JPWO2007086306A1 - 生分解性逆オパール構造体、その製造方法及び使用方法、並びに該生分解性逆オパール構造体からなる医療用インプラント - Google Patents
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Abstract
[要約][課題]生分解性、生体適合性、pH応答性に優れ、3次元規則空孔により特異な光反射特性を有するとともに、pH変化への高速な応答による自律的、断続的な薬物放出が可能で、さらには生分解に伴う薬物放出を光学的手段により簡便、迅速に計測できる逆オパール構造体及びその製造方法、並びに、該逆オパール構造体からなる医療用インプラント、さらには、前記逆オパール構造体の空孔径を拡大させる方法及び前記逆オパール構造体に担持された薬物の放出量を測定する方法を提供することを課題とする。[解決手段]脂肪族ポリエステルからなることを特徴とする生分解性逆オパール構造体、及び(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子によりコロイド結晶を得る工程、(2)前記コロイド結晶に、脂肪族ポリエステルを構成する単量体溶液を含浸させる工程、(3)前記単量体を加圧下で熱重合することにより脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を得る工程、(4)前記組成物からシリカ粒子をエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させて除去することにより生分解性逆オパール構造体を得る工程を含む生分解性逆オパール構造体の製造方法とする。
Description
本発明は、生分解性逆オパール構造体、その製造方法及び使用方法、並びに該生分解性逆オパール構造体からなる医療用インプラントに関する。詳細には、生分解性、生体適合性、光反射特性、pH応答性を利用し、医療用として好適に使用される生分解性逆オパール構造体、その製造方法及び使用方法に関する。
医療や医薬の分野において、薬剤の薬効を十分に発揮しつつ、副作用を抑えるために、薬剤を生体組織内の特定の部位にて、必要な時間、有効量を放出するシステムに対する要求は極めて高い。そのため、従来、薬剤を担体に担持可能なインプラントに関する発明が多く創出されてきた。
例えば、特許文献1では、温度、糖濃度、イオン濃度の変化に応答し、構造色を変化させる刺激応答性多孔質高分子ゲルについて、また、これらを利用した各種測定試薬について記載されている。特許文献1の発明は、刺激応答速度が速いという効果を奏するものの、高分子ゲルの合成に有機溶媒、および重合開始剤が必要であり、未反応試薬、および残留物の生体毒性が懸念されるため、生体組織中で使用される医療用インプラントには適さないという問題を有していた。
特許文献2では、ポリ乳酸を組成物とした非逆オパール構造型の3次元周期構造体、およびその作製法について記載されている。特許文献2の発明においては、鋳型となる多孔質基板は、作製条件の調整が容易ではなく、また、多孔質内への浸透性の問題から、流動性が乏しい高分子、および高分子ゲルを用いることには適さないという問題点を有していた。さらに、得られる構造体の内部空間は比較的小さく、薬物の担持量が限定される。また、静電的に中性なポリ乳酸から構成されるため、物理化学的な環境変化に対する応答性が乏しいため、自然分解による持続的な薬物放出は可能であるが、生体組織内におけるpH変化への機械的応答に基づく断続的かつ高速な薬物放出には適さない。また、生体組織のような親水的環境への適合性、および親水的性質をもつ薬物の担持能力にも劣るという問題を有していた。
特許文献3に記載の生分解性高分子からなる医療用インプラントは、生体組織内で生分解されることにより、担持薬物を持続的に病変部位へ放出する。しかしながら、特に、副作用の強い薬物を使用する際には、病変部位に特有な物理化学的環境変化に自律的に応答することにより、担持薬物を、持続的にというより、むしろ断続的に放出できることが望ましい。また、薬物放出量は、通常は、X線CT、MRIなどの大型装置により、生分解時のインプラントのサイズ・形状変化から間接的でしか知ることが出来ないという問題を有していた。
特許文献4には、2次元的に配置された空隙をもつと考えられるメッシュ状構造体について記載されているが、このような構造体は、選択的な光反射特性と機械的応答性に劣るという問題を有していた。また、特許文献4の構造体は、生体組織への埋入後、治療患者の身体的負担を強いるMRI等の大型設備を使用しない限り、生分解時の残存量を知ることは難しい。
特許文献5の生分解性ポリマーは、ポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体からなる、直鎖状高分子であり、また非多孔質構造体である。従って、機械的応答性に劣るという問題を有していた。さらに、この生分解性ポリマーは、合成時に使用される有機溶媒を完全に除去するために煩雑な工程を必要とするため、製造効率が低いという問題を有していた。
特許文献6の逆オパール型構造体は、エピスルフィド化合物などのスルフィド系化合物を必須成分とした組成物からなる。この逆オパール型構造体は、光学フィルター、光導波路、レーザーキャビティー等の光学デバイスへの適応を目的とした高屈折率組成物であり、医療用に適した材料ではなかった。そのため、生体組織内での使用に際して要求される十分な生分解性、生体適合性(非刺激性、分解生成物の低毒性等)を有するものではなかった。
非特許文献1の構造体は非多孔質体であるから、屈折率が一様で反射特性を示さず、また、pHなどの外部刺激に対する、十分な機械的応答速度(膨潤・収縮等)が期待できないという問題を有していた。
即ち、生分解性、生体適合性、pH応答性に優れるとともに、3次元規則空孔により特異な光反射特性を有するような構造体、pH変化への高速な応答による自律的、断続的な薬物放出が可能で、生分解に伴う薬物放出を光学的手段により簡便、迅速に計測できる構造体が望まれているが、そのような構造体は創出されていないのが現状である。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、生分解性、生体適合性、pH応答性に優れ、3次元規則空孔により特異な光反射特性を有する逆オパール構造体、および、その製造方法を提供することである。
さらに、本発明は、pH変化への高速な応答による自律的、断続的な薬物放出が可能で、生分解に伴う薬物放出を光学的手段により簡便、迅速に計測できる逆オパール構造体及び医療用インプラントを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、前記逆オパール構造体の空孔径を拡大させる方法、前記逆オパール構造体に担持された薬物の放出量を測定する方法を提供することである。
さらに、本発明は、pH変化への高速な応答による自律的、断続的な薬物放出が可能で、生分解に伴う薬物放出を光学的手段により簡便、迅速に計測できる逆オパール構造体及び医療用インプラントを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、前記逆オパール構造体の空孔径を拡大させる方法、前記逆オパール構造体に担持された薬物の放出量を測定する方法を提供することである。
本発明者らは、3次元規則空孔をもつ逆オパール構造体を用いることにより、生分解性、生体適合性、pH応答性に優れた、極めて有用性が高い医療用インプラントを製造できることを見出し、本発明に至った。
即ち、請求項1に係る発明は、脂肪族ポリエステルからなることを特徴とする生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項2に係る発明は、可視及び近赤外領域の光を選択反射する三次元規則配列の空孔を有することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項3に係る発明は、前記可視及び近赤外領域の光が600〜1100nmの波長を有することを特徴とする請求の範囲第2項に記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項4に係る発明は、前記空孔の直径が10〜1000nmであることを特徴とする請求の範囲第2項又は第3項に記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項5に係る発明は、前記脂肪族ポリエステルが、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸及びラクトン類から選択される一種以上の単量体によりエステル結合を形成してなることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第4項いずれかに記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項6に係る発明は、エステル結合を形成する前記単量体の組成比がそれぞれ0.001〜1000重量%の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項2に係る発明は、可視及び近赤外領域の光を選択反射する三次元規則配列の空孔を有することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項3に係る発明は、前記可視及び近赤外領域の光が600〜1100nmの波長を有することを特徴とする請求の範囲第2項に記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項4に係る発明は、前記空孔の直径が10〜1000nmであることを特徴とする請求の範囲第2項又は第3項に記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項5に係る発明は、前記脂肪族ポリエステルが、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸及びラクトン類から選択される一種以上の単量体によりエステル結合を形成してなることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第4項いずれかに記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項6に係る発明は、エステル結合を形成する前記単量体の組成比がそれぞれ0.001〜1000重量%の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項7に係る発明は、前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第6項いずれかに記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項8に係る発明は、pH応答性を有することを特徴とする請求の範囲第1項乃至第7項いずれかに記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項9に係る発明は、前記請求の範囲第1項乃至第8項いずれかに記載の生分解性逆オパール構造体からなる医療用インプラントに関する。
