JPWO2007097443A1 - Dna塩基配列を決定する方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、DNAの塩基配列を決定する方法を提供する。本発明のDNAの塩基配列決定方法によれば、突出末端を有し、かつ該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識されたプローブであって、クラスIIS制限酵素の認識配列を含有するプローブを用いて、多数の解析対象DNAについて、同時に、解析対象DNAの末端塩基とプローブの連結および解析対象DNAの末端塩基の切断を連鎖反応で行い、1分子蛍光分光分析法によって塩基配列を順次決定することができるので、効率的にDNAの塩基配列を決定することが可能となる。

Description

本発明は、DNAの塩基配列を決定する方法に関する。より具体的には、本発明は、制限酵素とDNA連結酵素によるDNA塩基削除連鎖反応を1分子レベルで検出することによって、DNAの塩基配列を決定する方法に関する。
従来より、DNAの塩基配列を決定する方法として、マクサム・ギルバート法やサンガー法が知られている。例えば、マクサム・ギルバート法においては、DNAの塩基配列を決定するために、例えば、以下のような工程を要する。
(1)細胞から抽出したDNAを断片化し、遺伝子組換え技術などを用いて大腸菌などにDNA断片を組み込む。
(2)大腸菌などを培養し、組み込まれたDNA断片を増幅する(クローニング)。
(3)大腸菌などを溶解し、組み込まれたDNA断片を生化学的に分離し、純度の高いDNA精製を行う。
(4)PCR技術を用い、精製されたDNA断片を基に1塩基ずつ長さの異なるDNA断片を作成する。この工程で、4種類の塩基に応じた4種類の標識をDNA断片に付加する。
(5)(4)の反応産物を精製する。
(6)電気泳動法により、1塩基ずつ長さの異なるDNA断片を分子量の大きさにより分離し、蛍光を検出することでDNAの塩基配列を決定する。
上記のような方法はクローニングを必要とするが、一度にクローニングできるDNA断片の長さは、数千から数万塩基対である。従って、例えば、約30億塩基対のヒトの全ゲノムの塩基配列を決定するためには、最低でも10万回程度のクローニングが必要である。
このように、従来から用いられているDNAの塩基配列決定方法では、DNAの塩基配列を決定するために大変な労力と時間、それに莫大な費用が必要であるという問題があった。特に、高等生物のゲノム情報は数十億塩基対にものぼるため、例えば、ヒト1人分の全ゲノムDNAの塩基配列を決定するためには、国家的なプロジェクトが必要であった。
このような状況下、煩雑な操作を必要とせず、短時間にDNAの塩基配列を決定することができる方法の開発が望まれていた。また、クローニングを必要としないDNAの塩基配列決定方法の開発が望まれていた。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、一塩基突出末端を有し、かつ該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識されたプローブであって、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素の認識配列を含有するプローブを用いることによって、細胞から抽出したDNAの塩基配列を、クローニングすることなく決定できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のようなDNAの塩基配列決定方法、プローブ、DNAの塩基配列決定用キットなどを提供する。
(1) (a)突出末端を有する、基材に固定化された解析対象DNAと、突出末端を有し、かつ該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識されたプローブであって、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素の認識配列を含有するプローブとを、DNA連結酵素で連結する工程;
(b)前記解析対象DNAと連結された前記プローブの識別標識の種類を同定する工程;及び
(c)前記解析対象DNAと前記プローブとの連結体を、前記認識配列と切断部位とが離れている制限酵素で切断する工程
を含む、DNAの塩基配列決定方法。
(2) 前記解析対象DNAの突出末端および前記プローブの突出末端が、いずれも一塩基突出末端である上記(1)記載の方法。
(3) 前記プローブが、それぞれA(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)またはG(グアニン)に相補的な1塩基又は2塩基突出末端を有する4種のプローブを含む、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4) 前記プローブの制限酵素の認識配列と突出末端との距離が、前記制限酵素の認識配列と切断部位との距離より一塩基短い、上記(2)または(3)に記載の方法。
(5) 前記各工程が連鎖反応で行われる、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 前記識別標識が、蛍光標識、量子ドット又は金属コロイドである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 前記識別標識の種類の同定が、1分子観察で行われる上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8) 前記識別標識の種類の同定が、前記蛍光標識の蛍光波長の検出により行われる上記(6)記載の方法。
(9) 前記蛍光波長の検出が、1分子蛍光分光顕微鏡を用いて行われる上記(8)記載の方法。
(10) 同時に複数の解析対象DNAの塩基配列を決定する、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11) 前記制限酵素が、1塩基又は2塩基突出末端を生成する酵素である、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12) 前記酵素が、クラスIIS制限酵素である、上記(11)記載の方法。
(13) 前記解析対象DNAの突出末端と、前記プローブの突出末端が、いずれも3’突出末端である上記(1)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14) 前記制限酵素が、3’末端に1塩基又は2塩基突出末端を生成する酵素である、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15) 前記酵素が、BmrI、BmuI、BfiI、AsuHPI、HphI、BciVI、BfuI、HpyAV、MboII、NcuI、MnlI、Asp26HI、Asp27HI、Asp35HI、Asp36HI、Asp40HI、Asp50HI、Bce83I、BcgI、BmaHI、BpmI、BpuEI、BsaMI、BscCI、Bse1I、Bse3DI、BseGI、BseMI、BseNI、BsgI、BsmI、BspKT5I、BsrI、BsrDI、BsrSI、Bst11I、BstF5I、BtsI、BtsCI、CspCI、CstMI、EciI、Eco57MI、GsuI、Mva1269I、PctI、Tsp1I、TspDTIおよびTspGWIから選択される、上記(14)記載の方法。
(16) 前記解析対象DNAの突出末端と、前記プローブの突出末端が、いずれも5’突出末端である上記(1)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(17) 前記制限酵素が、5’末端に1塩基又は2塩基突出末端を生成する酵素である、上記(1)〜(12)および(16)のいずれか記載の方法。
(18) 前記酵素が、AclWI、AlwI、BinI、BspPI、BstH9I、Bst31TI、EacI、BccI、HpyC1I、BcefI、PleI、PpsI、AciI、BceAI、Bme585I、BscAI、Bst19I、BstFZ438I、FauI、SmuIおよびSsiIから選択される、上記(17)記載の方法。
(19) 前記基材が、光透過性を有する材料から形成されている上記(1)〜(18)のいずれかに記載の方法。
(20) 突出末端を有し、該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識したプローブであって、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素の認識配列を含有するプローブ。
(21) 前記突出末端が、1塩基又は2塩基突出末端である上記(20)記載のプローブ。
(22) 前記認識配列と前記一塩基突出末端との距離が、前記認識配列と前記切断部位との距離より一塩基短い、上記(21)記載のプローブ。
(23) 前記突出末端が、3’突出末端である上記(20)〜(22)のいずれかに記載のプローブ。
(24) 前記突出末端が、5’突出末端である上記(20)〜(22)のいずれかに記載のプローブ。
(25) 前記認識配列が、クラスIIS制限酵素の認識配列である、上記(20)〜(24)のいずれかに記載のプローブ。
(26) 上記(20)〜(25)のいずれかに記載のプローブを含む、DNAの塩基配列決定用キット。
(27) 前記プローブが、それぞれA、T、CまたはGに相補的な1塩基又は2塩基突出末端を有する少なくとも4種のプローブを含む、上記(26)記載のキット。
(28) さらに、制限酵素およびDNA連結酵素を含む、上記(26)または(27)に記載のキット。
(29) (i)測定セル;(ii)光学手段;(iii)光学情報を識別信号に変換する手段;および(iv)識別信号を塩基配列情報に変換する手段を備える、DNAの塩基配列決定装置であって、前記測定セルは、(a)突出末端を有する、基材に固定化された解析対象DNAと、突出末端を有し、かつ該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識されたプローブであって、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素の認識配列を含有するプローブとを、DNA連結酵素で連結する手段;及び(c)前記解析対象DNAと前記プローブとの連結体を、前記認識配列と切断部位とが離れている制限酵素で切断する手段を備える装置。
本発明は次のような効果を奏する。
(1)DNAの塩基配列決定を極めて迅速に行うことができる。
(2)細胞から抽出したDNAを直接観察できる。つまり、後述のように、クローニングが必要がでない。
(3)比較的小型かつ単純な装置で実現できる。
