JPWO2007117038A1 - 癌の予防・治療剤 - Google Patents
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Abstract
本発明は、癌細胞を選択的かつ効果的に死滅させることができる癌の予防・治療剤などを提供する。本発明のアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる医薬などは、癌細胞を選択的かつ効果的に死滅させることができる癌の予防・治療剤などとして使用することができる。
Description
本発明は、癌の予防・治療剤などに関する。
脂肪酸合成酵素(FAS)は、脂肪酸生合成の入り口の反応であるマロニル−CoAから長鎖脂肪酸への変換を担う酵素である(Wakil,S.J.,Biochemistry,28巻,4523−4530頁,1989年)。FASは多くのがん細胞で発現が亢進しており(Kuhajda,F.P.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91巻,6379−6383頁,1994年)、また、FASの発現抑制または活性抑制は、正常細胞に対しては低毒性であるのに対し、癌細胞に選択的な増殖抑制や細胞死を誘導する(Kuhajda,F.P.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97巻,3450−3454頁,2000年,De Schrijver,E.et al.,Cancer Res.,63巻,3799−3804頁,2003年)。FAS阻害剤としてはCephalosporium caerulence由来の天然物低分子化合物であるCerulenin(Vance,D.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,48巻,649−656頁,1972年)および合成低分子化合物であるC75(Pizer,E.S.et al.,Cancer Res.,60巻,213−218頁,2000年)が知られている。
一方、アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素(以下、ACSと略記する)は、長鎖脂肪酸からアシル−CoAへの変換を司る酵素である。アシル−CoAは、細胞内脂質合成および脂肪酸分解・伸長反応における基質となることから、ACSは、細胞内の脂質代謝さらには脂質による細胞内シグナル伝達において中心的な役割を担う。またACSは、細胞外脂肪酸の取込みにも関与する(Faergemen,N.J.& Knudsen,J.,Biochemical.J.,323巻,1−12頁,1997年)。現在までに基質選択性や細胞内局在の異なる5つのアイソザイム(ACS1,3,4,5,6)がヒトおよびげっ歯類において同定されている(Coleman,R.A.et al.J.Nutr.,132巻,2123−2126頁,2002年)。これらのうち、ACS4やACS5は、ヒト大腸がんやヒトグリオーマなどで発現亢進している(Cao,Y.et al.Cancer Res.,61巻,8429−8434頁,2001年、Yamashita,Y.et al.Oncogene,19巻,5919−5925頁,2000年)。さらにACS阻害は癌選択的な細胞死を誘導する(Mashima,T.et al.J.Natl.Cancer Inst.,97巻,765−777頁,2005年)。ACS阻害剤としてはStreptomyces sp.由来の天然物低分子化合物であるTriacsin C(Tomoda,H.et al.,Biochem.Biophys.Acta.,921巻,595−598頁,1987年)が知られている。Triacsin CがACS1とACS4を阻害することが知られている(Kim,J.−H.et al.J.Biol.Chem.,276巻,24667−24673頁,2001年)。
一方、アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素(以下、ACSと略記する)は、長鎖脂肪酸からアシル−CoAへの変換を司る酵素である。アシル−CoAは、細胞内脂質合成および脂肪酸分解・伸長反応における基質となることから、ACSは、細胞内の脂質代謝さらには脂質による細胞内シグナル伝達において中心的な役割を担う。またACSは、細胞外脂肪酸の取込みにも関与する(Faergemen,N.J.& Knudsen,J.,Biochemical.J.,323巻,1−12頁,1997年)。現在までに基質選択性や細胞内局在の異なる5つのアイソザイム(ACS1,3,4,5,6)がヒトおよびげっ歯類において同定されている(Coleman,R.A.et al.J.Nutr.,132巻,2123−2126頁,2002年)。これらのうち、ACS4やACS5は、ヒト大腸がんやヒトグリオーマなどで発現亢進している(Cao,Y.et al.Cancer Res.,61巻,8429−8434頁,2001年、Yamashita,Y.et al.Oncogene,19巻,5919−5925頁,2000年)。さらにACS阻害は癌選択的な細胞死を誘導する(Mashima,T.et al.J.Natl.Cancer Inst.,97巻,765−777頁,2005年)。ACS阻害剤としてはStreptomyces sp.由来の天然物低分子化合物であるTriacsin C(Tomoda,H.et al.,Biochem.Biophys.Acta.,921巻,595−598頁,1987年)が知られている。Triacsin CがACS1とACS4を阻害することが知られている(Kim,J.−H.et al.J.Biol.Chem.,276巻,24667−24673頁,2001年)。
現状の癌治療において、既存の治療法によっては多くの癌を根治に導くことはできず、新しい治療法の開発が望まれている。とくに、既存の抗癌剤はヒト正常組織に対する副作用が問題である。正常細胞に低毒性、かつ、癌細胞を選択的かつ強力に死に追い込む安全で優れた方法の開発が、がんの治療成績の向上のために切望されている。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ACSの活性とFASの活性を同時に阻害することにより、癌細胞をより強く死滅させることが可能であることを見出した。これらの知見に基づいて、検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる癌の予防・治療剤、
〔2〕 アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素が、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13および配列番号:15で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩から選ばれる少なくとも一種である上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔3〕 アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素が、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9および配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩から選ばれる少なくとも一種である上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔4〕 脂肪酸合成酵素が、配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔5〕 (i)(a)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素に対する抗体、(d)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種と、(ii)(a)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)脂肪酸合成酵素に対する抗体、(d)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔6〕 アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩と脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩とを組み合わせてなる上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔7〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、または(および)(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質を含有してなる癌の予防・治療剤、
〔8〕 癌の予防・治療剤が配合剤である上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔9〕 予防・治療剤が、(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬とからなるキットである上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔10〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害し、かつ(ii)脂肪酸合成酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害することを特徴とする癌の予防・治療方法、
〔11〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種の有効量と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種の有効量とを哺乳動物に対して投与する癌の予防・治療方法、
〔12〕 癌の予防・治療剤を製造するための、(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種との使用、
〔13〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる癌細胞のアポトーシス促進剤または癌細胞の増殖抑制剤、
〔14〕 (i)(a)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素に対する抗体、(d)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種と、(ii)(a)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)脂肪酸合成酵素に対する抗体、(d)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる上記〔13〕記載の剤、
〔15〕 アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩と脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩とを組み合わせてなる上記〔13〕記載の剤、
〔16〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、または(および)(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質を含有してなる癌細胞のアポトーシス促進剤または癌細胞の増殖抑制剤、
〔16’〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害し、または(および)(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害することを特徴とする癌細胞のアポトーシス促進方法または癌細胞の増殖抑制方法、
〔16’’〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質の有効量、または(および)(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質の有効量を哺乳動物に対して投与する癌細胞のアポトーシス促進方法または癌細胞の増殖抑制方法、
〔17〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害し、かつ(ii)脂肪酸合成酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害することを特徴とする癌細胞のアポトーシス促進方法または癌細胞の増殖抑制方法、
〔17’〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害する物質の有効量と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害する物質の有効量とを哺乳動物に対して投与する癌細胞のアポトーシス促進方法または癌細胞の増殖抑制方法
などを提供する。
「癌の予防・治療用医薬」は、癌の予防・治療作用を有する物質(例、合成化合物、ペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿など)自体であってもよく、該物質を含有してなる医薬であってもよい。「癌の予防」とは、癌の転移または/および再発を防止するという意味を含む。
「癌細胞のアポトーシス促進用医薬」は、癌細胞のアポトーシス促進作用を有する物質自体であってもよく、該物質(例、合成化合物、ペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿など)を含有してなる医薬であってもよい。
「癌細胞の増殖抑制用医薬」は、癌細胞の増殖抑制作用を有する物質(例、合成化合物、ペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿など)自体であってもよく、該物質を含有してなる医薬であってもよい。
「遺伝子の発現を阻害する」とは、遺伝子からタンパク質生成までの一連の事象(例えば、転写(mRNAの生成)、翻訳(タンパク質の生成)を含む)のうちのいずれかの事象を阻害することによって、その遺伝子によってコードされるタンパク質の生成を阻害することを意味する。
「タンパク質の発現を阻害する」とは、当該タンパク質をコードする遺伝子からタンパク質生成までの一連の事象(例えば、転写(mRNAの生成)、翻訳(タンパク質の生成)を含む)のうちのいずれかの事象を阻害することによって、当該タンパク質の生成を阻害することを意味する。
「低分子化合物」とは、分子量10,000以下(好ましくは、分子量5,000以下、より好ましくは分子量2,000以下、特に好ましくは分子量700以下)の有機および無機物質を意味する。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ACSの活性とFASの活性を同時に阻害することにより、癌細胞をより強く死滅させることが可能であることを見出した。これらの知見に基づいて、検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる癌の予防・治療剤、
〔2〕 アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素が、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13および配列番号:15で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩から選ばれる少なくとも一種である上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔3〕 アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素が、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9および配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩から選ばれる少なくとも一種である上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔4〕 脂肪酸合成酵素が、配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔5〕 (i)(a)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素に対する抗体、(d)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種と、(ii)(a)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)脂肪酸合成酵素に対する抗体、(d)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔6〕 アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩と脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩とを組み合わせてなる上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔7〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、または(および)(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質を含有してなる癌の予防・治療剤、
〔8〕 癌の予防・治療剤が配合剤である上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔9〕 予防・治療剤が、(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬とからなるキットである上記〔1〕記載の予防・治療剤、
〔10〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害し、かつ(ii)脂肪酸合成酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害することを特徴とする癌の予防・治療方法、
〔11〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種の有効量と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種の有効量とを哺乳動物に対して投与する癌の予防・治療方法、
〔12〕 癌の予防・治療剤を製造するための、(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種との使用、
〔13〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる癌細胞のアポトーシス促進剤または癌細胞の増殖抑制剤、
〔14〕 (i)(a)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素に対する抗体、(d)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種と、(ii)(a)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)脂肪酸合成酵素に対する抗体、(d)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる上記〔13〕記載の剤、
〔15〕 アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩と脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩とを組み合わせてなる上記〔13〕記載の剤、
〔16〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、または(および)(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質を含有してなる癌細胞のアポトーシス促進剤または癌細胞の増殖抑制剤、
〔16’〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害し、または(および)(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害することを特徴とする癌細胞のアポトーシス促進方法または癌細胞の増殖抑制方法、
〔16’’〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質の有効量、または(および)(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質の有効量を哺乳動物に対して投与する癌細胞のアポトーシス促進方法または癌細胞の増殖抑制方法、
〔17〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害し、かつ(ii)脂肪酸合成酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害することを特徴とする癌細胞のアポトーシス促進方法または癌細胞の増殖抑制方法、
〔17’〕 (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害する物質の有効量と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害する物質の有効量とを哺乳動物に対して投与する癌細胞のアポトーシス促進方法または癌細胞の増殖抑制方法
などを提供する。
「癌の予防・治療用医薬」は、癌の予防・治療作用を有する物質(例、合成化合物、ペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿など)自体であってもよく、該物質を含有してなる医薬であってもよい。「癌の予防」とは、癌の転移または/および再発を防止するという意味を含む。
「癌細胞のアポトーシス促進用医薬」は、癌細胞のアポトーシス促進作用を有する物質自体であってもよく、該物質(例、合成化合物、ペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿など)を含有してなる医薬であってもよい。
「癌細胞の増殖抑制用医薬」は、癌細胞の増殖抑制作用を有する物質(例、合成化合物、ペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿など)自体であってもよく、該物質を含有してなる医薬であってもよい。
「遺伝子の発現を阻害する」とは、遺伝子からタンパク質生成までの一連の事象(例えば、転写(mRNAの生成)、翻訳(タンパク質の生成)を含む)のうちのいずれかの事象を阻害することによって、その遺伝子によってコードされるタンパク質の生成を阻害することを意味する。
「タンパク質の発現を阻害する」とは、当該タンパク質をコードする遺伝子からタンパク質生成までの一連の事象(例えば、転写(mRNAの生成)、翻訳(タンパク質の生成)を含む)のうちのいずれかの事象を阻害することによって、当該タンパク質の生成を阻害することを意味する。
「低分子化合物」とは、分子量10,000以下(好ましくは、分子量5,000以下、より好ましくは分子量2,000以下、特に好ましくは分子量700以下)の有機および無機物質を意味する。
図1は、SF268/mockまたはSF268/ACS5細胞に、FAS阻害剤であるCerulenin(15μg/ml)またはC75(15μg/ml)を添加して24時間培養したときの細胞増殖抑制効果を示す図である。縦軸は薬剤無処理のSF268/mockを100%としたときの細胞生存率(%)を示す。
アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素、脂肪酸合成酵素(以下、これらを本発明で用いられるタンパク質と称することもある)は、ヒトや温血動物(例、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例、網膜細胞、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、血小板など)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、網膜、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など、または血球系の細胞もしくはその培養細胞(例えば、MEL、M1、CTLL−2、HT−2、WEHI−3、HL−60、JOSK−1、K562、ML−1、MOLT−3、MOLT−4、MOLT−10、CCRF−CEM、TALL−1、Jurkat、CCRT−HSB−2、KE−37、SKW−3、HUT−78、HUT−102、H9、U937、THP−1、HEL、JK−1、CMK、KO−812、MEG−01など)に由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。
アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素としては、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13および配列番号:15で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
脂肪酸合成酵素としては、配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15または配列番号:17で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15または配列番号:17で表わされるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えばアシル−CoA合成酵素活性などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、アシル−CoA合成酵素活性などが同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
