無線通信機が備える送信用の電力増幅器は、無線通信機の中でも特に電力を消費する。そのため、電力増幅器の電力効率の改善が無線通信機開発の重要な課題となる。近年の無線通信規格ではスペクトル効率を改善するために線形変調方式を用いる構成が主流になりつつある。この線形変調方式では、信号歪に対する要求が厳しいため、電力増幅器を、良好な線形性が得られる高バックオフ(低入力電力)状態で動作させる必要がある。しかしながら、高バックオフ状態で動作させると電力増幅器の電力効率が低下する。そのため、電力増幅器の電力効率を向上させつつ入出力信号間の線形性を維持する技術として、近年、EER(Envelope Elimination and Restoration)が盛んに研究されている。
EER技術は、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)成分及び位相変調(PM:Phase modulation)成分を含む入力信号(変調波信号)を高効率で増幅するために、入力信号のAM成分を除去して残ったPM成分のみを増幅し、増幅後のPM成分を、除去したAM成分で振幅変調することで、入力信号を線形増幅しつつ元の波形を復元する手法である。このEER技術を適用した背景技術の電力増幅器の構成を図1に示す。
図1はEER技術を適用した背景技術の電力増幅器の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、EER技術を適用した背景技術の電力増幅器は、信号発生回路147、RF(Radio Frequency)アンプ109、パルス変調器104、ドライバアンプ116、スイッチングアンプ105、ローパスフィルタ106及びバンドパスフィルタ107を有する構成である。
信号発生回路147は、入力信号に含まれるAM成分を抽出し、振幅成分信号111として端子145を介してパルス変調器104へ出力する。また、信号発生回路147は、入力信号に含まれるPM成分を抽出し、位相成分信号112として端子146を介してRFアンプ109へ出力する。
パルス変調器104は、振幅成分信号111をパルス変調することで矩形波信号を生成し、ドライバアンプ116へ出力する。
ドライバアンプ116は、パルス変調器104から出力された矩形波信号にしたがってスイッチングアンプ105を駆動し、該矩形波信号を効率よく増幅する。増幅後の矩形波信号は、ローパスフィルタ106によって平滑化され、端子142を介してRFアンプ109へ供給される。
RFアンプ109は、トランジスタ101、入力電源回路108及び出力電源回路140を備え、信号発生回路147から出力された位相成分信号112を増幅する。このとき、RFアンプ109の出力信号は、ローパスフィルタ106及び端子142を介してスイッチングアンプ105から供給される平滑後の矩形波信号、すなわち増幅された振幅成分信号114によって振幅変調される。
なお、トランジスタ101のゲートに接続された入力電源回路108には、通常、端子141を介して不図示の電源装置から一定の直流電圧が供給される。
RFアンプ109によって増幅された信号(出力信号115)は、バンドパスフィルタ107によって不要な帯域成分が除去され、端子144を介して不図示のアンテナ素子等へ供給される。
図2は図1に示した信号発生回路の一構成例を示すブロック図であり、図3は図1に示した信号発生回路の他の構成例を示すブロック図である。図2に示す信号発生回路147は電力増幅器の入力端子143にRF信号が入力される場合に用いて最適な構成であり、図3に示す信号発生回路147は電力増幅器の入力端子143にベースバンド信号が入力される場合に用いて最適な構成である。
図2に示す信号発生回路147は、入力信号であるRF信号からAM成分を抽出し、振幅成分信号111として出力する振幅検出器103と、入力信号のAM成分を除去するリミッタ102とを有する構成である。振幅検出器103は、端子143から入力された入力信号(RF信号)のAM成分を抽出し、振幅成分信号111として端子145から出力する。リミッタ102は、端子143から入力された入力信号(RF信号)のAM成分を除去し、残ったPM成分である位相成分信号112を端子146から出力する。また、図2に示す信号発生回路147は、遅延補正器153を備え、該遅延補正器153により振幅成分信号111と位相成分信号112の遅延時間差が調整可能である。
図3に示す信号発生回路147は、ベースバンド信号処理回路150とVCO151とを備えている。ベースバンド信号処理回路150は、DSP(Digital Signal Processor)及びD/A(デジタル−アナログ)変換器を備えていることが望ましい。ベースバンド信号処理回路150は入力信号であるベースバンド信号のAM成分である振幅成分信号111を端子145へ出力し、かつベースバンド信号のPM成分である位相成分信号をVCO151へ出力する。ベースバンド信号処理回路150は、端子143から入力されたベースバンド信号のAM成分をDSPによりデジタル処理にて演算・抽出し、D/A変換器でアナログ信号に変換した後、端子145から振幅成分信号111として出力する。また、ベースバンド信号処理回路150は、端子143から入力されたベースバンド信号のPM成分をDSPによりデジタル処理にて演算・抽出し、D/A変換器でアナログ信号に変換した後、端子145から位相成分信号として出力し、同位相成分信号でVCO151を制御する。
VCO151は、ベースバンド信号処理回路150からの位相成分信号によって制御され、RF信号にアップコンバートされた位相成分信号を出力する。
図1に示した電力増幅器では、信号発生回路147から十分に大きな電力で位相成分信号112を出力することで、RFアンプ109のトランジスタ101を常に飽和動作させる。さらに、RFアンプ109が備えるトランジスタ101のドレインに、端子142及び出力電源回路140を介して振幅成分信号114を供給することで、トランジスタ101によって増幅された位相成分信号112を振幅成分信号114により振幅変調する。そのため、入力信号を高い電力効率で増幅しつつ、入出力信号間の線形性を維持できる。
一方、電力増幅器の電力効率の向上と線形性を維持するための他の技術として、ET(Envelope Tracking)技術が知られている。
ET技術は、AM成分及びPM成分を含む入力信号を増幅すると共に、入力信号のAM成分を抽出し、増幅後の信号を抽出したAM成分で振幅変調することで、入出力信号間の線形性を保ちつつ電力効率を向上させる手法である。このET技術を適用した背景技術の電力増幅器の構成を図4に示す。
図4はET技術を適用した背景技術の電力増幅器の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、ET技術を適用した背景技術の電力増幅器は、信号発生回路148の構成及び動作が、図1に示したEER技術を適用した電力増幅器と異なっている。その他の構成及び動作は図1に示したEER技術を適用した電力増幅器と同様であるため、ここではその説明を省略する。なお、図4では、信号発生回路148を除く他の構成要素に対して、図1に示した電力増幅器と同様の符号を付与している。
信号発生回路148は、入力信号に含まれるAM成分を抽出し、振幅成分信号111として端子145を介してパルス変調器104へ出力する。また、信号発生回路148は、AM成分及びPM成分を含む入力信号の振幅に比例する変調波信号149を、端子146を介してRFアンプ109へ出力する。
図5は図4に示した信号発生回路の一構成例を示すブロック図であり、図6は図4に示した信号発生回路の他の構成例を示すブロック図である。図5に示す信号発生回路148は電力増幅器の入力端子143にRF信号が入力される場合に用いて最適な構成であり、図6に示す信号発生回路は電力増幅器の入力端子143にベースバンド信号が入力される場合に用いて最適な構成である。
図5に示す信号発生回路148は、入力信号であるRF信号からAM成分を抽出し、振幅成分信号111として出力する振幅検出器103を備えた構成である。振幅検出器103は、端子143から入力された入力信号(RF信号)のAM成分を抽出し、振幅成分信号111として端子145から出力する。端子143から入力された入力信号は、振幅検出器103へ供給されると共に、そのまま端子146から変調波信号149として出力される。また、図5に示す信号発生回路148は、遅延補正器153を備え、該遅延補正器153により振幅成分信号111と変調波信号149の遅延時間差が調整可能である。
図6に示す信号発生回路148は、ベースバンド信号処理回路150と直交変調器152とを備えている。ベースバンド信号処理回路150は、端子143から入力されたベースバンド信号のAM成分をDSPによりデジタル処理にて演算・抽出し、D/A変換器でアナログ信号に変換した後、端子145から振幅成分信号111として出力する。また、ベースバンド信号処理回路150は、入力ベースバンド信号をD/A変換器でアナログ信号に変換した後、直交変調器152へ出力する。
直交変調器152は、ベースバンド信号処理回路150から出力されたベースバンド信号をRF周波数にアップコンバートし、変調波信号149として端子146から出力する。
図4に示した電力増幅器では、信号発生回路148から十分に大きな電力で変調波信号149を出力し、RFアンプ109のトランジスタ101を常に飽和動作させることで、図2に示したリミッタ102の機能をRFアンプ109に持たせている。すなわち、EER技術では入力信号のPM成分をRFアンプ109へ入力し、ET技術ではAM成分及びPM成分を含む変調波信号149をRFアンプ109に入力する点を除けば、これらの技術を適用した電力増幅器は共通の原理で動作する。そのため、ET技術を適用した電力増幅器も入力信号を高い電力効率で増幅しつつ、入出力信号間の線形性を維持できる。
