIまでの約1.2kb EcoRI−HindIII断片)、およびJT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(N1C0クローン、PCT/JP2006/304993)をプローブとして用いて、サザンハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション実験はECL direct labeling & detection system(GEヘルスバイオサイエンス社製)を使用した。キット添付の説明書きに従ってプローブをラベリングした。ハイブリダイゼーションは、キット中のハイブリダイゼーション バッファーにブロッキング試薬を5%(w/v)、NaClを0.5Mになるように加え、37℃(通常42℃)で4時間行った。洗浄は、0.4% SDS、0.5xSSC中で、50℃(通常55℃)で20分を2回、2xSSC中で室温、5分を1回行った。シグナルの検出は、キット添付の説明書きに従った。その結果、JT0160株由来のプローブを用いた場合、EcoRI消化で約5.5kbのバンドが、HindIII消化で約4.8kbのバンドが、そしてBamH I消化で4.8kbのバンドが検出された。また、JT−ISH−224株由来のプローブを用いた場合は、HindIII消化とBamH I消化で約4.8kbのバンドが検出された。さらに、JT−SHIZ−145株のゲノムDNAを制限酵素PstI、HincIIでそれぞれで消化し、同様にハイブリダイゼーションを行った。その結果、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来、およびJT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子の両プローブにおいて、PstI消化で約1.6kbのバンドが、HincII消化で約1.3kbのバンドが検出された。これらより、JT−SHIZ−145株には、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来、およびJT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のホモログが存在することが明らかとなった。
(2)JT−SHIZ−145株におけるβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログを含むゲノム断片のサブクローニング
上記より、JT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモローグの全長を含み、かつプラスミドベクターへの導入が容易であると考えられた1.6kb PstI断片をプラスミドベクターpUC18へ挿入し、コロニーハイグリダイゼーションによりスクリーニングを行った。
JT−SHIZ−145株のゲノムDNAを再度PstIで消化し、TAE緩衝液中で低融点アガロース(SeaPlaqueGTG)を用いてアガロースゲル電気泳動を行った。次に1.6kb付近のDNA断片を含む部分のゲルを切り出し、このゲルと等量(v/w)の200mM NaClを加え、70℃で10分処理し、ゲルを融解した。このサンプルをフェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出を各1回行い、さらにエタノール沈殿によって1.6kbのDNA断片を回収した。この断片をライゲーションキット(Takara社製)を用いて、あらかじめ脱リン酸化処理を行ったプラスミドベクターpUC18のPstI部位にライゲーションした。ライゲーション反応後、DNAをエレクトロポレーションによって大腸菌TB1に形質転換し、100(g/mL アンピシリン、およびX−gal (5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド)を含むLA寒天培地で培養した。DNA断片が挿入されたと考えられた白色コロニー400個を上記抗生物質入りの別のLA寒天培地に接種した。コロニーが形成されたプレートの表面にHybond−N+ナイロンメンブレンフィルター(GEヘルスバイオサイエンス社製)を接触させ、コロニーをメンブレンに転写した。その後、メンブレン添付の説明書きに従ってアルカリ処理によってDNAを変性させ、メンブレン上に固定させた。このメンブレンに対し、JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子をプローブとしたコロニーハイブリダイゼーションを行った結果、4つのコロニーにシグナルが検出された。なお、プローブのラベリング、ハイブリダイゼーション条件は、ECL systemによる上記と同様の方法で行った。
これらのコロニーをアンピシリン含有LB液体培地に接種し、37℃で一晩振とう培養し、常法(Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd edition(引用によりその全体を本明細書に援用する))に従いプラスミドを抽出し、制限酵素分析により、1.6kb断片の挿入を確認した。
(3)JT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログの全塩基配列の決定
上記でインサートDNAが確認されたプラスミドの一つに関して、M13プライマー(Takara社製)を用いて、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer社製)で、1.6kb PstI断片の両端の塩基配列を決定した。得られたDNA配列を、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス社製)を用いて、アミノ酸配列に翻訳し、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のGenBankデータベースに対して、BLASTプログラムによる同一性検索を行った。その結果、片方のDNA配列から翻訳されたアミノ酸配列が、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素のアミノ酸配列と有意な相同性を示した。相同性を示した領域の方向性から、1.6kb PstI断片の中には完全なJT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログが含まれることが示唆された。
