JPWO2003100139A1 - 固定化コロイド結晶およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、微粒子配列の三次元的な規則性が充分に維持された、力学的に安定した固定化コロイド結晶に関する。
背景技術
フォトニック結晶とは、屈折率や誘電率等の電磁波である光に関係するような光学的性質の異なる物質が、光の波長程度の間隔で、三次元的に規則的に配列したような周期的構造体であり、1987年にE.Yablonovitch(Phys.Rev.Lett.1987,58,2059)とS.John(Phys.Rev.Lett.1987,58,2486)により理論的に提唱されたものである。ここで、光の波長程度の間隔とは、対象とする光によって変わるが、例えば、紫外線の場合には10〜380nm程度、可視光線の場合には380〜780nm程度、赤外線の場合には780nm〜1mm程度である。フォトニック結晶では、三次元的周期構造があるために、フォトニックバンドギャップと呼ばれる特定の波長の光の存在が禁止される、又は、制限される領域が発現し、その性質を利用すればこれまで以上に光を制御することができる。このため、フォトニック材料は、無しきい値レーザ、高効率非線形光学効果、純光トランジスタ、マイクロ光回路、光導波路、新しい概念の光変調素子、光記憶素子等への幅広い応用展開が進められつつある。
フォトニック結晶の三次元的な規則性は、無機化学の成書(例えば、「セラミックスの基礎科学」第三版、内田老鶴圃、東京、1993)や化学大辞典に記載されているように、ブラベ(Bravais)の空間格子(space lattice)として、14種類の結晶構造に限定される。そのうち比較的単純で良く知られているのが、単純立方格子、面心立方格子、体心立方格子である。ここで重要なのは規則性の周期を表す格子間隔(lattice spacing)であり、使用する物質や、適用する光の波長に応じて、フォトニック結晶の格子間隔を設計する必要がある。
フォトニック結晶を作製する方法としては種々の方法が提案されているが、フォトリソグラフィー技術によって光学的性質の異なる構造を平面的に作り、それをさらに積層していく方法と、大きさの比較的揃ったコロイド微粒子を積み重ねていく方法の2つがよく知られている(吉野 勝美、大阪大学 平成12年度高度技術研修「有機−無機電子・光デバイスの最前線」2000、p.1−20)。特に後者は、コロイド微粒子を上述の14種類の結晶構造にする技術であることから、コロイド結晶化技術と呼ばれ、比較的安価に三次元周期構造体を作れるため近年注目を集めている。
コロイド結晶化技術によるフォトニック結晶の作製方法としては、例えば、光ピンセット法、レーザマニピュレーション法等の粒子を一個一個操作する方法;微粒子を分散させた溶媒中で結晶を育成する方法等を挙げることができる。なかでも、微粒子を分散させた溶媒中で結晶を育成する方法は、安価に比較的大きなサイズの結晶が得られることから、現在のコロイド結晶化技術の主流を占めている(吉野勝美、大阪大学 平成12年度高度技術研修「有機−無機電子・光デバイスの最前線」2000、p.1−20)。
しかし、いずれの方法で微粒子を規則的に配列してコロイド結晶を作製しても、そのままではフォトニック結晶としては扱いにくい。それは、微粒子同士が互いに結びつけられておらず、力学的強度が低いため、ちょっとした衝撃や振動で、お互いの位置がずれて規則性が乱れてしまい、フォトニックバンドギャップが消失する等光学特性が変わってしまうからである。
そこで、規則的配列体を作製した後、三次元的な規則性を保持しながら力学的強度を上げる必要がある。これは結晶配列の固定化とか固体化とか呼ばれており、作製したものは固定化コロイド結晶などと呼ばれている。
結晶配列を固定化して固定化コロイド結晶を作製する方法としては、例えば、規則的に配列した微粒子に、微粒子の融点以下の温度をかけて微粒子の表面をわずかに溶解して、微粒子同士を焼結させる方法(Jpn,J,Appl,Phys.,1997,36,L714)が提案されている。しかし、この方法は隣接する微粒子の表面同士を溶かして融着させるため、わずかではあるが必ず配列の乱れが生じるという問題があった。
USP6123845号公報には、固体光フィルタ材料の製造に関して、加熱せずに、微粒子のポリマ外殻を溶媒を用いて、膨潤させて、隣接粒子同士を融合させた後溶媒を除去させる方法が開示されている。しかしながら、この方法でもやはり微粒子の外殻を溶解するため、必ず配列の乱れが生じる。また、配列の乱れを少なくするためには、隣接微粒子の融合する面積を小さくする必要があることから、規則性と力学的強度とを両立させるのは困難であった。