上述した図1または図4に示した電力増幅器をW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)通信方式のように数MHzの帯域幅を持つRF信号の電力増幅に用いる場合、ドライバアンプ116及びスイッチングアンプ105を数十〜数百MHzでスイッチング動作させる必要がある。また、無線基地局が備える電力増幅器に上記EER技術やET技術を適用する場合、スイッチングアンプ105から数十Vの高電圧を出力する必要がある。しかしながら、現在のデバイス・回路技術では、数十Vの高電圧で動作するドライバアンプ116及びスイッチングアンプ105のスイッチング速度は数百kHz程度が限界である。このようなドライバアンプ116及びスイッチングアンプ105の動作限界を回避するための手法が、例えば特開2005−244950号公報で提案されている。
図7はEER技術を適用した背景技術の電力増幅器の他の構成例を示すブロック図である。なお、図7に示す電力増幅器は上記特開2005−244950号公報の図24に記載された構成である。
図7に示すデータ生成部301は送信信号の振幅成分信号及び位相成分信号を出力する。位相成分信号は、角度変調部303によりRF信号に重畳されて振幅変調部305へ出力される。振幅成分信号は、周波数弁別部302によって低周波振幅成分信号と高周波振幅成分信号とに分解される。振幅変調部305は高周波電圧制御部304で生成される高周波振幅成分信号を用いて位相成分信号を振幅変調し、振幅変調部307は低周波電圧制御部306で生成される低周波振幅成分信号を用いて位相成分信号を振幅変調する。このような構成では、高周波電圧制御部304の動作周波数は高くなるが出力電力が比較的小さくて済む。一方、低周波電圧制御部306の出力電力は大きくなるが動作周波数が比較的低くて済む。したがって、図7に示す高周波電圧制御部304及び低周波電圧制御部306は、高電圧出力と高速なスイッチング動作を両立する必要はなく、現在のデバイス・回路技術でも実現できる。
しかしながら上記したような背景技術の電力増幅器では、図1及び図4に示したRFアンプ109が備える出力電源回路140へ供給する電圧(電源電圧)が下がると、RFアンプ109の電力効率が低下する問題がある。図8は、図1に示したRFアンプ109に一定の電源電圧を供給する場合(通常動作時)の電力効率特性、及び図1に示したRFアンプ109をEER動作させる場合の電力効率特性を示している。
図8に示すように、RFアンプ109は、EER動作させることで通常動作時よりも電力効率が改善する。しかしながら、EER動作時においても、出力電力が小さいときには電力効率が低下している。このような小出力電力時におけるRFアンプ109の電力効率の低下は、電力増幅回路全体の平均電力効率を低下させる要因となる。
また、背景技術の電力増幅器では、図1及び図4に示したスイッチングアンプ105の出力電圧(平均電圧)が下がると、スイッチングアンプ105の電力効率が低下する問題がある。スイッチングアンプ105の電力効率が低下すると、上記RFアンプ109の電力効率の低下と同様に、電力増幅回路全体の平均電力効率を低下させる要因となる。
すなわち、入力信号の振幅成分のダイナミックレンジが大きく、電力増幅器の出力電力が小さくなることがある場合、背景技術のEER技術及びET技術を適用した電力増幅器では、RFアンプ及びスイッチングアンプの電力効率が低下して電力効率が十分に改善されない問題が発生する。
さらに、背景技術の電力増幅器では、上述したように図1及び図4に示した電力増幅器を広い帯域幅を持つRF信号の電力増幅に用いる場合、ドライバアンプ116及びスイッチングアンプ105に対して、今日のデバイス技術では実現困難な、高電圧出力と高速なスイッチング動作の両立が要求される。そのため、図1及び図4に示した電力増幅器の利用範囲が制限されてしまう問題がある。
図7に示した電力増幅器は、ドライバアンプ116及びスイッチングアンプ105に対する、高電圧出力と高速なスイッチング動作の両立を不要にしている。しかしながら、このような構成では、出力信号として、入力信号を精度よく復元した信号を得ることができないという問題がある。
図7に示す構成では、例えば振幅変調部307が飽和動作している場合、振幅変調部307の出力振幅は振幅変調部305の出力振幅にほとんど依存しない。そのため、振幅変調部307の出力信号には、高周波電圧制御部304で生成された高周波振幅成分信号の振幅が反映されない。逆に、振幅変調部307が線形動作している場合、振幅変調部307の出力振幅は、低周波電圧変調部306で生成された低周波振幅成分信号によってほとんど変化しない。そのため、振幅変調部307の出力信号には、低周波電圧制御部306で生成された低周波振幅成分信号の振幅が反映されない。したがって、図7に示した電力増幅器では、高周波電圧制御部304または低周波電圧制御部306で生成された振幅成分信号のいずれか一方しか出力信号に反映されないため、出力信号として、入力信号を精度よく復元した信号を得ることが困難である。
次に本発明について図面を参照して説明する。
図9は本発明の電力増幅器の一構成例を示すブロック図である。
図9に示すように、本発明の電力増幅器は、分解回路1、ミキシング回路2、増幅回路3及びRFアンプ4を有する構成である。
分解回路1は、入力信号に含まれるAM成分を、積の値がAM成分と比例する2つの制御信号に分解する。
ミキシング回路2は、上述したEER技術を適用する場合、分解回路1によって分解された一方の制御信号と入力信号に含まれるPM成分とをミキシングする。また、ミキシング回路2は、上述したET技術を適用する場合、分解回路1によって分解された一方の制御信号と入力信号(変調波信号)とをミキシングする。
増幅回路3は、分解回路1によって分解された他方の制御信号を増幅し、RFアンプ4に出力する。
RFアンプ3は、ミキシング回路2から出力された信号を増幅すると共に、該増幅後の信号を増幅回路3の出力信号で振幅変調して出力する。
以下、図9に示した電力増幅器が備える分解回路1、ミキシング回路2、増幅回路3及びRFアンプ4の具体例について、第1の実施の形態〜第4の実施の形態を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図10は第1の実施の形態の電力増幅器の構成を示すブロック図である。図11は図10に示した電力増幅器の要部の信号波形を示す波形図であり、図12は図11に示した信号の周波数特性を示すグラフである。なお、図10は上述したEER技術を適用した電力増幅器の構成例を示している。
図10に示すように、第1の実施の形態の電力増幅器は、信号発生回路447、RF(Radio Frequency)アンプ409、第1のパルス変調器420、第1のドライバアンプ421、第2のパルス変調器404、第2のドライバアンプ416、スイッチングアンプ405、ローパスフィルタ406、ミキサ423及びバンドパスフィルタ407を有する構成である。
図9に示した分解回路1は図10に示す信号発生回路447に含まれ(後述する信号分離部あるいは信号生成部)、図9に示したミキシング回路2は図10に示すミキサ423が対応し、図9に示したRFアンプ4は図10に示すRFアンプ409が対応している。また、図9に示した増幅回路3は、図10に示す第2のパルス変調器404、第2のドライバアンプ416、スイッチングアンプ405及びローパスフィルタ406で構成される。
信号発生回路447は、入力信号に含まれるAM成分を抽出し、該AM成分から生成した第1の制御信号418を、端子453を介して第1のパルス変調器420へ出力し、該AM成分から生成した第2の制御信号419を、端子445を介して第2のパルス変調器404へ出力する。本実施形態では、入力信号のAM成分をa(t)としたとき、AM成分a(t)よりもダイナミックレンジが小さくa(t)∝a1(t)a2(t)の関係を満たす振幅成分a1(t)を第1の制御信号418として第1のパルス変調器420へ出力し、振幅成分a2(t)を第2の制御信号419として第2のパルス変調器404へ出力する。また、信号発生回路447は、入力信号に含まれるPM成分を抽出し、位相成分信号412として端子446を介してRFアンプ409へ出力する。なお、信号発生回路447は、第1の制御信号418と位相成分信号412間、及び第2の制御信号419と位相成分信号412間の遅延時間差を調整する機能を備えていることが望ましい。
第1のパルス変調器420は、第1の制御信号418をパルス変調することで振幅が一定の矩形波信号を生成し、第1のドライバアンプ421へ出力する。第1のパルス変調器420には、PWM(Pulse width modulation)変調器、Δ変調器、ΔΣ変調器等を用いることができる。第1のパルス変調器420は、信号発生回路447から出力された第1の制御信号418を、振幅が一定の矩形波信号に変換できればどのような回路を用いてもよい。
第1のドライバアンプ421は、第1のパルス変調器420から出力された矩形波信号を増幅し、ミキサ423へ供給する。なお、第1のパルス変調器420がミキサ423を駆動するのに十分な強度の信号を出力できる構成であれば、第1のドライバアンプ421は無くてもよい。
