JP2004226891A - コロイド溶液、コロイド結晶及び固定化コロイド結晶 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】媒体中に微粒子が分散したコロイド溶液であって、前記微粒子は、ゼータ電位が絶対値で10mV以上であるコロイド溶液。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微粒子の分散安定性に優れるコロイド溶液、及び、微粒子が規則的かつ周期的に3次元配列してなり、フォトニック材料として有用なコロイド結晶に関し、特に、高密度の微粒子を用いた場合にも微粒子の規則配列構造を有するコロイド結晶とすることができるコロイド溶液、及び、該コロイド溶液を用いてなるコロイド結晶に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、フォトニック結晶(材料)に関する研究開発が盛んに行われている。フォトニック結晶とは、光の波長と同程度のディメンション(格子を形成する粒子間距離:例えば可視光線の場合にはサブミクロンオーダー)で屈折率が周期的に変化する物質の内部において、ある特定波長の光が屈折、回折等により存在しなくなるという禁制波長の出現を利用するものであり、このような禁制波長の出現がちょうど半導体結晶における電子遷移禁制帯の形成と類似であることから命名された術語である。
【0003】
微粒子が媒体中で格子状に配列した3次元周期構造体をフォトニック結晶として利用することは公知の技術であり(例えば、非特許文献1参照)、この微粒子が格子状に配列した3次元周期構造体はコロイド結晶や固定化コロイド結晶と呼ばれている。このコロイド結晶や固定化コロイド結晶は、格子定数が可視光又はその周辺の紫外光や赤外光の波長と同程度である場合、これらの光をBragg回折する。この現象を利用して、コロイド結晶や固定化コロイド結晶を特定の波長の光を透過しない光フィルターや特定の波長の光を反射するミラー、更には上述したフォトニック結晶等の新規な光機能材料へ応用することが考えられている。
【0004】
ここで、固定化コロイド結晶とは、単分散微粒子溶液の中にゲル化剤を含ませ、微粒子が3次元規則配列構造のコロイド結晶をとった後にゲル化させ、微粒子の3次元規則配列構造をマトリックス中に固定したものであり、この固定化コロイド結晶は、微粒子の3次元規則配列構造が振動、温度変化等の外部刺激に影響を受けず安定性が極めて高くなる。なお、ゲル化剤としては、高分子モノマーとしてアクリルアミド、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド、及び、重合開始剤としてベンゾインメチルエーテルを組み合わせたものが使用されており、このような組成のゲル化剤は、紫外線照射によりコロイド結晶媒体のゲル化を開始させることができる。
【0005】
固定化コロイド結晶を用いた公知技術としては、例えば、透明な材料でできた2枚の平板を平行に相対させ、その間の空間にコロイド結晶をサンドイッチ状に挟んだ構造を有する素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、例えば、分散媒中に高分子モノマー、架橋剤及び重合開始剤等からなるゲル化剤を添加したコロイド結晶を2枚の基板の間に挟み、薄板状に保持した後にゲル化させてシート状にし、基板から取り外してコロイド結晶シートを得ることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
コロイド結晶を作製する方法としては、例えば、重力により積み上げていく方法や液体中で電界の力を利用する方法、微粒子表面間の斥力によって規則的な構造を形成していく方法等が知られている。
例えば、微粒子表面間の斥力によって微粒子を配列する技術に関し、特許文献3には、微粒子間蒸気圧及び表面張力を異にする2種以上の液体混合物からなる媒質中に微粒子を分散させ、微粒子分散液を基板表面上に流延し、高度に格子配列した液膜を形成する微粒子薄膜の製造方法が開示されている。
【0007】
従来、このようなコロイド結晶を利用したフォトニック材料の研究において、微粒子の原料としては、比較的単分散粒子が得られやすく、また、密度も低いため沈降等による規則配列構造を形成する上での問題が発生しにくいシリカやポリスチレン等が主として使用されていた。
しかしながら、シリカやポリスチレン等の密度の低い物質からなる微粒子を使用したコロイド結晶は、フォトニック材料の重要特性で高ければ高いほどよいとされる屈折率、誘電率及び磁化率を充分な値で得にくいことから、逆オパール構造にしたりする必要がある等非常に煩雑な処理が必要となるという問題があった。
