本発明は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置およびレーザ穿孔方法に関する。
従来、血液の採取または薬剤の投与を目的として、皮膚に小さな穴をあけるための技術として、レーザを用いて皮膚を穿孔する技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。レーザを用いれば、従来一般的に使用されていた針の交換作業が不要になり、また、針に比べて穿孔時の痛みも軽減されうるといった利点がある。
特許文献1記載のレーザ穿孔装置は、図1に示すように、レーザハウジング1から出射されたレーザ光2を、光学的なビームスプリッタ3を用いて分割することで、同時またはほぼ同時に皮膚の所望領域内に多数の穴をあけるようにしている。皮膚に多数の穴をあけることで、穿孔後、薬剤を、クレームやローション、絆創膏の形で皮膚に適用することが容易になる。
特開2004−195245号公報
特表2004−533866号公報
しかしながら、従来のレーザ穿孔装置においては、出射されたレーザ光を分割する際に、複数の平行光に分岐しているため、レーザ光の穿孔領域が広くなり、穿孔時の痛みが増大するおそれがある。これは、穿孔後の薬剤投与の便宜を考慮して、皮膚に多数の穴を効率的にあけることのみを目的とするためである。
皮膚の穿孔装置においては、針を用いる場合に限らず、レーザを用いる場合にも、いかにして穿孔時の苦痛を軽減するかは、実際問題として、最も重要な課題のひとつである。従来のレーザ穿孔装置においては、この点の考慮が不十分であり、今なお、穿孔時の痛みを軽減するための手法が広く求められている。
本発明は、簡単な構成で、皮膚穿孔時の痛みを軽減することができるレーザ穿孔装置およびレーザ穿孔方法を提供することを目的とする。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、1回の穿孔動作において同一の穿孔位置に複数のレーザ光を照射するように前記レーザ光源のレーザ出力を分割制御するレーザ出力制御手段と、を有する構成を採る。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、1回の穿孔動作において同一の穿孔位置に複数のレーザ光を照射するように前記レーザ光源のレーザ出力を分割制御するレーザ出力制御手段と、を有し、前記レーザ出力制御手段は、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を複数の光路に分岐するレーザ光分岐手段を含み、前記複数の光路に分岐されたレーザ光を前記同一の穿孔位置に向かって集光させる、構成を採る。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、1回の穿孔動作において同一の穿孔位置に複数のレーザ光を照射するように前記レーザ光源のレーザ出力を分割制御するレーザ出力制御手段と、を有し、前記レーザ出力制御手段は、前記レーザ光源をパルス制御するパルス制御手段を含み、パルス状のレーザ光を複数回前記同一の穿孔位置に照射する、構成を採る。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、1回の穿孔動作において同一の穿孔位置に複数のレーザ光を照射するように前記レーザ光源のレーザ出力を分割制御するレーザ出力制御手段と、を有し、前記レーザ出力制御手段は、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の強度を可変する制御回路を含み、時間とともに強度が小さくなるレーザ光を前記同一の穿孔位置に照射する、構成を採る。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、透過光量が異なる複数のフィルタと、を有し、前記複数のフィルタは、前記レーザ光源の光軸上に選択可能に設けられている、構成を採る。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源、を有し、前記レーザ光源は、1つの励起光源により複数のレーザ結晶を励起して複数のレーザ光を出射する、構成を採る。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔方法であって、1回の穿孔動作において同一の穿孔位置に複数のレーザ光を照射するようにレーザ光源のレーザ出力を分割制御する、ようにした。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔方法であって、レーザ光源から出射されたレーザ光を複数の光路に分岐し、分岐されたレーザ光を同一の穿孔位置に向かって集光させることにより、前記レーザ光源のレーザ出力を制御する、ようにした。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔方法であって、レーザ光源をパルス制御して、パルス状のレーザ光を複数回同一の穿孔位置に照射することにより、前記レーザ光源のレーザ出力を制御する、ようにした。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔方法であって、レーザ光源から出射されるレーザ光の強度を可変して、時間とともに強度が小さくなるレーザ光を同一の穿孔位置に照射することにより、前記レーザ光源のレーザ出力を制御する、ようにした。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔方法であって、透過光量が異なる複数のフィルタを、レーザ光源の光軸上に選択可能に設けることにより、前記レーザ光源のレーザ出力を制御する、ようにした。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔方法であって、1つの励起光源により複数のレーザ結晶を駆動して複数のレーザ光を出射することにより、レーザ光源のレーザ出力を制御する、ようにした。
本発明によれば、簡単な構成で、皮膚穿孔時の痛みを軽減することができる。
従来のレーザ穿孔装置における多重ビームスプリッタを示す図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置の第1の例を示す分解組立斜視図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置の第2の例を示す分解組立斜視図
図3の血液検査装置の側面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ発射装置の一例を示す外観斜視図
図5のレーザ発射装置の一構成例を示す断面図
図5のレーザ発射装置の他の構成例を示す断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ発射装置の他の例を示す部分切欠斜視図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサの一例を示す断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサの他の例を示す断面図
図9の血液センサの穿刺時の断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサのさらに他の例を示す断面図
図8の血液センサの透視平面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサのさらに他の例を示す透視平面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサのさらに他の例を示す透視平面図
図8の血液センサの分解平面図であり、図15Aはカバーの平面図、図15Bはスペーサの平面図、図15Cは基板の平面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットとその近傍を示す断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットを当該血液検査装置に装着するためのガイド部の一例を示す要部展開正面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットの一例を示す斜視図
図18の血液センサユニットにおけるホルダの下端近傍の一構成例を示す要部断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットの下端近傍の他の構成例を示す要部断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットの下端近傍のさらに他の例を示す要部断面図
図18の血液センサユニットの断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットの他の例を示す断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットのさらに他の例を示す断面図
図24の血液センサユニットの平面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ焦点からの穿刺対象の距離(X軸)とバーンパターン径(Y軸)の関係を示すグラフ
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における負圧室および負圧経路の一例を示す要部拡大断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における負圧室および負圧経路の他の例を示す要部拡大断面図
図27に示す負圧室の容積の説明図
図28に示す負圧室の容積の説明図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における電気回路部のブロック図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置を用いた検査手順の一例を示すフローチャート
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置を用いた検査手順の一例をより具体的に示す工程別断面図
図33Aに続く工程別断面図
図33Bに続く工程別断面図
図33Cに続く工程別断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置を用いた検査手順の他の例を示すフローチャート
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における負圧制御の一例を説明するための図
図35で説明される負圧制御による皮膚の盛り上がりの様子を模式的に示す図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における負圧制御の他の例を説明するための図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置に含まれるレーザ穿孔装置の一例を示す分解組立斜視図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ分岐制御の一例を示す図
図39のレーザ分岐制御を説明するための図
図39のレーザ分岐制御に使用可能なキューブ状光学素子の斜視図
図39のレーザ分岐制御に使用可能なキューブの一例を示す図であり、図42Aはレーザ光の分岐を三次元のイメージで示す図、図42Bはその分岐を実現するキューブの一例を示す斜視図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置においてレーザ光を斜め方向から照射して穿刺する様子を示す図
レーザ光の照射形のバリエーションを示す図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ出力制御の他の例を示す概略図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザパルス制御の一例を示す図
図46のレーザパルス制御による穿刺状態を示す断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ出力制御のさらに他の例を示す図であり、図48Aは回路図、図48Bはフラッシュランプへの入力電流の時間変化を示す図、図48Cはレーザ出力の時間変化を示す図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ出力制御のさらに他の例を示す図であり、図49Aは回路図、図49Bはフラッシュランプへの入力電流の時間変化を示す図、図49Cはレーザ出力の時間変化を示す図
本発明の血液検査装置の電源制御部の第1の例を示すブロック図
図50の電源制御部の制御手順の第1の例を示すフローチャート
図50の電源制御部の制御手順の第2の例を示すフローチャート
図50の電源制御部の制御手順の第3の例を示すフローチャート
図50の電源制御部の制御手順の第4の例を示すフローチャート
本発明の血液検査装置の電源制御部の第2の例を示すブロック図
図55の電源制御部の制御手順の第1の例を示すフローチャート
図55の電源制御部の制御手順の第2の例を示すフローチャート
本発明の血液検査装置の電源制御部の第3の例を示すブロック図
図58の電源制御部の制御手順の第1の例を示すフローチャート
図58の電源制御部の制御手順の第2の例を示すフローチャート
電池の残量に基づいて、レーザ発射装置への充電のための充電量を、段階的に設定する方法を説明するグラフ
電池の残量に基づいて、レーザ発射装置への充電のための充電量を、連続的に設定する方法を説明するグラフ
電池の残量に基づいて、レーザ発射装置への充電のための充電量を、可変曲線にあわせて設定する方法を説明するグラフ
充電量を変化させたときの、電池の電圧(Y軸)と電池残量(X軸)との関係を示すグラフ
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ分岐制御の他の例を示す図であり、図63Aは2分岐の場合を示す図、図63Bは4分岐の場合を示す図
図63のレーザ分岐制御に用いられる光ファイバ方向性結合器の構成を示す概略図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ分岐制御のさらに他の例を示す図
以下、図面に基づいて、本発明のレーザ穿孔装置を説明する。ここでは、本発明のレーザ穿孔装置を血液検査装置に適用した場合を例にとって説明する。なお、各図面において共通する部材には同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
装置全体図1
図2は、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置の全体構成の第1の例を示す分解組立斜視図である。
図2に示される血液検査装置31の下ケース32の内部には、レーザ発射装置33と、吸引ポンプ(負圧ポンプ)34a、ポンプ弁ユニット34b、および大気開放スイッチ34cで構成された負圧手段34と、電気部品に電力を供給する電池35と、これらの部品上に装着された電気回路部36と、電気回路部36の上に装着されるとともに、例えば、液晶で構成された表示部37などの部材が格納される。
各部材が格納された下ケース32に上ケース38が被せられて装置本体39が構成される。上ケース38には、透明の表示窓38aが、表示部37に対応した位置に設けられる。
装置本体39は、血液センサユニット44と、アダプタ40を介して接続される。アダプタ40の一方は円筒状のホルダであり、血液センサユニット44が挿抜自在に装着される。血液センサユニット44は、ホルダ41と、ホルダ41の内部に装着された血液センサ42とから構成される。血液センサユニット44の中央に設けられた窓43は、レーザ発射装置33のレーザ発射口からのレーザ光を通過させる部分である。窓43は、貫通孔であってもよく、レーザ光を透過する材料で形成された部材でもよい。
装置全体図2
図3は、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置の全体構成の第2の例を示す分解組立斜視図である。図4はその側面図である。図3および図4に示される血液検査装置31aは、負圧手段140を構成する負圧ポンプとして手動吸引できる手動ポンプを有する点で、図2に示される血液検査装置31と相違する。以下、この相違点について説明する。
血液検査装置31aは、手動ポンプ(負圧ポンプ)141と、手動ポンプ141を手動で駆動する手動ポンプノブ142とを含む負圧手段140を有する。大気開放スイッチ144は、ポンプ弁ユニット143で発生する負圧を大気に開放する。
手動ポンプノブ142は弓形状をしており、一方は支軸142aとされ、他方は作用部142bとされている(図4参照)。手動ポンプノブ142は、支軸142aを中心に回動することができる。作用部142bが手動ポンプ141に動力を伝達する。患者は、手動ポンプノブ142を、装置本体39と共に握り、作用部142bを上下運動させることができる。この上下運動により手動ポンプ141が動作して負圧が発生する。
作用部142bの上下運動により、皮膚の盛り上がりを確認しながら、適正な負圧を加えるようにするため、負圧室60(図16など参照)の内部を目視できるように、血液センサユニット44の外装を透明部材で形成することが好ましい。血液センサユニット44の外装をすべて透明部材で形成してもよいし、血液センサユニット44の先端41h側(負圧室60側)のみを透明部材で形成してもよい。手動ポンプノブ142の被把持部142cには、指の形の凹凸を設けて、滑りを防止してもよい。
負圧手段140を手動駆動とすることにより、負圧手段140を駆動する電源が不要となる。よって、電池35を長寿命化することができ、携帯用の血液検査装置に適する。
レーザ発射装置(レンズ含む)の態様1について
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは、皮膚を穿刺する手段としてレーザを用いる。レーザ光を皮膚に照射すると、皮膚の水のOH基にレーザ光が吸収されて瞬間的に熱が上昇して気化する。このときに周りの細胞も一緒に気化して、皮膚に穴が開く。
血液検査装置31、31aにはレーザ発射装置33が収納される。図5は、血液検査装置31、31aに収納されるレーザ発射装置33の外観斜視図である。また、図6Aおよび図6Bは、それぞれ、レーザ発射装置33の断面図である。図6Aでは、レーザ結晶33dは、部分透過鏡33fと全反射鏡33gが設置された壁に囲まれた内部に配置されているが、図6Bでは、レーザ結晶33dは、両側面に部分透過鏡33fと全反射鏡33gを備え、レーザ結晶33dは、筒体33bの外壁と内部壁(仕切り板)に取り付けられている。つまり、図6Bでは、レーザ結晶(レーザロッド)33dが長くなって内部壁(仕切り板)よりも前に伸長している。
レーザ発射装置33は、発振チューブ33aと、発振チューブ33aの前方に連結された円筒状の筒体33bとから構成される。筒体33bの前方中央にはレーザ発射口33cが設けられる。
発振チューブ33aの内部には、エルビウムをドーピングしたEr:YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)またはホロニウムをドーピングしたHo:YAGレーザ結晶33dと、キセノンフラッシュランプを用いた励起光源33eとが格納される。発振チューブ33aの一方の端には、部分透過鏡33fが装着される(特に図6A)。部分透過鏡33fの透過率は、約1%〜10%にすればよい。発振チューブ33aの他方の端には、99%〜100%の全反射鏡33gが装着される(図6A、図6B)。また、部分透過鏡33fや全反射鏡33gを用いずに、レーザ結晶33dの端面にスパッタなどで同じ特性を持つ膜を形成したものでもよい。
筒体33bの内部には凸レンズ(焦点レンズ)33hが装着される。凸レンズ33hは、レーザを血液センサ42の面の近傍に集光させる(詳細は後述)。全反射鏡33gとYAGレーザ結晶33dと部分透過鏡33fとレンズ33hとレーザ発射口33cとは、この順に配置される。
レーザ発射装置33からレーザ光が発射されるプロセスを説明する。励起光源33eから発射された励起光は、例えば、Er:YAGレーザ結晶33dの内部に入り、Er(エルビウム)イオンを励起してエネルギーの高い状態を作り出して反転分布状態になって、全反射鏡33gとYAGレーザ結晶33dと部分透過鏡33fの間を反射して共振するとともに増幅される。Ho(ホロニウム)の場合も同様である。増幅されたレーザ光の一部は、誘導放出により部分透過鏡33fを通過する。部分透過鏡33fを通過したレーザ光は、レンズ33hを通過してレーザ発射口33cから放射される。後述のように、レーザ発射口33cから放射されたレーザ光が皮膚を穿刺(照射)する。
レーザ発射装置の態様2について
図7にレーザ発射装置の別の例が示される。図7に示されるレーザ発射装置189は、1個のフラッシュランプ185を励起光源として、励起光を2種のレーザ結晶に照射する。このとき、それぞれの結晶からレーザ光が出力される。2種の結晶を用いることにより、レーザ光の強度や、波長の異なるレーザ光を出力することができる。
レーザ発射装置189は、図7に示すように、断面が楕円形をした筒体を2つ重ねた形状の筺体188と、筺体188の中央部に配置されたレーザを励起するためのフラッシュランプ185と、フラッシュランプ185の両側に配置されたレーザ発振のための第1の結晶186および第2の結晶187とを含む。楕円形状の筺体188には3つの焦点が存在する。筐体188は2つの楕円が重なった形状であるため、各々の楕円に2つの焦点を有するが、そのうち1つの焦点を共通な焦点となるように配置しているため、3つの焦点が存在する。3つの焦点のうち、一方の焦点に第1の結晶186を配置し、他方の焦点に第2の結晶187を配置する。そして、2つの焦点を共有する中央部にフラッシュランプ185を配置する。1つのフラッシュランプ185で、2つの結晶186、187のそれぞれからレーザ光を得ることができるので、レーザ発射装置の小型化と低価格化が図られる。
レーザの出力強度はフラッシュランプ185の発光強度にも比例するが、結晶186および結晶187の体積にも比例する。したがって、同じ径であっても長さの異なる2つの結晶を配置すれば、1つのフラッシュランプ185で、強度の異なる2つのレーザ光を得ることができる。
また、同じ体積の結晶を用いれば、同じ強さの2本のレーザ光を同時出力することができる。したがって、レーザ光を分岐しなくても(図40、図41参照)、同じ強度の2本のレーザ光で皮膚を穿刺することができる。この場合、分岐によるスプリッタやミラーによるエネルギー損失がなくなる。
組成の異なる2つの結晶(例えば、波長2.94μmのEr:YAGレーザの結晶、および波長1.06μmのNd:YAGの結晶)を配置すれば、波長の異なるレーザ光を得ることができる。異なる波長のレーザ光を、同じ位置に照射すれば、皮膚に深さの異なる傷をつけることができる。例えば、Er:YAGとNd:YAGとでは、OH基の吸収効率が異なる。そこで、吸収効率の高いEr:YAGで浅めの傷をつけ、Er:YAGよりも効率の低いNd:YAGで深めの傷をつけることができる。この性質を利用して、同時に2つのレーザ光を照射すると、より効率良く皮膚に傷をつけることができる。2つのレーザ光を照射する場合には、若干の時間差をつけて、Er:YAGとNd:YAGの順に照射することが好ましい。
レーザ発射装置189を用いれば、レーザ光の波長を選択して使用することができる。また、光学系を用いて2種類のレーザ光を同じ位置に照射するようにすれば、出力強度を向上させることができる。
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは、患者の皮膚を穿刺する手段として、皮膚に接触することなく穿刺できるレーザ発射装置33、189を用いているので、従来の血液検査装置で必要とされた穿刺針が不要となる。また、患者の皮膚と非接触の穿刺手段を用いるので、衛生的である。また、穿刺針は検査毎に交換される必要があったが、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aによる検査では、その交換作業も不要となる。
さらに、針による穿刺では必要とされた針を運動させる可動部品が、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aでは必要ないので、故障が少なくなる。また、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは必要な部品点数が少なくなるので、部品管理が容易である。また、レーザ発射口33cの前面に透明の防水壁を設けておけば、血液検査装置31、31a全体を丸洗いすることも可能となる。
血液センサについて
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは、穿刺された皮膚から流出した血液を取り込み、その血液成分などを検査するための血液センサを有する。
血液センサの第1の例
図8は、血液センサの第1の例の断面図である。図8に示される血液センサ42は、外形形状が円形または多角形である。血液センサ42を構成する基体45は、基板46と、基板46の上面に貼り合わされたスペーサ47と、スペーサ47の上面に貼り合わされたカバー48とで構成される。
基体45の略中央には、血液の貯留部49が設けられる。貯留部49は、基板46に設けられた孔46aと、スペーサ47に設けられた孔47aとに連通して形成される。貯留部49は、皮膚からの血液を採取するため、下方に向かって開口している。貯留部49の容積は特に限定されないが、例えば、0.904μLとすればよい。貯留部49には、供給路50の一方の端が連結される。供給路50の容積は特に限定されないが、例えば、0.144μLとすればよい。供給路50の内部には検出部51が配置される。
貯留部49に溜められた血液は毛細管現象で供給路50に導入され、検出部51に導かれる。供給路50の他端は空気孔52に連結されている。空気孔52の直径は、50μm〜250μm程度とすればよい。空気孔52の直径を小さくすれば、空気孔52からの血液の過剰な流出が抑えられる。また、空気孔52は、貯留部49に皮膚が密着した状態において、貯留部49内に負圧を加える負圧路としても作用する。
検出部51上に載置された試薬53は、検査対象に応じて適宜調製すればよい。例えば、0.01〜2.0wt%CMC(カルボキシルメチルセルロース)水溶液に、酵素(PQQ−GDH)を0.1〜5.0U/センサ、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、マルチトールを1〜50mM、タウリンを20〜200mMとなるようにそれぞれ添加して溶解させて調製した試薬溶液を、基板46に配置された検出部51上に滴下して、乾燥させて試薬53とする。
血液センサ42の貯留部49は、面49a(以下「天面」ともいう)で封鎖されている。
照射されたレーザ光が天面49aを透過するようにすれば、レーザ光によって穿刺された皮膚から流出した血液が、天面49aから流出することはなく、好ましい。天面49aをレーザ光が透過するには、カバー48をレーザ光が透過できる材質(例えば、ガラスやポリイミドなどのプラスチックまたは樹脂系材料が含まれる)で形成すればよい。
また、照射されたレーザ光が天面49aを透過できない場合は、そのレーザ光が天面49aを穿孔できればよい。レーザ光が天面49aを穿孔する場合は、基板46、スペーサ47およびカバー48は、同じ材質で形成されうる。
天面49aに形成された孔は、空気孔52とともに、負圧手段が貯留部49を負圧にするための負圧経路となることができる。
血液センサの第2の例
図9は、血液センサの第2の例の断面図である。図8に示される血液センサ42の貯留部49の天面49aは封鎖されているが、一方、図9に示される血液センサ103の貯留部49の天面は開放されている。
血液センサ103のカバー48には孔103bが形成されている。孔103bの直径(例えば、1.0mm)は、貯留部49の直径(例えば、2.0mm)よりも小さい直径であって、空気孔52の直径(50μm〜250μm)よりも大きいことが好ましい。孔103bは、貯留部49の天面中央に位置することが好ましい。レーザは、孔103bを通過して皮膚を穿刺する。孔103bを設けることにより、レーザの減衰を抑制することができる。よって、照射するレーザのエネルギーを小さくすることができる。
孔103bは、空気孔52とともに、負圧手段34、140が貯留部49を負圧にするための負圧経路となることができる。
図10に示すように、孔103bの内側に生じる血液16の表面張力が、皮膚穿刺により採取した血液16のカバー上面への流出を抑制する。血液16が貯留部49の内部に行き渡る。したがって、適正量の血液16を採取することができる。貯留部49を満たした血液16は、毛細管現象により供給路50に流入される。
孔103bを撥水性にしておけば、血液16は孔103bからさらに溢れにくくなる。よって、血液検査装置31、31aの内部が血液で汚染されることはない。
血液センサ103のカバー48の材質には、ポリエチレンテレフタート(PET)などを使用することもでき、基板46やスペーサ47と同様の材質を使用することができる。よって、材料管理が容易である。
レーザ光は貯留部49の孔103bを通過するが、孔103bの中心を通過してもよく、孔103bの中心からずれた位置を通過させてもよい。例えば、レーザ光を、孔103bの中心から、供給路50から遠い位置を通過させれば、皮膚13から流出した血液16が確実に貯留部49の内部を満たした後に、供給路50へ流入する。したがって、精度の高い測定ができる。
血液センサ103は、あらかじめ、貯留部49の天面に孔103bが形成されている。このようにあらかじめ孔103bが形成されているので、穿孔すべき箇所にレーザの軸を合わせる必要がない。よって、血液センサユニット44への血液センサ103の装着が容易となる。孔103bは0.05〜0.25mm程度と小さくすればよく、穿刺孔からの血液16の流出を抑制することが好ましい。
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aにおける血液センサ42、103は、図8および図9に示されたように、貯留部49と供給路50を有することが好ましい。供給路50の内壁面は親水性を有することが好ましい。検出部51が配置された供給路50に、血液をスムーズに送り込むためである。また、供給路50の内壁面の親水性は、貯留部49の内壁面の親水性よりも強いことが好ましい。貯留部49に貯留された血液を、スムーズに供給路50に供給するためである。
さらに、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aにおける血液センサ42、103は、図8および図9に示されたようにカバー48を有し、カバー48は貯留部49の天面を形成している。カバー48の上面48a、103a(レーザが照射される面)は、撥水性を有することが好ましい。また、カバー48の上面48a、103aの撥水性は、貯留部49の内壁面の撥水性よりも強いことが好ましい。貯留部49に貯留された血液が、カバー48に形成された孔(レーザ穿孔による孔または孔103b)から流出するのを防止するためである。
血液センサの第3の例
患者の皮膚13の湿り具合は、環境によって異なる。
一方、レーザで穿刺される皮膚13は、適度な水分を有していることが好ましい。そこで、レーザ穿刺する前の皮膚13の近傍をあらかじめ湿らすことにより、皮膚13に適度の水分を与えて湿り具合を一定にすることが好ましい。安定した条件で測定を行うためである。
図11には、血液センサ42(詳細は図8を参照)の皮膚13に当接する下面側に、水を貯留する水貯留部195を設けた血液センサ42aが示される。図11に示された血液センサ42aは、レーザ光が照射された時、またはレーザ光が照射される前に負圧手段34、140により皮膚が盛り上げられた時に、水貯留部195が破れて皮膚13に定量の水をかけて、皮膚を湿らせる。水貯留部195は、例えば水が収容されたPETなどのプラスチック材の容器であるか、もっと柔らかいバッグでも可能であり、水を浸み込ませたスポンジまたは綿状の部材であってもよい。ただし、レーザ光が通過する透過部分196には、水貯留部195を配置しないことが好ましい。水によってレーザ光の強度が減少するためである。
血液センサの透視平面図1
図12は、血液センサ42の透視平面図である。血液センサ42には、検出電極54〜57が配置され、貯留部49から空気孔52に向かって順に、検出電極57(Hct(ヘマトクリット)極)、検出電極56(対極)、検出電極54(作用極)、検出電極56(対極)、検出電極55(検知極)とされている。検出部51に検出電極54〜56が配置される。
検出電極54〜57のそれぞれは、接続電極54a〜57aに接続される。接続電極54a〜57aは、基板46の外周にまで延びる。接続電極54a〜57aのそれぞれには、接触部位54b〜57bが設けられている。さらに、接続電極56aには、接触部位56bに加えて接触部位56cも設けられ、2つの接触部位が形成されている。基準電極56dは、接続電極56a以外の接続電極(54a、55a、57a)に設けても構わない。
接触部位54b〜57b、および接触部位56cは、センサ42の外周近傍に略等間隔に配置される。
各接触部位54b〜57b、56cのうち、接触部位56bと接触部位56cとは導通しており、その他の接触部位同士は絶縁されている。
接触部位56cを基準接触部位、つまり基準電極56dとして用いて、各接続電極を特定することができる。つまり、隣り合う接触部位の絶縁抵抗を電気回路部36(図2参照)で測定し、絶縁抵抗が零となる接触部位を基準電極56dと特定する。基準電極56dを基準に、時計周りに接続電極56a、接続電極57a、接続電極54a、接続電極55aを特定する。
このように血液センサ42は基準電極56dを有するので、各接続電極を特定することができる。よって、装置本体39に配置された5つのコネクタそれぞれに、接触部位(54b〜57b、56c)が任意に接続されても、各接続電極が特定されて測定が可能となる。よって、血液センサ42(または血液センサ42を含む血液センサユニット44)を対称形として、無造作に装置本体39に装着することができ、装着作業が非常に容易となる。