請求項10に係る発明は、以下の工程(1)乃至(3)を含む製造方法により製造される脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物に関する。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子によりコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、脂肪族ポリエステルを構成する単量体溶液を含浸させる工程
(3)前記単量体を加圧下で熱重合することにより脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
請求項11に係る発明は、前記シリカ粒子又はポリスチレン粒子の重量分率が0.01〜90重量%であることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物に関する。
請求項12に係る発明は、以下の工程(1)乃至(4)を含むことを特徴とする生分解性逆オパール構造体の製造方法に関する。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子によりコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、脂肪族ポリエステルを構成する単量体溶液を含浸させる工程
(3)前記単量体を加圧下で熱重合することにより脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
(4)前記組成物からシリカ粒子をエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させて除去することにより生分解性逆オパール構造体を得る工程
請求項8に係る発明は、pH応答性を有することを特徴とする請求の範囲第1項乃至第7項いずれかに記載の生分解性逆オパール構造体に関する。
請求項9に係る発明は、前記請求の範囲第1項乃至第8項いずれかに記載の生分解性逆オパール構造体からなる医療用インプラントに関する。
請求項10に係る発明は、以下の工程(1)乃至(3)を含む製造方法により製造される脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物に関する。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子によりコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、脂肪族ポリエステルを構成する単量体溶液を含浸させる工程
(3)前記単量体を加圧下で熱重合することにより脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
請求項11に係る発明は、前記シリカ粒子又はポリスチレン粒子の重量分率が0.01〜90重量%であることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物に関する。
請求項12に係る発明は、以下の工程(1)乃至(4)を含むことを特徴とする生分解性逆オパール構造体の製造方法に関する。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子によりコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、脂肪族ポリエステルを構成する単量体溶液を含浸させる工程
(3)前記単量体を加圧下で熱重合することにより脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
(4)前記組成物からシリカ粒子をエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させて除去することにより生分解性逆オパール構造体を得る工程
請求項13に係る発明は、薬物を担持させた生分解性逆オパール構造体を、生体内で、生分解及び/又はpH応答させることにより該薬物を放出させることを特徴とする脂肪族ポリエステルからなる生分解性逆オパール構造体の使用方法に関する。
請求項14に係る発明は、以下の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする生体内における、脂肪族ポリエステルからなる生分解性逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法に関する。
(a)薬物を担持させた生分解性逆オパール構造体を、生分解及び/又はpH応答させることにより該薬物を放出する工程
(b)前記生分解性逆オパール構造体に可視及び近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び強度の変化を測定する工程
請求項15に係る発明は、さらに以下の工程(イ)及び(ロ)を含むことを特徴とする請求の範囲第14項に記載の生体内における生分解性逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法に関する。
(イ)生分解性逆オパール構造体に、可視光を吸収する擬似薬物を担持し、生分解及び/又はpH応答させることにより該薬物を放出させる工程
(ロ)前記生分解性逆オパール構造体に可視又は近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び/又は強度の変化(A)を測定するとともに、可視吸収スペクトルの定量分析により前記擬似薬物の放出量(B)を測定した後、前記(A)及び(B)を相関付ける工程
請求項16に係る発明は、脂肪族ポリエステルからなる生分解性逆オパール構造体の空孔内壁を加水分解することにより、脂肪族ポリエステルからなる生分解性逆オパール構造体の空孔径を拡大させる方法に関する。
請求項14に係る発明は、以下の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする生体内における、脂肪族ポリエステルからなる生分解性逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法に関する。
(a)薬物を担持させた生分解性逆オパール構造体を、生分解及び/又はpH応答させることにより該薬物を放出する工程
(b)前記生分解性逆オパール構造体に可視及び近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び強度の変化を測定する工程
請求項15に係る発明は、さらに以下の工程(イ)及び(ロ)を含むことを特徴とする請求の範囲第14項に記載の生体内における生分解性逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法に関する。
(イ)生分解性逆オパール構造体に、可視光を吸収する擬似薬物を担持し、生分解及び/又はpH応答させることにより該薬物を放出させる工程
(ロ)前記生分解性逆オパール構造体に可視又は近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び/又は強度の変化(A)を測定するとともに、可視吸収スペクトルの定量分析により前記擬似薬物の放出量(B)を測定した後、前記(A)及び(B)を相関付ける工程
請求項16に係る発明は、脂肪族ポリエステルからなる生分解性逆オパール構造体の空孔内壁を加水分解することにより、脂肪族ポリエステルからなる生分解性逆オパール構造体の空孔径を拡大させる方法に関する。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、生分解性、生体適合性、pH応答性に優れ、3次元規則空孔により特異な光反射特性を有する。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、優れたpH応答性を有するから、がん組織などの低pH環境に自律的かつ高速に応答し薬物を放出できる。また本発明の生分解性逆オパール構造体は、特異な光反射特性を有するから、組織透過性が高く障害性が少ない可視光および近赤外光を選択反射する性質を利用して、光学的手段により薬物放出量を計測することができる。
本発明の医療用インプラントは、上記効果を有する生分解性逆オパール構造体からなるから、医療分野で好適に使用でき、また、がん局所化学療法等へ応用することができる。
本発明の生分解性逆オパール構造体の製造方法は、上記効果を有する生分解性逆オパール構造体を簡便に製造することができる。