アシル−CoA合成酵素活性の測定は、自体公知の方法、例えば、J.Biol.Chem.,256巻、5702−5707頁,1981年に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。具体的には、本発明で用いられるタンパク質を、0.2M Tris−HCl緩衝液(pH7.5)、2.5mM ATP、8mM MgCl2、2mM EDTA、20mM NaF、0.1%(w/v)Triton X−100、10μM[1−14C]パルミチン酸(5μCi/μ mol)および0.5mM coenzyme A(CoA)を含む0.5mlの溶液中において、35℃で10分間反応させる。反応はCoAを加えることにより開始し、イソプロパノール:n−ヘプタン:1M硫酸(40:10:1,v/v)を2.5ml加えることにより停止する。反応停止後、0.5mlの水および2.5mlのn−ヘプタンを加えて未反応の脂肪酸を含む有機溶媒相を除き、さらに、水相を2.5mlのn−ヘプタンで3回洗浄し、水相に残った放射活性をシンチレーションカウンターで測定する。
配列番号:17で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号:17で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:17で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば脂肪酸合成酵素活性などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、脂肪酸合成酵素活性などが同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
脂肪酸合成酵素活性の測定は、自体公知の方法、例えば、Nepokroeff,C.M.et al.,Methods Enzymol.,26巻,37−39頁,1975年に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。具体的には、本発明で用いられるタンパク質を、0.5Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、0.2mM マロニル−CoA、0.066mM アセチル−CoA、0.2mM NADPHを含む1mlの反応溶液中において30℃で5分間反応させ、反応前後の340nmの吸光度を測定し、それらの吸光度の値の差から酵素活性を算出する。
また、本発明で用いられるタンパク質としては、例えば、(1)(i)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテイン、(2)(i)配列番号:17で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:17で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:17で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:17で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置としては、とくに限定されない。
本明細書におけるタンパク質は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質をはじめとする、本発明で用いられるタンパク質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明で用いられるタンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明で用いられるタンパク質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
本発明で用いられるタンパク質の具体例としては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:9で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:11で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:13で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:17で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質などがあげられる。
本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドとしては、前記した本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドであって、好ましくは、前記した本発明で用いられるタンパク質と同様の性質を有するものであればいずれのものでもよい。
例えば、本発明で用いられるタンパク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、さらに好ましくは70個以上、より好ましくは100個以上、最も好ましくは200個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが用いられる。
また、本発明で用いられる部分ペプチドは、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入され、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、本発明で用いられる部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
さらに、本発明で用いられる部分ペプチドには、前記した本発明で用いられるタンパク質と同様に、C末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有しているもの、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明で用いられる部分ペプチドは抗体作成のための抗原としても用いることができる。
本発明で用いられるタンパク質または部分ペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から自体公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、タンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩、またはそのアミド体の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質または部分ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt,HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(C1−6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、t−ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
タンパク質または部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質または部分ペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質または部分ペプチドとを製造し、これらのタンパク質またはペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質またはペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質またはペプチドを得ることができる。この粗タンパク質またはペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質またはペプチドのアミド体を得ることができる。
タンパク質またはペプチドのエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質またはペプチドのアミド体と同様にして、所望のタンパク質またはペプチドのエステル体を得ることができる。
本発明で用いられる部分ペプチドまたはそれらの塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明で用いられるタンパク質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明で用いられる部分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の(i)〜(v)に記載された方法が挙げられる。
(i)M.BodanszkyおよびM.A.Ondetti、ペプチド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience Publishers,New York(1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide),Academic Press,New York(1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株)(1975年)
(iv)矢島治明および榊原俊平、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、205、(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明で用いられる部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、前述した本発明で用いられるタンパク質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
本発明で用いられるタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、(1)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14もしくは配列番号:16で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14もしくは配列番号:16で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13もしくは配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードするDNA、または(2)配列番号:18で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:18で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:17で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14または配列番号:16で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14または配列番号:16で表される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:18で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:18で表される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning 2nd(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:2で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:4で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:6で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:8で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:9で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:10で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:11で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:12で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:13で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:14で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:16で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:17で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:18で表される塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
本発明で用いられる部分ペプチドをコードするDNAとしては、前述した本発明で用いられる部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
本発明で用いられる部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16もしくは配列番号:18で表される塩基配列を含有するDNAの一部分を有するDNA、または配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16もしくは配列番号:18で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、本発明で用いられるタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAの一部分を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16もしくは配列番号:18で表される塩基配列とハイブリダイズできるDNAは、前記と同意義を示す。
ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様のものが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質、部分ペプチド(以下、これらをコードするDNAのクローニングおよび発現の説明においては、これらを単に本発明で用いられるタンパク質と略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明で用いられるタンパク質をコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明で用いられるタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、Molecular Cloning 2nd Ed(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
DNAの塩基配列の変換は、PCR、公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))等を用いて、ODA−LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化されたタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明で用いられるタンパク質の発現ベクターは、例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ii)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明で用いられるタンパク質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明で用いられるタンパク質をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,60巻,160(1968)〕,JM103〔Nucleic Acids Research,9巻,309(1981)〕,JA221〔Journal of Molecular Biology,120巻,517(1978)〕,HB101〔Journal of Molecular Biology,41巻,459(1969)〕,C600〔Genetics,39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24巻,255(1983)〕,207−21〔Journal of Biochemistry,95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn,J.L.ら、In Vivo,13,213−217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、Nature,315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr−)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,マウスATDC5細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69巻,2110(1972)やGene,17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、Molecular & General Genetics,168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、Methods in Enzymology,194巻,182−187(1991)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology,6,47−55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール 263−267(1995)(秀潤社発行)、Virology,52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),Journal of Experiments in Molecular Genetics,431−433,Cold Spring Harbor Laboratory,New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian,K.L.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter,G.A.らProc.Natl.Acad.Sci.USA,81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace,T.C.C.,Nature,195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔Science,122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔Virology,8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association 199巻,519(1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外に本発明で用いられるタンパク質を生成せしめることができる。
上記培養物から本発明で用いられるタンパク質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
本発明で用いられるタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるタンパク質の精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られるタンパク質が遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するタンパク質を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして生成する本発明で用いられるタンパク質の存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッティングなどにより測定することができる。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩(以下、抗体の説明においては、これらを単に本発明で用いられるタンパク質と略記する場合がある)に対する抗体は、本発明で用いられるタンパク質を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明で用いられるタンパク質は、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔Nature、256、495(1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの温血動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、タンパク質抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したタンパク質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(タンパク質抗原)自体、あるいはそれとキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明で用いられるタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
本発明で用いられるタンパク質または部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド(好ましくはDNA)(以下、アンチセンスポリヌクレオチドの説明においては、これらのDNAを本発明で用いられるDNAと略記する場合がある)の塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスポリヌクレオチドとしては、本発明で用いられるDNAの塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスポリヌクレオチドであってもよいが、アンチセンスDNAが好ましい。
本発明で用いられるDNAに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、本発明で用いられるDNAに相補的な塩基配列(すなわち、本発明で用いられるDNAの相補鎖)の全塩基配列あるいは部分塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。特に、本発明で用いられるDNAの相補鎖の全塩基配列うち、(i)翻訳阻害を指向したアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、本発明で用いられるタンパク質のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレオチドが、(ii)RNaseHによるRNA分解を指向するアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、イントロンを含む本発明で用いられるDNAの全塩基配列の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレオチドがそれぞれ好適である。
具体的には、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16もしくは配列番号:18で表わされる塩基配列を含有するDNAの塩基配列に相補的な、もしくは実質的に相補的な塩基配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチド、好ましくは例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16もしくは配列番号:18で表わされる塩基配列を含有するDNAの塩基配列に相補的な塩基配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチド(より好ましくは、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16もしくは配列番号:18で表わされる塩基配列を含有するDNAの塩基配列に相補な塩基配列を有するアンチセンスポリヌクレオチド)が挙げられる。
アンチセンスポリヌクレオチドは通常、10〜40個程度、好ましくは15〜30個程度の塩基から構成される。
ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンスDNAを構成する各ヌクレオチドのりん酸残基(ホスフェート)は、例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾りん酸残基に置換されていてもよい。また、各ヌクレオチドの糖(デオキシリボース)は、2’−O−メチル化などの化学修飾糖構造に置換されていてもよいし、塩基部分(ピリミジン、プリン)も化学修飾を受けたものであってもよく、配列番号:2で表わされる塩基配列を有するDNAにハイブリダイズするものであればいずれのものでもよい。これらのアンチセンスポリヌクレオチドは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