(1)と(2)の特徴から、全ゲノム塩基配列の決定に要する時間を大幅に短縮し、ゲノム生物学、遺伝学、医学、薬理学など、様々な領域に革命的変革をもたらすことができる。また、(2)と(3)の特徴から、臨床分野での幅広い応用も考えられる。たとえば、遺伝子が関わる疾患(例えば、遺伝子の変異、多型(例えば、SNPsなど)などが関わる疾患)においては、患者1人1人のゲノム情報に応じたテーラーメード医療へ利用することができる。
図1は、本発明の1つの実施態様を説明するための概略図である。
図2は、蛍光標識の同定方法などを説明するための概略図である。
図3は、実施例1で用いた、解析対象DNAにビオチンを結合したビオチン化DNAの構造を示す図である。
図4は、実施例1における解析対象DNAを結合させたビーズの観察結果を示す図である。
図5は、実施例2で用いた、量子ドット・DNAプローブと、解析対象DNAにビオチンを結合したビオチン化DNAの構造を示す図である。
図6は、実施例2における量子ドット・DNAプローブの観察装置と観察結果を示す図である。
図7は、実施例3における解析対象DNAと連結された量子ドットプローブの観察結果を示す図である。(2)は、(1)の一部を拡大した画像を示す図である。(3)は、(2)の同じ箇所の連続シーケンスを並べた画像を示す図である。
本発明は、一塩基突出末端を有し、かつ該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識されたプローブであって、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素の認識配列を含有するプローブ、前記プローブを用いたDNAの塩基配列決定方法、前記プローブを含有するDNAの塩基配列決定用キットなどに関する。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.DNAの塩基配列決定方法
本発明の第1の態様は、下記工程(a)〜(c)を有する、DNAの塩基配列決定方法に関する。
(a)突出末端を有する、基材に固定化された解析対象DNAと、突出末端を有し、かつ該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識されたプローブであって、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素の認識配列を含有するプローブとを、DNA連結酵素で連結する工程;
(b)前記解析対象DNAと連結された前記プローブの識別標識の種類を同定する工程;
(c)前記解析対象DNAと前記プローブとの連結体を、前記認識配列と切断部位とが離れている制限酵素で切断する工程。
以下、各工程の詳細について説明する。
(1)工程(a):解析対象DNAとプローブとのDNA連結酵素による連結
工程(a)は、解析対象DNAとプローブをDNA連結酵素で連結する工程である。
(解析対象DNA)
解析対象となるDNAは、特に制限はなく、ゲノムDNA由来であってもよく、cDNA由来であってもよい。本発明のDNAの塩基配列決定方法は、1分子のDNAの塩基配列を、クローニングすることなく決定することができるので、細胞から抽出したゲノムDNAの塩基配列を決定するのに特に好ましく用いることができる。すなわち、解析対象DNAとしては、ゲノムDNA由来のDNAを好ましく用いることができる。
解析対象DNAの長さには特に制限はないが、通常1〜5000塩基、好ましくは2〜1000塩基、より好ましくは5〜500塩基、特に好ましくは10〜100塩基である。
本発明の解析対象DNAの調製は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)(以下、モレキュラー・クローニング第3版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,John Wiley and Sons(1987−1997)、DNA Cloning 1:Core Techniques,A practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。具体的には、例えば、ゲノムDNA由来のDNAを用いる場合には、まず、解析対象となる生物の組織、細胞からDNAを抽出・精製してゲノムDNAを調製する。次に、ゲノムDNAを制限酵素などを用いて切断してDNA断片を調製する。このようにして得られたDNA断片を、クローニングすることなく本発明の解析対象DNAとして用いることができる。
解析対象DNAは基材に固定化される。基材は、塩基配列決定を阻害しないものであればよく、特に制限はない。基材としては、生体分子を固定する基材となるものを用いることができ、例えば、ガラス基板、石英ガラス基板、石英基板、シリコン基板、プラスチック基板、金属基板(例えば、金箔基板)等の基板;ガラス容器、石英ガラス容器、プラスチック容器等の容器;ニトロセルロース、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)等の材料からなるメンブレンなどが挙げられる。複数の解析対象DNAを固定化し、同時に複数の解析対象DNAの塩基配列決定を行うためには、基材は板状であるのが好ましく、例えば、ガラス基板、石英ガラス基板、シリコン基板、アルミ基板、光透過性単結晶基板(例えば、Al、SiO)などが挙げられる。後述するプローブの識別標識に蛍光物質を用いる場合には、基材としては光透過性を有するものが好ましく、さらに光透過性を有する板状のものが好ましく、特に、ガラス基板、石英ガラス基板、シリコン基板、光透過性単結晶基板(例えば、Al、SiO)が好ましく、なかでもガラス基板が好ましい。
解析対象DNAを基材に固定化する手段は、解析対象DNAの塩基配列決定に障害とならない手段であればよく、直接的に、または間接的に固定化する手段を用いることができる。好ましくは、解析対象DNAと基材に設けられた結合部分を使用することによって間接的に固定化することができる。このような結合部分としては、親和性結合を形成する物質の組合せや、架橋剤などを利用した化学結合を用いることができる。親和性結合を形成する物質の組合せとしては、例えば、アビジンまたはストレプトアビジン/ビオチン、抗体または抗体断片/抗原分子(エピトープ)などの組合せが挙げられ、アビジンまたはストレプトアビジン/ビオチンの組合せが好ましく用いられる。このような親和性結合を形成する物質の組合せを用いる場合、組合せの一方の物質が基材に結合され(または本来的にその一部である)、もう一方の物質が解析対象DNAに結合される。好ましくは、アビジンまたはストレプトアビジンが基材に結合され(または本来的にその一部である)、ビオチンが解析対象DNAに結合される。これらを接触させることにより、アビジンまたはストレプトアビジンとビオチンとが親和性結合を形成し、解析対象DNAが基材に固定化される。
解析対象DNAを基材に固定化する部位は、解析対象DNAの塩基配列決定を阻害しない部位であればよく、特に制限はないが、突出末端(すなわちプローブが連結される末端)とは反対の末端であるのが好ましい。
基材に固定化する解析対象DNAの数は、特に制限はない。本発明においては、例えば、1〜約100、約100〜約1000、約1000〜約10,000、約10,000〜約50,000、約50,000〜約100,000、約100,000〜約500,000の解析対象DNAを基材に固定化して処理することができる。迅速に塩基配列を決定するという観点からは、基材に固定化する解析対象DNAの数は、100以上であるのが好ましい。
解析対象DNAの固定化されない末端には、突出末端が形成されている。突出末端は、用いられるプローブが連結できるように形成される。具体的には、3’突出末端を有するプローブを用いる場合には、解析対象DNAの突出末端も3’突出末端とされる。5’突出末端を有するプローブを用いる場合には、解析対象DNAの突出末端も5’突出末端とされる。1塩基突出末端を有するプローブを用いる場合には、解析対象DNAの突出末端も1塩基突出末端とされる。プローブが2塩基突出またはそれ以上である場合には、解析対象DNAも、これに対応して、2塩基突出またはそれ以上とされる。より具体的には、1塩基突出の3’突出末端を有するプローブを用いる場合には、解析対象DNAの突出末端も1塩基突出の3’突出末端とされる。1塩基突出の5’突出末端を有するプローブを用いる場合には、解析対象DNAの突出末端も1塩基突出の5’突出末端とされる。
このような突出末端は、適切な制限酵素を用いて形成することができる。例えば、解析対象DNA中に、後で詳述する工程(c)で用いられる制限酵素の認識配列が含まれている場合には、工程(c)で用いられる制限酵素の認識配列と同じ配列を認識する制限酵素を用いて突出末端を形成することができ、工程(c)で用いる制限酵素によって突出末端を形成してもよい。解析対象DNAの突出末端の形成は、好ましくは解析対象DNAを基材に固定化した後に行われる。
なお、解析対象DNA中に、工程(c)で用いられる制限酵素の認識配列が含まれていると、工程(c)において、制限酵素がその認識配列を認識して解析対象DNAを切断してしまうため、塩基配列決定の障害となる。そこで、工程(a)を行う前に、あらかじめ工程(c)で用いる制限酵素によって処理するなど、前記した解析対象DNAの切断を回避する処理を行うことが好ましい。
(プローブ)
本発明のプローブは、突出末端と、該突出末端の塩基の種類に応じた識別標識と、制限酵素の認識配列を含有している。本発明のプローブは、2つの1本鎖DNAをアニーリングさせたプローブ(本明細書において「2分子性のプローブ」と称することもある。)であってもよく、1つの1本鎖DNAを分子内でアニーリングさせた、ヘアピン構造を有するプローブ(本明細書において「1分子性のプローブ」と称することもある。)であってもよい。2分子性のプローブとしては、突出末端または制限酵素の切断部位側の末端とは反対側の末端が標識されているものが好ましい。プローブの末端が標識されている場合、標識される末端は5’末端または3’末端のいずれでもよい。1分子性のプローブとしては、ヘアピン構造部分が標識されているものが好ましい。