第2のパルス変調器404は、第2の制御信号419をパルス変調することで矩形波信号を生成し、第2のドライバアンプ416へ出力する。第2のパルス変調器404には、第1のパルス変調器420と同様に、PWM(Pulse width modulation)変調器、Δ変調器、ΔΣ変調器等を用いることができる。
第2のドライバアンプ416は、第2のパルス変調器404から出力された矩形波信号にしたがってスイッチングアンプ405を駆動し、スイッチングアンプ405は該矩形波信号を効率よく電流増幅する。増幅後の矩形波信号は、ローパスフィルタ406によって平滑化され、端子442を介してRFアンプ409へ供給される。スイッチングアンプ405には、矩形波信号を高い電力効率で増幅できる増幅器、例えばD級アンプ、E級アンプ、S級アンプ等を用いればよい。なお、第2のパルス変調器404がスイッチングアンプ405を駆動するのに十分な強度の信号を出力できる構成であれば、第2のドライバアンプ416は無くてもよい。
ミキサ423は、信号発生回路447から出力された位相成分信号412と第1のドライバアンプ421から出力された矩形波信号をミキシングし、RFアンプ409へ出力する。
RFアンプ409は、トランジスタ401、入力電源回路408及び出力電源回路440を備え、ミキサ423の出力信号426を増幅する。このとき、RFアンプ409の出力信号は、ローパスフィルタ406及び端子442を介してスイッチングアンプ405から供給される平滑後の矩形波信号、すなわち増幅された振幅成分信号414によって振幅変調される。トランジスタ401のゲートに接続された入力電源回路408には、背景技術と同様に、端子441を介して不図示の電源装置から一定の直流電圧が供給される。なお、トランジスタ401には、電界効果トランジスタ及びバイポーラトランジスタのいずれを用いてもよい。
RFアンプ409によって増幅された信号(出力信号415)は、バンドパスフィルタ407によって不要な帯域成分が除去され、端子444を介して不図示のアンテナ素子等へ供給される。
図13は図10に示した信号発生回路の一構成例を示すブロック図であり、図14は図10に示した信号発生回路の他の構成例を示すブロック図である。図13に示す信号発生回路447は図10に示した電力増幅器にRF信号が入力される場合に用いて最適な構成であり、図14に示す信号発生回路447は図10に示した電力増幅器にベースバンド信号が入力される場合に用いて最適な構成である。
図13に示す信号発生回路447は、入力信号であるRF信号からAM成分を抽出する振幅検出器403と、入力信号のAM成分を除去するリミッタ402と、振幅検出器403によって抽出された入力信号のAM成分を分解する信号分離部417aとを有する構成である。また、図13に示す信号発生回路447は、遅延補正器454を備え、該遅延補正器454により振幅検出器403で抽出される入力信号のAM成分とリミッタ402で抽出されるPM成分の遅延時間差を調整可能である。
振幅検出器403は、端子443から入力された入力信号(RF信号)のAM成分を抽出し、信号分離部417aへ出力する。信号分離部417aは、入力信号のAM成分a(t)を上記a(t)∝a1(t)a2(t)の関係を満たす振幅成分a1(t)とa2(t)に分解し、振幅成分a1(t)を持つ第1の制御信号418を端子453へ出力し、振幅成分a2(t)を持つ第2の制御信号419を端子445へ出力する。リミッタ402は、端子443から入力された入力信号(RF信号)のAM成分を除去し、残ったPM成分である位相成分信号412を端子446から出力する。
信号分離部417aは、論理回路、A/D(アナログ−デジタル)変換器やD/A変換器を備えたデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、あるいはアナログ回路で構成された演算回路等によって実現できる。
図14に示す信号発生回路447は、ベースバンド信号処理回路450とVCO451とを備えている。ベースバンド信号処理回路450は、DSP及びD/A変換器を備えていることが望ましい。ベースバンド信号処理回路450は、端子443から入力されたベースバンド信号のAM成分a(t)に対し、上記a(t)∝a1(t)a2(t)の関係を満たす振幅成分a1(t)とa2(t)をそれぞれDSPによりデジタル処理にて演算・抽出し、D/A変換器でアナログ信号に変換した後、振幅成分a1(t)を第1の制御信号418として端子453へ出力し、振幅成分a2(t)を第2の制御信号419として端子445へ出力する。また、ベースバンド信号処理回路450は、端子443から入力されたベースバンド信号のPM成分をDSPによりデジタル処理にて演算・抽出し、該PM成分をD/A変換器でアナログ信号に変換した後、端子145から位相成分信号として出力する。さらに、ベースバンド信号処理回路450は、ベースバンド信号のAM成分とPM成分の遅延時間差を計算して補正する機能をDSPにより実現することが望ましい。
VCO451は、ベースバンド信号処理回路450の出力信号によって制御され、RF信号にアップコンバートされた位相成分信号を出力する。
なお、図10では、信号発生回路447にD/A変換器を備え、第1の制御信号418及び第2の制御信号419をアナログ信号として出力する例を示しているが、信号発生回路447が図13に示したDSPで構成された信号分離部417aを備える構成、または図14に示したベースバンド信号処理回路450を備える構成の場合、第1の制御信号418及び第2の制御信号419をデジタル信号で出力してもよい。その場合、第1のパルス変調器420及び第2のパルス変調器404にD/A変換器を備えていてもよい。また、信号発生回路447が備えるベースバンド信号処理回路450や信号分離部417aに、第1のパルス変調器420及び第2のパルス変調器404の機能を備えていてもよい。その場合、第1のパルス変調器420及び第2のパルス変調器404を無くすことも可能である。
また、図10に示した第1の実施の形態の電力増幅器では、ミキサ423を用いて位相成分信号412に第1の制御信号418を重畳させる例を示しているが、このような機能は図15に示すRFアンプ478でも実現できる。図15に示す電力増幅器は、図9に示した電力増幅器のRFアンプ4にミキシング回路2を含む構成である。
図15に示すRFアンプ478は、図10に示したRFアンプ409と同様の構成であり、トランジスタ471、入力電源回路472及び出力電源回路473を備えている。
ミキサ423に代わって図15に示すRFアンプ478を用いる場合、位相成分信号412を図15に示す端子476から入力し、第1のドライバアンプ421から出力された矩形波信号を図15に示す入力電源端子474または出力電源端子475へ入力すればよい。この場合、端子477から位相成分信号412と矩形波信号をミキシングした信号が得られる。
図10に示すRFアンプ409は、飽和動作時に高い電力効率が得られるため、RFアンプ409への入力信号はRFアンプ409が飽和動作する程度に高い電力であることが望ましい。但し、RFアンプ409を飽和動作させると、RFアンプ409の入力信号の振幅成分がRFアンプ409の出力信号に反映されない。そこで、第1の制御信号418を振幅が一定の矩形波信号422に変換し、ミキサ423を用いて位相成分信号412に重畳させた後、RFアンプ409に入力する。このように処理することで、第1の制御信号418の振幅成分をRFアンプ409の出力信号に反映させることができる。
さらに、本実施形態の電力増幅器では、図1に示した背景技術の電力増幅器と同様に、RFアンプ409が備えるトランジスタ401のドレインに、端子442及び出力電源回路440を介して振幅成分信号414を供給することで、トランジスタ401によって増幅された信号を振幅成分信号414により振幅変調する。図11に示すように、この振幅変調により、RFアンプ409からは、位相成分信号412と矩形波信号422とを乗算し、さらに、その乗算結果にローパスフィルタ406の出力信号(出力電源変調信号)414を乗算した信号425が出力される。
図12に示すように、RFアンプ409から出力される信号425は、増幅・再生されたベースバンド信号成分428を中心周波数fcとし、その両側波帯に矩形波信号422に起因するスプリアス成分429a及び429bを持つ周波数特性となる。
このRFアンプ409から出力される信号425を、ベースバンド信号の周波数帯域428よりも広く、かつ矩形波信号422に起因するスプリアス成分429a及び429bを除去できる周波数帯域を持つバンドパスフィルタ407を通過させることで、RFアンプ409から出力される信号425に重畳している不要なスプリアス成分429a及び429bが除去され、入力信号を線形増幅した所望のRF信号415が得られる。
上述したように、第1の実施の形態の電力増幅器では、第1の制御信号418及び第2の制御信号419のダイナミックレンジを、元になる入力信号のAM成分a(t)よりも小さくしている。したがって、スイッチングアンプ405の平均出力電圧及びRFアンプ409の出力電圧の低下が抑制され、RFアンプ409及びスイッチングアンプ405の電力効率の低下を抑制できる。
また、第1の制御信号418を振幅が一定の矩形波信号に変換してRFアンプ409に入力しているため、RFアンプ409が飽和動作していても第1の制御信号418の情報は消えることなくRFアンプ409の出力信号に正しく反映される。