本発明の生分解性逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法は、患者の負担を抑えつつ、簡便に測定することができ、得られた薬物放出量の値は正確なものであるため、医療分野において好適に用いられる。
本発明の生分解性逆オパール構造体の空孔径を拡大させる方法によると、pHを調整することにより、容易に空孔径を拡大させることができるから、担持される薬物の放出を調整できるという優れた効果をもたらす。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、優れたpH応答性を有するから、がん組織などの低pH環境に自律的かつ高速に応答し薬物を放出できる。また本発明の生分解性逆オパール構造体は、特異な光反射特性を有するから、組織透過性が高く障害性が少ない可視光および近赤外光を選択反射する性質を利用して、光学的手段により薬物放出量を計測することができる。
本発明の医療用インプラントは、上記効果を有する生分解性逆オパール構造体からなるから、医療分野で好適に使用でき、また、がん局所化学療法等へ応用することができる。
本発明の生分解性逆オパール構造体の製造方法は、上記効果を有する生分解性逆オパール構造体を簡便に製造することができる。
本発明の生分解性逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法は、患者の負担を抑えつつ、簡便に測定することができ、得られた薬物放出量の値は正確なものであるため、医療分野において好適に用いられる。
本発明の生分解性逆オパール構造体の空孔径を拡大させる方法によると、pHを調整することにより、容易に空孔径を拡大させることができるから、担持される薬物の放出を調整できるという優れた効果をもたらす。
以下、本発明の生分解性逆オパール構造体について説明する。
本発明の3次元規則空孔をもつ逆オパール構造体は、光の波長程度の直径をもつ空孔が3次元周期的に規則配列した構造を有し、特定波長の光を選択的に反射し、天然オパールで見られるような構造色を呈することで知られる。また、多孔質構造に由来する広い比表面積により、非多孔質高分子と比較して、外部刺激に対する機械的応答速度が3、4桁高い点に特徴がある。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、脂肪族ポリエステルからなることを特徴とする。
この理由は、脂肪族ポリエステルは、生分解性と生体適合性に優れ、pH応答性が可能であるとともに、水溶液系での熱重合反応により合成することができ、有機溶媒や重合開始剤を必ずしも使用する必要がないため、残留物による生体毒性の心配がない点で有利であるからである。
この理由は、脂肪族ポリエステルは、生分解性と生体適合性に優れ、pH応答性が可能であるとともに、水溶液系での熱重合反応により合成することができ、有機溶媒や重合開始剤を必ずしも使用する必要がないため、残留物による生体毒性の心配がない点で有利であるからである。
本発明に係る脂肪族ポリエステルは、好ましくは、多価カルボン酸、多価アルコール、
ヒドロキシカルボン酸及びラクトン類から選択される一種以上を単量体として合成することができる。前記脂肪族ポリエステルは、水溶液系での重合開始剤を使用しない縮合重合反応により容易に合成できるが、有機溶媒、重合開始剤を用いて合成することも可能である。上記単量体の組み合わせとしては、多価カルボン酸と多価アルコール、多価カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸、多価アルコールとヒドロキシカルボン酸が挙げられる。また、ヒドロキシカルボン酸どうしの縮合重合反応によっても、脂肪族ポリエステルを得ることが可能である。これら組み合わせの組成比は任意に設定できるが、好ましくは、それぞれ0.001〜1000重量%の範囲内、より望ましくは、0.1〜90重量%の範囲内であることが望ましい。この理由は、0.001〜1000重量%の範囲内である場合、エステル結合に関与しないカルボキシル基および水酸基が存在するため、生分解性およびpH応答性に優れるからである。
ヒドロキシカルボン酸及びラクトン類から選択される一種以上を単量体として合成することができる。前記脂肪族ポリエステルは、水溶液系での重合開始剤を使用しない縮合重合反応により容易に合成できるが、有機溶媒、重合開始剤を用いて合成することも可能である。上記単量体の組み合わせとしては、多価カルボン酸と多価アルコール、多価カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸、多価アルコールとヒドロキシカルボン酸が挙げられる。また、ヒドロキシカルボン酸どうしの縮合重合反応によっても、脂肪族ポリエステルを得ることが可能である。これら組み合わせの組成比は任意に設定できるが、好ましくは、それぞれ0.001〜1000重量%の範囲内、より望ましくは、0.1〜90重量%の範囲内であることが望ましい。この理由は、0.001〜1000重量%の範囲内である場合、エステル結合に関与しないカルボキシル基および水酸基が存在するため、生分解性およびpH応答性に優れるからである。
本発明に係る多価カルボン酸としては、構造中に2つ以上のカルボキシル基をもつものが好適に使用される。その一例を以下に示す。
クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、無水フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、
コハク酸、アジピン酸、マロン酸、シュウ酸、ピメリン酸、グルタル酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、酪酸、吉草酸、アコニット酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アセトキシコハク酸、イソカンホロン酸、イタコン酸、エチルマロン酸、オキサロ酢酸、オキシ二酢酸、カルボキシオキサニル酸、シトラコン酸、シトラマル酸、ジメチルコハク酸、ジメチルマロン酸、テトラメチルコハク酸、トリデカン二酸、メチルマロン酸、メチルコハク酸、メサコン酸、ヘキサジエン二酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、クルトロン酸、シトラコン酸、オキソヘプタン酸等を例示することができる。
クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、無水フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、
コハク酸、アジピン酸、マロン酸、シュウ酸、ピメリン酸、グルタル酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、酪酸、吉草酸、アコニット酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アセトキシコハク酸、イソカンホロン酸、イタコン酸、エチルマロン酸、オキサロ酢酸、オキシ二酢酸、カルボキシオキサニル酸、シトラコン酸、シトラマル酸、ジメチルコハク酸、ジメチルマロン酸、テトラメチルコハク酸、トリデカン二酸、メチルマロン酸、メチルコハク酸、メサコン酸、ヘキサジエン二酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、クルトロン酸、シトラコン酸、オキソヘプタン酸等を例示することができる。
本発明に係る多価アルコールとしては、構造中に2つ以上の水酸基をもつものが好適に使用される。その一例を以下に示す。
ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、モノパルミチン、モノステアリン、モノアセチン、モノオレイン、3−メトキシー2,3−ブタンジオール、ヘキサンジオール、2−ブチンー1,4−ジオール、2−メチレンー1,2−プロパンジオール等を例示することができる。
ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、モノパルミチン、モノステアリン、モノアセチン、モノオレイン、3−メトキシー2,3−ブタンジオール、ヘキサンジオール、2−ブチンー1,4−ジオール、2−メチレンー1,2−プロパンジオール等を例示することができる。
本発明に係るヒドロキシカルボン酸としては、構造中に水酸基とカルボキシル基をそれぞれ1つ以上もつものが好適に使用される。その一例を以下に示す。
乳酸、グリコール酸、マンデル酸、イソバニリン酸、グリセリン酸、グルタコン酸、セリン、ヒドロアクリル酸、10−ヒドロキシオクタデカン酸、ヒドロキシグルタルサン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ピナコール、リシネライジン酸、o−ラクトイル乳酸、テトラヒドロキシ酪酸等を例示することができる。
乳酸、グリコール酸、マンデル酸、イソバニリン酸、グリセリン酸、グルタコン酸、セリン、ヒドロアクリル酸、10−ヒドロキシオクタデカン酸、ヒドロキシグルタルサン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ピナコール、リシネライジン酸、o−ラクトイル乳酸、テトラヒドロキシ酪酸等を例示することができる。
さらに、本発明に係る単量体として、環状構造をもつラクトン類も使用することができる。その一例を以下に示す。
β−プロピオラクトン、β−ブチロオラクトン、ピバロラクトン、β−ベンジルマロラクトナート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、σ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ラクトン、パントラクトン、パラコン酸、テレビン酸、ジケテン、エリキン、グリコリド、ラクチド、マライドベンジルエステル等を例示することができる。