用いられるプローブの突出末端は、解析対象DNAの突出末端と、突出末端の鎖(5’または3’)および突出末端の塩基数が同じであるものである。具体的には、例えば、解析対象DNAの突出末端が1塩基突出の3’突出末端である場合には、1塩基突出の3’突出末端を有するプローブが用いられる。解析対象DNAの突出末端が1塩基突出の5’突出末端である場合には、1塩基突出の5’突出末端を有するプローブが用いられる。用いられるプローブの突出末端の塩基は、解析対象となるDNAの突出末端を形成し得る塩基に相補的な塩基である。具体的には、突出末端が1塩基突出末端である場合には、例えば、突出末端の塩基が、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)またはグアニン(G)である4種のプローブが用いられる。突出末端が2塩基突出末端である場合には、例えば、突出末端の塩基が、AA、AT、AC、AG、TA、TT、TC、TG、CA、CT、CC、CG、GA、GT、GCまたはGGである16種のプローブが用いられる。突出する塩基数が増えると、用いられるプローブの種類が多くなり、各プローブの識別標識および識別が困難になる傾向があるので、突出末端は1または2塩基突出末端であるのが好ましく、特に1塩基突出末端であるのが好ましい。もしくは、NA、NT、NG、NCの2塩基突出末端を持つプローブを4種類用意し、1塩基ずつ読むことも可能である。このようなプローブとしては、末端側がNであるプローブ(すなわち、左側を末端としてNA、NT、NG、NC)、末端側がA、T、GまたはCであるプローブ(すなわち、左側を末端として、AN、AT、AG、AC)が挙げられるが、末端側がNであるのが、解析対象DNAの塩基配列を末端から決定できる点で好ましい。ここで、Nは、プローブを形成するオリゴDNA合成の際に、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)またはグアニン(G)が混合されたものを取り込ませた塩基部位を表し、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)およびグアニン(G)が同比率で混合されたものを取り込ませたものが好ましい。すなわち、Nの部位にはアデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)またはグアニン(G)のいずれかの塩基が同確率で存在するのが好ましい。
NA、NT、NG、NCに代えて、NNA、NNT、NNG、NNCなどの3塩基突出末端を持つプローブ、NNNA、NNNT、NNNG、NNNCなどの4塩基突出末端を持つプローブなど、3塩基以上の突出末端を有するプローブも好ましく用いることができる。このような3塩基以上の突出末端を有するプローブは、アニーリングの効率が良いという点で好ましい。もっとも、あまり突出末端の塩基数が多くなると、誤アニーリングする可能性が高くなる傾向がある。よって、アニーリング効率と誤アニーリング回避という点からは、3〜5塩基突出末端を有するプローブが好ましく、特に4塩基突出末端を有するプローブが好ましい。
識別標識に用いられる標識物質としては、前記突出末端の塩基の識別することができる標識物質であればよい。標識物質としては、例えば、蛍光物質、化学発光物質、偏光の変化を測定し得る標識物質などの各種標識物質を使用することができ、なかでも蛍光物質が好ましく用いられる。本発明で用いられる蛍光物質は、当該蛍光物質で標識されていることが検出可能なものであればよく、特に制限はない。蛍光物質としては、核酸の標識に用いられている蛍光物質を用いることができ、例えば、ローダミンB、ローダミン6G、x−ローダミン、テトラメチルローダミン(TMR)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TMRITC)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Cy(登録商標)3、Cy(登録商標)5、TAMRA(登録商標)、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)405、Alexa Fluor(登録商標)430、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)680、Alexa Fluor(登録商標)700、Alexa Fluor(登録商標)749、アクリジンイエロー、テキサスレッド、量子ドット、蛍光ビーズ、TransFluoSpheres(登録商標)ビーズ、金属コロイドなどが挙げられる。量子ドットとしては、例えば、Qdot(登録商標)525 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Qdot(登録商標)545 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Qdot(登録商標)565 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Qdot(登録商標)585 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Qdot(登録商標)605 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Qdot(登録商標)655 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Qdot(登録商標)705 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Qdot(登録商標)800 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Qdot(登録商標)525 ITKTM Amino(PEG)Quantum Dots、Qdot(登録商標)545 ITKTM Amino(PEG)Quantum Dots、Qdot(登録商標)565 ITKTM Amino(PEG)Quantum Dots、Qdot(登録商標)585 ITKTM Amino(PEG)Quantum Dots、Qdot(登録商標)605 ITKTM Amino(PEG)Quantum Dots、Qdot(登録商標)655 ITKTM Amino(PEG)Quantum Dots、 Qdot(登録商標)705 ITKTM Amino(PEG)Quantum Dots、Qdot(登録商標)800 ITKTM Amino(PEG)Quantum Dots、Qdot(登録商標)545 ITKTM Organic Quantum Dots、Qdot(登録商標)565 ITKTM Organic Quantum Dots、Qdot(登録商標)585 ITKTM Organic Quantum Dots、Qdot(登録商標)605 ITKTM Organic Quantum Dots、Qdot(登録商標)655 ITKTM Organic Quantum Dots、Qdot(登録商標)705 ITKTM Organic Quantum Dots、Qdot(登録商標)800 ITKTM Organic Quantum Dotsなど(以上、Invitrogen Corporation)、Evident Thechnologies社製の量子ドットなどが挙げられる。なお、解析対象DNAの長さが長い場合には、解析に要する時間が長くなるので、特に退色しにくい蛍光物質を用いるのが好ましい。また、蛍光色素に応じて退色防止剤を用いるのが好ましい。
プローブは、突出末端の塩基の種類を識別できるように、当該突出末端の塩基の種類ごとに、互いに識別可能な標識物質を用いて標識される。具体的には、突出末端が1塩基突出末端である場合には、例えば、それぞれDNAの4種類の塩基(A、T、C、G)に相補的な1塩基突出末端を有する4種のプローブを、互いに識別可能な4種類の標識物質を用いて標識する。突出末端が2塩基突出末端である場合には、それぞれDNAの2塩基突出末端の塩基の種類に相補的な2塩基突出末端を有する16種のプローブを、互いに識別可能な16種類の識別物質を用いて標識すればよい。プローブの突出末端が3塩基以上突出している場合も、当該突出末端の塩基の種類ごとに互いに識別可能な標識物質を用いて標識すればよい。プローブの標識は、化学修飾など公知の方法によって、直接的または間接的に行うことができる。
プローブに含まれる制限酵素の認識配列は、後で詳述する工程(c)で用いられる制限酵素(認識配列と切断部位とが離れている制限酵素)の種類に応じた塩基配列を有している。ここで、工程(c)で用いられる制限酵素は、用いられるプローブの突出末端と、突出末端の鎖(5’または3’)および突出末端の塩基数が同じである突出末端を形成する切断部位を有する制限酵素である。具体的には、例えば、プローブの突出末端が1塩基突出の3’突出末端である場合には、3’末端に1塩基突出を生成する切断部位を有する制限酵素が用いられる。プローブの突出末端が、1塩基突出の5’突出末端である場合には、5’末端に1塩基突出を生成する切断部位を有する制限酵素が用いられる。
認識配列と突出末端の距離は、工程(c)で用いられる制限酵素の認識配列と切断部位の距離より、工程(b)で一度に決定される塩基の数だけ短い。したがって、突出末端に突出しているDNAの塩基数と工程(b)で一度に決定される塩基の数とが等しい場合には、認識配列と突出末端の距離は、工程(c)で用いられる制限酵素の認識配列と切断部位の距離より、当該突出末端に突出しているDNAの塩基数だけ短くなっている。具体的には、例えば、突出末端が1塩基突出末端である場合には、工程(b)で一度に決定される塩基数も1塩基であるので、認識配列と突出末端の距離は、認識配列と切断部位の距離より1塩基短い。また、例えば、突出末端が2塩基突出末端であり、2塩基ずつ配列を決定する場合には、認識配列と突出末端の距離は、認識配列と切断部位の距離より2塩基短い。これに対し、突出末端が2塩基突出末端であっても、例えば、NA、NT、NG、NCの2塩基突出末端を持つプローブを用いて1塩基ずつ配列を決定する場合には、認識配列と突出末端の距離が、認識配列と切断部位の距離より1塩基短いものが用いられる。
また、1塩基突出末端を持ち、認識配列と突出末端の距離が、認識配列と切断部位の距離より2塩基短いプローブを用いることにより、解析対象DNA中の塩基を2塩基ごと(1塩基とばし)に解析することもできる。
さらに、例えば、NA、NT、NG、NCの2塩基突出末端を持ち、認識配列と突出末端の距離が、認識配列と切断部位の距離より2塩基短い(すなわち、突出末端の塩基数と同じ塩基数だけ短い)プローブを用いることにより、解析対象DNA中の塩基を2塩基ごと(1塩基とばし)に解析することもできる。
同様にして、例えば、NNNA、NNNT、NNNG、NNNCの4塩基突出末端を持ち、認識配列と突出末端の距離が、認識配列と切断部位の距離より4塩基短い(すなわち、突出末端の塩基数と同じ塩基数だけ短い)プローブを用いることにより、解析対象DNA中の塩基を4塩基ごと(3塩基とばし)に解析することもできる。認識配列と突出末端の距離が、認識配列と切断部位の距離より3または2塩基短いプローブを用いることにより、解析対象DNA中の塩基を3または2塩基ごとに解析することもできる。認識配列と突出末端の距離が、認識配列と切断部位の距離より5または6塩基短いプローブを用いることにより、解析対象DNA中の塩基を5または6塩基ごとに解析することもできる。このようにして、n(nは1以上の整数を表す)塩基突出末端を持ち、認識配列と突出末端の距離が、認識配列と切断部位の距離よりm(mは2以上の整数を表す)塩基短いプローブを用いることにより、解析対象DNA中の塩基をm塩基ごと(m−1塩基とばし)に解析することができる。以上のように、解析対象DNA中の塩基を2塩基以上ごとに解析した場合には、塩基配列データベースに対して参照を行うことにより、該解析対象DNAを同定すること(すなわち、解析対象DNAがどのような遺伝子であるかを決定すること)ができる。