このため、振幅成分信号の一部が反映されずに正しく信号が再生できない図7に示した背景技術の電力増幅器に比べて、本実施形態の電力増幅器では、出力信号として、その入力信号の波形がより高い精度で復元された信号が得られる。
例えば100kHzの正弦波で振幅変調したRF信号(中心周波数1.95GHz)を入力信号とし、第1の制御信号(a1(t))418及び第2の制御信号(a2(t))419をa1(t)=a2(t)∝sqrt(a(t))の関係とした場合の本実施形態の電力増幅器の要部の信号波形を図16及び図17に示す。
図16は入力信号のAM成分a(t)及び第1の制御信号418及び第2の制御信号419の波形をそれぞれ示す波形図である。
図16に示すように、本実施形態の電力増幅器では、第1の制御信号(a1(t))418及び第2の制御信号(a2(t))419が、入力信号のAM成分a(t)よりもダイナミックレンジが小さくなっている。具体的には、入力信号の振幅成分の最大/最小比は3.0であるのに対し、第1の制御信号(a1(t))418及び第2の制御信号(a2(t))419の最大/最小比は1.7に縮小している。これによりスイッチングアンプ405の平均出力電圧及びRFアンプ409の出力電圧の低下が抑制され、RFアンプ409及びスイッチングアンプ405の電力効率の低下が抑制される。
また、a1(t)=a2(t)∝sqrt(a(t))を満たすとき、第1の制御信号418及び第2の制御信号419はa(t)∝a1(t)a2(t)の関係を満たす。なお、sqrt(a(t))は、a(t)の冪根(例えば、平方根)を示す。したがって、図10に示した電力増幅器は、第1の制御信号418及び第2の制御信号419から元のAM成分a(t)を精度よく復元することができる。
図17は図10に示した電力増幅器の入出力信号(RF)のAM波形を示す波形図である。
図17に示すように、本実施形態の電力増幅器では、入力信号を所定の定数倍にして出力信号とスケーリングを一致させた場合、それぞれの波形がほぼ一致し、入力信号が線形増幅されていることが分かる。
なお、第1の制御信号(a1(t))418及び第2の制御信号(a2(t))419は、a1(t)=a2(t)∝sqrt(a(t))の関係に限定されるものではなく、例えばa1(t)∝[a(t)]n1、a2(t)∝[a(t)]n2(n1+n2=1)の関係にあってもよい。この場合、AM成分a(t)よりも振幅成分a1(t)及びa2(t)のダイナミックレンジが小さいという条件を満たすために、n1、n2<1であることが望ましい。
また、第1の制御信号(a1(t))418及び第2の制御信号(a2(t))419は、図18に示すように設定することもできる。
例えば、AM成分a(t)に対して予め所定のしきい値arefを設定し、a(t)が該しきい値arefよりも小さい場合、第1の制御信号418をa(t)と比例する値とし、第2の制御信号419を一定値aref2としてよい。また、a(t)がしきい値aref以上の場合、第1の制御信号418を一定値aref1とし、第2の制御信号419をa(t)と比例する値としてもよい。
すなわち、第1の制御信号418は、a(t)がしきい値aref以上のときは一定値とし、a(t)がしきい値arefよりも小さいときはa(t)と比例する値に設定する。この場合、第2の制御信号419は、a(t)がしきい値aref以上のときはa(t)と比例する値とし、a(t)がしきい値arefよりも小さいときは一定値に設定する。
このように第1の制御信号418及び第2の制御信号419を設定した場合も、これらの信号は、元のAM成分a(t)に対してダイナミックレンジが小さくなるため、スイッチングアンプ405の出力電圧及びRFアンプ409の出力電圧の低下が抑制され、RFアンプ409及びスイッチングアンプ405の電力効率の低下が抑制される。また、第1の制御信号418(a1(t))及び第2の制御信号419(a2(t))がa(t)∝a1(t)a2(t)の関係を満たしているため、入力信号の線形増幅が実現される。同様の動作は、上記a1(t)とa2(t)の関係を入れ替えても実現できる。
なお、第1の制御信号418及び第2の制御信号419の設定方法については、上記例に限定されるものではなく、第1の制御信号418及び第2の制御信号419のうち、少なくとも一方が元のAM成分a(t)よりもダイナミックレンジが小さければ(但し、a(t)∝a1(t)a2(t))、どのような値であってもよい。
図19は第1の実施の形態の電力増幅器の第1変形例を示すブロック図である。図20は図19に示した電力増幅器の要部の信号波形を示す波形図であり、図21は図19に示した信号の周波数特性を示すグラフである。なお、図19はEER技術を適用した電力増幅器の構成例を示している。
図19に示す電力増幅器は、図10に示した構成からミキサ423を除去し、信号発生回路447から出力される位相成分信号412をRFアンプ409へ入力し、かつ第1のドライバアンプ421から出力される矩形波信号422をRFアンプ409に入力する構成である。矩形波信号422は、端子441及び入力電源回路408を介してトランジスタ401のゲートに印加される。
図19に示す電力増幅器では、矩形波信号422によりトランジスタ401をon/offすることで、図10に示した電力増幅器と同様に、位相成分信号412に対して矩形波信号422を重畳する。
このような構成でも、図20に示すように、RFアンプ409からは、位相成分信号412と矩形波信号422とを乗算し、さらに、その乗算結果にローパスフィルタ406の出力信号(出力電源変調信号)414を乗算した信号425が出力される。
図21に示すように、RFアンプ409から出力される信号425は、増幅・再生されたベースバンド信号成分428を中心周波数fcとし、その両側波帯に矩形波信号422に起因するスプリアス成分429a及び429bを持つ周波数特性となる。
図19に示した電力増幅器でも、図10に示した電力増幅器と同様に、信号発生回路447から、AM成分a(t)よりもダイナミックレンジが小さく、a(t)∝a1(t)a2(t)の関係を満たす第1の制御信号418(a1(t))及び第2の制御信号419(a2(t))を出力することで、スイッチングアンプ405の出力電圧及びRFアンプ409の出力電圧の低下が抑制され、RFアンプ409及びスイッチングアンプ405の電力効率の低下が抑制される。また、図7に示した背景技術の電力増幅器に比べて、出力信号に、その入力信号の波形がより高い精度で復元される。さらに、図19で示した電力増幅器は、ミキサ423が不要であるため、図10に示した電力増幅器に比べて部品点数が低減し、消費電力及び製造コストが低減する。
図22は第1の実施の形態の電力増幅器の第2変形例を示すブロック図である。図22は上述したET技術を適用した電力増幅器の構成例を示している。
ET技術を適用した電力増幅器は、図22に示す信号発生回路447の構成及び動作が、図10に示したEER技術を適用した電力増幅器と異なっている。その他の構成及び動作は図10に示したEER技術を適用した電力増幅器と同様であるため、ここではその説明を省略する。なお、図22では、電力増幅器を構成する各構成要素に対して、図10に示した電力増幅器と同様の符号を付与している。
図22に示す信号発生回路447は、図10に示した電力増幅器と同様に、入力信号に含まれるAM成分を抽出し、該AM成分から生成した第1の制御信号418を、端子453を介して第1のパルス変調器420へ出力し、該AM成分から生成した第2の制御信号419を、端子445を介して第2のパルス変調器404へ出力する。ここで、入力信号の振幅成分をa(t)としたとき、AM成分a(t)よりもダイナミックレンジが小さくa(t)∝a1(t)a2(t)の関係を満たす振幅成分a2(t)を第1の制御信号418として第1のパルス変調器420へ出力し、振幅成分a2(t)を第2の制御信号419として第2のパルス変調器404へ出力する。また、図22に示す信号発生回路447は、AM成分及びPM成分を含む入力信号の振幅に比例する変調波信号410を、端子446を介してミキサ423へ出力する。信号発生回路447は、第1の制御信号418と位相成分信号412間、及び第2の制御信号419と位相成分信号412間の遅延時間差を調整する機能を備えていることが望ましい。
図23は図22に示した信号発生回路の一構成例を示すブロック図であり、図24は図22に示した信号発生回路の他の構成例を示すブロック図である。図23に示す信号発生回路447は電力増幅器の入力端子443にRF信号が入力される場合に用いて最適な構成であり、図24に示す信号発生回路は電力増幅器の入力端子443にベースバンド信号が入力される場合に用いて最適な構成である。
図23に示す信号発生回路447は、入力信号であるRF信号からAM成分を抽出する振幅検出器403と、振幅検出器403によって抽出された入力信号のAM成分を分解する信号分離部417aとを有する構成である。端子443から入力された入力信号は、振幅検出器403へ供給されると共に、そのまま端子446から変調波信号410として出力される。
振幅検出器403は、端子443から入力された入力信号(RF信号)のAM成分を抽出し、信号分離部417aへ出力する。信号分離部417aは、入力信号のAM成分a(t)を上記a(t)∝a1(t)a2(t)の関係を満たす振幅成分a1(t)とa2(t)に分解し、振幅成分a1(t)を持つ第1の制御信号418を端子453へ出力し、振幅成分a2(t)を持つ第2の制御信号419を端子445へ出力する。
信号分離部417aは、論理回路、A/D(アナログ−デジタル)変換器やD/A変換器を備えたデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、あるいはアナログ回路で構成された演算回路等によって実現できる。