次に、JT−SHIZ−145株由来同酵素遺伝子ホモログのDNA配列を完全に決定するため、1.6kb PstI断片から得られたDNA配列を基に、2種のプライマー:
SHIZ145 26 N1 (5’−GCCATCATTACAGCAGTTAATG−3’(22mer):配列番号5)
SHIZ145 26 N2(5’−TGAGTATTCACAGAATGAGCGC−3’(22mer):配列番号6)
を合成し、塩基配列決定に用いた。
これらのプライマーを用いて、塩基配列を決定した結果、配列表の配列番号1の配列を得た。この配列は、JT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログのオープンリーディングフレーム(ORF)の全塩基配列である。JT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログのORFは、1494塩基対からなり、497個のアミノ酸をコードしていた。このアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。GENETYX Ver.7を用いてDNA配列、およびアミノ酸配列の解析を行ったところ、JT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログのDNA配列は、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子と68.2%の相同性を有していた。またアミノ酸配列でも、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素(JC5898)と66.3%の相同性を示した。さらに、JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子に対して、塩基配列では63.7%、そしてアミノ酸配列では55.1%の相同性を示した。
(4)JT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログ発現ベクターの構築
クローン化した遺伝子が、シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするか否かを調べるため、同遺伝子ホモログの全長、およびN末端側のシグナルペプチドをコードする部分を除去したタイプの遺伝子を発現ベクターに組み込み、大腸菌内でタンパク質を生産させ、この発現タンパク質の活性を測定した。
JT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログのコードするアミノ酸配列について、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7で解析を行ったところ、N末端の15アミノ酸がシグナルペプチドであると予測された。そこで、遺伝子全長(本実施例においてSHIZ145−N0C0と表記する)をクローン化するためのプライマー対:
SHIZ145 N0 BspHI(5’−AAAGGGTCATGAAAAGAATATTTTGTTTA−3’(29mer):配列番号7);および
SHIZ145 C0 Hind(5’−ATGAGCAAGCTTTCAGCACCAAAATAGAACATC−3’(33mer):配列番号8);
さらに、シグナルペプチド部分のアミノ酸が除かれたタイプのタンパク質をコードする遺伝子(本実施例においてSHIZ145−N1C0と表記する)をクローン化するためのプライマー対:
SHIZ145 N1 Pci(5’−TATACATGTGTAATGATAATCAGAATACAG−3’(30 mer):配列番号9);および
SHIZ145 C0 Hind(5’−ATGAGCAAGCTTTCAGCACCAAAATAGAACATC−3’(33mer):配列番号8);
を設計、合成した。
1.6kb PstI断片を含むプラスミドを鋳型に、これらのプライマーを用いてPCRを行い、発現ベクターに組み込むためのJT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログを増幅した。PCRの反応条件は以下のように設定した。50μlの反応液中に、鋳型DNA 500ng、10× PyroBest buffer II 5μl、2.5mM 各dNTP 4μl、プライマー 各50pmoles、PyroBest DNA Polymerase(Takara社製)0.5μlをそれぞれ含み、プログラムテンプコントロールシステムPC−700(ASTEK製)を用いて、96℃ 3分を1回、96℃ 1分、55℃ 1分、72℃ 2分を5回、72℃ 6分を1回行った。その結果、SHIZ145−N0C0でおよそ1.5kb、SHIZ145−N1C0でおよそ1.45kbのPCR産物が増幅された。これらのPCR産物を、ベクターpCR4TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。ライゲーション反応はベクターキット添付の説明書きに従った。大腸菌TB1にエレクトロポレーション法を用いてDNAを導入し、常法(Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd edition)に従いプラスミドDNAを抽出した。インサートの確認されたクローンに関して、M13プライマー(Takara社製)を用いて、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer社製)で、PCR産物の塩基配列をその両端から決定した。その結果、変異のないSHIZ145−N0C0(配列番号1)、およびSHIZ145−N1C0(配列番号3)がクローニングされたことを確認した。