本発明に従えば、本発明で用いられるタンパク質遺伝子の複製または発現を阻害することのできる該遺伝子に対応するアンチセンスポリヌクレオチド(核酸)を、クローン化した、あるいは決定されたタンパク質をコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。かかるアンチセンスポリヌクレオチドは、本発明で用いられるタンパク質遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成または機能を阻害することができるか、あるいは本発明で用いられるタンパク質関連RNAとの相互作用を介して本発明で用いられるタンパク質遺伝子の発現を調節・制御することができる。本発明で用いられるタンパク質関連RNAの選択された配列に相補的なポリヌクレオチド、および本発明で用いられるタンパク質関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、生体内および生体外で本発明で用いられるタンパク質遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列または核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ヌクレオチド、塩基配列または核酸とタンパク質との間で「対応する」とは、ヌクレオチド(核酸)の配列またはその相補体から誘導される(指令にある)タンパク質のアミノ酸を通常指している。タンパク質遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどは、好ましい対象領域として選択しうるが、タンパク質遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドとの関係については、目的核酸が対象領域とハイブリダイズすることができる場合は、その目的核酸は、当該対象領域のポリヌクレオチドに対して「アンチセンス」であるということができる。アンチセンスポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。このような修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンまたは脂肪族基などで置換されているか、またはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、RNA、DNAまたは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては、核酸の硫黄誘導体、チオホスフェート誘導体、ポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものなどが挙げられる。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、例えば、以下のように設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンスポリヌクレオチドをより安定なものにする、アンチセンスポリヌクレオチドの細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、また、もし毒性があるような場合はアンチセンスポリヌクレオチドの毒性をより小さなものにする。このような修飾は、例えばPharm Tech Japan,8巻,247頁または395頁,1992年、Antisense Research and Applications,CRC Press,1993年などで数多く報告されている。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端または5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端または5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンスポリヌクレオチドの阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、または本発明で用いられるタンパク質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。
以下に、本発明の癌の予防・治療剤などの医薬について詳細に説明する。
なお、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質を「本発明で用いられるタンパク質A」、配列番号:17で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質を「本発明で用いられるタンパク質B」と略記することもある。
また、アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素を「本発明で用いられるタンパク質A」、脂肪酸合成酵素を「本発明で用いられるタンパク質B」と称することもある。
本発明で用いられるタンパク質Aの活性または発現と、本発明で用いられるタンパク質Bの活性または発現を同時に阻害することにより、癌細胞のアポトーシスを選択的かつ強力に誘導し、癌細胞を選択的かつ効果的に死滅させることができる。よって、(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性(例、アシル−CoA合成酵素活性)を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性(例、脂肪酸合成酵素活性)を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる医薬などは、例えば、癌(例、脳腫瘍、下垂体腺腫、神経膠腫、聴神経鞘腫、網膜肉腫、甲状腺癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、胸腺腫、中皮腫、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、胃癌、食道癌、十二指腸癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、肝細胞癌、膵癌、膵内分泌腫瘍、胆管癌、胆嚢癌、陰茎癌、腎臓癌、腎盂癌、尿管癌、腎細胞癌、精巣腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、外陰癌、子宮癌、子宮頚部癌、子宮体部癌、子宮肉腫、絨毛性疾患、膣癌、卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、皮膚癌、悪性黒色腫、菌状息肉症、基底細胞腫、軟部肉腫、悪性リンパ腫、ホジキン病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、成人T細胞白血病、慢性骨髄増殖性疾患、膵内分泌腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、原発不明癌など)の予防・治療剤、癌細胞のアポトーシス促進剤、癌細胞の増殖抑制剤などとして安全な医薬として使用することができる。
(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性(例、アシル−CoA合成酵素活性)を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性(例、脂肪酸合成酵素活性)を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とは、同一の物質であってもよい。このような物質、すなわち(i’)本発明で用いられるタンパク質Aの活性または本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現と、(ii’)本発明で用いられるタンパク質Bの活性または本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現とを阻害する物質なども、本発明で用いられるタンパク質Aの活性または発現と、本発明で用いられるタンパク質Bの活性または発現とを同時に阻害することができるので、上記した本発明の癌の予防・治療剤、癌細胞のアポトーシス促進剤、癌細胞の増殖抑制剤などの医薬として好適に使用することができる。
本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質としては、例えば、(a)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩、(c)本発明で用いられるタンパク質Aに対する抗体、(f)本発明で用いられるタンパク質Aに対してドミナントネガティブに作用する本発明で用いられるタンパク質Aの変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドなどが挙げられる。
(a)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩は、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質として好適に使用することができる。本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩としては、本発明で用いられるタンパク質Aの有する活性(例、アシル−CoA合成酵素活性)を阻害しうる化合物またはその塩であればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質Aに結合し、その活性を阻害する化合物またはその塩などが挙げられる。このような化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物であってもよい。該化合物は、新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。該化合物の塩としては、例えば、生理学的に許容される金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。金属塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
このうち、生理学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合にはアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩,カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩,マグネシウム塩,バリウム塩など)などの無機塩、アンモニウム塩など、また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸など無機酸との塩、または酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。
本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩としては、低分子化合物が好ましい。
本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩としては、例えば、Triacsin C、2−ブロモパルミチン酸またはそれらの塩などが挙げられ、Triacsin Cまたはその塩が好ましい。
上記化合物またはその塩は、常套手段に従って製剤化し、投与することができる。
例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記物質を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記物質を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
(c)本発明で用いられるタンパク質Aに対する抗体、好ましくは本発明で用いられるタンパク質Aの活性を中和(減退または消失)する作用を有する抗体(中和抗体)は、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質として好適に使用することができる。
上記抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記抗体またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与(例、静脈注射)に適する剤形として提供される。好ましくは吸入剤として提供される。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
(f)本発明で用いられるタンパク質Aに対してドミナントネガティブに作用する本発明で用いられるタンパク質Aの変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドは、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質として好適に使用することができる。本明細書において、「本発明で用いられるタンパク質Aに対してドミナントネガティブに作用するタンパク質Aの変異体」とは、それが発現することによって、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害(消失もしくは低下)させる作用を有するタンパク質を意味する(多比良和誠編,遺伝子の機能阻害実験法,羊土社,26−32頁,2001年など参照)。
上記本発明で用いられるタンパク質Aの変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドは、常套手段に従って製剤化し、投与することができる。
本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害するものであれば特に制限はないが、例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAへの転写を阻害する物質、(ii)本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害する物質などが挙げられる。(i)本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAへの転写を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAへの転写を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写への転写に関与する因子に結合し、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写を阻害する物質などが挙げられる。(ii)本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳に関与する因子に結合し、本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害する物質などが挙げられる。このような本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する物質としては、具体的には、例えば、(b)本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する化合物またはその塩、(d)本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、(e)本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAなど)、(g)本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対してリボザイム活性を有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。
(b)本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する化合物またはその塩は、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する化合物またはその塩としては、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害しうるものであればよく特に制限はないが、例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAへの転写を阻害する化合物、(ii)本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害する化合物などが挙げられる。(i)本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAへの転写を阻害する化合物としては、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写に関与する因子に結合し、転写を阻害する化合物などが挙げられる。(ii)本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害する化合物としては、本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳に関与する因子に結合し、翻訳を阻害する化合物などが挙げられる。
本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する化合物またはその塩としては、低分子化合物が好ましい。
本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する化合物またはその塩としては、例えば、Triacsin C、2−ブロモパルミチン酸またはそれらの塩などが挙げられ、Triacsin Cまたはその塩が好ましい。
上記化合物またはその塩は、常套手段に従って、例えば上記本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩と同様にして製剤化し、投与することができる。
(d)本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチドは、低毒性であり、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子の発現を抑制することができ、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このようなアンチセンスポリヌクレオチドとしては、上述したものなどが用いられる。
上記アンチセンスポリヌクレオチドは、自体公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。
また、例えば、前記のアンチセンスポリヌクレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。該アンチセンスポリヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。あるいは、エアロゾル化して吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記のアンチセンスポリヌクレオチドを単独またはリポゾームなどの担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下、関節腔内、癌病変部等に投与してもよい。
(e)本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAなど)は、低毒性であり、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子の翻訳を抑制することができ、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このような、本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNAとしては、本発明で用いられるタンパク質をコードするRNAの一部を含有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNA(small(short)interfering RNA)、shRNA(small(short)hairpin RNA)など)などが挙げられる。
このような二重鎖RNAは、公知の方法(例、Nature,411巻,494頁,2001年;特表2002−516062号公報;米国特許出願公開第2002/086356号明細書;Nature Genetics,24巻,180−183頁,2000年;Genesis,26巻,240−244頁,2000年;Nature,407巻,319−320頁,2002年;Genes & Dev.,16巻,948−958頁,2002年;Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,99巻,5515−5520頁,2002年;Science,296巻,550−553頁,2002年;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99巻,6047−6052頁,2002年;Nature Biotechnology,20巻,497−500頁,2002年;Nature Biotechnology,20巻,500−505頁,2002年;Nucleic Acids Res.,30巻,e46,2002年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。
本発明で用いられるRNAi作用を有する二重鎖RNAの長さは、通常、17〜30塩基、好ましくは19〜27塩基、より好ましくは20〜22塩基である。
上記二重鎖RNAは、上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
(g)本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対してリボザイム活性を有するポリヌクレオチドは、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このようなリボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine,7巻,221頁,2001年;FEBS Lett.,228巻,228頁,1988年;FEBS Lett.,239巻,285頁,1988年;Nucl.Acids.Res.,17巻,7059頁,1989年;Nature,323巻,349頁,1986年;Nucl.Acids.Res.,19巻,6751頁,1991年;Protein Eng.3巻,733頁,1990年;Nucl.Acids Res.,19巻,3875頁,1991年;Nucl.Acids Res.,19巻,5125頁,1991年;Biochem.Biophys.Res.Commun.,186巻,1271頁,1992年など参照)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、本発明で用いられるタンパク質AをコードするRNAの一部に公知のリボザイムを連結することによって製造することができる。本発明で用いられるタンパク質AをコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得る本発明のRNA上の切断部位に近接した部分(RNA断片)が挙げられる。上記リボザイムには、グループIイントロン型やRNasePに含まれるM1 RNAなどのラージリボザイム、ハンマーヘッド型やヘアピン型などのスモールリボザイムなどが含まれる(タンパク質核酸酵素,35巻,2191頁,1990年)。ハンマーヘッド型リボザイムについては、例えば、FEBS Lett.,228巻,228頁,1988年;FEBS Lett.,239巻,285頁,1988年;タンパク質核酸酵素,35巻,2191頁,1990年;Nucl.Acids Res.,17巻,7059頁,1989年などを参照することができる。また、ヘアピン型リボザイムについては、例えば、Nature,323巻,349頁,1986年;Nucl.Acids Res.,19巻,6751頁,1991年;化学と生物,30巻,112頁,1992年などを参照することができる。
上記リボザイム活性を有するポリヌクレオチドは、上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質としては、例えば、(a)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物またはその塩、(c)本発明で用いられるタンパク質Bに対する抗体、(f)本発明で用いられるタンパク質Bに対してドミナントネガティブに作用する本発明で用いられるタンパク質Bの変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドなどが挙げられる。
(a)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物またはその塩は、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質として好適に使用することができる。本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物またはその塩としては、本発明で用いられるタンパク質Bの有する活性(例、脂肪酸合成酵素活性)を阻害しうるものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質Bに結合し、その活性を阻害する化合物またはその塩などが挙げられる。このような化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物であってもよい。該化合物は、新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。該化合物の塩としては、前記した本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物の塩と同様のものが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物またはその塩としては、低分子化合物が好ましい。