図23に示す信号発生回路447は、遅延補正器454を備え、該遅延補正器454により振幅検出器403で抽出される入力信号のAM成分と端子446へ出力される変調波信号410の遅延時間差を調整可能である。
図24に示す信号発生回路447は、ベースバンド信号処理回路450と直交変調器452とを備えている。ベースバンド信号処理回路450は端子443から入力されたベースバンド信号のAM成分a(t)に対し、上記a(t)∝a1(t)a2(t)の関係を満たす振幅成分a1(t)とa2(t)をそれぞれDSPによりデジタル処理にて演算・抽出し、D/A変換器でアナログ信号に変換した後、振幅成分a1(t)を第1の制御信号418として端子453へ出力し、振幅成分a2(t)を第2の制御信号419として端子445へ出力する。また、ベースバンド信号処理回路450は、端子443から入力されたベースバンド信号をD/A変換器でアナログ信号に変換した後、該信号を直交変調器452へ出力する。さらに、ベースバンド信号処理回路450は、制御信号418及び419と直交変調器452へ出力されるベースバンド信号の遅延時間差を計算して補正する機能をDSPにより実現することが望ましい。
直交変調器452は、ベースバンド信号処理回路450から出力されたベースバンド信号をRF周波数にアップコンバートし、変調波信号410として端子445から出力する。
なお、図22では、信号発生回路447にD/A変換器を備え、第1の制御信号418及び第2の制御信号419をアナログ信号として出力する例を示しているが、信号発生回路447が図23に示したDSPで構成された信号分離部417aを備える構成、または図24に示したベースバンド信号処理回路450を備える構成の場合、第1の制御信号418及び第2の制御信号419をデジタル信号で出力してもよい。その場合、第1のパルス変調器420及び第2のパルス変調器404にD/A変換器を備えていてもよい。また、信号発生回路447が備えるベースバンド信号処理回路450や信号分離部417aに、第1のパルス変調器420及び第2のパルス変調器404の機能を備えていてもよい。その場合、第1のパルス変調器420及び第2のパルス変調器404を無くすことも可能である。
図22に示す構成でも、図10に示した電力増幅器と同様に、信号発生回路447は、入力信号のAM成分a(t)よりもダイナミックレンジが小さい(但し、a(t)∝a1(t)a2(t))の関係を満たす)第1の制御信号418(a1(t))を第1のパルス変調器420へ出力し、第2の制御信号419(a2(t))を第2のパルス変調器404へ出力する。したがって、スイッチングアンプ405の平均出力電圧及びRFアンプ409の出力電圧の低下が抑制され、RFアンプ409及びスイッチングアンプ405の電力効率の低下を抑制できる。
また、第1の制御信号418を振幅が一定の矩形波信号に変換してRFアンプ409に入力しているため、RFアンプ409が飽和動作していても第1の制御信号418の情報は消えることなくRFアンプ409の出力信号に正しく反映される。
このため、振幅成分信号の一部が反映されずに正しく信号が再生できない図7に示した背景技術の電力増幅器に比べて、本実施形態の電力増幅器では、出力信号に、その入力信号の波形がより高い精度で復元される。
図25は第1の実施の形態の電力増幅器の第3変形例を示すブロック図である。図25は上述したET技術を適用した電力増幅器の構成例を示している。
図25に示す電力増幅器は、図22に示した構成からミキサ423を除去し、信号発生回路447から出力される変調波信号410をRFアンプ409へ入力し、かつ第1のドライバアンプ421から出力される矩形波信号422をRFアンプ409に入力する構成である。矩形波信号422は、端子441及び入力電源回路408を介してトランジスタ401のゲートに印加される。
図25に示す電力増幅器は、矩形波信号422によりトランジスタ401をon/offすることで、図22に示した電力増幅器と同様に、変調波信号410に対して矩形波信号422を重畳する。
このような構成でも、図22に示した電力増幅器と同様に、信号発生回路447から、AM成分a(t)よりもダイナミックレンジが小さく、a(t)∝a1(t)a2(t)の関係を満たす第1の制御信号418(a1(t))及び第2の制御信号419(a2(t))を出力することで、スイッチングアンプ405の出力電圧及びRFアンプ409の出力電圧の低下が抑制され、RFアンプ409及びスイッチングアンプ405の電力効率の低下が抑制される。また、図7に示した背景技術の電力増幅器に比べて、出力信号に、その入力信号の波形がより高い精度で復元される。さらに、図25で示した電力増幅器は、ミキサ423が不要であるため、図22に示した電力増幅器に比べて部品点数が低減し、消費電力及び製造コストが低減する。
本実施形態の電力増幅器によれば、振幅変調成分及び位相変調成分を含む入力信号(変調波信号)の振幅変調成分を抽出し、積の値が該振幅変調成分と比例する2つの制御信号に分解し、一方の制御信号(第2の制御信号)を用いてRFアンプの出力電源を変調しつつ、他方の制御信号(第1の制御信号)を振幅が一定の矩形波信号に変換し、その信号でRFアンプの入力信号を変調しているため、RFアンプが飽和動作していても第1の制御信号の情報は消えることなくRFアンプの出力信号に正しく反映される。
したがって、本実施形態の電力増幅器では、振幅成分信号の一部が反映されずに正しく信号が再生できない、図7に示した背景技術の電力増幅器に比べて、出力信号として、入力信号の波形がより高い精度で復元された信号が得られる。
よって、良好な電力効率で信号増幅しつつ、該信号を精度よく復元できる、EER技術及びET技術を適用した電力増幅器が得られる。
また、本実施形態の電力増幅器では、第1の制御信号418及び第2の制御信号419(またはいずれか一方)が元のAM成分a(t)よりもダイナミックレンジが小さいため、スイッチングアンプ405の平均出力電圧及びRFアンプ409の出力電圧の低下が抑制され、RFアンプ409及びスイッチングアンプ405の電力効率の低下をより抑制できる。
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態の電力増幅器について図面を用いて説明する。
第2の実施の形態の電力増幅器は、信号発生回路447の構成及び動作が、図10に示した第1の実施の形態の電力増幅器と異なっている。その他の構成及び動作は図10に示した第1の実施の形態の電力増幅器と同様であるため、ここではその説明を省略する。
本実施形態の信号発生回路447は、図10に示した電力増幅器と同様に、入力信号に含まれるAM成分を抽出し、該AM成分から生成した第1の制御信号418を、端子453を介して第1のパルス変調器420へ出力し、該AM成分から生成した第2の制御信号419を、端子445を介して第2のパルス変調器404へ出力する。本実施形態では、入力信号の振幅成分をa(t)としたとき、AM成分a(t)よりもダイナミックレンジが小さく、a(t)∝as(t)af(t)の関係を満たす振幅成分as(t)を第1の制御信号418として第1のパルス変調器420へ出力し、振幅成分af(t)を第2の制御信号419として第2のパルス変調器404へ出力する。as(t)は入力信号のAM成分a(t)の低周波成分であり、af(t)はa(t)からas(t)を除去した残りの周波数成分(af(t)∝a(t)/as(t))である。また、本実施形態の信号発生回路447は、入力信号に含まれるPM成分を抽出し、位相成分信号412として端子446を介してRFアンプ409へ出力する。なお、本実施形態の信号発生回路447も、第1の実施の形態と同様に、第1の制御信号418と位相成分信号412間、及び第2の制御信号419と位相成分信号412間の遅延時間差を調整する機能を備えていることが望ましい。
図26は第2の実施の形態の電力増幅器で用いる信号発生回路の一構成例を示すブロック図である。なお、図26に示す信号発生回路447は、本実施形態の電力増幅器の入力端子443にRF信号が入力される場合に用いて最適な構成である。また、図26はEER技術を適用する本実施形態の電力増幅器に用いて最適な構成である。
図26に示す信号発生回路447は、入力信号であるRF信号からAM成分を抽出する振幅検出器403と、入力信号のAM成分を除去するリミッタ402と、振幅検出器403によって抽出された入力信号のAM成分a(t)の低周波成分as(t)を通過させるローパスフィルタ427と、a(t)からas(t)を除去した残りの周波数成分であるaf(t)を生成する信号生成部417bとを有する構成である。
振幅検出器403は、端子443から入力された入力信号(RF信号)のAM成分a(t)を抽出し、ローパスフィルタ427へ出力する。ローパスフィルタ427は、振幅検出器403によって抽出されたAM成分a(t)の低周波成分を通過させ、振幅成分as(t)を持つ第2の制御信号419を端子445へ出力する。
信号生成部417bは、入力信号のAM成分a(t)とローパスフィルタ427から出力された低周波成分as(t)からa(t)∝as(t)af(t)を満たす、すなわちaf(t)∝a(t)/as(t)を満たすaf(t)を生成し、振幅成分af(t)を持つ第1の制御信号418を端子453へ出力する。リミッタ402は、端子443から入力された入力信号(RF信号)のAM成分を除去し、残ったPM成分である位相成分信号412を端子446から出力する。