USP5281370号公報には、固体光フィルタ材料の製法に関して、シリカ粒子の表面を外側にスルホン酸基がくるように処理し、このシリカ粒子を規則的に配列させた後、溶媒を蒸発させて、シリカ粒子間のクーロン力によって隣接状態を維持させる方法が開示されている。しかしながら、この方法では、クーロン力が弱いことから、力学的強度が不充分であった。
USP5281370号公報には、微粒子間を占める媒質に重合性物質と開始剤を添加し、光重合で微粒子間を占める媒質を重合させて、微粒子を規則的に配列した状態で固定化する方法が開示されている。この方法は、USP4451412号公報で微粒子間を占める媒質をUV重合して固定化することが紹介されて以来よく行われている方法であり、規則性の乱れが少なく、しかも充分な力学的強度が得やすい、優れた方法である。しかしながら、この方法においても媒質の重合時に規則性の乱れが生じやすく、重合後に予期した光学性能が得られないという問題があった。これは、媒質の重合過程において、ミクロ的に重合性物質や重合物の移動が生ずることからマクロ的には体積変化を伴うことが多く、元々相互に強く結びついていない微粒子が、重合の進行とともに、周囲から受ける力によって位置をずらされたり、微粒子同士が接触押圧してさらに位置をずらしたり、ずれた隙間に毛細管現象等により重合性媒質が進入することにより粒子間隔が部分的に変わったりするためであると考えられる。このような重合前後の規則性の乱れは、重合前後の反射スペクトル又は透過スペクトルを測定した場合のピーク位置のズレとして測定される。例えば、American Chemical Society.,1997,13,3338−3344には、重合前後の透過スペクトルピークのピーク位置のズレが22nmであったことが記載されている。単一波長光を用いる場合には規則的配列性への要求が厳しくなるので、このような媒質を重合する方法も、力学的強度は問題がないものの、微粒子配列の規則性維持の点では問題があった。
発明の要約
本発明は、微粒子配列の三次元的な規則性が充分に維持された、力学的に安定した固定化コロイド結晶を提供することを目的とする。
本発明は、コロイド粒子が重合性物質を含有する有機溶媒中に分散したコロイド結晶を、前記重合性物質を重合させることにより固定化してなる微粒子が規則的に配列している固定化コロイド結晶であって、隣接する前記微粒子同士は接触していないものであり、前記重合前後に反射スペクトル又は透過スペクトルを測定した場合に、重合前後のピーク位置の差が3nm以内である固定化コロイド結晶である。本発明の固定化コロイド結晶は、室温から350℃まで昇温したときの溶媒を除いた重量減少率が1重量%以上であることが好ましい。上記微粒子は、表面が有機分子で修飾されていることが好ましく、室温から微粒子の融点まで昇温したときの溶媒を除いた重量減少率が1重量%以上であることが好ましい。
本発明の固定化コロイド結晶を製造する方法であって、少なくとも、表面が有機分子で修飾されている微粒子を、重合性物質を含有する有機溶媒中に分散させ沈降させてコロイド結晶を調製する工程と、前記コロイド結晶中の前記重合性物質を重合させることによりコロイド結晶の固定化を行う工程とを有する固定化コロイド結晶の製造方法もまた、本発明の1つである。
本発明の固定化コロイド結晶を用いてなる光学材料もまた、本発明の1つである。
発明の詳細な開示
以下に本発明を詳述する。
本発明の固定化コロイド結晶は、コロイド粒子が重合性物質を含有する溶媒中に分散した後規則的に配列させたコロイド結晶を、重合性物質を重合させることにより固定化してなる微粒子が規則的に配列している固定化コロイド結晶である。
本発明者らは、これまで考慮されていなかったコロイド粒子の存在する雰囲気に着目して鋭意検討を行った結果、コロイド結晶から固定化する過程で隣接するコロイド粒子同士が本質的に接触しない状況を作り出すことで、固定化後も極めて規則性の乱れの少ない固定化コロイド結晶を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。これは、コロイド粒子同士が接触しない状況にすることで、コロイド粒子間に一種の緩衝作用が生じるため、重合物の物質移動時の衝撃力や、毛細管現象による重合物の侵入が緩和されることにより規則性の乱れが少なくなるものと考えられる。
本発明の固定化コロイド結晶を作製するには、まず、コロイド粒子が重合性物質を含有する溶媒中に分散した後、規則的に配列させたコロイド結晶を作製する。