β−プロピオラクトン、β−ブチロオラクトン、ピバロラクトン、β−ベンジルマロラクトナート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、σ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ラクトン、パントラクトン、パラコン酸、テレビン酸、ジケテン、エリキン、グリコリド、ラクチド、マライドベンジルエステル等を例示することができる。
上記単量体のうち、本発明にかかる脂肪族ポリエステルを生成する好適な組み合わせはとして、クエン酸とペンタンジオール、クエン酸とペンタエリトリトール、クエン酸と乳酸、クエン酸とグリコール酸、リンゴ酸と乳酸、リンゴ酸とグリコール酸が挙げられるが、これらに、特に限定されない。
或いは、本発明にかかる脂肪族ポリエステルとして、ポリ乳酸を好適に使用することができる。前記ポリ乳酸は、D体、L体の2種類の光学異性体、およびこれら両方からなるDL体のいずれでもよい。前記ポリ乳酸は、1,000〜10,000,000の範囲の分子量のものが使用され得るが、好ましくは10,000以上の分子量を有するポリ乳酸である。この分子量を有するポリ乳酸は、逆オパール構造体の3次元多孔質構造の規則性が高く、機械的強度に優れるとともに、生分解速度が低いから望ましい。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、その構造内に多価カルボン酸又はヒドロキシカルボン酸に由来するカルボキシル基が存在し、合成時における単量体の種類、組成比により脂肪族ポリエステル内のカルボキシル基の濃度を制御することが可能である。それにより、親水性を制御できるため、生体組織への適合性に優れるとともに、生分解性の制御もできる。さらに、本発明の生分解性逆オパール構造体は、カルボキシル基におけるプロトンの付加・解離により、機械的に収縮・膨張する性質をもつため、がん組織などの低pH環境への自律的応答が可能である。
或いは、本発明にかかる脂肪族ポリエステルとして、ポリ乳酸を好適に使用することができる。前記ポリ乳酸は、D体、L体の2種類の光学異性体、およびこれら両方からなるDL体のいずれでもよい。前記ポリ乳酸は、1,000〜10,000,000の範囲の分子量のものが使用され得るが、好ましくは10,000以上の分子量を有するポリ乳酸である。この分子量を有するポリ乳酸は、逆オパール構造体の3次元多孔質構造の規則性が高く、機械的強度に優れるとともに、生分解速度が低いから望ましい。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、その構造内に多価カルボン酸又はヒドロキシカルボン酸に由来するカルボキシル基が存在し、合成時における単量体の種類、組成比により脂肪族ポリエステル内のカルボキシル基の濃度を制御することが可能である。それにより、親水性を制御できるため、生体組織への適合性に優れるとともに、生分解性の制御もできる。さらに、本発明の生分解性逆オパール構造体は、カルボキシル基におけるプロトンの付加・解離により、機械的に収縮・膨張する性質をもつため、がん組織などの低pH環境への自律的応答が可能である。
次に、本発明の生分解性逆オパール構造体の形状について説明する。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、鋳型となるコロイド結晶の三次元規則構造を反映し、内部に三次元的に規則配列した空孔をもつ。
前記空孔の直径は、好ましくは10〜1000nm、より望ましくは200〜600nmである。本発明の生分解性逆オパール構造体は、このような空孔を有するため、特定波長の光を選択的に反射する性質を示す。反射光の波長は、ブラッグ−スネル則に基づき、光の入射角度、空孔径、逆オパール構造体と空孔内に存在する物質の体積分率と屈折率に依存して変化する。前記特定波長の光としては、例えば、600〜1100nmの波長を有する可視光及び近赤外光が挙げられる。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、鋳型となるコロイド結晶の三次元規則構造を反映し、内部に三次元的に規則配列した空孔をもつ。
前記空孔の直径は、好ましくは10〜1000nm、より望ましくは200〜600nmである。本発明の生分解性逆オパール構造体は、このような空孔を有するため、特定波長の光を選択的に反射する性質を示す。反射光の波長は、ブラッグ−スネル則に基づき、光の入射角度、空孔径、逆オパール構造体と空孔内に存在する物質の体積分率と屈折率に依存して変化する。前記特定波長の光としては、例えば、600〜1100nmの波長を有する可視光及び近赤外光が挙げられる。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、組織透過性が高く、その広い比表面積により非多孔質重合体と比較して、pH変化への高速応答が可能であるとともに、障害性が少ない可視および近赤外領域の光を選択反射できるから、生体組織内に埋入して、医療用インプラントとして好適に使用される。詳細には、白金製剤、抗生物質、ホルモン剤、さらには、DNA薬剤等を担持するインプラント、またACNU及びBCNU等のアルキル化剤を担持して、脳腫瘍等のがん局所化学療法用インプラントとして使用される。
次に、本発明の生分解性逆オパール構造体の製造方法について説明する。
本発明の生分解性逆オパール構造体の製造方法は、以下の工程(1)乃至(4)を含むことを特徴とする。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子によりコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、脂肪族ポリエステルを構成する単量体溶液を含浸させる工程
(3)前記単量体を加圧下で熱重合することにより脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
(4)前記組成物からコロイド粒子をエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させて除去することにより生分解性逆オパール構造体を得る工程
本発明の生分解性逆オパール構造体の製造方法は、以下の工程(1)乃至(4)を含むことを特徴とする。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子によりコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、脂肪族ポリエステルを構成する単量体溶液を含浸させる工程
(3)前記単量体を加圧下で熱重合することにより脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
(4)前記組成物からコロイド粒子をエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させて除去することにより生分解性逆オパール構造体を得る工程
前記工程(1)において、シリカ粒子又はポリスチレン粒子によりコロイド結晶を得る。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、好ましくはコロイド結晶を鋳型としたレプリカ法により作製される。コロイド結晶の簡便な作製法として、重力沈降法が挙げられる。この方法は、基板上に滴下したコロイド懸濁液から、溶媒が徐々に蒸発する際、コロイド粒子間に横毛管力が作用し、自己集積する性質を利用したものである。この方法では低結晶性のコロイド結晶しか得られないが、不揮発性物質で溶媒表面を覆うなどすることで、比較的大面積のコロイド結晶膜を作製することが可能である。また、この方法以外に、電気化学的自己集積法、流体力学的集積法を用いても、三次元規則性の高いコロイド結晶を作製することができる。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、好ましくはコロイド結晶を鋳型としたレプリカ法により作製される。コロイド結晶の簡便な作製法として、重力沈降法が挙げられる。この方法は、基板上に滴下したコロイド懸濁液から、溶媒が徐々に蒸発する際、コロイド粒子間に横毛管力が作用し、自己集積する性質を利用したものである。この方法では低結晶性のコロイド結晶しか得られないが、不揮発性物質で溶媒表面を覆うなどすることで、比較的大面積のコロイド結晶膜を作製することが可能である。また、この方法以外に、電気化学的自己集積法、流体力学的集積法を用いても、三次元規則性の高いコロイド結晶を作製することができる。
本発明においては、均一粒径のコロイド粒子として、好ましくはシリカ粒子及びポリスチレン粒子を使用し、例えば3nm〜90nmまでの範囲の粒径のものは、比較的安価で市販されている。鋳型となるコロイド結晶は、合成条件にもよるが、通常は立方最密充填構造を形成し、コロイド粒子の粒径により、格子定数を制御することができる。可視から近赤外領域の光を選択反射させるためには、コロイド粒子の粒径は、好ましくは200〜600nm、より望ましくは300nm〜500nmとされるが、特にこの範囲に限定されるものではない。本発明に係るコロイド結晶の様子を図1の(1)に表す。
工程(2)において、工程(1)で作製したコロイド結晶に、脂肪族ポリエステルを構成する単量体溶液を含浸させる。コロイド結晶が面心立方構造をもつ場合、体積分率の74%をコロイド結晶が占めるため、残りの26%の空隙に単量体溶液が浸透する。また、コロイド結晶の構造が上記とは異なる場合、および、コロイド懸濁液と単量体溶液の混合溶液からコロイド結晶を作製する場合は、上記の体積分率には限定されない。
工程(3)において、前記単量体を加圧下で熱重合することにより脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を得る。