本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物またはその塩としては、例えば、Cerulenin、C75またはそれらの塩などが挙げられ、Cerulenin、C75またはそれらの塩が好ましい。
上記化合物またはその塩は、前述した本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩と同様にして製剤化し、投与することができる。
(c)本発明で用いられるタンパク質Bに対する抗体、好ましくは本発明で用いられるタンパク質Bの活性を中和(減退または消失)する作用を有する抗体(中和抗体)は、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質として好適に使用することができる。
上記抗体は、前述した本発明で用いられるタンパク質Aに対する抗体と同様にして製剤化し、投与することができる。
(f)本発明で用いられるタンパク質Bに対してドミナントネガティブに作用する本発明で用いられるタンパク質Bの変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドは、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質として好適に使用することができる。本明細書において、「本発明で用いられるタンパク質Bに対してドミナントネガティブに作用するタンパク質Bの変異体」とは、それをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害(消失もしくは低下)させる作用を有するタンパク質を意味する(多比良和誠編,遺伝子の機能阻害実験法,羊土社,26−32頁,2001年など参照)。
上記本発明で用いられるタンパク質Bの変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドは、常套手段に従って製剤化し、投与することができる。
本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害するものであれば特に制限はないが、例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAへの転写を阻害する物質、(ii)本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害する物質などが挙げられる。(i)本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAへの転写を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAへの転写を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写への転写に関与する因子に結合し、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写を阻害する物質などが挙げられる。(ii)本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳に関与する因子に結合し、本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害する物質などが挙げられる。このような本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する物質としては、具体的には、例えば、(b)本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する化合物またはその塩、(d)本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、(e)本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAなど)、(g)本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対してリボザイム活性を有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。
(b)本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する化合物またはその塩は、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する化合物またはその塩としては、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害しうるものであればよく特に制限はないが、例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAへの転写を阻害する化合物、(ii)本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害する化合物などが挙げられる。(i)本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAへの転写を阻害する化合物としては、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写に関与する因子に結合し、転写を阻害する化合物などが挙げられる。(ii)本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害する化合物としては、本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、、本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳に関与する因子に結合し、翻訳を阻害する化合物などが挙げられる。
本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する化合物またはその塩としては、低分子化合物が好ましい。
本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する化合物またはその塩としては、例えば、Cerulenin、C75またはそれらの塩などが挙げられ、Cerulenin、C75またはそれらの塩が好ましい。
上記化合物またはその塩は、前述した本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する化合物またはその塩と同様にして製剤化し、投与することができる。
(d)本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチドは、低毒性であり、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子の発現を抑制することができ、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このようなアンチセンスポリヌクレオチドとしては、上述したものなどが用いられる。
上記アンチセンスポリヌクレオチドは、前述した本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
(e)本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAなど)は、低毒性であり、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子の翻訳を抑制することができ、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このような、本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNAとしては、本発明で用いられるタンパク質をコードするRNAの一部を含有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNA(small(short)interfering RNA)、shRNA(small(short)hairpin RNA)など)などが挙げられる。
このような二重鎖RNAは、本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNAと同様の方法により、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。
本発明で用いられるRNAi作用を有する二重鎖RNAの長さは、通常、17〜30塩基、好ましくは19〜27塩基、より好ましくは20〜22塩基である。
上記二重鎖RNAは、上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
(g)本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対してリボザイム活性を有するポリヌクレオチドは、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このようなリボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine,7巻,221頁,2001年;FEBS Lett.,228巻,228頁,1988年;FEBS Lett.,239巻,285頁,1988年;Nucl.Acids.Res.,17巻,7059頁,1989年;Nature,323巻,349頁,1986年;Nucl.Acids.Res.,19巻,6751頁,1991年;Protein Eng.3巻,733頁,1990年;Nucl.Acids Res.,19巻,3875頁,1991年;Nucl.Acids Res.,19巻,5125頁,1991年;Biochem.Biophys.Res.Commun.,186巻,1271頁,1992年など参照)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、本発明で用いられるタンパク質BをコードするRNAの一部に公知のリボザイムを連結することによって製造することができる。本発明で用いられるタンパク質BをコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得る本発明のRNA上の切断部位に近接した部分(RNA断片)が挙げられる。上記リボザイムには、グループIイントロン型やRNasePに含まれるM1 RNAなどのラージリボザイム、ハンマーヘッド型やヘアピン型などのスモールリボザイムなどが含まれる(タンパク質核酸酵素,35巻,2191頁,1990年)。ハンマーヘッド型リボザイム、ヘアピン型リボザイムについては、前述した文献などを参照することができる。
上記リボザイム活性を有するポリヌクレオチドは、上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
上記本発明の癌の予防・治療剤などの医薬としては、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩と本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物またはその塩とを組み合わせてなる癌の予防・治療剤、癌細胞のアポトーシス促進剤、癌細胞の増殖抑制剤などが好ましい。
また、(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質なども、本発明で用いられるタンパク質Aの活性または発現と、本発明で用いられるタンパク質Bの活性または発現とを同時に阻害することができるので、上記した本発明の癌の予防・治療剤、癌細胞のアポトーシス促進剤、癌細胞の増殖抑制剤などの医薬として好適に使用することができる。
さらに、(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質と、(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質とは、同一の物質であってもよい。
上記本発明の癌の予防・治療剤などの医薬は、本発明で用いられるタンパク質Aの活性または発現と、本発明で用いられるタンパク質Bの活性または発現とを同時に阻害することができる形態であればよい。例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを、一つの医薬組成物(例、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、注射剤、坐剤など)中に製剤化した配合剤としてもよい。また、本発明の癌の予防・治療剤などの医薬は、(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬とからなるキットであってもよい。この場合、(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬とは、本発明で用いられるタンパク質Aの活性または発現と本発明で用いられるタンパク質Bの活性または発現とを同時に阻害することができるかぎり時間差を置いて投与してもよいが、同時に投与するのが好ましい。
本発明の癌の予防・治療剤などの医薬における(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種との投与量の比率(または配合比)は、投与(または配合)される本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質の種類および/または組み合わせ、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、重量比で、約1:500〜500:1、好ましくは約1:100〜100:1、より好ましくは1:10〜10:1、特に好ましくは1:5〜5:1である。
本発明の(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを上述の剤として使用する場合、例えば上述した方法など、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記物質を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記物質を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とが、それぞれ含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記物質との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、肺癌の治療の目的で本発明の(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該物質を、それぞれ約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該物質の投与量は、対象疾患、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、肺癌の治療の目的で本発明の(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを注射剤の形で投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該物質を、それぞれ約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
また、上記本発明の癌の予防・治療剤などの医薬は、ホルモン療法剤、抗癌剤(例、化学療法剤、免疫療法剤、または細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤)など(以下、併用薬物と略記する)と併用して使用することができる。この際、投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、上記本発明の癌の予防・治療剤などの医薬と併用薬物の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせ等に応じて適宜選択することができる。
「ホルモン療法剤」としては、例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、ジエノゲスト、アソプリスニル、アリルエストレノール、ゲストリノン、ノメゲストロール、タデナン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキシフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン(例、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン等)、ERダウンレギュレーター(例、フルベストラント等)、ヒト閉経ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、LH−RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン等)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、アロマターゼ阻害薬(例、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン等)、抗アンドロゲン(例、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド等)、5α−レダクターゼ阻害薬(例、フィナステリド、デュタステリド、エプリステリド等)、副腎皮質ホルモン系薬剤(例、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン等)、アンドロゲン合成阻害薬(例、アビラテロン等)、レチノイドおよびレチノイドの代謝を遅らせる薬剤(例、リアロゾール等)などが挙げられる。LH−RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン等)が好ましい。
「化学療法剤」としては、例えばアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤などが挙げられる。
「アルキル化剤」としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシンなどが挙げられる。
「代謝拮抗剤」としては、例えば、メルカプトプリン、6−メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5−FU系薬剤(例、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール等)、アミノプテリン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチンなどが挙げられる。
「抗癌性抗生物質」としては、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシンなどが挙げられる。
「植物由来抗癌剤」としては、例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタクセル、ビノレルビンなどが挙げられる。
「免疫療法剤(BRM)」としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾールなどが挙げられる。
「細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤」における「細胞増殖因子」としては、細胞の増殖を促進する物質であればどのようなものでもよく、通常、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子が用いられ、具体的には、(1)EGF(epidermal growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、EGF、ハレグリン(HER2リガンド)等〕、(2)インシュリンまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、インシュリン、IGF(insulin−like growth factor)−1、IGF−2等〕、(3)FGF(fibroblast growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、酸性FGF、塩基性FGF、KGF(keratinocyte growth factor)、FGF−10等〕、(4)その他の細胞増殖因子〔例、CSF(colony stimulating factor)、EPO(erythropoietin)、IL−2(interleukin−2)、NGF(nerve growth factor)、PDGF(platelet−derived growth factor)、TGF β(transforming growth factor β)、HGF(hepatocyte growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)等〕などが挙げられる。
「細胞増殖因子の受容体」としては、前記の細胞増殖因子と結合能を有する受容体であればいかなるものであってもよく、具体的には、EGF受容体、ハレグリン受容体(HER2)、インシュリン受容体、IGF受容体、FGF受容体−1またはFGF受容体−2などが挙げられる。
「細胞増殖因子の作用を阻害する薬剤」としては、トラスツズマブ(ハーセプチン(商標);HER2抗体)、メシル酸イマチニブ、ZD1839またはセツキシマブ、VEGFに対する抗体(例、ベバシツマブ)、VEGF受容体に対する抗体、ゲフィチニブ、エルロチニブなどが挙げられる。
前記の薬剤の他に、L−アスパラギナーゼ、アセグラトン、塩酸プロカルバジン、プロトポルフィリン・コバルト錯塩、水銀ヘマトポルフィリン・ナトリウム、トポイソメラーゼI阻害薬(例、イリノテカン、トポテカン等)、トポイソメラーゼII阻害薬(例えば、ソブゾキサン等)、分化誘導剤(例、レチノイド、ビタミンD類等)、血管新生阻害薬(例、サリドマイド、SU11248等)、α−ブロッカー(例、塩酸タムスロシン、ナフトピジル、ウラピジル、アルフゾシン、テラゾシン、プラゾシン、シロドシン等)セリン・スレオニンキナーゼ阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬(例、アトラセンタン等)、プロテアゾーム阻害薬(例、ボルテゾミブ等)、Hsp90阻害薬(例、17−AAG等)、スピロノラクトン、ミノキシジル、11α―ヒドロキシプロゲステロン、骨吸収阻害・転移抑制薬(例、ゾレドロン酸、アレンドロン酸、パミドロン酸、エチドロン酸、イバンドロン酸、クロドロン酸)なども用いることができる。
本明細書および配列表において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Sec :セレノシステイン(selenocysteine)
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
Tos :p−トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2−Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェニル
Trt :トリチル
Bum :t−ブトキシメチル
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−
1,2,3−ベンゾトリアジン
HONB :1−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ヒトACS1のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
ヒトACS1をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
ヒトACS3のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
ヒトACS3をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
ヒトACS4 isoform 1のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:6〕
ヒトACS4 isoform 1をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
ヒトACS4 isoform 2のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:8〕
ヒトACS4 isoform 2をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
ヒトACS5 isoform aのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:10〕
ヒトACS5 isoform aをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
ヒトACS5 isoform bのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:12〕
ヒトACS5 isoform bをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
ヒトACS6 isoform aのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:14〕
ヒトACS6 isoform aをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
ヒトACS6 isoform bのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:16〕
ヒトACS6 isoform bをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:17〕
ヒトFASのアミノ酸配列を示す。(GeneBank NP_004095)
〔配列番号:18〕