上記コロイド結晶の溶媒としては特に限定されず、例えば、水、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン、メタノール、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、クロロホルム、ジオキサン、アクリロニトリル等を挙げることができる。これらの液状媒質は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記溶媒に配合する重合性物質としては特に限定されず、例えば、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリル酸メチル、ジメタクリル酸エチレン等のビニル系モノマー又はマクロモノマー;エチレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル;β−プロピオンラクトン等の環状エステル;ε−カプロラクタム等の環状アミド;メチルシラン、フェニルシラン等のポリシランを与えるモノマー等を挙げることができる。これらの重合性物質は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの重合性物質が液状である場合には、重合性物質自体を溶媒として用いてもかまわない。
上記溶媒に分散してコロイド粒子となる粒子としては特に限定されず、例えば、シリカ、チタニア、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化鉛、砒化ガリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫、酸化アルミニウム、シリコン、ゲルマニウム、金、銀、銅、白金等の酸化物、硫化物、金属等を含む幅広い意味での無機物;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアニリン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン等の幅広い有機物を挙げることができる。これらの粒子は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。更に、単一材質の粒子で用いてもよいが、表面修飾やコアシェル構造等で複合粒子化するのが好ましい。
上記粒子の形状としては球状には限定されない。球状以外の粒子であってもコロイド結晶を形成することが知られている。
上記微粒子は、表面が有機分子で修飾されていることが好ましい。本発明者らは、鋭意検討の結果、予めコロイド粒子となる微粒子の表面を有機分子で覆い、化学的又は物理的に付着させて修飾することにより、これを用いてなるコロイド結晶を固定化するときの規則性の乱れが少なくなることを見出した。予め粒子表面を有機分子で修飾しておくことで、コロイドを形成する微粒子間同士の緩衝作用が一層効果的に起こるためと考えられる。また、一般に、重合性物質を配合した溶媒を用いた場合には、重合性物質が粒子間に介在することにより粒子同士の静電的反発作用が阻害されコロイド結晶が形成されにくい傾向にあり、用いることのできる溶媒、重合性物質及び粒子の組み合わせに著しい制限があった。しかし、驚くべきことに、表面が有機分子で修飾されている粒子を用いることにより、多くの溶媒、重合性物質及び粒子の組み合わせでコロイド結晶が形成され、選択の幅が飛躍的に増大した。これは、有機分子による排除体積効果により、コロイド粒子同士の静電的反発作用の不足が補われるためではないかと思われる。
上記粒子の表面を修飾する有機分子としては特に限定されず、例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリスチレン、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(メタクリル酸メチル)やそれらの共重合体等を挙げることができる。また、これらの有機分子は、粒子表面との親和性を上げるために適当な官能基を有していてもよい。例えば、粒子としてシリカ粒子を用いる場合には、トリメトキシシラン基、トリエトキシシラン基等を有する有機分子で修飾を行うことが有効である。
このように粒子の表面を有機分子で修飾する際、微粒子本体と修飾有機分子の光学特性が異なるコアシェル構造をとることにより、光学特性の設計自由度を高くすることができ好ましい。