信号生成部417bは、論理回路、A/D(アナログ−デジタル)変換器やD/A変換器を備えたデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、あるいはアナログ回路で構成された演算回路等によって実現できる。
本実施形態の電力増幅器の入力端子443にベースバンド信号が入力される場合、信号発生回路447には、図14に示したベースバンド信号処理回路450及びVCO451を備えた構成を用いてもよい。その場合、ベースバンド信号処理回路450は、端子443から入力された入力信号(ベースバンド信号)をD/A変換し、D/A変換後の信号をアップコンバートしてRF信号に変換する。そして、該RF信号のAM成分を抽出し、該AM成分a(t)を上記a(t)∝as(t)af(t)の関係を満たす振幅成分as(t)とaf(t)に分解し、振幅成分af(t)を持つ第1の制御信号418を端子453へ出力し、振幅成分as(t)を持つ第2の制御信号419を端子445へ出力する。VCO451は、ベースバンド信号処理回路450から出力された制御電圧にしたがって、アップコンバート後のRF信号のPM成分に等しい位相成分信号412を端子446から出力する。
なお、本実施形態の電力増幅器の信号発生回路447が、図26に示したDSPで構成された信号生成部417bを備える構成、または図14に示したベースバンド信号処理回路450を備える構成の場合、第1の制御信号418及び第2の制御信号419をデジタル信号で出力してもよい。その場合、第1のパルス変調器420及び第2のパルス変調器404にD/A変換器を備えていてもよい。また、信号発生回路447が備えるベースバンド信号処理回路450や信号分離部417aに第1のパルス変調器420及び第2のパルス変調器404の機能を備えていてもよい。その場合、第1のパルス変調器420及び第2のパルス変調器404を無くすことも可能である。
第2の実施の形態の電力増幅器においても、第1の実施の形態と同様に、信号発生回路447から出力された位相成分信号412と第1のドライバアンプ421から出力された矩形波信号をミキシングし、その出力信号をRFアンプ409へ入力すると共に、第1の制御信号419を増幅した出力電源変調信号414によりRFアンプ409の出力信号を振幅変調することで、RFアンプ409からは、位相成分信号412と矩形波信号422とを乗算し、さらに、その乗算結果にローパスフィルタ406の出力信号(出力電源変調信号)414を乗算した信号425が出力される。
このRFアンプ409から出力される信号425を、ベースバンド信号の周波数帯域428よりも広く、かつ矩形波信号422に起因するスプリアス成分を除去できる周波数帯域を持つバンドパスフィルタ407を通過させることで、RFアンプ409から出力される信号425に重畳している不要なスプリアス成分が除去され、入力信号を線形増幅した所望のRF信号415が得られる。
第2の実施の形態の電力増幅器では、第2の制御信号419が低い周波数になるため、第2のドライバアンプ416及びスイッチングアンプ405を数十V程度の高い電圧で動作させることができる。
一方、第1の制御信号418は、入力信号のAM成分と同程度に高い周波数であるが、RFアンプ409の入力電圧は、電力増幅器を無線基地局で用いる場合のように、出力電力を大きくする場合でも、通常、数V程度の比較的低い電圧で済む 。そのため、第1のドライバアンプ418を比較的低い電圧で動作させることが可能であり、所望する高い周波数で動作させることが可能になる。
このように、第2の実施の形態の電力増幅器は、スイッチングアンプ405、第1のドライバアンプ416及び第2のドライバアンプ421にて、高電圧動作及び高速動作を両立する必要がないため、第1の実施の形態と同様の効果に加えて、広帯域、かつ高出力電力が要求される装置にも適用できる。
第2の実施の形態の電力増幅器においても、第1の実施の形態で示した第1変形例〜第3変形例をそれぞれ適用することが可能であり、これらの変形例においても第1の実施の形態で示した効果だけでなく、上記と同様の効果を得ることができる。
なお、第2の実施の形態の電力増幅器に、第1の実施の形態で示した第2変形例及び第3変形例(ET技術)を適用する場合、信号発生回路447には、図27に示す構成あるいは図24に示した構成を用いることができる。図27に示す信号発生回路447は、本実施形態の電力増幅器にRF信号が入力される場合に用いて最適な構成である。
図27に示す信号発生回路447は、入力信号であるRF信号からAM成分を抽出する振幅検出器403と、振幅検出器403によって抽出された入力信号のAM成分a(t)の低周波成分as(t)を通過させるローパスフィルタ427と、a(t)からas(t)を除去した残りの周波数成分であるaf(t)を生成する信号生成部417bとを有する構成である。
端子443から入力された入力信号は、振幅検出器403へ供給されると共に、そのまま端子446から変調波信号410として出力される。
振幅検出器403は、端子443から入力された入力信号(RF信号)のAM成分a(t)を抽出し、ローパスフィルタ427へ出力する。ローパスフィルタ427は、振幅検出器403によって抽出されたAM成分a(t)の低周波成分を通過させ、振幅成分as(t)を持つ第2の制御信号419を端子445へ出力する。
信号生成部417bは、入力信号のAM成分a(t)とローパスフィルタ427から出力された低周波成分as(t)からa(t)∝as(t)af(t)を満たす、すなわちaf(t)∝a(t)/as(t)を満たすaf(t)を生成し、振幅成分af(t)を持つ第1の制御信号418を端子453へ出力する。
信号生成部417bは、論理回路、A/D(アナログ−デジタル)変換器やD/A変換器を備えたデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、あるいはアナログ回路で構成された演算回路等によって実現できる。
本実施形態の第2変形例及び第3変形例の電力増幅器の入力端子443にベースバンド信号が入力される場合、信号発生回路447には、上述したように図24に示したベースバンド信号処理回路450及び直交変調器452を備えた構成を用いてもよい。その場合、ベースバンド信号処理回路450は、端子443から入力された入力信号(ベースバンド信号)をD/A変換し、D/A変換後の信号をアップコンバートしてRF信号に変換する。そして、該RF信号のAM成分を抽出し、該AM成分a(t)を上記a(t)∝as(t)af(t)の関係を満たす振幅成分as(t)とaf(t)に分解し、振幅成分af(t)を持つ第1の制御信号418を端子453へ出力し、振幅成分as(t)を持つ第2の制御信号419を端子445へ出力する。また、ベースバンド信号処理回路450は、直交変調器452の出力信号を制御するための制御信号を出力する。
直交変調器452は、ベースバンド信号処理回路450から出力された制御信号にしたがって、アップコンバート後のRF信号の振幅に比例する変調波信号410を端子446から出力する。
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態の電力増幅器について図面を用いて説明する。
図28は第3の実施の形態の電力増幅器の構成を示すブロック図である。
図28に示すように、第3の実施の形態の電力増幅器は、第1の制御信号418及び第2の制御信号419を生成する信号発生回路147、パルス変調器404及び信号分離部417aの構成及び動作が、図10に示した第1の実施の形態の電力増幅器と異なっている。その他の構成及び動作は第1の実施の形態の電力増幅器と同様であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
図9に示した分解回路1は図28に示す信号分離部417aが対応し、図9に示したミキシング回路2は図28に示すミキサ423が対応し、図9に示したRFアンプ4は図28に示すRFアンプ409が対応している。また、図9に示した増幅回路3は、図28に示す第2のドライバアンプ416、スイッチングアンプ405及びローパスフィルタ406で構成される。
本実施形態の信号発生回路147は、図2または図3に示した背景技術の信号発生回路と同様の構成により、入力信号に含まれるAM成分を抽出し、振幅成分信号111として端子145から出力する。
信号発生回路147から出力された振幅成分信号111は、パルス変調器404により、振幅が一定の矩形波信号(1ビットのパルス信号)111aに変換される。パルス変調器404で変換された1ビットのパルス信号111aは信号分離部417aにより第1の制御信号418と第2の制御信号419とに分解される。
ここで、入力信号の振幅成分をa(t)とし、1ビットのパルス信号111aをD[a(t)]とすると、信号分離部417aは、入力信号のAM成分a(t)を上記a(t)∝a1(t)a2(t)の関係を満たす1ビットのパルス信号D[a1(t)]とD[a2(t)]に分解する。そして、1ビットのパルス信号D[a1(t)]を第1の制御信号418として第1のドライバアンプ421へ出力し、1ビットのパルス信号D[a2(t)]を第2の制御信号419として第2のドライバアンプ416に出力する。なお、信号分離部417aは、例えばDSPで構成するものとする。