ヒトFASをコードするcDNAの塩基配列を示す。(GeneBank NM_004104)
〔配列番号:19〕
実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:20〕
実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素、脂肪酸合成酵素(以下、これらを本発明で用いられるタンパク質と称することもある)は、ヒトや温血動物(例、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例、網膜細胞、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、血小板など)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、網膜、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など、または血球系の細胞もしくはその培養細胞(例えば、MEL、M1、CTLL−2、HT−2、WEHI−3、HL−60、JOSK−1、K562、ML−1、MOLT−3、MOLT−4、MOLT−10、CCRF−CEM、TALL−1、Jurkat、CCRT−HSB−2、KE−37、SKW−3、HUT−78、HUT−102、H9、U937、THP−1、HEL、JK−1、CMK、KO−812、MEG−01など)に由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。
アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素としては、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13および配列番号:15で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
脂肪酸合成酵素としては、配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15または配列番号:17で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15または配列番号:17で表わされるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えばアシル−CoA合成酵素活性などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、アシル−CoA合成酵素活性などが同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
アシル−CoA合成酵素活性の測定は、自体公知の方法、例えば、J.Biol.Chem.,256巻、5702−5707頁,1981年に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。具体的には、本発明で用いられるタンパク質を、0.2M Tris−HCl緩衝液(pH7.5)、2.5mM ATP、8mM MgCl2、2mM EDTA、20mM NaF、0.1%(w/v)Triton X−100、10μM[1−14C]パルミチン酸(5μCi/μ mol)および0.5mM coenzyme A(CoA)を含む0.5mlの溶液中において、35℃で10分間反応させる。反応はCoAを加えることにより開始し、イソプロパノール:n−ヘプタン:1M硫酸(40:10:1,v/v)を2.5ml加えることにより停止する。反応停止後、0.5mlの水および2.5mlのn−ヘプタンを加えて未反応の脂肪酸を含む有機溶媒相を除き、さらに、水相を2.5mlのn−ヘプタンで3回洗浄し、水相に残った放射活性をシンチレーションカウンターで測定する。
配列番号:17で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号:17で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:17で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば脂肪酸合成酵素活性などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、脂肪酸合成酵素活性などが同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
脂肪酸合成酵素活性の測定は、自体公知の方法、例えば、Nepokroeff,C.M.et al.,Methods Enzymol.,26巻,37−39頁,1975年に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。具体的には、本発明で用いられるタンパク質を、0.5Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、0.2mM マロニル−CoA、0.066mM アセチル−CoA、0.2mM NADPHを含む1mlの反応溶液中において30℃で5分間反応させ、反応前後の340nmの吸光度を測定し、それらの吸光度の値の差から酵素活性を算出する。
また、本発明で用いられるタンパク質としては、例えば、(1)(i)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテイン、(2)(i)配列番号:17で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:17で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:17で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:17で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置としては、とくに限定されない。
本明細書におけるタンパク質は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質をはじめとする、本発明で用いられるタンパク質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明で用いられるタンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明で用いられるタンパク質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
本発明で用いられるタンパク質の具体例としては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:9で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:11で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:13で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:17で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質などがあげられる。
本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドとしては、前記した本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドであって、好ましくは、前記した本発明で用いられるタンパク質と同様の性質を有するものであればいずれのものでもよい。
例えば、本発明で用いられるタンパク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、さらに好ましくは70個以上、より好ましくは100個以上、最も好ましくは200個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが用いられる。
また、本発明で用いられる部分ペプチドは、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入され、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、本発明で用いられる部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
さらに、本発明で用いられる部分ペプチドには、前記した本発明で用いられるタンパク質と同様に、C末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有しているもの、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明で用いられる部分ペプチドは抗体作成のための抗原としても用いることができる。
本発明で用いられるタンパク質または部分ペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から自体公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、タンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩、またはそのアミド体の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質または部分ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt,HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(C1−6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、t−ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
タンパク質または部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質または部分ペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質または部分ペプチドとを製造し、これらのタンパク質またはペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質またはペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質またはペプチドを得ることができる。この粗タンパク質またはペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質またはペプチドのアミド体を得ることができる。
タンパク質またはペプチドのエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質またはペプチドのアミド体と同様にして、所望のタンパク質またはペプチドのエステル体を得ることができる。
本発明で用いられる部分ペプチドまたはそれらの塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明で用いられるタンパク質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明で用いられる部分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の(i)〜(v)に記載された方法が挙げられる。
(i)M.BodanszkyおよびM.A.Ondetti、ペプチド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience Publishers,New York(1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide),Academic Press,New York(1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株)(1975年)
(iv)矢島治明および榊原俊平、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、205、(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明で用いられる部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、前述した本発明で用いられるタンパク質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
本発明で用いられるタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、(1)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14もしくは配列番号:16で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14もしくは配列番号:16で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13もしくは配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードするDNA、または(2)配列番号:18で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:18で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:17で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14または配列番号:16で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14または配列番号:16で表される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:18で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:18で表される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning 2nd(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:2で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:4で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:6で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:8で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:9で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:10で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:11で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:12で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:13で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:14で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:16で表される塩基配列を含有するDNAなどが、配列番号:17で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:18で表される塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
本発明で用いられる部分ペプチドをコードするDNAとしては、前述した本発明で用いられる部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
本発明で用いられる部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16もしくは配列番号:18で表される塩基配列を含有するDNAの一部分を有するDNA、または配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16もしくは配列番号:18で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、本発明で用いられるタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAの一部分を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16もしくは配列番号:18で表される塩基配列とハイブリダイズできるDNAは、前記と同意義を示す。
ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様のものが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質、部分ペプチド(以下、これらをコードするDNAのクローニングおよび発現の説明においては、これらを単に本発明で用いられるタンパク質と略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明で用いられるタンパク質をコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明で用いられるタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、Molecular Cloning 2nd Ed(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
DNAの塩基配列の変換は、PCR、公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))等を用いて、ODA−LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化されたタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明で用いられるタンパク質の発現ベクターは、例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ii)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明で用いられるタンパク質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明で用いられるタンパク質をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,60巻,160(1968)〕,JM103〔Nucleic Acids Research,9巻,309(1981)〕,JA221〔Journal of Molecular Biology,120巻,517(1978)〕,HB101〔Journal of Molecular Biology,41巻,459(1969)〕,C600〔Genetics,39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24巻,255(1983)〕,207−21〔Journal of Biochemistry,95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn,J.L.ら、In Vivo,13,213−217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、Nature,315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr−)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,マウスATDC5細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69巻,2110(1972)やGene,17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、Molecular & General Genetics,168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、Methods in Enzymology,194巻,182−187(1991)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology,6,47−55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール 263−267(1995)(秀潤社発行)、Virology,52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),Journal of Experiments in Molecular Genetics,431−433,Cold Spring Harbor Laboratory,New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian,K.L.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter,G.A.らProc.Natl.Acad.Sci.USA,81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace,T.C.C.,Nature,195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔Science,122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔Virology,8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association 199巻,519(1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外に本発明で用いられるタンパク質を生成せしめることができる。
上記培養物から本発明で用いられるタンパク質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
本発明で用いられるタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるタンパク質の精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られるタンパク質が遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するタンパク質を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして生成する本発明で用いられるタンパク質の存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッティングなどにより測定することができる。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩(以下、抗体の説明においては、これらを単に本発明で用いられるタンパク質と略記する場合がある)に対する抗体は、本発明で用いられるタンパク質を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明で用いられるタンパク質は、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔Nature、256、495(1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの温血動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、タンパク質抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したタンパク質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(タンパク質抗原)自体、あるいはそれとキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明で用いられるタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
本発明で用いられるタンパク質または部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド(好ましくはDNA)(以下、アンチセンスポリヌクレオチドの説明においては、これらのDNAを本発明で用いられるDNAと略記する場合がある)の塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスポリヌクレオチドとしては、本発明で用いられるDNAの塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスポリヌクレオチドであってもよいが、アンチセンスDNAが好ましい。
本発明で用いられるDNAに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、本発明で用いられるDNAに相補的な塩基配列(すなわち、本発明で用いられるDNAの相補鎖)の全塩基配列あるいは部分塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。特に、本発明で用いられるDNAの相補鎖の全塩基配列うち、(i)翻訳阻害を指向したアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、本発明で用いられるタンパク質のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレオチドが、(ii)RNaseHによるRNA分解を指向するアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、イントロンを含む本発明で用いられるDNAの全塩基配列の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレオチドがそれぞれ好適である。