【0008】
一方、フォトニック材料の屈折率、誘電率及び磁化率を高く制御するためには、微粒子の粒径が揃っていることと微粒子が規則的かつ周期的に3次元配列していることとに加え、微粒子の原料として半導体結晶や遷移金属等のような高屈折率で高誘電率を兼ね備えた物質が必要とされる。
しかしながら、これらの物質の密度は、一般的に屈折率、誘電率とともに高くなる傾向があり、微粒子の密度が高くなると、微粒子が規則的かつ周期的な3次元配列構造をとる前に沈降してしまうという問題があった。
更に、微粒子の粒径は禁制波長域に対応があるため、微粒子の粒径を大きくすることによってもフォトニック材料としての光学特性を制御することもできるが、微粒子の粒径が大きくなると微粒子が沈降しやすくなるという問題があった。
これに対し、溶液中での微粒子の分散安定性を高める手段としては、例えば、分散媒のpHを変えたり、ヘキサメタリン酸ナトリウムやピロリン酸ナトリウム等の分散剤や界面活性剤を添加したりする方法等が公知技術として知られているが、これらの方法では高密度の微粒子をコロイド結晶化させるには不充分であった。
【0009】
【特許文献1】
米国特許第4627689号明細書
【特許文献2】
欧州特許出願公開第0482394号明細書
【特許文献3】
特開2002−286962号公報
【非特許文献1】
J.D.Joannopoulos et al.,Nature,vol.386(1997)pp.143−149
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高密度の微粒子を用いた場合であっても、微粒子の沈降や二次凝集等が生じることがなく、微粒子同士が所定間隔を保ち、分散安定性に優れるコロイド溶液、及び、高密度の微粒子であっても、微粒子同士が所定間隔を保って規則的かつ周期的に3次元配列した結晶構造を維持することができ、フォトニック材料としての光学特性に優れるコロイド結晶を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、媒体中に微粒子が分散したコロイド溶液であって、前記微粒子は、ゼータ電位が絶対値で10mV以上であるコロイド溶液である。
以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明のコロイド溶液は、媒体中に微粒子が分散したコロイド溶液である。
上記媒体としては特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール、プロピルアルコール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の低級エーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸ブチル等の低級エステル;ジメチルフォルムアミド、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等を挙げることができる。なかでも、環境への負荷が小さいことから水が好ましい。これらの媒体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明のコロイド溶液を用いて後述する固定化コロイド結晶を作製する場合には、上記媒体は重合性物質を含んでいてもよい。
上記重合性物質としては特に限定されず、例えば、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリル酸メチル、ジメタクリル酸エチレン等のビニル系モノマー又はマクロモノマー;エチレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル;β−プロピオンラクトン酸等の環状エステル;ε−カプロラクタム等の環状アミド;メチルシラン、フェニルシラン等のポリシランを与えるモノマー等を挙げることができる。これらの重合性物質は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、これらの重合性物質が液状である場合には、上記媒体に代えて重合性物質自体を媒体として用いてもよい。
【0014】
更に、上記媒体は分散剤を含んでいてもよい。上記分散剤としては特に限定されず、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0015】
本発明のコロイド溶液において、上記微粒子は、ゼータ電位が絶対値で10mV以上である。