基板46の外周上には、位置合わせ凹部46cを設けてもよい。位置合わせ凹部46cに対応して、スペーサ47とカバー48のそれぞれ外周上には、位置合わせ凹部47c、48cが設けられる。位置合わせ凹部46c〜48cにより、血液センサ42を血液センサユニット44の所定位置に合わせて装着することができる。
血液センサの透視平面図2
図13は、円形形状の血液センサの透視平面図である。図13に示された血液センサ101は、接続電極56aから所定のパターンを介して基準電極56dを形成した点で血液センサ42(図12参照)と相違している。以下において、この相違点を中心に説明する。
基準電極56dには、基準接触部位56cが設けられる。基準接触部位56cおよび接触部位54b〜57bはそれぞれ、外周近傍に等間隔で配置される。つまり、接触部位54b、55b、56b、56c、57bで正五角形を形成している。
接続電極56aと基準電極56dの間はレーザで加工されたパターン56eで接続される。パターン56eの幅を変えることにより、接触部位56bと基準接触部位56cとの間の抵抗値を変化させることができる。基準電極56dは、接続電極54a〜57aの位置を特定する基準となる。
基準電極56dは、血液センサ101の製品仕様の識別に利用されうる。例えば、パターン56eの抵抗値が200オーム〜1000オームであれば検量線1を、抵抗値が1000オーム〜2000オームであれば検量線2を、抵抗値が2000オーム〜3000オームであれば検量線3をそれぞれ用いると設定し、自動でそのセンサの検量線を認識し、最適な検量線を用いて血糖値を測定する。
基準電極は、検量線の自動認識のほかにも、種々の製品仕様の識別について利用されうる。例えば、A社仕様、B社仕様のように、出荷先のユーザの識別に用いることもできる。
パターン56eで種々の値を有するインダクタを形成し、このインダクタを発振器を構成する共振器に接続して、インダクタの値の相違により発振周波数を変化させて、種々の情報を持たせることができる。
基準電極56dを設けることにより、血液センサユニット44を血液検査装置31、31aに装着するとき、装着方向を軸とする軸周りの角度を任意にして装着しても、各接続電極54a〜57aを特定することができる。したがって、血液センサユニット44の装着において、装着方向を目視などで合わせる必要がなく、装着が容易になる。
血液センサの透視平面図3
図14は、四角形状をした血液センサの透視平面図である。図14に示された血液センサ102の外形形状は四角形であるが、六角形や八角形などの多角形であってもよい。四角形や六角形にすると、材料取りの歩留まりが向上する。また、図14に示したように、四辺のうちの一辺に血液センサユニット44との位置合わせ凹部102aを設けて非対称形にしてもよい。凹部102aは、血液センサ102を血液センサユニット44に取り付けるときの基準となる。また、凹部102aに係合する血液センサユニット44側の凸部130f(図25参照)を基準にして、アダプタ40との位置合わせをすれば、基準電極56dを設けなくても接続電極54a〜57a位置を特定することができる。
接触部位54b〜57bは、四角形の基板102bの各角に設けられている。基板102bにはスペーサ102cおよびカバー102dが貼り合わされている。基板102bは基板46に対応し、スペーサ102cはスペーサ47に対応し、カバー102dはカバー48に対応する(図8参照)。
血液センサの分解平面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aに具備される血液センサ42(図8参照)の組み立ておよび材料について説明する。
図15は、血液センサ42の分解平面図である。図15Aはカバー48の平面図、図15Bはスペーサ47の平面図、図15Cは基板46の平面図である。
図15Cは、血液センサ42を構成する円形をした基板46の平面図である。基板46の直径は、約8.0mmとすればよい。基板46の材質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂であり、厚さは約0.075〜0.250mm(例えば、0.188mm)である。
基板46の上面には、検出電極54〜57、および検出電極54〜57のそれぞれから導出された接続電極54a〜57aが一体的に形成されている。検出電極および接続電極は、金や白金、パラジウムなどを材料として、スパッタリング法または蒸着法により導電層を形成し、レーザ加工して形成すればよい。
基板46の略中央に設けられた孔46aの直径は、約2.0mmとすればよい。孔46aの壁面は、供給路50よりも弱い親水性を有するか、またはカバー48の上面48aよりも弱い撥水性を有することが好ましい。
孔46aは、検出電極54〜57側から、凸金型を用いて打ち抜いて形成することが好ましい。検出電極54〜57側から打ち抜けば、検出電極54〜57に傷を付けにくいからである。また、打ち抜きにより孔46aにバリが生じたとしても、そのバリは下方(皮膚側)に向かう。したがって、貯留部49からの血液16の流出が防止される。基板46の外周上に設けられた位置合わせ用の凹部46cは、血液センサユニット44の筒体41eに形成された位置合わせ用凸部41j(ともに図16参照)とかみ合う。よって、血液センサ42の血液センサユニット44への装着位置が決定される。
図15Bは、スペーサ47の平面図である。スペーサ47の直径は、約5.2mmとすればよい。スペーサ47の材質はポリエチレンテレフタレートなどの樹脂であればよく、その厚さは、0.025〜0.25mm(例えば、0.1mm)であればよい。
スペーサ47の略中央に設けられた孔47aは、直径2.0mmであり、かつ基板46に設けられた孔46aに対応する位置に設けられる。孔47aの壁面は、供給路50よりも弱い親水性を有するか、またはカバー48の上面48aよりも弱い撥水性を有することが好ましい。貯留部49は、孔46aと孔47aとで形成される。
孔47aから外周方向へ向かってスリット47bが形成される。スリット47bは、血液の供給路50となる。スリット47bの壁面と、それに対応する基板46の上面も親水化処理されている。また、スリット47bの幅は約0.6mmとすればよく、長さは約2.4mmとすればよい。その結果、供給路50の容量は約0.144μLとなる。
したがって、供給路50の容量を小さくすれば、小容量の血液で血液検査ができるので、患者への負担も少なく、また患者へ与える恐怖心もない。
スペーサ47の外周上に設けられた位置合わせ用の凹部47cは、基板46に形成された位置合わせ用の凹部46cに対応した位置に形成される。
図15Aは、カバー48の平面図である。カバー48の直径は、約5.2mmとすればよい。カバー48の厚さは、約0.050〜0.125mm(例えば、0.075mm)とすればよい。
カバー48の材質は、レーザ光を吸収しない材質とすることができる。カバー48の材質の例には、ガラスやポリイミドなどのプラスチックが含まれる。レーザ光がカバー48で吸収されなければ、貯留部49の天面49aを通過して、皮膚を穿刺することができる。レーザ光により天面49aが穿孔されないので、血液が孔から流出せず、装置本体39の内部に血液16が流入しない。
カバー48の材質は、レーザ光を吸収する材質であってもよい。その場合には、照射されたレーザ光によってカバー48が穿孔されるか、または、レーザ光を照射する前に、カバー48にレーザ光が貫通するための孔を形成しておけばよい。
空気孔52は、供給路50の先端部に対応して設けられる。空気孔52の直径は、50μmである。
基体45の上面を形成するカバー48の上面48a(図8参照)は撥水化処理されていることが好ましい。供給路50の天面は親水化処理されていることが好ましい。また、貯留部49の天面49aは、供給路50よりも弱い親水化処理をされているか、またはカバー48の上面48aよりも弱い撥水化処理をされていることが好ましい。
親水性を弱めるには、例えば、疎水性材料に施された親水性化材を除去して、疎水性を強めればよい。親水化材の除去は、例えば、UV(紫外線)照射により親水化材を分解して行う。貯留部49の天面49aは、疎水性の素材をそのまま用いることができる。
材料の撥水化は、その材料に撥水化材を混入すればよい。また、親水性材料の表面に適量の撥水化材を塗布してもよい。なお、撥水性の程度を調整するには、混入する撥水化材の量を調整すればよい。
血液センサ42の各部材の親水性または疎水性は、以下のようにして調整することができる。
あらかじめカバー48の上面48aに撥水化処理を行う。一方、カバー48の下面には親水化処理を全面に施す。カバー48の下面には、供給路50の天面が含まれる。次に、基板46とスペーサ47とカバー48を貼り合わせる。これらを貼り合わせた後に、貯留部49の開口から短波長のUVを照射して、天面49aの親水性材料を分解除去する。
以上のように製造された血液センサ42は、カバー48の上面48aを撥水性にし、かつ供給路50の内面を親水性にすることができる。また、貯留部49の内面は、供給路50よりも弱い親水性を、または上面48aよりも弱い撥水性を有しうる。
基板46の厚み(0.188mm)と、スペーサ47の厚み(0.100mm)と、カバー48の厚み(0.075mm)との比は、略2.5:1.3:1とされている。これにより、血液センサ42を薄型化しながら、しかも十分な血液を溜める貯留部49を形成することができる。また、スペーサ47の厚み(0.100mm)によって、供給路50の毛細管現象の効果も十分に得ることができる。
血液センサ42は、貯留部49の容積(0.904μL)と供給路50の容積(0.144μL)の比を略6:1とすればよいが、特に限定されない。したがって、血液16の不足により検査が不正確になることはない。また、貯留部49の容積は、必要とする供給路50の容積に対して大き過ぎることはなく、血液16が大量に供給路50を流れて、試薬53(図8参照)を押し流すこともない。したがって、血液16の流れが律速状態となり、試薬53の溶融性にばらつきが生じることはなく、正確な血液16の検査ができる。
また、採取する血液16の量は、血液16の検査に必要十分な微小容量に設定されたものであり、供給路50の容積の約6倍の血液16を採取するのみである。したがって、患者にかける負担を極めて少なくすることができる。正確な測定のための血液16の採取量と、患者への負担を少なくするための血液16の採取量とを勘案して、貯留部49の容積は、供給路50の容積の5倍以上、かつ7倍以下であることが好ましい。
血液センサユニットについて
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aにおける血液センサ42は、血液センサユニット44に含まれていてもよい。血液センサユニット44は、装置本体39に着脱可能であり、交換可能な部材である。
図16は、血液センサユニット44とその近傍の断面図である。血液センサユニット44は、上下方向が共に開口した円筒形状のホルダ41と、ホルダ41内を塞ぐように設けられた装着部41bとによって、断面を「H」形状に構成されている。
ホルダ41の材質は、射出成形されうる樹脂が好ましく、例えば、ABS樹脂やAS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタートなどの熱可塑性樹脂、または、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、シリコン樹脂などの熱硬化性樹脂などが例示される。
装着部41bには血液センサ42が装着されている。血液センサ42は着脱可能であってもよい。図16では、血液センサ42が、装着部41bの上側(レーザ発射装置33側)に装着されているが、装着部41bの下側(穿刺される皮膚13側)に装着されていてもよい。
装着部41bの中央には、貯留部49に対応して窓43を設けることが好ましい。窓43の開口部面積は、貯留部49の開口部面積よりも大きいことが好ましい。さらに、装着部41bの上側と下側を貫通する負圧路41cが設けられる。負圧路41cは、例えば、血液センサ42の外周とホルダ41の内周側との間に設けられていればよい。
装着部41bよりも下側の筒体41dは、皮膚13との間に負圧室60を形成する。また、血液センサユニット44の装着部41bよりも上側の筒体41eの内壁は、アダプタ40の外側に係止する。
アダプタ40の内側にはコネクタ61が設けられる。コネクタ61は、それぞれ独立した複数本(例えば、5本)のコネクタ61a〜61fからなる。血液センサユニット44をアダプタ40に装着すると、コネクタ61a〜61fが、血液センサ42の接触部位54b〜57b、56cのそれぞれに接触する。コネクタ61a〜61fの信号は電気回路部36に導かれる。
筒体41dの先端41hに設けられた第1の皮膚接触センサ62は、血液センサユニット44が皮膚13に当接したことを検知する。第1の皮膚接触センサ62も、ホルダ41内に配置された導体62aを介して、アダプタ40に設けられた接続部62cに接続し、さらにアダプタ40側の導体62bに接続される。導体62bは電気回路部36に導かれている。
筒体41dの先端41hの互いに異なった部位(図16では筒体41dの中心を通る直線上)に、複数個(例えば、2個)の導体からなる第1の皮膚接触センサ62を設けることが好ましい。第1の皮膚接触センサ62の2個の導体間の抵抗値を測定することにより、皮膚13への当接を検知する。このため、皮膚13が隙間なく確実に血液センサユニット44の先端に当接したことを検知することができる。第1の皮膚接触センサ62が皮膚の接触を検知しない限り、レーザ光を発射できなくすることが好ましい。第1の皮膚接触センサ62は、機構式のマイクロスイッチや、反射型の光学スイッチなどであってもよい。
レーザ発射装置33からレーザ光が発射されると、レーザ光により皮膚13内の毛細血管が傷付けられ、血液16が流出する。流出した血液16は貯留部49に溜められる。
血液センサユニット44の筒体41dとアダプタ40とには、血液センサユニット44の装着を容易にするためのガイド部が設けられていてもよい。図17は、血液センサユニット44のアダプタ40への挿入をガイドするガイド部63の要部展開正面図である。筒体41dの内側に凸部41fが形成され、アダプタ40の外側に凸部40fが形成される。凸部41fおよび凸部40fの端の先端部41gおよび先端部40gは、それぞれ鋭角とされている。先端部41gおよび先端部40gは互いに向かい合う。凸部40fとその先端部40g、および凸部41fとその先端部41gとで、ガイド部63を形成する。
血液センサユニット44をアダプタ40に挿入するときに、互いの位置が多少ずれていたとしても、血液センサユニット44はガイド部63に沿って進路を修正しながら挿入される(矢印64参照)。その結果、アダプタ40に設けられたコネクタ61a〜61fと、センサ42に設けられた接触部位54b〜57b、56cのいずれかとが、確実に接触する。したがって、血液センサユニット44を、挿入方向を軸とする回転角度を考慮することなく挿入することができるので、血液センサユニット44の装着が容易になる。
図18は、血液センサユニットの斜視図である。図18に示された血液センサユニット110は、特に説明のない限り、血液センサユニット44と同様の構造とすればよい。血液センサユニット110は、その断面が「H」形状である円筒状である。血液センサユニット110のホルダ110aの内側には、血液センサ(血液センサ42、101、102、103のいずれでもよい)の接触部位の信号を、電気回路部36へ伝達する5本のコネクタ111が設けられていてもよい(ただし、血液センサ102の場合には4本のコネクタでよい)。コネクタ111は、ホルダ110aの上端でアダプタ40に接続され、このアダプタ40を介して電気回路部36に導かれる。
コネクタ111をアダプタに設けて、コネクタ111を血液センサユニット110の血液センサの接触部位に接触させてもよい。
ホルダ110aの開口を塞ぐように設けられた装着部110bの裏側(下端110h側、つまり穿刺される皮膚が配置される側)に、血液センサ42が装着される。装着部110bの略中央に設けられた窓110cは、血液センサ42の貯留部49の位置に対応して設けられる。レーザは、窓110cと貯留部49を通過して、皮膚13を穿刺する。
装着部110bに設けられた空気孔110dは、血液センサ42の空気孔52と対応した位置に設けられる。空気孔110dは、血液センサ42の供給路50に血液16を流入させたり、貯留部49に負圧を加えたりするために設けられる。
アダプタ40と係合する係合部110eの弾性で、アダプタ40に血液センサユニット110が係合する。ホルダ110aには、互いに対向する2つの係合部110eが設けられる。係合部110eは、その両隣にスリットを形成して弾性を付与し、ホルダ110aと一体的に形成されている。したがって、係合部110eを低価格で製造することができる。
装着部110bの上面には、消臭部材置場110fが同心円状に設けられる。消臭部材置場110fには消臭部材が載置される。レーザ穿刺をした場合、皮膚13が炭化して臭いを生じることがあるので、この臭いを消臭部材(脱臭剤など)で消臭することができる。また、装着部110bの上面には、血液溜り110gが同心円状に設けられる。したがって、血液センサ103(図8参照)の孔103bから血液16が溢れ出たとしても、血液16は血液溜り110gに滞留するので、血液16が血液検査装置31、31aの本体部を汚すことを防止することができる。
図19は、ホルダ110aの下端110h近傍の一構成例を示す要部断面図である。下端110hの端部は患者の皮膚13に当接して、負圧室60を形成する。下端110hは、皮膚13との密着性が要求される。そこで、下端110hは鋭角に尖った2本の同心円上の線110jで形成されていてもよい。線110jは皮膚13と線接触により確実に当接するので、負圧室60の密室性は保たれる。線110jは2本である必要はなく、1本でも2本以上の複数本でもよい。
また、2本の同心円上の線110jの間に形成される溝に毛細管機能を付与すれば、測定後の余分な血液16は、前記溝に吸引される。よって、拭き取り用の紙などを準備する必要がない。
図20は、ホルダ110aの下端110h近傍の他の構成例を示す要部断面図である。下端110hには、ゴムやシリコン、ウレタン、スポンジなどの弾性体で形成された同心円状の当接部110kが形成されている。したがって、当接部110kは、その弾性によって皮膚13と密着し、負圧室60の密室性が保たれる。当接部110kの接触面は、皮膚13との当接面積を大きくするため、平面であることが好ましい。
当接部110kをスポンジなどの吸水性を有する吸収部材で形成すれば、穿刺により流出した余分な血液16を測定後に拭き取ることができる。そのため、拭き取り用の紙などを準備する必要がなくなる。また、吸収部材に消毒薬を加えれば衛生的である。
皮膚13の湿り具合は、季節などの外部環境によって変化する。したがって、穿刺する皮膚13の近傍の湿り具合は一定にすることが好ましい。したがって、穿刺の前に、あらかじめ皮膚13に適度の水分を与えて皮膚を湿らすことにより、安定した条件で測定を行うようにしてもよい。
そこで、図21に示されたように、血液センサユニット110のホルダ110aの下端110hの全周に渡って、水を含ませた水貯留部197を設けて、あらかじめ穿刺部付近の皮膚13を水に浸してからレーザで穿刺するようにしてもよい。水貯留部197は、スポンジなどの弾性を有する多孔質材料であればよい。
図22は、血液センサユニット110の断面図である。図22に示すように、血液センサユニット110の装着部110bの下面に血液センサ42が配置され、装着部110bに保持される。皮膚13は、負圧手段34、140(図2、図3など参照)によって盛り上げられて、血液センサ42に密着する。血液センサ42は、装着部110bにより保持されているので、密着する皮膚13によって歪みにくい。コネクタ111は、血液センサ42の接触部位54b〜57b、56cに接触する。ホルダ110aには、アダプタ40に対応するガイド部63(図17参照)が設けられていることが好ましい。
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは負圧手段34、140を有し、負圧手段34、140は血液センサユニット110の内部を負圧にする。その負圧経路として、血液センサユニット110の装着部110bに、溝110fを形成してもよい。溝110fは、ホルダ110aの装着部110bの外周側から、装着部110bの略中央に形成された窓110eに延びる。負圧を加えると、溝110fも負圧にされて、血液センサ42は装着部110bに密着し、負圧を大気開放すると、血液センサ42は装着部110bから外れる。
コネクタ111は、血液センサ42と接触面111aにおいて接触する。コネクタ111は、ホルダ110aに内蔵され、装着部110bの一部に割り込むように形成されている。これにより、血液センサ42の上面に形成された接続電極の接触部位とコネクタ111に設けられたコンタクト部(ともに図示せず)とが接続する。
血液センサ42の下面に第2の皮膚接触センサ110mを設けてもよい。これにより、負圧室60の負圧により皮膚13が第2の皮膚接触センサ110mに当接したことを検知する。第2の皮膚接触センサ110mは、例えば、対電極で構成すればよい。第2の皮膚接触センサ110mが、皮膚との接触を検知しない限り、レーザが発射できないようにすることが好ましい。
前記当接を検知した時点で、負圧手段34による負圧室60への負圧を停止してもよい。このように負圧手段34を制御することにより、負圧電力を無駄にせずに最適に制御できる。
さらに、ホルダ110aの下端110hに第1の皮膚接触センサ62を設けてもよい。
図23は、他の血液センサユニットの断面図である。図23に示された血液センサユニット120は、特に説明のない限り、血液センサユニット110と同様の構造とすればよい。血液センサユニット120は、ホルダ120aの開口を塞ぐように形成された装着部120bの上側に、血液センサ42が載置される点で、血液センサユニット110と相違する。電気回路部36に接続されているコネクタ61は、血液センサ42の接触部位(54b〜57b、56c)と導通する。
断面「H」形状に形成された血液センサユニット120の装着部120bの上方空間と下方空間は、負圧路120cで連通される。下方空間は負圧室60を形成している。第1の皮膚接触センサ62が、ホルダ120aの下端120hに設けられる。また、図示されないが、装着部120bの下面に第2の皮膚接触センサ120mが設けられていてもよい。
血液センサ42を装着部120bの上面に装着すれば、コネクタ61と、血液センサ42の接触部位(54b〜57b、56c)との接触圧を大きくすることができる。また、血液センサ42の装着部120bへの装着が容易となる。
血液センサ42および装着部120bで区切られた、装置本体39側の空間(同図中の上部空間)と、皮膚13側の空間(同図中の下方空間)とは、負圧路120cを介して連通される。皮膚13に負圧を加えるときには、この負圧路120cを介して皮膚13側の空間を負圧にすることができる。また、負圧を大気開放すると、負圧路120cを介して装置本体39側の空間に空気がすばやく流入する。よって、血液センサ42に取り込まれた血液が、装置本体39側に飛散することを防止することもできる。
負圧路として、装着部120bの上側に溝120fを形成してもよい。溝120fは、ホルダ120aの装着部120bの外周側から、装着部120bの略中央に形成された窓120eに延びる。溝120fがあれば、装着部120bを貫通する孔を設ける必要がなくなる。
図24は、さらに他の血液センサユニットの断面図である。図24に示された血液センサユニット130は、特に説明のない限り、血液センサユニット44と同様の構造とすればよい。ここでは、血液センサユニット130の装着部130bの上面に、センサ42が装着される。ホルダ130aの下端130dの内径は、上端130cの内径よりも小さい。
装着部130bの下方に形成される負圧室60の開口部130eの直径は、2〜20mmが好ましく、3〜10mmがより好ましく、5〜7mmがさらに好ましい。穿刺する皮膚への負圧効率を高めるためである。また、上端130cの外形よりも下端130dの外形を小さくすれば、複数の血液センサユニット130を縦に積層して、効率良く収納することができる。一般的に、血液センサ42はある程度の大きさを必要とするので、上端130cの外形は小さくしにくいことがある。
また、ホルダ130aの内側に血液センサ42方向に突出して設けられた係止凸部130gは、血液センサ42を係止して、ホルダ130aからの外れを防止する。
図25は、血液センサユニット130の平面図である。血液センサユニット130のホルダ130aには、血液センサ42の位置合わせ用の凹部46c、47c(図15参照)に嵌合する凸部130fが2つ形成されている(略120度の角度)。ホルダ130aの凸部130fと、血液センサ42の位置合わせ用凹部46cとで、血液センサユニット130内における血液センサ42の配置位置が決定される。血液センサ42が適切に配置された血液センサユニット130は、アダプタ40に対して、ガイド部63(図17参照)により所定位置に装着される。このようにして、血液センサ42の検出電極54〜57の信号は、電気回路部36に伝えられる。
凸部130fは1つでもよいが、その場合には、装着部130bを、血液センサ42を嵌入できるような構造にしておくことが好ましい。
レーザの焦点について
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは、穿刺手段としてレーザを用いており、装置本体39にはレーザ発射装置33が収納される(図2など参照)。発射されたレーザ光は、焦点レンズで集光されて皮膚13に照射される。本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aにおいて、レーザ光は、例えば、血液センサ42の面の近傍に集光されることが好ましい。前述の通り、穿刺される皮膚13は負圧手段34、140によって吸引されて、血液センサ42に密着するので、血液センサ42の面の近傍に集光されたレーザ光は、皮膚13を効果的に穿刺することができる。
レーザ光の焦点は、血液センサ42の面上にあってもよく、血液センサ42の面よりも皮膚13側にあってもよく、または血液センサ42の面よりもレーザ発射装置33側にあってもよい。図26には、レーザアライメントペーパ(ZAP-IT社:Z-48)を用いて、「バーンパターン径(mm)」(Y軸)と「レーザ焦点からの、穿刺しようとする対象(穿刺対象:ここではレーザアライメントペーパ)の距離(mm)」(X軸)との関係を調べた結果が示される。「バーンパターン径」とは、レーザ光を照射したときに開けられる穴の径である。
図26は、本発明の血液検査装置におけるレーザ光の焦点位置からの穿刺対象の距離(X軸)とバーンパターン径(Y軸)との関係を示すグラフである。
図26に示されたグラフのX軸において、レーザ光の焦点位置が「0」である。マイナス(「−」)領域は、レーザ光の焦点位置よりもレーザ発射装置33側に穿刺対象位置を設定している場合を示し、プラス(「+」)領域は、レーザ光の焦点位置よりもレーザ発射装置33から遠い側に穿刺対象位置を設定している場合を示している。
レーザの出力強度は、60mJ、80mJ、100mJ、120mJの4種類とした。出力強度が大きいほどバーンパターン径が大きくなるが、いずれの出力強度においても、焦点の穿刺対象からの距離(X)とバーンパターン径(Y)との関係は相似している。
Aゾーン(穿刺対象の近傍に焦点を合わせたとき)では、穿刺対象位置の多少のずれがあっても、バーンパターン径はあまり変化しない。したがって、確実に穿刺することができる。一方、BゾーンまたはCゾーンでは、穿刺対象位置のずれによって、バーンパターン径が大きく変化する。このことは、穿刺対象位置と相対関係にあるレーザ光の焦点位置においても言える。
つまり、穿刺対象位置が固定されている場合などは、Aゾーン(穿刺対象の近傍に焦点を合わせたとき)では、レーザ光の焦点位置の多少のずれがあっても、バーンパターン径はあまり変化しない。したがって、確実に穿刺することができる。一方、BゾーンまたはCゾーンは、レーザ光の焦点位置のずれによって、バーンパターン径が大きく変化する。
バーンパターン径が大きくなるようにレーザ光の焦点位置がずれれば、穿刺がされないので、安全性が高まる。例えば、Bゾーンにレーザ光の焦点位置を合わせておけば、穿刺対象位置が所定の位置にまでレーザ発射位置に近づかない限り穿刺がされない。つまり、負圧によって皮膚が十分に吸引されて盛り上げられない限り、穿刺がされない。
また、Cゾーンにレーザ光の焦点位置を合わせておけば、穿刺対象位置が所定の位置よりもレーザ発射位置に近づくと穿刺がされない。つまり、負圧によって皮膚が必要以上に吸引されて盛り上げられても穿刺がされない。
また、血液センサ42に溶融しやすいフィルムなどを配置した場合は、血液センサ42に焦点を合わせない方がよい場合がある。フィルムが溶解してレーザのエネルギーが消費されるためである。よって、BゾーンまたはCゾーンに焦点を合わせることが好ましいこともある。
負圧室について
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは負圧手段34、140を有し、装置本体39には負圧手段34、140の構成要素として機械式吸引ポンプ34a(図2)または手動式吸引ポンプ141(図3)などが収容される。負圧手段34、140は、負圧室60を負圧して、被穿刺部位である皮膚13を吸引して盛り上げることによって、血液センサ42に密着させる。
上述のように、負圧手段34は、吸引ポンプ34a、ポンプ弁ユニット34bおよび大気開放スイッチ34cで構成され(図2参照)、負圧手段140は、ポンプ弁ユニット143および大気開放スイッチ144に加えて、手動ポンプ141および手動ポンプノブ142で構成されている(図3参照)。「負圧手段」という用語は、広義では、ポンプ(吸引ポンプまたは負圧ポンプ)や弁(負圧弁または開放弁)などに加えて負圧経路なども含んでいる。また、ここで、「負圧手段を駆動する」とは、ポンプおよび弁を駆動することをいい、「負圧を開放する」とは、弁を開いて外気圧(例えば、大気圧)を導入することをいう。
図27および図28には、負圧室(吸引室)と負圧経路が示される。図27は、負圧室が最大の場合の負圧経路を示し、図28は、負圧室が最小の場合の負圧経路を示す。図2の血液検査装置31を例にとって説明すると、図27に示される吸引室60aおよび図28に示される吸引室60bは、いずれも、装置本体39の内部空間であって、レーザ発射装置33のレーザ発射口33cよりも血液センサ42側の空間に設けられる。負圧室60は、測定時に皮膚13が血液センサユニット44に当接して負圧状態となる空間を広く意味し、装置本体39内の吸引室60a、60bに加えて、血液センサユニット44の内部空間も含まれる。負圧室60(特に吸引室60a、60b)は、図27および図28に示されるように、例えば、ポンプ34aにより吸引され(つまり、負圧にされ)、弁34bにより負圧が解除される。
負圧室60を小さくすれば、負圧の発生に必要なエネルギーが少なくなり、かつ検査に必要とされる時間も短くなる。よって、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aの内部の負圧室60(特に吸引室60a、60b)は、レーザ発射装置33のレーザ発射口33cよりも血液センサ42側に設けられた壁によって、仕切られていることが好ましい。
具体的には、吸引室60a、60bを仕切る壁(負圧用仕切りまたは隔壁)70は、レーザ発射口33cと同じ位置に配置されていてもよく,または、焦点レンズ33hと同じ位置に配置されている(つまり、壁と焦点レンズ33hが一体となっている)か、もしくは焦点レンズ33h自体が壁となってもよい。図27および図28にそれぞれ示される例は、後者の場合である。また、負圧室60の容量を小さくするため、吸引室の形状を錘状にしてもよい(図28の吸引室60b参照)。装置本体39には、吸引室60a、60bに連通する負圧路71が設けられ、この負圧路71はポンプ34aの吸引口に連結されている。血液センサ42内には、上述のように、負圧経路72としても機能する貯留部49、供給路50および空気孔52が設けられている。吸引室60a、60bは、血液センサ42内のこの負圧経路72とも連通している。特に図28の構成例では、吸引室60bと空気孔52とをつなぐ微細な負圧経路73が、装置本体39にさらに設けられている。負圧経路72、73(ただし、貯留部49の部分は除く)は、容積がほとんど零に等しい微細流路である。
血液検査装置31、31aにおいて、レーザ光80の経路上に位置する内部空間として、図29および図30に示されるように、大別して3つの内部空間V1、V2、V3を考えることができる。内部空間V1は、レーザ結晶(レーザロッド)33dの前面と焦点レンズ33hの間の空間である。内部空間V2は、焦点レンズ33hと血液センサユニット44内の血液センサ42(またはホルダ41)の間の空間であって、図27および図28の構成例では、装置本体39内の吸引室60a、60bに対応している。内部空間V3は、血液センサユニット44内の血液センサ42(またはホルダ41)と皮膚当接面74の間の空間であって、主として、血液センサユニット44の内部空間に対応している。
例えば、焦点レンズ33hの径は、φ5〜15mmである。焦点レンズ33hから血液センサ42までの距離は、10〜30mmである。また、血液センサ42からホルダ41の下面(=皮膚接触面)までの距離は、1.5〜2mmであり、血液センサ42およびホルダ41の径は、φ6〜10mmである。図27に示される負圧室60は、V2とV3で構成され、吸引室60aの容積を最大にした場合、実際には装置本体39の内部形状は傾斜部分がほとんど無くなるため、V2部分は簡易的に円筒形で近似でき、V3部分も同様に円筒形であるため、約5.5ccの容量とすることができる(図29の破線で囲んだ領域を参照)。また、図28に示される負圧室60も、V2とV3で構成されるが、吸引室60bの容積を最小にした場合、V2部分は円錐形になり、負圧経路部分は無視でき、V3部分は上記と同様であることから、約0.45ccの容量とすることができる(図30の破線で囲んだ領域を参照)。
電気回路について