上記粒子の表面を修飾する有機分子の量としては、粒子重量に対して1重量%以上であることが好ましい。1重量%未満であると、充分な効果が得られないことがある。より好ましくは2〜20重量%である。なお、有機分子の量は、微粒子を室温から350℃まで昇温したときの溶媒を除いた重量減少率から測定することができる。すなわち、微粒子は、室温から350℃まで昇温したときの溶媒を除いた重量減少率が1重量%以上であることが好ましい。
上記コロイド結晶を作製する方法としては特に限定されず、例えば、上記溶媒に重合性物質及び粒子を混合し、充分に攪拌した後、一定時間放置する方法等を挙げることができる。
このようにして得られたコロイド結晶を、含有されている重合性物質を重合することにより、本発明の固定化コロイド結晶を得ることができる。重合の方法としては用いた重合性物質に応じて決定され特に限定されないが、熱、電子線又は紫外線を用いる方法が簡便で好適である。
このような方法により作製することにより、本発明の固定化コロイド結晶では、隣接する微粒子同士は実質的に接触していない状態となる。微粒子同士が実質的に接触していない状態で固定することにより、微粒子同士を接触させその表面を融着することにより固定化する方法のように規則的構造の乱れが生じることがない。また、上述のように、表面を有機物質で修飾した粒子を用いる場合には、特に規則性の乱れが起こりにくくなる。実質的に接触していない状態とは、例えば、得られる固定化結晶コロイドより切り出した試料を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したとき、粒子の立体的な重なりで、100%接触していない状態では観察できないが、90%以上は接触していない状態で観察できるような状態を示すものである。
かかる、本発明の固定化コロイド結晶を製造する方法であって、好ましくは、表面が有機分子で修飾されている微粒子を、重合性物質を含有する溶媒中に分散させてコロイド結晶を調製する工程と、上記コロイド結晶中の上記重合性物質を重合させることによりコロイド結晶の固定化を行う工程とを有する固定化コロイド結晶の製造方法もまた、本発明の1つである。
本発明の固定化コロイド結晶は、上記重合前後に反射スペクトル又は透過スペクトルを測定した場合に、重合前後のピーク位置の差が3nm以内である。重合前後のピーク位置の差が3nm以内であるということは、重合前後でのコロイド粒子の規則性の変化が極めて少ないことを示している。重合前後のピーク位置の差が3nmを超えると、光学特性が変わってしまいフォトニック結晶としての充分な性能を維持できない。
また、重合後のピークの半値幅は、固定化コロイド結晶において微粒子が極めて規則性の高い構造を維持していることを示唆している。
本発明の固定化コロイド結晶は、室温から350℃まで昇温したときの溶媒を除いた重量減少率が1重量%以上であることが好ましい。この重量減少は、本質的に結晶を構成する微粒子以外の成分に由来するものである。コロイド結晶は、どのブラベの空間格子をとるかで結晶構造が変わるが、粒子径の均一な粒子を用いて最密充填した場合には、単位格子当たりの粒子の体積分率は74%になる。しかし、結晶を構成する微粒子よりも更に小さな微小粒子は、残りの空間に詰めることも可能であり、その場合には粒子全体の占める体積分率はもう少し増加して80〜90%に達すると考えられる。本発明者らは、このような結晶を構成する微粒子以外の成分が結晶格子中に多く含まれると、コロイド結晶を固定化するときにこれらの成分が緩衝材の役割を果たして、結晶を構成する微粒子の規則性の乱れが抑えられることを見出した。重量減少率が1重量%未満であると、このような効果は充分に発揮されないことがある。より好ましくは、5〜70重量%である。
本発明の固定化コロイド結晶は、原料となるコロイド結晶の規則性をほとんど乱すことなく正確に固定化したものであり、微粒子が極めて規則的に配列している。また、本発明の固定化コロイド結晶は、重合性物質を重合することにより固定化したものであることから堅牢であり、材料として極めて扱いやすい。
本発明の固定化コロイド結晶は、光の制御が必要な部材、例えば、フォトニック材料、無しきい値レーザ素子、高効率非線形光学効果、純光トランジスタ、マイクロ光回路、光導波路、新しい概念の光変調素子、光記憶素子、光導波路、光スイッチ、光センサ、カラーディスプレイ素子、分波器、合波器、光遅延素子、偏光素子、回折素子等の光学材料へ用いることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