高温下での重合によって単量体溶液が沸騰し、重合体内に気泡が発生することを防ぐために、本発明においては、好ましくは、水蒸気等の加圧下で熱重合する。これにより、気泡のない脂肪族ポリエステルの作製が可能となる。本発明では、例えば、耐圧瓶等が好適に用いられる。
高温下での重合によって単量体溶液が沸騰し、重合体内に気泡が発生することを防ぐために、本発明においては、好ましくは、水蒸気等の加圧下で熱重合する。これにより、気泡のない脂肪族ポリエステルの作製が可能となる。本発明では、例えば、耐圧瓶等が好適に用いられる。
前記熱重合の温度としては、好ましくは50〜150℃、より望ましくは80〜130℃である。この縮合重合反応において、単量体間で複数のエステル結合が形成されることにより、直鎖状高分子、または三次元網目状の高分子ゲルが得られる。
また、前記温度と加圧力の両者を調整することによっても、脂肪族ポリエステル内の気泡の発生を制御することが出来る。
また、前記温度と加圧力の両者を調整することによっても、脂肪族ポリエステル内の気泡の発生を制御することが出来る。
本発明にかかる脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物における、シリカ粒子又はポリスチレン粒子の重量分率は好ましくは0.01〜90重量%、より望ましくは0.1〜50重量%である。この理由は、シリカ粒子又はポリスチレン粒子の比率が、0.01〜90重量%の範囲内である場合、コロイド結晶の3次元周期性に優れるからである。
工程(3)により得られた脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を図1の(2
)に表す。
工程(3)により得られた脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を図1の(2
)に表す。
次に、工程(4)により、脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の中の、内部に鋳型として使用されたシリカ粒子をフッ化水素等の水溶液を用いてエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させることにより除去して生分解性逆オパール構造体を得る。
前記有機溶媒としては、例えば、トルエンを挙げることができる。
工程(4)により得られた生分解性逆オパール構造体を図1の(3)に表す。
前記有機溶媒としては、例えば、トルエンを挙げることができる。
工程(4)により得られた生分解性逆オパール構造体を図1の(3)に表す。
得られる生分解性逆オパール構造体の形状は、好ましくは薄膜状であるが、適当な粒径のシリカ粒子又はポリスチレン粒子、適当な形状の容器を用いてコロイド結晶を作製し、これを鋳型として用いることで、針状、ウェハー状、ペレット状などの様々な形状の生分解性逆オパール構造体を得ることができる。
工程(4)で得られた本発明の生分解性逆オパール構造体の空孔径は、鋳型となるコロイド結晶の粒径に依存するが、作成後に調整することも可能である。例えば、緩衝溶液、あるいは酵素等を用いて空孔内壁を加水分解させる、あるいは、任意のpHに調整された水溶液に浸漬することで、空孔径を拡大させることができる。また、構造体を適当濃度に希釈した単量体溶液に浸漬させ、熱重合することで、空孔径を縮小させることができる。
次に本発明の生分解性逆オパール構造体の使用方法について説明する。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、生分解性逆オパール構造体の空孔内に薬物を担持させた後、生体組織内に埋入して、生分解及び/又はpH応答させることにより該薬物を放出させることができる。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、生分解性逆オパール構造体の空孔内に薬物を担持させた後、生体組織内に埋入して、生分解及び/又はpH応答させることにより該薬物を放出させることができる。
前記薬物としては、特に限定されないが、本発明の生分解性逆オパール構造体が固体状であることから、溶媒への溶解性が低い薬物、生体中で容易に分解される薬物を好適に担持することができる。詳細には、ACNU及びBCNU等のアルキル化剤、白金製剤、抗生物質、ホルモン剤が挙げられ、さらに、DNA薬剤等も担持可能である。また、親水性の調節が可能であるため、親水性が高い薬物の担持にも適している。
薬物を担持させるためには、薬物を含む溶液へ生分解性逆オパール構造体を浸漬することによる方法が挙げられるが、これに限定されない。
空孔内に薬物を担持した生分解性逆オパール構造体を生体組織中へ埋入する方法としては、例えば、腹腔鏡下手術で使用されるトロカールを用いる方法が挙げられる。
薬物を担持させるためには、薬物を含む溶液へ生分解性逆オパール構造体を浸漬することによる方法が挙げられるが、これに限定されない。
空孔内に薬物を担持した生分解性逆オパール構造体を生体組織中へ埋入する方法としては、例えば、腹腔鏡下手術で使用されるトロカールを用いる方法が挙げられる。
本発明の生分解性逆オパール構造体の使用方法によると、生分解及びpH応答させることにより担持された薬物を放出させる。
生分解による薬物放出に関しては、イオン交換水、酸性または塩基性にpH調整された緩衝溶液、適当濃度の酵素を含む水溶液が、加水分解反応に基づく生分解性の評価に用いられる。これらの溶液により、分解反応速度を調節することができる。即ち、前記溶液により、薬物の放出速度を調節できる。また、医療用インプラントとして応用することを考慮すると、生分解性逆オパール構造体が完全に分解されるまでの時間は、数週間から1年程度であることが望ましい。
生分解による薬物放出に関しては、イオン交換水、酸性または塩基性にpH調整された緩衝溶液、適当濃度の酵素を含む水溶液が、加水分解反応に基づく生分解性の評価に用いられる。これらの溶液により、分解反応速度を調節することができる。即ち、前記溶液により、薬物の放出速度を調節できる。また、医療用インプラントとして応用することを考慮すると、生分解性逆オパール構造体が完全に分解されるまでの時間は、数週間から1年程度であることが望ましい。
pH応答による薬物放出に関しては、本発明の構造体はその内部にエステル結合に使用されないカルボキシル基をもち、さらに広い比表面積をもつことから、pH変化に対して高い機械的応答性を示す。例えば、高pH環境下では、カルボキシル基からプロトンが解離し、負電荷間で静電的反発が生じるため、体積が膨張する。逆に、低pH環境下では、カルボキシル基にプロトンが付加し負電荷が中和されることで、静電的反発が緩和され、その結果、体積が収縮する。これらの機械的特性の変化は、加水分解の影響を無視すれば、繰り返し可能である。さらに、pH変化への自律的応答による薬物の断続的な放出も可能である。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、生分解性であることから、緩衝溶液、あるいは酵素等の作用により徐々に分解されるとともに、生分解及びpH変化への機械的応答により、空孔径及び空孔の三次元規則性が変化する。これを計測することにより薬物放出量を検知することができる。この計測には、分光器、光源、検知用プローブからなる反射測定装置だけを使用すればよく、X線CT、MRIと異なり小型であるため、迅速、簡便に実時間計測をベッドサイドで行うことができ、患者への負担が少ない。
空孔径の変化を検知するためには、生体組織への透過性が高い600‐1100nm程度の波長をもつ可視光および近赤外光を入射光源として用いることが望ましい。特に、分光学的窓と呼ばれる700‐1000nmの波長をもつ近赤外光は組織透過性に優れ、例えば、830nmの近赤外光は1300nmの浸透深さをもつ。本発明の生分解性逆オパール構造体は、その空孔径を容易に制御可能であるから、所望の領域の光を選択することができる。
反射スペクトルは、通常の分光光度計を用いて測定することができるが、生分解過程を実時間でその場で測定するためには、光ファイバー式小型分光光度計、光学顕微鏡、CCDカメラから構成される反射測定システムを利用するのが望ましい。この装置では、入射光源にハロゲン光源、キセノン光源等の白色光源、あるいは固体レーザ、レーザダイオード等の単色光源を用いる。
次に、本発明の生分解性逆オパール構造体に担持された薬物の放出量の測定方法について具体的に説明する。
薬物放出は、前述のごとく生分解およびpH応答により実施できる。例えば、生分解により薬物が放出される場合、生分解性逆オパール構造体が崩壊する過程で、吸着あるいは吸収された薬物は徐放される。或いは、pH応答に伴う構造体の体積膨潤・収縮によっても薬物を放出することができる。
放出量を測定するためには、可視光を吸収するようなメチレンブルー等の擬似薬物を用い、可視吸収スペクトルの吸光度から擬似薬物の放出量を測定するとともに、生分解に伴う反射光の波長および強度の変化を測定する。両者の測定結果を相関づけることにより放出量がわかる。
薬物放出は、前述のごとく生分解およびpH応答により実施できる。例えば、生分解により薬物が放出される場合、生分解性逆オパール構造体が崩壊する過程で、吸着あるいは吸収された薬物は徐放される。或いは、pH応答に伴う構造体の体積膨潤・収縮によっても薬物を放出することができる。
放出量を測定するためには、可視光を吸収するようなメチレンブルー等の擬似薬物を用い、可視吸収スペクトルの吸光度から擬似薬物の放出量を測定するとともに、生分解に伴う反射光の波長および強度の変化を測定する。両者の測定結果を相関づけることにより放出量がわかる。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、さらに生体物質の分離用隔膜、細胞培養用の培地、又は創傷被覆材(または、人工皮膚)等としても使用できる。
詳細には、生体物質の分離用隔膜とした場合、数百ナノメートルサイズの多孔質構造を利用した、たんぱく質、DNAなどの生体物質の分離用の隔膜とすることができ、空孔内壁への物質の吸着状況を反射特性の変化から計測できる。