プローブの長さは、300塩基以下であることが好ましい。好ましくは、少なくとも8塩基対、少なくとも9塩基対、少なくとも10塩基対、少なくとも11塩基対、少なくとも12塩基対、少なくとも13塩基対、少なくとも14塩基対、少なくとも15塩基対、少なくとも16塩基対、少なくとも17塩基対、少なくとも18塩基対、少なくとも19塩基対または少なくとも20塩基対である。また、プローブの長さは、好ましくは、100塩基対以下、80塩基対以下、60塩基対以下、50塩基対以下、40塩基対以下、35塩基対以下、30塩基対以下、25塩基対以下、24塩基対以下、23塩基対以下、22塩基対以下、21塩基対以下、20塩基対以下、19塩基対以下、18塩基対以下、17塩基対以下、16塩基対以下、15塩基対以下、14塩基対以下、13塩基対以下、12塩基対以下、11塩基対以下または10塩基対以下である。
本発明のプローブは、化学合成法など公知の方法に従って合成することができる。
(DNA連結酵素による連結)
工程(a)では、解析対象DNAとプローブとがDNA連結酵素によって連結される。解析対象DNAと、プローブと、DNA連結酵素とを反応させると、解析対象DNAと、突出末端の塩基が解析対象となるDNAの突出末端の塩基に相補的であるプローブ(相補的なプローブと称することがある)が連結される。用いられるDNA連結酵素は、突出末端を有するDNA断片を連結できるものであればよく、特に制限はない。DNA連結酵素としては、例えば、T4 DNAリガーゼ、Pfu DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、TTH DNAリガーゼなどが挙げられる。
(2)工程(b):解析対象DNAと連結されたプローブの識別標識の種類の同定
工程(b)は、工程(a)において解析対象DNAと連結されたプローブの識別標識の種類を同定する工程である。
上述したように、プローブは、その突出末端の塩基の種類ごとに、互いに識別可能な標識物質を用いて標識(識別標識)されているので、該識別標識の種類を同定することによって、プローブの突出末端の塩基の種類を同定することができる。さらに、プローブの突出末端の塩基は、該プローブに連結された解析対象DNAの突出末端の塩基と相補的であるので、プローブの突出末端の塩基を同定することによって、該プローブに連結された解析対象DNAの突出末端の塩基の種類を同定することができる。このようにして、解析対象DNAとプローブの突出末端が3’突出末端である場合には解析対象DNAの3’末端の塩基が同定され、解析対象DNAとプローブの突出末端が5’突出末端である場合には、解析対象DNAの5’末端の塩基が同定される。
識別標識の種類の同定には、用いられている標識物質に応じて得られる信号を検出し、標識物質の種類を同定することができる方法が用いられる。このような識別標識の種類の同定方法としては、解析対象DNAと連結されたプローブと、解析対象DNAと連結されていない(フリーの)プローブを区別できる方法が好ましい。解析対象DNAと連結されたプローブと、フリーのプローブを区別できる方法としては、例えば、1分子観察による方法が挙げられる。1分子観察によれば、ガラス表面に固定されたプローブのみが輝点として、フリーなプローブは弱い一様なバックグラウンドノイズとしてそれぞれ検出されるため、連結したプローブとフリーなプローブとを区別することが出来る。具体的には、例えば、標識標識が蛍光標識である場合には、蛍光標識の種類の同定には、蛍光標識の蛍光波長を検出し、蛍光標識の種類を同定する方法、例えば、蛍光分光分析法が用いられる。さらに、解析対象DNAと連結されたプローブとフリーのプローブを区別できる方法としては、例えば、1分子蛍光分光分析法が用いられる。1分子蛍光分光分析は、例えば、1分子蛍光分光顕微鏡、市販の1分子蛍光分析システム(例えば、MS20(オリンパス株式会社製)など)、プリズムや回折格子を用いた分光光学系、複数のCCDカメラとフィルターを組み合わせたシステム、高速フィルター切り替え装置、3CCDカメラ、単板カラーCCDカメラ、デジタルCCDカメラ(例えば、EM−CCDカメラなど)、Quad−ViewTM(Roper Bioscience)、Dual−ViewTM(Roper Bioscience)、Dual−CamTM(Roper Bioscience)やDouble−Viewなどを使用して行うことができる。本発明で用いられる1分子蛍光分光分析法としては、例えば、蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy)(例えば、Biopolymers,13,29−61(1974)など参照)、蛍光強度多分布解析(Fluorescence Intensity Multiple Distribution Analysis)(例えば、Biophysical Journal,79,2858−2866(2000)、特表2001−502062号公報、特表2001−518307号公報、特表2002−505742号公報など参照)などが挙げられる。
蛍光標識の励起に使用する光源としては、水銀ランプ、キセノンランプなどのアーク光源、LED、Arレーザー、HeNeレーザー、LDレーザー、HeCdレーザー、NdYAGレーザー、KrArレーザーなどのレーザー光源など、公知の光源を使用することができる。光源の波長は、用いられる蛍光標識の励起波長に応じて選択される。アーク光源など、広い波長領域を有する光源を用いる場合には、用いられる蛍光標識の励起波長に応じたバンドパスフィルターを使用するのが好ましい。バンドパスフィルターとしては、例えば、誘電体バンドパスフィルター、金属バンドパスフィルターなどが挙げられる。アーク光源など、広い波長領域を有する光源は、バンドパスフィルターを適宜選択することによって、蛍光標識に応じた励起光を容易に選択することができる点で好ましく用いることができる。
蛍光を検出する際には、蛍光と、励起光、散乱光などの蛍光以外の光を分離することにより、背景光を低減させて観察するのが好ましい。このような、蛍光とその他の光(励起光、散乱光など)の分離は、ダイクロイックミラー、吸収フィルターなどを用いて行うことができる。ダイクロイックミラーとしては、蛍光標識の励起波長および蛍光波長に応じて、励起光を反射し、蛍光を透過するような波長特性のものを選択すればよい。吸収フィルターとしては、蛍光を透過し、散乱光などを吸収するようなものを選択すればよい。
蛍光標識の蛍光を検出するための検出器としては、例えばCCDカメラが挙げられる。ノイズ低減の観点から、冷却CCDカメラが好ましく用いられる。CCDカメラを用いて蛍光を検出する場合には、プリズムなどの分光素子を用いて蛍光のスペクトルを得ることが、蛍光標識を識別する上で好ましい。
上記のようにして得られた画像を、市販の画像解析ソフトウェア、例えばMetaMorph(Universal Imaging Corporation)などを使用して解析してもよい。
(3)工程(c):解析対象DNAとプローブとの連結体の制限酵素による切断
工程(c)は、工程(a)において連結された解析対象DNAとプローブとの連結体を、制限酵素で切断する工程である。上述したように、プローブの認識配列と突出末端の距離は、認識配列と切断部位の距離より短いので、解析対象DNAとプローブとが連結されることによって、解析対象DNA上に切断部位が出現することになる。具体的には、例えば、解析対象DNAとプローブの突出末端が1塩基突出末端である場合には、プローブの認識配列と突出末端の距離は、認識配列と切断部位の距離より1塩基短くなっているので、解析対象DNAとプローブが連結されると解析対象DNAの末端から1番目と2番目の塩基の間に切断部位が出現する。この解析対象DNAとプローブの連結体が制限酵素で切断されることによって、解析対象DNAの末端の1塩基が削られ、新たな1塩基突出末端が生成される。
本発明で用いられる制限酵素は、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素であり、かつ突出末端を生成するものである。生成される突出末端は、3’突出末端でもよく、5’突出末端でもよい。また、突出する塩基数としては、特に制限はないが、生成される突出末端は、突出末端は1または2塩基突出末端であるのが好ましく、特に1塩基突出末端であるのが好ましい。このような制限酵素は、例えば、クラスIIS制限酵素から選択される。具体的には、例えば、1塩基突出の3’突出末端を生成する制限酵素としては、BmrIおよびそのアイソシゾマー(例えば、BfiI、BmuIなど)、AsuHPI及びそのアイソシゾマー(例えば、HphIなど)、BciVIおよびそのアイソシゾマー(例えば、BfuIなど)、HpyAVおよびそのアイソシゾマー、MboIIおよびそのアイソシゾマー(例えば、NcuIなど)、MnlIおよびそのアイソシゾマーなどが挙げられ、、なかでもBmrI、BciVI、MboII、HphIが好ましく、特にBmrIが好ましい。1塩基突出の5’突出末端を生成する制限酵素としては、AclWIおよびそのアイソシゾマー(例えば、AlwI、BinI、BspPI、BstH9I、Bst31TI、EacIなど)、BccIおよびそのアイソシゾマー(例えば、HpyC1Iなど)、BcefIおよびそのアイソシゾマー、PleIおよびそのアイソシゾマー(例えば、PpsIなど)などが挙げられ、なかでもAlwI、PleI、BcefI、HpyC1Iが好ましく、特にAlwI、PleIが好ましい。
2塩基突出の3’突出末端を生成する制限酵素としては、例えば、AciIおよびそのアイソシゾマー(例えば、SsiIなど)、BceAIおよびそのアイソシゾマー、Bme585Iおよびそのアイソシゾマー(例えば、BstFZ438I、FauI、SmuIなど)、BscAIおよびそのアイソシゾマー(例えば、Bst19Iなど)などが挙げられる。2塩基突出の5’突出末端を生成する制限酵素としては、例えば、Asp26HIおよびそのアイソシゾマー(例えば、Asp27HI、Asp35HI、Asp36HI、Asp40HI、Asp50HI、BmaHI、BsaMI、BscCI、BsmI、Mva1269I、PctIなど)、Bce83Iおよびそのアイソシゾマー(例えば、BpuEIなど)、BcgIおよびそのアイソシゾマー、BpmIおよびそのアイソシゾマー(例えば、GsuIなど)、Bse1Iおよびそのアイソシゾマー(例えば、BseNI、BsrI、BsrSI、Bst11I、Tsp1Iなど)、Bse3DIおよびそのアイソシゾマー(例えば、BseMI、BsrDIなど)、BseGIおよびそのアイソシゾマー(例えば、BstF5I、BtsCIなど)、BsgIおよびそのアイソシゾマー、BspKT5Iおよびそのアイソシゾマー、BtsIおよびそのアイソシゾマー、CspCIおよびそのアイソシゾマー、CstMIおよびそのアイソシゾマー、EciIおよびそのアイソシゾマー、Eco57MIおよびそのアイソシゾマー、TspDTIおよびそのアイソシゾマー、TspGWIおよびそのアイソシゾマーなどが挙げられる。