数平均分子量6600でトリメトキシシランを末端に有するポリ(メタクリル酸メチル)2gに、1,2’−ジメトキシエタン(DME)50mLと微量のテトラヒドロフラン(THF)とを加えて、超音波混合処理して溶解した。そこに、微粒子として粒径136nmのエタノールシリカゾル(濃度17.8%)を12mL加えて、超音波処理して均一に分散させ、90℃で共沸を行ってDMEを45mL留去した後、テトラヒドロフラン(THF)10mlを加えて還流した。懸濁液を遠沈管に採取し、アセトンとエーテルで洗浄後、減圧乾燥して、ポリ(メタクリル酸メチル)で表面を修飾したシリカ複合微粒子を得た。このシリカ複合微粒子をよく乾燥した後、熱重量分析器(島津製作所社製、TGA−50)を用いて、昇温速度10℃/minで室温から350℃まで行って加熱減量を測定した結果、シリカ複合微粒子における修飾物の重量は7重量%であることがわかった。
得られたシリカ複合微粒子を遠沈管に測り取り、アセトニトリルを加え超音波処理で分散させた後、一度遠心分離器にかけて粒子を沈殿させて上澄みを捨てた。そこに、重合性物質としてジメタクリル酸エチレン(ED)、メタクリル酸メチル(MMA)を配合したアセトニトリル溶液を加え、よく攪拌した。溶液中、シリカ複合微粒子は31重量%、EDは4重量%、MMAは18重量%となった。これをガラスセルに移し、しばらく静置することによりコロイド結晶を得た。
次に、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBM)を加え、窒素置換した後、ガラスセルを冷却水に浸しながら、ウシオスペックス製超高圧水銀ランプ光源装置SX−UI500HQを用いて光照射して、重合性物質を共重合させて、固定化結晶コロイドを得た。
得られた固定化結晶コロイドでは、重合前のコロイド結晶に見られた微粒子規則配列体に特有の虹彩色が観察された。更に、ガラスセルから試料を取り出し、手を触れても形状は崩れず、充分な力学強度を持つことが確認できた。
また、マルチチャンネル分光測定装置(浜松ホトニクス社製、PMA−11)を用いて、光重合前後のコロイド結晶及び固定化コロイド結晶の反射スペクトルを測定したところ、ピーク位置は重合前が529.4nm、重合後は530.4nmであり、重合前後のピーク位置の差は1nmであった。これより、ピーク位置は光重合前後でほとんど変化がなく、規則性の乱れが非常に少ないことがわかった。また、重合後のピークの半値幅は10nmであった。これより、得られた固定化コロイド結晶がフォトニック材料として優れた材料であることが分かった。
得られた固定化結晶コロイドを乾燥させた後、その一部を切り出したものをエポキシ樹脂に包埋後ウルトラミクロトームで約100nm厚の薄片とし、透過型電子顕微鏡(日立製作所社製、H−8100)を用いて観察したところ、隣接する微粒子同士は実質的に接していないことが確認できた。更に、一部を熱重量分析器(島津製作所製、TGA−50)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で室温から350℃まで昇温したときの重量減少率は39重量%であった。
(実施例2)
コロイド結晶を、表面修飾したシリカ複合微粒子が18重量%、EDが6重量%、MMAが25重量%として作製した以外は、実施例1と同様にして固定化コロイド結晶を作製した。
実施例1と同様の方法により、光重合前後の反射スペクトルの測定、及び、得られた固定化コロイド結晶について電子顕微鏡による観察、重量減少率の測定を行った。
結果を表1に示した。
(実施例3)
コロイド結晶を、表面修飾したシリカ複合微粒子が47重量%、EDが2重量%、MMAが9重量%として作製した以外は、実施例1と同様にして固定化コロイド結晶を作製した。
実施例1と同様の方法により、光重合前後の反射スペクトルの測定、及び、得られた固定化コロイド結晶について電子顕微鏡による観察、重量減少率の測定を行った。
結果を表1に示した。
(実施例4)
数平均分子量6600でトリメトキシシランを末端に有するポリ(メタクリル酸メチル)の代わりに、数平均分子量2500でトリメトキシシランを末端に有するポリ(メタクリル酸メチル−スチレン)を用いてシリカ複合微粒子を作製し、コロイド結晶を、シリカ複合微粒子が34重量%、EDが3重量%、MMAが20重量%として作製した以外は、実施例1と同様にして固定化コロイド結晶を作製した。なお、実施例1と同様の方法によりシリカ複合微粒子における修飾物の重量を測定したところ、5重量%であった。
実施例1と同様の方法により、光重合前後の反射スペクトルの測定、及び、得られた固定化コロイド結晶について電子顕微鏡による観察、重量減少率の測定を行った。
結果を表1に示した。