上記微粒子のゼータ電位とは、固定相を有する固体(微粒子)が動くときの液体(媒体)との間の電位差であり、微粒子の分散の特性を示すために通常用いられるパラメータである。なお、上記微粒子のゼータ電位の大きさを絶対値で規定したのは、微粒子のゼータ電位は、液体(媒体)との関係で正又は負となることがあるからであり、上記微粒子が電気的に同じ符号を持っていれば、微粒子同士の斥力が生じる。
【0016】
上記微粒子のゼータ電位の絶対値が10mV未満であると、上記微粒子として高密度ものを用いた場合、微粒子同士の斥力が小さくなって微粒子の沈降や微粒子同士の二次凝集が起こりやすくなり、微粒子の分散安定性が低下する。上記微粒子のゼータ電位の絶対値は15mV以上であることが好ましい。
なお、上記特許文献3では、微粒子表面間の斥力が小さすぎても大きすぎても好ましくないとあるが、本発明においては、微粒子表面間の斥力は、大きければ大きいほどよいとする。
【0017】
上記微粒子としては特に限定されないが、高い屈折率及び磁化率を有するコロイド結晶が得られることから高密度の物質からなることが好ましい。本発明のコロイド溶液では、従来コロイド結晶化が困難とされていた高密度の物質からなる微粒子を用いた場合でも、容易にコロイド結晶を得ることができる。
なお、微粒子の密度は凝集等の構成により異なるものであるが、本発明において、微粒子の密度とは物質密度のことをいい、また、高密度の物質からなる微粒子とは、従来コロイド結晶の微粒子原料として使用されていたシリカ及びポリスチレンの密度(シリカの密度:2.6g/cm3、ポリスチレンの密度:1.05〜1.09g/cm3)よりも高い密度の物質からなる微粒子のことをいう。
【0018】
フォトニック結晶として屈折率、誘電率及び磁化率を制御する目的で本発明のコロイド溶液を用いる場合、上記微粒子原料としては、例えば、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等の組成式で表される周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)や、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe等の組成式で表される周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)等の化合物半導体類、炭素、ケイ素、ゲルマニウム等の単体結晶半導体類、非晶炭素、カーボンブラック、黒鉛等の任意の炭素材料、金、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケル、コバルト、鉄等の遷移金属、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等のランタノイドの酸化化合物、BaTiO3、チタン酸鉛、二酸化チタン、PZT(Pb(Zr,Ti)O3)、Ta2O5、ZrO2、CeO2、酸化銅、酸化マグネシウム、チタン酸リチウム、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム、PbO、PbO2、Pb3O4、ZnO、ZnO2、TiO2等のセラミックス、リン酸二水素カリウム、ロッシェル塩等を挙げることができる。これらの物質は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上述した物質からなる微粒子は、コアシェル構造や混晶構造等の複数の組成が集合した構造を有していてもよく、複数種の物質からなる混合物でもよい。
【0019】
これらの微粒子原料のほとんどは、上述したシリカやポリスチレンの密度よりも高い高密度なものである。具体的には、BaTiO3(6.08g/cm3)、ZnS(4.1g/cm3)、PbO(8.0g/cm3)、PbO2(9.375g/cm3)、Pb3O4(9.1g/cm3)、TiO2(4.3g/cm3)、Ta2O5(8.735g/cm3)、ZnO(5.47〜5.78g/cm3)、ZnO2(5.71g/cm3)である。
【0020】
本発明のコロイド溶液において、上記微粒子は、表面を直接媒体に露出させる表面活性化処理が施されていることが好ましい。
合成後の上記微粒子の表面には分散剤、錯化剤、緩衝剤、保護剤、未反応物質等が物理的に結合している。本明細書において、微粒子の表面を直接媒体に露出させる表面活性化処理とは、微粒子の表面に結合している上記分散剤等をできる限り完全に取り除いて上記微粒子を構成する原料を表面に露出させることで、上記微粒子の表面を活性化させることを意味する。このような表面活性化処理を施すことにより、上記微粒子のゼータ電位の絶対値を10mV以上に確保することが容易になる。