図31は、電気回路部36のブロック図である。図28において、54b〜57bおよび56cは、血液センサ42に形成された接触部位である。接触部位54b〜57b、56cは、コネクタ61a〜61fを介して、切換回路71に接続される。切換回路71の出力は電流/電圧変換器72の入力に接続されている。電流/電圧変換器72の出力は、アナログ/デジタル変換器(以下「A/D変換器」という)73を介して、演算部74の入力に接続されている。演算部74の出力は、液晶で形成された表示部37に接続されている。また、切換回路71には基準電圧源78が接続されている。基準電圧源78はグランド電位であってもよい。
制御部76の入出力は、切換回路71の制御端子、演算部74、穿刺ボタン75、送信部77、タイマ79、レーザ発射装置33、負圧手段34(特に吸引ポンプ34a)および第1の皮膚接触センサ62に接続され、図示されない警報手段や第2の皮膚接触センサ110m(図22参照)にも接続されている。演算部74の出力は、送信部77の入力にも接続されている。負圧手段34(特にポンプ弁ユニット34b)の吸引口は、負圧路71を介して負圧室60と血液センサユニット44の内部に導かれている。
ここで、電気回路部36の動作を説明する。
血液検査の前に、血液センサ42の接触部位54b〜57b、56cのそれぞれが、コネクタ61a〜61fのいずれに接続されているかを特定する。まず、制御部76の指令により、コネクタ61a〜61fのうち、隣り合う端子間の電気抵抗が零である接触部位56cを特定する。特定された接触部位56cに接続されている接続電極を基準電極56dであると決定する。接触部位56cに接続されたコネクタ61を基準として、順に接続電極56a、57a、54a、55aに接続するコネクタ61であると特定する。このようにして、接続電極54a〜57aのそれぞれに接続されたコネクタ61を特定する。
その後に血液検査を行う。まず、切換回路71を切り換えて、血液成分量を測定するための作用極となる検出電極54を、上記決定されたコネクタ61を介して電流/電圧変換器72に接続する。また、血液16の流入を検知するための検知極となる検出電極54を、上記決定されたコネクタ61を介して基準電圧源78に接続する。
そして、検出電極54と検出電極55との間に、一定の電圧を印加する。この状態で、血液16が検出部51に流入すると、検出電極54と55との間に電流が流れる。この電流は、電流/電圧変換器72によって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器73によってデジタル値に変換される。このデジタル値は、演算部74に向かって出力される。演算部74は、そのデジタル値に基づいて、血液16が十分に流入したことを検出する。
あらかじめ定められた時間が経過しても、検出部51で血液16が検出されない場合や、血液16の量が適正でない場合は、警報手段を働かせて警報するとともに処置の内容を表示部37に表示してもよい。
次に、血液成分であるグルコースの測定が行われる。グルコース成分量の測定は、まず制御部76の指令により切換回路71を切り換えて、グルコース成分量の測定のための作用極となる検出電極54を、コネクタ61を介して電流/電圧変換器72に接続する。また、グルコース成分量の測定のための対極となる検出電極56を、コネクタ61を介して基準電圧源78に接続する。
例えば、血液中のグルコースとその酸化還元酵素とを一定時間反応させる間は、電流/電圧変換器72および基準電圧源78をオフにしておく。そして、一定時間(1〜10秒)の経過後に、制御部76の指令により、検出電極54と検出電極56との間に、一定の電圧(0.2〜0.5V)を印加する。そして、検出電極54と検出電極56との間に流れた電流を、電流/電圧変換器72によって電圧に変換する。この電圧値は、A/D変換器73によってデジタル値に変換される。このデジタル値は、演算部74に出力される。演算部74は、そのデジタル値に基づいて、グルコース成分量を求める。
グルコース成分量の測定後に、Hct(ヘマトクリット)値の測定が行われる。
まず、制御部76からの指令により切換回路71を切り換える。Hct値の測定のための作用極となる検出電極57を、コネクタ61を介して電流/電圧変換器72に接続する。また、Hct値の測定のための対極となる検出電極54を、コネクタ61を介して基準電圧源78に接続する。
次に、制御部76の指令により、検出電極57と検出電極54との間に一定の電圧(2V〜3V)を印加する。検出電極57と検出電極54との間に流れる電流は、電流/電圧変換器72によって電圧に変換される。この電圧値は、A/D変換器73によってデジタル値に変換される。このデジタル値は、演算部74に出力される。演算部74は、そのデジタル値に基づいて、Hct値を求める。
得られたHct値とグルコース成分量を用いて、あらかじめ求めておいた検量線または検量線テーブルを参照して、グルコース成分量をHct値で補正する。補正された結果は表示部37に表示される。
また、補正された結果は、送信部77からインスリン(治療薬の一例として用いた)を注射する注射装置に向けて送信されてもよい。電波を用いて送信してもよいが、医療器具への妨害のない光通信で送信することが好ましい。注射装置に送信された測定データに基づいて、インスリンの投与量を注射装置が自動的に設定できるようにすれば、投与するインスリン量を患者自身が注射装置に設定する必要がなくなり、煩わしさが軽減される。また、人為手段を介さずにインスリン量を注射装置に設定することができるので、設定ミスが防止される。
以上、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aを用いてグルコースを測定する例を説明したが、グルコース以外の血液成分(乳酸値やコレステロールなど)の測定にも、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは有用である。
測定ステップのフロー1
図2に示された血液検査装置31を用いた血液検査のフローを、図32を参照して説明する。
まず、血液センサユニット44を、血液検査装置31に装着する(ステップ81)。このステップ81では、血液センサユニット44をアダプタ40に挿入する。挿入により、アダプタ40の先端が血液センサユニット44の装着部41bに当接する。血液センサユニット44は、そのホルダ41の弾性で、アダプタ40に係止される。
次に、血液センサ42の接続電極54a〜57aの特定を行う(ステップ82)。ここでは、電気回路部36で、隣り合うコネクタ61a〜61f間の抵抗値から基準電極56dを特定する。そして、特定された基準電極56dから時計回りに接続電極56a、57a、54a、55aと決定する。このように、任意の角度で挿入された血液センサユニット44の血液センサ42の接続電極54a〜57aが、ステップ82で特定され、その結果、検出電極54〜57が特定される。
次に、血液センサユニット44の先端41hを患者の皮膚13に押し当てて密着させる(ステップ83)。皮膚13の先端41hへの接触を、第1の皮膚接触センサ62が検知すると、負圧手段34の吸引ポンプ34aが動作して負圧の発生を開始する。このとき、吸引ポンプ34aに加わる負荷電流を制御部76で検出して、穿刺可能な負圧か否かを表示部37に表示してもよい。負荷電流を検出する代わりに、負圧が発生してからあらかじめ定められた時間をタイマ79で計測して、表示部37に穿刺が可能であるか否かを表示してもよい。
また、第2の皮膚接触センサ150mが設けられていれば、負圧の吸引による皮膚13の盛り上がりを検知できる。該検知を、表示部37に表示してもよい。
このように、レーザ穿刺するときに皮膚13に負圧を加えると、弛緩していた皮膚13が緊張状態になるので、穿刺による傷が小さくても、血液16を効率良く採取することができる。よって、患者に与える苦痛が軽減される。また、負圧により皮膚13を所定位置にまで盛り上げて位置を規定(規制)すれば、照射するレーザ光を正確に集光することができる。
次に、穿刺ボタン75を押下する(ステップ84)。穿刺ボタン75の信号は電気回路部36で認識される。電気回路部36がレーザ発射装置33を駆動すると、レーザが皮膚13に向けて発射される。レーザでの穿刺電圧を、約300Vとすれば、患者に与える苦痛は少なくなる。
次に、採血を行う(ステップ85)。レーザでの穿刺により患者の皮膚13から流出した血液16を、血液センサ42の貯留部49に貯留する(図8など参照)。貯留部49に貯留された血液16は、毛細管現象によって供給路50に浸入し、検出部51に導かれる。検出部51に導かれた血液16が、検知極としての検出電極55に達すると、測定に必要な量の血液16が得られたと判断される。このときに負圧手段34を停止してもよく、あるいは、皮膚接触センサ62が皮膚の非接触を検知してから負圧手段34を停止してもよい。
一方、あらかじめ定められた時間が経過しても、検出部51で血液16が検出されない場合や、血液16の量が適正でない場合(検出電極54と検出電極55間の抵抗で検出する)には、警報手段を作動させて警告するとともに、適切な処置内容を表示部37に表示してもよい。
次に、グルコースの測定を行う(ステップ86)。血液中のグルコースとグルコース酸化還元酵素とを一定時間反応させた後、検出電極54を作用極とし、検出電極56を対極として、両検出電極54、56の間に電圧を印加して、グルコース測定を行えばよい。
さらに、Hct値の測定を行う(ステップ87)。検出電極57を作用極とし、検出電極54を対極として、両検出電極54、57の間に電圧を印加すれば、Hct値に依存する電流が検出される。この電流に基づいてHct値を測定できる。
最後に、血液成分の補正を行う(ステップ88)。つまり、ステップ87で検出したHct値を用いて、ステップ86で得られたグルコース量を補正する。補正後、その結果を表示部37に表示する。以上のステップにより、血糖値測定が終了したら使用済み血液センサユニット44は廃棄する。
測定ステップのフロー2
図33は、測定ステップのフローチャートを、より詳細に模式的に説明する図である。
図33において、ステップ151は、血液検査装置31のアダプタ40に血液センサユニット44を装着する前の状態を示す。ステップ152は、ガイド部63(図7参照)に沿って血液センサユニット44をアダプタ40へ挿入した状態を示す。ステップ153は、コネクタ61を押し下げて、コネクタ61がセンサ42の接触部位54b〜57b、56cに当接した状態を示す。
次に、ステップ154に移行して、血液検査装置31のメインスイッチを起動する。すると、自動的に電気回路部36が基準電極56dを検出し、検出電極54〜57を特定する。その後、表示部37が、測定準備が完了したことを表示する。
ステップ155では、血液検査装置31を穿刺する皮膚13に、血液センサユニット44の端部を当接させる。図33において、ステップ155以降については、血液検査装置31の装置本体39を省略して、血液センサユニット44のみを示す。ステップ156では、血液検査装置31を患者の皮膚13に当接させる。この皮膚13への当接は第1の皮膚接触センサ62が検出する。
第1の皮膚接触センサ62が皮膚13を検知すると、ステップ157に移る。そして、負圧手段34が動作を開始し、矢印157aに示すように負圧室60を吸引する。吸引の結果、皮膚13が盛り上る。手動式の負圧手段140の場合は(図3参照)、表示部37に手動開始の旨の表示がなされ、患者が手動ポンプノブ142の操作を開始する。
負圧が加えられると、ステップ158に示すように皮膚13はさらに盛り上がり、第2の皮膚接触センサ(皮膚接触電極)110mに当接する。
第2の皮膚接触センサ110mは、血液センサユニット44の下面に装着された血液センサ42の裏面に形成されるか(図22参照)、または、血液センサユニット44の上面に血液センサ42が装着される場合は、装着部120bの下面に形成される(図23参照)。
第2の皮膚接触センサ110mは、血液センサ42への皮膚13の接触を検知できればよいので、電極の代わりに、光センサや機構スイッチ、電気抵抗検出素子などを用いてもよい。
ステップ159では、負圧室60における皮膚13の吸引を停止する。なお、第2の皮膚接触センサ110mがない場合は、負圧手段34の動作開始からあらかじめ定められた時間の経過後に、吸引を停止すればよい。経過時間は電気回路部36のタイマ79で計測すればよい。
次に、ステップ160に移り、皮膚13にレーザ光を照射して穿刺する。穿刺により、皮膚13からは血液16が流出する。第2の皮膚接触センサ110mが皮膚13を検知すると、自動的に穿刺が行われてもよい。また、皮膚13の当接を表示部37に表示することにより、患者が穿刺ボタン75(図29参照)を押下するようにしてもよい。患者自身が穿刺ボタン75を押下する場合には、患者は気構えをすることができる。
流出した血液16は、ステップ161に示すように、貯留部49を満たし、供給路50へ流入する。血液16の流入は、供給路50による毛細管現象と、負圧手段34による空気孔52からの吸引とにより行われる。
ステップ162に示すように、血液16は血液センサ42の検出部51に導かれる。血液16の検出部51への流入が検知されると、負圧手段34の動作を停止する(ステップ163)。血液16がセンサ42の検出電極55(図6参照)に達すると、血液16の流入が検知される。そして、大気開放スイッチ34cを操作して負圧室60内を外気圧にする。
次に、ステップ164に示すように、血液検査装置31を皮膚13から離す。測定が終了したら、その旨を表示部37に表示する。そして、ステップ165に移り、採取した血液16の測定結果を表示部37に表示する。
測定ステップのフロー3(認証ステップあり)
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置を用いて血液検査をするフローには、患者である使用者を認証するステップが含まれていてもよい。レーザ機器であるため、安全性を考慮して許可された者以外の使用を禁止するためである。
図34には、認証ステップ261を含む検査フローが示される。認証は、指紋や声紋、虹彩、静脈パターンなどを用いて、患者が所定の許可された者であるか否かを識別して行えばよい。
使用が許可された者の場合は、ステップ262に進む。患者はダイアルを操作して、穿刺深さ(レーザパワー)を設定する。そして、ステップ263に移り、血液検査装置31のアダプタ40に、血液センサ42を有する血液センサユニット44を装着する。血液センサユニット44の装着で装置本体39の電源が自動的に起動して、測定待機状態になる。血液センサユニット44を装着するステップ263は、ステップ261の前に行ってもよい。血液センサユニット44が装着されていないと測定動作は行えないが、測定結果の表示などは可能である。
次に、ステップ264に進む。ステップ264では、血液センサユニット44が皮膚13に当接しているか否かを第1の皮膚接触センサ62(図16など参照)で検知する。第1の皮膚接触センサ62の代わりに、血管の有無の検知、体温の検知、皮膚の電気抵抗の検知、脈動の検知であってもよい。いずれにしても、安全のために、皮膚13への当接を検知している状態でステップ265以降の動作を行う。皮膚13への当接の検知ができるまで、ステップ264で待機する。
第1の皮膚接触センサ62が皮膚を検知したら、ステップ265で負圧手段34の動作を開始する。また、同時にレーザ発射装置33の駆動電圧チャージを開始する。そして、ステップ266に進み、負圧手段34へ流れる電流値を1〜5秒間モニタする。電流値が異常の場合は、その旨を表示部37に表示して、ステップ264の前に戻る。
電流値が正常な場合は、ステップ267に進み、負圧が適正か否かを判定する。負圧の適否の判定は、負圧手段34へ流れる電流を、あらかじめ定められた閾値と比較することにより行う。一定の負圧力になると、ステップ268に進み、レーザ光の発射を許可する。負圧が閾値を超えない場合は、空気漏れ(血液センサユニット44の皮膚13への当接不良)として、負圧手段34による吸引を停止し、リトライを指示するとともに、ステップ264の前に戻る。
また、第2の皮膚接触センサ110m(図22参照)を配置すれば、負圧により吸引された皮膚13の盛り上がりを検知することができる。適切に皮膚13が盛り上がり、血液センサ42に密着したら、レーザ光の発射を許可する。
ステップ268では、レーザ光を発射して皮膚13を穿刺する。そして、ステップ269に進み、穿刺により皮膚13から流出した血液16を血液センサ42へ取り込む。このとき、負圧手段34は駆動を続行する。
次に、ステップ270に進み、血液16が血液センサ42の検出部51(図8参照)に取り込まれたか否かをチェックする。穿刺後の一定の経過時間内(2〜10秒の場合もある)に、検出電極55に血液16が達したか否かを検知する。一定の経過時間内に血液16が検知されないときは、ステップ264の前に戻り再穿刺する。したがって、一旦装着された血液センサ42を、未使用のまま無駄にすることがない。しかも、迅速に再穿刺することができる。
血液16が検知された場合は、ステップ271に進み、血糖値の測定を開始する。また、ステップ271で、ポンプ弁ユニット34b(図2参照)を制御して負圧の外気開放を開始する。この時点ではまだ負圧手段34は動作している。負圧手段34が駆動しているときの音や振動により、患者に対して測定中である旨を認識させ、患者が血液検査装置31を皮膚13から取り外さないようにするためである。このような配慮により、血液成分の測定途中で、血液検査装置31に振動や衝撃が加わることを防止し安定した測定ができる。また、負圧を開放した直後に、患者が、皮膚13から装置を取り外して、血液16を飛散させて汚染することを防止する。
ステップ271で測定が完了すると、ステップ272に移り、測定した結果を表示部37に表示する。そして、ステップ273に移り、負圧手段34(特に吸引ポンプ34aおよびポンプ弁ユニット34b)(図2参照)の駆動を停止する。以後、患者は血液検査装置31を皮膚13から離す。
次に、ステップ274に移り、患者が、血液センサユニット44を血液検査装置31の装置本体39から外して廃棄する。そして、ステップ275に移り、血液センサユニット44の取り外しを検知して、装置本体39の電源を自動停止する。
以上説明したように、血液検査装置31を用いた血糖値の測定において、血液検査装置31が皮膚13へ当接していることを条件(論理積条件)に、レーザ発射装置33を駆動しているので、皮膚13への穿刺以外でレーザ光が放射されることは無く、安全である。
また、血液検査装置31の使用に先立って、ステップ261で使用者認証を行っているので、許可された者のみが操作することができ、無許可の者は操作できないので、安全である。
血液検査装置31の電源は、自動的に起動および停止されるので操作が容易となり、電池35の消費が抑制される。
レーザ照射における負圧の制御
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31は、穿刺後に、負圧を複数回断続して加えてもよい。図35および図36を参照して、負圧を加えるタイミングと、その作用を説明する。
第1の皮膚接触センサ62が皮膚13を検知すると、時間166aで負圧手段34が駆動を開始する(図33のステップ156に対応)。負圧室60内に負圧が加えられ、皮膚13は状態167aのように緊張して盛り上がる(図33のステップ157に対応)。皮膚13が盛り上がり、時間166bで、第2の皮膚接触センサ110mに当接する(図33のステップ158に対応)。時間166bで、皮膚13は、図33に示す状態167bとなる。ここで、負圧室60に供給する負圧を停止する(図33のステップ159に対応)。そして、時間166cで、皮膚13を穿刺する(図33のステップ160に対応)。ここで、皮膚13は状態167cとなり、血液16が滲み出る。
そして、一旦負圧の供給を停止した後、時間166dの時点で、再び負圧を加える。負圧により、状態167dのように皮膚13の開口部が広がり、血液16が流出し易くなる(図33のステップ161に対応)。
このように、負圧を断続的に加える理由の1つは、皮膚13の穿刺孔を広げて血液16の採取を容易にするためである。別の理由は、強い負圧で一気に吸引すると血液16が勢い良く流出し、過剰に採血してしまうことがあるので、これを防止するためでもある。そのため、余分に血液16が溢れ出ない程度に負圧手段34を断続的に動作させている。このようにして、吸引力を弱めて省電力化を図るとともに、適量の血液16を採取する。適量の血液16を得て、精密な測定が終了した段階で、血液検査装置31を皮膚13から外す(図33のステップ164に対応)。測定が終了した時間166eにおいて、皮膚13は、状態169eに示すように、負圧で広げられた傷口168を元の通りに塞ぐ。したがって、傷口の回復が早くなる。
患者によっては、レーザ穿刺しても皮膚13から血液16が流出しにくい場合もある。そのような場合は、穿刺前の負圧力に比べて、穿刺後の負圧力を大きくして血液16が流出しやすいようにしてもよい。負圧力の制御は、最高到達圧(負圧)が一定であるので、弁34bの閉鎖時間を制御することによって行う。また、断続的な負圧の駆動を行わなくとも、継続して負圧を加えるように構成してもよい。
また、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31は、穿刺の前後に、いわゆる「揉み動作」を行ってもよい。図37を参照して、揉み動作を説明する。
揉み動作は、例えば、ポンプ(例えば、電動式吸引ポンプ)34aを定電圧駆動しつつ、弁(例えば、電磁弁)34bを所定のタイミングで開閉することによって行う。図37に示される動作例では、第1の皮膚接触センサ62が皮膚13を検知して負圧手段34が駆動を開始してから(吸引開始)、レーザによる穿刺が行われるまでの間(期間92)は、穿刺前の準備として揉みほぐしを行い(穿刺前準備(揉みほぐし))、レーザによる穿刺が行われた後は、血液16が血液センサ42の検出部51に取り込まれたことを検知して(点着検知)、電磁弁34bを閉鎖するまでの間(期間93)に、少なくとも1回の揉みを入れる(穿刺後吸引)。図37において、空気圧のレベル90は、体感で吸引をほとんど感じない負圧レベルであり(例えば、−10kPa)、レベル91は、ポンプ34aを定電圧駆動した場合の最高到達圧(負圧)(例えば、−70kPa)である。揉み動作をもたらす弁(電磁弁)34bの開閉動作は、負圧室60内の空気圧がレベル90とレベル91の間で変化し、かつ、その変化の周期が、皮膚13が負圧の変化に反応する最小時間よりも長い時間(例えば、0.1秒以上)になるようなタイミングで行う。このような弁(電磁弁)34bの開閉動作は、吸引開始から点着検知・電磁弁閉鎖までの期間(電磁弁開閉動作期間94)の間行われる。点着検知後に電磁弁を閉鎖するのは、上述のように、皮膚13の穿刺孔を広げて血液16の採取を容易にするためである。血液16の採取がなされ、測定が終了すると、負圧手段34の駆動を停止する(ポンプ吸引停止および弁開放)。
このような揉み動作を行うことで、血管の血行が良くなり、血液16が流出しやすくなる。つまり、皮膚13を揉むことで、被穿刺部が加熱され(血行が良くなり)、揉まない場合に比べて採血量を多くすることができる。また、揉み動作は、穿刺時の痛みの軽減にもつながる。
レーザ穿孔装置について
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは、図38に示されるレーザ穿孔装置を含んでいる。このレーザ穿孔装置は、血液検査装置31、31aから血液センサユニット44およびこの血液センサユニット44に関係する部材(例えば、血液センサ42と接続するコネクタなど)を取り除いた構造を有する。このレーザ穿孔装置は、1回の穿刺動作において同一の穿刺位置を「分割穿刺」するようにレーザ発射装置33のレーザ出力を制御する機能を有する。ここで、「分割穿刺」とは、1回の穿刺動作を空間的または時間的に分割して行うことをいう。具体的には、前者は、レーザ光を複数の光路に分割して穿刺動作を行う場合(レーザ出力の分岐制御)であり、後者は、レーザ光を複数回に分割して穿刺動作を行う場合(レーザ出力のパルス制御)である。
レーザ照射におけるレーザ光の分岐
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは、レーザ発射装置33から発射された1本のレーザ光を複数本に分岐させて皮膚13を穿刺してもよい。図39において、符号「33」はレーザ発射装置、「13」は患者の皮膚である。また、符号「170a」、「170b」、「170c」は、それぞれ、入射光に対して半分の光を通過させるとともに残りの半分の光を反射させて入射光を均等に分配するスプリッタである。このスプリッタ170a、170b、170cは、ハーフミラーで形成されている。
符号「171a」、「171b」、「171c」は、それぞれ、入射した光を全反射させる全反射ミラーである。この全反射ミラー(以下単に「ミラー」という)171a、171b、171cは、スプリッタ170a、170b、170cとそれぞれ組になっている。図39において、これらのスプリッタ170a、170b、170cおよびミラー171a、171b、171cは、同一の照射位置177を穿刺するよう、入射光に対して所定の角度に設定されている。
レーザ発射装置33から出射されたレーザ光172は、スプリッタ170aでレーザ光173aとレーザ光173bに分岐される。分岐されたレーザ光173bはミラー171aに入射し、このミラー171aで全反射してレーザ光174となる。このレーザ光174は、スプリッタ170bでレーザ光175aとレーザ光175bに分岐される。分岐されたレーザ光175aは直接皮膚13の照射位置177を穿刺する。また、スプリッタ170bで分岐されたレーザ光175bは、ミラー171bで全反射してレーザ光175cとなり、皮膚13の照射位置177を穿刺する。
一方、スプリッタ170aを通過したレーザ光173aは、スプリッタ170cでレーザ光176aとレーザ光176bに分岐される。分岐されたレーザ光176aは直接皮膚13の照射位置177を穿刺する。また、スプリッタ170cで分岐されたレーザ光176bは、ミラー171cで全反射してレーザ光176cとなり、皮膚13の照射位置177を穿刺する。
このように1つのレーザ光172を複数の光路に分岐して皮膚13の照射位置177を穿刺するので、出力が小さいレーザ光で穿刺することになり、痛みを軽減することができる。したがって、皮膚13の内部の毛細血管にレーザ光を集約して穿刺することが可能となる。
また、図40に示されるように、ミラー171cを図39に示される位置よりも遠くに配置した場合には、スプリッタ170cで分岐されたレーザ光176bがミラー171cで全反射してレーザ光176cとなり皮膚13の照射位置177へ到達するまでの時間が長くなる。このようにミラーを適正な位置に配置することで、分岐された複数のレーザ光を同一の照射位置に順番に照射できるようにレーザ出力を制御することができる。
スプリッタ170a、170b、170cやミラー171a、171b、171cは、図41に示すように直方体を対角線178aで2分割したキューブ状の光学素子178を用いることが好ましい。キューブ状のスプリッタ170a、170b、170cは、合わせ面に屈折率の異なるミラーを貼り合わせたものであり、キューブ状のミラー171a、171b、171cは、全反射する面と全透過する面を貼り合わせたものである。このように、キューブ状に形成された光学素子178は、透過光路のずれやゴーストの発生が無いため、光路の分割や屈折などの変更に対して精度を高く保つことができる。なお、スプリッタ170a、170b、170cやミラー171a、171b、171cをすべて、または一部ずつ、1つのキューブ状光学素子にて構成することも可能である。
例えば、図39や図40に示されるレーザ分岐をキューブ状の光学素子で構成する場合を説明する。図39および図40では、レーザ光172の分岐を二次元のイメージで表現したが、これを三次元のイメージで表現すると、図42Aに示される通りである。図42Aに示されるように、レーザ発射装置33から出射されたレーザ光172は、一旦複数の光路に分岐されて、最後は一箇所の照射位置177に集光される。図42Bは、この分岐を実現するキューブの一例を示している。図42Bに示されるキューブ179内には、スプリッタ170a、170b、170cおよびミラー171a、171b、171cが所定の位置にそれぞれ固定配置されている。このように、レーザ分岐に使用するスプリッタ170a、170b、170cおよびミラー171a、171b、171cをキューブ179内に収納することにより、細かい位置決めが不要になり、レーザの光軸上にキューブ179を配置するだけで、分岐制御されたレーザ光を所望の位置に照射することが可能になる。
レーザ光の分岐方法としては、光ファイバを用いてレーザ光を分岐してもよい。図63Aおよび図63Bは、光ファイバによるレーザ光の分岐方法を示している。図63Aは、レーザ発射装置33からレーザ光を分岐ファイバケーブル421によって2分岐した場合である。この場合、この2分岐ファイバケーブル421から皮膚13の同一の照射位置177に向けて2分岐されたレーザ光422が照射される。2分岐ファイバケーブル421は、1つの光ファイバ方向性結合器423を含んでいる。また、図63Bは、レーザ発射装置33からレーザ光を分岐ファイバケーブル424によって4分岐した場合である。この場合、この4分岐ファイバケーブル424から皮膚13の同一の照射位置177に向けて4分岐されたレーザ光425が照射される。4分岐ファイバケーブル424は、3つの光ファイバ方向性結合器423を含んでいる。このように、光ファイバを用いても、図39に示される場合と同様に、レーザ発射装置33から発射された1本のレーザ光を複数本に分岐させて皮膚13を穿刺することができる。特にファイバケーブルを使用する場合は、外部にレーザ光が漏れることがないので、スプリッタを使用する場合よりも取り扱いが非常に容易である。
図64は、光ファイバ方向性結合器423の構成を示す概略図である。一般に方向性結合器は光を分岐する光学素子である。光ファイバ方向性結合器423は、2本の光ファイバ426の結合部427のクラッド428を除去してコア429同士を近づけることによって構成されている。光ファイバ方向性結合器423では、一方の光ファイバ426から光を入射すると、2本のコア429の近接部分において光の干渉効果により他方のコア429にも光が伝播し、光を分岐することができる。
図65は、光ファイバによるレーザ光の分岐方法として、分岐ジョイント部430およびファイバケーブル431を使用する場合である。ここでは、レーザ発射装置33から出射されたレーザ光432は、分岐ジョイント部(T型分岐)430を経由して2分岐される。分岐ジョイント部430は、例えば、三角形の全反射ミラー433を内蔵しており、逆T字にレーザ光432を分岐する。分岐されたレーザ光は、それぞれファイバケーブル431を経由して、皮膚13の同一の照射位置177を穿刺する。
一般に、レーザ光が皮膚13に照射されると、照射部は光吸収により急激な温度上昇を起こす。この温度上昇により、血液16が蒸発して皮膚13を押し上げバルーン状になる。そして、さらなる皮膚13の押し上げにより、皮膚13が破壊して血液16が流出する。血液16が流出した後、レーザで穿刺された底面は炭化して、炭化臭を発する。炭化臭は脱臭剤で脱臭するとよい。
このレーザ発射装置33において、レーザは患者の皮膚13を約0.5mm穿刺するように設計されている。
この場合、レーザ発射装置33のレーザの種類はEr:YAGまたはCO2ガスとすればよく、波長領域は2.7〜3.5μmまたは6.5〜10.5μmとすればよく、パルス幅は50〜400μs、好ましくは200μsとすればよく、出力は300mJ〜3000mJとすればよい。また、ショット径は0.1mm〜0.5mmとし、ショット深さは0.3〜0.7mmとすればよい。また、チャージ電圧は200〜700Vの範囲、好ましくは500Vとする。この高電圧は、電池を用いて電荷をコンデンサにチャージ(充電)した後、このチャージされた電荷を一気に放電することによって得られる。
レーザ照射における照射角度
1本のレーザ光を、皮膚13に対して斜めの方向から照射して、皮膚13を穿刺してもよい。図43において、血液センサユニット44の負圧室60の内部は負圧手段34により負圧され、皮膚13が盛り上がっている。皮膚13の盛り上がりの頂点180の接線方向に対して、90度未満の角度でレーザ光181を照射する。このように接線方向に対して90度未満の角度でレーザ光を照射すると、垂直方向からレーザ光を照射する場合と比べて、毛細血管が網羅されている面に対して斜め方向からレーザ光181が照射される。そのため、レーザ光181の単位面積当たりの照射強度は弱くなるが、毛細血管を傷つける確率は増加する。したがって、血液採取効率が高くなる。よって、穿刺深さが浅くても十分な血液16が採取できることになり、患者に与える痛みが軽減される。
また、レーザ光181の照射形は、真円でなく、図44に示されるように楕円形183または長四角形184にしてもよい。照射形を楕円形183または長四角形184にすると、レーザ光181が網羅している毛細血管を傷つける確率が増加して、血液採取効率が高くなる。よって、穿刺深さが浅くても十分な血液16を採取することができるので、患者に苦痛を与えることは少ない。
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aにおいて、1つのレーザ発射装置33であっても、レーザの出力強度を可変することができる。
図45に示されるように、レーザ発射装置33と皮膚13との間に、レーザの透過光量が異なる複数種のフィルタ、例えば、減光(ND:Neutral Density)フィルタ191a〜191dが貼り付けられたプレート193を設けてもよい。プレート193をレーザ光194の照射路に設置する。プレート193を回転させることで、皮膚13に照射するレーザ光194の光量を制御する。レーザの光量を制御することにより、穿刺深さを制御することができる。
これにより、従来レーザ強度を制御するために行っていた、フラッシュランプの場合は印加電圧を制御し、半導体レーザの場合は電流を制御するといった方法に加えて、NDフィルタによるレーザ穿刺の出力調整も可能となる。したがって、レーザ出力のよりきめ細かい制御が可能となる。
さらに異なる用途としては、レーザの出力強度をフラッシュランプへの印加電圧で決定する場合、電圧を可変にすると、電圧値の安定性が劣化し、レーザ出力が変動する要因となる。これを解決するために電圧を固定にして、レーザ光194の出力が低下(変化)した場合においても、透過光量の異なるこのNDフィルタ191a〜191dを用いることで、レーザの出力を一定に保つことができる。したがって、安定したレーザ出力を得ることが可能となる。
レーザ照射におけるパルス制御(時分割)