本発明で用いられる制限酵素は、工程(a)で用いられるプローブに対応して選択される。具体的には、工程(a)で用いられるプローブの突出末端と、突出末端の鎖(5’または3’)および突出末端の塩基数が同じである突出末端を形成する切断部位を有する制限酵素が用いられる。具体的には、例えば、プローブの突出末端が1塩基突出の3’突出末端である場合には、3’末端に1塩基突出を生成する切断部位を有する制限酵素が用いられる。プローブの突出末端が、1塩基突出の5’突出末端である場合には、5’末端に1塩基突出を生成する切断部位を有する制限酵素が用いられる。さらに、用いられる制限酵素は、認識配列と切断部位の距離が、用いられるプローブの認識配列と突出末端の距離より工程(b)で一度に決定される塩基の数だけ長いものである。したがって、工程(b)で一度に決定される塩基の数と突出末端に突出しているDNAの塩基数とが等しい場合には、認識配列と切断部位の距離は、用いられるプローブの認識配列と突出末端の距離より、当該突出末端に突出しているDNAの塩基数だけ長いものである。具体的には、例えば、用いられるプローブの突出末端が1塩基突出末端である場合には、工程(b)で一度に決定される塩基数も1塩基であるので、認識配列と切断部位の距離が、認識配列と突出末端の距離より1塩基長い制限酵素が用いられる。また、例えば、突出末端が2塩基突出末端であり、一度に決定される塩基数が2塩基である場合には、認識配列と切断部位の距離が、認識配列と突出末端の距離より2塩基長い制限酵素が用いられる。これに対し、突出末端が2塩基突出末端であっても、例えば、NA、NT、NG、NCの2塩基突出末端を持つプローブを用いて1塩基ずつ配列を決定するような場合には、認識配列と切断部位が、認識配列と突出末端の距離の距離より1塩基長い制限酵素が用いられる。さらに、NA、NT、NG、NCの2塩基突出末端を持つプローブを用いて2塩基ごとに解析対象DNA中の塩基を解析する場合など、2塩基以上の突出末端を持つプローブを用いて2塩基以上ごとに塩基を解析する場合には、認識配列と切断部位の距離が認識配列と突出末端の距離より2塩基以上長い制限酵素が用いられる。
(4)解析対象DNAの塩基配列の決定
上述したように、工程(a)において解析対象DNAはプローブと連結され、工程(b)において解析対象DNAの突出末端の塩基が同定される。そして、工程(c)において、解析対象DNAには新たな突出末端が生成される。このようにして、新たな突出末端が生成された解析対象DNAは、さらに工程(a)〜(c)に供することができ、同様にして工程(a)〜(c)を繰り返すことができる。この工程(a)〜(c)の繰り返しは、工程(c)における制限酵素による切断が可能である限り行うことができる。このような工程(a)〜(c)の繰り返しによって、解析対象DNAの突出末端の塩基を順次同定することによって、解析対象DNAの塩基配列を決定(または解析)することができる。具体的には、解析対象DNAの突出末端が3’突出末端である場合には、解析対象DNAの塩基配列を3’側から順次決定(または解析)することができる。解析対象DNAの突出末端が5’突出末端である場合には、解析対象DNAの塩基配列を5’側から順次決定することができる。また、解析対象DNAの突出末端が1塩基突出末端である場合には、1塩基ずつ決定していくことができる。
このような工程(a)〜(c)の繰り返しは、(1)工程(a)、工程(b)および工程(c)の1または2反応を行った後に反応液を交換して行うこともでき、または(2)解析対象DNAと、プローブと、DNA連結酵素と、制限酵素の共存下、連鎖反応で行うこともできる。工程(a)〜(c)の繰り返しは、解析速度の観点からは、連鎖反応で行うのが好ましい。
前記(1)のように、工程(a)、工程(b)および工程(c)の1または2反応を行った後に反応液を交換して行う場合には、例えば、マイクロ流路と温度制御装置を組み合わせた系で、ポンプなどにより反応液を交換する方法により行うことができる。DNA連結反応とDNA切断反応とでは反応至適条件が異なるため、それぞれの反応の至適条件となるように、反応条件を交互に変えて各反応を行ってもよい。
次に、本発明のDNAの塩基配列決定方法の1つの実施態様について、図1および図2に基づいて具体的に説明する。
まず、工程(a)の1つの実施態様について説明する。図1(1)に示されているように、解析対象DNAは、突出末端とは反対の末端が、アビジン/ビオチン結合を介して間接的に基材に固定化されている。解析対象DNAの上側の鎖は、左が5’末端であり、右が3’末端である。従って、解析対象DNAの突出末端は、1塩基突出の3’末端である。解析対象DNAの塩基は、3’突出末端の塩基から順に、第1塩基、第2塩基、第3塩基というように表されている。
プローブは、突出末端とは反対の末端が、突出末端の塩基の種類ごとに、互いに識別可能な蛍光物質を用いて標識されている。具体的には、突出末端の塩基がTであるプローブ1は、蛍光物質1で標識されている。同様に、突出末端の塩基がそれぞれA、C、Gであるプローブ2、3、4は、それぞれ蛍光物質2、3、4で標識されている。プローブ1〜4の下側の鎖は、左が3’末端であり、右が5’末端である。従って、プローブの突出末端は、解析対象DNAと同様に、1塩基突出の3’末端である。プローブには、BmrI制限酵素の認識配列が含まれている。前記認識配列と突出末端の距離は、BmrI制限酵素の認識配列と切断部位の距離より1塩基短い。
解析対象DNAの突出末端の塩基(第1塩基)はAであるので、これに相補的なTを突出末端に有するプローブ1が、DNA連結酵素によって連結され、図1(2)に示されるような連結体が生成される。
次に、工程(b)の1つの実施態様について説明する。工程(a)おいて生成した解析対象DNAとプローブ1との連結体(図1(2))を、蛍光分光分析法などを用いて分析することによって、解析対象DNAと連結されたプローブの蛍光標識(蛍光物質1)が同定される。このような蛍光標識の同定には、例えば、図2(1)に示されるような蛍光分光分析装置が用いられる。図2(1)の蛍光分光分析装置においては、光源から発せられた光から、バンドパスフィルターによって、蛍光物質の励起に必要な波長の光が抽出される。このようにして抽出された励起光は、ダイクロイックミラーによって反射され、サンプルに照射される。照射された励起光によって、プローブの蛍光標識は励起され、蛍光を発する。蛍光標識から発せられた蛍光は、ダイクロイックミラーを透過し、プリズムによって分光された後、冷却CCDによって観察される。なお、通常は蛍光顕微鏡などの拡大光学系を併用し、1分子蛍光分光分析を行う。1分子蛍光分光分析法によれば、ゆらぎの大きさなどから、解析対象DNAに連結されたプローブと、フリーのプローブを区別することができるので、1分子蛍光分光分析法を用いるのが好ましい。このようにして、例えば、図1(2)に示された解析対象DNAに連結されたプローブがプローブ1であることが同定される。さらに、解析対象DNAの突出末端の塩基は、プローブ1の突出末端の塩基(T)に相補的な塩基(A)と同定される。
サンプルとしては、例えば、図2(2)に示されるように、基材に複数の解析対象DNAが固定化されたものを用いることもできる。1分子蛍光分光分析法によれば、同時に多数(例えば、数百から数千)の蛍光を観察することもできるので、基材に複数の解析対象DNAを固定化したサンプルを用いることによって、同時に複数(例えば、数百から数千)の解析対象DNAの塩基配列を決定することもできる。
次に、工程(c)の1つの実施態様について説明する。上述したように、プローブの認識配列と突出末端の距離は、認識配列と切断部位の距離より1塩基短いので、解析対象DNAとプローブとが連結されることによって、解析対象DNAの第1塩基と第2塩基の間に切断部位が出現している(図1(2))。従って、この解析対象DNAとプローブ1との連結体をBrmI制限酵素で切断すると、解析対象DNAの第1塩基がプローブ1に連結された状態で切断され、解析対象DNAは1塩基短く削られる。その結果、解析対象DNAには、第2塩基が突出した新たな1塩基突出末端が生成される(図1(3))。
このようにして生成された新たな1塩基突出末端(第2塩基(C))を有する解析対象DNAは、さらに工程(a)〜(c)に供することができる。すなわち、第2塩基(C)が突出した解析対象DNAには、これに相補的なGを突出末端に有するプローブ4がDNA連結酵素によって連結される(工程(a))。以下、上述したように、工程(b)、工程(c)を行うことができ、さらに同様にして工程(a)〜(c)を繰り返すことができる。このような工程(a)〜(c)の繰り返しは、工程(c)における制限酵素による切断が可能である限り行うことができる。このような工程(a)〜(c)の繰り返しによって、解析対象DNAの塩基配列が、3’側から1塩基ずつ順次決定される。
2.プローブおよびDNAの塩基配列決定用キット
また、本発明の別の態様は、突出末端を有し、該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識したプローブであって、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素の認識配列を含有するプローブ、および該プローブを含有するDNAの塩基配列決定用キットに関する。
本発明のプローブとしては、前記と同様のものが挙げられ、前記と同様のものが好ましい。例えば、前記突出末端が3’突出末端であるのものと、5’突出末端であるものが挙げられる。なかでも、前記突出末端が一塩基突出末端であるものが好ましい。また、前記認識配列と前記一塩基突出末端との距離が、前記認識配列と塩基切断部位との距離より一塩基短いものが好ましい。また、前記認識配列が、クラスIIS制限酵素の認識配列であるものが好ましい。
本発明のDNAの塩基配列決定用キットは、上述の工程(a)〜工程(c)を含む方法により、DNAの塩基配列を決定するために用いられる。本発明のキットに含有されるプローブとしては、前記した本発明のプローブが挙げられ、前記と同様のものが好ましい。特に、プローブとして、それぞれA、T、CまたはGに相補的な1塩基突出末端を有する少なくとも4種のプローブを含むキットが好ましい。
本発明のキットには、さらに制限酵素を含んでいてもよい。本発明のキットに含まれる制限酵素としては、上述の工程(c)で用いられる制限酵素、解析対象DNAに突出末端を形成するための制限酵素が挙げられる。このような制限酵素としては、前記と同様のものが挙げられ、前記と同様のものが好ましい。