塩基配列が確認されたSHIZ145−N0C0、ならびにSHIZ145−N1C0のクローンについて、制限酵素BspHIとHindIII(SHIZ145−N0C0の場合)、または制限酵素PciIとHindIII(SHIZ145−N1C0の場合)で二重消化した後、上述と同様にDNA断片をゲル精製した。大腸菌発現用ベクターはpTrc99A(Pharmacia LKB製)を用いた。このベクターを制限酵素NcoIとHindIIIで二重消化しゲル精製したものを、上記のように調製したSHIZ145−N0C0ならびにSHIZ145−N1C0のDNA断片とライゲーションキット(Takara社製)を用いてライゲーションし、大腸菌TB1に形質転換した。常法に従いプラスミドDNAを抽出、制限酵素分析を行い、DNA断片の発現ベクターへの組み込みを確認し、SHIZ145−N0C0/pTrc99A、ならびにSHIZ145−N1C0/pTrc99Aを完成した。
(5)発現誘導と活性測定
上記で得られた2種類の発現ベクターの内、SHIZ145−N1C0/pTrc99Aを用いて、タンパク質発現誘導実験を行った。SHIZ145−N1C0クローン(配列番号3)が組み込まれた発現ベクターpTrc99Aをもつ大腸菌TB1の単一コロニーを、抗生物質アンピシリン(最終濃度100μg/mL)を含むLB培地(6ml)に接種し、A600=0.5程度になるまで30℃で菌を前培養し、その後IPTG(イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド、和光純薬工業社製)を最終濃度で1mMとなるように加え発現誘導を開始し、30℃でさらに一晩振とう培養した。培養液2ml中の菌体を遠心分離によって集めた。この菌体を、400μlの0.336%トリトンX−100を含む20mM ビストリス緩衝液(pH6.0)に懸濁し、氷冷下で超音波破砕した。得られた破砕液を粗酵素液としシアル酸転移活性の測定に供試した。方法は、J. Biochem., 120, 104-110 (1996) (引用によりその全体を本明細書に援用する)の記載に従った。具体的には、糖供与体基質であるCMP−NeuAc(70nmol、14CでNeuAcをラベルしたCMP−NeuAc 約20,000cpmを含む。NeuAcはN−アセチルノイラミン酸を表す)、0.5M NaCl、糖受容体基質である120mM ラクト−ス、さらに上記に記した方法で調製した粗酵素液5μlを混和し、30℃で30分間反応させた。その後、5mMリン酸緩衝液(pH6.8)1.97mlで反応を停止させ、この溶液をDowex1×8(PO4 3‐ フォーム、0.2×2cm、BIO−RAD製)カラムに供した。カラムの溶出液に含まれる反応生成物、すなわち、シアリルラクト−スに含まれる放射活性を測定することで、酵素活性を算出した。2反復で測定を行ったところ、SHIZ145−N1C0を含む大腸菌の粗酵素液中には、糖供与体であるCMP−NeuAc中の14CでラベルされたNeuAcを糖受容体基質であるラクト−スに転移する活性、即ちシアル酸転移酵素活性が存在することが示された。具体的には、インサートが挿入されていないpTrc99Aベクターを組み込んだ大腸菌から調製した破砕液を用いた場合(ネガティブコントロール)の放射活性が156cpmであったのに対し、SHIZ145−N1C0クローンが組み込まれた発現ベクターpTrc99Aを組み込んだ大腸菌から調製した破砕液を用いた場合の放射活性は、8326cpmであった。
以上のことから、クローン化したホモログは、JT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素(配列番号4)をコードする遺伝子(配列番号3)であることが明らかとなった。
Figure 2008108325
(6)β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移活性の確認
上記(5)のSHIZ145−N1C0/pTrc99Aを導入した大腸菌で発現されたシアル酸転移酵素がβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移活性を有するかどうか調べた。実施例1と同様に、糖受容体としてピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ社製PA−Sugar Chain 026)を用い、酵素反応を行った。その結果、実施例1と同様に、PA−6’−シアリルラクトース(Neu5Acα2−6Galβ1−4Glc−PA)が検出された。これらの結果から、フォトバクテリウム属 JT−SHIZ−145株のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子がクローニングされ、かつ、大腸菌内で発現されたことが証明された。
実施例3:SHIZ145−N1C0クローンが組み込まれた発現ベクターpTrc99Aをもつ大腸菌TB1からのβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の抽出、精製
LBAmp平板培地上で継代培養したSHIZ145−N1C0クローン(配列番号3)が組み込まれた発現ベクターpTrc99Aをもつ大腸菌TB1のコロニーから菌体をループで採取し、30μlの×200アンピシリン(400mg/20ml)を添加した6ml−LB液体培地10mlに接種し、30℃、毎分180回転で8時間振とう培養した。