穿刺時の痛みを軽減するために、一定の深さまでの穿刺を複数回に分けて行ってもよい。チャージ電圧として320V程度の大きなパルスを用いて1回で穿刺する方法に比べて、図46に示されるように、レーザ光を3回のパルス198a、198b、198cに分割して、それぞれ210V程度の小さなパルスを用い、100μs〜1msecの間隔(休止区間)で複数回穿刺する。これにより、図47に示されるように、各パルス198a、198b、198cに対応して、皮膚13をレベル199a、199b、199cと3段階に分けて穿刺することができる。この場合、100μs〜1msecの休止区間でコンデンサをチャージして高電圧を得ている。
この穿刺方法の制御によれば、1パルスで皮膚13を穿刺する深さが浅いので、痛みを軽減しつつ、所定の深さまで穿刺することができる。なお、この場合は、パルス198a、198b、198cの間隔を100μs〜1msecと短くすることが重要であり、血液16が滲み出る前に次の穿刺を行うようにしている。
また、穿刺時の痛みを軽減するために、一定の深さまでの穿刺を複数回に分けて行う別の方法として、レーザ光を連続可変/分割照射する場合について説明する。本発明で穿刺する対象物とは、例えば、指の腹の皮膚である。皮膚は、表面から順に、角質層を外部に持つ表皮と、痛点や毛細管が存在する真皮とで形成されている。したがって、最初または数回の照射で表皮だけを除去するエネルギーを与えた後、小さいエネルギーで真皮を穿刺すると、痛みが軽減される。
例えば、エルビウムをドーピングしたEr:YAGを材料とし、φ2.5mm、長さ52mmのレーザロッド(レーザ結晶)33dを用いる場合、1回で穿刺する時のフラッシュランプ(励起光源)33eヘのチャージ電圧は、450V程度の大きなパルスを用いる。この時の動作を起こすための回路が図48Aに示され、フラッシュランプ33eヘの入力電流が図48Bに示され、レーザの出力が図48Cに示されている。
図48Aの回路図において、サイリスタ(SCR1)401がオンされると、トリガコイル402から数kVの昇圧された電圧が出力され、フラッシュランプ33eに充填されたキセノンガスがイオン化され、電解コンデンサ403の主放電が始まり、フラッシュランプ33eが発光する。このフラッシュランプ33eの発光によってレーザロッド33dは励起され、レーザ光が出射される。なお、符号「404」は抵抗(R1)である。
上記の場合は1回で穿刺する場合である。
次に、電解コンデンサ1回分の充電で数回に分けてレーザ光を出射する場合について説明する。このときの回路図、フラッシュランプ33eヘの入力電流、およびレーザ出力は、図49A、図49B、および図49Cにそれぞれ示されている。
数回に分けてフラッシュランプ33eを発光させる場合には、図49Aの回路図において、大電流でスイッチング速度が速いトランジスタ(IGBT)411にハイの信号が入力されると、トランジスタ(IGBT)411がオンと同時にフラッシュランプ33eの負極がグランドに接続され、フラッシュランプ33eに電解コンデンサ412からの電圧が印加され、さらに同時にトリガコイル413から数kVの昇圧された電圧が出力される。これにより、フラッシュランプ33eに充填されたキセノンガスがイオン化し、電解コンデンサ412の主放電が始まり、フラッシュランプ33eが発光する。次に、トランジスタ(IGBT)411にローの信号が入力されると、トランジスタ(IGBT)411がオフして、フラッシュランプ33eヘの電圧印加は停止する。これにより、フラッシュランプ33eの発光も停止し、レーザの出力も停止する。この動作を繰り返すことで、レーザの出力を数回に分けて行うことができる。ここでは、2回に分けた場合を示している。なお、符号「414」は抵抗(R1)である。
図49Cからも明らかなように、最初は大きい出力で照射し、次に小さい出力で照射することができる。本例で示したEr:YAGのレーザロッド33dを使用する場合は、レーザ光を出射するためのフラッシュランプ33eの最低電圧は370Vであるので、2回目の電圧は370Vよりも大きく設定し、フラッシュランプ33eの発光時間を短くして全体のエネルギーを小さくする必要がある。これにより、皮膚13をレベル199a、199bと2段階に分けて穿刺することができる(図47参照)。
この穿刺方法の制御によれば、まず皮膚13の表皮を除去してから、真皮を小さいエネルギーで掘るため、真皮の深いところまでレーザ光が到達しないので、痛みを軽減しつつ、所定の深さまで穿刺することができる。なお、血液16が滲まないように表皮を穿刺するようにしている。
電源制御について
本発明の血液検査装置は、電気消耗の大きいレーザ発射装置を搭載しているので、電源の管理が重要である。電源として電池を用いる携帯機器である場合には、容量に制限があるので、電源の管理が特に重要である。
また、血糖値の測定という生命の安全に係わる装置である場合には、電源切れによる測定不能を避けることが求められ、最悪でも血液検査(例えば血糖値の測定)だけは実施できることが重要である。
本発明の血液検査装置は、装置に含まれるレーザ発射装置を駆動する電源と、電気回路部を駆動する電源との電源供給を制御する電源制御回路を有することが好ましい。さらに電源制御回路は、レーザ発射装置を駆動する電源と、電気回路部を駆動する電源とを独立に制御することが好ましい。
「独立に制御する」とは、電源(特に電池)の残量や電圧に応じて、レーザ発射装置を駆動する電力と、電気回路部を駆動する電力とを、供給するかしないかを決定すること、およびいずれの電源から供給するかを決定することなどを意味する。
本発明の血液検査装置の電源は、電池電源を含むことが好ましい。携帯機器として用いることができるからである。電池電源は、1つであってもよく、2つ以上あってもよい。
電池は、二次電池もしくは一電池、またはその両者の組み合わせでもよい。二次電池の例には、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などが含まれる。一次電池の例には、リチウム電池、マンガン電池、アルカリ電池、オキシライド電池などが含まれる。
本発明の血液検査装置の電源は、電池電源に加えて、緊急用電源の接続端子を有していてもよい。電池電源の電池が消費された場合に、他の電源に接続して血液検査装置を用いるためである。緊急時の電源の例には、入手が容易な乾電池、パソコン等で用いるUSB端子、燃料電池、手動発電機(ダイナモ)等が含まれる。これらの電源を容易に接続できる。
さらに本発明の血液検査装置の電源は、電池電源に加えて、外部電源を有していてもよい。外部電源と接続している場合には、外部電源が優先して使用されて、電池からの電気出力が停止されるか、または電池への充電が行われることが好ましい。
血液検査装置は、電池電源の電池の残量を測定する電池残量測定回路を有していてもよい。さらに血液検査装置は、電池残量測定回路が測定した電池残量と、予め定められた値(電力量)とを比較する比較部を有することが好ましい。電池の残量を把握して、レーザ穿刺または検査が可能かどうかを判断するためである。
前述の通り、比較部には予め定められた電力量が記憶されている。予め定められた電力量の第1は、所定の回数分の検査(レーザ穿刺と測定を含む)に必要な電力量である。この値を第1残量閾値という。電池残量が第1残量閾値を下回る場合は、使用者に電池の交換を促す警告(電池残量警告)をすることが好ましい。第1残量閾値は、設計された回路によって適宜設定されればよく、基本的には固定値とすればよい。
予め定められた電力量の第2は、1回の検査(穿刺および測定などを含む)に必要な電力量である。この値を第2残量閾値という。電池残量が第2残量閾値以上であれば、少なくとも1回の検査ができると判断され、検査が実施される。ただし、前述の通り、電池残量が第1残量閾値を下回っている場合には、電池残量警告を行うことが好ましい。
一方、測定した電池残量が第2残量閾値未満であれば、通常の検査を行うことはできないので、レーザによる穿刺を禁止して、検査不可能であることを使用者に示すことが好ましい(使用不可表示)。しかしながら、レーザによる穿刺は不可能であっても、電力消費の少ない測定プロセスを実施することができる場合がある。よって、レーザ以外の手段で穿刺した上で、測定を行うことができる。
第2残量閾値は、前回の検査において消費された電池の消費量を基準に設定されることが好ましい。具体的に第2残量閾値は、当該消費量と、測定のための電気回路を駆動するための電力量との和であることが好ましい。レーザ発射装置のレーザ出力設定変更などにより電池の消費量が変わるため、検査において消費される電池の消費量は最新のデータを記憶しておくようにしている。このように、第2残量閾値は可変である。
予め定められた電力量の第3は、レーザ発射装置への1回の充電に必要な電力量と、測定のための電気回路を駆動するための電力量との和である。この値を第3残量閾値という。レーザ発射装置に充電するための電源と、電気回路を駆動するための電源とが別である場合に、緊急時に電気回路を駆動するための電源を用いてレーザ発射装置に充電をするかどうかを判断する基準として、第3残量閾値を用いる。レーザ発射装置への1回の充電に必要な電力量は、レーザの励起用にチャージするコンデンサの容量やチャージ電圧やチャージ電流及び電池の内部抵抗により決定される。
電池残量に応じた充電電流値の設定
また、電池残量測定回路で測定された電池残量に基づいて、レーザ発射装置への充電をするための充電量を設定してもよい。図61A〜図61Cに、電池残量に応じて充電量を設定する例を示す。
図61Aは、電池残量(Y軸)の割合に応じて、段階的に充電電流を変更する方法である。例えば、電池残量が75〜100%(第1ゾーン)であれば、充電電流値を最大値(100%)とし、電池残量が50〜75%(第2ゾーン)であれば、充電電流値を最大値の50%とし、電池残量が25〜50%(第3ゾーン)であれば、充電電流を25%とする。
図61Bは、電池残量(Y軸)の割合に比例して、連続的に充電電流(X軸)を変更する方法である。
図61Cは、電池残量(Y軸)の割合の変化曲線を基準として、その曲線と逆になるような可変カーブになるように、連続的に充電電流(X軸)を変更する方法である。図61Cでは、「Y=X+a(a:オフセット分)」の比例直線と対照になるカーブにあわせて制御を行っている。
本発明の血液検査装置は、電池電源の電池の電圧を測定する電池電圧測定回路を有することが好ましい。さらに血液検査装置は、電池電圧測定回路が測定した電池電圧と、予め定められた電圧値とを比較する比較部を有することが好ましい。
検査(穿刺と測定)のために必要な電力量が電池に残っている場合であっても、レーザ穿刺のためにレーザ発射装置に充電を行うと、測定のための電気回路部を駆動するための電圧よりも、電池電圧が低下してしまうことがある。したがって、測定に必要な電池残量があるにもかかわらず、測定が実施できない場合が発生しうる。そこで、電池電圧測定回路で、電池が充分な電圧を出力しているかどうかを確認する。
前述の通り、比較部には予め定められた電圧値が記憶されている。予め定められた電圧値の第1は、測定のための電気回路部を駆動するための必要最低電圧よりもある程度高い電圧値であることが好ましい。この電圧値を、第1電圧閾値という。レーザ発射装置への充電により電池の電圧が下がっても、電池の電圧が必要最低電圧を下回らないように、第1電圧閾値を設定する。充電により電池の電圧がどの程度下がるかは、電池の性質によって異なるので、電池の性質に応じて適宜第1電圧閾値を設定する。
レーザ発射装置に充電を行う前に電池電圧測定回路が測定した電池電圧が、第1電圧閾値よりも低いと、比較部で判断された場合には、通常の電流よりも低い電流で、レーザ発射装置に充電を行うことが好ましい。低電流で充電を行うと、電池電圧が低下しにくくなるためである。
図62に、充電量を変化させたときの、電池の電圧(Y軸)と電池残量(X軸)との関係が示される。曲線410は充電電流が0(負荷無)のとき、曲線420は充電電流がIのとき、曲線430は充電電流がI’(>I)のときの、電池の電圧(Y軸)と電池残量(X軸)との関係をそれぞれ示す。曲線410に対して、曲線420および曲線430とも電池電圧が下がっていることがわかる。これは、電池内部の抵抗(421および431)による。
測定のための電気回路を駆動するために必要な電圧レベルを440とすると、充電電流がIの場合(曲線420)は、電池の残量がX2になるまで、電池は電気回路を駆動できる。一方、充電電流がI’(>I)の場合(曲線430)は、電池の残量がX1になるまでしか、電池は電気回路を駆動できない。このように、充電電流を下げると、電池電圧の低下が抑制される。電池電圧の低下が大きいと、450で示されるように、使用できない電池エネルギーが増えるため好ましくない。
比較部に予め定められた電圧値の第2は、第1電圧閾値以上で、本来は十分に余裕のある電圧値である。この電圧値を、第2電圧閾値という。例えば、第1電圧閾値+0.5〜1V程度である。
比較部が、レーザ発射装置に充電を行う前に電池電圧測定回路が測定した電池電圧が、第2電圧閾値を上回ると判断した場合には、レーザ発射装置により高い充電電流で充電を行うことが好ましい。
本発明の血液検査装置は、血液検査の検査結果を表示される表示部(図1参照)を有する。前述の電池残量警告の表示や使用不可表示は、表示部に表示されることが好ましい。
電源制御部の第1の例
図50には、血液検査装置の第1の例の電源制御部200−1が示される。
図50において、家庭用AC電源(外部電源の例として用いた)に接続されるコンセント201は、ACアダプタ202に接続されている。ACアダプタ202の出力は、電源制御回路203の一方の入力にコネクタを用いて挿抜自在に接続できる。
電池210は、電池残量および電池電圧測定回路212に接続される。回路212の第1の出力は電源制御回路203に接続され、回路212の第2の出力は比較部211に接続されている。
緊急用電源の接続端子204は、電源制御回路203に接続されている。
電源制御回路203は、ACアダプタ202と接続されているときには、ACアダプタ202電源を優先して使用し、電池210を使用しないように制御する。ACアダプタ202から出力される電圧を検知して、この電圧が出力されているときは、電池35からの供給を強制的に停止、または電池210に充電する。
電源制御回路203の第1の出力は電気回路部36aに接続される。電源制御回路203の第2の出力は昇圧回路205の入力に接続され、昇圧回路205の出力はレーザ発射装置33に接続されている。
比較部211の第1の出力は電源制御回路203に接続されている。比較部211の第2の出力は昇圧制御部208に接続されて、昇圧制御部208の出力は、昇圧回路205に接続されている。比較部211の第3の出力は表示制御部209に接続されて、表示制御部209の出力は表示部37に接続されている。
電気回路部36aの入力には穿刺ボタン75が接続されており、穿刺ボタン75の押下信号は電気回路部36aを介して昇圧制御部208の入力に接続されている。昇圧制御部208の他方の入力には緊急ボタン207が接続されている。電気回路部36aの出力は、表示部37に接続されている。
図50に示された電源制御部200−1の動作の第1の例を、図51を参照して説明する。ステップ311で電源を起動する。ステップ312に移行して、電池残量を測定する。ステップ313で、測定された電池残量を第1残量閾値と比較し、ステップ314で第2残量閾値と比較する。第1残量閾値とは、所定の回数分の検査(レーザ穿刺と測定を含む)に必要な電力量であり、第2残量閾値とは、1回の検査(穿刺および測定などを含む)に必要な電力量である。
ステップ313で電池残量が第1残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ318へ移行して、レーザ発射装置に充電を行う。
ステップ313で電池残量が第1残量閾値未満であると判断された場合であって、ステップ314で第2残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ315で使用者に電池の交換を促すための電池残量警告表示を表示し、かつステップ318へ移行して、レーザ発射装置に充電を行う。
ステップ313で電池残量が第1残量閾値未満であると判断された場合であって、ステップ314で第2残量閾値未満であると判断された場合には、ステップ316で使用者に通常の検査ができないことを知らせるための使用不可表示を表示部に表示して、かつステップ317でレーザ発射装置への電力の供給を禁止する。
ステップ318でレーザ発射装置に所定量の充電がされたら、ステップ319でレーザを発射して皮膚を穿刺する。ステップ321で穿刺された皮膚から流出した血液の成分を測定し、得られた測定結果を表示して、血液検査を完了させる。
検査後、ステップ322で電池の残量を測定する。ステップ323で、ステップ312で測定した電池残量と、ステップ322で測定した電池残量との差を求めて、今回電池消費量を求める。さらにステップ323で、今回電池消費量と測定のための電気回路部を駆動するための最低必要電力量との和を求めて、第2残量閾値を再設定する。ステップ324で電源を停止する。
図50に示された電源制御部200−1の動作の第2の例を、図52を参照して説明する。ステップ311で電源を起動する。ステップ331で電池の電圧を測定し、ステップ332で電池の残量を測定する。
ステップ333で、ステップ331で測定された電圧と、前回の検査のステップ347(後述)で算出された電圧降下値との差を求める。さらにステップ333で、当該差と測定のための電気回路部を駆動するための必要最低電圧とを比較する。
ステップ313で、ステップ332で測定された電池残量と第1残量閾値とを比較し、ステップ314で、ステップ332で測定された電池残量と第2残量閾値とを比較する。前記の通り、第1残量閾値とは、所定の回数分の検査(レーザ穿刺と測定を含む)に必要な電力量であり、第2残量閾値とは、1回の検査(穿刺および測定などを含む)に必要な電力量である。
ステップ333で前記差が必要最低電圧以上であると判断された場合であって、ステップ313で電池残量が第1残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ341に移行して、通常電流によりレーザ発射装置に充電する。
ステップ333で前記差が必要最低電圧以上であると判断された場合であって、ステップ313で電池残量が第1残量閾値未満であると判断され、ステップ314で電池残量が第2残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ315で使用者に電池の交換を促すための電池残量警告表示を表示し、かつステップ341へ移行して、通常電流によりレーザ発射装置に充電する。
ステップ333で前記差が必要最低電圧以上であると判断された場合であって、ステップ313で電池残量が第1残量閾値未満であると判断され、かつステップ314で電池残量が第2残量閾値未満であると判断された場合には、ステップ316で使用者に通常の検査ができないことを知らせるための使用不能表示を表示して、かつステップ317でレーザ発射装置への電力の供給を禁止する。
一方、ステップ333で前記差が必要最低電圧未満であると判断された場合には、ステップ335に移行して、レーザ発射装置に通常の充電ができないこと(例えば、充電時間が長くなること)を使用者に知らせるための通常充電不能表示を表示し、ステップ336で使用者に検査を実施する場合には緊急ボタンを押すように求める。
ステップ336で緊急ボタンが押されなかった場合には、ステップ317に移行してレーザ発射装置への電力の供給を禁止する。
ステップ336で緊急ボタンが押下された場合には、ステップ337で通常よりも低電流によりレーザ発射装置に充電する。充電のための電流値の制御は、昇圧制御部208が行う。ステップ338でレーザ発射装置がレーザを発射して皮膚を穿刺し、ステップ339で穿刺された皮膚から流出した血液の成分測定を行い、測定結果を表示する。検査後にステップ348で電源を停止する。
一方、ステップ341で通常電流によりレーザ発射装置に充電した場合は、ステップ342で充電中の電池の電圧を測定する。ステップ343で、充電されたレーザ発射装置からレーザを発射して皮膚を穿刺する。ステップ344で、穿刺された皮膚から流出した血液の成分を測定して、測定結果を表示する。ステップ345で、測定後の電池残量を測定する。
ステップ346で、ステップ332で測定した電池残量と、ステップ345で測定した電池残量との差を求めて、今回電池消費量とする。さらにステップ346で、今回電池消費量と測定のための電気回路部を駆動するための必要最低電力量との和を求めて、第2残量閾値を再設定する。
またステップ347で、ステップ331で測定した電圧と、ステップ342で測定した電圧との差を算出して、電圧降下値とする。電圧降下値は、次の検査におけるステップ333(前述)において用いられる。その後、ステップ348で電源が停止する。
図50に示された電源制御部200−1の動作の第3の例を、図53を参照して説明する。ステップ311で電源を起動する。ステップ312に移行して、電池残量を測定する。ステップ313で、測定された電池残量と第1残量閾値とを比較し、ステップ314で、測定された電池残量と第2残量閾値とを比較する。
前記の通り、第1残量閾値とは、所定の回数分の検査(レーザ穿刺と測定を含む)に必要な電力量であり、第2残量閾値とは、1回の検査(穿刺および測定などを含む)に必要な電力量である。
ステップ313で電池残量が第1残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ351へ移行して、前回の検査においてレーザ発射装置に充電をするための充電電流値(後述のステップ358を参照)を、今回の検査における充電電流値として設定する。
ステップ313で電池残量が第1残量閾値未満であると判断された場合であって、ステップ314で電池残量が第2残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ315で使用者に電池の交換を促すための電池残量警告表示を表示し、かつステップ351へ移行して、前回の検査においてレーザ発射装置に充電をするための充電電流値(後述のステップ358を参照)を、今回の検査における充電電流値として設定する。
ステップ313で電池残量が第1残量閾値未満であると判断された場合であって、ステップ314で第2残量閾値未満であると判断された場合には、ステップ316で使用者に検査ができないことを知らせるための使用不可表示を表示して、かつステップ317でレーザ発射装置への電力の供給を禁止する。
ステップ352では、ステップ351で設定した充電電流値によって、レーザ発射装置への充電を行う。電池の交換や電源種類が変わった場合には、所定の充電電流値によって充電を行う。ステップ353で、充電中の電池の電圧を測定する。ステップ354で、充電中の電池の電圧と第1電圧閾値とを比較する。ステップ356で充電中の電池の電圧と第2電圧閾値とを比較する。
前述の通り、第1電圧閾値は、測定のための電気回路部を駆動するための必要最低電圧よりもある程度高い電圧値であり;第2電圧閾値は、第1電圧閾値以上で、本来は十分に余裕のある電圧値である。この電圧値を、第2電圧閾値という。例えば、第1電圧閾値+0.5〜1V程度である。
ステップ354で、充電中の電池の電圧が第1電圧閾値以上であると判断され、かつステップ356で第2電圧閾値以下であると判断された場合には、ステップ358でそのときの充電電流値を次回の検査のための充電電流値として記憶する(次回の検査におけるステップ351で用いる)。
ステップ354で、充電中の電池の電圧が第1電圧閾値未満であると判断された場合には、ステップ355で、充電電流値を低下させる。一方ステップ356で、充電中の電池の電圧が第2電圧閾値を超えていると判断された場合には、ステップ357で、充電電流を高める。
ステップ359で、レーザ発射装置からレーザを発射して皮膚を穿刺する。ステップ361で、穿刺された皮膚から流出した血液の成分を測定し、測定結果を表示する。ステップ362で、検査終了後の電池残量を測定する。ステップ363で、ステップ312で測定した残量と、ステップ362で測定した残量との差を求めて、今回電池消費量とする。さらにステップ363で、今回電池消費量と測定のための電気回路部を駆動するための必要最低電力量との和を、第2残量閾値として再設定する。ステップ364で電源を停止する。
図50に示された電源制御部200−1の動作の第4の例を、図54を参照して説明する。図54に示されたフローは、図53に示されたフローと類似するが、レーザ発射装置への充電のための充電電流値の設定方法が異なる。つまり図54に示されたフローでは、ステップ350で、電池の残量に基づいて充電電流値を設定する。具体的な設定方法は前述のとおりであるが、基本的には、電池残量の割合が高いほど、高い電流値で充電する。
その他のステップは、図53に示されたフローと同様である。
電源制御部の第2の例を説明する。
図55には、血液検査装置の第2の例の電源制御部200−2が示される。
図55において、家庭用AC電源(外部電源の例として用いた)に接続されるコンセント201は、ACアダプタ202に接続されている。ACアダプタ202の出力は、電源制御回路203の一方の入力にコネクタを用いて挿抜自在に接続できる。
電池210aは、電池残量および電池電圧測定回路212に接続される。回路212の第1の出力は電源制御回路203に接続され、回路212の第2の出力は比較部211に接続されている。電池210bは、電気回路部36aに接続されている。緊急用電源の接続端子204は、電源制御回路203に接続されている。
電源制御回路203は、ACアダプタ202と接続されているときには、ACアダプタ202電源を優先して使用し、電池210aを使用しないように制御する。ACアダプタ202から出力される電圧を検知して、この電圧が出力されているときは、電池35からの供給を強制的に停止、または電池210aに充電する。
電源制御回路203の出力は昇圧回路205に接続され、昇圧回路205の出力はレーザ発射装置33に接続されている。
比較部211の第1の出力は電源制御回路203に接続されている。比較部211の第2の出力は昇圧制御部208に接続されて、昇圧制御部208の出力は、昇圧回路205に接続されている。比較部211の第3の出力は表示制御部209に接続されて、表示制御部209の出力は表示部37に接続されている。
電気回路部36aの入力には穿刺ボタン75が接続されており、穿刺ボタン75の押下信号は電気回路部36aを介して昇圧制御部208の入力に接続されている。昇圧制御部208の他方の入力には緊急ボタン207が接続されている。電気回路部36aの他方の出力は、表示部37に接続されている。
図55に示される電源制御部200−2の動作の第1の例を、図56を参照して説明する。図56に示されたフローは、図51に示されたフローと類似する。ただし、電源制御部200−2は、2つの電池(210aおよび210b)を有し、電池210a(レーザ用電池)だけがレーザ発射装置の充電に用いられる。よって、ステップ312’で、レーザ用電池の電池残量を測定し、ステップ313’で、ステップ312’で測定された残量と第1残量閾値とを比較し、ステップ314’で、ステップ312’で測定された残量と第2残量閾値とを比較する。
その他のステップは、図51に示されたフローのステップと同様である。
図55に示される電源制御部200−2の動作の第2の例を、図57を参照して説明する。図57に示されるフローは、図56に示されたフローと類似するが、レーザ発射装置への充電のための充電電流値の設定方法が異なる。つまり、図57に示されたフローでは、ステップ350で、充電電流値の設定を電池の残量に基づいて行う。具体的な設定方法は前述のとおりであるが、基本的には、電池残量の割合が高いほど、高い電流値で充電する。
その他のステップは、図56に示されたフローと同様である。
電源制御部の第3の例を説明する。
図58には、血液検査装置の第3の例の電源制御部200−3が示される。
図58において、家庭用AC電源(外部電源の例として用いた)に接続されるコンセント201は、ACアダプタ202に接続されている。ACアダプタ202の出力は、電源制御回路203の一方の入力にコネクタを用いて挿抜自在に接続できる。
電池210aは、電池残量および電池電圧測定回路212aに接続される。回路212aの第1の出力は電源制御回路203に接続され、回路212aの第2の出力は比較部211に接続されている。電池210bは、電池残量および電池電圧測定回路212bに接続される。回路212bの第1の出力は電源制御回路203に接続され、回路212bの第2の出力は比較部211に接続されている。緊急用電源の接続端子204は、電源制御回路203に接続されている。
電池212aと電池212bはいずれも、電源制御部203に接続されているので、レーザ発射装置33の充電および電気回路部36aの駆動に用いられる。通常は、電池212aがレーザ発射装置を充電して、電池212bが電気回路部36aを駆動する。ただし、電池212aの残量が不足してレーザ発射装置を充電できない場合であって、電池212bに充分な残量がある場合には、緊急手段として電池212bがレーザ発射装置を充電する。
電源制御回路203は、ACアダプタ202と接続されているときには、ACアダプタ202電源を優先して使用し、電池210aおよび電池210bを使用しないように制御する。ACアダプタ202から出力される電圧を検知して、この電圧が出力されているときは、電池210aおよび電池210bからの供給を強制的に停止、または電池210aおよび電池210bに充電する。
電源制御回路203の第1の出力は電気回路部36aに接続される。電源制御回路203の第2の出力は昇圧回路205の入力に接続され、昇圧回路205の出力はレーザ発射装置33に接続されている。
比較部211の第1の出力は電源制御回路203に接続されている。比較部211の第2の出力は昇圧制御部208に接続されて、昇圧制御部208の出力は、昇圧回路205に接続されている。比較部211の第3の出力は表示制御部209に接続されて、表示制御部209の出力は表示部37に接続されている。
電気回路部36aの入力には穿刺ボタン75が接続されており、穿刺ボタン75の押下信号は電気回路部36aを介して昇圧制御部208の入力に接続されている。昇圧制御部208の他方の入力には緊急ボタン207が接続されている。電気回路部36aの出力は、表示部37に接続されている。
図58に示された源制御部200−3の動作の第1の例を、図59を参照して説明する。
図59に示されたフローは、図56に示されたフローと類似する。ただし、電源制御部200−3は、2つの電池(210aおよび210b)を有し、いずれの電池も電源制御回路203に接続されている。基本的には、電池210a(レーザ用電池)がレーザ発射装置の充電に用いられ、電池210b(システム用電池)が電気回路部36aを駆動するために用いられる。しかしながら、電池210aの残量が不足した場合などの緊急時には、電池210bをレーザ発射装置の充電に用いる場合がある。
図56に示されたフローと同様に、ステップ314’でレーザ用電池の残量と第2残量閾値とが比較されるが、レーザ用電池の残量が第2残量閾値未満であると判断された場合には、ステップ371で、使用者にレーザ用電池が使用できないことを知らせるための表示をする。
ステップ372でシステム用電池の残量を測定する。ステップ373で、ステップ372で測定された残量と第3残量閾値とを比較する。第3残量閾値とは、レーザを発射するために必要とされるレーザ発射装置へ充電するべき電力量と、システム最低電力量との和とすればよい。
ステップ373で、システム用電池の残量が、第3残量閾値未満であると判断された場合には、ステップ316で、使用者に検査が行えないことを伝えるための使用不能表示を表示する。さらに、ステップ317でレーザ発射装置への電力の供給を禁止する。
一方、ステップ373で、システム用電池の残量が、第3残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ374で、使用者にレーザ発射装置に通常の充電ができない(例えば、通常よりも長い充電時間を要する)ことを知らせるための通常充電不能表示を表示し、それでも検査を実施したい場合には、緊急ボタンを押下するように求める。
ステップ375で、緊急ボタンが押下されなかった場合には、ステップ317に移行してレーザ発射装置への電力の供給を禁止する。
一方、ステップ375で、緊急ボタンが押下された場合には、ステップ376でシステム用電池によるレーザ発射装置への充電を許可し、ステップ377でレーザ発射装置の充電を行う。ステップ377での充電は、システム用電池の電圧降下を避けるため、通常より低電流で行うことが好ましい。充電のための電流値の制御は、昇圧制御部208が行う。
ステップ378で、レーザ発射装置からレーザを発射して皮膚を穿刺する。ステップ379で、穿刺された皮膚から流出した血液の成分を測定し、測定結果を表示する。ステップ381では、使用者にシステム用電池を交換することを促すためのシステム用電池交換警告表示を表示する。ステップ382で電源を停止する。
図58に示された電源制御部200−3の動作の第2の例を、図60を参照して説明する。図60に示されたフローは、図59に示されたフローと類似するが、レーザ発射装置への充電のための充電電流値の設定方法が異なる。つまり図60に示されたフローでは、ステップ350で、電池の残量に基づいて充電電流値を設定する。具体的な設定方法は前述のとおりであるが、基本的には、電池残量の割合が高いほど、高い電流値で充電する。
その他のステップは、図59に示されたフローと同様である。
2006年3月22日出願の特願2006−078415、同じく2006年3月22日出願の特願2006−078421、同じく2006年3月22日出願の特願2006−078423、同じく2006年3月22日出願の特願2006−078426、同じく2006年3月22日出願の特願2006−078428の各日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
本発明のレーザ穿孔装置およびレーザ穿孔方法は、例えば、血液の採取や薬剤の投与などの目的を問わず、簡単な構成で、皮膚穿孔時の痛みを軽減することができるレーザ穿孔装置およびレーザ穿孔方法として有用である。このため、医療分野における血液検査装置に適用できることはもちろん、特に糖尿病患者などが使用する家庭用医療器具などにも広く適用することができる。