細胞培養用の培地としては、構造体上において細胞の成長・増殖を行うことも可能である。このとき、逆オパール構造体が生分解されることによる反射特性の変化から、細胞の成長・増殖状況が計測できる。
創傷被覆材(または、人工皮膚)とした場合には、生分解性逆オパール構造体が有する多孔質構造によりガス、水分の交換が可能で、かつ、生体への吸収状況を反射特性の変化から計測できる。
詳細には、生体物質の分離用隔膜とした場合、数百ナノメートルサイズの多孔質構造を利用した、たんぱく質、DNAなどの生体物質の分離用の隔膜とすることができ、空孔内壁への物質の吸着状況を反射特性の変化から計測できる。
細胞培養用の培地としては、構造体上において細胞の成長・増殖を行うことも可能である。このとき、逆オパール構造体が生分解されることによる反射特性の変化から、細胞の成長・増殖状況が計測できる。
創傷被覆材(または、人工皮膚)とした場合には、生分解性逆オパール構造体が有する多孔質構造によりガス、水分の交換が可能で、かつ、生体への吸収状況を反射特性の変化から計測できる。
即ち、本発明の生分解性逆オパール構造体は、従来の生体内材料と比較し以下の点で優れる。
特許文献1に記載の発明は、有機溶媒および重合開始剤を使用して高分子ゲルを合成する。一方、本発明の生分解性逆オパール構造体は、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸及びラクトン類の共重合体からなり、有機溶媒および重合開始剤を必要としないから、未反応試薬および残留物等の生体毒性がないという優れた効果を有する。
特許文献1に記載の発明は、有機溶媒および重合開始剤を使用して高分子ゲルを合成する。一方、本発明の生分解性逆オパール構造体は、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸及びラクトン類の共重合体からなり、有機溶媒および重合開始剤を必要としないから、未反応試薬および残留物等の生体毒性がないという優れた効果を有する。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、特許文献2のポリ乳酸を組成物とする構造体と比較し、物理化学的な環境変化に対する応答性に優れ、自然分解による持続的な薬物放出が可能であるばかりか、生体組織内におけるpH変化への機械的応答に基づく断続的かつ高速な薬物放出も可能である。また、生体組織のような親水的環境への適合性、および親水的性質をもつ薬物の担持能力にも優れる。さらに、本発明の生分解性逆オパール構造体は簡便に製造できるのに対し、特許文献2の構造体の製造方法は、鋳型となる多孔質基板の作製条件の調整が容易ではなく、また、多孔質内への浸透性の問題から、流動性に乏しい高分子、および高分子ゲルを用いることには適さないという問題も有する。また、本発明の生分解性逆オパール構造体の製造方法によると、得られる構造体の内部空間は比較的大きく、所望の担持量の薬物を担持することができる。
本発明の生分解性逆オパール構造体は、特許文献3の生分解性高分子からなる持続的に薬物を放出する医療用インプラントと比較すると、特に副作用の強い薬物を使用する際、薬物を断続的に放出できる点で優れる。また、本発明の生分解性逆オパール構造体には、その薬物放出量の確認は、X線CT、MRIなどの大型装置を必要としないという点で優れる。
特許文献4の如く2次元的メッシュ状構造体と比較すると、本発明の生分解性逆オパール構造体は、3次元周期的配列の空孔を有するから、選択的な光反射特性と高い機械的応答性を示す。つまり、特許文献4の構造体は、生体組織への埋入後、治療患者の身体的負担を強いるMRI等の大型設備を使用しない限り、生分解時の残存量を知ることが難しい。一方、本発明の生分解性逆オパール構造体は、生体組織への透過性が高い近赤外光を、その逆オパール構造により選択反射することが可能であるため、生分解時の残存量を光学的手段により、簡便かつ高感度に非侵襲的に計測できる点で優れる。この計測には、小型の分光装置を利用することができ、ベッドサイドでの実施が可能なため、治療患者の身体的負担を軽減できる。
特許文献5に記載の生分解性ポリマーの組成物は、その合成時に有機溶媒が使用される。一方、本発明の生分解性逆オパール構造体は、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸及びラクトン類の共重合体で、分岐構造をもつ非直鎖状高分子(高分子ゲル)であるから、合成時の溶媒として水を使用できるため、有機溶媒を完全に除去する等の煩雑な工程が不要である。また、本発明の構造体は、熱重合時に重合開始剤や触媒を用る必要がないため、これらの除去も不要である。さらに、本発明の構造体は逆オパール構造であるから、反射特性及び高い機械的応答性を示すが、特許文献5の生分解性ポリマーは、非多孔質構造体であるため、これらの性質は発現されない。
特許文献6のエピスルフィド化合物などのスルフィド系化合物を必須成分とした組成物からなる逆オパール型構造体は、光学フィルター、光導波路、レーザーキャビティー等の光学デバイスへの適応を目的とした高屈折率組成物であり、医療用材料に適さない。そのため、生体組織内の使用に際して要求される生分解性、生体適合性(非刺激性、分解生成物の低毒性等)を有していない。一方、本発明の生分解性逆オパール構造体は、生体組織内で使用されるインプラント材料としての利用を念頭においている。具体的には、生体毒性が低い低分子化合物を成分として選定しており、その重合体は生体環境下において加水分解反応により比較的容易に分解されるように設計されている。また、本発明の生分解性逆オパール構造体は、柔軟なゲル状化合物であるため、生体組織への機械的刺激が少ないという利点がある。
非特許文献1には、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸からなるポリエステルゲルの生分解性とpH応答性に関する記載があるものの、この文献においては、逆オパール構造をもたない非多孔質体についてのみ言及している。本発明の構造体は、空孔のサイズが数百ナノメートル程度の場合、可視光線から近赤外線を選択的に反射する性質をもつ。この性質は、光の波長程度の周期で屈折率が周期的に変化する構造体において広くみられるものである。一方、非特許文献1の構造体は、屈折率が一様な非多孔質体であり、そのような反射特性を示さない。即ち、本発明の生分解性逆オパール構造体はその広い比表面積により、pHなどの外部刺激に対する機械的応答速度(膨潤・収縮等)が優れるが、非特許文献1の非多孔質体ではこのような特性を有していない。
以下、本発明の実施例を記載することにより、本発明の効果をより明確なものとする。
尚、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
尚、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(生分解性逆オパール構造体の合成:1)
平均粒径が300nmのシリカ粒子の懸濁液(Polysciences, Inc.製)をパスツールピペットでガラス基板に滴下した後、常温・常湿の暗室にて静置することで、コロイド結晶薄膜が得られた。
平均粒径が300nmのシリカ粒子の懸濁液(Polysciences, Inc.製)をパスツールピペットでガラス基板に滴下した後、常温・常湿の暗室にて静置することで、コロイド結晶薄膜が得られた。
生分解性逆オパール構造体の原料として、低毒性であることが公知であるクエン酸(L.D.50(oral mouse)=5,040mg/kg)(和光純薬工業株式会社製)、ペンタエリトリトール(25,500 mg/kg)、1,5−ペンタンジオール(25,500mg/kg)を用いた。ペンタエリトリトール0.0681g(0.5mmol)、1,5‐ペンタンジオール0.52g(5mmol)、クエン酸1.153g(6mmol)をイオン交換水に溶解させ、室温下にて十分に溶解させた。上記により作製されたコロイド結晶薄膜に、この混合溶液をパスツールピペットで滴下・含浸させ、過剰な溶液をキムワイプで除去した。続いて、ガラス基板ごと、100ml耐圧瓶に移し、イオン交換水を加え、オーブンにて127℃で24時間、加熱することで熱重合を行った。この操作により、内部にコロイド結晶を含むポリエステル薄膜、即ち、本発明の脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物が得られた。
ジメチルスルホキシド、42%フッ酸アンモニウム水溶液、エタノール(和光純薬工業株式会社製)を含むエッチング溶液に、上記のポリエステル薄膜をガラス基板ごと浸漬させ、静置した。この処理を5〜48時間行うことで、シリカ粒子を溶出させた。また、この処理により、ポリエステル薄膜をガラス基板から剥離させ、本発明の生分解性逆オパール構造体を得た。これを、イオン交換水で洗浄した後、エタノール保存液中で保存した。
(電子顕微鏡観察)
前述の操作により得られたポリエステル薄膜を用いて、走査型電子顕微鏡観察を行った(測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800)。試料は、エタノール保存液から取り出し、イオン交換水で洗浄した後、凍結真空乾燥した直後のものを用いた。
前述の操作により得られたポリエステル薄膜を用いて、走査型電子顕微鏡観察を行った(測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800)。試料は、エタノール保存液から取り出し、イオン交換水で洗浄した後、凍結真空乾燥した直後のものを用いた。
電子顕微鏡写真(図2)から、エッチングを5時間行った本発明の生分解性逆オパール構造体が周期的な網目構造をもつことを確認した。鋳型となるコロイド結晶では、ガラス基板の垂直方向に(111)面が結晶成長するが、これを反映したヘキサゴナル構造を確認できた。また、空孔内に見られる残留物は、鋳型として使用したシリカ粒子であり、エッチングが不十分であると考えられる。