具体的には、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16もしくは配列番号:18で表わされる塩基配列を含有するDNAの塩基配列に相補的な、もしくは実質的に相補的な塩基配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチド、好ましくは例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16もしくは配列番号:18で表わされる塩基配列を含有するDNAの塩基配列に相補的な塩基配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチド(より好ましくは、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16もしくは配列番号:18で表わされる塩基配列を含有するDNAの塩基配列に相補な塩基配列を有するアンチセンスポリヌクレオチド)が挙げられる。
アンチセンスポリヌクレオチドは通常、10〜40個程度、好ましくは15〜30個程度の塩基から構成される。
ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンスDNAを構成する各ヌクレオチドのりん酸残基(ホスフェート)は、例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾りん酸残基に置換されていてもよい。また、各ヌクレオチドの糖(デオキシリボース)は、2’−O−メチル化などの化学修飾糖構造に置換されていてもよいし、塩基部分(ピリミジン、プリン)も化学修飾を受けたものであってもよく、配列番号:2で表わされる塩基配列を有するDNAにハイブリダイズするものであればいずれのものでもよい。これらのアンチセンスポリヌクレオチドは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
本発明に従えば、本発明で用いられるタンパク質遺伝子の複製または発現を阻害することのできる該遺伝子に対応するアンチセンスポリヌクレオチド(核酸)を、クローン化した、あるいは決定されたタンパク質をコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。かかるアンチセンスポリヌクレオチドは、本発明で用いられるタンパク質遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成または機能を阻害することができるか、あるいは本発明で用いられるタンパク質関連RNAとの相互作用を介して本発明で用いられるタンパク質遺伝子の発現を調節・制御することができる。本発明で用いられるタンパク質関連RNAの選択された配列に相補的なポリヌクレオチド、および本発明で用いられるタンパク質関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、生体内および生体外で本発明で用いられるタンパク質遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列または核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ヌクレオチド、塩基配列または核酸とタンパク質との間で「対応する」とは、ヌクレオチド(核酸)の配列またはその相補体から誘導される(指令にある)タンパク質のアミノ酸を通常指している。タンパク質遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどは、好ましい対象領域として選択しうるが、タンパク質遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドとの関係については、目的核酸が対象領域とハイブリダイズすることができる場合は、その目的核酸は、当該対象領域のポリヌクレオチドに対して「アンチセンス」であるということができる。アンチセンスポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。このような修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンまたは脂肪族基などで置換されているか、またはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、RNA、DNAまたは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては、核酸の硫黄誘導体、チオホスフェート誘導体、ポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものなどが挙げられる。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、例えば、以下のように設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンスポリヌクレオチドをより安定なものにする、アンチセンスポリヌクレオチドの細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、また、もし毒性があるような場合はアンチセンスポリヌクレオチドの毒性をより小さなものにする。このような修飾は、例えばPharm Tech Japan,8巻,247頁または395頁,1992年、Antisense Research and Applications,CRC Press,1993年などで数多く報告されている。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端または5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端または5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンスポリヌクレオチドの阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、または本発明で用いられるタンパク質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。
以下に、本発明の癌の予防・治療剤などの医薬について詳細に説明する。
なお、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13または配列番号:15で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質を「本発明で用いられるタンパク質A」、配列番号:17で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質を「本発明で用いられるタンパク質B」と略記することもある。
また、アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素を「本発明で用いられるタンパク質A」、脂肪酸合成酵素を「本発明で用いられるタンパク質B」と称することもある。
本発明で用いられるタンパク質Aの活性または発現と、本発明で用いられるタンパク質Bの活性または発現を同時に阻害することにより、癌細胞のアポトーシスを選択的かつ強力に誘導し、癌細胞を選択的かつ効果的に死滅させることができる。よって、(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性(例、アシル−CoA合成酵素活性)を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性(例、脂肪酸合成酵素活性)を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる医薬などは、例えば、癌(例、脳腫瘍、下垂体腺腫、神経膠腫、聴神経鞘腫、網膜肉腫、甲状腺癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、胸腺腫、中皮腫、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、胃癌、食道癌、十二指腸癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、肝細胞癌、膵癌、膵内分泌腫瘍、胆管癌、胆嚢癌、陰茎癌、腎臓癌、腎盂癌、尿管癌、腎細胞癌、精巣腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、外陰癌、子宮癌、子宮頚部癌、子宮体部癌、子宮肉腫、絨毛性疾患、膣癌、卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、皮膚癌、悪性黒色腫、菌状息肉症、基底細胞腫、軟部肉腫、悪性リンパ腫、ホジキン病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、成人T細胞白血病、慢性骨髄増殖性疾患、膵内分泌腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、原発不明癌など)の予防・治療剤、癌細胞のアポトーシス促進剤、癌細胞の増殖抑制剤などとして安全な医薬として使用することができる。
(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性(例、アシル−CoA合成酵素活性)を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性(例、脂肪酸合成酵素活性)を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とは、同一の物質であってもよい。このような物質、すなわち(i’)本発明で用いられるタンパク質Aの活性または本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現と、(ii’)本発明で用いられるタンパク質Bの活性または本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現とを阻害する物質なども、本発明で用いられるタンパク質Aの活性または発現と、本発明で用いられるタンパク質Bの活性または発現とを同時に阻害することができるので、上記した本発明の癌の予防・治療剤、癌細胞のアポトーシス促進剤、癌細胞の増殖抑制剤などの医薬として好適に使用することができる。
本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質としては、例えば、(a)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩、(c)本発明で用いられるタンパク質Aに対する抗体、(f)本発明で用いられるタンパク質Aに対してドミナントネガティブに作用する本発明で用いられるタンパク質Aの変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドなどが挙げられる。
(a)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩は、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質として好適に使用することができる。本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩としては、本発明で用いられるタンパク質Aの有する活性(例、アシル−CoA合成酵素活性)を阻害しうる化合物またはその塩であればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質Aに結合し、その活性を阻害する化合物またはその塩などが挙げられる。このような化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物であってもよい。該化合物は、新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。該化合物の塩としては、例えば、生理学的に許容される金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。金属塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
このうち、生理学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合にはアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩,カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩,マグネシウム塩,バリウム塩など)などの無機塩、アンモニウム塩など、また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸など無機酸との塩、または酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。
本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩としては、低分子化合物が好ましい。
本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩としては、例えば、Triacsin C、2−ブロモパルミチン酸またはそれらの塩などが挙げられ、Triacsin Cまたはその塩が好ましい。
上記化合物またはその塩は、常套手段に従って製剤化し、投与することができる。
例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記物質を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記物質を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
(c)本発明で用いられるタンパク質Aに対する抗体、好ましくは本発明で用いられるタンパク質Aの活性を中和(減退または消失)する作用を有する抗体(中和抗体)は、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質として好適に使用することができる。
上記抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記抗体またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与(例、静脈注射)に適する剤形として提供される。好ましくは吸入剤として提供される。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
(f)本発明で用いられるタンパク質Aに対してドミナントネガティブに作用する本発明で用いられるタンパク質Aの変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドは、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質として好適に使用することができる。本明細書において、「本発明で用いられるタンパク質Aに対してドミナントネガティブに作用するタンパク質Aの変異体」とは、それが発現することによって、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害(消失もしくは低下)させる作用を有するタンパク質を意味する(多比良和誠編,遺伝子の機能阻害実験法,羊土社,26−32頁,2001年など参照)。
上記本発明で用いられるタンパク質Aの変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドは、常套手段に従って製剤化し、投与することができる。
本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害するものであれば特に制限はないが、例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAへの転写を阻害する物質、(ii)本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害する物質などが挙げられる。(i)本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAへの転写を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAへの転写を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写への転写に関与する因子に結合し、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写を阻害する物質などが挙げられる。(ii)本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳に関与する因子に結合し、本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害する物質などが挙げられる。このような本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する物質としては、具体的には、例えば、(b)本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する化合物またはその塩、(d)本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、(e)本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAなど)、(g)本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対してリボザイム活性を有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。
(b)本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する化合物またはその塩は、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する化合物またはその塩としては、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害しうるものであればよく特に制限はないが、例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAへの転写を阻害する化合物、(ii)本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害する化合物などが挙げられる。(i)本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAへの転写を阻害する化合物としては、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写に関与する因子に結合し、転写を阻害する化合物などが挙げられる。(ii)本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害する化合物としては、本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質AをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Aへの翻訳に関与する因子に結合し、翻訳を阻害する化合物などが挙げられる。
本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する化合物またはその塩としては、低分子化合物が好ましい。
本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する化合物またはその塩としては、例えば、Triacsin C、2−ブロモパルミチン酸またはそれらの塩などが挙げられ、Triacsin Cまたはその塩が好ましい。
上記化合物またはその塩は、常套手段に従って、例えば上記本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩と同様にして製剤化し、投与することができる。
(d)本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチドは、低毒性であり、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子の発現を抑制することができ、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このようなアンチセンスポリヌクレオチドとしては、上述したものなどが用いられる。
上記アンチセンスポリヌクレオチドは、自体公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。
また、例えば、前記のアンチセンスポリヌクレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。該アンチセンスポリヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。あるいは、エアロゾル化して吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記のアンチセンスポリヌクレオチドを単独またはリポゾームなどの担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下、関節腔内、癌病変部等に投与してもよい。
(e)本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAなど)は、低毒性であり、本発明で用いられるタンパク質Aをコードする遺伝子の翻訳を抑制することができ、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このような、本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNAとしては、本発明で用いられるタンパク質をコードするRNAの一部を含有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNA(small(short)interfering RNA)、shRNA(small(short)hairpin RNA)など)などが挙げられる。
このような二重鎖RNAは、公知の方法(例、Nature,411巻,494頁,2001年;特表2002−516062号公報;米国特許出願公開第2002/086356号明細書;Nature Genetics,24巻,180−183頁,2000年;Genesis,26巻,240−244頁,2000年;Nature,407巻,319−320頁,2002年;Genes & Dev.,16巻,948−958頁,2002年;Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,99巻,5515−5520頁,2002年;Science,296巻,550−553頁,2002年;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99巻,6047−6052頁,2002年;Nature Biotechnology,20巻,497−500頁,2002年;Nature Biotechnology,20巻,500−505頁,2002年;Nucleic Acids Res.,30巻,e46,2002年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。
本発明で用いられるRNAi作用を有する二重鎖RNAの長さは、通常、17〜30塩基、好ましくは19〜27塩基、より好ましくは20〜22塩基である。
上記二重鎖RNAは、上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
(g)本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対してリボザイム活性を有するポリヌクレオチドは、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このようなリボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine,7巻,221頁,2001年;FEBS Lett.,228巻,228頁,1988年;FEBS Lett.,239巻,285頁,1988年;Nucl.Acids.Res.,17巻,7059頁,1989年;Nature,323巻,349頁,1986年;Nucl.Acids.Res.,19巻,6751頁,1991年;Protein Eng.3巻,733頁,1990年;Nucl.Acids Res.,19巻,3875頁,1991年;Nucl.Acids Res.,19巻,5125頁,1991年;Biochem.Biophys.Res.Commun.,186巻,1271頁,1992年など参照)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、本発明で用いられるタンパク質AをコードするRNAの一部に公知のリボザイムを連結することによって製造することができる。本発明で用いられるタンパク質AをコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得る本発明のRNA上の切断部位に近接した部分(RNA断片)が挙げられる。上記リボザイムには、グループIイントロン型やRNasePに含まれるM1 RNAなどのラージリボザイム、ハンマーヘッド型やヘアピン型などのスモールリボザイムなどが含まれる(タンパク質核酸酵素,35巻,2191頁,1990年)。ハンマーヘッド型リボザイムについては、例えば、FEBS Lett.,228巻,228頁,1988年;FEBS Lett.,239巻,285頁,1988年;タンパク質核酸酵素,35巻,2191頁,1990年;Nucl.Acids Res.,17巻,7059頁,1989年などを参照することができる。また、ヘアピン型リボザイムについては、例えば、Nature,323巻,349頁,1986年;Nucl.Acids Res.,19巻,6751頁,1991年;化学と生物,30巻,112頁,1992年などを参照することができる。