本発明のキットには、さらにDNA連結酵素を含んでいてもよい。DNA連結酵素としては、前記と同様のものが挙げられ、前記と同様のものが好ましい。
3.DNAの塩基配列決定装置
また、本発明の別の態様は、(i)測定セル、(ii)光学手段、(iii)光学情報を識別信号に変換する手段、および(iv)識別信号を塩基配列情報に変換する手段、を備えるDNAの塩基配列決定装置であって、前記測定セルは、(a)突出末端を有する、基材に固定化された解析対象DNAと、突出末端を有し、かつ該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識されたプローブであって、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素の認識配列を含有するプローブとを、DNA連結酵素で連結する手段;及び(c)前記解析対象DNAと前記プローブとの連結体を、前記認識配列と切断部位とが離れている制限酵素で切断する手段を備える装置に関する。
本発明のDNAの塩基配列決定装置においては、まず、(i)測定セル内において、(a)突出末端を有する、基材に固定化された解析対象DNAと、突出末端を有し、かつ該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識されたプローブであって、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素の認識配列を含有するプローブとを、DNA連結酵素で連結する反応が行われる。次に、(ii)光学手段によって、解析対象DNAと連結されたプローブの識別標識からの光学情報(例えば、色情報)を得る。得られた光学情報を(iii)光学情報を識別信号に変換する手段によって、プローブの識別標識を識別しうる識別信号(例えば、電気的信号)に変換する。この識別信号を(iv)識別信号を塩基配列情報に変換する手段によって、塩基配列を得る。その後、(i)測定セル内において、(c)前記解析対象DNAと前記プローブとの連結体を、前記認識配列と切断部位とが離れている制限酵素で切断する反応が行われる。これに続いて、さらに上記の工程を繰り返すことにより、解析対象DNAの塩基配列を順次決定することができる。なお、上記各工程は、上述した本発明のDNAの塩基配列決定方法にしたがって行うことができる。
以下、各構成要素について説明する。
(i)測定セル
測定セルは、解析対象DNAが固定化された基材と、プローブ、バッファー、制限酵素などを投入するための投入口と、それらを排出するための排出口とを備える。ここで、投入口と排出口とを別々に設ける必要はなく、投入と排出とを行うための投入・排出口を設けてもよい。測定セルの材料は、プローブの識別標識に蛍光物質、量子ドット、金属コロイドなどを用いる場合には、光透過性を有する材料が好ましく、さらに、ガラス、石英ガラス、シリコン、光透過性単結晶(例えば、Al、SiO)などが好ましい。測定セル自体を解析対象DNAを固定化する基材として用いてもよい。
(ii)光学手段
光学手段は、プローブの識別標識を識別しうる光学情報(例えば、色情報)を得ることができる光学系などで構成される。具体的には、例えば、標識標識が蛍光標識または量子ドットである場合に用いられる光学系としては、例えば、蛍光顕微鏡など、好ましくは、1分子蛍光分光顕微鏡などが挙げられる。本発明で用いられる光学手段は、プリズムや回折格子を用いた分光光学系、高速フィルター切り替え装置などを備えていてもよい。
(iii)光学情報を識別信号に変換する手段
光学情報(例えば、色情報など)を識別信号(例えば、電気的信号など)に変換する手段は、上記(ii)光学手段によって得られた、プローブの識別標識を識別しうる光学情報を、プローブの識別標識を識別しうる識別信号(例えば、電気的信号など)に変換する手段である。光学情報を識別信号に変換する手段としては、例えば、プローブの識別標識を識別しうる光学情報を、分光後、異なるCCDまたは1つのCCDの異なる画素に結像させ、結像部分にある画素からの輝度情報を基に、プローブの識別標識を識別しうる識別信号(例えば、電気的信号など)に変換する手段が挙げられる。なお、CCDとしては、通常、デジタルCCDが用いられる。デジタルCCDを用いた場合には、識別信号をデジタル信号として得ることができる。デジタル信号は、コンピュータによる処理に適しているので、下記(iv)識別信号を塩基配列情報に変換する手段をコンピュータを用いて自動化する上で好ましい。また、光学情報を、分光後、異なるCCDを用いて輝度信号に変換すると、各CCDチップからの輝度情報を区別することができるので、得られた識別信号から、コンピュータ上で、容易にプローブの識別標識の種類を同定することができる。したがって、下記(iv)塩基配列情報に変換する手段を容易に自動化することができるので、光学情報を識別信号に変換する手段には、異なるCCD(例えば、3CCD)を用いるのが好ましい。
また、光学情報の識別情報への変換は、1分子単位で行うのが好ましい。
(iv)識別信号を塩基配列情報に変換する手段
識別信号を塩基配列情報に変換する手段は、上記(iii)光学情報を識別信号に変換する手段によって得られた識別信号(例えば、電気的信号など)をDNAの塩基配列情報に変換する手段である。
上述したように、各プローブは、その突出末端の塩基の種類ごとに、互いに識別可能な標識(識別標識)がされているので、該識別標識の種類を同定することによって、プローブの突出末端の塩基の種類を同定することができる。さらに、プローブの突出末端の塩基は、該プローブに連結された解析対象DNAの突出末端の塩基と相補的であるので、プローブの突出末端の塩基を同定することによって、該プローブに連結された解析対象DNAの突出末端の塩基の種類を同定することができる。そして、上記(iii)によって各プローブの識別標識に対応した識別信号を得ることができるので、上記(iii)で得られる識別信号から、解析対象DNAの突出末端の塩基の種類を同定することができる。ここで、上記(iii)で得られる識別信号は、一般的に使用される構成要素(例えば、RAM、ROM、ハードディスクなどの記憶部、記憶部に収納されたプログラム、キーボードなどの入力部、CPUなどの演算部)を備えるコンピュータによって処理しうる電気的信号として得ることができるので、識別信号を塩基配列情報に変換する手段を容易に自動化することができる。コンピュータによって変換された塩基配列情報は、モニターなどの表示部、プリンターなどの出力部によって表示または出力することができる。
本明細書の配列番号は、以下の配列を示す。
[配列番号:1]プローブ1の一方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:2]プローブ1の他方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:3]プローブ2の一方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:4]プローブ2の他方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:5]プローブ3の一方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:6]プローブ3の他方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:7]プローブ4の一方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:8]プローブ4の他方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:9]実施例1で用いた解析対象DNAの一方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:10]実施例1で用いた解析対象DNAの他方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:11]実施例2で用いた量子ドット525・DNAプローブの一方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:12]実施例2で用いた量子ドット525・DNAプローブの他方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:13]実施例2で用いた量子ドット605・DNAプローブの一方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:14]実施例2で用いた量子ドット605・DNAプローブの他方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:15]実施例2で用いた解析対象DNAの一方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:16]実施例2で用いた解析対象DNAの他方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:17]実施例3で用いた量子ドット(525)プローブの一方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:18]実施例3で用いた量子ドット(525)プローブの他方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:19]実施例3で用いた量子ドット(565)プローブの一方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:20]実施例3で用いた量子ドット(565)プローブの他方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:21]実施例3で用いた量子ドット(605)プローブの一方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:22]実施例3で用いた量子ドット(605)プローブの他方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:23]実施例3で用いた量子ドット(655)プローブの一方の鎖の塩基配列を示す。
[配列番号:24]実施例3で用いた量子ドット(655)プローブの他方の鎖の塩基配列を示す。