エッチングを30時間行った本発明の生分解性逆オパール構造体の電子顕微鏡写真(図3)では、規則構造が確認できるが、鋳型となるシリカ粒子が除去されたこと、および試料中に溶媒媒が存在しないことにより、空孔径の縮小が見られた。また、写真からは空孔内にシリカ粒子の残留は見られない。エッチングを48時間行ったものでは、シリカ粒子が完全に除去されていることを、エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製 EMAX-ENERGY)を用いた組成分析により確認した。
(赤外吸収スペクトル測定)
赤外吸収スペクトル測定(測定装置:日本分光株式会社製 FT/IR-470)を行った結果を図4に示す。試料としては、前述の(生分解性逆オパール構造体の合成)において、48時間エッチングした本発明の生分解性逆オパール構造体をエタノール保存液から取り出し、イオン交換水で洗浄した後、24時間、凍結真空乾燥したものを用いた。この赤外吸収スペクトルを図4の2に表す。図4中1及び3は、それぞれシリカ粒子と単量体の混合物の赤外吸収スペクトルを表す。
赤外吸収スペクトル測定(測定装置:日本分光株式会社製 FT/IR-470)を行った結果を図4に示す。試料としては、前述の(生分解性逆オパール構造体の合成)において、48時間エッチングした本発明の生分解性逆オパール構造体をエタノール保存液から取り出し、イオン交換水で洗浄した後、24時間、凍結真空乾燥したものを用いた。この赤外吸収スペクトルを図4の2に表す。図4中1及び3は、それぞれシリカ粒子と単量体の混合物の赤外吸収スペクトルを表す。
シリカ粒子のスペクトル(図4の1)において、1000〜1300cm−1付近にSi‐O‐Si結合の伸縮振動に由来する極めて強い吸収が見られた。しかし、48時間エッチングを行った生分解性逆オパール構造体のスペクトル(図4の2)では、この吸収は全く見られなかったことから、シリカ粒子はエッチングにより完全に除去されたことが分かる。また、単量体の混合物のスペクトル(図4の3)において、1740cm−1付近、および1220cm−1付近に、C=O結合およびC‐O結合の伸縮振動に由来する強い吸収が見られた。一方、生分解性逆オパール構造体のスペクトルにおいては、前者の吸収は弱く、かつ幅広になり、また、後者の吸収は明瞭には観測されなかった。この測定結果は、単量体の水酸基とカルボキシル基間でエステル結合が生じ、網目状のゲルが形成されることで、C=O結合およびC‐O結合が、複数の異なる化学的環境下におかれていることを示唆する。
(ラマンスペクトル測定)
生分解性逆オパール構造体と同条件下で合成された同組成をもつポリエステルのラマンスペクトル測定(測定装置:Thermo Electron社製 FT-IR-Raman Spectrometer Nexus 870)の結果を図5に示す。スペクトルにおいて、1305cm−1および1733cm−1に見られるピークは、それぞれC‐O‐C結合およびC=O結合の特性振動によるものであり、上記の合成方法における熱重縮合によりエステル結合が形成されたことが分かる。
生分解性逆オパール構造体と同条件下で合成された同組成をもつポリエステルのラマンスペクトル測定(測定装置:Thermo Electron社製 FT-IR-Raman Spectrometer Nexus 870)の結果を図5に示す。スペクトルにおいて、1305cm−1および1733cm−1に見られるピークは、それぞれC‐O‐C結合およびC=O結合の特性振動によるものであり、上記の合成方法における熱重縮合によりエステル結合が形成されたことが分かる。
(反射スペクトルの測定)
pH応答による生分解性逆オパール構造体の反射特性の変化について調べた。測定にはエッチングを48時間行った生分解性逆オパール構造体を、エタノール保存液から取り出し、イオン交換水で洗浄した後、ガラス基板ごとスチロールケース内に移し、水酸化ナトリウム水溶液(pH=11.5)に浸漬させた。ポリエステル薄膜の固定には、カバーガラスを用いた。ポリエステル薄膜を入れたケースを光学顕微鏡(株式会社ニコン社製 工業用顕微鏡 ECLIPSE LV100D)のステージ上に設置し、試料の反射スペクトル変化を測定した(測定装置:Ocean Optics, Inc.製 反射測定用高分解能ファイバマルチチャネル分光システム)。
pH応答による生分解性逆オパール構造体の反射特性の変化について調べた。測定にはエッチングを48時間行った生分解性逆オパール構造体を、エタノール保存液から取り出し、イオン交換水で洗浄した後、ガラス基板ごとスチロールケース内に移し、水酸化ナトリウム水溶液(pH=11.5)に浸漬させた。ポリエステル薄膜の固定には、カバーガラスを用いた。ポリエステル薄膜を入れたケースを光学顕微鏡(株式会社ニコン社製 工業用顕微鏡 ECLIPSE LV100D)のステージ上に設置し、試料の反射スペクトル変化を測定した(測定装置:Ocean Optics, Inc.製 反射測定用高分解能ファイバマルチチャネル分光システム)。
反射スペクトルの経時変化を図6に示す。図6中の添字は、水酸化ナトリウム水溶液に浸漬したときの時間経過(1:0分後、2:87分後、3:130分後、4:201分後、5:440分後、6:1046分後、7:3320分後)を示すものである。浸漬前の試料は、679nmに最大反射波長をもつが、浸漬後、時間経過とともに、このピークの位置が長波長側にシフトし、最終的には、近赤外領域(797nm)に到達することが分かる。これは、ポリエステルのカルボキシル基からのプロトン解離による静電的反発、および親水性の向上に伴う膨潤により、空孔径が増大するためであると考えられる。また、反射強度が低下する傾向が見られたが、これは膨潤したポリエステルの屈折率と空孔内に存在する水溶液の屈折率の差が小さくなるためであると考えられる。最大反射強度および最大反射波長の時間経過を図7および図8に示す。
加水分解前後の生分解性逆オパール構造体の反射特性の変化を図9に示す。図9中添字は、生分解性逆オパール構造体をpH緩衝溶液に浸漬させる前後を表しており、1は浸漬前、2は浸漬後45時間を表す。測定では、上記の試料を3日程度、pH3に調製した塩酸水溶液に浸漬した後、イオン交換水で洗浄した試料を用いた。緩衝溶液には、炭酸塩pH標準液第2種(pH10.01 和光純薬工業株式会社製)を使用した。緩衝溶液中でポリエステルが完全に加水分解し、逆オパール構造に由来する反射がなくなることが確認できる。
反射スペクトルのpH依存性を図10に示す。図10中添字は、生分解性逆オパール構造体を水溶液に浸漬させた順序を表しており、1と3はpH=3、2と4はpH=11を表す。測定は、試料を塩酸溶液(pH=3)および水酸化ナトリウム水溶液(pH=11)に交互に浸漬させて行った。pH=3においては、上記の反射波長よりも短波長側に反射ピークがみられた。これは、低pHにおいて、ポリエステル内のカルボキシル基へのプロトン付加により、カルボキシル基間での静電的反発の効果が低下するために、空孔径が収縮したことが原因と考えられる。一方、pH=11においては、長波長側に反射ピークがみられたが、これはカルボキシル基からプロトンが解離し、カルボキシル基間で静電的に反発しあうために、空孔径が増大したことが原因と考えられる。図10において、pH変化に伴う最大反射波長のピークシフトの再現性も確認できる。
(光学顕微鏡観察)
加水分解過程における生分解性逆オパール構造体の構造色を、顕微鏡デジタルシステム(島津理化器械株式会社製 Moticam2000)を用いて調べた。試料の加水分解は、イオン交換水(pH=6〜7)を用いた。イオン交換水に浸漬直後、および284時間後の試料の観察写真を図11および図12に示す。
さらに、図13及び図14に非特許文献1に記載の非逆オパール構造体の観察写真を示す。本発明の生分解性逆オパール構造体(図11)は逆オパール構造による選択的な光反射、すなわち構造色を示す。一方、図13及び14に示す非逆オパール構造体は逆オパール構造をもたない非多孔質体であるため無色透明である。
加水分解過程における生分解性逆オパール構造体の構造色を、顕微鏡デジタルシステム(島津理化器械株式会社製 Moticam2000)を用いて調べた。試料の加水分解は、イオン交換水(pH=6〜7)を用いた。イオン交換水に浸漬直後、および284時間後の試料の観察写真を図11および図12に示す。
さらに、図13及び図14に非特許文献1に記載の非逆オパール構造体の観察写真を示す。本発明の生分解性逆オパール構造体(図11)は逆オパール構造による選択的な光反射、すなわち構造色を示す。一方、図13及び14に示す非逆オパール構造体は逆オパール構造をもたない非多孔質体であるため無色透明である。
(屈折率測定)
本発明の生分解性逆オパール構造体と同組成の非多孔質ポリエステルについて、屈折率を測定したところ(測定装置:ATAGO社製 アッベ屈折計 NAR−1T)、nD=1.49であった。この屈折率を用いて本発明の生分解性逆オパール構造体の平均屈折率を以下の化式により計算し求めた。
本発明の生分解性逆オパール構造体と同組成の非多孔質ポリエステルについて、屈折率を測定したところ(測定装置:ATAGO社製 アッベ屈折計 NAR−1T)、nD=1.49であった。この屈折率を用いて本発明の生分解性逆オパール構造体の平均屈折率を以下の化式により計算し求めた。
ここで、naは構造体の成分であるポリエステルと空孔内部の成分の平均屈折率であり、niは各成分の屈折率、Viは各成分の体積分率を表す。空孔の周期配列は面心立方構造であることから、空孔の体積分率は0.74、ポリエステルの体積分率は0.26である。空孔内部が水(nD=1.33)の場合、空孔径を鋳型となるコロイド粒子の粒子径(300nm)と同じと仮定すると、平均屈折率はna=1.37と見積もられた。この平均屈折率を用いて、以下のブラッグ式(化式2)により求めた反射光の回折波長は、673nmであった。