本発明は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置およびレーザ穿孔方法に関する。
従来、血液の採取または薬剤の投与を目的として、皮膚に小さな穴をあけるための技術として、レーザを用いて皮膚を穿孔する技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。レーザを用いれば、従来一般的に使用されていた針の交換作業が不要になり、また、針に比べて穿孔時の痛みも軽減されうるといった利点がある。
特許文献1記載のレーザ穿孔装置は、図1に示すように、レーザハウジング1から出射されたレーザ光2を、光学的なビームスプリッタ3を用いて分割することで、同時またはほぼ同時に皮膚の所望領域内に多数の穴をあけるようにしている。皮膚に多数の穴をあけることで、穿孔後、薬剤を、クレームやローション、絆創膏の形で皮膚に適用することが容易になる。
特開2004−195245号公報
特表2004−533866号公報
しかしながら、従来のレーザ穿孔装置においては、出射されたレーザ光を分割する際に、複数の平行光に分岐しているため、レーザ光の穿孔領域が広くなり、穿孔時の痛みが増大するおそれがある。これは、穿孔後の薬剤投与の便宜を考慮して、皮膚に多数の穴を効率的にあけることのみを目的とするためである。
皮膚の穿孔装置においては、針を用いる場合に限らず、レーザを用いる場合にも、いかにして穿孔時の苦痛を軽減するかは、実際問題として、最も重要な課題のひとつである。従来のレーザ穿孔装置においては、この点の考慮が不十分であり、今なお、穿孔時の痛みを軽減するための手法が広く求められている。
本発明は、簡単な構成で、皮膚穿孔時の痛みを軽減することができるレーザ穿孔装置およびレーザ穿孔方法を提供することを目的とする。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、1回の穿孔動作において同一の穿孔位置に複数のレーザ光を照射するように前記レーザ光源のレーザ出力を分割制御するレーザ出力制御手段と、を有する構成を採る。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、1回の穿孔動作において同一の穿孔位置に複数のレーザ光を照射するように前記レーザ光源のレーザ出力を分割制御するレーザ出力制御手段と、を有し、前記レーザ出力制御手段は、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を複数の光路に分岐するレーザ光分岐手段を含み、前記複数の光路に分岐されたレーザ光を前記同一の穿孔位置に向かって集光させる、構成を採る。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置であって、
レーザ光を出射するレーザ光源と、1回の穿孔動作において同一の穿孔位置に複数のレーザ光を照射するように前記レーザ光源のレーザ出力を分割制御するレーザ出力制御手段と、を有し、前記レーザ出力制御手段は、前記レーザ光源をパルス制御するパルス制御手段を含み、パルス状のレーザ光を複数回前記同一の穿孔位置に照射する、構成を採る。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、1回の穿孔動作において同一の穿孔位置に複数のレーザ光を照射するように前記レーザ光源のレーザ出力を分割制御するレーザ出力制御手段と、を有し、前記レーザ出力制御手段は、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の強度を可変する制御回路を含み、時間とともに強度が小さくなるレーザ光を前記同一の穿孔位置に照射する、構成を採る。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源と、透過光量が異なる複数のフィルタと、を有し、前記複数のフィルタは、前記レーザ光源の光軸上に選択可能に設けられている、構成を採る。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔装置であって、レーザ光を出射するレーザ光源、を有し、前記レーザ光源は、1つの励起光源により複数のレーザ結晶を励起して複数のレーザ光を出射する、構成を採る。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔方法であって、1回の穿孔動作において同一の穿孔位置に複数のレーザ光を照射するようにレーザ光源のレーザ出力を分割制御する、ようにした。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔方法であって、レーザ光源から出射されたレーザ光を複数の光路に分岐し、分岐されたレーザ光を同一の穿孔位置に向かって集光させることにより、前記レーザ光源のレーザ出力を制御する、ようにした。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔方法であって、レーザ光源をパルス制御して、パルス状のレーザ光を複数回同一の穿孔位置に照射することにより、前記レーザ光源のレーザ出力を制御する、ようにした。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔方法であって、レーザ光源から出射されるレーザ光の強度を可変して、時間とともに強度が小さくなるレーザ光を同一の穿孔位置に照射することにより、前記レーザ光源のレーザ出力を制御する、ようにした。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔方法であって、透過光量が異なる複数のフィルタを、レーザ光源の光軸上に選択可能に設けることにより、前記レーザ光源のレーザ出力を制御する、ようにした。
本発明のレーザ穿孔装置は、レーザを用いて皮膚を穿孔するレーザ穿孔方法であって、1つの励起光源により複数のレーザ結晶を駆動して複数のレーザ光を出射することにより、レーザ光源のレーザ出力を制御する、ようにした。
本発明によれば、簡単な構成で、皮膚穿孔時の痛みを軽減することができる。
以下、図面に基づいて、本発明のレーザ穿孔装置を説明する。ここでは、本発明のレーザ穿孔装置を血液検査装置に適用した場合を例にとって説明する。なお、各図面において共通する部材には同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
装置全体図1
図2は、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置の全体構成の第1の例を示す分解組立斜視図である。
図2に示される血液検査装置31の下ケース32の内部には、レーザ発射装置33と、吸引ポンプ(負圧ポンプ)34a、ポンプ弁ユニット34b、および大気開放スイッチ34cで構成された負圧手段34と、電気部品に電力を供給する電池35と、これらの部品上に装着された電気回路部36と、電気回路部36の上に装着されるとともに、例えば、液晶で構成された表示部37などの部材が格納される。
各部材が格納された下ケース32に上ケース38が被せられて装置本体39が構成される。上ケース38には、透明の表示窓38aが、表示部37に対応した位置に設けられる。
装置本体39は、血液センサユニット44と、アダプタ40を介して接続される。アダプタ40の一方は円筒状のホルダであり、血液センサユニット44が挿抜自在に装着される。血液センサユニット44は、ホルダ41と、ホルダ41の内部に装着された血液センサ42とから構成される。血液センサユニット44の中央に設けられた窓43は、レーザ発射装置33のレーザ発射口からのレーザ光を通過させる部分である。窓43は、貫通孔であってもよく、レーザ光を透過する材料で形成された部材でもよい。
装置全体図2
図3は、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置の全体構成の第2の例を示す分解組立斜視図である。図4はその側面図である。図3および図4に示される血液検査装置31aは、負圧手段140を構成する負圧ポンプとして手動吸引できる手動ポンプを有する点で、図2に示される血液検査装置31と相違する。以下、この相違点について説明する。
血液検査装置31aは、手動ポンプ(負圧ポンプ)141と、手動ポンプ141を手動で駆動する手動ポンプノブ142とを含む負圧手段140を有する。大気開放スイッチ144は、ポンプ弁ユニット143で発生する負圧を大気に開放する。
手動ポンプノブ142は弓形状をしており、一方は支軸142aとされ、他方は作用部142bとされている(図4参照)。手動ポンプノブ142は、支軸142aを中心に回動することができる。作用部142bが手動ポンプ141に動力を伝達する。患者は、手動ポンプノブ142を、装置本体39と共に握り、作用部142bを上下運動させることができる。この上下運動により手動ポンプ141が動作して負圧が発生する。
作用部142bの上下運動により、皮膚の盛り上がりを確認しながら、適正な負圧を加えるようにするため、負圧室60(図16など参照)の内部を目視できるように、血液センサユニット44の外装を透明部材で形成することが好ましい。血液センサユニット44の外装をすべて透明部材で形成してもよいし、血液センサユニット44の先端41h側(負圧室60側)のみを透明部材で形成してもよい。手動ポンプノブ142の被把持部142cには、指の形の凹凸を設けて、滑りを防止してもよい。
負圧手段140を手動駆動とすることにより、負圧手段140を駆動する電源が不要となる。よって、電池35を長寿命化することができ、携帯用の血液検査装置に適する。
レーザ発射装置(レンズ含む)の態様1について
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは、皮膚を穿刺する手段としてレーザを用いる。レーザ光を皮膚に照射すると、皮膚の水のOH基にレーザ光が吸収されて瞬間的に熱が上昇して気化する。このときに周りの細胞も一緒に気化して、皮膚に穴が開く。
血液検査装置31、31aにはレーザ発射装置33が収納される。図5は、血液検査装置31、31aに収納されるレーザ発射装置33の外観斜視図である。また、図6Aおよび図6Bは、それぞれ、レーザ発射装置33の断面図である。図6Aでは、レーザ結晶33dは、部分透過鏡33fと全反射鏡33gが設置された壁に囲まれた内部に配置されているが、図6Bでは、レーザ結晶33dは、両側面に部分透過鏡33fと全反射鏡33gを備え、レーザ結晶33dは、筒体33bの外壁と内部壁(仕切り板)に取り付けられている。つまり、図6Bでは、レーザ結晶(レーザロッド)33dが長くなって内部壁(仕切り板)よりも前に伸長している。
レーザ発射装置33は、発振チューブ33aと、発振チューブ33aの前方に連結された円筒状の筒体33bとから構成される。筒体33bの前方中央にはレーザ発射口33cが設けられる。
発振チューブ33aの内部には、エルビウムをドーピングしたEr:YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)またはホロニウムをドーピングしたHo:YAGレーザ結晶33dと、キセノンフラッシュランプを用いた励起光源33eとが格納される。発振チューブ33aの一方の端には、部分透過鏡33fが装着される(特に図6A)。部分透過鏡33fの透過率は、約1%〜10%にすればよい。発振チューブ33aの他方の端には、99%〜100%の全反射鏡33gが装着される(図6A、図6B)。また、部分透過鏡33fや全反射鏡33gを用いずに、レーザ結晶33dの端面にスパッタなどで同じ特性を持つ膜を形成したものでもよい。
筒体33bの内部には凸レンズ(焦点レンズ)33hが装着される。凸レンズ33hは、レーザを血液センサ42の面の近傍に集光させる(詳細は後述)。全反射鏡33gとYAGレーザ結晶33dと部分透過鏡33fとレンズ33hとレーザ発射口33cとは、この順に配置される。
レーザ発射装置33からレーザ光が発射されるプロセスを説明する。励起光源33eか
ら発射された励起光は、例えば、Er:YAGレーザ結晶33dの内部に入り、Er(エルビウム)イオンを励起してエネルギーの高い状態を作り出して反転分布状態になって、全反射鏡33gとYAGレーザ結晶33dと部分透過鏡33fの間を反射して共振するとともに増幅される。Ho(ホロニウム)の場合も同様である。増幅されたレーザ光の一部は、誘導放出により部分透過鏡33fを通過する。部分透過鏡33fを通過したレーザ光は、レンズ33hを通過してレーザ発射口33cから放射される。後述のように、レーザ発射口33cから放射されたレーザ光が皮膚を穿刺(照射)する。
レーザ発射装置の態様2について
図7にレーザ発射装置の別の例が示される。図7に示されるレーザ発射装置189は、1個のフラッシュランプ185を励起光源として、励起光を2種のレーザ結晶に照射する。このとき、それぞれの結晶からレーザ光が出力される。2種の結晶を用いることにより、レーザ光の強度や、波長の異なるレーザ光を出力することができる。
レーザ発射装置189は、図7に示すように、断面が楕円形をした筒体を2つ重ねた形状の筺体188と、筺体188の中央部に配置されたレーザを励起するためのフラッシュランプ185と、フラッシュランプ185の両側に配置されたレーザ発振のための第1の結晶186および第2の結晶187とを含む。楕円形状の筺体188には3つの焦点が存在する。筐体188は2つの楕円が重なった形状であるため、各々の楕円に2つの焦点を有するが、そのうち1つの焦点を共通な焦点となるように配置しているため、3つの焦点が存在する。3つの焦点のうち、一方の焦点に第1の結晶186を配置し、他方の焦点に第2の結晶187を配置する。そして、2つの焦点を共有する中央部にフラッシュランプ185を配置する。1つのフラッシュランプ185で、2つの結晶186、187のそれぞれからレーザ光を得ることができるので、レーザ発射装置の小型化と低価格化が図られる。
レーザの出力強度はフラッシュランプ185の発光強度にも比例するが、結晶186および結晶187の体積にも比例する。したがって、同じ径であっても長さの異なる2つの結晶を配置すれば、1つのフラッシュランプ185で、強度の異なる2つのレーザ光を得ることができる。
また、同じ体積の結晶を用いれば、同じ強さの2本のレーザ光を同時出力することができる。したがって、レーザ光を分岐しなくても(図40、図41参照)、同じ強度の2本のレーザ光で皮膚を穿刺することができる。この場合、分岐によるスプリッタやミラーによるエネルギー損失がなくなる。
組成の異なる2つの結晶(例えば、波長2.94μmのEr:YAGレーザの結晶、および波長1.06μmのNd:YAGの結晶)を配置すれば、波長の異なるレーザ光を得ることができる。異なる波長のレーザ光を、同じ位置に照射すれば、皮膚に深さの異なる傷をつけることができる。例えば、Er:YAGとNd:YAGとでは、OH基の吸収効率が異なる。そこで、吸収効率の高いEr:YAGで浅めの傷をつけ、Er:YAGよりも効率の低いNd:YAGで深めの傷をつけることができる。この性質を利用して、同時に2つのレーザ光を照射すると、より効率良く皮膚に傷をつけることができる。2つのレーザ光を照射する場合には、若干の時間差をつけて、Er:YAGとNd:YAGの順に照射することが好ましい。
レーザ発射装置189を用いれば、レーザ光の波長を選択して使用することができる。また、光学系を用いて2種類のレーザ光を同じ位置に照射するようにすれば、出力強度を向上させることができる。
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは、患者の皮膚を穿刺する手段として、皮膚に接触することなく穿刺できるレーザ発射装置33、189を用いているので、従来の血液検査装置で必要とされた穿刺針が不要となる。また、患者の皮膚と非接触の穿刺手段を用いるので、衛生的である。また、穿刺針は検査毎に交換される必要があったが、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aによる検査では、その交換作業も不要となる。
さらに、針による穿刺では必要とされた針を運動させる可動部品が、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aでは必要ないので、故障が少なくなる。また、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは必要な部品点数が少なくなるので、部品管理が容易である。また、レーザ発射口33cの前面に透明の防水壁を設けておけば、血液検査装置31、31a全体を丸洗いすることも可能となる。
血液センサについて
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは、穿刺された皮膚から流出した血液を取り込み、その血液成分などを検査するための血液センサを有する。
血液センサの第1の例
図8は、血液センサの第1の例の断面図である。図8に示される血液センサ42は、外形形状が円形または多角形である。血液センサ42を構成する基体45は、基板46と、基板46の上面に貼り合わされたスペーサ47と、スペーサ47の上面に貼り合わされたカバー48とで構成される。
基体45の略中央には、血液の貯留部49が設けられる。貯留部49は、基板46に設けられた孔46aと、スペーサ47に設けられた孔47aとに連通して形成される。貯留部49は、皮膚からの血液を採取するため、下方に向かって開口している。貯留部49の容積は特に限定されないが、例えば、0.904μLとすればよい。貯留部49には、供給路50の一方の端が連結される。供給路50の容積は特に限定されないが、例えば、0.144μLとすればよい。供給路50の内部には検出部51が配置される。
貯留部49に溜められた血液は毛細管現象で供給路50に導入され、検出部51に導かれる。供給路50の他端は空気孔52に連結されている。空気孔52の直径は、50μm〜250μm程度とすればよい。空気孔52の直径を小さくすれば、空気孔52からの血液の過剰な流出が抑えられる。また、空気孔52は、貯留部49に皮膚が密着した状態において、貯留部49内に負圧を加える負圧路としても作用する。
検出部51上に載置された試薬53は、検査対象に応じて適宜調製すればよい。例えば、0.01〜2.0wt%CMC(カルボキシルメチルセルロース)水溶液に、酵素(PQQ−GDH)を0.1〜5.0U/センサ、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、マルチトールを1〜50mM、タウリンを20〜200mMとなるようにそれぞれ添加して溶解させて調製した試薬溶液を、基板46に配置された検出部51上に滴下して、乾燥させて試薬53とする。
血液センサ42の貯留部49は、面49a(以下「天面」ともいう)で封鎖されている。
照射されたレーザ光が天面49aを透過するようにすれば、レーザ光によって穿刺された皮膚から流出した血液が、天面49aから流出することはなく、好ましい。天面49aをレーザ光が透過するには、カバー48をレーザ光が透過できる材質(例えば、ガラスやポリイミドなどのプラスチックまたは樹脂系材料が含まれる)で形成すればよい。
また、照射されたレーザ光が天面49aを透過できない場合は、そのレーザ光が天面49aを穿孔できればよい。レーザ光が天面49aを穿孔する場合は、基板46、スペーサ47およびカバー48は、同じ材質で形成されうる。
天面49aに形成された孔は、空気孔52とともに、負圧手段が貯留部49を負圧にするための負圧経路となることができる。
血液センサの第2の例
図9は、血液センサの第2の例の断面図である。図8に示される血液センサ42の貯留部49の天面49aは封鎖されているが、一方、図9に示される血液センサ103の貯留部49の天面は開放されている。
血液センサ103のカバー48には孔103bが形成されている。孔103bの直径(例えば、1.0mm)は、貯留部49の直径(例えば、2.0mm)よりも小さい直径であって、空気孔52の直径(50μm〜250μm)よりも大きいことが好ましい。孔103bは、貯留部49の天面中央に位置することが好ましい。レーザは、孔103bを通過して皮膚を穿刺する。孔103bを設けることにより、レーザの減衰を抑制することができる。よって、照射するレーザのエネルギーを小さくすることができる。
孔103bは、空気孔52とともに、負圧手段34、140が貯留部49を負圧にするための負圧経路となることができる。
図10に示すように、孔103bの内側に生じる血液16の表面張力が、皮膚穿刺により採取した血液16のカバー上面への流出を抑制する。血液16が貯留部49の内部に行き渡る。したがって、適正量の血液16を採取することができる。貯留部49を満たした血液16は、毛細管現象により供給路50に流入される。
孔103bを撥水性にしておけば、血液16は孔103bからさらに溢れにくくなる。よって、血液検査装置31、31aの内部が血液で汚染されることはない。
血液センサ103のカバー48の材質には、ポリエチレンテレフタート(PET)などを使用することもでき、基板46やスペーサ47と同様の材質を使用することができる。よって、材料管理が容易である。
レーザ光は貯留部49の孔103bを通過するが、孔103bの中心を通過してもよく、孔103bの中心からずれた位置を通過させてもよい。例えば、レーザ光を、孔103bの中心から、供給路50から遠い位置を通過させれば、皮膚13から流出した血液16が確実に貯留部49の内部を満たした後に、供給路50へ流入する。したがって、精度の高い測定ができる。
血液センサ103は、あらかじめ、貯留部49の天面に孔103bが形成されている。このようにあらかじめ孔103bが形成されているので、穿孔すべき箇所にレーザの軸を合わせる必要がない。よって、血液センサユニット44への血液センサ103の装着が容易となる。孔103bは0.05〜0.25mm程度と小さくすればよく、穿刺孔からの血液16の流出を抑制することが好ましい。
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aにおける血液センサ42、103は、図8および図9に示されたように、貯留部49と供給路50を有することが好ましい。供給路50の内壁面は親水性を有することが好ましい。検出部51が配置された供
給路50に、血液をスムーズに送り込むためである。また、供給路50の内壁面の親水性は、貯留部49の内壁面の親水性よりも強いことが好ましい。貯留部49に貯留された血液を、スムーズに供給路50に供給するためである。
さらに、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aにおける血液センサ42、103は、図8および図9に示されたようにカバー48を有し、カバー48は貯留部49の天面を形成している。カバー48の上面48a、103a(レーザが照射される面)は、撥水性を有することが好ましい。また、カバー48の上面48a、103aの撥水性は、貯留部49の内壁面の撥水性よりも強いことが好ましい。貯留部49に貯留された血液が、カバー48に形成された孔(レーザ穿孔による孔または孔103b)から流出するのを防止するためである。
血液センサの第3の例
患者の皮膚13の湿り具合は、環境によって異なる。
一方、レーザで穿刺される皮膚13は、適度な水分を有していることが好ましい。そこで、レーザ穿刺する前の皮膚13の近傍をあらかじめ湿らすことにより、皮膚13に適度の水分を与えて湿り具合を一定にすることが好ましい。安定した条件で測定を行うためである。
図11には、血液センサ42(詳細は図8を参照)の皮膚13に当接する下面側に、水を貯留する水貯留部195を設けた血液センサ42aが示される。図11に示された血液センサ42aは、レーザ光が照射された時、またはレーザ光が照射される前に負圧手段34、140により皮膚が盛り上げられた時に、水貯留部195が破れて皮膚13に定量の水をかけて、皮膚を湿らせる。水貯留部195は、例えば水が収容されたPETなどのプラスチック材の容器であるか、もっと柔らかいバッグでも可能であり、水を浸み込ませたスポンジまたは綿状の部材であってもよい。ただし、レーザ光が通過する透過部分196には、水貯留部195を配置しないことが好ましい。水によってレーザ光の強度が減少するためである。
血液センサの透視平面図1
図12は、血液センサ42の透視平面図である。血液センサ42には、検出電極54〜57が配置され、貯留部49から空気孔52に向かって順に、検出電極57(Hct(ヘマトクリット)極)、検出電極56(対極)、検出電極54(作用極)、検出電極56(対極)、検出電極55(検知極)とされている。検出部51に検出電極54〜56が配置される。
検出電極54〜57のそれぞれは、接続電極54a〜57aに接続される。接続電極54a〜57aは、基板46の外周にまで延びる。接続電極54a〜57aのそれぞれには、接触部位54b〜57bが設けられている。さらに、接続電極56aには、接触部位56bに加えて接触部位56cも設けられ、2つの接触部位が形成されている。基準電極56dは、接続電極56a以外の接続電極(54a、55a、57a)に設けても構わない。
接触部位54b〜57b、および接触部位56cは、センサ42の外周近傍に略等間隔に配置される。
各接触部位54b〜57b、56cのうち、接触部位56bと接触部位56cとは導通しており、その他の接触部位同士は絶縁されている。
接触部位56cを基準接触部位、つまり基準電極56dとして用いて、各接続電極を特定することができる。つまり、隣り合う接触部位の絶縁抵抗を電気回路部36(図2参照)で測定し、絶縁抵抗が零となる接触部位を基準電極56dと特定する。基準電極56dを基準に、時計周りに接続電極56a、接続電極57a、接続電極54a、接続電極55aを特定する。
このように血液センサ42は基準電極56dを有するので、各接続電極を特定することができる。よって、装置本体39に配置された5つのコネクタそれぞれに、接触部位(54b〜57b、56c)が任意に接続されても、各接続電極が特定されて測定が可能となる。よって、血液センサ42(または血液センサ42を含む血液センサユニット44)を対称形として、無造作に装置本体39に装着することができ、装着作業が非常に容易となる。
基板46の外周上には、位置合わせ凹部46cを設けてもよい。位置合わせ凹部46cに対応して、スペーサ47とカバー48のそれぞれ外周上には、位置合わせ凹部47c、48cが設けられる。位置合わせ凹部46c〜48cにより、血液センサ42を血液センサユニット44の所定位置に合わせて装着することができる。
血液センサの透視平面図2
図13は、円形形状の血液センサの透視平面図である。図13に示された血液センサ101は、接続電極56aから所定のパターンを介して基準電極56dを形成した点で血液センサ42(図12参照)と相違している。以下において、この相違点を中心に説明する。
基準電極56dには、基準接触部位56cが設けられる。基準接触部位56cおよび接触部位54b〜57bはそれぞれ、外周近傍に等間隔で配置される。つまり、接触部位54b、55b、56b、56c、57bで正五角形を形成している。
接続電極56aと基準電極56dの間はレーザで加工されたパターン56eで接続される。パターン56eの幅を変えることにより、接触部位56bと基準接触部位56cとの間の抵抗値を変化させることができる。基準電極56dは、接続電極54a〜57aの位置を特定する基準となる。
基準電極56dは、血液センサ101の製品仕様の識別に利用されうる。例えば、パターン56eの抵抗値が200オーム〜1000オームであれば検量線1を、抵抗値が1000オーム〜2000オームであれば検量線2を、抵抗値が2000オーム〜3000オームであれば検量線3をそれぞれ用いると設定し、自動でそのセンサの検量線を認識し、最適な検量線を用いて血糖値を測定する。
基準電極は、検量線の自動認識のほかにも、種々の製品仕様の識別について利用されうる。例えば、A社仕様、B社仕様のように、出荷先のユーザの識別に用いることもできる。
パターン56eで種々の値を有するインダクタを形成し、このインダクタを発振器を構成する共振器に接続して、インダクタの値の相違により発振周波数を変化させて、種々の情報を持たせることができる。
基準電極56dを設けることにより、血液センサユニット44を血液検査装置31、31aに装着するとき、装着方向を軸とする軸周りの角度を任意にして装着しても、各接続電極54a〜57aを特定することができる。したがって、血液センサユニット44の装
着において、装着方向を目視などで合わせる必要がなく、装着が容易になる。
血液センサの透視平面図3
図14は、四角形状をした血液センサの透視平面図である。図14に示された血液センサ102の外形形状は四角形であるが、六角形や八角形などの多角形であってもよい。四角形や六角形にすると、材料取りの歩留まりが向上する。また、図14に示したように、四辺のうちの一辺に血液センサユニット44との位置合わせ凹部102aを設けて非対称形にしてもよい。凹部102aは、血液センサ102を血液センサユニット44に取り付けるときの基準となる。また、凹部102aに係合する血液センサユニット44側の凸部130f(図25参照)を基準にして、アダプタ40との位置合わせをすれば、基準電極56dを設けなくても接続電極54a〜57a位置を特定することができる。
接触部位54b〜57bは、四角形の基板102bの各角に設けられている。基板102bにはスペーサ102cおよびカバー102dが貼り合わされている。基板102bは基板46に対応し、スペーサ102cはスペーサ47に対応し、カバー102dはカバー48に対応する(図8参照)。
血液センサの分解平面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aに具備される血液センサ42(図8参照)の組み立ておよび材料について説明する。
図15は、血液センサ42の分解平面図である。図15Aはカバー48の平面図、図15Bはスペーサ47の平面図、図15Cは基板46の平面図である。
図15Cは、血液センサ42を構成する円形をした基板46の平面図である。基板46の直径は、約8.0mmとすればよい。基板46の材質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂であり、厚さは約0.075〜0.250mm(例えば、0.188mm)である。
基板46の上面には、検出電極54〜57、および検出電極54〜57のそれぞれから導出された接続電極54a〜57aが一体的に形成されている。検出電極および接続電極は、金や白金、パラジウムなどを材料として、スパッタリング法または蒸着法により導電層を形成し、レーザ加工して形成すればよい。
基板46の略中央に設けられた孔46aの直径は、約2.0mmとすればよい。孔46aの壁面は、供給路50よりも弱い親水性を有するか、またはカバー48の上面48aよりも弱い撥水性を有することが好ましい。
孔46aは、検出電極54〜57側から、凸金型を用いて打ち抜いて形成することが好ましい。検出電極54〜57側から打ち抜けば、検出電極54〜57に傷を付けにくいからである。また、打ち抜きにより孔46aにバリが生じたとしても、そのバリは下方(皮膚側)に向かう。したがって、貯留部49からの血液16の流出が防止される。基板46の外周上に設けられた位置合わせ用の凹部46cは、血液センサユニット44の筒体41eに形成された位置合わせ用凸部41j(ともに図16参照)とかみ合う。よって、血液センサ42の血液センサユニット44への装着位置が決定される。
図15Bは、スペーサ47の平面図である。スペーサ47の直径は、約5.2mmとすればよい。スペーサ47の材質はポリエチレンテレフタレートなどの樹脂であればよく、その厚さは、0.025〜0.25mm(例えば、0.1mm)であればよい。
スペーサ47の略中央に設けられた孔47aは、直径2.0mmであり、かつ基板46に設けられた孔46aに対応する位置に設けられる。孔47aの壁面は、供給路50よりも弱い親水性を有するか、またはカバー48の上面48aよりも弱い撥水性を有することが好ましい。貯留部49は、孔46aと孔47aとで形成される。
孔47aから外周方向へ向かってスリット47bが形成される。スリット47bは、血液の供給路50となる。スリット47bの壁面と、それに対応する基板46の上面も親水化処理されている。また、スリット47bの幅は約0.6mmとすればよく、長さは約2.4mmとすればよい。その結果、供給路50の容量は約0.144μLとなる。
したがって、供給路50の容量を小さくすれば、小容量の血液で血液検査ができるので、患者への負担も少なく、また患者へ与える恐怖心もない。
スペーサ47の外周上に設けられた位置合わせ用の凹部47cは、基板46に形成された位置合わせ用の凹部46cに対応した位置に形成される。
図15Aは、カバー48の平面図である。カバー48の直径は、約5.2mmとすればよい。カバー48の厚さは、約0.050〜0.125mm(例えば、0.075mm)とすればよい。
カバー48の材質は、レーザ光を吸収しない材質とすることができる。カバー48の材質の例には、ガラスやポリイミドなどのプラスチックが含まれる。レーザ光がカバー48で吸収されなければ、貯留部49の天面49aを通過して、皮膚を穿刺することができる。レーザ光により天面49aが穿孔されないので、血液が孔から流出せず、装置本体39の内部に血液16が流入しない。
カバー48の材質は、レーザ光を吸収する材質であってもよい。その場合には、照射されたレーザ光によってカバー48が穿孔されるか、または、レーザ光を照射する前に、カバー48にレーザ光が貫通するための孔を形成しておけばよい。
空気孔52は、供給路50の先端部に対応して設けられる。空気孔52の直径は、50μmである。
基体45の上面を形成するカバー48の上面48a(図8参照)は撥水化処理されていることが好ましい。供給路50の天面は親水化処理されていることが好ましい。また、貯留部49の天面49aは、供給路50よりも弱い親水化処理をされているか、またはカバー48の上面48aよりも弱い撥水化処理をされていることが好ましい。
親水性を弱めるには、例えば、疎水性材料に施された親水性化材を除去して、疎水性を強めればよい。親水化材の除去は、例えば、UV(紫外線)照射により親水化材を分解して行う。貯留部49の天面49aは、疎水性の素材をそのまま用いることができる。
材料の撥水化は、その材料に撥水化材を混入すればよい。また、親水性材料の表面に適量の撥水化材を塗布してもよい。なお、撥水性の程度を調整するには、混入する撥水化材の量を調整すればよい。