本培養は、以下の手順で実施した。1.5mlの×200アンピシリン(400mg/20ml)+300μlの1M IPTG(1.192g/5ml)を添加した300ml−LB培地を1000ml容のコブ付フラスコに300ml張り込み、これを9本(合計2.7L)用意した。各々のフラスコに前培養液12mlを接種し、30℃、毎分180回転で24時間振とう培養した。培養液を遠心分離し、菌体を回収した。
この菌体を、990mlの0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis-Tris緩衝液(pH7.0)に懸濁し、1.6g/26mlとし、氷冷下で超音波破砕した。菌体破砕液を4℃、100,000×gで1時間、遠心分離を行い、上清を得た。
この粗酵素液を、0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis-Tris緩衝液(pH7.0)で平衡化したHiLoad 26/10 Q Sepharose HP(Amersham社製)陰イオン交換カラムに吸着させ、0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis-Tris緩衝液(pH7.0)から1M塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ直線濃度勾配法で溶出させた。その結果、塩化ナトリウム濃度が0.25M付近で溶出された酵素活性を有する画分を回収した。
回収した画分を20mMリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈し、予め0.336%トリトンX−100を含む20mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したハイドロキシアパタイト(Bio−Rad製)に吸着させ、0.336%トリトンX−100を含む20mMリン酸緩衝液(pH7.0)から0.336%トリトンX−100を含む500mMリン酸緩衝液(pH7.0)へ直線濃度勾配法で溶出させ。その結果、リン酸緩衝液濃度が125mM付近に溶出された酵素活性を有する画分を回収した。
次に、この酵素活性を示す画分を、予め0.2Mの塩化ナトリウム及び0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis-Tris緩衝液(pH7.0)で平衡化したゲルろ過カラムSuperdex(Amersham社製)に供して、ゲルろ過を行い、シアル酸転移活性を示すタンパク質画分を回収した。
その後に、再度この酵素活性を示す画分を、MonoQ 5/50 GL(Amersham社製)陰イオン交換カラムに吸着させ、0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis-Tris緩衝液(pH7.0)から1M 塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ直線濃度勾配法で溶出させ酵素活性を有する画分を回収した。
酵素活性を示す画分をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(アクリルアミドゲルの濃度は12.5%)した結果、目的酵素は単一のバンドを示し、約50,000の分子量を示した。
粗酵素液からのSHIZ145−N1C0クローンのβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の精製について、上述したそれぞれの精製工程を経た試料の酵素活性を表2に示す。酵素活性は、実施例1に記載したのと同様にJ. Biochem. 120, 104-110(1996)に記載されている方法に準じて、測定した。また、タンパク質の定量はCoomassie Protein Assay Reagent(PIERCE製)を用いて、添付されたマニュアルにしたがってタンパク質の定量を行った。酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシアル酸を転移する酵素量とした。
Figure 2008108325
実施例4:JT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)の酵素活性の至適pH、至適温度
実施例3で調製した精製酵素を用い、JT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)の至適pH、至適温度を調べた。
(1)JT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性の至適pH
酢酸バッファー(pH4−5)、カコジル酸バッファー(pH5−6)、ビス−トリスバッファー(pH6−7)、リン酸バッファー(pH6−9.5)、トリス−塩酸バッファー(pH7−9.5)、TAPSバッファー(pH8−9)、CHESバッファー(pH9−10)、CAPSバッファー(pH10−11)をそれぞれ調製し、これらを用いて、30℃で各pHにおける酵素活性を測定した。
その結果、JT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)は、図2−1に示すように、pH7.0〜9.5の範囲の至適pHを有することが明らかとなった。また、リン酸バッファー中では特に高い活性を示し、pH8.0において、酵素活性が最大であった。なお、各pHにおける酵素活性はリン酸バッファーを用いた場合のpH8.0における酵素活性を1とする相対活性で評価した。
(2)JT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性の至適温度
リン酸バッファー(pH8.0)を用いて、10℃から50℃までの5℃毎の反応温度において、酵素活性を測定した。