上記リボザイム活性を有するポリヌクレオチドは、上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質としては、例えば、(a)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物またはその塩、(c)本発明で用いられるタンパク質Bに対する抗体、(f)本発明で用いられるタンパク質Bに対してドミナントネガティブに作用する本発明で用いられるタンパク質Bの変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドなどが挙げられる。
(a)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物またはその塩は、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質として好適に使用することができる。本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物またはその塩としては、本発明で用いられるタンパク質Bの有する活性(例、脂肪酸合成酵素活性)を阻害しうるものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質Bに結合し、その活性を阻害する化合物またはその塩などが挙げられる。このような化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物であってもよい。該化合物は、新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。該化合物の塩としては、前記した本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物の塩と同様のものが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物またはその塩としては、低分子化合物が好ましい。
本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物またはその塩としては、例えば、Cerulenin、C75またはそれらの塩などが挙げられ、Cerulenin、C75またはそれらの塩が好ましい。
上記化合物またはその塩は、前述した本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩と同様にして製剤化し、投与することができる。
(c)本発明で用いられるタンパク質Bに対する抗体、好ましくは本発明で用いられるタンパク質Bの活性を中和(減退または消失)する作用を有する抗体(中和抗体)は、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質として好適に使用することができる。
上記抗体は、前述した本発明で用いられるタンパク質Aに対する抗体と同様にして製剤化し、投与することができる。
(f)本発明で用いられるタンパク質Bに対してドミナントネガティブに作用する本発明で用いられるタンパク質Bの変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドは、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質として好適に使用することができる。本明細書において、「本発明で用いられるタンパク質Bに対してドミナントネガティブに作用するタンパク質Bの変異体」とは、それをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害(消失もしくは低下)させる作用を有するタンパク質を意味する(多比良和誠編,遺伝子の機能阻害実験法,羊土社,26−32頁,2001年など参照)。
上記本発明で用いられるタンパク質Bの変異体もしくはそれをコードするポリヌクレオチドは、常套手段に従って製剤化し、投与することができる。
本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害するものであれば特に制限はないが、例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAへの転写を阻害する物質、(ii)本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害する物質などが挙げられる。(i)本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAへの転写を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAへの転写を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写への転写に関与する因子に結合し、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写を阻害する物質などが挙げられる。(ii)本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害する物質としては、本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳に関与する因子に結合し、本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害する物質などが挙げられる。このような本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する物質としては、具体的には、例えば、(b)本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する化合物またはその塩、(d)本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、(e)本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAなど)、(g)本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対してリボザイム活性を有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。
(b)本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する化合物またはその塩は、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する化合物またはその塩としては、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害しうるものであればよく特に制限はないが、例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAへの転写を阻害する化合物、(ii)本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害する化合物などが挙げられる。(i)本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)から本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAへの転写を阻害する化合物としては、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子(DNA)からmRNAへの転写に関与する因子に結合し、転写を阻害する化合物などが挙げられる。(ii)本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害する化合物としては、本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳を阻害するものであればよく特に制限はないが、例えば、、本発明で用いられるタンパク質BをコードするmRNAから本発明で用いられるタンパク質Bへの翻訳に関与する因子に結合し、翻訳を阻害する化合物などが挙げられる。
本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する化合物またはその塩としては、低分子化合物が好ましい。
本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する化合物またはその塩としては、例えば、Cerulenin、C75またはそれらの塩などが挙げられ、Cerulenin、C75またはそれらの塩が好ましい。
上記化合物またはその塩は、前述した本発明で用いられるタンパク質Aの発現を阻害する化合物またはその塩と同様にして製剤化し、投与することができる。
(d)本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチドは、低毒性であり、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子の発現を抑制することができ、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このようなアンチセンスポリヌクレオチドとしては、上述したものなどが用いられる。
上記アンチセンスポリヌクレオチドは、前述した本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
(e)本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAなど)は、低毒性であり、本発明で用いられるタンパク質Bをコードする遺伝子の翻訳を抑制することができ、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このような、本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNAとしては、本発明で用いられるタンパク質をコードするRNAの一部を含有する二重鎖RNA(例、本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNA(small(short)interfering RNA)、shRNA(small(short)hairpin RNA)など)などが挙げられる。
このような二重鎖RNAは、本発明で用いられるタンパク質Aをコードするポリヌクレオチドに対してRNAi作用を有する二重鎖RNAと同様の方法により、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。
本発明で用いられるRNAi作用を有する二重鎖RNAの長さは、通常、17〜30塩基、好ましくは19〜27塩基、より好ましくは20〜22塩基である。
上記二重鎖RNAは、上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
(g)本発明で用いられるタンパク質Bをコードするポリヌクレオチドに対してリボザイム活性を有するポリヌクレオチドは、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を抑制することができるので、本発明で用いられるタンパク質Bの発現を阻害する物質として好適に使用することができる。このようなリボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine,7巻,221頁,2001年;FEBS Lett.,228巻,228頁,1988年;FEBS Lett.,239巻,285頁,1988年;Nucl.Acids.Res.,17巻,7059頁,1989年;Nature,323巻,349頁,1986年;Nucl.Acids.Res.,19巻,6751頁,1991年;Protein Eng.3巻,733頁,1990年;Nucl.Acids Res.,19巻,3875頁,1991年;Nucl.Acids Res.,19巻,5125頁,1991年;Biochem.Biophys.Res.Commun.,186巻,1271頁,1992年など参照)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、本発明で用いられるタンパク質BをコードするRNAの一部に公知のリボザイムを連結することによって製造することができる。本発明で用いられるタンパク質BをコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得る本発明のRNA上の切断部位に近接した部分(RNA断片)が挙げられる。上記リボザイムには、グループIイントロン型やRNasePに含まれるM1 RNAなどのラージリボザイム、ハンマーヘッド型やヘアピン型などのスモールリボザイムなどが含まれる(タンパク質核酸酵素,35巻,2191頁,1990年)。ハンマーヘッド型リボザイム、ヘアピン型リボザイムについては、前述した文献などを参照することができる。
上記リボザイム活性を有するポリヌクレオチドは、上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
上記本発明の癌の予防・治療剤などの医薬としては、本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する化合物またはその塩と本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する化合物またはその塩とを組み合わせてなる癌の予防・治療剤、癌細胞のアポトーシス促進剤、癌細胞の増殖抑制剤などが好ましい。
また、(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質なども、本発明で用いられるタンパク質Aの活性または発現と、本発明で用いられるタンパク質Bの活性または発現とを同時に阻害することができるので、上記した本発明の癌の予防・治療剤、癌細胞のアポトーシス促進剤、癌細胞の増殖抑制剤などの医薬として好適に使用することができる。
さらに、(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質と、(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質とは、同一の物質であってもよい。
上記本発明の癌の予防・治療剤などの医薬は、本発明で用いられるタンパク質Aの活性または発現と、本発明で用いられるタンパク質Bの活性または発現とを同時に阻害することができる形態であればよい。例えば、(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを、一つの医薬組成物(例、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、注射剤、坐剤など)中に製剤化した配合剤としてもよい。また、本発明の癌の予防・治療剤などの医薬は、(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬とからなるキットであってもよい。この場合、(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬とは、本発明で用いられるタンパク質Aの活性または発現と本発明で用いられるタンパク質Bの活性または発現とを同時に阻害することができるかぎり時間差を置いて投与してもよいが、同時に投与するのが好ましい。
本発明の癌の予防・治療剤などの医薬における(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種との投与量の比率(または配合比)は、投与(または配合)される本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質、本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質の種類および/または組み合わせ、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、重量比で、約1:500〜500:1、好ましくは約1:100〜100:1、より好ましくは1:10〜10:1、特に好ましくは1:5〜5:1である。
本発明の(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを上述の剤として使用する場合、例えば上述した方法など、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記物質を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記物質を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とが、それぞれ含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記物質との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、肺癌の治療の目的で本発明の(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該物質を、それぞれ約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該物質の投与量は、対象疾患、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、肺癌の治療の目的で本発明の(i)本発明で用いられるタンパク質Aの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Aの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)本発明で用いられるタンパク質Bの活性を阻害する物質、および本発明で用いられるタンパク質Bの遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを注射剤の形で投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該物質を、それぞれ約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
また、上記本発明の癌の予防・治療剤などの医薬は、ホルモン療法剤、抗癌剤(例、化学療法剤、免疫療法剤、または細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤)など(以下、併用薬物と略記する)と併用して使用することができる。この際、投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、上記本発明の癌の予防・治療剤などの医薬と併用薬物の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせ等に応じて適宜選択することができる。
「ホルモン療法剤」としては、例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、ジエノゲスト、アソプリスニル、アリルエストレノール、ゲストリノン、ノメゲストロール、タデナン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキシフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン(例、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン等)、ERダウンレギュレーター(例、フルベストラント等)、ヒト閉経ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、LH−RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン等)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、アロマターゼ阻害薬(例、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン等)、抗アンドロゲン(例、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド等)、5α−レダクターゼ阻害薬(例、フィナステリド、デュタステリド、エプリステリド等)、副腎皮質ホルモン系薬剤(例、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン等)、アンドロゲン合成阻害薬(例、アビラテロン等)、レチノイドおよびレチノイドの代謝を遅らせる薬剤(例、リアロゾール等)などが挙げられる。LH−RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン等)が好ましい。
「化学療法剤」としては、例えばアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤などが挙げられる。
「アルキル化剤」としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシンなどが挙げられる。
「代謝拮抗剤」としては、例えば、メルカプトプリン、6−メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5−FU系薬剤(例、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール等)、アミノプテリン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチンなどが挙げられる。
「抗癌性抗生物質」としては、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシンなどが挙げられる。
「植物由来抗癌剤」としては、例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタクセル、ビノレルビンなどが挙げられる。
「免疫療法剤(BRM)」としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾールなどが挙げられる。
「細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤」における「細胞増殖因子」としては、細胞の増殖を促進する物質であればどのようなものでもよく、通常、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子が用いられ、具体的には、(1)EGF(epidermal growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、EGF、ハレグリン(HER2リガンド)等〕、(2)インシュリンまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、インシュリン、IGF(insulin−like growth factor)−1、IGF−2等〕、(3)FGF(fibroblast growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、酸性FGF、塩基性FGF、KGF(keratinocyte growth factor)、FGF−10等〕、(4)その他の細胞増殖因子〔例、CSF(colony stimulating factor)、EPO(erythropoietin)、IL−2(interleukin−2)、NGF(nerve growth factor)、PDGF(platelet−derived growth factor)、TGF β(transforming growth factor β)、HGF(hepatocyte growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)等〕などが挙げられる。
「細胞増殖因子の受容体」としては、前記の細胞増殖因子と結合能を有する受容体であればいかなるものであってもよく、具体的には、EGF受容体、ハレグリン受容体(HER2)、インシュリン受容体、IGF受容体、FGF受容体−1またはFGF受容体−2などが挙げられる。
「細胞増殖因子の作用を阻害する薬剤」としては、トラスツズマブ(ハーセプチン(商標);HER2抗体)、メシル酸イマチニブ、ZD1839またはセツキシマブ、VEGFに対する抗体(例、ベバシツマブ)、VEGF受容体に対する抗体、ゲフィチニブ、エルロチニブなどが挙げられる。
前記の薬剤の他に、L−アスパラギナーゼ、アセグラトン、塩酸プロカルバジン、プロトポルフィリン・コバルト錯塩、水銀ヘマトポルフィリン・ナトリウム、トポイソメラーゼI阻害薬(例、イリノテカン、トポテカン等)、トポイソメラーゼII阻害薬(例えば、ソブゾキサン等)、分化誘導剤(例、レチノイド、ビタミンD類等)、血管新生阻害薬(例、サリドマイド、SU11248等)、α−ブロッカー(例、塩酸タムスロシン、ナフトピジル、ウラピジル、アルフゾシン、テラゾシン、プラゾシン、シロドシン等)セリン・スレオニンキナーゼ阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬(例、アトラセンタン等)、プロテアゾーム阻害薬(例、ボルテゾミブ等)、Hsp90阻害薬(例、17−AAG等)、スピロノラクトン、ミノキシジル、11α―ヒドロキシプロゲステロン、骨吸収阻害・転移抑制薬(例、ゾレドロン酸、アレンドロン酸、パミドロン酸、エチドロン酸、イバンドロン酸、クロドロン酸)なども用いることができる。
本明細書および配列表において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Sec :セレノシステイン(selenocysteine)