クローニングその他の操作、反応条件などについて本明細書中(下記の実施例を含む)に特に記載がない場合、Sambrook J.et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)(モレキュラー・クローニング第3版と略記する場合がある);Ausbel F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,John Wiley and Sons(1987−1997);Glover D.M.and Hames B.D.,DNA Cloning 1:Core Techniques,A practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の標準的なプロトコル集に記載の方法またはそれに準じた方法により行うことができる。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
多分子系における配列特異的な蛍光プローブの取り込み
1塩基突出末端を持つDNAの配列に特異的に結合する蛍光DNAプローブを検出し、さらにClassIIS制限酵素とDNAライゲースとを交互に反応させることで、DNAの塩基配列を決定した。
(1)解析対象DNAの基材への固定化
アビジン・アガロースビーズ(Sigma社、A9207)(1xPBSで30μlスラリーに懸濁)に、解析対象DNAにビオチンを結合したビオチン化DNA(図3)(配列番号:9:5’biotin−GCTACGTAAGCTTCATGAATTCGACACTGTGTCAGCA3’、配列番号:10:5’GCTGACACAGTGTCGAATTCATGAAGCTTACGTAGC3’、)(10μM)を混ぜて1時間混和し、解析対象DNAをアビジン・アガロースビーズに固定化した。
(2)解析対象DNAと蛍光DNAプローブとの連結
上記(1)で得られた、解析対象DNAが固定化されたビーズを1xPBSで2回洗浄し、さらにT4 DNAライゲースバッファ(50mM Tris―HCl、10mM MgCl、10mM DTT)で1回洗浄した後、蛍光DNAプローブ(10μM、50mM Tris―HCl、10mM MgCl、10mM DTT)(10μl)、T4 DNAライゲース(Toyobo、Ligation high、LGK−101)(10μl)、を上記のアガロースビーズに混ぜて、20℃で1時間インキュベートし、1xPBSで2回洗浄して、解析対象DNAと蛍光DNAプローブとを連結させた。
なお、蛍光DNAプローブは、図1(1)に示されたプローブ1、3および4と同様の構造のものを用いた。蛍光物質1(蛍光1)としてはFITCを、蛍光物質3(蛍光3)としてはCy5を、蛍光物質4(蛍光4)としてはCy3を用いた。
(3)解析対象DNAと連結された蛍光DNAプローブの同定
上記(2)で得られた、蛍光DNAプローブを結合させたビーズの一部を蛍光顕微鏡(Zeiss Axiovert 200M)で観察し、ビーズ表面に結合した蛍光DNAプローブを同定した。
(4)解析対象DNAと蛍光DNAプローブとの連結体の切断
上記(3)で蛍光DNAプローブを同定したビーズを1xNEBuffer 2(NEB、B7002S)で1回洗浄した後、BmrI(NEB、R0600S)(2μl)、1xNEBffer 2をビーズに添加して37℃で1時間インキュベートし、解析対象DNAと蛍光DNAプローブとの連結体を切断した。
その後、1xPBSで2回洗浄した。
(5)DNA塩基配列の順次同定
上記(2)から(4)を繰り返すことでDNA塩基配列を順次同定した。
(6)結果
まず、(1)〜(3)を行うことにより、FITCの蛍光が観察され、解析対象DNAの3’末端の1番目の塩基がAと同定された。続けて、(4)および(2)〜(3)を繰返し行うことにより、Cy3の蛍光が観察され、解析対象DNAの3’末端の2番目の塩基がCと同定された。さらに、(4)および(2)〜(3)を繰返し行うことにより、Cy5の蛍光が観察され、解析対象DNAの3’末端の2番目の塩基がGと同定された。このようにして、連結した蛍光プローブの蛍光波長により解析対象DNAの塩基配列が3塩基同定された(図4)。
なお、図3に示されるように、2回目の塩基の同定において、Cy3の蛍光と共にFITCの蛍光が観察された。これは、アビジン・アガロースビーズに結合した複数(100個程度)の解析対象DNAの一部が、BmrIによる切断を受けずに次の反応へ進んだことを示している。同様に、3回目の塩基の同定においては、Cy5の蛍光と共に、FITCおよびCy3の蛍光が観察され、これは解析対象DNAの一部が1回目または2回目のBrmIによる切断を受けずに次の反応へ進んだことを示している。このように、同時に複数の解析対象DNAを処理する場合、その一部が未反応のまま次の反応へ進む可能性があるので、1分子観察で識別標識の同定を行うのが望ましい。
実施例2
制限酵素、連結酵素による連鎖反応を1分子観察することで、DNAの塩基配列の組み合わせを解析した。
(1)量子ドット・DNAプローブの調製
架橋剤(EDC)を用い、量子ドット(525、605)(Q21341MP Qdot(登録商標)525 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Q21301MP Qdot(登録商標)605 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Invitrogen Corporation)を、それぞれ下記DNAの5’のアミノ基に共有結合し、量子ドット・DNAプローブを調製した。
量子ドット525(図5(1a)):
配列番号:11:5’cgtcccagtactagtatgc3’
配列番号:12:5’amine−gcatactagtactgggacgc3’
量子ドット605(図5(1b)):
配列番号:13:5’cgtcccagtactagtatgc3’
配列番号:14:5’amine−gcatactagtactgggacgt3’
(2)解析対象DNAの基材への固定化
まず、カバーガラスの表面にアビジン(Sigma、A9275)を固定した。アビジンを固定化したカバーガラスに、解析対象DNAにビオチンを結合したビオチン化DNA(図5(2))、(配列番号:15:5’biotin−actcggcatgcgccagagagagagagagag3’、配列番号:16:5’tctctctctctctctggcgcatgccgagt3’)(100μM)を添加し、1時間静置し、解析対象DNAをカバーガラスに固定化した。
(3)解析対象DNAと連結された量子ドット・DNAプローブの観察
解析対象DNAが固定化されたカバーバラスをPBSで洗浄した後、量子ドットの結合したDNAプローブ(量子ドット・DNAプローブ)、T4 DNAライゲース(2μl、NEB(New England Biolabs Inc.)、M0202M)、BmrI(5μl、NEB、R0600L)、ATP(1mM)、NEBuffer2(NEB)をカバーガラスの表面にのせ、1分子蛍光顕微鏡(Nikon TE2000 E,Plan Apo TIRF 100x NA1.45)と3CCD(浜松ホトニクス、C7780−20)により(図6(1))、解析対象DNAに連鎖反応で結合するプローブを観察した。
(4)結果
解析対象DNAの塩基配列に応じた量子ドット・DNAプローブの連鎖的な取り込みが1分子レベルで観察された(図6(2))。
実施例3
複数の解析対象DNAが固定化された基材を用い、制限酵素、連結酵素による連鎖反応を1分子観察することで、DNAの塩基配列を同定した。
(1)オリゴDNAのリン酸化
オリゴDNA(50pmol/μl)200μl(北海道システム・サイエンス)に10x T4 polynucleotide kinase buffer(NEB)22μl、ATP(100mM)5μl、T4 polynucleotide kinase(NEB)10μlを加え、37℃で5時間インキュベートした。インキュベート後、フェノール抽出(フェノール:クロロフォルム=1:1、Vortexミキサーにて10秒間振盪)、クロロフォルム洗浄(Vortexミキサーにて10秒間振納盪)、イソプロパノール沈殿(50%イソプロパノールと0.3M酢酸ナトリウムで室温にて1分間処理後、20000×g、15分間、4℃で遠心。)、および70%エタノール洗浄(1000μlで処理後、20000×gで遠心。洗浄回数1回)を行った。洗浄後、10mM Hepes−KOH(pH7.5)に溶解し、相補鎖とアニーリングさせた。
(2)ビオチン化DNA基質(解析対象DNA)の調製
ビオチン化DNA基質(解析対象DNA)は北海道システム・サイエンス社から入手した(HPLC精製品)。ビオチン化DNA基質(解析対象DNA)は、「tcaa」、「tcat」、「tcag」および「tcac」からなる塩基配列から選択される2以上(約10個〜約10000個)の塩基配列が連結された塩基配列を含む塩基配列を有している。ビオチン化DNA基質も上記(1)と同様の方法によりリン酸化した。なお、解析対象DNAの長さは、通常、最低10bp程度、最大1万bp程度であり、1000bp程度が特に好ましい。
(3)量子ドット・DNAプローブの作成
架橋剤(EDC)を用い、下記のようにして、カルボキシル基付量子ドット(525、565、605、655)を、それぞれ下記オリゴDNAプローブの5’のアミノ基に共有結合し、量子ドット・DNAプローブを調製した。
(各カルボキシル基付量子ドットに結合させたオリゴDNAプローブ)
量子ドット525:
(Q21341MP Qdot(登録商標)525 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Invitrogen Corporation)
配列番号:17:
5’amine−tgcctgacatgtgtacgtctcgattagcacgaagtcaggatgcagtg3’
配列番号:18:
5’agttcactgcatcctgacttcgtgctaatcgagacgtacacatgtcagga3’
量子ドット565:
(Q21331MP Qdot(登録商標)565 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Invitrogen Corporation)
配列番号:19:
5’amine−tgcctgacatgtgtacgtctcgattagcacgaagtcaggatgcagtg3’
配列番号:20:
5’agtacactgcatcctgacttcgtgctaatcgagacgtacacatgtcagga3’
量子ドット605:
(Q21301MP Qdot(登録商標)605 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Invitrogen Corporation)
配列番号:21:
5’amine−tgcctgacatgtgtacgtctcgattagcacgaagtcaggatgcagtg3’
配列番号:22:
5’agtccactgcatcctgacttgtgctaatcgagacgtacacatgtcagga3’
量子ドット665:
(Q21321MP Qdot(登録商標)665 ITKTM Carboxyl Quantum Dots、Invitrogen Corporation)