血液センサ42の各部材の親水性または疎水性は、以下のようにして調整することができる。
あらかじめカバー48の上面48aに撥水化処理を行う。一方、カバー48の下面には
親水化処理を全面に施す。カバー48の下面には、供給路50の天面が含まれる。次に、基板46とスペーサ47とカバー48を貼り合わせる。これらを貼り合わせた後に、貯留部49の開口から短波長のUVを照射して、天面49aの親水性材料を分解除去する。
以上のように製造された血液センサ42は、カバー48の上面48aを撥水性にし、かつ供給路50の内面を親水性にすることができる。また、貯留部49の内面は、供給路50よりも弱い親水性を、または上面48aよりも弱い撥水性を有しうる。
基板46の厚み(0.188mm)と、スペーサ47の厚み(0.100mm)と、カバー48の厚み(0.075mm)との比は、略2.5:1.3:1とされている。これにより、血液センサ42を薄型化しながら、しかも十分な血液を溜める貯留部49を形成することができる。また、スペーサ47の厚み(0.100mm)によって、供給路50の毛細管現象の効果も十分に得ることができる。
血液センサ42は、貯留部49の容積(0.904μL)と供給路50の容積(0.144μL)の比を略6:1とすればよいが、特に限定されない。したがって、血液16の不足により検査が不正確になることはない。また、貯留部49の容積は、必要とする供給路50の容積に対して大き過ぎることはなく、血液16が大量に供給路50を流れて、試薬53(図8参照)を押し流すこともない。したがって、血液16の流れが律速状態となり、試薬53の溶融性にばらつきが生じることはなく、正確な血液16の検査ができる。
また、採取する血液16の量は、血液16の検査に必要十分な微小容量に設定されたものであり、供給路50の容積の約6倍の血液16を採取するのみである。したがって、患者にかける負担を極めて少なくすることができる。正確な測定のための血液16の採取量と、患者への負担を少なくするための血液16の採取量とを勘案して、貯留部49の容積は、供給路50の容積の5倍以上、かつ7倍以下であることが好ましい。
血液センサユニットについて
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aにおける血液センサ42は、血液センサユニット44に含まれていてもよい。血液センサユニット44は、装置本体39に着脱可能であり、交換可能な部材である。
図16は、血液センサユニット44とその近傍の断面図である。血液センサユニット44は、上下方向が共に開口した円筒形状のホルダ41と、ホルダ41内を塞ぐように設けられた装着部41bとによって、断面を「H」形状に構成されている。
ホルダ41の材質は、射出成形されうる樹脂が好ましく、例えば、ABS樹脂やAS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタートなどの熱可塑性樹脂、または、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、シリコン樹脂などの熱硬化性樹脂などが例示される。
装着部41bには血液センサ42が装着されている。血液センサ42は着脱可能であってもよい。図16では、血液センサ42が、装着部41bの上側(レーザ発射装置33側)に装着されているが、装着部41bの下側(穿刺される皮膚13側)に装着されていてもよい。
装着部41bの中央には、貯留部49に対応して窓43を設けることが好ましい。窓43の開口部面積は、貯留部49の開口部面積よりも大きいことが好ましい。さらに、装着部41bの上側と下側を貫通する負圧路41cが設けられる。負圧路41cは、例えば、血液センサ42の外周とホルダ41の内周側との間に設けられていればよい。
装着部41bよりも下側の筒体41dは、皮膚13との間に負圧室60を形成する。また、血液センサユニット44の装着部41bよりも上側の筒体41eの内壁は、アダプタ40の外側に係止する。
アダプタ40の内側にはコネクタ61が設けられる。コネクタ61は、それぞれ独立した複数本(例えば、5本)のコネクタ61a〜61fからなる。血液センサユニット44をアダプタ40に装着すると、コネクタ61a〜61fが、血液センサ42の接触部位54b〜57b、56cのそれぞれに接触する。コネクタ61a〜61fの信号は電気回路部36に導かれる。
筒体41dの先端41hに設けられた第1の皮膚接触センサ62は、血液センサユニット44が皮膚13に当接したことを検知する。第1の皮膚接触センサ62も、ホルダ41内に配置された導体62aを介して、アダプタ40に設けられた接続部62cに接続し、さらにアダプタ40側の導体62bに接続される。導体62bは電気回路部36に導かれている。
筒体41dの先端41hの互いに異なった部位(図16では筒体41dの中心を通る直線上)に、複数個(例えば、2個)の導体からなる第1の皮膚接触センサ62を設けることが好ましい。第1の皮膚接触センサ62の2個の導体間の抵抗値を測定することにより、皮膚13への当接を検知する。このため、皮膚13が隙間なく確実に血液センサユニット44の先端に当接したことを検知することができる。第1の皮膚接触センサ62が皮膚の接触を検知しない限り、レーザ光を発射できなくすることが好ましい。第1の皮膚接触センサ62は、機構式のマイクロスイッチや、反射型の光学スイッチなどであってもよい。
レーザ発射装置33からレーザ光が発射されると、レーザ光により皮膚13内の毛細血管が傷付けられ、血液16が流出する。流出した血液16は貯留部49に溜められる。
血液センサユニット44の筒体41dとアダプタ40とには、血液センサユニット44の装着を容易にするためのガイド部が設けられていてもよい。図17は、血液センサユニット44のアダプタ40への挿入をガイドするガイド部63の要部展開正面図である。筒体41dの内側に凸部41fが形成され、アダプタ40の外側に凸部40fが形成される。凸部41fおよび凸部40fの端の先端部41gおよび先端部40gは、それぞれ鋭角とされている。先端部41gおよび先端部40gは互いに向かい合う。凸部40fとその先端部40g、および凸部41fとその先端部41gとで、ガイド部63を形成する。
血液センサユニット44をアダプタ40に挿入するときに、互いの位置が多少ずれていたとしても、血液センサユニット44はガイド部63に沿って進路を修正しながら挿入される(矢印64参照)。その結果、アダプタ40に設けられたコネクタ61a〜61fと、センサ42に設けられた接触部位54b〜57b、56cのいずれかとが、確実に接触する。したがって、血液センサユニット44を、挿入方向を軸とする回転角度を考慮することなく挿入することができるので、血液センサユニット44の装着が容易になる。
図18は、血液センサユニットの斜視図である。図18に示された血液センサユニット110は、特に説明のない限り、血液センサユニット44と同様の構造とすればよい。血液センサユニット110は、その断面が「H」形状である円筒状である。血液センサユニット110のホルダ110aの内側には、血液センサ(血液センサ42、101、102、103のいずれでもよい)の接触部位の信号を、電気回路部36へ伝達する5本のコネクタ111が設けられていてもよい(ただし、血液センサ102の場合には4本のコネク
タでよい)。コネクタ111は、ホルダ110aの上端でアダプタ40に接続され、このアダプタ40を介して電気回路部36に導かれる。
コネクタ111をアダプタに設けて、コネクタ111を血液センサユニット110の血液センサの接触部位に接触させてもよい。
ホルダ110aの開口を塞ぐように設けられた装着部110bの裏側(下端110h側、つまり穿刺される皮膚が配置される側)に、血液センサ42が装着される。装着部110bの略中央に設けられた窓110cは、血液センサ42の貯留部49の位置に対応して設けられる。レーザは、窓110cと貯留部49を通過して、皮膚13を穿刺する。
装着部110bに設けられた空気孔110dは、血液センサ42の空気孔52と対応した位置に設けられる。空気孔110dは、血液センサ42の供給路50に血液16を流入させたり、貯留部49に負圧を加えたりするために設けられる。
アダプタ40と係合する係合部110eの弾性で、アダプタ40に血液センサユニット110が係合する。ホルダ110aには、互いに対向する2つの係合部110eが設けられる。係合部110eは、その両隣にスリットを形成して弾性を付与し、ホルダ110aと一体的に形成されている。したがって、係合部110eを低価格で製造することができる。
装着部110bの上面には、消臭部材置場110fが同心円状に設けられる。消臭部材置場110fには消臭部材が載置される。レーザ穿刺をした場合、皮膚13が炭化して臭いを生じることがあるので、この臭いを消臭部材(脱臭剤など)で消臭することができる。また、装着部110bの上面には、血液溜り110gが同心円状に設けられる。したがって、血液センサ103(図8参照)の孔103bから血液16が溢れ出たとしても、血液16は血液溜り110gに滞留するので、血液16が血液検査装置31、31aの本体部を汚すことを防止することができる。
図19は、ホルダ110aの下端110h近傍の一構成例を示す要部断面図である。下端110hの端部は患者の皮膚13に当接して、負圧室60を形成する。下端110hは、皮膚13との密着性が要求される。そこで、下端110hは鋭角に尖った2本の同心円上の線110jで形成されていてもよい。線110jは皮膚13と線接触により確実に当接するので、負圧室60の密室性は保たれる。線110jは2本である必要はなく、1本でも2本以上の複数本でもよい。
また、2本の同心円上の線110jの間に形成される溝に毛細管機能を付与すれば、測定後の余分な血液16は、前記溝に吸引される。よって、拭き取り用の紙などを準備する必要がない。
図20は、ホルダ110aの下端110h近傍の他の構成例を示す要部断面図である。下端110hには、ゴムやシリコン、ウレタン、スポンジなどの弾性体で形成された同心円状の当接部110kが形成されている。したがって、当接部110kは、その弾性によって皮膚13と密着し、負圧室60の密室性が保たれる。当接部110kの接触面は、皮膚13との当接面積を大きくするため、平面であることが好ましい。
当接部110kをスポンジなどの吸水性を有する吸収部材で形成すれば、穿刺により流出した余分な血液16を測定後に拭き取ることができる。そのため、拭き取り用の紙などを準備する必要がなくなる。また、吸収部材に消毒薬を加えれば衛生的である。
皮膚13の湿り具合は、季節などの外部環境によって変化する。したがって、穿刺する皮膚13の近傍の湿り具合は一定にすることが好ましい。したがって、穿刺の前に、あらかじめ皮膚13に適度の水分を与えて皮膚を湿らすことにより、安定した条件で測定を行うようにしてもよい。
そこで、図21に示されたように、血液センサユニット110のホルダ110aの下端110hの全周に渡って、水を含ませた水貯留部197を設けて、あらかじめ穿刺部付近の皮膚13を水に浸してからレーザで穿刺するようにしてもよい。水貯留部197は、スポンジなどの弾性を有する多孔質材料であればよい。
図22は、血液センサユニット110の断面図である。図22に示すように、血液センサユニット110の装着部110bの下面に血液センサ42が配置され、装着部110bに保持される。皮膚13は、負圧手段34、140(図2、図3など参照)によって盛り上げられて、血液センサ42に密着する。血液センサ42は、装着部110bにより保持されているので、密着する皮膚13によって歪みにくい。コネクタ111は、血液センサ42の接触部位54b〜57b、56cに接触する。ホルダ110aには、アダプタ40に対応するガイド部63(図17参照)が設けられていることが好ましい。
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは負圧手段34、140を有し、負圧手段34、140は血液センサユニット110の内部を負圧にする。その負圧経路として、血液センサユニット110の装着部110bに、溝110fを形成してもよい。溝110fは、ホルダ110aの装着部110bの外周側から、装着部110bの略中央に形成された窓110eに延びる。負圧を加えると、溝110fも負圧にされて、血液センサ42は装着部110bに密着し、負圧を大気開放すると、血液センサ42は装着部110bから外れる。
コネクタ111は、血液センサ42と接触面111aにおいて接触する。コネクタ111は、ホルダ110aに内蔵され、装着部110bの一部に割り込むように形成されている。これにより、血液センサ42の上面に形成された接続電極の接触部位とコネクタ111に設けられたコンタクト部(ともに図示せず)とが接続する。
血液センサ42の下面に第2の皮膚接触センサ110mを設けてもよい。これにより、負圧室60の負圧により皮膚13が第2の皮膚接触センサ110mに当接したことを検知する。第2の皮膚接触センサ110mは、例えば、対電極で構成すればよい。第2の皮膚接触センサ110mが、皮膚との接触を検知しない限り、レーザが発射できないようにすることが好ましい。
前記当接を検知した時点で、負圧手段34による負圧室60への負圧を停止してもよい。このように負圧手段34を制御することにより、負圧電力を無駄にせずに最適に制御できる。
さらに、ホルダ110aの下端110hに第1の皮膚接触センサ62を設けてもよい。
図23は、他の血液センサユニットの断面図である。図23に示された血液センサユニット120は、特に説明のない限り、血液センサユニット110と同様の構造とすればよい。血液センサユニット120は、ホルダ120aの開口を塞ぐように形成された装着部120bの上側に、血液センサ42が載置される点で、血液センサユニット110と相違する。電気回路部36に接続されているコネクタ61は、血液センサ42の接触部位(54b〜57b、56c)と導通する。
断面「H」形状に形成された血液センサユニット120の装着部120bの上方空間と下方空間は、負圧路120cで連通される。下方空間は負圧室60を形成している。第1の皮膚接触センサ62が、ホルダ120aの下端120hに設けられる。また、図示されないが、装着部120bの下面に第2の皮膚接触センサ120mが設けられていてもよい。
血液センサ42を装着部120bの上面に装着すれば、コネクタ61と、血液センサ42の接触部位(54b〜57b、56c)との接触圧を大きくすることができる。また、血液センサ42の装着部120bへの装着が容易となる。
血液センサ42および装着部120bで区切られた、装置本体39側の空間(同図中の上部空間)と、皮膚13側の空間(同図中の下方空間)とは、負圧路120cを介して連通される。皮膚13に負圧を加えるときには、この負圧路120cを介して皮膚13側の空間を負圧にすることができる。また、負圧を大気開放すると、負圧路120cを介して装置本体39側の空間に空気がすばやく流入する。よって、血液センサ42に取り込まれた血液が、装置本体39側に飛散することを防止することもできる。
負圧路として、装着部120bの上側に溝120fを形成してもよい。溝120fは、ホルダ120aの装着部120bの外周側から、装着部120bの略中央に形成された窓120eに延びる。溝120fがあれば、装着部120bを貫通する孔を設ける必要がなくなる。
図24は、さらに他の血液センサユニットの断面図である。図24に示された血液センサユニット130は、特に説明のない限り、血液センサユニット44と同様の構造とすればよい。ここでは、血液センサユニット130の装着部130bの上面に、センサ42が装着される。ホルダ130aの下端130dの内径は、上端130cの内径よりも小さい。
装着部130bの下方に形成される負圧室60の開口部130eの直径は、2〜20mmが好ましく、3〜10mmがより好ましく、5〜7mmがさらに好ましい。穿刺する皮膚への負圧効率を高めるためである。また、上端130cの外形よりも下端130dの外形を小さくすれば、複数の血液センサユニット130を縦に積層して、効率良く収納することができる。一般的に、血液センサ42はある程度の大きさを必要とするので、上端130cの外形は小さくしにくいことがある。
また、ホルダ130aの内側に血液センサ42方向に突出して設けられた係止凸部130gは、血液センサ42を係止して、ホルダ130aからの外れを防止する。
図25は、血液センサユニット130の平面図である。血液センサユニット130のホルダ130aには、血液センサ42の位置合わせ用の凹部46c、47c(図15参照)に嵌合する凸部130fが2つ形成されている(略120度の角度)。ホルダ130aの凸部130fと、血液センサ42の位置合わせ用凹部46cとで、血液センサユニット130内における血液センサ42の配置位置が決定される。血液センサ42が適切に配置された血液センサユニット130は、アダプタ40に対して、ガイド部63(図17参照)により所定位置に装着される。このようにして、血液センサ42の検出電極54〜57の信号は、電気回路部36に伝えられる。
凸部130fは1つでもよいが、その場合には、装着部130bを、血液センサ42を嵌入できるような構造にしておくことが好ましい。
レーザの焦点について
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは、穿刺手段としてレーザを用いており、装置本体39にはレーザ発射装置33が収納される(図2など参照)。発射されたレーザ光は、焦点レンズで集光されて皮膚13に照射される。本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aにおいて、レーザ光は、例えば、血液センサ42の面の近傍に集光されることが好ましい。前述の通り、穿刺される皮膚13は負圧手段34、140によって吸引されて、血液センサ42に密着するので、血液センサ42の面の近傍に集光されたレーザ光は、皮膚13を効果的に穿刺することができる。
レーザ光の焦点は、血液センサ42の面上にあってもよく、血液センサ42の面よりも皮膚13側にあってもよく、または血液センサ42の面よりもレーザ発射装置33側にあってもよい。図26には、レーザアライメントペーパ(ZAP-IT社:Z-48)を用いて、「バーンパターン径(mm)」(Y軸)と「レーザ焦点からの、穿刺しようとする対象(穿刺対象:ここではレーザアライメントペーパ)の距離(mm)」(X軸)との関係を調べた結果が示される。「バーンパターン径」とは、レーザ光を照射したときに開けられる穴の径である。
図26は、本発明の血液検査装置におけるレーザ光の焦点位置からの穿刺対象の距離(X軸)とバーンパターン径(Y軸)との関係を示すグラフである。
図26に示されたグラフのX軸において、レーザ光の焦点位置が「0」である。マイナス(「−」)領域は、レーザ光の焦点位置よりもレーザ発射装置33側に穿刺対象位置を設定している場合を示し、プラス(「+」)領域は、レーザ光の焦点位置よりもレーザ発射装置33から遠い側に穿刺対象位置を設定している場合を示している。
レーザの出力強度は、60mJ、80mJ、100mJ、120mJの4種類とした。出力強度が大きいほどバーンパターン径が大きくなるが、いずれの出力強度においても、焦点の穿刺対象からの距離(X)とバーンパターン径(Y)との関係は相似している。
Aゾーン(穿刺対象の近傍に焦点を合わせたとき)では、穿刺対象位置の多少のずれがあっても、バーンパターン径はあまり変化しない。したがって、確実に穿刺することができる。一方、BゾーンまたはCゾーンでは、穿刺対象位置のずれによって、バーンパターン径が大きく変化する。このことは、穿刺対象位置と相対関係にあるレーザ光の焦点位置においても言える。
つまり、穿刺対象位置が固定されている場合などは、Aゾーン(穿刺対象の近傍に焦点を合わせたとき)では、レーザ光の焦点位置の多少のずれがあっても、バーンパターン径はあまり変化しない。したがって、確実に穿刺することができる。一方、BゾーンまたはCゾーンは、レーザ光の焦点位置のずれによって、バーンパターン径が大きく変化する。
バーンパターン径が大きくなるようにレーザ光の焦点位置がずれれば、穿刺がされないので、安全性が高まる。例えば、Bゾーンにレーザ光の焦点位置を合わせておけば、穿刺対象位置が所定の位置にまでレーザ発射位置に近づかない限り穿刺がされない。つまり、負圧によって皮膚が十分に吸引されて盛り上げられない限り、穿刺がされない。
また、Cゾーンにレーザ光の焦点位置を合わせておけば、穿刺対象位置が所定の位置よりもレーザ発射位置に近づくと穿刺がされない。つまり、負圧によって皮膚が必要以上に吸引されて盛り上げられても穿刺がされない。
また、血液センサ42に溶融しやすいフィルムなどを配置した場合は、血液センサ42
に焦点を合わせない方がよい場合がある。フィルムが溶解してレーザのエネルギーが消費されるためである。よって、BゾーンまたはCゾーンに焦点を合わせることが好ましいこともある。
負圧室について
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは負圧手段34、140を有し、装置本体39には負圧手段34、140の構成要素として機械式吸引ポンプ34a(図2)または手動式吸引ポンプ141(図3)などが収容される。負圧手段34、140は、負圧室60を負圧して、被穿刺部位である皮膚13を吸引して盛り上げることによって、血液センサ42に密着させる。
上述のように、負圧手段34は、吸引ポンプ34a、ポンプ弁ユニット34bおよび大気開放スイッチ34cで構成され(図2参照)、負圧手段140は、ポンプ弁ユニット143および大気開放スイッチ144に加えて、手動ポンプ141および手動ポンプノブ142で構成されている(図3参照)。「負圧手段」という用語は、広義では、ポンプ(吸引ポンプまたは負圧ポンプ)や弁(負圧弁または開放弁)などに加えて負圧経路なども含んでいる。また、ここで、「負圧手段を駆動する」とは、ポンプおよび弁を駆動することをいい、「負圧を開放する」とは、弁を開いて外気圧(例えば、大気圧)を導入することをいう。
図27および図28には、負圧室(吸引室)と負圧経路が示される。図27は、負圧室が最大の場合の負圧経路を示し、図28は、負圧室が最小の場合の負圧経路を示す。図2の血液検査装置31を例にとって説明すると、図27に示される吸引室60aおよび図28に示される吸引室60bは、いずれも、装置本体39の内部空間であって、レーザ発射装置33のレーザ発射口33cよりも血液センサ42側の空間に設けられる。負圧室60は、測定時に皮膚13が血液センサユニット44に当接して負圧状態となる空間を広く意味し、装置本体39内の吸引室60a、60bに加えて、血液センサユニット44の内部空間も含まれる。負圧室60(特に吸引室60a、60b)は、図27および図28に示されるように、例えば、ポンプ34aにより吸引され(つまり、負圧にされ)、弁34bにより負圧が解除される。
負圧室60を小さくすれば、負圧の発生に必要なエネルギーが少なくなり、かつ検査に必要とされる時間も短くなる。よって、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aの内部の負圧室60(特に吸引室60a、60b)は、レーザ発射装置33のレーザ発射口33cよりも血液センサ42側に設けられた壁によって、仕切られていることが好ましい。
具体的には、吸引室60a、60bを仕切る壁(負圧用仕切りまたは隔壁)70は、レーザ発射口33cと同じ位置に配置されていてもよく,または、焦点レンズ33hと同じ位置に配置されている(つまり、壁と焦点レンズ33hが一体となっている)か、もしくは焦点レンズ33h自体が壁となってもよい。図27および図28にそれぞれ示される例は、後者の場合である。また、負圧室60の容量を小さくするため、吸引室の形状を錘状にしてもよい(図28の吸引室60b参照)。装置本体39には、吸引室60a、60bに連通する負圧路71が設けられ、この負圧路71はポンプ34aの吸引口に連結されている。血液センサ42内には、上述のように、負圧経路72としても機能する貯留部49、供給路50および空気孔52が設けられている。吸引室60a、60bは、血液センサ42内のこの負圧経路72とも連通している。特に図28の構成例では、吸引室60bと空気孔52とをつなぐ微細な負圧経路73が、装置本体39にさらに設けられている。負圧経路72、73(ただし、貯留部49の部分は除く)は、容積がほとんど零に等しい微細流路である。
血液検査装置31、31aにおいて、レーザ光80の経路上に位置する内部空間として、図29および図30に示されるように、大別して3つの内部空間V1、V2、V3を考えることができる。内部空間V1は、レーザ結晶(レーザロッド)33dの前面と焦点レンズ33hの間の空間である。内部空間V2は、焦点レンズ33hと血液センサユニット44内の血液センサ42(またはホルダ41)の間の空間であって、図27および図28の構成例では、装置本体39内の吸引室60a、60bに対応している。内部空間V3は、血液センサユニット44内の血液センサ42(またはホルダ41)と皮膚当接面74の間の空間であって、主として、血液センサユニット44の内部空間に対応している。
例えば、焦点レンズ33hの径は、φ5〜15mmである。焦点レンズ33hから血液センサ42までの距離は、10〜30mmである。また、血液センサ42からホルダ41の下面(=皮膚接触面)までの距離は、1.5〜2mmであり、血液センサ42およびホルダ41の径は、φ6〜10mmである。図27に示される負圧室60は、V2とV3で構成され、吸引室60aの容積を最大にした場合、実際には装置本体39の内部形状は傾斜部分がほとんど無くなるため、V2部分は簡易的に円筒形で近似でき、V3部分も同様に円筒形であるため、約5.5ccの容量とすることができる(図29の破線で囲んだ領域を参照)。また、図28に示される負圧室60も、V2とV3で構成されるが、吸引室60bの容積を最小にした場合、V2部分は円錐形になり、負圧経路部分は無視でき、V3部分は上記と同様であることから、約0.45ccの容量とすることができる(図30の破線で囲んだ領域を参照)。
電気回路について
図31は、電気回路部36のブロック図である。図28において、54b〜57bおよび56cは、血液センサ42に形成された接触部位である。接触部位54b〜57b、56cは、コネクタ61a〜61fを介して、切換回路71に接続される。切換回路71の出力は電流/電圧変換器72の入力に接続されている。電流/電圧変換器72の出力は、アナログ/デジタル変換器(以下「A/D変換器」という)73を介して、演算部74の入力に接続されている。演算部74の出力は、液晶で形成された表示部37に接続されている。また、切換回路71には基準電圧源78が接続されている。基準電圧源78はグランド電位であってもよい。
制御部76の出力は、切換回路71の制御端子、演算部74、穿刺ボタン75、送信部77、タイマ79、レーザ発射装置33、負圧手段34(特に吸引ポンプ34a)および第1の皮膚接触センサ62に接続され、図示されない警報手段や第2の皮膚接触センサ110m(図22参照)にも接続されている。演算部74の出力は、送信部77の入力にも接続されている。負圧手段34(特にポンプ弁ユニット34b)の吸引口は、負圧路71を介して負圧室60と血液センサユニット44の内部に導かれている。
ここで、電気回路部36の動作を説明する。
血液検査の前に、血液センサ42の接触部位54b〜57b、56cのそれぞれが、コネクタ61a〜61fのいずれに接続されているかを特定する。まず、制御部76の指令により、コネクタ61a〜61fのうち、隣り合う端子間の電気抵抗が零である接触部位56cを特定する。特定された接触部位56cに接続されている接続電極を基準電極56dであると決定する。接触部位56cに接続されたコネクタ61を基準として、順に接続電極56a、57a、54a、55aに接続するコネクタ61であると特定する。このようにして、接続電極54a〜57aのそれぞれに接続されたコネクタ61を特定する。
その後に血液検査を行う。まず、切換回路71を切り換えて、血液成分量を測定するた
めの作用極となる検出電極54を、上記決定されたコネクタ61を介して電流/電圧変換器72に接続する。また、血液16の流入を検知するための検知極となる検出電極54を、上記決定されたコネクタ61を介して基準電圧源78に接続する。
そして、検出電極54と検出電極55との間に、一定の電圧を印加する。この状態で、血液16が検出部51に流入すると、検出電極54と55との間に電流が流れる。この電流は、電流/電圧変換器72によって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器73によってデジタル値に変換される。このデジタル値は、演算部74に向かって出力される。演算部74は、そのデジタル値に基づいて、血液16が十分に流入したことを検出する。
あらかじめ定められた時間が経過しても、検出部51で血液16が検出されない場合や、血液16の量が適正でない場合は、警報手段を働かせて警報するとともに処置の内容を表示部37に表示してもよい。
次に、血液成分であるグルコースの測定が行われる。グルコース成分量の測定は、まず制御部76の指令により切換回路71を切り換えて、グルコース成分量の測定のための作用極となる検出電極54を、コネクタ61を介して電流/電圧変換器72に接続する。また、グルコース成分量の測定のための対極となる検出電極56を、コネクタ61を介して基準電圧源78に接続する。
例えば、血液中のグルコースとその酸化還元酵素とを一定時間反応させる間は、電流/電圧変換器72および基準電圧源78をオフにしておく。そして、一定時間(1〜10秒)の経過後に、制御部76の指令により、検出電極54と検出電極56との間に、一定の電圧(0.2〜0.5V)を印加する。そして、検出電極54と検出電極56との間に流れた電流を、電流/電圧変換器72によって電圧に変換する。この電圧値は、A/D変換器73によってデジタル値に変換される。このデジタル値は、演算部74に出力される。演算部74は、そのデジタル値に基づいて、グルコース成分量を求める。
グルコース成分量の測定後に、Hct(ヘマトクリット)値の測定が行われる。
まず、制御部76からの指令により切換回路71を切り換える。Hct値の測定のための作用極となる検出電極57を、コネクタ61を介して電流/電圧変換器72に接続する。また、Hct値の測定のための対極となる検出電極54を、コネクタ61を介して基準電圧源78に接続する。
次に、制御部76の指令により、検出電極57と検出電極54との間に一定の電圧(2V〜3V)を印加する。検出電極57と検出電極54との間に流れる電流は、電流/電圧変換器72によって電圧に変換される。この電圧値は、A/D変換器73によってデジタル値に変換される。このデジタル値は、演算部74に出力される。演算部74は、そのデジタル値に基づいて、Hct値を求める。
得られたHct値とグルコース成分量を用いて、あらかじめ求めておいた検量線または検量線テーブルを参照して、グルコース成分量をHct値で補正する。補正された結果は表示部37に表示される。
また、補正された結果は、送信部77からインスリン(治療薬の一例として用いた)を注射する注射装置に向けて送信されてもよい。電波を用いて送信してもよいが、医療器具への妨害のない光通信で送信することが好ましい。注射装置に送信された測定データに基づいて、インスリンの投与量を注射装置が自動的に設定できるようにすれば、投与するインスリン量を患者自身が注射装置に設定する必要がなくなり、煩わしさが軽減される。ま
た、人為手段を介さずにインスリン量を注射装置に設定することができるので、設定ミスが防止される。
以上、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aを用いてグルコースを測定する例を説明したが、グルコース以外の血液成分(乳酸値やコレステロールなど)の測定にも、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは有用である。
測定ステップのフロー1
図2に示された血液検査装置31を用いた血液検査のフローを、図32を参照して説明する。
まず、血液センサユニット44を、血液検査装置31に装着する(ステップ81)。このステップ81では、血液センサユニット44をアダプタ40に挿入する。挿入により、アダプタ40の先端が血液センサユニット44の装着部41bに当接する。血液センサユニット44は、そのホルダ41の弾性で、アダプタ40に係止される。
次に、血液センサ42の接続電極54a〜57aの特定を行う(ステップ82)。ここでは、電気回路部36で、隣り合うコネクタ61a〜61f間の抵抗値から基準電極56dを特定する。そして、特定された基準電極56dから時計回りに接続電極56a、57a、54a、55aと決定する。このように、任意の角度で挿入された血液センサユニット44の血液センサ42の接続電極54a〜57aが、ステップ82で特定され、その結果、検出電極54〜57が特定される。
次に、血液センサユニット44の先端41hを患者の皮膚13に押し当てて密着させる(ステップ83)。皮膚13の先端41hへの接触を、第1の皮膚接触センサ62が検知すると、負圧手段34の吸引ポンプ34aが動作して負圧の発生を開始する。このとき、吸引ポンプ34aに加わる負荷電流を制御部76で検出して、穿刺可能な負圧か否かを表示部37に表示してもよい。負荷電流を検出する代わりに、負圧が発生してからあらかじめ定められた時間をタイマ79で計測して、表示部37に穿刺が可能であるか否かを表示してもよい。
また、第2の皮膚接触センサ150mが設けられていれば、負圧の吸引による皮膚13の盛り上がりを検知できる。該検知を、表示部37に表示してもよい。
このように、レーザ穿刺するときに皮膚13に負圧を加えると、弛緩していた皮膚13が緊張状態になるので、穿刺による傷が小さくても、血液16を効率良く採取することができる。よって、患者に与える苦痛が軽減される。また、負圧により皮膚13を所定位置にまで盛り上げて位置を規定(規制)すれば、照射するレーザ光を正確に集光することができる。
次に、穿刺ボタン75を押下する(ステップ84)。穿刺ボタン75の信号は電気回路部36で認識される。電気回路部36がレーザ発射装置33を駆動すると、レーザが皮膚13に向けて発射される。レーザでの穿刺電圧を、約300Vとすれば、患者に与える苦痛は少なくなる。
次に、採血を行う(ステップ85)。レーザでの穿刺により患者の皮膚13から流出した血液16を、血液センサ42の貯留部49に貯留する(図8など参照)。貯留部49に貯留された血液16は、毛細管現象によって供給路50に浸入し、検出部51に導かれる。検出部51に導かれた血液16が、検知極としての検出電極55に達すると、測定に必要な量の血液16が得られたと判断される。このときに負圧手段34を停止してもよく、