その結果、図2−2に示すように、30℃において、酵素活性が最大であった。なお、各温度における酵素活性は30℃における酵素活性を100とする相対活性で評価した。
実施例5:JT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)の糖受容体基質特異性
実施例3で調製したJT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)の精製酵素を用いて、各種の単糖/二糖類を糖受容体基質として、シアル酸転移反応を行った。反応は、J. Biochem., 120, 104-110 (1996)に記載されている方法に従って行った。
糖受容体基質として用いた単糖は、メチル−α−D−ガラクトピラノシド(Gal−α−OMe)、メチル−β−D−ガラクトピラノシド(Gal−β−OMe)、メチル−α−D−グルコピラノシド(Glc−α−OMe)、メチル−β−D−グルコピラノシド(Glc−β−OMe)、メチル−α−D−マンノピラノシド(Man−α−OMe)、メチル−β−D−マンノピラノシド(Man−β−OMe)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の8種類を用いた。二糖類として、ラクト−ス(Gal−β1,4−Glc)、N−アセチルラクトサミン(Gal−β1,4−GlcNAc)及びGal−β1,3−GalNAcの3種類を用いた。
その結果、今回糖受容体基質として用いた11種類の単糖及び二糖の中では、メチル−β−D−ガラクトピラノシド、N−アセチルガラクトサミン、ラクト−ス、N−アセチルラクトサミン及びGal−β1,3−GalNAcにシアル酸が効率よく転移していることが明らかとなった(表3)。なお、各受容体基質に対する相対活性は、ラクトースに対するシアル酸転移活性を100とした場合を示す。
Figure 2008108325
実施例6:JT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)の糖タンパク質に対する受容体基質特異性の比較
糖受容体基質として、アシアロフェツイン、アシアロムチンを用いた。2mgのアシアロフェツインまたはアシアロムチンを1mlの20mM Bis-tris緩衝液(pH7.0)に溶解させて、糖受容体基質溶液とした。糖供与体基質としてCMP−NeuAcを用いた。糖受容体基質溶液40μl、糖供与体基質5μl、酵素溶液5μlを混合して、30℃、0.5時間インキュベートしてシアル酸転移反応を行った。反応終了後、反応溶液を0.1 M塩化ナトリウムで平衡化したセファデックスG−50スーパーファイン(0.8x18.0cm)に供して、ゲルろ過を行った。糖タンパク質が含まれるゲルろ過の溶出液画分(2〜4mlの画分)を集め、この画分の放射活性を液体シンチレーションカウンターを用いて測定することで、糖受容体基質に転移したシアル酸の定量を行った。
その結果、いずれの糖受容体基質にもシアル酸が転移することが明らかとなった。
Figure 2008108325
実施例7:JT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)の酵素活性に対する各種イオンの影響
(1)JT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性に対する錯イオンの効果
硝酸カリウム(KNO3)水溶液、硝酸ナトリウム(NaNO3)水溶液、硫酸カリウム(K2SO4)水溶液、硫酸ナトリウム(Na2SO4)水溶液、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)水溶液、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)水溶液、および、リン酸カリウム(KH2PO4+K2HPO4(KPBと略す))水溶液を調整し、Tris−HClバッファーを用いて、30℃で、反応液中の陰イオン濃度をそれぞれ0.1Mに調整し、酵素活性を測定した。
その結果、図3に示すように、リン酸カリウム(KPB)またはリン酸水素二ナトリウムを添加した場合に酵素活性は最大となった。また、リン酸イオンのみならず、硫酸イオン、硝酸イオンといった錯イオンを含む塩を添加した場合においても、無添加条件と比較して酵素活性が有意に高くなった。なお、各種溶液を添加した反応液における酵素活性は、無添加条件(Tris−HClのみ)における酵素活性を1とする相対活性で評価した。
(2)JT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性に対するNa + およびK + イオンの効果
硝酸カリウム(KNO3)水溶液、硝酸ナトリウム(NaNO3)水溶液、硫酸カリウム(K2SO4)水溶液、硫酸ナトリウム(Na2SO4)水溶液、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)水溶液、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)水溶液、および、リン酸カリウム(KH2PO4+K2HPO4(KPBと略す))水溶液を調整し、Tris−HClバッファーを用いて、30℃で、反応液中の陰イオン濃度をそれぞれ0.1Mに調整し、酵素活性を測定した。
その結果、図3に示すように、リン酸カリウム(KPB)またはリン酸水素二ナトリウムを添加した場合に酵素活性は最大となった。また、他のカリウム/ナトリウム水溶液を添加した場合においても、無添加条件と比較して酵素活性が有意に高くなった。なお、各種溶液を添加した反応液における酵素活性は、無添加条件(Tris−HClのみ)における酵素活性を1とする相対活性で評価した。