ここで、d:孔径、m:ブラッグ定数 (m=1)を表す。反射測定により得られた回折波長は670nm程度であることから、算出した平均屈折率na=1.37が妥当であることを示す。これは、本発明の構造体が逆オパール構造をもつことを裏付けるものである。
(生分解性逆オパール構造体の合成:2)
生分解性、生体適合性が確立されており、既に骨接合材、縫合糸、薬物担体等として実用化されているポリ乳酸を用いて生分解性逆オパール構造体を合成した。
DL-ポリ乳酸(多木化学株式会社)の30%−wtアセトン溶液を、パスツールピペットを用いてコロイド結晶薄膜に滴下・含浸させた後、常温・常湿にて約1日間静置することにより、D,L-ポリ乳酸被覆コロイド結晶が得られた。コロイド結晶膜は、平均粒径が400nmのシリカ粒子の懸濁液(Polysciences, Inc.製)より作製した。
上記の薄膜を2.3%−wtフッ化水素酸水溶液(和光純薬工業株式会社)に浸漬し、冷暗所にて48時間静置することにより、シリカ粒子を溶出させた。これを、イオン交換水で洗浄した後、イオン交換水に浸漬し冷暗所に保存した。
生分解性、生体適合性が確立されており、既に骨接合材、縫合糸、薬物担体等として実用化されているポリ乳酸を用いて生分解性逆オパール構造体を合成した。
DL-ポリ乳酸(多木化学株式会社)の30%−wtアセトン溶液を、パスツールピペットを用いてコロイド結晶薄膜に滴下・含浸させた後、常温・常湿にて約1日間静置することにより、D,L-ポリ乳酸被覆コロイド結晶が得られた。コロイド結晶膜は、平均粒径が400nmのシリカ粒子の懸濁液(Polysciences, Inc.製)より作製した。
上記の薄膜を2.3%−wtフッ化水素酸水溶液(和光純薬工業株式会社)に浸漬し、冷暗所にて48時間静置することにより、シリカ粒子を溶出させた。これを、イオン交換水で洗浄した後、イオン交換水に浸漬し冷暗所に保存した。
(電子顕微鏡観察)
電子顕微鏡写真(図15)は、400nmの粒径をもつシリカ粒子を用いて作製したポリ乳酸からなる生分解性逆オパール構造体である。鋳型となるコロイド結晶の三次元周期構造を反映した多孔質構造を確認できる。
上記の構造体の生分解による構造変化について調べた。電子顕微鏡写真(図16)は、マウス皮下組織に1週間、埋入した後の試料であり、生分解により逆オパール構造における空孔の周期性、空孔サイズの均一性が失われていることが分かる。
また、埋入箇所のマウス皮下組織には際立った炎症等は確認できず、また、マウスの体重には顕著な減少傾向は確認できなかったことから、本発明の生分解性逆オパール構造体は生体適合性を有することが示唆される。
電子顕微鏡写真(図15)は、400nmの粒径をもつシリカ粒子を用いて作製したポリ乳酸からなる生分解性逆オパール構造体である。鋳型となるコロイド結晶の三次元周期構造を反映した多孔質構造を確認できる。
上記の構造体の生分解による構造変化について調べた。電子顕微鏡写真(図16)は、マウス皮下組織に1週間、埋入した後の試料であり、生分解により逆オパール構造における空孔の周期性、空孔サイズの均一性が失われていることが分かる。
また、埋入箇所のマウス皮下組織には際立った炎症等は確認できず、また、マウスの体重には顕著な減少傾向は確認できなかったことから、本発明の生分解性逆オパール構造体は生体適合性を有することが示唆される。
(反射スペクトル測定)
上記の生分解性逆オパール構造体の反射特性を図17の1に示す。合成時に400nmの粒径をもつシリカ粒子を用いることにより、反射ピークを860nm付近に制御可能であることが分かる。
図17の2は、生分解性逆オパール構造体上にマウス皮膚組織を設置した際に得られた反射スペクトルである。測定では、光源としてハロゲンランプを用いた。図17の1の反射ピークと比較して反射強度が低いが明瞭な反射ピークが観測された。この結果は、上記の生分解性逆オパール構造体の反射ピークが近赤外領域に位置するため、入射光および反射光が皮膚組織により完全に吸収されず、透過するためであると考えられる。
上記の生分解性逆オパール構造体の反射特性を図17の1に示す。合成時に400nmの粒径をもつシリカ粒子を用いることにより、反射ピークを860nm付近に制御可能であることが分かる。
図17の2は、生分解性逆オパール構造体上にマウス皮膚組織を設置した際に得られた反射スペクトルである。測定では、光源としてハロゲンランプを用いた。図17の1の反射ピークと比較して反射強度が低いが明瞭な反射ピークが観測された。この結果は、上記の生分解性逆オパール構造体の反射ピークが近赤外領域に位置するため、入射光および反射光が皮膚組織により完全に吸収されず、透過するためであると考えられる。
Claims (16)
- 脂肪族ポリエステルからなることを特徴とする生分解性逆オパール構造体。
- 可視及び近赤外領域の光を選択反射する三次元規則配列の空孔を有することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の生分解性逆オパール構造体。
- 前記可視及び近赤外領域の光が600〜1100nmの波長を有することを特徴とする請求の範囲第2項に記載の生分解性逆オパール構造体。
- 前記空孔の直径が10〜1000nmであることを特徴とする請求の範囲第2項又は第3項に記載の生分解性逆オパール構造体。
- 前記脂肪族ポリエステルが、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸及びラクトン類から選択される一種以上の単量体によりエステル結合を形成してなることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第4項いずれかに記載の生分解性逆オパール構造体。
- エステル結合を形成する前記単量体の組成比がそれぞれ0.001〜1000重量%の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の生分解性逆オパール構造体。
- 前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第6項いずれかに記載の生分解性逆オパール構造体。
- pH応答性を有することを特徴とする請求の範囲第1項乃至第7項いずれかに記載の生分解性逆オパール構造体。
- 前記請求の範囲第1項乃至第8項いずれかに記載の生分解性逆オパール構造体からなる医療用インプラント。
- 以下の工程(1)乃至(3)を含む製造方法により製造される脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子によりコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、脂肪族ポリエステルを構成する単量体溶液を含浸させる工程
(3)前記単量体を加圧下で熱重合することにより脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を得る工程 - 前記シリカ粒子又はポリスチレン粒子の重量分率が0.01〜90重量%であることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物。
- 以下の工程(1)乃至(4)を含むことを特徴とする生分解性逆オパール構造体の製造方法。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子によりコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、脂肪族ポリエステルを構成する単量体溶液を含浸させる工程
(3)前記単量体を加圧下で熱重合することにより脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
(4)前記組成物からシリカ粒子をエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させて除去することにより生分解性逆オパール構造体を得る工程 - 薬物を担持させた生分解性逆オパール構造体を、生体内で、生分解及び/又はpH応答させることにより該薬物を放出させることを特徴とする脂肪族ポリエステルからなる生分解性逆オパール構造体の使用方法。
- 以下の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする生体内における、脂肪族ポリエステルからなる生分解性逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法。
(a)薬物を担持させた生分解性逆オパール構造体を、生分解及び/又はpH応答させることにより該薬物を放出する工程
(b)前記生分解性逆オパール構造体に可視及び近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び強度の変化を測定する工程 - さらに以下の工程(イ)及び(ロ)を含むことを特徴とする請求の範囲第14項に記載の生体内における生分解性逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法。
(イ)生分解性逆オパール構造体に、可視光を吸収する擬似薬物を担持し、生分解及び/又はpH応答させることにより該薬物を放出させる工程
(ロ)前記生分解性逆オパール構造体に可視又は近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び/又は強度の変化(A)を測定するとともに、可視吸収スペクトルの定量分析により前記擬似薬物の放出量(B)を測定した後、前記(A)及び(B)を相関付ける工程 - 脂肪族ポリエステルからなる生分解性逆オパール構造体の空孔内壁を加水分解することにより、脂肪族ポリエステルからなる生分解性逆オパール構造体の空孔径を拡大させる方法。
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