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
Tos :p−トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2−Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェニル
Trt :トリチル
Bum :t−ブトキシメチル
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−
1,2,3−ベンゾトリアジン
HONB :1−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ヒトACS1のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
ヒトACS1をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
ヒトACS3のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
ヒトACS3をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
ヒトACS4 isoform 1のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:6〕
ヒトACS4 isoform 1をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
ヒトACS4 isoform 2のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:8〕
ヒトACS4 isoform 2をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
ヒトACS5 isoform aのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:10〕
ヒトACS5 isoform aをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
ヒトACS5 isoform bのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:12〕
ヒトACS5 isoform bをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
ヒトACS6 isoform aのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:14〕
ヒトACS6 isoform aをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
ヒトACS6 isoform bのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:16〕
ヒトACS6 isoform bをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:17〕
ヒトFASのアミノ酸配列を示す。(GeneBank NP_004095)
〔配列番号:18〕
ヒトFASをコードするcDNAの塩基配列を示す。(GeneBank NM_004104)
〔配列番号:19〕
実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:20〕
実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
以下において実施例により本発明をより具体的にするが、この発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 ACS発現によるFAS阻害剤抵抗性の獲得
(1)ヒトACS5のクローニングと発現ベクターの構築
ヒトACS5遺伝子は、ヒト大腸癌HCT−15細胞cDNAよりPCRでクローニングした。ヒトACS5のクローニングには次の配列をプライマーとして用いた。
5’−AAAGAATTCTATGCTTTTTATCTTTAACTTTTTGTTTTCCC−3’(配列番号:19)
5’−AAAGGATCCATAATCCTGGATGTGCTCATACAGGC−3’(配列番号:20)
(なお、3’−末端にFLAGタグを連結させるため、終始コドンTAGをTATに置換した形でプライマーを設定した。)反応は、AmpliTaq DNA polymerase(アプライド・バイオシステムズ社)を用い、94℃ 30秒、65℃ 30秒、72℃ 4分を35サイクルで行なった。得られたcDNA断片はEcoRIおよびBamHI(タカラバイオ社)で両末端を切断した後、pFLAG−CMV5(コスモバイオ社)にクローニングしてpFLAG−CMV−ACS5を得て、そのDNA sequencingを行なった。その結果、得られたcDNAの配列は公知のヒトACS5(AB033899)と一致した。得られたACS5 cDNAは、3’末にFLAGタグを連結した形で、pFLAG−CMV−ACS5より切り出した後、レトロウイルスベクターpHa−IRES−DHFR(Kage K.et al.Int.J.Cancer,97巻,626−630頁,2002年)に組み込み、pHa−ACS5−FLAG−IRES−DHFRを構築した。
(2)ACS5の安定発現細胞の樹立
ACS5の安定発現細胞の樹立を以下のように行なった。前項の方法で構築したレトロウイルスベクターpHa−ACS5−FLAG−IRES−DHFRおよび空ベクターpHa−IRES−DHFRは、mammalian transfection kit(ストラタジーン)を用いてマウス繊維芽細胞PA317に導入し、ウイルス液を得た。さらに得られたウイルス液をヒトグリオーマSF268細胞(ATCC)に感染させ、選択薬剤であるメトトレキセート100ng/mlにて選択することにより、安定発現株SF268/ACS5およびコントロールとしてSF268/mockを得た。各細胞の細胞抽出液を抗FLAG−M2抗体(シグマ社)(およびコントロールとして、抗チューブリン抗体(シグマ社))によるウェスタンブロットにて解析し、SF268/ACS5において、ACS5蛋白質の安定発現を確認した。
(3)ACS発現による癌細胞におけるFAS阻害剤感受性変化の検討
検討においては、前項の方法で樹立したACS5安定高発現細胞SF268/ACS5および対照細胞であるSF268/mock細胞を用い、また細胞培養液としては、RPMI1640−10%FBS(ウシ胎児血清)−20mM HEPES(pH6.5)を用いた。SF268/mock細胞およびSF268/ACS5細胞を6−well plateに100000細胞/wellにて播種後、RPMI1640−10%FBS−20mM HEPES(pH6.5)にて7日間37℃で培養した。その後、薬剤無処理または、上記培地にFAS阻害剤として15μg/mlのセルレニン(Cerulenin)[(2R,3S,E,E)−2,3−epoxy−4−oxo−7,10−dodecadienamide](シグマ社)、または15μg/mlのC75[4−methylene−2−octyl−5−oxotetrahydrofuran−3−carboxylic acid](Alexis Biochemicals社)を添加し24時間処理した後、生存細胞数をトリパンブルー・イクスクルージョン法にて測定した。生存細胞数は、薬剤無処理のSF268/mock細胞の細胞数を100%として示す。
結果を図1に示す。
薬剤無処理において、コントロールのSF268/mock細胞に比べ、ACS5安定高発現細胞SF268/ACS5では有意な生存細胞の増加を認めた。さらに、FAS阻害剤に対する感受性を比較すると、コントロールのSF268/mock細胞では、セルレニンおよびC75による明らかな増殖抑制効果が認められたが、ACS5安定高発現細胞SF268/ACS5ではセルレニンおよびC75による増殖抑制効果は認められなかった。このことはACSを過剰に発現した癌細胞が、FAS阻害に対して抵抗性を獲得することを示している。
実施例2 ACS阻害剤とFAS阻害剤の併用効果の検証
肺癌細胞株であるNCI−H23(ATCC)を用いてACS阻害剤(Triacsin C[2,4,7−undecatrienal nitrosohydrazone])およびFAS阻害剤(CeruleninまたはC75)を用いた抗腫瘍作用の併用効果を検証した。NCI−H23細胞はRPMI1640−10%FBSで培養した。添加薬剤であるTriacsin C、CeruleninおよびC75はいずれもシグマ社から購入した。NCI−H23細胞を96−well plateに2000細胞/wellの濃度で播種し、1日後に上記培地に(A)Triacsin C、(B)Cerulenin、(C)C75、(D)Triacsin CおよびCerulenin、(E)Triacsin CおよびC75をそれぞれ添加し3日間処理した後、細胞の生存率をSulforhodamine B法(Skehan,P.et al.,J.Natl.Cancer Inst.,82巻,1107−1112頁,1990年)によって測定し、それぞれ薬剤無処理の結果と比較した。添加した薬剤濃度はTriacsin Cが0.3μM、Ceruleninが2μM、C75が2μMである。また実験はn=3で行った。その結果、上記(A)から(E)までの薬剤処理条件での生存細胞率は、薬剤無処理の生存細胞率を100%としたとき、(A)56.3±0.5%、(B)70.2±7.9%、(C)61.2±3.6%、(D)13.4±1.4%、(E)15.3±1.0%であった。これらの結果からACS阻害剤(Triacsin C)とFAS阻害剤(CeruleninまたはC75)を併用することにより、抗腫瘍効果が増強されることが示された。
実施例1 ACS発現によるFAS阻害剤抵抗性の獲得
(1)ヒトACS5のクローニングと発現ベクターの構築
ヒトACS5遺伝子は、ヒト大腸癌HCT−15細胞cDNAよりPCRでクローニングした。ヒトACS5のクローニングには次の配列をプライマーとして用いた。
5’−AAAGAATTCTATGCTTTTTATCTTTAACTTTTTGTTTTCCC−3’(配列番号:19)
5’−AAAGGATCCATAATCCTGGATGTGCTCATACAGGC−3’(配列番号:20)
(なお、3’−末端にFLAGタグを連結させるため、終始コドンTAGをTATに置換した形でプライマーを設定した。)反応は、AmpliTaq DNA polymerase(アプライド・バイオシステムズ社)を用い、94℃ 30秒、65℃ 30秒、72℃ 4分を35サイクルで行なった。得られたcDNA断片はEcoRIおよびBamHI(タカラバイオ社)で両末端を切断した後、pFLAG−CMV5(コスモバイオ社)にクローニングしてpFLAG−CMV−ACS5を得て、そのDNA sequencingを行なった。その結果、得られたcDNAの配列は公知のヒトACS5(AB033899)と一致した。得られたACS5 cDNAは、3’末にFLAGタグを連結した形で、pFLAG−CMV−ACS5より切り出した後、レトロウイルスベクターpHa−IRES−DHFR(Kage K.et al.Int.J.Cancer,97巻,626−630頁,2002年)に組み込み、pHa−ACS5−FLAG−IRES−DHFRを構築した。
(2)ACS5の安定発現細胞の樹立
ACS5の安定発現細胞の樹立を以下のように行なった。前項の方法で構築したレトロウイルスベクターpHa−ACS5−FLAG−IRES−DHFRおよび空ベクターpHa−IRES−DHFRは、mammalian transfection kit(ストラタジーン)を用いてマウス繊維芽細胞PA317に導入し、ウイルス液を得た。さらに得られたウイルス液をヒトグリオーマSF268細胞(ATCC)に感染させ、選択薬剤であるメトトレキセート100ng/mlにて選択することにより、安定発現株SF268/ACS5およびコントロールとしてSF268/mockを得た。各細胞の細胞抽出液を抗FLAG−M2抗体(シグマ社)(およびコントロールとして、抗チューブリン抗体(シグマ社))によるウェスタンブロットにて解析し、SF268/ACS5において、ACS5蛋白質の安定発現を確認した。
(3)ACS発現による癌細胞におけるFAS阻害剤感受性変化の検討
検討においては、前項の方法で樹立したACS5安定高発現細胞SF268/ACS5および対照細胞であるSF268/mock細胞を用い、また細胞培養液としては、RPMI1640−10%FBS(ウシ胎児血清)−20mM HEPES(pH6.5)を用いた。SF268/mock細胞およびSF268/ACS5細胞を6−well plateに100000細胞/wellにて播種後、RPMI1640−10%FBS−20mM HEPES(pH6.5)にて7日間37℃で培養した。その後、薬剤無処理または、上記培地にFAS阻害剤として15μg/mlのセルレニン(Cerulenin)[(2R,3S,E,E)−2,3−epoxy−4−oxo−7,10−dodecadienamide](シグマ社)、または15μg/mlのC75[4−methylene−2−octyl−5−oxotetrahydrofuran−3−carboxylic acid](Alexis Biochemicals社)を添加し24時間処理した後、生存細胞数をトリパンブルー・イクスクルージョン法にて測定した。生存細胞数は、薬剤無処理のSF268/mock細胞の細胞数を100%として示す。
結果を図1に示す。
薬剤無処理において、コントロールのSF268/mock細胞に比べ、ACS5安定高発現細胞SF268/ACS5では有意な生存細胞の増加を認めた。さらに、FAS阻害剤に対する感受性を比較すると、コントロールのSF268/mock細胞では、セルレニンおよびC75による明らかな増殖抑制効果が認められたが、ACS5安定高発現細胞SF268/ACS5ではセルレニンおよびC75による増殖抑制効果は認められなかった。このことはACSを過剰に発現した癌細胞が、FAS阻害に対して抵抗性を獲得することを示している。
実施例2 ACS阻害剤とFAS阻害剤の併用効果の検証
肺癌細胞株であるNCI−H23(ATCC)を用いてACS阻害剤(Triacsin C[2,4,7−undecatrienal nitrosohydrazone])およびFAS阻害剤(CeruleninまたはC75)を用いた抗腫瘍作用の併用効果を検証した。NCI−H23細胞はRPMI1640−10%FBSで培養した。添加薬剤であるTriacsin C、CeruleninおよびC75はいずれもシグマ社から購入した。NCI−H23細胞を96−well plateに2000細胞/wellの濃度で播種し、1日後に上記培地に(A)Triacsin C、(B)Cerulenin、(C)C75、(D)Triacsin CおよびCerulenin、(E)Triacsin CおよびC75をそれぞれ添加し3日間処理した後、細胞の生存率をSulforhodamine B法(Skehan,P.et al.,J.Natl.Cancer Inst.,82巻,1107−1112頁,1990年)によって測定し、それぞれ薬剤無処理の結果と比較した。添加した薬剤濃度はTriacsin Cが0.3μM、Ceruleninが2μM、C75が2μMである。また実験はn=3で行った。その結果、上記(A)から(E)までの薬剤処理条件での生存細胞率は、薬剤無処理の生存細胞率を100%としたとき、(A)56.3±0.5%、(B)70.2±7.9%、(C)61.2±3.6%、(D)13.4±1.4%、(E)15.3±1.0%であった。これらの結果からACS阻害剤(Triacsin C)とFAS阻害剤(CeruleninまたはC75)を併用することにより、抗腫瘍効果が増強されることが示された。
アシル−CoA合成酵素(ACS)ファミリーに属する酵素の活性または発現を、脂肪酸合成酵素(FAS)の活性または発現と同時に阻害することにより、癌細胞のアポトーシスを選択的かつ強力に誘導し、癌細胞を選択的かつ効果的に死滅させることができる。よって、1)(i)(a)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素に対する抗体、(d)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種と、(ii)(a)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)脂肪酸合成酵素に対する抗体、(d)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる医薬、2)(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、または(および)(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質を含有してなる医薬などは、例えば、癌(例、脳腫瘍、下垂体腺腫、神経膠腫、聴神経鞘腫、網膜肉腫、甲状腺癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、胸腺腫、中皮腫、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、胃癌、食道癌、十二指腸癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、肝細胞癌、膵癌、膵内分泌腫瘍、胆管癌、胆嚢癌、陰茎癌、腎臓癌、腎盂癌、尿管癌、腎細胞癌、精巣腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、外陰癌、子宮癌、子宮頚部癌、子宮体部癌、子宮肉腫、絨毛性疾患、膣癌、卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、皮膚癌、悪性黒色腫、菌状息肉症、基底細胞腫、軟部肉腫、悪性リンパ腫、ホジキン病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、成人T細胞白血病、慢性骨髄増殖性疾患、膵内分泌腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、原発不明癌など)の予防・治療剤、癌細胞のアポトーシス促進剤、癌細胞の増殖抑制剤、癌の転移・再発抑制剤などとして安全な医薬として使用することができる。
(i)(a)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素に対する抗体、(d)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種と、(ii)(a)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)脂肪酸合成酵素に対する抗体、(d)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種とが同一物質であってもよい。
(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質と(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質とが同一物質であってもよい。
[配列表]
(i)(a)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素に対する抗体、(d)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種と、(ii)(a)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)脂肪酸合成酵素に対する抗体、(d)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種とが同一物質であってもよい。
(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質と(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質とが同一物質であってもよい。
[配列表]
Claims (17)
- (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる癌の予防・治療剤。
- アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素が、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13および配列番号:15で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の予防・治療剤。
- アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素が、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9および配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の予防・治療剤。
- 脂肪酸合成酵素が、配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である請求項1記載の予防・治療剤。
- (i)(a)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素に対する抗体、(d)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種と、(ii)(a)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)脂肪酸合成酵素に対する抗体、(d)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる請求項1記載の予防・治療剤。
- アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩と脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩とを組み合わせてなる請求項1記載の予防・治療剤。
- (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、または(および)(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質を含有してなる癌の予防・治療剤。
- 癌の予防・治療剤が配合剤である請求項1記載の予防・治療剤。
- 予防・治療剤が、(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種を含有してなる医薬とからなるキットである請求項1記載の予防・治療剤。
- (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害し、かつ(ii)脂肪酸合成酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害することを特徴とする癌の予防・治療方法。
- (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種の有効量と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種の有効量とを哺乳動物に対して投与する癌の予防・治療方法。
- 癌の予防・治療剤を製造するための、(i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種との使用。
- (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する物質、およびアシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種と、(ii)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質から選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる癌細胞のアポトーシス促進剤または癌細胞の増殖抑制剤。
- (i)(a)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素に対する抗体、(d)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種と、(ii)(a)脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩、(b)脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、(c)脂肪酸合成酵素に対する抗体、(d)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、および(e)脂肪酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAまたはshRNAから選ばれる少なくとも一種とを組み合わせてなる請求項13記載の剤。
- アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性を阻害する化合物またはその塩と脂肪酸合成酵素の活性を阻害する化合物またはその塩とを組み合わせてなる請求項13記載の剤。
- (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素および脂肪酸合成酵素の活性を阻害する物質、または(および)(ii)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の遺伝子および脂肪酸合成酵素の遺伝子の発現を阻害する物質を含有してなる癌細胞のアポトーシス促進剤または癌細胞の増殖抑制剤。
- (i)アシル−CoA合成酵素ファミリーに属する酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害し、かつ(ii)脂肪酸合成酵素の活性または(および)該酵素の遺伝子の発現を阻害することを特徴とする癌細胞のアポトーシス促進方法または癌細胞の増殖抑制方法。
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