あるいは、皮膚接触センサ62が皮膚の非接触を検知してから負圧手段34を停止してもよい。
一方、あらかじめ定められた時間が経過しても、検出部51で血液16が検出されない場合や、血液16の量が適正でない場合(検出電極54と検出電極55間の抵抗で検出する)には、警報手段を作動させて警告するとともに、適切な処置内容を表示部37に表示してもよい。
次に、グルコースの測定を行う(ステップ86)。血液中のグルコースとグルコース酸化還元酵素とを一定時間反応させた後、検出電極54を作用極とし、検出電極56を対極として、両検出電極54、56の間に電圧を印加して、グルコース測定を行えばよい。
さらに、Hct値の測定を行う(ステップ87)。検出電極57を作用極とし、検出電極54を対極として、両検出電極54、57の間に電圧を印加すれば、Hct値に依存する電流が検出される。この電流に基づいてHct値を測定できる。
最後に、血液成分の補正を行う(ステップ88)。つまり、ステップ87で検出したHct値を用いて、ステップ86で得られたグルコース量を補正する。補正後、その結果を表示部37に表示する。以上のステップにより、血糖値測定が終了したら使用済み血液センサユニット44は廃棄する。
測定ステップのフロー2
図33は、測定ステップのフローチャートを、より詳細に模式的に説明する図である。
図33において、ステップ151は、血液検査装置31のアダプタ40に血液センサユニット44を装着する前の状態を示す。ステップ152は、ガイド部63(図7参照)に沿って血液センサユニット44をアダプタ40へ挿入した状態を示す。ステップ153は、コネクタ61を押し下げて、コネクタ61がセンサ42の接触部位54b〜57b、56cに当接した状態を示す。
次に、ステップ154に移行して、血液検査装置31のメインスイッチを起動する。すると、自動的に電気回路部36が基準電極56dを検出し、検出電極54〜57を特定する。その後、表示部37が、測定準備が完了したことを表示する。
ステップ155では、血液検査装置31を穿刺する皮膚13に、血液センサユニット44の端部を当接させる。図33において、ステップ155以降については、血液検査装置31の装置本体39を省略して、血液センサユニット44のみを示す。ステップ156では、血液検査装置31を患者の皮膚13に当接させる。この皮膚13への当接は第1の皮膚接触センサ62が検出する。
第1の皮膚接触センサ62が皮膚13を検知すると、ステップ157に移る。そして、負圧手段34が動作を開始し、矢印157aに示すように負圧室60を吸引する。吸引の結果、皮膚13が盛り上る。手動式の負圧手段140の場合は(図3参照)、表示部37に手動開始の旨の表示がなされ、患者が手動ポンプノブ142の操作を開始する。
負圧が加えられると、ステップ158に示すように皮膚13はさらに盛り上がり、第2の皮膚接触センサ(皮膚接触電極)110mに当接する。
第2の皮膚接触センサ110mは、血液センサユニット44の下面に装着された血液センサ42の裏面に形成されるか(図22参照)、または、血液センサユニット44の上面
に血液センサ42が装着される場合は、装着部120bの下面に形成される(図23参照)。
第2の皮膚接触センサ110mは、血液センサ42への皮膚13の接触を検知できればよいので、電極の代わりに、光センサや機構スイッチ、電気抵抗検出素子などを用いてもよい。
ステップ159では、負圧室60における皮膚13の吸引を停止する。なお、第2の皮膚接触センサ110mがない場合は、負圧手段34の動作開始からあらかじめ定められた時間の経過後に、吸引を停止すればよい。経過時間は電気回路部36のタイマ79で計測すればよい。
次に、ステップ160に移り、皮膚13にレーザ光を照射して穿刺する。穿刺により、皮膚13からは血液16が流出する。第2の皮膚接触センサ110mが皮膚13を検知すると、自動的に穿刺が行われてもよい。また、皮膚13の当接を表示部37に表示することにより、患者が穿刺ボタン75(図29参照)を押下するようにしてもよい。患者自身が穿刺ボタン75を押下する場合には、患者は気構えをすることができる。
流出した血液16は、ステップ161に示すように、貯留部49を満たし、供給路50へ流入する。血液16の流入は、供給路50による毛細管現象と、負圧手段34による空気孔52からの吸引とにより行われる。
ステップ162に示すように、血液16は血液センサ42の検出部51に導かれる。血液16の検出部51への流入が検知されると、負圧手段34の動作を停止する(ステップ163)。血液16がセンサ42の検出電極55(図6参照)に達すると、血液16の流入が検知される。そして、大気開放スイッチ34cを操作して負圧室60内を外気圧にする。
次に、ステップ164に示すように、血液検査装置31を皮膚13から離す。測定が終了したら、その旨を表示部37に表示する。そして、ステップ165に移り、採取した血液16の測定結果を表示部37に表示する。
測定ステップのフロー3(認証ステップあり)
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置を用いて血液検査をするフローには、患者である使用者を認証するステップが含まれていてもよい。レーザ機器であるため、安全性を考慮して許可された者以外の使用を禁止するためである。
図34には、認証ステップ261を含む検査フローが示される。認証は、指紋や声紋、虹彩、静脈パターンなどを用いて、患者が所定の許可された者であるか否かを識別して行えばよい。
使用が許可された者の場合は、ステップ262に進む。患者はダイアルを操作して、穿刺深さ(レーザパワー)を設定する。そして、ステップ263に移り、血液検査装置31のアダプタ40に、血液センサ42を有する血液センサユニット44を装着する。血液センサユニット44の装着で装置本体39の電源が自動的に起動して、測定待機状態になる。血液センサユニット44を装着するステップ263は、ステップ261の前に行ってもよい。血液センサユニット44が装着されていないと測定動作は行えないが、測定結果の表示などは可能である。
次に、ステップ264に進む。ステップ264では、血液センサユニット44が皮膚1
3に当接しているか否かを第1の皮膚接触センサ62(図16など参照)で検知する。第1の皮膚接触センサ62の代わりに、血管の有無の検知、体温の検知、皮膚の電気抵抗の検知、脈動の検知であってもよい。いずれにしても、安全のために、皮膚13への当接を検知している状態でステップ265以降の動作を行う。皮膚13への当接の検知ができるまで、ステップ264で待機する。
第1の皮膚接触センサ62が皮膚を検知したら、ステップ265で負圧手段34の動作を開始する。また、同時にレーザ発射装置33の駆動電圧チャージを開始する。そして、ステップ266に進み、負圧手段34へ流れる電流値を1〜5秒間モニタする。電流値が異常の場合は、その旨を表示部37に表示して、ステップ264の前に戻る。
電流値が正常な場合は、ステップ267に進み、負圧が適正か否かを判定する。負圧の適否の判定は、負圧手段34へ流れる電流を、あらかじめ定められた閾値と比較することにより行う。一定の負圧力になると、ステップ268に進み、レーザ光の発射を許可する。負圧が閾値を超えない場合は、空気漏れ(血液センサユニット44の皮膚13への当接不良)として、負圧手段34による吸引を停止し、リトライを指示するとともに、ステップ264の前に戻る。
また、第2の皮膚接触センサ110m(図22参照)を配置すれば、負圧により吸引された皮膚13の盛り上がりを検知することができる。適切に皮膚13が盛り上がり、血液センサ42に密着したら、レーザ光の発射を許可する。
ステップ268では、レーザ光を発射して皮膚13を穿刺する。そして、ステップ269に進み、穿刺により皮膚13から流出した血液16を血液センサ42へ取り込む。このとき、負圧手段34は駆動を続行する。
次に、ステップ270に進み、血液16が血液センサ42の検出部51(図8参照)に取り込まれたか否かをチェックする。穿刺後の一定の経過時間内(2〜10秒の場合もある)に、検出電極55に血液16が達したか否かを検知する。一定の経過時間内に血液16が検知されないときは、ステップ264の前に戻り再穿刺する。したがって、一旦装着された血液センサ42を、未使用のまま無駄にすることがない。しかも、迅速に再穿刺することができる。
血液16が検知された場合は、ステップ271に進み、血糖値の測定を開始する。また、ステップ271で、ポンプ弁ユニット34b(図2参照)を制御して負圧の外気開放を開始する。この時点ではまだ負圧手段34は動作している。負圧手段34が駆動しているときの音や振動により、患者に対して測定中である旨を認識させ、患者が血液検査装置31を皮膚13から取り外さないようにするためである。このような配慮により、血液成分の測定途中で、血液検査装置31に振動や衝撃が加わることを防止し安定した測定ができる。また、負圧を開放した直後に、患者が、皮膚13から装置を取り外して、血液16を飛散させて汚染することを防止する。
ステップ271で測定が完了すると、ステップ272に移り、測定した結果を表示部37に表示する。そして、ステップ273に移り、負圧手段34(特に吸引ポンプ34aおよびポンプ弁ユニット34b)(図2参照)の駆動を停止する。以後、患者は血液検査装置31を皮膚13から離す。
次に、ステップ274に移り、患者が、血液センサユニット44を血液検査装置31の装置本体39から外して廃棄する。そして、ステップ275に移り、血液センサユニット44の取り外しを検知して、装置本体39の電源を自動停止する。
以上説明したように、血液検査装置31を用いた血糖値の測定において、血液検査装置31が皮膚13へ当接していることを条件(論理積条件)に、レーザ発射装置33を駆動しているので、皮膚13への穿刺以外でレーザ光が放射されることは無く、安全である。
また、血液検査装置31の使用に先立って、ステップ261で使用者認証を行っているので、許可された者のみが操作することができ、無許可の者は操作できないので、安全である。
血液検査装置31の電源は、自動的に起動および停止されるので操作が容易となり、電池35の消費が抑制される。
レーザ照射における負圧の制御
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31は、穿刺後に、負圧を複数回断続して加えてもよい。図35および図36を参照して、負圧を加えるタイミングと、その作用を説明する。
第1の皮膚接触センサ62が皮膚13を検知すると、時間166aで負圧手段34が駆動を開始する(図33のステップ156に対応)。負圧室60内に負圧が加えられ、皮膚13は状態167aのように緊張して盛り上がる(図33のステップ157に対応)。皮膚13が盛り上がり、時間166bで、第2の皮膚接触センサ110mに当接する(図33のステップ158に対応)。時間166bで、皮膚13は、図33に示す状態167bとなる。ここで、負圧室60に供給する負圧を停止する(図33のステップ159に対応)。そして、時間166cで、皮膚13を穿刺する(図33のステップ160に対応)。ここで、皮膚13は状態167cとなり、血液16が滲み出る。
そして、一旦負圧の供給を停止した後、時間166dの時点で、再び負圧を加える。負圧により、状態167dのように皮膚13の開口部が広がり、血液16が流出し易くなる(図33のステップ161に対応)。
このように、負圧を断続的に加える理由の1つは、皮膚13の穿刺孔を広げて血液16の採取を容易にするためである。別の理由は、強い負圧で一気に吸引すると血液16が勢い良く流出し、過剰に採血してしまうことがあるので、これを防止するためでもある。そのため、余分に血液16が溢れ出ない程度に負圧手段34を断続的に動作させている。このようにして、吸引力を弱めて省電力化を図るとともに、適量の血液16を採取する。適量の血液16を得て、精密な測定が終了した段階で、血液検査装置31を皮膚13から外す(図33のステップ164に対応)。測定が終了した時間166eにおいて、皮膚13は、状態169eに示すように、負圧で広げられた傷口168を元の通りに塞ぐ。したがって、傷口の回復が早くなる。
患者によっては、レーザ穿刺しても皮膚13から血液16が流出しにくい場合もある。そのような場合は、穿刺前の負圧力に比べて、穿刺後の負圧力を大きくして血液16が流出しやすいようにしてもよい。負圧力の制御は、最高到達圧(負圧)が一定であるので、弁34bの閉鎖時間を制御することによって行う。また、断続的な負圧の駆動を行わなくとも、継続して負圧を加えるように構成してもよい。
また、本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31は、穿刺の前後に、いわゆる「揉み動作」を行ってもよい。図37を参照して、揉み動作を説明する。
揉み動作は、例えば、ポンプ(例えば、電動式吸引ポンプ)34aを定電圧駆動しつつ
、弁(例えば、電磁弁)34bを所定のタイミングで開閉することによって行う。図37に示される動作例では、第1の皮膚接触センサ62が皮膚13を検知して負圧手段34が駆動を開始してから(吸引開始)、レーザによる穿刺が行われるまでの間(期間92)は、穿刺前の準備として揉みほぐしを行い(穿刺前準備(揉みほぐし))、レーザによる穿刺が行われた後は、血液16が血液センサ42の検出部51に取り込まれたことを検知して(点着検知)、電磁弁34bを閉鎖するまでの間(期間93)に、少なくとも1回の揉みを入れる(穿刺後吸引)。図37において、空気圧のレベル90は、体感で吸引をほとんど感じない負圧レベルであり(例えば、−10kPa)、レベル91は、ポンプ34aを定電圧駆動した場合の最高到達圧(負圧)(例えば、−70kPa)である。揉み動作をもたらす弁(電磁弁)34bの開閉動作は、負圧室60内の空気圧がレベル90とレベル91の間で変化し、かつ、その変化の周期が、皮膚13が負圧の変化に反応する最小時間よりも長い時間(例えば、0.1秒以上)になるようなタイミングで行う。このような弁(電磁弁)34bの開閉動作は、吸引開始から点着検知・電磁弁閉鎖までの期間(電磁弁開閉動作期間94)の間行われる。点着検知後に電磁弁を閉鎖するのは、上述のように、皮膚13の穿刺孔を広げて血液16の採取を容易にするためである。血液16の採取がなされ、測定が終了すると、負圧手段34の駆動を停止する(ポンプ吸引停止および弁開放)。
このような揉み動作を行うことで、血管の血行が良くなり、血液16が流出しやすくなる。つまり、皮膚13を揉むことで、被穿刺部が加熱され(血行が良くなり)、揉まない場合に比べて採血量を多くすることができる。また、揉み動作は、穿刺時の痛みの軽減にもつながる。
レーザ穿孔装置について
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは、図38に示されるレーザ穿孔装置を含んでいる。このレーザ穿孔装置は、血液検査装置31、31aから血液センサユニット44およびこの血液センサユニット44に関係する部材(例えば、血液センサ42と接続するコネクタなど)を取り除いた構造を有する。このレーザ穿孔装置は、1回の穿刺動作において同一の穿刺位置を「分割穿刺」するようにレーザ発射装置33のレーザ出力を制御する機能を有する。ここで、「分割穿刺」とは、1回の穿刺動作を空間的または時間的に分割して行うことをいう。具体的には、前者は、レーザ光を複数の光路に分割して穿刺動作を行う場合(レーザ出力の分岐制御)であり、後者は、レーザ光を複数回に分割して穿刺動作を行う場合(レーザ出力のパルス制御)である。
レーザ照射におけるレーザ光の分岐
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aは、レーザ発射装置33から発射された1本のレーザ光を複数本に分岐させて皮膚13を穿刺してもよい。図39において、符号「33」はレーザ発射装置、「13」は患者の皮膚である。また、符号「170a」、「170b」、「170c」は、それぞれ、入射光に対して半分の光を通過させるとともに残りの半分の光を反射させて入射光を均等に分配するスプリッタである。このスプリッタ170a、170b、170cは、ハーフミラーで形成されている。
符号「171a」、「171b」、「171c」は、それぞれ、入射した光を全反射させる全反射ミラーである。この全反射ミラー(以下単に「ミラー」という)171a、171b、171cは、スプリッタ170a、170b、170cとそれぞれ組になっている。図39において、これらのスプリッタ170a、170b、170cおよびミラー171a、171b、171cは、同一の照射位置177を穿刺するよう、入射光に対して所定の角度に設定されている。
レーザ発射装置33から出射されたレーザ光172は、スプリッタ170aでレーザ光
173aとレーザ光173bに分岐される。分岐されたレーザ光173bはミラー171aに入射し、このミラー171aで全反射してレーザ光174となる。このレーザ光174は、スプリッタ170bでレーザ光175aとレーザ光175bに分岐される。分岐されたレーザ光175aは直接皮膚13の照射位置177を穿刺する。また、スプリッタ170bで分岐されたレーザ光175bは、ミラー171bで全反射してレーザ光175cとなり、皮膚13の照射位置177を穿刺する。
一方、スプリッタ170aを通過したレーザ光173aは、スプリッタ170cでレーザ光176aとレーザ光176bに分岐される。分岐されたレーザ光176aは直接皮膚13の照射位置177を穿刺する。また、スプリッタ170cで分岐されたレーザ光176bは、ミラー171cで全反射してレーザ光176cとなり、皮膚13の照射位置177を穿刺する。
このように1つのレーザ光172を複数の光路に分岐して皮膚13の照射位置177を穿刺するので、出力が小さいレーザ光で穿刺することになり、痛みを軽減することができる。したがって、皮膚13の内部の毛細血管にレーザ光を集約して穿刺することが可能となる。
また、図40に示されるように、ミラー171cを図39に示される位置よりも遠くに配置した場合には、スプリッタ170cで分岐されたレーザ光176bがミラー171cで全反射してレーザ光176cとなり皮膚13の照射位置177へ到達するまでの時間が長くなる。このようにミラーを適正な位置に配置することで、分岐された複数のレーザ光を同一の照射位置に順番に照射できるようにレーザ出力を制御することができる。
スプリッタ170a、170b、170cやミラー171a、171b、171cは、図41に示すように直方体を対角線178aで2分割したキューブ状の光学素子178を用いることが好ましい。キューブ状のスプリッタ170a、170b、170cは、合わせ面に屈折率の異なるミラーを貼り合わせたものであり、キューブ状のミラー171a、171b、171cは、全反射する面と全透過する面を貼り合わせたものである。このように、キューブ状に形成された光学素子178は、透過光路のずれやゴーストの発生が無いため、光路の分割や屈折などの変更に対して精度を高く保つことができる。なお、スプリッタ170a、170b、170cやミラー171a、171b、171cをすべて、または一部ずつ、1つのキューブ状光学素子にて構成することも可能である。
例えば、図39や図40に示されるレーザ分岐をキューブ状の光学素子で構成する場合を説明する。図39および図40では、レーザ光172の分岐を二次元のイメージで表現したが、これを三次元のイメージで表現すると、図42Aに示される通りである。図42Aに示されるように、レーザ発射装置33から出射されたレーザ光172は、一旦複数の光路に分岐されて、最後は一箇所の照射位置177に集光される。図42Bは、この分岐を実現するキューブの一例を示している。図42Bに示されるキューブ179内には、スプリッタ170a、170b、170cおよびミラー171a、171b、171cが所定の位置にそれぞれ固定配置されている。このように、レーザ分岐に使用するスプリッタ170a、170b、170cおよびミラー171a、171b、171cをキューブ179内に収納することにより、細かい位置決めが不要になり、レーザの光軸上にキューブ179を配置するだけで、分岐制御されたレーザ光を所望の位置に照射することが可能になる。
レーザ光の分岐方法としては、光ファイバを用いてレーザ光を分岐してもよい。図63Aおよび図63Bは、光ファイバによるレーザ光の分岐方法を示している。図63Aは、レーザ発射装置33からレーザ光を分岐ファイバケーブル421によって2分岐した場合
である。この場合、この2分岐ファイバケーブル421から皮膚13の同一の照射位置177に向けて2分岐されたレーザ光422が照射される。2分岐ファイバケーブル421は、1つの光ファイバ方向性結合器423を含んでいる。また、図63Bは、レーザ発射装置33からレーザ光を分岐ファイバケーブル424によって4分岐した場合である。この場合、この4分岐ファイバケーブル424から皮膚13の同一の照射位置177に向けて4分岐されたレーザ光425が照射される。4分岐ファイバケーブル424は、3つの光ファイバ方向性結合器423を含んでいる。このように、光ファイバを用いても、図39に示される場合と同様に、レーザ発射装置33から発射された1本のレーザ光を複数本に分岐させて皮膚13を穿刺することができる。特にファイバケーブルを使用する場合は、外部にレーザ光が漏れることがないので、スプリッタを使用する場合よりも取り扱いが非常に容易である。
図64は、光ファイバ方向性結合器423の構成を示す概略図である。一般に方向性結合器は光を分岐する光学素子である。光ファイバ方向性結合器423は、2本の光ファイバ426の結合部427のクラッド428を除去してコア429同士を近づけることによって構成されている。光ファイバ方向性結合器423では、一方の光ファイバ426から光を入射すると、2本のコア429の近接部分において光の干渉効果により他方のコア429にも光が伝播し、光を分岐することができる。
図65は、光ファイバによるレーザ光の分岐方法として、分岐ジョイント部430およびファイバケーブル431を使用する場合である。ここでは、レーザ発射装置33から出射されたレーザ光432は、分岐ジョイント部(T型分岐)430を経由して2分岐される。分岐ジョイント部430は、例えば、三角形の全反射ミラー433を内蔵しており、逆T字にレーザ光432を分岐する。分岐されたレーザ光は、それぞれファイバケーブル431を経由して、皮膚13の同一の照射位置177を穿刺する。
一般に、レーザ光が皮膚13に照射されると、照射部は光吸収により急激な温度上昇を起こす。この温度上昇により、血液16が蒸発して皮膚13を押し上げバルーン状になる。そして、さらなる皮膚13の押し上げにより、皮膚13が破壊して血液16が流出する。血液16が流出した後、レーザで穿刺された底面は炭化して、炭化臭を発する。炭化臭は脱臭剤で脱臭するとよい。
このレーザ発射装置33において、レーザは患者の皮膚13を約0.5mm穿刺するように設計されている。
この場合、レーザ発射装置33のレーザの種類はEr:YAGまたはCO2ガスとすればよく、波長領域は2.7〜3.5μmまたは6.5〜10.5μmとすればよく、パルス幅は50〜400μs、好ましくは200μsとすればよく、出力は300mJ〜3000mJとすればよい。また、ショット径は0.1mm〜0.5mmとし、ショット深さは0.3〜0.7mmとすればよい。また、チャージ電圧は200〜700Vの範囲、好ましくは500Vとする。この高電圧は、電池を用いて電荷をコンデンサにチャージ(充電)した後、このチャージされた電荷を一気に放電することによって得られる。
レーザ照射における照射角度
1本のレーザ光を、皮膚13に対して斜めの方向から照射して、皮膚13を穿刺してもよい。図43において、血液センサユニット44の負圧室60の内部は負圧手段34により負圧され、皮膚13が盛り上がっている。皮膚13の盛り上がりの頂点180の接線方向に対して、90度未満の角度でレーザ光181を照射する。このように接線方向に対して90度未満の角度でレーザ光を照射すると、垂直方向からレーザ光を照射する場合と比べて、毛細血管が網羅されている面に対して斜め方向からレーザ光181が照射される。
そのため、レーザ光181の単位面積当たりの照射強度は弱くなるが、毛細血管を傷つける確率は増加する。したがって、血液採取効率が高くなる。よって、穿刺深さが浅くても十分な血液16が採取できることになり、患者に与える痛みが軽減される。
また、レーザ光181の照射形は、真円でなく、図44に示されるように楕円形183または長四角形184にしてもよい。照射形を楕円形183または長四角形184にすると、レーザ光181が網羅している毛細血管を傷つける確率が増加して、血液採取効率が高くなる。よって、穿刺深さが浅くても十分な血液16を採取することができるので、患者に苦痛を与えることは少ない。
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置31、31aにおいて、1つのレーザ発射装置33であっても、レーザの出力強度を可変することができる。
図45に示されるように、レーザ発射装置33と皮膚13との間に、レーザの透過光量が異なる複数種のフィルタ、例えば、減光(ND:Neutral Density)フィルタ191a〜191dが貼り付けられたプレート193を設けてもよい。プレート193をレーザ光194の照射路に設置する。プレート193を回転させることで、皮膚13に照射するレーザ光194の光量を制御する。レーザの光量を制御することにより、穿刺深さを制御することができる。
これにより、従来レーザ強度を制御するために行っていた、フラッシュランプの場合は印加電圧を制御し、半導体レーザの場合は電流を制御するといった方法に加えて、NDフィルタによるレーザ穿刺の出力調整も可能となる。したがって、レーザ出力のよりきめ細かい制御が可能となる。
さらに異なる用途としては、レーザの出力強度をフラッシュランプへの印加電圧で決定する場合、電圧を可変にすると、電圧値の安定性が劣化し、レーザ出力が変動する要因となる。これを解決するために電圧を固定にして、レーザ光194の出力が低下(変化)した場合においても、透過光量の異なるこのNDフィルタ191a〜191dを用いることで、レーザの出力を一定に保つことができる。したがって、安定したレーザ出力を得ることが可能となる。
レーザ照射におけるパルス制御(時分割)
穿刺時の痛みを軽減するために、一定の深さまでの穿刺を複数回に分けて行ってもよい。チャージ電圧として320V程度の大きなパルスを用いて1回で穿刺する方法に比べて、図46に示されるように、レーザ光を3回のパルス198a、198b、198cに分割して、それぞれ210V程度の小さなパルスを用い、100μs〜1msecの間隔(休止区間)で複数回穿刺する。これにより、図47に示されるように、各パルス198a、198b、198cに対応して、皮膚13をレベル199a、199b、199cと3段階に分けて穿刺することができる。この場合、100μs〜1msecの休止区間でコンデンサをチャージして高電圧を得ている。
この穿刺方法の制御によれば、1パルスで皮膚13を穿刺する深さが浅いので、痛みを軽減しつつ、所定の深さまで穿刺することができる。なお、この場合は、パルス198a、198b、198cの間隔を100μs〜1msecと短くすることが重要であり、血液16が滲み出る前に次の穿刺を行うようにしている。
また、穿刺時の痛みを軽減するために、一定の深さまでの穿刺を複数回に分けて行う別の方法として、レーザ光を連続可変/分割照射する場合について説明する。本発明で穿刺する対象物とは、例えば、指の腹の皮膚である。皮膚は、表面から順に、角質層を外部に
持つ表皮と、痛点や毛細管が存在する真皮とで形成されている。したがって、最初または数回の照射で表皮だけを除去するエネルギーを与えた後、小さいエネルギーで真皮を穿刺すると、痛みが軽減される。
例えば、エルビウムをドーピングしたEr:YAGを材料とし、φ2.5mm、長さ52mmのレーザロッド(レーザ結晶)33dを用いる場合、1回で穿刺する時のフラッシュランプ(励起光源)33eヘのチャージ電圧は、450V程度の大きなパルスを用いる。この時の動作を起こすための回路が図48Aに示され、フラッシュランプ33eヘの入力電流が図48Bに示され、レーザの出力が図48Cに示されている。
図48Aの回路図において、サイリスタ(SCR1)401がオンされると、トリガコイル402から数kVの昇圧された電圧が出力され、フラッシュランプ33eに充填されたキセノンガスがイオン化され、電解コンデンサ403の主放電が始まり、フラッシュランプ33eが発光する。このフラッシュランプ33eの発光によってレーザロッド33dは励起され、レーザ光が出射される。なお、符号「404」は抵抗(R1)である。
上記の場合は1回で穿刺する場合である。
次に、電解コンデンサ1回分の充電で数回に分けてレーザ光を出射する場合について説明する。このときの回路図、フラッシュランプ33eヘの入力電流、およびレーザ出力は、図49A、図49B、および図49Cにそれぞれ示されている。
数回に分けてフラッシュランプ33eを発光させる場合には、図49Aの回路図において、大電流でスイッチング速度が速いトランジスタ(IGBT)411にハイの信号が入力されると、トランジスタ(IGBT)411がオンと同時にフラッシュランプ33eの負極がグランドに接続され、フラッシュランプ33eに電解コンデンサ412からの電圧が印加され、さらに同時にトリガコイル413から数kVの昇圧された電圧が出力される。これにより、フラッシュランプ33eに充填されたキセノンガスがイオン化し、電解コンデンサ412の主放電が始まり、フラッシュランプ33eが発光する。次に、トランジスタ(IGBT)411にローの信号が入力されると、トランジスタ(IGBT)411がオフして、フラッシュランプ33eヘの電圧印加は停止する。これにより、フラッシュランプ33eの発光も停止し、レーザの出力も停止する。この動作を繰り返すことで、レーザの出力を数回に分けて行うことができる。ここでは、2回に分けた場合を示している。なお、符号「414」は抵抗(R1)である。
図49Cからも明らかなように、最初は大きい出力で照射し、次に小さい出力で照射することができる。本例で示したEr:YAGのレーザロッド33dを使用する場合は、レーザ光を出射するためのフラッシュランプ33eの最低電圧は370Vであるので、2回目の電圧は370Vよりも大きく設定し、フラッシュランプ33eの発光時間を短くして全体のエネルギーを小さくする必要がある。これにより、皮膚13をレベル199a、199bと2段階に分けて穿刺することができる(図47参照)。
この穿刺方法の制御によれば、まず皮膚13の表皮を除去してから、真皮を小さいエネルギーで掘るため、真皮の深いところまでレーザ光が到達しないので、痛みを軽減しつつ、所定の深さまで穿刺することができる。なお、血液16が滲まないように表皮を穿刺するようにしている。
電源制御について
本発明の血液検査装置は、電気消耗の大きいレーザ発射装置を搭載しているので、電源の管理が重要である。電源として電池を用いる携帯機器である場合には、容量に制限があ
るので、電源の管理が特に重要である。
また、血糖値の測定という生命の安全に係わる装置である場合には、電源切れによる測定不能を避けることが求められ、最悪でも血液検査(例えば血糖値の測定)だけは実施できることが重要である。
本発明の血液検査装置は、装置に含まれるレーザ発射装置を駆動する電源と、電気回路部を駆動する電源との電源供給を制御する電源制御回路を有することが好ましい。さらに電源制御回路は、レーザ発射装置を駆動する電源と、電気回路部を駆動する電源とを独立に制御することが好ましい。
「独立に制御する」とは、電源(特に電池)の残量や電圧に応じて、レーザ発射装置を駆動する電力と、電気回路部を駆動する電力とを、供給するかしないかを決定すること、およびいずれの電源から供給するかを決定することなどを意味する。
本発明の血液検査装置の電源は、電池電源を含むことが好ましい。携帯機器として用いることができるからである。電池電源は、1つであってもよく、2つ以上あってもよい。
電池は、二次電池もしくは一電池、またはその両者の組み合わせでもよい。二次電池の例には、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などが含まれる。一次電池の例には、リチウム電池、マンガン電池、アルカリ電池、オキシライド電池などが含まれる。
本発明の血液検査装置の電源は、電池電源に加えて、緊急用電源の接続端子を有していてもよい。電池電源の電池が消費された場合に、他の電源に接続して血液検査装置を用いるためである。緊急時の電源の例には、入手が容易な乾電池、パソコン等で用いるUSB端子、燃料電池、手動発電機(ダイナモ)等が含まれる。これらの電源を容易に接続できる。
さらに本発明の血液検査装置の電源は、電池電源に加えて、外部電源を有していてもよい。外部電源と接続している場合には、外部電源が優先して使用されて、電池からの電気出力が停止されるか、または電池への充電が行われることが好ましい。
血液検査装置は、電池電源の電池の残量を測定する電池残量測定回路を有していてもよい。さらに血液検査装置は、電池残量測定回路が測定した電池残量と、予め定められた値(電力量)とを比較する比較部を有することが好ましい。電池の残量を把握して、レーザ穿刺または検査が可能かどうかを判断するためである。
前述の通り、比較部には予め定められた電力量が記憶されている。予め定められた電力量の第1は、所定の回数分の検査(レーザ穿刺と測定を含む)に必要な電力量である。この値を第1残量閾値という。電池残量が第1残量閾値を下回る場合は、使用者に電池の交換を促す警告(電池残量警告)をすることが好ましい。第1残量閾値は、設計された回路によって適宜設定されればよく、基本的には固定値とすればよい。
予め定められた電力量の第2は、1回の検査(穿刺および測定などを含む)に必要な電力量である。この値を第2残量閾値という。電池残量が第2残量閾値以上であれば、少なくとも1回の検査ができると判断され、検査が実施される。ただし、前述の通り、電池残量が第1残量閾値を下回っている場合には、電池残量警告を行うことが好ましい。
一方、測定した電池残量が第2残量閾値未満であれば、通常の検査を行うことはできな
いので、レーザによる穿刺を禁止して、検査不可能であることを使用者に示すことが好ましい(使用不可表示)。しかしながら、レーザによる穿刺は不可能であっても、電力消費の少ない測定プロセスを実施することができる場合がある。よって、レーザ以外の手段で穿刺した上で、測定を行うことができる。