配列番号:23:
5’amine−tgcctgacatgtgtacgtctcgattagcacgaagtcaggatgcagtg3’5’
配列番号:24:
5’agtgcactgcatcctgacttcgtgctaatcgagacgtacacatgtcagga3’
(架橋反応および精製)
各カルボキシル基付量子ドット(8μM)20μlを、EDC(10mg/ml)1.5μl、炭酸塩バッファー(pH8.5、0.1M)30.5μlおよび各オリゴDNAプローブ(50pmol/μl)48μlと混合し、室温で3時間インキュベートして各DNAの5’のアミノ基に共有結合させ、量子ドット・DNAプローブを調製した。得られた量子ドット・DNAプローブは、ゲル濾過(NAP5、Amersham―Pharmacia)により10mM Hepes−KOH pH7.5に溶媒置換した。
(4)ガラス表面への解析対象DNAの固定
カバーガラスを強アルカリ性洗剤(Scat 20x、第一クリーンケミカル)で超音波洗浄した後、メタノールで洗浄し、風乾させた。乾燥後、カバーガラスをビオチンを結合した親水性リンカーで処理し、ガラス表面をコーティングした。20ng/mlアビジン(Avidin、Sigma)をビオチンでコーティングしたカバーガラス(固定ガラス)表面にアプライし、15分間処理した後、Hepes−KOHで洗浄した。洗浄後、(2)で調製したビオチン化DNA基質(解析対象DNA)をアプライし、15分間処理した後、Hepes−KOHで洗浄した。
(5)解析対象DNAと連結された量子ドット・DNAプローブの観察
上記(4)で得られた解析対象DNAが固定化されたカバーバラスをPBSで洗浄した後、上記(3)で得られた量子ドット・DNAプローブ、T4 DNAライゲース(2μl、NEB、M0202M)、ATP(100mM)、10x反応バッファー(NEBuffer2、NEB)、ClassIIS制限酵素(NEB、FokI)、超純水をカバーガラスの表面にのせ、倒立型蛍光顕微鏡(Nikon TE2000E)とEM−CCDカメラ(Roper CascadeII)により(図6(1)参照)、解析対象DNAに連鎖反応で結合する量子ドット・DNAプローブを観察した。量子ドット・DNAプローブの観察に使用した光学系および画像解析ソフトウェアは下記の通りである。
(光学系および画像解析ソフトウェア)
倒立型蛍光顕微鏡(Nikon TE2000E)
対物レンズAPO TIRF、油浸、100x NA1.49
白色全反射照明装置
高速フィルターチェンジャー(Prior)
EM−CCDカメラ(Roper CascadeII)
ダイクロイックミラー 505nm
励起フィルター 450−490nm
蛍光フィルター 520/10、560/15、605/20、655/20
画像解析ソフトウエア MetaMorph(Universal Imaging Corporation)
上記の条件で反応を観察し、時間軸に対する色変化を横軸にずらしながら重ねた結果を図7(1)に示す。1ラインが1分子のDNAに結合した量子ドット・DNAプローブの蛍光に由来し、ラインの左端が時間0を表す。
図7(1)の一部を拡大した画像を図7(2)に示す。解析対象DNAに結合した量子ドット・DNAプローブの種類に応じて異なる蛍光が順次取り込まれる様子が観察された。
図7(2)の同じ箇所の連続シーケンスを並べた画像を図7(3)に示す。解析対象DNAの塩基配列に応じた量子ドット・DNAプローブの連鎖的な取り込みが1分子レベルで観察された。
本発明のDNAの塩基配列決定方法は、効率的にDNAの塩基配列を決定することができる、クローニングすることなく細胞から抽出したDNAを直接観察することができるなどの特徴を有するので、DNAの塩基配列決定方法、特にゲノムDNAの塩基配列決定方法として有用である。さらに、比較的小型かつ単純な装置で実現することができるので、臨床分野におけるDNAの塩基配列決定方法、特に患者1人1人のゲノム情報に応じたテーラーメード医療のためのDNAの塩基配列決定方法として有用である。
[配列表]

Claims (29)

  1. (a)突出末端を有する、基材に固定化された解析対象DNAと、突出末端を有し、かつ該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識されたプローブであって、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素の認識配列を含有するプローブとを、DNA連結酵素で連結する工程;
    (b)前記解析対象DNAと連結された前記プローブの識別標識の種類を同定する工程;及び
    (c)前記解析対象DNAと前記プローブとの連結体を、前記認識配列と切断部位とが離れている制限酵素で切断する工程
    を含む、DNAの塩基配列決定方法。
  2. 前記解析対象DNAの突出末端および前記プローブの突出末端が、いずれも一塩基突出末端である請求項1記載の方法。
  3. 前記プローブが、それぞれA、T、CまたはGに相補的な1塩基又は2塩基突出末端を有する4種のプローブを含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記プローブの制限酵素の認識配列と突出末端との距離が、前記制限酵素の認識配列と切断部位との距離より一塩基短い、請求項2または3に記載の方法。
  5. 前記各工程が連鎖反応で行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記識別標識が、蛍光標識、量子ドット又は金属コロイドである請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記識別標識の種類の同定が、1分子観察で行われる請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記識別標識の種類の同定が、前記蛍光標識の蛍光波長の検出により行われる請求項6記載の方法。
  9. 前記蛍光波長の検出が、1分子蛍光分光顕微鏡を用いて行われる請求項8記載の方法。
  10. 同時に複数の解析対象DNAの塩基配列を決定する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記制限酵素が、1塩基又は2塩基突出末端を生成する酵素である、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記酵素が、クラスIIS制限酵素である、請求項11記載の方法。
  13. 前記解析対象DNAの突出末端と、前記プローブの突出末端が、いずれも3’突出末端である請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 前記制限酵素が、3’末端に1塩基又は2塩基突出末端を生成する酵素である、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 前記酵素が、BmrI、BmuI、BfiI、AsuHPI、HphI、BciVI、BfuI、HpyAV、MboII、NcuI、MnlI、Asp26HI、Asp27HI、Asp35HI、Asp36HI、Asp40HI、Asp50HI、Bce83I、BcgI、BmaHI、BpmI、BpuEI、BsaMI、BscCI、Bse1I、Bse3DI、BseGI、BseMI、BseNI、BsgI、BsmI、BspKT5I、BsrI、BsrDI、BsrSI、Bst11I、BstF5I、BtsI、BtsCI、CspCI、CstMI、EciI、Eco57MI、GsuI、Mva1269I、PctI、Tsp1I、TspDTIおよびTspGWIから選択される、請求項14記載の方法。
  16. 前記解析対象DNAの突出末端と、前記プローブの突出末端が、いずれも5’突出末端である請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  17. 前記制限酵素が、5’末端に1塩基又は2塩基突出末端を生成する酵素である、請求項1〜12および16のいずれか記載の方法。
  18. 前記酵素が、AclWI、AlwI、BinI、BspPI、BstH9I、Bst31TI、EacI、BccI、HpyC1I、BcefI、PleI、PpsI、AciI、BceAI、Bme585I、BscAI、Bst19I、BstFZ438I、FauI、SmuIおよびSsiIから選択される、請求項17記載の方法。
  19. 前記基材が、光透過性を有する材料から形成されている請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
  20. 突出末端を有し、該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識したプローブであって、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素の認識配列を含有するプローブ。
  21. 前記突出末端が、1塩基又は2塩基突出末端である請求項20記載のプローブ。
  22. 前記認識配列と前記一塩基突出末端との距離が、前記認識配列と前記切断部位との距離より一塩基短い、請求項21記載のプローブ。
  23. 前記突出末端が、3’突出末端である請求項20〜22のいずれかに記載のプローブ。
  24. 前記突出末端が、5’突出末端である請求項20〜22のいずれかに記載のプローブ。
  25. 前記認識配列が、クラスIIS制限酵素の認識配列である、請求項20〜24のいずれかに記載のプローブ。
  26. 請求項20〜25のいずれかに記載のプローブを含む、DNAの塩基配列決定用キット。
  27. 前記プローブが、それぞれA、T、CまたはGに相補的な1塩基又は2塩基突出末端を有する少なくとも4種のプローブを含む、請求項26記載のキット。
  28. さらに、制限酵素およびDNA連結酵素を含む、請求項26または27に記載のキット。
  29. (i)測定セル;
    (ii)光学手段;
    (iii)光学情報を識別信号に変換する手段;および
    (iv)識別信号を塩基配列情報に変換する手段
    を備える、DNAの塩基配列決定装置であって、前記測定セル内は、
    (a)突出末端を有する、基材に固定化された解析対象DNAと、突出末端を有し、かつ該突出末端の塩基の種類に応じて識別標識されたプローブであって、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素の認識配列を含有するプローブとを、DNA連結酵素で連結する手段;及び
    (c)前記解析対象DNAと前記プローブとの連結体を、前記認識配列と切断部位とが離れている制限酵素で切断する手段
    を備える装置。
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