このように、上記微粒子の表面を活性化、即ち、微粒子のゼータ電位の絶対値を大きくすることにより、微粒子同士の斥力が大きくなるため、高密度であっても一定間隔で規則的に配列しやすくなり、コロイド結晶化が可能な微粒子となりうる。
【0021】
上記表面活性化処理としては特に限定されず、例えば、遠心分離機等で合成後の微粒子を溶媒中に沈降させ、溶媒を水と置換し、超音波処理等により微粒子を再分散させ、再び遠心分離機等により微粒子を沈降させる工程を数回行う方法や、上記微粒子の保護剤にゼラチン等の蛋白質を使用した場合には、蛋白質を分解する酵素を使用して合成後の微粒子表面の蛋白質を分解する方法等を挙げることができる。また、例えば、上記微粒子原料に合わせて分解剤を選択することによって、上記微粒子の表面を直接媒体に露出させ、上記微粒子の表面活性化を行うことも可能である。なお、これらは微粒子の表面活性化処理であり、一般的に文献等に記載されているような粒子の合成後に行われる洗浄とは異なる。
【0022】
また、本発明のコロイド溶液において、上記微粒子は、表面に官能基を有する物質が付着していることが好ましい。表面に官能基を有する物質が付着することにより、上記微粒子のゼータ電位の値をより大きくすることができ、微粒子同士の斥力がより大きくなるため、本発明のコロイド溶液の微粒子の分散安定性がより優れたものとなるからである。この場合、上記微粒子の表面を該微粒子の原料と異なる物質で覆い、その表面に官能基を有する物質が付着していてもよい。
【0023】
上記官能基としては特に限定されないが、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、チオール基及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0024】
上記官能基を有する物質としては特に限定されず、例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリスチレン、ポリ(無水マレイン酸)、オルトケイ酸テトラエチルやこれらの共重合体等の有機分子等を挙げることができる。
【0025】
本発明のコロイド溶液を作製する方法としては特に限定されず、例えば、上記媒体に上記微粒子や必要に応じて上記重合性物質や分散剤等を混合し、充分に攪拌した後、一定時間放置する方法等を挙げることができる。
【0026】
本発明のコロイド溶液は、媒体中に分散させた微粒子のゼータ電位の絶対値が10mV以上と大きなものであり、微粒子表面間の斥力が大きなものである。
そのため、本発明のコロイド溶液は、微粒子が密度の高いものであっても、微粒子の沈降や微粒子同士の二次凝集が起こりにくくなり、微粒子の分散安定性に優れたものとなる。
【0027】
また、本発明のコロイド溶液は、媒体中に分散させた微粒子の密度が高いものであっても、好適にコロイド結晶化させることができ、このような本発明のコロイド溶液を用いてなるコロイド結晶も本発明の1つである。
【0028】
本発明のコロイド結晶は、本発明のコロイド溶液を用いてなるコロイド結晶であって、微粒子が媒体中に規則的かつ周期的に3次元配列した結晶構造を構成しているコロイド結晶である。
【0029】
本発明のコロイド溶液中の微粒子を規則的かつ周期的に3次元配列させて結晶構造を構成させる方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0030】
本発明のコロイド結晶は、本発明のコロイド溶液における微粒子が媒体中に規則的かつ周期的に3次元配列した結晶構造を構成したものである。即ち、本発明のコロイド結晶を構成する微粒子は、高密度なものであっても分散安定性に優れたものであるため、微粒子原料として高屈折率及び高誘電率を兼ね備えた高密度の物質を使用することができる。従って、本発明のコロイド結晶は、フォトニック材料としての光学特性を向上させることができる。
【0031】
上記媒体が重合性物質を含有している場合には、コロイド結晶を作製した後、上記重合性物質を重合させることにより、コロイド結晶を固定化することができる。係る固定化コロイド結晶もまた、本発明の1である。
即ち、本発明の固定化コロイド結晶は、本発明のコロイド結晶を用いてなる固定化コロイド結晶であって、媒体は重合性物質を含有するものであり、上記重合性物質を重合させることにより微粒子が規則的かつ周期的な3次元配列した結晶構造を構成したまま固定化してなるものである。
【0032】
本発明の固定化コロイド結晶を作製するには、まず、重合性物質を含有する媒体を用いて微粒子が媒体中に規則的かつ周期的に3次元配列した結晶構造を構成している本発明のコロイド結晶を作製する。