図10に示した第1の実施の形態の電力増幅器では、第1の制御便号418及び第2の制御信号419がアナログ信号であるのに対し、本実施形態では第1の制御便号418及び第2の制御信号419がそれぞれ1ビットのパルス信号となる。但し、第1の実施の形態と同様に、分解された制御信号a1(t)とa2(t)のうち、少なくとも一方は元の入力信号の振幅成分a(t)よりもダイナミックレンジが小さくなるように選ぶものとする。パルス変調器404には、PWM(Pulse width modulation)変調器、Δ変調器、ΔΣ変調器等を用いることができ、これらは、オペアンプやスイッチトキャパシタ回路等を組み合わせたアナログ回路で実現できる。
第1のドライバアンプ421は、信号分離部417aから出力された第1の制御信号418を増幅し、ミキサ423へ供給する。信号分離部417aがミキサ423を駆動するのに十分な強度の信号を出力できる構成であれば、第1のドライバアンプ421は無くてもよい。
第2のドライバアンプ416は、信号分離部417aから出力された矩形波信号(第2の制御信号419)にしたがってスイッチングアンプ405を駆動し、スイッチングアンプ405は該矩形波信号を効率よく電流増幅する。増幅後の矩形波信号は、ローパスフィルタ406によって平滑化され、端子442を介してRFアンプ409へ供給される。スイッチングアンプ405には、矩形波信号を高い電力効率で増幅できる増幅器、例えばD級アンプ、E級アンプ、S級アンプ等を用いればよい。信号分離部417aがスイッチングアンプ405を駆動するのに十分な強度の信号を出力できる構成であれば、第2のドライバアンプ416は無くてもよい。
ミキサ423は、信号発生回路447から出力された位相成分信号412と第1のドライバアンプ421から出力された矩形波信号をミキシングし、RFアンプ409へ出力する。
RFアンプ409は、トランジスタ401、入力電源回路408及び出力電源回路440を備え、ミキサ423の出力信号426を増幅する。このとき、RFアンプ409の出力信号は、ローパスフィルタ406及び端子442を介してスイッチングアンプ405から供給される平滑後の矩形波信号、すなわち増幅された第2の制御信号414によって振幅変調される。そのため、RFアンプ409からは、位相成分信号412と矩形波信号422とを乗算し、さらに、その乗算結果にローパスフィルタ406の出力信号414を乗算した信号425が出力される。
このRFアンプ409から出力される信号425を、ベースバンド信号の周波数帯域428よりも広く、かつ矩形波信号422に起因するスプリアス成分を除去できる周波数帯域を持つバンドパスフィルタ407を通過させることで、RFアンプ409から出力される信号425に重畳している不要なスプリアス成分が除去され、入力信号を線形増幅した所望のRF信号415が得られる。
上述したように、第3の実施の形態の電力増幅器では、第1の制御信号418及び第2の制御信号419のダイナミックレンジを、元になる入力信号のAM成分a(t)よりも小さくしている。したがって、スイッチングアンプ405の平均出力電圧及びRFアンプ409の出力電圧の低下が抑制され、RFアンプ409及びスイッチングアンプ405の電力効率の低下を抑制できる。
また、第1の制御信号418を振幅が一定の矩形波信号に変換してRFアンプ409に入力しているため、RFアンプ409が飽和動作していても第1の制御信号418の情報は消えることなくRFアンプ409の出力信号に正しく反映される。
このため、本実施形態の電力増幅器では、振幅成分信号の一部が反映されずに正しく信号が再生できない図7に示した背景技術の電力増幅器に比べて、入力信号の波形をより高い精度で復元した出力信号が得られる。
本実施形態の電力増幅器は、信号分離部417aの入力信号及び出力信号が共に1ビットのデジタル信号であるため、信号分離部417aを、カウンタ、デジタルフィルタ、論理演算等の処理を組み合わせたDSPによる処理で実現できる。そのため、入力信号から制御信号a1(t)とa2(t)への分解を柔軟に実行できる利点がある。
また、比較的大きな回路面積を必要とし、かつ比較的大きな電力を消費するアナログ回路であるパルス変調器が1つで済むため、電力増幅器全体のサイズや消費電力を低減できる。
第3の実施の形態の電力増幅器においても、第1の実施の形態で示した第1変形例〜第3変形例をそれぞれ適用することが可能であり、これらの変形例においても第1の実施の形態で示した効果だけでなく、上記と同様の効果を得ることができる。
なお、第3の実施の形態の電力増幅器に、第1の実施の形態で示した第2変形例及び第3変形例(ET技術)を適用する場合、信号発生回路には図5または図6に示した背景技術の構成をそのまま用いることができる。図5に示した信号発生回路148は電力増幅器の入力端子143にRF信号が入力される場合に用いて最適な構成であり、図6に示す信号発生回路は電力増幅器の入力端子143にベースバンド信号が入力される場合に用いて最適な構成である。
また、第3の実施の形態においても、第2の実施の形態で示したように、入力信号の振幅成分a(t)を、信号分離部417aを用いて、低周波成分(第2の制御信号)D[as(t)]と、a(t)からas(t)を除去した残りの周波数成分(第1の制御信号)D[af(t)](af(t)∝a(t)/as(t))とに分解することも可能である。
この場合も、信号分離部417aは、入力信号及び出力信号が共に1ビットのデジタル信号になるため、カウンタ、デジタルフィルタ、論理演算等の処理を組み合わせたDSPによる処理で実現できる。その他の構成や動作は第2の実施の形態と同様であるため、ここでは省略する。
第3の実施の形態と第2の実施の形態とを組み合わせた構成では、第2の制御信号419に含まれる信号成分as(t)が低い周波数であるため、第2の制御信号419の平均的なスイッチング周波数も低くなり、第2のドライバアンプ416及びスイッチングアンプ405を数十V程度の高い電圧で動作させることが可能となる。一方、第1の制御信号418は、入力信号のAM成分と同程度の高い周波数であるが、本発明の電力増幅器を無線基地局で用いる場合のように、RFアンプ409の入力電圧は、出力電力を大きくする場合でも、通常、数V程度の比較的低い電圧で済む。そのため、第1のドライバアンプ418を比較的低い電圧で動作させることが可能であり、所望する高い周波数で動作させることが可能である。
このように、第3の実施の形態と第2の実施の形態とを組み合わせた場合は、スイッチングアンプ405、第1のドライバアンプ416及び第2のドライバアンプ421にて、高電圧動作及び高速動作を両立する必要がないため、広帯域、かつ高出力電力が要求される装置にも適用できる。また、比較的大きな回路面積を必要とし、かつ比較的大きな電力を消費するアナログ回路であるパルス変調器が1つで済むため、電力増幅器全体のサイズや消費電力を低減できる。
(第4の実施の形態)
次に第4の実施の形態の電力増幅器について図面を用いて説明する。
図29は第4の実施の形態の電力増幅器の構成を示すブロック図である。なお、図29は上述したEER技術を適用した電力増幅器の構成例を示している。
図29に示すように、第4の実施の形態の電力増幅器は、信号発生回路647、RF(Radio Frequency)アンプ609、第1のパルス変調器620、第1のドライバアンプ621、ミキサ623、出力電源変調回路633及びバンドパスフィルタ607を有する構成である。
図9に示した分解回路1は図29に示す信号発生回路447に含まれ、図9に示したミキシング回路2は図29に示すミキサ623が対応し、図9に示したRFアンプ4は図29に示すRFアンプ609が対応し、図9に示した増幅回路3は図29に示す出力電源変調回路633が対応している。
信号発生回路647は、入力信号に含まれるAM成分を抽出し、該AM成分から生成した第1の制御信号618を、端子653を介して第1のパルス変調器620へ出力し、該AM成分から生成した第2の制御信号619を、端子645を介して出力電源変調回路633へ出力する。
本実施形態では、入力信号のAM成分をa(t)としたとき、a(t)∝ad(t)ae(t)の関係を満たす振幅成分ae(t)を第1の制御信号618として第1のパルス変調器620へ出力し、AM成分a(t)よりもAC成分に対するDC成分の比率が高い振幅成分ad(t)を第2の制御信号619として出力電源変調回路633へ出力する。
第2の制御信号619としては、例えばad(t)∝sqrt(a(t))の関係を満たす信号がある。入力信号として、W−CDMA(down link)方式のRF信号を想定した場合、入力信号の振幅成分a(t)の電力のうち、63%がDC成分で占められている。第2の制御信号619としてad(t)∝sqrt(a(t))の関係を満たす振幅成分ad(t)を用いる場合、ad(t)はDC成分の割合が86%となる。このとき、第1の制御信号618は、a(t)∝ad(t)ae(t)の関係からae(t)∝sqrt(a(t))となる。
また。第2の制御信号619の他の例としては、振幅成分a(t)にDC成分を付加した信号が考えられる。この場合も、第1の制御信号618は、a(t)∝ad(t)ae(t)の関係から、ae(t)∝a(t)/ad(t)となる。
第2の制御信号619は、上記例に限らず、振幅成分a(t)よりも、AC成分に対するDC成分の比率が高くなれば、どのような信号を用いてもよい。
また、信号発生回路647は、入力信号に含まれるPM成分を抽出し、位相成分信号612として端子646を介してミキサ623へ出力する。なお、本実施形態の信号発生回路647は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に、第1の制御信号618と位相成分信号612間、及び第2の制御信号619と位相成分信号612間の遅延時間差を調整する機能を備えていることが望ましい。