(実施例5)
還流時間を調整して修飾物の重量が2重量%のシリカ複合微粒子を作製し、これを用いて、コロイド結晶を、シリカ複合微粒子が68重量%、EDが2重量%、MMAが7重量%として作製した以外は、実施例1と同様にして固定化コロイド結晶を作製した。
実施例1と同様の方法により、光重合前後の反射スペクトルの測定、及び、得られた固定化コロイド結晶について電子顕微鏡による観察、重量減少率の測定を行った。
結果を表1に示した。
(実施例6)
有機分子による修飾を施していないシリカ微粒子を用い、これを用いて、コロイド結晶を、シリカ微粒子が68重量%、EDが6重量%、MMAが25重量%として作製した以外は、実施例1と同様にして固定化コロイド結晶を作製した。
実施例1と同様の方法により、光重合前後の反射スペクトルの測定、及び、得られた固定化コロイド結晶について電子顕微鏡による観察、重量減少率の測定を行った。
結果を表1に示した。
(実施例7)
カドミウム濃度が0.3モル/LでpH=8の水酸化カドミウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、酢酸アンモニウム、アンモニア、ゼラチンを含む水溶液と、硫黄濃度が1.2モル/Lのチオアセトアミド、ゼラチンを含む水溶液とを混合し、反応時間を調整することで、平均粒子径105nmの硫化カドミウム球状粒子を得た。
得られた硫化カドミウム球状粒子をエタノールに分散させ、少量のアンモニア水を添加したものに、オルトけい酸テトラエチルを添加し、硫化カドミウムをシリカでシェル化し、反応系の濃度と反応時間を調整することで、トータルの平均粒子径が145nmのコアシェル型複合粒子を得た。
得られたコアシェル型複合粒子を、エタノールシリカゾルの代わりに用いた以外は実施例2と同様にして固定化コロイド結晶を作製した。
実施例1と同様の方法により、光重合前後の反射スペクトルの測定、及び、得られた固定化コロイド結晶について電子顕微鏡による観察、重量減少率の測定を行った。
結果を表1に示した。
(比較例1)
有機分子による修飾を施していないシリカ微粒子を用い、これを用いて、コロイド結晶を、シリカ微粒子が68重量%、EDが1重量%、MMAが4重量%として作製した以外は、実施例1と同様にして固定化コロイド結晶を作製した。
実施例1と同様の方法により、光重合前後の反射スペクトルの測定、及び、得られた固定化コロイド結晶について電子顕微鏡による観察、重量減少率の測定を行った。
結果を表1に示した。
産業上の利用可能性
本発明によれば、微粒子配列の三次元的な規則性が充分に維持された、力学的な強度の高い固定化コロイド結晶を提供できる。
Claims (8)
- コロイド粒子が重合性物質を含有する溶媒中に分散し規則的に配列したコロイド結晶を、前記重合性物質を重合させることによりコロイド粒子が規則的に配列したまま固定化してなる固定化コロイド結晶であって、
隣接する前記微粒子同士は実質的に接触していない
ことを特徴とする固定化コロイド結晶。 - 室温から350℃まで昇温したときの溶媒を除いた重量減少率が1重量%以上であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の固定化コロイド結晶。
- コロイド粒子は、表面が有機分子で修飾されていることを特徴とする請求の範囲第1又は2項記載の固定化コロイド結晶。
- コロイド粒子は、微粒子本体と光学特性の異なる有機分子で被覆修飾されたコアシェル構造を有することを特徴とする請求の範囲第1、2又は3記載の固定化コロイド結晶。
- コロイド粒子は、室温から350℃まで昇温したときの溶媒を除いた重量減少率が1重量%以上であることを特徴とする請求の範囲第1、2、3又は4項記載の固定化コロイド結晶。
- コロイド結晶との反射スペクトル又は透過スペクトルのピーク位置の差が3nm以内であることを特徴とする請求の範囲第1、2、3、4又は5記載の固定化コロイド結晶。
- 請求の範囲第1、2、3、4、5又は6項記載の固定化コロイド結晶を製造する方法であって、
少なくとも、表面が有機分子で修飾されている微粒子を、重合性物質を含有する有機溶媒中に分散させてコロイド結晶を調製する工程と、
前記コロイド結晶中の前記重合性物質を重合させることによりコロイド結晶の固定化を行う工程と
を有することを特徴とする固定化コロイド結晶の製造方法。 - 請求の範囲第1、2、3、4、5又は6項記載の固定化コロイド結晶を用いてなることを特徴とする光学材料。
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