上記重合性物質、媒体、微粒子及び本発明のコロイド結晶の作製方法は、既に説明済みであるので、ここではその説明を省略する。
【0033】
次に、得られた本発明のコロイド結晶の媒体に含有されている重合性物質を重合させることにより、本発明の固定化コロイド結晶を得ることができる。上記重合性物質を重合する方法としては用いた重合性物質に応じて決定され、特に限定されないが、熱、電子線又は紫外線を用いる方法が簡便である。
【0034】
本発明の固定化コロイド結晶は、本発明のコロイド結晶を微粒子が規則的かつ周期的な3次元配列した結晶構造を構成したまま固定化してなるものである。
そのため、微粒子原料として高屈折率及び高誘電率を兼ね備えた高密度の物質を使用することができ、本発明の固定化コロイド結晶は、フォトニック材料としての光学特性を向上させることができるとともに、堅牢で、上記微粒子の規則的かつ周期的な3次元配列した結晶構造が衝撃、振動及び温度変化等の外部刺激の影響を受けにくくなり、極めて取扱い性に優れたものとなる。
【0035】
本発明のコロイド結晶及び固定化コロイド結晶は、光の制御が必要な部材、例えば、フォトニック材料、無しきい値レーザ素子、高効率非線形光学効果、純光トランジスタ、マイクロ光回路、光導波路、新しい概念の光変調素子、光記憶回路、光スイッチ、光センサ、カラーディスプレイ素子、分波器、合波器、光遅延素子、偏光素子、回折素子等の周期構造体の光学素子へ用いることができる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
表面活性化ZnS粒子の合成
0.3mol/dm3の硝酸亜鉛(和光純薬社製、99.9%)、0.306mol/dm3のエチレンジアミン四酢酸(EDTA、同仁化学社製)、1.4mol/dm3の酢酸アンモニウム(和光純薬社製)及び1.2mol/dm3のアンモニア(和光純薬社製)に、超純水と2wt%のゼラチンとを加えて全体が200mLとなるようにEDTA−Zn溶液を調製した。また、沈殿剤として、1.2mol/dm3のチオアセトアミド(TAA)に、超純水と2wt%のゼラチンとを加えて全体が50mLになるようにTAA溶液を調製した。
【0038】
次に、60℃に調整した水浴中に、調製したEDTA−Zn溶液を入れ、攪拌しながらアンモニアを加えてpHが8.2になるように調整した。
そして、pHを調整したEDTA−Zn溶液を攪拌したままTAA溶液を一気に入れて反応させ、ZnS粒子分散液を得た。なお、反応を停止させる時には、pHが5以下になるまで酢酸を入れた。
【0039】
得られたZnS粒子分散液のZnS粒子の表面を活性化させる処理として、まず、反応後のZnS粒子分散液を遠心分離機にかけてZnS粒子を沈降させ、上澄みを取り去り、新たに水を添加して超音波処理してZnS粒子を分散させた。このときのZnS粒子のゼータ電位及び伝導率を下記の方法により測定し、得られた値を表面活性化前ゼータ電位及び伝導率とした。結果を表1に示した。
その後、分散液を再び遠心分離機にかけてZnS粒子を沈降させた。この工程を繰り返し3回行い、最終的には上澄み液の伝導度が300μS/cm以下になるまでZnS粒子を精製し、表面活性化ZnS粒子(1)を得た。得られた表面活性化ZnS粒子(1)のゼータ電位及び伝導率を下記の方法により測定した。結果を表1に示した。
この後、表面活性化ZnS粒子を5wt%になるように水に分散させた。その分散液をスライドガラスの上に滴下して、乾燥させコロイド結晶化させた。
【0040】
(ゼータ電位の測定)
ZnS粒子に超純水を添加して0.002wt%の分散液を調製し、該分散液について、電気泳動光散乱光度計(大塚電子社製、ELS−800)により分散しているZnS粒子のゼータ電位を測定した。なお、測定においては、He−Neレーザー(10mW)を光源とし、このレーザーによる散乱光のドップラー・シフト量を求めることによりZnS粒子の電気泳動速度を求め、その値からゼータ電位を求めた。
【0041】
(伝導率の測定)
ZnS粒子に超純水を添加して約0.1wt%の分散液を調製し、該分散液について、東亜エレクトロニクス社製、CM−20Sにより分散しているZnS粒子の伝導率を測定した。
【0042】
実施例2
表面活性化ZnS粒子の合成
実施例1と同様にして得られた表面活性化ZnS粒子(1)を50℃に調整した水浴中で、アンモニア水によってpH=8.0になるように調整した。そこに蛋白質分解酵素としてスミチールMP(協和エンザイム社製)0.005gを添加し、50℃で120分反応させた。
【0043】