第2残量閾値は、前回の検査において消費された電池の消費量を基準に設定されることが好ましい。具体的に第2残量閾値は、当該消費量と、測定のための電気回路を駆動するための電力量との和であることが好ましい。レーザ発射装置のレーザ出力設定変更などにより電池の消費量が変わるため、検査において消費される電池の消費量は最新のデータを記憶しておくようにしている。このように、第2残量閾値は可変である。
予め定められた電力量の第3は、レーザ発射装置への1回の充電に必要な電力量と、測定のための電気回路を駆動するための電力量との和である。この値を第3残量閾値という。レーザ発射装置に充電するための電源と、電気回路を駆動するための電源とが別である場合に、緊急時に電気回路を駆動するための電源を用いてレーザ発射装置に充電をするかどうかを判断する基準として、第3残量閾値を用いる。レーザ発射装置への1回の充電に必要な電力量は、レーザの励起用にチャージするコンデンサの容量やチャージ電圧やチャージ電流及び電池の内部抵抗により決定される。
電池残量に応じた充電電流値の設定
また、電池残量測定回路で測定された電池残量に基づいて、レーザ発射装置への充電をするための充電量を設定してもよい。図61A〜図61Cに、電池残量に応じて充電量を設定する例を示す。
図61Aは、電池残量(Y軸)の割合に応じて、段階的に充電電流を変更する方法である。例えば、電池残量が75〜100%(第1ゾーン)であれば、充電電流値を最大値(100%)とし、電池残量が50〜75%(第2ゾーン)であれば、充電電流値を最大値の50%とし、電池残量が25〜50%(第3ゾーン)であれば、充電電流を25%とする。
図61Bは、電池残量(Y軸)の割合に比例して、連続的に充電電流(X軸)を変更する方法である。
図61Cは、電池残量(Y軸)の割合の変化曲線を基準として、その曲線と逆になるような可変カーブになるように、連続的に充電電流(X軸)を変更する方法である。図61Cでは、「Y=X+a(a:オフセット分)」の比例直線と対照になるカーブにあわせて制御を行っている。
本発明の血液検査装置は、電池電源の電池の電圧を測定する電池電圧測定回路を有することが好ましい。さらに血液検査装置は、電池電圧測定回路が測定した電池電圧と、予め定められた電圧値とを比較する比較部を有することが好ましい。
検査(穿刺と測定)のために必要な電力量が電池に残っている場合であっても、レーザ穿刺のためにレーザ発射装置に充電を行うと、測定のための電気回路部を駆動するための電圧よりも、電池電圧が低下してしまうことがある。したがって、測定に必要な電池残量があるにもかかわらず、測定が実施できない場合が発生しうる。そこで、電池電圧測定回路で、電池が充分な電圧を出力しているかどうかを確認する。
前述の通り、比較部には予め定められた電圧値が記憶されている。予め定められた電圧値の第1は、測定のための電気回路部を駆動するための必要最低電圧よりもある程度高い
電圧値であることが好ましい。この電圧値を、第1電圧閾値という。レーザ発射装置への充電により電池の電圧が下がっても、電池の電圧が必要最低電圧を下回らないように、第1電圧閾値を設定する。充電により電池の電圧がどの程度下がるかは、電池の性質によって異なるので、電池の性質に応じて適宜第1電圧閾値を設定する。
レーザ発射装置に充電を行う前に電池電圧測定回路が測定した電池電圧が、第1電圧閾値よりも低いと、比較部で判断された場合には、通常の電流よりも低い電流で、レーザ発射装置に充電を行うことが好ましい。低電流で充電を行うと、電池電圧が低下しにくくなるためである。
図62に、充電量を変化させたときの、電池の電圧(Y軸)と電池残量(X軸)との関係が示される。曲線410は充電電流が0(負荷無)のとき、曲線420は充電電流がIのとき、曲線430は充電電流がI’(>I)のときの、電池の電圧(Y軸)と電池残量(X軸)との関係をそれぞれ示す。曲線410に対して、曲線420および曲線430とも電池電圧が下がっていることがわかる。これは、電池内部の抵抗(421および431)による。
測定のための電気回路を駆動するために必要な電圧レベルを440とすると、充電電流がIの場合(曲線420)は、電池の残量がX2になるまで、電池は電気回路を駆動できる。一方、充電電流がI’(>I)の場合(曲線430)は、電池の残量がX1になるまでしか、電池は電気回路を駆動できない。このように、充電電流を下げると、電池電圧の低下が抑制される。電池電圧の低下が大きいと、450で示されるように、使用できない電池エネルギーが増えるため好ましくない。
比較部に予め定められた電圧値の第2は、第1電圧閾値以上で、本来は十分に余裕のある電圧値である。この電圧値を、第2電圧閾値という。例えば、第1電圧閾値+0.5〜1V程度である。
比較部が、レーザ発射装置に充電を行う前に電池電圧測定回路が測定した電池電圧が、第2電圧閾値を上回ると判断した場合には、レーザ発射装置により高い充電電流で充電を行うことが好ましい。
本発明の血液検査装置は、血液検査の検査結果を表示される表示部(図1参照)を有する。前述の電池残量警告の表示や使用不可表示は、表示部に表示されることが好ましい。
電源制御部の第1の例
図50には、血液検査装置の第1の例の電源制御部200−1が示される。
図50において、家庭用AC電源(外部電源の例として用いた)に接続されるコンセント201は、ACアダプタ202に接続されている。ACアダプタ202の出力は、電源制御回路203の一方の入力にコネクタを用いて挿抜自在に接続できる。
電池210は、電池残量および電池電圧測定回路212に接続される。回路212の第1の出力は電源制御回路203に接続され、回路212の第2の出力は比較部211に接続されている。
緊急用電源の接続端子204は、電源制御回路203に接続されている。
電源制御回路203は、ACアダプタ202と接続されているときには、ACアダプタ202電源を優先して使用し、電池210を使用しないように制御する。ACアダプタ2
02から出力される電圧を検知して、この電圧が出力されているときは、電池35からの供給を強制的に停止、または電池210に充電する。
電源制御回路203の第1の出力は電気回路部36aに接続される。電源制御回路203の第2の出力は昇圧回路205の入力に接続され、昇圧回路205の出力はレーザ発射装置33に接続されている。
比較部211の第1の出力は電源制御回路203に接続されている。比較部211の第2の出力は昇圧制御部208に接続されて、昇圧制御部208の出力は、昇圧回路205に接続されている。比較部211の第3の出力は表示制御部209に接続されて、表示制御部209の出力は表示部37に接続されている。
電気回路部36aの入力には穿刺ボタン75が接続されており、穿刺ボタン75の押下信号は電気回路部36aを介して昇圧制御部208の入力に接続されている。昇圧制御部208の他方の入力には緊急ボタン207が接続されている。電気回路部36aの出力は、表示部37に接続されている。
図50に示された電源制御部200−1の動作の第1の例を、図51を参照して説明する。ステップ311で電源を起動する。ステップ312に移行して、電池残量を測定する。ステップ313で、測定された電池残量を第1残量閾値と比較し、ステップ314で第2残量閾値と比較する。第1残量閾値とは、所定の回数分の検査(レーザ穿刺と測定を含む)に必要な電力量であり、第2残量閾値とは、1回の検査(穿刺および測定などを含む)に必要な電力量である。
ステップ313で電池残量が第1残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ318へ移行して、レーザ発射装置に充電を行う。
ステップ313で電池残量が第1残量閾値未満であると判断された場合であって、ステップ314で第2残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ315で使用者に電池の交換を促すための電池残量警告表示を表示し、かつステップ318へ移行して、レーザ発射装置に充電を行う。
ステップ313で電池残量が第1残量閾値未満であると判断された場合であって、ステップ314で第2残量閾値未満であると判断された場合には、ステップ316で使用者に通常の検査ができないことを知らせるための使用不可表示を表示部に表示して、かつステップ317でレーザ発射装置への電力の供給を禁止する。
ステップ318でレーザ発射装置に所定量の充電がされたら、ステップ319でレーザを発射して皮膚を穿刺する。ステップ321で穿刺された皮膚から流出した血液の成分を測定し、得られた測定結果を表示して、血液検査を完了させる。
検査後、ステップ322で電池の残量を測定する。ステップ323で、ステップ312で測定した電池残量と、ステップ322で測定した電池残量との差を求めて、今回電池消費量を求める。さらにステップ323で、今回電池消費量と測定のための電気回路部を駆動するための最低必要電力量との和を求めて、第2残量閾値を再設定する。ステップ324で電源を停止する。
図50に示された電源制御部200−1の動作の第2の例を、図52を参照して説明する。ステップ311で電源を起動する。ステップ331で電池の電圧を測定し、ステップ332で電池の残量を測定する。
ステップ333で、ステップ331で測定された電圧と、前回の検査のステップ347(後述)で算出された電圧降下値との差を求める。さらにステップ333で、当該差と測定のための電気回路部を駆動するための必要最低電圧とを比較する。
ステップ313で、ステップ332で測定された電池残量と第1残量閾値とを比較し、ステップ314で、ステップ332で測定された電池残量と第2残量閾値とを比較する。前記の通り、第1残量閾値とは、所定の回数分の検査(レーザ穿刺と測定を含む)に必要な電力量であり、第2残量閾値とは、1回の検査(穿刺および測定などを含む)に必要な電力量である。
ステップ333で前記差が必要最低電圧以上であると判断された場合であって、ステップ313で電池残量が第1残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ341に移行して、通常電流によりレーザ発射装置に充電する。
ステップ333で前記差が必要最低電圧以上であると判断された場合であって、ステップ313で電池残量が第1残量閾値未満であると判断され、ステップ314で電池残量が第2残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ315で使用者に電池の交換を促すための電池残量警告表示を表示し、かつステップ341へ移行して、通常電流によりレーザ発射装置に充電する。
ステップ333で前記差が必要最低電圧以上であると判断された場合であって、ステップ313で電池残量が第1残量閾値未満であると判断され、かつステップ314で電池残量が第2残量閾値未満であると判断された場合には、ステップ316で使用者に通常の検査ができないことを知らせるための使用不能表示を表示して、かつステップ317でレーザ発射装置への電力の供給を禁止する。
一方、ステップ333で前記差が必要最低電圧未満であると判断された場合には、ステップ335に移行して、レーザ発射装置に通常の充電ができないこと(例えば、充電時間が長くなること)を使用者に知らせるための通常充電不能表示を表示し、ステップ336で使用者に検査を実施する場合には緊急ボタンを押すように求める。
ステップ336で緊急ボタンが押されなかった場合には、ステップ317に移行してレーザ発射装置への電力の供給を禁止する。
ステップ336で緊急ボタンが押下された場合には、ステップ337で通常よりも低電流によりレーザ発射装置に充電する。充電のための電流値の制御は、昇圧制御部208が行う。ステップ338でレーザ発射装置がレーザを発射して皮膚を穿刺し、ステップ339で穿刺された皮膚から流出した血液の成分測定を行い、測定結果を表示する。検査後にステップ348で電源を停止する。
一方、ステップ341で通常電流によりレーザ発射装置に充電した場合は、ステップ342で充電中の電池の電圧を測定する。ステップ343で、充電されたレーザ発射装置からレーザを発射して皮膚を穿刺する。ステップ344で、穿刺された皮膚から流出した血液の成分を測定して、測定結果を表示する。ステップ345で、測定後の電池残量を測定する。
ステップ346で、ステップ332で測定した電池残量と、ステップ345で測定した電池残量との差を求めて、今回電池消費量とする。さらにステップ346で、今回電池消費量と測定のための電気回路部を駆動するための必要最低電力量との和を求めて、第2残
量閾値を再設定する。
またステップ347で、ステップ331で測定した電圧と、ステップ342で測定した電圧との差を算出して、電圧降下値とする。電圧降下値は、次の検査におけるステップ333(前述)において用いられる。その後、ステップ348で電源が停止する。
図50に示された電源制御部200−1の動作の第3の例を、図53を参照して説明する。ステップ311で電源を起動する。ステップ312に移行して、電池残量を測定する。ステップ313で、測定された電池残量と第1残量閾値とを比較し、ステップ314で、測定された電池残量と第2残量閾値とを比較する。
前記の通り、第1残量閾値とは、所定の回数分の検査(レーザ穿刺と測定を含む)に必要な電力量であり、第2残量閾値とは、1回の検査(穿刺および測定などを含む)に必要な電力量である。
ステップ313で電池残量が第1残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ351へ移行して、前回の検査においてレーザ発射装置に充電をするための充電電流値(後述のステップ358を参照)を、今回の検査における充電電流値として設定する。
ステップ313で電池残量が第1残量閾値未満であると判断された場合であって、ステップ314で電池残量が第2残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ315で使用者に電池の交換を促すための電池残量警告表示を表示し、かつステップ351へ移行して、前回の検査においてレーザ発射装置に充電をするための充電電流値(後述のステップ358を参照)を、今回の検査における充電電流値として設定する。
ステップ313で電池残量が第1残量閾値未満であると判断された場合であって、ステップ314で第2残量閾値未満であると判断された場合には、ステップ316で使用者に検査ができないことを知らせるための使用不可表示を表示して、かつステップ317でレーザ発射装置への電力の供給を禁止する。
ステップ352では、ステップ351で設定した充電電流値によって、レーザ発射装置への充電を行う。電池の交換や電源種類が変わった場合には、所定の充電電流値によって充電を行う。ステップ353で、充電中の電池の電圧を測定する。ステップ354で、充電中の電池の電圧と第1電圧閾値とを比較する。ステップ356で充電中の電池の電圧と第2電圧閾値とを比較する。
前述の通り、第1電圧閾値は、測定のための電気回路部を駆動するための必要最低電圧よりもある程度高い電圧値であり;第2電圧閾値は、第1電圧閾値以上で、本来は十分に余裕のある電圧値である。この電圧値を、第2電圧閾値という。例えば、第1電圧閾値+0.5〜1V程度である。
ステップ354で、充電中の電池の電圧が第1電圧閾値以上であると判断され、かつステップ356で第2電圧閾値以下であると判断された場合には、ステップ358でそのときの充電電流値を次回の検査のための充電電流値として記憶する(次回の検査におけるステップ351で用いる)。
ステップ354で、充電中の電池の電圧が第1電圧閾値未満であると判断された場合には、ステップ355で、充電電流値を低下させる。一方ステップ356で、充電中の電池の電圧が第2電圧閾値を超えていると判断された場合には、ステップ357で、充電電流を高める。
ステップ359で、レーザ発射装置からレーザを発射して皮膚を穿刺する。ステップ361で、穿刺された皮膚から流出した血液の成分を測定し、測定結果を表示する。ステップ362で、検査終了後の電池残量を測定する。ステップ363で、ステップ312で測定した残量と、ステップ362で測定した残量との差を求めて、今回電池消費量とする。さらにステップ363で、今回電池消費量と測定のための電気回路部を駆動するための必要最低電力量との和を、第2残量閾値として再設定する。ステップ364で電源を停止する。
図50に示された電源制御部200−1の動作の第4の例を、図54を参照して説明する。図54に示されたフローは、図53に示されたフローと類似するが、レーザ発射装置への充電のための充電電流値の設定方法が異なる。つまり図54に示されたフローでは、ステップ350で、電池の残量に基づいて充電電流値を設定する。具体的な設定方法は前述のとおりであるが、基本的には、電池残量の割合が高いほど、高い電流値で充電する。
その他のステップは、図53に示されたフローと同様である。
電源制御部の第2の例を説明する。
図55には、血液検査装置の第2の例の電源制御部200−2が示される。
図55において、家庭用AC電源(外部電源の例として用いた)に接続されるコンセント201は、ACアダプタ202に接続されている。ACアダプタ202の出力は、電源制御回路203の一方の入力にコネクタを用いて挿抜自在に接続できる。
電池210aは、電池残量および電池電圧測定回路212に接続される。回路212の第1の出力は電源制御回路203に接続され、回路212の第2の出力は比較部211に接続されている。電池210bは、電気回路部36aに接続されている。緊急用電源の接続端子204は、電源制御回路203に接続されている。
電源制御回路203は、ACアダプタ202と接続されているときには、ACアダプタ202電源を優先して使用し、電池210aを使用しないように制御する。ACアダプタ202から出力される電圧を検知して、この電圧が出力されているときは、電池35からの供給を強制的に停止、または電池210aに充電する。
電源制御回路203の出力は昇圧回路205に接続され、昇圧回路205の出力はレーザ発射装置33に接続されている。
比較部211の第1の出力は電源制御回路203に接続されている。比較部211の第2の出力は昇圧制御部208に接続されて、昇圧制御部208の出力は、昇圧回路205に接続されている。比較部211の第3の出力は表示制御部209に接続されて、表示制御部209の出力は表示部37に接続されている。
電気回路部36aの入力には穿刺ボタン75が接続されており、穿刺ボタン75の押下信号は電気回路部36aを介して昇圧制御部208の入力に接続されている。昇圧制御部208の他方の入力には緊急ボタン207が接続されている。電気回路部36aの他方の出力は、表示部37に接続されている。
図55に示される電源制御部200−2の動作の第1の例を、図56を参照して説明する。図56に示されたフローは、図51に示されたフローと類似する。ただし、電源制御
部200−2は、2つの電池(210aおよび210b)を有し、電池210a(レーザ用電池)だけがレーザ発射装置の充電に用いられる。よって、ステップ312’で、レーザ用電池の電池残量を測定し、ステップ313’で、ステップ312’で測定された残量と第1残量閾値とを比較し、ステップ314’で、ステップ312’で測定された残量と第2残量閾値とを比較する。
その他のステップは、図51に示されたフローのステップと同様である。
図55に示される電源制御部200−2の動作の第2の例を、図57を参照して説明する。図57に示されるフローは、図56に示されたフローと類似するが、レーザ発射装置への充電のための充電電流値の設定方法が異なる。つまり、図57に示されたフローでは、ステップ350で、充電電流値の設定を電池の残量に基づいて行う。具体的な設定方法は前述のとおりであるが、基本的には、電池残量の割合が高いほど、高い電流値で充電する。
その他のステップは、図56に示されたフローと同様である。
電源制御部の第3の例を説明する。
図58には、血液検査装置の第3の例の電源制御部200−3が示される。
図58において、家庭用AC電源(外部電源の例として用いた)に接続されるコンセント201は、ACアダプタ202に接続されている。ACアダプタ202の出力は、電源制御回路203の一方の入力にコネクタを用いて挿抜自在に接続できる。
電池210aは、電池残量および電池電圧測定回路212aに接続される。回路212aの第1の出力は電源制御回路203に接続され、回路212aの第2の出力は比較部211に接続されている。電池210bは、電池残量および電池電圧測定回路212bに接続される。回路212bの第1の出力は電源制御回路203に接続され、回路212bの第2の出力は比較部211に接続されている。緊急用電源の接続端子204は、電源制御回路203に接続されている。
電池212aと電池212bはいずれも、電源制御部203に接続されているので、レーザ発射装置33の充電および電気回路部36aの駆動に用いられる。通常は、電池212aがレーザ発射装置を充電して、電池212bが電気回路部36aを駆動する。ただし、電池212aの残量が不足してレーザ発射装置を充電できない場合であって、電池212bに充分な残量がある場合には、緊急手段として電池212bがレーザ発射装置を充電する。
電源制御回路203は、ACアダプタ202と接続されているときには、ACアダプタ202電源を優先して使用し、電池210aおよび電池210bを使用しないように制御する。ACアダプタ202から出力される電圧を検知して、この電圧が出力されているときは、電池210aおよび電池210bからの供給を強制的に停止、または電池210aおよび電池210bに充電する。
電源制御回路203の第1の出力は電気回路部36aに接続される。電源制御回路203の第2の出力は昇圧回路205の入力に接続され、昇圧回路205の出力はレーザ発射装置33に接続されている。
比較部211の第1の出力は電源制御回路203に接続されている。比較部211の第
2の出力は昇圧制御部208に接続されて、昇圧制御部208の出力は、昇圧回路205に接続されている。比較部211の第3の出力は表示制御部209に接続されて、表示制御部209の出力は表示部37に接続されている。
電気回路部36aの入力には穿刺ボタン75が接続されており、穿刺ボタン75の押下信号は電気回路部36aを介して昇圧制御部208の入力に接続されている。昇圧制御部208の他方の入力には緊急ボタン207が接続されている。電気回路部36aの出力は、表示部37に接続されている。
図58に示された源制御部200−3の動作の第1の例を、図59を参照して説明する。
図59に示されたフローは、図56に示されたフローと類似する。ただし、電源制御部200−3は、2つの電池(210aおよび210b)を有し、いずれの電池も電源制御回路203に接続されている。基本的には、電池210a(レーザ用電池)がレーザ発射装置の充電に用いられ、電池210b(システム用電池)が電気回路部36aを駆動するために用いられる。しかしながら、電池210aの残量が不足した場合などの緊急時には、電池210bをレーザ発射装置の充電に用いる場合がある。
図56に示されたフローと同様に、ステップ314’でレーザ用電池の残量と第2残量閾値とが比較されるが、レーザ用電池の残量が第2残量閾値未満であると判断された場合には、ステップ371で、使用者にレーザ用電池が使用できないことを知らせるための表示をする。
ステップ372でシステム用電池の残量を測定する。ステップ373で、ステップ372で測定された残量と第3残量閾値とを比較する。第3残量閾値とは、レーザを発射するために必要とされるレーザ発射装置へ充電するべき電力量と、システム最低電力量との和とすればよい。
ステップ373で、システム用電池の残量が、第3残量閾値未満であると判断された場合には、ステップ316で、使用者に検査が行えないことを伝えるための使用不能表示を表示する。さらに、ステップ317でレーザ発射装置への電力の供給を禁止する。
一方、ステップ373で、システム用電池の残量が、第3残量閾値以上であると判断された場合には、ステップ374で、使用者にレーザ発射装置に通常の充電ができない(例えば、通常よりも長い充電時間を要する)ことを知らせるための通常充電不能表示を表示し、それでも検査を実施したい場合には、緊急ボタンを押下するように求める。
ステップ375で、緊急ボタンが押下されなかった場合には、ステップ317に移行してレーザ発射装置への電力の供給を禁止する。
一方、ステップ375で、緊急ボタンが押下された場合には、ステップ376でシステム用電池によるレーザ発射装置への充電を許可し、ステップ377でレーザ発射装置の充電を行う。ステップ377での充電は、システム用電池の電圧降下を避けるため、通常より低電流で行うことが好ましい。充電のための電流値の制御は、昇圧制御部208が行う。
ステップ378で、レーザ発射装置からレーザを発射して皮膚を穿刺する。ステップ379で、穿刺された皮膚から流出した血液の成分を測定し、測定結果を表示する。ステップ381では、使用者にシステム用電池を交換することを促すためのシステム用電池交換
警告表示を表示する。ステップ382で電源を停止する。
図58に示された電源制御部200−3の動作の第2の例を、図60を参照して説明する。図60に示されたフローは、図59に示されたフローと類似するが、レーザ発射装置への充電のための充電電流値の設定方法が異なる。つまり図60に示されたフローでは、ステップ350で、電池の残量に基づいて充電電流値を設定する。具体的な設定方法は前述のとおりであるが、基本的には、電池残量の割合が高いほど、高い電流値で充電する。
その他のステップは、図59に示されたフローと同様である。
2006年3月22日出願の特願2006−078415、同じく2006年3月22日出願の特願2006−078421、同じく2006年3月22日出願の特願2006−078423、同じく2006年3月22日出願の特願2006−078426、同じく2006年3月22日出願の特願2006−078428の各日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
本発明のレーザ穿孔装置およびレーザ穿孔方法は、例えば、血液の採取や薬剤の投与などの目的を問わず、簡単な構成で、皮膚穿孔時の痛みを軽減することができるレーザ穿孔装置およびレーザ穿孔方法として有用である。このため、医療分野における血液検査装置に適用できることはもちろん、特に糖尿病患者などが使用する家庭用医療器具などにも広く適用することができる。
従来のレーザ穿孔装置における多重ビームスプリッタを示す図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置の第1の例を示す分解組立斜視図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置の第2の例を示す分解組立斜視図
図3の血液検査装置の側面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ発射装置の一例を示す外観斜視図
図5のレーザ発射装置の一構成例を示す断面図
図5のレーザ発射装置の他の構成例を示す断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ発射装置の他の例を示す部分切欠斜視図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサの一例を示す断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサの他の例を示す断面図
図9の血液センサの穿刺時の断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサのさらに他の例を示す断面図
図8の血液センサの透視平面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサのさらに他の例を示す透視平面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサのさらに他の例を示す透視平面図
図8の血液センサの分解平面図であり、図15Aはカバーの平面図、図15Bはスペーサの平面図、図15Cは基板の平面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットとその近傍を示す断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットを当該血液検査装置に装着するためのガイド部の一例を示す要部展開正面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットの一例を示す斜視図
図18の血液センサユニットにおけるホルダの下端近傍の一構成例を示す要部断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットの下端近傍の他の構成例を示す要部断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットの下端近傍のさらに他の例を示す要部断面図
図18の血液センサユニットの断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットの他の例を示す断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における血液センサユニットのさらに他の例を示す断面図
図24の血液センサユニットの平面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ焦点からの穿刺対象の距離(X軸)とバーンパターン径(Y軸)の関係を示すグラフ
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における負圧室および負圧経路の一例を示す要部拡大断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における負圧室および負圧経路の他の例を示す要部拡大断面図
図27に示す負圧室の容積の説明図
図28に示す負圧室の容積の説明図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における電気回路部のブロック図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置を用いた検査手順の一例を示すフローチャート
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置を用いた検査手順の一例をより具体的に示す工程別断面図
図33Aに続く工程別断面図
図33Bに続く工程別断面図
図33Cに続く工程別断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置を用いた検査手順の他の例を示すフローチャート
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における負圧制御の一例を説明するための図
図35で説明される負圧制御による皮膚の盛り上がりの様子を模式的に示す図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置における負圧制御の他の例を説明するための図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置に含まれるレーザ穿孔装置の一例を示す分解組立斜視図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ分岐制御の一例を示す図
図39のレーザ分岐制御を説明するための図
図39のレーザ分岐制御に使用可能なキューブ状光学素子の斜視図
図39のレーザ分岐制御に使用可能なキューブの一例を示す図であり、図42Aはレーザ光の分岐を三次元のイメージで示す図、図42Bはその分岐を実現するキューブの一例を示す斜視図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置においてレーザ光を斜め方向から照射して穿刺する様子を示す図
レーザ光の照射形のバリエーションを示す図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ出力制御の他の例を示す概略図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザパルス制御の一例を示す図
図46のレーザパルス制御による穿刺状態を示す断面図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ出力制御のさらに他の例を示す図であり、図48Aは回路図、図48Bはフラッシュランプへの入力電流の時間変化を示す図、図48Cはレーザ出力の時間変化を示す図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ出力制御のさらに他の例を示す図であり、図49Aは回路図、図49Bはフラッシュランプへの入力電流の時間変化を示す図、図49Cはレーザ出力の時間変化を示す図
本発明の血液検査装置の電源制御部の第1の例を示すブロック図
図50の電源制御部の制御手順の第1の例を示すフローチャート
図50の電源制御部の制御手順の第2の例を示すフローチャート
図50の電源制御部の制御手順の第3の例を示すフローチャート
図50の電源制御部の制御手順の第4の例を示すフローチャート
本発明の血液検査装置の電源制御部の第2の例を示すブロック図
図55の電源制御部の制御手順の第1の例を示すフローチャート
図55の電源制御部の制御手順の第2の例を示すフローチャート
本発明の血液検査装置の電源制御部の第3の例を示すブロック図
図58の電源制御部の制御手順の第1の例を示すフローチャート
図58の電源制御部の制御手順の第2の例を示すフローチャート
電池の残量に基づいて、レーザ発射装置への充電のための充電量を、段階的に設定する方法を説明するグラフ
電池の残量に基づいて、レーザ発射装置への充電のための充電量を、連続的に設定する方法を説明するグラフ
電池の残量に基づいて、レーザ発射装置への充電のための充電量を、可変曲線にあわせて設定する方法を説明するグラフ
充電量を変化させたときの、電池の電圧(Y軸)と電池残量(X軸)との関係を示すグラフ
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ分岐制御の他の例を示す図であり、図63Aは2分岐の場合を示す図、図63Bは4分岐の場合を示す図
図63のレーザ分岐制御に用いられる光ファイバ方向性結合器の構成を示す概略図
本発明のレーザ穿孔装置を含む血液検査装置におけるレーザ分岐制御のさらに他の例を示す図