(3)JT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性に対するNa + 、K + およびLi + イオンの効果
塩化カリウム(KCl)水溶液、塩化ナトリウム(NaCl)水溶液、塩化リチウム(LiCl)水溶液を調製し、Tris−HClバッファーを用いて、30℃で、反応液中の陽イオン濃度をそれぞれ0.1M、0.2Mまたは0.5Mに調整し、酵素活性を測定した。
その結果、図4に示すように、無添加条件と比較して酵素活性が有意に高くなった。なお、各種溶液を添加した反応液における酵素活性は、無添加条件(Tris−HClのみ)における酵素活性を1とする相対活性で評価した。
(4)JT−SHIZ−145株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性に及ぼすカルシウムイオンの影響
粗酵素液を用いて反応液中に塩化カルシウムおよび/またはEDTAを添加し、カルシウムイオンについては終濃度10mM、EDTAについては終濃度50mMとなるよう調整し、酵素活性を測定した。
その結果、図5に示すように、カルシウムイオン存在下での酵素活性は無添加条件と比較して著しく増加した。なお、反応系にカルシウムイオンと共にキレート剤であるEDTAを添加すると酵素活性はカルシウムイオン無添加条件とほぼ同じ程度を示した。
実施例8:JT−SHIZ−145株以外のフォトバクテリウム・レイオグナシー菌株におけるシアル酸転移酵素活性の確認
フォトバクテリウム・レイオグナシー(Photobacterium leiognathi)基準株であるNCIMB2193(ATCC25521)株、ならびに、フォトバクテリウム・レイオグナシー株NCIMB1511(ATCC25587)株およびNCIMB2134(ATCC33469)株を、それぞれシー・ウォーター・イースト・ペプトン培地(イースト・エクストラクト3.0g/lおよびペプトン5.0g/l)6mlを用いて培養し、前述の実施例2−(5)の方法に従って粗酵素液を調製し、シアル酸転移酵素活性の測定に供試した。その結果、表5に示すように粗酵素液を含まないバッファーのみを含む場合(ネガティブコントロール)および粗酵素液を含む場合の放射活性はいずれも500〜600cpmであった。この結果は、当該技術分野において入手可能な複数のフォトバクテリウム・レイオグナシー株が、シアル酸転移酵素を持たない、または検出限界以下の極めて弱い酵素活性しか持たないことを示すものである。一方、JT−SHIZ−145株は、フォトバクテリウム・レイオグナシー株でありながら高いシアル酸転移酵素活性を有する。
Figure 2008108325
本発明は、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびそれをコードする核酸を提供することにより、生体内において重要な機能を有することが明らかにされている糖鎖の合成・生産手段を提供する。特に、シアル酸は、生体内の複合糖質糖鎖において非還元末端に存在することが多く、糖鎖機能という観点から極めて重要な糖であるため、シアル酸転移酵素は糖転移酵素の中でも最も需要が高い酵素の一つである。本発明の新規なシアル酸転移酵素は、糖鎖を応用した医薬品、機能性食品等の開発に利用することが可能である。

Claims (16)

  1. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する単離されたタンパク質であって:
    (a)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−497、からなる群より選択されるアミノ酸配列;
    (b)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−497、からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1またはそれより多くのアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列;または
    (c)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−497、からなる群より選択されるアミノ酸配列と60%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
    を含んでなる、前記単離されたタンパク質。
  2. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する単離されたタンパク質であって:
    (a)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1494、からなる群より選択される塩基配列;
    (b)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1494、からなる群より選択される塩基配列において、1またはそれより多くのヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列;
    (c)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1494、からなる群より選択される塩基配列と70%以上の同一性を有する塩基配列;または、
    (d)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1494、からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;
    を含んでなる核酸によってコードされる、前記単離されたタンパク質。
  3. フォトバクテリウム属に属する微生物由来である、請求項1または2に記載の単離されたタンパク質。