反応後の分散液を遠心分離機にかけて表面活性化ZnS粒子(1)を沈降させ、上澄み液を取り去り、新たに温水を添加して超音波処理して表面活性化ZnS粒子(1)を分散させた後、再び遠心分離機にかけた。この工程を繰り返し3回行い、表面活性化ZnS粒子(1)の表面に付着していた蛋白質を分解、除去(プロテアーゼ処理)し、表面活性化ZnS粒子(2)を作製した。
得られた表面活性化ZnS粒子(2)のゼータ電位及び伝導率を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表1に示した。
この後、実施例1と同様にしてコロイド結晶化させた。
【0044】
実施例3
表面改質ZnS粒子の精製
実施例1と同様にして得られた表面活性化ZnS粒子(1)1gをデシケータ中に数日間放置して充分乾燥させた後、エタノール(和光純薬工業社製、特級)120mLを添加し、30Wの超音波処理機に60分間かけて表面活性化ZnS粒子(1)を分散させた。
【0045】
得られた分散液に、超純水8mLと28%アンモニア水(ナカライテスク社製、特級)25mLとを添加し、30分間よく攪拌した。
続いて激しく攪拌しながら室温下でオルトケイ酸テトラエチル12gとエタノール60mLとの混合溶液を添加し、3時間反応させて、表面活性化ZnS粒子(1)の表面にシラノール基を付着させ、表面改質ZnS粒子を得た。
得られた表面改質ZnS粒子のゼータ電位及び伝導率を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表1に示した。
この後、実施例1と同様にしてコロイド結晶化させた。
【0046】
比較例1
表面活性化処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてZnS粒子を作製し、得られたZnS粒子を用いてコロイド結晶化行った。
得られたZnS粒子のゼータ電位及び伝導率を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表1に示した。
【0047】
(コロイド結晶化評価)
実施例1〜3及び比較例1で得られたコロイド結晶について、マルチチャンネル分光測定装置(浜松ホトニクス社製、PMA−11)を用いて反射(透過)スペクトルを測定し、ピークがあるか又は虹彩色を示していれば、コロイド結晶化していると判断した。
その結果を表1に示した。なお、表1中○は、コロイド結晶化していることを示し、×はコロイド結晶化していないことを示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、微粒子が密度の高いものであっても、微粒子の沈降や微粒子同士の二次凝集が起こりにくくなるため、微粒子の分散安定性に優れたコロイド溶液を提供することができる。
また、微粒子原料として高屈折率及び高誘電率を兼ね備えた高密度の物質を使用することができるため、フォトニック材料としての光学特性を向上させたコロイド結晶を提供することができる。
更に、媒体が含有している重合性物質を重合させることにより、微粒子が規則的かつ周期的に3次元配列した結晶構造を固定化することができるため、フォトニック材料としての光学特性を向上させるとともに、堅牢で、極めて取扱い性に優れた固定化コロイド結晶を提供することができる。
Claims (6)
- 媒体中に微粒子が分散したコロイド溶液であって、
前記微粒子は、ゼータ電位が絶対値で10mV以上であることを特徴とするコロイド溶液。 - 微粒子は、表面を直接媒体に露出させる表面活性化処理が施されているものであることを特徴とする請求項1記載のコロイド溶液。
- 微粒子は、表面に官能基を有する物質が付着していることを特徴とする請求項1又は2記載のコロイド溶液。
- 官能基は、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、チオール基及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項3記載のコロイド溶液。
- 請求項1、2、3又は4記載のコロイド溶液を用いてなるコロイド結晶であって、
微粒子が媒体中に規則的かつ周期的に3次元配列した結晶構造を構成していることを特徴とするコロイド結晶。 - 請求項5記載のコロイド結晶を用いてなる固定化コロイド結晶であって、
媒体は重合性物質を含有するものであり、
前記重合性物質を重合させることにより微粒子が規則的かつ周期的な3次元配列した結晶構造を構成したまま固定化してなる
ことを特徴とする固定化コロイド結晶。
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