第1のパルス変調器620は、第1の制御信号618をパルス変調することで振幅が一定の矩形波信号を生成し、第1のドライバアンプ621へ出力する。第1のパルス変調器620には、PWM(Pulse width modulation)変調器、Δ変調器、ΔΣ変調器等を用いることができる。第1のパルス変調器620は、信号発生回路647から出力される第1の制御信号618を振幅が一定の矩形波信号に変換できればどのような回路を用いてもよい。
第1のドライバアンプ621は、第1のパルス変調器620から出力された矩形波信号を増幅し、ミキサ623へ供給する。第1のパルス変調器620がミキサ623を駆動するのに十分な強度の信号が出力できる構成であれば、第1のドライバアンプ621は無くてもよい。
出力電源変調回路633は、第1のローパスフィルタ628、第2のパルス変調器604、第2のドライバアンプ616、スイッチングアンプ605、第2のローパスフィルタ606、減算器634、アッテネータ627、線形アンプ624及び加算器632を備えた構成である。
第1のローパスフィルタ628は、信号発生回路647から出力された第2の制御信号619(ad(t))の低周波成分を通過させ、第2のパルス変調器604へ出力する。
第2のパルス変調器604は、第1のローパスフィルタ628を通過した第2の制御信号619(低周波成分)をパルス変調することで矩形波信号を生成し、第2のドライバアンプ616へ出力する。第2のパルス変調器604には、第1のパルス変調器620と同様に、PWM(Pulse width modulation)変調器、Δ変調器、ΔΣ変調器等を用いることができる。
第2のドライバアンプ616は、第2のパルス変調器604から出力された矩形波信号にしたがってスイッチングアンプ605を駆動し、スイッチングアンプ605は該矩形波信号を効率よく電流増幅する。増幅後の矩形波信号は、第2のローパスフィルタ606によって平滑化され、加算器632及び端子642を介してRFアンプ609へ供給される。スイッチングアンプ605には、矩形波信号を高い電力効率で増幅できる増幅器、例えばD級アンプ、E級アンプ、S級アンプ等を用いればよい。第2のパルス変調器604、第2のドライバアンプ616及びスイッチングアンプ605を含むスイッチングレギュレータ部635は、周知のDC−DCコンバータに置き換えてもよい。また、第2のパルス変調器604がスイッチングアンプ605を駆動するのに十分な強度の信号を出力できる構成であれば、第2のドライバアンプ616は無くてもよい。
減算器634は、信号発生回路647から出力された第2の制御信号619(ad(t))から、アッテネータ627を介して帰還される、加算器632の出力信号を減算し、その減算結果を線形アンプ624に出力する。線形アンプ624は、減算器634から出力信号を増幅し、加算器632へ出力する。
加算器632は、第2のローパスフィルタ606から出力された信号631と線形アンプ624から出力された信号629とを加算し、RFアンプ609へ出力する。
本実施形態では、信号発生回路647から出力された第2の制御信号619(ad(t))を、フィードバック回路を備えた線形アンプ624を用いて比較的高い周波数成分を補正するための補正信号629を生成し、この補正信号629を加算器632により第2のローパスフィルタ606の出力信号631に加算することで、第1の制御信号619を精度良く増幅した信号614を得る。この信号614によりRFアンプ609の出力信号を振幅変調する。
ミキサ623は、信号発生回路647から出力された位相成分信号612と第1のドライバアンプ621から出力された矩形波信号をミキシングし、RFアンプ609へ出力する。
RFアンプ609は、トランジスタ601、入力電源回路608及び出力電源回路640を備え、ミキサ623の出力信号626を増幅する。このとき、RFアンプ609の出力信号は、出力電源変調回路633から供給される補正後の矩形波信号、すなわち増幅された振幅成分信号614によって振幅変調される。トランジスタ601のゲートに接続された入力電源回路608には、背景技術と同様に、端子641を介して不図示の電源装置から一定の直流電圧が供給される。なお、トランジスタ601には、電界効果トランジスタ及びバイポーラトランジスタのいずれを用いてもよい。
RFアンプ609によって増幅された信号(出力信号625)は、バンドパスフィルタ607によって不要な帯域成分が除去され、端子644を介して不図示のアンテナ素子等へ供給される。
なお、図29に示す信号発生回路647には、例えば図26及び図27等に示した第2の実施の形態と同様の構成あるいは図14及び図24に示したベースバンド信号処理回路を含む構成を用いることができる。但し、図14及び図24並びに図26及び図27に示した端子443、445、446、453には、図29に示した端子643、645、646、653が対応する。これら信号発生回路647の構成及び動作は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態で説明した構成及び動作と同様であるため、ここではその説明を省略する。
また、図29では、信号発生回路647にD/A変換器を備え、第1の制御信号618及び第2の制御信号619をアナログ信号として出力する例を示しているが、信号発生回路647が図13に示したDSPで構成された信号分離部を備える構成、または図14に示したベースバンド信号処理回路を備える構成の場合、第1の制御信号618及び第2の制御信号619をデジタル信号で出力してもよい。その場合、第1のパルス変調器620及び出力電源変調回路633にD/A変換器を備えていてもよい。また、信号発生回路647が備えるベースバンド信号処理回路や信号分離部に、第1のパルス変調器620及び出力電源変調回路633の機能を備えていてもよい。その場合、第1のパルス変調器620及び出力電源変調回路633を無くすことも可能である。
また、図29に示した電力増幅器では、ミキサ623を用いて位相成分信号612に第1の制御信号622を重畳させる例を示しているが、このような機能は第1の実施の形態と同様に、図15に示したRFアンプ478でも実現できる。
ミキサ623に代わって図15に示したRFアンプ478を用いる場合、位相成分信号612を図15に示す端子476から入力し、第1のドライバアンプ621から出力された矩形波信号を図15に示す入力電源端子474または出力電源端子475へ入力すればよい。
図29に示すRFアンプ609は、飽和動作時に高い電力効率が得られるため、RFアンプ609への入力信号はRFアンプ609が飽和動作する程度に高い電力であることが望ましい。但し、RFアンプ609を飽和動作させると、RFアンプ609の入力信号の振幅成分がRFアンプ609の出力信号に反映されない。そこで、第1の制御信号618を振幅が一定の矩形波信号622に変換し、ミキサ623を用いて位相成分信号612に重畳させた後、RFアンプ609に入力する。このように処理することで、第1の制御信号618の振幅成分をRFアンプ609の出力信号に反映させることができる。
また、本実施形態の電力増幅器では、RFアンプ609が備えるトランジスタ601のドレインに、端子642及び出力電源回路640を介して振幅成分信号614を供給することで、トランジスタ601によって増幅された信号を振幅成分信号614により振幅変調する。この振幅変調により、RFアンプ609からは、位相成分信号612と矩形波信号622とを乗算し、その乗算結果に第2のローパスフィルタ606の出力信号(出力電源変調信号)614を乗算した信号625が出力される。
本実施形態では、入力信号のAM成分をa(t)としたとき、a(t)∝ad(t)ae(t)の関係を満たし、かつAM成分a(t)よりもAC成分に対するDC成分の比率が高い振幅成分ad(t)を第2の制御信号619として出力電源変調回路633へ供給しているため、線形アンプ624から出力される補正信号629の振幅が小さくなる。そのため、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様の効果に加えて、線形アンプの消費電力を低減できる。また、線形アンプには動作電圧が低いものを用いることができるため、線形アンプのコストを低減できる。
図30は第4の実施の形態の電力増幅器の第1変形例の構成を示すブロック図であり、図31は第4の実施の形態の電力増幅器の第2変形例の構成を示すブロック図であり、図32は第4の実施の形態の電力増幅器の第3変形例の構成を示すブロック図である。
第4の実施の形態の電力増幅器においても、第1の実施の形態で示した第1変形例〜第3変形例をそれぞれ適用することが可能であり、これらの変形例においても第1の実施の形態で示した効果だけでなく、上記と同様の効果を得ることができる。
なお、第4の実施の形態の電力増幅器に、第1の実施の形態で示した第2変形例及び第3変形例(ET技術)を適用する場合、信号発生回路647には、図27に示した構成あるいは図24に示した構成を用いることができる。図27に示した信号発生回路447は、本実施形態の電力増幅器にRF信号が入力される場合に用いて最適な構成である。
この出願は、2006年12月26日に出願された特願2006−349724号および2007年11月30日に出願された特願2007−310899号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。