  4. 反応至適pHが、pH7〜pH9.5の範囲である、請求項1または2に記載の単離されたタンパク質。
  5. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸であって:
    (a)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−497、からなる群より選択されるアミノ酸配列;
    (b)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−497、からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1またはそれより多くのアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列;または
    (c)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−497、からなる群より選択されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列;
    を含んでなるタンパク質をコードする、前記単離された核酸。
  6. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸であって:
    (a)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1494、からなる群より選択される塩基配列;
    (b)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1494、からなる群より選択される塩基配列において、1またはそれより多くのヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列;
    (c)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1494、からなる群より選択される塩基配列と70%以上の同一性を有する塩基配列;または
    (d)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1494、からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;
    を含んでなる、前記単離された核酸。
  7. 請求項5または6に記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
  8. 請求項7に記載の発現ベクターで形質転換した宿主細胞。
  9. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する組換えタンパク質の製造方法であって、以下の工程:
    1)請求項5または6に記載の核酸を含んでなる発現ベクターで宿主細胞を形質転換し;
    2)得られた形質転換細胞を培養し;そして、
    3)培養した形質転換細胞またはその培養上清から、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質を単離する;
    ことを含んでなる、前記製造方法。
  10. シアル酸転移反応における、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の使用であって、リン酸バッファーを含む組成を有する反応液中で使用することを特徴とする、前記使用。
  11. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、当該反応を一価金属イオンの存在下で行うことにより、当該一価金属イオンの非存在下と比較して当該反応の効率を高める方法。
  12. 一価金属イオンが、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンである、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、当該反応を、リン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ホウ酸イオン、塩化物イオン、フッ化物イオンおよびそれらいずれかの組合せ、
    からなる群より選択される陰イオンの存在下で行うことにより、当該陰イオンの非存在下と比較して当該反応の効率を高める方法。
  14. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、当該反応を、一価の金属イオンと、リン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ホウ酸イオン、塩化物イオン、およびフッ化物イオンからなる群より選択される陰イオンとの塩の存在下で行うことにより、当該塩の非存在下と比較して当該反応の効率を高める方法。
  15. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、当該反応をカルシウムイオンの存在下で行うことにより、カルシウムイオンの非存在下と比較して当該反応の効率を高める方法。
  16. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて糖転移反応を行うに際し、当該反応を、カルシウムイオンと、リン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ホウ酸イオン、塩化物イオン、およびフッ化物イオンからなる群より選択される陰イオンとの塩の存在下で行うことにより、当該塩の非存在下と比較して当該反応の効率を高める方法。
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